平成13(ワ)4645 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年8月26日 名古屋地方裁判所
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判決文本文56,807 文字)

平成13年(ワ)第4645号損害賠償請求事件判決 主文 1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,360万円及びこれに対する平成13年11月20日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,名古屋拘置所(以下,単に「拘置所」ともいう。)に未決拘禁されていた原告が,同拘置所において種々の違法行為を受けたと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害の賠償を求めた事案である。 1前提となる事実当事者間に争いのない事実,以下に摘示する各証拠及び弁論の全趣旨によると次の事実を認めることができる。 (1)原告ア原告は,1968年10月4日生まれのグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国国籍の男性である。 原告は,日本人女性と結婚して来日し,英語塾の教師をしながら,約5年間日本で生活していたが,平成11年10月30日,愛知県刈谷警察署に傷害致死事件の被疑者として逮捕され,平成12年3月22日,名古屋地方裁判所岡崎支部において,傷害致死罪により懲役4年の実刑判決を言い渡された。 イ原告は,上記判決に対して即日控訴し,平成12年5月9日,名古屋高等検察庁の移監指揮により,名古屋拘置所に入所した。その後,原告は,平成13年10月24日に大阪刑務所に移監されるまで,名古屋拘置所に収容されていた。 その間,平成12年8月28日に名古屋高等裁判所による控訴棄却判決,平成13年9月28日に最高裁判所による上告棄却判決を経て,同年10月13日に上記刑が確定した。 (2)名古屋拘置所の定める未決被収容者の遵守事項ア名古屋拘置所は,未決被収容者の遵守事項を定め(以下「遵守事項」という。甲4号証),以下の規定を置いている。 20項大声を発し, 記刑が確定した。 (2)名古屋拘置所の定める未決被収容者の遵守事項ア名古屋拘置所は,未決被収容者の遵守事項を定め(以下「遵守事項」という。甲4号証),以下の規定を置いている。 20項大声を発し,放歌し,口笛を吹き,扉や壁をたたき,又は足蹴りし,その他騒がしい行為をしないこと。 32項他の人に暴行を加え,又は暴行の気勢を示し,その他粗暴な言動をしないこと。 48項法令,生活の心得若しくは作業実施細則の実施に当たり,規律秩序の維持のため,又は管理運営上職員が指示し,若しくは命令したことに対し,正当な理由がなく,従わず,若しくは暴言,抗弁その他の方法をもって反抗し,又は職員の職務の執行を妨害しないこと。 イ名古屋拘置所は,原告に対し,拘置所入所時に上記遵守事項について説明するとともに,遵守事項の英語版(甲5号証)を原告居室に備え付けていた。 (3)戒具の使用及び保護房への収容に関する通達平成11年11月1日付け矯保3329矯正局長通達「戒具の使用及び保護房への収容について(通達)」(平成12年1月1日実施。以下「新通達」という。甲3号証)には,次のような定めがある。 6保護房収容等(1)収容要件次の各号のいずれかに該当する被収容者であり,かつ普通房に収容することが不適当と認められる場合に限り収容すること。 ア逃走のおそれがある者イ他人に暴行又は傷害を加えるおそれがある者ウ自殺又は自傷のおそれがある者エ職員の制止に従わず,大声又は騒音を発する者オ房内汚染,器物損壊等異常な行動を反復するおそれがある者(4)保護房に収容されている者に対する戒具の使用保護房収容のみでは,逃走,暴行又は自殺を抑止できないと認められる場合に限り,保護房に収容されている者に対して戒具を使用できること。 (4)原告が受けた懲罰及び保護房収容措置等ア第1回懲罰名古 用保護房収容のみでは,逃走,暴行又は自殺を抑止できないと認められる場合に限り,保護房に収容されている者に対して戒具を使用できること。 (4)原告が受けた懲罰及び保護房収容措置等ア第1回懲罰名古屋拘置所は,原告が,平成12年10月9日,拘置所11階46室(以下「原告居室」又は「居室」という。)において,食器孔台の上に置かれた残飯入りの食器をこぶしでたたきつけ,同食器を看守の腰部等に当てた(遵守事項32項違反)として,同年10月31日,原告に対し,叱責の懲罰を科すことを決定した(この懲罰を,以下「第1回懲罰」といい,この懲罰の対象とされた平成12年10月9日の事件を,以下「10月9日事件」という。)。 イ第1回保護房収容(ア)原告は,平成13年1月20日,昼食時に支給されたシチューの量がみそ汁などの他の献立の場合と比べて少ないことに不満を抱き,「シチュー少ない。なぜだ。」などと日本語及び英語で大声を発しながら,原告居室の扉を蹴った(この事件を,以下「1月20日事件」という。)。 (イ)その後,原告は,拘置所2階にある処遇部門取調室(以下「取調室」という。)に連行されたが,名古屋拘置所は,原告が職員に対して暴行の気勢を示し,職員の制止に従わずに大声を発し続け,このまま普通房である原告居室へ収容することは不適当であると判断して,原告を拘置所1階にある保護房に収容した(この保護房収容を,以下「第1回保護房収容」という。)。 ウ第2回懲罰名古屋拘置所は,上記1月20日事件について,原告が,「シチュー少ない。」等怒鳴り,居室扉を強く蹴りつけ,職員に粗暴な言動をした(遵守事項32項違反)として,平成13年2月16日,原告に対し,軽屏禁3日及び文書図画閲読禁止3日(併科)の懲罰を科すことを決定した(この懲罰を,以下「第2回懲罰」という。)。 エ第2回 言動をした(遵守事項32項違反)として,平成13年2月16日,原告に対し,軽屏禁3日及び文書図画閲読禁止3日(併科)の懲罰を科すことを決定した(この懲罰を,以下「第2回懲罰」という。)。 エ第2回保護房収容(ア)名古屋拘置所は,平成13年2月16日,取調室において原告に第2回懲罰を告知したが,原告は,当該懲罰に不服がある旨の態度を示した。そこで,名古屋拘置所は,原告を立ち会わせずに当該懲罰の執行に伴う原告居室からの物品等の引揚げをあらかじめ行った。 (イ)その後,原告は,取調室から居室前まで連行されたが,居室から物品等が引き揚げられているの確認し,「自分の部屋ではない」などとして居室に入るのを拒否した。 そこで,名古屋拘置所は,実力を行使して原告を強制的に居室へ入室させようとしたが,原告はこれに抵抗した(この事件を,以下「2月16日事件」という。)。 その後,名古屋拘置所は,金属手錠を装着して原告を制圧するなどしたが,原告が極度の興奮状態にあって,引き続き暴行のおそれがあり,このまま普通房に収容することは不適当と判断して,原告を保護房に収容した(この保護房収容を,以下「第2回保護房収容」という。)。 オ第3回懲罰名古屋拘置所は,上記2月16日事件について,原告が,居室への入室を拒否していたところ,看守から「部屋に入りなさい。」,「君が自ら部屋に入らないのであれば,職員が君の腕を持って連れて行くことになる。」と再三指示されるも,「やってみろ。」と英語で言って居室に入ろうとしなかったことから,看守長統括矯正処遇官A1及び看守部長A2(以下「A2看守部長」又は「A2副看守長」という。)が原告の両腕を取り,連行しようとしたところ,「ファック・ユー」と叫び,上半身を激しく揺さぶり,両腕を振り払いながら,上記両看守に肘打ちを数回し,もって職員に対して 長」又は「A2副看守長」という。)が原告の両腕を取り,連行しようとしたところ,「ファック・ユー」と叫び,上半身を激しく揺さぶり,両腕を振り払いながら,上記両看守に肘打ちを数回し,もって職員に対して暴行した(遵守事項32項違反)として,平成13年3月14日,原告に対し,軽屏禁5日及び文書図画閲読禁止5日(併科)の懲罰を科すことを決定した(この懲罰を,以下「第3回懲罰」という。)。 カ第3回保護房収容及び革手錠の使用(ア)名古屋拘置所は,平成13年8月8日,原告が,英語を話せる職員を呼ぶように要求し,辞書で居室扉をたたくなどしたことから,原告を取調室に連行することとしたが,原告がこれに抵抗し,この際,副看守長A3が全治22日を要する左顔面打撲傷の傷害を負った(この事件を,以下「8月8日事件」という。)。なお,A3副看守長の当該傷害は,当初,加療5日を要する見込みと医師に診断されていた。 (イ)そこで,名古屋拘置所は,実力を行使して原告を制圧するなどしたが,原告が英語でわめきながら制止を免れようとして体を揺さぶり,職員に暴行するおそれが顕著であり,このまま普通房に収容することは不適当であると判断し,原告を保護房に収容した(この保護房収容を,以下「第3回保護房収容」という。)。また,拘置所は,原告を保護房に収容した際,このまま看守が原告の制止を解除すれば,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であると判断し,原告に対し,革手錠を右手前左手後ろに装着し,併せて手首脱却防止のために金属手錠を装着した。 キ第4回懲罰名古屋拘置所は,上記8月8日事件について,原告は,①英語を話せる職員を呼ぶように執拗に述べていたが,看守が英語を話せる職員は来ない旨説明したところ,「ファッキン,ファッキン」等と怒鳴りながら,辞書で房扉を連続して7,8回たたき, について,原告は,①英語を話せる職員を呼ぶように執拗に述べていたが,看守が英語を話せる職員は来ない旨説明したところ,「ファッキン,ファッキン」等と怒鳴りながら,辞書で房扉を連続して7,8回たたき,看守がこれを制止しても従わず,なおも「ファッキン,ファッキン,ファッキン。」等と怒鳴りながら,辞書で房扉を連続してたたき続け,もってけん騒行為をした(遵守事項20項違反),②上記①の後,非常ベルにより駆けつけた看守が,原告を取調室に連行すべく,原告に居室から出るように再三指示したが,原告がこれに従わなかったため,看守部長A4が原告の左腕を取ろうとしたところ,同看守部長の胸部位を突き飛ばし,この直後,A3副看守長が原告の右腕を取ろうとしたところ,同副看守長の左顔面部位を右手拳で1回殴打する暴行を加え,同人に左顔面打撲傷により加療5日を要する見込みの傷害を負わせた(遵守事項32項違反)として,平成13年8月29日,原告に対し,軽屏禁20日及び文書図画閲読禁止20日(併科)の懲罰を科すことを決定した(この懲罰を,以下「第4回懲罰」という。)。 ク平成13年8月31日事件原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同月31日午前,居室内において,布団を敷いて横臥していた。これを見た看守らが,軽屏禁の受罰姿勢は正座又は安座とされていたことから,原告に対して起きるように指導したが,原告はこれに従わなかった(この事件を,以下「8月31日事件」という。)。 ケ第4回保護房収容及び革手錠の使用(ア)原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同年9月2日,居室内において,布団を敷いて横臥していた。そこで,看守らが,原告に対して起きるように指導し,居室内に入ったが,原告との間でもみ合いとなり,この際,看守長A5が加療10日を要 ったが,同年9月2日,居室内において,布団を敷いて横臥していた。そこで,看守らが,原告に対して起きるように指導し,居室内に入ったが,原告との間でもみ合いとなり,この際,看守長A5が加療10日を要する顔面挫傷の傷害を負った(この事件を,以下「9月2日事件」という。)。 (イ)その後,名古屋拘置所は,実力を行使して原告を制圧し,金属手錠を装着したが,原告が大声を発し続け,極度の興奮状態にあり,引き続き暴行するおそれが顕著であり,このまま普通房に収容することは不適当であると判断し,原告を保護房に収容した(この保護房収容を,以下「第4回保護房収容」という。)。また,拘置所は,原告を保護房に収容した際,このまま看守が原告の制止を解除すれば,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であって,金属手錠では拘束力が不十分であると判断し,原告に対し,革手錠を両手前に装着し,併せて手首脱却防止のために金属手錠を装着した。 コ第5回保護房収容(ア)原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同年9月11日,居室内において,布団に横臥していた。そこで,看守らが,原告に対して起きるように指導し,居室内に入ったが,原告との間でもみ合いとなった(この事件を,以下「9月11日事件」という。)。 (イ)その後,名古屋拘置所は,実力を行使して原告を制圧するなどしたが,原告が大声を発し続け,極度の興奮状態にあり,引き続き暴行するおそれが顕著であり,このまま普通房に収容することは不適当であると判断し,原告を保護房に収容した(この保護房収容を,以下「第5回保護房収容」という。)。 サ第5回懲罰名古屋拘置所は,①上記9月2日事件について,原告は,原告が受罰姿勢をとらずに布団を敷いて横臥していたことから,A5看守長が原告居室扉を開き,原告に対して起きて 護房収容」という。)。 サ第5回懲罰名古屋拘置所は,①上記9月2日事件について,原告は,原告が受罰姿勢をとらずに布団を敷いて横臥していたことから,A5看守長が原告居室扉を開き,原告に対して起きて座るように指示したところ,A5看守長に対し,大声を発し,唾を吐きかけ,さらに同人の顔面を手拳で殴打した(遵守事項32項違反),②上記9月11日事件について,原告は,看守らの再三に渡る指示を無視して横臥していたため,ライナー付きヘルメット等を着用した看守が原告居室へ入り,「起きなさい。起きなければ布団を部屋の外に出す。」と指示したが,横臥を続けていたため,同看守が掛け布団及び毛布を外に出し,敷布団をわずかに動かしたところ,大声を発し,同看守のヘルメットを肘打ちして立ち上がり,さらに入室していた他の看守のヘルメットを肘で打ち付けた(遵守事項48項違反)として,平成13年10月10日,軽屏禁10日及び文書図画閲読禁止10日(併科)の懲罰を科すことを決定した(この懲罰を,以下「第5回懲罰」という。)。 2争点(1)事実関係(2)第1回懲罰の違法性(3)第1回保護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無(4)第2回懲罰の違法性(5)第2回保護房収容の違法性(6)第3回懲罰の違法性(7)第3回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性並びに看守らによる違法な暴行の有無(8)第4回懲罰の違法性(9)8月31日事件における看守らによる違法な暴行の有無(10)第4回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性並びに看守らによる違法な暴行の有無(11)第5回保護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無(12)第5回懲罰の違法性(13)損害第3当事者の主張1事実関係について当事者の主張の要旨は別紙のとおりである。 2第1回懲罰の違法性について 護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無(12)第5回懲罰の違法性(13)損害第3当事者の主張1事実関係について当事者の主張の要旨は別紙のとおりである。 2第1回懲罰の違法性について(1)原告の主張10月9日事件における原告の言動は,監獄法(以下「法」という。)59条の「紀律ニ違ヒタルトキ」や,遵守事項32項に該当せず,また,これを理由として原告に懲戒処分を科することは市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)7条及び10条に違反する。 なお,10月9日事件は,看守が原告を「がき,がき」と嘲ったことに原因がある。 (2)被告の主張10月9日事件における原告の言動は法59条及び遵守事項32項に違反する粗暴な言動であったから,懲罰は適法であり,また,自由権規約7条及び10条に違反しない。 3第1回保護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無について(1)原告の主張ア原告の言動は,新通達6(1)各号が定める保護房収容要件のいずれにも該当せず,また,このときの原告の言動を理由に保護房に収容することは自由権規約7条及び10条に違反する。 拘置所は,取調室におけるわずか10分弱の,しかも通訳を付けないやりとりで,原告が大声を発し続けるなどを理由として保護房収容を決めているが,より丁寧に時間をかけて話し合えば,保護房に収容するまでの必要は生じなかったはずである。なお,原告の食事量に関する抗議に対して拘置所は,原告が他の者との比較において食事量が少ない旨抗議しているものと誤解し,「みんな同じ量だ」との的はずれな説明に終始していたものである。 イ第1回保護房収容の際,看守らは,原告の抵抗を排して保護房に収容しようとし,原告の右腕と右足を保護房の扉に挟むなどの違法な暴行を加え,原告に傷害を負わせた。 原告は,保 終始していたものである。 イ第1回保護房収容の際,看守らは,原告の抵抗を排して保護房に収容しようとし,原告の右腕と右足を保護房の扉に挟むなどの違法な暴行を加え,原告に傷害を負わせた。 原告は,保護房に収容されることを告知されていなかったことなどから,何をされるか分からないという恐怖感に駆られ,保護房に収容されることに抵抗したものであり,この原告の抵抗には合理的な理由がある。また,上記のとおり,保護房収容自体が違法であることも考慮すると,看守らが原告の抵抗を排して保護房に収容しようとしたことは,「違法な職務執行に対する適法な抵抗を排除するために行われた違法な有形力の行使」と評価されるものである。 (2)被告の主張ア原告に新通達6(1)イ及びエに該当する言動が認められたことは明らかであるから,原告を保護房に収容したことは相当であり,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 イ看守らが原告に違法な暴行をしたとの点は否認する。原告を保護房に収容する際の看守らの制圧行為は,必要かつ合理的な範囲内の実力行使であった。 4第2回懲罰の違法性について(1)原告の主張1月20日事件における原告の言動は,法59条及び遵守事項32項に該当せず,また,これを理由として原告に懲戒処分を科することは自由権規約7条及び10条に違反する。 同事件は,食事量が少ないことに対する抗議に端を発するもので,原告の言動は,原告の抗議に対して拘置所が適切な説明をしなかったことに対する正当な抵抗であった。 (2)被告の主張1月20日事件における原告の言動は法59条及び遵守事項32項に違反する粗暴な言動であったから,懲罰は適法であり,また,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 5第2回保護房収容の違法性について(1)原告の主張原告の言動は,新通達6(1)各号のいずれにも該当せず る粗暴な言動であったから,懲罰は適法であり,また,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 5第2回保護房収容の違法性について(1)原告の主張原告の言動は,新通達6(1)各号のいずれにも該当せず,また,これを理由に保護房に収容することは自由権規約7条及び10条に違反する。 原告は看守らの実力行使に抵抗したにすぎず,攻撃的な行為又は積極的な暴行はしていない。 被告は,新通達6(1)イに該当する旨主張するが,当時の状況からすると,原告を居室に収容することで十分だったはずであり,新通達6(1)本文の「かつ普通房に収容することが不適当」と判断される事情はなかった。 (2)被告の主張原告に新通達6(1)イ及びエに該当する言動が認められたことは明らかであるから,原告を保護房に収容したことは相当であり,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 6第3回懲罰の違法性について(1)原告の主張2月16日事件における原告の言動は,法59条及び遵守事項32項に該当せず,また,これを理由として原告に懲戒処分を科することは自由権規約7条及び10条に違反する。 原告は,積極的暴行行為を行っておらず,当該懲罰は,看守らが原告を実力で居室に収容しようとしたことに対して抵抗した行為のみをとらえて科されたものである。 (2)被告の主張2月16日事件における原告の言動は法59条及び遵守事項32項に違反する粗暴な言動であったから,懲罰は適法であり,また,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 7第3回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性並びに看守らによる違法な暴行の有無について(1)原告の主張ア原告の言動は,新通達6(1)各号や,同(4)の定める戒具使用要件のいずれにも該当せず,また,これを理由に保護房に収容し,革手錠を装着することは自由権規約7条及び10条に違反する (1)原告の主張ア原告の言動は,新通達6(1)各号や,同(4)の定める戒具使用要件のいずれにも該当せず,また,これを理由に保護房に収容し,革手錠を装着することは自由権規約7条及び10条に違反する。 看守らは,原告が居室扉をたたいた行為のみを取り上げて,原告の主張に理解を示す姿勢も見せず,一方的に原告を居室から出そうとしたもので,誤った対応というべきである。このような理不尽で一方的な拘置所の対応に,原告が居室から出るのを拒絶したことは当然であり,また,原告につかみかかろうとするA3副看守長に対し,これを止めようとしてブロックした行為は正当な抵抗であり,非難されるべきものではない。 また,このとき革手錠が使用されているが,これ以前の保護房収容時には革手錠は使用されていないのであるから,革手錠を使用するためには,革手錠の使用を必要とする特段の事情が必要である。この点,原告の手がA3副看守長の顔面に当たったこと以外に,特段の事情はない。さらに,拘置所としては,時間をかけて原告を落ち着かせることもできたにもかかわらず,保護房収容後直ちに革手錠を使用しており,結局,原告に対する弾圧目的として革手錠が使用されたと判断せざるを得ない。 イ看守らは,原告に対し,原告の首を締め上げた状態で原告を保護房に連行し,また,息ができないくらいきつく革手錠を装着するという暴行を加えた。 (2)被告の主張ア原告に新通達6(1)イ及びエ,同(4)に該当する言動が認められたことは明らかであるから,原告を保護房に収容し,革手錠を装着したことは相当であり,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 イ看守らが原告に違法な暴行をしたとの点は否認する。原告を保護房に連行又は収容する際の看守らの制圧行為は,必要かつ合理的な範囲内の実力行使であった。また,看守らが息ができないくらいきつく 反しない。 イ看守らが原告に違法な暴行をしたとの点は否認する。原告を保護房に連行又は収容する際の看守らの制圧行為は,必要かつ合理的な範囲内の実力行使であった。また,看守らが息ができないくらいきつく革手錠を装着したとの点は否認する。 8第4回懲罰の違法性について(1)原告の主張8月8日事件における原告の言動は,法59条並びに遵守事項20項及び32項に該当せず,また,これを理由として原告に懲戒処分を科することは自由権規約7条及び10条に違反する。 前述のとおり,同事件における原告の言動は正当なものである。 (2)被告の主張8月8日事件における原告の言動は法59条並びに遵守事項20項及び32項に違反するものであったから,懲罰は適法であり,また,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 98月31日事件における看守らによる違法な暴行の有無について(1)原告の主張ア原告が布団に寝ていると,看守らは,受罰中である原告に受罰姿勢を強制するため,布団を取り去り,かつ,原告の手首に傷を付け,肘をねじり上げるなどの違法な暴行を加えた。 イ受罰者に受罰姿勢を強制することは,法令に根拠がなく,自由権規約7条が禁止する非人道的な取扱いに該当し,同10条が定める人道的かつ人間固有の尊厳の尊重に違反し,また,国連被拘禁者処遇最低基準規則31条が禁止する体罰に該当する。しかも,法務省矯正局保安課長が矯正管区第二部長等に宛てて送付した平成9年11月10日付け「被収容者の動作要領について(参考送付)」と題する書面(以下「平成9年11月10日付け書面」という。甲16号証)においても,被収容者が動作要領を行わないなどの場合には原則として物理的強制はしないものとされ,かつ,軽屏禁中の動作要領等は少なからず苦痛を伴うものであり,外国人については日本人とまったく同様の取扱いには も,被収容者が動作要領を行わないなどの場合には原則として物理的強制はしないものとされ,かつ,軽屏禁中の動作要領等は少なからず苦痛を伴うものであり,外国人については日本人とまったく同様の取扱いにはならないと思料されるとされている。 ウしたがって,外国人である原告に受罰姿勢を指示すること,これに対する違反に対して実力をもって強制することは,二重三重に違法であり,正当な職務行為とはいえない。 (2)被告の主張ア看守らが原告の布団を取り去ったり原告に暴行を加えたとの点は否認する。布団は原告自らが居室外に放り投げたものである。 また,看守らは,横臥している原告に対して起きるよう指導し,当該指導に必要な範囲で実力を行使したにすぎず,受罰姿勢を強制したとはいえない。 イ屏禁は,受罰者を罰室内に閉居させて外界と隔離し,それにより謹慎させ,精神的孤独のうちに反省,改悛を促すことを目的とするもので,その目的を達成するために必要かつ合理的な一定の行為の禁止,制限は,当然に法60条2項の「屏居」に含まれると解すべきであり,また,自由権規約7条及び10条並びに国連被拘禁者処遇最低基準規則31条にも違反しないと解すべきである。なお,我が国は,国連被拘禁者処遇最低基準規則を批准していない。 そして,受罰者が,受罰姿勢をとらないどころか,体調不良等の特別な理由もなく布団の中で横臥している場合,懲罰期間中の反省を促す矯正教育上の見地から,横臥しないで起きるように指導すべきことは当然であり,指導に従わない場合には必要な範囲で実力を行使することも認められると解すべきである。平成9年11月10日付け書面においても,「動静視察上の支障の防止(身体不調の者,自殺事故等の発見を容易ならしめるという観点)及び受刑者の教化上の必要性から,横臥しないよう指導することは理由があると思料され 1月10日付け書面においても,「動静視察上の支障の防止(身体不調の者,自殺事故等の発見を容易ならしめるという観点)及び受刑者の教化上の必要性から,横臥しないよう指導することは理由があると思料される。」とされている。 10第4回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性並びに看守らによる違法な暴行の有無について(1)原告の主張ア原告の言動は,新通達6(1)各号及び同(4)のいずれにも該当せず,また,これを理由に保護房に収容し,革手錠を装着することは自由権規約7条及び10条に違反する。 第4回保護房収容は,看守らが原告に受罰姿勢を強制したことに端を発するものであるところ,前述のとおり,拘置所は,受罰者に対して受罰姿勢を強制すべきではない。 また,拘置所は,原告に対し,足がしびれたときには適宜立ったり,足を伸ばしたりすることを認めていたこと(乙25号証),原告が,第2回及び第3回懲罰時には,部屋の中を徘徊し,布団に腰掛け,布団を敷いて寝ているといった生活を送っていたが,拘置所はこれを容認していたことを念頭に置いて原告に対応すべきであった。拘置所は,従前の扱いを無視して,一方的に原告に対して受罰姿勢を要求したもので,原告から見れば,つじつまの合わない理不尽な要求としか受け取ることはできないのであり,このような恣意的な拘置所の対応に抵抗するのは原告の当然の権利である。 さらに,原告がA5看守長を押し離した行為も,同人の強引な対応に抵抗するためのものであって非難されるべきものではない。 イ上記のとおり,原告の行為に非難されるべきところはないところ,看守らは,受罰中である原告に受罰姿勢を強制し,原告に一斉に飛びかかるなどの違法な暴行を加えた。 看守らは,原告を保護房に収容後,原告のパンツを下げ,肛門に何かを突き刺すなどの暴行を加え,原告に革手錠をきつく装着 中である原告に受罰姿勢を強制し,原告に一斉に飛びかかるなどの違法な暴行を加えた。 看守らは,原告を保護房に収容後,原告のパンツを下げ,肛門に何かを突き刺すなどの暴行を加え,原告に革手錠をきつく装着した。 (2)被告の主張ア原告に新通達6(1)イ及びエ,同(4)に該当する言動が認められたことは明らかであるから,原告を保護房に収容し,革手錠を装着したことは相当であり,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 イ看守らが,原告に受罰姿勢を強制し,暴行を加えたとの点は否認する。 看守らは,横臥している原告に対して起きるように指導し,当該指導に必要な範囲で実力を行使したにすぎないし,また,原告居室内及び原告を保護房に収容する際の看守らの制圧行為は,必要かつ合理的な範囲内の実力行使であった。 看守らが保護房内で原告のパンツを下げ,肛門に何かを突き刺すなどの暴行を加え,原告に革手錠をきつく装着したとの点は否認する。 11第5回保護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無について(1)原告の主張ア原告の言動は,新通達6(1)各号のいずれにも該当せず,また,これを理由に原告を保護房に収容することは自由権規約7条及び10条に違反する。 看守らは,あらかじめライナー付きヘルメット等を着用して原告居室に赴いており,このことからすると,看守らが,始めから,原告の抵抗を誘い,抵抗したことをもって保護房に収容しようとの意図を持っていたことが明らかである。看守らの行う受罰姿勢の強制及び保護房収容は,原告に対する懲らしめ目的以外の何ものでもない。 イ看守らは,受罰中である原告に受罰姿勢を強制し,また,保護房収容の際に,原告に暴行を加えた。 (2)被告の主張ア原告に新通達6(1)イ及びエに該当する言動が認められたことは明らかであるから,原告を保護房に収容したことは相当で 受罰姿勢を強制し,また,保護房収容の際に,原告に暴行を加えた。 (2)被告の主張ア原告に新通達6(1)イ及びエに該当する言動が認められたことは明らかであるから,原告を保護房に収容したことは相当であり,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 イ看守らが,原告に受罰姿勢を強制し,暴行を加えたとの点は否認する。 看守らは,横臥している原告に対して起きるように指導し,当該指導に必要な範囲で実力を行使したにすぎない。また,原告居室内及び原告を保護房に収容する際の看守らの制圧行為は,必要かつ合理的な範囲内の実力行使であった。 12第5回懲罰の違法性について(1)原告の主張9月2日事件及び9月11日事件における原告の言動は,法59条,遵守事項32項,同48項に該当せず,また,これを理由として原告に懲戒処分を科することは自由権規約7条及び10条に違反する。 両事件において原告がした抵抗は,いずれも正当な権利の行使であり,懲罰が科されるべきものではない。 (2)被告の主張9月2日事件及び9月11日事件における原告の言動は法59条並びに遵守事項32項及び48項に違反するものであったから,懲罰は適法であり,また,自由権規約7条及び10条にも違反しない。 13損害について(1)原告の主張名古屋拘置所における上記各違法行為によって原告が被った肉体的,精神的損害は,300万円を下らない。 本訴提起のための弁護士費用は60万円が相当である。 (2)被告の主張原告の主張は否認ないし争う。 第4当裁判所の判断1事実関係について前記前提となる事実,括弧内に摘示する各証拠(いずれも枝番号を含む),原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると次の(1)及び(2)ないし(7)の各アの事実を認めることができる。 (1)10月9日事件について(甲19号証,乙27号証,証人A1, ずれも枝番号を含む),原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると次の(1)及び(2)ないし(7)の各アの事実を認めることができる。 (1)10月9日事件について(甲19号証,乙27号証,証人A1,同A6)原告は,平成12年10月9日午後零時15分ころ,原告居室において,巡回中の看守が原告の態度を注意する際に「がき」という言葉を使用したことに激怒し,食器孔台に置いてあった残飯入りの食器を手でたたきつけて,同食器を同看守の腰部辺りにぶつけるとともに,残飯により同看守の衣服及び床等を汚損した。 (2)第1回保護房収容等について(甲8,18,22,23号証,乙2,3,23号証,証人A7,同A6,同A8)ア(ア)1月20日事件原告は,平成13年1月20日午前11時55分ころ,昼食時に支給されたシチューの量がみそ汁などの他の献立と比べて少ないことに不満を抱き,看守部長A8)に対してこれを抗議した。原告は,A8看守部長から,シチューは規定量であり,他の被収容者も皆同じ量である旨の説明を受けたが納得せず,「シチュー少ない。なぜだ。」などと日本語及び英語で大声を発しながら,原告居室の扉を強く蹴った。 (イ)第1回保護房収容a上記原告の態度を見て,A8看守部長は,非常ベルにより処遇部門に通報し,同通報により,看守長A7ほか5名の看守が原告居室に急行した。 原告は,A7看守長から静かにするように指導されてもこれに従わず,さらに大声を発し続けた。そこで,A7看守長らは,原告を取調室に連行した。 A7看守長は,取調室において,原告に対し,シチューは規定量であり,他の被収容者も皆同じ量である旨を説明するとともに,原告が居室扉を足蹴りにしたことを注意した。しかし,原告は,これに納得せず,「シチュー好き,もっと欲しい。今日少ない。なぜ。」などと大声を発し,さらに早口の 者も皆同じ量である旨を説明するとともに,原告が居室扉を足蹴りにしたことを注意した。しかし,原告は,これに納得せず,「シチュー好き,もっと欲しい。今日少ない。なぜ。」などと大声を発し,さらに早口の英語でまくし立て,机を4,5回たたくなどし,また,原告を制止しようとするA7看守長に対し,いわゆるファイティングポーズをとって殴りかかるような仕草をするなどした。 このとき,英語の通訳のできる職員が立ち会っていなかったため,原告は通訳人を立ち会わせるように要求したが,この日は土曜日で,英語のできる職員が皆休みであったことから,A7看守長らは,原告に対し,通訳人は休みである旨伝えた。なお,原告は,日常会話を日本語ですることができ,拘置所職員から運動時間や入浴時間等の拘置所内の生活に関する説明等を日本語でされてもそれを一応理解することができる程度の日本語に対する理解力を有していた。 bそこで,名古屋拘置所は,前記前提となる事実のとおり,原告を保護房に収容することとした。 c原告は,自分が保護房に収容されることを知らなかったことから,取調室を出ると,原告居室へ戻るべく,エレベーターホールに向かって歩き出した。そこで,看守らは,原告に対し,保護房へ通じる階段を下りるように促したが,原告が「ノー,ノー」などと大声を発しながらなおもエレベーターホールに向かって前進したため,副看守長A9は,原告の右腕をつかんで,「こっちだ。」と言って方向転換を促した。これに対して原告は,A9副看守長の手をふりほどこうとして,腕を激しく振り動かすなどして抵抗をした。これを見たA7看守長は原告の制圧を指示し,副看守長A10と看守部長A11が原告の左腕を,A7看守長とA9副看守長が原告の右腕をそれぞれつかんで後ろ手に制し,原告を保護房へ連行した。原告は,保護房への連行中,両肩を激し は原告の制圧を指示し,副看守長A10と看守部長A11が原告の左腕を,A7看守長とA9副看守長が原告の右腕をそれぞれつかんで後ろ手に制し,原告を保護房へ連行した。原告は,保護房への連行中,両肩を激しく振り動かすなどして抵抗した。 d原告は,保護房に収容される際,右腕と右足を保護房の外に出した状態で収容に激しく抵抗した。看守らは,原告の抵抗を排し,同日午後零時10分ころ,原告を保護房に収容した。 eその後原告は,同月21日午後1時37分ころ,保護房収容を解除された。 f原告は,同月22日午前10時40分ころ,名古屋拘置所医務課医師A12による巡回診察を受けた。原告は,A12医師に対し,右前腕,右胸,右肘内側,右足内側,右手母子内側に青あざがある旨を訴えた。A12医師が診察したところ,わずかに皮下出血を認めたが,腫脹はなかった。 イ原告の主張等について(ア)原告は,取調室において机をたたいたり,A7看守長に殴りかかるような仕草などをしたことはない旨主張する。 a原告の陳述書の訳文(以下,特に断りのない限り,単に「原告の陳述書」又は「陳述書」という。)には,取調室における出来事に関し,「私:「シチューが,なぜ,なぜ,なぜ,なぜ,なぜ80%しかないんだ,なぜ!??ナゼ??!」私は完全に頭にきていたが,」とか,「私は腹を立てて立ち上がり,A7と向き合って叫んだ,「シチューだ,ばかもんが!あれっぽちのシチューで,誰も何も文句を言わないんだ!」私は怒鳴り続けた,「扉のことなんかどうでもいいから,私の質問に答えろ!」」などの記述があり,これによると,当時原告が相当興奮していたことがうかがわれる。 bまた,第1回保護房収容に係る視察表(乙2号証)には,原告が取調室において机をたたいたり,胸部位の前で両手を握りしめ,A7看守長に対して殴りかかる仕草をした旨の記載 奮していたことがうかがわれる。 bまた,第1回保護房収容に係る視察表(乙2号証)には,原告が取調室において机をたたいたり,胸部位の前で両手を握りしめ,A7看守長に対して殴りかかる仕草をした旨の記載があり,証人A7もこれと同旨の証言をしている。この点,原告の陳述書には,取調室に連行される前の居室における出来事に関し,「私は攻撃の姿勢をとって,握りこぶしを挙げ,「かかってこい!」と叫んだ。」とか,「私は握りこぶしを挙げて言った,「OK,だが私の体に触れたらやっつけるぞ」」との記述があることや,上記陳述書の記述からうかがわれる原告の興奮状況等に照らすと,原告が取調室において机をたたいたり,A7看守長に対して殴りかかるような仕草をしたとしても何ら不自然ではなく,上記視察表の記載及び証人A7の証言は十分信用できる。 c以上の諸点を総合考慮すると,上記認定のとおり,原告が取調室において机をたたいたりA7看守長に対して殴りかかるような仕草をしたことが認められ,これに反する原告の陳述書の記述(なお,以下では原告の陳述書の記述を,原告本人尋問における供述と併せて「原告の供述等」ということがある。)を採用することはできず,この点に関する原告の主張は採用できない。 (イ)原告は,看守らが原告を保護房に収容する際,原告の右腕と右足を保護房の扉に挟むなどの暴行を加えた旨主張する。 aこの点,原告の陳述書には,看守らが「扉を使って私の右腕と右足を動かそうとした。 扉が繰り返し私の腕と足に当たって跳ね返り,バタンと音を立てた。」,「私は足か腕を折ることになるか,手足の指をちょんぎられる事態になるのではないかと恐れた」との記述がある。 bしかしながら,原告の陳述書,第1回保護房収容に係る現場記録表(甲8号証)及び証人A7の証言並びに弁論の全趣旨によると,原告が保護房に収容さ られる事態になるのではないかと恐れた」との記述がある。 bしかしながら,原告の陳述書,第1回保護房収容に係る現場記録表(甲8号証)及び証人A7の証言並びに弁論の全趣旨によると,原告が保護房に収容される際の状況は,原告が右腕及び右足を保護房の外に出した状態で,さらに保護房の外に出ようとして収容に抵抗したのに対し,数人の看守らが原告の体を押すなどして原告を保護房に押し入れようとするというものであったと認められるが,そのような状況で,原告に激しく扉を当てるなどすることは,看守らにとっても危険な行為であり,看守らがそのような行為をするとはにわかに考えがたい。 cまた,保護房扉を撮影した写真撮影報告書(乙33号証)及び証人A7の証言によると,保護房の扉は,金属製で相当重量のあるものと認められるところ,翌日のA12医師の診察では,原告の右前腕,右胸,右肘内側,右足内側及び右手母子内側にわずかに皮下出血が認められたにすぎず,この診察に立ち会った証人A6は,原告があざがあると言って指さした箇所に顔を近づけて確認したが,ちょっと赤くなっているという感じで,それが負傷したというのかどうか判断できなかった旨証言しており,「腕と足に当たって跳ね返り,バタンと音を立て」るという状況でこの扉が繰り返し当たった場合に,上記程度の皮下出血で済むのか疑問がある。さらに,上記収容状況に照らすと,「腕と足に当たって跳ね返り,バタンと音を立て」るという状況でこの扉が繰り返し当たった場合には,原告の右足外側等にも何らかの痕跡が残っていたり,医師に痛みを申告していてもおかしくないと思われるが,そのような事実は認められない。 d原告は,原告の右半身にのみ皮下出血が確認されていることをもって,看守らが原告の右半身に保護房の扉を打ち付けたことは明白である旨主張する。 しかし,上記収容状況 るが,そのような事実は認められない。 d原告は,原告の右半身にのみ皮下出血が確認されていることをもって,看守らが原告の右半身に保護房の扉を打ち付けたことは明白である旨主張する。 しかし,上記収容状況に照らすと,看守らが原告を保護房に押し入れようとする力は,主に原告の右側から加えられたものと推認できるし,この点,原告の陳述書によっても,看守らの力が主に原告の右腕,右足及び右上半身に加えられたものと認められるのであって,皮下出血が原告の右側にのみ認められたからといって,直ちにこれが保護房の扉を打ち付けられたことによるものと認めることはできない。 e以上の諸点を総合考慮すると,上記陳述書の記述は,不自然であるか,又は大きな誇張があるといわざるを得ず,この点に関する原告の供述等は直ちに採用することができず,原告の上記主張は採用できない。 (ウ)原告は,保護房に収容される際,A3副看守長に髪を引っ張られたとか,看守が原告にパンチをしたりつねったりした旨主張する。 aこの点,原告の陳述書には,A3副看守長が原告の頭の後ろの髪をものすごい力で引っ張った旨,看守の誰かが原告の右のあばらにパンチをしたりした旨の記述があり,本人尋問において,このとき原告にパンチをしたりした看守は,たぶんA3副看守長であったと思う旨供述している。 bしかし,上記現場記録表によると,このときA3副看守長は,記録係をしていたことが認められるところ,証人A7は,記録係が制圧行為に加わることはない旨,第1回保護房収容の際にA3副看守長が制圧行為に加わったことはない旨証言している。 cまた,原告は,訴状においては,この点につき,看守らが「原告の髪の毛をつかみ,体のあちこちをつかんだり,押すなどして,保護房に入れようとした」としか主張しておらず,上記陳述書の記述との間には,相当なニュアンスの違 訴状においては,この点につき,看守らが「原告の髪の毛をつかみ,体のあちこちをつかんだり,押すなどして,保護房に入れようとした」としか主張しておらず,上記陳述書の記述との間には,相当なニュアンスの違いがみられる。 d以上の諸点を総合考慮すると,原告の記憶には誤認混同があるか,又はその表現に相当な誇張があると考えられ,A3副看守長に髪を引っ張られたとか,看守が原告にパンチをしたりつねったりした旨の原告の供述等は直ちに採用することができず,原告の上記主張は採用できない。 (3)第2回保護房収容等について(甲18号証,乙34ないし36号証,証人A1,同A6)ア(ア)2月16日事件a副看守長A13は,平成13年2月16日午後1時40分ころ,取調室において,看守部長A6の通訳を介し,原告に対し,第2回懲罰を告知するとともに,懲罰中の受罰姿勢,当該懲罰に伴い居室から引き揚げる物品の品目,運動及び入浴の制限等の懲罰執行中の居室内における生活要領を説明した。この際,受罰姿勢については,部屋の真ん中で扉に向いて,いわゆるあぐらの姿勢で座っていること,その際,目をつぶっていてもよいこと,トイレに行く際には報知器を押してから行くべきこと,朝食後,夕点検まで受罰姿勢をとるべきこと,足がしびれたときには適宜足を伸ばしてもよいことなどを説明した。これに対して原告は,「懲罰は納得できない」,「物品の引揚げに携わる職員には危害を加える」旨発言し,懲罰を受けることを拒んだ。A13副看守長及びA6看守部長は,約2時間に渡り,原告に対し,懲罰を受けるように説得をしたが,原告は,上記と同旨の発言を繰り返した。 懲罰に伴う物品等の引揚げは通常受罰者の立会いの下に行われるが,A13副看守長から上記原告の態度について報告を受けたA1統括は,原告が居室に戻る前に物品等の引揚げを行うよう 旨の発言を繰り返した。 懲罰に伴う物品等の引揚げは通常受罰者の立会いの下に行われるが,A13副看守長から上記原告の態度について報告を受けたA1統括は,原告が居室に戻る前に物品等の引揚げを行うように指示をした。 b原告は,同日午後3時40分ころ,原告居室前まで連行されたが,居室から物品等が引き揚げられているの確認し,「自分の部屋ではない」などとして居室に入るのを拒否した。A1統括は,A6看守部長の通訳を介し,原告に対し,「部屋に入りなさい」,「自ら部屋に入らないのであれば,職員が君の腕を持って連れて行くことになる」旨再三説得したが,原告は,「カモン,カモン」などと言ってこれに応じなかった。 A1統括は,原告を強制的に居室に入室させることとし,処遇部門に応援を求め,看守長統括矯正処遇官A14ら数名の看守が原告居室前に急行した。 そこで,A1統括が原告の左腕を,A2看守部長が原告の右腕をそれぞれ抱えるようにしてつかみ,原告を居室に入室させようとしたところ,原告は,「ファック・ユー」などと叫んで上半身及び腕を激しく揺さぶり,A1統括及びA2看守部長の腹部を数回肘打ちし,A1統括らの手を振り払おうとした。 (イ)第2回保護房収容a上記原告の態度を見て,A14統括が正面から原告を制しようとしたところ,原告は,上半身を前後に振り,A14統括に対して頭突きをするような素振りをし,原告の頭がA14統括の帽子のつばに当たり,帽子が床に落ちた。 bそこで,看守A15が非常ベル通報をするとともに,看守A16が原告の左腕を,A2看守部長が原告の右腕を,A1統括が原告の背中を,看守A17が原告の左足を,看守A18が原告の右足をそれぞれ押さえ,原告をうつぶせの状態にして制圧した。それでも,原告は,「ファック・ユー」などと叫びながら,体を激しく揺さぶり抵抗していたことから ,看守A17が原告の左足を,看守A18が原告の右足をそれぞれ押さえ,原告をうつぶせの状態にして制圧した。それでも,原告は,「ファック・ユー」などと叫びながら,体を激しく揺さぶり抵抗していたことから,非常ベル通報により急行した処遇部門首席矯正処遇官看守長A19の指示により,同日午後3時50分ころ,原告に対し,戒具である金属手錠を両手後ろの状態で装着した。 cA19首席は,原告を取調室に連行することとし,金属手錠を使用した状態で,A2看守部長が原告の右腕を,A1統括が原告の左腕をそれぞれ抱えてエレベーターに乗ったところ,原告は,頭部及び上半身等を激しく揺さぶるなどして,周りの看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとした。 dそこで,名古屋拘置所は,同日午後3時52分ころ,前記前提となる事実のとおり,原告を保護房に収容した。拘置所は,原告を保護房に収容する際に金属手錠の解除を試みたが,原告が,「手錠を外したら誰でもいいから殺してやる」などの趣旨の発言をしたため,金属手錠を装着したまま保護房に収容することとした。 eその後原告は,同日午後5時15分ころに金属手錠を解除され,同月19日午後2時35分ころに保護房収容を解除された。 イ原告の主張等について(ア)原告は,A1統括らに肘打ちをした事実はない旨供述する。 aこの点,原告の陳述書及び本人尋問の結果によっても,原告が,看守らが原告の腕等をつかみ,又はつかもうとしたことに対して,それを振り払うように体を振ったりしていたことは認められるところ,原告本人尋問の結果によると,このとき,原告は腕を組んだ状態でいたというのであるから,その状態で体を振れば,原告の腕をつかもうとした看守らの腹部に原告の肘が当たったということは十分に考えられる。 bそして,看守が原告の腕等をつかみ,又はつかもうとしたことに対し,それを振 のであるから,その状態で体を振れば,原告の腕をつかもうとした看守らの腹部に原告の肘が当たったということは十分に考えられる。 bそして,看守が原告の腕等をつかみ,又はつかもうとしたことに対し,それを振り払うようにして,腕を組んだ状態で体を振るなどすれば,原告の肘が当該看守に当たることは原告においても当然に認識できることであり,また,証人A6の証言によると,原告が,A1統括の「自ら部屋に入らないのであれば,職員が君の腕を持って連れて行くことになる」旨の説得に対し,「カモン,カモン」などと言っていたことが認められることに照らすと,原告が意図的に肘打ちをしたものと評されるのはやむを得ない。 c原告は,第2回保護房収容に係る視察表(乙34号証)には,原告が意図的に肘打ちをした事実は記載されていない旨主張し,これと異なり,原告が意図的に肘打ちをしたとする証人A1及び同A6の各証言には信用性がない旨主張するが,同視察表には,「更に両腕で肘うちし,A1統括とA2部長の上半身に本人の肘部位が数回当たる暴行に出た」と記載されているのであって,当該記載が原告の肘打ちが意図的なものであったとする趣旨であることは明らかである。 d以上の諸点を総合考慮すると,上記認定のとおり,原告がA1統括らに肘打ちをした事実を認めることができ,これに反する原告の供述等は採用できない。 (イ)原告は,A14統括に対して頭突きをする素振りをしたことを否認する供述をしている。 aこの点,証人A1は,原告がA14統括に頭突きをして,A14統括の帽子が勢いよく飛んだのをはっきりと覚えている,A1統括らが原告の手を抱えていたところ,それを支点として腰から上を振り子みたいな形で思い切り上下に振っていた旨証言している。 また,証人A6は,A14統括が原告の正面に立ったところ,原告は,いったん上体を反ら 原告の手を抱えていたところ,それを支点として腰から上を振り子みたいな形で思い切り上下に振っていた旨証言している。 また,証人A6は,A14統括が原告の正面に立ったところ,原告は,いったん上体を反らして,それから思いっきり前方に,サッカーのヘディングをするような状態で,頭を振って頭突きをした,原告の頭突きは,A14統括の体には当たらなかったが,A14統括がかぶっていた帽子のつばに当たって帽子が床に落ちた旨証言している。 上記各証言を検討すると,上記各証言は,ほぼ同一の内容を,具体的に表現しているものと評価することができ,その内容に不自然な点はなく,十分に信用できるものである。 b原告は,上記視察表には,「A14統括めがけて頭突きをなす」としか記載されていないことや,A1統括らに両手をつかまれている状態では,原告は証人A1が証言するような大きな動きはできないはずであるとして,証人A1の証言には誇張がある旨主張する。この点,証人A1の証言が,上記視察表の記載よりも具体的であることは明らかであるが,このことは,証人A1が,単に同視察表に基づいて証言しているのではなく,当時の自己の記憶に基づいて証言していることをうかがわせる事情として,むしろ,同証言の信用性を高めるものと評価し得るし,また,更にA1統括らに両手をつかまれていた場合に証人A1が証言するような動きができないとは認められないし,上記証人A6の証言内容に照らせば,証人A1の証言に誇張があると断ずることはできない。 c以上の諸点を総合考慮すると,上記認定のとおり,原告がA14統括に頭突きをする素振りをした事実を認めることができ,これに反する原告の供述等は採用できない。 (ウ)原告は,エレベーター内において,頭及び上半身等を激しく揺さぶるなどして,周りの看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとしたことも た事実を認めることができ,これに反する原告の供述等は採用できない。 (ウ)原告は,エレベーター内において,頭及び上半身等を激しく揺さぶるなどして,周りの看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとしたことも否認する。 a原告は,上記の否認する理由に関し,金属手錠をかけられているから看守らに対して抵抗することは無理であったという旨を供述する。 この点,原告の陳述書には,原告は,金属手錠をかけられてからも,もがき,わめき続けていた旨の記述があるし,原告本人尋問においても,看守らが原告を歩かせようとしたことに抵抗しようとしたこと自体は認める旨の供述をしているのであって,上記の供述内容は必ずしも合理的なものではないと考えられる。 bまた,上記視察表及び第2回保護房収容に係る現場記録表(乙35号証)によると,原告は,原告居室からエレベーターまで,エレベーターから保護房までは,いずれもA1統括及びA2看守部長に両腕を制された状態で,歩いて連行されていた旨の記載がある。 原告は,原告本人尋問において,手錠をかけられた後に保護房へ行くのに抵抗をしたかとの質問に対し,「何とか歩かせようとしましたので,そういう歩かせられることに対しては抵抗しました」とエレベーターから保護房まで自ら歩いて連行された旨の供述をしているところ,原告の陳述書には,原告はうつ伏せにされた状態でエレベーターに運ばれ,また,うつ伏せの状態で保護房に運ばれた旨の記述があり,このときの出来事に関する原告の記憶には誤認混同があることがうかがわれる。 c以上の諸点を総合考慮すると,上記認定のとおり,原告がエレベーター内において周りの看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとした事実を認めることができ,これに反する原告の供述等は採用できない。 (4)第3回保護房収容等について(甲9,18,21,23号証,乙5ないし11 において周りの看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとした事実を認めることができ,これに反する原告の供述等は採用できない。 (4)第3回保護房収容等について(甲9,18,21,23号証,乙5ないし11号証,証人A1,同A6)ア(ア)ハンガーストライキ等a原告は,雑居運動場での運動を認められていなかったところ,これを不服として,平成13年7月30日から断続的に,ハンガーストライキを行っていた。 b原告は,同年8月7日,ハンガーストライキを再開した。 A14統括は,A6看守部長の通訳を介し,原告に対し,①名古屋拘置所は,外国人の雑居運動場の使用についての実情等について英国総領事館に必要な説明を行っていること(なお,原告は,以前から,英国総領事館に対し,名古屋拘置所の処遇が不当である旨を訴えており,名古屋拘置所は,英国総領事館の調査に応じていた。),②名古屋拘置所は,原告のハンガーストライキについて,わがままな要求を押しつけるための不当な手段と考えており,何の意味も認めないが,これ以上続けるのであれば合法的措置(強制的栄養補給)を採る用意があることなどを伝えた。このとき原告は,横臥したままの姿勢で話を聞き,A14統括らに対し,「おめでとう」,「関係ない。向こうへ行け。」などと言っていたが,その後,A14統括らの上記言葉を書面に記載して,英国総領事館と原告の委任している弁護士に伝えようと考えた。 そこで原告は,同月8日午前中,英国総領事館等に手紙を出すこととし,英語を話せるA6看守部長に協力を求めるために,看守部長A20に対し,A6看守部長を呼ぶように要求した。 c名古屋拘置所は,同年8月8日午後1時5分ころ,原告が入浴中に原告居室内を捜検した。その際,拘置所は,原告が配食された食事は食べていないものの,居室内で菓子類を食べている様子がうかがわれて した。 c名古屋拘置所は,同年8月8日午後1時5分ころ,原告が入浴中に原告居室内を捜検した。その際,拘置所は,原告が配食された食事は食べていないものの,居室内で菓子類を食べている様子がうかがわれていたため,原告の間食状況を確認する目的で,原告が所持する菓子類の減り具合について確認した。 d原告は,同日午後1時30分ころ,原告が不在の間に居室の捜検が行われたことや,英語を話せる職員を呼ぶように再三要求しているにもかかわらず,英語を話せる職員が来ないことなどを不満に思い,A20看守部長に対し,この点についての説明を求めるとともに,英語の話せる職員を呼ぶように再度要求したが,A20看守部長から納得のいく説明は得られず,また,英語のできる職員も来なかった。 なお,従前原告の通訳を主に担当していたA6看守部長は,前日7日,拘置所所長に対し,原告の通訳の担当から下ろしてくれるように頼み,認められていた。 (イ)8月8日事件a原告は,同日午後3時40分ころ,A20看守部長に対し,英語を話せる職員を呼ぶように要求した。これに対し,A20看守部長は,昨日の話についてはA14統括及びA6看守部長が英語で話したとおりであり,今日は英語を話せる職員は来ない旨を告げた。 b原告は,同日午後4時ころ,A20看守部長に対し,英語を話せる職員を呼ぶように要求した。これに対し,A20看守部長が,昨日の話についてはA14統括らが話したとおりであり,英語を話せる職員は来ない旨を再び告げたところ,原告は,「ファッキン,ファッキン」などと叫びながら,辞書で原告居室扉をたたき始めた。A20看守部長は,原告に扉をたたくのをやめるように指示したが,原告がこれに従わずになおも扉をたたいたり,英語で怒鳴り続けたりしたため,非常ベルにより処遇部門に通報した。 c上記非常ベル通報により原告居室前 守部長は,原告に扉をたたくのをやめるように指示したが,原告がこれに従わずになおも扉をたたいたり,英語で怒鳴り続けたりしたため,非常ベルにより処遇部門に通報した。 c上記非常ベル通報により原告居室前に急行したA14統括は,原告に対し,扉をたたくのをやめるように再三指導したが,原告は,英語でまくし立てるばかりで,静まる気配を見せなかった。そこで,A19首席が原告を取調室に連行するように指示し,A20看守部長が居室扉を開け,原告に対し,居室から出るように促した。しかし,原告が居室から出ようとしなかったため,処遇部長A35の指示により,看守部長A4が原告の左腕をつかもうとしたところ,原告は,A4看守部長の手を払いのける仕草をした後,A4看守部長の胸部付近を突いた。さらに,原告は,A3副看守長が原告の右腕をつかもうとしたところ,A3副看守長の左目付近を右手拳で殴打し,同人に全治22日を要する左顔面打撲傷の傷害を負わせた。 (ウ)第3回保護房収容aそこで直ちに,A2副看守長が原告の左腕を,A1統括が原告の右腕を,看守部長A21が原告の左足を,看守部長A22が原告の右足をそれぞれ押さえ,原告を仰向けに制圧し,原告を取調室に連行するべく,仰向けに制圧したままの状態で原告を持ち上げ,エレベーターに乗った。 b原告は,エレベーター内でも,英語で何事かを叫び,体を激しく揺さぶるなどしたことから,A4看守部長が原告の右脇を,A17看守が原告の左脇をそれぞれ抱えて制圧に加わった。しかし,それでも原告が激しく体を揺さぶるなどしたことから,名古屋拘置所は,原告を取調室に連行することを断念し,同日午後4時15分ころ,前記前提となる事実のとおり,原告を保護房に収容した。 また,名古屋拘置所は,原告が,保護房に収容される際,なおも「ファッキン」などとわめきながら体を激しく することを断念し,同日午後4時15分ころ,前記前提となる事実のとおり,原告を保護房に収容した。 また,名古屋拘置所は,原告が,保護房に収容される際,なおも「ファッキン」などとわめきながら体を激しく揺さぶるなどしていたため,前記前提となる事実のとおり,原告に対して革手錠等を装着した。 cその後原告は,同日午後5時29分ころに革手錠等を解除され,同月9日午後零時8分ころ,保護房収容を解除された。 d原告は,保護房収容中である同日午前11時40分ころ,名古屋拘置所医務課医師A23による保護房収容後の診察を受けた。A23医師は,首,右腹部,左上腕部に軽い圧痛がある程度で,問題はないと診断した。 イ原告の主張等について(ア)原告は,原告が居室扉をたたいたことは認めるが,怒鳴ってはいない旨主張する。 aしかし,第4回懲罰に係る懲罰表(乙11号証)に添付された当時名古屋拘置所11階に収容されていた者の供述調書には,原告が外国語で何事か大声で叫びながら扉をたたき続けた,看守が原告に「話を聞くから部屋から出なさい。」と言ったが,原告は看守らに大声で「ファッキン,ファッキン。」というような言葉だけを何回も言っていた旨の記述があり,また,同様に当時名古屋拘置所11階に収容されていた他の者の供述調書には,原告が外国語で大きな声で何かを叫んでいた旨の記述があり,当該各記述に特段不自然なところはない。 bまた,原告の陳述書には,原告が怒鳴っていた旨の記述はないが,これを明確に否認し,又はこれと明らかに矛盾する記述もない。 c以上の諸点を総合考慮すると,上記認定のとおり,原告が「ファッキン,ファッキン」などと叫びながら居室扉をたたいた事実を認めることができ,これに反する原告の供述等を採用することはできず,原告の上記主張は採用できない。 (イ)原告は,原告がA3副看守長を手 ファッキン,ファッキン」などと叫びながら居室扉をたたいた事実を認めることができ,これに反する原告の供述等を採用することはできず,原告の上記主張は採用できない。 (イ)原告は,原告がA3副看守長を手拳で殴打したという点について,A3副看守長が原告に突撃してきたので,手のひらを上に向けたまま,前ブロックをしたものである旨主張する。 aしかし,証人A1は,A3副看守長が原告の右腕を取ろうとしたところ,原告はその手を引っ込めて,そのまま勢いよくストレートパンチで思い切りA3副看守長の左顔面を殴りつけた,A3副看守長が原告居室に入ろうとしたのを止めようとして原告が手を出したという状況とはまったく違う,原告がこぶしを握っていたのをはっきりと見ている旨明確に証言し,当該証言内容に不自然な点は認められない。 また,原告の陳述書には,原告が看守らに対し「私に触ったら,身を守るからな」と警告した旨や,A3副看守長が原告の右腕をつかもうとしたので,急いで後ずさりして,右の握りこぶしを振り挙げた旨,A3が1,2回飛びかかるふりをしたので,原告はA3副看守長に向かって「やれよ」と言った旨の記述があって,このような原告の挙動及びこれからうかがわれる原告の興奮状態に照らすと,原告が,原告の右腕をつかもうとしたA3副看守長を手拳で殴打したとしても不自然ではない。 b他方,原告の陳述書には,「A3は歯ぎしりをして,私に向かって突撃した。それと同時に私は手を開いて手のひらを上に向けたまま,ラグビーで相手をブロックする動きを見せて,前に身を乗り出した」との記述があるところ,「手を開いて手のひらを上に向けたまま,ラグビーで相手をブロックする動き」が具体的にいかなる動きであるのか必ずしも明確ではないが,A3副看守長が原告の右腕をつかもうとしたことに対するとっさの動きとして,手の て手のひらを上に向けたまま,ラグビーで相手をブロックする動き」が具体的にいかなる動きであるのか必ずしも明確ではないが,A3副看守長が原告の右腕をつかもうとしたことに対するとっさの動きとして,手のひらを上に向けて前方に突き出す行為をしたというのは自然な動作とはいい難いと思われる。 cまた,原告は,この原告の動きを,原告本人尋問では,「相撲の突っ張り」に例え,A3副看守長を突っ張って押し返した旨供述し,また,殴ったというのは少し大げさな表現だと思う旨供述しているが,上記認定のとおり,このときA3副看守長が負った傷害が全治22日を要するものであったことや,原告の陳述書では,直後のA3副看守長の動きについて「撃たれでもしたかのように倒れて床に転がった」と表現されていることに照らすと,自らの行為を過小に表現しているといわざるを得ない。 d以上の諸点を総合考慮すると,原告がA3副看守長を手拳で殴打した事実を認めることができ,これに反する上記原告の供述等を採用することはできず,原告の上記主張は採用できない。 (ウ)原告は,看守らが原告の首を締め上げた状態で原告を保護房に連行した旨主張し,これに沿う原告の供述等がある。 aしかし,第3回保護房収容に係る現場記録表(甲9号証)によると,このときの原告に対する制圧方法及び連行態様について,上記認定のとおり,原告を仰向けにし,6人の看守がそれぞれ原告の四肢及び両脇を抱えた状態であったと認めることができ,証人A1は,第3回保護房収容の際に,看守が原告の頭部を持ったり抱えたりしたことは絶対にない旨証言しているところ,このような状態で,看守らが原告の首を締め上げるということは困難であり,不自然であるといわざるを得ない。 b他方,原告の陳述書には,「あっという間に私は足を水平方向に持ち上げられた。およそ10人が両手で私 うな状態で,看守らが原告の首を締め上げるということは困難であり,不自然であるといわざるを得ない。 b他方,原告の陳述書には,「あっという間に私は足を水平方向に持ち上げられた。およそ10人が両手で私を掴んだので,私はあらゆる方向に引っ張られ押しつけられた。この時一人の看守が私ののどに腕を回したので,私の頭はしっかりと押さえられた。」との記述がある。これは,原告が看守らに水平に持ち上げられて連行された旨を述べているものと考えられるが,うつ伏せの状態であったのか,仰向けの状態であったのか,看守がどの位置からどのように原告ののどに手を回したというのかなど,具体的な状況は明らかではない。 この点,原告は,本人尋問において,保護房に連行されるときの状況について,「皆が襲いかかって自分を歩かせようとしました。何とか歩いていったことはいいんですけれども,そのうちの1人が自分ののどのところに腕をかけて窒息させようとしました。」と供述し,上記陳述書の記述とは異なり,自ら歩いて保護房に連行されたかのような供述をしている上,ここでも,看守がどの位置からどのように原告ののどに腕をかけたとするのか明らかではない。 さらに,原告は,本件訴状においては,「10名位の職員がいっせいに原告に襲いかかり,原告の手,足,胴をつかんでつり上げたが,その際に一人の職員が原告の手を同人の首を締め上げるように首から巻き上げてつり上げた」と主張しており,これによると,原告はうつ伏せに持ち上げられたとの主張であり,また,原告の首に巻き付いていたのは,看守の手ではなく,原告の手であるという主張のように解される。 そうすると,看守らが原告の首を締め上げた状態で原告を保護房に連行した旨の原告の主張及び供述等には,明確ではない点があり,また重要な点において変遷があるというべきである。 c以上の諸点 に解される。 そうすると,看守らが原告の首を締め上げた状態で原告を保護房に連行した旨の原告の主張及び供述等には,明確ではない点があり,また重要な点において変遷があるというべきである。 c以上の諸点を総合考慮すると,看守らが原告の首を締め上げた状態で原告を保護房に連行した旨の原告の供述等は直ちに採用し難いものであり,原告の上記主張を採用することはできない。 (エ)原告は,看守らが,革手錠を息ができないほどきつく装着した旨主張し,原告の陳述書にはこれに沿う記述がある。 aしかし,証人A1は,原告に対する革手錠の装着は適正に行われており,同証人が革手錠と原告の体の間に指を入れて革手錠の締め具合を確認したところ,人さし指から小指までを原告の体に垂直に立てる余裕もあった旨証言しているところ,当該証言は具体的であり,その内容に特に不自然な点は認められない。 bまた,上記認定のとおり,翌日の診察においてA23医師が認めた原告の症状は,首,右腹部,左上腕部に軽い圧痛がある程度というものであり,さらに,6日後である平成13年8月16日に英国領事代理が撮影した写真(以下「8月16日撮影写真」という。甲21号証)に映し出された原告の両腰部の状況は,500円硬貨大の範囲に,わずかな変色が見られる程度である。 c以上の諸点を総合考慮すると,革手錠を息ができないほどきつく装着された旨の原告の陳述書の記述には相当誇張があると考えざるを得ず,直ちに採用することはできず,この点に関する原告の上記主張は採用できない。 (5)8月31日事件について(甲18号証,乙12号証,証人A1)ア(ア)原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同月31日午前,居室内において,布団を敷いて横臥していた。これを見たA20看守部長が,軽屏禁の受罰姿勢は正座又は安座とされていた (ア)原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同月31日午前,居室内において,布団を敷いて横臥していた。これを見たA20看守部長が,軽屏禁の受罰姿勢は正座又は安座とされていたことから,原告に対して起きるように指導したが,原告はこれに従わなかった。 (イ)A20看守部長から報告を受けたA14統括らは,同日午前10時50分ころ,原告居室に赴いて扉を開き,原告に対し,布団をたたんで起きるように指導するとともに,寝ているなら布団を居室から出す旨を伝えた。これに対して原告は,「ゴー・アウェイ」などと言って起きる様子がなかった。そこで,A2副看守長及び看守A24が居室内に入り,A24看守が原告の掛け布団を持ち上げたところ,原告は,「ファッキン」,「ドントタッチ」などと怒鳴り,掛け布団を居室外に放り投げ,畳の上に座った。A14統括は,起きていれば布団は出さない旨原告を諭した上,掛け布団を居室に戻した。 イ原告の主張等について原告は,看守らが原告の布団を取り去り,原告の手首に傷を付け,肘をねじり上げた旨主張し,原告の陳述書には,これに沿う記述がある。 (ア)しかし,証人A1は,最初から最後まで見ていたが,このとき看守は原告に指1本触れておらず,原告がけがをするはずがない旨明確に証言している。 (イ)また,原告の陳述書には,原告が,同日午後3時30分ころ,別の用件でやってきた弁護士に対し,同日の事件の内容と傷の説明をし,同弁護士がこれを文書にした旨の記述があるところ,本件訴訟に当該弁護士が作成したとされる文書は提出されていない。 (ウ)以上の諸点を総合考慮すると,看守らが原告の手首に傷を付け,肘をねじり上げた旨の原告の陳述書の記述は直ちに採用することができず,原告の上記主張は採用できない。なお,原告の掛け布団を最終的に居室外に放り投げた 点を総合考慮すると,看守らが原告の手首に傷を付け,肘をねじり上げた旨の原告の陳述書の記述は直ちに採用することができず,原告の上記主張は採用できない。なお,原告の掛け布団を最終的に居室外に放り投げたのが原告であることは,原告の陳述書からも認められる。 (6)第4回保護房収容等について(甲10,18,20号証,乙13ないし18,32号証,証人A8)ア(ア)9月2日事件a原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同年9月2日午前9時40分ころ,居室内において,布団を敷いて横臥していた。これを見たA8看守部長が,原告に対し起きるように指導したが,原告はこれに従わなかった。 bA8看守部長から報告を受けたA5看守長らは,同日午前11時20分ころ,原告居室に赴き,原告に対し,寝ていないで座っているように指導したが,原告は,これに従わなかった。そこで,A5看守長は,居室扉を開いた上で,再度座るように指導したが,原告は,「ファック」などと怒鳴りながら,A5看守長に唾を吐き,こぶしを振り挙げて身構えた。原告は,A5看守長に左手をつかまれたことから,左手を思いっきり引っ張り返したが,このとき,原告の左手にひっかき傷ができた。原告は,A5看守長が原告の右手をつかもうとしてきたことから,A5看守長の顔面を手拳で殴打し,同人に加療10日を要する顔面挫傷の傷害を負わせた。 (イ)第4回保護房収容aそこで直ちに看守らが原告の両手,両足を制したが,原告が両腕を激しく動かすなどして抵抗したことから,副看守長A25が原告の両足を,副看守長A26が原告の右腕を,看守A27が原告の左腕を,A8看守部長が原告の頭をそれぞれ押さえて原告をうつ伏せに制圧し,さらに,なおも原告が激しく体を動かして抵抗したことから,同日午前11時32分ころ,金属手錠を両手後ろに装 看守A27が原告の左腕を,A8看守部長が原告の頭をそれぞれ押さえて原告をうつ伏せに制圧し,さらに,なおも原告が激しく体を動かして抵抗したことから,同日午前11時32分ころ,金属手錠を両手後ろに装着した。その後,名古屋拘置所は,原告を取調室に連行するために原告をエレベーターに乗せたが,原告がエレベーター内でも「ファックユー,ファックユー」等英語で大声を発し,体を激しく動かして抵抗したことから,取調室への連行を断念し,同日午前11時35分ころ,前記前提となる事実のとおり,原告を保護房に収容した。 bまた,名古屋拘置所は,原告を保護房に収容した後,看守らが原告の金属手錠を解除しようとしたところ,原告が,「ユー,キル」などと大声を発して立ち上がり,原告の右腕を制していたA27看守の右大腿部を蹴りつけるなどの暴行をしたため,前記前提となる事実のとおり,原告に対して革手錠等を装着した。 cその後原告は,同日午後5時40分ころに革手錠等を解除され,同月3日午前11時52分ころに保護房収容を解除された。 d原告は,同月3日午前11時42分ころ,保護房において,名古屋拘置所医務課医師A28の診察を受けた。A28医師は,原告の両腕部及び右側胸部等に軽度の擦過傷及び腫脹等を,両腰部に皮下出血(右腰部17センチメートル×8センチメートル,左腰部19センチメートル×8センチメートル)をそれぞれ認めたが,いずれも治療の必要性はないと診察した。 イ原告の主張等について(ア)原告は,A5看守長が原告の左手をつかんで居室から出そうとし,その際,左手の外側にひっかき傷を負った旨主張する。 aこの点,原告の陳述書の訳文(甲18号証の2の21頁)には,「A5が,私の左手/腕に両手でひと突きした」旨の記述があるが,原告本人尋問の結果によると,「突いた」との部分は,「つかんだ」と 張する。 aこの点,原告の陳述書の訳文(甲18号証の2の21頁)には,「A5が,私の左手/腕に両手でひと突きした」旨の記述があるが,原告本人尋問の結果によると,「突いた」との部分は,「つかんだ」と訳するのが適当であることが認められる。 bそして,原告は,原告本人尋問において,当該ひっかき傷ができた状況について,A5看守長が原告の左手をつかんだことから,原告が思い切り左手を引っ張り返し,その際にひっかき傷ができた旨供述しており,これに照らすと,原告が主張するように,単にA5看守長が原告の左手をつかんだことによってひっかき傷ができたわけではないことが認められる。 (イ)原告は,原告がA5看守長の顔面を殴打したという点について,A5看守長が原告の右手を突いたので,右手のひらに痛みを感じ,左手でA5看守長を突き放したものである旨主張する。 aしかし,第4回保護房収容に係る現場記録表(甲10号証)及びA5看守長が作成した視察表(乙13号証)には,原告が右手拳でA5看守長の右顔面を殴打した旨の記載があるところ,原告の陳述書には,居室扉が開けられた際,原告が「握りこぶしを挙げたポーズで,「ちくしょう,ここから出て行け。私は自分の身を守るのだ。」と大声で言い続けた。」との記述があり,これによると,当時原告は相当な興奮状態にあったと考えられること,証人A8は,原告が,A5看守長の指導に対し,大声でわめき散らしており,いつ看守に暴力を振るうか分からないような緊張感があった旨証言していること,さらに,上記のとおり,8月8日事件において原告がA3副看守長の顔面を手拳で殴打したことが認められることなどの事情に照らすと,原告が右手拳でA5看守長の右顔面を殴打した旨の上記現場記録表及び視察表の記載は十分に信用し得る。 b他方,原告の陳述書の訳文(甲18号証の2の21頁) したことが認められることなどの事情に照らすと,原告が右手拳でA5看守長の右顔面を殴打した旨の上記現場記録表及び視察表の記載は十分に信用し得る。 b他方,原告の陳述書の訳文(甲18号証の2の21頁)には,A5看守長が「両手で私の右手を突いた。私は右手のひらに鋭い痛みを感じたので,反射的に左手を出して,彼の顔の右側を掴みながらA5を後ろへ押した」との記述がある(なお,この「突いた」との部分も「つかんだ」と訳するのが適当であると考えられる。)。 しかし,原告は,本人尋問においては,「手のひらのほうに痛みを感じたので,その手を突き返しました。」として,右手のひらに痛みを感じた後に突き返したのは,A5看守長の顔ではなく,同人の手であった旨供述している。 そうすると,原告の供述等には,重要な点において変遷が認められるといわざるを得ない。 c以上の諸点を総合考慮すると,原告が右手拳でA5看守長の右顔面を殴打したとの事実を認めることができ,これに反する原告の供述等は採用できず,上記原告の主張は採用できない。なお,上記現場記録表及び視察表には,A5看守長が原告の手をつかんだ旨の記載はないが,本件各事件において認められる原告の看守らに対する暴行は,いずれも看守らが原告をつかんだり,つかもうとしたことなどに対して行われていること,A5看守長が何らそのような素振りを見せていないのに,いきなり原告が殴りかかったとまでは考え難いことによると,原告がA5看守長を殴打する前に,A5看守長が原告の手をつかもうとしたと考えるのが相当である。 (ウ)原告は,看守らが一斉に飛びかかってきて原告を制圧したとか,原告は抵抗しなかった旨主張する。 aこの点,看守らによる原告の制圧状況及び保護房への連行態様は,上記現場記録表に記載があり,当該記載内容の信用性について疑いを差し挟むべき事情 て原告を制圧したとか,原告は抵抗しなかった旨主張する。 aこの点,看守らによる原告の制圧状況及び保護房への連行態様は,上記現場記録表に記載があり,当該記載内容の信用性について疑いを差し挟むべき事情は特に認められないから,これに沿う事実を上記のとおり認めることができる。 b原告の陳述書には,原告がうつ伏せに制圧された後はもがいていない旨の記述がある。しかし,上記認定のとおり,原告は,うつ伏せに制圧された後,金属手錠を装着されているのであって,原告が何らの抵抗も示していないのに,拘置所が金属手錠を使用するとはにわかに考え難い。 また,原告の陳述書には,金属手錠を装着された後,「水平の姿勢に持ち上げられ,顔は上向きでエレベーターの中へ運ばれた」旨の記述があって,同記述は,仰向けに持ち上げられて連行されたとの趣旨をいうものと解されるが,上記現場記録表によると,このとき原告はうつ伏せに制圧されたまま持ち上げられて連行されているのであって(この点について記録係があえて原告の姿勢に関して事実に反することを記載する理由はうかがわれないから,原告はうつ伏せの状態で連行されたものと解される。),上記陳述書の記述は,明らかに事実に反し,このときの出来事に関する原告の記憶には誤認混同があることがうかがわれる。 c他方,証人A8は,原告は看守らに制圧されてからも大声でわめき,両手両足でもがき,激しく暴れている状態で,そのような状態が,保護房収容後まで続いていた旨,保護房収容の際も,原告は大声でわめき,力の限り暴れまくっており,看守にすきがあれば,すぐに暴力でかかってくるようなひどい状態で,革手錠にしないと看守らが保護房から安全に出ることができない状態であった旨証言している。当該証言は,必ずしも具体的でない面があるが,上記現場記録表及び視察表に記載された状況に照らし うなひどい状態で,革手錠にしないと看守らが保護房から安全に出ることができない状態であった旨証言している。当該証言は,必ずしも具体的でない面があるが,上記現場記録表及び視察表に記載された状況に照らして不自然な点はなく,信用し得るものと解される。 d以上の諸点を総合考慮すると,上記認定に反する原告の供述等はにわかに信用できず,この点に関する原告の主張は採用し難い。 (エ)原告は,保護房に収容された際,A5看守長が原告のパンツを下げ,肛門に何かを突き刺した旨主張する。 aこの点,原告の陳述書の訳文(甲18号証の2の22頁)には,A5看守長が原告のズボンを下ろして臀部を分けた旨,肛門に何か突き刺さったのを感じた旨の記述がある。 しかし,原告は,本件訴状では「突然職員が原告のパンツを下げようとしてきたので,原告は職員によって下半身を陵辱される危険を感じて,必死の抵抗をした」と主張しているだけであって,パンツを下げられたとか,臀部を分けられたとか,肛門に何かが突き刺さったなどの主張をしていない。 b他方,証人A8は,保護房収容時に肛門に何かを突き刺すような身体検査が行われたことがあったかという趣旨の質問に対し,通常は衣類を替えて保護房に収容するところ,第4回保護房収容の際には原告が非常に暴れて衣類を替えることができなかったため,衣服の上から触手して原告を保護房に収容したが,肛門に何かを突っ込むようなことは決してない旨証言している。 cさらに,上記認定のとおり,原告は,以前から,英国総領事館や弁護士に対して拘置所の処遇が不当である旨を訴えるなどしており,平成13年8月16日には英国領事代理が原告の写真を撮影するということがあったのであって,その約半月後に,拘置所が,原告のパンツを下げて肛門に何かを突き刺すなどの行為を身体検査等以外に行うとは考え難いことで 8月16日には英国領事代理が原告の写真を撮影するということがあったのであって,その約半月後に,拘置所が,原告のパンツを下げて肛門に何かを突き刺すなどの行為を身体検査等以外に行うとは考え難いことである。 d以上の諸点を総合考慮すると,看守が原告のパンツを下げ,肛門に何かを突き刺した旨の原告の供述等は直ちに採用することができず,原告の上記主張は採用できない。 (オ)原告は,革手錠をきつく装着された旨主張する。 aこの点,上記認定のとおり,翌日のA28医師の診察において,原告の両腰部に皮下出血が認められ,平成13年9月6日に英国領事代理によって撮影された写真(以下「9月6日撮影写真」という。甲20号証)には,これに対応すると思われる両腰部の変色状況が映し出されているところ,当該皮下出血は,左右ほぼ対称の範囲及び程度で認められるものであって,革手錠の装着との間に何らかの因果関係があることをうかがわせるものである。 bしかしながら,原告の陳述書には,第4回保護房収容の際に装着された革手錠は,第3回保護房収容の際に装着された状況に比べ,きつく締められておらず,窮屈ながらもいくらか動かすことができ,両手は決まった場所に固定されていたわけではなかった旨の記述があり,また,第4回保護房収容時の保護房内における原告の動静視察表(乙32号証)には,「PM4:10 両手首を数10回左右に回して革手錠の両手首をのぞく」,「PM5:10 両手首を交差させさかんに動かしている」との記載があるのであって,これによれば,第4回保護房収容の際の革手錠の装着方法が,きつすぎるものではなかったことが明らかである。 cそして,9月6日撮影写真に映し出された両腰部の変色状況は,第3回保護房収容の際の革手錠装着後の8月16日撮影写真に映し出された両腰部の変色状況に比べると,範囲,程度 かったことが明らかである。 cそして,9月6日撮影写真に映し出された両腰部の変色状況は,第3回保護房収容の際の革手錠装着後の8月16日撮影写真に映し出された両腰部の変色状況に比べると,範囲,程度において明らかに大きなものであるが,第4回保護房収容の際の革手錠の装着方法が第3回保護房収容の際のそれに比べてきついものではなかった旨の上記陳述書の記述も考慮すると,上記両腰部の皮下出血は,革手錠の装着により直接生じたものとは認め難い。この点,証人A1は,第4回保護房収容の際,原告が,保護房内において両手を上下に一生懸命こすっているのを認め,傷を付けて後でけがを負ったということを主張するんだろうなと思った旨証言しており,また,上記の動静視察表記載によると,原告は両手首をさかんに動かしていたことがうかがわれるのであり,そうすると,このような原告の自らの行為によって上記皮下出血が生じた可能性を否定できない。 dさらに,上記のとおり,約半月前の平成13年8月16日に英国領事代理が原告の写真を撮影するということがあったのであって,そのような折,拘置所が,原告に皮下出血を生じさせるような態様で革手錠を装着するとは考え難い。 e以上の諸点を総合考慮すると,革手錠をきつく締められた旨の原告の主張は採用できない。 (カ)原告は,看守らが乱暴に革手錠を解除し,その際わざと足や腕の筋肉をつねった旨主張する。 この点,原告の陳述書には,「外はすでに暗かったので,7時頃だったと思う。私は足を使って布団を敷いて横になった。30分程過ぎて(扉のハッチを介しての2回の検査の後)扉が開き,10人以上の看守がなだれ込んで来た。彼らは私の身体全体を掴み,できるだけ痛く乱暴にベルトを外しだした。看守の中の2~3人は,私を痛めつけるためか,又は更に虐待を加えられるようにか,私の反応を引き ,10人以上の看守がなだれ込んで来た。彼らは私の身体全体を掴み,できるだけ痛く乱暴にベルトを外しだした。看守の中の2~3人は,私を痛めつけるためか,又は更に虐待を加えられるようにか,私の反応を引き出そうと,私の足と腕の筋肉をわざとつねった。」旨の記述がある。 他方,原告は訴状において「午後6時30分頃に一人の職員が覗きに来たので,手首に手錠が食い込んで痛いと訴えたところ,しばらくして,7名位の職員が保護房に入ってきて,原告の手足をつかんだ状態で体をねじって故意に拘束具をひどく体に食い込ませた。」と主張しており,上記陳述書の記述と比べると,看守らが保護房に入るに至った経緯,その時刻,入ってきた看守の数,看守らによる暴行の態様等において相違が見られる。 これに加え,上記のとおり,約半月前の平成13年8月16日に英国領事代理が原告の写真を撮影するということがあったのであって,そのような折,拘置所が,原告の足や腕をつねったりするとは考え難いことなどを総合考慮すると,原告の供述等はにわかに信用できず,この点に関する原告の主張は採用できない。 (7)第5回保護房収容等について(甲11,18号証,乙19号証,証人A1)ア(ア)9月11日事件a原告は,平成13年8月30日から第4回懲罰を受罰中であったが,同年9月11日,起床時から,居室内において,アイマスクをして布団に横臥していた。これを見た看守A29が,同日午前7時30分ころから午前8時30分ころまでの間,数回に渡り原告に対し起きるように指導したが,原告はこれに従わなかった。 bA29看守からの報告を受けたA19首席ら数人の看守は,同日午前9時2分ころ,原告居室に赴いた。この際,A1統括,看守A30及び看守A31は,ライナー付きヘルメット及びセキュリティベストを着用して原告居室に赴いた。 A19首席は 19首席ら数人の看守は,同日午前9時2分ころ,原告居室に赴いた。この際,A1統括,看守A30及び看守A31は,ライナー付きヘルメット及びセキュリティベストを着用して原告居室に赴いた。 A19首席は,まず,看守A32の通訳を介し,原告に対し,起きるよう3回に渡り指導したが,原告はこれに従わなかった。次に,A1統括,A30看守及びA31看守が原告居室内に入り,A1統括が,A32看守の通訳を介し,原告に対し,起きなければ布団を外に出す旨3回に渡り指示したが,原告はこれに従わなかった。 cそこで,A1統括が原告の足下付近にあった掛け布団及び毛布を一枚ずつ居室外に出し,さらに原告が横臥している敷布団に手をかけてわずかに引っ張ったところ,原告は,「ゲット,ザ,ファックオフ」などと叫びながらアイマスクを外して上半身を起こし,A1統括のヘルメット前部のライナー部を肘打ちして立ち上がり,さらにその際,A31看守の左側頭部を肘打ちした。 (イ)第5回保護房収容aその後,A1統括が原告の左上腕を,A31看守が原告の右上腕をそれぞれ制し,A19首席が原告に落ち着いて座るように指示したが,原告は,「ファックオフ」などと大声を挙げながら,A1統括らに制されている両腕を激しく動かし,さらに,A1統括及びA31看守の大腿部付近に数回膝を当てるなどして抵抗した。そこで,看守部長A33,副看守長A34及びA14統括が加わって原告を仰向けにし,A1統括が原告の右腕を,A30看守が原告の左腕を,A33看守部長が原告の右足を,A34副看守長が原告の左足を,A31看守が原告の腰部をそれぞれ抱えた。 bしかし,原告は,なおも「ファックオフ,ハンズミー」などと大声を挙げながら体を激しく動かし,その後,取調室に連行するためにエレベーターに乗せた際も「キル,キル」などと叫びながら体を激しく 抱えた。 bしかし,原告は,なおも「ファックオフ,ハンズミー」などと大声を挙げながら体を激しく動かし,その後,取調室に連行するためにエレベーターに乗せた際も「キル,キル」などと叫びながら体を激しく動かすなどし,A19首席が落ち着くように再三指導するも従わなかった。そこで,名古屋拘置所は,同日午前9時7分ころ,前記前提となる事実のとおり,原告を保護房に収容した。 cその後原告は,同月12日午後零時8分ころ,保護房収容を解除された。 イ原告の主張等について(ア)原告は,A1統括がA32看守の通訳を介し,原告に対し,起きなければ布団を外に出す旨を3回に渡り指示したことを否認する。 aこの点,第5回保護房収容に係る現場記録表(甲11号証)には,A1統括がA32看守の通訳を介し「B1起きなさい。起きなければ布団を部屋の外へ出す。」と3回ゆっくりと指示した旨の記載があり,当該記載に不自然な点はない。 b他方,原告は,これと明らかに矛盾する事実を主張しているわけではなく,また,原告の陳述書及び本人尋問においてもそのような供述をしていない。 cそうすると,上記現場記録表記載の事実を認めることができ,本件各証拠によるも,上記認定を覆すに足りる事情は認められない。 (イ)原告は,看守らが掛け布団を引ったくり,枕,シーツも取られた旨主張する。 aこの点,原告の陳述書には,「私の足元から掛け布団が引ったくられた。次に私の頭の下にあった枕が引ったくられ,その下にあった毛布がすばやく引き取られた。敷布団は,名古屋拘置所のシーツだったので,私の下からひったくられた。しかし私は動いたり話したりしなかった。次に彼らは,私の個人所有のシーツを掴み,その時にやっと私は返事をした。私はシーツをしっかり掴み,「それに触るな,それは私のだ。」と言った。」との記述がある。 しかし,上記陳述 話したりしなかった。次に彼らは,私の個人所有のシーツを掴み,その時にやっと私は返事をした。私はシーツをしっかり掴み,「それに触るな,それは私のだ。」と言った。」との記述がある。 しかし,上記陳述書の記述によると,原告は,枕を引ったくられても動かず,体の下のシーツを引ったくられても動かなかったというのであって,不自然である。また,証人A1は,このとき敷布団は1枚しかなかったと思う,私物があれば官給品は引き揚げられるから,拘置所が支給している敷布団に私物のシーツを掛けることはない旨証言しており,これによると,原告の敷布団は一枚であったと考えるのが相当である。そうすると,上記陳述書の記述はにわかに信用できない。 b以上の点に,証人A1の証言,上記現場記録表及び第5回保護房収容に係る視察表(乙19号証)の記載を総合考慮すると,A1統括が原告の布団を居室外に出した状況は上記のとおりであると認定するのが相当であって,これに反する原告の陳述等を採用することはできず,原告の上記主張は採用できない。 (ウ)原告は,原告がA1統括のヘルメット前部のライナー部を肘打ちしたことや,A31看守の左側頭部を肘打ちしたことを否認する。 aしかし,証人A1は,同証人が敷布団を手前にぱっと引いたところ,原告は勢いよく上半身を起こしてアイマスクを外した,原告は証人らの格好を見てかなり驚いているようであった,その後原告はすぐに左肘で証人のヘルメット前部のライナー部を思い切りたたきつけ,そのまま振り向きざまにA31看守の左側頭部辺りを肘打ちした,証人に肘打ちしたときは間違いなく上半身を起こしただけの状態であったが,A31看守に肘打ちをしたときには半ば立ち上がっている状態であった旨証言しているところ,同証言は具体的であって,特に不自然なところはない。 b他方,原告の陳述書には,原 起こしただけの状態であったが,A31看守に肘打ちをしたときには半ば立ち上がっている状態であった旨証言しているところ,同証言は具体的であって,特に不自然なところはない。 b他方,原告の陳述書には,原告がアイマスクを外すと,機動隊の装備をした3人の看守が立っていたことから驚いて飛び起きた,原告が立ち上がると,3人の看守が原告を取り囲み,原告を壁に押しつけた,原告が大声で「あんたら一体どうしたんだ」との趣旨のことを言うと,看守らはますます原告を壁に押してきた,そのとき,A1統括が原告の顔にヘルメットを押し当てた,原告が自分の顔を守るために両腕を上げたところ肘が近くにいた看守に当たった旨の記述がある。 また,原告本人尋問では,原告は,原告が起き上がろうとしていたときに,3人のヘルメットをかぶった看守が来ていて,A1統括であったかどうかは分からないが,原告の前に覆いかぶさってきた,原告が自分の顔を守るために腕を顔の前に上げた瞬間に,左の肘がその前にいた看守のヘルメットに当たったと思う,近くにいた看守に左肘が当たったことは覚えている旨証言している。 上記陳述書の記述と原告本人尋問における供述を比較すると,原告の左肘が当たったとするときについて,陳述書によると,原告が完全に立ち上がってからとの趣旨であることは明らかであるが,原告本人の供述によると,原告が起き上がろうとしていたときとする趣旨のようであるし,またその際の看守らの動きについても両者の内容は異なる。 このように原告の供述には変遷があると解される上,上記のとおり,その直前である看守らが布団を居室外に出した状況についての原告の供述も信用し難いものであることからすると,この点に関する原告の供述等は信用できない。 c以上の諸点を総合考慮すると,原告がA1統括及びA31看守を肘打ちしたとの事実を認めること 状況についての原告の供述も信用し難いものであることからすると,この点に関する原告の供述等は信用できない。 c以上の諸点を総合考慮すると,原告がA1統括及びA31看守を肘打ちしたとの事実を認めることができ,これに反する原告の主張は採用できない。 (エ)原告は,看守らが原告を保護房に連行する際に暴行を加えた旨主張する。 この点,原告が看守らのいかなる行為を暴行というのか必ずしも明らかではないが,看守らによる原告の制圧状況及び保護房への連行態様は,上記現場記録表に記載があり,当該記載内容の信用性について疑いを差し挟むべき事情は特に認められないから,これに沿う上記のとおりの事実を認めることができる。 なお,翌日の医師の診察において,原告は,医師に対して身体的に虐待を受けた旨述べたが,具体的にはどこであるかを示すことなく,医師から見せるようにとの指示を受けても見せておらず,外見上,顔面及び頭部に外傷は認められていない(乙20号証)。 2第1回懲罰の違法性について(1)懲罰の違法性の判断基準についてア法は,59条において「在監者紀律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ処ス」と規定し,60条において懲罰の種類を規定している。また,監獄法施行規則(以下「規則」という。)は,19条1項において「所長ハ在監者ノ遵守スヘキ事項並ニ刑期ノ起算及ヒ終了ノ日ヲ入監者ニ告知ス可シ」と規定し,22条2項において「在監者遵守事項ハ冊子トシテ之ヲ監房内ニ備ヘ置ク可シ」と規定しているところ,同各規定の趣旨に基づき,拘置所長は,施設の規律秩序を害する行為を禁止する被収容者遵守事項を定めている(弁論の全趣旨)。 イ法及び規則には,在監者のいかなる規律違反に対していかなる懲罰を科すかについて具体的に規律する規定が存在しないから,この点についての判断は,原則として,監獄における施設及び在監者の管理につ 旨)。 イ法及び規則には,在監者のいかなる規律違反に対していかなる懲罰を科すかについて具体的に規律する規定が存在しないから,この点についての判断は,原則として,監獄における施設及び在監者の管理について責任を負っている所長の専門的知識ないしは経験に基づく裁量に委ねられているものということができる。もっとも,当該所長の裁量が無制限のものでないことはいうまでもなく,ある在監者が規律違反行為をしたとして懲罰を科した判断が,当該在監者の行為についての事実の認定,当該行為が規律違反行為に該当するとの判断,当該規律違反行為と懲罰との均衡などの点において,合理的根拠を欠き,又は著しく妥当性を欠く場合には,所長に委ねられた裁量権の範囲の逸脱又は濫用(以下「裁量権の逸脱等」という。)として違法となると解すべきである。 (2)第1回懲罰の違法性についてア前記前提となる事実のとおり,名古屋拘置所は,10月9日事件について,原告が遵守事項32項に違反する行為をしたとして,原告に対し,叱責の懲罰を科したのであるが,上記認定事実に照らし,当該事件における原告の行為の認定や当該行為が遵守事項32項に違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰との均衡といった点において,拘置所の判断が合理的根拠を欠き,又は著しく妥当性を欠くものとは認められず,その他,本件各証拠によるも,上記懲罰に係る拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 イ原告は,本件は看守が原告を嘲ったことに原因がある旨主張するが,仮に看守の言動に不適切な点があったとしても,残飯入りの食器を看守に当てるなどという行為が正当化されるはずもなく,上記判断を左右するものではない。 ウなお,原告は,上記懲罰が自由権規約7条及び10条に違反する旨主張する。しかし,上記認定の原告の拘置所における行為 に当てるなどという行為が正当化されるはずもなく,上記判断を左右するものではない。 ウなお,原告は,上記懲罰が自由権規約7条及び10条に違反する旨主張する。しかし,上記認定の原告の拘置所における行為態様に照らすと,本件において,法及び規則の解釈,運用としての上記懲罰の違法性の有無に関して検討することのほかに,上記懲罰が自由権規約7条及び10条に違反するものであるかどうかを検討すべき事情が存することをうかがうことはできない。この点は,後述する各懲罰,保護房収容等の違法性についての判断においても同様である。 3第1回保護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無について(1)保護房収容の違法性の判断基準についてア保護房とは,行刑実務上,在監者が興奮して自殺,自傷又は暴行のおそれのある場合,あるいは大声を発するなどして舎房全体の平穏を害し,その秩序維持に支障を与える等のおそれのある場合に,在監者を拘禁してこれを鎮静し,又は保護するため設けられた特別の設備,構造を備えた独居房を指すものであり,この保護房への収容は,「在監者ニシテ戒護ノ為メ隔離ノ必要アルモノハ之ヲ独居拘禁ニ付ス可シ」と規定する規則47条に基礎をおく,戒護のための独居拘禁措置であると解される(弁論の全趣旨)。 イ法及び規則には,保護房収容の要件,手続等について具体的に規律する規定が存在しないから,保護房収容の必要性に関する判断は,基本的には,監獄における施設及び在監者の管理について責任を負っている所長の専門的知識ないしは経験に基づく裁量に委ねられているものということができる。もっとも,当該所長の裁量が無制限のものでないことはいうまでもなく,新通達が保護房収容要件を具体的に定め,保護房収容の必要性の判断に関する所長の裁量権の行使に制約を設けようとしていることを考慮すると,ある在監者 所長の裁量が無制限のものでないことはいうまでもなく,新通達が保護房収容要件を具体的に定め,保護房収容の必要性の判断に関する所長の裁量権の行使に制約を設けようとしていることを考慮すると,ある在監者について保護房収容の必要性があるとした判断が,新通達の定める要件を充足する事実が存在しないのに,これが存在するものとしてされた場合には,当該判断には裁量権の逸脱等があったとして違法の評価を免れないと解すべきである。 (2)第1回保護房収容の違法性についてア上記認定事実によると,原告は,居室内において,食事の量について大声で抗議をしながら扉を蹴りつけ,その後,取調室に連行されてからも,A7看守長の制止に従わず,大声を発し続けるとともに,机を4,5回たたくなどし,また,A7看守長に対し,いわゆるファイティングポーズをとって殴りかかるような仕草をしたのであり,さらに,上記説示のとおり,このとき原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,原告について,職員に対して暴行の気勢を示し,また,職員の制止に従わず大声を発し続けるとして,保護房に収容する必要性があると判断したことが,相当でないということはできない。本件各証拠によっても,上記の保護房収容の必要性に関する拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 イ原告は,通訳を付けてより丁寧に話し合えば保護房に収容するまでの必要は生じなかったとか,原告の抗議に対する拘置所の説明が的はずれであったなどと主張する。この点,上記認定事実に照らすと,確かに,A7看守長らは,原告の抗議内容について原告が指摘するような誤解をしていた可能性がないとはいえない。 しかしながら,原告の陳述書及び証人A7の証言並びに弁論の全趣旨によると,原告及びA7看守長らは,概ね 看守長らは,原告の抗議内容について原告が指摘するような誤解をしていた可能性がないとはいえない。 しかしながら,原告の陳述書及び証人A7の証言並びに弁論の全趣旨によると,原告及びA7看守長らは,概ねお互いの言おうとすることは理解していたことがうかがわれるし,仮にA7看守長らに原告の抗議内容に関する誤解があったとしても,「シチューは規定量であり,他の被収容者も皆同じ量である」旨の説明があながち的はずれとまではいえず,また,原告本人尋問によると,原告は,仮に予算の都合である旨の説明を受けていたとしても納得しなかったと思う旨供述しているのである。これらの事情に,上記に説示した原告の興奮状態等も考慮すると,通訳を付けてより丁寧に話し合えば保護房に収容するまでの必要は生じなかったとまでいえるのかは疑問であり,上記原告の主張は直ちに採用できない。 (3)看守らによる違法な暴行の有無についてア原告は,看守らが原告を保護房に収容する際,原告の右腕と右足を保護房の扉に挟むなどの暴行を加えて原告に傷害を負わせた旨主張するが,この主張を認めることができないことは前述のとおりである。 イまた,原告は,第1回保護房収容は違法であり,原告が保護房に収容されることに抵抗したことは適法であるから,この抵抗を排除するために行われた有形力の行使は違法である旨主張する。 (ア)しかし,第1回保護房収容の必要性についての判断に裁量権の逸脱等は認められず,違法といえないことは前述のとおりである。 そして,拘置所は,被収容者の逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として,多数の未決拘禁者を収容する施設であるから,当該目的を達成し,被収容者の平穏な生活環境を保持するために,拘置所内における安全と秩序を維持することが必要不可欠であって,このような見地から,拘置所職員は,被収容者が収容目的に反して拘 であるから,当該目的を達成し,被収容者の平穏な生活環境を保持するために,拘置所内における安全と秩序を維持することが必要不可欠であって,このような見地から,拘置所職員は,被収容者が収容目的に反して拘置所内の安全を害し,秩序に違反しようとする場合又は職員が安全と秩序維持のために行う適法な職務執行を妨害しようとする場合には,これを予防し,又は制圧するために必要かつ相当な範囲内で被収容者に対し有形力を行使することが許容されるものと解される。この点,上記認定事実に照らし,保護房収容に対する原告の抵抗を排除するために行われた看守らの有形力の行使は,適法な職務執行に対する妨害を制圧するための必要かつ相当な範囲内のものであったということができる。 (イ)もっとも,原告は保護房に収容されるのはこのときが初めてであり,また保護房に収容される旨を告知されていなかったのであるから,原告が「何をされるか分からない」という恐怖感に駆られたということも,その心情としては理解できないではない。しかし,このことから,直ちに,保護房収容に対する原告の抵抗が適法となったり,これを排除するための有形力の行使が違法となるものとは解されない。 ウ以上のとおりであって,原告の上記主張はいずれも採用できず,その他本件各証拠によるも,第1回保護房収容の際に看守らによる違法な暴行があったことを認めることはできない。 4第2回懲罰の違法性について(1)前記前提となる事実のとおり,名古屋拘置所は,1月20日事件について,原告が遵守事項32項に違反する行為をしたとして,原告に対し,軽屏禁3日及び文書図画閲読禁止3日(併科)の懲罰を科したのであるが,上記認定事実に照らし,当該事件における原告の行為の認定や当該行為が遵守事項32項に違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰との均衡といった点 閲読禁止3日(併科)の懲罰を科したのであるが,上記認定事実に照らし,当該事件における原告の行為の認定や当該行為が遵守事項32項に違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰との均衡といった点において,拘置所の判断が合理的根拠を欠き,又は著しく妥当性を欠くものとは認められず,その他,本件各証拠によるも,上記懲罰に係る拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 (2)原告は,1月20日事件における原告の言動は,原告の抗議に対して拘置所が適切な説明をしなかったことに対する正当な抵抗であった旨主張する。 しかし,原告の抗議に対する拘置所の説明が的はずれのものであったとまではいえないことは前述のとおりであり,また,当該事件における原告の言動が,拘置所の対応に対する抵抗であったとしても,その方法,程度において著しく不相当であることは明らかであるから,上記原告の主張は採用できない。 5第2回保護房収容の違法性について(1)上記認定事実によると,原告は,第2回懲罰の執行に伴って居室から物品を引き揚げられたことから,居室に入るのを拒否していたところ,原告を強制的に入室させようとしてA1統括らが原告の両腕をつかむと,上半身を激しく揺さぶり,A1統括らの腹部を肘打ちするなどして同人らの手を振り払おうとし,さらにA14統括に対して頭突きをする素振りをして頭をA14統括の帽子のつばに当て,その後,非常ベル通報により急行した看守らに制圧され,さらに金属手錠を装着されるも,取調室に向かうエレベーターの中で頭及び上半身等を激しく揺さぶるなどして,周りの看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとしたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,原告 看守らに対し頭突きや足蹴りをしようとしたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,原告について,原告が極度の興奮状態にあって,引き続き暴行のおそれがあり,保護房へ収容する必要性があると判断したことが,相当でないということはできない。本件各証拠によるも,上記保護房収容の必要性に関する拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 (2)ア原告は,看守らの実力行使に抵抗したにすぎず,攻撃的な行為又は積極的な暴行はしていないから,新通達6(1)各号に該当する事実はない旨主張する。 しかしながら,原告に第2回懲罰に対する不服があったとしても,居室への入室を拒絶することが許されるとは到底解されず,また,居室への入室を拒む原告をそのまま放置することができないことは当然であるから,これに対して実力行使に出ることは拘置所内の安全及び秩序維持等のために必要やむを得ないことというべきである。そして,上記認定事実によると,その方法も相当なものであったと認められるところ,原告は,当該実力行使に出た看守らに対し,肘打ちをし,又頭突きをする素振りを見せているのであって,原告の当該行為は抵抗の域を超えるものというべきである。 イさらに,原告は,当時の状況からすると,原告を居室に収容することで十分だったはずである旨主張する。しかしながら,第2回保護房収容が原告が居室への入室を拒否したことに端を発するものであることからも,名古屋拘置所が原告居室への収容を不適当と判断したことには十分な理由があるというべきである。 ウしたがって,上記原告の主張はいずれも採用できない。 6第3回懲罰の違法性について(1)前記前提となる事実のとおり,拘置所は,2月16日事件 当と判断したことには十分な理由があるというべきである。 ウしたがって,上記原告の主張はいずれも採用できない。 6第3回懲罰の違法性について(1)前記前提となる事実のとおり,拘置所は,2月16日事件について,原告が遵守事項32項に違反する行為をしたとして,原告に対し,軽屏禁5日及び文書図画閲読禁止5日(併科)の懲罰を科したのであるが,上記認定事実に照らし,当該事件における原告の行為の認定や当該行為が遵守事項32項に違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰との均衡といった点において,拘置所の判断が合理的根拠を欠き,又は著しく妥当性を欠くものとは認められず,その他,本件各証拠によるも,上記懲罰に係る拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 (2)原告は,積極的暴行行為を行っておらず,当該懲罰は,看守らが原告を実力で居室に収容しようとしたことに対して抵抗した行為のみをとらえて科されたものである旨主張するが,当該主張を採用できないことは,前述したところから明らかである。 7第3回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性並びに看守らによる違法な暴行の有無について(1)革手錠使用の違法性についての判断基準ア手錠は,法及び規則が規定する戒具の一つであり,手錠の使用条件について,法19条1項は「在監者逃走,暴行若クハ自殺ノ虞アルトキ又ハ監外ニ在ルトキハ戒具ヲ使用スルコトヲ得」と規定し,規則50条は「手錠・・・ハ暴行,逃走若シクハ自殺ノ虞アル在監者又ハ護送中ノ在監者ニシテ必要アリト認ムルモノニ限リ之ヲ使用スルコトヲ得」る旨を規定している。 イ上記の法及び規則の規定内容に照らすと,具体的な場合における手錠の使用の必要性に関する判断については,一定の範囲において,監獄における施設及び在監者の管理について責任を負っている所長の裁量 いる。 イ上記の法及び規則の規定内容に照らすと,具体的な場合における手錠の使用の必要性に関する判断については,一定の範囲において,監獄における施設及び在監者の管理について責任を負っている所長の裁量に委ねられている部分があることは否定できないが,戒具としての手錠の使用は,被使用者の身体を拘束する態様が直接的であり,かつ,その身体の拘束の程度が極めて大きいものであって,手錠の使用により被使用者が受ける苦痛が重大なものであることは明らかであるから,使用の必要性に関する裁量判断は,暴行,逃走若しくは自殺の具体的なおそれがある在監者について,手錠を使用することが必要であると認められる場合に限り使用されなければならないとの基準に基づいて,合理的にされなければならないものというべきである。そして,ある在監者について手錠の使用の必要性があるとした判断が,上記判断基準に照らし合理的なものとして肯認できない場合においては,その使用は,裁量権の逸脱等として,違法の評価を免れないものというべきである。 (2)第3回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性についてア上記認定事実によると,原告は,英語を話せる職員を呼ぶことを要求し,「ファッキン,ファッキン」などと叫びながら辞書で居室扉を繰り返したたき,職員が制止してもこれに従わず,また,原告を取調室に連行するために原告の左腕をつかもうとしたA4看守部長の胸部付近を突き,さらに原告の右腕をつかもうとしたA3副看守長の左顔面を殴打し,その後,看守らに制圧されてエレベーターに乗せられても,英語で何事かを叫び,体を激しく揺さぶって抵抗し続け,保護房に収容される際も体を激しく揺さぶるなどしていたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考 て抵抗し続け,保護房に収容される際も体を激しく揺さぶるなどしていたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,大声を発し続ける原告について,極度の興奮状態にあり,職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であるとして,保護房に収容する必要性があると判断したことが,相当でないということはできず,また,保護房に収容する際に,看守が原告の制止を解除すれば,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であるとして,革手錠を使用する必要性があると判断したことが,上記手錠の使用の必要性に関する判断基準に照らし,合理性を欠くものとはいえず,その他,本件各証拠によるも,上記の各判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 イ(ア)原告は,原告の行為は,原告の主張に理解を示さず,一方的に原告を居室から出そうとした拘置所の理不尽な対応に対する正当な抵抗である旨主張する。 aしかしながら,上記認定事実によると,拘置所は,原告に対して居室扉をたたくことをやめるように再三説得し,原告がこれに従わなかったことから,原告を取調室に連行して事情を聴取すべく,原告に居室から出ることを促し,原告がこれに従わなかったことから,実力行使に及んでいるのであって,これによると,拘置所が実力行使に及んだ経緯は段階を踏んだ相当なものであったというべきである。 b他方,原告には,領事館や自己の弁護士に手紙を書くために英語を話せる職員を呼ぶ必要性があったことが認められ,それ自体は原告にとって重要なことであったというべきであるが,そうであるからといって,辞書で扉をたたいたりすることが正当化されるとは到底いえないし,また,取調室へ行くことを拒否しなければならなかった事情は 体は原告にとって重要なことであったというべきであるが,そうであるからといって,辞書で扉をたたいたりすることが正当化されるとは到底いえないし,また,取調室へ行くことを拒否しなければならなかった事情は認められない。 c以上によると,拘置所の対応が一方的で理不尽であるとか,原告の行為が正当な抵抗であるなどとはいえないことは明らかであり,原告の主張は採用できない。 (イ)また,原告は,従前の保護房収容時には,革手錠は使用されていないのであるから,革手錠を使用するためには,これを必要とする特段の事情が必要であるところ,原告の手がA3副看守長に当たったこと以外に特段の事情はない旨主張する。 しかしながら,原告がA3副看守長の顔面を殴打したこと(原告が主張するように単に手が当たったというものではないことは上記認定のとおりである。)は,原告が職員に暴行を加える具体的なおそれの有無を判断するに当たって極めて重要な事情というべきである。 (3)看守らによる違法な暴行の有無について原告は,看守らが原告に対し,原告の首を締め上げた状態で原告を保護房に連行し,また,息ができないくらいきつく革手錠を装着した旨主張する。 しかし,当該事実を認めることができないことは前述のとおりであり,また,上記認定事実に照らし,看守らの制圧行為は,拘置所内の安全及び秩序維持等のために必要かつ相当な範囲内のものであったと解することができる。その他本件各証拠によるも,第3回保護房収容の際に,看守らが原告に違法な暴行を加えたとの事実を認めることはできない。 8第4回懲罰の違法性について(1)前記前提となる事実のとおり,名古屋拘置所は,8月8日事件について,原告が遵守事項20項及び同32項に違反する行為をしたとして,原告に対し,軽屏禁20日及び文書図画閲読禁止20日(併科)の懲罰を科したので 提となる事実のとおり,名古屋拘置所は,8月8日事件について,原告が遵守事項20項及び同32項に違反する行為をしたとして,原告に対し,軽屏禁20日及び文書図画閲読禁止20日(併科)の懲罰を科したのであるが,上記認定事実に照らし,当該事件における原告の行為の認定及び当該行為が遵守事項20項及び同32項に違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰の均衡といった点において,拘置所の判断が合理的根拠を欠き,又は著しく妥当性を欠くものとは認められず,その他,本件各証拠によるも,上記懲罰に係る拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 (2)原告は,8月8日事件における原告の言動は正当なものである旨主張するが,当該主張を採用できないことは前述したところから明らかである。 98月31日事件における看守らによる違法な暴行の有無について(1)原告は,看守らが原告の手首に傷を付け,肘をねじり上げるなどの暴行をした旨主張するが,当該事実を認めることができないことは前述のとおりである。 (2)また,原告は,看守らが,原告の布団を取り去るなど,受罰姿勢を強制したとして,これが違法である旨主張する。 ア法60条2項は「屏禁ハ受罰者ヲ罰室内ニ昼夜屏居セシメ情状ニ因リ就業セシメサルコトヲ得」と規定しているところ,当該規定からも,軽屏禁罰は,受罰者を罰室内に閉居させて外界と隔離し,そのことによって謹慎させ,精神的孤独のうちに反省,改悛を促すことを目的とするものであると解することができ,その目的を達成するために必要かつ合理的な一定の行為の禁止又は制限は,当然に同条の「屏居」の中に含まれていると解することができる。 この点,乙1号証,証人A1及び同A6の各証言並びに弁論の全趣旨によると,名古屋拘置所は,軽屏禁中の受罰姿勢について,内規により,午前7時4 に同条の「屏居」の中に含まれていると解することができる。 この点,乙1号証,証人A1及び同A6の各証言並びに弁論の全趣旨によると,名古屋拘置所は,軽屏禁中の受罰姿勢について,内規により,午前7時40分からの朝食後,午後4時50分の夕点検時までの間,食事及びトイレの時間を除いて,居室中央付近で,居室扉に向かい,正座又は安座するものと定めていることが認められるが,受罰姿勢に係る上記の内規の定めは,軽屏禁罰の目的に照らし,合理性がないとはいえない。 イもっとも,拘置所が,受罰者に対し,上記内規の定める受罰姿勢に関して一切の例外を認めず,これに従わないことのみを理由に懲罰を科すなどして,これを厳格に強制すると,受罰者に対し,少なからぬ苦痛を与えることとなって,必ずしも相当とはいえない場合もあり得るものと解される。 しかしながら,上記認定事実のとおり,A13副看守長は,第2回懲罰を告知する際,原告に対し,足がしびれたら適宜足を伸ばしてもよいことなどを説明しているし,証人A1及び同A6の各証言並びに弁論の全趣旨によると,原告は,第2回及び第3回懲罰の受罰中,部屋の中を徘徊したり,布団の上に腰掛けていたり,布団を敷いて寝ていたりしており,これに対して拘置所は,横臥している原告に対して起きるように指導していたにすぎないことがうかがわれ,その他本件各証拠によるも,拘置所が原告に対し上記内規の定める受罰姿勢を厳格に強制していた事実はうかがわれない。 ウそして,軽屏禁罰の受罰者に対し,一定時間横臥していることを禁止することは,上記軽屏禁罰の目的に照らし,必要かつ合理的な行為の禁止又は制限に当たると解することができ,横臥している受罰者に対して起きるように指導することにも十分な合理性がある。また,平成9年11月10日付け書面は,居房内の動作要領について,身体不調者 な行為の禁止又は制限に当たると解することができ,横臥している受罰者に対して起きるように指導することにも十分な合理性がある。また,平成9年11月10日付け書面は,居房内の動作要領について,身体不調者,自殺事故等の発見を容易ならしめるという動静視察上の支障の防止という観点から,被収容者に対して横臥しないように指導することは理由があると考えられる旨を示しており,このような動静視察上の支障の防止という観点からも,横臥している被収容者に対して起きるように指導することに合理性のあることを認めることができる。 そうすると,布団上に横臥している受罰者が,看守から起きるように指導されたにもかかわらずこれに従わない場合に,布団を取り上げることにより起きていることを強制することも,これが上記軽屏禁罰の目的等に照らして相当な方法で行われる限り,一応の合理性を有するものとして許容されるものと解され,これを直ちに違法ということはできないというべきである。 エそこで検討するに,上記認定事実によると,原告は,居室内において布団を敷いて横臥していたところ,A20看守部長から起きるように指導されるもこれに従わず,その後,A14統括から布団をたたんで起きるように指導され,寝ているなら布団を居室から出す旨伝えられたにもかかわらずこれに従わなかったというのであり,これに対して,A24看守は,原告の掛け布団を持ち上げたというにすぎないのであって,当該看守らの行為は,上記軽屏禁罰の目的に照らして不相当なものとはいえず,直ちに違法と解することはできない。 なお,原告は,受罰姿勢を強制することは,自由権規約7条が禁止する非人道的な取扱いや,国連被拘禁者処遇最低基準規則31条が禁止する体罰に該当するなどと主張する。しかし,横臥している原告に対して起きるように指導し,これに従わない原告の布 は,自由権規約7条が禁止する非人道的な取扱いや,国連被拘禁者処遇最低基準規則31条が禁止する体罰に該当するなどと主張する。しかし,横臥している原告に対して起きるように指導し,これに従わない原告の布団を取り上げようとしたにすぎない拘置所の上記行為をもって,非人道的な取扱いであるとか,体罰であるなどとは到底いえないというべきである。この点は,後述する原告の受罰姿勢に対する拘置所の対応についても同様である。 (3)以上のとおりであるから,8月31日事件において看守らが原告に対して違法な暴行をした旨の原告の主張は採用できず,その他本件各証拠によるも,上記の判断を左右するに足りる事情を認めることはできない。 10第4回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性並びに看守らによる違法な暴行の有無について(1)第4回保護房収容及びその際の革手錠使用の違法性についてア上記認定事実によると,原告は,A5看守長が居室扉を開いて受罰中の原告に起きるように指導したところ,こぶしを振り挙げて身構え,原告の腕をつかもうとしたA5看守長の顔面を手拳で殴打し,その後看守らにうつ伏せに制圧されて金属手錠を装着されるも,激しく体を揺さぶるなどして抵抗し,エレベーター内においても「ファックユー,ファックユー」などと叫びながら体を揺さぶるなどの抵抗を続け,保護房に収容される際も,看守らが金属手錠を解除しようとするや,「ユー,キル」などと大声を発して立ち上がり,原告の右腕を制していた看守の大腿部を蹴りつけるなどの暴行をしたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,大声を発し続ける原告について,極度の興奮状態にあり,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であると 相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,大声を発し続ける原告について,極度の興奮状態にあり,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であるとして,保護房に収容する必要性があると判断したことが,相当でないということはできず,また,保護房に収容する際に,看守が原告の制止を解除すれば,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であるとして,革手錠を使用する必要性があると判断したことが,上記手錠の使用の必要性に関する判断基準に照らし,合理性を欠くものとはいえず,その他,本件各証拠によるも,上記の各判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 イ原告は,受罰姿勢を強制することは違法であるなどとして,原告の行為は正当である旨主張する。 (ア)この点,上記認定事実によると,看守らは,布団を敷いて横臥していた原告に対して起きるように指導し,これに従わない原告の布団を取り上げようとしたにすぎないのであって,これを直ちに違法と評価できないことは,前述したところから明らかである。なお,A5看守長が原告の腕をつかみ,又は看守らが原告を制圧するなどした行為は,原告がA5看守長に向かってこぶしを振り挙げて身構え,A5看守長の顔面を殴打したことなどに対するものであって,受罰姿勢を強制しようとすることに向けられたものでないことは明らかである。 (イ)また,原告は,第2回及び第3回懲罰時には,拘置所は原告が受罰姿勢をとっていないことを容認していたのであって,拘置所の対応は一貫しない旨主張するが,前述のとおり,拘置所は,第2回及び第3回懲罰時においても,横臥している原告に起きるように指導していたことがうかがわれるし,8月31日事件においても横臥している原告に対して起きるように指導しているのであって, り,拘置所は,第2回及び第3回懲罰時においても,横臥している原告に起きるように指導していたことがうかがわれるし,8月31日事件においても横臥している原告に対して起きるように指導しているのであって,拘置所の対応が一貫していないとはいえない。 (ウ)さらに原告は,A5看守長を押し倒した行為は同人の強引な対応に抵抗するためのものであって非難されるべきものではない旨主張する。 しかし,上記認定事実によると,A5看守長が起きるように複数回指導したのに対し,原告は,A5看守長に対してこぶしを振り挙げて身構えるなどしていたのであって,A5看守長が原告の腕をつかむなどしたことは,拘置所内の安全及び秩序の維持等のために必要かつ相当な範囲内の行為であったというべきである。なお,上記認定事実のとおり,A5看守長に左手をつかまれた原告が左手を引っ張り返した際に,原告の左手にひっかき傷ができたのであるが,これをもって直ちにA5看守長の行為が違法と評価されるべきものでないことは明らかである。 そうすると,A5看守長の行為が強引であったとか,A5看守長の顔面を手拳で殴打するという行為が非難されるべきものではないとはいえない。 (エ)以上のとおりであって,原告の主張はいずれも採用できない。 (2)第4回保護房収容の際の看守らによる違法な暴行の有無についてア原告は,看守らが原告に一斉に飛びかかった旨主張するが,上記のとおり,原告は,A5看守長に対してこぶしを振り挙げて身構え,原告の腕をつかもうとしたA5看守長の顔面を手拳で殴打したのであるから,これに対し,看守らが上記認定事実のとおり原告を制圧したことは,拘置所内の安全及び秩序維持等のために必要かつ相当な範囲内の行為であったというべきである。 なお,翌日の医師の診察において,原告の両腕部及び右側胸部等に軽度の擦過傷及び腫脹等 原告を制圧したことは,拘置所内の安全及び秩序維持等のために必要かつ相当な範囲内の行為であったというべきである。 なお,翌日の医師の診察において,原告の両腕部及び右側胸部等に軽度の擦過傷及び腫脹等が認められているが,上記原告の抵抗状況やこれに対する看守らの制圧行為の態様に照らすと,その際に,原告がこの程度の傷を負うことはやむを得ないものというべきであって,これをもって直ちに看守らの制圧行為を違法と評価することはできないというべきである。 イまた,原告は,保護房内において,看守らが原告のパンツを下げ,肛門に何かを突き刺した,看守らが革手錠をきつく装着した旨主張するが,これらの事実を認めることができないことは前述のとおりである。 ウ以上のとおりであって,原告の主張はいずれも採用できず,その他本件各証拠によるも,第4回保護房収容の際に看守らによる違法な暴行があったとの事実を認めることはできない。 11第5回保護房収容の違法性及び看守らによる違法な暴行の有無について(1)第5回保護房収容の違法性についてア上記認定事実によると,原告は,受罰中にもかかわらず布団に横臥しており,看守らが起きるように指導するもこれに従わず,このため,布団を取り上げるべく原告居室に入った看守らのヘルメット等に肘打ちをし,その後看守らに両腕を制されるも,当該看守らの大腿部付近に膝を当てるなどし,さらにその後看守らに仰向けに制圧されるも「ファックオフ,ハンズミー」などと大声を挙げながら,体を激しく揺さぶるなどして抵抗し,取調室へ向かうエレベーター内でも「キル,キル」などと叫びながら体を激しく揺さぶるなどして抵抗を続けていたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,大 体を激しく揺さぶるなどして抵抗を続けていたのであり,これら一連の経過における原告の挙動からすると,当時原告は相当興奮した状態にあったことがうかがわれる。これらの事情を総合考慮すると,拘置所が,大声を発し続ける原告について,極度の興奮状態にあり,原告が職員に殴りかかるなどの暴行に出るおそれが顕著であるとして,保護房に収容する必要性があると判断したことが,相当でないということはできない。本件各証拠によるも,当該保護房収容の必要性に関する拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 イ原告は,看守らがあらかじめライナー付きヘルメット等を着用して原告居室に赴いていることをもって,看守らが,始めから原告を保護房に収容しようとする意図をもっていたとか,原告に対する受罰姿勢の強制及び保護房収容は,原告に対する懲らしめ目的であった旨主張する。 しかし,上記認定事実のとおり,ライナー付きヘルメット等を装着したA1統括らとともに原告居室に赴いたA19首席は,原告に対して起きるように3回指導しており,その後A1統括は,原告に対し,起きなければ布団を外に出す旨3回指示しているのであって,始めから原告の抵抗を誘うような行為をしているわけではないこと,9月2日事件における原告の言動を考慮すると看守らがあらかじめライナー付きヘルメット等を着用していたことには十分な理由があることからすると,看守らに始めから原告を保護房に収容しようとする意図があったとか,原告に対する懲らしめ目的があったと推認することはできない。 したがって,原告の主張は採用できない。 (2)第5回保護房収容の際の看守らによる違法な暴行の有無について原告は,看守らが原告に受罰姿勢を強制し,原告を保護房に収容する際に違法な暴行を加えた旨主張する。 ア上記認定事実によると,原告は,アイマス 第5回保護房収容の際の看守らによる違法な暴行の有無について原告は,看守らが原告に受罰姿勢を強制し,原告を保護房に収容する際に違法な暴行を加えた旨主張する。 ア上記認定事実によると,原告は,アイマスクをして布団に横臥していたところ,A29看守から数回に渡り起きるように指導されるも従わず,その後A19首席から3回に渡り起きるように指導されるも従わず,さらにA1統括から3回に渡り起きなければ布団を外に出す旨指導されたにもかかわらず,これにも従わなかったのであり,これに対し,A1統括は,原告の足下付近にあった掛け布団及び毛布を取り上げて居室外に出し,敷布団に手をかけてわずかに動かしたというにすぎないのであって,これによると,看守らの行為は,上記軽屏禁罰の目的に照らして不相当なものとはいえず,違法ということはできない。 イまた,上記認定事実によると,看守らの原告に対する制圧行為や,保護房への連行態様は,原告の抵抗の状況に照らすと,拘置所内の安全及び秩序維持等のために必要かつ相当な範囲のものであったと解することができ,その他本件各証拠によるも,第5回保護房収容の際に,看守らが原告に対し,違法な暴行を加えたとの事実を認めることはできない。 12第5回懲罰の違法性について(1)前記前提となる事実のとおり,名古屋拘置所は,9月2日事件について,原告の行為が遵守事項32項に違反するものであるとして,また,9月11日事件について,原告の行為が遵守事項48項に違反するものであるとして,原告に対し,軽屏禁10日及び文書図画閲読禁止10日(併科)の懲罰を科したのであるが,上記認定事実に照らし,両事件における原告の行為の認定及び当該各行為が遵守事項32項及び同48項にそれぞれ違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰との均衡といった点において,拘置所の判断が 上記認定事実に照らし,両事件における原告の行為の認定及び当該各行為が遵守事項32項及び同48項にそれぞれ違反するとの判断,当該規律違反行為と科された懲罰との均衡といった点において,拘置所の判断が合理的根拠を欠き,又は著しく妥当性を欠くものとは認められず,その他,本件各証拠によるも,上記懲罰に係る拘置所の判断に裁量権の逸脱等があると解すべき事情は認められない。 (2)原告は,両事件における原告の行為はいずれも正当な権利の行使である旨主張するが,当該主張を採用できないことは前述したところから明らかである。 第5結論以上のとおりであって,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官佐久間邦夫裁判官樋口英明裁判官及川勝広

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