- 1 -平成29年10月26日判決言渡平成29年(行コ)第94号租税協定に基づく情報交換要請取消等請求,租税条約に基づく情報交換要請取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成25年(行ウ)第618号,平成27年(行ウ)第172号) 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人らに関する部分を取り消す。 2 国税庁長官官房国際業務課長が,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定26条1項に基づき,シンガポール共和国政府に対して2012年(平成24年)11月22日付け「RE: ExchangeofInformationonRequest」と題する書簡をもってした控訴人らに関する情報の要請を取り消す。 3 控訴人らは,Z1及びZ2の平成21年分ないし平成23年分の所得税の調査手続の一環として,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定26条1項に基づく2012年(平成24年)11月22日付け「RE: ExchangeofInformationonRequest」と題する書簡をもって日本国政府からシンガポール共和国政府に対して行われている情報の要請において,同日以降,それぞれ自身に関する一切の情報を交換されない地位にあることを確認する。 4 控訴人らが,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定に基づき,シンガポール共和国政府から得られるそ 位にあることを確認する。 4 控訴人らが,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定に基づき,シンガポール共和国政府から得られるそれぞれ自身に係る情報が記載された資料を,被控訴人及び関係行政庁によって利用されない地位にあることを確認する。 - 2 - 5 被控訴人は,控訴人Z3に対し,100万円を支払え。 6 被控訴人は,控訴人MAMに対し,1150万円を支払え。 7 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 8 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要控訴人Z3は,Z1及びZ2(以下「Z4夫婦」という。)の子である。 東京地方裁判所平成25年(行ウ)第618号事件は,Z4の平成21年分ないし平成23年分の所得税の調査に関連して,国税庁長官官房国際業務課長(以下「国際業務課長」という。)が,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定(甲1。以下「日星租税協定」という。)に基づき,書簡により,シンガポール共和国(以下「シンガポール」という。)に対し,控訴人ら等に関係する情報を要請したことについて,控訴人らが,当該情報要請は日星租税協定に違反してされたものであり,これにより自身ないし顧客のプライバシーその他の権利利益を侵害されると主張して,①その取消しを求め(以下「本件取消請求」という。),②当該情報要請により一切の情報を交換されない地位にあることの確認及び日星租税協定に基づき,自身に関して得られた資料を,被控訴人及び関係行政庁に利用されない地位にあることの確認を求める(以下,併せて「本件各確認請求」という。)とともに,③国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,控訴人Z3にお 資料を,被控訴人及び関係行政庁に利用されない地位にあることの確認を求める(以下,併せて「本件各確認請求」という。)とともに,③国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,控訴人Z3において精神的損害の,控訴人MAMにおいて財産的及び非財産的損害の各賠償を求めた(以下,併せて「本件各国賠請求」という。)事案である。 また,東京地方裁判所平成27年(行ウ)第172号事件は,「マキス・ホールディング B.V.」(以下「原告マキス」という。)を原告とし,被控訴人を被告とする事件であり,Z4の平成21年分ないし平成23年分- 3 -の所得税の調査に関連して,国際業務課長が,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国(以下「オランダ」という。)との間の条約(以下「日蘭租税条約」という。日星租税協定と合わせて「本件各租税条約」ということがある。)に基づき,オランダに対し,原告マキス等に関係する情報を要請したことについて,原告マキスが,当該情報要請は日蘭租税条約に違反してされたものであり,これにより自身ないし顧客のプライバシーその他の権利利益を侵害されると主張して,その取消しを求め,上記情報要請により一切の情報を交換されない地位にあることの確認及び日蘭租税条約に基づき,自身に関して得られた資料を,被控訴人及び関係行政庁に利用されない地位にあることの確認を求めるとともに,国賠法1条1項に基づき,損害賠償を求めた事案である。 原審は,控訴人ら及び原告マキスの各訴えのうち,被控訴人に対し金員の支払を請求する以外の請求に係る部分をいずれも却下し,その余の請求をいずれも棄却した。これに対し,控訴人らが本件各控訴をした。原告マキスは控訴をしておらず,東京地方裁判所平成27年(行ウ)第172号事件の当 求する以外の請求に係る部分をいずれも却下し,その余の請求をいずれも棄却した。これに対し,控訴人らが本件各控訴をした。原告マキスは控訴をしておらず,東京地方裁判所平成27年(行ウ)第172号事件の当否は,当審における審判の対象とはならない。 2 関係法令等の定めは,原判決の「事実及び理由」第2の1(1),(3)及び(4)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 前提事実は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,同(3)イ及び同(4)イを除く。)。 (1) 原判決11頁7行目の「本件各租税条約」を「日星租税協定」と改め,以下,原判決中「本件各租税条約」を「日星租税協定」と読み替える。 (2) 原判決11頁10行目の「書簡」の次に「(乙3。以下「本件書簡」という。)」を加える。 (3) 原判決中11頁26行目から12頁1行目にかけての「(以下「本件シ- 4 -ンガポール情報要請」といい,上記書簡を「本件シンガポール情報要請書簡」という。)」を「(以下「本件情報要請」という。)」と改め,以下,原判決中「本件シンガポール情報要請」を「本件情報要請」と読み替える。 (4) 原判決18頁9行目末尾の次で改行し,以下のとおり加える。 「(6) OECDのモデル租税条約に関するコメンタリー日星租税協定は,OECDのモデル租税条約に準拠して締結されたものであり(前記2で引用した原判決の「事実及び理由」第2の1(3)),OECDのモデル租税条約に関してOECDの租税委員会が作成したコメンタリー(以下「本件コメンタリー」という。なお,乙第1号証(396頁以降。頁数は書証のそれによる。以下同じ。)及び乙第19号証は,本件コメンタリーのうち,日星租税協定26条に関係する 成したコメンタリー(以下「本件コメンタリー」という。なお,乙第1号証(396頁以降。頁数は書証のそれによる。以下同じ。)及び乙第19号証は,本件コメンタリーのうち,日星租税協定26条に関係する部分である。)は,日星租税協定の解釈に際して参照されるべき資料とされている(最高裁平成21年10月29日第一小法廷判決・民集63巻8号1881頁参照)。」 4 主な争点は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決18頁13行目の「本件各取消請求」を「本件取消請求」と改め,以下,原判決中「本件各取消請求」を「本件取消請求」と読み替える。 (2) 原判決18頁13行目の「本件各情報要請」を「本件情報要請」と改め,以下,原判決中「本件各情報要請」を「本件情報要請」と読み替える。 (3) 原判決18頁17行目の「又は日蘭租税条約25条1項」を削る。 (4) 原判決18頁20行目の「又は日蘭租税条約25条3項b号」を削る。 (5) 原判決18頁25行目冒頭から26行目末尾までを削る。 (6) 原判決19頁1行目の「(ウ)」を「(イ)」と改める。 5 主な争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の4(1)(ただし,(原告らの主張)イ(イ)を除- 5 -く。),(2),(3)(ただし,(原告らの主張)カ及び(被告の主張)カを除く。),(4),(6),(7)(ただし,(原告らの主張)イ及び(被告の主張)イを除く。)並びに(8)(ただし,(原告らの主張)ウ(ウ)を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決20頁11行目の「及び日蘭租税条約25条4項,5項」を削り,12行目の「同各条」を「同条」と改める。 原告らの主張)ウ(ウ)を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決20頁11行目の「及び日蘭租税条約25条4項,5項」を削り,12行目の「同各条」を「同条」と改める。 (2) 原判決20頁15行目の「及びオランダ当局」を削る。 (3) 原判決22頁3行目の「及びオランダ当局」を削る。 (4) 原判決23頁6行目から7行目にかけての「,日蘭租税条約25条2項」を削る。 (5) 原判決23頁18行目の「及び原告マキス」を削る。 (6) 原判決23頁22行目から23行目にかけての「及び本件オランダ各口座」を削る。 (7) 原判決23頁23行目の「又はオランダ当局」を削る。 (8) 原判決23頁24行目の「及び原告マキス」を削る。 (9) 原判決24頁15行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「さらに,本件情報要請に対し,シンガポールの所得税法は,「当該国が,当該情報を入手するために自国領域内で可能なすべての情報入手手段を尽くしたこと(要求される情報の関係者から直接に情報を収集することを含む。)の陳述」を求めているところ,上記陳述の内容が真実かつ正確であるか否かを判断するのに適しているのは日本の裁判所であり,日本の裁判所が本件情報要請の違法性を確認するのは,理に適うことである。」(10) 原判決25頁4行目の「全く関連性がない。」の次に,以下のとおり加える。 「Z5及びZ6税理士は,税務調査に協力的であり,Z4の資金移動の趣旨及び目的について丁寧に説明を行っており,通常の能力を有する税務- 6 -職員であれば理解し得たはずである。また,」(11) 原判決25頁20行目から21行目にかけての「当然に想定すべきであり,また,」を,以下のとおり改める。 「当然に想定すべきである。控訴人MAMの運用す ば理解し得たはずである。また,」(11) 原判決25頁20行目から21行目にかけての「当然に想定すべきであり,また,」を,以下のとおり改める。 「当然に想定すべきである。控訴人MAMの運用する投資信託は,一般投資家向けの公募ではなく,少人数のプロの投資家を対象に私募を行っているものであり,投資家の投資額は巨額であり,投資家のプライバシーはより保護されるべきである。また,本件情報要請の要請書は,調査対象者となるZ7一族を定義しており,上記定義によれば,メルコHDはZ7一族に含まれないところ,」(12) 原判決28頁13行目の「原告Z3」から14行目ないし15行目にかけての「確定できていなかったものであるから,」までを,以下のとおり改める。 「控訴人Z3が日本の居住者として所得税の納税義務があるのか否かを確定することができていなかったところ,一定の場所が,ある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものであるから,」(13) 原判決31頁7行目の「,日蘭租税条約25条1項」を削る。 (14) 原判決31頁16行目の「又はオランダ」を削る。 (15) 原判決38頁7行目の「又は日蘭租税条約25条1項」を削る。 (16) 原判決40頁24行目の「,日蘭租税条約25条3項」を削る。 (17) 原判決43頁10行目の「租税条約に基づく情報要請を行うに際しては,」を,以下のとおり改める。 「日星租税協定はOECDのモデル租税条約に準拠しており,OECDの策定した租税条約マニュアルは,「要請を送付する前に,締約国は,不相応に大きな困難が伴うものでない限り,当該情報を入手するために自国領域内で利用できるあらゆる手段を用いるべきである。」(甲36の2- 7 -(訳文1枚目))と明記して 送付する前に,締約国は,不相応に大きな困難が伴うものでない限り,当該情報を入手するために自国領域内で利用できるあらゆる手段を用いるべきである。」(甲36の2- 7 -(訳文1枚目))と明記している。また,本件コメンタリーは,「他方の国に対して情報の提供要請が行われる前に,まず国内の課税上の手続に基づき利用し得る通常の情報源に依拠すべきことが了解されている。」(乙1(399頁),乙19(訳文7頁))としている。これらの要件は,本件情報要請に当たって,国内調査における反面調査以上に極めて厳格な補充性を要求したものである。したがって,日星租税協定に基づく情報要請を行うに際しては,」(18) 原判決43頁13行目の「これを尽くしたのか」の次に,以下のとおり加える。 「,本件においてはZ4夫婦ないしZ6税理士に対し,具体的に資料を特定してその提出を依頼したのか」(19) 原判決43頁17行目の「租税条約」を「日星租税協定」と改める。 (20) 原判決43頁20行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「そして,上記補充性の要件は,それを満たさなければ直ちに情報要請が違法となるところの日星租税協定上の要件であるから,税務職員が国内調査をするに際しての「必要があるとき」の要件(新通則法74条の2第1項,平成23年改正前の所得税法234条)に収れんされるものではない。」(21) 原判決46頁7行目の「当国内で」から8行目の「虚偽の記載をして」までを,以下のとおり改める。 「Z8等が平成24年11月12日にZ5に対し情報の取り寄せを求めているにもかかわらず,その情報が寄せられるのを待たず,かつ,当国内で可能な全ての情報入手手段を実施しないまま,本件書簡に「要求される情報の関係者から直接情報を収集することを含め,当国内で可能なすべて いるにもかかわらず,その情報が寄せられるのを待たず,かつ,当国内で可能な全ての情報入手手段を実施しないまま,本件書簡に「要求される情報の関係者から直接情報を収集することを含め,当国内で可能なすべての情報入手手段については実施済みである。」と虚偽の記載をして」(22) 原判決51頁14行目の「本件各租税条約が」から16行目から17行- 8 -目にかけての「規定であると解され,」までを,以下のとおり改める。 「日星租税協定が二国間で必要な情報を交換することを約束するものであり,本件情報要請がOECDモデル租税条約に準拠する日星租税協定26条に基づくものであるところ,本件コメンタリーは,上記条項の解釈について「被要請国は,自国の納税者の利益を保護するにあたり,提供要請された情報の提供を拒否する一定の裁量を付与されている」(乙1(404頁),乙19(訳文14頁))としている。すなわち,被要請国は,自国の納税者の利益を保護するに当たり,提供された情報を拒否する一定の裁量が付与され,情報を提供するかしないかは,被要請国の裁量に委ねられているのであって,日星租税協定26条1項,3項は,被要請国の利益を保護する趣旨の規定であると解される。したがって,」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件情報要請について抗告訴訟の対象としての処分性を認めることができず,本件各確認請求について確認の利益を認めることができないものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決53頁11行目の「及び日蘭租税条約25条」を削り,同行の「各3項」を「3項」と,12行目から13行目にかけての「各4項」を「4項」と,15行目の「各5項」を「5項」と,それぞれ 。 (1) 原判決53頁11行目の「及び日蘭租税条約25条」を削り,同行の「各3項」を「3項」と,12行目から13行目にかけての「各4項」を「4項」と,15行目の「各5項」を「5項」と,それぞれ改める。 (2) 原判決55頁4行目の「及びオランダ両国」を削り,9行目及び22行目の各「又はオランダ」をいずれも削る。 (3) 原判決57頁25行目の「原告ら」を「控訴人ら及び控訴人MAMの顧客」と改める。 (4) 原判決59頁7行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「なお,証拠(甲15(和訳2頁),乙20(和訳11頁))によれば,- 9 -本件情報要請に対し,シンガポールの所得税法は,「当該国が,当該情報を入手するために自国領域内で可能なすべての情報入手手段を尽くしたことの陳述」を求めていることが認められるところ,控訴人らは,上記陳述の内容が真実かつ正確であるか否かを判断するのに適しているのは日本の裁判所といえる旨主張する。しかし,控訴人らが求める本件各確認請求に係る訴えは,前述のとおり,本件情報要請が日星租税協定に違反していることを理由に,本件情報要請に基づく情報の取得や利用によるプライバシーの侵害を未然に防止しようとするいわゆる予防的確認の訴えであるところ,上記陳述の内容が真実かつ正確であるか否かを判断するのに適しているのが日本の裁判所といえるかどうかはともかくとして,前述のとおり,控訴人らが主張する情報を被控訴人が取得等した場合の不利益の性質や,事後的な損害の回復等の程度等を勘案すると,そもそも控訴人らが求める本件各確認請求に係る訴えは,その目的に即した有効適切な争訟方法であるということはできないから,控訴人らの上記主張するところは,確認の利益の有無の判断に当たって考慮すべき事柄ということはできない。」 2 当裁判所は, 訴えは,その目的に即した有効適切な争訟方法であるということはできないから,控訴人らの上記主張するところは,確認の利益の有無の判断に当たって考慮すべき事柄ということはできない。」 2 当裁判所は,本件情報要請に国賠法上の違法があるとは認められないものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の4ないし7(ただし,6(3)を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決53頁11行目の「及び日蘭租税条約25条」を削り,同行の「各3項」を「3項」と,12行目から13行目にかけての「各4項」を「4項」と,15行目の「各5項」を「5項」と,55頁4行目の「及びオランダ両国」を削り,9行目及び22行目の各「又はオランダ」をいずれも削り,59頁21行目から22行目にかけての「,日蘭租税条約25条1項,3項」を削る。 (2) 原判決60頁9行目末尾の次に,以下のとおり加える。 - 10 -「これに対し,被控訴人は,本件コメンタリーを引用し,被要請国の居住者の権利利益を保護する責任を負うのは国内法令を執行する被要請国の税務当局である旨主張する。しかし,被要請国の税務当局が被要請国の居住者の権利利益を保護する責任を負うとしても,そのことにより,要請国の税務当局が上記責任を免れるとする合理的理由は見当たらない。そして,要請国の税務当局が負う職務上の法的義務と被要請国の税務当局が負う法的義務は互いに排斥し合う関係に立つものではなく,被要請国の居住者の権利利益保護の観点から両立し得る関係に立つものと解すべきであって,被控訴人の上記主張は採用することができない。」(3) 原判決60頁25行目の「,日蘭租税条約25条1項」を削る。 (4) 原判決63頁16行目の「明瞭であるとはいえない。」 と解すべきであって,被控訴人の上記主張は採用することができない。」(3) 原判決60頁25行目の「,日蘭租税条約25条1項」を削る。 (4) 原判決63頁16行目の「明瞭であるとはいえない。」の次に,以下のとおり加える。 「これに対し,控訴人らは,Z5及びZ6税理士は,税務調査に協力的であり,Z4夫婦の資金移動の趣旨及び目的について丁寧に説明を行っており,通常の能力を有する税務職員であれば理解し得たはずである旨主張する。しかし,Z4夫婦は,Z7一族の外国投資信託に係る適正な所得を把握するために必要な控訴人MAMが運用する外国証券投資信託に関する書類の提出等を拒み(前記第2の3で引用した原判決の「事実及び理由」第2の2(2)イ),後記(原判決第3の7(2))のとおり,控訴人MAMが運用する外国証券投資信託の内容,その運用実態に係る資料及び財務諸表の提出の求めに応じず,本件シンガポールZ5口座の取引明細書の提出の求めにも応じなかったのであり,控訴人らの上記主張は採用することができない。」(5) 原判決65頁4行目末尾の次で改行し,以下のとおり加える。 「また,控訴人らは,控訴人MAMの運用する投資信託は,一般投資家向けの公募ではなく,少人数のプロの投資家を対象に私募を行っているも- 11 -のであり,投資家の投資額は巨額であり,投資家のプライバシーはより保護されるべきである旨主張する。しかし,公募か私募か,あるいは投資額の寡多によって保護されるべきプライバシーに軽重を設けるのは相当でなく,控訴人らの主張するところをもって,本件情報要請が違法となるわけではない。」(6) 原判決65頁11行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「確かに,本件書簡の「1 取引の概要」には,Z7一族が投資をしている外国投資信託は,販売会 情報要請が違法となるわけではない。」(6) 原判決65頁11行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「確かに,本件書簡の「1 取引の概要」には,Z7一族が投資をしている外国投資信託は,販売会社は異なるものの,すべて控訴人MAMが投資運用会社となっていることから,Z7一族だけが受益者となっていると想定される旨の記載があるのに対し,IRASが,本件情報要請に基づき,控訴人MAMに対し,情報の提供を求めた情報要請書(甲4の2)の「情報提供の依頼」2項には,控訴人MAMが立花ファンドの運用会社として営業しており,メルコHDが立花ファンドに対し合計200億円の出資をしたと理解している旨の記載があり,上記記載から,国税庁において,メルコHDの資金が,立花ファンドを介して,控訴人MAMによって運用されていることを認識していたことが推認される。」(7) 原判決65頁18行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「また,上記のとおり本件情報要請は,Z4夫婦の所得税に関する我が国の租税法の適正な執行を目的としたものであり,その目的のために全くの第三者とはいえないメルコHDを受益者とする投資信託の情報を取得することは有意なことである。本件コメンタリーは,「被要請国が,要請された情報の一部に関連性があることに疑義を生じさせる事実を知った場合,権限のある当局同士で協議すべきであり,被要請国はこれらの事実を踏まえて関連性を明確にするよう要請国に求めることができる。」としており(乙19(訳文4頁)),仮に,シンガポールの権限のある当局において,本件書簡の記載内容に疑義がある場合には,被控訴人がシンガポールの権- 12 -限のある当局に対して説明を行うなど締約国の協議によりその範囲を明確にすることが可能である。」(8) 原判決65頁22行目から23 に疑義がある場合には,被控訴人がシンガポールの権- 12 -限のある当局に対して説明を行うなど締約国の協議によりその範囲を明確にすることが可能である。」(8) 原判決65頁22行目から23行目にかけての「想定される旨記述した事実があったとしても,」を,以下のとおり改める。 「想定される旨本件書簡に記載したことが不実の記載となるわけではなく,ましてや,」(9) 原判決67頁21行目の「原告らは,」の次に,以下のとおり加える。 「一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものであるから,本件情報要請をする前に,控訴人Z3のシンガポールにおける滞在日数を確認すべきであるところ,国際業務課長が,」(10) 原判決67頁24行目の「しかし,」の次に,以下のとおり加える。 「住所は,形式的基準によらずに実質的な生活関係に基づいて判断すべきであって,滞在日数のみにより一義的に一定の場所がある者の住所であるか否かが定まるわけではなく,かつ,」(11) 原判決70頁24行目から25行目にかけての「,日蘭租税条約25条3項b号」を削り,71頁4行目の「又はオランダ」を削る。 (12) 原判決79頁6行目から7行目にかけての「OECDモデル租税条約に関するコメンタリーにおいても,」を,以下のとおり改める。 「OECDモデル租税条約について,OECDの策定した租税条約マニュアルは,「要請を送付する前に,締約国は,不相応に大きな困難が伴うものでない限り,当該情報を入手するために自国領域内で利用できるあらゆる手段を用いるべきである。」とし(甲36の2),本件コメンタリーも,」(13) 原判決79頁20行目の「収れんされるものと解される。」の次に,以下のとおり加える。 - 内で利用できるあらゆる手段を用いるべきである。」とし(甲36の2),本件コメンタリーも,」(13) 原判決79頁20行目の「収れんされるものと解される。」の次に,以下のとおり加える。 - 13 -「これに対し,控訴人らは,上記租税条約マニュアルの「当該情報を入手するために自国領域内で利用できるあらゆる手段を用いるべきである」との要件及び本件コメンタリーの「国内の課税上の手続に基づき利用し得る通常の情報源に依拠すべき」との要件は,本件情報要請に当たって,国内調査における反面調査以上に極めて厳格な補充性を要求したものであるとして,上記補充性の要件を満たさなければ直ちに情報要請が違法となるところの日星租税協定上の要件であるから,税務職員が国内調査をするに際しての「必要があるとき」の要件(新通則法74条の2第1項,平成23年改正前の所得税法234条)に収れんされるものではない旨主張する。 しかし,租税条約マニュアルの上記要件は「不相応に大きな困難が伴うものでない限り」と規定しており,本件コメンタリーの上記要件も「利用し得る通常の情報源」と規定しており,上記租税条約マニュアル及び本件コメンタリーが補完性について定めたものと読み取ることはできても,極めて厳格な補充性の要件を定めたものと一義的に読み取ることはできず,控訴人らの上記主張は,その前提を欠くものであって,採用することができない。」(14) 原判決80頁6行目の「租税条約に基づく情報交換要請」を「日星租税協定に基づく本件情報要請」と改める。 (15) 原判決82頁14行目末尾の次に,以下のとおり加える。 「これに対し,控訴人らは,Z4夫婦ないしZ6税理士に対し,具体的に資料を特定してその提出を依頼すべきであった旨主張する。しかし,税務当局が,情報取得についての障壁の大 に,以下のとおり加える。 「これに対し,控訴人らは,Z4夫婦ないしZ6税理士に対し,具体的に資料を特定してその提出を依頼すべきであった旨主張する。しかし,税務当局が,情報取得についての障壁の大きい外国に存在する情報について,資料を具体的に特定するのは困難というほかなく,一方,Z4夫婦ないしZ6税理士は上記情報に容易に接近し得る立場にある以上,税務当局側からの概括的な依頼に対して,自ら情報を特定して提供することは可能であったといえることから,控訴人らの上記主張をもって,Z4夫婦ないしZ- 14 -6税理士の対応が本件所得税調査に協力的でなかったとの認定が覆されるわけではない。」(16) 原判決82頁25行目の「租税条約に基づく情報交換要請」を「日星租税協定に基づく本件情報要請」と改める。 (17) 原判決83頁21行目の「しかし,この主張も,」を,以下のとおり改める。 「確かに,前記(2)イのとおり,Z8等が平成24年11月12日にZ5に対し情報の取り寄せを求めているところ,国際業務課長は,同月22日付けの本件書簡をもって,本件情報要請を行っている。しかし,情報の取り寄せを求めてから本件情報要請を行うまで1週間以上経過しており,前記(2)ウのとおり,Z5が,Z8等からの情報の取り寄せの求めに応じていないことも考慮するならば,被控訴人において,全ての可能な情報入手手段を尽くすつもりがなかったとは認められず,本件書簡の「要求される情報の関係者から直接情報を収集することを含め,当国内で可能なすべての情報入手手段については実施済みである。」との記載(乙3(和訳1枚目))が虚偽の事実を記載したものとは認められない。また,控訴人らの上記主張は,」 3 以上によれば,本件情報要請について抗告訴訟の対象としての処分性を認めることは る。」との記載(乙3(和訳1枚目))が虚偽の事実を記載したものとは認められない。また,控訴人らの上記主張は,」 3 以上によれば,本件情報要請について抗告訴訟の対象としての処分性を認めることはできず,本件各確認請求について確認の利益を認めることはできないから,本件各訴えのうち本件取消請求及び本件各確認請求に係る部分はいずれも不適法であるからこれらを却下すべきであり,本件各国賠請求は,本件情報要請に国賠法上の違法があるとは認められず,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これを棄却すべきであるところ,上記判断と同旨の原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 - 15 -東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官大段亨 裁判官小林元二 裁判官松本真
▼ クリックして全文を表示