- 1 -令和5年3月8日判決言渡令和4年(ネ)第10099号国内・国際特許を取れなくされた職務発明における相当の対価請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第27536号)口頭弁論終結日令和5年2月1日 判決 控訴人 X同訴訟代理人弁護士角謙一 被控訴人日鉄テクノロジー株式会社 同訴訟代理人弁護士増井和夫橋口尚幸齋 藤 誠二郎 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、500万円及びこれに対する令和3年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。) 1 事案の要旨 本件は、株式会社日鐵テクノリサーチ(以下「テクノリサーチ」という。) - 2 -の従業員であった控訴人が、発明の名称を「船舶の両舷ドラフト差測定装置」とする特許(特許第5827775号。以下「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)に係る発明(以下「本件発明」という。)は、控訴人がテクノリサーチ在職中にした職務発明であり、その特許を受ける権利をテクノリサーチに承継させた旨主張し、テクノリサーチを吸収合 併した被控訴人に対し、平成16年法律第79号による改正後の特許法35条(以下、単に「 中にした職務発明であり、その特許を受ける権利をテクノリサーチに承継させた旨主張し、テクノリサーチを吸収合 併した被控訴人に対し、平成16年法律第79号による改正後の特許法35条(以下、単に「特許法35条」という。)3項及び5項に基づき、上記特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の一部である500万円及びこれに対する令和3年11月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の 割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人が本件発明について特許法35条5項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」を得たものと認められないとして、控訴人の請求を棄却した。 そこで、控訴人は、原判決を不服として、本件控訴を提起した。 2 前提事実以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決2頁7行目から15行目までを次のとおり改める。 「 ア控訴人は、昭和43年に八幡製鐵株式会社に入社し、平成9年にテ クノリサーチに出向し、平成16年にテクノリサーチに転籍した後、平成21年6月30日に定年退職し、同年7月1日に嘱託社員としてテクノリサーチに再雇用され、平成22年6月30日に退職した。 イ被控訴人は、鉄鋼業等における品質保証に関する業務等を目的とする株式会社である。 被控訴人は、平成25年4月1日、テクノリサーチを吸収合併し、 - 3 -その権利義務を承継した(乙4)。 (2) 本件発明控訴人は、平成20年末頃、本件発明(次のとおりの本件特許に係る発明)をした(甲8)。」(2) 原判決2頁23行目の「(弁論の全趣 権利義務を承継した(乙4)。 (2) 本件発明控訴人は、平成20年末頃、本件発明(次のとおりの本件特許に係る発明)をした(甲8)。」(2) 原判決2頁23行目の「(弁論の全趣旨)」を「(乙16)」と、同頁 25行目の「本件発明の登録時の請求項」を「本件特許」と、同頁末行の「(弁論の全趣旨)」を「(甲23)」と改める。 ⑶ 原判決3頁1行目から2行目までを削り、同頁3行目の「原告は、」を「控訴人は、同年8月5日付けの取消理由通知を受けたため、」と、同行の「本件発明の登録時の」を「特許請求の範囲の」と改め、同頁9行目から4 頁3行目までを次のとおり改める。 「 特許庁は、同年11月16日、上記訂正を認めた上で、本件特許の請求項2、4ないし9に係る特許を維持する、請求項1,3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する旨の決定をした(甲25、弁論の全趣旨)。 ウ控訴人は、平成30年10月頃、日本製鉄による傾斜測定装置の使用又は販売が本件特許権の侵害に当たるなどと主張し、日本製鉄及び被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償の一部として3000万円及び遅延損害金の連帯支払を求める訴訟(東京地方裁判所平成30年(ワ)第33118号。以下「前訴」という。)を提起した(乙3 の1、弁論の全趣旨)。 前訴の第1審は、令和元年7月10日、控訴人の請求を棄却する旨の判決(乙3の1)をしたため、控訴人は、これを不服として控訴し(知的財産高等裁判所令和元年(ネ)第10055号)、日本製鉄が使用又は販売する傾斜測定装置(被告装置A及びB)のうち、被告装 置Aは、本件訂正発明9の技術的範囲に、被告装置Bは、本件訂正発 - 4 -明2及び4の技術的範囲に属するなどと主張した(乙3の2)。 る傾斜測定装置(被告装置A及びB)のうち、被告装 置Aは、本件訂正発明9の技術的範囲に、被告装置Bは、本件訂正発 - 4 -明2及び4の技術的範囲に属するなどと主張した(乙3の2)。 前訴の控訴審は、令和2年12月2日、日本製鉄が本件特許権の設定登録日以降被告装置Aを使用・販売していた事実を認めることができない、被告装置Bは、本件訂正発明2、4の技術的範囲に属するが、本件訂正発明2、4に係る本件特許には、特許法123条1項6号に規定す る無効理由があり、控訴人は、同法104条の3第1項により、本件特許権を行使することができないなどとして、控訴を棄却する旨の判決(乙3の2)をし、その後、同判決は、確定した。」 3 争点⑴ 相当対価請求権の存否(争点1) ⑵ 相当対価請求権の消滅時効の成否(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(相当対価請求権の存否)について以下のとおり訂正するほか、原判決5頁8行目から6頁23行目に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決5頁9行目の「1」を「(1)」と、同行の「に係る」を「の技術的範囲に属する」と改め、同頁10行目末尾に「(甲10ないし12)」を、同頁23行目の「500万円」の後に「及びこれに対する令和3年11月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金」を加え、同頁24行目の「2」を「(2)」と改める。 (2) 原判決6頁7行目末尾に行を改めて「被控訴人は、検査会社に対し被告装置を無償貸与しているが、控訴人が主張する態様で被告装置を自ら使用していない。」を加える。 2 争点2(相当対価請求権の消滅時効の成否)について(被控訴人の主張) (1) テ 置を無償貸与しているが、控訴人が主張する態様で被告装置を自ら使用していない。」を加える。 2 争点2(相当対価請求権の消滅時効の成否)について(被控訴人の主張) (1) テクノリサーチは、平成20年11月頃、控訴人から、テクノリサーチ - 5 -の「特許等の発明考案規定」(乙17。以下「本件発明考案規定」という。)に基づき、本件発明についての特許を受ける権利を承継した。 その当時、本件発明考案規定において、特許を受ける権利の承継の対価の支払時期を定めた規定は存在しなかったから、控訴人の相当対価請求権の消滅時効の起算点は、遅くとも同月末である。そうすると、平成30年11 月末の時点で、控訴人の相当対価請求権の消滅時効が完成した。 (2) 控訴人は、本訴において、前記消滅時効を援用する。 (控訴人の主張)被控訴人の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(相当対価請求権の存否)について以下のとおり訂正するほか、原判決6頁25行目から8頁14行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決6頁25行目の「1」を「(1)」と改める。 (2) 原判決7頁1行目の「35条」を「35条5項」と、同頁13行目の 「2(1)」を「(2)ア」と改め、同行の「証拠等(」の後に「甲10ないし12、」を加える。 (3) 原判決7頁22行目の「(2)」を「イ」と改め、同行の「本件全証拠によっても、」の後に「被控訴人が被告装置を自ら使用している事実を認めるに足りる証拠はないのみならず、」を加え、同頁末行の「3」を「(3)」と改 める。 (4) 原判決8頁6行目の「とおりである。」の後に「また、被控訴人が被告装置を自ら使用している事実を認めるに足りる証拠はないか ならず、」を加え、同頁末行の「3」を「(3)」と改 める。 (4) 原判決8頁6行目の「とおりである。」の後に「また、被控訴人が被告装置を自ら使用している事実を認めるに足りる証拠はないから、被控訴人にボート料金の削減の利益が生じているものと認めることはできない。」を加える。 (5) 原判決8頁13行目から14行目までを次のとおり改める。 - 6 -「(4) 以上によれば、被控訴人が本件発明について特許法35条5項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」を得たものと認められないから、控訴人は、被控訴人に対し、本件発明に係る相当対価請求権を有するものと認めることはできない。 その他控訴人は、縷々主張するが、いずれも上記認定を左右するもの ではない。」 2 結論以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求は、理由がない。 したがって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由 がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官小川卓逸 裁判官遠山敦士
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