平成27(行ウ)436 怠る事実の違法確認等請求事件(住民訴訟)

裁判年月日・裁判所
平成30年7月12日 大阪地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文32,724 文字)

- 1 - 平成30年7月12日判決言渡平成27年(行ウ)第436号怠る事実の違法確認等請求事件(住民訴訟) 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が別紙記載1⑴から⑽までの各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を怠ることが違法であることを確認する。 2 被告が別紙記載2⑴及び⑵の各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令を怠ることが違法であることを確認する。 3 被告は別紙記載1⑴から⑽までの各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合に よる金員の支払を請求せよ。 4 被告は別紙記載2⑴及び⑵の各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。 第2 事案の概要 本件は,高槻市の住民である原告が,同市交通部芝生営業所及び緑が丘営業所(以下,併せて「本件各営業所」という。)において,職員の遅刻を有給休暇に振り替える等の取扱い(以下「本件取扱い」という。)が行われてきたことに関し,平成22年4月以降,①高槻市自動車運送事業管理者(以下「本件事業管理者」という。)の職にあったA,B及びC(以下,併せて「歴代管理者」という。),② 「職員の出勤状況を把握し,出勤表を整理すること」及び「定例的な給与等の支- 2 - 給並びに所得税その他法令に基づく事務を処理すること」について専決権限 て「歴代管理者」という。),② 「職員の出勤状況を把握し,出勤表を整理すること」及び「定例的な給与等の支- 2 - 給並びに所得税その他法令に基づく事務を処理すること」について専決権限を有する総務課長又は総務企画課長の職にあったD及びE(以下,併せて「歴代課長」という。)並びに③「所属職員の休暇,早退及び欠勤を許可し,又は承認すること」について専決権限を有する本件各営業所の所長の職にあったF,G,H,I,J及びK(以下,併せて「歴代所長」という。)は,高槻市に対し,それぞれ不法行 為に基づく損害賠償責任又は地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負っているなどと主張して,同法242条の2第1項3号及び4号に基づき,前記第1記載のとおり,被告が歴代管理者,歴代課長及び歴代所長に対し損害賠償請求又は賠償命令を怠ることが違法であることの確認を求めるとともに,被告に対する当該損害賠償請求又は賠償命令の義務付けを求める住民訴訟の事案である(各 請求における遅延損害金の起算日は被告に対する本件訴状送達の日の翌日である。)。 1 関係法令等の定め⑴ 地方公営企業法等ア地方公営企業法8条1項本文は,管理者は,同項各号に掲げる事項を除 くほか,地方公営企業の業務を執行し,当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する旨規定し,同法9条は,管理者は,同法8条の規定に基づいて,地方公営企業の業務の執行に関し,おおむね同法9条各号に掲げる事務を担任する旨規定し,同条2号は,職員の任免,給与,勤務時間その他の勤務条件,懲戒,研修及びその他の身分取扱に関する事項を掌理す ることを掲げる。同法10条は,管理者は,法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則又はその機関の定める規則に違反しない限りにおいて,業務に関し管理 及びその他の身分取扱に関する事項を掌理す ることを掲げる。同法10条は,管理者は,法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則又はその機関の定める規則に違反しない限りにおいて,業務に関し管理規程(以下「企業管理規程」という。)を制定することができる旨規定する。 地方公営企業法38条は,企業職員(管理者の権限に属する事務の執行 を補助する職員をいう。以下同じ。同法15条1項参照。)の給与は,給- 3 - 料及び手当とする旨(1項),企業職員の給与は,その職務に必要とされる技能,職務遂行の困難度等職務の内容と責任に応ずるものであり,かつ,職員の発揮した能率が充分に考慮されるものでなければならない旨(2項),企業職員の給与は,生計費,同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与,当該地方公営企業の経営の状況その 他の事情を考慮して定めなければならない旨(3項),企業職員の給与の種類及び基準は,条例で定める旨(4項)を各規定する。 イ地方公営企業法36条は,企業職員の労働関係については,地方公営企業等の労働関係に関する法律(以下「地公労法」という。)の定めるところによる旨規定する。 地公労法7条は,職員に関する,賃金その他の給与,労働時間,休憩,休日及び休暇に関する事項(同条1号)並びに昇職,降職,転職,免職,休職,先任権及び懲戒の基準に関する事項(同条2号)は,団体交渉の対象とし,これに関し労働協約を締結することができ,ただし,地方公営企業等の管理及び運営に関する事項は,団体交渉の対象とすることができな い旨規定する。同法8条1項本文は,地方公共団体の長は,地方公営企業において当該地方公共団体の条例に抵触する内容を有する協定が締結されたときは,その締結後10日以内に,そ とすることができな い旨規定する。同法8条1項本文は,地方公共団体の長は,地方公営企業において当該地方公共団体の条例に抵触する内容を有する協定が締結されたときは,その締結後10日以内に,その協定が条例に抵触しなくなるために必要な条例の改正又は廃止に係る議案を当該地方公共団体の議会に付議して,その議決を求めなければならない旨規定し,同条4項は,同条1 項の協定は,同項の条例の改正又は廃止がなければ,条例に抵触する限度において,効力を生じない旨規定する。同法9条は,地方公共団体の長その他の地方公共団体の機関は,地方公営企業において,当該地方公共団体の長その他の地方公共団体の機関の定める規則その他の規程に抵触する内容を有する協定が締結されたときは,速やかに,その協定が規則その他の 規程に抵触しなくなるために必要な規則その他の規程の改正又は廃止のた- 4 - めの措置をとらなければならない旨規定する。 なお,地方公務員法は,3章4節(24条から26条の3まで)において,給与,勤務時間その他の勤務条件について規定し,そのうち24条5項は,職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は条例で定める旨規定するところ,地方公営企業法39条1項は,企業職員については,上記各規定 は適用しない旨規定している。 ⑵ 高槻市公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例(昭和41年高槻市条例第689号。以下「給与条例」という。)給与条例1条は,同条例は地方公営企業法38条4項の規定に基づき,企業職員の給与の種類及び基準を定めるものとする旨規定し,同条例2条1項 は,企業職員で常時勤務を要するもの(臨時に雇用された者及び嘱託を除く。)及び地方公務員法28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(以下,同条例において「職 定し,同条例2条1項 は,企業職員で常時勤務を要するもの(臨時に雇用された者及び嘱託を除く。)及び地方公務員法28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(以下,同条例において「職員」という。)の給与の種類は,給料及び手当とする旨規定し,同条2項は,給料は,正規の勤務時間による勤務に対する報酬であって,手当を除いた全額とする旨規定し,同条例14条は,勤勉手 当は,6月及び12月に在職する職員に対して,その勤務成績に応じ,かつ,その他の事情を考慮して支給する旨規定する。 給与条例16条1項は,職員が正規の勤務日又は勤務時間中に勤務しないときは,その勤務しないことにつき管理者の承認があった場合を除くほか,その勤務しない1時間につき,勤務1時間当たりの給与額をその者に支給す べき給与の額から減額する旨規定する。 給与条例19条は,同条例の施行に関し必要な事項は,当該労働組合と協議して定める旨規定する。 ⑶ 高槻市自動車運送事業職員就業規則(平成2年高交管理規程第10号。以下,単に「本件就業規則」という。甲6) ア本件就業規則10条1項は,職員(地方公営企業法15条の規定に基づ- 5 - き,本件事業管理者が高槻市自動車運送事業の一般職の職員として任命した者をいう。以下,本件就業規則において同じ。本件就業規則2条。)は疾病その他の事故により欠勤しようとするときは,事前にその事由及び日数を所属長に届け出なければならず,ただし,予測し難い事由で欠勤するときは,事後速やかに届け出なければならない旨規定する。本件就業規則1 1条は,職員は,遅刻した場合又は勤務時間中に発病その他やむを得ない事由により早退しようとするときは,所属長に届け,又は承認を受けなければならない旨規定する。 イ本件就業規則 件就業規則1 1条は,職員は,遅刻した場合又は勤務時間中に発病その他やむを得ない事由により早退しようとするときは,所属長に届け,又は承認を受けなければならない旨規定する。 イ本件就業規則25条1項本文は,年次有給休暇の承認を受けようとする職員は,あらかじめ本件事業管理者に請求しなければならない旨規定し, 同条2項は,職員は,同条1項の規定にかかわらず,病気,災害その他やむを得ない事由により定められた時期までに請求できなかった場合には,その理由を付して事後において承認を求めることができる旨規定する。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。) ⑴ 当事者等ア原告は,高槻市の住民であり,高槻市議会の議員である。 イ高槻市は高槻市自動車運送事業の設置等に関する条例(昭和41年高槻市条例第681号。以下「設置条例」という。)により自動車運送事業(地方公営企業法2条1項4号)を設置しており,被告はその管理者(同法7 条)である。 ウ(ア) Aは平成19年7月12日から平成23年6月19日まで,Bは同月20日から平成25年5月31日まで,それぞれ本件事業管理者の職にあった。 Cは,同年6月1日から本件事業管理者の職にあり,本件訴えの提起 の当時もその職にあった。 - 6 - (イ) Dは,平成21年4月1日から平成27年7月31日まで総務課長の職(ただし,平成24年4月1日から平成25年3月31日の間は総務企画課長の職)にあった。 Eは,平成27年8月1日から総務課長の職にあり,本件訴えの提起の当時もその職にあった。 (ウ) Fは,平成22年度及び平成23年度において,芝生営業所の所長の職に 画課長の職)にあった。 Eは,平成27年8月1日から総務課長の職にあり,本件訴えの提起の当時もその職にあった。 (ウ) Fは,平成22年度及び平成23年度において,芝生営業所の所長の職にあった。 Gは,平成22年度及び平成23年度において,緑が丘営業所の所長の職にあり,平成24年度において芝生営業所の所長の職にあった。 Hは,平成24年度において緑が丘営業所の所長の職にあった。 Iは,平成25年度,平成26年度及び平成27年度において,芝生営業所の所長の職にあった。 Jは,平成25年度及び平成26年度において,緑が丘営業所の所長の職にあった。 Kは,平成27年度において,緑が丘営業所の所長の職にあった。 ⑵ 高槻市自動車運送事業に係る事務処理のための組織等ア(ア) 高槻市には本件事業管理者の権限に属する事務を処理させるため交通部(以下,単に「交通部」という。)が置かれている(設置条例3条)。 (イ) 交通部には総務課及び企画運輸課が置かれている(高槻市自動車運送事業事務分掌規程(昭和45年高自管理規程第5号。甲2)2条1項) が,総務課は,平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間,総務企画課と称されていた(以下,この期間を含め,単に「総務課」という。)。 (ウ) 交通部企画運輸課には本件各営業所が置かれている(高槻市交通部営業所規程(昭和46年高自管理規程第5号。以下,単に「営業所規程」 という。甲4)1条,2条)。営業所の分掌する事務には,運輸主任,主- 7 - 任及び乗務員の勤務並びに配車に関すること(同規程3条2号),乗務記録に関すること(同条5号)が含まれる。 イ(ア)本件事業管理者は,高槻市自動車運送事業事務決裁規程(平成元年高交管理規程第7号。以下,単に「決 勤務並びに配車に関すること(同規程3条2号),乗務記録に関すること(同条5号)が含まれる。 イ(ア)本件事業管理者は,高槻市自動車運送事業事務決裁規程(平成元年高交管理規程第7号。以下,単に「決裁規程」という。甲3)により,労働組合との労働協約の締結に関すること(同規程5条4号),企業管理規 程その他重要な例規の制定,改廃及び令達をすること(同条7号)等について,自ら決裁を行うこととされている。 (イ) 総務課長は,決裁規程により,職員の出勤状況を把握し,出勤表を整理すること(同規程6条2項,別表第2の1⑷),定例的な給与等の支給並びに所得税その他法令に基づく事務を処理すること(同項,同別表の 1⒁)等について,専決することができることとされている。平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間の総務企画課長についても,同様であった(弁論の全趣旨)。 平成24年11月8日,高槻市自動車運送事業職員の賠償責任に関する規程(平成24年高交管理規程第12号。乙12)が施行されたことに より,総務課長については,同日より,地方公営企業法34条の準用する地方自治法243条の2第1項後段に定める賠償命令の対象となる者(同項後段各号に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則又は企業管理規程で指定したもの)に該当することとなった。 (ウ) 営業所の所長(以下,単に「所長」という。)は,企画運輸課長の命を受けて営業所の所管事務を掌理し,所属職員を指揮監督する(営業所規程4条3項)ところ,所属職員の休暇,早退及び欠勤を許可し,又は承認することは,本件事業管理者の権限に属する事務のうち所長が専決することができる事務とされている(同規程5条4号)。 ⑶ 本 程4条3項)ところ,所属職員の休暇,早退及び欠勤を許可し,又は承認することは,本件事業管理者の権限に属する事務のうち所長が専決することができる事務とされている(同規程5条4号)。 ⑶ 本件取扱いの概要- 8 - ア交通部においては,平成22年度以前から,①職員による遅刻のうち,始業から30分未満であるなど一定の条件を満たすものについては,2回目までは遅刻として取り扱わず,3回目に有給休暇を半日分取得したこととする取扱い(3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱い)がされていたほか,②30分を超える遅刻であっても有給休暇を半日分取得した こととする取扱い(1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱い)がされていた。そして,これらの取扱いがされた場合も,遅刻した職員は,出勤後にそのままバス乗務等の勤務に従事し,遅刻による減給や処分を受けることはなかった(弁論の全趣旨)。 イ休暇届表の記載 (ア) 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いの場合,休暇届表の裏面の「遅刻・早退」欄に遅刻した時間等が記載され,これが3回目になると同表の表面の「半休」欄に3回目に遅刻した日付が記載され,その備考欄に「遅刻3回」等と記載されることとなっていた。また,1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いの場合,休暇届表の表面の 「半休」欄の備考欄に「遅刻」との記載や遅刻した時間等が記載されることとなっていた。(以上につき,甲7参照。)(イ) 平成22年4月から平成27年8月までの間の本件各営業所所属の職員らの休暇届表の記載を取りまとめると別表のとおりとなるところ,同表によれば,上記の期間に,少なくとも,延べ445名の職員(同表の 番号1から449までの職員。ただし,18,40,41及び317は欠番。 表の記載を取りまとめると別表のとおりとなるところ,同表によれば,上記の期間に,少なくとも,延べ445名の職員(同表の 番号1から449までの職員。ただし,18,40,41及び317は欠番。)が本件取扱いを受けたこととなる(弁論の全趣旨)。 ⑷ 本件訴えの提起までの経緯ア原告は,平成27年8月10日,高槻市監査委員に対し,本件取扱いについて,「本来認められない有給休暇を承認するなどして,遅刻を欠勤とし て扱わず,減給することなく給与を支給してきたことは違法不当であり,- 9 - それによって交通部は損害を被ってきた。」などとして,監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした(甲9)。 イ高槻市監査委員は,平成27年10月8日付けで,本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分につき,地方自治法242条2項本文の監査請求期間を徒過したものとして監査の対象外と する一方,上記日以降に支給された給与に係る部分につき,原告の主張する給与の支給が違法又は不当な公金の支出に当たるかどうかを監査対象事項とした上で,「請求人が求める欠勤による給与の減額を行わずに公金を支出したことについて,市の損害として,関係職員らに不当利得又は損害賠償の請求を求める措置の必要は認められない」との監査結果を原告に 通知した(甲10)。 ウ原告は,平成27年11月6日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点⑴ 本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分が監査請求期間を徒過した不適法なものか(本案前の争点)(争点①) ⑵ 歴代所長の責任ア歴代所長による本件取扱いの違法性(争点②)イ歴代所長の故意・過失(争点③)⑶ 歴代課長の責任ア歴代課長による遅刻 なものか(本案前の争点)(争点①) ⑵ 歴代所長の責任ア歴代所長による本件取扱いの違法性(争点②)イ歴代所長の故意・過失(争点③)⑶ 歴代課長の責任ア歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令の違法性(争点 ④)イ歴代課長の故意・過失(賠償命令については重過失)(争点⑤)⑷ 歴代管理者の責任ア歴代管理者による歴代所長及び歴代課長に対する指揮監督上の義務の懈怠の有無(争点⑥) イ歴代管理者の故意・過失(争点⑦)- 10 - ⑸ 損害の有無及び額(争点⑧) 4 争点に対する当事者の主張⑴ 争点①(本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分が監査請求期間を徒過した不適法なものか)について(原告の主張) ア原告の主張する違法な財務会計行為の内容と地方自治法242条2項の適用の有無について(ア) 歴代所長に係る請求は,歴代所長による本件取扱いが不法行為であり,当該不法行為に基づく損害賠償請求を怠る事実の違法を主張するものである。したがって,歴代所長に係る請求は,地方自治法242条2項 の適用のない,いわゆる真正怠る事実(以下,単に「真正怠る事実」という。)に係る請求である。 歴代課長に係る請求は,歴代課長による遅刻した職員に対する給与の支出命令が違法であり,違法な財務会計上の行為をした職員に対する損害賠償請求又は賠償命令を怠る事実の違法を主張するものである。した がって,歴代課長に係る請求は,地方自治法242条2項の適用のある,いわゆる不真正怠る事実(以下,単に「不真正怠る事実」という。)に係る請求である。 歴代管理者に係る請求は,歴代管理者が歴代所長に対する指揮監督を怠ったことが不法行為であり,当該不法行為に ある,いわゆる不真正怠る事実(以下,単に「不真正怠る事実」という。)に係る請求である。 歴代管理者に係る請求は,歴代管理者が歴代所長に対する指揮監督を怠ったことが不法行為であり,当該不法行為に基づく損害賠償請求を怠 る事実の違法を主張するものと,歴代課長による支出命令の本来的権限者に対する損害賠償請求を怠る事実の違法を主張するものである。したがって,歴代管理者に係る請求のうち,前者は真正怠る事実に係る請求であり,後者は不真正怠る事実に係る請求である。 (イ) 被告は,歴代所長の行為は,総務課長が行う財務会計上の行為の準備 行為又は補助行為に当たるとして,歴代所長に係る請求及び歴代管理者- 11 - に係る請求のうち歴代所長に対する指揮監督を怠ったことを不法行為とする部分は不真正怠る事実に係る請求である旨主張するが,所長は所属職員の休暇,早退及び欠勤を許可し,又は承認する専決権限を独自の権限として有する以上,所長の行為が給与の支払の準備行為であるとか補助行為であるとかいうことはできない。 イ地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」について(ア) 上記アのとおり,歴代課長に係る請求及び歴代管理者に係る請求のうち歴代課長による支出命令の本来的権限者に対する損害賠償請求を怠る事実の違法を主張する部分は不真正怠る事実に係る請求であるから,そのうち,平成26年8月10日前に支出された給与に係る部分は,そ の前提となる本件監査請求が,地方自治法242条2項本文の定める監査請求期間を徒過したものであるということとなる。 しかし,本件取扱い及びこれに基づく給与の支出命令は,交通部内部で行われていたものであり,純粋に内部での問題であることから,一般住民はもちろん,市議会議員である原告においても,その問題を となる。 しかし,本件取扱い及びこれに基づく給与の支出命令は,交通部内部で行われていたものであり,純粋に内部での問題であることから,一般住民はもちろん,市議会議員である原告においても,その問題を知るこ とはできなかった。そして,原告は,平成27年5月頃,頻繁に遅刻している職員がいるとのうわさを聞いたことから,同月27日,情報公開請求をしたところ,休暇届表が公開され,同書面の「半休」欄の備考欄に「遅刻3回」等の記載があることに気付いた。そこで,原告は,交通部に問い合わせるなどし,最終的に,同年7月16日に市議会における 被告の答弁により,本件取扱い及びこれに基づく違法な給与の支出について知ったのである。原告は,その約1か月後である同年8月10日に本件監査請求をした。 これらの事情に照らせば,上記請求の前提となる本件監査請求について,監査請求期間を徒過したことには,地方自治法242条2項ただし 書の「正当な理由」があるというべきである。 - 12 - (イ) 被告は,原告が本件監査請求において「正当な理由」について主張せず,監査対象外とされた以上,本訴において「正当な理由」を主張・立証したとしても遡って本件監査請求が適法になるものではない旨主張する。しかし,住民監査請求において「正当な理由」について主張したが監査委員にこれを認められなかった場合と,「正当な理由」について主 張せずに監査委員が「正当な理由」なしと判断した場合とで,結論が異なるものではない。また,住民訴訟段階で「正当な理由」の主張を補充することを禁ずる旨の規定もない。したがって,被告の上記主張は失当である。 被告は,原告が平成25年にも情報公開請求により休暇届表を取得し ていたことを根拠に「正当な理由」がないと主張するところ,当時の ずる旨の規定もない。したがって,被告の上記主張は失当である。 被告は,原告が平成25年にも情報公開請求により休暇届表を取得し ていたことを根拠に「正当な理由」がないと主張するところ,当時の休暇届表に「遅刻3回」との記載があったか否かについて記憶していない。 仮に,そのような記載があったとしても,その記載のみから本件取扱いの存在及び内容を知ることはできないし,何らかの問題があるのではないかとの疑問を持つこともできない。したがって,原告は,平成25年 当時,本件取扱いについて知らなかったし,知ることもできなかったのであって,被告の上記主張は失当である。 ウ結論よって,本件監査請求は,平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分も含め,適法であり,本件訴えは,適法な監査請求を経た適法な 訴えである(最高裁判所平成10年12月18日第三小法廷判決・民集52巻9号2039頁参照)。 (被告の主張)ア地方自治法242条2項の適用の有無について原告は,歴代所長に係る請求及び歴代管理者に係る請求のうち歴代所長 に対する指揮監督を怠ったことを不法行為とする部分は真正怠る事実に係- 13 - る請求である旨主張する。 しかし,各職員につき休暇,早退及び欠勤の決裁をした休暇届表を作成し,それらを含む勤務実績を総務課に報告するという歴代所長の行為は,財務会計上の行為ではない事実行為であるものの,職員に対する給与の支払の前提行為であり,後に続く財務会計上の行為たる支出命令と一体のも のというべきである。そうすると,歴代所長の上記行為については,総務課長が行う財務会計上の行為たる支出命令の準備行為又は補助行為に当たるというべきであるから,上記各請求も,不真正怠る事実に係る請求であるというべきである(最高 と,歴代所長の上記行為については,総務課長が行う財務会計上の行為たる支出命令の準備行為又は補助行為に当たるというべきであるから,上記各請求も,不真正怠る事実に係る請求であるというべきである(最高裁判所平成14年10月3日第一小法廷判決・民集56巻8号1611頁参照)。 イ地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」について(ア) 本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分は,不適法なものとして監査の対象外とされていること原告は,本件監査請求において「正当な理由」について主張しなかったため,本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与 に係る部分は,監査委員によって,監査の対象外とされている。 監査請求において,請求人が「正当な理由」について疎明したにもかかわらず,監査委員が判断を誤ってこれを不適法なものとした場合には,監査請求前置の要件を満たすものとして住民訴訟の審理が行われるべきであるが,そもそも,請求人が監査請求において「正当な理由」の主 張さえしていない場合には,当該監査請求は不適法なものといわざるを得ないのであって,このような場合にまで住民訴訟の審理を行うことは,実質的に監査請求を経ずに住民訴訟を許すこととなり,監査請求前置主義を採用した地方自治法の趣旨に反する。したがって,たとえ本訴において「正当な理由」の主張・立証がされたとしても,原告が本件監査請 求において「正当な理由」の主張すらしていなかった以上,本件監査請- 14 - 求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分は不適法なものといわざるを得ない。 (イ) 本件監査請求について「正当な理由」が認められないこと原告は,平成25年6月11日,情報公開請求により,平成24年度 0日前に支給された給与に係る部分は不適法なものといわざるを得ない。 (イ) 本件監査請求について「正当な理由」が認められないこと原告は,平成25年6月11日,情報公開請求により,平成24年度の休暇届表を取得しており,その「半休」欄の備考欄に「遅刻3回」の 記載がされているものもあったのであるから,その頃には,原告は,本件取扱いがされていることを認識することができた。加えて,原告は,高槻市議会の議員であるから,休暇届表を取得した時点で,市議会議員として相当の注意力をもって調査等をすれば,休暇届表の内容及び記載の趣旨のほか,原告が主張するところの本件取扱いの違法原因等につい て容易に知ることができたというべきである。 したがって,原告は,平成25年中には,本件取扱いについて,監査請求をするに足りる程度にその行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり,その後,相当期間内に監査請求をしたということはできない。したがって,本件監査請求について「正当な理由」は認め られない。 ウ小括よって,本件訴えのうち,平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分は,適法な監査請求を経ていない不適法な訴えとして,却下されるべきである。 ⑵ 争点②(歴代所長による本件取扱いの違法性)について(原告の主張)ア給与は勤務に対する対価であり,勤務なくして給与を支払うことはできない(ノーワーク・ノーペイの原則)ところ,交通部の職員についても,上記原則から,職員が勤務しない時間については,本件事業管理者の承認 があった場合を除き,所定の勤務時間当たりの給与額を減額して給与を支- 15 - 給しなければならない旨の規定が設けられている(給与条例16条1項)。 本件取扱いの下において,職員は,遅刻した時 があった場合を除き,所定の勤務時間当たりの給与額を減額して給与を支- 15 - 給しなければならない旨の規定が設けられている(給与条例16条1項)。 本件取扱いの下において,職員は,遅刻した時間の分だけ勤務していないにもかかわらず,遅刻した時間も勤務したものとして給与が支給されている。しかし,本件取扱いにおいて,上記規定にいう承認が適法にされているとはいえない。 また,「労働者自身が休暇をとること(すなわち,就労しないこと)によって始めて,休暇の付与が実現される」(最高裁判所昭和48年3月2日第二小法廷判決・民集27巻2号210頁参照)とされているところ,本件取扱いの下では,職員は実際には遅刻した後に勤務している以上,有給休暇を取得したことにはならないはずである。本件取扱いは,遅刻による減 給等の不利益を受けるのが嫌なら半日分の有給休暇を消化したことにせよと迫っているに等しく,常習的に遅刻している職員を除けば,本人の自由意思に基づく休暇取得とはいえない。 以上のとおり,本件取扱いは,ノーワーク・ノーペイの原則に反するとともに,有給休暇制度の趣旨を没却する違法なものである。 イ(ア) 被告は,3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについては,高槻市交通労働組合(以下,単に「本件組合」という。)との間の労働協約である,平成7年12月27日付け覚書(以下「本件覚書」という。 乙1)に基づくものであると主張するが,そのような合意がされたということ自体が疑わしい。 この点を措くとしても,このような合意は,上記のとおり,ノーワーク・ノーペイの原則に反するとともに,有給休暇制度の趣旨を没却する違法なものであるし,市民感覚に照らしても著しく合理性を欠くものであるから,このような労働協約が締結されたとしても, とおり,ノーワーク・ノーペイの原則に反するとともに,有給休暇制度の趣旨を没却する違法なものであるし,市民感覚に照らしても著しく合理性を欠くものであるから,このような労働協約が締結されたとしても,無効なものというほかない。 (イ) 被告は,本件取扱いには必要性があった旨主張するが,乗務員が欠勤- 16 - した場合のために待機職員が存在するのであって,待機人数を上回る遅刻者が日々存在するとは考え難い。また,仮に遅刻してでも出勤してもらうことにメリットがあるとしても,僅かの時間の遅刻のために有給休暇半日分に振り替えた上で乗務させる必要まではなく,有給休暇制度の趣旨を損なうことなく,かつ交通部の特殊性を踏まえた上で,市バスの 定時運行を可能にする方策はあったはずである。実際,交通部においても,平成27年には1時間単位での有給休暇の取得が可能となり,本件覚書による取扱いは廃止されている。 ウ以上によれば,歴代所長による本件取扱いは,違法である。 (被告の主張) ア本件取扱いの内容交通部職員の遅刻を有給休暇に振り替える取扱いの具体的な内容は,以下のとおりであった。いずれの場合も,遅刻した職員は,出勤後にそのままバス乗務等の勤務に従事し,遅刻による減給や処分はしていない。 (ア) 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱い 交通部においては,本件組合との間で締結された本件覚書に基づき,交通部職員の遅刻について,次のとおり,取り扱うこととされていた。 a 基本的取扱いとして,出勤時刻以降の勤務時間内出勤は,職務命令違反・部分欠勤に当たり,当該欠勤時間に応じて賃金カット等の対象とする。 b 職員救済の立場から,本人からの申請と上司の承認を経て,始業から30分未満の遅刻(乗務員については, ,職務命令違反・部分欠勤に当たり,当該欠勤時間に応じて賃金カット等の対象とする。 b 職員救済の立場から,本人からの申請と上司の承認を経て,始業から30分未満の遅刻(乗務員については,始業から30分未満で,かつ,出庫時刻までの遅刻)については,有給休暇との振替措置を行う。 c 遅刻3回を有給休暇半日分と振り替えることとし,振替の限度日数は有給休暇2日分相当までとする。そして,端数(2回以内の遅刻) の振替はしない。 - 17 - (イ) 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱い始業から30分を過ぎた遅刻(乗務員については,出庫時刻を過ぎた遅刻を含む。)については,本件覚書の対象外である。 ただし,このような場合であっても,遅刻した職員から,有給休暇として処理してほしいとの申請があれば,本件就業規則25条2項に基づ き,遅刻扱いとせず,半日の有給休暇として処理している。 イ 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いの適法性(ア) 上記のとおり,3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは,本件覚書に基づくものであるところ,本件覚書は有効に成立した労働協約である。そして,その内容は,職員の一定の範囲の遅刻について,事 前かつ包括的に,給与条例16条1項の勤務しないことについての承認をすることとしたものであるということができるから,地公労法8条1項の「条例に抵触する内容を有する協定」には該当しない。したがって,上記取扱いを違法とする理由はない。 (イ) また,交通部では,平日と休日とを併せて300通りにも及ぶ仕業に ついて,輪番制により毎日異なる仕業を割り当てられるという勤務形態の特殊性があり,一定数の乗務員が遅刻をするという事態が生じていたところ,市バスの定時運行の確保という公 0通りにも及ぶ仕業に ついて,輪番制により毎日異なる仕業を割り当てられるという勤務形態の特殊性があり,一定数の乗務員が遅刻をするという事態が生じていたところ,市バスの定時運行の確保という公共交通機関としての事業目的に照らせば,乗務員には出勤時刻に間に合わない場合でも有給休暇を取得するのではなく,遅刻してでも出勤して業務に就くべきことが要請さ れていた。本件覚書は,このような事情の下で,本件組合との交渉の結果として締結されたものであって,交通部における事業を遂行するために極めて合理性のある制度であったというべきであり,この点からも,上記取扱いは適法であるといえる。 ウ 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いの適法性 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは,本件覚書に基づく- 18 - ものではなく,本件就業規則25条2項に基づき事後に有給休暇の承認をしているものであるところ,上記イのとおりの事情の下では,同項にいう「やむを得ない事由」が認められる。したがって,上記取扱いは適法である。 エ原告の主張に対する反論 原告は,本件取扱いが著しく合理性を欠くなどと主張するが,交通部における上記事情を理解しない机上の空論にすぎない。 また,原告は,本件取扱いの下では,職員は遅刻した後に勤務している以上,有給休暇を取得したことにはならないなどと主張するが,有給休暇の法的効果は,当該稼働日における就労義務が消滅することに尽きるから, 当該稼働日に業務に従事したからといって,その取扱いが虚偽であるとか無効であるとかいうことはできない。 ⑶ 争点③(歴代所長の故意・過失)について(原告の主張)歴代所長は,本件取扱いの下において違法に休暇の承認をしており,故意 が認められる。本件覚 無効であるとかいうことはできない。 ⑶ 争点③(歴代所長の故意・過失)について(原告の主張)歴代所長は,本件取扱いの下において違法に休暇の承認をしており,故意 が認められる。本件覚書は,平成27年6月24日に廃止されたというのであるから,少なくとも,同廃止後の同年8月13日にされた休暇の承認については,明らかに故意がある。 仮に,故意が認められないとしても,歴代所長は,本件取扱いが民間企業等では考え難い措置であり,市民感情に照らしても理解を得難いものである こと,また,他に合理的な方策があることも容易に認識することができた。 したがって,本件取扱いにつき,慣習や労使間の合意があったとしても,それが違法・無効であることを容易に認識することができたというべきであるから,歴代所長には過失が認められる。 (被告の主張) 仮に本件取扱いが違法であったとしても,歴代所長は,本件覚書及び本件- 19 - 就業規則25条2項に基づき,本件取扱いをしていたのであるから,故意はない。 また,本件取扱いは,本件覚書及び本件就業規則25条2項に基づき,継続的に行われてきたことであり,また,これらの処理が違法であるなどと問題提起がされたことも全くなかったのであるから,歴代所長に,その違法性 を認識し得る素地自体がないというべきであり,具体的な予見可能性も結果回避可能性もなく,過失は認められない。 ⑷ 争点④(歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令の違法性)について(原告の主張) 上記⑵のとおり,本件取扱いは著しく合理性を欠くものであるところ,歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令は,違法な有給休暇の承認を前提としたものであって,同様に違法である。 被告は,専決権限を有する所長の 取扱いは著しく合理性を欠くものであるところ,歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令は,違法な有給休暇の承認を前提としたものであって,同様に違法である。 被告は,専決権限を有する所長の判断で有給休暇の承認がされている以上,総務課長の独自の判断で給与を減額することはできないと主張するが,総務 課長は,職責上,所長よりもその地位は上であり,職員の出勤状況を把握し,出勤表を整理することについて専決権限を有している以上,所長が承認した全ての有給休暇の正確性について判断し,誤りがあれば,これを是正することができるというべきである。 (被告の主張) 総務課長は,給与の支出命令をするに当たっては,所長が決裁した休暇や時間外勤務等を前提として,総務課において計算した給与の金額について決裁をしているのであり,所長が承認した全ての有給休暇の正確性について判断することは現実的に不可能である。専決権者である所長の判断で有給休暇が承認されている以上,これに対して給与を支出することは,本来の権限を 有する本件事業管理者及び専決権者である総務課長の義務というべきであ- 20 - り,独自の判断で減額することはできない。 原告は,本件取扱いが違法であるから,歴代課長による給与の支出命令も違法である旨主張する。しかし,先行行為の違法により後行行為たる財務会計上の行為が違法となるのは,先行行為が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に限られ るところ(最高裁判所平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁),上記⑵で述べたところからすれば,少なくとも,本件取扱いが著しく合理性を欠くといえないことは明らかである。 したがって,歴代課長による遅刻をした職員に対す 三小法廷判決・民集46巻9号2753頁),上記⑵で述べたところからすれば,少なくとも,本件取扱いが著しく合理性を欠くといえないことは明らかである。 したがって,歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令は,違法ではない。 ⑸ 争点⑤(歴代課長の故意・(重)過失)について(原告の主張)歴代課長は,違法に遅刻をした職員に対する給与の支出命令をしており,故意が認められる。本件覚書は,平成27年6月24日に廃止されたというのであるから,少なくとも,同廃止後の同年8月13日に休暇の承認を受け た職員に対する給与の支出命令については,明らかに故意がある。 仮に,故意が認められないとしても,歴代課長は,本件取扱いが民間企業等では考え難い措置であり,市民感情に照らしても理解を得難いものであること,また,他に合理的な方策があることも容易に認識することができた。 したがって,本件取扱いにつき,慣習や労使間の合意があったとしても,そ れが違法・無効であることを容易に認識することができたというべきであるから,歴代課長には重過失が認められる。 なお,仮に,歴代課長が,本件取扱いがされていることを知らなかったとすれば,その職責を全うしていなかったのであり,重過失が認められる。 (被告の主張) 仮に本件取扱いが違法であったとしても,歴代課長は,歴代所長による休- 21 - 暇の承認等を前提に支出命令をしたのであるから,故意はない。 また,歴代所長と同様に,過失も認められない。 ⑹ 争点⑥(歴代管理者による歴代所長及び歴代課長に対する指揮監督上の義務の懈怠の有無)について(原告の主張) 歴代管理者は,本件取扱いを廃止し,歴代所長及び歴代課長の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務があったにもかかわらず, 代課長に対する指揮監督上の義務の懈怠の有無)について(原告の主張) 歴代管理者は,本件取扱いを廃止し,歴代所長及び歴代課長の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務があったにもかかわらず,違法にこれを怠った。 (被告の主張)本件取扱いは違法ではないから,歴代管理者に原告が主張するような指揮監督上の義務違反はない。 ⑺ 争点⑦(歴代管理者の故意・過失)について(原告の主張)歴代所長による本件取扱い及び歴代課長による給与の支出命令が許されないことは明らかであったから,これを阻止する義務を果たさなかった歴代管理者には故意又は過失が認められる。 (被告の主張)歴代管理者に故意・過失はない。 ⑻ 争点⑧(損害の有無及び額)(原告の主張)ア損害の発生 本件取扱いの下では,遅刻をした時間についても給料が支給されているが,本来遅刻をした時間分は稼働していない以上,給料が支払われてはならない。また,遅刻の有無や回数は勤務態度に直結するから期末手当及び勤勉手当の額も減額されるはずであるが,本件取扱いの下では,これらの減額はされていない。そうすると,交通部には,それだけの損害が生じた ことになる。また,遅刻の有無や回数は,本来,昇進や昇給にも影響する- 22 - はずであるが,本件取扱いにより,本来,昇進・昇給させるのが妥当でない者が昇進・昇給されていたと考えられ,この点においても,交通部には損害が生じている。 イ損害額高槻市自動車運送事業職員給与支給規程(昭和33年高自管理規程第8 号。以下「給与支給規程」という。乙4)等によれば,勤勉手当は欠勤がない期間が5か月15日以上6か月未満の場合は5%減額されるところ,平成28年4月公表の「高槻市の給与・定員管理等について」(甲 号。以下「給与支給規程」という。乙4)等によれば,勤勉手当は欠勤がない期間が5か月15日以上6か月未満の場合は5%減額されるところ,平成28年4月公表の「高槻市の給与・定員管理等について」(甲11)によれば,交通部職員の勤勉手当が1.5月分,平均基本給が月額28万7064円である。そうすると,本件取扱いにより遅刻した職員は勤勉手当 を5%分減額されるべきであったはずであり,その金額は,平均で2万1529円となる。 (計算式:28万7064円 × 1.5 × 5% ≒ 2万1529円)したがって,遅刻者一人当たり,少なくとも,年間1万円の損害が生じたということができる。 ウ請求額前記前提事実⑶イ(イ)のとおり,平成22年4月から平成27年8月までの間に延べ445名の職員が本件取扱いにより遅刻を有給休暇に振り替える取扱いを受けたところ,歴代管理者,歴代課長及び歴代所長は,それぞれ,別紙の各金額及びこれに対する遅延損害金につき,不法行為に基づ く損害賠償責任又は地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負うこととなる。 なお,Dは,平成24年度については,同年11月8日までは不法行為に基づく損害賠償責任を負い,その後は地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負うので,同年度に係る損害金87万円を12分(7か月分と 5か月分)し,その7を前者の損害とし,その5を後者の損害として計上- 23 - した。また,別表の番号7,17及び141の各職員については,Fが所長であった時の遅刻とGが所長であった時の遅刻とがあるため,いずれも,損害を5000円ずつに分けて計上した。 (被告の主張)争う。本件取扱いによって,高槻市に損害は生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件監査請求の とがあるため,いずれも,損害を5000円ずつに分けて計上した。 (被告の主張)争う。本件取扱いによって,高槻市に損害は生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分が監査請求期間を徒過した不適法なものか)について⑴ 歴代所長に係る監査請求について前記前提事実⑷ア及び弁論の全趣旨によれば,本件監査請求は,本件取扱 いに関し,歴代所長が,職員の遅刻を欠勤として取り扱わず,有給休暇を半日分取得したとの取扱いをしたことが不法行為に該当するとし,被告が歴代所長に対する当該不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っているという事実を対象に含むものということができる。そして,前記前提事実⑵イ(ウ)によれば,歴代所長は,その専決権限に基づいて,遅刻した職員につき有 給休暇の承認等をしていたものであるところ,歴代所長による有給休暇の承認等の行為自体は財務会計上の行為ではないから,本件監査請求のうち上記の部分は,真正怠る事実に係る監査請求であるということができる。 これに対し,被告は,歴代所長の上記行為は財務会計上の行為たる給与の支出命令の準備行為又は補助行為に当たるから,本件監査請求のうち上記の 部分は,不真正怠る事実に係る監査請求である旨主張する。しかし,所長による有給休暇の承認等の行為は,それ自体が,人事の管理等を目的とする独立した一つの事務であって,給与の支出命令と一体として捉えられるべきような性質の行為ではないというべきである。したがって,歴代所長の上記行為は給与の支出命令の準備行為又は補助行為に当たるということはできず, 被告の上記主張は採用することができない。 - 24 - よって,本件監査請求のうち歴代所長に係る部分は 長の上記行為は給与の支出命令の準備行為又は補助行為に当たるということはできず, 被告の上記主張は採用することができない。 - 24 - よって,本件監査請求のうち歴代所長に係る部分は,平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分も含め,適法な監査請求である。 ⑵ 歴代課長に係る監査請求に係る「正当な理由」の有無についてア(ア) 前記前提事実⑷ア及び弁論の全趣旨によれば,本件監査請求は,歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令を対象に含むもの ということができるところ,前記前提事実⑷アのとおり,本件監査請求は平成27年8月10日にされたものであるから,歴代課長に係る監査請求のうち,平成26年8月10日前にされた給与の支出命令を対象とする部分は,地方自治法242条2項本文の監査請求期間を経過しており,同項ただし書にいう「正当な理由」がない限り,不適法である。 (イ) この点に関し,被告は,原告が本件監査請求において上記「正当な理由」について主張すらせず,その結果として,本件監査請求のうち平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分が不適法なものとして却下されている以上,たとえ本訴において上記「正当な理由」の主張・立証がされたとしても,本件監査請求のうち上記部分が不適法であるこ とに変わりはなく,このような場合にまで住民訴訟の審理を行うことは監査請求前置主義を採用した地方自治法の趣旨に反する旨主張する。 しかし,上記「正当な理由」の有無を含め監査請求が適法なものであるかどうかは客観的に決せられるべき事柄であって,監査請求期間を徒過した請求人が,一般的に,上記「正当な理由」についての主張・立証 の義務を負うとまでいうべき合理的理由は見いだし難い。他方で,地方自治法上,請求人が上記 るべき事柄であって,監査請求期間を徒過した請求人が,一般的に,上記「正当な理由」についての主張・立証 の義務を負うとまでいうべき合理的理由は見いだし難い。他方で,地方自治法上,請求人が上記「正当な理由」について主張しない限り,監査委員において,これを認めることができないとされているものではなく,むしろ,監査委員は,請求人の主張の有無にかかわらず,上記の点を含めて,必要な監査をすべきものと解される。そうすると,監査委員が請 求人に対して上記「正当な理由」についての主張等を求めたにもかかわ- 25 - らず請求人がこれを拒否したために,監査委員においてこの点についての判断を誤ったなどの特別の事情がある場合は別異に解する余地があり得るとしても,単に,監査請求において請求人が上記「正当な理由」の主張をしなかったからといって,当該監査請求が不適法なものに確定するなどということはできず,本訴において上記の点についての主張・ 立証をすることが禁じられるものでもないと解するのが相当である。 そうであるところ,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,本件監査請求について上記特別の事情があったことをうかがわせる事情は見当たらない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 イ(ア) 普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記 の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかにより判 り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記 の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかにより判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。 (イ) もっとも,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって 調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成14年10月1 5日第三小法廷判決・集民208号157頁)。 - 26 - ウ(ア) 前記前提事実⑷ア及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件監査請求において,遅刻が欠勤として取り扱われず本来すべき減額をせずに給与が支給されてきたことが違法・不当である旨主張していたものであるところ,高槻市における有給休暇の承認等に関する取扱いは,専ら同市の内部的な事務処理上の事項であることなどからすると,遅刻をした職員 に対し何らの減額もされずに給与が支給されていたことは,同市の一般住民にとっては通常知り得ない事情であるということができる。そうすると,平成26年8月10日前にされた給与の支出命令については,「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知 ることができなかった場合」に該当するというべきである。 そうであるところ,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成27年5月 査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知 ることができなかった場合」に該当するというべきである。 そうであるところ,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成27年5月頃,頻繁に遅刻している職員がいるとのうわさを聞いたことから,同月27日,情報公開請求をしたところ,同年6月26日,職員らの休暇届表が公開されたこと,原告は,公開された休暇届表の「半 休」欄の備考欄に「遅刻3回」等の記載があることに気付いたことから,同記載の意味を議会で質問すべく,交通部に対し質問原稿を送付したところ,同年7月8日から同月10日にかけて,3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える制度があったことなどを説明する内容の答弁案が送付されてきたこと,原告は,同年7月16日に市議会において上記記載 の意味等について質問をしたところ,被告から上記答弁案のとおりの答弁がされ,これにより遅刻をした職員に対し何らの減額もされずに給与が支給されていたことを知ったこと,原告は,その後,同年8月10日に本件監査請求をしたことが認められる。 以上の事実によれば,原告は,情報公開の手続や議会での質問をする ことにより遅刻をした職員に対し何らの減額もされずに給与が支給さ- 27 - れていたことを知ってから,1か月程度のうちに本件監査請求をしたというのであるから,原告は,監査請求をするに足りる程度に遅刻をした職員に対する給与の支出命令の内容を知ることができた時から相当な期間内に監査請求をしたものということができる。 (イ) これに対し,被告は,原告は平成25年6月11日に平成24年度の 休暇届表を取得しており,これに基づいて本件取扱いがされていることを知ることができたなどとして,上記相当な期間内に監査請求をしたとはいえない旨主張 ,原告は平成25年6月11日に平成24年度の 休暇届表を取得しており,これに基づいて本件取扱いがされていることを知ることができたなどとして,上記相当な期間内に監査請求をしたとはいえない旨主張するところ,確かに,証拠(乙13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が上記日に公開を受けた職員の休暇届表にも「遅刻3回」等の記載がされていたことが認められる。しかし,他に特段の情報 も持ち合わせていないにもかかわらず,公開された休暇届表の上記記載に注目すること自体が困難であるといえるほか,同記載のみから遅刻をした職員について違法・不当な事務の取扱いが行われているのではないかとの疑いを持つことも相当に困難であるといわざるを得ない(なお,原告自身は,当時,祭祀休暇について問題意識を有して調査していたこ とがうかがわれる。)。そうすると,原告が平成25年6月11日に休暇届表の公開を受けていたからといって,その頃に,原告において遅刻をした職員に対する給与の支出命令に違法又は不当な点があると考えて監査請求をするに足りる程度にその内容を知ることができたということはできない。 よって,被告の上記主張は,採用することができない。 エ以上によれば,歴代課長に係る監査請求のうち,平成26年8月10日前にされた給与の支出命令を対象とする部分については,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」が認められ,適法な監査請求であるということができる。 ⑶ 歴代管理者に係る監査請求について- 28 - ア前記前提事実⑷ア及び弁論の全趣旨によれば,本件監査請求は,歴代管理者が歴代所長に対する指揮監督を怠ったことが不法行為に該当するとし,被告が歴代管理者に対する当該不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っているという事 論の全趣旨によれば,本件監査請求は,歴代管理者が歴代所長に対する指揮監督を怠ったことが不法行為に該当するとし,被告が歴代管理者に対する当該不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っているという事実を対象に含むものということができるところ,上記⑴で述べたところと同様に,本件監査請求のうち上記の部分は,真正 怠る事実に係る監査請求であるということができる。 したがって,歴代管理者に係る監査請求のうち,上記の部分については,平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分も含め,適法な監査請求である。 イ前記前提事実⑷ア及び弁論の全趣旨によれば,本件監査請求は,歴代管 理者が歴代課長に対する指揮監督を怠ったことが不法行為に該当するとし,被告が歴代管理者に対する当該不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っているという事実を対象に含むものということができるところ,この点について監査を遂げるためには,監査委員は,歴代課長による遅刻をした職員に対する給与の支出命令の違法性等について判断をしなけれ ばならないから,本件監査請求のうち上記の部分は,不真正怠る事実に係る監査請求であるというべきである。そうすると,歴代管理者に係る上記監査請求のうち,平成26年8月10日前にされた給与の支出命令を対象とする部分は,地方自治法242条2項本文の監査請求期間を経過していることとなるが,上記⑵で述べたところと同様に,同項ただし書にいう「正 当な理由」が認められるから,結局,上記部分についても,適法な監査請求であるということができる。 ⑷ 小括以上によれば,本件監査請求は,平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分も含め,全体として適法な監査請求であるということができる。 したがって,本件訴えは,適法な監査請求 ⑷ 小括以上によれば,本件監査請求は,平成26年8月10日前に支給された給与に係る部分も含め,全体として適法な監査請求であるということができる。 したがって,本件訴えは,適法な監査請求を前置した適法な訴えである。 - 29 - 2 争点②(歴代所長による本件取扱いの違法性)について⑴ 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲5~7,10,乙1,8~10,14,証人G)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア平成7年当時,高槻市本庁舎において,午前8時45分が出勤時刻であ るが午前9時までの15分間は休息時間とされ,この休息時間中に出勤すれば遅刻として取り扱われないこととされていたところ,このような取扱いには問題があるとされ,午前8時45分以降の出勤は遅刻であるとの観点から,勤務時間全般の見直しが行われた。 本件事業管理者は,高槻市本庁舎における勤務時間全般の見直しを受け て本件組合との間で協議を行った結果,平成7年12月27日付けで本件覚書を締結した。本件覚書は,労働協約に該当するものであるところ,その具体的内容は,以下のとおりであった(なお,原告はこのような合意がされたこと自体が疑わしいと主張するが,本件覚書(乙1)が存在しており,これが発見された経緯にも不自然な点は見当たらない以上,上記合意 がされたことについて疑いを差し挟む余地はなく,本件覚書どおりの合意がされた事実を認定することができる。)。 (ア) 基本的取扱いとして,出勤時刻以降の勤務時間内出勤は,職務命令違反・部分欠勤に当たり,当該欠勤時間に応じて賃金カット等の対象とする。 (イ) しかし,職員救済の立場から,本人からの申請と上司の承認を経て,始業から30分未満の遅刻(乗務員については,始業から30分未満 たり,当該欠勤時間に応じて賃金カット等の対象とする。 (イ) しかし,職員救済の立場から,本人からの申請と上司の承認を経て,始業から30分未満の遅刻(乗務員については,始業から30分未満で,かつ,出庫時刻までの遅刻。以下同じ。)については,有給休暇との振替措置を行う。 (ウ) 遅刻3回を有給休暇半日分と振り替えることとし,振替の限度日数は 有給休暇2日分相当までとする。そして,端数(2回以内の遅刻)の振- 30 - 替はしない。 イまた,交通部では,平成21年度以前から,本件覚書に基づく振替措置のほか,始業から30分を過ぎた遅刻(乗務員については,出庫時刻を過ぎた遅刻を含む。以下同じ。)についても,本人からの申請と上司の承認を経て,有給休暇半日分と振り替える取扱いがされていた。 ウ上記ア及びイの有給休暇の承認がされた日にも,遅刻した職員は,出勤後にそのままバス乗務等の勤務に従事し,遅刻による減給や処分を受けることはなかった。 エ歴代所長は,本件取扱いの下で,別表のとおり,遅刻を遅刻として取り扱わず,又は,上記ア及びイの遅刻の有給休暇半日分への振替措置として 有給休暇の承認をした。別表記載の遅刻をした職員延べ445名のうち,1年度の間に有給休暇半日分の承認を複数回受けた者は延べ37名であり,4回以上の承認を受けた者は,以下のとおりである。 (ア) 別表番号116 遅刻1回で有給休暇半日分 2回遅刻3回で有給休暇半日分 2回合計4回 (イ) 別表番号134 遅刻1回で有給休暇半日分 5回合計5回(ウ) 別表番号305 遅刻1回で有給休暇半日分 4回遅刻3回で有給休暇半日分 1回合計5回(エ) 別表番号270 遅刻1回で有給休暇半日分 3回遅刻3回で有給休暇半日分 合計5回(ウ) 別表番号305 遅刻1回で有給休暇半日分 4回遅刻3回で有給休暇半日分 1回合計5回(エ) 別表番号270 遅刻1回で有給休暇半日分 3回遅刻3回で有給休暇半日分 3回合計6回 オ交通部では,平日1日当たり約2000便のバスを運行しており,これに基づき,乗務員の1日の業務内容を定めた仕業を設定しているところ,この仕業は平日で約200通りに及ぶ。乗務員は,早出勤務,遅出勤務及び中休勤務(ラッシュ時間帯の勤務)の3勤務体系の中で,輪番制により毎日異なる仕業が割り当てられ,業務に従事している。なお,職員が遅刻 をした場合のほか,交通渋滞や交通事故等の不測の事態が発生した場合に- 31 - 備えて,時間帯毎に1名ないし3名の職員が待機しており,上記のような場合には,待機職員が代替バスの運転等をすることとされている。 仕業表には,当該仕業に係る出勤時刻及び退勤時刻が定められている。 乗務員は,仕業表に定められた出勤時刻にその日の運行管理者(運輸主任)による点呼を受けることとされ,点呼の時刻を過ぎると,本来遅刻扱いと される。 交通部では,平成22年度から平成26年度までの5年間で,遅刻をした乗務員は185人,遅刻回数が1回の者は延べ244人,遅刻回数が2回以上の者は111人,延べ遅刻回数は581回(1年度当たりでは,遅刻をした職員は概ね70人前後で,延べ遅刻回数は116回前後)であっ たが,遅刻の原因として,割り当てられた仕業を勘違いしたことによるものも少なくなかった。 カ本件覚書に基づき3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは,本件事業管理者と本件組合との間の平成27年6月22日付け協定書により,同月24日をもって廃止された。また,平成27年高交管理規程第 に基づき3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは,本件事業管理者と本件組合との間の平成27年6月22日付け協定書により,同月24日をもって廃止された。また,平成27年高交管理規程第 7号による改正前の本件就業規則21条の2第1項によれば,年次有給休暇は1日又は半日を単位として与えるものとされていたところ,同改正により,同年6月24日より,1時間を単位としても与えることができることとなった。 ⑵ 判断 ア企業職員の勤務条件についての本件事業管理者の裁量権について前記関係法令等の定めのとおり,地方公営企業法は,企業職員については,給与,勤務時間その他の勤務条件に関する地方公務員法24条から26条の3までの規定の適用を除外した上で(同法39条1項),企業職員の給与は給料及び手当とし(同法38条1項),その種類及び基準のみ条例 で定めることとし(同法38条4項),その額や支給方法といった具体的内- 32 - 容のほか,勤務時間その他の勤務条件については,条例で定めることを要せず,原則として,労働組合との間の団体交渉等を踏まえ(地公労法7条から9条まで参照),管理者が定めることとされている(地方公営企業法9条,10条)。これらの規定を受けて,高槻市においても,給与条例において企業職員の給与の種類及び基準が定められているほか,交通部の職員に ついては,本件事業管理者の定める企業管理規程(地方公営企業法10条)として,給与支給規程及び本件就業規則が定められ,給与支給規程においては給料表等について,本件就業規則においては勤務時間及び休暇等の勤務条件について,それぞれ定められている。 以上のとおり,企業職員の給与の額や支給方法,勤務時間その他の勤務 条件について,一般の地方公務員のそれとは異なり,条 おいては勤務時間及び休暇等の勤務条件について,それぞれ定められている。 以上のとおり,企業職員の給与の額や支給方法,勤務時間その他の勤務 条件について,一般の地方公務員のそれとは異なり,条例で定めることを要せず,管理者が定めることとされている趣旨は,地方公営企業において,企業職員が従事する業務は民間企業における類似の業務と共通する性格を有しており,独立採算の原則の下に経済性を発揮して能率的な経営を行うことが求められる(地方公営企業法3条,17条の2,地方財政法6条参 照)ことから,その特殊性に基づき,当該企業の経営の状況や団体交渉の経緯等を踏まえ,管理者において,その合理的な裁量に基づいて上記勤務条件を決定するのが相当であることによるものと解される。 以上を前提に,歴代所長による本件取扱いの違法性について判断する。 イ 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて (ア) 上記認定事実によれば,3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは,労働協約たる本件覚書に基づくものであるところ,上記アで説示したところからすれば,本件覚書は,その内容が企業職員に対する給与の根本原則を定める地方公営企業法38条2項や給与条例の規定等の趣旨に違反するものであるなどの事情がない限り,本件事業管理者が その合理的裁量に基づき締結した労働協約として有効なものというべ- 33 - きである。そして,労働協約はいわゆる規範的効力を有する(労働組合法16条参照)から,上記事情のない限り,歴代所長が本件覚書に基づき上記取扱いをしたことが高槻市との関係で違法であるということはできないものと解される。 (イ) 上記取扱いに対しては,1回目及び2回目の遅刻について,勤務時間 のうちの一定時間を勤務していないにもかかわ をしたことが高槻市との関係で違法であるということはできないものと解される。 (イ) 上記取扱いに対しては,1回目及び2回目の遅刻について,勤務時間 のうちの一定時間を勤務していないにもかかわらず,何らの不利益も受けず,給料の全額が支給されるという点,3回目の遅刻について,本来,有給休暇の事後申請が認められる事由(本件就業規則25条2項の「やむを得ない事由」)が認められないにもかかわらず有給休暇が承認される場合がある点において,企業職員に対する過度の優遇措置であるとか, 不注意で欠勤した者に対する不要の救済措置であるとかいった評価をする余地もあり得るところである。 この点について,被告は,市バスの定時運行の確保という公共交通機関としての事業目的に照らせば,乗務員には出勤時刻に間に合わない場合でも有給休暇を取得するのではなく,遅刻してでも出勤して業務に就 くべきことが要請されていたのであり,上記取扱いは事業遂行のために合理性があった旨主張し,証人Gもこれに沿う証言をする。 そこで検討すると,上記認定事実によれば,交通部においては,多数に及ぶ仕業がある中で,輪番制により毎日異なる仕業を割り当てられるという特殊な勤務形態のため,現実に一定数の乗務員が勘違い等により 遅刻をするという事態が生じていたというのであって,その原因を職員の責めにのみ帰すべきものとはいい難い側面があった。そして,上記のような救済措置を設けなければ,遅刻をしそうになった職員から,仮に職員自身の不注意によるものであるとしても,有給休暇の事後申請がされることが考えられるところ,これについて,所長が,事案毎に,本件 就業規則25条2項にいう「やむを得ない事由」の有無を的確に判断し,- 34 - 有給休暇の承認をせずに欠勤として取り扱うと ことが考えられるところ,これについて,所長が,事案毎に,本件 就業規則25条2項にいう「やむを得ない事由」の有無を的確に判断し,- 34 - 有給休暇の承認をせずに欠勤として取り扱うという運用を行うことは,必ずしも容易ではないものと考えられる。そうすると,1時間単位の有給休暇も認められていなかったという当時の事情の下で,事後申請による半日単位の有給休暇の取得が行われ,乗務員が業務に従事しないこととなった場合には,市バスの定時運行の確保という上記目的の達成に相 応の支障が生じるものと考えられ,このような支障を避ける現実的要請があったことは否定することができない。この点について,原告は,乗務員が欠勤した場合のために待機職員が存在するなどと主張するが,上記認定のとおり,待機職員は交通渋滞や交通事故等の不測の事態が発生した場合にも代替バスの運転をする必要があるのであって,限られた待 機職員によって職員の急な欠勤に対応するのにも,おのずから限界があったものと考えられる。また,多数に及ぶ仕業がある中で輪番制により毎日異なる仕業を割り当てられるという特殊な勤務形態のため,現実に一定数の乗務員が勘違い等により遅刻をするという事態が生じていたことは上記のとおりであるところ,このような事態が生じている状況の 下で,本来の規律に従った厳格な運用を徹底した場合には,職員の勤労意欲の低下や,職員ないし労働組合からの強い反発を招くことも十分に想定されるところである。 加えて,3回の遅刻を有給休暇に振り替える上記取扱いにおいて,その対象が始業から30分未満の遅刻という,業務への現実の影響が大き くない場合に限られており,また,有給休暇2日分相当まで(遅刻12回まで)という一定の上限が設けられていたほか,上記取扱いの下におい 始業から30分未満の遅刻という,業務への現実の影響が大き くない場合に限られており,また,有給休暇2日分相当まで(遅刻12回まで)という一定の上限が設けられていたほか,上記取扱いの下において複数回にわたって遅刻をした職員がいたことが認められるものの,これが悪用されて事業に支障が生じるなどの現実の問題が生じていた様子はうかがわれないことも考慮すれば,自動車運送事業の遂行を図る ための方法として,本来の規律に従った厳格な運用をするのではなく,- 35 - 上記取扱いのとおり,一定程度柔軟な対応をしていたとしても,直ちに不合理であるとはいい難く,少なくとも,企業職員に対する過度の優遇措置であるとか,不注意で欠勤した者に対する不要の救済措置であるとかいった評価をするのが相当であるとはいえない。 そして,1回目及び2回目の遅刻を欠勤として取り扱わないことにつ いては,上記の範囲の遅刻について,事前かつ包括的に,給与条例16条1項の勤務しないことについての承認をすることとしていたものと位置付けることができる。 以上に述べたところに照らせば,本件覚書の内容は,交通部における経営の状況や団体交渉の経緯等を踏まえた一定の合理性を有するもの と評価することができるのであって,企業職員に対する給与の根本原則を定める地方公営企業法38条2項や給与条例の規定等の趣旨に違反するとまでいうことはできない。 (ウ) したがって,歴代所長による上記取扱いが高槻市との関係で違法であるということはできない。 ウ 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,交通部においては,本件覚書に基づく取扱いがされていることを踏まえ,始業から30分を過ぎた遅刻についても,本件就業規則25条2項 分に振り替える取扱いについて上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,交通部においては,本件覚書に基づく取扱いがされていることを踏まえ,始業から30分を過ぎた遅刻についても,本件就業規則25条2項にいう「やむを得ない事由」があるものとして有給休暇の承認をする取扱いをしていたものといえるところ, 有給休暇の事後申請について,所長が,事案毎に,上記「やむを得ない事由」の有無を的確に判断し,有給休暇の承認をせずに欠勤として取り扱うという運用を行うことが,必ずしも容易ではないものと考えられること,1時間単位の有給休暇も認められていなかったという当時の事情の下で,事後申請による半日単位の有給休暇の取得が行われ,乗務員が業務に従事 しないこととなった場合に,市バスの定時運行の確保という事業目的の達- 36 - 成に相応の支障が生じると考えられること等は,上記説示のとおりである。 これらの事情に加え,始業から30分を過ぎた遅刻に係る上記「やむを得ない事由」について,歴代所長が何らの事情も考慮することなく有給休暇の承認をしていたとまで認めるに足りる証拠は見当たらず,むしろ,証人Gの証言及び弁論の全趣旨によれば,個別の事情によっては,所長におい て有給休暇を承認せず,遅刻をした職員に対し所定の不利益を課すこともできないわけではなかったものと考えられる上,上記取扱いが悪用されて事業に支障が生じるなど現実の問題が生じていた様子や,明らかに上記「やむを得ない事由」が認められない事例について不相当に有給休暇の事後申請が承認されていたといった事情もうかがわれないことも併せ考慮すれば, 始業から30分未満の遅刻について本件覚書に基づく取扱いがされていることも踏まえ,30分を過ぎた遅刻についても,ある程度柔軟に上記「やむを得ない事由」を うかがわれないことも併せ考慮すれば, 始業から30分未満の遅刻について本件覚書に基づく取扱いがされていることも踏まえ,30分を過ぎた遅刻についても,ある程度柔軟に上記「やむを得ない事由」を認めて有給休暇の承認をする取扱いをしていたことをもって,本件事業管理者に与えられた裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法であったとまでいうのは困難である。 そうすると,本件事業管理者の権限に属する事務のうち所属職員の休暇,早退及び欠勤の許可又は承認につき専決権限を有する歴代所長が上記取扱いをしていたことが,高槻市との関係で違法であるということはできない。 エ原告の主張について以上に対し,原告は,本件取扱いはノーワーク・ノーペイの原則に反す る旨主張するが,同原則は私法上の契約解釈における原則にすぎず,労働契約においてこれと異なる定めをすることも許容されるものであるところ,既に説示したとおり,企業職員の給与については,一定の範囲内において,管理者がその合理的な裁量によって定め得るものであるから,ノーワーク・ノーペイの原則から,直ちに本件取扱いが違法になるものではない。した がって,原告の上記主張は採用することができない。 - 37 - また,原告は,本件取扱いは有給休暇制度の趣旨を没却する違法なものである旨主張するところ,確かに,本件取扱いの下においては,有給休暇が承認されているにもかかわらず,現実には,遅刻をした職員は,出勤後にそのままバス乗務等の勤務に従事していたというのであるから,当該職員との関係においては,有給休暇を与えたことにはならないと解する余地 がある。しかしながら,そのような有給休暇の承認をしたことが市との関係において違法になるかは別論であるというべきところ,既に説示したところに照らせば 給休暇を与えたことにはならないと解する余地 がある。しかしながら,そのような有給休暇の承認をしたことが市との関係において違法になるかは別論であるというべきところ,既に説示したところに照らせば,上記事情をもって高槻市との関係で違法であるとまで評価することはできないというべきである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 ⑶ 小括以上によれば,歴代所長による本件取扱いが違法であったということはできず,歴代所長が高槻市に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはないというべきである。 3 争点④から⑦まで(歴代課長及び歴代管理者の責任)について 以上によれば,歴代課長が,遅刻をした職員に対する給与の支出命令が違法であることを理由として高槻市に対して不法行為に基づく損害賠償責任又は地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負うことはなく,また,歴代管理者が歴代所長及び歴代課長に対する指導監督上の義務を懈怠したとして同市に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うこともないというべきである。 4 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治- 38 - 裁判官森田亮 裁判官石川舞子 - 39 - 別紙 1 ⑴ A82万円⑵ B174万円⑶ C189万円 ⑷ D219万7500円⑸ F79万5000円⑹ G129万500 A82万円⑵ B174万円⑶ C189万円 ⑷ D219万7500円⑸ F79万5000円⑹ G129万5000円⑺ H47万円⑻ I107万円 ⑼ J72万円⑽ K10万円 2 ⑴ D224万2500円⑵ E1万円

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