平成16(ワ)4674 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成19年3月29日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文64,640 文字)

平成19年3月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ワ)第4674号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成19年3月19日判決東京都台東区原告A同訴訟代理人弁護士竹本裕美谷内口一彦東京都千代田区被告社会福祉法人三井記念病院同代表者理事B同訴訟代理人弁護士原田策司井野直幸小林ゆか主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,金9704万5715円及びこれに対する平成16年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告が開設する病院において,鉗子分娩の方法で分娩介助を受けた原告が,出産後ほどなく出生した子が脳浮腫を生じて痙攣重積等の高度の神経症状を来たした後に脳死状態に陥り,その後に感染症に罹患して死亡した,又は,後遺障害が発生したのは,鉗子分娩を担当した医師が数回にわたり鉗子を 滑脱させたことなどにより,児の脳に障害が起こり,あるいは児が低酸素状態に陥ったためであると主張して,被告に対し,不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求として,子の逸失利益,慰謝料及び原告固有の損害並びにこれらに対する不法行為後の日(訴状送達日の翌日)からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提事実(事実認定の根拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者ア原告(昭和43年2月生)は,中華人民共和国国籍を有する外国人である。 原告は,平成11年12月14日にCと婚姻したが,平成15年12月3日に協議離婚した。 (甲B1,2,弁論の全趣旨)イD(平成12年3月7日生,平成15年11月25日死亡。は,原告と である。 原告は,平成11年12月14日にCと婚姻したが,平成15年12月3日に協議離婚した。 (甲B1,2,弁論の全趣旨)イD(平成12年3月7日生,平成15年11月25日死亡。は,原告とCとの間の子(長女)である。 ウ(ア)被告は,肩書所在地において「三井記念病院」との名称の病院(以下「被告病院」という)を開設している。 。 (イ)Eは,平成12年3月ころ,被告病院産婦人科に勤務していた医師である。 (ウ)Fは,平成12年3月ころ,研修医として被告病院に勤務していた医師である。 エ社会福祉法人賛育会は,東京都墨田区内において「賛育会病院」という名称の病院(以下「賛育会病院」という)を開設している。 。 (2)原告の被告病院への受診及びDの分娩に至る経緯ア原告は,平成12年1月19日(以下,日付については,平成12年の出来事については,年の記載を省略する,妊婦検診のため被告病院の。)産婦人科を受診し,その後も被告病院で妊婦検診を受けていたが,2月下 旬とされていた出産予定日を超過しても出産の徴候が見られなかったことから,3月6日,分娩誘発により出産する予定で被告病院の産婦人科に入院した。 (,,。)イ原告の分娩経過なお本項における日付はいずれも3月7日である(ア)原告は,朝にE医師の診察を受け,午前9時ころから陣痛誘発促進剤の投与を受け始めたところ,陣痛が到来し,午後3時30分ころには破水となった。 (イ)原告は,分娩室に移動したが,午後5時45分ころ,子宮口は全開大には至っておらず,また,児が回旋異常(前方前頂位)を起こしていることが判明した。 (ウ)午後7時50分ころ,原告の子宮口が全開大となり,児も下降してきてはいたが,その後も娩出に至らなかったことから,被告病院医師らは,クリステレル圧出 方前頂位)を起こしていることが判明した。 (ウ)午後7時50分ころ,原告の子宮口が全開大となり,児も下降してきてはいたが,その後も娩出に至らなかったことから,被告病院医師らは,クリステレル圧出法の施行と併せて鉗子を用いた分娩を実施することとし,午後8時40分ころから原告に対する鉗子分娩に着手した(以下「本件鉗子分娩」という。 。)しかして,実際の鉗子分娩は,研修の一環としてF医師が担当し,E医師はF医師の脇に付いて手技等を指導するという方式で実施されることになったが,F医師は本件鉗子分娩以前に術者として鉗子操作を実施した経験はなかった。 (エ)F医師は,E医師の指導の下で原告に対する鉗子分娩を試みたが,2回にわたり鉗子を滑脱させてしまったため娩出に至らず,その後,E医師が術者を交代して鉗子分娩を試みたが,同医師も1回鉗子を滑脱させてしまい,4回目の鉗子手技とクリステレル圧出法の施行により,午後9時06分ころDを娩出させた(滑脱の態様については当事者間に争いがある。 。)(3)被告病院におけるDの診療経過等 アDの娩出直後の状態(ア)Dは娩出時には前方後頂位で出生し,被告病院において,全身色暗赤色で末端チアノーゼのほか顔面表皮に鉗子による傷跡が2か所,頭部全体に産瘤がそれぞれ認められたが,体重は3542gで,全身状態は安定していると判断され,3月7日午後9時35分に観察目的で新生児室のクベース(保育器)に収容された。 (イ)被告病院の診療録(医師記載部分)には,Dの出生直後のアプガースコア(1分値)は9点と記載されている(ただし,実際にDが同スコア9点に相当する状態であったかどうかは当事者間に争いがある。 。)イF医師は,3月8日Dを診察し,頭部に血腫様症状を認めたため,被告病院小児科にコンサルトした。 る(ただし,実際にDが同スコア9点に相当する状態であったかどうかは当事者間に争いがある。 。)イF医師は,3月8日Dを診察し,頭部に血腫様症状を認めたため,被告病院小児科にコンサルトした。 被告病院小児科のF医師は,同日午後0時30分ころ,Dを診察し,その際,頭部全周囲の浮腫については産瘤と帽状腱膜下血腫を疑った。その後同日午後4時ころになってDの頭囲が生下時より約24㎝大きくなっ,. ていることが判明したことから,F医師は,被告病院と提携関係にあった賛育会病院小児科のH医師と協議し,いつでも賛育会病院で受け入れ可能であるとの了解を得た。 ウDは,3月9日午前0時ころから,啼泣,発汗が多くなり,左上下肢に痙攣様の体動が見られるようになった。被告病院小児科のI医師は,同日午前9時20分ころ,Dを診察したが,上記の頭部症状や痙攣様症状に加え,皮膚色がやや不良で,大泉門もやや緊満ぎみであったほか四肢の緊張も強かったことなどから,頭蓋内圧亢進を疑い,同日午前10時40分ころ,Dを賛育会病院に転院させた。 エなお,被告病院においては,出生時の臍帯血の動脈血液ガス分析検査,出生後の動脈血ガス分析検査及びDの頭部についてのレントゲン,CT,MRIといった画像検査は実施されていない。 (4)後医(賛育会病院)転送後のDの診療経過等アDは,3月9日午前11時05分ころ,賛育会病院に搬送され,同病院小児科病棟に入院して頭部CT検査を受けた。その画像によると,帽状腱膜下血腫のほか,右側頭部に頭蓋内血腫(ただし,これが硬膜下血腫か硬膜外血腫であるかは後に検討する)と右大脳半球の浮腫(浮腫の程度は。 後に検討する)が認められる。 。 イDは,同日午後0時45分以後,右半身から全身性に至る痙攣を繰り返し起こすようになり,さらに,同日午後10 かは後に検討する)と右大脳半球の浮腫(浮腫の程度は。 後に検討する)が認められる。 。 イDは,同日午後0時45分以後,右半身から全身性に至る痙攣を繰り返し起こすようになり,さらに,同日午後10時ころからは全身性の強直間代性痙攣を繰り返し,そのうち痙攣重積の状態に陥った。賛育会病院医師は,痙攣重積の鎮静を図るため,同月11日午前11時からDを人工呼吸管理下に置き,バルビツレート療法(中枢神経抑制薬であるラボナールの持続静注を内容とする抗痙攣治療)の施行を開始し,痙攣の鎮静を見たため,同月12日午後10時ころラボナールの投与を中止し,バルビツレート療法を終了した。 ウDは,バルビツレート療法施行中から,自発呼吸がなく,瞳孔も散大していたほか,各種の反射もない状態となっていたが,終了後も回復の徴候が見られなかったことから,賛育会病院医師は,Dの頭蓋内変化を疑い,同月15日にDの頭部CT検査を実施したが,その際,大脳領域全体に重度の脳浮腫が生じていることが判明した。 Dは,同月16日,上記のCT所見とともに,自発呼吸,対光反射,角膜反射等がいずれもなく瞳孔も散大しているとして,臨床的には脳死状態にあるものと診断された。 エなお,賛育会病院では,Dの頭部病変に関して単純レントゲン検査は施行されていない。 (5)Dの死亡に至る経緯等(甲A3)Dは,その後,呼吸管理等を受けながら賛育会病院での入院を継続してい たが,脳死状態から回復することはなく,平成15年11月8日ころに発症した肺炎及びそれに続く肺出血により,同月25日午前2時10分に死亡が確認された(死亡時3歳。 )なお,Dについては,死亡後の解剖は実施されていない。 (,,,(6)Dに係る諸検査結果等甲B24乙A1ないし5B18ないし2022,25,弁論の全趣旨 確認された(死亡時3歳。 )なお,Dについては,死亡後の解剖は実施されていない。 (,,,(6)Dに係る諸検査結果等甲B24乙A1ないし5B18ないし2022,25,弁論の全趣旨)ア被告病院及び賛育会病院において実施されたDの血液検査,血液ガス分析検査の結果は,別紙3「検査結果一覧表」記載のとおりである。 イ上記の血液検査項目のうち本件に関連するものの意義等は,以下のとおりである。 (ア)CRP炎症マーカーともいわれ,その異常は体内の炎症反応の存在を示すものとされているが,その炎症性変化の原因となった疾患を一義的に特定できるものではない。 (イ)CPK(クレアチンホスホキナーゼ「CK」ともいう),。 CPKは,臓器局在性の酵素であり,骨格筋,心筋,赤血球に多く含まれ,脳や消化管にも比較的多く存在するが,その余の臓器にはあまり存在しない。CPKは,上記の臓器(例えば筋組織)から血中に漏出したものが測定されるため,逸脱酵素といわれており,組織障害度の指標。 ,()として利用されているCPKはそのタンパク分画等アイソザイムに応じて,主として,骨格筋由来のもの(CK-MM,心筋由来のも)の(CK-MB,脳由来のもの(CK-BB)などに分類されるが,)CK活性はMM型が最高であり大半を占めるといわれている。CPKが高値を示す病態には,様々なものがあり,新生児仮死による低酸素負荷の場合には著明な高値を示すといわれているが,溶血でも上昇することがある。 (ウ)LDH(乳酸脱水素酵素)LDHは,広く全身の臓器の可溶性分画に存在する逸脱酵素であるため,臓器診断的価値はあまり高くないが,スクリーニング検査として有用であり,高値を示した場合は,種々の原因で何らかの臓器に障害が加わっていることを意味する 臓器の可溶性分画に存在する逸脱酵素であるため,臓器診断的価値はあまり高くないが,スクリーニング検査として有用であり,高値を示した場合は,種々の原因で何らかの臓器に障害が加わっていることを意味する。LDHは,わずかな溶血でも赤血球由来のLDHが上昇することがある。LDHも,そのアイソザイムに応じて,主として,心筋,赤血球由来のもの(LD1(BBBB,心筋,腎,))赤血球,肺,白血球由来のもの(LD2(BBBA,脳,腎,肺由))来のもの(LD3(BBAA,肝,肺由来のもの(LD4(BAA))A,肝,骨格筋由来のもの(LD5(AAAA)の5種類に分類さ)))れる。 (エ)GOT,GPT,γ-GTP肝臓腎臓心筋骨格筋膵臓赤血球中に多量に含まれており特,,,,,(に,GPTは肝臓に局在している,組織が障害される際に細胞から。)血中に漏出したものが測定される逸脱酵素である。これら項目が高値である場合も多様な疾患の存在を示唆するが,主として肝障害と相関している。 ウ新生児の血液検査,血液ガス分析検査等の,生後時間に応じた正常値及び参考数値は,別紙5「正常値」記載のとおりである。 (7)本件に関連する医学的知見ア頭部分娩外傷頭部は最も分娩外傷を受けやすい部位といわれているところ,頭蓋内出血による頭蓋内圧亢進により生命維持に必須の中枢が破壊されることがあり,その場合は死亡率も高くなる。頭部分娩外傷の頻度は,size, space,forceの調和が保たれていない分娩の場合では上昇し,例えば頭部の形状が短時間で急激に変化を受けるような高位鉗子分娩等の過程では危険性が 上昇するといわれている(段階的な内圧の上昇には耐えることができる硬膜も,突発的な加圧に際しては断裂してしまうことがある。 。) 短時間で急激に変化を受けるような高位鉗子分娩等の過程では危険性が 上昇するといわれている(段階的な内圧の上昇には耐えることができる硬膜も,突発的な加圧に際しては断裂してしまうことがある。 。),。 なお頭部分娩外傷として臨床上現れる症状としては下記のものがある(甲B4,5,12,13,乙B6,12)(ア)産瘤(甲B5,7)胎児の先進部は通常浮腫状であるところ,頭部は頸管開大部に直面する部分を除き子宮壁に密着しているため,該部の皮下組織にうっ血ある,。 ,いは滲出液が貯留することになりこれを産瘤という顔面位では眼瞼両頬,鼻部,口唇までに広汎に皮下浮腫と点状出血が見られる。一般には数日内で消失する。 (イ)頭血腫及び帽状腱膜下血腫(甲B4,5,7,12,13,乙B12)①頭血腫頭血腫は,児が産道を通過する際に受ける外力により頭蓋骨の骨膜が一部剥離して生じる骨膜下血腫であり,鉗子や吸引分娩によっても骨膜下血管の破綻を来たし血腫となることがあるが,自然分娩でも生じることがある。骨膜下血腫であるため,骨縫合を超えて血腫が広がることはない。骨膜下出血は徐々に進行するので娩出後数時間してから発見されることが普通である。予後は良好で通常は2,3か月で自然に吸収される。 ②帽状腱膜下血腫帽状腱膜下血腫は,骨膜とその直上を被う帽状腱膜との間の出血であるところ,骨膜と帽状腱膜の間の疎性結合組織はずれやすく血管も豊富であるため,骨縫合部軟骨の断裂や導出動脈自体の牽引性断裂で。 ,,出血して発症するとされている発生頻度は全出生時の1%未満で多くは吸引分娩で生じるとされているが,鉗子分娩などで頭部に強い 外力が働いた場合に生じることもあり,また,自然分娩の場合にも発症することがある。 帽状腱膜下に血腫が形成されるため,骨縫合部 満で多くは吸引分娩で生じるとされているが,鉗子分娩などで頭部に強い 外力が働いた場合に生じることもあり,また,自然分娩の場合にも発症することがある。 帽状腱膜下に血腫が形成されるため,骨縫合部を超えて頭皮下全体に血腫が拡がりやすく,その場合は境界,腫脹及び波動は不明瞭である場合が多い。顔面などに浮腫を伴い,高度な場合は指圧痕を認めたり貧血を起こしてショック状態となり,DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併することもある。治療は,ビタミンKシロップの使用 が挙げられるが,出血性ショックの徴候があれば集中治療を開始するとされている。なお,帽状腱膜下血腫のような頭血腫が生じた症例の4分の1に線状骨折を認めたとの報告もある。 (ウ)頭蓋内出血(甲B4ないし7,9,12,13,乙B1,2の1・2,3,4,11,12)頭蓋内出血は,頭蓋腔の主たる静脈や洞の裂傷から起こり,硬膜外,硬膜下,くも膜下及び脳室内出血が代表的である。 硬膜下,硬膜外出血は,頭部の過度の変形が因子と考えられており,産道を通過する際や高位鉗子分娩によって頭蓋骨に対して急激な応力が働いて生じるとされている。成熟児で鉗子分娩や吸引分娩を受けた児に多いと考えられているが,最近は,出生前から見られる例もあり,自然分娩でも起こるとされている。 硬膜外出血は,主として分娩外傷により頭蓋骨骨折(線状骨折と陥没骨折があるを伴って生じ他方硬膜下出血は大脳表面の静脈テ。),,,(ント上では上大脳静脈,テント下,下矢状洞では小脳静脈等)が断裂して破綻し,硬膜下に出血をきたす状態をいうが,出生前に発生する場合もあるので分娩外傷を必ずしも示唆しないという意見もある。 ,,硬膜下血腫は瞳孔の左右不同やショック症状を呈する場合に疑われ直ちにCT検査と血液検査を実施するとさ 態をいうが,出生前に発生する場合もあるので分娩外傷を必ずしも示唆しないという意見もある。 ,,硬膜下血腫は瞳孔の左右不同やショック症状を呈する場合に疑われ直ちにCT検査と血液検査を実施するとされている。少量の硬膜下出血 はMRI検査では確認しやすいが,CT検査では静脈洞のうっ血と鑑別が困難なことも多い。少量では無症状又はあっても易刺激性などの軽微な症状で,経過の注意深い観察を行う。出血量が多いと,大脳皮質や脳,,,。 神経の圧迫による症状や貧血ショック頭蓋内圧亢進症状が現れる症状によって,呼吸循環の全身管理,頭蓋内圧亢進や痙攣に対する薬物治療に加えて,外科的血腫除去術を行う。その予防は,吸引,鉗子分娩に際して頭蓋骨に急激な圧が加わらないように誘導することであるが,上記分娩機序をたどった出生時全例について生後の注意が必要である。 硬膜下血腫を生じ,それによって最終的に重篤な症状が発症した症例の多くは,娩出後に一見正常な状態がしばらく続き,生後1ないし24時間経過すると,なんとなく不穏状態となり高音で啼泣し,前額部にしわが寄り,両目を大きく見開いて一点を凝視しているような印象を与える。更に進展すると四肢を激しく動かして大泉門の緊張が亢進し,嘔吐,,や半身麻痺四肢の運動減弱等の頭蓋内圧亢進に伴う神経症状が見られまた,失血による急性貧血症状が見られることもあり,やがて痙攣(間代性痙攣,強直性痙攣(通常全身性で四肢が強直性伸展位をとり,ときに上肢は屈曲,下肢は伸展して除皮質様肢位をとることもある。しばしば,眼球偏位,時に間代性痙攣,無呼吸発作を伴う)のほか,微細発。 作として無呼吸発作,咀嚼様運動,ペダルこぎ様運動等,麻痺,筋緊),,,,,張の低下皮膚色蒼白頻脈血圧低下発熱等が見られるようになりチ 痙攣,無呼吸発作を伴う)のほか,微細発。 作として無呼吸発作,咀嚼様運動,ペダルこぎ様運動等,麻痺,筋緊),,,,,張の低下皮膚色蒼白頻脈血圧低下発熱等が見られるようになりチアノーゼを伴う無呼吸の時期が漸増して死に至るとされている。モロー反射は初期に亢進し,やがて減退し,消失する。 イ頭蓋内圧亢進(甲B16),,,頭蓋内は頭蓋骨に囲まれた一定容積の閉鎖腔であり通常は腔内の脳血液,髄液の相互的変化によって腔内圧を一定に保っているが,腔内に他の占拠物(血腫等)が生じたときや病変により脳浮腫を来した場合等には 頭蓋内圧亢進を来す。 頭蓋内圧が亢進して脳灌流圧が減少すると,脳血管抵抗,脳血流が減少し,脳血管床が増大し(すなわち脳内静脈系に血液が貯留してしまう,。),,更に頭蓋内圧が上昇すると脳への血流が阻害されるようになり呼吸障害,,低酸素症により代謝性アシドーシスとなり急速に急性脳腫脹に移行して更に頭蓋内圧が亢進するという悪循環を来す。 小児では軽微な頭部外傷で脳循環の自己調節機構が消失し,血管床が増大して頭蓋内圧亢進を来すことがあるという意見もある。 ウ新生児仮死(低酸素虚血性脳症を含む)及び新生児痙攣。 (ア)新生児仮死(甲B10,25,26,乙B13,14)①新生児仮死の意義は,多義的であるが,一般には胎盤や肺におけるガス交換が障害されて,低酸素症や高炭酸ガス血症を来す病態とされている。高度になると嫌気性解糖の結果生じた乳酸が蓄積して代謝性アシドーシスを来す。新生児仮死の最大の原因は胎児仮死であり,胎児仮死の原因は,胎盤におけるガス交換の障害,子宮血流の低下,母体の低酸素や低血圧,臍帯血流障害などである。胎児仮死以外の新生児仮死の原因としては,分娩外傷など種々の要因による自発呼吸の確 あり,胎児仮死の原因は,胎盤におけるガス交換の障害,子宮血流の低下,母体の低酸素や低血圧,臍帯血流障害などである。胎児仮死以外の新生児仮死の原因としては,分娩外傷など種々の要因による自発呼吸の確立の障害がある。仮死は,全身における呼吸・循環障害であり,その影響は脳,心血管系,肺,腎などに及ぶが,なかでも脳は短時間の低酸素や虚血で障害を受けやすい。新生児仮死の結果,中枢神経系の症状を示すものは低酸素性虚血性脳症と呼ばれ,その他,心筋障害,遷延性肺高血圧症,胎便吸引症候群,急性尿細管壊死などにより,呼吸・循環・腎機能不全を合併しやすい。 単独で仮死の重症度や神経学的予後を評価できるものはないが,胎児心拍パターン,出生時のアプガースコアの低値,動脈血液ガス分析検査における高度の代謝性アシドーシス,AST(GOT,ALT) (GPT,LDH,CKなどの逸脱酵素の上昇,脳波,頭部CTや)MRIなどの異常所見により評価される。 ②アプガースコアアプガースコアは,新生児の状態を表す評価数値であり,その評価基準は,別紙4「アプガースコア評価基準」のとおりである。 アプガースコアの合計が7点未満の場合には新生児仮死と診断される。 もっとも,アプガースコアの採点には,主観や仮死以外の要素が入り込む余地があるため,アメリカ産婦人科学会においては,臍帯動脈血ガス分析結果を踏まえたアシドーシスの有無を評価の中心として,新生児仮死の診断基準を下記のとおりと定めている。 記(a)臍帯動脈血ガス分析で高度(pH<7.00)の代謝性アシドーシスあるいは混合性アシドーシスの状態にあること(b)生後5分を超える低アプガースコア(0~3点)(c)新生児早期からの痙攣,筋緊張低下,昏睡,低酸素性脳症などの神経症状の発症(d)新生児早期より多臓器不全 アシドーシスの状態にあること(b)生後5分を超える低アプガースコア(0~3点)(c)新生児早期からの痙攣,筋緊張低下,昏睡,低酸素性脳症などの神経症状の発症(d)新生児早期より多臓器不全状態を示していること(イ)新生児痙攣(甲B9)新生児痙攣は,新生児の中枢神経系疾患の中でも最も頻度が高い。新生児痙攣は,その発作型に応じて,①微細発作(側方凝視,偏視,瞬目,,,,),運動吸啜様の口唇頬の異常運動四肢の異常運動無呼吸発作等②強直性発作(通常全身性で四肢が強直性伸展位をとり,ときに上肢は屈曲,下肢は伸展し,除皮質様肢位をとることもある。しばしば眼球偏位,時に間代性痙攣,無呼吸発作を伴う。脳室内出血に伴うことが多い,③多焦点性間代性発作(ある四肢から他の四肢へと不規則に間。) 代性痙攣が移行する,④焦点性間代性発作(限局した間代性痙攣で,。)通常意識障害はない。脳挫傷の症状としてみられるが,新生児では代謝異常を含む脳全体の症状として発現することがある,⑤ミオクロー。)ヌス発作(四肢の単一又は多発性の急速な屈曲性痙攣,ただし,極めてまれである)に分類されている。 。 新生児痙攣の原因としては,①胎児仮死等の仮死(低酸素性虚血性脳症,②代謝障害(低血糖症,低Ca血症等,③頭蓋内出血,④中枢))神経感染症,⑤薬物中断,⑥脳梗塞,⑦その他の原因に分類できる。 ①は,新生児痙攣の60~65%を占めるという報告もあるが,仮死の90%は出生前より始まっているといわれていることから,胎児仮死の診断が重要である。この場合,痙攣は通常は生後24時間以内に見られることが多い。 ③は,新生児痙攣の15~17%に見られるという報告があり,出血部位としては硬膜下,くも膜下,脳室内,脳実質内などがあるが,硬膜下出血は の場合,痙攣は通常は生後24時間以内に見られることが多い。 ③は,新生児痙攣の15~17%に見られるという報告があり,出血部位としては硬膜下,くも膜下,脳室内,脳実質内などがあるが,硬膜下出血は分娩外傷に見られるものが最も多く,硬膜下出血を起こした新生児の50%に生後24時間以内に痙攣が出現するといわれている。 ④は,新生児痙攣の約12%に見られ,通常周産期に感染した細菌性(大腸菌,B群溶血性連鎖球菌等)又は非細菌性(トキソプラズマ,単純ヘルペス,コクサッキーB,風疹,サイトメガロウイルス)の感染症に起因するといわれている。 ⑥は,新生児痙攣の約5%に見られ,正期産児に多く,原因としては低酸素症,多血症,塞栓症,血栓症等があり,焦点性間代性発作が最も多く,生後72時間以内に出現することが多いとされている。 新生児痙攣への治療としては,全身管理下において抗痙攣剤の投与を行って痙攣を抑制することが第一選択となるが,その際は血圧低下,呼吸抑制に注意が必要とされている。 新生児痙攣を起こした児は,一般的に予後不良であるが,後遺症の危険は予後不良因子の組み合わされ方により一定でなく,後遺症の危険率について,低酸素性虚血性脳症について50%とする報告と80%とする報告があり,頭蓋内出血について90%とする報告と20%とする報告がある。 (ウ)痙攣重積(甲B27ないし29)一般に痙攣重積は,てんかん重積状態の一型として取り扱われるが,てんかん重積状態は,一般に,発作が切れ目なく持続しているか,あるいは意識回復のない短い断続期を繰り返している状態を指し,それが30分ないし1時間以上続くものである。 痙攣重積においては,代謝と血流に不均衡を生じ,不可逆的な脳障害をきたす可能性がある。低酸素血症,低血糖及び局所循環障害がなくとも,過剰な神経電気 し,それが30分ないし1時間以上続くものである。 痙攣重積においては,代謝と血流に不均衡を生じ,不可逆的な脳障害をきたす可能性がある。低酸素血症,低血糖及び局所循環障害がなくとも,過剰な神経電気的活動そのものが脳障害の原因となる。 痙攣重積は,死に至ることがあり,生存しても重度の知的あるいは神経学的な後遺症を残すことがある。痙攣重積開始後一定時間以内では,代償作用が充分に働いてこのような脳障害は起こりにくいが,それを過ぎると代償不能となり,脳障害が重篤になりやすい。 大部分の後遺障害は基礎疾患が原因とされるようであるが,痙攣活動そのものが原因ないし関与したと思われる後遺症もある。 エ分娩(甲B17,21,22,弁論の全趣旨)分娩に際し,胎児は回旋運動しながら産道を下降し通過する。 産道内における児頭の下降度は,通常「station」で表され,児頭先端が骨盤の坐骨棘間線まで下降した状態を「station0」と表記し,児頭先端部が坐骨棘間線よりも上方にある場合は,その解離距離(㎝)に応じて「station-1「station-2」のように,逆に,児頭先端部が坐骨棘」,間線よりも下方にある場合は「station+1「station+2」のように,」, 表記される。 正常分娩第1回旋で児の頤部が胸部に接近し,後頭部が先進する。これに対し,頤部が胸部から離れて後頭が後ろに反り返った状態を反屈位と呼ぶ。正常分娩第2回旋では児の後頭が母体前方に回旋するが,これと逆に母体後方に回旋した場合を後方後頭位と呼ぶ。 反屈位については,反屈の程度により①頭頂位(屈位と反屈位の中間で大小泉門の中間が先進,②前頭位(大泉門が先進。通過面は児頭前後。)径周囲③額位額部が先進通過面は児頭大斜径周囲④顔位顔。),(。 。),(面が先 頭頂位(屈位と反屈位の中間で大小泉門の中間が先進,②前頭位(大泉門が先進。通過面は児頭前後。)径周囲③額位額部が先進通過面は児頭大斜径周囲④顔位顔。),(。 。),(面が先進。通過面は頤下大泉門周囲径)の4種類に分類される。 。 前方前頂位は,大部分は,娩出時には正常の前方後頭位になるが,時に後方後頭位になる。 オ鉗子分娩術(甲B11,14,17ないし20)(ア)鉗子分娩術は,産科鉗子で主として児頭を把握してこれを牽引する手術である。鉗子分娩の利点は,正しく鉗子を装着すれば滑脱することはなく1回の牽引で確実に児を娩出できる点にあるとされ,この点で吸引分娩よりも優れていると解されているが,鉗子手技が正しく施行されないと母体及び児に危険である。 (イ)現在,鉗子分娩においては「ネーゲレ鉗子」と呼ばれる適度に弾力性を持つ鋼鉄製の鉗子が用いられるのが通常である。 ネーゲレ鉗子は,術者が左手に持って産婦骨盤の左側に挿入する左葉と右手に持って右側に挿入する右葉の2本からなりそれぞれが匙部児,(頭を把握する輪状の部分で,児頭に密着させるために彎曲している,。)接合部(鉗子装着後に左右の葉を交差させて牽引する際の支点となる部分,把柄部(術者が牽引の際に把持する部分。なお「鉤」と呼ばれる)牽引時に術者が指を掛けるための突起様の部位が付属している)に区。 分される。ネーゲレ鉗子の大きさは,左右一方について全高36㎝,全 ,,幅9㎝で両葉を交差させて鉗子を閉じた状態での匙部の最大幅は7㎝先端部の幅は2㎝である。 (ウ)鉗子分娩の適応鉗子分娩の適応は,(a)母体の適応として,微弱陣痛,分娩遷延,回旋異常,心疾患等による分娩第2期短縮目的等が,(b)胎児の適応として,胎児仮死又はその可能性等がそれぞれ挙げられて 鉗子分娩の適応鉗子分娩の適応は,(a)母体の適応として,微弱陣痛,分娩遷延,回旋異常,心疾患等による分娩第2期短縮目的等が,(b)胎児の適応として,胎児仮死又はその可能性等がそれぞれ挙げられている。 (エ)鉗子分娩の要約鉗子分娩の要約とは鉗子分娩の必要条件であり,適応があっても要約が満たさなければ鉗子分娩は行ってはならないとされている。 具体的な要約としては,①児頭骨盤不均衡(CPD)のないこと,②児が成熟しており,児頭が一定の大きさと硬さを有していること,③子宮口が全開大していること,④既破水であること,⑤児頭は鉗子適位にあること(児頭が鉗子分娩を行える位置まで下降していること。具体的には,児頭が骨盤内に進入して児頭の大横経が骨盤入口を通過している状態をいう,⑥児が生存していることが挙げられているが,これに。)加えて,⑦児の回旋が正しく診断されていること,⑧新生児の蘇生準備が整っていること,⑨術者が器具の特徴,使用方法を熟知していることを掲げるべきという意見もある。 (オ)鉗子分娩の手技(症例に応じて様々であり,以下のものは一般的な手技である)。 ①鉗子の挿入(a)児頭が鉗子適位にある場合で,前方後頭位で児頭の矢状縫合が骨盤縦経に一致するかこれに近いときは,児頭の位置や回旋の状態を確認しながら左右の順番で匙部を膣壁内に挿入し,指掌面を児頭に密着させるが,その際,匙部先端は内手掌に沿い,児の耳殻上を,()横切り目の外側を経て下顎に達する下顎に匙部の先端を掛ける ように装着する。 (b)これに対し,(a)の場合より児頭がやや高い場合又は回旋異常があるときは,矢状縫合の存在するのと反対の斜径に一致させるように挿入する方法と,矢状縫合の方向に関係なく,これが縦径の場合と同様に母体骨盤の左右に鉗子を挿入する方 り児頭がやや高い場合又は回旋異常があるときは,矢状縫合の存在するのと反対の斜径に一致させるように挿入する方法と,矢状縫合の方向に関係なく,これが縦径の場合と同様に母体骨盤の左右に鉗子を挿入する方法がある。 ②牽引手技鉗子の装着が終了した場合は,一方の手を鉗子を握り,それに重ねたもう一方の点の示中2指を伸ばして児頭先進端に当て,2,3回軽く牽引して児頭が滑脱することなく鉗子とともに動くかどうか確認する(これを「試験牽引」という)を実施し,確認できない場合は再。 挿入を試みる。 試験牽引に児頭が応じたことを確認した場合には,両手で把柄部を握り(なお,左手の示指を左右両匙葉の間に挿入して挟み込むことで児頭に及ぶ圧力を軽減させることが行われている,牽引するが,。)その際には強い力で牽引するよりは,正しい方向(自然分娩における児頭の下降運動に一致する方向)に牽引することに注意すべきとされている。牽引は,常に陣痛発作時に合わせて行い,徐々に力を強めていくように引き,鉗子を前後に振り動かしたり,牽引に伴わない回旋をしてはならない。腹圧が十分にかからない場合にはクリステレル圧出法を併用する。なお,回旋異常がある場合であっても,牽引に合わせて回旋が補正されることが多いとされている。 ③その他,鉗子分娩においては,可能な限り麻酔(最低限でも浸潤麻酔か陰部神経麻酔,可能なら硬膜外麻酔)を実施すべきであるとする意見もある。 カ脳症,脳炎(乙B16,21)(ア)疾患概要 脳炎は,中枢神経系症状を認め,髄膜炎を伴うので髄液所見から推定されている。しかし,遺伝子診断法の進歩により,髄液で細胞増多がなく脳症様の髄液所見を呈していても,髄液中からウイルスの分離やPCR法によりウイルスゲノムの検出を認めることがあり,この場合が脳炎と診断される。 しかし,遺伝子診断法の進歩により,髄液で細胞増多がなく脳症様の髄液所見を呈していても,髄液中からウイルスの分離やPCR法によりウイルスゲノムの検出を認めることがあり,この場合が脳炎と診断される。 他方,急性脳症は,予後不良疾患であるが,誘因から感染性,低酸素,,,性代謝中毒性が挙げられているものの原因は明らかにされておらず。 ,,,定義も曖昧である嘔吐不機嫌全身倦怠などの前駆症状に引き続き,,,,高熱意識障害痙攣が急激に出現しこれらの症状は刻々と重症化し脳神経障害などが合併してくる。治療は対症療法であるが,主病態である脳浮腫とそれに伴う頭蓋内圧亢進に対する治療が基本となる。 ,,,なお急性脳症のうち急性壊死性脳症といわれる病態の分類基準は下記のとおりとされている。 記,,①ウイルス性発熱疾患に続発した急性脳症意識レベルの急速な低下痙攣②髄液細胞増多(-,髄液タンパクの増加多い。 )③頭部CT,MRIによる対称性・多発性脳病変の証明,両側視床病変は必須。大脳白質(側脳室周囲,内包,被殻,中脳,橋の被蓋,)小脳髄質(歯状核周囲)にも病変を認めることあり。 ④血清トランスアミナーゼ値の上昇。S-NHは正常範囲内 ⑤鑑別診断A臨床的見地からB神経放射線学的,神経病理学的見地(イ)臨床症状,検査所見発熱とともに痙攣重積,意識障害に陥ることが多い。急性致死性脳症 での除脳硬直,弛緩性は脳幹障害を疑わせる。血液ガス検査により代謝性アシドーシスになっているかどうかを注意する。画像所見としては,急性致死性脳症では,両側対称性の視床病変を認めることがある。 診療経過に関する当事者の主張ア平成11年8月18日から平成13年4月4日までの被告病院(平成11年8月18日から平成1 しては,急性致死性脳症では,両側対称性の視床病変を認めることがある。 診療経過に関する当事者の主張ア平成11年8月18日から平成13年4月4日までの被告病院(平成11年8月18日から平成12年1月18日までは社会保険中央総合病院におけ),る診療経過における原告及びDに対する診療経過についての被告の主張は「()」(,「」。)別紙1診療経過一覧表被告病院分ただし原告の反論欄は除く記載のとおりである。 被告病院受診中のDの診療経過に係る原告の主張の要旨は別紙1「診療経過一覧表(被告病院分」の「原告の反論」欄記載のとおりである。 )イ平成12年3月9日から平成15年11月25日までの賛育会病院におけるDに対する診療経過についての原告及び被告の主張は,別紙2「診療経過一覧表(賛育会病院分」記載のとおりである。 ) 原告の主張(1)被告病院医師の過失ア本件鉗子分娩の術者の選択の過失鉗子分娩は,それ自体一定の技量と経験を有する医師が実施しない限り,,危険性を伴うものであって熟達していない医師が行うことができるのはせいぜい低位鉗子の場合に限定されており,それ以外の難易度の高い中位鉗子の場合あるいは児の回旋異常が存在する場合には,鉗子分娩に熟達した医師が実施するのでない限り,鉗子分娩を実施してはならない。 しかして,本件鉗子分娩において,着手時における児頭の位置は記録上(,はstation+1であったというのであって低位鉗子には当たらない仮に被告主張のとおり児頭がstation+2とstation+3の間にあったとしても同様である。また,児には前方前頂位の回旋異常があった。 。) それゆえ,被告病院医師においては,原告に対する鉗子分娩を実施するに際しても,その経験のある医師において実施すべき あったとしても同様である。また,児には前方前頂位の回旋異常があった。 。) それゆえ,被告病院医師においては,原告に対する鉗子分娩を実施するに際しても,その経験のある医師において実施すべき注意義務があった。 しかるに,E医師は,鉗子分娩を施行した経験が全くないF医師に本件鉗子分娩を委ね,また,F医師もこれを行ったものであるから,被告病院医師らはその点において,過失がある。 イ早期に帝王切開術等に切り替えなかった過失鉗子分娩では複数回の滑脱はあってはならないのであるから,被告病院医師らは,遅くともF医師が2回目に鉗子を滑脱させた時点で速やかに帝王切開術に移行すべき注意義務があった。 しかし,被告病院医師らは,帝王切開術を選択することなく,そのまま漫然と鉗子分娩を続行した。 ウ鉗子分娩の術者を交代しなかった過失E医師は,本件鉗子分娩を実施するについて,研修医であるF医師の指導者としての立場にあったものであるから,F医師が初回の鉗子を滑脱させた段階で,速やかに術者を交代し,自らが鉗子分娩に当たるべき注意義務があった。 しかし,E医師は,F医師と分娩手技を交代することなく,その後も引き続いてF医師に鉗子分娩の手技を続行させた。 エ鉗子分娩の手技上の過失E医師及びF医師は,鉗子分娩の施行を始めた時点で胎児が前方前頂位の回旋異常がある状態であったのであるから,それを前提とした鉗子の挿入,装着及び牽引を実施し,また,回旋異常が確認されている場合,牽引手技によって回旋の状態も変化するのであるから,各牽引及び滑脱の後には十分な内診を行い,胎児の状態を確認した上で,鉗子の正しい挿入,装着及び牽引を行うべき注意義務があった。 しかるに,E医師及びF医師は,上記の注意義務を怠り,胎児の回旋異 常を前提としない通常の方法で鉗子の挿入,装着及び 態を確認した上で,鉗子の正しい挿入,装着及び牽引を行うべき注意義務があった。 しかるに,E医師及びF医師は,上記の注意義務を怠り,胎児の回旋異 常を前提としない通常の方法で鉗子の挿入,装着及び牽引を行い,また,児頭の位置,回旋の状態等を把握するための十分な内診を行わなかったため,合計3回にわたって鉗子を滑脱させて,Dの頭部に強度の圧迫を与えた。 (2)結果及び因果関係アDの死亡原因Dは,3月15日に賛育会病院において重度脳浮腫を発症しているのが見つかり,翌16日には急性壊死性脳症と診断されるとともに臨床的脳死,。 状態に陥り全身状態が悪化したまま肺炎及び肺出血を合併して死亡したイDが脳死状態に至った機序についてDは,被告病院において3回にわたり鉗子滑脱を起こされ,4回目の牽引によりようやく娩出されるに至ったものであるところ,Dは,かかる経過を前提として,下記のいずれかの機序が単独であるいは重畳的に発生して重度脳浮腫ないし急性壊死性脳症を発症し,脳死状態に陥ったものである。 (ア)本件鉗子分娩時に3回にわたって児頭を把持した鉗子を滑脱させるという物理的圧迫により,頭蓋内の血管が損傷して硬膜下血腫(又は頭蓋骨骨折を伴う硬膜外血腫)が発生し,この硬膜下血腫(又は頭蓋骨骨折を伴う硬膜外血腫)が原因で頭蓋内圧が亢進して血流不全が生じ,脳に十分な血液と酸素が行き渡らずに脳梗塞状態となり,重度脳浮腫ないし急性壊死性脳症を発症した(以下「原告主張の因果経過(ア)」という。 。)(イ)本件鉗子分娩時に3回にわたって児頭を把持した鉗子を滑脱させるという物理的圧迫により,児頭に重度の帽状腱膜下血腫が発生し,これにより貧血が進展して低酸素状態となり,これが進展して重度脳浮腫ないし急性壊死性脳症を発症した(以下「原告主張の因果経過( 滑脱させるという物理的圧迫により,児頭に重度の帽状腱膜下血腫が発生し,これにより貧血が進展して低酸素状態となり,これが進展して重度脳浮腫ないし急性壊死性脳症を発症した(以下「原告主張の因果経過(イ)」とい う。 。)(ウ)本件鉗子分娩は3回の滑脱等のため分娩遷延状態となり,これにより児に大きなストレスがかかり,その結果,重度の低酸素脳症を発症して脳浮腫が生じ,その後これが次第に拡大して重度脳浮腫ないし急性壊死性脳症を発症した(以下「原告主張の因果経過(ウ)」という。 。)(エ)本件鉗子分娩は3回の滑脱等のため分娩遷延状態となり,これにより児にストレスがかかり,その結果,軽度の低酸素脳症及び軽度の脳浮腫が生じ,これに起因する痙攣の治療に転院先の賛育会病院が難渋して低酸素状態が継続したため重度脳浮腫ないし急性壊死性脳症を発症した(以下「原告主張の因果経過(エ)」という。 。)ウ被告病院医師らの過失とDの死亡との間の因果関係被告病院医師らが,上記(1)の注意義務を尽くしていれば,Dの頭部分娩外傷あるいは分娩遷延は回避でき,Dが脳の血流不全ないし低酸素症により脳浮腫を発症することも急性壊死性脳症に進展して死亡に至ることもなかった。 エ被告病院医師らの過失とDの重度後遺障害の発生との間の因果関係被告病院医師らが上記(1)の注意義務を尽くしていれば,Dに重度の後遺障害が残ることはなかった。 すなわち,Dは,本件鉗子分娩時に,3回にわたって児頭を把持した鉗子が滑脱するという物理的圧迫により,頭蓋内出血を発症して痙攣重積の状態に陥り,この痙攣重積による神経系の障害により重度の後遺障害が生じたものである。 それゆえ,仮に,上記ウの因果関係(被告病院医師らの過失とDの死亡結果との間の因果関係)が否定されたとしても,少なくとも被告 ,この痙攣重積による神経系の障害により重度の後遺障害が生じたものである。 それゆえ,仮に,上記ウの因果関係(被告病院医師らの過失とDの死亡結果との間の因果関係)が否定されたとしても,少なくとも被告病院医師らの過失とDに重度の後遺障害が生じたこととの間には相当因果関係がある。 (3)損害アDの損害合計7322万5715円(ア)逸失利益4322万5715円Dは死亡時3歳であり,満18歳から満67歳まで就労可能であったとの前提で同人の逸失利益を算出すると,その計算は以下のとおりとなる。 基礎年収494万6300円(平成14年賃金センサス,産業計・企業規模計・全労働者平均賃金)×(19.1191(就労可能年数64年(67-3)に対応するライプニッツ係数)-10.3796(就労可能年数15年(18-3)に対応するライプニッツ係数)(イ)死亡慰謝料3000万円(ウ)原告は,上記損害に係るDの被告に対する損害賠償請求権を全部相続した。 イ原告の損害合計2382万円(ア)慰謝料1500万円(イ)弁護士費用882万円ウなお,仮に被告病院医師の過失とDの死亡との間に因果関係が肯定されないとしても,上記(2)エのとおり,被告病院医師らの過失がなければ,Dには痙攣重積が発生しておらず,痙攣治療のため抗痙攣薬を多用し,意識状態を呈かさせる必要もなく,抗痙攣剤の投与以外の適切な治療行為を行う余地があったといえるから,被告は,適切な治療を受ける期待を裏切られ,救命ないし延命の機会を奪われたことによる原告及びDが被った精神的損害を賠償すべき義務がある。その金額は,原告及びDについて各々1000万円とすべきである。 被告の主張(1)被告病院医師らの過失の不存在 ア本件鉗子分娩の術者の選択が相当であること本 害を賠償すべき義務がある。その金額は,原告及びDについて各々1000万円とすべきである。 被告の主張(1)被告病院医師らの過失の不存在 ア本件鉗子分娩の術者の選択が相当であること本件鉗子分娩は,母児にとって安全であると解される児頭が低在位から中在位(station+2とstation+3の間)にある状態で施行されており,鉗子適位にあった。また,F医師が鉗子分娩を行った際も,約300例の鉗子分娩の経験があるE医師が,指導医としてすぐ横について手技等について指示をしていたのであるから,F医師が本件鉗子分娩までにその経験がなかったからといって,それにより鉗子分娩の実施が許されないということにはならない。 イ早期に帝王切開術等に切り替えなかった点に過失はないこと上記のとおり,2回目以後の鉗子分娩施行時においても,本件鉗子分娩の適応と要約を満たしていたから,帝王切開術に切り替えなかった被告病院医師らの判断に不合理な点はない。 ウ術者を交代しなかったことについて過失がないこと上記のとおり,1回目以後の鉗子分娩施行時においても,本件鉗子分娩の適応と要約を満たしており,また,E医師はF医師に対して相応の手技等の指導をしていたものであるし,現にF医師が2回目に鉗子を滑脱させた後はE医師が術者を交代している。よって,初回滑脱後にE医師がF医師と鉗子手技を交代しなければならない注意義務はなかった。 エ本件鉗子分娩の手技に不適切な点はないことF医師は本件鉗子分娩の施行に際しE医師の指導に従い内診を行っ,,,て児頭の位置,児頭と膣壁間に何もないことを確認した上で,ネーゲレ鉗子の両葉を挿入,児頭に装着し,陣痛間欠期に試験牽引を実施して児頭が,,牽引に従って下降すること児心拍に異常を認めないことを確認した上で原告の陣痛に併せて骨盤 ないことを確認した上で,ネーゲレ鉗子の両葉を挿入,児頭に装着し,陣痛間欠期に試験牽引を実施して児頭が,,牽引に従って下降すること児心拍に異常を認めないことを確認した上で原告の陣痛に併せて骨盤誘導線に従い,鉗子柄に沿って水平に徐々に牽引,。 を行ったが少し下降したところでするっと抜けるように鉗子が滑脱したその後,F医師及び術者を交代したE医師においてそれぞれ1回づつ上記 と同様の手順で鉗子操作を行ったが,やはり抜けるように滑脱が生じた。 このように,E医師及びF医師は,正しく鉗子操作を実施したにもかかわらず,なお滑脱が生じてしまったものであるから,その手技に不適切な点はなく,むしろ,滑脱の原因は,原告が分娩誘導に協力せず,産痛等の影響で内診台の上で暴れたり,被告病院医師を足で蹴ったりしたためである。 (2)Dの死亡に係る因果関係の不存在Dの娩出後に帽状腱膜下血腫が発症したこと,3月9日の賛育会病院転送時においてDに硬膜下血腫,右脳の脳浮腫が存在していたこと,3月15日の時点でDに重度脳浮腫が生じ,これが原因となってDが脳死状態に陥ったことはいずれも認めるが,その余の原告主張の因果経過(ア)ないし(エ)については否認する。 以下のとおり,本件鉗子分娩とDが脳死状態に陥ったこと(重度脳浮腫を来したこと)との間の相当因果関係は否定されるべきである。 ア原告主張の因果経過(ア)に対し(ア)Dの帽状腱膜下血腫,頭蓋内出血の発生原因について新生児の帽状腱膜下血腫及び硬膜下血腫は,自然分娩に際しても起こり得るものであるから,鉗子分娩が実施された後にDに硬膜下血腫が生じたということだけで,それが本件鉗子分娩に起因するものといえるものではない。 かえって,①本件鉗子分娩は,適応,要約ともに満たされていたものであること,②娩出時において れた後にDに硬膜下血腫が生じたということだけで,それが本件鉗子分娩に起因するものといえるものではない。 かえって,①本件鉗子分娩は,適応,要約ともに満たされていたものであること,②娩出時においてDの頭部には擦過傷などの外傷はなかったこと,③鉗子の滑脱態様も水平滑脱で抵抗なくするっと抜けており,頭部外傷を惹起させるほどの圧力は加わっていないと思われること,④頭蓋骨骨折を起こすほど外力が加わらない限り外傷性に頭蓋内出血が生じることは考えられないことなどの事情に照らせば,本件鉗子分娩の手技によってD に帽状腱膜下血腫や頭蓋内出血を生じさせたとは断定できない。 それゆえ,鉗子分娩により帽状腱膜下血腫あるいは硬膜下血腫が生じたということはできない。 むしろ,原告の分娩時体重は非妊娠時から20㎏も増加しており,これにより骨盤内部に脂肪が付着して児頭が下降しづらくなり,下降に際して応形機能が過度に進展したであろうことは容易に想定されるのであって,このような経過で児頭に過剰な頭蓋変化が生じて帽状腱膜下血腫,硬膜下血腫を発症したと考えられる。 (イ)脳浮腫の発生原因が頭蓋内出血とは無関係であること3月9日に賛育会病院で撮影されたDの頭部CT検査では,右硬膜下血腫と右大脳半球の軽度浮腫があるに留まっていたものが,同じく賛育会病院で3月15日に撮影された頭部CT写真では大脳半球全域に重度の脳浮腫が見られており,この6日間に急速な病状の悪化があったことが窺われる。しかして,この両時点で右前頭側頭の円外蓋部に認められた硬膜下血腫の程度は,いずれもさほど大きくなく(最大の厚さ約4㎜(3月9日時点)ないし約6㎜(3月15日時点)程度である,この血腫が頭蓋内圧。)亢進を発症させたとか,重度脳浮腫の原因になったというのは考え難い。 仮に,3月9日時点で認め く(最大の厚さ約4㎜(3月9日時点)ないし約6㎜(3月15日時点)程度である,この血腫が頭蓋内圧。)亢進を発症させたとか,重度脳浮腫の原因になったというのは考え難い。 仮に,3月9日時点で認められた硬膜下血腫に起因して頭蓋内圧亢進,,,状態となり15日までに重度脳浮腫を発症したとすればその原因は3月9日の頭部CT検査によりDに頭蓋内出血が描出されているにもかかわらず,賛育会病院医師において,これがないものと判定し,適切な対応処置を行わず,痙攣重積等に進展させた上,痙攣に伴う低酸素状態の補正を実施しなかったことにあると考えられ,仮に賛育会病院で上記の症状経過に相応した適切な治療が実施されていれば,Dがその後に重度脳浮腫を発症することは回避できたといえるから,この点においても本件鉗子分娩とDの重度脳浮腫の発生との間に相当因果関係はない。 (ウ)Dの重度脳浮腫の発生原因賛育会病院が9月13日にDに対して実施したウイルス検査により,高値のサイトメガロウイルスIgM抗体が検出されている。それゆえ,Dの重度脳浮腫及びDの出生後に見られた痙攣,貧血,黄疸及び肝機能障害といった一連の症状についても先天性のサイトメガロウイルス感染によるウイルス性脳症と考えるのが合理的である。 (エ)なお,脳梗塞は,血栓等が脳の血管に詰まって発症するものであり,頭蓋内圧亢進が原因となって発症するものではないし,脳梗塞が原因となって壊死性脳症が発症するとの医学的根拠はない。加えて,賛育会病院において,3月15日にDが重度の脳浮腫を来していたことは認めるが,それは壊死性脳症と診断されるものではない。 イ原告主張の因果経過(イ)に対し,,本件鉗子分娩によってDに帽状腱膜下血腫が生じたとしてもその程度は貧血による低酸素症を来すほどに重度ではなかった。 れは壊死性脳症と診断されるものではない。 イ原告主張の因果経過(イ)に対し,,本件鉗子分娩によってDに帽状腱膜下血腫が生じたとしてもその程度は貧血による低酸素症を来すほどに重度ではなかった。 ウ原告主張の因果経過(ウ)に対し本件鉗子分娩時及びDの娩出直後において,Dには胎児仮死,新生児仮死の徴候はなかった。鉗子分娩が選択されたのも胎児仮死の状態にあったからではなく,分娩停止の状態に陥ったためであるし,また,出生時のDの全身状態は良く(アプガースコア9点,哺乳力も良好等,呼吸抑制もチアノー)ゼもなかった。よって,分娩期にDが出生後の脳浮腫を来すほどの低酸素状態に陥っていたとはいえない。 エ原告主張の因果経過(エ)に対し上記のとおり出生時においてDに仮死の症状は認められなかったから,Dがその後に痙攣発作を起こした原因が分娩遷延による低酸素によるものと考えることはできない。また,賛育会病院でDが痙攣重積の状態に陥った原因も,上記のとおり,サイトメガロウイルス感染あるいは同病院での治療処置 が不十分であったことに起因するものである。 (3)損害についていずれも否認又は争う。 被告の主張に対する原告の反論等(1)被告病院医師らの過失についてア帝王切開への移行について鉗子分娩は1回で確実に牽引,娩出できるところに吸引分娩と異なる利点があるのであり,逆に滑脱は児に対する危険な侵襲となるものである。 よって,1回で牽引できなければ即座に帝王切開に移行すべきである。 イ本件鉗子分娩時の手技の実施について被告は,本件の鉗子分娩の実施時において,術者において内診を行ったと主張するが,分娩開始前には「前方前頂位」であったものが,娩出時には前方後頭位になっていたというのに,児の回旋の状態が確認されたことを裏付ける記載は診療録上も 時において,術者において内診を行ったと主張するが,分娩開始前には「前方前頂位」であったものが,娩出時には前方後頭位になっていたというのに,児の回旋の状態が確認されたことを裏付ける記載は診療録上も何も残されていないのであって,これに実際に3回もの滑脱を繰り返したことも考え併せれば,F医師及びE医師が本件鉗子分娩の実施に際して児頭の位置,回旋の状況について十分に内診を尽くしていたとは考えられないし,そもそも3回も鉗子を滑脱させたことだけでも手技上の過誤があったというに十分である。 (2)因果関係についてア帽状腱膜下血腫及び頭蓋内出血の発生原因について被告は,自然分娩においても帽状腱膜下血腫あるいは硬膜下血腫が発生することもあるので本件鉗子分娩の手技に不合理な点があったとはいえないと主張するが,本件鉗子分娩は,合計3回にわたる滑脱という異常な経過をたどったものであるし,出生後ほどなく頭位が生下時から2.4㎝も肥大化するほどに重篤な帽状腱膜下血腫を生じていること,現に頭蓋内出血(硬膜下血腫)が生じていることからすれば,本件鉗子分娩ないし鉗子 の3回の滑脱によりDの頭部に過度の圧迫が加えられた結果,Dの頭部に重大な分娩外傷を生じさせたことは明らかというべきである。 イ頭蓋内出血の程度について被告は,Dの頭蓋内血腫がさほど大きくないので,これにより重大な頭蓋内圧亢進が生じるとは考えられないと主張するが,たとえ血腫の厚さが数ミリであっても,新生児にそのような頭蓋内出血が生じれば生命に一定の危険性を生じさせるものというべきである。 ウ賛育会病院の過失と被告の責任原因との関係について被告は,Dに重度脳浮腫が生じたのは,賛育会病院で痙攣や低酸素状態に対する適切な処置がされなかったためであるから,被告病院における鉗子分娩とDの重度脳浮腫の 院の過失と被告の責任原因との関係について被告は,Dに重度脳浮腫が生じたのは,賛育会病院で痙攣や低酸素状態に対する適切な処置がされなかったためであるから,被告病院における鉗子分娩とDの重度脳浮腫の発生との間には相当因果関係はないと主張する。 しかし,賛育会病院の過失行為が介在していたとしても,被告病院医師による過失がなければ,Dが賛育会病院に転院する契機となった硬膜下血腫あるいは頭蓋内圧亢進症状が現れることもなかったのであるから,被告病院医師による鉗子手技とDの重度脳浮腫の発生との間の相当因果関係は否定されない。 エサイトメガロウイルス感染について被告は,Dの重度脳浮腫が先天的なサイトメガロウイルス感染によるものであると主張するが,3月15日のDの頭部CT写真にはウイルス性脳症の所見は現れておらず,むしろ,重症蘇生後脳症の特徴を呈しているのであって,先天性のウイルス感染によりDの脳浮腫が生じたとの機序は否定されるべきである。 オD出生時のアプガースコアについて被告は,娩出時においてDのアプガースコアが9点であったと主張するが,出生時にアプガースコア9点であった新生児が,その後急激に痙攣重 積,重度脳浮腫に至るということは考え難いし,看護記録上のアプガースコアの記載は空欄とされており,また「新生児仮死蘇生術」が実施され,たとの記載もあるほか,レセプトの傷病名欄には「胎児仮死」と記載されていることからすれば,上記のアプガースコアの点数は信用できず,むしろ,Dは分娩時に胎児仮死に陥っていたというべきである。 第3当裁判所の判断 認定事実前記前提事実に証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められ,他に同認定を覆すに足りる証拠はない。 (1)原告の分娩経過等(甲A1,7,8,乙A1ないし4,19, 定事実前記前提事実に証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められ,他に同認定を覆すに足りる証拠はない。 (1)原告の分娩経過等(甲A1,7,8,乙A1ないし4,19,B15,23,証人E,鑑定の結果。なお,特に認定に用いた証拠は後掲かっこ内に再掲する)。 ア被告病院の外来受診経過等(ア)原告は,Cとの間で子を懐妊し,平成11年8月から,東京都新宿区所在の社会保険中央総合病院で2回ほど妊婦検診を受けた。なお,同病院においては,原告の分娩予定日は2月22日とされていた。 その後,原告は,同病院の紹介により1月19日に被告病院産婦人科を受診して,同科のJ医師による妊婦検診を受けた。J医師は,腹部エコー等を実施し,妊娠週数35週1日,児の推定体重は2196グラムで軽度の子宮内発育遅延(IUGR)があると判断した。 その後,原告は,定期的に被告病院産婦人科を受診してJ医師の検診を受けたが,母体側に貧血が認められた以外は原告及び胎児の状態は比較的順調に推移していた。 (イ)原告は,3月1日,被告病院産婦人科を受診し,同科のK医師の診察を受けた。K医師は,妊娠41週1日でビショップスコア0点であったことなどから頸管熟化不全と診断し,マイリス(子宮頸管熟化剤)を 投与した。 K医師は,出産予定日を約1週間超過しているにもかかわらず原告に出産の徴候がなかったことから,原告が外国人で日本語での会話が不自(「」。)由であったこともあって原告に同道していた劉聡以下劉というに通訳してもらい,原告に対し,出産予定日を超過していること,出産が遅れると分娩に支障を来すことがあるので入院して分娩誘発を行うことを考えておくべきであること,経膣分娩が上手くいかなければ帝王切開で分娩することもあり得ることなどを説明し を超過していること,出産が遅れると分娩に支障を来すことがあるので入院して分娩誘発を行うことを考えておくべきであること,経膣分娩が上手くいかなければ帝王切開で分娩することもあり得ることなどを説明した。これに対し,原告から,身内にも出産が遅れた者がいるし,入院しても日本語がよく分からないので2週間くらいは様子を見たいとの希望が出されたことから,結局,しばらく経過観察とし,それでも分娩に至らないようであれば,3月6日か7日に入院するということになった。 イしかして,原告は,その後も出産に至らなかったため,3月6日,分娩誘発による分娩介助を受ける目的で被告病院の産婦人科病棟に入院した。 入院時における原告の身体状況は,身長161㎝,体重65㎏(非妊娠時は45㎏,ビショップスコア4点,子宮口は開大1.5㎝,展退40)%,硬度はやや硬く,子宮口は後方と中央の中間,児先進部はstation-3という状態であった。 原告は,入院後,PGE錠(子宮収縮剤)を数回内服したが,陣痛は 生じるものの微弱で有効陣痛に至らなかった。なお,この時点で胎児には特段の異常は認められなかった。 ウ出産当日(3月7日)の分娩経過等(ア)同日の病棟担当医であったE医師は,午前8時10分ころ原告を診察し,予定日を大幅に経過しているため薬で陣痛を促して出産した方が良いこと,初産であり娩出まで長時間かかることが予想されるので,その間に問題が生じれば帝王切開で娩出することもあり得ることを説明 ,()。 し午前9時ころからアトニン陣痛誘発促進剤の継続投与を行ったその結果原告に有効陣痛が現れ午後3時30分ころには破水となっ,,たため,原告は午後5時を過ぎた後,分娩室に移動した。 なお,原告の分娩に際しては,J医師,E医師及びF医師が立ち会うことになった。 の結果原告に有効陣痛が現れ午後3時30分ころには破水となっ,,たため,原告は午後5時を過ぎた後,分娩室に移動した。 なお,原告の分娩に際しては,J医師,E医師及びF医師が立ち会うことになった。 (イ)E医師は,午後5時45分ころ,原告を内診したが,子宮口は全開大には至っておらず,また,その時点で胎児には産瘤が認められ,産道,,()に固定され大泉門は11時方向で中在頭位で回旋異常前方前頂位があることが分かったが,児心拍は安定していたことから,しばらく経過観察とした(乙A2,p10。 )なお,このころ,E医師は,原告から産痛が強いので帝王切開にして欲しい旨を求められたが,J医師,F医師と協議した結果,依然,経膣分娩の適応があるものと判断されたとして,立会していた劉に通訳してもらい,その旨を原告に伝えた。 しかし,その後も分娩は進行せず,午後7時ころ,産痛緩和・産道弛緩を目的として硬膜外麻酔が施行された(キシロカインの投与。なお,原告にキシロカインが投与されたのは,この1回のみでこの後に硬膜外麻酔は施行されなかった。 。)午後7時50分ころになって,ようやく子宮口が全開大となり,児頭先進部はstation±0前後の位置まで下降してきてはいたが(乙A2,p33,依然として陣痛は微弱であり,また,原告も,分娩誘導に従)えない状態であったことから,被告病院医師らは,分娩停止の状態にあるものと判断し,クリステレル圧出法と併用した鉗子分娩の方法で児を娩出させることとした。なお,原告の分娩において児頭骨盤不均衡はなかった。 (ウ)午後8時40分ころから原告に対する鉗子分娩が開始されたが,E 医師は,研修医であったF医師に鉗子分娩を経験させる目的で,実際の手技をF医師に実施させ,自身はF医師の脇に付いて手技等を指導する 午後8時40分ころから原告に対する鉗子分娩が開始されたが,E 医師は,研修医であったF医師に鉗子分娩を経験させる目的で,実際の手技をF医師に実施させ,自身はF医師の脇に付いて手技等を指導することとした。なお,E医師は,本件鉗子分娩までに300例近い鉗子分娩の経験を有していたが,F医師は,同時点まで経膣分娩を数十例担当したことはあったが,鉗子分娩については経験がなく,本件鉗子分娩が最初の症例であった。 ,,。 F医師はE医師の指導の下原告に対する最初の鉗子分娩を試みたその際の,F医師の内診の結果は,station+1で,前方前頂位であった(乙A2,p34。乙B15,証人Eには,自らが内診したところ,その時点の児頭の位置は低くともstation+2と3の間,中在位と低在位の境目であったとの部分がある。F医師は,内診後,鉗子を挿入。)し,牽引を試みたが,鉗子を滑脱させてしまい,再度,鉗子を挿入して牽引を試みたもののまたも鉗子を滑脱させてしまった。そのため,E医師が術者を交代し,3回目の鉗子の挿入,牽引を試みたが,原告の体動等の影響で同医師も鉗子を滑脱させてしまい児を娩出できなかった。E医師は,その後に試みた4回目の鉗子による牽引とJ医師によるクリステレル圧出法の施行により,午後9時06分ころ,Dを娩出させた。なお,クリステレル圧出法が合計5回施行された。 (E医師のF医師に対する指導の具体的な内容,E医師が内診を実施したか,E医師が,その児頭の位置をどのように判断したか,その際の児頭の正確な位置,試験牽引の実施の有無,試験牽引の実施者,滑脱の具体的な態様,原因,原告の当時の状況等の鉗子分娩の実施の具体的な経緯については,原告と被告との間で事実関係に争いがあるが,被告病院医師らの過失の有無に密接に関連する争点であるので,後記2 ,滑脱の具体的な態様,原因,原告の当時の状況等の鉗子分娩の実施の具体的な経緯については,原告と被告との間で事実関係に争いがあるが,被告病院医師らの過失の有無に密接に関連する争点であるので,後記2(1)において,必要な限度で認定する)。 なお,出産後における原告の附属物所見は,羊水について量は普通で あったが緑色に混濁している,胎盤は重さ690gで特に異常はない,臍帯は長さ69㎝,太さ1.0㎝で結節はなく,巻絡は頸部に1回(巻絡につき,乙A2,p34,弁論の全趣旨(被告が認めている。こ。)れに反する乙A1,p5は採用しない,というものであった。 。)(エ)本件鉗子分娩中に測定されていたパルトグラム上は,鉗子の滑脱が発生する以前には,児に変動一過性徐脈は認められるもののバリアビリティー(基線細変動)は認められていた。また,鉗子分娩に着手した後は,鉗子の滑脱に併せるように児に高度変動一過性徐脈が出現し,滑脱を繰り返すごとに徐脈の程度は悪化していたが,娩出直前までには児心音も回復しており,また,バリアビリティーも維持されていた。 (乙B23,証人E,鑑定の結果)(オ)その後,原告は,3月14日,被告病院を退院したが,前日の13日に実施された原告の臍帯と胎盤の病理組織検査の結果は,組織学的診断として臍帯の局所血腫と胎盤の軽度石灰化があるというものであった。 (カ)被告は,原告の分娩介助に係る診療報酬請求に際し「胎児仮死」,を傷病名とした保険請求を行った。 (2)出生後のDの被告病院における診療経過等(甲A1,7,8,乙A2ないし5,19,B15,23,証人E,S鑑定人)アDの娩出直後の状況,,. ,(ア)出生時におけるDの身体状態は体重3542g身長500㎝頭囲35.0㎝,胸囲35㎝,外表奇形(-,自 し5,19,B15,23,証人E,S鑑定人)アDの娩出直後の状況,,. ,(ア)出生時におけるDの身体状態は体重3542g身長500㎝頭囲35.0㎝,胸囲35㎝,外表奇形(-,自発啼泣あり,顔面表)皮に鉗子による傷跡が2か所あり,頭部産瘤(+)頭部全体にあり,全身色暗赤色(乙A4,p14。ただし,その後ピンク(同,p6,))四肢末端チアノーゼ(+,抹梢冷感(+,筋トーヌス中,バビンス))(),(),(),(),キ反射±哺乳反射+吸啜反射+引き起こし反射◇2 把握反射左右とも+モロー反射左右とも+呼吸数やや連迫乙(),()(A4,p14。ただし,その後規則的(同,p6,自発運動活発,))リトラクション(陥没(-,臍出血(-,黄疸なし,嘔吐なし,浮))),,,,腫なし大泉門正常右下肺野にラ音聴取腹部正常というものであり全身状態は安定していた(なお,3月8日午前0時30分ころには哺乳力も良好であると認められた。 。)F医師は,上記の所見に照らし,四肢末端にややチアノーゼが認められたことから,アプガースコア評価基準中の「皮膚色」について1点と,,()し他の判定項目は全て2点と評価してDのアプガースコア1分値を9点と判定した。 (イ)Dは3月7日午後9時35分ころ観察目的でクベース(保育器)に収容され,吹き流しで酸素投与がされたが,同時点におけるDのバイタ,. ,(),,()ルサイン等は体温362℃啼泣+心拍数148心雑音-で肺音は清明であった。 (ウ)さらに,同日午後10時18分ころ,原告の臍帯血(静脈血)検査が施行されたが,その結果は,別紙3「検査結果一覧表」の同日(臍帯血)欄記載のとお 拍数148心雑音-で肺音は清明であった。 (ウ)さらに,同日午後10時18分ころ,原告の臍帯血(静脈血)検査が施行されたが,その結果は,別紙3「検査結果一覧表」の同日(臍帯血)欄記載のとおりであり,異常なしと判定された。 なお,この際,原告の臍帯血検査については静脈血検査は実施されたが,動脈血検査(ガス分析)は実施されなかった。 イF医師は,3月8日午前中,Dを診察し,全身状態は安定しているものと判断したが,頭部全周に血腫様症状を認めたため,被告病院小児科にコンサルトした。小児科のF医師は,Dを診察し,全身状態は良好で手足もよく動く,大泉門の膨隆なし,モロー反射正常,排尿排便あり,出血傾向なし,頭全周囲に浮腫を認め,産瘤と帽状腱膜下血腫の疑いと診断し,今後,頭囲計測・脈拍・呼吸数・貧血・黄疸・尿などに注意するよう指示して経過観察とした。 しかして,F医師は,同日午後4時ころ,新生児室にいるDの頭囲の状況を確認したところ,生下時より約2.4㎝大きくなっていることが判明したことなどから,Dの頭部症状について精査の必要を感じ,被告病院と提携関係にあり,NICU(新生児集中治療室)の設備を有し,また,新生児専門医も揃っている賛育会病院に電話し,小児科のH医師との間でDの状態について協議するとともに,H医師からいつでも賛育会病院で受入可能であるとの了解を得た。 ウその後,Dは,啼泣・発汗が多くなってきたほか,左上下肢に痙攣様の動きが生じたことから,3月9日午前0時ころ,指にサチュレーションモニターが装着された(同時点でのSO2(酸素飽和度)は100%,心拍数は130台。その後,Dは,同日の朝方にかけて,SpO2値が60,4) 30台%と低下するが刺激により回復するといったことがあり午,()(前2時30分ころ, 度)は100%,心拍数は130台。その後,Dは,同日の朝方にかけて,SpO2値が60,4) 30台%と低下するが刺激により回復するといったことがあり午,()(前2時30分ころ,その後も同数値が65%,80%といった低値を示)すこともあったほか,左上下肢の痙攣様発作と思われる動きが頻繁に見られるようになった。 I医師は,3月9日午前9時20分ころ,F医師の申し送りを踏まえてDを診察したが皮膚色はやや蒼白で大泉門は平滑だが緊張がやや強かっ,,たこと,血腫が後頭部にまで拡がっていたこと,四肢強直が認められたこと,下肢の位置(Position)も正常範囲でないと判断され,モロー反射も一相のみであったことなどから,分娩外傷と頭蓋内圧亢進症状があり,軽くても頭蓋内出血の疑いもあると判断し,NICUの設備が整っている賛育会病院にDを転院させて管理,精査した方が安全であると考え,午前10時40分ころDを同病院に救急搬送した。 (3)賛育会病院におけるDの診療経過等(甲A1ないし8,乙A5,B5,証人L及び同Hの各供述書,P鑑定人)アDは,3月9日午前11時05分ころ,賛育会病院に搬送され,同病院 小児科のNICU(新生児集中治療室)に入院し,同病院のL医師の診察と採血等を受けた後,クベースに収容されて酸素投与(30%,輸液管)。 ,,,,理を受けたなおL医師はDを診察し胸部聴診では異常を認めない肝脾は触れない,筋緊張の亢進や低下なし,モロー反射あり,意識明瞭,啼泣あり,哺乳不良,バイタルサイン異常なしと診断した。L医師は,チ,,アノーゼや努力呼吸が認められなかったので呼吸心拍モニターを用いて児の状態を把握し,他に,サチュレーションモニターの装着や動脈血液ガス分析検査を実施しなかった。 イしか した。L医師は,チ,,アノーゼや努力呼吸が認められなかったので呼吸心拍モニターを用いて児の状態を把握し,他に,サチュレーションモニターの装着や動脈血液ガス分析検査を実施しなかった。 イしかして,Dは,同日午後0時45分ころから,右半身を中心に痙攣様の症状を起こすようになったため,セルシン(抗痙攣剤)等の薬剤投与による痙攣の鎮静が試みられたが,手の痙攣が治まっても足のピクつきが残,。 るなど十分な鎮静ができず痙攣の再発と抗痙攣剤の投与が繰り返されたまた,このころにはDに黄疸が認められたことから,光線療法が併せて施行されることになった。 ウL医師は,同日午後1時すぎころ,上記の治療と並行してDについて頭部CT検査を実施したが,その画像を検討した結果,有意な病変はないと判断し,痙攣が継続的に現れていること,入院時血液検査によりGOTが111,GPTが35,LDHが1643,CPKが6601といずれも(,。)基準値を越える異常値特にLDH値CPK値は著明に高値であったであったことなどから,Dについて娩出時にかなり強い仮死があり,その時点で発症している痙攣も仮死による低酸素症で脳浮腫を来した結果生じているのではないかと疑った(以下,同日に撮影されたDの頭部CT写真を「3月9日CT」という。なお,賛育会病院放射線科では,3月15日に,3月9日CT写真について「rt-tempolo-frontalside(右前側頭部),にsubduralhematoma(硬膜下血腫)andsubcutaneoushematoma(皮下血腫)あり」との画像診断をした。 。 。) エその後もDの痙攣は抗痙攣剤により十分コントロールができない状態が続き,同日夕方ころからは,両足の自転車こぎ様運動と両手の手まねきするような運動や非常 り」との画像診断をした。 。 。) エその後もDの痙攣は抗痙攣剤により十分コントロールができない状態が続き,同日夕方ころからは,両足の自転車こぎ様運動と両手の手まねきするような運動や非常に早い眼球の回転運動が認められるようになったこと,,(),からL医師はアレビアチン抗痙剤の定時静注を指示するとともにデカドロン(脳浮腫改善用副腎皮質ステロイド剤)を静注して経過観察とした。 しかし,それでもDの痙攣は治まらず,同日午後10時ころからは,全身性の強直間代性の痙攣を繰り返すようになった。そのため,L医師は,痙攣の解消を最優先とし,ホリゾン,アレビアチン(いずれも抗痙攣剤)の投与により痙攣の解消を行っていたが,3月11日午前中には,これらの投薬でも痙攣が抑制できない状態となったことから,同日9時10分ころ,気管内挿管を行って呼吸管理を施した後にキシロカイン(麻酔薬)の。 ,,,点滴を開始したしかし同治療によってもピクつきは治まらずさらにラボナールをワンショット(注射器でラインから静注すること)で投与して,ようやく痙攣が治まるといった状態となった。そのころ,体温及び心拍はほぼ正常であったが,呼吸数は10日昼ころまでは38~60回/分であったが,その後,痙攣の関係もあり,速拍,不規則で,60~76回/分となり,11日午前は49,52回/分とやや回復した。 オこのような経過から,L医師は,そのころまでに,痙攣重積状態となったと判断し,その解消を図るため,3月11日午前11時ころから,Dを人工呼吸管理下に置き,バルビツレート療法(中枢神経抑制薬であるラボナールの持続静注を内容とするもの)を開始した。L医師は,そのころから,二酸化炭素分圧モニター,サチュレーションモニターにて低酸素血症を24時間監視したが,問 ツレート療法(中枢神経抑制薬であるラボナールの持続静注を内容とするもの)を開始した。L医師は,そのころから,二酸化炭素分圧モニター,サチュレーションモニターにて低酸素血症を24時間監視したが,問題はなかったため,3月15日まで,動脈血液ガス分析検査を実施しなかった。 バルビツレート療法の結果,Dの痙攣重積は鎮静を見たことから,L医 師は,同月12日午前中をもってラボナールの投与を中止して同療法の施行を終了とした。 カDは,バルビツレート療法の施行中は,中枢神経抑制剤の影響もあり自発呼吸,瞳孔反射,咽頭反射,自律排尿はない状態となっていた。 しかして,同療法終了後,1日あるいは2日程度経過することで,これらの神経症状は回復するのが通常であるにもかかわらず,療法中止後2日を経過してもDには自発運動や自力排尿はもとより,自発呼吸や対光反射も戻らず,瞳孔も散大したままで,回復の徴候も窺えない状態となった。 さらに,Dについては,3月12日午前3時ころの触診で大泉門が緊満状態にあると診断され,以後も同様の状態が続いていた。加えて,3月14日実施された血液検査によりCRP値が高値を示し,体内に何らかの炎症が起こっていることが疑われたほか,同月14日に実施した脳の超音波検査によっても広汎な虚血性変化が疑われる所見が得られた。 そのため,L医師は,Dのバルビツレート昏睡からの回復が遅れている原因として頭蓋内変化を疑い,同月15日,検索のため2回目の頭部CT検査を実施した(以下,同日に撮影されたDの頭部CT写真を「3月15日CT」という。そのCT写真は,は大脳領域全体,小脳及び脳幹に。)わたって浮腫が広がり,右前側頭部に最大厚約6㎜の頭蓋内出血が生じて(,いることが認められるものである賛育会病院放射線科による診断所見は「Cortico-m は大脳領域全体,小脳及び脳幹に。)わたって浮腫が広がり,右前側頭部に最大厚約6㎜の頭蓋内出血が生じて(,いることが認められるものである賛育会病院放射線科による診断所見は「Cortico-medullaryjunction(皮質-髄質接合部)が不明瞭で脳室が見え。 ()()ていないCorticalsulci皮質溝にhighdensityarea高吸収領域が見られ,くも膜下出血よりは静脈還流異常が示唆されていると見られ,急性(壊死性)脳症を疑う」というものであった。 。 。)L医師は,同月16日,上記のCT所見に加え,同日になっても自発呼吸はなく,対光反射,角膜反射のいずれも戻らず,瞳孔も散大した状態であったことなどから,Dについて臨床的には脳死状態にあると診断した。 キL医師は,Dの頭蓋内病変の意義及び原因を精査するため,3月21日と22日の両日,Dを杏林大学医学部付属病院小児科に転院させ,同科の野村優子医師に診断を依頼した。 杏林大学においては,Dに対し,同日には脳血流シンチグラム検査が,同月22日には頭部MRI検査が実施されたが,その結果は,脳血流シンチについて「両側大脳半球のperfusion(潅流)の低下が見られる。成,人に比しこの時期のテント上部の血流は正常でも脳幹部に比し集積は乏しいことが知られていますが,他の所見とあわせれば,やはり病的所見と考えます」というものであり,また,MRI検査結果の診断としては「2。 ,W1にてテント上部と中心に皮質下~深部白質に高信号が広がっており,T1Flair像ではこの領域は低信号を示しており,ほぼ水のsignalとほとんど同じものと考え,著しい浮腫か脳軟化があるものと考える。脳幹部及び両側頭頂葉部の円蓋部には正常実質が残存している。両側頭頂部に腱 ir像ではこの領域は低信号を示しており,ほぼ水のsignalとほとんど同じものと考え,著しい浮腫か脳軟化があるものと考える。脳幹部及び両側頭頂葉部の円蓋部には正常実質が残存している。両側頭頂部に腱膜下血腫を認める。急性脳症と考える」というものであった。 。 (4)Dの死亡に至る経緯等(甲A3,乙A5)Dは,その後,賛育会病院で呼吸管理等を受けながら入院治療を継続していたが,痙攣などの神経症状は収まりを見せたものの,自力呼吸はなく,各種の反射も戻らなかった上,脳組織の融解による脳萎縮が進み,医学的な脳機能の回復は全く期待できない状態のまま推移していた。 なお,Dについては,9月1日ころウイルス検査が実施されたが,その結果サイトメガロウイルスが検出された(なお,3月24日にDの髄液検査が実施されたが,その際はウイルスの分離はされなかった。 。)Dは,その後も感染症を繰り返し発症していたところ,平成13年1月末,,ころに発症した肺炎をきっかけに横紋筋融解を併発して腎不全に陥りまた血小板減少症に伴う出血傾向も進み,平成15年11月8日ころに発症した肺炎及びそれに続く肺出血により,同月25日午前2時10分に死亡が確認 された。 (5)その余の診療経過(乙A1ないし5,弁論の全趣旨)ア平成11年8月18日から平成13年4月4日までの被告病院(平成11年8月18日から平成12年1月18日までは社会保険中央総合病院における診療経過)における原告及びDに対する診療経過は,診療経過(入通院状況・主訴・所見・診断)欄のうち,斜体で記載されている「+」を「」,「()」それぞれ++と訂正するほか別紙1診療経過一覧表被告病院分(ただし,下線部は除く)記載のとおりである。 。 平成12年3月9日から平成15年11月25日までの 」を「」,「()」それぞれ++と訂正するほか別紙1診療経過一覧表被告病院分(ただし,下線部は除く)記載のとおりである。 。 平成12年3月9日から平成15年11月25日までの賛育会病院におけるDに対する診療経過は,別紙2「診療経過一覧表(賛育会病院分」)(ただし,下線部は除く)記載のとおりである。 。 イ補足説明別紙1「診療経過一覧表(被告病院分」に記載された事実の一部及び)「()」,別紙2診療経過一覧表賛育会病院分に記載された事実については当事者間に争いがないが,直接事実ではないので,証拠及び弁論の全趣旨により,上記アのとおり認定した。 特に,3月9日,10日及び11日明け方にDが痙攣重積状態に陥った事実については,前提事実(7)ウ(ウ)の痙攣重積の定義と証拠(乙A5,証人L及び同Hの各供述書)により認められるDの症状経過からして,上記時点でDが痙攣重積状態であったと断定することはできない。 被告病院医師らの過失の有無について前記前提事実及び上記認定事実(以下「前提事実等」という)並びに鑑定。 の結果(なお,本件で実施された鑑定は,M大学附属病院産婦人科講師のN医師(産婦人科,O大学医学部教授のP医師(小児神経科,Q大学教授(R))大学名誉教授)のS医師(小児・新生児科)の3名の鑑定人により実施されたいわゆるカンファレンス方式による鑑定である。以下,個々の鑑定人の意見を 引用するときには「N鑑定人」のようにいう)に基づいて,まず,原告主張。 に係る被告病院医師らの過失の存否について検討する。 (1)本件鉗子分娩の術者の選択における過失の有無についてア証拠(甲B14,17ないし20)によると,鉗子分娩についての鉗子摘位について,次の事実が認められる。 低位鉗子(大横径は峡平面に る。 (1)本件鉗子分娩の術者の選択における過失の有無についてア証拠(甲B14,17ないし20)によると,鉗子分娩についての鉗子摘位について,次の事実が認められる。 低位鉗子(大横径は峡平面に属する(低在。児頭先進部はstation+)2より下にあり,児頭と仙骨の凹面にはすき間がない)については一般。 ,(()。 に鉗子適位とされているが中位鉗子大横径は濶平面に属する中在頭部先進部は坐骨棘の高さからstation+2までにあり,児頭と仙骨の凹面にはすき間がある)については賛否両論があり,初心者にも可とは言。 い難い,術者が熟練者で帝王切開に切り替えられる準備の下で行うのであれば母胎の予後を悪くする手技とはいえないとの意見があり,station+2前後でも,児頭の回旋や進入の状態によっては,牽引に対する抵抗が大きいことがあり,娩出に時間を要し,技術的に難しく,鉗子分娩に習熟している者が選択することとなるとの意見もある。 なお,前方前頭位などでは,高度の応形変化をきたし,stationが下降しているように見えても実際の児頭最大周囲径の位置は高く,下降していない。 (),,イ①上記アに鑑定の結果N鑑定人を加えると回旋異常のある場合の児頭最大周囲径の位置は回旋異常のない場合の同一stationの児頭最大周囲径の位置より高く,その意味で鉗子分娩の実施は回旋異常がない場合に比してより難しくなり,牽引の手技も回旋異常のない場合より難しいと考えられているところ,本件においては,前方前頂位という回旋異常が認められること,②鑑定の結果(N鑑定人)によると,産瘤についても,児頭最大周囲径の高さの点においても,手技の点においても,鉗子分娩の実施を困難とさせる事情と認められるところ,本件においては,上記1(1)ウ (イ) の結果(N鑑定人)によると,産瘤についても,児頭最大周囲径の高さの点においても,手技の点においても,鉗子分娩の実施を困難とさせる事情と認められるところ,本件においては,上記1(1)ウ (イ)記載のとおり児には産瘤が認められたこと,③児頭先進部は低くともstation+2と+station3の間(乙B15,証人E,と中位鉗子と低位)鉗子の中間であったこと,そうであるのに,④F医師は術者として鉗子分娩を実施するのは原告の分娩が初めてであったことが認められる。 以上の事実によれば,本件鉗子分娩は,乙B15,証人Eを採用するとしても,児頭最大周囲径の位置との観点から見ても,要約を満たすことについて医学的にも承認されている典型的な低位鉗子と同視し得る症例でないことは明らかで,逆に,要約を一般的に満たさないとはいえないまでも賛否両論があり,要約を満たすとの見解も,多くは熟練者が実施する必要がある,又は,初心者が実施すべきでないとしている中位鉗子と同視すべきケースであったといえる。かかる事情に加え,児に回旋異常及び産瘤が,,あったので牽引の方法に困難が伴うことを考え併せれば本件鉗子分娩は鉗子分娩の経験の豊富な熟達者によって実施されることを要するものというべきであって,鉗子分娩の経験がない医師に研修をさせる目的で実施させる症例としては不適切と解するのが相当である(N鑑定人。 )ウ被告の主張について(ア)これに対し,被告は,F医師が鉗子分娩を施行するに際しては,経験豊富なE医師が指導していたのであるから,鉗子分娩の要約に欠けるところはないし,不適切でもなかったと主張する。 しかし,E医師が指導者としてF医師の手技等について指示,監督をしていたとしても,証人Eが認めるとおり,実際の最終的な牽引の手技に当たるのがF医師一人であることに変わ 不適切でもなかったと主張する。 しかし,E医師が指導者としてF医師の手技等について指示,監督をしていたとしても,証人Eが認めるとおり,実際の最終的な牽引の手技に当たるのがF医師一人であることに変わりはなく,牽引に際し,鉗子で頭部を挟む際の強さ,鉗子を牽引する方向,牽引の強さ,牽引のタイミング等は,実際に実施する者の手技にかかるものであるから,指示,監督によって,ある程度の修正はできるとしても,完全にその具体的な内容を決定することは事の性質上不可能であること,現にF医師は2回 ,,にわたり鉗子を滑脱させていることにも照らせば証人Eの供述どおりE医師が最終的な牽引以外の点について共同して実施するなどして,事細かに指導医として関与したとしても,F医師が術者として本件鉗子分娩を実施したことが不相当であったとの上記認定は左右されない(N鑑定人も結論において同様である。 。)(イ)また,被告は,本件鉗子分娩において,児頭は,station+2からstation+3の間にあり,母児にとって安全な低在位から中在位にあったから鉗子適位にあったと主張する。 しかし,上記アで認定判断したとおり,station+2からstation+3の間に児頭先進部がある場合は,必ずしも鉗子適位であったとはいえないというべきであるし,回旋異常,産瘤が認められることからすると,より難易度が高いことは,上記イで検討したとおりであって,被告のこの見解は採用しない。 エ以上によれば,鉗子分娩の経験のないF医師が術者となって本件鉗子分娩を行ったことは臨床医学的に相当でなかったといえるから,F医師が本件鉗子分娩を実施したこと(E医師が研修の一環としてF医師に実際の鉗子手技を委ねたこと)は,被告病院医師らの過失を構成するというべきである。 よって,この点に関する原告の たといえるから,F医師が本件鉗子分娩を実施したこと(E医師が研修の一環としてF医師に実際の鉗子手技を委ねたこと)は,被告病院医師らの過失を構成するというべきである。 よって,この点に関する原告の主張は理由がある。 (2)早期に帝王切開術に移行しなかった過失の有無原告は,遅くともF医師による2回目の鉗子分娩が滑脱により不成功に終わった時点で速やかに帝王切開術による分娩に移行する注意義務があったところ,被告病院医師らにおいては,これを行わなかったと主張する。 この点,被告病院医師らが,F医師において2回にわたり鉗子を滑脱させた後も帝王切開術に移行せず,E医師による3回目の鉗子分娩が継続されたことは原告主張のとおりであるしまた前提事実(7)ア(イ)(ウ)オ(ア),,,, 及びN鑑定人によれば,鉗子分娩が鉗子の滑脱により失敗すれば,それが被告が主張するように抵抗なくするっと抜けた場合であっても,当然のことながら児にとっての外的ストレスとなるばかりでなく,分娩外傷の原因ともなり得ること,それゆえ,鉗子分娩は1回で成功させることが手技選択の前提とされていることが認められる(なお,抵抗なくするっと抜けた場合についての判断の根拠の詳細は,下記3(2)イ(エ)dで説示する。 。)一方で,一般的に鉗子滑脱が1回でも発生した場合,すべからく鉗子分娩の適応,要約が欠けることになり,他方で帝王切開の適応が当然に満たされることになるとの医学的知見の存在を認めるに足りる証拠はなく,また,本件において2回目の滑脱が生じた段階で帝王切開の適応が肯定される状態にあったことを窺わせるに足りる的確な証拠も見当たらない。加えて,F医師が滑脱を繰り返した後に3回目に鉗子手技を担当したE医師は,結果的には3度目の滑脱を起こしたものの,鉗子分娩について30 る状態にあったことを窺わせるに足りる的確な証拠も見当たらない。加えて,F医師が滑脱を繰り返した後に3回目に鉗子手技を担当したE医師は,結果的には3度目の滑脱を起こしたものの,鉗子分娩について300例近い経験を有していたというのである。 このような事情を総合すれば,F医師による2回目の滑脱後に被告病院医師らにおいて直ちに帝王切開術に移行すべき注意義務があったとまでは認めるに足りないといえるから,原告の上記主張は採用することができない(なお,N鑑定人も,鉗子滑脱があった際は,次は確実に児を娩出させなければならないが,それは必ずしも帝王切開を選択すべきという意味ではなく,次の手技で確実に鉗子装着を行い,児を娩出できると判断できた場合は鉗子分娩を続行するのも決して判断として誤りではないとの意見を述べている。 。)(3)術者を交代しなかった過失原告は,E医師は,F医師が初回の鉗子を滑脱させた段階で,速やかに同医師と交代して鉗子分娩に当たるべき注意義務があったと主張する。 この点,E医師においては,F医師の初回滑脱後,再度,同医師に鉗子手技を委ねたことは前提事実(2)イ(エ)及び上記1(1)ウ(ウ)に認定したとおり であるが,上記(1)のとおり,本件鉗子分娩は,そもそもF医師が担当するに相当でない症例であったといえること,上記(2)のとおり,鉗子の滑脱は児にとって一定の危険性を有するものであるから,原則として鉗子手技は1回で成功させるべきであるとされている手技であること,E医師は,分娩室に臨場しており,いつでもF医師と交代して鉗子分娩を続行することが可能であったといえること等の諸事情に照らしてみれば,E医師には,F医師が初回の滑脱をした時点で術者を交代すべき注意義務があったというべきである。 しかして,E医師は,上記のとおり,引き続い ことが可能であったといえること等の諸事情に照らしてみれば,E医師には,F医師が初回の滑脱をした時点で術者を交代すべき注意義務があったというべきである。 しかして,E医師は,上記のとおり,引き続いてF医師に鉗子分娩の手技を委ねたというのであるから,このことはE医師の過失を構成するといわなければならない(N鑑定人。 )(4)鉗子分娩の手技上の過失原告は,被告病院医師らにおいて,3回にわたって鉗子を滑脱させたことは手技上の過失を構成すると主張する。 この点,鉗子分娩に際して鉗子が滑脱するといったことは,鉗子が正常な位置に装着されていない場合,牽引の方向を誤った場合あるいは児頭骨盤不均衡や回旋異常など牽引によっても児の下降が見られない状態で無理な牽引を行った場合以外は想定しにくく,それゆえ,鉗子分娩の際は鉗子を充分に深く装着することが重要であり,また,既に鉗子装着の時点で産瘤が形成されているような場合は牽引手技はもとより装着の段階から高度のテクニックが要求されることが多いことが認められる(N鑑定人,弁論の全趣旨。 )また,N鑑定人によると,内診により鉗子の装着がきちんとかかっていたことが確認されていれば滑脱が起こることは一般的には考えにくいと認められる。 しかるに,本件において,被告病院医師らは合計3回にわたって鉗子を滑脱させたというのであるところ,そのような事態は鉗子分娩において通常発 生し得ない(あるいは発生させてはならない)ものといえるから,このような経過をたどった理由について医療機関において鉗子の滑脱が手技の誤りによって生じたものでないことを合理的に窺わせる特段の事情がない限り,鉗子装着の誤り,又は牽引方法の誤り(あるいは両者)があったことを合理的に推認させるというべきである。 これに対し,被告は,本件鉗子分娩においては, でないことを合理的に窺わせる特段の事情がない限り,鉗子装着の誤り,又は牽引方法の誤り(あるいは両者)があったことを合理的に推認させるというべきである。 これに対し,被告は,本件鉗子分娩においては,原告が体を動かしたりしたために鉗子が滑脱したものであると主張し,乙B15,証人Eには,それに副う部分もあるが,仮に,原告の体動が鉗子の滑脱を招来する程のものであれば,被告病院医師らにおいても十分認識し得るものであるから,そのような状況下において鉗子分娩を選択するのであれば,麻酔等によって原告の(。 ,鎮静を図ってから実施する必要があるというべきであってN鑑定人なおN鑑定人によると,午後7時ころに投与された硬膜外麻酔の効力は本件鉗子分娩着手時においては,その効力が減退していたと認められる,そのよ。)うな鎮静処置も講じないままに結果的に産婦側の体動の影響もあって鉗子が滑脱したとしても,そのことをもって滑脱を正当化することができるものではなく,むしろ原告の上記の状態を踏まえないまま鉗子分娩に着手したこと自体が手技の適切さを欠くものといわなければならない。 よって,被告主張の事情を前提としても,鉗子の滑脱が被告病院医師らの手技の誤りによって発生したものでないことを合理的に基礎付けることはできず,他に本件全証拠を検討しても,上記特段の事情の存在を認めるに足りる証拠はない。 よって,本件鉗子分娩の手技の誤りをいう原告の主張は理由がある。 (5)以上のとおりであるから,被告病院医師らには,本件鉗子分娩の実施に際し,鉗子分娩が同手技の経験が全くなかったF医師において施行した点,同医師が鉗子を滑脱させた時点でE医師が術者を交代しなかった点及びその鉗子分娩において滑脱を3回も繰り返すなどした点において,過失があると いわなければならない。 本件 において施行した点,同医師が鉗子を滑脱させた時点でE医師が術者を交代しなかった点及びその鉗子分娩において滑脱を3回も繰り返すなどした点において,過失があると いわなければならない。 本件鉗子分娩とDの死亡との間の因果関係の存否について(1)3月15日の脳浮腫とDの死亡結果との間の因果関係前提事実(4)ウ及び上記1(3)カによれば,Dは,賛育会病院入院中の3月15日に大脳領域全体に広がる重度の脳浮腫を来していると診断されたこと(以下,同日にDの脳に認められた脳浮腫を「重度脳浮腫」ということがある,各種の反射や自発呼吸が消失するといった重篤な神経症状を発症し,。)同月16日には臨床的脳死状態にあると判断されたこと,その後,Dは,脳萎縮が進展して自発呼吸も戻らないまま,賛育会病院において呼吸管理を受けながら生命維持を中心とした治療等を受けていたが,その間も頻回に感染症を発症していたこと,Dは平成13年1月末ころに発症した肺炎をきっかに横紋筋融解,腎不全を合併し,血小板減少症に伴う出血傾向も進み,平成15年11月8日ころに発症した肺炎及びそれに続く肺出血を起こして同月25日に死亡したことが認められる。 上記の経過からすれば,Dの直接死因は肺炎及び肺出血による呼吸循環障害であったといえ,重度脳浮腫そのものが直接原因となって死亡に至ったものということはできないが,重篤な脳障害により呼吸機能,嚥下機能等が障害されると易感染性,免疫力の低下,呼吸循環障害,重度発達遅滞を来す場合があること(S鑑定人,P鑑定人)を考え併せれば,Dは,重度脳浮腫に起因して臨床的脳死状態に陥り,全身状態の悪化している状態で発症した感染症が重篤化して最終的に死亡するに至ったものと解することができるから,重度脳浮腫とDの死亡結果との間には相当因果関係を肯定する 起因して臨床的脳死状態に陥り,全身状態の悪化している状態で発症した感染症が重篤化して最終的に死亡するに至ったものと解することができるから,重度脳浮腫とDの死亡結果との間には相当因果関係を肯定するのが相当というべきであり(S鑑定人,P鑑定人,他に同認定を覆すに足りる証拠)はない。 なお,原告は,重度脳浮腫の原因疾患は「急性壊死性脳症」であると主張するが,3月15日時点のDの症状は必ずしも前提事実(7)カ(ア)記載の急 性壊死性脳症の診断基準に合致すると認めるには足りないし,賛育会病院も3月15日CTの診断所見としては「急性(壊死性)脳症」と疑診してい,るだけであり,その後に検査を行った杏林大学医学部付属病院も単に「急性脳症と診断するに留まっていることからすれば3月15日時点でDが急」,「性壊死性脳症」を発症していたかどうかは必ずしも明らかではないといわざるを得ない(むしろ,日本赤十字社医療センター救急部(脳神経外科)伊地俊介医師(被告協力医,以下「伊地医師」という)は,3月15日CTか。 ら窺われる脳の症状は急性壊死性脳症とは異なる形状であるとの意見を述べている(乙B5の1~3。 )。),,もっとも同日時点のDの脳の状態像として広範囲に脳浮腫が生じておりこれがDの重度の神経症状ないし臨床的脳死状態をもたらした原因となる病態であることも当事者間に争いがない(鑑定人3名の共通した意見でもある)ことから,以下においては,3月15日CTでDの脳に認められた異。 常所見については,その状態像に着目し「脳浮腫」であるとの前提で検討,することとする。 (2)本件鉗子分娩と3月9日の脳浮腫発症との間の因果関係ア原告は,上記2の被告病院医師らの過失に起因してDは重度脳浮腫を発症したと主張し,その間の因果経過について,原告主 ,することとする。 (2)本件鉗子分娩と3月9日の脳浮腫発症との間の因果関係ア原告は,上記2の被告病院医師らの過失に起因してDは重度脳浮腫を発症したと主張し,その間の因果経過について,原告主張の因果経過(ア)ないし(エ)の機序を主張するのに対し,被告は,上記の因果経過をいずれも争うとともに,重度脳浮腫は先天性サイトメガロウイルス感染により生じたと考えるのが相当であって本件鉗子分娩とは関係がないと主張する。 ところで,前提事実(3)イ,(4)ア,ウ,上記1(2)イ,ウ,(3)ウ,カ,キによれば,Dは出生後に広汎な帽状腱膜下血腫,右前側頭部に頭蓋内血腫を発症したこと,3月9日時点で右大脳領域に限局した脳浮腫(同日にDの右脳に生じた脳浮腫を「軽度脳浮腫」ということがある)を生じて。 いたこと,その後に痙攣重積の状態に陥り,重度脳浮腫を発症して脳死状 態に陥ったことが認められる。 そこで,本件鉗子分娩と重度脳浮腫との間の因果関係の有無を検討するにおいて,まず,原告主張の因果経過(ア)ないし(エ)のうち,本件鉗子分娩と軽度脳浮腫,痙攣重積の発症との間の因果関係の有無について検討することとする。 イ原告主張の因果経過(ア)について(ア)頭蓋内出血の部位前提事実(4)ア,上記1(3)ウ及びS鑑定人によれば,Dには3月9日時点で右前側頭部(冠状縫合付近)に頭蓋内出血が生じていたこと(以下「本件頭蓋内出血」という,賛育会病院医師は,3月15日まで。)に,本件頭蓋内出血が認められた3月9日CT(乙A8)の診断所見として硬膜下血腫と判別したことが認められる。 他方,証拠(乙A8ないし11,S鑑定人,P鑑定人)及び弁論の全趣旨によれば,本件頭蓋内出血は,血腫様で,薄い葉あるいは三日月型のコブ様の形状を有していることが認められるところ,S鑑 が認められる。 他方,証拠(乙A8ないし11,S鑑定人,P鑑定人)及び弁論の全趣旨によれば,本件頭蓋内出血は,血腫様で,薄い葉あるいは三日月型のコブ様の形状を有していることが認められるところ,S鑑定人及びP鑑定人は,いずれも,このような形状の頭蓋内出血の画像所見だけをみれば,通常は硬膜下血腫というより硬膜外血腫と判断されるとの意見を述べている。もっとも,同鑑定人らは,3月9日,同月15日及び4月7日に賛育会病院で撮影されたDの各頭部CT写真のみからは,非常に小さな硬膜下血腫については描出されないこともあるので,硬膜外血腫に加えて硬膜下血腫があったとみることも否定はできない(はっきりしない)との意見を述べている。これらの鑑定人意見を踏まえると,Dに認められた本件頭蓋内出血については,硬膜外血腫である可能性が高いものといえるが,硬膜下血腫の存在を一切否定することもできないと解される。 もっとも,一般的には硬膜下血腫の方が脳圧迫により脳浮腫を生じさ せる可能性は高いといえるけれども,本件頭蓋内出血が硬膜下,硬膜外のいずれの部位に発症したものであったとしても,3月9日時点で本件頭蓋内出血がみられたのと同じ右側の大脳半球に浮腫が生じていること,,,からすれば少なくとも当該脳浮腫の発生機序を検討するに際しては本件頭蓋内出血が硬膜下か硬膜外かによって有為な差異をもたらすものではない(S鑑定人,P鑑定人)と解するのが相当である。 (イ)頭蓋骨骨折の有無について原告は,F医師及びE医師が合計3回にわたって鉗子を滑脱させたことにより,本件頭蓋内出血を来した部位に頭蓋骨骨折を発症させたと主張するので検討する。 前提事実(7)ア,イのとおり,鉗子分娩に際しては分娩外傷として頭蓋骨骨折が生じることもあるとされていること,Dの頭蓋内出血が生じた 血を来した部位に頭蓋骨骨折を発症させたと主張するので検討する。 前提事実(7)ア,イのとおり,鉗子分娩に際しては分娩外傷として頭蓋骨骨折が生じることもあるとされていること,Dの頭蓋内出血が生じた部位(及び頭蓋骨骨折が疑われる部位)は,冠状縫合の少し後ろ側であり鉗子の装着位置とも一致しており(N鑑定人,同部位付近に合計)3回の鉗子滑脱が生じたと解されること,Dの頭部には出生後に頭囲に広汎な帽状腱膜下血腫が生じており,生下後もその範囲が後頭部や顔面にまで広がるほどに増悪したこと,硬膜下,硬膜外のいずれであったにせよ本件頭蓋内出血が生じていること,Dの上記の各頭部CT写真からは,出血部位が化骨化したものではないと疑われる頭蓋骨の非連続性が指摘できないではないこと(S鑑定人)からすれば,本件頭蓋内出血を来してた付近の頭蓋骨に骨折が生じていた可能性もあながち否定することはできない。 しかし,前提事実(3)エ,(4)エによれば,本件においては被告病院及び賛育会病院のいずれにおいても頭蓋骨骨折の有無の検索に有用な頭部の単純レントゲン検査は実施されていないことが認められる。また,新生児の頭蓋はもともと成人のように繋がっておらず,その骨の縫合部分 が可動性を有することから断層撮影の方法によって骨折があると見える(),,こともあることが認められるというのであってP鑑定人3月9日同月15日及び4月7日に賛育会病院で撮影されたDの各頭部CT(乙A8ないし11)の画像所見だけからは,本件頭蓋内出血の発症部位に頭蓋内骨折を併発していたか否かは,明らかな所見を指摘することは困難である(S鑑定人,P鑑定人も同様の意見を述べている。 。)したがって,本件頭蓋内出血を来した部位に頭蓋骨骨折が併発していたか否かは不明というほかはない。 (ウ)脳実 な所見を指摘することは困難である(S鑑定人,P鑑定人も同様の意見を述べている。 。)したがって,本件頭蓋内出血を来した部位に頭蓋骨骨折が併発していたか否かは不明というほかはない。 (ウ)脳実質の物理的損傷(脳挫傷等)の有無(,,,), 証拠 乙A8ないし11S鑑定人P鑑定人N鑑定人によれば3月9日,同月15日及び4月7日に撮影されたDの頭部CT写真から,,は脳実質の物理的損傷を窺わせる所見は見当たらないことが認められそれがあったと積極的に認定することは困難である。 (エ)本件頭蓋内出血の発生機序についてa以上の検討を前提に,Dの本件頭蓋内出血が,被告病院医師らの過失(鉗子滑脱等)により発生したといえるか否かについて検討する。 ,,(),前提事実(7)ア(イ)(ウ)オ(ア)に証拠N鑑定人を併せれば鉗子分娩の滑脱の合併症として硬膜下血腫及び硬膜外血腫というのは通常指摘されるものであること,鉗子分娩自体が児頭への一定のストレスを与えるものである上(それゆえ鉗子分娩は1回で娩出に至らせるべきであって,2回以上の施行はそもそも予定されていない,。),,鉗子を滑脱させた場合にはそれが水平滑脱であると否とに関わらずなおさら児に頭部圧迫に起因する強いストレスを与えるものであることが認められる。 しかして,本件においては,本件頭蓋内出血が生じた部位(及び頭蓋骨骨折が疑われる部位)は,本件鉗子分娩において滑脱した鉗子が 装着されていた部位とも一致していること,同部位に対しては分娩に至った際に実施された手技を含めれば合計4回にわたって鉗子による頭部圧迫が生じていたであろうこと,Dの娩出後に広汎な帽状腱膜下血腫が生じていたことが認められるのであって,それらの点に,上記のとおり,鉗子分娩に着手した 手技を含めれば合計4回にわたって鉗子による頭部圧迫が生じていたであろうこと,Dの娩出後に広汎な帽状腱膜下血腫が生じていたことが認められるのであって,それらの点に,上記のとおり,鉗子分娩に着手した後は,鉗子の滑脱に併せるように児に高度変動一過性徐脈が出現し,滑脱を繰り返すごとに徐脈の程度は悪化していたが,これは鉗子の滑脱によって児頭に強いストレスがかかっていたものと解されること(N鑑定人)も併せ考えると,Dに生じた本件頭蓋内出血が3度にわたる鉗子滑脱に起因して発生したであろうことは優に推認されるというべきである。 bなお,この点,出生直後のDのアプガースコアが9点であったことが認められる(この点については後記エ(イ)に詳論する)が,前提。 事実(7)ア(ウ)に証拠(S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)を併せ考えると,娩出直前に頭蓋内出血を来したとしても,それによって頭蓋内圧亢進症状が娩出後直ちに発現しないこともあり得ることが認められるから,Dの出生時のアプガースコアが9点と正常であったことをもって上記の認定は左右されない。 cこれに対し,被告は,仮にDに頭蓋内出血があったとしても,新生児の頭蓋内出血は正期産の自然分娩児においても産道を通過する際の圧により発生する所見であるから,これらが本件鉗子分娩と関連して発症したものとは言いきれないと主張し,恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院院長の中林正雄医師(被告協力医,以下「中林医師」という)も,同趣旨の理由で本件鉗子分娩とDの頭蓋内出。 血との間に因果関係はないとの意見を述べている(乙B8)ところである。 しかし,本件鉗子分娩は,鉗子分娩の実技としてはおよそ想定され ていない3回にわたる鉗子の滑脱という経過をたどっているのであって,そのような鉗子滑脱が児頭に相当程度のストレス )ところである。 しかし,本件鉗子分娩は,鉗子分娩の実技としてはおよそ想定され ていない3回にわたる鉗子の滑脱という経過をたどっているのであって,そのような鉗子滑脱が児頭に相当程度のストレスを与えたであろうことは容易に推認し得るものであるから,そのような経過をたどったにせよ,なお鉗子手技とは異なる他の事由を主因として頭蓋内出血が生じたことを合理的に窺わせる特段の事情がない限り,本件鉗子分娩を主たる原因として上記の分娩外傷が生じたと解するのが相当であるところ,本件全証拠を検討しても,本件鉗子手技以外に事由を主因として本件頭蓋内出血等が生じたことを合理的に窺わせる特段の事情を見いだすことはできない。それゆえ,中林医師の上記意見は,一般的な医学的知見として首肯し得るところではあるが,本件における具体的診療経過に照らしてみる限り採用することができない。よって,被告の上記主張は採用しない。 dまた,被告は,本件鉗子分娩の際の滑脱態様も水平滑脱で抵抗なくするっと抜けており,頭部外傷を惹起させるほど外力は加わっていないなどと主張した上,本件頭蓋内出血が本件鉗子分娩に起因するものといえないと主張する。 しかし,上記aで指摘したとおり,本件において鉗子滑脱が頭部へ物理的侵襲を与えたと解すべきである。また,前提事実(7)オ(オ)記載の鉗子分娩の手技にN鑑定人を併せ考えると,抵抗なく抜けたということは,かえって,鉗子の先端部が装着すべき下顎に正しく装着さ,,,れておらず頭部を通過したことになるところ正しい装着であれば頭部は匙の中央部の匙の間が広く空いている部分に包み込まれる形となるため,避けられていた侵襲が,匙の先端部の間が狭い部分に挟まれる形となったということとなり,かえって侵襲は大きいというべきであって,被告の主張するところは,外力 空いている部分に包み込まれる形となるため,避けられていた侵襲が,匙の先端部の間が狭い部分に挟まれる形となったということとなり,かえって侵襲は大きいというべきであって,被告の主張するところは,外力を否定する根拠とはならない。 (オ)3月9日CTの画像所見について上記1(3)ウに証拠(乙A8,B5の1,S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)を併せ考慮すると,3月9日CTの読影所見は,右側頭部に本件頭蓋内出血が存在し,右脳側の脳室については左脳側のものと比べて空洞が狭く見える部分があるなど,右大脳半球に浮腫が生じているが,一方で左大脳半球の脳室は明瞭に描出されており,右大脳領域においても脳室が描出されているスライスもあること,皮髄境界は保たれており,静脈洞(CT検査における脳のスライス画像においては,左右の大脳を隔てる部分に縦に白く描出される,上矢状洞という部分が,依然と。)して左右の大脳領域の中央部に直線様に描出されていることが認められる。 上記のCT所見からすると,3月9日時点においてDの右大脳半球には浮腫が生じていたといえるとしても,左脳側には脳室が描出されているなど特段脳浮腫の存在を窺わせる所見はないこと,右脳側にも脳室が描出されている箇所があること,脳実質の右脳から左脳への偏位(シフト)もないことからすれば,その程度は軽度であったというべきである(なお,このことは,Dが頭蓋骨の縫合が密着しておらず,一定の可動性をもっていた新生児であることを前提としても変わりはない(S鑑定人,P鑑定人。 )。)(カ)Dの神経症状の進展経過,,,,,前提事実(3)ウ(4)イ上記1(2)ウ(3)イないしエによればDは3月9日午前0時ころから,啼泣・発汗が多くなり,左上下肢に痙攣様,,の体動が認められるようになりそ ,,,,,前提事実(3)ウ(4)イ上記1(2)ウ(3)イないしエによればDは3月9日午前0時ころから,啼泣・発汗が多くなり,左上下肢に痙攣様,,の体動が認められるようになりその後も同様の状態が続いていたこと同日午前9時20分ころのI医師の診察時には,皮膚色はやや蒼白で,大泉門は平滑だが緊張がやや強く,四肢強直が認められ,下肢の位置も正常範囲でなく,モロー反射も一相のみであったこと,賛育会病院に転 送された同日午後0時45分ころから,右半身を中心とした痙攣が始まり,同日午後10時ころからは全身性の強直間代性の痙攣を繰り返し,抗痙攣剤への投与がされるも,コントロールが困難な痙攣重積状態の状態となり,3月11日午前11時ころから,バルビツレート療法が実施されるに至ったと認められる。 (キ)被告病院医師らの過失と軽度脳浮腫発生との間の関係について以上の(エ)ないし(カ)の事情を総合すれば,本件頭蓋内出血は,被告病院医師らの過失(鉗子の滑脱)により,児の頭部に外力が加わって生じたと解されるところ,3月9日時点で,上記の頭部疾患と部位を同じくするように右大脳半球に軽度の浮腫が生じていること,Dの症状経過も左上下肢の痙攣(これは右脳領域の疾患に起因することを推認させる)や大泉門の緊張という所見が得られており,これらの症状経過は。 右脳領域の頭蓋内出血による右脳の圧迫によって生じた脳浮腫による頭蓋内圧亢進症状という一連の症状経過の中で説明することが可能であり,また自然でもあることからすれば,Dに3月9日に生じた右脳の軽度脳浮腫は本件頭蓋内出血が影響して生じたものと解するのが合理的である(N鑑定人,P鑑定人,S鑑定人。 )よって3月9日の軽度脳浮腫の発生と被告病院医師らの過失行為鉗,(子滑脱等)との間には相当因果関 は本件頭蓋内出血が影響して生じたものと解するのが合理的である(N鑑定人,P鑑定人,S鑑定人。 )よって3月9日の軽度脳浮腫の発生と被告病院医師らの過失行為鉗,(子滑脱等)との間には相当因果関係があると解するのが相当であって,本件全証拠を検討しても他に同認定を覆すに足りる証拠はない。 (ク)Dの痙攣発作及び痙攣重積状態の発生との間の因果関係そこで,更にDの右大脳半球の軽度浮腫とDの痙攣の発症及び進展との関係について検討する。 Dの出生及びその後の痙攣の発症及び進展の経過については前提事実(1)ないし(4),上記1(1)ないし(3)のとおりと認められるところ,前提事実(7)ウ(イ)に証拠(乙B5の1,S鑑定人,P鑑定人)及び弁論の 全趣旨を併せ考えると,新生児の痙攣は,仮死や頭蓋内出血等の原因で発症することが多いが,通常の分娩経過で出生した新生児であっても発症することがあること,頭蓋内血腫があれば,頭蓋内圧亢進作用により多少痙攣も起こりやすくなるともいえるが,血腫の大小と痙攣の発症の有無あるいは重篤度とは必ずしも相関関係はなく,血腫が小さくても痙攣を発症し,また,重篤化することもあること,新生児の痙攣に対しては抗痙攣剤の投与により痙攣を止めることが治療上の第一選択となるが,新生児は脳の感受性が低いことから抗痙攣剤がなかなか奏功しないこともあり,そのため痙攣が長引いたり,重積化することがあることがそれぞれ認められる。 ,,このような事情にDの痙攣発作の進展状況を併せるとDにおいては鉗子滑脱に伴う頭蓋内出血により右大脳半球の浮腫を来して頭蓋内圧亢進状態となり,これに起因して左上下肢を中心とした痙攣が発症し,さらに,これが進展して抗痙攣剤が十分に奏功しない状態となって,痙攣重積の状態に陥ったものと考えることができるというべきで て頭蓋内圧亢進状態となり,これに起因して左上下肢を中心とした痙攣が発症し,さらに,これが進展して抗痙攣剤が十分に奏功しない状態となって,痙攣重積の状態に陥ったものと考えることができるというべきである(N鑑定人,P鑑定人,S鑑定人。 )(ケ)以上の検討からすれば,被告病院医師らの過失によりDに頭蓋内出血を生じさせ,これがDの痙攣重積を発症させたものと解することができるから,被告病院医師の過失とDの軽度脳浮腫ないし3月11日午前11時にバルビツレート療法が実施されるに至った痙攣重積の発症との間には相当因果関係を肯定するのが相当というべきである。 よって,原告主張の因果経過(ア)のうち,被告病院医師らの過失とDの軽度脳浮腫及び痙攣重積の発症との間の因果関係の存在をいう部分については理由がある。 ウ原告主張の因果経過(イ)について(ア)帽状腱膜下血腫の発生原因について a前提事実(4)アによれば,娩出後のDに帽状腱膜下血腫が発生したことが認められる(当事者間にも争いがない。 。),,,,,bしかして前提事実(3)ア(ア)イ上記1(2)ア(ア)イによればDの帽状腱膜下血腫は娩出直後から発生していたと解されること,3月8日午後4時ころには頭囲が生下時に比べて2.4㎝も増大し,その後頚部に至るまで血腫が広がったことが認められ,これに本件鉗子分娩の経過や帽状腱膜下血腫の発生原因に係る医学的知見を併せれば,Dの帽状腱膜下血腫が本件鉗子分娩に起因して(少なくとも一因となって)発生したことは明らかというべきである。 (イ)帽状腱膜下血腫による貧血の程度前提事実(3)ア(ア),イ,(4)ア,(6)ア,上記1(2)ア(ア),イによれば,Dの帽状腱膜下血腫は上記のとおり後頭部まで広がるほどの重度のものであったといえる反 帽状腱膜下血腫による貧血の程度前提事実(3)ア(ア),イ,(4)ア,(6)ア,上記1(2)ア(ア),イによれば,Dの帽状腱膜下血腫は上記のとおり後頭部まで広がるほどの重度のものであったといえる反面,出生後の血液検査におけるヘモグロビン値は3月8日午前8時20分ころ(被告病院入院時)で15.4g/dl,3月9日の賛育会病院入院時で11.1g/dlであったこと,TP(tota). . 。 lprotein値も55g/dlから63g/dlであったことが認められる上記の事情からすれば,Dの帽状腱膜下血腫の出血量は多かったとはいえるところ,証拠(S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)によれば,Dには帽状腱膜下血腫による貧血はあったといえるが,ヘモグロビン値からみれば高度貧血といえるほどのものではなく(S鑑定人は,胎盤出血を来してヘモグロビン値が4あるいは5g/dlになった場合でも低酸素により脳浮腫を来したりしないとの意見を述べている,また,TP値も。)新生児としては異常値(低値)とまではいえないことが認められる。 (ウ)かかる事情に照らせば,Dについて帽状腱膜下血腫による一定の出血が存在したとしても,それをもって脳循環血液量の低下により脳機能に影響を与えるほどの低酸素状態に陥ったとか,それによって脳浮腫を 生じたということはできず,他に同事情を認めるに足りる証拠も見出せない。 よって,原告主張の因果経過(イ)は理由がない。 エ原告主張の因果経過(ウ)について(ア)娩出時におけるDの状態について,,,,,a前提事実(6)ア上記1(1)ウ(ウ)(エ)(2)ア(ア)ウによれば,,本件鉗子分娩に際しては3回の鉗子の滑脱があったことなどにより1回の鉗子操作で分娩に成功した場合に比べれば娩出までに時間を要したこと 上記1(1)ウ(ウ)(エ)(2)ア(ア)ウによれば,,本件鉗子分娩に際しては3回の鉗子の滑脱があったことなどにより1回の鉗子操作で分娩に成功した場合に比べれば娩出までに時間を要したこと(約26分,鉗子の滑脱等の影響で児には鉗子の滑脱に相)応するように高度変動一過性徐脈が生じていたこと,娩出時においてDには四肢末端チアノーゼが認められたこと,娩出から約3時間を経過した時点でDには左上下肢の痙攣様の体動が確認されていること,,,Dの経皮的血液ガス分析結果によればSpO 値が60台から40台 30台%と低下して刺激により回復するということがあったが3()(),(),月9日午前2時30分ころその後も65%午前5時30分ころ80%(午前7時30分ころ)と著明に低い数値を示していたこと,3月9日午前9時30分ころには頭蓋内圧亢進症状と解される所見(皮膚色やや蒼白,大泉門にやや強い緊張,四肢強直(+,下肢の)Positionの異常等)があったこと,賛育会病院入院時に実施されたDの血液ガス分析検査の数値は「pH:7.421,pO2:66.8mm,,. ,. . 」HgpCO2:248mmHgSO2:994%BE:-78mmol/Lというものであったことが認められる。 b上記のとおり,Dの分娩に際しては一定の分娩遅延があり,また,出生後ほどなく左上下肢を中心とした痙攣発作様の所見が現れていることやSpO2値が著明に低値を示したり娩出後約半日を経過した時点で頭蓋内圧亢進を疑わせる所見が現れていること,賛育会病院入院時 においてBE(ベース・エクセス)が低値であることなどは,Dが出生時において低酸素あるいは代謝性アシドーシスの状態にあったことを一応疑わせる所見といえる。 ,,,,,, 会病院入院時 においてBE(ベース・エクセス)が低値であることなどは,Dが出生時において低酸素あるいは代謝性アシドーシスの状態にあったことを一応疑わせる所見といえる。 ,,,,,,cしかし前提事実(4)ア上記1(1)ウ(ウ)(エ)(2)ア(ア)イウ,(3)に証拠(乙A5,9,B5の1,S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)及び弁論の全趣旨を併せると,Dの出生時におけるアプガースコアは9点(1分値,減点要因は四肢末端のチアノーゼ)であったこと,パルトグラム上も鉗子分娩実施中には鉗子滑脱に連動するように高度変動一過性徐脈が出現しているものの,滑脱後は児心音も回復しており,バリアビリティー(基線細変動)も残っているなど,分娩遷延により児が低酸素脳症に陥っていたことを窺わせる徴候に乏しいといえること,新生児の小脳や脳幹部(テント下の部位)は低酸素に強く,新生児仮死で出生して虚血性脳症に至った場合であっても非常によく保たれるところ,3月15日CTで小脳部分についても浮腫が生じていたことは,Dが新生児仮死により低酸素脳症を発症したと判断するに当たっては非常に矛盾する所見といえることに加え,出生後の第一呼吸が生後1分以内に認められていること,3月8日までの時点ではまだ皮膚色がピンクであり呼吸や体動にも異常がなく,哺乳力も良好であったこと,低酸素症となれば早期に影響を受けるのは腎臓であるところ,出生後も排尿は正常であったと解されること(低酸素症に陥っていれば,中枢神経系が影響を受け,多くの場合,最初に腎臓の機能に影響を与え尿量が減少しあるいは無尿となり,これが脳浮腫の大きな原因となり得る,出生時にDが胎児仮死ないし新生児仮。)死の状態にあり,これが原因となって低酸素症に起因する脳浮腫を起こしていたとすれば,3月9日時点 しあるいは無尿となり,これが脳浮腫の大きな原因となり得る,出生時にDが胎児仮死ないし新生児仮。)死の状態にあり,これが原因となって低酸素症に起因する脳浮腫を起こしていたとすれば,3月9日時点で右大脳半球に限局された脳浮腫しか生じていなかったということも考え難いこと(むしろ,低酸素症 により脳が障害を受けたのであれば全大脳領域に低酸素症の症状が現れているのが自然である)がそれぞれ認められる。また,原告の分。 娩時にみられた羊水混濁についても,そのような羊水混濁は過産期の25%にみられ,それのみで胎児期の低酸素を一義的に表すものとは評価されていない(乙B23。 )d上記cの諸事情を総合すれば,出生時の臍帯動脈血の血液ガス分析所見が得られていないうらみはあるものの,上記bの所見を前提としたとしても,Dが出生時に代謝性アシドーシスを起こすほどの低酸素状態にあったと認めることはできないというべきである。 (イ)これに対し,原告は,診療録の記載内容やDの出生後の急激な症状の増悪経過に照らせば,そもそも出生時にアプガースコアが9点であったとは考えられないと主張する。 なるほど,被告病院の産婦人科入院診療録(乙A2・34頁)をみると,F医師がDの出生時のアプガースコアを9点と記載したことが認められるものの,一方で,小児科入院診療録(看護師記載部分・乙A4・9及び14頁)にはアプガースコアを記載しかけたままで点数の記載がされていないこと(AP」とのみ記載され,その後が空欄となってい「る,3月7日の看護ワークシート(乙A2・p61)には「新生児。)」,()「」仮死蘇生術と被告病院の診療報酬請求書甲A8には胎児仮死との各記載がされていることが認められるし,また,3月9日以後のDの病状の進展経過も急激であったとい 児。)」,()「」仮死蘇生術と被告病院の診療報酬請求書甲A8には胎児仮死との各記載がされていることが認められるし,また,3月9日以後のDの病状の進展経過も急激であったといえる。 しかし,客観的な検査結果である上記(ア)で指摘した分娩直前のパルトグラムの所見や3月9日CTの結果が,アプガースコア9点との判断と整合性を持つことは上記(ア)で述べたとおりである。 また,Dの出生後において,被告病院において真に胎児仮死ないし新生児仮死が生じていた場合に施行させるべき対応処置がされた形跡はな く(この点は当事者間に争いがない,また,対応処置が施されてい。)ないにもかかわらず,3月9日午前0時ころの左上下肢の痙攣用発作の発現までは帽状腱膜下血腫を除き低酸素症に陥っていれば当然に発生しても不思議でない各種の神経症状等も現れていない。また,被告病院産婦人科の看護師長は,上記の「新生児仮死蘇生術」との記載は,お産が大変であった旨のJ医師の発言をとらえて独自の判断で記載したものであり「胎児仮死」とのレセプト記載もこれを受けて被告病院の医事課,が独自に記載したものであるとの説明をしている(乙A6)ところである。 さらに,出生後のDの症状経過との関係をみても,前提事実(7)ア(ウ),ウ(イ)に証拠(P鑑定人,S鑑定人)及び弁論の全趣旨を併せ考えると,分娩直前に何らかの脳出血が起こったとしても出生直後のアプガースコアに反映されないこともあることが認められるから,出生時のアプガースコアが9点であったこととその後のDの症状経過とが医学的に矛盾するということもできない。 以上の検討によれば,原告主張の事情を前提としても,Dの出生時におけるアプガースコアが9点であったとの認定は左右されず,他に同認定を覆すに足りる証拠はない。 (ウ に矛盾するということもできない。 以上の検討によれば,原告主張の事情を前提としても,Dの出生時におけるアプガースコアが9点であったとの認定は左右されず,他に同認定を覆すに足りる証拠はない。 (ウ)以上のとおりであるから,Dが出生時において低酸素状態にあったとまではいえず,他に同事情を認めるに足りる証拠はない。 よって,原告主張の因果経過(ウ)は理由がない。 オ原告主張の因果経過(エ)についてDが分娩遷延により出生時において,軽度であっても低酸素状態にあったとまでは認められないことは上記エに説示したとおりであるから,その後の賛育会病院での診療経過について検討するまでもなく,原告主張の因果経過(エ)は理由がないというべきである。 カ被告主張の因果経過(先天性サイトメガロウイルス感染による急性脳症の発症)の当否これに対し,被告は,3月15日に認められた重度脳浮腫を中心とするDの脳の器質的変化及び痙攣等の神経症状の原因については,本件鉗子分娩は無関係であり,むしろ,先天性のサイトメガロウイルス感染による急性脳症と考えられると主張する。 上記1(4)によれば,Dからは,9月1日に実施されたウイルス検査によりサイトメガロウイルスが検出されたことが認められる。 しかして,上記のウイルス検査は出生直後やDの症状が急性期(3月9),,日から15日にあった時期に実施されたものではなく脳萎縮が進行し脳死状態のまま全身状態が悪化している時期に実施されたものであることに加え,前提事実等並びに証拠(S鑑定人,P鑑定人)及び弁論の全趣旨を併せ考えると,出生直後から重度脳浮腫の発症までサイトメガロウイルス感染によると思われる症状や検査所見(ウイルス抗体価の推移,臨床)症状,胸部X線写真,CTなどからウイルス感染を疑わせるような異常は認められない 生直後から重度脳浮腫の発症までサイトメガロウイルス感染によると思われる症状や検査所見(ウイルス抗体価の推移,臨床)症状,胸部X線写真,CTなどからウイルス感染を疑わせるような異常は認められないこと,母親である原告について妊娠前期や出産直後においてサイトメガロウイルス検査は実施されておらず,また,多くの成人は母親を含めて無症状であるもののサイトメガロウイルスに感染しており,母親からの垂直感染や児への輸血による感染もまれではないところ,サイトメガロウイルス感染による急性脳症が多くの新生児に発症するものではないこと,3月24日に実施された髄液検査の結果は陰性であったことが認められるのであって,これらの事情に照らせば,Dの重度脳浮腫がサイトメガロウイルスを含むウイルス感染により生じたとまでは認めるに足りないというべきである。 以上によれば,重度脳浮腫を中心とするDの脳の器質的変化及び痙攣等の神経症状の原因について先天性のサイトメガロウイルス感染による可能 性を示唆する萬年徹医師(乙B7・被告病院神経内科医師)の意見は,採用することができず,他に被告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 (3)Dの軽度脳浮腫ないし痙攣重積の発生と重度脳浮腫ないし臨床的脳死状態に至る機序について上記(2)イの検討からすれば,被告病院医師らの過失によりDに頭蓋内出血が生じ,これに起因してDの右大脳半球領域に軽度脳浮腫及び痙攣重積を発症させたと認められる。しかして,原告は,原告主張の因果経過(ア)のとおり,Dは,軽度脳浮腫及びこれに起因する痙攣重積状態に陥り,脳梗塞等を発症して3月15日までには重度脳浮腫を発症して脳死状態に陥ったと主張するので,以下,3月9日の軽度脳浮腫ないし痙攣重積の発症から同月15日の重度脳浮腫の発生に至る経過ないし機序について更に 塞等を発症して3月15日までには重度脳浮腫を発症して脳死状態に陥ったと主張するので,以下,3月9日の軽度脳浮腫ないし痙攣重積の発症から同月15日の重度脳浮腫の発生に至る経過ないし機序について更に検討する。 アDの症状経過について上記1(2)ウ,(3)ウないしキによれば,Dは3月9日午前0時ころからサチュレーションモニターを装着されているところ,それによって測定されたSpO 値が最低30%台まで低下したことがあり,その後も低値を示 していたこと,賛育会病院入院時において実施されたDの生化学検査(血液検査)の結果,CPK(CK)値が6601と高値を示していたこと,L医師は,Dが3月9日夜から抗痙攣剤が奏功しないほどの状態となったことから,痙攣の抑制を最優先として抗痙攣剤や麻酔薬の投与を行っていたが,それでも痙攣を抑制できずに痙攣重積状態となったため,3月11日からDを人工呼吸管理下に置き,バルビツレート療法を開始したこと,Dの痙攣重積はバルビツレート療法の施行により鎮静をみたため,同月12日午前中には中枢神経抑制剤の投与を中止したが,本来であれば同療法の中止後1,2日で回復するはずの自発呼吸,対光反射,咽頭反射,瞳孔(),散大といった神経症状P鑑定人が療法中止後2日を経過しても戻らず同月16日に臨床的脳死状態と診断されたこと,この間,3月12日午前 3時の時点ころからは大泉門が緊満状態となったこと,血液検査の結果,,. CRP値が3月13日までは1mg/dl未満であったものが14日には55,15日には22.8,16日には31.5,17日は25.9と急激に高値を示したこと,3月22日に杏林大学医学部付属病院で重度脳浮腫の原因検索のためMRI検査が実施され,その際の病名は「急性脳症」というものであったことがそれぞれ認め .5,17日は25.9と急激に高値を示したこと,3月22日に杏林大学医学部付属病院で重度脳浮腫の原因検索のためMRI検査が実施され,その際の病名は「急性脳症」というものであったことがそれぞれ認められる。 イ各種画像所見の比較検討(ア)3月9日CTの所見上記(2)イ(オ)のとおりである。 (イ)3月15日CTの所見証拠(乙B5の1,P鑑定人,S鑑定人)によれば,3月15日CTにおいては,皮髄境界は消失し,左右の脳室も全く描出されておらず,浮腫が大脳領域全体に広がっていたこと,浮腫の範囲が大脳領域のみならず,小脳,脳幹部領域にも非常に強い浮腫が生じていて,脳幹部と頭蓋骨との間に本来描出される隙間構造が見えない状態となっていたことが認められる。 (ウ)3月22日のMRIの所見証拠(乙A14ないし18,P鑑定人)によれば,3月22日に杏林大学医学部付属病院で撮影されたDの頭部MRI写真には,脳幹部や視床,椎骨脳底動脈系に出血と解される著明な器質変化が起こっていることを窺われる所見があることが認められる。 (エ)以上によれば,3月9日時点の軽度脳浮腫は右大脳半球に限局しており,皮髄境界,脳室も描出され,脳実質の左方変位もみられなかったほか,頭蓋内出血の大きさも小さいものであったといえるところ,3月15日以後には脳浮腫が大脳領域の全域に及んでいたばかりか小脳,脳幹部にまで及んでいたということができる(乙B5の1,S鑑定人,P 鑑定人。 )ウ検討以上の症状経過,CT所見等を前提にDの脳の病態変化について検討する。 (ア)軽度脳浮腫,痙攣重積からの自然的増悪による重度脳浮腫の発生の可能性についてa各鑑定人の意見の概要P鑑定人は,上記の各CT所見の比較を行ったところで,痙攣発作に対する不用意な薬剤の投与により呼吸停止を 腫,痙攣重積からの自然的増悪による重度脳浮腫の発生の可能性についてa各鑑定人の意見の概要P鑑定人は,上記の各CT所見の比較を行ったところで,痙攣発作に対する不用意な薬剤の投与により呼吸停止を来したとか,適切な痙攣に対する処置がされないといったケースでは,痙攣そのものが二次的に脳障害を発症させることもあり得るが,本件はそのようなケースには該当しない,3月9日CTと3月15日CTを見比べると,病状の変化が非常に不連続であり,これまでに経験した新生児痙攣を発症した症例の中で上記のような急激な病態の変化を来したものはなく,3月9日時点の軽度脳浮腫あるいは痙攣が増悪した結果として同月15日の重度脳浮腫が形成されて脳死状態に陥ったと考えるのは非常に無理があるように思われるむしろCRP値がそれまで正常値にあっ,,たものが,3月14日から急激に,かつ高度な異常数値を示すように,,,なったこと3月15日CTでは小脳脳幹部にも浮腫が生じており3月22日に杏林大学で撮影された頭部MRIでは脳幹部や視床,椎骨脳底動脈系に出血と解される著明な器質変化が起こっていることからすれば,3月15日の重度脳浮腫は9日までの右大脳半球の脳浮腫を発症させた病態とは全く別個の機転により発症したものではないかと考えられるとの意見を述べている。 また,S鑑定人も,脳浮腫の増悪原因として通常一番多いとされているのは仮死に伴う低酸素であるが,Dについては新生児仮死はな かったといえるし,痙攣が繰り返し起こり始めた時点で撮影された3月9日CTでも大きな脳の器質的変化はみられないところ,3月15日のCTには極めて強い器質的変化が生じているが,新生児においてそのような臨床経過をたどった症例については経験がなく,両CTに現れた脳の器質的変化を関連づけることはできない られないところ,3月15日のCTには極めて強い器質的変化が生じているが,新生児においてそのような臨床経過をたどった症例については経験がなく,両CTに現れた脳の器質的変化を関連づけることはできないと思われるとの意見を述べている。 bこれに対し,前提事実(7)ウ(ウ)によると痙攣重積が脳代謝異常を招来し,神経組織の障害が生じて死亡に至る場合があることは認められるが,どのような場合に痙攣重積が脳代謝異常を招来し,神経組織の障害を発生させるかについては具体的な主張立証はなくかえっ,,,て,本件においては,賛育会病院医師は,Dの痙攣やそれに続く痙攣重積に対して,入院当初から継続的に抗痙攣剤を投与し,それによるコントロールが困難と判断された3月11日からはバルビツレート療法を実施して,その抑制を中心とした対応を行っており,3月12日にはそれが奏功し,痙攣重積が鎮静したと認められることに加え,前提事実(7)ウ(ウ)の認定の基礎となった文献(甲B27)を執筆したP鑑定人自身も本症例において痙攣重積の自然的因果経過により重度脳浮腫が生じたとみることに否定的な意見を述べていることも考え併せれば,上記の医学的知見から直ちにDの重度脳浮腫の原因が賛育会病院入院時の痙攣及びそれが増悪した痙攣重積にあるということはできない。 c以上の検討に証拠(乙B5の1,S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)及び弁論の全趣旨を併せると,3月9日CTと同月15日CT(及び3月22日の杏林大学で撮影されたMRI)は全く異なる脳の様相を示していると解さざるを得ず,医学的には,3月9日時点でみられた右脳の軽度脳浮腫(及び痙攣ないし痙攣重積状態)が,自然的増悪の 結果として3月15日までに重度脳浮腫に進展して脳死状態に陥ったと考えることはできないというべきである。 (イ) 日時点でみられた右脳の軽度脳浮腫(及び痙攣ないし痙攣重積状態)が,自然的増悪の 結果として3月15日までに重度脳浮腫に進展して脳死状態に陥ったと考えることはできないというべきである。 (イ)そこで,自然的増悪によらず他の原因により重度脳浮腫が発症した可能性について更に検討する。 a出生後の低酸素状態による影響の有無(a)SpO2値の評価上記1(2)ウのとおり,3月9日午前0時以後のDのSpO2値は著しく低値を示していたことが認められる。 この点,一般に,SpO2値の低下は,生体の低酸素状態を窺わせるところ,証拠(S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)及び弁論の全趣旨によれば,SpO2値は血中酸素飽和度をサチュレーションモニターにより経皮的に測定する以上は不可避に誤数値を示すことがあること,刺激により回復したとのエピソードは,上記のSpO2値が新生児の生理的な無呼吸(重度の場合は乳幼児突然死を来すこともあるところ,新生児では,これによりSpO2が30%台に下がることもある)あるいは,このころ既に始まっていた痙攣に起因する無。 呼吸を原因として発症していた可能性が指摘できることが認められる。そうすると,上記のSpO2値の推移から,直ちにDがこの時点で呼吸機能等に障害を受けていたとか,継続的に低酸素の状態に陥っていたとまでは解することができない。 (b)賛育会病院入院時の血液ガス分析検査結果の評価次いで,賛育会病院入院直後に実施されたDの血液ガス分析検査の結果について検討するに同時点のおける検査結果は別紙3検,,「査結果一覧表の3月9日欄欄記載のとおりであるところ証拠P」,(鑑定人,S鑑定人,N鑑定人)及び弁論の全趣旨によれば,同時点におけるpHは7.421でアシデミアにはない(むしろ塩基バラ ンスは保たれている 9日欄欄記載のとおりであるところ証拠P」,(鑑定人,S鑑定人,N鑑定人)及び弁論の全趣旨によれば,同時点におけるpHは7.421でアシデミアにはない(むしろ塩基バラ ンスは保たれている)といえること,-7.8mmol/ℓとのBE値。 は,生体が酸性に傾こうとしていることを窺わせるが,その数値自体もDの日齢を考えるとことさら重篤なものとはいえないこと,pCO2値が24.8mmHgとなっているのは呼吸によって二酸化炭素を体外に排出している状態を示しているといえるがデータ自体は悪い数値ではないこと,その他,同時点で塩基補正等の急速処置をしなければならないといった状態にはなかったことが認められる。 このことからすれば,賛育会病院入院時においてDは代謝性アシドーシスの状態にあったとはいえるものの,程度は軽く,特に重度脳浮腫の原因となる程の低酸素状態にあったとか,高度の代謝性アシドーシスを示していたとはいえないということができる。 (c)以上の検討からすれば,Dが娩出後において重度脳浮腫の原因となる程の低酸素状態に陥っていたことは,上記の血液ガス分析検査の結果からは否定的に解すべきである。 b血液検査(生化学検査)の結果について上記1(3)ウのとおり,賛育会病院入院時の血液検査の結果,DのCPK(CK)値は6601と高値を示していたことが認められる。 しかして,前提事実(6)イ(イ)及び証拠(S鑑定人,P鑑定人)並びに弁論の全趣旨によれば,CPKは筋,脳,赤血球の細胞内に含まれる酵素が,上記の臓器の細胞が破壊されることにより血中に現れることで測定される逸脱酵素であるところ,6601という数値は著明に高値であるといえるが,その原因については,上記の異常値が帽状腱膜下血腫が吸収される段階で現れていること(赤血球の破壊によるCPKの増 とで測定される逸脱酵素であるところ,6601という数値は著明に高値であるといえるが,その原因については,上記の異常値が帽状腱膜下血腫が吸収される段階で現れていること(赤血球の破壊によるCPKの増加,痙攣による筋の破壊,生理的な黄疸によるものなど)種々の原因が考えられるところであって,新生児において痙攣のみで上記の数値を示すことは一般には考え難いが,同時に低酸素状態のた め筋が影響を受けて筋由来のCPKが逸脱してきたとか,脳由来のCPKが測定されていると考えることは,上記aに検討した検査所見の評価も併せると,直ちに想定し難いものというべきである。 それゆえ,上記のCPK値から直ちにDの脳に低酸素による重篤な障害が発生していたと推認するということもできない。 c賛育会病院における痙攣等に対する治療過程(バルビツレート療法の施行を含む)の影響の有無。 上記1(3)ウないしカによれば,L医師は,3月9日CT上Dの痙攣を生じさせる有意な所見を見いださず,むしろ被告病院出生時の仮死を疑っていたこと,Dは賛育会病院に転院した後に痙攣が重篤化して抗痙攣剤も奏功しない状態が続いたため,3月11日から翌12日にかけて,人工呼吸管理下でバルビツレート療法の施行を受け,痙攣,,は沈静化したが同時に同療法に係る薬理効果もあって自発呼吸なし瞳孔散大,各種反射なしの状態が続いていたところ,同療法が中止された後も回復がなく,3月15日CTにより重度脳浮腫の状態に陥っていることが判明したことが認められる。 しかして,前提事実(7)ウ(ウ)に証拠(S鑑定人,P鑑定人)及び弁論の全趣旨を併せると,痙攣重積の状態にある場合は,二次的変化を阻止するために痙攣を止めることが先決であるといえること,賛育会病院においては入院時からDをクベースに収容して酸素投与(30 人)及び弁論の全趣旨を併せると,痙攣重積の状態にある場合は,二次的変化を阻止するために痙攣を止めることが先決であるといえること,賛育会病院においては入院時からDをクベースに収容して酸素投与(30%から)を行うなどの呼吸管理を行っていたこと,バルビツレート療法は,中枢神経抑制剤を大量に投与するものであるため,呼吸,反射を抑制することになり,その範囲で低酸素を合併する危険性を内包するものであるといえるところ,当該薬物による神経機能の抑制は可逆的であり,薬剤の効用が消失すれば脳機能も回復するのが通常であるとされていることが認められる。また,3月9日時点で認められた本 件頭蓋内出血は小さいものであって,これは痙攣発症の原因となり得るとしても,これにより直ちに重篤な脳浮腫を来す可能性があると想定されるものではなかった(P鑑定人,S鑑定人。 )このようにみると,L医師が,3月9日時点の本件頭蓋内出血を有意と評価しなかったとしても,そのことから直ちに重度脳浮腫に進展したということもできないし,また,Dの痙攣抑止を最優先として抗,,痙攣剤の投与を継続したことバルビツレート療法を施行したことは,,それ自体相当な治療行為であったといえるのであってその治療方針内容から事後の重度脳浮腫を生じさせる危険性があったということもできないから,賛育会病院での痙攣に対する治療によってDに重度脳。 ,,浮腫が生じたと解することもできないかえってP鑑定人によると3月22日に杏林大学で撮影されたMRI(乙A15)には,呼吸,瞳孔反射等を司る視床から中脳,脳幹部にかけて急性期の出血があると診断される低吸収域が認められており,同所見もDが臨床的脳死状態に陥っていることを裏付けるものであるといえるところ,このような脳幹部の出血がなければ,Dにおいてもバル 部にかけて急性期の出血があると診断される低吸収域が認められており,同所見もDが臨床的脳死状態に陥っていることを裏付けるものであるといえるところ,このような脳幹部の出血がなければ,Dにおいてもバルビツレート昏睡から離脱することになったであろうと推測されるが,このような器質的変化(画像診断だけからは亜急性壊死性脳症ということとなる)は極め。 て特異的な所見であり,3月9日の軽度脳浮腫との関連を肯定することはできず,このような病態が起こる原因としては想定できるものはないし,バルビツレート療法で使用された薬剤の薬理作用そのものから永続的な後遺症を残す脳障害を発生させるということはないと窺える。 なお,上記1(3)イないしエのとおり,3月9日午後10時ころからDが全身性の強直間代性の痙攣を繰り返すようになり,それは,3月11日午前11時ころにバルビツレート療法が開始されるまで,抗 痙攣剤等の投与がされながら,結局,痙攣が断続的に続いたこと,その時点ではパルスオキシメーターなどで正確な呼吸状態までは把握しておらず,呼吸数が速拍,不規則であったこともあったことからすると,その間に,低酸素による脳浮腫がある程度増悪したり,前提事実(7)ウ(ウ)で認められる痙攣自体による脳障害が生じた可能性が全くないとはいえない。しかし,呼吸数がこの程度で,この期間継続した場合に低酸素脳症を発症するとの医学的知見の主張,立証もなく,可能性を超えて蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,その点が,3月15日時点の重度脳浮腫を生じさせたと認めることは困難である。 この点,伊地医師及びE医師は,賛育会病院での痙攣,特に痙攣重積に対する対応,観察に問題があり重症低酸素症を引き起こして3月15日時点の重度脳浮腫を生じさせたと考えるのが妥当であるとの意見を述べているが(乙B 医師及びE医師は,賛育会病院での痙攣,特に痙攣重積に対する対応,観察に問題があり重症低酸素症を引き起こして3月15日時点の重度脳浮腫を生じさせたと考えるのが妥当であるとの意見を述べているが(乙B5の1~3,10,23,上記の検討に照)らし直ちに採用することができない。 dその他の原因について証拠(乙A8,S鑑定人,P鑑定人,N鑑定人)及び弁論の全趣旨を併せ考えると,3月9日CT上,右脳の中大脳動脈領域(右中大脳動脈が栄養している右大脳半球の比較的外側に近い部分)に,断定はできないまでも血液の流れの分布が正常でない(脳梗塞所見とも断言はできない)箇所が指摘できるところ,そのような所見が現れた原。 因については,これを具体的に特定できるほどの根拠はなく,胎児期の鉗子分娩あるいは娩出前後の低酸素状態との関係についても不明というほかない。また,仮に,上記の病変が中大脳動脈領域の脳梗塞所見であったとしても,それが3月9日以後のDの症状の増悪経過と関(。 連性を有するかどうかについては不明といわざるを得ないS鑑定人なお,P鑑定人は,3月9日の右大脳半球の脳浮腫の原因が上記のよ うな右中大脳動脈の病変であったとすれば,むしろ,その後に15日CTのような全脳領域の浮腫を内容とするような器質的変化が生じたことを説明することは不可能であるとの意見を述べている。 。)また,証拠(P鑑定人,S鑑定人)によれば,右脳の浮腫によって呼吸中枢(脳幹部)が圧迫されて呼吸が止まりあるいは減退して低酸素に陥るということは一般的には考えられるところ,3月9日CTによれば,そのような脳幹圧迫を生じさせていると判断できるような脳浮腫の所見はなく,むしろ脳幹部は描出されている以上,脳幹圧迫の事実を認めることもできないというべきである。 さらに,本件全証拠を検 によれば,そのような脳幹圧迫を生じさせていると判断できるような脳浮腫の所見はなく,むしろ脳幹部は描出されている以上,脳幹圧迫の事実を認めることもできないというべきである。 さらに,本件全証拠を検討しても,Dの脳に脳浮腫発症の原因となり得るような先天的の器質異常があったことは認められない。 エ上記の検討によれば,Dの重度脳浮腫は,3月9日時点の軽度脳浮腫及び痙攣重積とは全く異なる所見であるという以上に,その原因,機序については本件全証拠を検討しても判別できないというほかなく,今日の医学的知見からは想定できない非常にまれな特別な病態の発生を機転として発症した(P鑑定人)と解さざるを得ない。 よって,被告病院医師らの過失によって,Dの重度脳浮腫及びそれに伴う臨床的脳死状態が生じた蓋然性は認め難く,それゆえ,Dの死亡との関係において,原告主張の因果経過(ア)を肯定することはできないというべきである。 なお,仮に,原告が,予備的に,Dの死の相当程度の可能性侵害についても主張する趣旨であるとしても,Dの重度脳浮腫の原因が,今日の医学的知見からは想定できない非常にまれな特別な病態の発生を機転としているのであれば,逆に,重度脳浮腫が,3月9日の軽度脳浮腫,痙攣重積及びそれに関連する治療と関係する可能性がないと医学的に断定できるものではなく,その意味で,鉗子の3回の滑脱と関係する可能性がないと断定 することもできないが,可能性を完全に否定できる訳ではないと解すべき証拠状態であることをもって,被告の過失行為(鉗子の滑脱等)によってDが死亡した相当程度の可能性があるとすることは相当ではないと判断する。 (4)被告病院医師らの過失とDの痙攣重積後の後遺障害の発生と因果関係について原告は,仮に被告病院医師らの本件鉗子分娩に際しての過失によりDが死 能性があるとすることは相当ではないと判断する。 (4)被告病院医師らの過失とDの痙攣重積後の後遺障害の発生と因果関係について原告は,仮に被告病院医師らの本件鉗子分娩に際しての過失によりDが死亡するに至ったといえないとしても,少なくとも痙攣重積状態に陥らせて重度の後遺障害を発症させたこととの間では相当因果関係が肯定されると主張する。 ,,,この点前提事実(7)ウ(ウ)によると痙攣重積が脳代謝異常を招来し神経組織の障害が生じて重度後遺障害を残す場合があることは認められるが,どのような場合に神経組織の不可逆的な障害が生じ,後遺障害が残存するか,本件がそれに当たるかの明確な主張,立証はなく(原告の提出する甲B28によれば,1~2時間以上痙攣重積が継続する場合に後遺障害が残存する可能性が高いことが窺われるが,本件において,そのような長時間痙攣重積が継続したと認めるに足りる証拠はないし,残存すべき後遺障害の内容及びその残存の蓋然性を認めるに足りる証拠もない,P鑑。)定人,S鑑定人によっても,Dが頭蓋内出血に起因して痙攣重積に至ったとしても,痙攣の収束により後遺障害を残さずに回復した可能性もあり,逆に何らかの神経症状が残った可能性も否定はできないけれども,どのような症状が残るかは不明であると窺える。 上記の検討によれば,被告病院医師らの過失によってDが痙攣重積状態に陥ったとしても,そのことに起因して重度脳障害という後遺障害が発生したと認めるに足りず,他に本件全証拠を検討しても,被告病院医師らの過失とDの重度脳障害の発生との間の因果関係を肯定するに足りる事情は 窺われない。 また,仮に,原告が,予備的に,重度脳障害という後遺障害が発生した相当程度の可能性侵害も主張するものとしても,重度脳障害について,その発生を妨げる相当程度 肯定するに足りる事情は 窺われない。 また,仮に,原告が,予備的に,重度脳障害という後遺障害が発生した相当程度の可能性侵害も主張するものとしても,重度脳障害について,その発生を妨げる相当程度の可能性侵害が法益として保護されるか否かはさておくとしても,後遺障害の内容及び可能性の程度について特定して認定するに足りる証拠がない本件においては,重度脳障害という後遺障害の発生を妨げる相当程度の可能性を侵害したと認めることも困難である。 よって,原告の上記主張もまた採用することができない。 (5)適切な治療を受ける期待,救命ないし延命の機会の喪失について原告は,さらに,本件鉗子分娩に際しての過失によりDが痙攣重積状態に至り,抗痙攣薬を多用し,意識状態が低下させられたことによって,抗痙攣剤の投与以外の適切な治療行為を行う余地を妨げたので,適切な治療を受ける期待を裏切られ,救命ないし延命の機会を奪われたと主張する。 ,,()確かに上記(2)までの検討によって被告の過失行為鉗子の滑脱等によって,バルビツレート療法が実施され,それによって,Dの意識状態が低下したことによって,上記(3)記載の,そのころ同時的に生じた重度脳浮腫の原因疾患の発症の発見が遅れた可能性はある。 しかし,上記(3)で記載したとおり,Dの重度脳浮腫の病態が本件全証拠によって全く特定できない以上,それに対して,適切な治療行為を特定して認定することもできず,その実施による,救命ないし延命の相当程度の可能性があると認めることもできない。また,救命ないし延命の機会の喪失が法的保護に値する利益かをさておくとしても,その機会喪失があったと認定することも困難である。 したがって,この点の原告の主張も理由がない。 結論 以上によれば,被告病院医師らにおいては,原告に対する鉗子分娩 値する利益かをさておくとしても,その機会喪失があったと認定することも困難である。 したがって,この点の原告の主張も理由がない。 結論 以上によれば,被告病院医師らにおいては,原告に対する鉗子分娩の実施及 びその手技において過失があるといえるけれども,上記のとおり,Dの死亡等の原告の主張する結果がこれらの過失に起因するものとまではいうことができないから,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部水野有子裁判長裁判官片野正樹裁判官西田祥平裁判官

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