平成30(行ウ)273 課徴金納付命令決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月27日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文56,869 文字)

令和7年6月27日判決言渡平成30年(行ウ)第273号課徴金納付命令決定取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求金融庁長官が平成30年6月11日付けで原告に対してした課徴金6億8424万円を同年8月13日までに国庫に納付するよう命ずる旨の決定を取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、平成25年9月25日午後2時59分30秒から同日午後3時までの期間(以下「本件期間」という。)に原告が行った後記3⑹の取引(以下「本件取引」という。)につき、原告が金融商品取引法(以下「金商法」という。) 159条2項1号(現実取引による相場操縦の禁止)に違反したとして、内閣総理大臣から権限を委任された金融庁長官が、同法174条の2第1項(平成25年法律第45号による改正前のもの。以下同じ。)等に基づき、原告に対し、課徴金6億8424万円を国庫に納付することを命ずる旨の決定(以下「本件決定」という。)をしたところ、原告が、本件取引につき原告には「取引を誘引 する目的」は認められないなどとして、その取消しを求める事案である。 2 主な関係法令の定め等⑴ 金商法159条2項柱書きは、何人も、有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引(以下「有価証券売買等」という。)のうちいずれかの取引を誘引する目的をもって、同項各号に掲げる行為をしてはな らない旨を定めており、同項1号は、有価証券売買等が繁盛であると誤解さ せ、又は取引所金融商品市場における上場金融商品等若しくは店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場を変動させるべき一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受 であると誤解さ せ、又は取引所金融商品市場における上場金融商品等若しくは店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場を変動させるべき一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受託等をすること(このうち相場を変動させるべきものを以下「変動取引」という。)を掲げる。 ⑵ア金商法174条の2第1項柱書きは、同法159条2項1号の規定に違 反する一連の有価証券売買等又はその申込み若しくは委託等(以下「違反行為」という。)をした者(以下「違反者」という。)があるときは、内閣総理大臣は、同法第6章の2第2節(審判手続)に定める手続に従い、当該違反者に対し、同法174条の2第1項各号に掲げる額の合計額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない旨を定めて いる。 イ金商法174条の2第1項2号は、「次のイからニまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからニまでに定める額(次のイからニまでのうち二以上に掲げる場合に該当するときは、当該二以上のイからニまでに定める額の合計額)」と規定しているところ、同号ロの規定は、以下のとおりである。 「当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量が当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量を超える場合次の⑴に掲げる額から次の⑵に掲げる額を控除した額(当該額が零を下回る場合には、零とする。)⑴ 当該違反行為が終了してから一月を経過するまでの間の各日におけ る当該違反行為に係る有価証券等に係る有価証券の売付け等についての67条の19又は130条に規定する最高の価格(当該価格がない場合は、これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい、当該違反行為が終了した日にあっては、内閣府令で定める額とする。)のうち最も 67条の19又は130条に規定する最高の価格(当該価格がない場合は、これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい、当該違反行為が終了した日にあっては、内閣府令で定める額とする。)のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額 ⑵ 当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額」 ウ金商法130条は、金融商品取引所は、内閣府令で定めるところにより、その開設する取引所金融商品市場における毎日の総取引高、その上場する金融商品等の銘柄別の毎日の最高、最低及び最終の価格、約定数値及び対価の額その他の事項をその会員等に通知し、公表しなければならない旨を定めている。 3 前提事実次の事実は、当事者間に争いのない事実、当裁判所に顕著な事実又は掲記の証拠(なお、以下、書証番号は、特記しない限り、枝番号のあるものは枝番号を全て含む。)若しくは弁論の全趣旨によって認めることができる事実である。 ⑴ 原告等 ア原告等について(乙10、11、17、18、71、弁論の全趣旨)Aは、ケイマン諸島に本店を置き、ケイマン諸島法に基づき設立されたエグゼンプテッド・トラスト(投資信託の一種)であり、本件当時、年10%の収益率の達成を目指すヘッジ・ファンドであった。また、平成25年9月末時点で、Aの顧客からの出資総額は約768億円であり、信用取 引等に基づく負債を控除しない資産総額は約1528億円であった。 原告は、香港に本店を置き、香港法に基づき設立されたリミテッド・カンパニーであり、B(Aの受託者)及びC(インベストメント・マネージャー)との間でインベストメント・アドバイザリー契約を締結し、Aに出資された資産の運用権限を有していた。Aは、本件当時原告が運用してい た唯一のファンドであった。 原 ベストメント・マネージャー)との間でインベストメント・アドバイザリー契約を締結し、Aに出資された資産の運用権限を有していた。Aは、本件当時原告が運用してい た唯一のファンドであった。 原告が運用する同ファンドの主要戦略の一つに、イベント・ドリブン戦略(コーポレート・アクションや、指数構成銘柄の入替えといった市場イベント等に伴って発生する需給の変化を分析し、収益の獲得を目指す戦略)がある。原告は、本件取引当時において、同戦略等の強化のため、市場イ ベント分析等の技術を有し、引値保証取引(後記⑷ア)を含むインデック ス・リバランスに関する取引の実務経験を有するファンド・マネージャーや指数構成銘柄の入替えに伴う市場インパクト等の予想を行うアナリスト等を雇用していた。また、原告は、本件取引より前に、日経平均株価(株式会社日本経済新聞社が東京証券取引所市場第一部(当時。以下同じ。)に上場する銘柄のうち225銘柄を選定し、その株価を使って算出・公表す る株価指数のこと。以下「日経平均」という。)の構成銘柄(以下「日経平均構成銘柄」という。)等における銘柄入替えイベントに参加したことがあり、平成25年9月までの約2年半の間には約200件の引値保証取引を行い、そのいずれの引値保証取引においても、これに基づく引渡しを完全に履行していた。 イ原告代表者等について(乙16、弁論の全趣旨)原告代表者であるD(又は「原告代表者」という。)は、E株式会社等における勤務を経て、本件当時、原告の代表者であった。 そして、本件当時、Aの受益者であり、かつ、原告の役員等である者として、D、F、G及びHの4名がおり、これら4名の平成25年9月末時 点におけるAへの出資割合は、合計して約7.25%であった。 、本件当時、Aの受益者であり、かつ、原告の役員等である者として、D、F、G及びHの4名がおり、これら4名の平成25年9月末時 点におけるAへの出資割合は、合計して約7.25%であった。 ⑵ 日経平均構成銘柄の入替えア株式会社日本経済新聞社は、平成25年9月6日の大引け(立会時間終了時)後、同月26日にI株式会社の株式(以下「本件株式」という。)を日経平均構成銘柄に採用し、それまで採用していた1銘柄を日経平均構成 銘柄から除外すること(以下「本件銘柄入替え」という。)を公表した。(乙19)イ J株式会社は、本件銘柄入替えにつき、パッシブ・ファンドであるインデックス・ファンド(市場指数(インデックス)に連動した成果を目指す運用を行う投資信託)による買いインパクト(日経平均インデックス・フ ァンド(日経平均の変動を反映した運用成果を目指す投資信託)が、各銘 柄に1500万株投資していると仮定した場合の買い需要を、平成25年9月5日までの過去25営業日間の平均出来高で除した数字)を約13. 66日分に相当すると予想した(乙19)。 また、K株式会社は、本件銘柄入替えに伴い予想される本件株式の買入株数は約1904万6000株であり、本件株式の買入れインパクト(予 想される買入株数である1904万6000株を、過去3か月平均の1日平均売買高で除した数値)は約15.13日分であると推定した(乙19、20)。 ウ日経平均を指数とするインデックス・ファンドにおいては、日経平均構成銘柄が変更される場合、当該ファンドにおける構成銘柄も入れ替える必 要が生じる。 しかし、インデックス・ファンド自らが直接に市場で調達すると、「買い入れる時点での価格」と「構成銘柄が変更される時点での価格」に乖離が発生 における構成銘柄も入れ替える必 要が生じる。 しかし、インデックス・ファンド自らが直接に市場で調達すると、「買い入れる時点での価格」と「構成銘柄が変更される時点での価格」に乖離が発生し、トラッキング・エラー(対象とする指数の騰落率(ある期間の始めと終わりとで価格がどれだけ変化したかを表すもの)とファンドの基準 価格(当日の終値ベースで算出される、ファンド1口当たりの純資産価額)の騰落率との乖離をいう。)が生じるリスクがある。 そこで、インデックス・ファンドでは、証券会社との間で、「新たに採用される銘柄の株式」について、代金額を「採用日前日の終値」、引渡し時期を「採用日前日の取引所の立会時間終了後」とする引値保証取引を締結し、 トラッキング・エラーの発生リスクを回避することがある。 インデックス・ファンドと引値保証取引を締結した証券会社も、当該銘柄の株式の調達を自ら市場で行うことになると、上記と同様に、「買い入れる時点での価格」と「構成銘柄が変更される時点での価格」に乖離が発生するリスクを直接負うことになる。 そこで、証券会社は、このリスクを転嫁又は分散させるため、このよう な場面でのリターンを志向するアクティブ・ファンド(独自のテーマ等に基づいて銘柄を選定して投資するなどして市場指数を上回る成果を目指す運用をする投資信託)等との間で、更に引値保証取引を結ぶことがある(以下、この更なる引値保証取引を「マッチング取引」ということがある。)。 本件でも、後記⑷のとおり、Aに出資された資産の運用権限を有してい た原告は、証券会社と引値保証取引を締結した。 ⑶ 平成25年9月24日までの本件株式に係る取引状況等(以下、平成25年9月中の出来事については、年及び月の記載を省略する 権限を有してい た原告は、証券会社と引値保証取引を締結した。 ⑶ 平成25年9月24日までの本件株式に係る取引状況等(以下、平成25年9月中の出来事については、年及び月の記載を省略する。)ア 2日から6日までの本件株式の平均出来高数は、112万9620株であるのに対し、本件銘柄入替えが公表された日の翌営業日である9日以降 24日までの各日の出来高は、最も少ない日(11日)で228万6700株、最も多い日(24日)で542万2500株であり、その出来高は増加していた。 イ原告は、24日までに、本件株式の売買を行い、同日時点で、本件株式を352万2900株保有していた。(乙21) ウ本件株式につき、24日の終値は6540円(前日より140円高)であり、その出来高は542万2500株であった。(乙23)⑷ 原告と各証券会社との間の引値保証取引(乙24)ア引値保証取引とは、ある株式について、後場(本件当時は午後0時30分から午後3時まで)における引値(終値)で売買を行うことを事前に契 約し、取引時間終了後に当該売買をする取引をいう。 イ原告は、24日午後5時頃から25日午後0時30分頃までの間、本件株式に関し、次のとおり、各記載の時刻(上記の時間における最終合意時刻)において、各記載の証券会社との間で、各記載の数量(最終合意時刻における合計数量)の本件株式を原告が当該証券会社に売り渡す旨の引値 保証取引の合意をした。 ① 午前10時56分 L株式会社 70万3000株② 午前11時27分 K株式会社 820万1000株③ 午後0時18分 J株式会社 488万8000株ウ原告は、25日午後、 70万3000株② 午前11時27分 K株式会社 820万1000株③ 午後0時18分 J株式会社 488万8000株ウ原告は、25日午後、本件株式に関し、次のとおり、各記載の時刻(同日における最終合意時刻)において、各記載の証券会社との間で、更に各 記載の数量(最終合意時刻における合計数量)の引値保証取引の合意をし、結果、合計138万1000株を積み増す旨の引値保証取引の合意をした(以下、この各引値保証取引と前記イの引値保証取引を併せて「本件引値保証取引」という。)。 ① 午後0時54分 M株式会社 30万株 ② 午後1時57分 N株式会社 5万2000株③ 午後2時36分 K株式会社 62万9000株(前記イ②と合わせて883万株)④ 午後2時41分 L株式会社 40万株(前記イ①と合わせて110万3000株) エこれらにより、原告が本件引値保証取引を履行する上で必要となる本件株式数は、1517万3000株となった。 また、本件引値保証取引においては、原告が一定の手数料を支払い又は一定の値引き(割引)をする旨が約定されていた。 ⑸ 25日(以下、同日のことを「本件取引日」ということがある。以下、本 件取引日中の出来事については、年月日の記載を省略することがある。)における本件期間前の取引状況等ア Dは、午前9時1分13秒頃、O株式会社の担当者に対し、25日に発注する予定の本件株式につき、その執行開始時刻を大引けの15秒前である午後2時59 とがある。)における本件期間前の取引状況等ア Dは、午前9時1分13秒頃、O株式会社の担当者に対し、25日に発注する予定の本件株式につき、その執行開始時刻を大引けの15秒前である午後2時59分45秒からとする旨の意向を示した。(甲40、乙27、 122) イ原告は、午後0時17分頃から午後2時49分頃までの間、O株式会社に対し、22回にわたり、執行開始時刻を指定し、買付けの方法としてTWAP(大口注文を均等に分割して均等時間間隔で執行するアルゴリズム)又はVWAP(過去の平均的な日中出来高分布に応じた割合で分割し執行するアルゴリズム)を用い、設定を「Low」(分割回数は原則6回)又は 「Mideum」(分割回数は原則8回)と指定し、合計471万2000株の買い注文の委託をした(以下「本件事前注文」という。)。その1回当たりの注文株数はおおむね10万株から40万株、執行開始時刻は22回中17回が25日午後2時59分から大引けまでの間に指定され、そのうち本件期間中を執行開始時刻として指定するものは15回、その買い注文 株数は359万9000株であった。(甲36、乙27、28、137)ウ原告は、午後2時59分30秒時点に至るまでに、本件株式につき、市場内で3万株を売り付ける一方、市場内で合計283万1800株を、市場外で2500株をそれぞれ買い付け(合計283万4300株)、その結果、同時点で、本件株式632万7200株を保有していた。 原告は、本件引値保証取引により、本件株式1517万3000株を引き渡す必要があったから(前記⑷エ)、本件引値保証取引を履行するためには、大引けまでの30秒間(本件期間)に、本件株式884万5800株を調達しなければならなかった。(乙21)⑹ 本件期間にお き渡す必要があったから(前記⑷エ)、本件引値保証取引を履行するためには、大引けまでの30秒間(本件期間)に、本件株式884万5800株を調達しなければならなかった。(乙21)⑹ 本件期間における取引状況等 ア原告は、東京証券取引所(以下「東証」という。)において、プログラムを用いる旨事前に委託した発注(アルゴリズムを用いた注文)と手動で即時に行われる注文(DMAによる注文。トレーダーは、D、Gら3名)により、午後2時59分30秒から午後3時までの間(本件期間)、O株式会社、P株式会社及びM株式会社を介して、合計118回にわたり、下表の 内訳のとおり、合計919万8100株の買い注文を発注し(アルゴリズ ムを用いた注文については、事前に委託した発注の執行)、そのうち788万6900株分の取引が成立した(本件取引。なお、DMAとは、投資者が証券会社に委託した注文内容が即時そのまま証券会社によって取引所に発注される注文方法である。)。 本件取引の詳細は、下図及び別紙2のとおりであり、本件取引の118 回の注文のうち105回が成行注文、13回が指値注文であった。そして当該指値注文のうち12回は直前約定値より1%以上高値での注文であり、そのうち11回は直前約定値より300円から640円の高値での注文であった。(甲35、41、乙28、30~32、82) イ本件期間中に取引が成立した本件株式の総数は1120万3200株であるところ、原告の買付関与率(株式市場における特定の銘柄について、ある期間の当該銘柄全体の出来高を分母とし、同期間の特定の投資家の買付けによる出来高を分子として算出する割合をいう。)は約70.4%(788万6900株/1120万3200株)であった。 また、本件株式の価格は、約30秒間のうちに し、同期間の特定の投資家の買付けによる出来高を分子として算出する割合をいう。)は約70.4%(788万6900株/1120万3200株)であった。 また、本件株式の価格は、約30秒間のうちに6690円から7540円へと高騰し、いわゆるストップ高となった。(乙30~32)本件期間中の株価推移と原告の本件株式の買付状況の概要をグラフ化すると、下図のとおりである。 O株式会社M株式会社P株式会社P株式会社 ウ原告は、25日の大引け時点で、本件株式を1421万4100株保有していた。(乙21)⑺ 本件取引後ア原告は、本件引値保証取引を締結した各証券会社に本件株式を売り渡し た。 イ本件株式については、翌26日、6790円(前日終値比750円安)で取引が始まり、6710円(前日終値比830円安)で取引を終え、本件取引から約1年後の平成26年12月6日まで、25日の終値である7540円を上回ったことはなかった。(乙23、86) ⑻ 本件決定(甲1)内閣総理大臣の権限の委任を受けた金融庁長官は、金商法所定の手続を経た上で、平成30年6月11日付けで、原告に対し、本件取引が違反行為であるとして、課徴金6億8424万円を同年8月13日までに国庫に納付することを命ずる旨の決定(本件決定)をした。 本件決定が認定した違反事実は、大要、下記のとおりである。 記原告の代表者であるDらは、原告の業務に関し、東京証券取引所市場第一部に上場されている本件株式につき、同株式の売買を誘引する目的をもって、平成25年9月25日午後2時59分30秒から同日午後3時までの間(本 件期間)、東証において、O株式会社、P株式会社及びM株式会社を介し、成行又は直 つき、同株式の売買を誘引する目的をもって、平成25年9月25日午後2時59分30秒から同日午後3時までの間(本 件期間)、東証において、O株式会社、P株式会社及びM株式会社を介し、成行又は直前約定値より高指値で大量の買い注文を連続して発注して株価を引き上げたり、下値に大量の買い注文を発注したりするなどの方法により、本件株式合計788万6900株を買い付けるとともに、本件株式合計131万1200株の買付けの委託を行い、もって原告の役員等であるD、F、G 及びHの同年9月度におけるAへの出資割合である7.25%相当については自己の計算において、それ以外については自己以外の者であるAへの出資者の計算において、本件株式の売買等が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における本件株式の相場を変動させるべき一連の売買及び委託をした。 ⑼ 本件訴えの提起 原告は、平成30年7月9日、本件訴えを提起した。 4 主たる争点本件取引は、有価証券の売買に係る「取引を誘引する目的」(金商法159条2項柱書き。以下「誘引目的」という。)をもって行われたか(誘引目的の有無)。 5 主たる争点に関する当事者の主張 (被告の主張)⑴ 誘引目的の判断枠組み等誘引目的とは、人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものと誤認させて有価証券市場における有価証券の売買取引に誘い込む目的をいう(最高裁昭和6 3年(あ)第1102号平成6年7月20日第三小法廷決定・刑集48巻5 号201頁。以下「平成6年最高裁決定」という。)ところ、これが認められるためには、投資者を積極的に取引に誘い込む意図までは必要なく、投資者に誤解を与え、投資者がそれに基づいて取引に参 巻5 号201頁。以下「平成6年最高裁決定」という。)ところ、これが認められるためには、投資者を積極的に取引に誘い込む意図までは必要なく、投資者に誤解を与え、投資者がそれに基づいて取引に参加する可能性があることの認識で足りる。そして、人為的な操作を加えて相場を変動させようとする場合には、投資者に誤解を与え、投資者がそれに基づいて取引に参加する可能 性があることを当然に認識しているから、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があれば、誘引目的があるということができる。 また、誘引目的は、現実に株式を買い付ける目的と併存し得るものであり、併存する他の目的の有無や当該目的との主従関係は、金商法159条2項1号違反の成否に影響を及ぼすものではない。 そして、誘引目的は主観的要素であるが、行為者がこれを否定したとしても、客観的な取引態様等の外形的な間接事実からその目的の存在を推認できればこれを認定できるのであり、取引の動機、売買取引の態様、売買取引に付随した前後の事情等から、一連の取引についての誘引目的の有無を総合的に認定判断すべきである。このうち、取引の態様については、取引の目的を 判断する重要な要素であり、取引の動機は、誘引目的の認定に当たって極めて重要な考慮要素となる。 ⑵ 原告に誘引目的があったこと以下の事情を総合的にみれば、原告には本件取引において誘引目的があったと認められる。 ア本件取引の態様から推認される原告の意図(ア) 原告は、大引け間際の限られた時間である本件期間に大量の買い注文を発注し、本件期間における買付関与率は約70.4%、本件期間のザラバ(立会時間中)での買付関与率は約94.6%と極めて高かったのであって、本件取引は、本件株式の相場に大きな 件期間に大量の買い注文を発注し、本件期間における買付関与率は約70.4%、本件期間のザラバ(立会時間中)での買付関与率は約94.6%と極めて高かったのであって、本件取引は、本件株式の相場に大きな影響を与え、相場を支 配する規模のものであった。特に、原告は、大引け前の立会時間中の取 引において、売り注文の総量をはるかに超える量の買い注文を成行又は直前約定値ないし最良売り気配を相当程度上回る高指値で発注することにより、市場の売り注文をほぼ単独で全て買いさらい、その結果、本件株式の株価はストップ高まで上昇している。このような経過に照らして、本件取引が、本件期間中の相場を高値に誘導し、本件株式の株価を高値 に形成する極めて強い効果を有していたことは明らかである。 (イ) そして、Dが引値保証取引等に係るガイドライン(乙13、62・別添4。以下「本件ガイドライン」という。)を知悉していたことや原告の人員体制、取引経験等に照らして、本件取引のように大引け間際に成行及び高指値で大量の買い注文を発注するという取引形態が、類型的に相 場操縦の疑義がある買付形態とされ、株価を高値に誘導し、終値に多大な影響を与える効果を持つことや、大引け前30秒間に想定される出来高が限定的であることを認識していなかったはずがない。原告は、本件のような取引態様で買付けを行えば、流動性に比して価格形成に過度な影響を与えるような数量や価格での発注となり、本件期間における原告 の買付関与率が高い割合になって、自らの買付けによる影響により本件株式の株価を急騰させることになることをあらかじめ認識していなかったとも考え難いから、原告は、本件取引が本件株式の株価に与える影響を十分に認識した上で本件取引に及んだものと認められる。 (ウ) 原告は、大 価を急騰させることになることをあらかじめ認識していなかったとも考え難いから、原告は、本件取引が本件株式の株価に与える影響を十分に認識した上で本件取引に及んだものと認められる。 (ウ) 原告は、大引け30秒前の時点で、マッチング取引の履行のために必 要な株数として884万5800株を残していたところ、売り板の状況から本件取引開始時点における売り注文の総量(544万0800株)を認識していながら、本件期間中において、その総量を大幅に上回り、かつ、マッチング取引の履行のために必要であった総量をも上回る合計919万8100株の買い注文を発注した。そして、このとき、原告と 競合する買い注文がほとんどなかったにもかかわらず、原告は、本件取 引のほぼ全てを、即座に約定して株価を上昇させる効果を持つ成行注文ないし高指値注文で発注した。また、原告は、大きな数量の発注をするにもかかわらず、発注単位を小さくする、十分な時間をかけるなどしなかったし、株価への影響を相対的に減らすことができると考えられるため、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くが引け条件付き注 文(引けに執行されることを条件とした注文であり、約定する場合の約定値は引値となる。)で買い注文を発注しているにもかかわらず、原告は、引け条件付きの買い注文を一切発注しなかったのであって、原告には、マーケット・インパクト(市場参加者の売買が市場価格に与える影響)に配慮しようとする姿勢がみられなかった。さらに、大量の売り需要が 全て売り注文として喚起される(市場で発注される)ためには相応の時間を要するのに、原告は、原告の買い注文の発注規模に見合う大量の潜在的な売り需要が喚起されて新規の売り注文として発注されることは想定し難い、大引け間際の30秒間という限られた時間に ためには相応の時間を要するのに、原告は、原告の買い注文の発注規模に見合う大量の潜在的な売り需要が喚起されて新規の売り注文として発注されることは想定し難い、大引け間際の30秒間という限られた時間にあえて買い注文を集中させた。そもそも、原告は、引け条件付きの買い注文だけでなく 事前に買い付ける方法や大引け後に借株をする方法によっても本件株式を調達することができたのであるから、大引け間際の30秒間という限られた時間に売り注文の総量をはるかに超える買い注文を集中させる必然性があったとは認め難い。ましてや、原告が後記のとおりマッチング取引を積極的にかき集め、膨大なリスクを抱える投資判断をしたことか らすれば、本件株式の株価が大引けにかけて上がるとの原告代表者(D)の見込みは、確信ともいえる相当強度のものであったのであるから、なおのこと、原告が事前の買付けの割合を低く抑える必要性はなかった。 (エ) したがって、前記のような原告の行動は、本件株式の株価を急騰させることを原告が当然に認識していたこと、ひいては原告に人為的に株価 を上昇させる意図があったことを強く推認させるといえる。 イマッチング取引のかき集め行為から推認される原告の意図(ア) 原告は、本件株式の想定買入株数の約8割を占める合計1517万3000株のマッチング取引を締結し、本件取引日前日までの買付分を差し引くと、本件取引日に調達することとなったのは、本件取引日における本件株式の一日の出来高(約2300万株)の約半分に相当する11 65万0100株であって、インデックス・ファンドが引値保証取引を用いることにより分散しようとした本件株式に係る買い需要をあえて自社に集中させたものである。これにより、原告は、大口トレーダーとなり、市場全 100株であって、インデックス・ファンドが引値保証取引を用いることにより分散しようとした本件株式に係る買い需要をあえて自社に集中させたものである。これにより、原告は、大口トレーダーとなり、市場全体の一日の取引量の約半分に相当する買い注文を、自己の意図するタイミング、価格条件により発注し、実質的に単独で価格動向に 決定的な影響を与えることができる立場に自らを置いた。すなわち、当該マッチング取引のかき集めにより、大量の買い注文の集中による人為的な相場変動が可能となったものであるから、銘柄入替日前日の取引量の増加を踏まえても、当該マッチング取引のかき集めは、原告が相場操縦をより効果的かつ確実に実行することを可能とする客観的状況を作出 する行為であったといえる。 (イ) マッチング取引の性質上、単に終値に近い価格で本件株式を調達するだけでは、手数料や割引率の負担を上回る収益を上げることはできないし、引値保証取引は平均買付単価が合意された引渡価格を上回れば差額分の損失を被るリスクのある取引であり、リスク規模は引値保証取引の 量が増えれば増えるほど大きくなるものである。また、引値保証取引を大量に行うと自己の買付けにより株価に影響を与える可能性も高まるため、社内規則等に従い、相場操縦ではないかとの疑義が生じることを避けようとすれば、引値保証取引の量は、マーケット・インパクトの観点から一定程度に制限せざるを得ず、買付けに当たっては、大引けに近接 した時間帯での市場での買付量に留意しつつ、分散買付けを行うことが 通常想定されることになる。したがって、このような通常の対応をとるファンド等であれば、割引率や手数料の負担を伴うマッチング取引を大量にかき集めることは、負担するリスクの規模や自己の買付けによる株価の影響への配 ることになる。したがって、このような通常の対応をとるファンド等であれば、割引率や手数料の負担を伴うマッチング取引を大量にかき集めることは、負担するリスクの規模や自己の買付けによる株価の影響への配慮の観点からして考え難い。 他方で、Dは、証券会社の担当者に対して、マッチング取引を可能な 限り多く集めたいとの意向を述べるとともに、他社よりも有利(原告にとっては不利)な価格条件を提示する意向も明確に述べた上で、事前に買い付けていた本件株式の数量をはるかに上回る合計1517万3000株のマッチング取引を締結した。これは、仮に本件株式の終値が下がれば、Aの受益者は膨大な損失を受けるという大きな価格変動リスクを 負担することを意味していた。このような膨大なリスクの積み増しは、株価の成り行きという不確定要素を所与のものとした投資者の判断としては、合理的に理解することが困難であり、かかるマッチング取引のかき集めが、相場操縦をより効果的かつ確実に実行することを可能とする客観的状況を作出するための準備行為として行われたものと理解して初 めて、原告がマッチング取引のかき集めによる膨大なリスクの積み増しという、一見すると不合理な手法を選択した理由を合理的に理解することが可能となる。 (ウ) したがって、マッチング取引のかき集め(本件引値保証取引)は、原告に人為的に株価を上昇させる目的があったことを推認させる事実であ る。 ウ以上によれば、原告が、マッチング取引をかき集め、自己の意図するタイミングで、自己の意図する価格条件により発注し、実質的に単独で価格動向に決定的な影響を与えることができる大口トレーダーになった上で、銘柄入替前日の立会終了前30秒間に、大量の成行又は高い指値の買い注 文を集中・反復・継続するという 注し、実質的に単独で価格動向に決定的な影響を与えることができる大口トレーダーになった上で、銘柄入替前日の立会終了前30秒間に、大量の成行又は高い指値の買い注 文を集中・反復・継続するという、「相場操縦的行為」と指摘されている手 法を用いた本件取引により、本件株式の終値を人為的に高値に操作したことは明らかであり、原告において、他の投資者が本件取引によって形成された相場が自然の需給関係により形成されているものであると受け止め、その上で売買取引に参加する可能性のある状況と認識していたことも明白である。 よって、原告に誘引目的があったことは優に認められる。 (原告の主張)⑴ 判断枠組み等平成6年最高裁決定が示した誘引目的の定義からすれば、誘引目的が認められるためには、自らの取引によって相場が変動する可能性があること(マ ーケット・インパクトがあること)や第三者が誘い込まれる可能性があることの認識で足りるものではなく、他の投資者をその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて売買取引に誘い込む目的こそが誘引目的の中核的内容というべきであり、投資者を誤認させて誘い込むことを積極的に意図することを要すると解すべきである。 このため、誘引目的を間接事実から推認する場合には、当該推認の対象は、「人為的な操作を加えて相場を変動させる」意図ではなく、他の投資者を「誤認」させる意図でなければならないのであって、「市場に関する誤った認識を投資者に生じさせる欺罔性」が立証されなければならない。 また、仮に、誘引目的の違法性の中核を人為的操作の意図にあると解して も、大量の買付行為に現実の需要(実需)がある場合に、買付行為を行う取引圧力により相場が変動する可能性を認識していることをもっ た、仮に、誘引目的の違法性の中核を人為的操作の意図にあると解して も、大量の買付行為に現実の需要(実需)がある場合に、買付行為を行う取引圧力により相場が変動する可能性を認識していることをもって、人為的に相場を変動させる意図があると評価することはできず、かかる買付行為を実際に行うことは、人為的に相場を操作することに当たらない。 ⑵ 原告に誘引目的はなかったこと 以下のとおり、本件取引は実需に基づく合理的なものであり、原告の買い 注文によって、市場参加者が何かを誤認したこともなければ、そのような誤認によって取引に誘引させられた者もいなかったのであるから、原告に誘引目的は認められない。 ア本件取引は自然の需給関係に基づくものであること実需に基づく合理的な取引であれば、それは自然の需給関係を構成する ものであるから、「投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させ」る取引とはいえず、誘引目的も認められない。 インデックス・ファンドの銘柄入替前日における大引けの価格での買い需要は自然の需要であり、引値保証取引を通じてその需要を引き受けた証券会社や機関投資家の買い需要も自然の需要である。そして、かかる買い 需要に基づく大量の買い注文を見越し、かかる大量の買い需要の発生を格好の収益機会と捉えて新規銘柄を先回りして買い付け、入替前日の大引けにかけて大量の買い注文にぶつけて売り付ける投資家(以下「先回り投資家」という。)がいるところ、先回り投資家もそのような買い需要を見越して先回りして買い付け、それを銘柄入替前日の大引けにかけて売るのであ るから、その売り需要もまた自然の需要である。したがって、これらの需給に基づく価格変動は自然の需給関係により形成されたも して先回りして買い付け、それを銘柄入替前日の大引けにかけて売るのであ るから、その売り需要もまた自然の需要である。したがって、これらの需給に基づく価格変動は自然の需給関係により形成されたものである。そして、日経平均の新規採用銘柄については、事前周知によって、インデックス・ファンドの需要を反映した大量の買い注文が銘柄入替前日の大引けにかけて大量に出ることや、それを想定した先回り投資家が同じ時間帯に大 量の売り注文を出すことが、市場参加者に広く認識されていた。本件取引は、このようなインデックス・ファンドの需要を反映した大量の買い注文の一部を構成するものとして行われたのであるから、他の投資者にとって想定の範囲内のものであって、他の投資者を「誤認」させるものではなく、「自然の需給関係」を構成するものであり、誘引目的は認められない。 イ本件取引は合理的であったこと (ア) 大引けにかけての時間帯に発注することの合理性引値保証取引の受注者は、引値保証取引を履行するための注文(ヘッジ取引)を執行する際に、時間発展リスク(買い付ける時間帯が銘柄入替前日の大引けから時間的に離れれば離れるほど買付価格と終値が乖離する価格変動のリスク)と未約定リスク(請け負った株を全て買わなけ ればならないリスク。債務不履行に陥れば証券会社から取引停止の措置を受ける可能性がある。)を適切にコントロールする必要がある。 本件取引は、以下のとおり、時間発展リスク及び未約定リスクの観点からみて合理的なものであり、大引け前の30秒という時間をとったのは、時間発展リスクと未約定リスクの最適化を図ったものである。 すなわち、指数構成銘柄入替前日の大引けにかけて株価が下落するリスクがあるから、時間発展リスクの観点か 0秒という時間をとったのは、時間発展リスクと未約定リスクの最適化を図ったものである。 すなわち、指数構成銘柄入替前日の大引けにかけて株価が下落するリスクがあるから、時間発展リスクの観点からは、当該入替前日の大引けにできるだけ近い時間帯での執行が求められる。また、引値保証取引の履行に必要な株数を買い付けるには、先回り投資家らの大量の売り注文が発生すると合理的に予測される時間帯に買い注文を入れることが合理 的であり、実際、本件取引日の板状況においても、大引けから離れれば離れるほど売り板が薄くなっていたのであって、未約定リスクの観点からも、大引けにかけて発生することが予想される巨大な売り注文に合わせて自らの買い注文を集中させることにより、必要株数を調達することができる。 また、原告は、未約定リスクを考慮して必要株数の一部については前倒しで買い付けているが、大量の売り注文が出てくることが期待できない早い時間帯に相当数を買い付けると、買い注文のマーケット・インパクトが大きくなり、株価が上がるため、原告の取得単価が高くなってしまい、しかも、その時点の株価で相当数量の株式を買えるわけでもない のであって、執行時刻を早めることに合理性がなかった。実際、銘柄入 替前日の大引けにかけて値上がりしているケースにおいても、大きな数量の株式が前倒しで買われているものではない。このように、原告は、マーケット・インパクトに配慮して(すなわち買付けコストも考慮して)本件期間よりも前の買い注文の数量を限定した。 したがって、原告が大引けにかけての30秒間に多くの注文を集中さ せたことは、合理的であった。 (イ) 引け条件付き注文を出さなかったことに合理性があったこと原告は、引け条件付き注文を出さな けにかけての30秒間に多くの注文を集中さ せたことは、合理的であった。 (イ) 引け条件付き注文を出さなかったことに合理性があったこと原告は、引け条件付き注文を出さないと最初から決めていたものではなく、本件では、大引けにかけて、引け条件付きの売り注文よりも引け条件付きの買い注文の方が多くなっていたため、引け条件付きの買い注 文を入れても必要数量を買えない可能性が高く、また、ザラバで買った方が安く買える可能性が高かったことから、引け条件付き注文を入れなかった。 アルゴリズム注文について、引け条件付きで出さないこととしたのは、大引けでは取引が成立しない(ザラバ引け)可能性があるため、大引け にかけての市場の状況が分からない本件事前注文の時点では、アルゴリズム注文を引け条件付きで出した場合、未約定リスクが高くなるからである。 むしろ、引け条件付きで大きな数量の買い注文を入れることは、終値を引き上げ、又は終値で株価が下がらないようにするための最も直接的 かつ効果的な手段である。引け条件付きで大きな数量の買い注文を入れておけば、大引けの株価が下がるのを防ぐことができる。仮に、原告が終値を高くしようしていたのであれば、引け条件付きで大きな数量の買い注文を入れたはずであるところ、原告は、引け条件付きの買い注文を全く入れていない。 (ウ) 即時執行注文(成行注文及び高指値注文)の連続発注の合理性 時間発展リスクを考慮して大引けにかけての限られた時間の中で必要数量を買い付けるには、即時執行注文の連続発注が合理的であった。 すなわち、最良買い気配値以下の買い注文で約定を待っていては、株価が下がってくる保証がない以上、買えるかどうかは分からないし、競 要数量を買い付けるには、即時執行注文の連続発注が合理的であった。 すなわち、最良買い気配値以下の買い注文で約定を待っていては、株価が下がってくる保証がない以上、買えるかどうかは分からないし、競合相手に売り注文を買われてしまい、未約定リスクが高まることになる。 一方、原告が即時執行注文の連続発注をしたからといって株価が上がっていくわけではない。板を見た時から発注の完了までタイムラグがあるから、その間に売り注文が出れば株価は下がる可能性があるし、原告の注文直後は株価が上がったとしても、その後に売り注文が出れば下がる可能性がある。実際、本件では、売り手側も即時執行注文を出していて 株価は乱高下しており、一直線に上がっていったものではなく、原告は株価をコントロールできたものではない。 また、仮に、原告が現在の価格より少し低い価格で大量の買い注文を出せば、それは板として顕在化して、競合する他の買い手に直ちに価格と数量が知られるところとなる。この場合、超短期志向の投資家は、現 在価格より高い買い注文を大量に入れて、現在価格より相当上のところまで買いさらってしまうから、原告はその急騰したところから買い注文を入れなくてはならなくなる。それを防ぐためには、現在価格より高い指値及び成行で買っていくしかないし、この場合、原告が設定した価格や数量は板として残らないので、上記のような超短期志向の投資家の行 動を防げるのである。 (エ) アルゴリズムによる注文と手動注文との組合せの合理性原告は、本件株式を買うに当たり、アルゴリズム注文のほか、板の状況に応じて臨機応変に対応するために、トレーダーによる手動注文を併せて行うこととした。 ⑶ 誘引、誤認がないこと 本件銘柄入替えについて事前に周知さ アルゴリズム注文のほか、板の状況に応じて臨機応変に対応するために、トレーダーによる手動注文を併せて行うこととした。 ⑶ 誘引、誤認がないこと 本件銘柄入替えについて事前に周知されていたことにより、銘柄入替前日の大引けにかけてインデックス・ファンドの大量の買い需要が発生することは知られていたことであり、原告が付け加えた情報は何もなかった。原告は、その買い需要を反映した買い注文の一部を構成していただけであるから、原告の行動によって新たな思惑や観測が生まれることもなかった。そして、大 引けにかけて大量の売り注文と買い注文とがぶつかり合い、価格が乱高下することがあり得ることも、最終的に引値(終値)がどうなるかが予測できないことも認識されていた。 このように、原告の買い注文によって、市場参加者が何かを誤認したこともなければ、そのような誤認によって取引に誘引させられた者もいなかった のであるから、この点からも、原告に誘引目的は認められない。 ⑷ 被告の主張への反論等ア株式取引を評価するに当たっては、株価の動きが不確実であり事前には分からないことを前提にする必要があり、本件取引を行った後に株価が高騰したのはおかしいだとか、もっと前もって買っておけば安い価格で買え たなどと結果論で評価すべきではない。被告の主張は、当該不確実性を無視して結果論で議論しており不当である。 イ平常時の大引けにかけての短時間に大量の買い注文を集中させれば、それに見合う売り注文が喚起される暇もなく株価が急騰するであろうが、指数構成銘柄に新規採用される銘柄については銘柄入替前日の大引けにか けて又は大引けにおいてインデックス・ファンドの需要を反映した大量の買い注文が出ることを市場参加者はあらかじめ認識していた。そして、 銘柄に新規採用される銘柄については銘柄入替前日の大引けにか けて又は大引けにおいてインデックス・ファンドの需要を反映した大量の買い注文が出ることを市場参加者はあらかじめ認識していた。そして、銘柄入替前日の大引けにかけて、先回り投資家の大量の売り注文が待ち構えているのであるから、平常時とは状況が全く異なる。特に、本件株式に対するインデックス・ファンドの想定需要は過去最大級のものであった。し かも、売り注文を出すのに要する時間は、機械発注であれば1秒も必要で なく、個人でも一、二秒あれば足りる。被告は、本件取引を評価するに当たり、かかる銘柄入替前日の特殊な状況を考慮せず、大量の売り注文が待ち構えているわけではない平常時の取引に対する分析手法を前提としており、根本的に間違っている。 また、銘柄入替前日の大引けにかけての株価は上昇することが多いが、 当該株価の形成は、インデックス・ファンドの買い需要数と先回り投資家らの売り需要数とのバランスによって決まる。そして、インデックス・ファンドの総需要数は、インデックス・ファンドの規模から算出されるものであり、インデックス・ファンドが直接買い付けても引値保証取引を用いても変わるものではない。したがって、銘柄入替前日の大引けにかけての 株価形成は、先回り投資家等の売りの規模によって決まる。 このため、仮に、インデックス・ファンドの需要を独占した投資家がヘッジ取引を行った結果、買付関与率が100%であったとしても、最終的に株価の行方を決定付けるのは、先回り投資家等による売り注文の多寡であるから、本件取引の買付関与率は誘引目的の間接事実として意味をなさ ない。本件取引の買付関与率はインデックス・ファンドの大量の買い需要を反映したものであって、仮に、原告が本件 り注文の多寡であるから、本件取引の買付関与率は誘引目的の間接事実として意味をなさ ない。本件取引の買付関与率はインデックス・ファンドの大量の買い需要を反映したものであって、仮に、原告が本件引値保証取引の数量を減らして買付関与率を低くしたとしても、他の取引主体がその分の買い需要を反映した買い注文を入れるだけのことであるし、前記のとおり、先回り投資家の大量の売り需要が存在するのであるから、平常時の取引における関与 率の議論を本件に持ち込むのは誤りである。 ウ借株について銘柄入替えの翌日以降の株価がどうなるかは不確実であり、借株には大きなリスクがあるため、借株で調達することは現実的な選択ではない。 エ株価の急騰について 前記のとおり、指数構成銘柄入替前日の大引けにかけての株価形成は、 売り需要の規模によって決まる。そして、銘柄入替前日の大引けにかけての大量の買い注文が具体的にどの程度の数量になるのかはある程度推測できる一方で、先回り投資家らによる大引けにかけての売り注文については、大量であることは予想できるものの、具体的にどの程度の数量になるかは事前に分からない。したがって、大引けにかけて上がるか下がるかは 事前に分からず、本件では売り注文が買い注文より少なかったため、結果的に急騰したにすぎないし、急騰した事例は本件のみではない。 オ本件引値保証取引について(ア) 本件引値保証取引の締結に先立ち、原告は、割引率が不合理に原告に不利にならないように受注交渉を行っていたのであり、割引率の多寡を 問わず、引値保証取引を可能な限り多くかき集めたという事実はない。 複数の証券会社が原告に対して引値保証取引を発注したのは、それまでの原告の引値保証取引の履行実績を重視した結果 割引率の多寡を 問わず、引値保証取引を可能な限り多くかき集めたという事実はない。 複数の証券会社が原告に対して引値保証取引を発注したのは、それまでの原告の引値保証取引の履行実績を重視した結果である。 (イ) 被告は、原告が獲得した引値保証取引の数量を問題視するが、そもそもその数量は、事前に市場に周知されたインデックス・ファンドの買い 需要に関する市場関係者の想定株数(約1900万株)の内数になるだけである。原告が締結した引値保証取引の数がいくらであろうとインデックス・ファンドの買い需要の数に変化はなく、銘柄入替前日の大引けにかけての株価形成は、売り注文の規模によって決まるのであって、株価形成を決定付けるのは売り注文であるから、引値保証取引の数量は、 他の投資者を誤認させて取引に誘い込む意図とは関連がない。 (ウ) 日経平均構成銘柄の入替えにおいては需要発生日の大引けにかけて値上がりする事例が多く見られるところ、原告は、I株式会社は値がさ株(判決注:株価の水準が高い銘柄。日経平均の算出上、値がさ株については、相対的に新規採用時のインパクトが大きくなる傾向がある。)であ るため、必然的にインデックス・ファンドが買う金額が大きくなること から、他の日経平均の採用銘柄と比較して更に需要発生日の大引けにかけて値上がりする可能性が高いと判断した。加えて、原告はトレーダーとしてのスキルが非常に高いこと、銘柄入替えでI株式会社が新規採用されることは余り予想されていなかったこと、6日のI株式会社の新規採用の発表後、9日から24日の株価の動きや売買高の推移などを総合 的に判断し、本件引値保証取引によって利益を期待できると考えた。この点、本件銘柄入替えの公表前までの一日平均出来高は114万株ほどであっ 後、9日から24日の株価の動きや売買高の推移などを総合 的に判断し、本件引値保証取引によって利益を期待できると考えた。この点、本件銘柄入替えの公表前までの一日平均出来高は114万株ほどであったのに、新規採用が公表された翌営業日9日の出来高は約530万株にまで急増し、24日までの出来高をベースに計算すると、先回り買いされた可能性のある株式数は最大で2400万株にも及んだのであ る。原告は、このような市場の動きから、銘柄入替前日の大引けにかけて売り注文が大量に出ると見込んだ上で、インデックス・ファンドからの引値保証取引を大量に受注しても調達可能性は問題がないと判断して、本件引値保証取引を締結したものである。他方で、実際の株価の動きは不確実であるため、損失を被るリスクもあり、本件引値保証取引はその リスクも踏まえた上でのリスク・トレードであって、損失リスクを負担する正当な投機取引であるし、原告は、多くの他の引値保証取引も含めてトータルとしての引値保証取引によって利益を得ることを狙っていたものである。 カマーケット・インパクトについて 誘引目的が認められるには、他の投資者を誤認させるものであることが必要であって、マーケット・インパクトがあるから誘引目的が認められるというものではない。マーケット・インパクトはいかなる取引でも生じ得るものであるから、これを生じ得る取引であったとしても変動取引に該当するだけであり、他人を誤認させて取引に誘い込むという誘引目的が認め られるわけではない。 また、原告の注文によってマーケット・インパクトが生じれば、それだけ原告の取得単価が高くなり、原告に不利に働くから、原告は、本件取引においてマーケット・インパクトを度外視していない。原告は、マーケット・インパクト によってマーケット・インパクトが生じれば、それだけ原告の取得単価が高くなり、原告に不利に働くから、原告は、本件取引においてマーケット・インパクトを度外視していない。原告は、マーケット・インパクトを抑えるために、アルゴリズム注文については、細かく分割できることを最重要視して、これができるTWAPを採用し、ほとんど のアルゴリズム注文について、マーケット・インパクトを小さくすることを目指す設定(「Low」)を指定した。 そもそもマーケット・インパクトがどの程度生じるのかは事前には分からない。また、先回り投資家の大量の売り注文も発生するのであるから、本件取引における注文株数と注文時間をもってマーケット・インパクトの 非常に大きな注文であったと評価するのは誤りである。 原告は、大量の売り注文が集中することが合理的に予測できる大引けにかけて買い注文をしたのであり、マーケット・インパクトに配慮していた。 キ本件引値保証取引の履行に必要な数量より多い買い注文を出したことについて 原告は、大引けまで15秒を切った辺りの板情報から、大引けにかけてストップ高になり、アルゴリズム注文の一部が約定しないことを懸念し、引値保証取引の履行に必要な株数を確保するため、急遽、手動注文による注文株数を当初予定していた数量よりも追加したにすぎない。 ク執行の時期について Dは午後2時59分53秒で、Gは午後2時59分54秒で、担当していた注文株数を全て出し切った。また、アルゴリズムによる買い注文については、以前(2時間半前から11分前)に設定していたものであって、価格の上昇を意識したものではない。 被告は、原告の買い注文が大引け直前であったために、それに対抗する 売り注文を出すことはできなかっ 半前から11分前)に設定していたものであって、価格の上昇を意識したものではない。 被告は、原告の買い注文が大引け直前であったために、それに対抗する 売り注文を出すことはできなかったかのように主張するが、先回り投資家 による手動注文による大量の売り注文に加え、アルゴリズム注文の数量及び設定価格によっては、大引け直前の株価が急落する可能性も十分にあったのであるから、被告の主張は、売り注文でもアルゴリズム注文が用いられているという実態を無視したものである。 また、銘柄入替前日の大引けにかけて、先回り投資家の大量の売り注文 が待ち構えており、売り注文を出すのに要する時間は、個人でも一、二秒あれば足りるから、本件取引は、株価を上昇させて終値を高値に形成するものではない。 さらに、被告は、もっと早い段階で大量の買い注文を入れておけば、もっと安く買え、価格の急騰もなかったかのようにいうが、仮にもっと早い 段階で大量の買い注文を入れた場合には、指値注文ならばその大量の買い注文に見合う売り注文がほとんどないためほとんど買うことができなかったはずであるし、成行での注文ならば、その時点近辺の売り注文はほとんどなく、ずっと上の価格まで拾って買うことになるため高い価格で買うことになり、価格も急騰する結果となるから、売り注文が薄い段階では、 大量の株式を安く買うことはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実争いがない事実及び前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 日経平均構成銘柄の入替前日における相場の傾向ア出来高(ア) 日経平均構成銘柄の入替えに伴う売買の多くは、特に当該銘柄入替前日の立会終了時(大引け)にかけて集中 ⑴ 日経平均構成銘柄の入替前日における相場の傾向ア出来高(ア) 日経平均構成銘柄の入替えに伴う売買の多くは、特に当該銘柄入替前日の立会終了時(大引け)にかけて集中する傾向がある。(甲2、22、乙66、67、80、114) (イ) 一般に、大引け時の板寄せが一日の中で最も出来高が大きくなる傾向 にあり、このことは、指数構成銘柄入替えのときにおいても変わらない。 (乙112の1)(ウ) 平成22年1月から本件取引の前までに日経平均構成銘柄に新規採用された銘柄(インデックス・ファンドの買入れ需要が発生しない持株会社化等に伴う銘柄入替えを除いた11銘柄。以下「過去事例」という。) における銘柄入替前日の出来高を平均すると、一日の取引のうち約29. 4%が大引けにおいて成立していた。他方で、当該平均における、大引け間際の約30秒間のザラバの出来高の平均は、一日の出来高の約7. 1%に相当する。そして、過去事例における大引け前5分間の出来高をみると、大引け間際の30秒間のザラバの出来高の割合は、それまでの 出来高よりも増加した事例がほとんどであるものの、いずれの事例においても、当該割合よりも、大引けでの出来高の割合の方が多かった(大引けでの出来高が最も多かった。)。これを対比すると、大引け間際の約30秒間のザラバの出来高は、大引けの出来高の4分の1以下にとどまることになる。(乙114、弁論の全趣旨) (エ) 前記(イ)のとおり、通常、大引け時の板寄せにおいて、一日の中で最も多くの取引が行われる傾向があるため、引け条件付き注文を出すことにより、大引けにおいて執行すれば、株価への影響(マーケット・インパクト)を減らすことができ、価格変動リスクを抑えることもでき 中で最も多くの取引が行われる傾向があるため、引け条件付き注文を出すことにより、大引けにおいて執行すれば、株価への影響(マーケット・インパクト)を減らすことができ、価格変動リスクを抑えることもできることから、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くは、買い注文の 一部を引け条件付きで発注している。 (乙112~114、証人Q・33、34頁等)(オ) 過去事例のうち、本件取引の直近の事例である、株式会社Rの株式が新規採用された際の銘柄入替前日(平成24年9月25日)の当該株式に係る出来高の推移についてみると、大引け間際の約30秒間のザラバ の出来高は150万5000株、これが当該一日の出来高に占める割合 は約4.5%であり、大引けから離れた時間帯(午後1時43分より後で午後2時15分より前)において、同程度の出来高の増加があった。 他方で、大引けの板寄せにおける出来高は1036万9000株、これが当該一日の出来高に占める割合は約31%であり、大引け間際の約30秒間のザラバと比べて7倍に近い量の取引が行われていた。そして、 大引けで取引が成立した1036万9000株のうち、買い注文の約96%、売り注文の約92%が引け条件付き注文による約定であり、当該一日の取引のうち、買い注文の約30%、売り注文の約29%が引け条件付き注文による約定であった。 また、過去事例のうち、株式会社Sの株式が新規採用された際の銘柄 入替前日(平成23年9月27日)の当該株式に係る出来高の推移についてみると、大引け間際の約30秒間のザラバの出来高は95万4000株、これが当該一日の出来高に占める割合は約3.2%であり、他方で、大引けの板寄せにおける出来高は723万8000株、これが当該一日の出来高に占める割合は約2 0秒間のザラバの出来高は95万4000株、これが当該一日の出来高に占める割合は約3.2%であり、他方で、大引けの板寄せにおける出来高は723万8000株、これが当該一日の出来高に占める割合は約24.1%であり、大引け間際の約30 秒間のザラバと比べて7倍を超える取引が行われていた。(甲22、乙113、114)イ株価過去事例を含め、本件取引の前までに日経平均構成銘柄に新規採用された銘柄における銘柄入替前日の株価の傾向をみると、始値に対して終値が 上がったものが多いが、下がったものもあった。(甲2、22、41、乙66、67、証人Q・22、38頁等、原告代表者・7頁)⑵ 指数構成銘柄入替えにおいて行われる引値保証取引についてア本件ガイドライン等(全体として乙62、82、証人Q・4、5頁)(ア) 例えば、引値保証取引を締結し、引値で株式を引き渡すこととなった 証券会社やヘッジ・ファンド等にとっては、平均買付単価と引渡価格(終 値から割引料等を引いたもの)の差額が利益となることから、終値を意図的に引き上げようとするインセンティブが強く生じやすい一方で、当該株式を買い付けるインデックス・ファンドにとっては、そのようにして株価が人為的に高騰した場合、株式の買付けコストが増大し、最終的に、インデックス・ファンドに投資する受益者(最終投資者)らの損失 に転嫁されることになることから、インデックス・ファンドの運用等に携わる投資信託委託会社及び証券会社等においては、かねてから、引値保証契約に基づき高値で売り渡すことを前提として人為的に終値を高騰させ、インデックス・ファンドに投資する受益者を犠牲にして過大な利益を不当に得る行為を警戒すべきであるという認識が共有されていた。 すなわち 高値で売り渡すことを前提として人為的に終値を高騰させ、インデックス・ファンドに投資する受益者を犠牲にして過大な利益を不当に得る行為を警戒すべきであるという認識が共有されていた。 すなわち、ある証券会社において、引値保証取引等に関し、作為的相場形成に当たる行為が認められたことを受け、金融庁は、平成15年3月18日付けで、「引値保証取引等への対応」と題する文書(乙12、62・別添3)を発出した。金融庁は、同文書において、上記のような自らの利益を図るインセンティブ(例えば、ヘッジ取引と称して取引終了 時にかけて買い上がる。)が生じ、相場操縦的行為につながるリスクがあるとして、引値保証取引等に関し、①発注者(投資信託協会等)に対し、引値保証取引等を行うための基準・手続の明確化や発注証券会社の選定基準等に係る自主ルールの整備等を、②受託証券会社に対し、引値保証取引等の受託、ヘッジ取引の執行及び監視体制に係る社内ルールの整備 を、③取引所等に対し、引値保証取引等に伴う証券会社のヘッジ取引が不公正取引規制に抵触するかどうかについての具体的なガイドラインの公表等を、それぞれ要請し、これを受けて、後記(イ)から(エ)までのとおり、本件ガイドラインや各社の社内ルール等が定められていた。 (甲19、乙12、弁論の全趣旨) (イ) インデックス・ファンド等を設定・運用する投資信託委託会社等を主 たる会員とする一般社団法人投資信託協会は、前記(ア)の要請を受け、「投資信託等の運用に関する規則」(乙88)を定め、会員である投資信託委託会社等に対し、引値保証取引を委託する際には、その対象株式の出来高及び株価等の動向に応じた指図内容等や引値保証取引の発注時刻に関する基準等について社内規則をあらかじめ定め、当該取引の指図を 信託委託会社等に対し、引値保証取引を委託する際には、その対象株式の出来高及び株価等の動向に応じた指図内容等や引値保証取引の発注時刻に関する基準等について社内規則をあらかじめ定め、当該取引の指図を 行う場合にはそれを遵守すること、引値保証取引の相手方である第一種金融商品取引業者がヘッジ取引のため現物株式の売買を行う場合には、マーケット・インパクトを最も小さくするよう努める旨の条件を付けるなどして、株価動向に配慮した執行を行うよう要請すること等を義務付けていた。(甲19、乙88、弁論の全趣旨) (ウ) 本件ガイドライン株式会社東京証券取引所は、前記(ア)の要請を受け、平成15年3月19日付けの「引値保証取引等に係るガイドライン」(乙62・別添4)を発出した。これと、株式会社東京証券取引所から自主規制業務が移管された東京証券取引所自主規制法人(平成26年に日本取引所自主規制 法人に名称変更。以下「自主規制法人」という。)が発出した平成20年6月20日付け「引値保証取引等に関するガイドライン」(乙13)とは実質的な内容が同一である(本件ガイドライン)。 そして、本件ガイドラインでは、引値保証取引等の合意をした金融商品取引業者が行ういわゆる事前ヘッジ(判決注:引値保証取引の締結後、 銘柄入替前日の大引けまでの間に自己勘定で市場において買い付けるなどすること)は、事前ヘッジとして執行した買付けの平均価格が終値より低い場合には、終値との差がディーリング益となるなど、金融商品取引業者に終値を意図的に操作しようとするインセンティブが働く可能性もあると考えられること、事前ヘッジの過程で、特に立会終了時にかけ て多量の買付けが行われた場合にはマーケットの価格、とりわけ終値に 大きな影響を与えてしまう インセンティブが働く可能性もあると考えられること、事前ヘッジの過程で、特に立会終了時にかけ て多量の買付けが行われた場合にはマーケットの価格、とりわけ終値に 大きな影響を与えてしまうおそれがあり、広く他の投資者に誤解を生じさせる可能性があるとともに、価格を意図したものとみなされかねないことがあること、こうした行為が、売買が繁盛であると誤解を与えたり、相場の大きな変動を通じて結果的に取引が誘引されたりすること等で、相場操縦的行為の疑義が生じるおそれがあることなどが指摘されている。 また、本件ガイドラインには、自主規制法人が引値保証取引等に係る事前ヘッジが、相場操縦規制等に抵触するかどうか調査する場合には、主に①事前ヘッジの総数量(立会取引を通じた事前ヘッジを必要とする数量を超えて取引しているようなことはないか)、②立会終了接近時におけるヘッジ数量等(立会終了前15分以内における事前ヘッジの数量が当 該銘柄の流動性に比較して過大なものとなっていないか、価格形成へのインパクトを大きくするため執行のタイミングを意図的に遅らせるような行為がされていないか)、③買上がり(午後立会終了前15分以内に、直前約定価格又は気配価格を上回る価格での買い注文・成行注文の発注を反復・継続して行っていないか)、④終値形成への関与(立会終了時の 流動性に比して価格形成に過度な影響を与えるような数量や価格での発注を行っていないか)等の行為形態を注視している旨の記載がある。(乙13、80、133)(エ) 本件ガイドラインが発出されていた当時Dが在籍していたEを含む証券会社各社においては、本件取引当時、本件ガイドライン等を踏まえ て引値保証取引等に係る社内ルールを作成しており、大引け15分前の買付けなど、大引けに近接した時間帯 Dが在籍していたEを含む証券会社各社においては、本件取引当時、本件ガイドライン等を踏まえ て引値保証取引等に係る社内ルールを作成しており、大引け15分前の買付けなど、大引けに近接した時間帯の発注を行うに当たり、過度なマーケット・インパクトが生じないよう配慮する旨や、発注数量や執行・注文形態に注意する旨を定めており、中には、例えば、大引け前15分間の執行株数は、指数構成銘柄の入替え等の場合を除き、直近10営業 日の1日当たり平均出来高の20%以内とする(M株式会社)、上記15 分間のヘッジ売買においては原則としてアルゴリズムを用いてヘッジする(J株式会社)、事前ヘッジを目的として発注する場合は、午後2時30分以前の出来高の30%を上限とし、大引け前5分以降については、この2分の1を上限とする、また、大引け前5分以降の成行発注は禁止し、大引け前5分以降に発注する場合の指値は当日高安の範囲内とする、 発注回数は1分間に3回を上限(最大30回)とする(K株式会社)、指値を行う場合は、発注時における現値(直前約定値)の上下1%以内とし、成行注文は、大引け前5分以降は発注しない(E)など、大引けに近接した時間帯の発注数量や回数、価格等について数量的な制限を設けている証券会社もあった。(乙94) イ T株式会社の取引姿勢インデックス・ファンド及びアクティブ・ファンドを運用するT株式会社においては、取引を行うに際し、マーケット・インパクトを極力生じさせることがないように努めることを原則としており、大引けに近い時間帯は終値に与える影響が大きく、終値関与につながるリスクも大きいなどと して、大引け前10分間は原則として発注を行わないようにしている。そして、指数構成銘柄の入替えに際して新規採用銘柄 い時間帯は終値に与える影響が大きく、終値関与につながるリスクも大きいなどと して、大引け前10分間は原則として発注を行わないようにしている。そして、指数構成銘柄の入替えに際して新規採用銘柄株式を調達する場合、買い需要によってマーケット・インパクトを生じさせやすい状況にあることから、短い時間に大きな数量の買付けを行わないようにするなどしている。(乙93、139、証人U) ウ M株式会社における取引姿勢M株式会社では、一般に、取引の結果として市場価格への過度な影響(マーケット・インパクト)が生じること自体が望ましくないとの考えの下、売買管理・審査を実施しており、顧客からの注文を執行する場合と同社の売買のために発注を行う場合のいずれにおいてもマーケット・インパクト を生じさせることがないように最大限の注意を払っている。また、同社は、 日経平均構成銘柄等の指数構成銘柄の入替え時において、インデックス・ファンドから受注する引値保証取引の量については、受注する規模がインデックス・ファンドの買い需要の総計を考慮して過大になると、負うリスクが大きくなる上、市場で買い付ける分量が多くなり、自社の注文により過大なマーケット・インパクトを与える可能性が高まってしまうと考えて、 適切な範囲の数量で受注するようにするとともに、本件ガイドラインも参照しつつ、買い上がり、立会い時間終了接近時における過大な数量の売買、終値形成への関与等の行為に特に注意している。(乙94)⑶ 原告による過去の引値保証取引について(平成25年2月27日)(前提事実⑴ア、乙33、95、128の1、乙129、原告代表者・44頁) 原告は、平成25年9月までの約2年半の間に約200件の引値保証取引を行ったものであるところ、同年2月 2月27日)(前提事実⑴ア、乙33、95、128の1、乙129、原告代表者・44頁) 原告は、平成25年9月までの約2年半の間に約200件の引値保証取引を行ったものであるところ、同年2月27日には、TOPIX構成銘柄に新規採用されるV株式会社の株式について、K株式会社との間で56万3900株を引き渡す旨の引値保証取引を行った。 原告は、当該引値保証取引の履行に当たり、同日の大引け前の約30秒間 (午後2時59分31秒から59秒)のザラバで、合計78万株の成行の買い注文(W株式会社のDMAを用いるなどしたもの)を出し、このうち54万7400株が約定したが、同期間に株価は7120円から7890円まで急騰した。同期間の原告の買付関与率は、約92%であり、原告による買い注文の上記発注数量は、14時59分30秒時点で発注されていたザラバ売 り注文の合計数量(52万0800株)を上回っていた。また、同時点で、引け板の売り注文数(合計86万6700株)が引け板の買い注文数(合計47万2500株)を大幅に上回る状況であり、大引け直前の時点でも、引け板の売り注文数(85万3400株)が引け板の買い注文数(69万1400株)を上回っていたが、同期間において、原告は、引け条件付き注文で の買い注文を一切行わなかった。 W株式会社の担当者は、同年3月14日頃、Dに対し、「2月27日の貴社による引成売り注文及び成行買い注文が、午後2時59分31秒から取引終了までの間の株価の上昇(7120円から7890円)に少なからぬ影響を与えたと弊社では考えております。」、「今後万が一貴社からの発注により同様の事態が発生した際には、弊社コンプライアンス担当部署の判断により、 発注に係る制限措置等を取らせていただく可能性がある旨を申し と弊社では考えております。」、「今後万が一貴社からの発注により同様の事態が発生した際には、弊社コンプライアンス担当部署の判断により、 発注に係る制限措置等を取らせていただく可能性がある旨を申し添えさせていただきます。」、「相場操縦に係る注意点の箇所を抜粋し、ご参考までに裏面に記載させていただきます。」などと記載されるとともに、相場操縦に該当し得る取引等についての説明が記載された同年3月14日付けの文書を手交し、今後、相場操縦と疑われる取引を行わないよう再発防止策の検討を求め るとともに、今後同様の事態が発生した場合には発注制限措置等を採る可能性がある旨を警告した。 ⑷ 本件引値保証取引の締結等ア 6日、本件株式が日経平均構成銘柄に採用される旨が公表された。 本件株式は、いわゆる値がさ株であり、日経平均構成銘柄として採用さ れる旨事前に予想されていなかったことやその流動性に対してインデックス・ファンドの買い需要が大きいものであることが推定されていたことから、本件銘柄入替えは、市場への影響が特に大きいイベントとして市場関係者の間で注目されていた。(前提事実⑵ア、イ、乙19、20、94、原告代表者・4頁、弁論の全趣旨) イ原告代表者であるDは、本件株式が日経平均構成銘柄に採用される旨一般に予想されていなかったため、これが予想されていた銘柄と比べ、銘柄入替え公表前に買付けをするなどしていた先回り投資家が少なく、他方で本件株式が値がさ株であるため買い需要の総量が大きくなると考えられたこと、過去に日経平均構成銘柄に新規採用された値がさ株の事例において は大引けにかけての上昇率が大きくなっていること、同公表後の株価や売 買高の推移等から、入替前日の大引けにかけて本件株式の株価が上がるのではないか、 規採用された値がさ株の事例において は大引けにかけての上昇率が大きくなっていること、同公表後の株価や売 買高の推移等から、入替前日の大引けにかけて本件株式の株価が上がるのではないか、引値保証取引によりAに収益を上げられるのではないかと予想し、原告として本件株式に係る引値保証取引を締結したいと考えた。(甲41、原告代表者・6~8、19頁等)ウ原告は、本件銘柄入替え公表の翌取引日である9日から24日までの間 に、本件株式の売買を行い、同日時点で、本件株式を352万2900株保有していた。(前提事実⑶イ)エ Dは、24日から本件取引日までの間、K株式会社等の各証券会社の担当者に対し、引値保証取引につき、「取れるレートで取ってもらってかまわないんで。それが、たとえ何ベーシスになるかわかんないっすけど。(判決 注:1ベーシス(ポイント)は0.01%であり、ここでは値引率を指す。)」、「特にこれは、まずもって御社のこれは絶対取りたいじゃないですか。」、「で、次ですよね。」、「うちも、是非是非ちょっとやりたいんで、ここは、他社を入れずにですね、うちでやってもらえれば。」、「今回はコマいのも全部集めちゃおうと思ってるんで。」、「例えば30万とか50万とかってや つも集めちゃいたいんだよ。だから、それも積極的に出していきたい。」などと述べたり、多くの機関投資家等が本件株式の引値保証取引に無関心な中で、一定数の引値保証取引を締結した後に「そのかわりもっと持ってきてください。」とメッセージを送ったり、「もうないですか。」と述べたりするなど、手数料や割引率において他社より有利(原告に不利)な条件を提 示し、あるいは、積極的に本件株式に係る引値保証取引を締結したい旨の意向を繰り返し示して、引値保証取引を次々と と述べたりするなど、手数料や割引率において他社より有利(原告に不利)な条件を提 示し、あるいは、積極的に本件株式に係る引値保証取引を締結したい旨の意向を繰り返し示して、引値保証取引を次々と締結していった。原告は、本件取引日の午後2時41分まで引値保証取引の交渉を続け、最終的に、これらの引値保証取引(本件引値保証取引)により、合計1517万3000株の引渡債務を負うこととなった。これは、本件銘柄入替えに伴うイ ンデックス・ファンド等による本件株式の想定買入株数約1900万株の 約8割を占める数量であった。(前提事実⑵イ、⑷、甲40、41、乙24、64、99、100、121、原告代表者・46~48頁)オ原告は、本件引値保証取引によって利益を獲得できると考え、本件引値保証取引を締結したものであるが、本件引値保証取引における割引率(証券会社への手数料を含めたもの)は、加重平均値で約16ベーシスポイン トであり、少なくとも終値が平均買付単価よりも約10円程度以上は上回ると期待していた。(甲41、乙24、原告代表者・8頁)カなお、K株式会社は、原告以外にも8社の顧客に対して引値保証取引を打診していたが、原告の他にこれに応じた顧客(ファンド)は3社のみであり、これらの顧客が応じた取引の規模は3万株から5万株であった。ま た、このうちの一社は、その引値保証取引の締結に際し、K株式会社に対し、3万株以上の株数の引値保証取引に応じることはできない旨を述べていた。(乙97、101、123の1)⑸ 本件取引日における本件取引前の取引等(いずれも平成25年9月25日の事情であり、本項目及び後記⑹において日付の記載を省略する。) ア本件事前注文に関して(ア)Dは、午前9時1分13秒頃、O 件取引前の取引等(いずれも平成25年9月25日の事情であり、本項目及び後記⑹において日付の記載を省略する。) ア本件事前注文に関して(ア)Dは、午前9時1分13秒頃、O株式会社の担当者に対し、同社を介して発注する予定の本件株式につき、その執行開始時刻を大引けの15秒前である午後2時59分45秒からとする意向を示した。 (前提事実⑸ア) (イ) 原告は、午後0時17分頃から午後2時49分頃までの間、O株式会社に対し、22回にわたって合計471万2000株の本件株式の買い注文の発注の委託(本件事前注文)をした。本件事前注文のうち359万9000株の買い注文は、本件期間中が執行開始時刻として指定された成行注文であり、特に、その約55%に当たる200万株については、 午後2時59分57秒から59秒までが執行開始時刻として指定され、 おおむね立会終了時刻が接近するにかけて成行での買い注文が大量に連続して発注されていくような設定とされた。(前提事実⑸イ、乙27、68)(ウ) Dは、午後0時21分14秒頃、午後2時59分45秒に20万株を発注し、残りの20万株を引け条件付き買い注文で出すというO株式会 社の担当者の提案に対して難色を示し、「(判決注:引けに)参加しない方がよろしいですか。」という同人の質問に「参加しない方がいい。」と回答するなどし、引け条件付き買い注文を行わない方針であることを示した。(甲40、乙29、122)(エ) Dは、午後2時39分28秒頃、O株式会社の担当者から、「ギリギリ のところに(中略)、59分59秒とかに入ってるっていうものは、基本的には、もう59分59秒のところで、あの、ほぼワンショットで行く感じになると思いますので。」と言われ、こ から、「ギリギリ のところに(中略)、59分59秒とかに入ってるっていうものは、基本的には、もう59分59秒のところで、あの、ほぼワンショットで行く感じになると思いますので。」と言われ、これを了承した。(甲40、乙25、27、122、原告代表者・10頁)イ本件取引前の本件株式の保有状況等 原告は、本件取引日の本件取引前の時間帯において、本件株式の売買を行い、本件期間開始時点(午後2時59分30秒時点)では、本件株式632万7200株を保有していた。 これにより、原告は、同時点において、本件引値保証取引を履行するために、本件株式884万5800株を調達する必要があった。(前提事実⑸ ウ)⑹ 本件取引での本件株式の発注状況等ア本件期間の開始時点(午後2時59分30秒時点)本件期間の開始時点で、最良売り気配は6700円であり、最良売り気配から制限値幅の上限(ストップ高となる価格)の7540円までを指値 とする売り注文が合計544万0800株出されており、6800円を指 値とする売り注文が最も多かった。また、この時点での直前約定値は6690円、最良買い気配は6690円であった。(乙32、72、107、115)イ午後2時59分30秒から43秒までの発注状況等原告は、午後2時59分30秒から43秒までの約13秒間で、22回 の成行の買い注文(TWAPを用いる旨委託したものとDMAによるものとがある。1回当たりの発注株数は1万株から6万7000株)に加え、DMAによる計5回各30万株の指値の買い注文を発注し、これらは全て約定した。そして、当該指値の買い注文は、その値段(7000円から7400円)が直前約定値より300円から640円高いものであった。 DMAによる計5回各30万株の指値の買い注文を発注し、これらは全て約定した。そして、当該指値の買い注文は、その値段(7000円から7400円)が直前約定値より300円から640円高いものであった。(乙 28、30~32)ウ午後2時59分44秒から52秒までの発注状況等原告は、午後2時59分44秒から52秒までの約8秒間で、26回の成行の買い注文(TWAPを用いる旨委託したものとDMAによるものとがある。1回当たりの発注株数は1万株から30万株)に加え、DMAに よる計7回各20万株の指値の買い注文を発注し、これらは全て約定した。 そして、当該指値の買い注文は、いずれも7300円での注文であり、うち6回が直前約定値より310円から550円高く、うち1回が直前約定値から120円高いものであった。(乙28、30~32)エ午後2時59分53秒から57秒034までの発注状況等 原告は、午後2時59分53秒から57秒034までの約4秒間で、13回の成行の買い注文(TWAPを用いる旨委託したものとDMAによるものとがある。1回当たりの発注株数は1万株から30万株)を発し、これらは全て約定した。 また、原告は、午後2時59分53秒646にDMAにより7300円 の指値での買い注文を20万株発注した。これは、原告が当該発注をする と決めた時点での株価は7250円であったところ、原告が即時約定を意図して、最良売り気配以上の指値で行った注文であったが、実際に注文が市場に反映されるまでの間に株価が上がり、結果的に最良売り気配を下回る注文となって、一部は大引け時にも約定せずに残った。 そして、原告が午後2時59分57秒018に発注した成行の買い注文 (8万株)が約定して株価は7540円( がり、結果的に最良売り気配を下回る注文となって、一部は大引け時にも約定せずに残った。 そして、原告が午後2時59分57秒018に発注した成行の買い注文 (8万株)が約定して株価は7540円(ストップ高)まで上昇し、原告が同秒034に発注した成行の買い注文(7万株)の一部が約定した時点で、対当する売り注文がなくなり、買い特別気配が7540円に表示され、取引が一時停止した。(甲2、41、乙28、30~32、107、弁論の全趣旨) オ午後2時59分57秒037以降のザラバでの発注状況等原告は、午後2時59分57秒037以降、ザラバにおいて、44回の成行の買い注文(TWAPを用いる旨委託したものとDMAによるものとがある。合計238万9000株)を発した。 なお、原告がした本件期間における最後のDMAによる買い注文は、午 後2時59分58秒の成行での1万株のものであった。 そして、これらの成行の買い注文株数に足りる売り注文が発注されるまで買い特別気配表示は解消されず、その結果、取引が再開されないまま、原告の注文のうち257万4700株の買い注文が未約定で大引けを迎えた。(甲35、41、42、乙28、30~32、原告代表者・15頁等、 弁論の全趣旨)カ大引けでの状況等大引け時においては、成行の買い注文の数量が売り注文の数量を上回り、成行の買い注文を全て約定させるという板寄せによって取引を成立させる条件を満たさない状態であった。そのため、ストップ配分(大引け時の 板寄せの条件を緩和したもの)が行われ、原告の未約定の注文のうち12 6万3500株が約定した。 キ本件期間における本件株式の売買の状況等(ア) 午後2時59分30秒から午後2時59分59秒までの したもの)が行われ、原告の未約定の注文のうち12 6万3500株が約定した。 キ本件期間における本件株式の売買の状況等(ア) 午後2時59分30秒から午後2時59分59秒までの間において新たに発注された、ザラバで有効な本件株式に係る注文(取消し及び変更注文を考慮せずに新規に発注された条件なし注文及び不成注文)は、売 り注文数が合計185万8500株であったのに対し、買い注文数は1025万9600株であり、うち919万8100株が原告による買い注文であった。(乙117)(イ) 原告は、本件取引の開始から午後2時59分57秒034時点までの約27秒間に、合計680万9100株の本件株式の買い注文を発注し、 このうち662万3400株が約定した。他方で、大引けを除く本件期間中に約定した買い注文のうち、原告以外による買い注文による約定株数は合計38万0300株であった。大引けを除く本件期間の出来高は700万3700株であった。(乙114、119、弁論の全趣旨)(ウ) 原告による本件取引の買付株数788万6900株のうち、立会終了 時(大引け)の買付株数は126万3500株、ザラバでの買い付け株数は662万3400株であり、本件取引での買い注文の大半(約84%)が立会時間中に約定したものであった。また、大引けを含む本件期間における原告の買付関与率は約70.4%であり、大引けを除いたザラバにおける原告の買付関与率は約94.6%であった。 (前提事実⑹ア、イ、 前記(イ))(エ) 原告が大引け前の3秒間(午後2時59分57秒000から午後3時まで)に発注した買い注文数は、260万9000株(全て成行)であり、これは原告の本件期間の買い注文株数の4分の1以上(260万9000÷919万8100≒ (午後2時59分57秒000から午後3時まで)に発注した買い注文数は、260万9000株(全て成行)であり、これは原告の本件期間の買い注文株数の4分の1以上(260万9000÷919万8100≒0.28)に相当する量であったところ、 前記⑸ア(イ)のとおり、そのうち200万株は、O株式会社に対し、あら かじめ、午後2時59分57秒以降を執行開始時刻として発注を委託したものであった。 (オ) 原告による買い注文が本件取引日の高値を更新した回数は73回あった。また、原告は、本件取引日の後場において、本件株式の買付けに当たり、引け条件付き買い注文を一切行わなかった。なお、原告の本件 期間における本件株式の平均買付単価は、7052円であった。 (乙68)⑺ その他本件株式に係る本件取引日の事情ア本件銘柄入替えが公表される前3か月間における本件株式の1日平均出来高が約126万株であったのに対し、本件株式の本件取引日の出来高は、2296万2600株であった。(乙20、113、114) イ本件株式の本件取引日の大引けにかけての30秒及び大引け(本件期間)における出来高は、1120万3200株であった。(前提事実⑹イ)⑻ 本件取引後の事情ア本件取引日の大引け時点で、原告の本件株式の保有数は1421万4100株であり、本件引値保証取引の履行には95万8900株不足してい たため、原告は、本件取引日の午後3時58分頃、L株式会社に対し、他の証券会社から本件株式を借りて売り渡し、この頃までに、各証券会社に対し、本件引値保証取引に基づき、1517万3000株を売り渡した。 (前提事実⑷エ、⑸ウ)イ本件取引日の翌日である26日には、多数の売り注文が出されたため、 更新値幅の範囲内で取引が成立 、本件引値保証取引に基づき、1517万3000株を売り渡した。 (前提事実⑷エ、⑸ウ)イ本件取引日の翌日である26日には、多数の売り注文が出されたため、 更新値幅の範囲内で取引が成立せず、前場の開始後からしばらく売り特別気配が表示され取引が一時停止された。その後、売り特別気配の更新を繰り返して、同日の最初の取引が6790円(前日終値比750円安)で成立するまでに、成行の新規の売り注文が98万7600株、5990円から6790円までを指値として指定する新規の売り注文が合計46万03 00株発注された(寄付きの出来高は136万6000株)。そして、同日 の一日を通じて、多くの売り注文が発注され、本件株式の株価は大きく下落した。最終的に、一日の出来高は1137万8700株であり、株価は前日比830円安となった。(前提事実⑺イ、乙23、118)⑼ 本件銘柄入替えに係る他の投資者の買付状況等本件銘柄入替えに伴い本件株式の買付けを行った原告以外の主要な投資者 は、本件ガイドラインや各社の社内ルール等を踏まえ、銘柄入替前日よりも前に買付けを行う、銘柄入替前日の大引けから離れた時間帯に買付けを行う、立会外取引により買い付ける、大引けの板寄せで買付けを行う(引け条件付き注文を出す)、大引けに近接した時間のザラバでの買付けでは30秒よりも長い時間をかけて注文を小口に分割して指値の水準を抑えるなどといった 手法により本件株式を買い付けており、本件期間中には成行や高指値での発注をほとんど行わなかった。 (乙42、44~46、48、49、112の1、乙119、132、弁論の全趣旨) 2 誘引目的の判断枠組みについて⑴ 金商法は、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券 の流通を円 4~46、48、49、112の1、乙119、132、弁論の全趣旨) 2 誘引目的の判断枠組みについて⑴ 金商法は、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券 の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的としているところ(同法1条)、有価証券の売買取引は、公開された公正な情報に基づく自然かつ正常な需給関係に従って行われるべきものであり、また、かかる需給関係に従って行われているものとして投資者 が期待しているものであるが、かかる需給関係によって形成されるべき相場に人為的な操作を加えると、他の投資者が不測の損害を被るばかりでなく、自由公正な有価証券市場としての信頼を損なうことになることから、同法159条は、他の投資者に不測の損害を与える可能性のある取引だけではなく、自由公正な有価証券市場としての信頼を損なう危険性のある不公正な取引を 禁止しているものである。 したがって、同条2項にいう誘引目的とは、人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものと誤認させて有価証券市場における有価証券の売買取引に誘い込む目的をいい、また、「相場を変動させるべき取引」(変動取引)とは、相場を変動させる可能性のある取引をいうものであり(平成6年最高裁決定参照)、 誘引目的が認められるためには、投資者を積極的に取引に誘い込む意図までは必要でなく、有価証券市場における他の投資者に人為的操作がないと誤認させ、それに基づいて当該投資者が取引に参加する可能性があることを認識しながら、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図に基づいて取引をすれば足りるもの 場における他の投資者に人為的操作がないと誤認させ、それに基づいて当該投資者が取引に参加する可能性があることを認識しながら、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図に基づいて取引をすれば足りるものと解される。 ⑵ 一般に、有価証券市場において形成された相場は自然な需給関係により形成された公正なものであると認知されているのであるから、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図に基づいて相場を変動させるべき取引(変動取引)をする者は、他の投資者に自然の需給関係により形成された相場であると誤認させ、それに基づいて当該投資者が取引に参加する可能性があるとい うことについても、認識しているということができる。 したがって、誘引目的が認められるか否かは、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があるか否かを中心に検討すべきである。 そして、当該意図があるか否かについては、取引(変動取引と密接に関連する他の取引を含む。)の内容や態様、取引の前後の事情等のほか、取引の動 機その他行為者の認識等を総合的に勘案して判断すべきである。 ⑶ なお、金商法は、現実取引による相場操縦を禁止しているところ、有価証券の売買取引を行うこと自体に現実の需要がある場合であっても、有価証券市場における売り注文又は買い注文の時期、数量、価格や方法等の態様によっては、相場が人為的に変動させられることがあるし、「ある投資者にとって」 リスクを最小化し、あるいは利益を最大化させるという観点から最適な又は 合理的な注文方法等であったとしても、相場が人為的に変動させられることがあるのであって、これらによって他の投資者の期待や信頼が裏切られ、有価証券市場の公正性、健全性が害されるおそれがあることからすると、そのような取引を行うことと誘引目的とは 為的に変動させられることがあるのであって、これらによって他の投資者の期待や信頼が裏切られ、有価証券市場の公正性、健全性が害されるおそれがあることからすると、そのような取引を行うことと誘引目的とは併存・両立し得るといえる。 したがって、有価証券の売買取引を行うこと自体に現実の需要があること や、「ある投資者にとって」リスクを最小化し、あるいは利益を最大化させるという観点から最適な又は合理的な注文方法等であるということだけでは、誘引目的が直ちに否定されるものではない。 ⑷ 原告の主張のうち、上記説示と異なる趣旨をいう部分は、これを採用することができない。 3 本件について⑴ 本件取引及び本件引値保証取引の内容や態様についてア立会終了直前の大量の買い注文が株式の価格に与える影響について東証において、立会時間中(ザラバ)は、最も優先する売り注文及び最も優先する買い注文の条件が合致する都度、その合致した価格をもって株 価が決定される(ザラバ方式)。そして、ザラバ方式における各注文の優先順位は、①成行注文は指値注文に優先して約定し、指値注文の中では、より安値での売り注文又はより高値での買い注文が他の売り又は買い注文に優先するという価格優先の原則と、②同一の価格であれば、注文時間が早い注文が遅い注文に優先するという時間優先の原則に基づき決定され る。 価格優先の原則によれば、成行又は直前約定値ないし最良買い気配を上回る指値(高指値)の買い注文は、既に発注されている売り注文と優先的に、すなわち直ちに対当して約定するものであり、それ自体が一般に株価を上昇させ得るものである。そして、市場取引に参加する投資者は、株価 や売買高の変動、板の状況等を見つつ様々な観点から投資判断を行い、発 注行為をす するものであり、それ自体が一般に株価を上昇させ得るものである。そして、市場取引に参加する投資者は、株価 や売買高の変動、板の状況等を見つつ様々な観点から投資判断を行い、発 注行為をするのであるから、発注行為をするに当たっては、その発注行為そのものに要する時間だけでなく、当該判断を行う時間も必要となる。 これらを踏まえると、売り注文と直ちに対当する成行又は高指値での買い注文を立会終了直前に大量に発注する行為は、既に発注されている売り注文を大量に買いさらうとともに、その後売り注文が出てもこれを買いさ らい、また、買い注文の量を上回り、株価を下落させるほどの大量の売り注文を喚起するのに十分な時間がないため、株価を上昇させつつ、その上昇させた価格で立会終了時(大引け)を迎えることにより、終値を高値に形成する蓋然性が高いものである。 イ本件取引について (ア) 原告は、わずか30秒間の本件期間中、合計919万8100株もの大量の買い注文を、成行又は直前約定値より相当な高指値により、連続的に行った(本件取引)。 具体的には、本件取引の118回の注文のうち105回が成行注文、13回が指値注文であり、当該指値注文のうち12回は直前約定値より 1%以上高値での注文であり、そのうち11回は直前約定値より300円から640円の高値での注文であった。また、本件事前注文のうち359万9000株は本件期間を開始時刻として指定された成行注文であり、うち200万株は大引けの3秒前以降を執行開始時刻とする成行注文であって、これらを含め、原告は、本件期間中に609万8100 株の成行注文を行った。また、原告が本件期間中に発注した919万8100株という株式数は、本件取引日の大引け30秒前(本件期間の開始時点)において出さ 、原告は、本件期間中に609万8100 株の成行注文を行った。また、原告が本件期間中に発注した919万8100株という株式数は、本件取引日の大引け30秒前(本件期間の開始時点)において出されていた売り注文数合計544万0800株を大きく上回るのみならず、本件銘柄入替えに伴い予想される買入株式数1904万6000株の約48.3%にもなる圧倒的な規模であった(以 上につき、前提事実⑵イ、⑸イ、⑹ア、認定事実⑸ア、⑹)。 本件取引は、その時期、数量、価格や方法に照らし、客観的にみて、マーケット・インパクトが大きい上、先回り投資家の売り需要を考慮してもなお、既に発注されている売り注文及びその後発注される売り注文を買いさらって株価を上昇させつつ、立会終了までに株価を下落させるほどの大量の売り注文を喚起するのに十分な時間がないため、上昇させ た価格で立会終了時を迎えて、終値を高値に形成する蓋然性が極めて高いものであった(前記ア参照)。 そして、大引け直前に成行又は高指値での大量の買い注文を反復・継続して行うことは、マーケット・インパクトが大きいばかりか、相場操縦の疑いがある行為であるなどとして、本件取引当時、本件ガイドライ ンや証券会社の社内ルール等において規制されており、現に、本件銘柄入替えに伴い本件株式を調達した他の証券会社等は、本件ガイドラインや各社の社内ルール等を踏まえ、本件期間中には成行や高指値での発注をほとんど行わなかった(認定事実⑵、⑼)。 (イ) 本件期間において新たに発注された、ザラバで有効な売り注文の数量 は、同様に新たに発注されたザラバで有効な買い注文の数量(その大半を占めるのが原告による注文である。)を上回らず、本件取引の影響を受けて、本件株式の株価は本件取引開始直前の6 売り注文の数量 は、同様に新たに発注されたザラバで有効な買い注文の数量(その大半を占めるのが原告による注文である。)を上回らず、本件取引の影響を受けて、本件株式の株価は本件取引開始直前の6690円からストップ高である7540円まで高騰し、買い特別気配表示が解消されずに取引が再開しないまま、大引け時にも売り注文数が買い注文を上回らず、スト ップ配分となった。そして、原告による買い注文が本件取引日の高値を更新した回数は73回あり、また、大引けを除く本件期間の出来高の約94.6%(ザラバでの買付関与率)が原告によるものであり、大引けを含む本件期間における原告の買付関与率も約70.4%であることからすると(以上につき認定事実⑹ア~カ、キ(ア)~(オ))、本件取引は、客 観的にみて、相場を支配し、売り注文を買いさらって株価を上昇させて 終値を高値に形成したものと認められる。 ウ本件引値保証取引及びこれに基づく本件取引以外の発注等について(ア) 原告は、本件取引は、本件引値保証取引に基づく原告の引渡債務を履行するために行ったものである旨主張している上、その時期や内容等からみて、本件引値保証取引は本件取引と密接に関連するものと認められ るので、以下、その内容やこれに基づく本件取引以外の発注等について検討する。 (イ) 原告は、多くの機関投資家等が本件株式の引値保証取引に無関心な中で、手数料や割引率において他社より有利(原告に不利)な条件を提示し、あるいは、積極的に本件株式に係る引値保証取引を締結したい旨 の意向を繰り返し示して、本件取引日午後2時41分までの間に引値保証取引を次々と締結し、最終的に、これらの引値保証取引(本件引値保証取引)により、合計1517万3000株の引渡債務を負うこととなった。 向を繰り返し示して、本件取引日午後2時41分までの間に引値保証取引を次々と締結し、最終的に、これらの引値保証取引(本件引値保証取引)により、合計1517万3000株の引渡債務を負うこととなった。これは、本件銘柄入替えに伴うインデックス・ファンド等による本件株式の想定買入株数約1900万株の約8割を占める数量であり、 また、本件銘柄入替えに伴いK株式会社が締結した他の引値保証取引の規模が3万株から5万株であったことや、X株式会社が自己勘定で買い付けるべき本件株式数が185万6300株であったことなどと比べても、圧倒的な規模であった(認定事実⑷、乙112の1)。 原告は、この結果、本件銘柄入替えに伴う本件株式の買い需要の大半 を原告一社に集中させて大口トレーダーとなり、本件株式の買い注文の時期、数量、価格や方法をコントロールすることにより、相場を支配することのできる地位を得ることとなった。 (ウ) 原告が本件取引日午後2時59分30秒までに調達した本件株式は、本件引値保証取引に基づき必要となる株数の約4割である632万7 200株にとどまり、原告は、本件期間開始時点において、本件銘柄入 替えに伴い予想される買入株数の5割近くにもなる本件株式884万5800株の買い注文を出す必要性を残存させていた(前提事実⑵イ、認定事実⑸イ)。このように、原告が立会終了直前の30秒間という短時間に大量の買い注文を出すべき状況にあり、また、本件引値保証取引により、本件株式を終値で引き渡す目途を立てていたことは、客観的に みて、原告が相場を支配し、終値の価格上昇を引き起こすことが可能となり得る状況であった。 (エ) 本件引値保証取引によれば、原告の平均買付単価と引渡価格の差額が原告の利益となるところ、前記(イ)のと 、原告が相場を支配し、終値の価格上昇を引き起こすことが可能となり得る状況であった。 (エ) 本件引値保証取引によれば、原告の平均買付単価と引渡価格の差額が原告の利益となるところ、前記(イ)のとおり本件引値保証取引の規模が非常に大きいこともあって、原告は、本件株式の株価の動向(特に終値) に大きな利害関係があり、強い関心を有していたと認められる(原告代表者・26、50~56、59頁等参照)。 ところで、引値保証取引に基づく引渡債務を履行するため、ザラバで株式を買い付け、その後、株価が上昇して終値が買付価格と割引料等の合計額を上回ると、終値との差額が利益となる半面、引け条件付き注文 が執行され、引値で約定すると、引値保証取引に基づく引渡債務の履行により、割引料等相当額分の損失が確実に生ずることとなる。他方で、通常、大引け時の板寄せにおいて、一日の中で最も多くの取引が行われる傾向があるため、引け条件付き注文を出すことにより、大引けにおいて執行すれば、株価への影響(マーケット・インパクト)を減らすこと ができ、価格変動リスクを抑えることもできることから、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くは、買い注文の一部を引け条件付きで発注している(認定事実⑴ア(エ))。それにもかかわらず、原告代表者であるDは、本件株式の買付けに際し、引け条件付き買い注文を行わない方針である旨を事前に示しており、実際、原告は、引け条件付き買い 注文を一切行わなかった(認定事実⑸ア(ウ)、⑹キ(オ))。 ⑵ 前記⑴ウ以外の取引の前後の事情等についてア原告は、平成25年9月までの約2年半の間に約200件の引値保証取引を行ったことがあるところ、同年2月27日、TOPIX構成銘柄に新規採用されるV株式会社の株式について、K株式 事情等についてア原告は、平成25年9月までの約2年半の間に約200件の引値保証取引を行ったことがあるところ、同年2月27日、TOPIX構成銘柄に新規採用されるV株式会社の株式について、K株式会社との間で引値保証取引を行い、本件と同様に、大引け前約30秒間で多数の成行の買い注文を 出し、その間に株価が急騰したことに関し、取引後、原告の買い注文を執行した証券会社から、原告による当該取引が株価の上昇に少なからず影響を与えたと考えられるなどとして、今後、相場操縦と疑われる取引を行わないよう再発防止策の検討を求められるとともに、今後同様の事態が発生した場合には発注制限措置等を採る可能性がある旨の警告を受けていた (前提事実⑴ア、認定事実⑶)。 イまた、原告は、株式会社Rや株式会社Sを含む過去の日経平均構成銘柄の入替えに係る事例分析をしていた(認定事実⑷イ、甲41、原告代表者・34頁)。 ⑶ 取引の動機その他原告の認識等について ア原告代表者であるDは、本件ガイドラインの発出当時、Eに勤務しており、また、前記⑵アのように引値保証取引の豊富な経験を有していたことなどから、原告は、本件取引時点において、引値保証取引における事前ヘッジの過程で立会終了時にかけて多量の買付けが行われた場合に終値に大きな影響を与えてしまうおそれがあり相場操縦的行為の疑義が生じるおそ れがあるなどと指摘する本件ガイドラインの存在及び内容はもとより、市場関係者の多くが本件ガイドラインやこれに沿った社内ルール等に従って行動していることを認識していた(前提事実⑴、認定事実⑴ア、⑵ア、原告代表者・48頁、弁論の全趣旨)。 そして、上記のようなDの経歴及び知識に加えて、V株式会社の株式が TOPIX構成銘柄に新規採用された際の引値保証取引 (前提事実⑴、認定事実⑴ア、⑵ア、原告代表者・48頁、弁論の全趣旨)。 そして、上記のようなDの経歴及び知識に加えて、V株式会社の株式が TOPIX構成銘柄に新規採用された際の引値保証取引に関し、原告が、 証券会社から、今後、相場操縦と疑われる取引を行わないよう再発防止策の検討を求められ、警告を受けたこと(認定事実⑶、前記⑵ア)からしても、原告は、大引け間際の短時間に成行及び高指値で大量の買い注文を連続的に行うという態様の本件取引が、株価を高値に形成するなど、終値に多大な影響を与える蓋然性の高いものであることはもとより、相場操縦に 当たる行為として規制の対象となり得るものであることについても、本件取引時点において、十分認識していたと認められる。 イまた、価格変動リスクを抑えつつ株式を調達することができ、かつ、相対的にマーケット・インパクトを低減させることができるとして、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くが買い注文の一部を引け条件 付きで発注していること(認定事実⑴ア(エ))についても、Dの経歴等(前記ア)に照らし、原告は、十分認識していたものと認められる。 ウしかるに、原告は、前記の各認識を有しながら、マーケット・インパクトや価格変動リスクを抑えることが相対的にできると考えられている引け条件付きの買い注文を一切出すことなく(認定事実⑹)、前記のとおり、 終値を高値に形成する蓋然性の極めて高い本件取引をあえて行ったのであるから、原告は、自らの利益の最大化を優先して、株価を変動(上昇)させる意図ないし動機の下、本件取引を行ったことがうかがわれる。 ⑷ 検討前記⑴から⑶までのとおり、原告は、本件期間の直前までにかけて、各証 券会社との間で積極的に引値保証取引を締結し、その結果、本 し動機の下、本件取引を行ったことがうかがわれる。 ⑷ 検討前記⑴から⑶までのとおり、原告は、本件期間の直前までにかけて、各証 券会社との間で積極的に引値保証取引を締結し、その結果、本件引値保証取引に基づき、1517万3000株という、他のファンドによる引値保証取引の規模等と比べて格段に多いのみならず、本件株式の想定買入株数の約8割にものぼる圧倒的な規模の株式の引渡債務を負うこととなり、これにより、本件銘柄入替えに伴う本件株式の買い需要の大半を原告一社に集中させて大 口トレーダーとなり、本件株式の買い注文の時期、数量、価格や方法をコン トロールすることにより、相場を支配することのできる地位を得、さらに、本件期間開始時点において、本件銘柄入替えに伴い予想される買入株数の5割近くにもなる本件株式884万5800株の買い注文を出す必要性を残存させることにより、原告が相場を支配し、終値の価格上昇を引き起こすことが可能となり得る状況を人為的に作り出した。かかる状況の下で、原告は、 大引けまでの30秒間という短い時間である本件期間中、合計919万8100株もの大量の買い注文を、成行又は直前約定値より相当な高指値により、連続的に行ったものであり(本件取引)、これは、先回り投資家の売り需要等を考慮してもなお、注文の時期、数量、価格や方法に照らし、客観的にみて、本件株式の株価を上昇させ、終値を高値に形成する蓋然性が極めて高いもの であって、実際、本件取引は、相場を支配し、売り注文を買いさらって株価を上昇させて終値をストップ高の高値に形成したものであった。 そして、大引け直前に成行又は高指値での大量の買い注文を反復・継続して行うことは、マーケット・インパクトが大きいばかりか、相場操縦の疑いがある行為であるなどとして、 の高値に形成したものであった。 そして、大引け直前に成行又は高指値での大量の買い注文を反復・継続して行うことは、マーケット・インパクトが大きいばかりか、相場操縦の疑いがある行為であるなどとして、本件取引当時、本件ガイドラインや証券会社 の社内ルール等において規制されており、本件銘柄入替えに伴い本件株式を調達した他の証券会社等は、本件ガイドラインや各社の社内ルール等を踏まえ、本件期間中には成行や高指値での発注をほとんど行わなかったところ、原告は、上記のような本件ガイドラインやこれに沿った市場関係者の取引姿勢を認識するとともに、本件取引が、株価を高値に形成するなど、終値に多 大な影響を与える蓋然性の高いものであることはもとより、相場操縦に当たる行為として規制の対象となり得るものであることを十分認識していた。また、マーケット・インパクトを抑えることができるなどの理由から、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くが買い注文の一部を引け条件付きで発注していることについても十分認識していた。それにもかかわらず、原 告は、引け条件付き買い注文を一切行わず、本件株式の株価を上昇させ、終 値を高値に形成する蓋然性が極めて高い本件取引をあえて行ったものであり、利益の最大化を優先して、株価を変動(上昇)させる意図ないし動機の下、本件取引を行ったことがうかがわれる。 これらの事情を総合すると、本件取引に当たり、原告には、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があったものと認められ、前記2で説示した ところに照らすと、本件取引は、誘引目的をもって行われたものと認めることができる。 ⑸ 原告の主張についてア本件引値保証取引に関して原告は、①銘柄入替前日の大引けにかけての株価形成は、売り注文の規 誘引目的をもって行われたものと認めることができる。 ⑸ 原告の主張についてア本件引値保証取引に関して原告は、①銘柄入替前日の大引けにかけての株価形成は、売り注文の規 模によって決まるから、引値保証取引の数量は、インデックス・ファンドの買い需要の想定株数の内数になるだけであり、原告が締結した引値保証取引の数がいくらであろうとインデックス・ファンドの買い需要の数に変化はなく、引値保証取引の数量は、誘引目的と関係がない、②銘柄入替前日の大引けにかけて値上がりする可能性が高く、また、売り注文が大量に 出ると見込んだ上で、引値保証取引を大量に受注しても調達可能性は問題がないと判断し、他方で、実際の株価の動きは不確実であるため損失を被るリスクも踏まえた正当な投機取引として本件引値保証取引を締結したのであって、他の引値保証取引も含めてトータルとしての引値保証取引によって利益を得ることを狙っていたものであるなどと主張する。 しかしながら、①一般に、市場においては、ある注文が出されたのを受け、それに応じた注文が出されるなどして、株価が形成されていくのであり、仮にインデックス・ファンドの買い需要の総量が一定であったとしても、これに基づく買い注文の時期、数量、価格や方法等によって株価への影響は異なるのであるから、指数構成銘柄入替えが公表されたことにより 生じるインデックス・ファンドの買い需要数と先回り投資家らによる潜在 的な売り需要数という規模だけで銘柄入替前日の株価が形成されるとは認め難いし、引値保証取引の数量も、他の事情と相まって、当該株価に影響を与え得るから、誘引目的と関係がないとはいえない。 また、②前記⑴から⑷までにおいて詳細に検討したところから明らかなとおり、本件引 引値保証取引の数量も、他の事情と相まって、当該株価に影響を与え得るから、誘引目的と関係がないとはいえない。 また、②前記⑴から⑷までにおいて詳細に検討したところから明らかなとおり、本件引値保証取引から本件取引に至るまでの一連の取引は、本件 ガイドラインやこれに沿った市場関係者の取引姿勢に反するのみならず、原告の利益の最大化を優先して、人為的な操作を加えて相場を変動させ、他の投資者の期待や信頼を裏切るものであるから、これを正当な投機取引とみることはできない。 したがって、原告の上記主張は、いずれも採用することができない。 イ本件取引が合理的なものであるとの主張等について(ア) 原告は、本件取引はインデックス・ファンドの需要を反映した大量の買い注文の一部を構成するものであって他の投資者を誤認させるものではなく、「自然の需給関係」を構成するものであったから、誘引目的は認められないなどと主張する。 しかしながら、前記2で説示したとおり、有価証券の売買取引を行うこと自体に現実の需要があるからといって、誘引目的が直ちに否定されるものではない。そして、原告は、24日午後5時頃から25日(本件取引日)午後2時41分にかけて、各証券会社との間で本件引値保証取引を次々と締結し、本件銘柄入替えに伴うインデックス・ファンド等に よる本件株式の想定買入株数の約8割にものぼる1517万3000株を「原告一社が」調達するという需要を人為的に作出し、これにより、注文の時期・数量・価格・方法を調整することによって相場を支配することができる地位を得たものであり(前記⑴ウ)、その上で、原告は、自らの利益を最大化させることを優先し、注文の時期・数量・価格・方法 を調整し、本件取引を行ったのであって、これを「自然の することができる地位を得たものであり(前記⑴ウ)、その上で、原告は、自らの利益を最大化させることを優先し、注文の時期・数量・価格・方法 を調整し、本件取引を行ったのであって、これを「自然の需給関係」で あると評価するのは相当でない。原告の上記主張は、採用できない。 (イ) また、原告は、①時間発展リスクと未約定リスクの最適化の観点から、大量の売り注文が発生すると合理的に予測される大引けにかけての30秒間に多くの注文を集中させたことは合理的である一方、②本件期間よりも前の段階では、売り注文(売り板)が薄く、大量に安く買うことな どできないから、執行時刻を早めることに合理性はなかった、③アルゴリズムによる買い注文は以前(2時間半前から11分前)に設定していたものであり、価格の上昇を意識したものではなかった、④大引け直前であっても、先回り投資家による手動注文による大量の売り注文に加え、アルゴリズムによる売り注文の数量等によっては、大引け直前の株価が 急落する可能性も十分にあったし、銘柄入替前日の大引けにかけて、先回り投資家の大量の売り注文が待ち構えており、売り注文を出すのに要する時間は、個人でも一、二秒あれば足りるから、本件取引は、株価を上昇させて終値を高値に形成するものではないなどと主張する。 しかしながら、①例えば、大引け間際に大量の買付けを集中させるこ とによって、時間発展リスクを限定しつつ、大引け間際での価格上昇を図ることは可能であるから、原告にとって、時間発展リスクや未約定リスクの最適化の観点から合理的な注文方法等であるとしても、誘引目的が直ちに否定されるものではない(前記2⑶参照)。 むしろ、過去の日経平均構成銘柄の入替えにおいては、出来高が最も 多いのは大引けの板寄せであるから 的な注文方法等であるとしても、誘引目的が直ちに否定されるものではない(前記2⑶参照)。 むしろ、過去の日経平均構成銘柄の入替えにおいては、出来高が最も 多いのは大引けの板寄せであるから、時間発展リスク及び未約定リスクの観点からは、買い注文の一部を引け条件付きで出すことに相応の合理性があると考えられ、実際、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くが買い注文の一部を引け条件付きで発注しているにもかかわらず、原告は、あえて引け条件付きの買い注文を出さなかったのであり(認定 事実⑴ア(エ)、⑸ア、⑹)、本件取引が時間発展リスク及び未約定リスク の観点から合理的といえるかについては、疑問も残る。 そして、そもそも、原告は、各証券会社との間で積極的に本件引値保証取引を締結することにより、本件銘柄入替えに伴うインデックス・ファンド等による本件株式の想定買入株数の約8割にものぼる1517万3000株を「原告一社が」調達するという需要を人為的に作出したの であり、これが本件取引の重要な前提事情となっているのであるから(前記⑴から⑷参照)、かかる状況を踏まえることなく本件取引のみを取り出してその合理性を議論するのは、当を得たものとはいえない。 また、②市場においては、ある注文が出されたのを受け、それに応じた注文が出されるなどして、株価が形成されていくのであるから、仮に 原告が本件期間よりも前の時間帯から時間をかけて少量ずつ買い注文を出していれば、これに呼応した売り注文が出され、売り板が厚くなり、原告がこれを買うことができる蓋然性もあったと考えられる。なお、これにより本件期間より前の時点における約定値が上昇した可能性はあるものの、大引けまでの時間が十分にあれば、相当量の売り注文が喚起さ れることが期待さ できる蓋然性もあったと考えられる。なお、これにより本件期間より前の時点における約定値が上昇した可能性はあるものの、大引けまでの時間が十分にあれば、相当量の売り注文が喚起さ れることが期待されるから、本件取引のように株価が急騰し、市場の流動性が枯渇するといった事態が生ずるとはにわかに認め難い。 しかも、③本件期間よりも前にアルゴリズムによる買い注文の設定をしていたという事実は、原告が本件取引よりも前の時点で株価の上昇を意図していたことと何ら矛盾しない上、アルゴリズムによる買い注文は 全て成行注文であり、このうち約360万株については大引け30秒前である午後2時59分30秒以降を執行開始時刻としてあらかじめ指定され、しかも、このうち200万株については大引け3秒前である午後2時59分57秒以降を執行開始時刻としてあらかじめ指定したものであって(認定事実⑸ア(イ))、立会終了直前に行う大量の成行の買い注文 が株式の価格に与える影響(前記⑴ア)に照らすと、上記事実は、むし ろ、原告が当初から株価を上昇させる意図を有していたことをうかがわせる事情というべきである。 さらに、④原告の上記④の主張は、一般に、市場関係者の多くは、本件ガイドライン等に従い、大引けに近接した時間帯での大量の発注を控えている中で(認定事実⑵)、原告が大引け直前の本件期間中に発注した 919万8100株という株式数が本件取引日の大引け30秒前(本件期間の開始時点)において出されていた売り注文数合計544万0800株を大きく上回るのみならず、本件銘柄入替えに伴い予想される買入株式数1904万6000株の約48.3%にもなる圧倒的な規模であったなどという本件の事実関係の下では、具体性の乏しいものといわざ るを得ないし、値下がりの 本件銘柄入替えに伴い予想される買入株式数1904万6000株の約48.3%にもなる圧倒的な規模であったなどという本件の事実関係の下では、具体性の乏しいものといわざ るを得ないし、値下がりの可能性があることは必ずしも原告の誘引目的を否定する事情とはいえない。 したがって、原告の上記主張は、いずれも採用することができない。 (ウ) さらに、原告は、①引け条件付き注文を出さないと最初から決めていたものではなく、大引けにかけて、引け条件付きの売り注文よりも引け 条件付きの買い注文の方が多くなっていき、引け条件付きの買い注文を入れても必要数量を買えない可能性が高かったし、②アルゴリズム注文について、引け条件付きで出さないこととしたのは、大引けでは取引が成立しない(ザラバ引け)可能性があるため、大引けにかけての市場の状況が分からない本件事前注文の時点では、アルゴリズム注文を引け条 件付きで出した場合、未約定リスクが高くなるからである、③ザラバで買った方が安く買える可能性が高かったから、引け条件付き注文を入れなかったのであり、本件の状況では引け条件付き注文を出さなかったことには合理性があった、④仮に原告が終値を高くしようとしていたのであれば、引け条件付きで大きな数量の買い注文を入れたはずであるなど と主張する。 しかしながら、①原告代表者であるDが、本件事前注文に際し、O株式会社の担当者に対して、大引けでの取引には参加しない旨述べたことや(認定事実⑸ア(ウ))、原告が参加した過去の指数構成銘柄入替えイベントにおいて、入替前日の午後2時59分30秒時点及び大引け直前の時点で引け板の売り注文が買い注文を上回っていたのに、原告が大引け までの約30秒間に引け条件付きの買い注文を一切出さなかったこと(認 おいて、入替前日の午後2時59分30秒時点及び大引け直前の時点で引け板の売り注文が買い注文を上回っていたのに、原告が大引け までの約30秒間に引け条件付きの買い注文を一切出さなかったこと(認定事実⑶)も併せ考えると、原告が引け条件付き注文を出さないと最初から決めていたものではない旨の上記主張は、にわかに採用し難い。 また、原告が引け条件付きの買い注文を入れても必要数量を買うことができない可能性があったのは、原告自身が成行注文や直前約定値より 相当な高指値での買い注文を大量かつ連続的に行うことにより、ザラバで売り注文を買いさらっていったためであるとうかがわれる(認定事実⑹参照)。 さらに、②ザラバ引けとなった場合、大引けでの取引が成立しないため、全ての注文を引け条件付き注文で発注することは、未約定リスクが 伴うものであるが(乙112の1)、各投資者は、かかるリスクと、自己の注文が価格形成に与えるリスク等を勘案して、適切な分量の引け条件付き注文を出しているところ(認定事実⑴ア(エ)、⑵、乙112の1、証人Q・33、34頁、原告代表者・38、39頁、弁論の全趣旨)、原告が自己の注文が価格形成に与えるリスク等の観点から上記のような検討 をした形跡はみられないし、そもそも、原告は、本件銘柄入替えに伴うインデックス・ファンド等による本件株式の想定買入株数の約8割にものぼる1517万3000株を「原告一社が」調達するという需要を人為的に作出したのであり、これが本件取引の重要な前提事情となっているのであるから(前記(イ)参照)、かかる状況を踏まえることなく未約定 リスクを議論するのは、当を得たものとはいえない。むしろ、本件事前 注文の内容からみて、原告が当初から株価を上昇させる意図を有していたことがうかが 、かかる状況を踏まえることなく未約定 リスクを議論するのは、当を得たものとはいえない。むしろ、本件事前 注文の内容からみて、原告が当初から株価を上昇させる意図を有していたことがうかがわれるのは、前記(イ)のとおりである。 しかも、③原告は、あらかじめ本件引値保証取引を締結していたから、原告が主張する、ザラバで買った方が安く買える可能性が高かったから、引け条件付き注文を入れなかったという事情は、原告の利益を増加させ る事情であり、原告に誘引目的があったことと何ら矛盾しない。 以上に加えて、④原告は、本件引値保証取引により大口トレーダーとなり、相場を支配することのできる地位を得た上、現に900万株以上といった大量の買い注文を成行又は高指値により本件期間中に連続して行い、これにより本件株式の価格が急騰したことなどを踏まえると、原 告が引け条件付き買い注文を出さなかったことをもって、原告が終値を高くする意思を有していたことを否定する事情ということはできない。 したがって、原告の上記主張は、いずれも採用することができない。 (エ) また、原告は、未約定リスクの観点から、競合相手に売り注文を買われないようにする即時執行注文(成行及び高指値による注文)は合理的 であるし、原告が即時執行注文の連続発注をしたからといって、株価が上がるものではないなどと主張する。 しかしながら、原告にとって合理的な取引方法であるとしても、誘引目的が直ちに否定されるとはいえないところ(前記2⑶)、原告は、大引け間際の約30秒間のザラバにおいて、成行及び直前約定値より相当な 高指値による大量の買い注文を連続的に発注したものであり、その時期、数量、価格や方法に照らし、かかる発注行為は、客観的にみて、売り注文を買いさらい、株価を上昇 、成行及び直前約定値より相当な 高指値による大量の買い注文を連続的に発注したものであり、その時期、数量、価格や方法に照らし、かかる発注行為は、客観的にみて、売り注文を買いさらい、株価を上昇させる蓋然性の極めて高いものであった(前記⑴イ)。原告の上記主張は、本件取引の態様の一側面を切り取って評価するものであり、採用することができない。 ウ買付関与率等に関して 原告は、①指数構成銘柄入替えの前日の大引けにかけての株価形成は売り需要の規模、すなわち先回り投資家等による売り注文の多寡によって決まるものであることを前提に、②買付関与率は誘引目的の間接事実として意味がないし、③仮に原告が本件引値保証取引の数量を減らして買付関与率を低くしたとしても、他の取引主体がその分の買い需要を反映した買い 注文を入れただけである、④先回り投資家による大量の売り注文が具体的にどの程度の数量になるかは事前に分からず、本件では売り注文が買い注文より少なかったため結果的に急騰したにすぎないなどと主張する。 しかしながら、①前記アで説示したとおり、原告の主張する上記前提には理由がなく、これを採用することはできない。 そして、②本件取引は、客観的にみて、株価を上昇させ、終値を高値に形成する蓋然性の極めて高いものであり、実際、本件株式の価格(約定値)は、本件取引の結果、ストップ高である7540円まで高騰しているところ(前記⑴イ)、本件期間における原告の買付関与率が相当に高いという事実は、その株価上昇に原告が与えた影響の大きさを示唆するものといえる。 しかも、本件においては、原告の買付関与率の高さだけではなく、本件取引及び本件引値保証取引の内容や態様、その前後の事情、取引の動機その他原告の認識等を総合的に勘案した結 唆するものといえる。 しかも、本件においては、原告の買付関与率の高さだけではなく、本件取引及び本件引値保証取引の内容や態様、その前後の事情、取引の動機その他原告の認識等を総合的に勘案した結果、本件取引に当たり、原告には、人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があったものと認められ、このため、本件取引は、誘引目的をもって行われたものと認められるのであ って(前記⑴~⑷)、原告の上記主張②は、正鵠を射たものとはいえない。 また、③仮に、原告が本件引値保証取引を引き受けなかった、あるいはその数量を減らしていた場合には、その引値保証取引部分については、複数の取引主体によって引き受けられていた、あるいは、インデックス・ファンド自身によって買付行為がされるなどしていた可能性があるが、各証 券会社やインデックス・ファンドの多くは、本件ガイドラインや投資信託 等の運用に関する規則及びこれらに沿った各社の社内ルールの下で取引を行っており、本件銘柄入替えに伴う買付けに当たっても、マーケット・インパクトを低減すべく、取引の規模や注文の時期・方法等に配慮して取引を行っていたのであるから(認定事実⑵、⑷カ、⑼)、仮に、原告が本件引値保証取引を引き受けなかった、あるいはその数量を減らしていた場合に おいて、原告の代わりに引き受けた他の者が、本件取引と同様の規模や時期・方法等で買い注文を行うとは考え難い。 しかも、④原告の上記④の主張は、前記イ(イ)④の原告の主張と同様に、本件の事実関係の下では、具体性の乏しいものといわざるを得ない。 したがって、原告の上記主張は、いずれも採用することができない。 エマーケット・インパクトに関して原告は、誘引目的が認められるためにはマーケット・インパクトがあることの い。 したがって、原告の上記主張は、いずれも採用することができない。 エマーケット・インパクトに関して原告は、誘引目的が認められるためにはマーケット・インパクトがあることの認識では足りない上、アルゴリズム注文についてはTWAPを採用してほとんどの注文についてマーケット・インパクトを小さくすることを目指す「Low」にするなどしてマーケット・インパクトに配慮していた などと主張する。 しかしながら、前記⑴から⑷までで述べたことから明らかなとおり、本件取引がマーケット・インパクトのあるものであると原告が認識していることをもって直ちに誘引目的が認められると判断しているものではない。 そして、銘柄入替えに伴い買付けを行う市場関係者の多くがマーケット・ インパクトを抑えるように配慮して取引を行っているのに対し(前記ウ)、原告が行った本件取引は、大引け間際の30秒間に大量の買い注文を成行又は高指値で発注するという、既に発注されている売り注文及びその後発注される売り注文を買いさらって終値を高値に形成する蓋然性の極めて高いもの、すなわちマーケット・インパクトが大きい態様によるものであ り、それにもかかわらず、原告は、マーケット・インパクトを抑えること が相対的にできると考えられていた引け条件付きの買い注文を一切出さなかった(認定事実⑹)。しかも、原告は、本件事前注文のうち約360万株もの成行の買い注文を大引け間際の30秒間での執行となるように指定し、このうち200万株の成行の買い注文を3秒間での執行となるよう指定するなど、価格を上昇させる蓋然性の極めて高い行為をあえて行った こと(認定事実⑸ア(イ))からすると、原告が指摘する上記の事情をもって、原告が価格形成に関与しないようにマーケット・インパクト 定するなど、価格を上昇させる蓋然性の極めて高い行為をあえて行った こと(認定事実⑸ア(イ))からすると、原告が指摘する上記の事情をもって、原告が価格形成に関与しないようにマーケット・インパクトに配慮していたものとはにわかに認められない。 オ誘引、誤認がない旨の原告の主張についてまた、原告は、本件において原告が付加した情報は何もなく、買い需要 を反映した買い注文の一部を構成していただけであるなどとして、原告の買い注文によって市場参加者が何かを誤認したこともなければ、そのような誤認によって取引に誘引させられた者もいなかったのであるから、原告に誘引目的は認められないと主張する。 しかしながら、原告は、本件銘柄入替えに伴うインデックス・ファンド 等による本件株式の想定買入株数の約8割にものぼる1517万3000株を「原告一社が」調達するという需要を人為的に作出し、本件株式の買い注文の時期、数量、価格や方法をコントロールすることにより、相場を支配することのできる地位を得て、これに基づいて、本件株式の株価を上昇させ、終値を高値に形成する蓋然性が極めて高い本件取引を行ったも のであり、実際、本件取引は、相場を支配し、売り注文を買いさらって株価を上昇させて終値を高値に形成したものであった(前記⑴)。 そして、一般に、有価証券市場において形成された相場は自然な需給関係により形成された公正なものであるとして認知されているところ、本件取引によって形成された相場についても、他の市場参加者において、それ が人為的な操作を加えられたものでない、自然の需給関係により形成され た相場であると誤認させ、それに基づいて当該市場参加者が取引に参加する可能性があったものと認められるのであって(証人Q・19 が人為的な操作を加えられたものでない、自然の需給関係により形成され た相場であると誤認させ、それに基づいて当該市場参加者が取引に参加する可能性があったものと認められるのであって(証人Q・19、46~48頁参照)、この認定を否定するに足りる証拠はない。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 カ原告のその他の主張について 原告は、その他るる主張するが、以上説示したところに照らすと、いずれも理由がない。 ⑹ 小括以上に加え、本件取引が相場を変動させる可能性のある取引(変動取引)であることは明らかであるから、原告は、誘引目的をもって、変動取引を行 ったものと認められる。 4 課徴金の金額について⑴ 本件において、金商法174条の2第1項2号ロ⑴所定の「最高の価格のうち最も高い価格」は、7546円であると認められる(乙23、54~56)。 これに対し、原告は、相場操縦における課徴金の算定の基準となる「最高の価格」(金商法174条の2第1項2号ロ⑴)とは、競売買による方法で価格が定まる市場における最高の価格、すなわち、時間内取引において成立した最高価格と解すべきであり、ToSTNeT市場におけるToSTNeT-1において成立した価格は含まれないと解すべきであると主張するが、T oSTNeT取引とは、東証の立会外取引であり(乙57)、本件株式が上場する東京証券取引所市場第一部も「取引所金融商品市場」(同法130条、2条17項)に該当するのであるから、ToSTNeT-1取引での最高の価格が「130条に規定する最高の価格」(同法174条の2第1項2号ロ⑴)に含まれることは明らかである。原告の主張は、理由がない。 ⑵ そして、本件に現れた各事実を T-1取引での最高の価格が「130条に規定する最高の価格」(同法174条の2第1項2号ロ⑴)に含まれることは明らかである。原告の主張は、理由がない。 ⑵ そして、本件に現れた各事実を基に、原告が納付すべき課徴金の金額を計 算すると、6億8424万円となり(甲1、弁論の全趣旨)、これは、本件決定により原告に納付を命じられた課徴金の金額と同額である。 5 小括以上によれば、本件決定は、適法である。 第4 結論 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官篠田賢治 裁判官下和弘 裁判官鈴木真耶(別紙1、別紙2省略)

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