- 1 -主文 被告は,原告に対し,20万2500円及びこれに対する平成17年10月1日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の本訴請求を棄却する。 原告は,被告に対し,96万円及びこれに対する平成21年9月2日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 被告のその余の反訴請求を棄却する。 訴訟費用は,本訴及び反訴を通じてこれを5分し,その4を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,主文1項及び3項に限り,仮に執行することができる。 事実 第1当事者の求めた裁判 原告(1) 本訴の請求の趣旨被告は,原告に対し,378万円及びこれに対する平成17年10月1日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告の反訴請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,本訴及び反訴を通じて被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 被告(1) 反訴請求の趣旨原告は,被告に対し,194万5650円及びこれに対する平成21年9月2日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告の本訴請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,本訴及び反訴を通じて原告の負担とする。 (4) 仮執行宣言- 2 -第2当事者の主張【本訴請求原因】 被告は,平成17年5月,北海道伊達市a町b番c宅地329平方メートル及びその地上の木造2階建居宅(家屋番号b番c,1階57.96平方メートル,2階26.49平方メートル。以下「本件建物」という。)を購入し,その所有権を取得した。 本件建物は,築後かなりの年数を経た建物であり,長期間空き家のまま放置されていたこともあって,そのままでは居住することが困難と感じた被告は,平成17年5月,知り合いのAから紹介された原告に対し,本件建物の外壁塗装と内装の改装工 経た建物であり,長期間空き家のまま放置されていたこともあって,そのままでは居住することが困難と感じた被告は,平成17年5月,知り合いのAから紹介された原告に対し,本件建物の外壁塗装と内装の改装工事(以下,平成17年5月に注文があった改装工事を「前回工事」といい,前回工事を終えた後の翌6月に注文がされた工事を「本件工事」という。)を依頼した。 原告は,平成17年5月中に前回工事を行い,被告からその代金128万1000円の支払を受け,その後さらに,次の2ないし6のとおり,本件建物のリフォーム工事として本件工事を行った。 バルコニー設置工事の受注及び施工(1) 原告(請負人)は,平成17年6月,被告(注文者)との間で,報酬を確定金額で定めずこれを出来高払として,本件建物の2階南側(1階南側屋根の上)にバルコニーを設置する工事の注文を受け請負契約を締結した。なお,原告は,受注の際,被告に対し,バルコニーへの出入りには踏み台が必要になることを説明し(甲7),被告は,そのことを了解した上で,バルコニー設置工事を注文した。 (2) 原告は,株式会社坪井製作所に下請に出してこれを施工し(以下,原告施工のバルコニーを「本件バルコニー」という。),本件バルコニーを被告に引き渡した。 この工事に要した費用は39万4000円であったから(甲5),これが- 3 -相当な報酬額である。 サンルーム設置工事の受注及び施工(1) 原告(請負人)は,平成17年6月,被告(注文者)との間で,工事代金を確定金額で定めずこれを出来高払とする合意の下,本件建物1階南側外壁に沿ってサンルームを設置する工事の請負契約を締結した。 (2) 原告は,平成17年7月上旬ころには,株式会社坪井製作所,北営工業株式会社及び有限会社吉田左官工業所に下請に出してこれを施工し(以下,原 に沿ってサンルームを設置する工事の請負契約を締結した。 (2) 原告は,平成17年7月上旬ころには,株式会社坪井製作所,北営工業株式会社及び有限会社吉田左官工業所に下請に出してこれを施工し(以下,原告施工のサンルームを「本件サンルーム」という。),本件サンルームを被告に引き渡した。 この工事に要した費用は107万5100円であったから(甲5),これが相当な報酬額である。 物置設置工事の受注及び施工(1) 原告(請負人)は,平成17年7月上旬,被告(注文者)との間で,工事代金を確定金額で定めずこれを出来高払とする合意の下,本件建物1階西側から北側の外壁に沿って物置を設置する工事の請負契約を締結した。 (2) 原告は,有限会社日和建工に下請に出してこれを施工した(以下,原告施工の物置を「本件物置」という。)。 この工事に要した費用は96万7475円であったから(甲5),これが相当な報酬額である。 床下防湿工事の受注及び施工(1) 原告(請負人)は,平成17年6月下旬,被告(注文者)との間で,工事代金を確定金額で定めずこれを出来高払とする合意の下,床下の防湿工事としての床下への炭敷き工事と換気口設置工事の請負契約を締結した。 (2) 原告は,北営工業株式会社などに下請に出すなどしてこれを施工した。この工事に要した費用は26万5000円であったから(甲5),これが相当な報酬額である。 - 4 - 台所改修工事及び内装工事の受注及び施工(一部未施工)(1) 原告(請負人)は,平成17年6月,被告(注文者)との間で,工事代金を確定金額で定めずこれを出来高払とする合意の下,台所改修工事(洗面台設置工事,配電設備工事,給排水工事を含む。以下においても同じ。)の請負契約を締結した。 (2) 原告は,株式会社吉野電気商会,株式会社荒川設備,株式会 を出来高払とする合意の下,台所改修工事(洗面台設置工事,配電設備工事,給排水工事を含む。以下においても同じ。)の請負契約を締結した。 (2) 原告は,株式会社吉野電気商会,株式会社荒川設備,株式会社坪井製作所,株式会社共生,B工務店に下請けに出してこれらを施工したが,平成17年7月16日ころ,床下に水が溜まっているとして,被告が工事の中止を要求したため,一部が未施工のまま工事が中止された。 既施工部分は原告の利益となるので,原告は,その出来高に応じた報酬の支払を求めることができるところ,施工済みの工事の内容は,別表「原告主張の工事内容」欄のとおりであり,その出来高は,別表「金額」欄のとおりであって,台所改修工事が30万7200円,内装工事が89万1980円である。 まとめよって,原告は,請負契約に基づき,上記2ないし6の工事(以下「本件各工事」という。)の報酬の一部378万円及びこれに対する催告(平成17年9月にされた)の後である平成17年10月1日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 【本訴請求原因に対する認否】 請求原因1の事実は認める。 バルコニー設置工事について被告は,乙第4号証に記載のような,この建物にもともと付いていたと思われる物干し台(2階の非常口から出入りできる物干し台)の設置を求めたのであって,本件バルコニーの設置を注文した事実はない。 被告は,2階中廊下の非常口を床レベルまで下げ,非常口を開ければそのま- 5 -ま歩いて出られる物干し台が設置されるものと期待していたが,本件バルコニーはこれとは異なり,2階東側の和室の腰高の窓(高さ93センチメートル)から出入りするしかなく,出入りが極めて困難なものであった。 本件バルコニーは,原告が注文したものと全く異なるだけでなく,物干し台 ーはこれとは異なり,2階東側の和室の腰高の窓(高さ93センチメートル)から出入りするしかなく,出入りが極めて困難なものであった。 本件バルコニーは,原告が注文したものと全く異なるだけでなく,物干し台として普通に使用できるものでもない。 サンルーム設置工事について被告は,1階居間の南側窓の外に木製の「ベランダ(ガラス囲いのない開放されたもの)」の設置を注文したのであって,本件サンルームの設置を注文した事実はない。本件サンルームは居間に接続して設置された温室であり,これがあるため,夏などは居間の窓を開けても室内が40度以上になるのであり,本件サンルームは有害無益である。 物置設置工事について本件物置は,風呂の窓を室内に含む形で築造されているため,風呂場の湿気が内部にこもるという欠陥があるし,そもそも,被告は,100万円もの費用がかかる物置の設置を注文したことはない。 床下防湿工事について被告が床下防湿工事を注文した事実は認める。 本件建物は,①脱衣場の点検口床下に敷いてあったダンボールが水浸しであった,②1階西側和室(6畳)の押入の床に大量のカビが発生していた,③1階居間のフローリングのカーペットの下には一面に黒カビが発生していた,④1階の二つの和室には畳の上にカーペットが敷かれていたが,いずれもカーペットの下にカビが発生し,畳がカビだらけであったことから,床下防湿工事は不可欠と考えられた。そのため,被告は床下防湿工事を注文したのである。 ところで,本件建物の床下に水が溜まる現象は,基礎外側の地表面よりも基礎内側の床下の地表面の方が低いことが原因であり,まずは床下に土やコンクリートを入れて地表面の高さを同一にし,その上で防湿対策を講じる必要があ- 6 -った。 ところが,原告は,床下にビニールを敷き,その上に炭を敷くだけで,根 ことが原因であり,まずは床下に土やコンクリートを入れて地表面の高さを同一にし,その上で防湿対策を講じる必要があ- 6 -った。 ところが,原告は,床下にビニールを敷き,その上に炭を敷くだけで,根本的な防湿対策を講じようとしなかった。原告が施工した床下防湿工事は何ら防湿効果のないものであった。 平成17年7月16日,畳の入替えに来た業者が床板を外したところ,床下のビニールの上には,水道からの漏水ではないかと思われるくらい水が溜まっている状況であった。被告は,すぐに水道業者に調べてもらったが水道からの漏水ではなかったため,原告に連絡して対処を要求した。ところが,原告は,何も対応してくれなかった。 床下の防湿対策は,被告が本件建物で居住するための最重要課題であり,一級建築士の資格を有する原告は,その重要性に気付かないということはありえない。ところが,原告は,その重要性が分かっていながら,被告に適切な助言もせず,適切な対策を講じないまま適当にリフォーム工事を終えようとしていたのである。 台所改修工事及び内装工事についてこれら工事に関する認否は,別表「被告の認否」欄のとおりである。なお,被告が原告に注文したのは,台所の流し台の改修(別表の1),洗面台の設置(同4),必要な配電設備(同6),1階居間のクロスの貼替え,階段の修理(同9,10,30),便所のクッションフロア(同11)の貼替え,1階居間の床板の張替え(同12),台所の窓ガラスの取替え(同22),木製建具の取替え(同29),台所の網戸の取替えであり,それ以外の工事は注文していない。 【本訴抗弁-相殺】 被告は,原告が行った床下防湿工事に必要な炭として,23万円で竹炭を購入し,これを原告に渡し,床下に敷いてもらったが,本訴請求原因に対する認否5に記載のとおり,原告がした床下防湿 訴抗弁-相殺】 被告は,原告が行った床下防湿工事に必要な炭として,23万円で竹炭を購入し,これを原告に渡し,床下に敷いてもらったが,本訴請求原因に対する認否5に記載のとおり,原告がした床下防湿工事は何ら防湿効果がないものであ- 7 -り,原告の誤った判断により,被告は,23万円の不要な出費をし,同額の損害を被った。 仮に,本件各工事に係る何らかの報酬債権があるとしても,被告は,訴訟上,本件各工事の報酬債権と上記23万円の損害賠償債権と対当額で相殺する旨の意思表示をした。 【本訴抗弁に対する認否】 原告が当初提案した床下防湿対策は,換気口設置工事(換気口周囲の土砂を取り除いて換気口を設置する工事)であったが,被告が床下に炭を敷くことを強く求め,独断で竹炭を購入してきたため,炭敷きがどれほどの防湿効果があるのか疑問であったが,被告の指示に従ってこれを敷いたのである。竹炭購入代金は,被告自身の判断によるものである。 同2は争う。 【反訴請求原因】 本件物置の撤去が必要なこと(乙16)(1) 本件物置は,本件建物の外壁に接続し,基礎もある23.47平方メートルの規模のものであり,建築基準法の適用がある(物置につき建築基準法の適用除外となるのは,既存建物から独立している場合で,床面積が10平方メートル以下の場合のみである-建築基準法施行令40条,平成12年建設省告示第1347号1条1項)。 また,本件物置は本件建物に緊結されているため,本件物置増築後の建築物の構造方法が「耐久性等関係規定に適合し,かつ,自重,積載荷重,積雪荷重,風圧,土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃による当該建築物の倒壊及び崩落並びに屋根ふき材,外装材及び屋外に面する帳壁の脱落のおそれがないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する構造方法」に ,土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃による当該建築物の倒壊及び崩落並びに屋根ふき材,外装材及び屋外に面する帳壁の脱落のおそれがないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する構造方法」に該当する必要がある(建築基準法施行令137条の2第1号イ)。 ところが,本件建物は,有効な大量壁の設置がないため,本件建物を補強- 8 -しないまま本件物置を増築しても,建物倒壊の危険性を著しく増大させるだけであり,本件物置設置工事は違法である。 (2) さらに,本件物置それ自体も,基礎が束基礎であって平成12年建設省告示第1347号に反しており,室内側の防火被覆がなく平成12年建設省告示第1362号に反しており,建築基準法に違反している。 (3) したがって,本件物置は,撤去が必要であるところ,その撤去には,34万6500円が必要である(乙20)。原告は,法令を遵守し,安全性を確保した構造物を建築すべき契約上の義務を負うのにこれを怠ったから,その撤去費用を賠償すべき責任を負う。 本件サンルームの撤去が必要なこと(乙16)(1) 本件サンルームも本件建物の外壁に緊結されており,本件物置と同様,その設置工事は,建築基準法施行令137条の2第1号イに違反する違法な工事である。 (2) また,本件サンルームは,単独での構造安全性を有しておらず,国土交通省告示第410号第6に違反している。 (3) 本件サンルームの基礎(ベタ基礎)は深さが30センチメートルしかなく,伊達市の凍結深度が50センチメートルであることから,基礎が凍結して損壊する危険があり(平成12年建設省告示第1347号1条3項4違反),本件建物の屋根からの落雪でガラスが損傷する危険もあり,撤去が必要である。 (4) 本件サンルームの撤去には42万2100円が必要である(乙20)。原告は 年建設省告示第1347号1条3項4違反),本件建物の屋根からの落雪でガラスが損傷する危険もあり,撤去が必要である。 (4) 本件サンルームの撤去には42万2100円が必要である(乙20)。原告は,既存建物を補強しないまま,本件サンルームの設置工事を行い,本件建物倒壊の危険性を著しく増大させた違法な工事を行ったから,その撤去費用を賠償すべき責任を負う。 本件バルコニーの撤去が必要なこと本件建物の2階床梁に対する荷重を増大させ,既存建物の構造安全性を低下- 9 -させるものであって,建築基準法20条1項に違反しており,使用が困難であることからも撤去が必要である。 本件バルコニーの撤去には,13万6500円が必要である(乙20)。 調査費用の発生被告は,本件物置,本件サンルーム,本件バルコニー各設置工事による本件建物に対する構造安全性の検証のため,ハウスサポート有限会社一級建築士事務所に調査を依頼し,その調査費用として合計113万6100円を支払ったが(乙17,18,19),これは原告の違法な工事に起因して被告に生じた損害である。 まとめ上記1ないし3の撤去工事は,一度に全部行えば80万9550円で済むから(乙16の18頁),被告は,反訴請求として,原告に対し,本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの撤去費用80万9550円及び上記4の調査費用113万6100円の合計194万5650円の損害賠償金の支払及びこれに対する反訴状送達の日の翌日以降の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 【反訴請求原因に対する認否】 本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの設置工事は,いずれも,被告の注文に基づき,注文に従って施工されたものであり,その施工は,請負契約における債務の本旨に従ってされたものであって,何ら債務 本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの設置工事は,いずれも,被告の注文に基づき,注文に従って施工されたものであり,その施工は,請負契約における債務の本旨に従ってされたものであって,何ら債務不履行ではない。 また,被告は,それら工事をできるだけ安い費用で行うことを強く希望していたのであって,それら工事施工後の建築物全体につき構造計算を行うことや本件建物の耐力壁の補強工事を行うことは,非常に多額の費用を要することから,被告の意図に反することが明らかであり,構造計算や本件建物の補強工事を行わずに本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの設置工事を行ったとしても,原告に何らかの義務違反が生じるとはいえない。 - 10 - したがって,被告の反訴請求は法的根拠を欠くものというべきである。 理由 第1事実経過について乙第1,第4ないし第9号証,第13号証,第16号証及び原告及び被告各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨(専門委員を同行した平成21年6月24日の進行協議期日における本件建物の検分状況を含む。)によれば,以下の事実が認められる。 本件工事を依頼するに至った経緯等(1) 被告は,昭和17年2月20日生まれの女性で,北海道職員として長年勤務しており,単身で札幌市内の公団住宅に居住していたが(長女がいるが静岡県に居住している。),化学物質過敏症と診断されていたことから,60歳で定年退職をしたことを機に伊達市で住むことを決意し,適当な不動産を探していた。 被告は,平成17年5月,Aから勧められ,本件建物及びその敷地を860万円で買い受けた。 (2) 本件建物は,昭和41年に建築された建物であり,被告は,Aから,建築確認のため作成された一枚の古い図面(乙4。以下「確認図面」という。)の交付を受けた。確認図面に記載された平面図 い受けた。 (2) 本件建物は,昭和41年に建築された建物であり,被告は,Aから,建築確認のため作成された一枚の古い図面(乙4。以下「確認図面」という。)の交付を受けた。確認図面に記載された平面図と立面図は別紙図面1のとおりである。 本件建物の間取りは,確認図面と同様である。1階には,玄関横の四畳半の和室,居間兼台所及び六畳の和室の3室に脱衣場と風呂があり,2階には,押入と中廊下を挟んで2つの和室がある。 (3) 本件建物は,老朽化している上,何年か空き家のままであったため,外壁塗装や内装を改装する必要があり,被告は,平成17年5月中に,Aから紹介された原告に,それら改装工事(前回工事)を注文した。 原告は,一級建築士の資格を有するが,建設会社に勤務する会社員にすぎ- 11 -ず,個人で建設業を営んでいるわけでもなかったため,前回工事をすべて下請業者に発注してその施工をさせた。 前回工事に際し,原告は,被告から口頭で簡単な注文を聞いただけで施工を引き受け,施工箇所ごとの費用を積算した見積書を発行することもせず,どのような施工を行うかを図面で説明することもしないまま施工を行い(そのため,前回工事の施工内容の詳細は必ずしも明らかではない。),施工後,被告に128万1000円の請負代金を請求した。 被告は,見積書も図面も示されないことに特段の疑問も抱かず,平成17年6月8日,Aの自宅で,原告にその支払をし,その後の同月24日,本件建物内に荷物を運び入れた。 (4) 前回工事だけでは,必ずしも,本件建物が居住に適した状態にはなっていなかった。 最大の問題は床下の湿気であった。本件建物1階3室の床や畳の上にはカーペットが敷かれていたが,床下の湿気が室内にまで上がってきており,カーペットを剥がすと床板も畳もカビだらけの状態であり,脱衣場の点検口か 題は床下の湿気であった。本件建物1階3室の床や畳の上にはカーペットが敷かれていたが,床下の湿気が室内にまで上がってきており,カーペットを剥がすと床板も畳もカビだらけの状態であり,脱衣場の点検口から覗くと,床下地表面に置かれたダンボールが水浸しになっており,早急に床下防湿対策を講じる必要があった。 それ以外にも,被告の家財道具や荷物を収納するための物置を広くする必要があったし,窓の木枠に腐食している部分があって窓の開閉がしにくい,階段が痛んでいる等の不具合があった。 また,被告は,1階居間の南側には,外の風に触れるための縁台のようなもの(被告がいう「ベランダ」)を設置した方が良いと感じていたし,2階には確認図面に記載されたような物干し台(本件建物には設置されていなかった。)がある方が便利と考えた。 (5) そのため,被告は,平成17年6月24日の前後ころあるいはそれ以前に,原告に対し,①床下の防湿工事を行うこと,②物置を改築すること,③1階- 12 -の居間南側に「ベランダ」を設置すること,④確認図面に記載されたのと同様の物干し台を設置すること,⑤窓枠及び階段の補修,⑥台所の流し台ステンレス部分と窓ガラスの取替え,⑦1階居間の床板と和室の畳の取替え,⑧洗面台の設置,⑨便所のクッションフロアの張替え,⑩配電設備の取替えといった工事を注文した。 (6) 被告は,確認図面に記載されているように,2階中廊下の非常口から出入りする物干し台の設置を注文したつもりであり,非常口を掃き出し窓に改造した上で,そこを出入り口とする物干し台が設置されるものと思っていた。 しかし,確認図面と本件建物の現状は異なっており,本件建物の1階の屋根は,別紙図面2のとおり,2階窓枠のすぐ下に迫っているため,屋根の一部を破壊しない限り,確認図面に記載されたのと同様の物干し た。 しかし,確認図面と本件建物の現状は異なっており,本件建物の1階の屋根は,別紙図面2のとおり,2階窓枠のすぐ下に迫っているため,屋根の一部を破壊しない限り,確認図面に記載されたのと同様の物干し台を設置するなど不可能であった。 (7) 被告が設置を希望した「ベランダ」とは,縁側とかテラスの類の1階居間の床と同一平面を成す,ガラス囲いのない構造物である。 原告による代金請求と支払拒否原告は,本件工事についても,前回工事と同様,被告と細かな打合せをすることなく,施工内容の概略を説明する図面なども作成交付することなく,さらには施工内容,材料費,工賃を記載した見積書を作成交付することもないまま,平成17年7月10日ころまでの間に,本件物置,本件サンルーム,本件バルコニーの設置工事,内装工事等を下請業者に発注して施工し,同年7月11日付けの483万円の見積書(乙6)を被告に交付した。 被告は,請求金額が予想外に高額なものであったことに驚いた。被告は,今回は金を支払わなかった。 床下防湿工事について(1) 本件建物の基礎は,別紙図面2のとおり,外周だけが布基礎となっており,内部は束基礎となっていて,床下に地盤の土砂が露出している。しかも,床- 13 -下地表面が周辺地表面より概ね30センチメートル程度も低くなっている。 床下地表面と周辺地表面(例えば南側の庭や東側玄関先の道路)にこれだけ段差があれば,建築業者や建築士が本件建物に入ればすぐに気付くことであり,床を一部外して床下地表面を目視すれば容易に確認できることであった(ただし,この事実は書証からは全く分からない。平成21年3月4日の第6回口頭弁論期日における床下防湿工事に関する専門委員の意見も,この事実が分からないまま述べられたものである。)。 (2) 上記のような地盤の段差があるた からは全く分からない。平成21年3月4日の第6回口頭弁論期日における床下防湿工事に関する専門委員の意見も,この事実が分からないまま述べられたものである。)。 (2) 上記のような地盤の段差があるため,床下地表面は水が浮き出やすい状態にあり,この状態を改善する必要があった。 抜本的な防湿対策は床下地表面をコンクリートで覆うことである。ただし,そこまでしなくとも,床下地表面を周囲と同じ高さまで土砂で埋め,水が地表面に浮き出ないようにした上で,地表面を防湿ビニールシートで覆うことでも相応の防湿効果は得られる。 (3) ところが,床下防湿工事として原告が行ったのは,床下通風口周辺の土砂を取り払い,通風口の(柵状の)金属枠を取り替え,床下地表面をビニールシートで覆うというだけであった。このようなことをしても,床下地表面に水が浮き出すことを食い止めることができないし,そうなった場合,ビニールシートも水浸しになるので,防湿対策としては極めて不十分であった(乙1の番号21ないし24の写真)。 なお,被告は,防湿対策として床下に竹炭を置くことを主張し,自らの判断で23万円を出費して竹炭を購入してきた。そのため,原告は,ビニールシートの上に竹炭を置いた。 工事中止の経緯被告は,平成17年7月16日,畳の入替えに来た業者が床板を外した際,床下のビニールシートが,水道からの漏水ではないかと思われるくらい水浸しになっていることに気付き,すぐに水道業者に調べてもらったが水道からの漏- 14 -水ではなかったため,原告に連絡して対応を要求した。しかし,原告は対応しようとしなかった。そこで,被告は,伊達市役所の建築課,一級建築士事務所協会伊達支部長に相談に行った。 被告は,その後,Aや一級建築士事務所協会伊達支部長を交えて,原告と善処方を話し合ったが,もはや原 うとしなかった。そこで,被告は,伊達市役所の建築課,一級建築士事務所協会伊達支部長に相談に行った。 被告は,その後,Aや一級建築士事務所協会伊達支部長を交えて,原告と善処方を話し合ったが,もはや原告に工事を行わせるつもりはなく,平成17年7月16日に中断した本件工事が再開されることはなかった。 原告は,出来高が409万5000円である旨を記載した平成17年9月1日付け見積書(乙5)を被告に送付したが,被告は,その支払にも応じなかった。 本件物置設置工事について本件物置は床面積が23.47平方メートルであるため,本件建物の増築には建築確認申請が必要である。 しかしながら,本件物置は,その基礎が束基礎であって建築基準法20条4号に違反しているし,防火被覆がない点でも建築基準法22条,23条に違反しており,構造安全基準を充足しない違法な建築物である。 また,本件物置は,風呂の窓を覆うように設置されているため(乙1の番号20の写真,乙8の番号10の写真),内部に風呂場の湿気がこもり,カビや結露が発生しやすい構造となっており,物置として必要な性能を欠いている。 したがって,本件物置は,被告の注文に基づいて建築されたものの,著しい瑕疵がある。そして,その違法状態を解消し瑕疵を是正するためには,一旦これを撤去し,10平方メートル未満で,かつ,風呂場の窓を覆わない形で設置し直す必要がある。 本件バルコニー設置工事について被告が希望する物干し台の設置は不可能であったが,原告は,その説明はせず,ともかく物干し台を設置することにし,2階東側四畳半の和室の窓から出入りするよう物干し台を設置することにした。そのため,物干し台の大きさも,- 15 -確認図面に記載されたものより大きなものとなった。その結果,出来上がったものが本件バルコニーである。 本件バ 出入りするよう物干し台を設置することにした。そのため,物干し台の大きさも,- 15 -確認図面に記載されたものより大きなものとなった。その結果,出来上がったものが本件バルコニーである。 本件バルコニーに出入りする窓枠は上下約90センチメートルで,畳から95センチの高さにあるが,被告の身長は150センチ程度であるから,非常に高い階段状の踏み台を付けないと被告が本件バルコニーに出ることができない(乙第1号証の番号34,35の写真)。ところが,高い踏み台を置くと,今度は,深くかがまないとバルコニーに出ることができないし,本件バルコニーに出た場合,今度は和室に降りるにはさらに困難な体勢を強いられる。すなわち,普段の生活で,被告が本件バルコニーを物干し台として使用することは,事実上不可能である。 台所の現状について(乙1番号1ないし8の写真)流し台に設置されたステンレス部分は明らかに中古品であって,流し台のステンレスは新調されていない。 洗面台は,流し台の横に洗面台が設置されている。被告は,ふけや髪の毛が流し台に及ぶおそれがあるため,その設置場所に不満を抱いているが,脱衣場に置くことが不可能なため(脱衣場の三か所の扉の開閉の関係で,脱衣場には洗面台を置くことができない。),洗面台は他に置く場所がない。 台所の電気工事や給排水工事は完了しておらず,流し台や洗面台で電気と水道が使用できる状況にはない。 流し台の上部には窓があり,窓枠の上部には戸棚が設置されていたが,戸棚の最下部は床から180センチほどの高さにある(乙8の番号14の写真)。 すなわち,被告が到底手が届かない場所に戸棚が取り付けられている。 窓枠の取替えについて本件建物の窓は,もともと,木製の窓枠に4本の溝を作り,引き違い戸の外窓と内窓を設置するという二重窓構造であったが,その 告が到底手が届かない場所に戸棚が取り付けられている。 窓枠の取替えについて本件建物の窓は,もともと,木製の窓枠に4本の溝を作り,引き違い戸の外窓と内窓を設置するという二重窓構造であったが,その後,木製の窓枠の外側からアルミサッシ窓が取り付けられ,被告が本件建物を購入した時点では,結- 16 -果として三重窓となっていた。 結露の影響で木枠下部の溝部分が腐食していたが,本件工事では,腐食部分の補修はされず,溝部分の上に板を張って腐食部分を隠し,木枠の内側(部屋側)にプラスチック樹脂製の枠を取り付け,その枠を利用してプラスチック樹脂製の内窓が設置された(乙1の番号28,29の写真,乙8の番号18ないし21の写真)。 被告は,化学物質過敏症であったため,できるだけ木を使用して内装工事を行うことを希望しており,窓枠についても,もともとの木枠の腐食部分を補修し,補修した木枠に既存の木製窓を嵌めて使うつもりであった。そして,そのような窓の改修工事を注文したつもりであったが,希望に反してプラスチック樹脂製の内窓が設置されたものである。 第2床下防湿工事(被告の相殺主張)について 前記の事実が認められるところ,原告がした床下防湿対策は,床下通風口の確保と枠の取替え及びビニールシートの敷設であり,このようなことは,本件建物の床下防湿対策として無意味であるから,原告は,債務の本旨に従った床下防湿工事を何ら施工していないというほかなく,床下防湿工事に関する原告の代金請求は理由がない。 竹炭の敷設が防湿にどれほどの効果があるのかは不明であり,被告が床下に竹炭を置こうとした理由も不明であるが,原告の何らかの義務違反行為によって被告が竹炭の購入を余儀なくされたとの事実関係を証拠によって認定することもできないから(竹炭の購入が自発的であったことは被告 竹炭を置こうとした理由も不明であるが,原告の何らかの義務違反行為によって被告が竹炭の購入を余儀なくされたとの事実関係を証拠によって認定することもできないから(竹炭の購入が自発的であったことは被告も陳述書-乙13-2頁目において認めている。),被告が原告に対し竹炭の購入費の賠償を求める根拠も肯定することはできず,被告の相殺の主張は理由がない。 第3本件バルコニー設置工事について 前記認定のとおり,本件バルコニーは実用に耐えないことが明らかであって,被告がこのようなバルコニーの設置を注文したとか,事後にその設置を了解し- 17 -たとは到底考えられない。したがって,被告が陳述書(乙13)や本人尋問において供述するとおり,被告が注文したのは確認図面に記載されたのと同様の物干し台であったと考えられるのである。 被告が注文した物干し台を設置しようと思えば,多額の費用を投じて,屋根と外壁の一部を破壊し,破壊部分周辺に大がかりな補強工事を施し,非常口を掃き出し窓に改造する必要があるが,そのようなことは全く現実的ではなく,被告が注文した物干し台の設置は事実上不可能である。 したがって,建築の専門家である原告としては,被告のいうような物干し台の設置は不可能であると説明すべきであり,注文と似ても似つかないバルコニーを独断で設置することは許されない。 ところが,原告は,被告にその説明をしないまま,実用性など全く検討もせず,被告が思いもしなかった本件バルコニーを設置したものである。 注文と全く異なる工事をしても,請負人がその工事の報酬を請求することができないのは当然であるし,注文者がそのような工事の成果を受領する義務はない。 また,請負人は,請負契約に伴う付随義務として,注文者の利益に反する工事や注文と全く異なる工事をしない義務を負うと解されるか ないのは当然であるし,注文者がそのような工事の成果を受領する義務はない。 また,請負人は,請負契約に伴う付随義務として,注文者の利益に反する工事や注文と全く異なる工事をしない義務を負うと解されるから,注文者の利益に反する工事を行うことは債務不履行(付随義務違反)に該当する。 したがって,原告は,本件バルコニーの撤去に要する費用について,債務不履行による損害としてこれを賠償する責任を負う(民法415条)。 第4本件物置設置工事について 前記認定のとおり,本件物置は,被告の注文に基づいて設置されたものであるが,著しい瑕疵があり,一旦撤去して設置し直すしか瑕疵を是正する手段がない。 したがって,本件物置設置工事の出来高は零円であるし,原告は,民法634条2項に基づき,瑕疵修補に代え,その撤去に要する費用を賠償すべき責任- 18 -を負う。 第5本件サンルーム設置工事について 本件サンルームは,1階の居間と玄関横和室の窓を覆う大規模なものであって(床面積は9.5平方メートル-乙16の1頁),原告請求の施工費用も107万5100円と高額である。 原告は,陳述書(甲12)において「日なたぼっこのためサンルームが欲しい」との被告の要望があり,本件サンルームの設置を受注したと供述するが,被告は,居間南側のサッシ窓(掃き出し窓)の南側に「ベランダ」の設置を求めただけで,本件サンルームの設置を注文した事実などないと主張し,陳述書(乙9)及び本人尋問において,同様の供述をしている。そこで,本件サンルームの注文の有無について検討する。 夏場は,本件サンルームを開け放たないと,風通しの悪さと直射日光により,居間も玄関横和室も非常に高温となって生活しづらいことが明らかであるし,冬場は,屋根断熱がないガラス構造のサンルーム内はかなりの低温になること ンルームを開け放たないと,風通しの悪さと直射日光により,居間も玄関横和室も非常に高温となって生活しづらいことが明らかであるし,冬場は,屋根断熱がないガラス構造のサンルーム内はかなりの低温になることが予想されるので,本件サンルームが「日なたぼっこ」に適しているかどうかは疑問である。被告が,多額の費用をかけて,このような大規模なサンルームを必要とする理由もないように思われる。 また,100万円もの費用をかけてサンルームを設置しようという場合,普通は,メーカーのパンフレットを示しての説明や見積書の授受が行われるのに,本件では,そのようなことが一切行われておらず,そのような受注活動もしていないのに,これほど高額のサンルームの設置を被告が決意したとは容易に考え難い。 原告は,本人尋問においては,「たとえ雨でも,上に屋根がかかっててほしいということをちらっと言われましたんで,それならサンルームだなと解釈しました」と供述している(原告本人尋問調書17頁)。本件サンルームのような多額の工事の注文の有無は「解釈」や推測すべき事柄ではないのであって,- 19 -本件サンルームの設置を受注したとする原告の供述は不自然というべきである。 さらに,前記認定説示のとおり,原告は,使い勝手など全く無視して平然と本件バルコニーを設置し,その代金を請求しているのであって,余り実用的でない本件サンルームについても,被告の注文を無視して設置されたのではないかとの疑いの目を向けざるをえない。 したがって,原告の供述よりも,「ベランダ」を注文しただけであるとの被告の供述の方が信用性が高いというべきであり,本件サンルームは被告の注文とは全く異なる構造物であると認めるのが相当である。 そうすると,前記第3の3に説示したのと同様の理由により,原告は,本件サンルームの 述の方が信用性が高いというべきであり,本件サンルームは被告の注文とは全く異なる構造物であると認めるのが相当である。 そうすると,前記第3の3に説示したのと同様の理由により,原告は,本件サンルームの撤去に要する費用についても,債務不履行による損害としてこれを賠償する責任を負う(民法415条)。 第6台所改修工事及び内装工事について 原告主張の台所改修工事及び内装工事(別表の1ないし31)のうち,被告が注文した事実が認められるのは,台所の流し台ステンレス部分の新調(別表の1),洗面台の設置(同4),必要な配電設備(同6),1階居間のクロスの貼替え,階段の修理(同9,10,30),便所のクッションフロア(同11)の貼替え,1階居間の床板の張替え(同12),台所の窓ガラスの取替え(同22),木製建具の取替え(同29),台所の網戸の取替えである。なお,別表の7の台所換気扇の取替えは,台所流し台の改修に付随するものとみるのが相当である。 上記以外の工事について,被告の注文があったこと及び注文の趣旨に従った工事がされた事実を認めるに足る証拠は十分ではない。 請負業者が請負代金の支払を求めるためには,注文者の注文内容を具体的に特定した上で,注文の趣旨に従った工事の施工を終えた事実を立証しなければならず,この立証は,通常,契約書,見積書,図面,写真等の文書によって行われるが,本件においては,そのような文書によって上記事実を認定すること- 20 -はできない。 そして,注文の内容について原告と被告の言い分に大きな食違いがある本件の状況下で,原告の供述に信用性を認め,別表1ないし31の項目全部について,被告の注文があったと認めることは困難である。なぜなら,原告は,本件バルコニー以外にも,被告の使い勝手など全く無視して高所に戸棚を設置している事実も 用性を認め,別表1ないし31の項目全部について,被告の注文があったと認めることは困難である。なぜなら,原告は,本件バルコニー以外にも,被告の使い勝手など全く無視して高所に戸棚を設置している事実も認められるのであって,本件では,原告が,被告の意向や注文と無関係にリフォーム工事を進めた疑いがあるため,受注に関する原告の供述の信用性には疑問の余地があるといわざるをえないからである。 したがって,被告が注文した事実を認めない工事項目については,諸事情に照らせば当然にそのような注文があったはずだというもの(例えば,台所の換気扇がこのようなものに該当する。)を除き,原告が受注したと供述しているだけで注文があった事実を認めることは相当ではない。 被告の注文があった工事(上記1)のうち,注文の趣旨に従った施工がされた出来高は,次の合計20万2500円と認められる。 別表の4洗面化粧台の設置2万7000円別表の6分電盤取替工事2万0000円別表の7汚損した既存の台所換気扇の取替え1万1000円別表の9,10階段補修6万5000円別表の11便所のクッションフロアの貼替え1万0000円別表18大工手間4万0000円(この金額の限度で認めるのが相当である。)別表22台所窓ガラスの取替え1万2000円別表30階段手摺1万7500円 台所と洗面台は,電気や水が使える状態で設置されていないし,台所の流し台は中古のシンクが使われていて新調されておらず,いずれも,注文の趣旨に従った施工が完了しているとは認められない。 - 21 -非常に多額(31万5000円)の請求がされた別表の21の樹脂サッシの取付けについては,前記認定のとおり,被告の注文に従った窓枠の補修をしないまま,被告の注文しない内窓が取付けられたにすぎないし,別表 常に多額(31万5000円)の請求がされた別表の21の樹脂サッシの取付けについては,前記認定のとおり,被告の注文に従った窓枠の補修をしないまま,被告の注文しない内窓が取付けられたにすぎないし,別表12のフローリングは,床下防湿対策をしないで施工されており,やり直しが必至であるから,いずれも出来高とは認められない。 また,別表の29の木製建具について,被告は,陳述書(乙9)及び本人尋問において,引き戸かカーテンを注文したと供述しており,本件建物が手狭なこと等を考慮すれば引き戸やカーテンの注文にも合理性があると考えられるのであって(特に台所と脱衣場の間は,引き戸にしないと非常に使い勝手が悪く,このことは,乙8の番号14の写真からも容易にうかがえるところである。),扉を設置しても注文に従った施工とは認められない。 さらに,弁論の全趣旨に照らせば,居間と和室の引き違い戸は,調整が未了であって開閉が困難となっており,やはり出来高とは認められない。 第7被告の反訴請求について 事実経過について乙第11号証の1,2,第14ないし第16号証,第17号証の1,2,第18号証,第19号証の1,2及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告は,平成19年3月13日,本件工事代金の支払を求める本件訴訟を札幌地方裁判所本庁に提起した(事件は,平成19年3月30日に室蘭支部に回付され,平成20年1月28日に本庁に再回付された。)。 (2) 被告は,原告の請求及び主張を全面的に争い,本件バルコニー,本件物置及び本件サンルームは撤去が必要であると考えていたので,平成20年8月,伊達市内の建設業者(C建設)にその撤去費用の見積を依頼したところ,その業者が見積もった撤去費用は37万5375円であった(乙第11号証の1,2)。 - 22 -(3) たので,平成20年8月,伊達市内の建設業者(C建設)にその撤去費用の見積を依頼したところ,その業者が見積もった撤去費用は37万5375円であった(乙第11号証の1,2)。 - 22 -(3) 被告は,平成20年10月ころ,ハウスサポート有限会社(以下「訴外会社」という。)に本件建物の調査を依頼した。調査を担当したのは「欠陥住宅被害全国連絡協議会」所属のD一級建築士(以下「D建築士」という。)であった。 (4) D建築士は,平成20年10月12日,本件建物に赴き,予備調査として,目視,写真撮影と簡単な計測を行い,その結果を同月14日付け「建物予備調査所見」及び同月20日付け「建物予備調査所見Ⅱ」の合計10枚の報告書にまとめ(乙14,15),被告に提出した。被告は,訴外会社から,予備調査費用として18万0600円の調査費用の支払を請求され,同月27日,これを支払った(乙17の1,2)。 (5) D建築士の予備調査所見は,概ね,次のとおりであり,被告が最も問題にしている床下防湿対策については言及されていない。 ①本件バルコニーの設置行為自体に問題はないが,構造安全性の検証が未了である。 ②本件物置の束基礎及び内壁に防火被覆がないことが建築基準法違反である。 ③本件物置及び本件サンルームの設置工事は,建築基準法上の増築に該当するため,既存建物(本件建物)に建築基準法違反が発生している場合,既存建物の適法化是正措置を含めた増築計画が必要となるから,既存建物全体の適法性(特に構造安全性)の調査を行う必要がある。 (6) 訴外会社は,平成20年10月27日,予備調査に引き続き,調査費用を95万5500円とする本調査を受注した(乙18)。 本調査は,本件バルコニー,本件物置及び本件サンルームの「増築工事が建築基準法規定に準拠して建築をしているか 27日,予備調査に引き続き,調査費用を95万5500円とする本調査を受注した(乙18)。 本調査は,本件バルコニー,本件物置及び本件サンルームの「増築工事が建築基準法規定に準拠して建築をしているか否かを検証すること」を目的とするものであり(乙16の6頁),予備調査で言及された既存建物(本件建物)全体の構造安全性の調査に力点が置かれたものであり,D建築士は,平- 23 -成20年10月28日と29日に現場に臨場し,天井の解体・復旧工事を行うとともに,詳細な計測を行い,その後,多大の手間と費用をかけて構造計算を行った。 本調査の報告書(乙16)は,詳細かつ大部であるが,その過半は,本件建物の構造安全性の検証(構造計算)で占められている。 (7) 本調査の報告書は,本件建物の1階に有効な耐力壁がなく,構造評点が0. 67であって,一応倒壊しないとされる評点1.0を大きく下回っており,大地震を受けた場合,倒壊する可能性が高いことが判明したとしており(乙16の8頁,10頁目),本件物置と本件サンルームは,構造安全性を有しない違反建築物であり,本件バルコニーは,本件建物の危険性を増大させる行為であると結論付け(乙16の8.9頁),本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの撤去工事を一度に全部行えば80万9550円の費用を要すると見積もった(乙16の18頁)。 なお,本件調査の報告書でも,床下防湿対策については言及されていない。 (8) 被告は,平成20年11月21日,訴外会社に対し,本調査の調査費用95万5500円を支払った(乙19の1,2)。 撤去費用の賠償請求について前記に認定説示のとおり,原告は,本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの撤去に要する費用を賠償すべき責任を負うところ,その撤去費用については,C建設の見積(37万5375 用の賠償請求について前記に認定説示のとおり,原告は,本件物置,本件サンルーム及び本件バルコニーの撤去に要する費用を賠償すべき責任を負うところ,その撤去費用については,C建設の見積(37万5375円-乙11)と訴外会社の見積(80万9550円-乙16)とで大きく異なっている。これほどの差異がある以上,訴外会社の見積金額をそのまま採用することは困難であるが,C建設の見積では,サンルームの基礎コンクリートの撤去費用が含まれていないことが認められ(乙11の2),そこには本件物置の束基礎の撤去費用も含まれていない疑いも生じるため,C建設の見積もそのまま採用することができない。 そのため,撤去費用に相当する損害の額としては両者の中間値を採用し,5- 24 -9万円(千円未満の端数は切捨て)と認めるのが相当である。 調査費用の賠償請求について(1) 訴外会社の本調査は,破壊検査を伴う大がかりなものであったし,その報告書も大部なものであって,その過半を構造計算に関する部分が占めているが,この調査がどのような趣旨・目的で行われたのかは,今ひとつ理解することができない。 本件工事に関する被告の不服の最も重要な点は,床下防湿対策が全くされていないこと,注文と大きく異なり実用にも耐えない本件バルコニーが設置されたこと,「ベランダ」を発注したのにサンルームが設置されたことであり,その旨の被告の言い分は,訴外会社が調査に入る1年も前に,裁判所でも明らかにされている(平成19年6月15日付け及び同年9月5日付け準備書面)。したがって,被告が本件訴訟で直面している課題は,いかにして被告の言い分を法的に構成し,その立証を行うかであったと思われる。 ところが,訴外会社の調査報告書には,被告の最大関心事である床下防湿対策に関する記載がないし,本件バルコニーがおよそ実 は,いかにして被告の言い分を法的に構成し,その立証を行うかであったと思われる。 ところが,訴外会社の調査報告書には,被告の最大関心事である床下防湿対策に関する記載がないし,本件バルコニーがおよそ実用に耐えない重大問題をはらんでいるのに「バルコニーの設置行為自体に問題は無い」との記載がされていることからすれば(乙15の2枚目),訴外会社による調査は,とりあえず被告の言い分とは無関係に(被告の言い分は考慮せず),とにかく本件建物の構造安全性を確認・検証しようという目的で行われたのではないかともみられる。少なくとも,被告の言い分との関係では,本件バルコニーや本件サンルームに関する訴外会社の調査は明らかに過剰である。 そうすると,屋根の破壊を伴う詳細な検分や膨大な構造計算を行って,本件バルコニー,本件物置及び本件サンルームの建築基準法令適合性を調査検討する必要がどこにあったのかは疑問といわざるをえない。 したがって,被告が訴外会社に支払った調査費用は,全体として,施工の瑕疵や原告の債務不履行と相当因果関係に立つ損害ということができず,調- 25 -査費用に関する原告の賠償範囲を認定するためには,さらに個別的な検討が必要である。 (2) 本件物置に関する部分被告主張の調査費用のうち,本件物置の瑕疵に関する部分は,その瑕疵によって生じた損害として民法634条2項により賠償請求の対象となると解することが可能である。 ただし,本件物置の撤去が必要な理由は,専門家である一級建築士であれば,本件物置の設置状況を目視調査すれば見いだすことが可能であると考えられ,本件建物を詳細に計測した上で,多大の手間と費用をかけて構造計算を行うまでもなかったのではないかと思われる。 そもそも,訴外会社の調査は,本件物置が,本件建物に緊結(あるいは接続)して建築されて本件 本件建物を詳細に計測した上で,多大の手間と費用をかけて構造計算を行うまでもなかったのではないかと思われる。 そもそも,訴外会社の調査は,本件物置が,本件建物に緊結(あるいは接続)して建築されて本件建物と一体の構造を成しており,本件建物と別構造ではないという事実を前提とし,本件建物全体の構造計算を行っているものとみられるが,進行協議期日で本件建物を検分しても,本件物置の構造耐力上主要な部分が本件建物のそれと一体を成しているとの事実を認めることはできず,訴外会社が構造計算の前提とした事実が何を根拠とするのかは不明である。 したがって,訴外会社の本調査の過半を占める本件建物の構造安全性の検証(構造計算)に要する費用は,本件物置の瑕疵によって生じた損害とは認められない。 (3) 本件バルコニー及び本件サンルームに関する部分本件バルコニーの設置は,動産を本件建物に付着させたというものでしかなく,増築物として建築基準法への適合性を検討すべき対象ではないし,本件物置(23.47平方メートル)と異なり,本件サンルーム(9.5平方メートル)の設置に建築確認が必要なわけでもない(建築基準法40条)。 したがって,建築基準法の構造安全基準という観点から本件バルコニーや本- 26 -件サンルームの撤去の要否を検討することは困難とみられる。 したがって,本件バルコニーと本件サンルーム撤去が必要となるのは,被告が注文していないものを原告が施工したという点に見いだすしかないと考えられる。注文の要否などは,契約関係書類の検討や被告への聴き取り調査以外の方法で確かめるしかないのであって,破壊検査や構造計算を行うことに何らの意味もなく,被告主張の調査費用のうち,本件バルコニーと本件サンルームに関する部分は,原告の債務不履行に起因して生じた損害ということが困難である。 のであって,破壊検査や構造計算を行うことに何らの意味もなく,被告主張の調査費用のうち,本件バルコニーと本件サンルームに関する部分は,原告の債務不履行に起因して生じた損害ということが困難である。 なお,本件サンルームに関しても,訴外会社の調査は,これが本件建物に緊結(あるいは接続)して建築されて本件建物と一体の構造を成しており,本件建物と別構造ではないという事実を前提とし,本件建物全体の構造計算を行っているものとみられるが,本件物置と同様,本件サンルームの主要な部分が本件建物のそれと一体を成しているとの事実を認めることはできず,訴外会社が構造計算の前提とした事実が何を根拠とするのかは不明である。 (4) 被告が訴外会社に支払った調査費用(合計113万6100円)のうち本件物置に関する部分を厳密に認定することは困難であるが,その3分の1の37万円(千円未満の端数は切捨て)がこれに相当すると認めるのが相当である。 まとめしたがって,被告の反訴請求は,撤去費用59万円と調査費用37万円の合計96万円の賠償を求める限度で理由がある。 第8 結論 よって,原告の本訴請求は20万2500円とこれに対する遅延損害金を求める限度で理由があり,被告の反訴請求は96万円とこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容し,その余の本訴請求及び反訴請求をいずれも失当として棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61- 27 -条,64条を,仮執行宣言につき同法259条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部裁判官橋詰均- 28 -(別表)原告主張の工事内容金額被告の認否¥307,200【台所改修・洗面台設置工事】合計 既設台所流し台の改修(シンク・台の¥65,000中古品を設置した 詰均- 28 -(別表)原告主張の工事内容金額被告の認否¥307,200【台所改修・洗面台設置工事】合計 既設台所流し台の改修(シンク・台の¥65,000中古品を設置しただけであり,やり仕上げ貼り)直しが必要である。 調理台の設置¥28,000発注の事実なし。 フードの設置¥1,200発注の事実なし。 洗面化粧台の設置¥27,000配電・給水なく未施工で放置されている。衛生面から流し台への設置は不適切である。 電灯移設配線工事¥3,000発注の事実なし。 分電盤取替工事(漏電ブローカーの新¥20,000IH対応でなく,このようなものは規取付け)発注していない。 汚損した既存の台所換気扇の取替え¥11,000施工の事実は認める。 風呂・台所の配水管の補修点検¥152,000未施工であり,水道は使用不能のままである。 【内装工事】合計¥891,980施工の事実は認める。 階段下地(蹴上部分)の補強¥15,000施工の事実は認める。 階段の床仕上げ材の取替え¥50,000施工の事実は認める。 便所床CF(クッションフロア)貼替え¥10,000傾斜も修整せず,床下防湿・カビ対 1階居間のフローリング¥40,600策もしないで漫然と張替えだけが行われており,やり直しが必要。 施工の有無不明。 1階居間のスライド巾木¥7,000前回工事で施工済み。 台所等の壁の下地材の補修¥420前回工事で施工済み。 1階居間のクロス貼りの下地(ラワンベニ¥5,040ア)の設置及び押入床の張替え前回工事で施工済み。 キッチンボードの設置¥11,500前回工事分は否認する。 上記12~16に要した釘・接着剤・補足材等 下地(ラワンベニ¥5,040ア)の設置及び押入床の張替え前回工事で施工済み。 キッチンボードの設置¥11,500前回工事分は否認する。 上記12~16に要した釘・接着剤・補足材等¥15,000前回工事分は否認する。 上記9~16の施工の大工手間¥148,500前回工事で施工済み。 居間・台所・和室の壁全体のビニールクロ¥49,450スの貼替え廃材は一部放置されたまま。 廃材処理運搬¥30,000発注の事実なし。原告は従来の木製 1階・2階窓の内窓の障子の撤去,これに¥315,000窓枠の補修を注文したのである。 代わる樹脂サッシの取付け施工の事実は認める。 台所窓ガラスを透明なものに取替え¥12,000施工の有無不明。 1階和室の破損した網戸の取替え¥16,000発注の事実なし。 1階和室のカーテンレールWの取付け¥5,300発注の事実なし。 1階居間のカーテンレールWの取付け¥4,850発注の事実なし。 2階和室のカーテンレールWの取付け¥5,300発注の事実なし。 2階廊下のカーテンレールSの取付け¥1,020発注の事実なし。 24~27の取付けのための金物¥6,500引き戸を注文した。扉ではない。施 1階木製建具工事(玄関ホール/和室,玄関¥115,000工された引き違い戸は,歪みがあっホール/居間,台所/脱衣場の3か所の扉,居て開閉できない。 間/和室の引き違い戸,合計5枚の建具)施工の事実は認める。 階段手摺¥17,500発注の事実なし。 台所流し前のシルキーブラインド¥11,000 発注の事実なし。 台所流し前のシルキーブラインド¥11,000
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