平成12(行ウ)134 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年12月6日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文43,293 文字)

主文 1 被告が平成10年3月30日付けでした原告の平成6年分の所得税に係る重加算税賦課決定のうち,加算税額99万1000円を超える部分を取り消す。 2 被告が平成10年3月31日付けでした原告の平成6年分の所得税に係る重加算税賦課決定のうち,加算税額438万1500円を超える部分を取り消す。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告が平成10年3月30日付けでした原告の平成6年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定を取り消す。 (2) 被告が平成10年3月31日付けでした原告の平成6年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額708万8300円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。 2 被告の本案前の答弁被告が平成10年3月30日付けで行った平成6年分所得税に係る過少申告加算税及び重加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えを却下する。 3 被告の本案の答弁原告の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要本件は,原告の平成6年度分の所得税について被告が行った平成10年3月30日付け過少申告加算税賦課決定及び重加算税賦課決定並びに平成10年3月31日付け更正処分及び重加算税賦課決定に対し,原告が,自らは確定申告手続を委任した税理士及び当時現役の税務署職員が行った犯罪行為の被害者であると主張し,上記各処分はいずれも違法であるとして,その取消しを求めている事案である。 1 法令の定め(1) 租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のもの。以下「措置法」という。)上の特例ア長期譲渡所得の課税の特例個人が,その有する土地若しくは土地上に存する権 る。 1 法令の定め(1) 租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のもの。以下「措置法」という。)上の特例ア長期譲渡所得の課税の特例個人が,その有する土地若しくは土地上に存する権利又は建物及びその付属設備若しくは構築物で,その年1月1日において所有期間が10年を超えるものの譲渡をした場合には,当該譲渡による譲渡所得については,所得税法の規定にかかわらず,他の所得と区分し,その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額から長期譲渡所得の特別控除額を控除した金額に対し,100分の30の税率を適用して所得税を課する。 (措置法31条1項)イ特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例a 個人が,平成5年4月1日から平成7年3月31日までの間に,その有する家屋又は土地若しくは土地上に存する権利で,その年1月1日において措置法31条3項に規定する所有期間が10年を超えるもののうち,当該個人がその居住の用に供している家屋(当該個人がその居住の用に供している期間として政令で定める期間が10年以上であるものに限る。)で政令で定めるもののうち国内にあるもの及び当該家屋の敷地の用に供されている土地又は当該土地の上に存する権利等一定の要件を満たしたもの(以下「譲渡資産」という。)の譲渡をした場合において,平成5年4月1日から当該譲渡の日の属する年の12月31日までの間に,当該個人の居住の用に供する家屋又は当該家屋の敷地の用に供する土地若しくは当該土地の上に存する権利の取得をし,かつ,当該取得の日から当該譲渡の日の属する年の翌年12月31日までの間に当該個人の居住の用に供したとき,又は供する見込みであるときは,一定の場合を除いて,当該譲渡資産の譲渡による収入金額が当該買換資産の取得価額以下である場合にあっては当該譲渡資産 2月31日までの間に当該個人の居住の用に供したとき,又は供する見込みであるときは,一定の場合を除いて,当該譲渡資産の譲渡による収入金額が当該買換資産の取得価額以下である場合にあっては当該譲渡資産の譲渡がなかったものとし,当該収入金額が当該取得価額を超える場合にあっては当該譲渡資産のうちその超える金額に相当するものとして政令で定める部分の譲渡があったものとして,措置法31条の規定を適用する(以下「本件買換特例」という。)。 (措置法36条の6第1項2号)b 措置法36条の6第1項の規定は,同項の規定の適用を受けようとする者の譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に,同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり,かつ,当該譲渡資産の譲渡価額,買換資産の取得価額又はその見積価額に関する明細書その他大蔵省令で定める書類(以下「本件添付書類」という。)の添付がある場合に限り,適用する。 (措置法36条の6第2項,36条の2第4項)c 税務署長は,確定申告書の提出がなかった場合又は措置法36条の6第1項の規定の適用を受けようとする旨の記載若しくは本件添付書類の添付がない確定申告書の提出があった場合においても,その提出又は記載若しくは添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは,当該記載をした書類及び本件添付書類の提出があった場合に限り,措置法36条の6第1項の規定を適用することができる。 (措置法36条の6第2項,36条の2第5項)(2) 過少申告加算税の賦課要件ア期限内申告書が提出された場合において,修正申告書の提出又は更正があったときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき国税通則法35条2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少 更正があったときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき国税通則法35条2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。 (国税通則法65条1項)イ国税通則法65条1項の規定に該当する場合において,同項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があったときは,その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときは,同項の過少申告加算税の額は,同項の規定にかかわらず,同項の規定により計算した金額に,当該超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは,当該納付すべき税額)に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。 (国税通則法65条2項)ウ国税通則法65条1項又は2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,これらの項の規定を適用する。 (国税通則法65条4項)エ国税通則法65条1項の規定は,修正申告書の提出があった場合において,その提出が,その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは,適用しない。 (国税通則法65条5項)(3) 重加算税の賦課 て,その提出が,その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは,適用しない。 (国税通則法65条5項)(3) 重加算税の賦課要件国税通則法65条1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(同条5項の規定の適用がある場合を除く。)において,納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,当該納税者に対し,政令で定めるところにより,過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし,又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは,当該隠ぺいし,又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え,当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。 (国税通則法68条1項)(4) 更正等の期間制限ア更正は,原則として,その更正に係る国税の法定申告期限から3年を経過した日以後においてはすることができない。 (国税通則法70条1項1号)イ課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は,その納税義務の成立の日から5年を経過した日以後においてはすることができない。 (国税通則法70条4項2号)ウ偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ,若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等は,国税通則法70条1項ないし4項の規定にかかわらず,更正については,その更正に係る国税の の全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等は,国税通則法70条1項ないし4項の規定にかかわらず,更正については,その更正に係る国税の法定申告期限の日から,課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定については,その納税義務の成立の日から7年を経過する日まですることができる。 (国税通則法70条5項)(5) 不服申立て前置国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは,原則として,異議申立てをすることができる処分(審査請求をすることもできるもの(異議申立てについての決定を経た後審査請求をすることができるものを含む。)を除く。)にあっては異議申立てについての決定を,審査請求をすることができる処分にあっては審査請求についての裁決をそれぞれ経た後でなければ提起することができない。 ただし,異議申立てについての決定又は審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき,その他その決定又は裁決を経ないことにつき正当な理由があるときは,上記の限りでない。 (国税通則法115条1項3号) 2 前提となる事実(以下の事実は,各項末尾に掲げた証拠等により認定した。)(1) 原告の居住用家屋の買換えア原告は,平成6年8月26日,株式会社Jとの間で,同社に対し,原告が相続により昭和58年6月15日に取得した東京都大田区ab丁目c番d所在の土地及び同土地上に原告が昭和49年に建築した建物(以下,これらの土地及び建物を併せて「本件譲渡資産」という。)を代金1億4400万円で譲渡する旨の売買契約を締結し,同年11月16日,本件譲渡資産の各所有権を移転した。 本件譲渡資産は,10年を超えて所有されていた 及び建物を併せて「本件譲渡資産」という。)を代金1億4400万円で譲渡する旨の売買契約を締結し,同年11月16日,本件譲渡資産の各所有権を移転した。 本件譲渡資産は,10年を超えて所有されていた居住用財産である。 (争いのない事実)イ原告は,平成6年7月6日,Aとの間で,同人から東京都大田区ab丁目e番fの土地上に存する借地権付建物(以下「本件買換資産」という。)を代金6206万円で購入する旨の売買契約を締結し,同年10月11日,上記借地権(ただし,上記土地は原告所有地であるため,借地権は混同により消滅した。)及び建物所有権を取得し,同日,直ちに原告の居住の用に供した。 なお,原告は,その後,上記の家屋を取り壊し,同所に新たな家屋を建築し,平成7年10月16日から,上記新家屋を原告の居住の用に供している。 (争いのない事実)(2) 原告の平成6年度所得に係る確定申告ア原告は,平成7年2月13日ころ,本件譲渡資産の譲渡に係る所得税の確定申告手続について相談するため,確定申告書の下書きや「譲渡内容についてのお尋ね」等の書類を持参してK税務署に赴き,担当の係官と面接し,同係官は,原告の平成6年度分の本件譲渡資産の譲渡に係る納付すべき所得税額を698万0800円と算出し,その旨原告に伝えた。 (争いのない事実)イ原告は,平成7年2月13日ころ,原告の平成6年分所得税の確定申告手続(以下「本件確定申告手続」という。)一切を,当時,税理士であったB(以下「B」という。)に委任し(以下「本件委任」という。),同月17日,税金及び手数料の合計額として520万円をBに支払った。 (争いのない事実)ウ Bは,平成7年3月14日,原告の住所欄に「横浜市青葉区g町hーi」と虚偽の住所地を記載し,長期譲渡に係る一般所得分の必要経費欄に「1億4336万 て520万円をBに支払った。 (争いのない事実)ウ Bは,平成7年3月14日,原告の住所欄に「横浜市青葉区g町hーi」と虚偽の住所地を記載し,長期譲渡に係る一般所得分の必要経費欄に「1億4336万6721円」と虚偽の数額を記載するなどして,長期譲渡所得金額,総所得金額及び納付すべき税額をいずれも零円とする原告の平成6年度分の所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を作成し,緑税務署に対してこれを提出した。 そして,Bは,原告から受領した上記520万円の全額を自己の用途に費消した。 なお,本件確定申告書には,本件買換特例の適用を受ける旨の記載はなく,また,本件添付書類も添付されていなかった。 (争いのない事実)エ平成7年3月当時,L税務署個人課税第五部門の統括国税調査官として,譲渡所得に係る所得税の賦課及び減免並びにその課税標準の調査を含む資産税事務の総括及び調査等の職務に従事していたC(以下「C」という。)は,平成7年3月14日ころ,L税務署において,Bから,原告外3名の平成6年度分の譲渡所得に係る所得税の確定申告につき,架空経費等の計上により譲渡所得を過少に申告した事実を黙認するなどしてその発覚を未然に防止してもらいたい旨の請託を受け,その謝礼として現金500万円の供与を受けて賄賂を収受し,原告らの過少申告の事実を黙認した。 なお,Cは,平成10年6月29日,東京地方裁判所において,上記の加重収賄等の罪により,懲役3年の実刑及び1700万円の追徴の判決を受けた。 (甲13)(3) Bの経歴等Bは,税務署の職員として勤務した後,昭和42,3年ころ,東京税理士会に所属する税理士として登録し,K税務署の前に事務所を構えて開業したが,その後,遅くとも平成元年ころからは,現役の税務署職員であったM,Cなどの協力を得て 務した後,昭和42,3年ころ,東京税理士会に所属する税理士として登録し,K税務署の前に事務所を構えて開業したが,その後,遅くとも平成元年ころからは,現役の税務署職員であったM,Cなどの協力を得て,税務申告を不正に行って脱税行為を繰り返すようになり,平成9年ころ,これらの脱税行為が発覚し,Bは,所得税法違反の罪により懲役刑の実刑判決を受けた。 (証人B)(4) 原告による修正申告等東京国税局は,平成9年10月14日に原告に対する査察調査に着手した。 その後,原告は,平成10年1月6日,被告に対し,①不動産所得金額を302万8723円,②給与所得金額を555万3670円,③分離長期譲渡所得金額を2757万9826円,④総所得金額を858万2394円,⑤納付すべき税額708万8300円とする修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出し,併せて,「譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面に本件買換特例の適用を受けようとする旨を記載して提出した。 また,原告は,平成10年2月10日,本件添付書類として,取得価格に係る認定申請書,登記簿謄本,住民票の付票等を被告に対して提出した。 (甲5,8)(5) 被告による更正処分等ア被告は,平成10年3月30日,本件修正申告書の提出により原告が新たに納付すべきこととなった税額708万8300円に対し,過少申告加算税の金額を4万6000円,重加算税の金額を231万3500円とする加算税賦課決定処分(以下「第一次決定処分」という。)を行った。 (争いのない事実)イ被告は,平成10年3月31日付けで,原告の平成6年度分の所得税について,①不動産所得金額を302万8723円,②給与所得金額を555万3670円,③長期譲渡所得金額を1億2533万1879円,④総所得金額を858万2393円,⑤納付 告の平成6年度分の所得税について,①不動産所得金額を302万8723円,②給与所得金額を555万3670円,③長期譲渡所得金額を1億2533万1879円,④総所得金額を858万2393円,⑤納付すべき税額を3630万6500円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額2921万8200円に対し,重加算税の金額を1022万3500円とする加算税賦課決定処分(以下「第二次決定処分」という。)を行った。 (争いのない事実)(6) 原告による不服申立てア原告は,平成10年5月6日,被告に対し,本件更正処分及び第二次決定処分について異議申立てを行ったが,被告は,同年10月15日,同異議申立てを棄却する旨の決定をした。 (争いのない事実)イ原告は,平成10年11月13日,国税不服審判所長に対し,本件更正処分及び第二次決定処分について審査請求を行ったが,同所長は,平成12年3月8日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (争いのない事実) 3 当事者の主張(被告の本案前の主張)国税通則法115条1項によれば,国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める場合は,同項1号ないし3号所定の事由がある場合でない限り,原則として異議申立てについての決定及び審査請求についての裁決という二段階の行政上の不服申立手続を経た後でなければ,訴えを提起することはできない(ただし,国税通則法80条2項に規定する処分を除く。)。 ところが,原告は,第一次決定処分については,処分庁に対する異議申立て及び審査裁決庁に対する審査請求をいずれもしておらず,これを経ずに訴えを提起できるような例外的な事情も存在しないことから,本件訴訟において原告が第一次決定処分の取消しを求め 処分庁に対する異議申立て及び審査裁決庁に対する審査請求をいずれもしておらず,これを経ずに訴えを提起できるような例外的な事情も存在しないことから,本件訴訟において原告が第一次決定処分の取消しを求めることは,取消訴訟の訴訟要件である不服申立前置を経ない不適法な訴えというべきである。 また,第一次決定処分は,本件修正申告書の提出により新たに納付すべきこととなった税額を基礎とした加算税賦課決定処分であり,第二次決定処分は,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額を基礎とした加算税賦課決定処分であって,それぞれ,異なる課税要件事実に基づいて行われた別個独立の処分であり,原告においても,上記各処分が別個独立の処分であることは容易に把握し得たはずであるから,第二次決定処分についての不服申立てを経たからといって,第一次決定処分についての不服申立てを経由したことにはならないというべきである。 (被告の本案の主張)(1) 第一次決定処分の根拠及び適法性ア隠ぺい又は仮装の事実の存在a 国税通則法68条1項の隠ぺい又は仮装の意義国税通則法68条1項は,「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」と規定しているが,「納税者が」という主語が,「隠ぺいし,又は仮装し」という述語と,その後の「納税申告書を提出していた」という述語の双方に同時にかかっていることは明らかである。そして,国税通則法は,納税者が第三者に委任して代理人により申告を行うことを認めているから(同法124条,税理士法2条1項1号),納税者から委任を受けた第三者が,代理人として申告書を提出した場合には,国税通則法68条1項の解釈適用上も「納税者が」「納 より申告を行うことを認めているから(同法124条,税理士法2条1項1号),納税者から委任を受けた第三者が,代理人として申告書を提出した場合には,国税通則法68条1項の解釈適用上も「納税者が」「納税申告書を提出していた」ことになる。 このように,国税通則法68条1項の「納税申告書を提出していた」という述語との関係で同項の「納税者」と同視された第三者が隠ぺい又は仮装を行った場合には,同項の「隠ぺいし,又は仮装し」という述語との関係でも,当該第三者を「納税者」と同視し得ると解することは,同項の文理上も困難ではない。 かえって,後述のとおり,隠ぺい又は仮装による過少申告は過少申告の悪質な一態様と位置付けられており,同項の「隠ぺいし,又は仮装し」たことは,同項の「納税申告書を提出していた」ことの態様であることに照らせば,同項の「納税申告書を提出していた」という述語との関係で「納税者」と同視される者は,同項の「隠ぺいし,又は仮装し」という述語との関係でも,「納税者」と同視し得ると解することが相当である。なぜなら,納税者が第三者に申告を委任し,その第三者の申告をもって自己の申告とした以上,その第三者の申告は,原則として,その態様を含めてそのまま納税者自身の申告と同視されるべきものだからである。 以上のとおりであるから,国税通則法68条1項の「納税者」という文言は,納税者から委任を受けた第三者が隠ぺい又は仮装による過少申告に及んだ場合に,納税者に重加算税を賦課し得ると解する妨げになるものではない。同項の適用上,いかなる場合に第三者が納税者と同視されるかということは,同項に定める重加算税の趣旨・目的,性質等に照らして合理的に解釈されるべきである。 b 第三者による隠ぺい又は仮装と納税者の責任国税通則法の設けた加算税制度は,申告納税制度及び徴収納付制 うことは,同項に定める重加算税の趣旨・目的,性質等に照らして合理的に解釈されるべきである。 b 第三者による隠ぺい又は仮装と納税者の責任国税通則法の設けた加算税制度は,申告納税制度及び徴収納付制度の定着と発展を図るため,申告義務及び徴収納付義務の違反に対して特別の経済的負担を課すことによって,それらの義務の履行を図り,ひいてはこれらの制度の定着を促進しようとする趣旨の制度であり,なかでも重加算税は,同法65条に定める過少申告加算税を課すべき納税義務違反が,本税の課税要件事実を隠ぺいし,又は仮装するという不正手段を用いた悪質な態様で行われた場合に,重い経済的負担を課することによって,かかる悪質な態様による納税義務違反の発生を防止し,もって申告納税制度による適正な徴税の実を挙げようとする趣旨に出た行政上の措置であり,刑罰とはその趣旨・目的を異にする。 このように,加算税が納税義務違反を防止する趣旨・目的を有するというのは,経済的インセンティブを利用して義務履行を誘導するという意味である。すなわち,重加算税は,隠ぺい又は仮装による過少申告を行えば非常に高率の加算税が賦課されることとして,納税者にその賦課を避けるというマイナスのインセンティブを与え,納税義務違反を行わなくなることを期待して設けられた制度であって,隠ぺい又は仮装という不正行為に対する倫理的非難を含むものではないから,刑罰とは異なり,必ずしも隠ぺい又は仮装の行為をした者に対して課さなければならないというものではない。 したがって,重加算税の対象となる納税者自身が隠ぺい又は仮装の行為に及ばない限り,課し得ないというものではなく,むしろ,重加算税が,納税者にインセンティブを与えて納税義務違反を防止する趣旨・目的であることに,申告の委任が自由であることを併せ考えると,国税通則法6 及ばない限り,課し得ないというものではなく,むしろ,重加算税が,納税者にインセンティブを与えて納税義務違反を防止する趣旨・目的であることに,申告の委任が自由であることを併せ考えると,国税通則法68条1項は,第三者に申告を委任する納税者に対しても,重加算税の賦課を避けるというインセンティブを与えることにより,納税者に,当該第三者の隠ぺい又は仮装による過少申告を防止させようとする趣旨・目的をも含んでいると解するのが相当である。 重加算税がこのような趣旨・目的を有するものであるとすれば,「隠ぺい又は仮装」行為が納税者以外の第三者によって行われた場合においても,納税者において第三者の隠ぺい又は仮装による過少申告を防止し得た場合には,当該第三者の隠ぺい又は仮装による過少申告について,納税者に重加算税を賦課することが相当と解される。 そして,このように,納税において,第三者の隠ぺい又は仮装による過少申告を防止し得た場合には,当該第三者の隠ぺい又は仮装による過少申告について,納税者に重加算税を賦課すべきであって,このことは,当該第三者が税理士であるか,税理士以外の第三者であるかによって異なるものではない。 確かに,税理士は,中立的な立場において職務を遂行すべきものではある。しかし,税理士の税務代理(税理士法2条1項1号)は,あくまで納税者との委任契約に基づくものであるから,納税者が,受任者の選任や報告義務及び解除権を通じて,正しい申告内容を実現することができるのであり,隠ぺい又は仮装を防止する手段を有することは,税理士以外の第三者に委任する場合と異なるものではない。 税理士法33条1項は,税務代理の場合においても,課税標準等の記載のある申告書に関しては,納税者本人の押印を求めている。これは,申告書が課税要件事実を正しく反映したものとなっている ものではない。 税理士法33条1項は,税務代理の場合においても,課税標準等の記載のある申告書に関しては,納税者本人の押印を求めている。これは,申告書が課税要件事実を正しく反映したものとなっているかについて,納税者自身の確認を求める趣旨の規定であると解される。すなわち,税理士に委任した納税者には,税理士の作成した申告書に納税者自身が押印する過程において,当該税理士が脱税に及ぶのではないかという疑いを抱いた納税者は,そのような疑いのない他の税理士に委任するとか,その疑いを取り除いた上で当該税理士に委任するなどの方法により,隠ぺい又は仮装による過少申告を防止できるのである。 そうであるとすれば,税理士が脱税に及ぶのではないかという疑いを抱いたにもかかわらず,納税者がその疑いを取り除くことなく委任した結果,当該税理士が隠ぺい又は仮装による過少申告に及んだ場合には,納税者に重加算税を課し得ると解することが,国税通則法68条1項の趣旨・目的にかなうことは明らかである。 c 本件における隠ぺい又は仮装の事実の存在(a) 本件においては,以下の事実が認められる。 Ⅰ 原告は,前提となる事実記載のとおり,本件税務相談の際に,担当係官から,原告が納付すべき正当な納税額が698万円余りであることを告知され,また,Bからも,本件委任に先立ち,本来納付すべき税額は約700万円であることを告げられていたので,本来納付すべき税額が698万円余りであることを明確に認識していた。 Ⅱ 原告は,Bが,原告から当該譲渡資産の譲渡の経緯を聞き出したりそれを検討したり計算したりすることもなく,いきなり,諸費用や礼金等をすべて含めた金額として520万円で済ませるとの申し出を受け,そのように低額となる理由について説明を受けることもなく,かえって「税務署長は私の部下のようなもんだ」 ともなく,いきなり,諸費用や礼金等をすべて含めた金額として520万円で済ませるとの申し出を受け,そのように低額となる理由について説明を受けることもなく,かえって「税務署長は私の部下のようなもんだ」などと,税務署職員を加担させた不正な脱税行為を示唆する発言を受けながら,あえてBに確定申告手続を依頼した。 Ⅲ 原告は,譲渡所得の申告を含めて所得税の確定申告に関して一定の知識と経験を有し,本件譲渡資産の譲渡所得の申告に際しても,本件譲渡が特例の適用要件を具備していることを認識して申告手続に臨んでいた。 Ⅳ 原告は,Bに確定申告手続を依頼した後の平成6年3月中旬ないし下旬ころに,電話で同人に原告の確定申告手続が終了したかどうかの確認はとったものの,Bに対し,本件確定申告書の控えや納付書の控えを請求することもしなかった上,原告がBの事務所を訪れた折にも,Bに預けていた下書き書類や契約書等は受け取りながら,本件確定申告書の控えや納付書の控えは受領していないなど,確定申告と納税が適正に行われたかどうかについて具体的な確認を全くしていない。 Ⅴ 原告は,遅くとも平成7年6月ころには,平成7年度特別区民税・都民税の通知書によって平成6年分の所得が給与所得だけになっていることを知って不審を抱いたはずであり,また,原告は,連年,不動産所得と給与所得に係る申告をしており,平成6年分について500万円にも及ぶ多額の納税をしたとの認識であったならば,当然あるべき平成7年分の所得税の予定納税の通知がないことを不審に思ったはずであるのに,平成6年分の確定申告の内容を確認しようとしていない。 (b) 上記の事実関係によれば,原告は,Bに申告手続を委任した時点において,既に正当に納税する意思はなく,Bに何らかの不正行為による脱税を依頼したものであることが推認でき,原告は,B していない。 (b) 上記の事実関係によれば,原告は,Bに申告手続を委任した時点において,既に正当に納税する意思はなく,Bに何らかの不正行為による脱税を依頼したものであることが推認でき,原告は,Bが脱税に及ぶことを明確に認識していたと認められ,少なくとも,原告は,Bが脱税行為に及ぶとの疑いを抱いていたと認められる。 したがって,原告は,少なくともBが脱税行為に及ぶのではないかとの疑いを抱きながら,その疑いを取り除くことなく委任した結果,Bが隠ぺい又は仮装による過少申告に及んだのであるから,Bの「隠ぺい又は仮装」行為による過少申告の結果について,原告に重加算税を課し得るというべきである。 また,原告は,Bから520万円で原告の確定申告を済ませる旨申し向けられたところで,自らの確定申告が適切に行われるかどうか,Bを疑う事情が十分にあったというべきであり,また,事後にBに確定申告書の控えや納付書の控えの提示を求めるなどしてBが行った申告行為の適否を確認し,その申告行為が不適切であれば修正申告書を提出するなど,Bの行為の是正をはかる機会はいくらでもあったにもかかわらず,原告は,これらを怠ったのであり,原告のBに対する確定申告手続の委任には,代理人の選任,監督について少なくとも過失があり,この点からも,Bの行った確定申告の効果は原告に帰属するというべきである。 なお,原告は,Bに520万円を渡し,Bはこれを全額着服して,納税資金には一切充てていないのであるが,この金額ないしこれからBに対する税理士報酬を差し引いた額について,原告に納税の意図があったと認めることもできない。 以上のとおり,本件確定申告書には虚偽の取得費等が記載され,その結果,原告の譲渡所得を当該税務署が把握することを事実上不可能にし,その譲渡所得に係る所得税を免れる方法での確 認めることもできない。 以上のとおり,本件確定申告書には虚偽の取得費等が記載され,その結果,原告の譲渡所得を当該税務署が把握することを事実上不可能にし,その譲渡所得に係る所得税を免れる方法での確定申告がされたものであるから,上記虚偽記載等の事実が国税通則法68条1項に規定する「その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当することは明らかである。 イ重加算税額 231万3500円上記金額は,本件修正申告書を提出したことにより新たに納付すべきこととなった税額708万8300円のうち,国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実を,前記のおとり仮装した部分に該当する金額661万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に同法68条1項所定の100分の35の割合を乗じて計算した金額である。 ウ過少申告加算税額 4万6000円上記金額は,本件修正申告書を提出したことにより新たに納付すべきこととなった税額708万8300円のうち,国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実を仮装した部分に該当する金額以外の金額46万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの。)に同法65条1項の規定を適用して算出した金額である。 なお,前記のとおり,原告は,脱税を意図してBに納税申告手続を委任して所得税の納付を免れたものであるから,本件修正申告書を提出したことにより新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実を本件確定申告書における納付すべき税額の計算の基礎としなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由が を提出したことにより新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実を本件確定申告書における納付すべき税額の計算の基礎としなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められない。 また,原告は,東京国税局P部Q第g部門に在籍していたD査察官(以下「D査察官」という。)から本件買換特例を適用しないで計算した修正申告書を提出するよう再々要請されながらこれに応じようとせず,本件買換特例を適用して修正申告した場合には更正処分があるべきことを告げられながら,あえて本件買換特例を適用した修正申告書を提出したのであるから,「更正のあるべきことを予知してなされたものでないとき」には該当しない。 (2) 本件更正処分の根拠及び適法性についてア更正の期間制限について前記のとおり,原告は,Bから,知り合いに働きかけて原告の納付すべき所得税額を安くすると脱税を持ちかけられて,納付する税額が安く済むのであればその方がよいと考えてこれに応じたものであり,原告の了承を得たBは,脱税行為を行う目的のもと,架空取得費を記載するなどして,本件譲渡に係る所得金額及び納付すべき所得税額をいずれも零円とする内容虚偽の本件確定申告書を作成し,L税務署に提出した。 これらのことからすれば,本件更正処分は,国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ,若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税についての更正決定等」に該当する。 したがって,本件確定申告期限から国税通則法70条5項の定める期間経過前に行われた本件更正処分は,期間制限の定めに反するものではない。 イ原告の平成6年分の課税長期譲渡所得金額及び納付すべき税額並びにその算定根拠は,次のとおりである。 a 長期譲渡所得金額 間経過前に行われた本件更正処分は,期間制限の定めに反するものではない。 イ原告の平成6年分の課税長期譲渡所得金額及び納付すべき税額並びにその算定根拠は,次のとおりである。 a 長期譲渡所得金額  1億2661万9179円上記金額は,本件譲渡資産の譲渡に係る長期譲渡所得金額であり,次の(a)から(b)及び(c)を控除した残額である。 (a) 収入金額  1億4400万円上記金額は,原告が平成6年度中に訴外株式会社Jに譲渡した本件譲渡資産の譲渡価額である。 (b) 取得費  1265万8700円上記金額は,次のⅠ及びⅡの合計額である。 Ⅰ 本件土地の取得費  691万2700円上記金額は,措置法31条の4の規定に基づき,収入金額から次のⅡの金額を控除した残額に100分の5を乗じて算出したものである。 Ⅱ 本件建物の取得費  574万6000円上記金額は,本件建物の取得価額1300万円から所得税法38条2項及び同法施行令85条(ただし,平成10年政令104号による改正前のもの。)の規定に基づいて求めた本件建物の減価の額を控除した後の金額である。 (c) 譲渡費用  472万2121円上記金額は,本件譲渡資産の譲渡に要した費用の合計額である。 b 課税長期譲渡所得金額  1億2561万9179円上記金額は,上記長期譲渡所得金額1億2661万9179円から,措置法31条4項に規定する特別控除額100万円を控除した残額である。 c 課税総所得金額  696万4229円上記金額は,次の(a)及び(b)の合計額から(c)の金額を控除した残額である。 (a) 不動産所得の金額  302万8723円上記金額は,原告の平成6年分の不動産所得の金額であり,本件修正申告書に不動産所得の金額として記載されたものと同額である。 (b) 給与所得の金 る。 (a) 不動産所得の金額  302万8723円上記金額は,原告の平成6年分の不動産所得の金額であり,本件修正申告書に不動産所得の金額として記載されたものと同額である。 (b) 給与所得の金額  555万3670円上記金額は,原告の平成6年分の給与所得の金額であり,本件修正申告書に給与所得の金額として記載されたものと同額である。 (c) 所得控除の合計額  161万8164円上記金額は,所得税法72条以下に規定する所得控除の合計額であり,本件修正申告書に記載されたものと同額である。 d 予定納税額控除前の所得税額  3656万5300円上記金額は,次の(a)及び(b)の合計額から(c)及び(d)を控除した残額である(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)。 (a) 課税長期譲渡所得金額に対する税額  3768万5700円上記金額は,措置法31条1項に基づき,前記bの課税長期譲渡所得金額1億2561万9000円(ただし,国税通則法118条1項の規定に基づき,1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)に100分の30を乗じて算出した金額である。 (b) 課税総所得金額に対する税額  118万9200円上記金額は,上記cの課税総所得金額696万4000円(ただし,国税通則法118条1項の規定に基づき,1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)に所得税法89条1項(ただし,平成6年法律第109号附則第2条により同法による改正前のもの。)に規定する税率を適用して計算した金額である。 (c) 特別減税額  200万円上記金額は,平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づく金額である。 (d) 源泉徴収された所得税額  30万9600円上記金額は,原 額である。 (c) 特別減税額  200万円上記金額は,平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づく金額である。 (d) 源泉徴収された所得税額  30万9600円上記金額は,原告の平成6年分の給与所得に係る源泉所得税額であり,本件修正申告書に記載されたものと同額である。 e 納付すべき税額  3639万2900円上記金額は,上記dの申告納税額から第一期分及び第二期分の予定納税額各8万6200円の合計額を控除した残額である。 ウ本件更正処分の適法性について以上のとおり,原告の平成6年分の所得税の納付すべき税額は,3639万2900円であり,本件更正処分における納付すべき税額3630万6500円を上回るから,本件更正処分は適法である。 エ本件買換特例の適用がないことについて原告は,前提となる事実記載のとおり,確定申告書に本件買換特例を適用する旨の記載をせず,また,本件添付書類の添付もしていないところ,以下のとおり,原告について措置法36条の2第5項にいう「やむを得ない事情」を認めることもできないから,本件譲渡資産の譲渡について,本件買換特例を適用することはできないというべきである。 a 本件買換特例を適用するに当たり,同特例を適用する旨を確定申告書へ記載すること及び本件添付書類を添付することが必要とされる趣旨措置法36条の6において規定する本件買換特例の制度は,個人の住宅の住み替えを促進し,個人の居住水準の向上を図るとの観点から,同条の所定期間内に,同条第1項1号ないし4号に定められる居住用財産(以下「譲渡資産」という。)を譲渡するとともに,自己の居住の用に供する家屋又は敷地の用に供する土地等(以下「買換資産」という。)を取得し,かつ,自己の居住の用に供したときには,譲渡資産から買換資産に取得価額が引き継が う。)を譲渡するとともに,自己の居住の用に供する家屋又は敷地の用に供する土地等(以下「買換資産」という。)を取得し,かつ,自己の居住の用に供したときには,譲渡資産から買換資産に取得価額が引き継がれたものとみなして,①譲渡資産の譲渡収入金額が買換資産の取得価額を下回る場合には当該譲渡はなかったものとし,②譲渡資産の収入金額が買換資産の取得価額を上回る場合には,譲渡資産の収入金額のうち,買換資産の取得価額を上回る部分についてのみ譲渡があったものとして,譲渡所得に対する課税の繰り延べを認めているものである。 このように,本件買換特例の適用を受けようとする納税者に対して,確定申告書への記載と本件添付書類の添付を求めている趣旨は,本件買換特例が,納税者に有利な課税の特例として設けられたものであることから,その適用を希望する納税者のみに適用することとし,かつ,納税者自身が確定申告書に本件買換特例を適用する旨を記載し,適用要件の存在を明らかにする書類を添付した場合にのみ適用を認めるとすることで,税額確定手続における画一的かつ的確な処理の実現を図ることにある。 さらに,本件買換特例は,譲渡所得に対する課税が免除したり税額が減額したりするものではなく,譲渡所得に対する課税の時期を原則どおり今回の譲渡時点とするか,将来の譲渡時点にまで繰り延べるかを納税者の選択に委ねるものである。 したがって,本件買換特例の適用を受けようとする納税者は,本件買換特例の適用要件を満たす譲渡資産を譲渡し,かつ,買換資産を取得したとしても,当然に本件買換特例の適用を受けることとなるものではなく,原則として,当該納税者が,譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に本件買換特例を受けようとする旨を記載し,さらに,本件添付書類の添付をした場合に限り適用できるものとされてい ものではなく,原則として,当該納税者が,譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に本件買換特例を受けようとする旨を記載し,さらに,本件添付書類の添付をした場合に限り適用できるものとされているのであり(措置法36条の6第2項において準用する同法36条の2第4項),納税者が選択権行使の意思表示をしないものについては,原則の取扱いとなる。 以上によれば,納税者が,本件買換特例を含めて,各課税の特例を適用する旨を確定申告書に記載し,かつ,必要書類を添付する行為は,単に特例適用をするための形式的な行為というにとどまらず,納税者の課税上の選択権の行使としての意味を持つというべきである。 b 「やむを得ない事情」の意義について他方,本件買換特例に係る措置法36条の2第5項は,本件買換特例適用に当たり,確定申告書の提出がなかった場合又は特例を適用する旨の記載若しくは必要書類の添付がない確定申告書の提出がされた場合においても,その提出又は記載若しくは添付がないことについて,税務署長がやむを得ない事情があると認めた場合には,当該記載をした書類並びに必要書類の提出があった場合に限り,特例適用を認めるとする規定が設けられている。 これは,特例の適用を受けるための手続に厳格な要式行為性を備えることを要求する結果として生じ得べき不都合を防止することにあると解されるところ,もともと確定申告書に特例を適用する旨を記載し,かつ,必要書類を添付する行為は,納税者の課税上の選択権の行使としての意味を持つものであるから,同規定に定められる「やむを得ない事情」も,納税者個人の主観的な事情はこれに当たらず,納税者の責めに帰することのできない事由により,確定申告書の提出若しくは確定申告書に特例の適用を受けようとする旨の記載をし,若しくはそのための必要書類を添付するこ 人の主観的な事情はこれに当たらず,納税者の責めに帰することのできない事由により,確定申告書の提出若しくは確定申告書に特例の適用を受けようとする旨の記載をし,若しくはそのための必要書類を添付することが不可能であったと認められるような客観的な事情を指すものと解すべきである。 c 本件において「やむを得ない事情」が認められないこと(a) 前記のとおり,原告は,違法に税を免れる脱税の認識を有しながら,あえて,Bに確定申告手続を依頼したと認められるから,本件買換特例の適用を受けようとする旨を確定申告書に記載し,必要書類を添付することができなかったことについての「やむを得ない事情」は存しないというべきである。 (b) さらに,そもそも,自ら選任した税理士の不正行為について納税者は責任を免れることはできないのであり,本件においても,原告の認識にかかわらず,本来,Bの行った不正申告の責めを免れず,税理士の行った不正行為について「やむを得ない事情」を観念することはできないというべきであるから,仮に,原告に上記認識がなかったとしても,結局のところ,原告はBの不正行為の責めを免れることはできないというべきである。 d 禁反言の主張に対する反論原告は,当時,D査察官や当時,K税務署資産課税第1部門に在籍していたE統括官(以下「E統括官」という。)が本件買換特例の適用を認める旨の発言をしたから,本件買換特例の適用を認めない本件更正処分は禁反言の法理により違法であると主張する。 しかし,D査察官は,本件買換特例の適用に関し,当初よりその適用をすることは認められず,本件買換特例を適用しないところで計算した修正申告書を提出するよう一貫して原告に要請していたのであるが,原告がこれに応じず,あくまで本件買換特例を適用して計算した修正申告書を提出したい旨申し出たことか 件買換特例を適用しないところで計算した修正申告書を提出するよう一貫して原告に要請していたのであるが,原告がこれに応じず,あくまで本件買換特例を適用して計算した修正申告書を提出したい旨申し出たことから,修正申告は納税者が任意に行うものでこれを妨げる理由がなく,また,原告が修正申告をするに当たって必要な書類は国税局査察部に押収されていたことから,やむを得ず原告が希望した修正申告書の作成に必要な数額を記載したメモを渡したにすぎず,E統括官においても,原告らに対して,本件買換特例の適用を認めるとの発言をした事実はない。 このように,被告の担当者が,本件買換特例の適用を認めるかのような発言をした事実はないから,禁反言を理由とする原告の主張には理由がないというべきである。 (3) 第二次決定処分の根拠及び適法性について前記のとおり,本件確定申告書には虚偽の取得費等が記載され,その結果,原告の譲渡所得を当該税務署が把握することを事実上不可能にし,その譲渡所得に係る所得税を免れる方法での確定申告がなされたものであるから,上記虚偽記載等の事実が国税通則法68条1項に規定する「その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。 そうすると,第二次決定処分によって賦課決定すべき重加算税の金額は,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額2921万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき,1万円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)に同法68条1項所定の100分の35の割合を乗じて計算した1022万3500円となるから,第二次決定処分は適法である。 (原告の主張)(1) 第一次決定処分の取消しを求める訴えの適法性 ある。)に同法68条1項所定の100分の35の割合を乗じて計算した1022万3500円となるから,第二次決定処分は適法である。 (原告の主張)(1) 第一次決定処分の取消しを求める訴えの適法性本件において,第一次決定処分と第二次決定処分とは,1日違いという極めて近接した時期に行われており,原告は,第二次決定処分により第一次決定処分が当然に変更,取り消されたものと理解し,本件更正処分及び第二次決定処分について異議を出すことにより,第一次決定処分についても審査の対象となると考えて,第一次決定処分の異議申立てを行わなかったものである。 そして,第二次決定処分のうちの重加算税賦課決定処分は,その基礎とする確定納税額は第一次決定処分における重加算税と共通のものであり,両処分で対象とされた基礎事実はいずれも同一であり,両決定処分を根拠付ける事実も共通であるから,第二次決定処分を取消訴訟の対象とすれば,第一次決定処分も当然に取消訴訟の対象となるものというべきである。 また,過少申告加算税と重加算税とは,相互に無関係な別個独立の処分ではなく,重加算税の賦課決定に対する審査請求においては,重加算税の加重事由の存否のみならず,過少申告加算税の賦課要件の存否も当然に審判の対象となることからすれば,第一次決定処分の重加算税賦課決定が取消訴訟の対象となる以上,過少申告加算税賦課決定も取消訴訟の対象となるものというべきである。 このように,第一次決定処分についても,実質的には不服申立前置主義の手続が履践されているというべきであり,第一次決定処分の取消しを求める訴えを却下することは,信義,公平の原則に反する。 仮に,原告が第一次決定処分についての不服申立てを経ていないものであるとしても,本件においては,第一次決定処分において対象とされた基礎事実と第二次決 を却下することは,信義,公平の原則に反する。 仮に,原告が第一次決定処分についての不服申立てを経ていないものであるとしても,本件においては,第一次決定処分において対象とされた基礎事実と第二次決定処分で対象とされた基礎事実はいずれも同じであって,両者は不可分の牽連関係にあり,しかも,1日違いの近接した時期に行われた処分であるなどの事情に照らせば,第二次決定処分についての決定及び裁決を経ることにより,第一次決定処分についての不服申立て前置の趣旨を全うしているということができるから,第一次決定処分について,不服申立手続を経ていないことについて,国税通則法115条1項3号の定める「正当な理由」があるというべきである。 したがって,第一次決定処分の取消しを求める訴えは適法である。 (2) 第一次決定処分の違法性ア第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分の違法性本件においては,以下のとおり,国税通則法68条1項の定める重加算税賦課決定の課税要件となる,隠ぺい又は仮装の事実がないので,原告に対し,重加算税賦課決定を行うことは違法というべきである。 a 重加算税は,不正をしたものに対する制裁であるので,制裁に値する者に対してのみ課されなければならないのであって,安易に拡張解釈を行いその適用範囲を広げることは,不正行為の防止に寄与することにならず,かえって国家の恣意的な課税をもたらすことになり,このことは租税法律主義の趣旨に反し,かつ個人責任の原則にも反する。 そして重加算税が過少申告加算税や無申告加算税よりも圧倒的に高い税率を課されるのは査察によっても容易には判明しないように何らかの作為を行っているという点に強度の悪質性がみられるためであることからすれば,税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいし又は仮装するとは,帳簿書類や財産処分行為の証拠とな も容易には判明しないように何らかの作為を行っているという点に強度の悪質性がみられるためであることからすれば,税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいし又は仮装するとは,帳簿書類や財産処分行為の証拠となるものに税金を逃れる意思をもって事実とは異なる記載をするなどの方法によって,税額等の計算の基礎となる事実を把握できないように証拠を隠匿したり又は証拠に作為を加えて真実とは異なる外観を作出することであると解すべきである。 ところが,本件においては,原告もBも,税額計算の基礎となる事実に関する証拠となるべきものを隠匿もしておらず,作為も加えていないことから,そもそも,事実の隠ぺい又は仮装は一切行われていない。 b 重加算税が課される趣旨が前記のとおりであることからすれば,国税通則法68条1項の規定の適用を受けるのは,隠ぺい又は仮装の事実を認識,認容していた者に限られるというべきである。 しかし,本件においては,原告は,国税庁の職員も経験したという当時税理士であったBを信頼して,確定申告手続を依頼したところ,税金及び確定申告手数料名下に520万円を詐取されるという被害にあったものであり,十分な税務知識を有しない原告には,Bが不正行為や脱税に及ぶという認識が全くなかった。 cBと原告の関係は正常の委任関係にある税理士と依頼者との関係ではなく,犯罪の加害者と被害者の関係であり,欺罔行為者であるBとその被害者である原告の間の委任契約は詐欺取消しが可能であり,又は錯誤により無効といってよい状況であるから,Bの虚偽内容の申告を原告の確定申告と評価することは不合理であり,Bの行為を原告の行為と同視することはできない。 しかも,国税当局が適正に職務を遂行していれば,Bは不正申告を行うことができず,その結果,Bの原告に対する詐欺も早急に発覚するか,あるいは,原告 り,Bの行為を原告の行為と同視することはできない。 しかも,国税当局が適正に職務を遂行していれば,Bは不正申告を行うことができず,その結果,Bの原告に対する詐欺も早急に発覚するか,あるいは,原告に対する詐欺を行うこと自体不可能なはずであったにもかかわらず,適正な課税,徴税行為を遂行すべき当時現職の国税統括調査官の地位にあったCが,Bから賄賂を受領し,Bの不正申告に協力するという不正行為を行っていたために,原告は,Bによる上記詐欺被害にあうこととなった。 納税者が,国税を徴収する者が賄賂を受領して税理士と共謀し不正申告を行うことまで予想することは不可能であるから,原告にはBの選任,監督について過失はなく,原告は正当な税額を納税する意思で相当金額をBに現実に交付していたにもかかわらずBがこれを着服して自己の利益を図ったのであるから,原告に対して重加算税を課すべきでない特段の事情が存在していたというべきである。 イ第一次決定処分のうち過少申告加算税賦課決定部分の違法性a 更正の予知の不存在D査察官は,平成9年11月26日に本件買換特例を認める旨の連絡を原告に行い,同年12月12日には国税局で本件買換特例を適用した計算書を原告に渡して,本件買換特例を適用した修正申告を所轄の税務署に提出するよう指示していることから,本件修正申告は,更正のあることを予知しないで提出されており,国税通則法65条5項に該当し,過少申告加算税の規定は適用されるべきではない。 b 正当な理由の存在原告は,査察を受けるまでは適正に確定申告がされていると認識していたため,修正申告書の提出は考えられず,税理士であるBの犯罪行為が明らかになった後にD査察官の指導により修正申告書を直ちに提出したものである。 このように,本件においては,原告に対して過少申告加算税を課すことは 申告書の提出は考えられず,税理士であるBの犯罪行為が明らかになった後にD査察官の指導により修正申告書を直ちに提出したものである。 このように,本件においては,原告に対して過少申告加算税を課すことは不当若しくは酷と思料される事情が存するから,本件修正申告書における納付すべき税額の計算の基礎となった事実が,原告の本件修正申告書提出前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項所定の正当な理由があるというべきである。 (3) 本件更正処分の違法性ア期間制限違反国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」とは,ほ脱の意図をもって,その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作をいうところ,そのような違法行為に照らして期間が延長されている趣旨に鑑みれば,上記のような不正行為の主観は本人について判断すべきである。 そして,前記のとおり,原告は,脱税の意図を全く有しておらず,税理士と国税調査官が共謀して脱税行為を行うことは予測できなかったこと,税金の徴収を監督するはずの国税調査官が脱税行為に関与していることからすれば,原告に「偽りその他不正の行為」があったとはいえない。 仮に,上記不正行為の主観を代理人において判断すべきであるとしても,税理士のみならず国税調査官らが不正行為に荷担した本件においては,納税者に不利益を課すことは相当でないから,「偽りその他の不正の行為」があったとみるべきではない。 したがって,原告の平成6年度の所得税に係る更正は,国税通則法70条1項により3年の期間制限に服するものであり,本件更正処分は,3年の期間を超えて行われたものであるから違法である。 イ本件買換特例を適用すべきであること本件譲渡資産の譲渡に係る長期譲渡所得については,以下の 年の期間制限に服するものであり,本件更正処分は,3年の期間を超えて行われたものであるから違法である。 イ本件買換特例を適用すべきであること本件譲渡資産の譲渡に係る長期譲渡所得については,以下のとおり,本件買換特例の適用が認められるべきであり,これを認めなかった本件更正処分は違法である。 なお,本件買換特例を適用しなかった場合の税額が本件更正処分のとおりであることは争わない。 a 居住用家屋等の買い換え原告は,前提となる事実記載のとおり,居住用家屋等を買い換えたのであり,この不動産取引は,措置法36条の6第1項に規定する本件買換特例の適用を受けられる資産の譲渡に該当する。 b 措置法36条の2第5項の「やむを得ない事由」の存在本件においては,本件確定申告書に本件買換特例の適用を受ける旨の記載がなく,本件添付書類も添付されていなかったことについて,次のような事情があるから,措置法36条の6第2項の準用する同法36条の2第5項の規定する「やむを得ない事情」があるというべきである。 (a) 原告には,前記のとおり,Bが不正行為や脱税に及ぶという認識が全くなく,十分な税務知識も有していなかった。 (b) 原告が申告を依頼したのは,監督官庁が監督すべき税理士であり,K税務署の案内板に掲示されている税理士名簿及び税務署が作成した市民向けパンフレット中の税務署が推薦する税理士名にBの名前も記載されていた。 (c) 前記のとおり,国税調査官らが収賄,不正申告の黙認等により不正申告に関与しており,国は,上記国税調査官らに対する監督を長期間にわたり怠っていた。 (d) 代理人が背任的意思で依頼者の意に反して行った行為は,そのことを意思表示の相手方が知り,又は知り得べき場合には,民法93条ただし書の趣旨を類推し,本人はその行為についての責めに任じられ た。 (d) 代理人が背任的意思で依頼者の意に反して行った行為は,そのことを意思表示の相手方が知り,又は知り得べき場合には,民法93条ただし書の趣旨を類推し,本人はその行為についての責めに任じられない。所得税の確定申告は,私人間の行為ではないが,国に対し,租税債務を負担する意思表示であり,債権債務関係を発生させる私法関係と類似の利益関係ということができるから,民法の規定を適用できるものと解すべきである。 そうであるとすれば,原告は,適正な納税申告を行う意図でBに税務申告を依頼したところ,Bは,原告の意思に反して脱税を行い,国税職員であったCがBから賄賂を受領して協力したという事実関係の下においては,Bの行った虚偽の確定申告行為を原告の行為と同視することはできない。 (e) 次項ウ記載のとおり,東京国税局査察官において本件買換特例を認める旨の発言をしていた。 ウ本件においては,以下のとおり,いったん本件買換特例を認める旨述べて,原告に修正申告をさせた上で,本件買換特例の適用を認めなかったものであるから,本件更正処分は,禁反言の原則に反し,違法というべきである。 a 東京国税局からの買換特例適用による修正申告の勧告(a) D査察官は,平成9年11月21日,買換特例は認めないが修正申告をしろと言った。原告は買換特例を認めてくれるよう頼んだが,聞き入れてもらえなかった。 (b) ところが,D査察官は,平成9年11月26日,原告に対し,買換特例の適用を認めるので東京国税局に出頭するよう電話連絡した。原告は,平成9年12月3日,原告代理人のO弁護士(以下「O弁護士」という。)とともに東京国税局に出頭し,F主任査察官及びD査察官から,買換特例の適用を認めるとの回答を得た。 (c) 修正申告及び納税原告の妻は,平成9年12月26日,G税理士ととも 「O弁護士」という。)とともに東京国税局に出頭し,F主任査察官及びD査察官から,買換特例の適用を認めるとの回答を得た。 (c) 修正申告及び納税原告の妻は,平成9年12月26日,G税理士とともにK税務署を訪れ,東京国税局D査察官から受け取った資料に基づき作成した修正申告書を示しつつE統括官の指導を受けた。 翌日,原告は妻及びO弁護士とともにK税務署を訪れ,E統括官に修正申告書を提出した。このとき,E統括官は,原告に対し,計算はこれでいいと述べた上で,添付書類が提出されていないので早急に提出するよう指導した。 ところが,平成10年3月6日,原告はK税務署に呼ばれたので,妻及びO弁護士とともに出向いていったところ,E統括官から,突然,買換特例は認めないと言われたものである。 b このように,本件では東京国税局がいったんは本件買換特例の適用を認め,K税務署職員であるE統括官も,当初は適用を前提とした指導を行いながら,その後,突然適用を認めないと態度を変更し,被告によって本件更正処分がされた。 行政行為においても,禁反言の原則の適用があるというべきであり,行政の一体性からすると上級官庁である東京国税局がいったんは本件買換特例の適用を認めながら,東京国税局の指導監督下にある被告が本件買換特例の適用を認めずに本件更正処分をしたことは,禁反言の原則に明らかに反し,違法な処分である。 (4) 第二次決定処分の違法性ア隠ぺい又は仮装の事実の不存在前記(2)ア記載のとおり,本件においては,隠ぺい又は仮装の事実が存在しないので,重加算税を賦課した第二次決定処分は違法である。 イ禁反言東京国税局がいったんは本件買換特例の適用を認めていながら,K税務署長が本件買換特例の適用を認めなかった本件更正処分を前提とする第二次決定処分は,禁反言の原則に反 定処分は違法である。 イ禁反言東京国税局がいったんは本件買換特例の適用を認めていながら,K税務署長が本件買換特例の適用を認めなかった本件更正処分を前提とする第二次決定処分は,禁反言の原則に反し,違法である。 4 争点以上によれば,本件の争点は次のとおりである。 (1) 第一次決定処分取消しを求める訴えは,不服申立前置を欠く不適法なものであるか否か。 (争点1)(2) 原告が,「隠ぺい又は仮装」の行為によって,本件譲渡資産の譲渡に係る所得税を免れた事実があるか否か(第一次決定処分及び第二次決定処分の適法性)。 (争点2)(3) 本件修正申告書の提出は,更正を予知して行われたものであるか否か(第一次決定処分の適法性)。 (争点3)(4) 原告が所得金額を過少に申告したことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるか否か(第一次決定処分の適法性)。 (争点4)(5) 原告が国税通則法70条5項に規定する偽りその他不正の行為によって,税額を免れた事実があるか否か(本件更正処分の適法性)。 (争点5)(6) 本件確定申告書に,本件買換特例の規定の適用を受けようとする旨の記載及び本件添付書類の添付がなかったことについて,やむを得ない事情があると認められるか否か(本件更正処分の適法性)。 (争点6)(7) 本件更正決定及び本件第二次決定処分は,禁反言の法理に反するものとして違法であるか否か。 (争点7)第3 当裁判所の判断 1 争点1について第一次決定処分は,原告が本件修正申告書を提出したことにより新たに納付すべきこととなった本税額を基礎となる税額として賦課決定されたものであり,第二次決定処分は,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった本税額を基礎となる税額として賦課決定されたものであって,両者は,それぞれの った本税額を基礎となる税額として賦課決定されたものであり,第二次決定処分は,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった本税額を基礎となる税額として賦課決定されたものであって,両者は,それぞれの課税要件事実を異にする別個独立の処分である。そうであるとすれば,本件更正処分及び第二次決定処分に関してのみ,異議申立てについての決定及び審査請求についての裁決という不服申立手続を経由したにとどまる本件においては,第一次決定処分の取消しを求める訴えは,国税通則法115条1項の定める不服申立前置の要件を欠くものというべきである。 しかし,①第一次決定処分及び第二次決定処分は,いずれも同一の本税に係る加算税賦課決定であること,②第一次決定処分は,本件更正処分及び第二次決定処分が行われた日の前日に行われたものであるところ,原告は,第一次決定処分の不服申立期間経過前に,同一の本税についてされた本件更正処分及びこれに伴う第二次決定処分についてそれぞれ異議申立て及び審査請求を行い,それらの異議決定及び審査裁決を経由していること,③弁論の全趣旨によれば,原告は,第二次決定処分によって第一次決定処分が変更,取り消されたものと誤解し,原告の平成6年度所得税に係る加算税賦課決定の全てについての不服申立てをする趣旨で,第二次決定処分の不服申立てを行ったものと認められること,④同一の本税に係る数次にわたる加算税賦課決定は,本件のように,それぞれ別個独立の処分として行われる場合だけでなく,国税通則法32条2項に基づく変更決定処分という形式で行われる場合もあり,第二次決定処分が,第一次決定処分を変更する処分として行われたものであるのか,第一次決定処分とは別個独立の処分として行われたものであるのかについて,納税者が判別することは必ずしも容易ではない上,本件においては,第二 ,第一次決定処分を変更する処分として行われたものであるのか,第一次決定処分とは別個独立の処分として行われたものであるのかについて,納税者が判別することは必ずしも容易ではない上,本件においては,第二次決定処分が第一次決定処分の翌日に行われたことからすると,原告において,第二次決定処分によって第一次決定処分が変更,取り消されたと考えたとしても,やむを得ないものと認められることなどの前記各事情に照らすと,第一次決定処分については,異議申立て及び審査請求を経ないで取消訴訟を提起することについて,国税通則法115条1項3号にいう正当な理由があるときに該当するものというべきである。 したがって,第一次決定処分の取消しを求める訴えは適法であり,被告の本案前の申立ては理由がない。 2 争点2について(1) 重加算税を課するためには,納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい,仮装に当たるというだけでは足りず,過少申告行為そのものとは別に,隠ぺい,仮装と評価すべき行為が存在し,これに併せた過少申告がされたことを要するものであるが,架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要と解するのは相当でなく,納税者が,当初から所得を過少に申告することを意図し,その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上,その意図に基づく過少申告をしたような場合には,重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである(最高裁平成6年(行ツ)第215号・平成7年4月28日第二小法廷判決参照)。 そうすると,本件においては,前提となる事実記載のとおり,原告から本件確定申告手続の委任を受けたBは,本件確定申告書等に内容虚偽の必要経費等を記載して税額を零と過少申告した上,当時,L税務署個人課税第五部門の統括国税調査官として,譲渡所得に係る所得税の賦課及び減免並 定申告手続の委任を受けたBは,本件確定申告書等に内容虚偽の必要経費等を記載して税額を零と過少申告した上,当時,L税務署個人課税第五部門の統括国税調査官として,譲渡所得に係る所得税の賦課及び減免並びにその課税標準の調査を含む資産税事務の総括及び調査等の職務に従事していたCに対して本件確定申告書の黙認を依頼して贈賄を行ったことが認められるところ,これらのBの行為は,課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出する行為に該当するというべきであり,これに反する原告の主張は採用できない。 (2) ところで,国税通則法68条1項の規定する重加算税は,申告納税制度の下において,本税の課税要件事実を隠ぺいし又は仮装するという不正な手段を用いて納税義務違反行為が行われた場合に重い経済的負担を課することによって,悪質な納税義務違反を未然に防止し,適正な徴税を実現するための行政上の措置であって,刑罰とは異なり,隠ぺい又は仮装という不正行為に対する非難を目的とするものではなく,納税者以外の者が国税通則法68条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為を行った場合であっても,その行為が納税者本人の行為と同視できる場合には,納税者に対して重加算税を課することができるものと解するのが相当である。 (3) そこで,本件において,Bの行った上記隠ぺい又は仮装の行為を,納税者である原告の行為と同視できるか否か,以下検討する。 各項末尾に掲げた証拠等によれば,以下の事実が認められる。 ア原告の税務知識等a 原告の職業,経歴等原告は,高校を卒業後,セールス,ウェーターなどの仕事を経験した後,現在まで約40年間,H信用金庫等において,運転手を勤めている。 (原告本人)b 過去の確定申告に 知識等a 原告の職業,経歴等原告は,高校を卒業後,セールス,ウェーターなどの仕事を経験した後,現在まで約40年間,H信用金庫等において,運転手を勤めている。 (原告本人)b 過去の確定申告について原告は,青色申告者として,毎年,アパートの家賃収入に係る確定申告を,不明なところは,税務署へ行って尋ねたり,不動産屋に尋ねたりしながら,自ら行っていた。 (甲8)c 本件確定申告について原告は,N税務署やH信用金庫の顧問税理士などから本件譲渡資産の譲渡について本件買換特例の適用があることを聞き及んだ原告の妻より,本件買換特例の存在を教えられ,本件譲渡資産の譲渡に係る譲渡所得について本件買換特例を適用できること,それによって納付すべき税額を安くすることができることを知り,確定申告書や本件買換特例を適用するために必要な所定用紙に一通り下書きとして記載するなどして,平成6年分の所得税の申告納税額を380万7000円と試算した。 (原告本人,乙4)イ原告がBに本件確定申告を依頼した経緯原告は,平成7年2月13日,K税務署に行き,本件買換特例を適用した場合の税額について,前記の確定申告書の下書き等を見せながら税務相談をし,その結果,担当係官が,上記下書きの誤っている部分を訂正するなどして,平成6年分の所得税の正当な納税額が698万0800円であると教えられた(以下「本件税務相談」という。)。 ところが,原告が,上記K税務署からの帰りに,原告の親戚の者が経営する喫茶店に立ち寄り税務署へ行ってきたことを同人に話していたところ,客として来店していたBが,原告に近づいてきて,名刺を差し出すなどしたことから,原告は,Bに興味を持ち,その事務所を見せてもらいに行くこととした。 そして,原告は,Bが「私は国税局のOBだ」,「税務署長は私の部下のよ たBが,原告に近づいてきて,名刺を差し出すなどしたことから,原告は,Bに興味を持ち,その事務所を見せてもらいに行くこととした。 そして,原告は,Bが「私は国税局のOBだ」,「税務署長は私の部下のようなもんだ」,「偉い人はみんな知っている」などと言い,また,Bの事務所は,K税務署のすぐそばにあって立派であったことから,Bを信用し,本件確定申告手続をBに依頼しようかと考えて,K税務署で手直しをしてもらった確定申告書の下書き等の書類をBに見せた。 すると,Bが「私に任せなさい。もう少し安くなるから。」と言ったため,原告は,安くなるとの言葉にうれしくなり,Bに本件確定申告手続を依頼する決心をした。 原告は,翌日の平成6年2月14日,Bの事務所に,本件譲渡資産の譲渡に係る関係書類等を持参し,Bに税額と手数料について尋ねたところ,Bは,上記書類を見て,「手数料込みで520万円でよい。」と答えた。その際,Bは,どのような方法で税金が安くなるかなどについて説明せず,原告もその点をBに尋ねたりはしなかった。原告は,同日,委任状に署名して,正式にBに本件確定申告手続を委任した。 (原告本人,甲8)ウ原告がBに本件確定申告手続を依頼した後の経緯原告は,平成7年3月16日,Bの事務所に電話し,確定申告が終わったかどうか尋ねたところ,確定申告はすべて終了したと報告を受けた。 その後,原告は,Bから,預けていた書類一切の入ったファイルを受け取ったが,ファイルの中身を点検したり確認したりはせず,本件確定申告書の控えが入っているかどうかを確認することもしなかった。 (原告本人,甲8)(4) ところで,被告は,Bが原告に520万円という金額を提示した際に,Bは,原告に対し,本来の税額が700万円であることを告げた上,脱税をもちかけたと主張する。 この点, (原告本人,甲8)(4) ところで,被告は,Bが原告に520万円という金額を提示した際に,Bは,原告に対し,本来の税額が700万円であることを告げた上,脱税をもちかけたと主張する。 この点,Bは,検察官に対し,「そして,確かその翌日ころにIさんが私方事務所に持って来られた右物件の譲渡関係資料などを基にして,私方で右物件の売却に伴う譲渡所得税額を試算してみたところ,居住用財産の買換特例を適用しても,約700万円の税金を納めなければならないことが分かりました。そこで,私は,Iさんに,本来なら700万円くらいの税金を払わなければいかんが,私に任せるのなら税金,手数料などをすべて含めて520万円で全部してあげようというように言いました。」などと供述し(乙5),証人尋問においても,Bが原告に対して「あなたの計算で正しい計算であるけれども,あなたがもう少し安くならんかとおっしゃれば,できないことはないですよ。」,「やってくれる人がいますから,どうですか。」,「知り合いがいてやってくれるから安心してください。」などと述べた旨供述している。 しかし,Bが原告に対して本来の税額を告げた際の具体的発言内容は,検察官に対する供述と証人尋問における供述とで異なっている上,Bは,証人尋問では,700万円が正しい金額であると原告に話したというのは,他の顧客に対して,いつも正しい金額を説明していたので,原告に対しても同じように説明しただろうという推測である旨述べるなど,その根拠について曖昧な供述もしている。さらに,Bは,証人尋問においては,520万という金額はBの共犯者であったMが決めた,原告の本来の納税額をBが実際に試算したかどうかわからない旨述べるなど,Bが原告から本件確定申告手続の依頼を受けた際の状況についての重要な部分に関する供述が,検察官に対する 犯者であったMが決めた,原告の本来の納税額をBが実際に試算したかどうかわからない旨述べるなど,Bが原告から本件確定申告手続の依頼を受けた際の状況についての重要な部分に関する供述が,検察官に対する供述から変遷していることが認められる。 そうすると,原告自身は,Bから本来の税額が700万円であるなどと告げられたことは一切ないと一貫して供述していることも併せ考慮すると,Bが原告に話した内容に関する供述部分はにわかには信用できず,ほかに,Bが原告に700万円が正しい税額であることを告げた上で脱税をもちかけたと認めるに足りる証拠もないから,上記被告の主張は採用できない。 (5) Bの不正行為に対する原告の認識被告は,原告が,本件確定申告手続をBに委任した際に,納付すべき金額よりも少額の金員をBに供与すれば,Bが何らかの不正行為を行って原告の所得税を免れさせてくれるものと認識し,少なくともそのような疑いを抱いていたと主張し,Bは,証人尋問において,原告が脱税を認識した上で自分に本件確定申告手続を依頼した旨供述している。 しかし,Bの上記供述は,原告の認識についての推測を述べるにすぎず,Bが原告から本件確定申告手続の依頼を受けた状況に関する供述内容自体が前記のとおり曖昧で,信用性に疑問があることからすれば,採用できない。 そして,①原告は,原告がBに本件確定申告手続を委任した際,Bが脱税などの不正行為によって税金を安くするつもりであったことは全く認識しておらず,そのような疑問も持たなかった,Bを信頼し,適法に確定申告手続を行ってもらえるものと考えていた,東京国税局による査察を受けて初めて,本件確定申告書に虚偽の記載がされ税額が零と申告されていることを知った,などの供述をほぼ一貫して行っていること(原告本人,甲8,乙4),②原告は,Bと知り合っ た,東京国税局による査察を受けて初めて,本件確定申告書に虚偽の記載がされ税額が零と申告されていることを知った,などの供述をほぼ一貫して行っていること(原告本人,甲8,乙4),②原告は,Bと知り合った翌日に,Bに正式に本件確定申告手続を委任しているところ,知り合ったばかりの人間に対し,詳細な打ち合わせなどもせずに,いきなり,脱税などという犯罪行為に及ぶことまで容認して確定申告手続を全面的に任せるなどということは通常考え難いこと,③むしろ,知り合ったばかりの税理士が脱税に及ぶのではないかと少しでも疑った場合には,どのような手段を用いて安くするのか,捕まる心配はないのか,どのくらいの金額が脱税額でどのくらいの金額が税理士の手数料となるのかなどについて,細かく確認するのが通常であると考えられるところ,本件においては,そのような確認は全く行われていないこと,④税務署での税務相談において,担当官から教えられた税額を正しい税額と考えられるのが通常であるとしても,専門外の人間である原告にとっては,やはり税務の専門家である税理士が税務署職員から教えられた税額より安い税額を提示したからといって,そのことが必ずしも脱税を意味するとは受け取らず,税務の専門家として高度の知識に基づいて,特例措置の適用など適法な手段を用いた節税方法を活用することによって税金を安くすることができるものと理解したとしても,不自然とまではいえないことなどに照らすと,前記認定の事実関係の下において,原告が,Bに確定申告手続を委任した際,Bが不正行為を行うことを認識し,あるいはそのような疑いを抱いていたと推認することは困難であり,かえって,原告は,Bが脱税に及ぶとの認識は有しておらず,また,そのような疑いも抱くことなく,適法に確定申告手続を行ってもらえるものと信頼して,Bに対して本件確 いていたと推認することは困難であり,かえって,原告は,Bが脱税に及ぶとの認識は有しておらず,また,そのような疑いも抱くことなく,適法に確定申告手続を行ってもらえるものと信頼して,Bに対して本件確定申告手続を委任したものであると認めるのが相当である。これに反する被告の上記主張は採用できない。 (6) 以上を前提に,本件において,Bの行った隠ぺい又は仮装の行為を原告の行為と同視できるかについて検討する。 本件においては,前記認定事実及び前提となる事実によれば,①原告は,Bの不正行為を認識せず,そのような疑いを抱くこともなく,Bが適正な確定申告手続を行うものと信頼して,本件確定申告手続を委任した,②Bは,当時,税務に関する専門家として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念にそって,納税義務者の信頼に応え,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命を負う税理士(税理士法1条)であったにもかかわらず,税理士としての義務に反し,長年にわたって,税務署職員と共謀して脱税行為を続けていたものであって,本件確定申告においても,原告の意思に反して内容虚偽の確定申告書を提出するなどの不正行為を行って,納税者である原告から520万円を騙し取った,③Bの不正行為には現役の税務署職員の協力が不可欠であり,本件においても,当時,現役税務署職員であったCが,Bから贈賄を受けてBに協力した結果,本件の脱税行為が実現されたものである,などの極めて特殊な事情が認められる。 そして,納税者にとって,税理士法上公共的責務を負っている税理士と国家公務員として適正な徴税義務を負っている現役の税務署職員が共謀の上,虚偽の確定申告書を提出して脱税し,税金と手数料として納税者から受け取った金員全額を騙し取るなどということは,通常予想し得るような態様の不 として適正な徴税義務を負っている現役の税務署職員が共謀の上,虚偽の確定申告書を提出して脱税し,税金と手数料として納税者から受け取った金員全額を騙し取るなどということは,通常予想し得るような態様の不正行為ではなく,税理士に自己の申告手続を委任した一般の納税者にとって,そのような通常予想し得ない不正行為まで防止することは容易ではないことからすると,本件において認められる上記の事情の下においては,後記のとおり,代理人の選任,監督について原告に過失があると認められることを考慮したとしても,Bが行った隠ぺい又は仮装の行為を,納税者である原告の行為と同視することは相当でないというべきである。 したがって,本件においては,国税通則法68条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったと認めることはできない。 3 争点3について原告は,D査察官らが本件買換特例の適用を認めるとの発言をした上で,本件修正申告書の提出を指示していることから,更正のあることを予知しないで修正申告書が提出された場合に該当すると主張する。 しかし,原告が予知しなかったと主張する更正は,本件買換特例の適用を認めなかった本件更正処分のことを述べているものと解されるが,第一次決定処分は,本件更正処分を前提として行われているものではないから,原告が本件更正処分を予知していたか否かは,第一次決定処分の適否には全く無関係であり,本件更正処分を予知していなかったからといって,本件修正申告書の提出について,国税通則法65条5項にいう「更正があるべきことを予知してされたものでないときに」該当するものとはいえない。 そして,原告は,本件修正申告書の提出に先立って,東京国税局の査察調査を受けて,本件確定申告書の税額が零と過少申告されていたこと及び国税当局がその事実を把握していることを認識するに至っ いえない。 そして,原告は,本件修正申告書の提出に先立って,東京国税局の査察調査を受けて,本件確定申告書の税額が零と過少申告されていたこと及び国税当局がその事実を把握していることを認識するに至ったものと認められるから(原告本人),上記の査察調査があったことにより,修正申告書を一切提出しなければ,原告の平成6年度の所得税につき何らかの更正処分が行われることは当然予知していたと認められる。 したがって,本件修正申告書の提出は,「その申告に係る国税についての調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」とは認められないというべきである。 4 争点4について原告は,本件修正申告書における納付すべき税額の計算の基礎となった事実が,原告の本件修正申告書提出前の税額の計算の基礎とされていなかったことについては正当な理由があると主張する。 しかし,前提となる事実及び前記認定事実によれば,①原告は,Bと知り合う前に本件税務相談により,担当係官から,本件譲渡資産の譲渡の譲渡所得に係る税額が698万円余りであることの教示を受けていること,②原告は,本件税務相談において教示された698万円余りを大幅に下回る520万円という金額をBから示されたときに,Bがどのような根拠でそのような税額を示したのかなどについて全く確認していないこと,③確定申告手続終了後も返却された書類等を確認したり,確定申告書の控えの交付を請求したりすることもなく,Bに全く任せきりにしていたことが認められる。 これらによれば,本件税務相談と全く異なる税額に疑問を持ち,Bにその根拠を尋ねるなどすれば,Bが脱税の意図を有していることを認識し得たものというべきであり,それらの確認を怠り,安易にBを信頼して本件確定申告手続を委任してしまった原告には,代理人の選任,監督に その根拠を尋ねるなどすれば,Bが脱税の意図を有していることを認識し得たものというべきであり,それらの確認を怠り,安易にBを信頼して本件確定申告手続を委任してしまった原告には,代理人の選任,監督について,過失があったというべきである。 そうであるとすれば,過少の税額を記載した本件確定申告書が提出されたことについて,原告の責めに帰すべき事由がないとはいえず,原告が,現職の税務署職員と共謀して脱税行為を繰り返していたBに騙された被害者であることなどを考慮したとしても,原告に過少申告加算税を課すことが不当あるいは酷であるとまでは認められない。 したがって,本件修正申告書の税額の計算の基礎となった事実について,本件確定申告書において税額の計算の基礎とされていなかったことに国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があったと認めることは困難である。 5 争点5について(1) 更正の期間制限の制度(国税通則法70条)は,法律関係の早期安定という観点から,本来納付すべき税額の徴収を制限するものであるところ,偽りその他不正の行為によりその全部もしくは一部の税額を免れた国税についての更正まで,短期間(3年間)の制限期間内に行わしめるものとすることは,実質的な租税負担の公平の観点から相当でない。 そこで,国税通則法70条5項は,上記のような国税に係る更正については,7年間という長い制限期間を定めたものと解され,同項による制限期間の延長は,納税者が本来納付すべきであった正当税額の納付を求めるものであって,納税者に対して特段の負担を新たに発生させるものではない。 そうであるとすれば,特に行為主体が限定されることなく規定されている国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」とは,税額を免れる意図のもとに,税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何ら そうであるとすれば,特に行為主体が限定されることなく規定されている国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」とは,税額を免れる意図のもとに,税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることをいい,「偽りその他不正の行為」を行ったのが納税者であるか否か,あるいは納税者自身において「偽りその他不正の行為」の認識があるか否かにかかわらず,客観的に「偽りその他の不正の行為」によって税額を免れた事実が存在する場合には,同項の適用があると解するのが相当である。 (2) そうすると,本件においては,前記のとおり,Bが内容虚偽の必要経費等を記載して税額を零とする本件確定申告書を提出すると共に,Cに対して本件確定申告書の黙認を依頼して贈賄を行ったことは,原告の不正行為の認識の有無にかかわらず,国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」に該当するというほかなく,原告の平成6年度の所得税に係る更正は,その法定申告期限の日から7年を経過するまで行うことができるというべきである。 したがって,本件更正処分は,国税通則法70条5項の定める期間が経過する前に行われており,適法な期間内に行われたものと認められる。 6 争点6について本件買換特例の適用を受けるために,原則として,特例の適用を受けようとする旨を確定申告書に記載し,本件添付書類が添付されていることが求められている趣旨は,本件買換特例が,譲渡所得に対する課税の時期を原則どおり今回の譲渡時点とするか,将来の譲渡時点にまで繰り延べるかを納税者の選択にゆだねるものであることに照らすと,その適用を希望する納税者のみに適用することとし,かつ,納税者自身が確定申告書に本件特例の適用を受けようとする旨を記載し,適用要件の存在を明らかにする書類の添付をし だねるものであることに照らすと,その適用を希望する納税者のみに適用することとし,かつ,納税者自身が確定申告書に本件特例の適用を受けようとする旨を記載し,適用要件の存在を明らかにする書類の添付をした場合にのみ適用を認めるとすることで,税額確定手続における画一的かつ的確な処理の実現を図ることにあると解される。 そうであるとすれば,措置法36条の2第5項にいう「やむを得ない事情」とは,天災その他本人の責めに帰すことのできない事由により,確定申告書の提出又は確定申告書に本件買換特例の適用を受けようとする旨の記載をし若しくはそのための必要資料を添付することが不可能であったと認められるような客観的事情を指し,納税者の主観的な意思あるいは個人的な事情はこれに該当しないと解するのが相当である。 そこで,本件において,上記の「やむを得ない事情」が認められるか検討するに,前記のとおり,原告はBを代理人として選任し,本件確定申告手続を委任したものであるところ,原告には代理人の選任,監督に過失が認められることからすると,原告が,現職の税務署職員と共謀したBに騙された被害者であることを考慮したとしても,本件確定申告書に本件買換特例の適用を受ける旨の記載がなく,本件添付書類の添付を欠いていることについては,原告の責めに帰すべき事由がないとはいえず,原告に「やむを得ない事情」が存したと認めることは困難というほかない。 したがって,本件譲渡資産の譲渡に係る長期譲渡所得について,本件買換特例の適用を認めることはできないといわざるを得ない。 7 争点7について(1) 租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則あるいは禁反言の法理の適用により,その課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法 法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則あるいは禁反言の法理の適用により,その課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,上記法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて上記法理の適用の是非を考えるべきものである。そして,上記特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,後に上記表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また納税者が税務官庁の上記表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮が不可欠である(最高裁判所昭和60年(行ツ)第125号・昭和62年10月30日第三小法廷判決参照)。 (2) そこで,本件更正処分について,上記のような特別の事情が存するかどうか検討するに,各項末尾に掲げる証拠等によれば,以下の各事実が認められる。 ア原告は,平成9年10月14日,本件確定申告についての所得税法違反容疑で,東京国税局の査察調査を受け,原告の自宅が捜索され,本件譲渡資産の譲渡に関係する資料等の差押えを受け,その後,同年11月2日まで4回にわたり,D査察官らから事情聴取を受けた。 (原告本人,証人D,甲8,乙6)イ原告は,平成9年11月18日ころ,D査察官から,修正申告書を提 る資料等の差押えを受け,その後,同年11月2日まで4回にわたり,D査察官らから事情聴取を受けた。 (原告本人,証人D,甲8,乙6)イ原告は,平成9年11月18日ころ,D査察官から,修正申告書を提出するように電話連絡を受け,同月21日,東京国税局へ行き,D査察官と面談したところ,D査察官は,原告に対し,本件買換特例の適用は認められず,仮に,買換特例を適用した修正申告書が提出された場合には,更正決定,差押え等を行う旨を告げた。これに対し,原告は,買換特例が認められないのであれば,修正申告書は提出しないとD査察官に述べた。 (原告本人,証人D,8,乙6)ウ原告は,平成9年11月26日,D査察官から電話連絡を受け,同年12月3日,O弁護士と共に東京国税局へ行き,D査察官及びF主査と面談した。その際,D査察官は,原告らに対し,本件譲渡資産の譲渡に係る譲渡価額や取得費用,購入した資産の取得価額などの各種金額,給与所得や不動産所得に係る収入金額,必要経費など調査の結果把握された金額を同月12日に示すことを約束した。 (原告本人,証人D,甲8,乙6)エ原告とO弁護士は,平成9年12月12日,東京国税局へ行き,D査察官から,本件買換特例が適用された場合に必要となる数額,計算関係を明らかにしたメモ(以下「本件メモ」という。)を受け取った。 (原告本人,証人D,甲4,8,乙6)オ原告は,G税理士(以下「G税理士」という。)に依頼し,本件メモに記載された数額を基に本件買換特例を適用した修正申告書を作成してもらい,原告の妻とG税理士は,平成9年12月26日,上記修正申告書をもってK税務署へ行き,K税務署のE統括官に同修正申告書を見せたところ,E統括官は,「これでいいです。」と述べた。 (原告本人,証人E,甲8,乙7)カ原告は,平成10年1月6日,本 記修正申告書をもってK税務署へ行き,K税務署のE統括官に同修正申告書を見せたところ,E統括官は,「これでいいです。」と述べた。 (原告本人,証人E,甲8,乙7)カ原告は,平成10年1月6日,本件修正申告書をE統括官に提出し,E統括官は,添付書類が必要なので,早急に提出するよう原告に指導した。 (原告本人,証人E,甲8,乙7)(3) 原告は,D査察官が,平成9年11月26日に電話連絡してきた際,本件買換特例の適用を認めると発言し,以後同年12月3日,同月12日における面談の際にも本件買換特例の適用を認めるとの回答をしたと主張し,その旨の供述をしており(原告本人,甲8,甲12),本件買換特例の適用が認められなければ修正申告書を提出していないと述べていた原告が,現に本件修正申告書を提出していること,D査察官が,本件買換特例が適用される場合に必要となる数額及び計算関係を記載した本件メモを作成し,原告に交付していることなど,D査察官が原告に対し本件買換特例の適用を認める旨の発言をしたことを窺わせる事情も認められる。 しかし,原告の所得税の更正決定を行う権限を有するのは原告の住所地を管轄する税務署長であり,東京国税局P部門に所属するD査察官において,原告の所得税について更正決定を行うか否かを判断,決定する権限は存しない。 これに対し,原告は,東京国税局が本件買換特例の適用を認めたと主張して,東京国税局は被告の上級官庁であること及び行政の一体性を根拠に禁反言の原則違反を主張するが,D査察官が東京国税局を代表する権限を有するものでないことは明らかであるから,仮にD査察官が本件買換特例の適用を認める旨の発言をしたとしても,被告又は東京国税局が本件買換特例の適用を認めたことになるものではないから,原告の主張は前提を欠いており失当である。 そうすると ら,仮にD査察官が本件買換特例の適用を認める旨の発言をしたとしても,被告又は東京国税局が本件買換特例の適用を認めたことになるものではないから,原告の主張は前提を欠いており失当である。 そうすると,仮に,D査察官において,原告が主張するような言動があったとしても,D査察官が行った何らかの見解の表示は,信義則あるいは禁反言の法理の適用において,「信頼の対象となる公的見解の表示」と評価することはできないというべきである。 (4) また,原告は,E統括官が,本件買換特例の適用を前提に修正申告書の書き方を指導し,「これでいい。」と発言したことをもってE統括官も本件買換特例の適用を認めていた旨主張する。 しかし,E統括官が本件買換特例を適用した場合の修正申告書の書き方を指導したり,その記載について「これでいい。」と発言した趣旨は,修正申告書の記載方法に誤りがない旨述べたものと理解できるから,上記発言によって,E統括官が原告に対し本件買換特例の適用を認めたことにはならないというべきであるし,他に,E統括官が原告に対し本件買換特例の適用を認めたと認定するに足りる証拠もない。 そうすると,E統括官の発言を理由に禁反言の原則に反するとの原告の主張は,その前提を欠いており失当である。 (5) 以上によれば,本件更正処分が禁反言の原則に反すると認めるべき特別の事情があるとは認められず,本件更正処分が禁反言の原則に反し違法であるとの原告の主張は採用できない。 8 小括(1) 第一次決定処分の適法性以上によれば,本件第一次決定処分のうち過少申告加算税賦課決定部分は適法と認められるが,本件第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分は,隠ぺい又は仮装の事実が認められない点において,重加算税を賦課する処分としては違法というべきである。 ところで,国税通則法65 適法と認められるが,本件第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分は,隠ぺい又は仮装の事実が認められない点において,重加算税を賦課する処分としては違法というべきである。 ところで,国税通則法65条の規定による過少申告加算税と同法68条1項の規定による重加算税とは,ともに申告納税方式による国税について過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであって,同一の修正申告又は更正に係るものである限り,その賦課及び税額計算の基礎を同じくし,ただ,後者の重加算税は,前者の過少申告加算税の賦課要件に該当することに加えて,当該納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に,当該基礎となる税額に対し,過少申告加算税におけるよりも重い一定比率を乗じて得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられる。そうであるとすれば,両者は相互に無関係な別個独立の処分ではなく,重加算税の賦課は,過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に前記加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として,上記過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当である(最高裁昭和56年(行ツ)第139号・昭和58年10月27日第一小法廷判決)。 そこで,第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分が,過少申告加算税の賦課要件を満たしているか検討するに,本件修正申告書が更正を予知してされたものでないときに該当せず,本件修正申告書の提出により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が,修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由 予知してされたものでないときに該当せず,本件修正申告書の提出により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が,修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由が認められないことは前記のとおりであるから,過少申告加算税の賦課要件を満たしているものと認められる。 したがって,第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分は,本件修正申告書の提出により新たに納付すべき税額708万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの。)に国税通則法65条1項の規定を適用して算出した金額70万8000円に,同条2項の規定を適用して算出した金額32万9000円を加算した合計額103万7000円から,第一次決定処分のうち過少申告加算税賦課決定部分の金額4万6000円を差し引いた99万1000円の限度では適法と認められ,他方,これを超える部分は違法というべきである。 (2) 本件更正処分の適法性本件更正処分が更正の期間制限に反せず,本件買換特例の適用が認められないことは前記のとおりであり,本件買換特例の適用が認められない場合の税額が本件更正処分における税額のとおりであることについて争いがない(なお,長期譲渡所得金額についての被告の本訴における主張額は,本件更正処分における金額と異なっているが,原告は,上記被告主張額についても争っていない。)。 したがって,本件更正処分は適法であると認められる。 (3) 第二次決定処分の適法性第二次決定処分は,隠ぺい又は仮装の事実が認められない点において違法であるが,第二次決定処分が過少申告加算税の賦課要件を満たしているか検討するに,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が,本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなか が,第二次決定処分が過少申告加算税の賦課要件を満たしているか検討するに,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が,本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由が認められないことは,第一次決定処分について述べたのと同様であるから,過少申告加算税の賦課要件を満たしているものと認められる。 したがって,第二次決定処分は,本件更正処分により新たに納付すべき税額2921万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの。)に国税通則法65条1項の規定を適用して算出した金額292万1000円に,同条2項の規定を適用して算出した金額146万0500円を加算した合計額438万1500円の限度においては適法というべきである。 第4 結論よって,第一次決定処分のうち重加算税賦課決定部分のうち99万1000円を超える部分及び第二次決定処分のうち438万1500円を超える部分はいずれも違法であるので,これらを取り消し,原告のその余の請求はいずれも理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官森英明裁判官馬渡香津子

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