令和1(行ウ)648 所得税及び復興特別所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年10月12日 東京地方裁判所
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判決文本文30,218 文字)

- 1 -令和3年10月12日判決言渡令和元年(行ウ)第648号所得税及び復興特別所得税更正処分等取消請求事件主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 江東西税務署長が平成30年5月29日付けで原告Aに対してした原告Aの平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分のうち,納付すべき税額9884万9900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(た だし,いずれも令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 2 江東西税務署長が平成30年6月12日付けで原告Bに対してした原告Bの平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分のうち,納付すべき税額9894万9900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(た だし,いずれも令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告らが,養母である亡C(以下「亡C」という。)から相続して取得した土地に借地権を設定した対価として受領した権利金に係る所得を分 離課税の長期譲渡所得の金額に計上して平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「本件所得税等」という。)の確定申告をしたところ,江東西税務署長から,租税特別措置法39条1項(平成30年法律第7号による改正前のもの)の適用により取得費の額に加算される相続税額(以下「取得費加算額」という。)の計算に誤りがあるとして,原告Aにあっては平成30年5月29 日付けで,原告Bにあっては同年6月12日付けで,それぞれ更正処分(以下 - 2 -「本件各更正処分」という。)及び過少申 。)の計算に誤りがあるとして,原告Aにあっては平成30年5月29 日付けで,原告Bにあっては同年6月12日付けで,それぞれ更正処分(以下 - 2 -「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けた(ただし,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は,いずれも令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消されており,以下,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分については,いずれも特に区別する必要がある場合を除き,上記裁決によ り一部取り消された後のものを指すものとする。また,本件各更正処分のうち,個別の原告に係る更正処分を指すときは「原告Aに対する更正処分」などといい,本件各各賦課決定処分のうち,個別の原告に係る賦課決定処分を指すときは「原告Aに対する賦課決定処分」などという。そして,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各更正処分等」という。)ことから,本件各 更正処分の一部及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する①所得税法(平成28年法律第15号による改正前のもの。 以下同じ。),②所得税法施行令(平成29年政令第40号による改正前のもの。以下同じ。),③租税特別措置法(31条につき平成26年法律第10号 による改正前のもの,39条につき平成30年法律第7号による改正前のもの。 以下「措置法」という。),④租税特別措置法施行令(以下「措置令」という。),⑤財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56ほかによる国税庁長官通達。乙18。以下「評価通達」という。),⑥国税通則法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下「通則法」という。),⑦国税通則法第7 章の2(国税 5日付け直資56ほかによる国税庁長官通達。乙18。以下「評価通達」という。),⑥国税通則法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下「通則法」という。),⑦国税通則法第7 章の2(国税の調査)等関係通達の制定について(平成24年9月12日付け課総5-9ほかによる国税庁長官通達。乙13。以下「調査手続通達」という。),⑧財務省組織規則,⑨国税庁事務分掌規則(平成13年1月6日付け国税庁訓令第1号。乙22)及び⑩国家公務員法の定めは,別紙2―1から別紙2-10までのとおりである。 2 前提事実(証拠等を掲記した事実を除き,いずれも当事者の間に争いがない - 3 -か,又は当事者が争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)(1) 亡Cの死亡による相続(以下「本件相続」という。)の発生ア亡Cは,平成▲年▲月▲日に死亡した。原告らは,いずれも亡Cの養子であり,本件相続に係る共同相続人である。 イ原告らは,平成27年11月27日付けで成立した本件相続に係る遺産分割協議により,亡Cの相続財産の一部である別表5-1記載の各土地及び別表5-2記載の各建物を持分各2分の1ずつの割合により取得した。 ウ別表5-1記載の各土地は,平成27年12月4日,別表6-1のとおり分筆され,平成▲年▲月▲日,別表6-2のとおり合筆された。 (2) 借地権設定契約の締結等ア原告らは,平成27年12月11日,原告Aが代表取締役を務める株式会社Dビルディング(以下「本件会社」という。)との間で以下の各契約を締結した。 (ア) 原告らが,2015年(平成27年)12月12日から2035年 (令和17年)12月31日までの間,東京都中央区(住所省略),(住所省略),(住所省略),(住所省略),( 締結した。 (ア) 原告らが,2015年(平成27年)12月12日から2035年 (令和17年)12月31日までの間,東京都中央区(住所省略),(住所省略),(住所省略),(住所省略),(住所省略)の各土地(いずれも平成▲年▲月▲日付けの合筆登記前のもので,別表6-2の順号1ないし8の各土地。以下「E土地」という。)を建物所有目的で本件会社に賃貸し,契約締結時に,本件会社が原告らに対し,権利金32億460 0万円を支払うこと等を内容とする契約(イ) 原告らが,2015年(平成27年)12月12日から2035年(令和17年)12月31日までの間,東京都中央区(住所省略),(住所省略)の各土地(いずれも平成▲年▲月▲日付けの合筆登記前のもので,別表6-2の順号13ないし15の各土地。以下「F土地」といい, E土地とF土地を併せて「本件各土地」という。)を建物所有目的で本 - 4 -件会社に賃貸し,契約締結時に,本件会社が原告らに対し,権利金16億4600万円を支払うこと等を内容とする契約(以下,前記(ア)の契約と併せて「本件各借地権設定契約」という。)(ウ) 別表5-2の順号1の建物(以下「Eビル」という。)の所有を目的としてE土地につき借地権設定契約を締結することを条件として,原 告らが本件会社に対し,Eビルを売買代金1000万円(消費税別)で譲渡すること等を内容とする契約(エ) 別表5-2の順号4の建物(以下「Fビル」といい,EビルとFビルを併せて「本件各建物」という。)の所有を目的としてF土地につき借地権設定契約を締結することを条件として,原告らが本件会社に対し, Fビルを売買代金5600万円(消費税別)で譲渡すること等を内容とする契約(以下,前記(ウ)の契約と併せて「本件各建物売買契約 地権設定契約を締結することを条件として,原告らが本件会社に対し, Fビルを売買代金5600万円(消費税別)で譲渡すること等を内容とする契約(以下,前記(ウ)の契約と併せて「本件各建物売買契約」という。)イ本件各土地は,いずれも本件相続の開始の時及び本件各借地権設定契約の締結時において,評価通達27所定の借地権割合が90%の地域にある ものであった(乙8の1,2及び弁論の全趣旨)。 (3) 本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の課税の経緯ア原告らは,平成27年12月16日,京橋税務署長に対し,別表4の「平成27年12月16日申告」欄記載のとおり,本件相続税の申告書を共同で提出した(乙9)。 イ原告らは,平成28年3月14日,前記アの申告書の記載に誤りがあったとして,別表4の「平成28年3月14日申告(いわゆる訂正申告)」欄記載のとおり,本件相続税の申告書を共同で提出した(乙10)。 ウ京橋税務署長は,平成29年12月26日付けで,別表4の「更正処分平成29年12月26日付」欄記載のとおり,本件相続税の減額更正をし た(乙4の1,2)。 - 5 -エ前記ウの相続税の減額更正において,本件各土地の相続税評価額は,いずれも評価通達26所定の貸家建付地として評価された(乙4の3)。 (4) 本件各更正処分等の経緯ア原告らは,平成28年3月14日,江東西税務署長に対し,それぞれ別表7―1及び別表7―2の「確定申告」欄記載のとおり,本件所得税等の 確定申告書(以下「本件各確定申告書」といい,本件各確定申告書のうち,個別の原告に係る確定申告書を指すときは「原告A確定申告書」などという。)を提出した。 その際,原告らは,前記(2)ア(ア)及び(イ)の本件各借地権設定契約に係 書」といい,本件各確定申告書のうち,個別の原告に係る確定申告書を指すときは「原告A確定申告書」などという。)を提出した。 その際,原告らは,前記(2)ア(ア)及び(イ)の本件各借地権設定契約に係る各権利金(以下「本件各権利金」という。)が本件各土地の価額の10 分の5に相当する金額を超えるものであることから,所得税法33条1項及び所得税法施行令79条1項1号に基づき,本件各権利金に係る所得は譲渡所得に該当するものとして申告した上で,本件各権利金に係る分離課税の長期譲渡所得(以下「本件譲渡所得」という。)の金額の計算に当たっては,取得費加算額を別表3-1及び別表3-2の各「申告額」欄(① ないし④欄)記載のとおり計算するとともに,本件譲渡所得の金額を別表2-1及び別表2-2の各「確定申告額」欄(①ないし⑥欄)記載のとおり計算した。なお,本件各確定申告書には,それぞれ「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」が添付されているところ,これらのうち本件各土地に係るものには,本件各土地の売却理由は納税資金のためで ある旨の記載があった。(以上につき,乙2の1,乙2の2の2,乙2の2の4,乙2の3,乙3の1,乙3の2の2,乙3の2の4,乙3の3)イ江東西税務署長は,原告Aに対しては平成30年5月29日付けで,原告Bに対しては同年6月12日付けで,それぞれ別表7―1及び別表7―2の「更正処分」欄記載のとおり,本件所得税等の増額更正及び過少申告 加算税の賦課決定をした。 - 6 -その際,江東西税務署長は,本件譲渡所得の金額の計算に当たっては,取得費加算額を別表7-1及び別表7-2の各「取得費加算額」欄(⑥欄)の「更正処分」欄記載のとおり計算するとともに(その内訳及び計算過程は,別表3-1及び別表3- 譲渡所得の金額の計算に当たっては,取得費加算額を別表7-1及び別表7-2の各「取得費加算額」欄(⑥欄)の「更正処分」欄記載のとおり計算するとともに(その内訳及び計算過程は,別表3-1及び別表3-2の各「被告主張額」欄(⑤ないし⑩欄)記載のとおりである。),本件譲渡所得の金額を別表7―1及び別表7―2 の各「分離長期譲渡所得の金額」欄(②欄)の「更正処分」欄記載のとおり計算した。(以上につき,甲2の1,2)(5) 本件訴えの提起に至る経緯等ア原告らは,平成30年8月7日,前記(4)イの増額更正及び過少申告加算税の賦課決定を不服として,国税不服審判所長に対し,それぞれ別表7― 1及び別表7―2の「審査請求」欄記載のとおり,審査請求をした(乙12の1,2)。 イ国税不服審判所長は,令和元年7月5日付けで,本件各借地権設定契約及び本件各建物売買契約に係る契約書に貼付された印紙代は,本件譲渡所得の金額の計算上,譲渡費用に該当するとして,それぞれ別表7―1及び 別表7―2の「裁決」欄記載のとおり,前記(4)イの増額更正及び過少申告加算税の賦課決定の一部を取り消す旨の裁決をした(甲3の1,乙5)。 なお,江東西税務署長は,上記審査請求において,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,評価通達28所定の貸家建付借地権の評価方法に基づき算 定した金額である旨を主張したが,上記裁決は,この主張を採用せず,取得費加算額を前記(4)イ記載のとおり計算した。 ウ原告らは,令和元年12月26日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 被告の主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性 被告の主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性は,別紙3「被告の主 令和元年12月26日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 被告の主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性 被告の主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性は,別紙3「被告の主張 - 7 -する本件各更正処分等の根拠及び適法性」のとおりである(なお,同別紙において定める略称等は,以下においても用いることとする。)。 原告らは,後記4の争点に関する部分のほかに,本件各更正処分等の根拠及び適法性を争っていない。 4 争点 (1) 本件譲渡所得に係る取得費加算額を計算するに当たり,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を本件各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすることの適否(争点1)(2) 本件所得税等に係る調査手続に通則法126条及び国家公務員法100 条1項並びに通則法74条の2に違反する違法があるか(争点2)(3) 本件各更正処分に行政手続法14条1項本文所定の理由の提示不備の違法があるか(争点3) 5 争点に関する当事者の主張の要旨当事者の主張内容に鑑み,争点1については被告の主張の要旨から先に記載 し,その余の争点については原告らの主張の要旨から先に記載する。 (1) 争点1(本件譲渡所得に係る取得費加算額を計算するに当たり,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を本件各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすることの適否)について (被告の主張の要旨)ア措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,本件各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすべきであること( の主張の要旨)ア措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,本件各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすべきであること(ア) 次のとおり,措置法39条1項の定め(以下「本件特例」というこ とがある。)を適用して取得費加算額を計算するに当たり,本件各借地 - 8 -権設定契約の締結後にも原告らの権利が引き続き残る資産(本件各土地に係るいわゆる底地部分。以下「本件各底地部分」という。)に対応する相続税額は,取得費加算額に含めることはできない。 a 本件において,本件各借地権設定契約に基づく各借地権(本件各借地権)の設定は,措置法「第31条第1項に規定する譲渡所得の起因 となる不動産等の貸付け」(措置法39条1項),すなわち,「建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権(中略)の設定(括弧内省略)のうち,その対価として支払を受ける金額が次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額の10分の5に相当する金額を超えるもの」(措置法31条1項,所得税法施行令7 9条1項)に該当することから,措置法39条1項にいう「資産の譲渡」に該当する。 そうすると,本件において,措置令25条の16第1項2号に規定する「当該譲渡をした資産」が本件各借地権であることは明らかであり,本件各借地権の設定後も原告らの権利が引き続き残る資産である 本件各底地部分に対応する相続税額については,本件特例の適用対象とならないことは法令の文理上明らかである。 b また,借地権等の設定に係る所得に譲渡所得課税をする趣旨は,土地の貸借に際し借地権等の設定の対価として多額の権利金等を受け取る場合には,その土地の利用権部分についてはその段階でキャピタル・ b また,借地権等の設定に係る所得に譲渡所得課税をする趣旨は,土地の貸借に際し借地権等の設定の対価として多額の権利金等を受け取る場合には,その土地の利用権部分についてはその段階でキャピタル・ ゲインの清算をするのが適当と考えられたことによるものであるが,当該利用権部分以外の部分(底地部分)に係るキャピタル・ゲインはいまだ実現していない以上,当然ながら,当該部分については,その段階では譲渡所得課税の対象にはならない。 そして,本件特例は,譲渡所得課税の対象とされる相続により取得 した資産を前提として規定されているところ,これは,相続人が相続 - 9 -税の納税のため相続財産を処分しなければならない場合,その財産の処分に際して,その処分をした者に対し,被相続人の所有期間に生じたキャピタル・ゲインを含めて所得税を課税する(被相続人の取得価額に基づいて譲渡所得を計算する)ことによる当該納税者の負担感が強いという問題に対処するため,政策的な見地から設けられた制度で あり,相続財産の処分をした場合における譲渡所得の金額の計算上,譲渡した相続財産に対応する部分の相続税額を取得費に準じて差し引くという調整措置を講ずるものとして創設されたものである。 その後,本件特例は,平成5年度税制改正において,相続財産である土地等の一部を譲渡した場合のその土地等の譲渡所得金額の計算上, 取得費に加算して控除できる金額について,「譲渡資産に対応する相続税相当額」から「その者が相続したすべての土地等に対応する相続税相当額」とすることとされたが,本件特例を取り巻くその後の状況が変化したことを踏まえ,平成26年度税制改正において,譲渡をしていない土地等に対応する相続税額までをも譲渡をした土地等に係る 譲渡所得の金額の計算上,取得費に 本件特例を取り巻くその後の状況が変化したことを踏まえ,平成26年度税制改正において,譲渡をしていない土地等に対応する相続税額までをも譲渡をした土地等に係る 譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算するという少し行き過ぎた優遇となっていたものを,譲渡をした土地等に対応する相続税額のみを加算するという本来の姿に戻すこととされたところである。 このような本件特例の制度趣旨及び改正経緯等に照らせば,本件各底地部分に対応する相続税額を含む本件各土地に対応する相続税の全 額を取得費に加算すると解することは到底できない。 さらに,借地権等の設定をした場合の譲渡所得に係る取得費について規定する所得税法施行令174条1項によれば,借地権の設定の対価につき譲渡所得が課税される場合において,その借地権の設定をした土地の取得に要した金額等のうち,底地部分に対応する金額,すな わち,譲渡所得の課税の対象とならない部分に対応する金額について - 10 -は,当該譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に当たらないこととされているのである。 これを本件についてみれば,本件相続の開始の時には本件各土地に本件各借地権は設定されておらず,その後の本件各借地権設定契約により本件各土地が本件各借地権と本件各底地部分に分離され,本件各 底地部分の権利が原告らに残ることとなったのであるから,本件各底地部分に対応する相続税額を取得費加算額に含めることができないことは明らかである。 (イ) 借地権等の設定をした場合の譲渡所得に係る取得費については,所得税法施行令174条1項の規定に基づき,その借地権等の設定をした 土地の取得に要した金額及び改良費の額の合計額に,その借地権等の設定の対価として支払を受ける金額が,当該金額と底地部分としての価額との合 174条1項の規定に基づき,その借地権等の設定をした 土地の取得に要した金額及び改良費の額の合計額に,その借地権等の設定の対価として支払を受ける金額が,当該金額と底地部分としての価額との合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とされているところ,原告らが本件譲渡所得に係る取得費につき,本件各土地の取得価額(簿価)の90%相当額を本件各借地権に対応する取得費として計算 し申告していること,本件各土地は,本件各借地権設定契約の締結時において,借地権の割合が90%の地域にあることからすれば,本件における「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,本件各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた価額とすべきである。 イ原告らの主張には理由がないこと(ア) 原告らは,本件各更正処分において,本件各土地に係る取得費加算額の計算上,貸家建付地として評価された価額に更に借地権割合を乗じるのは,借地権を二重に評価するものであって,その合理性は全くないとして,本件各更正処分は,措置法39条及び措置令25条の16の解 釈適用を誤ったものであり,違法である旨主張する。 - 11 -しかし,本件各土地について,本件相続税の課税価格の計算上,評価通達26に定める貸家建付地として,その計算過程において本件相続の開始の時の借地権の割合である100分の90が使用されていることと,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」,すなわち,相続税が課税された 資産のうち譲渡所得が課税される資産に対応する部分として,貸家建付地として評価した本件各土地の相続税評価額に本件相続の開始の時の借地権の割合と同じ割合である100分の90を乗じて計算することとは 資産のうち譲渡所得が課税される資産に対応する部分として,貸家建付地として評価した本件各土地の相続税評価額に本件相続の開始の時の借地権の割合と同じ割合である100分の90を乗じて計算することとは,それぞれ,その前提とする法令等の趣旨等を異にするものであり,譲渡所得の金額の計算において借地権を二重に評価するものではない から,原告らの主張には理由がない。 (イ) 原告らは,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,自用地の借地権評価額とするのが妥当である旨主張する。 しかし,原告らが主張するところの計算がいかなる意味で合理的であ ると主張しているのか判然としない上,原告らの同号の解釈は明らかに同号の文理からかけ離れたものであり採用することができない。特に,措置法は,本来課されるべき税額を政策的な見地から特に軽減するものであるから,租税負担公平の原則に照らし,その解釈は厳格にされるべきものであり,みだりに拡張解釈等をすることは許されないと解されて いることからしても,原告らの主張が当を得ないことは明らかである。 (ウ) 原告らは,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の上限を,本件各土地の相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額(貸家建付地評価額)とすれば,本件特例の改正趣旨を逸脱したことにはならない旨主張する。 しかし,本件特例の制度趣旨及び改正経緯並びに借地権等の設定に係 - 12 -る所得を譲渡所得として課税する趣旨からすれば,相続税が課税された財産のうち譲渡所得課税の対象ではない部分(譲渡をしていない部分)がある場合には,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入 譲渡所得として課税する趣旨からすれば,相続税が課税された財産のうち譲渡所得課税の対象ではない部分(譲渡をしていない部分)がある場合には,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,相続税が課税された財産の課税価格の計算の基礎に算入された価額を基準として,その価額から譲渡所得課税の対 象ではない部分(譲渡をしていない部分)の価額を控除して算定しなければならないと当然に解されるのであり,原告らの主張は失当である。 原告らの上記主張は,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」について,相続税が課税された資産のうち譲渡所得が課税される資産に対応する部分以外の部分をも含めて計算 するものであり,結果として,譲渡所得が課税されていない(譲渡所得の基因となる事実が発生していない)本件各底地部分についても取得費加算の対象に含めることを可能にするものであって,本件特例の制度趣旨及び改正経緯等に明らかに反するものである。したがって,原告らの主張には理由がない。 (エ) 原告らは,措置令25条の16第1項2号は課税要件明確主義に違反する旨主張する。 しかし,不確定概念とは,抽象的・多義的概念をいうところ,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,相続税の課税価格の計算の基礎に算入された財産の価額をいうので あるから,抽象的・多義的概念でないことは明らかである。 この点をおくとして,租税法規が不確定概念を用いる場合にあっても,それが,法の趣旨・目的に照らしてその意義を明確になし得るものは,租税行政庁に自由裁量を認めるものではなく,その必要性と合理性が認められる限り,この種の不確定概念を用いることは,課税要件明確主義 に反するもの 目的に照らしてその意義を明確になし得るものは,租税行政庁に自由裁量を認めるものではなく,その必要性と合理性が認められる限り,この種の不確定概念を用いることは,課税要件明確主義 に反するものではないと解すべきであるとされていることからすると, - 13 -同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,措置法39条及び措置令25条の16第1項の文理,本件特例の制度趣旨及び改正経緯等から明らかになるのであるから,課税要件明確主義に反するものではない。 (原告らの主張の要旨) ア本件各更正処分は,措置法39条及び措置令25条の16の解釈適用を誤ったものであること(ア) 本件各更正処分においては,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付地として評価された本件各土地の価額に借地権割合である9 0%を乗じた金額として計算されている。 しかし,貸家建付地の算定は,自用地の価額をもとに借地権割合,借家権割合,賃貸割合が既に考慮されている。このように本件各建物は貸家となっており,本件各土地は貸家建付地としての評価の際に,借地権割合が考慮されているにもかかわらず,更に借地権割合を乗じるのは, 借地権を二重に評価するものであって,その合理性は全くない。したがって,本件各更正処分は,措置法39条及び措置令25条の16の解釈適用を誤ったものであり,違法である。 (イ) 本件において,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産」に相当する資産は,本件各借地権であるところ,同号の「当該譲 渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,以下のとおり,自用地の借地権評価額,すなわち,本件各土地の自用地として 相当する資産は,本件各借地権であるところ,同号の「当該譲 渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,以下のとおり,自用地の借地権評価額,すなわち,本件各土地の自用地としての評価額に借地権割合(90%)を乗じた価額として計算する方式(以下「計算A方式」ということがある。)とするのが妥当である。 a 貸家建付地の評価においては,当該貸家建付地評価額は「(自用地 の評価額)×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算さ - 14 -れ,したがって,計算の基礎となる要素は(自用地の評価額),(借地権割合),(借家権割合)及び(賃貸割合)となる。ここで,自用地の借地権評価額は「(自用地の評価額)×(借地権割合)」であるから,ここでも上記貸家建付地評価額の計算の基礎に算入された要素を用いて評価額を計算しているのであり,措置令25条の16第1項 2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を計算A方式で計算することは,条文から合理的に解釈される計算方法に従ったものといえる。 b この点について,前記aのとおり解釈すると,計算A方式で計算した本件各借地権相当額が本件各土地の貸家建付地としての評価額より も高くなってしまうことになる。 しかし,貸家建付地評価額は「(自用地の評価額)×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」となるところ,これは,本件各建物のように土地と建物が自己所有であり,建物の一部又は全部を他人に賃貸している場合には,借家権相当額が借主の権利となり,その反面, 土地と建物の経済的価値が減少することを理由とした計算式であり,他人に賃貸している面積が増えれば(すなわち賃貸割合が増えれば),借家権の価値が増加し,その結果,貸家建付地としての評価額は減 土地と建物の経済的価値が減少することを理由とした計算式であり,他人に賃貸している面積が増えれば(すなわち賃貸割合が増えれば),借家権の価値が増加し,その結果,貸家建付地としての評価額は減少する。本件各借地権相当額が貸家建付地としての評価額よりも高くなってしまうのは,賃貸割合が影響したに過ぎないものであり,計算A 方式を否定する理由にはならない。 本件特例は,平成26年度税制改正において,少し行き過ぎた優遇を解消するために,譲渡をした土地等に対応する相続税額のみを加算するという本来の姿に戻されたものであるところ,計算A方式で計算した本件各借地権相当額が本件各土地の貸家建付地としての評価額よ りも高くなってしまったとしても,それは上記のとおり,賃貸割合が - 15 -影響したに過ぎないものであり,そのような場合には,本件各土地の相続税評価額を上限とすることで,上記改正の趣旨を逸脱したことにもならない。計算A方式は,措置法39条の立法趣旨である納税者保護の精神等からも妥当な解釈というべきである。 以上のとおり,原告らは,本件所得税等の確定申告をするに当たり, 計算A方式で計算した本件各借地権相当額が貸家建付地としての評価額を超えてしまうことから,本件各土地の相続税評価額である貸家建付地としての評価額を限度として,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を計算したものである。 c 被告の主張する計算方式は,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を本件各土地の貸家建付地としての評価額に借地権割合(90%)を乗じた価額として計算する方式(以下「計算B方式」ということがある。)である。 た資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を本件各土地の貸家建付地としての評価額に借地権割合(90%)を乗じた価額として計算する方式(以下「計算B方式」ということがある。)である。 しかし,前記(ア)のとおり,計算B方式は借地権を二重に評価するものであって,その合理性は全くない。なお,原告らは,本件相続により「借地+底地」として取得した本件各土地のうち,「借地」部分を譲渡したとみなされるのであるから,実質的経済価値が考慮された貸家建付借地権を譲渡したものと解するのが合理的であるともいえる。 そうすると,江東西税務署長が本件各更正処分等(ただし,令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消される前のもの)の審査請求の手続において主張したように,「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付借地権の評価額として計算する方式がより妥当な金額であるとも 考えられるのであって,被告の主張する計算B方式が絶対的に正しい - 16 -という根拠はないというべきである。 イ措置令25条の16第1項2号は課税要件明確主義に違反すること本件各更正処分においては,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付地として評価した本件各土地の価額に借地権割合である90%を乗じ た金額として計算されている。 しかし,江東西税務署長は,本件各更正処分等(ただし,令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消される前のもの)の審査請求の手続において,「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,評価通達28に定める貸家建付借地 権の評価方法に基づき算定した金額と 一部取り消される前のもの)の審査請求の手続において,「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,評価通達28に定める貸家建付借地 権の評価方法に基づき算定した金額となる旨の主張をしている。このことは,江東西税務署長が,措置法39条及び措置令25条の16第1項2号の解釈に関し,一義的な解釈をすることができなかったことを示すものであり,上記「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」が不確定な概念であることは明らかである。 したがって,同号は,行政庁の恣意的な裁量を防止し,国民の財産権が不当に侵害されることを防止し,国民生活に法的安定性と予測可能性を付与することを目的とする課税要件明確主義に反するものであって,当該規定に基づいてされた本件各更正処分も無効である。 (2) 争点2(本件所得税等に係る調査手続に通則法126条及び国家公務員 法100条1項並びに通則法74条の2に違反する違法があるか)について(原告らの主張の要旨)ア(ア) 本件相続税の調査(以下「本件相続税調査」という。)を担当した東京国税局の職員(以下「本件相続税調査担当職員」という)は,平成29年11月16日に原告ら及び本件相続税の申告手続等を担当する税 理士(以下「本件相続税担当税理士」という。)の立会いの下で本件相 - 17 -続税調査を実施した際,原告らに対し,本件所得税等について修正申告が必要であること並びにその理由及び具体的金額について説明し(以下,この説明を「本件説明」という。),併せて,「よくある間違いであって,加算税や延滞税が課税されない」旨を説明した。 本件においては,東京国税局から本件相続税担当税理士に対して,本 件相続税調査の要請があった後,京橋税務署から原告らの ,「よくある間違いであって,加算税や延滞税が課税されない」旨を説明した。 本件においては,東京国税局から本件相続税担当税理士に対して,本 件相続税調査の要請があった後,京橋税務署から原告らの本件所得税等の調査の要請があり,その際,京橋税務署は本件相続税調査と同時に本件所得税等の調査を実施することを希望していた。これに対し,本件相続税担当税理士が東京国税局に対し,上記京橋税務署の希望に関する問い合わせをしたところ,東京国税局からは,本件相続税調査に時間を要 するため,本件相続税調査と同時に本件所得税等の調査を実施することは現実的ではないとして,別個に実施するよう東京国税局から京橋税務署に対し掛け合うこととしたい旨の回答を受けたものであり,その結果,本件相続税調査と本件所得税等の調査はそれぞれ別日に実施されることとなったものである。このような経緯からすれば,本件においては,税 務代理権限のない税理士が調査に立ち会うことがないように十分な配慮がされた上で調査が実施されていたものであるといえる。 そして,本件相続税担当税理士は,本件相続税については税務代理権限があるが,本件所得税等については税務代理権限がないのであるから,本件相続税調査担当職員は,本件所得税等の調査に関することについて は本件相続税担当税理士に説明してはならない守秘義務を負っているというべきである。相続税の調査においては,相続税の額のみについて調査し,報告すれば十分なのであり,まして,本件各土地の価額に借地権割合である90%を乗じた金額が取得費加算額となる旨の説明をすることは,本件相続税調査に関係ないものといわざるを得ない。 以上によれば,本件相続税調査担当職員が本件相続税担当税理士の面 - 18 -前で本件説明をしたことは通則法12 旨の説明をすることは,本件相続税調査に関係ないものといわざるを得ない。 以上によれば,本件相続税調査担当職員が本件相続税担当税理士の面 - 18 -前で本件説明をしたことは通則法126条及び国家公務員法100条1項に規定する守秘義務に違反するものである。 (イ)a 被告は,税理士の地位が,単なる私的な代理人ではなく,公共的なものと位置づけられ,守秘義務も課せられていること等に鑑みれば,本件説明は,本件相続税調査担当職員の守秘義務に直ちに違反するも のではない旨主張する。 しかし,税理士であっても,自らが税務代理権限を有していない調査との関係では単なる私人にすぎないのであるから,本件相続税調査担当職員が本件相続税担当税理士の面前で,本件相続税調査とは関係のない本件所得税等に関する情報を開示することは,本件相続税調査 担当職員の守秘義務に違反するものというべきである。 b 被告は,本件説明は,刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受けるものでないことは明らかであるから,本件各更正処分の取消事由には該当しない旨 主張する。 しかし,国家公務員の守秘義務違反は,国家公務員に対する国民の信頼を失う最も根源的な非違行為であって,重大な違法行為というべきであるし,そもそも被告が主張するように取消原因を限定することは,税務調査の手続上の瑕疵については実質的に司法審査が及ばない ことになり,税務当局の質問検査権の公正を害する結果になるものであるから,適正手続の観点から到底妥当な解釈ということはできない。 本件相続税調査担当職員が本件説明をしたことは,重大な守秘義務違反であって,その手続的瑕疵は極めて大き の公正を害する結果になるものであるから,適正手続の観点から到底妥当な解釈ということはできない。 本件相続税調査担当職員が本件説明をしたことは,重大な守秘義務違反であって,その手続的瑕疵は極めて大きいといわざるを得ない。 イまた,本件相続税調査担当職員は,調査手続通達の1-3に定める「そ の調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当せず,通則法7 - 19 -4条の2が定める本件所得税等の質問検査権を有していない。 ウ以上によれば,本件所得税等に係る調査には通則法126条及び国家公務員法100条1項並びに通則法74条の2に違反した違法があり,これを前提としてされた本件各更正処分等にはこれらを取り消すべき違法がある。 (被告の主張の要旨)ア税務調査の一環としての質問検査が違法に行われた場合に,これに基づく更正,決定が違法となるか否かについては,調査手続の単なる瑕疵は更正処分に影響を及ぼさないものと解すべきであり,調査の手続が刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる 等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り,その処分に取消原因があるものと解するのが相当である。 イ本件相続税調査担当職員は,東京国税局課税第一部資料調査二課所属の職員であるから,通則法74条の2第1項が規定する国税局の職員に当た る。また,本件相続税調査担当職員は,その担当する事務につき,国税庁事務分掌規則296条1号及び3号の定めによって,譲渡所得の調査事務について,質問検査権を有しており,調査手続通達の1-3に定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当する。 したがって,本件相続税調査担当職員は本件所得税等の質問検査権を 査事務について,質問検査権を有しており,調査手続通達の1-3に定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当する。 したがって,本件相続税調査担当職員は本件所得税等の質問検査権を有 していない旨の原告らの主張には理由がない。 ウ本件譲渡所得における取得費加算額は,本件相続税の課税価格や相続税額,本件各土地に係る相続税評価額といった本件相続税の課税内容を基に計算されるものであることから,本件相続税の税額等に増減があれば,本件譲渡所得における取得費加算額についても異動が生じ,これにより必然 的に原告らの本件所得税等の税額にも増減が生ずるという関係がある。 - 20 -そして,原告らが本件各確定申告書に添付した「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」には本件各土地の売却理由は納税資金のためである旨の記載があり,原告らが本件相続税の納税資金の捻出のために本件各借地権設定契約を締結したことがうかがわれる。 このような状況の下で,本件相続税調査担当職員が,上記のように本件 相続税の税額等の変動に伴い,本件所得税等の税額が必然的に変動するという当然の事柄について,本件相続税担当税理士立会いの下,原告らに対して本件所得税等について修正申告が必要であること等を説明したとしても,そのことが,所得税等を適正かつ公平に賦課徴収し,税務行政の適正な執行確保を阻害することは想定されず,また,税理士の地位が,単な る私的な代理人ではなく,公共的なものと位置づけられ,守秘義務も課せられていること(税理士法38条)等に鑑みれば,国家公務員法100条1項及び通則法126条に規定する守秘義務に直ちに違反するものとはいえない。 この点をおくとしても,本件相続税調査担当職員の上記のような行為は, 刑罰法規 等に鑑みれば,国家公務員法100条1項及び通則法126条に規定する守秘義務に直ちに違反するものとはいえない。 この点をおくとしても,本件相続税調査担当職員の上記のような行為は, 刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受けるものでないことは明らかであるから,本件各更正処分の取消事由には該当しない。 したがって,本件相続税調査担当職員が原告らに対して本件説明したこ とが通則法126条及び国家公務員法100条1項に規定する守秘義務に違反する旨の原告の主張には理由がない。 (3) 争点3(本件各更正処分に行政手続法14条1項本文所定の理由の提示不備の違法があるか)について(原告らの主張の要旨) ア本件各更正処分等に係る通知書には,本件各更正処分の理由として,本 - 21 -件各土地の相続税評価額に100分の90の割合を乗じた金額を基に取得費加算額を計算した旨の記載があるにすぎず,上記計算の理由についての記載は一切ない。処分の理由に突如として根拠のない数字が提示されており,極めて不十分な理由付記といわざるを得ない。 イまた,前記(1)(原告らの主張の要旨)のとおり,本件各更正処分におい ては,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付地として評価した本件各土地の価額に借地権割合である90%を乗じた金額として計算されているにもかかわらず,江東西税務署長は,審査請求の手続において,上記「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は貸家 建付借地権の評価額となる旨の主張をしている。 このような計算方法の変更は, 西税務署長は,審査請求の手続において,上記「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は貸家 建付借地権の評価額となる旨の主張をしている。 このような計算方法の変更は,本件各更正処分等に係る通知書に記載された理由に誤りがあったことを江東西税務署長自身が認めていることを示すものである。そして,本件のように処分理由の差替えを自由に認めることは,理由の付記なしに更正処分をすることを認めたことと同様の結果 となり,納税者の手続保障を著しく阻害するものである。 したがって,本件各更正処分は行政手続法14条1項本文に基づく理由提示に不備があり,違法である。 (被告の主張の要旨)ア行政手続法14条1項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは, 同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきであると解される。 イ本件各更正処分等に係る通知書には,本件譲渡所得の基因となる事実と して,本件各建物の譲渡及び本件各借地権の設定が記載され,また,取得 - 22 -費加算額の計算において,本件相続税の各更正処分における本件各借地権の相続税評価額並びに本件相続税の課税価格及び相続税額を示した上で,本件各借地権の相続税評価額は,本件各土地の相続税評価額の100分の90の割合に相当する金額に2分の1の割合を乗じた金額であることが記載されている。加えて,本件譲渡所得の金額の計算上,取得費加算額は, 措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき,本件相続税の額に,本件相続税の課税価格のうちに上記本件各借地権の相続税評価額の占める割合を乗じて算出し 所得の金額の計算上,取得費加算額は, 措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき,本件相続税の額に,本件相続税の課税価格のうちに上記本件各借地権の相続税評価額の占める割合を乗じて算出した各金額の合計額であることが記載されている。 以上によれば,本件各更正処分等に係る通知書には,本件譲渡所得の金額の計算上,取得費加算額の計算方法に関する江東西税務署長の判断の理 由につき,その判断過程が逐一検証し得る程度に具体的に記載されており,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由の提示として欠けるものではないから,原告らの主張には理由がない。 ウ原告らは,江東西税務署長が,審査請求時において,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡した資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を貸家建付借地権として評価した価額であると主張したことを問題視して,そのことが,本件各更正処分等に係る理由附記として不十分であり,違法であると主張するようである。 しかし,江東西税務署長は,貸家建付借地権として評価した価額を用いた計算方法であっても,結果として,本件譲渡所得に係る取得費加算額が,本件各更正処分における取得費加算額を下回ることとなり,本件各更正処分は適法な範囲内であることから,同計算方法を法的評価の解釈として主張したものであるところ,このような主張を審査請求の段階において行っ たとしても,本件の争点が,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格 - 23 -の計算の基礎に算入された価額」はいくらであるのかという点にあることは,当初から変わりはないのであって,取得費加 たとしても,本件の争点が,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格 - 23 -の計算の基礎に算入された価額」はいくらであるのかという点にあることは,当初から変わりはないのであって,取得費加算額の計算の前提となる本件各土地上に借地権が設定された事実や相続税の課税価格及び相続税額等の本件各更正処分等に係る通知書に記載された基本的な課税要件事実等に変更を加えるものではないし,原告らの防御権行使に当たって,原 告らの主張の機会を奪ったり,制限したりするなどの不利益を与えるものでもない。 したがって,原告らの主張には理由がなく,本件各更正処分に理由の提示不備の違法がないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件譲渡所得に係る取得費加算額を計算するに当たり,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を本件各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすることの適否)について(1) 借地権等の設定に係る所得を譲渡所得として課税する趣旨並びに本件特 例の趣旨及び改正経緯等についてア所得税法33条1項は,「建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるもの」を譲渡所得の対象となる「資産の譲渡」に含める旨を定め,上記の「政令で定めるもの」として,所得税法施行令79条1項は, 建物若しくは構築物の所有を目的とする借地権の設定のうち,その対価として支払を受ける金額が,その土地の価額の10分の5に相当する金額を超えるものとする旨を定めているところ,これらの定めは,土地の貸借に際し借地権等の設定の対価として多額の権利金等を受け取る場合には,その金額の性質は,単に地代の前払い 額の10分の5に相当する金額を超えるものとする旨を定めているところ,これらの定めは,土地の貸借に際し借地権等の設定の対価として多額の権利金等を受け取る場合には,その金額の性質は,単に地代の前払いというにとどまらず,その土地の独占 的利用権ないし場所的利益の譲渡の対価としての意味合いをもつ場合があ - 24 -り,そのような場合には,経済的,実質的には,地主はその土地の更地価額のうち土地の利用権に当たる部分を半永久的に譲渡することによってその土地に対する投下資本の大半を回収し,地主には底地部分に対するわずかの地代収受権が残されるにすぎないともみられることから,法律的には「資産の譲渡」ではないが,その土地の利用権部分についてはその段階で キャピタル・ゲインの清算をするのが適当であるとの考えから,土地の譲渡があったものとみなすこととしたものであると解される。 イまた,措置法39条1項(本件特例)は,相続又は遺贈による財産の取得をした個人で当該相続又は遺贈につき相続税の課税を受けた者が,当該相続の開始があった日の翌日から当該相続に係る申告書の提出期限の翌日 以後3年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産の譲渡(措置法31条1項に規定する譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。)をした場合においては,譲渡所得に係る所得税法33条3項に規定する取得費は,当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定め るところにより計算した金額を加算した金額とする旨を定め,これを受けて,措置令25条の16第1項柱書きは,本文において,本件特例に規定する譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額は,同項1号に掲げる相続 金額とする旨を定め,これを受けて,措置令25条の16第1項柱書きは,本文において,本件特例に規定する譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額は,同項1号に掲げる相続税額に同項2号に掲げる割合を乗じて計算した金額とする旨を定めた上で,同項1号は,上記「相続税額」とし て,当該譲渡をした資産の取得の基因となった相続又は遺贈に係る当該取得をした者の相続税額で,当該譲渡の日の属する年分の所得税の納税義務の成立する時において確定しているものを,同項2号は,上記「割合」として,同項1号に掲げる相続税額に係る同号に規定する者についての相続税法に規定する課税価格のうちに当該譲渡をした資産の当該課税価格の計 算の基礎に算入された価額の占める割合を,それぞれ掲げている。 - 25 -このような本件特例等の定めは,相続税の課税対象となった相続財産の譲渡が相続の直後に行われる場合に,相続税と譲渡に係る所得税が相次いで課されることによる負担の調整を図るため,譲渡をした相続財産に係る相続税相当額をその譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算する特例として創設されたものである。そして,本件特例等に関しては,平成5年度税 制改正において,相続財産である土地等の一部を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算して控除できる金額が「その者が相続したすべての土地等に対応する相続税に相当する金額」とされた結果,譲渡をしていない土地等に対応する相続税額までをも譲渡をした土地等に係る譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算するという少し行き過ぎた優遇と なっていたものを,譲渡をした土地等に対応する相続税額を加算するという本来の姿に戻すことを目的として,平成26年度税制改正において,相続財産である土地等の一部を譲渡し う少し行き過ぎた優遇と なっていたものを,譲渡をした土地等に対応する相続税額を加算するという本来の姿に戻すことを目的として,平成26年度税制改正において,相続財産である土地等の一部を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算して控除できる金額を上記「その者が相続したすべての土地等に対応する相続税に相当する金額」から「その譲渡した土地等に対応する 相続税に相当する金額」とする旨の改正がされたものである。 (2) 本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」についてア措置令25条の16第1項2号の文理に加え,前記(1)のような本件特例の趣旨及び改正経緯等に照らせば,同号の「当該譲渡をした資産の当該 課税価格の計算の基礎に算入された価額」とは,相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額のうち譲渡をした相続財産に対応する部分をいうものであることは明らかである。 イ本件においては,原告らは,本件各借地権設定契約に基づき本件各借地権を設定した対価として,本件各土地の価額の10分の5に相当する金額 を超える金額の本件各権利金を受領したものであり,措置令25条の16 - 26 -第1項2号の「当該譲渡をした資産」が本件各借地権であることは,当事者間に争いがないものと認められ,また,前提事実(2)イのとおり,本件各土地は,いずれも本件相続の開始の時及び本件各借地権設定契約の締結時において,評価通達27所定の借地権割合が90%の地域にあるものであったことからすると,本件各借地権設定契約により譲渡したものとみなさ れる本件各借地権は,本件各土地の権利の90%相当分に当たるものということができる。 そして,前提事実(3)エのとおり,本件相続税の減額更正において,本件 権設定契約により譲渡したものとみなさ れる本件各借地権は,本件各土地の権利の90%相当分に当たるものということができる。 そして,前提事実(3)エのとおり,本件相続税の減額更正において,本件各土地の相続税評価額は,いずれも評価通達26に定める貸家建付地として評価されたものであることを踏まえると,本件各更正処分が,本件譲渡 所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付地としての本件各土地の評価額に,借地権割合である90%を乗じた金額としたことは相当であると認められる。 (3) 原告らの主張についてア原告らは,本件各土地は,貸家建付地としての評価の際に,借地権割合 が考慮されているにもかかわらず,更に借地権割合を乗じるのは,借地権を二重に評価するものであって,その合理性は全くない旨主張する。 しかし,評価通達上,貸家建付地としての評価の際に,借地権割合が考慮されるのは,家屋の借家人は家屋に対する権利を有するほか,その家屋の敷地についても,家屋の賃借権に基づいて,家屋の利用の範囲で,ある 程度の支配権を有していると認められ,逆にその範囲において地主は,借家人による敷地の利用についての受忍義務を負うことになるため,実際に地主が,借家人の有する支配権を消滅させるためには,いわゆる立退料の支払を要する場合もあり,また,その支配権が付着したままの状態でその土地を譲渡するとした場合にはその支配権が付着していないとした場合 における価額より低い価額でしか譲渡することができないと認められる - 27 -と考えられているためであるが,そこで評価の対象とされているのは飽くまで当該土地の全体である。これに対し,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に られる - 27 -と考えられているためであるが,そこで評価の対象とされているのは飽くまで当該土地の全体である。これに対し,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の算定に当たり借地権割合を考慮するのは,上記のようにして評価された貸家建付地としての本件各土地全体の評価額のうち,譲渡をした相続財産である本件各 借地権に対応する部分の価額を算定し,これにより相続税額のうち取得費加算の対象となる部分を明らかにするためである。 以上のとおり,本件各土地を貸家建付地として評価する際に借地権割合が考慮されることと,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の算定に当たり借地権割合を考慮 することは,その目的を異にするものであり,借地権割合を二重に評価するものであるということはできない。 したがって,原告らの主張は採用することができない。 イ原告らは,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,自用地の借地権評価額, すなわち,本件各土地の自用地としての評価額に借地権割合(90%)を乗じた価額として計算する方式(計算A方式)とするのが妥当であるとした上で,上記方式で計算した場合に,借地権相当額が当該土地の貸家建付地としての評価額よりも高くなってしまうことがあるとしても,それは賃貸割合が影響したに過ぎないものであり,そのような場合には,当該土地 の相続税評価額を上限とすれば,本件特例の改正の趣旨を逸脱するものではない旨主張する。 しかし,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付地としての本件各土地の評価額に,借地権割合である9 趣旨を逸脱するものではない旨主張する。 しかし,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,貸家建付地としての本件各土地の評価額に,借地権割合である90%を乗じた価額とするのが相当であることは前 記(2)のとおりである。 - 28 -この点をおくとしても,仮に,原告らの主張を前提として,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を貸家建付地としての本件各土地の評価額とすることを認めるとすると,本件各借地権設定契約の締結後も本件各底地部分の権利は,譲渡人である原告らに帰属したままであるにもかかわらず,本件各底地部分も含 めた本件各土地の権利全部に対応した相続税額を取得費に加算することを認めることとなり,結果として,譲渡所得が課税されていない底地部分についても取得費加算の対象に含めることを認めることとなる。 しかし,このような解釈が,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産」が本件各借地権であるという実体を適正に反映していないものであり,ま た,前記(1)アの借地権等の設定に係る所得を譲渡所得として課税する趣旨並びに本件特例の文理,制度趣旨及び改正経緯等に反するものであることは明らかであるから,原告らの主張は採用することができない。 ウ原告らは,江東西税務署長は,本件各更正処分等(ただし,令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消される前の もの)の審査請求の手続において,本件各更正処分における算定方式とは異なる算定方式を主張していたとして,措置令25条の16第1項2号は,課税要件明確主義に反する旨主張する。 しかし,同号は,前記(1)の借地権等の設定に係る所得を譲渡所得として課税する趣旨並びに本 異なる算定方式を主張していたとして,措置令25条の16第1項2号は,課税要件明確主義に反する旨主張する。 しかし,同号は,前記(1)の借地権等の設定に係る所得を譲渡所得として課税する趣旨並びに本件特例の趣旨及び改正経緯等に鑑みれば,譲渡をし た相続財産に対応する相続税に相当する金額を譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算するという点も含めて、課税要件の内容がその文言に照らして明確であるというべきであって,課税要件明確主義に反するということはできない。そして,江東西税務署長が審査請求の手続において,本件各更正処分における算定方式とは異なる算定方式を主張したことは,直ちに 上記判断を左右するものではないから,原告らの主張は採用することがで - 29 -きない。 (4) 小括以上によれば,本件譲渡所得に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は,本件各土地の貸家建付地としての相続税評価額に100分の90を乗じた金額とした本件各更正処分は適法である。 2 争点2(本件所得税等に係る調査手続に通則法126条及び国家公務員法100条1項並びに通則法74条の2に違反する違法があるか)について(1) 税務調査の手続の瑕疵が当該税務調査を基礎とした更正処分に与える影響については,税務調査の手続の単なる瑕疵は更正処分の効力に影響を及ぼさないものと解すべきであり,調査の手続が刑罰法規に触れ,公序良俗に反 し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り,その処分に取消原因があるものと解するのが相当である。 (2)ア原告らは,本件相続税調査担当職員が,本件相続税担当税理士の面前で,原告らに対し,本件所得税等 等しいものとの評価を受ける場合に限り,その処分に取消原因があるものと解するのが相当である。 (2)ア原告らは,本件相続税調査担当職員が,本件相続税担当税理士の面前で,原告らに対し,本件所得税等について修正申告が必要であること並びにそ の理由及び具体的金額について説明したこと(本件説明)は,通則法126条及び国家公務員法100条1項に規定する守秘義務に違反するものである旨を主張する。 イしかし,譲渡所得の計算における取得費加算額は,相続財産の評価額や相続税の課税価格及び相続税額といった相続税に係る課税内容を基に計算 されるものであるところ,本件相続税額等に増減があれば,本件譲渡所得等の計算における取得費加算額についても変動が生じ,これにより必然的に原告らの本件譲渡所得等に係る税額にも変動が生じ得るものであり,そのことは税務に関する専門家である税理士にとって明らかな事項であるから,本件所得税等について修正申告が必要であることが,直ちに本件相続 税担当税理士との関係で「秘密」(通則法126条及び国家公務員法10 - 30 -0条1項)に該当するとは解し難い。また,原告らの主張によっても,本件相続税調査担当職員による本件説明は原告らに対してされたものであり,本件相続税担当税理士はその場に立ち会ったにすぎないというのであるから,本件相続税担当税理士には税理士法上,自らの税理士業務に関して知り得た秘密を守る義務が課せられており,本件説明により直ちに所得税等 の適正かつ公平な賦課徴収及び税務行政の適正な執行確保が阻害されるということはできないことを踏まえると,本件相続税調査担当職員が本件説明をしたことが,直ちに通則法126条及び国家公務員法100条1項に規定する守秘義務に違反するものであるということはできない。 ということはできないことを踏まえると,本件相続税調査担当職員が本件説明をしたことが,直ちに通則法126条及び国家公務員法100条1項に規定する守秘義務に違反するものであるということはできない。 したがって,原告らの主張を前提としたとしても,調査の手続が刑罰法 規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものということはできないから,本件各更正処分に取消原因があるということはできず,原告らの主張は採用することができない。 (3)アまた,原告らは,本件相続税調査担当職員は,調査手続通達の1-3に 定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当せず,通則法74条の2が定める本件所得税等の質問検査権を有していない旨を主張する。 イしかし,弁論の全趣旨によれば,本件相続税調査担当職員は東京国税局課税第一部資料調査第二課所属の職員であると認められるところ,同課の 職員は,国税庁事務分掌規則(乙22)296条に基づき,相続税等及び譲渡所得等に係る所得税等の課税標準の調査並びにこれらの国税に関する検査に関する事務で,国税局長が必要があると認めた特定事項に係る事務の指導及び監督並びにこれに必要な調査及び検査に関する事務(同条1号)を所掌し,また,相続税等及び譲渡所得等に係る所得税等の課税標準の調 査並びにこれらの国税に関する検査に関する事務で,当該調査及び検査を - 31 -受ける者の所得の金額,事業の規模及び態様又は取得した財産の価額その他の状況に照らし,国税局長が特に必要があると認めた事項に係る調査及び検査に関する事務(同条3号)を所掌しているものと認められ,調査手続通達の1-3に定める「その調査を行う国税に関 た財産の価額その他の状況に照らし,国税局長が特に必要があると認めた事項に係る調査及び検査に関する事務(同条3号)を所掌しているものと認められ,調査手続通達の1-3に定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当するから,本件所得税等に関する通則法74条の2所定の質 問検査権を有しているものと認められる。したがって,原告らの主張は採用することができない。 3 争点3(本件各更正処分に行政手続法14条1項本文所定の理由の提示不備の違法があるか)について(1) 原告らは,①本件各更正処分等に係る通知書には,本件各更正処分の理由 として,本件各土地の相続税評価額に100分の90の割合を乗じた金額を基に取得費加算額を計算した旨の記載があるにすぎず,上記計算の理由についての記載は一切ない,②江東西税務署長が審査請求の手続において,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は貸家建付借地権の評価額となる旨の主張をしてお り,このことは,本件各更正処分等に係る通知書に記載された理由に誤りがあったことを江東西税務署長自身が認めていることを示すものであるとして,本件各更正処分は行政手続法14条1項本文に基づく理由提示に不備がある旨を主張する。 (2)ア行政手続法14条1項本文が,行政庁が不利益処分をする場合にその 理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるところ,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記 のよう 性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるところ,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記 のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該 - 32 -処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきものと解するのが相当である(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 また,提示すべき理由の内容及び程度は,特段の理由のない限り,いかな る事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたのかを,処分の相手方においてその記載自体から了知し得るものでなければならず,単に処分の根拠規定の該当条項を示すだけでは,それによって当該規定の適用の原因となった具体的な事実関係をも当然に知り得るような例外の場合を除いては,法の要求する理由の提示として十分ではないといわなければな らない(最高裁昭和45年(行ツ)第36号同49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁参照)。 イ本件において,本件各更正処分等に係る通知書(甲2の1,2)には,本件各更正処分等の処分の理由として,①本件各建物の譲渡及び本件各借地権の設定による分離課税の長期譲渡所得の金額は,総収入金額から取得 費の額を差し引いた金額であること,②上記取得費の額は,資産の取得に要した金額と,措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき取得費に加算される相続税額との合計額であること,③上記措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき取得費に加算される相続税額は,本件相続税の額に,本件相続税の課税 令25条の16の規定に基づき取得費に加算される相続税額との合計額であること,③上記措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき取得費に加算される相続税額は,本件相続税の額に,本件相続税の課税価格のうちに譲渡した資産の課税価額で ある相続税評価額の占める割合を乗じて算出した金額であること,④上記譲渡した資産の課税価額である相続税評価額は,本件各借地権に係る土地の相続税評価額の100分の90の割合に相当する金額に,2分の1の割合を乗じた後の金額であることが,具体的な金額とともに記載されている。 したがって,原告らは,上記通知書の記載から,いかなる事実関係に基 づいていかなる法規を適用して本件各更正処分がされたかを十分に知り - 33 -得るものといえるから,本件各更正処分における理由提示は,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに処分の理由を名宛人に知らせて不服申立ての便宜を図るという行政手続法14条1項の趣旨に沿って十分な記載がされ,適法に行われているということができ,理由提示の不備による違法は認められない。そして,江東西税務署長が審 査請求の手続において,本件各更正処分における算定方式とは異なる算定方式を主張したことは,直ちに上記判断を左右するものではない。これに反する原告らの主張は,上記に判示したところに照らし,いずれも採用することができない。 4 本件各更正処分等の適法性について 原告らは,本件訴訟において,争点に関する部分のほかに本件各更正処分の根拠及び適法性を争っていないところ,前記1ないし3によれば,本件所得税等についての原告らの納付すべき税額は,別表1の「納付すべき税額」欄(⑮欄)記載のとおりであると認められ,本件各更正処分における原告らの納付すべき税額と同額 ころ,前記1ないし3によれば,本件所得税等についての原告らの納付すべき税額は,別表1の「納付すべき税額」欄(⑮欄)記載のとおりであると認められ,本件各更正処分における原告らの納付すべき税額と同額であることから,本件各更正処分は適法である。 そして,上記のとおり,本件各更正処分は適法であるところ,本件各更正処分により原告らが新たに納付すべきこととなった税額に基づいて計算した過少申告加算税の額は,別表1の「過少申告加算税の額」欄(⑯欄)記載のとおりであると認められ,本件各賦課決定処分における過少申告加算税の金額と同額であることから,本件各賦課決定処分は適法である。 5 結論よって,原告らの請求は,理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 鎌野真敬 - 34 - 裁判官 栗原志保 裁判官 佐藤秀海

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