平成24年9月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第16066号販売行為差止等(不正競争防止法)請求事件口頭弁論終結日平成24年7月2日判決原告株式会社大廣製作所同訴訟代理人弁護士後藤秀継同田部井大輔同玉置健同訴訟代理人弁理士竹内祐二被告株式会社ビューティガレージ同訴訟代理人弁護士川畑大輔同谷中俊介同補佐人弁理士松下昌弘 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載のヘアードライヤーを販売し,使用し,譲渡し,貸し渡し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,原告に対し,金3200万円及びこれに対する平成22年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,かつて後記本件意匠権を有しており,かつ別紙原告製品目録記載のヘアードライヤー(以下「原告製品」という。)の製造販売を行う原告が,別紙被告製品目録記載のヘアードライヤー(以下「被告製品」という。)の販売等を行う被告に対し,下記請求をした事案である(なお,損害賠償請求については,意匠権侵害に基づく請求と不正競争防止法違反に基づく請求は,損害が重なる限度で選択的に請求されているものと解する。)。 う被告に対し,下記請求をした事案である(なお,損害賠償請求については,意匠権侵害に基づく請求と不正競争防止法違反に基づく請求は,損害が重なる限度で選択的に請求されているものと解する。)。 記(1) 意匠権侵害に基づく損害賠償請求被告製品の販売等が,後記本件意匠権を侵害することを理由とする,意匠権侵害の不法行為(民法709条)に基づく金1600万円及びこれに対する不法行為の後である平成22年11月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の損害賠償請求(2) 不正競争防止法違反に基づく差止・損害賠償請求被告製品の販売等が,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当することを理由とする,同法3条1項に基づく被告製品の販売等の差止請求,並びに,同法4条に基づく金3200万円及びこれに対する不法行為の後である平成22年11月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の損害賠償請求 2 判断の基礎となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる。 (1) 当事者原告は,理美容器具等の製造販売を目的とする会社である。被告は,理美容用品・機器の販売等を目的とする会社であり,理美容用品・機器の中古品販売事業も行っている。 原告製品の製造販売原告は,平成4年5月から,原告製品を製造販売している。原告製品の構成は,別紙原告製品写真及び図面記載のとおりである。なお,原告製品については,平成22年6月頃,量産体制は終了し,その後は受注生産とされている(甲51)。 本件意匠権原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)を有してい は終了し,その後は受注生産とされている(甲51)。 本件意匠権原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)を有していた。なお,本件意匠権は,平成21年3月25日,存続期間満了により消滅した。なお,意匠に係る物品のヘアードライヤーとは,理美容器具の一種であり,ヘアサロンにおいて,理美容師が利用客に対し,パーマ,カラーリング,ドライなどを行った際,その浸透ないし乾燥を促進するために使用する機器の総称である。登録番号第900962号出願日平成3年12月11日登録日平成6年3月25日意匠に係る物品ヘアドライヤ本体登録意匠別紙本件意匠公報記載のとおり 被告製品の販売被告は,平成18年から,被告製品を販売している。被告製品の構成は,別紙被告製品写真記載のとおりである(以下,被告製品に係る意匠を「被告意匠」という。)。 3 争点 意匠権侵害に基づく請求被告意匠は本件意匠に類似するか(争点1)(2) 不正競争防止法違反に基づく請求ア原告製品の形態は,周知商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するか(争点2-1)イ被告製品の形態は原告製品の形態に類似するか(争点2-2)ウ原告製品と被告製品との混同のおそれがあるか(争点2-3)エ原告に,営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるか(争点2-4) 原告の損害額(争点3)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告意匠は本件意匠に類似するか)について【原告の主張】 本件意匠の要部ア 2-4) 原告の損害額(争点3)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告意匠は本件意匠に類似するか)について【原告の主張】 本件意匠の要部ア需要者・取引者について本件意匠に係る物品(ヘアードライヤー)の需要者・取引者は,ヘアサロンの経営者・従業員のほかに,ヘアサロンの利用客も含まれる。イ使用態様についてヘアードライヤーは,洗った頭髪を乾燥させたり,温風でパーマ液の浸透を促進したりするための美容器材である。したがって,注目される本質的部分は,本来の機能を発揮するヒーター部とこれを支えるシェード部である。ウ従来の意匠と比較した特徴本件意匠は,従来のヘアードライヤー(円筒シェード固定タイプ,複数シェード点在固定タイプ,環状シェード回転タイプ)と比較すると,ヒーター部(左右に分かれたシェードの下側両端部に横長の略長方形の保護ネットに被われた細長の円柱形のパークヒーターが2基ずつ舟底のように削られたシェードの底面にセットされている部分)とこれを支えるシェード部に特徴がある。これらの部位はファッショナブルな独特の形状で,使用時には,シェード部が360度回転することにより,洗った頭髪を熱風で乾燥させたり,又は,パーマ液の浸透を促進させたりする。エ要部について 本件意匠の要部は,ヒーター部とこれを支えるシェード部の形状にある。操作盤(制御部)が設けられた支持部やモーターカバーである円柱部の形態は要部ではない。 本件意匠と被告意匠との類否ア本件意匠の構成本件意匠のうち,要部に関する具体的構成は以下のとおりである。ア 側面視において,シェード部は円型のオゾン噴出口の縦中心線を基点として,略帯状のシェードが左右に 否ア本件意匠の構成本件意匠のうち,要部に関する具体的構成は以下のとおりである。ア 側面視において,シェード部は円型のオゾン噴出口の縦中心線を基点として,略帯状のシェードが左右に「逆への字状」と「への字状」に分かれており,全体としてブーメランのような形を構成する。シェードの両端部の下側には横長の略長方形で網状の保護ネットが装着され,上側には略台形状のシェードフィルター(放熱口)が接着されている。イ 底面視において,シェード部の両端部の底面は,舟底のように削られ,その上に,網状の保護ネットに被われた略長方形のケーシング(断熱用耐熱樹脂)がセットされた形を構成している。ウ 上記イの各ケーシングには,別紙原告製品写真及び図面記載「3ブーメランヒーター部略図」のとおり,細長い円筒形のパークヒーターが2基,棒状のPTCヒーターが1基と,これに対応する溝が設けられている。エ シェード部は,その中心の上部にあるモーターを軸として,投ぜられたブーメランのような軌道で360度回動する。これに従って,シェード部の下側両端部にセットされた各ヒーターも同様の軌道で回動することにより,従来のヘアードライヤーにはない美感と毛髪に付着する薬液を効率よく乾かす機能を有している。イ本件意匠と被告意匠との対比ア 被告意匠は,以下のとおり,本件意匠の構成上の特徴(要部)の全てを備えている。a 被告意匠は,側面視において,円型のオゾン噴出口の縦中心線を基点として,略帯状のシェードが左右に「逆への字状」と「への字状」に分かれており,全体としてブーメランのような形を構成する点,シェード部の両端部の下側には横長の略長方形で網状の保護ネットが装着され,上側には略台形状のシェー ドが左右に「逆への字状」と「への字状」に分かれており,全体としてブーメランのような形を構成する点,シェード部の両端部の下側には横長の略長方形で網状の保護ネットが装着され,上側には略台形状のシェードフィルターが接着されている点において,本件意匠と同じである。b 被告意匠は,底面視において,シェード部の両端部の底面は,舟底のように削られ,その上に,網状の保護ネットに被われた略長方形のケーシング(断熱用耐熱樹脂)がセットされた形を構成する点において,本件意匠と全く同じである。c 被告意匠は,別紙原告製品写真及び図面記載「3 ブーメランヒーター部略図」のように,細長い円筒形のパークヒーターが2基,棒状のPTCヒーターが1基と,これに対応する溝が設けられており,本件意匠と全く同じである。d 被告意匠は,シェード部が,その中心の上部にあるモーターを軸として,投ぜられたブーメランのような軌道で時計まわりに360度回動し,これに従って,シェード部の下側両端部にセットされた各ヒーターも同様の軌道で回動する点において,本件意匠と同じである。なお,各ヒーターの名称や回動の方向(時計回りか否か)についての違いは,本質的なものではない。イ 一方,本件意匠と被告意匠は,以下の差異点を有する。本件意匠のシェード部は,両端が直線的であるのに対し,被告意匠のシェード部は,両端がやや曲線的であり,その中央にピックのような切り込みがある。また,本件意匠のシェード部は,中央から左右の両端までの幅がほぼ均一で,上蓋部分もほぼ同一幅でその下部を被っているのに対し,被告意匠のシェード部は,中央よりも左右の両端の方が幅広くなっており,上蓋部分は均一な幅を有するものの下部より外側にはみ出している。ウ類否につい ぼ同一幅でその下部を被っているのに対し,被告意匠のシェード部は,中央よりも左右の両端の方が幅広くなっており,上蓋部分は均一な幅を有するものの下部より外側にはみ出している。ウ類否について本件意匠と被告意匠の共通点は,いずれも両意匠の類否判断を左右する主要部にかかるものであり,かつ看者の注意を最も強く惹く点であって,看者に類似の印象を強く与えるものである。これに対し,差異点は,何れも部分的,あるいは非本質的なもの(設計上の変更事項)であって,共通点により惹起される類似の印象を打ち壊し,両者を別異のものとする程,視覚的に顕著なものではない。エ小括したがって,被告意匠は本件意匠と類似する。【被告の主張】 本件意匠の構成ア基本的構成態様A シェード部右側面視において,左上側に位置する部分(以下「第1シェード」という。)と,第1シェードと線対称の形状を有し右下側に位置する部分(以下「第2シェード」という。)とが一体的に形成されたシェード部B 円柱部シェード部の上面中央に設けられた円柱部C 支持部円柱部を介してシェード部を支持する支持部D 取っ手部支持部の下端部に設けられた取っ手部イ具体的構成態様本件意匠は,上記基本的構成態様につき,以下の具体的構成態様を備えている。 A シェード部について(ア) 平面視において,第1シェードと第2シェードの左右方向の巾は略均一であり,第1シェードの縁と第2シェードの縁は,巾方向へ直線状に延びている。 (イ) 第1シェードと第2シェードの下面にはそれぞれヒーター部が設けられている。 右側面視において,第1シェードのヒーター部は,水平方向に対して反時計回りの向きに略20度傾斜している。また 。 (イ) 第1シェードと第2シェードの下面にはそれぞれヒーター部が設けられている。 右側面視において,第1シェードのヒーター部は,水平方向に対して反時計回りの向きに略20度傾斜している。また,第2シェードのヒーター部は,垂直方向に対して反時計回りの向きに略20度傾斜している。 (ウ) 第1シェードと第2シェードの各上面には,巾方向に延びたストライプ状の7本の放熱口が形成されており,その長さは同じである。 (エ) ヒーター部に設けられた略矩形の網状の保護ネットは,その矩形領域の内側にシェード部の長手方向に沿って等間隔に配置された6本のラインと,それに直交して等間隔に配置された3本のラインを備えている。 (オ) 第1シェードと第2シェードの結合部の底面側の中央付近には,直径がシェード部の巾の略1/4の円パターンが形成されている。 B 円柱部について(ア) 円柱部の下側面は,シェード部の上面の中央部に結合している。 (イ) 円柱部の上側は,丸みを帯びた曲面を形成している。 (ウ) 円柱部の側面の略中間付近は,支持部に結合している。 C 支持部について(ア) 右側面視において,支持部は,正面方向へ2段階に折れ曲がっており,これらの屈曲部を境目とする3つのブロックから構成される(以下,上から順に「第1支持部」,「第2支持部」,「第3支持部」という。)。 (イ) 第1支持部は,円柱部の側面に対して,円柱部の軸方向と垂直な向きから結合し,第2支持部は,第1支持部に対して略120度の内角で時計回り方向に屈曲し,第3支持部は,第2支持部に対して略160度の内角で時計回り方向に屈曲している。 (ウ) 第1支持部の中央付近には,蛇腹部が設けられている。 平面視において,第1支持部の巾は,円柱部の結合部側か ,第3支持部は,第2支持部に対して略160度の内角で時計回り方向に屈曲している。 (ウ) 第1支持部の中央付近には,蛇腹部が設けられている。 平面視において,第1支持部の巾は,円柱部の結合部側から第2支持部側に向けて広がっている。 (エ) 第2支持部および第3支持部の長手方向に直交した断面は略矩形である。 (オ) 第2支持部の背面に設けられた制御部には,矩形領域内の上側に2つの矩形パターンが形成され,下側にも2つの矩形パターンが形成されている。また,上側と下側の矩形パターンで挟まれた領域には,略18個の細かい点パターンが不規則に形成されている。 D 取っ手部について底面視において,第3支持部の端面には,取り付け具を介して略矩形に曲げられたリング状の取っ手部が連結している。 被告意匠の構成ア基本的構成態様a シェード部右側面視において,左上側に位置する第1シェードと,第1シェードと線対称の形状を有し右下側に位置する第2シェードとが一体的に形成されたシェード部b 円柱部シェード部の上面中央に設けられた円柱部c 支持部円柱部を介してシェード部を支持する支持部d 取っ手部支持部の下端部に設けられた取っ手部イ具体的構成態様被告意匠は,上記基本的構成態様につき,以下の具体的構成態様を備えている。 a シェード部について(ア) 第1シェードと第2シェードの左右方向の巾は,各シェードの屈曲部と先端部の中間付近に近づくにつれて太くなっており,第1シェードの縁と第2シェードの縁は,円弧状である。 (イ) 右側面視において,第1シェードのヒーター部は地表から水平であり,第2シェードのヒーター部は地表から垂直の関係にある。 (ウ) 第1シェード及び第2シェードの上 ードの縁は,円弧状である。 (イ) 右側面視において,第1シェードのヒーター部は地表から水平であり,第2シェードのヒーター部は地表から垂直の関係にある。 (ウ) 第1シェード及び第2シェードの上面には各シェードの巾方向に延びたストライプ状の9本の放熱口が形成されており,その巾方向の長さは,円柱部に近づくにつれて徐々に長くなっている。 (エ) ヒーター部に設けられた略矩形の保護ネットは,その矩形領域も内側にシェード部の長手方向に沿って等間隔に配置された27本のラインと,それに直交して等間隔に配置された4本のラインとを備えている。 (オ) 第1シェードと第2シェードとの結合部の底面側の中央付近には,シェード部の巾の略半分の直径の円形のオゾン噴出口が形成されている。オゾン噴出口には,同心円の4本の円形の保護部材と,外周から中心に向けて延びる左右上下対称の4本の保護部材とが設けられている。 (カ) 両シェードは,所定の位置に固定された円柱部の中心軸を中心に時計回りに回転する(乙24の6)。 b 円柱部について(ア) 円柱部の下面は,シェード部の上面の中央部に結合している。 (イ) 円柱部の上面は,支持部に結合している。 (ウ) 円柱部が被告意匠全体で占める割合は非常に小さく,被告意匠全体の印象に与える影響は小さい。 c 支持部について(ア) 支持部は,円柱部を上側から保持する保持部と,保持部の下方に位置し保持部と一体的に形成されて垂直方向に延びる下方支持部とで形成されている。 (イ) 右側面視において,保持部の円柱部側は,円柱部の中心軸と直交したラインを形成している。また,保持部は,上記直交したラインの上側端部から,下方支持部の垂直に延びる右側ラインに向けて滑らかな曲線を形成し,当該曲線の最上位置付近に 柱部側は,円柱部の中心軸と直交したラインを形成している。また,保持部は,上記直交したラインの上側端部から,下方支持部の垂直に延びる右側ラインに向けて滑らかな曲線を形成し,当該曲線の最上位置付近に,滑らかな曲線からなる凸部が形成されている。 また,保持部は,上記直交したラインの下端部から,下方支持部の垂直に延びる左側ラインに向けて滑らかな曲線を形成している。 (ウ) 右側面視において,下方支持部は,下方から上方へ向かうにつれて徐々に厚みを増している。保持部は,下方から上方へ向うにつれて厚みを増しながら,正面方向に緩やかに傾いている。 (エ) 正面視において,保持部の巾が下方支持部より広くなっており,上側の端が丸みを帯びていることから,支持部の外形は「さじ」を立てたような形状となっている。 (オ) 下方支持部の背面に設けられた制御部には,矩形領域の上側に2つの矩形の液晶表示部が設けられている。 また,上記液晶表示部の下方には,横1列に4個の直径略10mmの円型のスイッチが設けられている。上記4個の円型スイッチの下方には,3×3のマトリクス状の9個の直径略17mmの円型のスイッチと,3×3のマトリクスの右下のスイッチの下に1個の同一直径の円型のスイッチが設けられている。3×3のマトリクスの右下のスイッチと,その下の1個のスイッチは,オレンジ色であり,それ以外のスイッチは薄緑色である。上記1個の円型スイッチの左斜め下に,「BeautyCall」の文字パターンが表記されている。 d 取っ手部について底面視において,支持部の端部にはいかり型の取っ手部が設けられている。 類否についてア要部について本件意匠の要部は,以下のとおり,シェード部,円柱部,支持部及び取っ手部からなる全体形態 持部の端部にはいかり型の取っ手部が設けられている。 類否についてア要部について本件意匠の要部は,以下のとおり,シェード部,円柱部,支持部及び取っ手部からなる全体形態である。ア 取引者・需要者本件意匠に係る物品(ヘアードライヤー)は,通常,ヘアサロンにおいて,利用客に使用する目的で購入される。したがって,取引者・需要者は,主としてヘアサロンの経営者・従業者である。イ 用途・使用態様ヘアードライヤーは,ヘアサロンの従業者が利用客にパーマをかけたり,毛髪を染めたりするときに用いるものである。通常は店舗の隅などに置かれており,必要がある場合に,その都度,所定の位置に動かして使用される。具体的な使用態様としては,ヘアサロンの従業者が,制御部のパネル内に設置されているスイッチを押して,諸機能を作動させる(甲8,乙7)。ウ 要部について以上を前提に,本件意匠の要部について検討すると,スイッチが設けられた支持部及び制御部のパネルを操作するときに操作者の正面に位置する円柱部は,取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分である。また,取っ手部は,操作者が実際に当該製品を使用する際に,必ず触れるため,取引者・需要者の注意を惹きやすい部分である。 そして,ヒーターを用いて乾燥処理を行う際,人の頭部と一定の間隔をおいてシェード部のヒーターが位置するように目視でシェード部の位置を決めることから,シェード部は取引者・需要者の注意を惹きやすい部分である。 したがって,本件意匠の要部は,単にシェード部のみならず,シェード部,円柱部,支持部及び取っ手部からなる全体形態である。 (エ) 原告の主張に対する反論原告は,シェード部のブーメラ したがって,本件意匠の要部は,単にシェード部のみならず,シェード部,円柱部,支持部及び取っ手部からなる全体形態である。 (エ) 原告の主張に対する反論原告は,シェード部のブーメランのような形状を要部と主張するが,シェード部の第1シェードと第2シェードが一体的に形成された形態は,本件意匠の出願前に公知であり(乙12),本件意匠のみが備える特徴的な形態ではない。 また,原告は,ヒーター部も要部と主張するが,ヒーター部は,本件意匠の正面図および底面図において,保護ネットの背後にあって,注視してようやく認識されるものであり,また,その形状も極めてシンプルで,要部とはなりえない(なお,ヒーター部の形態は,本件意匠と被告意匠とで同一ではない。)。 イ差異点についての評価(ア) シェード部の態様本件意匠のシェード部は,ゴツゴツとした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している。 これに対し,被告意匠のシェード部は,シルエットの曲線が全体的に緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している。 (イ) 円柱部の態様本件意匠の円柱部は,上側は上方に突出し,やや丸みを帯びた曲面を形成している。そして,当該やや丸みを帯びた曲面は,本件意匠の最も高い位置にあり,正面,背面,平面,右側面および左側面の5方向から見え,看者の注意を特に惹く要部である。 これに対し,被告意匠の円柱部は,厚みが薄く,正面視,背面視,平面視,底面視からは見えず,被告製品の全体形態に与える影響は小さい。また,被告製品の円柱部の端部には丸みを帯びた曲面はない。 (ウ) 支持部の態様本件意匠の支持部は,第1支持部に対して第2支持部が屈曲し,第2支持部に対して第3支持部が屈曲している。ま 。また,被告製品の円柱部の端部には丸みを帯びた曲面はない。 (ウ) 支持部の態様本件意匠の支持部は,第1支持部に対して第2支持部が屈曲し,第2支持部に対して第3支持部が屈曲している。また,第2支持部及び第3支持部の断面は略矩形である。さらに,第1支持部には蛇腹部分が設けられている。そのため,本件意匠の支持部は,外形が不連続に折れ曲がり,ゴツゴツとした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している。また,全体的に下側にうつむいた印象を与える。 これに対し,被告意匠の支持部は,シルエットの曲線が連続的かつ 緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している。また,支持部の外形は「さじ」を立てたような形状で,全体的に姿勢が真っ直ぐに延びた印象を与える。 (エ) 取っ手部の態様本件意匠の取っ手部は,矩形のリング状であるのに対し,被告意匠の取っ手部はいかり型である。 ウ小括以上述べた差異点は,いずれも看者に全く異なる印象を与えるものであって,意匠全体の美感に影響を与える。 したがって,被告意匠は本件意匠に類似しない。 2 争点2-1(原告製品の形態は,周知商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するか)について【原告の主張】(1) 原告製品の形態が特別顕著なものであることアヘアードライヤーの形態は,元々は利用客が頭の上からすっぽり被る「円筒シェード固定タイプ」が主流であり,その後,頭部の上・後・左右に位置する発熱体を固定した「複数シェード点在固定タイプ」が登場し,昭和63年10月には,タカラベルモント株式会社(以下「タカラベルモント社」という。)が独自開発した利用客の頭の上でリング状のヒーター部が回転揺動する「環状シェード回転タイプ」が登場した。原 し,昭和63年10月には,タカラベルモント株式会社(以下「タカラベルモント社」という。)が独自開発した利用客の頭の上でリング状のヒーター部が回転揺動する「環状シェード回転タイプ」が登場した。原告製品が販売されるようになった平成4年頃は,このような各種タイプのヘアードライヤーが競い合う状況にあった。 イ原告製品は,利用客にとっては,圧迫感やまとわりつく感じを与えずに解放感,自由感をもたらすと共に,ヒーター部の回転により頭髪を均一にムラなく加熱でき,かつ動作時の必要空間が小さいために美容師の作業性を向上できるなど,機能性に優れている。また,独創的な形態とシェードの動きが相まって,斬新でファッション性,デザイン性に富み,しかもシェード部は作動終了時に縦の位置で止まるため,設置場所をとらず省スペースである。 このように,原告製品は,その独創的な形態とシェードの回転の動きによって,他のヘアードライヤーとは明白に識別し得る独特の特徴を有する。 (2) 周知性についてア需要者(購入者)についてヘアードライヤーの購入者は,美容室であるところ,平成21年度までの各年度の美容所施設数及び従業美容師数は,別紙美容所施設数・従業美容師数のとおりである。 なお,原告製品は理容室に販売されることもあるが,その数は僅少である(原告は,美容室における周知性を主張するものであり,理容室はその対象に含めない。)。 イ原告製品の宣伝について(ア) 原告は,理美容器具メーカーとして飛躍的発展を遂げ,タカラベルモント社に次ぐ業界2位を占めるに至っており,平成4年度の売上高は78億円に達している。 (イ) 原告では,特約代理店を介する取引が基本であるが,原告自らも,東京や大阪の中心部に数 ラベルモント社に次ぐ業界2位を占めるに至っており,平成4年度の売上高は78億円に達している。 (イ) 原告では,特約代理店を介する取引が基本であるが,原告自らも,東京や大阪の中心部に数百坪のフロアを持つショールームを有するほか(甲42~48),その他の都市にも相当規模のショールームを保有しており,理美容店関係者に実際に原告製品を体験してもらうなどの宣伝も行っている。 (ウ) 原告は,平成4年から平成7年までの間,原告製品を掲載したカタログやチラシを作成,配布し(甲16~23),また,平成7年には暑中見舞いはがきに原告製品の写真を掲載するなどして(甲24),全国各地のヘアサロン等に強力な宣伝を行った。また,平成8年から平成21年までの間も,ほぼ毎年,チラシやカタログ等を作成,配布して,広告宣伝活動を続けている(甲25~38)。 原告製品が掲載されたチラシやカタログの印刷部数は,各7万部である(なお,平成7年の暑中見舞いのはがき(甲24)及び平成21年2月作成のカタログ(甲38)の印刷部数は,約3万部である。)。 これらは,原告の本店,支店,営業所,ショールームなど(全国に合計20か所)を経由して,全国各地のディーラー(約560社)を通じ,又はディーラーの営業に同行した原告の社員によって,全国各地のヘアサロンに配布されているほか,原告が開催する展示会(支店,展示場のある営業所で年2回程度),商談会において来場者にも配布されている。 (エ) さらに,原告は,美容関係の業界誌にも,平成5年3月,平成6年9月,平成10年1月に原告製品の広告を掲載した(甲5~7)。 ウ原告製品の販売実績について(ア) 原告製品の年度別の出荷販売台数は別紙原告製品販売実 にも,平成5年3月,平成6年9月,平成10年1月に原告製品の広告を掲載した(甲5~7)。 ウ原告製品の販売実績について(ア) 原告製品の年度別の出荷販売台数は別紙原告製品販売実績記載のとおりであり,その販売先は,全国各地に及んでいる(甲40,41。 なお,上記販売実績には海外向けに販売した分も含むが,その数は僅少である。)。 (イ) ヘアードライヤーは10年程度で買換えがなされるところ,美容所施設が1施設当たり1台のヘアードライヤーを保有していると仮定して,平成4年度から平成7年度の原告製品の市場占有率を計算すると,おおよそ以下のとおりである(別紙美容所施設数・従業美容師数参照)。なお,実際には,一つの経営主体が複数の施設を保有することもあり,経営主体数を基準に市場占有率を計算すると,その数字は上昇する。 年度美容所施設数(件)販売台数(台)市場占有率平成4年18,8584,33223.1%平成5年18,9973,84120.3%平成6年19,2113,33717.4%平成7年19,3912,41812.5%エ小括以上のとおり,原告製品は,遅くとも平成7年には,その独創的な形態により商品等表示として出所識別性を取得し,需要者の間で原告の製造販売する製品として広く認識されるに至った。 【被告の主張】(1) 原告製品の形態に特別顕著性がないこと原告製品のシェード部の形態は,原告製品の販売開始時に,既に公知であり(乙12),ヒーター部を回転させる構造を備えたヘアードライヤーも,既に公知であった(乙13~16)。このように,シェード形態を採用すること,あるいはヒーター部を回転させることは公知に属するもの あり(乙12),ヒーター部を回転させる構造を備えたヘアードライヤーも,既に公知であった(乙13~16)。このように,シェード形態を採用すること,あるいはヒーター部を回転させることは公知に属するものであり,原告製品の商品等表示を基礎付けるものではない。 原告製品の形態は,ヘアードライヤーの機能を実現するために必要な形態であって顕著な特異性はない。 (2) 原告製品の形態に周知性がないことア需要者について原告は,需要者として美容室のみを対象にするが,実際には,理容室も顧客となることから,理容室も含める必要がある(乙38,39参照)。 イ原告製品の宣伝について(ア) 原告は,カタログやチラシ,雑誌等による宣伝を主張するが,これらの媒体の発行部数や掲載に要した費用等は不明である。また,雑誌及びカタログへの掲載は,理美容関連の製品を販売する上で極めて一般的なものであり,この点をもって,強力な宣伝があったとはいえない。 さらに,原告は,販売当初こそ原告製品独自のパンフレットを作成しているが(甲16,17),その後は,期間限定の商談会やセールのチラシ(甲21,23,25~27,29,30),暑中見舞いはがき(甲24),総合カタログの一部(甲18~20,甲31~38)において掲載されていたにすぎない。 (イ) また,原告では,代理店の営業社員が系列のヘアサロンを回って販売するルート営業が行われており,期間限定のセール等も,代理店及びその取引先に対して行われるにすぎない。 このような営業方法からすれば,原告製品は,代理店及びその取引先においてのみ認知されていたにすぎず,業界全体に周知されていたとはいえない。 ウ原告製品の販売実績について(ア) 原 のような営業方法からすれば,原告製品は,代理店及びその取引先においてのみ認知されていたにすぎず,業界全体に周知されていたとはいえない。 ウ原告製品の販売実績について(ア) 原告は,原告製品の販売台数について,年度別出荷実績(甲40)及び出荷販売台帳(甲41)を根拠にするが,これらには海外への出荷分も含まれており,同出荷分は除外されるべきである。 (イ) また,原告は,ヘアードライヤーの買換えまでの期間を10年程度として市場占有率を計算するが,ヘアードライヤーの標準使用期間は7年であり(乙40,41参照),買換えまでの期間を10年とすることに根拠はない。 エ強力な競合商品が存在することについてヘアードライヤー(回転タイプのもの)については,タカラベルモント社の「ローラーボール」が圧倒的なシェアを占めている(被告での中古品販売においても60%以上のシェアを占めている。乙28)。 オ原告製品の周知性は認められないことについて以上の点からすれば,原告製品の形態に周知性は認められない。 なお,仮に,平成7年の時点では,原告製品の形態に周知性が認められるとしても,以下の事情からすれば,遅くとも平成19年11月以降は,周知性が失われたというべきである。 (ア) 原告は,平成12年8月に「わくわく21」の販売を開始してからは,同製品を主力商品として扱うようになった(乙29)。 その結果,平成19年から平成22年において,原告製品の販売台数は僅かである。すなわち,例えば,平成19年度は,理美容室の施設数35万6341店に対し,原告製品の販売台数は180台(海外販売分も含む。)である。また,理美容関連の製品の中古市場で最大の販売実績を誇る被告の中古品販売実績(乙28)によると, ,理美容室の施設数35万6341店に対し,原告製品の販売台数は180台(海外販売分も含む。)である。また,理美容関連の製品の中古市場で最大の販売実績を誇る被告の中古品販売実績(乙28)によると,平成19年11月から平成22年11月までの間,ヘアードライヤーの中古品を合計959台販売しているが,そのうち原告製品は72台(約7. 5%)であり,ローラーボール,わくわく21に次ぐ3番手以下の販売台数である(1か月当たり2,3台程度しか販売されていない。)。 (イ) 他方,被告は,平成17年以降毎年,被告製品をカタログやウェブサイトで紹介している(乙24)。また,平成15年から平成17年頃には,株式会社アトリエワールドが,被告製品と全く同一形態の製品を「IR-Ⅱ」の名称で販売していたほか(乙17,18),株式会社ヤマグチリペアラー等も,相当以前から,「IR-Ⅱ」又は「ビューティコール」の名称で,同一形態の製品を販売していた(乙20~23)。 そして,原告は,これらの販売を認識しながらも,本件訴訟に至るまで,何らの措置をとっていない。 (ウ) さらに,現在,カラーリングやパーマ,ヘアーケアを目的する機器としては,まったく新しくミスト型の製品も販売されるなどしており,必ずしもすべての理美容室にヘアードライヤーが存在する状況ではない。 (エ) 以上のような事情からすれば,遅くとも平成19年11月以降について,原告製品の形態の周知性は認められない。 3 争点2-2(被告製品の形態は原告製品の形態に類似するか)について【原告の主張】(1) 原告製品の形態及びその要部ア原告製品は,シェード部とその中心から左右両端に設けられたヒーター部及びこれらの支持部材である 類似するか)について【原告の主張】(1) 原告製品の形態及びその要部ア原告製品は,シェード部とその中心から左右両端に設けられたヒーター部及びこれらの支持部材であるモーター部(円柱部)とこれに続く支持部,並びにこれら全体を支えるスタンド部からなる。 イヘアードライヤーの性質,目的,用途,使用態様等によれば,原告製品の形態のうち,もっとも注意を惹く印象的な部分は,その中心機能を果たすヒーター部とこれを支えるシェード部である(上記1【原告の主張】(1)参照)。 他方,支持部材であるモーター部(円柱部)とこれに続く支持部は,シェード部の回動を支援,制御する裏方の役回りを果たすにすぎず,原告製品の特徴を表すものではない。また,スタンド部は,従来のヘアードライヤーにも存在する普遍的なものであって,需要者の注意を特別に惹くものではない。 (2) 原告製品と被告製品の形態の主な共通点原告製品と被告製品は,いずれも帯状シェード回転タイプのヘアードライヤーである。 そして,その枢要部であるヒーター部の形態も,以下のとおり,同じである。 ア両製品のヒーター部は,いずれもケーシングの中に2種類のヒーターが内蔵されている。 イ両製品のケーシングの寸法(縦横高さ)は同じであり,その形状も,穴の位置や凹凸の具合,保護ネットの引っ掛かりの位置,止め具の形状が全く同じである。 ウ両製品のケーシングに内蔵されている部材の種類,形状,配置等も全く同じである。すなわち,ヒーターは,同じサイズのセラミックの発熱体であるバークヒーター2本が同じ間隔で並行に配置されており,その後ろに同じ形状の反射板が設置され,放熱が反射する構造になっている。 そして,上記バークヒーター2本の間に蛇 じサイズのセラミックの発熱体であるバークヒーター2本が同じ間隔で並行に配置されており,その後ろに同じ形状の反射板が設置され,放熱が反射する構造になっている。 そして,上記バークヒーター2本の間に蛇腹状(アコーディオン構造)の発熱体が配置され,その背部からファンにより風を当てて送られ,風がこの蛇腹状の面状の発熱体(PTCヒーター)に触れて温風となって吹き出して顧客の頭髪を乾燥させる構造となっている。また,このPTCヒーターは,同じ模様の蛇腹状(アコーディオン構造)で,同じ寸法で,同じ位置に配置されている。また,このケーシングを前面で覆う保護ネットも,縦横高さの寸法,形状,模様,桟の本数,線の太さ,長さも全く同じである。 (3) 原告製品と被告製品の形態の主な差異点これに対して,原告製品と被告製品の形態には,以下のような差異点がある。 アシェード部の両先端の形状は,原告製品は角張っているが,被告製品は丸みを帯びている。 イ支持部材であるモーター部の形状は,原告製品は略先端部半球状の円筒形状であるが,被告製品は全体が略半球形状である。また,原告製品は,モーター部(円柱部)の円筒の側面に接する支持部の先端に蛇腹を設けているが,被告製品はモーター部と支持部が一体となっている。 (4) 原告製品と被告製品の形態の比較ヘアードライヤーのうち一番注目を浴びる主要な部分は,その心臓であるヒーター部とこれを支えるシェード部であり,原告製品と被告製品は,当該部分のその構造,形状において同一又は類似であり,差異点は設計上の微細な変更にすぎない。 また,原告製品と被告製品は支持部材の形状に差異があるが,これらは,帯状シェード回転タイプのヘアードライヤーとしての,枢要部以外の細部の相違に過ぎない。なお,被告製品の支持部 細な変更にすぎない。 また,原告製品と被告製品は支持部材の形状に差異があるが,これらは,帯状シェード回転タイプのヘアードライヤーとしての,枢要部以外の細部の相違に過ぎない。なお,被告製品の支持部材の形状は,ローラーボール(甲11)のヒーター部を支える支持部材の形状とほぼ同一又は類似であり,被告製品としての印象を強くもたらすものではない。 (5) 小括したがって,被告製品の形態は,原告製品の形態と類似する。 【被告の主張】(1) 原告製品の構成態様ア基本的構成態様原告製品は,基本的構成態様として,シェード部,円柱部,支持部,取っ手部(上記1【被告の主張】(1)ア参照)に加え,脚部の固定部を備える。 イ具体的構成態様原告製品の具体的構成態様は,上記1【被告の主張】(1)イに加えて,以下のとおりである。 (ア) シェード部第1シェード及び第2シェードの各先端部に丸みを帯びた赤色のランプが設けられている。 シェード部は,円柱部の中心軸を中心に反時計回りに回転し,回転中に赤色のランプが点滅する。このとき,シェード部は,円柱部を揺動させながら回転する(甲5)。 第1シェードと第2シェードの各上面には,巾方向に延びたストライプ状の9本の放熱口が形成されており(なお,本件意匠の放熱口は7本である。),その長さは同じである。 (イ) 支持部第2支持部の背面に設けられた制御部には,矩形領域の上側に2つの矩形の液晶表示部が設けられている。 また,上記液晶表示部の下方には,4×4のマトリクス状に直径略12mmの円型のスイッチが設けられている。上記4×4のマトリクス状のスイッチの下方には,2つの矩形パターンが設けられ,左側の矩形パターンには「Boomeran 方には,4×4のマトリクス状に直径略12mmの円型のスイッチが設けられている。上記4×4のマトリクス状のスイッチの下方には,2つの矩形パターンが設けられ,左側の矩形パターンには「Boomerang」の文字が形成され,右側の矩形パターンの中央には直径略12mmの円型のスイッチが設けられている(乙4)。 (ウ) 固定部固定部は,5本の脚部を有している。また,各脚部の端部に取り付けられた移動ローラは,所定の間隔を隔てて配置され同軸で回転する2つの円盤状の車輪と,これらの車輪の上方を覆う傘部とを備えている(乙4)。 (2) 被告製品の構成態様ア基本的構成態様被告製品は,基本的構成態様として,シェード部,円柱部,支持部,取っ手部(上記1【被告の主張】(2)ア参照),脚部の固定部を備える。 イ具体的構成態様被告製品の具体的構成態様は,上記1【被告の主張】(2)イに加えて,以下のとおりである。 固定部は,4本の脚部を有している。また,各脚部の端部に取り付けられた移動ローラは,シルバーの球体の表面にリング状の黒色のゴム輪をはめ込んだ形態を有している。 (3) 類否についてア要部について原告製品の要部は,シェード部,円柱部,支持部,取っ手部及び固定部からなる原告製品の全体形態であるといえる(上記1【被告の主張】(3)ア参照)。なお,固定部の脚部は,原告製品の全体形態の中で比較的大きな割合を占めるため,取引者・需要者の注意を惹きやすい部分で,原告製品の主要部であるといえる。 イ差異点の評価(ア) シェード部の態様原告製品のシェード部は,ゴツゴツとした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している。これに対し,被告製品のシェード部は, いえる。 イ差異点の評価(ア) シェード部の態様原告製品のシェード部は,ゴツゴツとした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している。これに対し,被告製品のシェード部は,シルエットの曲線が全体的に緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している(上記1【被告の主張】(3)イ(ア))。 また,原告製品の各シェードの先端には回転中に点灯する赤色のランプが設けられ,被告製品のシェードとは全く異なる印象を看者に与えている。 さらに,原告製品のシェード部は,円柱部を揺動させながら回転する(甲5)。これに対し,被告製品のシェード部は,所定の位置に固定された円柱部の中心軸を中心に時計回りに回転する。このようなシェード部の回転の違いによって,原告製品と被告製品とは全く異なる印象を看者に与えている。 (イ) 円柱部の態様原告製品の円柱部は,上側は上方に突出し,やや丸みを帯びた曲面を形成している。そして,当該やや丸みを帯びた曲面は,原告製品の最も高い位置にあり,正面,背面,平面,右側面および左側面の5方向から見え,看者の注意を特に惹く要部である。これに対し,被告製品の円柱部は,厚みが薄く,正面視,背面視,平面視,底面視からは見えず,被告製品の全体形態に与える影響は小さい。また,被告製品の円柱部の端部には丸みを帯びた曲面はない(上記1【被告の主張】(3)イ(イ))。 (ウ) 支持部の態様原告製品の支持部は,外形が不連続に折れ曲がり,ゴツゴツとした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している。また,全体的に下側にうつむいた印象を与える。これに対し,被告製品の支持部は,シルエットの曲線が連続的かつ緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している。また, 感を表出している。また,全体的に下側にうつむいた印象を与える。これに対し,被告製品の支持部は,シルエットの曲線が連続的かつ緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している。また,支持部の外形は「さじ」を立てたような形状で,全体的に姿勢が真っ直ぐに延びた印象を与える(上記1【被告の主張】(3)イ(ウ))。 また,原告製品と被告製品とでは,制御盤のパネルの形態が大きく異なり,全く異なる印象を看者に与えている。当該パネルは,操作者が操作を行う際に目視される部分であり,看者の注意を特に惹く要部である。 (エ) 取っ手部の態様原告製品の取っ手部は,矩形のリング状であるのに対し,被告製品の取っ手部はいかり型である(上記1【被告の主張】(3)イ(エ))。 (オ) 固定部の態様原告製品と被告製品とでは,脚部の数が異なるとともに,移動ローラの形態が大きく異なり,全く異なる印象を看者に与えている。 ウ小括以上述べた差異点は,商品等表示という観点から製品全体の美感に影響を与えるものである。 したがって,被告製品の形態は,原告製品の形態に類似しない。 4 争点2-3(原告製品と被告製品との混同のおそれがあるか)について【原告の主張】(1) 原告製品の形態が周知商品等表示に該当し,被告製品の形態がこれと類似すること(上記2,3の各【原告の主張】)からすれば,両者の間には混同が生じていたといえる。 (2) また,被告代表者は,平成7年頃から被告を設立する平成18年10月までの間,当初は個人で,平成11年2月以降は自らが代表を務める有限会社シュウワークプロダクツにおいて,原告製品のみを取り扱っていたが,被告設立後に,安価な被告製品の取扱いを始め,次第に販売の中心を被告 間,当初は個人で,平成11年2月以降は自らが代表を務める有限会社シュウワークプロダクツにおいて,原告製品のみを取り扱っていたが,被告設立後に,安価な被告製品の取扱いを始め,次第に販売の中心を被告製品に移していったものである。 このような取引の実情をみても,原告製品と被告製品との間には,混同が生じていたといえる。 【被告の主張】原告製品と被告製品とでは,その形態が異なる上,以下の点からすれば,原告製品と被告製品とに混同は生じない。 (1) 原告製品は「ブーメラン(Boomerang)」,被告製品は「ビューティコール(BeautyCall)」とその名称は全く異なるところ,これらの名称は,各製品自体に付されると共に,各製品の広告等にも表示されている(乙24)。また,原告製品と被告製品は価格も大きく異なっている。 (2) 被告は,原告製品の中古品を販売しているが,原告製品と被告製品が同一のものであるかのような売り方はしておらず,各ショールームでもインターネット上でも,顧客が多数の理美容品関連の製品を並べて,比較検討して購入できるようにしている(乙35,37)。顧客から誤って購入した旨のクレーム等を受けたこともない。 なお,原告は,被告製品は,原告製品の代用品として購入されていると主張するが,被告製品の販売を開始したのは,原告製品の販売台数が減少した後の平成18年であり,被告製品の販売開始と原告製品の販売減少とに因果関係はない。 5 争点2-4(原告に,営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるか)について【原告の主張】原告は,原告製品について,金型を保有しており受注生産できる態勢にあるのであって,製造廃止になっているわけではない。 したがって,被告製品の販売等により, あるか)について【原告の主張】原告は,原告製品について,金型を保有しており受注生産できる態勢にあるのであって,製造廃止になっているわけではない。 したがって,被告製品の販売等により,営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある。 【被告の主張】原告製品は,仮に受注生産を行っているとしても,実質的にはほとんど販売されていない。 したがって,原告製品は,現時点では市場に流通しているとはいえず,原告に,営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるとはいえない。 6 争点3(原告の損害額)について 【原告の主張】(1) 被告は,被告製品を,平成19年11月15日から平成21年3月25日(本件意匠権の存続期間の満了日)までの間に少なくとも400台,平成21年3月26日から同22年11月15日までの間に少なくとも400台販売した。 (2) 被告における被告製品1台当たりの販売による利益は,少なくとも4万円である。 (3) したがって,被告が平成19年11月15日から平成21年3月25日までの間に被告製品の販売によって得た利益は,金1600万円を下ることはなく,意匠法39条2項により,同金額が,意匠法侵害の不法行為に基づく損害額と推定される。 また,被告が平成19年11月15日から平成22年11月15日までの間に被告製品の販売によって得た利益は,金3200万円を下ることはなく,不正競争防止法5条2項により,同金額が,不正競争防止法違反に基づく損害額と推定される。 【被告の主張】事実関係は否認し,主張は争う。第4 当裁判所の判断 1 意匠権侵害に基づく請求(争点1)について 本件意匠の構成証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件意匠は, 】事実関係は否認し,主張は争う。第4 当裁判所の判断 1 意匠権侵害に基づく請求(争点1)について 本件意匠の構成証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件意匠は,別紙本件意匠公報に記載のとおりであり,意匠に係る物品を「ヘアドライヤ本体」とするもので,その構成態様は,次のとおりと認められる。 なお,原告は,本件意匠の構成について,以下に加えて,ヒーター部につき原告製品の当該構成(別紙原告製品写真及び図面3参照)に基づき詳細に主張するが,当該構成は,本件意匠公報から明らかではないため,本件意匠の構成態様と認めることはできない(意匠法24条1項)。 ア基本的構成態様A シェード部(ヒーター部を備えたシェード型の部分)① 略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様である(以下,折り曲げた部分のうち,右側面図において左側に位置する部分を「第1シェード部」,右側に位置する部分を「第2シェード部」という。)。 ② 第1シェード部及び第2シェード部の各平面視形状は,いずれも略矩形状である。 ③ シェード部は,円柱部の軸を中心に左右対称であり,第1シェード部は及び第2シェード部は,上記軸に対して,それぞれ約45度の角度に傾斜している。 ④ 第1シェード部及び第2シェード部の背面側には,側面視略くさび型状の膨出部が,正面視の横幅をシェード部の横幅よりやや狭くする態様で形成されている。 B 円柱部(シェード部の背面側の中央と接合する略円柱状の部分)① 円柱部の頂面はなだらかな略凸湾曲面状である。 ② 円柱部の軸は,スタンドの戴置面に対し,約70度傾斜している。 C 支持部(シェード部を支持する部分)① 平面視略矩形状の略厚板状体を側面視略倒「への字」状に折り曲げ 曲面状である。 ② 円柱部の軸は,スタンドの戴置面に対し,約70度傾斜している。 C 支持部(シェード部を支持する部分)① 平面視略矩形状の略厚板状体を側面視略倒「への字」状に折り曲げた態様である(以下,折り曲げた部分のうち,円柱部と接合する短い部分を「第1支持部」,スタンド側に位置する長い部分を「第2支持部」という。なお,第2支持部は,第1支持部に対して略120度の角度を有しており,第2支持部は途中でわずかに屈曲している。)。 ② 円柱部の側面の中央と接合している。 D 取っ手部(支持部の下方に設けられた取っ手部分)底面視で略矩形のリング状である。 イ具体的構成態様A シェード部について① シェード部の内側の中央には「オゾン送風口」が,第1シェード部及び第2シェード部には,それぞれ内側に「ヒーター部」,背面側に「放熱口」がある。 ② オゾン送風口は,円形である(なお,直径はシェード幅の略4分の1である。)。 ③ ヒーター部には,縦6本及び横3本の格子で構成される網状格子が取り付けられ,その中に,ヒーター収納部として,比較的長めの矩形枠が2つ及びそれに挟まれた短めの矩形枠が1つある。 ④ 放熱口は,略正方形状の横桟状孔部である。 C 支持部について① 第1支持部は,底面側に膨出部が形成され,その中央は蛇腹状である。 ② 第2支持部の背面側の中央には「制御部」があり,その下には「放熱口」がある。 ③ 制御部は略矩形状で,上端と下端に大きめの略矩形状のスイッチが2個ずつ,それらの間に小さいスイッチが約18個配置されている。 ④ 放熱口は,横長矩形状の横桟状孔部が形成されている。 (2) 被告意匠の構成証拠(乙1~3,5,6,甲56~60)及び弁論の全趣旨によれ それらの間に小さいスイッチが約18個配置されている。 ④ 放熱口は,横長矩形状の横桟状孔部が形成されている。 (2) 被告意匠の構成証拠(乙1~3,5,6,甲56~60)及び弁論の全趣旨によれば,被告意匠は,ヘアードライヤー(本体)であって,その構成態様は次のとおりと認められる。 ア基本的構成態様A シェード部① 略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様である(以下,折り曲げた部分のうち,右側面図において左側に位置する部分を「第1シェード部」,右側に位置する部分を「第2シェード部」という。)。 ② 第1シェード部及び第2シェード部の各平面視形状は,いずれも側面側が略円弧状に膨出した略「卵形」状である。 ③ シェード部は,円柱部の軸を中心に左右対称であり,第1シェード部及び第2シェード部は,上記軸に対して,それぞれ約45度の角度に傾斜している。 ④ シェード部は,平面視外周部に縁部を設けると共に,背面側が全体に肉厚状に膨出している。 B 円柱部① 円柱部の頂面の形状は不明である。 ② 円柱部の軸は,スタンドの戴置面に対し,約45度の角度である。 C 支持部① 円柱部の頂面を内蔵する,頭部が大きい略半球状で下窄まり状の,倒立したひしゃく形状である。支持部の略半球状の頭部に細幅な畝状の凸部が形成されている。 ② 円柱部とは,その頂面を内蔵する形で接合している。 D 取っ手部底面視でT字状である。 イ具体的構成態様A シェード部について① シェード部の内側の中央には「オゾン送風口」が,第1シェード部及び第2シェード部には,内側に「ヒーター部」,背面側に「放熱口」がある。 ② オゾン送風口は,円形である(なお,直径はシェード幅の略2分の1で の内側の中央には「オゾン送風口」が,第1シェード部及び第2シェード部には,内側に「ヒーター部」,背面側に「放熱口」がある。 ② オゾン送風口は,円形である(なお,直径はシェード幅の略2分の1である。)。 ③ ヒーター部は,外枠を除き,縦4本及び横約27本の格子で構成される網状格子が取り付けられ,その中に,ヒーター収納部として,比較的長めの矩形枠が2つ及びそれに挟まれた短めの矩形枠が1つある。 ④ 放熱口は,略台形状の横桟状孔部である。 C 支持部について① 支持部の背面側の中央には「制御部」があり,その下には「放熱口」がある。 ② 制御部は略矩形状で,3列3段に配列された小円形状のスイッチが主として配置されている。 ③ 放熱口は,横長矩形状の横桟状孔部が形成されている。 本件意匠の要部についてア要部について登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。したがって,その判断にあたっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意が惹き付けられる部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。 イ需要者について本件意匠及び被告意匠は,いずれもヘアードライヤーに関するものであり,その需要者は理美容業者である。ウ使用態様についてア ヘアードライヤーは,理美容室において,利用客に対し,パーマや毛染めをするときに薬液の浸透を促進させたり,濡れた髪を乾燥させたりするために用いられる器具である。 使用態様についてア ヘアードライヤーは,理美容室において,利用客に対し,パーマや毛染めをするときに薬液の浸透を促進させたり,濡れた髪を乾燥させたりするために用いられる器具である。使用時には,理美容椅子に座った利用客の側に設置され,利用客の頭部を覆う高さにシェード部の位置が調節され,その後制御部を操作して通電することにより,第1支持部を軸として,シェード部及び円柱部が左右に90度ずつ回動するとともに,円柱部を軸として,シェード部が左右に90度ずつ回動し,2つのヒーター部から吹き出す熱風が利用客の頭髪に当たることにより,薬液の浸透や乾燥が行われることになる(甲1「説明」,「使用状態を示す参考図1・2」参照)。イ 理美容室において,使用しないときは,店舗の隅などに置かれており,使用の必要が生じたときに,利用客のもとに移動して使用されるのが通常である(弁論の全趣旨)。エ公知意匠について本件意匠権の出願以前において,ヘアードライヤーの意匠には,①シェード部が円筒型で,これを利用客の頭部に被せて使用する形態のもの(甲14),②ヒーター部が利用客の頭部の上,左右,後ろなどに点在した形態のもの(甲13),③シェード部が環状の形態のもの(甲11。 タカラベルモント社のローラーボール)などがあった。一方,本件意匠のように,略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様のシェード部を,円柱部の軸を中心として左右対称になるように配置し,これを回動させて使用する形態のものは見当たらない。オ本件意匠の要部ア 本件意匠は,上記アのとおり,シェード部,円柱部,支持部及び取っ手部から構成されるところ,このうちシェード部,円柱部及び支持部は,本件意匠 見当たらない。オ本件意匠の要部ア 本件意匠は,上記アのとおり,シェード部,円柱部,支持部及び取っ手部から構成されるところ,このうちシェード部,円柱部及び支持部は,本件意匠の全体において少なくない割合を占めており,意匠全体の骨格を構成している。これらの部分について,例えば,正面側から見ると主にシェード部及び円柱部が,背面側から見ると主に支持部が中心的に看取されるが,ヘアードライヤー本体は,上記ウのとおり,使用時には,理美容室の利用客の近くに設置され,正面,背面,左右側面の各方向から立体的に観察されることになるし(シェード部の位置調節や,制御部の操作の際にも,特定方向からの観察に限定されるものではないといえる。),また,使用しないときは,理美容室の隅などに置かれ,このときも,特定方向からの観察に限定されるものではない。 そうすると,本件意匠のうち需要者の注意が惹き付けられる部分(要部)は,シェード部,円柱部及び支持部の具体的な形状にあるというべきであるが,取っ手部については,意匠全体の骨格を構成するものとはいえず,要部とはいえない。また,上記形状のうち,シェード部の「オゾン送風口」,「ヒーター部」,「放熱口」の具体的形状,支持部の「制御部」「放熱口」の具体的形状は,意匠全体の骨格を構成するものではなく,要部には含まれない。イ 原告は,本件意匠の要部は,公知意匠との比較,機能的な意義からヒーター部とこれを支えるシェード部に限定される旨主張する。確かに,原告の主張するとおり,本件意匠のシェード部の形状(略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様)は,上記エの各公知意匠のシェード部(円筒型,点在型,環状型)とは異なるものであるが,各公知意匠と 主張するとおり,本件意匠のシェード部の形状(略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様)は,上記エの各公知意匠のシェード部(円筒型,点在型,環状型)とは異なるものであるが,各公知意匠と異なる形状をとっているのは,シェード部のみならずシェード部を支持する部分(本件意匠のうち円柱部及び支持部に対応する部分)についても同様であり(甲11,13,14),公知意匠との比較において,本件意匠の要部をシェード部に限定すべきということはできない。 また,原告は,ヘアードライヤーの機能を発揮するのはヒーター部とこれを支えるシェード部であるため,要部はかかる部分に限定されると主張するが,そもそも意匠の類否は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて検討されるのであることからすれば(意匠法24条2項),当該物品の機能を発揮する部分であることのみをもって,意匠の要部を判断すべきではないといえるし,本件意匠においては,シェード部,円柱部及び第1支持部の動きが一体となって,機能を発揮しているというべきであるから,いずれにしても本件意匠の要部をヒーター部及びシェード部に限定すべきということはできない(なお,本件意匠のシェード部は,上記ウのとおり使用時に独創的な動きをすることが認められるが,このような動き自体も円柱部及び第1支持部と一体となって実現されていることからすれば,やはり,本件意匠の要部をシェード部に限定すべき理由にはならない。)。したがって,本件意匠の要部がヒーター部とこれを支えるシェード部に限定される旨の主張には理由がない。 類否についてア本件意匠及び被告意匠の共通点及び差異点本件意匠と被告意匠は,いずれもシェード部,円柱部,支持部,取っ手部を有するほか,以下の共通点及 は理由がない。 類否についてア本件意匠及び被告意匠の共通点及び差異点本件意匠と被告意匠は,いずれもシェード部,円柱部,支持部,取っ手部を有するほか,以下の共通点及び差異点を有する。ア 共通点 A シェード部① 側面視形状(基本的構成態様)いずれも略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様である。また,いずれも円柱部の軸を中心に左右対称であり,第1シェード部及び第2シェード部は,上記軸に対して,それぞれ約45度の角度に傾斜している。② 構造(具体的構成態様)いずれもシェード部の内側の中央には「オゾン送風口」が,第1シェード部及び第2シェード部には,内側に「ヒーター部」,背面側に「放熱口」がある。 ③ オゾン送風口,ヒーター部及び放熱口の形状(具体的構成態様)いずれも「オゾン送風口」は円形,「ヒーター部」は格子状,「送風口」は矩形状の横桟状孔部である。C 支持部① 構造(具体的構成態様)いずれも支持部の背面側の中央には「制御部」があり,その下に「放熱口」がある。② 制御部及び放熱口の形状(具体的構成態様)いずれも「制御部」は略矩形状で,複数のスイッチが配置されており,「放熱口」は横長矩形状の横桟状孔部である。イ 差異点A シェード部① 平面視形状(基本的構成態様)本件意匠は略矩形状であるのに対し,被告意匠は側面側が略円弧状に膨出した略「卵形」状である。② 背面側の形状(基本的構成態様)本件意匠は第1シェード部及び第2シェード部の背面側には,側面視略くさび型状 形状であるのに対し,被告意匠は側面側が略円弧状に膨出した略「卵形」状である。② 背面側の形状(基本的構成態様)本件意匠は第1シェード部及び第2シェード部の背面側には,側面視略くさび型状の膨出部が,正面視の横幅をシェード部の横幅よりやや狭くする態様で形成されているのに対し,被告意匠は平面視外周部に縁部を設けると共に,背面側が全体に肉厚状に膨出している。③ ヒーター部の具体的形状(具体的構成態様)本件意匠は縦6本及び横3本の格子状であるのに対し,被告意匠は外枠を除き縦4本及び横約27本の格子状である。④ 放熱口の具体的形状(具体的構成態様)本件意匠は略正方形状であるのに対し,被告意匠は略台形状である。B 円柱部① 形状(基本的構成態様)本件意匠はなだらかな略凸湾曲面状の頂面が露出しているのに対し,被告意匠では円柱部の頂面が支持部に内蔵され,その形状は不明である。② 円柱部の長さ(基本的構成態様)本件意匠と比較して,被告意匠では,シェード部と支持部とを接続する短い円柱でしかない。③ 円柱部の軸のスタンド戴置面に対する角度(基本的構成態様) 本件意匠は約70度であるのに対し,被告意匠は約45度である。C 支持部① 形状(基本的構成態様)本件意匠は,平面視略矩形状の略厚板状体を側面視略倒「への字」状に折り曲げた態様であるのに対し,被告意匠は,頭部が大きい略半球状で下窄まり状の倒立したひしゃく形状である。② 円柱部との接合態様(基本的構成態様)本件意匠は,円柱部の側面の中央において支持部と接合するのに対し,被告意匠は,支持部が円柱部の頂面を内蔵する形で 形状である。② 円柱部との接合態様(基本的構成態様)本件意匠は,円柱部の側面の中央において支持部と接合するのに対し,被告意匠は,支持部が円柱部の頂面を内蔵する形で接合している。③ 制御部の具体的形状(具体的構成態様)本件意匠は,上端と下端に大きめの略矩形状のスイッチが2個ずつ,それらの間に小さいスイッチが約18個配置されているのに対し,被告意匠は,3列3段に配列された小円形状のスイッチが主として配置されている。D 取っ手部(基本的構成態様)本件意匠は底面視で略矩形のリング状であるのに対し,被告意匠は底面視でT字状である。イ類否の判断についてア 本件意匠と被告意匠は,上記アのとおり,シェード部の側面視形状(上記アアA①)及び構造(上記アアA②),支持部の構造(上記アアC①),シェード部のうちオゾン送風口,ヒーター部及び放熱口の形状(上記アアA③),支持部のうち制御部及び放熱口の形状(上記アアC②)において共通する一方で,シェード部の平面視形状及び背面側の形状(上記アイA①,②),円柱部の形状,長さ,角度,支持部の形状及び支持部と円柱部の接合態様(上記アイB①,②,③,C①,②),シェード部のうちヒーター部及び放熱口の具体的形状(上記アイA③,④),支持部のうち制御部の具体的形状(上記アイC②),取っ手部の形状(上記アイD)において異なっている。イ このうち,円柱部の形状,角度及び支持部の形状及び支持部と円柱部との接合態様についての差異点は本件意匠の要部に関するものであり,このような差異点によって,本件意匠は,より凹凸の多く角張った印象を与えるのに対し,被告意匠は,より丸みを帯びた 及び支持部と円柱部との接合態様についての差異点は本件意匠の要部に関するものであり,このような差異点によって,本件意匠は,より凹凸の多く角張った印象を与えるのに対し,被告意匠は,より丸みを帯びた滑らかな印象を与える。また,円柱部は,本件意匠では独立した存在として強い印象を与えるのに対し,被告意匠ではシェード部と支持部を接合する短い部分にすぎず,格別の印象を与えない。ウ シェード部について,本件意匠と被告意匠は,その形状及び構造に一定の共通点がみられるものの,上記のとおり本件意匠の要部はシェード部の形状に限られるものではなく,上記アの差異点がもたらす印象の違いは大きいというべきであるから,シェード部の共通点がこれを凌駕するような共通の美感を生じさせるとは認められない。むしろ,シェード部の具体的形状をみると,本件意匠は略矩形状でより角張った印象を与えるのに対し,被告意匠は略「卵形」状でより丸みを帯びた印象を与えており,円柱部及び支持部の形状の差異点によって生じる両意匠の印象の違いと同様の,異なった印象を与えるものといえる。したがって,シェード部についての一定の共通点があるとしても,全体として,両意匠に共通の美感が生じるとはいえない。エ そのほか,シェード部のうちオゾン送風口,ヒーター部及び放熱口,支持部のうち制御部及び放熱口,取っ手部の形状については,いずれも本件意匠の要部ではなく,これらについての共通点及び差異点が,両意匠の全体の印象に影響するものではない。(オ) 以上のとおり,本件意匠と被告意匠は,需要者に異なる印象を与え,その美感を異にするというべきであるから,本件意匠が被告意匠に類似するとはいえない。(5) 小括したがって,原告の意匠権に基づく請求は 意匠と被告意匠は,需要者に異なる印象を与え,その美感を異にするというべきであるから,本件意匠が被告意匠に類似するとはいえない。(5) 小括したがって,原告の意匠権に基づく請求は,その余の点について検討するまでもなく,理由がない。 2 不正競争防止法違反に基づく請求(争点2)について 争点2-1(原告製品の形態は,周知商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するか)についてア商品形態の商品等表示該当性商品の形態は,本来的には,商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし,特定の商品の形態が独自の特徴を有し,かつ,この形態が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,当該商品の形態が,不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」として保護されることがあり得ると解される。 イ原告製品の形態の商品等表示該当性についてア 商品形態の特別顕著性について原告製品の形態は,シェード部が略薄板状体を側面視略倒「亀甲括弧」状に折り曲げた態様で,これを回動させて使用される。掲記の各証拠によれば,原告製品の販売が開始された平成4年当時,ヘアードライヤーの形態としては,①ヒーター部を備えたシェード部が円筒型で,これを利用客の頭部に被せて使用する形態(甲14),②ヒーター部が利用客の頭部の上,左右,後ろなどに点在した形態のもの(甲13),③ヒーター部を備えたシェード部が環状の形態(甲11。タカラベルモント社のローラーボー に被せて使用する形態(甲14),②ヒーター部が利用客の頭部の上,左右,後ろなどに点在した形態のもの(甲13),③ヒーター部を備えたシェード部が環状の形態(甲11。タカラベルモント社のローラーボール)などがあったものの,原告製品のように,ヒーター部を備えたシェード部が帯状であり,これを回動させることによって使用するものは,存在していなかったことが認められる。したがって,原告製品の上記形態は,独自の特徴を有するものであったといえる。イ 周知性についてa 事実関係掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によると,原告製品の販売,広告宣伝等については,以下の事実が認められる。 需要者ヘアードライヤーの需要者は理美容業者である。平成5年度以降の理容所及び美容所の施設数は,別紙理美容所施設数記載のとおりで,33万件ないし35万件台である。なお,原告は,日本国内の美容室のみにおける周知性を主張するが,理容室と美容室を区別することについて,合理的な理由が主張されているわけではなく,理美容室業者を需要者と見るのが相当である。ヘアードライヤーは,おおむね7~10年程度で買換えがされる(弁論の全趣旨)。 原告製品の販売 原告製品の販売台数は,別紙原告製品販売実績記載のとおりである(甲40,41。なお,上記販売実績には海外向けに販売した分も含まれている。)。 原告製品が多く販売されていたのは,平成4年度から平成6年度までの3年間(4332台,3841台,3337台)であり,平成12年度までは,毎年2000台前後を販売していたものの,その後は数百台程度となり,平成18年度以降は200台未満である。 (c) 原告製品の広告 4332台,3841台,3337台)であり,平成12年度までは,毎年2000台前後を販売していたものの,その後は数百台程度となり,平成18年度以降は200台未満である。 (c) 原告製品の広告宣伝原告は,原告の代理店を介しての取引を基本にしつつ,全国各地にショールームを開設し,需要者である理美容業者に原告製品を実際に体験してもらう等している。 また,原告製品については,平成4年から平成21年までの間,原告製品を紹介するチラシ(甲16,17,28)が作成・配布されたほか,原告の理美容品カタログ(甲18~20,22,31~38),展示会やフェア開催のチラシ(甲21,23,25~27,29,30)などで原告製品が紹介されていた。また,原告製品については,平成5年3月,平成6年9月,平成10年1月に,美容関係の業界誌に広告が掲載された(甲5~7)。 (d) 原告製品と同一の機能を有する製品の販売原告製品と同様に,ヒーター部を備えたシェード部が帯状であり,これを回動させることによって使用するヘアードライヤーについては,平成13年以降,韓国のロイヤル社が製造した「ビューティコール」(被告製品と同一形態である。)が,日本に輸入されるようになった(甲39,乙19)。 同製品は,平成15年から平成17年頃,株式会社アトリエワールドが「IR-Ⅱ」の名称で販売しており(乙17,18),株式会社ヤマグチリペアラーなどの販売業者も,「IR-Ⅱ」又は「ビューティコール」の製品を取り扱っていた(乙20~23)。 被告も,平成18年に被告製品の販売を開始し,同社のカタログにおいて製品の広告宣伝を行う等している(乙24)。 原告は,これらの販売を認識しながらも,本件訴訟に至るまで,特段の措置を 0~23)。 被告も,平成18年に被告製品の販売を開始し,同社のカタログにおいて製品の広告宣伝を行う等している(乙24)。 原告は,これらの販売を認識しながらも,本件訴訟に至るまで,特段の措置をとっていない(弁論の全趣旨)。 b 検討以上を踏まえて,被告製品の販売が開始された平成18年当時の原告製品の形態の周知性について検討する。 原告は,平成4年から平成7年当時,原告製品の販売を重点的に行っており,そのための営業活動を行っていたといえる(甲5,6,16~24等参照)。 しかしながら,その販売台数は,販売当初の平成4年度は4000台であったものの,その後はおおむね減少しており,平成13年度以降は数百台程度となっている。理美容所の施設数が33万件ないし35万件台であったことからすれば,ヘアードライヤーが7~10年程度で買い換えられる製品であることも踏まえたとしても,その販売台数を特別多いと評価することはできず,原告製品は,販売当初こそ市場において一定の評価を得たものの,その後,当該評価が定着するに至ったとまではいい難い。また,チラシやカタログについても,平成4年から平成7年にかけては,原告製品に主眼を置いたカタログ等が使用されたが,その後は,原告製品を他の理美容品と共に紹介するチラシ等が使用されているにすぎないことからすれば,これをみた需要者・取引者が,原告製品を特に意識して認知していたということはできない(特に,平成7年以降は,原告が製造販売する他のヘアードライヤーである「ビビアン」,「エクセル」,「わくわく21」などと共に紹介されている。)。さらに,新製品として原告製品を紹介するチラシも作成配布されていたことが認められるが,これらは販売開始当初の限定された時期に配布され 」,「エクセル」,「わくわく21」などと共に紹介されている。)。さらに,新製品として原告製品を紹介するチラシも作成配布されていたことが認められるが,これらは販売開始当初の限定された時期に配布されたにすぎないといえることからすれば,その後の周知性を基礎付けるものということはできない。さらに,平成15年以降,原告製品と同様の商品(ヒーター部を備えたシェード部が帯状であり,これを回動させることによって使用するヘアードライヤー)が韓国から輸入されるようになっており,平成18年当時は,既に輸入販売が開始されてから3年が経過していたことになる。 以上によれば,被告製品が販売されるようになった平成18年当時,原告製品の形態が,原告の商品等表示として,需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。原告は,原告製品の形態は,平成7年頃に周知性を獲得し,それがその後も失われていないと主張するようであるが,平成7年当時,3年程度の販売実績しかなく,その後の販売台数の低下は上記のとおりであることからすれば,仮に平成7年頃に一定の周 知性があったとしても,平成18年の時点でそれがあったということはできない。ウ小括したがって,被告が,平成18年以降,被告製品を販売したことが,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たるとはいえない。 まとめ以上のとおりであって,原告の不正競争防止法違反に基づく請求は,その余の点について検討するまでもなく理由がない。 3 結論以上によれば,原告の請求にはいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷 以上によれば,原告の請求にはいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒 裁判官 松川充康 裁判官 網田圭亮 (別紙) 原告製品目録 「ブーメラン」という名称のヘアードライヤー 以上 (別紙) 被告製品目録 「ビューティコール」という名称のヘアードライヤー 以上
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