平成17(わ)875 業務上過失致死傷

裁判年月日・裁判所
平成19年1月26日 大津地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-34956.txt

判決文本文33,032 文字)

主文 被告人を禁錮3年に処する。 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成17年11月13日午前5時ころ,業務として大型貨物自動車を運転し,滋賀県彦根市a町地先高速自動車国道中央自動車道西宮線下り線411. 3キロポスト付近を北方から南方に向かい時速約90キロメートルで進行中,同月7日から,深夜に及ぶ長距離運転業務を継続的に行っていたことによる睡眠不足と過労のため眠気を覚え,前方注視が困難な状況に陥ったのであるから,直ちに運転を中止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,直ちに運転を中止せず,漫然上記状態のまま同速度で運転を継続した過失により,そのころ,睡眠状態に陥り,自車を右前方に逸走させ,折から自車右前方を時速約40キロメートルの低速度で進行していたA運転の大型乗用自動車左後部に自車右前部を衝突させて自車を前方に暴走させ,自車前方にいたB運転の普通貨物自動車後部に自車前部を衝突させて同車を右前方に押し出してC運転の大型乗用自動車に衝突させ,次いで,自車前方で停止していたD運転の普通乗用自動車右後部に自車左前部を衝突させた上,東側路肩に横転していたE運転の普通乗用自動車に自車左前部等を衝突させるなどし,よって,これらの衝撃により,そのころ,同所において,別紙一覧表記載のとおり,前記Eほか4名を死亡させるとともに,Bほか2名に傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1本件の争点 主位的訴因(起訴状記載の公訴事実)被告人は,平成17年11月13日午前5時ころ,業務として大型貨物自動 車を運転し,滋賀県彦根市a町地先高速自動車国道中央自動車道西宮線下り線411.8キロポスト付近道路を北方から南方に向かい時速約90キロメートルで進行するに当たり,前 ろ,業務として大型貨物自動 車を運転し,滋賀県彦根市a町地先高速自動車国道中央自動車道西宮線下り線411.8キロポスト付近道路を北方から南方に向かい時速約90キロメートルで進行するに当たり,前方左右を注視し,進路の安全を確認しながら進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,交通閑散に気を許し,寝不足による疲労等で注意力散漫となり,前方左右を注視することなく,進路の安全を確認しないまま前記速度で漫然進行した過失により,自車右前方を時速約40キロメートルの低速度で進行していたA運転の大型乗用自動車に気付かないまま,同車左後部に自車右前部を衝突させて自車を前方に暴走させ,自車前方にいたB運転の普通貨物自動車後部に自車前部を衝突させて同車を右前方に押し出してC運転の大型乗用自動車に衝突させ,次いで,自車前方で停止していたD運転の普通乗用自動車右後部に自車左前部を衝突させた上,東側路肩に横転していたE運転の普通乗用自動車に自車左前部等を衝突させるなどし,よって,これらの衝撃により,そのころ,同所において,別紙一覧表記載のとおり,前記Eほか4名を死亡させるとともに,Bほか2名に傷害を負わせたものである。 予備的訴因(訴因の予備的追加変更請求書記載の公訴事実)上記認定事実と同旨 弁護人の主張弁護人は,①主位的訴因について,被告人は,本件事故直前に,睡眠時無呼吸症候群に起因するマイクロスリープ状態(車を運転している時,目を開けたまま瞬間的に寝てしまう現象)に陥っており,前方左右の注視が不可能な状況に陥っていたのであるから,被告人に前方左右注視義務違反の過失はない,②予備的訴因について,被告人は,睡眠時無呼吸症候群により全く眠気を感じることなく突然睡眠状態に陥ったものである上,当時自らが睡眠時無呼吸症候群に罹患していることを全く認識 視義務違反の過失はない,②予備的訴因について,被告人は,睡眠時無呼吸症候群により全く眠気を感じることなく突然睡眠状態に陥ったものである上,当時自らが睡眠時無呼吸症候群に罹患していることを全く認識しておらず,睡眠状態に陥ることについて予見可能性も結果回避可能性もなかったのであるから,被告人に運転中止義務違反の過失はない,③各訴因について,Eほか4名の死亡については,本件事故直 前にX運転の大型乗用自動車(以下「X車」という。)がE運転の普通乗用自動車(以下「E車」という。)に追突した交通事故(以下「第1事故」という。)によって生じた可能性を排斥することができないから,本件事故との間に因果関係はない旨主張する。 すなわち,本件の争点は,①主位的訴因に関し,前方左右注視義務違反の過失の有無(その前提として,被告人が本件時に睡眠状態に陥っていなかったか否か),②予備的訴因に関し,運転中止義務違反の過失の有無(その前提として,被告人が本件時に睡眠状態に陥ることを予見できたか否か),③各訴因に関し,Eほか4名の死亡との因果関係の有無(被告人の引き起こした事故により各被害者が死亡したといえるか否か)である。 第2争点判断の前提となる事実そこで検討すると,関係各証拠によれば,以下の各事実を認定することができる。 本件事故に至る経緯被告人は,平成17年11月7日午前7時20分ころ,配送のため大型貨物自動車(以下「被告人車」という。)を運転して京都府内の運送会社事務所を出発し,その後埼玉県,東京都,福岡県,東京都,神奈川県へと移動し,同月12日午後4時ころ,電化製品を配送するためにさらに福岡県へ向けて出発した。この間,被告人は,業務の合間などに1回当たり数時間程度,主に被告人車の中で仮眠を取ることはあったが,時間も不規則でまとまった睡眠は 後4時ころ,電化製品を配送するためにさらに福岡県へ向けて出発した。この間,被告人は,業務の合間などに1回当たり数時間程度,主に被告人車の中で仮眠を取ることはあったが,時間も不規則でまとまった睡眠は取れず,そのような勤務形態に慣れていなかったこともあって,疲労を感じていた。 被告人は,厚木インターチェンジから高速自動車国道第一東海自動車道(通称東名高速道路)に入り,途中で1度食事休憩を取った以外は休憩を取ることなく西に走り続けたが,愛知県所在の豊橋本線料金所を過ぎたあたりで強い眠気を感じたことから,同日午後8時30分ころ,最寄りの赤塚パーキングエリアに入り,2時間程度の予定で仮眠に入ったが,予定を大幅に超えて同月13 日午前1時30分ころに目を覚ました。 被告人は,直ちに同所を出発し西に走り続けて,高速自動車国道中央自動車道西宮線(通称名神高速道路)に入ったが,再び強い眠気を感じたことから,同日午前3時前ころ,伊吹パーキングエリアに入って,運転席に座ったままシートを倒して再度仮眠に入り,午前5時前に目を覚ました。被告人は,途中で自宅に立ち寄りたかったこともあり,急いで同所を出発して西へと向かい,10分ほどで本件事故現場付近へと差し掛かった。なお,被告人は,この間,オートクルーズ機能(スイッチを入れると,その時点での速度を保ったままアクセルを踏むことなく走行し続ける機能)を利用して,ハンドル操作のみで時速約90キロメートルの速度で走行し続け,少なくとも本件事故現場手前では走行車線を進行していた。 本件事故現場の状況本件事故現場は,米原ジャンクション西方約6.7キロメートルに位置する名神高速道路下り線411.8キロポスト付近路上であり,同所はガードレールにより中央分離帯が設置された,走行車線(進行方向左側)及び追越車線(進行方向右側 クション西方約6.7キロメートルに位置する名神高速道路下り線411.8キロポスト付近路上であり,同所はガードレールにより中央分離帯が設置された,走行車線(進行方向左側)及び追越車線(進行方向右側)からなる片側2車線の道路である。また,走行車線左側には路側帯が設けられ,さらにその左側は山手に約45度傾斜したブロック側壁の法面となっている。なお,本件事故現場手前の道路状況については,410. 2キロポスト付近から410.7キロポスト付近にかけては勾配約5パーセントのほぼ直線の下り坂,410.8キロポスト付近から411.7キロポスト付近にかけては曲線半径約1200メートルのほぼ平坦な左カーブ(路側帯の幅約2.2メートル),411.7キロポスト付近から本件事故現場付近までの約100メートルは上り勾配約1パーセントの直線道路(路側帯の幅約2. 7メートル)となっている。なお,本件事故当時,路面は乾燥していた。 第1事故の状況Xは,本件事故現場の直前に追越車線から走行車線に入り,時速約80キロ メートルで走行していたが,カーラジオの操作に気を取られて前方を注視していなかったため,同日午前5時ころ,右後輪のバーストにより走行車線を時速約20ないし30キロメートルの低速度で走行していたE車に直前で気付き,あわてて急制動の措置を講じたものの及ばず,自車前部をE車後部に追突させた。E車は,追突後,前方に押し出されながら左回りに半回転し,法面に接触した後,追突場所の前方約80.3メートルの路側帯上にフロントガラス側を手前に向け,助手席側を地面に接する形で横転した。X車は,追突場所の前方約114.6メートルの走行車線上に停止した。 後続車両の動静,運転者の目撃状況等㨯Dは,Jを助手席に乗せて普通乗用自動車(以下「D車」という。)を運転して走行車線 た。X車は,追突場所の前方約114.6メートルの走行車線上に停止した。 後続車両の動静,運転者の目撃状況等㨯Dは,Jを助手席に乗せて普通乗用自動車(以下「D車」という。)を運転して走行車線を進行中,約90.1メートル前方を走っていたX車の辺りからかなり大きな衝突音が聞こえたことから,同車が追突事故を起こしたと思い,減速しながら進行するうち,E車が左回りに半回転して横転するのを目撃し,その横転場所の後方約25.5メートルに車体の一部を路側帯に乗り入れる形で,ハザードランプを点滅させながら停止した。DがE車の様子を確認すると,同車のフロントガラス越しに,両手を挙げて頭上にある運転席のドアを開けようとしている人物の姿が見えた。なお,Dが見る限り,E車から車外に出たり,車外に倒れている人物はいなかった。 㨯Cは,大型乗用自動車(以下「C車」という。)を運転して走行車線を進行し,本件事故現場付近に差し掛かったところ,約200メートル前方に煙を上げて停止しているE車及びその前方の走行車線上に停止しているX車を発見し,両車が交通事故を起こしたことに気付き,すぐに減速してハザードランプを点滅させ,追越車線に車線変更した上で,横転するE車の横を時速約20キロメートルで通り過ぎようとした。Cは,E車の様子が気になり,同車から10ないし20メートルほどの地点で1,2秒程度同車の方を見たところ,同車の助手席に,頭や顔の辺りを手で押さえるような格好をしてい る人物の姿が見えた。 㨯Aは,大型乗用自動車(以下「A車」という。)を運転して走行車線を進行し,本件事故現場付近に差し掛かったところ,約100メートル前方を走行するC車がブレーキを掛けながら追越車線に入り,ハザードランプを点滅させたことから,前方で交通事故が発生したことに気付き,自らもC車に続 件事故現場付近に差し掛かったところ,約100メートル前方を走行するC車がブレーキを掛けながら追越車線に入り,ハザードランプを点滅させたことから,前方で交通事故が発生したことに気付き,自らもC車に続いて減速しながら追越車線に入り,ハザードランプを点滅させながら,時速約40キロメートルで進行した。 㨯Bは,普通貨物自動車(以下「B車」という。)を運転して走行車線を進行し,本件事故現場付近に差し掛かった(Bは,事故の衝撃で事故当時の状況を記憶しておらず,Bの当時の認識やB車の動静については明らかでない。)。 本件事故の状況被告人車は,E車の横転場所の後方約106.3メートルの地点において,走行車線から追越車線に車体を若干はみ出した状態で,運転席右側に取り付けられたサイドミラーをA車の左後角部に衝突させ,その後もオートクルーズ機能により時速約90キロメートルを保ったまま,A車のすぐ左横を通り抜ける形で前進し,衝突地点の前方約72.2メートルの走行車線上でB車の後部に,さらにその前方約6.6メートルの走行車線上でD車の右後部にそれぞれ車両前部を衝突させた。B車は,その衝撃で前方やや右方向に約23.5メートル押し出され,追越車線上のC車左側面部に衝突した。 D車への衝突後,被告人は,走行車線前方にX車が停止しているのを認め,同車への衝突を避けるためにとっさに急ブレーキをかけるとともにハンドルを左に切って路側帯に進入し,路側帯上に横転していたE車の前部に自車前部を衝突させ,そのまま同車を約16.8メートル前方まで引きずり,さらにそこからX車左横を通り過ぎつつ,約83.8メートル進行して停止した。 なお,E車は,第1事故後には上記のとおり助手席を下に向けた形で横転し ていたが,本件事故後はフロントガラス側を手前に向けたまま,左車輪部を除いた り過ぎつつ,約83.8メートル進行して停止した。 なお,E車は,第1事故後には上記のとおり助手席を下に向けた形で横転し ていたが,本件事故後はフロントガラス側を手前に向けたまま,左車輪部を除いた車底部のほぼ全体を法面に乗り上げる形で停止している。 また,第1事故から本件事故までの時間については,Xが自車を停止させて車外へ出るために運転席ドアを開けようとしたが開かず,助手席ドアから出ようとしたところで自車左側を被告人車が通過した旨供述していることや,Dが自車を停止させてからおおよそ15秒ないし20秒で被告人車に追突された旨供述していることなどを総合すると,1分に満たない程度であったと推認できる。 遺体の状況本件事故後,E車に乗車していた以下の7名がいずれも車外で遺体として発見され,各遺体についてM医師による鑑定が実施された。その発見状況や鑑定結果は以下のとおりである。 㨯K同人の遺体は,E車の最終停止位置から約5.0メートル前方の路側帯上に,頭部を法面方向に向けて仰向けに横たわっていた。その遺体の下の路面には,後頭部からの出血によると見られる血痕や,E車から続く引きずり痕が認められる。 鑑定時の所見によれば,Kの遺体には,①後頭部打撲創(後頭正中やや左部に,幾分上方向に非常に強い打撃が加わって形成されたと見られる,頭皮の左斜め下から上方向への弁状の大きな皮膚破綻とその外側の同様の小破綻がある。大きな皮膚破綻部の内側では後頭骨骨折・陥没,頭蓋窩骨折等が生じており,後頭蓋窩骨折に起因して小脳損傷を伴う延髄断裂が生じている。 なお,頭皮外表には路面や車両底面での擦過を示す変化は認められない。),②肺臓・肝臓の振盪創(背面等の強い打撲による肺臓や肝臓の破裂であり,いずれも重篤な損傷),③全身の擦過傷(いずれも軽傷)等が認められる。 M医 は路面や車両底面での擦過を示す変化は認められない。),②肺臓・肝臓の振盪創(背面等の強い打撲による肺臓や肝臓の破裂であり,いずれも重篤な損傷),③全身の擦過傷(いずれも軽傷)等が認められる。 M医師は,①を第1事故時にE車部品で打撃されたことによる追突損傷(な お,遺体の損傷状況等から,KはE車最後列の右側に乗車していたと推定している。),②を第1事故後に走行中の車両から振り落とされて路面で背面を強打したことによる転落損傷,③を追突・転落時に生じた損傷と判断し,①のうちの延髄断裂を致命傷と判断している。 㨯F同人の遺体は,E車の最終停止位置から約9.6メートル前方の路側帯上に,頭部を法面方向に向けて横向きに横たわっていた。その遺体の下の路面には,E車から続く2筋の引きずり痕(血液様のもの1筋,肉片様・血液様のもの1筋)が認められ,後者の引きずり痕はFの遺体のあたりで止まっている。 鑑定時の所見によれば,Fの遺体には,①左右膝部の表皮剥脱,左右大腿骨骨折,左右仙腸関節離開,②肝臓・脾臓・心臓破裂,肋骨多発骨折,肋骨骨折端の肺臓への嵌入,胸鎖関節離開,頚椎完全脱臼とこれに伴う延髄断裂,後頭部の皮下出血等が認められる。M医師は,損傷の部位,形状等から,①を第1事故による追突損傷,②を本件事故による轢過損傷(体の左側を下にした状態で腹部右側から上方向に圧挫されて形成されたもの)と判断し,②のうちの延髄断裂を致命傷と判断している。 㨯E同人の遺体は,E車の最終停止位置から約9.6メートル前方の路側帯上に,Fの遺体と折り重なるようにして,脚部を法面方向に向けて横向きに横たわっていた。その遺体の下には,頭部からの出血によると見られる大量の血痕や,E車から続く引きずり痕が認められる。 鑑定時の所見によれば,Eの遺体には,①右鎖骨部皮下出血,下 面方向に向けて横向きに横たわっていた。その遺体の下には,頭部からの出血によると見られる大量の血痕や,E車から続く引きずり痕が認められる。 鑑定時の所見によれば,Eの遺体には,①右鎖骨部皮下出血,下腹右側部・上行結腸部出血,胃内容物の気管吸引,胸骨骨折,肺臓右下葉出血,心臓前面点状出血,左右膝関節の捻転性脱臼骨折,左大腿内側の皮下出血,②前頭右側への打撃によると見られる頭蓋骨粉砕状骨折を伴う右前頭葉挫滅,右 側頸部から頬部,右耳部及び右耳後部にかけてのガラス片による顕著な損傷,③腰部,臀部等の擦過傷(表皮剥脱・赤褐色への顕著な変色)等が認められる。M医師は,損傷の部位,形状等から,①を第1事故による追突損傷(運転席側シートベルトでの圧迫,ハンドルへの打撃,横転時の打撲・捻転等による損傷。なお,遺体の損傷状況等から,Eは運転席に乗車していたものと推定している。),②を本件事故による衝突損傷(被告人車の前部等による前面からの損傷),③を車外放出時の損傷と判断し,②のうちの右前頭葉挫滅を致命傷と判断している。 㨯G同人の遺体は,E車の最終停止位置から約25.8メートル前方の路側帯上に,頭部を進行方向前方に向けて仰向けに横たわっていた。その遺体の下には,頭部等からの出血によると見られる大量の血痕や,E車から続く引きずり痕が認められる。 鑑定時の所見によれば,Gの遺体には,①頭部顔面の損傷(頭部顔面の前面を左から右へ圧挫されたことによると見られる頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳脱出,前頭部・鼻部・左眼部を中心とする表皮剥脱,頭皮破裂,第5・第6頸椎骨折転位。なお,後頭部に毛髪のすり減りや擦過傷は認められない。),②胸部の損傷(胸部及び腹部の上方を左から右へ圧挫されたことによると見られる胸部左右・下部の表皮剥脱,肝臓破裂,右側肋骨群の前面及び背面の 。なお,後頭部に毛髪のすり減りや擦過傷は認められない。),②胸部の損傷(胸部及び腹部の上方を左から右へ圧挫されたことによると見られる胸部左右・下部の表皮剥脱,肝臓破裂,右側肋骨群の前面及び背面の多発骨折,心㨯破裂,右心房破裂,肋骨骨折端による右肺臓損傷。なお,左右肩甲骨間の皮膚破綻を除いて背面に顕著な表皮剥脱は認められない。),③膝部付近の損傷(左膝部を中心とした大きな皮膚破綻,筋肉断裂,膝関節脱臼骨折,左大腿骨骨折,右腹部・右大腿部表皮剥脱)等が認められる。M医師は,損傷の部位,形状等から,①ないし③のいずれも本件事故による轢過損傷(座席に座った状態で前左下から右上方向に轢過されて形成された損傷)と判断し,①,②ともに致命的損傷であるものの,①のうちの脳脱出を 致命傷と判断している。 㨯H同人の遺体は,E車の最終停止位置から約82.8メートル前方の路側帯上に,頭部を進行方向前方に向け,停止した被告人車の左2軸目車輪左側に右腹部を接する形で,うつ伏せに横たわっていた。その遺体の下には,頭部からの夥しい出血を含むと見られる大量の血痕や,E車から続く引きずり痕が認められ,その引きずり痕は同遺体付近で止まっている。 鑑定時の所見によれば,Hの遺体には,①左右仙腸関節の離開,肝臓・脾臓破裂,腎門部・膵臓出血,心臓表面の点状出血,②右胸・腹部ないし右大腿外側・右上肢内側・右肩部・頸部右側・右頬部・前頭右側の表皮剥脱,右上肢後面や背面の皮膚欠損を含む表皮剥脱,頭部顔面全体の右から左への圧偏,頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳脱出等が認められる。M医師は,損傷の部位・形状等から,①を第1事故による追突損傷(追突時に前方に押し出され,前方の座席部で下肢・胸部・腹部を打撲したことによる損傷であり,重篤な損傷),②を本件事故による轢過損傷(仰向けの状態で, の部位・形状等から,①を第1事故による追突損傷(追突時に前方に押し出され,前方の座席部で下肢・胸部・腹部を打撲したことによる損傷であり,重篤な損傷),②を本件事故による轢過損傷(仰向けの状態で,体幹と右上肢の間から頭部顔面にかけて車輪等で轢過されたことによる損傷)と判断し,②のうちの脳脱出を致命傷と判断している。 㨯L同人の遺体は,E車の最終停止位置から約82.8メートル前方の路側帯上に,脚部を法面方向に向け,停止した被告人車の左2軸目車輪前部に左腰部ないし大腿部を接し,上半身が同車の車体の下に入り込む形で仰向けに横たわっていた。その遺体の脚部の上にはHの遺体が横たわっており,遺体の下には大量の血痕が認められる。 鑑定時の所見によれば,Lの遺体には,①左胸鎖関節部・左腸腰筋部の出血,脾臓・肝臓破裂(ただし,胸腹部の外表に擦過傷等はない。),②頤部・下唇部・左耳介下部表皮剥脱とその内側の下顎骨骨折,左眉部擦過打撲と その内側の前頭蓋窩骨折,両骨折部からの鼻口腔への出血と気管吸引,③後頭正中部の柳葉状の皮膚破綻(挫創)とその内側の頭蓋骨骨折,④肋骨骨折,⑤左右下腿部の表皮剥脱,⑥右大腿後面から外側にかけての皮膚欠損(擦過は外側から内側に向かっており,この部分に出血は認められない。),右大腿後面の筋肉欠損(右大腿骨骨頭露呈),左大腿前面ないし外側部の擦過傷,左大腿後面の筋肉欠損(同じく擦過は外側から内側に向かっており,この部分にも出血は認められない。),左右下腿前面の小表皮剥脱,左右足部の擦過傷等が認められる。M医師は,損傷の部位・形状等から,①を第1事故時の助手席側シートベルトでの圧迫による追突損傷,②を第1事故時のフロントガラス等への打撲による追突損傷,③を第1事故時のフロントガラス等への打撲の反動でE車部品に打撲したことに から,①を第1事故時の助手席側シートベルトでの圧迫による追突損傷,②を第1事故時のフロントガラス等への打撲による追突損傷,③を第1事故時のフロントガラス等への打撲の反動でE車部品に打撲したことによる追突損傷,④を第1事故時の背面打撲による追突損傷(ただし,本件事故での引きずりによる可能性も残る。),⑤を第1事故時の助手席前部部品での擦過打撲による追突損傷,⑥を本件事故による引きずり損傷と判断し,死因については②の出血血液を気管吸引したことによる窒息死と判断している。 㨯I同人の遺体は,E車の最終停止位置から約83.8メートル前方の路側帯上に,頭部を進行方向後方に向け,停止した被告人車の左1軸目車輪内側の車体下に全身が入り込む形で,横向きに横たわっていた。その遺体の下には,頭部等からの出血によると見られる大量の血痕が認められる。 鑑定時の所見によれば,Iの遺体には,①左右膝関節部・左右大腿部の表皮剥脱(いずれも軽傷),後頭左側の右から左方向への挫創(皮膚翻転),②左大腿後面部の皮膚破綻,左大腿骨骨折,胸部左側凹損,胸骨及び各肋骨の結合離断,左側頭部全域の皮膚破綻,前頭部右の下から上方向への挫創(剥離),③第1,第2頸椎間脱臼骨折,延髄断裂が認められる。M医師は,損傷の部位,形状等から,①を第1事故による追突損傷(なお,後頭左側の 挫創は,他の頭部の損傷と方向が異なることから,第1事故時にE車の部品で損傷した可能性が高く,そのことからしてIは最後列の中央か左側に乗車していたものと推定している。),②を第2事故による圧挫・引きずり損傷,③を②の頭部とそれ以外の部分との引きずり速度のずれによる損傷と判断し,死因については③の頸椎脱臼骨折による延髄断裂と判断している。 各車両の形状,損傷状況等本件事故後の実況見分等によれば,E車, を②の頭部とそれ以外の部分との引きずり速度のずれによる損傷と判断し,死因については③の頸椎脱臼骨折による延髄断裂と判断している。 各車両の形状,損傷状況等本件事故後の実況見分等によれば,E車,X車及び被告人車の形状,損傷状況等は以下のとおりである。 㨯E車E車は,事故前においては長さ460センチメートル,幅169センチメートル,高さ183センチメートルで,座席3列(最前列に運転席及び助手席,2列目に2人乗り用座席及び補助座席,最後列に3人乗り用座席)により構成され,運転席及び助手席に開閉式ドア,助手席後方にスライド式ドア,車両後部にテールゲートが設けられたワゴン型の普通乗用自動車(右ハンドル車,塗色銀色)である。同車両のシートにはヘッドレストが1列あたり2つずつ備え付けられており,同型車両を用いた測定結果によれば,地面から車体下部,座席上端及びヘッドレスト上端までの高さはそれぞれ約43センチメートル,約125センチメートル及び約140センチメートル,後部テールゲートから最後列座席までの距離は約28センチメートルである。 事故後の状況を見ると,車体は全体的に逆への字型に押しつぶされ,左前輪を支点として前部が浮き上がり,屋根や後部ドアが離断脱落し,後部が全体的に前方へ押しつぶされていたほか,車体左ボディが左方に倒壊しており,原型を留めない状況に大破している。なお,事故後の車体の全長は,右側が約400センチメートル,左側が約415センチメートルである。 車体前部は,バンパーの左端から右方へ約50センチメートルの範囲で塗装が擦過状に剥離し,左端から右方約40センチメートル付近において破断 損傷が認められるほか,フロントグリルも同所付近において破断されている。 また,左角に幅約30センチメートルの黒色タイヤ痕が認められる。前照灯は,右 から右方約40センチメートル付近において破断 損傷が認められるほか,フロントグリルも同所付近において破断されている。 また,左角に幅約30センチメートルの黒色タイヤ痕が認められる。前照灯は,右側は残っているが,左側は台座の一部を残し,全体が破壊されている。 フロントガラスは割損脱落し,一部が運転席前のダッシュボードに覆い被さるようにして存在している。 ボンネットは,全体的に後方へ後退して浮き上がり,左端から右方約40センチメートルの間が後方へめくれるように曲損して,左端から右方約20センチメートルが下方へ凹損とともに曲損変形している。さらに,左前先端に黒色タイヤ痕が幅約20センチメートルで付着するとともに,曲損した左側端部に沿う状態で同じく黒色タイヤ痕の付着が認められる。ボンネット右側は側端から左方へ約25センチメートルの幅が擦過し,同所が下方に凹損している。 左側車体は,左前フェンダーが先端部分から約50センチメートルの位置で内側へ2つ折り状態に折れ曲がるとともに,同フェンダー全体が後方へめくられるように後退曲損し,タイヤハウス内が露出している。車体から離断したフェンダー上部にあたる箇所に車体から垂れ下がるようにして長さ約23センチメートル,幅約0.5センチメートルの帯状のゴムが付着している(なお,このゴムは,下記㨯⑦記載の被告人車左後輪3軸目の車輪の抉れ損傷と断面が一致する。)。左助手席ドアから左後部フェンダーまでの車体は,屋根部分との境で離断し,外側に倒壊して地面に接している。倒壊した車体部分は,ピラーが折れ曲がり,全ての窓ガラスが割損脱落している。その内側には,折れ曲がったピラー上から助手席ドア及びスライドドアの上端付近を経て車体の後方に向かって黒色タイヤ痕(ブロックパターン模様)の付着が認められる。助手席ドア及びスライド 損脱落している。その内側には,折れ曲がったピラー上から助手席ドア及びスライドドアの上端付近を経て車体の後方に向かって黒色タイヤ痕(ブロックパターン模様)の付着が認められる。助手席ドア及びスライドドアの外側には,それぞれ血痕の付着が認められる。 右側車体は,右前フェンダーがほぼ上部において擦過状に凹損を生じ,運 転席側ドアも凹損して窓枠が後方に曲損変形している。右ピラーが後方内側に傾倒し,その上部には擦過痕が認められる。その後方の車体も同様に傾倒していたほか車体下部から上方約70センチメートルを境として内側に折れ曲がり,その曲損部位から窓ガラス下端に当たる部位までの間に無数の擦過痕が認められる。後部右側フェンダーはピラーごと前方に向け大きく曲損し,右側窓ガラスはすべて割損脱落している。右ピラーの上端付近に上下幅約15センチメートルにわたって黄色と赤色を呈する塗料が擦過状に付着している。 後部バンパーは,右側のみ車体に固定されているが,左端において車体から脱落している。同バンパー左右両端において亀裂損傷が生じているほか,擦過損傷,茶色オイルの付着,横長の楕円形の中に横一文字を呈する打痕(なお,この打痕は,X車のラジエーターの鉄製受け皿の下面に下方へ突出した横一文字の形状を有する構造物と形状等がほぼ一致する。)が認められる。同バンパー左端から右方約60センチメートルの位置に深さ約20センチメートルの凹損,その左側約40センチメートルの位置を中心として凸状態の変形(なお,この変形は,下記㨯⑥のX車のオイルパンの凹損部分と形状等がほぼ一致する。)と黒色の物体の付着が認められる。また,バンパーの脱落により剥き出しになった車台金属部分に,左端から右方約35センチメートル及び約70センチメートルの位置にそれぞれ黒色塗膜片の付着及び支柱様の凹 )と黒色の物体の付着が認められる。また,バンパーの脱落により剥き出しになった車台金属部分に,左端から右方約35センチメートル及び約70センチメートルの位置にそれぞれ黒色塗膜片の付着及び支柱様の凹損が認められる。 後部テールゲートは,車体から完全に離断している。後部テールゲートは,前方に向け全体が凹損し,ナンバープレートの左側部分からテールゲート左端の右方約2.0センチメートルにかけての範囲に逆コの字型を有する打痕状の凹損(左辺約28センチメートル,上辺約30センチメートル,下辺約44センチメートル),同打痕内に左辺から右方約9.5センチメートルの位置を中心として直径約1.0センチメートルの真円状の打痕(上下2点) と緑色塗料の付着(3か所)が認められる。また,ナンバープレートを囲んでいる楕円形の窪みの左上部の部品が脱落し,その湾曲部分付近に擦過状の打痕が認められる。テールゲート外側の窓枠の左下付近,左側部付近及び上部に線状の擦過痕跡が無数に認められるほか,窓枠右上部と屋根の境付近に赤色塗料が付着している。テールゲートの内張は全体が破損して現場路面に散乱している。 屋根は車体から完全に離断している。屋根はダブルサンルーフ形式で,サンルーフのガラス等は割損脱落し,屋根全体が左側を軸として扇状に曲損している。また,後方サンルーフの前端屋根部分と助手席側サンルーフ縁に血痕が付着している。屋根部の前端には損傷等は認められない。 運転席周辺は,ハンドルが上方から下方に向けて押しつぶされ,メーター周りとともに運転席座席上まで後退移動して,その形状はほぼ楕円形をなしており,ハンドル中央付近のクラクション吹鳴部分等が破損脱落している。 また,ハンドル左側のハザードランプ用押しボタンが押し込まれた状態のまま固着している。 運転席シートベルトは,ベルト 楕円形をなしており,ハンドル中央付近のクラクション吹鳴部分等が破損脱落している。 また,ハンドル左側のハザードランプ用押しボタンが押し込まれた状態のまま固着している。 運転席シートベルトは,ベルトプレートがベルトホルダー部に差し込まれ,同ベルトが使用時の状態になっており,装着金具部分の両面には擦過痕が認められる。助手席シートベルトは,ベルトプレートは車体から垂れ下がっているが,ベルトホルダー部分が損壊し,同ホルダー部の外装部品や押しボタンは存在せず,内部の金属部品が露出しており,装着金具部分の両面には同様に擦過痕が認められる。なお,2列目及び3列目のシートベルトはいずれも未装着状態で,装着金具部分の両面に擦過痕は認められない。 座席シートは,3列ともすべてほぼ左後方へ倒れており,各列右側シートの背もたれは右側より左側が,3列目左シートの背もたれは右側が,より下方に深く折れ曲がっている。また,助手席及び3列目左シートの背もたれは,いずれも右側結合部分が座席から外れた状態となっている。なお,2列目補 助座席は背もたれが開いた形でその結合部分が座席から完全に外れた状態となっており,使用状態にあったと認められる。さらに,3列目右側シートのヘッドレストが差込み穴から外れ,E車の最終停止位置の助手席付近路上に落ちている。 上記以外の血痕等については,鑑定結果によればEのものとされる血痕として運転席ドア上部(2か所),運転席背もたれ左側面,助手席背もたれ中央,2列目補助座席上,3列目左側座席足下カーペット上及び背もたれ左側の血痕が,Iのものとされる血痕として右側面中央上部内張,ルーフパネル及び2列目助手席側サンルーフ縁の血痕が,Hのものとされる血痕等として2列目助手席側サンルーフ縁の血痕並びに後部テールゲート内側の露出した金属部分の血痕及び毛 として右側面中央上部内張,ルーフパネル及び2列目助手席側サンルーフ縁の血痕が,Hのものとされる血痕等として2列目助手席側サンルーフ縁の血痕並びに後部テールゲート内側の露出した金属部分の血痕及び毛髪が,その他車内及び車体に誰のものか判明していない多数の血痕,肉片,毛髪等が認められる。 タイヤは右後輪が著しく摩耗し,内側外周全体に亀裂損傷が生じ,タイヤ内のワイヤが全体として断裂するなど,バースト状態にあったと推認できる状況にあった。 車底部は,マフラーが曲損し,マフラー防護金具が脱落破損しているほか,ガソリンタンク等が擦過している。なお,エンジンには異常は認められない。 㨯X車X車は,長さ1196センチメートル,幅249センチメートル,高さ379センチメートルの大型貨物自動車(右ハンドル車)である。 同車の損傷状況等として,①フロントガラスの右側端から左方約146センチメートルを中心として地上約180センチメートルから約205センチメートルの範囲に亀裂損傷,②フロントガラス下の前部パネルの右側端に取り付けられたコーナーベイの脱落,同右側端の擦過痕(地上約150センチメートル),同右側端から左方約170センチメートルの範囲に後退損傷並びに銀色塗料及び赤色プラスチック片の付着,③前部パネル下の左右前照灯 の割損,④前照灯下の前部バンパーの右側端から左方約115センチメートルの範囲に傷及び曲損(バンパー右端において約20センチメートル後退),同バンパー下部の曲損部位に銀色塗料の付着,⑤前部バンパー中央部に取り付けられた緑色ナンバープレート(地上約61センチメートルないし約89センチメートル,幅約49.5センチメートル)の上方ビス2本(その間隔約27.5センチメートル)の脱落,ナンバープレート枠の曲損,ナンバープレートの中央からやや右寄り 61センチメートルないし約89センチメートル,幅約49.5センチメートル)の上方ビス2本(その間隔約27.5センチメートル)の脱落,ナンバープレート枠の曲損,ナンバープレートの中央からやや右寄りの位置に正面から見て逆L字型の打痕,⑥前部車底部の板バネ部等の擦過痕,オイルパン前部の凹損(左右幅約33センチメートル,前後幅約14センチメートル,上下幅約13センチメートルで,その最深部は車体前端から後方約80センチメートル,地上高約41センチメートル),擦過痕及び銀色塗料の付着,前部バンパー後方から約80センチメートルに位置するスタビライザー上部の擦過痕,⑦エンジンマウンテン部に赤色プラスチック片の付着が認められる。 㨯被告人車被告人車は,長さ1199センチメートル,幅250センチメートル,高さ380センチメートルの車軸4本からなる大型貨物自動車(右ハンドル車)である。 同車の損傷状況等として,①フロントガラス(下端の高さ約173センチメートル)の左側下部付近を中心とした亀裂割損及び同ガラス下端付近(左側端の右方約15センチメートル)に毛髪の付着(鑑定結果によれば,誰のものかは特定できない。),②フロントガラス下の前部パネル(高さ約110センチメートルないし約173センチメートル)の左側端から右方約85センチメートルの範囲及び右側端から左方約128センチメートルの範囲に凹損,同パネル上端付近(左側端の右方約37センチメートル)に血痕の付着(鑑定結果によれば,Eのものである。),同パネル下端(左側端)に塗膜片の付着,③前部パネル下の左右前照灯の割損,④左右前照灯下の前部バ ンパーの左右両端の曲損,右端の一部脱落,同バンパー右端から左方約30センチメートルを中心とした血痕の付着(鑑定結果によれば,誰のものかは特定できない。),⑤左側 割損,④左右前照灯下の前部バ ンパーの左右両端の曲損,右端の一部脱落,同バンパー右端から左方約30センチメートルを中心とした血痕の付着(鑑定結果によれば,誰のものかは特定できない。),⑤左側ドアの曲損及び変形,⑥左サイドミラーの脱落及び血痕の付着,⑦左前輪(1軸目)の車軸の曲損並びに車輪の亀裂損傷及び抉れ,左後輪(3軸目)の車輪側面の数本の線状の抉れ損傷,⑧左荷台側面部のゲート等の破損損傷(高さ約185センチメートルないし約219センチメートル),⑨左後輪(4軸目)の泥よけの湾曲及びその後方の荷台ゲートの擦過痕,⑩左車輪2軸目と3軸目の間のサイドバンパーの湾曲及び擦過痕,⑪左側面の車輪,車台,サイドバンパー,スタビライザー等に無数の血痕,肉片,毛髪等の付着(鑑定結果によれば,このうち8つはHの,3つはGの,2つはEの,1つはLのものであり,その余は誰のものか特定できない。),⑫車底部の車体前端から後方約60センチメートルないし約360センチメートルの範囲に車底部左側付近を中心として無数の血痕,肉片,毛髪等の付着(鑑定結果によれば,このうち7つはHの,4つはGの,1つはKのものであり,その余は誰のものか特定できない。),⑬車底部前輪(1軸目)スタビライザーの曲損及び右前輪の内側への入り込み,⑭右車輪2軸目と3軸目の間のサイドバンパーに肉片,毛髪の付着(車体前端から後方約550センチメートルないし約580センチメートル,高さ約58センチメートル。鑑定結果によれば,このうち1つはGのものであり,その余は誰のものか特定できない。)が認められる。 その他E車に乗車していて死亡した7名のうち,自動車運転免許を受けていたのは,E及びIの2名のみである。 第3争点に対する判断 主位的訴因における前方左右注視義務違反の過失の有無(被告 。 その他E車に乗車していて死亡した7名のうち,自動車運転免許を受けていたのは,E及びIの2名のみである。 第3争点に対する判断 主位的訴因における前方左右注視義務違反の過失の有無(被告人が本件時に睡眠状態に陥っていなかったか否か)について 㨯上記認定事実によれば,被告人が本件事故現場に差し掛かった際,前方ではE車が横転し,X車,D車及びB車が停車し,C車及びA車がハザードランプを点滅させながら低速で走行しているという,一見して明らかな異常事態が生じており,被告人は時速90キロメートルという高速度でその現場に迫っていたものであるところ,被告人は,捜査段階から一貫して,「バーン」という衝撃で初めて衝突事故を起こしたことに気付いた旨供述しており,逆にいえば,衝突するまで前方の異常事態に全く気付かず,自車が高速度でその現場に迫っていることについて何らの危機感も覚えず,急制動等の回避措置も一切講じていないのであって,最初の衝突が自車の運転席側のサイドミラーを車高の高い大型乗用自動車(A車)に衝突させるという,単なる前方不注視では考えられない衝突態様であったことなども考え合わせると,被告人は,最初の衝突時には既に前方注視が全くできない状態,すなわち睡眠状態に陥っていたものと認めるのが相当である。 㨯これに対し,検察官は,本件衝突時に寝てはいなかった旨の被告人の検察官調書(検乙第9号証)を根拠に,被告人が睡眠状態にはなかった旨主張する。 しかしながら,この供述は上記の客観的な事故態様に整合しないばかりか,被告人は,捜査・公判を通じて,上記検察官調書以外に寝ていなかったと断定する供述は一切しておらず,その供述自体が唐突なものであって,寝た自覚がない旨の被告人の弁解を曲解して調書が作成された疑いが払拭できず,この点に関する上記検 上記検察官調書以外に寝ていなかったと断定する供述は一切しておらず,その供述自体が唐突なものであって,寝た自覚がない旨の被告人の弁解を曲解して調書が作成された疑いが払拭できず,この点に関する上記検察官調書の供述部分は信用できない。 㨯また,検察官は,被告人が本件事故現場直前のカーブを無事に曲がりきり,その後の直線も若干追越車線にはみ出した程度で概ね走行車線を維持して走行していたことを根拠に,被告人には道路状況に従って走行するだけの意識状態が保たれていた旨主張する。 たしかに,上記認定事実によれば,本件事故現場の手前約100メートル の地点までは,約900メートルにわたって左カーブが続いているところ,被告人車は,概ね走行車線を維持した状態でこの左カーブを走り抜けたというのであるから,被告人は,左カーブの途中までは道路状況に従って走行するだけの意識状態を保っていたと認めることができる。 しかしながら,この左カーブは,曲線半径約1200メートルと非常に緩やかで,かつ勾配もほとんどない平坦なカーブだというのであるから,その途中で運転可能な意識状態を保てなくなったとしても,惰性でそのままカーブを走り抜けることも十分に考え得るところであり,被告人が左カーブを曲がりきった事実から直ちにその間被告人が運転可能な意識状態を保ち続けていたと推認することはできない。 㨯なお,被告人立会の実況見分調書(検甲第46号証)によれば,被告人は,前方注視ができなくなった地点として,最初の衝突地点の約60.6メートル手前の地点を指示しており,これを前提とするならば,被告人が睡眠状態に陥る前に前方を注視していれば本件事故現場の状況を認識し,結果回避措置を講じることが可能であったと認める余地がある。 しかしながら,まだ暗い時間帯で目立ったランドマークもない高速道路上 が睡眠状態に陥る前に前方を注視していれば本件事故現場の状況を認識し,結果回避措置を講じることが可能であったと認める余地がある。 しかしながら,まだ暗い時間帯で目立ったランドマークもない高速道路上で,時速90キロメートルの高速度で走行していた被告人が,前方の車両の存在すら全く認識できないほどの意識状態でありながら,自分が前方注視ができなくなった地点を正確に指示説明できるかは甚だ疑問であり,その地点と特定した理由が調書上一切明らかでないことからしても,被告人の指示説明どおりの事実を認定することはできない。 㨯以上によれば,被告人は,最初の衝突時には既に睡眠状態に陥っており,睡眠状態に陥る前に前方を注視していれば前方の車両の状況を認識して結果回避措置を講じることができたと認めるに足りる証拠もないから,前方左右注視義務を課す前提を欠いており,同義務違反の過失は認められない。 よって,検察官の主位的訴因にかかる犯罪事実は成立しない。 予備的訴因における運転中止義務違反の過失の有無(被告人が本件時に睡眠状態に陥ることを予見できたか否か)について㨯まず,前提として,被告人が本件事故前に眠気を感じたか否かについて争いがあるので,この点に関する被告人の供述経過を検討すると,被告人は,本件事故当日である平成17年11月13日の警察官取調べ(検乙第6号証)では,「私は,この事故を起こす直前,ボーッとした状態で走り,一瞬ウトウトと居眠ったのかもしれません。」と,同月14日の検察官弁解録取(弁第19号証)では,「私は,疲れてボーッとした状態で大型トラックを運転してしまい,前を十分に見ていなかったので,今回の事故を起こしてしまったのでした。」と,同月23日の警察官取調べ(検乙第14号証)では,「私は,(下り坂付近で)頭がすっきりとしないボーッとした 運転してしまい,前を十分に見ていなかったので,今回の事故を起こしてしまったのでした。」と,同月23日の警察官取調べ(検乙第14号証)では,「私は,(下り坂付近で)頭がすっきりとしないボーッとした状態(で)漫然と走っていると,表現をするのも難しいのですが,私的に意識がスーッと引き込まれるようになり,言いかえると一瞬ウトッと目をつぶることになったのだと思います。」と,同日の警察官取調べ(検乙第15号証)では,「(411.3キロポスト付近で)意識がスーッと引き込まれるように一瞬ウトッとなったのです。」と,同月25日の警察官取調べ(弁第22号証)では,「長く緩い下り坂を走っているときに,意識がスーッと引き込まれるように一瞬ウトッとなったのです。」と,同月30日の検察官取調べ(検乙第9号証)では,「検事さんから,寝ていたのではないかと聞かれましたが,寝ていたわけではありませんでした。警察では,『ウトッ』としたなどと,寝てしまったかのようなことを言ってしまいましたが,それは表現が難しかったからであり,ボーッとして,前方の狭い範囲だけを見ているという油断した運転状態になってしまったのでした。」とそれぞれ述べているのに対し,公判では,伊吹パーキングエリアを出て高速道路を走り出してからはウトッとした感覚やボーッとした感覚,視野が狭くなるような感覚はなく,そのような調書が作成されたのは,原因が自分でもわからないと述べたところ,そ れでは遺族が納得しないと言われ,自分でも記憶が曖昧だったので,捜査官の誘導に従う形で取調べが進んだからである旨述べている。 㨯以上の供述経過によれば,捜査段階における供述のうちの「ウトッ」とした感覚については,警察官調べの当初では「ウトウトと居眠ったのかもしれません。」という表現だったのが,「表現をするのも難しいのです 以上の供述経過によれば,捜査段階における供述のうちの「ウトッ」とした感覚については,警察官調べの当初では「ウトウトと居眠ったのかもしれません。」という表現だったのが,「表現をするのも難しいのですが…一瞬ウトッとなったのだと思います。」,「一瞬ウトッとなったのです。」と徐々に断定的な表現に変遷している上,検察官調べにおいては,表現が難しかったからそのようなことを言ってしまったのであって,そのような感覚はなかった旨述べるに至っていることからすれば,この点については,被告人が公判で述べるとおり,取調警察官の誘導に迎合する形で供述調書が作成された疑いが否定できず,直ちに信用することはできない。 これに対し,「ボーッ」とした感覚については,捜査段階の当初から一貫してそのような感覚があった旨述べており,弁第5号証によれば取調べ時間が18分間と認められる本件事故翌日の検察官弁解録取においてもそのような感覚があった旨明言していることや,被告人自身,警察官取調べにおいて米原ジャンクションで眠気を感じたのではないかと言われたのに対しては明確にこれを否定した旨公判で述べており,被告人が常に取調官に対して迎合的に供述していたわけではないことなどからしても,取調官の誘導に迎合した供述とはおよそ考えられず,その信用性は高い。また,前方の狭い範囲だけを見ているような感覚についても,検察官調書において初めて現れる表現ではあるが,それまでの警察官調書に現れていた「ウトッ」とした感覚を否定し,これを訂正する形での供述であることからしても,検察官の誘導があったとは考えられず,被告人が自発的に記憶を喚起して供述したものと認められるから,同様にその信用性は高いといえる。これに反する被告人の公判供述は,起訴後に睡眠時無呼吸症候群と診断された被告人が,眠気を感じることなく睡 被告人が自発的に記憶を喚起して供述したものと認められるから,同様にその信用性は高いといえる。これに反する被告人の公判供述は,起訴後に睡眠時無呼吸症候群と診断された被告人が,眠気を感じることなく睡眠状態に陥ったという弁護人の主張を受けてこれに従う形で供述 を変遷させた疑いが強く,信用できない。 㨯以上によれば,被告人は,本件事故前に,「ウトッ」とした感覚,すなわち居眠りしかけるほどの強い眠気までは感じていなかったものの,「ボーッ」として前方の狭い範囲だけを見ている状態に陥る程度の眠気は感じていたものと認められる。 㨯ところで,高速道路においては,故障その他の理由により駐停車することがやむを得ない場合において,十分な幅員がある路肩又は路側帯に駐停車する場合など,法令で定められた場合を除いては,駐停車が禁止されているのであるから(道路交通法75条の8第1項),高速道路を走行中に眠気を催したとしても,居眠りしかけたり,前方注視が困難になるなどといった強い眠気でない限りは,通常は一定区間毎に設けられたサービスエリアやパーキングエリアまで走行した上で休息を取るなどの方法により眠気を解消すれば足り,単に眠気を感じたことのみをもってその場で直ちに運転を中止すべき注意義務が生じるとは必ずしもいえない。しかしながら,道路交通法66条により,過労等により正常な運転ができないおそれがある状態ではそもそも運転自体が禁止されているところ,そのような過労状態での運転中に眠気を催したような場合には,眠気自体は直ちに睡眠状態に陥りかねないほどの強いものとまでは感じられなかったとしても,そのまま運転を継続すれば過労状態と相まって不意に睡眠状態に陥り,交通事故を引き起こす危険があることは明白であるから,このような場合,車両の運転者としては,かかる事態を避けるた れなかったとしても,そのまま運転を継続すれば過労状態と相まって不意に睡眠状態に陥り,交通事故を引き起こす危険があることは明白であるから,このような場合,車両の運転者としては,かかる事態を避けるため,直ちに十分な幅員がある路肩又は路側帯に車両を駐停車させて運転を中止すべき業務上の注意義務があるものと解するのが相当である。 なお,このような場合における高速道路上での駐停車は,上記の「やむを得ない場合」にあたり道路交通法上も違法とはならず,上記のとおり解したとしても運転者に違法行為を強いることにはならないことはいうまでもない。 これを本件についてみると,被告人は,本件事故の6日前から継続して長 距離運転業務に従事し,この間業務の合間などに1回当たり数時間程度,主に被告人車の中で仮眠を取ることはあったものの,時間も不規則でまとまった睡眠は取れず,そのような勤務形態に慣れていなかったこともあって被告人自身も疲労を感じていたところ,本件事故直前の状況をみても,被告人は,本件事故前日の平成17年11月12日午後8時30分ころ,強い眠気を感じてパーキングエリアで予定を大幅に超えた約5時間の仮眠を取った上で運転を再開し,その後も約1時間半しか保たずにまたも強い眠気を感じて再度パーキングエリアで約2時間の仮眠を取った上で運転を再開したが,それでも約10分後には眠気を覚えたというのであるから,被告人はこの時点で極度の過労により正常な運転ができないおそれがある状態であったことは明らかであって,そのような状態下で眠気を感じた以上は,直ちに十分な幅員がある路側帯に車両を駐停車させて運転を中止すべき業務上の注意義務があったものというべきである。そして,本件事故現場手前の411.7キロポスト付近までの左カーブの路側帯は約2.2メートルで被告人車の車幅(約2. 両を駐停車させて運転を中止すべき業務上の注意義務があったものというべきである。そして,本件事故現場手前の411.7キロポスト付近までの左カーブの路側帯は約2.2メートルで被告人車の車幅(約2. 5メートル)に満たないものの,同ポスト付近から本件事故現場までの直線道路の路側帯は,被告人車の車幅を超える約2.7メートルであったのであるから,眠気を感じた時点で直ちにオートクルーズ機能による運転を止めて減速を開始し,運転を中止する意識を保って注意深く運転すれば,睡眠状態に陥ることなく本件事故現場手前の411.7キロポスト付近で路側帯に完全に被告人車を駐停車させる形で運転を中止することが可能であったと認められる。にもかかわらず,被告人は,眠気を感じた後も運転を中止しようとすることなく,オートクルーズ機能によるハンドル操作のみの運転を漫然と継続した結果,睡眠状態に陥って本件事故を引き起こしたというのであるから,被告人には運転中止義務違反の過失が認められる。 なお,被告人は,本件事故の直前に伊吹パーキングエリアで仮眠を取ったことにより眠気は解消された旨述べるが,極度の過労状態にあった被告人が, 運転席に座ったまま2時間程度の仮眠を取ったことにより,一時的に眠気が解消されたとしても,過労状態自体が解消されたとは到底いえず,現に運転再開後約10分で眠気を催しているのであるから,被告人が本件事故直前に仮眠を取ったことをもって運転中止義務違反が否定されることにはならない。 㨯これに対し,弁護人は,被告人が本件当時重度の睡眠時無呼吸症候群に罹患しており,その影響により何らの予兆もなく睡眠状態に陥ったものであって,被告人には運転中止義務違反の過失はないと主張する。 たしかに,証拠調べの結果によれば,被告人は,本件事故後の平成18年4月14日,N医師から重度 により何らの予兆もなく睡眠状態に陥ったものであって,被告人には運転中止義務違反の過失はないと主張する。 たしかに,証拠調べの結果によれば,被告人は,本件事故後の平成18年4月14日,N医師から重度の睡眠時無呼吸症候群と診断されており,その症状の程度や本件事故と診断日との時間的近接性などに照らせば,被告人は少なくとも本件事故当時には睡眠時無呼吸症候群に罹患していたものと推認できる。また,一般に睡眠時無呼吸症候群に罹患していると,睡眠の質が低下して睡眠状態に陥りやすく,場合によっては自覚のないままに眠ってしまうこともあることはN医師の証言からも認められる。したがって,被告人が本件事故時に睡眠状態に陥った点について,睡眠時無呼吸症候群に罹患していたことが一定程度影響した可能性は否定できない。 しかしながら,上記のとおり,被告人は,本件事故前に眠気を感じていたのであるから,何らの予兆なく睡眠状態に陥ったという弁護人の主張自体が前提を欠いている上,被告人は,本件事故以前の相当期間運転手として稼働していたが,本件以外に運転中に自覚のないまま居眠りをしたという事情は一切窺われないことからしても,本件事故時に被告人が睡眠状態に陥ったのは,睡眠時無呼吸症候群の影響よりもむしろ極度の過労状態で運転を継続した影響によるところが大きいというべきである。また,睡眠時無呼吸症候群に罹患していることを認識していなかったとしても,極度の過労状態の下で眠気を感じながら運転を継続すれば,不意に睡眠状態に陥る危険があることは十分に予見可能といえる。したがって,本件において被告人が睡眠時無呼 吸症候群に罹患していたことは,運転中止義務違反の過失の成立を何ら妨げるものではない。 㨯よって,被告人には運転中止義務違反の過失が認められる。 Eほか4名の死亡との因果関係の 睡眠時無呼 吸症候群に罹患していたことは,運転中止義務違反の過失の成立を何ら妨げるものではない。 㨯よって,被告人には運転中止義務違反の過失が認められる。 Eほか4名の死亡との因果関係の有無について㨯車両の痕跡等から推認できる各事故の詳細な状況等上記認定のとおり,本件では,まずX車がE車に追突したことにより,E車が前方に押し出されながら左回りに半回転し,約80.3メートル前方の路側帯上にフロントガラス側を手前に向け,助手席側を地面に接する形で横転し,その後被告人車が横転したE車の前部に衝突し,そのまま同車を約16.8メートル前方まで引きずり,さらに約83.8メートル進行したというものである。 そして,X車のナンバープレートの中央やや右寄りにE車の左後角部への衝突によるものと見て矛盾しない逆L字型の打痕が,E車のテールゲートのナンバープレート左側にX車のナンバープレート部分との衝突によるものと見て矛盾しない逆コの字型の凹損,同プレートの右側ビスの形状と概ね一致する上下2点の真円上の打痕,同プレートの色と一致する緑色塗料の付着がそれぞれ認められることからすれば,第1事故は,X車のほぼ中央部がE車の左端と衝突する形で生じたものと推認できる。 また,E車の後部バンパーの凸損とX車のオイルパン前部の凹損(最深部は車体前端の後方約80センチメートル)の形状が一致することからすれば,X車は,そのオイルパンにE車の後部バンパーが衝突するほど深くめり込む形で衝突したと認められ,E車の後部テールゲートから最後列座席までの距離が約28センチメートルであることや,両車両の速度差が時速約50キロメートルないし60キロメートルであったことを合わせ考慮すると,第1事故によりE車の後部座席に対してかなりの直接的な打撃が加わったことが推認できる。 あることや,両車両の速度差が時速約50キロメートルないし60キロメートルであったことを合わせ考慮すると,第1事故によりE車の後部座席に対してかなりの直接的な打撃が加わったことが推認できる。 ただし,衝突後のE車の動きや各目撃者の供述,死亡した7名の遺体がいずれもE車の最終停止位置より前方に位置することなどからすると,第1事故によりE車の後部は大きく変形したものの,それ以外の部分は地面との擦過等による損傷以外に大きな損傷はなく,また,7名ともいずれもE車内に留まっていたものと推認できる。 一方,本件事故後のE車の車体は,車底部のほとんどを法面に乗り上げる形で停止していたが,全体的に逆への字型に押しつぶされ,屋根が離断脱落し,車体左ボディが左方に倒壊するなど,原型を留めないほど大破していること,車体前部左角やボンネットの曲損した左側端部,左側車体内側に被告人車のものと見て矛盾しない黒色タイヤ痕が認められ,左側フェンダー上部に被告人車左後輪3軸目の車輪の損傷と一致するゴムが付着していること,運転席側シートベルトは装着状態であったのに対し,助手席側シートベルトはベルトホルダー部分が損壊し,内部の金属部分が露出している状態であったこと,座席の背もたれがいずれもほぼ左後方へ倒れており,特に助手席及び3列目左シートの背もたれはいずれも右側結合部分が座席から外れ,補助座席の背もたれは座席から完全に外れた状態になっていたことなどからすると,被告人車は,横転したE車に衝突した後,その左側部に乗り上げながら座席を次々となぎ倒す形で同車を通過し,その過程で横転していたE車が引きずられながら車体を半ば起きあがらせたものと推認できる。また,被告人車がE車の前部に衝突したことからすると後方より前方の被害者が,被告人車がE車の左側部を轢過しており,座席やシ 転していたE車が引きずられながら車体を半ば起きあがらせたものと推認できる。また,被告人車がE車の前部に衝突したことからすると後方より前方の被害者が,被告人車がE車の左側部を轢過しており,座席やシートベルトの損傷状況も左側の方がより大きいことからすると右側より左側の被害者が,それぞれより大きな打撃を受けた可能性が高いといえる(ただし,E車は,第1事故後,助手席側を地面に接する形で横転しており,そのため被害者らも当初の座席位置より左側に寄っていた可能性が考えられるから,左右の位置関係と打撃の大きさとの間に完全な相関関係が認められるわけではない。)。 また,Kを除く6名の遺体は,いずれもE車の最終停止位置から約9.6メートルないし約83.8メートル前方で発見され,鑑定結果によれば轢過ないし引きずられたことによると見られる痕跡があり,被告人車の車底部左側及び左側面にも無数の血痕,肉片,毛髪等(その一部はH,G,E及びLのものと特定されている。)の付着が認められることからすると,これら6名はいずれも被告人車による衝突後,同車の左車輪や車底部などで轢過ないし引きずられて発見位置まで移動したことが推認できる。これに対し,Kの遺体には,轢過ないし引きずられたと見られる痕跡はなく,また,E車の最終停止位置から約5.0メートル前方という比較的近い距離で発見されていることからすると,被告人車により轢過ないし引きずられることなく,E車の後部から転落する形で路上に倒れたと推認するのが相当である。なお,M医師は,Kの肺臓・肝臓の振盪創(破裂)について,第1事故後に走行中の車両から振り落とされ,路面で背面などを強く打撲したことによって生じたと判断しているが,上記のとおり,Kは第1事故後にはまだE車内に留まっていたと認められるから,そもそも前提事実に誤認が に走行中の車両から振り落とされ,路面で背面などを強く打撲したことによって生じたと判断しているが,上記のとおり,Kは第1事故後にはまだE車内に留まっていたと認められるから,そもそも前提事実に誤認があり,かつ,路面に転落した際に肺臓・肝臓の破裂という重篤な損傷を生じるほど,背面を路面に強打したとすれば,頭部にもそれだけの損傷が認められてしかるべきところ,M医師は,証人尋問において,頭部の損傷は鋭利な金属片か何かによるもので,路面に打ち付けて形成されたものではないと述べていることからしても,肺臓・脾臓の振盪創が転落時に生じたとは考えがたい。Kの遺体に肺臓・脾臓の振盪創に結びつく外傷が一切ないことからしても,その振盪創は何らかの物体を介して間接的にKの腹胸部ないし背部に強い衝撃が働いたことにより形成されたと見るのが自然であり,本件の一連の事故態様や遺体の損傷状況等を総合すれば,第1事故時に座席を介して間接的にX車の追突を受けたことによって形成されたと推認するのが相当である。 以上を前提に死亡した7名の車内における座席位置について検討すると, E車では運転席と助手席のシートベルト以外にシートベルトが着用された形跡はなく,鑑定結果によれば鎖骨付近及び腸部付近に出血を生じるいわゆるシートベルト損傷を負っているのはE及びLだけであること,右ハンドル車で三点式シートベルトを着用した場合には運転席では右鎖骨に,助手席では左鎖骨にシートベルトが当たるところ,Eは右鎖骨部に,Lは左胸鎖関節部にそれぞれ出血が生じていること,両者のうちで運転免許を持っているのはEだけであることなどからすれば,M医師の推定するとおり,Eが運転席に,Lが助手席にそれぞれ乗車していたものと推認できる。また,Gには追突損傷が全く認められないことからすると,Gが最後列に乗車してい Eだけであることなどからすれば,M医師の推定するとおり,Eが運転席に,Lが助手席にそれぞれ乗車していたものと推認できる。また,Gには追突損傷が全く認められないことからすると,Gが最後列に乗車していたとは考えられず,2列目に乗車していたものと推認できる。さらに,Kは,他の被害者が一様に全身に大きな外傷を負っているのに対して,後頭部の打撲創以外に目立った外傷を負っておらず(なお,これが第1事故によるものか否かについては,本件では争点となっていないので明言を避ける。),逆に第1事故により肺臓・肝臓の振盪創(破裂)という重篤な追突損傷を負っていることからすれば,M医師の推定するとおり,本件事故による直接的な打撃を最も受けにくく,第1事故により重篤な損傷を受ける可能性の高い最後列右側に乗車していたものと推認できる。 他方,M医師は,Iは後頭部に他の損傷と向きが異なる挫創があり,これが第1事故により形成されたものであるという前提で,同人が最後部中央ないし左側に乗車していたと推定しているが,かかる挫創は,IがE車最終停止位置からさらに約83.8メートル引きずられるまでの過程で被告人車の部品と接触するなど,別の原因によっても生じうるものであって,その部位や形状から直ちに第1事故によって形成されたと見るのは早計である。逆に,最後列中央ないし左側という,第1事故の打撃を最も大きく受ける位置に座っていたにしては,同人の追突損傷は,左右膝関節部・左右大腿部の表皮剥脱といった軽傷に止まっており,KやHが第1事故により内臓破裂の重傷を 負っていることと比べて明らかに矛盾している。しかも,Hの追突損傷は,左右仙腸関節の離開,肝臓・脾臓破裂,腎門部・膵臓出血,心臓表面の点状出血など,Kに比べても多岐にわたっていることなどからすれば,第1事故によりかかる重傷を に矛盾している。しかも,Hの追突損傷は,左右仙腸関節の離開,肝臓・脾臓破裂,腎門部・膵臓出血,心臓表面の点状出血など,Kに比べても多岐にわたっていることなどからすれば,第1事故によりかかる重傷を負ったHがむしろ最後部左側(頭部の追突損傷がないことからして,ヘッドレストのない中央部に乗車していたとは考えがたい。)に,Iは第1事故による影響の比較的少ない2列目に乗車していたと推認するのが相当である。 最後に,Fについても,第1事故により左右大腿骨骨折や左右仙腸関節離開といった重傷を負ってはいるものの,頭部や内臓に追突損傷を負っていないことからして,最後部中央に座っていたとは考えられず,2列目に乗車していたと推認できる(2列目の補助座席が使用状態にあったことからすれば,2列目に3人が乗車していたと見て矛盾はない。)。なお,2列目に乗車していた3人の左右の座席位置については,本件の証拠関係だけでは明らかではない。 以上の認定事実を踏まえて,本件事故により死亡したとされる5名の被害者についてさらに因果関係の有無を検討する。 㨯Fの死亡との因果関係鑑定書によれば,Fは,体の左側を下にした状態で腹部右側から上方向に圧挫されたことによる轢過損傷として,肝臓・脾臓・心臓破裂,肋骨多発骨折,頚椎完全脱臼とこれに伴う延髄断裂を負っており,延髄断裂により死亡したものと判断されているところ,その鑑定結果は,遺体の状況や,Fが本件事故によりE車の最終停止位置から約9.6メートル前方まで引きずられ,路面にFの遺体によるものと認められる肉片様・血液様の引きずり痕が残されていることなどとも整合しており,信用できる(なお,Fについては延髄断裂のほかに心臓破裂も致命傷となりうるが,これらは同一事故によって生じたものであることは明らかであるから,因果関係の判断に影響を れていることなどとも整合しており,信用できる(なお,Fについては延髄断裂のほかに心臓破裂も致命傷となりうるが,これらは同一事故によって生じたものであることは明らかであるから,因果関係の判断に影響を及ぼすも のではない。)。かかる轢過損傷は,第1事故では生じ得ないものであり,本件事故によって生じたことも合理的に推認できる。したがって,本件事故とFの死亡との間に因果関係が認められる。 これに対し,弁護人は,Fは第1事故によって左右膝部表皮剥脱,左右大腿骨骨折,左右仙腸関節離開の重傷を負っており,Fの延髄損傷は第1事故によって生じた可能性もあること,現にKについてはM医師も第1事故で延髄断裂を生じたと判断していることなどを理由として本件事故との因果関係を争うが,Fは上記のとおりE車の2列目に乗車していたもので,第1事故によって延髄部分に直接打撃を受ける状況も,第1事故によって延髄付近に生じたと疑われるような外傷も認められず,弁護人が指摘する第1事故でのFの受傷はいずれも下半身に生じたものであって,直ちに延髄付近への外力の作用を疑わせるものではない上,M医師がKの死因を第1事故による延髄断裂と判断したのは,第1事故時にE車の部品で打撃されたことにより直接延髄断裂が生じたと考えたことによるのであって,そのような事情を窺わせる外傷のないFとは前提が異なるから,弁護人の主張は採用できない。 㨯Eの死亡との因果関係鑑定書によれば,Eは,前頭右側への打撃によると見られる頭蓋骨粉砕状骨折を伴う右前頭葉挫滅により死亡したとされているところ,その判断は,他に致死的な損傷が認められないことから信用できる。また,Eは運転席でシートベルトを着用している状況で本件事故に遭っていることから,被告人車の衝突による打撃を直接受けている蓋然性が高く,現に被告人車の前 致死的な損傷が認められないことから信用できる。また,Eは運転席でシートベルトを着用している状況で本件事故に遭っていることから,被告人車の衝突による打撃を直接受けている蓋然性が高く,現に被告人車の前部パネル上端付近にはEとの衝突によるものと見て矛盾しない同人の血痕が付着しており,逆に頭蓋骨粉砕状骨折を伴う右前頭葉挫滅の傷害を第1事故での追突により負ったとは考えられないから,この傷害は本件事故によって生じたと推認できる。したがって,本件事故とEの死亡との間に因果関係が認められる。 これに対し,弁護人は,Eに第1事故時のハンドルとの衝突による胸骨骨折,肺臓右下葉出血,心臓前面の点状出血など,心臓付近を強打した痕跡が認められることから,心振盪による急性心不全で死亡した可能性があるとして,本件事故との因果関係を争うが,心振盪自体が極めて偶発的な症状である上,鑑定書によれば,Eは,本件事故後に車外に放出された際に腰部や臀部に擦過傷を負っているが,その受傷部位には一般に生体反応と理解されている赤褐色の顕著な変色が認められることからすれば,本件事故前にEが心停止状態に陥っていたとは考えがたいから,弁護人の主張は採用できない。 㨯Gの死亡との因果関係鑑定書によれば,Gは,本件事故時に頭部,胸部及び膝部を轢過され,頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳脱出により死亡したとされているところ,その損傷の部位・形状等からすると第1事故によってそのような損傷が形成されたとは考えられず,ほかに第1事故によって生じたと見られるような損傷が特に認められないことなどに照らして信用できるから,本件事故とGの死亡との間に因果関係が認められる。なお,Gについても脳脱出のほかに心㨯・右心房破裂その他の多臓器損傷も致命傷となりうるが,これらも同一事故によって生じたものであることは明ら るから,本件事故とGの死亡との間に因果関係が認められる。なお,Gについても脳脱出のほかに心㨯・右心房破裂その他の多臓器損傷も致命傷となりうるが,これらも同一事故によって生じたものであることは明らかであるから,因果関係の判断に影響を及ぼすものではない。 㨯Hの死亡との因果関係鑑定書によれば,Hは,本件事故により体幹と右上肢の間から頭部顔面にかけて轢過され,頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳脱出により死亡したとされているところ,これが轢過損傷であることは,遺体の損傷状況や,遺体がE車の最終停止位置から約82.8メートル前方の路側帯上で被告人車に接触する形で発見され,E車から遺体付近まで続く引きずり痕が認められることなどから明らかであり,これが致命傷となりうる損傷であることも疑いがない。また,かかる轢過損傷は第1事故によって生じる可能性はなく,本件事故によ って生じたことも合理的に推認できる。 なお,弁護人は,鑑定書によればHは第1事故により左右仙腸関節の離開,肝臓・脾臓破裂,腎門部・膵臓出血,心臓表面点状出血の傷害を負い,適切な治療がなされないと重篤な状態に陥る状態であるとされており,かかる複合的な重傷を負ったHが本件事故前に既に死亡していた可能性は十分にあると主張して,本件事故との因果関係を争うが,第1事故による受傷が適切な治療を受けなければ死の危険がある重篤な損傷であるとはいえるものの,1分に満たない短時間のうちに死の結果を生じるほどのものとは考えられないから,脳脱出を致命傷と判定したM医師の判断に誤りはない。 よって,本件事故とHの死亡との間にも因果関係が認められる。 㨯Iの死亡との因果関係鑑定書によれば,Iは,本件事故により被告人車に圧挫されて引きずられ,その際に頭部と胴体部とで引きずり速度にずれが生じた結果,第1,第2頸椎間脱臼 も因果関係が認められる。 㨯Iの死亡との因果関係鑑定書によれば,Iは,本件事故により被告人車に圧挫されて引きずられ,その際に頭部と胴体部とで引きずり速度にずれが生じた結果,第1,第2頸椎間脱臼骨折及び延髄断裂が生じ,死に至ったとされているところ,Iが被告人車に圧挫されて引きずられた点については,遺体の損傷状況や,遺体がE車の最終停止位置から約83.8メートル前方の路側帯上で被告人車の車体下に全身が入り込む形で発見されたことなどから明らかであり,延髄断裂の発生機序についても,頸部付近に物体等の作用により直接延髄断裂を生じたことを窺わせる創傷が一切認められないことなどから,頭部と胴体部とのずれの外力により生じたと合理的に推認できる。 なお,弁護人は,強い衝撃を受けた場合には頸椎の脱臼や骨折,環椎後頭関節脱臼が起こり,ときに頸髄が断裂することもあるから,延髄断裂等が第1事故によって生じた可能性も否定できないとして本件事故との因果関係を争うが,上記のとおり,IはE車の2列目に乗車しており,しかもシートベルトも着用していなかったのであるから,第1事故による追突の衝撃により直接に,あるいは頭部と胴体部とのずれの外力によって頸椎脱臼骨折や延髄 断裂を生じたとは考えがたく,これが本件事故時に引きずられた際に生じたというM医師の判断に誤りはない。 よって,本件事故とIの死亡との間にも因果関係が認められる。 以上によれば,予備的訴因どおりの運転中止義務違反の過失,及び,その過失とEほか4名の死亡との間の因果関係が認められ,また,Bほか2名が本件事故によりそれぞれ予備的訴因記載の各傷害を負ったことは証拠上明らかであるから,被告人にはEほか4名に対する業務上過失致死罪及びBほか2名に対する業務上過失傷害罪が成立する。 (法令の適用) 罰条いず りそれぞれ予備的訴因記載の各傷害を負ったことは証拠上明らかであるから,被告人にはEほか4名に対する業務上過失致死罪及びBほか2名に対する業務上過失傷害罪が成立する。 (法令の適用) 罰条いずれも平成18年法律第36号による改正前の刑法211条1項前段(裁判時の罰条は刑法211条1項前段。同法6条,10条による軽重比較の結果,軽い行為時法を適用) 科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(1罪として犯情の最も重いFに対する業務上過失致死罪の刑で処断) 刑種の選択禁錮刑 未決勾留日数の算入刑法21条 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,業務として大型貨物自動車を運転して高速道路を走行中,運転中止義務に違反した過失により,睡眠状態に陥って自車を車両4台に次々と衝突させ,被害者5名を死亡させるとともに被害者3名に傷害を負わせたという業務上過失致死傷の事案である。 被告人は,約6日間にわたって運転業務に従事し続け,この間業務の合間等に不規則に車内等で仮眠を取っただけで十分な睡眠や休息を取らずに疲労が蓄積し,極度の過労状態で走行中に眠気を生じたものの,運転を中止することなく漫然と運転 を継続した結果,睡眠状態に陥って本件事故を引き起こしたものである。十分な睡眠や休息を取らずに運転業務に従事し続けて極度の過労状態に陥った点については,勤務先の指示に従った結果であることは明らかで,その意味で酌量すべき面もあるが,そのような状態であることを認識しながら,眠気を感じた後も漫然と運転を継続して本件事故を引き起こした点は強く非難されなければならない。また,本件事故により被害者5名の尊い命が奪われ,被害者3名が傷害を負ったものであって,その結果はあまりにも重大である。死亡した5名の被 続して本件事故を引き起こした点は強く非難されなければならない。また,本件事故により被害者5名の尊い命が奪われ,被害者3名が傷害を負ったものであって,その結果はあまりにも重大である。死亡した5名の被害者は,18歳から32歳といういずれも働き盛りの日系ブラジル人で,祖国から遠く離れた日本で真面目に働いて家族を支えていたものであるが,本件事故によりそれぞれが将来に向けて抱いていたであろう夢や希望の一切を絶たれ,最愛の家族との別れを余儀なくされたものであって,その無念は察するに余りある。また,被害者らの変わり果てた姿に直面した遺族らの悲しみや苦悩は想像を絶するものがあり,各被害者の父母や兄が遺族を代表して公判や手紙でその悲痛な心境を述べ,その多くは被告人に対する厳しい処罰感情を示している。にもかかわらず被告人は,公判において捜査段階での供述を翻し,眠気を感じたことは全くなかったなどと述べて過失を争うなど,自己の責任を逃れようとする態度に終始しており,真摯な反省の情は見出しがたい。 以上によれば,被告人の刑事責任は重い。 他方,被告人が極度の過労状態に陥ったのは,上記のとおり勤務先の指示に従った結果によるものであって,この点については被告人個人の責任というよりもむしろ会社の責任によるところが大きいこと,被告人が睡眠状態に陥った原因として,当時から罹患している睡眠時無呼吸症候群が一定程度影響したことは否定できないこと,これまでに傷害の罰金前科1犯以外に前科はないことなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで,これらの諸事情を総合考慮し,主文の刑を相当と判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑禁錮4年) 平成19年1月26日大津地方裁判所刑事部裁判官久礼博一 別紙一覧表番号被害者氏名(年齢)乗車車両傷害程 相当と判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑禁錮4年) 平成19年1月26日大津地方裁判所刑事部裁判官久礼博一 別紙一覧表番号被害者氏名(年齢)乗車車両傷害程度又は死因等 E(当時21歳)E車頭蓋骨粉砕状骨折を伴う右前頭葉挫滅により死亡 F(当時18歳)同上頸椎完全脱臼によって生じた延髄断裂により死亡 G(当時24歳)同上頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳脱出により死亡 H(当時19歳)同上頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳脱出により死亡 I(当時32歳)同上頸椎脱臼骨折による延髄離断により死亡 D(当時29歳)D車加療約1か月間を要する全身打撲,右大腿外側皮下巨大血腫等 J(当時31歳)同上加療約3週間を要する頚椎捻挫等 B(当時43歳)B車全治約2週間を要する頚部挫傷等

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る