【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人大塚重親、同高木常光の上告理由について 論旨は、要するに、上告人の
主文 原判決を破棄する。 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人大塚重親、同高木常光の上告理由について論旨は、要するに、上告人の原審における「被上告人が、昭和三八年五月二八日、旭川簡易裁判所法廷で、訴外Dに対し、原判決別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)についての共有持分の売却を追認するとともに、訴外Dへの持分移転登記を省略して直接上告人に対し右移転登記手続をすることに同意した」旨の主張は、被上告人の兄訴外Eが被上告人の無権代理人として訴外Dに対し被上告人に属する共有持分を売却し、上告人においてDから買主の地位の譲渡を受けた旨の上告人の予備的主張(以下「売買等に関する予備的主張」又は単に「予備的主張」という。)との関係においてのみ主張されたものではなく、被上告人の母Fが被上告人の法定代理人としてDに対し被上告人に属する共有持分を売却し、上告人においてDから買主の地位の譲渡を受けた旨の上告人の主位的主張(以下「売買等に関する主位的主張」又は単に「主位的主張」という。)との関係においても主張されたものであるにもかかわらず、原審が主位的主張の当否を判断するに際し右の点につき判断を示さないまま主位的主張を排斥したのは判断遺脱の違法を犯したものであり、仮に、主位的主張に対する関係においても主張されたことが明確でなかつたとするならば、原審は釈明権を行使して主張の趣旨を明確にしなかつた点において釈明義務を尽くさず、審理不尽の違法を犯したものである、というのである。 よつて審案するに、原審は、上告人が被上告人に属していた本件土地の共有持分を売買によつて取得したかどうかを判断するについて、本件土地は、もと被上告人の母F、姉G、兄E、被上告人の妹H、同I、同J及び被上告人の共有 に、原審は、上告人が被上告人に属していた本件土地の共有持分を売買によつて取得したかどうかを判断するについて、本件土地は、もと被上告人の母F、姉G、兄E、被上告人の妹H、同I、同J及び被上告人の共有に属し、F- 1 -が九分の三、その余の者が各九分の一の共有持分を有していたものであるところ、昭和二七、八年頃、右共有者七名は、Dとの間で、当時未成年であつた被上告人及びその妹三名についてはその親権者である母Fが法定代理人として、それぞれの共有持分につき売買契約を締結したが、その後昭和三〇年九月に、上告人がDから右売買契約上の地位の譲渡を受けたものである旨の上告人の主位的主張にそう事実を認定したが、上告人がDから右の買主の地位の譲渡を受けた際、被上告人から右譲渡に対する承諾を受けた旨の上告人の主張についてはこれを認めるに足りる証拠がないとして、結局上告人の主位的主張を排斥している。 ところで、右のように不動産売買における買主の地位が第三者に譲渡された場合において売主が右譲渡を承諾したときは、右譲渡は売主に対してもその効力を生じ、譲受人は、買主としての地位を取得するから、売主に対し直接目的不動産についての登記請求権を取得するのである。そこで、冒頭掲記の被上告人の同意に関する上告人の原審における主張と主位的主張との関係をみるに、上告人の主位的主張と予備的主張との間で主張の内容を異にする点は、Dに対して被上告人の共有持分が売り渡された際、何びとが被上告人を代理して契約を締結したかについてのみであつて、Dから上告人に対する譲渡契約の内容が目的物の転売ではなく買主の地位の譲渡であることはその主位的主張においても予備的主張においても異なるところのないことは、前判示のとおりである。したがつて、上告人の原審における前記主張のうち、被上告人がDへの持分移転 く買主の地位の譲渡であることはその主位的主張においても予備的主張においても異なるところのないことは、前判示のとおりである。したがつて、上告人の原審における前記主張のうち、被上告人がDへの持分移転登記をすることを省略して直接上告人に右登記をすることに同意したとの部分については、その真意が、転売が行われた場合のいわゆる中間省略登記の合意を主張しようとするものではなく、買主の地位がDから上告人に移転したことに伴い、売主である被上告人において直接買主である上告人に対し持分移転登記をすることに同意した旨、換言すれば、買主の地位の譲渡につき売主としてこれに承諾を与えた旨を主張する趣旨であることは、容易に理解しえた- 2 -ところといわなければならない。してみれば、右の主張は、特段の事情のない限り、上告人の売買等に関する主位的主張に関しても、Dが上告人に買主の地位を譲渡した当時被上告人が右譲渡を承諾していた旨の上告人の主張が認められない場合についての第二次的な承諾の主張(以下「第二次的承諾の主張」という。)として判断の対象とすべきものであつたというべきである。もつとも、本件記録に徴すると、上告人の訴訟代理人は、原審の最終口頭弁論期日において、「原判決(第一審判決)の事実摘示中、請求原因3の主張は、同2の主張が理由なしとされた場合の予備的な関係で主張するものである」との釈明的な陳述をしたことが明らかであるところ、第一審判決の事実摘示中の請求原因3の主張には、被上告人の兄Eが代理権がないにもかかわらず被上告人を代理して本件土地の被上告人の共有持分をDに売り渡したこと、被上告人が右無権代理行為を追認したことについての主張とDの上告人に対する買主の地位の譲渡を承諾した旨の主張とが含まれており、一見、後者の主張は前者の主張に関してのみされているかのような したこと、被上告人が右無権代理行為を追認したことについての主張とDの上告人に対する買主の地位の譲渡を承諾した旨の主張とが含まれており、一見、後者の主張は前者の主張に関してのみされているかのような観があるけれども、後者の主張が売買等に関する主位的主張についてもこれを理由あらしめるに足りる主張であることは前記説示のとおりであるから、上告人の前記釈明がことさらに右第二次的承諾の主張を売買等に関する予備的主張との関係においてのみする趣旨で述べたものと解することはきわめて不合理であるといわざるをえず、原審がもしそのような趣旨に解しようとするなら、少なくともこの点についてさらに陳述の真意を確かめるべき義務があつたものといわなければならない。そうであるとすると、論旨指摘の主張を第二次的承諾の主張として判断の対象とすることなく上告人の主位的主張を排斥した原判決は、判断遺脱の違法を犯したか、又は釈明権の行使を怠つた結果審理不尽の違法を犯したものといわなければならず、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 よつて、民訴法四〇七条に従い、原判決を破棄し、右の点につきさらに審理を尽- 3 -くさせるため、本件を札幌高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官団藤重光裁判官藤崎萬里裁判官本山亨裁判官戸田弘裁判官中村治朗- 4 - 亨裁判官 戸田弘裁判官 中村治朗
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