令和4(わ)775 動物の愛護及び管理に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
令和5年1月31日 京都地方裁判所
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判決文本文4,016 文字)

主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。 理由 【罪となるべき事実】第1(令和4年8月24日付け起訴状、同年9月2日付け訴因変更請求書、同年10月14日付け訴因変更請求書)被告人は、令和4年6月19日から同月23日までの間に、京都市a区b町c番地d号室の当時の被告人方において、飼い猫1匹(スコティッシュフォールドロングヘアー)の爪を爪切りで深く切断して出血させる傷害を負わせ、さらに、同日から同月27日までの間に、同所において、同飼い猫の舌を不詳の方法で切断する傷害を負わせるとともに、胸腹部を不詳の方法で圧迫するなどして、その頃、同所において、同飼い猫を胸腹部の鈍的外傷に伴う外傷性ショック等により死亡させ、もって愛護動物をみだりに傷つけ、殺した。 第2(令和4年9月12日付け起訴状、同年10月11日付け訴因変更請求書)被告人は、令和4年6月25日から同年7月23日までの間に、前記被告人方において、飼い猫1匹(エキゾチックショートヘア)の胸部等に不詳の方法で鈍的外傷を加えるなどし、同飼い猫に肺出血等の傷害を負わせ、もって愛護動物をみだりに傷つけた。 第3(令和4年10月11日付け起訴状公訴事実第1)被告人は、令和4年6月30日から同年8月3日までの間に、前記被告人方において、飼い猫1匹(マンチカン)のひげをたばこの火で焼損させ、もって愛護動物をみだりに傷つけた。 第4(令和4年10月11日付け起訴状公訴事実第2) 被告人は、令和4年7月2日から同年8月3日までの間に、前記被告人方において、飼い猫1匹(アメリカンショートヘア)の爪を爪 けた。 第4(令和4年10月11日付け起訴状公訴事実第2) 被告人は、令和4年7月2日から同年8月3日までの間に、前記被告人方において、飼い猫1匹(アメリカンショートヘア)の爪を爪切りで深く切断して出血させるとともに、そのひげをたばこの火で焼損させ、もって愛護動物をみだりに傷つけた。 第5(令和4年10月11日付け起訴状公訴事実第3)被告人は、令和4年7月22日から同年8月3日までの間に、前記被告人方において、飼い猫1匹(ミヌエット)の爪を爪切りで深く切断して出血させるとともに、その尻尾をつかんで振り回し尾椎を亜脱臼させ、もって愛護動物をみだりに傷つけた。 【証拠の標目】(略)【事実認定等の補足説明】 1 争点弁護人は、判示第1について、その飼い猫(以下「本件猫」という。)の爪を爪切りで深く切断して出血させる傷害を負わせたことは争わないものの、舌を切断したことはなく、尻尾を持って振り回し壁にぶつけたことはあるものの、その際、被告人には未必的な殺意もなかったから、被告人は本件猫を殺していない旨主張し、被告人もそれに沿う供述をする。 2 前提事実関係証拠によると、次の事実が認められる。 被告人は、令和4年6月19日、生後約3か月の本件猫を、ペットショップで購入したが、その際、本件猫に健康上の問題はなかった。被告人は、同月23日、本件猫を動物病院に持ち込み、そこで本件猫が栄養不足状態であることや、その爪18本全てが根元から切り取られていたことが確認され、点滴治療が施された。被告人は、同月24日、前記動物病院に来院し、本件猫が死んだ、新しい猫がもらえるから死亡診断書を作成してほしいと求めたが、死体を見ていないとして拒絶されると、同月27日、大量のウジが湧いた本件猫の死体を前記動物病院に持参し 記動物病院に来院し、本件猫が死んだ、新しい猫がもらえるから死亡診断書を作成してほしいと求めたが、死体を見ていないとして拒絶されると、同月27日、大量のウジが湧いた本件猫の死体を前記動物病院に持参した。 本件猫の死体を解剖したA獣医師作成の鑑定書及び同人の供述によると、本件猫の死因は、胸部の鈍的外傷に起因する肺出血及び胸腹部の鈍的外傷に伴う外傷性ショックであり、腹部後大静脈又は胸部後大静脈が裂けたと認められることからすると、人間が誤って踏みつけた程度では生じず、例えば、人間が、尻尾をつかんで投げ飛ばし固いところに身体を強く打ちつけたり、肺の辺りを蹴飛ばしたり踏みつけたりすることで生じたと考えられること、本件猫には、死因となった外傷のほか、生前に、舌の左半分が根元から先端まで、鋭利な刃物様の道具が使われて切り取られ、18本の爪全てが出血するほど深く切られていたことが認められる。 3 判断本件猫は、6月19日に被告人に購入された時点で、健康上の問題はなかったのに、その4日後には栄養不足と全ての爪が深く切られていたことが確認され、その翌日には被告人が動物病院に死亡した旨伝え、その3日後、動物病院によって死亡が確認されていることに加え、本件猫が生後約3か月の子猫であり、一人暮らしの被告人によって飼われていたことからすると、被告人が、本件猫の全ての爪を深く切り、舌の左半分を根元から先端まで、鋭利な刃物様の道具を使って切り取り、何らかの方法で、肺出血や腹部後大静脈又は胸部後大静脈が裂けるほどの強い鈍的外力を胸腹部に加えたことが強く推認される。そして、舌の左半分を切り取ることは、猫が死亡する危険を感じさせるものであり、胸腹部に強い鈍的外力を加えることは、猫が死亡する危険性の高い行為であるから、被告人は、それらの行為を行った際、少 れる。そして、舌の左半分を切り取ることは、猫が死亡する危険を感じさせるものであり、胸腹部に強い鈍的外力を加えることは、猫が死亡する危険性の高い行為であるから、被告人は、それらの行為を行った際、少なくとも本件猫が死んで構わないという内心状態であったと強く推認される。 被告人は、舌の左半分を切り取ったことはない、胸腹部に強い鈍的外力を故意に加えたことはなく、押し入れの壁の前に座って尻尾を持って本件猫を振り回しているときに、後ろの壁に本件猫をぶつけてしまっただけであり、本件猫が死ぬとは思わなかった旨供述する。 しかしながら、本件猫の舌の左半分を被告人以外の者が切り取ったことをうかがわせる証拠はないから、被告人が切り取ったとしか考えられない。また、胸腹部へ の強い鈍的外力の原因が、被告人の供述するとおりのものであったとすると、被告人は、壁に近いところに座り、尻尾を持って相当勢いよく本件猫を振り回したということになる。本件猫は生後約3か月の子猫であるから、その行為は、本件猫を壁に衝突させ、死亡させてしまう危険の高いものである。そして、被告人は、本件猫を購入しても名前を付けず、購入して10日も経たないうちに、本件猫に苦痛を与えながら全ての爪を切り取り、舌の左半分を切り取るといった死亡する危険を感じさせる行為に及んだほか、死亡後に大量のウジが湧いても気に留めず、動物病院から確認されても生年月日や品種を答えることができなかったのである。また、被告人によると、本件猫が死んだのは壁に衝突からであると思ったにもかかわらず、その後も、別の子猫の尻尾を持って同様に振り回し壁に衝突させ、肺出血が生じるほどの怪我を負わせたというのである。これら被告人の言動からは、飼い猫への慈しみや愛情を見て取ることができないばかりか、飼い猫の命に対する無関心さや死亡 て同様に振り回し壁に衝突させ、肺出血が生じるほどの怪我を負わせたというのである。これら被告人の言動からは、飼い猫への慈しみや愛情を見て取ることができないばかりか、飼い猫の命に対する無関心さや死亡しても意に介さない態度を見て取ることができる。そうすると、本件猫に生じた胸腹部への強い鈍的外力の原因が、被告人が供述する態様のものであったとしても、その際、被告人は、本件猫が壁に衝突しても構わないし、その結果本件猫がどうなっても構わない、即ち死んでも構わないという内心状態で、尻尾を持って相当勢いよく本件猫を振り回し、本件猫を壁に衝突させ死亡させたと認められる。 したがって、被告人の供述を踏まえても、被告人は本件猫を殺したと認められる。 【法令の適用】罰条いずれも動物の愛護及び管理に関する法律44条1項刑種の選択いずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)。 未決勾留日数の算入刑法21条執行猶予刑法25条1項保護観察刑法25条の2第1項前段 訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書【量刑の理由】被告人は、2か月足らずの間に5匹の子猫をみだりに殺したり、傷つけたりしており、常習的犯行である。これらの犯行により、動物を愛護する気風は大きく害されている。また、被告人が犯行当時うつ病を患い、共感性が乏しくなっていたことが犯行に影響していると考えられるものの、ことさら虐待を加える理由にはならないのであって、その責任非難を弱めることは余りできない。 他方、被告人は、今後、動物を一切買わないと誓っており、実父も被告人の更生を支援する旨約束していること、被告人に前科はないことなど被告人のために酌むべき事情もある 難を弱めることは余りできない。 他方、被告人は、今後、動物を一切買わないと誓っており、実父も被告人の更生を支援する旨約束していること、被告人に前科はないことなど被告人のために酌むべき事情もある。 そこで、本件については、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。そして、その更生環境にはなお不安が残ることから、その猶予の期間中、被告人を保護観察に付することとする。 (求刑懲役1年6月)令和5年1月31日京都地方裁判所第3刑事部 裁判官安永武央

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