平成16(わ)1053 業務上過失致死,道路交通法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年12月13日 神戸地方裁判所
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判決文本文2,569 文字)

主文 被告人を懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は第1 平成16年9月21日午前5時5分ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,神戸市a区bc丁目d番e号先の交通整理の行われていない交差点を時速約60キロメートルで北から南に向け進行するに当たり,交差点南詰めには横断歩道が設置されているのであるから,前方を注視して,同横断歩道上の歩行者等の有無及びその安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,自車の直前に気を取られて,進路前方を注視せず,横断歩道上の歩行者等の有無及びその安全を十分確認しないまま,上記速度で進行した過失により,折から,上記横断歩道上を右(西)から左(東)に歩行してきたA(当時69歳)を前方約12.1メートルの至近距離に初めて発見したが,急制動する間もなく,同人の左側に自車の左前角付近を衝突させて左前方に約7.9メートル跳ねとばして路上に転倒させ,同人に肋骨多発骨折,左側頭部・後頭部打撲等の傷害を負わせ,よって,同日午前7時20分ころ,同市f区gh丁目i番j号所在のB医療センターにおいて,上記傷害に基づく失血及び外傷性蜘蛛膜下出血により死亡させた第2 同日午前5時5分ころ,同市a区bc丁目d番e号先の交通整理の行われていない交差点において,上記記載のとおり,上記Aに傷害を負わせる交通事故を起こしたのに,直ちに車両の運転を停止して,同人を救護する等必要な措置を講ぜず,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった第3 酒気を帯び,呼気1リット ,直ちに車両の運転を停止して,同人を救護する等必要な措置を講ぜず,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった第3 酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.55ミリグラムのアルコールを身体に保有する状態で,同日午前5時10分ころ,上記第2記載の場所付近道路において,上記第1記載の車両を運転したものである。 (証拠の標目)-括弧内は証拠等関係カード検察官請求証拠番号省略(補足説明)弁護人は,判示第2の事実のうち報告義務違反の点について,被告人は,本件事故直後,一旦現場から逃走したけれども,間もなく現場に戻り,臨場した警察官に本件事故の事実を申告しているから,報告義務違反には該当しないと主張する。 しかしながら,道路交通法72条1項後段にいう「直ちに」とは,「できる限り速やかに」を意味し,救護等の措置以外の行為に時間を費やしてはならないという意味であると解せられるところ,被告人は,運転していた普通乗用自動車を被害者に衝突させ傷害を負わせる交通事故を起こした直後,飲酒運転中に横断歩道上の歩行者を跳ねとばしたことから,厳しく処罰されるのを恐れるあまり,自車を停車させて被害者を救護することなく,また,携帯電話等により,最寄りの警察署の警察官に事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を報告することが可能であったにもかかわらず,これをしないまま約900メートル走行して停車し,自車の破損状況を調べてから,事故の約5分後に再び事故現場に戻って,目撃者の通報により既に臨場していた警察官に自己が本件事故を起こした旨申告したのであるから,被告人が,本件事故後,「直ちに」警察官への報告義務を果たしたとは認められず,報告義務に違反したといわざるを得ない。弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適 事故を起こした旨申告したのであるから,被告人が,本件事故後,「直ちに」警察官への報告義務を果たしたとは認められず,報告義務に違反したといわざるを得ない。弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,被告人が,普通乗用自動車を飲酒運転中,前方を注視して横断歩道上の歩行者の有無等を確認して進行すべき注意義務を怠った過失により,横断歩行中の被害者に自車を衝突させて傷害を負わせ死亡させながら,救護・報告義務を怠って逃走し,更に酒気帯び運転をしたという,業務上過失致死と道路交通法違反の事案である。 被告人は,自動車運転者として最も基本的な前方注視義務を怠り,横断歩道を歩行中の被害者に自車を衝突させて死亡させたものであって,被告人の過失の程度は高いこと,被害者は,本件事故により,短時間のうちに生命を失ったものであって,生じた結果は取り返しのつかない重大なものであること,被告人は,本件事故後,被害者に重傷を負わせたであろうことを十分認識しながら,救護・報告義務を果たすことなく酒気帯び運転を続けながら逃走したものであって,その行為も無責任というほかないこと,被告人の酒気帯びの程度は高く,また,酒気帯び運転に至る経緯にも酌むべき事情は乏しいことなどを考え併せると,犯情は悪く,被告人の刑事責任は重いというべきである。 また,被告人には,平成10年12月と平成11年1月の2回酒気帯び運転の罪により罰金刑に処せられた前科があることも,量刑上看過するわけにはいかない。 してみると,現在では被告人も反省していること,被告人は,本件事故後一旦は逃走したものの,間もなく現場に戻り,臨場していた警察官に対して本件犯行を自首していること,被告人運転車両には,対人賠償無制限の任意保険が付けられており,いずれ相当額の損害賠償 は,本件事故後一旦は逃走したものの,間もなく現場に戻り,臨場していた警察官に対して本件犯行を自首していること,被告人運転車両には,対人賠償無制限の任意保険が付けられており,いずれ相当額の損害賠償がなされるであろうこと,被告人には,上記の罰金前科以外に前科はなく,これまでそれなりに真面目な社会生活を送ってきていたこと,被告人の実母が今後の監督を約していること,被告人が本件で2か月半余りの間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役3年6月)よって,主文のとおり判決する。 平成16年12月13日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判官森岡安廣

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