【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人岡崎基上告趣意書は、原判決ハ日本憲法施行ニ伴フ刑事訴訟法ノ応急的措 置ニ関スル法律ニ違反シ虚無ノ証拠ニヨリテ強盗ノ
主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人岡崎基上告趣意書は、原判決ハ日本憲法施行ニ伴フ刑事訴訟法ノ応急的措置ニ関スル法律ニ違反シ虚無ノ証拠ニヨリテ強盗ノ事実ヲ認定シタルノ違法アリ、原判決ハ理由ノ部ニ於テ第二ノ事実ニ付「被告人等四名は互に共同して同家家人に対し暴行脅迫を為し財物を強取しようと言ふ意思連絡の下に原審相被告人Aに於て其の場に在つた襦袢をB(当時五十七年)の頭から被せ紐で同人の両手を縛りなほ「我々は復員者だ、住む所も仕事もなく食ふに困るから盗つて行く、金は何処にあるか、金を出せ」等と申向けその反抗を抑圧し同人をして右要求を拒否し得さる程度に畏怖させて同人を脅迫した上被告人等は同人に案内をさせて階下物置の中から原審相被告人Aが現金約六百円余、被告人Cと原審相被告人Dの両名が白米約七升余、被告人Cが階下茶の間の簟笥からカーキ色軍服上衣一枚、薩摩絣単衣一枚、原審相被告人Dが男物袷着物、羽織各一枚、メリヤスシヤツ一枚を夫々取出し以てB所有に係る前記金品を強取し」云々ト判示シB方ニ於ケル強盗ノ点ニ付キ反抗ヲ抑圧スル程度ノ暴行脅迫ノ事実ヲ挙ケ之等ハ何レモAノ為シタル事実ヲ認定シ被告人ニ付キテハ之等暴行脅迫行為ヲナシタル事ヲ認定セス被告人ニ付キテハAノ暴行脅迫後白米七升カーキ色軍服上衣一枚薩摩絣単衣一枚ヲ奪取シタル事実ヲ認定スル一方被告人等四名ハ暴行脅迫財物奪取ノ行為ヲナシタルモノナルニヨリ強盗罪ノ共同正犯ナリトナスモノナリ、然レドモ原判決カ被告人ノ暴行脅迫財物奪取ノ意思連絡即相互認識ノ点ニ付キ原審ノ挙ゲル所ノ証拠ハ被告人ノ第二審公判廷ニ於ケル被告人ノ供述被告人ニ対スル第四回予審訊問調書中「四人共無理ニ戸ヲ開ケサセテ家ノ中ニ入リ脅カシテ盗ル気ニナツテ家ノ中ニ入リ」云々ノ部分ト証人Bニ対スル第一回 ル所ノ証拠ハ被告人ノ第二審公判廷ニ於ケル被告人ノ供述被告人ニ対スル第四回予審訊問調書中「四人共無理ニ戸ヲ開ケサセテ家ノ中ニ入リ脅カシテ盗ル気ニナツテ家ノ中ニ入リ」云々ノ部分ト証人Bニ対スル第一回予審訊問調書中ノ同人ノ供述ノミニ尽クルモ被告人ノ第二回公判廷ニ於ケル供述- 1 -中ニハ暴行脅迫及財物ノ奪取即強盗ノ点ニ付キ他ノ三人ト意思連絡アリタル旨ノ供述記載ナク証人Bニ対スル第一回予審訊問調書中ニモ之ヲ証スヘキ供述記載ナシ只前掲被告人ノ第四回予審訊問調書中此点ヲ認メ得ル供述記載アルノミナリ、然ラバ被告人カ他ノ三人ト意思連絡即相互認識ヲ有シタリトナス証拠ハ右被告人ニ対スル第四回予審訊問調書カ唯一ノ証拠ナリ即チ相互認識ノ点ニ付キ日本憲法施行ニ伴フ刑事訴訟法ノ応急的措置ニ関スル法律第十条第二項ニ所謂被告人ニ不利益ナル唯一ノ証拠カ被告人本人ノ自白ニ該当スルモノナルニヨリ之ヲ採ツテ以テ証拠トナシ有罪ヲ認定スルコトヲ得サルモノナルヲ以テ原判決カ被告人自身ノ暴行脅迫ヲ認定セサル以上右被告人暴行脅迫及財物奪取ノ点ニ対スル相互認識ノ点ニ付キ被告人ノ自白以外ノ他ノ証拠ナキ限リ被告人ノ所為ヲ強盗ノ共同正犯ナリト認定スレハ右法律第十条第二項ノ規定ニ違反シ虚無ノ証拠ニ依リテ相互認識ノ点ヲ認定シ従テ強盗ノ共同正犯ヲ認定シタルノ違法アリ破毀ヲ免レサルモノナリというのであるが、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十条第三項は一つの犯罪について被告人を有罪とし、又は被告人に刑罰を科するには、その証拠が本人の自白だけでは十分でなく、他に傍証がなければならないことを規定したものであつて、右の要件が備わつた場合でも犯罪事実の一部については証拠として本人の自白があるだけで他に傍証がないという場合をも包含する趣旨ではない。本件において原判決は判示第二の強盗 ことを規定したものであつて、右の要件が備わつた場合でも犯罪事実の一部については証拠として本人の自白があるだけで他に傍証がないという場合をも包含する趣旨ではない。本件において原判決は判示第二の強盗罪について被告人の自白の外、証人Bの供述記載を証拠として引用しているのであるから、所論のように被告人と他の共犯者との間の強盗の意思連絡について被告人の自白以外に他の証拠がないからとて、前記法律の規定に違反して虚無の証拠によつて事実を認定したものとはいえない。されば原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。 以上は裁判官全員一致の意見であるので、刑事訴訟法第四百四十六条により主文のように判決する。 - 2 -検察官下秀雄関与昭和二十二年十二月十六日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官長谷川太一郎裁判官井上登裁判官庄野理一裁判官島保裁判官河村又介- 3 -
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