平成21(行コ)84 原告所有小型船舶の河川水利使用権利確認請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成19年(行ウ)第89号)

裁判年月日・裁判所
平成21年7月8日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文12,447 文字)

- 1 -主文 原判決中,船舶の撤去命令の取消しに係る部分を取り消す。 前項の部分につき,本件を横浜地方裁判所に差し戻す。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 主文第1項と同旨 神奈川県知事が,平成19年10月4日付けで控訴人に対してした原判決別紙船舶目録記載の船舶(以下「本件船舶」という)の撤去命令を取り消す。 。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,神奈川県知事が管理する二級河川であるα川に本件船舶を錨のみによって係留していた控訴人が,平成19年10月4日付けで同知事が河川法(以下「法」という)75条1項の規定に基づき控訴人に対してした本件船。 舶の撤去命令処分(同項の「その他の措置」として命じられたもの。以下「本件撤去命令」という)の取消しを求めるとともに,将来における本件撤去命。 令に基づく代執行の差止めを請求した事案である。 原判決は,控訴人の訴えをいずれも却下したため,控訴人が控訴をした。控訴人は,原判決中本件撤去命令の取消しに係る部分についてのみ不服を申し立てたので,当審の審理の対象は,同部分に限られる。 本件の争点及び争点に関する当事者の主張は,控訴人の当審における主張を次のとおり補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の3及び4(原判決3頁15行目から6頁13行目まで)に記載のとおりであるから,こ- 2 -れを引用する。ただし,原判決3頁17行目を削り,同頁18行目の「( )」 を「( )」に改め,同4頁16行目から5頁13行目までを削り,同頁14行 目の「( )争点( )」を「( )争点( )」に改め,同6頁2行目の「河川法」 を「法」に改める。 ( )法75条1項の規定による監督処分は,係留施設に係留されている船舶 の除 の「( )争点( )」を「( )争点( )」に改め,同6頁2行目の「河川法」 を「法」に改める。 ( )法75条1項の規定による監督処分は,係留施設に係留されている船舶 の除却を命ずることはできるが,錨のみによって停泊している船舶の撤去を命ずることはできない。 ,( )神奈川県内にはα川以外にβ川及びγ川といった二級河川があるところ 神奈川県知事は,β川及びγ川においては許可を得ない占用を容認しているのに,α川における占用についてのみ撤去命令を発することは,法の下の平等(憲法14条1項)に違反する。 第3当裁判所の判断 本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益について( )行政処分を受けた者が当該行政処分によって課せられた公法上の義務を 任意に履行し,その結果,当該行政処分が目的を達成した場合には,当該行政処分の法的効果は消滅し,当該行政処分の取消しを求める訴えの利益も消滅する。そこで,まず,本件で控訴人が本件撤去命令によって課された義務を任意に履行し,本件撤去命令が目的を達成したということができるかどうかを検討する。 証拠(甲1の1,3の1,12,29の1及び2,32,33,乙1,3から6まで,12,原審控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 - 3 -ア神奈川県知事は,法10条1項の規定に基づき,二級河川であるα川(逗子市所在)を管理している。 イ控訴人は,遅くとも平成19年9月4日から,神奈川県知事の許可を受けないで,本件船舶をα川に錨のみによって係留させるようになった。 控訴人は,α川沿いの駐車場(神奈川県逗子市δ-×-27所在)を年間契約で借り,同駐車場に軽トラックを停め,同所近くのα川に係留している本件船舶に乗り込んでいた。 ウ神奈川県知事は,平成19年 。 控訴人は,α川沿いの駐車場(神奈川県逗子市δ-×-27所在)を年間契約で借り,同駐車場に軽トラックを停め,同所近くのα川に係留している本件船舶に乗り込んでいた。 ウ神奈川県知事は,平成19年9月12日付けで,控訴人が本件船舶をα川に係留することは法24条の規定に違反するので,本件船舶の撤去命令を予定しているとして,控訴人に対し,行政手続法13条1項2号の規定に基づき,弁明書を提出するよう通知した。 エ神奈川県知事は,平成19年10月4日付けで,控訴人に対し,本件船舶の係留は法24条の規定に違反するとして,法75条1項の規定に基づき,同月25日までに本件船舶をα川から撤去するように命じた(本件撤去命令。 )オ控訴人が本件撤去命令に従わず,本件船舶をα川から撤去しなかったので,神奈川県知事は,平成19年11月14日付けで,控訴人に対し,行政代執行法3条1項の規定に基づき,同月25日までに控訴人が本件撤去命令を履行しないときは,本件船舶撤去の代執行をする旨文書で戒告した。 カ控訴人は,平成19年11月21日,本件撤去命令の取消しを求める本件訴訟を提起した。 キ神奈川県知事は,同年12月7日付けで,控訴人に対し,行政代執行法- 4 -3条2項の規定に基づき,次の内容の代執行令書を送付した。 (ア)物件の所在地二級河川α川(イ)物件の名称本件船舶(ウ)代執行の時期平成19年12月19日から同月27日まで(エ)代執行責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理A(オ)代執行に要する費用の概算見積額約18万円から36万円ク控訴人は,平成19年12月12日,係属中の本件撤去命令の取消訴訟に,代執行の差止請求を追加する訴えの変更申立てをした。 ケ被控訴人の代執行担当者は,平成19年12月19日,本件撤去命令についての 控訴人は,平成19年12月12日,係属中の本件撤去命令の取消訴訟に,代執行の差止請求を追加する訴えの変更申立てをした。 ケ被控訴人の代執行担当者は,平成19年12月19日,本件撤去命令についての代執行を実施しようとしたが,控訴人が同日早朝に本件船舶をα川から移動させたため,実施することができなかった。 コ控訴人が上記ケの本件船舶の移動を行ったのは,代執行を免れるためであり,その後民間の施設と契約して,本件船舶を係留し,又は陸揚げして保管している。控訴人は,本件取消訴訟に勝訴したら,直ちに本件船舶をα川に戻すことを明言している。 一方,神奈川県知事は,控訴人が本件船舶を再びα川に係留することを困難にするような措置をとっていないので,控訴人は,本件船舶を容易にα川に戻すことができる。 サ本件船舶は,小型船舶の登録等に関する法律の規定により登録されているところ,控訴人は,平成20年10月27日,その船籍港を横浜市から逗子市に変更する変更登録を行った。 ( )ところで,本件撤去命令は,控訴人が本件船舶の係留によってα川の河 - 5 -川区域内の一定の土地を占用しているとして(なお,後記のように,法24条にいう「河川区域内の土地の占用」とは,ある特定の目的のために,その目的を達成するのに必要な限度において,公共用物である河川区域内の土地を排他的,継続的に使用することをいい,河川区域内の土地に固着せず水面部分だけを使用する場合も,河川管理上支障があると認められるような場合には「占用」に含まれると解される,控訴人に対し,本件船舶をα川の。)河川区域から撤去して,河川区域内の土地の占用の解消を義務付けるものである。 そこで,上記( )の事実関係に照らし,控訴人が任意にα川の河川区域内 の土地の占用を解消して上記義務を履行したといえるか 川区域から撤去して,河川区域内の土地の占用の解消を義務付けるものである。 そこで,上記( )の事実関係に照らし,控訴人が任意にα川の河川区域内 の土地の占用を解消して上記義務を履行したといえるかどうかを検討する。 この点については,以下の点を指摘することができる。本件での河川区域内の土地の占用は,上記のように本件船舶を錨のみによって係留することでされているから,本件船舶が係留場所から一時的,暫定的に移動したとしても,容易に元の係留場所に戻り,再び占用を継続することが可能であるという特質を有する。したがって,本件船舶がα川の河川区域から任意に移動したとしても,それが一時的,暫定的なものであって,容易に元の係留場所に戻り,占用を継続できるという場合には,本件船舶の移動をもって控訴人の占用が解消されて本件撤去命令の目的が達成されたものと評価することは相当でないというべきである。 これを本件についてみると,上記( )によれば,①控訴人は,平成19年 10月4日付けの本件撤去命令により,本件船舶をα川から撤去するように命じられ,同年11月14日付けで同月25日までに本件撤去命令を履行し- 6 -ないと代執行をする旨の戒告を受けると,時を置かずに同月21日に本件撤去命令の取消しを求める本件訴訟を提起していること,②控訴人が同年12月19日に本件船舶をα川から移動させたのは,代執行を免れるためであり,控訴人は,本件取消訴訟に勝訴したら,直ちに本件船舶をα川に戻すことを明言しており,平成20年10月には本件船舶の船籍港をあえてα川のある逗子市に変更していること,③神奈川県知事は,控訴人が本件船舶を再びα川に係留することを困難にするような措置をとっていないので,控訴人は本件船舶を容易にα川に戻すことができるという事情が認められるから,控訴人の行 いること,③神奈川県知事は,控訴人が本件船舶を再びα川に係留することを困難にするような措置をとっていないので,控訴人は本件船舶を容易にα川に戻すことができるという事情が認められるから,控訴人の行った本件船舶の移動は一時的,暫定的なものであり,かつ,控訴人は本件船舶を容易に元の係留場所に戻すことができるといえるのである。したがって,本件では,控訴人の占用が解消されて本件撤去命令の目的が達成されたものとすることは相当でない。なお,この点の判断は,控訴人が民間の施設と契約して本件船舶を係留し,又は保管しており,本件船舶をα川から移動させた後約1年半近くが経過しているということにより左右されるものではない(本件で,本件船舶の移動後経過した期間の長短により,本件撤去命令の目的が達成されたか否かが決まるとすると,訴訟が長引くと訴えの利益が消滅することになって,妥当を欠くことが明らかである。 。)そうすると,控訴人には,本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。 したがって,本件を第一審裁判所に差し戻すべきである(行政事件訴訟法7条,民事訴訟法307条。 )なお,本件は,以下のとおり,当審が本案について判断できる例外的な場合- 7 -に当たらない。 すなわち,本件撤去命令は,法24条の規定に基づくものであるところ,同条は,河川区域内の土地を占用しようとする者は,河川管理者の許可を受けなければならないと定めている。この「河川区域内の土地の占用」とは,ある特定の目的のために,その目的を達成するのに必要な限度において,公共用物である河川区域内の土地を排他的,継続的に使用することをいい,河川区域内の土地に固着せず水面部分だけを使用する場合も,河川管理上支障があると認められるような場合には「占用」に含まれると解するのが相当であ る河川区域内の土地を排他的,継続的に使用することをいい,河川区域内の土地に固着せず水面部分だけを使用する場合も,河川管理上支障があると認められるような場合には「占用」に含まれると解するのが相当である。なお,河川区域は,法6条1項で定義されており「河川の流水が継続して存する土,地」が含まれる。 河川区域内の土地(水面部分を含む。以下同じ)を排他的,継続的に使用。 するということは,当然そこに一定範囲の特定の土地が観念されなければならないのであり,被控訴人は,本件撤去命令の適法性を基礎付けるため,河川区域内の土地を特定した上,控訴人が本件船舶により当該部分を排他的に(すなわち他の使用を排除して,かつ,継続して(すなわち一定期間以上連続し)て)使用していることを主張,立証する必要がある。しかしながら,本件では,占用に係る土地の特定が不十分であることが明らかである(なお,特定の桟橋にチェーン等で結び付けて固定するような形態での係留を想定すると,当該桟橋を特定さえすれば当該桟橋から一定の距離内の特定の土地を観念できないことはないが,本件では,錨のみにより固定する形態での係留という主張であるから,端的に錨のみにより固定した船舶が排他的,継続的に使用しているとする土地部分の特定が必要である。また,当該部分を排他的,継続的に使用。)- 8 -したといえるかについての主張,立証も尽くされていない(控訴人の主張ははなはだ不分明であるが,錨のみによる停泊であるから,排他的,継続的な使用ではないということを主張しているとも読み取れるものである。 。)したがって,本案を判断するためには,審理がなお必要であり,本件は,当審が本案について判断できる例外的な場合に当たらない。 以上によれば,控訴人には本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が認められ たがって,本案を判断するためには,審理がなお必要であり,本件は,当審が本案について判断できる例外的な場合に当たらない。 以上によれば,控訴人には本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が認められ,これを否定した原審の判断には誤りがあるから,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法307条により,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部裁判長裁判官大坪丘裁判官宇田川基裁判官尾島明(原裁判等の表示)主文- 9 - 本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 神奈川県知事が,平成19年10月4日付けで原告に対してした別紙船舶目録記載の船舶の撤去命令を取り消す。 神奈川県知事は,原告に対し,前項の船舶撤去の代執行処分をしてはならない。 第2事案の概要 事案の骨子二級河川であるα川を管理する神奈川県知事は,原告が河川法(以下「法」ともいう)24条の規定に違反して別紙船舶目録記載の船舶(以下「本件船。 舶」という)をα川に係留しているとして,平成19年10月4日付けで,。 原告に対し,法75条1項に基づき,本件船舶を撤去するよう命じ(以下「本件撤去命令」という,同年11月14日付けで,行政代執行法3条1項に。)基づき,本件船舶撤去の代執行をする旨を戒告し,同年12月7日付けで,同法3条2項に基づき,代執行令書を送付したものの,原告はそのころ本件船舶をα川から移動させたため,代執行の実施には至らなかった。 本件は,原告が,被告に対し,本件撤去命令の取消し及び本件船舶撤去の代執行を差し止めるよう求めた事案である。 基礎となる事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) には至らなかった。 本件は,原告が,被告に対し,本件撤去命令の取消し及び本件船舶撤去の代執行を差し止めるよう求めた事案である。 基礎となる事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)( )原告は,本件船舶を所有している(甲1の1,32,33,乙1。 )- 10 -( )原告は,遅くとも,平成19年9月4日には,法10条1項に基づき二 級河川であるα川を管理する神奈川県知事の許可を受けないで,本件船舶をα川に停泊させるようになった(乙3。 )( )神奈川県知事は,原告が,河川区域内の土地を占用しようとする者は河 川管理者の許可を受けなければならないとする法24条の規定に違反して本件船舶をα川に係留していることから,本件船舶に対する撤去命令を予定しているとして,同月12日付けで,原告に対し,行政手続法13条1項2号に基づき,弁明書を提出するよう通知した(乙3。 )( )神奈川県知事は,同年10月4日付けで,原告に対し,法75条1項に 基づき,同月25日までに本件船舶を撤去するよう命じた(本件撤去命令。 甲3の1,乙4。 )( )神奈川県知事は,同年11月14日付けで,原告に対し,行政代執行法 3条1項に基づき,同月25日までに本件撤去命令の履行がないときは本件),船舶撤去の代執行をする旨を文書で戒告し(乙5,同年12月7日付けで同法3条2項に基づき,以下の内容の代執行令書を送付した(乙6。 )ア物件の所在地二級河川α川イ物件の名称本件船舶ウ代執行の時期同月19日から同月27日までエ代執行責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理Aオ代執行に要する費用の概算見積額約18万円から36万円( )被告の担当者は,同月19日,本件撤去命令についての行政代執行を実 施しようとしたが 責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理Aオ代執行に要する費用の概算見積額約18万円から36万円( )被告の担当者は,同月19日,本件撤去命令についての行政代執行を実 施しようとしたが,原告が同日早朝に本件船舶をα川から移動させていたた- 11 -め,実施することができなかった(乙12。 )( )原告は,その後現在に至るまで,本件船舶をα川に戻していない。 争点 ( )本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益の有無 ( )本件船舶撤去の代執行の差止めを求める訴えの適法性 ( )本件撤去命令等の適法性 争点に関する当事者の主張( )争点( )(本件撤去命令の取消訴訟の訴えの利益)について (原告の主張)原告は,本件撤去命令によって,本件船舶をα川にびょう泊できず,α川の水利利用ができなくなっており,本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益がある。 (被告の主張)ア本件撤去命令の目的は,α川からの本件船舶の撤去であるから,それさえされれば処分の法的効果は消滅することになるが,河川の不法係留船は容易に移動できるため,撤去してからの期間,撤去された船の係留場所の確保等を総合的に勘案して,処分の相手方が命令を受け入れ自主的に撤去したと認められない等の特別の事情がある場合には,撤去命令処分が履行されたとはいえない。 本件において,原告は,自らのした撤去は行政代執行を免れるための緊急避難であること,α川に係留する権利があることを主張しており,自主的に撤去されたという状況になく,本件撤去命令は現在でも有効であり,- 12 -本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が消滅したとはいえない。 イもっとも,本件においては,原告がα川から本件船舶を撤去した事実があり,撤去後の期間が長期間であること,原告が係 り,- 12 -本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が消滅したとはいえない。 イもっとも,本件においては,原告がα川から本件船舶を撤去した事実があり,撤去後の期間が長期間であること,原告が係留施設との間で本件船舶を係留するための契約をしているという事情があるから,これをもって処分の目的が達成され,本件撤去命令は履行されたと解されなくもなく,そうだとすれば,本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益があるとはいえない。 ( )争点( )(代執行の差止訴訟の適法性)について (原告の主張)原告は,代執行処分によって,本件船舶をα川にびょう泊できず,α川の水利利用ができないことになるが,これにより,平成18年12月に永年勤務した団体を退職した原告が,同19年1月から生計を立てるために始めた本件船舶を利用しての相模湾一帯を作業現場とする船舶の修理業が行えなくなり,また,修理業を行うにしても,α川にびょう泊した場合より燃料代と時間を要するようになったとの不利益を被るから,本件撤去命令に基づき今後行われる代執行処分全般の差止めを求める。 (被告の主張)ア本件船舶が現時点においてα川にないという事実関係の下においては,神奈川県知事は本件船舶をα川から撤去させる行政代執行を行う状況になく,行政事件訴訟法3条7項にいう「一定の処分・・・がされようとしている場合」に当たらず,このような差止請求は認められない。 イまた,不法係留船の行政代執行は,たんにその船を当該河川から移動さ- 13 -せることが目的であり,通常,移動した船は一定期間県有地ほかに留め置かれることになるが,船の所有者は,行政庁に申し出ることにより自らの権原のある場所に移動させ,以前のとおり使用することができるから,原告に重大な損害が生ずるおそれ(行政事件訴訟法37条の4 に留め置かれることになるが,船の所有者は,行政庁に申し出ることにより自らの権原のある場所に移動させ,以前のとおり使用することができるから,原告に重大な損害が生ずるおそれ(行政事件訴訟法37条の4第1項)があるとはいえない。 しかも,原告は,行政代執行により本件船舶を使用した修理業ができなくなるわけではなく,原告が現在本件船舶を係留させている施設が修理の作業場所から遠いというにすぎず,事前の救済を認めなければならない程度の損害があるとはいえない。 ( )争点( )(本件撤去命令等の適法性)について (原告の主張)ア原告は,本件船舶をα川にびょう泊していただけであり,係留していたわけではない。びょう泊とは,自船の錨で留まりいつでも船を出せる状態のことであり,係留とは陸岸の設備にロープをつなげて船を留めることであり,両者は「航行中』とは,船舶がびょう泊をし,陸岸に係留をし,,『又は乗り揚げていない状態をいう」と規定する海上衝突予防法3条9項。 でも区別されている。α川に係留設備はなく,係留船舶など存在しないのである。 イ神奈川県内の二級河川はα川のほか,β川及びγ川があるが,神奈川県知事は,β川及びγ川における水利利用は公認しているのに,α川における水利利用は禁止しており,これは差別以外の何ものでもない。 (被告の主張)- 14 -ア河川区域内における船舶の係留については,係留杭等の施設を設置して係留する場合には,河川法24条,26条等の河川管理者の許可が必要であり,また,錨のみによる係留等,係留施設を設置することなく係留する場合でも,一時係留でなければ,法24条の許可は必要である。 本件船舶は,平成19年4月以降,継続的に同一水面上に係留をしており,法24条に違反していたから,神奈川県知事は本件撤去命令をしたのであ 場合でも,一時係留でなければ,法24条の許可は必要である。 本件船舶は,平成19年4月以降,継続的に同一水面上に係留をしており,法24条に違反していたから,神奈川県知事は本件撤去命令をしたのであり,これは適法なものである。 イ神奈川県では,従前から不法係留船の対策に取り組んでいるが,不法係留船はかなりの数になりつつあり,また,恒久的な係留施設の建設が十分に進んでいない状況の下では,河川によっては一挙に強制的な撤去措置をとることが困難な状況にあった。県は,各河川の状況を踏まえて,対処方法が整った河川から順次不法占有対策を実施しているのであって,あえてα川だけを差別的に措置するというものではない。 第3当裁判所の判断 争点( )(本件撤去命令の取消訴訟の訴えの利益)について ( )前記第2の2( )のとおり,原告は既に本件船舶をα川から移動させてい るので,これにより本件撤去命令の取消しを求める利益が消滅するかどうかについて,検討する。 ( )この点,行政庁の処分の法的効果が既に消滅しているのであれば,取消 訴訟において処分を取り消し,個人の権利利益に対する侵害状態を解消させる必要がないから,訴えの利益は存在しないといわざるを得ない。そして,本件撤去命令は,河川法75条1項に基づく工作物の除去命令であるところ,- 15 -同命令はその名宛人に当該工作物を除去すべき義務を課すものであるから,当該工作物が除去されれば,処分の効果は消滅することとなる。 ( )これを本件についてみると,前記基礎となる事実及び証拠(甲24,乙 12,原告本人)によれば,神奈川県知事は,平成19年12月19日に本件撤去命令に係る行政代執行を行う予定であったところ,原告は,同日早朝に本件船舶をα川から自ら移動させ,そのころから横浜市ε区にある 2,原告本人)によれば,神奈川県知事は,平成19年12月19日に本件撤去命令に係る行政代執行を行う予定であったところ,原告は,同日早朝に本件船舶をα川から自ら移動させ,そのころから横浜市ε区にあるBに係留し,その後他の施設で保管していることが認められるから,本件船舶をα川から撤去するとの本件撤去命令の目的は達成され,本件撤去命令の法的効果は既に消滅したというべきである。 もっとも,原告は,本件船舶をα川から移動させたのは,行政代執行を免れるためであって,本件訴訟で勝訴した場合は直ちにα川に船舶を戻すと主張しているが,原告の供述によれば,原告が本件船舶をα川から移動させてから約1年もの期間が経過し,その間にα川に本件船舶を戻して停泊させたこともないというのであるし,原告は係留施設と契約を締結するなどして他に係留場所ないし保管場所を確保して,本件船舶を係留ないし保管させているというのであるから,原告による本件船舶のα川からの移動は必ずしも暫定的なものとはいえず,原告は本件撤去命令により課された義務を自ら履行したと解するのが相当である。 したがって,本件撤去命令の取消しを求める訴えは,その利益を欠くに至ったものといわざるを得ない。 争点( )(代執行の差止訴訟の適法性)について ( )原告は,第6回口頭弁論期日において,本件で原告が差止めを求めるの - 16 -は,前記第2の2( )の代執行令書(乙6)で予定された代執行ではなく, 本件撤去命令に基づいて今後行われる本件船舶の撤去に係る代執行処分全般であると主張している。 ( )これを前提に検討すると,上記1でみたとおり,本件撤去命令はその法 的効果を既に失っており,神奈川県知事によって本件撤去命令に基づいて今後本件船舶の撤去に係る代執行処分がされようとしているとはいえない を前提に検討すると,上記1でみたとおり,本件撤去命令はその法 的効果を既に失っており,神奈川県知事によって本件撤去命令に基づいて今後本件船舶の撤去に係る代執行処分がされようとしているとはいえないから(行政事件訴訟法3条7項,このような差止めの訴えは不適法である。 )なお,将来において原告が本件船舶をα川に停泊させ,河川区域内の土地を占用した場合には,神奈川県知事によりこれに対する撤去命令及び代執行の手続がとられることがあり得るが,本件の差止請求の趣旨を,このような新たな撤去命令に基づく代執行処分を含むものと解したとしても,原告が将来そのようなことをするかどうか,また,河川法75条に基づく監督処分がされるかどうかは不確実であり,このような事実関係の下では,代執行の差止めを求める訴えの利益を認めることはできないというべきである。 加えて,本件船舶撤去の代執行がされれば,原告としては一定期間本件船舶の利用ができなくなるが,原告の供述によれば,原告は,平成18年12月に勤務先を退職した後,本件船舶を利用して船舶等の修理業で生計を立てようと考えていたが,実際にはほとんど行っておらず,その他には特に本件船舶を利用することはないというのであって(なお,原告は年金で生活しているようである,原告に行政事件訴訟法37条の4第1項が規定する。)「重大な損害を生ずるおそれがある」と認めることもできない。 ( )したがって,いずれにせよ,本件船舶撤去の代執行の差止めを求める訴 - 17 -えは不適法である。 争点( )(本件撤去命令等の適法性)について ( )以上のとおり,本件訴えはいずれも不適法であるが,本件訴訟に至る経 緯及び本件訴訟における原告の対応等にかんがみ,本件撤去命令の適法性についての裁判所の判断を示すこととする。 ( ) ( )以上のとおり,本件訴えはいずれも不適法であるが,本件訴訟に至る経 緯及び本件訴訟における原告の対応等にかんがみ,本件撤去命令の適法性についての裁判所の判断を示すこととする。 ( )まず,原告は,本件船舶をα川にびょう泊していただけであると主張す るが,河川法24条は「河川区域内の土地を占用しようとする」場合には,河川管理者の許可を受けるべき旨を規定しており,係留施設を設置しない場合であっても,土地を排他的,継続的に使用していれば,上記許可を要するものと解される。 本件において,原告は,平成19年3月ころから本件船舶をα川に停泊させていたと供述しており,原告がその場所を占用していたことは明らかであって,原告は,河川法24条に違反して河川管理者である神奈川県知事の許可を予め受けないでα川を占用していたものである。 ( )また,原告は,神奈川県知事が,β川及びγ川について規制せずにα川 のみ規制し,これが差別である旨主張する。 しかし,証拠(乙12)によれば,神奈川県は,α川については,河口付近の県有地を事業者に貸し付け,小型船舶保管施設を整備(平成18年6月に運営開始)し,不法係留船の所有者に対し,当該施設との利用契約の締結を促す措置をとりつつ,船舶を撤去しない所有者に対しては,一斉に,平成19年9月ころから,河川法75条1項に基づく監督処分及び行政代執行の手続をとったことが認められ,あえてα川に係留された船舶,あるいは本件- 18 -船舶だけを差別的に取り締まったものとはいえない。 ( )したがって,神奈川県知事による本件撤去命令は適法であり,この点に 関する原告の主張は採用することができない。 結論 よって,本件訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所 件撤去命令は適法であり、この点に関する原告の主張は採用することができない。 結論 よって、本件訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし、主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官北澤章功裁判官土谷裕子裁判官高橋心平

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