平成23年11月10日判決言渡平成21年(行ウ)第466号遺族補償給付不支給処分取消等請求事件 主文 1 三田労働基準監督署長が平成19年1月16日付けで原告に対してした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,原告が,長男のP1が平成▲年▲月▲日に自宅で「心停止〈心臓性突然死〉」により死亡したのは業務上の事由に起因するものであるとして,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく遺族補償給付を請求(以下「本件労災申請」という。)したところ,三田労働基準監督署長が不支給とする旨の決定(以下「本件不支給決定」という。)をしたことから,その取消しを求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下「前記前提事実」という。)(1) 当事者等ア原告は,P1(昭和▲年▲月▲日生)の母である。 イ(ア) P1は,昭和61年3月,P2大学大学院P3学科修士過程を終了し,同年4月1日,P4株式会社に入社した(乙6・1頁)。 入社後,P1は,1年3か月間,医薬品開発のモニタリング業務及び開発企画業務を担当し,次いでP5支店において,1年3か月間,医療情報担当者として外勤を経験した後,開発部の支店駐在モニターとして,2年6か月間,モニタリング業務に従事した。そして,本社勤務となり開発企画業務を11か月間担当し,次いでモニター対象を中心とした臨床開発 当者として外勤を経験した後,開発部の支店駐在モニターとして,2年6か月間,モニタリング業務に従事した。そして,本社勤務となり開発企画業務を11か月間担当し,次いでモニター対象を中心とした臨床開発部所属社員への研修企画,実施業務を1年4か月間担当した。 平成10年10月1日,P1は,本社臨床開発本部に異動し,臨床開発における臨床試験のプロジェクト業務に従事するようになった。そして,平成11年10月1日,本社臨床開発本部臨床開発部に異動し,上記臨床試験のプロジェクト業務の責任者であるアソシエートクリニカルマネジャー代行となり,次いで平成12年4月1日,本社研究開発本部臨床研究センター臨床開発部に異動するとともに,アソシエートクリニカルマネジャー(以下「ACM」という。)に就任した(乙5・184頁,乙6・2頁)。 (イ) P1は,ACMとして上記臨床開発における臨床試験のプロジェクト業務に従事中の平成▲年▲月▲日,東京都杉並区の自宅において,「心停止〈心臓性突然死〉」(以下「本件疾病」という。)により死亡した。死亡推定時刻は同日午前4時ころである(乙5・118頁以下。)。 なお,上記P1死亡当時,P4株式会社の社名は,「P6株式会社」に変更されていた。 ウ P6株式会社の概要(P1死亡当時)は以下のとおりである(乙20・6頁)。 なおP6株式会社は,平成18年1月1日,社名をP7株式会社(以下前身であるP4株式会社,P6株式会社を含め「本件会社」という。)に変更している。 (ア) 事業開始平成12年1月1日(イ) 事業内容医薬品の輸出入・製造・研究開発,販売,医療機関への医薬情報提供・収集その他(ウ) 本社所在地東京都港区<以下略> (イ) 事業内容医薬品の輸出入・製造・研究開発,販売,医療機関への医薬情報提供・収集その他(ウ) 本社所在地東京都港区<以下略>(エ) 資本金 126億6220万円(オ) 従業員数約2500名(カ) 支店・営業所全国に11支店,80営業所(2) 本件不支給決定及びこれに対する行政機関の不服審査(以下「本件不支給決定等」という。)の経緯・内容厚生労働省労働基準局長は,平成13年11月16日付け脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(以下「専門検討会報告書」という。乙1)を踏まえ,平成13年12月12日付けで,下記の脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。以下「脳・心臓疾患」という。)の認定基準(基発第1063号。以下「認定基準」という。乙2)を定めた。 本件疾病は,上記のとおり,「心停止〈心臓性突然死〉」であって,上記認定基準の「対象疾病」(乙1・19頁参照)に該当するところ,本件不支給決定等は,以下のとおり,上記認定基準に依拠し,いずれも原告の本件労災給付申請を斥けている。 ア原告は,P1死亡から約5年間が経過した平成18年10月3日,本件疾病は本件会社(P6社)における長期にわたる過密な労働が原因で発症したものであるとして,本件会社を所属事業所として,三田労働基準監督署長に対し,本件労災申請を行った(甲3)。 イ三田労働基準監督署長は,本件疾病は業務に起因することの明らかな疾病とは認められないとして,平成19年1月16日付けで,本件不支給決定をした(甲4)。 原告は,本件不支給決定を不服として,同年3月13日,東京労働者災 害補 起因することの明らかな疾病とは認められないとして,平成19年1月16日付けで,本件不支給決定をした(甲4)。 原告は,本件不支給決定を不服として,同年3月13日,東京労働者災 害補償保険審査官に対し,審査請求をしたが(甲5),同審査官は,本件会社におけるP1の業務にはこれに関連する異常な出来事,短期間の加重業務,長期間の加重業務のいずれも認められず,本件疾病は業務上の事由によるものと判断することはできないとして,平成20年1月9日付けで,同審査請求を棄却する旨の決定をした(甲6)。 ちなみに上記審査官が認定した,本件疾病発症前6か月間におけるP1の月平均時間外労働時間は「64時間22分」である(甲6)。 ウ原告は,上記決定を不服として,同年3月5日,労働保険審査会に対し,再審査請求をしたが(甲7),同審査会も,上記審査官の判断を是認し,平成21年3月18日付けで,同再審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲8)。 ちなみに上記審査会が認定した,本件疾病発症前6か月間におけるP1の月平均時間外労働時間は「57時間19分」である(甲8)。 エ原告は,同年9月19日,本件不支給決定の取消しを求め,本件取消訴訟を提起した。 3 争点P1の本件疾病の発症及びそれによる死亡は,労災保険法1条にいう「業務上の事由」によるものであるか。 4 争点に関する当事者の主張【原告の主張】(1) 業務起因性の判断について労災補償保険は,労働者の業務上の負傷,疾病,障害又は死亡(以下「死亡等」という。)に対して支給されるものであり,労働者の死亡等が「業務上の事由」によるものであるというためには,これまでの最高裁判決等から抽出された下記の3要素を総合考慮の上,当該労働者の業 下「死亡等」という。)に対して支給されるものであり,労働者の死亡等が「業務上の事由」によるものであるというためには,これまでの最高裁判決等から抽出された下記の3要素を総合考慮の上,当該労働者の業務と死亡等の結果の発生との間に相当因果関係が認められることが必要である。 ① 被災労働者に素因又は基礎疾患があり,これが増悪して発症した場合,被災労働者の素因又は基礎疾患が当該業務に従事する以前に確たる発症因子がなくても自然経過により発症する寸前にまで進行していたとは認められないこと(要素①)② 被災労働者が従事した当該業務が同人の素因又は基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させる要因となり得るものと認められること(要素②)③ 被災労働者の従事した当該業務以外に同人の素因又は基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させる要因となる確たる発症因子が認められないこと(要素③)(2) 本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症原因についてア本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)は,虚血性心疾患を原因として発症したものである。 イこの虚血性心疾患は,ストレスが大きな原因となっていることは医学的にも確立された知見である。すなわち長期的な慢性ストレスは血行の状態を悪化させ,急性心筋梗塞のみならず,慢性冠動脈疾患とも関連していることが指摘されており,特に短時間睡眠では脳・心臓疾患の事故発生率は有意に高い。また10時間以上の長時間労働は高血圧の発症に対して独立した負の要因となるのであって,心筋梗塞発症者の1回の連続勤務時間が10.9時間であるとする知見も存在するほか,11時間を超える労働時間では急性心筋梗塞のリスクが増加することが知られており,こうした長時間労働に加え,接待が多いことも冠動脈病変に関する労働関連の要因とし 9時間であるとする知見も存在するほか,11時間を超える労働時間では急性心筋梗塞のリスクが増加することが知られており,こうした長時間労働に加え,接待が多いことも冠動脈病変に関する労働関連の要因として指摘されている。 (3) P1の労働実態(1)-P1の業務の量的な過重性ア本件疾病の発症前6か月におけるP1の時間外労働時間数について本件疾病の発症前6か月におけるP1の時間外労働時間は,「フレックスタイム勤務予定・勤務状況報告書」に記載の始業・終業時刻に加え,労 働実態からの合理的な推認を可能にする,P1の勤務場所が入居しているビルの退館記録,タクシー利用の際の領収書控え,パソコン履歴等に基づき認定するのが相当であるところ,かかる認定指針に基づきP1の時間外労働時間を認定すると,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」に記載の時間外労働時間が認められるべきであり,これによると,①拘束時間数,②時間外労働時間数,③発症前2か月間ないし6か月間の平均時間外労働時間は,以下のとおりである。 記 拘束時間時間外労働時間発症前 1か月307時間50分107時間50分発症日を起点として算定される月平均時間外労働時間2か月279時間29分72時間50分2か月平均90時間20分3か月228時間41分50時間11分3か月平均76時間57分4か月 255時間10分 73時間40分4か月平均76時間07分5か月 316時間06分 125時間06分5か月平均85時間55分 57分4か月 255時間10分 73時間40分4か月平均76時間07分5か月 316時間06分 125時間06分5か月平均85時間55分 6か月 260時間17分 81時間17分6か月平均85時間09分(註)上記発症前1か月とは「平成13年9月12日から同年10月11日」,同発症前2か月とは「平成13年8月13日から同年9月11日」,同発症前3か前とは「平成13年7月14日から同年8月12日」,同発症前4か月とは「平成13年6月14日から同年7月13日」,同発症前5か月とは「平成13年5月15日から同年6月13日」,同発症前6か月とは「平成13年4月15日から同年5月14日」をいう。 なお上記労働時間の認定上争いのある始業・終業時刻及び休憩時間に関する原告の主張(要旨)は,後記「第3 当裁判所の判断」の3(3)イ(イ)の説示において要約摘示した。 イ P1の慢性的長時間労働とその常態化としての深夜労働(ア) 以上によるとP1の本件疾病の発症前6か月における時間外労働時 間は,少なくとも合計510時間54分,平均で1か月85時間に及んでいた。特に上記発症前1か月は107時間50分,更に平成13年5月15日から同年6月13日までの期間に至っては1か月125時間06分もの特に過重な長時間労働に従事していたものであって,こうした長時間労働がP1に慢性的な疲労の蓄積となったことは明らかである。 しかも,P1の業務態様の特徴としてテレカンファレンスやビデオカンファレンスが実施されるときには午前0時を超えて就労せざるを得ないことが多く,その就労は,これらの会議が終了してからも深夜 しかも,P1の業務態様の特徴としてテレカンファレンスやビデオカンファレンスが実施されるときには午前0時を超えて就労せざるを得ないことが多く,その就労は,これらの会議が終了してからも深夜午前2時まで及ぶことが常態となっていたばかりか,業務の性質上,医師等に対する接待も非常に多かった。このような深夜に及ぶ労働は,睡眠の質を低下させ,疲労の回復を妨げるものであるし,接待は神経をすり減らす情動ストレスとなって循環器疾患に悪影響を及ぼすものであるから,こうした長時間労働と深夜労働及び接待が重なったことが,P1の循環器系に多大な負担となり,本件疾病の発症につながったものである。 (イ) 加えて,本件会社におけるP1の業務は,出張の多い業務であった。 P1は,学会への出席,各種会合,研究会への出席等で頻繁に出張を行っており,そのため早朝から勤務を開始することもあった。またP1は,平成13年4月にロンドンに出張しているほか,P8学会,P9学会,P10学会,P11学会,P12学会等への出張があり,これらに出席して研究者と交流をもったり,情報交換をしたり,自社のアピールを行うことが重要な職責とされていた。こうした出張は,その過程全般が使用者の支配下にあり,その出張業務の遂行に当然付随する出張時の移動時間も労働時間に含まれることはいうまでもない。 ウ本件疾病の発症直前におけるP1の長時間労働(ア) P1は,平成▲年▲月▲日に本件疾病の発症により死亡したが,その日は,新薬の検討会議において案を発表することが予定されていた。 そのため前日の同月▲日,P1は,午前9時45分から午後11時36分まで業務に従事した(争いなし)。休憩時間を1時間としても12時間51分の長時間労働である。また,その前日の同月▲日 れていた。 そのため前日の同月▲日,P1は,午前9時45分から午後11時36分まで業務に従事した(争いなし)。休憩時間を1時間としても12時間51分の長時間労働である。また,その前日の同月▲日も,午前8時から翌日の零時9分まで業務に従事した(争いなし)。休憩時間を1時間としても,実に15時間9分の超長時間労働である。更にその前日である同月9日も,午前9時15分から翌日の午前零時16分まで業務に従事していた(争いなし)。休憩時間を1時間としても,実に14時間1分の超長時間労働である。 (イ) このように,当事者間に争いのない本件疾病の発症前3日間の労働時間だけをみても平均して1日14時間に及んでおり,これを3日間連続して翌日に本件疾病により急死しているのであるから,かかる長時間,深夜労働が睡眠不足による血圧の上昇を招き,虚血性心疾患を引き起こしたものとみるべきである。 なお同月8日については,P1は,自宅において,パソコンを使用して,資料や議事録等の文書を作成しており,この作業に加え,上記のとおり翌9日の午前2時45分まで従事していたのであるから,P1が,上記3日間の前日にも就労していたことは明らかである。 (4) P1の労働実態(2)-P1の業務の質的な過重性ア本件会社におけるP1の業務は,以下のような就労状況の下で行われていた。 (ア) P1は,平成12年4月に新しく開発される糖尿病治療薬のプロジェクトリーダーに任命されたが,糖尿病領域の開発を担当したのは,これが初めてであった。 (イ) P1は,HMR1964及びHMR4006の二つのプロジェクトチームの責任者(ACM)を任されていた。これらのプロジェクトは,本件会社における開発最前線のプロジェクトとして多額の開発費用が投 (イ) P1は,HMR1964及びHMR4006の二つのプロジェクトチームの責任者(ACM)を任されていた。これらのプロジェクトは,本件会社における開発最前線のプロジェクトとして多額の開発費用が投 入されており,失敗が許されない状況にあった。またP1は,HOE901の開発にも関与していた。 (ウ) HMR1964の開発は,治験届が締め切り3か月前という最も多忙な時期にさしかかっており,治験薬のデザイン決定や施設の選定に難航していた。 他方,HMR4006は,P13社との共同開発であったが,その対応が原因で,HMR1964との共同開発に困難を来していた。 また,平成13年5月にHMR4006の開発段階において,治験者が死亡するという事故があり,P1は,そのことに強いショックを受けていた。 (エ) 本件疾病を発症した時期は,これから行われる臨床試験に際して,心身ともに緊張を強いられる,多忙な時期であった。にもかかわらず平成13年7月31日にHMR4006プロジェクトにおける人員が2名削減され,担当者がP1一人になったばかりか,発症1か月前には上司が異動し,プロジェクトの内容を把握していない上司への説明等を求められるなど業務量が増加した。 (オ) 平成13年3月24日,P1に対し,第三者から業務に関する脅迫電話があり,同人には,これが著しい心理的な負荷としてのしかかった。 イ以上の各就労状況が,P1の業務の質的な過重性を高めたことは明らかである。 (5) 結論ア以上を前提にすると,本件疾病の発症は,以下のとおり,上記(1)で述べた①ないし③要素を全て満たしている。 (ア) 要素①P1の血圧値は正常範囲内であり,その他にも治療を要する循環器系の病気に疾患していた のとおり,上記(1)で述べた①ないし③要素を全て満たしている。 (ア) 要素①P1の血圧値は正常範囲内であり,その他にも治療を要する循環器系の病気に疾患していた事実はない。本件疾病の発症に近接する健康診断 でも心電図検査等で異常は認められなかったのである。したがって,P1の素因又は基礎疾患が,その業務に従事する以前に,確たる発症因子がなくても,自然経過により発症する寸前まで進行していたとは認められない。 (イ) 要素②P1は,ACMとして臨床試験のプロジェクト責任者に就任してから,未経験の代謝系(糖尿病)のプロジェクト等を重複して担当し,多数回にわたる会議や出張をこなしてきた。 複数のプロジェクトを同時並行で進行させなければならず,そもそも業務量が多かったのである。P1は,このような業務量が多い中,平日には深夜にわたる長時間労働に従事し,公休日にも出勤しており,年次有給休暇もほとんど取得できなかった。 しかもP1は,本件疾病の発症前1か月は100時間を超える法定時間外労働に,また発症前2か月は90時間を超える法定時間外労働に,更に発症前3か月ないし6か月は80時間前後の法定時間外労働に従事しており,このように量的及び質的に過重な労働が,ストレスを持続させ,これによりP1の血圧を上昇させ,あるいは自律神経機能を低下させ,基礎疾患としての虚血性心疾患を増悪させる原因となったことは明らかである。 したがって,P1の業務が,同人の素因又は基礎疾患を超えて増悪させる要因となり得るものであったことは明らかである。 (ウ) 要素③東京都監察医務院剖検記録によると「死因に直結するような病変・中毒及び損傷所見は認められない」ものとされ,し 増悪させる要因となり得るものであったことは明らかである。 (ウ) 要素③東京都監察医務院剖検記録によると「死因に直結するような病変・中毒及び損傷所見は認められない」ものとされ,しかもP1が,本件会社の業務以外に明らかな負荷要因や事件・事故などの異常な出来事に遭遇した事実は認められず,当該業務と本件疾病の発症との間の因果関係を中 断すべき事情も見当たらない。 したがって,本件においてはP1が従事していた業務以外に同人の素因又は基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させる要因となる確たる発症因子は存在しない。 イ以上によると,P1の業務と本件疾病の発症との間には相当因果関係が認められ,したがって,本件疾病の業務起因性を否定した本件不支給決定は違法であるから,速やかに取り消されるべきである。 【被告の主張】(1) 業務起因性の判断についてア労災補償保険は,労働者の業務上の死亡等に対して支給されるものであり,労働者の死亡等が「業務上の事由」によるものであるというためには,当該労働者が当該業務に従事しなければ死亡等の結果は生じなかったという条件関係に加えて,両者の間に法的にみて労災補償を認めるのを相当とする関係(相当因果関係)があることを要する。 労災補償制度は,労働者が従属的労働契約に基づいて使用者の支配管理下にあることから,労務を提供する過程において,業務に内在する危険が現実化して死亡等が引き起こされた場合には,使用者は,当該死亡等の発症,発生について過失がなくても,その危険を負担し,労働者の損失補償に当たるべきであるとする危険責任の考え方に基づくものである。したがって,上記の相当因果関係が肯定されるためには,当該死亡等の結果が,当該業務に内在する危険の現実化と認 険を負担し,労働者の損失補償に当たるべきであるとする危険責任の考え方に基づくものである。したがって,上記の相当因果関係が肯定されるためには,当該死亡等の結果が,当該業務に内在する危険の現実化と認められることが必要である。以上のことは,脳・心臓疾患の場合にも当てはまるものである。 脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる動脈硬化等による血管病変又は動脈瘤,心筋変性等の基礎的病態(以下「血管病変等」という。)が主に加齢,食生活,生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等の個人に内在する要因によって徐々に進行し,増悪するといった自然経過をたどって発 症するものであって,一般人にも普遍的に数多く発症するものであり,業務は血管病変等の形成に当たり直接の要因とはならないものである。そのため,脳・心臓疾患について上記の相当因果関係が認められるには,①当該業務による負荷が,当該労働者と同程度の年齢,経験等を有し,通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者にとって,血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められ(危険性の要件),② 当該業務による負荷が,その他の業務外の要因(当該労働者の喫煙,高血圧等の個人的な危険因子,先天的な素因,私生活上の身体的,精神的負荷等)に比して相対的に有力な原因となって,当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること(現実化の要件)が必要である。 イ危険性の要件の判断基準(ア) 危険性の要件は,業務による負荷がどの程度のものであれば使用者の危険責任を認めるに相応しい業務の危険性を肯定できるかという問題である。そして,脳・心臓疾患に関する専門家が最新の医学的知見に基づき取りまとめた脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書によれば,危険 を認めるに相応しい業務の危険性を肯定できるかという問題である。そして,脳・心臓疾患に関する専門家が最新の医学的知見に基づき取りまとめた脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書によれば,危険性の要件が認められるには,① 発症直前から前日までの間において,発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(異常な出来事),② 発症に近接した時期において,特に過重な業務に就労したこと(短期間の過重業務),③ 発症前の長期間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務),以上三つのいずれかが認められることが必要とされる。 a 「異常な出来事」とは,(a)極度の緊張,興奮,恐怖,驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常事態,(b)緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常事態, (c)急激で著しい作業環境の変化のいずれかをいう。異常な出来事と発症との関連性については,通常,負荷を受けてから24時間以内に症状が出現するとされているので,発症直前から前日までの間を評価期間とし,その間に上記の異常な出来事の存在が認められるかどうかを判断する。 b 「短期間の過重業務」については,発症前概ね1週間において,日常業務(通常の所定労働時間内の所定業務内容)に比較して特に過重な身体的,精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいう。 具体的な負荷要因としては,(a)労働時間,(b)不規則な勤務,(c)拘束時間の長い勤務,(d)出張の多い業務,(e)交替制勤務,深夜勤務,(f)作業環境(温度環境,騒音,時差),(g)精神的緊張を伴う業務などを考慮する。短期間の過重業務と発症との関連性を時間的にみると,発症に近いほど影響が強く 多い業務,(e)交替制勤務,深夜勤務,(f)作業環境(温度環境,騒音,時差),(g)精神的緊張を伴う業務などを考慮する。短期間の過重業務と発症との関連性を時間的にみると,発症に近いほど影響が強く,発症から遡るほど関連性は希薄になるとされているので,まず,発症直前から前日までの業務が特に過重かどうかを判断し,それが認められない場合は,発症前概ね1週間の業務が過重であるかどうかを判断する。 c 「長時間の過重業務」については,恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には疲労の蓄積が生じ,これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,その結果,脳・心臓疾患を発症させることがあるので,発症前の一定期間の就労実態等を考慮し,発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断する。発症前の長期間とは,発症前概ね6か月間をいい,その間に著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に従事したかどうかを,業務量,業務内容,作業環境等を考慮し,同僚等にとっても,特に過重な身体的,精神的負荷と認められるかどうかという観点から,客観的かつ総合的に判断する。発症前概ね6か月よりも前の業務につ いては,疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり,付加的要因として考慮する。 (イ) 業務の過重性の具体的な評価に当たっては,疲労の蓄積の観点から,労働時間のほかに,上記(ア)bの(b)~(g)の要素を十分に検討し,特に労働時間については,発症日を起点として1か月単位の連続した期間を見て,発症前1か月ないし6か月にわたって,1か月当たり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合には,業務と発症との関連性が弱いが,概ね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると にわたって,1か月当たり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合には,業務と発症との関連性が弱いが,概ね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること,発症前1か月間に概ね100時間又は発症前2か月ないし6か月間にわたって1か月当たり概ね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断する。 (2) 本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症原因について平成13年11月2日付け発行の東京都監察医務医P14医師が作成した死体検案書及び東京労働局労災医員P15医師作成の平成18年12月20日付けの意見書によると本件疾病の原因となった傷病名は「心停止〈心臓性突然死〉」である。 ところでP1の健康診断における血圧値は,平成11年10月25日の健康診断における血圧値は正常範囲ではあるが,それ以前の健康診断における血圧値は高く,少なくとも3年間高血圧状態が継続していた。 また,平成7年1月19日の健康診断では,「洞性不整脈」,平成8年1月17日の健康診断では,「心室内ブロック」,平成10年12月2日の健康診断では,「高中性脂肪血症の疑」と各々指摘されるなど,心臓疾患の症状やリスクファクターを複数有していた。 上記の事実に加えて,脳・心臓疾患の私的リスクファクター(性・年齢・家族歴・高血圧等)の相対リスクないしオッズ比は概して業務のそれより高 いこと,リスクファクターが重複するとその危険度は単に相加的に増えるのではなく,相互に関連してその作用はさらに強化されるものであることからすれば,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)発症の原因(いわゆる基礎疾患等)は,上記高血圧や高中性脂肪血症などのリスクファクターにより生じた血管 関連してその作用はさらに強化されるものであることからすれば,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)発症の原因(いわゆる基礎疾患等)は,上記高血圧や高中性脂肪血症などのリスクファクターにより生じた血管病変等の増悪にあるものと認められる。 (3) P1の労働実態(1)-P1の業務の量的な過重性ア本件疾病の発症前6か月におけるP1の時間外労働時間数について本件疾病の発症前6か月におけるP1の時間外労働時間は,「フレックスタイム勤務予定・勤務状況報告書」に記載の始業・終業時刻を中心に,退館台帳の転記,国内旅費交通費等精算書及び海外旅費交通費等精算書等に基づき認定するのが相当であるところ,かかる認定指針に基づきP1の時間外労働時間を認定すると,別紙2「被告主張に係る労働時間認定一覧表」に記載(なお,この一覧表においては仮にP1のパソコン・メール(甲89)及びパソコン・ファイル(甲90の1・2)の記載に労働時間の認定資料としての価値を承認した場合に認定されるべき時間外労働時間を記載した。)の時間外労働時間が認められるべきであり,これによると,①拘束時間数,②時間外労働時間数,③発症前2か月間ないし6か月間の平均時間外労働時間は,以下のとおりである。 記 拘束時間時間外労働時間発症前 1か月236時間52分41時間52分発症日を起点として算定される月平均時間外労働時間2か月221時間01分47時間28分2か月平均44時間40分3か月208時間11分29時間20分3か月平均39時間33分4か月 249時間41 間01分47時間28分2か月平均44時間40分3か月208時間11分29時間20分3か月平均39時間33分4か月 249時間41分 67時間41分4か月平均46時間35分 5か月 307時間29分 108時間29分5か月平均58時間58分 6か月 190時間04分 36時間32分6か月平均55時間13分なお,上記労働時間の認定上争いのある始業・終業時刻及び休憩時間に関する被告の主張は,その要旨を後記「第3 当裁判所の判断」の3(3)イ(イ)の説示において要約摘示した。 イ P1は,本件疾病の発症直前から前日までの間に業務に関する異常な出来事に遭遇していないことP1は,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症により平成▲年▲月▲日午前4時ころ死亡したものと推定される。したがって,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)による死亡当日は,本件会社に出社しておらず,当然のことながら業務に関する異常な出来事に遭遇した事実はない。 また,本件疾病の発症前日である▲月▲日,P1は,当時の通常の出勤時刻である午前9時45分に出勤したものと推認される。そして,同日午後11時36分に退社し(乙第5号証154ページ),その後「P16」に寄り,タクシーで帰宅した。P1の手帳の同日欄には,「午後1時15分→午後3時まで防災訓練説明会,午後3時→午後4時までP17先生,午後4時からP18さん」との記載があるにとどまり,同日も,P1は,業務に関して突発的な異常な出来事に遭遇したとは認められない。 以上によると本件疾病の発症直前から前日までの間に,P1は,発 生,午後4時からP18さん」との記載があるにとどまり,同日も,P1は,業務に関して突発的な異常な出来事に遭遇したとは認められない。 以上によると本件疾病の発症直前から前日までの間に,P1は,発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る業務に関する異常な出来事に遭遇したとはいえない。 ウ P1が短期間の過重な業務に従事していないこと本件発症前概ね1週間のP1の労働時間は,別紙2「被告主張に係る労働時間認定一覧表」に記載のとおりであって,この間の時間外労働時間数は9時間46分である。また,本件疾病発症前概ね1週間の間において3日間の連続した休日を取得している。 したがって,P1は,短期間の過重業務に従事したとはいえない。 エ P1が長期間の過重な業務に就労していないこと本件疾病の発症前1か月間の時間外労働時間数は,別紙2「被告主張に係る労働時間認定一覧表」に記載のとおりであって,この間の時間外労働時間数は41時間52分であるから,業務と発症との関連性が強いと評価することが可能な発症前1か月間の時間外労働時間数(概ね100時間)を超えるものとは認められず,また,発症前2か月ないし6か月における1か月当たりの平均時間外労働時間数は,38時間47分ないし58時間17分であることから,業務と発症との関連性が強いと評価できる発症前2か月間ないし6か月間の時間外労働時間数(1か月当たり概ね80時間)をも超えていない。 加えて,P1は,発症5か月前(5月15日から6月13日)以外は概ね週2日の休暇を取得し,本件疾病発症1か月前の9月5日ないし9月9日の間には5日間連続して休日を取得し,ゴールデンウイークには8日間の休暇を取得している。 したがって,P1は,長期間の過重業務に就労したとはいえない。 月前の9月5日ないし9月9日の間には5日間連続して休日を取得し,ゴールデンウイークには8日間の休暇を取得している。 したがって,P1は,長期間の過重業務に就労したとはいえない。 (4) P1の労働実態(2)-P1の業務の質的な過重性ア本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)発症時におけるP1の就労状況は以下のとおりである。 (ア) P1は,本件疾病を発症した当時,本件会社の臨床開発企画第二部に所属し,糖尿病治療薬のHMR4006及びHMR1964の2つの新薬開発のプロジェクトチームにACMとして参画していた。ACMは,臨床試験に係る実行部隊の責任者である。このACMの主な役割は,新薬開発に関する,親会社のプロジェクトマネジャー及びクリニカルマネジャーとの協議,各種会議への参加,CDPの作成,予算の立案・管理,リソース計画立案と管理,本社の他部門との調整,治験薬概要書の全体の整合性の確認,申請概要に関連する全般,対照薬に関する交渉及び入 手,対当局とのプロジェクトベースの交渉,専門家との全般的協議などを行うことである。P1が従事していた2つの新薬開発にかかるプロジェクトの業務配分はHMR1964が9割,HMR4006が1割であった。 (イ) HMR1964は,糖尿病治療薬で,超速効型インスリンアナログ(遺伝子組換え)製剤(注射剤)である。平成12年9月にJPTが立ち上げられ,臨床チームが結成された。当初の臨床チームのACMは別人であったが,平成13年4月,P1がACMに就任した。 平成13年8月8日時点のHMR1964の臨床チームの参画者は,ACMのP1のほか,7名であった。 新薬の開発作業のうち,臨床チームとして最も忙しくなるのは,臨床試験の前後であるところ,P1が本件疾病を発症した当時 点のHMR1964の臨床チームの参画者は,ACMのP1のほか,7名であった。 新薬の開発作業のうち,臨床チームとして最も忙しくなるのは,臨床試験の前後であるところ,P1が本件疾病を発症した当時は,HMR1964の安全性に関して,まだ,計画書や治験届を提出できる段階まで作業が進んでおらず,臨床試験ができる状態に至っていなかった。このHMR1964の臨床試験は平成15年秋から始まったため,臨床チームが業務多忙となり始めたのは,P1が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)により死亡した後の平成14年頃からであった(ウ) HMR4006は,P13製薬と共同開発する糖尿病治療薬で,経肺吸入型のインスリン(遺伝子組み換え)製剤である。開発の期間は,平成11年7月から平成18年1月の間で,P1は,平成11年10月に臨床チームに参画し,ACM代行に就任した。P1が死亡した平成▲年▲月当時,臨床チームの参画者は,ACMのP1だけとなっていたが,これはHMR4006の臨床試験が,当初,日本でも実施される予定だったところ,結果的に日本で実施することが難しくなったためである。 イその他,P1の就労状況として以下の諸点を指摘することができる。 (ア) P1は,上記のとおり,平成11年10月にHMR4006のAC M代行に就任している。P1が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)により死亡した平成▲年▲月の時点では,P1は,既に糖尿病治療薬の開発に従事して少なくとも2年は経過していたのであり,糖尿病治療薬の開発に初めて従事したものではない。 (イ) 臨床チームの責任者として複数の新薬プロジェクトに参画することは通常あり得ることで,場合によっては3つのプロジェクトに参画している者もいるほどである。P1の糖尿病 ない。 (イ) 臨床チームの責任者として複数の新薬プロジェクトに参画することは通常あり得ることで,場合によっては3つのプロジェクトに参画している者もいるほどである。P1の糖尿病治療薬の業務配分は,上記のとおり,HMR1964は9割,HMR4006は1割であり,またHOE901には殆ど関与していなかったのであるから,新薬のプロジェクトへの複数参画により業務の過重負荷が生じていたとはいえない。 (ウ) 新薬開発の日本における責任者はジャパンプロジェクトチーム(JPM)であり,新薬開発における失敗が仮にあった場合,その責任を負うのは,そのリーダーであるジャパンプロジェクトマネジャー(JPM)であった。ACMの主な役割は,臨床試験にかかるCDP作成,予算の立案・管理,リソースの計画立案・管理などのマネージメント業務だったのであり,P1は,治験者の生命や健康に直接関わることはなく,責任は重いものではなかった。 (エ) P1の本件疾病発症前6か月における比較的遠距離の出張としては,平成13年4月15日から18日まで京都で開催されたP19学会への出席,同年5月7日から12日までのロンドンへの出張,同年7月5日から6日まで那須で開催されたPR全体会議への出席,同年7月26日から27日まで福岡で開催された九州臨床薬理関連施設説明会への出席,同年8月9日から10日まで郡山にあるP20病院への出張,同年8月29日に福岡のP21クリニックへの出張がある。しかし頻度からいうと月に1回程度であるから,出張の多い業務とはいえない。 (オ) HMR4006は,当初は日本でも臨床試験を実施する予定であっ たが,上記の時点では,日本では臨床実験を実施しないことになっていた。 したがって,平成13年5月にHMR4006の開発段階において, R4006は,当初は日本でも臨床試験を実施する予定であっ たが,上記の時点では,日本では臨床実験を実施しないことになっていた。 したがって,平成13年5月にHMR4006の開発段階において,治験者が死亡し,これによりP1に強い心理的負荷が生じたというような事実はない。 なお部下のP22は,「P1氏の自宅の留守番電話に脅迫電話が入っていたことは,P1氏から聞いた記憶がありますが,」と述べているところ,P1に脅迫電話があったことは認められるものの,その脅迫電話の内容は不明であって,仮にそうした電話があったとしても,直ちに業務に関連する脅迫電話であったとはいえない。 ウ以上によるとP1の業務は,質的にも過重な業務であったとはいえない。 (5) 結論以上によると本件会社におけるP1の業務は,量的にはもとより,質的にも過重負荷を生じさせるようなものではない。一方,P1には業務以外の要因であるところのリスクファクターが複数かつ相当の長期にわたって存在していた。そうするとP1は,内在するリスクファクターの影響により,血管病変等が自然経過の中で増悪し,遂に本件疾病を発症するに至ったものと考えるのが相当であり,P1の業務と本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症との間には相当因果関係は認められない。 したがって,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)によるP1の死亡は「業務上の事由」によるものとは認められず,本件疾病につき業務起因性を否定した本件不支給決定は適法である。 よって,原告の本件請求は理由がなく,速やかに棄却されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 業務起因性の判断基準労災保険法に基づく保険給付は,労基法の定める使用者の災害補償責任を担 保するための制度 は理由がなく,速やかに棄却されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 業務起因性の判断基準労災保険法に基づく保険給付は,労基法の定める使用者の災害補償責任を担 保するための制度であり,労働者の業務上の疾病等について行われるものであること(労災保険法7条1項1号),災害補償制度が,業務又はその遂行行為(以下これを一括して「業務等」という。)に内在又は随伴する各種の危険が現実化して労働者に疾病等の結果がもたらされた場合には,使用者に過失がなくとも,その危険を負担して損失の補てんに当たるべきであるとする危険責任の法理に基づくものであることからすれば,労働者の疾病等を業務上のものと認めるには,当該疾病等の結果発生と業務等との間に条件関係があるだけではなく,当該疾病等が業務等に内在又は随伴する危険が原因となって発生したという相当因果関係があることが必要であると解するのが相当である。 これを本件についてみると,前記前提事実(1)イ(イ)のとおり,P1は本件疾病を発症し,これにより死亡するに至っているので,本件疾病がP1の従事した業務等に内在又は随伴する危険が現実化したものと評価できるかどうかを検討することになる。 2 本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症原因について(1) 本件疾病が「心停止〈心臓性突然死〉」であることについては,当事者間に争いがない。もっとも,平成13年11月2日付け発行のP14医師が作成した死体検案書によるとP1の直接死因は「原因不明の突然死」であるとされるところ,原告は,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症原因(基礎疾患)について「虚血性心疾患」であると主張するのに対し,被告は,「血管病変等」と主張するにとどまる。 そこで以下本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となっ 性突然死〉)の発症原因(基礎疾患)について「虚血性心疾患」であると主張するのに対し,被告は,「血管病変等」と主張するにとどまる。 そこで以下本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となった基礎疾患について検討する。 (2) 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると以下の事実が認められる(以下「認定事実1」という。)。 ア心臓の解剖と生理[乙1・34頁以下。なお後記(ウ)bにつき南山堂医学大辞典第19版2236頁(公知の事実)参照] (ア) 心臓のあらましと構造心臓は,血液を循環させるためのポンプの役割を担っている臓器である。成人男性の心臓重量は300グラム(体重1キログラム当たり6グラムが正常心の上限値)とされる。心臓は,心外膜,心筋層,心内膜の3層からなる中空の筋性器官であって,それぞれ左右2つの心房と心室に分かれている。 心房は基本的には血液が戻ってくる場所であり,右心房には上下の大静脈から全身の酸素濃度の低い静脈血が入り,左心房には左右の肺静脈から酸素が豊富になった血液が入ってくる。そして,このように心房に入ってきた血液は,心房に続く厚い筋肉でできた心室に入る。この心室こそが心臓のポンプに当たる部分であって,右心室からは肺動脈を経て肺臓に,また,左心室からは大動脈を経て全身に血液が送り込まれる。 (イ) 心臓に分布する血管(冠循環)心臓は,一生の間,一刻も休むことなく収縮と拡張を繰り返す運動を続ける臓器である。特に全身に血液を送り出す左心室には動脈が密に分布しているが,この心臓に酸素と栄養等を送る動脈を冠状動脈という。 冠状動脈は,心臓の表面を包み込むように枝を出しながら,心外膜下組織内を表在性に走行し,表在枝に対してほぼ直角に分枝する多数の枝を心筋 の心臓に酸素と栄養等を送る動脈を冠状動脈という。 冠状動脈は,心臓の表面を包み込むように枝を出しながら,心外膜下組織内を表在性に走行し,表在枝に対してほぼ直角に分枝する多数の枝を心筋層内に送り込む。心室,特に左心室を栄養する冠状動脈の枝は極めて密に分布するが,個々の枝は,末梢の領域で他の動脈枝と吻合・交通することはなく,直ちに毛細血管と連なる。 この毛細血管と連なる動脈を終動脈といい,この動脈が血栓などで閉塞すると,バイパスからの血液供給が途絶え,終動脈により栄養を補給されていた領域の組織は壊死する。かかる病変を梗塞といい,これが心筋に生起したものが後述する心筋梗塞である。この心筋梗塞は,心室,特に左心室によく発生する。他方,心房の分布する動脈は,心室に比較 して著しく粗にしか分布していないが,動脈枝相互間の吻合・交通が良く発達し,バイパスもよく発達しているため,心房に梗塞が発生することはほとんどない。 (ウ) 刺激伝導系とブロックa 刺激伝導系の概要心臓の活動を制御するシステムには二つある。一つは自律神経を介するもので,交感神経がアクセルとして,また副交感神経がブレーキとして作用する。もう一つのシステムは,刺激伝導系と呼ばれるもので,この刺激伝導系によって,心筋は,脳からの神経支配を受けずに自動的に収縮する。すなわち,この刺激伝導系は,以下のとおり,心筋収縮の調和と同調を引き起こす刺激(インパルス)を生じ,かつ,それを伝導する特殊な機能を担う心筋組織から構成されている。 (a) 洞結節(洞房結節)上大静脈閉口部と右心房の境界部に存在する特殊な心筋細胞の小集団で,他の特殊心筋細胞の集団よりも早く刺激(インパルス)を生じ,心拍数を決定する。そのためペース (a) 洞結節(洞房結節)上大静脈閉口部と右心房の境界部に存在する特殊な心筋細胞の小集団で,他の特殊心筋細胞の集団よりも早く刺激(インパルス)を生じ,心拍数を決定する。そのためペースメーカー(歩調取り)とも呼ばれる。 (b) 房室結節心房と心室との間にある特殊な心筋細胞の小集団で,右房室弁近くの心房中隔の壁に位置しており,心房の刺激は,この房室結節を介してのみ心室に伝わる。 (c) ヒス束→左右の脚→プルキンエ線維→心室筋房室結節から起始する特殊な心筋細胞束で,心房と心室を区分けする線維組織を横切り,心室中隔の膜様部の中を通り,心室中隔の上方に達する。そして,この心室中隔の上方に達したヒス束は左脚と右脚に別れ,それぞれに更に枝分かれして,心内膜下を走り,次 のプルキンエ線維に移行する。 このように正常な刺激伝導は,洞結節で形成された刺激が心房節から房室結節,ヒス束,左脚及び右脚,プルキンエ線維を経て心室筋を順次興奮させる形で行われる。 b 刺激伝導系障害としてのブロック刺激伝導障害(ブロック)とは,この刺激伝導路の解剖学的病変(心筋梗塞,心筋炎,結合組織変性,腫瘍等)や機能的障害(ジギタリス,電解質失調など)による途絶をいい,部位によって洞房ブロック,房間ブロック,房室ブロック,右脚ブロック,左脚ブロック,心室内伝導障害などがあり,程度により3度(完全途絶),2度(不完全途絶),1度(伝導時間の延長)に分類される。 イ心停止の機序[乙1・63頁以下](ア) 心停止とは,心拍出が無となり循環が停止した状態をいう。多くは,心電図上,心室静止,心室細動のいずれかを示す。何らの前兆なしに突然心 イ心停止の機序[乙1・63頁以下](ア) 心停止とは,心拍出が無となり循環が停止した状態をいう。多くは,心電図上,心室静止,心室細動のいずれかを示す。何らの前兆なしに突然心停止を来す場合,救急蘇生が速やかに行われないと突然死に至る。心停止は,一般に蘇生に成功した心停止,心臓に原因のある心臓性突然死及び詳細不明の心停止に分類される。また,一般に突然死の態様は,瞬間死から症状出現24時間以内の死亡まで様々であるが,この突然死のうち心臓に由来するものを「心臓性突然死」という。 (イ) この突然発症する心停止の原因の多くは心室細動,心室静止のほか,電気収縮解離,急性ポンプ失調,心破裂がある。 心室細動とは,心室が不規則で無秩序な電気的興奮を示す状態をいい,梗塞,線維化,変性,肥大などの器質的心筋異常,心筋虚血,電解質異常等の心筋を取り巻く環境の異常を背景に発生する。心室期外収縮を契機に突然発生する場合と持続性心室頻拍から移行する場合がある。前者は,しばしば急性心筋虚血時に見られ,従来の一次性心停 止に分類される。 また心臓は,洞結節から発生した電気的興奮が刺激伝導系を介して,心房,心室へ順次,伝導することにより収縮する。心室に洞結節からの電気的興奮が伝わらない,あるいは下位中枢の補充調律が生じない状態が発生すると心室静止となり突然死する。 その他,心停止の原因としては,電気収縮解離,急性ポンプ失調,心破裂があるが,これらの多くは急性心筋梗塞の合併症として発生する。 (ウ) 心停止の原因となる基礎疾患(なお以下では「心停止の原因(基礎疾患)」と表記することもある。)としては以下のものがある。 a 冠 として発生する。 (ウ) 心停止の原因となる基礎疾患(なお以下では「心停止の原因(基礎疾患)」と表記することもある。)としては以下のものがある。 a 冠状動脈疾患(a) 冠状動脈疾患とは,冠状動脈に病変を持つ疾患の総称であって,必ずしも心筋虚血による症状や心筋虚血の存在が証明されることを条件としていない。しかし心停止の原因となる基礎疾患としては,心筋虚血が存在するもの,すなわち虚血性心疾患が多い。 突然死の剖検例では,約10パーセントが急性心筋梗塞で,40パーセントに陳旧性心筋梗塞が認められたとの報告がある。その意味で心臓性突然死の基礎疾患として最も重要である(なお心室細動や心原性ショックで非常に早期に死亡した例では剖検においても梗塞巣が検出されないことがある。)。 (b) 急性心筋梗塞,不安定狭心症による心臓性突然死は,冠状動脈硬化病変の脂質に富むプラーク(血管内膜の限局性肥厚)破綻と血栓形成という共通の基礎病態から発症し,血管内腔の狭窄度と血流遮断持続時間洞の違いによる虚血の程度差が臨床病型を決定するものとされ,一括して急性冠症候群として扱うのが一般的である。 急性心筋梗塞では,30パーセントが病院に搬送される前に死亡し,その原因としては,持続性心室頻拍・心室細動,房室ブロックや洞停止による心室静止(この心室細動と心室静止による突然死を「不整脈死」という。),電気収縮解離,急性ポンプ失調,心破裂があり,冠状動脈疾患の突然死例のうち死因が確定できたものの51パーセントが不整脈死であったとの報告がある。 陳旧性心筋梗塞も心臓性突然死の危険があり,4~5パーセントが突然死し,その多くは持 疾患の突然死例のうち死因が確定できたものの51パーセントが不整脈死であったとの報告がある。 陳旧性心筋梗塞も心臓性突然死の危険があり,4~5パーセントが突然死し,その多くは持続性心室頻拍,心室細動が原因である。 冠れん縮性狭心症における突然死の頻度は2~16パーセントとされている。 (c) なお,この冠状動脈疾患は複雑な機序で徐々に進行するが,発症と進展に関係する臨床的因子が疫学的研究により明らかにされており,これをリスクファクターといい,既に200を超える因子が明らかにされている。主な因子には,是正不可能なものとして年齢,性別,家族歴が,また是正可能なものとして高脂血症,高血圧,喫煙,糖尿病,肥満,高尿酸血症等がある。このうち高脂血症,高血圧,喫煙は三大リスクファクターとされ,その影響は動脈硬化の病型により異なる。高血圧は細動脈硬化には最大のリスクファクターであるが,粥状硬化症には高脂血症の関与が大きいとされる。 b 心筋症(a) 肥大型心筋症とは,高血圧によらない左室の肥大を主徴とする心筋疾患で,通常肥大は非対称性で心室中隔に強い。この肥大型心筋症における心臓死の50~70パーセントは突然死であるとされ,その原因としては持続性心室頻拍,心室細動が最も多い。 (b) 拡張型心筋症拡張型心筋症とは,左室の拡大と高度収縮低下を主徴とする心筋疾患である。その予後は不良で,5年生存率は35~54パーセントで,その38~64パーセントが突然死であるとされ,その原因の殆どが持続性心室頻拍,心室細動である。 c 心筋炎,その他の心筋疾患(不整脈源性右室心筋症,サルコイドーシス等) が突然死であるとされ,その原因の殆どが持続性心室頻拍,心室細動である。 c 心筋炎,その他の心筋疾患(不整脈源性右室心筋症,サルコイドーシス等)なお突然死の約5パーセントにおいて,病理所見で心筋炎が認められ,その原因としては心室細動などの不整脈が考えられる。 d 原発性不整脈(a) QT 延長症候群QT 延長症候群とは,QT 間隔の延長とそれに伴うトルサード型心室頻拍と呼ばれる特異な多形性心室頻拍の出現を主徴とする症候群であり,その原因から先天性と後天性に分類され,失神発作や時に心停止を生じる。失神発作のある無治療の先天性QT 延長症候群患者は,1年で5~20パーセントが突然死する。 (b) ブルガダ症候群基礎疾患のない心機能正常例の中に突然,心室細動が発生することがあり,これを特発性心室細動と呼ぶが,ブルガダ症候群とは,その特発性心室細動の中で,胸部第1~3誘導の右脚ブロック様波形とST 上昇という特異な心電図所見を特徴とするものをいう。元来日本にはポックリ病と呼ばれる健常人の原因不明の夜間突然死症候群があり,その関連が指摘されている。その原因として,近時,遺伝子異常が報告されているが,ブルガダ型心電図を呈する例がどの程度突然死するかは未だ定かでない。突然死の家族歴を有する例は突然死の高危険群と考えられている。 e ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW)症候群WPW 症候群とは,心房心室間に先天的な異常伝導路(副伝導路)が存在するものをいい,心室早期興奮や上室性頻拍を特徴としており,ハイリスク群では心室細動へ移行し心停止が WPW 症候群とは,心房心室間に先天的な異常伝導路(副伝導路)が存在するものをいい,心室早期興奮や上室性頻拍を特徴としており,ハイリスク群では心室細動へ移行し心停止が発生する。WPW 症候群患者が突然死するリスクは,1年間に0.1パーセント以下とされる。 f その他(a) 徐脈性不整脈房室ブロックの中でも,モービッツⅡ型2度房室ブロック,高度房室ブロック,完全房室ブロックは,心室静止による心停止の可能性があり,特にQRS 幅の広い完全房室ブロックはブロック部位がヒス束以下である可能性が高く,心室補充調律の心拍数は遅く不安定であって,時に心室静止から突然死する。 洞不全症候群は,洞停止時に補充調律が出やすいが,補充調律が出現しない場合に心室静止を来し得る。 (b) その他,弁膜症では,大動脈弁狭窄,大動脈弁閉鎖不全などが突然死を来すことがある。 ウ死亡発覚の経緯及び発見時の状況等[甲23,乙5・179,180頁]P1が死亡した平成▲年▲月▲日は,本件会社内において,午前10時30分からミーティングが予定されていた。にもかかわらずP1は,午後になっても出社して来なかった。P1の部下であるP22は,不審に思い,同日午後3時過ぎ頃,P1の様子を見に自宅居室を訪れ,同日午後3時30分頃,家主の立会の下,応答のないP1の居室内に入室したところ,仰向けの状態(両足は右足を上に組み,左手は頭の上,右手は普通に体の横にあった。)で,既に死亡しているP1を発見した。 エ P1に対する剖検の結果等[乙5・118,119頁,325頁](ア) P1の死亡発見後,荻窪警察署の検死を経て,同月▲日,東京都監 で,既に死亡しているP1を発見した。 エ P1に対する剖検の結果等[乙5・118,119頁,325頁](ア) P1の死亡発見後,荻窪警察署の検死を経て,同月▲日,東京都監察医務院において剖検が行われた(以下「本件剖検」という。)。解剖執刀医は,P14医師である。 同医師が作成した平成13年11月2日付け「死体検案書」(以下「本件死体検案書」という。)には以下の記載がある。 aP1が死亡したとき :「平成▲年▲月▲日午前4時頃」b 直接の死因 :「原因不明の突然死」,c 発病(発症)から死亡までの期間:「急死」d 解剖の主要所見 :下記のとおり「(A) 原因不明の突然死(1) 心刺激伝導系の障害は認められない。 (2) 諸臓器のうっ血やや高度(3) 弱度酩酊状態 (血中アルコール0.07,尿中0.49㎎/ml)(B) その他(1) 胸腺実質わずかに残存,(2) 甲状腺35g,(3) 死因に直結する損傷・病変及び中毒所見は認められない。」e 死因の種類 :「病死及び自然死」(イ) なお上記剖検記録の「計測値」「心臓」欄には,心臓に関連するものとして以下の記載がある。 a 「計測値」欄(a) 身長:167cm 体重:64㎏(b) 心臓:361g冠状動脈狭窄度:左主幹10%,前下行枝10%,回旋枝10%, 右冠動脈10%b 「心臓」欄(a) 弁:大動脈弁 6.5cm肺動脈弁 7.0cm O.K. 僧帽弁軽度 右冠動脈10%b 「心臓」欄(a) 弁:大動脈弁 6.5cm肺動脈弁 7.0cm O.K. 僧帽弁軽度sclerosis三尖弁 (注:硬化)冠動脈(b) 刺激伝導系の障害は?? 左・右いずれも10%内外狭窄オ東京労働局労災医員の意見[乙5・125頁以下,127頁以下]東京労働局労災医員P15医師は,平成18年12月20日付けの「意見書」において,P1の死亡原因について,要旨以下の意見を述べている。 (ア) P1は,剖検されているにもかかわらず死亡原因が特定されておらず東京都監察医務院剖検記録には「成壮年急死症候群か?」という記載も見られる。しかし過去の健康診断記録によると,平成5年10月18日の健康診断の総合判定欄に「洞性不整脈」が「観察」,平成7年1月19日の健康診断の総合判定欄に「心室内ブロック」が「観察」,平成10年1月27日の健康診断の総合判定欄に「高中性脂肪血症の疑い」が「要経過観察」と記載されていることを考慮すると,断定はできないものの傷病名は「心停止〈心臓性突然死〉」と考えられる。 (イ) 本件疾病の発症時期は,本件死体検案書に記載のとおり「平成▲年▲月▲日」であると考えられる。 ちなみに,P1が本件会社において受診した健康診断の結果(なお血圧値は最高値/最低値で記す。なお平成10年12月2日の血圧検査については1回目と2回目を前後に併記する。)は,以下のとおりである。 ① 昭和61年11月28日 :異常なし132/78 日の血圧検査については1回目と2回目を前後に併記する。)は,以下のとおりである。 ① 昭和61年11月28日 :異常なし132/78 *「異常なし」とは「この検査の範囲では異常ありません。」を意味する(以下同じ)。 ② 昭和63年 3月23日 :異常なし112/70③ 平成元年 3月29日 :異常なし122/78④ 平成 3年10月14日 :異常なし129/75⑤ 平成 5年10月18日 :異常なし123/74⑥ 平成 7年 1月19日 :洞性不整脈「観察」 125/72⑦ 平成 8年 1月17日 :心室内ブロック「観察」 147/89*「観察」とは「わずかに異常を認めますが,日常生活に差し支えありません。」を意味する。 ⑧ 平成 9年 1月16日 :異常なし 141/86⑨ 平成10年 1月27日 :異常なし142/84⑩ 平成10年12月 2日 :高中性脂肪血症疑「要経過観察」147/83 日 :高中性脂肪血症疑「要経過観察」147/83141/76*「要経過観察」とは「日常生活に注意を要し,経過の観察を必要とします。」を意味する。 ⑪ 平成11年10月25日 :異常なし128/84(3) 検討上記認定事実1に基づき本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因,すなわちその前提にある基礎疾患の有無及び内容について検討する。 ア上記認定事実1・イ(ウ)に記載のとおり,心停止の原因となる基礎疾患の主なものとして,①冠状動脈疾患,②心筋症(肥大性心筋症,拡張型心筋症),③心筋炎等の心筋疾患,④原発性不整脈(QT 延長症候群,ブルガダ症候群),⑤WPW 症候群,⑥徐脈性不整脈,弁膜症等を挙げることができるところ,本件剖検の結果(上記認定事実1エ)によるとP1の心臓には左心室の肥大,心筋炎等の心筋疾患,弁膜症の存在をうかがわせる徴 候はなく,また,心刺激伝導系の異常も認められないこと,本件疾病の発症の約2年前である平成11年10月25日に行われた健康診断の心電図検査上も胸部第1~3誘導の右脚ブロック様波形とST 上昇,QT 間隔の延長といった異常も現れていないこと(乙5・136頁心電図波形参照)などに照らすと上記各基礎疾患のうち②ないし⑥についてその可能性を全く否定してしまうことはできないが,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となる基礎疾患であったとは考え難い。 イ ①の冠状動脈疾患について検討する。 ここで冠状動脈疾患とは,冠状動脈に病変を 否定してしまうことはできないが,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となる基礎疾患であったとは考え難い。 イ ①の冠状動脈疾患について検討する。 ここで冠状動脈疾患とは,冠状動脈に病変を持つ疾患の総称であるところ,本件剖検の結果によると,P1の心臓の冠状動脈狭窄度は,いずれも10パーセント程度であること,死亡発見時の状況(上記認定事実1のウ)からはP1が死の直前胸部の激痛等に襲われた形跡がうかがわれないことなどの事情からみて,冠状動脈疾患のうち最も突然死する頻度の高い,既往の虚血性心疾患(心筋梗塞,狭心症)が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となる基礎疾患として存在していたとも考え難い。 もっとも,その一方で,本件剖検の結果によると,10パーセント程度とはいえP1の心臓の冠状動脈に狭窄が生じていたことは否定し難い上,大動脈弁等の弁や冠状動脈にも軽度のsclerosis(硬化)が認められたこと,平成8年から10年にかけての健康診断における血圧検査では高血圧症の症状が現れ,また,そのころから洞性不整脈や心室内ブロックが「観察」扱いにされたり,あるいは「高中性脂肪血症」が疑われ「要経過観察」とされていることなどの事情が認められ,これらの事情に併せ考慮するとP1の心臓の冠状動脈には,軽度とはいえ,動脈硬化等の血管病変が生じていたものと推認するのが合理的である。 ウ以上の検討結果を総合すると,本件疾病の原因を確定するのは困難であるが,P1の心臓には,既往の心筋虚血は見られないものの,軽度の冠状 動脈疾患が進行していたと認められることからすれば,かかる冠状動脈疾患が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となるべき基礎疾患を構成していた可能性が高いと考えられる。 3 本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の業務起因性 れることからすれば,かかる冠状動脈疾患が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となるべき基礎疾患を構成していた可能性が高いと考えられる。 3 本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の業務起因性について(1) 本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の業務起因性に関する判断基準ア冠状動脈病変と労働との関係について証拠(甲71・302頁,76,77,乙1・65頁,86頁)及び弁論の全趣旨によると冠状動脈病変と労働との関係について以下の医学的知見が認められる(以下「認定事実2」という。)。 (ア) 冠状動脈疾患は,冠状動脈に病変(以下「冠状動脈病変」という。)を持つ疾患の総称であって,脳・心臓疾患の一つであるところ,この心臓疾患は,主に加齢,食生活,生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等の個人に内在する要因を基礎として(基礎的要因),生体が受ける通常の負荷により,長年の営みの中で,徐々に冠状動脈病変の形成,進行,増悪という自然経過をたどり発症するものであるが,業務による過重な負荷が加わることにより,基礎疾患としての冠状動脈病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し,重篤な心臓疾患に至る場合があることは,今日では医学的にも広く認知されている。 (イ) そして,この業務による過重な負荷としては,発症に近接した時期における業務による過重な負荷のほか,長期間にわたる業務の過重負荷により疲労が蓄積した場合(いわゆる過労)も含まれる。 すなわち,一般に,生体に対して負荷要因が加われば,生体は生理的反応をもって応答する。このような負荷要因は,日常生活を送る上で様々な場面において存在するものであり,業務においても,どのようなものであれ,それを遂行することによって生体機能に一定の変化を生じさせる 応をもって応答する。このような負荷要因は,日常生活を送る上で様々な場面において存在するものであり,業務においても,どのようなものであれ,それを遂行することによって生体機能に一定の変化を生じさせる負荷要因が存在する。この負荷要因によって引き起こされる反応を 一般にストレス反応というが,一般的な日常の業務等により生じるストレス反応は一時的なものであり,休憩・休息,睡眠,その他適切な対処により,生体は元の状態に復する。しかし,恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合,ストレス反応は持続し,かつ,過大となり,ついには回復し難いものとなる。これを一般に「疲労の蓄積」という。 (ウ) このような「疲労の蓄積」が生じた場合,ストレス反応が持続し,内分泌系のみならず自律神経系の反応が生じ,特に交感神経系の強い反応によって髄質からのカテコールアミン(特にアドレナリン)が分泌される。このカテコールアミンの分泌促進により,血圧上昇と心拍数の増加,心筋酸素消費量の増大,あるいは冠れん縮を発生させ,その結果として,狭心症や心筋梗塞が発症し,心室頻拍,心室細動等の致死性不整脈等によって突然死に至ることがある。そして,このような突然死は,狭心症あるいは心筋梗塞の既往を有する症例はもとより,冠状動脈硬化のみを有する症例でも起こり得る病態であるとされ(甲76,77),現に,軽度の冠状動脈狭窄病変から突然のjump-upにより発症する心筋梗塞ではストレス増加が,血栓形成による冠状動脈急性閉塞と関連しているとの研究報告もある(甲71)。 イ本件疾病に関する業務起因性の判断基準(ア) 前記1で指摘したとおり上記業務起因性の有無は,本件疾病がP1の従事した業務に内在又は随伴する危険が現実化したものと評価できる イ本件疾病に関する業務起因性の判断基準(ア) 前記1で指摘したとおり上記業務起因性の有無は,本件疾病がP1の従事した業務に内在又は随伴する危険が現実化したものと評価できるか否かにかかる。 上記認定事実2によれば,心臓疾患は,加齢,食生活,生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等の個人に内在する要因(基礎的要因)により,生体が受ける通常の負荷によって,長年の間に徐々に冠状動脈病変等の形成,進行,増悪という自然経過をたどり発症するのが通常であ るが,業務による過重な負荷が加わると,血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し,重篤な心臓疾患に至る場合があることは,医学的知見として認知されているものと認められ,これは本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)にも妥当する。 そうだとすると,本件疾病のような心臓疾患(負傷に起因する場合を除く。)における業務起因性の有無は,上記医学的知見を基礎とした上,労働者が従事した業務が,客観的にみて,社会通念上,「基礎疾患としての冠状動脈病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,当該心臓疾患の発症に至らせるほどの過重負荷を与えたものと評価できるか否か」という観点より,これを判断するのが相当である。 (イ) そして,この判断基準は,発症に近接した時期における業務による過重な負荷のほか,長期間にわたる業務の過重負荷により疲労が蓄積した場合(いわゆる過労)にも妥当するところ,このうち後者,すなわち業務による疲労の蓄積は,主観的な訴えが中心となる上,業務以外の要因が疲労の蓄積に関与することも少なくないことなどから,業務による疲労自体を定量的かつ客観的に把握することは難しい。そこで,かかる場合の業務の過重性は,過労すなわち睡眠時間の減少に直結す 務以外の要因が疲労の蓄積に関与することも少なくないことなどから,業務による疲労自体を定量的かつ客観的に把握することは難しい。そこで,かかる場合の業務の過重性は,過労すなわち睡眠時間の減少に直結する時間外労働の時間数を第一次的要素としつつ,これに勤務の不規則性,拘束性,交替制勤務,作業環境などの諸要因や,業務に由来する精神的緊張の諸要素を総合考慮することにより,その有無・程度を判断する必要がある(なお乙1・89頁以下)。 以下,上記の各判断要素についてふえんする。 a 第一次的判断要素としての「労働時間」について近年の医学的研究では,長時間労働は,脳血管疾患を始め虚血性心疾患,高血圧,血圧上昇等の心血管系へ影響することが指摘されており,その原因は,主として長時間労働により睡眠が十分取れなくな ることにあるとされている。 一般に,睡眠不足により循環器や交感神経系(交感神経系は,副交感神経系と共に自律神経系の二大系統をなし,両者はほぼ拮抗的な作用を営む。交感神経系は,刺激や恐怖などに対して生体を興奮させる作用が強く,心拍数を増加させたり,血管を収縮させるなどの作用を有する。)の反応性が高まり,脳・心臓疾患の有病率や死亡率を高める。男女とも睡眠時間が1日7~8時間の群が,6時間以下の群及び9時間以上の群に比べ,あらゆる死因を総合した死亡率が最も低いことを示す追跡調査があり,このことは,人にとっては,どのような健康状態においても,1日7~8時間の睡眠が最も健康的であることを示している。 これを労働者についてみると,①1日7.5時間程度の睡眠が確保できる状態とは,1日の労働時間が8時間を超え,2時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,この場合に を示している。 これを労働者についてみると,①1日7.5時間程度の睡眠が確保できる状態とは,1日の労働時間が8時間を超え,2時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,この場合には1か月概ね45時間の時間外労働となる。他方,②1日6時間程度の睡眠が確保できない状態とは,1日の労働時間が8時間を超え,4時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,この場合には1か月概ね80時間を超える時間外労働となる。また,③1日5時間程度の睡眠時間が確保できない状態とは,1日の労働時間が8時間を超え,5時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,この場合には1か月100時間を超える時間外労働となる。 b 労働時間以外の主な要因について(a) 不規則な勤務,出張の多い業務については,これらの要因が存在することと脳・心臓疾患の発症との間に,その程度はともかく,有意な関連性があるとする報告があり,このような就労態様は,具体的業務内容によっては,業務の過重性を評価する上での客観的な 負荷要因の一つとなり得る。 (b) 拘束時間の長い業務の過重性については,拘束時間,実労働時間だけでなく,拘束時間中の業務実態等について十分検討する必要がある。 (c) 交替制勤務,深夜勤務については,交替制勤務が日常業務としてスケジュールどおり実施されている場合又は日常業務が深夜時間帯である場合に受ける負荷は,日常生活で受ける負荷の範囲内のものと考えられるが,勤務シフトの変更が不規則である場合には,疲労の蓄積を生じ得る。 作業環境(温度環境,騒音,時差)については,脳・心臓疾患の発症との関係でその有意性を認める報告があるものの,その関連性は必ずしも強くない。 c なお 疲労の蓄積を生じ得る。 作業環境(温度環境,騒音,時差)については,脳・心臓疾患の発症との関係でその有意性を認める報告があるものの,その関連性は必ずしも強くない。 c なお,上記認定基準における「長期間の過重業務」に関する判断基準は,前記第2の4【被告の主張】(1)イにおいて摘示したとおりである。 (2) 本件会社においてP1が従事した業務の内容等について前記前提事実(1)イによれば,P1は,昭和61年4月1日,本件会社に入社し,本件疾病により死亡するまでの間,本件会社において勤務したことが認められるところ,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件会社におけるP1の就労実態等は以下のとおりのものであったと認められる(以下「認定事実3」という。)。 ア本件会社における原告の労働時間等[乙10・12,15,23頁](ア) 所定労働時間(就業規則44条)始業時刻午前8時45分から終業時刻午後5時30分までの7時間45分ただし,フレックスタイムの適用者のコアタイムは,午前10時30 分から午後3時30分まで。 原告は,フレックスタイムの適用者であった。 (イ) 休憩時間(就業規則44条)正午から午後1時までの1時間。 (ウ) 休日(就業規則61条)土曜日,日曜日,国民の祝日,5月1日,年末年始(12月29日~1月4日),フレキシブル休日(年間2日),その他,会社が特に指定した日。 イ本件会社における新医薬品開発プロジェクト業務とP1の業務内容(ア) 新医薬品開発プロジェクト業務とその手続の概要a 新医薬品開発プロジェクト業務の概要(a) 本件会社は,新薬を開発するに当 (ア) 新医薬品開発プロジェクト業務とその手続の概要a 新医薬品開発プロジェクト業務の概要(a) 本件会社は,新薬を開発するに当たって,新薬ごとに薬事部門,臨床チーム,プロジェクトマネージメント部門,安全性部門などが参画するジャパンプロジェクトチーム(以下「JPT」という。)を立ち上げる(乙8の2・1頁)。 JPTは,JPM(ジャパンプロジェクトマネジャー)をリーダーとして,ACM(アソシエートクリニカルマネジャー),SB(統計・解析担当者),DM(データマネジャー),CMC(AS)(分析研究室),Pre-Clin(LO)(非臨床の代表1名),CDHP(臨床薬理),PE(安全性調査),RSL(薬事センターの代表1名)及びMK(マーケティング)などをコアメンバーとして構成される(乙9・7ないし9頁,乙18)。 (b) 臨床開発部は,通常,臨床チームを編成して,JPTに参画している。この臨床チームは,臨床開発企画第一部(アレルギー・感染症・循環器・神経),臨床開発企画第二部(代謝・内分泌・免疫),臨床開発企画第三部(抗癌剤)及び臨床開発部により構成さ れ,新薬のプロジェクトチームは,新薬の領域を担当する臨床開発企画各部の下に,臨床開発部に所属する職員が割り当てられる(乙5・205頁)。そして,この臨床チームの責任者がACMである(乙8の2・1頁)。 治療薬の開発プロジェクトにおける臨床業務は,具体的には臨床試験をどう組んでいくか,その際,比較対象にどういう薬を使うか,患者の選定をどうするかといったことを様々な角度から検討し,そのために研究者や医師と連絡をとって訪問して意見を聞き,そのための資料を作成したり,ス んでいくか,その際,比較対象にどういう薬を使うか,患者の選定をどうするかといったことを様々な角度から検討し,そのために研究者や医師と連絡をとって訪問して意見を聞き,そのための資料を作成したり,スケジュールの調整を行うことにある(甲85)。 b 新医薬品開発と承認審査までのプロセスと期間(乙7・63ないし65頁)本件会社における新医薬品の開発は,おおまかに5段階に分けて行われる。その後,審査によって承認された医薬品のみが市場に出される。 (a) 研究(医薬品のモトとなる新規物質の発見と創製:期間2から3年)医薬品の開発は,疾患に関連した標的分子を探し,その標的分子に作用する化合物を発見したり,化学的に創出したりすることから始まる。その手法として,天然素材(植物・動物など)からの抽出や,合成・バイオテクノロジーなど,さまざまな科学技術が活用される。 そして,スクリーニング(ふるいわけ)にかけて最適化可能な化合物(リード化合物)を絞り込んだうえ,薬効・薬物動態・毒性プロファイルの優れた候補化合物を見出す作業が行われる。 そして,この作業が終了した時点で「特許出願」が行われる。 (b) 非臨床試験(新規物質の有効性と安全性の研究:期間3から5年)医薬品として可能性のある物質を対象に,有効性(薬効)と安全性(毒性)を詳細に検討するため,動物や培養細胞を用いて非臨床試験が行われ,これには薬効薬理試験,薬物動態試験,副次的薬理試験,安全性薬理試験がある。 また,その物質の薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄の過程)や,品質,安全性に関する試験と製剤化のための研究が行われ,これには一般毒性研究と特殊毒性研究がある。 そして,この非臨床試験が終了した時点で「治験届」が提出され 吸収・分布・代謝・排泄の過程)や,品質,安全性に関する試験と製剤化のための研究が行われ,これには一般毒性研究と特殊毒性研究がある。 そして,この非臨床試験が終了した時点で「治験届」が提出される。 (c) 臨床試験(ヒトを対象とした有効性と安全性のテスト:期間3から7年)臨床試験(治験)では,非臨床試験を通過した物質に対して,ヒトに対して安全性と有効性があるかどうかを調べる。治験は3段階に分かれ,病院などの医療機関で,健康な人や患者を対象に同意を得たうえで実施される。 ① 第Ⅰ相試験(フェーズⅠ):臨床薬理試験少数の健康人(男性志願者)を対象に,副作用等の安全性を中心に薬物動態(吸引,分布,代謝,排泄)が検討される。 ② 第Ⅱ相試験(フェーズⅡ):探索的試験少数の患者を対象に,有効で安全な用法(投与方法,投与回数,投与期間,投与間隔など)や用量(最も効果的な投与量)の検討が行われる。 ③ 第Ⅲ相試験(フェーズⅢ):検証的試験多数の患者を対象に,有効性と安全性について比較対照群(標 準薬群あるいはプラセボ群)との比較を行う。 (d) 承認申請・審査(期間1から2年)製薬企業は,臨床試験で医薬品候補物質の有効性,安全性,品質などが確認されると,医薬品としての承認を得るために「医薬品副作用救済・研究新興調査機構」(現「医薬品医療機器総合機構」。 以下「機構」ないし「KIKO」という。)で審査を受けた上,機構の審査報告書に基づき薬事・食品衛生審議会において専門的見地から評価が行われる。そして医薬品として適当であるとの結論がでれば「承認」が与えられることになる。 (e) PMS:治療的使用医薬品は,発売後に数多くの患者に使用される。その中で て専門的見地から評価が行われる。そして医薬品として適当であるとの結論がでれば「承認」が与えられることになる。 (e) PMS:治療的使用医薬品は,発売後に数多くの患者に使用される。その中で,開発段階,承認審査段階では予測できなかった副作用や効果が現れることがある。 したがって,製造販売承認後にも,副作用などの安全面や使用法のチェックを行うことが製薬企業に対して義務づけられている。 (イ) P1の業務内容前記前提事実(1)イのとおりP1は,本件疾病の発症により死亡した当時,本件会社の研究開発本部臨床研究センターにおいて,臨床開発企画第二部に所属し(乙6・1頁),ACMとして,糖尿病治療薬のHMR4006及びHMR1964の2つの新薬開発のプロジェクトチームに参画していた。 なおP1は,インシュリンアナログ製材であるHOE901の開発プロジェクトチームのメンバーではなかったが,同製剤の開発が先行していたことから,その成果等をHMR1964の開発に際し参考にすることがあった(乙27・11頁)。 また平成13年3月,P1の留守番電話に「あなたのお命もらいま す。」との脅迫電話が入っていたことがあるが,上記各プロジェクト業務との関連は不明である(甲34,乙8の2・4頁)。 aACMの主な役割分担(甲28ないし30,乙5・230,231頁,乙6・1頁)(a) P1が参画していた臨床チームにおけるACMの主な業務は,新薬開発に関する,親会社のプロジェクトマネジャー及びクリニカルマネジャーとの協議,各種会議への参加,CDPの作成,予算の立案・管理,リソース計画立案と管理,本社の他部門との調整,治験薬概要書の全体の整合性の確認,申請概要に関 ジェクトマネジャー及びクリニカルマネジャーとの協議,各種会議への参加,CDPの作成,予算の立案・管理,リソース計画立案と管理,本社の他部門との調整,治験薬概要書の全体の整合性の確認,申請概要に関連する全般,対照薬に関する交渉及び入手,対当局とのプロジェクトベースの交渉,専門家との全般的協議を行うことなどのマネージメント業務であった。 (b) これを受け,P1の平成13年度における業績目標は以下のとおり設定されていた。 ① 共同開発者であるP13社との連携を図り,ClinicalPackage等に関する機構相談を第3四半期に実施する。 ② 共同開発者であるP13社との連携を図り,フェーズⅡ及びⅢに関する機構相談を第4四半期に実施する。 ③ 同年11月までに臨床試験を円滑に推進することができるように治験実施施設の調査を行い、適切な治験実施施設を選定する。 ④ 同年12月までにⅰ 治験実施計画書と同意説明文書を作成し,また、治験薬概要書、症例報告書の作成に協力した上,治験届を提出する。 ⅱ 臨床試験関連のGCP/SOP 文書類及び治験用資材を準備する。 ⅲ P13社との業務分担を明確にし、臨床試験を円滑に推進させる(施設分担、AE 報告の流れ、CRF の流れ)。 bHMR1964開発プロジェクト(a) HMR1964は,糖尿病治療薬である。食事の直前に注射可能な,超速効型インスリンアナログ(遺伝子組換え)製剤(注射剤。 乙5・218頁)であるが,日本での開発は本件会社が○番手であった(乙27・8頁)。 (b) HMR1964の開発については, 注射可能な,超速効型インスリンアナログ(遺伝子組換え)製剤(注射剤。 乙5・218頁)であるが,日本での開発は本件会社が○番手であった(乙27・8頁)。 (b) HMR1964の開発については,平成12年9月,JPTが立ち上げられ,臨床チームが結成された(乙5・218頁)。 平成13年4月,P1は,HMR1964の臨床チームのメンバーとなるとともに,ACMに就任した(乙5・218頁,乙8の2・1,2頁,乙27・3頁)。 (c) P1が平成13年9月5日に作成した「計画表」によれば,HMR1964開発プロジェクトは,下記の業務を同時並行的に遂行することが求められた(甲29,30)。 ⅰ 平成14年1月11日の治験届へ向けたスケジュール① 症例記録案(平成13年10月9日まで),最終案(同月30日まで)② 「プロトコール骨子(概要)」作成(同年10月31日まで)③ 「プロトコール」作成(同年12月28日まで)④ 「同意説明文書・同意書作成」(同年12月28日まで)⑤ QOL(同年12月28日まで)⑥ 患者日誌の作成(同年12月28日まで)ⅱ 機構相談① 機構相談資料として同年10月31日案社内機構コンサルテーション(同年11月5日まで)② 相談内容骨子発表、相談内容骨子等英訳を予定していた。 ⅲ 外部との交渉 ① SRL メディサーチ,② ベルシステム24,③ CRO,④SMO,⑤ 営業との協力・折衝の業務 ⅲ 外部との交渉 ① SRL メディサーチ,② ベルシステム24,③ CRO,④SMO,⑤ 営業との協力・折衝の業務ⅳ 治験薬・提供品の発注関連ⅴ 施設へのモニター,調査関連ⅵ プロトコール検討会(PRCM),社内IRB,治験届等の社内手続ⅶ 全体会議,アドバイザリー会議セッティング等(d) 通常,この臨床チームが最も忙しくなるのは,臨床試験(治験)が開始される前後である。 P1が死亡した平成▲年▲月当時,平成14年1月11日までにHMR1964の治験届(案)を作成することが予定されていた。 そのためP1と部下のP22は,HMR1964の治験実施計画書を作成する前提で,そのドラフト等を作成し,アドバイザーからの助言を受けつつ(甲97の5),治験デザインをどのようなものにするかにつき検討を重ねていた。しかし,その作業は,治験を担当する予定の医師(P23病院教授)からは「超速効型は高齢者等にはリスクが高いためあまり使いたくない」との意見が出るなど必ずしも順調ではなかった(甲99)。 実際にHMR1964の臨床試験が開始されたのは,平成15年秋のことであって,P1が死亡した当時,臨床試験は未だ開始されていなかった(甲30,乙8の2・4頁,8の3,27・9,10頁)。 (e) なお平成13年8月1日時点のHMR1964の臨床チームのメンバーは,ACMのP1を中心に,P22外5名であった(乙29の1・1枚目)。 cHMR4006開発プロジェクト (a) HMR4006は,P13製薬と共 ムのメンバーは,ACMのP1を中心に,P22外5名であった(乙29の1・1枚目)。 cHMR4006開発プロジェクト (a) HMR4006は,P13製薬と共同開発する糖尿病治療薬で,経肺吸入型のインスリン(遺伝子組み換え)製剤である。 HMR4006の開発期間は,平成11年7月から平成18年1月の間であった(乙5・218頁)。 (b) P1は,平成11年10月,HMR4006の臨床チームのメンバーとなるとともに,ACMに就任した(乙5・218頁,乙8の2・1頁,乙27・6頁)。 (c) HMR4006は,P13製薬との共同開発で進められていた。 P1がACMに就任した平成11年10月当時,HMR4006の開発は,臨床試験のフェーズⅢの準備段階に入っており,平成13年2月には治験実施計画書も完成した(甲101)。 ところが,P13製薬との間で,経肺吸入型であるHMR4006の肺に対する影響をめぐって問題が生じた(甲104)。そして,その海外での治験結果がでるまで2年間ほどかかることから,HMR4006の開発ペースはスローダウンし,また,このこととの関連で日本ではHMR4006の臨床試験は行わないことになった(甲36,102,乙8の3,乙27・7頁)。 ただし,HMR4006の開発業務自体は継続しており,平成13年1月以降,P1が死亡するまでの間に,HMR4006の会議は,HMR1964との合同会議を含め20回程開催された(甲95)。 また米国のP6社との間では,HMR1964とHMR4006の双方について,夜間,それぞれ1回程度,テレカンファレンス(以下「TC」という。)やビデオカンファレンス(以下「VTC」という。)が実施され,その終了時刻は深夜に及ぶことが多かった(乙1 の双方について,夜間,それぞれ1回程度,テレカンファレンス(以下「TC」という。)やビデオカンファレンス(以下「VTC」という。)が実施され,その終了時刻は深夜に及ぶことが多かった(乙12,27・9頁)。 (d) なお平成13年8月1日時点で,HMR4006の臨床チームのメンバーは,2名削減され,ACMのP11名だけであった(甲64,乙29の2)。 (3) 本件疾病の発症前6か月間におけるP1の就労状況等ア本件における労働時間の認定資料と指針ここで「労働時間」とは脳・心臓疾患に関する業務起因性の第一次的な判断要素である。 前記1で述べたとおり,労働者の疾病等を業務上のものと認めるには,業務起因性すなわち当該労働者の疾病が,業務等(=業務又はその遂行行為)に伴う危険の現実化として発生したものであることが必要である(危険責任の法理)。このような観点からは,同法理にいう「危険」とは,当該労働者がその労働契約に基づき使用者の支配又は管理下にあることに伴って発生するリスクのことをいうものと考えるのが合理的であって,そうだとすると上記業務起因性の第一次的判断要素としての「労働時間」とは,「就労のため使用者の指揮命令の下にある時間帯」をいうものと解するのが相当である。 そして,その判断は,(A)当該業務の提供行為(就労)の有無・程度(以下「要素a」という。),(B)労働契約上ないしは事実上の義務付けの有無(以下「要素b」という。),(C)義務付けに伴う場所的・時間的拘束性(労務の提供が一定の場所で行うことを余儀なくされ,かつ時間を自由に利用できない状態)の有無・程度(以下「要素c」という。)を総合考慮した上,労災保険法の趣旨・目的を踏まえ,社会通念に照らし,客観的にみて,上記のような使用者の指揮命令下にあるも ,かつ時間を自由に利用できない状態)の有無・程度(以下「要素c」という。)を総合考慮した上,労災保険法の趣旨・目的を踏まえ,社会通念に照らし,客観的にみて,上記のような使用者の指揮命令下にあるものと評価することができるか否かという観点から,これを行うのが相当である。 (ア) 認定資料P1は,管理職として扱われていたため,従業員としての労働時間の 管理はなされていなかった。 その結果,P1の労働時間を把握するための主な資料としては,下記のものがあり(以下「認定資料」という。),その作成の経緯と内容等は,以下のとおりである。 a フレックスタイム勤務予定・勤務状況報告書(乙12,乙5・188頁。以下「勤務状況報告書」という。)本件会社は,平成13年1月から,研究開発部門の仕事量を把握するために,P1のような管理職についても,「勤務状況報告書」(乙12)を使用した手書きの申告・承認による時間管理を開始し,平成13年10月からは,電子承認システムを導入している。 b 退館台帳の転記(乙5・154頁以下,乙8の2・3頁。以下「退館台帳転記」という。)平成13年当時,P1は,研究開発本部臨床研究センターで勤務していたが,同センターが入居していたビルでは,平日午後10時以降及び休日の入・退館の状況を把握するため,守衛がいる警備室前にある「退館台帳(社員用:夜間用)」(以下「退館台帳」という。乙5・154,155頁)を置き,入退館者に対して,その入・退館時刻を記載させる体制をとっていた。 c 国内旅費交通費等精算書及び海外旅費交通費等精算書(乙17,乙5・279頁。以下「交通費等精算書」という。)交通費等精算書は,就業に関係してP1が負担した費用を精算するため,P c 国内旅費交通費等精算書及び海外旅費交通費等精算書(乙17,乙5・279頁。以下「交通費等精算書」という。)交通費等精算書は,就業に関係してP1が負担した費用を精算するため,P1が本件会社へ提出した書類であり,出張先,出発時・帰着時,利用した交通機関,交通費などが記載されている。 (イ) 認定の指針a 就業規則上の休日以外の日(以下「平日」という。)(a) 始業時刻 前記認定事実3のア及び上記(ア)aによるとフレックスタイム適用者であるP1は,平成13年1月以降,自らの各就業日の始業時刻を勤務状況報告書の「始業時刻」欄に記載し,これを本件会社に提出,申告し,その承認を得ていたことが認められ,そうだとするとP1の始業時刻は,他に(交通費等精算書等による)特段の立証がない限り,上記勤務状況報告書の記載に基づき認定するのが相当である。 (b) 終業時刻上記(a)で検討したとおりP1の終業時刻も,基本的には上記勤務状況報告書の記載に基づき認定すべきである。 ただし,この勤務状況報告書の記載はあくまで事後的な報告にとどまる面があり,したがって,終業時刻が午後10時以降に及ぶ場合には,退館台帳転記の記載の方が,退館時に逐次時計で時刻を確認しながら記載されたものである点において証拠としての価値が高い。したがって,就業日の午後10時以降については,他に(交通費等精算書等による)特段の立証がない限り,退館台帳転記の記載をもってP1の終業時刻と認定するのが相当である。 (c) 休憩時間前記認定事実3のア(イ)のとおり就業規則上の休憩時間は,正午から午後1時までの1時間と定められており,原告においても,一部の就労日(①平成13年8月20日,②同年7月19日及び③同年6月18日 前記認定事実3のア(イ)のとおり就業規則上の休憩時間は,正午から午後1時までの1時間と定められており,原告においても,一部の就労日(①平成13年8月20日,②同年7月19日及び③同年6月18日)を除いて,この休憩時間の定めとは異なる主張をしていない。そうすると上記就業規則の休憩時間に関する定めは概ね順守されていたものといえ,したがって,P1の(実)労働時間の認定に当たっては,他に特段の立証がない限り,休憩時間として1時間は確保されていたものと認め,これを労働時間(拘束時間)か ら控除する。 b 休日出勤ここで休日とは,前記認定事実3のア(ウ)のとおり,土曜日,日曜日,国民の祝日,5月1日,年末年始(12月29日~1月4日),フレキシブル休日(年間2日),その他,会社が特に指定した日をいう。 (a) 始業及び終業時刻上記(イ)a(b)で指摘したとおり勤務状況報告書の記載はあくまで事後的な報告にとどまる面があり,したがって,休日の入退館時刻についても退館台帳転記の記載の方が証拠としての価値が高い。 そうだとすると,休日出勤時におけるP1の始業及び終業は,他に(交通費等精算書等による)特段の立証がない限り,退館台帳転記の記載に基づき認定するのが相当である。ただし,休日出勤の目的が社外における医師等との面談など退館台帳への記載が行われなかった場合には,勤務状況報告書の記載をもってP1の始業及び終業時刻を認定すべきである。 (b) 休憩時間平日におけるP1の就労実態(特に休憩時間の取得状況)からみて休日出勤した場合の休憩時間は,他に特段の立証がない限り,1時間と認めるのが相当である。 もっとも休日出勤 平日におけるP1の就労実態(特に休憩時間の取得状況)からみて休日出勤した場合の休憩時間は,他に特段の立証がない限り,1時間と認めるのが相当である。 もっとも休日出勤の場合,1日の労働時間(拘束時間)が概ね6時間にも満たないような場合もあり,このような場合には,その時間数等からみてP1が敢えて休憩を取っていたものとは考え難く,その休憩時間は「なし」と認定するのが相当である。 イ第一次的判断要素としての労働時間の認定(ア) 上記ア(イ)で検討した認定の指針に基づき,別紙2「被告主張に係 る労働時間認定一覧表」(なお原告の使用する労働時間の集計表もこれとほぼ同様である。)の期間割りに倣って,本件疾病の発症日の前日(平成▲年▲月▲日)から起算して30日ごとに6つに区切った期間におけるP1の(時間外)労働時間等を認定すると別紙3「労働時間認定一覧表」に記載のとおりである(以下「認定事実4」という。)。 これによると各期間の①拘束時間数,②時間外労働時間数,③発症前2か月間ないし6か月間の平均時間外労働時間(括弧内の時間数)は,以下のとおり整理することができる。 記 拘束時間時間外労働時間発症前 1か月245時間37分50時間37分発症日を起点として算定される月平均時間外労働時間2か月224時間46分51時間13分2か月平均50時間55分3か月213時間09分34時間19分3か月平均45時間23分4か月 249時間39分 68時間09分4か月平均 か月平均50時間55分3か月213時間09分34時間19分3か月平均45時間23分4か月 249時間39分 68時間09分4か月平均51時間04分5か月 306時間54分 107時間54分5か月平均62時間26分 6か月 211時間59分 46時間02分6か月平均59時間42分(イ) 以下,上記労働時間の認定上特に争いのある始業・終業時刻について,その認定理由を補足する(以下この補足説明において認定した事実を一括して「認定事実5」という。なお年号は,特に断らない限り,平成13年である。)。 [1.始業・終業時刻について]a まず上記労働時間の認定上特に争いのある時刻を指摘すると下記のとおりであるところ,その争われ方に着目すると,その各時刻を以下のとおり分類することができる。 類型Ⅰ 主として休日における業務遂行の有無ないしその労働時間性等が争われているものとして②<35><37><39><40><41><43>の各 時刻がある。 類型Ⅱ 主として出張における移動時間の労働時間性が争われているものとして⑤⑲<31><34>の各時刻がある(なお<34>9月3日は始業時刻のみ)。 類型Ⅲ 主として接待,懇親会等の労働時間性が争われているものとして⑨⑪<22><24><25><26><27><29><33><34><38><42>の各時刻がある。 類型Ⅳ 主として電子メール等により始業・終業時刻の認定それ自体争われているものとして①③④⑥⑦⑧⑩⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑳<21><22><23><28><30 ><42>の各時刻がある。 類型Ⅳ 主として電子メール等により始業・終業時刻の認定それ自体争われているものとして①③④⑥⑦⑧⑩⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑳<21><22><23><28><30><32><36>の各時刻がある。このうち③④⑦⑧⑭⑮⑱<32>は「パソコン・メール」(甲89〈枝番省略〉。なお⑭は終業時刻のみ)を,また⑩⑬⑭⑳<31>は「パソコンのファイル」(甲90,91〈枝番省略〉。なお⑭は始業時刻のみ)を根拠としている。 記(なお付記された括弧内のローマ数字は上記各類型を示す。)①4月27日の終業時刻(Ⅳ),②4月28日~同月30日までの始業・終業時刻(Ⅰ),③5月2日の終業時刻(Ⅳ),④5月7日(5月6日)の始業・終業時刻(Ⅳ),⑤5月7日及び5月12日の始業・終業時刻(Ⅱ),⑥5月17日の終業時刻(Ⅳ),⑦5月18日の終業時刻(Ⅳ),⑧5月20日の終業時刻(Ⅳ),⑨5月23日の終業時刻(Ⅲ),⑩6月5日の終業時刻(Ⅳ),⑪6月6日の終業時刻(Ⅲ),⑫6月9日の終業時刻(Ⅳ),⑬6月13日の終業時刻(Ⅳ),⑭6月18日の始業・終業時刻(Ⅳ),⑮6月19日の終業時刻(Ⅳ),⑯7月2日の終業時刻(Ⅳ),⑰7月3日の終業時刻(Ⅳ),⑱7月4日の終業時刻(Ⅳ),⑲7月5日の始業時刻(Ⅱ), ⑳7月16日の始業時刻(Ⅳ),<21>7月17日の終業時刻(Ⅳ),<22>7月19日の終業時刻(Ⅲ),<23>7月23日の終業時刻(Ⅳ),<24>7月31日の終業時刻(Ⅲ),<25>8月2日の終業時刻(Ⅲ),<26>8月8日の終業時刻(Ⅲ),<27>8月9日の終業時刻(Ⅲ),<28>8月23日の終業時刻(Ⅳ),<29>8月24日の終業時刻( 7月31日の終業時刻(Ⅲ),<25>8月2日の終業時刻(Ⅲ),<26>8月8日の終業時刻(Ⅲ),<27>8月9日の終業時刻(Ⅲ),<28>8月23日の終業時刻(Ⅳ),<29>8月24日の終業時刻(Ⅲ),<30>8月28日の終業時刻(Ⅳ),<31>8月29日の始業・終業時刻(始業時刻につきⅡ,終業時刻はⅣ),<32>8月30日の終業時刻(Ⅳ),<33>8月31日の終業時刻(Ⅲ),<34>9月3日の始業・終業時刻(始業時刻につきⅡ,終業時刻につきⅢ),<35>9月5日~同月7日までの始業・終業時刻(Ⅰ),<36>9月11日の終業時刻(Ⅳ),<37>9月16日の始業・終業時刻(Ⅰ),<38>9月20日の終業時刻(Ⅲ),<39>9月22日の始業・終業時刻(Ⅰ),<40>9月24日の始業・終業時刻(Ⅰ),<41>10月4日の始業・終業時刻(Ⅰ),<42>10月5日の終業時刻(Ⅲ),<43>10月6日から8日までの始業・終業時刻(Ⅰ)b 類型Ⅰについて(a) 類型Ⅰ・(1):原告の陳述書等を根拠とするもの-②4月28日~同月30日及び<35>9月5日~同月7日の各始業・終業時刻ⅰ <35>9月5日~同月7日の休日労働の有無原告は,P1の妹の陳述書(甲87)の記載から合理的に推定できる労働時間を加算するとした上,本来は休日のはずの上記<35>の期間内においてP1は休日労働をしていた旨主張し(別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」の上記<35>の期間の始業・終業時刻欄参照),他方,被告は,P1の妹の上記陳述書はこれを裏付ける客観的資料に欠け,証拠価値に乏しいなどと反論する。 確かに妹の上記陳述書によるとP1が上記<35>の期間中帰省先の ),他方,被告は,P1の妹の上記陳述書はこれを裏付ける客観的資料に欠け,証拠価値に乏しいなどと反論する。 確かに妹の上記陳述書によるとP1が上記<35>の期間中帰省先の実家に仕事を持ち込み,本件会社の業務の一部を行っていたことがうかがわれる。しかし,帰省先の自宅における会社業務の遂行は,その具体的な内容が明らかでないばかりか(要素a),勤務状況報告書等にも記載がないこと(要素b),一般的にみて時間的拘束性や精神的緊張度が低いこと(要素c)などを考慮すると使用者の指揮命令下における業務遂行とはいい難く,これを業務起因性の第一次的判断要素としての「労働時間」に当たるものと解することはできない。 ⅱ ②4月28日~同月30日の休日労働の有無原告は,自らの陳述書(甲88)の記載に基づき,本来は休日のはずの上記②の期間内においてP1は休日労働をしていた旨主張し(別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」上記②の期間の「始業・終業時刻」欄参照),他方,被告は,原告の上記陳述書もこれを裏付ける客観的資料に欠け,証拠価値に乏しいなどと反論する。 確かに原告の上記陳述書によると上記②の期間中,P1は,外出先において何らかの会社業務を行っていた形跡がうかがえないでもない。しかし,その一方で,勤務状況報告書や退館台帳等に上記の期間中,P1が本件会社の業務を行っていたことをうかがわせる記載は見当たらない。そうだとすると原告の上記陳述書の記載は客観的な証拠による裏付けを欠くものといわざるを得ず,P1が上記②の期間中,休日労働をしていたことを認めるに足る的確な証拠とはいい難く,他にP1の上記休日労働を認めるに足る証拠はない(要素aないしcの欠如)。 ⅲ 小括 労働をしていたことを認めるに足る的確な証拠とはいい難く,他にP1の上記休日労働を認めるに足る証拠はない(要素aないしcの欠如)。 ⅲ 小括 以上によると,原告の上記各主張を採用することはできず,上記の各日は,上記就業規則の定め及び勤務状況報告書の記載に基づき,いずれも「休日」であったと認めるのが相当である。 (b) 類型Ⅰ・(2):交通費等精算書,P1の手帳・ノート,友人の手紙を根拠とするもの-<37>9月16日,<39>9月22日,<40>9月24日,<43>10月6日から8日の各始業・終業時刻についてⅰ 勤務状況報告書に始業・終業時刻の記載があもの-<37>9月16日の休日労働について原告は,交通費等精算書<37>9月16日欄の記載(金額「55,555円」,内容「P24先生技術指導料」,相手先「P25病院」。乙17・3頁)に基づき,P1は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」上記<37>の「始業・終業時刻」欄に記載のとおり,本来は休日のはずの上記<37>9月16日に,奈良県のP25病院に出張し,休日労働を行った旨主張し,他方,被告は,そのような出張の事実はないと反論する。 そこで検討するに,上記交通費等精算書の記載は「P24先生技術指導料」の名目で上記金員の精算を求めたものにすぎず,出張先への交通費の精算を求めたものではなく,上記<37>9月16日にP1が奈良県にあるP25病院に出張したことを客観的に裏付ける証拠とはいい難い(要素aないしcの欠如)。 むしろ,勤務状況報告書に「始業時刻10:30,終業時刻12:30」との記載があるのに対し(乙12・9頁),退館台帳には入退館時刻の記載がないこと(乙5・154頁),P1が使用 しcの欠如)。 むしろ,勤務状況報告書に「始業時刻10:30,終業時刻12:30」との記載があるのに対し(乙12・9頁),退館台帳には入退館時刻の記載がないこと(乙5・154頁),P1が使用していた手帳の当日欄に「10→12DrP24」の記載があること(乙16・46頁),P25病院の内分泌内科部長であったP24医師は,平成13年9月16日の午後の横浜での会議の 前に,横浜市内のαのホテルにおいてP1と面談した旨を述べていること(乙8の1)などからみてP1は,同日,奈良県ではなく,横浜市に出張し,市内のホテルにおいて,会議に備え,P24医師と面談していたものと推認され,そうだとすると,同日午前10時30分から午後0時30分までの間に限り,P1は,休日労働をしていたものと認めるのが相当である。 ⅱ 勤務状況報告書,退館台帳及び交通費等精算書に記載がないもの-<39>9月22日,<40>9月24日,<43>10月6日から8日の各始業・終業時刻について(ア) 原告は,P1の手帳(乙16)の<39>9月22日及び<40>9月24日欄に,それぞれ「糖尿病トータルケアフォーラムP26ビル『P27ホール』」(<39>9月22日,乙16・47頁),「1964VTC」の記載があること(<40>9月24日,乙16・48頁)を根拠として,P1は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」の上記各就労日の「始業・終業時刻」欄に記載の休日労働を行っていた旨主張し,他方,被告は,P1がそのような休日労働を行ったと認めるに足る証拠はない旨反論する。 そこで検討するに,勤務状況報告書,退館台帳及び交通費等精算書のいずれにも上記の各休日(<39>9月22日及び<40>9月24日)の就労 と認めるに足る証拠はない旨反論する。 そこで検討するに,勤務状況報告書,退館台帳及び交通費等精算書のいずれにも上記の各休日(<39>9月22日及び<40>9月24日)の就労をうかがわせる記載がない上,糖尿病トータルケアフォーラムはともかく,秋分の日の振り替え休日にVTCが実施されるのは不自然であること(乙8の2・3頁のP22供述参照)などを併せ考慮すると,上記各手帳の記載だけでは,P1が,業務として糖尿病トータルケアフォーラムに参加したり(<39>9月22日),あるいはHMR1964のVTC を行っていたものと推認することはできず,他にP1の上記休日労働を認めるに足る証拠はない(要素aないしcの欠如)。 (イ) また原告は,P1の友人の手紙の中に<43>10月6日と同月7日の両日P1が休日であるにもかかわらず出勤していたことをうかがわせる記載があることを理由に,P1は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」の上記各就労日の「始業・終業時刻」欄に記載の休日労働を行っていた旨主張し,他方,被告は,そのような休日労働の事実を否定する。 そこで検討するに,<43>10月6日と同月7日の両日については勤務状況報告書及び交通費等精算書のいずれにもP1の休日労働をうかがわせる記載は全く見当たらない。また,<43>10月7日については退館台帳に入退館時刻の記載が残ってはいるものの,それは「入館時刻14:09」から「退館時刻14:47」までの僅か40分間程度の記載に過ぎず,就労の事実を十分にうかがわせるような性質のものではなく,友人の電話番号を調べるために出社したと考えられる(甲40)。そうすると上記友人の手紙の記載だけでは,<43>10月6日と同月7日の両日P1が休日出勤を 十分にうかがわせるような性質のものではなく,友人の電話番号を調べるために出社したと考えられる(甲40)。そうすると上記友人の手紙の記載だけでは,<43>10月6日と同月7日の両日P1が休日出勤をしていたものと推認することはできず,他にP1の上記休日労働を認めるに足る証拠はない(要素aないしcの欠如)。 , (ウ) なお原告は,P1のパソコン履歴中に10月9日の午前2時45分ころまで同人が会議資料等を作成していたことをうかがわせる記録が残っていること(甲39)を根拠に,<43>10月8日についてもP1は自宅において別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」の上記<43>10月8日の「始業・終業時刻」欄に記載の休日労働を行っていた旨主張するが,こうした 自宅での会議資料等の作成作業は,その内容や成果が不明であるばかりか,時間的・場所的拘束性も低いことに加え,勤務状況報告書には,これを業務として報告する記載がないことを併せ考慮すると,上記のような単発的なパソコンの履歴だけをもって<43>10月8日にP1が休日労働を行っていたものと推認することはできず,他に上記休日労働を認めるに足る証拠はない。 ⅲ 小括以上によると,原告の上記各主張を採用することはできず,上記の各日は,上記就業規則の定め及び勤務状況報告書に記載のとおり,いずれも「休日」であったと認めるのが相当である。 (c) 類型Ⅰ・(3):釣り大会の業務性-<41>10月4日の始業・終業時刻ⅰ 原告は,上記釣り大会は平日に実施されたものである上,プロジェクトの結束と親睦を深める目的で開催され,今後の仕事につながる重要な行事であって,P1は 業・終業時刻ⅰ 原告は,上記釣り大会は平日に実施されたものである上,プロジェクトの結束と親睦を深める目的で開催され,今後の仕事につながる重要な行事であって,P1はプロジェクトの責任者として出席しないわけにはいかなったのであるから,上記釣り大会は業務性が肯定され,その参加に要した時間は上記「労働時間」である旨主張し,他方,被告は,P1の部下であったP22の供述(乙5・279頁,乙8の2・4頁)に基づき,上記釣り大会(以下「本件釣り大会」という。)は参加者全員が年次有給休暇を取得して参加する,任意の同好会的なものに過ぎなかったとして,その業務性を否定する。 ⅱ そもそも脳・心臓疾患における業務起因性の第一次的判断要素としての「労働時間」の中に含まれるためには,使用者の指揮命令下にあると評価し得るものでなければならない。したがって, 上記釣り大会のような親睦行為への参加が上記「労働時間」に含まれるためには,少なくとも本件会社(使用者)が何らかの形で自らの業務の一部として容認し(要素a),対象の従業員に対して,その親睦行為への参加を事実上義務付け(要素b),これにより一定の精神的ないし肉体的負荷を生じさせるようなものであること(要素c)が必要と解される。 本件釣り大会は,(ア)いわゆる社内行事の一つとして定期的に行われることが予定されていた行事であって(甲42),その目的は臨床開発チームの結束と親睦を深めることにあり,社内メールを使用して呼びかけが行われていること(甲41。要素a及びb),(イ)P1は,上記プロジェクトチームの責任者として,実施の前日から旅館に宿泊した上,本件釣り大会に参加し,早朝の午前5時30分ころから午後6時30分までの間,釣り船に乗り,三浦 要素a及びb),(イ)P1は,上記プロジェクトチームの責任者として,実施の前日から旅館に宿泊した上,本件釣り大会に参加し,早朝の午前5時30分ころから午後6時30分までの間,釣り船に乗り,三浦半島の先端当たりまで出船していること(乙8の2・4頁。 要素b及びc),(ウ)本件会社は,P1の勤務状況報告書の予実区分欄に「実績」として「始業時刻8:45,終業時刻17:30」と記載し(乙12・10頁),本件釣り大会の業務性を承認する処理を行っていること(要素a)などの事情が認められる。 ⅲ これらの事情によると,本件釣り大会は,本件会社の関与の下,プロジェクトチームの結束と親睦を深めることを目的とする社内行事の一つとして平日に実施されたものであって,P1は,臨床開発チームの責任者として不参加はできない立場にあったこと,そして,本件釣り大会は,上記のとおり早朝から夕方までの間,釣り船を沖合いまで出船させるという,一定の危険を伴うものであって,参加者に対して,それ相応の負荷を生じさせる内容のものであったということができる。 そうだとすると,P1の本件釣り大会への参加は,本件会社が業務として承認した時間(すなわち午前8時45分から午後5時30分)の限度で使用者の指揮命令下にあったものと評価することが相当であり,上記「労働時間」に含まれるものと解される。 なお,本件釣り大会の参加費用は全て参加者が負担し,かつプロジェクトチームのメンバー全員が参加したわけではないことがうかがえるが,これらの事情は,少なくともP1の本件釣り大会への参加との関係では上記認定,判断の妨げとはならないものというべきである。 c 類型Ⅱについて(a) 類型Ⅱ・(1) ,少なくともP1の本件釣り大会への参加との関係では上記認定,判断の妨げとはならないものというべきである。 c 類型Ⅱについて(a) 類型Ⅱ・(1):海外出張における移動時間の労働時間性-⑤5月7日及び5月12日の各労働時間についてⅰ 上記各日がP1のロンドン出張の移動日に当たることは争いがない。 原告は,出張とは使用者の出張命令に基づいて特定の用務を果たすために通常の勤務地を離れて用務地へ赴き,用務地へ赴いてから用務を果たして戻るまでの一連の過程をいうのであるから,その出張の用務地を往復する移動時間は,使用者の支配下にあるものとして,上記各日について別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中⑤5月7日及び5月12日の「1日の労働時間数」欄に記載の「労働時間」が認定されるべきであると主張し,他方,被告は,そもそも出張の際の移動時間は「労働時間」には含まれないのであるから,上記各日は単なる移動日に過ぎない旨反論する。 ⅱ そこで検討するに,上記ロンドン出張の「海外旅行スケジュール表」(乙5・178頁),交通費等精算書⑤5月7日と5月1 2日欄の記載(乙17・18頁)及びP1の手帳(乙16・28頁)によると,〈ア〉P1は,出発日の5月7日,新宿午前8時45分発の乗り物に乗って成田空港に向かい午前10時30分に成田空港に到着した上,日本時間午後0時発のロンドン行きの航空機に搭乗し,同日午後4時25分(現地時間)にロンドン(ヒースロー空港)へ到着したこと,〈イ〉P1は,帰国日の5月11日午後7時45分(現地時間)にロンドン(ヒースロー空港)を出発した上,5月12日午後3時15分(日本時間)に成田空港に到着し,新宿経由 ースロー空港)へ到着したこと,〈イ〉P1は,帰国日の5月11日午後7時45分(現地時間)にロンドン(ヒースロー空港)を出発した上,5月12日午後3時15分(日本時間)に成田空港に到着し,新宿経由で帰宅したことが認められる。 ⅲ 確かに出張の用務地に向けての移動は,出張という業務遂行の前提となる行為ではある。しかし,そうはいっても業務の提供そのものではなく,通常の就労に伴う負荷とは程度や質の点で相当の違いがある上(要素a及びbの欠如),移動中の時間利用については通常は基本的に出張者の自由に委ねられている点で拘束性が低いばかりか,過労の原因となるような睡眠時間の減少をもたらすおそれも少ないのが一般的である(要素b及びcの欠如)。 そうだとすると,出張の際の移動時間は,基本的には上記「労働時間」には含まれないものと解するのが相当である。 もっとも例えば,航空機による海外出張のように長時間にわたる身体的・場所的拘束を伴う移動を余儀なくされる出張において(要素b及びc),その移動時間が労基法所定の労働時間(法定労働時間)を優に超えるようなケースにあっては,結果として出張者に対してかかる精神的・肉体的負荷の程度は,通常の就労と比べても決して小さくないことに加え,過労を回避するために必要な睡眠時間の確保という点からも看過し難いものがあるというべきであるから(要素a),このような特段の事情が認められる 事案においては,出張に伴う移動時間も上記「労働時間」に準じて取り扱うのが相当であると解される。 上記「海外旅行スケジュール表」(乙5・178頁)によるとP1の上記ロンドン出張は,もとより移動手段として航空機(class(等級)は「C」)を利用しているが,日本とイギリスの 上記「海外旅行スケジュール表」(乙5・178頁)によるとP1の上記ロンドン出張は,もとより移動手段として航空機(class(等級)は「C」)を利用しているが,日本とイギリスの時差(8時間〈サマータイム〉)からみて,そのフライト時間は往路が12時間25分,帰路が9時間30分であったと認められる。 そうすると,上記ロンドン出張の往路・帰路ともに法定労働時間を優に超える時間を要しているものということができ,したがって,その限度で,上記ロンドン出張の移動時間は,上記「労働時間」に準じて扱うのが相当である。 ⅳ よって,上記ロンドン出張については⑤5月7日及び5月12日の移動時間のうち上記各フライト時間(前者の往路につき「12時間25分」,後者の帰路につき「9時間30分」)の限度で,これを上記「労働時間」として扱い(なお移動手段が航空機であることを考慮し「休憩時間」はなしと認める。),その他の移動時間は「労働時間」に含まれないものというべきである。,(b) 類型Ⅱ-(2):国内出張における移動時間の労働時間性-⑲7月5日の始業時刻,<31>8月29日の始業時刻及び<34>9月3日の始業時刻ⅰ 前泊を伴わないもの-⑲7月5日の始業時刻,<34>9月3日の始業時刻(ア) P1の交通費等精算書の上記各就労日の記載(乙17・12頁,5頁)及びP1の手帳の当日欄の記載(乙16・36頁,45頁)によると,P1は,⑲7月5日午前7時30分 に,那須で開催されたPR全体会議に出席するため新幹線で出発したこと,また<34>9月3日午前8時に,インスリンプロジェクトオフサイトミーティングに出席するためタクシーで出発したことが認められると に,那須で開催されたPR全体会議に出席するため新幹線で出発したこと,また<34>9月3日午前8時に,インスリンプロジェクトオフサイトミーティングに出席するためタクシーで出発したことが認められるところ,原告は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「始業時刻」欄に記載のとおり,⑲7月5日については上記出張先である那須に向け出発した午前7時30分をもって,また<34>9月3日についても出張先に向け出発した午前8時をもって,それぞれの始業時刻と解すべきである旨主張し,他方,被告は,その時刻は単なる移動の開始時刻に過ぎないと反論している。 (イ) そこで検討するに,上記認定の経過等からみて,上記7月5日の午前7時30分及び9月3日の午前8時という時刻は,各出張先に向け移動を開始した時刻であると認められるところ,上記(a)で検討したとおり,このような出張先に向けての移動時間は「労働時間」には含まれないものと解されるところ,本件全証拠を検討しても,同日について上記特段の事情を基礎付ける事実関係を認めるに足る的確な証拠はない(要素aないしcの欠如)。 そうすると,原告の上記主張を採用することはできず,⑲7月5日及び<34>9月3日の始業時刻は,勤務状況報告書の記載(乙12・7頁,9頁)に基づき前者が午前8時45分,後者が午前9時と認めるのが相当である。 ⅱ 前泊を伴うもの-<31>8月29日の始業時刻(ア) 交通費等精算書<31>8月29日欄の記載(乙17・6頁),P1の手帳における同日欄の記載(乙16・44頁),P28 ホテルのホテル料金の支払いを午前5時22分に行った旨の記載のあるクレジットカード利用伝票の控(甲51)及 日欄の記載(乙17・6頁),P1の手帳における同日欄の記載(乙16・44頁),P28 ホテルのホテル料金の支払いを午前5時22分に行った旨の記載のあるクレジットカード利用伝票の控(甲51)及び弁論の全趣旨によるとP1は,<31>8月29日午前5時22分に,P28ホテルにおいてホテル宿泊料金を精算し,羽田空港まで移動して午前6時30分の航空機に搭乗し,福岡にあるP21クリニックへ出張し,午後5時25分の航空機で東京へ戻ってきたことが認められる。 原告は,出張のための移動時間も上記「労働時間」に含まれるとの見解を前提とした上,とりわけ上記<31>8月29日に関してはP1は,その前日に「P29先生」との面会のため,第1の用務地にあるP28ホテルに前泊を余儀なくされたものであるから,そこから次の用務地に向かうための移動時間については,なおさらのこと「労働時間」とみるべきであるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中<31>8月29日の「始業時刻」欄に記載のとおり上記午前5時22分をもって同日の始業時刻と解すべきである旨主張し,他方,被告は,出張のための移動時間は上記「労働時間」に含まれるとの見解を前提に,同日の始業時刻は,勤務状況報告書に基づき午前8時45分であると主張する。 (イ) そこで検討するに,上記8月29日午前5時22分という時刻が出張先に向け移動を開始した時刻であることは,上記認定の経過からみて明らかであって,上記(a)で検討したとおり「労働時間」には含まれないものと解される(要素aないしcの欠如)。 原告は,上記のとおり同日の上記出張のように用務地から用務地へ向けての出張の場合には,その移動時間を「労働時間」 と解さなければ,その途中で事 (要素aないしcの欠如)。 原告は,上記のとおり同日の上記出張のように用務地から用務地へ向けての出張の場合には,その移動時間を「労働時間」 と解さなければ,その途中で事故に遭遇した場合,出張者は通勤災害としても保護されないという不相当な結果を招くなどと主張するが,そもそもP1の手帳の8月28日の欄をみると「(午後)7時30分P30 ¥9500 P31さん」と記載されており(乙16・44頁),P1は,同日午後7時30分からP30で行われた,「P31さん」に関係する催しに出席したものと認められ,そうだとすると上記P28ホテルにおける前泊が用務地において余儀なくされた宿泊であるとはいい難い。いずれにしても原告の主張するような不相当な結果は別の観点から検討されるべき問題であって,上記判断を左右するような事情には当たらず,他に上記特段の事情を基礎付ける事実関係を認めるに足る的確な証拠はない。 (ウ) そうすると,原告の上記主張を採用することはできず,<31>8月29日の始業時刻は,勤務状況報告書の記載(乙12・8頁)に基づき午前8時45分であると認めるのが相当である。 d 類型Ⅲについて(a) 類型Ⅲ・(1):特定の会議,講演等の業務に伴い,あるいはこれを前提として行われた懇親会・食事会等(二次会も含む。以下同じ)ⅰ 懇親会等の実施につき交通費等精算書による会社承認があるもの-<22>7月19日の終業時刻,<25>8月2日の終業時刻,<34>9月3日の終業時刻交通費等精算書(乙17・9頁,11頁及び5頁)によると上記各就労日の懇親会・食事会(ただし<22>7月19日の二次会を除く。)は,「H >9月3日の終業時刻交通費等精算書(乙17・9頁,11頁及び5頁)によると上記各就労日の懇親会・食事会(ただし<22>7月19日の二次会を除く。)は,「HMR1964会議」(<22><25>)ないし「インスリンプロジェクトオフサイトミーティング」(<34>)の終了後 に,これに伴って行われたもので,いずれも交通費等精算書上会社の承認があるが,ただ<34>9月3日については予め懇親会が組み込まれた会議スケジュールが存在しているのに対し,<22>7月19日及び<25>8月2日は証拠上そのようなスケジュールは作成されていない。そこで以下この「<22>7月19日及び<25>8月2日」と「<34>9月3日」を分け検討する。 (A) <22>7月19日及び<25>8月2日の各終業時刻(ア) 勤務状況報告書・上記各就労日欄の記載(乙12・7,8頁),交通費等精算書・上記各就労日欄の記載(乙17・9頁,11頁),原告の手帳・上記就労日欄の記載(乙16・38頁及び40頁),社内会議の打ち上げ資料(甲55)及び弁論の全趣旨によるとP1は,(a)7月19日午後8時,本件会社において「HMR1964会議」を終え,「P32」において「HMR1964会議」の食事会をした後,「P33」で軽く二次会を行い,同月20日午前0時頃タクシーに乗り帰宅したこと,(b)8月2日午後6時30分,「HMR1964社内会議」を終え,「㈱P34」で行われた食事会に参加し,同日午後10時31分,代金支払いを終え帰宅したことが認められる。 原告は,上記各懇親会・食事会等は,いずれも「HMR1964会議」という会社業務を前提に行われたものであり,「P32」と「㈱P34」での食事会 え帰宅したことが認められる。 原告は,上記各懇親会・食事会等は,いずれも「HMR1964会議」という会社業務を前提に行われたものであり,「P32」と「㈱P34」での食事会については会社の承認まであることなどを理由にP1の業務の一部であるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中上記各就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,<22>7月19日については「P33」での二次会が終了しタクシーに乗車した午前 0時(24時)を,また,<25>8月2日については「(株)P34」での食事会の代金精算が終了した午後10時31分をもって,上記各就労日の「終業時刻」である旨主張し,他方,被告は,これらの懇親会・食事会及び二次会の業務性を否定する。 (イ) そこで検討するに,一般に会社業務の終了後,その業務に伴って懇親会・食事会等が行われることはよく見られるところではある。しかし,そうした懇親会等は,業務終了後の会食ないしは慰労の場に過ぎず,そうだとすると仮に,その費用負担につき使用者の承認があったとしても,懇親会等への出席は,基本的に使用者の指揮命令下における行為であるとはいい難く,社会通念上,「当該懇親会等が,予め当該業務の遂行上必要不可欠なものと客観的に認められ,かつ,それへの出席・参加が事実上強制されているような場合」を除き,その懇親会等に要した時間は,上記「労働時間」に含まれないものと解するのが相当である。 上記<22>7月19日については上記二次会はもとより,「HMR1964会議」終了後に行われた食事会についても,単なる業務終了後の食事会としての域を出るものとは認められず,当該業務(「HMR1964会議」)の遂行上必要不可欠なものではあ はもとより,「HMR1964会議」終了後に行われた食事会についても,単なる業務終了後の食事会としての域を出るものとは認められず,当該業務(「HMR1964会議」)の遂行上必要不可欠なものではあるとはいい難く,これらに要した時間は上記「労働時間」には含まれないものというべきである。 (ウ) よって,上記各就労日(<22>7月19日及び<25>8月2日)の終業時刻は,勤務状況報告書(乙12・7頁,8頁)に基づき,<22>7月19日については同日午後8時,<25>8月2日については同日午後6時30分であると認めるのが相 当である。 (B) <34>9月3日の終業時刻(ア) 勤務状況報告書・上記就労日欄の記載(乙12・9頁),交通費等精算書・上記就労日欄の記載(乙17・5頁),原告の手帳・上記就労日欄の記載(乙16・45頁),精算書(甲47の1,2)及び弁論の全趣旨によるとP1は,9月3日午後6時,臨床開発チームの責任者(ACM)として,インスリンプロジェクトオフサイトミーティングを終えた後,「P35」において行われた同ミーティングの懇親会に出席し,同日午後10時12分に同懇親会が終了した後も,「P36」での二次会にも参加し,その精算を午後11時58分に済ませたことが認められる。 原告は,上記「P35」での懇親会はもとより,「P36」での二次会についても,インスリンプロジェクトオフサイトミーティング業務に伴って行われたものであり,交通費等精算書上も会社の承認があることなどを理由にP1の業務の一部であるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,<34>9月3日の終 り,交通費等精算書上も会社の承認があることなどを理由にP1の業務の一部であるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,<34>9月3日の終業時刻は,上記二次会の精算時刻である午後11時58分である旨主張し,他方,被告は,上記懇親会及び二次会の業務性をいずれも否定する。 (イ) 上記インスリンプロジェクトオフサイトミーティングのスケジュール表(乙62の1,2)及び弁論の全趣旨によると上記「P35」における懇親会は,予め上記スケジュール中に組み込まれ,数名の女性社員を除き,多くの本件会社の社員が出席することが予定されていたことに加え,原告は上 記ミーティングの責任者(ACM)として,上記懇親会を切り盛りする立場にあったことが認められる。 そうだとすると,上記「P35」での懇親会は,客観的にも上記ミーティング業務の遂行上必要不可欠なものとして設定された懇親会であると認められ,かつ,P1はその責任者(ACM)としてこれに当然参加するよりほかない立場にあり,その意味で当該懇親会への参加を事実上強制されていたものということができる。他方,上記「P36」での二次会は,もとより上記インスリンプロジェクトオフサイトミーティングのスケジュールに組み込まれていたものではなく,その性質上も客観的にみて同ミーティング業務の遂行上必要不可欠なものであるとはいい難い。 (ウ) そうすると,上記インスリンプロジェクトオフサイトミーティング後に行われた懇親会と二次会については,前者への参加に要した時間の限度で上記「労働時間」性を肯定することができ,したがって,上記懇親会の精算時刻である午後10時12分をもって<34>9月 ーティング後に行われた懇親会と二次会については,前者への参加に要した時間の限度で上記「労働時間」性を肯定することができ,したがって,上記懇親会の精算時刻である午後10時12分をもって<34>9月3日の終業時刻と認めるのが相当である。 ⅱ 懇親会等の実施につき交通費等精算書による会社承認がないもの-<24>7月31日の終業時刻,<27>8月9日の終業時刻,<29>8月24日の終業時刻交通費等精算書(乙17・8頁及び9頁)及び原告の手帳・上記就労日欄の記載(乙16・40頁,41頁及び43頁)によると上記各就労日に行われた懇親会・食事会は,大学教授の講演会,医師の説明会等に伴って開催されたものであるが,いずれについても懇親会・食事会等の実施等について交通費等精算書による会 社の承認はない。しかし,この会社の承認は,当該費用を会社の経費扱いにすることに関するものであって,仮にその承認が得られたからといって直ちに当該懇親会・食事会等が使用者の指揮命令下において行われたものであることにはならない。したがって,上記会社の承認は,あくまで「労働時間」性評価の一つの判断要素に過ぎず,仮に上記会社承認がないからといって直ちに上記「労働時間」性が否定されるわけでもない。以下このような理解を前提に上記各就労日の終業時刻について検討する。 (A) <24>7月31日(ア) 勤務状況報告書・上記就労日欄の記載(乙12・7頁),P1の手帳の上記就労日欄の記載(乙16・40頁),交通費等精算書・上記就労日欄の記載(乙17・9頁),P1の手帳及びノートの上記就労日欄の記載(甲57〈手帳〉,乙15・15ないし17頁〈ノート P1の手帳の上記就労日欄の記載(乙16・40頁),交通費等精算書・上記就労日欄の記載(乙17・9頁),P1の手帳及びノートの上記就労日欄の記載(甲57〈手帳〉,乙15・15ないし17頁〈ノート〉),「P33」の請求書(甲65の1ないし3),P1の「7月31日弊社社内講演会について」と題するメール(甲94)及び弁論の全趣旨によると①P1は,7月31日午後6時25分から午後7時45分までの間,AJSの責任者として,本件会社内において開催されたP37大学のP38医師の講演会に参加した後,同日午後8時ころから2時間程度,「P33」での懇親会に参加したこと,②この懇親会は,上記講演会の責任者であるP1が,予め上記講演会の打ち上げを目的として設定していた食事会であること,③上記「P33」は,本件会社に対し,上記食事会の請求書を送付し,その費用の支払を請求していることが認められる。 (イ) 原告は,これらの事情から上記「食事会」はP1の業務 の一部であるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,上記食事会の終了時刻である同日午後10時が<24>7月31日の終業時刻であると主張し,他方,被告は,上記食事会の業務性を否定しているところ,上記①ないし③の各事情に照らすと上記食事会は,予め,外部講師を招へいしての講演会業務の遂行上当然必要なものと客観的に認められ,かつ,P1は,上記講演会の責任者(ACM)として当然参加するよりほかない立場に置かれ,事実上参加を強制されていたものということができる。 (ウ) そうすると,上記講演会後に行われた食事会への参加に要した時間は,上記「労働時間」に含まれ,したがって,上記食事会の終了時刻で のということができる。 (ウ) そうすると,上記講演会後に行われた食事会への参加に要した時間は,上記「労働時間」に含まれ,したがって,上記食事会の終了時刻である同日午後10時をもって<24>7月31日の終業時刻であると認めるのが相当である。 (B) <27>8月9日の終業時刻(ア) 勤務状況報告書・上記就労日欄の記載(乙12・8頁),P1の手帳の上記就労日欄の記載(乙16・40頁),交通費等精算書・上記就労日欄の記載(乙17・8頁),P1の手帳の上記就労日欄の記載(乙16・41頁),P1に対する「8/9P20治験経過説明会について」との件名のメール(甲53)及び弁論の全趣旨によると,①P1は,8月9日午後4時16分発の新幹線で,臨床開発チームの責任者(ACM)として,福島県郡山市にあるP20病院を訪問し,同市内の日本料理店「P39」において,同日午後7時から開催された「8/9P20治験経過説明会(お食事会)」に出席したこと,②上記説明会においては,併せて「食事会」 の実施も予定されていたものの,P20病院糖尿病センター内科のセンター長を初めとする医師数名,本件会社開発本部の社員である福島エリアマネジャーなどが出席し,本件会社の社員によって,OHPを使用し,30分間程度,HOE901(国内状況、海外状況)及びHMR1964の治験経過の説明が行われ,遅くとも午後9時までには終了したことなどの事情が認められる。 (イ) 原告は,これらの事情を根拠に,上記説明会に際して開催された「食事会」はP1の業務の一部である旨主張し,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労日の「終業時刻」欄に記載の (イ) 原告は,これらの事情を根拠に,上記説明会に際して開催された「食事会」はP1の業務の一部である旨主張し,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,<27>8月9日の終業時刻の終業時刻は,上記食事会の終了時刻であると推認される同日午後9時である旨主張し,他方,被告は,上記食事会の業務性を否定しているところ,上記①及び②の各事情に照らすと上記食事会は,P1らが臨床開発チームの責任者として訪問したHMR1964の治験経過説明会の一部として組み込まれており,客観的にも訪問先における説明会業務の遂行上必要不可欠なものであったと認められ,かつ,P1は,責任者(ACM)として当該食事会に出席するよりほかない立場にあり,その意味で当該食事会への出席が事実上強制されていたものということができる。 (ウ) そうすると,上記説明会に伴って行われた食事会への参加に要した時間は,上記「労働時間」に含まれ,したがって,上記食事会の終了推定時刻である同日午後9時をもって<27>8月9日の終業時刻であると認めるのが相当である。 (C) <29>8月24日の終業時刻 (ア) 勤務状況報告書・上記就労日欄の記載(乙12・8頁),P1の手帳の上記就労日欄の記載(乙16・43頁),交通費等精算書・上記就労日欄の記載(乙17・8頁),P1の手帳及びノートの上記就労日欄の記載(乙16・41頁〈手帳〉,甲63及び64の各2枚目,乙15・30頁〈ノート〉),クレジットカードの「お客様控え」(甲52,なお甲44),「HMR1964アドバイザリー会議のご案内」等(甲97の1ないし5)及び弁論の全趣旨によると① 64の各2枚目,乙15・30頁〈ノート〉),クレジットカードの「お客様控え」(甲52,なお甲44),「HMR1964アドバイザリー会議のご案内」等(甲97の1ないし5)及び弁論の全趣旨によると①P1は,臨床開発チームの責任者(ACM)として,8月24日午後6時45分頃から同日午後8時45分頃までの間,P40で開かれた「HMR1964アドバイザリー会議」に出席したこと,②上記「HMR1964アドバイザリー会議」は,アドバイザーの研究者3名を招待し,「日本におけるHMR1964の開発について」,「製品説明,開発状況」及び「日本における臨床試験について」を議題として行われたこと,③P1は,臨床開発チームの責任者(ACM)として,上記会議の開催に先立って,上記3名の研究者に対して,「会議終了後懇親会を用意させていただいております」との記載のある案内状を送付し,当日も懇親会場まで上記各研究者を誘導する役割を担当していたこと,④もっとも上記懇親会は,参加社員全員の出席が予定された,30分程度の食事会で,同日午後9時45分頃には出席者全員が解散したが(なお解散予定時刻は同日午後9時30分であったが,甲97の5〈QuickReport〉によると上記会議は,当日,予定より15分経過した午後8時45分まで続いたことが認められる。),ただ,P1は,その後も宿泊する研究者を慰労すべく二次会を 設定し,同日午後11時28分頃,会社から貸与されたクレジットカードで,その精算を済ませたことが認められる。 (イ) 原告は,これらの事情を根拠に,上記「HMR1964アドバイザリー会議」の開催後に設定された懇親会とその後の二次会はP1の業務の一部であるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労 は,これらの事情を根拠に,上記「HMR1964アドバイザリー会議」の開催後に設定された懇親会とその後の二次会はP1の業務の一部であるとして,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,<29>8月24日の終業時刻は,上記二次会の終了時刻(代金精算時)である同日午後11時28分である旨主張し,他方,被告は,上記食事会の業務性を否定しているところ,上記①ないし③の各事情に照らすと上記会議の直後に行われた懇親会は,P1が臨床開発チームの責任者(ACM)として関与した上記会議のスケジュールの中に予め組み込まれており,客観的にも,研究者(外部者)を招へいして開催された上記会議業務の遂行上必要不可欠なものとして設定された食事会であると認められ,かつP1は,責任者(ACM)として上記懇親会に出席するよりほかない立場にあり,その意味で事実上当該食事会に参加を強制されていたものということができ,他方,その後に行われた二次会は,上記会議業務の遂行上必要不可欠なものであるとはいい難い。 (ウ) そうすると,上記「HMR1964アドバイザリー会議」に伴って行われた懇親会(食事会)と二次会の参加に要した時間は,上記懇親会の限度で上記「労働時間」に含まれ,したがって,上記懇親会が終了し社員全員が解散した時刻である同日午後9時45分をもって<29>8月24日の終業時刻であると認めるのが相当である。 なお上記二次会の精算は,上記(ア)の④で認定したとおり, P1が本件会社から貸与されたクレジットカードにより精算が行われている。しかしP1が同クレジットカードを使用していた当時,当該クレジットカードの使用マニュアル上,その使用を本件会社の業務に限定する規定は存在せず,む 貸与されたクレジットカードにより精算が行われている。しかしP1が同クレジットカードを使用していた当時,当該クレジットカードの使用マニュアル上,その使用を本件会社の業務に限定する規定は存在せず,むしろカード利用従業員の便宜を考慮して,当該クレジットカード及び利用明細書の送付先については本件会社か利用従業員の自宅のどちらかを選択することが可能であったことが認められるのであるから(乙23,25・2枚目,27・15頁),そうだとすると上記二次会の精算が上記本件会社から貸与されたクレジットカードにより行われたからといって,直ちに上記二次会が本件会社(使用者)の指揮命令下に置かれていたものと評価することはできず,上記判断を左右するものではない。 (b) 類型Ⅲ・(2):特定の会議,講演等の業務を前提とはせずに行われた懇親会・食事会等-⑨5月23日の終業時刻,⑪6月6日の終業時刻,<26>8月8日の終業時刻,<33>8月31日の終業時刻,<38>9月20日の終業時刻,<42>10月5日の終業時刻ⅰ 勤務状況報告書・上記各就労日の記載(乙12・5頁,6頁,8ないし10頁),接待の領収書(甲46〈<38>〉,58〈⑨〉),交通費等精算書(乙17・2頁〈<42>〉,15頁〈⑪〉),精算レシート(甲54〈<26>〉),P1の手帳(甲48〈<33>〉,乙16・44頁〈<33>〉,47頁〈<38>〉,49頁〈<42>〉),クレジットカード伝票の控え(甲45の1,2〈<38>〉)及び弁論の全趣旨によるとP1は,本件会社の退社後に,臨床開発チームの責任者(ACM)として,通常業務終了後に接待等に伴う食事会(⑨5月23日,⑪6月6日及び<26>8月8 日),社員の壮行会(<33>8月31日,<38 は,本件会社の退社後に,臨床開発チームの責任者(ACM)として,通常業務終了後に接待等に伴う食事会(⑨5月23日,⑪6月6日及び<26>8月8 日),社員の壮行会(<33>8月31日,<38>9月20日)及び送別会(<42>10月5日)に出席し,<38>9月20日については二次会にまで参加していることが認められる。 ⅱ これらの食事会・壮行会等は,特定の会社業務に伴って,あるいはこれを前提に行われたものではない(なお⑪6月6日の食事会は「HMR1964VTC」後に行われているが,これはP1が所属する臨床開発チームの通常業務の一つであり,また,<26>8月8日の食事会は会合後に行われたことがうかがわれるが,その会合が通常の業務外のものであると認めるに足る証拠はない。)。 しかし原告は,上記懇親会・食事会等への参加は,P1が臨床開発チームの責任者(ACM)としての立場を前提とするものであるから当然業務の一部に当たり,その参加・出席に要した時間は上記「労働時間」に含まれるものと解すべきであるとして,上記各就労日の終業時刻は,上記食事会・壮行会等の終了時刻(会終了推定時刻〈⑨5月23日,<33>8月31日〉,代金精算終了時〈<26>8月8日,<38>9月20日〉,タクシー乗車開始時刻〈⑪6月6日,<42>10月5日〉)すなわち別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「終業時刻」欄に記載の時刻である旨主張し,他方,被告は,これらの食事会・壮行会等の業務性を否定している。 ⅲ そこで検討するに,確かに,当該懇親会・食事会等が特定の会社業務に伴い,あるいはそれを前提として行われたものではない場合であっても,本件会社の業務の遂行上必要不可欠なものであると客観的に認めら ⅲ そこで検討するに,確かに,当該懇親会・食事会等が特定の会社業務に伴い,あるいはそれを前提として行われたものではない場合であっても,本件会社の業務の遂行上必要不可欠なものであると客観的に認められ,かつ,それらへの参加が事実上強制されていると認められる場合には,当該懇親会・食事会等に要した時 間も,上記「労働時間」に含まれるものと解される。 上記各就労日における懇親会・食事会等は,いずれも本件会社の業務(本件では臨床開発業務)の遂行上必要不可欠なものであったと認めるに足る的確な証拠はなく(なお甲49,63によると<33>8月31日に行われた「P41の壮行会」については,8月19日と同月30日の二度,社内会議において,その実施方法等が討議され,これに基づきP1において上記壮行会の準備を行った形跡がうかがえるが,これだけでは上記「P41の壮行会」が本件会社の事業遂行上必要不可欠なものであったと認めるには十分ではない。),これらに要した時間を上記「労働時間」に含めることはできない。 よって,各勤務状況報告書の「終業時刻」欄に記載の時刻をもって上記各就労日の終業時刻であると認めるのが相当である。 e 類型Ⅳについて(a) 類型Ⅳ・(1):P1の「パソコン・メール」(甲89)を根拠とするもの-③5月2日の終業時刻,④5月7日(5月6日)の始業・終業時刻,⑦5月18日の終業時刻,⑧5月20日の終業時刻,⑭6月18日の終業時刻,⑮6月19日の終業時刻,⑱7月4日の終業時刻及び<32>8月30日の終業時刻(8月31日の始業時刻)ⅰ 原告は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,甲89(「パソコ 終業時刻及び<32>8月30日の終業時刻(8月31日の始業時刻)ⅰ 原告は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,甲89(「パソコン・メール」)に基づき認定した「パソコン・メール」の送信時刻に10分を加えた時刻をもって,上記各就労日の終業時間を認定すべきである旨主張し,他方,被告は,そもそも上記「パソコン・メール」の送信記録は「労働時間」の認定資料とはなり得ず,また仮に,その認定資料となり得たとしても,①単にメールを他 の人に転送している場合には電子メール1通当たり2分間,②数行程度のメールを送信している場合には電子メール1通当たり発信前10分及び発信後5分の合計15分間の限度で「労働時間」として認定すべきである旨主張する。 ⅱ そこで検討するに,本件における「パソコン・メール」(甲89)による「労働時間」の認定は,上記「パソコン・メール」の送信が,(A)勤務状況報告書(ないし退館台帳転記)に記載のある始業・終業時刻内の時刻に行われた場合(以下「類型Ⅳ・(1)ア」という。⑦5月18日,⑧5月20日,⑭6月18日,⑮6月19日),(B)勤務状況報告書に記載のある始業・終業時刻外に行われた場合(勤務状況報告書に始業・終業時刻の記載のない日に行われた場合も含む。以下「類型Ⅳ・(1)イ」という。 ③5月2日,⑱7月4日,<32>8月30日(8月31日)),(C)勤務状況報告書に始業・終業時刻の記載のない日に行われた場合(以下「類型Ⅳ・(1)ウ」という。④5月7日)に分けて検討するのが適当である。 (A) 類型Ⅳ・(1)ア-⑦5月18日,⑧5月20日,⑭6月18日及び⑮6月19日の終業時刻甲89の2・3・6 討するのが適当である。 (A) 類型Ⅳ・(1)ア-⑦5月18日,⑧5月20日,⑭6月18日及び⑮6月19日の終業時刻甲89の2・3・6及び乙12によると上記各就労日における「パソコン・メール」の送信は,いずれも勤務状況報告書(ないし退館台帳転記)に記載の始業・終業時刻内に行われているところ,原告は,上記のとおり「パソコン・メール」の送信記録に10分間を加えた時刻をもって終業時刻と認定すべきであると主張する(したがって,例えば⑦5月18日の終業時刻は,「パソコン・メール」の送信記録午後6時51分に10分間を加えた午後7時01分ということになる。)が,何故, 当該「パソコン・メール」の送信時刻に10分間を加えた時刻が終業時刻となるのか,その合理的根拠は全く示されておらず,原告の上記主張は採用の限りではない。 そうだとすると,P1の上記各就労日における終業時刻は,上記ア(イ)で述べた認定の指針のとおり,上記勤務状況報告書(ないし退館台帳転記)の記載に基づき認定されるべきである。 (B) 類型Ⅳ・(1)イ-③5月2日,⑱7月4日,<32>8月30日(8月31日)甲89の1と8,49及び乙12によると上記各就労日における「パソコン・メール」の送信は,いずれも勤務状況報告書に記載の始業・終業時刻外に行われているところ,乙32によるとP1はパソコンを持ち歩いており,自宅・外出先など,どこからでもメールの送受信が可能な状態であったものと認められる。そうだとすると,メールの送信記録が存在するからといって,必ずしもP1がその時間まで勤務先に在籍し,又は業務に従事していたことにはならない上 でもメールの送受信が可能な状態であったものと認められる。そうだとすると,メールの送信記録が存在するからといって,必ずしもP1がその時間まで勤務先に在籍し,又は業務に従事していたことにはならない上,「パソコン・メール」の操作に要する労力は,量的にはもとより質的にも,それほど大きなものではないことなどの事情を考慮すると,当該「パソコン・メール」の送信記録をもって,そのまま「労働時間」を示すものとみることはできない。したがって,当該「パソコン・メール」の送信が,当該業務の遂行上緊要なものと客観的に認められる場合に限り,上記「パソコン・メール」の送信記録に基づく「労働時間」の認定が許されるものと解されるところ,上記各就労日における「パソコン・メール」の送信記録だけでは,P1の臨床開発チームの責任者(ACM)としての業務の遂行上緊要なものと評価することはできず,他に,この緊要性 を基礎付ける事実関係を認めるに足る証拠はない。したがって,上記「パソコン・メール」の送信記録をもって上記各就労日の終業時刻を認定することはできないものというべきである。 そうだとすると,P1の上記各就労日における終業時刻は,上記(イ)で述べた認定の指針のとおり,上記勤務状況報告書の記載に基づき認定されるべきである。 (C) 類型Ⅳ・(1)ウ-④5月7日(5月6日))甲89の7及び乙12によると上記就労日における「パソコン・メール」の送信は,勤務状況報告書に始業・終業時刻の記載がない就労日にされているが,当該「パソコン・メール」の送信記録(同日午前1時12分)をもって,そのまま「労働時間」を示すものとみることができないことは,上記(B)の場合と同様であって,当該 記載がない就労日にされているが,当該「パソコン・メール」の送信記録(同日午前1時12分)をもって,そのまま「労働時間」を示すものとみることができないことは,上記(B)の場合と同様であって,当該「パソコン・メール」の送信が当該業務の遂行上緊要なものと客観的に認められる場合に限り,上記「パソコン・メール」の送信記録に基づき「労働時間」を認定すべきものと解される。 上記c(a)で認定したとおりP1は,5月7日,新宿午前8時45分発の乗り物に乗車し,ロンドン出張に向かう予定であったことから,上記「パソコン・メール」(甲89の7)は,P1が上記ロンドン出張に出かけ,暫く日本を不在にすることを踏まえ,急遽,本件会社の社員に対し,その間の対応を指示したメールであると認められ,しかも,その「OriginalMessage」には,その「Inportance」欄に「High」との記載があることなどを考慮すると上記「パソコン・メール」の送信は,客観的にみてP1の臨床開発業務の遂行上緊要なものであったと認められ,その送信に要したもの と推認される15分間は,上記就労日の「労働時間」に当たるものというべきである(なお便宜上,この15分間は,④5月7日の「拘束時間数」及び「労働時間数」に加算する。)。 なお原告は,5月6日午後8時ころからP1は,翌日のロンドン出張の準備をしていたものとして,④5月7日(5月6日)の労働時間を5月6日午後8時(始業時刻)から翌日午前1時22分(終業時刻)までであると主張するが,このような主張を裏付けるに足る客観的な証拠はなく,原告の上記主張は採用の限りではない。 (b) 類型Ⅳ・(1):P1の「パソコン・ファイル」(甲90,91。 なお⑭は始業時刻の うな主張を裏付けるに足る客観的な証拠はなく,原告の上記主張は採用の限りではない。 (b) 類型Ⅳ・(1):P1の「パソコン・ファイル」(甲90,91。 なお⑭は始業時刻のみ)を根拠とするもの-⑩6月5日の終業時刻(甲91の4),⑬6月13日の終業時刻(甲90の2),⑭6月18日の始業時刻(甲91の5),⑳7月16日の始業時刻(甲91の3),<31>8月29日の終業時刻(甲91の1)ⅰ 甲90の「パソコン・ファイル」を根拠とするもの-⑬6月13日の終業時刻(ア) 甲90の2及び弁論の全趣旨によるとP1は,上記就労日の午後9時13分,ファイル名を「要約用.doc」とするファイルを保存したことが認められるところ,原告は,このファイルのプロパティの作成者がP1であること(甲92)などを根拠に,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「終業時刻」欄に記載のとおり,上記ファイルの保存時刻に10分間を加えた時刻もって上記就労日の終業時刻と認定すべきである旨主張し,他方,被告は,上記ファイルは上記就労日の終業時刻の認定資料とはなり得ない旨反論する。 (イ) そこで検討するに,甲92によると上記「パソコン・ファ イル」(甲90)は,本件会社のサーバに保存されているファイルであって,平成13年1月1日から同年10月12日に更新されたファイルのうち,そのプロパティの作成者がP1(作成者名:JP002748)であるファイルについてファイル名,作成日時,更新日時等を一覧表にしたものであるところ,そこに示されている「作成日時」は,最初にファイルが作成された日時を示すものとして保存されているが,ただ,そこから推認される事実は,単にP1がその保存時刻に当該ファイルの「保存」 のであるところ,そこに示されている「作成日時」は,最初にファイルが作成された日時を示すものとして保存されているが,ただ,そこから推認される事実は,単にP1がその保存時刻に当該ファイルの「保存」を行ったという事実にとどまり,それを超えて,上記保存時刻まで継続して当該ファイルの作成作業等に従事していたことまで推認させるものではなく,かかる推認を前提する原告の上記主張を採用することはできない。 (ウ) したがって,P1の上記各就労日における終業時刻は,上記(イ)で述べた認定の指針のとおり,上記勤務状況報告書の記載に基づき認定されるべきである。 ⅱ 甲91の「パソコン・ファイル」を根拠とするもの-⑩6月5日の終業時刻(甲91の4),⑭6月18日の始業時刻(甲91の5),⑳7月16日の始業時刻(甲91の3),<31>8月29日の終業時刻(甲91の1)(ア) 甲91の1・3・4・5及び弁論の全趣旨によるとP1は,(a)6月6日午前0時22分に,ファイル名を「KIKO資料20010604.doc」とするファイルを更新(保存)したこと,(b)6月18日午前8時30分に,ファイル名を「第Ⅲ相臨床試験の概要.doc」とするファイルを更新(保存)したこと,(c)7月16日午前9時28分に,ファイル名を「1964CTM説明資料20010716.ppt」とするファイルを更新(保 存)したこと,(d)8月29日午後9時57分に,ファイルを「1964prog.xls」とするファイルを更新(保存)したことが認められるところ,原告は,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「始業・終業時刻」欄に記載のとおり,上記各ファイルの保存時刻をもって上記各就労日の始業ないし終業時刻(なお終業時刻について上記保存時刻に10 原告主張に係る労働時間認定一覧表」中,上記各就労日の「始業・終業時刻」欄に記載のとおり,上記各ファイルの保存時刻をもって上記各就労日の始業ないし終業時刻(なお終業時刻について上記保存時刻に10分間を加えた時刻)と認定すべきである旨主張し,他方,被告は,上記各ファイルは上記各就労日の始業・終業時刻の認定資料とはなり得ない旨反論する。 (イ) 甲92によると甲91の「パソコン・ファイル」は,本件会社のサーバに保存されているファイルであって,平成13年1月1日から同年10月12日に更新されたファイルのうち,そのプロパティの前回保存者がP1(前回保存者名:JP002748)であるファイルについてファイル名,前回保存日時,更新日時等を一覧表にしたものであるところ,そこに示されている「更新日時」は,単にファイルのコピーを作成したり,整理のための移動などをするだけでも,電磁的記録として残るものであって,その更新日時までP1が当該ファイルに実質的な作業を行っていたことを示すものではなく,ましてやP1が,その更新日時まで継続して当該ファイルに実質的な作業を行っていたことを推認させるに足るものではなく,かかる推認を前提とする原告の上記主張を採用することはできない。 (ウ) したがって,P1の上記各就労日における始業・終業時刻は,上記ア(イ)で述べた認定の指針のとおり,上記勤務状況報告書の記載に基づき認定されるべきである。 f 以上のほかに,別紙1「原告主張に係る労働時間認定一覧表」及び 別紙2「被告主張に係る労働時間認定一覧表」によると,7月26日の終業時刻についても当事者間に争いがあるが,甲69,乙17・10頁及び弁論の全趣旨によるとP1は,同日,九州臨床薬理関連施設説明会に出席するため福岡へ 係る労働時間認定一覧表」によると,7月26日の終業時刻についても当事者間に争いがあるが,甲69,乙17・10頁及び弁論の全趣旨によるとP1は,同日,九州臨床薬理関連施設説明会に出席するため福岡へ出張したことが認められるところ,その説明会の議事録(8月5日出席者作成)によると同説明会は,「HMR1 964 の1型糖尿病患者を対象とした臨床試験について」と題する説明会で,P42において,同日午後7時15分から午後9時15分まで開催されたことが認められ,この認定を覆すに足る証拠はない。そうすると勤務状況報告書の記載時刻(乙12・7頁)ではなく,上記説明会の終了時刻である午後9時15分をもって,上記7月26日の終業時刻であると認めるのが相当である。 なお,上記勤務状況報告書の記載(甲12・7頁)によると,7月6日の終業時刻は「午後5時30分」と記載されている。しかし交通費等精算書の記載(甲17・12頁)及び弁論の全趣旨によるとP1は,前日の7月5日からPR全体会議に出席するため開催地の那須へ出張し,翌日の上記7月6日午後8時に帰着していることが認められ,この点は被告においても特に争わない。したがって,同日の終業時刻は,上記交通費等精算書の記載に基づき,「午後8時」と認めるのが相当である。 [2.休憩時間について]a 前記ア(イ)a(c)で検討したとおり,P1の(実)労働時間の認定に当たっては,他に特段の立証がない限り,休憩時間として1時間は確保されていたものと認めるのが相当である。そこで以下,争いのある①8月20日,②7月19日及び③6月18日の各休憩時間について検討を加える。 b ①8月20日及び②7月19日の休憩時間について 甲90の1によると①平成13年8月20日については, 20日,②7月19日及び③6月18日の各休憩時間について検討を加える。 b ①8月20日及び②7月19日の休憩時間について 甲90の1によると①平成13年8月20日については,ファイル名を「HMR1964臨床試験パッケージ3.doc」とするファイルが,同日午後0時12分にP1の「パソコン」中に保存されていること,②甲91の2,乙34の1・2及び弁論の全趣旨によると同年7月19日については,ファイル名を「HMR1964機構相談想定対応.doc」とする同人作成のファイル(このファイルは同月18日午後4時36分に保存されている。甲91の2のプロパティ〈甲34の2〉)が,同月19日午後0時53分に印刷のため開かれ,更新(保存)されていることが認められるところ,原告は,これらの事実を前提に所定の休憩時間中にパソコン・ファイルに保存がされている以上,上記各就労日の休憩時間は「30分」であるとみるのが相当である旨主張し,他方,被告は,これを一部争い,①8月20日については「48分間」,②7月19日については「51分間」である旨主張する。 そこで検討するに,上記の認定を前提とした場合,上記①平成13年8月20日については,P1は,少なくとも午前中の業務を同日午後0時12分まで継続していたものと推認され,したがって,その限度で上記特段の立証があったものとして,同日の休憩時間は「48分間」と認めるのが相当である。 また,上記②の同年7月19日については,上記甲91の2のファイルを開き,印刷を終了し,保存を済ますには数分間を要すること,保存時刻が上記のとおり午後0時53分と午後の始業時刻に近接していることなどからみてP1は,同日午後0時50分ころから午後の業務を開始していたものと推認することができ,したがって,その限度で上 ,保存時刻が上記のとおり午後0時53分と午後の始業時刻に近接していることなどからみてP1は,同日午後0時50分ころから午後の業務を開始していたものと推認することができ,したがって,その限度で上記特段の立証があったものとして,同日の休憩時間は「50分間」と認めるのが相当である。 c ③6月18日の休憩時間について 原告は,甲89の4のメールの記載を根拠にP1は同日午後0時30分までHMR1964の機構コンサルテーションチームミーティングに出席していたとして,上記就労日の休憩時間は「30分間」である旨主張し,他方,被告は,上記メールがP1に対しては「CC」(カーボンコピー〔CarbonCopy:「TO(宛先)」の人にメールを送ったので見て下さい,という意味。〕の略)により送信されていることを根拠に上記メールだけではP1が上記ミーティングに参加していたものと認めることには十分ではない旨反論する。 しかし,甲89の4のメール中には「メール本文にHMR1964の機構コンサルテーションチームミーティングが,同月18日(月)9:30-12:30に行われる」旨の明確な記載があることに加え,P1はHMR1964の臨床開発チームの責任者(ACM)であることを併せ考慮すると③同年6月18日については,P1は,午前中から午後0時30分ころまで上記ミーティングに参加していたものと推認するのが合理的である。 被告の上記主張は,P1の地位・職責等を考慮すると上記推認を覆すに足るものとはいえない。 以上を前提とすると上記の限度で上記特段の立証があったものとして,同日の休憩時間は「30分間」と認めるのが相当である。 ウ労働時間以外の要素から見たP1の就労実態前記認定事実4及び5に加え,乙16,17及び弁 で上記特段の立証があったものとして,同日の休憩時間は「30分間」と認めるのが相当である。 ウ労働時間以外の要素から見たP1の就労実態前記認定事実4及び5に加え,乙16,17及び弁論の全趣旨によると労働時間以外の要素から見たP1の就労実態として以下の事実が認められる(以下「認定事実6」という。)。 (ア) 発症前1か月(9月12日から10月11日。時間外労働時間・50時間37分。以下「期間A」という。)a 上記期間の総延べ日数は30日,そのうち稼働日数は23日,休日 日数は7日である。 この期間中,いわゆる3連休が二度あり,P1は,平均すると概ね週に2日の割合で休日を取得し,その間隔も5日間程度であったが,ただ,9月12日から同月21日まで10日間(後記期間Bから数えると12日間になり,その間に2日休日勤務がある。)の連続勤務がある。 b 期間A中,P1の始業時刻(平日)は,会社行事(釣り大会)があった日以外は一律午前9時45分で,終業時刻は,午後9時台が3日,午後10時台が4日,午後11時台が3日,翌日午前0時台が3日あり,深夜労働の日数は合計10日を数えたが,そのうち3時間を超えた日はなかった。 (イ) 発症前2か月(8月13日から9月11日。時間外労働時間・51時間13分。以下「期間B」という。)a 上記期間の総延べ日数は30日,そのうち稼働日数は21日,休日日数は9日である。 この期間中,いわゆる夏季休暇を含む5連休が1度あり,P1は,平均すると週に2日の割合で休日を取得し,その間隔も5日間程度であったが,ただ,8月27日から9月4日まで9日間(その中に2日間休日勤務が含まれてい いわゆる夏季休暇を含む5連休が1度あり,P1は,平均すると週に2日の割合で休日を取得し,その間隔も5日間程度であったが,ただ,8月27日から9月4日まで9日間(その中に2日間休日勤務が含まれている。)の連続勤務がある。 b 期間B中,P1の始業時刻(平日)は,午前9時30分ないし午前9時45分で,終業時刻は,午後9時台が4日,午後10時台が2日,午後11時台が1日,翌日午前0時台と午前1時台がそれぞれ1日あり,深夜労働の日数は合計5日を数え,そのうち3時間を超える日は1日あった。 c なお,この期間中,P1は,8月29日,福岡市にあるP21クリニックへ日帰り出張をしている(乙16・29頁)。 (ウ) 発症前3か月(7月14日から8月12日。時間外労働時間・34時間19分。以下「期間C」という。)a 上記期間の総延べ日数は30日,そのうち稼働日数は19日,休日日数は11日である。 この期間中,いわゆる3連休が1度あり,P1は,週に2日ないし3日の割合で休日を取得し,その間隔も5日間程度であって,それ以上の連続勤務や休日勤務はなかった。 b 期間C中,P1の始業時刻(平日)は,午前9時30分ないし午前9時45分で,終業時刻は,午後9時台が3日,午後10時台が2日,午後11時台が1日,翌日午前1時台がそれぞれ1日あり,深夜労働の日数は合計4日を数え,そのうち3時間を超える日は1日あった。 c なお,この期間中,P1は,7月26日から同月27日までの間,九州臨床薬理関連施設説明会に出席するため開催地の福岡市へ出張し(乙17・10頁),8月9日から同月10日までの間,郡山市にあるP20病院に出張している(乙17・8頁)。 までの間,九州臨床薬理関連施設説明会に出席するため開催地の福岡市へ出張し(乙17・10頁),8月9日から同月10日までの間,郡山市にあるP20病院に出張している(乙17・8頁)。 (エ) 発症前4か月(6月14日から7月13日。時間外労働時間・68時間09分。以下「期間D」という。)a 上記期間の総延べ日数は30日,そのうち稼働日数は22日,休日日数は8日である。 この期間中,P1は,週に2日の割合で休日を取得し,その間隔も5日間程度であって,それ以上の連続勤務や休日勤務はなかった。 b 期間D中,P1の始業時刻(平日)は,概ね午前9時30分ないし午前9時45分で,終業時刻は,午後9時台が3日,午後10時台が2日,午後11時台が3日,翌日午前0時台と午前2時台がそれぞれ1日あり,深夜労働の日数は合計7日を数えたが,そのうち3時間を超える日は1日あった。 c なお,この期間中,P1は,7月5日から同月6日までの間,PR全体会議に出席するため開催地の那須へ出張している(乙17・12頁)。 (オ) 発症前5か月(5月15日から6月13日。時間外労働時間・107時間54分。以下「期間E」という。)a 上記期間の総延べ日数は30日,そのうち稼働日数は27日,休日日数は3日である。 この期間中,P1は,3週続けて1日しか休日を取得せず,その間隔も7日間というのが1度あり,6月3日から6月13日まで11日間(期間Dに及んだ分を含めると13日間となり,その中に4日間休日勤務が含まれている。)の連続勤務がある。 b 期間E中,P1の始業時刻(平日)は,いずれも午前9時台(午前9時15分,30分,45分)で, 分を含めると13日間となり,その中に4日間休日勤務が含まれている。)の連続勤務がある。 b 期間E中,P1の始業時刻(平日)は,いずれも午前9時台(午前9時15分,30分,45分)で,終業時刻は,午後9時台が7日,午後10時台が5日,午後11時台が3日,翌日午前0時台が2日,午前1時台が3日あり,深夜労働の日数は合計13日を数え,そのうち3時間を超える日は3日あった。 (カ) 発症前6か月(4月15日から5月14日。時間外労働時間・46時間02分。以下「期間F」という。)a 上記期間の総延べ日数は30日,そのうち稼働日数は19日,休日日数は11日である。 この期間中,いわゆる3連休と5連休がそれぞれ1度あり,P1は,週に2日以上の休日を取得し,その間隔も4ないし6日間程度であって,それ以上の連続勤務はなかった。 b 期間E中,P1の始業時刻(平日)は,いずれも午前8時台(午前8時45分)ないし9時台(午前9時30分,45分)で,終業時刻は,午後9時台がなく,午後10時台が3日,午後11時台が3日, 翌日午前0時台が1日,同午前2時台が1日あり,深夜労働の日数は合計8日を数えたが,そのうち3時間を超える日は1日あった。 c なお,この期間中,P1は,4月15日から同月18日までの間,京都市で開催されたP19学会に出席するため同市へ出張し,5月7日から同月12日までの間,ロンドン市へ出張している(乙17・20頁,18頁)。 (4) 本件疾病の発症直前におけるP1の就労状況等ア本件疾病が発症した平成▲年▲月上旬ころのP1の就労状況前記認定事実3ないし5に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると以下の事実が認められる。 おけるP1の就労状況等ア本件疾病が発症した平成▲年▲月上旬ころのP1の就労状況前記認定事実3ないし5に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると以下の事実が認められる。 (ア) P1が死亡した平成▲年▲月ころは,順調にHMR1964の臨床試験(治験)を開始することができるようセットアップする時期で,HMR1964の治験届の締め切りが3か月後に迫っていた。 (イ) P1は,ACMとして,治験を実施する施設を選定し,その施設に関する情報を治験届に掲載する必要があったことから,同年8月ころから,上記治験施設の選定・調査を開始した(甲85)。その対象となる施設は50か所以上を予定していた(甲38,98,103,104)。 そして,同年12月までにプロトコールを完成させることが予定されていたため,P1は,部下のP22とともに,外部の医師などとのスケジュール調整をし,機構相談,申請前相談,治験後の相談などのスケジュールを組み,これらを実施するととに,頻繁に社内会議や打ち合わせを実施した(甲85)。また治験施設ごとの求めに応じて,例えば患者に案内する治験参加カード,施設特有の資料,治験スタートの説明資料などの作成に取り組んだ(甲85)。 (ウ) またP1は,HMR1964のデザイン決定に苦慮しており,治験を実施する施設の医師(P23病院教授)からは,「超速効型は高齢者 等にはリスクが高いためあまり使いたくない」との意見が出される中,HMR1964の新薬としての特徴を出すため,HMR1964のデザイン決定に必死で取り組んだ(甲85)。 (エ) こうした中,P1は,本件疾病の発症前日(▲月▲日),P22とともに,11月30日に控えた「機構相談」に向けて,「HMR1964医 4のデザイン決定に必死で取り組んだ(甲85)。 (エ) こうした中,P1は,本件疾病の発症前日(▲月▲日),P22とともに,11月30日に控えた「機構相談」に向けて,「HMR1964医薬品機構治験相談資料」(甲38)の作成に従事しており,同資料をパソコンに保存し退社した時刻は,同日午後11時30分を過ぎていた(甲105)。また▲月▲日の午前中は,上記の件に関する会議の際のP1による発表が予定されていた(甲2)。 イ本件疾病の発症1週間前におけるP1の就労状況等前記認定事実4及び5に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると以下の各事実が認められる(以下上記アの認定と一括して「認定事実7」という。)。 (ア) ▲月▲日(▲)P1は,同日午前9時45分に出社した。 その手帳には「午前11時→午前12時CTM 7B,午後3時DrP43J会議室」との,また交通費等精算書の出張先(訪問先)および経路の欄には「Insulinproject 会議」との記載がある。 同日午後6時30分,P1は退社し,P44の送別会に出席した後,翌日午前0時30分すぎにタクシーで帰宅した。なお前記イ(イ)[1. 始業・終業時刻について]b(b)ⅱで検討したとおり,この送別会に出席した時間は,「労働時間」に含まれない。 (イ) ▲月▲日(▲)休日。前記イ(イ)[1.始業・終業時刻について]b(b)ⅱで検討したとおりP1は,外出した形跡はあるが,休日出勤はしていない。 (ウ) ▲月▲日(▲) 休日。前記イ(イ)[1.始業・終業時刻について]b(b)ⅱで検討したとおりP1は,友人の住所と電話番号を調 るが,休日出勤はしていない。 (ウ) ▲月▲日(▲) 休日。前記イ(イ)[1.始業・終業時刻について]b(b)ⅱで検討したとおりP1は,友人の住所と電話番号を調べるため,同日午後2時過ぎ本件会社のビルに出掛け,40分程で退出している。 (エ) ▲月▲日(▲)休日(▲)。前記イ(イ)[1.始業・終業時刻について]b(b)ⅱで検討したとおりP1は,休日出勤をしていない。ただし自宅において仕事をした形跡が残っている。 (オ) ▲月▲日(▲)P1は,同日午前9時15分に出社した(乙12・10頁)。なおP1が使用していたパソコン中には,同日午前2時45分に「1964¥DM-BUAM 会議資料」との作業履歴が残っている。 また,その手帳には「午前9時→午前11時InsulinJPT,午後1時30分→午後5時30分SOP説明会,午後6時30分MB1-K&L」との記載がある(乙16・50頁)。 この記載によるとP1は,同日午前中,「InsulinJPT」に出席するなどし,午後12時過ぎまで働き,翌日午前0時16分に退社した(乙5・154頁)。 (カ) ▲月▲日(▲)P1は,同日8時に出社した。 その手帳には「午前9時→午前11時1964Teleconference(8時からに変更を),午後2時30分→午後3時P45DrP47,午後9時30分Visitorroom2」との記載がある(乙16・50頁)。 この記載によるとP1は,上記出社後,直ちにテレカンファレンスを行い,午後2時30分にP46研究所を訪問した。そして帰社した後,翌日午前0時過ぎまで働き,午前0時09分に退社し(乙5・154 この記載によるとP1は,上記出社後,直ちにテレカンファレンスを行い,午後2時30分にP46研究所を訪問した。そして帰社した後,翌日午前0時過ぎまで働き,午前0時09分に退社し(乙5・154頁),タクシーを利用して帰宅した(乙17・1頁)。 (キ) ▲月▲日(▲)P1は,同日午前9時45分に出社した。 その手帳には,「午後1時15分→午後2時30分まで防災訓練説明会,午後3時→午後4時までP17先生,午後4時30分からP18さん」との記載がある(乙16・50頁)。 この記載によるとP1は,同日午後1時から午後3時までの間,防災訓練説明会に出席し,次いで午後3時から午後4時まで「P17先生」と称する人物,更に午後4時からは「P18さん」と称する人物と面談した。そして上記ア(エ)で認定したとおり,11月30日に控えた「機構相談」に向け,「HMR1964医薬品機構治験相談資料」(甲38)の作成に従事した上,同日午後11時36分に退社した(乙5・154頁)。 (ク) ▲月▲日(▲)退社後,P1は,一人で「P16」に寄り,「カクテル」を飲み,タクシーを使用して帰宅し(乙5・179頁),自宅の一室で,本件疾病により死亡した。死亡推定時刻は同日午前4時ころである。 (5) 本件疾病の業務起因性に関する総合的検討前記認定事実1で検討したとおり,P1の心臓には既往の心筋虚血は見られないものの,冠状動脈疾患が進行していたと認められ,かかる冠状動脈疾患が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となるべき基礎疾患を構成していた可能性が高い。しかし仮にそうだとしても,その進行程度は,本件剖検時においても軽度のものにとどまっていたのであるから,本件 患が本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の原因となるべき基礎疾患を構成していた可能性が高い。しかし仮にそうだとしても,その進行程度は,本件剖検時においても軽度のものにとどまっていたのであるから,本件発症の6か月前はもとより,その直前においても上記基礎疾患たる冠状動脈疾患は,その自然の経過により心停止〈心臓性突然死〉を引き起こす寸前にまで増悪していたとはいえないことは明らかである。 そこで以上の前提を踏まえ,前記各認定事実に基づき,本件疾病(心停止 〈心臓性突然死〉)の業務起因性について判断する。 ア本件会社におけるP1の業務の加重性(ア) 本件疾病発症前6か月間における業務について本件会社におけるP1の労働時間(時間外労働時間も含む。),勤務態様,業務内容の加重性については,以下のとおり評価することができる。 a 労働時間からみた加重性P1の時間外労働時間について,原告は,本件疾病発症前1か月間が107時間50分,同6か月間の平均が85時間09分に及んでいた旨主張し,一方,被告は,同1か月間が36時間32分,同6か月間の平均が55時間13分にとどまる旨主張するところ,前記認定事実4によると上記発症前1か月間が51時間37分であり,同6か月間の平均が59時間42分であることが認められる。 以上のP1の時間外労働時間を前記3(1)イ(イ)aで指摘した医学的知見に照らしてみると,P1は,本件会社において臨床開発チームの責任者(ACM)として就労していた最後の6か月間,業務と脳・心臓疾患死心の発症との関連性の検討の対象となり得る1か月当たり概ね45時間を超える時間外労働を行っていた事実は認められるものの,その一方で,業務と発症との間に強い関連性が肯定される1か 業務と脳・心臓疾患死心の発症との関連性の検討の対象となり得る1か月当たり概ね45時間を超える時間外労働を行っていた事実は認められるものの,その一方で,業務と発症との間に強い関連性が肯定される1か月当たり概ね80時間を超える時間外労働を行っていたものとはいい難い。 ただ,上記時間外労働時間は,前記のとおり「就労のための使用者の指揮命令の下にある時間帯」をいうものであるところ,上記労働時間とは認められない時間帯においても,業務との関連性においては濃淡があり得る。このような観点からP1の就労実態をみるならば,P1は,本件会社における管理職であって臨床試験のプロジェクト業務 の責任者の立場にあり,昼夜を問わず,研究者や医師等の打合せも多かったといえるのであるから,これらについて幅をもった時間外労働時間としての認定はできないものの,P1は,休日に自宅等において業務の一部を行う時間があったことが推測される上(前記類型Ⅰ及びⅣ),本件会社における立場上,自ら,会議,講演会後の懇親会のほか,その二次会を設定し,出席したりすることも多々あったこと(前記類型Ⅲ)を指摘することができる。そして,これらの事情も,日常業務における負荷を増大させる要因となり得ることを考慮すると,労働時間以外の主な要因である「不規則な勤務」ないしは「拘束時間の長い業務」に準じて(前記3(1)イ(イ)b参照),本件疾病(心停止(心臓性突然死))の業務起因性を検討するにあたっての一要素として考慮されるべきであるといえる。 また,前記認定事実4によると本件疾病の発症前5か月(期間E)におけるP1の時間外労働時間は100時間を優に超えており,1日の睡眠時間として4,5時間程度を確保することがやっとの状態が続いたこと,そして,この期間Eと発症前4か月(期間D)の時間外労 期間E)におけるP1の時間外労働時間は100時間を優に超えており,1日の睡眠時間として4,5時間程度を確保することがやっとの状態が続いたこと,そして,この期間Eと発症前4か月(期間D)の時間外労働時間の平均も80時間を大きく超えており(約88時間),この期間Dから発症前1か月(期間A)における時間外労働時間の平均は51時間を超えていることが認められる。 b 就労実態及び業務内容からみた加重性(a) 就労実態からみた過重性ⅰ 前記認定事実3,6及び7によると本件疾病の発症前6か月間のP1の就労実態,すなわち同人に適用されているフレックスタイムの運用実態は以下のとおりである。 始業時刻は,休日出勤を除き,概ね午前9時台ということで一定している。 終業時刻は,平日も含めまちまちであるが,期間Eを除き深夜の時間帯(午後10時以降)に及ぶことは,稼働日数の3分の1程度であり,3時間を超える深夜勤務は月に一度程度であった。 休日は,期間Eを除き平均すると週に2日は取得され,その間隔も概ね5日間程度は確保されていた。またP1は,本件疾病の発症2か月前の期間Bには夏季休暇も含め5連休を取得し,本件疾病の発症1か月前の期間Aでは3連休を二度取得している。 また,出張の回数は,平均すると1か月に1回程度で,数日間にわたる長期出張は,本件疾病の発症6か月前の期間Fに行われたロンドン出張一件のみであった。 そして,フレックスタイムのコアタイム(午前10時30分から午後3時30分)は遵守されており,勤務時間が昼夜逆転するようなことはなかった。 ⅱ 以上によると,P1のフレックスタイ そして,フレックスタイムのコアタイム(午前10時30分から午後3時30分)は遵守されており,勤務時間が昼夜逆転するようなことはなかった。 ⅱ 以上によると,P1のフレックスタイムの運用は,一定の規則性を保った形で維持されていたものということができる。しかし,就業時刻が深夜の時間帯に及ぶことが稼働日数の3分の1程度であり,3時間を超える深夜勤務は月に一回程度あったことが認められる。 (b) 業務の内容からみた過重性前記認定事実3及び7によると,本件疾病の発症当時,HMR4006の臨床開発は暗礁に乗り上げた状態で,開発のペースもスローダウンした状態にあったこと,HMR1964の開発業務が最も多忙な時期を向かえるのは臨床試験(治験)が開始されてからのことであって,本件疾病が発症した当時は,あくまで臨床試験(治験)の開始に向け,その段取りや資料等をセットアップするための時期にあり,P1の業務は,これから予想される業務からみて,極 めて多忙な時期にあったとまではいえない。 しかし,P1は,HMR1964の臨床開発チームの責任者(ACM)だけでなく,HMR4006のそれも兼任していたばかりか,本件疾病の発症当時,HMR1964の治験届を3か月先に控え,同治験薬のデザイン決定を含め,かなり厳しいスケジュール管理とその下での業務遂行を求められていたということができる。また,死亡当日には,P1は,会議における発表が予定されていた。 (イ) 本件疾病の発症直前における業務についてa 前記認定事実2によるとP1は,平成▲年▲月▲日午前4時ころ本件疾病の発症により死亡したものと推定されるところ,本件疾病の発症前一週間のP1の就労状況等は,前記認定事実7において認定したとおりであり, 認定事実2によるとP1は,平成▲年▲月▲日午前4時ころ本件疾病の発症により死亡したものと推定されるところ,本件疾病の発症前一週間のP1の就労状況等は,前記認定事実7において認定したとおりであり,P1は,死亡前日である同月▲日の終業時刻が午後11時36分,同月10日のそれが翌11日午前0時09分,同月9日のそれが翌10日午前0時16分であり,この3日間の実労働時間は「42時間」を超えていた。これを1日当たりの労働時間数に直すと,1日平均して14時間を超える労働に従事していたことになり,しかも,その内容は,かなり密度の濃いものであったことがうかがわれる。 確かに,前記認定事実4,5及び7によるとP1は,上記3日間の就労に先立って,同月6日から8日までの3日間連続して休日を取得していることが認められるが,その一方で,P1のパソコン履歴中に10月9日の午前2時45分ころまで同人が会議資料を作成していたことをうかがわせる記録が残っていることからすれば,同日(10月8日深夜)のその時点においては少なくともP1は上記業務に従事していたことが認められ,そうすると,同日朝にかけて睡眠時間は数時間程度の短時間であった可能性があるといえる。P1は,上記3日間連続した休日において,上記のような同日以降の激務に備え,十分な 休養をとっていたかについては疑問を挟む余地がある。 b なお,前記認定事実7によると本件疾病の発症直前,P1の身辺に強度の精神的ないし身体的負荷を引き起こす緊急ないし突発的又は予測困難な異常事態が発生していたとは認められず,他に,P1が,そうした異常事態に遭遇していたと認めるに足る証拠はない。 イ本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)に関する業務以外の発症因子の有無前記認定事実1のエ(イ)で認定した 1が,そうした異常事態に遭遇していたと認めるに足る証拠はない。 イ本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)に関する業務以外の発症因子の有無前記認定事実1のエ(イ)で認定したP1が過去に受診した健康診断の結果によるとP1は,平成8年から同10年の間に受診した健康診断において高血圧の症状を示していたこと,平成7年と同8年の健康診断では心臓の刺激伝導系(平成7年が「洞性不整脈」,同8年が「心室内ブロック」)に僅かな異常が見られたこと,そして平成10年の健康診断では「高中性脂肪血症疑」とされ「経過観察」と判定された経緯が認められる。 しかし平成11年に受診した健康診断の結果は「異常なし」とされ,上記高血圧症状と「高中性脂肪血症疑」を示していた数値は正常化していたものと推認され,また「洞性不整脈」と「心室内ブロック」についても平成9年以降の健康診断では異常が見られず,これに本件剖検の結果を併せ考慮すると,一時的な心電図異常であったとみる方が自然である。 したがって,これらの健康診断の結果は,業務以外に本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の確たる発症因子が存在したことを推認させる足るものではなく,他に,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症についてP1に業務以外の確たる発症因子を認めるに足る証拠はない。 ウ総合的検討(ア) P1は,平成▲年▲月▲日午前4時ころ(推定),本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)により死亡したことは前記認定のとおりである。 そして,その原因については,前記2(3)及び上記(5)の冒頭で検討した とおりであり,本件疾病の発症直前において,P1は,基礎疾患として考えられる軽度の冠状動脈疾患の存在は認められるものの,同病変等の増悪により,いつ心停止の状態に至って 記(5)の冒頭で検討した とおりであり,本件疾病の発症直前において,P1は,基礎疾患として考えられる軽度の冠状動脈疾患の存在は認められるものの,同病変等の増悪により,いつ心停止の状態に至ってもおかしくない状態にあったものとは認められない。また,P1が従事した業務以外に同人の素因又は基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させる要因となる確たる発症因子は認められない。 (イ) そこで,P1の業務内容についてみると,前記アにおいて検討したとおりであり,時間外労働時間について,発症前1か月間が約51時間であり,同6か月間の平均をみても59時間強であることが認められ,このことだけをみると直ちにP1は,本件会社において,著しく過重な業務に従事したとはいい難い。 しかし,その一方で,①時間外労働時間の推移を仔細にみると,発症前5か月(期間E)におけるP1の時間外労働時間は100時間を優に超えたことがあり,しかも,それ以降,発症までの期間(期間AないしD)における時間外労働時間の平均も50時間を超えており,また,発症前6か月の間に深夜労働を行った日が3分の1程度に上っていることからみて,上記期間Eにおける疲労を回復するに十分な労働時間の減少があったとはいい難いこと,②P1は,いわゆる時間外労働とは認め難いものの,休日を含め自宅においても深夜まで業務を行うことや,業務に関連して帰宅が深夜に及ぶ日も相当数あったといえ,その意味で実際の勤務状態はかなり不規則なものであったと考えられること,また,③P1の業務内容は,かなり厳しいスケジュール管理とその下での業務遂行を求められており,これに伴う精神的緊張の程度は決して小さなものではなかったと考えられること,④死亡直前の3日間については,実労働時間が14時間を超えるという極めて長時間,かつ密度の濃い労 業務遂行を求められており,これに伴う精神的緊張の程度は決して小さなものではなかったと考えられること,④死亡直前の3日間については,実労働時間が14時間を超えるという極めて長時間,かつ密度の濃い労働に従事しており,睡眠時間は1日数時間程度であったといえる(P1の終 業時刻についてみると,深夜に及ぶ日は多々あったものの,午後11時30分以降の終業時刻が3日間連続したことは,発症前6か月間には一度もなかったことである。)こと,そして,⑤P1は,この長時間にわたる3日間の労働(激務)の直後に,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)を発症し,死亡していることを指摘することができる。 (ウ) 以上の各事情に加え,⑥前記3(1)ア(ウ)のとおり「疲労の蓄積」が生じた場合,ストレス反応が持続し,カテコールアミンの分泌が促進され,それにより血圧上昇と心拍数の増加,心筋酸素消費量の増大,あるいは冠れん縮を発生させ,その結果として,致死性不整脈によって突然死に至ることがあり,これは冠状動脈硬化のみを有する症例でも起こり得る病態であるとの知見が存することなどを併せ考慮すると,本件会社におけるP1の業務は,同人の上記基礎疾患をその自然経過を超えて著しく増悪させ得る程度の精神的・肉体的負荷のある過重な業務であったということができる。 そうすると,本件においてP1は,本件疾病発症前に従事した上記の加重な業務により,上記基礎疾患をその自然の経過を超えて急激に増悪させ,本件疾病(心停止〈心臓性突然死〉)の発症に至ったものとみるのが相当である。 第4 結語以上によれば,本件会社におけるP1の業務と本件疾病の発症及びこれによる同人の死亡との間には相当因果関係を肯定することができるから,本件疾病の業務起因性を否定して行った本件不支給決定は違法であり,取 以上によれば,本件会社におけるP1の業務と本件疾病の発症及びこれによる同人の死亡との間には相当因果関係を肯定することができるから,本件疾病の業務起因性を否定して行った本件不支給決定は違法であり,取消しを免れない。 よって,原告の本件請求は,理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官古久保正人 裁判官伊良原恵吾 裁判官内藤寿彦
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