平成13(う)931 詐欺等被告

裁判年月日・裁判所
平成14年1月16日 東京高等裁判所
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判決文本文21,267 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人Aを懲役7年に,被告人Cを懲役5年6月に,被告人B,被告人D,被告人E,被告人F及び被告人Gを各懲役4年にそれぞれ処する。 被告人らに対し,原審における各未決勾留日数中180日をそれぞれその刑に算入する。 被告人Cから,横浜地方検察庁川崎支部で保管中の大麻1袋(平成12年領第788号符号1)を没収する。 理由 検察官の控訴の趣意は,検察官匹田信幸作成の控訴趣意書記載のとおりであり,これに対する被告人Aの答弁は,同被告人弁護人大口昭彦作成の答弁書に,被告人Bの答弁は,同被告人弁護人田島浩作成の答弁書に,被告人C及び同Gの各答弁は,同被告人ら弁護人武内大徳作成の控訴答弁書に,被告人Dの答弁は,同被告人弁護人中山博善作成の答弁書に,被告人Eの答弁は,同被告人弁護人石川光作成の意見書に,被告人Fの答弁は,同被告人弁護人加藤悟作成の答弁書にそれぞれ記載のとおりであり,被告人Aの控訴の趣意は,同被告人弁護人大口昭彦作成の控訴趣意書に,被告人Bの控訴の趣意は,同被告人弁護人田島浩作成の控訴趣意書に,被告人C及び同Gの各控訴の趣意は,同被告人ら弁護人武内大徳作成の控訴趣意書に,被告人Dの控訴の趣意は,同被告人弁護人中山博善作成の控訴趣意書に,被告人Eの控訴の趣意は,同被告人弁護人石川光作成の控訴趣意書にそれぞれ記載のとおりであるから,これらを引用する。 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも加えて検討する。 第1 被告人Aの事実誤認,法令適用の誤りの論旨について被告人Aの弁護人は,原判示第1のH(以下単に「H」ともいう。)をリーダーとする各犯行について,各実行行為者が自己の判断に基づき電話をしていたもので,Hの指 事実誤認,法令適用の誤りの論旨について被告人Aの弁護人は,原判示第1のH(以下単に「H」ともいう。)をリーダーとする各犯行について,各実行行為者が自己の判断に基づき電話をしていたもので,Hの指示を受けた場合にはせいぜいHとの間で相手方に対する害悪告知等についての共同認識が形成されたにすぎず,行為の共同もなく,主観的にも共同実行の意思を欠いているから,被告人Aが実行行為に関与していない各犯行については共同正犯は成立せず,同被告人は無罪であり,原判決は,事実を誤認したか,刑法60条の解釈・適用を誤った違法があると主張する。 しかしながら,関係証拠によれば,原判示第1のHをリーダーとしていた時期の各犯行についても,被告人Fを除く被告人6名は,電話を架ける場所を同じくし,一定の利益分配のルールの下で,決められた氏名,団体名などを使用して各犯行に及び,被害者の送金先の口座も同じくし,他の共犯者が同じ被害者に重ねて金員を交付させる「回し打ち」や上司のふりをして被害者に金員を要求する「上司打ち」をするなど,共同して犯罪を遂行するシステムができあがっており,その犯罪の収益によって共同の費用を賄っていたことなどから,自己が直接関与しない犯行についても共同実行の意思を有していたものと優に認めることができる上,被告人Aについては,Hの補佐役として「回し打ち」の担当者を決めることにも関与し,Hが不在の際には,被告人Aが全体を取り仕切っていたのであって,被告人Aが直接担当していない犯行も含め,原判示第1の各犯行につき,被告人Aは共同正犯の責めを免れない。 被告人Aの事実誤認及び法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。 第2 検察官の事実誤認,法令適用の誤りの論旨について検察官の論旨は,原判決が,原判示第2及び第3の各事実につき,恐喝罪又は詐欺罪のみの成 人Aの事実誤認及び法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。 第2 検察官の事実誤認,法令適用の誤りの論旨について検察官の論旨は,原判決が,原判示第2及び第3の各事実につき,恐喝罪又は詐欺罪のみの成立を認め,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」と略す。)3条1項9号又は10号の適用を否定したのは,その前提となる事実を誤認し,法令の解釈・適用を誤ったものである,というのであり,①原判決は,被告人Eが被害者から振り込まれた現金を引き出して,「北海道の被告人らに送金し」たと認定しているが,送金先は「被告人らグループの銀行口座」である,②通話先の選定は,原判決が説示するような適当に選択したものではなく,犯行に成功した被害者の氏名を記録する「変則用紙」の記載も,原判決は,「簡単に記入し」たものであると判示しているが,そうではなく,これを無内容で重要でないかのように認定するのは誤りである,③原判決は,被告人Aから他の被告人が叱責されたことはなく,制裁もなかったとしているが,被告人Aは他の被告人を叱責していた上,成績の上がらない者には収入の多い「回し打ち」を担当させず,競争心をあおっていたもので,他の被告人は「回し打ち」をさせてもらえるかが最大の関心事であり,「回し打ち」の担当者を決める権限を持つ被告人Aの「指揮命令」は十分強固なものであった,④犯罪の収益のうち被告人Aが取る「社納」は,団体に帰属するものであって,犯罪による利益は団体に帰属していたものであるのに原判決はこれを被告人Aに帰属しているものと誤認している,などと主張する。 関係証拠に照らすと,検察官の所論のうち,①ないし③の指摘は必ずしも当を得たものではないが,原判決が,「争点に関する判断」の第3において,原判示第2,第3の各犯行について,組織的 どと主張する。 関係証拠に照らすと,検察官の所論のうち,①ないし③の指摘は必ずしも当を得たものではないが,原判決が,「争点に関する判断」の第3において,原判示第2,第3の各犯行について,組織的犯罪処罰法3条1項9号又は10号の適用を否定する理由を説示する部分は首肯し難く,所論は結論において正当である。原判決は,組織的犯罪処罰法3条1項の構成要件に関連する事実を誤認し,あるいはその評価を誤り,法令の解釈適用を誤ったものであって,破棄を免れない。その理由は以下のとおりである。 1 関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件グループ形成に至る経緯① Hは,兄Iと共に数名のグループで本件同様の紳士録を利用した詐欺・恐喝を行っていたもので,Iは東京都内のほか,全国各地に同様のグループをいくつか持っていたこともあった。被告人Aは,平成7年ころ,Iに誘われて東京の紳士録詐欺・恐喝グループに入り,最初は紳士録のコピーなどを担当していたが,そのうち詐欺等の犯行を自ら行うようになり,平成9年ころにはそのグループに被告人Bが加わり,平成10年ころに被告人Gが,平成11年には被告人Dがそれぞれ加わった。被告人Cは,平成9年ころから北海道北見市内のIの主宰するグループに入り,その後,札幌に移り,同様の犯行を重ねていた。平成11年春ころ,メンバーの一部が逮捕されたことから,東京のグループも北海道のグループもいったん活動を停止したが,その後,Hや被告人Aらは北海道に渡り,同年4月ころから,札幌市g区h所在のマンションを事務所として活動を再開し,被告人Fを除く被告人6名らがこれに参加し,Hが主宰者として他のメンバーに指示をし,他の者からは「社長」とか「大社長」と呼ばれていた。同年夏ころには,メンバーの一人が抜けたことから警察への通報をおそれて 人Fを除く被告人6名らがこれに参加し,Hが主宰者として他のメンバーに指示をし,他の者からは「社長」とか「大社長」と呼ばれていた。同年夏ころには,メンバーの一人が抜けたことから警察への通報をおそれて同市i区j所在のマンション内に事務所を移し,更に平成12年2月には同様の理由で本拠を同市k区l所在のマンション内に事務所に移し,その間も,本件同様の詐欺,恐喝を繰り返していた。被告人Eは,Hからの依頼により,平成11年6月ころから,被害者から送金された金員を預金から引き出して被告人らグループの銀行預金口座に送金するようになり,同年8月末からは,送金の報酬を諸経費を含め月100万円と取り決め,被害者が送金する預金口座の開設,被害金額の振込の確認,送金,電話代行業者との契約などを行っていた。 ② jに事務所を設置していたころからの同グループの活動についてみると,事務所内に電話を6本設置し,被告人Dが紳士録をコピーして他の者に配付し,それぞれが,あらかじめ決められた架空の名義の右翼,同和団体,興信所関係の団体名と偽名を名乗って電話を架け,新規の被害者の開拓に成功すると,担当者が被害者の特徴などを書いた「変則用紙」を作成し,Hが被告人Aに相談するなどして,同じ被害者から金員を取る「回し打ち」の担当者を決めており,「新規」の担当者が勝手に引き続きその被害者から金員を取ることは許されていなかった。新規の被害者からの入金があると,原則として7割は担当者の取り分となり,3割は「社納」としてHが取り,「回し打ち」については,「社納」が3割,その担当者と新規担当者がそれぞれ3割5分ずつなどと決められていたが,Hは「回し打ち」の担当者にも1割程度しか渡さず,犯行による収益の大部分を自分の収入にしていた。事務所の家賃,電話代などの共益費は,「社納」分から出すこと れぞれ3割5分ずつなどと決められていたが,Hは「回し打ち」の担当者にも1割程度しか渡さず,犯行による収益の大部分を自分の収入にしていた。事務所の家賃,電話代などの共益費は,「社納」分から出すことになっており,Hが支払っていた。Hは,被告人ら電話の担当者が外出することも制限し,自己の趣味であるパチンコにも共犯者全員を引き連れて行くなどし,私生活にも厳しい統制をしたため,次第に共犯者が不満を強めていった。 ③ 被告人Aは,Hが留守の際にはグループを取り仕切り,Hが「回し打ち」の担当者を決める際にもその相談役になるなど,実質的にはグループ内でHに次ぐ地位にあったが,Hの利益分配方法や生活上の締め付けに不満を持ち,平成12年3月ころから他のメンバーに声を掛けて,Hからの独立を持ち掛け,電話を担当していたメンバーの了解を得たほか,東京に在住する被告人Eとも連絡をとり,従前の条件で,引き続き新グループのために送金や口座開設などを担当することの了承を得て,原判示第2,第3の犯行場所である札幌市g区m所在のマンションを借り受け,Hが不在の間に元の事務所を引き払い,電話6本も移設し,同月20日ころから,被告人Aをリーダーとして,被告人Fを除く6人がグループの構成員となり,これまで同様の詐欺・恐喝を繰り返し,原判示第2の各犯行に及び,同年5月8日ころからは,被告人Fが同グループに加わり,判示第3の各犯行に及んだ。 (2) 原判示第2,第3の各犯行時の被告人らグループの実態① 被告人Eを除く被告人らは,前記マンションの個室4室とリビングルームに引かれた各個人専用の電話回線でそれぞれ電話を架け犯行を繰り返していたもので,平日はだいたい午前9時ころから夕方まで電話を架け,土曜,日曜日は休日にしていたが,成績の上がらない被告人Dは,他の者より遅くまで 個人専用の電話回線でそれぞれ電話を架け犯行を繰り返していたもので,平日はだいたい午前9時ころから夕方まで電話を架け,土曜,日曜日は休日にしていたが,成績の上がらない被告人Dは,他の者より遅くまで電話を架けていることが多かった。被告人らの架電先,架電方法は従前と同様であり,電話をしていた者がうまく話ができないと,途中から他の者が電話を替わり,その上司であるかのように装って,騙したり脅したりしており,これを「上司打ち」と呼び,また,「回し打ち」の段階に入ってから,被害者から電話代行業者にその被害者の「新規」担当者宛に電話が入るなどした場合に,これに介入して話をまとめることなどを「交通整理」と呼び,「上司打ち」や「交通整理」をした場合には,その者が犯罪の収益の一部の分配を受けるなどしていた。 利益の分配については,Hがリーダーのころの配分割合が踏襲され,被告人Aが「変則用紙」を受け取り,犯罪の収益の大半を占める「回し打ち」の担当者を決めたり,使用する名義の選択,送金口座の指定などをし,グループ全体のリーダーとしての役目を果たし,「変則用紙」や成果の報告を通じて全体を掌握し,犯罪の収益についても,被害者からの振込の確認を受け,他の者に指示して,被告人EからJ銀行K支店の借名預金口座宛に送金されてきた金員を引き出させ,これを受け取って担当者の配分割合を決め,自ら担当者らに分配していた。さらに,被告人らは電話代行業者を利用し,あらかじめ使用する団体名等を連絡して,業者に被害者からの電話を取り次がせ,被告人Dが,毎日のように,その電話代行業者に電話の有無や内容を問い合わせて,これを被告人Aに報告し,同被告人は,担当者にその内容を連絡したり,自ら犯行に介入するなどして,相手方の出方に応じた対処方法をとっていた。 ② 被告人Aは,基本的には各自に犯 内容を問い合わせて,これを被告人Aに報告し,同被告人は,担当者にその内容を連絡したり,自ら犯行に介入するなどして,相手方の出方に応じた対処方法をとっていた。 ② 被告人Aは,基本的には各自に犯行の具体的方法を任せていたが,指導をしたり,うまくいかないと叱責したり,「回し打ち」の担当者を決める際には,「右翼でいけ。」とか「同和でいけ。」などと基本的な方針を指示することもあり,他のメンバーは被告人Aの指示に従って行動していた。被告人Aは,「社納」として犯罪の収益の3割を受け取っていたため,事務所の家賃,光熱費,電話代,メンバーの昼食費などを支払っていたほか,しばしばメンバーを飲みに連れて行き,その飲食代は月数十万円に上っていた。また,被告人Aは,「社納」分を自己の取り分と区別して保管せず,これをグループの財産として蓄積もしておらず,共益費用の明細を他のメンバーに明らかにすることもなく,「社納」分のうち,共益費の支払に充てられたもの以外は被告人Aが個人的に費消し,事実上,被告人Aの利益となっていた。被告人Aが支払う家賃や飲食費,被告人Eの報酬を合計してもせいぜい月200万円程度であるのに,被告人Aがリーダーとなった後の犯罪の収益は約2億円であり,このうちの3割が「社納」分と推定されることから,被告人Aは「社納」の大部分を個人的に費消していたことになる。 ③ 被告人Aは,Hから独立する際には,他のメンバーに対して,原則どおりの利益の分配を約束していたのに,金遣いが荒く,担当者に本来支払うべき報酬を渡さなかったり,勝手に「交通整理」をして他の担当者の犯行に介入し,自己の取り分を増やすなどしていたが,他のメンバーは,被告人Aに不服を申し立てることはしなかった。 ④ 前記のとおり,被告人らのグループに途中から被告人Fが加わったが,同被告人 者の犯行に介入し,自己の取り分を増やすなどしていたが,他のメンバーは,被告人Aに不服を申し立てることはしなかった。 ④ 前記のとおり,被告人らのグループに途中から被告人Fが加わったが,同被告人に対しては,被告人Aの指示で被告人Bが犯行の方法を教え,また,被告人Dは,H時代に同被告人が受け取っていた,B5判の紙5枚に基本的な手口を手書きしたマニュアル様のものを被告人Fに渡した。しかし,組織的に詳しいマニュアルが作成されていたわけではなく,新人教育用のプログラムなども特に存在しておらず,先輩が新人をその都度教育する程度にすぎないものであった。 ⑤ 被告人らの手口の典型は,紳士録に掲載されている人物に無差別に電話を架け,最初は,掲載料や記事抹消料がかかるなどとして騙して現金を振り込ませようとし,それがうまくいかないと右翼や同和団体などを仮装して脅迫し,相手方を信用させたり恐れさせるための工夫を凝らし,しかも一度成功すると,他の共犯者が別の団体の名義を使って,詐欺や恐喝を繰り返し,多額の金員を振り込ませるというもので,2000万円以上も脅し取られた被害者もおり,数人が協力し合って初めて可能になる犯行の形態も少なくない。被告人Aがリーダーとなってから,被害者の振込先として利用していた預金口座には合計で約350回の入金があり,その合計額は2億円を超えている。 2 以上の事実を前提に,組織的犯罪処罰法3条1項の要件について検討すると,次のとおりである。 (1) 組織的犯罪処罰法2条にいう「団体」該当性について同法2条は「団体」の定義として「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって,その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。 目的を有する多数人の継続的結合体であって,その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう」と規定している。 被告人らは,紳士録に登載されている者を狙って,詐欺,恐喝を繰り返すという目的で結合している集団であって,人数面においても6名ないし7名で「多数」といえる上,継続性についてもHをリーダーとする時から,場所を転々と変えながら長期間続いており,Hをリーダーとしていた時点から,多少のメンバーの入れ替わりはあるものの,摘発されない限りはグループとして犯行を継続していくことが予定されていたといえる。もっとも,本件で組織的犯罪処罰法違反の対象となっている犯行は,被告人Aがリーダーとなってから以降のものであるが,基本的な犯行の方法,態様はHがリーダーであった時から変更はなく,被告人Aをリーダーとする新グループの結成は,犯行場所を変え,Hを追い出しただけであると見ることもでき,同グループは共同の目的を有する多数人の結合体であって,その目的又は意思を実現する行為の全部を反復して行っていたことは否定できない。被告人らのグループには特に名称はないが,団体であることの要件としてこれが必要であると解すべき根拠もない。また,そのグループには,前記のとおり電話対応の要領をまとめたマニュアル類似のものはあったが,これを組織的に作成していたとまで認めるべき証拠もなく,新人の教育も単に先輩が教示する程度にとどまっているが,そのことによって,団体の継続性が否定されるものではない。 次に,「組織」によって犯罪を実行しているとの点については,まず,「組織」というためには,「指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分 そのことによって,団体の継続性が否定されるものではない。 次に,「組織」によって犯罪を実行しているとの点については,まず,「組織」というためには,「指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」でなければならないことは前記のとおりである。そこで,その指揮命令の要件について検討すると,被告人Aは,絶対的な権限でメンバーに対し指揮命令をしていたものではないが,「指揮命令」は,既に犯行のシステムが従前の上位者の指示などによってほぼ確立したものになっている場合には,個々の犯行において具体的になされる必要はなく,上位者から指示が出された場合にそれに従うシステムになっていれば,個々の犯罪行為は指揮命令に基づく行為であると評価すべきところ,被告人らのグループでは,「新規」の電話の架け方や詐欺・恐喝の方法などは,原則的には各自に任されていたが,その場合に用いる団体の名称や偽名は被告人Aにより決められたものを使用し,場合により被告人Aがリーダーとして方法を指導,指示したり,やり方が悪いと叱責したりすることもあり,被告人Aが,メンバーから提出された「変則用紙」や成果の報告などを通じて全体の犯行を掌握し,「回し打ち」の担当者を決めていた上,犯罪の収益についても,被告人Eによって送金され,引き出された現金もまず被告人Aの手元に届けられてから,同被告人が具体的な配分を決めて担当者に手渡していたのであり,その場合に必ずしも取り決めどおりの配分をしていなかったにもかかわらず,他のメンバーが不服を述べたこともなかったというのであるから,被告人Aは,被告人らのグループの中で,単なる役割分担を超えた上位者としての地位があり,被告人Aのみが,他の者を従わせる指示をすることのできる立場にあったと見ることができる。そうする のであるから,被告人Aは,被告人らのグループの中で,単なる役割分担を超えた上位者としての地位があり,被告人Aのみが,他の者を従わせる指示をすることのできる立場にあったと見ることができる。そうすると,被告人Aは,「社長」などと呼ばれていたHらが確立した基本的なシステムを承継し,新たにリーダーとなったものであるから,個々の犯行については具体的な指揮,命令をしなくても,それらも被告人Aの指揮,命令に基づく犯行であると評価することができる。次に,任務の分担についてみると,メンバーのほとんどが実行行為を担当し,「回し打ち」の担当者が被告人Aの指名によって定まっていたにすぎず,さほど細かく分かれているとはいえないが,「新規」を中心に行う者,「回し打ち」を主に担当する者,実行行為のほか雑用等を担当する者,送金や口座の新規開設を担当する者などの任務の分担があり,電話代行業者との連絡なども含め,円滑に詐欺・恐喝の犯行が遂行できるようなシステムになっていたことが認められる。もっとも,「新規」の詐欺,恐喝については,被告人Dが紳士録のコピーを配布し,実行犯が電話をかけ,被告人Eが被害者からの振込金を送金する程度で,実行行為自体は単独で実行しているともいえ,個々の犯罪について組織を挙げて役割分担をして実行しているとまではいえないが,既にシステム化しているものを利用して複数の者が関与して効率よく行われているとみることができるから,関与者が少なくても組織によって実行されているといえる。そうであるからこそ,被告人Aがリーダーになってからのわずか3か月半の間に前記のような多数回の犯行に成功し,巨額の収益を上げることができたということができるのであって,「新規」の分も含め,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体により反復して行わ 多数回の犯行に成功し,巨額の収益を上げることができたということができるのであって,「新規」の分も含め,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体により反復して行われていたものということができ,被告人らのグループは同法2条の「団体」の要件を充足するものというべきである。 (2) 組織的犯罪処罰法3条1項の「団体の活動」の要件該当性について同法3条1項は,その各号に該当する行為が団体の活動として,当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときに刑を加重する規定であるところ,原判示第2,第3の各犯行が,この要件のうち,当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたものに該当することは,既に説示したところから明らかである。 そこで「団体の活動」として行われたものであるかを検討すると,「団体の活動」とは,「団体の意思決定に基づく行為であって,その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう」と規定されているところ,団体の意思決定に基づく行為である点については,個々の架電先については逐一組織的な決定はないが,あらかじめ定められた範囲の人間(紳士録登載者)に対し,一定の手段・方法により詐欺・恐喝の犯罪を行うことが以前からのグループ内の共通の了解事項になっており,「回し打ち」についてもグループ内の上位者である被告人Aによってその担当者が定められているのであるから,これらの犯行は団体の意思決定に基づくものということができる。 次に,犯罪の利益の帰属についてみると,利益分配の原則が守られた場合には,「社納」が3割であり,その余は担当者の取り分となり,当該犯行を担当していない他の共犯者に犯罪の利益が分配されることはなく,最終的には主として担当者ら個人に利益が帰属することになるが,いったんリー ,「社納」が3割であり,その余は担当者の取り分となり,当該犯行を担当していない他の共犯者に犯罪の利益が分配されることはなく,最終的には主として担当者ら個人に利益が帰属することになるが,いったんリーダーである被告人Aの元に犯罪の収益が集められ,被告人Aの判断に基づいて担当者に分配されているのであり,その場合,必ずしも取り決めどおりには分配されていなかったというのであるから,犯罪の収益は当初から担当者に帰属しているものではなく,いったん団体に帰属して,リーダーである被告人Aを通じて担当者に報酬が支払われていたとも見ることもできる上,組織維持のための費用は「社納」により賄われる建前になっているのであるから,少なくとも犯罪の収益の一部は本来団体に帰属すべきものであったといえる。もっとも,実際には,「社納」分の現金は団体の財産として被告人Aの財産と区別して管理されてはおらず,被告人Aが,「社納」分から共益費等を支出するという形をとらずに,自己の取り分と区別せずに,「社納」分の大半を私的に費消し,随時共益費等の支払を行っていたことは前述のとおりであり,「社納」分も事実上被告人Aの取り分のように扱われていたことは否めない。しかし,Hを「社長」と呼んでいたことなどをも考え併せると,「社納」分は本来団体に帰属するものとして徴収されていたことは否定できず,実際にも「社納」を受け取った被告人Aが,「社納」の中からではなくても,共益費等を支払っており,そのことによって団体の運営が維持されていたものであるから,少なくとも犯罪の収益の一部は団体に帰属し,その運営費用に使用されていたものと認められる。そして,犯罪の収益によって団体が維持されているのであれば,団体の財産が個人の財産と区別して保管されず,あるいは団体の活動資金などとして蓄積されていなくとも,犯罪に 使用されていたものと認められる。そして,犯罪の収益によって団体が維持されているのであれば,団体の財産が個人の財産と区別して保管されず,あるいは団体の活動資金などとして蓄積されていなくとも,犯罪による収益が組織的な犯罪を助長する効果を持つことは明らかであり,犯罪の利益の一部だけが団体に帰属し,大半は最終的には実行行為者等に帰属していても,組織的犯罪処罰法の立法趣旨(同法1条)に照らし,「これによる利益が団体に帰属するもの」という要件は満たしているものと解すべきである。 したがって,原判示第2,第3の各犯行は,団体の活動として行われたものと認められる。 3 原判決は,ほぼ前記事実と同旨の事実を認定しながら,組織的犯罪処罰法が,「団体」の定義に,組織性による制約を加えたのは,組織により活動を行う継続的結合体は,組織性を有していないものと比べ,継続性や計画性が強く,その構成員に対する関係では,共同目的による統制に加えて,組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができることなどから,犯罪の実行に及んだ場合にはその目的の実現性が高く,重大な被害やばく大な不正の利益を生ずる蓋然性が高く,違法性が高いからであり,組織的犯罪処罰法は,そのような組織的な犯罪について刑の加重等を行おうとするものであり,主として宗教団体や暴力団及び会社ぐるみの悪徳商法事案において,上位の者の指揮命令に基づき,下位の者が役割分担に従って詐欺や恐喝を行う場合を念頭におき,従来の詐欺,恐喝罪では適切な科刑がなされない場合のあることを考慮して立法化されたものであるとし,被告人らのグループがその「団体」に該当するかについては,①被告人らグループにおいては,被告人Aが,被告人らグループを立ち上げる中心となったことから,リーダー的存在ではあったものの,回し打ちの担当者を決 らのグループがその「団体」に該当するかについては,①被告人らグループにおいては,被告人Aが,被告人らグループを立ち上げる中心となったことから,リーダー的存在ではあったものの,回し打ちの担当者を決める以外,被告人らが犯行を行うにあたって時折必要な助言や指示を出していたにすぎず,電話架けの態様や方法,活動時間等の重要な点については各被告人の裁量に任されていたこと,②構成員に喝取したり騙取する金額のノルマ等が科されておらず,その金額が少ないために叱責をされたり制裁を受けるようなことはなく,交付を受けた金額が少なければその構成員の利得額が少ないだけのことであったこと,③被告人らのグループは,Hの厳しい統制に不満を持った者らが,それから逃れようと新たに作ったグループであることなどから,被告人らのグループが,同法が刑の加重の根拠としたような,宗教団体や暴力団等に見られる組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができていた団体というには疑問があり,「団体性」は希薄で,同法が予定する「団体」とは著しく異なっているとしている。また,原判決は,同法3条1項の要件についても,「社納」とされた分は,活動資金として蓄えられるようなこともなく,必要経費等の明細も構成員に報告もされず,必要経費としてその個人の収益に比してごく少額を支出する以外,被告人Aが自由に費消していたもので,必要経費として支出していた分もグループ全体の6割強の収益を受けていた被告人Aが個人的に負担していた色彩の強いものであり,結局,犯罪の収益は,当該犯罪の実行担当者と被告人Aの収益に充てられていたにすぎず,被告人Aを含め,被告人らはそれぞれ個人の利益を追求していたのであって,当該犯罪の利益が団体に帰属していたとはいえず,被告人らは,その詐欺,恐喝を団体の活動として行っていたとはい れていたにすぎず,被告人Aを含め,被告人らはそれぞれ個人の利益を追求していたのであって,当該犯罪の利益が団体に帰属していたとはいえず,被告人らは,その詐欺,恐喝を団体の活動として行っていたとはいえない,と説示し,原判示第2,第3の各犯行は,同法3条1項9号,10号には該当しないとしている。 そこで検討するに,まず,原判決が厳密な意味で団体性の要件として宗教団体や暴力団のような強い内部統制を必要と解しているかどうかは,団体性自体を否定せずに,団体性が希薄であるという表現をしている点からして,必ずしも明らかではないが,前述のように,宗教団体や暴力団等に見られる組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができていた団体というには疑問があり,同法が予定する団体とは著しく異なっているとしているから,この点を特に重視していることは明らかである。 しかしながら,この点に関する原判決の説示は,組織的犯罪処罰法の立法の主要な根拠を参考としたものであろうが,いうまでもなく,内部統制の強さは,刑加重の要件ではなく,加重の立法根拠にすぎないのであり,組織性の要件,すなわち,「指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務に従って構成員が一体として行動する人の結合体」に該当すれば,偶々,内部統制が強くない団体であっても,同法の規制対象となるのであり,内部統制の強弱は,単なる犯情の差にすぎないのであって,これを適用要件にからめて判断するのは相当でない。このことは,いわゆる悪徳商法を会社ぐるみで行う場合などを想定すれば,法が予定している組織的犯罪の典型のような場合であっても,必ずしも団体に強い内部統制が加えられているとは限らないことからも明らかである。組織的な犯罪の遂行にとって必要とはいい難い人間関係の強度の結びつきまで要求する根拠は乏しく,その説示は容易 あっても,必ずしも団体に強い内部統制が加えられているとは限らないことからも明らかである。組織的な犯罪の遂行にとって必要とはいい難い人間関係の強度の結びつきまで要求する根拠は乏しく,その説示は容易には首肯することができず,むしろその立法趣旨からすれば,団体の構成員の結び付きは,組織的な犯罪を行うという共同の目的にそった合理的なもので足りるはずであり,まさに,同法が明記する組織性に関する前記要件がそのことを立法的に表現しているのである。 そうすると,原判決が団体性が希薄であることを当該利益が団体に帰属していないことと並べて同法の適用を否定する理由としているのは適切ではない。 次に,原判決が指摘する前記①の点については,被告人Aがリーダーになる以前から,グループ内では実質的にHに次ぐ地位にあったことを看過しており,また,Hらがリーダーであった時点において既に犯罪の実行方法等の主要な部分がシステムとして確立しており,個別に具体的な指揮や命令をする必要がなかったことは既に説示したとおりであり,これらの点を団体性を否定する根拠とすることは誤りであるといわざるを得ない。②の点についてもノルマがないことは原判決の説示のとおりであるが,それが特に組織性を否定する理由にはならず,また,被告人Aが他のメンバーを叱責することがあったことは証拠上も明らかで,原判決の説示は不正確といわざるを得ない。また,③の点についても,被告人らがHの下から独立した理由は,犯罪の収益の大部分をHが独り占めし,予定していた配分割合どおりの利益の分配がなかったことと,Hが外出を規制するなどの私生活上も厳しい統制を加えていたことなどにあるのであって,グループ内部での利益配分の変更は内部統制の強さとは関係がなく,むしろ,担当者に対する利益配分を増やすことは,構成員の犯罪実行の意 るなどの私生活上も厳しい統制を加えていたことなどにあるのであって,グループ内部での利益配分の変更は内部統制の強さとは関係がなく,むしろ,担当者に対する利益配分を増やすことは,構成員の犯罪実行の意欲をより強く引き出す作用があり,グループとしての結合を強化するものであるともいえる。また,Hは自己の趣味であるパチンコまでも共犯者を引き連れて行くなどしていたが,このようなことが犯罪を実行を目的とする団体の内部統制として必要な規制であったとは到底いえない上,外出を極力させないとか,偽名の使用を強いるなどの点は,身元の発覚を防ぎ,捜査を困難にする効果があることも否めないが,これまた犯罪の遂行のために必要不可欠な内部統制とはいえず,暴力団の組織的犯行や会社ぐるみの悪徳商法の事例などでも,そのような強い生活上の統制までは加えていないのが通常であるから,Hが構成員に加えていたような必ずしも合理的とはいえないような強度の生活上の統制がなければ,団体性が認められないと解することはできない。 次に,当該利益の団体帰属性の点についてみると,被告人Aは,自己の取り分と「社納」を区別して保管せずに勝手に費消しており,経費等の明細を他の共犯者に明らかにしていないが,暴力団のような場合に,組の収入と費用の明細を構成員に示したりすることはないと思われ,また,暴力団の組長が組の収入と組長個人の収入をきちんと分けて管理しているのが通常であるとは考え難く,収入の保管がずさんであることや構成員に費用の明細を示していない点は,犯罪の利益が団体に帰属しないことの有力な根拠ということはできない。原判決が,「社納」も被告人Aの取り分であり,共益費等は被告人Aが個人的に負担していた色彩が強いと説示する点も根拠が乏しく,首肯し難い。また,原判決が説示するように,被告人らはそれぞれ個人の ない。原判決が,「社納」も被告人Aの取り分であり,共益費等は被告人Aが個人的に負担していた色彩が強いと説示する点も根拠が乏しく,首肯し難い。また,原判決が説示するように,被告人らはそれぞれ個人の利益を追求して犯罪を行っていたことは否めないが,個人の利益の追求と団体の利益とは必ずしも相反するものではなく,例えば,歩合制で給与を支給するシステムの会社ぐるみの詐欺商法であれば,これに従事する者は,主観的には個人の利益の追求のために売り上げを伸ばして自己の取り分を増やそうと努力するが,個人が売り上げを増やせばこれに比例して会社に帰属する利益も増加することになるから,個人の利益の追求を主たる目的としている行為であることが,団体への利益の帰属を否定する根拠になるとはいい難い。 以上のとおりであるから,被告人らの詐欺・恐喝グループは,組織的犯罪処罰法にいう「団体」に該当し,原判示第2,第3の各犯行は,その団体の活動として組織により行われたものと認められるところ,原判示第2,第3の各所為について,組織的犯罪処罰法の適用を否定し,被告人らの各所為に恐喝罪又は詐欺罪を適用した原判決は,組織的犯罪処罰法3条1項9号又は10号の構成要件に関係する事実を誤認し,法令の解釈適用を誤ったものであって,破棄を免れない。 検察官の論旨は,結局理由がある。 よって,被告人らのその余の控訴理由についての判断を省略し,刑訴法397条1項,380条,382条により,原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当審において被告事件について更に次のとおり判決する。 (罪となるべき事実)原判決の「罪となるべき事実」中,第2の冒頭の「被告人A、同B、同C、同D、同E及び同Gは、共謀の上、いわゆる紳士録に氏名等の記事が掲載されている者から、掲載料、記事抹消料等名下に金員を詐取 実)原判決の「罪となるべき事実」中,第2の冒頭の「被告人A、同B、同C、同D、同E及び同Gは、共謀の上、いわゆる紳士録に氏名等の記事が掲載されている者から、掲載料、記事抹消料等名下に金員を詐取又は喝取しようと企て」とあるのを「被告人A、同B、同C、同D、同E及び同Gは、架空名義の団体を仮装して、いわゆる「紳士録」に氏名等の記事が掲載されている者から、掲載料、記事抹消料等の名下に金員を詐取又は喝取するために集団を形成していたものであり、その集団は、被告人Aをリーダーとし、その指揮命令に基づいて,あらかじめ定まっている、詐欺・恐喝の実行犯、預金口座の開設、現金の引出し・送金等の任務分担に従って、その多数の構成員が組織的に前記詐欺及び恐喝を行い、これにより利益を図る等を共同の目的とする前記被告人6名によって構成された継続的な結合体であり、組織により前記詐欺・恐喝を反復して行っていた団体であるが、前記被告人6名は、共謀の上、前記のとおり、金員を詐取又は喝取しようと企て、その団体の活動として、詐欺・恐喝を実行するための組織によって、」と,同第3の冒頭の「被告人7名は共謀の上、いわゆ「紳士録」に氏名等の記事が掲載されている者から、掲載料、記事抹消料等名下に金員を詐取又は喝取しようと企て」を「平成12年5月8日ころ、被告人Fも、その事情を知りながら前記被告人らの団体に加わり、その頃から被告人7名で前同様の団体を形成していたものであるが、被告人7名は、共謀の上、前記第2と同様に金員を詐取又は喝取しようと企て、その団体の活動として、詐欺・恐喝を実行するための組織によって、」とそれぞれ改めるほかは,同事実記載のとおりである。 (証拠の標目)原判決記載のとおりである。 (被告人Cの自首の成否について)被告人Cの原審及び当審各弁護人は,被告人Cに めの組織によって、」とそれぞれ改めるほかは,同事実記載のとおりである。 (証拠の標目)原判決記載のとおりである。 (被告人Cの自首の成否について)被告人Cの原審及び当審各弁護人は,被告人Cには原判示第4の大麻所持につき自首が成立すると主張するが,関係証拠によれば,平成12年7月5日,捜査官が,被告人Cを逮捕した後,恐喝被疑事件の捜索差押許可状に基づき,原判示の被告人C所有の普通乗用自動車内の捜索を開始し,後部トランクを開けて捜査官が被告人Cに対し「法に触れるような物があれば早く出しなさい。」と申し向けたところ,被告人Cがトランク内の青紫色のプラスチック製ボックスを指示して「この中に大麻があります。」と供述し,その供述どおり本件大麻が発見されたこと(甲70),トランク内には工具類等を入れたプラスチック製籠やコンロなどが入っており,前記プラスチック製ボックスはそれらの物の下に隠れて見えないが,トランク内の物を取り出せば容易に目に付く場所に置かれており,そのボックスの中身は,たばこ,本件大麻,パイプ,タバコ巻紙器など,大麻吸引に使用するものばかりであったこと(甲71)が認められ,被告人Cが大麻所持の申告をした時点では,いまだ捜査官に大麻所持の事実は発覚していなかったものの,捜索の実施によって大麻が発見されることは必至の状況にあったのであるから,被告人Cは,そのような状況下で,捜査官の発言に促されて観念した結果,やむなく大麻所持の事実を申告したものと推認される。被告人Cは,原審及び当審公判並びに当審で取り調べた上申書(弁15)において,捜査官が捜索を終えるころに大麻所持の申告をしたと供述しているが,関係証拠に照らしても,捜査官が前記ボックスを開けもせずに捜索を終了しようとしていた形跡はなく,同被告人の供述は信用し難い。 したがって, が捜索を終えるころに大麻所持の申告をしたと供述しているが,関係証拠に照らしても,捜査官が前記ボックスを開けもせずに捜索を終了しようとしていた形跡はなく,同被告人の供述は信用し難い。 したがって,被告人Cのした大麻所持の申告には自発性の要件が欠けており,法律上の自首には当たらない。 (法令の適用)原判決の「法令の適用」中,「被告人A,同B,同Lにつき」とあるのを「被告人A,同B,同Dにつき」と訂正し,関係各被告人の原判示第2の2,第3の3,第3の5,第3の6(2),第3の7(2),第3の8,第3の10,第3の12(2),第3の13の各所為につき,「いずれも包括して刑法60条、249条1項」とあるのを「いずれも包括して刑法60条、組織的犯罪処罰法3条1項10号、刑法249条1項」と,同第2の1,第2の4,第3の1,第3の2(2),第3の4,第3の11の各所為につき「いずれも刑法60条,249条1項」とあるのを「いずれも刑法60条、組織的犯罪処罰法3条1項10号,刑法249条1項」と,同第2の3,第3の2(1),第3の6(1),第3の7(1),第3の9,第3の12(1)の各所為につき「いずれも刑法60条,246条1項」とあるのを,「いずれも刑法60条,組織的犯罪処罰法3条1項9号,刑法246条1項」と改めるほか,各被告人の原判示挙示の各所為は原判示の各罰条に該当するところ,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Gについては,いずれも刑及び犯情の最も重い原判示第2の2の罪の刑に,被告人Fについては,犯情の最も重い原判示第3の3の罪の刑に,それぞれ同法14条の制限内で法定の加重をし,その各刑期の範囲内で被告人Aを懲役7年に,同Cを懲役5年6月に,同B,同D,同E,同F及び 被告人Fについては,犯情の最も重い原判示第3の3の罪の刑に,それぞれ同法14条の制限内で法定の加重をし,その各刑期の範囲内で被告人Aを懲役7年に,同Cを懲役5年6月に,同B,同D,同E,同F及び同Gを各懲役4年にそれぞれ処し,同法21条を適用して,被告人らに対し,原審における各未決勾留日数中180日をそれぞれその刑に算入し,横浜地方検察庁川崎支部で保管中の大麻1袋(平成12年領第788号符号1)は,原判示第4の罪に係る大麻で,犯人の所有するものであるから,大麻取締法24条の5第1項本文によりこれを被告人Cから没収し,被告人A,同B及び同Dの原審及び当審における各訴訟費用並びに被告人Fの当審における訴訟費用については,刑訴法181条1項ただし書を適用していずれも当該被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人らが組織的に詐欺,恐喝を繰り返した事案及び被告人Cによる大麻所持の事案である。 このうち,詐欺・恐喝の事案は,前判示のとおり,極めて巧妙な手口により,組織的に行われたもので,特に恐喝の犯行は,被害者のみならずその家族に対しても危害を加えるかのような脅迫をしており,しかも,一度犯行に成功すると,共犯者が別の団体の名をかたるなどして,その被害者から何度も金員を巻き上げようとし,被害者の中には2000万円以上の被害を被った者もおり,被害額は合計で1億2800万円余りの巨額に達し(そのうち被告人Fが関与したのは5700万円余り),犯行の回数もかなり多く,犯情は極めて悪質である。 被告人らは,これらの犯行を組織的,職業的に行っていたもので,その刑事責任は重大である。 被告人ら7名は,そのグループの銀行口座に残っていた約546万円を各被害者に対し被害額に按分して支払ったほか,被告人Cが60万円の弁償をしたこと,被告人E いたもので,その刑事責任は重大である。 被告人ら7名は,そのグループの銀行口座に残っていた約546万円を各被害者に対し被害額に按分して支払ったほか,被告人Cが60万円の弁償をしたこと,被告人Eが,本件犯行とは関係なく別に調達した資金により約750万円の被害弁償をしたこと,被告人Gが170万円の弁償をしたことが認められ,これらの事実はそれぞれ弁償をした被告人にとって有利な情状となるほか,被害者への被害填補がされたという点で被告人ら共通の有利な情状ともなるが,これらをすべて合わせても,弁償した額は全体の被害額からみれば微々たるものであり,被害の大半は回復の見込みもない。 次いで,各被告人の個別の情状についてみると,被告人Aは,原判示第1の犯行のころから,グループ内ではHに次ぐ地位にあり,原判示第2の犯行からはグループのリーダーとして率先して犯行を繰り返していたもので,犯行による利得額も他の被告人と比較すると格段に多く,しかもこれを主としてギャンブルに湯水のように費消して弁償の資力もないというのであるから,共犯者中では最も刑事責任は重い。そうすると,事実を認め反省の態度を示していること,原審で父親が農業の手伝いをさせたいと述べており,出所後の生活の当てがあること,前科は古い罰金刑のみであることなどを考慮しても,主文の刑は免れない。 被告人Bは,本件において自らが直接関与した犯行による収益は他の被告人と比較して少ないが,同種行為を職業的に行っていた期間は相当長く,後から加入した被告人Fに対する教育を行うなどしているのであるから,その刑事責任は軽視できず,事実を認め反省の態度を示していること,原審において友人が被告人Bの更生に助力する旨述べていること,前科は交通関係のものだけであることなどの事情を考慮しても,主文の刑は免れない。 被告 軽視できず,事実を認め反省の態度を示していること,原審において友人が被告人Bの更生に助力する旨述べていること,前科は交通関係のものだけであることなどの事情を考慮しても,主文の刑は免れない。 被告人Cは,本件犯行により1000万円を上回る多額の報酬を得ており,紳士録詐欺・恐喝のグループに加入していた期間も長い上,平成7年に覚せい剤取締法違反の罪で懲役1年6月,執行猶予4年の判決を受けながら,大麻を所持していたことに照らすと,規制薬物に対する親和性も認められ,規範意識が鈍麻しているといわざるを得ない。そうすると,前記の被害弁償に加え,当審において,同被告人が被害者に謝罪の手紙を出し,被害者4名が同被告人については厳重な処罰までは望まない旨の上申書を提出したこと(ただし,うち3名については,真意ではなく,厳重な処罰を求める旨の各電話聴取書が存在する。),同被告人が事実を認め反省していること,原審において同被告人の姉が更生に助力する旨述べ,当審において友人が出所後の雇用を約束するとの上申書を提出していることなど,同被告人にとってしん酌すべき事情を十分考慮しても,その刑事責任は被告人Aに次いで重いものといわざるを得ず,主文の刑に処するのが相当である。 被告人Dについては,紳士録詐欺・恐喝のグループに加わっていた期間は短くはなく,事務所の引越手続や電話代行業者との連絡などの雑用を担当し,本件各犯行を遂行する上で一定の役割を果たしており,実行犯としてはあまり成果が上がらず,直接関与した犯行も少なく,他の被告人より犯罪の利得もかなり少額であるが,その刑事責任を軽視することはできない。そうすると,同被告人も事実を認め,反省の態度を示していること,原審において,同被告人の妻が,被告人の社会復帰後に2人で働いて少しでも弁償したいと述べていること,前科 責任を軽視することはできない。そうすると,同被告人も事実を認め,反省の態度を示していること,原審において,同被告人の妻が,被告人の社会復帰後に2人で働いて少しでも弁償したいと述べていること,前科は交通関係の罰金前科のみであることなどを考慮しても,被告人Bらとはその刑事責任の重さにおいて大差はないものというべきであり,主文の刑に科するのが相当である。 被告人Eは,犯罪地から遠隔地に被害者の振込先口座を開設することや,被害者からの振込金の送金,電話代行業者との契約などの犯罪遂行に不可欠な行為を担当し,月100万円という多額の報酬を得ていたもので,その刑事責任は軽視できない。そうすると,前記の被害弁償に加え,同被告人は,詐欺・恐喝の実行行為には直接関与していなかったこと,事実を認め反省の態度を示していること,当審において,被告人Eのおばが,出所後の被告人Eの面倒を見る旨証言していること,前科は交通関係のものだけであることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,主文の刑は免れない。 被告人Fは,途中から被告人らのグループに加入して積極的に犯行に関与していたもので,関与した期間は他の被告人に比べて短く,犯罪の収益も比較的少ないが,他の被告人が逮捕された後も逃走を続け,その間に被害金を費消しており,その刑事責任は軽視できない。そうすると,反省の態度を示していること,原審において婚約者が被告人の更生への助力を誓っていること,前科がないことなどを考慮しても,主文の刑に処するのが相当である。 被告人Gについては,犯行に際し強度の脅迫をすることが多く,他の共犯者よりも犯行の態様が悪質であり,主として割りのいい「回し打ち」を担当し,本件犯行による利得額も1000万円を超える多額であり,犯情は相当悪い。しかしながら,前記の弁償に加え,原審にお く,他の共犯者よりも犯行の態様が悪質であり,主として割りのいい「回し打ち」を担当し,本件犯行による利得額も1000万円を超える多額であり,犯情は相当悪い。しかしながら,前記の弁償に加え,原審において被害者らが同被告人については厳重な処罰を求めない旨の上申書を提出していること,同被告人も事実を認めて反省の態度を示していること,前科もなく,犯行時は少年であったこと,その他家庭の状況などの事情を考慮すると,同被告人に対しては主文の刑にとどめるのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年1月16日東京高等裁判所第9刑事部裁判長裁判官原田國男裁判官大島隆明裁判官田邊三保子

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