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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人福沢文夫の上告理由第一点について。所論は、上告人が援用した昭和二〇年八月一五日のマツカーサー宣言、米国海軍軍政府布告第七号、同布告第五号が本件について適用を見ないとした原判決の判断は違法である、というのである。当裁判所が職権により調査して得た資料により案ずるに、昭和二一年一月二九日「若干の外廓地域の日本からの政治上および行政上の分離」と題する米軍総司令部覚書が発せられ、日本政府に対し、北緯三〇度以南の南西諸島全域について政治上および行政上の権力の行使の停止が命ぜられたが、この分離命令は、同年二月二日米国海軍軍政府により奄美群島の住民に宣言された。上告人がマッカーサー宣言と称するところは、この二月二日の宣言を指すにほかならぬと解せられるが、この宣言の内容が私法上の法律関係に直接影響を及ぼすような事項を含んでいた形跡はない。次に、所論軍政府布告第七号は、軍政府下の区域内におけるいわゆる「放棄財産」を軍の財産管理官に委任し、これに関する私権の行使を禁止制限する趣旨のものであるが、右布告執行のための琉球列島米国軍政本部指令第一九号(昭和二三年四月七日付)に従い、奄美大島名瀬駐在の上級軍政府司政官代理から北部琉球臨時政府知事宛て同年五月一二日付でなされた訓令によれば、「放棄財産」とみなされるのは「日本に居住していることのわかつているかまたはそのように信じられている者、またはその住所の不明な者によつて全部または一部が所有されていると称せられる私人の財産」のことなのであるから、同島内にある財産が島内に居住する者によつて所有されているかぎり「放棄財産」とされぬものと解されるところ、右布- 1 -告が公布された昭和二 れていると称せられる私人の財産」のことなのであるから、同島内にある財産が島内に居住する者によつて所有されているかぎり「放棄財産」とされぬものと解されるところ、右布- 1 -告が公布された昭和二一年三月ないし五月頃、本件家屋が既に昭和二一年二月一日の交換によつて(当時奄美大島名瀬市内に居住中の)被上告人の所有に帰していたことは原判決において確定された事実であるから、本件家屋については同布告の適用はないものといわねばならない。 財産」のことなのであるから、同島内にある財産が島内に居住する者によつて所有されているかぎり「放棄財産」とされぬものと解されるところ、右布- 1 -告が公布された昭和二一年三月ないし五月頃、本件家屋が既に昭和二一年二月一日の交換によつて(当時奄美大島名瀬市内に居住中の)被上告人の所有に帰していたことは原判決において確定された事実であるから、本件家屋については同布告の適用はないものといわねばならない。原判決は、同布告公布の日時を昭和二三年四月七日とした点においては誤つているが、同布告の適用を排した結論においては正当である。更に、同布告第五号は、その第二条において所論のような支払停止令を含んでいるから、かかる趣旨の規定がないとした点においても原判決は誤つているけれども、本件延滞家賃金催告のなされた昭和二四年八月一日当時同布告が果して効力を有していたかどうかについては、当事者の立証もなく、当裁判所の職権調査の結果によるも、明らかでないから、かかる場合には同布告の適用によつて利益を受くべき当事者の不利益において裁判するのほかなく、従つて、本件において上告人の援用した同布告の適用なしとした原判決は、結論において正当というべきである。よつて、原判決には所論の違法なく、所論は採用できない。同第二点について。所論は、要するに、被上告人は上告人に対して家賃支払の請求をしたことがないし、契約解除の意思表示もしなかつたのに、解除を認定した原判決は違法である、というのである。しかし、原判決は、上告人が特別の事由もないのに、感情的対立から三年六月にわたつて家主である被上告人に全く家賃の支払をせず、将来もそれを期待しえない状況のもとに、被上告人が二ヶ月の猶予期間を置いて上告人に対し家屋の明渡を請求したことを確定した上で、か 対立から三年六月にわたつて家主である被上告人に全く家賃の支払をせず、将来もそれを期待しえない状況のもとに、被上告人が二ヶ月の猶予期間を置いて上告人に対し家屋の明渡を請求したことを確定した上で、かかる場合には、たとえ催告書中に契約解除の文言を使用していなくても、契約解除の意思表示と認めるのが社会観念上相当であるとしたものであつて、確定事実のもとにおいて右判断は正当として肯認できる。原判決に所論の違法はなく、所論は採用できない。- 2 -よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 猶予期間を置いて上告人に対し家屋の明渡を請求したことを確定した上で、かかる場合には、たとえ催告書中に契約解除の文言を使用していなくても、契約解除の意思表示と認めるのが社会観念上相当であるとしたものであつて、確定事実のもとにおいて右判断は正当として肯認できる。原判決に所論の違法はなく、所論は採用できない。- 2 -よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官垂水克己裁判官河村又介裁判官石坂修一裁判官五鬼上堅磐裁判官横田正俊- 3 -
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