平成29(行ウ)44 分限免職処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年7月29日 福岡地方裁判所
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判決文本文30,057 文字)

主文 1 糸島市消防本部消防長が原告に対して平成29年3月3日付けでした分限免職処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、糸島市消防本部(以下、糸島市消防本部の前身である糸島地区消防 厚生施設組合糸島消防本部を含めて、「消防本部」という。)の職員であった原告が、地方公務員法(以下「地公法」という。)28条1項1号及び3号に該当するとして、平成29年3月3日付で分限免職処分(以下「本件処分」という。)を受けたところ、本件処分の理由とされた事実には誤認があり、また、本件処分には裁量権を逸脱した違法があるとして、被告に対し、本件処分の取 消しを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲証拠〈特に記載がない限り枝番をすべて含むものとする。〉及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実)⑴ 被告の消防組織について被告は、消防組織法9条の規定に基づき、消防長を頂点とする糸島市消防 本部(消防本部)及び署長を頂点とする糸島市消防署(以下「消防署」という。)を設置しており(以下、消防本部及び消防署の職員を「消防職員」という。)、消防署の下には、3つの出張所(前原、志摩、二丈)が設置されている。 消防本部及び消防署に属する消防職員(約100名)は、日勤(日中に勤 務するもの)と当務(隔日で24時間勤務するもの)に分かれ、このうち当 務の者(約80名)によって消防隊が編成され、火災等の現場における消火活動等に従事する。消防隊は、消防署長を長とし、1部から3部までの各中隊を編成し、各部(各中隊)には、 かれ、このうち当 務の者(約80名)によって消防隊が編成され、火災等の現場における消火活動等に従事する。消防隊は、消防署長を長とし、1部から3部までの各中隊を編成し、各部(各中隊)には、部隊長及び中隊長からなる指揮隊、本署に第1小隊、第2小隊及び救急小隊が、前原、志摩及び二丈の各出張所に各小隊がそれぞれ設置されている(なお、平成26年4月以降は、各部に通信 指令が設置された。)。 (乙118、132ないし145、弁論の全趣旨)⑵ 原告の経歴等についてア階級等原告(昭和▲年▲月▲日生)は、平成4年4月、旧前原市(平成22年1月1日に糸島市に合併)糸島地区消防厚生施設組合に消防吏員として採 用された後、平成20年4月1日に消防司令補に任ぜられ、遅くとも平成22年4月頃には、消防隊編成表上、小隊長に任ぜられるとともに、係長級の役職に任ぜられた(この間の平成21年8月から10月までの2か月間、消防大学校に入学した。)。 その後、原告は、平成25年4月に消防司令(第3警備課長補佐)に任 命され、消防隊編成表上、部隊長に次ぐ中隊長に任ぜられた。 (乙18の1、19の1、132、138)イ所属 平成22年1月から同年3月まで、消防本部予防課予防係長を務め、消防隊編成表上は3部第2小隊長を務めた。 平成22年4月から平成23年3月まで、二丈出張所第2係長を務め、消防隊編成表上は2部二丈小隊長を務めた。 平成23年4月から平成25年3月まで、消防署第2警備課本署第2係長を務め、消防隊編成表上は、平成23年4月から平成24年3月までは2部第2小隊長を、平成24年4月から平成25年3月までは2部 第1小隊長を務めた。 課本署第2係長を務め、消防隊編成表上は、平成23年4月から平成24年3月までは2部第2小隊長を、平成24年4月から平成25年3月までは2部 第1小隊長を務めた。 平成25年4月から平成27年3月まで、消防署第3警備課長補佐を務め、消防隊編成表上は3部中隊長兼同第1小隊長を務めた。なお、この時の第3警備課長はA1であった。 平成27年4月から本件処分に至るまで、消防本部警防課長補佐を務め、消防隊編成表上は、平成27年4月から平成28年3月までは3部 中隊長を務めたが、同年4月以降は、同編成表に組み込まれなかった。 なお、平成27年4月から平成28年3月までの警防課長はB1であり、同年4月以降の警防課長はC1であった。 (以上、乙132ないし145、弁論の全趣旨)⑶ 本件各処分に至る経緯について ア消防本部では、平成24年頃から、全職員を対象として、年に1、2回程度、職場環境改善に関するアンケートを回答者匿名の方法で実施していたところ、平成28年6月頃に実施した上記アンケートにおいて、「現在の職場環境」について、「訓練中の暴力は、指導の一環と捉えるのは間違っているのではないか。」「高圧的な態度やグループで集まって、毎日の ように誰かの悪口を言っており、職場の雰囲気が悪い。」「○○部の上司が部下に対する行き過ぎた指導、暴力、暴言が日常的に行われている。」「罵声を浴びせられ、体力的に無理難題を突き付けられ、殴られたり、蹴られたりも何度もある。」など、職場での暴力、暴言等に言及する回答が相当数含まれていた。 (乙1) イ平成28年7月6日頃、糸島市長や副市長に宛てて、「勇士一同」名義で作成された文書( 等に言及する回答が相当数含まれていた。 (乙1) イ平成28年7月6日頃、糸島市長や副市長に宛てて、「勇士一同」名義で作成された文書(乙2)が送付されたところ、同文書には、糸島市消防本部の職場環境は劣悪であり、ここ数年で若手6名が次々と退職し、3名の病休者(うつ病、不眠症等)が出ており、その原因は、消防本部内での暴行、暴言、しごき、いじめ等であること、消防本部では、数年前のパワ ハラ問題以降、定期的にアンケートが行われているが、アンケートに書い ても何も変化がないこと、複数名の加害者の中に、当時消防本部予防課係長であったD1の名も挙げられ、同人につき、訓練の名を借りた、いじめ、しごきがあり、暴言も度を超し、人の挨拶を無視すること、頻繁に仕事をサボること等があること、そのトップにいるのが当時消防本部警防課長補佐であった原告であること、暴言、暴行等の実態調査のため、調査委員会 を立ち上げて欲しいこと等が記載されていた。 (乙2、112、159)ウ被告総務部総務課は、同年7月中旬頃から同年12月頃までにかけて、消防本部におけるハラスメントの有無について、35名の消防職員(元職員を含む。)からの聴き取り調査を実施したが、他方、原告やD1など加 害者とされる職員や、それに近しい者と判断された職員に対する調査は行わず、事情聴取が行われていること自体明らかにされなかった。 また、被告総務部総務課は、原告が、職場のパソコンを使用して、複数の消防職員に対し、グループメールを私的に送信している疑いがあったことから、聴き取り調査と並行して、糸島市役所情報セキュリティ担当に対 し、庁内メールにつき情報提供を依頼した。 (以上、乙15な 防職員に対し、グループメールを私的に送信している疑いがあったことから、聴き取り調査と並行して、糸島市役所情報セキュリティ担当に対 し、庁内メールにつき情報提供を依頼した。 (以上、乙15ないし21、23、26ないし29、35ないし37、42ないし44、48、64、111、112、弁論の全趣旨)エ糸島市長は、平成28年12月5日、同副市長を委員長とし、教育長、市長事務部局の部長ら及び消防長等を委員とする糸島市職員懲戒分限審査 委員会(以下「審査委員会」という。)に対し、糸島市職員懲戒分限審査委員会規則2条1号、2号に基づき、消防本部で実施した平成28年度「職場環境改善に関するアンケート」の集約結果の公表内容に基づくパワー・ハラスメント事案及びその他含む規律違反等の事項による懲戒処分及び分限処分の適否について、諮問を行った。 (乙109、112) オ審査委員会は、同年12月15日から平成29年2月20日までの間、 消防本部におけるハラスメントの有無等について審議を行った。 なお、審査委員会には、副市長、教育長、被告総務部長のほか、当時消防長であったE1も出席していた。 (乙110の1ないし7、113)カ平成29年2月25日、被告総務課の職員において、原告を含む処分対 象者などからの弁明を聴き取った。この聴き取りは、開始前に聴き取りの対象者に対して非違行為の内容を列挙した文書を交付し、同文書に沿って、事実関係の有無などの言い分を聴取する方法で行われた。 (乙3、4)キ審査委員会は、同月28日、上記カの聴き取りの結果を踏まえて、被処分者らに対する処分の可否や量刑について審議を行った。 (乙110の8) ⑷ 本件処分について処 (乙3、4)キ審査委員会は、同月28日、上記カの聴き取りの結果を踏まえて、被処分者らに対する処分の可否や量刑について審議を行った。 (乙110の8) ⑷ 本件処分について処分行政庁は、平成29年3月3日付けで、原告に対し、別紙1(分限処分に係る事実)記載の各行為(以下、同別紙記載の各行為を、その番号に従い「本件行為1」などという。)により、原告の勤務成績不良及びその職に必要な適格性の欠如が認められるとして、地公法28条1項1号及び同3号 に基づき、本件処分をした(甲4)。 ⑸ D1らに対する懲戒処分について処分行政庁は、同日、別紙2(処分対象者一覧)のとおり、D1を含む消防職員15名に対して、懲戒処分を行い、そのほか2名の消防職員について、文書訓告とした。 (以上、甲5、乙156) ⑹ 原告による不服申立て原告は、平成29年5月30日付けで、糸島市公平委員会に対し、本件処分に関する審査請求を行ったが、3か月を経過しても裁決されなかったため、平成29年9月27日付けで、本件訴訟を提起した。 (甲7、弁論の全趣旨) ⑺ 分限処分の基準について ア被告は、本件処分当時、分限処分に係る基準等を策定していなかった。 イ被告は、本件処分後、「糸島市職員の分限処分に関する指針」(乙91、以下「分限指針」という。)を策定し、平成30年4月1日より施行した。 同指針には、概要、以下の規定が設けられている。 地公法28条1項1号の規定により職員を降任させ、又は免職するこ とができる場合は、次に掲げる場合であって、指導その他の措置を行ったにもかかわらず、勤務実績が不良なことが明ら けられている。 地公法28条1項1号の規定により職員を降任させ、又は免職するこ とができる場合は、次に掲げる場合であって、指導その他の措置を行ったにもかかわらず、勤務実績が不良なことが明らかなときとする。 a 糸島市職員人事評価実施規程に規定する能力評価及び業績評価の総合評価の結果の区分が2年以上継続して最下位の段階である場合b 前号に掲げる場合のほか、職員の勤務の状況を示す事実に基づき、 勤務実績がよくないと認められる場合同項3号の規定により職員を降任させ、又は免職することができる場合は、職員の適格性を判断するに足ると認められる事実に基づき、その職に必要な適格性を欠くと認められる場合であって、指導その他の措置を行ったにもかかわらず、適格性を欠くことが明らかなときとする。 任命権者は、職員を降任させ、又は免職しようとする場合には、当該職員に対し弁明の機会を付与するものとする。ただし、弁明の機会を付与することができない特別の事情がある場合は、この限りでない。 ウ国家公務員に対する分限処分について、「昭和27年人事院規則11-4(職員の身分保障)」は、分限処分による降任又は免職の要件として、 「指導その他の人事院が定める措置を行ったにもかかわらず、勤務実績が不良なことが明らかなとき」としているところ(同規則7条)、「人事院規則11-4の運用について(昭和54年12月28日任企-548)」と題する通知(以下「人事院通知」という。)には、上記の人事院が定める措置として、職員の上司等が、注意又は指導を繰り返し行うこと、職員 の転任その他の当該職員が従事する職務を見直すこと、職員の矯正を目的 とした研修の受講を命ずること、その他任命権者が職員の矯正のために必要と認める措置をと 導を繰り返し行うこと、職員 の転任その他の当該職員が従事する職務を見直すこと、職員の矯正を目的 とした研修の受講を命ずること、その他任命権者が職員の矯正のために必要と認める措置をとることを掲げている(7条関係第3項)。また、人事院通知においては、適格性を欠くことを理由に降任又は免職を判断するにあたっては、職員に対する指導等に関する記録や分限処分、懲戒処分その他服務等に関する記録などの「客観的な資料」によらなければならない旨 (7条関係第4項)、国家公務員法78条1号又は3号の規定により、職員を降任させ、又は免職するに当たっては、任命権者は、警告書を交付した後、弁明の機会を与えるものとする旨(7条関係第9項)の規定がある。 (乙98、99)⑻ 糸島市職員倫理条例について 糸島市職員倫理条例(平成22年糸島市条例第39号。以下「職員倫理条例」という。)第4条は、職員がと、利害関係者と共に飲食、遊技、ゴルフ又は旅行をすること(糸島市職員倫理条例施行規則第4条1項8号)を禁止行為として定めている。 (乙59、60、162) 3 争点及び争点に関する当事者の主張 本件の主たる争点は、 本件処分の原告が、地公法28条1項1号(人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合)及び同3号(その職に必要な適格性を欠く場合)に該当するか否かである。 〔原告の主張〕⑴ 公務員に対する分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認め られるものの、その純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいた分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることは許されず、考 然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいた分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることは許されず、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断するとか、また、その判断が合理性をもつ判断として許容される限度を超え た不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法なものであることを 免れない。 また、地公法28条1項3号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解される。 さらに、適格性の有無の判断についても、分限処分が免職である場合は、現に就いている職に限らず、転職可能な他の職をも含めてこれらすべての職についての適格性の有無の判断が必要であるのみならず、公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において、特に厳密、慎重であることが要求されるものと解される。 ⑵ 本件処分の判断枠組みそのものに問題があることア被告が認定し本件処分の理由とした本件行為1ないし10は、いずれも事実を誤認したものであり、かかる事実を前提に原告の適格性を判断して処分すること自体が違法であるが、そもそも本件処分は、被告が認定した処分理由を前提としても、上記審査基準に照らせば、明らかに裁量を逸脱 した違法なものである。 イ本件処分の対象となった行為は、消防本部の同僚、上司及び部下のほか、所属部署についての誹謗中傷や悪口(本件行為1ないし4)、右翼・左翼との発言(本件行為5)、同僚や部下に対する暴言や問題発言(本件行為6⑴、⑵及 となった行為は、消防本部の同僚、上司及び部下のほか、所属部署についての誹謗中傷や悪口(本件行為1ないし4)、右翼・左翼との発言(本件行為5)、同僚や部下に対する暴言や問題発言(本件行為6⑴、⑵及び⑸)、部下に対する暴行(本件行為6⑶及び⑷)、部下に対 する仲間外し(本件行為6⑷)、職務専念義務違反(本件行為7)、人事評価に関する言動(本件行為8)、職務命令違反(本件行為9)、職員倫理条例違反(本件行為10)である。 本件処分の理由とされているこれらの行為は、以下のとおり、それが真実であったとしても、そもそも分限処分の理由とならないものや軽微なも のに限られており、これらの行為だけを理由に分限免職とすることは、明 らかに裁量を逸脱している。 同僚等についての誹謗中傷・悪口、右翼・左翼発言、暴言について同僚等についての誹謗中傷や悪口は、およそ一切禁止されるようなものではないし、右翼・左翼との発言についても、いわゆる差別的表現そのものではなく、少なくとも分限処分に直結するような問題ではない。 また、同僚や部下に対する暴言等も、部下に対するものであれば、パワー・ハラスメントに当たる可能性はあるものの、何らの指導や注意をすることなく、直ちに分限処分が許されるとは考え難い。 部下に対する暴行、仲間外しについて部下に対する暴行は、本件行為の中では最も大きな問題といえるとこ ろ、そもそも暴行の事実はないし、被告が認定した暴行態様としても、それぞれ「胸を3発殴った」、「数発殴った」というもので、殴られた部下が傷害を負ったとの記載もなく、暴行の程度としては比較的軽微なものであって、これにより直ちに分限免職処分とするのは明らかに裁量を逸脱している。また、部下に対する仲間外しについても、パワー・ハ 傷害を負ったとの記載もなく、暴行の程度としては比較的軽微なものであって、これにより直ちに分限免職処分とするのは明らかに裁量を逸脱している。また、部下に対する仲間外しについても、パワー・ハ ラスメントに当たる可能性もある行為ではあるが、直ちに分限免職という極めて重い処分の理由となるものではない。 職務専念義務違反について被告が指摘する行為は、喫煙や雑談による離席時間が長いことと職場のパソコンを利用した私的メールであるところ、いずれも職務専念義務 違反として重大なものとまではいえず、繰り返し指導・注意を受けていたのに改善しなかったという事情もないのであるから、免職という重い処分の理由となるものではない。 人事評価に対する言動についてそもそも自身の人事評価について疑問があれば、これについて意見を 述べることは許されるはずの行為であり、分限処分の理由とはなり得な いはずである。 職務命令違反について原告に消防長からの命令違反があったとしても、その違反の程度が重いということはできないから、分限処分の理由となるとは考え難い。 職員倫理条例違反について 被告が職員倫理条例違反として指摘する行為は、原告が一度だけ利害関係者と飲食したという行為にすぎず(割り勘であって、供応を受けたわけでもない。)、違反態様としては軽微なものであって、免職という重い処分の理由となるものではない。 ⑶ 指導その他の措置を行っていないこと 本件処分当時、被告においては、独自の分限処分指針を作成していなかったが、人事院規則11-4(職員の身分保障)7条4項では、適格性を欠くことを理由に降任又は免職ができる場合は、「指導その他の人事院が定める措置を行ったにもかかわらず、適格性を欠くことが明らかなとき たが、人事院規則11-4(職員の身分保障)7条4項では、適格性を欠くことを理由に降任又は免職ができる場合は、「指導その他の人事院が定める措置を行ったにもかかわらず、適格性を欠くことが明らかなとき」とされており(乙98)、同規則の運用に関する人事院通知(乙99)では、「人事 院が定める措置」として、①職員の上司等が、注意又は指導を繰り返し行うこと、②職員の転任その他の当該職員が従事する職務を見直すこと、③職員の矯正を目的とした研修の受講を命ずること、④その他任命権者が職員の矯正のために必要と認める措置をとること、のいずれかをとることが求められている(7条関係第3項)。 また、本件処分後に被告が定めた「糸島市職員の分限処分に関する指針」(分限指針)2条3項においても、適格性を欠くことを理由に降任又は免職ができる場合は、「指導その他の措置を行ったにもかかわらず、適格性を欠くことが明らかなとき」とされており(乙91)、他の多くの自治体の分限処分に関する指針においても、人事院規則に倣って、降任や免職といった重 い分限処分をするには、それに先立って指導その他の措置をとることを要求 しており、それにもかかわらず、適格性を欠くことが明らかな場合に初めて降任や免職といった重い分限処分ができるとされていることに照らし、本件処分においても、これに先立つ指導その他の措置を取ることが必要と解される。 ⑷ 指導等に関する客観的資料によって判断する必要があること さらに、人事院通知(7条関係第4項)では、適格性を欠くことを理由に降任又は免職を判断するにあたっては、職員に対する指導等に関する記録や分限処分、懲戒処分その他服務等に関する記録などの「客観的な資料」によらなければならないとされているところ、本件処分に関しては に降任又は免職を判断するにあたっては、職員に対する指導等に関する記録や分限処分、懲戒処分その他服務等に関する記録などの「客観的な資料」によらなければならないとされているところ、本件処分に関しては、それに先立って原告に対して指導その他の措置はとられておらず、客観的資料は一切存 在しない。 〔被告の主張〕⑴ 分限処分を選択した理由消防職員が消防の任務を適切に行うためには、法令及び消防本部組織における上司の指揮命令を遵守することはもちろんのこと、迅速かつ的確で、効 果的・効率的な消防活動を行うため、消防職員相互の信頼と信頼に基づく連携体制が確立されていることが必要不可欠であるから、協調性が特に要求される。また、管理職としての適格性については、特に対人関係の処理につき、自己と個人的、感情的には対立関係にある者との接触をも含めて、職務上予測されるあらゆる場面において、職務の円滑な遂行に支障をきたさない程度 にこれを処理し得る能力が要求されるというべきである。 原告については、別紙1(分限処分に係る事実)記載の各行為が確認され、原告の言動により被害を受けた者の精神的苦痛等の被害も無視できない上、平成28年度の職場環境改善アンケートを契機に実施した聴き取り調査の結果、原告を中心としたグループ(以下「本件グループ」という。)が形成さ れており、本件グループのメンバーによるハラスメント行為(暴言、暴力、 しごき、いじめ等)や、他の職員の陰口、誹謗中傷等が横行し、多くの職員(特に若手職員)がやる気をなくして退職を望んでいるという実情が明らかになった。また、原告は、以前から、消防長を含めた幹部職員に対し、事あるごとに反発して、不遜、非礼な態度で食ってかかり、幹部職員も手を焼いていたが、長年の蓄積を経て、幹 望んでいるという実情が明らかになった。また、原告は、以前から、消防長を含めた幹部職員に対し、事あるごとに反発して、不遜、非礼な態度で食ってかかり、幹部職員も手を焼いていたが、長年の蓄積を経て、幹部職員も次第に原告に注意しなくなり、原 告の傍若無人な振る舞いがエスカレートしていった。 原告の性格や素質、上司や同僚等に対する対応等は、消防本部の職場における秩序維持や円滑な職務の遂行に重大な支障が生じているのみならず、課長補佐として部下を指導すべき立場にあるにもかかわらず、率先して第三者を誹謗中傷し、上司を上司とも思わない態度で職場の秩序を乱してきた原告 に対し、今後の指導・教育によって、消防職員としての適格性を回復させることは困難であるとの判断のもと、懲戒処分ではなく分限処分とすることとしたものである。 そして、原告の不適格性は、単に管理職として不適格であるにとどまらず、およそ消防職員・公務員として不適格であるから、降任による職務遂行は期 待できず、分限降任処分ではなく分限免職処分を行うほかなかった。 ⑵ 本件処分当時、被告には、職員の適格性の欠如の判断について、「指導その他の措置を行ったにもかかわらず、適格性を欠くことが明らかなときとする」旨の被告分限指針は存在しておらず、「指導その他の措置」を経たか否かが分限処分の要件となることはないし、指導その他の措置を取ったとして も効果が薄い事案、あるいは、指導等を行うことが困難な事案においては、「指導その他の措置」を経ることなく分限処分をしても、何ら人事院規則等の趣旨に反しないというべきである。本件において、原告には、消防長からの職務命令を堂々と無視する態度が見て取れる上(本件行為9)、原告は、パワハラが訴えられた職場環境改善アンケートの結果を「便所の落書き」と 反しないというべきである。本件において、原告には、消防長からの職務命令を堂々と無視する態度が見て取れる上(本件行為9)、原告は、パワハラが訴えられた職場環境改善アンケートの結果を「便所の落書き」と 断じ、パワハラ防止の訓示を行ったB1を、「ポンコツB1」、「差別主義 者」、「独裁者」と罵るなど、パワハラが問題視され、管理職である原告自身が自省する機会が何度もあったにもかかわらず、自省する態度は一切見られず、上司への批判や暴言(本件行為4及び8)は、原告がもはや制御不能であることを示す事実であって、原告に指導等の措置を行ったとしても、その改善はとても期待できない状況であった。 また、本件では、退職にまで追い込まれようとしている複数の職員がおり、原告による新たなパワハラ被害の発生や被害拡大の蓋然性が認められる状況であって、原告の非違行為は単に個々の行為が問題であるにとどまらず、長年にわたり、多くの人間を巻き込んだ結果、上司を含む消防本部全体の指揮・運営に関わる悪影響を生じさせる事態にまで及んでいた。 したがって、被告が、原告について、「当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合」に当たると判断したことには、何らの裁量の逸脱ないし濫用はないというべきである。 ⑶ 勤務実績の不良による降任又は免職の要件について本件処分後に制定された分限指針には、糸島市職員人事評価における「能力評価及び業績評価の総合評価の結果の区分が2年以上継続して最下位の段階である場合」とあるところ、被告の人事評価制度は、平成23年10月から試行導入されたが、平成28年4月までは処遇等に反映しない形で運用さ 業績評価の総合評価の結果の区分が2年以上継続して最下位の段階である場合」とあるところ、被告の人事評価制度は、平成23年10月から試行導入されたが、平成28年4月までは処遇等に反映しない形で運用さ れていたため、平成28年4月頃まではどの職員に対しても総合評価で最下位区分をつけることはなかった。また、当時の消防本部の昇任方法は、消防吏員昇任試験において一定の点数を満たした者を合格者として、昇任候補名簿に登載し、退職等に伴い役職に欠員が生じた場合、昇任候補者名簿に登載された順で昇任させていたため、昇任候補者の勤務態度、資質等を考慮しな いという点で問題があった。 したがって、本件においては、客観的な人事評価以外の事情から、「勤務実績がよくない場合」に該当するか否かを判断せざるを得ず、また、指導その他の措置の有無についても、勤務実績を改善させることが困難であることを推認させる一事情となるにすぎない。 ⑷ 原告の主張に対する反論 適格性欠如を理由とする分限免職処分は、懲戒処分のように個々の行為に対して制裁を科すのではなく、その職員の個々の行動、態度に徴表される「状態」に対して処分をするもので、その職員にまつわるあらゆる事情を関連付けて総合判断しなければならない。 被告は、本件行為1ないし10を総合的に考慮して、分限免職処分が相当 であると判断したものであるところ、原告は、本件行為を分解して個別に評価したうえで、本件処分の不当性を主張するものであって、不適切な主張である。 ア上司、同僚等についての誹謗中傷・悪口、右翼・左翼発言、同僚等に対する暴言、仲間外しについて 上司に対する誹謗中傷は、消防本部内の秩序を乱し、指揮系統を混乱させる行為であり、悪意のある個人攻撃は、当該個人に対する 中傷・悪口、右翼・左翼発言、同僚等に対する暴言、仲間外しについて 上司に対する誹謗中傷は、消防本部内の秩序を乱し、指揮系統を混乱させる行為であり、悪意のある個人攻撃は、当該個人に対する信頼を失わせ、隊員相互の信頼関係の構築を阻害する行為である。また、所属部署に対する誹謗中傷は、当該部署に対する信頼を損ない、団結力及び統制を破壊し部隊間の不信感や対立を生じさせ、職場を分裂させる行為である。原告は 小隊長ないし中隊長として上司と部下のパイプ役としての地位にあったこと、管理職であったことに鑑みると、その適格性の欠如は顕著というべきである。 平成25年度安全関係者会議の「審議結果」欄には、「職員の指導は消防長訓示を理解し、訓練後に必要以上に激しく叱責する、無視する、仲間 はずれにする等の人としての尊厳を無視した行為が無いよう注意し」との 記載があり(甲2)、さらに、訓練におけるハラスメント防止マニュアルの「行動原則」欄には、「指揮者は、業務に関係のない発言や人格を攻撃してはいけない」と明記されており(甲3)、誹謗中傷や差別発言等をしてはいけないという指導があったことは明らかである。 イ部下に対する暴行について 原告は、部下に対する暴行のみを取り上げて、比較的軽微なものにすぎないと主張するが、被告は部下に対する暴行のみを理由に本件処分をしたものではなく、原告の主張は事実関係を矮小化するものである。 ウ職務専念義務違反について原告の離席時間の長さは尋常なものではなく、これを見かねた他の職員 が原告の離席時間を記録するなどしていたもので、重大な職務専念義務違反というべきである。 エ人事評価に対する言動について人事評価の運用や評価結果等に関する苦情や相談がある場合は、人事担当 が原告の離席時間を記録するなどしていたもので、重大な職務専念義務違反というべきである。 エ人事評価に対する言動について人事評価の運用や評価結果等に関する苦情や相談がある場合は、人事担当課長が窓口となって対応することとなっており、人事担当課長の段階で 解決できない苦情や相談等については、人事評価審査委員会に対して、「人事評価に関する不服申立て書」を提出することとされ、被評価者が評価者に対して直接苦情等を述べることを回避する制度となっているところ、原告は、管理職として、そのような制度があることを理解しているにもかかわらず、正規の不服申立て制度を無視し、評価者に対し、評価の在り方や 点数の不当性に関する主張を繰り返し、評価のやり直しを執拗に迫ったものである。 オ職務命令違反について原告は、消防長からの命令違反はあるものの、職務命令違反の程度が重いということはできないと主張するが、原告は、消防長からの指示につい て、「ポンコツトップ大幹部からクレームが来ました」、「そんな根拠の ない命令なら絶対言うこと聞きません~~」等というメールを部下に送信するなど、消防職員でありながら、上司の指示に従おうという意思を持っていない者であって、消防職員として不適格であることは明らかである。 カ職員倫理条例違反について利害関係者と不必要な飲食をすることは、公務に対する市民の信頼を損 ないかねない極めて重大な非違行為であり、原告が違反態様としては軽微なものであると主張していること自体、原告の公務員としての不適格性を裏付けるものである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に加え、証拠(後掲各書証)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の各事実が認められる。 ⑴ 被告の人事評 性を裏付けるものである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に加え、証拠(後掲各書証)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の各事実が認められる。 ⑴ 被告の人事評価制度についてア制度の概要被告職員の人事評価において、平成27年3月まで使用されていた「能 力・態度評価シート」は、大きく「能力評価」と「態度・姿勢評価」に分けられ、前者については、①知識・技能、②企画立案・政策形成、③判断力、④市民説明・交渉折衝力・調整力、⑤情報収集力、⑥リーダーシップ・指導・育成力の各項目が、後者については、⑦責任感、⑧協調性、⑨積極性、⑩服務規律・倫理観の各項目が評価要素とされており、各項目につき、 被評価者(自己評価)、第一次評価者、第二次評価者がそれぞれ、最低を1、最高を5とする5段階で評価することとされていた。また、平成27年4月から使用されている「能力考課シート」は、能力評価として、①知識・技能、②企画立案・政策形成、③判断力、④交渉折衝力・調整力、⑤情報収集力、⑥リーダーシップ・指導・育成力、⑦責任感、⑧協調性・チ ームワーク、⑨積極性、⑩服務規律・倫理観の10の考課項目ごとに、被 評価者、第1次評価者及び第2次評価者がそれぞれ、最低を1、最高を5とする5段階で評価することとされている。 (甲11)イ被告における人事評価の方法等について、平成23年に策定され、平成28年に改訂された「糸島市人事評価制度マニュアル」(甲9。以下「人事評価マニュアル」という。)によれば、第2次評価者は、第1次評価者 の評価内容について事実誤認や情報の洩れ、判断ミス等がないかを確認し、修正が必要と考えた場合は、第1次評価者に確認し、理由を説明した上で修正を という。)によれば、第2次評価者は、第1次評価者 の評価内容について事実誤認や情報の洩れ、判断ミス等がないかを確認し、修正が必要と考えた場合は、第1次評価者に確認し、理由を説明した上で修正を行うこと、第2次評価結果を第1次評価者に渡す際、第1次評価者に対して修正理由を説明し、評価対象者との面談を指示することとされている。 ウ人事評価に対する不服申立ての手続について人事評価マニュアルによれば、被告における人事評価に関する苦情等については、人事担当課長が1次的な窓口となるとされている。また、人事評価に関する不服の申立てを行う場合には、「人事評価に関する不服申立て書」を人事評価審査委員会の委員長に提出することとされている。 ⑵ 本件処分前の原告に対する人事評価についてア原告について作成された「能力・態度評価シート」及び「能力考課シート」によれば、平成25年3月から平成29年3月までの期間における原告に対する評価は、平成27年9月の企画立案・政策形成及び服務規律・倫理観の各項目並びに平成28年3月の服務規律・倫理観の項目につき2 と評価されているほかは、協調性の項目も含め、いずれの評価要素ないし考課項目についても3ないし4と評価されており、概ね良好な評価を受けていたことが認められる(ただし、平成28年9月の評価については、下記イのとおり、当初の評価内容から変更されている。)。 また、評価者所見欄には、「組織全体を考え行動している。部下の指導 教育も積極的に取り組み目標達成に向けリーダーシップを発揮している。 (平成25年9月)」、「中隊長として部下の指導育成にリーダーシップを発揮し、管理職としての責任感を自覚している。(平成26年9月)」などの積極的に評価する記載がある一方、「真意 いる。 (平成25年9月)」、「中隊長として部下の指導育成にリーダーシップを発揮し、管理職としての責任感を自覚している。(平成26年9月)」などの積極的に評価する記載がある一方、「真意を正しく伝えるには、威圧感を前面に出した時のような説明ではなく、丁寧に説明しているときのように行えば誤解を招くことは無いと考える。(平成28年9月)」、「管 理職としての言動に注意して、職務に励んでいただきたい。(同)」などの記載がある。 (甲11、乙51)イ平成28年9月の評価について平成28年9月の人事評価において、第2次評価者であったB1が、第1次評価者であるC1がいずれも3としていた評価項目(②企画立案・ 政策形成、③判断力、④交渉折衝力・調整力、⑧協調性・チームワーク、⑩服務規律・倫理観)につき、2と評価するなど、第1次評価者による評価を大きく下回る内容であった。 この点に疑問を感じた原告は、同年11月28日、第2次評価者であるB1に対し、評価の理由を尋ねたところ、B1は、原告の自己評価を 考慮したなどと回答したが、原告は納得しなかった。 原告は、同年12月15日、D1とともに、E1及び当時消防総務課長であったF1に対して、人事評価マニュアルに沿った人事評価を行うよう要求したところ、第2次評価をやり直し、再度第1次評価者による面談を行うこととなった。 B1は、原告の第2次評価を第1次評価と同様の評価にする旨原告に伝えたが、原告は納得せず、同月16日、第1次評価者であったC1同席の下、B1に対して、再度、人事評価マニュアルに沿った評価を行うよう要求した。 同月22日、原告、D1、B1、C1及びD1の上司にあたるA1が 会談し、この時、原告は、B1に ったC1同席の下、B1に対して、再度、人事評価マニュアルに沿った評価を行うよう要求した。 同月22日、原告、D1、B1、C1及びD1の上司にあたるA1が 会談し、この時、原告は、B1に対して、上記変更前後の原告に対する 評価の理由や評価が変更されることとなった理由などを追及する内容の書面を交付した。 これに対し、B1は、「今回の人事評価については、糸島市人事評価マニュアルを熟知していなかった事で、マニュアルに基づくルールや客観的な事実に基づいて、公平公正な評価をしていなかった部分があり、 また日常の人間性関係等における先入観や主観的に評価していたところがあると認められる。また、各課においての評価の統一性もなく、これは管理職としての管理能力の至らなさでもあり、本人たちに不愉快な思いをさせたことに申し訳ないと思っている。今後においては、消防本部内で人事評価の在り方を検討し、決して不公平な評価がなされないよう 徹底していく所存である。」と書面(甲10。なお、作成年月日の「平成26年」は「平成28年」の誤記である。)で回答した。また、原告の評価点については、最終的に第1次評価者の評価を上回る内容に修正された。 平成29年2月6日、B1や課長級の職員において、今後の人事評価 の在り方について協議を行った際、B1は、原告が、第2次評価で評価が決まるので自己評価は関係ない旨述べていたと発言した。 同月7日、原告は、B1に対し、上記協議においてB1が原告の名前を出したことなどについて、1時間ほどにわたって強く抗議した。 (以上、甲10、乙52ないし55) ⑶ 消防本部の昇任方法について平成22年1月に制定された糸島市消防本部職員任用規則及び同施行細則によ 抗議した。 (以上、甲10、乙52ないし55) ⑶ 消防本部の昇任方法について平成22年1月に制定された糸島市消防本部職員任用規則及び同施行細則によれば、当時の消防本部の昇任方法としては、消防吏員昇任試験において一定の点数を満たした者を合格者として、昇任候補者名簿に登載し、退職等に伴い役職に欠員が生じた場合、昇任候補者名簿に登載された順で昇任させ ていたが、平成30年4月に上記規則及び施行細則を改正して、昇任候補者 名簿を廃止し、翌年度に退職等で役職に欠員が生じる見込みである場合に、その人数のみを合格とし、翌年度昇任するまでの間、勤務態度等を詳細に観察し、良好な場合のみ昇任させることとした。(乙102ないし106)⑷ 被告におけるハラスメント防止対策等についてア平成23年7月、当時消防士であったG1は、当時消防司令補であった D1、消防士長であったH1及び同じく消防士長であったI1から、ハラスメントを受けたことを理由に退職を申し出たため、被告総務課の職員において、関係者の聴き取り調査を行ったものの、客観的証拠や目撃証言がないことから、G1が述べたハラスメント行為のうち一部のみを認定し、H1及びI1は、同年11月29日付けで文書訓告処分(懲戒処分ではな い。)を受けたが、D1については不処分とされた。 イ平成24年10月に前原小隊に配属されたJが、同年11月15日以降休職したため、消防本部において、その理由を確認したところ、当時、いずれも前原出張所に勤務していた司令補のK、士長のH1及び副士長のLから、疎外するような扱いを受けたり、約7時間にわたる叱責を受けたり したとのことであった。 そこで、被告人事課において、上記3名及び関係者から聴き取り 司令補のK、士長のH1及び副士長のLから、疎外するような扱いを受けたり、約7時間にわたる叱責を受けたり したとのことであった。 そこで、被告人事課において、上記3名及び関係者から聴き取り調査を行ったが、客観的証拠や目撃証言がなく上記各事実を確認することができなかったことから、上記3名を不処分とした。 (甲20、乙8の1、158) ウ糸島市総務部人事課は、上記ア記載のG1の案件をきっかけに、平成24年度以降、糸島市ハラスメントの防止等に関する規程の改正に関する周知を行うとともに、職場環境改善アンケートを実施するようになり、同年10月には、糸島市消防本部において、「訓練におけるハラスメント防止マニュアル」を作成し、消防署長を相談窓口の責任者とする「訓練時にお けるハラスメント相談窓口体制」を整えた。 (乙121ないし123、128ないし130、158)「糸島市ハラスメントに関するQ&A集」には、消防職の訓練におけるパワー・ハラスメントについて、「パワー・ハラスメントの行為類型とそれぞれの訓練の指導書等とを照らして、パワー・ハラスメントに該当しそうな点を協議し、訓練上のルールを組織として共通認識を行う。特定の職 員に厳しい指導とならないためには、訓練上のルールにのっとり、年齢や経験年数等に応じた、訓練が上手く遂行できないときの対応策やその限度等について指導をする側も受ける側も共通の認識をもって臨んでください。」との記載がある。 (乙119ないし121)エ平成24年6月から8月にかけて、被告主催で職員倫理研修が行われ、 消防職員を含む市の全職員が、職員倫理条例に関する研修を受講し、その後、全職員が5年に1度受講するよう計画的に実施されて エ平成24年6月から8月にかけて、被告主催で職員倫理研修が行われ、 消防職員を含む市の全職員が、職員倫理条例に関する研修を受講し、その後、全職員が5年に1度受講するよう計画的に実施されているほか、当該年度の昇格者及び新規採用職員にも受講させているところ、原告も平成24年に研修を受け、平成26年にも前年度の昇格者として研修を受けた(乙124ないし127)。 このほか、被告は、平成28年8月、各部課長に対し、「パワハラチェックリスト」(乙131)を掲示するよう指示した。 オ被告のハラスメント防止対策に対する意見等について平成25年の被告消防本部消防職員委員会において、消防本部における「ハラスメント」に対する対応があいまいであり、「糸島市ハラスメント の防止等に関する規程」による適切な措置がとられていないのではないかとの問題意識が示され、「上司が部下に対して行う業務指導について、受けた側の言い分のみでパワハラであると判断され処置されるのであれば、今後部下に対してどのように指導を行ったら良いのかわからない。消防業務の特殊性(危険性、緊急性、困難性)を考えた場合、上司が職務上の権 限で部下を統率することは必要不可欠であると考えるが、このような権限 の行使が安易にパワハラとされることは隊の運用を困難にし、災害対応力の低下につながると思慮する。」旨の意見が出され、安全関係者会議に意見提出することとされた。 (甲1)また、同年度の安全関係者会議においては、上記意見のほかに、訓練に伴う指導につき、「現在の指導とパワハラに係る訴えの多さは、現場の指 揮者(小・分隊長)と幹部職員との意識の差にも一因があると考える。現場対応のため必死で当たり前の指導を行った職員が叱 、訓練に伴う指導につき、「現在の指導とパワハラに係る訴えの多さは、現場の指 揮者(小・分隊長)と幹部職員との意識の差にも一因があると考える。現場対応のため必死で当たり前の指導を行った職員が叱責を受け、当たり前のことができずに指導を受けた職員が手厚く保護されており、権利は主張するが義務を負わない隊員が増加することになるのではないかと危惧する。」との議題が提出され、上記意見と併せて一括審議された。 審議結果欄には、「受け取る側の取り方で『パワハラ』と捉えられることもあるため、個人の能力等に合わせた訓練の構成、工夫、パワハラと取られない訓練指導も必要であるが、訓練方法を一部の隊員に合わせることにより訓練のレベルを下げることは、隊および消防本部全体の能力低下につながる懸念がある。現状は、目に見える暴行、暴言等は見受けられず、 管理職のパワハラに対する意識、監督はできていると認識している。」、「指導される側は、自己の職務遂行努力を怠り何でも『パワハラ』と訴えるようなことは慎むべきである。指導者は過大な要求をしているわけではなく、隊員一人ひとりを一人前の隊員にするため指導しているので、指導される側においても自らの未熟さを自覚し、知識、技術向上の努力をしな ければならない。」との記載がある。 (甲2)⑸ 本件処分の理由とされた各行為についてア同僚らないし所属部署に対する誹謗中傷、右翼・左翼発言等(本件行為1ないし3、5)についてM司令補は、原告の1期下に当たり、当初は原告と仲がよかったが、平 成15年7月に大喧嘩したことをきっかけに関係が悪化した。原告は、平 成20年頃には、Mの悪口を公然と口にするようになり、Mが2部の第1小隊長に就任した平成26年4月(当時、原告は 成15年7月に大喧嘩したことをきっかけに関係が悪化した。原告は、平 成20年頃には、Mの悪口を公然と口にするようになり、Mが2部の第1小隊長に就任した平成26年4月(当時、原告は3部の中隊長であった。)以降、2部批判を繰り返すようになった。 また、原告は、平成28年1月頃から平成29年2月頃にかけて、D1、N及びI1ら原告と親しい関係にある消防職員5名ないし7名に対し、職 場のパソコンを使用して、自己の所感を記載した長文のメールを多数送信していたところ、その中には、Mのほか、当時2部の部隊長であったO及び2部の第2小隊の小隊長であったPを指して、「ポンコツAB部隊長とゆかいな仲間たち」、「ポンコツトリオ」と記載するなど同人らを誹謗中傷したり、2部の活動を批判したりする内容が含まれていた(乙22。以 下、原告が平成28年1月頃から平成29年2月頃にかけてD1らに送信していたメールを「本件メール」という。)。また、原告は、本件メールの中で、自分と意見を異にする者を「左翼もん」などと総称して批判していた。 (甲19、乙22、25、73ないし81) イ幹部職員・組織批判(本件行為4)について原告は、平成22年頃、当時消防長であったQについて、「Qがつまらん、予算もとってこんで。」、「市役所の言いなり。消防の意見を尊重できていない。」などと批判していたほか、平成23年頃、当時2部の部隊長であったRについて、「すぐテンパるし、指示が的を得ていない。くだ らん部隊長が。」などと言って批判していた。 (争いがない)原告は、平成28年7月17日に開催された消防団の操法大会の挨拶の際、B1が言葉に詰まり、身体が震えたことなどについて、批判的な発言を繰り返し、本件メールに、「見た?開会式の震え (争いがない)原告は、平成28年7月17日に開催された消防団の操法大会の挨拶の際、B1が言葉に詰まり、身体が震えたことなどについて、批判的な発言を繰り返し、本件メールに、「見た?開会式の震えよう!」、「感想は、 『酷過ぎる』『恥ずかしすぎる』『直視できない』・・・『なさけない』 『幹部の器ではない』」、「消防官としても管理職としても不適格者です。 ホントにやめればよかったい」、「B1ポンコツ大幹部」などと記載した。 このほか、原告は、E1やB1について、時期は不明であるものの、他の職員が居合わせる場面で「ボンクラ」、「幹部がいかんったい。そこがいかんから腐る。」などと発言し、平成28年頃、喫煙室において、「バ カやろうが」などと発言していた。 なお、B1は、平成28年7月に結果が公表された職場環境改善アンケートにおいて、5、6名が「署長を辞めさせなければならない」という趣旨の記載をしていたことから、原告らがB1を失脚させようとしていると考えて、不安・不眠状態に陥り、同月30日、メンタルクリニックを受診 し、不安障害との診断を受け、平成31年3月に自己都合退職した。 (乙22、87、88、114、115、156)ウ職場環境に対する意識の欠如(本件行為6)についてJに対する無視等Jは、平成25年3月頃(Jの聴き取り内容に記載された「平成26 年3月頃」の記載は誤解に基づくものと推認される。)、休職後の職場復帰を控えて訓練に参加した際、身体がなまっていて思うように動けないでいたところ、原告から、「貴様、しゃばいったい!なんでこんくらいもしきらんとや!」などと言われた旨供述するが、これを裏付ける的確な証拠はなく、仮に、原告がそのような発言をしたとしても、かかる 叱責が直ちにパワ ら、「貴様、しゃばいったい!なんでこんくらいもしきらんとや!」などと言われた旨供述するが、これを裏付ける的確な証拠はなく、仮に、原告がそのような発言をしたとしても、かかる 叱責が直ちにパワー・ハラスメントに該当するとまでは認められない。 また、原告が、本件メールの中で、OとJについて、「本職はあんなに非力な消防士はポンコツ部隊長と痩せごたいJ君しか知りません!」などと記載したことは認められるものの、Jの職場復帰後、原告がJのことを継続的に無視していたことや、Jが休職するきっかけとなったKや H1のパワー・ハラスメントについて、原告が聴き取り調査に応じたS に対し、圧力をかけるような言動をしたことを認めるに足りる証拠はない。 (乙8、9、22の11)Tに対する暴言平成26年4月ないし5月頃、当時、3部第1小隊の小隊長であった原告は、隊員の一人であったTに対し、消防士に向いていない旨の発言 をしたほか、「こんなんでへばってたら夏乗り切れんぜ。辞めっしまえ。」などと発言した。 Tは、同年8月に退職したところ、当時、消防業務が想像していたものと違っていたこと、通常の訓練に耐えられず、今後も厳しい訓練に耐えられそうにないとの思いが精神的な負担となったことを理由としてい たが、平成29年2月の聴き取り調査において、訓練において、「しごき」を受けていたこと、原告に「辞めるなら早く辞めろ」などと言われ、精神的に追い込まれたためである旨供述した。 (甲22、25、乙6、9、16の1、23、27の1、43、116、117) Uに対する暴力原告は、平成26年8月、操法大会に向けた強化訓練のために、志摩出張所を訪れた際、志摩出張所の職員の配慮が足りないことに腹を立て、当時、1部志摩 、116、117) Uに対する暴力原告は、平成26年8月、操法大会に向けた強化訓練のために、志摩出張所を訪れた際、志摩出張所の職員の配慮が足りないことに腹を立て、当時、1部志摩小隊長であったUを叱責し、同人の胸を殴った。 Uは、令和元年6月に被告代理人から事情を聴かれた際、原告から叱 責されたことは記憶していたが、殴られた回数や殴られた部位は覚えていなかった。 (甲24、乙83)Nに対する仲間外し等原告は、上記のとおり、強化訓練のために志摩出張所を訪れた際、3部志摩小隊長であったNも叱責したが、同人に対し、暴行を加えた事実 は認められない(このほかに、原告が、Nを拒絶し、仲間外しをしたと いう事実も認め難い。)。 (甲23、乙82)Vに対する暴言平成28年9月14日午前9時ないし10時頃、当時警防課長補佐であった原告は、九星飲料工業株式会社による建物の増築工事に伴い設置 された20トンの水槽が、防火水槽として設置されたのか、それとも消防用水として設置されたのか確認したい旨を、D1を通じて予防課に伝えたが、午後2時半頃まで予防課から回答がなかったことに腹を立て、当時予防課長補佐であったVに対し、「お前何しようとや。無視や。」などと声を荒げて詰め寄った。 (乙20、24、46) エ職務専念義務違反(本件行為7)について原告は、勤務時間中、しばしば自席を離れて喫煙室等に行き、長時間戻ってこないことが多かった。原告の離席状況については、平成28年6月23日から同年9月13日まで及び同年10月3日から11月17日までの間、それぞれ記録されているところ、当該記録によれば、各期間にお ってこないことが多かった。原告の離席状況については、平成28年6月23日から同年9月13日まで及び同年10月3日から11月17日までの間、それぞれ記録されているところ、当該記録によれば、各期間におけ る離席時間は、1日平均1.7時間ないし1.8時間であったが、当時、警防課長補佐の立場にあった原告は、業務である機械器具や備品の現状や書類の確認等のために車庫や倉庫、書庫などに行くことも多く、離席時間のうちどの程度を喫煙室等で過ごしていたかは不明である。 また、本件メールは、職場のパソコンを利用して作成されたものである ところ、送信時間は勤務時間終了後ではあるものの、その内容や量からすると、勤務時間中に作成されたことが疑われる状況であった。 (乙22、49、69、73ないし81)オ人事評価をめぐる原告の一連の言動(本件行為8)について上記⑵イに記載したとおりである。 カ職務命令違反行為(本件行為9)について 消防本部は、平成28年度に救助工作車を購入したところ、当時、警防課長補佐として救助工作車の担当者であった原告が、サイドシャッター部分に、英語や日の丸に稲妻が刺さったようなデザインを施すことを計画していたことから、当時、消防長であったE1は、英語表記を「糸島市消防救助隊」に改めるなどデザインの変更を命じた。しかし、業者との連絡を 担当していた原告は、E1の指示に従わず、平成29年2月14日に納車された救助工作車には、変更前のデザインの上に赤いテープ様のもので隠された状態であった。このため、テープをはがしてデザインを修正するまでの数日間、当該工作車を運用することができなかった。 なお、原告は、本件メールに、「ポンコツトップ大幹部からクレームが 来ました。」、「そんな根拠のな ープをはがしてデザインを修正するまでの数日間、当該工作車を運用することができなかった。 なお、原告は、本件メールに、「ポンコツトップ大幹部からクレームが 来ました。」、「そんな根拠のない命令なら絶対言うこと聞きません~~!!」、「デザイン変更しません。赤ステッカーで上から目隠しで貼って4月1日に目隠しステッカーをはがします。」などと記載していた。 (乙22の30、113)キ職員倫理条例違反(本件行為10)について 原告は、平成28年10月31日、糸島市に納入される救助工作車の中間検査のために、東京出張した際に、救助工作車を製作した事業者の関係者と、酒席を共にした。 (争いがない)⑹ 原告に対する注意・指導等について原告は、平成15年7月31日、職員に対する暴力行為(職員同士の喧嘩) に及んだことについて、訓戒処分を受けたことがあるものの、本件処分以前に懲戒処分や分限処分を受けたことはない。 また、原告は、本件処分の理由とされた本件各行為について、上司等から、適切な注意・指導を受けたと認めることはできない。 この点、A1は、平成26年9月14日、原告がVに対し、声を荒げて詰 め寄ったこと(本件行為6⑸)について、原告の態度には問題があると思い、 原告を注意したと供述するものの、他方で、原告が組織批判をしていることを目にしながら、上司として原告を注意して態度を改めさせることができなかったのは、事を大げさにしたくないという意識が働いて悪いことに目をつぶって逃げていたからだと思う旨の供述をしていることに照らし、A1が、原告に対し、適切な注意・指導を行ったとは認め難い。 また、原告の離席時間が したくないという意識が働いて悪いことに目をつぶって逃げていたからだと思う旨の供述をしていることに照らし、A1が、原告に対し、適切な注意・指導を行ったとは認め難い。 また、原告の離席時間が長いこと(本件行為7)について、元消防署長であったWは、原告が離席し1時間20分も事務室に上がってこないので注意していたと述べるものの、Wが平成25年3月に退職していることからして、同人が原告の離席時間が長いことにつき注意・指導したと認めることはできないし、平成28年当時、原告の直属の上司であったC1は、原告の離席時 間が長いという印象を持っていたものの、原告がどこに行っていたか把握しておらず、離席時間が長いことについて注意した形跡はない。 なお、平成27年4月から平成28年10月までの間に開催された消防本部の部門会議(課長職にあったC1も出席していた。)において、当時、次長であったXが、担当者の放送での呼び出しが多いように思われるとして、 全職員を対象に長時間の離席を控えるよう注意喚起していたことが認められる。 このほか、C1は、平成28年12月から平成29年2月頃、原告がB1に対し、人事評価に対する不満を訴えた場面に立ち会っており(本件行為8)、その際の原告のB1に対する態度には問題があると思ったものの、原告の言 い分が正しいということもあり見て見ぬふりをしたと供述しており、原告の上司に対する態度について、注意・指導したとは認められない。 (乙21、68、69、94) 2 分限処分にかかる処分事由の有無の判断について公務員に対する分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認めら れるものの、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることは許されず、 その判断が合理性をもつ判断として許容 公務員に対する分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認めら れるものの、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることは許されず、 その判断が合理性をもつ判断として許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法なものであることを免れないというべきである。そして、分限処分が免職である場合は、公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において、特に厳密、慎重であることが要求されるものと解される。 したがって、地公法28条1項1号にいう「人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合」の該当性判断については、原則として、当該事実を示す書面等の客観的根拠たり得る資料に依拠してされるべきである。また、同条1項3号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の容易に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等 に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうところ、その該当性判断については、当該職員の外部にあらわれた個々の行動、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度について相互に有機的に関連づけてこれを評価すべく、当該職員の経歴や性格、 社会環境等の一般的要素をも考慮する必要があり、これら諸般の要素を総合的に検討したうえ、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関係でこれを判断すべきである。そして、人事院通知の趣旨に照らし、適格性の欠如の有無を判断するに当たっては、上司等が注意又は指導を繰り返し行ったか、職員の矯正を目的とした研修の受講を命じたかなど、職員の矯正のために必要と認め る措置がとられたか否 照らし、適格性の欠如の有無を判断するに当たっては、上司等が注意又は指導を繰り返し行ったか、職員の矯正を目的とした研修の受講を命じたかなど、職員の矯正のために必要と認め る措置がとられたか否かという観点からも慎重に検討する必要があるというべきである。 3 原告について、人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくないといえるか否か⑴ 前記前提事実⑵及び認定事実⑵によれば、原告は、平成20年4月に消防 司令補に、平成25年4月に消防司令(第3警備課長補佐)に任ぜられると ともに、部隊長に次ぐ中隊長に任ぜられるなど、消防吏員として採用された後、順調に昇進していること、平成25年3月から平成29年3月までの期間における原告に対する評価は、平成27年9月の企画立案・政策形成及び服務規律・倫理観の各項目並びに平成28年3月の服務規律・倫理観の項目につき2とされた以外は、いずれの評価要素ないし考課項目についても3以 上であり、概ね良好であったことが認められ、「能力・態度評価シート」及び「能力考課シート」等の客観的な資料に照らせば、原告の勤務実績に問題があったとは認められない。 なお、平成28年9月の人事評価において、第2次評価者であったB1が、第1次評価者による評価を大きく下回る評価をしたことに関して、第1次評 価者に確認し、理由を説明することなく修正したことに強く抗議し、その結果、第1次評価者の評価を上回る評価に変更されたことが認められるが、第1次評価者の評価及び第2次評価者であったB1の対応に照らせば、原告の抗議によって評価が不当に歪められたとは認め難い。 ⑵ これに対し、被告は、被告の人事評価制度は、平成28年4月までは処遇 等に反映しない形で運用されていたため、その頃まで、いず せば、原告の抗議によって評価が不当に歪められたとは認め難い。 ⑵ これに対し、被告は、被告の人事評価制度は、平成28年4月までは処遇 等に反映しない形で運用されていたため、その頃まで、いずれの職員に対しても総合評価で最下位区分をつけることはなく、また、当時の消防本部の昇任方法において、消防吏員昇任試験に合格すれば、昇任候補者名簿に登載された順に、昇任候補者の勤務態度、資質等を考慮することなく昇任していたことから、入庁後の原告の経歴や「能力考課シート」等における人事評価は、 客観的根拠たり得ない旨主張する。 しかしながら、原告に対する人事評価は概ね良好であったことは前記のとおりであって、1次評価者所見においても、能力や積極性が評価されていること、原告の直属の上司であったA1やC1は、いずれも、原告について、上司に対しても、相手を言い負かそうとするような強い口調、態度であるこ とから、煙たがられることはあるものの、まじめで仕事熱心であると評価し ていること(甲27、乙68)に照らし、原告の勤務実績が総合評価で最下位の段階と評価されるような状況であったとは到底認められない。また、原告について、昇任するに従って幹部批判等が激しさを増し、注意・指導が困難になったとの評価はあるものの、原告の上司であったC1は、原告について、本人の能力や頑張り、積極性などが評価されて昇進していったと思う旨 供述しており(甲27)、原告が消防司令等の役職に応じた職責を果たしていなかったとは認め難い。 ⑶ 以上によれば、原告について、人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合に該当すると認めることはできない。 4 原告について消防吏員の職に必要な適格性を欠く場合に該当するといえるか 否か⑴ 前 事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合に該当すると認めることはできない。 4 原告について消防吏員の職に必要な適格性を欠く場合に該当するといえるか 否か⑴ 前記認定事実(1⑸)によれば、原告は、平成20年頃には、Mの悪口を公然と口にするようになり、平成26年4月以降、2部批判を繰り返すようになったこと、Mのほか、2部の部隊長であったOや第2小隊の小隊長であったPについても、同人らを誹謗中傷するような発言を繰り返していたこと、 本件メールの中で、自分と意見を異にする職員を「左翼もん」などと総称して、批判していたこと、平成22年ないし平成23年頃、当時消防長であったQや2部の部隊長であったRを批判し、また、時期は不明であるものの、E1やB1について、他の職員が居合わせる場面で「ボンクラ」などと発言したこと、平成28年7月頃には、B1について、消防官としても管理職と しても不適格者であるなどと本件メールに記載したことが認められる(本件行為1ないし5)。また、人事評価を巡る一連の言動(本件行為8)は、原告の言い分に理があったにせよ、上司に対する態度としては、行き過ぎた非礼な態度があったこと、救助工作車を巡る職務命令違反(本件行為9)については、意図的に消防長の指示を無視したことがうかがえる。 これに対し、職場環境に対する意識の欠如(本件行為6)については、原 告の同僚ないし部下を注意・指導する際の言動が時に苛烈であり、原告を畏怖する若手職員が相当数存在したことは認められるものの、本件行為6に掲記された各行為は、Uに対する暴行を除いて、パワー・ハラスメントとまでは評価し得ず、Uに対する暴行についても、懲戒処分等で個別に対応すべき問題である。また、職務専念義務違反(本件行為7 件行為6に掲記された各行為は、Uに対する暴行を除いて、パワー・ハラスメントとまでは評価し得ず、Uに対する暴行についても、懲戒処分等で個別に対応すべき問題である。また、職務専念義務違反(本件行為7)について、原告の離席 時間が長かったことは認められるものの、業務のために離席した時間がどの程度含まれるかは必ずしも明らかではないこと、原告の離席時間が長いことについて、上司が指導した形跡はないこと、消防本部の部門会議において、全職員を対象に長時間の離席を控えるよう注意喚起していたことからすると、原告についてのみ、職務専念義務違反が問題視されていたとは認められない。 なお、職員倫理条例違反(本件行為10)については、懲戒処分等で対応すべき行為であって、原告の適格性の欠如を基礎づける行為とは認め難い。 ⑵ 本件行為1ないし5にかかる原告の言動の中には、激烈な表現で特定個人を誹謗中傷する内容が含まれているところ、かかる言動は、当該個人に対する他の職員の信頼を失わせ、消防隊員相互の信頼関係の構築を阻害するもの であるし、上司に対する侮辱的な表現は、消防本部内の秩序を乱し、指揮系統の混乱に繋がりかねないものである。また、所属部署に対する誹謗中傷は、消防本部全体の団結力及び統制を破壊し部隊間の不信感や対立を生じさせるものといわざるを得ない。そして、原告が課長補佐として部下を指導すべき立場にあったことに鑑みると、原告において、率先して第三者を誹謗中傷し、 幹部職員に対しても、不遜・非礼な態度で食ってかかるなど、職場の秩序を乱すような言動があったことは、管理職としての適格性に問題があると評価されてもやむを得ない事情というべきである。 さらに、原告は、本件メールにおいて、消防本部が組織として取り組んでいたパワー・ハラスメント防 動があったことは、管理職としての適格性に問題があると評価されてもやむを得ない事情というべきである。 さらに、原告は、本件メールにおいて、消防本部が組織として取り組んでいたパワー・ハラスメント防止対策一環である職場環境改善アンケート等に ついて、若手職員におもねるものなどと非難し、同アンケートの結果につい ても、便所の落書きなどと述べて、事実関係を確認しようともせず、パワー・ハラスメントに類する行為を告発する意見等を一刀両断に切り捨てるような言動に及んでいたことは、パワー・ハラスメントを容認する姿勢と受け止められかねず、管理職としては不適切な態度といわざるを得ない。 ⑶ しかしながら、本件メールは、原告に近い数名の職員に宛てた私信にすぎ ず、平成25年当時、消防本部消防職員委員会及び安全関係者会議において、「上司が職務上の権限で部下を統率することは必要不可欠であり、その権限の行使が安易にパワハラとされることは隊の運用を困難にし、災害対応力の低下につながる」との意見が提出されるなど、訓練の在り方等については、消防本部内でも様々な意見が存在したことからすると、原告の意見に同調す る者が相当数存在し、これらの者の一部がパワー・ハラスメントと捉えられる行為に及んだとしても、そのことから直ちに、原告が当該行為を主導したと評価することはできない。また、原告は、幹部批判に際し、人格攻撃に及ぶことはあったものの、基本的には、当該幹部の個別の判断ないし対応等を非難するものであって、殊更に職場秩序を乱したとまでは認められないし、 その結果、消防活動の現場において、支障が生じたとも認められない。 ⑷ そして、原告は、平成15年7月に訓戒処分を受けたことはあるものの、本件処分以前に懲戒処分や分限処分を受けたことはないこと、 その結果、消防活動の現場において、支障が生じたとも認められない。 ⑷ そして、原告は、平成15年7月に訓戒処分を受けたことはあるものの、本件処分以前に懲戒処分や分限処分を受けたことはないこと、本件処分の理由とされた本件各行為についても、上司等から適切な注意・指導を受けたことはないこと、被告において、全職員を対象に職員倫理研修を実施しており、 原告もこれを受講したことが認められるものの、原告の矯正を目的とした研修ではないことを考慮すると、上記のような原告の問題行動について、その矯正のために必要と認める措置がとられたとはいえない。また、原告が上司に対しても、相手を言い負かそうとするような強い口調、態度であることから、原告の指導を躊躇する幹部職員が相当数存在したことはうかがえるもの の、幹部職員において、原告の行動や態度を問題視し、組織として原告に対 する指導方法等を検討した形跡もないことからすると、原告について、今後の指導・教育によって、消防職員としての適格性を回復させることが困難であるとまでは認め難い。 ⑸ したがって、上記⑴で認定した本件各行為のほか、外部にあらわれた個々の行動、態度について、相互に有機的に関連付けてこれを評価しても、原告 について、容易に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合とはいえないから、原告が、その職に必要な適格性を欠くと認めることはできない。 第4 結論 以上によれば、本件処分は、地公法28条1項1号及び3号所定の処分事由が認められないにもかかわらず、これがあることを前提としたものといわざるを得ず、裁量権の行使を逸脱した違法があるというべきである。 よって 、本件処分は、地公法28条1項1号及び3号所定の処分事由が認められないにもかかわらず、これがあることを前提としたものといわざるを得ず、裁量権の行使を逸脱した違法があるというべきである。 よって、本件処分の取消しを求める原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官小野寺優子 裁判官有田浩規 裁判官大西優太は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官小野寺優子

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