主文 被告人を懲役1年に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 被告人から金2億4533万6500円を追徴する。 訴訟費用のうち,証人Qに支給した分の4分の1及び国選弁護人西村健に関する分は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,分離前の相被告人A,同B,同C及びDらと共謀のうえ,大阪市(以下略)の株式会社大阪証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている株式会社Eの株券について,その株価の高値形成を図り,同株券の売買を誘引する目的を,,,()もって平成17年3月4日から同月18日までの間同市場において別表1略記載のとおり,11取引日にわたり,F2ほか13名義で,G1証券株式会社ほか5社の証券会社を介し,連続した成行注文又は高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法により,同表「変動操作・買付状況」欄記載の同株券合計7385株を買い付ける一方,同表「変動操作・売付状況」欄記載の同株券合計5731株を売り付ける一連の売買をし,別表2(略)記載のとおり,F6ほか2名義で,G1証券株式会社を介し下値買注文を入れて下値を支えるなどの方法により同表変,,「動操作・買付委託状況」欄記載の同株券合計58株の買付けの委託を行い,その株価を28万5000円から40万8000円まで高騰させるなどし,もって,同株券の売買が繁盛であると誤解させ,かつ,同株券の相場を変動させるべき一連の売買及びその委託をし,さらに,他人をして同株券の売買が繁盛に行われていると誤解させるなど,同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって,同期間中,同市場において,別表3(略)記載のとおり,8取引日にわたり,F2ほか11名義で,G1証券株式会社ほか2社の証券会社を介 るなど,同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって,同期間中,同市場において,別表3(略)記載のとおり,8取引日にわたり,F2ほか11名義で,G1証券株式会社ほか2社の証券会社を介し,同株券合計384 0株について,Aのする売付けと同時に別途Aにおいて買付けをし,もって,同株券につき,権利の移転を目的としない仮装の売買をするとともに,別表4(略)記載のとおり,2取引日にわたり,F6ほか6名義で,G1証券株式会社ほか2社の証券会社を介し,同株券合計1239株について,H又はIのする売付けと同時期にこれと同価格においてAが買い付けることをあらかじめH,I,A及び被告人らがそれぞれ通謀のうえ,当該売付け又は買付けをし,もって,同株券につき,馴れ合いの売買をした。 (証拠の標目(略))(事実認定の補足説明)第1被告人及び弁護人の主張被告人及び弁護人は,公訴事実記載の各取引について,その当時,被告人には,①判示「株価の高値形成を図り,同株券の売買を誘引する目的」や,②判示「他人をして同株券の売買が繁盛に行われていると誤解させるなど,同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」はなく,また,他の共犯者との間で①②の各目的をもって上記各取引をする旨の共謀もしていないから,被告人は無罪である,仮に判示証券取引法違反の罪が成立するとしても,被告人には同罪の共同正犯ではなく従犯が成立するにとどまると主張するので,以下,検討する。 第2本件の事実経過及び株式取得の状況等関係証拠を総合して検討すると,以下の各事実が認められる。 株式会社Eの概要等株式会社E以下EというはK電話株式会社やL鉄道株式会社等を(「」。),主たる取引先とする,交通・通信等の社会インフラと個人の情報端末とを結びつけて,利便性 株式会社Eの概要等株式会社E以下EというはK電話株式会社やL鉄道株式会社等を(「」。),主たる取引先とする,交通・通信等の社会インフラと個人の情報端末とを結びつけて,利便性を向上させる仕組み・サービス(携帯電話による位置探索システム等)を企画し開発・提供すること等を目的として,平成10年9月4日に設立された株式会社であり,平成14年1月30日に当時の大阪証券取引所ナ (,「」スダックジャパン現在の大阪証券取引所ヘラクレス以下大証ヘラクレスというに株式を上場した平成17年3月末当時においてEの発行済株式。)。 ,総数は約2万6000株であった。 Eでは,平成14年4月1日から平成17年3月31日まで,3期連続で業績不振による赤字経営が続いており,株価上昇に結びつくような事業活動は行われていなかった。 なお,Eの代表取締役は,設立当時からMが務めていた。 Nグループの概要等(1)Nグループ分離前の相被告人Aは,主にパチンコ攻略情報誌の販売などを営む株式会社Nの実質的経営者であり,出版業,広告代理業,飲食業,ペット販売業な(。),どを営む多数の関連会社現在では経営実体のない会社も多いも設立しこれらの会社全体以下Nグループというの運営方針等を決定するた(「」。)めの組織として理事会を設置し,その実質的な支配権を持ち,Nグループ傘下の関連会社の資金を思うままに利用し,自己の利益を図ることができる立場にあった。 (2)被告人の地位被告人は,平成14年ころ,Nグループ傘下の関連会社のうち,大阪府にある株式会社Jの不動産管理業務等担当者として雇用され,平成16年以降本件犯行当時を含むはAの指示で主に株式取引業務を担当するよう(。),,になった。 犯行に至 社のうち,大阪府にある株式会社Jの不動産管理業務等担当者として雇用され,平成16年以降本件犯行当時を含むはAの指示で主に株式取引業務を担当するよう(。),,になった。 犯行に至る経緯等(1)O方式Aは,平成16年1月ころ,インターネットウェブビジネスの総合コンサルティング等を営む株式会社Oの株式以下O株というをJ名義の証(「」。)券取引口座を介して買い集めて大株主となり,その株主権を背景に,Oの代 表取締役らと通じてNグループ傘下の関連会社とOとの間で業務提携をさせ,Oがその関連会社を子会社化して,実体のない取引による架空の売上げを計上するなどしたうえ,上方修正した虚偽の業績を公表するなどして,一般投資家のO株に対する興味を引き,同株の取引に引き込み,株価を上昇させた後,高騰したO株を第三者に高値で売却することによって,数十億円に上る多額の利益を得るなどしていた(以下,このように,上場会社の株式を買い集めたうえ,同会社にNグループ傘下の関連会社との業務提携をさせ,架空の売上げを計上することなどによって上方修正した虚偽の業績を一般投資家向けに公表し,上記上場会社の株式の取引に引き込み,その株価を高騰させた後に第三者にこれを高値で売却して高額の利益を得る手法を「O方,式」と称する。 。)(2)E株買い集めの経緯及びその準備状況Aは,O方式によってさらなる利益を得るため,平成16年6月ころ,株式取引等に関する専門的な知識を有し,経営コンサルタントなどを営み,O方式を利用したO株の高値売り抜けによって利益を得ていた,分離前の相被告人Cから,Eの代表取締役であるMを紹介してもらい,Mと会った後,EをO方式の対象とすることを計画し,Cに依頼して,Mに対し,O方式のための業務提携を提案し,提携交 て利益を得ていた,分離前の相被告人Cから,Eの代表取締役であるMを紹介してもらい,Mと会った後,EをO方式の対象とすることを計画し,Cに依頼して,Mに対し,O方式のための業務提携を提案し,提携交渉を進めてもらうとともに,そのころ,被告人に対しEの株式以下E株というを買い集めることを伝えこれを(「」。),受けて,被告人は,Jの従業員で被告人の部下であったDとE株を買い集めるための作業を開始した。 その際,被告人は,Aの指示で,株式取引業務のためにかねて預かっていたA及びその実子であるF1の各名義の証券取引口座とは別に,Nグループ傘下の関連会社の幹部であったF2,F3らの承諾を得て,同人ら名義の各(,「」。)証券取引口座以下この際に開設された口座を幹部名義口座というを開設し,これらの口座を管理するようになった。 さらに,被告人は,Aの指示で,平成17年1月ころから,幹部名義口座とは別に,Nグループの取引先企業の経営者や従業員であるF4,F5,F6,F7に依頼して,その証券取引口座を開設させ,これらの口座と,Aが別途依頼して開設させたAの知人であるF8名義のG1証券株式会社の証券取引口座もあわせて管理するようになった(以下,この際に開設された口座に加え,これ以前に被告人がF9から承諾を得て管理していた同人名義の口座,Aの秘書兼運転手だったF10名義の口座,Nグループ内では有数の株取引に関する知識を有していた分離前の相被告人B名義の口座(G1証券株式会社のものBが後にNグループのためにEの株式取引を行う際に使用す),ることとなるB名義の口座(当時のG3証券株式会社のもの)及びBがかねて知人であるF11に依頼して開設してもらい,管理していた同人名義の口座を合わせて「第三者名義口座」という。 , 使用す),ることとなるB名義の口座(当時のG3証券株式会社のもの)及びBがかねて知人であるF11に依頼して開設してもらい,管理していた同人名義の口座を合わせて「第三者名義口座」という。 ,。)(3)E株の買い集め状況被告人は,平成16年12月ころ,Aから,E株を買い集めるようにとの,,指示を受けAがNグループ傘下の関連会社等から捻出させた資金を元手にそのころ以降,幹部名義口座を使って,Dと共にE株を買い集め始めた。また,そのころから,被告人は,Aの指示で,Bから株式取引に関する助言を受けるようになった。こうして,被告人は,平成17年1月末ころまでに,幹部名義口座によりE株を約4000株(発行済株式総数の約17パーセント相当)取得した。 ,,(,その後被告人は平成17年1月下旬ころから同年2月上旬ころ以下特に年の記載のない場合には平成17年のことを示すにかけてAか「」。),ら,E株を幹部名義口座から第三者名義口座に移すように指示されたため,証券取引市場において,幹部名義口座にあるE株を売り付け,第三者名義口座の各名義で買い付けるなどして第三者名義口座にE株を移す一方,引き続き第三者名義口座を使ってE株の買い集めを続けた。 その際,被告人は上記両口座間でなされた株式売買によって得られた利益(後記のとおり,このころEの株価は,平成16年12月当時に比べて高騰していたため売買差益が生じていたを各口座の名義人本人らに引き出,。),させて,Aに手渡したり,被告人が管理する別の借名口座に入金するなどした。また,被告人は上記両口座間でE株を高値で相対させる取引(被告人はこれをクロス取引と称していた等を行っていたがこれによって後記のと。),おりE株の取引の出来高が増加するとともに,株価 した。また,被告人は上記両口座間でE株を高値で相対させる取引(被告人はこれをクロス取引と称していた等を行っていたがこれによって後記のと。),おりE株の取引の出来高が増加するとともに,株価を高騰させる効果があった。そして,被告人は,Dに命じて,E株の買い集めの進ちょく状況に関する,各取引日ごとの「株式報告書」を作成させ,これをAやNグループ傘下の関連会社の役員らに送付して,取引日ごとのEの株価,出来高数,売付・買付株式数等について報告していた。他方でAは1月ころ以降,かねてO方式を利用したO株の高値売り抜けにより多額の利益を得させてやったことのある,Nグループの取引企業の経営者であるHやIに対し,E株を購入するよう持ちかけ,同人らに多数のE株を取得させておいた。 (4)Eとの業務提携の交渉状況と交渉決裂時の対応策についてAは,O方式の実現を企図して,上記のとおり,被告人らにE株の買い集めを続けさせる一方,Cを介してMに対し,Nグループ傘下の関連会社とEとの業務提携の交渉を続けたが,Mは,1月末ころ,これを明確に拒否する姿勢を示した。そこで,Aは,2月6日に,札幌市内のホテルにCを招き,Nグループの幹部らを前に,業務提携ができなかった場合にとるべき対応策について話し合った。 この会合でCが説明した対応策の内容は,①更にE株を買い集めて株主の立場からEとの業務提携を持ちかける,②それでも業務提携がうまくいかなければ,Eの株価を高騰させて第三者に高値で売却して利益を得る(売り抜ける③売り抜けられずに損失が生じる事態になったとしてもまずは第三),,者名義口座にあるE株をJに高値で買い取らせ,売買差益を得て利益を確保 するとともに,Jの損失については,O株の売却で得た多額の利益と相殺すれば,Jが多額の税金の徴収を免れること は第三),,者名義口座にあるE株をJに高値で買い取らせ,売買差益を得て利益を確保 するとともに,Jの損失については,O株の売却で得た多額の利益と相殺すれば,Jが多額の税金の徴収を免れることができるので,実質的な損失を被らない,というものであった。 (5)J名義の証券取引口座の開設等その後,Aは,被告人に対し,J名義の証券取引口座(以下「J口座」と。)。 ,,,いうを開設するように指示した被告人はAの指示に従い2月14日G2証券株式会社P支店において,J口座の開設の申込みをし,同口座を開設した。この口座には,翌15日にO株328株が入庫されたが,3月1日にこれが売却され,同月4日同口座にO株の売却代金1億690万2416円が入金された(このときから同口座を利用してE株を取得することができる状態になった。 。)また,このころ,Aは,Cから,MがNグループ傘下の関連会社とEとの業務提携を正式に拒否する意向を示したことを聞き,Bに対し,株価を40万円までつり上げてJ口座に移すことを,被告人に対し,Bと協力して株価を40万円までつり上げてJ口座に移すことを,それぞれ指示した。 (6)本件直前のE株の保有状況,,,被告人らは3月3日の時点で幹部名義口座及び第三者名義口座によりE株を合計約7471株(発行済株式総数の約28.6パーセント)保有していた。 本件対象期間中における被告人らによる取引等被告人らは,平成17年3月4日から同月18日までの間の土日を除く11取引日以下本件対象期間というにおいて①直前の約定値よりも高い(「」。),指値または成行の買い注文を出し,高値で市場にある株を連続して買い付ける(),,,高値買い上がりその一方で②直前の約定値よりも安い買い注文を出してその指値 よりも高い(「」。),指値または成行の買い注文を出し,高値で市場にある株を連続して買い付ける(),,,高値買い上がりその一方で②直前の約定値よりも安い買い注文を出してその指値よりも株価が下落することを防ぐ下値買い支え③終値をできるだ(),け高くするために取引終了以下引けという間際に株価を高値に誘導,(「」。) する終値関与④管理する口座間での買い注文と売り注文を複数回繰り返し(),て出来高を増加させる,⑤いわゆる仮装売買や⑥馴合売買をするなどの方法により,E株の取引を行い,その際,別表1,2記載のとおりの,株式の売買が繁盛であると誤解させ,かつ同株式の相場を変動させる態様の一連の売買及びその委託をし,別表3記載のとおりの,株式につき権利の移転を目的としない仮装の売買をし,別表4記載のとおりの,通謀して売付けと同時期に同価格で買い付ける馴れ合いの売買をした。以下は,具体的な取引の事例であり,被告人は,東京都内でNグループの仕事をしていたBと連絡を取り合い,その助言や指導を受けながら,そのほとんどの取引を自ら行った。 (1)①高値買い上がりBは,3月4日,自己が管理していたF11名義の口座を使って,始値が28万5000円であったところ,午前9時に成行で28株の,同2分にも成行で17株の各買い注文を出すという,小刻みな成行買い注文を出し,株価が29万3000円となった同3分に,直前の約定値(以下「直前値」というを上回る29万5000円の高指値で30株の買い注文を出し同4。),分に連続して同じ指値で30株の買い注文を出すなどの,直前値を上回る値,。 段による買い注文を連続して出し株価を29万4000円まで引き上げた被告人は3月9日,直前値が36万5000円であったところ, 連続して同じ指値で30株の買い注文を出すなどの,直前値を上回る値,。 段による買い注文を連続して出し株価を29万4000円まで引き上げた被告人は3月9日,直前値が36万5000円であったところ,午後1時49分に,F9名義の口座を使って,指値36万9000円で20株,同50分に,F5名義の口座を使って,指値37万円で20株,同51分に,F8名義の口座を使って,指値37万5000円で20株の各買い注文を出すという,連続した高指値での買い注文を出し,株価を37万5000円まで引き上げた。 また,被告人は,3月15日,午前9時39分に,直前値が35万4000円であったところ,J口座を使って,直前値よりも6000円高い36万円の指値で260株の買い注文を出し,同40分には株価を36万5000 。 ,,,円まで引き上げたさらに被告人はこのように株価が上昇したことから同45分には,上記取引の後,未だ約定していない254株の買い注文を37万円の高指値に変更し,これにより株価を37万円まで引き上げた。その後株価は一時更に上昇したものの,同52分には36万1000円まで下落していたため,同53分に,直前値が36万1000円のところ,F9名義の口座を使って,成行で10株の買い注文を出し,株価を36万7000円にまで引き上げ,さらに同54分に,同じ口座を使って,成行で10株の買い注文を出し,株価を37万円まで引き上げた。 (2)②下値買い支え被告人は,①3月7日の取引では,F6名義の口座を使って,直前値より。 ,も3000円安い30万3000円の指値で8株の買い注文を出したまた被告人は,②同日,F7名義の口座を使って,直前値よりも2000円安い31万4000円の指値で10株を,③続けて直前値よりも4000円安い31万4000円の指値で1 指値で8株の買い注文を出したまた被告人は,②同日,F7名義の口座を使って,直前値よりも2000円安い31万4000円の指値で10株を,③続けて直前値よりも4000円安い31万4000円の指値で10株の買い注文を出した。さらに,被告人は,④3月17日の取引では,F4名義の口座を使って,直前値よりも8000円安い37万6000円で30株の買い注文を出した。 本件当時,E株の市場における取引状況は,被告人らによる大量の仮装売買ないし馴合売買以外は,買い注文の発注株数の多くが一桁であり,その大半が1株だけであった。このような取引状況にかんがみれば,上記のとおり被告人が直前値よりも安値である8株ないし30株もの買い注文を出すことは,一般投資家に対し,株価の下落リスクが低く,新たな取引約定のためには,これらの発注価額よりも高値で買い注文を出さなければならないと認識させるに十分な行為であると評価できる。 したがって,上記の4注文はいずれも下値買い支えと認められる。 なお,検察官は,上記の4注文に加えて,①3月7日のF7名義の口座を使った,指値30万5000円での20株の買い注文,②同日のF8名義の 口座を使った,指値31万7000円での10株の買い注文,③3月8日のF8名義の口座を使った,指値36万5000円での90株の買い注文,④3月15日にF9名義の口座を使った,指値37万2000円での1株の買い注文が,いずれも下値買い支えであると主張する。 しかしながら,これらの買い注文は,いずれも直前値以上の価額で発注されたものであるから,下値買い支えとは認められない。 (3)③終値関与本件で取引が行われた当時の大証ヘラクレス市場の引けの時刻は午後3時10分であった。 被告人は,3月11日の取引では,直前値が37万9000円であったところ,引け間際の れない。 (3)③終値関与本件で取引が行われた当時の大証ヘラクレス市場の引けの時刻は午後3時10分であった。 被告人は,3月11日の取引では,直前値が37万9000円であったところ,引け間際の午後2時56分に,B名義の口座(G1証券株式会社のもの)で20株の成行での買い注文,同時刻に同口座で直前値より4000円高い38万3000円の指値で1株の買い注文を出して,株価を38万3000円まで引き上げ,引き続き,午後2時57分には,直前値より2000円高い38万5000円の指値で3株の買い注文を出すなどの,直前値よりも高い指値による買い注文や成行での買い注文を小刻みに繰り返し,終値を38万7000円まで引き上げた。 3月15日の取引では,当日の株価は35万5000円から38万5000円という幅で変動していたが,引け間際の午後2時53分に,直前値が37万1000円のところ,F10名義の口座を使って,37万3000円で1株,37万8000円で1株,同54分に37万9000円で2株,午後3時2分に同額で30株,同5分に38万円で50株,同6分に38万2000円で10株,同7分に38万2000円で合計26株,同8分と同9分にそれぞれ成行で5株の各買い注文を出して,株価を38万2000円まで引き上げた。 (4)④同じ口座間での買い注文と売り注文を交互に行う取引 3月4日の取引で,被告人は,午前10時11分に,直前値29万4000円のところ,F8名義の口座を使って,成行で合計10株の買い注文を出,,,し株価を29万7000円まで引き上げた直後F2名義の口座を使って午前10時11分に29万4000円の指値で1株,午前10時12分と同13分に29万2000円の指値で1株ずつの売り注文を出した。また,午前10時26分に,直前値29万2000 2名義の口座を使って午前10時11分に29万4000円の指値で1株,午前10時12分と同13分に29万2000円の指値で1株ずつの売り注文を出した。また,午前10時26分に,直前値29万2000円のところ,再びF8名義の口座を使って,29万3000円の指値で2株の買い注文を出し,同額に株価を引き上げ,午前10時28分に,再びF2名義の口座を使って,成行で3株の売り注文を出した。このように,同じ口座を使って多数回にわたり売買を行い,多くの出来高を作り出した。 (5)⑤仮装売買3月7日の取引で,被告人は,午後1時41分に,直前値が31万6000円であったところ,F3名義の口座を使って,成行で125株の売り注文を出し,同時刻にF8名義の口座を使って,直前値よりも1000円高い31万7000円の指値で130株の買い注文を出し,あえて5株の買い注文を場に残す形で約定させることにより,一般投資家に対し,買いの圧力が強いという印象を与えた。 ,,,,3月14日の取引で被告人はJ口座から午後零時34分に200株午後1時10分に50株(高指値,午後2時29分に200株(高指値,))(),(),午後2時36分に300株高指値午後2時49分に200株高指値午後2時55分に200株午後3時3分に52株高指値午後3時4分,(),に113株の合計1315株の買い注文を出し,これと第三者名義口座を使って細分化した売り注文とを対当させ,このうち1218株について,実際には権利の移転がなされていないにもかかわらず,このような大量の売買を約定させて,当日の出来高を大幅に増加させるとともに,買いの圧力が強いように見せかけた。 3月15日の取引で,被告人は,午前9時45分に,J口座を使って,残っていた36万円の指値での25 買を約定させて,当日の出来高を大幅に増加させるとともに,買いの圧力が強いように見せかけた。 3月15日の取引で,被告人は,午前9時45分に,J口座を使って,残っていた36万円の指値での254株の買い注文を37万円の指値に変更したうえ,同時刻に,F4名義の口座を使って37万円の指値での売り注文を出し,これらを約定させて,出来高を作り出す一方,上記買い注文を72株残して,買いの圧力が強いという印象を与えた。 3月17日の取引で,被告人は,4つの第三者名義口座を使い分け,午前10時20分から午後零時47分までの間に,36万6000円から38万2000円までの1000円ごとの全ての価格に数十株から300株まで(合計951株)の大口の売り注文を出したほか,38万5000円の指値,,,,で170株の売り注文を出し他方で午後零時50分にJ口座を使って36万7000円の指値で50株の買い注文を出し,そのうち40株を対当させたり,その後も午後2時11分から21分ころにかけて指値を上げながら,2回150株の大口の買い注文を出すなどして,出来高を増加させつつ株価を38万5000円まで引き上げた。 (6)⑥馴合売買被告人は,Aの指示の下,3月8日及び9日の両取引日において,自己が行う買付けと同時期に,それと同価格で,当時E株を保有していたI及びH,,,が株を売り付けることをIについてはBを介しHについてはAを介してI及びHと通謀し,両名が売り注文を出したE株のほとんどすべてを,B及びDの協力を得て買い付け,合計1239株について,馴合売買を行った。 具体的には以下のとおりである。 3月8日の取引で被告人は,午後1時42分にIの口座を使って出した36万7000円の指値での90株の売り注文に対し,同時刻にF8名義の口座を使って36万7 を行った。 具体的には以下のとおりである。 3月8日の取引で被告人は,午後1時42分にIの口座を使って出した36万7000円の指値での90株の売り注文に対し,同時刻にF8名義の口座を使って36万7000円の指値で90株の買い注文を出し,89株を約定させた。 また,被告人は,同日午後1時53分にIが出した37万8000円の指 値での310株の売り注文に対し,同時刻にF6名義及びF7名義の各口座を使って,同額の指値で160株ずつの買い注文を出し,310株について約定させた。 3月9日の取引で被告人は,午後1時44分にHが出した36万円の指値での851株の売り注文に対し,同時刻に36万円の指値でF7名義の口座を使って100株,F5名義の口座を使って300株,及びF8名義の口座を使って300株,午後1時45分にF6名義の口座を使って36万2000円の指値で150株(この注文はBと相談のうえ,Bが行った,F9名。)義の口座を使って,36万円の指値で50株の各買い注文を出し,840株を約定させた。なお,F6名義で買い付けた150株については,売値である36万円よりも2000円高い36万2000円の指値で買い注文を出しているが,馴合売買における「同価格」とは,双方の注文が対当して成約する可能性のある価格であれば足りるから,上記の150株についても馴合売買に含まれると認められる。 (7)Eの株価及び出来高の推移等Eの株価は,平成16年12月上旬ころまで終値が8万円台(出来高が数十株程度)で推移していたところ,同月29日に終値で10万円(出来高が数百株程度)を超えた。平成17年1月は株価が約10万円から約20万円の間で,出来高が数百株から数千株の間で推移し,同年2月は株価が約15万円から約30万円の間で,出来高が数百株から数千株の間で推移し 百株程度)を超えた。平成17年1月は株価が約10万円から約20万円の間で,出来高が数百株から数千株の間で推移し,同年2月は株価が約15万円から約30万円の間で,出来高が数百株から数千株の間で推移し,同年3月は,株価が約25万円から約40万円の間で,出来高が数百株から数千株の間で推移した。その中でも,Aが株価を40万円までつり上げることを,,指示した直後ころであり本件対象期間である同年3月4日から18日には同月4日から10日までに株価が約28万円から約40万円まで急上昇し,同日には一時40万8000円にまで達した。被告人らがE株を第三者名義口座からJ口座に移し替え始めた同月14日から18日までの間は,約35 万円から約40万円までの株価を維持した。 (8)被告人らによる売付け及び買付けの出来高全体に占める割合本件対象期間を通じてのE株の売付け及び買付けの出来高全体のうち,被告人らによる売付け及び買付けが占める割合は,売付けが約27.5パーセント,買付けが約35.4パーセントであり,その内訳は以下のとおりである。 3月4日は売付けが約19.0パーセント,買付けが約39.9パーセン,. ,. ,ト7日は売付けが約295パーセント買付けが約366パーセント8日は売付けが約9.9パーセント,買付けが約12.8パーセント,9日は売付けが約25.9パーセント,買付けが約29.7パーセント,10日は買付けが約0.4パーセント,11日は買付けが約5.0パーセント,14日は,売付けが約72.8パーセント,買付けが約67.5パーセント,,. ,. ,15日は売付けが約123パーセント買付けが約603パーセント,. ,. ,16日は売付けが約578パーセント買付けが約725パーセント,. ,. , . ,. ,15日は売付けが約123パーセント買付けが約603パーセント,. ,. ,16日は売付けが約578パーセント買付けが約725パーセント,. ,. ,17日は売付けが約672パーセント買付けが約815パーセント18日は,売付けが約33.6パーセント,買付けが約44.3パーセントであった。 第3本件の事実経過等に関する弁護人の主張について 被告人の供述の信用性について被告人の供述は,第1の各争点にわたり,捜査段階と公判段階とで相反しているところ,以下にも述べるとおり,上記相反部分については,その捜査段階供述の方が,客観的証拠とも合致して合理的であるうえ,分離前の相被告人らの捜査段階供述や,その他の関係者らの供述とも整合することなどから,被告人の公判供述よりも信用性が高いといえる。 Eの株価を40万円につり上げる旨のAの指示があった時期についてこの点について,弁護人は,被告人の検察官調書及び公判供述に基づき,E の株価を40万円までつり上げる旨の指示を受けた時期は,本件対象期間前ではなく,同期間中である3月8日から11日までの間であると主張する。 しかしながら,被告人は,Aから上記の指示を受けた時期について,第6回及び第8回公判では,証券会社からJ口座開設の通知を受けた直後であると供述したにもかかわらず,検察官から同口座の開設時期が2月14日である旨の証拠を提示されると,第10回公判で,馴合売買を行った直後の3月10日ころであるなどと,合理的な説明もなく供述を変遷させており,被告人の上記公判供述の信用性は低い。また,被告人は,捜査段階で検察官に対し,3月上旬ころにAからJ口座を開設するよう指示され,その後にAから上記の指示があ,,った旨供述しているがこの供述は上記のJ口座 記公判供述の信用性は低い。また,被告人は,捜査段階で検察官に対し,3月上旬ころにAからJ口座を開設するよう指示され,その後にAから上記の指示があ,,った旨供述しているがこの供述は上記のJ口座の開設時期と合致しておらず同様に信用性に乏しい。 既に認定したとおり,被告人が,2月14日にJ口座を開設し,3月1日の時点で,同口座で株式の現物取引をする際の原資となるO株の売却代金が入金,,されており同口座による取引が可能な状態になっていたという客観的状況やこれを踏まえて3月4日からE株の変動操作等を行ったことについて,具体的かつ詳細に説明する被告人の警察官調書及びBの捜査段階供述等をあわせて検討すると,被告人は,具体的な日時までは特定できないものの,本件対象期間前に,AからEの株価を40万円までつり上げた後にJ口座に移すように指示されていたことが認められる。 別表1及び3のF11名義の口座での取引について被告人及び弁護人は,別表1及び3記載の各取引のうち,BがF11名義の,,口座を使用して行った取引についてBが個人的に行った取引であると主張しBも公判で,F11名義の口座による取引は自己資金でした個人的取引である旨供述しているので,以下検討する。 既に認定したように,Bも,被告人と同じく,Aから,本件対象期間前に,Eの株価を40万円までつり上げてJ口座に移すようにとの指示を受けていた ことが認められる。ところで,F11名義の口座は,本来B個人の株式取引のために,F11から名義を借りて使用していたものであるし,例えば,株価が30万円を下回っている3月4日の時点で買い付けたE株を,株価が37万円から38万円あたりを推移している3月16日及び17日に売却してその差益を得るなどしたことは事実であるから,B自身の利益のためにE株の買付 下回っている3月4日の時点で買い付けたE株を,株価が37万円から38万円あたりを推移している3月16日及び17日に売却してその差益を得るなどしたことは事実であるから,B自身の利益のためにE株の買付けをした面があったことは否定できない。しかし,Bが,本件対象期間前にAからE株を40万円までつり上げるよう言われた後の取引の態様,例えば,3月4日に同口座を使って行った買付けにおいて,短時間内で株数を小分けにして発注したり,連続した高指値ないし成行での買い注文を出して高値で買い上がったりするなど,あえて株価を上昇させるような方法で買付けを行っていることに照らすと,本件対象期間前にAからE株を40万円までつり上げるように言われたため,これに従ってAのためにこれらの取引を行ったというBの捜査段階の供述は信用できる。 そうすると,BによってなされたF11名義の口座を使った取引も,被告人らによる変動操作取引ないし仮装売買の一部を構成するというべきである。 第4証券取引法違反の罪の成否 仮装売買について(1)後記の平成16年改正前の証取法159条1項が規定する「取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」とは,取引が頻繁かつ広範に行われているとの外観を呈する等,当該取引の出来高,売買の回数,価格等の変動及び参加者等の状況に関し,他の投資者に,自然の需給関係によりそのような取引の状況になっているものと誤解されることを認識することであると解せられる。 もっとも,実質的に権利を移転することもないのに,あえて証券市場において取引を行うことはおよそ経済的合理性のある行為とはいえないから,このような仮装売買をしたこと自体をもって,特段の事情のない限り,上記目 的の存在を推認することができる。 本件において,被告人が行った仮装売買も,一般投資家に株取引が ある行為とはいえないから,このような仮装売買をしたこと自体をもって,特段の事情のない限り,上記目 的の存在を推認することができる。 本件において,被告人が行った仮装売買も,一般投資家に株取引が繁盛に行われているとの誤解を生じさせるような態様での取引であるといえるし,そのことを被告人も認識していたと推認できる。実際,本件対象期間の11取引日のうち,8取引日で仮装売買がなされており,出来高が相当数増加し。 ,,,ているこれにより一般投資家が取引が繁盛に行われていると誤解してE株の取引に参加しようと考える可能性は,十分にあったと考えられる。そして,被告人は,捜査段階では,自ら行った仮装売買によって,一般投資家が取引が繁盛に行われていると誤解し,そのうえで売買取引に参加しようと考える可能性があることを認識していた旨供述している。したがって,被告人が,上場有価証券等の取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって,仮装売買を行ったことは優に認められる。 (2)これに対し,弁護人は,上記取引については,そもそも市場における取引が原則であるところ,被告人はN関係者がE株を買い集めているという情報を証券市場から打ち消す必要があったことから,幹部名義口座から第三者名義口座へ,第三者名義口座からJ口座へと移し替えること,すなわち名義変更を目的としていたにすぎないと主張する。 しかしながら,弁護人が主張するような情報を打ち消すことが目的であれば,第三者名義口座からJ口座への権利の移転まで証券市場において行わなければならない必然性はないうえ,例えば3月18日の取引で第三者名義口座間での仮装売買がなされていることを説明できない。また,単なる名義変更であれば,一回の取引で一括して行えばよいにもかかわらず,取引日を複数回に分けるだけでなく,一取 3月18日の取引で第三者名義口座間での仮装売買がなされていることを説明できない。また,単なる名義変更であれば,一回の取引で一括して行えばよいにもかかわらず,取引日を複数回に分けるだけでなく,一取引日一口座の中でも注文を細分化して売買を成立させていることも不自然かつ不合理である。 したがって,弁護人の主張は採用できない。 また,そもそも,前記(1)の目的が認められる場合,他に併存する目的 (例えば,業務提携目的や名義変更目的等)が存在することや,併存する目的との主従関係等は,犯罪の成否自体には影響を及ぼさない。そうすると,仮に弁護人の主張するとおり,被告人において名義変更目的があったとしても,上記のとおり,一般投資家に繁盛に行われていると誤解を生じさせるような態様で仮装売買を行い,そのことを被告人が認識していたことが十分に推認できる以上,本罪が成立する。 馴合売買について馴合売買においても,その主観的要件たる目的は,前記の仮装売買と同様であるところ,売り手と買い手が通謀して,証券市場を介することなく取引が可能であるにもかかわらず,あえて証券市場において取引を行うことは,手数料の出費の点や売りに出した当該株式を第三者が買い付ける可能性を考えると,およそ経済的合理性のある行為とはいえないから,このような馴合売買をしたこと自体をもって,特段の事情のない限り,上記1の(1)の目的の存在を推認することができる。 被告人が行った馴合売買は,一般投資家に株取引が繁盛に行われているとの誤解を生じさせる態様での取引であるといえるし,そのことを被告人も認識していたと推認できる。実際,本件で,馴合売買がなされた2取引日において,出来高が相当数増加している。これにより,一般投資家が,取引が繁盛に行われていると誤解して,E株の取引に参加しようと考える可 していたと推認できる。実際,本件で,馴合売買がなされた2取引日において,出来高が相当数増加している。これにより,一般投資家が,取引が繁盛に行われていると誤解して,E株の取引に参加しようと考える可能性は十分にあったと考えられるし,現に3月9日の馴合売買によって取引に参加した投資家がいたことも判明している。そして,被告人は捜査段階で,自らがした馴合売買によって,一般投資家が,取引が繁盛に行われていると誤解し,そのうえで売買取引に参加しようと考える可能性があることを認識していた旨供述している。 よって,本件馴合売買についても,被告人に前記目的があったことは優に認められ,本罪が成立する。なお,上記目的がある以上,他に併存する目的があったとしても,犯罪の成否に影響を及ぼさないことは,前記1の仮装売買の項 で述べたところと同様である。 変動操作について(1)誘引目的の意義後記の平成16年改正前の証取法159条2項1号は,有価証券の相場を変動させるべき一連の売買取引等のすべてを違法とするものではなく,有価証券市場における売買取引を誘引する目的をもって,有価証券取引が繁盛であると誤解させる一連の売買取引等を禁止しているところ,その趣旨は,人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず,投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤解させて有価証券市場における有価証券の売買取引に誘い込む目的をもってする,相場を変動させる可能性のある売買取引等を禁止するものと解される(最高裁平成6年7月20日第三小法廷決定。 )(2)認定事実とその評価ア取引の動機被告人は,本件対象期間前に,Aから,Eの株価を40万円までつり上げたうえで,E株を第三者名義口座からJ口座に移すことを指示され,これを実現する意図をもって,本件対象期 実とその評価ア取引の動機被告人は,本件対象期間前に,Aから,Eの株価を40万円までつり上げたうえで,E株を第三者名義口座からJ口座に移すことを指示され,これを実現する意図をもって,本件対象期間中,株取引を行った。 このような動機の存在は,それ自体として,被告人に誘引目的があったことを相当程度推認させる事情である。 イ取引の態様被告人らは,前記第2の4で認定したとおり,①高指値ないし成行での買い注文を繰り返し,③引け間際に多くの取引をして終値を引き上げるという取引を行っているが,これらはいずれも株価を高値に誘導するものである。また,②あえて直前値よりも安い買い注文を出すことで値崩れを防ぎ,④複数の口座を使用し,少ない株数で買い注文と売り注文を交互に行うことで,出来高を増加させたり,⑤仮装売買や⑥大口での馴合売買を, 11取引日にわたり繰り返し行った。このような経済的合理性がない取引を含む種々の取引を繰り返し行うこと自体,一般投資家をE株の取引に誘い込む意図をもってなされたことを推認させる。 この点について,被告人及び弁護人は,本件の取引のうち,下値支え等とされている取引は,買い集めの一環として,相場よりも低価格で購入するためであったと主張するが,そもそも被告人らは,一方で相場よりも低価格で購入するという目的からは明らかに不合理な,高値ないし成行での買い注文を繰り返しているのであるから,被告人及び弁護人の上記主張は採用できない。 また,弁護人は,被告人の取引割合が全体的に,特に期間前半は低いにもかかわらず,出来高は増加している,とりわけ,最も出来高の多い3月8日の関与率は1パーセントに満たないし,本件対象期間中で最高価格となった3月10日には全く取引していないと主張する。 しかしながら,被告人らの取引は全体として相場を変動させ け,最も出来高の多い3月8日の関与率は1パーセントに満たないし,本件対象期間中で最高価格となった3月10日には全く取引していないと主張する。 しかしながら,被告人らの取引は全体として相場を変動させる可能性のある売買取引であったと認められるところ,本件対象期間中,被告人らの,,取引割合が低い日があることは被告人らによる変動操作の影響もあってさらなる変動操作を加えなくとも株価が上昇したとみることができるのであって,取引割合が低い日等があることをもって,誘引目的を否定すべき事情とはならない。 ウ取引の割合被告人らによる取引の割合は,3月4日及び7日はおおむね20ないし30パーセント程度であり,本件対象期間の後半は50パーセントを超える日もあったことからすると,被告人らの取引が,E株の市場取引に与えた影響は重大であったというべきであり,このように被告人らによる取引の割合が大きい状況下で変動操作を行えば,一般投資家が自然の需給で取引が行われていると誤解することについて,被告人は当然に認識し得たも のと考えられる。 エ値上げ幅の程度既に前記第2の1で認定したとおり,本件当時,Eでは特段その株価上昇に結びつくような事業活動は行われておらず,平成16年12月ころまではその株価は8万円程度であった。 他方で,前記第2の4で認定したとおり,Eの株価は本件対象期間前には28万5000円であったのに,被告人らによる取引により,40万8000円の最高価格まで達し,その後は変動を繰り返しながらも38万円程度を推移していた。このような株価の推移は,誘引目的をもって変動操作がなされたことを推認させる事情といえる。 なお,弁護人は,3月14日ないし16日は,終値が始値よりも低くなっていることや,期間後半は上昇幅が小さいことなどからして,株価の上昇は, をもって変動操作がなされたことを推認させる事情といえる。 なお,弁護人は,3月14日ないし16日は,終値が始値よりも低くなっていることや,期間後半は上昇幅が小さいことなどからして,株価の上昇は,E株を買い集める過程において自然に上昇したといえる程度のものにとどまると主張する。しかし,本件対象期間全体を通して,株価は上昇傾向にあること,わずか11取引日の間に当初の株価から3割程度上昇していること等からすると,弁護人が主張するように,経済的合理性をもってした株式の買い集めによって自然に上昇したものとは考えがたい。 オ取引後の状況弁護人は,本件対象期間後に,Jが所有している株では議決権を行使できないことが発覚し,被告人がAから厳しく叱責された事実を指摘し,こ,。 れをもって本件の取引は業務提携を推進する目的で行われたと主張するしかし,既に述べたように,Aの第1の目的は,O方式を念頭においたEとの業務提携にあったものの,その業務提携がうまくいかない場合に備えて,Eの株価を上昇させることが必要であったことに照らせば,上記の事実は誘引目的の認定を左右しないというべきである。 (3)総合判断 以上に加えて,被告人やAの指示により,本件の一連の取引を被告人とと,,「,もに行っていたDが被告人から場が活発で動いているように見えるから,。」一部を残した方が他の人がそれを見て売買に入って付いてきやすいからなどと本件の取引について説明を受けたと供述しており,このような被告人の説明は,被告人に誘引目的が存在したことを裏付ける。 さらに,被告人は,捜査段階では,出来高を多く見せることで人気がある株だと誤解した一般投資家をE株の売買に誘い込むことができると考えていたと供述しており,この供述は,既に述べた仮装・馴合売買をも取りまぜた, 人は,捜査段階では,出来高を多く見せることで人気がある株だと誤解した一般投資家をE株の売買に誘い込むことができると考えていたと供述しており,この供述は,既に述べた仮装・馴合売買をも取りまぜた,。 客観的な取引態様等やDの供述とも整合し十分に信用ができるものであるそうすると,被告人は①株価を引き上げるために,②変動操作と評価できるような取引を繰り返し,③それらの取引の割合は全体的に高いもので,④これによって株価は28万5000円から40万8000円の最高価格までつり上げられており,⑤取引後の状況も特段誘引目的を否定する事情とはなりえないこと,加えて,Dや捜査段階の被告人の供述からすると,本件対象期間当時,被告人に誘引目的があったことが優に認められる。 第5被告人と他の共犯者間の共謀による共同正犯の成否既に述べたように,被告人は,Aから,E株の買い集め及びその株価のつり上げを指示され,Bの助言等を得ながら,仮装売買,馴合売買,変動操作のほとんどの取引を自ら行ったものであり,その指示を了承した時点で,Aらとの共謀を遂げたものと認められる。 そして,前記第3の3で述べた,BによるF11名義の口座を使った取引についても,被告人はBとの間で,Aを介して,共謀していたと認められる。なお,本件の一連の取引の中には,上記の取引以外にも,被告人が直接関与して,,,,いない取引が存在するがこれらの取引に関しても上記と同様に被告人はAを介して,その各取引の実行行為者らと共謀関係にあったと認められる。 さらに,被告人は,本件取引について,終始Aに従っていたという側面はあ るものの,Nグループの株取引担当者であるという立場から,自己の業務の一環として変動操作等の犯罪の実行行為を行っていたのであるから,被告人に共同正犯が成立することに疑問の余 いたという側面はあ るものの,Nグループの株取引担当者であるという立場から,自己の業務の一環として変動操作等の犯罪の実行行為を行っていたのであるから,被告人に共同正犯が成立することに疑問の余地はない。 第6 結論 以上の次第で,本件において,被告人には,後記の平成16年改正前の証取法159条1項1号及び5号並びに同条2項1号違反の罪の共同正犯が成立する。 (法令の適用(略))(追徴に関する補足説明) 旧証券取引法198条の2は,相場操縦等の犯罪行為により得た財産及びその対価として得た財産を必要的に没収・追徴する旨規定しているが,同法198条の2第1項ただし書は,当該財産全部を没収・追徴することが犯人に過酷な結果をもたらす場合などには,例外的にその財産の全部又は一部を没収・追徴しないことを許容しているものと解される。 そして,本件において,被告人らが現実に取得できる利益は相場操縦に係る株式の売買差益相当額にすぎないことにかんがみると,同法198条の2第1項た,,だし書を適用して被告人からは判示の犯罪行為により得たE株の売却代金から同株の買付代金相当額を控除した売買差益相当額を没収・追徴するのが相当である。 なお,仮装売買は実質的な権利移転がなく,犯罪行為により得た財産はないといえるから,そもそも必要的没収・追徴の対象とはならない。 以上を前提として検討すると,被告人の判示の犯罪行為による売買損益については,①本件対象期間前にE株を買い付けて,同期間中に同株を売り付けた売買については,2億4145万4500円の差益が,②本件対象期間中に同株を買い付けて,同期間中に同株を売り付けた売買については,388万2000円の差益がそれぞれ生じているのに対し,③本件対象期間中に同株を買い付けて,同期間後に同株を売り付けた売買については 中に同株を買い付けて,同期間中に同株を売り付けた売買については,388万2000円の差益がそれぞれ生じているのに対し,③本件対象期間中に同株を買い付けて,同期間後に同株を売り付けた売買については,多額の差損が生じていることが認め ,。 られるところ①及び②の各差益が没収・追徴の対象となることは明らかである検察官は,さらに③の売買についても,売買差益が生じた取引のみを合算すれば,2158万4000円の差益が生じているので,同価額を被告人から没収・追徴すべきであると主張する。しかしながら,③の売買のうち,主にJ名義の口座を使用してなされた取引では,上記差益をはるかに上回る差損が生じていること,売買差益が生じた取引のみを没収・追徴の対象とする合理的理由は乏しいと考えられることなどから,検察官の上記主張は被告人にとって酷に過ぎる結果をもたらすことになるので,相当とはいえない。 よって,被告人からは,上記①及び②の合計金額である2億4533万6500円を没収すべきであるが,既に費消されるなどしてこれを没収することができないので,同法198条の2第2項により,被告人から同価額を追徴することとする。 ,,, なお弁護人は被告人は本件犯行によって特別な報酬等を得たわけではなく被告人には利益が帰属しておらず,被告人から追徴すべきではない旨主張している。しかしながら,平成17年改正前の証取法198条の2が一定の犯罪行為により得た財産について必要的没収・追徴を定めている趣旨は,このような犯罪行為により得た財産をはく奪して,不正に取得した財産を利用するなどして更なる犯罪行為を行うことを阻止し,もって不公正な証券取引を抑制することにあると考えられることからすれば,上記財産は当該犯罪に関与した犯人全員を対象として確実にはく奪されるべきものであ するなどして更なる犯罪行為を行うことを阻止し,もって不公正な証券取引を抑制することにあると考えられることからすれば,上記財産は当該犯罪に関与した犯人全員を対象として確実にはく奪されるべきものであって,同法198条の2の「犯人」には共犯者全員が含まれると解するのが相当であるから,弁護人の上記主張は採用できない。 (量刑の理由)本件は,被告人が,当時の勤務先の実質的経営者であるAの指示を受け,E株の売買状況等に関して他人に誤解を生じさせる目的で,仮装売買及び馴合売買を行うとともに,誘引目的をもって,E株の売買が繁盛であると誤解させ,かつ相場を変 動させるべき一連の取引を行ったという,証券取引法違反の事案である。 被告人は,業務の一環として,自らの行為により,多数の一般投資家が誤解し,多額の損失を被る危険性があることを認識していながら,共犯者らとともに犯罪事実記載の一連の取引を行って相場を操縦したものであり,その経緯や動機に酌量の余地は少ない。また,本件は組織的かつ計画的な犯行であり,被告人は,仮装売買や馴合売買を交えながら,直前の相場よりも高い指値や成行での買い注文を小出しに行う一方で,値崩れを防止するために直前の相場よりも安値で多量の買い注文を出すことで下値支えをし,さらには,引け間際に高指値や成行での注文を重ねることで終値をつり上げるなどしたもので,その手口は巧妙かつ悪質である。被告人らの相場操縦行為により,Eの株価を大幅につり上げたことで,証券市場の公正性を揺るがし,多くの投資家の判断を誤らせて損失を被らせる危険にさらし,証券市場に対する国民の信頼を損なったのであり,結果は重大である。被告人は,犯罪事実記載の行為のほとんどを直接実行したものであり,その役割は重要かつ不可欠なものであったといえる。以上に加え,被告人が公判で不合理 する国民の信頼を損なったのであり,結果は重大である。被告人は,犯罪事実記載の行為のほとんどを直接実行したものであり,その役割は重要かつ不可欠なものであったといえる。以上に加え,被告人が公判で不合理な弁解に終始しており,反省の態度が十分にうかがわれないことをあわせ考えると,被告人の刑事責任を軽視することは許されない。 しかしながら,被告人は本件の首謀者であるAの指示に従って終始行動していたことが認められ,従属的な立場にあったことが明らかであること,現在はAらNグループとの関わりがないこと,前科前歴がないこと,扶養すべき妻がいること等,被告人のために酌むべき事情も認められる。 以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文のとおりの刑を定めたうえ,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑懲役1年,追徴金2億6721万6500円)平成20年10月31日大阪地方裁判所第4刑事部 細井正弘裁判長裁判官秋田志保裁判官池上弘裁判官
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