平成20(行ク)23 文書提出命令申立て事件

裁判年月日・裁判所
平成21年1月13日 名古屋地方裁判所
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判決文本文13,413 文字)

平成20年(行ク)第23号文書提出命令申立て事件(基本事件・平成18年(行ウ)第80号政務調査費返還代位請求事件)決定主文相手方は,平成16年度分の「政務調査費報告書」と題する書面(丙第27号証の黒塗りのないもの)及び同書面に添付の領収書を,当裁判所に提出せよ。 理由 第1申立て主文同旨第2事案の概要 本件の基本事件は,名古屋市の住民である申立人らが原告となり,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,名古屋市長を被告として,名古屋市議会の会派である相手方が,名古屋市から交付を受けた平成16年度の政務調査費(議員1人当たり月額55万円)のうち,相手方が共通経費(議員1人当たり月額5万円)を除いて所属議員に交付した合計1億3950万円(議員1人当たり月額50万円。 以下「個人支給分」という。)から既に返還済みの450万円を控除した1億3500万円を不当に利得していると主張して,被告に対し,同金額に相当する不当利得金の返還を相手方に請求することを求める住民訴訟である。相手方は,基本事件において,被告を補助するために訴訟に参加している。 なお,本決定において引用する関連法令等の定めは,別紙「関連法令等」記載のとおりである(以下,平成20年名古屋市条例第1号による改正前の「名古屋市会政務調査費の交付に関する条例」を「本件条例」,「名古屋市会政務調査費の交付に関する規則」を「本件規則」,「名古屋市会政務調査費の使途基準及び収支報告書等の閲覧に関する規程」を「本件規程」という。)。 2(1) 一件記録によれば,平成16年度における相手方の政務調査費に係る処理は,次のとおりであったことが認められる。 ア相手方の財務委員長α(以下「α委員長」という。)は,本件規則6条1項の政務調査費の経理責任者を務めていたところ,毎月10日に名 方の政務調査費に係る処理は,次のとおりであったことが認められる。 ア相手方の財務委員長α(以下「α委員長」という。)は,本件規則6条1項の政務調査費の経理責任者を務めていたところ,毎月10日に名古屋市から月額55万円に所属議員数を乗じた金額の政務調査費の交付を受け,うち月額50万円に所属議員数を乗じた金員を個人支給分として現金で保管し,月額5万円に所属議員数を乗じた金員を共通経費分として預金口座(以下「本件預金口座」という。)に入金していた。 イα委員長は,所属議員から,必要事項を記入した「政務調査費報告書」と題する書面(以下,併せて「本件報告書」という。)及びこれに対応する領収書(以下,併せて「本件領収書」といい,本件報告書と併せて「本件各文書」という。)の提出を受け,本件各文書を基に,支出が政務調査費の使途基準に適合するか否かを検討し,同基準に適合すると判断したものについて,本件報告書の細目ごとの金額をパソコンに入力して集計した上で,所属議員に個人支給分(議員1人当たり月額50万円まで)を支給していた。平成16年度分において所属議員が本件報告書により報告した政務調査費の額は,年間を通じて集計すればいずれも600万円(1か月当たり50万円)を超えるものであったが,α委員長は,1か月当たり50万円を超える支出についても,政務調査費の支出としてパソコンに入力して集計した。なお,α委員長は,所属議員から提出された本件領収書を項目ごとにまとめて保管しており,現時点では,各領収書がどの議員から提出されたものであるのか,それ自体から特定することはできない。 ウ本件報告書は,別紙「政務調査費報告書」のとおり,「項目」欄に本件規程別表に定められた項目を列記し,「細目」欄に本件規程別表の「内容」欄に例示された費目等を列記した上,各細目に対応する きない。 ウ本件報告書は,別紙「政務調査費報告書」のとおり,「項目」欄に本件規程別表に定められた項目を列記し,「細目」欄に本件規程別表の「内容」欄に例示された費目等を列記した上,各細目に対応する領収書の枚数及び金額の記載欄と,各項目に対応する「主な調査内容(行先・会場等)」の記載欄とを設けた用紙に,所属議員が必要事項を記入したものである。本件報告書が上記のように用いられた文書であることからすると,「主な調査内容(行先・会場等)」欄の記載は,所属議員が,各領収書に対応する金員が政務調査費の使途基準に適合するものであることを説明するために,その調査内容の概要を記載したものと推認することができる。 エ相手方が実際に共通経費として金銭を支出した場合には,これを本件預金口座から支払い,α委員長がその領収書を保管した。 オα委員長は,本件報告書を基にパソコンに入力した上記データを集計し,これに,相手方が実際に共通経費として支出した金額を合算して,平成16年度の政務調査費として交付を受けた総額を1億5345万円(このうち,相手方が個人支給分として現金で保管したのが1億3950万円,共通経費として本件預金口座に入金したのが1395万円である。),支出総額を1億4738万4320円,残余金を606万5717円(なお,37円は預金利息)と算出した。相手方は,これに基づいて,平成16年度政務調査費収支報告書(甲1。以下「本件収支報告書」という。)を作成し,平成17年4月28日,これを名古屋市議会議長に提出するとともに,名古屋市に対し,同残余金を返還した。 カα委員長は,本件規則6条2項により調製・保管が義務付けられている会計帳簿を調製していなかった。 (2) 相手方は,基本事件において,平成16年度に名古屋市から交付を受けた政務調査費のうち個人支給分と 委員長は,本件規則6条2項により調製・保管が義務付けられている会計帳簿を調製していなかった。 (2) 相手方は,基本事件において,平成16年度に名古屋市から交付を受けた政務調査費のうち個人支給分として所属議員に支給した金員が正当に支出されたことを立証するとして,本件報告書中の所属議員が記載した部分のうち,何年何月分かを記入した部分及び領収書の枚数を記載した部分を除く部分をすべて黒塗りしたもの(同年4月分が18枚,同年5月分が20枚,同年6月分が20枚,同年7月分が18枚,同年8月分が18枚,同年9月分が19枚,同年10月分が17枚,同年11月分が19枚,同年12月分が20枚,平成17年1月分が18枚,同年2月分が20枚,同年3月分が20枚)を書証(丙27)として提出した。 本件は,申立人らが,相手方における平成16年度の政務調査費の個人支給分の支出に関して,支出の実態と本件収支報告書の記載とが異なっていること,相手方が政務調査費を政務調査活動以外に支出していることを立証するためであるとして,民訴法220条4号に基づき,相手方の所持する本件各文書について文書提出命令の申立てをしたものであり,相手方は,本件各文書が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(以下「自己利用文書」という。)に当たる上,本件申立ては「証明すべき事実」が特定されていない不適法な申立てであるとして争っている事案である。 当事者の主張(1) 申立人らア本件各文書が自己利用文書に当たらないこと(ア) 本件報告書は,相手方所属議員の政務調査費の支出について,財務委員長がその支出の正当性を判断するために作成されたものということができる。そして,相手方では政務調査費の支出についての会計帳簿を作成していないことと併せて見れば,相手方にお 費の支出について,財務委員長がその支出の正当性を判断するために作成されたものということができる。そして,相手方では政務調査費の支出についての会計帳簿を作成していないことと併せて見れば,相手方における政務調査費の支出の正当性を判断するための資料は,本件領収書のほかには本件報告書しか存しないことになる。 そうである以上,本件報告書は,本件領収書と共に,本件条例6条による議長の調査の対象となる文書というべきであって,会計帳簿と同様に会派の外部に提出することが予定されている文書に該当する。なお,本件報告書が議長の調査の対象となる文書に当たるか否かは,客観的に判断すべきであり,議長が本件報告書の存在を知っていたか否かは問題ではない。 (イ) 相手方は,本件各文書が外部に開示された場合には,政務調査活動が執行機関,他の会派等の干渉によって阻害されるおそれがある旨主張するが,およそ執行機関等が調査研究の内容に干渉するおそれはなく,これを推認させる事情も全く存しない。 なお,公文書の公開に関する名古屋市情報公開条例(平成12年名古屋市条例第65号)7条1項2号は,原則として,「法人その他の団体(国,独立行政法人等(中略),地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等又は個人に明らかに不利益を与えると認められるもの」について非公開にすることができると定めている。そうすると,仮に本件各文書が「公文書」に該当する場合であっても,会派に「明らかに」不利益を与えると「認められる」場合,すなわち,不利益発生の蓋然性が高いことが明らかな場合にのみ非公開とすることが許されるにすぎないから,相手方のように具体的根拠も示さず,「執行機関等が調査研究の内容に干渉 えると「認められる」場合,すなわち,不利益発生の蓋然性が高いことが明らかな場合にのみ非公開とすることが許されるにすぎないから,相手方のように具体的根拠も示さず,「執行機関等が調査研究の内容に干渉するおそれがある」と述べるだけでは,なおさら非公開が正当化されるものではない。 したがって,本件各文書が自己利用文書に当たらないことは明らかである。 イ本件申立ては「証明すべき事実」が特定されていること本件においては,本件収支報告書の記載が政務調査費の支出を正確に反映しているかどうかが争点となっているところ,その正確性についての評価は,本件収支報告書に記載のある金額が本件報告書の記載金額を合算したものとして特定できるか,という点が重要である。 また,本件報告書に記載された支出内容が政務調査目的に支出したものと評価されない場合にも,相手方には名古屋市に対する当該金額の返還義務が発生する。 したがって,上記事実関係を明らかにするために本件各文書を証拠として提出することが必要となっているのであり,申立人らが証明すべき事実として挙げる内容は,証明すべき事実の特定に欠けるものでないことが明らかである。 (2) 相手方の主張ア本件報告書が自己利用文書に当たること(ア) 本件各文書は,以下のとおり,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書に当たる。 a本件領収書について本件条例において,会派は議長に対し収支報告書を提出することが義務付けられているものの(本件条例5条1項),会計帳簿及び領収書は提出が義務付けられておらず,その調製,整理,保管が義務付けられているにすぎない(本件規則6条2項)。会計帳簿及び領収書の調製,整理,保管が義務付けられているのは,政務調査費の使途の適正を確保することにあると解されるが,そ ず,その調製,整理,保管が義務付けられているにすぎない(本件規則6条2項)。会計帳簿及び領収書の調製,整理,保管が義務付けられているのは,政務調査費の使途の適正を確保することにあると解されるが,それらの提出が義務付けられていないのは,会派が議会において独立性を有して自主的に活動すべき団体であり,前提として,政務調査費の適正な使用については原則として各会派の自律にゆだねるとともに,政務調査費を使用して行われる議員の調査研究に対する執行機関や他の会派等からの干渉を防止することにあるものと解される。 本件条例及び本件規則の規定及び趣旨からすれば,会計帳簿及び領収書は,専らこれを調製,整理,保管する各会派の内部にとどめて利用すべき文書であり,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書に当たるというべきである。 なお,本件条例6条に基づく議長の収支報告書の調査権は,政務調査費の支出についての会計帳簿及び領収書等に及ぶものとも解されるが,かかる調査は,議会の長である議長が必要と判断した場合に,例外的に議長限りで調べることができるにすぎないものと解されるから,議長の調査権があるとしても,会計帳簿及び領収書が,専ら会派の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であるという性質を左右するものではない。 b本件報告書について本件報告書は,地方自治法はもとより本件条例,本件規則にも規定はなく,相手方が内部的な取決めとして政務調査費の交付に際して所属議員に対して作成,提出を求めているにすぎないものである。また,その様式も相手方において独自に作成したものである。 相手方においては,相手方に支給された政務調査費を所属議員に交付するに際して,財務委員長が本件領収書と本件報告書を検討し,支出 いものである。また,その様式も相手方において独自に作成したものである。 相手方においては,相手方に支給された政務調査費を所属議員に交付するに際して,財務委員長が本件領収書と本件報告書を検討し,支出について疑問があるものについては,適宜当該議員から聞き取りを行うなどして,不適正な申請については撤回させている。また,提出された本件報告書は,相手方内部に保管されて外部の者に開示されることはない。 よって,本件報告書は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書というべきである。 (イ) 本件各文書が外部に開示されることによる相手方の不利益本件各文書が外部に開示された場合には,政務調査活動が執行機関,他の会派等の干渉によって阻害されるおそれがある。 (ウ) したがって,本件各文書は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示により所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる文書であるから,自己利用文書に当たる。 イ本件申立ては「証明すべき事実」が特定されていないこと文書提出命令の申立ては,「証明すべき事実」を明らかにして申し立てなければならない(民訴法221条1項4号)。 申立人らは,本件申立てにおいて,「証明すべき事実」として,相手方における平成16年度の政務調査費の個人支給分の支出に関して,支出の実態と本件収支報告書の記載とが異なっていること,相手方が政務調査費を政務調査活動以外に支出していることを挙げる。 しかし,申立人らは,個々の政務調査費の支出の違法性に関して,具体的事実を特定した主張はしていない。証拠により証明されるべき事実は政務調査費の支出の違法性に関する具体的事実であって,この具体的事実を何ら明らかにすることなく, 政務調査費の支出の違法性に関して,具体的事実を特定した主張はしていない。証拠により証明されるべき事実は政務調査費の支出の違法性に関する具体的事実であって,この具体的事実を何ら明らかにすることなく,漠然と「支出の実態と本件収支報告書の記載とが異なっていること」,「政務調査活動以外に支出していること」と述べるだけでは,「証明すべき事実」を特定したことにはならない。 第3当裁判所の判断 本件各文書が自己利用文書に当たるか否かについて(1) ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によってその文書の所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は自己利用文書に当たると解するのが相当である(最高裁平成11年(許)第2号同年11月12日第二小法廷決定・民集53巻8号1787頁等参照)。 以下,この見地に立って,本件各文書が,自己利用文書に該当するか否かについて検討する。 (2) 平成20年法律第69号による改正前の地方自治法100条は,政務調査費の交付につき,普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができ,この場合において,当該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならないものと規定した上(13項),「政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,当該政務調査 合において,当該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならないものと規定した上(13項),「政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする」ことを規定している(14項)。これらの規定による政務調査費の制度は,平成12年4月1日の「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」の施行により,地方公共団体の自己決定権や自己責任が拡大し,その議会の担う役割がますます重要なものとなってきていることにかんがみ,議会の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため,議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化し,併せて,その使途の透明性を確保しようとしたものである。 同条13項の委任を受けて,名古屋市は,本件条例を制定し,①会派の代表者は,前年度の政務調査費に係る収入及び支出についての収支報告書を毎年4月30日までに議長に提出しなければならない(5条1項,2項),②議長は,政務調査費の適正な運用を期するため,上記収支報告書が提出されたときは,必要に応じ調査を行うことができ(6条),同収支報告書を提出期限の日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならず(8条1項),③何人も,議長に対し収支報告書の閲覧を請求することができる(同条2項)ものと定めている。また,本件条例9条に基づいて制定された本件規則において,①議長は,本件条例5条1項の規定により提出された収支報告書の写しを市長に送付するものとし(5条),②会派は,政務調査費に関する経理責任者を置かなければならず,政務調査費の交付を受けた会派の経理責任者は,政務調査費の支出について会計帳簿を調製するとともに,領収書等の証拠書類を整理し,これらの ,②会派は,政務調査費に関する経理責任者を置かなければならず,政務調査費の交付を受けた会派の経理責任者は,政務調査費の支出について会計帳簿を調製するとともに,領収書等の証拠書類を整理し,これらの書類を当該政務調査費に係る収支報告書の提出期限の日から起算して5年を経過する日まで保管しなければならないものと定めている(6条1項,2項)。 これらの規定に照らせば,名古屋市において会派の経理責任者に対して会計帳簿の調製,領収書等の証拠書類の整理及び同各書類の5年間の保管を義務付けているのは,議長が,本件条例6条の政務調査費の適正な運用を期するための調査権限に基づき,政務調査費が適正に支出されたか否かを調査する目的で,収支報告書の内容が適正か否かを調査するに当たり,会派の経理責任者から会計帳簿及び領収書等の提出を受け,同各書類を基に収支報告書の内容の適正性を判断することが予定されているためであると解することができる。 また,地方公共団体の長は,予算の執行の適正を期するため,補助金,交付金等の交付を受けた者に対して,その状況を調査し,又は報告を徴する権限を有するところ(地方自治法221条2項),市長は,同権限に基づいて,政務調査費が適正に支出されたか否かを調査するため,議長から送付された収支報告書の写しを検討し,会派が調製・保管を義務付けられている会計帳簿及び領収書について調査することができるものと解される。 (3) これを本件について見るに,相手方においては,前記第2の2(1)のとおり,平成16年度の政務調査費について,経理責任者のα委員長が,所属議員から必要事項を記入した本件報告書及びこれに対応する本件領収書の提出を受け,本件各文書を基に,支出が政務調査費の使途基準に適合するか否かを検討し,同基準に適合すると判断したものについて,所属議員に個 ら必要事項を記入した本件報告書及びこれに対応する本件領収書の提出を受け,本件各文書を基に,支出が政務調査費の使途基準に適合するか否かを検討し,同基準に適合すると判断したものについて,所属議員に個人支給分(1人当たり月額50万円まで)を支給していたものの,調製・保管が義務付けられている会計帳簿を調製していなかったというのであり,このことからすると,相手方が平成16年度の本件収支報告書の内容の適正性を裏付ける書類として保管しているのは本件各文書のみであって,仮に,議長又は市長から本件収支報告書の内容を調査するため客観的な書類の提出を求められた場合には,本件各文書を提出するほかはなく(なお,本件領収書の保管状況に照らすと,本件領収書のみを提出したのでは本件収支報告書の内容の適正性を判断することは著しく困難である。),相手方が,議長又は市長に対して本件各文書を提出しなければ,事実上調査を拒否することに等しいこととなる。 そうすると,本件領収書は,地方自治法,本件条例及び本件規則の定めに従い議長又は市長から調査を受ける際に提出することが予定されているものであり,また,本件報告書は,本件条例及び本件規則の定めに従って作成されたものではないものの,本件の事実関係の下では,議長又は市長から調査を受ける際に提出することが予定されている会計帳簿に代わるものとして,議長又は市長に対して提出することが予定されているものと解するのが相当であるから,本件各文書は,いずれも専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていないものということはできない。 また,相手方は,本件各文書が外部に開示された場合には,議員の政務調査活動が執行機関,他の会派等の干渉によって阻害されるおそれがある旨主張するが,一件記録に照らしても,そのようなおそれがあ きない。 また,相手方は,本件各文書が外部に開示された場合には,議員の政務調査活動が執行機関,他の会派等の干渉によって阻害されるおそれがある旨主張するが,一件記録に照らしても,そのようなおそれがあるということはできない。加えて,平成20年名古屋市条例第1号による本件条例の改正により,会派の代表者は,議長に対して収支報告書を提出する際に,1件につき1万円以上の支出に係る領収書その他の当該支出の事実を証する書類の写しを添付することが義務付けられたのであり(改正後の5条1項),こうした改正の経緯に照らしても,本件領収書を提出すること自体が議員の政務調査活動を阻害することとなるものでないことが明らかである。さらに,本件報告書は,領収書等を基にその枚数,金額,主な調査内容が記載されたものであり,所属議員が支出した金員についてそれが政務調査費の使途基準に適合するものであることを説明するために作成されたものであることからすると,本件報告書を提出することについても,それが議員の政務調査活動を阻害するものとは認めることができない。なお,本件報告書の「主な調査内容(行先・会場等)」欄にどの程度の具体的内容が記載されているかは必ずしも明らかではないものの(当裁判所は,平成20年12月25日,本件報告書が自己利用文書に該当するかどうかの判断をするため必要があるとして,相手方に対し民訴法223条6項に基づく提示命令を発したが,相手方は,正当な理由なくその提示を拒否した。),相手方は所属議員の個人支給分が使途基準に従って適正に支出されたものであるとしてその内容を具体的に主張・立証しており,同欄の記載内容が,相手方の主張・立証内容を超える詳細なものとは考えられないこと,また,相手方においても同欄の記載部分を特定してそれが公になることにより議員の政務調査活動が阻害さ 主張・立証しており,同欄の記載内容が,相手方の主張・立証内容を超える詳細なものとは考えられないこと,また,相手方においても同欄の記載部分を特定してそれが公になることにより議員の政務調査活動が阻害されるという具体的な主張をしていないことなどに照らせば,「主な調査内容(行先・会場等)」欄の記載部分を開示することについても,それが議員の政務調査活動を阻害するものと認められないことは明らかである。 したがって,本件各文書は,自己利用文書に当たらない。 本件申立ては「証明すべき事実」が特定されているか否かについて相手方は,本件申立ては「証明すべき事実」の特定がされていない旨主張する。 しかし,申立人らが本件訴訟に先立ってした監査請求に対する監査結果において,名古屋市監査委員が「β党名古屋市議団の政務調査費の支給事務に関し,A議員に対する政務調査費の支給に至る経緯が曖昧であり,また,領収書が個人別に特定できず,会計帳簿が不備であったことなどから,会派としてのチェック機能が十分に働いていないことがうかがわれた。」との意見を述べていること(甲2)に加え,政務調査費の支出の適正性を裏付ける資料は相手方が保有するものに限られ,申立人ら自身はこれらを立証する手段を保有していないことなどに照らせば,本件申立てが模索的証明のためにされたものであると直ちにいうことはできず,本件申立てが「証明すべき事実」の特定が不十分で不適法なものであると認めることはできない。 以上によれば,本件文書提出命令申立ては,理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり決定する。 平成21年1月13日名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官前田郁勝裁判官廣達人裁判官瀨(別紙)関連法令等(1) 地方自治法(平成20年法律第69号に 成21年1月13日名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官前田郁勝裁判官廣達人裁判官瀨(別紙)関連法令等(1) 地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)100条13項普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる。この場合において,当該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならない。 14項前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。 (2) 名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号)平成20年名古屋市条例第1号による改正前現行条例のもの3条1項政務調査費は,月額550,03条1項(同左)00円に当該会派の所属議員の数を乗じて得た額を会派に対し交付する。 4条政務調査費は,議長が定める使途基4条(同左)準に従って使用するものとし,市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならない。 5条1項政務調査費の交付を受けた会派5条1項政務調査費の交付を受けた会派の代表者は,政務調査費に係る収入及び支出の代表者は,政務調査費に係る収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を,の報告書(以下「収支報告書」という。)を,別記様式により議長に提出しなければならな別記様式により議長に提出しなければならない。 い。この場合において,当該会派の代表者は,1件につき10,000円以上の支出に係る領収書その他の当該支出の事実を証する書類(以下「領収書等」という。)の写しを添 長に提出しなければならない。 い。この場合において,当該会派の代表者は,1件につき10,000円以上の支出に係る領収書その他の当該支出の事実を証する書類(以下「領収書等」という。)の写しを添付しなければならない。 2項収支報告書は,前年度の交付に係2項収支報告書及び領収書等の写しる政務調査費について,毎年4月30日まで(以下「収支報告書等」という。)は,前年度に提出しなければならない。 の交付に係る政務調査費について,毎年4月30日までに提出しなければならない。 6条議長は,政務調査費の適正な運用を6条議長は,政務調査費の適正な運用を期すため,前条の規定により収支報告書が提期すため,前条の規定により収支報告書等が出されたときは,必要に応じ調査を行うこと提出されたときは,必要に応じ調査を行うこができる。 とができる。 7条市長は,政務調査費の交付を受けた7条(同左)会派がその年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派がその年度において市政に関する調査研究に資するため必要な経費として支出した総額を控除して残余がある場合,当該残余の額に相当する額の政務調査費の返還を命ずることができる。 8条1項議長は,第5条第1項の規定に8条1項議長は,第5条第1項の規定により提出された収支報告書を,提出期限の日より提出された収支報告書等を,提出期限のから起算して5年を経過する日まで保存しな日から起算して5年を経過する日まで保存しければならない。 なければならない。 2項何人も,議長に対し,前項の収支2項何人も,議長に対し,前項の収支報告書の閲覧を請求することができる。 報告書等の閲覧を請求することができる。 9条この条例に定めるもののほか,政務9条(同左)調査費の交付に関し必要な事項は,規則で定める。 ( し,前項の収支報告書の閲覧を請求することができる。 報告書等の閲覧を請求することができる。 9条この条例に定めるもののほか,政務9条(同左)調査費の交付に関し必要な事項は,規則で定める。 (3) 名古屋市会政務調査費の交付に関する規則(平成13年名古屋市規則第11号)5条議長は,条例第5条第1項の規定により提出された収支報告書の写しを市長に送付するものとする。 6条1項会派は,政務調査費に関する経理責任者を置かなければならない。 2項政務調査費の交付を受けた会派の経理責任者は,政務調査費の支出について会計帳簿を調製するとともに,領収書等の証拠書類を整理し,これらの書類を当該政務調査費に係る収支報告書の提出期限の日から起算して5年を経過する日まで保管しなければならない。 (4) 名古屋市会政務調査費の使途基準及び収支報告書等の閲覧に関する規程(平成13年名古屋市会達第1号)2条条例第4条に規定する政務調査費の使途基準は,別表に掲げる項目ごとに概ね右欄に掲げるとおりとする。 別表項目内容調査費本市の事務及び地方行財政に関する調査研究活動並びに調査委託に要する経費(調査委託費,交通費,宿泊費等)研修費調査研究活動のために行う研修会・講演会の実施に必要な経費並びに他団体が開催する研修会・講演会等への所属議員及び会派の雇用する職員の参加に要する経費(会場費・機材借り上げ費,講師謝金,会費,交通費,宿泊費等)会議費調査研究活動のために行う各種会議に要する経費(会場費・機材借り上げ費,資料印刷費等)資料作成費調査研究活動のために必要な資料の作成に要する経費(印刷・製本代,原稿料等)資料購入費調査研究活動のために必要な図書・資料等の購入に要する経費(書籍購入代,新聞雑誌購読料等)広報費調査研究活動,議 究活動のために必要な資料の作成に要する経費(印刷・製本代,原稿料等)資料購入費調査研究活動のために必要な図書・資料等の購入に要する経費(書籍購入代,新聞雑誌購読料等)広報費調査研究活動,議会活動及び市政に関する政策等の広報活動に要する経費(広報紙・報告書等印刷費,会場費,送料,交通費等)事務費調査研究活動に係る事務遂行に必要な経費(事務用品・備品購入費,通信費等)人件費調査研究活動を補助する職員(臨時職員を含む。)を雇用する経費(給料,手当,社会保険料,賃金等)注()内は例示

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