令和4(行ケ)10007 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月18日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文93,163 文字)

令和5年1月18日判決言渡 令和4年(行ケ)第10007号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年11月1日判決 原告ダイキン工業株式会社 原告ダイキンアプライドアメリカズインコーポレィティッド 原告ら訴訟代理人弁護士小松陽一郎 同藤野睦子 同原悠介 同訴訟代理人弁理士加藤秀忠 同上田雅子 被告特許庁長官 同指定代理人山崎勝司 同平城俊雅 同松下聡 同青木良憲 同清川恵子 主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 3 原告らにつき、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が不服2020-12722号事件について令和3年9月10日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告らは、平成30年(2018年)6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成29年(2017年)6月23日(US)アメリカ合衆国。以下、平成29年(2017年)6月23日を「本願優先日」という 年(2018年)6月19日(パリ条約による優先権 主張外国庁受理平成29年(2017年)6月23日 (US)アメリカ合衆国。以下、平成29年(2017年)6月23日を「本願優先日」という。)を国際出願日として、発明の名称を「熱搬送システム」とする特許出願(平成30年(2018年)12月27日国際公開、WO2018/235832、特願2019-525638号、出願当初の請求項の数10。以下 「本願」という。)を行った(以下、本願の願書に添付された明細書を図面と併せて「本願明細書等」という。本願明細書等は、別紙再公表特許公報(WO2018/235832、甲1)のとおりである。)。 ⑵ 原告らは、令和2年3月16日付け拒絶理由通知を受け、同年4月15日に意見書及び手続補正書を提出し、同手続補正書により、特許請求の範囲の 記載を補正したが(この補正により、請求項の数は11となった。)、同月28日付けで拒絶査定を受けた。 原告らは、令和2年9月11日、拒絶査定不服審判(不服2020-12722号、以下「本件審判」という。)を請求した。 特許庁は、令和3年9月10日、本件審判について、結論を「本件審判の 請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。本件審決は、 別紙のとおりである。)をし、その謄本は、同月28日、原告らに送達された。 なお、出訴期間として原告ダイキンアプライドアメリカズインコーポレィティッドに対し90日が附加された。 ⑶ 原告らは、令和4年1月21日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和2年4月15日に提出された手続補正書(甲7)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に 件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和2年4月15日に提出された手続補正書(甲7)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであり、本願の請求項1(以下、上記補正後の請求項1を「請求項1」という。)に係る発明(以下「本願発明」という。) は、次のとおりである(本件審決2〔本件審決2頁〕)(なお、AないしIの分説の符号は、本判決において付した。)。 A 冷媒を昇圧する冷媒昇圧機と、B 前記冷媒と室外空気とを熱交換させる室外空気熱交換器と、C 前記冷媒と熱搬送媒体とを熱交換させる媒体熱交換器と、 D 前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態と、を切り換える冷媒流路切換機と、 を有しており、前記冷媒としてHFC-32からなる流体が封入された冷媒回路と、E 前記熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機と、F 前記媒体熱交換器と、G 前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒体 放熱状態と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる 第1媒体蒸発状態と、を切り換える第1媒体流路切換機と、H 前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる複数の室内空気熱交換器と、を有しており、前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、を備えた、I 熱搬送システム。 3 本件審決の理由の要旨⑴ 引用文献記載の発明等ア引用文献1(特開2008-2 有しており、前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、を備えた、I 熱搬送システム。 3 本件審決の理由の要旨⑴ 引用文献記載の発明等ア引用文献1(特開2008-20083号公報、甲11)記載の発明本件審決が認定した引用文献1記載の発明(以下「引用発明」という。)は、次のとおりである(本件審決4の4-1⑵〔本件審決8、9頁〕)。 1次側冷凍サイクル10と、2次側冷凍サイクル20とを備えた2元冷凍サイクル装置1であって、2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2次側冷媒)とが熱交換できるように形成された中間熱交換器300とを備え、 1次側冷凍サイクル10は、第1圧縮機100と、この第1圧縮機100の吐出口に連結された第1四方弁150と、この第1四方弁150に連結された室外熱交換器160と、この室外熱交換器160に連結された第1膨張機構170と、この第1膨張機構170に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第1中間熱交換器300Aと、この第1中間熱交換 器300Aに第1四方弁150を介して連結されたアキュムレータ180とを順次備え、このアキュムレータ180は圧縮機100の吸込口へと連結され、2次側冷凍サイクル20は、第2圧縮機200と、この第2圧縮機200の吐出口から連結された第2四方弁250と、この第2四方弁250に 連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300B と、この第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280と 第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280とを順次備え、このアキュムレータ280は圧縮機200の吸込口へと連結され、 中間熱交換器300は、第1中間熱交換器300Aと第2中間熱交換器300Bとを備えており、1次側冷媒と2次側冷媒とを熱交換可能に構成され、2元冷凍サイクル装置1の冷房運転時は、1次側冷媒は室外熱交換器160で凝縮され、第1中間熱交換器300Aで蒸発し、2次側冷媒は第2 中間熱交換器300Bにおいて放熱し冷熱を得て、室内熱交換器270によって室内の熱を吸収し室内空気を冷却し、冷凍サイクル1の暖房運転時は、1次側冷媒は、第1中間熱交換器300Aで凝縮され、室外熱交換気160で蒸発し、2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め、第2中間熱交換器300Bによ って蒸発し、2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10に使用する1次側冷媒をHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷凍サイクル20に使用する2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いたものである、2元冷凍サイクル装置1。 イ引用文献2(特許第5800994号公報、甲12)記載の技術的事項本件審決が認定した引用文献2記載の技術的事項(以下「引2事項」という。)は、次のとおりである(本件審決4の4-2⑵〔本件審決11、12頁〕)。 高温側(高段側、一次側)の冷凍サイクル(以下、高温側サイクルとい う)と、低温側(低段側、二次側)の冷凍サイクル(以下、低温側サイク ルという)と、を備えた冷凍装置では、高温側サイクルの蒸発器と低温側サイクルの クル(以下、高温側サイクルとい う)と、低温側(低段側、二次側)の冷凍サイクル(以下、低温側サイク ルという)と、を備えた冷凍装置では、高温側サイクルの蒸発器と低温側サイクルの凝縮器とでカスケードコンデンサが構成され、高温側サイクルの冷媒と低温側サイクルの冷媒とは、カスケードコンデンサにおいて熱交換するものにおいて、高温側サイクルの冷媒として、例えば、HFC冷媒(R410A、R404A、R32、R407C)、HFO冷媒、HC冷媒 等が使用され、低温側サイクルの冷媒として、例えば、地球温暖化係数(GWP)が1であるCO2冷媒が使用されること。 ウ引用文献3(特開2016-44892号公報、甲13)記載の技術的事項本件審決が認定した引用文献3記載の技術的事項(以下「引3事項」と いう。)は、次のとおりである(本件審決4の4-3⑵〔本件審決18頁〕)。 熱源側圧縮機21を備える熱源側冷媒が循環する冷凍サイクルと、搬送側回路と、利用側圧縮機31を備える利用側回路50とをカスケードに接続するものにおいて、利用側回路50に複数の利用ユニット4a、4bを設けること。 エ引用文献10(特開2017-32184号公報、甲14)記載の技術的事項本件審決が認定した引用文献10記載の技術的事項(以下「引10事項」という。)は、次のとおりである(本件審決4の4-4⑵〔本件審決20頁〕)。 空調用圧縮機11で圧縮された高温高圧の空調用冷媒は、給湯用冷媒と カスケード熱交換器でカスケードに接続され、1次側の空調用冷媒が、給湯用冷媒を加熱するものにおいて、1次側の空調用冷媒にR32を用い、給湯用冷媒には、二酸化炭素冷媒を用いること。 オ引用文献11(特開2005-180866号公報、甲15)記載の技術的 媒が、給湯用冷媒を加熱するものにおいて、1次側の空調用冷媒にR32を用い、給湯用冷媒には、二酸化炭素冷媒を用いること。 オ引用文献11(特開2005-180866号公報、甲15)記載の技術的事項 本件審決が認定した引用文献11記載の技術的事項(以下「引11事項」 という。)は、次のとおりである(本件審決4の4-5⑵〔本件審決21頁〕)。 高段側冷媒回路の蒸発器と低段側冷媒回路の放熱器とを交熱的にカスケード接続するカスケード熱交換器とを備えた二元冷凍装置において、前記高段側冷媒回路内には冷媒としてアンモニア(R717)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)やフッ素系冷媒のR410、R32、R 134a、R407Cなどが所定量封入(実施例ではプロピレンとする)されると共に、低段側冷媒回路内には冷媒として自然冷媒である二酸化炭素(CO2)が所定量封入されていること。 ⑵ 本件審決が引用文献記載の事項に基づいて認定した周知事項ア周知事項1 本件審決は、引2事項、引11事項に基づき、本願優先日前に周知の事項として、次の周知事項1を認定した(本件審決6の⑴〔本件審決25頁〕)。 1次側(高温側)の冷媒回路の蒸発器と2次側(低温側)の冷媒回路の放熱器とをカスケード接続する二元冷凍装置において、前記1次側(高温側)の冷媒回路内には冷媒としてR32を用い、前記2次側(低温側)の 冷媒回路には冷媒として二酸化炭素(CO2)を用いることイ周知事項2本件審決は、引3事項等に基づき、本願優先日前に周知の事項として、次の周知事項2を認定した(本件審決6の⑴〔本件審決25頁〕)。 利用側圧縮機を備える利用側回路に複数の利用ユニットを設けること ⑶ 本願発明と引用発明の対比本件 に周知の事項として、次の周知事項2を認定した(本件審決6の⑴〔本件審決25頁〕)。 利用側圧縮機を備える利用側回路に複数の利用ユニットを設けること ⑶ 本願発明と引用発明の対比本件審決が認定した本願発明と引用発明の一致点、相違点は、次のとおりである(本件審決5〔本件審決23、24頁〕)。 ア一致点冷媒を昇圧する冷媒昇圧機と、 前記冷媒と室外空気とを熱交換させる室外空気熱交換器と、 前記冷媒と熱搬送媒体とを熱交換させる媒体熱交換器と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態と、を切り換え る冷媒流路切換機と、を有しており、前記冷媒として流体が封入された冷媒回路と、前記熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機と、前記媒体熱交換器と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒 体放熱状態と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第1媒体蒸発状態と、を切り換える第1媒体流路切換機と、前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器と、を有しており、前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、を備えた、 熱搬送システム。 イ相違点(ア) 相違点1冷媒として流体が封入された冷媒回路について、本願発明は、「HFC-32からなる流体が封入され」ているのに対して、引用発明は、「HC 系冷媒であるプロパン」が流体として用いられている点。 (イ) 相違点2熱搬送媒体と室内空気とを熱交換 明は、「HFC-32からなる流体が封入され」ているのに対して、引用発明は、「HC 系冷媒であるプロパン」が流体として用いられている点。 (イ) 相違点2熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器について、本願発明は、「複数の室内空気熱交換器」としているのに対して、引用発明は、室内熱交換器270が複数設けられているとは特定されていない 点。 ⑷ 進歩性に関する判断本件審決の進歩性に関する判断の要旨は、次のとおりである。 ア相違点の検討(本件審決6⑴〔本件審決24、25頁〕)(ア) 相違点1について引用発明において、冷媒回路において用いる冷媒として、HC系冷媒 であるプロパンに代えて、R32とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 相違点2について引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ効果について(本件審決6⑵〔本件審決25頁〕)本願発明は、全体としてみても、引用発明、引10事項、周知事項1、2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 ウまとめ(本件審決6⑷〔本件審決27頁〕)本願発明は、引用発明、引10事項、及び周知事項1、2に基づいて、 当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 4 原告ら主張の取消事由⑴ 取消事由1(引用発明、並びに一致点及び相違点の認定の誤り)⑵ 取消事由2(周知技術の認定の誤り) ⑶ 取消事由3(進歩性の判断の誤り)第3 当事者の主張 1 取消事由1(引用発明、並びに一致点及び相違点の認定の誤り)について〔原告らの主張〕⑴ 本願発明 知技術の認定の誤り) ⑶ 取消事由3(進歩性の判断の誤り)第3 当事者の主張 1 取消事由1(引用発明、並びに一致点及び相違点の認定の誤り)について〔原告らの主張〕⑴ 本願発明の要旨認定について 本願発明は、1台の室外機に複数台の室内機が接続され、室内機は個別に 冷暖房ができる、規模の大きい建物(ビル)に設置されるマルチパッケージ型空気調和機(以下「ビル用マルチ」という。)であり(甲16、添付資料1)、本願発明の「媒体昇圧機」は、ペア機である引用発明の「第2圧縮機」とは異なる。その理由は、次のとおりである。 本願明細書等に「ビル用マルチ」という用語はないが、本願発明は、本願 の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの熱搬送システムであり、1台の室外機(室外熱交換機等を有する冷媒回路)と複数の室内機(複数の室内空気熱交換器)を備え、冷暖房切り替え可能な冷媒流路切換機、第1媒体流路切替機を有しており、ビル用マルチである。そして、本願明細書等の【背景技術】に記載された「チラーシステム」(段落【0002】)が、解決 すべき課題を有する「従来のチラーシステム」(【発明の概要】段落【0003】)として表示されていることから、本願発明は、ビル等の大容量の冷暖房に使われるセントラル空調機の課題解決を前提としている。 また、本願発明の課題は、本願明細書等に記載のとおり、「媒体回路を構成する配管を小径化するとともに、環境負荷の低減及び安全性の向上を図るこ と」にあり(段落【0005】)、本願発明の作用効果は、以下の五つであることが、本願明細書等に明記されている。 効果1:冷房と暖房が可能であること(段落【0007】及び【0061】)効果2:複数の室内の冷房及び暖房をまとめて切換可能であ 用効果は、以下の五つであることが、本願明細書等に明記されている。 効果1:冷房と暖房が可能であること(段落【0007】及び【0061】)効果2:複数の室内の冷房及び暖房をまとめて切換可能であること(段落【0062】) 効果3:配管小径化、省スペース化・配管施工及びメンテナンス省力化、媒体使用量削減(段落【0008】及び【0063】)効果4:着火事故防止(段落【0009】及び【0064】)効果5:環境負荷低減(段落【0010】及び【0065】)ビル用マルチについて、冷媒量が多いこと、漏えいがしやすいこと、可燃 性冷媒を使用しようとすると着火事故の問題があることは、当業者の技術常 識である(例えば、甲23の2頁目の囲み部分、3頁目の表備考欄)。また、配管小径化、省スペース化・配管施工及びメンテナス省力化というのは、当業者であれば、ビル用マルチにおける建物内配管の小径化、(チラーシステムを前提とする)省スペース化、配管施工等を想定した課題であると理解する。 さらに、本願明細書等に開示されている、本願発明の<動作及び特徴>(段 落【0054】~【0060】)や図1ないし図4、図8ないし図20はいずれも、まさに、1台の室外機に複数台の室内機が接続され、室内機は個別に冷暖房ができる空調機であって、ビル用マルチである。別の言い方をすれば、本願発明は、上記課題(段落【0003】~【0005】)を踏まえて、上記効果1ないし効果5を奏する発明であることが本願明細書等から明白である (段落【0007】~【0011】、【0061】~【0066】)。 ⑵ 引用発明の認定の誤りについてア原告ら主張に係る引用発明について本件審決の引用文献1の特許請求の範囲の請求項1、発明の詳細な説明の段落【0004 11】、【0061】~【0066】)。 ⑵ 引用発明の認定の誤りについてア原告ら主張に係る引用発明について本件審決の引用文献1の特許請求の範囲の請求項1、発明の詳細な説明の段落【0004】、【0006】、【0007】、【0014】、【0027】、 【0028】、【0042】ないし【0052】によれば、引用文献1記載の引用発明は、次のとおり認定されるべきである(下線部は、本件審決の認定と異なる部分である。)。 室外熱交換器を有する1次側冷凍サイクルと、室内熱交換器を有する2次側冷凍サイクルと、 この2次側冷凍サイクルに設けられ、2つのシリンダを有するとともに、これら2つのシリンダのうち1つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機と、上記1次側冷凍サイクルの冷媒と上記2次側冷凍サイクルの冷媒とを熱交換する中間熱交換器とを備えることを特徴とする2元冷凍サイクル装 置 であって、2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2次側冷媒)とが熱交換できるように形成された1つの中間熱交換器300とを備え、1次側冷凍サイクル10は、・・・1つの中間熱交換器300に組み込ま れた第1中間熱交換器300Aと、この第1中間熱交換器300Aに第1四方弁150を介して連結されたアキュムレータ180とを順次備え、このアキュムレータ180は圧縮機100の吸込口へと連結され、2次側冷凍サイクル20は、・・・前記中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結さ れた第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された1つの室内 ル20は、・・・前記中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結さ れた第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された1つの室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280とを順次備え、このアキュムレータ280は、2つのシリンダのうち1つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式である圧縮機2 00の吸込口へと連結され、前記中間熱交換器300は、第1中間熱交換器300Aと第2中間熱交換器300Bとを備えており、1次側冷媒と2次側冷媒とを熱交換可能に構成され、・・・たものである、2元冷凍サイクル装置1。 イ引用発明の認定の誤りの有無について 本件審決による引用発明の認定には誤りがあり、その理由は、次のとおりである。 (ア) 2シリンダ形回転式圧縮機を備える点について引用発明の認定は、不用意に上位概念化してはならず、刊行物の記載を基礎として、客観的、具体的にされなければならない。本件審決は、 引用発明が、圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成した、インバー タ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機を必須の構成要素とする発明であることを捨象し、抽象化、上位概念化して、圧縮機全般を前提としているかのように認定した点で、引用発明の認定に誤りがある。 (イ) ペア機である点についてa 引用文献1には、中間熱交換器300(室外機内)と室内熱交換機 270(室内機)とが1対1で対応しているペア機(以下「ペア機」という。)を前提にした発明が開示されており、本件審決は、この点を看過した点でも誤っている。 すなわち、引用文献1記載の発明は、媒体熱 270(室内機)とが1対1で対応しているペア機(以下「ペア機」という。)を前提にした発明が開示されており、本件審決は、この点を看過した点でも誤っている。 すなわち、引用文献1記載の発明は、媒体熱交換器(中間熱交換器)と室内熱交換器が1対1で連結しているパッケージ型空調機(ペア機) を大前提とした課題の解決に関するものであり、一つの中間熱交換機に対して複数の室内熱交換器を有するパッケージ型空調機(ビル用マルチ)を想定していない。引用文献1に記載された【発明が解決しようとする課題】は、「2次側の圧縮機の吸込容積が冷房運転時と暖房運転時とで同じであるため、能力可変幅が圧縮機回転数可変範囲に依存 してしまう。このため低負荷や高負荷時において、能力可変幅を逸脱し、負荷に応じた運転ができないことや、圧縮機の効率が悪い低回転数での運転となることがあった」(段落【0003】)ことである。ペア機では、引用文献1の図1に示されるように、室内機に、ビル用マルチの各室内機に設けられているような個別の膨張機構は存在せず、 室内機の設定温度及び室内温度に基づく能力要求は、室外機の圧縮機の能力調整によって処理されるから、上記課題が生じるのであって、このような課題は、本願発明が想定しているビル用マルチにおいては生じない。 被告は、引用文献1には、ペア機という用語の記載はないし、ペア 機に限るという記載もなく、更には室内熱交換器の台数についての記 載もないと主張するが(後記〔被告の主張〕⑵イ(イ)a)、その可能性を排除する記載がなければ引用発明として想定されるとする認定は、典型的な上位概念化であり、引用発明の認定に容易想到性の判断を持ち込むもので許されない。 b また、被告は、引用文献1の段落【0003】及び【0004 なければ引用発明として想定されるとする認定は、典型的な上位概念化であり、引用発明の認定に容易想到性の判断を持ち込むもので許されない。 b また、被告は、引用文献1の段落【0003】及び【0004】の 記載を参酌して、引用文献1に記載されている課題がペア機に特有のものとはいえないと主張する(後記〔被告の主張〕⑵イ(イ)b)。しかし、本願発明が想定しているビル用マルチでは、通常、各室内機の能力要求に応じて室内機を制御し、システム全体としては全室内機の負荷に対応できる構成としているため、引用文献1に記載されているような、 圧縮機について、低負荷や高負荷時において、能力可変幅を逸脱し、負荷に応じた運転ができないという課題が生じない。また、室内機が複数台の場合には、室内熱交換器を複数備えるので、それぞれの室内の負荷に応じて、各室内熱交換器に流れる冷媒量を調整する必要があるところ、各室内熱交換器に流れる冷媒量を調節することは、2シリ ンダ型圧縮機のシリンダの圧縮運転と非圧縮運転とを切り替えて圧縮機のシリンダ容積を変えるだけでは難しいため、引用発明から出発して室内熱交換器を複数にするという発想にはつながらない。なお、原告らの主張は、ビル用マルチにおいて、圧縮非圧縮を切り替え可能な2シリンダ型圧縮機を一切使用しないという趣旨ではなく(ビル用マ ルチでも、例えば、システム全体の能力可変幅を拡大するために2シリンダ型圧縮機を用いることはあり得る。)、引用文献1に記載された引用発明の解決課題及びその解決手段としての引用発明の構成(圧縮非圧縮を切り替え可能な2シリンダ型圧縮機)は、本願発明と技術的思想が異なるということを主張しているのである。 ⑶ 本願発明と引用発明の一致点、相違点の認定の誤りについて 非圧縮を切り替え可能な2シリンダ型圧縮機)は、本願発明と技術的思想が異なるということを主張しているのである。 ⑶ 本願発明と引用発明の一致点、相違点の認定の誤りについて ア原告ら主張に係る本願発明と引用発明の一致点、相違点について引用文献1記載の引用発明は、前記⑵アのとおりであるから、本願発明と引用発明の一致点、相違点は、次のとおり認定されるべきである(下線部は、本件審決の認定と異なる部分である。)。 (ア) 一致点 冷媒を昇圧する冷媒昇圧機と、前記冷媒と室外空気とを熱交換させる室外空気熱交換器と、前記冷媒と熱搬送媒体とを熱交換させる媒体熱交換器と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態と、 前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態と、を切り換える冷媒流路切換機と、を有しており、前記冷媒として流体が封入された冷媒回路と、前記熱搬送媒体を昇圧する機構と、 前記媒体熱交換器と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒体放熱状態と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第1媒体蒸発状態と、を切り換える第1媒体流路切換機と、前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器と、 を有しており、前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、を備えた、熱搬送システム。 (イ) 相違点 a 相違点1 冷媒として流体が封入された冷媒回路について、本願発明は、「HFC-32からなる流体が封入され」ているのに対して、引用 熱搬送システム。 (イ) 相違点 a 相違点1 冷媒として流体が封入された冷媒回路について、本願発明は、「HFC-32からなる流体が封入され」ているのに対して、引用発明は、「HC系冷媒であるプロパン」が流体として用いられている点。 b 相違点2本願発明は、媒体熱交換機に連結している室内空気熱交換器が複数 であるのに対して、引用発明は、中間熱交換器300に連結している室内熱交換器が一つである点。 c 相違点3熱搬送媒体を昇圧する機構について、本願発明は、複数の室内空気熱交換器を備えた熱搬送システムを前提とした昇圧可能な媒体昇圧機 であるのに対して、引用発明は、『二つのシリンダのうち一つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機』が用いられている点。 イ一致点、相違点の認定の誤りの有無について(ア) 相違点2について 引用発明の認定に関して主張したとおり、引用文献1の記載に基づけば、室内空気熱交換器は一つであるから、引用発明は、室内熱交換器が一つであるとして認定すべきであり、本件審決が、相違点2において、「引用発明は、室内熱交換器270が複数設けられているとは特定されていない」と認定したのは、複数設けることを特徴とする本願発明に接 した先入観による後知恵の認定であり、誤りである。 引用発明は、ビル用マルチに関する本願発明と異なり、ペア機に特有の課題である、2次側の圧縮機において低負荷や高負荷時に負荷に応じた運転ができないという課題を解決するための発明であるから、このような技術的意義の相違を踏まえて対比した上で、相違点2を認定すべき である。被告は、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とに切替可能 う課題を解決するための発明であるから、このような技術的意義の相違を踏まえて対比した上で、相違点2を認定すべき である。被告は、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とに切替可能 な2シリンダ形回転式圧縮機を備える1台の室外機に対して、複数の室内機が連結された形態のマルチエアコン自体は、乙2及び乙3の各文献に記載されており、本願優先日前の周知技術であると主張するが(後記〔被告の主張〕⑶イ(ア))、乙2及び乙3の各文献は、審査・審判手続に提出されておらず、このような被告の主張は、審査・審判手続で指摘のな かった新たな文献により、新たに「周知の技術」を持ち出すものであり、失当である(特許法50条、159条2項)。 (イ) 相違点3についてまた、引用発明が特定の圧縮機の構成を有するのは、ペア機特有の課題である、2次側の圧縮機において低負荷や高負荷時に負荷に応じた運 転ができないという課題の解決のためであって、本願発明のようなビル用マルチにおいて、このような圧縮機を適用する理由がないから、ペア機である引用発明の「第2圧縮機」がビル用マルチである本願発明の「媒体昇圧機」に相当する(本件審決5〔本件審決21頁24行目~30行目〕)とした本件審決の認定は誤りであり、この点を相違点3として認定 し、判断すべきである。 (ウ) 審決の結論に対する影響について本件審決は、本願発明と引用発明との一致点・相違点に関し、原告ら主張の上記相違点2及び上記相違点3を認定しておらず、そのため、これらの相違点に対する判断を行っておらず、そのことは、直ちに本件審 決の結論に影響するので、本件審決は取り消されるべきである。 〔被告の主張〕⑴ 〔原告らの主張〕⑴(本願発明の要旨認定について)に対し本願発明は、複数の ず、そのことは、直ちに本件審 決の結論に影響するので、本件審決は取り消されるべきである。 〔被告の主張〕⑴ 〔原告らの主張〕⑴(本願発明の要旨認定について)に対し本願発明は、複数の室内機を有し冷媒量が多いビル用マルチに限られず、本願発明と引用発明の対比に当たって、引用発明の「第2圧縮機」は、本願 発明の「媒体昇圧機」に相当する。その理由は、次のとおりである。 本願の特許請求の範囲の請求項1、本願明細書等には、「ビル用」であることの記載はない。家庭用のルームエアコンであっても、1台の室外機に複数台の室内機を接続するマルチ型のものは本願優先日前に周知の事項であり(乙8の段落【0001】及び【0015】、乙9の段落【0001】及び【0011】)、本願発明が複数の室内空気熱交換器を備えるからといって、必ず しもビル用のものとはいえない。 ⑵ 〔原告らの主張〕⑵(引用発明の認定の誤りについて)に対しア原告ら主張に係る引用発明について原告ら主張に係る引用発明の認定のうち、本件審決の認定と異なる部分は争う。 イ引用発明の認定の誤りの有無について本件審決による引用発明の認定に誤りはない。その理由は、次のとおりである。 (ア) 2シリンダ形回転式圧縮機を備える点について引用発明の認定は、本願発明との対比及び判断を誤りなくすることが できるように行うことで足りる。本件審決は、本願発明が媒体回路側の圧縮機について、「熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機」とのみ特定し、媒体昇圧機の具体的な態様を特定していないので、当該事項と明確に対比できるものとして、引用発明について、「2次側冷凍サイクル20」の「第2圧縮機200」と認定したものである。引用文献1の段落【0012】 には、 様を特定していないので、当該事項と明確に対比できるものとして、引用発明について、「2次側冷凍サイクル20」の「第2圧縮機200」と認定したものである。引用文献1の段落【0012】 には、「第2圧縮機200」という用語が記載されているから、本件審決は、本願発明との対比及び判断が明確にできる範囲のものとして、引用文献1の記載に基づいて、そこに記載された文言を用いて引用発明を認定したものであり、引用文献の記載を何ら抽象化又は上位概念化したものではない。 (イ) ペア機である点について a 原告らは、引用文献1記載の発明はペア機を前提としており、ビル用マルチを想定していない旨主張する(前記〔原告らの主張〕⑵イ(イ)a)。しかし、引用文献1には、ペア機という用語の記載はないし、ペア機に限るという記載もなく、更には室内熱交換器の台数についての記載もない。引用文献1の特許請求の範囲には、ペア機に関する発明 であることを示す記載はない。 原告らは、ビル用マルチでは、引用文献1に記載されている、2次側の圧縮機において低負荷や高負荷時に負荷に応じた運転ができないという課題は生じない旨主張する(前記〔原告らの主張〕⑵イ(イ)a)。 しかし、本願発明は、各室内機の能力要求に応じて、各室内機に設け られた膨張機構の開度調整がなされるための事項、つまり膨張機構については何ら記載されておらず、「室内空気熱交換器」について、せいぜい「前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる複数の室内空気熱交換器と、を有し」(構成要件H)た「熱搬送システム」(構成要件I)と特定するのみであるから、本願発明は、そもそも、原告らが主張す る上記の課題とはかかわりがなく、別の課題を解決するものであって、本願発明の進歩性を判断する前提 熱搬送システム」(構成要件I)と特定するのみであるから、本願発明は、そもそも、原告らが主張す る上記の課題とはかかわりがなく、別の課題を解決するものであって、本願発明の進歩性を判断する前提として引用発明を認定するに当たり、原告ら主張の上記課題を考慮する必要はない。原告らの上記主張は、本願発明の特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、失当である。 b また、引用文献1の段落【0003】及び【0004】の記載を参酌すると、引用文献1に記載された2次側冷凍サイクルにおいて、冷房時と暖房時で、圧縮機の吸い込み容積が同じであるとするならば、同一回転数では冷房運転時の能力が大きくなりすぎるということは、室内機が1台の場合(ペア機)であっても、室内機が複数台の場合(ビ ル用マルチ)であっても同じようにいえるから、引用文献1に記載さ れている、2次側の圧縮機において低負荷や高負荷時に負荷に応じた運転ができないという課題は、ペア機に特有のものとはいえない。 ⑶ 〔原告らの主張〕⑶(本願発明と引用発明の一致点、相違点の認定の誤りについて)に対しア原告ら主張に係る本願発明と引用発明の一致点、相違点について 原告ら主張に係る本願発明と引用発明の一致点、相違点の認定のうち、本件審決の認定と異なる部分は争う。 イ一致点、相違点の認定の誤りの有無について原告らの主張は争う。 本件審決による本願発明と引用発明の一致点、相違点の認定に誤りはな い。その理由は、次のとおりである。 (ア) 相違点2について引用発明の認定に関して反論したとおり、引用文献1において、「室内熱交換器270」が複数設けられていると規定されていないことは、引用文献1の記載から明らかであり、さらに、引用文献1に、ペア機と 引用発明の認定に関して反論したとおり、引用文献1において、「室内熱交換器270」が複数設けられていると規定されていないことは、引用文献1の記載から明らかであり、さらに、引用文献1に、ペア機とい う用語の記載やペア機に限るという記載はなく、室内熱交換器の台数についての記載もない。引用文献1には、図面において、2元冷凍サイクル装置1(段落【0010】)について、最も単純なものとして、室内構成(I)として室内熱交換器270を一つ備え、室外構成(E)として中間熱交換器300、室外熱交換器160を各一つ備えるものが記載さ れているにすぎない。 したがって、本件審決の相違点2の認定に誤りはない。 この点に関し、原告らは、引用発明は、ビル用マルチに関する本願発明と異なり、ペア機に特有の課題である、2次側の圧縮機において低負荷や高負荷時に負荷に応じた運転ができないという課題を解決するため の発明であるから、このような技術的意義の相違を踏まえて対比した上 で、相違点2を認定すべきであると主張する(前記〔原告らの主張〕⑶イ(ア))。 しかし、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とに切替可能な2シリンダ形回転式圧縮機を備える1台の室外機に対して複数の室内機が連結された形態のマルチエアコン自体は、乙2及び乙3の各文献に記載さ れており、本願優先日前の周知技術であり、原告ら主張の上記課題がビル用マルチに生じないということはできないから、原告らの上記主張は誤りであり、本件審決による相違点2の認定に誤りはない。 (イ) 相違点3について前記(ア)のとおり、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とに切替可 能な2シリンダ形回転式圧縮機を備える1台の室外機に対して複数の室内機が連結された形態のマルチエアコン自 違点3について前記(ア)のとおり、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とに切替可 能な2シリンダ形回転式圧縮機を備える1台の室外機に対して複数の室内機が連結された形態のマルチエアコン自体は、本願優先日前の周知技術であるから、原告らが相違点3として、熱搬送媒体を昇圧する機構について、引用発明は、「二つのシリンダのうち一つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式 圧縮機」が用いられている、ということを認定することは、当を得たものではない。 また、仮に引用発明における第2圧縮機200を「インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機」と認定したとしても、「インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機」は圧縮機の一形態であるにすぎず、 上記のとおりペア機特有なものとはいえないから、本願発明における「媒体昇圧機」に相当するものであることに変わりはなく、相違点3は存在しない。 したがって、相違点3を認定すべきであるとする原告らの主張は失当である。 (ウ) 審決の結論に対する影響について 以上のとおり、本件審決による本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定に誤りはないから、審決の結論に影響を与えるものではない。 2 取消事由2(周知技術の認定の誤り)について〔原告らの主張〕⑴ 周知事項1について 本件審決は、引用文献2の記載により認定した引2事項、引用文献11の記載により認定した引11事項等に基づいて周知事項1を認定したところ(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)、本件審決による周知事項1の認定には誤りがあり、その理由は、次のとおりである。 ア複数の冷媒の中からの選択について 引用文献2(甲12)の段落【0018】には、1次側冷 件審決25頁〕)、本件審決による周知事項1の認定には誤りがあり、その理由は、次のとおりである。 ア複数の冷媒の中からの選択について 引用文献2(甲12)の段落【0018】には、1次側冷媒としてHFC冷媒、HFO冷媒、HC冷媒等が多数列挙されており、2次側冷媒として二酸化炭素が例示されているにすぎず、引用文献11の段落【0021】には、一次側冷媒としてアンモニア(R717)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、フッ素系冷媒(R410、R32、R134a、 R407c)などが多数列挙され、実施例ではプロピレンが開示されているに過ぎないから、いずれの文献にも、「1次側の冷媒回路内の冷媒としてR32、2次側の冷媒回路内の冷媒として二酸化炭素を用いること」(「周知事項1」)の記載がない。本件審決は、周知事項の認定の段階で、例示される複数の冷媒からR32を選択するという推定・推論をしており、客観的 に周知事項を認定していない。 本件審決は、本願発明に接した後で、複数列挙の冷媒から、本願発明と同じ構成を選択しており、このような判断は、引用発明の認定に容易想到性の判断を持ち込むもので許されない。また、本件審決の認定は、周知事項の認定の段階で想定・推論し、さらに、本願発明と引用発明との相違点 について論理付けができるかどうかの判断をしているから、いわゆる容易 の容易であって許されない。 この点に関し、被告は、乙4の文献に記載された表6.1を挙げて、いずれの冷媒も一般的で、その中から冷凍サイクルに用いる冷媒を当業者が選択でき、R32の選択が困難である理由はないと主張するが(後記〔被告の主張〕⑴ア)、被告の上記主張は、審査・審判で指摘していない乙4の 文献を主張の根拠とする点でも失当である る冷媒を当業者が選択でき、R32の選択が困難である理由はないと主張するが(後記〔被告の主張〕⑴ア)、被告の上記主張は、審査・審判で指摘していない乙4の 文献を主張の根拠とする点でも失当である。 イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて本願発明は、ビル用マルチの発明であるのに対して、引用文献2記載の発明と引用文献11記載の発明は、低温領域の冷凍装置に関するものである。そのため、引用文献2記載の発明と引用文献11記載の発明は、本願 発明とは、対象とする温度領域が重なっておらず、求められる熱力学特性が全く異なる上、本願発明と異なり、冷房と暖房の切替や、部屋ごとの独立した温度調整といった要請もない。 したがって、本件審決が周知事項1を認定したのは誤りである。 この点に関し、被告は、空調機も、冷凍室等の低温用途の冷凍サイクル 装置も、二元冷凍装置であることに変わりはないと主張するが(後記〔被告の主張〕⑴イ)、証拠上認められる技術から上位概念化して引用発明を認定したり、一連の技術の一面だけに着目して、ひとまとまりの技術的事項の一部を抽出したりすることは、後知恵を招き不適切である。引用文献に記載された事項は、超低温用途なのであるから、これを事実として認定し て、このような分野の違いにより、論理付けが否定されるか否かは、論理付けの場面(容易想到性の判断)で考慮されるべき事項である。 ウ周知性を裏付ける文献の数について周知事項1は、被告の主張によっても、それを根拠づける文献は、引用文献2と引用文献11のみで数が少なく、周知技術に該当しないことは明 白である。 また、本件審決は、周知事項1を、複数の文献(引用文献1、2及び10)を組み合わせて認定しており、いわゆる容易の容易であり、許さ く、周知技術に該当しないことは明 白である。 また、本件審決は、周知事項1を、複数の文献(引用文献1、2及び10)を組み合わせて認定しており、いわゆる容易の容易であり、許されない。 ⑵ 1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒に二酸化炭素(CO2)を用いることについて 本件審決は、周知事項1及び引10事項から、1次側冷媒により2次側冷媒を冷却又は加熱する場合のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願優先日前に普通に採用される冷媒の組合せであるとするが(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)、誤りであり、その理由は、次のとおりである。 ア空調用冷凍サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を用いることについて引用文献10(甲14)記載の発明は、「空調給湯システム」に用いられるものであって、本願発明との対比の対象となる「室内の空調」は、R410A、R32及びR407Cが例示されている空調用冷媒(段落【00 41】)が室内熱交換器31に流入して室内空気と熱交換することで行われ(段落【0021】、図1等、1元回路)、これに対して、「給湯(温水の生成)」は、熱生成ユニット40に到達した空調用冷媒が、カスケード熱交換器44にて給湯用冷媒を加熱することにより行われ、給湯用冷媒には、熱媒体を給湯用熱交換器320で60~90℃にまで沸き上げるため(段 落【0027】)、二酸化炭素冷媒が用いられる(段落【0041】)。このように、引用文献10記載の発明は、給湯用冷媒にのみ二酸化炭素が用いられており、空調用冷凍サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を用いることが記載されているわけではないから、「室内空調の冷凍サイクルにおいて1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒に み二酸化炭素が用いられており、空調用冷凍サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を用いることが記載されているわけではないから、「室内空調の冷凍サイクルにおいて1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること」は記 載されていない。 本件審決が引用文献10を参照した趣旨が、相違点1に、引2事項及び引11事項から認定した周知事項1を適用するに当たって、論理付のために文献を追加して判断したのだとすると、いわゆる容易の容易として許されない。また、本件審決が引用文献10を参照した趣旨が、周知事項1を認定するためだとすると、本願発明と異なってR32以外の冷媒も記載さ れている点や、二酸化炭素が冷媒として用いられているのが空調用冷凍サイクルにおける2次側冷媒ではなく給湯用冷媒であるという点を捨象して、技術の一面だけに着目し又は上位概念化して周知技術の認定に用いているから、許されない。 イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて 本件審決は、周知事項1及び引10事項から「1次側冷媒により2次側冷媒を冷却又は加熱する場合のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願優先日前に普通に採用される冷媒の組み合わせである」と認定した。 しかし、引10事項には、給湯用冷媒として二酸化炭素が記載されてい るのみであり、本件審決の上記認定は、0℃近い水温を60℃以上の高温にしなければならない給湯システムと、人が過ごすための快適な室温を25℃ないし30℃(一般空調域)に制御する空調機との技術的な違い、技術分野の違い、原理の違いを無視した乱暴な認定である。 この点に関し、被告は、サイクルの対象が給湯用又は空調用であるとい った用途は、それらの冷媒の組み合わせが する空調機との技術的な違い、技術分野の違い、原理の違いを無視した乱暴な認定である。 この点に関し、被告は、サイクルの対象が給湯用又は空調用であるとい った用途は、それらの冷媒の組み合わせがあることとは関係ないことであると主張するが(後記〔被告の主張〕⑵イ)、技術的思想として発明全体を一体としてとらえるべきであるから、このような被告の主張は独自の見解であり、失当である。 ⑶ 引用文献11に記載されたプロパンと本願発明に記載されたR32の違 いについて 本件審決は、「引11事項に示すとおり、1次側冷媒回路に用いられる冷媒として、プロパンとR32とは併記して例示される冷媒でもある。」とする(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)。 しかし、引用文献11には、プロパンに換えてR32とすることについての示唆も動機付けも一切記載がなく、仮に、当業者が引用文献11に基づき、 引用発明のプロパンを同引用文献(請求項5、段落【0021】)に記載された冷媒のいずれかに置き換えるとするならば、同じ炭化水素系で、実施例に記載のあるプロピレンに置き換える可能性が高い。また、プロパンとR32とでは、燃焼性(安全性)、外気温による蒸発圧力への影響度合い、熱搬送能力、圧力による冷媒密度などが大きく異なり、これらに代替性はない。さら に、地球温暖化の防止の観点からは、プロパンをR32に代替することはない。 したがって、上記の本件審決の趣旨が、プロパンとR32に代替性があるという趣旨であれば、誤りである。 ⑷ 周知事項2について 本件審決は、引用文献3の記載により認定した引3事項等に基づいて周知事項2を認定したところ(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)、本件審決による周知事項2の認定には誤りがあり、その理由は、次のとおり 本件審決は、引用文献3の記載により認定した引3事項等に基づいて周知事項2を認定したところ(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)、本件審決による周知事項2の認定には誤りがあり、その理由は、次のとおりである。 ア技術的思想の違いの有無について引用文献3は、2冷媒回路-スラリー回路-冷媒回路からなる三次回路 方式の空気調和装置に関するものであって、本願発明のような二元回路方式(低温側冷凍サイクルと高温側冷凍サイクルの間で熱交換をさせる方式で、高温側と低温側とでそれぞれ適した冷媒を使用するシステム)ではないし、引用文献3は、二つの冷媒回路で同じ冷媒を使用することが好ましいとするものである(段落【0008】)。このように、本願発明と引用文 献3記載の発明は、異なる技術的思想のものであるにもかかわらず、本件 審決は、引用文献3の記載を単なる空気調和装置として上位概念化したうえで認定するものであって、誤りである。引用文献3は、スラリー等を前提とする三元回路を前提とする技術であって、引3事項を認定する証拠にはならない。 イ室内熱交換器の個数を相違点としたことについて 本件審決は、他の構成要件との関係性を無視して、室内熱交換器の個数だけを相違点として取り出した結果、本願発明とは無関係である引用文献により、(形式的に)複数の室内熱交換機の記載があるものを論理づけに用いており、その点でも判断に誤りがある。 ウ周知性を裏付ける文献について 引用文献3のみの1件により周知事項2の周知性が裏付けられるとはいえない。被告は、本件訴訟において、引用文献3に加えて乙5ないし乙7の各文献を新たに追加したが、原告らには、審査、審判手続において、これらの文献に基づく被告の主張を争う機会や補正の機会が与えられていないか 被告は、本件訴訟において、引用文献3に加えて乙5ないし乙7の各文献を新たに追加したが、原告らには、審査、審判手続において、これらの文献に基づく被告の主張を争う機会や補正の機会が与えられていないから、これら新たな公知文献(乙5~乙7)に基づく主張は許されな い(特許法50条、159条2項)。そもそも、乙5ないし乙7の各文献は、いずれも、本願発明のような、利用側回路が一方の熱交換器を凝縮器とし、他方の熱交換器を蒸発器とする二元冷凍サイクルを開示するものではないし、引用文献3が前提とする三元回路とも異なるから、引3事項にいう「利用側回路50に複数の利用ユニット4a、4bを設けること」が周知 であることを裏付けるものではない。 〔被告の主張〕⑴ 〔原告らの主張〕⑴(周知事項1について)に対し原告らの主張は争う。 ア複数の冷媒の中からの選択について 本件審決による引2事項及び引11事項の認定に誤りはない。引用文献 2には低温側サイクル21に用いられる冷媒としてCO2が挙げられており、高温側の冷媒として例示された各冷媒とCO2の組み合わせが具体的に記載されているといえるから、例示されているHFC冷媒のうちR32を選択することはできる。引用文献2に高温側の冷媒として例示されたものは、いずれも冷凍サイクルに使用される冷媒として極めて一般的なもの であるから(乙4の文献に記載された表6.1)、その中から冷凍サイクルに用いる冷媒を当業者が選択することができ、R32の選択が困難である理由はない。 イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて引用文献2と引用文献11が低温用途の冷凍サイクル装置であったと しても、空調機も、冷凍室等の低温用途の冷凍サイクル装置も、二元冷凍装置であるこ 機の発明と冷凍装置の発明であることについて引用文献2と引用文献11が低温用途の冷凍サイクル装置であったと しても、空調機も、冷凍室等の低温用途の冷凍サイクル装置も、二元冷凍装置であることに変わりはないから、これらの文献により、二元冷凍装置における周知の冷媒であることは認定することができる。 ウ周知性を裏付ける文献の数について本件審決は、周知技術1の認定のために、10年以上も前に公知となっ た刊行物である引用文献11を含め、複数の文献を示しており、本件審決が周知事項1を認定したことに何ら誤りはない。 ⑵ 〔原告らの主張〕⑵(1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒に二酸化炭素(CO2)を用いることについて)に対し本件審決が、周知事項1及び引10事項から、1次側冷媒により2次側冷 媒を冷却又は加熱する場合のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願優先日前に普通に採用される冷媒の組み合わせである(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)と認定したことに誤りはない。 ア空調用冷媒サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を用いることにつ いて 原告らは、引用文献10において、給湯用冷媒にのみ二酸化炭素が用いられているとか、空調用冷凍サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を用いることは記載されていない等と主張するが(前記〔原告らの主張〕⑵ア)、本件審決は、引用文献10において、単に、冷媒回路をカスケード接続する冷凍サイクルにおいて、1次側冷媒により2次側冷媒を加熱する場 合(1次側を凝縮器、2次側を蒸発器として用いる場合)に、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体が記載されているとしているのであって(引10事項)、冷凍サイクル 熱する場 合(1次側を凝縮器、2次側を蒸発器として用いる場合)に、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体が記載されているとしているのであって(引10事項)、冷凍サイクルの対象が給湯用であるとか空調用であるといった用途は、それらの冷媒の組み合わせがあることとは関係のないことであり、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にC O2を用いることは、引用文献2、引用文献11に加えて、引用文献10にも記載された事項といえる。 原告らは、本件審決が引用文献10を参照したことは、容易の容易として許されないとか、技術の一面だけに着目し又は上位概念化して周知技術の認定に用いていると主張する(前記〔原告らの主張〕⑵ア)。 しかし、引用文献2、引用文献11及び引用文献10には、2元冷凍サイクル装置の2次側冷媒にCO2を用いたときの1次側冷媒が複数具体的に記載され、2次側冷媒にCO2との組み合わせとしてR32を用いることが、限られた数の組み合わせの一つとして具体的に記載がされているから、原告らの上記主張は理由がない。 イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて原告らは、本件審決が1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いることは本願優先日前に普通に採用される冷媒の組み合わせであると認定したことについて、給湯システムと空調機との技術的な違い、技術分野の違い、原理の違いを無視した乱暴な認定であると主張するが(前記 〔原告らの主張〕⑵イ)、前記アのとおり、冷凍サイクルの対象が給湯用で あるとか空調用であるといった用途は、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いるという冷媒の組み合わせがあることとは関係のないことであるから、原告らの上記主張は理由がない。 ⑶ 〔 あるとか空調用であるといった用途は、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いるという冷媒の組み合わせがあることとは関係のないことであるから、原告らの上記主張は理由がない。 ⑶ 〔原告らの主張〕⑶(引用文献11に記載されたプロパンと本願発明に記載されたR32の違いについて)に対し 微燃性であるR32は、冷媒が漏れた際の着火性の観点からみて、強燃性のプロパンよりは安全であり、本願優先日前に、冷媒として周知であったから、プロパンに換えてR32を採用することは容易に想到し得る。 ⑷ 〔原告らの主張〕⑷(周知事項2について)に対し次のとおり、本件審決による周知事項2の認定に誤りはない。 ア技術的思想の違いの有無について引用文献3(甲13)は、スラリー回路を介在するものであるが、その点を除けば、二つの冷媒回路を備える本願発明の二元回路と同じであり、利用側回路に複数のユニットを設けるものであるから、本件審決が周知事項2を認定したことに誤りはない。 イ室内熱交換器の個数を相違点としたことについて室内熱交換機の個数の相違に関する相違点2は、冷媒の相違に関する相違点1と別個に判断することができるので、相違点2を相違点1と分けて認定したことに誤りはない。 ウ周知性を裏付ける文献について 周知事項2が周知であることは、引用文献3のほか、乙5の文献(段落【0027】、【0065】、図2)、乙6の文献(段落【0020】、【0023】、【0052】、図14)、乙7の文献(段落【0011】、【0012】、【0013】、図1)により裏付けられる。 3 取消事由3(進歩性判断の誤り)について 〔原告らの主張〕 原告らの主張する本願発明と引用発明の相違点(前記1⑶ア(イ 】、【0013】、図1)により裏付けられる。 3 取消事由3(進歩性判断の誤り)について 〔原告らの主張〕 原告らの主張する本願発明と引用発明の相違点(前記1⑶ア(イ))を前提とするならば、本願発明には進歩性がある。本件審決が認定した一致点、相違点を前提としても、本件審決の進歩性の判断には誤りがあり、その理由は、次のとおりである。 ⑴ 設計事項であるか否かについて ア相違点1について相違点1について、プロパンをR32に置き換えることを設計事項であるとすることは、技術分野を問わず、優先日当時に公知の冷媒であれば、何を適用しても全て設計事項とするものであり、明らかに誤りである。 イ相違点2について 相違点2について、ペア機において、複数の部屋に室内機を設置する場合には、ペア数を増やすのが通常で、室内機のみを増やすことは考えにくいし、また、ペア機とマルチでは、室外機一つ当たりの規模、配管、室内の空調制御方法等が異なるから、部屋数等に応じて、ベア数を増やさずに、マルチに変更することは、設計事項ではない。 ウ設計事項であることの説示の有無について本件審決では、「設計事項」との理由は一つも挙げられていないから、相違点1及び2を設計事項と判断するのは失当である。 ⑵ 主引用発明に周知技術を適用する動機付けの有無についてア動機付けの判断の有無について 周知事項を根拠に設計事項であるとする場合でも、周知事項であるという理由だけで、容易想到であることの論理付けができるか否かの検討(その周知事項の適用に阻害要因がないか等の検討)を省略してはならないところ、本件審決は、これらの判断をしていないから、その判断は失当である。 イ技術分野の関連性の有無について (その周知事項の適用に阻害要因がないか等の検討)を省略してはならないところ、本件審決は、これらの判断をしていないから、その判断は失当である。 イ技術分野の関連性の有無について 技術分野の関連性を判断するに当たっては、各技術を上位概念化してはならず、具体的な技術分野が共通するかを検討しなければならないところ、本願発明は、一つの媒体熱交換機に対して複数の室内熱交換器を有するビル用マルチに関するものであるのに対し、引用発明は、ペア機特有の課題に着目したもので、しかも2シリンダ形回転式圧縮機に係るものであって、 その具体的な技術分野は相違しており、共通性があるとはいえないから、引用発明に他の技術を組み合わせて本願発明を想到するための動機付けは極めて薄い。 ウ課題、作用・機能の共通性の有無について本願発明は、冷房と暖房が可能であること、複数の屋内の冷房及び暖房 をまとめて切り替えることが可能であること、配管の小径化・省スペース化・配管施工及びメンテナンス省力化が可能であること、媒体の使用量削減が可能であること、着火事故を防止できること、環境負荷を低減することができることという多数の作用効果を有機的に組み合わせた統合システムの発明であるのに対し、引用発明は、圧縮機の吸込容積を可変とする ものにすぎず、その具体的な課題や作用・機能は全く異なっており、この観点からも、引用発明に他の技術を組み合わせて本願発明を想到するための動機付けはない。 ⑶ 組み合わせの阻害要因について引用発明において使用されているプロパンは、冷媒の能力として、寒冷地 での使用が困難であるから、これをR32に代替することには阻害要因がある。また、引用発明ではプロパンの使用が前提とされているところ、プロパンは周知のと るプロパンは、冷媒の能力として、寒冷地 での使用が困難であるから、これをR32に代替することには阻害要因がある。また、引用発明ではプロパンの使用が前提とされているところ、プロパンは周知のとおり強燃性であり、着火事故の防止というビル用マルチの決定的な課題に反する選択となるので、引用発明をビル用マルチに使用することには、阻害要因がある。 〔被告の主張〕 ⑴ 〔原告らの主張〕⑴(設計事項であるか否かについて)に対し次のとおり、本件審決の進歩性の判断に誤りはない。 ア相違点1について本件審決は、周知事項1と引10事項から、R32とCO2の冷媒の組み合わせが、2元冷凍サイクル装置における普通の冷媒の組み合わせである ことを示し、引用発明においてプロパンをR32に変更することは適宜なし得る技術的事項であるとしたものであり、R32は冷媒として極めて一般的なものであったから(乙1、乙4)、その判断に誤りはない。 イ相違点2について本件審決の相違点2に関する判断に誤りはない。 ウ設計事項であることの説示の有無について本件審決の進歩性の判断に誤りはない。 ⑵ 〔原告らの主張〕⑵(主引用発明に周知技術を適用する動機付けの有無について)に対しア動機付けの判断の有無について 本件審決は、相違点1について、周知事項1及び引10事項より導き出される周知事項を参酌して、引用発明において、プロパンをR32に換えることは容易であると判断しているものであり、また、相違点2については、周知事項2により、引用発明における利用ユニットに相当する室内熱交換器の数は、利用側の部屋の数や利用形態に応じて適宜決め得る設計的 事項であることから、引用発明において、室内熱交換器270を複数設け 項2により、引用発明における利用ユニットに相当する室内熱交換器の数は、利用側の部屋の数や利用形態に応じて適宜決め得る設計的 事項であることから、引用発明において、室内熱交換器270を複数設けることは容易であると判断しているものである。そうすると、引用発明に周知事項1及び2を適用している訳ではないので、その動機付けについては特段検討する必要はない。 イ技術分野の関連性の有無について 空調装置、冷凍装置及び給湯器という技術分野に本質的な差異は認めら れないから、引用発明に他の技術を組み合わせて本願発明を想到することはできる。 ウ課題、作用・機能の共通性の有無について引用発明のプロパンと周知事項1のR32とは、どちらも燃焼性を有し、着火事故に対する安全性を高めるという課題が共通し、二元冷凍装置のカ スケード熱交換器において二酸化炭素冷媒を凝縮させるものである点で作用・機能が共通しており、また、引用発明のプロパンと引10事項のR32とは、二元冷凍装置のカスケード熱交換器において二酸化炭素冷媒を蒸発させるものである点で作用・機能が共通している。そして、引用文献2の段落【0018】の記載、及び引用文献11の段落【0021】の記 載において、R32とプロパン(R290)は冷媒として併記されており、プロパンをR32に置き換えることの示唆がある。 ⑶ 〔原告らの主張〕⑶(組み合わせの阻害要因について)に対し原告らの主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本願優先日(平成29年(2017年)6月23日)前の技術常識⑴ 空調機と冷凍機、給湯器についてア刊行物等の記載本願優先日前に公知であった刊行物等には、空調機と冷凍機、給湯器について、別紙「空調機と冷凍機、給湯器に関する刊行物 3日)前の技術常識⑴ 空調機と冷凍機、給湯器についてア刊行物等の記載本願優先日前に公知であった刊行物等には、空調機と冷凍機、給湯器について、別紙「空調機と冷凍機、給湯器に関する刊行物の記載」のような 記載があった。 イ技術常識別紙「空調機と冷凍機、給湯器に関する刊行物の記載」によれば、次の事項は、本願優先日前に当業者に一般的に知られている技術又は経験則から明らかな事項(技術常識)であったと認められる。 (ア) 環境温度より高い温度や低い温度の環境を生成する機械をヒートポ ンプあるいは冷凍機といい、ヒートポンプは低温や高温を生成する機械の総称であるのに対し、冷凍機は低温を生成する機械を指し、圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張弁、受液器の五つの部分から構成される構造の冷凍機を蒸気圧縮式冷凍機という(以下「技術常識A」という。)。 (イ) 空調を行う機械と冷凍を行う機械は、ヒートポンプあるいは冷凍機と して原理的には全く同じであり、ヒートポンプ技術が給湯分野に応用されて、冷暖房と給湯の機能を合体させたヒートポンプ冷暖房給湯システム、及び給湯機能だけを独立させたヒートポンプ給湯機として製品化されている(以下「技術常識B」という。)。 ⑵ 冷媒について ア刊行物等の記載本願優先日前に公知であった刊行物等には、冷媒について、別紙「冷媒に関する刊行物の記載」のような記載があった。 イ技術常識別紙「冷媒に関する刊行物の記載」によれば、本願優先日前においては、 蒸気圧縮冷凍機において用いられる冷媒として多くの種類が当業者に知られており(同別紙記載1(甲16添付資料3表4)、3(甲16添付資料9)、4(乙4の表6.1))、これら冷媒についての次の事項は、本願優先日前に当 おいて用いられる冷媒として多くの種類が当業者に知られており(同別紙記載1(甲16添付資料3表4)、3(甲16添付資料9)、4(乙4の表6.1))、これら冷媒についての次の事項は、本願優先日前に当業者に一般的に知られている技術又は経験則から明らかな事項(技術常識)であったと認められる。 (ア) 本願優先日当時までに冷媒として知られているものとしては、自然冷媒としてアンモニア(R717)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、二酸化炭素(R744)、炭化水素(HC)等があり、HFC冷媒としてR32、R134a、R404A、R407C、R410A等があり、HFO冷媒としてR1234yf等があった。 冷媒として、20世紀の前半までは、アンモニア、プロパンなど様々 な物質(自然冷媒)が利用されていたが、毒性や可燃性を有するという欠点があったところ、1930年にフロン系冷媒が発明されてから、フロン系以外の冷媒は一旦駆逐され、その後、フロン系冷媒の中で塩素を含む冷媒CFC、HCFCは、オゾン層破壊の問題から製造・利用が禁止され、HFCも温暖化の問題から利用が見直されようとしている。そ して、代替物質の研究・開発が進められる中、HFC系冷媒、HFO系冷媒のほか、アンモニア、炭化水素(ブタン、プロパン)、二酸化炭素など自然冷媒が再び注目されている(同別紙記載1(甲16添付資料3「3. 空調用冷媒の変遷」及び「表2 冷媒の変遷」)、4(乙4「6.1.1冷媒とその種類」))(以下「技術常識C」という。)。 (イ) 代替フロン(HFC等)から低GWP(GlobalWarmingPotential:地球温暖化係数)・ノンフロン冷媒への転換が進んでいく状況であり、空調用冷媒の低GWP冷媒候補は多数ある (イ) 代替フロン(HFC等)から低GWP(GlobalWarmingPotential:地球温暖化係数)・ノンフロン冷媒への転換が進んでいく状況であり、空調用冷媒の低GWP冷媒候補は多数あるが、将来的にどの冷媒が主流になるかは見えていないものの、課題としては低GWP冷媒の微燃性に対する安全性の確保があり、低GWPと可燃性についてはトレードオフ (「複数の条件を同時にみたすことのできないような関係」大辞林第4版)の傾向がある(同別紙記載1(甲16添付資料3「2.冷媒の特徴」、「4. 低GWP冷媒」))(以下「技術常識D」という。)。 (ウ) 平成23年(2011年)にはR32を採用した空調機器の基本特許が開放されており、R32は空調機器に用いられており(同別紙記載2 (甲16添付資料6))、本願優先日時点には、家庭用エアコン(家庭用AC)ではプロパン(R-290)とR32が、業務用エアコン(業務用PAC)やビル用マルチ(ビルマルチ)ではR32が次世代の冷媒候補として挙げられていた(同別紙記載1(甲16添付資料3図1))(以下「技術常識E」という。)。 (エ) エアコン用の次世代の冷媒候補であるプロパンとR32については、 プロパンはGWPが20未満であるが強燃性で、R32はGWPが675であるが微燃性であり、両者のGWPと燃焼性はトレードオフの関係にあり、また、プロパンとR32は、熱物性値である標準沸点、臨界温度、臨界圧力は似た性質を有する(同別紙記載5(乙28表1)、6(乙29表2))(以下「技術常識F」という。)。 2 本願発明の内容⑴ 特許請求の範囲及び本願明細書等の記載ア特許請求の範囲の記載本願特許の特許請求の範囲(令和2年4月15日付け手続補正書(甲7)による補正 識F」という。)。 2 本願発明の内容⑴ 特許請求の範囲及び本願明細書等の記載ア特許請求の範囲の記載本願特許の特許請求の範囲(令和2年4月15日付け手続補正書(甲7)による補正後のもの)の請求項1の記載(本願発明)は、前記第2の2の とおりであり、その他の請求項の記載は、次のとおりである。 (ア) 請求項2前記媒体回路を構成する配管の管径は、前記熱搬送システムの定格能力が14kW以下の場合に、10mm以下である、請求項1に記載の熱搬送システム。 (イ) 請求項3前記冷媒回路、前記媒体昇圧機及び前記第1媒体流路切換機は、室外に配置された熱搬送装置に設けられており、前記室内空気熱交換器は、室内に配置された利用装置に設けられている、 請求項1又は2に記載の熱搬送システム。 (ウ) 請求項4前記熱搬送装置は、前記冷媒回路が設けられた空冷装置と、前記媒体昇圧機及び前記第1媒体流路切換機が設けられた熱源装置と、を有している、 請求項3に記載の熱搬送システム。 (エ) 請求項5前記媒体昇圧機は、インバータによって回転数が制御されるモータを有している、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 (オ) 請求項6 前記媒体昇圧機は、ロータリ圧縮機である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 (カ) 請求項7前記媒体昇圧機は、オイルレスのターボ圧縮機である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 (キ) 請求項8前記第1媒体流路切換機は、前記第1媒体放熱状態において、前記室内空気熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させ、前記第1媒体蒸発状態において、前記室内空気熱交換器を前記 (キ) 請求項8前記第1媒体流路切換機は、前記第1媒体放熱状態において、前記室内空気熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させ、前記第1媒体蒸発状態において、前記室内空気熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる、 請求項1~7のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 (ク) 請求項9前記媒体回路は、前記室内空気熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第2媒体蒸発状態と、前記室内空気熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第2媒体放熱状態と、を切り換える第 2媒体流路切換機を、前記室内空気熱交換器ごとにさらに有している、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 (ケ) 請求項10前記媒体回路は、前記媒体回路を循環する前記熱搬送媒体を溜めるレシーバをさらに有している、 請求項1~9のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 (コ) 請求項11前記媒体回路は、複数の前記室内空気熱交換器のそれぞれに対応する利用側媒体減圧機を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱搬送システム。 イ本願明細書等の記載 本願明細書等の記載は、別紙再公表特許公報(WO2018/235832)のとおりである。 ⑵ 本願発明の技術的意義前記⑴ア及びイによれば、本願発明の技術的意義は、次のとおり認められる。 ア技術分野 本願発明は、熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させて室内の空調を行う熱搬送システム(チラーシステム)に関する(段落【0001】及び【0144】)。 イ課題冷媒回路と水回路を有する従来のチラーシステムは、水配管の管径が大 きく、大きな設置スペースが必要で、施工やメンテナンスに手間がかかる(段落【0003】)。 【0144】)。 イ課題冷媒回路と水回路を有する従来のチラーシステムは、水配管の管径が大 きく、大きな設置スペースが必要で、施工やメンテナンスに手間がかかる(段落【0003】)。 これに対して、水回路を省略して冷媒回路に冷媒を採用すると、環境負荷(オゾン層破壊や地球温暖化)を低減する特性を満足できる流体には、微燃性や可燃性を有するものが多く、冷媒が室内に漏洩した場合に、室内 における冷媒の濃度が可燃濃度まで上昇して着火事故を起こすおそれがある(段落【0004】)。 本願発明の課題は、冷媒が循環する冷媒回路と熱搬送媒体が循環する媒体回路とを有しており、熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させて室内の空調を行う熱搬送システムにおいて、媒体回路を構成する配管を小径化する とともに、環境負荷の低減及び安全性の向上を図ることにある(段落【0 005】)。 ウ課題を解決する手段本願発明は、冷媒としてHFC-32からなる流体が封入された冷媒回路と、熱搬送媒体として二酸化酸素が封入された媒体回路と、を備えた熱搬送システムであり、冷媒回路は、冷媒昇圧機と、室外空気熱交換器と、 媒体熱交換器と、冷媒流路切換機とを有し、媒体回路は、媒体昇圧機と、媒体熱交換器と、第1媒体流路切換機と、熱搬送媒体と室内の空気とを熱交換させる複数の室内空気熱交換器と、を有しており、冷媒流路切換機により、室外空気熱交換器及び媒体熱交換器を冷媒の放熱器又は蒸発器として機能させることを切替え、また、第1媒体流路切換機により、媒体熱交 換器を熱搬送媒体の放熱器又は蒸発器として機能させることを切り換えるものである(請求項1、段落【0006】)。 エ本願発明の効果本願発明は、熱搬送媒体として二酸化炭素を使用しているため、熱搬送 換器を熱搬送媒体の放熱器又は蒸発器として機能させることを切り換えるものである(請求項1、段落【0006】)。 エ本願発明の効果本願発明は、熱搬送媒体として二酸化炭素を使用しているため、熱搬送媒体として水を使用する場合と比べて、媒体回路を構成する配管を小径化 することができ、これにより、配管の設置スペースを小さくでき、配管施工やメンテナンスも省力化でき、媒体回路の媒体の量を少なくすることができる(段落【0008】及び【0063】)。また、熱搬送媒体が媒体回路から漏洩しても、不燃性であるため、着火事故を起こすおそれをなくすことができる(段落【0009】及び【0064】)。 さらに、冷媒のHFC-32及び熱搬送媒体の二酸化炭素は、いずれもオゾン層破壊係数がゼロで、かつ温暖化係数が小さい流体であるため、環境負荷低減の要求を満たすことができる(段落【0010】及び【0065】)。 また、流路切換機により、室内の空調(冷房及び暖房)を行うことがで き(段落【0061】)、室内の冷房及び室内の暖房を全ての室内空気熱交 換器でまとめて切り換えて行うことができる(段落【0062】)。 3 取消事由1(引用発明、並びに一致点及び相違点の認定の誤り)について⑴ 本願発明の要旨認定についてア要旨認定の手法発明の要旨認定は、特許請求の範囲の記載に基づいて行うべきであり、 発明が属する技術分野における優先日前の技術常識を考慮した通常の意味内容により特許請求の範囲の記載を解釈するのが相当である。もっとも、特許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれば、通常の意味内容とは異なるものとして解される余地はあるものの、そのような定義又は説 の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれば、通常の意味内容とは異なるものとして解される余地はあるものの、そのような定義又は説 明がない場合には、上記のとおり解釈するのが相当である。 イ本願発明がビル用マルチの発明として特定されるか否かについて(ア) 本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、前記第2の2のとおりであり、このうち構成要件Hには「前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる複数の室内空気熱交換器」という記載があるところ、「室」は「① ざしき、へや。居間」(広辞苑第7版)を意味するから、本願発明は、熱搬送媒体と、「室内」すなわち「ざしき、へや。居間」内の空気とを熱交換させる、いわゆる「空調用」(「空調」は「空気調節の略。」(広辞苑第7版))の「空気熱交換器」を複数有するもの(以下、「マルチエアコン」という。)であることが特定されている。また、構成要件Dの「冷媒流路 切換機」及び構成要件Gの「第1媒体流路切換機」という記載があることからすると、前記の「複数の室内空気熱交換器」において、室内空気を冷却又は加熱すること、すなわち、冷暖房が切替可能であることが特定されている。他方、本願の特許請求の範囲の請求項1には、冷媒量や室の規模等の特定はないから、本願発明は、冷媒量が特に多い「ビル用」 のマルチエアコンに特定されているとは認められず、一般家庭でも使用 される規模のマルチエアコンをも包含していると解さざるを得ない。 そうすると、本願発明は、通常の意味内容により特許請求の範囲の記載を解釈するならば、複数の室内熱交換器を有する冷暖房が切替可能なマルチエアコンの発明であると認められるものの、冷媒量が特に多い「ビル用」のマルチエアコ 明は、通常の意味内容により特許請求の範囲の記載を解釈するならば、複数の室内熱交換器を有する冷暖房が切替可能なマルチエアコンの発明であると認められるものの、冷媒量が特に多い「ビル用」のマルチエアコン(ビル用マルチ)に特定されているとは認めら れない。 (イ) 次に、仮に特許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれば、通常の意味内容とは異なるものとして解される余地はあるので、この点について検討する。本願明細書等の【産業上の利用可能性】の「本発明 は、冷媒が循環する冷媒回路と熱搬送媒体が循環する媒体回路とを有しており、熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させて室内の空調を行う熱搬送システムに対して、広く適用可能である。」(段落【0144】)という記載は、本願発明が、1台の室外機に複数台の室内機が接続されたマルチエアコンであると解することと整合するものの、そこから、使用する 冷媒の量が桁違いに多いビル用マルチであると理解できるものではないし、その余の本願明細書等の記載をみても、本願発明のマルチエアコンがビル用に限定されている旨の定義又は説明を見出すことはできない。 したがって、本願発明について、特許請求の範囲の記載の意味内容を、通常の意味内容とは異なるものとして解さなければならない理由はない。 (ウ) この点に関し、原告らは、本願明細書等の【背景技術】に記載された「チラーシステム」(段落【0002】)が、解決すべき課題を有する「従来のチラーシステム」(【発明の概要】段落【0003】)として表示されていることから、本願発明は、ビル等の大容量の冷暖房に使われるセントラル空調機の課題解決を前提としていると主張する(前記第3の1〔原 告らの主張〕⑴) の概要】段落【0003】)として表示されていることから、本願発明は、ビル等の大容量の冷暖房に使われるセントラル空調機の課題解決を前提としていると主張する(前記第3の1〔原 告らの主張〕⑴)。 しかし、本願明細書等の【背景技術】には、「従来より、冷媒回路と水回路とを有しており、水回路を循環する水と冷媒回路を循環する冷媒とを熱交換させることによって冷媒から水に熱搬送を行うように構成されたチラーシステムがある。」(段落【0002】)と記載され、【発明の概要】には「上記従来のチラーシステムは、水回路に水と室内空気とを熱 交換させる熱交換器を設けることによって室内の空調に使用されることがある。」(段落【0003】)と記載されており、これによれば、チラーシステムとは、水回路を循環する水と冷媒回路を循環する冷媒とを熱交換させることによって冷媒から水に熱搬送を行うように構成された冷却装置を指し、空調以外の用途のものをも含むものであると認められ、「チ ラーシステム」という用語が用いられていることから、本願発明が、ビル等の大容量の冷暖房に使われるセントラル空調機の課題解決を前提としていると解することはできない。 また、原告らは、本願明細書等の課題や効果の記載から、本願発明はビル用マルチであると主張する(前記第3の1〔原告らの主張〕⑴)。 しかし、「媒体回路を構成する配管を小径化するとともに、環境負荷の低減及び安全性の向上を図ること」(段落【0005】)という本願発明の課題は、ビル用ではない家庭用等のマルチエアコンの課題でもある。 また、原告らが本願発明の作用効果として主張する、冷房と暖房が可能であること(効果1)、複数の室内の冷房及び暖房をまとめて切換可能で あること(効果2)、配管小径化、省スペース化 題でもある。 また、原告らが本願発明の作用効果として主張する、冷房と暖房が可能であること(効果1)、複数の室内の冷房及び暖房をまとめて切換可能で あること(効果2)、配管小径化、省スペース化・配管施工及びメンテナンス省力化、媒体使用量削減(効果3)、着火事故防止(効果4)、環境負荷低減(効果5)は、いずれもビル用ではない家庭用等のマルチエアコンの作用効果としても妥当するものである。 したがって、本願明細書等の課題や効果の記載から、本願発明はビル 用マルチであると認めることはできない。 (エ) そうすると、本願発明は、複数の室内熱交換器を有する冷暖房が切替可能なマルチエアコンの発明であると認められるものの、冷媒量が特に多い「ビル用」のマルチエアコン(ビル用マルチ)に特定されているとは認められない。 ⑵ 引用発明の認定の誤りについて ア引用文献1の記載引用文献1には、別紙「引用文献1(甲11)の記載」のとおりの記載がある。 イ引用文献1に開示された技術的事項別紙「引用文献1(甲11)の記載」によれば、引用文献1には、次の ような技術的事項が開示されているものと認められる。 引用文献1は、空気調和機等に用いられる2元式冷凍サイクルに関し、特に効率を高めることができる技術に関するものであり(段落【0001】)、従来、2次側の圧縮機の吸込容積が冷房運転時と暖房運転時とで同じであるため、能力可変幅が圧縮機回転数可変範囲に依存してしまい、負 荷に応じた運転ができないことや、圧縮機の効率が悪い低回転数での運転となることがあったところ(段落【0003】)、冷房運転時と暖房運転時に応じた適正な吸込容積として効率の高い運転が可能な2元冷凍サイクル装置を提供することを目的とし(段落【000 い低回転数での運転となることがあったところ(段落【0003】)、冷房運転時と暖房運転時に応じた適正な吸込容積として効率の高い運転が可能な2元冷凍サイクル装置を提供することを目的とし(段落【0004】)、このような目的を達成するために、1次又は2次冷凍サイクルに設けられ、インバータ駆動 される2シリンダ式圧縮機の一つのシリンダは圧縮運転と非圧縮運転を切り替え可能とし、かかる構成により、圧縮機の吸込容積を可変とすることで、冷房運転時と暖房運転時に応じた適切な吸込容積とすることができ、効率の高い運転が可能となるものである(段落【0006】及び【0007】)。 そして、図1に図示される第1の実施の形態に係る2元冷凍サイクル装 置1は、第1圧縮機100と、第1四方弁150と、室外熱交換器160と、第1膨張機構170と、一つの中間熱交換器300に組み込まれた第1中間熱交換器300Aとを有する1次側冷凍サイクル10と(段落【0011】)、第2圧縮機200と、第2四方弁250と、一つの中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、第2膨張機構26 0と、一つの室内熱交換器270とを有する2次側冷凍サイクル20とを備え(段落【0012】)、第1圧縮機100及び第2圧縮機200は、インバータ130で駆動される2シリンダ形回転式圧縮機であり、必要時にシリンダ108Bに高圧冷媒を導入し、ベーン115b前後の圧力差をなくし第2シリンダ108Bのみ非圧縮運転ができるようになっており(段 落【0027】)、1次側冷媒にHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いた(段落【0053】及び【0058】)ものであり、室内側に使用する冷媒が二酸化炭素であるため、室内に可燃性冷媒が漏れることがな 媒にHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いた(段落【0053】及び【0058】)ものであり、室内側に使用する冷媒が二酸化炭素であるため、室内に可燃性冷媒が漏れることがなく、安全に使用できる(段落【0062】)ものである。 ウ引用発明の認定の誤りの有無について (ア) 引用発明の認定の手法引用発明の技術内容は、引用文献の記載を基礎として、客観的かつ具体的に認定・確定されなければならず、引用文献に記載された技術内容を、本願発明との対比に必要がないにもかかわらず抽象化したり、一般化したり、上位概念化したりすることは、恣意的な判断を容れるおそれ が生じるため、原則として許されない。他方、引用発明の認定は、これを本願発明と対比させて、本願発明と引用発明との相違点に係る技術的構成を確定させることを目的としてされるものであるから、本願発明との対比に必要な技術的構成について過不足なく行われなければならず、換言すれば、引用発明の認定は、本願発明との対比及び判断を誤りなく することができるように行うことで足りる。 (イ) 2シリンダ形回転式圧縮機を備える点についてa 本願の特許請求の範囲の請求項1において、「媒体昇圧機」は、「前記熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機」(構成要件E)と特定されている。 これによれば、「媒体昇圧機」は、その具体的な構造や駆動手段等は特定されていないから、熱搬送媒体を昇圧することができる様々な構成 を包含するものである。このことは、媒体昇圧機に関して、本願の請求項5で「インバータによって回転数が制御されるモータを有している」とされ、請求項6で「ロータリ圧縮機である」とされ、請求項7で「オイルレスのターボ圧縮機である」とされていることや、本願明細書等の段 項5で「インバータによって回転数が制御されるモータを有している」とされ、請求項6で「ロータリ圧縮機である」とされ、請求項7で「オイルレスのターボ圧縮機である」とされていることや、本願明細書等の段落【0042】に「媒体昇圧機31は、熱搬送媒体を昇圧 する機器である。媒体昇圧機31は、ロータリやスクロール等の容積式の媒体圧縮要素(図示せず)をモータからなる媒体昇圧機用駆動機構31aによって駆動する圧縮機である。尚、媒体昇圧機31を構成する媒体圧縮要素は、ロータリやスクロールのような容積式の圧縮要素に限定されるものではなく、他の形式(レシプロ等)の圧縮要素で あってもよい。また、媒体昇圧機用駆動機構31aは、モータに限定されるものではなく、他の駆動機構(エンジン等)であってもよい。」と記載され、本願発明の媒体昇圧機として様々な構成を採用し得ることが記載されていることとも整合する。 他方、前記イのとおり、引用文献1には、第1の実施の形態におい て、第1圧縮機100及び第2圧縮機200は、インバータ130で駆動される2シリンダ形回転式圧縮機であり、必要時にシリンダ108Bに高圧冷媒を導入し、ベーン115b前後の圧力差を無くし第2シリンダ108Bのみ非圧縮運転ができるものとして記載されている。 上記のとおり、本願発明における「媒体昇圧機」は、具体的な構造 や駆動手段等は特定されておらず、熱搬送媒体を昇圧することができ る様々な構成を包含するものであることに照らすと、このような本願発明と引用発明との相違点に係る技術的構成を確定させるためには、引用発明が第2圧縮機200を備えていることを特定すれば過不足がないということができ、第2圧縮機200について、第1の実施の形態に係る具体的な構造等を認定すること る技術的構成を確定させるためには、引用発明が第2圧縮機200を備えていることを特定すれば過不足がないということができ、第2圧縮機200について、第1の実施の形態に係る具体的な構造等を認定することまでを要するものではないと いうべきである。 そうすると、本件審決が引用発明の2次側冷凍サイクル20の圧縮機を単に「圧縮機200」と認定したことには誤りはない。 b 原告らは、本件審決は、引用発明が、圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成した、インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機 を必須の構成要素とする発明であることを捨象し、抽象化、上位概念化して、圧縮機全般を前提としているかのように引用発明を認定した点で、引用発明の認定に誤りがあると主張する(前記第3の1⑵イ(ア))。 確かに、引用発明を、抽象化、上位概念化して認定することにより、引用発明に記載されていない技術的思想を認定することは許されない。 しかし、引用発明は、常に刊行物に書かれたとおりの具体的な構成として認定しなければならないとする理由はなく、本願発明との対比及び判断を誤りなくすることができるように、本願発明に示された技術的思想と対比する上で必要な限度で、刊行物の記載に基づいて、そこに示された技術的思想を表す構成を認定することは許されるというべ きである。これを本件についてみると、本願発明における「媒体昇圧機」は、具体的な構造や駆動手段等を特定することなく、熱搬送媒体を昇圧することのできる装置という技術的思想を示すものであると認められ、技術的観点からしても、その技術的思想の内容及び範囲を把握することは可能である。そして、引用文献1に、圧縮運転と非圧縮 運転とを切替可能に構成した、インバータ駆動される2シリンダ形回 転式圧縮 ても、その技術的思想の内容及び範囲を把握することは可能である。そして、引用文献1に、圧縮運転と非圧縮 運転とを切替可能に構成した、インバータ駆動される2シリンダ形回 転式圧縮機を備える発明が記載されているとしても、そこには、上記のような技術的思想を表す構成が示されていると認められるから、同じ技術的思想を示すものとして、引用発明の2次側冷凍サイクル20の圧縮機を単に「圧縮機200」と認定することは、引用文献1の記載に基づいて、本願発明との対比及び判断を誤りなくすることができ るように引用発明の認定を行ったということができる。 したがって、本件審決による引用発明の認定に誤りがあるとは認められない。 (ウ) ペア機である点についてa 引用文献1に開示された技術的事項は、前記イのとおりであって、 引用文献1に記載された引用発明は、圧縮機の吸込容積を冷房運転時と暖房運転時に応じた適正な吸込容積として、効率の高い運転が可能な2元冷凍サイクル装置を提供することを課題とし、圧縮機の一つのシリンダは圧縮運転と非圧縮運転を切り替え可能とする構成により上記課題を解決したものである。そして、引用文献1には、第1の実施 の形態として、必要時に第2シリンダ108Bのみ非圧縮運転ができる第2圧縮機200とともに、一つの中間熱交換器300と一つの室内熱交換器270とを有する2次側冷凍サイクル20(いわゆるペア機)が記載されている。 しかし、引用文献1において、実施の形態は、上記のようにペア機 であることが把握できるものの、その特許請求の範囲の請求項1の記載をみると、上記課題を解決する手段である圧縮機に係る構成(二つのシリンダのうち一つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成)が特定される一方で、室内熱交換器の数 、その特許請求の範囲の請求項1の記載をみると、上記課題を解決する手段である圧縮機に係る構成(二つのシリンダのうち一つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成)が特定される一方で、室内熱交換器の数量等の具体的な構成については特定されていない上、その発明の詳細な説明の記載を見ても、前記 課題解決手段と室内熱交換器数量等の具体的な構成が密接不可分であ ることをうかがわせる記載はない。このような特許請求の範囲や発明の詳細な説明の記載に照らすと、上記課題を解決する手段との関係において、室内熱交換器270の数量等の具体的な構成は、課題の解決に必須のものではなく、任意付加的なものであって、引用文献1に記載された発明は、ペア機に特定されるものではないものと認められる。 そうすると、引用文献1の記載に基づいて、本件審決が引用発明の認定において、室内熱交換器の数量等を記載せずに、単に「室内熱交換器270」と認定したことに誤りはないというべきである。 b この点に関し、原告らは、引用文献1には、ペア機を前提にした発明が開示されており、本件審決は、引用発明の認定に当たってこの点 を看過して点で誤っていると主張する(前記第3の1〔原告らの主張〕⑵イ(イ))。 原告らの上記主張は、引用文献1に、低負荷や高負荷時に負荷に応じた運転ができないという課題が記載されているとし、そのような課題は、ペア機に生じ、本願発明のようなそれぞれの室内の負荷に応じ て、各室内熱交換器に流れる冷媒量を調節するビル用マルチには生じないから、引用発明として、ペア機であることを認定すべきであるというものである。しかし、前記aのとおり、引用文献1の特許請求の範囲や発明の詳細な説明の記載に照らすと、室内熱交換器270の数量等の具体的な構成は、課題の解 て、ペア機であることを認定すべきであるというものである。しかし、前記aのとおり、引用文献1の特許請求の範囲や発明の詳細な説明の記載に照らすと、室内熱交換器270の数量等の具体的な構成は、課題の解決に必須のものではなく、引用文献 1に記載された発明は、ペア機に特定されるものではないし、前記⑴イ(エ)のとおり、本願発明は、マルチエアコンの発明であると認められるものの、冷媒量が特に多い「ビル用」のマルチエアコンに特定されているとは認められないし、また、本願発明は、各室内熱交換器に流れる冷媒量を調節する構成は何ら特定されていないから、原告らの上 記主張は採用することができない。 ⑶ 本願発明と引用発明の一致点、相違点の認定の誤りについてア相違点2について前記⑵ウ(ウ)aのとおり、引用文献1の特許請求の範囲や発明の詳細な説明の記載に照らすと、室内熱交換器270の数量等の具体的な構成は、課題の解決に必須のものではなく、引用発明における室内熱交換器270に 係る本件審決の認定に誤りがあるとはいえないことからすると、本件審決が相違点2の認定において、「熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器について、・・・引用発明は、室内熱交換器270が複数設けられているとは特定されていない点。」としたことは誤りであるとは認められない。 原告らは、引用発明は、ビル用マルチに関する本願発明と異なり、ペア機に特有の課題である、低負荷や高負荷時に負荷に応じた運転ができないという課題を解決するための発明であるから、このような技術的意義の相違を踏まえて対比した上で、相違点2を認定すべきであるなどと主張するが(前記第3の1〔原告らの主張〕⑶イ(ア))、前記⑵ウ(ウ)bのとおり、引 用発明の課題に関する 、このような技術的意義の相違を踏まえて対比した上で、相違点2を認定すべきであるなどと主張するが(前記第3の1〔原告らの主張〕⑶イ(ア))、前記⑵ウ(ウ)bのとおり、引 用発明の課題に関する原告らの上記主張は採用することができないから、相違点2に関する原告らの主張も採用することができない。 イ相違点3について前記⑵ウのとおり、本件審決の引用発明の認定に誤りはなく、本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「圧縮機200」は本願発明の「媒 体昇圧機」に相当するから、この点は相違点とすることはできず、本件審決が、本願発明と引用発明が「熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機」を備える点で一致すると認定したことに誤りはない。 なお、仮に、引用発明の認定として、圧縮機200について、原告らの主張のとおり、「二つのシリンダを有するとともに、これら二つのシリンダ のうち一つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ 駆動される2シリンダ形回転式圧縮機」と認定したとしても、本願の特許請求の範囲の請求項1において、「媒体昇圧機」は、「前記熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機」(構成要件E)と特定されているにとどまり、その具体的な構造や駆動手段等は特定されておらず、熱搬送媒体を昇圧することができる様々な構成を包含するものであるから、上記のような圧縮機も本願 発明の「媒体昇圧機」に相当し、本願発明と引用発明の相違点を構成するものではない。 そうすると、本願発明と引用発明の相違点として相違点3を認定すべきとする原告らの主張は採用することができない。 ⑷ 以上によれば、本件審決による本願発明と引用発明との一致点・相違点の 認定に誤りはなく、取消事由1は理由がない。 4 取消事由2(周知技術の認定の誤り らの主張は採用することができない。 ⑷ 以上によれば、本件審決による本願発明と引用発明との一致点・相違点の 認定に誤りはなく、取消事由1は理由がない。 4 取消事由2(周知技術の認定の誤り)について⑴ 周知事項1について引2事項は、引用文献2の記載に基づいて客観的に認定されたものであり、また、引11事項は、引用文献11の記載に基づいて客観的に認定されたも のであり、それらの認定に誤りがあるとは認められない。そして、本件審決が、引用文献2の記載により認定した引2事項、引用文献11の記載により認定した引11事項等に基づいて周知事項1を認定したことにも誤りはない。 その理由は、次のとおりである。 ア複数の冷媒の中からの選択について (ア) 本件審決は、「引2事項」中、冷媒について、「高温側サイクルの冷媒として、例えば、HFC冷媒(R410A、R404A、R32、R407C)、HFO冷媒、HC冷媒等が使用され、低温側サイクルの冷媒として、例えば、地球温暖化係数(GWP)が1であるCO2冷媒が使用されること。」(本件審決の4の4-2⑵〔本件審決12頁〕)と認定し、ま た、「引11事項」中、冷媒について、「高段側冷媒回路内には冷媒とし てアンモニア(R717)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)やフッ素系冷媒のR410、R32、R134a、R407Cなどが所定量封入(実施例ではプロピレンとする)されると共に、低段側冷媒回路内には冷媒として自然冷媒である二酸化炭素(CO2)が所定量封入されていること」(本件審決の4の4-5⑵〔本件審決21頁〕)と 認定しており、上記に認定された冷媒は、引用文献2と引用文献11のそれぞれに記載のとおりであるから、各刊行物の記載を基礎として、客観的か ること」(本件審決の4の4-5⑵〔本件審決21頁〕)と 認定しており、上記に認定された冷媒は、引用文献2と引用文献11のそれぞれに記載のとおりであるから、各刊行物の記載を基礎として、客観的かつ具体的に認定、確定されたものということができ、これを誤りとすることはできない。 (イ) 確かに、一般論としては、引用刊行物において、例えば、当該刊行物 に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、当業者は、特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできないといえる。 しかし、引用文献2と引用文献11のように、一般式のような形式ではなく、1次側冷媒が具体的に列挙されている場合には、複数列挙されている1次側冷媒のそれぞれと二酸化炭素との組み合わせが、並列的に、現実に記載されているものと認められるから、当該刊行物の記載から、1次側冷媒のうちの一つと二酸化炭素の組み合わせからなる特定の選択 肢に係る具体的な技術的思想を示す構成を認めることができるというべきである。 もっとも、1次側冷媒として列挙されたものの中に、2次側冷媒の二酸化炭素と組み合わせることが技術的にできないようなものがある場合には、そのようなものは、2次側冷媒の二酸化炭素との組み合わせとし て抽出することはできないが、引用文献2や引用文献11において、R 32について、2次側冷媒の二酸化炭素と組み合わせることが技術的にできないことを示す記載はない。また、技術常識C(前記1⑵イ(ア))に照らして、引用文献2や引用文献11に列挙される冷媒(いずれもR32を含む。)は、いずれの冷媒も本願優 組み合わせることが技術的にできないことを示す記載はない。また、技術常識C(前記1⑵イ(ア))に照らして、引用文献2や引用文献11に列挙される冷媒(いずれもR32を含む。)は、いずれの冷媒も本願優先日前に当業者によく知られたものであり、かつこれらのいずれかを選択することは、フロンの代替物質 の研究・開発が進められる技術動向にも合致しているものであるから、いずれの選択肢も技術的に採用し得ないものではない。さらに、これらの1次側冷媒を2次側冷媒の二酸化炭素と組み合わせた場合に、二元冷媒回路がカスケード接続された蒸気圧縮式冷凍機として一切稼働しない等の、1次側冷媒として技術的に採用し得ないとする事情は認められな い。そのため、1次側冷媒としてのR32と2次側冷媒として二酸化炭素(CO2)を組み合わせることは、技術的に採用し得ないものとは認められない。 そうすると、本件審決が、引2事項及び引11事項から周知事項1を導き出したことは、各刊行物の記載に基づいて、客観的かつ具体的に、 そこに記載された技術的事項を認定したものと認められ、誤りがあるとは認められない。 (ウ) この点に関し、原告らは、本件審決は、周知事項の認定の段階で、例示される複数の冷媒からR32を選択するという推定・推論をしており、客観的に「周知事項」を認定していない旨、本件審決は、本願発明に接 した後で、複数列挙の冷媒から、本願発明と同じ構成を選択しており、このような判断は、引用発明の認定に容易想到性の判断を持ち込むもので許されない旨、本件審決の認定は、周知技術の認定の段階で想定・推論し、さらに、本願発明と引用発明との相違点について論理付けができるかどうかの判断をしているから、いわゆる容易の容易であって許され ない旨主張する(前記第3の2〔原告 術の認定の段階で想定・推論し、さらに、本願発明と引用発明との相違点について論理付けができるかどうかの判断をしているから、いわゆる容易の容易であって許され ない旨主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑴ア)。 しかし、前記ア(イ)のとおり、引用文献2と引用文献11には、複数列挙されている1次側冷媒のそれぞれと二酸化炭素との組み合わせが、現実に記載されているものと認められ、複数列挙されている1次側冷媒の一つであるR32と二酸化炭素の組み合わせは、現実に記載されている組み合わせのうちの一つである。そして、引用発明の認定は、本願発明 との対比及び判断を誤りなくすることができるように行うものであり、相違点1において、1次側冷媒について、本願発明がR32であるのに対して引用発明がプロパンであることが示されていることからすれば、相違点1に関係する冷媒の組み合わせとしては、1次側冷媒がR32である組み合わせを選択することは当然に行われるべきことである。そこ において、相違点1に関係する冷媒の組み合わせを選択して示すという精神作用が働いているとしても、それは、引用文献の記載のうち相違点に関連する組み合わせを、「R32」という本願発明の構成要件中の具体的な用語と同一の用語を探すことにより選択しているというにとどまり、それをもって、引用文献の記載と離れた推定、推論、想定が行われてい ると認めることはできないし、容易想到性に関する判断が行われているとはいえない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて原告らは、引用文献2記載の発明と引用文献11記載の発明は、本願発 明とは、対象とする温度領域が重なっておらず、求められる熱力学特性が全く イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて原告らは、引用文献2記載の発明と引用文献11記載の発明は、本願発 明とは、対象とする温度領域が重なっておらず、求められる熱力学特性が全く異なる上、本願発明と異なり、冷房と暖房の切替や、部屋ごとの独立した温度調整といった要請もないから、本件審決が周知事項1を認定したのは誤りである旨主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑴イ)。 しかし、前記アで述べたとおり、本件審決が、引用文献2の記載に基づ く引2事項、引用文献11の記載に基づく引11事項から、1次側冷媒と してのR32と2次側冷媒として二酸化炭素(CO2)を組み合わせることを導き出したことに誤りはなく、周知事項1は、引用文献2及び引用文献11の記載に基づいて、客観的かつ具体的に、そこに記載された技術思想を認定したものと認められ、その点に誤りがあるとは認められない。 ウ周知性を裏付ける文献の数について 原告らは、周知事項1は、被告の主張によっても、それを根拠づける文献は、引用文献2と引用文献11のみで数が少なく、周知技術に該当しないことは明白であると主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑴ウ)。 しかし、周知技術とは、その技術分野において一般的に知られている技術をいうところ、別紙「冷媒に関する刊行物の記載」及び技術常識Cによ れば、周知事項1で特定される冷媒は、いずれもヒートポンプに係る技術分野において広く知られていたものと認められるから、このような冷媒の組み合わせを特定した周知事項1は、周知技術に該当するものと認められる。なお、乙5(特開平7-269964号公報)には、別紙「乙5(特開平7-269964号公報)の記載」のとおりの記載があり、乙5の文 献に記載された実施例1には、二元 該当するものと認められる。なお、乙5(特開平7-269964号公報)には、別紙「乙5(特開平7-269964号公報)の記載」のとおりの記載があり、乙5の文 献に記載された実施例1には、二元冷媒回路がカスケード接続された空調機において、1次側にHFC32(R32)を、2次側にCO2を用いる組み合わせが選択肢として記載されており(乙5の文献段落【0023】及び【0024】)、周知事項1がヒートポンプに係る技術分野において広く知られていたことが裏付けられる。 この点に関し、原告らは、本件審決は、周知事項1を、複数の文献(引用文献1、2及び10)を組み合わせて認定しており、いわゆる容易の容易であり、許されないと主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑴ウ)。 しかし、前記イのとおり、本件審決が、引2事項及び引11事項から周知事項1を導き出したことは、各刊行物の記載に基づいて、客観的かつ具 体的に、そこに記載された技術的事項を認定したものと認められ、誤りが あるとは認められず、前記ア(ウ)のとおり、それをもって、引用文献の記載と離れた推定、推論、想定が行われていると認めることはできないし、容易想到性に関する判断が行われているとはいえない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑵ 1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒に二酸化炭素(CO2)を用いるこ とについて本件審決が、周知事項1及び引10事項から、1次側冷媒により2次側冷媒を冷却又は加熱する場合のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願優先日前に普通に採用される冷媒の組み合わせである(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)と認定したこと に誤りはない。 ア空調用冷媒サイクルにおけ 、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願優先日前に普通に採用される冷媒の組み合わせである(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)と認定したこと に誤りはない。 ア空調用冷媒サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を用いることについて原告らは、引用文献10記載の発明は、給湯用冷媒にのみ二酸化炭素が用いられており、空調用冷媒サイクルにおける2次側冷媒に二酸化炭素を 用いることが記載されているわけではないから、「室内空調の冷凍サイクルにおいて1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること」は記載されていない旨主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑵ア)。 しかし、本件審決は、引10事項として、「給湯用冷媒には、二酸化炭素冷媒を用いること」を認定しており、空調用冷媒サイクルにおける2次側 冷媒に二酸化炭素を用いることが記載されていることまでを認定したものではないから、原告らの上記主張は、その前提を欠くものであり、採用することができない。また、引用文献10の記載に照らし、引10事項は、その記載に基づいて客観的かつ具体的に認定できるものであり、その認定に誤りがあるとは認められない。 イ空調機の発明と冷凍装置の発明であることについて 原告らは、本件審決が、周知事項1及び引10事項から「1次側冷媒により2次側冷媒を冷却又は加熱する場合のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願優先日前に普通に採用される冷媒の組み合わせである」と認定したことについて、引10事項には、給湯用冷媒として二酸化炭素が記載されているのみであり、 本件審決の上記認定は、0℃近い水温を60℃以上の高温にしなければならない給湯システムと、人が過ごすための快適な室温を25℃ 10事項には、給湯用冷媒として二酸化炭素が記載されているのみであり、 本件審決の上記認定は、0℃近い水温を60℃以上の高温にしなければならない給湯システムと、人が過ごすための快適な室温を25℃ないし30℃(一般空調域)に制御する空調機との技術的な違い、技術分野の違い、原理の違いを無視した乱暴な認定であると主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑵イ)。 周知事項1や引10事項の基礎となった各刊行物(周知事項1につき引用文献2及び引用文献11、引10事項につき引用文献10)は、個別的にみれば、冷凍機又は給湯機に関するものであるが、前記⑴及び前記アのとおり、周知事項1及び引10事項は、各刊行物の記載に基づいて客観的かつ具体的に認定できるものであり、それらの認定に誤りがあるとはいえ ない。そして、周知事項1は、1次側冷媒により2次側冷媒を冷却する場合であり、引10事項は1次側冷媒により2次側冷媒を加熱する場合であるが、いずれの場合であっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いることが記載されているといえる。さらに、技術常識A及びBによれば、冷凍、給湯及び空調は、いずれもヒートポンプを用いること から、原理的には全く同じで、技術面で共通していることが認められ、冷媒に係る技術常識Cも踏まえれば、本件審決が認定したとおり、「1次側冷媒により2次側冷媒を冷却又は加熱する場合のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること」は、ヒートポンプに係る技術分野(冷凍、給湯、空調)における当業者に知れ渡っていた ものと認められる。なお、前記⑴ウのとおり、乙5の文献に記載された実 施例1には、二元冷媒回路がカスケード接続された空調機において、1次側にHFC32(R32) 知れ渡っていた ものと認められる。なお、前記⑴ウのとおり、乙5の文献に記載された実 施例1には、二元冷媒回路がカスケード接続された空調機において、1次側にHFC32(R32)を、2次側にCO2を用いる組み合わせが選択肢として記載されており(乙5の文献段落【0023】及び【0024】)、上記の認定を裏付けているといえる。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑶ 引用文献11に記載されたプロパンと本願発明に記載されたR32の違いについて原告らは、本件審決が、「引11事項に示すとおり、1次側冷媒回路に用いられる冷媒として、プロパンとR32とは併記して例示される冷媒でもある。」と認定したこと(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)について、プロパンとR 32とでは性質が異なること等から、上記の本件審決の趣旨が、プロパンとR32に代替性があるという趣旨であれば、誤りであると主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑶)。 しかし、前記⑴ア(ウ)のとおり、引用文献11(甲15)には、複数列挙されている1次側冷媒のそれぞれと二酸化炭素との組み合わせが、並列的に、 現実に記載されているものと認められるから、本件審決が上記のとおり認定したことについて誤りはない。 ⑷ 周知事項2についてア周知事項2の認定の誤りの有無について(ア) 引用文献3の記載 引用文献3には、別紙「引用文献3(甲13)の記載」のとおりの記載がある。 (イ) 引用文献3に開示された技術的事項別紙「引用文献3(甲13)の記載」によれば、引用文献3には、次のような技術的事項が開示されているものと認められる。 引用文献3に記載された発明は、熱源側回路を循環する冷媒と熱交換 を行う 3(甲13)の記載」によれば、引用文献3には、次のような技術的事項が開示されているものと認められる。 引用文献3に記載された発明は、熱源側回路を循環する冷媒と熱交換 を行う熱搬送媒体が循環する回路を有する空気調和装置に関し(段落【0001】)、フロン等の冷媒量の削減が要求され、二次回路方式を採用することで、装置全体で冷媒が循環する回路部分(ここでは、熱源側回路)を小さくして、冷媒量の削減を図ることが検討され(段落【0002】)、利用側回路を循環する熱搬送媒体の熱搬送能力を向上させるために、ス ラリーを熱搬送媒体として使用した構成が提案されているところ(段落【0003】)、搬送用媒体の利用によって冷媒量の削減の要求を満たしつつ、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットを容易に開発できるようにするものである(段落【0004】~【0009】)。 そして、図1に図示される一実施形態に係る空気調和装置1は、熱源側 冷媒が熱源側圧縮機21により循環する熱源側回路20と、熱源側冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環ポンプ29により循環する搬送側回路40と、熱搬送媒体と熱交換を行う利用側冷媒が利用側圧縮機31により循環する利用側回路50とを有する装置であって(段落【0032】、【0041】)、各回路は、媒体-熱源側冷媒熱交換器26及び媒体-利 用側冷媒熱交換器34により接続されており(段落【0035】)、熱搬送媒体として電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを用い(段落【0054】)、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられているものである(段落【0034】)。なお、利用ユニ ットの台数については、2台 )、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられているものである(段落【0034】)。なお、利用ユニ ットの台数については、2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよいとの示唆がある(段落【0034】)。 (ウ) 認定の誤りの有無について引用文献3の記載(前記(ア))及び引用文献3に開示された技術的事項(前記(イ))によれば、本件審決の認定した引3事項(前記第2の3⑴ウ、 本件審決の4の4-3⑵〔本件審決18頁〕)は、引用文献3の記載を客 観的かつ具体的に認定したものと認められ、その認定に誤りがあるとは認められない。 また、引3事項により周知事項2を認定したことに誤りがあると認めることもできない。そして、周知事項2は、二元冷媒回路がカスケード接続された空調機に限ったとしても、乙5ないし乙7の各文献に示され ているから、当該技術分野において一般的に知られているものであったことは、乙5ないし乙7により裏付けられているものと認められる。 イ原告らの主張に対する判断(ア) 技術的思想の違いの有無について原告らは、引用文献3記載の発明は、三次回路方式の空調装置に関す るものであることなどから、本願発明と技術的思想を異にするものであり、本件審決は、引用文献3の記載を単なる空気調和装置として上位概念化した上で認定するもので誤りであると主張する(前記第3の2〔原告らの主張〕⑷ア)。 しかし、本件審決が認定した相違点2は、利用側空調機の数の相違で あるところ、利用側回路が、熱源側の熱を、熱交換器を介して利用側に直接伝えるか、搬送側回路を一つ追加して当該搬送側回路を介して伝えるかは、相違点2の判断に直接の関連性はないから、本件 相違で あるところ、利用側回路が、熱源側の熱を、熱交換器を介して利用側に直接伝えるか、搬送側回路を一つ追加して当該搬送側回路を介して伝えるかは、相違点2の判断に直接の関連性はないから、本件審決の周知事項2の認定は、相違点2に係る事項の判断に必要となる事項が過不足なく認定されているといえる。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 室内交換器の個数を相違点としたことについて原告らは、本件審決は、他の構成要件との関係性を無視して、室内熱交換器の個数だけを相違点として取り出した結果、本願発明とは無関係である引用文献により、(形式的に)複数の室内熱交換機の記載があるも のを論理づけに用いており、その点でも誤った判断であると主張する(前 記第3の2〔原告らの主張〕⑷イ)。 しかし、本件審決による相違点2の認定に誤りがないことは、前記3⑶アのとおりであり、相違点2の認定に誤りがあることを前提とする原告らの上記主張は採用することができない。また、冷媒の相違に関する相違点1と、室内熱交換器の個数の相違に関する相違点2は、それらの 内容に鑑みて、別個の相違点として認定し、容易想到性の判断も別途に行うのが相当と解され、冷媒の種類と室内交換機の個数が技術的に関連していると認めるに足りる証拠はなく、それらの構成要件を関連付けて解釈する根拠を認めるに足りる証拠もないから、その点からみても、本件審決が、室内熱交換器の個数の相違を相違点2として認定したことに 誤りはなく、原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) 周知性を裏付ける文献について原告らは、引用文献3のみの1件により周知事項2の周知性が裏付けられるとはいえない旨、原告らには、審査、審判手続において、乙5ないし乙 することができない。 (ウ) 周知性を裏付ける文献について原告らは、引用文献3のみの1件により周知事項2の周知性が裏付けられるとはいえない旨、原告らには、審査、審判手続において、乙5ないし乙7の各文献に基づく被告の主張を争う機会や補正の機会が与えら れていないから、これらの新たな公知文献(乙5~乙7)に基づく主張は許されない旨、そもそも乙5ないし乙7の各文献は、本願発明とも引用文献3が前提とする三元回路とも異なるから、引3事項にいう「利用側回路50に複数の利用ユニット4a、4bを設けること」が周知であることを裏付けるものではない旨を主張する(前記第3の2〔原告らの 主張〕⑷ウ)。 確かに、審決取消訴訟においては、審判手続において表れなかった資料を新たに証拠として提出することは原則として許されないが、いかなる例外もなく絶対に許されないというわけではなく、例えば、当業者にとっては、刊行物をいちいち挙げるまでもないほどの周知慣用事項につ いて、審決取消訴訟の段階で、これを立証するために補充的に新たな資 料を提出することは許されるというべきであるところ、本件審決は、周知事項2を、その技術分野において一般的に知られている技術的事項として認定したものであり、そのような事項は、その技術分野において、例示する必要がない程よく知られており、当業者が熟知している事項であるので、多数の証拠を示されなければ認められないというものではな く、本件審決において、引用文献3は、そのような技術的事項の内容を示すために用いられたものであるから、原告らの上記主張は、その前提を欠くといえる。そして、本件審判において引用文献3が提出されていたことを考慮すると、本件審判の手続において原告らに主張立証の機会が与えられていなかったと のであるから、原告らの上記主張は、その前提を欠くといえる。そして、本件審判において引用文献3が提出されていたことを考慮すると、本件審判の手続において原告らに主張立証の機会が与えられていなかったとはいえない。また、乙5ないし乙7の各文献 は、それらがなければ周知事項2の周知性が認められないというものではなく、本件審決が周知であるとした認定に誤りがないことを示すために補充的に本件訴訟で提出されたものであり、乙5の文献(【0027】、【0065】、図2)、乙6の文献(【0020】、【0023】、【0052】、図14)、乙7の文献(【0011】、【0012】、【0013】、図1)に は、周知事項2に当たる事項が記載されているから、被告が乙5ないし乙7の各文献を提出して周知事項2が周知である旨主張したことに誤りはない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑸ 以上によれば、取消事由2は理由がない。 5 取消事由3(進歩性判断の誤り)について原告らは、原告らの主張する本願発明と引用発明の相違点(前記第3の1〔原告らの主張〕⑶ア(イ))を前提とするならば、本願発明には進歩性があると主張するが、前記3のとおり、本件審決による本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定に誤りはなく、原告らの主張する相違点(前記第3の1〔原告らの 主張〕⑶ア(イ))は採用することができないから、原告らの上記主張は理由がな い。 以下では、本件審決が認定した一致点、相違点を前提として、本件審決の進歩性の判断には誤りがあるか否かについて判断する。 ⑴ 相違点1について冷媒に係る技術常識を踏まえると、多数の冷媒の中では、CFC、HCF Cは製造利用が禁止されていることから、HFC系冷媒、HF 断には誤りがあるか否かについて判断する。 ⑴ 相違点1について冷媒に係る技術常識を踏まえると、多数の冷媒の中では、CFC、HCF Cは製造利用が禁止されていることから、HFC系冷媒、HFO系冷媒、又は自然冷媒が選択肢となることは当業者にとって自明の事項であるし(技術常識C)、これらの選択肢の中でも、R32やプロパンは、空調用の冷媒として次世代の候補であったこと(技術常識E)や、プロパンとR32は、熱物性値である標準沸点、臨界温度、臨界圧力において似た性質を有し、物性特 性が類似する一方で、プロパンはGWP(GlobalWarmingPotential、地球温暖化係数)が20未満であるが強燃性であるのに対し、R32はGWPが675であるが微燃性であり、両者のGWPと燃焼性はトレードオフの関係にあること(技術常識D及びF)は本願発明の技術分野において周知であり、当業者は、技術を理解する上で当然又は暗黙の前提となる知識として有して いたものと認められる。そして、低GWPと可燃性がトレードオフの関係にある以上、当業者は、その他の、毒性がないことなどの冷媒に求められる要求にも配慮しながら、冷媒の選択肢の中から、トレードオフの関係にある事項のいずれを重視するかによって、より適切な冷媒を選択するものであり、こうした選択可能な冷媒から一つの冷媒を選択することは、当業者の通常の 創作能力の発揮にすぎないといわざるを得ない。 ところで、引用発明は1次側冷媒にプロパンを用いているところ、燃焼性は高いもののGWPは低いプロパンに換えて、燃焼性は小さいもののGWPがプロパンより高いR32を選択することは、GWPが低いことよりも燃焼性が低いことを重視することからきわめて容易に導かれる選択であるし、ま た、プロパン又はR3 て、燃焼性は小さいもののGWPがプロパンより高いR32を選択することは、GWPが低いことよりも燃焼性が低いことを重視することからきわめて容易に導かれる選択であるし、ま た、プロパン又はR32のいずれを選択した場合であっても、引用発明が解 決しようとする課題(圧縮機の吸込容積を冷房運転時と暖房運転時に応じた適正な吸込容積として効率の高い運転が可能な2元冷凍サイクル装置を提供すること)は、「圧縮機の吸込容積を可変とすることで、冷房運転時と暖房運転時に応じた適切な吸込容積とすること」という引用発明の解決手段を採用することで解決し得るものである。そうすると、引用発明において、プロパ ンに換えてR32を採用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは、引用発明の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用というべきものである。 本願優先日当時には、上記のような技術常識があったものであり、本件審決は、二元冷凍装置において、「1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にC O2を用いること」が、本願優先日前の刊行物に具体的に記載され、認識されていたこと(周知事項1)、1次側冷媒により2次側冷媒を冷却する場合も過熱する場合も、「1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること」が普通に採用される冷媒の組み合わせであること(周知事項1、引10事項)を証拠により認定し、1次側冷媒としてプロパンとR32が併記し て例示されていること(引11事項)を認定して、引用発明において、プロパンに換えてR32を採用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記の設計変更や設計的事項の採用により、当業者が容易に想到し得ることを示したものといえる。 したがって、本件審決が、相違点1について、「引用発明 採用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記の設計変更や設計的事項の採用により、当業者が容易に想到し得ることを示したものといえる。 したがって、本件審決が、相違点1について、「引用発明において、冷媒回 路において用いる冷媒として、HC系冷媒であるプロパンに代えて、R32とすることは、当業者が容易に想到し得たことである」(本件審決6⑴〔本件審決25頁〕)と判断したことに誤りはない。 ⑵ 相違点2について前記3⑵ウ(ウ)aのとおり、引用発明において室内熱交換器の数は任意付加 的な事項である一方、引用発明の課題は、圧縮機の吸込容積を冷房運転時と 暖房運転時に応じた適正な吸込容積として効率の高い運転が可能な2元冷凍サイクル装置を提供することであり、室内熱交換器の数とは関係がなく、ペア又はマルチのいずれを選択した場合であっても、引用発明が解決しようとする課題は、引用発明の解決手段を採用することにより解決し得るものである。そうすると、引用発明において、室内熱交換器の数は、利用側の部屋の 数や利用形態に応じて当業者が適宜決め得る事項であるといえる。そして、周知事項2のとおり、利用側回路に複数の利用ユニットを設けることが周知であることを踏まえると、引用発明において、複数の利用装置を設けることを採用して相違点2に係る本願発明の構成とすることは、引用発明の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う単なる設計変更や設計的事項の採用 というべきものであり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 したがって、本件審決が、相違点2について、「引用発明における利用ユニットに相当する室内熱交換器の数は、利用側の部屋の数や利用形態に応じて適宜決め得ることであるから、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成 審決が、相違点2について、「引用発明における利用ユニットに相当する室内熱交換器の数は、利用側の部屋の数や利用形態に応じて適宜決め得ることであるから、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。」(本件審 決6⑴〔本件審決25頁〕)と判断したことに誤りはない。 ⑶ 原告らの主張に対する判断ア設計事項であるか否かについて(ア) 相違点1について原告らは、相違点1について、プロパンをR32に置き換えることを 設計事項であるとすることは、技術分野を問わず、優先日当時に公知の冷媒であれば、何を適用しても全て設計事項とするものであり、明らかに誤りであると主張する(前記第3の3〔原告らの主張〕⑴ア)。 しかし、引用発明においてプロパンに換えてR32を採用することが設計変更や設計的事項の採用と解されるのは、前記⑴で述べた事情を考 慮したことによるものであり、技術分野を問わず、優先日当時に公知の 冷媒であれば、何を適用しても全て設計事項とするものではないから、原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 相違点2について原告らは、相違点2について、ペア機においてペア数を増やさずにマルチに変更することは設計事項ではない等と主張する(前記第3の3〔原 告らの主張〕⑴イ)。 ペア機に関して、複数の部屋に設置する場合に、ペア数を増やすことは、当業者が通常認識している選択肢といえるから、そのような選択も当業者の通常の創作能力の範囲内にあるといえる。しかし、前記⑵のとおり、利用側に複数の熱交換機を設けることも、当業者が通常認識して いる選択肢であり、ペア数を増やすかマルチとするかも含めて、当業者が適宜選択できることであって、ペア数を増やす し、前記⑵のとおり、利用側に複数の熱交換機を設けることも、当業者が通常認識して いる選択肢であり、ペア数を増やすかマルチとするかも含めて、当業者が適宜選択できることであって、ペア数を増やすという選択肢の存在が上記相違点2の判断を左右するものではないから、原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) 設計事項であることの説示の有無について 原告らは、本件審決では、「設計事項」という理由は一つも挙げられていないから、相違点1及び2を設計事項と判断するのは失当であると主張する(前記第3の3〔原告らの主張〕⑴ウ)。 しかし、前記⑴及び⑵のとおり、引用発明において相違点1及び2に係る本願発明の構成を採用することは当業者の通常の創作能力の発揮に すぎないから、設計事項ということができるものであり、本件審決の容易想到性に関する判断(本件審決6〔本件審決24~27頁〕)も、その判断内容に鑑みれば、これと同様に判断したものと認められるから、原告らの上記主張は採用することができない。 イ主引用発明に周知技術を適用する動機付けの有無について (ア) 動機付けの判断の有無について 原告らは、周知事項を根拠に設計事項であるとする場合でも、周知事項であるという理由だけで、容易想到であることの論理付けができるか否かの検討(その周知事項の適用に動機付けがあるか、阻害要因がないか等の検討)を省略してはならないところ、本件審決は、これらの判断をしていないから、その判断は失当であると主張する(前記第3の3〔原 告らの主張〕⑵ア)。 本願発明の容易想到性が肯定されるためには、主引用発明に、副引用例に記載された発明又は周知技術を組み合わせることについて、原則として動機付けがなければならないと解される。しかし、 の主張〕⑵ア)。 本願発明の容易想到性が肯定されるためには、主引用発明に、副引用例に記載された発明又は周知技術を組み合わせることについて、原則として動機付けがなければならないと解される。しかし、主引用発明に、その課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事 項を採用することによって本願発明に至る場合は、そのような設計変更や設計的事項の採用は、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、それについて特段の動機付けがなくても本願発明の容易想到性が認められるというべきである。前記⑴及び⑵のとおり、引用発明に相違点1及び2に係る本願発明の構成を適用することは、当業者の通常の創作能力 の発揮にすぎないから、設計事項ということができるものであり、その適用について特段の動機付けのあることが示されなくても容易想到性は認められる。 また、前記⑴及び⑵のとおり、引用発明が解決しようとする課題は、引用発明の解決手段を採用することで解決し得るものであり、引用発明 において相違点1及び2に係る本願発明の構成を適用することによって引用発明の課題が解決できなくなるような事情はないから、それらの適用に阻害事由はない。本件審決は、阻害要因についての原告らの主張を挙げた上、それらの主張を採用できないことを判断しており(本件審決6⑶イ〔本件審決26、27頁〕)、その判断に誤りがあるとは認められ ない。なお、上記のとおり、相違点1及び2の容易想到性を認めるため には、特段の動機付けを要するものではないが、以下、念のため、原告らの主張について検討する。 (イ) 技術分野の関連性の有無について原告らは、技術分野の関連性を判断するに当たっては、各技術を上位概念化してはならないとし、本願発明はビル用マルチに関するもの 告らの主張について検討する。 (イ) 技術分野の関連性の有無について原告らは、技術分野の関連性を判断するに当たっては、各技術を上位概念化してはならないとし、本願発明はビル用マルチに関するものであ るのに対し、引用発明は、ペア機特有の課題に着目したもので、しかも2シリンダ形回転式圧縮機に係るものであって、その具体的な技術分野は相違しているから、引用発明に他の技術を組み合わせて本願発明を想到するための動機付けは極めて薄いと主張する(前記第3の3〔原告らの主張〕⑵イ)。 しかし、前記3⑵ウのとおり、本願発明はビル用マルチに限定されるものではなく、媒体昇圧機の具体的な構造等は特定されていないし、前記⑵のとおり、引用発明の課題はペア機特有のものではないから、原告らの主張はその前提において採用することができない。 (ウ) 課題、作用・機能の共通性の有無について 原告らは、本願発明は、多数の作用効果を有機的に組み合わせた統合システムの発明であるのに対し、引用発明は、圧縮機の吸込容積を可変とするものにすぎず、その具体的な課題や作用・機能は全く異なっており、この観点からも、引用発明に他の技術を組み合わせて本願発明を想到するための動機付けはないと主張するので(前記第3の3〔原告らの 主張〕⑵ウ)、この点について検討する。 原告らの上記主張の趣旨は必ずしも明確ではないが、容易想到性の判断に当たり、請求項に係る発明と主引用発明との間に具体的な課題や作用・効果の共通性を要するという主張であるとすれば、主引用例の選択の場面では、そもそも請求項に係る発明と主引用発明との間で、解決す べき課題が大きく異なるものでない限り、具体的な課題が共通している 必要はないというべきである。これを本件についてみるに、本 そもそも請求項に係る発明と主引用発明との間で、解決す べき課題が大きく異なるものでない限り、具体的な課題が共通している 必要はないというべきである。これを本件についてみるに、本願発明の課題は、「冷媒が循環する冷媒回路と水(熱搬送媒体)が循環する水回路(媒体回路)とを有しており、熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させて室内の空調を行うチラーシステム(熱搬送システム)において、媒体循環を構成する配管を小径化するとともに、環境負荷の低減及び安全性の 向上を図ること」(段落【0005】)であって、格別新規でもなく、いわば自明の課題というべきものであり、二酸化炭素を熱搬送媒体として採用した引用発明においては解決されているといえるものである。 また、原告らは、本願発明が奏する効果についても主張するので、この点について検討すると、本願発明の、冷房と暖房が可能であるという 効果(段落【0007】及び【0061】)、及び複数の室内の冷房及び暖房をまとめて切換可能であるという効果(段落【0062】)は、本願発明が、冷媒流路切換機及び第1媒体流路切換機を備えることによる効果であるところ、引用発明においても、第1四方弁150と第2四方弁250を備えるから、冷房と暖房が可能であるし、複数の室内空気熱交 換器(相違点2に係る本願発明の構成)を備える場合には、第2四方弁250と連結された室内熱交換機の数が増えるのみであると考えられるから、複数の室内の冷房及び暖房をまとめて切換可能であるという効果も当然に奏されることになる。そして、1次側にR32冷媒(相違点1に係る本願発明の構成)を採用した場合でも、そのような効果を奏する ことに変わりはない。配管小径化、省スペース化・配管施工及びメンテナンス省力化、媒体使用量削減を図るこ にR32冷媒(相違点1に係る本願発明の構成)を採用した場合でも、そのような効果を奏する ことに変わりはない。配管小径化、省スペース化・配管施工及びメンテナンス省力化、媒体使用量削減を図ることができるという本願発明の効果(段落【0008】、【0063】)は、本願発明が熱搬送媒体として二酸化炭素を採用したことによって奏するものであり、これは、引用発明も、熱搬送媒体として二酸化炭素を採用するから、同様の効果を奏する ものである。着火事故を防止できるという本願発明の効果(段落【00 09】及び【0064】)は、室内側に配置される媒体回路に二酸化炭素を用いていることによるものであるが、これは、引用発明も、熱搬送媒体として二酸化炭素を採用するから、同様の効果を奏するものである(甲11の段落【0062】)。また、本願明細書等には、HFC-32(R32)を冷媒として採用する冷媒回路を構成する配管を室内側まで設置 する必要がないとの記載もある(段落【0009】及び【0064】)が、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載及びその記載により認定される本願発明では、冷媒回路が室内側に設置されていないことは特定されていないので、上記の効果は、本願発明の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づくものとは認められない。さらに、技術常識D及びFに照らせ ば、引用発明のプロパンは強燃性であるのに対し、本願発明のR32は微燃性であることから、着火事故を防止できるという効果は、引用発明に比べると本願発明が優れていると解されるが、引用発明において相違点1に係る本願発明の構成を採用することにより、自ずと奏するようになる効果である。環境負荷を低減するという本願発明の効果(段落【0 010】及び【0065】)は、R32と二酸化炭素を採用し 違点1に係る本願発明の構成を採用することにより、自ずと奏するようになる効果である。環境負荷を低減するという本願発明の効果(段落【0 010】及び【0065】)は、R32と二酸化炭素を採用したことによるものであるところ、引用発明において相違点1に係る本願発明の構成を採用することにより自ずと奏されるものである。そうすると、原告らが本願発明の効果として主張するものは、引用発明も奏するものであるか、又は相違点1に係る本願発明の構成を採用することにより自ずと奏 するものであり、引用発明に他の技術を組み合わせて本願発明を想到するための動機付けを否定するに足りるような顕著なものではない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ウ組み合わせの阻害要因について原告らは、プロパンは、冷媒の能力として、寒冷地での使用が困難であ るから、これをR32に代替することには阻害要因があると主張する(前 記第3の3〔原告らの主張〕⑶)。 しかし、本願発明においては、寒冷地での使用の可否など冷房又は暖房の能力に関連する特定はなく、引用文献1にも、引用発明において、特に寒冷地での使用が困難なプロパンのような冷媒を採用することに技術的意味があることをうかがわせるような記載はないから、引用発明のプロパ ンをR32に代替することに阻害事由があるとは認められない。 また、原告らは、着火事故の防止というビル用マルチの決定的課題に反する選択となるので、引用発明をビル用マルチに使用することには阻害要因があると主張する(前記第3の3〔原告らの主張〕⑶)。 しかし、本願発明がビル用マルチに限定されたものでないことは前記3 ⑴イのとおりであるし、仮に本願発明がビル用マルチに適用されるとしても、引用発明で採用されている の3〔原告らの主張〕⑶)。 しかし、本願発明がビル用マルチに限定されたものでないことは前記3 ⑴イのとおりであるし、仮に本願発明がビル用マルチに適用されるとしても、引用発明で採用されている強燃性のプロパンを微燃性のR32に置き換えることは、ビル用マルチに要請される性能に必ずしも反するものではなく、むしろそれにそう面もあるから、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑷ 以上によれば、取消事由3は理由がない。 6 結論原告らは、その他縷々主張するが、それらはいずれも理由がない。 以上によれば、原告らの主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件審決には、これを取り消すべき違法はない。 よって、原告らの請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 中平健 裁判官 都野道紀 (別紙再公表特許公報,別紙審決書写し省略) 別紙空調機と冷凍機、給湯器に関する刊行物の記載 1 乙12(「エコキュート普及促進のため小型化・高効率化を実現」国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、以下「NEDO」という。) のホームページ)(乙19により、平成25年(2013年)に掲載されたものと認められる。)「自動車部品サプライヤーとしての強みを活かした開発世界で初めてCO 、以下「NEDO」という。) のホームページ)(乙19により、平成25年(2013年)に掲載されたものと認められる。)「自動車部品サプライヤーとしての強みを活かした開発世界で初めてCO2 冷媒ヒートポンプ給湯器を作り出したデンソーは、給湯器や家電のメーカーではありません。エンジン制御システムや電子機器、カーエアコ ン、カーナビシステムなどの自動車部品関連事業を中心とする企業でありながら、画期的な給湯システムを作り出すことができたのはなぜでしょうか。 プロジェクトの責任者を務めた空調冷熱技術2部・部長の平輝彦さんによれば、「むしろ自動車関連の仕事をベースとした技術力があるからこそ、エコキュートを実現できたのだと思います」とのこと。 長年、自動車用途で培われたラジエータなどの熱交換器だけでなく、コンプレッサやエジェクタなどカーエアコンの主要な高度技術を広くエコキュートに応用できたというわけです。大気からの熱を吸熱するエパボママレータやその熱で水を温めるための水冷媒熱交換器などにおいて、カーエアコンで使われている材料や加工技術などが大いに役立っています。 平さんは、「冷凍サイクルということでは、カーエアコンと給湯器とで共通するものも多いですし、そもそもデンソーでは自動車とその他の製品を区別せず開発にあたっています。実際には担当製品分野が決まっていますが、デンソーの色々の分野の技術者、開発者が全員同じ建物内で仕事をしているので、情報共有やアイデアの提案などは活発に行われています」と語ります。 例えば、今回のプロジェクトでは、エバポレータ(吸熱を行う熱交換器)にアル ミ扁平管を使っています。通常の給湯器では銅とアルミを使いますが、製品の軽量性や性能を考えればアルミ単体の方が優れて 今回のプロジェクトでは、エバポレータ(吸熱を行う熱交換器)にアル ミ扁平管を使っています。通常の給湯器では銅とアルミを使いますが、製品の軽量性や性能を考えればアルミ単体の方が優れています。その一方で加工が難しく、一般的には採用されてきませんでした。 しかし、カーエアコンのアルミ扁平管を作ってきた技術がベースとしてあるため、デンソーではエコキュートでもアルミ扁平管を採用することができました。そし て、このアルミ微細加工技術がエコキュートの実用化、性能向上に重要な役割を果たしているのです(次項目参照)。」 2 乙22(「ヒートポンプがわかる本」社団法人日本冷凍空調学会、平成19年(2007年)8月31日第1版第2刷発行)8頁 「●ヒートポンプとは(中略)環境温度より高い温度や低い温度の環境を生成する機械をヒートポンプあるいは冷凍機と言います。冷凍機は低温を生成する機械を指すのに対し、ヒートポンプは低温や高温を生成する機械の総称です。」 「●身の回りのヒートポンプ(中略)生活の中のヒートポンプをまとめると、以下のとおりになります。 家庭:冷蔵庫、ルームエアコン、除湿機、ヒートポンプ給湯機」 3 乙23(「ヒートポンプ活用ガイドブック」株式会社電気書院、昭和60年2月10日第1版第1刷発行)263~264頁「熱回収式ルームエアコンの使い方日立製作所ルームエアコン設計部五十川元(中略) ヒートポンプルームエアコンは、定格冷房能力に対する定格暖房能力の割合を 示す冷暖比が10年前の約1.7倍以上にも高暖房力化され、またCOP(成績係数)も改良されて、省エネルギー性が高められている(第1図).ヒートポンプルームエアコンの性能改良に伴って、需 示す冷暖比が10年前の約1.7倍以上にも高暖房力化され、またCOP(成績係数)も改良されて、省エネルギー性が高められている(第1図).ヒートポンプルームエアコンの性能改良に伴って、需要も年々増加し、58冷凍年度では、ルームエアコン全体の出荷台数の約半数をヒートポンプが占めるに至っている(第2図). (中略)ヒートポンプ技術がこの給湯分野に応用されつつあり、冷暖房と給湯の機能を合体させたヒートポンプ冷暖房給湯システム、および給湯機能だけを独立させたヒートポンプ給湯機として製品化されている.家庭用ヒートポンプ給湯の歴史は浅く、生産台数も多くないが、経済性や安全性などから将来に大きな期待が寄せら れている.」なお、「成績係数」とは、「(coefficientofperformance)冷凍機やヒートポンプの入力に対する出力の比。」を意味する。 4 乙24(「わかり易い機械講座冷凍および空気調和」株式会社明現社、昭和6 0年3月30日第1版第12刷)「ではここで冷凍機の構成要素をならべてみよう。 ① 圧縮機(コンプレッサ、compressor)冷媒の蒸気を圧縮して送り出す。冷凍機の心臓ともいえる。 ② 蒸発器(エバポレータ、evaporator) 冷却器ともいい、物体から熱を奪い低温にする。 ③ 凝縮器(コンデンサ、condenser)圧縮された冷媒の蒸気を水または空気で冷却して液体とする。 ④ 膨張弁(エクスパンションバルブ expansionvalve)絞り弁で、高圧冷媒液が通るとき急に広い所に吹き出されるので圧力が低下し、 したがって沸点が下がり、蒸発器で容易に蒸発しやすくなる。冷媒流量も調整で きる。キャピラリチューブという細い管を使うこ 液が通るとき急に広い所に吹き出されるので圧力が低下し、 したがって沸点が下がり、蒸発器で容易に蒸発しやすくなる。冷媒流量も調整で きる。キャピラリチューブという細い管を使うことも多い。 ⑤ 受液器(レシーバー、receiver)凝縮した冷媒液を一時ためておく容器以上のように大きく五つの部分から構成されている。このような構造のものをふつう蒸気圧縮式冷凍機と名付けている。一般に冷凍機といえば、この形式のも のと考えてよい。 さて冷凍機の働きを冷媒の流れにしたがってみると、蒸発器で熱を奪った気体冷媒は、圧縮機で高温・高圧の状態となり、凝縮器で冷やされて、ふたたび液体にかわり、受液器、膨張弁を経て蒸発器に帰ってくる。奪った熱は庫外に設けられた長いパイプの凝縮器で外部に吐き出しているわけである。」(24頁) 「 次に電気冷蔵庫、ガス冷蔵庫、ルームクーラなどについて少しみておこう。 1.3.6 電気冷蔵庫(Electricrefrigerator)冷媒としては、塩化メチル(methylchloride, CH2Cl2), 亜硫酸ガス(sulfurdioxide, SO2)またはフレオンガス(Freon,CHCl2F)などを使って圧縮液化させ、次にこれを膨張弁で急激に膨張気化させる。このとき気化に際して、庫内の熱を吸収し、庫内温度を下げ、氷をつくる。」 (26頁)「1.3.8 クーラ電気冷蔵庫と原理的にはまったく同じで、ただ蒸発器を室内に、凝縮器を室外に置く点が異なる。蒸発器で吸収した室内の熱を室外に置かれた凝縮器で放出する。 (中略) なお、後にのべるように凝縮器における放熱を利用して暖房ができる。蒸発器、凝縮器をそのままにしておき、スイッチ一つで冷媒の流れを反対にすれば、冷 に置かれた凝縮器で放出する。 (中略) なお、後にのべるように凝縮器における放熱を利用して暖房ができる。蒸発器、凝縮器をそのままにしておき、スイッチ一つで冷媒の流れを反対にすれば、冷房側がそのまま暖房側になる。このような便利な冷暖房装置は、ヒートポンプ方式と言われ、広く利用されている。 1.4 冷凍サイクル 1.4.1 冷凍サイクルとは前節では冷凍機はどんな機器から構成され、冷媒がど んな順序で、どんな変化をしながら循環するかをのべた。そしてあたかも水ポンプのように熱を低熱源から高熱源にくみ上げる働きをしていることにもふれた。 冷凍機の冷媒の流れる順序をもう一度繰り返すと下のようになる。 このように、Aから出発して、一まわりしふたたびもとのAにもどる、この循環の輪をサイクル(cycle)と名付ける。」(27頁) 別紙冷媒に関する刊行物の記載 1 甲16(「陳述書」ダイキン工業株式会社空調生産本部商品開発エグゼクティブリーダー主席技師甲、令和4年2月28日)添付資料3(「空調用冷媒の動向」N TTファシリティーズ総研 AnnualReportNo.28 平成29年(2017年)6月)「1. はじめに近年,地球温暖化問題から高GWP(GlobalWarmingPotential:地球温暖化係数)冷媒を巡り,国際的な規制強化の動きが高まっている。今後,代替フロン から低GWP・ノンフロン冷媒への転換がますます進んでいく状況にある。 我国では,機器使用中の冷媒の大規模漏洩の判明などを受けて,これまでのフロン回収・破壊法が改正され,回収・廃棄時だけでなくフロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策が 。 我国では,機器使用中の冷媒の大規模漏洩の判明などを受けて,これまでのフロン回収・破壊法が改正され,回収・廃棄時だけでなくフロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策が取られるように「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(以下「フロン排出抑制法」)が施 行されている。 本稿では近年の空調用冷媒の取り巻く状況とその動向について紹介する。 2. 冷媒の特徴フロン類とはフルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称であり,フロン排出抑制法ではCFC(クロロフルオロカーボン),HCFC(ハイドロクロロフ ルオロカーボン),HFC(ハイドロフルオロカーボン)をフロン類と呼んでいる。 最近では低GWP 冷媒としてHFO(ハイドロフルオロオレフィン)系冷媒を採用した製品の発売が増えている。HFO は水素,フッ素,炭素からなる化合物で,炭素と炭素の結合に二重結合を有するため大気中での分解が早く,GWP が極めて低い。 」 「3. 空調用冷媒の変遷3.1 黎明期,フロン系冷媒の登場空調システムの黎明期における空調用冷媒には炭化水素,アンモニア,二酸化炭素といった自然冷媒が用いられていた。その後,CFC(クロロフルオロカーボン),HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)といったフロン系冷媒が開発さ れた。冷媒として性能に優れ,化学的に安定し不燃,無毒であり安全性が高いこ とから使用用途が拡大していった。 3.2 オゾン層保護 1974 年,CFC が成層圏のオゾン層を破壊することが米国カルフォルニア大学ローランド教 ,無毒であり安全性が高いこ とから使用用途が拡大していった。 3.2 オゾン層保護 1974 年,CFC が成層圏のオゾン層を破壊することが米国カルフォルニア大学ローランド教授らの論文により明らかとなった。この問題から,オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書に基づき,国際的に生産・輸入が規制さ れた。同議定書を受けて,日本では「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(以下「オゾン層保護法」)に基づき,CFC を1995 年に全廃済み,HCFC を2020 年に全廃予定である。 3.3 地球温暖化対策オゾン層破壊問題を受けて,HFC(ハイドロフルオロカーボン)系冷媒が開発 された。一般にこれらを代替フロンと呼ぶ。HFC 系冷媒はオゾン層を破壊する塩素を持たないためオゾン層破壊はしないものの,二酸化炭素の100 倍から1万倍以上の大きな温室効果がある。そのためこれまでの代替フロンに代わる低GWP・ノンフロン冷媒が求められている。 低GWP 冷媒としては,HFC 系の混合冷媒やHFO(ハイドロフルオロオレフ ィン)系冷媒などの研究開発が進んでいる。また,これら以外に自然界に存在する自然冷媒である炭化水素,アンモニア,二酸化炭素などの採用がある。 4. 低GWP 冷媒4.1 次世代冷媒候補図1に製品別の次世代候補を示す。空調用冷媒の低GWP 冷媒候補は多数挙げ られているが,将来的にどの冷媒が主流となっていくのかは見えていない。 (中略)4.2 低GWP 冷媒の課題現在,低GWP 冷媒の課題として低GWP 冷媒の微燃性に対しての安全性の確保が挙げられる。 冷媒の国際規格としてISO 817 があり,2014 年に微燃性(2L)区分を含む冷 題現在,低GWP 冷媒の課題として低GWP 冷媒の微燃性に対しての安全性の確保が挙げられる。 冷媒の国際規格としてISO 817 があり,2014 年に微燃性(2L)区分を含む冷 媒の安全等級の基準が盛り込まれ改訂されている。本改訂では,燃焼性区分が細分化され等級としては4つに分類された(不燃性:Class1,微燃性:Class2L,燃焼性:Class2,強燃性:Class3)(表3)。 CFC 系冷媒は不燃性であったが,低GWP 冷媒として期待されている冷媒には微燃性のものが多い。低GWP 冷媒としては,HFO 系冷媒(R-1234yf,R-1234ze (E)),HFC 系との混合冷媒(R-32)などがあるが,微燃性(2L)区分の冷媒がほとんどである(表4)。このように低GWP 化と可燃性についてはトレードオフの傾向があり,GWP が低くても燃焼性や毒性の問題で一長一短である。」 」 2 甲16添付資料6(「経営戦略を成功に導く知財戦略」特許庁2020年(令和2年)) 「 ダイキン工業株式会社は1924年に大阪で創業。 現在、空調機・フッ素化学製品の世界的メーカーとして、世界150か国以上で事業を展開しており、空調事業は世界トップレベルを誇る。 オープン領域とした地球温暖化への影響を低減する基本技術の特許を無償開放し、グローバルに技術を普及して、市場を拡大するとともに、クローズ領域の競 争力のある特許で競争力を確保して販売台数を拡大。」 「冷媒R32特許の無償開放の経緯同社は、従来の冷媒(代替フロンR 及して、市場を拡大するとともに、クローズ領域の競 争力のある特許で競争力を確保して販売台数を拡大。」 「冷媒R32特許の無償開放の経緯同社は、従来の冷媒(代替フロンR410A)に比べて地球温暖化係数が訳1/3の冷媒R32を使用した空調機を開発し、基本特許・関連特許を世界各国で出願・取得。マーケットを拡大していくために、標準化を進めつつ、特許技術のオープン化を展開してきた(図1)。 図1 冷媒R32特許技術の段階的なオープン化の拡大2011年:温暖化影響の少ない冷媒への切換えに向けた取組を加速するため、新興国においてR32空調機に関する93件の特許を無償開放。 2015年:各国の環境規制の機運の高まりに合わせ、先進国においても「無償 開放」を行うことを発表。 2019年:2011年以降に出願した特許(約180件)に関しても「無償開放」をアナウンス。同社の「特許権不行使の誓約」の中で、事前許可も契約も不要であること、係争等の場合に誓約を取消し得ることなどを明記。」 3 甲16添付資料9は、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)のStandardであり、各種の多数の冷媒について冷媒番号を定めており、その冷媒番号は、国際標準化機構(ISO、InternationalOrganizationforStandardization)のISO817でも採用されている。 4 乙4(「初級標準テキスト冷凍空調技術」公益社団法人日本冷凍空調学会、平成24年(2012年)2月10日第4次改訂)「6.1.1 冷媒とその種類⑴ 冷媒の歴史 冷媒は冷凍機の内部を循環して冷凍サイクルを形成する作動物質で、液体の状 空調学会、平成24年(2012年)2月10日第4次改訂)「6.1.1 冷媒とその種類⑴ 冷媒の歴史 冷媒は冷凍機の内部を循環して冷凍サイクルを形成する作動物質で、液体の状 態で周囲の物質から熱を吸収し低温で蒸発し、物質を冷却する媒体である。 冷凍サイクルで、加熱目的で利用するときはヒートポンプサイクルというが、この場合は加熱が目的なので冷凍という名称は適当でないので、ヒートポンプの作動液体または媒体と呼ぶことがあるが、冷却加熱兼用のヒートポンプでは冷媒という名称をそのまま使っていることが多い。 冷媒には蒸気圧縮冷凍機に用いられるものと、吸収冷凍機に用いられるものがある。ここでは、前者用の冷媒を取り上げる。後者には(中略)がある。 冷媒には多くの種類があり、19世紀から20世紀の前半にかけては、エチルエーテル(中略)アンモニア(中略)プロパンなどいろいろな物質が利用されていたが、これはいずれも毒性や可燃性を有するという欠点があった。しかし、1 930年にフルオロカーボン(フロン)系冷媒が発明されるに及んで、ほとんどほかの冷媒は駆逐されて1990年代まできた。 しかし、このフルオロカーボン系冷媒の中で、塩素を含む冷媒(CFC系、HCFC系)の塩素が、地球の成層圏に存在し大気圏への紫外線の透過を防いでいるオゾン層を破壊していることがわかり、その製造、利用が全面的に禁止される ようになり、さらに塩素を含まないHFC系も地球温暖化に寄与していることから、その利用も見直されようとしている。 表6.1はこれらの冷媒のオゾン破壊や地球温暖化に与える影響を比較したものである。表ではオゾン破壊についてはR11を1とし、地球温暖化については二酸化炭素を1とした相対値で示している。 現在、冷凍 はこれらの冷媒のオゾン破壊や地球温暖化に与える影響を比較したものである。表ではオゾン破壊についてはR11を1とし、地球温暖化については二酸化炭素を1とした相対値で示している。 現在、冷凍技術分野では、このフルオロカーボン系冷媒の代替物質の研究・開発が進められている。 その中には、まだその利用が認められているHCFC・HFC系冷媒(R22,R134aなど)のほかに、冷凍機の古い歴史の中で用いられてきたアンモニアやブタン、プロパン、二酸化炭素などがあり、総称して自然冷媒と呼ばれ、注目 を集めている。 」 5 乙28(「環境問題と冷媒開発-快適な生活環境の持続のために-」山田康夫ダイキン工業株式会社化学と教育67巻7号、2019年(平成31年)) 「 」(316頁、赤枠は被告による。) 「 」(317頁) 6 乙29(「船舶における冷凍冷蔵・空調用冷媒の現状および将来動向」日本マリンエンジニアリング学会誌、第41巻第3号、2006年(平成8年)) 「」(28頁、赤枠は被告による。) 別紙引用文献1(甲11)の記載 1 特許請求の範囲【請求項1】 室外熱交換器を有する1次側冷凍サイクルと、室内熱交換器を有する2次側冷凍サイクルと、この2次側冷凍サイクルに設けられ、2つのシリンダを有するとともに、これら2つのシリンダのうち1つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリ 2次側冷凍サイクルと、この2次側冷凍サイクルに設けられ、2つのシリンダを有するとともに、これら2つのシリンダのうち1つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機と、 上記1次側冷凍サイクルの冷媒と上記2次側冷凍サイクルの冷媒とを熱交換する中間熱交換器とを備えることを特徴とする2元冷凍サイクル装置。 (中略)【請求項3】上記2次側冷凍サイクルの冷媒は、二酸化炭素を主成分とする単一冷媒又は混 合冷媒であることを特徴とする請求項1または2記載の2元冷凍サイクル装置。 【請求項4】上記1次側冷凍サイクルの冷媒は、炭化水素系の冷媒であることを特徴とする請求項3記載の2元冷凍サイクル装置。 2 発明の詳細な説明【技術分野】【0001】本発明は、空気調和機等に用いられる2元式冷凍サイクルに関し、特に効率を高めることができる技術に関する。 【背景技術】 【0002】冷凍装置において、低温度を発生させるために、1次側冷凍サイクルと2次側冷凍サイクルを備えた2元冷凍サイクル装置が用いられることがある。このような2元冷凍サイクル装置に用いられる圧縮機には、インバータ駆動の容量可変形圧縮機を用いたり、圧縮機を複数台設置したりすることが知られている(例えば 特許文献1参照)。 【特許文献1】 特開平4-148160号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0003】 上述した2元冷凍サイクル装置を空気調和機とした場合、次のような問題があった。すなわち、2次側の圧縮機の吸込容積が冷房運転時と暖房運転時とで同じであるため、能力可変幅が圧縮機回転数可変範囲に依存してしまう。このため低負荷や高負 空気調和機とした場合、次のような問題があった。すなわち、2次側の圧縮機の吸込容積が冷房運転時と暖房運転時とで同じであるため、能力可変幅が圧縮機回転数可変範囲に依存してしまう。このため低負荷や高負荷時において、能力可変幅を逸脱し、負荷に応じた運転ができないことや、圧縮機の効率が悪い低回転数での運転となることがあった。これは、一般 的に圧縮機の運転回転数が低いと、シール部からの漏れ量が多くなり、効率が低下するためである。 【0004】そこで本発明は、圧縮機の吸込容積を可変とすることで、冷房運転時と暖房運転時に応じた適正な吸込容積とし効率の高い運転が可能な2元冷凍サイクル装置 を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】【0005】前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の2元冷凍サイクル装置は次のように構成されている。 【0006】 室外熱交換器を有する1次側冷凍サイクルと、室内熱交換器を有する2次側冷凍サイクルと、この2次側冷凍サイクルに設けられ、2つのシリンダを有するとともに、これら2つのシリンダのうち1つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機と、上記1次側冷凍サイクルの冷媒と上記2次側冷凍サイクルの冷媒とを熱交換する中間熱交換器 とを備えることを特徴とする。 【発明の効果】【0007】本発明によれば、圧縮機の吸込容積を可変とすることで、冷房運転時と暖房運転時に応じた適正な吸込容積とすることができ、効率の高い運転が可能となる。 【0008】図1は本発明の第1の実施の形態に係る2元冷凍サイクル装置(空気調和機)1を示す構成図、図2は2元冷凍サイクル装置1に組み込まれた とができ、効率の高い運転が可能となる。 【0008】図1は本発明の第1の実施の形態に係る2元冷凍サイクル装置(空気調和機)1を示す構成図、図2は2元冷凍サイクル装置1に組み込まれた第1圧縮機100及び第2圧縮機200を示す断面図、図3は2元冷凍サイクル装置1の暖房運転時におけるP-h線図である。 (中略)【0010】図1に示すように2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10と、2次側冷凍サイクル20とを備えている。また、2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2 次側冷媒)とが熱交換できるように形成された中間熱交換器300とを備えている。なお、1次側冷媒と2次側冷媒とには、同じ冷媒又は特性の類似した冷媒を用いる。 【0011】1次側冷凍サイクル10は、第1圧縮機100と、この第1圧縮機100の吐 出口に連結された第1四方弁150と、この第1四方弁150に連結された室外 熱交換器160と、この室外熱交換器160に連結された第1膨張機構170と、この第1膨張機構170に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第1中間熱交換器300Aと、この第1中間熱交換器300Aに第1四方弁150を介して連結されたアキュムレータ180とを順次備え、このアキュムレータ180は圧縮機100の吸込口へと連結されている。 【0012】2次側冷凍サイクル20は、第2圧縮機200と、この第2圧縮機200の吐出口から連結された第2四方弁250と、この第2四方弁250に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に 弁250と、この第2四方弁250に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に 連結された室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280とを順次備え、このアキュムレータ280は圧縮機200の吸込口へと連結されている。 【0013】中間熱交換器300は、第1中間熱交換器300Aと第2中間熱交換器300 Bとを備えており、1次側冷媒と2次側冷媒とを熱交換可能に構成されている。 (中略)【0026】また、第1圧縮機100と第1四方弁150とを連結する吐出管118の中途部から分岐して、第2シリンダ室114bに接続される吸込管116bの中途部 に合流する分岐管Pが設けられている。この分岐管Pの中途部には、第1開閉弁128が設けられている。吸込管116bで分岐管Pの分岐部よりも上流側に第2開閉弁129が設けられている。第1開閉弁128と第2開閉弁129とは、それぞれ電磁弁であって、制御部140からの電気信号に応じて開閉制御されるような構成となっている。 【0027】 このように、第1圧縮機100及び第2圧縮機200は、インバータ130で駆動される2シリンダ形回転式圧縮機であり、必要時にシリンダ108Bに高圧冷媒を導入し、ベーン115b前後の圧力差を無くし第2シリンダ108Bのみ非圧縮運転ができるようになっている。 【0028】 このように構成された2元冷凍サイクル装置1では、次のようにして通常運転と片側シリンダ非圧縮運転(能力半減運転)との切換えを行う。すなわち、通常運転を行う場合は、制御部140が、圧力切換え機構K このように構成された2元冷凍サイクル装置1では、次のようにして通常運転と片側シリンダ非圧縮運転(能力半減運転)との切換えを行う。すなわち、通常運転を行う場合は、制御部140が、圧力切換え機構Kの第1開閉弁128を閉成し、第2の開放弁129を開放するよう制御する。そして、制御部140はインバータ130を介して電動機部103に運転信号を送る。回転軸104が回転 駆動され、偏心ローラ113a、113bは第1、第2シリンダ室114a、114b内で偏心回転を行う。 (中略)【0032】次に、第1シリンダ108Aは圧縮運転で、第2シリンダ108Bのみ非圧縮 運転を行う片側シリンダ非圧縮運転を行う場合について説明する。なお、片側シリンダ非圧縮運転は、冷房運転又は暖房運転に応じて第1圧縮機100及び第2圧縮機200の一方のみにおいて行われ、他方は上述した通常運転を行う。第2シリンダ108Bの非圧縮運転は次のように行う。すなわち、制御部140が圧力切換え機構Kの第1開閉弁128を開放し、第2開閉弁129を閉成するよう に切換え設定する。第1シリンダ室114aにおいては上述したように通常の圧縮作用がなされ、密閉ケース101内に吐出された高圧ガスが充満してケース内高圧となる。吐出管118から吐出される高圧ガスの一部が分岐管Pに分流され、開放する第1開閉弁128と吸込み管116bを介して第2シリンダ室114b内に導入される。 【0033】 第2シリンダ室114bが吐出圧(高圧)雰囲気にある一方で、ベーン室122bはケース内高圧と同一の状況下にあることには変わりがない。このため、ベーン115bは前後端部とも高圧の影響を受けていて、前後端部において差圧が存在しない。ベーン115bはローラ113b外周面か 2bはケース内高圧と同一の状況下にあることには変わりがない。このため、ベーン115bは前後端部とも高圧の影響を受けていて、前後端部において差圧が存在しない。ベーン115bはローラ113b外周面から離間した位置で移動することなく停止状態を保持し、第2シリンダ室114bでの圧縮作用は行われな い。結局、第1シリンダ室114aでの圧縮作用のみが有効であり、能力を半減した運転がなされることになる。 (中略)【0036】2元冷凍サイクル装置1の冷房運転時は図1中矢印Cのように、まず1次側冷 凍サイクル10では、上述したように第1圧縮機100で圧縮された1次側冷媒は、第1圧縮機100の吐出管118から第1四方弁150、室外熱交換器160、第1膨張装置170及び第1中間熱交換器300Aを順次通過し、第1四方弁150、第1アキュムレータ180を介して第1圧縮機100へと戻る。 【0037】 同様に、2次側冷凍サイクル20では、第2圧縮機200で圧縮された2次側冷媒は、第2圧縮機200の吐出管118から第2四方弁250、第2中間熱交換器300B、第2膨張装置260及び室内熱交換器270を順次通過し、第2四方弁250、第2アキュムレータ280を介して第2圧縮機200へと戻る。 このとき、1次側冷媒は室外熱交換器160で凝縮され、第1中間熱交換器30 0Aで蒸発し、2次側冷媒は第2中間熱交換器300Bにおいて放熱し冷熱を得て、室内熱交換器270によって室内の熱を吸収し室内空気を冷却する。 【0038】2元冷凍サイクル装置1の暖房運転時は第1四方弁150と、第2四方弁250とを切換える。これにより、図1中矢印Hのように、冷媒の流れが冷房運転時 と逆になり、1次側冷媒の流れは1次側冷凍サイクル10では、第1圧縮機10 房運転時は第1四方弁150と、第2四方弁250とを切換える。これにより、図1中矢印Hのように、冷媒の流れが冷房運転時 と逆になり、1次側冷媒の流れは1次側冷凍サイクル10では、第1圧縮機10 0の吐出管118から第1四方弁150、第1中間熱交換器300A、第1膨張装置170及び室外熱交換器160を順次通過し、第1四方弁150、第1アキュムレータ180を介して第1圧縮機100へと戻る。 【0039】同様に2次側冷凍サイクル20では、第2圧縮機200で圧縮された2次側冷 媒が、第2圧縮機200の吐出管118から第2四方弁250、室内熱交換器270、第2膨張装置260及び第2中間熱交換器300Bを順次通過し、第2四方弁250、第2アキュムレータ280を介して第1圧縮機200へと戻る。 【0040】図3は冷凍サイクル1の暖房運転時における冷媒の状態を示しており、図3中 実線Mは冷凍圧縮サイクル行程の1次側冷凍サイクル10の冷媒のP―hの変化を示し、aは第1圧縮機100の入口(吸込み)部、bは第1中間熱交換器300A、cは第1膨張装置170の入口部、dは室外熱交換器160の入口部の入口部の冷媒の状態を示している。また、図3中破線Nは冷凍圧縮サイクル行程の2次側冷凍サイクル20の冷媒のP―hの変化を示し、eは第2圧縮機200の 入口(吸込み)部、fは室内熱交換器270の入口部、gは第2膨張装置26の入口部、hは第2中間熱交換器300Bの入口部の冷媒の状態を示している。 【0041】1次側冷媒は、第1中間熱交換器300Aで凝縮され、室外熱交換気160で蒸発する。2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め、第 2中間熱交換器300Bによって蒸発する。このとき図3に示すように、中間 交換器300Aで凝縮され、室外熱交換気160で蒸発する。2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め、第 2中間熱交換器300Bによって蒸発する。このとき図3に示すように、中間熱交換器300では、1次側冷凍サイクル10の凝縮と2次側冷凍サイクル20の蒸発とでの温度差をとって熱交換させるため、1次側冷媒の冷凍サイクル行程と2次側冷媒の冷凍サイクル行程とが交差する二段構造となる。 (中略) 【0052】 図4は2元冷凍サイクル装置1の変形例に係る冷房運転時のT-h線図、図5は本変形例の暖房運転時のT-h線図、図6は本変形例の1次側冷凍サイクル10と2次側冷凍サイクル20の熱交換時の凝縮温度と全体のサイクル効率(COP)を示したグラフ、図7は本変形例の二酸化炭素冷媒のP-h線図上に冷房運転と暖房運転における二酸化炭素の冷媒状態を示したグラフである。 【0053】本変形例の2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10に使用する1次側冷媒をHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷凍サイクル20に使用する2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いたものである。 (中略) 【0055】2元冷凍サイクル装置1は、2次側冷凍サイクル20の室内熱交換器(蒸発)270で室内空気から吸熱して室内を冷却する。室内空気から吸熱した2次側冷媒は、中間熱交換器300の1次側冷凍サイクル10の第1中間熱交換器(蒸発)300Aと2次側冷凍サイクル20の第2中間熱交換器(凝縮)300Bとで熱 交換し、冷媒の熱を2次側冷媒から1次側冷媒に移動させる。1次側冷媒の熱を1次側冷凍サイクル10の室外熱交換器(凝縮)160で室外空気へ放熱させる。 【0056】図5は、本変形例の2元冷凍サイクル装置1の 媒の熱を2次側冷媒から1次側冷媒に移動させる。1次側冷媒の熱を1次側冷凍サイクル10の室外熱交換器(凝縮)160で室外空気へ放熱させる。 【0056】図5は、本変形例の2元冷凍サイクル装置1の暖房運転時における、図5中破線Qは1次側冷媒であるプロパンのT-hの変化、図5中実線Rは2次側冷媒で ある二酸化炭素のT-hの変化を示したグラフである。 【0057】2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の室外熱交換器(蒸発)160にて室外空気から吸熱し、中間熱交換器300の1次側冷凍サイクル10の第1中間熱交換器(凝縮)300Aと2次側冷凍サイクル20の第2中間熱交換 器(蒸発)300Bとで熱交換し、冷媒の熱を1次側冷媒から2次側冷媒へ移動さ せる。そして、2次側冷媒の熱を2次側冷凍サイクル20の室内熱交換器270により室内を暖房する。 【0058】図4、5に示すように、2次側冷媒として用いる二酸化炭素はサイクル効率が低いため、2次側冷凍サイクル20の冷媒に使用する場合は、1次側冷凍サイク ル10で、高圧側と低圧側の温度差を可能な限り取り、2次側冷凍サイクルは圧力差を極力小さくすることが消費電力量の点で望ましい。 【0059】図6は、1次側冷凍サイクル10と2次側冷凍サイクル20との熱交換時の凝縮温度と全体のサイクル効率(COP)を示したグラフである。冷房運転時は、 2次側冷凍サイクル20の二酸化炭素の凝縮温度を下げるほど、暖房運転時は1次側冷凍サイクル10のプロパンの凝縮温度を上げるほど効率が高くなる。 【0060】図7は、二酸化炭素のP-h線図上に、冷房運転時及び暖房運転時における二酸化炭素の冷媒状態を示したグラフである。図7に示すように、冷房運転時と暖 房運転時で 効率が高くなる。 【0060】図7は、二酸化炭素のP-h線図上に、冷房運転時及び暖房運転時における二酸化炭素の冷媒状態を示したグラフである。図7に示すように、冷房運転時と暖 房運転時で、作動圧力が極端に変わることが分かる。他の冷媒は圧力に大きな差があると、コンプレッサ吸込における冷媒の密度の差が大きくなる。しかし、二酸化炭素冷媒の場合は、暖房運転時に超臨界サイクルになり、エンタルピ差が冷房運転時に比べて極端に小さくなる。このため、上述した第1の実施の形態の2元冷凍サイクル装置1とは異なり、吸込み圧力が低く、冷媒の比体積の大きな(冷 媒密度の小さい)冷房運転の方が暖房運転に比べて、能力が大きすぎることになる。 【0061】したがって、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能な2シリンダ形回転式圧縮機(例えば第1圧縮機100、第2圧縮機200)を備えること により、冷房運転時や低負荷時には1つのシリンダでの運転、暖房運転時や高負 荷時には2シリンダでの運転とすることができ、適用能力範囲を広げることが可能となる。 【0062】本実施例の2元冷凍サイクル装置1によれば1次側冷媒に炭化水素(HC)系の冷媒を用い、2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いると、使用冷媒が自然界に存 在する冷媒であることから、代替フロンを用いる必要がなく、地球温暖化への冷媒自体の直接効果を減少することが可能である。このため、冷媒の漏れなどによる温暖化防止に有効となる。また、室内側に使用する冷媒が二酸化炭素冷媒であるため、室内に可燃性冷媒が漏れることもなく、安全に使用可能である。 【0063】 なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例で2次側冷媒に二酸化炭素を用いるとしたが 室内に可燃性冷媒が漏れることもなく、安全に使用可能である。 【0063】 なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例で2次側冷媒に二酸化炭素を用いるとしたが、この二酸化炭素冷媒は単一冷媒又は混合冷媒のどちらでも適用できる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。 【図面の簡単な説明】 【0064】【図1】本発明の第1の実施の形態に係る2元冷凍サイクル装置を示す構成図。 【図2】同2元冷凍サイクル装置に組み込まれた第1圧縮機及び第2圧縮機を示す断面図。 (中略) 【図4】同2元冷凍サイクル装置の変形例における冷房運転時のT-h線図。 【図5】本変形例の暖房運転時のT-h線図。 (中略)【図7】本変形例の二酸化炭素冷媒のP-h線図上に冷房運転と暖房運転における二酸化炭素の冷媒状態を示したグラフ。 【符号の説明】 【0065】1…2元冷凍サイクル装置、10…1次側冷凍サイクル、20…2次側冷凍サイクル、100…第1圧縮機、150…第1四方弁、160…室外熱交換器、170…第1膨張装置、180…第1アキュムレータ、200…第2圧縮機、250…第2四方弁、260…第2膨張弁、270…室内熱交換器、280…第2アキ ュムレータ、300…中間熱交換器、300A…第1中間熱交換器、300B…第2中間熱交換器、E…室外構成、I…室内構成、C…冷房運転時の冷媒の流れ、H…暖房運転時の冷媒の流れ。 3 図面 【図1】 【図2】 【図2】 (中略) 【図4】 【図5】 【図6】 (以下略) 別紙引用文献3(甲13)の記載 1 発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】本発明は、空気調和装置、特に、熱源側回路を循環する冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する回路を有する空気調和装置に関する。 【0002】近年の温室効果ガスの大幅削減の要求に関して、空気調和装置の分野において は、フロン等の冷媒量の削減が要求されている。これに対して、二次回路方式の空気調和装置の採用が検討されている。ここで、二次回路方式の空気調和装置とは、熱源側回路を循環する冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する利用側回路を有しており、利用側回路が有する利用側熱交換器における熱搬送媒体の熱交換によって空調を行うものである。すなわち、二次回路方式を採用することで、装 置全体で冷媒が循環する回路部分(ここでは、熱源側回路)を小さくして、冷媒量の削減を図ることが検討されている。 【0003】また、二次回路方式の空気調和装置として、特許文献1(特開2000-161724号公報)には、利用側回路を循環する熱搬送媒体の熱搬送能力を向上さ せるために、液 ている。 【0003】また、二次回路方式の空気調和装置として、特許文献1(特開2000-161724号公報)には、利用側回路を循環する熱搬送媒体の熱搬送能力を向上さ せるために、液体-固体相転移に伴って得られる潜熱を利用する物質を含むスラリーを熱搬送媒体として使用した構成が提案されている。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】 特許文献1の構成では、利用側回路を構成する利用側熱交換器に熱搬送媒体が 流れることになる。このため、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットを熱搬送媒体用に開発する必要がある。ところが、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットの開発にあたっては、冷媒が循環するだけの一次回路方式の空気調和装置において使用されている利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットの構成を流用することが難しい。 【0005】本発明の課題は、熱源側回路を循環する冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する回路を有する空気調和装置において、搬送用媒体の利用によって冷媒量の削減の要求を満たしつつ、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットを容易に開発できるようにすることにある。 【課題を解決するための手段】【0006】第1の観点にかかる空気調和装置は、熱源側冷媒が循環する熱源側回路と、熱源側冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する搬送側回路と、熱搬送媒体と熱交換を行う利用側冷媒が循環する利用側回路とを有している。そして、利用側回路 は、利用側熱交換器を有しており、熱源側回路からの熱は、搬送側回路を通じて利用側回路に搬送され、利用側熱交換器における利用側冷媒の熱交換によって空調を行うようになっ いる。そして、利用側回路 は、利用側熱交換器を有しており、熱源側回路からの熱は、搬送側回路を通じて利用側回路に搬送され、利用側熱交換器における利用側冷媒の熱交換によって空調を行うようになっており、熱搬送媒体は、電子のもつ自由度に関する相転移である電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーである。 【0007】 ここでは、二次回路方式における利用側回路を、熱源側冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する搬送側回路、及び、熱搬送媒体と熱交換を行う利用側冷媒が循環する利用側回路によって構成するとともに、熱搬送媒体として電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーを使用している。ここで、熱源側回路、搬送側回路及び利用側回路という3つの回路を有する構成を三次回路方式 と呼ぶことにする。また、電子相転移とは、特許文献2(特開2010-163 510号公報)にも記載されているように、電子のもつ自由度である、軌道の自由度、又は、電荷・スピン・軌道の自由度のうち少なくとも2つ以上を含む複自由度の相転移のことである。そして、この電子相転移は、固体状態で発生する相転移(固体-固体相転移)であり、相転移に伴って潜熱を得ることができ、相転移時の体積変化が固体-液体相転移に比べて小さいという特性がある。そして、 ここでは、このような電子相転移を行う物質である電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体としているのである。 【0008】このため、ここでは、熱源側回路を循環する熱源側冷媒と搬送側回路を循環する熱搬送媒体とが熱交換することによって、熱搬送媒体において液媒体の温度変 化及び電子相転移物質の相転移が発生する。そして、搬送側回路を循環する熱搬送媒 循環する熱源側冷媒と搬送側回路を循環する熱搬送媒体とが熱交換することによって、熱搬送媒体において液媒体の温度変 化及び電子相転移物質の相転移が発生する。そして、搬送側回路を循環する熱搬送媒体と利用側回路を循環する利用側冷媒とが熱交換することによって、熱搬送媒体において液媒体の温度変化及び電子相転移物質の相転移(但し、熱源側回路を循環する熱源側冷媒と搬送側回路を循環する熱搬送媒体との熱交換とは逆の温度変化及び相転移)が発生する。そして、利用側熱交換器における利用側冷媒の 熱交換によって、空調が行われることになる。すなわち、ここでは、電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して、熱源側回路から搬送側回路への熱搬送、そして、搬送側回路から利用側回路への熱搬送が行われる。しかも、電子相転移時における電子相転移物質の体積変化が小さいため、搬送側回路における圧力変化も抑えられる。また、このとき、利用側回路を構成する利用側熱交換器に利用 側冷媒が流れることになるため、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットを熱搬送媒体用に開発する必要がない。そして、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットの開発にあたっては、利用側冷媒のような冷媒が循環するだけの一次回路方式の空気調和装置において使用されている利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットの構成を流用するこ とができる。しかも、利用側回路と同様に冷媒が循環する熱源側回路との共通化 も可能になり、このような共通化の観点では、特に、熱源側冷媒と利用側冷媒とを同じ冷媒にすることが好ましい。 【0009】これにより、ここでは、搬送用媒体の利用によって冷媒量の削減の要求を満たしつつ、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられ 源側冷媒と利用側冷媒とを同じ冷媒にすることが好ましい。 【0009】これにより、ここでは、搬送用媒体の利用によって冷媒量の削減の要求を満たしつつ、利用側熱交換器や利用側熱交換器が設けられる利用ユニットを容易に開 発できるようにすることができる。 (中略)【0030】以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実 施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。 【0031】(1)構成図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。次に、空気調和装置1の全体構成について説明する。 【0032】<全体>空気調和装置1は、回路構成の観点から見ると、熱源側冷媒が循環する熱源側回路20と、熱源側冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する搬送側回路40と、熱搬送媒体と熱交換を行う利用側冷媒が循環する利用側回路50とを有する装置 である。そして、空気調和装置1は、利用側回路50が、利用側熱交換器42a、42bを有しており、熱源側回路20からの熱が、搬送側回路40を通じて利用側回路50に搬送され、利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の熱交換によって空調を行うようになっている。ここで、熱源側回路20は、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら熱源側冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式) の冷凍サイクルを構成している。また、搬送側回路40は、熱源側回路20から 得た熱(冷熱や温熱)を利用側回路50に搬送しながら熱搬送媒体が循環する熱搬送サイクルを構成している。さらに、利用側回路50は、搬送側回路40から得た熱(冷熱や温熱)を使 20から 得た熱(冷熱や温熱)を利用側回路50に搬送しながら熱搬送媒体が循環する熱搬送サイクルを構成している。さらに、利用側回路50は、搬送側回路40から得た熱(冷熱や温熱)を使用しつつ、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら利用側冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式)の冷凍サイクルを構成している。 このように、空気調和装置1では、三次回路方式が採用されている。ここで、熱 源側冷媒と利用側冷媒とは異なる冷媒であってもよいし同じ冷媒であってもよいが、熱源側回路20と利用側回路50との共通化の観点では、同じ冷媒にすることが好ましい。 【0033】また、空気調和装置1は、ユニット構成の観点から見ると、主として、熱源ユ ニット2と、中間ユニット3と、利用ユニット4a、4bとが接続されることによって構成されている。ここで、熱源ユニット2は、ビル等の建物外に設けられており、中間ユニット3及び利用ユニット4a、4bは、その建物内に設けられている。そして、熱源ユニット2と中間ユニット3とは、熱搬送媒体が流れる送り側熱搬送媒体連絡管6及び戻り側熱搬送媒体連絡管7を介して接続されている。 また、中間ユニット3と利用ユニット4a、4bとは、利用側冷媒が流れる液利用側冷媒連絡管8及びガス利用側冷媒連絡管9を介して接続されている。すなわち、空気調和装置1では、熱源側冷媒が循環する熱源側回路20が熱源ユニット2に設けられており、熱搬送媒体が循環する搬送側回路40が送り側熱搬送媒体連絡管6及び戻り側熱搬送媒体連絡管7を介して熱源ユニット2及び中間ユニッ ト3にまたがって設けられている。また、空気調和装置1では、利用側冷媒が循環する利用側回路50が液利用側冷媒連絡管8及びガス利用側冷媒連絡管9を介して中間ユニット3及び利用 2及び中間ユニッ ト3にまたがって設けられている。また、空気調和装置1では、利用側冷媒が循環する利用側回路50が液利用側冷媒連絡管8及びガス利用側冷媒連絡管9を介して中間ユニット3及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられている。 このように、空気調和装置1では、互いに離れた場所に設置される室外側(ここでは、熱源ユニット2)と室内側(ここでは、中間ユニット3及び利用ユニット 4a、4b)との接続を、熱搬送媒体が流れる熱搬送媒体連絡管6、7を介して 行うようにしており、熱源側冷媒が循環する熱源側回路20が室外側(ここでは、熱源ユニット2)だけに収まり、かつ、利用側冷媒が循環する利用側回路50が室内側(ここでは、中間ユニット3及び利用ユニット4a、4b)だけに収まるようにしている。 【0034】 また、ここでは、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられている。また、空調として冷房及び暖房を行うことができるように、熱源側回路20における熱源側冷媒の流れ方向を切り換えるための熱源側冷媒切換機構23が熱源側回路20に設けられており、利用側回路50における利用側冷媒の流れ方向を切り換えるための 利用側冷媒切換機構33が利用側回路50に設けられている。ここで、冷房は、熱源側回路20から搬送側回路40を通じて利用側回路50に冷熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の蒸発によって冷熱を利用する空調である。また、暖房は、熱源側回路20から搬送側回路40を通じて利用側回路50に温熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の放熱 によって温熱を利用する空調である。尚、利用ユニットの台数は、2台に限定されるもの から搬送側回路40を通じて利用側回路50に温熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の放熱 によって温熱を利用する空調である。尚、利用ユニットの台数は、2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。次に、空気調和装置1の詳細構成について説明する。 【0035】<熱源ユニット> 熱源ユニット2は、上記のように、室外に設置されており、 搬送側回路40の一部及び熱源側回路20を構成している。熱源ユニット2は、主として、熱源側圧縮機21と、熱源側冷媒切換機構23と、熱源側熱交換器24と、熱源側膨張機構25と、媒体-熱源側冷媒熱交換器26と、循環ポンプ29とを有している。そして、熱源側圧縮機21、熱源側冷媒切換機構23、熱源側熱交換器24、熱源側膨張機構25及び媒体-熱源側冷媒熱交換器26が接続 されることによって構成された熱源側冷媒が循環する回路が熱源側回路20であ る。また、媒体-熱源側冷媒熱交換器26及び循環ポンプ29が熱搬送媒体連絡管6、7を介して媒体-利用側冷媒熱交換器34に接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が搬送側回路40である。 【0036】熱源側圧縮機21は、冷凍サイクルの低圧の熱源側冷媒を高圧になるまで昇圧 して熱源側冷媒を循環させるための機器である。ここでは、熱源側圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数(回転数)制御可能な熱源側圧縮機用モータ22によって回転駆動する構造となっている。すなわち、熱源側圧縮機21は、周波数(回転数)を変化させることで運転容量を制御することが可能に構成されている。熱源側圧縮機21 は、吸入側及び吐出側がともに熱源側冷媒切換機構23に接続され 。すなわち、熱源側圧縮機21は、周波数(回転数)を変化させることで運転容量を制御することが可能に構成されている。熱源側圧縮機21 は、吸入側及び吐出側がともに熱源側冷媒切換機構23に接続されている。 【0037】熱源側冷媒切換機構23は、熱源側回路20における熱源側冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。熱源側冷媒切換機構23は、冷房時には、熱源側熱交換器24を熱源側圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒の放熱器とし て機能させ、かつ、媒体-熱源側冷媒熱交換器26を熱源側熱交換器24において放熱した熱源側冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、熱源側冷媒切換機構23は、冷房時には、熱源側圧縮機21の吐出側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の実線を参照)。しかも、熱源側圧縮機21の吸入側と媒体-熱源側冷媒 熱交換器26のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の実線を参照)。また、熱源側冷媒切換機構23は、暖房時には、熱源側熱交換器24を媒体-熱源側冷媒熱交換器26において放熱した熱源側冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、媒体-熱源側冷媒熱交換器26を圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒の放熱器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。すなわ ち、熱源側冷媒切換機構23は、暖房時には、熱源側圧縮機21の吐出側と媒体 -熱源側冷媒熱交換器26のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の破線を参照)。しかも、熱源側圧縮機21の吸入側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の破線を参照)。尚、ここでは、熱源側冷媒切換機構23として四路切換弁が使用されているが、 )。しかも、熱源側圧縮機21の吸入側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の破線を参照)。尚、ここでは、熱源側冷媒切換機構23として四路切換弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にすること等によって、四路切換弁と同様の機能を果た せるように構成してもよい。 【0038】熱源側熱交換器24は、冷房時には室外空気を冷却源として熱源側圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒の放熱器として機能し、暖房時には室外空気を加熱源として熱源側膨張機構25において減圧された熱源側冷媒の蒸発器として機 能する熱交換器である。熱源側熱交換器24は、液側が熱源側膨張機構25に接続されており、ガス側が熱源側冷媒切換機構23に接続されている。ここで、熱源ユニット2は、熱源ユニット2内に室外空気を吸入して、熱源側熱交換器24において熱源側冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための室外ファン27を有している。すなわち、熱源ユニット2は、熱源側熱交換器24を流れる熱源 側冷媒の冷却源又は加熱源としての室外空気を熱源側熱交換器24に供給するファンとして、室外ファン27を有している。ここでは、室外ファン27として、室外ファン用モータ28によって駆動されるプロペラファン等が使用されている。 【0039】熱源側膨張機構25は、冷房時には熱源側熱交換器24において放熱した冷凍 サイクルの高圧の熱源側冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧し、暖房時には媒体-熱源側冷媒熱交換器26において放熱した冷凍サイクルの高圧の熱源側冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧するための機構である。熱源側膨張機構25は、一端が熱源側熱交換器24の液側に接続されており、他端が媒体-熱源側冷媒熱交換器26のガス側に接続されている。こ の熱源側冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧するための機構である。熱源側膨張機構25は、一端が熱源側熱交換器24の液側に接続されており、他端が媒体-熱源側冷媒熱交換器26のガス側に接続されている。ここでは、熱源側膨張機構25として電動 膨張弁が使用されている。 【0040】媒体-熱源側冷媒熱交換器26は、熱源側回路20を循環する熱源側冷媒と搬送側回路40を循環する熱搬送媒体との熱交換を行う熱交換器である。媒体-熱源側冷媒熱交換器26は、冷房時には、熱源側膨張機構25において減圧された熱源側冷媒と媒体-利用側冷媒熱交換器34において吸熱した熱搬送媒体との熱 交換によって、熱源側冷媒の蒸発器として、かつ、熱搬送媒体の放熱器として機能する。また、媒体-熱源側冷媒熱交換器26は、暖房時には、熱源側圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒と媒体-利用側冷媒熱交換器34において放熱した熱搬送媒体との熱交換によって、熱源側冷媒の放熱器として、かつ、熱搬送媒体の吸熱器として機能する。媒体-熱源側冷媒熱交換器26の熱源側冷媒が流 れる部分は、液側が熱源側膨張機構25に接続されており、ガス側が熱源側冷媒切換機構23に接続されている。また、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されている。このように、熱源側回路20と搬送側回路40とが、媒体-熱源側冷媒熱交換器26を有している。 【0041】循環ポンプ29は、熱搬送媒体を昇圧して熱搬送媒体を循環させるための機器である。ここでは、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等のポンプ要素をポンプ用モータ30によって駆動する構造となっている。循環ポンプ29は、吸入側が戻 送媒体を昇圧して熱搬送媒体を循環させるための機器である。ここでは、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等のポンプ要素をポンプ用モータ30によって駆動する構造となっている。循環ポンプ29は、吸入側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されており、吐出側が媒体-熱源側冷媒熱交換 器26の入口側に接続されている。尚、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等の機械式のポンプに限定されるものではなく、特許文献1のような加減圧動作による構成を使用してもよい。また、循環ポンプ29の接続位置は、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の入口側に限定されるものではなく、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の出口側に接続されていてもよい。この場合には、媒体-熱源側冷媒熱交換 器26の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続 され、出口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されることになる。 【0042】<中間ユニット>中間ユニット3は、上記のように、室内に設置されており、搬送側回路40の一部及び利用側回路50の一部を構成している。中間ユニット3は、主として、 媒体-利用側冷媒熱交換器34と、利用側圧縮機31と、利用側冷媒切換機構33とを有している。そして、媒体-利用側冷媒熱交換器34が熱搬送媒体連絡管6、7を介して循環ポンプ29及び媒体-熱源側冷媒熱交換器26に接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が搬送側回路40である。また、利用側圧縮機31、利用側冷媒切換機構33及び媒体-利用側冷媒熱交換器 34が利用側冷媒連絡管8、9を介して利用側流量調節機構4a、41b及び利用側熱交換器42a、42bに接続されることによって構成された利用側冷媒が循環する回路が利用側回路50である。 【0043】媒体-利用側 絡管8、9を介して利用側流量調節機構4a、41b及び利用側熱交換器42a、42bに接続されることによって構成された利用側冷媒が循環する回路が利用側回路50である。 【0043】媒体-利用側冷媒熱交換器34は、搬送側回路40を循環する熱搬送媒体と利 用側回路50を循環する利用側冷媒との熱交換を行う熱交換器である。媒体-利用側冷媒熱交換器34は、冷房時には、媒体-熱源側冷媒熱交換器26において放熱した熱搬送媒体と利用側圧縮機31において昇圧された利用側冷媒との熱交換によって、熱搬送媒体の吸熱器として、かつ、利用側冷媒の放熱器として機能する。また、媒体-利用側冷媒熱交換器34は、暖房時には、媒体-熱源側冷媒 熱交換器26において吸熱した熱搬送媒体と利用側流量調節機構41a、41bにおいて減圧された利用側冷媒との熱交換によって、熱搬送媒体の放熱器として、かつ、利用側冷媒の蒸発器として機能する。媒体-利用側冷媒熱交換器34の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されており、出口側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されている。また、媒体-利用側冷媒 熱交換器34の利用側冷媒が流れる部分は、液側が液利用側冷媒連絡管8に接続 されており、ガス側が利用側冷媒切換機構33に接続されている。このように、搬送側回路40と利用側回路50とが、媒体-利用側冷媒熱交換器34を有している。 【0044】利用側圧縮機31は、冷凍サイクルの低圧の利用側冷媒を高圧になるまで昇圧 して利用側冷媒を循環させるための機器である。ここでは、利用側圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数(回転数)制御可能な利用側圧縮機用モータ32によって回転駆動する構 ための機器である。ここでは、利用側圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数(回転数)制御可能な利用側圧縮機用モータ32によって回転駆動する構造となっている。すなわち、利用側圧縮機31は、周波数(回転数)を変化させることで運転容量を制御することが可能に構成されている。利用側圧縮機31 は、吸入側及び吐出側がともに利用側冷媒切換機構33に接続されている。 【0045】利用側冷媒切換機構33は、利用側回路50における利用側冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。利用側冷媒切換機構33は、冷房時には、媒体-利用側熱交換器34を利用側圧縮機31において昇圧された利用側冷媒の放熱 器として機能させ、かつ、利用側熱交換器42a、42bを媒体-利用側熱交換器34において放熱した利用側冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、利用側冷媒切換機構33は、冷房時には、利用側圧縮機31の吐出側と媒体-熱源側冷媒熱交換器34のガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の実線を参照)。しかも、利用側圧縮機31の吸 入側と利用側熱交換器42a、42bのガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の実線を参照)。また、利用側冷媒切換機構33は、暖房時には、媒体-利用側熱交換器34を利用側熱交換器42a、42bにおいて放熱した利用側冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、利用側熱交換器42a、42bを利用側圧縮機31において昇圧された利用側冷媒の放熱器として機能させる暖房サイ クル状態への切り換えを行う。すなわち、利用側冷媒切換機構33は、暖房時に は、利用側圧縮機31の吐出側と利用側熱交換器42a、42bのガス側とが接続 して機能させる暖房サイ クル状態への切り換えを行う。すなわち、利用側冷媒切換機構33は、暖房時に は、利用側圧縮機31の吐出側と利用側熱交換器42a、42bのガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の破線を参照)。しかも、利用側圧縮機31の吸入側と媒体-利用側冷媒熱交換器34のガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の破線を参照)。尚、ここでは、利用側冷媒切換機構33として四路切換弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にする こと等によって、四路切換弁と同様の機能を果たせるように構成してもよい。 【0046】<利用ユニット>利用ユニット4a、4bは、上記のように、室内に設置されており、利用側回路50の一部を構成している。利用ユニット4aは、主として、利用側流量調節 機構41aと、利用側熱交換器42aとを有している。また、利用ユニット4aと同様に、利用ユニット4bは、主として、利用側流量調節機構41bと、利用側熱交換器42bとを有している。そして、利用側流量調節機構41a、41b及び利用側熱交換器42a、42bが利用側冷媒連絡管8、9を介して媒体-利用側冷媒熱交換器34、利用側圧縮機31及び利用側冷媒切換機構33に接続さ れることによって構成された利用側冷媒が循環する回路が利用側回路50である。 尚、利用ユニット4bは、利用ユニット4aと同様の構成を有するため、以下の説明では、利用ユニット4aの構成だけを説明し、利用ユニット4bの構成については、利用ユニット4aの各部を示す符号の添字「a」を添字「b」に読み替えることで説明を省略する。」 (中略)【0052】そこで、ここでは、熱搬送媒体として、電子のもつ自由度に関する相転移である電子相転 部を示す符号の添字「a」を添字「b」に読み替えることで説明を省略する。」 (中略)【0052】そこで、ここでは、熱搬送媒体として、電子のもつ自由度に関する相転移である電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーを使用している。ここで、電子相転移とは、特許文献2にも記載されているように、電子のもつ自由 度である、軌道の自由度、又は、電荷・スピン・軌道の自由度のうち少なくとも 2つ以上を含む複自由度の相転移のことである。そして、この電子相転移は、固体状態で発生する相転移(固体-固体相転移)であり、相転移に伴って潜熱を得ることができ、相転移時の体積変化が固体-液体相転移に比べて小さいという特性がある。 【0053】 このような電子相転移物質としては、VO2(二酸化バナジウム)やVO2(二酸化バナジウム)のV(バナジウム)の一部をW(タングステン)等で置換したもののように、種々の物質がある。そして、冷房や暖房のような空調用途では、0℃~50℃程度の温度範囲内で電子相転移を行う電子相転移物質を使用することが好ましい。例えば、V0.99W0.01O2(電子相転移温度:42℃~44℃)、V0.977W0.023 O2(電子相転移温度:10℃~11℃)、V0.98Ta0.02O2(電子相転移温度:48℃~49℃)、V0.92Ta0.08O2(電子相転移温度:3℃~4℃)、V0.95Nb0.05O2(電子相転移温度:15℃~16℃)、V0.975Ru0.025O2(電子相転移温度:36℃~37℃)、V0.97Mo0.03O2(電子相転移温度:33℃~34℃)、LiMn2O4(電子相転移温度:21℃)、LiVS2(電子相転移温度:40℃)、TbBaFe2O5 (電子相転移温度:1 7℃)、V0.97Mo0.03O2(電子相転移温度:33℃~34℃)、LiMn2O4(電子相転移温度:21℃)、LiVS2(電子相転移温度:40℃)、TbBaFe2O5 (電子相転移温度:12℃)、DyBaFe2O5(電子相転移温度:21℃)、HoBaFe2O5(電子相転移温度:23℃)、YBaFe2O5(電子相転移温度:37℃)、DyBaCo2O5.54(電子相転移温度:45℃)、HoBaCo2O5.48(電子相転移温度:31℃)、YBaCo2O5.49(電子相転移温度:24℃)を使用することができる。 【0054】そして、ここでは、上記のような電子相転移を行う物質である電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体としている。 2 図面【図1】 (以下略) 別紙乙5(特開平7-269964号公報)の記載 【0009】 【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は、この発明の第1実施例を示す空気調和装置の冷媒回路図である。この冷媒回路は、第1の冷媒回路である流路Aと第2の冷媒回路である流路Bとの二つの閉流路を備えている。 流路Aは、室内熱交換器1,流体駆動機3,中間熱交換器5を配管7により結合しており、内部を流れる冷媒aとして、HFC32/125(50/50)を使用している。室内熱交 換器1は、冷媒aと外部の室内空気とを熱交換させる。流体駆動機3は、正逆回転可能な可逆ポンプであり、冷媒aの吐出方向を、室内熱交換器1側と中間熱交換器5側とに切り替え可能である。中間熱交換器5は、冷媒aの通路と、流路B内を流れる冷媒bの通路とが 。流体駆動機3は、正逆回転可能な可逆ポンプであり、冷媒aの吐出方向を、室内熱交換器1側と中間熱交換器5側とに切り替え可能である。中間熱交換器5は、冷媒aの通路と、流路B内を流れる冷媒bの通路とが隔壁9を介して仕切られ、冷媒aと冷媒bとを隔壁9を介して熱交換させる。 【0010】流路Bは、室外熱交換器11,四方弁13,圧縮機15,前述した中間熱交換器5,膨張弁17を配管19により結合しており、内部を流れる冷媒bとして、HFC134a を使用している。室外熱交換器11は、冷媒bと外部の室外空気とを熱交換させ、四方弁13は、冷媒bの流路を実線状態と破線状態とに切り替え可能である。圧縮機15は冷媒bを高温高圧のガス冷媒として吐出し、膨張弁17は 冷媒bを膨張させる。 【0011】流路Bのすべての要素および、中間熱交換器5,流体駆動機3は室外機21内に収納され、室内熱交換器1は室内機23内に収納される。流路Aの配管7には、室外機21と室内機23とを結ぶ渡り配管25および27が含まれている。 【0012】次に、このような構成の空気調和装置の動作を説明する。 【0013】冷房運転時には、流路Aの冷媒aはIA の方向に流れ、流路Bの冷媒b はIBの方向に流れる。このとき流体駆動機3から液状態で吐出された冷媒aは、渡り配管27を通って室内熱交換器1に流入し、ここで空気を冷却することにより一部あるいは全部が蒸発する。蒸気あるいは気液二相状態となった冷媒aは、渡り配管25を通って中間熱交換器5に流入する。中間熱交換器5内では、冷媒aは、流路B側にて低温状態にある冷媒bにより冷却され、液状態となって流体駆動機3に 戻る。 【0014】一方、冷房運転時において、流路Bでは、圧縮機15で圧縮され吐出された蒸気状態の 、冷媒aは、流路B側にて低温状態にある冷媒bにより冷却され、液状態となって流体駆動機3に 戻る。 【0014】一方、冷房運転時において、流路Bでは、圧縮機15で圧縮され吐出された蒸気状態の冷媒bは、切り替え流路が破線状態となっている四方弁13を通り、室外熱交換器11に流入する。室外熱交換器11内で冷媒bはで空気により冷却され、一部あるいは全部が凝縮する。液あるいは気液二相状態となった冷媒bは、 膨張弁17を通って膨張し、気液二相状態になって中間熱交換器5に流入する。この中間熱交換器5内において、冷媒bは、前述したように、冷媒aを冷却し、蒸気状態となる。蒸気状態となった冷媒bは、四方弁13を経て圧縮機15へ戻る。 【0015】暖房運転時には、流路Aの冷媒aはIIA の方向に流れ、流路Bの冷媒bはIIB の方向に流れる。このとき、流体駆動機3により吐出された蒸気状態の冷 媒aは、中間熱交換器5に流入し、流路B側にて高温状態にある冷媒bにより加熱され、一部あるいは全部が蒸発する。蒸気あるいは気液二相状態となった冷媒aは、渡り配管25を通って室内熱交換器1に流入する。室内熱交換器1では、冷媒aは空気を加熱することにより凝縮する。液状態となった冷媒aは、渡り配管27を通って流体駆動機3に戻る。このように、冷媒aは、冷暖両運転時ともに、液状態で 流体駆動機3に流入するので、液ポンプである流体駆動機3を効率よく運転することができる。 【0016】一方、暖房運転時において、流路Bでは、圧縮機15で圧縮され吐出された蒸気状態の冷媒bは、切り替え流路が実線状態となっている四方弁13を通り、中間熱交換器5に流入する。中間熱交換器5においては、前述したように冷媒 bは、冷媒aを加熱し、一部あるいは全部が凝縮する。液あるいは気液 、切り替え流路が実線状態となっている四方弁13を通り、中間熱交換器5に流入する。中間熱交換器5においては、前述したように冷媒 bは、冷媒aを加熱し、一部あるいは全部が凝縮する。液あるいは気液二相状態と なった冷媒bは、膨張弁17を通って膨張し、気液二相状態になって室外熱交換器11に流入する。室外熱交換器11では、冷媒bは空気により加熱され蒸気状態となり、四方弁13を通って圧縮機15に戻る。 【0017】ところで、流路Aにおいては、流体駆動機3により冷媒aを循環させることで、熱を室内熱交換器1から中間熱交換器5へ搬送する(冷房運転時)、ある いは、中間熱交換器5から室内熱交換器1へ搬入する(暖房運転時)働きがあり、流路Aの流体駆動機3の出口から入口までの配管内での冷媒の圧力損失が小さいほど、流体駆動機3への入力が小さくなる。特に、流路Aにおける配管7は、室外機21と室内機23とを接続する長い渡り配管25,27を含んでいるので、圧力損失を小さくすることは有効である。 【0018】表1は、各HFC冷媒および自然冷媒の圧力損失を示している。 【表1】 この表から明らかなように、流路Aに用いた冷媒aであるHFC32/125(50/50)の圧力損失は、12.1[kPa] であり、流路Bに用いた冷媒bであるHFC134a の同29. 3[kPa] よりも大幅に小さい。したがって、本実施例のように、冷媒aとしてHFC32/125(50/50)を用いると、HFC134a を用いた場合に比べ、流体駆動機3への入 力は大幅に低減される。 【0019】また、表1において、HFC23 の圧力損失は8.3[kPa] と極めて小さい値であることから、HF いた場合に比べ、流体駆動機3への入 力は大幅に低減される。 【0019】また、表1において、HFC23 の圧力損失は8.3[kPa] と極めて小さい値であることから、HFC23 を流路Aの冷媒aとして用いることにより、流体駆動機3への入力をさらに低減させることができる。 【0020】一方、流路Bは、室外機21内に収納されるので、配管19の長さは短く、このため流路Bの実COPに対する圧力損失の影響は、従来の空気調和装置 に比べると大幅に小さい。したがって、冷媒bとして、圧力損失については特に考慮せず、理論COPの高い冷媒を選択すれば、流路Bの実COPも高くなる。 【0021】表2には、HFC冷媒および自然冷媒の理論COPの比較が示してある。 【表2】 この表から明らかなように、HFC134a の理論COPは5.52であり、 HFC32/125(50/50)の同4.92よりも大幅に大きい、したがって、本実施例のように、流路Bにおける冷媒bとして、HFC134a を用いると、HFC32/125(50/50)を用いた場合に比べ、流路Bの実COPは大幅に向上する。 【0022】以上のように、本実施例では、空気調和装置の冷媒流路を流路Aと流路Bから構成し、流路Aを流れる冷媒aとして、配管の圧力損失がHFC134a より大 幅に小さい冷媒HFC32/125(50/50)を用い、流路Bを流れる冷媒bとして、理論CO PがHFC32/125(50/50)よりも大幅に高い冷媒HFC134a を用いることにより、従来の空気調和装置にHFC134a およびHFC32/125(50/50)を単独で用いたいずれの場合よりも高い実COPを得ることができる。 )よりも大幅に高い冷媒HFC134a を用いることにより、従来の空気調和装置にHFC134a およびHFC32/125(50/50)を単独で用いたいずれの場合よりも高い実COPを得ることができる。 【0023】なお、表1に挙げたCO2 ,HFC125,HFC32 の重量比が50%以下のHFC32/125(25/75),HFC32 の重量比が10%以上25%以下のHFC32/134a(25/75) な ども、配管部分の圧力損失はHFC134a より小さいので、これらを冷媒aとして用いれば、程度の差はあるものの、本実施例と同様の効果が得られる。また、これらの冷媒以外に、配管部分の圧力損失がHFC134a よりも小さい冷媒であれば、冷媒aとして本発明の効果を発揮することができる。加えて、HFC32/125 やHFC32/134a における、HFC32 の重量比の上限値は、混合冷媒の可燃性の限界によって定まるので、 現状では、HFC32/125 の場合50%,HFC32/134a の場合25%としてあるが、将来の調査結果により、上昇することがあり、その場合には新たな可燃性上限値が、本発明のHFC32 の上限値となる。 【0024】表2に挙げたアンモニア,プロパン,HFC32 ,HFC32 の重量比が50%以上のHFC32/125 ,HFC32 の重量比が25%以下のHFC32/134a も、理論COPが HFC32/125(50/50)よりも大きいので、これらを冷媒bとして用いれば、程度の差はあるものの、本実施例と同様の効果が得られる。また、これらの冷媒以外に、理論COPがHFC32/125(50/50)よりも大きい冷媒であれば、冷媒bとして、本発明の効果を発揮することができる。 た、これらの冷媒以外に、理論COPがHFC32/125(50/50)よりも大きい冷媒であれば、冷媒bとして、本発明の効果を発揮することができる。 【図1】

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