【DRY-RUN】○ 主文 一 本件控訴を棄却する。 二 控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求める裁判 一 控訴人 「一、原判決を取消す。二、被控訴人Aは、被控訴人高山町に対し、金七五二万 一、
○ 主文一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一控訴人「一、原判決を取消す。二、被控訴人Aは、被控訴人高山町に対し、金七五二万一、六九六円および内金七二七万〇、七七六円に対しては昭和五四年七月一日から、内金二五万〇、九二〇円に対しては昭和五五年五月九日から、各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。三、被控訴人高山町は、控訴人三名に対し、金七五万円およびこれに対する本判決言渡の口の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。四、訴訟費用は一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決。 二被控訴人主文同旨の判決。 第二当事者の主張、証拠一原判決の引用当事者の主張、証拠関係は、以下のとおり訂正、附加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。 原判決三枚目表七、八行目の「普通退職の場合の一〇〇分の八〇の割増の退職手当」を「普通退職の場合に比し一〇〇分の八〇多い割増退職手当」と、同裏一〇行目の「もののみ」を「勧しようによるもののみ」と、同四枚目表一行目の「場合が」を「ものであるから、これが」と、同一三行目の「においては」を「において」と、同裏七行目の「旨定め」を「旨を定め」と訂正し、同五枚目表六、七行目のそれぞれ「ては」の次に「不法行為の日である」を各加入する。同六枚目表二行目の「行われなけ」を「行わなけ」と、同裏七行目の「ついては」を「ついて」と、同八行目の「にも規則等にも」を「や規則等に」とそれぞれ訂正する。 二控訴人らの主張(一) 退職勧奨制度は人事の刷新、行政能率の維持向上を目的として老令者、病弱者又は能力不足者に退職の意思を慫慂するものであるから、本件のように特別職へ抜擢するため一般職の退職を求める場合には適用すべきでは 退職勧奨制度は人事の刷新、行政能率の維持向上を目的として老令者、病弱者又は能力不足者に退職の意思を慫慂するものであるから、本件のように特別職へ抜擢するため一般職の退職を求める場合には適用すべきではない。一般職からの若年転職を容易にするには特別職の賃金体系等の手直しによるべきで勧奨退職制度を用いるのは筋違いである。 (二) 被控訴人Aが被控訴人高山町の町長として告示施行した法規たる性質を有する勧奨退職の特例措置要綱において特別職へ転職する場合につき勧奨退職要綱二条所定の勧奨退職者と看做す基準として定めている「一般職の勧奨退職者として受ける見込のあつた退職金の額と特別職の職員に就任して受ける見込の経済的収入と比較して不利益が著しい場合」に本件の訴外Bの場合は該当しない。即ち、収入役は平均二期(八年)在任するものとし、一般職として六〇才まで勤務したときは慣例上五九才以上の職員に適用のない勧奨退職の対象とすべきでないので、このような基準で算定すると、次のように一般職の在職収入は収入役の経済的収入に及ばない。 (1) 収入役の経済的収入六、九六六万二、一四〇円(但し、収入役としての純収入六、〇一〇万七、一四〇円に転職時の一般職普通退職金九五五万五、〇〇〇円を加算したもの)(2) 一般職の経済収入イ五八才まで勤務の場合五、〇〇七万五、一一五円ロ六〇才まで勤務の場合五、七五六万四、一三一円なお、退職年金まで考慮すると収入役就任の方が更に有利となる。 したがつて、被控訴人Aが訴外Bの割増勧奨退職金として、退職手当組合に特別負担金を支払つた行為は違法である。 (三) 被控訴人Aの訴外Bに勧奨退職の取扱をした行為は次のとおり町長として職員人事の裁量の範囲を逸脱した裁量権の濫用である。 1 特例措置要綱の告示、施行及びその訴外Bに対する適用は被控訴 である。 (三) 被控訴人Aの訴外Bに勧奨退職の取扱をした行為は次のとおり町長として職員人事の裁量の範囲を逸脱した裁量権の濫用である。 1 特例措置要綱の告示、施行及びその訴外Bに対する適用は被控訴人Aが高山町町長選挙にからみ自派職員を優遇する情実人事の一環として右Bを収入役に登用し勧奨退職扱とする異例の優遇措置をなす目的の下に行なわれたもので、同被控訴人の恣意に基づくものである。 2 勧奨退職制度は定年制のない地方公務員について老令化を防ぎ、人事の刷新、行政能力の維持向上を図るものであり、本件にはかかる目的がない。 3 特例措置要綱は法規たる性質を有するが、仮りにこれが裁量権行使の基準を定めたにすぎないとしても、本件は前示(二)のとおりその基準に達しない。 (四) 被控訴人らの後記三(四)の主張を争う。 なお、退職手当組合は市町村の事務を共同処理するための機関であるから、同組合の事務が介在することによつて町長のなす勧奨退職適用の違法性が中断されるものではない。 (五) 被控訴人らの後記三(五)の主張を争う。 被控訴人ら主張のように仮りに他町村に若干の類似取扱例があるとしても、それが本件勧奨退職扱の違法性を阻却し、その適法性や被控訴人Aの無過失を根拠づけるものでないことは明らかである。 三被控訴人らの主張(一) 控訴人らの前示二、(一)の主張を争う。 本件退職手当条例四条一項三号は同条所定の割増退職手当支給の要件として「その者の非違によることなく勧しようを受けて退職した場合」と規定し、「勧しよう」について他の要件の定めがないからそれは任命権者である町村長の自由裁量に委ねられており、退職後職員が、他に就職するか、特別職に選任されるか否かを間うものではない。したがつて、控訴人主張のように訴外Bが収入役に就任するために一般職の職員を退職したことの 村長の自由裁量に委ねられており、退職後職員が、他に就職するか、特別職に選任されるか否かを間うものではない。したがつて、控訴人主張のように訴外Bが収入役に就任するために一般職の職員を退職したことの故をもつて、同人の勧奨退職扱を違法ということはできない。 (二) 控訴人らの前示二(二)の主張を争う。 収入役は、地方公共団体の長が議会の同意を得て選任するもので、任期は四年であり(地方自治法一六八条七項、一六三条本文)、助役とともに長の女房役として、長の退任にともなつて退職するのが通例であるから、収入役の経済的収入は一期四年を前提として計算すべきである。控訴人ら主張のように二期在職を前提として算定すべきではない。そして、収入役の在職を一期として計算すると、次のとおり、一、三〇〇万円強の収入減となり、特例措置要綱に定める「著しい不利益」に当る。 1 普通退職(五八才まで在職)の収入五、〇〇七万五、一一五円 2 収入役(一期在任)の収入三、六七四万八、七四〇円(但し、一般職の普通退職手当九五五万五、〇〇〇円を含む)(三) 控訴人らの前示二(三)の主張を争う。 特例措置要綱は行政庁内部において裁量権行使の基準を設ける内規であるからその告示施行は任命権者の自由裁量に委ねられている。 控訴人ら主張の町長選挙後の情実人事は単なる風聞と推測、誤解に基づくものである。 勧奨退職制度の目的は控訴人ら主張の二(三)2のように定年制に代ることに限定されない。 そして、退職手当組合加入の多数の町村が本件同様特別職に就任させるため一般職員に退職を勧めた場合に勧奨退職の取扱をしていることからみても、本件が裁量権の濫用に当らないことが明らかである。 (四) 本件退職手当組合は地方自治法二八四条所定の一部事務組合として特別地方公共団体に当り、町村に関する法令の規定が準用され ていることからみても、本件が裁量権の濫用に当らないことが明らかである。 (四) 本件退職手当組合は地方自治法二八四条所定の一部事務組合として特別地方公共団体に当り、町村に関する法令の規定が準用され(同法二九二条)、同組合は退職手当条例及び負担金条例を制定している。 そして、退職手当の額は退職手当組合が退職手当条例によつてその金額を決定、支給するもので、加入町村はその権限を有しない。 したがつて、仮りに本件退職手当の支給が違法であつても、その違法性は負担金条例により中断されるから町村の退職手当組合に対する負担金の納付に違法性が承継されることはないので、住民は退職手当組合又はその機関に対し住民訴訟を提起すべきである(同法二九二条)。 (五) 本件退職手当組合は退職手当条例制定以来、本件と同様一般職を退職して当該市町村の特別職に就任した者に対して勧奨退職の取扱をした事例が昭和三七年から昭和五五年までに二七例あり、高山町では特別職に就任するため一般職を退職にた者全員がその取扱を受けている。そして、被控訴人Aはこのことを熟知して本件勧奨退職扱を当然適法と考えてその負担金の支出をなしたものであるから、同被控訴人の行為には「故意又は重大な過失」がない。 四証拠(省略)○ 理由一当裁判所も原判決同様、控訴人らの請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、以下のとおり、訂正、削除、附加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。 原判決八枚目裏三行目の「とは解されず」を「として運用されているとは解されず」と、訂正し、同一三行目の「広義」から同末行の「ものであるが、」までを削除し、同九枚目表一行目の「該当する」を「該当し、裁量権の行使の基準を定めたものというべきである」と、同三行目の「右要綱」を「右要綱の告示施行」と、同七行目の から同末行の「ものであるが、」までを削除し、同九枚目表一行目の「該当する」を「該当し、裁量権の行使の基準を定めたものというべきである」と、同三行目の「右要綱」を「右要綱の告示施行」と、同七行目の「ないのであるから、」を「ないし、」と、同一一行目の「観奨退職」を「勧奨退職」と、同一二行目の「あるから、」を「あるから、他に特段の事情のない限り、」とそれぞれ訂正する。 二勧奨退職制度の目的と勧奨の要件本件勧奨退職制度、即ち勧奨により退職した者に割増退職金を支給する制度の法的根拠としては、地方自治法二〇四条二項の「普通地方公共団体は、条例で、常勤の職員に対し、退職手当を支給することができる」旨の、同条三項の「手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。」旨の各規定を承けて、同法二八四条一項所定の一部事務組合で特別地方公共団体に該る退職手当組合が制定した退職手当条例(乙第二号証)四条一項三号の「その者の非違によることなく勧しようを受けて退職した場合」の退職手当の額を普通退職により計算した額に「一〇〇分の一八〇を乗じて得た額とする。」との規定に基づくものである。 このように地方自治法、退職手当条例では勧奨退職の要件として退職が(一)非違によるものでないこと、(二)「勧しよう」を受けたことを定めるほか、その目的や「勧しよう」の意義、要件などにつき何らの規定をおいていない。 なるほど、原審証人Cの証言及び公知の事実によると、勧奨退職の制度は一般職公務員について戦後国家公務員法、地方公務員法の施行に伴ない公務員の身分保障との関係から条例による定年制も地方公務員法に反するとしで従前の定年制が廃止されたことと人事院ないし人事委員会の職階制や分限制度が所期の機能を発揮していないところから、考え出されたものと認められるが、勧奨退職の制度は、 る定年制も地方公務員法に反するとしで従前の定年制が廃止されたことと人事院ないし人事委員会の職階制や分限制度が所期の機能を発揮していないところから、考え出されたものと認められるが、勧奨退職の制度は、その対象者を必ずしも高令に達した者に限らず、職員の人事の停滞、公務能率の低下、人件費の膨張等を回避するため、任命権者が退職を求めたい者に対し、その退職を勧誘し割増退職金の支給を通じて自発的な退職意思を惹起させ、もつて人事の刷新等を通じて公務の能率的な運営に資することを目的としたものであると考える。 しかも、本来、退職の勧奨とは、任命権者がその人事権に基づき、雇用関係にある者に対し任意の退職意思の形成を從慂し任意退職の申入れないし申込の誘引をなす説得等の行為であつて明文上の根拠をもつ行政行為ではなく、単なる事実行為であるから(最判(第一小法廷)昭和五五・七・一〇労働判例三四五号二〇頁・五二年(オ)四〇五号事件参照)、その説得の手段、方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り、割増退職金の支給の有無にかかわらず、もともと任命権者の正当な業務行為として広く許されるべきものである。 そして、本件退職手当条例四条一項三号の「勧しよう」も右の退職の勧奨と同性質であつて、とくに法令によりこれを制限する定めがない限り、任命権者の人事権の自由裁量により時宜に応じこれを行なうことができるものというべきである。 したがつて、地方自治法、退職手当条例に何らの限定がなく、また原審証人Cの証言(とくに、原審記録二三四丁裏~三三五丁表)によりこれが従来退職手当組合の構成団体である町村において独自に退職手当条例を設けていた関係でその既得権を保障する趣旨の下に何らの制約を設けず、「勧しよう」の基準は各町村の運用に委ねたものといえるから、本件「勧しよう」の場合には、一応任 である町村において独自に退職手当条例を設けていた関係でその既得権を保障する趣旨の下に何らの制約を設けず、「勧しよう」の基準は各町村の運用に委ねたものといえるから、本件「勧しよう」の場合には、一応任命権者の人事の自由裁量により勧奨を行なうことができ、前示控訴人ら主張二(一)のように必ずしも老令者、病弱者、能力不足者に限定されるものではないし、退職者が特別職へ転職する場合をとくに排除しなければならない理由はない。 三勧奨退職要綱、特例措置要綱について(一) 成立に争いのない甲第五号証、乙第五、六号証、原審証人D、C、当番証人E(一部)、Fの各証言、弁論の全趣旨によると、1被控訴人高山町では勧奨退職要綱(乙第五号証)が昭和五二年三月二三日に告示されており(告示第一六号)、その二条では一般職の職員のうち「次の者に退職を勧奨するものとする。 (1)四月一日現在、年令五八才以上となる者(一号該当者)(2)四月一日現在、年令五〇才以上で在職期間が二〇年を超え、自ら退職を希望する者(二号該当者)」と同三条二項は「勧奨退職申出書は退職発令日(四月一日)の一年前までに提出しなければならない。期日までに提出しなかつた場合は勧奨を拒否したものとみなし、以後優遇措置は適用しない。」旨、同四条は「勧奨退職申出者には、退職発令日前一二月間、次の優遇措置を行なう。(1)一号該当者には給料月額の二号給引き上げ」の旨を定めている。2特例措置要綱(乙第六号証)が昭和五四年五月二三日告示、施行され(告示第二四号)、一般職を退職した高山町職員が引き続き特別職の高山町の職員に就任した場合、その者が勧奨退職要綱の「一号該当者として受ける見込であつた退職金の額と特別職の職員に就任して受ける見込の経済的収入と比較して不利益がいちぢるしい場合は、退職要綱の規定にかかわらず勧奨退職者と 合、その者が勧奨退職要綱の「一号該当者として受ける見込であつた退職金の額と特別職の職員に就任して受ける見込の経済的収入と比較して不利益がいちぢるしい場合は、退職要綱の規定にかかわらず勧奨退職者と見做し、一般退職条例(退職手当条例)第四条一項の規定を適用することができる。」旨を定めている。3この特例措置要綱は、当時町長であつた被控訴大Aが企画課長Eに命じて急拠起案させ、告示、施行したものであるが、従前、高山町で一般職から特別職へ転職した例が三例あるところ、二例は一たん辞職した後に期間をおいて就任したものであり、他の一例は一般職の課長から収入役に引続き転職したものであつて、いずれも勧奨退職の優遇措置として割増退職金の支給を受けていたことから、被控訴人Aが訴外Bなど一般職の職員を収入役その他の特別職に登用するについて、その人材を確保するため主として勧奨退職要綱三条二項の退職発令日の一年前までに勧奨退職申出書の提出を要する条項の例外を設ける趣旨で設けられたものであること、4鹿児島県下でも高山町のほかにも九町に亘つて昭和三七年から昭和五五年までに約二七例の一般職から特別職へ転職する場合の勧奨退職扱例が数えられる一甲第五号証)、訴外Bの経済的収入は、(1)収入役就任の場合(一期在任)、三、六七四万三、四六〇円(収入役給料17、550、000+手当5、557、500+収入役退職金4、080、960+昭和54年一般職普通退職金9、555、000円=36、743、460円、(2)一般職のまま在職の場合(五八才まで在任)五、〇〇七万五、一一五円(給料17、221、200+諸手当9、173、115+退職金23、680、800=50、075、115)となること(但し、(2)の収入額は当事者間に争いがない)となる。 以上の事実を認めることができ、この認定に反す 、200+諸手当9、173、115+退職金23、680、800=50、075、115)となること(但し、(2)の収入額は当事者間に争いがない)となる。 以上の事実を認めることができ、この認定に反する当審証人Eの証言の一部は前掲各証拠に照らし遽かに措信できず、他にこれを覆すに足る証拠がない。 (二) 右認定(一)1、2の事実と前示二の認定事実及びその説示したところを考え併せると、本件勧奨退職要綱、特例措置要綱は高山町長が法規の性質を有しない行政規則として告示の形式をもつて、前示二のとおり任命権者の自由裁量に委ねられている「勧奨を受けて退職する者に係る基準その他必要な事項」を定め(勧奨退職要綱一条)乙第五号証)、町長自ら又はその補助機関たる任命権者等に対し裁量の範囲を自ら制約する基準(但し、勧奨退職要綱は一般的基準、特例措置要綱はその特例扱的基準)を示して、これに基づき退職勧奨を行ない、優遇措置をとるべきことを命じたものにほかならないというべきである。そして、かかる行政規則たる告示は、別段、法律、条例の授権をまかず、行政権の当然の権能としてこれを定めることができる反面、一般に行政機関の行為が行政規則(告示)に違反することのみをもつて、その行為を違法とし損害賠償責任を追及することはできない。 したがつて、勧奨退職要綱、特例措置要綱が法規たる性質を有し、訴外Bに対する本件勧奨退職をそれが特例措置要綱に該当しないとの一事をもつて、違法であるとして町長たる被控訴人Aに対し損害賠償責任を論ずる前示控訴人らの主張二(二)は失当である。 (三) また、たとえ右各要綱が実質上法令を補充するものとして、法規的性質を有し、これに違反する行為を控訴人ら主張のように違法であると解したとしても、次のとおり訴外Bの本件退職は特例措置法の基準に該当しているから、これを勧奨 綱が実質上法令を補充するものとして、法規的性質を有し、これに違反する行為を控訴人ら主張のように違法であると解したとしても、次のとおり訴外Bの本件退職は特例措置法の基準に該当しているから、これを勧奨退職扱にした被控訴人Aの行為を違法であるということはできない。 却ち、特例措置要綱は特別職へ転職する場合につき前認定三(一)2のとおり「一号該当者として受ける見込であつた退職金の額」と「特別職の職員に就任して受ける見込の経済的収入」とを比較し「不利益がいちぢるしい場合」を「勧奨退職者と見做す」要件としている。ところで、右の、「退職金の額」と「経済的収入」が具体的に何を指すかは必ずしも明らかでない。 当事者双方は前示のとおり、(1)一般職残存在職期間中の総収入、勧奨割増退職金と、(2)特別在職中の総収入、その退職金、及び特別職就任時の一般職普通退職金の総額とを比較すべきものとし、控訴人らは(2)につき特別職在職期間を二期八年としたうえ、(1)、(2)に退職年金も加算して比較すべきものと主張し、被控訴人らは特別職在職期間は一期四年とし、退職年金は加算すべきでないと主張して争つている。 しかしながら、当裁判所はこのような総合収入を対比すべきものとは考えない。けだし、総合収入の対比はそもそも前示特例措置要綱の「退職金の額」と「経済的収入」との対比という明文から余りにも離れ過ぎており、また総合収入比較説によると若年であればあるほど一般職在職残存期間が長くなるから、特別職転職が不利となつて、勧奨退職扱を受け易くなり、かえつて、控訴人らが非難する若年勧奨退職の弊を助長することにもなり不合理であるからである。 むしろ、特例措置要綱の文言及びその趣旨に副つて、前示「退職金の額」は一号該当者としての勧奨割増退職金の割増額を指し、「経済的収入」とは一般職在任の給与額 長することにもなり不合理であるからである。 むしろ、特例措置要綱の文言及びその趣旨に副つて、前示「退職金の額」は一号該当者としての勧奨割増退職金の割増額を指し、「経済的収入」とは一般職在任の給与額と比較した収入役の給与額の増減収入額を指すものというべきである。そして、これはもともと特例措置要綱が前認定のとおり一般職職員の特別職への転職を容易にし特別職の人材を確保する目的に出たものであるところに照らし、特別職への転職時の当面の利害得失を比較すれば足ることからも根拠づけることができる。 そして、成立に争いのない乙第一〇号証の6ないし15、弁論の全趣旨によると、訴外Bの昭和五四年特別職転職時の勧奨退職金の額一、六九二万三、八一六円(16、359、246円+564、570(改訂追給分)=16、923、816円)からその普通退職金を控除した差額は七五二万一、六九六円(7、270、776(特別負担金)+250、920(追加特別負担金)=7、521、696円)であり、昭和五四度一般職の給与・諸手当額四六八万九、一五二円(3、075、600(本棒)+1、297、520(期末手当)+120、000(扶養手当+214、032(管理職手当)=4、689、152)を収入役の収入額五三七万二、〇〇〇円(4、080、000(給料)+1、292、000(期末手当)=5、372、000円)から控除した差額六八万二、八四八円の四年分二七三万一、三九二円が勧奨退職要綱にいう収入役の経済的収入となるというべきである。このように勧奨退職金の割増額七五二万円と経済的収入増加額二七三万一、三九二円を比較すると訴外Bは前示特例措置要綱所定の「不利益がいちぢるしい場合」に該当するものといわねばならない。 なお、当事者双方主張のように総収入比較によるとしても、当裁判所はその場合収入役の 三九二円を比較すると訴外Bは前示特例措置要綱所定の「不利益がいちぢるしい場合」に該当するものといわねばならない。 なお、当事者双方主張のように総収入比較によるとしても、当裁判所はその場合収入役の在職期間はその性質上一期四年をもつて計算すべきものと判断するので前認定三(一)4のとおり、収入役就任の場合三、六七四万三、四六〇円は一般職在職の場合の収入五、〇〇七万五、一一五円と比較して前示特例措置要綱の「不利益がいちぢるしい場合」に当ると認められる。 このようにいずれの点からみても訴外Bの本件勧奨退職扱が勧奨退職要綱、特例措置要綱に違反した違法行為であるとする控訴人らの主張は失当であつて採用できない。 四裁量権濫用の判断控訴人らは前示その主張二(三)のとおり、被控訴人Aの訴外Bに対する本件勧奨退職扱が町長として職員人事の裁量権の濫用に当る旨主張するが、まずそのうち(三)1にいう訴外Bの特別職就任、勧奨退職扱が町長選挙の自派職員のみを不当に優遇する情実人事の一環としてなされたものであるとの事実はその副う当審証人Eの証言の一部はそれ自体同人の直感に基づくにすぎないものであり、かつ前認定三(一)の各事実経過に照らし遽かに措信できないし、他にこれを認めるに足る的確な証拠がない。また、同(三)2の勧奨退職制度が控訴人ら主張のように定年制のない地方公務員に老令化を防ぐことのみを目的としたものではないことば前示二において説示したとおりであつて、この点の控訴人らの主張は理由がない。そして、同(三)3の特例措置要綱に該当しないとの主張も、かえつて、これに該当するものであることば前示三(三)において説示したところであるからこれが採用できないことは明らかである。 このように控訴人らの裁量権濫用の主張はいずれもその前提事実が認められず、また、前認定三(一)の各 ものであることば前示三(三)において説示したところであるからこれが採用できないことは明らかである。 このように控訴人らの裁量権濫用の主張はいずれもその前提事実が認められず、また、前認定三(一)の各事実に照らしてもこれが裁量権の濫用に該るといえないことが明らかであるから、失当であつて到底これを採用することができない。 五結論以上のとおり、控訴人らの本訴請求はその余の判断をするまでもなく失当であるから、これを棄却した原判決は結論において相当である。よつて、控訴人らの本件控訴を失当とにてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官吉川義春甲斐誠玉田勝也)
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