主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が,原告に対し,別紙目録「従前の宅地」欄記載の各土地につき平成11年5月19日付けで行った各仮換地指定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,被告が,別紙目録記載の原告所有の各土地(以下「本件各土地」といい,そのうち,地番Aの土地を「Aの土地」,地番Bの土地を「Bの土地」という。)に対して,平成11年5月19日付けで仮換地指定処分(以下「本件各処分」という。)を行ったところ,原告が,手続違反及び照応原則違反を理由として,本件各処分の取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実並びに証拠(甲1ないし7,9,10,乙1ないし3,5ないし12,証人C,証人D,原告本人)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 当事者原告は,本件各土地を所有している者である。 被告は,土地区画整理法(平成11年3月法律25号による改正前のもの。以下「法」という。)3条2項に基づいて,福岡県宗像市E地区及び同市F地区の一部の地域における土地区画整理事業(以下「本件土地区画整理事業」という。)を実施するために,福岡県知事の認可を受けて設立された土地区画整理組合である。 (2) 本件土地区画整理事業本件土地区画整理事業は,宗像市中心部にあるJR鹿児島本線G駅から北西0.8キロメートルの地点に位置する東西約0.2キロメートル,南北約0.9キロメートルの区域(以下「本件区域」という。)を対象として,商業施設を誘致し,周辺の住宅地との調整を図りながら,市街地の造成を行うことを目的としている。 本件区域は,宗像市総合計画において,商業ゾーンに位置づけられた地域の一部を含んでいるが,本件土地区画整理事業の開始当時,市街化調整区域に指定されてお がら,市街地の造成を行うことを目的としている。 本件区域は,宗像市総合計画において,商業ゾーンに位置づけられた地域の一部を含んでいるが,本件土地区画整理事業の開始当時,市街化調整区域に指定されており,その大部分が水田,田畑等の農地として利用されていた。 (3) 本件各処分の経緯ア被告は,組合員に対し,平成11年3月19日付け総会招集通知(乙1)を送付し,第2回総会の招集を通知した。その中には,議決事項として,「(3)換地設計基準の決定について,(4)仮換地指定について」などが記載されていた。 イ平成11年3月28日に,被告の第2回総会(以下「本件総会」という。)が開催され,原告も組合員としてそれに出席した。そして,第14号議案の換地設計基準の決定については,換地設計基準案(乙3)が原案どおり可決され,続いて,第15号議案の仮換地指定について,換地計画に基づいた仮換地の指定を工区ごとに施行することが付議された。その際,被告理事は,組合員に対し,配布された議案資料(乙10)及び口頭により,法31条8号及び法98条3項で,仮換地の指定に際しては,総会の議決を経ることを要する旨規定されていることを説明した。 ただし,当時,換地計画はもとより,各筆の土地についての仮換地先を定めた具体的な仮換地案は作成されておらず,同審議に際しても,組合員らに対して仮換地案は示されなかったが,原告を含む組合員らからは特段の質問等もなく,原案どおり可決された。なお,本件総会の時点においては,仮換地案は,ほぼ完成に近い状態であった。 被告の理事は,全議案の審理が終了した後,組合員らに対し,仮換地の指定について,本件総会で議決された換地設計基準に基づいて仮換地案を作成中であり,仮換地案を理事会に付議した後,個人説明会を開催し,組合員の意見を聴取した上,必要があれば理事 合員らに対し,仮換地の指定について,本件総会で議決された換地設計基準に基づいて仮換地案を作成中であり,仮換地案を理事会に付議した後,個人説明会を開催し,組合員の意見を聴取した上,必要があれば理事会で修正を加え,同年4月末から同年5月初めに仮換地指定通知書を発送する予定である旨の説明を行った。 ウその後,区画整理士の資格を有する技師長Dは,本件区域の仮換地案(以下「本件仮換地案」という。)を完成させ,平成11年4月12日には被告理事会が開催され,同仮換地案が承認され,また,本件仮換地案について組合員らに対して個人説明会を行うこと,その日程などが決定された。 エ個人説明会は,平成11年4月15日ころから同月26日ころにかけて行われ,その際,本件仮換地案に対し,十数件の変更又は修正の申立てがされた。 原告に対する個人説明会は,同月25日に開催され,被告理事長,理事及びDは,同日,原告に対し,本件仮換地案についての説明を行い,図面,書類等の具体的資料を交付した上,仮換地の位置,形状,面積及び減歩率等の説明を行った。原告は,その際,いくつかの質問を行ったものの,原告から,仮換地の手続に対する疑問,照応の原則に違反するとの意見,本件仮換地案に対する変更又は修正の希望などの発言はなかった。 オ被告は,平成11年4月28日,個人説明会における修正又は変更の申立てを踏まえ,理事会において,本件仮換地案の変更を決定し,同年5月10日,理事会において,仮換地指定通知書の発送を承認した。 被告は,同月19日付けで,原告に対する本件各処分を行い,同月21日,原告に対して本件各処分が通知された。 カ原告は,平成11年7月16日,福岡県知事に対し,本件各処分について,審査請求を行った。これに対し,福岡県知事は,平成13年1月17日,原告の上記請求を棄却する旨の して本件各処分が通知された。 カ原告は,平成11年7月16日,福岡県知事に対し,本件各処分について,審査請求を行った。これに対し,福岡県知事は,平成13年1月17日,原告の上記請求を棄却する旨の裁決をした。 (4) 本件各処分における仮換地指定の方法等ア Dは,まず,別紙図面1のとおり,従前地上に道路位置を決めた上,本件各土地の仮換地の位置を検討した。 その際,Dは,従前のBの土地の一部が位置する別紙図面1の18の街区内には,保留地等の関係により,他の権利者の仮換地を行う必要があったことから,本件各土地に対する仮換地の位置を別紙図面1の19の街区内にすることとし,さらに,原告から,本件各土地を一体として利用することによって,前面と後面の双方の道路から出入りしていたとの事情を聞いていたことから,前面と後面が道路に接する土地と一面だけが道路に接する土地を指定することとした結果,別紙図面2のとおり,本件各土地の仮換地の位置を決定した。 イ Dは,換地設計細則(乙7)に従って本件各土地(従前地)の換地権利評価指数を算出し,これを仮換地の位置について定められる整理後単位評価指数で除して,仮換地の地積を決定した。そして,仮換地後の本件各土地の整理後単位評価指数とそれぞれの土地の地積を乗じた数値の合計値が,換地権利評価指数の合計値と一致するよう,別紙目録及び別紙図面2のとおり,本件各土地の仮換地の指定を行った。その結果,本件各土地の合計地積に対する仮換地の合計地積の減歩率は,34.59パーセントとなった。 ウ Dは,他の土地についても同様に仮換地を決めた結果,本件区画整理事業全体の減歩率は32.99パーセント,本件各土地が所在する第2工区の減歩率は約37パーセントとなった。 2 争点(1) 手続違反についてア原告の主張仮換地の指定は,従前の宅 ,本件区画整理事業全体の減歩率は32.99パーセント,本件各土地が所在する第2工区の減歩率は約37パーセントとなった。 2 争点(1) 手続違反についてア原告の主張仮換地の指定は,従前の宅地所有者の権利関係に重大な影響を及ぼすものであるから,法定の必要的総会決議事項とされており,法31条8号及び法98条3項は,組合施行の場合,個々の組合員にどのような仮換地指定を行うかという個別具体的な仮換地指定につき,総会の議決を要する旨規定していると解すべきである。しかし,被告は,本件総会において,換地計画に基づいた仮換地の指定を工区ごとに施行することについて議決を得たにとどまり,本件仮換地案について議決を得ていない。 したがって,本件各処分は,法31条8号及び法98条3項に違反する違法なものであるから,取り消されるべきである。 イ被告の主張法は,換地処分については,換地計画案の作成及び縦覧等並びに都道府県知事の許可等,厳格な手続を定めている(法89条1項,31条1項8号,88条2ないし4項,86条1項)のに対し,仮換地指定の手続については,このような手続を規定していない。したがって,法31条8号及び法98条3項は,仮換地指定のための総会決議に当たっては,仮換地指定を行うことについて,その理由やどのような基準で仮換地を指定するかなどについて説明した上で同意を得れば足りるとするものと解される。 したがって,本件各処分には,法31条8号及び法98条3項に違反しておらず,取り消されるべき違法はない。 (2) 照応原則違反についてア原告の主張本件各処分においては,212平方メートルのAの土地に対し,約5.8倍の1232平方メートルの土地が仮換地として指定され,一方,2752平方メートルのBの土地に対し,約4分の1の707平方メートルの土地が仮 分においては,212平方メートルのAの土地に対し,約5.8倍の1232平方メートルの土地が仮換地として指定され,一方,2752平方メートルのBの土地に対し,約4分の1の707平方メートルの土地が仮換地として指定されている。したがって,本件各処分は,法98条2項及び89条1項に違反する違法なものであるから,取り消されるべきである。 イ被告の主張原告は,本件各処分前,被告に対し,本件各土地は隣接しており,従前から前後面とも道路に隣接する一体の土地として使用している旨述べていた。したがって,被告は,従前の位置関係に従って,一面のみが道路に接する形の2筆ではなく,前後面ともに道路に接する1筆及び1面のみ接する1筆の仮換地を行うことが原告の意向に沿うと考え,本件各処分を行った。また,本件各土地を一体として見た減歩率は,平均減歩率より低く,他の地権者との間の不公平も生じていない。 したがって,本件各処分には,法98条2項及び法89条1項に違反する点はなく,取り消されるべき違法はない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 法98条3項が,仮換地の指定について,あらかじめ組合の総会等の同意を得なければならないと定めた趣旨は,同指定がもたらす諸効果が,組合員の権利利益に多大な影響を及ぼすものであるから(法99条等),組合の総会等における審議を経ることによって,組合員の権利利益を保護し,かつ,組合員らの利害の調整を図ろうとしたものと解される。 このような法の趣旨からすれば,上記総会等の同意は,仮換地の指定が法に適合しているか,すなわち,仮換地の指定の必要性があるか(法98条1項),換地計画において定められた事項又は法89条所定の照応の原則に適合しているか(法98条2項)等について判断した上で行われなければならない。したがって,換地計画 指定の必要性があるか(法98条1項),換地計画において定められた事項又は法89条所定の照応の原則に適合しているか(法98条2項)等について判断した上で行われなければならない。したがって,換地計画が策定されていなかった本件においては,法98条3項の総会若しくはその部会又は総代会の同意は,仮換地の指定の内容が法89条1項の規定に適合するかどうかにつき行われなければならないと解すべきであり,このような同意の前提として,各筆ごとの仮換地の位置及び範囲等を明示した具体的な仮換地案を組合員に対して提示することが必要であるというべきである。 この点につき,被告は,法は,仮換地の指定については,換地処分のような厳格な手続を定めておらず,仮換地指定の理由及び基準を説明すれば足りる旨主張する。 しかしながら,従前地と仮換地の照応は,個々の権利者の従前地と換地の比較のみではなく,他の権利者との比較をも考慮して判断されるべきものであって,法98条3項が総会等の同意を得なければならないものとしている趣旨は,個々の権利者の従前地と仮換地との照応のみならず,他の権利者との比較における照応を判断するのに必要な事情について審議を行わせることにあるというべきであるから,被告の主張は採用できない。 (2) ところで,前記(第2の1(3))のとおり,本件総会において,仮換地を指定することそのものについては同意がされているものの,当時,具体的な仮換地案は完成しておらず,上記総会においても組合員らに示されることはなかった。したがって,本件では,仮換地の指定について法89条1項の規定に適合する旨の総会の同意がされたとはいえず,本件各処分は,法98条3項及び法31条8号所定の総会の同意を欠くものといわざるを得ない。 福岡県建築都市部都市計画課が,被告に対し,総会の議決は,仮換地指定を実 る旨の総会の同意がされたとはいえず,本件各処分は,法98条3項及び法31条8号所定の総会の同意を欠くものといわざるを得ない。 福岡県建築都市部都市計画課が,被告に対し,総会の議決は,仮換地指定を実施することについて得れば足り,具体的な仮換地指定については個人説明会を行う方法で差し支えない旨指導した事情(乙13)及びこのような取扱いが行われた事例が多数存在する事情(乙14)は,上記判断を左右するものではない。 (3) しかしながら,前記(第2の1(3))のとおり,被告理事は,本件総会において,具体的な仮換地案については個人説明会を開催する旨を説明し,これに対し原告を含む出席組合員から異議は出なかったこと,その後,被告は,原告に対し,個人説明会を実施し,図面,書類等の具体的資料を交付した上,仮換地の位置,形状及び面積や減歩率等の説明を行ったこと,その際,原告にも,他の組合員同様,変更又は修正の申立てを行う機会を与えられていたと認められることなどの事情からすれば,原告を含む組合員らには,本件各処分が行われる以前に,本件仮換地案が法89条1項の規定に適合するか否かを判断する機会を与えられており,実質的には,本件各処分の時点までには,法98条3項及び31条8号所定の総会の同意があったものと同視し得る状況にあったものというべきである。 したがって,単に形式上は本件総会においては同意を得ていなかったとしても,手続全体を見た場合,総会の同意があったものと解することができるから,本件各処分が違法であると解することはできない。 (4) ところで,原告は,個人説明会では,質問ができる雰囲気ではなく,変更又は修正の申立てについては考える余裕もなかった旨供述するが,前記(第2の1(3))のとおり,原告以外の組合員らは,十数件の変更又は修正の申立てを行っており, 会では,質問ができる雰囲気ではなく,変更又は修正の申立てについては考える余裕もなかった旨供述するが,前記(第2の1(3))のとおり,原告以外の組合員らは,十数件の変更又は修正の申立てを行っており,現に修正をされていることを考慮すると,原告の上記供述を直ちに採用することはできない。 2 争点(2)について(1) 法89条1項及び法98条2項によれば,仮換地を定める場合,仮換地を従前の宅地との位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等が照応するように定めなければならない(照応の原則)。この仮換地の照応関係は,従前地に所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限がある場合でない限り,同一所有者に対する従前地全体とこれに対する仮換地全体を総合的に見て,その間に認められれば足りると解すべきである。 (2) 本件では,前記(第2の1(4))のとおり,本件各土地の面積の合計は2964平方メートルであり,これに対する仮換地の面積は1939平方メートルであって,その減歩率は34.59パーセントであるところ,本件区画整理事業全体の減歩率は32.99パーセント,本件各土地所在の第2工区の減歩率は約37パーセントであるから,本件各土地に対する仮換地の減歩率は平均程度といえる。また,本件各土地は,それぞれ一面が道路に接するものであるが,互いに隣接し,これを一体として見た場合には,前後面ともに道路に接する位置にあり,原告は,本件各土地を一体の土地として利用していたところ,本件各土地に対する仮換地も,Aの土地の仮換地は,前後面ともに道路に接し,Bの土地の仮換地は一面が道路に接し,これら2つの仮換地は隣接しており,一体として利用することが可能である。 また,各仮換地の形状も,おおむね整ったものである。 しかも,被告は,面積の大きな従前地(Bの土地)に面積の小さな仮換地(別紙 し,これら2つの仮換地は隣接しており,一体として利用することが可能である。 また,各仮換地の形状も,おおむね整ったものである。 しかも,被告は,面積の大きな従前地(Bの土地)に面積の小さな仮換地(別紙目録符号6)が,面積の小さな従前地(Aの土地)に面積の大きな仮換地(同目録符号8)が当てられたが,原告の希望があれば,その逆も可能であったことが認められる(乙9)。 以上の各事実によれば,本件各土地とこれに対する仮換地は,いずれも全体として見た場合照応していると認めることができる。したがって,本件各処分が,法98条2項及び法89条1項に違反するということはできない。 (3) これに対し,原告は,Aの土地に対して約5.8倍の地積の仮換地が,Bの土地に対して約4分の1の地積の仮換地がそれぞれ指定されたことをもって,本件各処分が法98条2項及び法89条1項に違反する旨主張するが,前記のとおり,仮換地の照応関係は,同一所有者に対する従前地全体とこれに対する仮換地全体を総合的に見て,その間に認められれば足りるのであるから,上記主張は採用できない。 3 結論以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第3民事部裁判長裁判官木村元昭裁判官宮尾尚子裁判官櫛橋明香・
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