主文 1 本件控訴及び附帯控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。 (一) 控訴人が平成10年8月19日にした審査の決定中,被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載1ないし5の土地に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,別紙「価格表」記載の各価格を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (二) 控訴人が平成10年9月16日にした審査の決定中,被控訴人Aの所有する別紙物件目録記載6の土地に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,別紙「価格表」記載の価格を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (三) その余の被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は控訴人と各被控訴人との間において第1,第2審を通じて各10分し,その各1を控訴人の,その余を各被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(一) 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人らの請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,第2審を通じ被控訴人らの負担とする。 (二) 附帯控訴の趣旨に対する答弁(1) 本件附帯控訴をいずれも棄却する。 (2) 附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。 2 被控訴人ら(一) 控訴の趣旨に対する答弁(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 (二) 附帯控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,控訴人が平成10年8月19日にした同土地の価格決定のうち,価格5950万円を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (3) 被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地2」という。)に係る平成9年度の固定資産課税 同土地の価格決定のうち,価格5950万円を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (3) 被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地2」という。)に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,控訴人が平成10年8月19日にした同土地の価格決定のうち,価格3億2700万円を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (4) 被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載3の土地(以下「本件土地3」という。)に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,控訴人が平成10年8月19日にした同土地の価格決定のうち,価格1億5100万円を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (5) 被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載4の土地(以下「本件土地4」という。)に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,控訴人が平成10年8月19日にした同土地の価格決定のうち,価格9100万円を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (6) 被控訴人清峰堂の所有する別紙物件目録記載5の土地(以下「本件土地5」という。)に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,控訴人が平成10年8月19日にした同土地の価格決定のうち,価格1億3800万円を超える部分を棄却した部分を取り消す。 (7) 被控訴人Aの所有する別紙物件目録記載6の土地(以下「本件土地6」という。)に係る平成9年度の固定資産課税台帳登録価格につき,控訴人が平成10年9月16日にした同土地の価格決定のうち,価格5億7420万円を超える部分を取り消す。 (8) 訴訟費用は第1,第2審とも控訴人の負担とする。 第2 事案の概要及び争点 1 事案の概要(一) 本件は,固定資産課税台帳の登録価格が高額に過ぎるとしてされた被控訴人らの審査の申出に対し,控訴人が棄却又は一部棄却の審査の決定をした の負担とする。 第2 事案の概要及び争点 1 事案の概要(一) 本件は,固定資産課税台帳の登録価格が高額に過ぎるとしてされた被控訴人らの審査の申出に対し,控訴人が棄却又は一部棄却の審査の決定をしたため,これを不服としてその取消しを求めた地方税法434条所定の行政事件訴訟である。 (二) 被控訴人らは,原審において,主位的に被控訴人らが適正と主張する価格を超える部分の取消を求め,予備的に各審査の決定の全部の取消を求めた。 (三) 原判決は,主位的請求を不適法として却下した上,予備的請求を認容した。その理由の骨子は,以下のとおりである。 (1) 東京都では,昭和38年自治省告示第158号による固定資産評価基準(以下「評価基準」という。),東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領(昭和38年主課固発第174号・昭和38年5月22日主税局長決裁。乙1。以下「取扱要領」という。)及び東京都主税局資産税部長通達「平成9規準年度に係る準備事務の具体的処理について」(6主資評第101号,以下「資産税部長通達」という。)等に基づき土地の評価を行っている。 本件各土地の平成9年度の価格決定の根拠となっている平成7年度の標準宅地の価格は,これが基準地となってはいるが角地であって,その周辺地域は中間画地が標準となる地域であるから,これを標準宅地に選定したことは,評価基準,取扱要領及び資産税部長通達のいずれにも反する。 (2) 標準宅地の選定に誤りがなかったとしても,その評点数の付設は適正なものとは認め難い。すなわち,①角地から中間画地への標準化補正に用いた指標が不当な結果,標準宅地の評点数が高額に付設されている。②重要な取引事例が捨象され,また,採用された事例につき必要な事情補正がされていないなど,標準宅地の鑑定価格は適正な時価を反映していない。③標準宅地を鑑定す ,標準宅地の評点数が高額に付設されている。②重要な取引事例が捨象され,また,採用された事例につき必要な事情補正がされていないなど,標準宅地の鑑定価格は適正な時価を反映していない。③標準宅地を鑑定するに当たり,公示価格を規準した価格を算出しているが,存在しない公示地を引用しており,又は本来基準地価格の決定と同時に算出されるべき価格が鑑定の基礎として用いられている不当がある。 (3) そして,本件では,裁判所が独自に標準宅地を選定し,かつ,その評価を行うことは適切でなく,むしろ本件裁決を取り消して,これらについて控訴人に評価をやり直させることが相当である。 (四) これに対し控訴人が控訴提起し,被控訴人らは附帯控訴を提起して,それぞれ原判決の判断を争った。被控訴人らは,当審では,適正と主張する価格を超える部分の取消(原審主位的請求)のみを求めた。 2 前提となる事実(一) 被控訴人清峰堂は,本件土地1ないし5を,また,被控訴人Aは,本件土地6を所有している。 (二) 東京都港都税事務所長は,平成10年3月31日,東京都知事が平成9年3月31日付けで決定した本件土地1ないし5に対する平成9年度の固定資産税の課税標準となるべき価格を地方税法(平成11年法律第15号による改正前のもの。以下「法」という。)417条の規定に基づき修正し,本件土地1につき7758万1900円,本件土地2につき3億4717万5020円,本件土地3につき1億6018万9080円,本件土地4につき9677万1300円,本件土地5につき1億4626万4360円,本件土地6につき9億0511万2490円として固定資産課税台帳に登録した。 (三) 被控訴人清峰堂は,平成10年2月24日控訴人に対し,本件土地1ないし5の登録価格を不服として審査の申出をしたが,控訴人は,平成10年8 511万2490円として固定資産課税台帳に登録した。 (三) 被控訴人清峰堂は,平成10年2月24日控訴人に対し,本件土地1ないし5の登録価格を不服として審査の申出をしたが,控訴人は,平成10年8月19日,被控訴人清峰堂の審査申出を棄却する決定(以下「本件決定1」という。)をした。 また,被控訴人Aは,同年4月30日,控訴人に対し,本件土地6の登録価格を不服として審査の申出をしたが,控訴人は,同年9月16日被控訴人Aの審査申出に係る土地の平成9年度の価格を8億6017万7830円とし,同被控訴人が適正と主張する価格との差額部分の取消しを求める審査申出を棄却する旨の決定(以下「本件決定2」という。)をした。 3 関係法令の定め関係法令の定め等については,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」のうち,「2 関係法令等の定め」欄に記載のとおりであるからこれを引用するが,本件争点と関連を有する主要な点を再掲すれば以下のとおりである。 (一) 市町村長(以下にいう「市町村長」には,都知事を含む。)は,固定資産の状況及び固定資産税の課税標準である固定資産の価格を明らかにするため,固定資産課税台帳を備えなければならない(法380条1項)。 土地課税台帳には,総務省令で定めるところによって,土地登記簿に登記されている土地について,所有権等の登記名義人の氏名や当該土地の基準年度の価格又は比準価格等を登録しなければならない(同条2項)。 (二) 登録価格の決定に際しての土地の評価については,自治大臣(当時)が評価の基準並びに評価の実施方法及び手続(固定資産評価基準)を定め,告示しなければならないものとされ(法388条1項),昭和38年自治省告示第158号をもって固定資産評価基準(「評価基準」)が告示されている。 市町村長は,評価基準によって土 資産評価基準)を定め,告示しなければならないものとされ(法388条1項),昭和38年自治省告示第158号をもって固定資産評価基準(「評価基準」)が告示されている。 市町村長は,評価基準によって土地の評価をしなければならない(法403条1項)。東京都においては,評価基準に基づき取扱要領(乙1)及び資産税部長通達が策定され,これに基づき土地の評価を行っている。 (三) 評価基準等が定める宅地の評価方法は以下のとおりである。 (1) 地目の現況が宅地である場合の土地の評価は,各筆の宅地について評点数を付設し,当該評点数を評点1点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の評価額を求める方法による(第1章第3節一)。 (2) 各筆の評点数は,市町村の宅地の状況に応じ,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,「市街地宅地評価法」によって付設する。市街地宅地評価法による宅地の評点数の付設は,以下のとおり行う(同節二(一))。 ① 標準宅地の選定(同節二(一)2)市町村の宅地を,宅地の利用状況を基準とし,商業地区,住宅地区,工業地区,観光地区等に区分し,当該地区について,街路の状況,公共施設等の接近の状況,家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等からみて,その状況が相当に相違する地域ごとに区分し,当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち,奥行,間口,形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められる標準宅地を選定する。 ② 路線価の付設(同節二(1)3)標準宅地について,売買実例価額から適正な時価を求め,これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し,これに比準して主要な街路以外の街路(以下「その他の街路」という。)の路線価を付設する。 主要な街路について付設する路線価は,当該主要な街路に沿接する標準宅地の単位面積 街路について路線価を付設し,これに比準して主要な街路以外の街路(以下「その他の街路」という。)の路線価を付設する。 主要な街路について付設する路線価は,当該主要な街路に沿接する標準宅地の単位面積当たりの適正な時価に基づいて付設する。標準宅地の適正な時価は,(ア)売買が行われた宅地の売買実例価額について,その内容を検討し,正常と認められない条件がある場合においては,これを修正して,売買宅地の正常価格を求める。(イ) 当該売買宅地と標準宅地の位置,利用上の便等の相違を考慮し,(ア)によって求められた当該売買宅地の正常価格から標準宅地の適正な時価を評定する。(ウ) (イ)によって標準宅地の適正な時価を評定する場合においては,後記の基準宅地との評価の均衡及び標準宅地相互間の均衡を総合的に考慮する方法によって,宅地の売買実例価額から評定するものとする。ただし,この点については,後記のとおり経過措置が定められている。 その他の街路について付設する路線価は,近傍の主要な街路の路線価を基礎とし,主要な街路に沿接する標準宅地とその他の街路に沿接する宅地との間における街路の状況,公共施設等の接近の状況,家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等の相違を総合的に考慮して付設する。 ③ 各筆の宅地の評点数の付設(同節二(1)4)各筆の宅地の評点数は,路線価を基礎とし,画地計算法を適用して,各筆の宅地の評点数を付設するものとする。 (3) 画地計算法各筆の宅地の評点数は,各筆の宅地の立地条件に基づき,路線価を基礎とし,(1)奥行価格補正割合法,(2)側方路線影響加算法,(3)二方路線影響加算法,(4)不整形地,無道路地,間口が狭小な宅地算出法の各画地計算法を適用して求めた評点数によって付設するものとする。 その際,各筆の宅地の評点数は,1画地の宅地ごとに 算法,(3)二方路線影響加算法,(4)不整形地,無道路地,間口が狭小な宅地算出法の各画地計算法を適用して求めた評点数によって付設するものとする。 その際,各筆の宅地の評点数は,1画地の宅地ごとに画地計算法を適用して求めるものとし,この場合において1画地は,原則として,土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録された1筆の宅地によるものとするが,1筆の宅地又は隣接する2筆以上の宅地について,その形状,利用状況等からみて,これと一体をなしていると認められる部分に区分し,又はこれらをあわせる必要がある場合においては,その一体をなしている部分の宅地ごとに1画地とする。 (4) 評点1点当たりの価額の決定及び提示平均価額の算定評点1点当たりの価額は,自治大臣又は都道府県知事(東京都特別区にあっては自治大臣)が算定する宅地の提示平均価額に宅地の総地積を乗じ,これをその付設総評点数で除した額に基づいて市町村長が決定する(第3節三1。本件においては1円。)。 (5) 経過措置① 宅地の評価において,標準宅地の適正な時価を求める場合には,当分の間,基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし,これらの価格の7割を目途として評定するものとする(第12節一)。 ② 平成9年度の評価においては,市町村長は,平成8年1月1日から平成8年7月1日までの間の標準宅地の価格が下落したと認める場合には,第3節及び前記(ア)によって求めた評価額に修正を加えることができるものとする(同節二)。 (四) 上記評価基準等にいう地価公示価格とは,地価公示法に基づき,一般の土地取引の指標として毎年1月1日の時点で評価され,3月下旬頃に公表される価格である。地価公示価格にお ものとする(同節二)。 (四) 上記評価基準等にいう地価公示価格とは,地価公示法に基づき,一般の土地取引の指標として毎年1月1日の時点で評価され,3月下旬頃に公表される価格である。地価公示価格における「正常な価格」とは,土地について自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格であり(同法2条2項),地価公示価格が公表されると,その価格は以下のような効力を有することとなる。 (1) 不動産鑑定士及び不動産鑑定士補は,地価公示の対象区域内の土地について鑑定評価を行う場合,当該土地の正常な価格を求めるに際し,公示価格を規準としなければならない(同法8条)。 (2) 都道府県知事は,地価公示の対象区域内の土地について後記のように国土利用計画法の規定に基づいて基準価格を算定する場合は,公示価格を規準として算定しなければならない(同法16条1項1号,19条2項,24条1項1号)。 (3) 土地基本法16条の公的土地評価の適正化等の規定を踏まえ,土地の相続税評価及び固定資産評価については,公示価格を規準として,その一定割合程度を評価割合として評価が行われる。 (五) 都道府県地価調査価格都道府県地価調査価格とは,国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため,地価公示価格と同様に一般の土地取引の指標に使用される基準地の価格である。 同価格は,毎年7月1日時点の価格で,9月下旬頃に公表される価格である(同法施行令9条,同法施行規則14条)。 基準地価格における正常価格とは,市場性を有する不動産について,合理的な自由市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいい,公示価格を規準として算定しなければならない(同法施行令9条2項,3項)。基準地を具体的に求めるには,国の定めた運用細則に基づいて,できるだけ良好な条 れるであろう市場価値を表示する適正な価格をいい,公示価格を規準として算定しなければならない(同法施行令9条2項,3項)。基準地を具体的に求めるには,国の定めた運用細則に基づいて,できるだけ良好な条件を具備した画地を選定するよう努力し,近隣地域の地域要因を考慮することなどが定められている(同条4項,同法施行規則15条,12条1項)。 4 平成9年度の本件各土地の価格の決定について平成9年度の本件各土地の価格の決定の手法は別紙「本件各土地の評価の経緯」のとおりである。 本件各土地の価格は,後記の標準宅地の時価を前提として,評価基準及び取扱要領に定める手法に従って算出された。 この標準宅地の選定と適正な時価の評定は次のとおり行われた。 本件各土地の所在する地域の標準宅地としては,都道府県地価調査事業における東京都の基準地「港5-2」である港区α1114番の土地(以下「標準宅地1」という。)が選定された(取扱要領第二節第4)。 その適正な地価は,東京都の価格調査基準日である平成8年1月1日時点の価格401万円(同土地の平成7年7月1日時点の東京都地価調査価格480万円に標準化補正として103分の100を乗じ,さらに,平成7年7月1日から平成8年1月1日までの時点修正率マイナス13.9パーセントを乗じた価格)を活用し,その7割程度の価格をもって280万円とした(取扱要領第二節第5)。 同土地の平成7年7月1日時点の東京都地価調査価格480万円は,B不動産鑑定士(以下「B鑑定士」という。)の平成7年地価調査に基づく鑑定評価書(甲6。以下「B鑑定」という。)によるものであるが,その方法は近隣の取引事例5例から比準価格515万円を得た上,公示価格を規準とした価格として,代表標準地港5-34の土地の価格658万円に時点修正89/100,個別修正1 いう。)によるものであるが,その方法は近隣の取引事例5例から比準価格515万円を得た上,公示価格を規準とした価格として,代表標準地港5-34の土地の価格658万円に時点修正89/100,個別修正100/98,地域格差100/133,基準地の個別補正103/100を乗じて482万円を得,これらの結果から480万円と評定したものである。 5 争点及び当事者の主張の要旨は原判決の事実及び理由の「第2 事案の概要」中,「6 争点及び争点に関する当事者の主張」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 審査の決定の一部取消しを求める被控訴人らの請求の適法性について初めに,審査決定の一部取消しを求める請求を不適法とする原審の判断に鑑み,当事者間には争いがないが,その適法性について判断する。 固定資産税の登録価格についての争いは,固定資産評価審査委員会に対する審査の申出と,これを受けてされた審査の決定に対し,法434条に基づき行政事件訴訟を提起することのみが認められ,その余の方法は認められていない。 この行政事件訴訟は,審査の決定(これは裁決としての性質を有するものと解される。)につきその違法性の有無を争うもので,その訴訟物は,審査の決定という1つの評価判断の適否である。しかしながら,固定資産の登録価格についての争いは,通常は価格の大小という数量的な問題に帰着するものであるから,審査の決定の手続的違法が争われるなどの理由から,審査の決定全部の取消しが不可欠である場合は別として,原告が審査の決定に係る価格を争い,自ら適正な時価であるとする価格を提示した上,これを超える部分を棄却した部分の取消しのみを求めている場合は,これにより,審査の決定のうち違法と主張される部分が特定され,かつ,審理の対象である原告の請求に上限が画され るとする価格を提示した上,これを超える部分を棄却した部分の取消しのみを求めている場合は,これにより,審査の決定のうち違法と主張される部分が特定され,かつ,審理の対象である原告の請求に上限が画されたものと解するのが相当である。このように解すると,1つの裁決の評価判断を適法部分と違法部分とに分断するかのような観を呈するが,紛争の中心が価格の適否であり,しかも認定判断の中心が適正な時価そのものであるという上記訴訟形態に鑑みれば,特段の不都合はなく,適正な時価を超えない価格部分に係る審査の決定まで敢えて取り消すべき合理的理由を見いだすことはできないというべきである。 したがって,被控訴人らの請求は適法である。 2 標準宅地1の選定の適否固定資産の登録価格の決定に当たっては,前記のとおり評価基準が定められ,これによって評価すべきものとされており,この基準によって評価された価格は,反証のない限り適正なものと推定されると解されるところ,被控訴人らは,本件においては,標準宅地1の選定につき評価規準が適用されていないと主張する。 前記のとおり,評価基準は,標準宅地の選定に関し,市町村の宅地を商業地区,住宅地区,工業地区,観光地区等に区分し,当該地区についてその状況が相当に相違する地域ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうち,奥行,間口,形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められる標準宅地を選定する旨の定めを置いている。 評価基準の趣旨を受けて,取扱要領(乙1)も,標準宅地の選定に当たっては,主要な街路に沿接する宅地のうちから標準的なものと認められるものを選定するものとし,その際,①代表性,②中庸性,③安定性に留意するものとしているほか,その他の留意点として,原則として,主要な街路のみに接する宅地を選定するものとしている。 そして, られるものを選定するものとし,その際,①代表性,②中庸性,③安定性に留意するものとしているほか,その他の留意点として,原則として,主要な街路のみに接する宅地を選定するものとしている。 そして,資産税部長通達は,主要な街路に沿接する宅地のうち,土地の利用状況,環境,地積,形状等が中庸であるものを標準宅地として選定するものとし,地価公示地点(公示地)又は地価調査地点(基準地)が存する場合には,画地条件,利用用途及びその他の留意事項についての所定の条件を大きく逸脱するものでない限り当該地を標準宅地と選定するものと定め,画地条件として,「奥行価格補正率が1.00であり,他の加算率及び補正率の適用がない宅地を原則として選定するものとする。」と定めた上,「中間画地が標準となる地域だけでなく,角地,二方路線等が標準的である地域もあることから,場合によっては角地,二方路線等を選定することも差し支えない。」としている。この資産税部長通達は,取扱要領を受けてその実施のための作業細則を定めたものとみられるから,上記標準宅地の選定についても評価基準及び取扱要領の趣旨を具体化したものと認められる。 これらを総合すれば,評価基準等は,当該地域において角地が標準的と認められない限り,原則として,角地を標準宅地として選定することは認めていないものと解されるが,他方で,標準宅地として選定された土地が画地条件,利用用途及びその他の留意事項について所定の条件を大きく逸脱するものでない場合については角地等を選定する余地も否定していないといえる。 そこで,標準宅地1が上記所定の条件を大きく逸脱するものでないか否かを検討する。 標準宅地1は,港5-2と称される基準地であり,主要街路としてβ通りに面し,側方路線としてγ通りからβ通りに抜ける道路に面する角地であり,甲16, 件を大きく逸脱するものでないか否かを検討する。 標準宅地1は,港5-2と称される基準地であり,主要街路としてβ通りに面し,側方路線としてγ通りからβ通りに抜ける道路に面する角地であり,甲16,17,28等に添付された地図によれば,その周辺地域は一見すると角地が標準的とは認め難いように見え,むしろ中間画地が数の上では多い地域である。しかしながら,より子細に見ると,周辺地域はγ通りからβ通りに抜ける側方路線が何本もあり,主要街路間の距離が極めて短いため,中間画地に対する角地の割合は相当に高い地域である。この事実は,標準宅地1とβ通りを隔てた反対側(西側)の地域において顕著であり,その地域においては,側方路線がさらに多く通っているため,角地でない土地で標準的な土地を探すのが困難であるといえる程に角地が多くなっている。この点は,この付近一帯が主として,飲食店,ビル,娯楽施設として利用される状況となっており,その営業の便宜の観点から好都合な状況であると推測されるところである。 したがって,標準宅地1を標準宅地に選定したことは,評価基準,取扱要領及び資産税部長通達の原則的な指示に沿うものではないが,当該土地で基準地であること,主要街路であるβ通りに面する両側周辺区域全体の利用状況や道路付けを総合としてみれば,資産税部長通達ひいては評価基準に大きく違反するものとはいえず,少なくとも,画地条件,利用状況その他の留意事項についての所定の条件を大きく逸脱するものとは認め難い。 本件審査の決定(甲1,2)が「主要な街路に地価公示地又は地価調査地(基準地)が存する場合には,別途列挙する規準(条件)を大きく逸脱するものでない限り,当該地を標準宅地として選定すると定められている。」ことを重視した上,「この規準の一つに画地条件として,補正の適用のない中間画地 する場合には,別途列挙する規準(条件)を大きく逸脱するものでない限り,当該地を標準宅地として選定すると定められている。」ことを重視した上,「この規準の一つに画地条件として,補正の適用のない中間画地を原則として選定するというものがあるが,本件標準宅地は,土地の利用状況,環境,地積,形状が状況類似地区内で標準的なものであり,角地であるということのみで標準宅地の要件を大きく逸脱しているとは認め難い。」としている点は,その意味で相当である。 そうだとすれば,標準宅地1の選定自体が適正を欠くとする被控訴人らの主張は理由がないというべきである。 3 標準宅地1の時価評価について(1) 基準地価格の適否について標準宅地1の時価評価については,当該土地が基準地であることから,基準地価格と同一であることを前提として算定されているが,被控訴人らは,この基準地価格自体がその算定の基礎となったB鑑定に誤りがあるため,誤っていると主張する。 (ア) 被控訴人らは,まず,B鑑定におけるδ事例の不採用について非難する。 証拠(甲5,16,17,19,29ないし34)によれば以下の事実が認められる。 標準宅地1との側方路線を挟んで向かい側の土地である港区α1012番ないし1015番の土地が平成6年12月9日に売買されている。同土地は,標準宅地1と同じ角地であるが,売買価格は1㎡当たり379万円であった。同土地には「δ」という著名な料亭があり,長い間公開市場に出されていた有名物件であった。当初,同土地には所有者の同族会社の借地権が設定され,底地の所有権は個人所有とされており,相続に伴って平成5年初め頃から売りに出されたものであるが,双方が一括して売りに出され,全体の売買価格がほぼ決まってから,それを借地権価格と底地権価格とに分け,いずれについても藤新物産株式会 ており,相続に伴って平成5年初め頃から売りに出されたものであるが,双方が一括して売りに出され,全体の売買価格がほぼ決まってから,それを借地権価格と底地権価格とに分け,いずれについても藤新物産株式会社が購入した。 買主から,裁判所に宛てた借地権と底地権が分けられていることで,値引きがされたことはなかった旨の書面(甲34)が提出されている。 B鑑定においては,この取引を取引事例として採用していない。この理由につき,控訴人は,前記取引は,長い間売りに出されていた物件である上,相続による売り急ぎの事情があること,さらには,借地権と底地権が別人に帰属しており,それに伴い株式売買が行われているから正常な取引でないため,取引事例として採用しなかった旨述べ,B鑑定士もその意見書の中で同様の趣旨を述べる(乙19)。 このうち,後者の点については,借地権と底地権とが分かれているのは売り手側の内部的問題であり,買主である藤新物産株式会社の代表取締役は,前記のとおり借地権と底地権とが分かれていることが価格に影響を与えなかった旨述べていることからすれば,価格形成に影響したといえるか否かは疑問であるということができる。しかしながら,前者の点については,甲16によれば,δの土地は平成5年初めころ坪3800万円で売りに出されたが,最終的な売買価格は前記のとおり坪1250万円であったというものであって,2年間で買価格が言値の32.9%(-67.1%)まで値下がりしている。C鑑定は,この言値が時代錯誤か希望含みの高額設定であったという(甲39)が,その根拠は必ずしも明確でなく,相続に伴って売りに出されたことを考えると,むしろ相当な時価に近似したものであったとする方が実態に合致するといえよう。確かに,周辺土地の平成6年から平成9年にかけての下落率がかなりのもので,50%近 続に伴って売りに出されたことを考えると,むしろ相当な時価に近似したものであったとする方が実態に合致するといえよう。確かに,周辺土地の平成6年から平成9年にかけての下落率がかなりのもので,50%近いものもあった(乙21,22の各1,2)。しかし,上記事例の3分の2もの下落はやはり異常というべきであって,このような取引事例には,長い間売りに出されていた相続による売り急ぎの事情があるとしてこれを採用しなかったB鑑定は相当である。 (イ) また,被控訴人らは,B鑑定において取引事例の1つとなった大村商事買取物件の評価の誤りを主張する。 証拠(甲16,25)によれば,以下の事実が認められる。 標準宅地1の至近の土地であるα1112番の土地が,平成6年12月12日に売買されており,この売買は,B鑑定において事例aとして,C鑑定において事例Ⅱとして用いられている。同土地の買主である大村商事株式会社は,パチンコ店の営業のため,隣地をかなり前から入手し,難航の末明渡しを得ていたが,豊栄土地開発が破産し,急遽売買の話が持ちかけられた。大村商事は,自ら積極的に交渉を進め,坪1000万円から1300万円程度であろうとの情報を得ていたが,パチンコ店の間口を広げることが出来るとの足もとを見られたためか,総額4億1000万円(坪約2046万円,620万1785円/㎡)で契約を成立させられた。 その交渉の過程では,破産管財人の弁護士は値下げは難しいとして破産会社を説得しないで,直接交渉を元営業担当者に任せ,担当者もまた1年以上交渉に応じなかった。ようやく交渉が開始された後,大村商事側は高いとは思いつつ3億5000万円(坪約1747万円,525万5000円/㎡)の買値を示した。にもかかわらず,売主の担当者はこれに応じないばかりか,他の買い受け希望者の存在をほのめかす 大村商事側は高いとは思いつつ3億5000万円(坪約1747万円,525万5000円/㎡)の買値を示した。にもかかわらず,売主の担当者はこれに応じないばかりか,他の買い受け希望者の存在をほのめかすなどしたため,大村商事側から4億円の申出をして,ほぼ交渉がまとまった。しかし,決済日直前に至って1000万円上乗せさせられ,最終決着をみた。 この事例につき,B鑑定は,何らの事情補正をせず,正常価格と判断しているが,この判断について意見書(乙19)において,売主が破産し売り急ぎの事情があり,他方,隣地売買の取引であることから買い進み事情が認められ,その両事情を相殺したものである旨説明している。確かに,売主が破産し,隣地所有者の強い買受け希望があるとなれば,この判断は一般的にはおかしくはない。しかし,上記の交渉過程からすると,売主が破産したことは実際には売り急ぎの事情として作用しておらず,この経緯を詳しく聴取していれば,土地取得を希望していた買い進みの事例として減価補正を行うべき事例であったと認められる。したがって,この点においてB鑑定は妥当性を欠くものといわざるを得ない。 そうだとすれば,B鑑定において比準価格を算出するに当たっては,この取引事例aを採用すべきではなかったというほかなく,それにもかかわらずB鑑定では取引事例aを重視して比準価格を算定している。したがって,B鑑定における比準価格は適正を欠くというべきことになる。 そこで,取引事例aを除いた場合,B鑑定のその他の取引事例につきこれを排斥すべき理由は本件全証拠によっても認めることができないから,取引事例bないしeに基づいて考えるべきことになるが,その場合,最低の価格がcの1㎡当たり496万円であるから,比準価格はこの価格を下回ることはないと認めることができる。 (ウ) 次に,公示価 ら,取引事例bないしeに基づいて考えるべきことになるが,その場合,最低の価格がcの1㎡当たり496万円であるから,比準価格はこの価格を下回ることはないと認めることができる。 (ウ) 次に,公示価格を規準した価格についてみてみる。 B鑑定は,標準地である標準宅地1を鑑定するに当たり,公示価格を規準した価格を算出しているが,その標準地を「港5-34」,公示価格を685万円と記載し,時点修正,地域格差修正等を行い対象基準地の価格を482万円とした。 しかしながら,平成7年の公示地価の標準地に港5-34という地点は存在せず,公示価格685万円の地点も存在しない(甲18)。この点は,明らかなB鑑定士の誤りである。甲20によれば,本来,規準すべきだった公示地の港5-7と平成7年7月1日における調査で基準地とされた港5-34が同一地点であり,同基準地の平成7年7月1日時点の基準地価格が685万円であったことが認められる。すなわち,本来,制度上基準地港5-2の価格の評定と同時に行われるべき基準地港5-34の評定価格が前者の価格の鑑定の基礎として用いられたという奇妙な現象が起きたことになる。 この点について,B鑑定士は,その意見書(乙19)の中で,仮に公示地港5-7の価格である770万円を用いても,ほぼ同額の480万円との価格が算出される旨を述べ,前記の価格が適切である旨主張する。しかし,甲6と乙19の計算過程を比較すると,街路,環境,行政的といった地域格差による補正の内容は,先にした鑑定における数値に大きな変更を加えているから,これによる価格算定の妥当性を基礎づけるものとはいえず,結論に適合させるよう数値調整をしたものではないかとの疑念を払拭できない。 ちなみに,甲6で用いた各補正値をそのまま適用して,公示地港5-7の公示価格770万円に基づき を基礎づけるものとはいえず,結論に適合させるよう数値調整をしたものではないかとの疑念を払拭できない。 ちなみに,甲6で用いた各補正値をそのまま適用して,公示地港5-7の公示価格770万円に基づき規準すると,対象基準地(標準宅地1)は,541万円と試算され,480万円を大きく上回る。 このような現象が起きた原因を考えるに,おそらくB鑑定士は,鑑定に当たり,公示地港5-7すなわち基準地港5-34の基準地価格を既に把握していたため,770万円の公示地価格より低く評定された規準地価格である685万円を用いたものと推測して間違いないであろう。本来の公示価格を規準した価格ではないという問題はあるが,基準地でもある公示地の公示価格と誤って基準地価格を用いてしまったものであって,標準宅地1の基準価格はいうまでもなくその分低くなっているはずである。したがって,本来の価格より低い価格を規準したことにつき,被控訴人らに不服を申し立てる利益を認める必要はないと解されるので,このことのみをもって,B鑑定を排斥する理由があるとはいい難い。 (2) 被控訴人らの主張価格について被控訴人らは,甲16,19,23,24,28等のC作成の鑑定書,意見書等(以下「C鑑定」という。)を提出し,標準宅地1につき,取引事例との比準から価格300万円を試算し,B鑑定は誤りであって,上記価格に基づき試算された本件各土地の価格が適正であると主張している。C鑑定では,公示地や基準地の価格が適正な時価を大幅に超えていることは公知の事実であるとの前提から,通常の不動産鑑定評価の手法のうち,最重要視される公示地価格規準の手法(乙28,29など)は当初から排除されている。 そして,事例ⅠないしⅢの標準宅地1の近傍の実際の取引価格から,主として取引事例比較法を用いて標準宅地1の価格を300 要視される公示地価格規準の手法(乙28,29など)は当初から排除されている。 そして,事例ⅠないしⅢの標準宅地1の近傍の実際の取引価格から,主として取引事例比較法を用いて標準宅地1の価格を300万円と評価している。 しかしながら,事例Ⅰは前記δの事例であり,事例Ⅱは前記大村商事買取事例であり,事例Ⅲは,価格時点である平成7年7月1日より後の売買事例で,逆の時点補正を施したものである。事例Ⅰの採否については前記のとおり問題があり,事例Ⅱについては,買い進み事案と認められること前記のとおりであり,いずれも異常な取引ともいうべきものであって,これらを規準すべき取引事例として採用すべきではない。C鑑定では,事例Ⅱについて,その事情補正を0.65として採用しているが,採用するにしてもその率は過大に過ぎるのではないかとの問題がある。前記経緯によれば,買主の提示価格は若干高いとしながら3億5000万円までは了承した価格であり,契約成立は4億1000万円であるから,事情補正は0.15ないしこれを若干上回る率を超える部分については根拠が薄弱であるといえる。C鑑定人は,甲39で,この点につき,いかにパチンコ店の営業にとって間口が重要かを述べ,さらに,上記を超える買い進みもあり得た事案であるというが,その当否は性質上検証できない。また,事例Ⅲについては230万円で妥当な取引価格の事例とされるが,人通りや繁華性が劣る事例であって,比較対象地としての適性には疑問が残る。 そうすると,C鑑定は,採り上げた取引事例がいずれも的確なものとはいえないにもかかわらず,公示地価格や規準地価格が適正な時価を大幅に超えることを前提として,不十分な事例から価格を算定したものといわざるを得ず,その価格が適正なものと認められないばかりでなく,B鑑定の信用性を失わせるものでもない 価格や規準地価格が適正な時価を大幅に超えることを前提として,不十分な事例から価格を算定したものといわざるを得ず,その価格が適正なものと認められないばかりでなく,B鑑定の信用性を失わせるものでもないというほかはない。 (3) 半年分の下落の無視について被控訴人らは,賦課期日が平成9年1月1日であるのに,平成8年7月1日から平成9年1月1日までの間の価格下落を無視し,平成8年7月1日までの時点修正を行って価格決定を行っているが,法は,賦課期日における目的不動産の適正時価を課税標準としているのであるから,平成9年1月1日までの時点修正を行って評価をすべきであると主張する。 しかしながら,法は,388条1項の評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないと定め,固定資産の評価が適正で,かつ,全国的に各市町村相互間で均衡がとれたものであることが必要であるため,評価基準では,市町村すべての土地を同一の基準で評価し,この評価について都道府県及び市町村の評価の均衡を図る制度を設けている。すなわち,自治大臣は指示平均価額の算定を通して市町村間の均衡を図るための調整を行い,その調整を終えた上,同法は,固定資産の価格を2月末日までに決定しなければならないとされている。 これを受けて平成9年度の評価替え(土地)における暫定措置は,平成8年1月1日を価格調査基準日とし,平成8年7月1日までの時点修正をするものとしている(評価基準第12節経過措置第2項)。 また,当該基準年度の賦課期日当日の価格に基づいて課税しなければならないとすると,固定資産の価格を2月末日までに決定しなければならないという時間的制約から,暫定的に定めた価格に基づいて課税を行わざるを得ないこととなり,後に賦課期日時点の地価を再評価して価格の修正を行い,その増減額について賦課決定 末日までに決定しなければならないという時間的制約から,暫定的に定めた価格に基づいて課税を行わざるを得ないこととなり,後に賦課期日時点の地価を再評価して価格の修正を行い,その増減額について賦課決定を行う必要が出てこよう。それは,膨大な数のすべての課税・徴税事務に2度手間を要することを意味するが,同法がこうした事務作業を予定していないことは,価格決定時期や縦覧時期についての規定からも明らかである。 以上によれば,法は,同法が定める「賦課期日における価格」として,基準年度の賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点を価格調査基準日とし,その時点の価格を「賦課期日における価格」とみなすことまで禁止しているということはできない。 さらに,固定資産税評価においては,前記のとおり平成8年1月1日時点の価格に7割を乗じ,かつ,同年7月1日までの時点修正率を乗じているのであるから,仮に本件土地の固定資産評価額が平成9年1月1日時点の「適正な時価」を超えないことを要するとしても,各固定資産税評価額は「適正な時価」の範囲内にあるというべきである(なお,乙21,22の各1,2によれば,本件各土地周辺の公示地価格の平成8年7月1日から9年1月1日までの地価下落率は30パーセントを超えていないと認められる。)。 (4) 以上検討したところによれば,B鑑定では,比準価格が適正価格を超えており,公示地価格を規準した価格が逆に低いものとなっているが,これらの瑕疵は,上記時価評価額が上記価格を下回ることの根拠とはなり得ず,また,C鑑定も前述のとおり,上記時価評価を覆し得るものではない。したがって,本件における標準宅地1の時価評価は,1㎡当たり480万円を下回らないものと認めることができる。 4 角地補正の方法について前記のとおり,標準宅地1の周辺地域は 覆し得るものではない。したがって,本件における標準宅地1の時価評価は,1㎡当たり480万円を下回らないものと認めることができる。 4 角地補正の方法について前記のとおり,標準宅地1の周辺地域は,特にβ通りの東側が全体としては中間画地が数の上では標準的な地域であると判断される。標準宅地1は角地であるから,その価格に基づいて主要な街路の路線価を付設するに当たっては,標準化補正としてその角地の価格を中間画地の価格に補正することが必要となる。この補正は,画地計算法に基づき角地である宅地の評点を付設するに当たって側方路線影響加算を行う作業の逆の作業であり,いわば側方路線影響加算に係る価格を除去する作業となる。そうであるとすると,この標準化補正に当たっては,取扱要領の定める側方路線影響加算率を用いた結果と大きく異なることは許されないと考えられる。特に,標準地の適正価格は,路線価の付設を通じ,周辺地域の各土地の評価に直接影響を及ぼすものであるから,その補正は側方路線の影響を厳格に控除するようなものでなければならない。 このような見地から標準化補正の適否をみるに,控訴人は,前記のとおり,角地である本件土地2ないし5の評点付設に当たり,側方路線影響加算率として0.08を用いているから,同じ地域に属する標準宅地1についてもこの率が妥当するものと考えられる。この率を前提として標準宅地1についての標準化補正率103分の100が適切であるためには,側方路線の路線価が主要街路(正面路線)のそれに比べて8分の3程度でなければならないこととなるが,双方の路線の状況からしてこれほどの価格差があるとは認め難い(前記各地図によると,標準宅地1の側方道路は主要街路と殆ど同じ幅員を持ち,甲16によれば,6メートル対7.5メートルと認められる。また,最寄り駅からの通り道と てこれほどの価格差があるとは認め難い(前記各地図によると,標準宅地1の側方道路は主要街路と殆ど同じ幅員を持ち,甲16によれば,6メートル対7.5メートルと認められる。また,最寄り駅からの通り道として側方路線の利用頻度が高いことも推認される。)。現に,前記のとおり標準宅地1の側方路線価よりも価格が低いと認められる本件土地2ないし5の側方路線ですら,主要街路(正面路線)に対して78.5パーセント(198万/252万)の価格であるとされており,当裁判所に顕著な東京国税局作成の「平成九年分・財産評価基準書・路線価図」による路線価においては,標準宅地1の正面路線と側方路線の価格比は2620対2100となっていることからすると,標準宅地1の標準化補正に当たって少なくとも106分の100程度の率を乗じるべきであったと考えられる(その計算根拠は別紙「角地補正の計算書」のとおり。被控訴人らは少なくとも10%の補正を要すると主張するが,特段の根拠がなく,採用できない。)。実際に行われた補正は不十分で,同宅地に付された評点数は過大であったといわざるを得ない。 そこで,この適正な標準化補正を行うと,標準宅地1の価格調査基準日の補正後の価格が389万円となり,その7割の272万円をもって適正な時価とすべきことになる。 5 被控訴人らは,次のとおり比準表の格差率に誤りがあると主張する。すなわち,比準表では,主要な街路と本件各土地の正面街路との価格形成要因の差異を東京都土地価格比準表に基づいて格差率に置き換え,この格差率を主要な街路の路線価に乗じて本件各土地の正面街路の路線価を付設することとされているが,例えば,標準宅地1の前面道路の幅員は8.04メートルないし8.30メートルであり,本件土地1の土地の前面道路の幅員は6.45メートルに過ぎないのに,街路条件の 路線価を付設することとされているが,例えば,標準宅地1の前面道路の幅員は8.04メートルないし8.30メートルであり,本件土地1の土地の前面道路の幅員は6.45メートルに過ぎないのに,街路条件の格差を1%に過ぎない99%とし,また,標準宅地1の容積率は490%,本件土地1の容積率は392%でその格差は80%であるのに,行政的条件の格差を6%に過ぎない94%としているなど,街路条件,交通,接近条件,環境条件,行政的条件についての比準表の格差率には多くの誤りがあると主張する。 しかしながら,実際の街路条件や容積率の単純な格差がそのまま格差率に反映するとする前提は採用できない。東京都では,評価基準に従った路線価の設定及び各種格差に基づく補正率を採用しており(取扱要領),これに従った処理は,公平の観点からも具体的妥当性の見地からも是認され,これらの補正率や格差による処理そのものをもって違法とすることはできない。 6 本件各土地の価格について以上のとおりであるから,平成9年度の標準地の適正な価格は,東京都の価格調査基準日である平成8年1月1日時点の価格401万円(同土地の平成7年7月1日時点の東京都地価調査価格480万円に標準化補正として103分の100を乗じ,さらに,平成7年7月1日から平成8年1月1日までの時点修正率マイナス13.9パーセントを乗じた価格)の7割程度の価格をもって280万円とされたが,前示のとおり,標準宅地1の標準化補正においては100/106を乗じるべきであるから,平成8年1月1日時点の適正な価格は389万となり,その7割程度の価格は272万円となる(上位3桁採用)ので,この価格を基準とすべきである。 この正しい標準宅地1の価格を前提として,別紙「本件各土地の評価の経緯」にこれを代入すると,別紙「土地価格表」のとおり の価格は272万円となる(上位3桁採用)ので,この価格を基準とすべきである。 この正しい標準宅地1の価格を前提として,別紙「本件各土地の評価の経緯」にこれを代入すると,別紙「土地価格表」のとおりとなる。 したがって,この価格を超える部分の審査の申出を棄却した控訴人の審査の決定は違法というべきである。 7 時期に遅れた攻撃防御方法について被控訴人らは,控訴人の準備書面や証拠(乙第26号証ないし第31号証など)が時期に遅れた攻撃防御方法に当たる旨を主張し,弁論の全趣旨によれば,被控訴人らの指摘するとおり,控訴人が再三にわたり,準備書面及び書証の提出期限を遅延したことが窺えるが,この点について控訴人に故意又は重過失があったとまでは認められないから,却下すべき攻撃防御方法であるとまではいえない。 第4 結語よって,被控訴人らの請求は本判決認容の限度で理由があるが,その余は理由がない。これと異なる原判決を主文のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 なお,原審において主位的請求は却下され,当審においては附帯控訴とともにこの請求のみが維持されているが,この請求につき当審において実体判断をすることは当事者双方が希望したところである。 東京高等裁判所第12民事部裁判長裁判官相良朋紀裁判官三代川俊一郎裁判官上田卓哉
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