平成26年3月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第3292号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年12月25日判決東京都品川区<以下略>原告ホーチキ株式会社同訴訟代理人弁護士大野聖二同訴訟代理人弁理士鈴木 守大阪市<以下略>被告新コスモス電機株式会社同訴訟代理人弁護士岡田春夫同小池眞一同中西 淳同瓜生嘉子同訴訟代理人弁理士北 村 修一郎同山崎徹也同太田隆司同補佐人弁理士辻 政宏 主文 1 被告は,原告に対し,1億6751万3798円及び別紙遅延損害金一覧表記載の各金員に対する同表記載の各年月日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成23年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,「電池式警報器」との名称の特許権(以下「本件特許権」という。)の共有特許権者(平成24年2 平成23年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,「電池式警報器」との名称の特許権(以下「本件特許権」という。)の共有特許権者(平成24年2月27日以降は単独特許権者)である原告が,別紙被告製品目録記載の製品(以下,それぞれ「イ号製品」などという。 また,これらを併せて「被告製品」ということがある。)は,本件特許の請求項1ないし4の各発明(以下,それぞれ「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という。)の技術的範囲に属するから,被告による被告製品の製造,販売は本件特許権を侵害するものであると主張し,被告に対し,平成18年12月22日から平成24年3月末日までの間の被告製品の製造販売に係る本件特許権侵害の不法行為責任に基づく損害賠償として,①主位的には特許法102条1項に基づく損害額である10億円,予備的には②同条2項に基づく損害額である6億4591万3000円若しくは3億1728万0780円又は③同条3項に基づく損害額である1億5731万8127円(附帯請求として,これらの金員に対する訴状送達日の翌日である平成23年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告は,火災報知設備,消火設備,情報通信設備,防犯設備等を提供する株式会社である。 イ被告は,火災警報器,ガス警報器,ニオイセンサ等を業として製造,販売する株式会社である。 (2) 本件特許権ア本件特許権の内容等は次のとおりである(甲2)。 特許番号特許第3895646号発明の名称電池式警報器出願日平成14年7月16 (2) 本件特許権ア本件特許権の内容等は次のとおりである(甲2)。 特許番号特許第3895646号発明の名称電池式警報器出願日平成14年7月16日出願番号特願2002-207418登録日平成18年12月22日イ原告は,本件特許権に係る特許出願の単独出願人であったが,その特許を受ける権利の一部を東京瓦斯株式会社(以下「東京瓦斯」という。)に譲渡し,平成15年10月2日,特許庁に対し,出願人変更届を提出した(乙1,5の1ないし11)。 ウ本件特許権は,上記登録日において,原告と東京瓦斯の共有特許権として登録された(甲1,2)。 エ原告は,平成24年2月頃,本件特許権の共有持分につき,東京瓦斯から譲渡を受け,平成24年2月27日,その旨の登録を了した(甲33)。 (3) 本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」といい,本判決末尾に添付する。)の「特許請求の範囲」における,請求項1ないし4の記載は,それぞれ次のとおりである。 ア請求項1「電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器であって,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視する電圧監視手段と,前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段と,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段と,前記電圧監視手段によって監 視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記電池の交 要求受付手段と,前記電圧監視手段によって監 視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段と,を備えたことを特徴とする電池式警報器。」イ請求項2「電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器であって,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視し,当該電圧が所定の電圧以下に低下すると,当該電圧の低下を示す電圧低下信号を出力する電圧監視手段と,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付けて,当該確認要求の受付を示す確認信号を出力する確認要求受付手段と,前記電圧監視回路によって出力された前記電圧低下信号を受け入れることを条件として,前記電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段と,前記電圧監視手段によって出力された前記電圧低下信号の入力を受け付けると共に,前記確認要求受付手段によって出力された前記確認信号の入力を受け付けた場合には,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段と,を備え,更に前記確認要求受付手段は,前記確認要求のみならず,前記異常の検出を試験するための試験要求を前記利用者から受け付けるものであって,前記確認要求を受け付けた場合には,当該確認要求の受付を示す確認要求受付信号を出力し,前記試験要求を受け付けた場合には,前記異常の検出を試験するために用いられる試験信号を出力すること,を特徴とする電池式警報器。」ウ請求項3「前記電圧監視手段は,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下し 求を受け付けた場合には,前記異常の検出を試験するために用いられる試験信号を出力すること,を特徴とする電池式警報器。」ウ請求項3「前記電圧監視手段は,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している間,前記電圧低下信号を継続的に出力し,前記音声出力手段は,前記確 認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力されている場合に,前記音声メッセージを出力すること,を特徴とする請求項2に記載の電池式警報器。」エ請求項4「前記電圧監視手段は,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,前記電圧低下信号を出力することによって前記音声出力手段にフラグを立たせ,前記音声出力手段は,前記確認信号が入力された時点で前記フラグが立っている場合に,前記音声メッセージを出力すること,を特徴とする請求項2に記載の電池式警報器。」(4) 本件発明1ないし4の構成要件の分説本件発明1ないし4を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」などという。)。 ア本件発明1A 電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器であって,B 前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視する電圧監視手段と,C 前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段と,D 前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段と,E 前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記 ける確認要求受付手段と,E 前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記電池の交換を促す内容を含んだ 音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段と,を備えたことを特徴とする電池式警報器。 イ本件発明2F 電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器であって,G 前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視し,当該電圧が所定の電圧以下に低下すると,当該電圧の低下を示す電圧低下信号を出力する電圧監視手段と,H 前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付けて,当該確認要求の受付を示す確認信号を出力する確認要求受付手段と,I 前記電圧監視回路によって出力された前記電圧低下信号を受け入れることを条件として,前記電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段と,J 前記電圧監視手段によって出力された前記電圧低下信号の入力を受け付けると共に,前記確認要求受付手段によって出力された前記確認信号の入力を受け付けた場合には,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段と,を備え,K 更に前記確認要求受付手段は,前記確認要求のみならず,前記異常の検出を試験するための試験要求を前記利用者から受け付けるものであって,前記確認要求を受け付けた場合には,当該確認要求の受付を示す確認要求受付信号を出力し,前記試験要求を受け付けた場合には,前記異常の検出を試験するために用いられる試験信号を出力すること,を特徴とする電池式警報器。 ウ本件発明3L 求の受付を示す確認要求受付信号を出力し,前記試験要求を受け付けた場合には,前記異常の検出を試験するために用いられる試験信号を出力すること,を特徴とする電池式警報器。 ウ本件発明3L 前記電圧監視手段は,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下してい る間,前記電圧低下信号を継続的に出力し,M 前記音声出力手段は,前記確認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力されている場合に,前記音声メッセージを出力すること,を特徴とする請求項2に記載の電池式警報器。 エ本件発明4N 前記電圧監視手段は,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,前記電圧低下信号を出力することによって前記音声出力手段にフラグを立たせ,O 前記音声出力手段は,前記確認信号が入力された時点で前記フラグが立っている場合に,前記音声メッセージを出力すること,を特徴とする請求項2に記載の電池式警報器。 (5) 被告の行為等ア被告は,別紙被告製品目録記載のイ号ないしニ号製品(電池式住宅用火災警報器)を製造,販売していた。 イイ号ないしニ号製品の構成は,別紙イ号ないしニ号製品説明書各記載のとおりである(以下,別紙イ号ないしニ号製品説明書記載の構成をそれぞれ「構成①」などという。)(弁論の全趣旨)。 (6) イ号製品ないしニ号製品の構成要件充足性アイ号ないしニ号製品の構成①は本件発明1の構成要件A及び本件発明2の構成要件Fを充足する。 イイ号ないしニ号製品の構成②は本件発明1の構成要件Bを充足する。 ウロ号製品のうち,「表示灯手段」のみで利用者に報知する製品については,その構成③は本件発明1の構成要件Cを充足する。 エイ号ないしニ号製品は,構成要件Gを充足する(イ号ないしニ号製品の構成②,③には,電圧の低下を示 示灯手段」のみで利用者に報知する製品については,その構成③は本件発明1の構成要件Cを充足する。 エイ号ないしニ号製品は,構成要件Gを充足する(イ号ないしニ号製品の構成②,③には,電圧の低下を示す電圧低下信号を出力する手段についての記載はないが,被告はその点の充足を含めて構成要件Gの充足を認めて いる。)。 オロ号ないしニ号製品は,構成要件Lを充足する。 カイ号ないしニ号製品の構成⑧,⑨は本件発明4の構成要件N,Oを充足する。(以上につき,いずれも当事者間に争いがない。)(7) 被告による無効審判請求等ア第1次無効審判(ア) 被告は,平成21年10月9日,本件特許につき無効審判(無効2009-800214号)を請求した(以下,上記無効審判請求事件を「第1次無効審判」という。)(乙6)。 (イ) 特許庁は,平成22年4月12日,第1次無効審判に関し,「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決(以下「第1次審決」という。)をした(乙17)。 (ウ) 被告は,同年5月19日,第1次審決につき,知的財産高等裁判所に対し,審決取消訴訟(平成22年(行ケ)第10166号)を提起した(乙18)。 (エ) 被告は,同年7月16日頃,上記(ウ)の審決取消訴訟を取り下げた(乙22,23)。 イ第2次無効審判(ア) 被告は,平成22年7月14日,本件特許につき無効審判(無効第2010-800120号)を請求した(以下,上記無効審判請求事件を「第2次無効審判」という。)(乙24)。 (イ) 特許庁は,平成23年4月6日,第2次無効審判に関し,「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決(以下「第2次審決」という。)をした(甲22)。 (ウ) 被告は,第2次審決につき,知的財産高等裁判所に対し,審決取消訴訟(平成23年( 効審判に関し,「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決(以下「第2次審決」という。)をした(甲22)。 (ウ) 被告は,第2次審決につき,知的財産高等裁判所に対し,審決取消訴訟(平成23年(行ケ)第10164号)を提起した(乙61,8 7)。 (エ) 知的財産高等裁判所は,平成24年2月8日,被告の請求を棄却する旨の判決をした(乙89)。 (オ) 被告は,平成24年2月20日,上記(エ)の判決に対し,上告受理申立てを行った(乙94)。 (カ) 上記上告受理申立てについては,平成25年1月31日付けで不受理決定がされた(弁論の全趣旨)。 (8) 消滅時効の援用被告は,平成24年7月6日の本訴第10回弁論準備手続期日において,平成18年12月22日から平成19年8月23日までの間の被告製品の製造販売に係る本件特許権侵害の不法行為責任に基づく損害賠償請求権につき,消滅時効を援用する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著)。 2 争点(1) イ号ないしニ号製品が本件発明の技術的範囲に属するか。 アイ号ないしニ号製品が本件発明1の技術的範囲に属するか。 (ア) 構成要件Cの充足性(イ号,ハ号,ニ号製品)(イ) 構成要件Dの充足性(ウ) 構成要件Eの充足性イイ号ないしニ号製品が本件発明2の技術的範囲に属するか。 ウイ号ないしニ号製品が本件発明3の技術的範囲に属するか。 エイ号ないしニ号製品が本件発明4の技術的範囲に属するか。 (2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか。 ア乙48号証に基づく進歩性欠如の成否イ乙50号証に基づく進歩性欠如の成否(3) 東京瓦斯納入製品についての侵害の成否(4) 消滅時効の成否 にされるべきものか。 ア乙48号証に基づく進歩性欠如の成否イ乙50号証に基づく進歩性欠如の成否(3) 東京瓦斯納入製品についての侵害の成否(4) 消滅時効の成否 (5) 損害額ア特許法102条1項に基づく損害額(主位的請求)イ特許法102条2項に基づく損害額(予備的請求1,2)ウ特許法102条3項に基づく損害額(予備的請求3)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)ア(イ号ないしニ号製品が本件発明1の技術的範囲に属するか。)(1) 構成要件Cの充足性(イ号,ハ号,ニ号製品)(争点(1)ア(ア))(原告の主張)アイ号,ハ号,ニ号製品の表示灯手段は,電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回検出した場合に緑点滅するものであるから(イ号,ハ号及びニ号製品の構成③),「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段」に相当し,構成要件Cを充足する。 イイ号製品に関する被告の主張に対する反論(ア) 被告は,イ号製品の表示灯手段は,電池電圧が低下した場合のみならず,検出部位の異常を検出した場合や有効期間に達した場合にも点滅するから,「当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する」(構成要件C)を充足しないと主張する。しかし,イ号製品の表示灯手段が,電池電圧の低下を報知していることは明らかであるところ,構成要件Cは,「当該電圧の低下を報知するため『だけ』に点灯または点滅する表示灯手段」とは規定されていないのであるから,これ以外の機能,目的を有していたとしても,構成要件Cの充足性は左右されない。 (イ) 被告は,原告の第2次 を報知するため『だけ』に点灯または点滅する表示灯手段」とは規定されていないのであるから,これ以外の機能,目的を有していたとしても,構成要件Cの充足性は左右されない。 (イ) 被告は,原告の第2次無効審判における主張を根拠とする禁反言も主張するが,原告は被告の指摘する主張を取り下げた上で第2次審決を受けているのであるから,上記主張は禁反言の対象となるものではない。 また,被告は,平成23年1月26日付け口頭審理陳述要領書(乙28の1)において,特許請求の範囲の文言上,表示灯手段は他の異常状態の表示を行う機能を含んでいてもよいことを理解した記載をしており(乙28の1の22頁~23頁),原告の主張を信頼などしていない。 したがって,第2次無効審判における原告の主張を理由として,構成要件Cが限定解釈されることはない。 ウハ号及びニ号製品に関する被告の主張に対する反論(ア) 被告は,本件発明1において電池の電圧低下は表示灯手段のみによって報知されることを要し,発音又は発声手段による報知の併用は排除されていると主張するが,次のとおり誤りである。 (イ) 本件発明の技術的意義本件発明の従来技術においては,ブザー音を出力することにより,電池残量の低下を報知していたが,利用者はその意味を理解し難く,うるさがって電池を抜き出すなどしてしまい,電池交換が促されないという問題があった(【0008】,【0009】)。また,電池残量の低下をブザー音で報知し続けると電池を無駄に消費することになり,電池容量を必要以上に大きくしなければならないという問題があった(【0010】)。そこで,本件発明は,ブザー音に代えて音声メッセージを用いることとし,さらに,従来のブザー音のように,音声メッセージを一定間隔で出力すると,消費電力が大きくなって いう問題があった(【0010】)。そこで,本件発明は,ブザー音に代えて音声メッセージを用いることとし,さらに,従来のブザー音のように,音声メッセージを一定間隔で出力すると,消費電力が大きくなってしまうので,まずは表示灯手段によって電池残量低下を報知し,利用者からの確認要求を待って,音声メッセージを出力するという方式を採用することにより,上記3つの課題をバランス良く解決したものである(【0011】,【0012】)。 (ウ) 以上の本件発明の技術的意義に照らせば,本件発明において重要なのは,利用者が内容を理解でき,かつ,消費電力が大きくない方式で電 池残量低下を報知することにより,電池交換を促進して,無監視状態での放置を回避することであり,そのために一切ブザー音を鳴らさなくするということではない。特許請求の範囲の記載は,ブザー音を一切用いないという構成とはなっていないし,被告の指摘する【0013】,【0015】,【0026】,【0055】の記載は,いずれも,確認要求受付手段が備わっていない従来の意味内容を理解し難いブザー音(すなわち,それ自体が電池の残量が少なくなったことを意味し,取扱説明書を読んで初めて意味を理解できるブザー音)を意味するものにすぎない。 そうすると,表示灯手段の点滅に「ピッ」音の発音が伴ったとしても,利用者は報知内容を理解できるのであって,本件発明の上記作用効果を得られるのであるから,本件発明において,表示灯手段の点滅に「ピッ」音の発音が伴うことは排除されていない。 (エ) 被告は,本件出願経過における原告の平成18年3月13日付け意見書(乙5の24)の記載を指摘するが,上記意見書の「音声出力手段による報知は利用者からの能動的な確認要求があった場合にのみ行うことで,音声報知のみを実質的に『待機(遅延 平成18年3月13日付け意見書(乙5の24)の記載を指摘するが,上記意見書の「音声出力手段による報知は利用者からの能動的な確認要求があった場合にのみ行うことで,音声報知のみを実質的に『待機(遅延又は蓄積)』させている」(4頁7~8行目)との記載における「音声出力手段」は,音声メッセージを出力する手段を意味するものであり,ブザー音を出力する手段(発音手段)を意味するものではない。前述のとおり,本件発明の目的は,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することができる電池式警報器を提供することであり,ブザー音が鳴動し続けることに起因する問題に直接フォーカスしたものではない。 また,上記意見書において,利用者に耳障りであると指摘したブザー音は「火災またはガス漏れ発生時のブザー音と同種」(【0008】)のブザー音のことであり,ハ号及びニ号製品において50秒間隔で出力さ れる「ピッ」音とは全く異なるものであるから,上記記載によって,上記「ピッ」音の併用が排除されるものではない。 (被告の主張)ア原告の主張は争う。 イイ号製品について(ア) 構成要件Cは,「…当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段」というものであるから,監視領域の利用者に対し,電池電圧の低下を報知できる機能を有することを要するものである。これは,本件明細書に,「利用者は,電源ランプ18の点灯または点滅,さらには音声メッセージの出力を通じて,取扱説明書を読まなくても,電池の残量が少なくなった旨を早急かつ確実に理解する。」(【0026】)として,電源ランプ18の点滅のみで電池残量低下を認識し得る場合があることが明記されていることや,「各種ランプ…は,…警報器10の機能状態や検出状態を利用者に報知するLEDなどの表示 【0026】)として,電源ランプ18の点滅のみで電池残量低下を認識し得る場合があることが明記されていることや,「各種ランプ…は,…警報器10の機能状態や検出状態を利用者に報知するLEDなどの表示灯手段である。」(【0035】),「ランプ制御回路24は…対応するランプを点灯または点滅させる。」(【0036】)として,電源ランプ18が,電池電圧の低下の報知に特化して報知を行う表示灯手段であることが明記されていることからも明らかである。 しかるに,イ号製品における異常表示灯手段は,電池の電圧低下,警報器の故障又は有効期限切れのいずれかを含む,何らかの異常が発生したことを示す構成であって(イ号製品の構成③),異常表示灯手段が点滅したからといって,監視領域の利用者は,機器に何らかの異常が発生していることを知ることができるのみであり,その原因を特定し得ない。 これは,本件発明が,利用者による電池交換を予定しているのに対し,イ号製品が,利用者による電池交換を予定しておらず,また,電池電圧の低下を招く原因が単なる電池切れではなく回路自体の異常によること が多いことから,電池電圧の低下を,新しい警報器への取り替えを促すべき機器の故障の一原因として扱っているにすぎないことによるものであって,異常表示灯手段の目的・機能において,本件発明1とイ号製品が明らかに相違することに起因するものである。 したがって,イ号製品の異常表示灯手段は,「当該電圧の低下を報知するために点灯又は点滅する」(構成要件C)ものではないから,上記文言を充足しない。 (イ) 訴訟上の禁反言a 原告は,第2次無効審判において提出した平成22年10月5日付け答弁書(乙25)において,甲1号証(判決注:乙37の1)と本件発明1との対比に当たり,上記引用発明の「故障 イ) 訴訟上の禁反言a 原告は,第2次無効審判において提出した平成22年10月5日付け答弁書(乙25)において,甲1号証(判決注:乙37の1)と本件発明1との対比に当たり,上記引用発明の「故障表示灯」は,電池電圧が所定の電圧以下に低下した場合は点滅点灯し,その他の異常を検出した場合は連続点灯するものである一方,本件発明1の表示灯手段は,電池電圧の低下のみを報知するものであるから,上記引用発明と本件発明1はこの点において相違する旨主張している(乙25の17頁12~20行)。 イ号製品における異常表示灯手段は,電池の電圧低下のみならず,検出部位の回路異常の有無又は有効期間切れを表示する手段であり,かつ,そのいずれの原因による場合であっても,同様に緑点滅するものであって(イ号製品の構成③),報知対象が電池電圧低下に特化しているものではない。したがって,イ号製品が構成要件Cを充足する旨の原告の主張は,第2次無効審判における上記主張と矛盾するものであり,訴訟上の信義則の原則又は禁反言の趣旨に照らし許されない。 b なお,第2次無効審判における原告の上記主張は構成要件Cとの関係では撤回されているが,訴訟係属当事者としては,紛争に関連した他の手続において特許性を維持するために発明特定事項について主張 した内容は,特段の事情がない限り,侵害訴訟においても維持されると信頼すべき合理的な基礎があり,これは,最終的に特許庁において維持された主張であるか否かによって左右されない。したがって,本件において,原告が第2次無効審判と本件訴訟で矛盾した主張をすることは許容されない。 ウハ号及びニ号製品について(ア)a 本件明細書の【0013】,【0015】,【0026】,【0055】の記載によれば,本件発明は,発音手段又は発声手段によ 主張をすることは許容されない。 ウハ号及びニ号製品について(ア)a 本件明細書の【0013】,【0015】,【0026】,【0055】の記載によれば,本件発明は,発音手段又は発声手段による報知が,利用者にとって煩わしく,かつ,消費電力が大きいことから,これを排除し,表示灯手段による報知のみを単独で用いることに技術的特徴を有するものであり,表示灯手段による報知と発音手段又は発声手段による報知を併用することは強く排除されている。 b この点に関し,原告は,本件明細書において,表示灯手段と発声手段との併用は排除されているものの,ブザー等の発音手段との併用までは排除されていないと主張する。しかし,上記主張は,本件明細書において,「音」を発しないことによる効果が明記されていることと矛盾するものである上,本件明細書の【0026】において,ブザー音を併用することが明確に排除されていることとも矛盾する。原告は,ブザー音が鳴っていたとしても,利用者は,確認要求を行うことにより,その警報内容を容易に理解できるから,上記ブザー音をうるさがって電池を抜き出すという事態が生じることはないとも主張するが,本件明細書には,利用者は,音声メッセージであればその内容を理解できるにもかかわらず,「…利用者が(特に,就寝中の利用者),いきなり出力される音声メッセージをうるさがって…」(【0055】)との記載があるのであって,利用者が,意味内容を理解できないためにうるさがるのではなく,音としての報知そのものを耳障りに 感じることが明記されている。 c したがって,本件発明1において,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下している」ことは「表示灯手段」のみによって報知されなければならないと解すべきところ,ハ号及びニ号製品は,表示灯の緑点滅と同時に「ピッ がって,本件発明1において,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下している」ことは「表示灯手段」のみによって報知されなければならないと解すべきところ,ハ号及びニ号製品は,表示灯の緑点滅と同時に「ピッ」音の発音を開始するものであるから,構成要件Cを充足しない。 d なお,原告は,「ブザー音」の併用が排除されているとしても,ハ号及びニ号製品における「ピッ」音は「ブザー音」とは異なるから,その併用は排除されていない旨も主張するが,本件明細書において「『ピッ』というブザー音」(【0006】),「電源ランプ18は,当然『ピッ』というブザーよりも低消費電力である必要があり…」(【0026】)と記載されていることからは,「ピッ」音とブザー音が区別されていないことが明らかである。 (イ) 出願経過禁反言a 原告は,本件特許出願に当たり,特許庁から平成17年12月22日付け拒絶理由通知(乙5の23)を受けて,平成18年3月13日付け手続補正書(乙5の25)により,本件明細書の【0013】,【0015】,【0055】の記載を追加するとともに,同日付け意見書(乙5の24)において,「補正後の請求項1に係る発明の構成上の特徴」として,「…音声出力手段による報知は利用者からの能動的な確認要求があった場合にのみ行うことで,音声報知のみを実質的に『待機(遅延又は蓄積)』させている点」(乙5の24の4頁7~8行目)と主張し,さらに,「従来技術では,…直ちに,ブザーにて警報音を出力していた。…これに対して請求項1に係る発明では,…利用者が能動的に指示を行わない限り音声出力が行われないので,補正後の明細書の段落『0055』等に記載のように,利用者の就寝中 に音声がいきなり出力されるような事態を防止でき…」(同頁28~42行目)との効果を主張して 限り音声出力が行われないので,補正後の明細書の段落『0055』等に記載のように,利用者の就寝中 に音声がいきなり出力されるような事態を防止でき…」(同頁28~42行目)との効果を主張している。また,上記拒絶理由通知における引用文献1ないし4に関し,「引用文献1~4には,表示報知を自動的に行う一方,音声報知は利用者からの能動的な要求があった場合にのみ行うことで,音声報知のみを実質的に『待機状態』とする点は一切開示されていない。…これに対して,補正後の請求項1に係る発明は,…あえて音声報知のみを待機状態として遅延させることで,課題を解決したものである。」(乙5の24の6頁3~14行目)と主張している。 したがって,原告は,表示灯手段による報知と発音手段又は発声手段による報知の併用を除外することにより特許査定を受けたものであるから,これらを併用する場合であっても構成要件Cを充足すると主張することは,出願経過の参酌(禁反言)により許されない。 b この点に関し,原告は,意見書(乙5の24)の上記記載は,発声手段について述べたものであり,発音手段による報知の併用を排除する趣旨のものではないと主張する。 しかし,原告は,上記意見書において,「電池切れでないケースでも音声や音による警報を発してしまう可能性がある。」(乙5の24の4頁26~27行目)として,音声だけではなく音も,「待機」させるべき対象とする旨を明確にした上で,従来技術では,ブザーにて警報音を出力していたため,利用者に耳障りであり,かつ,電池消耗が促進されるという問題があることを指摘し,本件発明により,これらの問題を回避できる旨記載しているのであるから,出願経過において,発声手段による報知だけではなく,発音手段による報知も排除されていたことが明らかである。 c ることを指摘し,本件発明により,これらの問題を回避できる旨記載しているのであるから,出願経過において,発声手段による報知だけではなく,発音手段による報知も排除されていたことが明らかである。 c したがって,ハ号及びニ号製品は構成要件Cを充足しない。 (2) 構成要件Dの充足性(争点(1)ア(イ))(原告の主張)アイ号製品の点検スイッチ及びロ号ないしニ号製品の点検停止スイッチは「電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かの確認を前記監視領域の利用者から受け付ける」(イ号ないしニ号製品の構成④)ものであるから,「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」に相当し,構成要件Dを充足する。 イ被告の主張に対する反論(ア) 第1次無効審判における原告の主張に関してa 被告の指摘する第1次無効審判時の原告答弁書(乙7)の記載のうち,乙38ないし40に関する点は,これらの文献に電池の電圧低下を検出する構成(構成要件Bに相当する構成)が記載されていないことを指摘したものにすぎず,電池電圧の低下に特化した確認でなければ「確認要求受付手段」(構成要件D)に当たらないなどと主張したものではない。 b 上記答弁書の記載のうち,乙37の9に関する点は,乙37の9の電池切れ確認スイッチ24が,複数の異常検知装置2のいずれかが電池切れを起こしているが,それがどれか分からない状態で,電池切れを起こした異常検知装置2を確認(特定)するための要求を受け付けるものであって,構成要件Dと構成が異なることを指摘したものにすぎない。すなわち,乙37の9は,複数の異常検知装置2が警戒区域に設置され,警戒区域から離れた場所に制御装置1を含む警報装置が設置さ るものであって,構成要件Dと構成が異なることを指摘したものにすぎない。すなわち,乙37の9は,複数の異常検知装置2が警戒区域に設置され,警戒区域から離れた場所に制御装置1を含む警報装置が設置されており,複数の異常検知装置のいずれかが電池切れを検知すると,これを特定するユニットコードを警報装置に送信し,警報装置ではLED16aにて電池切れ異常を表示するとともに,当該ユニッ トコードを記憶し,電池切れ確認スイッチの操作により,上記ユニットコードを報知するものであり,電池切れの報知はLED16aによって完了しているのであって,電池切れスイッチ24は,ユニットコードを知るためのスイッチにすぎず,電池切れ情報を確認する構成を備えていない。 c したがって,上記答弁書の記載から,原告が,確認要求受付手段が電池電圧低下の確認要求以外を受け付けることを排除する主張をした旨限定解釈することは不可能である。 (イ) 第2次無効審判における原告の主張に関してa 乙37の5記載の発明は,ユーザがテスト/サイレンスボタンを押したときにバッテリレベルが低であるか否かを検出するというものであり,本件発明1のように,電池電圧の低下を表示灯手段によってユーザに報知し,その後に,電圧が低下しているか否かの確認のための確認要求を受け付けるものではない。原告は,この点を捉えて,本件発明1における確認要求受付手段と単なるテストボタンとの相違を指摘するため,答弁書(乙25)において被告の指摘する主張をしたものであり,被告の主張するような限定をしたものではない。被告は,乙37の5記載の発明において,ユーザがLOWBATTERYフラッグのセットを知ることを契機としてテスト/サイレンスボタンを押すこともあり得るから,使用手順において本件発明と乙37の5記載の ,乙37の5記載の発明において,ユーザがLOWBATTERYフラッグのセットを知ることを契機としてテスト/サイレンスボタンを押すこともあり得るから,使用手順において本件発明と乙37の5記載の発明が異なる旨の原告の上記主張は誤りである旨も主張するが,乙37の5記載の発明では,低バッテリは低バッテリインジケータ50cの点灯によって報知されるのであるから,ユーザが低バッテリか否かの確認を目的としてテスト/サイレンスボタンを押すことは想定できない。 なお,第2次審決は,乙37の5のテスト/サイレンスボタンと本 件発明における確認要求受付手段が機能として異なるものである旨判断しているのであって,「テストの一環か」どうかという観点で確認要求受付手段に当たるか否かを判断していない。 b 原告の上記答弁書における乙37の2に関する主張は,同文献に複数種類の異常を検出する手段の記載があるものの,電圧監視手段が記載されていないという点を捉えて,本件発明1と相違する旨を主張したものにすぎず,本件発明が電圧低下以外の異常を監視する手段を含んではならない旨を主張したものではない。 c したがって,上記答弁書におけるこれらの記載から,構成要件Dを限定解釈すべきではない。 (被告の主張)ア原告の主張は争う。 イ構成要件Dは,「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」というものであるところ,以下でみるとおり,第1次無効審判及び第2次無効審判における原告の主張に照らし,上記「確認要求受付手段」は,電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かのみを確認するための手段であることを要すると解するべきである(訴訟上の禁反言)。 ウ第1次無効審判にお 主張に照らし,上記「確認要求受付手段」は,電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かのみを確認するための手段であることを要すると解するべきである(訴訟上の禁反言)。 ウ第1次無効審判における原告の主張(ア) 原告は,第1次無効審判時の答弁書(乙7)において,被告が提出した引用文献である乙38ないし40につき,これらの文献には,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を受け付ける構成がない点で構成要件Dと相違する旨主張した。 上記主張は,被告が,乙37の4記載の発明を主引例とする無効主張に関し,相違点に対する周知技術の適用の容易想到性を主張したことに 対する反論としてされたものである。そして,乙37の4記載の発明は,電池電圧の低下を検出する手段と,上記電池電圧の低下を発光により報知する手段を備える点で,本件発明1の構成要件B及びCと一致するものであり,これに,乙38ないし40によって示される,「何らかの機器異常が発生した場合,まず異常を発光手段により報知し,利用者がスイッチ操作をした場合に異常の内容を音声によって報知する」という周知技術を適用することが容易かどうかという点が争われていたにすぎない。 そうすると,原告の上記主張は,電圧低下が発生した場合に,その確認要求を受け付けるという構成と,乙38ないし40の構成(何らかの機器異常が発生した場合に,その確認要求を受け付けるという構成)とは異なる技術分野に属する異質な技術であると主張する趣旨としか解されず,確認要求の対象が電池電圧の低下に特化していなければならないとの主張に他ならない。 (イ) また,原告は,上記答弁書(乙7)で,乙37の9に記載された警報器における「電池切れ確認スイッチ24」は,電池切れ信号を送出した の低下に特化していなければならないとの主張に他ならない。 (イ) また,原告は,上記答弁書(乙7)で,乙37の9に記載された警報器における「電池切れ確認スイッチ24」は,電池切れ信号を送出した異常検知装置のユニットコードを報知させるための要求を受け付ける構成を備えているものの,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求」を受け付ける構成を備えていない点で構成要件Dと相違する旨主張した。 乙37の9における「電池切れスイッチ24」は,その操作によって,電池切れを起こしたユニットコードを確認するものであって,「電池切れ」の情報と,どの「ユニットコード」であるかの情報を確認するための情報を受け付けるものである。なお,原告は,電池切れスイッチ24の操作によって電池切れ情報(電圧低下の情報)は確認されないと主張するが,情報処理の技術的理解及びユーザーの理解に反するものであり, 採用できない。 そうすると,乙37の9における「電池切れスイッチ24」の確認対象が構成要件Dと異なる旨の原告の主張は,電池切れ情報の確認に追加して,ユニットコードの確認を行うものは本件発明1の「確認要求」に当たらないとの主張であり,電池電圧の低下のみの確認を行う要求でなければ構成要件Dに相当しないとの主張に他ならない。 エ第2次無効審判における原告の主張(ア) 原告は,第2次無効審判の原告答弁書(乙25)において,乙37の5に記載された警報器における「テスト/サイレンスボタン」につき,「テスト(試験)の一環として電池電圧が低下しているか否かをチェック…するように構成されているだけである。」(乙25の33頁10~14行目),「テスト/サイレンスボタンは本特許件発明1における確認要求受付手段とは無関係のテストモード が低下しているか否かをチェック…するように構成されているだけである。」(乙25の33頁10~14行目),「テスト/サイレンスボタンは本特許件発明1における確認要求受付手段とは無関係のテストモード時の動作を説明したものに過ぎない」(乙25の33頁26~28行目),「テスト/サイレンスボタンは,本件特許における『試験要求受付手段』(本件発明2の構成要件F,H)に相当するものと思料する」(乙25の21頁25~26行目)として,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための」要求であっても,「テストの一環」としてこれを検出させる動作は,「確認要求受付手段」(構成要件D)に相当しない旨の主張をした。 (イ) また,原告は,上記答弁書(乙25)において,乙37の1と本件発明との相違点の認定に関し,「本件特許発明1の表示灯手段は,電池の電圧低下を示すだけでなく,確認要求受付手段の操作要求を示す意味も含んでいる。」(乙25の17頁20~21行目)と主張した上で,乙37の2記載の「確認スイッチ」の乙37の1発明への適用の可否に関し,「…燃焼の燃焼制御回路からの複数種類の異常を検出する異常 検出手段を備えているのに対して,本件特許発明1は電池電圧の低下を検出する電圧監視手段のみが構成要件となっているだけである。」(乙25の21頁2~5行目)と主張し,さらに,乙37の5の「テスト/サイレンスボタン」につき,電池の電圧が所定の電圧以下に低下したことのみを確認すべき表示灯手段からの報知を受けて操作されるものではないとの主張をした。 (ウ) なお,原告は,表示灯手段からの電圧低下の報知を受けて,利用者が電池の電圧が所定の電圧以下に低下したことを確認するためにスイッチを押すとの使用手順を踏まなければ「確認要求受付手段」(構成要 (ウ) なお,原告は,表示灯手段からの電圧低下の報知を受けて,利用者が電池の電圧が所定の電圧以下に低下したことを確認するためにスイッチを押すとの使用手順を踏まなければ「確認要求受付手段」(構成要件D)には当たらないところ,上記主張は,このような意味で乙37の5の「テスト/サイレンスボタン」が本件発明1の「確認要求受付手段」に当たらないと主張したものにすぎないと反論する。しかし,第2次無効審決が指摘するとおり,乙37の5記載の発明は,ビルトインテストにおいて,バッテリが十分な容量を有していない場合にはLOWBATTERYフラッグをセットし,この状態をユーザに示す構成を有しているのであり,これを契機としてユーザがテスト/サイレンスボタンを押すことも考えられるものであるから,乙37の5記載の発明は,使用手順において本件発明1と差異がなく,原告の上記主張は技術的意味がない。 オ以上によれば,原告は,構成要件Dの「確認要求受付手段」は,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求」のみを受け付ける手段であると一貫して主張してきたものと解すべきであり,原告が,一つの点検要求によって複数の機器異常を確認するイ号ないしニ号製品の構成④につき,「確認要求受付手段」(構成要件D)を充足すると主張することは,信義則又は訴訟上の禁反言により許されない。 (3) 構成要件Eの充足性(争点(1)ア(ウ)) (原告の主張)アイ号ないしニ号製品の機器異常警告出力手段は,「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回(連続して5時間)検出した前記の場合,…かつ,前記点検スイッチ(又は点検停止スイッチ)によって前記点検要求(又は点検停止要求)を受け付けたときに」 が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回(連続して5時間)検出した前記の場合,…かつ,前記点検スイッチ(又は点検停止スイッチ)によって前記点検要求(又は点検停止要求)を受け付けたときに」(構成⑤),人声メッセージを出力するものである(構成⑥)ところ,「電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。」とのメッセージ(イ号製品の構成⑥)及び「電池切れです。販売店に連絡してください。」とのメッセージ(ロ号ないしニ号製品の構成⑥)は,いずれも電池交換を促す内容のものである。 したがって,イ号ないしニ号製品は,「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段と,を備えたことを特徴とする電池式警報器」(構成要件E)を充足する。 イ被告の主張に対する反論被告は,イ号ないしニ号製品における人声メッセージが「電池交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」(構成要件E)に当たることを争うが,上記メッセージの文言に,販売店に連絡すべき理由として「電池切れ」という情報が入っている以上,上記メッセージが電池交換を促すものと利用者に理解されることは明白である。電池切れという情報が出力されれば,利用者は電池の交換が必要であることを知ることになるため,電池切れという情報の出力は電池交換を促すメッセージを出力することにほかならない。上記報知後に,電池交換をユーザ自身が行うか,ユーザからの依頼を受けた販売店が行うかは問題ではない。なお,電池電圧低下の報知を受け た後の対応として,電池交換を行うのではなく製品自体を交換する場合も,電池を交 換をユーザ自身が行うか,ユーザからの依頼を受けた販売店が行うかは問題ではない。なお,電池電圧低下の報知を受け た後の対応として,電池交換を行うのではなく製品自体を交換する場合も,電池を交換することと変わりない。 (被告の主張)ア原告の主張は争う。 イイ号製品について(ア) 構成要件Eは,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合における場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに」「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を出力するものであり,「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」とは,電池交換が可能であることを前提として,利用者の手による電池交換を促進するためのメッセージを意味するものと解される(【0007】,【0008】,【0011】,【0040】)。 (イ) イ号製品の点検スイッチは,電池電圧の低下,検出部位の異常検出及び有効期間に達したか否かの点検要求を受け付けるものであり(イ号製品の構成④),電池電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回検出した場合,検出部位試験手段が検出部位の異常を検出した場合及び有効期間に達したと照合した場合のいずれについても,同様に「電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。」との人声メッセージを出力するものであるから(イ号製品の構成⑤,⑥),利用者は,上記人声メッセージを聞いても,電池の電圧が低下しているのか否かを判断できない。 また,イ号製品が,電池交換を予定しない製品であることは,争点(1)ア(ア)に関する被告の主張のとおりである。加えて,イ号製品のカタログ(甲3の2)には,「症状:点検をした時に『電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。』と鳴る。」,「原因:警報器の故障または する被告の主張のとおりである。加えて,イ号製品のカタログ(甲3の2)には,「症状:点検をした時に『電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。』と鳴る。」,「原因:警報器の故障または有効期限切れです。」,「対処:新しい警報器と交換し てください。」と記載されているのであって,利用者は,上記人声メッセージが出力されても,販売店への連絡を検討するのみであり,電池交換を促されない。原告は,販売店を通じて電池交換がされてもよいと主張するが,電池の保証期間内の電圧低下は回路異常等の故障であることが多く,電池交換によって解消されないことも多いのであるから,上記人声メッセージは,販売店にとっても電池交換を促される音声メッセージには当たらない。 (ウ) よって,イ号製品は,「…電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに」「音声メッセージを出力」するものではなく,かつ,出力される人声メッセージは「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」ではないから,構成要件Eを充足しない。 ウロ号ないしニ号製品について(ア) ロ号ないしニ号製品は,イ号製品と異なり,電池電圧の低下,検出部位の異常及び有効期間切れのいずれを検出するかによって異なる音声メッセージを出力するものであるから(ロ号ないしニ号製品の構成⑤),「…電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに」「音声メッセージを出力」するものであるという点では構成要件Eを充足する(この点については当事者間に争いがない)。 (イ) しかし,構成要件Eにおける「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」とは,電池交換が可能であることを であるという点では構成要件Eを充足する(この点については当事者間に争いがない)。 (イ) しかし,構成要件Eにおける「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」とは,電池交換が可能であることを前提として,利用者の手による電池交換を促進するためのメッセージを意味するものと解されることは前記のとおりであるところ,ロ号ないしニ号製品において出力される「電池切れです。販売店に連絡してください。」との人声メッセージは,警報器に故障が発生したことを明らかにして販売店での対応を 指示するメッセージであり,利用者による電池の交換を促す内容のものではない。ロ号製品の取扱説明書(甲5)等に,「お客様ご自身で電池交換をすることはできません。」と記載されていることからも,利用者が上記人声メッセージにより電池交換を促されないことは明らかである。 (ウ) したがって,ロ号ないしニ号製品において出力される人声メッセージは,「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」(構成要件E)に当たらないから,構成要件Eを充足しない。 2 争点(1)イ(イ号ないしニ号製品が本件発明2の技術的範囲に属するか。)(原告の主張)(1) 構成要件D,C,Eの充足性について主張したところによれば,イ号ないしニ号製品が構成要件H,I,Jを充足することは明らかである。 (2) 構成要件Kの充足性イ号ないしニ号製品における点検スイッチ又は点検停止スイッチは,警報器が正常に作動するか否かを点検するためのスイッチであり,異常の検出を試験するための試験要求を受け付ける。また,電池の電圧が所定の電圧以下に低下したランプが点滅している状態でスイッチを操作すると,電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージが出力されて,電池の電圧が低下しているかどうかを確認できる。このよ ,電池の電圧が所定の電圧以下に低下したランプが点滅している状態でスイッチを操作すると,電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージが出力されて,電池の電圧が低下しているかどうかを確認できる。このように点検スイッチ等は,動作試験と電池の電圧低下の確認の各要求を受け付けることから,試験信号及び確認要求受付信号を出力している。したがって,イ号ないしニ号製品は,構成要件Kを充足する。 (3) したがって,イ号ないしニ号製品は,本件発明2の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 構成要件HないしJの充足性に関する原告の主張(ただし,ロ号製品の構成要件H充足性に関する点を除く。)はいずれも争う。 (2) イ号,ハ号及びニ号製品は,本件発明1におけるこれらの製品について の構成要件D,C,Eに関する主張と同じ理由により,構成要件H,I,Jを充足しない。 (3) ロ号製品は,本件発明1における同製品についての構成要件D,Eに関する主張と同じ理由により,構成要件H,Jを充足しない。 (4) イ号ないしニ号製品が,構成⑦において,点検スイッチ等を長時間操作された場合に鳴動信号(試験要求信号)を出力するものであることを認めるが,イ号ないしニ号製品の構成④は確認要求を受け付けるものではないから,構成要件Kを充足しない。 (5) したがって,イ号ないしハ号製品は,本件発明2の技術的範囲に属しない。 3 争点(1)ウ(イ号ないしニ号製品が本件発明3の技術的範囲に属するか。)(原告の主張)(1) イ号ないしニ号製品が構成要件H~Kを充足することは,争点(1)イに関する原告の主張のとおりである。 (2) 構成要件L,Mの充足性イ号ないしニ号製品は,電池の電圧が所定の電圧に低下していることを連続して所定回数検出した場合に表示灯を緑点滅 は,争点(1)イに関する原告の主張のとおりである。 (2) 構成要件L,Mの充足性イ号ないしニ号製品は,電池の電圧が所定の電圧に低下していることを連続して所定回数検出した場合に表示灯を緑点滅するなどする(構成③)ものであり,上記点滅状態で点検スイッチ又は点検停止スイッチを操作すると,人声メッセージを出力するものである(構成⑥)。したがって,イ号ないしニ号製品は,電池の電圧が低下している場合に,電圧低下信号を継続的に出力するものであり,かつ,上記電圧低下信号入力時に,点検スイッチ又は点検停止スイッチからの点検要求又は点検停止要求が入力されている場合には上記人声メッセージを出力するものであるから,構成要件L及びMを充足する。被告は,異常フラグの解消の有無等を挙げてイ号製品について構成要件Lの充足性,ロ号製品について構成要件Mの充足性を争うが,上記事項は構成要件L,Mの充足性とは関係のない単なる付加にすぎない。 (3) したがって,イ号ないしニ号製品は本件発明3の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) イ号製品の構成要件H~K,L,Mの充足性及びロないしニ号製品の構成要件H~K,Mの充足性に関する原告の主張はいずれも争う。 イ号ないしニ号製品が構成要件H~Kを充足しないことは争点(1)イに関する被告の主張のとおりである。 (2) イ号製品の構成要件Lの充足性イ号製品は,警報器の異常が確定すると異常フラグを立たせ,その後正常値検出があっても異常フラグを解消しないものであって(イ号製品の構成⑧),一度,電圧低下状態であると判断されると,その後,電圧が所定値以上に回復したとしても,そのまま電圧低下信号が残存し続ける構成となっている。このように,受け手側で情報の更新がない以上,電圧低下信号が出力されたとしても, あると判断されると,その後,電圧が所定値以上に回復したとしても,そのまま電圧低下信号が残存し続ける構成となっている。このように,受け手側で情報の更新がない以上,電圧低下信号が出力されたとしても,「継続的な出力」の技術的意義を奏し得ないから,イ号製品の「電圧監視手段」は,「電圧低下信号を継続的に出力」(構成要件L)するものに当たらない。 (3) イ号ないしニ号製品の構成要件Mの充足性アイ号製品は,一旦,警報器の異常が確定すると,電池の電圧が所定の電圧を下回るか否かにかかわらず,構成④ないし⑥の動作を行うものであるところ(イ号製品の構成⑨),上記「異常」には,電池電圧が所定値以下であることを所定回数検出した場合のほか,検出部位の異常が検出された場合や,有効期間に達したと照合された場合を含むものである(イ号製品の構成③)。そうすると,イ号製品において,点検スイッチが押下された時点で電池電圧の低下信号が入力されているか否かは,人声メッセージの出力と全く関係がないというべきであるから,イ号製品は「前記確認信号が入力された時点で,前記電圧低下信号が入力されている場合に,音声メッセージを出力することを特徴とする」ものではなく,構成要件Mを充足 しない。 イロ号ないしニ号製品は,異常フラグが立っている場合は,電池の電圧が所定の電圧を下回るか否かにかかわらず,構成④ないし⑥の動作を行うものであるから(ロ号ないしニ号製品の構成⑨),構成要件Mを充足しない。 (4) 本件発明の詳細な説明において,本件発明3と4は択一的関係に立つことが明らかにされているのであるから(【0039】),同一の製品について本件発明3及び4の充足を主張する原告の主張は失当である。 4 争点(1)エ(イ号ないしニ号製品が本件発明4の技術的範囲に属するか。) かにされているのであるから(【0039】),同一の製品について本件発明3及び4の充足を主張する原告の主張は失当である。 4 争点(1)エ(イ号ないしニ号製品が本件発明4の技術的範囲に属するか。)(原告の主張)(1) イ号ないしニ号製品が構成要件IないしKを充足することは,争点(1)イに関する原告の主張のとおりである。 (2) イ号ないしニ号製品は,いずれも,電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,電圧低下信号を出力することによって異常フラグを立たせるものであるから(イ号ないしニ号製品の構成⑧),構成要件Nを充足する。 また,イ号ないしニ号製品は,いずれも,点検スイッチ又は点検停止スイッチが操作された時点で上記異常フラグが立っている場合には,人声メッセージを出力するものであるから(構成⑨),構成要件Oを充足する。 (3) したがって,イ号ないしニ号製品は本件発明4の技術的範囲に属する。 (被告の主張)原告の主張は争う。 イ号,ハ号及びニ号製品は構成要件I,H,J,Kを,ロ号製品は構成要件H,J,Kを充足しないから,イ号ないしニ号製品は本件発明4の技術的範囲に属しない。 5 争点(2)ア(乙48号証に基づく進歩性欠如の成否)(被告の主張)(1) 乙48発明の内容 ア本件特許出願前の公知文献である国際公開第90/01759号(以下「乙48文献」といい,乙48文献記載の発明を「乙48発明」という。)には,次の構成を有する煙検知器が記載されている(以下,次の構成をそれぞれ「乙48発明a1」などという。)。 a1 バッテリー12が,センサ10とアラーム発信器14に電力を供給することによって稼働し,a2 モーテルの部屋等の囲まれた場所の煙や燃焼物の検出を行う前記センサ10において煙を検出して,前記ア a1 バッテリー12が,センサ10とアラーム発信器14に電力を供給することによって稼働し,a2 モーテルの部屋等の囲まれた場所の煙や燃焼物の検出を行う前記センサ10において煙を検出して,前記アラーム発信器14がホーン18より5秒間隔で一定時間の発音式アラームを鳴らす,a3 煙検知器20とこれに機械的及び電気的に接続されるハウジング130内の人声及び論理部とを一つの射出成形樹脂製ハウジングでまとめたa4 バッテリー作動式ユニットの人声警報器付煙検知器であって,b 前記バッテリー12の電圧が低電圧の場合に低電圧信号をアラーム発信器14に送り出すよう構成されており,c1 前記バッテリー12の電圧が低電圧であることを知らせるために,c2 前記アラーム発信器14が前記ホーン18より45秒間隔で短い警告音を発する発音手段と,d1 前記バッテリー12の電圧が低電圧であるか否かをテストするための要求を,前記ハウジング130の変形可能な切り欠き部として形成され,前記囲まれた場所にいる居住者からハウジング内に圧入され受け付け,d2 データバス90を介してマイクロプロセッサ28に出力信号を送り出すラッチ50の入力に前記要求を受け付けたことに対応する情報である正電圧を付与するテストスイッチ52と,e1 前記バッテリー12の電圧が低電圧であることを前記アラーム発信 器14,ライン26,前記ラッチ50,及び前記データバス90を介して前記マイクロプロセッサ28が受け付けた場合であって,e2 かつ,前記テストスイッチ52が前記バッテリー12の電圧が低電圧であるか否かをテストするための要求を受け付けたとき,e3 取り外し可能なバッテリーケース128内で,バッテリーの交換を行うことができる前記バッテリー12に関して「煙検知機の ー12の電圧が低電圧であるか否かをテストするための要求を受け付けたとき,e3 取り外し可能なバッテリーケース128内で,バッテリーの交換を行うことができる前記バッテリー12に関して「煙検知機のバッテリーを交換してください」との人声メッセージを前記囲まれた場所に出力する前記人声及び論理部と,e4 を備えたことを特徴とするバッテリー作動式ユニットである人声警報付煙検知器。 イ乙48発明の目的について(ア) 乙48発明は,緊急性のある煙や燃焼物を検知したときに受ける変化のない警報,又はバッテリー低下時の定期的な短い発音式の警報に追加して,その対応を指示する人声メッセージを送り出すことをその特徴とするものである。これは,米国特許第5969600号公報(乙49号証)において,バッテリ電圧低下時に警報信号を供給する構成が開示されているところ,乙48発明が,上記乙49号証を参照例として援用するものであり,同号証記載の構成を取り込みつつ,その有していた課題を解決しようとするものであることからも明らかである。 乙48発明が,上記のとおり,一定の変化のない報知手段が先にあることを前提として,これに追加して人声メッセージを送り出す二段階の報知を採用している点を課題解決手段(目的)とするものであることは,乙48文献に,「煙検知器20は,発音式のアラームを出す際には,通常の煙検知器のように機能する。スピーカ44は,警報状況に応じて,取るべき行動を指示することによって,その発音式のアラームに価値ある補足を加えるのである。」(乙48訳文5頁1~4行),「建物や住 宅の居住者に聞こえる合成人声メッセージを生成する。これは,検知器がバッテリーで作動する場合は煙の状態あるいは低バッテリー電圧を知らせるホーン・アラームまたはこれに類するもの ,「建物や住 宅の居住者に聞こえる合成人声メッセージを生成する。これは,検知器がバッテリーで作動する場合は煙の状態あるいは低バッテリー電圧を知らせるホーン・アラームまたはこれに類するものに追加的になされる。」(乙48訳文1頁13~16行)と記載されており,「煙検知器20」において,通常の警報があることを前提にして,「人声及び論理部」が作動する構成とされていることからもうかがわれる。 (イ) したがって,乙48発明の目的は上記のとおりであり,本件発明と,課題解決の特徴を共通にし,本件発明1の進歩性を検討する上での適格性を有するものである。 ウ乙48文献に乙48発明dないしeの構成が記載されていること(ア) 上記イでみたとおり,乙48発明の目的が,バッテリーが低電圧の場合に,ホーン等の変化のない報知に追加して人声メッセージを出力する点にあることに加え,乙48発明の実施例の説明中に,「ライン26はまた,バッテリー12の電圧が低いことを知らせる信号を送ることもできる。」(乙48訳文4頁22~23行目)と記載されていること,これに対応する出力メッセージ例が「23.煙検知のバッテリーを交換してください。」(乙48訳文6頁32行目)というものであること,及び上記出力条件がテストスイッチ52を押すことのみであることに照らせば,乙48文献に構成dないしeが記載されていることは明らかである。 (イ) この点について更に詳述すると,次のとおりである。 a 乙48発明に係る煙検知器には,バッテリー12とバッテリー34が設けられており,それぞれのバッテリーの低電圧状態を検知すべき手段が記載されている。そして,乙48文献に,「煙検知機20は,ライン32上の残りの回路に電力を供給してもよいし,当該回路が,それ自体のバッテリーで電力供給され のバッテリーの低電圧状態を検知すべき手段が記載されている。そして,乙48文献に,「煙検知機20は,ライン32上の残りの回路に電力を供給してもよいし,当該回路が,それ自体のバッテリーで電力供給されてもよい」(乙48訳文4頁1 8~20行)との記載があることや,乙48文献の図1(「本発明を実施するための装置の機能ブロック図」)において,煙検知器20からマイクロプロセッサ28への「POWER」と記載されたライン32が図示されており,煙検知器20のバッテリー12から電力供給を行う場合,少なくともマイクロプロセッサ28に電力が供給されることが読み取れること,図2(「検知された警報状況に応答して人声警告を与えるべく構築された詳細な回路ブロック図」)において,マイクロプロセッサ28を含めた各パーツ上部に,電力供給を受けていることを示す「┯」の回路記号が付されており,複数の電力供給の選択肢に対応できる形で上記回路図が記載されていることからは,乙48発明に係る煙検知器において主とされるべき電力供給源はバッテリー12であり,バッテリー34は予備的電力供給源であることが明らかである。 b そこで,主たる電力供給源であるバッテリー12の低電圧検知についてみると,乙48文献において,「状況7は,バッテリーの電圧が限度値内のとき,スイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態であり」(乙48訳文9頁5~6行)と記載されているとおり,乙48文献記載の煙検知器は,メッセージ選択40の3つのスイッチが「000」,「001」,「010」,「011」又は「100」に設定されている場合であって,バッテリー12が低電圧になっていることを検知している時点でテストスイッチ52が閉じられた場合(「状況7」)には,「23.煙検知のバッテリーを交換してください 0」に設定されている場合であって,バッテリー12が低電圧になっていることを検知している時点でテストスイッチ52が閉じられた場合(「状況7」)には,「23.煙検知のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージを出力し(乙48訳文6頁末行),「発音式のアラームに価値ある補足を加える」(乙48訳文5頁3~4行)ものである。 なお,乙48文献には,メッセージ選択40の上記スイッチが 「101」又は「110」に設定されている場合には,検知した警報状況に応じて,これにふさわしい人声メッセージ例を出力したり(「WORDS」。表1のメッセージテキスト1~21を指す),その組み合わせによる一連の人声メッセージを出力したり(「PHRASES」)し,さらに,メッセージ選択の上記スイッチが「111」に設定されている場合には,煙検知器に異常が生じていなければ,「INTRO」として,「テストスイッチ122」を押してシミュレーションを行うことを促すメッセージが出力されることが記載されている。しかし,引用文献から同文献記載の発明を認定するに当たり,その実施例において,全ての設定条件でバッテリー電圧を報知する人声メッセージを発する装置でなくとも,そのような装置に係る発明が記載されていると認定することは可能なのであって,これらの記載を理由として,テストスイッチ52がバッテリー12の低電圧を確認するものであることを否定することはできない。 そして,乙48文献には,「23.煙検知器のバッテリーを交換してください。」とのメッセージの出力については,煙検知器20のホーン18からの発音式アラームによる報知から自動的に切り替わるとは記載されておらず,テストスイッチ52を閉じた場合の状況7として出力される旨が記載されているにとどまるのであるから,乙48 器20のホーン18からの発音式アラームによる報知から自動的に切り替わるとは記載されておらず,テストスイッチ52を閉じた場合の状況7として出力される旨が記載されているにとどまるのであるから,乙48文献記載の煙検知器が,バッテリー12の低電圧信号が送り出されていることを前提として,テストスイッチ52を閉じることによって,上記メッセージが出力される(二段階の報知を行う)ものであることが明らかである。加えて,乙48文献には,上記メッセージが出力された場合には,アラーム発信器14のホーン18からの音が中断されることが記載されているのであるから(乙48訳文4頁17~18行,図1,5頁26~30行,図2),「テストスイッチ52」が,ホー ン18からの報知があることを前提に,その内容を利用者が確認するために使用される構成であることも明らかである。 c これは,乙48文献の表2で示された「28 マイクロプロセッサ1802」,「36 PROM 27C64」及び「50/96 ラッチHC373」に係る電子部品のデータシート(乙57~59)の内容を前提とする,乙48文献の図2における回路作動状況からも当然に理解することのできるものである。 d 以上によれば,乙48文献には,バッテリー12の低電圧を知らせるためにホーン18から警告音が発せられている状態で,利用者がテストスイッチ52を閉じることにより,「煙検知器のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージが出力されることが記載されており,乙48発明構成dないしeに係る構成が記載されている。 エ原告の主張に対する反論(ア) 原告は,テストスイッチ52はバッテリー12の低電圧を確認するスイッチではなく,バッテリーが正常値のときに,人声部が正しく作動するか否か,すなわち人声メッセー エ原告の主張に対する反論(ア) 原告は,テストスイッチ52はバッテリー12の低電圧を確認するスイッチではなく,バッテリーが正常値のときに,人声部が正しく作動するか否か,すなわち人声メッセージが出力されるかどうかの確認を行うものにすぎないのであって,発せられるメッセージは何でもよいと主張する。 (イ) しかし,上記主張のうち,発せられるメッセージが何でもよいとする点は,実際に「状況7」において発せられるメッセージが「23.煙検知器のバッテリーを交換してください。」である旨明記されていることを無視するものである。乙48文献では,出力されるメッセージが不特定である場合には,出力するメッセージを「WORDS」,「PHRASES」等と記載することにより,上記メッセージが不特定のものであることを明示しているのであるから,出力メッセージが「23.煙検知器のバッテリーを交換してください。」と特定されている以上,出力 されるメッセージが何でもよいと理解する余地はない。なお,被告は,メッセージ選択のスイッチが「000」から「100」までに設定されている場合を「乙48発明」として特定しているのであるから,上記以外の場合(上記スイッチを「101」等に設定している場合)の出力例が「WORDS」等であることを理由として,「状況7」において出力されるメッセージが何でもよいと理解することはできない。 (ウ) 原告の上記主張のうち,テストスイッチ52が,人声部が正しく作動するか否かをテストするためのスイッチであるとする点は,乙48文献に,「人声部の作動をテストする」(乙48訳文8頁13~14行)との記載があることをその根拠とするものであるが,この点も次のとおり失当である。 すなわち,乙48文献の「記載されるこれらの出力及びその他は,ダイ をテストする」(乙48訳文8頁13~14行)との記載があることをその根拠とするものであるが,この点も次のとおり失当である。 すなわち,乙48文献の「記載されるこれらの出力及びその他は,ダイオードORゲート54に取り込まれ,その出力は,トランジスタ56を介してタイマー58に与えられる。…ライン62の電圧は,…基準電圧を供給する。基準電圧は,比較68においてライン62の分圧量と比較される。これにより,ライン70に取り込まれた低電圧を通知する信号をラッチ50に送る。」(乙48訳文5頁12~19行)との記載からは,テストスイッチ52を閉じた場合には,必ず,バッテリー34が低電圧であるか否かを確認すべき構成となっており,低電圧が検出された場合には,「22.火災部署(消防署)に連絡してください。」との人声メッセージが出力される構成であることを読み取ることができる。 これは,乙48文献の図2の回路図から,比較68(バッテリー34の電圧確認を行うもの)に電力が供給されるのは,テストスイッチ52が押されたときのみ(テストスイッチ52を押すことにより,パストランジスタ60を介した電力供給がライン62から行われるのみ)であり,テストスイッチ52を押した場合に,バッテリー34の電圧チェックが 行われてライン70に信号が供給されるという構成が読み取れることからも明らかである。なお,米国における商慣習に照らせば,バッテリーが低電圧である場合に消防署への連絡を促す人声メッセージを出力することは何ら不自然なものではない。 バッテリー34が予備的な電力供給源であることは前述のとおりであるところ,このようなバッテリー34の電圧が低下している場合には,人声部の作動に危険があることが明らかであり,テストスイッチ52は,このような意味で,テストスイッチ 給源であることは前述のとおりであるところ,このようなバッテリー34の電圧が低下している場合には,人声部の作動に危険があることが明らかであり,テストスイッチ52は,このような意味で,テストスイッチ52を閉じることにより,「人声部の作動をテスト」(乙48訳文8頁13~14行)すると表現しているのである。 したがって,「人声部の作動をテスト」との文言から,テストスイッチ52の操作が人声部の作動テスト(人声メッセージの出力テスト)を行うためのものであると理解するのは失当である。 (エ) さらに,原告の上記主張のうち,テストスイッチ52はバッテリー電圧が正常値のときのテストを行うものにすぎないとする点は,「限度値内のとき(withinlimits)」(乙48訳文9頁5~6行,原文13頁2行目)との記載が「正常範囲において」等を意味することを根拠とするものであるが,その理解を誤っており,失当である。 前述のとおり,乙48文献においては,バッテリー12が主たる電力供給源であり,バッテリー34が予備的電力供給源であると位置づけられ,予備的電力供給源であるバッテリー34が低電圧である場合には,利用者による確認を待たずに「22.火災部署(消防署)に連絡してください。」との指示がされるものである。そうすると,乙48発明は,通常であれば見逃し得る低バッテリー状態と,緊急の対応が必要な低バッテリー状態という,利用者の対応を異にすべき2つの限度値を前提にしていることが明らかである。 上記理解を前提にすれば,「状況7は,バッテリーの電圧が限度値内(withinlimits)のとき…」とは,緊急の対応が必要な低バッテリー状態(バッテリー34が低電圧である場合)ではないが,低バッテリー状態である(バッテリー12が低電圧である)場合を意味 内(withinlimits)のとき…」とは,緊急の対応が必要な低バッテリー状態(バッテリー34が低電圧である場合)ではないが,低バッテリー状態である(バッテリー12が低電圧である)場合を意味するものと理解するのが自明であり,これは,すなわち,バッテリーの状態が「ほどほど」である状態を意味するものであって,「限度値内(withinlimits)」の意味にも沿うものである。 (オ) 加えて,原告は,乙48発明が二段階の報知を行うものであることについても争うが,乙48文献に,「好適な実施例では,…ライン26はまた,バッテリー12の電圧が低いことを知らせる信号を送ることもできる。」(乙48訳文4頁21~23行)として,ライン26からマイクロプロセッサ28に対し低電圧信号を送り出すことが明記されていることや,「本発明は…入力に対して最も適切な行動と対応を選択するとともに,建物や住宅の居住者に聞こえる合成人声メッセージを生成する。これは,検知器がバッテリーで作動する場合は煙の状態あるいは低バッテリー電圧を知らせるホーン・アラームまたはこれに類するものに追加的になされる。」(乙48訳文1頁10~16行)として,バッテリー12が低電圧の場合に,ホーン等による警告に追加して人声メッセージが出力されるものであることが明記されていることに反するものである。 (カ) 以上の被告の指摘は,次のとおり,乙48文献の図2(回路図)の理解にも沿うものであり,原告の主張する同図の理解は誤ったものである。 a 原告は,ラッチ50への信号の入力により,パストランジスタ60が作動し,バッテリー34から回路上部への電力供給が開始されると主張する。しかし,回路図を作成するに当たって,異なる記号を用い て接続を示すことはあり得ないから,バッテリー34から スタ60が作動し,バッテリー34から回路上部への電力供給が開始されると主張する。しかし,回路図を作成するに当たって,異なる記号を用い て接続を示すことはあり得ないから,バッテリー34から伸びる「↑」と回路上部の「┯」とが接続すると理解することはできない。 「┯」は,何らかの電源に接続されていることを示す記号であり,乙48文献の「煙検知器20は,ライン32上の残りの回路に電力を供給してもよいし,当該回路が,それ自体のバッテリーで電力供給されてもよい。いずれか,あるいは両方とも,交流式電源ラインから電力供給されることができる。」(乙48訳文4頁18~21行)に対応するものにすぎない。原告の主張するように回路図を理解した場合,マイクロプロセッサ28にはパストランジスタ60を介して断続的に電源投入がされることになり,起動に要する時間からして実用性を有しない。また,回路図右下部分の「比較76」,「光抵抗器74」及び「ライン78」へは,パストランジスタ60を介したライン62からしか電力供給がされないところ,これらから出力される明るさ信号等は,マイクロプロセッサ28に直接入力される情報となるが,上記明るさ信号等が出力された時点ではマイクロプロセッサ28はまだ起動中であり,情報の受付けが行われないという極めて不自然な帰結となる。さらに,原告の主張によれば,ラッチ50も「┯」によって電力供給を受けるものとなる以上,パストランジスタ60からの起動があるまでは電源供給がなく,作動しないことになってしまう。 b また,原告は,ラッチ50の出力がマイクロプロセッサ28,PROM36及び人声プロセッサ92に適宜入力されると主張するが,これも誤りである。ラッチ50の出力は,データバス90を介してマイクロプロセッサ28にのみ送り出され,データバスの ロプロセッサ28,PROM36及び人声プロセッサ92に適宜入力されると主張するが,これも誤りである。ラッチ50の出力は,データバス90を介してマイクロプロセッサ28にのみ送り出され,データバスの切り替えにより人声プロセッサ92とPROM36との間でのデータのやり取りに使用されるのみである。 c 比較68への電力供給ラインはライン62しか存在しないから, 比較68に電力が供給されるのは,パストランジスタ60を介した電力供給がライン62から行われるときだけである。したがって,テストスイッチ52を押した場合に,初めてパストランジスタ60からバッテリー34の電圧がライン62に供給されるものである以上,比較68は,テストスイッチ52を押した場合にしか作動せず,このときに初めてバッテリー34の電圧チェックが行われるのである。 (2) 本件発明1の進歩性欠如ア本件発明1と乙48発明との対比(ア) 構成要件Aについてa 構成要件乙48発明a1は,構成要件Aの「電池によって稼働し」に相当する。 b 乙48発明a2の「モーテルの部屋等の囲まれた場所」は構成要件Aの「監視領域」に相当し,乙48発明a2の「煙や燃焼物の検出を行う前記センサー10において…発音式アラームを鳴らす」は,構成要件Aの「異常を検出して警報を発する」に相当する。 c 乙48発明a3及びa4の「人声警報器付煙検知器」は,構成要件Aの「電池式警報器」に相当する。 (イ) 乙48発明bは,本件発明の構成要件Bと一致する。 (ウ) 乙48発明c1・2のアラーム発信器14は,バッテリー12の電圧が基準となる電圧より低電圧であることを報知するものであるから,構成要件Cの「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場 ーム発信器14は,バッテリー12の電圧が基準となる電圧より低電圧であることを報知するものであるから,構成要件Cの「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するため」の手段である点で構成要件Cと一致するが,「点灯または点滅する表示灯手段」ではない点で構成要件Cと相違する。 (エ) 乙48発明d1・2のテストスイッチ52は,「前記囲まれた場所にいる居住者からハウジング内に圧入される」ことにより,バッテリー 12の電圧が低電圧であるか否かをテストするための要求を受け付け,上記要求を受け付けたことに対応する情報(正電圧)をラッチ50の入力に付与するものであるから,構成要件Dの「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」に相当する。 (オ) 乙48発明e1は,構成要件Eの「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合」に相当し,乙48発明e2は,構成要件Eの「前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたとき」に相当する。 乙48発明e3の「煙検知器のバッテリーを交換してください」との人声メッセージは,構成要件Eの「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」に相当するから,乙48発明e3の「人声及び論理部」は構成要件Eの「前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段」に相当する。 (カ) 以上によれば,本件発明1と乙48発明は,「電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器であって,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視する電圧監視手段と,前記電圧監 ,本件発明1と乙48発明は,「電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器であって,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視する電圧監視手段と,前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知する手段と,前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段と,前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段と,を備えたことを特徴とする電池式警報器。」である点で一致し,本件発明1が,電圧低 下を報知する手段として「点灯又は点滅する表示灯手段」を採用しているのに対し,乙48発明が「前記アラーム発信器14が前記ホーン18より45秒間隔で短い警告音を発する発音手段」を採用している点(乙48発明c2)において相違する。 イ相違点の検討(ア) 電圧監視手段によって監視された電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知する構成を採用した場合に,その具体的な報知手段として「表示灯手段」を設けるか,あるいは「発音手段」を設けるかは,次の刊行物によって裏付けられた周知技術の適用による設計事項であり,又は各刊行物記載の技術的事項を適用することにより容易に想到できるものである。 (イ) 乙37の4文献記載の技術的事項特開2002-74547号明細書(以下「乙37の4文献」という。)の請求項1には,電池消耗を発音により報知するガス漏れ警報器が開示され ものである。 (イ) 乙37の4文献記載の技術的事項特開2002-74547号明細書(以下「乙37の4文献」という。)の請求項1には,電池消耗を発音により報知するガス漏れ警報器が開示されており,同請求項2には,電池消耗を発光により報知するガス漏れ警報器が開示されている。 したがって,同文献には,表示灯手段と発音手段が相互に代替可能な報知手段として周知であったことが開示されている。 (ウ) 乙37の7文献記載の技術的事項米国特許5686896号公報(以下「乙37の7文献」という。)には,低バッテリ状態を通知するため点滅する発光ダイオードを備えた煙検出器が開示されているところ,同文献には,ユーザが煩わしい警報によって邪魔されないよう,低バッテリ状態を通知するための手段として,発音手段ではなく「表示灯手段」を採用したこと及び上記選択が技術的事項であったことが記載されている。 なお,同文献記載の発明は,消極的報知(発光ダイオード)の後に積 極的報知(音声サイレン)を予定している点で乙48発明と共通しており,課題及び機能の面からみても,乙48発明に乙37の7文献記載の技術的事項を適用することが強く動機付けられる。 (エ) 乙62ないし64文献記載の技術的事項実願昭51-152416号(実開昭53-70177号)のマイクロフィルム(以下「乙62文献」という。),実願平4-16093号(実開平5-79695号)のCD-ROM(以下「乙63文献」という。)及び特開平10-269474号公報(以下「乙64文献」という。)には,いずれも,表示灯手段と発音手段が相互に代替可能な報知手段であること及び同技術が周知であることが開示されている。 (オ) 以上によれば,本件発明1と乙48発明との相違点につき,乙37の う。)には,いずれも,表示灯手段と発音手段が相互に代替可能な報知手段であること及び同技術が周知であることが開示されている。 (オ) 以上によれば,本件発明1と乙48発明との相違点につき,乙37の4文献,乙37の7文献,乙62ないし64文献に記載の技術的事項を設計事項として適用し,又はこれを乙48発明に組み合わせて本件発明1に至ることは当業者にとって容易である。 (3) 本件発明2の進歩性欠如ア本件発明2と乙48発明との対比(ア) 本件発明1と本件発明2の相違は,本件発明2においては,①構成要件Gにおいて,構成要件Bに加え,「電圧監視手段」が「電圧低下信号を出力する」と特定されていること,②構成要件Hにおいて,構成要件Dに加え,「確認要求受付手段」が「確認信号を出力する」と特定されていること,③構成要件Iにおいて,構成要件Cに加え,「表示灯手段」が「前記電圧低下信号を受け入れることを条件として」点滅等するものと特定されていること,④構成要件Jにおいて,構成要件Eとは文言を変え,「音声出力手段」が「前記電圧低下信号の入力を受け付けると共に」,「前記確認信号の入力を受け付けた場合には」と特定されていること,⑤構成要件Kにおいて,構成要件Dに加え,「確認要求受付 手段」が「確認要求のみならず,前記異常の検出を試験するための試験要求を前記利用者から受け付けるものであって,前記確認要求を受け付けた場合には,当該確認要求の受付を示す確認要求受付信号を出力し,前記試験要求を受け付けた場合には,前記異常の検出を試験するために用いられる試験信号を出力すること」との特定が追加されていることの5点において異なるのみである。 (イ) 上記①ないし③は,電子回路を念頭に置けば,構成要件B,D,Cからの当然の技術的帰結であると解される。また 信号を出力すること」との特定が追加されていることの5点において異なるのみである。 (イ) 上記①ないし③は,電子回路を念頭に置けば,構成要件B,D,Cからの当然の技術的帰結であると解される。また,上記④についても,構成要件Eと本質的に異なるところはない。 したがって,本件発明2と乙48発明は,実質的には,本件発明1でみた相違点(本件発明2が,電圧低下を報知する手段として「点灯又は点滅する表示灯手段」を採用しているのに対し,乙48発明が「前記アラーム発信器14が前記ホーン18より45秒間隔で短い警告音を発する発音手段」を採用している点)に加え,上記⑤の点(確認要求受付手段が,確認要求のみならず試験要求も受け付けるものである点)において相違するのみである。 イ相違点の検討(ア) 上記相違点のうち,前者に係る点が当業者にとって容易想到であることは,本件発明1に関し主張したとおりである。 (イ) 上記相違点のうち,後者に係る点についてa 乙48発明に係る人声警報器付煙検知器は,テストスイッチ52のほかに,「テストスイッチ122」(乙48訳文7頁15行)を設けているところ,これは,センサ10による煙や燃焼物の検出をシミュレートして報知手段の作動を確認する機能を有する構成であり(乙48訳文3頁25行~4頁3行),「試験要求」を受け付ける手段(構成要件K)に相当するものである。 b 乙48文献において,上記のとおり,テストスイッチ122はテストスイッチ52と別構成とされているものである。しかし,特開平5-282572号公報(以下「乙37の6文献」という。)においては,使用頻度の低い停止スイッチや確認スイッチによる占有面積が大きくなると,警報灯や警報灯に対応する場所名の表記の占有面積が小さくなったり,警報装置の盤面が 以下「乙37の6文献」という。)においては,使用頻度の低い停止スイッチや確認スイッチによる占有面積が大きくなると,警報灯や警報灯に対応する場所名の表記の占有面積が小さくなったり,警報装置の盤面が大型化するというような問題が生じること(【0003】)を指摘した上で,停止スイッチと確認スイッチを1つのスイッチで兼用することにより,上記問題点を解決することが示されているのであって(【0004】),一つのスイッチをもって異なる要求を受け付けることができるようにして,占有面積を低減することは,周知の課題解決原理である。乙37の5文献の「テスト/サイレンスボタン」や米国特許第5969600号明細書(以下「乙50文献」という。)の「テスト/リセットスイッチ134」が,電圧低下の有無の確認と,センサの異常の有無の確認の両者を同じスイッチで受け付けるものであることは,この点が周知技術であったことを裏付けている。 c したがって,乙48発明の「テストスイッチ52」と「テストスイッチ122」を同一の構成にすることは,単なる設計事項にすぎない。 (ウ) 以上によれば,本件発明2は,乙48発明に乙37の4~7文献,乙50文献,乙62~64文献に記載の周知技術を適用することによって当業者が容易に想到することができたものに当たる。 (4) 本件発明3の進歩性欠如ア本件発明3と乙48発明との対比(ア) 本件発明3は,本件発明2を引用するものであり,本件発明3においては,①構成要件Lにおいて,構成要件B(G)に加え,「電圧監視手段」が「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している間,前記電 圧低下信号を継続的に出力し」と特定されていること,②構成要件Mにおいて,構成要件E(J)に加え,「前記確認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力さ 電圧以下に低下している間,前記電 圧低下信号を継続的に出力し」と特定されていること,②構成要件Mにおいて,構成要件E(J)に加え,「前記確認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力されている場合に,前記音声メッセージを出力すること」と特定されていることにおいて,本件発明2と異なるのみである。 (イ) しかし,乙48発明において,「検知器20」から「ライン26」を介して45秒おきに送り出される,バッテリー12が低電圧であるとの信号は,当然のことながら,検知器20側から「継続的に出力」されるものである。また,受入れ側の「マイクロプロセッサ28」において,「テストスイッチ52」が閉じられるまでの間,45秒おきに当該信号に基づいてフラグを更新していくか,フラグを立てて保持するかは,単なる設計事項にすぎない。 よって,これらの点は,乙48発明との実質的な相違点となるものではない。 (ウ) したがって,本件発明3と乙48発明は,本件発明2においてみた相違点において相違するのみである。 イ相違点の検討上記相違点が当業者にとって容易に想到することができたものに当たることは,前記(3)イで主張したとおりである。 したがって,本件発明3は,当業者が容易に想到することができたものに当たる。 (5) 本件発明4の進歩性欠如ア本件発明4と乙48発明との対比(ア) 本件発明4は,本件発明2を引用するものであり,本件発明4においては,①構成要件Nにおいて,「電圧監視手段」が「音声出力手段」に対し「電圧低下信号を出力することによって」「フラグ」を立てるも のとされていること,及び②構成要件Oにおいて,「音声出力手段」が当該「フラグ」に依拠して「音声メッセージを出力する」ものとされていることの2点において ことによって」「フラグ」を立てるも のとされていること,及び②構成要件Oにおいて,「音声出力手段」が当該「フラグ」に依拠して「音声メッセージを出力する」ものとされていることの2点において本件発明2と異なるにすぎず,実質的には,「フラグ」処理の有無が異なるのみである。 (イ) したがって,本件発明4と乙48発明は,本件発明2でみた相違点に加え,上記フラグ処理の有無において一応相違する。 イ相違点の検討(ア) 本件発明2でみた相違点が当業者にとって容易想到であることは前述のとおりである。 (イ) フラグ処理の有無についてa 乙48発明が「フラグ」に対応する引用発明であること乙48文献には,バッテリー12の低電圧検知時にライン26を介して送り出される低電圧信号につき,マイクロプロセッサ28が「フラグ」を立てて記憶しておく旨の記載はない。 しかし,乙57号証記載の慣用技術に照らせば,マイクロプロセッサ内で適宜「フラグ」を立てて入力データを維持し,次の処理につなげていくことが当業者の技術常識であったことが明らかである。また,マイクロプロセッサ28においても,適切な人声メッセージを出力するため,入力されるデータ(低電圧信号と異常信号)を識別して保持する必要があることは明らかであるところ,低電圧信号については,人声メッセージの出力が,「状況7でテストスイッチ52を押した場合」に限られていることから,それまでの間,上記情報を「フラグ」を立てて保持しておく必要があることは,一層明らかである。これは,「マイクロプロセッサ28」が音声出力の作動を開始するに当たり,データバスを切り替える必要があり,ラッチ50からの新たな入力がされなくなることからも裏付けられる。 以上によれば,乙48発明において「フラグ」 」が音声出力の作動を開始するに当たり,データバスを切り替える必要があり,ラッチ50からの新たな入力がされなくなることからも裏付けられる。 以上によれば,乙48発明において「フラグ」技術が採用されていることは,乙48発明の内容自体から,当業者が,記載されているに等しい事項として理解する事項に当たる。 b 「フラグ」技術が周知・慣用技術であること仮に,「フラグ」処理の有無が実質的な相違点に当たるとしても,上記処理は単なる設計事項にすぎない。 すなわち,乙57号証の「マイクロプロセッサ28」のパーツリスト「1802」に示すとおり,マイクロプロセッサが必要な時間,必要なデータを,フラグを立てることにより保持することは,当業者の技術常識である。乙37の9においても,「ユニットコード」が「電池切れユニット記憶回路33」に記憶されて保持されることが記載されているところ(乙37の9の4頁),上記「ユニットコード」は「フラグ」に相当するものである。その他,乙38,39号証にも,異常信号を「フラグ」として保持して音声で出力する技術が開示されている。 以上のとおり,機器の異常を,フラグを立てて保持することは,当業者の技術常識であり,単なる設計事項にすぎない。そして,本件明細書には,「フラグ」を使用することによる作用効果について何らの記載もないのであるから,その採用につき,厳格な動機付けは不要であり,設計事項としての論理付けが可能か否かを検討すれば足りるものである。 c したがって,当該相違点は当業者にとって容易想到であり,本件発明4は当業者が容易に想到することができたものに当たる。 (原告の主張)(1) 被告の主張は争う。 (2) 乙48発明の内容 アテストスイッチ52は人声部が正しく作動するかを 件発明4は当業者が容易に想到することができたものに当たる。 (原告の主張)(1) 被告の主張は争う。 (2) 乙48発明の内容 アテストスイッチ52は人声部が正しく作動するかを確認するためのものであること乙48文献のテストスイッチ52は,「ハウジング内に圧入され,人声煙検知器の人声部の作動をテストする」(乙48訳文8頁13~14行)と記載されているとおり,人声部が正しく作動するかどうかをテストするためのものであり,バッテリー12が低電圧か否かを確認するための要求を受け付けるスイッチではない(乙48発明d1・d2)。スイッチ52を閉じることによりメッセージが出力されるのは,人声部が正しく作動するか否か,すなわち人声が正しく出力されるかどうかを確認するためのものにすぎず,バッテリー12の低電圧を報知するものではない(乙48発明e1~3)。したがって,テストスイッチ52を押したときに人声が出ることが確認できればよく,その確認のためのメッセージは何であってもよい。 イテストスイッチ52がバッテリー12の低電圧を確認するスイッチではないこと(ア) 被告は,乙48文献の「状況7は,バッテリーの電圧が限度値内のとき,スイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態であり」(乙48の訳文9頁5~6行)との記載における「限度値内のとき」を「低電圧状態であるとき」と捉えた上で,これを根拠として,テストスイッチ52は,バッテリー12が低電圧となっていることを検知しているとき(ライン26からマイクロプロセッサ28にバッテリー12の低電圧信号を送り出しているとき)に,「煙検知器のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージを出力するものであると主張する。 しかし,「withinlimits」は,バッテリーの電圧が正常 低電圧信号を送り出しているとき)に,「煙検知器のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージを出力するものであると主張する。 しかし,「withinlimits」は,バッテリーの電圧が正常範囲にあるときを意味するものであり,被告の主張は前提において誤っている。 すなわち,乙48文献において,上記部分は,「Condition 7 isa testconditioncausedbyclosingtheswitch 52 whenthebatteryvoltageiswithinlimits」(乙48原文13頁1~2行)を訳したものであるところ,「withinlimits」は,「あるポイント,量,時間等を超えない」,「(いろいろ限界はあるが)その範囲内で,まずまずの程度に,適度に」(甲24),「適度に,ある程度(までは)」(甲25)という意味のイディオムであり,「正常な状況」(normalsituations)を意味するものである(甲30)。したがって,テストスイッチ52が操作されるのは,バッテリーの電圧が限度を超えていない,すなわち正常値のときであることが明らかである。被告は,「withinlimits」が複数形であることから,乙48発明が,通常であれば見逃し得る低バッテリー状態と,緊急の対応が必要な低バッテリー状態の二つの限度値を前提としていることが明らかである旨主張するが,乙48文献の記載に基づくものではなく,失当である。 (イ) 被告は,テストスイッチ52を操作したときに出力されるメッセージが「煙検知器のバッテリーを交換してください。」であることを根拠として,テストスイッチ52がバッテリー12の低電圧を確認するためのものであることが明らかであるとも主張する。しかし,上記のとおり ージが「煙検知器のバッテリーを交換してください。」であることを根拠として,テストスイッチ52がバッテリー12の低電圧を確認するためのものであることが明らかであるとも主張する。しかし,上記のとおり,「状況7」は,人声部の作動を確認するためのテスト状態であり,メッセージを出力するのは,人声部に不具合がないことを確認するためにすぎないのであるから,出力されるメッセージは何でもよく,その内容に特に意味はない。このことは,バッテリーの電圧値が限度値内にあるとき(withinlimits)に,このメッセージが出力されることから明らかである。また,メッセージ選択のスイッチが「101」~「111」の例では,出力されるメッセージが「WORDS」「PHRASES」「INTRO」とされており,不特定のものでよいことが明らかにされていることからもうかがわれる。なお,乙48文献において,「状況 8」(バッテリー34が低電圧の場合)では,メッセージ22が出力されるとされているころ,メッセージ22は「消防署(「FireDepartment」は消防署の意味であり,乙48の訳文における「火災部署」は誤訳である。)に連絡してください。」であり,バッテリーの低電圧状態における出力メッセージとしては不自然であるから,メッセージ22(状況8において出力)とメッセージ23(状況7において出力)が逆である可能性がある。 (ウ) 被告は,乙48文献の図2の回路図上,テストスイッチ52が閉じられた場合,バッテリー34が低電圧であるか否かを確認すべき構成となっている旨も主張する。 しかし,図2の回路図から読み取れる構成は次のとおりである。 煙検出器20からの信号,温度検知器38からの信号,テストスイッチ52からの信号,比較68(バッテリー34が低電圧で 張する。 しかし,図2の回路図から読み取れる構成は次のとおりである。 煙検出器20からの信号,温度検知器38からの信号,テストスイッチ52からの信号,比較68(バッテリー34が低電圧であるか否かを判断するためのもの。乙48の訳文5頁18~19行)からの信号は,それぞれ別のラインを通じてラッチ50及びORゲート54に入力され,ラッチ50の出力は,マイクロプロセッサ28,PROM36及び人声部92に適宜入力され,人声部92からは,ラッチ50からの上記入力と,乙48文献の表3(乙48の9~10頁)に従い,人声メッセージが出力される。 バッテリー34は,比較68,タイマー58,温度検知装置38,トランジスタ56,59等,図2の下側の回路(センサー及びスイッチの部分)に電力を供給している。マイクロプロセッサ28等のある上側の回路(人声を出力する部分)に向かう電源ライン上にはパストランジスタ60があるが,普段はパストランジスタ60が作動しておらず,上側の回路には電力が供給されていない。 ラッチ50への入力と同時に,ORゲート54に煙検出器20等から 信号が入力されると,ORゲート54は信号を出力し,トランジスタ56,タイマー58,トランジスタ59,パストランジスタ60が順次作動して,バッテリー34からの電力がマイクロプロセッサ28等に供給される。すなわち,ラッチ50に何らかの入力があると,マイクロプロセッサ28等が起動するようになっている。 以上のとおり,テストスイッチ52が操作された場合も,比較68が低電圧信号を出力した場合も,単にこれらの信号がラッチ50でラッチされ,マイクロプロセッサ28等に出力されるとともに,マイクロプロセッサ28等にバッテリー34からの電力供給が開始されるのみであって,テスト 号を出力した場合も,単にこれらの信号がラッチ50でラッチされ,マイクロプロセッサ28等に出力されるとともに,マイクロプロセッサ28等にバッテリー34からの電力供給が開始されるのみであって,テストスイッチ52の操作と,比較68の作動(バッテリー34が低電圧であるか否かの確認)との間に何ら関係はない。比較68が低電圧信号を出力すれば,ラッチ50に取り込まれ,マイクロプロセッサ28等に入力可能となるのであって,乙48文献には,単にバッテリー34の低電圧を検知するとメッセージが出力される構成が記載されているのみである。 (エ) さらに,仮に,テストスイッチ52を閉じたときにバッテリー34の電圧値が低下しているか否かを確認することが読み取れるとしても,上記確認がバッテリー34を対象とするものである以上,バッテリー12が低電圧であることの警告音による報知(乙48発明c1・c2)とは無関係である。被告は,バッテリー12が主電源,バッテリー34が予備的電源であり,乙48発明は低電圧状態を二段階で報知することを予定したものであると主張するが,乙48文献には,そのように解すべき記載はない。確かに,乙48文献には,「煙検知器20は,ライン32の残りの回路に電力を供給してもよい」との記載があるものの,図2の回路にライン32は記載されておらず,「ライン32上の残りの回路」が何を指すかも不明であり,上記記載は,そのようなオプションの 可能性に言及しているだけであるとしか考えられない。 (オ) 被告は,乙48発明に係る煙検知器は乙55号証記載のとおりの動作をする旨主張するが,乙48文献の図2に示される回路から読み取れる構成は,上記cでみた限度のものにとどまる。マイクロプロセッサ28及び人声部92がどのような動作を行うかは,これらを動作させるプ 作をする旨主張するが,乙48文献の図2に示される回路から読み取れる構成は,上記cでみた限度のものにとどまる。マイクロプロセッサ28及び人声部92がどのような動作を行うかは,これらを動作させるプログラムに依存するから,回路とパーツリストからその具体的動作状況をうかがい知るのは不可能である。 被告の主張は,乙48文献に記載がない回路動作状況(プログラム)について述べたものにすぎず,乙55号証の内容を加味して乙48発明の内容を認定することは相当ではない。 ウ乙48文献に,ホーンによる報知の後に,利用者からの操作を受け付けて低バッテリー状態を報知するという二段階の報知が記載されていないこと(ア) 被告は,乙48号証に,「変化のない報知手段による早期の報知に加え,利用者に指示を与える人声メッセージによる報知の追加という二段階の報知を採用する点」が記載されているとし,これが本件発明の課題解決の特徴と共通していると主張している。 しかし,上記ア,イのとおり,テストスイッチ52は,人声部の作動をテストするためのものであって,低バッテリー状態をテストするものではない。また,テストスイッチ52と比較68の作動との間に関連は全くないのであって(上記イ(ウ)),乙48文献の回路図からも,被告の主張するような二段階の報知を読み取ることはできない。 (イ) 乙48文献の訳文(4頁2~3行,14~15行,5頁18~19行)から,乙48発明に係る煙検知器がバッテリー12とバッテリー34のそれぞれの低電圧を検知する機能を備えていることを把握できるとしても,それ以上のことは記載されていない。ライン26によってバッ テリー12の電圧が低いことを知らせる信号を送った後(4頁22~23行),人声部がどのような動作をするのか,動作するとして, しても,それ以上のことは記載されていない。ライン26によってバッ テリー12の電圧が低いことを知らせる信号を送った後(4頁22~23行),人声部がどのような動作をするのか,動作するとして,どのようなメッセージを出力するのかは記載されていないし,テストスイッチ52との関係についても記載はない。 (ウ) そもそも,乙48文献は,火災等の緊急事態の際に適切に行動することが困難であることから,検出された警報状態に応じてメッセージで適切な行動を指示することのできる人声機能付き煙探知器を提供するためのものであり,ホーンによる報知の後に利用者からの報知を受け付けることは何ら記載されていない。むしろ,乙48発明の上記目的からすれば,メッセージによる指示を行う前に,いちいち利用者からの指示を待つような動作をすることはあり得ない。 エ出力されるメッセージが低電圧を報知するためのものではないこと上記イのとおり,テストスイッチ52は,バッテリーが正常値内にあるときに,人声部の作動をテストするものであって,出力されるメッセージの内容に特に意味はないのであるから,上記メッセージは低電圧を報知するために出力されるものに当たらない。 (3) 以上によれば,乙48文献には,本件発明の構成要件D,Eに相当する構成が記載されていないことが明らかである。したがって,乙48発明における発音手段に代えて表示灯手段を設けることが容易か否かを検討するまでもなく,被告の主張は失当であり,本件発明1は乙48文献により進歩性を欠くものとは認められない。 (4) 本件発明2は,確認要求受付手段(構成要件H),表示灯手段(構成要件I),音声出力手段(構成要件J)を備えているので,本件発明1と同様に,乙48文献により進歩性を欠くものとは認められない。 本件発明3及 は,確認要求受付手段(構成要件H),表示灯手段(構成要件I),音声出力手段(構成要件J)を備えているので,本件発明1と同様に,乙48文献により進歩性を欠くものとは認められない。 本件発明3及び4は本件発明2に従属するものであるから,これと同様に,進歩性を欠くものとは認められない。 6 争点(2)イ(乙50号証に基づく進歩性欠如の成否)(被告の主張)(1) 乙50発明の内容ア本件特許出願前の公知文献である乙50文献(以下,乙50文献記載の発明を「乙50発明」という。)には,次の構成を有するバッテリ電源式一酸化炭素検出器が開示されている(以下,次の構成をそれぞれ「乙50発明a1」などという。)。 a1 バッテリB1(3V)が,DC電源装置120として,プロセッサ502を組み込んだプロセッサ130,LED1ないし3を組み込んだ可視表示器132,圧電ホーン142を組み込んだホーンドライバ140,COセンサ装置402を組み込んだセンサ150に電力を供給することによって稼働し,a2 家又はオフィス等の閉ざされた空間の一酸化炭素の検出を行う前記センサ150においてCOを検出して,前記可視表示器132及び前記圧電ホーン142が作動する,a3 ハウジング600内にまとめたバッテリ電源式CO検出器であって,b1 前記プロセッサ502は,前記バッテリB1の電圧測定値が,第2のバッテリ完全性所定の非常に低い電圧(1.5V)以下に低下しているか否か,第1のバッテリ完全性所定の低い電圧(2.5V)以下に低下しているか否か,を定期的に監視し,b2 前記バッテリB1の電圧測定値が,前記第2のバッテリ完全性所定の非常に低い電圧以下に低下している場合に,Hushフラグをリセットするとともに,Battery_Condi を定期的に監視し,b2 前記バッテリB1の電圧測定値が,前記第2のバッテリ完全性所定の非常に低い電圧以下に低下している場合に,Hushフラグをリセットするとともに,Battery_Conditionフラグをセットし,前記第1のバッテリ完全性所定の低い電圧以下に低下している場合に,Battery_Conditionフラグをセットして,共に5個の10MS緑色LEDパルスと10MSホーンパルスとを発し, c 前記プロセッサ502による前記バッテリB1の電圧測定値が前記第2のバッテリ完全性所定の非常に低い電圧以下に低下していること,または,前記第1のバッテリ完全性所定の低い電圧以下に低下していることを報知するために,前記Battery_Conditionフラグ及び前記5個の10MS緑色LEDパルスと10MSホーンパルスとを発し,前記LED1(緑色)を500ミリ秒の間隔をおいて10ミリ秒間パルスの5回一組のバーストを1分間隔で繰り返すシーケンスでLED1(緑色)を作動させ報知を行う発光手段,及び前記各バーストの前記LED1のパルスの直前又は実質的に同時に10ミリ秒間パルスの前記圧電ホーンを作動させ報知を行う発音手段と,d1 前記バッテリB1の電圧測定値が前記第2のバッテリ完全性の非常に低い所定の電圧以下に低下しているか否かも含め,人間の介在が必要な故障状態にあるか否かを一連のシーケンスで点検するための要求を,d2 前記ハウジング600の円形凹部674に取り付けてあるボタン676により囲まれた空間にいるユーザの手動作動可能に受け付け,d3 前記点検要求を受け付けたことを示す点検信号を前記プロセッサ502に出力し,前記Hushフラグを立てることができるテスト/リセットスイッチ134と,e1 前記バッテリB1 受け付け,d3 前記点検要求を受け付けたことを示す点検信号を前記プロセッサ502に出力し,前記Hushフラグを立てることができるテスト/リセットスイッチ134と,e1 前記バッテリB1の電圧測定値が第2のバッテリ完全性所定の非常に低い電圧以下に低下している場合,前記Hushフラグをリセットするとともに,前記Battery_Conditionフラグをセットした場合であって,かつ,前記テスト/リセットスイッチ134からの点検信号を受け付けたときに,e2 開閉可能なバッテリハウジング618内で,バッテリの交換を行うことができる前記バッテリB1に関して,前記閉ざされた空間にいるユーザに対し,前記LED1(緑色)を500ミリ秒の間隔をおいて10 ミリ秒間パルスの5回一組のバーストを1分間隔で繰り返すシーケンスでLED1(緑色)を作動させ報知を行う発光手段,及び前記各バーストの前記LED1のパルスの直前又は実質的に同時に10ミリ秒間パルスの前記圧電ホーンを作動させ報知を行う発音手段と,e3 を備えたことを特徴とするバッテリ電源式CO検出器。 イ乙50発明の目的について乙50発明は,「バッテリの完全性を定期的に評価する特性を備え,バッテリの完全性が疑われる場合には,適切なバッテリ故障信号をユーザに提供する」ものであるが(乙50訳文5頁28~30行目),発音手段による報知が煩わしいものであることから,バッテリ故障が切迫していない場合には,警報を短期間休止する一方,バッテリ故障が切迫している場合には,警報を無視することは賢明ではないという両方の状態に対応するものであり(乙50訳文5頁23~26行目),より具体的には,バッテリ故障が切迫しているか否かを区別し,かつ,バッテリ故障が切迫していない場合にのみ,ユーザ は賢明ではないという両方の状態に対応するものであり(乙50訳文5頁23~26行目),より具体的には,バッテリ故障が切迫しているか否かを区別し,かつ,バッテリ故障が切迫していない場合にのみ,ユーザ起動の一時的センサ故障信号の消音機能を適用するバッテリ稼働危険状態検出装置を提供することを目的とするものである(乙50訳文5頁33行目~6頁2行目)。 ウ乙50文献に乙50発明d~eが記載されていること(ア) 原告は,テスト/リセットスイッチ134が電圧低下を点検するための要求を受け付ける手段ではなく,乙50文献に乙50発明d~eは記載されていないと主張する。 (イ) しかし,乙50文献の請求項1には,「…プロセッサに連結された手動作動可能スイッチと,前記第1の低バッテリ状態が検出された場合,前記第1のバッテリ異常表示を所定期間にわたって発生することにより,前記可聴アナンシエータの駆動を抑制する,前記手動作動可能スイッチの作動に応答する手段と,前記第2の低バッテリ状態が検出された場合, 前記可聴アナンシエータの駆動を抑制しないように,前記第2のバッテリ異常表示を発生した後,前記手動作動可能スイッチの作動に応答する手段と…を備える,危険状態警告装置」と記載されているのであって,手動作動可能スイッチの作動に応答して,第1又は第2の低バッテリ状態が検出されることが記載されている。これは,乙50文献の請求項3に「…前記第1の低バッテリ状態が検出された場合に限り,前記手動作動可能スイッチの作動によって,前記可聴アナンシエータの駆動を所定期間にわたって抑制し,第2の低バッテリ状態が検出された場合に限り,前記手動作動可能スイッチの作動による前記可聴アナンシエータの駆動の所定期間にわたる抑制を防ぐ」と記載されていることからも,一層明らかで わたって抑制し,第2の低バッテリ状態が検出された場合に限り,前記手動作動可能スイッチの作動による前記可聴アナンシエータの駆動の所定期間にわたる抑制を防ぐ」と記載されていることからも,一層明らかである。 (ウ) また,乙50文献には,テスト/リセットスイッチの作動によって初期化シーケンス2400が実行されることが記載されているところ(乙50訳文25頁26~27行),乙50文献の図24~26には,初期化シーケンス2400のフローにおいて,テスト/リセットスイッチが押された場合(「TEST/RESETBUTTONPUSHED?」のフローにおいて「Y」を選択した場合)に,図26のメインループ(「MAIN2600」)に飛び,バッテリ状態確認(「SERVICEBATTERYSTATUS 2610」)を含む一連のテストシーケンスを実行することが記載されている。上記メインループにおける「SERVICEBATTERYSTATUS 2610」がバッテリ状態を確認するものであることは,乙50文献の「バッテリ状態も定期的に,例えばメインプログラムループを通過する毎に一度,チェックする(ステップ2610)」との記載(乙50訳文34頁26~27行)からも明らかである。 (エ) 原告は,乙50文献におけるHushフラグの設定及び解消に関する記載から,電池電圧低下の点検がCO事象発生の場合に限られると主 張するが,原告の指摘する記載は,CO事象が起きている場合に,危険が切迫していない「Warning」(警告)と,危険が切迫している「Alarm」(警報)とに分けて,その処理を行うことを記載したものにすぎず,これにより,CO事象が起きていない場合に,「初期化シーケンス2400」が実行され,「メインループ」に飛んで,バッテリ状態の確認が行われる 報)とに分けて,その処理を行うことを記載したものにすぎず,これにより,CO事象が起きていない場合に,「初期化シーケンス2400」が実行され,「メインループ」に飛んで,バッテリ状態の確認が行われることが否定されるものではない。 (オ) 以上によれば,テスト/リセットスイッチが電圧低下を点検するための要求を受け付ける手段ではないとは到底理解することができず,乙50文献には,乙50発明d1が記載されている。 (カ) なお,Hushフラグのセット・リセット処理(乙50発明d3,e1,e2)については,乙50文献には,図36及びその説明部分においてしか記載がない。そして,図36及びその説明部分は,CO事象が起きている場合においてテスト/リセットスイッチが押された場合の処理について記載したものであり,CO事象が起きていない場合にテスト/リセットボタンが押された場合にも適用があるか否かは明確ではない。 しかし,前記イでみたとおり,乙50発明は,バッテリ電圧の低下が切迫していない場合には警報を一定期間抑制する一方,バッテリ電圧の低下が切迫している場合には警報を抑制しないという技術的思想を明記したものであり,CO事象の有無にかかわらず,バッテリ状態をチェックしたときに,その状態の切迫度に合わせて警報を抑制するか否かを分けて処理するものである。そうすると,CO事象が生じている際にテスト/リセットスイッチが押された場合の処理内容として記載されているHushフラグのセット・リセット処理については,CO事象が起きていない際にテスト/リセットスイッチが押された場合にも適用されるとみるべきである。 (2) 本件発明1の進歩性欠如ア本件発明1と乙50発明との対比(ア) 乙50発明a1は構成要件Aの「電池によって稼働し」に,乙50発明 た場合にも適用されるとみるべきである。 (2) 本件発明1の進歩性欠如ア本件発明1と乙50発明との対比(ア) 乙50発明a1は構成要件Aの「電池によって稼働し」に,乙50発明a2は構成要件Aの「監視領域の異常を検出して警報を発する」に,乙50発明a3は構成要件Aの「電池式警報装置」に各相当する。 (イ) 乙50発明b1は構成要件Bに相当する。 (ウ) 乙50発明cは構成要件Cに相当する。 なお,乙50発明において,電池電圧の低下は発光手段と発音手段によって報知されるものであり,被告は,構成要件の非充足の主張を行うに当たり,本件発明1の構成要件Cは,発光手段の表示手段のみを用いて電池の電圧異常を報知するものでなければならず,発音手段との併用が強く排除されていると主張している。しかし,発明の新規性及び進歩性について審理するための発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,本願明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきところ,本件発明の特許請求の範囲の記載において,表示灯手段と発音手段との併用を禁ずる明確な文言がない以上,上記併用がされていることは,乙50発明cが構成要件Cに相当することを左右しない。 (エ) 乙50発明d1ないし3の「テスト/リセットスイッチ134」は,「ボタン676」により,「前記バッテリB1の電圧測定値が…低下しているかも含め,…一連のシーケンスで点検するための要求」を「囲まれた空間にいるユーザの手動作動可能に受け付ける」ものであるから(乙50発明d1・2),構成要件Dの「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」に相当する。 なお,乙50発明において,電池電圧が所定の電圧以下に低下していることの確 電圧以下に低下しているか否かを確認するための要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」に相当する。 なお,乙50発明において,電池電圧が所定の電圧以下に低下していることの確認は,その他人間の介在が必要な故障状態にあるか否かを点 検する一連のシーケンスの中で点検されるものである(乙50発明d2)。しかし,被告が,電池電圧の低下のみを確認するための確認要求を受け付ける手段でなければ「確認要求受付手段」(構成要件D)を充足しないと主張しているのは,第1次・第2次無効審判における原告の主張に基づくもの(訴訟上の信義則違反)であるから,発明の要旨認定に当たり,被告が構成要件Dにつき同様の理解をすべき理由はない。 (オ) 乙50発明e1の「前記バッテリB1の電圧測定値が第2のバッテリ完全性所定の非常に低い電圧以下に低下している場合」「であって,前記テスト/リセットスイッチ134からの点検信号を受け付けたとき」は,構成要件Eの「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたとき」に相当するが,乙50発明e2は,「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を出力するものでない点で構成要件Eと相違する。 (カ) 以上によれば,乙50発明と本件発明1は,乙50発明が,電池の電圧低下を「発光手段」及び「発音手段」により報知するのみで,「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を出力するものではない点で本件発明1と相違し,その余の点において本件発明1と一致する。 イ相違点の検討(ア) 乙48発明の適用による容易想到性争点(2)アにおいて主張したとおり,乙48発明は,一定の変化のない報知手段を設けた従来技術に追加して人声メッセージを送り出す構 イ相違点の検討(ア) 乙48発明の適用による容易想到性争点(2)アにおいて主張したとおり,乙48発明は,一定の変化のない報知手段を設けた従来技術に追加して人声メッセージを送り出す構成を設けることにより,煙検知器の有用性を高めたものである。したがって,乙48文献に接した当業者が,乙50文献記載のCO検出器が,乙50発明c及びe2のとおり,LED及びホーンの作動による報知を行うことを知った場合には,乙48発明における上記課題を内包すること を認識することが明らかである。また,乙50発明における「テスト/リセットスイッチ34」は,乙50発明cにおいて報知されていた電圧低下状態が,「第2のバッテリ完全性所定の電圧以下に低下した状態」すなわち電池交換を必要とする切迫した状態なのか,「第1のバッテリ完全性所定の電圧以下に低下した状態」すなわち一定の間は大丈夫と判断できる状態なのかを確認するために使用されるものである点で,乙48発明の「テストスイッチ52」と機能において同じである。さらに,乙50発明における報知手段を人声メッセージに変更した場合,乙50発明の目的を高める一方,これを阻害するところはない。加えて,乙48発明と乙50発明は,電池式警報器における電池電圧の報知技術という同一の技術分野に属するものであり,乙48発明に係る構成を乙50発明に適用するに当たっての技術的な阻害もない。 したがって,本件発明1は,乙50発明に乙48発明を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。 (イ) 乙37の2発明の適用による容易想到性実願昭59-156724号(実開昭和61-74765号)のマイクロフィルム(以下「乙37の2文献」という。)には,「電源によって稼働し,燃焼状態の異 ) 乙37の2発明の適用による容易想到性実願昭59-156724号(実開昭和61-74765号)のマイクロフィルム(以下「乙37の2文献」という。)には,「電源によって稼働し,燃焼状態の異常を検出して報知する燃焼機の異常事態報知器であって,燃焼状態の異常を検出する燃焼制御回路と,前記燃焼制御回路からの異常事態発生信号により,当該異常事態発生を報知するために点灯する発光素子と,使用者が異常事態の内容を知りたい場合に使用する確認スイッチと,燃焼制御回路が燃焼機の異常事態発生を検出して発光素子が発光している場合であって,かつ,使用者が確認スイッチを押圧したときに,具体的にどのような異常事態であるのか報知する音声合成装置とを備えた異常事態報知器」の発明(以下「乙37の2発明」と いう。)が記載されている。 乙37の2発明は,発光素子を用いるのみでは,異常事態の種類だけ発光素子を用いるか,又は利用者において異常事態の内容を調べる必要があり,また,異常事態を音声合成装置で報知する場合には,使用者の意思に関係なく音声合成装置が働いてしまい使用者に不快感を与えることがあったという課題を解決するため,確認スイッチを押圧した際に,音声合成装置により異常事態を報知するという手段を採用したものである。 そうすると,乙37の2文献に接した当業者であれば,乙50発明が,利用者において異常事態の内容を調べる必要があるという課題を内在する発明であることを認識することが明らかである。また,乙50発明は,バッテリに故障があるがその故障が切迫していない場合,煩わしい可聴警報を短期間休止するというものであるから,これを,発光手段を用いるとともに,その異常の具体的内容については確認スイッチを押圧し人声により伝えるという手段により解決する余地があ い場合,煩わしい可聴警報を短期間休止するというものであるから,これを,発光手段を用いるとともに,その異常の具体的内容については確認スイッチを押圧し人声により伝えるという手段により解決する余地があるというべきである。 さらに,乙37の2発明と乙50発明は,異常事態が発生した場合の報知技術という点で同じ技術分野に属するものであり,特に,上記相違点に係る構成については,使用者への報知技術としての共通性が明らかである。 したがって,乙50発明に乙37の2発明に係る構成を適用することは当業者にとって容易であり,本件発明1は,乙50発明に乙37の2発明を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものであって,進歩性を欠く。 (3) 本件発明2の進歩性欠如ア乙48発明に基づく本件発明2の進歩性欠如に関し主張したとおり,本件発明1の構成要件BないしEは,本件発明2の構成要件GないしJと実 質的に同一であるから,本件発明2の進歩性を検討するに当たっては,本件発明1でみた相違点(乙50発明が,電池の電圧低下を「発光手段」及び「発音手段」により報知するのみで,「電池交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を出力するものではない点)に加え,確認要求受付手段が,確認要求のみならず試験要求をも受け付けるものであるか否かについて検討すれば足りる。 イ乙50発明の「テスト/リセットスイッチ」は,確認要求のみならずセンサ異常に関する試験要求も受け付けるものであるから(乙50発明d1),乙50発明はこの点において本件発明2の構成要件Kと一致する。 また,乙50発明が,電池の電圧低下を「電池交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を出力することにより報知するものではない点については,前述のとおり,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明 する。 また,乙50発明が,電池の電圧低下を「電池交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を出力することにより報知するものではない点については,前述のとおり,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を適用することにより,容易に想到可能である。 ウしたがって,本件発明1と同様の理由により,本件発明2は当業者にとって容易に想到することができたものに当たり,進歩性を欠く。 (4) 本件発明3の進歩性欠如ア本件発明3と乙50発明との対比(ア) 構成要件Lについて乙50発明において,「プロセッサ502」は,「バッテリB1」の電圧測定値を定期的に検出するものであるから,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下している間,前記電圧低下信号を継続的に出力する」ものに当たる。したがって,構成要件Lに関しては,乙50発明と本件発明3との間に実質的な相違点はない。 (イ) 構成要件Mについて乙50発明は,テスト/リセットスイッチ134を押した時点で,新たに「バッテリB1」の電圧測定値を得て,「第2のバッテリ完全性所 定の非常に低い電圧」であるか否かを判断するものであり,「確認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力されている」ものではない点で,本件発明3と相違する。 イ相違点の検討(ア) 構成要件Mに係る相違点について電圧低下信号が確認信号入力前に入力されているものであるか否かは,何ら効果の差異を生み出すものではなく,技術常識に従って適宜の設計事項として理解すべき些末な相違点というべきものであるから,当業者であれば,技術常識に従って適宜の設計変更を行ってこの点を変更することが容易であることは明らかである。 また,乙48文献及び乙37の2文献記載の発明は,いずれも,テストスイッチ52を閉じ,又は確認スイッチ ,技術常識に従って適宜の設計変更を行ってこの点を変更することが容易であることは明らかである。 また,乙48文献及び乙37の2文献記載の発明は,いずれも,テストスイッチ52を閉じ,又は確認スイッチを押圧する前の低電圧信号又は異常情報信号に基づき,音声等を出力する構成となっている。したがって,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を適用することにより,上記相違点を解決することができることは明らかであるところ,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を適用することが容易であることは,本件発明1に関し主張したとおりである。 (イ) したがって,本件発明3は,当業者にとって容易に想到することができたものに当たり,進歩性を欠く。 (5) 本件発明4の進歩性欠如ア本件発明4と乙50発明との対比本件発明4と乙50発明は,本件発明2でみた相違点に加え,フラグ処理の有無において相違する。 イ相違点の検討乙48発明が,マイクロプロセッサ28内におけるフラグ処理によりバッテリー12の低電圧信号を保持するものであるとみることができること は,乙48発明による本件発明4の進歩性欠如に関し主張したとおりである。また,乙37の2発明も,「燃焼制御回路(4)からの異常事態発生信号」は,「燃焼制御回路(4)」があらかじめ受け付けていた情報になるのであるから,これを「フラグ」として保持・記憶していたものであることが明らかである。 したがって,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を適用することにより,上記相違点も当然に解消することができるものであるところ,当業者にとって上記適用が容易であることは,本件発明1の進歩性欠如に関し主張したとおりである。 ウしたがって,本件発明4は,当業者にとって容易に想到することができたものに きるものであるところ,当業者にとって上記適用が容易であることは,本件発明1の進歩性欠如に関し主張したとおりである。 ウしたがって,本件発明4は,当業者にとって容易に想到することができたものに当たり,進歩性を欠く。 (原告の主張)(1) 被告の主張は争う。 (2) 乙50発明の内容ア乙50発明は,「バッテリ稼働危険状態センサのバッテリに,故障があると判断されたが,故障が切迫していない場合,独特の繰り返し可聴警報を短期間,一晩等,休止することが望ましい。しかしバッテリ故障が切迫している場合,その結果生じる警報を無視するのは賢明ではない。」(乙50訳文5頁23~25行)という状態に対応するものであり,「比較的長い期間の後にバッテリ故障が予想される第1のバッテリ完全性に関する状態,及びバッテリ故障が切迫している第2のバッテリ完全性に関する状態」を検出し,「第1のバッテリ完全性に関する状態が検出された場合,プロセッサに連結された手動作動可能スイッチによって前記ホーンの駆動を所定期間にわたって抑制することが可能になるが,第2のバッテリ完全性に関する状態が検出された後のスイッチ作動によっては,ホーンの駆動を一時的に抑制することが防がれる。」(乙50訳文1頁)というもので ある。 イ乙50発明において,バッテリ状態は,定期的に,例えばメインプログラムループを通過する毎に一度,チェックされるものであるところ(乙50訳文34頁26~27行),乙50文献の図35(バッテリ状態更新ルーチンのフローを示す図)には,①まず,ステップ3502において,バッテリが非常に低い状態か否かを判定し,②バッテリが非常に低い状態であると判定された場合,Hushフラグをリセットし,Battery_Conditionフラグをセットし,緑LEDを点灯 において,バッテリが非常に低い状態か否かを判定し,②バッテリが非常に低い状態であると判定された場合,Hushフラグをリセットし,Battery_Conditionフラグをセットし,緑LEDを点灯し,ホーンを出力する。③バッテリが非常に低い状態ではない場合には,Hushフラグがセットされているか否かを判定し,Hushフラグがセットされている場合には,何もしないでリターンし,④Hushフラグがセットされていない場合には,ステップ3510でバッテリが低い状態か否かを判定し,バッテリが低い状態であると判定されると,Battery_Conditionフラグをセットし,緑LEDを点灯し,ホーンを出力するという処理が記載されている。また,乙50文献の図36には,テスト/リセットスイッチが押されている場合にはホーンが鳴り,続いてCO事象が起きているか否かが判定され,CO事象が起きていればHushフラグをセットしてHush機能を開始する一方,CO事象が起きていなければ初期ルーチンを実行することが記載されている。 以上を併せ読むと,乙50文献には,次の発明が記載されている。 「バッテリの電圧が非常に低い状態(第2のバッテリ完全性に関する状態)を検知したときには,Hushフラグがセットされているか否かによらず,緑LEDの点灯とホーン駆動を行い,バッテリの電圧が非常に低い状態ではないが低い状態(第1のバッテリ完全性に関する状態)を検知したときには,Hushフラグがセットされていれば,一定期間,緑LEDの点灯とホーン駆動が抑制され,Hushフラグがセットされていなけれ ば,緑LEDの点灯とホーン駆動を行う。上記Hushフラグは,テスト/リセットスイッチを押したときにCO事象が生じている場合にセットされる。テスト/リセットスイッチを押したとき ていなけれ ば,緑LEDの点灯とホーン駆動を行う。上記Hushフラグは,テスト/リセットスイッチを押したときにCO事象が生じている場合にセットされる。テスト/リセットスイッチを押したときにCO事象が起きていなければ,Hushフラグはセットされない。」ウ以上によれば,乙50発明における「テスト/リセットスイッチ」は,バッテリが所定の電圧以下に低下しているか否かを点検するものではなく,かつ,テスト/リセットスイッチを押した場合にHushフラグが立つかどうかはCO事象の有無によるのであって,フラグを意図的にセットできるものではない。したがって,乙50文献には,乙50発明d1及びd3に係る構成は記載されていない。また,テスト/リセットスイッチが,バッテリが所定の電圧以下に低下しているか否かを点検するものでない以上,点検信号を受け付けたときにバッテリ電圧低下を報知するためにLEDやホーンを作動することもないから,乙50文献には,乙50発明e2に係る構成も記載されていない。 (3) 以上のとおり,本件発明1と乙50発明は,乙50発明が本件発明の構成D,Eに係る構成を備えていない点で相違するものであるから,被告の主張は,本件発明と乙50発明の一致点・相違点の認定において誤っているものであり,相違点についての容易想到性について検討するまでもなく,本件発明1が乙50文献により進歩性を欠くものとはいえない。 (4) 被告の主張に対する反論ア被告は,乙50文献の請求項の記載を根拠に,テスト/リセットスイッチを押すことにより,LED及びホーンで報知されていた電圧低下状態が,「第2のバッテリ完全性所定の電圧以下に低下した状態」であるか否かを確認することができる旨主張する。 しかし,乙50文献の請求項記載の発明は,手動作動可能スイッ で報知されていた電圧低下状態が,「第2のバッテリ完全性所定の電圧以下に低下した状態」であるか否かを確認することができる旨主張する。 しかし,乙50文献の請求項記載の発明は,手動作動可能スイッチの作動により,バッテリ電圧が低下していても,バッテリ故障が切迫している 場合でなければ,警報を一定期間抑制するというものであり,バッテリが所定の電圧以下に低下しているか否かを利用者が確認するという技術思想は一切ない。また,上記「手動作動可能スイッチ」は,警報を抑制するためのスイッチであって,第2のバッテリ完全性所定の電圧以下であるかどうかを確認するために使用するものではない。なお,手動作動可能スイッチを操作して警報が抑制されなかったことをもって,バッテリが第2のバッテリ完全性所定の電圧以下であると理解するためには,警報がバッテリ低下を知らせるものであって,第2のバッテリ完全性所定の電圧以下のときには手動作動可能スイッチの作動によっても警報が抑制されないという装置の仕様を知っている必要があるが,一般のユーザがこのような仕様を把握しているという前提自体に無理がある。 したがって,乙50発明と本件発明1は,乙50発明に「電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求」についての記載や示唆がない点(構成要件D,Eに係る構成の記載や示唆がない点)で相違する。 また,仮に,警報が抑制されるか否かによってバッテリ低下状態の切り分けが可能であるとしても,その場合には,ユーザにおいて,警報が抑制されないことをもって,バッテリ電圧が緊急を要する程度に低下していることを理解可能であるということになるのであるから,電池の交換を促す音声メッセージを出力するという構成(構成要件Eに係る構成)を適用する動機付けがない。 テリ電圧が緊急を要する程度に低下していることを理解可能であるということになるのであるから,電池の交換を促す音声メッセージを出力するという構成(構成要件Eに係る構成)を適用する動機付けがない。 イ本件発明1の構成要件Eは,確認要求を受け付ける前に電圧監視手段が電圧低下を検出していることを意味するものと解されるところ,乙50発明においては,テスト/リセットスイッチが押されたときにバッテリの電圧点検が行われるのであり,この点でも本件発明1と乙50発明は相違する。 ウしたがって,被告の指摘する点を考慮しても,本件発明1は乙50文献により進歩性を欠くものではない。 (5) 本件発明1が乙50文献によって進歩性を欠くものではない以上,本件発明2ないし4も,乙50文献によって進歩性を欠くものではない。 7 争点(3)(東京瓦斯納入製品についての侵害の成否)(被告の主張)(1)ア被告製品のうち,被告型式名SA-173E,SA-173Ea,SW-106E及びSA-156Eb(販売型式名SC-K921B-K,SC-K922B-K,SC-K921B-CK及びSC-K920B-K)は,「ご承認図」(甲12の2,乙51ないし53)という,原告及び東京瓦斯との協議によって承認された仕様書(本件発明に係る構成を全て含むもの。)により示された共通仕様に従い,東京瓦斯の指揮監督の下で製造され(乙73ないし82),東京瓦斯にその100%が納品され,東京瓦斯の独自の品名が付されて販売されているものである。さらに,被告は,イ号製品につき,東京瓦斯の要請に基づき,「異常が発生しています。」との人声メッセージを「電池切れなどが発生しています。」と変更しているところ,上記製品は,イ号製品の上記開発経緯を引き継ぎ,音声メッセージの内容を決定したもので に基づき,「異常が発生しています。」との人声メッセージを「電池切れなどが発生しています。」と変更しているところ,上記製品は,イ号製品の上記開発経緯を引き継ぎ,音声メッセージの内容を決定したものである。 以上の事実関係に照らせば,その実施主体は東京瓦斯であると評価せざるを得ない。 イしたがって,東京瓦斯が本件特許権の共有特許権者であった平成24年2月26日までの上記製品の製造販売は,共有特許権者による自己実施(特許法73条2項)に当たり,本件特許権侵害を構成しない。 (2) そもそも,ライセンス契約に基づく取引関係において,ライセンシーに100%の納品がある製品は下請行為と理解するのが通常であり,当事者間で特段の定めがない限り,サブライセンスとしての契約処理を要しないとい う理解が一般的である。このようなライセンス実務に照らしても,上記製品が本件特許権侵害を構成する旨の原告の主張は相当ではない。東京瓦斯株式会社が,特定会社の単独発注を嫌い,第三者から原告の本件特許実施品や被告製品と同様の製品を購入しており(例えば矢崎総業株式会社〔以下「矢崎総業」という。〕製「YS-K920B-K」等),原告がこれを許容してきた等の事情があれば,東京瓦斯に納入した製品全てにつき,共有特許権者である原告からライセンス付与の黙示の同意があるとすら理解されるものである。原告は,東京瓦斯が本件特許に応じた仕様を要求仕様として各社に示すことや,上記要求仕様に従った製品の製造を被告に発注することを予め知っていたものであり(乙73,74),その主張は濫用的なものといわざるを得ない。 (3) 原告の主張に対する反論ア原告は,下請け製造を共有者の自己実施と同視できるためには,①製品の製作につき共有者から下請けに工賃が支払われていたこと,②共有者が ものといわざるを得ない。 (3) 原告の主張に対する反論ア原告は,下請け製造を共有者の自己実施と同視できるためには,①製品の製作につき共有者から下請けに工賃が支払われていたこと,②共有者が原料の購入,製品の販売,品質,模様等一切について指揮監督していたこと,③その製品すべてが共有者に納入されていたことを満たす必要がある旨主張するが,上記要件を全て満たす場合でなければ特許法73条2項の適用がないと解するのは相当ではない。原告の指摘する判例(大判昭和13年12月22日・民集17巻24号1700頁)は,いずれも上記要件を必要条件ではなく十分条件として摘示したものである。 イ上記大審院判例は,通常実施権の譲渡の場合であっても,事業と一体的に譲渡する場合には特許権者の許諾が不要とされていること(現行特許法につき94条1項)を根拠として,共有特許権者の自己実施についても,事業としての一体性が維持される場合には,他の共有特許権者の同意が不要であるとしたものであるところ,製品全てを共有特許権者に引き渡し,他に販売したことがない(100%納品)場合には,当該製造行為は共有 特許権者の販売事業に全面的に依拠していることになるから,共有特許権者の自己実施に該当するか否かの判断においては,上記事実が最も重視されるべきである。共有特許権者らから許諾を受けた通常実施権者が第三者に特許製品を製造させ,納入させていた事案において,上記第三者を当該通常実施権者の一機関と認め,共有特許権侵害を否定した事案(最判平成9年10月28日・平成6年(オ)第2311号)に照らしても,当該製品が100%納品されたか否かを基準として自己実施の範囲を定めることが許容されているものというべきであり,このような理解は,下請に関するライセンス実務の理解にも沿うものであ 号)に照らしても,当該製品が100%納品されたか否かを基準として自己実施の範囲を定めることが許容されているものというべきであり,このような理解は,下請に関するライセンス実務の理解にも沿うものである。 しかるに,被告は,前記のとおり,上記製品の100%を東京瓦斯に納品しているのであるから,上記製品の製造納入が東京瓦斯の自己実施と評価されるべきであることは明らかである。 ウ原告は,上記製品以外のロ号製品も構成において上記製品と同じであって,これらの製品の100%が東京瓦斯に納品されたものではないから,上記製品の製造納入を東京瓦斯の自己実施と評価することはできないと主張するが,特許権侵害訴訟における物件目録は,対象特許発明との対比の関係で構成上の特徴を特定・分類したものにすぎず,同一目録に掲載されている製品が同一製品であると評価できるものではない。例えば,ロ号目録記載の製品中には,煙検知器のほか,一酸化炭素検知器も含まれており,商取引上の製品分類において同じ製品ではない。 また,原告は,SA-156EbとSA-156Ecが,日本消防検定協会から同一の鑑定型式番号を付されていることから,これらが同一製品であって,その100%が東京瓦斯に納入されているものではないとも主張する。しかし,日本消防検定協会においては,異なる製品であっても検定事項が主要項目において同じである限り,同一鑑定型式番号の使用が許可されるのであって,上記番号が同一であることは,これらの製品の内容 が同一であることを意味しない。 (原告の主張)(1) 被告の主張は事実については否認し,法的主張は争う。 (2) 下請業者が共有特許権者の一機関として特許製品を製作していたというためには,①製品の製作につき共有者から下請けに工賃が支払われていたこと,② の主張は事実については否認し,法的主張は争う。 (2) 下請業者が共有特許権者の一機関として特許製品を製作していたというためには,①製品の製作につき共有者から下請けに工賃が支払われていたこと,②共有者が原料の購入,製品の販売,品質,模様等一切について指揮監督していたこと,③その製品すべてが共有者に納入されていたことが求められている(大判昭和13年12月22日・民集17巻24号2700頁)。 しかるに,以下に述べるとおり,①東京瓦斯は製品を購入しているだけで工賃を支払っているものではなく,②東京瓦斯が原料の購入等の一切について指揮監督していたものでもなく,③被告は,対象製品のすべてを東京瓦斯に納入しているものでもない。したがって,被告の指摘する4機種の製造を,東京瓦斯による自己実施と同視することはできず,上記製品の製造販売は,本件特許権侵害を構成する。 (3) 指揮監督についてア被告は,「御承認図」(甲12の2,乙51ないし53)を根拠として,上記製品が東京瓦斯の指揮監督に基づき製造されたものであると主張する。 しかし,上記「御承認図」は,東京瓦斯の顧客に対し,製品仕様を了解してもらうために作成されたものであり,上記仕様が東京瓦斯の指揮監督によるものであることを示すものではない。また,仮に上記製品が東京瓦斯の仕様に基づく製品であるとしても,それは,東京瓦斯が売買契約の目的物の仕様を承認したということを示すにすぎず,上記製品の製造が東京瓦斯の指揮監督の下になされたことを示すものではない。 イ被告は,乙73ないし82を根拠に,上記製品が東京瓦斯の要求仕様に従った製品であると主張するが,乙73記載の仕様は,各メーカーが商品開発・提案を行う際の参考となるのみであり,製品仕様を決定するのは各 メーカーである。乙73ないし82は 京瓦斯の要求仕様に従った製品であると主張するが,乙73記載の仕様は,各メーカーが商品開発・提案を行う際の参考となるのみであり,製品仕様を決定するのは各 メーカーである。乙73ないし82は,いずれも本件特許権登録前の議事録であり,上記時点において東京瓦斯が参考仕様案を提示すること自体は本件特許権との関係で何ら問題となるものではなく,各メーカーがその責任において上記仕様案をどの程度まで参考にするかを決定すれば足りるものである。 ウ被告は,東京瓦斯に販売した製品のカタログ(甲5,12,13)に,製造者として被告名を記載しており,東京瓦斯も,上記製品の製造者が被告であることを明示している。また,上記製品の日本消防検定協会における審査依頼者は被告と表示されており(甲27ないし29),被告は,上記製品の鑑定型式番号と同一の番号を得た製品を,自社製品(SA-156Ec)として販売している。これらの事実に照らせば,被告が,東京瓦斯から独立した立場において,主体的に製品の製造を行っていることが明らかである。 (4) 製品の納入について特許法73条2項の共有特許権者の自己実施といえるためには,当該特許発明の技術が共有者に全面的に依拠しており,当該特許発明に基づいた製品がすべて共有特許権者に納入されていることが必要であると解され,単に特定の型番を付した製品の全量が納入されているのみでは足りない。しかるに,被告は,その指摘する4製品と同一構成の製品であるロ号製品を,東京瓦斯以外に販売している上,その製造を東京瓦斯に全面的に依拠しているものでもないのであるから,上記要件を満たさない。 (5) 本件発明は,原告従業員によって東京瓦斯とは無関係にされたものであるところ,本件特許出願後,原告が本件発明の内容につき東京瓦斯に対し提案を行った際に いのであるから,上記要件を満たさない。 (5) 本件発明は,原告従業員によって東京瓦斯とは無関係にされたものであるところ,本件特許出願後,原告が本件発明の内容につき東京瓦斯に対し提案を行った際に,東京瓦斯から上記内容を高く評価され,持分譲渡を依頼された。原告は,①瓦斯会社に特許権の持分を譲渡する業界慣行があること,②上記譲渡によっても他のメーカーに対する権利行使に差し支えがないこと, ③瓦斯会社に対する権利行使はそもそも考え難いことから上記譲渡に応じたものであり,上記譲渡により,第三者に対する権利行使が制約されることはあり得ない。 また,東京瓦斯についてみても,東京瓦斯は納入メーカー同士の特許紛争に関しては中立的立場を採っているものであるから,東京瓦斯が第三者への発注を前提に本件特許権の持分を取得したということも考えられない。これは,今般,東京瓦斯が本件特許権の共有持分を放棄したことからも明確に裏付けられる。 (6) 原告が東京瓦斯に対し本件特許権の第三者への実施許諾に黙示に同意したことがないことは,上記(5)でみた本件特許権の持分譲渡の経緯に加え,東京瓦斯と原告との間の次の合意に照らしても明らかである。 すなわち,原告と東京瓦斯は,本件特許権に関し実施契約書(甲37)を締結しているところ,上記契約書によれば,本件特許権の実施品の製作は原告が行うものとされ,かつ,「第三者からの本技術の実施許諾の申し入れ」に対しては,原告と東京瓦斯の協議の上決定するとされているのであるから,原告と東京瓦斯間には,東京瓦斯の独断で実施許諾をすることができない旨の明示の定めがある。したがって,東京瓦斯による第三者への実施許諾について原告が黙示に同意することは,上記明示の合意に反するものであり,あり得ない。 8 争点(4)(消滅時効の成否 とができない旨の明示の定めがある。したがって,東京瓦斯による第三者への実施許諾について原告が黙示に同意することは,上記明示の合意に反するものであり,あり得ない。 8 争点(4)(消滅時効の成否)(被告の主張)(1) 原告は,被告に対し,平成22年8月23日付け本件特許の侵害警告書(乙3)を送付しており,被告は,同月24日,上記侵害警告書を受領している。また,原告及び被告は,本件特許権登録以前から交渉を重ねており,原告は,被告に対し,平成19年8月30日付けで通知書(乙92)を交付しているところ,上記通知書は,イ号製品である「SA-156E」及びロ 号製品である「SA-156Eb」を「東京ガス株式会社向け仕様住宅用火災警報器」と,ハ号製品である「けむぴこ」を「大阪ガス株式会社向け仕様住宅用火災警報器」として指摘するものである。 (2) 以上の原被告間の交渉経緯からすれば,原告は,被告が上記侵害警告書を受領した日である平成22年8月24日の3年前の平成19年8月23日時点において,本件損害賠償請求権に関し,損害及び加害者を知っていたことになる。したがって,平成18年12月22日から平成19年8月23日までの被告製品の製造販売に係る本件特許権侵害の不法行為責任に基づく損害賠償請求権については,平成22年8月23日の経過をもって消滅時効が完成している(民法724条)。 被告は,前記前提事実(7)のとおり,平成24年7月6日の本訴第10回弁論準備手続期日において,上記損害賠償請求権につき消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 したがって,上記損害賠償請求権は時効消滅している。 (原告の主張)(1) 被告の主張は事実については否認し,法的主張は争う。 (2) 被告は,原被告間で本件特許登録以前から交渉が続けられ したがって,上記損害賠償請求権は時効消滅している。 (原告の主張)(1) 被告の主張は事実については否認し,法的主張は争う。 (2) 被告は,原被告間で本件特許登録以前から交渉が続けられていた旨主張するが,そのような事実はない。本件特許登録以前の原被告間でのやり取り(平成17年7月14日付け「特許実施に関するご提案」〔甲34〕,平成18年3月10日付け「特許実施に関するご提案について(回答)」〔甲35〕,平成19年6月28日付け「特許実施に関するご提案について」〔甲36〕)のうち,甲34,35はいずれも出願中の権利に関するものであって,その権利範囲は本件特許とは異なるものであった。甲36は提案に係る特許出願が登録された後の被告の回答である。原告は,権利の概要を示して通常実施権の許諾の提案をしたのみであり,特定の製品についての侵害を主張したものではない。 なお,原告は,平成19年8月30日付けで通知書(乙92)を被告に交付しているが,上記通知書は,イ号及びロ号製品を特定して本件特許権侵害を警告した最初の書面であり,それ以前になされた通常実施権許諾の上記提案とは関係がない。 (3) したがって,原告がSA-156E,SA-156Eb及び「けむぴこ」について損害及び加害者を知ったのは,上記通知書(乙92)を交付した平成19年8月30日であり,同日が消滅時効の起算点となる。原告は,同日から3年経過前の平成22年8月23日に警告書(乙3)の送付により催告を行い,その後,6か月以内である平成23年2月3日に本件訴訟を提起しているから,上記製品の製造販売に係る損害賠償請求権は時効消滅していない。 なお,訴状添付別紙記載の製品のうち,上記製品以外のもの(ただし,「HS―W2」「YS―W」は除く)について,原告が損害 いるから,上記製品の製造販売に係る損害賠償請求権は時効消滅していない。 なお,訴状添付別紙記載の製品のうち,上記製品以外のもの(ただし,「HS―W2」「YS―W」は除く)について,原告が損害及び加害者を知ったのは,上記警告書(乙3)を送付した時点又は本訴の提起時であり,原告準備書面(2)添付別紙「参考製品型番・製品名目録」にて追加した製品について,損害及び加害者を知ったのは,被告第1準備書面が提出された時点である。したがって,これらの製品に関して消滅時効が成立する余地は全くない。 9 争点(5)(損害額)(1) 争点(5)ア(特許法102条1項に基づく損害額)(原告の主張)ア被告は,平成18年12月22日から平成24年3月末日までの間に,被告製品を少なくとも92万5110台販売した。 イ(ア) 原告は,上記期間において,型番SS-2LF(甲40),SS-2LI(甲41),SS-2LQ(甲42),SS-FJ(甲43),SS-2LR(甲44),SS-FK(甲45)の各製品(以下,それ ぞれ「原告製品1」などといい,これらの製品を併せて「原告製品」という。)を販売したものであるところ,これらの原告製品は,原告が被告による本件特許侵害行為がなければ販売することができた物に当たる。 (イ) 公認会計士Aⅰ及びAⅱ作成に係る調査意見書(甲39)によれば,各年度における原告製品1台当たりの利益額及び特許法102条1項に基づく損害額は次のとおりである。 年度原告製品1台あたりの利益額(円)被告の譲渡数量(台)損害額(千円)平成18●(省略)●29,974●(省略)●平成19●(省略)●202,561●(省略)●平成20●(省略)●228,105●(省略)●平成 台)損害額(千円)平成18●(省略)●29,974●(省略)●平成19●(省略)●202,561●(省略)●平成20●(省略)●228,105●(省略)●平成21●(省略)●179,874●(省略)●平成22●(省略)●165,908●(省略)●平成23●(省略)●118,688●(省略)●合計925,110●(省略)●(ウ) したがって,特許法102条1項に基づく原告の損害額は,10億円を下らない。 ウ(ア) 計算鑑定人Aⅲによる計算鑑定の結果(以下「Aⅲ鑑定」といい,Aⅲ鑑定に係る計算鑑定書を「Aⅲ鑑定書」という。)によれば,原告製品1台当たりの利益額及びその販売数量は次のとおりである。 共通型式名1台当たりの利益額(円)販売数量(台)SS-2LF●(省略)●●(省略)●SS-2LI●(省略)●●(省略)●SS-2LQ●(省略)●●(省略)● SS-FJ●(省略)●●(省略)●SS-2LR●(省略)●●(省略)●SS-FK●(省略)●●(省略)●なお,Aⅲ鑑定では,販売工事費に関し,社内工事原価を算出し,これを原告利益から控除しているが,原告従業員は原告製品の社内工事のために雇用されているものではないから,上記費用は固定費であり,これを控除するのは相当ではない。 (イ) 原告製品1台当たりの利益額については,各型式の製品の販売数量を加味して求めるのが相当である。 具体的には,まず,(型式毎の1台当たり利益額)×(販売数量)=(型式毎の利益合計)の計算式により,型式毎の利益合計を算出し,次に,(全型式の総利益〔型式毎の1台利益合計の合算〕)/(全型式の販売数量)=(原告製品1台 1台当たり利益額)×(販売数量)=(型式毎の利益合計)の計算式により,型式毎の利益合計を算出し,次に,(全型式の総利益〔型式毎の1台利益合計の合算〕)/(全型式の販売数量)=(原告製品1台当たりの利益額)の計算式により,原告製品1台当たりの利益額を求めるのが相当である。 これによって求めた原告製品1台当たりの利益額は,●(省略)●円となる。 (ウ) したがって,Aⅲ鑑定に基づき,特許法102条1項に基づく損害額を計算すると,上記●(省略)●円に被告の販売数量である92万5110台を乗じた金額である●(省略)●円となる。 なお,被告製品の譲渡数量は,全期間を通じてほぼ一定であるから,全期間を通じた被告製品1台当たりの平均利益額を,その販売数量を加味して算出し,これに被告製品の総販売数量を乗じる原告の上記計算は合理的なものである。 エ被告の主張に対する反論 (ア) 特許法102条1項但し書きの事情(数的推定覆滅事情)についてa 被告は,CO検出機能付き住宅用火災警報器は,煙検知機能又は熱検知機能付き住宅用火災警報器によって代替されないと主張し,CO検出機能付きの機種(SW-103E,SC-104E,SC-105E)の出荷台数2万4488台につき推定覆滅事情があると主張する。 しかし,被告が,原告製品と代替性を有する製品を列挙したものとして提出する乙128の1ないし3,乙136には,CO検出機能付きの火災警報器が掲載されているのであって,CO検出機能付き火災警報器と,同機能を有しない火災警報器とが同列に取り使われており,相互に代替性を有していることが明らかである。 b 被告は,ガス業界において住宅用火災警報器を販売するためには,ガス漏れ警報器に関する高い営業ネットワークが必要である旨主張する。しかし れており,相互に代替性を有していることが明らかである。 b 被告は,ガス業界において住宅用火災警報器を販売するためには,ガス漏れ警報器に関する高い営業ネットワークが必要である旨主張する。しかし,大阪瓦斯株式会社は,パナソニック株式会社(以下,商号変更の前後を通じて「パナソニック」といい,同社製品を「パナソニック社製品」という。)の住宅用火災警報器を採用しているところ,同社はガス漏れ警報器に関する高い営業ネットワークを有していない。 また,原告は,東京瓦斯と共同で本件特許権を有していた会社であって,ガス業界において,東京瓦斯のパートナーであると認識され,一定の信用を有し,他のガス会社への参入も比較的容易であったという事情がうかがわれる。 c 被告は,競合品(パナソニック社製品,矢崎総業製品)の存在を理由として,原告の販売機会の上限はその市場シェア率である21%を超えない旨も主張するが,パナソニック社製品及び矢崎総業製品も本件特許権を侵害するものであるから,被告が販売できなかった分をパナソニックが販売できたとみるべき理由はない。すなわち,上記パナ ソニック社製品は,電池電圧低下が検知された段階で,1日に3回音声メッセージを出力するものであるが,このような構成を付加しても,本件特許の技術的意義に反するものではない。上記パナソニック社製品は,利用者からの確認要求を受け付けた時点で音声メッセージを出力することにより,警報内容(電池切れ)を利用者に確実に報知するものであるから,本件特許の技術的意義を備え,作用効果を奏するものである。矢崎総業製品についても同様であり,本件特許権を侵害するものに当たる。 なお,原告は,ホ号ないしト号製品が本件発明の技術的範囲に属しない旨を主張したことはないのであって,パナソニック社製品等が本件 業製品についても同様であり,本件特許権を侵害するものに当たる。 なお,原告は,ホ号ないしト号製品が本件発明の技術的範囲に属しない旨を主張したことはないのであって,パナソニック社製品等が本件特許権を侵害するものである旨の原告の上記主張が訴訟上の信義則に反することはあり得ない。 (イ) 寄与率(質的推定覆滅事情)について本件特許は,利用者が警報器の前にいて,メッセージを聞く態勢にあるとき(確認要求受付手段による確認要求を受け付けたとき)に電池交換を促すメッセージを出力することにより,利用者に電池電圧の低下を確実に伝達できるものである。被告は,原告が甲40及び41記載の機種以降の後継機種において本件特許を実施していないと主張するが,これらの機種において,電池電圧低下を検出した時点で1時間毎に3回の音声メッセージを出力するのは,本件特許との関係では付加的構成にすぎず,原告はこれらの機種においても本件特許を実施しているのであり,この点を理由に本件特許の利用価値が低いとする被告の主張は失当である。なお,被告製品は利用者による電池交換が禁じられているものであるが,電池電圧低下時に販売店に連絡するよう利用者に促すことで,製品の信頼性を確実なものにしていることに変わりがない。 以上のとおり,本件特許は電池切れという事態を防止して長期にわた る製品の信頼性を確実なものにし,商品の優位性や差別化につながるものであり,住宅用火災警報器における本質的機能を実現するものである。 オ共有特許権者との間の損害額の按分について(ア) 本件特許権は,平成24年2月26日までは,東京瓦斯との共有であったものである。 (イ) しかし,原告と東京瓦斯との間の「新型火災警報器に関する実施契約書」(甲37)第5条には,本件特許の実施品の製作は 許権は,平成24年2月26日までは,東京瓦斯との共有であったものである。 (イ) しかし,原告と東京瓦斯との間の「新型火災警報器に関する実施契約書」(甲37)第5条には,本件特許の実施品の製作は原告のみが行うことができる旨の規定がある。なお,被告は,東京瓦斯が矢崎総業からも本件発明の実施品の供給を受けている旨主張するが,原告は東京瓦斯との間で矢崎総業による上記納入につき実施許諾協議をしたことはないのであって,東京瓦斯が上記契約に反して自由に他業者から本件発明の実施品を購入できることを前提としてよいものではない。 したがって,東京瓦斯が本件特許の実施品の製作をすることができない以上,被告の侵害行為がなければ,原告は,共有特許権者の存在にかかわらず,被告の譲渡数量の全量を製造販売することができたのであるから,特許法102条1項に基づき算出される損害の額はすべて原告が被ったものであり,上記損害額を東京瓦斯との間で按分するのは相当ではない。 (被告の主張)ア原告の主張は争う。 ただし,平成18年12月22日から平成24年3月31日までの被告製品の販売台数が92万5110台であることは認める。 イ特許法102条1項による損害額について(ア) 原告製品の利益額原告製品の売上げから控除すべき変動費の範囲はAⅲ鑑定よりも大きいものであるが,Aⅲ鑑定が控除を認めた費用項目についてはいずれも 正しいものであり,上記鑑定結果を援用する。 (イ) 損害額の算出方法について原告は,平成20年8月までは,原告製品1及び原告製品2のみしか販売していなかったものであるところ,Aⅲ鑑定によれば,原告製品1及び2の1台当たりの平均利益額は,平成19年8月23日までは●(省略)●円,同月24日から平成24年3月31日 び原告製品2のみしか販売していなかったものであるところ,Aⅲ鑑定によれば,原告製品1及び2の1台当たりの平均利益額は,平成19年8月23日までは●(省略)●円,同月24日から平成24年3月31日までは●(省略)●円である。他方,被告製品は,期間前半において販売数量が多く,期間後半になるにつれ販売数量が減少している。 そうすると,原告の主張するように,全期間を通じた原告製品の1台当たり平均利益額を算出し,これに被告製品の販売数量を乗じて損害額を計算することは相当ではなく,平成20年8月末日で区切り,各時期において実際に代替可能な製品の1台当たり利益額に同時期における被告製品の販売数量を乗じることにより損害額を算出するべきである。 ウ特許法102条1項但し書きの事情(数的推定覆滅事情)について(ア) 一酸化炭素検出機能付き火災警報器について被告製品のうち,「SW-103E」,「SC-104E」及び「SC-105E」は一酸化炭素検出機能を備えた製品であるところ,一酸化炭素検出機能付き製品は電力消費量が多く,かつ,高額化する傾向があることから,上記製品によって他の住宅用火災警報器(光電式又は定温式)に代えることが可能であっても,他の住宅用火災警報器をもって一酸化炭素検出機能付き製品に代替することはできない。しかるに,原告製品はいずれも一酸化炭素検出機能を備えていないから,被告が上記製品を販売することができなかった場合にも,原告が原告製品を販売する余地はない。仮に被告が上記製品を販売することができなかったとすれば,一酸化炭素検出機能付き製品を販売しており,かつ,被告と同じくガス漏れ警報器分野で高いシェアを有する矢崎総業がこれに代替する 製品を販売することができたにとどまることが明らかである。 したがって,被告製 機能付き製品を販売しており,かつ,被告と同じくガス漏れ警報器分野で高いシェアを有する矢崎総業がこれに代替する 製品を販売することができたにとどまることが明らかである。 したがって,被告製品のうち,一酸化炭素検出機能付き製品である上記製品の販売数である2万4488台(概数2万4500台)については,原告が販売することができないとする事情(特許法102条1項但し書き)が存在する。 (イ) ガス業界販売ルートについて被告製品●(省略)●台のうち77万台は,ガス業界に対し,ガス関連機器の販売に併せて顧客に売買又はリースにより納品される製品として販売されたものであるところ,被告が上記のとおりガス業界に特化して被告製品を販売することができたのは,被告がガス漏れ警報器に関し突出して高いシェアを有し,ガス業界において高い信頼性を有していたことによるものである。ガス業界は地域との密着性の高い業界であるから,各営業所に対応する専用営業所に専従の従業員を置く等の営業努力を重ね,高い営業ネットワークを構築した業者でなければ,上記ルートに参入することは困難である。なお,原告は,パナソニックがガス業界において高い市場シェアを有することから,ガス業界ルートへの参入に営業ネットワークが必要不可欠ではないと主張するが,パナソニックがガス事業者(特に大阪瓦斯株式会社)につき豊富かつ細かく整備された営業ネットワークをもつことを無視した主張であり,失当である。 また,被告が最も多くの製品を販売した先である大阪瓦斯株式会社に関しては,ホームセキュリティサービスに適合する仕様が要求されており,原告製品を含む市販の住宅用火災警報器に代替商品は存在しない。 さらに,ガス業界においては,採用業者として選別されるかどうかにより,その後の販売可能性が決せら スに適合する仕様が要求されており,原告製品を含む市販の住宅用火災警報器に代替商品は存在しない。 さらに,ガス業界においては,採用業者として選別されるかどうかにより,その後の販売可能性が決せられるところ,大阪瓦斯株式会社に関しては,被告とパナソニックの製品が採用されていたのであるから,被告製品が販売できなかったとすれば,被告の販売する他の製品(訴状記 載のホ号ないしト号製品)又はパナソニック社製品が採用されていたことが明らかである。 これらの事情に照らせば,原告がガス業界ルートにおいて喪失した販売機会は僅少であり,ガス業界以外から一般消費者に原告製品を供給する可能性を考慮に入れるとしても,被告製品を販売できなかった場合に原告が原告製品を販売できた数量は,その50%を超えることはない。 したがって,被告のガス業界向け販売数量(一酸化炭素検出機能付き製品を除いた74万5500台)の50%である37万2750台については,原告が販売することができないとする事情がある。 (ウ) 市場シェアについてa 住宅用火災警報器市場においては,パナソニック及び原告を含む4社が競合する状況にあり,上記4社の市場占有率は約9割に及ぶ(乙97の1ないし5)。また,一般社団法人日本火災報知機工業会の提供する商品情報(乙127の2ないし15)や,東京消防庁における住宅用火災警報器斡旋価格資料(乙128の1ないし3)によれば,被告製品と代替可能な製品が多数存在することが明らかであるところ,上記競合4社は上記代替製品をそれぞれ販売しているのであるから,被告製品を販売することができなかった場合には,上記競合4社は,各社の市場シェアに応じて,上記代替製品の販売機会を獲得していたものと合理的に推認される。 そうすると,被告製品を販売するこ ら,被告製品を販売することができなかった場合には,上記競合4社は,各社の市場シェアに応じて,上記代替製品の販売機会を獲得していたものと合理的に推認される。 そうすると,被告製品を販売することができなかったとしても,被告製品の販売数量(被告の販売数量●(省略)●台のうち,上記(ア)及び(イ)により原告が販売することができないとされる数量を除いた42万5250台)のうち,原告が実際に得ることができた販売機会は,原告の市場シェア率(平成19年1月1日から平成23年12月31日までの平均値。乙140の1ないし5)である21%を超える ことはない。したがって,被告は,上記競合4社と原告を併せた市場シェア率90%のうち,約77%(〔90%-21%〕÷90%)につき,数的推定覆滅事情があると主張する。 したがって,32万7442台(42万5250台×77%,概数32万7450台)につき,原告が販売することができないとする事情がある。 以上によれば,被告製品の販売数量●(省略)●台のうち,72万4700台(上記(ア)の2万4500台+上記(イ)の37万2750台+上記(ウ)の32万7450台)分について推定覆滅事情(88%の推定覆滅事情)があることになる。 b この点に関し,原告は,パナソニック社製品は本件特許の侵害品であるから,同製品のシェアを考慮して原告製品の販売数量を限定するのは相当ではないと主張する。しかし,上記パナソニック社製品は,被告第1準備書面別紙ホ号ないしト号目録記載の製品と同一の構成を有するものであるところ,原告は,平成23年6月27日付け準備書面(2)において,ホ号ないしト号製品を本件訴訟の対象としない旨明言しているのであって,これらの製品が本件特許を侵害しないことを認めたものであることが明らかである。し 平成23年6月27日付け準備書面(2)において,ホ号ないしト号製品を本件訴訟の対象としない旨明言しているのであって,これらの製品が本件特許を侵害しないことを認めたものであることが明らかである。したがって,原告が,損害論に入った段階において,ホ号ないしト号製品及び上記パナソニック社製品は本件特許の侵害品である旨主張することは訴訟上の信義則に反するものであり,許されない。実質的にみても,これらの製品は,確認要求受付手段からの確認要求を待たずに音声メッセージを出力する機能を有するものであるところ,構成要件Cの充足性に関する原告の主張に照らせば,原告が上記製品は本件特許を侵害するものではないと判断して訴訟の対象外としたものであることが明らかであり,原告の主張は失当である。 エ寄与率(質的推定覆滅事情)について(ア) 特許法102条1項に基づく損害については,同項但し書きの事情のほか,商品訴求力における発明の技術的価値,代替技術の存在,その特許性等に応じた質的推定覆滅事情(寄与率)による損害額の減額が認められるべきであるところ,本件においては,次の事情が上記質的推定覆滅事情として考慮されるべきである。 (イ) 本件発明の作用効果が商品の宣伝に利用されていないこと本件発明は,電池電圧の低下を音声で促すことにより,電池交換を促進し,電池切れ状態の放置を回避することができることをその作用効果とするものである(【0013】)ところ,音声による電圧低下の報知自体は周知技術であり(乙37の3,4),商品の差別化又は優位性につながるものではない。また,被告製品の販売時期において,利用者による電池交換は機器異常を招くものとして忌避されており,被告製品も利用者による電池交換を禁じているのであるから,「利用者による電池の交換を促進 のではない。また,被告製品の販売時期において,利用者による電池交換は機器異常を招くものとして忌避されており,被告製品も利用者による電池交換を禁じているのであるから,「利用者による電池の交換を促進」するという作用効果が広告されることもあり得ない。そもそも,利用者が早期に電池電圧低下情報を得ることを優先するのであれば,確認要求の受付を待たず,電池電圧低下が生じた場合に,直ちに音声メッセージを出力すればよいのであって,実際に,原告製品のうち,甲42記載の機種以降のものについても,そのような構成が採用されているのであるから,利用者に確実かつ早期に電池切れ情報を伝達するという本来の目的に照らせば,本件発明の利用価値は極めて低いといわざるを得ない。 また,利用者が音声による報知を煩わしく感じることを防ぐという作用効果についても,乙37の7文献,乙50文献等に示される手段によることが知られていたものである上,被告製品において,この点が宣伝広告されていたような事実はない。 加えて,被告製品のうち,ロ号ないしニ号製品については,電池電圧低下が生じると,発光に加え,発音による報知も開始するのであるから,本件発明において表示灯手段を報知手段として用いることによる作用効果(発音の煩わしさを回避する,電力消費を抑える)についても何ら利用していない。 本件発明2ないし4は,一つのスイッチで確認要求と試験要求の受付を兼ね,回路を簡素化することをその作用効果とするものであるが(【0015】),この点についても何ら商品訴求力に結びつくものではない。 (ウ) 本件発明の機能的一部性住宅用火災警報器は,火災等により人命に危険が迫った際のセンサ機能及び報知機能の確実性と,長期間にわたる製品の信頼性にその本質的機能がある製品である。 い。 (ウ) 本件発明の機能的一部性住宅用火災警報器は,火災等により人命に危険が迫った際のセンサ機能及び報知機能の確実性と,長期間にわたる製品の信頼性にその本質的機能がある製品である。 このうち,長期間にわたる製品の信頼性という点においては,電池電圧低下の報知は重要な機能というべきであるが,上記異常を早期かつ確実に報知するためには,電池電圧低下後直ちに電池切れ情報の伝達を行った方がよいのであり,これは,原告が,原告製品3以降,そのような構成を採用していることからも明らかである。 したがって,住宅用火災警報器にとって,本件発明の効果は本質的なものではなく,その機能的一部性は明らかである。 被告製品において,産業財産権11件(乙143ないし153)が採用されていることからも,被告製品における本件発明の機能的一部性は裏付けられる。 (エ) 本件発明の特許性乙48文献記載の住宅用火災警報器は,本件特許出願前の時点で,米国において「VocAlert」との商品名で市販されていたもので あり,被告は,上記VocAlertの実機による本件発明の公然実施又は公知性を主張し,特許庁においてその特許性を争っている。このように,本件発明の特許性に重大な疑念がある中で,本件発明の寄与度を過大に評価するのは相当ではない。 (オ) 以上の事情を総合考慮すると,本件発明の寄与率(質的推定覆滅事情)は20%を超えることはない。とりわけ,原告が本件発明を実施しない製品である原告製品3を市場に送り出した平成20年以降においては,本件発明の訴求力そのものが技術環境,市場環境の変化により価値を失ったものとみるべきであり,その寄与率は10%を超えることはない。これらの20%又は10%の寄与率は,前記推定覆滅事情88%により減額 件発明の訴求力そのものが技術環境,市場環境の変化により価値を失ったものとみるべきであり,その寄与率は10%を超えることはない。これらの20%又は10%の寄与率は,前記推定覆滅事情88%により減額された被告の利益額に乗じられるべきものである。 (カ) なお,原告は,原告製品3ないし5も本件特許の実施品であると主張する。しかし,これらの製品は,確認要求受付手段からの確認要求を待たずに音声メッセージを出力するものであり,ホ号ないしト号製品と同様に,本件特許を侵害しないことが確認された製品であるから,原告の主張は訴訟上の信義則に反するものであり,許されない。 オ共有特許権者との間の損害額の按分について(ア) 本件特許権は,平成24年2月26日までの間,東京瓦斯との共有であったものであるところ,損害賠償請求権が可分債権である以上,共有特許権者全体の損害額を算出するものである特許法102条各号の適用があれば,これが共有特許権者に可分帰属することは当然であり,かつ,その按分割合については,特段の事情がない限り,権利の持分割合によるべきである。仮に,特許権の持分割合ではなく,利益割合や実施割合で按分することが相当であるとしても,上記利益割合や実施割合については具体的事実関係に即した立証を要するところ,原告からこの点に関する立証は何らされていない。 なお,原告は,東京瓦斯から原告に対する本件特許持分の移転登録を示すが,原告の主張をみても,損害賠償請求権の譲渡事実は主張されていない。 (イ) 矢崎総業及びそのグループ会社(以下,これらをまとめて呼ぶ場合も「矢崎総業」という。)は,東京瓦斯に対し「YS-W」,「YK-110A」との製造型式の警報器を納入してきたものであるところ,「YS-W」については乙139の1・2により,「YK まとめて呼ぶ場合も「矢崎総業」という。)は,東京瓦斯に対し「YS-W」,「YK-110A」との製造型式の警報器を納入してきたものであるところ,「YS-W」については乙139の1・2により,「YK-110A」については乙65及び120により,本件特許の実施品であるものと認められる。矢崎総業は,これらの製品を東京瓦斯に納品するほか,自社製品として東京瓦斯以外にもこれらの製品を販売しているのであり,東京瓦斯が,矢崎総業に対し,本件発明の実施を許諾していた事実が明らかであり,東京瓦斯の実施割合をゼロとする原告の主張はこの点でも失当である。 (ウ) したがって,特許法102条1項に基づく原告の損害額は,平成24年2月26日までの分については,同項に基づき算出された損害額に,東京瓦斯との間の特許権の持分割合である2分の1を乗じた額とすべきである。 (2) 争点(5)イ(特許法102条2項に基づく損害額)(原告の主張)ア被告は,平成18年12月22日から平成24年3月末日までの間に,被告製品の製造販売により,少なくとも6億4591万3000円の利益を得た。したがって,被告の上記侵害行為により原告が被った損害額は,特許法102条2項により,少なくとも6億4591万3000円と推定される。 イ廉価販売品の除外について被告は,損害額算定の基礎となる被告製品の販売数量等は別紙「住宅用 火災警報器/訴訟対象製品の売上高及び損益」の「3.」及び「4.」記載のとおりであると主張する。しかし,同表中には,材料外注費単価が売上単価を下回っているものがあるところ,侵害品は本来廃棄の対象となるものであるにもかかわらず,被告利益の算出に当たり廉価販売品を計算に含めた場合,その対象物を廃棄した場合に比べて利益額が減少するのは不合 を下回っているものがあるところ,侵害品は本来廃棄の対象となるものであるにもかかわらず,被告利益の算出に当たり廉価販売品を計算に含めた場合,その対象物を廃棄した場合に比べて利益額が減少するのは不合理であるから(大阪地判平成16年9月13日参照),上記廉価販売品を被告利益算出の基礎に含めるべきではない。 ウ被告の得た利益額について被告の主張する各種経費のうち,次の費用については,売上高から控除するのは相当ではない。 (ア) 材料外注費のうち,能美防災の利益分について能美防災に対する外注費には,能美防災株式会社(以下「能美防災」という。)の利益が含まれているところ,能美防災は被告製品の重要部分を委託製造するものであるから,能美防災には本件特許権の間接侵害が成立し,能美防災と被告は共同不法行為の関係に立つ。したがって,被告は,共同不法行為者の侵害利益も合算した額につき,不真正連帯債務者として損害賠償義務を負うものであり,能美防災の利益分を売上高から控除することはできない。 なお,計算鑑定人Aⅳによる鑑定の結果(以下「Aⅳ鑑定」といい,Aⅳ鑑定に係る計算鑑定書を「Aⅳ鑑定書」という。)では,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの間においてSA-156Ex及びSA-162Eの材料外注費が売上高に占める割合は約95%と算出されており,外注によって実質的に完成品が製造されていることがうかがわれる。他方,Aⅳ鑑定においては,上記時期において,被告が上記2製品につき能美防災に対し多額の実施料を支払ったものとされており,これは,上記2製品の内製割合が高いことを示すものであると ころ,これらの事実は相互に矛盾する。 したがって,Aⅳ鑑定は,材料外注費を広く捉えすぎているものと考えられ,被告利益を不当に低く は,上記2製品の内製割合が高いことを示すものであると ころ,これらの事実は相互に矛盾する。 したがって,Aⅳ鑑定は,材料外注費を広く捉えすぎているものと考えられ,被告利益を不当に低く算出したものである。 (イ) 専用工場費用について志摩工場の製造ラインは,被告製品以外の住宅用火災警報器も製造するものであるから,被告製品を製造しない場合にも,被告において志摩工場を賃借する必要があったことは明らかである。そして,被告は被告製品以外の製品の製造も広く行っており,志摩工場を被告製品以外の製品の製造に転用することも可能であるから,志摩工場費用は一般固定費であり,その全額が控除対象外とされるべきである。 なお,Aⅳ鑑定は,専用工場の管理者の人件費についても被告利益から控除しているが,上記従業員は専用工場がなくとも雇用されていたものであり,上記人件費は被告製品の製造販売に当たり追加的に要した費用に当たらないから,上記費用を控除するのは誤りである。 (ウ) 試験研究費について試験研究費のうち,侵害品のサンプル製造以外の費用については,被告において不可避的に発生する費用であるから,一般固定費であり,控除対象外とすべきである。 (エ) 減価償却費について被告が減価償却を主張する設備費用のうち,共通設備については,侵害品の製造以外にも用いられるものであり,侵害品を製造販売するために追加的に要したものとはえいない。したがって,減価償却費のうち,共通設備に係る費用は全額を控除対象外とすべきである。 (オ) 実施料について共同開発者(能美防災)に対し支払う実施料は,実質は試験研究費であり,侵害品の製造販売がなくとも当該事業の試験研究を進めた結果発 生する一般固定費である。また,能美防災が得た実施料は, 共同開発者(能美防災)に対し支払う実施料は,実質は試験研究費であり,侵害品の製造販売がなくとも当該事業の試験研究を進めた結果発 生する一般固定費である。また,能美防災が得た実施料は,本件発明に抵触する技術をノウハウとして提供することにより獲得したものであり,本来,原告が受けるべきものである。したがって,上記実施料は,その全額を控除対象外とすべきである。 (カ) 上記以外の直接経費について被告製品と相当因果関係が認められない広告宣伝費及び志摩工場関連費用については控除対象外とすべきである。 (キ) 個別鑑定費用について・販売用運送費について上記イで主張したとおり,廉価販売分に係るこれらの費用は控除対象外とすべきである。 (ク) 設計・開発従業員の人件費について被告は被告製品以外にも住宅用火災警報器を製造販売しているのであるから,被告製品の製造販売がなくとも,設計・開発用人員を雇用する必要があったものと解される上,これらの人員は,被告製品の設計・開発以前から被告において雇用されていたものと推測される。また,被告製品を製造販売しなかった場合,これらの人員は,他の試験研究に従事することも可能である。したがって,これらの人件費は一般固定費であり,控除対象外とすべきである。 (ケ) 営業従業員の人件費について上記費用は,侵害行為がなかったとしても発生する一般固定費である。 また,被告の全売上高に対する被告製品の割合は平均3.1%にすぎないのであって,被告製品の製造販売によって営業人員の人件費が増加することはないものと解されるのであるから,上記人件費が被告製品の販売と相当因果関係を有するものとはみることができない。したがって,上記費用はその全額を控除対象外とすべきである。 エ寄与率(質的推定覆滅事 ないものと解されるのであるから,上記人件費が被告製品の販売と相当因果関係を有するものとはみることができない。したがって,上記費用はその全額を控除対象外とすべきである。 エ寄与率(質的推定覆滅事情)について 本件特許が住宅用火災警報器における本質的機能を実現するものであり,その寄与率が高いものと解されることは,争点(5)ア(特許法102条1項に基づく損害額)に関する原告の主張エ(イ)で主張したとおりである。 オ共有特許権者との間の損害額の按分について争点(5)ア(特許法102条1項に基づく損害額)に関する原告の主張オと同様の理由により,本件特許権が東京瓦斯との共有であった期間についても,被告製品の製造販売による損害は,すべて原告が被ったものであり,特許法102条2項に基づき算出される損害額を東京瓦斯との間で按分するのは相当ではない。 (被告の主張)ア原告の主張は争う。 イ平成18年12月22日から平成19年8月23日まで,同月24日から平成24年2月26日まで及び同月27日から平成24年3月31日までの被告製品の販売数量,売上高及び修正営業利益(貢献利益)は別紙「住宅用火災警報器/訴訟対象製品の売上高及び損益」の「3.」記載のとおりであり,このうち,東京瓦斯出荷分の販売数量等は同「4.」記載のとおりである。なお,被告において住宅用火災警報器は不採算部門に当たる。これは,被告の有価証券報告書(乙104~106)の記載からも明らかである。 ウ廉価販売品の除外について(ア) 原告は,被告製品のうち,材料外注費よりも廉価で販売した製品については,102条2項所定の「利益」算定の基礎とするべきではないと主張する。 (イ) しかし,被告は,上記製品を,在庫処理として定期的に社内販売等により処理した 外注費よりも廉価で販売した製品については,102条2項所定の「利益」算定の基礎とするべきではないと主張する。 (イ) しかし,被告は,上記製品を,在庫処理として定期的に社内販売等により処理したものにすぎず,上記製品を材料外注費より廉価販売したことにつき,本件訴訟との関係は全くない。不良在庫処理は,事業活動 に伴って必然的に生じるものであり,利益額算定の基礎から上記製品を除外すべき理由はない。 エ被告の得た利益額について(ア) 特許法102条2項所定の「利益」は,売上高から,製造又は販売に直接必要な変動費及び個別固定費を控除した,いわゆる貢献利益を意味するものと解されるところ,上記個別固定費に当たるか否かは,費用科目のみから演繹的に検討するのは相当ではなく,侵害品の製造又は販売との関係の直接性の立証の程度によって判断されるべきである。そして,次の費用(その額については別紙「住宅用火災警報器/訴訟対象製品の売上高及び損益」に記載のとおり。)は,いずれも売上高から控除すべき費用に当たる。 (イ) 材料費・材料外注費について被告は,被告製品の一部を能美防災に対し外注するほか,被告の志摩工場及び愛媛工場において製造しているものであるところ,能美防災への外注費用及び自社製造に係る材料費は,当然に売上高から控除すべき費用に当たる。 この点に関し,原告は,能美防災に対する外注費につき,能美防災に間接侵害が成立することを理由として,その利益相当分(10%)につき変動経費性を否定する主張をする。しかし,能美防災との間に,本件特許権侵害につき共同不法行為が成立することにつき主張立証がない以上,能美防災の利益分につき控除を否定する合理的根拠は認められない。 (ウ) 専用工場(志摩工場)費用について被告は,住宅用火災警報器 害につき共同不法行為が成立することにつき主張立証がない以上,能美防災の利益分につき控除を否定する合理的根拠は認められない。 (ウ) 専用工場(志摩工場)費用について被告は,住宅用火災警報器の内製化に当たり,志摩工場を住宅用火災警報器の生産専用工場として賃借し,専用従業員を配置し,常設の製造設備を備えて,被告製品の製造に使用している。したがって,志摩工場関連費用(専用従業員の人件費,製造設備に係る備品費,志摩工場から 物流拠点までの荷造運送費,製造ライン稼働のための水道光熱費等,志摩工場賃借費,保険料)については,被告製品の製造に直接要した費用と評価されるべきであり,売上高から控除されるべき費用に当たる。 (エ) 試験研究費について住宅用火災警報器については,品質管理用に内部試験を必要とするほか,日本消防検定協会等の公的機関における認証を経る上で提出を必要とする試験を実施する必要があり,これらに要する費用は被告製品の製造に直接要した費用に当たる。 (オ) 減価償却費用について被告は,住宅用火災警報器の市場に新規参入し,その製造設備に投資を行ってきたものであるから,被告製品の製造に必要な設備に係る費用及び火災警報器の製造全般に必要な設備のうち,火災警報器中の被告製品の製造割合である78%を乗じた費用については,被告製品の製造販売に直接要した費用として,売上高から控除されるべきである。 (カ) 実施料について被告は,火災警報器の内製化に伴い,能美防災に対しノウハウ等を含めた知的財産の実施料を支払った。当該費用は,被告製品の製造に直接要した費用であり,売上高から控除されるべきである。 (キ) その他直接費用について上記費用は,被告製品の製造に直接要したその他の費用をまとめたものであり,売上高 用は,被告製品の製造に直接要した費用であり,売上高から控除されるべきである。 (キ) その他直接費用について上記費用は,被告製品の製造に直接要したその他の費用をまとめたものであり,売上高から控除されるべきものである。 (ク) 個別鑑定費用について住宅用火災警報器を販売するためには,日本消防検定協会の型式鑑定を受ける必要があるところ,上記型式鑑定手数料は売上高から控除すべき費用に当たる。 (ケ) 販売用運送費について 上記費用は,被告の物流拠点から被告製品を搬出するに当たり運送会社に支払った費用であり,売上高から控除されるべきものに当たる。 (コ) 設計・開発の従業員人件費について上記費用は,住宅用火災警報器の設計・開発に実際に従事した従業員の人件費に,担当業務割合及び被告製品の占める割合を乗じて算出したものであり,被告製品の製造に直接要した費用に当たる。 原告は,上記従業員が他の業務に従事し得たことを理由として直接経費性を争う。しかし,被告は,住宅用火災警報器の事業分野に新規参入した業者であり,新製品の開発に当たり,従業員を設計・開発業務に従事させる必要があった上,住宅用火災警報器の上市に当たっては,試験データ等を提供し検定を受ける必要があるのであるから,これらの業務に従業員が実際に従事した割合に応じた人件費については,直接経費性が認められるべきである。 (サ) 営業従業員の人件費について上記費用は,住宅用火災警報器の販売に従事した従業員の人件費に,担当業務割合及び被告製品の占める割合を乗じて算出したものであり,被告製品の販売に直接要した費用に当たる。 原告は,被告製品の売上高は被告の総売上高の3.1%に過ぎず,これを確保するための営業用従業員は不要であるとして,上記費用の 乗じて算出したものであり,被告製品の販売に直接要した費用に当たる。 原告は,被告製品の売上高は被告の総売上高の3.1%に過ぎず,これを確保するための営業用従業員は不要であるとして,上記費用の直接経費性を争う。しかし,被告の上記計算によれば,被告は,営業用従業員のうち2ないし5%程度の人材を被告製品の営業のために割り当てている計算となるのであり,被告製品の売上げが総売上高に占める割合に照らしても,上記人件費の計上は合理的なものである。 オ Aⅳ鑑定についてAⅳ鑑定は,被告の上記主張よりも控除費用の範囲を限定したものであるが,その内容は正当なものであり,Aⅳ鑑定よりも控除範囲を限定すべ き旨の原告の主張は失当である。 カ損害額の推定の覆滅特許法102条2項は,侵害者による特許権侵害がなければ利益が得られたであろうという事情に基づき,権利者の損害を推定するものであるから,被告製品の販売によって原告製品の販売機会を喪失せしめたとの事情が認められなければ,その限度において上記損害の推定は覆滅される。特許法102条1項による損害に関して主張した数的推定覆滅事情と寄与率(質的推定覆滅事情)は,いずれも,上記推定覆滅事情に当たるものであり,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,上記事情に応じて減額されるべきである。 キ共有特許権者との間の損害額の按分について争点(5)ア(特許法102条1項に基づく損害額)に関する被告の主張オと同様の理由により,本件特許権が東京瓦斯との共有であった期間については,特許法102条2項に基づく損害額についても,同項により算出された損害額に,原告と東京瓦斯との間の特許権の持分割合である2分の1を乗じた額を原告の損害額とすべきである。 (3) 争点(5)ウ(特許法102条 2項に基づく損害額についても,同項により算出された損害額に,原告と東京瓦斯との間の特許権の持分割合である2分の1を乗じた額を原告の損害額とすべきである。 (3) 争点(5)ウ(特許法102条3項に基づく損害額)(原告の主張)ア平成18年12月22日から平成19年8月23日までの間の被告製品の売上高は4億5474万6337円であり,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの被告製品の売上高は23億0522万0816円である(Aⅳ鑑定書)。 被告製品は「警報器」であり,日本標準産業分類において「F3049」に分類されるものであるところ,当該技術分野は,「19.ラジオ・テレビその他の通信音響機器」に含まれるものであり,その実施料率の平均値は,平成4年度~平成10年度においてイニシャルありが3.3%, イニシャルなしが5.7%であって,昭和63年度~平成3年度に比べ,いずれも上昇している(甲50)。したがって,被告製品の販売期間において,実施料率が5.7%より低率であることはない。 イ以上によれば,平成18年12月22日から平成24年3月31日までの被告製品の販売につき原告が受けるべき実施料相当額は,上記売上高に上記実施料率5.7%を乗じた1億5731万8127円となり,同額が特許法102条3項に基づく原告の損害額となる。 (被告の主張)ア原告の主張は争う。 イ相当実施料率について(ア) 原告は,「実施料率(第5版)」(甲50)を根拠に相当実施料率を5.7%と主張する。しかし,上記数値は,本件発明とは無関係な技術分野(有線・無線通信機器,ラジオ・テレビ・その他の通信音響機器)のライセンス契約が高額に偏在していることによるものであり,このような実施料率を含んだ平均値を使用す 数値は,本件発明とは無関係な技術分野(有線・無線通信機器,ラジオ・テレビ・その他の通信音響機器)のライセンス契約が高額に偏在していることによるものであり,このような実施料率を含んだ平均値を使用するのは相当ではない。 むしろ,このような場合には,最頻値を用いるのが通常であるところ,甲50及び乙156によれば,イニシャルなしの実施料率の最頻値は「1%」であり,これを超える実施料率を相当とする根拠はない。本件特許の寄与率に関し主張したところに照らしても,上記実施料率が相当であるというべきである。 (イ) なお,平成24年2月27日までは,本件特許権は東京瓦斯との共有特許権であったことから,同日までの実施につき原告が受けるべき金銭の額を算出するための実施料率は,その持分割合に応じ,0.5%とすべきである。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(イ号ないしニ号製品が本件発明1の技術的範囲に属するか。) (1) 構成要件Cの充足性(イ号,ハ号,ニ号製品)(争点(1)ア(ア))アイ号製品について(ア) イ号製品は,電圧監視手段によって監視された電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回(連続して5時間)検出したとき,緑点滅する異常表示灯手段を備えるものであり(イ号製品の構成③),上記異常表示灯手段は,電圧低下を報知するために点滅するものと評価することができるから,構成要件C(「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段と」)を充足する。 (イ) この点に関し,被告は,イ号製品が,検出部位の異常が検出された場合又は有効期間に達したと照合された場合にも,電池電圧が低下している場合と同一の態様で異常 する表示灯手段と」)を充足する。 (イ) この点に関し,被告は,イ号製品が,検出部位の異常が検出された場合又は有効期間に達したと照合された場合にも,電池電圧が低下している場合と同一の態様で異常表示灯手段が緑点滅することから(イ号製品の構成③),イ号製品の異常表示灯手段は「当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段」を充足しないと主張する。 しかし,前記のとおり,イ号製品の異常表示灯手段は,電池電圧の低下を検出した場合に緑点滅するものであり,当該場合において,「電圧の低下を報知するために点滅している」と評価することのできるものである。 そして,本件明細書(後記イ(イ)の【0001】,【0007】,【0008】,【0055】等)の記載からみても,本件発明1においては,異常表示灯手段が電池電圧の低下を報知できるものであれば足り,これと併せて他の異常を報知するために点灯又は点滅する場合があることが排除されているものとは解されないから,イ号製品の異常表示灯手段が,検出部位の異常が検出された場合及び有効期間に達したと照合された場合にも同様に点滅するものであることは,単なる付加的構成にす ぎないと解されるのであって,これにより,構成要件Cの充足性が左右されるものではない。 (ウ) 被告は,第2次無効審判において原告の提出した答弁書(乙25)の記載を根拠に,訴訟上の信義則(禁反言)により,「表示灯手段」(構成要件C)は電圧低下のみを報知するものに限定される旨も主張する。 確かに,原告は,第2次無効審判において提出した平成22年10月5日付け審判事件答弁書(乙25)において,同事件における甲1号証(乙37の1)と本件発明1との相違点に関し,「甲第1号証の故障表示灯は,電池の電圧が所定の電圧以下に低下した場 した平成22年10月5日付け審判事件答弁書(乙25)において,同事件における甲1号証(乙37の1)と本件発明1との相違点に関し,「甲第1号証の故障表示灯は,電池の電圧が所定の電圧以下に低下した場合には点滅点灯し,断線などその他の異常を検出した場合には連続点灯する構成が採用されている。一方,本件特許発明1の表示灯手段では,電池の電圧が所定の電圧以下に低下した場合には点灯または点滅する構成が採用されている。 したがって,本件特許発明1の表示灯手段は,点灯または点滅の如何に拘らずに監視領域の利用者に対して視覚を通じて電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを伝える構成が採用されているが,甲1号証の故障表示灯は,点滅させるか点灯させるかによって異なる異常内容を伝える構成が採用されている点で構成が異なっている。」(乙25の17頁12ないし20行)と主張していることが認められる。 しかし,原告は,特許庁における平成23年2月16日の第1回口頭審理において,上記主張を撤回しており(乙35,36),第2次審決においても,上記の点は甲1号証(乙37の1)記載の発明と本件発明1との相違点として挙げられていないのであるから(甲22の24~25頁),原告が,上記主張により本件発明につき特許を受け,又はその特許性を維持したものとはいうことができない。 また,原告の上記主張は,点灯又は点滅によって異なる異常内容を伝 える甲1号証と対比していることによって,被告の主張するように,本件発明1が電池の電圧低下のみを伝える発明であると主張していると解する余地はあるものの,他方,本件発明1が表示灯手段の点灯又は点滅の如何に関わらず電池の電圧の低下を伝える発明であることを主張しているにとどまり,本件発明1が点灯又は点滅の如何に関わらず他の異常内 する余地はあるものの,他方,本件発明1が表示灯手段の点灯又は点滅の如何に関わらず電池の電圧の低下を伝える発明であることを主張しているにとどまり,本件発明1が点灯又は点滅の如何に関わらず他の異常内容も併せて伝えることを排斥するものではないと理解する余地もあるものであって,必ずしも,被告の主張するような内容を確定的に主張したものと解することができるものではない。 したがって,これにより,原告が構成要件Cの解釈に関しこれと異なる主張をすることが訴訟上の信義則に反するものとは認められず,構成要件Cを限定解釈すべきものとは解されない。 イハ号及びニ号製品について(ア) 被告は,本件発明1において,電池電圧の低下の報知に関し,表示灯手段による報知と発音又は発声手段による報知を併用することは排除されており,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下している」ことは「表示灯手段」のみによって報知されなければならないところ,ハ号及びニ号製品は,電池電圧の低下を所定回数検出した場合に,表示灯手段が緑点滅することに加え,50秒単位で「ピッ」音を発音するものであるから,構成要件Cを充足しないと主張する。 (イ) そこで,本件明細書の記載を参酌して上記の点について検討すると,本件明細書には,この点に関し,次の記載がある。 a 【0001】【発明の属する技術分野】「この発明は,電池によって稼働し,監視領域の異常を検出して警報を発する電池式警報器に関し,特に,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することができる電池式警報器に関する。」b 【0005】「…この警報器30は,AC電源によって稼働する他 の警報器にはない,電池切れの警報を発する処理をも実行する。すなわち,この警報器30は,電池31によって稼働するが,電池 b 【0005】「…この警報器30は,AC電源によって稼働する他 の警報器にはない,電池切れの警報を発する処理をも実行する。すなわち,この警報器30は,電池31によって稼働するが,電池31には寿命(例えば,アルカリ電池を用いた場合の寿命は約1年,リチウム電池を用いた場合の寿命は約5年。) があるため,電池31の残量が少なくなった場合には,その旨の警報を利用者に発して電池31の交換を促す必要がある。」c 【0006】「これを具体的に説明すると,…電圧監視回路37から電圧低下信号を受け入れた警報回路35は,ブザー36を介して,電池31の残量が少なくなったことを報知する意味で警報を出力する。 すなわち,鑑定規則にしたがって,「ピッ」というブザー音を一定の間隔で(例えば,10秒に1回の割合で)72時間以上継続した後に,火災またはガス漏れ発生時と同様の警報(ブザー音)を1分以上継続させる電池容量が要求される。」d 【0007】【発明が解決しようとする課題】「しかしながら,上記の従来技術に係る警報器30は,電池31の残量が少なくなった場合に,利用者による電池31の交換が促進されず,無監視状態で放置されるおそれが高いという問題点があった。」e 【0008】「すなわち,上記の警報器30では,電池31の残量が少なくなった旨を報知するブザー音が,火災またはガス漏れ発生時のブザー音と同種であるので,利用者においてブザー音の意味内容が理解され難かった。このため,利用者は取扱説明書を読んで初めて,電池31の残量が少なくなった旨を理解できる状況にあり,利用者による電池31の交換が促進されず,電池31が切れたまま警報器30が放置されることも多かった。」f 【0009】「また,上記の警報器30では,電池31の残量が少なくなった旨を報知す あり,利用者による電池31の交換が促進されず,電池31が切れたまま警報器30が放置されることも多かった。」f 【0009】「また,上記の警報器30では,電池31の残量が少なくなった旨を報知するブザー音が,利用者にとって耳障りな音であ るので,特に,就寝中にブザー音が鳴り始めたような場合に,ブザー音を停止させるべく電池31を抜き出す事例も多かった。つまり,利用者による電池31の交換が促進されず,電池31が抜かれたまま警報器30が放置されることも多かった。」g 【0010】「さらに,上記の警報器30では,電池31の交換が促進されない結果,電池31の残量に十分に余裕がある段階で早めに電池切れの報知を開始して,その後にブザー音を72時間以上継続するなど,電池31を無駄に消費していた。このため,上記した無監視状態の放置という問題点の他に,電池31の寿命が短くなり,必要以上に電池容量を大きくしなければならないという問題点もあった。」h 【0011】「そこで,この発明は,上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することができる電池式警報器を提供することを目的とする。」i 【0013】「この警報器によれば,電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視し,電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,ブザー音ではなく,電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを監視領域に出力する。したがって,利用者は取扱説明書を読まなくても,電池の残量が少なくなった旨を理解できるので,利用者による電池の交換を促進し,電池が切れたまま警報器が放置されるような事態を回避することができる。つまり,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置され が少なくなった旨を理解できるので,利用者による電池の交換を促進し,電池が切れたまま警報器が放置されるような事態を回避することができる。つまり,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。 また,この警報器によれば,電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合でも,いきなり音声メッセージを出力するのではなく,電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確 認要求を利用者から受け付けて初めて,音声メッセージを出力する。 したがって,利用者(特に,就寝中の利用者)が,いきなり出力される音声メッセージをうるさがって電池を抜き出すようなこともなくなるので,利用者による電池の交換を促進し,電池が抜かれたまま警報器が放置されるような事態を回避することができる。つまり,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。 さらに,この警報器によれば,電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,いきなりブザー音を出力するのではなく,先ずは電圧の低下を報知するためにランプなどを点灯または点滅させ,この点灯または点滅に気付いた利用者による確認要求に応じて初めて,音声メッセージを出力する。したがって,利用者(特に,就寝中の利用者)が,いきなり出力されるブザー音などをうるさがって電池を抜き出すようなこともなくなり,また,ランプなどの点灯または点滅,さらには音声メッセージの出力を介して,利用者は電池の残量が少なくなった旨を早急かつ確実に理解する。このため,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。」j 【0055】【発明の効果】「以上説明したように,本発明によれば,利用者は取扱説明書を読まなくても, 利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。」j 【0055】【発明の効果】「以上説明したように,本発明によれば,利用者は取扱説明書を読まなくても,電池の残量が少なくなった旨を理解できるので,利用者による電池の交換を促進し,電池が切れたまま警報器が放置されるような事態を回避することができる。つまり,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。 また,本発明によれば,利用者が(特に,就寝中の利用者),いきなり出力される音声メッセージをうるさがって電池を抜き出すような こともなくなるので,利用者による電池の交換を促進し,電池が抜かれたまま警報器が放置されるような事態を回避することができる。つまり,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。 また,本発明によれば,利用者(特に,就寝中の利用者)が,いきなり出力されるブザー音などをうるさがって電池を抜き出すようなこともなくなり,また,ランプなどの点灯または点滅,さらには音声メッセージの出力を介して,利用者は電池の残量が少なくなった旨を早急かつ確実に理解する。このため,利用者による電池の交換を促進し,無監視状態で放置される事態を回避することが可能になる。」(ウ) 以上の本件明細書の記載に照らせば,本件発明1の課題,解決手段及び作用効果は次のとおりである。 電池によって稼働する警報器については,電池残量が少なくなった場合には,警報を利用者に発して電池交換を促す必要があるところ(【0005】),従来技術においては,ブザーから警報(ブザー音)を出力することによって,これを利用者に報知していたが(【0006】),上記警報(ブザー音)の意味内容 電池交換を促す必要があるところ(【0005】),従来技術においては,ブザーから警報(ブザー音)を出力することによって,これを利用者に報知していたが(【0006】),上記警報(ブザー音)の意味内容が利用者に理解され難く,また,耳障りであって利用者が電池を抜き出してしまうことがあることから,利用者による電池交換が促されないという問題点があった(【0007】~【0009】)。また,利用者による電池交換が促されない結果,早めに電池切れの報知を開始することが必要になり,電池を無駄に消費し,必要以上に電池容量を大きくしなければならないという問題点もあった(【0010】)。本件発明1は,このような問題点を解決するものであり,具体的には,電池電圧低下を,ブザー音ではなく,電池交換を促す内容を含んだ音声メッセージによって報知することで,利用者が報知内容を理解できるようにし,さらに,上記音声メッセージの出力を,表 示灯手段による報知に気付いた利用者からの確認要求を受け付けてから出力するものとすることで,利用者がいきなり出力される音声メッセージ又はブザー音をうるさがって電池を抜き出すという事態も回避して,電池交換を促進し,無監視状態で警報器が報知される事態を回避するという作用効果を果たすものである(【0013】,【0057】)。また,これらにより,利用者が早期かつ確実に電池電圧低下を認識し,電池電圧低下を放置することなく早期の電池交換が促されることから,早めに電池切れの報知を行う必要もなくなり,この意味で,電池の無駄な消費を抑えることもできるというものである(【0010】,【0013】)。 (エ) 以上によれば,本件発明1は,電池電圧低下を検出した場合に,従来技術において採用されていた,意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて,意味が明確か ものである(【0010】,【0013】)。 (エ) 以上によれば,本件発明1は,電池電圧低下を検出した場合に,従来技術において採用されていた,意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて,意味が明確かつ耳障りでない音声メッセージによって電池交換を促すとともに,利用者が音声メッセージを聴取するための誘因として,視覚的効果を有する表示灯手段を採用し,さらに,表示灯手段を視認して誘引された利用者が確認要求受付手段を利用することにより,確実に音声メッセージを認識できるようにしたものである。 そうすると,本件発明1の技術的意義は,第1に,従来技術における意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて音声メッセージを利用するようにしたことであり,第2に音声メッセージへ到達するための誘因として視覚的な表示灯手段を利用するとともに,利用者の確認要求によって音声メッセージを確実に認識できるようにしたことにある。 このような技術的意義を有する構成を採用したことにより,早期に確実に電池交換をすることが促進され,電池の無駄な消費も抑えることができるようになる。 本件発明1の上記技術的意義に照らせば,本件発明1において,電池 電圧低下の検出と同時に発することが排除されているのは,利用者がうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りな音声又はブザー音であって,表示灯手段による報知と併せて発音を行うこと自体が全く排除されているものではないと解するのが相当である。そして,ハ号及びニ号製品における「ピッ」音は,50秒単位で発せられるものであり,利用者に異常表示灯手段への注意を促す程度のものとみることができるから,上記発音が,利用者においてうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されず,上記発音が本件発明1において排除されている音声に当たるものと 意を促す程度のものとみることができるから,上記発音が,利用者においてうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されず,上記発音が本件発明1において排除されている音声に当たるものとは解されない。 なお,被告は,本件明細書において「『ピッ』というブザー音」(【0006】)との記載部分に続けて,ブザー音が利用者にとって耳障りな音である旨の記載があることから(【0009】),「ピッ」音も,利用が排除されるべき耳障りな「ブザー音」に含まれると主張する。 しかし,本件明細書では,「『ピッ』というブザー音」と,「火災又はガス漏れ発生時と同様の警報(ブザー音)」が区別して記載されているところ(【0006】),本件明細書は,後者のブザー音(火災又はガス漏れ発生時と同様の警報)を,利用者において意味内容が理解され難く,かつ,耳障りとされるブザー音として記載したものと解されるのであって(【0008】,【0009】),上記記載により,「ピッ」音の併用が排除されているものとは解することができない。 また,被告は,本件発明1において,発音による報知は消費電力が大きいことから,その併用が排除されている旨も主張する。しかし,前記(ウ)でみたとおり,本件発明1は,利用者が早期かつ確実に電池の電圧低下を認識し,早期に電池交換が促される結果,電池の無駄な消費を抑えることができるというものであり(【0010】【0011】),電池切れの報知を表示灯手段によって行うことによって,利用者は早期か つ確実に電池の電圧低下を認識できるように誘引される結果,電池の無駄な消費が抑えられることとされているのであって,これに「ピッ」というブザー音を併用したからといって,従来技術のように電池の無断な消費が発生するものではない。したがって,この点をもって,「ピッ」 無駄な消費が抑えられることとされているのであって,これに「ピッ」というブザー音を併用したからといって,従来技術のように電池の無断な消費が発生するものではない。したがって,この点をもって,「ピッ」音の併用が排除されているものと解することも相当ではない。 (オ) 被告は,原告は表示灯手段による報知と発音又は発声手段による報知の併用を除外することにより本件特許査定を受けたものであるから,これらを併用する場合であっても構成要件Cを充足すると主張することは出願経過禁反言により許されないとも主張する。 確かに,原告は,特許庁審査官による拒絶理由通知(乙5の23)を受けて,平成18年3月13日付け手続補正書(乙5の25)により,特許請求の範囲及び明細書の記載を変更するとともに,同日付けで意見書(乙5の24)を提出しており,上記意見書には,「表示灯手段による点灯または点滅は,電圧低下が検知された場合に自動的かつ即時に行われる一方,音声出力手段による音声メッセージの出力は,確認要求受付手段によって確認要求が受け付けられるのを待って行われる。つまり,音声報知については,電圧低下の検知後も直ちには出力せずに『待機状態』とし,表示灯手段による報知に対して音声報知を『待機』させる。」(4頁19~23行),「従来技術では,…電池電圧が低下した場合,直ちに,ブザーにて警報音を出力していた。…これに対して請求項1に係る発明では,…利用者が能動的に指示を行わない限り音声出力が行われないので,…利用者の就寝中に音声がいきなり出力されるような事態を防止でき,…」(4頁28~42行),「引用文献1~4には,表示報知を自動的に行う一方,音声報知は利用者からの能動的な要求があった場合にのみ行うことで,音声報知のみを実質的に『待機状態』とする点は一切開示されていない 28~42行),「引用文献1~4には,表示報知を自動的に行う一方,音声報知は利用者からの能動的な要求があった場合にのみ行うことで,音声報知のみを実質的に『待機状態』とする点は一切開示されていない。…補正後の請求項1に係る発明は,… あえて音声報知のみを待機状態として遅延させることで,課題を解決したものである。」(6頁3~14行)等の記載がみられる。しかし,本件発明1の技術的意義が,意味不明のブザー音ではなく,音声メッセージにより早期かつ確実に電池の電圧低下を利用者に認識させることにあることに照らせば,上記意見書にいう音声メッセージとは,利用者が電池の電圧低下を認識できるような音声による意味のあるメッセージのことを指していることは明らかである。そうすると,上記意見書の記載はそのような意味のある音声メッセージが表示灯手段の点灯・点滅と同時には発せられないことを指摘したにとどまり,意味の付与されない「ピッ」というブザー音が表示灯手段の点灯・点滅と同時に発せられること,すなわち,電池電圧低下と同時に発音することを一切排除する趣旨の記載とみることはできない。 したがって,原告が,構成要件Cの意義を被告が主張するような趣旨に限定することによって本件特許査定を受けたものと評価することはできず,被告の主張を採用することはできない。 (カ) ハ号及びニ号製品は,電圧監視手段によって監視された電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して所定の回数(連続して5時間)検出した場合に緑点滅する表示灯手段を備えるものであり(ハ号及びニ号製品の構成③),上記異常表示灯手段は,電圧低下を報知するために点滅するものと評価することができるから,構成要件C(「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場 品の構成③),上記異常表示灯手段は,電圧低下を報知するために点滅するものと評価することができるから,構成要件C(「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するために点灯または点滅する表示灯手段と」)を充足する。 (2) 構成要件Dの充足性(争点(1)ア(イ))アイ号製品の点検スイッチ及びロ号ないしニ号製品の点検停止スイッチは,「電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かの確認」を「前記監 視領域の利用者から受け付ける」(イ号ないしニ号製品の構成④)ものであるから,構成要件Dを充足する。 イ被告は,第1次及び第2次無効審判における原告の主張を根拠として,「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」(構成要件D)とは,電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かのみを確認するための手段であることを要するところ,イ号製品の点検スイッチ及びロ号ないしニ号製品の点検停止スイッチは,電池電圧低下のほか,機器異常検出の有無等についての点検要求も受け付けるものであるから,構成要件Dを充足しない旨主張するので,検討する。 ウ第1次無効審判における原告の主張について(ア) 原告は,第1次無効審判における平成21年12月28日付け審判事件答弁書(乙7)において,甲3号証(乙38)のリセットスイッチ12は,ガス漏れ警報器等を総合的に管理する制御機器において,ガス圧力低下(ガス漏れ)の検出の確認要求を受け付ける手段であること(乙7の15~16頁),甲4号証(乙39)のキー33は,画像形成装置において,シートジャム等の機器異常が発生した際にその処理手順を発声するための手段である 検出の確認要求を受け付ける手段であること(乙7の15~16頁),甲4号証(乙39)のキー33は,画像形成装置において,シートジャム等の機器異常が発生した際にその処理手順を発声するための手段であること(乙7の17頁),甲5号証(乙40)のチェックSWは,農作業機においてセンサの断線等の異常箇所を報知する手段であること(乙7の19~20頁)をそれぞれ挙げて,これらの文献には「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を」受け付ける構成がない点で構成要件Dとは構成が異なる旨の主張(乙7の16頁6~8行,17頁18~20行,20頁19~21行)をしたものである。 しかし,原告の上記主張は,単に上記文献に電池電圧が低下しているか否かを確認するための確認要求を受け付ける構成が記載されていない という点を指摘したものにすぎず,「確認要求受付手段」が電池電圧低下に特化した確認を行うものでなければならない旨を記載したものとは解されない。 被告は,上記主張が,第1次無効審判において被告が主引用例とした甲1号証(乙37の4)において,電池電圧低下を発光手段により報知するガス漏れ警報器が記載されていることを前提として,これに上記各文献(甲3ないし5号証〔乙38ないし40〕)記載の周知技術を適用することができるかという観点に関し主張されたものであるから,原告の上記主張は,電池の電圧低下の確認の受付と,それ以外の機器異常の確認の受付では技術分野が異なる異質の技術である旨を主張したものとしか解されないとも主張する。しかし,原告は,甲3ないし5号証(乙38ないし40)の各機器が,上記のとおり構成要件Dに係る構成等を備えないものであることに加え,各発明の対象や機器の使用態様等において本件発明と大きく異なるものであ し,原告は,甲3ないし5号証(乙38ないし40)の各機器が,上記のとおり構成要件Dに係る構成等を備えないものであることに加え,各発明の対象や機器の使用態様等において本件発明と大きく異なるものであることなどから,電池電圧の低下を確認する必要や電池切れの状態が長期間放置されることを防止する必要等がないなどとして,これらの文献が本件特許に関連する周知の手段を立証するための証拠として適格性がない旨を主張したものであり,構成要件Dに係る構成によって,電池の電圧低下の確認の受付と,それ以外の機器以上の確認の受付とが異なる技術分野に属する異質の技術である旨を主張したものとは解されない。 (イ) また,原告は,上記答弁書において,甲2号証(乙37の9)の電池切れ確認スイッチは,電池切れ信号を送出した異常検知装置のユニットコードを報知させるための要求を受け付けるためのスイッチであり,本件発明1の電池式警報器とは確認すべき内容が異なっている旨の主張をしたものであるが(乙7の14頁10~21行),これについても,単に上記文献に電池電圧が低下しているか否かを確認するための確認要 求を受け付ける構成が記載されていないという点を指摘したものにすぎず,「確認要求受付手段」が電池電圧低下に特化した確認を行うものでなければならない旨を記載したものとは解されない。ここで,被告は,甲2号証(乙37の9)の警報器は,電池切れ確認スイッチを押すことにより,電池切れ情報とユニットコードの確認を行うものである以上,原告の上記主張は,電池切れ情報のみの確認を行うものでなければ構成要件Dに相当しない旨を主張したものと解されるべきである旨主張する。 しかし,原告が,上記答弁書において,「甲第2号証の警報装置は,電池切れ信号を送出した異常検知装置のユニットコード,つまりど ば構成要件Dに相当しない旨を主張したものと解されるべきである旨主張する。 しかし,原告が,上記答弁書において,「甲第2号証の警報装置は,電池切れ信号を送出した異常検知装置のユニットコード,つまりどの異常検知装置から電池切れ信号が発信されているかを報知するだけであって…」(乙7の14頁4~6行),「甲第2号証の電池切れ確認スイッチは,複数ある異常検知装置のいずれかが電池切れになっていると判った上で,どの異常検知装置が電池切れになっているのかを確認するためのスイッチである。」(乙7の14頁15~17行)等と主張していることに照らせば,原告が,電池切れ確認スイッチが電池切れ情報の確認を行うものではないとの趣旨で上記主張をしたものであり,被告の主張するような前提に立って構成要件Dとの相違点を主張したものではないことが明らかである。なお,乙37の9に記載されている警報器は,電池容量が規定値以下となると,警戒区域を識別するためのハウスコード,異常検知装置の装置間を識別するためのユニットコード及び信号種を識別するための信号コード(異常検知信号であるか,電池切れ信号であるか,又は異常復旧であるかの信号種を示すコード)から構成される電池切れ信号を受信機に対し送出し,これらのコードを信号判別回路,状態判別回路及び信号識別回路において順次識別することにより,電池切れの状態にあることを識別した上で,上記ユニットコードを電池切れユニット記憶回路において記憶するものである(乙37の9の3頁左下欄4 ~18行,4頁右上欄1行~左下欄14行)。そして,電池切れ確認スイッチを操作した際には,上記のとおり電池切れユニット記憶回路に記憶されているユニットコードを音声報知回路等へ送入することにより,上記ユニットコードを報知するものである(乙37の9の4頁右下 確認スイッチを操作した際には,上記のとおり電池切れユニット記憶回路に記憶されているユニットコードを音声報知回路等へ送入することにより,上記ユニットコードを報知するものである(乙37の9の4頁右下欄1~11行)。したがって,乙37の9に記載されている警報器において,電池切れ確認スイッチの操作により行われるのは,どのユニットコードの電池が電池切れとなっているかの確認であり,電池切れそのものの確認は行われないから,乙37の9記載の発明の内容を考慮したとしても,原告の主張の趣旨が被告の主張するようなものであったと理解することはできない。 (ウ) 以上のとおり,原告の第1次無効審判における主張が構成要件Dを被告の主張するように限定する内容のものとは解されない上,第1次審決(乙17)の内容を見ても,構成要件Dを被告の主張するように限定解釈することにより,本件特許の有効性が維持された等の事情を認めることはできない。したがって,第1次無効審判における原告の主張を根拠に,被告の主張するように構成要件Dを限定解釈すべきものとは解されない。 エ第2次無効審判における原告の主張について(ア) 原告は,第2次無効審判における平成22年10月5日付け審判事件答弁書(乙25)において,「甲第5号証(判決注:乙37の5)のテスト/サイレンスボタンは本件特許発明1における確認要求受付手段とは無関係のテストモード時の動作を説明したものに過ぎないことは明らかである。」と主張したものである(乙25の33頁26~28行)。 しかし,原告は,上記答弁書において,「甲第5号証は電池電圧の自己テスト(ビルトインテスト)によって電池電圧の低下を検出している場合に,ユーザ(利用者)に対してこのテスト/サイレンスボタンの操作 を促す表示,その他の報知を行う構成は開 は電池電圧の自己テスト(ビルトインテスト)によって電池電圧の低下を検出している場合に,ユーザ(利用者)に対してこのテスト/サイレンスボタンの操作 を促す表示,その他の報知を行う構成は開示されておらず,テスト/サイレンスボタンのユーザによるテストモード時の動作について開示されているに過ぎない。」との記載に続けて「すなわち,ユーザによるテストモード時にテスト/サイレンスボタンを所定操作すると,テスト(試験)の一環として電池電圧が低下しているか否かをチェックして,その結果を黄色LEDの表示によって出力し,…シミュレートするように構成されているだけである。」と主張している(乙25の33頁5~14行)。原告の上記主張に照らせば,原告は,同文献の「テスト/サイレンスボタン」が,所定操作された場合に電池電圧低下をチェックするものであって,電池電圧低下が検出・報知されている場合に,その操作により電池電圧低下の確認を行うものではないという点で構成要件Dの「確認要求受付手段」とは異なる旨の主張をしたものと解されるのであって,「(電池電圧低下以外の異常の有無についても確認を行う)テストモード時の操作であること」を理由として,構成要件Dの「確認要求受付手段」とは異なる旨の主張をしたものではないこと明らかである。 なお,乙37の5文献には,テスト/サイレンスボタンを押すことにより起動されるテストモードのほかに,約10分毎又は20運転サイクル毎にバッテリB1が運転を維持するのに十分な容量を有していることの確認のためにテストされること及び上記ビルトインテストによって低論理レベルが検出された場合には,LOWBATTERYフラッグがセットされ,この状態がユーザに示されること(乙37の5訳文16頁28行~3頁11行)が記載されている。しかし,ユー テストによって低論理レベルが検出された場合には,LOWBATTERYフラッグがセットされ,この状態がユーザに示されること(乙37の5訳文16頁28行~3頁11行)が記載されている。しかし,ユーザが,上記LOWBATTERYフラッグのセット状態を認識してテスト/サイレンスボタンを押すものであることは記載されておらず,また,電池電圧は,テスト/サイレンスボタンの操作によって,新たにチェックされるものであり(同訳文13頁11~20行),上記ビルトインテストによって 検出された,バッテリの低論理レベルが確認されるものでもないのであるから,乙37の5に記載された発明の内容を考慮しても,原告の主張の趣旨が被告の主張するような内容のものであったと理解することはできない。 (イ) 以上のとおり,原告の第2次無効審判における主張が構成要件Dを被告の主張するように限定する内容のものとは解されない上,第2次審決(甲22)及び第2次審決に対する審決取消訴訟の判決(乙89)の内容を見ても,構成要件Dを被告の主張するように限定解釈することにより,本件特許の有効性が維持された等の事情を認めることはできない。 したがって,第2次無効審判における原告の主張を根拠に,被告の主張するように構成要件Dを限定解釈すべきものとは解されない。 オしたがって,被告の主張はいずれも採用できず,イ号ないしニ号製品の点検スイッチ又は点検停止スイッチが,電池電圧低下以外の機器異常の有無等の確認要求も受け付けるものであることは,構成要件Dの充足性を左右しない。 (3) 構成要件Eの充足性(争点(1)ア(ウ))ア(ア) イ号ないしニ号製品は,電圧監視手段によって監視された電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回(連続して5時間)検出した場合であって 件Eの充足性(争点(1)ア(ウ))ア(ア) イ号ないしニ号製品は,電圧監視手段によって監視された電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを連続して5回(連続して5時間)検出した場合であって,かつ,点検スイッチ又は点検停止スイッチによって点検要求又は点検停止要求を受け付けたときに,監視領域に人声メッセージを出力するものであるから(イ号ないしニ号製品の構成⑤,⑥),構成要件Eの「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに」「音声メッセージを前記監視領域に出力する」を充足する。 (イ) この点に関し,被告は,イ号製品は,上記のとおり電池電圧低下を 検出した場合に加え,検出部位試験手段が検出部位の異常を検出した場合又は有効期間確認手段が所定の有効期間に達したと照合した場合であって,点検スイッチによって点検要求を受け付けた場合にも,同様に人声メッセージを出力するものであることから(イ号製品の構成⑤,⑥),イ号製品は構成要件Eの上記部分を充足しないと主張するが,イ号製品が他の異常を検出した場合にも同様の動作をすることは,単なる付加にすぎないものと解されるのであって,これにより構成要件Eの充足性が左右されるものではない。 イ 「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」について(ア) イ号製品において出力される音声メッセージは,「電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。」というものであり,ロ号ないしニ号製品において出力される音声メッセージは,「電池切れです。販売店に連絡してください。」というものである。 (イ) 被告は,「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」とは,利用者による電池交換 号製品において出力される音声メッセージは,「電池切れです。販売店に連絡してください。」というものである。 (イ) 被告は,「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」とは,利用者による電池交換を促す内容を含んだものに限られるところ,イ号ないしニ号製品において,利用者が電池交換を行うことは予定されておらず,利用者は上記メッセージに接しても電池交換を促されないから,イ号ないしニ号製品の上記メッセージは「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」に当たらないと主張する。 しかし,前記1(1)イ(イ)でみた本件明細書の記載に照らすと,本件発明1において,利用者による電池交換を促進することの目的は,警報器の電池が切れたまま無監視状態で放置される事態を回避することにあると解されるのであるから(【0011】,【0013】,【0055】),「利用者による電池交換を促進する」とは,利用者自身による電池交換を促進することに限定されるものではなく,警報器が電池切れのまま放置されることを回避するための利用者の行動を促すものであれ ば足りるものと解するのが相当である。 そうすると,イ号ないしニ号製品の上記メッセージは,いずれも「電池切れ」である旨の情報を利用者に提供し,販売店に連絡することにより,上記電池切れに対応するよう促す内容のものであって,警報器が電池切れのまま放置されることを回避するための利用者の行動を促すものと評価できるものである。 (ウ) なお,被告は,イ号製品については,電池電圧低下,検出部位の異常検出及び有効期間経過のいずれの場合にも同一の人声メッセージを出力するものであり,利用者は異常の内容を特定することができないから,イ号製品の上記メッセージは「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」に当たらない旨も主張 れの場合にも同一の人声メッセージを出力するものであり,利用者は異常の内容を特定することができないから,イ号製品の上記メッセージは「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」に当たらない旨も主張する。しかし,イ号製品において出力されるメッセージが「電池切れなどが発生しています。」というものである以上,電池電圧低下が検出されている場合に,利用者がこれを認識することが可能であることは明らかであり,電池電圧低下以外の場合にも同様のメッセージが出力されることは単なる付加的構成にすぎない。 (エ) 以上によれば,イ号ないしニ号製品において出力される音声メッセージは,いずれも「電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」を充足する。 ウしたがって,イ号ないしニ号製品は,構成要件Eを充足する。 (4) 小括よって,イ号ないしニ号製品は,いずれも本件発明1の技術的範囲に属する。 2 争点(1)イ(イ号ないしニ号製品が本件発明2の技術的範囲に属するか。)(1) 構成要件HないしJについてア本件発明2の構成要件HないしJは,本件発明1の構成要件D,C,Eにそれぞれ対応するものであるところ,イ号ないしニ号製品が,確認要求 を受け付けた場合に確認信号を出力するものであること(構成要件H)や,電圧監視回路によって出力された電圧低下信号を受け入れることを条件として表示灯手段を点滅させるものであること(構成要件I),電圧低下信号及び確認信号の入力を受け付けた場合に音声メッセージを出力するものであること(構成要件J)については,当事者間に実質的に争いがない。 イ被告は,構成要件CないしEと同じ理由により,構成要件HないしJの充足性を争うが,上記主張がいずれも理由のないものであることは,構成要件CないしEに関する当裁判所の判断でみ 質的に争いがない。 イ被告は,構成要件CないしEと同じ理由により,構成要件HないしJの充足性を争うが,上記主張がいずれも理由のないものであることは,構成要件CないしEに関する当裁判所の判断でみたとおりである。 ウしたがって,イ号ないしニ号製品は,いずれも構成要件HないしJを充足する。 (2) 構成要件Kについてア被告は,イ号ないしニ号製品の構成⑦において,イ号ないしニ号製品が,点検スイッチ又は点検停止スイッチを長時間操作された場合に鳴動信号(試験要求信号)を出力するものであることを認めている。 そうすると,イ号ないしニ号製品は,点検スイッチ又は点検停止スイッチを長時間操作することにより,異常の有無を確認するための鳴動信号(試験要求信号)を出力するものであり(イ号ないしニ号製品の構成⑦),監視領域の異常の検出ができるかを試験するものであるから,「前記異常の検出を試験するための試験要求を前記利用者から受け付けるもの」であって「前記異常の検出を試験するために用いられる試験信号を出力するもの」と認められる。 イイ号ないしニ号製品の点検スイッチ又は点検停止スイッチが「確認要求受付手段」に当たることは,本件発明1の構成要件Dでみたとおりである。 ウしたがって,イ号ないしニ号製品は,いずれも構成要件Kを充足する。 (3) 小括よって,イ号ないしニ号製品は,本件発明2の技術的範囲に属する。 3 争点(1)ウ(イ号ないしニ号製品が本件発明3の技術的範囲に属するか。)(1) イ号製品の構成要件L,M充足性についてイ号製品は,電池電圧低下等の警報器の異常が確定すると異常フラグを立たせるものであり(イ号製品の構成⑧),上記異常が確定している状態,すなわち異常フラグが立っている状態で,点検スイッチにより点検要求 イ号製品は,電池電圧低下等の警報器の異常が確定すると異常フラグを立たせるものであり(イ号製品の構成⑧),上記異常が確定している状態,すなわち異常フラグが立っている状態で,点検スイッチにより点検要求を受け付けると,監視領域に「電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。」との人声メッセージを出力するものである(イ号製品の構成⑨)。しかし,イ号製品においては,いったん警報器の異常が確定して異常フラグが立つと,その後,正常値検出があっても(すなわち,低電圧信号が入力されなくなっても)上記異常フラグが解消されず(イ号製品の構成⑧),上記異常フラグが立っていることにより,点検スイッチの操作により人声メッセージが出力されることになるのであるから,イ号製品において人声メッセージを出力するか否かは,電圧低下信号の入力とは直接関係せず,専ら異常フラグが立っているか否かによって決せられていると評価すべきである。 そうすると,イ号製品においては,点検スイッチによって点検要求が受け付けられた場合,電圧低下信号が入力されていないとしても,異常フラグが立っている以上,人声メッセージが出力されるものと解されるのであるから,イ号製品を,「確認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力されている場合に,前記音声メッセージを出力する」ものと評価することはできず,イ号製品は構成要件Mを充足しない。 (2) ロ号ないしニ号製品についてロ号ないしニ号製品は,電池電圧低下が確定すると異常フラグを立たせるものであり(ロ号ないしニ号製品の構成⑧),上記異常フラグが立っている状態で点検停止スイッチにより点検停止要求を受け付けると,監視領域に「電池切れです。販売店に連絡してください。」との人声メッセージを出力するものである(ロ号ないしニ号製品の構成⑨)。し が立っている状態で点検停止スイッチにより点検停止要求を受け付けると,監視領域に「電池切れです。販売店に連絡してください。」との人声メッセージを出力するものである(ロ号ないしニ号製品の構成⑨)。しかし,ロ号ないしニ号 製品においては,上記異常フラグは,28時間連続の正常値検出があった場合に解消されるものであるものの,正常値が検出されている場合(すなわち,低電圧信号が入力されていない場合)であっても,上記正常値検出が28時間継続していない場合には,上記異常フラグがいまだ解消されず,上記異常フラグが立っていることにより,上記人声メッセージが出力されるのであるから,ロ号ないしニ号製品において人声メッセージを出力するか否かは,低電圧信号の入力とは直接関係せず,専ら異常フラグが立っているか否かによって決せられていると評価すべきである。 したがって,ロ号ないしニ号製品を,「確認信号が入力された時点で前記電圧低下信号が入力されている場合に,前記音声メッセージを出力する」ものと評価することはできず,ロ号ないしニ号製品は構成要件Mを充足しない。 (3) したがって,その余の点について検討するまでもなく,イ号ないしニ号製品は,いずれも本件発明3の技術的範囲に属しない。 4 争点(1)エ(イ号ないしニ号製品が本件発明4の技術的範囲に属するか。)(1) イ号ないしニ号製品が構成要件FないしKを充足することは,争点(1)イに関する当裁判所の判断でみたとおりである。 (2) イ号ないしニ号製品が構成要件N及びOを充足することは当事者間争いがない。 (3) したがって,イ号ないしニ号製品は,本件発明4の技術的範囲に属する。 5 小括以上によれば,イ号ないしニ号製品は,本件発明1,2及び4の技術的範囲に属し,本件発明3の技術的範囲に属 (3) したがって,イ号ないしニ号製品は,本件発明4の技術的範囲に属する。 5 小括以上によれば,イ号ないしニ号製品は,本件発明1,2及び4の技術的範囲に属し,本件発明3の技術的範囲に属しない。 したがって,以下の争点については,本件発明1,2及び4についてのみ検討する。 6 争点(2)(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか。)(1) 乙48号証に基づく進歩性欠如の成否(争点(2)ア) ア乙48文献は,平成2年2月22日国際公開に係る国際公開第90/01759号である。 イ乙48文献には,次の記載がある。 (ア) 「本発明は煙検知器に関する。特に,これは,煙や燃焼物や熱の検知器を備えた建造物の居住者に対して,人声警報を発する手段である。 合成音によるメッセージが,居住者に,検知された状況に対して適切な行動を取ることを指示するものである。」(訳文1頁3~5行目)(イ) 「本発明は…居住用煙検知器,好ましくはイオン化検知器と,煙検知器や,熱センサや光センサなどの他のセンサからの様々な入力に応答するマイクロプロセッサとの組合せであり,入力に対して最も適切な行動と対応を選択するとともに,建物や住宅の居住者に聞こえる合成人声メッセージを生成する。これは,検知器がバッテリーで作動する場合は煙の状態あるいは低バッテリー電圧を知らせるホーン・アラームまたはこれに類するものに追加的になされる。」(訳文1頁10~16行目)(ウ) 「ホーン・アラームと人声アラームの両方を発生させる,煙,燃焼物,及び高温の検知器であって,この検知器は,検知器の位置や検知された状態に適したメッセージを選択することを可能にし,居住者に,最も適切な行動を取るよう指示する。…この検出器は,低バッテリー電圧を警報する人声メッセ 器であって,この検知器は,検知器の位置や検知された状態に適したメッセージを選択することを可能にし,居住者に,最も適切な行動を取るよう指示する。…この検出器は,低バッテリー電圧を警報する人声メッセージを発することも可能であり,このメッセージは,明るい環境のみに発せられてもよいし,環境の明るさレベルに応じて変えてもよい。」(訳文3頁10~16行目)(エ) 「図1は,本発明を実施するための装置の機能ブロック図である。 図1において,煙や燃焼物を検知するためにセンサ10が設けられている。バッテリー12が,センサ10とアラーム発信器14に電力を供給する。あるいは,他の交流式電源ラインから,センサ10とアラーム発信器14に電力供給されてもよい。テストユニット16が,センサ10 とアラーム発信器14に接続されており,検知される事象をシミュレートする手段となっている。センサ10による煙や燃焼物の検出,テストユニット16からの信号,またはバッテリー12からの低電圧レベルによって,アラーム発信器14が,ホーン18で,アラームを鳴らす。」(訳文3頁22行目~4頁3行目)(オ) 「図1の煙検出器20は,マイクロプロセッサ28につながるライン26に警告信号を送る。ライン30の制御信号は,アラーム発信器14に伝達され,人声が流れている間ホーン18からの音を中断させる。 …ライン26は,センサ10による煙,燃焼物,他の状況の検出を示す警告信号を出す。ライン26はまた,バッテリー12の電圧が低いことを知らせる信号を送ることもできる。」(訳文4頁16~23行目)(カ) 「マイクロプロセッサ28は,図1の装置によって伝達される複数のメッセージを表すデジタル化された人声を含む,プログラム可能な読み出し専用メモリ(PROM)36に接続されている。…マイク )(カ) 「マイクロプロセッサ28は,図1の装置によって伝達される複数のメッセージを表すデジタル化された人声を含む,プログラム可能な読み出し専用メモリ(PROM)36に接続されている。…マイクロプロセッサ,またはPROM36,あるいはその両方の中で,プログラムは,ライン26のアラーム情報,温度センサ38からの温度感知情報,及びメッセージ選択40からの情報に応答して,緊急事態の場合に使用される望ましい文言を決定する。そのメッセージは,言語変換器42で人声に変換され,スピーカ44から送り出される。…スピーカ44は,警報状況に応じて,取るべき行動を指示することによって,その発音式のアラームに価値ある補足を加えるのである。」(訳文4頁26行目~5頁4行目)(キ) 表1 PROMのメッセージテキスト「…22.火災部署に連絡してください。 23.煙検知器のバッテリーを交換してください。」(訳文6頁8~32行目) (ク) 「図2のテストスイッチ52は,図3のハウジング130の変形可能な切り欠き部として形成されている。テストスイッチ52は,ハウジング内に圧入され,人声煙検知器の人声部の作動をテストする。」(訳文8頁12~14行目)(ケ) 「表3は,種々の状況に応じて選択された表1からのメッセージの好適な選択を示す真理表である。…状況7は,バッテリーの電圧が限度値内のとき,スイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態であり,状況8は,ライン70における低バッテリー電圧のテスト結果である。」(訳文8頁30行目~9頁7行目)(コ) 「表3のそれぞれの状況は,マイクロプロセッサ50への8通りの異なる入力の選択を可能にする図2のスイッチ40によって変更される。 8つのメッセージの好適な選択を表3に挙げている。」( 行目)(コ) 「表3のそれぞれの状況は,マイクロプロセッサ50への8通りの異なる入力の選択を可能にする図2のスイッチ40によって変更される。 8つのメッセージの好適な選択を表3に挙げている。」(訳文9頁8~10行目)(サ) 表3(「表1のメッセージの真理表」)には,「状況7.テスト」で出力されるメッセージにつき「000,001,010,011,100」の場合は「23」,「101」の場合は「WORDS」,「110」の場合は「PHRASES」,「111」の場合は「INTRO.」であることが記載されている。(訳文9頁17行目~11頁1行目)ウ乙48発明の内容(ア) 乙48文献には,居住用煙検知器(ホーン・アラームと人声アラームの両方を発生させる,煙,燃焼物及び高温の検知器)であって(上記イ(イ),(ウ)),バッテリーによって電力を供給するもの(上記イ(イ),(エ))が記載されている。 (イ) 上記煙検知器は,バッテリー12からの低電圧レベルによって,アラーム発信器14が,ホーン18でアラームを鳴らすものであり(上記 イ(エ)),さらに,マイクロプロセッサ28につながるライン26に,バッテリー12の電圧が低いことを知らせる信号を送り(上記イ(オ)),スピーカ44から,低バッテリー電圧を警報する人声メッセージを発することも可能なものである(上記イ(イ),(ウ))。なお,上記煙検知器がバッテリー12からの低電圧レベルによってアラームを鳴らすものであり,かつ,ライン26にバッテリー12の低電圧を知らせる信号を送るものである以上,上記煙検知器は,バッテリー12が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視する手段を備えているものと認められる。 (ウ) 以上によれば,乙48文献には,a バッテリー12によって稼働し,監視領 ,上記煙検知器は,バッテリー12が所定の電圧以下に低下しているか否かを監視する手段を備えているものと認められる。 (ウ) 以上によれば,乙48文献には,a バッテリー12によって稼働し,監視領域の煙,燃焼物,高温等の異常を検出してホーン・アラーム及び人声メッセージを発するバッテリー式煙検知器であって,b 前記バッテリー12の電圧が低電圧であるか否かを監視する電圧監視手段と,c 前記電圧監視手段によって監視された前記バッテリー12の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するためにアラームを鳴らすアラーム発信器14と,e 前記電圧監視手段によって監視されたバッテリー12の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,低バッテリー電圧を警報する人声メッセージを前記監視領域に出力するスピーカ44と,を備えた人声機能付き煙検知器が記載されているものと認められる。 (エ) この点に関し,被告は,乙48文献の「23.煙検知器のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージについては,バッテリーの低電圧信号が送り出され,ホーン18からの発音式アラームからの報知があることを前提に,テストスイッチ52を閉じて状況7が生じた場 合に出力される(二段階報知)と主張する。 (オ) 被告の上記主張は,乙48文献における煙検知器は,マイクロプロセッサ28及びPROM36において,ライン26(煙検知器20からのライン)からのアラーム状況等に応答して,緊急事態の際に使用される望ましい文言を決定し,当該メッセージを言語変換器で人声に変換した上でスピーカから送り出すものであるから(上記イ(カ)),スピーカから発せられる人声メッセージは,ライン26からの何らかの情報に対応したものであると解することを前提として(以下「 器で人声に変換した上でスピーカから送り出すものであるから(上記イ(カ)),スピーカから発せられる人声メッセージは,ライン26からの何らかの情報に対応したものであると解することを前提として(以下「被告前提」という。),スイッチ40が「000,001,010,011,100」に設定されている場合の,「バッテリーの電圧が限度値内のときにスイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態(状況7)」におけるメッセージの好適な選択として,「煙検知器のバッテリーを交換してください。」とのメッセージテキストが挙げられているのであるから(上記イ(キ),(ケ),(コ),(サ)),上記「状況7」とは,上記メッセージの内容に対応した情報,すなわち煙検知器が低バッテリー状態であるとの情報がライン26から送られている場合であるはずである(以下「被告推測」という。)というものと解される。 しかし,乙48文献において,以下に述べるとおり,スピーカから発せられるメッセージがライン26からの何らかの情報に対応したものであるという被告前提自体は採用できるとしても,以下の理由から,状況7が,煙検知器が低バッテリー状態であるとの情報がライン26から送られている場合であるとする被告推測を採用することはできない。 テストスイッチ52は,「人声部の作動をテストする」ものとして記載されているのであって(上記イ(ク)),煙検知器のバッテリーであるバッテリー12の電圧をテストするものとしては記載されていない。また,被告の指摘する「状況7」も,「バッテリーの電圧が限度値内のと きに,スイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態」として記載されているのであって(上記イ(ケ)),テストスイッチ52が閉じられた場合であって,かつ,バッテリー12が低電圧の状態を指すものと きに,スイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態」として記載されているのであって(上記イ(ケ)),テストスイッチ52が閉じられた場合であって,かつ,バッテリー12が低電圧の状態を指すものとして記載されているものではない。したがって,乙48文献の上記記載からは,上記「状況7」は,単に「テストスイッチ52を閉じることにより生じる人声部のテスト状態」を記載したものと解されるのであって,出力されるメッセージが上記の内容のものであることをもって,上記「状況7」が,上記メッセージに対応する情報(煙検知器のバッテリーであるバッテリー12が低電圧であるとの情報)がライン26から送られている場合であるとみることはできない。 (カ) この点に関し,被告は,「人声部の作動をテストする」(上記イ(ク))とは,予備的電源であるバッテリー34の電圧低下の有無を確認することを意味するものであり,「バッテリーの電圧が限度値内のとき」(上記イ(ケ))とは,予備的電源であるバッテリー34が低電圧であるという状態であって急を要する状態ではないが,主たる電源であるバッテリー12の電圧が低下している状態を意味するものであると主張する。また,被告は,「バッテリーの電圧が限度値内のときに,スイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態」(上記イ(ケ))とは,まさに,バッテリー12が低電圧状態にあるときにテストスイッチ52を閉じることによって生じるテスト状態を記載したものであると主張する。 確かに,乙48文献には,「本発明の人声及び論理部の詳細な回路図」である図2に関し,「図2において,煙検知器20はライン26を介してラッチ50に接続されている。温度検知装置38もまたラッチ50に接続されている。テストスイッチ52のように,温度検知スイッチ38は,一般的に,サ し,「図2において,煙検知器20はライン26を介してラッチ50に接続されている。温度検知装置38もまたラッチ50に接続されている。テストスイッチ52のように,温度検知スイッチ38は,一般的に,サーモスタット式熱電対バイメタルスイッチであり, テストスイッチ52は機械的スイッチである。それぞれは,対応する情報である正電圧をラッチ50に付与する。…記載されるこれらの出力及びその他は,ダイオードORゲート54に取り込まれ,その出力は,トランジスタ56を介してタイマー58に与えられる。ORゲート54のダイオードのいずれか1つへの入力に対応するトランジスタ56からの出力は,タイマー58をセットして,バッテリー34を,パストランジスタ60を介して,電圧を供給すべく,ライン62上の全回路に接続する。ライン62の電圧は,また,レジスタ64とその後のツェナーダイオード66に取り込まれ,基準電圧を供給する。基準電圧は,比較器68においてライン62の分圧量と比較される。これにより,ライン70に取り込まれた低電圧を通知する信号をラッチ50に送る。」(訳文5頁6~19行目)との記載があり,これに図2で示される回路図の構成も併せて検討すれば,テストスイッチ52が閉じられた場合を含め,ラッチ50に入力がある場合には,同時に上記出力がダイオードORゲート54にも取り込まれ,その結果,バッテリー34の電圧の確認が行われるものであることを読み取ることができる。 しかし,上記のとおり,バッテリー34の電圧の確認は,テストスイッチ52が閉じられた場合のみならず,煙検知器20や温度検知スイッチ38からラッチ50に正電圧が付与された場合にも行われるものであるから,乙48文献において,テストスイッチ52につき,バッテリー34の電圧確認を行うものであることを指 煙検知器20や温度検知スイッチ38からラッチ50に正電圧が付与された場合にも行われるものであるから,乙48文献において,テストスイッチ52につき,バッテリー34の電圧確認を行うものであることを指して,「人声部の作動をテストする」と記載したものであるとは解し難い。また,乙48文献中に,バッテリー34の電圧とバッテリー12の電圧を関連付ける記載が見当たらない以上,テストスイッチ52を閉じた場合に,バッテリー34の電圧確認が行われることをもって,「限度値内」(「withinlimits」・乙48原文13頁2行目)との記載を,バッテリー34が低 電圧ではなく,かつ,バッテリー12が低電圧である場合を意味するものとして理解することもできるものではない。 (キ) さらに,上記図2を見ても,テストスイッチ52を閉じた場合に,正電圧がラッチ50に入力され,データパス90を介してマイクロプロセッサ28等に入力されることや,煙検知器20からライン26を介して煙検知器からの情報(上記イ(オ)によれば,煙,燃焼物,その他の情報を示す警告信号又はバッテリー12の電圧が低いことを知らせる信号)がラッチ50に入力され,データパス90を介してマイクロプロセッサ28等に入力されることが読み取れるものの,テストスイッチ52を閉じることと,煙検知器20からバッテリー12の電圧が低いことを知らせる信号の入力の有無が関連するか否かについては,上記回路図から読み取れるものではない。ほかに,乙48文献において,テストスイッチ52を閉じることと,バッテリー12の電圧の確認を関連付ける記載は見当たらない。 (ク) なお,乙48文献に,バッテリー12の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,マイクロプロセッサ28につながるラインに信号を送り,低バッテリー電圧を警 を関連付ける記載は見当たらない。 (ク) なお,乙48文献に,バッテリー12の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,マイクロプロセッサ28につながるラインに信号を送り,低バッテリー電圧を警報する人声メッセージを出力する構成が記載されていることは,前記(ウ)でみたとおりであるところ,被告は,このように煙検知器20から低バッテリーであることを示す信号が送られた場合に,人声メッセージが出力されるという上記構成の実施例として,上記「状況7」(スイッチ40が「000,001,010,011,100」に設定されている場合であって,かつ,テストスイッチ52が閉じられたときに,「煙検知器のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージを出力する)が記載されていると主張するものとも解される。しかし,「状況7」に関する乙48文献の記載からは,テストスイッチ52が,単に人声部の作動をテストするためのスイッチである とみられることは前記のとおりであり,上記「状況7」を,バッテリー12の電圧低下時の動作に関する上記構成と結びつけて解することはできない。また,乙48文献において,人声メッセージは,「煙の状態あるいは低バッテリー電圧を知らせるホーン・アラームまたはこれに類するものに追加的になされる」(上記イ(イ))ものであり,「警報状況に応じて,取るべき行動を指示することによって,その発音式のアラームに価値ある補足を加える」(上記イ(カ))ものとして記載されているところ,図2(回路図)の説明において,煙検知器からの情報がラッチ50に入力された場合に,「NANDゲート100は,警報発生器14からの発音式信号にポーズを作り出す継電器104を作動させ,そのポーズの間に人声ステートメントを流すことができる。」(乙48訳文5頁28~30行目)と記 に,「NANDゲート100は,警報発生器14からの発音式信号にポーズを作り出す継電器104を作動させ,そのポーズの間に人声ステートメントを流すことができる。」(乙48訳文5頁28~30行目)と記載されていることも併せて考慮すれば,煙検知器20において煙を検知した場合やバッテリー12が低電圧の状態となった場合等には,警報発生器14からホーン等が発せられるとともに,上記ホーン等にポーズ(間隔)を設け,上記間隔において人声メッセージが流れるものと解されるのであって,この点からも,バッテリー12が低電圧となった場合に,テストスイッチ52が閉じられることを待って人声メッセージが流れる構成が記載されているものとは解することができない。 (ケ) 以上によれば,乙48文献に,テストスイッチ52を押すことにより,バッテリー12の電圧低下の有無が確認され,上記電圧低下が確認された場合には,「煙検知器のバッテリーを交換してください。」との人声メッセージを発する構成が記載されていると認めることはできない。 (コ) なお,被告は,乙48文献の表2(訳文7頁~8頁)で,図2(回路図)の回路構成パーツの一覧として挙げられている電子部品(「マイクロプロセッサ28」につき「1802」,「PROM36」につき 「276C64,128または256」,「ラッチ50」及び「ラッチ96」につき「74HC373」)のデータシート(乙57~59)記載の構成及び作動は,当業者にとって技術常識であり,「WO90/0175のパーツリストに基づく配線図の回路動作説明」(乙55)は,上記構成及び作動をまとめたものであるから,乙48発明は,上記回路動作説明(乙55)記載のとおり理解されるべきであるとも主張する。 しかし,上記回路動作説明(乙55)の記載のうち,「例えば,メッセ 上記構成及び作動をまとめたものであるから,乙48発明は,上記回路動作説明(乙55)記載のとおり理解されるべきであるとも主張する。 しかし,上記回路動作説明(乙55)の記載のうち,「例えば,メッセージ選択器40の3つのスイッチが解放時(000)等に設定されていると,バッテリー12の異常については,テストスイッチ52からの入力があるまで,煙検知器20側のホーン18による発音警報があるだけで,ハウジング130内の回路は通常時の状態を維持する」との記載(乙55の1頁表紙下の本文の記載の7~11行目)や,「本図においては,メッセージ選択40の3つのスイッチが解放時(000)等に設定されている例として明細書に記載される,人声メッセージ23『煙検知器のバッテリーを交換して下さい』(明細書の表1 PROMのメッセージテキスト)が選択されている状態を前提として,ライン26からのアラーム情報がマイクロプロセッサ28においてバッテリー12の低電圧情報と判断され,かつ,テストスイッチ52が押されたとマイクロプロセッサ28に入力された場合の人声警報出力処理として説明を続ける。」(乙55の5頁11~16行目)との記載は,上記電子部品のデータシートから読み取れる情報ではなく,乙48文献から読み取れる内容として記載されているものであるところ(被告第9準備書面24頁,26頁),乙48文献からこれらの内容を読み取ることができないことは前述のとおりである。そうすると,上記回路動作説明(乙55)は,上記のような前提に立って,マイクロプロセッサ28,PROM36及びラッチ50・96の動作を説明したものであるから,乙48発明の内 容を,上記回路動作説明記載のとおりのものと解することはできない。 (サ) 以上によれば,乙48発明の内容は,前記(ウ)のとおりのもの ・96の動作を説明したものであるから,乙48発明の内 容を,上記回路動作説明記載のとおりのものと解することはできない。 (サ) 以上によれば,乙48発明の内容は,前記(ウ)のとおりのものであると認められる。 エ本件発明1と乙48発明との対比(ア) 本件発明1(その内容は前記前提事実(4)アのとおりである。)を乙48発明と対比すると,乙48発明の構成a及びbは,本件発明1の構成要件A及びBに相当するものと認められる。また,乙48発明の構成cは,「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,当該電圧の低下を報知するため」の構成を備える点で「点灯又は点滅する表示灯手段」の部分を除いて,本件発明1の構成要件Cと一致する。さらに,乙48発明の構成eは,「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合」に,低バッテリー電圧を警報する人声メッセージを出力するものであるところ,上記人声メッセージは,「前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージ」とみることができるものと解されるから,「かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,」の部分を除いて,本件発明1の構成要件Eと一致する。 (イ) しかし,乙48発明は,電池電圧が所定の電圧以下に低下していることを報知する手段が「点灯または点滅する表示灯手段」ではない点で,本件発明1の構成要件Cと相違する。また,前記ウでみたところによれば,乙48文献には,「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」に相当する構成が記載されているものとは認められないから,この点で本件発明1の構成要件Dと相違する。さらに, るか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付ける確認要求受付手段」に相当する構成が記載されているものとは認められないから,この点で本件発明1の構成要件Dと相違する。さらに,上記人声メッセージの出力が,「かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに」なされるものではない点で,本件発 明1の構成要件Eとも相違する。 オ相違点の検討(ア) 被告は,構成要件Cについての上記相違点については,乙37の4文献,乙37の7文献及び乙62ないし64文献に裏付けられる周知技術又はこれらの文献記載の発明を乙48発明と組み合わせることにより,本件発明に係る構成に容易に想到できるものである旨を主張している。 しかし,これらの文献に,本件発明の構成要件D及びEについての上記相違点に係る構成が開示されているものとは認められず,また,上記相違点に係る構成が当業者にとって適宜の設計事項であるとも認められない。したがって,乙48発明に乙37の4文献,乙37の7文献又は乙62ないし64文献記載の技術的事項を適用し,又は上記各文献記載の発明を乙48発明と組み合わせたとしても,本件発明1に想到することはできない。 また,被告は,乙48文献には構成要件D,Eの上記相違点(確認要求受付手段に関するもの)についての記載があるとの前提で主張しているから,上記構成要件D,Eの相違点に係る容易想到性について主張立証していない(上記周知技術であると被告が主張する各文献には確認要求受付手段についての記載はない。)。 したがって,この点からも,本件発明1は乙48発明から容易に想到できたものであるということができない。 (イ) よって,本件発明1は,乙48発明に上記乙37の4文献,乙37の7文献及び乙62ないし64文献を ,この点からも,本件発明1は乙48発明から容易に想到できたものであるということができない。 (イ) よって,本件発明1は,乙48発明に上記乙37の4文献,乙37の7文献及び乙62ないし64文献を組み合わせることにより当業者において容易に想到することができたものに当たらない。 カ本件発明2について(ア) 本件発明1について検討したところによれば,本件発明2(その内容は前記前提事実(4)イのとおりである。)と乙48発明は,少なくと も「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付けて,当該確認要求の受付を示す確認信号を出力する確認要求受付手段」(構成要件H)を備えず,かつ,音声出力手段が「前記確認要求受付手段によって出力された前記確認信号の入力を受け付けた場合に」音声メッセージを出力するものではない点(構成要件J)で本件発明2と相違するものであり,これらの相違点に係る構成は,乙37の4文献,乙37の7文献及び乙62ないし64文献に開示されていないものである。 (イ) したがって,その余の点について検討するまでもなく,本件発明2は,乙48発明に上記乙37の4文献,乙37の7文献又は乙62ないし64文献を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものに当たらない。 キ本件発明4について本件発明2が乙48発明に上記乙37の4文献,乙37の7文献又は乙62ないし64文献を組み合わせることにより進歩性を欠くものとは認められない以上,本件発明2を引用する発明である本件発明4(その内容は,前記前提事実(4)エのとおりである。)についても,上記組合せにより進歩性を欠くものとは認められない。 (2) 乙50号証に基づく進歩性欠如の成否(争点 を引用する発明である本件発明4(その内容は,前記前提事実(4)エのとおりである。)についても,上記組合せにより進歩性を欠くものとは認められない。 (2) 乙50号証に基づく進歩性欠如の成否(争点(2)イ)ア乙50文献は,平成11年10月19日特許発行に係る米国特許第5969600号公報である。 イ乙50文献には,次の記載がある。 (ア) 「本発明は,全体として,家又はオフィス等の閉ざされた空間において,火災,燃焼生成物,一酸化炭素等の危険状態の存在の警告を発生する装置に関する。」(訳文2頁9~10行目)(イ) 「バッテリ稼働危険状態センサのバッテリに,故障があると判断さ れたが,故障が切迫していない場合,独特の繰り返し可聴警報を短期間,一晩等,休止することが望ましい。しかしバッテリ故障が切迫している場合,その結果生じる警報を無視するのは賢明ではない。本発明が対象とするのは,これらの対照的な状態両方に対応する特性である。」(訳文5頁23~26行目)(ウ) 「発明の目的従って本発明のより広い目的は,バッテリの完全性を定期的に評価する特性を備え,バッテリの完全性が疑われる場合には,適切なバッテリ故障信号をユーザに提供する,改良されたバッテリ稼働危険状態検出装置を提供することにある。 本発明のより具体的な目的は,比較的長い期間後に故障しうるバッテリと故障が切迫したバッテリとの区別が内部でなされ,かつ,前者の状態についてのみ,ユーザ起動の一時的センサ故障信号の消音機能を提供する,バッテリ稼働危険状態検出装置を提供することである。」(訳文5頁27行目~6頁2行目)(エ) 「発明の概要本発明の以上の及びその他の目的は,感知された危険状態が所定状態を超えたときに警報を発するように適合された一つのバッテリ稼働危 である。」(訳文5頁27行目~6頁2行目)(エ) 「発明の概要本発明の以上の及びその他の目的は,感知された危険状態が所定状態を超えたときに警報を発するように適合された一つのバッテリ稼働危険状態警告装置によって達成され,この装置には,プロセッサと,危険状態センサと,ホーン等の可聴アナンシエータと,比較的長い期間(例えば8時間超)の後にバッテリ故障が予想される第1のバッテリ完全性に関する状態,及びバッテリ故障が切迫しており交換を行うべきである第2のバッテリ完全性に関する状態を検出するための,前記プロセッサと協働しバッテリの完全性を定期的にチェックするバッテリ状態モニター処理とを含む,モニター装置回路を組み込んである。回路は更に,第1及び第2のバッテリ完全性に関する状態の両方の検出に応じてホーンを独特の可聴警告(例えば約1分間隔で約10ミリ秒間の単パルス)を発 生するよう駆動することに適合された可聴式のバッテリ低完全性警告発生器を実行する。第1のバッテリ完全性に関する状態が検出された場合,プロセッサに連結された手動作動可能スイッチによって前記ホーンの駆動を所定期間にわたって抑制することが可能になるが,第2のバッテリ完全性に関する状態が検出された後のスイッチ作動によっては,ホーンの駆動を一時的に抑制することが防がれる。可視バッテリ状態表示器を更に設けて,取り付けられている複数の危険状態警告装置のうち,バッテリに問題あるものを同定するようにしてもよい。」(訳文6頁3~18行目)(オ) 「好適な例示的実施形態の詳細な説明図1を参照すると,本発明による危険状態検出ユニット100は,電源装置120と,プロセッサ130と,それぞれの可視表示器132と,手動作動可能なテスト/リセットスイッチ134と,好適なオーディオ変 図1を参照すると,本発明による危険状態検出ユニット100は,電源装置120と,プロセッサ130と,それぞれの可視表示器132と,手動作動可能なテスト/リセットスイッチ134と,好適なオーディオ変換器(例えば圧電ホーン142)及び共働するホーンドライバ140と,好適なセンサ150及びセンサ監視システム152とを備える。…電源装置120に,主電源としてバッテリを用いてもよい。」(訳文8頁10~19行目)(カ) 「プロセッサ502は,…以下を受容する。…テスト/リセットスイッチ134からの(ピン6にて送られる),好適な割り込み信号RB0/INT;及び(ピン18にて送られる)バッテリレベルを示す信号RA1/AN1。」(訳文11頁29行目~12頁2行目)(キ) 「次いでプロセッサ502は,以下に対して制御信号を送る。…ホーンドライバ140(ピン11;RB5)及び可視表示器132(ピン7~9,RB1~RB3)(適切な状態,規定のCO暴露状態を示す警告及び警報信号(濃度レベル及び暴露期間に応じた警報又は警告)を発し,規定のバッテリ又はセンサ故障状態を発する)。図5に示すように, 可視表示器132は,異なる色(例えばそれぞれ緑色,黄色(琥珀色)及び赤色)の発光ダイオードLED1,LED2及びLED3を構成する。」(訳文12頁5~14行目)(ク) 「典型的な警報表示シーケンスを表2に記載する。」表2状態LED作動ホーン作動………バッテリ故障(比較的顕著なバッテリ故障)5個の間隔をおいた10ms間パルスのバースト(10msON,500msOFF)を1分間隔で繰り返すシーケンスでLED1(緑色)を作動各バーストの第1のLEDパルスの直前に又は実質的に同時に1個の10ms間パルスを ルスのバースト(10msON,500msOFF)を1分間隔で繰り返すシーケンスでLED1(緑色)を作動各バーストの第1のLEDパルスの直前に又は実質的に同時に1個の10ms間パルスを作動………(訳文13頁11~20行目)(ケ) 「プロセッサ502は,…所定の一連のステップを実施する。…初期化シーケンスを実行し,次いで繰り返しメインループに入り,必要に応じて多くの割り込みの使用を可能にし,様々なサブルーチンを要求する。」(訳文23頁2~8行目)(コ) 「メインプログラムループ2600を通過する毎に,センサ出力を1回サンプリングする。」(訳文32頁29行目)(サ) 「バッテリ状態も定期的に,例えばメインプログラムループを通過する毎に一度,チェックする(ステップ2610)。図35を参照すると,3500でバッテリ状態更新ルーチンが要求されるとき,負荷バッテリ電圧を読み取ることで,非常に低いバッテリ状態(例えば公称3. 0ボルトバッテリについて約1.5ボルトの電圧読み取り)についてテ ストする(ステップ3502)。この特性が与えられていてそれほど低バッテリでない場合,Hushフラグの状態をテストし,設定されていれば,リターンする(ステップ3508)。しかし,低バッテリの場合,介入が間もなく必要であることを示しており,Hushフラグをリセットし(ステップ3505),Battery_Conditionフラグを設定し(ステップ3509),5個の10MS緑色LEDパルスを発し(ステップ3512),10MSホーンパルスを発し(ステップ3513),リターンする(ステップ3508)。 バッテリが非常に低いわけではなく,ハッシュ特性が作動していなければ,テストを行って(ステ (ステップ3512),10MSホーンパルスを発し(ステップ3513),リターンする(ステップ3508)。 バッテリが非常に低いわけではなく,ハッシュ特性が作動していなければ,テストを行って(ステップ3510),低い(しかし非常に低くは無い)バッテリ状態(例えば公称3.0ボルトバッテリについて約2. 5ボルト)が存在するか否かを判定する。存在する場合,Battery_Conditionフラグを設定し,5個の10MS緑色パルスと1個の10MSホーンパルスとを発しリターンする(ステップ3509,3512,3513及び3508)。」(訳文34頁26行目~35頁7行目)(シ) 「テスト/リセットスイッチ134は多くの目的を果たす。CO事象でないときに作動される場合は,ボタンが押されている限り,ホーンが鳴る。初期化ルーチンに入り,すなわちプログラムが再スタートされる。一方,テスト/リセットスイッチ134が押されている際にCO警告事象が起きている場合,ボタンが押されている限り,ホーンが鳴る。 次いで,視聴覚警報を5分間等の所定期間オフにするハッシュ機能を開始する。より具体的には,図36を参照すると,メインループ2600に連動して,テスト/リセットスイッチ134の状態を250ミリ秒毎にサンプリングする(ステップ2618)。 テスト/リセット/リリースルーチン3600が要求されると,Ho rn_Testフラグ2318をテストしてテスト/リセットスイッチ134が起動されたか否かを判定する(ステップ3602)。…Horn_Testフラグが設定されているとすれば,…テスト/リセットスイッチ134の現在の状態をサンプリングして,ボタンがまだ押されているか否かを判定する(ステップ3608)。ボタンがまだ押されている(リリースされていない)場合, いるとすれば,…テスト/リセットスイッチ134の現在の状態をサンプリングして,ボタンがまだ押されているか否かを判定する(ステップ3608)。ボタンがまだ押されている(リリースされていない)場合,ホーンをオンにし(ステップ3610),リターンする(ステップ3604)。 一方スイッチ134がリリースされている場合,ホーンをオフにする(ステップ3612)。Alarmフラグ及びWarningフラグをテストし,CO事象が起きているか否かを判定する。警告及びAlarmフラグのいずれも作動していない場合(ステップ3614及び3616),初期化ルーチンを実行してプログラムを再びやり直す(ステップ3618)。しかし,Alarmフラグ又はWarningフラグのいずれかが設定されている場合,ハッシュ特性を作動する。Hushフラグを設定し(ステップ3620),割り込みを無効にし(ステップ3622),Hush_Countを開始する(ステップ3624)。Hush_Countにロードしたカウントは,上述したようにハッシュ期間を対応するように設定した警告状態及び警報状態について,異なっていてもよい。」(訳文35頁14行目~36頁6行目)(ス) 「センサに故障が起こりうる状態であっても,比較的長い期間(すなわち8時間超)は故障に至らない場合に,ハッシュ機能が可能となることが分かるであろう。しかし,より短い期間でセンサ状態が信頼できなくなる場合,ハッシュ機能は抑制される。いずれの場合も,好適な独特の可聴警報が発せられ,その状態が存在する限り,又は(可能な場合には)テスト/リセットスイッチを作動することでハッシュ機能が確立するまで,又は勿論,検出器から電力がなくなるまで,選択されたパタ ーンで鳴り続ける。」(訳文37頁25~30行目)(セ) 「請求 ト/リセットスイッチを作動することでハッシュ機能が確立するまで,又は勿論,検出器から電力がなくなるまで,選択されたパタ ーンで鳴り続ける。」(訳文37頁25~30行目)(セ) 「請求の範囲1.感知された危険状態が所定状態を超えたとき警報を発生するように適合された危険状態警告装置であって,危険状態モニター装置はバッテリで作動し,前記危険状態モニター装置は,A)プロセッサと,B)可聴アナンシエータと,C)少なくとも一つの可視表示器と,D)前記プロセッサと協働して負荷バッテリの出力電圧を定期的にチェックするバッテリ状態モニター手段であって,1)比較的長い期間の後にバッテリ故障が予想される第1の低バッテリ状態を検出し,それに応答して第1のバッテリ異常表示を発生する手段と,2)バッテリ故障が切迫しており交換を行うべきである第2の低バッテリ状態を検出し,それに応答して第2のバッテリ異常表示を発生する手段とを含むバッテリ状態モニター手段と,E)前記第1及び第2のバッテリ異常表示の発生それぞれに応答して,前記可聴アナンシエータに毎分約10ミリ秒間の可聴警告を発生させるように適合された可聴式低バッテリ警告手段と,F)前記可視表示器に,約500ミリ秒間隔で5回の約10ミリ秒の点灯を一続きとし,前記短い可聴警告の発生それぞれに連携して前記一続きの5回の点灯のうち第1の点灯を発生するように適合された可視低バッテリ表示手段と,G)前記プロセッサに連結された手動作動可能スイッチと,H)前記第1の低バッテリ状態が検出された場合,前記第1のバッテリ 異常表示を所定期間にわたって発生することにより,前記可聴アナンシエータの駆動を抑制する,前記手動作動可能スイッチの作動に応答する手段と, リ状態が検出された場合,前記第1のバッテリ 異常表示を所定期間にわたって発生することにより,前記可聴アナンシエータの駆動を抑制する,前記手動作動可能スイッチの作動に応答する手段と,I)前記第2の低バッテリ状態が検出された場合,前記可聴アナンシエータの駆動を抑制しないように,前記第2のバッテリ異常表示を発生した後,前記手動作動可能スイッチの作動に応答する手段と,を含む危険状態モニター装置回路を備える,危険状態警告装置。」(訳文38頁11行目~39頁4行目)ウ乙50発明の内容(ア) 乙50文献の請求項1には,バッテリで作動する危険状態モニター装置であって,感知された危険状態が所定状態を超えたときに警報を発するもの(前記イ(セ))が記載されている。なお,乙50文献は,家又はオフィス等の閉ざされた空間において火災等の危険状態の存在の警告を発する装置に関する(上記イ(ア))ものであるから,上記危険状態モニター装置は,「家又はオフィス等の閉ざされた空間」を監視領域として,その異常を検出し,警報を発するものと認められる。 (イ) 上記危険状態モニター装置は,プロセッサと協働して負荷バッテリの出力電圧を定期的にチェックするバッテリ状態モニター手段を有する(前記イ(セ))。 (ウ) 上記危険状態モニター装置は,バッテリ電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,可聴アナンシエータにおいて可聴警告を発生させ,かつ,可視表示器において,上記可聴警告の発生に各連携して点灯を発生するものであるところ(前記イ(セ)),上記可聴アナンシエータにおける可聴警告は,約1分間隔で約10ミリ秒間の単パルス等であり,また,上記可視表示器における点灯は,LED等の可視表示器において約1分間隔で10ミリ秒間のパルスの点滅を繰り返すものであってもよ における可聴警告は,約1分間隔で約10ミリ秒間の単パルス等であり,また,上記可視表示器における点灯は,LED等の可視表示器において約1分間隔で10ミリ秒間のパルスの点滅を繰り返すものであってもよい とされている(上記イ(エ),(キ),(ク))。 (エ) さらに,上記危険状態モニター装置は,バッテリ状態をチェックすることができるものであり,かつ,その内部において,比較的長い期間(例えば8時間超)の後にバッテリ故障が予想される第1の低バッテリ状態(例えば公称3.0ボルトバッテリについて約2.5ボルトの電圧が読み取られた場合)と,バッテリ故障が切迫している第2の低バッテリ状態(例えば公称3.0ボルトのバッテリについて約1.5ボルトの電圧が読み取られた場合)とを区別して認識することのできるものである(上記イ(ウ),(サ),(セ))。そして,バッテリ状態の上記チェックは,上記危険状態モニター装置のプロセッサ502において繰り返し実行されるメインプログラムループにおいて,定期的にチェックされるものであり(上記イ(ケ),(サ),乙50の図26の「SERVICEBATTERYSTATUS 2610」),具体的には,①バッテリが非常に低い状態の場合(第2の低バッテリ状態が検出された場合)には,Hushフラグがセットされていればこれをリセットした上で,Battery_ConditionフラグをセットしてLEDパルス及びホーンパルスを発し,②バッテリが非常に低くはない場合(第2の低バッテリ状態が検出されない場合)には,Hushフラグがセットされていればリターンし,③バッテリが非常に低くはない場合(第2の低バッテリ状態が検出されない場合)であるが,第1の低バッテリ状態が検出された場合であって,かつ,Hushフラグがセットされていない場合 ていればリターンし,③バッテリが非常に低くはない場合(第2の低バッテリ状態が検出されない場合)であるが,第1の低バッテリ状態が検出された場合であって,かつ,Hushフラグがセットされていない場合には,Battery_ConditionフラグをセットしてLEDパルス及びホーンパルスを発するというものである(上記イ(サ),乙50の図35)。 (オ) テスト/リセットスイッチについてa 被告は,上記危険状態モニター装置は,テスト/リセットスイッチ を押すことによって,バッテリの電圧が第2の低バッテリ状態であるか否かの点検を行い,テスト/リセットスイッチを押したときに第1の低バッテリ状態であった場合には,Hushフラグを立てることにより,可聴アナンシエータによる報知を一定時間抑制する一方,第2の低バッテリ状態であった場合には,Hushフラグをリセットして,可視表示器によるLED点滅及び可聴アナンシエータによる報知を行うものであると主張する。 b そこでテスト/リセットスイッチに関する乙50文献の記載について見ると,乙50文献において,テスト/リセットスイッチは,これを押している間はホーンが鳴り(押しているスイッチを離すとホーンが止まる。上記イ(シ),乙50の図36),テスト/リセットスイッチを離す(リリースする)と,初期化ルーチンに入り,プログラムが再スタートされる(すなわち,センサ出力が一回サンプリングされる)とともに,Alarmフラグ及びWarningフラグのテストによってCO事象が起きているか否かが判定され,これらのフラグのいずれかが設定されている場合には,Hushフラグを設定し,Hush_Countを開始するものとして記載されている(上記イ(コ),(シ))。 c 原告は,上記記述が,CO事象の有無によりHus のいずれかが設定されている場合には,Hushフラグを設定し,Hush_Countを開始するものとして記載されている(上記イ(コ),(シ))。 c 原告は,上記記述が,CO事象の有無によりHushフラグを設定する旨のものであることから,テスト/リセットスイッチを押した場合にHushフラグが立つかどうかはCO事象の有無によるのであって,テスト/リセットスイッチを押すことによって,どのような場合にもHushフラグを立てられるものではないと主張する。 しかし,乙50文献の請求項1及び発明の概要には,第1の低バッテリ状態が検出された場合には手動作動可能スイッチの作動によって可聴アナンシエータの駆動を抑制する一方,第2の低バッテリ状態が 検出された場合には上記手動作動可能スイッチの作動によって可聴アナンシエータの駆動を抑制しないことが明記されており(上記イ(エ),(セ)),かつ,乙50発明が,第1の低バッテリ状態のとき,すなわちバッテリ故障が切迫していない場合のみ,ユーザが一時的にセンサ故障信号を消音することのできる装置を提供することを目的とするものであることが記載されている(上記イ(イ),(ウ))。加えて,乙50文献において,テスト/リセットスイッチに関する上記説明の後には,「センサに故障が起こりうる状態であっても,比較的長い期間(すなわち8時間超)は故障に至らない場合に,ハッシュ機能が可能となることが分かるであろう。しかし,より短い期間でセンサ状態が信頼できなくなる場合,ハッシュ機能は抑制される。いずれの場合も,好適な独特の可聴警報が発せられ,その状態が存在する限り,又は(可能な場合には)テスト/リセットスイッチを作動することでハッシュ機能が確立するまで,又は勿論,検出器から電力がなくなるまで,選択されたパターンで鳴 聴警報が発せられ,その状態が存在する限り,又は(可能な場合には)テスト/リセットスイッチを作動することでハッシュ機能が確立するまで,又は勿論,検出器から電力がなくなるまで,選択されたパターンで鳴り続ける。」との記載があるのであるから(上記イ(ス)),テスト/リセットスイッチを押した際にCO事象の有無によってHushフラグを立てられる旨の上記イ(シ)の記載は,テスト/リセットスイッチを押した際に故障等が切迫していない場合にHush機能を作動させることができることの一例として挙げられたものにすぎず,乙50文献には,CO事象が起きていない場合であっても,テスト/リセットスイッチを押した場合であって,故障等が切迫していない場合(第1の低バッテリ状態の場合を含む。)にはHush機能を作動させることができる装置が開示されていると解するのが相当である。 d 以上をまとめると,乙50発明の危険状態モニター装置は,定期的にバッテリ状態をチェックし,低バッテリ状態(第1の低バッテリ状 態及び第2の低バッテリ状態を含む。)が検出された場合には,基本的にLEDパルス及びホーンパルスを発するものであるが(上記ウ(エ)),テスト/リセットスイッチを押すことにより,第1の低バッテリ状態の場合にのみ,Hush機能を作動させて(Hushフラグを立てて),上記ホーンパルスを抑制する(消音する)ことができるものであり(上記ウ(オ)c),第2の低バッテリ状態の場合には,テスト/リセットスイッチを押すことによっても,上記ホーンパルスを抑制する(消音する)ことはできない(上記ウ(オ)c)ものであると認められる。なお,テスト/リセットスイッチが既に押されていることにより,Hushフラグが立っている場合には,第1の低バッテリ状態が検出された場合には,上記ホーンパ い(上記ウ(オ)c)ものであると認められる。なお,テスト/リセットスイッチが既に押されていることにより,Hushフラグが立っている場合には,第1の低バッテリ状態が検出された場合には,上記ホーンパルスを発しないが,第2の低バッテリ状態が検出された場合には,Hushフラグをリセットし,上記ホーンパルスを発するものである(上記イ(サ),ウ(エ))。 (カ) 以上によれば,乙50文献には,a バッテリによって稼働し,監視領域の危険状態が所定状態を超えたときに警報を発するバッテリ式危険状態モニター装置であって,b 前記バッテリの電圧を定期的にチェックするバッテリ状態モニター手段と,c 上記バッテリ状態モニター手段によって監視された上記バッテリの電圧が所定の電圧以下に低下している場合には,当該バッテリ電圧の低下を報知するためにLEDが点滅する可視表示器及び可聴警告(ホーンパルス)を発する可聴アナンシエータと,d テスト/リセットスイッチと,e 前記バッテリ状態モニター手段によって監視されているバッテリ電圧が第1の低バッテリ状態に低下している場合であって,かつ,上記テスト/リセットスイッチが押されたときに,上記可聴警告(ホーン パルス)の発生を一時的に抑制する一方,上記バッテリ電圧が第2の低バッテリ状態に低下している場合には,上記テスト/リセットスイッチが押されたときであっても,上記可聴警告(ホーンパルス)の発生が抑制されないことを特徴とする,バッテリ式危険状態モニター装置が記載されているものと認められる。 エ本件発明1と乙50発明との対比(ア) 本件発明1(その内容は前記前提事実(4)アのとおりである。)と乙50発明を対比すると,乙50発明の上記構成a,bは本件発明の構成要件A,Bに各相当する。 (イ) 1と乙50発明との対比(ア) 本件発明1(その内容は前記前提事実(4)アのとおりである。)と乙50発明を対比すると,乙50発明の上記構成a,bは本件発明の構成要件A,Bに各相当する。 (イ) 乙50発明の上記構成cは,バッテリ電圧が所定の電圧以下に低下している場合に,可視表示器のLEDが点滅するのみではなく,可聴アナンシエータから可聴警告(ホーンパルス)を発するものである。しかし,本件発明1において,電池電圧低下の検出と同時に発することが排除されているのは,利用者がうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りな音声又はブザー音であって,表示灯手段による報知と併せて発音を行うこと自体が排除されているものとは解されないことは前記第4の1(1)イ(エ)でみたとおりである。そして,上記ホーンパルスは,LEDが約1分間隔で点滅するのに合わせて,10ミリ秒のホーンを発するというものであるから(前記イ(ク)),利用者がうるさがってバッテリを抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されない。したがって,乙50発明が,バッテリ電圧の低下を報知するために,可聴アナンシエータから可聴警告(ホーンパルス)を発するものであることをもって,乙50発明の上記構成cが本件発明1の構成要件Cと相違するものではない。 よって,乙50発明の上記構成cは,本件発明の構成要件Cに相当す る。 (ウ) しかし,乙50発明のテスト/リセットスイッチ(上記構成d)は,これを押すことにより,押している間はホーンが鳴り,これを離すと,初期化ルーチンに入ることによりセンサ出力を1回サンプリングするとともに,故障等が切迫していない状態(第1の低バッテリ状態を含む。)には,可聴警告(ホーンパルス)を抑制することができるものである。そうすると,乙50発明のテスト/ ンサ出力を1回サンプリングするとともに,故障等が切迫していない状態(第1の低バッテリ状態を含む。)には,可聴警告(ホーンパルス)を抑制することができるものである。そうすると,乙50発明のテスト/リセットスイッチは,センサ出力のサンプリング及び可聴警告(ホーンパルス)の抑制の要求を利用者から受け付けるものとみられるのであって,電圧低下の確認要求を利用者から受け付けるものとはみることができない。 また,上記テスト/リセットスイッチは,これを押すことにより,バッテリ電圧が第1の低バッテリ状態に低下している場合に,可聴警告(ホーンパルス)を抑制する一方,バッテリ電圧が第2の低バッテリ状態に低下している場合には,上記可聴警告(ホーンパルス)を抑制せず,上記可聴警告(ホーンパルス)が発せられ続けるというものであり,バッテリ電圧が低下している場合に,新たな音声メッセージ等を出力するものではない。 (エ) この点に関し,被告は,テスト/リセットスイッチは,バッテリ電圧が第1の低バッテリ状態にあるのか,第2の低バッテリ状態にあるのかを確認するためのスイッチであり,テスト/リセットスイッチが押された場合には,バッテリ電圧が第2の低バッテリ状態にあることを報知するために可聴警報(ホーンパルス)を出力するものであると主張する。 しかし,そもそも,上記可聴警報(ホーンパルス)は,バッテリ電圧が低下している場合(第1の低バッテリ状態及び第2の低バッテリ状態のいずれの場合も含む。)に,これを報知するために発せられ始めるものであり,バッテリ電圧が第2の低バッテリ状態に低下している場合に は,テスト/リセットスイッチを押してもこれが出力され続けるにとどまるものであって,テスト/リセットスイッチを押すことにより,新たな発音がされるものではない。ま 状態に低下している場合に は,テスト/リセットスイッチを押してもこれが出力され続けるにとどまるものであって,テスト/リセットスイッチを押すことにより,新たな発音がされるものではない。また,乙50発明の目的(前記イ(ウ))から明らかなとおり,乙50発明のバッテリ式危険状態モニター装置のユーザは,バッテリ電圧が第1の低バッテリ状態にある場合に上記可聴警報(ホーンパルス)を抑制するためにテスト/リセットスイッチを押すのであって,上記可聴警報(ホーンパルス)が抑制されるか否かによって,バッテリ電圧が第1の低バッテリ状態と第2の低バッテリ状態のいずれの状態であるかを確認するものとは解されない。 したがって,乙50発明の「テスト/リセットスイッチ52」は,本件発明1の「確認要求受付手段」(構成要件D)に相当するものとは認められない。また,乙50発明のバッテリ式危険状態モニター装置が,「前記電圧監視手段によって監視された前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下している場合であって,かつ,前記確認要求受付手段によって前記確認要求を受け付けたときに,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声手段」(構成要件E)に相当する構成を備えるものとも認められない。 (オ) 以上によれば,乙50発明は,構成要件AないしCに関し本件発明1と一致し,構成要件D及びEに関し本件発明1と相違する。 オ相違点の検討(ア) 乙48文献との組合せに関する検討a 被告は,乙48文献には,一定の変化のない報知手段に追加して人声メッセージを送り出す構成を設けることが記載されている上,「テストスイッチ52」を閉じることで,上記人声メッセージを送り出す構成が記載されているのであるから,乙50発明に乙48発明を適用することにより,本件 を送り出す構成を設けることが記載されている上,「テストスイッチ52」を閉じることで,上記人声メッセージを送り出す構成が記載されているのであるから,乙50発明に乙48発明を適用することにより,本件発明1に想到することができると主張する。 b しかし,乙48文献記載の人声機能付き煙検知器は,バッテリー12が所定の電圧以下に低下している場合に,アラーム(ホーン等)にポーズ(間隔)を設け,上記ポーズ(間隔)において,低バッテリー電圧を報知する人声メッセージを流すものと解されるのであって,テストスイッチ52を閉じることにより,電池電圧低下を報知するために上記人声メッセージが流れるものと解することはできないものである(前記第4の6(1)ウ)。 そうすると,仮に,乙50発明に乙48発明を適用したとしても,乙50発明記載のバッテリ式危険状態モニター装置において,可聴警報(ホーンパルス)のポーズにおいて,人声メッセージが流れる構成となるのみであって,本件発明1の構成D,Eに想到することはできないものというべきである。 c したがって,乙50発明に乙48発明を組み合わせることにより,本件発明1に想到することはできない。 (イ) 乙37の2発明との組合せに関する検討a 乙37の2文献には,次の記載がある。 「実用新案登録請求の範囲(1) 燃焼状態が異常になったときに発光素子等の点灯或いは点滅によって異常事態の発生を報知するものにおいて,前記発光素子等の異常事態発生の報知により使用者がスイッチを押圧すると音声合成装置が前記発光素子等による異常事態の内容を報知することを特徴とする音声合成装置を備えた燃焼。」(乙37の2第1頁4~10行目)「従来の燃焼の異常事態発生の報知は…発光素子等の発光手段,或いはブザー等 子等による異常事態の内容を報知することを特徴とする音声合成装置を備えた燃焼。」(乙37の2第1頁4~10行目)「従来の燃焼の異常事態発生の報知は…発光素子等の発光手段,或いはブザー等の発音手段で行なっていた。また,異常事態発生を音声合成装置で報知するものもある。…しかし,発光素子を用いたもの にあっては異常事態が具体的にどのような異常事態であるかを知らせるには異常事態の種類だけ発光素子が必要であり,単一の発光素子或いはブザー等で報知するものにあっては使用者は取扱い説明書等により異常事態の内容を調べなければならなかった。また,異常事態を音声合成装置で報知するものにあっては,使用者の意思に関係なく音声合成装置が働いてしまい異常事態の内には使用者が直ちに対応しなくても済むようなものもあり使用者に不快感を与えていた。…本考案は,燃焼制御回路(4)からの異常事態発生信号により発光素子(3)を点灯させて異常事態発生を報知させると共に,使用者が確認スイッチ(2)を押圧することによって燃焼制御回路(4)からの前記異常事態信号が音声合成装置(1)に入力され音声合成装置(1)からスピーカ等の発声装置(5)が具体的にどのような異常事態であるのか報知することにより前記問題点を解決している。」(乙37の2第1頁16行目~3頁2行目)b 以上によれば,乙37の2文献には,燃焼であって,燃焼制御回路における異常事態の発生を発光素子の点灯によって報知するとともに,使用者が確認スイッチを押すことで,発声装置から異常事態の内容を報知する音声を発声装置から出力する音声合成装置を備えたものが開示されている。 c しかし,前述のとおり,乙50発明におけるテスト/リセットスイッチは,センサ出力のサンプリングを行うとともに,可聴警告(ホーンパ 声装置から出力する音声合成装置を備えたものが開示されている。 c しかし,前述のとおり,乙50発明におけるテスト/リセットスイッチは,センサ出力のサンプリングを行うとともに,可聴警告(ホーンパルス)の抑制の要求を受け付けるものであって,異常事態の内容を確認するためのものではない。また,乙50発明においては,バッテリ式危険状態モニター装置の状態に応じてLED及びホーンの作動が異なるものとされているのであって(乙50文献の訳文13頁の表2),乙50文献において,LED及びホーンによって報知される異 常の内容を具体的に確認するという構成を導入する示唆又は動機付けはみられない。 さらに,乙50発明は,バッテリ故障が切迫している場合に,繰り返し可聴警報を継続させる一方,バッテリ故障が切迫していない場合に,上記可聴警報を短期間休止することによって,これら両方の状態に対応することを目的とするものであり(前記(2)イ(イ)),バッテリ故障が切迫していない場合にこれを抑制することに主たる目的があるものと解されるから,乙50発明において,LED及びホーンによる報知に加えて,異常の内容を音声メッセージにより更に報知するという構成を導入する動機付けは,この点でもみられないというべきである。 d よって,乙50発明に乙37の2発明を組み合わせることはできず,これにより本件発明1に容易に想到することはできない。 (ウ) したがって,本件発明1は,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を組み合わせることにより当業者において容易に想到することができたものに当たらない。 カ本件発明2について(ア) 本件発明1について検討したところによれば,本件発明2(その内容は前記前提事実(4)イのとおりである。)と乙50発明は,少なくとも「前記電 きたものに当たらない。 カ本件発明2について(ア) 本件発明1について検討したところによれば,本件発明2(その内容は前記前提事実(4)イのとおりである。)と乙50発明は,少なくとも「前記電池の電圧が所定の電圧以下に低下しているか否かを確認するための確認要求を前記監視領域の利用者から受け付けて,当該確認要求の受付を示す確認信号を出力する確認要求受付手段」(構成要件H)を備えず,かつ,「前記電圧監視手段によって出力された前記電圧低下信号の入力を受け付けると共に,前記確認要求受付手段によって出力された前記確認信号の入力を受け付けた場合には,前記電池の交換を促す内容を含んだ音声メッセージを前記監視領域に出力する音声出力手段」 (構成要件J)を備えるものでもない点で本件発明2と相違する。 (イ) 乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を組み合わせることにより,上記相違点に係る構成に想到することができないことは,本件発明1に関する上記検討でみたとおりである。 (ウ) したがって,その余の点について検討するまでもなく,本件発明2は,乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を組み合わせることにより当業者において容易に想到することができたものに当たらない。 キ本件発明4について本件発明2が乙50発明に乙48発明又は乙37の2発明を組み合わせることにより進歩性を欠くものと認められない以上,本件発明2を引用する発明である本件発明4(その内容は前記前提事実(4)エのとおりである。)についても,上記組合せにより進歩性を欠くものとは認められない。 (3) 小括以上によれば,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものに当たらない。 7 争点(3)(東京瓦斯納入製品についての侵害の成否)(1)ア被告は,東京瓦斯に れない。 (3) 小括以上によれば,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものに当たらない。 7 争点(3)(東京瓦斯納入製品についての侵害の成否)(1)ア被告は,東京瓦斯に納入した製品のうち,被告型式名SA-173E,SA-173Ea,SW-106E及びSA-156Eb(販売型式名SC-K921B-K,SC-K922B-K,SC-K921B-CK及びSC-K920B-K)については,東京瓦斯の自己実施と同視すべきものであるから,東京瓦斯が本件特許権の共有特許権者であった平成24年2月26日までの間については,上記被告製品の製造及び東京瓦斯への納入は,特許法73条2項により本件特許権侵害を構成しないと主張する。 イ確かに,証拠(乙73ないし82)によれば,東京瓦斯は,平成16年6月17日付けオリエンテーションにおいて被告を含む警報器メーカー各社に対し,技術仕様書を示して製品検討を依頼し,その後,平成17年1 1月25日から平成18年9月26日までにかけて,被告との間で定期的に打合せを行い,販売型式名SC-K920B-K,SC-K920B-CK等の製品について詳細な仕様検討を行ったものであることが認められる。 しかし,上記製品のうち,SA-156Eb(販売型式名SC-K920B-K)及びSA-173Ea(販売型式名SC-K922B-K)の取扱説明書(甲5,13)には,製造者として被告の名称のみが記載されている上,被告は,上記製品(いずれもロ号製品に含まれるものである。)と本件特許に関する構成において同一の製品である,その他のロ号製品を製造し,自社製品として市販しているものと認められる(甲14,16)。また,上記製品の製造に当たり,材料の調達,品質管理等において東京瓦斯が関与したことはうかがわれ の製品である,その他のロ号製品を製造し,自社製品として市販しているものと認められる(甲14,16)。また,上記製品の製造に当たり,材料の調達,品質管理等において東京瓦斯が関与したことはうかがわれず,東京瓦斯に対する上記製品の納入についても,通常の売買契約によるものであったことがうかがわれる。 これらの事情に照らすと,上記製品の製造及び納入を東京瓦斯の自己実施と同視することはできないものというべきである。 (2) 他方,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成14年7月16日,原告の単独出願として本件発明につき特許登録出願を行った(甲1,乙5の2)。 イ原告は,本件特許出願後,東京瓦斯に対し,本件特許出願に係る発明の内容につき提案を行い,東京瓦斯からの要請を受けて,平成15年9月18日頃,上記発明につき特許を受ける権利を一部譲渡し,同年10月2日,特許庁に対し,その旨の届け出をした(甲31,乙5の3ないし6)。 ウ東京瓦斯は,平成16年6月17日,原告,被告を含む火災警報器メーカー各社に向けて,「住宅用火災警報器設置義務の法制度化を踏まえた06年度までの『警報器商品戦略』について」と題するオリエンテーショ ンを開催した(乙73)。 上記オリエンテーションにおいて配布された資料に添付された「煙式火災警報器仕様」には,「電池切れ・故障時」の警報方式に関し,「緑LED点滅」,「点検スイッチ作動時『ピピ電池切れなどが発生しています販売店に連絡して下さい』」との記載があるところ,上記記載は,東京瓦斯が,原告の提案を受けて,エンドユーザー等の意見聴取及び社内検討を加えた上で,各メーカーに対し,望ましい商品仕様として提示したものであった(甲31,乙73 との記載があるところ,上記記載は,東京瓦斯が,原告の提案を受けて,エンドユーザー等の意見聴取及び社内検討を加えた上で,各メーカーに対し,望ましい商品仕様として提示したものであった(甲31,乙73)。 エ被告は,上記オリエンテーションを受けて東京瓦斯との間で定期的に製品仕様等に関し打合せを行い,電池切れ報知に関し,上記仕様に沿った方式とすることに加えて,電池電圧低下から1週間経過後に「ピッ」音を発生させること等を決定し,製品仕様を決定してその製造を開始した(乙74ないし82)。 オ以上の経緯に加え,東京瓦斯が,自ら火災警報器の製造を行うものではなく,各社から火災警報器の納入を受け,これを販売等するものであること(乙73)を考慮すれば,東京瓦斯は,本件特許権を製造各社に実施させる趣旨で本件発明につき特許を受ける権利の持分譲渡を受けたものと解されるのであって,原告はこれを認識していたものと認められる。加えて,上記ウのとおり,東京瓦斯は,原告からの提案を受けて,本件発明に係る構成を含む技術仕様を製造各社に提案しており,上記提案が行われた会合には,原告も出席していたのであるから,原告は,東京瓦斯が本件発明に係る構成を含む製品を他社に製造させる蓋然性が高いことを十分に認識していたものと認められる。にもかかわらず,原告が東京瓦斯に対し異議を述べた形跡がみられないことに照らせば,原告は,東京瓦斯が他社に本件特許権を実施許諾するに当たり,黙示に同意していたものと認めるのが相当である。これは,原告が平成24年2月27日付けで東京瓦斯から本件 特許権の共有持分の譲渡を受けていること(甲33)を考慮しても左右されない。 カこの点に関し,原告は,原告と東京瓦斯との間には,本件特許権の実施品の製造は原告のみが行い,第三者への実施許諾は原 特許権の共有持分の譲渡を受けていること(甲33)を考慮しても左右されない。 カこの点に関し,原告は,原告と東京瓦斯との間には,本件特許権の実施品の製造は原告のみが行い,第三者への実施許諾は原告と東京瓦斯との間の協議によることとする旨の明示の合意があるから,原告が東京瓦斯による実施許諾につき黙示に合意することは,上記明示の合意に反するものであって,あり得ない旨主張する。 しかし,被告製品のうち,東京瓦斯に納入されたものが本件特許権侵害を構成するものであるか否かに関し,当裁判所は,平成24年1月16日の第6回弁論準備手続期日において,原告に,乙73ないし82号証に基づく被告の主張に対し反論するよう促すとともに,東京瓦斯に特許を受ける権利の持分を譲渡した経緯について明らかにするよう求め,原告は,これを受けて主張及び証拠(甲31ないし33)を補充した。その上で,当裁判所は,平成24年4月18日の第8回弁論準備手続期日において,原告及び被告から,充足論・無効論に関する主張立証は終了した旨を聴取して,侵害論に関する審理を終結し,本件に関する裁判所の見解を示して和解を勧告するとともに,損害論に関する審理に入ったものであるところ,原告の上記主張及び証拠(甲37号証)は,上記のとおり損害論に関する審理に入った後である平成24年7月6日付けで提出されたものである(第6ないし8回,第10回弁論準備手続調書,当裁判所に顕著)。 以上の経緯に照らせば,原告の上記主張は,重大な過失により時機に後れて提出された防御方法に当たり,これにより本件訴訟の完結を遅延させることとなると認められる。したがって,民訴法157条1項に基づき,原告の上記主張は却下する。また,甲37号証については,上記主張を裏付けるものとしてはこれを採用しない。 キ以上によれ 遅延させることとなると認められる。したがって,民訴法157条1項に基づき,原告の上記主張は却下する。また,甲37号証については,上記主張を裏付けるものとしてはこれを採用しない。 キ以上によれば,被告が東京瓦斯に納入した製品については,本件特許権 侵害を構成しない。 8 争点(4)(消滅時効の成否)(1) 証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,上記争点に関し,次の事実が認められる。 ア原告と東京瓦斯は,本件特許登録前である平成17年7月14日付けで,被告に対し,本件特許出願番号等を示し,通常実施権の許諾につき提案する旨の「特許実施に対するご提案」と題する書面を送付し,上記書面は,その頃被告に到達した(甲34)。 イ被告は,平成16年10月頃から型番「SA-156E」の製品を,平成18年3月頃から型番「SA-156Ea」の製品を,平成19年7月頃から型番「SA-156Ec」の製品を販売している(乙93)。 ウ被告は,平成18年3月10日,上記書面(甲34)に対する回答として,提案受諾を保留したい旨の回答をし,さらに,平成19年6月28日,被告の製造する製品は本件特許に抵触せず,また,本件特許権には無効理由が内在する蓋然性が高い旨の回答をした(甲35,36)。 エ原告は,平成19年8月30日,被告に対し,イ号製品(東京ガス株式会社向け仕様住宅用火災警報器・型式名SA-156E,SA-156Eb等)及びロ号製品(大阪ガス株式会社向け仕様住宅用火災警報器・商品名「けむぴこ」等)は本件特許権の技術的範囲に属しているものと思料する旨の通知書を送付し,上記通知書は,その頃,被告に到達した(乙92)。 なお,上記通知書にいう「イ号製品」のうち,SA-156Eは,本件におけるイ号製品であるが 範囲に属しているものと思料する旨の通知書を送付し,上記通知書は,その頃,被告に到達した(乙92)。 なお,上記通知書にいう「イ号製品」のうち,SA-156Eは,本件におけるイ号製品であるが,SA-156Ebは本件におけるロ号製品である。また,上記通知書にいう「ロ号製品」の「けむぴこ」の中には,SA-157E(販売用型式102-0001)のハ号製品(甲11の1,乙130の1)が含まれているものと解される。 オ原告は,平成22年8月23日,被告に対し,被告の製造販売する「SA-156E,SA-156Ea,SA-156Eb,SA-156Ex,SA-157E,SA-157E,SA-158E,SA-162E,SW-103E,SC-104E,SA-262E,SA-265E,KA-268E,商品名『けむぴこ』」は本件特許権を侵害するものであり,原告は上記侵害行為につき損害賠償を請求する旨の内容証明郵便を発出し,上記通知書は,同月24日,被告に到達した(乙3,4の1)。 (2) 以上の事実に照らして検討するに,原告は,本件特許査定前である平成17年時点で,被告に対し,上記アのとおり,本件特許出願につき実施許諾の提案を行っているものであるところ,争点(3)でみたとおり,東京瓦斯は,平成16年6月17日,原告及び被告を含む火災警報器メーカー各社に対し,本件特許に係る構成を含む仕様を示して製品開発を促し,被告は,これに応じて製品開発を行っていたものであると認められる。また,原告と被告は,いずれも火災警報器の製造者であり,市場において競合する製品を販売する者である。そうすると,原告は,平成17年7月14日付けの上記通知書を発出した時点で,被告の開発・製造する火災警報器が,本件発明の技術的範囲に属する可能性が高い旨認識していたことがう 製品を販売する者である。そうすると,原告は,平成17年7月14日付けの上記通知書を発出した時点で,被告の開発・製造する火災警報器が,本件発明の技術的範囲に属する可能性が高い旨認識していたことがうかがわれるところ,被告は,上記イのとおり,本件特許の登録査定時(平成18年12月22日)以前から,被告製品の製造販売を開始しており,上記製品は,市場において入手可能なものであったと認められるのであるから,原告が,上記製品を分析するなどして,上記製品が本件特許権を侵害するものであることを認識していた蓋然性は高いものというべきである。 加えて,原告は,上記ウのとおり,平成19年6月28日に被告からその製品が本件特許に抵触しない旨の回答書を受領した後,上記エのとおり,その約2か月後である同年8月30日には,型番号等を挙げて侵害の警告をしているものであって,原告が,上記のとおり,本件特許登録日より前である 平成18年12月22日から被告に対し本件特許の実施許諾を提案しており,かつ,被告製品の販売状況を認識可能な地位にいたものと認められる以上,被告製品が本件特許権を侵害するものである旨の認識を,上記警告書を発する直前まで有するに至らなかったものとは解されない。 以上によれば,原告は,遅くとも前記エの警告書を作成した日より1週間前である平成19年8月23日時点において,被告製品の一部が本件特許権を侵害するものであることを認識し,これにより原告に損害が発生したことを認識していたものと認められる。 なお,原告が,平成19年8月23日時点で製造販売されている被告製品の型式ごとの全部の存在及び内容を認識していたものとまでは認められないが,前記エのとおり,原告はイ号ないしハ号製品の一部を認識していたものであるから,被告製品としての型式名等は異なって いる被告製品の型式ごとの全部の存在及び内容を認識していたものとまでは認められないが,前記エのとおり,原告はイ号ないしハ号製品の一部を認識していたものであるから,被告製品としての型式名等は異なっているものとしても,原告は,本件訴訟におけるイ号ないしハ号製品の製造販売の認識は有していたものである。また,ハ号製品とニ号製品については,その構成④及び⑥において若干の相違があるものの,本件訴訟との関係では実質的に同一とみることができるものである。そうすると,原告は,平成19年8月23日の時点において,イ号ないしニ号製品全てにつき,その存在を知っていたものと認めるのが相当である。「損害及び加害者を知った」(民法724条)というためには,侵害者の侵害行為による損害の発生を知っている限り,損害の全範囲及び損害額を知らなくとも足りると解されるから,この点をもって消滅時効の成否が左右されるものではない。 (3) したがって,本件特許権の登録時である平成18年12月22日から平成19年8月23日までの本件特許権侵害の不法行為責任に基づく損害賠償請求権については,平成22年8月23日の経過をもって消滅時効が完成したものと認められる。 (4) 前記前提事実(7)のとおり,被告は,本訴第10回弁論準備手続期日にお いて,上記損害賠償請求権につき,消滅時効を援用する旨の意思表示をしたものであるから,上記損害賠償請求権は,時効によって消滅している。 9 小括以上によれば,被告による平成19年8月24日から平成24年3月31日までの被告製品の製造及び販売は,平成24年2月26日までの間の東京瓦斯に対する販売分を除き,本件発明1,2及び4に係る本件特許権の侵害行為に当たり,被告は,上記侵害行為によって原告が被った損害を賠償すべき責任(民法709 売は,平成24年2月26日までの間の東京瓦斯に対する販売分を除き,本件発明1,2及び4に係る本件特許権の侵害行為に当たり,被告は,上記侵害行為によって原告が被った損害を賠償すべき責任(民法709条)を負う。 争点(5)(損害額)(1) 特許法102条1項に基づく損害額(主位的請求)ア被告製品の販売数量Aⅳ鑑定の結果によれば,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの期間における被告製品の販売数量(ただし,平成19年8月24日から平成24年2月26日までの間の東京瓦斯に対する販売分を除く。)は,●(省略)●台であると認められる(Aⅳ鑑定書3頁「販売数量」欄の「合計」参照)。 イ 「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することのできた物」(ア) 証拠(甲40ないし45)及びAⅲ鑑定の結果によれば,原告は,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの期間において,次の型番の6製品(原告製品)を製造販売していたものと認められる。 ① SS-2LF(甲40。「原告製品1」)② SS-2LI(甲41。「原告製品2」)③ SS-2LQ(甲42。「原告製品3」)④ SS-FJ(甲43。「原告製品4」)⑤ SS-2LR(甲44。「原告製品5」)⑥ SS-FK(甲45。「原告製品6」) (イ) 特許法102条1項にいう「特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物」とは,侵害品と市場において競争関係に立つ競合品を意味するものと解されるところ,原告製品は,いずれも電池式火災警報器であって(甲40ないし45),電池式火災警報器である被告製品と市場において競争関係に立つ競合品であると認められ,いずれも「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」 式火災警報器であって(甲40ないし45),電池式火災警報器である被告製品と市場において競争関係に立つ競合品であると認められ,いずれも「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるものと認められる。 (ウ) この点に関し,被告は,①原告製品は一酸化炭素検出機能を備えていないから,一酸化炭素検出機能付き火災警報器である「SW-103E」,「SC-104E」及び「SC-105E」との関係では,原告製品は競合関係にない,②大阪瓦斯株式会社に対する納入製品については,同社の提供するホームセキュリティサービスに適合する仕様が要求されているから,上記納入製品との関係では,原告製品は競合関係にないとし,これらの事情を特許法102条1項但し書きの「特許権者…が販売することができないとする事情」として主張する。しかし,原告製品が被告の主張する上記①,②の製品との関係で競合品であることは,「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に関する事実として,原告が主張立証すべきことであるから,上記事情は,競合品であることについてこれを否認する事情の主張であると解される。 そこで,原告製品が被告の主張する上記①,②の製品との関係で競合品であるかについて検討するに,前記のとおり,特許法102条1項にいう「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるというためには,権利者製品が侵害品とその性能・効用において完全に同一の製品であることまでを要するものではなく,市場の実情に照らし,侵害品と競合する関係にあれば足りると解するのが相当である。被告の指摘する上記の点は,火災警報器に付加された機能を主 張するにとどまり,被告製品のうち,一酸化炭素検出機能を有するもの又は大阪瓦斯株式会社に納入さ れば足りると解するのが相当である。被告の指摘する上記の点は,火災警報器に付加された機能を主 張するにとどまり,被告製品のうち,一酸化炭素検出機能を有するもの又は大阪瓦斯株式会社に納入されたものの付加された機能によって,原告製品と被告の主張する上記①,②の製品とが,およそ市場において競合する関係に立たなくなるものとは認められない。 よって,被告の主張する事情を考慮しても,原告製品と被告の主張する上記①,②の製品は競合関係にあり,原告製品は,被告の主張する上記①,②の製品との関係でも「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると解するのが相当である。 (エ) また,被告は,原告は,平成20年8月までは,原告製品1及び2のみしか販売していなかったものであるから,同月末日までの間は,原告製品1及び2のみが「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると主張する。 しかし,特許法102条1項は,一定期間にわたる特許権侵害が認められる場合に,権利者の上記期間における競合品としてあり得べき権利者製品の販売機会の喪失による逸失利益を全体として評価して,これを権利者の受けた損害とするものであり,権利者製品と侵害品を厳密に1対1対応させ,販売機会の喪失を検討することが予定されているものではないというべきである。したがって,本件においても,特許法102条1項に基づく原告の損害を算定するに当たり,平成19年8月24日から平成24年3月末日までの期間を全体として捉え,原告製品を,いずれも,上記期間において「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとみて,その平均利益をもって原告の損害を評価することは,特許法102条1項の上記趣旨に反するものではなく,許容さ 期間において「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとみて,その平均利益をもって原告の損害を評価することは,特許法102条1項の上記趣旨に反するものではなく,許容されるものというべきである。 (オ) よって,被告の主張はいずれも採用することができず,原告製品は,被告製品全部との関係において,「特許権者…がその侵害の行為がなけ れば販売することができた物」に当たるものと認められる。 ウ 「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することのできた物の単位数量当たりの利益の額」(ア) 特許法102条1項にいう「単位数量当たりの利益の額」とは,原則として,権利者製品の売上高から変動費を控除した利益(限界利益)をいうが,費用のうち権利者製品の製造又は販売に直接必要な個別固定費も例外的に含むものと解するのが相当である。 (イ) Aⅲ鑑定によれば,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの原告製品の販売数量及びその1台当たりの利益額は次のとおりである。 共通型式名1台当たりの利益額(円)販売数量(台)SS-2LF●(省略)●●(省略)●SS-2LI●(省略)●●(省略)●SS-2LQ●(省略)●●(省略)●SS-FJ●(省略)●●(省略)●SS-2LR●(省略)●●(省略)●SS-FK●(省略)●●(省略)●(ウ) 上記利益額は,原告製品の売上高から①材料費,②直接労務費,③外注加工費,④検定費,⑤製造荷造運賃,⑥製造手数料,⑦販売工事費,⑧販売荷造運賃,⑨広告宣伝費を控除することにより算出されたものであるところ(Aⅲ鑑定書6頁~8頁),Aⅲ鑑定(Aⅲ鑑定書10頁~13頁参照)及び弁論の全趣旨によれば,上記費用は,いずれも変動費又は原告製品の製 ,⑨広告宣伝費を控除することにより算出されたものであるところ(Aⅲ鑑定書6頁~8頁),Aⅲ鑑定(Aⅲ鑑定書10頁~13頁参照)及び弁論の全趣旨によれば,上記費用は,いずれも変動費又は原告製品の製造又は販売に直接必要な個別固定費に該当するものと認められる。 (エ) この点に関し,原告は,⑦販売工事費のうち,社内工事原価を算出 している点につき,上記費用は固定費であり,原告製品の売上から控除されるべき費用に当たらないと主張する。 そこでAⅲ鑑定書を見ると,●(省略)●しかし,原告の社内人員により上記工事を行った場合における労務費は,原告製品の販売に直接要した個別固定費と認められるところ,Aⅲ鑑定は,社外工事による売上高外注工事費比率を適用して社内工事原価を算出したものであり,上記計算方法は合理的なものと認められる。 したがって,販売工事費に社内工事原価を含め,かつ,上記社内工事原価を上記方法によって算出して,原告の売上から控除すべきとしたAⅲ鑑定は相当であり,原告の上記主張は採用することができない。 (オ) したがって,原告製品の1台当たりの利益額は前記(イ)でみたとおりであると認められる。 (カ) 原告製品1ないし6の各利益総額は下記aないしfのとおりであり,上記各利益総額の合計額(下記g)を原告製品の総販売数量(●(省略)●台。Aⅲ鑑定書4頁「総計」欄参照)で除した金額(原告製品1台当たりの平均利益額)は,下記hのとおり,●(省略)●円(100分の1円未満切り捨て)となる。 a 原告製品1について●(省略)●b 原告製品2について●(省略)●c 原告製品3について●(省略)●d 原告製品4について●(省略)●e 原告製品5について 略)●b 原告製品2について●(省略)●c 原告製品3について●(省略)●d 原告製品4について●(省略)●e 原告製品5について ●(省略)●f 原告製品6について●(省略)●g 上記aないしfの合計額●(省略)●円h ●(省略)●(小数点第3位以下切捨て)(キ) したがって,●(省略)●円が,原告が,侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額となる。 エ特許法102条1項但し書きの事情について(ア) 特許法102条1項但し書きは,侵害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が「販売することができないとする事情」があるときには,同項本文の損害額から,当該事情に相当する数量に応じた額を控除する旨規定している。 (イ) そこでこの点について検討すると,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,この点に関し,次の事実が認められる。 a 住宅用火災警報器の製造者としては,原告,被告のほか,株式会社センチュリー,日本フェンオール株式会社,ニッタン株式会社,能美防災,パナソニック,ヤマトプロテック株式会社,アイホン株式会社,綜合警備保障株式会社,日本ドライケミカル株式会社,株式会社東京信友,沖電気防災株式会社,セコム株式会社,東芝ライテック株式会社,矢崎総業株式会社等が挙げられ(乙127の1ないし15,128の1ないし3),平成18年12月から平成24年3月までの間における音声警報機能付き住宅用火災警報器の販売に限っても,パナソニック,能美防災,ニッタン株式会社,矢崎総業株式会社らにより,多数の機種が販売されていた(乙135,136の1ないし4,13 7の1ないし3,138 用火災警報器の販売に限っても,パナソニック,能美防災,ニッタン株式会社,矢崎総業株式会社らにより,多数の機種が販売されていた(乙135,136の1ないし4,13 7の1ないし3,138,139の1・2)。 b 原告の住宅用火災警報器における市場占有率(数量ベース)の推移は次のとおりであり,これを平均すると19.83%となる(乙140の1ないし5)。 平成19年光電式17.5%,定温式15.3%平成20年光電式22.6%,定温式23.4%平成21年光電式28% 定温式28%平成22年光電式15.8% 定温式15.8%平成23年光電式16%,定温式15.9%上記各年における原告のシェアは,いずれも住宅用火災警報器業界第2位であり,シェア1位はパナソニック(松下電工株式会社)(約42ないし50%),3位は能美防災(約10ないし15%),4位はニッタン株式会社(約6ないし12%)であった。 なお,被告の平成19年から平成23年の被告製品の販売数量を市場占有率に引き直すと,光電式で平均1.10%,定温式で平均0. 28%となる(乙116)。 c 被告は,平成18年12月22日から平成24年3月31日までの間,東京瓦斯に対する納入分を除き,被告製品を合計で約●(省略)●台販売したものであるところ,そのうち,約77万台については,大阪瓦斯株式会社等の都市ガス事業者及び岩谷産業株式会社等のLPガス事業者に対し販売されたものであり(Aⅳ鑑定,乙116),このうち,大阪瓦斯株式会社は,被告及びパナソニックから住宅用火災警報器の納入を受け,販売してきたものである(乙129,130の1ないし6)。なお,平成19年から平成23年のガス漏れ警報器市場においては,被告はLPガス用製品につき約25%(第2位),都市ガス 警報器の納入を受け,販売してきたものである(乙129,130の1ないし6)。なお,平成19年から平成23年のガス漏れ警報器市場においては,被告はLPガス用製品につき約25%(第2位),都市ガス用製品につき約60%(第1位)のシェアを有し,矢崎総業株 式会社との間で,そのシェアを二分する状況にあった(乙140の1ないし5)。 他方,原告は,上記期間において,原告製品を合計で約●(省略)●台販売したものであるところ,東京瓦斯,東邦瓦斯株式会社及び静岡ガスリビング株式会社に対する納入はあるものの,ガス漏れ警報置機市場においてはみるべきシェアはなく,原告の住宅設備事業推進部の発行する「ホーチキニュース」にみられるとおり,住宅販売会社その他の商流において販売されたものが多数を占めるものと認められる(甲42~45,乙116,133,134の1ないし3,Aⅲ鑑定書6~8頁,弁論の全趣旨)。 d 被告製品のうち,「SW-103E」,「SC-104E」及び「SC-105E」(Aⅳ鑑定書3頁によれば,その販売数量は平成19年8月24日から平成24年3月31日までの期間において合計●(省略)●台である。)は,一酸化炭素検出機能を備えたものであり(甲14,15,乙141),また,大阪瓦斯株式会社に対し納入された製品には,同社の提供するホームセキュリティサービスに適合した仕様の製品が含まれるところ(乙117,118,130の1ないし6),原告製品中に,これらの機能又は仕様を備えたものは存在しない(甲40ないし45,弁論の全趣旨)。 e 被告製品のカタログ,取扱説明書又はプレスリリース記事には,いずれも,電池切れ又は故障時の表示として,「ランプ緑色点滅」,「点検スイッチ操作で『ピッ電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。 カタログ,取扱説明書又はプレスリリース記事には,いずれも,電池切れ又は故障時の表示として,「ランプ緑色点滅」,「点検スイッチ操作で『ピッ電池切れなどが発生しています。販売店に連絡してください。』」等の作動をする旨の,本件発明に対応する構成が表示されている(甲3の1・2,4ないし10,11の1・2,12の1・2,13ないし20,乙117)。 (ウ) 以上の認定事実に照らして検討するに,上記(イ)a及びbのとおり, 住宅用火災警報器市場には,原告及び被告以外に,多数の製造業者が存在し,被告製品と競合する製品である住宅用火災警報器を販売していたものであるところ,とりわけ,住宅用火災警報器市場シェア1位のパナソニック,同3位の能美防災ら(上記(イ)b)は,平成19年ないし平成24年において,音声警報機能付き住宅用火災警報器を多数機種販売していたものであるから(上記(イ)a),仮に被告製品が存在しなかった場合には,原告のみならず,これらの業者においても,相当数の競合品を販売することができたものと考えられるところである。 また,被告は,住宅用火災警報器市場の市場占有率においては約1. 1%又はそれ以下の程度を占めるにすぎないものの,その販売数量の大半はガス業界向けに販売されたものであり(上記(イ)c),被告が,被告がガス漏れ警報器市場において高いシェアを有していること(上記(イ)c)にも照らし,ガス業界向けを中心として被告製品を販売することができたのは,被告がガス業界において高い営業力を有していたことによることがうかがわれるところである。他方,原告は,ガス漏れ警報器市場においては見るべきシェアを有するものではなく(上記(イ)c),また,ガス業界に対する住宅用火災警報器の販売数量も多いものではないことがうかがわれるのであって( る。他方,原告は,ガス漏れ警報器市場においては見るべきシェアを有するものではなく(上記(イ)c),また,ガス業界に対する住宅用火災警報器の販売数量も多いものではないことがうかがわれるのであって(上記(イ)c),同業界において高い営業力を有していたものとは認め難い。 これに加えて,被告製品の中には,原告製品が備えていない機能を有するものもみられるのであって(上記(イ)d),被告製品が存在しなかった場合に,これらの製品の需要が,すべて,当該機能を備えない製品であり,かつ,ガス業界における営業力も高いものではなかった原告の販売する原告製品に向き得るものであったとも認め難い。 (エ) 他方,本件発明は,その構成により,利用者が早期かつ確実に電池電圧低下を認識し,これを放置することなく早期の電池交換が促される ことで,無監視状態で警報器が放置される事態を回避することが可能になるという作用効果を有するものであるところ(前記第4の1(1)イ(ウ)),被告製品のカタログ等に本件発明に係る構成が記載されていること(上記(イ)e)に照らせば,本件発明の作用効果が購入者らによる製品購入(又は事業者による製品採用)の動機付けの一つとなっていることがうかがわれるものというべきである。ただし,火災警報器における基本的性能は,監視領域における火災等の異常を確実に検知し報知する点にあると考えられるのであって,電池電圧低下の検知及び報知は,異常を確実に検知し報知するための警報器の作動を確保するための機能に関するものではあるものの,複数あり得る火災警報器の故障又は異常状態の一類型に対応するものにすぎないことや電池電圧の低下の検知及び報知については音声のみによる方法等の本件発明を実施しない他の方法もあり得ることを考慮すれば,本件発明に係る構成に基づく 障又は異常状態の一類型に対応するものにすぎないことや電池電圧の低下の検知及び報知については音声のみによる方法等の本件発明を実施しない他の方法もあり得ることを考慮すれば,本件発明に係る構成に基づく作用効果が,購入の決定的な動機付けとなり,又は製品を選択するに当たり大きな影響力をもつものとまでは考え難い。 以上の諸事情については,被告製品の販売数量のうち,本件発明の作用効果を考慮してもなお他社の競合品によって代替されたと考えられる割合及び被告自身の営業力や本件発明の実施部分以外の被告製品の特性等により販売することができたと考えられる割合について,これらを総合して,原告が原告製品を「販売することができないとする事情」があると解するのが相当である。そして,上記諸事情に照らし,上記数量は7割とみるのが相当である。 (オ) 以上の認定に関し,原告は,パナソニック等の製品は本件特許権を侵害するものであるから,これらの製品の存在を考慮して,「販売することができないとする事情」を認定するのは相当ではないと主張するが,上記製品が本件特許権を侵害するものと認めるに足りず,採用すること ができない。 (カ) したがって,前記アの被告製品の販売数量のうち,7割に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。 オ寄与率の主張について(ア) 被告は,上記特許法102条1項但し書きの事情とは別に,本件発明の作用効果が商品の宣伝に利用されていないこと,本件発明の機能的一部性及び本件発明の特許性を考慮し,本件発明の寄与率は2割(平成20年以降は1割)を超えるものではないから,上記寄与率を超える部分に係る損害については,質的推定覆滅事情があると主張する。 (イ) しかし,まず,本件発明の特許性に関する点は,米国において「Voc 0年以降は1割)を超えるものではないから,上記寄与率を超える部分に係る損害については,質的推定覆滅事情があると主張する。 (イ) しかし,まず,本件発明の特許性に関する点は,米国において「VocAlert」との商品名で販売されていた製品による本件発明の公然実施又は公知性を主張するものである。上記主張は,当裁判所が,平成24年4月18日の第8回弁論準備手続期日において,原告及び被告から,充足論及び無効論に関する主張立証は終了した旨を聴取して,侵害論に関する審理を終結し,本件に関する裁判所の見解を示して和解を勧告するとともに,損害論に関する審理に入った後である,平成25年8月27日の第19回弁論準備手続期日でされたものであるところ,上記主張は,本件発明の寄与率が低い旨の主張としてされたものであるが,実質的には,本件特許権につき新たな無効理由がある旨主張するものに他ならない(第8回及び第19回弁論準備手続調書,当裁判所に顕著)。 以上の経緯に照らせば,被告の上記主張並びにこれを裏付けるものであるとされる乙99ないし102号証,110号証,154号証の申し出及び検乙1号証の検証の申し出は,いずれも民訴法157条1項に基づきこれを却下する。 (ウ) また,被告の主張するその他の事情は,いずれも,原告がその製品 を「販売することができないとする事情」の有無に帰着するものであり,上記事情の認定は,被告の主張する点を考慮してされたものであるから,重ねてこれらの点を推定覆滅事情として考慮するのは相当ではない。 (エ) したがって,被告の主張を採用することはできない。 カ共有特許権者との間の損害額の按分割合(ア) 原告は,東京瓦斯は本件発明を実施しておらず,かつ,原告と東京瓦斯との間には,本件発明の実施品の製造は原告のみに行 主張を採用することはできない。 カ共有特許権者との間の損害額の按分割合(ア) 原告は,東京瓦斯は本件発明を実施しておらず,かつ,原告と東京瓦斯との間には,本件発明の実施品の製造は原告のみに行わせる旨の合意があるから,特許法102条1項に基づき算出される損害額(被告製品の東京瓦斯納入分を除いたもの)は,その全額につき,原告が被ったものであると主張する。他方,被告は,東京瓦斯が矢崎総業に対し本件発明の実施を許諾していたことが認められる以上,東京瓦斯の実施割合をゼロとする原告の主張は失当である旨主張する。 (イ) 被告の上記主張の趣旨は,東京瓦斯が他社に本件発明を実施させることにより利益を得ていたから,東京瓦斯の実施割合をゼロとすることはできないとするものと解される。 しかし,そもそも,東京瓦斯は,都市ガス事業者であり,その購入する製品は,東京瓦斯の供給する都市ガス利用者に対し,リース又は販売等の形式で供給されるものであって,本件各証拠及び弁論の全趣旨に照らしても,東京瓦斯が,他のガス事業者又は一般市場に向けて,その購入した製品を卸売りすることがあり得たものとは認められない。他方,本件で損害額算定の基礎とする被告製品は,他のガス事業者に対し納入され,又は一般市場において販売されたものであるから,被告製品の販売により,東京瓦斯がその製品の販売機会を喪失したものとは認められず,東京瓦斯の実施割合は認められないというべきである。 確かに,証拠(乙65,120,139の1・2)によれば,矢崎総業が製造し,東京瓦斯に納入した製品の中には,電池電圧低下の場合に 緑色ランプが点滅し,「ピピ電池切れです。販売店に連絡してください」との音声警報を発する住宅用火災警報器が存在することが認められる。しかし,東京瓦斯が,矢崎総業に対し,東京 低下の場合に 緑色ランプが点滅し,「ピピ電池切れです。販売店に連絡してください」との音声警報を発する住宅用火災警報器が存在することが認められる。しかし,東京瓦斯が,矢崎総業に対し,東京瓦斯に対する納入分のみならず,他社に対し販売する製品についても,本件発明の実施を許諾していたものと認めるに足りる証拠はなく,また,原告が,東京瓦斯納入分を除く他社販売用製品について,東京瓦斯による実施許諾につき同意していたものとも認められない。 (ウ) したがって,東京瓦斯納入分を除く被告製品の販売についての特許法102条1項に基づく損害については,本件特許権が東京瓦斯との共有であった期間においても,東京瓦斯との間で損害額を按分すべきものとは認められない。 キ原告の損害額以上によれば,原告の特許法102条1項に基づく損害額は,以下の計算式のとおり,1億6751万3798円となる。 (原告製品の1台当たりの平均利益額)×(被告製品の販売数量)-(原告製品の1台当たりの平均利益額)×(被告製品の販売数量×販売することができないとする事情がある数量割合)●(省略)●=1億6751万3798円(2) 特許法102条2項に基づく損害額(予備的請求)ア特許法102条2項所定の「その者がその侵害の行為により利益を受けているとき」にいう「利益」とは,特許法102条1項にいう「単位数量当たりの利益の額」と同様に,原則として侵害者の売上高から侵害製品の製造又は販売に要した変動費を控除した利益(限界利益)をいい,例外的に侵害品の製造又は販売に直接必要な個別固定費も含まれると解するのが相当である。 イ被告製品の売上高(ア) Aⅳ鑑定によれば,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの被告製品の売上高は, 販売に直接必要な個別固定費も含まれると解するのが相当である。 イ被告製品の売上高(ア) Aⅳ鑑定によれば,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの被告製品の売上高は,合計23億0522万0816円である(Aⅳ鑑定書3頁「売上高」欄の「合計」参照)。 (イ) この点に関し,原告は,被告製品の売上の中には,材料外注費単価が売上単価を上回っているものがあるところ,上記廉価販売品を被告利益算出の基礎となる売上に含めるべきではないと主張する。 しかし,被告は,上記廉価販売品に関し,在庫品を定期的に社内販売等により処理したことで,売上が材料外注費単価を上回るものが生じたにすぎない旨説明しているところ,被告において,上記廉価販売品が,訴訟係属後に大量に生じるなどしたものではなく,原告が請求の対象とした全期間において特段の偏りなく生じていること(乙93)に照らせば,被告の上記説明は合理的なものと認められる。そうすると,上記廉価販売品は,通常の取引の中で不可避的に生じたものと認められるのであって,被告が,本件特許権侵害を理由とする廃棄を免れ,被告の利益を減少させるために上記廉価販売を行った等の事情を認めることはできないのであるから,上記廉価販売品を,被告利益算出の基礎となる売上から除外する理由はないものというべきである。 (ウ) したがって,この点に関する原告の主張は採用できず,被告製品の売上高である上記(ア)の金額が被告利益算出の基礎となる売上高となる。 ウ限界利益の額(ア) Aⅳ鑑定は,被告製品の売上高から①材料外注費,②実施料,③個別鑑定手数料,④販売運送費を控除した金額を「限界利益」として算出した上で,⑤直接費用,⑥専用工場費用,⑦試験研究費,⑧減価償却費を個別固定費として更に控除した金額を「貢献利 外注費,②実施料,③個別鑑定手数料,④販売運送費を控除した金額を「限界利益」として算出した上で,⑤直接費用,⑥専用工場費用,⑦試験研究費,⑧減価償却費を個別固定費として更に控除した金額を「貢献利益」として算出している。そこで,まず,上記①ないし④の費用を売上高から控除する点の相 当性について検討する。 (イ) 材料外注費についてAⅳ鑑定は,材料外注費として,合計●(省略)●円を計上しているところ,材料外注費が,被告製品の製造に必要な変動費に当たることについては当事者間に争いがない。そして,上記金額は,製品別材料外注費明細と会計元帳,納品書及び請求書とを,特定月を抜き出して照合することにより確認されたものであるから(Aⅳ鑑定書8頁「3.材料外注費」参照),相当なものと認められる。 この点に関し,原告は,上記材料外注費には,能美防災に対する外注費中に,同社の製造受託に係る利益分が含まれているところ,能美防災と被告には本件特許権侵害の共同不法行為が成立し,被告は,能美防災の利益分についても損害賠償義務を負うのであるから,上記利益分を材料外注費として控除するのは相当ではないと主張する。 しかし,原告は,能美防災が製造する部分が具体的に被告製品のどの部分であり,当該部分の受託製造が特許法101条各号の要件を満たすものであるのか否かにつき,具体的に主張立証するものではなく,能美防災に本件特許権の間接侵害が成立すると認めるに足りない。 したがって,能美防災に対する材料外注費から,同社の利益分を控除すべき理由を見出すことはできず,原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの間のSA-156Ex及びSA-162Eの能美防災に対する材料外注費が売上高比●(省略 はできず,原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,平成19年8月24日から平成24年3月31日までの間のSA-156Ex及びSA-162Eの能美防災に対する材料外注費が売上高比●(省略)●%と高い一方,被告が同時期に同社に多額の実施料を支払っていることから,これらの事実は相互に矛盾し,Aⅳ鑑定に係る材料外注費は不当に高いものであると主張するが,Aⅳ鑑定における材料外注費の算出方法が相当なものと認められることは前記のとおりであって,原告の主張する点は,Aⅳ鑑定に係る材料外注費に信 用性を欠く点を見出すに足りるものではない。 したがって,被告が上記期間において支出した材料外注費は前記のとおりであり,同額を売上高から控除すべきものと認められる。 (ウ) 実施料についてAⅳ鑑定は,実施料として●(省略)●円を計上しているところ,上記費用は,被告が被告製品の内製開始に伴い,能美防災株式会社に対しノウハウ等を含めた知的財産権の使用につき支払った実施料を合計したものであり,被告製品の製造に必要な変動費に当たるものと認められる。 また,Aⅳ鑑定において実施された手続の内容(Aⅳ鑑定書8頁「4. 実施料」参照)に照らし,上記金額は相当なものと認められる。 この点に関し,原告は,上記費用は実質的には試験研究費に当たるものであると主張するが,上記費用が上記のとおり内製開始に伴い支払われた知的財産権使用料であることに照らし,採用できない。また,原告は,上記費用は能美防災が本件発明に抵触する技術を提供したことにより獲得したものであり,本来は原告が受けるべきものであるとも主張するが,能美防災の提供した知的財産の内容が本件発明に抵触するものであるとの前提を認めるに足りず,採用できない。 したがって,被告が支出した実施料で り,本来は原告が受けるべきものであるとも主張するが,能美防災の提供した知的財産の内容が本件発明に抵触するものであるとの前提を認めるに足りず,採用できない。 したがって,被告が支出した実施料である上記額は,売上高から控除すべきものと認められる。 (エ) 個別鑑定手数料についてAⅳ鑑定は,個別鑑定手数料として●(省略)●円を計上しているところ,上記費用は,日本消防検定協会の型式鑑定を受け,社団法人日本火災報知機工業会から鑑定合格証票等を受けるに当たり必要となる手数料であって(乙93の資料9),上記費用が被告製品の製造又は販売に必要な変動費に当たることについては当事者間に争いがない。また,Aⅳ鑑定において実施された手続の内容(Aⅳ鑑定書8頁「5.個別鑑定 手数料」参照)に照らし,上記金額は相当なものと認められる。なお,原告は,廉価販売品(材料外注費単価が売上額を上回る製品)については,被告利益算定の基礎とならないものである以上,その個別鑑定手数料を売上高から控除すべきではない旨を主張するが,上記製品が被告利益算定の基礎から除外されないことは前述のとおりである。 したがって,被告が支出した個別鑑定手数料である上記額は,売上高から控除すべきものと認められる。 (オ) 販売運送費についてAⅳ鑑定は,販売運送費として●(省略)●円を計上しているところ,上記費用は,被告製品を大阪の物流拠点から顧客に対し輸送するに当たり,宅配便会社に対し支払った金額を集計したものであって(乙93の資料10),上記費用が被告製品の販売に必要な変動費に当たることについては当事者間に争いがない。また,Aⅳ鑑定において実施された手続の内容(Aⅳ鑑定書9頁「6.販売運送費」参照)に照らし,上記金額は相当なものと認められる。 したが 要な変動費に当たることについては当事者間に争いがない。また,Aⅳ鑑定において実施された手続の内容(Aⅳ鑑定書9頁「6.販売運送費」参照)に照らし,上記金額は相当なものと認められる。 したがって,被告が支出した販売運送費である上記額は,売上高から控除すべきものと認められる。 (カ) 以上によれば,上記(イ)ないし(オ)の費用は,いずれも売上高から控除すべきものと認められるところ,前記イでみた被告製品の売上高から,上記(イ)ないし(オ)の費用を控除すると,Aⅳ鑑定3頁「限界利益」欄の「合計」のとおり,●(省略)●円となる。 エ個別固定費の額Aⅳ鑑定においては,被告製品を製造するために直接要した金型及び試験装置等に係る費用を被告製品の製造に直接要した個別固定費であると認めており,その額は●(省略)●円である。 原告は,減価償却費のうち共通設備に係る費用は,被告製品を製造する ために直接要した個別固定費に当たらないから,減価償却費から控除すべきであると主張するが,上記Aⅳ鑑定は,共通設備ではなく,被告製品を製造するために直接要した金型等の費用を減価償却費の対象としたものであるから,原告の主張は当たらない。Aⅳ鑑定における減価償却費の個別固定費としての算定は正当である。 オそうすると,他の個別固定費の当否について判断するまでもなく,限界利益の額から減価償却費を控除した額は●(省略)●円となるから,特許法102条2項による原告の損害と推定されるべき額は,同条1項によって推定された前記1億6751万3789円の額を下回ることが明らかである。 よって,予備的請求としての特許法102条2項に基づく請求はこれを認めることができない。 (3) 特許法102条3項に基づく損害額(予備的請求)ア被告製品の売上 ることが明らかである。 よって,予備的請求としての特許法102条2項に基づく請求はこれを認めることができない。 (3) 特許法102条3項に基づく損害額(予備的請求)ア被告製品の売上高平成19年8月24日から平成24年3月31日までの被告製品の売上高が23億0522万0816円であることは,前記(2)イでみたとおりである。 イ相当実施料率について(ア) 被告製品は,住宅用火災警報器であり,日本標準産業分類においてF304に分類されるものであるところ(甲49),社団法人発明協会発行に係る「実施料率〔第5版〕」(甲50)によれば,上記F304が関連する技術(「19.ラジオ・テレビ・その他の通信音響機器」)についての平成4年度から平成10年度までの実施料率は,イニシャルありが3.3%,イニシャルなしが5.7%であり,また,最頻値はイニシャルあり・なしいずれも1%であることが認められる。なお,上記実施料率は,昭和63年度から平成3年度までの実施料率と比較すると, イニシャルありが3.1%から3.3%に,イニシャルなしが3.4%から5.7%にいずれも上昇していることが認められる。 (イ) 他方,本件発明の作用効果は前記(1)エ(エ)でみたとおりであり,警報器の機能において一定の重要性が認められるものの,その作用効果が極めて大きいものとまでみることができないことは前述のとおりである。 (ウ) 以上の事情に加え,被告製品が本件発明1,2及び4のいずれの発明の技術的範囲にも属するものであることも併せ考慮すれば,被告製品の売上高に5%を乗じた額が,本件特許の特許権者が本件発明(本件発明1,2及び4を併せたもの。)の実施に対し受けるべき金銭の額として相当であると認められる。 ウ本件特許権は,平成24年2月26 の売上高に5%を乗じた額が,本件特許の特許権者が本件発明(本件発明1,2及び4を併せたもの。)の実施に対し受けるべき金銭の額として相当であると認められる。 ウ本件特許権は,平成24年2月26日までの間,東京瓦斯との共有であったところ,上記期間においては,東京瓦斯も,本件発明の実施に対し金銭を受けるべき者に当たると認められる。そして,上記金員は,本件発明の自己実施の有無にかかわらず受けることができるものと解されるから,東京瓦斯が本件発明を自己実施しているか否かにより,その按分割合を増減させるべきものとは解されない。したがって,その按分割合は,原告と東京瓦斯との共有持分割合である2分の1とみるのが相当である。 エ以上に従って,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額を計算すると,下記計算式のとおり5879万5465円となる。 a 平成19年8月24日から平成24年2月26日まで23億0522万0816円×1648/1682×0.025=5646万5575円(円未満切り捨て)b 平成24年2月27日から同年3月31日まで23億0522万0816円×34/1682×0.05=232万9890円(円未満切り捨て)ca+b 5879万5465円オしたがって,特許法102条3項に基づく原告の損害額は,特許法102条1項に基づく原告の損害額を超えないものと認められる。 (4) まとめア以上によれば,原告が被告の本件特許権侵害により受けた損害額は,1億6751万3798円と認められ,原告は,被告に対し,本件特許権侵害の不法行為責任に基づく損害賠償として,同額の支払を求めることができる。 イ附帯請求について原告は,附帯請求として,上記損害額につき,訴状送達日の翌 れ,原告は,被告に対し,本件特許権侵害の不法行為責任に基づく損害賠償として,同額の支払を求めることができる。 イ附帯請求について原告は,附帯請求として,上記損害額につき,訴状送達日の翌日である平成23年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているところ,同日までの被告製品の製造販売による損害との関係では,平成23年2月9日は不法行為の日又は不法行為の後の日に当たるから,原告は,同日までの損害額に対する平成23年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 他方,同日より後の被告製品の製造販売による損害については,被告において各月末に当月分の売上が確定することに照らし,各月末に損害が発生したものとみて,当月分の被告製品の製造販売による損害につき,各月末日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができると解するのが相当である。なお,被告製品の製造販売による損害は,各月において,その日数に応じて等しい割合で生じたものと認められる。 したがって,原告は,別紙遅延損害金一覧表記載の各金額に対し,同表記載の各年月日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第5 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 大須賀滋 裁判官 西村康夫 裁判官 森川さつき 西村康夫 裁判官 森川さつき
▼ クリックして全文を表示