平成16(ワ)403 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年2月7日 奈良地方裁判所
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判決文本文24,315 文字)

主文 被告は,原告Aに対し,1億3484万7072円及びこれに対する平成11年8月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告B及び原告C各自に対し,110万円及びこれに対する平成11年8月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを4分し,その1を原告らの,その余を被告の負担とする。 主文第1,2項は仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告Aに対し,1億6923万5337円及びこれに対する平成11年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告B及び原告C各自に対し,550万円及びこれに対する平成11年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告が開設した奈良県立奈良病院(以下「被告病院」という。)眼科において2度(生後約4か月及び約7か月)にわたり診察を受けた原告Aとその両親が,担当医師が眼圧検査等の必要な検査を怠ったために原告Aの先天緑内障の発症を見落とし,両眼失明の後遺障害を負わせた旨主張して,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,損害の賠償を求めた事案である。 争いのない事実等(括弧内に対応する証拠を掲げる。)㨯当事者ア原告Aは,原告B及び同Cの長男として,平成11年1月7日に出生した。 イ被告は,被告病院を開設する地方公共団体である。 㨯原告Aの診療経過 ア3~4か月健康診査原告Aは,平成11年5月18日,医療法人愛生会D診療所(以下「D診療所」という。)において,3~4か月健康診査を受けたところ,E医師は,被告病院眼科を受診するよう指導した(甲A2の12)。 イ被告病院眼科での受 1年5月18日,医療法人愛生会D診療所(以下「D診療所」という。)において,3~4か月健康診査を受けたところ,E医師は,被告病院眼科を受診するよう指導した(甲A2の12)。 イ被告病院眼科での受診原告Aは,平成11年5月19日,被告病院眼科を受診した。その際,㨯担当医師から,両眼結膜炎の診断を受けた(乙A1)。 㨯原告Aは,平成11年8月3日,再び,被告病院眼科を受診した。 ウ医療法人社団誠明会F眼科(以下「F眼科」という。)等での受診㨯原告Aは,平成12年10月6日,F眼科を受診した(乙A3)。その際,担当医師から,両眼先天緑内障の診断を受けた(乙A3)。 㨯原告Aは,平成12年10月16日,天理よろづ相談所病院(以下「天理病院」という。)において,1度目の線維柱帯切開術の施行を受けた(甲A4,乙A3)。 㨯原告Aは,平成12年12月15日,天理病院において,2度目の線維柱帯切開術の施行を受けた(甲A4,乙A3)。 原告Aは,平成16年4月5日,F眼科のG医師から,両眼先天緑内㨯障,両眼視神経萎縮,視力は両眼光覚弁,との診断を受けた(甲A4)。 㨯原告Aの障害認定原告Aは,平成15年3月28日,身体障害者手帳の交付を受け,平成16年4月9日,障害程度変更により,再交付を受けた(身体障害者等級表による等級1級,視覚障害1級(視力,右光覚,左光覚))(甲A5)。 争点 㨯債務不履行責任・不法行為責任の有無㨯損害の額㨯過失相殺の可否 当事者の主張の骨子㨯争点㨯(債務不履行責任・不法行為責任の有無)について(原告ら)ア㨯平成11年5月19日の診療における注意義務違反又は過失同日被告病院眼科において原告Aの診察に当たった医師としては,原告Bと原告Cが,3~4か月健康診査に当たったD診療所の担当医師によ ら)ア㨯平成11年5月19日の診療における注意義務違反又は過失同日被告病院眼科において原告Aの診察に当たった医師としては,原告Bと原告Cが,3~4か月健康診査に当たったD診療所の担当医師による「眼球白濁」との所見と,被告病院眼科での診察を受けることを必要とする旨の記載のある母子健康手帳(以下「母子手帳」という。)を持参して来院しており,原告Cから原告Aの黒目の部分が他の子供に比べて大きいこと,光をまぶしがること,黒目が少し濁っているように感じることの主訴を受けたのであるから,先天緑内障の可能性を疑い,眼圧・眼底の検査,角膜径の測定等適切な検査を実施すべき注意義務があった。 それにもかかわらず,眼圧・眼底の検査,角膜径の測定等適切な検査を行わなかったことは,明らかに診療契約上の注意義務違反又は過失に該当する。 㨯平成11年8月3日の診療における注意義務違反又は過失同日には,原告Aの結膜炎は治癒していたが,原告Cは,原告Aが依然として光をまぶしがり,間違いなく原告Aの黒目の部分が他の子供に比べて大きく,黒目が少し濁っていると感じたことから,再度被告病院眼科で受診した。原告Cは,これらの症状を担当医師に訴えたし,既に3~4か月健康診査を行ったE医師が「眼球白濁」との所見を示していたのであるから,少なくともこの時点においては,担当医師としては,先天緑内障を疑い,眼圧・眼底の検査,角膜径の測定等適切な検査を行うべき注意義務があった。 それにもかかわらず,眼圧・眼底の検査,角膜径の測定等適切な検査 を行わなかったことは,明らかに診療契約上の注意義務違反又は過失に該当する。 イ被告は,被告病院の担当医師の使用者として,民法715条の使用者㨯責任を負う。 㨯原告Aは,被告病院眼科において診察を受けたことにより,被告との間で診療契約 意義務違反又は過失に該当する。 イ被告は,被告病院の担当医師の使用者として,民法715条の使用者㨯責任を負う。 㨯原告Aは,被告病院眼科において診察を受けたことにより,被告との間で診療契約を締結したが,診察に当たった担当医師が眼圧検査の実施等適切な検査を怠ったことにより原告Aの緑内障を看過した行為は,診療契約上の債務の不完全履行に該当する。 ウ以上から,被告は,原告らに対し,診療契約違反又は民法715条及び709条に基づき,損害賠償責任を負う。 (被告)ア実際の主訴であった結膜充血は,先天緑内障とは全く無関係である。 被告病院眼科初診時には,牛眼などの先天緑内障の所見はなかった。 再診時に,外に出るとまぶしがる,という症状を訴えたことは認めるが,瞳が大きいという訴えはなかった。また,瞳の大きさの異常の所見もなかった。再診時の羞明は結膜炎症状である。 眼圧測定はしていないが,乳児の眼圧測定は困難で,測定検査は麻酔薬や催眠剤を使用して行われるので危険が伴い,原告らが主張するような眼科診療の初歩的検査などではない。検査をしなかったのは,牛眼の原因となる眼圧亢進や,先天緑内障を疑う症状所見がなかったためである。 イ上記(原告ら)イは争う。 ウ上記(原告ら)ウは争う。 㨯争点㨯(損害の額)について(原告ら)ア原告A1億6923万5337円㨯逸失利益5352万0237円 原告Aに残った両眼失明の後遺症は,後遺障害等級第1級第1号に該当し,労働能力喪失率は100%である。かかる後遺障害に基づく逸失利益は,基礎収入555万4600円(平成14年度の賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計の男性労働者平均賃金)に,ライプニッツ係数9.6353(62年(67歳と5歳との差)に対応するライプニッツ係数19.0288と (平成14年度の賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計の男性労働者平均賃金)に,ライプニッツ係数9.6353(62年(67歳と5歳との差)に対応するライプニッツ係数19.0288と,13年(18歳と5歳との差)に対応するライプニッツ係数9.3935との差)を乗じて,5352万0237円となる。 㨯後遺症慰謝料3000万円㨯介護費用7071万5100円原告Aは,両眼失明の後遺症が残ったことにより,終生近親者の介護を受けなければ,日常生活を送ることは困難であるので,将来の介護料が損害となる。介護料は1日1万円で年額365万円,平均余命71歳に対応するライプニッツ係数19.374であるので,損害額は,365万円に19.374を乗じて,7071万5100円となる。 㨯弁護士費用相当額1500万円原告Aは,本件損害賠償請求訴訟の追行を原告ら代理人に委任し,損害額(1億5423万5337円)の1割に相当する1500万円の報酬を支払うことを約している。 イ原告B及び同C各自につき550万円㨯慰謝料各500万円原告B及び同Cは,3~4か月健康診査の際に医師から指示されたところに従い,原告Aを被告病院眼科において2度も受診させ,原告Aの眼の症状を訴えたにもかかわらず,担当医師は,眼科専門医として行うべき初歩的な検査すら行わず,そのため先天緑内障の発見が遅れ,両眼失明という重大な後遺障害を残すことになったものである。かかる後遺 障害により原告B及び同Cが父母として受けた精神的苦痛は甚大であって,これによる慰謝料は各自につき500万円を下ることはない。 㨯弁護士費用相当額各50万円原告B及び同Cは,本件損害賠償請求訴訟の追行を原告ら代理人に委任し,各自につき損害額の1割に相当する50万円の報酬を支払うことを つき500万円を下ることはない。 㨯弁護士費用相当額各50万円原告B及び同Cは,本件損害賠償請求訴訟の追行を原告ら代理人に委任し,各自につき損害額の1割に相当する50万円の報酬を支払うことを約している。 ウよって,被告に対し,診療契約違反又は民法715条及び709条に基づき,原告Aは1億6923万5337円及びこれに対する平成11年5月19日(被告病院眼科初診日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに原告B及び同Cは各550万円及び各金員に対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。 (被告)すべて争う。 㨯争点㨯(過失相殺の可否)について(被告)原告Aが1歳6か月(平成12年7月)の時点では,被告病院受診時には問題のなかった視力が正常でないことに気付き,角膜浮腫・混濁を意味するひとみが白いという異常が発生してきたことも知っていたのである。それが何時からかは不明のままであるが,できるだけ早く眼科医を受診すべきであったのに,原告らは,平成12年10月6日までこれを怠った。 (原告ら)原告Cが平成12年10月6日まで眼科医に診せることがなかったのは,被告病院の男性医師の助言に従ったからであって,原告B及び同Cには何の落ち度もない。にもかかわらず,担当医師が原告Cの訴えを真摯に取り上げなかったという初歩的な過失と男性医師が診察もしていない患者について行 った無責任な発言を棚に上げ,先天緑内障の発見が遅れた責任の一端が原告B及び同Cにあるかのように主張するのは許されない。 第3当裁判所の判断 争点㨯(債務不履行責任・不法行為責任の有無)について㨯争いのない事実等,証拠(甲A2の10~16,3,4,6,8~11,15,B2,6,8,乙A1~3,5,6 れない。 第3当裁判所の判断 争点㨯(債務不履行責任・不法行為責任の有無)について㨯争いのない事実等,証拠(甲A2の10~16,3,4,6,8~11,15,B2,6,8,乙A1~3,5,6,8,9,12,13,B1,2,4~7,21,証人G,同H,原告B,原告C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告病院眼科受診前㨯原告Aは,平成11年1月7日に出生した。 㨯原告Aは,平成11年2月23日,被告病院小児科において,1か月児健診を受けたが,その際の身体所見として,頭頚部に関し,眼脂は認められなかった。 㨯原告C及び同Aの母子手帳の保護者の記録欄には,育児の上で心配なことなどを記載する欄が設けられていたが,生後3~4か月ころまでの記載欄には,原告Aの眼の異常に関する記載はない。 また,生後3~4か月ころの原告Aには,目つきや目の動きについて気になることはなく,外気浴や日光浴をしていた。 原告Aは,平成11年5月18日(満4か月11日),原告Cに連れ㨯られて,D診療所で3~4か月健康診査を受けた。 E医師は,診査の結果,追視に異常は認めなかったが,眼球白濁傾向を認め,原告Cに対し,被告病院眼科で受診するよう指導するとともに,母子手帳に「眼球白濁傾向」,「要医療医療機関(県立医大眼科へ)」,「要観察眼球白濁→県立眼科へ」という記載をした。 イ被告病院眼科での受診㨯平成11年5月19日(満4か月12日) a原告Aは,同日,原告B及び同Cに連れられて,被告病院眼科で受診した。 b原告Cは,同病院の問診票に,「目やにが多い,白目のところが濁っている気がする」,「4か月検診を受けて,被告病院眼科に行った方がよいと言われました」などと記載し,担当のH(当時の姓はI)医師(以下「H」又は「H医師」という。 「目やにが多い,白目のところが濁っている気がする」,「4か月検診を受けて,被告病院眼科に行った方がよいと言われました」などと記載し,担当のH(当時の姓はI)医師(以下「H」又は「H医師」という。)に対しても,眼脂が多い,4か月検診で白目が濁っていると言われたと訴え,H医師から流涙の有無について質問されると,流涙はないと答えた。 cH医師は,小型のライトで原告Aの眼を照らし視診をしたところ,眼脂があり,両眼に結膜充血があった。眼脂は,眼瞼縁や角膜表面に大量に付着していた。 その後,H医師は,原告Aに対し,細隙燈顕微鏡(スリットランプ)検査(眼瞼縁,睫毛,瞼結膜,球結膜,角膜,強膜,前房,虹彩,水晶体,硝子体の前部などの状態を見る検査。)(前眼部)を実施したところ,両眼とも角膜及び前房は清明であったが,下涙点が少し閉塞気味であったため,拡張針(ブジー)を通して涙道の拡張をし,涙道洗浄をした。 なお,H医師は,眼圧測定,角膜径計測及び眼底検査をしなかった。 dH医師は,両眼結膜炎と診断しタリビット点眼液0.35(抗,%ml菌薬),1日5回両眼に点眼,の処方をした。 e原告Aは,目薬を差して2,3日で眼脂は止まったが,眼が赤くなる症状は,その後もときどき出ていた。 fなお,原告らは,bの際,原告B及び同Cが,H医師に対して,原告Aが太陽の光をまぶしがる,瞳(黒目の部分)が他の子供に比べて少し大きい,黒目の部分が少し白く濁っていると感じる,という症状を訴えた旨主張し,これに沿う証拠(甲A11,乙A5,原告C,原 告B)が存する。しかし,H医師が記載したカルテにも原告Cが記載した問診票にもその旨の記載はないこと(乙A1),後に受診したF眼科においても眼が他の子供に比べて少し大きいとの訴えはしていなかったこと(証人G)のほか,後 ,H医師が記載したカルテにも原告Cが記載した問診票にもその旨の記載はないこと(乙A1),後に受診したF眼科においても眼が他の子供に比べて少し大きいとの訴えはしていなかったこと(証人G)のほか,後記エ㨯a及びbのような天理病院での訴えの内容や,原告ら主張のような症状の訴えはなかった旨の証人Hの供述及び同人作成の陳述書(乙A6,9,13)並びに,原告らは,訴状や証拠保全の資料として作成した陳述書(乙A5)では白目の濁りと表現していたにすぎなかったことなどに照らすと,原告らの主張に沿う前記証拠を採用することはできず,他に上記原告らの主張を認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,H医師に対し,E医師が記載した診査結果を貼り付けた母子手帳の頁(ア参照)を開いて提出した旨主張し,これに㨯沿う証拠(甲A11,原告C,原告B)が存するが,H医師が記載したカルテにはそれに関する記載がないこと(乙A1)及び証拠(乙A6,証人H)に照らすと,原告らの主張に沿う証拠を採用することはできず,他に原告らの主張を認めるに足りる証拠はない。 㨯平成11年8月3日(満6か月27日)a原告Aは,同日,原告Cに連れられて,被告病院眼科を受診した。 b原告Cは,H医師に,目薬で充血はなくなった,眼脂はなくなった,流涙はない,ただ,目薬をやめて4,5日すると眼が赤くなる,外に出るとまぶしがる,うつ伏せ寝している,と訴え,H医師は,その旨カルテに記載した。 cH医師が原告Aの外観検査を実施したところ,両眼とも,結膜充血は初診時より改善していたが,治りきってはいなかった。 また,H医師は,原告Aに対し,細隙燈顕微鏡検査(前眼部)を実施したところ,両眼とも,角膜前房清明であった。 なお,H医師は,眼圧測定,角膜径計測及び眼底検査をしなかった。 dH医師は,羞 。 また,H医師は,原告Aに対し,細隙燈顕微鏡検査(前眼部)を実施したところ,両眼とも,角膜前房清明であった。 なお,H医師は,眼圧測定,角膜径計測及び眼底検査をしなかった。 dH医師は,羞明(まぶしがること)について,軽い症状であり,結膜炎と関連する病的意義の少ないものと判断した。 H医師は,結膜炎であると診断したが,原告Aに,点眼薬の処方をしなかった。そして,調子が悪ければ被告病院眼科を受診するよう指導した。 eなお,原告らは,bの際,原告Cが,原告Aの黒目の部分が他の子供に比べて大きく,少し濁っているように感じることを説明した旨主張し,これに沿う証拠(甲A2の13,甲A11,乙A5,原告C)が存する。しかし,Hはこれを否定している(乙A6,9,証人H)のみならず,H医師が記載したカルテにはbで認定した目の状態に関する記載はあるのに,黒目に関する記載はないこと(乙A1),原告Cは,F眼科においても眼が他の子供に比べて少し大きいとの訴えはしていなかったこと(証人G),後記エ㨯a及びbのとおり天理病院においても黒目の大きさについて訴えていなかったこと,原告らは,訴状や乙A5では白目の濁りと言っていたにすぎないことなどに照らすと,原告らの主張に沿う証拠を採用することはできず,その他に上記原告らの主張を認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,外に出たときの原告Aのまぶしがり方が激しく,体をねじってベビーカーに顔を埋めようとする,テレビの画面を見ても,すぐまぶしそうに目を伏せる旨訴えた旨主張し,これに沿う証拠(甲A11,原告C)が存するが,Hはこれを否定する(乙A9,証人H)のみならず,後記エ㨯bのとおり,原告Cは,原告Aが天理病院に入院する際,被告病院で受診した後にテレビ画面をまぶしがって見ないという状態であったと訴えてい るが,Hはこれを否定する(乙A9,証人H)のみならず,後記エ㨯bのとおり,原告Cは,原告Aが天理病院に入院する際,被告病院で受診した後にテレビ画面をまぶしがって見ないという状態であったと訴えていることに照らすと,原告らの主張に沿う証拠を採用することはできず,その他に上記原告らの主張を 認めるに足りる証拠はない。 㨯原告Aは,生後6~7か月ころ,体のそばにあるおもちゃに手を伸ばしてつかんだり,テレビやラジオの音がし始めるとすぐそちらを見ていたが,母子手帳の6~7か月ころの保護者の記録欄(甲A2の13)のうち,「ひとみが白く見えたり,黄緑色に光って見えたりすることがありますか。」の欄には「はい」にチェックがされている。 ウ被告病院眼科受診後,F眼科受診前原告Aは,平成11年9月13日,奈良市保健センターにおいて,奈㨯良市が実施する健康診査(7・8か月乳児相談)を受診した。原告Cは,その際,担当医師に,母子手帳を提出したが,担当医師からは,眼の異常があるとは言われなかった。 㨯原告Aは,生後9~10か月ころ,指で,小さい物をつかみ,平成11年9月ころには,つたい歩きをすることができるようになり,生後11か月(概ね平成11年12月)ころには歩くようになった。 上記時期及び1歳のころにおける母子手帳の保護者の記録欄(甲A2の14及び15)には,原告Aの眼の異常に関する記載はない。 㨯原告Aは,1歳6か月(概ね平成12年7月)ころには,極端にまぶしがっていた。 原告Aは,平成12年9月14日,奈良市保健センターにおいて,奈㨯良市が実施する1歳6か月児健診を受診した。その際,原告Cは,発育状況に関し,健康診査票に「眼について気になることがある。」,「ひとみが白くみえるなど」とある部分を肯定する記載をし,更に,主訴として,「少し眼が 1歳6か月児健診を受診した。その際,原告Cは,発育状況に関し,健康診査票に「眼について気になることがある。」,「ひとみが白くみえるなど」とある部分を肯定する記載をし,更に,主訴として,「少し眼が気になる,見えているが,時々,手さぐりで物を探したり,よく物に頭をぶつける」との記載をしたが,担当医師からは,眼に異常があるとは言われなかった。 㨯原告Aには,平成12年9月20日ころ,ボールが自分の横を転がっ ていっても取ることができなかったり,柱にぶつかるといった視力障害を示す行動が見られた。 原告Aは,同年10月5日,Jメガネにおいて,F眼科のK医師への案内状の作成を受けた。同案内状には,「以前より,光とか明るい物に対して目をそらす様子があった様で,他院でも診てもらったが,別に問題なしとの結果だった様です。」との記載がある。 エF眼科等における受診㨯平成12年10月6日(満1歳8か月29日)-F眼科a原告Aは,同日,原告Cに連れられて,F眼科を受診した。 b原告Cは,K医師に,原告Aがまぶしがる,と訴えた。 cK医師は,同日午前11時10分にトリクロリール(睡眠薬)を服用させ,入眠後の午後1時45分から原告Aの診察を開始した。 角膜に関する所見は,角膜横径は両眼とも14(子供の正常値はmm10.5~11),両眼に角膜実質混濁,すなわち,眼圧が高くなmmって角膜内皮が傷み,前房中の房水が角膜の中に染み込んで角膜実質へ混入し,浮腫が生じて濁っている状態があり(左眼より右眼が強い),両眼にデスメ膜破裂,すなわち,眼圧が高くなり,柔らかい子供の眼が膨れあがって角膜径が大きくなり,それについていけないデスメ膜(弾力膜)の線維が切れて裂けて濁りを作っている状態(ハープライン又はハープ線)があり,前房が深い(通常乳幼児の前房は浅 らかい子供の眼が膨れあがって角膜径が大きくなり,それについていけないデスメ膜(弾力膜)の線維が切れて裂けて濁りを作っている状態(ハープライン又はハープ線)があり,前房が深い(通常乳幼児の前房は浅い。前房が深いのは先天緑内障の特徴の1つである。),であった。 眼底に関する所見は,視神経乳頭陥凹比(神経線維が眼球から出ていく強膜の穴(乳頭)の大きさ(視神経の直径)と視神経にある陥凹の直径との比)は,右眼0.9(乳頭辺縁部の消失あり),左眼1. 0(正常値は0.3以下),緑内障性乳頭陥凹であった。 mmHgmmHgmm圧平眼圧は,右が25,左が28(子供の正常値は15 以下。催眠下の眼圧は覚醒時より5低い値となるため,小学生HgmmHgまでの乳幼児では15以上が異常である。)であった。 mmHgdK医師は,同日,原告Aを両眼先天緑内障と診断した。 㨯平成12年10月10日(満1歳9か月3日)-F眼科a原告Aは,同日,原告C及び同Bに連れられて,F眼科で受診した。 b原告Cは,G医師に対し,生後4か月のときに眼脂があり,被告病院で受診したが,他はどうもないと言われた,生後7か月ころに被告病院で再度検診を受けたが,異常なしと言われた,2,3週間前から視力が悪いことを明瞭に示すようになった,と訴え,G医師はその旨カルテに記載した。原告Cは,被告病院受診当時の原告Aの目の色についても説明し,G医師は,カルテに「角膜が白っぽい」と記載した。 なお,原告Aの眼が他の子供に比べて少し大きいようである旨の訴えはなかった。 cG医師は,同日,原告Aにトリクロリールを服用させ,入眠後に診察を開始した。 視神経乳頭陥凹比は,左眼1.0,右眼1.0(両眼とも乳頭辺縁部は消失),乳頭は蒼白(通常ピンク色をしている視神経は萎縮すると白くな 日,原告Aにトリクロリールを服用させ,入眠後に診察を開始した。 視神経乳頭陥凹比は,左眼1.0,右眼1.0(両眼とも乳頭辺縁部は消失),乳頭は蒼白(通常ピンク色をしている視神経は萎縮すると白くなる)だがbaseの色は良い(多少血の色が残っている),陶器様白色はなし,左眼角膜は少し浮腫状(濁り),デスメ膜の破裂あり,前房が深い,などの所見であった。 dG医師は,F眼科初診時の所見も併せ,眼圧が高く,角膜の浮腫があり,先天緑内障が手術により治療すべき疾患でこれをできるだけ早期に施行することが必要であることを考慮し,急いで手術をする必要があると判断した。なお,視機能については,既に視野の中心部はなく,ただ,瞳孔反応が少し残っており,右眼については周辺視野が残っているようであった。 G医師は,同日,天理病院眼科外来担当医あての,診療情報提供書を作成した。そこには,主訴又は病名として先天緑内障と記載がある他,「恐らく昨年6月ころ発症したと思われる先天緑内障です。」と記載されていた。 㨯平成12年10月10日以降-天理病院a原告Aは,平成12年10月10日,原告C及び同Bに連れられて,天理病院を受診した。 原告Cは,担当医師に対し,生後しばらくして両眼に眼脂があり,被告病院眼科を受診しブジーの施行を受けた,外に出るとまぶしがり,眼が少しくもっていた,平成11年7・8月に被告病院を受診し,もう少し様子を見るようにと指示された,平成12年夏までは普通に見て,普通に動いていたが,夏過ぎてから見にくそうになり,歩けなくなった,2週間前にかぜをひいてから特に見にくそうである,平成12年10月6日にF眼科を受診し,その後,天理病院へ来た,と訴えた。 b原告Aは,平成12年10月13日,天理病院に入院した。 原告Cは,担当医師に対し,生後2~ てから特に見にくそうである,平成12年10月6日にF眼科を受診し,その後,天理病院へ来た,と訴えた。 b原告Aは,平成12年10月13日,天理病院に入院した。 原告Cは,担当医師に対し,生後2~3か月した後両眼に眼脂があり被告病院を受診しブジーの施行を受け,その後眼脂はなくなった,平成11年7月ころからまぶしがっている様子及び眼の濁りに母親が気付き,同年8月に被告病院で受診したところ,特に異常はないと言われた,その後,物を見ている様子はしっかりとあり,声をかけなくても母親や姉を見付けて歩いて来たりしていたが,テレビは音はよく聴くものの画面はまぶしがって見ないという状態であった,平成12年夏ころまではよく物を見ている様子であったが,1か月~3週間前から明らかに見えにくくなっている様子で,手探りになってきたため,平成12年10月初めにF眼科を受診したところ,同月10日天理病 院紹介となった,流涙は以前からない,と訴えた。 c原告Aは,平成12年10月16日,天理病院において,全身麻酔下で,G医師の執刀により,線維柱帯切開術(トラベクロトミー)の施行を受けた。線維柱帯切開術とは,前房にたまった房水が眼の外へ出ていくときに隅角を通り抜けてシュレム管に入って血管(強膜中の静脈)の中に入っていくが,シュレム管の手前(線維柱帯)に発育異常によって先天的に生じている障害(先天緑内障)を除去するため,線維柱帯を開いて,シュレム管を前房に向かって開放する手術である。 d原告Aは,平成12年10月26日,天理病院を退院した。 天理病院のL医師が,同日作成したG医師あての診療情報提供書には,眼圧は,トリクロリール下で両眼とも10前後と手術後7日mmHg目まで安定していたと記載されている。 㨯平成12年10月31日-F眼科原告Aは,同日,F眼 したG医師あての診療情報提供書には,眼圧は,トリクロリール下で両眼とも10前後と手術後7日mmHg目まで安定していたと記載されている。 㨯平成12年10月31日-F眼科原告Aは,同日,F眼科を受診した。 G医師は,原告Aにトリクロリールを服用させ,入眠後に診察を開始した。圧平眼圧は,右眼12,左眼10であった。カリパーmmHgmmHg(角膜径を測定する器具)で角膜径を測定すると,両眼とも14であmmった。視神経乳頭陥凹比は,右眼は大きく,左眼は1.0であった。両眼とも,乳頭の色は比較的良くなった。左眼の角膜は浮腫がなくなって透明であり,ハープ線はあるが,中央にはかかっていなかった。右眼のハープ線は中央にかかっていた。 㨯平成12年12月1日-F眼科原告Aは,同日,F眼科を受診した。 G医師は,原告Aにトリクロリールを服用させ,入眠後に診察を開始した。圧平眼圧は,右眼12,左眼16であった。 mmHgmmHgG医師は,左眼の眼圧が16で小児としてはまだ少し高かったこmmHg と,1回目の手術ではシュレム管3分の1周しか開けず,3分の2が残ったことによる抵抗が残っていること,眼圧の下がり方が中途半端で, ないし20の間ぐらいの場合には視神経萎縮が治らないこmmHgmmHgとから,確実な治癒を目指して,2回目の手術をすることとし,同日,天理病院眼科のL医師あての書面を作成した。 㨯平成12年12月15日-天理病院原告Aは,同日,天理病院において,2回目の線維柱帯切開術の施行を受けた。 㨯平成13年1月5日-F眼科原告Aは,同日,F眼科を受診した。 G医師は,原告Aにトリクロリールを服用させ,入眠後に診察を開始した。圧平眼圧は,右眼10,左眼11であった。 mmHgmmHg原告Aは,そ 月5日-F眼科原告Aは,同日,F眼科を受診した。 G医師は,原告Aにトリクロリールを服用させ,入眠後に診察を開始した。圧平眼圧は,右眼10,左眼11であった。 mmHgmmHg原告Aは,その後平成13年6月1日までは,約1か月に1度の割合で,その後は約3か月に1度の割合で,経過観察のためF眼科を受診した。治療は,点眼液を1日3回差すだけで,他にはされなかった。平成13年1月5日以降,眼圧は正常値であった。 㨯平成16年4月5日-F眼科原告Aは,同日,G医師から,「平成12年10月6日当院初診時,両眼角膜径14(正常11),角膜浮腫と高眼圧を認め,先天緑内mmmm障と診断,10月16日,12月15日の2回に亘って両眼手術を行い,眼圧はその後正常値となったが,初診時より視神経乳頭は蒼白であり,その後他覚的に高度の視力障害を認めていたが,現在に至るも視力障害は改善せず,症状は固定していると考えられる。視神経は初診時より蒼白であり,視力障害は視神経萎縮によるもので,今後視力回復の可能性はないと考えられる。」として,両眼先天緑内障,両眼視神経萎縮,視力は両眼光覚弁,との診断を受けた。 㨯証拠(甲A14,15,B1~4,8,乙B1~12,15,20,21)によれば,次の医学的知見が認められる。 ア眼の構造㨯角膜角膜は,透光体であるとともに,外力に対して強靱さ,弾性を備えている。角膜は5層構造であり,前の方から角膜上皮,ボウマン膜,角膜実質,デスメ膜と角膜内皮がある。角膜実質は,比較的均一な太さの膠原線維を中心とする細胞外マトリックスと角膜実質細胞で構成されている。デスメ膜は角膜内皮側で,生後わずかながらその厚さを増す。内皮細胞は主に六角形であり,上皮細胞と異なり再生することはない。正常角膜は無血管組織である。角 マトリックスと角膜実質細胞で構成されている。デスメ膜は角膜内皮側で,生後わずかながらその厚さを増す。内皮細胞は主に六角形であり,上皮細胞と異なり再生することはない。正常角膜は無血管組織である。角膜上皮の表面を涙液層が覆っている。角膜知覚を司る三叉神経第1枝の神経終末が角膜上皮層に達している。 なお,角膜横径は生下時平均10.5であり,生後1年で11~1mm1.5となる。眼圧上昇により角膜は特に強角膜移行部で伸展するが,mm1歳未満で12以上の角膜横径は明らかな異常と考えるべきであるとmmされる。 㨯強膜乳白色の強靱な組織であり,強膜細胞と,太さの不均一な膠原繊維を中心とした細胞外マトリックスで構成されている。また,角膜と異なり血管組織を含んでいる。 㨯前房角膜後面から,虹彩前面と水晶体前面で囲われている部位の名称である。この中は房水で満たされている。 㨯後房虹彩後面,水晶体前面,さらに毛様体で囲われている部位である。毛様体上皮で産生された房水が,後房水としてこの部位を満たしている。 房水の働きは無血管組織である角膜内皮,角膜実質,水晶体などへの栄養・酸素供給である。さらに眼球の圧(眼圧)はこの房水の産生と流出によってバランスが保たれており,網膜は一定の圧で伸展されている。 房水は毛様体上皮で産生され後房,瞳孔,前房さらに隅角(前房隅角は,角膜強膜の移行部と虹彩の根部のなす部分の構造をいう。),繊維柱帯を通過してシュレム管に至る。シュレム管に入った房水は房水静脈を通り,上強膜静脈に至り眼外,さらに全身の静脈系に還流していく。 㨯結膜部位により,球結膜と瞼結膜(眼瞼の裏側)に分けられる。結膜の表面は滑らかであり,眼球運動や瞬目の際はこの相対する瞼結膜と球結膜,角膜がスムーズに運動できるようになっている。 イ いく。 㨯結膜部位により,球結膜と瞼結膜(眼瞼の裏側)に分けられる。結膜の表面は滑らかであり,眼球運動や瞬目の際はこの相対する瞼結膜と球結膜,角膜がスムーズに運動できるようになっている。 イ眼疾患症状㨯発赤(充血)充血は球結膜が赤い状態で,結膜の炎症の際に結膜血管の拡張によって生じる(結膜充血)。角膜や眼内の炎症及び高眼圧の際には毛様充血の形をとる。 㨯眼脂各種の結膜炎など結膜の炎症の際に生じる。膿性の場合には急性で,流行性の結膜炎や角膜感染症など重篤な場合が多い。睫毛乱生,眼瞼内反,涙道の狭窄や閉塞,涙嚢炎でも眼脂が生じる。眼脂が角膜に付着して霧視を訴えることがある。 㨯流涙流涙には,涙の分泌過剰による場合と,涙の排出障害が原因で起こる場合とがある。前者はそのほとんどが反射性であり,たとえば角膜異物,角膜びらんなどがその例で,羞明を伴う。後者は結膜嚢から鼻腔に至る涙道経路の通過障害が原因で,先天性閉塞のほか,外傷性涙小管断裂, 涙嚢炎や慢性結膜炎,トラコーマなどの後遺症,あるいは副鼻腔炎の手術後の鼻涙管の閉塞によって生じる。 㨯羞明まぶしい状態を羞明という。羞明は重篤な疾患の主症状であることがある。眼内に異常に大量の光が入る場合と,眼球自体の光に対する過敏性が原因になっている場合とがある。前者の例としては,病的散瞳や,角膜あるいは水晶体の混濁のため入射光が散乱される例,あるいは白子で眼の色素の量が極端に少なく,光が虹彩や脈絡膜を通過して眼内に入る場合などがそれである。光に対する過敏性が原因になっている例としては,角膜炎,虹彩炎などがある。 ウ先天緑内障㨯緑内障a意義緑内障とは,眼圧,視神経乳頭,視野の特徴的変化の少なくとも一つを共有し,眼圧を十分に下降させることで視神経障害の改善あるいは進行を 角膜炎,虹彩炎などがある。 ウ先天緑内障㨯緑内障a意義緑内障とは,眼圧,視神経乳頭,視野の特徴的変化の少なくとも一つを共有し,眼圧を十分に下降させることで視神経障害の改善あるいは進行を阻止しうる,眼の機能的・構造的異常を特徴とする一連の疾患群である。この障害が長年月で進行すると,多くの症例で失明に至る。高眼圧は緑内障性視神経障害(緑内障による視神経の構造的異常)の発症や進展に関与する最も重要な因子であるが,高眼圧がそのまま緑内障を意味するのではない。緑内障の本態は,さまざまな要因に基づく視神経障害である。 緑内障による視野異常は,発症と進行が緩慢である。緑内障性視野変化について,緑内障末期には中心視野のみを残し,高度の中心視野狭窄を示す。この末期の時期でも,患者の中には自分の異常に気付かない人たちもいる。緑内障では,中心視野は最後まで残ることが多い。 中心視野が消失して,耳側の島状の視野が残り,最後にはこれも消失 して盲となる。 b検査緑内障を他の視神経の病気の障害と区別するために最も大事なことは,眼底検査をして視神経乳頭の変化を直接眼で見ることである。緑内障では視神経乳頭を形成している神経繊維が消失するにつれて乳頭が陥凹し,正常なピンクの色調が失われ蒼白くなる。緑内障ではこの乳頭陥凹は縦長となる傾向があり,また血管も端に押しやられるという特有な変化があるので,他の病気とはだいたい区別できる。 一般に緑内障と診断するには,まず,眼圧や視野の測定,眼底の視神経乳頭の検査を1回きりではなく何回も繰り返す必要がある。眼圧は1日の中でも変動するため,丸1日,2時間おきくらいに眼圧を測定して初めて診断がつくこともある。また,長時間うつぶせになっていたり,瞳を薬で大きくするなどわざと眼圧が上がりやすい状況を設定して眼圧などの 中でも変動するため,丸1日,2時間おきくらいに眼圧を測定して初めて診断がつくこともある。また,長時間うつぶせになっていたり,瞳を薬で大きくするなどわざと眼圧が上がりやすい状況を設定して眼圧などの反応をみる必要があることも珍しくない。 c分類緑内障には,房水の流出口である隅角が虹彩の根元で閉鎖されるタイプ(閉塞隅角緑内障),隅角が十分にあいているのに,排出路の中で通過障害の起こるタイプ(開放隅角緑内障),隅角の発達が不完全なために眼圧が上昇する,生後1年以内に多い緑内障(先天緑内障)がある。 㨯原発先天緑内障(発達緑内障(早発型))a意義小児の緑内障の病因は隅角の発育異常であるところ,異常が隅角のみにあるものを原発先天緑内障と呼び,他の眼異常や,全身異常に伴うものを続発先天緑内障と呼ぶ。 原発先天緑内障は,胎生期の隅角の発育異常が原因となり,眼圧が 上昇する緑内障である。生後1年以内に約80パーセントが発症し(60パーセントは,生後6か月までに発症するとする文献もある。),眼球壁の脆弱性のために眼球が拡大し,牛眼という状態をきたす。 b眼科臨床㨯患者は新生児,乳幼児であり,初発症状としてはまず流涙,羞明があげられる。眼圧上昇が持続すると角膜浮腫,混濁,角膜径の拡大を生じる。角膜径に左右差がある,生下時より11を越える角mm膜径,あるいは極端に前房が深い場合は本症を疑う。角膜径が一層拡大するとデスメ膜の断裂と角膜実質の浮腫をきたし,角膜は一挙に混濁する。デスメ膜断裂が生じる前に早期に発見,診断し手術治療を行うことが重要である。隅角底の完成は生後約1年である。視神経乳頭では陥凹底が深いこと,全体的な陥凹の拡大が特徴である。 眼圧が相当高ければ,角膜が白く濁っていてすぐに分かることもあるが,眼圧が次第に上昇してくる である。隅角底の完成は生後約1年である。視神経乳頭では陥凹底が深いこと,全体的な陥凹の拡大が特徴である。 眼圧が相当高ければ,角膜が白く濁っていてすぐに分かることもあるが,眼圧が次第に上昇してくる場合では,眼圧により眼球全体が伸ばされて(子供の眼は弾力性があるため),徐々に黒目が大きくなってくる(牛眼)。乳幼児が光を嫌い,外へ出るとまぶしがる時には,この病気の可能性がある。 㨯生後間もない乳幼児では,眼球が発育段階にあり,眼球壁も未完成である。この段階の乳幼児に高度の眼圧上昇が起こると,眼球壁が著しく伸展され,角膜径の増大が起こるのみならず,角膜浮腫,デスメ膜の破裂などがみられる。この状態を牛眼と呼ぶ。 先天緑内障の牛眼で羞明を生じることはよく知られている。ただし,患者は乳幼児であるので,光を避けたりする患者の所作で判断しなければならない。先天緑内障の羞明は,眼圧上昇のために角膜の神経が刺激されて起こる三叉神経の反射現象であり,角膜浮腫が 出ていない程度の眼圧上昇でも起こり得る。早発型発達緑内障では,眼圧上昇は慢性であるため,自覚症状としては角膜の神経(三叉神経)が刺激されてまぶしくなったり,その結果涙が多くなったりという症状が少しずつ出てくる。 㨯角膜の混濁や拡大(眼圧上昇の反応)は,しばしば,幼児の緑内障のサインである。また,あるときには,小児の緑内障はそれ自体として流涙,羞明,眼瞼けいれんの「古典的3兆候」の1つ又はそれ以上を示す。乳児は,光から身を引いたり,光を避けるために頭を両親や寝具にうずめることが観察される。屋内であっても,幼児は明らかに仰向くのを嫌がり,内気な子ではないかと間違われたりすることもある。眼瞼けいれんは,羞明の別の表現でもあり得るし,しばしば流涙を伴う。 1歳以上の子供においては,緑内障は,通常 ても,幼児は明らかに仰向くのを嫌がり,内気な子ではないかと間違われたりすることもある。眼瞼けいれんは,羞明の別の表現でもあり得るし,しばしば流涙を伴う。 1歳以上の子供においては,緑内障は,通常ほとんどはっきりとした徴候や症状はひきおこさない。1歳から4歳の間に発症してきた緑内障の子供は,緑内障が他の随伴した眼球の異常や全身の異常から疑われなければ,正しく診断がつきにくい。 流涙,羞明,眼瞼けいれんは幼児緑内障に特有のものではなく,鼻涙管障害,眼感染症,角膜損傷の結果としても起こり得る。角膜浮腫又は混濁は,沈着症,角膜萎縮,分娩障害,先天異常の場合にも見られる。角膜拡大だけが見られるものは,巨大角膜,高度軸性近視にも起きる。他の緑内障でない眼の条件でも,小児緑内障の1つ又はそれ以上のサインを示すので,緑内障の除外が必要である。 先天緑内障は,その比較的な希少さのため,しばしば誤診され,結膜,角膜,眼瞼の感染症や炎症と混同される。 c治療本症には本質的に手術治療が選択され,隅角の流出路の再建手術で ある線維柱帯切開術が広く用いられる。複数回の手術にても眼圧コントロールが困難となった場合には線維柱帯切除術が選択される。 エ結膜炎一般に,結膜炎では「まぶしさ」を訴えることは少ないが,急性ウイルス性結膜炎や重篤なアレルギー性結膜炎では「まぶしさ」を訴える。 㨯因果関係ア原告らは,原告Aが被告病院を初めて受診した際(平成11年5月19日)には既に,原告Aは先天緑内障を発症していた旨主張するので,この点について検討する。 㨯角膜混濁について上記㨯アのとおり,D診療所のE医師は,平成11年5月18日の㨯診査のとき,原告Aの眼球が白濁する傾向を認め,その旨,母子手帳に記載し被告病院眼科での受診を指導している。しかし,上記㨯イ いて上記㨯アのとおり,D診療所のE医師は,平成11年5月18日の㨯診査のとき,原告Aの眼球が白濁する傾向を認め,その旨,母子手帳に記載し被告病院眼科での受診を指導している。しかし,上記㨯イ及び㨯㨯のとおり,被告病院眼科初診時(平成11年5月19日)及び再診時(同年8月3日)に,H医師が細隙灯顕微鏡検査を実施したところ,原告Aの両眼とも角膜は清明で前房にも異常を認めなかっただけでなく,上記㨯ウのとおり,被告病院での受診後間もない同年9月13日の健㨯康診査の際,原告Cは,上記のような記載のある母子手帳を担当医師に提出していたにもかかわらず,担当医師が眼の異常を指摘することはなかったものである。他方,証拠(証人G,証人H)によれば,白っぽい眼脂が角膜にまで付着している場合には角膜が濁っているように見えることがあり,眼脂が眼球にくっついて白っぽく見えることもあり得ることが認められるところ,同年5月19日に原告Cは眼脂が多いと訴え,現に眼脂が認められたのであるから,E医師が認めた眼球の白濁傾向は眼脂に起因するものであった可能性を否定できない。もっとも,上記㨯ウ㨯bのとおり,原発先天緑内障においては,初発症状としてまず流涙, 羞明が,眼圧上昇が継続すると角膜浮腫,混濁,角膜径の拡大が生じることからすれば,被告病院眼科初診時に角膜の混濁が認められなかったとしても,それだけで先天緑内障が発症していたことを否定するのは相当でないというべきである。 㨯流涙(眼脂)についてG証人は,被告病院眼科初診時に見られた眼脂は流涙が原因であると思われると証言等する。しかし,上記㨯イ,㨯及びエ㨯のとおり,被㨯告病院眼科初診時(平成11年5月19日)及び再診時(同年8月3日),原告Cは,H医師に,流涙はないと説明しており,また,平成12年 れると証言等する。しかし,上記㨯イ,㨯及びエ㨯のとおり,被㨯告病院眼科初診時(平成11年5月19日)及び再診時(同年8月3日),原告Cは,H医師に,流涙はないと説明しており,また,平成12年10月13日に天理病院に入院する際にも,担当医師に,流涙は以前からないと説明しているし,原告Aを診察したH医師は流涙を認めておらず,流涙があったことを直接裏付ける証拠はない。他方,上記㨯イ㨯のとおり,眼脂は結膜の炎症や涙道の閉塞などの際に生じるものであるところ,上記㨯イ及び㨯のとおり,被告病院眼科初診時には両眼に㨯結膜充血があり,被告病院においてブジーを通して涙道の拡張をし涙道洗浄をするとともに,抗菌薬を差した結果,眼脂は止まったことを併せ考慮すると,眼脂は,むしろ,結膜炎ないし涙道の閉塞によって生じた可能性が高い。 㨯羞明について上記㨯イ㨯のとおり,被告病院眼科再診時(平成11年8月3日),原告Cは,H医師に対し,原告Aが外に出るとまぶしがる,うつ伏せ寝していると訴えていたことが認められる。うつ伏せ寝していると説明した趣旨は必ずしも明らかでないが,カルテ(乙A1)に記載された文脈に照らすと,仰向けにするとまぶしがるためうつ伏せに寝かせていると説明したものと推認するのが相当である。そして,上記㨯イ㨯,㨯ウ㨯のとおり,羞明は先天緑内障の初発症状の1つであること,結膜炎にお いても認められることはあるが,被告病院眼科再診時には結膜充血は初診時より改善していたのに,このときになって初めて羞明の訴えが出てきたことなどの事実に照らすと,上記羞明は結膜炎と関連するものとは容易に認め難く,他に羞明の原因となる疾病の存在が証拠上明らかでないことをも併せ考えると,先天緑内障の初発症状であった可能性を否定することはできないというべきである。 㨯 結膜炎と関連するものとは容易に認め難く,他に羞明の原因となる疾病の存在が証拠上明らかでないことをも併せ考えると,先天緑内障の初発症状であった可能性を否定することはできないというべきである。 㨯角膜径・牛眼等についてG証人は,生後1~2か月から1歳7か月までの原告Aの写真(甲A7の1~9)を見て,黒目部分が普通より大きいように見える,先天緑内障の初期の大きさである,と証言するが,他方で,正常か大きいかの区別はつかない,少なくとも牛眼ではない,混濁の有無は分からない,とも証言していること,原告Cは,1歳半ぐらいのときから,黒目が少し大きいような,少し色が違うような印象であったとする趣旨の供述をしていることに照らすと,上記の写真をもって,被告病院受診当時,角膜径が通常より大きく,また,牛眼の症状があったと認めるには十分でない。 㨯視覚障害について上記㨯ウ,エ㨯及び㨯のとおり,原告Cは,平成12年9月14日㨯の1歳6か月児健診において初めて,原告Aが時々手探りで物を探したり,よく物に頭をぶつける旨訴え,同年10月10日F眼科を受診した際には,2,3週間前から視力が悪いことを明瞭に示すようになったと訴え,同日受診した天理病院においては,同年夏までは普通に見て普通に動いていたが,同年夏を過ぎてから見にくそうになって歩けなくなり,同年9月ころから明らかに見えにくくなっている様子で手探りになってきた旨訴えていたもので,被告病院眼科受診時から1年以上経過した後に視力障害を示す症状が明確になったものであることが認められる。し かし,上記㨯ウのとおり,緑内障による視野異常は発症と進行が緩慢㨯で,緑内障末期でも中心視野を残し,自分の異常に気付かない患者もいるのであるから,原告Aの視力障害を示す症状が明確になったのが被告病院眼科受診時 のとおり,緑内障による視野異常は発症と進行が緩慢㨯で,緑内障末期でも中心視野を残し,自分の異常に気付かない患者もいるのであるから,原告Aの視力障害を示す症状が明確になったのが被告病院眼科受診時から1年以上経過した後のことであるからといって,被告病院受診時に先天緑内障が発症していたことを否定することは必ずしもできない。 イアで説示したとおり,原告Aは,被告病院眼科再診時(平成11年8月3日)において,角膜混濁,流涙,角膜径の拡大,牛眼症状はいずれも認められず,視覚障害を示す症状もなかったものの,うつ伏せ寝させることを要する程度の羞明の症状があり,その羞明は結膜炎と関連するものであったとは認め難い。さらに,羞明は先天緑内障の初発症状の1つであること,原告Aは,平成12年10月6日,F眼科のK医師により,先天緑内障と診断されていること,緑内障による視野異常は発症と進行が緩慢であること,原発先天緑内障は,生後1年以内に約80パーセントが発症すること(60パーセントは,生後6か月までに発症するとする文献もある。)などの前記認定事実を総合すると,被告病院眼科再診時の羞明は,先天緑内障の初発症状であった蓋然性が高いというべきである。 そして,先天緑内障の羞明は眼圧上昇で起き(㨯ウ㨯b㨯,㨯),また,緑内障の大きな特徴として視神経乳頭の変化が起こる(㨯ウa,b)こ㨯とに鑑みれば,被告病院眼科再診時において,眼圧の測定,眼底検査を実施することにより,眼圧の異常ないしそれに伴う症状を発見してこれに対する治療をし,原告Aの視覚にかかる後遺障害の発生を避けられる高度の蓋然性があったと認めるのが相当である。そうとすれば,H医師がこれらの検査をしなかったことと,上記後遺障害の発生との間には,因果関係があるというべきである。 㨯過失(注意義務) られる高度の蓋然性があったと認めるのが相当である。そうとすれば,H医師がこれらの検査をしなかったことと,上記後遺障害の発生との間には,因果関係があるというべきである。 㨯過失(注意義務) ア原告Aが被告病院眼科を受診した平成11年8月3日(再診)当時には,先天緑内障が発症していた蓋然性が高く,その際原告らが主張する眼圧測定等の検査を実施していれば,原告Aの後遺障害の発生を避けることができた高度の蓋然性があったと認められることは,前記のとおりである。 イそして,羞明は先天緑内障の初発症状の1つであること,H医師は,原告Aの羞明が結膜炎と関連するものと判断したのであるが,被告病院眼科再診時には結膜充血は初診時より改善していたのに,このときになって初めて羞明の訴えが出てきたことに照らすと,上記判断が正しかったとはいい難く,上記判断をすることが無理もなかったといえるだけの事情があったと認めるに足りる証拠もないこと,H医師自身,先天緑内障のことは頭にあったと供述していること(証人H)に照らすと,H医師には,被告病院眼科再診時において,先天緑内障を疑い,眼圧測定,眼底検査を実施すべき法律上の注意義務があったというべきである。 それにもかかわらず,H医師は,これらの検査を実施しなかったのであるから,被告は,民法715条,709条に基づく不法行為責任を負う。 ウなお,証拠(甲B2~4,乙B1,2,5~7,11,13,20,証人G)によれば,小学生までの乳幼児では,催眠下で眼圧を測定し,1歳までの乳児は,身体を固定し表面麻酔後に開瞼器をかけて眼底検査をするところ,小児では呼吸抑制を来すことがあるし,入眠させるために通常用いられるトリクロリールは,小児では,一般に成人に比し薬物感受性が高いため,慎重に投与することとされ,発疹,悪心・嘔吐等の 査をするところ,小児では呼吸抑制を来すことがあるし,入眠させるために通常用いられるトリクロリールは,小児では,一般に成人に比し薬物感受性が高いため,慎重に投与することとされ,発疹,悪心・嘔吐等の副作用も指摘されていることが認められる。 しかし,先天緑内障を放置しておくと失明という重大な後遺障害を引き起こすことに鑑みれば,上記程度の障害ないし副作用の危険があるからといって,イの注意義務が否定されることにはならない。 争点㨯(損害の額)について 㨯原告A1億3484万7072円ア逸失利益5229万0773円争いのない事実等,前記1㨯エ㨯及び㨯のとおり,原告Aは,経過観察のためF眼科の受診を継続し,平成16年4月5日,G医師から,症状は固定しているとして,両眼先天緑内障,両眼視神経萎縮,視力は両眼光覚弁(暗室にて被検者の眼前で照明を点滅させ,明暗が弁別できる視力をいう。)との診断を受け,同月9日,身体障害者等級表による等級1級,視覚障害1級(視力,右光覚,左光覚)という内容の身体障害者手帳の再交付を受けたものであるところ,G証人は,上記同月5日の診断内容について,明るいか暗いか分かるぐらいの視力は残っているのではないかと推測するが,失明である旨証言していることをも踏まえると,原告Aの後遺障害は,「両眼が失明したもの」(労働者災害補償保険法施行規則14条1項,別表第一障害等級表第一級一)に該当するということができ,原告Aの労働能力喪失率は100パーセントと見るのが相当である。 そして,賃金センサス平成16年第1巻第1表産業計・企業規模計・男性労働者・学歴計の平均賃金542万7000円を基礎に計算する。 さらに,原告Aは,上記症状固定日において5歳であることが認められ,原告Aは18歳に達してから67歳に達するまで就労が可能で 規模計・男性労働者・学歴計の平均賃金542万7000円を基礎に計算する。 さらに,原告Aは,上記症状固定日において5歳であることが認められ,原告Aは18歳に達してから67歳に達するまで就労が可能であると考えられるので,年5パーセントの割合による中間利息を控除するため,62年に対応するライプニッツ係数19.0288から,13年に対応するライプニッツ係数9.3935を控除した9.6353を乗じる。 そうすると,542万7000円に100パーセントを乗じ,さらに,9.6353を乗じることにより,原告Aの後遺症による逸失利益の現価は5229万0773円(1円未満切り捨て。以下同じ。)と算定される。 イ後遺症慰謝料2800万円アのとおり,原告Aに存する障害は後遺障害等級第1級に該当すること を考慮すると,原告Aの後遺症慰謝料としては2800万円とするのが相当である。 ウ介護費用4255万6299円原告Aは,アのとおり両眼失明の後遺障害が残ったことにより,終生近親者等の介護を受けなければ,日常生活を送ることに支障が生ずると認められるので,将来の介護料が損害となるが,いわゆる植物状態の患者とは異なり,適切な訓練を受けることによって,ある程度,介護を受けなくても日常生活を送ることができると考えられる。この点を考慮すると,介護料は1日6000円(年額219万円),平均余命73年に対応するライプニッツ係数は19.4321であるので,損害額は,219万円に19. 4321を乗じて,4255万6299円となる。 エ弁護士費用相当額1200万円弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件損害賠償請求訴訟の提起・追行を原告ら代理人に委任したことが認められ,本件訴訟の難易,認容額その他の事情に鑑みると,原告Aの請求しうる弁護士費用は,1200万円をもって 趣旨によれば,原告Aは,本件損害賠償請求訴訟の提起・追行を原告ら代理人に委任したことが認められ,本件訴訟の難易,認容額その他の事情に鑑みると,原告Aの請求しうる弁護士費用は,1200万円をもって相当と認める。 㨯原告B及び同C各自につき110万円ア慰謝料各100万円前記認定のとおり,原告Aは,被告担当医の過失により両眼失明という重大な後遺障害を残すことになったものであるところ,これにより,原告B及び同Cが父母として受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額としては,各自につき100万円をもって相当と認める。 イ弁護士費用相当額各10万円弁論の全趣旨によれば,原告B及び同Cは,本件損害賠償請求訴訟の提起・追行を原告ら代理人に委任したことが認められ,本件訴訟の難易,認容額その他の事情に鑑みると,原告B及び同Cの請求しうる弁護士費用は, それぞれ10万円をもって相当と認める。 争点㨯(過失相殺の可否)について被告は,原告Aが1歳6か月(平成12年7月)の時点では,原告B及び同Cは被告病院受診時に問題のなかった視力が正常でないことに気付き,角膜浮腫・混濁を意味するひとみが白いという異常が発生してきたことも知っていたのであるから,できるだけ早く眼科医で受診すべきであったのに,原告らは平成12年10月6日まで眼科医に診せることを怠った過失があると主張する。 しかし,前記1㨯イ,ウのとおり,原告Cは,平成11年8月3日の被告病院眼科再診時にも,同年9月13日の奈良市保健センターにおける健康診査時にも,担当医師から眼の異常があるとは言われず,平成12年9月14日,奈良市保健センターにおいて,健康診査票に「眼について気になることがある。」,「ひとみが白くみえるなど」とある部分を肯定する記載をし,更に,主訴として,「少し眼が気になる, ,平成12年9月14日,奈良市保健センターにおいて,健康診査票に「眼について気になることがある。」,「ひとみが白くみえるなど」とある部分を肯定する記載をし,更に,主訴として,「少し眼が気になる,見えているが,時々,手さぐりで物を探したり,よく物に頭をぶつける」との記載をしたものの,ここでも,担当医師から眼に異常があるとは言われなかったことが認められるのであって,かかる事情のもとでは,医学知識を持たない(弁論の全趣旨)原告らに,被告主張の過失があったと評価することは相当でない。 結論 以上の次第で,原告らの請求は,原告Aにつき,1億3484万7072円及びこれに対する不法行為の日である平成11年8月3日から,原告B及び同Cにつき,各自110万円及びこれに対する同日から,それぞれ支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求についてはいずれも理由がない。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官坂倉充信 裁判官齋藤憲次裁判官高木健司

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