平成30(ワ)1465 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年12月15日 さいたま地方裁判所
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判決文本文37,716 文字)

- 1 -令和3年12月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第1465号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和3年9月1日判決主文 1 被告は,原告に対し,55万円及びこれに対する平成30年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その9は原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,550万円及びこれに対する平成30年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の設置する中学校に在籍していた原告が,サッカー部内でいじめを受けたことについて,同中学校の教諭ら及び被告の教育委員会がいじめ防止義務や不登校解消義務等の職務上の義務に違反したと主張して,被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,慰謝料及び弁護士費用の合計550万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の各証拠(特に枝番を付記しない場合は全枝番を含む。以下同様。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) - 2 -⑴ 原告(平成▲年▲月▲日生)は,原告法定代理人(以下「原告母」という。)の子である。原告は,小学校時代は中等度の発達障害(ADHD)と診断されていた。(甲57)⑵ 原告の在籍中,本件中学校の校長はa(以下「校長」という。)が務め,教頭は,平成29年1 いう。)の子である。原告は,小学校時代は中等度の発達障害(ADHD)と診断されていた。(甲57)⑵ 原告の在籍中,本件中学校の校長はa(以下「校長」という。)が務め,教頭は,平成29年1月まではb(以下「b教頭」という。)ほか1名,同月以降はb教頭及びc(以下「c教頭」という。)が務めていた。 原告の担任教諭は,1学年時はd(以下「d教諭」という。),2学年及び3学年1学期まではe(以下「e教諭」という。),同2学期から卒業時まではf(以下「f教諭」という。)が務めた。また,3学年の学年主任はg(以下「g教諭」という。)だった。 原告の1学年及び2学年時,サッカー部の顧問は,元プロサッカー選手であるh(以下「h教諭」という。)が務めていた。 川口市教育委員会(以下「市教委」という。)の指導主事は,平成27年4月から平成30年3月までi(以下「i」という。)が務めていた。 ⑶ 原告は,平成27年4月,川口市立j中学校(以下「本件中学校」という。)に入学し,同年5月頃,サッカー部に入部した。 原告は,1学年時は欠席日数が3日間であったが,2学年以降複数回不登校になった。原告の主な不登校期間は,平成28年5月9日から12日まで(以下「不登校1」という。),同年9月14日から平成29年3月24日まで(以下「不登校2」という。),平成29年11月2日から同年12月15日まで(以下「不登校3」という。),平成30年1月24日から同年3月15日まで(以下「不登校4」という。)である。なお,同日,本件中学校で卒業式が開催された。 原告は,埼玉県立k高等学校を受験し,同月9日合格した。 ⑷ 本件中学校は,平成29年1月10日,被告市長に対し,市教委を通じて,原告について重大事態(いじめ防止対策推進法(以下「 催された。 原告は,埼玉県立k高等学校を受験し,同月9日合格した。 ⑷ 本件中学校は,平成29年1月10日,被告市長に対し,市教委を通じて,原告について重大事態(いじめ防止対策推進法(以下「法」という。)28条 - 3 -1項)が発生した旨を報告した(法30条1項)。被告は,同年2月,川口市いじめ問題調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設け,同年3月,同委員会による調査が開始された。同委員会は,平成30年3月14日,「いじめ事案に関する報告書」をまとめ,次の行為を法2条1項のいじめと認定した。 (甲1)ア平成27年5月,サッカー部のLINEグループから原告のみ外された(以下「本件行為1」という。)。 イ平成28年3月,サッカー部の練習中,原告は,同学年の部員(以下,原告と同学年の同部部員を「部員」という。)の一人にTシャツの後ろの襟首を引っ張られ,首が絞められた状態で倒された(以下「本件行為2」という。)。 ウ同年5月,部員の一人と原告が映画を見る約束をしていたが,同人は原告に断りなく別の生徒と約束の前日に同じ映画を見に行き,約束の当日は原告に連絡せず別の友人と遊びに行った。原告がそのことを訴えると,同人は,怒って部員らに対し原告から一方的に文句を言われたと言い,原告が周囲から責められることになった(以下「本件行為3」という。)。 エ同月,原告の自宅で遊ぶことを断られた部員4名が,原告と交際している本件中学校の生徒の自宅に行き,周辺で騒いだ(以下「本件行為4」という。)。 オ平成28年9月,カード販売店に行きたがっている原告の前で,部員の一人が原告以外の生徒と同店に行く約束をした(以下「本件行為5」という。)。 カ同月,LINEにおいて,原告が中傷されたり,原告の自宅 年9月,カード販売店に行きたがっている原告の前で,部員の一人が原告以外の生徒と同店に行く約束をした(以下「本件行為5」という。)。 カ同月,LINEにおいて,原告が中傷されたり,原告の自宅の画像が投稿されたりした(以下「本件行為6」という。)。 キ平成28年1月ないし11月,LINEにおいて,原告がなりすましによるからかいや誹謗中傷を受けた(以下「本件行為7」という。)。 2 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ 争点1 本件中学校の教諭らの行為の違法性の有無(原告の主張) - 4 -ア教諭らの職務上の義務について本件中学校の教諭らは,生徒の心身の安全に配慮し学習環境を整備すべき義務を負い,生徒がいじめを受けるときは,以下の義務等を負う(法23条2項ないし4項,28条1項2号)。 いじめ防止義務 調査義務 組織的対応義務 いじめの加害生徒及びその保護者に対する指導助言義務 被害生徒及びその保護者との信頼関係構築義務 不登校防止義務及び不登校解消義務 いじめ解消確認義務イ不登校1までの対応 d教諭は,平成27年5月,原告母から本件行為1について知らされ,本件行為1がLINE外しと呼ばれる典型的ないじめであるにもかかわらず,その重大性を認識せず,原告への聞き取り調査やh教諭との情報共有を行わず,いじめを根絶する義務を怠った。のみならず,d教諭は,部員らに軽率に注意を与え,原告が逆恨みされる原因を作った。 教諭らは,本件行為1に適切な対応がされずいじめの温床が放置されていたから原告が更にいじめを受けることが予見されたにもかかわらず,いじめ防止義務を怠り本件行為2以降 れる原因を作った。 教諭らは,本件行為1に適切な対応がされずいじめの温床が放置されていたから原告が更にいじめを受けることが予見されたにもかかわらず,いじめ防止義務を怠り本件行為2以降のいじめを発生させた。その後原告の受けたいじめは,全て教諭らが更なるいじめが予見されたにもかかわらずこれを防止しなかった結果発生したものである。教諭らは,いじめ防止義務を尽くさず本件行為2~4のいじめを発生させ,しかも原告及び原告母から本件行為2~4について対応を求められても,調査や指導等を行わなかった。このため,原告は,同年5月9日から欠席を余儀なくされ,不登校1に陥った。 - 5 -ウ h教諭の体罰h教諭は,不登校1の間,原告を家庭訪問し,原告に対し,原告のj中ノート(生徒が家庭学習の内容を記入し学級担任に提出してコメントを受けるためのノート)を自分が見ることを申し出た。原告は,憧れていたh教諭への信頼から登校を再開した。ところが,h教諭は,平成28年7月15日及び同年9月5日,職員室において,原告に対し,j中ノートに空白が多いことを注意し,右手拳でその頭部を殴打し左手で右耳を引っ張る体罰を加えた。h教諭の行為は,生徒に安心して学習できる環境を提供するどころか,恐怖心と不信感を抱かせ不登校を招来するから,学習環境整備義務に違反し違法である。 エ不登校2の間の対応 不登校2の原因原告は,平成28年9月12日に本件行為5のいじめを受け,h教諭の体罰により同教諭への信頼を失い,同月14日から不登校2に陥り,また,同月15日未明,左手首をカッターナイフで切る自傷行為(以下「本件自傷行為」という。)に及んだ。 教諭らの不対応教諭らは,同月15日,原告母が本件中学校で校 ら不登校2に陥り,また,同月15日未明,左手首をカッターナイフで切る自傷行為(以下「本件自傷行為」という。)に及んだ。 教諭らの不対応教諭らは,同月15日,原告母が本件中学校で校長やh教諭らと面談し,本件行為5も含めたそれまでのいじめの全てを説明し,原告が不登校に陥り本件自傷行為に及んだことを伝えた。にもかかわらず,教諭らは,何ら原因調査や改善措置を行うことなく,同月17日に本件行為6のいじめを発生させた。原告母は,同月23日,校長に対し原因調査と改善措置を求めたが,校長は,1週間程度の時間が欲しいと述べたまま連絡しなかった。 さらに,原告母は,同年10月7日,校長に対し,原告につき重大事態が発生した旨を申し立て,同月24日には不登校1と合わせ原告の年 - 6 -間欠席日数が30日に達した。ところが,教諭らは,埼玉県教育委員会(以下「県教委」という。)や文部科学省(以下「文科省」という。)から重大事態として対応するよう指導を受けながら,平成29年1月10日まで法28条1項2号に基づく調査を行おうとしなかった。 教諭らの信頼関係破壊行為教諭らは,不登校2の間,原告及び原告母との信頼関係構築に努めるどころか,積極的に信頼関係を破壊する行為をした。 a 校長は,平成28年9月15日,本件自傷行為等の相談に訪れた原告母に対し,「嫌がらせ等をしていた子ども達は,要領が良く今の社会に適応していると思いますが,その点l君が遅れているのでは?」と発達障害を抱えた原告に責任があるかのような発言をした。 b 本件中学校は,同月27日,原告の不登校等に関してサッカー部保護者会を開催した。教諭らは,同会に原告母を出席させなかった。また,同会において,h教諭は,「子供たちを家に集めていたのは原告母である。」 件中学校は,同月27日,原告の不登校等に関してサッカー部保護者会を開催した。教諭らは,同会に原告母を出席させなかった。また,同会において,h教諭は,「子供たちを家に集めていたのは原告母である。」「原告になりすまして原告母がラインをしている可能性がある。」「(本件行為2について)原告母は首が絞まった状態で校庭1周引きずり回されたと言っているようだが,実はちょっと引っ張っただけである。」などと,原告母によるいじめの訴えは狂言ないし誇張である旨の発言をした。 c 本件中学校は,同年10月11日,サッカー部保護者会を開催し,原告母も出席したが,教諭らは,原告母の発言を遮って加害生徒の保護者にのみ話をさせた。また,同会の際,b教頭は,原告が部員らから「死ね」とのLINEメッセージを受け取ったことについて,文字だけではいじめに当たらないという発言をした。 d 校長は,同年12月20日に原告母と面談した際,「子ども達に悪気はないのでいじめではありません。」との発言をした。 - 7 -e 本件中学校は,調査委員会が設けられたことを受けて,平成29年1月31日,サッカー部保護者会を開催したが,その開催を原告母に事前に知らせず,参加させなかった。b教頭は,同会を欠席した保護者に電話を掛け,調査結果が出たわけでもないのに「調査の結果いじめはなかった。」と伝えた。 オ登校再開についての対応 校長は,平成29年3月28日,原告及び原告母に対し,原告の登校再開における支援内容を記載した「l君の今後の支援体制について」(甲3。以下「本件支援体制」という。)を提示し,担任が原告から目を離さない旨を約束した。 原告は,これを信じて同年4月10日に登校したが,同日担任のe教諭が目を離した際にサッカー部員らから指をさされて笑わ 下「本件支援体制」という。)を提示し,担任が原告から目を離さない旨を約束した。 原告は,これを信じて同年4月10日に登校したが,同日担任のe教諭が目を離した際にサッカー部員らから指をさされて笑われるなどしたため帰宅した。その後も,原告がサッカー部員から「うざ」などと言われて早退したことがあり,上記約束は徹底されなかった。 原告母は,平成29年5月12日,原告の通学靴の靴底に黒いペンで「しね」「うざ」と書かれているのを発見した。いじめを受けて不登校になった生徒が安心して登校を再開するには,いじめ防止が最も肝要な措置であり,上記いじめの発生は,いじめ防止措置が尽くされなかったことの結果である。原告母は,直ちに本件中学校に連絡し調査を依頼したが,速やかな対応はなく,同月26日にようやく校長から全クラスで情報提供を呼びかけたとの連絡を受けた。しかも,この連絡は事実に反しており,実際には,半数のクラスでしか呼びかけが行われなかった。 カインターネット上のいじめについての対応等同年10月1日,インターネット掲示板に「川口市j中学校サッカー部いじめ事件」と題するスレッド(以下「本件スレッド」という。)が立ち上がり,原告を誹謗中傷する多数の投稿がされた。これを知った原告は, - 8 -平成29年10月5日から同月13日まで不登校に陥った。 本件中学校の教諭らは,本件スレッド上のいじめについて,調査,指導及び記事の削除に向けた協力等を怠った。なお,校長は,本件中学校で同月20日に開催された全校保護者会において本件スレッドに関し注意喚起を行うと約束しながら,これを行わず,また,同年11月21日,実際には配布していないのに本件スレッドに関する注意喚起文書を全校生徒に配布した旨虚偽の報告をし,原告及び原告母の信 レッドに関し注意喚起を行うと約束しながら,これを行わず,また,同年11月21日,実際には配布していないのに本件スレッドに関する注意喚起文書を全校生徒に配布した旨虚偽の報告をし,原告及び原告母の信頼を損なった。 本件スレッドにおけるいじめの防止措置がとられなかったため,本件スレッドにおける誹謗中傷がエスカレートし,原告は同年11月2日から不登校3に陥った。本件中学校の教諭らは,本件スレッドにおけるいじめにより原告が不登校に陥ることを予見すべきであるにもかかわらず,不登校3を防止する義務を怠り,また,不登校3は原告母の画策であるなどと決めつけ,不登校3を解消する義務を怠った。 キ補習・受験・卒業式についての対応等 原告は,不登校期間中,授業のプリントや連絡文書を適時に自宅に届けてもらえず,卒業記念品の申込書が申込期間を過ぎてから届けられたこともあった。 原告は,本件支援体制において5教科について不登校期間の授業の補習を行う旨が約束されていたにもかかわらず,補習を受けられなかった。 埼玉県では,10日以上欠席がある生徒は,志望校に提出する調査書に欠席理由を記載するものと定められていた。ところが,校長が欠席理由の記載を拒否したため,原告は私立高校を受験することができなかった。原告は,上記校長の対応により本件中学校に対する信頼を傷つけられ,平成30年1月24日から不登校4に陥った。本件中学校の教諭らは,上記校長の対応により原告が不登校に陥ることが予見すべきでありながら,不登校4を防止する義務を怠り,また,不登校4は原告母の画 - 9 -策であるなどと決めつけ,不登校4を解消する義務を怠った。 原告は,卒業式で卒業生が親への感謝の手紙や担任へのメッセージカードを渡 義務を怠り,また,不登校4は原告母の画 - 9 -策であるなどと決めつけ,不登校4を解消する義務を怠った。 原告は,卒業式で卒業生が親への感謝の手紙や担任へのメッセージカードを渡す企画があることを知らせてもらえず,卒業式の前日に他の保護者から上記企画を知らされることになった。原告は,疎外感を感じ情緒不安定となって,卒業式に参加できなかった。 (被告の主張)ア教諭らの職務上の義務について本件中学校の教諭らは,教育的裁量の範囲内で生徒の安全に配慮する義務を負うのであり,原告又は原告母からいじめの訴えを受けたとき,それが法2条1項のいじめに該当するか否か,該当するとしても支援・指導を要するか否かを判断し,さらに,いかなる措置(法23条)を講ずるかを選択する上での裁量を有する。そして,ここにおける教諭らの判断は,裁量の濫用・逸脱がない限り,国賠法上違法の評価を受けない。 イ不登校1までの対応について 教諭らは,原告がLINEグループから退会させられた旨を聞き,部員らから事情を聴取し,LINEグループを作り直すため全員退会とし,原告も入れて新しいグループが作られたことを確認した。教諭らは,原告がいじめを訴えることなく部員らと親密な交流を続けていたため,いじめに該当しないと判断しつつも,部員らに対しLINEの使い方につき一般的な指導をした。なお,d教諭が部員らに注意を与えて原告が部員らから逆恨みされた事実はない。 h教諭は,平成28年4月,原告母から,原告がサッカー部の練習中部員の一人に引き倒されたと伝えられたが,原告母が対応しなくてよいと述べ,原告からいじめの訴えもなかったため,いじめではないと判断した。なお,当該部員は,原告に先に蹴られたため,同行為を行ったと述べていた。 引き倒されたと伝えられたが,原告母が対応しなくてよいと述べ,原告からいじめの訴えもなかったため,いじめではないと判断した。なお,当該部員は,原告に先に蹴られたため,同行為を行ったと述べていた。 - 10 - h教諭は,平成28年5月の連休明けに原告母から部員との映画の約束を破られたと知らされ,不登校1の初日に原告宅を訪問した際,原告から同行為を気にしていると聞いた。h教諭は,部員らから事情を聴取し,部員複数名で映画の約束をしていたところ,その中の1名が後で約束の日に行けなくなったため,原告に声を掛けた部員と前日同じ映画に行ったということを確認した。h教諭は,部員らに対し,約束を変更するときは約束した相手に事前に連絡するよう指導し,e教諭からも2年生全員に同様の指導をした。h教諭は,原告母より約束を破った部員及び保護者から謝罪を受けたと聞き,原告からも仲直りしたと聞いた。 部員らが原告と親しい生徒の家に行ったのは,不登校1の前の時期ではなく,平成28年8月頃である。h教諭は,同月頃,原告母から,当該生徒が部員らの訪問に恐怖を感じたと言っていたという話を聞いた。 原告母は,原告が告げ口をしたと思われたくないので誰が言ったのか分からないように指導してほしいと求め,h教諭は,原告母の了解を得た上で,近隣住民から騒音の苦情があったことにし,その限度で部員らを指導した。 ウ h教諭の行為についてh教諭は,原告に対し,指導の際,軽く握った右手の指側で原告の頭を叩き,親指と人差し指で耳たぶをつかみ1~2秒軽く引っ張ったのであるが,有形力の行使の程度・態様に加え,当時原告及び原告母から好意的に受け入れられていたことに鑑みれば,h教諭の同行為について,教育的指導の範囲を逸脱し違法であるとはいえない。 軽く引っ張ったのであるが,有形力の行使の程度・態様に加え,当時原告及び原告母から好意的に受け入れられていたことに鑑みれば,h教諭の同行為について,教育的指導の範囲を逸脱し違法であるとはいえない。 エ不登校2の間の対応 教諭らの不登校解消義務や調査義務等の履行についてa 校長らは,平成28年9月15日,原告母から,本件自傷行為があったこと,本件自傷行為や欠席の原因がサッカー部内のトラブルであ - 11 -ること,サッカー部の活動停止及び大会出場停止の措置を求めることを伝えられた。なお,本件自傷行為は,原告に確認できておらず,客観的な裏付けを欠くことから否認する。 なお,教諭らは,本件行為5について知らされたことがないから,対応することは不可能である。 b 校長らは,翌16日に家庭訪問し,原告母から本件行為2がいじめであるとの訴えを受けた。h教諭らは,部員らに事情を聞き,練習中に原告から2回蹴られた部員が怒って原告を引き倒したことを確認した。教諭らは,当該部員や保護者から原告母に謝罪させた。 ch教諭は,同日頃,原告と公園でサッカー練習を行うことを提案し,原告への支援として,同年9月から10月にかけて複数回原告と二人でサッカー練習を実施した。 dh教諭は,原告母から部員らが自宅の写真を撮っているとの連絡を受け,当該部員らに画像データを流出させないよう指導するとともに原告母に謝罪させ,保護者にも連絡して家庭での指導を促した。 e 校長は,同月23日,原告母から不登校の原因究明と改善策を求められ,同月27日にサッカー部保護者会を開催するなどの対応をした。 fh教諭は,翌28日の朝,部員らとともに原告宅に原告を迎えに行き,部員らから原告に声掛けを行 から不登校の原因究明と改善策を求められ,同月27日にサッカー部保護者会を開催するなどの対応をした。 fh教諭は,翌28日の朝,部員らとともに原告宅に原告を迎えに行き,部員らから原告に声掛けを行うなどした。 g 原告母は,校長や市教委に対し重大事態であるとの申立てをしていない。また,本件中学校の教諭らは,原告自身は部員らからいじめを受けたと思っておらず,そう考えているのは原告母だけであり,不登校2はいじめを原因とするものではなく,重大事態の発生もないと判断した。原告が不登校2の前日まで部活に参加し,いじめの相談をしたことがないこと,不登校になった後も,原告が部員らを悪く思っておらず早く通学したい旨や,原告母の指示で欠席している旨を述べた - 12 -ことがあったこと,原告母が部員の保護者らと対立関係にあったことなどを総合すると,上記教諭らの判断は相当なものである。 教諭らの発言等についてa 平成28年9月15日の校長の発言は,競技中のコミュニケーション能力に関するもので,原告の発達障害に言及したわけではない。また,校長は,翌日原告母に謝罪した。 bh教諭は,部員から原告母に自宅に来るよう誘われて困っているという話を聞いていたので,同月27日のサッカー部保護者会においてこれを伝えたにすぎない。 c 教諭らは,同年10月11日のサッカー部保護者会において,原告母の発言を遮っていない。同会でのb教頭の発言は,生徒の未熟な言葉の一部を切り取って論難するべきではないとの参加者の発言を肯定したにすぎない。 d 校長は,同年12月20日に原告母と面談した際,原告の再登校に向けた協議ができるように,原告母の主張に丁寧に対応した。 eb教頭は,平成29年1月31日のサッカー部保護者会の後, 。 d 校長は,同年12月20日に原告母と面談した際,原告の再登校に向けた協議ができるように,原告母の主張に丁寧に対応した。 eb教頭は,平成29年1月31日のサッカー部保護者会の後,欠席した保護者に電話をかけて調査委員会の調査への協力を求めたが,「調査の結果,いじめはなかった。」との発言はしていない。 オ登校再開についての対応 校長は,原告が登校を再開するに当たり,原告母の要望を受けて,部員らと原告との間にトラブルが起きないよう配慮することを約し,クラス編成において,原告と部員らを同じクラスとせず,原告の教室と同じ階の教室に部員らを置かないことや,原告母の意に沿う担任を当てるなどの措置をとった。なお,登校再開に際し,校内で原告と部員らが絶対に会わないことを保証した事実はない。 e教諭は,平成29年5月12日,原告母から原告の通学靴に落書き - 13 -があるとの連絡を受け,直ちに原告宅を訪問し落書きを確認した。その際,原告母は,原告が落書きに気付いていないので原告に分からないように調査してほしいと希望した。教諭らは,各クラスで靴のいたずらに心当たりがないかを呼びかけ,また,3学年を集めて不審行動を見かけた者はないかと問いかけるなどしたが,犯人は見つからなかった。なお,原告は,靴の落書きに気付かないまま平常通り通学し部活に参加していたから,この事実はいじめに該当しない。 カインターネット上のいじめについての対応教諭らは,本件スレッドに原告以外の複数名の部員らの実名等が投稿され,後に原告及び原告母を非難する投稿もあったため,実名等が投稿された部員らが警察に相談するのに同行し,部員ら及び保護者らに対し心理カウンセリングを実施し,全校生徒に対し,同年11月24日頃注意喚起 れ,後に原告及び原告母を非難する投稿もあったため,実名等が投稿された部員らが警察に相談するのに同行し,部員ら及び保護者らに対し心理カウンセリングを実施し,全校生徒に対し,同年11月24日頃注意喚起文書を配布し,同年12月15日に情報モラル教室を開催した。なお,校長は,同年11月21日,上記注意喚起文書が配布前であったのを配布済みと誤解して報告したが,故意に虚偽の報告をしたわけではない。 原告は,本件スレッド上の投稿を全く知らない様子で,これについて苦痛を訴えることもなかった。不登校3は,原告母が本件中学校に保護者会を開催させるために原告を欠席させたのであり,本件スレッドの投稿等との関連性はないから,教諭らが不登校3につき不登校防止義務や不登校解消義務を怠ったとはいえない。 キ補習・受験・卒業式に係る対応について原告の担任は,原告の欠席期間中,原告に対し,クラスの生徒に毎週配布物を届けさせた。なお,卒業記念品の申込書は,PTA独自の企画であり学校の配布物ではない。 本件支援体制では5教科の補習は約束されていない。本件中学校では,平成29年4月14日から平成30年2月23日まで,放課後原告に補 - 14 -習を実施すべく,アシスタント・ティーチャー(以下「AT」という。)を配置し体制を整えたが,原告は思うように参加せず,同年6月21日を最後に全くATの補習に参加しなくなった。さらに,教諭らは,原告に対し,一対一の補習を行おうとしたが,原告の参加は乏しかった。教諭らは,同年11月15日,原告の学習支援スケジュールを作成し,また,平成30年1月19日,高校受験に向けた補習計画を作成していたが,原告が不登校4に陥ったため2日間しか実施できなかった。 教諭らは,原告に対し,願書の書き方など受験につい 作成し,また,平成30年1月19日,高校受験に向けた補習計画を作成していたが,原告が不登校4に陥ったため2日間しか実施できなかった。 教諭らは,原告に対し,願書の書き方など受験について適切な指導を行った。なお,原告は,高校受験の対応等により本件中学校の教諭らに対する信頼を傷つけられて不登校4に陥ったと主張するが,不登校4は,原告母が本件中学校に保護者会を開催させるためにあえて原告を欠席させたものである。したがって,教諭らが不登校4につき不登校防止義務や不登校解消義務を怠ったとはいえない。 卒業式において生徒から担任にメッセージカードを渡すという企画は,PTAの企画であり学校は関与していない。また,保護者に感謝の手紙を渡すという企画は,サプライズ企画であるため原告に直接知らせたいと考えていたが,その機会が得られなかったのである。 ⑵ 争点2 市教委の行為の違法性の有無(原告の主張)原告母は,平成28年10月12日,市教委に対し,原告について重大事態が発生したとの申立てをし,同月24日には原告の年間欠席日数が不登校1と合わせ30日に達した。しかし,市教委は,平成29年1月10日まで本件を重大事態と認識せず,重大事態の調査を行わなかった。 また,市教委は,その管理下にある本件中学校の教諭らの違法な職務行為に対し,指導助言を怠った。 (被告の主張) - 15 -市教委は,本件中学校から原告母及び原告に関する事情や本件の経緯を聴取し,原告の不登校の原因はいじめではないと判断したものである。本件中学校の教諭らの判断と同様,その判断に裁量の逸脱・濫用はない。 また,本件中学校の教諭らの対応は適法かつ合理的なものである。市教委は,教諭らからの事情聴取により,教諭らの対応は相当なものであり, 中学校の教諭らの判断と同様,その判断に裁量の逸脱・濫用はない。 また,本件中学校の教諭らの対応は適法かつ合理的なものである。市教委は,教諭らからの事情聴取により,教諭らの対応は相当なものであり,裁量の逸脱・濫用はないと判断したのであるから,市教委の教諭らに対する指導監督にも違法はない。 ⑶ 争点3 損害額(原告の主張)ア原告は,本件中学校の教諭ら及び市教委がいじめ防止義務や不登校解消義務等を尽くさなかったため,長期間の不登校に陥り,大人に自分の苦しみを理解してもらえず,いじめから救ってもらえなかったことに大きく心情を傷つけられた。原告は,今なお大人に対する不信感を抱え,過呼吸,不安,不眠等に苦しみ,これによりPTSDの回復が妨げられている。こうした原告の精神的苦痛は,不登校防止義務及び不登校解消義務等を怠った以上は当然予見し得るものであり,これを慰謝するための慰謝料の額は500万円が相当である。 なお,原告母が拒絶していたにもかかわらず,校長,g教諭及びf教諭が卒業証書を持参して原告宅に押し掛け,何度もインターホンを鳴らしたことを,慰謝料増額事由として主張する。 イ被告の上記義務違反行為と相当因果関係のある弁護士費用は50万円が相当である。 (被告の主張)争う。なお,校長らは,平成30年3月8日頃,原告母に対し,卒業式に原告が参加できない場合は卒業証書を自宅に届ける旨を告げ,原告母の承諾を得た上で,卒業式終了後,卒業証書や教室に残置された私物等を届けるた - 16 -め原告宅を訪問したのであり,その際,何度もインターホンを鳴らしていない。したがって,校長らの訪問は慰謝料増額事由に該当しない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実,証拠(掲記の各 訪問したのであり,その際,何度もインターホンを鳴らしていない。したがって,校長らの訪問は慰謝料増額事由に該当しない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実,証拠(掲記の各証拠のほか,甲1,11,61,81,87乙25~35,46,h教諭,i,原告母。なお,必要に応じ,以下でこれら証拠の頁等を掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 1学年時の経緯ア原告母は,平成27年4月,原告が本件中学校に入学するに当たり,本件中学校の教諭らに対し手紙を送付し,原告の発達障害についての支援(発達障害者支援法)を要請した。原告は,oセンターにおいてADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断を受け,平成17年10月から通院を継続していたが,小学校を卒業する頃には相当に改善していた。校長及びd教諭らは,平成27年5月15日,原告の主治医と面会した。また,原告母は,原告がサッカー部に入部するに当たり,h教諭に対し原告への支援を要請した。なお,原告はサッカーの経験がほとんどなかったが,他の部員らは経験豊富な者が多かった。(甲57)イ原告は,同年4月,部員らのLINEグループに加わったが,しばらくして部員Aが原告を退会させた。原告は,数日後,別の部員から招待を受け,部員らのLINEグループに加わった。原告母は,d教諭に対し,同月,原告がLINEグループから外されたりLINEで悪口を言われたりしたと伝えた。その頃,原告以外の2名の部員にもLINEメッセージのトラブルがあり,1学年主任やd教諭らは,部員らに対し,LINEの使い方について指導を行った。(乙1,47,48)ウ原告の自宅は,同年夏頃から多くの部員らが頻繁に遊びに訪れるように - 17 -なり,原告母は,菓子を出 は,部員らに対し,LINEの使い方について指導を行った。(乙1,47,48)ウ原告の自宅は,同年夏頃から多くの部員らが頻繁に遊びに訪れるように - 17 -なり,原告母は,菓子を出すなどして対応した。また,原告は,何度もサッカーの試合等のチケットを入手したと言って,部員らを観戦等に誘った。 (乙36,47,48)エ原告母は,h教諭に頻繁に電話で原告の様子等を連絡し,原告宅に部員らが遊びにくること,サッカー部の練習を見に行っていること,原告へのメッセージ等は全て確認していることなどを伝えていた。h教諭は,当時原告から慕われており,平成28年1月頃,原告から誕生日のプレゼントとして名前入りのボールペンを贈られ,原告にお返しとしてTシャツを渡したこともあった。 オ原告は,平成28年3月2日,サッカーの練習中に,部員BからTシャツの後ろ襟首をつかまれ引き倒された。原告母は,同日,自宅に来た部員らに原告が練習中倒されたのを見たのかと尋ねた。部員Bは,翌日原告に「昨日ごめんね!」とメッセージを送り,原告は「わかってるならもうやんないで」と返信した。部員Bは,その後も原告宅で遊んだり,原告と一緒にサッカー観戦に出かけたりした。h教諭は,同年4月に原告母からこのことを伝えられたが,事実調査や指導を行わなかった。(甲30,乙27・7~8頁,乙36)カ原告は,同年3月28日,部員の一人にLINEメッセージを送り,指導教諭らに渡す色紙に寄せ書きするか尋ねたところ,同部員の端末でメッセージを見た他の部員らが名乗らずに「仕切るな」などと返信し,原告はメッセージを送った相手からの返信と誤解したままやり取りを続けた。 (甲9・資料3,甲35,36)。 キ本件中学校は,2学年のクラスを原告母の要望に沿うように編成し な」などと返信し,原告はメッセージを送った相手からの返信と誤解したままやり取りを続けた。 (甲9・資料3,甲35,36)。 キ本件中学校は,2学年のクラスを原告母の要望に沿うように編成した。 ⑵ 2学年時の経緯ア原告は,平成28年5月初め頃,部員Cから複数の部員らと映画に行くのに誘われたが,部員Cは,約束の日より前の日に原告に無断で別の部員 - 18 -と同じ映画を見に行った。原告は,当該部員にLINEメッセージで「俺は8日楽しみにしてたんじゃないの?」と抗議した。(甲9・資料8,甲32,乙4,38)イ原告は,同月9日から12日まで欠席した(不登校1)。 h教諭は,e教諭から原告がサッカー部内のトラブルで欠席していることを聞き,同月9日夕方に原告宅を訪問し,原告から,上記アが気になっているという話を聞いた。その後,h教諭は,部員Cから事情を確認し,事前に原告に断る必要があったと指導した。また,e教諭は,2年生全員を集め,約束を守ることについて指導した。(乙27・8~9頁)ウ登校再開後,原告のj中ノートはh教諭が見ることになった。h教諭は,同年7月15日頃及び同年9月5日頃,原告にj中ノートについて指導する際,原告の頭を軽く握ったこぶしで叩いたり,原告の耳たぶを指で掴んで引っ張ったりした。これについて,原告は,j中ノートの連絡メモ欄に「ゲンコツありがとうございました」「たんこぶもたくさんです」と記載した。その頃,原告は,h教諭に対し,「h先生がいるから学校に行けます。」などと述べることがあった。(甲9・資料13)エ同年夏頃までに原告が部員らから受けたメッセージの中には「しね」「きらわれてんのあなたでーす」「お前自意識過剰やでー」等の言葉を伝えるものがあった。(甲9資料3・10) た。(甲9・資料13)エ同年夏頃までに原告が部員らから受けたメッセージの中には「しね」「きらわれてんのあなたでーす」「お前自意識過剰やでー」等の言葉を伝えるものがあった。(甲9資料3・10)。 オ原告は,同年夏頃,原告宅で遊びたいという部員Dらの誘いを断った。 その後,原告は,親しい女子生徒から,部員Dらが自宅に来て中に入れろと言われて困っている旨の連絡を受けた。h教諭は,後日原告母からこの出来事を伝えられ,部員Dらに対し,女子生徒宅の近隣住民から苦情があったので注意するようにと指導した。なお,部員Dらは,予め女子生徒に家に行ってよいかと尋ね,承諾を得てから訪問していた。(甲9・資料11,乙46~49) - 19 -カ同年9月3日頃,サッカー部の複数名の保護者による食事会の写真が投稿されたが,同食事会に原告母は参加していなかった。原告母は,同月5日頃,部員らが遊びに来て帰った後の散らかった自宅の様子の画像データを「中学2年にもなる子達なのに」等と書き添えて投稿した。原告母の投稿を受け,部員らが部屋を散らかしたまま帰ったことや部員らの保護者の躾を非難する第三者の投稿があった(乙6,乙37)。 キ部員らは,保護者らから原告母の投稿を知らされて,驚いたり,保護者らから注意されたりして,誰も原告宅を訪れなくなった。また,原告は,同月11日,部員Eから,「私達はもう友達ではありません」「では」とのメッセージの送付を受け,部員EはLINEトークを退出した。(甲9・資料7,乙6,36~39,47,48)また,同じ頃,原告がある部員と一緒にいたところ,そこに来た別の部員が原告ではない方の部員だけをカード販売店に誘うことがあった。 ク原告母は,同月12日,匿名で市教委に電話を掛け,本件中学校のサッカー部の部員 ある部員と一緒にいたところ,そこに来た別の部員が原告ではない方の部員だけをカード販売店に誘うことがあった。 ク原告母は,同月12日,匿名で市教委に電話を掛け,本件中学校のサッカー部の部員らに問題行動が多く,顧問の教諭らが適切な指導をしていないことを伝え,サッカー部の活動継続を認めるべきではないとの意見を述べた。校長は,翌日市教委の指導主事から連絡を受けた。(乙25・6~7頁,乙34・1~2頁)。 ケ原告は,同月14日から学校を欠席した(不登校2)。原告母は,同月15日,校長,h教諭らと面談し,原告が同日未明に自傷行為を行ったことを伝え,サッカー部内のトラブルで原告が苦しんでいるので活動停止の措置をとってほしいと述べた。その際,校長は,サッカーは高いコミュニケーション能力を要するスポーツであり,サッカーの経験の長い子は要領のよい子が多いが,経験の乏しい原告は他の子についていけず遅れてしまっているのではないかという趣旨の発言をした。原告母は,面談後市教委に電話し,原告の不登校や自傷行為を知らせ,校長から原告が他の部員に - 20 -比べ遅れていると言われたと伝えた。(乙25・7~9頁,乙34・3~4頁)コ原告は,同日,部員の一人からLINEでなぜ学校に来ないのかと尋ねられ,「行きたくない」と伝え,サッカー部内の人間関係について「俺が悪いわけじゃなくても誰かが何か言うと急にみんな態度変わったりぎゃくに聞きたい俺なにかした?って」などと訴えた。(甲40)サ校長は,同月16日,原告宅を訪問し,原告母に対し前日の発言を謝罪したが,原告には会えなかった。原告母は,校長に対し,原告が部員Bに引き倒されたことを裁判にすると伝えた。その後,原告母は,本件中学校に赴き,校長,h教諭,部員B及びその母と に対し前日の発言を謝罪したが,原告には会えなかった。原告母は,校長に対し,原告が部員Bに引き倒されたことを裁判にすると伝えた。その後,原告母は,本件中学校に赴き,校長,h教諭,部員B及びその母と面談し,原告がh教諭と一対一でサッカーの練習をすることを提案された。また,同日,サッカー部の保護者に対し,当面LINE等の使用を控えるよう家庭での指導を求める連絡文書が配布された。(乙25・資料2)シ h教諭らは,同日頃,部員Bが原告を引き倒した件について,部員Bやその時近くにいた部員らに事情を尋ね,部員Bが原告に何度か足を蹴られ,怒った部員Bが原告を引き倒したと聞いた。h教諭は,これを原告母に対し伝えたが,原告母は納得しなかった。(乙27・15~16頁)ス原告母は,同月18日頃,部員2名が原告宅付近の写真を撮っているのを発見し,本件中学校に連絡した。校長とh教諭は,原告宅を訪れて原告母に謝罪するとともに,部員2名から事情を聞いて原告母に謝罪させた。 その後,原告母は,部員Bらも原告宅付近の写真を撮り画像データを投稿したことを知り,本件中学校に連絡した。h教諭は,部員Bとその際一緒にいた部員に事情を確認し,原告母に謝罪させた。また,原告母は,同日,校長に対し,1年生の時原告がLINEグループから外された時,d教諭が不用意に部員らを叱ったため原告が逆恨みされたと述べたため,d教諭が原告母に対し謝罪した。 - 21 -その頃,原告は,部員BにLINEで家に遊びに来てほしいとのメッセージを送付したが,部員Bは行かなかった。(乙36)セ h教諭は,同日頃から10月2日にかけて4回にわたり,原告宅付近の公園で原告とサッカー練習を行った。 ソ校長は,同年9月23日に原告母から不登校の原因調査や改善措置を求 36)セ h教諭は,同日頃から10月2日にかけて4回にわたり,原告宅付近の公園で原告とサッカー練習を行った。 ソ校長は,同年9月23日に原告母から不登校の原因調査や改善措置を求められ,1週間時間がほしいと述べたが,その後,原告母に対し回答しなかった。(甲65)タ同月27日,サッカー部臨時保護者会が開催された。原告母は学校側から出席しないよう求められた。h教諭は,保護者らに対し経緯を説明する際,原告母が部員らを自宅に誘ってゲームや飲食をさせたり高価なチケットをあげたりしていたことや,原告が練習中に他の部員との間で蹴ったり引っ張られたりの小競り合いをしたなどと述べた。保護者会終了後,校長は,部員Bの父親と原告宅を訪れ,原告母に謝罪した。h教諭は,保護者会で部員らと原告を迎えに行くことが決まったため,翌朝及び翌々朝,部員らと原告宅に赴き,部員らが原告に謝罪し声掛けをしたが,原告は登校しなかった。この頃までに校長らは,原告母の投稿(上記カ)によって,部員ら及びその保護者らが原告母に対し警戒心や反感を持ち,部員の誰も原告宅を訪れない状態になったことを認識した。(甲71,乙8,乙25・13~16頁,乙27・18~21頁,乙35・2~3頁)チ原告母は,同年10月頃,原告が部員Bに引き倒されたことを警察に相談し,部員Bらは警察の事情聴取を受けた。(乙10,36,37)ツ原告母は,上記タの保護者会の様子を他の保護者から聞き,校長らに対し,保護者らに事実が伝えられなかったとして,再度の保護者会の開催を要望した。本件中学校は,同年10月11日,原告母の参加の下でサッカー部臨時保護者会を開催した。原告母は,部員らを自宅に誘ったわけではなく迷惑だったと述べたり,原告を迎えに来た際部員らの謝罪が不十分だ 。本件中学校は,同年10月11日,原告母の参加の下でサッカー部臨時保護者会を開催した。原告母は,部員らを自宅に誘ったわけではなく迷惑だったと述べたり,原告を迎えに来た際部員らの謝罪が不十分だ - 22 -ったと述べたりし,その際教諭らに発言を遮られた時があった。また,原告に対して「死ね」というメッセージが送付されたことが話題になった際,b教頭は,「ラインというのは相手の表情も感情も見えないただの文字です。」と述べた。校長は,同保護者会の後,原告母と部員Bの母とが話し合う場を設けた。しかし,原告が部員Bを蹴ったかどうかについて言い争いとなり,平行線のまま,原告母が退席した。(甲23,82,乙9,25,27,35)テ oセンターのm医師は,同日,原告を診察し「証明書」と題する書面を作成した。同医師は,原告が不登校状態にあり,「学校の友達からのいじめ,いやがらせによって,心理的に不安定となり,強い不安,不眠,自傷行為(リストカット)などを生じています。現状では登校はできないと思われます。よろしくご配慮をお願い申し上げます。」と記載した。同医師は,原告の手首が覆われているのを確認したが,原告が嫌がったため,傷口そのものを確認することは控えた。(甲44,乙59)。 ト原告母は,同月12日,市教委に対し,本件は重大事態に当たるのではないかと述べた(甲73,i30頁)。 原告母は,同月18日,県教委に対し,原告がいじめを受けて1か月前から不登校になっている旨を連絡した。市教委は,翌19日,県教委に対し,本件中学校の対応に問題はないと述べ,上記カの原告母の投稿についても報告した。県教委は,同月24日頃,市教委に対し,重大事態であることを念頭に置いて対応しているのかを確認し,原告母から連絡を受けた文科省も,同月26日頃,県教 と述べ,上記カの原告母の投稿についても報告した。県教委は,同月24日頃,市教委に対し,重大事態であることを念頭に置いて対応しているのかを確認し,原告母から連絡を受けた文科省も,同月26日頃,県教委に対し重大事態としての対応を考えなければならない旨を連絡したが,市教委は,本件中学校の対応に問題はなく原告本人は学校に行きたがっていると回答した。その後,原告母が,文科省や県教委に対し,本件中学校に事実調査や対応策を求めているのに何の連絡もない旨を伝え,県教委が市教委に対し適切な対応を求めるというこ - 23 -とが繰り返されたが,市教委は,同年12月14日,県教委に対し,現時点では重大事態として対応しないと伝えた。県教委は,保護者から申立てがあれば重大事態と捉えて対応する必要があると返答した。(甲11・1~7頁)ナ原告は,同年10月17日に家庭訪問したe教諭と会い,「(部員Bが)蹴ってないのに何か蹴ったとか今でも嘘付いてるから嫌」であることや,学校に行きたい気持ちも少しあるが,部員Bらがいるから嫌であるなどと述べた。e教諭及び原告母は10分なら登校できないかなどと原告を説得しようとしたが,登校するとの返事は聞けなかった。(甲82)ニ部員の一人は,同年11月15日,原告に対し,他の部員のアカウントを用い,名乗らずに,原告に自分のことを嫌いだと言わせようとするかのようなメッセージを送付した。原告は,途中で気付いて「うざいって言わせたいの?」と返信した。(甲9・資料2)ヌ同年12月9日,原告母は,市教委に対し,h教諭の上記ウの指導が体罰である旨を申し立てた。市教委の連絡を受けた校長は,h教諭から事情を聴取し,頭を叩いたり耳を引っ張ったりした際原告が嬉しそうにしており原告母も原告が喜んでいると述べていた旨を 諭の上記ウの指導が体罰である旨を申し立てた。市教委の連絡を受けた校長は,h教諭から事情を聴取し,頭を叩いたり耳を引っ張ったりした際原告が嬉しそうにしており原告母も原告が喜んでいると述べていた旨を聞いた。校長は,原告のj中ノートにh教諭からげんこつされたとの記載があることも確認した。市教委は,翌日校長から報告を受け,体罰には当たらないが以後注意してほしいと注意した。(乙25・24~25頁)ネ本件中学校は,同月20日,原告母(弁護士2名同席),本件中学校(校長及びb教頭),市教委(iら3名の指導主事),埼玉県武南警察署(同署警察官2名)による協議の場を設けた。協議の前,同署警察官は,校長に対し,原告は部員Bのことを気にしていない様子だったと伝えた。協議の場で,警察官は,部員Bが原告を引き倒した行為の立件は難しいが,部員B及び保護者への指導を行ったと報告した。校長らは,原告母に対し, - 24 -同行為は双方の喧嘩でありいじめではなく,h教諭の指導についても原告が喜んでいたとの報告もあり体罰に当たらないと認識している旨を伝えた。 原告母の依頼した弁護士は,校長らに対し,いじめ防止対策推進法においては本人が苦痛を感じていればいじめに該当するとされていることを理解しているのかと尋ねたり,医師の証明書(上記テ)を見せたりした。(甲11・8~9頁,乙10,乙25・27~30頁,乙26・7~10頁,乙33・3~4頁,乙44)原告母は,同月26日,文科省に対し,本件中学校と協議したが,なおも学校側がいじめを認めなかったと伝えた。文科省から連絡を受けた県教委は,翌27日,市教委に対し,文科省から重大事態として対応すべきであるとの意見があった旨を伝えたが,市教委は,重大事態として対応する考えがない旨を回答した。県教委は,平成29年1月 絡を受けた県教委は,翌27日,市教委に対し,文科省から重大事態として対応すべきであるとの意見があった旨を伝えたが,市教委は,重大事態として対応する考えがない旨を回答した。県教委は,平成29年1月4日,市教委を訪問し情報提供等を行った。(甲11・9~11頁)ノ市教委は,平成29年1月10日,川口市長に対し,本件中学校において重大事態が発生した旨を報告し,調査委員会が設けられることになった。 ハ本件中学校は,同月31日にサッカー部保護者会を開催し,保護者らに調査委員会が設置される旨を報告し,調査への協力を求めた。原告母は,同保護者会の開催を知らされず,同会に参加できなかった。b教頭は,同年2月2日,上記保護者会を欠席した保護者の一人に対し,電話で調査への協力を求めるとともに,いじめはなかった旨を伝えた。(甲11,23,68・5頁,乙26,33)ヒ市教委は,同年3月21日,h教諭に対し,体罰事故を起こしたことを理由に文書訓告を行った。(甲56の1,2)フ原告母は,同月28日,原告の登校支援について,教諭ら及び市教委と協議を行った。校長は原告母に本件支援体制を示し,そこには,全校生徒に対しいじめ防止の指導を行うこと,原告の登校時間や学習内容に配慮す - 25 -ること,放課後原告に対し補習を行うこと,進路指導について確実に情報提供を行い,個別相談を行うことなどが記載されていた。また,校長は,原告母に対し,部員らと原告の間にトラブルが生じないよう配慮すると約し,原告と部員らを同じクラスにしないこと,部員の多くは原告の教室と別の階の教室に置くこと,原告母の希望に沿って原告の担任を決めることなどを述べた。校長は,全校生徒に対し,いじめや携帯電話等の使用に関する注意喚起文書を配布した。(甲3,11,乙25・資料3 教室と別の階の教室に置くこと,原告母の希望に沿って原告の担任を決めることなどを述べた。校長は,全校生徒に対し,いじめや携帯電話等の使用に関する注意喚起文書を配布した。(甲3,11,乙25・資料3,4,乙28,30)。 ⑶ 3学年時の経緯ア市教委は,同年4月6日,原告母に対し,調査委員会による調査の中間報告として「いじめ事案に関する進捗状況報告書(案)」を交付した。その後,原告母は,同案において原告及び原告母の訴えたいじめの一部しか認定されていないことや調査の進捗状況につき定期的な報告がないことについて,何度も市教委や県教委に申し入れをした。(乙33・資料2)イ原告は,平成29年4月10日,原告母に伴われて校長室に登校し,その後教室に向かった。e教諭は,同日予定されていた掃除等の作業の割り振りにおいて,原告には部員らと接触する可能性の低い作業を割り当てた。 同日,e教諭が教室にいない時間があり,部員らのうち原告と顔を合わせた者が数名あった。原告は,正午頃に早退し,その後,原告母は,本件中学校に電話し,数名の部員がe教諭のいない時に教室をのぞきに来たと伝えた。市教委は,校長らに対し,配慮が十分であったかを確認するよう指導した。翌日以降,本件中学校の各学級で,久しぶりに登校した生徒に心ない言葉かけたり見に行ったりしないよう指導し,e教諭らは部員らが原告の教室の前を通らないよう見守りをした。(乙25・33~34頁,乙29・2~3頁,別添1,乙30・4頁)ウ原告は,放課後,相談室のATの補習を受けることになった。原告は, - 26 -同月14日,ATと面談した際,部活の生徒と会いたくないと述べた。ATは,原告が塾に通っていることも踏まえ,数学・国語・英語の基礎を中心に補習を行う方針を立てたが,原告が 原告は, - 26 -同月14日,ATと面談した際,部活の生徒と会いたくないと述べた。ATは,原告が塾に通っていることも踏まえ,数学・国語・英語の基礎を中心に補習を行う方針を立てたが,原告が補習に参加しなかったり短時間しか参加しなかったりしたので計画のとおりに進まず,漢字の書き取りや数学の計算練習を中心にした補習を行った。(乙24・3枚目)エ本件中学校は,同年5月2日,サッカー部の3年生の保護者会を開催した。校長は,同会において,保護者に対し,原告の件は調査委員会で法律上の定義に沿って慎重に審議されていると説明した。同会において,原告母と保護者は,LINEの言葉遣いなどに関し言い争いになった。(乙11,乙25・34~35頁,乙29・3頁)オ原告母は,同月12日,原告の通学靴の靴底に「しね」「うざ」と書かれているのを発見した。原告母から連絡を受けたc教頭らは家庭訪問し靴の落書きを確認した。本件中学校は,一般的にいじめの有無を尋ねるアンケートを実施し,3年生を集めて靴に落書きがあったことを伝えた。教諭らは,同月26日,原告母に更に全部のクラスに伝達すると伝えたが,原告のクラスを含む3クラスで実施されなかった。(乙28・12~13頁,別添資料2)カ原告母は,上記エの保護者会での学校側の対応に納得できず,再度保護者会の開催を求め,同月27日,サッカー部3年生の保護者会が開催されることになった。県教委は,原告母に対し,保護者会で学校側に説明してほしい内容をメモに書いて渡し,学校側と十分に打合せすることを提案した。同会において,学校側から保護者に対し,学校側の責任で原告が不登校になったことや,いじめの重大事態として調査が行われていることなどが伝えられた。教諭の一人は,h教諭の体罰が言われているが,職員室で 。同会において,学校側から保護者に対し,学校側の責任で原告が不登校になったことや,いじめの重大事態として調査が行われていることなどが伝えられた。教諭の一人は,h教諭の体罰が言われているが,職員室で見ていたところ軽く叩いただけであり原告も喜んでいた旨発言した。(甲11・33~36頁,甲60,乙25・37~38頁) - 27 -キ平成29年7月13日,上記カの保護者会を欠席した保護者を対象に保護者会が開催された。その席上,上記カの体罰に関する発言した教諭は,同発言について原告母に対し謝罪した。(乙12,25・38~39頁)ク校長は,同月18日,部員らを集めていじめについての特別授業を行い,部員らに原告について考えたことを発表させた。部員らは,言葉遣いに気を付けることが大事だと述べたり,原告がいじめと言っていることを以前原告からされたことがあると述べたりした。(乙25・39頁)ケ本件中学校は,原告母からの要望を受けて,夏休み期間中,原告に対し,数学及び英語のマンツーマンの補習を4回実施した。 コ同年7月以降,本件中学校は原告についてマスコミの取材を受けるようになった。同年8月29日,週刊誌に本件中学校の生徒(仮名)がいじめを受け不登校や自傷行為に陥ったことを報じる「学校に行けないのが悔しかった。大人はウソをついてもいいんですか!」と題する記事(以下「本件記事」という。)が掲載され,その後,複数の新聞やテレビで原告についての報道が続いた。(乙25・40~42頁,資料5)サ同年9月1日に2学期が始まり,原告は登校を続けた。 c教頭は,同年10月4日,理科と社会のプリントを準備して原告に受講を促したが,原告は受講しなかった。原告母は,翌5日に原告が欠席する旨の連絡をした際,補習の受講を促し まり,原告は登校を続けた。 c教頭は,同年10月4日,理科と社会のプリントを準備して原告に受講を促したが,原告は受講しなかった。原告母は,翌5日に原告が欠席する旨の連絡をした際,補習の受講を促したことや保護者会が開催されないことについて苦情を述べた。(乙24,28・21~22頁)シ平成29年10月1日,本件スレッドが立ち上がった。同スレッドには,部員Bと原告及び原告母の双方を中傷する多数の投稿がされ,部員Bの実名も明らかにされた。この頃,他のサイト等にも本件中学校のサッカー部に関する多数の投稿があった。本件中学校は,同月30日までに,市教委の要請を受け,掲示板の管理者に本件スレッドの削除を要請した。(甲83,乙25・資料7) - 28 -ス原告母は,本件中学校及び市教委に対し,原告及び原告母に関する誹謗中傷が甚だしいので,全体保護者会を開催して学校側から事実を説明するよう求め,開催されれば原告も安心して登校できると述べた。本件中学校は,文科省及び県教委から全体保護者会を開催するよう指導を受け,同月20日の開催を決めた。(甲11・63~87頁,甲17,乙15)原告母は,同月20日,全校保護者会開催の前,校長に対し,原告及び原告母に対する誹謗中傷を防ぐため,同会において,原告に対して真実いじめがあったことを説明し,原告及び原告母が嘘をついているなどと投稿しないよう指導してほしいと求め,校長は承諾した。(甲68)同日,全校保護者会が開催され,校長は,原告がいじめを受けて不登校になった経緯を説明し,原告に対するいじめは本来重大事態として扱うべきであったが,法に対する認識の甘さから対応が遅れたことを反省していること,原告について現在複数の報道があり,原告はあらぬ噂が広がって困っていることな ,原告に対するいじめは本来重大事態として扱うべきであったが,法に対する認識の甘さから対応が遅れたことを反省していること,原告について現在複数の報道があり,原告はあらぬ噂が広がって困っていることなどを伝えた。(甲74)セ同月28日午後,本件中学校でj中祭が開催された。原告は,校長室に赴き,持参した食券を交換して持ち帰った。(乙25・44~45頁)ソ同月30日,本件スレッドに「lも母親も最悪かよ」などと原告の実名を明らかにし誹謗中傷する投稿がされた。(甲83・7頁)原告は,同年11月2日から学校を欠席した(不登校3)。 タ原告母は,上記スの全校保護者会における学校側の説明が不足していたためにネットでの誹謗中傷が止まらないとして,再度の全校保護者会の開催や全校への説明文書の配布を求め,同年11月7日,原告との面談を求めるiに対し,全校保護者会を開催しないうちは会わせられないと述べた。 市教委は,県教委から全校保護者会を開催するよう指導を受けた。また,原告は,同年11月21日,家庭訪問した校長らに対し,「校長先生が本当の事を言ってくれないと学校に行く気にもならないしまた嫌な事がある - 29 -から早く本当のことを言ってください。」と述べた。本件中学校は,同年12月15日の全校保護者会の開催を決めた。(甲64,乙28・26頁)チ本件中学校は,同年11月27日,全校保護者に対し,ネット上の誹謗中傷につき注意喚起文書を配布した。なお,校長は,市教委に対し,同月24日以前,同様の注意喚起文書を配布した旨を報告したが,その後,県教委からこれを聞いた原告母から確認を受け,勘違いであり実際はまだ配布していない旨答えた。(甲11・111~114頁,乙25・45~46頁,別添資料8・9)ツ 旨を報告したが,その後,県教委からこれを聞いた原告母から確認を受け,勘違いであり実際はまだ配布していない旨答えた。(甲11・111~114頁,乙25・45~46頁,別添資料8・9)ツ教諭らは,不登校3の間,学校の配布物を原告宅に届けていたが,卒業記念品の申込書が申込期限を過ぎてから届けられたことがあった。(甲11の108~110頁)テ本件中学校は,同年12月15日,全校生徒を対象としてネットアドバイザーによる情報モラル教室を開催し,併せて,全校保護者会を開催した。 県教委は,本件中学校に対し,予め説明原稿につき原告母の確認を受け協議するよう指導し,校長は,原告母と協議した原稿を読み上げた。(甲11・116~122頁,乙25の46~47頁,乙29・別添3,乙33・25~27頁)ト原告は,同月18日から登校を再開した。 教諭らは,原告の登校再開に際し,原告の見守り体制を確認するとともに,各クラスでインターネットに個人情報を投稿しないようにとの注意喚起を行った。なお,原告の担任であるf教諭や3学年の学年主任であるg教諭は,本件支援体制の書面を交付されなかった。(甲11・123,132頁,甲22,甲48,乙29・5頁,別添2)ナ校長は,原告母に対し,本件中学校から原告の志望校に送る調査書の欠席理由欄を空欄とし,欠席理由は直接同校校長に口頭で伝えると述べ,原告母は,同月6日,このことを文科省や県教委に相談した。本件中学校は, - 30 -文科省及び県教委からの指摘を受け,同月25日頃,調査書の欠席理由欄に,2学年時について「いじめの対応が遅れ,問題が長期化したため」,3学年時について「いじめの重大事態中,学校の対応が遅れたため」と記載した。(甲11・116,123~124頁)ニ教諭 に,2学年時について「いじめの対応が遅れ,問題が長期化したため」,3学年時について「いじめの重大事態中,学校の対応が遅れたため」と記載した。(甲11・116,123~124頁)ニ教諭らは,原告に対し,冬休み中(平成29年12月25日から平成30年1月8日),国語・数学・英語の補習をマンツーマンで3日間実施し,同月16日,国語の補習を実施した。教諭らは,原告母から高校受験に向けた補習計画の作成を何度も求められ,同月19日頃補習計画を作成し,同月22日及び翌23日に補習を実施した。しかし,同月24日から再び原告が学校を欠席したため(不登校4),補習を実施できなくなった。(甲46,66,乙20,乙25の48頁,乙29の5~6頁・別添4)ヌ原告母は,県教委に対し,平成30年1月24日から原告が不登校4に陥ったことについて,インターネット等の誹謗中傷が止まらないこと,原告が部員らと学校で会うことに不安を感じていること,原告がもう疲れたと言っていることなどを伝えた。文科省から原告の自殺が心配であるとの指摘もあり,教諭らが家庭訪問を行ったが,原告とは面談できなかった。 なお,iは,1月30日に原告宅を訪問し原告と面談した。その際,原告は,iから不登校の原因を尋ねられ,「不安。」と答えた。(甲11・127~129頁,乙33・31頁)教諭らは,文科省及び県教委から学習支援や安否確認の必要を指導され,連日原告宅の家庭訪問を行い,原告母に補習のプリントを渡すなどしたが,同年2月20日頃,原告母は,教諭らに対し,原告が教諭らの訪問を受けると興奮して暴れてしまうので,今後はプリント等をポストに入れるだけにしてほしいと伝えた。(甲11・132~143頁,乙29の8頁,乙33・36~37頁)ネ同年3月8日,原告母は を受けると興奮して暴れてしまうので,今後はプリント等をポストに入れるだけにしてほしいと伝えた。(甲11・132~143頁,乙29の8頁,乙33・36~37頁)ネ同年3月8日,原告母は,f教諭に対し,原告が卒業式に出ようか悩ん - 31 -でいる旨を述べ,また,同日及び同月13日,iに対し,原告を卒業式に出席させたいという原告母の意向を伝えた。(甲48,乙33・40~41頁)卒業式では,卒業生が保護者に感謝の手紙を渡すことや,担任にメッセージカードを渡すことが企画されていたが,原告母は,同日,他の保護者から聞いて初めてこれらの企画について知った。(甲51,乙29・9頁)原告は,同月15日,本件中学校の卒業式に出席しなかった。校長らは,卒業式終了後,卒業証書等を持参して原告宅を訪れ,玄関のチャイムを鳴らしたが,原告母は,校長らに対し,卒業証書は受け取れないから帰ってほしいと伝えた。原告母は,iに電話し,校長らの訪問に苦情を述べた。 (乙25・50頁,乙33・41頁)⑷ 卒業以降の経緯ア市教委は原告母に対し,同月16日,調査委員会の最終報告書(甲1)を交付し,同日,市教委は記者会見を行った。(甲20,乙33・57頁)イ平成30年3月20日,第3回全体保護者会が開催され,本件中学校から調査報告書の内容についての報告があった。(乙25・51頁)ウ pクリニックのn医師は,平成30年12月17日,原告について,いじめによるPTSDを診断し,中学時代のいじめまたはその対応をめぐる大人への不信があり過呼吸,不安,不眠等が認められるとする診断書を作成した。(甲58) 2 争点1(本件中学校の教諭らの行為の違法性の有無)について⑴ 本件中学校の教諭らは,教育活動を行 めぐる大人への不信があり過呼吸,不安,不眠等が認められるとする診断書を作成した。(甲58) 2 争点1(本件中学校の教諭らの行為の違法性の有無)について⑴ 本件中学校の教諭らは,教育活動を行うに当たり,いじめその他の加害行為から生徒の心身の安全を守り,生徒に対し良好な学習環境を整備すべき義務を負う。 ⑵ 不登校1までの対応についてア LINEグループを退会されられたことについて - 32 -部員Aが原告をLINEグループから退会させた行為は,原告に精神的苦痛を与える行為であるから,法2条1項のいじめに該当する。そして,教諭らは,同行為への対応として,部員らに対しLINEの使用に係る一般的な注意点を指導しているところ,原告は,教諭らの同対応について,いじめを根絶するには不十分であり,いじめ防止義務に違反した違法があると主張する。しかし,上記認定事実に照らし,原告が当時サッカー部内において集団的あるいは連続的ないじめを受けていたことは認められず,このことを予見すべき事情もうかがわれない。したがって,教諭らが,上記対応のほかに,原告が別のいじめを受ける可能性を防止するための措置をとる義務を負うとは解されず,教諭らの対応に違法があるとはいえない。 なお,原告は,d教諭が部員らを叱責したため原告が部員らから逆恨みされたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 イ練習中転倒させられたことについて上記認定のとおり,原告は,サッカーの練習中,部員BからTシャツの後ろ襟首をつかまれ引き倒された。これについて,被告は,原告が部員Bを先に蹴った旨を主張するが,サッカーに必然的に伴う身体的接触の範囲を超えて,原告が部員Bを蹴ったと認めるに足りる証拠はない。同行為は,原告に心身の苦痛を与える行為であり,法2条1項のいじ が部員Bを先に蹴った旨を主張するが,サッカーに必然的に伴う身体的接触の範囲を超えて,原告が部員Bを蹴ったと認めるに足りる証拠はない。同行為は,原告に心身の苦痛を与える行為であり,法2条1項のいじめに該当する。 もっとも,原告が部員Bらから他にもいじめを受け,更にいじめを受ける恐れがあったことをうかがわせる事情はない。 原告は,同行為についてh教諭らがいじめ防止義務を尽くさなかったと主張する。確かに,h教諭は平成28年4月頃同行為を知った後,直ちには事実確認や部員Bらへの指導を行っていないが,行為からある程度時間が経ち,その間原告と部員Bらとの関係に格別の問題がなかったことを勘案すると,上記h教諭の対応を違法とまでは解し難い。なお,h教諭が同月より以前に同行為を認知したと認めるに足りる証拠はない。 - 33 -ウ映画の約束について部員Cが原告との映画の約束を破った行為は,原告が部員Cに送付したメッセージや原告がh教諭に話した内容(認定事実⑵ア,イ)にも照らし,原告に精神的苦痛を与える行為として法2条1項のいじめに該当し,不登校1の原因の一つになったと認められる。もっとも,部員Cは,複数で約束しており自分が抜けても問題はないと思ったと述べており(乙38),原告に対する嫌がらせを目的として同行為をしたとは認められず,原告が部員Cらからその他のいじめを受けていたことや,更にいじめを受ける恐れがあったことをうかがわせる事情はない。 原告は,同行為に対する教諭らの対応について,いじめ防止義務や不登校解消義務等を尽くしておらず違法であると主張するが,教諭らは,速やかに家庭訪問を行って原告から事情を聴取し,部員Cに対する事実確認及び指導並びに2年生全員に対する指導を行っており,教諭らがいじめ防止義務や不登校解消義務等に違反した ると主張するが,教諭らは,速やかに家庭訪問を行って原告から事情を聴取し,部員Cに対する事実確認及び指導並びに2年生全員に対する指導を行っており,教諭らがいじめ防止義務や不登校解消義務等に違反したとは解し難い。 ⑶ h教諭の行為について上記認定のとおり,h教諭は,同年7月15日頃及び同年9月5日頃,原告に対し,指導に伴いその頭を叩いたり耳を引っ張ったりした。被告は,有形力の行使はわずかであり教育的指導の範囲を逸脱しないと主張するが,h教諭の再現を交えた証言に照らせば,h教諭は,軽く握った拳で原告の頭を打撃音が周囲に聞こえる程度の強さで叩き,また,座った姿勢から傍らに立つ原告の耳を指でつかみ,机上のノートに原告の顔を近づけるように約30cm引き寄せたものと認められるから(h教諭7~9・25頁),原告に対し少なからぬ程度の有形力を行使したものと認めるのが相当である。そして,ノートの記載に余白が多いことの指導方法として同行為が必要・相当とは認め難いから,同行為は違法なものと認められる。なお,被告は,原告が同行為を喜んでいたと主張するが,一般に上記行為を喜ぶとは考えにくく,これ - 34 -を認めるに足りる確たる証拠はない。 ⑷ 不登校2の間の対応についてア不登校2までの経緯について上記認定のとおり,原告は,同年夏頃,部員Dらの誘いを断った直後,親しい女子生徒から部員Dらが家に来て困っている旨の連絡を受けた。 原告は部員Dらの行為により精神的苦痛を受けたといえるから,同行為は法2条1項のいじめに該当するが,部員Dらが女子生徒の同意を得てから訪問した経緯に鑑みると,部員Dらが原告に嫌がらせしようとしたとは認められず,原告が部員Dらから他にもいじめを受け,更にいじめを受ける恐れがあったことをうかがわせる事情はない 子生徒の同意を得てから訪問した経緯に鑑みると,部員Dらが原告に嫌がらせしようとしたとは認められず,原告が部員Dらから他にもいじめを受け,更にいじめを受ける恐れがあったことをうかがわせる事情はない。 h教諭は,近隣から苦情があったことにして部員Dらを指導したところ,部員Dらの行為の内容等に照らせば相当な措置であり,h教諭らの対応に違法性は認め難い。 以上のとおり,原告は,同年9月までは,個別のトラブルにより心身の苦痛を受けることはあっても,集団性や連続性のあるいじめは受けておらず,部員らとLINEで会話し(なお,直前のメッセージについて甲38,39),自宅で遊んだりサッカー観戦等に出かけたりしながら,通常の交友関係を維持していたと見るのが相当である。なお,原告が部員らから受けたメッセージについて,別の部員になりすましたものがあったり粗暴な表現を使うものがあったりしたこと(認定事実⑴カ,⑵エ)により上記認定は左右されない。 しかしながら,同月5日頃の原告母の投稿の後,それまで遊びに来ていた部員らが誰も原告宅を訪れなくなったこと,原告が友人関係を断絶するメッセージを受けたり,カード販売店に誘われなかったりしたこと(認定事実⑵カ,キ),医師の診断内容(同テ),原告の同月15日のメッセージの内容(同コ),原告のe教諭に対する発言(同ナ)などを - 35 -総合すると,原告は,同月上旬以降,サッカー部内で孤立し,部員らの言動に心身の苦痛を受け,これが主な原因となって不登校2や本件自傷行為に及んだと認めるのが相当である。 なお,本件自傷行為について,被告は,その存在を否認するが,同月15日までの経緯や同年10月11日の受診時の様子(認定事実⑵テ)等に照らし,本件自傷行為があったと認めるのが相当である。被告は,原告が通常の状態で 行為について,被告は,その存在を否認するが,同月15日までの経緯や同年10月11日の受診時の様子(認定事実⑵テ)等に照らし,本件自傷行為があったと認めるのが相当である。被告は,原告が通常の状態で同年9月15日にoセンターを受診したと主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく(甲88,乙59),その余上記認定を左右すべき証拠はない。もっとも,同日原告が病院で怪我の治療を受けていないことや,原告が同月18日頃h教諭とサッカーの練習を行っていることを勘案すると,本件自傷行為による侵襲の程度が大きかったとまでは認め難い。 また,被告は,原告が同月13日まで特に変わった様子もなく登校していたこと,同月10日の体育祭において笑顔を見せていたこと(乙25・資料1),h教諭とサッカーの練習をしていた時も元気な様子だったこと(乙27・28頁)などを指摘し,原告本人は当時部員らとの関係を悩んでおらず,原告母の働きかけにより学校を欠席していたと主張するが,原告が部員ら以外と接している時に明るい様子だったとしても,上記認定は左右し難い。さらに,被告は,原告がATに対し原告母の指示で欠席した旨を述べたことがあると主張するが,証拠(乙24・19枚目)を見ても,ATが同趣旨の話を何者かから聞いたことはうかがわれるが,その話をしたのが原告であるとは認められない。 イ教諭らの不作為について本件中学校の教諭らは,同月15日,原告母から,原告が部員らとのトラブルで登校できなくなり,自傷行為に及んだ旨を伝えられ,同月27日頃には,原告母の投稿を知った部員らが誰も原告宅を訪れなくなったこと - 36 -(認定事実⑵カ,キ)を認識したのであるから(同タ),原告がサッカー部内で孤立し,部員らの言動により心身の苦痛を受け,登校できない状態にある恐れを認識し 原告宅を訪れなくなったこと - 36 -(認定事実⑵カ,キ)を認識したのであるから(同タ),原告がサッカー部内で孤立し,部員らの言動により心身の苦痛を受け,登校できない状態にある恐れを認識し得たと認められる。そして,同年10月24日には,不登校1と併せて原告の欠席日数が30日(甲2・14頁参照)に及んだのであるから,遅くとも同日以降,教諭らは,重大事態の発生を認識し,部員らの原告に対する言動やその背景事情等について調査票を用いるなどした網羅的な調査(甲2・13頁参照)を行い,その結果に応じた適切な方法で,法2条1項のいじめを防止し不登校を解消するため,部員らへの指導や原告への支援を行うべき義務を負ったと解される。 ところが,教諭らは,原告母の訴える過去のものを含めた部員らの行為について,個別に部員らから事情を聴き,謝罪を行うことなどに終始しており,重大事態と位置づけた上での網羅的な調査を行わなかったのであるから,上記義務に違反したものと解される。なお,被告は,原告がカード販売店に誘われなかったことについて,原告母から知らされなかったのだから対応できたはずがないとの主張をするが,自ら事実を調査する義務を負うという点で採用し難い。また,被告は,当時教諭らが,原告自身はいじめを苦慮しておらず,原告母の働きかけで欠席しているのであって,重大事態は発生していないと判断していたと主張するが,その判断を合理的に基礎づけ得る事情がないことは,既に説示のとおりである。被告は,教諭らが同判断に基づき上記義務を履行しなかったことについて,裁量の逸脱・濫用はないと主張するが,重大事態を認知すべきときに重大事態を認知しない裁量があるとは解されず,被告の主張は採用し難い。 ウ教諭らの言動について h教諭は,部員Bが原告を引き倒 脱・濫用はないと主張するが,重大事態を認知すべきときに重大事態を認知しない裁量があるとは解されず,被告の主張は採用し難い。 ウ教諭らの言動について h教諭は,部員Bが原告を引き倒したことについて,サッカー部保護者会において,原告の方でも部員Bを蹴っており小競り合いである趣旨の発言をし(認定事実⑵タ),また,校長らも,原告母に対し,けんか - 37 -でありいじめではないと判断していると伝えた(同ネ)。当時教諭らは,部員Bらから原告に足を蹴られたと聞いていたが(同シ),サッカーの練習中のことであるから偶発的な接触の可能性を考えるべきであり,未だ原告から事情を聴取していなかったのであるから,原告が蹴ったと判断するだけの根拠はなかったというべきである。そして,原告が部員Bを蹴ったということは,原告が自分も攻撃していたのに一方的にいじめられたように訴えているということを意味するから,上記発言をすれば,やがては部員らや原告に学校側の認識として伝わり,部員らが原告に対し不信や反感を強め,また,原告が学校側から嘘つきだと思われていると感じ一層登校に支障を感じることは,容易に予見し得る。他方で,上記発言をする格別の必要は認め難い。以上を総合すると,h教諭及び校長らは,上記発言をしない義務を負っており,職務上の義務に違反したと認めるのが相当である。 b教頭は,部員らの保護者に対し,いじめはなかった旨を伝えたが(同ハ),教諭らが十分な調査を行っていなかったことは前示のとおりであるから,同発言が十分な根拠を欠くことは明らかである。上記発言は,原告がありもしないいじめを訴えているという意味につながるから,b教頭が同発言をすれば,上記と同様,原告に対する部員らの不信や反感を強め,原告の登校の更なる障害になることは,容易に 。上記発言は,原告がありもしないいじめを訴えているという意味につながるから,b教頭が同発言をすれば,上記と同様,原告に対する部員らの不信や反感を強め,原告の登校の更なる障害になることは,容易に予見し得る。 したがって,b教頭は,上記発言をしない義務を負っており,職務上の義務に違反したと認めるのが相当である。 原告は,校長が,同年9月15日,原告母に対し,原告が遅れている旨の発言をしたと主張する。校長の発言内容(同ケ)に照らすと,原告が能力的に劣っているという意味とは解し難い。同発言は,原告母の心情を傷つける可能性があり望ましくないものではあるが,原告に対する職務上の義務違反を構成するとはいえない。 - 38 -また,原告は,サッカー部保護者会においてb教頭がメッセージの送付だけではいじめに当たらない旨の発言をしたと主張する。しかし,b教頭の発言の内容(同ツ)は,必ずしも上記趣旨のものとは解されず,同発言が原告に対する職務上の義務違反を構成するとは解し難い。 さらに,原告は,教諭らがサッカー部保護者会に原告母を参加させなかったことを違法と主張するが,保護者らから忌憚のない意見を聴く必要がある場合もあるから,同措置が直ちに原告に対する職務上の義務違反を構成するとは解し難い。 加えて,原告は,サッカー部保護者会において教諭らが原告母の発言を遮ったと主張するが,議事の進行の必要を超えて発言が遮られたことを認めるに足りる証拠はない。 ⑸ 登校再開後の対応についてア原告は,原告の登校再開に当たり,教諭らが原告から目を離さないことを約したにもかかわらず,e教諭が目を離した時間があったと主張する。 しかし,教諭らにおいて原告から一時も離れず付き添うことを約したとは認められない。また,当時の り,教諭らが原告から目を離さないことを約したにもかかわらず,e教諭が目を離した時間があったと主張する。 しかし,教諭らにおいて原告から一時も離れず付き添うことを約したとは認められない。また,当時の具体的状況も明らかではなく,e教諭が教室を一時不在にしたことについて,直ちに職務上の義務違反を認めることはできない。教諭らは,原告の登校再開に当たり,対応方針を書面で原告母に伝え,原告と部員らが接触しないようにクラス編成及び教室の配置を行い,部員らと原告が接触しないように掃除等の割り当てを行い,さらに,原告母の連絡等を受けた後は,各クラスで指導を行い見守りも行った(認定事実⑶イ)のであるから,教諭らの対応につき違法性は認め難い。 イ原告は,原告の靴底に落書きがされたいじめについて,教諭らが速やかな対応を行わなかったと主張する。しかし,教諭らは,原告母から連絡を受け,落書きを確認するために家庭訪問を行い,3学年の生徒らを集めて情報提供と注意を呼びかけ,その余のクラスにも情報提供を呼び掛けたの - 39 -であるから(同オ),教諭らの対応につき違法性は認め難い。 ⑹ 本件スレッドの投稿等への対応についてア原告は,教諭らが,本件スレッドへの投稿について,調査や注意喚起を行わず,記事の削除に協力しなかったと主張する。しかし,教諭らは,投稿内容を把握した上,二度にわたり全校保護者会を開催して原告がいじめにより不登校となっていることを説明し,全校生徒に注意喚起文書を配布し,情報モラル教室を開催するなどし(認定事実⑶ス,チ,テ),記事の削除を依頼した(同シ)から,教諭らが注意喚起や協力等を行わなかったとはいえない。この点,原告は,同年10月20日の全校保護者会における校長の説明内容に不足があったと主張するが,上記認定のとおり の削除を依頼した(同シ)から,教諭らが注意喚起や協力等を行わなかったとはいえない。この点,原告は,同年10月20日の全校保護者会における校長の説明内容に不足があったと主張するが,上記認定のとおり,校長は,保護者に対し,原告が部員らからいじめを受けて不登校になったことを説明し,原告が本件スレッド等の投稿により精神的苦痛を受けていることを伝え,理解を呼びかけているから,いじめ防止義務に違反する不足があるとは認め難い。なお,原告は,上記注意喚起文書の配布について,配布の前に校長が市教委に配布済みである旨報告したことを論難するが,原告に対する職務上の義務違反行為を構成するとは解し難い。 イ原告は,教諭らが不登校3について不登校防止義務や不登校解消義務に違反したと主張する。不登校3の原因を検討するに,平成29年夏から原告について複数の報道があり,本件スレッド等に原告について多くの投稿があり,同年10月30日に本件スレッドで原告の実名が明かされたこと(認定事実⑶コ,シ,ソ)に照らせば,これらを主な原因として原告が不登校3に陥ったと認めるのが相当である。被告は,原告は投稿等を苦にしておらず,原告母の指示により学校を欠席していたと主張するが,原告が同月28日にj中祭の食券を交換したこと(同セ)により原告が登校を望んでいたとは推認できず,その余上記認定を左右する証拠はない。 もっとも,上記アのとおり,教諭らはインターネット上の誹謗中傷を防 - 40 -止するための措置を講じ,原告が不登校3に陥った後も,原告宅を家庭訪問し,インターネット上の誹謗中傷を防止するための措置を講じていたから(同タ,チ,テ),教諭らが不登校防止義務や不登校解消義務に違反したとは認められない。 ⑺ 補習・受験・卒業式に係る対応について ーネット上の誹謗中傷を防止するための措置を講じていたから(同タ,チ,テ),教諭らが不登校防止義務や不登校解消義務に違反したとは認められない。 ⑺ 補習・受験・卒業式に係る対応についてア原告は,不登校期間中,授業のプリントや連絡文書が適時に原告宅に届けられなかったと主張するが,卒業記念品の申込書が申込期限経過後に届けられたこと(認定事実⑶ツ)のほかには,これを認めるに足りる証拠はない。そして,卒業記念品の申込書が申込期限経過後に届けられた経緯は明らかではなく,これに関し教諭らに職務上の義務違反があったとは認められない。 イ原告は,教諭らが5教科全部について補習を行うと約束しながら,漢字の書き取りしか行わなかったと主張する。しかし,本件支援体制にその旨の記載はなく,教諭らが5教科全部の補習の実施を約したことを認めるに足りる証拠はない。また,補習は生徒の余裕等に応じて可能な範囲で実施するものと解されるから,教諭らが5教科全部の補習を行う義務を当然負っていたとは解されない。そして,上記認定のとおり,本件中学校は,放課後にATによる補習の体制を整え,教諭らによる補習の機会も提供したから,教諭らが職務上の義務に違反したとは認められない。 ウ原告は,校長が調査書の欠席理由欄の記載を拒んだため,私立高校を受験できなかったと主張する。しかし,本件中学校は調査書の欠席理由を記載した上で原告に交付している(認定事実⑶ナ)から,原告の主張は前提を欠き採用できない。したがって,教諭らが不登校4につき不登校防止義務を怠ったという原告の主張は,前提を欠き採用し難い。また,教諭らは,不登校4の期間中も頻繁に家庭訪問等を行い,補習のプリントを渡すなどしているから(同ヌ),教諭らが不登校解消義務に違反したとは認められ - 告の主張は,前提を欠き採用し難い。また,教諭らは,不登校4の期間中も頻繁に家庭訪問等を行い,補習のプリントを渡すなどしているから(同ヌ),教諭らが不登校解消義務に違反したとは認められ - 41 -ない。 エ原告は,教諭らが,原告に対し,卒業に関する連絡を的確に行わなかったと主張する。卒業式の企画の一部が事前に伝えられなかったこと(同ネ)のほかに,卒業に関する連絡に不備があったことを認めるに足りる証拠はない。卒業式の企画の一部が事前に原告に伝えられなかったことについても,その企画の主体や内容等が明らかではなく,同企画の連絡が遅れたことについて教諭らが職務上の義務に違反したとは認め難い。 ⑻ まとめ以上の次第で,本件中学校の教諭らについては,h教諭が原告に体罰を加えたこと,遅くとも平成28年10月24日以降重大事態として調査等を行わなかったこと,校長,b教頭及びh教諭において,原告が部員Bを蹴っていた旨や原告に対するいじめがなかった旨の発言をしたことについて,職務上の義務に違反し,国賠法上の違法があると解される。 3 争点2(市教委の行為の違法性の有無)について⑴ 原告は,市教委が原告について重大事態の調査を行わなかったことを職務上の義務に違反し違法であると主張する。 「川口市いじめの防止等の基本的な方針」は,重大事態の発生が認められるときは,市教委において,当該学校が重大事態の発生を認めないときでも,重大事態が発生したものとして,報告・調査等に当たるものと定めている(甲2・12頁)。そして,市教委は,遅くとも同年10月24日までに,原告母からの連絡や本件中学校の教諭らの報告等により,本件中学校の教諭らの認識する事実を概ね知らされていた(認定事実⑵ト)。したがって,市教委は,重大事態の発生を認知すべきであったに 24日までに,原告母からの連絡や本件中学校の教諭らの報告等により,本件中学校の教諭らの認識する事実を概ね知らされていた(認定事実⑵ト)。したがって,市教委は,重大事態の発生を認知すべきであったにもかかわらず,重大事態としての調査を怠り,また,同調査の必要について本件中学校の教諭らに対する指導を行わなかった(同ト)のであるから,職務上の義務に違反したものと認められる。これに対し,被告は,市教委が,本件中学校の教諭らから聴取し - 42 -た事情に基づき原告の不登校の原因はいじめではないと判断したのであり,その判断に裁量の逸脱・濫用はないと主張するが,その判断が合理的根拠を欠くことは争点2の説示と同様である。重大事態の発生を認知すべきときに認知しない裁量があるとは解されず,被告の主張は採用できない。 ⑵ その余の本件中学校の教諭らの違法な職務行為については,これらを市教委が予見し,指導を行うことができたとは認められないから,市教委が教諭らに対する指導・助言義務に違反したとは認められない。 4 争点3(損害額)について前記認定の経緯に照らせば,本件中学校の教諭ら及び市教委が重大事態として調査等を行わなかったことにより,原告の不登校に関し,速やかに適切な措置をとることが妨げられ,また,校長,b教頭及びh教諭の発言により,事態の早期の鎮静化が妨げられたことは,問題が複雑化・長期化し,原告が不登校2以降の長期間の不登校に陥り,現在もいじめられたとの記憶や大人への不信に苦しんでいること(認定事実⑷ウ)の主要な原因の一つと認めるのが相当である。また,原告がh教諭を慕っていたこと(認定事実⑴エ)も勘案すると,原告は,h教諭の体罰により少なからぬ心身の苦痛を受けたものと推認できる。 なお,被告は,不登校4の原因は原告母の指示によるも ある。また,原告がh教諭を慕っていたこと(認定事実⑴エ)も勘案すると,原告は,h教諭の体罰により少なからぬ心身の苦痛を受けたものと推認できる。 なお,被告は,不登校4の原因は原告母の指示によるものであると主張するが,前記認定の経緯や,原告母が県教委に伝えた内容(認定事実⑶ヌ)に照らし,問題の解決が長期化・複雑化したことや誹謗中傷等による原告の疲弊を主な原因とするものと推認するのが相当である。また,原告は,卒業式終了後,校長らが,原告母から拒絶されていたにもかかわらず,卒業証書等を持参して原告宅を訪れ何度もチャイムを鳴らしたことが慰謝料増額事由に当たると主張するが,原告母が予め訪問しないでほしいと伝えたことや,校長らが何度もチャイムを鳴らしたことは認められず,校長らが卒業証書等を届けるために原告宅を訪問したこと(認定事実⑶ネ)により慰謝料を増額すべきとは解されない。 上記説示を踏まえ,前記認定の事情を総合考慮すると,被告の賠償すべき原 - 43 -告の慰謝料の額は,50万円を相当と認める。また,相当因果関係のある弁護士費用の額は5万円を相当と認める。 第4 結論以上によれば,原告の被告に対する請求は,55万円及びこれに対する平成30年7月28日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官岡部純子 裁判長 裁判官岡部純子 裁判官加藤靖 裁判官藤田陽平

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