平成12(ワ)39 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月14日 前橋地方裁判所 沼田支部
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判決文本文12,961 文字)

平成14年3月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成12年(ワ)第39号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成14年1月24日判決 主文 1(1) 被告は,原告aに対し,金1476万1500円及びこれに対する平成12年7月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告aのその余の請求を棄却する。 2 被告は,原告フタバ殖産有限会社に対し,金1276万1500円及びこれに対する平成12年7月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決の第1項(1)及び第2項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 【略称】以下,原告フタバ殖産有限会社を「原告会社」と,別紙物件目録記載1ないし3の土地を「本件土地」と,同目録記載4の建物を「本件建物」とそれぞれ略称する。 第1 請求 1 被告は,原告aに対し,金2276万1500円及びこれに対する平成12年7月12日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 主文第2項と同旨。 第2 事案の概要 1 本件は,原告らが,被告から建物建築に支障がない旨の説明を受けて本件土地を購入して同地上に本件建物を建築したが,本件土地が沈下して本件建物に不具合が発生したことなどを主張して,不法行為,債務不履行あるいは瑕疵担保に基づき,被告に対して補修費用等の損害賠償金及び訴状送達日の翌日以降の民法所定年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。 2 争いのない事実等(争いのない事実以外は認定証拠を括弧内に掲記)(1) 原告aは,平成3年まで本件土地の隣地に店舗兼住宅を有して鱒の甘露煮の製造販売業を営み居住していたところ,被告において同 。 2 争いのない事実等(争いのない事実以外は認定証拠を括弧内に掲記)(1) 原告aは,平成3年まで本件土地の隣地に店舗兼住宅を有して鱒の甘露煮の製造販売業を営み居住していたところ,被告において同所に市道を新設することになり,被告から本件土地をその代替地として提供する旨の申し入れを受けた。 そして,平成3年3月15日,原告aは別紙物件目録記載1及び2の土地を代金1630万0997円で,原告会社(当時は株式会社)は同目録記載3の土地を代金815万0085円で,いずれも被告から買い受けた(以下「本件売買」という。)。 (2) 原告らは,同年11月15日,本件土地上に本件建物を新築した(原告らの持分は各2分の1)(甲4)。 (3) 平成11年10月14日に実施された測量によって,本件土地には最大で21㎝の沈下があることが確認された。 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,①被告の責任原因(債務不履行,不法行為,瑕疵担保),②損害の範囲・額である。 (1) 争点①(責任原因)について【原告らの主張】ア被告職員の調査・説明の経緯等原告aは,被告から本件土地を代替地として提供する旨の申し入れを受けた際,本件土地が以前に沼田城のお堀の一部で,ゴミが投棄されていたこともあったため,被告に地盤調査を申し入れてこれが実施された。被告都市計画課職員b係長,c主任,d技師の調査結果の説明によると,本件土地はその上に家屋を建築するのに十分強固なものであるとのことであり,原告らはこれを信じて本件土地を購入した。 なお,地盤調査は少なくとも3点以上の地点を採って実施すべきであり,まして本件土地はゴミ等による埋立地であることを被告は知っていたのであるから,可能な限り多数の地点の調査を採用すべきであるのに,被告は1地点しか調査しなかった。 イ債務不履行責 実施すべきであり,まして本件土地はゴミ等による埋立地であることを被告は知っていたのであるから,可能な限り多数の地点の調査を採用すべきであるのに,被告は1地点しか調査しなかった。 イ債務不履行責任被告は,本件土地が建物建築に支障がない旨の説明をして本件売買を実行した。 したがって,被告は原告らに本件土地上に建築された本件建物に支障が生じないようにする債務があるというべきところ,支障を防止しないどころか支障の発生する度に小手先の弥縫策を取るばかりであった。 被告は,原告らに対し,民法415条により債務不履行責任を負う。 ウ不法行為責任被告は,本件土地の来歴や調査により将来本件土地の地盤沈下があることを予想し又は予想し得たのに,道路敷地の取得を急ぐ余り,原告らに対して建物建築に支障がない旨の説明をした上で,本件売買を敢行して原告らに損害を与えた。 したがって,被告は,民法709条,715条(被告職員が事業執行に当たって原告に不法行為をなした)に基づき,損害賠償責任を負う。 エ瑕疵担保責任本件土地は地盤沈下が進行しつつあるが,これは宅地として重大な瑕疵であり,被告は原告らに対し民法570条により瑕疵担保責任を負う。 【被告の主張】ア被告職員の調査・説明の経緯等平成2年9月28日の調査は,当初,平板載荷試験2か所と掘削調査1か所を予定していたが,原告aの合意の下で地耐力調査1か所と地表面から2m20㎝の試掘調査を行って終了した。この経緯を詳述すると,上記調査が行われた段階で,その結果につき原告aから確認を得た上で,被告職員eが「もう1か所調査を行いましょうか」と問い掛けたところ,原告aは「試掘の結果を見てもゴミなど出てこないし,もうこれ以上調査はいいですよ」と答えたことから調査を終了することとした。 上記調査は,原告aの要 か所調査を行いましょうか」と問い掛けたところ,原告aは「試掘の結果を見てもゴミなど出てこないし,もうこれ以上調査はいいですよ」と答えたことから調査を終了することとした。 上記調査は,原告aの要請を受けて本件土地が堀の埋立地であることを前提に,住宅建築用地として不適でないか及び通常の宅地単価で売買することの妥当性を判断するために行ったものである。当時,売買に関与した職員に建築技師はいないから,被告職員に建物建築について明確に保証できるだけの判断能力はなく,原告らが主張するような言動を採るとは考えられない。当時の担当者は「建物建築は可能ですが,基礎構造の問題もあるので建物を建築するに当たっては施工業者等に相談して下さい」という趣旨の説明をしたに止まる。 イ債務不履行責任建物に支障が生じないようにする債務は,施工業者(独立して設計監理契約が結ばれている場合は建築士)が本来的に負う義務であり(建築士法18条2項,建築基準法19条2項,建築基準法施行令38条1項),施工業者には,設計するに当たって現地を十分に調査し,敷地上に完全な建築物が建築されるように基礎構造を十分に検討して設計すべき義務がある。このような建築設計の専門家たる建築士が負う基本的かつ重要な債務内容を本件売買において被告が保証したというのは,意思表示の合理的解釈として無理があるし,本件における被告職員の調査報告によって建築士の義務が消滅して被告に移転する理由は見出しがたい。 本件では埋立地であるという事実は明らかである以上,それを前提として建築士の立場で調査,構造設計する義務が施工業者にあったはずである。敷地の売主との売買の経緯がどうであれ,建築士は地盤沈下によって欠陥が生ずるような設計,施工をしてはならないのである。 そして,施主である原告自身の判断による設計の中でも 工業者にあったはずである。敷地の売主との売買の経緯がどうであれ,建築士は地盤沈下によって欠陥が生ずるような設計,施工をしてはならないのである。 そして,施主である原告自身の判断による設計の中でも,特に重量のある業務用冷凍庫の設置に当たってはベタ基礎を施しており,その部分には沈下が見られない。このことは,建物全体についても冷凍庫荷重部分と同様の地盤調査と基礎構造の検討に基づいた施工をしていれば地盤沈下の発生を防止できたということを意味する。本件建物に生じた欠陥は,地盤沈下そのものが原因というよりは,建物の設計,施工に不備があったために生じたものである。 また,地盤沈下は,飽くまでも地盤に適合しない建築方法を採ったこと(埋立地という地盤の性質に配慮した建築がされなかったこと)によって発生したものであるから,被告職員の説明と地盤沈下という現象が発生したこととの間に事実的因果関係はない。また,施工業者の建築法規違反行為という特別事情を被告が予見することは困難であるから,相当因果関係が認められない。 ウ不法行為責任上記イのとおり,施工業者には,埋立地である本件土地に適合した建築方法を選択する義務,すなわち,建物建築による地盤沈下を回避する義務が法令上課されている。被告が地盤を売買する際に,施工業者による法令違反行為まで考慮に入れて地盤沈下を回避する義務があると考えるのには無理がある(信頼の原則)。仮に,百歩譲って被告による調査方法に不備があり,また,調査結果の説明に不十分な点があったとしても,それをもって地盤沈下の結果発生についての過失行為とするのは困難である(また,被告職員の説明と地盤沈下との間に因果関係がないことは上記イと同様である。)。 エ瑕疵担保責任本件土地において地盤沈下の原因となっている地盤の性質,言い換えれば沼田城の のは困難である(また,被告職員の説明と地盤沈下との間に因果関係がないことは上記イと同様である。)。 エ瑕疵担保責任本件土地において地盤沈下の原因となっている地盤の性質,言い換えれば沼田城のお堀の埋立地であることは契約締結時に明らかになっていたから,「隠レタル」瑕疵とはいえない。少なくとも買主が取引上一般に要求される程度の注意をしても発見できないような瑕疵ではない。 (2) 争点②(損害の範囲・額)について【原告らの主張】ア原告らが既に補修工事に要した費用は,92万3000円である。 イ現状のまま本件建物で営業・居住することは危険であるため,基礎を改めて補修・強化しなければならないところ,引越費用や仮店舗建築費を含めてこれに要する費用は2460万円である。 ウ原告a及びその家族は本件建物に居住して以来,建物自体の揺れ,建具の不具合等によって睡眠不足になるなど日常的に肉体的・精神的安定を害され,大きな精神的打撃を受けた。また,被告は,地盤沈下とこれによる建物支障が明らかになった後でも「ゴミ捨場と知って買ったaさんが悪い」,「住み方が悪い」,「斎藤林業の基礎工事が悪い」,「建物は沈んで当たり前」,「(建物が)あと10年もてばいいでしょ」等と責任回避の発言や侮辱的発言を繰り返し,あるいは,原告側の調査等の要請に対してもこれを長期間無視ないし放置した。このような被告職員の対応によって原告aは非常に大きな精神的打撃を受けた。 これを慰謝するのには1000万円を下らない。 【被告の主張】損害及び損害額に関する原告らの主張は,いずれも争う。特に,被告職員の発言内容及び「無視ないし放置した」との主張は否認する。 第3 争点に対する判断 1 本件経過に関する事実認定前記争いのない事実等,甲6,8,10,12~15,乙4~6(書証番号に枝 ,被告職員の発言内容及び「無視ないし放置した」との主張は否認する。 第3 争点に対する判断 1 本件経過に関する事実認定前記争いのない事実等,甲6,8,10,12~15,乙4~6(書証番号に枝番があるものは,枝番の全てを含む。),証人f,同g,同h,同b及び同iの各証言並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 本件売買の経過ア被告は,昭和63年から沼田都市計画道路3・3・1環状線事業の用地取得作業に取り組んできた。他方,原告a(原告会社)は,かねてより本件土地の隣地に店舗兼住宅を有して鱒の甘露煮の製造販売業を営んでいたが,同土地に上記環状線が建設される見通しとなったため,被告職員との間で,上記事業用地の買収交渉を持つこととなった。 イそして,平成2年7月,上記交渉において原告aから,現在の家と同様の建物を建築するための代替地を取得したい旨の希望が示されたため,その後の同年8月下旬,被告職員から本件土地が代替地として提案された。その際,原告aは,本件土地は埋立地(ゴミの投棄場所)ではないかとの疑問を指摘して調査を要求した。 これを受けて被告職員が調査した結果,本件土地がかつて沼田城の堀であったことが判明したため,その旨を原告aに伝えると,原告aから,宅地として使用が可能かどうか調べてほしい旨の要求が出され,被告職員はこれに応じて地盤調査をすることを約束した。 なお,被告は,このころまでに,本件土地が沼田城の堀(幅23.5m,深さ9.1m)の埋立地であることのほか,埋立ての時期,主体,方法等につき明確な資料・文献はないものの,近隣住民からの聴取によって,雑材料等で埋め戻しがされたのではないかとの判断をするに至っていた(乙5中の平成2年10月付け建設部都市計画課作成の地耐力試験結果報告書の「1.目的」参照) はないものの,近隣住民からの聴取によって,雑材料等で埋め戻しがされたのではないかとの判断をするに至っていた(乙5中の平成2年10月付け建設部都市計画課作成の地耐力試験結果報告書の「1.目的」参照)。 ウ平成2年9月28日,被告職員によって本件土地の地盤調査(地耐力調査1か所,地表面から2m20㎝の試掘調査1か所)が行われ,同年10月9日及び15日,被告職員から上記調査結果が原告aに説明された(事務職のみでなく技師が同行した。)。その説明内容は,建物建築に必要な地耐力は㎡当たり3tであるが,本件土地の地耐力は㎡当たり8tであり,建物建築に不適な土地ではないというものであった。 その後,原告a及び原告会社は,本件土地を代替地として購入することに応じ,平成3年3月15日,前記争いのない事実等(1)のとおり,本件売買の成立に至った。 (2) 本件建物建築の経過ア原告aは,平成3年3月ころ,有限会社斎藤林業の従業員(以下単に「斎藤林業」という。)に対し,被告職員の上記(1)ウの説明を踏まえて,沼田市による地盤調査の結果,本件土地の地耐力は8tであった旨を話して,本件建物の建築を依頼した。そして,斎藤林業から建築確認申請代理を依頼された植栗設計事務所のhは,同年5月,本件建物の建築確認を得た。 その後,原告a(ないし原告会社)と斎藤林業の間で,本件建物建築の請負契約が締結され,同年11月15日までに本件建物が完成した(その保存登記は,原告a,原告会社の持分各2分の1の共有登記とされている。)。 イなお,この間,斎藤林業あるいはhによって,本件土地の地盤調査が改めて行われたことはなかった。 (3) 本件土地の地盤沈下が生じた後の経緯ア本件建物の完成後間もなく,原告a及びその家族は,畳の揺れや建具の隙間などに悩まされるようになり,その都度斎 地盤調査が改めて行われたことはなかった。 (3) 本件土地の地盤沈下が生じた後の経緯ア本件建物の完成後間もなく,原告a及びその家族は,畳の揺れや建具の隙間などに悩まされるようになり,その都度斎藤林業に苦情を言い,室内建具の調整等の補修が施された。そして,平成8年10月,こうした本件建物の異常の原因を調査するため,斎藤林業が本件建物内の床下を見ると,地盤が沈み,束が浮いた状態にあることが判明し,束と束石との間に楔を入れる等の応急措置が行われた。 イ平成8年10月7日,原告aが被告職員に上記アの経過を説明したところ,その翌日,被告職員が本件建物を訪れ,束石の埋没等の異変を確認した。また,同月21日,被告職員及び斎藤林業らの立会いの下で,更に現地調査がされ,その際にも,束と束石との間に隙間があることが確認された。 原告aは,この頃から被告に責任負担の要求を出していたが,被告側は,建築上の問題の可能性を指摘して被告に責任があるか否かの判断ができないことや,今後とも詳細な調査が必要であることを主張して補償(賠償)の可否・内容について明らかにすることはなく,その後も度々交渉が持たれたものの,特に進展がないまま推移した(この間,被告が提供したU字溝の蓋で束の据付け部分を補強した上で高低差の調整が可能なプラスチック製の束の設置がされたが,沈下が進み,本件建物の不具合が収まることはなかった。)。 上記交渉には斎藤林業のほか,hが加わり,主に両者が本件建物の補修方法に関する検討を進めていた。 ウこうした中,平成11年9月に斎藤林業とhは本件土地を測量した上で地盤沈下が進行していることを確認して被告職員に伝えたところ,被告職員がより正確な測量を行いたい旨を申し出たため,同年10月14日,被告職員,斎藤林業,hらの立会の下で,本件土地及び本件建物の測 で地盤沈下が進行していることを確認して被告職員に伝えたところ,被告職員がより正確な測量を行いたい旨を申し出たため,同年10月14日,被告職員,斎藤林業,hらの立会の下で,本件土地及び本件建物の測量調査が再度行われることとなった。この際には,本件建物の南西角を基準として,その北西に1.3㎝,東南に9.3㎝,東北に21.0㎝の高低差が生じている(本件建物が東北方向に沈下している)ことが測定され,本件建物外のブロック塀にひび割れがあり,本件建物内の柱と襖や障子等とに隙間が多数あり,内壁にもひび割れが発生している様子が確認された(甲8)。 エこうした測量結果を踏まえて,斎藤林業は被告に対して本件土地の地盤調査を行うよう依頼したが,被告がこれに応じなかったため,独自に自ら千代田工営株式会社(地質調査業者。以下「千代田工営」という。)に地盤調査を依頼し,同社から,本件土地の表層部が間隙比の大きなゴミの層であることが沈下に大きく影響しており,沈下は将来も進行し,終局最大沈下量は17㎝と推定される旨の報告を得た(乙4中の千代田工営作成の「a邸地盤調査結果からの一考察」参照)。 そこで,本件建物の補修方法の検討を進めていたhは,同年11月10日,不同沈下の進行が止まっている(非常に少ない)場合の補修方法として本件建物をジャッキアップして基礎と土台との隙間をモルタル等で充填し,床下・基礎外周部を土間コンクリートで補強する案(A案)とともに,不同沈下が進行中である場合の補修方法として本件建物をジャッキアップして移動させ,①杭打ち地業(PC杭)とベタ基礎とする案(B1案),②地盤改良(不良土の入替え)とベタ基礎とする案(B2案)を被告に提示して,斎藤林業を交えて補修方法を協議した(乙4中の平成11年11月10日付けh作成のa様店舗併用住宅補修計画案参照) (B1案),②地盤改良(不良土の入替え)とベタ基礎とする案(B2案)を被告に提示して,斎藤林業を交えて補修方法を協議した(乙4中の平成11年11月10日付けh作成のa様店舗併用住宅補修計画案参照)。この際,被告職員は,上記A案によれば,本件建物に原告らが居住したまま補修ができるので補償費用の負担が少なく,単価が安いこと等を考慮して,A案による見積りを斎藤林業に依頼して,更に協議を進めることとした。 しかし,斎藤林業は,上記A案では沈下が進行中の本件土地の補修方法として不十分であり安全性が確保できないと考え,同年12月24日,上記B1案による見積書(甲6-見積額2460万円)を作成して被告に提示したところ,被告職員は,上記依頼と異なる見積り内容であったことから,これを前提とする交渉に難色を示した。 オ斎藤林業から地盤調査の依頼を受けた千代田工営は平成12年2月15日にも本件土地の地盤調査を実施しており,その調査結果においては,本件土地は表層部3~4mが礫分やゴミを含む盛土層で,粗大ゴミは含んでいないものの全体に間隙が多く締まり具合が不良であること,盛土層下部は50~100㎏自沈を示す粘性土層が続き,層厚や軟弱度にばらつきがあること,本件建物につき杭基礎等による地盤補強策の採用が必要であることが指摘された(乙4中の平成12年2月15日付け千代田工営作成の報告書参照)。 上記報告書等は斎藤林業から被告職員に交付されたが,被告側は依然としてA案による補修方法に固執する態度を採り続けた。その後の同年5月23日,被告職員は,補償金額として422万1000円(本件売買前に未然に地盤改良工事を行っていたとすれば要したであろう費用として被告が算出した額)を提示したが,原告らの了承は得られなかった。 2 争点①(責任原因)について(1) 上記1( 000円(本件売買前に未然に地盤改良工事を行っていたとすれば要したであろう費用として被告が算出した額)を提示したが,原告らの了承は得られなかった。 2 争点①(責任原因)について(1) 上記1(1)認定のとおり,被告職員は,原告aから本件土地が埋立地(ゴミの投棄場所)ではないかとの疑問を指摘され,調査をした結果,本件土地がかつて沼田城の堀であり,その堀の容積も幅23.5m,深さ9.1mという規模の大きなものであったこと,その埋立てには雑材料等が用いられた可能性があることを把握していたことからすれば,本件土地の表層部にはゴミや雑材等が埋設されていることを認識し,将来,本件土地の地盤沈下等の影響によって宅地としての利用が困難になり得ることを予見することは十分に可能であったと認められる。そして,本件土地の地盤の埋設物の存否・内容やこれが建物建築に与える影響の有無等は,原告らが本件土地を宅地として購入するか否かの意思決定をするに当たって極めて重要な事柄であることは疑いを容れる余地がないから,被告が本件土地を宅地として売却するに際しては,予め地盤の地質調査を十分に行い,その調査結果を適切に買主である原告らに説明すべき信義則上の義務があったというべきである。 しかしながら,被告職員は,本件土地の1か所のみの地耐力調査から地耐力㎡当たり8tとの結論を出し,わずか1か所の試掘調査しか実施せず,こうした調査では事前に把握していた本件土地に関する懸念を払拭するのに十分なものとは到底認められないにもかかわらず,原告aに対しては,本件土地の地耐力が㎡当たり8tであり,建物建築に不適な土地ではない旨を説明しているのであるから,被告職員には上記調査・説明義務を怠った債務不履行(ないし不法行為上の過失)があったといわなければならない。 そして,上記調査・説明 あり,建物建築に不適な土地ではない旨を説明しているのであるから,被告職員には上記調査・説明義務を怠った債務不履行(ないし不法行為上の過失)があったといわなければならない。 そして,上記調査・説明は被告の履行補助者ないし被用者の立場にある被告職員が行ったものであるから,被告は,原告らに対し,債務不履行ないし不法行為(使用者責任)に基づき,これによって生じた損害を賠償する義務がある。 (2) これに対し,被告は,前記第2・3(1)【被告の主張】アのとおり,原告aが1か所のみの調査で終了することを了承する趣旨の発言をしたことや,調査結果の説明時に被告職員が「施工業者等に相談して下さい」旨を述べたことをもって被告職員に義務違反がなかったかのような主張をしている。 しかし,被告側の用地交渉記録簿(乙4),交渉経過を記した原告aのメモ(甲15)のいずれにもこれに関連する記載はなく,上記主張は客観的な裏付けを全く欠くものである。また,この点をひとまずおいて,被告提出のe作成の陳述書(乙8)に現れた経過を前提に上記主張に係る原告aの調査時の言動を検討してみても,原告aが地盤調査や建築の知識に乏しい素人であり,当日の調査に立ち会った時間もごく僅かであること,被告が指摘する原告aの発言は,午後6時頃の薄暗い中で作業を続ける被告職員から「もっと調査しましょうか」と問われて出たものにすぎないことなどを考慮すれば,原告aが当日の調査内容・結果を十分に理解した上で調査終了を了解したものとは到底認め難い。さらに,仮に被告職員が調査結果の説明に当たって「施工業者等に相談して下さい」旨の留保を付していたとしても,その内容は極めて抽象的で,原告aが本件土地上に従前と同じ建物を建築する上でいかなる配慮が必要かを具体的に明示するものではなく,原告aが本件土地を購入するか否 て下さい」旨の留保を付していたとしても,その内容は極めて抽象的で,原告aが本件土地上に従前と同じ建物を建築する上でいかなる配慮が必要かを具体的に明示するものではなく,原告aが本件土地を購入するか否かの意思決定をするに当たって有益な説明であるとは言い難いから,これによって説明義務が尽くされたとみることもできない。 以上のとおり,いずれにしても,この点に関する被告の主張を採用することはできない。 (3) さらに,被告は,本件建物の施工業者である斎藤林業等に,本件土地に適合した建築方法を選択して地盤沈下を回避する義務を怠った過失があるとして,施工業者等によるこうした義務の履行を信頼した被告職員には過失がない,あるいは,被告職員の債務不履行(過失)と損害発生との間の因果関係がない旨の主張をしている。 しかしながら,被告職員が負うべき調査・説明義務は上記(1)に説示したとおりであり,この義務の内容が,本件建物の施工業者等の被告以外の者が負うべき義務の存否・内容によって左右されることはない。仮に施工業者等に何らかの債務不履行(過失)があれば,これと被告職員の債務不履行(過失)とが競合し,原告らとの関係では,それぞれが原告らが被った損害の全額について債務不履行あるいは不法行為に基づく損害賠償義務を負うことになるにすぎない(これら両債務は,本件土地の地盤沈下(及びこれに起因する本件建物の不具合)という不可分一個の損害を填補するものであるから,不真正連帯債務の関係に立つことになる。)。 次に,被告が指摘する因果関係の点をみると,被告職員が本件土地の調査を尽くし,その調査結果を適切に説明すれば,原告らは本件土地を代替地として取得することを拒み,あるいはこれを取得するとしても,一般的な工法による本件建物の建築を回避することによって本件土地の地盤沈下から し,その調査結果を適切に説明すれば,原告らは本件土地を代替地として取得することを拒み,あるいはこれを取得するとしても,一般的な工法による本件建物の建築を回避することによって本件土地の地盤沈下から生ずる損害を免れることができたことは明らかであるから,施工業者等の債務不履行(過失)の有無にかかわらず,被告職員の債務不履行(過失)と損害との間の因果関係の存在を容易に肯定することができる。 3 争点②(損害の範囲・額)について(1) 本件土地・本件建物の補修費用についてア甲5によれば,原告らは,本件建物建築後,室内建具の調整や束の調整,本件土地の地盤調査等に合計92万3000円を要したことが認められる。 イそして,上記1(3)に認定したとおり,本件土地はなお沈下が進行中であるところ,斎藤林業が同エのB1案による補修方法を提案するのみならず,千代田工営もその報告書中で杭基礎等による地盤補強策の採用の必要性を指摘していることに照らすと,本件建物の補修は上記B1案による必要があるということができる(他方,被告職員は,交渉の中でA案が妥当であるかのような見解を示しているが(乙4中の平成11年11月11日の用地交渉記録簿参照),その記載を見る限り単に被告が負担すべき費用を減少させる意図に出たものにすぎず,本件建物の補修の必要性を真摯に検討した結果とは認められない。)。 原告らは上記補修の費用として2460万円を請求するが,その根拠とする見積書に格別不合理な点は見当たらず(甲6-上記1(3)エで斎藤林業が被告に提示した見積書でB1案による見積りがされているが,その内容に対する被告側の具体的な主張立証は全くない。),これと甲13,14,証人g及び同hの各証言を総合すれば,原告らの上記請求額は,補修費用額として適正なものと認めることができる。 ウそ が,その内容に対する被告側の具体的な主張立証は全くない。),これと甲13,14,証人g及び同hの各証言を総合すれば,原告らの上記請求額は,補修費用額として適正なものと認めることができる。 ウそして,上記ア,イの各費用(合計2552万3000円)は,上記2(3)に説示したとおり,被告の上記債務不履行(過失)と相当因果関係のある損害ということができるところ,本件土地は本件建物の敷地として不可分一体的に利用されており,本件建物が原告aと原告会社との持分各2分の1の共有に属することに照らすと,原告aと原告会社は,その2分の1に当たる損害賠償債権(各1276万1500円)をそれぞれ取得するものと考えるのが相当である。 (2) 被告aの慰謝料について上記1に認定したところによれば,本件建物は原告a及びその家族の住居と営業の拠点を兼ねており,原告aが本件建物の揺れ等に日常的に悩まされ続けたことは想像に難くなく,その期間も,本件建物完成(平成3年11月)から本件口頭弁論終結(平成14年1月)までで10年以上(被告との交渉を開始した平成8年10月からでも5年以上)の長期間に及んでいる。この間,被告は,自らの責任の一部を認めるかのような素振りをみせる一方で,施工業者等の落ち度を指摘して,地盤の再調査や補修方法の検討を施工業者等に委ねるばかりで自ら積極的な施策を講じた形跡が乏しく,上記(1)イで説示したように,施工業者等から提示された補修方法案について,本件建物の補修の必要性を真摯に検討して交渉に臨んでいたとは言い難い。こうした本件建物の状況や交渉経過等によって原告aが強いられた精神的苦痛を軽視することはできないが,他方で,上記(1)の補修費用全額が賠償されることによってその精神的苦痛も相当程度まで慰謝されるものと考えられること,その他本件に現れた諸 って原告aが強いられた精神的苦痛を軽視することはできないが,他方で,上記(1)の補修費用全額が賠償されることによってその精神的苦痛も相当程度まで慰謝されるものと考えられること,その他本件に現れた諸事情を斟酌すると,その慰謝料は200万円とするのが相当である。 第4 結論以上によれば,原告aの請求は1476万1500円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成12年7月12日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告会社の請求は全部理由がある。 よって,原告aの本訴請求を上記限度で認容し,その余は失当として棄却し,原告会社の本訴請求を全部認容し,訴訟費用については,前記第3・1(3)に認定した交渉経過や本件における双方の主張内容等にかんがみて,民訴法64条ただし書,61条を適用して全部を被告に負担させることとして,主文のとおり判決する。 前橋地方裁判所沼田支部裁判官丹羽敏彦物件目録(土地) 1 沼田市j町字kl番m原野 125㎡ 2 沼田市j町字kl番n原野 71㎡ 3 沼田市j町字kl番o原野 98㎡(建物) 4 沼田市j町字kl番地m,l番地n,l番地o家屋番号 l番m種類居宅店舗木造瓦葺2階建床面積 1階 159.82㎡2階  37.26㎡

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