平成28(ワ)42833等 特許権侵害差止等請求事件,特許権侵害差止請求事件,特許権侵害に基づく損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年3月7日 東京地方裁判所
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判決文本文232,300 文字)

平成31年3月7日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第42833号特許権侵害差止等請求事件(第1事件)平成29年(ワ)第21803号特許権侵害差止請求事件(第2事件)平成30年(ワ)第27979号特許権侵害に基づく損害賠償請求事件(第3事件) 口頭弁論終結日平成31年3月1日判決 別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告ソニーは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジを製造し,販 売し,輸出し又は販売の申出をしてはならない。 2 被告SSMMは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジを製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 3 被告SSMSは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジを販売し,輸出し又は販売の申出をしてはならない。 4 被告らは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジ及びその半製品を廃棄せよ。 5 被告ソニー及び被告SSMMは,原告に対し,連帯して1億8294万3933円,及びうち445万4827円に対する平成28年1月1日から,うち2855万5390円に対する平成28年4月1日から,うち1 780万2988円に対する平成28年7月1日から,うち2446万1129円に対する平成28年10月1日から,うち5973万8802円に対する平成29年1月1日から,うち4793万0797円に対する平成29年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告らは,原告に対し,連帯して1億8837万4432円,及びうち 5638万8960円に対する平成29年7月1日から,うち5864万 9209円に対する平成29年10月1日から,うち3045万1016円に対する平 億8837万4432円,及びうち 5638万8960円に対する平成29年7月1日から,うち5864万 9209円に対する平成29年10月1日から,うち3045万1016円に対する平成30年1月1日から,うち2481万0209円に対する平成30年4月1日から,うち1807万5038円に対する平成30年6月22日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告ソニー及び被告SSMMは,原告に対し,連帯して17億2986 万2240円,及びうち5530万4250円に対する平成28年1月1日から,うち2億7423万0205円に対する平成28年4月1日から,うち2億3802万2834円に対する平成28年7月1日から,うち2億1661万3128円に対する平成28年10月1日から,うち3億7141万0003円に対する平成29年1月1日から,うち5億7428 万1820円に対する平成29年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告らは,原告に対し,連帯して29億5481万3537円,及びうち7億7782万2332円に対する平成29年7月1日から,うち6億4343万2513円に対する平成29年10月1日から,うち5億53 88万9408円に対する平成30年1月1日から,うち7億0306万3286円に対する平成30年4月1日から,うち2億7505万4635円に対する平成30年7月1日から,うち155万1363円に対する平成30年10月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 原告のその余の請求を棄却する。 10 訴訟費用は,第1事件ないし第3事件を通じてこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 11 この判決は,第5項 え。 9 原告のその余の請求を棄却する。 10 訴訟費用は,第1事件ないし第3事件を通じてこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 11 この判決は,第5項ないし第8項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 (第1事件・第2事件) 1 被告ソニーは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジを製造し,販売し,輸出し又は販売の申出をしてはならない。 2 被告SSMMは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジを製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 3 被告SSMSは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジを販売し,輸出し又は販売の申出をしてはならない。 4 被告らは,別紙物件目録1記載のデータカートリッジ及びその半製品を廃棄し,それらの製造に用いる設備を除却せよ。 5 被告ソニー及び被告SSMMは,原告に対し,連帯して2億2000万円, 及びうち550万円に対する平成28年1月1日から,うち3300万円に対する平成28年4月1日から,うち2200万円に対する平成28年7月1日から,うち3300万円に対する平成28年10月1日から,うち6930万円に対する平成29年1月1日から,うち5720万円に対する平成29年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告らは,原告に対し,連帯して2億4200万円,及びうち6600万円に対する平成29年7月1日から,うち7150万円に対する平成29年10月1日から,うち4400万円に対する平成30年1月1日から,うち3850万円に対する平成30年4月1日から,うち2200万円に対する平成30年6月22日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ち4400万円に対する平成30年1月1日から,うち3850万円に対する平成30年4月1日から,うち2200万円に対する平成30年6月22日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (第3事件) 7 被告ソニー及び被告SSMMは,原告に対し,連帯して,17億2986万2243円及びうち5530万4249円に対する平成28年1月1日から,うち2億7423万0206円に対する平成28年4月1日から,うち2億3802万2835円に対する平成28年7月1日から,うち2億1661万3 129円に対する平成28年10月1日から,うち3億7141万0004円 に対する平成29年1月1日から,うち5億7428万1820円に対する平成29年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告らは,原告に対し,連帯して,29億5481万3538円及びうち7億7782万2332円に対する平成29年7月1日から,うち6億4343万2514円に対する平成29年10月1日から,うち5億5388万940 9円に対する平成30年1月1日から,うち7億0306万3285円に対する平成30年4月1日から,うち2億7505万4635円に対する平成30年7月1日から,うち155万1363円に対する平成30年10月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 第1事件・第2事件は,発明の名称を「磁気記録媒体,磁気信号再生システムおよび磁気信号再生方法」とする特許第4459248号に係る特許権及び発明の名称を「磁気記録再生システム及び磁気記録再生方法」とする特許第3818581号に係る特許権を有する原告が,被告ら(以下,単に「被告」と表記することもある。)による別紙物件目録1記載 許権及び発明の名称を「磁気記録再生システム及び磁気記録再生方法」とする特許第3818581号に係る特許権を有する原告が,被告ら(以下,単に「被告」と表記することもある。)による別紙物件目録1記載のデータカートリッジ(以下「被告自 社製品」という。)の製造・販売等が原告の上記各特許権を侵害すると主張して,①被告らに対し,特許法100条1項に基づく被告自社製品の製造・販売等の差止めを,②被告らに対し,特許法100条2項に基づく被告自社製品及びその半製品の廃棄並びに製造設備の除却を,③被告ソニー及び被告SSMMに対し,民法709条,特許法102条2項に基づく損害賠償金2億2000万円及び上記 第1,5記載のとおりの各内金に対する各年月日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,④被告らに対し,民法709条,特許法102条2項に基づく損害賠償金2億4200万円及び上記第1,6記載のとおりの各内金に対する各年月日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 第3事件は,上記特許第4459248号に係る特許権を有する原告が,被告 らによる別紙物件目録2記載のデータカートリッジ(以下「被告OEM製品」といい,被告自社製品と併せて「被告製品」という。)の製造・販売等が原告の上記特許権を侵害すると主張して,①被告ソニー及び被告SSMMに対し,民法709条,特許法102条2項に基づく損害賠償金17億2986万2243円及び上記第1,7記載のとおりの各内金に対する各年月日から支払済みまでの民法 所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,②被告らに対し,民法709条,特許法102条2項に基づく損害賠償金29億5481万3538円及び上記第1,8記載 年月日から支払済みまでの民法 所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,②被告らに対し,民法709条,特許法102条2項に基づく損害賠償金29億5481万3538円及び上記第1,8記載のとおりの各内金に対する各年月日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠(枝番を付さないものは全ての枝番を含む。以下同じ。)を 掲げない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告の特許権原告は,次の特許権(以下,後記ア記載の特許権を「本件特許権1」と,後記イ記載の特許権を「本件特許権2」といい,併せて「本件特許権」という。また,これらの特許をそれぞれ「本件特許1」,「本件特許2」といい, 併せて「本件特許」という。さらに,本件特許1の願書に添付した明細書を「本件明細書1」と,本件特許2の願書に添付した明細書を「本件明細書2」という。)を有している。 ア本件特許権1(ア) 特許番号特許第4459248号 (イ) 発明の名称磁気記録媒体,磁気信号再生システムおよび磁気信号再生方法(ウ) 出願日平成19年3月30日(エ) 優先日平成18年3月31日(オ) 優先権主張国日本国 (カ) 登録日平成22年2月19日 イ本件特許権2(ア) 特許番号特許第3818581号(イ) 発明の名称磁気記録再生システム及び磁気記録再生方法(ウ) 出願日平成13年11月26日(エ) 優先日平成13年7月30日 (オ) 優先権主張国日本国(カ) 登録日平成18年6月23日(2) 特許請求の範囲の記載本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1 先日平成13年7月30日 (オ) 優先権主張国日本国(カ) 登録日平成18年6月23日(2) 特許請求の範囲の記載本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は,それぞれ本判決添付の本件特許に係る特許公報の該当項記載のとおりで ある(以下,本件特許1の請求項1に係る発明を「本件発明1-1」と,同請求項2に係る発明を「本件発明1-2」といい,これらを併せて「本件発明1」という。また,本件特許2の請求項1に係る発明を「本件発明2-1」と,同請求項2に係る発明を「本件発明2-2」といい,これらを併せて「本件発明2」という。)。 (3) 本件発明1の構成要件本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1A」のようにいう。)。 ア本件発明1-11A 非磁性支持体の一方の面に,六方晶フェライト粉末および結合剤を 含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,1B 磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,1C バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は2 0000~80000n㎥の範囲であり, 1D 原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaは0.5~2.5nmの範囲であり,かつ1E 六方晶フェライト粉末の平均板径は10~40nmの範囲であること1F を特徴とする磁気記録テープ。 イ本件発明1-21G 再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される1H 請求項1に記載の磁気記録テープ(4) 本件発明 テープ。 イ本件発明1-21G 再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される1H 請求項1に記載の磁気記録テープ(4) 本件発明2の構成要件 本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件2A」のようにいう。)。 ア本件発明2-12A 磁気記録媒体に最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録し,該記録された信号をMRヘッドを用いて再生する磁気記録再 生システムであって,2B 前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と六方晶フェライト粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,2C-1 前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深 さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下であり,かつ2C-2 前記磁性層表面の中心面平均粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲であること2D を特徴とする磁気記録再生システム。 イ本件発明2-2 2E 前記磁気記録媒体は磁気テープである2F 請求項1に記載の磁気記録再生システム。 (5) 被告らの行為ア平成27年12月から平成29年3月まで(以下「本件期間①」という。)被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告ソニーに販売し,被告 ソニーは,被告製品を販売,輸出していた。 イ同年4月から同年9月まで(以下「本件期間②」という。)被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告SSMSに販売し,被告SSMSは,被告製品を被告ソニーに販売し,被告ソニーは,被告製品を販売,輸出していた。 ウ同年10月から被告自社製品につき平成30年6月21まで 製造してこれを被告SSMSに販売し,被告SSMSは,被告製品を被告ソニーに販売し,被告ソニーは,被告製品を販売,輸出していた。 ウ同年10月から被告自社製品につき平成30年6月21まで,被告OEM製品につき同年9月30日まで(以下「本件期間③」という。)被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告SSMSに販売し,被告SSMSは,被告製品を販売,輸出していた。 エなお,被告OEM製品の取引形態には,①被告らの間における最終販売 者である被告ソニー又は被告SSMSが,日本国内から海外の販社に対して被告製品を販売(輸出)する取引形態(以下「取引形態1」という。)と,②被告製品の製造業者である被告SSMMが被告製品を海外に輸出し,海外において被告SSMM自身の在庫として保有しているものを,被告ソニー又は被告SSMSを介して海外の顧客に販売する取引形態(以下「取 引形態2」という。)が存在した。 (6) 被告製品及び被告システムの構成等ア本件発明1に関連する被告製品の構成等(ア) 本件発明1に関連する被告製品の構成等について,原告は,以下のとおり主張する。 1a バリウムフェライト粉末および結合剤を含む磁性層,非磁性層,非 磁性のベースフィルム及びバックコート層の4層構造を有する磁気記録媒体であって,1b 磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は5888n㎥であり,1c バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は4 4668n㎥であり,1dNanoscope Ⅲaによって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRa(測定範囲:40μm×40μm)は1.648nmであり,かつ1e バリウムフェライト粉末の平均板径は24nmであること cope Ⅲaによって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRa(測定範囲:40μm×40μm)は1.648nmであり,かつ1e バリウムフェライト粉末の平均板径は24nmであること 1f を特徴とする磁気テープ。 1g 再生ヘッドとしてGMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される1h 1a~1fの磁気記録テープ。 (イ) これに対して,被告らは,以下のとおり認否する。 被告製品が構成1a,1fを有することは認め,その余は否認する。 イ本件発明2に関連する被告システムの構成等(ア) 被告製品にはLTO-7ドライブにより磁気信号が記録され,被告製品に記録された信号をLTO-7ドライブに備えられたGMRヘッドが再生することができ,その際,被告製品とLTO-7ドライブとが,磁 気記録再生システムをなす(以下「被告システム」という。)。 (イ) 本件発明2に関連する被告システムの構成について,原告は,以下のとおり主張する。 2a 磁気記録媒体に最小記録bit長52.34nmで磁気信号を記録し,該記録された信号をGMRヘッドを用いて再生する磁気記録再 生システムであって, 2b 前記磁気記録媒体は,非磁性のベースフィルム上に,非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層と,バリウムフェライト粉末と結合剤を含む磁性層とを,この順に有し,非磁性層と磁性層とが設けられた面とは反対側の面にバックコート層を有し,2c-1 前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深 さを有する凹みの数が2個/10000μ㎡であり,かつ2c-2 前記磁性層表面の中心面平均粗さSRa(測定範囲:100μm×100μm)が1.771nmであること2d を特徴とする磁気記録再生システム。 の数が2個/10000μ㎡であり,かつ2c-2 前記磁性層表面の中心面平均粗さSRa(測定範囲:100μm×100μm)が1.771nmであること2d を特徴とする磁気記録再生システム。 2e 磁気記録媒体は磁気テープである 2f 2a~2dの磁気記録再生システム。 (ウ) これに対して,被告らは,以下のとおり認否する。 被告システムが構成2a,2b,2d,2eを有することは認める。 構成2c-1については,被告システムにおいて,磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が2個/1 0000μ㎡であることは否認する。ただし,当該凹みの数が100個/10000μ㎡以下であることは争わない。 構成2c-2については,被告システムにおいて,磁性層表面の中心面平均粗さSRa(測定範囲:100μm×100μm)が1.771nmであることは否認する。ただし,当該SRaが1.0~6.0nm の範囲であることは争わない。 被告システムが構成2fを有することについては否認する。上記のとおり,被告システムは構成2c-1及び2c-2を有しない。 (7) 被告らの無効主張に関する公知文献等本件特許1の優先日前の公知文献として,平成13年4月20日に公開さ れた特開2001-110032(乙28。以下「乙28文献」といい,乙 28文献に記載された発明を「乙28発明」という。)がある。 本件特許2の優先日前の公知文献として,①平成13年3月30日に公開された特開2001-84549(乙45。以下「乙45文献」といい,乙45文献に記載された発明を「乙45発明」という。),②平成13年5月18日に公開された特開2001-134919(乙88。以下「乙88文 献」といい,乙88文献に 以下「乙45文献」といい,乙45文献に記載された発明を「乙45発明」という。),②平成13年5月18日に公開された特開2001-134919(乙88。以下「乙88文 献」といい,乙88文献に記載された発明を「乙88発明」という。)がある。 また,被告らは,本件特許1及び2の各優先日前の公然実施発明として,①製品名「DGD125P」(ロット番号:C441828)の磁気テープ(以下「磁気テープ1」という。被告らが「公然実施テープ1」と称するも の。)により公然実施されていた発明(以下「引用発明1」という。被告らも同様に称する。),②製品名「LTX400G」(ロット番号:1A452P00704)の磁気テープ(以下「磁気テープ2」という。被告らが「公然実施テープ3」と称するもの。)により公然実施されていた発明(以下「引用発明2」という。被告らが「引用発明4」と称するもの。),③製品名「D GD125P」(ロット番号:C4412284)の磁気テープ(以下「磁気テープ3」という。被告らが「公然実施テープ4」と称するもの。)及び磁気テープ1により公然実施されていた発明(以下「引用発明3」という。 被告らも同様に称する。)があると主張するが,原告はこれを争う。 (8) LTO-7規格及びAP-75契約 LTO-7規格(LTOUltrium 7)は,Hewlett-PackardLimited,InternationalBusinessMachinesCorporation(IBM)及びQuantumCorporation(以下,三社を併せて「TPCs」(「TechnologyProviderCompanies」の略)という。)によって2015年(平成27年)に策定されたデータカートリッジの標準規格である。FS (以下,三社を併せて「TPCs」(「TechnologyProviderCompanies」の略)という。)によって2015年(平成27年)に策定されたデータカートリッジの標準規格である。FSP(「規格仕様参加者」を意味する。「F ormatSpecificationparticipant」の略。)がTPCsとの間で締結する 特許ライセンス契約は,●(省略)●との表題が付された定型の契約書により締結される(以下「AP-75契約」という。)。 原告は,●(省略)●,TPCsとの間で,AP-75契約を締結した(以下「原告AP-75契約」という。)。 一方,被告ソニーは,●(省略)●,TPCsとの間で,AP-75契約 を締結した(以下「被告AP-75契約」という。)(乙1)。被告製品は,LTO-7規格に準拠している。 (9) 管轄合意等原告AP-75契約11条11項には,●(省略)●旨の定めがある(以下「本件管轄合意」という。)。 なお,原告AP-75契約8条2項には,●(省略)●規定し,●(省略)●と規定する。(乙1,弁論の全趣旨) 2 争点本件の争点は,以下のとおりである。なお,第3事件においては,原告は,本件特許権1(本件発明1-1)の侵害に基づく損害賠償請求のみをしている ため,争点2,4,5,7,8及び10は,第1事件・第2事件のみの争点である。また,争点6-8及び11-2は,第3事件のみの争点である。 (1) 国際裁判管轄があるか(争点1)(2) 差止請求等に係る訴えの利益があるか(争点2)(3) 被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか(争点3) なお,構成要件1A,1Dないし1Fの充足性については当事者間に争いがない。また,構成要件1Hの充足性は構成要件1 (争点2)(3) 被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか(争点3) なお,構成要件1A,1Dないし1Fの充足性については当事者間に争いがない。また,構成要件1Hの充足性は構成要件1Aないし1Fの充足性に準じる。 ア被告製品は構成要件1Bを充足するか(争点3-1)イ被告製品は構成要件1Cを充足するか(争点3-2) ウ被告製品は構成要件1Gを充足するか(争点3-3) (4) 被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか(被告製品は構成要件2Aを充足するか)(争点4)なお,構成要件2Bないし2Eの充足性については当事者間に争いがない。 また,構成要件2Fの充足性は構成要件2Aないし2Dの充足性に準じる。 (5) 本件特許権2の間接侵害が成立するか(争点5) (6) 本件特許1に無効理由が存するか(争点6)ア磁気テープ1に基づく進歩性欠如(無効理由1-1)(争点6-1)イ実施可能要件違反(無効理由1-2)(争点6-2)ウ明確性要件違反(無効理由1-3)(争点6-3)エサポート要件違反(無効理由1-4)(争点6-4) オサポート要件違反(無効理由1-5)(争点6-5)カ磁気テープ2に基づく進歩性欠如(無効理由1-6)(争点6-6)キ実施可能要件違反(無効理由1-7)(争点6-7)ク乙28文献に基づく新規性欠如(無効理由1-8)(争点6-8)(7) 本件特許2に無効理由が存するか(争点7) ア乙45文献に基づく進歩性欠如(無効理由2-1)(争点7-1)イ磁気テープ1及び磁気テープ3に基づく進歩性欠如(無効理由2-2)(争点7-2)ウサポート要件違反(無効理由2-3)(争点7-3)エサポート要件違反(無効理由2-4)(争点7-4 )イ磁気テープ1及び磁気テープ3に基づく進歩性欠如(無効理由2-2)(争点7-2)ウサポート要件違反(無効理由2-3)(争点7-3)エサポート要件違反(無効理由2-4)(争点7-4) オ乙88文献に基づく進歩性欠如(無効理由2-5)(争点7-5)(8) 本件特許2の請求項は●(省略)●に当たるか(権利濫用の成否)(争点8)(9) 被告らに共同不法行為が成立するか(争点9)(10) 除却請求の当否(争点10) (11) 損害の有無及び額(争点11) ア特許法102条2項の適用があるか(争点11-1)イ輸出を伴う取引形態における利益の範囲(争点11-2)ウ限界利益額(争点11-3)エ推定覆滅事由の存否及びその割合(争点11-4) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(国際裁判管轄があるか)(原告の主張)ア本件訴えに係る原告の請求は,本件特許権の侵害に基づく差止請求及び不法行為に基づく損害賠償請求であるところ,わが国の民事訴訟法3条の2第3項(被告の所在地),3条の3第8号(不法行為地)に基づき,日 本の裁判所は当然に本件訴えにつき裁判管轄を有する。以下のとおり,原被告間に管轄合意は存在しておらず,また,本件紛争に原告AP-75契約に記載された本件管轄合意が適用される余地もなく,これらに関する被告らの主張は失当である。 イまず,被告らは原告AP-75契約の締結当事者ではなく,同契約11 条11項において管轄合意をした●(省略)●ではないから,原被告間には管轄の合意が存在しない。したがって,被告に対する本件訴えに係る紛争について,原告が本件管轄合意による拘束を受ける余地はない。このことのみをもってして,被告の主張は失当である。 ら,原被告間には管轄の合意が存在しない。したがって,被告に対する本件訴えに係る紛争について,原告が本件管轄合意による拘束を受ける余地はない。このことのみをもってして,被告の主張は失当である。 被告が根拠として挙げる民法539条は管轄合意とは全く関係のない条 文である。また,被告が主張する●(省略)●の確立した判例法は存在しない。●(省略)●法下の判例によれば,契約の「第三者受益者」は,契約に定められた全ての合意事項を行使できるわけではなく,あくまで,契約の当事者が明確に(specifically)意図した範囲内において,権利を行使し又利益を享受しうるにすぎない。しかも,●(省略)●法下での契約 解釈においては,契約の一部の箇所で用いられた用語が,他の箇所におい て用いられていない場合,当該他の箇所では,当該用語は意図的に排除されたものとして理解されなければならない。この点,原告AP-75契約において,●(省略)●ところ,8条2項は●(省略)●,管轄合意条項である11条11項には,●(省略)●,むしろ,●(省略)●このような8条2項と11条11項の記載の相違からすれば,原告AP-75契約 の当事者が,11条11項の管轄合意条項が●(省略)●とは到底理解できず,むしろ,原告AP-75契約において,11条11項は,●(省略)●であり,●(省略)●と理解すべきである。したがって,被告は,原告AP-75契約の管轄合意条項による拘束を原告に対して主張することはできない。 以上より,「第三者受益者」であることを理由とする被告の主張には理由がない。 ウさらに,本件管轄合意が適用対象とする請求は,●(省略)●すなわち,●(省略)●を意味することは,その文言上明らかである。したがって,各国の知的財産権の侵害に する被告の主張には理由がない。 ウさらに,本件管轄合意が適用対象とする請求は,●(省略)●すなわち,●(省略)●を意味することは,その文言上明らかである。したがって,各国の知的財産権の侵害に基づく差止請求や不法行為に基づく損害賠償請 求は,●(省略)●にも●(省略)●にも該当しないから,TPCsに対する請求であったとしても,本件管轄合意が適用対象とする請求に含まれない。本件において被告が主張している,規格参加者(FSP)による,TPCsとの間で契約を締結した他のFSPに対する知的財産権の侵害に基づく差止請求や不法行為に基づく損害賠償請求がこれに含まれないこと は,一層明らかである。上記文言を以上のとおり解すべきことは,契約当事者の合理的意思にも合致する。 被告の主張は,●(省略)●法下ないし連邦法下の判例に照らしても,明らかに不合理な結論を招く。すなわち,●(省略)●法において,契約は,「commerciallyunreasonable」(商業上不合理に)に解釈されてはな らず,また,当事者の合理的な期待に反する結果となる解釈を行ってはな らないとされているところ,連邦巡回区控訴裁判所(以下「CAFC」という。)の判決によれば,日本の特許権の侵害の成否について,米国の地方裁判所が判断することはできないから,日本の特許権の侵害訴訟が●(省略)●裁判所を専属管轄とする管轄合意条項の対象となるという解釈は明らかに不合理であるし,日本の特許権の日本における侵害行為に対する訴 訟について,日本の裁判所による審理判断を受けられないと解することは,当事者の合理的な期待に反する結果となる。被告がその主張の根拠として挙げるCAFCの判決は本件とは事案が異なり,普遍的な判断ではない。 エさらに,被告は,被告が 判断を受けられないと解することは,当事者の合理的な期待に反する結果となる。被告がその主張の根拠として挙げるCAFCの判決は本件とは事案が異なり,普遍的な判断ではない。 エさらに,被告は,被告が●(省略)●の裁判所に訴訟を提起したことを理由に,日本の裁判所は本件訴えについて国際裁判管轄を有しないという べきであると主張するが,本件訴えに係る請求は,本件管轄合意の対象ではないから,●(省略)●の裁判所は国際裁判管轄を有さず,国際訴訟競合の問題は生じないし,仮に,●(省略)●の裁判所が何らかの理由で裁判管轄を肯定するとしても,本件訴えに係る原告の請求は日本の裁判所が最も適切な判断をなしうるものであり,却下されるべきは被告が提訴した ●(省略)●の訴訟であって,本件訴えが却下されるべきことにはならない。 (被告らの主張)ア本件訴えに係る原告の各請求については,●(省略)●裁判所の管轄に専属的に服する旨の合意が存在する。したがって,日本の裁判所は,本件 訴えについて国際裁判管轄を有しないから,本件訴えは却下されるべきである。その理由は,以下のとおりである。 イ本件管轄合意条項が被告にも及ぶこと被告は,原告AP-75契約の当事者ではない。しかしながら,被告は●(省略)●として,原告AP-75契約の8条2項に規定する●(省略) ●に該当し,契約上,●(省略)●と規定されている。これは,日本法上 の「第三者のためにする契約」(民法537条)における受益者の地位に相当するものであると解される。他方,第三者のためにする契約において,当事者間の紛争について管轄合意が存在する場合,受益の意思表示をした受益者と,当該受益者に対して債務を負う諾約者との間の紛争にも,原則として当該管轄合意が適用されると解すべき めにする契約において,当事者間の紛争について管轄合意が存在する場合,受益の意思表示をした受益者と,当該受益者に対して債務を負う諾約者との間の紛争にも,原則として当該管轄合意が適用されると解すべきである。このことは,民法5 39条において,諾約者は要約者に対する契約上の抗弁をもって受益者に対抗することができると規定されていることからも明らかである。 また,●(省略)●法上も,第三者受益者は管轄合意に基づく管轄違いの抗弁を主張することができるとされている。すなわち,●(省略)●確立した判例法によれば,①当該第三者が,当該契約の第三者受益者(thir d-partybeneficiary)である場合,②当該第三者が,グローバルな取引(globaltransaction)の当事者であり,当該契約が当該取引の一部であり,かつ,それらの契約が,同一の時期に,同一の当事者間で,又は同一の目的のために,締結されたものである場合には,契約当事者でない第三者は,当該契約における管轄合意条項を行使することができるとされているとこ ろ,本件は,上記①及び②の場合に該当する。 ウ原告の各請求は,原告AP-75契約から生じ,又はこれに関連する請求であること被告は,本件訴訟において,後記(8)のとおり,仮に被告製品が本件発明2に係る物の生産にのみ用いる物であるならば,本件発明の各請求項もま た●(省略)●に該当すると主張しており,上記各請求項が●(省略)●に該当する場合には,●(省略)●になり,また,●(省略)●から,通常実施権の抗弁ないし権利濫用の抗弁が成立し,原告の請求は棄却を免れない。ところで,●(省略)●の文言は,AP-75契約に登場する契約文言であり,その文言解釈は,原告AP-75契約の解釈の問題である。 そし いし権利濫用の抗弁が成立し,原告の請求は棄却を免れない。ところで,●(省略)●の文言は,AP-75契約に登場する契約文言であり,その文言解釈は,原告AP-75契約の解釈の問題である。 そして,原告AP-75契約11条11項は,同契約は●(省略)●を規 定するとともに,●(省略)●を規定している。 そうすると,本件訴訟において,原告の請求に理由があるか否かを判断するためには,原告AP-75契約の解釈を行うことが必須であるから,本件訴訟に係る原告の請求は,原告AP-75契約に関連する請求に該当し,●(省略)●裁判所の専属的な管轄権に属するというべきである。こ のことは,原告AP-75契約11条11項における●(省略)●の範囲を●(省略)●法に基づいて解釈(「無根拠ではない紛争」がある事例で関連性を認め管轄合意の適用を認めたCAFCの判決)しても,また●(省略)●法から離れて解釈しても同様であるし,また,原告AP-75契約の当事者の合理的意思にも合致する。 エしたがって,本件訴えに係る原告の各請求については,●(省略)●裁判所の管轄に専属的に服する旨の合意が存在するから,日本の裁判所は本件訴えについて国際裁判管轄を有しない。 なお,被告は,平成28年7月27日,原告による●(省略)●の行為が被告に対する義務に違反し,反競争的行為であるとして,●(省略)● 裁判所に訴訟を提起した。●(省略)●の文言を含め,原告AP-75契約の解釈は,当該問題について専属的な管轄権を有する当該裁判所により,当該訴訟において行われることになる。したがって,この問題について,日本の裁判所において重ねて審理・判断することは妥当ではない。かかる観点からも,日本の裁判所は本件訴えについて国際裁判管轄を有しないと いうべき れることになる。したがって,この問題について,日本の裁判所において重ねて審理・判断することは妥当ではない。かかる観点からも,日本の裁判所は本件訴えについて国際裁判管轄を有しないと いうべきである。 (2) 争点2(差止請求等に係る訴えの利益があるか)(原告の主張)被告自社製品の製造・販売等の差止請求及びそれに伴う被告自社製品ないしその半製品の廃棄請求及び製造設備の除却請求に係る訴えには,訴えの利 益がある。 (被告らの主張)原告は,本件訴訟において,被告らに対する被告自社製品の製造・販売等の差止請求をしているが,平成30年6月21日に行われた東京地方裁判所平成30年(ヨ)第22061号事件の第2回審尋期日において,原告と被告らとの間で裁判上の和解が成立した。当該和解においては,和解条項の第 2項として,「被告ら(本件訴訟における被告ら)は,磁気テープカートリッジ『LTX6000G』(本件訴訟における被告自社製品)を製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をしない。」ことが定められた(乙207)。 上記和解条項の第2項は,原告が本件訴訟において,被告らに対する差止請求として求めている給付の内容と同一内容の給付を実現するものであり, 上記和解が成立したことにより,原告はかかる給付を実現するための債務名義を既に取得したものである。かかる原告に対し,同一内容の債務名義を重ねて付与しなければならない理由は何ら存在しない。 したがって,原告の本件訴えのうち,差止請求に係る部分は,上記和解成立により訴えの利益を失ったものであり,不適法であるから,却下されるべ きである。また,差止請求に係る訴えが不適法なものである以上,これに付帯する被告自社製品・半製品の廃棄請求及び製造設備の除却請求に係る訴え を失ったものであり,不適法であるから,却下されるべ きである。また,差止請求に係る訴えが不適法なものである以上,これに付帯する被告自社製品・半製品の廃棄請求及び製造設備の除却請求に係る訴えもまた不適法なものであるから,同様に却下されるべきである。 (3) 争点3(被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか)ア被告製品は構成要件1Bを充足するか(争点3-1) (原告の主張)被告製品の磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度(以下「PSD」ということがある。)は5888n㎥である(被告製品の構成1b)から,構成要件1Bを充足する。 (被告らの主張) 被告製品が構成1bを有すること,及び構成要件1Bを充足することは, いずれも否認する。構成要件1Bの,「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」との文言は不明確であるから,そもそも,構成要件1Bについて構成要件充足性を論じることはできない。また,原告は,被告製品について,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は5888n㎥であると主張するが,原告がここでいう「磁性層表面の10 μmピッチにおけるスペクトル密度」は,構成要件1Bの上記文言をそのまま引き写したものにすぎず,それ自体不明確であるから,結局,原告は被告製品の構成を十分に特定して主張していない。 また,「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」の測定方法・条件の解釈いかんによっては,「磁性層表面の10μmピッチにお けるスペクトル密度」が「800~10000n㎥」であることの立証がないことに帰する可能性があるので,かかる観点からも,構成要件1Bの充足性は争う。 イ被告製品は構成要件1Cを充足するか(争点3-2)(原告の主張) 000n㎥」であることの立証がないことに帰する可能性があるので,かかる観点からも,構成要件1Bの充足性は争う。 イ被告製品は構成要件1Cを充足するか(争点3-2)(原告の主張) (ア) 被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は44668n㎥である(被告製品の構成1c)から,構成要件1Cを充足する。 (イ) 乙58,59の測定結果が信用できないことa乙58で示される測定結果に係る測定条件(測定エリア)は「29 0×220μ㎡」であり,構成要件1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定するための測定条件(測定エリア:240μm×180μm(本件明細書1・段落【0013】))とは異なるから,乙58の測定結果は,構成要件1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を示すものではない。また,乙59は,測 定エリアを「624×468μ㎡」とした場合の測定結果であるとこ ろ,かかる測定条件(測定エリア)は,やはり構成要件1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定するための測定条件(測定エリア:240μm×180μm)とは異なるから,乙59の測定結果もまた構成要件1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を示すものではない。このとおり,乙58及び乙59は,被告 製品が構成要件1Cを充足する構成を備えていないことを示す証拠として不適切である。 b乙58は適切な条件で10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定したものではないこと乙58には,新潟県工業技術総合研究所が保有する非接触光学式粗 さ測定機である三次元構造解析顕微鏡「Wyko社製NT3300」の対物レンズの倍率を10倍,中間レンズの倍率を2倍として,被告製品 58には,新潟県工業技術総合研究所が保有する非接触光学式粗 さ測定機である三次元構造解析顕微鏡「Wyko社製NT3300」の対物レンズの倍率を10倍,中間レンズの倍率を2倍として,被告製品を測定した測定結果が示されている。原告が,上記測定機の状態について,Wyko社製測定機のメンテナンスを行っている専門業者であるブルカー・エイエックスエス株式会社(以下「ブルカー社」と いう。)に検証を依頼したところ,「10倍対物+2倍中間レンズのフォーカスがずれている(=正確な表面からのコントラストが取れない)」ため,磁気テープのPSD値を正確に測定することができない状態にあることが判明した(甲51,52)。「コントラストが取れない」のは,乙58もまったく同様である(例えば乙58・7頁のSu rfaceDataの図参照)。そして,新潟県工業技術総合研究所の研究員によれば,同センター保有の「Wyko社製NT3300」は,ここ数年,製造メーカーによる機器の状態確認及びメンテナンスが一切行なわれていないとのことであった。したがって,ブルカー社による検証(平成29年10月17日)の約1年前に被告ソニーが上記測定機 を用いて被告製品を測定した時点(平成28年10月28日)におい ても,同測定機の対物レンズの倍率を10倍,中間レンズの倍率を2倍として磁気テープのバックコート層を検体とした場合,正確な測定を行える状態になかったと考えられる。上記に加え,乙58の記載それ自体が不合理であり,信用性に疑義がある。まず,乙58には「Wyko社製NT3300」のキャリブレーションが行われたかどうか について一切記載がないため,それが行われていたかどうか定かでない。また,乙58には具体的な測定結果を裏付ける資料がなく,乙58・別 o社製NT3300」のキャリブレーションが行われたかどうか について一切記載がないため,それが行われていたかどうか定かでない。また,乙58には具体的な測定結果を裏付ける資料がなく,乙58・別紙1記載の各数値について,それを裏付ける資料が開示されておらず,その信用性が乏しい。このように,乙58の測定結果は,被告製品のバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を 正しく測定したものということはできず,その証拠価値は否定されるべきである。 c乙59も信用できないこと乙59では,対物レンズの倍率を5倍,中間レンズの倍率を2倍という低倍率のレンズの組み合わせを選択しているところ,乙59に係 るSurfaceData(例えば乙59・7/10頁に示される図)は,乙58に係るSurfaceData(例えば乙58・7頁の図)と同様に(あるいはそれ以上に)コントラストが劣っている。 上記bのとおり,乙58に係るSurfaceDataでさえフォーカスがずれていてコントラストが取れておらず,表面の形状が全体的にぼやけ てしまい測定を行うには不適切であるのだから,それよりも同程度(あるいはそれ以上に)コントラストが取れておらず表面の形状がぼやけている乙59に係る測定が不適切であることは明らかである。これは,レンズの倍率が小さいと,表面の微細な形状まで観測することができず,表面の微細な粗さを正確には測定できないという技術常識にも合 致する。 よって,乙59は,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を立証する証拠として信用性を欠くことは明らかである。 (ウ) 「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の解釈について本件明細書1・段落【0013】において,測定機の記 チにおけるスペクトル密度を立証する証拠として信用性を欠くことは明らかである。 (ウ) 「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の解釈について本件明細書1・段落【0013】において,測定機の記載は「非接触 光学式粗さ測定機」として特定され,「Wyko社製HD2000」との記載はあくまで括弧書きにすぎないことからしても,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」との用語は,「非接触光学式粗さ測定機」を用いて測定される10μmピッチにおけるスペクトル密度を意味するものと解釈すべきであって,必ずしも「Wyko社製HD2000」に 限定されるものではない。また,10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定における測定エリアについては,本件明細書1・段落【0013】に「240μm×180μm」という具体的な記載があるが,かかる記載に接した当業者においては,使用する測定機において,測定エリアが,「HD2000を用いて測定エリアを「240μm×180μm」 として測定した場合の測定エリア」と評価できる測定エリアを意味するものと理解する。この点,特許法70条は,発明の技術的範囲の認定において,明細書その他の記載を斟酌すべきことを規定しており,クレームの文言を明細書の記載を斟酌して解釈することは,むしろ特許法上予定されたものである。 なお,被告らは,「Wyko社製HD2000」は,現在,入手ないし利用することができない状態にあると主張するが,そもそも,測定機が「Wyko社製HD2000」に限定されることはないし,現在入手ないし利用することができない状態でもない。 (エ) 追加実験(甲62)の結果 原告は,被告製品が構成要件1Cを充足することを立証するため,公 証人立会いの下,原告が保有する非接触光学式粗 することができない状態でもない。 (エ) 追加実験(甲62)の結果 原告は,被告製品が構成要件1Cを充足することを立証するため,公 証人立会いの下,原告が保有する非接触光学式粗さ測定機である三次元構造解析顕微鏡「Wyko社製HD2000」を用いて,原告訴訟代理人が市場で購入した被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した。そうしたところ,被告製品が構成要件1Cを充足することが改めて確認された。 なお,測定エリアは「236.4μm×179.6μm」であり,対物レンズの倍率を50倍,中間レンズの倍率を0.5倍とした 。また,実験に用いた「HD2000」の状態について,ブルカー社に検証を依頼したところ,「光学系が良好なため,50倍対物+0.5倍中間レンズの組み合せで磁気テープのPSD値を正確に測定することができる」 状態とのことであった(甲51,52)。 測定に先立ち,キャリブレーションが行われたことは公証人が確認している。また,サンプル数について,原告は侵害立証のために5個のサンプルを作成し,各サンプルについて5か所ずつ(計25か所)スペクトル密度を測定したところ(甲62),これらは全て構成要件1Cが規 定する数値範囲内にあった。 (オ) 乙92は信用性を欠くことaキャリブレーションを行わない状態での測定原告は,偶然にも,被告ソニーと同時期に,NT9100を使用して被告製品のスペクトル密度の測定を試みていた(甲61)。平成2 9年11月20日,原告はNT9100を使用して被告製品のスペクトル密度の測定を試みたものの,この時NT9100はキャリブレーションが正しく行えない状態であった。かかる状態での測定結果はトレーサビリティが確保できず,その測定値 100を使用して被告製品のスペクトル密度の測定を試みたものの,この時NT9100はキャリブレーションが正しく行えない状態であった。かかる状態での測定結果はトレーサビリティが確保できず,その測定値の信頼性は乏しいものではあったが,原告は,機器の状態確認のため,キャリブレーションを行 わずに被告製品のバックコート層表面のスペクトル密度を測定した。 そうしたところ,被告製品のバックコート層表面のPSDの測定値は18540n㎥(10μmピッチ)であったが,測定結果に係るSurfaceDataの画像がぼやけていたので(甲61・別紙1上図),対物レンズのフォーカスがずれていることが疑われた。そこで,原告は施設の担当者に了解をとったうえで,その立会いの下,対物レンズのフォ ーカスを可能な限り調整し,再度測定したところ,測定値は36120n㎥(10μmピッチ)となった(フォーカス調整後の測定結果に係るSurfaceDataの画像は甲61・別紙2上図のとおりである。)。 bキャリブレーションを行った状態での測定平成29年11月30日,原告従業員は,施設担当者からNT91 00のキャリブレーションが正しく行えることを確認した旨の連絡を受けて,被告製品のバックコート層表面のスペクトル密度を測定した(甲61)。この時,原告従業員は,レンズのフォーカスを正しく調整し,キャリブレーションを行い,NT9100が被告製品の正確なスペクトル密度の値を測定できる状態にあることを確認してから測定 を開始した。そうしたところ,測定結果から,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲内にあり,被告製品が構成要件1Cを充足することが改めて確認された。 c乙92の測定 から,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲内にあり,被告製品が構成要件1Cを充足することが改めて確認された。 c乙92の測定時において,NT9100の対物レンズのフォーカス がずれており,PSD値を正確に測定できる状態になかった蓋然性が高いこと上記a及びbで述べた事実に照らせば,乙92に係る測定時において,NT9100の対物レンズのフォーカスがずれており,NT9100はPSD値を正確に測定できる状態になかった蓋然性が高いことが理 解できる。すなわち,①平成29年11月20日のフォーカス調整前 (フォーカスがずれた状態)の測定結果と,②同日のフォーカス調整後(フォーカスが合った状態)の測定結果を比べると,両者の測定値は2倍程度異なっている。一般に,フォーカスがずれているとコントラストが取れないため,PSD値がかなり低い値となることが知られているところ(甲52),上記①と②の測定結果の相違は,フォーカ スがずれていることによるものと特定できる。また,上記①の測定結果(平成29年11月20日のフォーカス調整前(フォーカスがずれた状態))と,乙92に示された測定結果を比べると,ほぼ等しい値になっている。NT9100の使用記録上,被告ソニーが測定を行ったとする平成29年11月10日から上記①の測定が行われた同月2 0日までの間に,本顕微鏡が使用された記録は存在しなかった(甲61)。したがって,乙92に係る測定は,上記①の測定と同様に,フォーカスがずれた状態で行われた蓋然性が高い 。 以上のとおり,乙92は,「被告製品のバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度が,クレーム範囲内に入らないこと等」 を立証趣旨とする証拠 スがずれた状態で行われた蓋然性が高い 。 以上のとおり,乙92は,「被告製品のバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度が,クレーム範囲内に入らないこと等」 を立証趣旨とする証拠として不適切であり,これに基づく被告らの主張は成り立たない。 (カ) 原告が行った追加実験によって被告製品が構成要件1Cを充足することが改めて確認されたこと今般,原告は,被告製品が構成要件1Cを充足することをより一層明 らかにするため,公証人立会いの下,原告が保有する非接触光学式粗さ測定機である三次元構造解析顕微鏡「Wyko社製HD2000」,及び,(住所は省略)所在のナノ・マイクロ産学官共同研究施設NANOBIC(以下「NANOBIC」という。)が保有する「Wyko社製NT9100A」を用いて,原告訴訟代理人が市場で購入した被告製品 のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定 した。これらの測定において,原告は,従前と同様に,測定に先立ち各測定機器のキャリブレーションを行い,また対物レンズの状態を正しく調整した 。「HD2000」を用いた測定における測定エリアは「236.4μm×179.6μm」であり,対物レンズの倍率を50倍,中間レンズの倍率を0.5倍とし,「NT9100A」を用いた測定にお ける測定エリアは「227μm×170μm」であり,対物レンズの倍率を50倍,中間レンズの倍率を0.55倍とした(甲64,65)。 いずれの測定結果も構成要件1Cの規定する範囲内(20000~80000n㎥)であり,被告製品が構成要件1Cを充足することが改めて示された。 (キ) 被告らの測定は,対物レンズの選択・調整の点で,スペクトル密度を正しく測定したとはいえない被告ソニーは,対物 ㎥)であり,被告製品が構成要件1Cを充足することが改めて示された。 (キ) 被告らの測定は,対物レンズの選択・調整の点で,スペクトル密度を正しく測定したとはいえない被告ソニーは,対物レンズの倍率として「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を正確に測定するには低過ぎる倍率(5倍及び10倍)を選択しており(乙58,59),また,対物レンズの倍率として50 倍を選択している場合(乙92)においては,対物レンズを正しく調整しないまま測定を実施しており,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を正確に測定できていない。 このことは,Wyko社製測定機のメンテナンスを行っている専門業者であるブルカー社のレポート(甲66),専門家であるA教授の鑑定 意見書(甲67),及び原告による再現実験(甲64,65)により,より一層明らかである。 (ク) 被告らの証拠に係る各測定方法がスペクトル密度の測定に不適切であることA教授の鑑定意見書(甲67)やブルカー社のレポート(甲66)で 説明されているとおり,非接触光学式粗さ測定機を使用した磁気テープ 表面のスペクトル密度の測定においては,①測定機のキャリブレーションを行うことが前提であり,さらに,②対物レンズが適切な状態,すなわち,(i)測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合っている状態で,かつ,(ii)コントラストの高い干渉縞が生じる状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面からの反射光の光路長がほぼ等し くなるように設定された状態)にあることが必須である。したがって,測定に際し対物レンズが適切な状態にあることは必ず確認されなければならない。 このように,スペクトル密度を正しく測定するためには,測定機の状態を確認し,測定機を適切な状態とするた る。したがって,測定に際し対物レンズが適切な状態にあることは必ず確認されなければならない。 このように,スペクトル密度を正しく測定するためには,測定機の状態を確認し,測定機を適切な状態とするために正しく操作することが必 須であって,第三者が保有する測定機器を用いたからといって,それだけを以てしても正しい測定結果が得られるわけではない。 そして,被告らが提出する実験(乙98ないし100)においては,いずれも対物レンズの状態が不適切なままであった。さらに,乙59及び103の作成者であるMVA ScientificConsultants(以下「MVA」 という。)に至っては,本件特許1の対応米国特許に係る米国ITC手続において被告ソニーから依頼を受けて被告製品のスペクトル密度の測定を行い,それを理由に原告の測定依頼を拒絶しており,そもそも「中立的な第三者」と評価することはできない。 (ケ) スペクトル密度の正しい測定方法 被告らは,「コントラストが取れない」(甲51,52)との記載の意味が不可解であると指摘しているが,甲51及び52にいう「コントラストが取れない」 状態とは,「SurfaceDataに示される表面粗さの俯瞰図がぼやけてしまう状態」を指しており,文字通り非接触光学式粗さ測定機の検出器でピンボケした画像が検出されてしまうということであ って,かかる状態は対物レンズのフォーカスがサンプル表面に合ってい ないことに起因する。そして,「SurfaceDataに示される表面粗さの俯瞰図がぼやけて」いると,実際のサンプル表面の形状よりも滑らかなデータしか取得できない結果,スペクトル密度の値を正確に測定することができない。 乙103に係る測定は,対物レンズが不適切な状態で行われた可能性 」いると,実際のサンプル表面の形状よりも滑らかなデータしか取得できない結果,スペクトル密度の値を正確に測定することができない。 乙103に係る測定は,対物レンズが不適切な状態で行われた可能性 が高く,被告製品が構成要件1Cを充足しないことを示す証拠として信用性を欠く。 非接触光学式粗さ測定機を使用したスペクトル密度の測定に際し,対物レンズの状態を確認した上で測定を行うことは技術常識であるところ(甲65,72,74),原告(及び後述する第三者機関)が,かかる 正しい測定方法を以て,時間・場所を変えて何度測定してみても,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は常に構成要件1Cで規定する数値範囲(20000~80000n㎥)内(具体的には,被告製品6巻,測定サンプル22個,のべ66箇所全ての測定結果が20000~80000n㎥の範囲内であった(甲8, 61,62,64))であり,構成要件1Cを必ず充足する結果となった。一方,被告ソニーは,原告が被告ソニーによる測定の信用性を否定する主張を行ったのに対して何ら技術的な反論をせずに,単に,公の機関が保有する測定機器で測定すれば正しい値を検出できるなどと述べるにすぎない。加えて,B氏の供述書も何ら被告らの測定の信用性を裏付 けるものではない。 したがって,被告らが提出する証拠に係る測定結果において10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定値が著しく低い値を示しているのは,これらの測定が,対物レンズの状態確認を行わないまま,同レンズが不適切な状態において行われたためであると考えざるを得ない。 (コ) 第三者機関による測定結果 第三者機関である株式会社三井化学分析センター(以下「三井化学分析センター」という。)から,被告 おいて行われたためであると考えざるを得ない。 (コ) 第三者機関による測定結果 第三者機関である株式会社三井化学分析センター(以下「三井化学分析センター」という。)から,被告製品のバックコート層表面の10μm近傍ピッチにおけるスペクトル密度の値の報告を受けたところ,全ての測定結果が構成要件1Cが規定する数値範囲(20000~80000n㎥)内であった(甲76)。原告は,上記第三者機関に測定を依頼 する際,同機関においては,測定に際し,上述した対物レンズの正しい調整を行うことの確証を得ている。 (サ) 本件発明1におけるスペクトル密度の測定,算出条件本件発明1におけるバックコート層表面の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」(構成要件1B及び1C)の測定,算出条件は,本件 明細書1の段落【0013】及び当業者の技術常識に基づくものである。 これを改めて整理して記載すると以下のとおりである。 ①測定機器Wyko社製HD2000及びこれと同じWyko社の白色干渉方式の後継機種(段落【0013】) ②測定モードPSIモード(出願時における当業者の技術常識:HD2000 Operator’sGuide(甲79。以下「HD2000測定ガイド」という。))③対物レンズの倍率50倍(出願時における当業者の技術常識:甲65,67) ④測定面積より導かれるCCDの認識精度測定面積「240μm×180μm」の記載により導かれるCCDの認識精度。すなわち,サンプリング長基準で,0.34~1.58μm(段落【0013】,出願時における当業者の技術常識)⑤対物レンズの焦点合わせ 測定に先立ち,対物レンズの焦点が測定サンプルの表面に合い,か つ,干渉縞への焦点を合わせた μm(段落【0013】,出願時における当業者の技術常識)⑤対物レンズの焦点合わせ 測定に先立ち,対物レンズの焦点が測定サンプルの表面に合い,か つ,干渉縞への焦点を合わせた状態(コントラストの高い干渉縞が生じる状態)になるような焦点合わせを行う(出願時における当業者の技術常識:甲65,67,79)。 ⑥PSDの算出Wyko社製HD2000及びその後継機種の付属ソフトウエアで あるVisionTM(甲79,80)を用いて自動計算する。 この点,以下で説明するとおり,原告が提出した実験(以下「原告実験」という。)においては,上記①~⑥の条件を全て満たしているから,PSDの測定及び算出は正確なものであり,その結果も採用に値するものである。これに対し,被告らが提出した実験(以下「被告実験」とい う。)においては,上記③及び/又は⑤の条件が満たされておらず,この点が,被告実験により得られるSurfaceDataの俯瞰図における「ぼやけ」の原因となっている。そして,このようなSurfaceDataの俯瞰図において「ぼやけ」を生じるデータは,PSDを正しく算出するための基礎とはなり得ないから,被告実験の結果はこれを採用するに値しない。 (シ) 被告製品は構成要件1Cを充足する以下の表にまとめるとおり,原告に係る甲8,甲61,甲62,甲64,甲65,甲76の実験及び今回提出した甲86の実験は,全て,上記①~⑤の条件を満たしている。なお,甲8には,対物レンズの焦点合わせの点について記載がないが,今般確認したところ,これらの実験に おいても同様に事前に,対物レンズの調整が行われていた(甲87)。 そして,これらの実験に基づいて算出される被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペク たところ,これらの実験に おいても同様に事前に,対物レンズの調整が行われていた(甲87)。 そして,これらの実験に基づいて算出される被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,30903~55440n㎥の範囲である。しかも,各実験において,得られたPSDの値はいずれも同程度の値であり,これも,原告実験の正確さを裏付け ている。よって,被告製品は構成要件1Cを充足する。 甲8甲61甲62甲64甲65甲76,78甲86①測定機器HD2000NT9100AHD2000HD2000NT9100ANT1100NT9100A②測定モードPSIPSIPSIPSIPSIPSIPSI③対物レンズx50x50x50x50x50x50x50中間レンズx0.5x0.55x0.5x0.5x0.55x0.5x0.55測定エリアμ㎡236.4x179.6 x170236.4x179.6236.4x179.6 x170 x186 x170④サンプリング長µm0.790.360.790.790.360.340.36サンプリング長nm(実測・参考)751.60354.83751.60751.60354.83333.69354.83⑤対物レンズ焦点合わせ○○○○○○○10μm近傍PSD値n㎥4466835260~4756035481~4674430903~4570941080 合わせ○○○○○○○10μm近傍PSD値n㎥4466835260~4756035481~4674430903~4570941080~4418036850~5544035260~47560この点,被告らは甲62に記載の測定に用いられたHD2000が,実験当時スペクトル密度を正常に測定することができる状態であったか否か依然として不明であると主張するが,甲62に記載の測定に用いられたHD2000が,その当時,正常に動作しており,被告製品のスペクトル密度を正常に測定することができる状態であることについては, ブルカー社の見解書(甲51,66)で確認されているとおりである。 なお,被告らは,「少なくとも約23年間,メーカーによるサポートを受けておらず,原告もこの点を争っていない。」と主張するが,当該HD2000については,定期的なメンテナンスが行われており,常に正しい測定環境を維持してきたことから,ブルカー社の見解書(甲51, 66)において,スペクトル密度を正常に測定することができる状態であることの確認を受けることができたのである。よって,被告らの主張は失当である。 (ス) 被告実験の実験条件は不適切であり,その結果は採用できないa以下に被告実験の実験条件及びその結果を示す。以下の表から明ら かなとおり,被告実験は,構成要件1Cに係るPSDの測定,算出において,満たすべき条件①~⑤のいずれか一つ又は複数を満たしていない。より具体的に言えば,被告実験におけるPSDの測定条件は, PSDの算出の基礎となる表面プロファイルの認識に大きく影響を与える③及び/又は⑤の条件を満たしていない。よって,被告実験は,いずれも,実験条件として 告実験におけるPSDの測定条件は, PSDの算出の基礎となる表面プロファイルの認識に大きく影響を与える③及び/又は⑤の条件を満たしていない。よって,被告実験は,いずれも,実験条件として不適切であるから,その結果は採用できない。 乙58乙59乙92乙98乙99,100乙101乙103①測定機器NT3300NT9100NT9100ANT9100ANT9100ANT3300NT9100②測定モードPSIPSIPSIPSIPSIPSIPSIPSI③対物レンズx10 ×x5 ×x50x50x50x50x10×x50中間レンズx2x2x0.55x1x0.55x1x2x0.55測定エリアμ㎡ x221 x468 x170 x94 x170 x94 x221 x172④サンプリング長µm0.420.990.360.20.360.20.420.42サンプリング長nm(実測値・参考)395.99977.30354.83195.39354.83195.72395.99359.76⑤対物レンズ焦点合わせなし×なし×なし×なし×なし×なし×なし×なし×10µm近傍PSD値n㎥6770~113025799~1061111950~1674014170~1954018080~1998012050~1651013750~161 6770~113025799~1061111950~1674014170~1954018080~1998012050~1651013750~1611015611~17937その他 対物レンズ不良(フォーカス不良)× bこの点をより具体的に述べると以下のとおりである。まず,乙58, 乙59,乙101においては,対物レンズとして5倍,あるいは10倍という明らかに低倍率のものを用いている。しかも,被告実験においては,いずれの実験においても,実験に先立ち対物レンズの焦点合わせを行った形跡はない。事実,被告らが,「対物レンズのフォーカスの調整」については,「WykoNT9100」のマニュアルに 記載されていないと主張していることからすると,対物レンズの調整を行っている可能性は極めて低い。そうすると,これらの実験においては,PSDの算出の基礎となる,表面プロファイルデータを正確に取得できない状態で取得されたことは明らかである。 さらに,乙58と乙101は,実験条件が同じであるにもかかわら ず,その下限値を比較した場合に,2倍程度の大きな値の開きがある。 同じ条件を採用しているにもかかわらず,このように値が異なるとい うことは,被告実験の杜撰さを物語るものである。 cまた,乙99及び100については,当該実験で用いられたあいち産業科学技術総合センターの「Wyko社製NT9100A」に関しては,甲73で立証されているとおり,対物レンズが不適切な状態にあったことが確認されている。よって,これらの実験においては,実 験条件が不適切であることは明らかである。さらに,乙92,乙98,乙99,100及び乙103においては, 物レンズが不適切な状態にあったことが確認されている。よって,これらの実験においては,実 験条件が不適切であることは明らかである。さらに,乙92,乙98,乙99,100及び乙103においては,対物レンズの焦点合わせが行われていない。よって,これらの実験も不適切な実験条件に基づいてなされたものであるから,その実験結果は採用できない。 しかも,乙92,乙98,乙99,100及び乙103の実験結果 を,乙101の実験結果と対比すると,これらの実験結果が信用できないことが明らかとなる。すなわち,これらの実験においては,50倍の対物レンズが用いられており,サンプリング長も0.49μmの条件が採用されているが,得られたPSDの値は,10倍の対物レンズを用いた乙101の実験結果とさほどかわらない。10倍程度の対 物レンズの倍率では,微小なピッチの強度を検証するための測定サンプルの微細な表面形状を正確に測定することができないことについては,甲65,67に記載されているところ,10倍の対物レンズと50倍の対物レンズを用いて行った実験のPSDの値がさほどかわらないということはあり得ない。そうすると,乙92,乙98,乙99, 100及び乙103の実験においては,焦点合わせを敢えて行なわず,焦点をぼやかした状態で実験を行った可能性が高く,その結果として,乙101の実験結果と同程度の値が得られたと理解するのが合理的である。 dさらに,乙92,乙98及び乙103で得られたSurfaceDataの画 像については,専門家により,いずれもぼやけているとの指摘が明確 にされている(甲65,83)。特に,C意見書(甲83)においては,乙98及び乙103のSurfaceDataについて,甲65と比較した具体的な見解が述 れもぼやけているとの指摘が明確 にされている(甲65,83)。特に,C意見書(甲83)においては,乙98及び乙103のSurfaceDataについて,甲65と比較した具体的な見解が述べられている。すなわち,乙98及び乙103のSurfaceDataは,同じ実験条件で行われた甲65の実験で得られたSurfaceDataに比べて,高い位置を示す点の大きさが大きく,画像自体が鮮 明でないこと,言い換えれば,焦点がきちんと合っていれば認識できるはずの点が認識できなかった可能性が高いこと,そして,その原因が,レンズの焦点位置に試料が設置されていなかったことに起因するとの指摘がされている。なお,焦点がきちんと合っていない場合に,2つの頂点(突起)が,1つの頂点として認識されてしまう原理は, 図(甲83・5頁)で説明されるとおりである。 よって,甲65,甲83で述べられているとおり,乙98及び乙103の結果はいずれも試料の状態を正確に認識かつ反映しておらず,信ぴょう性が低いから,乙92,乙98及び乙103の実験結果は採用できない。 ちなみに,甲65と同じNT9100Aを用いた甲61及び甲86の実験においても,そのSurfaceDataの画像は,甲65と同様に,各点が細かく,かつ,画像が鮮明である。この点も原告実験が信頼できるものであり,かつ,原告実験の結果が正しいことを裏付けるものである(より大きな画像データは甲91及び甲86-3。)。 e被告実験において,不適切な実験条件が採用されていることは他の観点からも説明できる。すなわち,乙99,100の実験で用いられたあいち産業科学技術総合センターの「Wyko社製NT9100A」に関しては,対物レンズが不適切な状態にあったことが確認され(甲73), 点からも説明できる。すなわち,乙99,100の実験で用いられたあいち産業科学技術総合センターの「Wyko社製NT9100A」に関しては,対物レンズが不適切な状態にあったことが確認され(甲73),このような不適切な状態の対物レンズを用いた実験において 得られたPSDの値が信用に値するものではなく採用できないが,注 目すべきは,乙92,乙98,乙101及び乙103の実験で得られたPSDの値も,乙99,100の実験結果とさほどかわらないということである。対物レンズの調整が行われずフォーカスが不適切な状態にある対物レンズを用いた乙99,100の実験結果と,乙92,乙98,乙101及び乙103の実験結果がほぼ整合するということ は,乙92,乙98,乙101及び乙103の実験も,不適切な条件の下に行われた実験であり,採用し得ないものであることを明確に示すものである。 f以上のとおり,被告実験の実験結果は採用できない。 (セ) 乙105について 被告らは,乙105の実験に関して,国立大学法人香川大学(以下「香川大学」という。)が「試験片表面に焦点が合い,かつ,干渉縞が現れた状態で測定を行っており」と主張しているが,乙105を見ても,対物レンズを事前調整したこと,すなわち,「サンプルの表面に対物レンズのフォーカスがあっている状態とし,かつ,コントラストの高い干渉 縞が生じる状態」に対物レンズの事前調整を行った上で試験片の測定を行ったとは記載されていない(特に「参照面の位置の調整」については何ら言及されていない。)。そうすると,おそらく乙105では,対物レンズ内の参照面の調整を行わず,単に,試験片上で対物レンズの位置を調整することにより焦点合わせを行おうとしたものと推察されるが, そのような手法では 。そうすると,おそらく乙105では,対物レンズ内の参照面の調整を行わず,単に,試験片上で対物レンズの位置を調整することにより焦点合わせを行おうとしたものと推察されるが, そのような手法では,到底,適切な測定状態に調整がされたとは言い難い。実際,乙105で得られたSurfaceDataも被告によるこれまでの実験と同様に,頂点を示す点が大きく,画像が鮮明でない,いわゆるぼやけた状態であるが,乙105の実験においては,「干渉縞の発生」のみに依拠した正確でない対物レンズの調整が行われたと考えれば,他の被 告実験と同様に辻褄が合う。つまり,被告らにおいては,参照面自体の 調節を行わず,「干渉縞の発生」を拠り所として対物レンズを上下させることのみによって調整を行おうとするから,測定サンプルの表面にきちんと焦点が合わず,結果として,SurfaceDataの画像が鮮明でなくなるのである。よって,このような不適切な状態で行われた乙105の実験結果(PSDの値)も採用することができない。 (ソ) 原告による追加実験について原告は,念のため,乙105の実験が行われた香川大学にて,同じ機種を用いて,実験を行った(甲92)。対物レンズの事前調整を行った上で実験を行ったことについては,甲92に明記されているとおりである。しかるところ,原告のこれまでの実験と同様に,構成要件1Cに係 るPSDの値は,39280~42960n㎥であり,本件発明1の構成要件1Cを充足するものであった。 また,原告は,HD2000を用いた実験において,測定面積「240μm×180μm」で決まるCCDの認識精度の範囲であれば,10μmピッチにおけるスペクトル密度が39811~50119n㎥の範 囲であり,既に行った甲8,甲62及び甲64 ,測定面積「240μm×180μm」で決まるCCDの認識精度の範囲であれば,10μmピッチにおけるスペクトル密度が39811~50119n㎥の範 囲であり,既に行った甲8,甲62及び甲64の実験結果とほとんど変わらないことを確認した(甲93)。よって,被告製品が構成要件1Cを充足することは,一層明らかになった。 (タ) 乙A1ないし3について(第3事件のみの主張)乙A1~乙A3の実験は,本件発明1に係るPSD測定において満た すべき条件を満たしていないから,採用できない。 まず,乙A2及び乙A3によれば,被告らの実験は,NT1100を用い,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の条件で測定がされている。 しかし,甲89(NT1100スペックシート)によれば,NT1100において,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の条件で選ばれるサン プリング長は,0.17×0.20であるところ,本件発明1において 満たすべきサンプリング長基準の条件である「0.34~1.58μm」を満たしていない。ちなみに,被告らの実験において採用されたサンプリング長は,本件発明1において規定されるよりも小さすぎる(つまりCCDの認識精度が良すぎる)ため,被告らの実験においては,被告製品の本来のPSDの値よりも,値がかなり大きくなったと推察される。 また,乙A2及び乙A3においては,測定に先立ち,対物レンズの調整を行った旨の記載がないから,対物レンズの焦点合わせを行っていない可能性がある。 ちなみに,被告らが,先に提出した,対象製品のバックコート層のPSDの値は,全て,構成要件Cの下限値である20,000n㎥を下回 るものであった(乙58,乙59,乙92,乙98,乙99,100,乙101及び乙103)。しかし,乙A2及び乙A コート層のPSDの値は,全て,構成要件Cの下限値である20,000n㎥を下回 るものであった(乙58,乙59,乙92,乙98,乙99,100,乙101及び乙103)。しかし,乙A2及び乙A3においては,被告製品のバックコート層のPSDの値は,80,000n㎥を上回っており,不自然である。 (被告らの主張) (ア) 被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲ではなく,被告製品は構成要件1Cを充足しない。 (イ) 被告の従業員及び被告から委託を受けた測定機関による測定の結果被告の従業員が実施した測定の結果(乙58),及び被告から委託を 受けた測定機関(MVA)が実施した測定の結果(乙59)によると,被告製品のバックコート層表面の10μm近傍のピッチにおけるスペクトル密度は,最大でも11000n㎥程度であり,構成要件1Cが規定する範囲の下限である20000n㎥を大きく下回る。したがって,10μmピッチについても,構成要件1Cが規定する範囲内に入らないこ とは明らかである。 (ウ) 「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の測定条件について仮に,原告の主張するとおり,本件明細書1の【0013】段落に記載のある,10μmピッチにおけるスペクトル密度(PSD(10μm))の測定条件を,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレーム文言中に読み込むのであれば,「10μmピッチにおけるスペクトル密 度」を測定する際に用いる測定機器は「Wyko社製HD2000」に限定されると解すべきであり,また,測定エリア(測定面積)については,「240μm×180μm」に限定されると解すべきである。 しかし,「Wyko社製HD2000」は現在,入手 社製HD2000」に限定されると解すべきであり,また,測定エリア(測定面積)については,「240μm×180μm」に限定されると解すべきである。 しかし,「Wyko社製HD2000」は現在,入手ないし利用が不可能な状態にあり,また,測定エリアを「240μm×180μm」と する非接触光学式粗さ測定機も現在,入手ないし利用が不可能な状態にある。したがって,現在,本件明細書1の【0013】段落に記載されている,非接触光学式粗さ測定機として「Wyko社製HD2000」を用い,測定エリアを「240μm×180μm」とする「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の測定を行うことはできない。このよう な,発明の実施可能性が,ある特定の非接触光学式粗さ測定機の入手・利用可能性に依存するような,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレーム解釈は,不合理であって成り立たないというべきである。 また,クレーム中に記載が一切存在しない,原告主張の測定エリア「240μm×180μm」を,何故,「10μmピッチにおけるスペクト ル密度」のクレーム文言中に読み込まなければならないのか,原告は,本件明細書1に記載があると説明するのみで,何ら具体的な根拠を示していないし,技術的な観点からも,(一般的な意味における)10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定において,測定エリアが「240μm×180μm」でなくてはならない必然性は存在しない。 以上のとおり,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレー ム文言に,本件明細書1に記載の測定条件を読み込むというクレーム解釈は成り立たない。 したがって,構成要件1B及び1Cの「10μmピッチにおけるスペクトル密度」は,「Wyko社製HD2000」で測定したものに限定され に記載の測定条件を読み込むというクレーム解釈は成り立たない。 したがって,構成要件1B及び1Cの「10μmピッチにおけるスペクトル密度」は,「Wyko社製HD2000」で測定したものに限定されないと解され,また,測定エリア「240μm×180μm」で測 定したものにも限定されないと解される。 (エ) NANOBICにおける測定結果平成29年11月10日,NANOBICにおいて,被告製品のバックコート層表面のスペクトル密度の測定を行った(乙92)。測定には,NANOBICが保有する高解像度表面形状計測装置「WykoNT 9100A」を使用した。また,測定に用いる試料は,被告製品の磁気テープからテープ片を切り出し,それをバックコート層側が上側になるように,予め長方形状のメンディングテープを張り付けたスライドガラス上に置き,テープ片の両端を片面テープでスライドガラスに固定したものを3点(試料B-1ないしB-3)用意した。その他の測定条件と して,緑色光源にフィルタを適用して,535nmの波長の光を照射し,測定モードはPSIとし,レンズは対物レンズ50倍,FOV(視野)レンズ0.55倍の組合せと,対物レンズ50倍,FOVレンズなし(1倍)の組合せの,2通りの組合せで測定を行った。また,スムージング処理はなし,補正は円筒補正・傾き補正とした。 以上の測定条件の下で測定したところ,いずれの試料についても,10μmピッチ近傍において,20000n㎥を下回るスペクトル密度の値が得られた。以上の測定結果からも,被告製品の10μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲になく,被告製品が構成要件1Cを充足しないことは明らかである。 (オ) 原告による被告製品の測定結果(甲8)が信用できな μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲になく,被告製品が構成要件1Cを充足しないことは明らかである。 (オ) 原告による被告製品の測定結果(甲8)が信用できないこと 原告は,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲にあることの証拠として,2016年12月16日付分析報告書(甲8)を提出する。しかし,同分析報告書によると,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は,原告が有する施設において,原告の 従業員によって行われたものであり,換言すれば,第三者の関与を完全に排除して測定が行われたものであるから,測定機器の校正やメンテナンスが適切に行われていたこと,測定それ自体が適切に行われていたことについては,何ら担保されていないのであり,その測定結果は,自ずと信用性の低いものとならざるを得ない。さらに,前記分析報告書によ ると,被告製品の測定に用いられた機器は,Wyko社製の「HD2000」とのことであるが,「HD2000」については,既に平成5年にメーカーによるサポートが終了しているところ,原告が被告製品の測定を行ったのは,前記分析報告書によれば2016年(平成28年)4月28日から11月25日にかけて,とのことであるから,原告が被告 製品の測定に用いた機器は,少なくとも約23年間,メーカーによるサポートを受けていないことになる。このような測定機器による測定結果は,にわかに信用することはできない。さらに,前記分析報告書においてバックコート表面のスペクトル密度を測定しているサンプルは1点のみであり,スペクトル密度の値も1点のみ得られている。なお,これに 対し,乙58,乙59及び乙92 さらに,前記分析報告書においてバックコート表面のスペクトル密度を測定しているサンプルは1点のみであり,スペクトル密度の値も1点のみ得られている。なお,これに 対し,乙58,乙59及び乙92の測定においては,いずれの測定においても3点のサンプルについて測定を行い,いずれのサンプルについても,クレームの数値範囲を下回る測定結果が得られている。測定したサンプルの数が多いほど,測定結果の信頼性が高いことは常識であり,かかる観点からも,前記分析報告書に記載の測定結果は,信用することは できない。 以上のとおり,前記分析報告書に記載の,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定結果は信用することができず,同分析報告書をもって,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲にあることが立証されているとはいえない。 (カ) 被告製品のスペクトル密度の新規の測定結果について被告らは,新たに,被告製品のバックコート層のスペクトル密度について,①NANOBIC,②MVA,③あいち産業科学技術総合センター,④新潟県工業技術総合研究所の4機関において測定を行った。 その結果,いずれの機関の測定においても,被告製品のバックコート 層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は,クレーム数値範囲外の,20000n㎥を下回る結果が得られた(乙98ないし101,103)。 (キ) 被告らによる被告製品のスペクトル密度の測定結果が信用できること被告らが新たに行った被告製品のバックコート層のスペクトル密度の測定結果(乙98ないし101,103),及び,被告らが従前行った 被告製品のバックコート層のスペクトル密度の測定結果(乙58,59, 新たに行った被告製品のバックコート層のスペクトル密度の測定結果(乙98ないし101,103),及び,被告らが従前行った 被告製品のバックコート層のスペクトル密度の測定結果(乙58,59,92)は,いずれも信用できるものである。 すなわち,これらの測定はいずれも,中立的な第三者機関が保有する,公の利用のために供されている測定機器(非接触光学式粗さ測定機)を用いて行われたものである。かかる測定機器は,中立的な第三者機関に より公の利用のために供されているという事実それ自体によって,測定を正常に行うことができるものであることが担保されているということができる。また,測定の手順についても,各測定機器のマニュアルの記載に従って測定が行われており,測定条件についても,妥当な測定条件が設定されている。なお,MVAが行った測定(乙59,103)及び あいち産業科学技術総合センターが行った測定(乙99,100)につ いては,被告らの従業員ではなく,当該機器を保有する第三者機関の職員が測定を行ったものであるところ,これらの測定結果は,より一層,信用性が高いということができる。したがって,被告らが行った被告製品のバックコート層のスペクトル密度の各測定結果は,信用することができる。 これに対し,原告は,被告らが行った測定によって得られた被告製品のバックコート層表面のスペクトル密度の各測定結果(乙58,59,92)について,それらの測定結果は信用できないとしてるる主張する。 しかしながら,原告が主張する「コントラストが取れない」の意味が不明であること,原告が主張する「レンズフォーカス調整」の内容が不明 であること,新潟県工業技術総合研究所が保有するWykoNT3300に対するブルカー社の見解はいずれも当たらないこと 意味が不明であること,原告が主張する「レンズフォーカス調整」の内容が不明 であること,新潟県工業技術総合研究所が保有するWykoNT3300に対するブルカー社の見解はいずれも当たらないことから,原告の主張には技術的に理解不能な点及び不明確な点が多数存在する。それらの点について原告が合理的な説明をしない限り,原告の主張は失当であると言わざるを得ない。 (ク) 原告による被告製品のスペクトル密度の測定結果が信用性を欠くこと原告は,被告製品のバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲内であることを示す証拠として,新たに,原告が保有するWykoHD2000を用いて被告製品のバックコート層のスペクトル密度を測定した結果(甲62),及び, NANOBICが保有する「WykoNT9100」を用いて被告製品のバックコート層のスペクトル密度を測定した結果(甲61)を証拠として提出する。 しかしながら,いずれの測定結果についても信用性に疑問があり,これらの証拠によって,被告製品のバックコート層の10μmピッチにお けるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲内であること が立証されたとはいえない。 (ケ) 被告らによるスペクトル密度の測定方法が適切であることa原告は,被告らが行ったスペクトル密度の測定は,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を正確に測定できていないと主張し,その理由として,対物レンズの倍率として50倍を選択した測定におい ては,対物レンズを正しく調整しないまま測定を実施している,と主張する。しかしながら,以下に述べるとおり,原告の主張は失当である。 b原告は,非接触光学式粗さ測定機を用いて測定対象の正確な表面形状を計 レンズを正しく調整しないまま測定を実施している,と主張する。しかしながら,以下に述べるとおり,原告の主張は失当である。 b原告は,非接触光学式粗さ測定機を用いて測定対象の正確な表面形状を計測するためには,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカ スが合っている状態で,かつ,コントラストの高い干渉縞が発生する状態に,参照面の位置を調整することが前提となる,と主張する。 原告の上記主張は,非接触光学式粗さ測定機を用いて測定対象の正確な表面形状を計測するためには,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合っている状態で,かつ,干渉縞が発生する状態であ る必要がある,という限度においては正しい。しかしながら,「測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合っている状態」というのは,ある厳密な一点を意味するものではない。すなわち,対物レンズには,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合った状態から対物レンズと測定サンプルとの間の距離を変化させても,フォー カスの合った画像がさほど変化しない範囲(焦点深度)が存在し,その範囲内であれば,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合っているということができる。同様に,「干渉縞が発生する状態」というのも,ある厳密な一点を意味するものではなく,干渉縞が発生する状態には,ある程度の幅が存在する。このことは,「WykoN T9100」の操作マニュアル(乙96)の記載からも明らかである。 すなわち,当該操作マニュアルには,「WykoNT9100」を用いた測定においては,まず,対物レンズの上下方向の位置を調整して,測定対象の表面にフォーカスが合った状態を探し出し(乙96・5-3頁の「10」),然る後,更に対物レンズの上下方向の位置の調整を行い,干渉 定においては,まず,対物レンズの上下方向の位置を調整して,測定対象の表面にフォーカスが合った状態を探し出し(乙96・5-3頁の「10」),然る後,更に対物レンズの上下方向の位置の調整を行い,干渉縞が発生する状態を探し出すこと(乙96・5-4 ~5-5頁の「11」及び「12」)が記載されている。もし,「測定対象の表面にフォーカスが合った状態」が,ある厳密な一点しか存在しないのであれば,測定対象の表面にフォーカスが合った状態において,更に対物レンズの上下方向の位置の調整を行うと,測定対象の表面からフォーカスがはずれてしまうことになるから,上記のような 測定の手順は取れないはずである。しかしながら,実際には,「WykoNT9100」の操作マニュアルには,上記のとおりの測定の手順が記載されている。このことからも明らかであるとおり,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合う状態には,ある程度の幅が存在する。そして,その範囲内で,対物レンズの上下方向の位置 を調整することによって干渉縞を発生させることができるのであれば,原告が主張するところの「フォーカスの調整」,すなわち,参照面の位置の調整を行うことなく,測定を行うことができるのであり,かかる測定は適切なものである。 c原告が主張するところの「フォーカスの調整」,すなわち,参照面 の位置の調整が必要となるのは,測定サンプルの表面にフォーカスが合った状態において,干渉縞を発生させることができない場合に限られる。このことは,原告自身が証拠として提出した,「フォーカス調整」の方法について説明した紙(甲74)にも示唆されている。すなわち,甲74には,「この調整でも干渉縞が表示されない場合は調整 範囲を超えていますのでメーカー返送して調整が必要となります。」 整」の方法について説明した紙(甲74)にも示唆されている。すなわち,甲74には,「この調整でも干渉縞が表示されない場合は調整 範囲を超えていますのでメーカー返送して調整が必要となります。」 と記載されており,ここに記載されている調整が,干渉縞を表示させるための調整であることが記載されている。換言すれば,測定サンプルの表面にフォーカスが合った状態において,対物レンズの上下方向の位置を調整することで干渉縞を発生させることができるのであれば,原告が主張するところの「フォーカスの調整」を行う必要はないので あり,かかる調整を行わなかったからといって,測定が不適切になるものではない。 dなお,原告は,干渉縞について,「コントラストの高い干渉縞」が発生している必要があると主張する。 原告の主張は,一般論としては正しい。しかしながら,どの程度の コントラストの高さの干渉縞であれば適切な測定を行うことができるか,という点については,明確な基準は存在しない。測定サンプルの表面にフォーカスが合った状態で,よりコントラストの高い干渉縞を発生させることができれば,その分,測定対象の表面形状をより正確に測定することができるのかも知れないが,どこまで干渉縞のコント ラストを高めれば十分に適切な測定を行うことができるのか,という点については,明確な基準は存在しないのである。また,測定サンプルの表面にフォーカスが合っているか否か,及び,コントラストの高い干渉縞が発生しているか否かは,機械が客観的に判断するわけではなく,測定者が,実際にカメラ画像を目視して判断する他ない。そこ には当然,測定者の主観が入ることになる。この点,原告は,原告準備書面(15)15頁の図5-2に示されている状態が,「適切に調整された状態」で 実際にカメラ画像を目視して判断する他ない。そこ には当然,測定者の主観が入ることになる。この点,原告は,原告準備書面(15)15頁の図5-2に示されている状態が,「適切に調整された状態」であると主張するが,何故そのようにいえるのか,客観的な根拠を何ら示しておらず,単に,その状態が適切であると主張しているにすぎない。このことからも明らかであるとおり,対物レン ズのフォーカスが標準サンプルに合っているか否か,及び,コントラ ストの高い干渉縞が生じているか否かは,測定者がカメラ画像を見て,主観的に判断する他ないのである。 なお,被告らがNANOBICにおいて,「WYKONT9100」について参照面の位置について様々な調整を行ってみた経験からすると,参照面の位置の調整は極めて繊細なものであり,ほんのわず かに参照面を動かしただけで,測定により得られる10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,大きく変動する。この場合,カメラ画像を見る限りでは,フォーカスや干渉縞の状態に何らかの変化が生じたようには見えないにもかかわらず,スペクトル密度の値は大きく変動している,といった現象も実際に確認されている。結局,測定サン プルの表面にフォーカスが合っているか否かの判断や,十分に高いコントラストの干渉縞が発生しているか否かの判断については,測定者の主観的な感覚に依拠せざるを得ず,その意味において,非接触光学式粗さ測定機を用いた表面形状の測定には,ばらつきが存在せざるを得ない。 e被告らがこれまで実施した測定は,いずれも,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合っている状態で,かつ,干渉縞が発生している状態で測定を行ったものであり,その測定はいずれも適切である。 なお,原告が本件訴訟において「フ いずれも,測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスが合っている状態で,かつ,干渉縞が発生している状態で測定を行ったものであり,その測定はいずれも適切である。 なお,原告が本件訴訟において「フォーカス調整」なるものについ て初めて言及したのは平成29年12月1日付原告準備書面(12)においてであるが,これを受けて,被告らは,平成30年1月15日にNANOBICにおいて被告製品のバックコート層表面の測定(乙98)を行った際,NANOBICが保管していた「FOCUS調整」の方法について記載されている紙(甲74と同様の内容が記載されて いるもの)に基づき,参照面の位置の調整を行い,より高いコントラ ストの干渉縞が発生するようにした上で測定を行った。なお,その時点で,原告がいうところの「フォーカス調整」が一体いかなる調整を指すのかは必ずしも明確ではなかったが,NANOBICが保管していた上記の紙に記載されている調整(すなわち,参照面の位置の調整)のことを指しているのではないかと一応推測されたことから,被告ら は,原告の主張の当否を検証するため,NANOBICが保管していた上記の紙の記載に基づいて対物レンズの調整を行った上で,被告製品のバックコート層表面の測定を行ったものである。しかしながら,当該測定においても,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,クレームの数値範囲を下回る測定結果が得られている。 fさらに,被告らは,香川大学に依頼して,以下の条件で,被告製品のバックコート層の10μmピッチのスペクトル密度の測定を行った(乙105)。 ・測定機器:ブルカー・エイエックスエス社製 NT9100・測定方向:テープ長手方向 ・測定モード:PSI・レンズ:対物レンズ50倍, トル密度の測定を行った(乙105)。 ・測定機器:ブルカー・エイエックスエス社製 NT9100・測定方向:テープ長手方向 ・測定モード:PSI・レンズ:対物レンズ50倍,中間レンズ0.55倍の組合せ・スムージング処理:無・補正:円筒補正・傾き補正その測定結果は,いずれの測定においても,クレームの数値範囲を 下回る測定結果が得られた。香川大学は,上記測定を行うに際し,試験片表面に焦点が合い,かつ,干渉縞が現れた状態で測定を行っており(乙105),香川大学による上記測定が適切に行われたものであることは明らかである。 gなお,被告らがあいち産業科学技術総合センターに依頼して行った 測定(乙99,100)においては,原告の従業員であるD氏の報告 書(甲73)によると,同センターではこれまで,対物レンズの調整を測定前に実施することをしていなかった,とのことである。また,被告らが問合せをして確認したところでは,被告らが測定を行った新潟県工業技術総合研究所及びNANOBICの各施設の担当者は,いずれも,非接触光学式粗さ測定機を用いた測定を行う際に参照面の位 置の調整を行う必要があるといったことを,何ら認識していなかった。 このことから分かるとおり,原告が主張するところの「フォーカス調整」は,非接触光学式粗さ測定機を用いた測定を日常的に行っている専門家でも,必ずしも知らないものである。 実際,「WykoNT9100」のマニュアル(乙96)には, 原告が主張するところの「フォーカスの調整」についての言及は,全く存在しない。また,原告がいうところの「フォーカスの調整」の方法について記載された紙(甲74)は,そもそも,何らかの非接触光学式粗さ測定機の操作マニュアルの一部を構成 の調整」についての言及は,全く存在しない。また,原告がいうところの「フォーカスの調整」の方法について記載された紙(甲74)は,そもそも,何らかの非接触光学式粗さ測定機の操作マニュアルの一部を構成するものではない。なお,被告らが甲74の紙についてブルカー社に確認したところ,ブル カー社は,甲74の紙がブルカー社の作成に係るものであり,「WykoNT9100」をターゲットにしたものであることは認めたものの,その頒布状況については,問合せのあった顧客に対してメールで送付しているとの回答に留まった(乙106)。このように,ブルカー社は,甲74の紙を,「WykoNT9100」の全てのユー ザーに対して頒布してはいなかった。実際,前述したあいち産業科学技術総合センターは,「WykoNT9100」を保有しているが,被告らが同センターに問合せをして確認したところ,同センターの担当者は,甲74の紙には見覚えがないとのことであった。 さらに,原告自身が従前行った測定においても,原告が主張すると ころの「フォーカスの調整」が行われたことを示す記載は存在しない (甲8,甲62)。とりわけ,原告が公証人の面前で行った測定について記載した公正証書(甲62)には,キャリブレーションを行ったことについての言及はある(「9」)ものの,原告が主張するところの「フォーカスの調整」を行ったことを示唆する記載は,一切存在しない。このように,原告自身も,甲62の測定が行われた平成29年 11月16日の時点では,非接触光学式粗さ測定機を用いた測定において,「フォーカスの調整」を行う必要があったとは認識していなかったものである。このことは,原告が主張するところの「フォーカスの調整」,すなわち,参照面の位置の調整は,非接触光学式粗さ測定 定において,「フォーカスの調整」を行う必要があったとは認識していなかったものである。このことは,原告が主張するところの「フォーカスの調整」,すなわち,参照面の位置の調整は,非接触光学式粗さ測定機を用いる測定者が,測定を行う前に通常は必ず実施する必要のある ような性質の調整ではなく,非接触光学式粗さ測定機を用いたスペクトル密度の測定において行う必要があると当業者が認識するものではないことを示している。したがって,非接触光学式粗さ測定機を用いる測定者が,測定を行う前に,原告が主張するところの「フォーカスの調整」を行っていなかったからといって,当該測定が当然に不適切 になるものでないことは明らかである。 h以上のとおり,被告らが実施した測定のうち,対物レンズの倍率として50倍を選択した場合の測定が不適切であるとする原告の主張は失当である。 iところで,これまでに原告及び被告らが測定した被告製品のバック コート層表面の10μmピッチのスペクトル密度の測定結果を見ると,クレームの数値範囲内(20000~80000n㎥)に入っているものと,入っていないものが存在することになる。被告らが実施した測定は,いずれも適切なものであるが,仮に,原告が実施した測定も適切であるとすると,被告製品のバックコート層表面の10μmピッ チのスペクトル密度については,適切な測定により得られる結果には 測定方法・条件によってばらつきがあり,クレームの数値範囲内に入る場合と入らない場合が存在することになる。このような場合,適切な測定により得られた測定結果が,常にクレームの数値範囲内に入るわけではない以上,被告製品は,本件発明1の構成要件1Cを充足しないと言わざるを得ない。 (コ) 対物レンズの倍率原告は,本件 測定により得られた測定結果が,常にクレームの数値範囲内に入るわけではない以上,被告製品は,本件発明1の構成要件1Cを充足しないと言わざるを得ない。 (コ) 対物レンズの倍率原告は,本件発明1において,10μmピッチのスペクトル密度を測定する際の対物レンズの倍率は,50倍に決定されると主張するが,その根拠は,HD2000測定ガイド(甲79)に記載のスペック表によれば,HD2000において用いられる最高倍率の対物レンズは50倍 である,ということに尽きる。また,そもそも,10μmピッチのスペクトル密度を測定する際に,当業者が必ず50倍の対物レンズを選択するわけではない。実際,原告の出願に係る特開2003-338023号公報(乙73)には,光干渉式表面粗さ計(WYKO社製HD2000)で5倍の倍率で10μmピッチのPSDを測定することが記載され ている(乙73・段落【0012】,【0092】)。このことからも,当業者が本件発明1における「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際,50倍の対物レンズを必ず選択するものでないことは明らかである。 そもそも,本件明細書1の段落【0013】には,用いるべき対物レ ンズの倍率についての記載は一切存在しないから,原告の上記主張は,本件明細書1の記載に基づくものではない。 以上のとおり,本件発明1における「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際の対物レンズの倍率は当然に50倍に決まるものではなく,原告の主張は失当である。 (サ) 原子間力顕微鏡による測定の方がより正確にスペクトル密度を測定で きることa測定対象の10μmピッチにおけるスペクトル密度をより正確に測定する場合には,非接触光学式粗さ測定機ではなく,原子間力顕微鏡 る測定の方がより正確にスペクトル密度を測定で きることa測定対象の10μmピッチにおけるスペクトル密度をより正確に測定する場合には,非接触光学式粗さ測定機ではなく,原子間力顕微鏡を用いた測定の方がより適切である。そして,原子間力顕微鏡を用いて被告製品のバックコート層を測定して得られた10μmピッチにお けるスペクトル密度の値は,クレームの数値範囲を上回るから,結局,被告製品は,構成要件1Cを充足しない。以下,詳述する。 bそもそも,物体表面のスペクトル密度を測定する方法は,非接触光学式粗さ測定機を用いる方法に限定されるわけではなく,原子間力顕微鏡(AtomicForceMicroscope(AFM))を用いてスペクトル密度 を測定することも可能である。 原子間力顕微鏡は,探針(プローブ)の先端を測定対象の表面に接触させ,あるいは表面から一定の間隔を保って測定対象の表面を走査し,測定対象の表面の凹凸形状を測定する機器である。 非接触光学式粗さ測定機は,通常,数百ナノメートルの波長を有す る光を用いて,物体の表面形状を測定する。これに対し,原子間力顕微鏡の探針の先端の半径は通常,50nm以下である。そのため,原子間力顕微鏡は,非接触光学式粗さ測定機が用いる光の波長よりも微細な凹凸の有無及びその高さを,より高解像度で測定することが可能である。 したがって,測定対象の10μmピッチにおけるスペクトル密度をより正確に測定したいのであれば,非接触光学式粗さ測定機ではなく,原子間力顕微鏡を用いた測定の方が,より適切である。このことは,物体の表面形状の測定技術の分野においては技術常識である。 cこの点,被告らが,被告SSMMが保有する原子間力顕微鏡(Dimen sion 3100 の方が,より適切である。このことは,物体の表面形状の測定技術の分野においては技術常識である。 cこの点,被告らが,被告SSMMが保有する原子間力顕微鏡(Dimen sion 3100 (NanoScopeIVSPMControlStation))を用いて被告製品 のバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した結果は,いずれもクレームの数値範囲(20000~80000n㎥)を上回っている(乙113)。 dところで,原告は,非接触光学式粗さ測定機において,フォーカスがずれた状態で測定を行うと,隣同士の複数の領域(測定点)のデー タがまとめてならされた1つのデータとして取得される結果,測定サンプルの微細な表面形状を正確に測定することができず,実際の形状よりも滑らかなデータしか取得できないため,そこから本来の表面形状を反映したスペクトル密度を得ることができなくなる,と主張する。 また,原告の従業員であるD氏の2018年2月9日付報告書(3) (甲65)によると,同氏は,ブルカー社の担当者より,「一般に,粗さ(PSD値を含む)の測定において,対物レンズのフォーカスが異なる状態で測定された場合,測定数値が大きい測定結果の方が対物レンズが適切な状態にあり,信憑性が高いと考えられる。」との説明を受けたとのことである(甲65・2~3頁)。以上の原告の主張, 及びD氏の報告書の記載からすると,原告は,測定サンプルの微細な表面形状をより正確に測定した場合には,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値はより大きな値になり,大きな値の方がより信憑性が高い,ということを主張する趣旨であると解される。 かかる原告の論法によるならば,被告らによる原子間力顕微鏡を用 いた上記測定により得られ の値はより大きな値になり,大きな値の方がより信憑性が高い,ということを主張する趣旨であると解される。 かかる原告の論法によるならば,被告らによる原子間力顕微鏡を用 いた上記測定により得られた10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,原告による非接触光学式粗さ測定機を用いた測定で得られた10μmピッチにおけるスペクトル密度の値をいずれも上回っており,そのことは,測定サンプルの微細な表面形状をより正確に測定した結果であって,被告らによる原子間力顕微鏡を用いた上記測定の方がよ り信憑性が高い,ということに帰する。 eなお,本件発明1において,10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法が,本件明細書1の【0013】段落に記載されている方法に限定されるものでなく,この点についての原告の主張が失当であることは,既に述べたとおりである。 f以上のとおり,測定対象の10μmピッチにおけるスペクトル密度 をより正確に測定する場合には,非接触光学式粗さ測定機ではなく,原子間力顕微鏡を用いた測定の方がより適切である。そして,原子間力顕微鏡を用いて被告製品のバックコート層を測定して得られた10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,クレームの数値範囲を上回っているのであるから(乙113),結局,被告製品は,構成要件 1Cを充足しない。 g新たな測定(第3事件のみの主張)被告らは,三井化学分析センターに依頼し,被告製品の磁気テープのバックコート層のスペクトル密度の測定を行った。測定を行った被告製品は,被告SSMMがOEM顧客であるHewlettPackardEnterp rise(以下「HPE」という。)のために製造した磁気テープカートリッジ「LTO-7 UltriumRWData SSMMがOEM顧客であるHewlettPackardEnterp rise(以下「HPE」という。)のために製造した磁気テープカートリッジ「LTO-7 UltriumRWDataCartridge 15TB」(製品番号:C7977A,ロット番号:5170919005,製造年月日:平成29年9月19日)である(乙A1)。 三井化学分析センターは,上記の被告製品から取り出した磁気テー プ(サンプル7-1及び7-2)について,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を,以下の条件で測定した。 ・測定機器: WYKONT1100・測定方向: テープ長手方向・照射光: 白色光源に,605nmのフィルタを用いて605n mの波長の光を照射 ・測定モード: PSI・レンズ: 対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せ・スムージング処理: 無・補正: 円筒補正・傾き補正なお,三井化学分析センターは,10μmにおけるスペクトル密度 の測定を適切に行っていることを原告自身が積極的に認めた測定機関であり,原告は,同センターでの測定結果を証拠として提出している。 また,レンズについては,原告も,10μmにおけるスペクトル密度を測定するためには50倍の対物レンズを使用する必要があると主張している。 測定結果は,10μm近傍である9.73μmピッチ及び10. 34μmにおける各スペクトル密度が,いずれも80000n㎥を上回っている(乙A1ないし3)ことから,10μmピッチにおけるスペクトル密度もまた80000n㎥を上回っていることは明らかである。なお,原告は,「本件発明1においては,本件明細書1の段落【0 013】の記載から導かれるサンプリン 10μmピッチにおけるスペクトル密度もまた80000n㎥を上回っていることは明らかである。なお,原告は,「本件発明1においては,本件明細書1の段落【0 013】の記載から導かれるサンプリング長は0.34~1.58μmであるが,本件発明1においては,10μmピッチにおけるPSDの強度を算出するものであるところ,PSDの値に有意な差は生じないと考えられる。この点は,C意見書(甲83)においても述べられているとおりである。」と主張しており(第1事件・第2事件の原告 準備書面17),かかる原告の主張を前提とすると,CCDの認識精度がサンプリング長で0.2μmという測定条件は,本件明細書の記載に照らして許容される測定条件であり,換言すれば,「WYKONT1100」を用い,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いることは,本件明細書から排除されていないことに帰する。 ウ被告製品は構成要件1Gを充足するか(争点3-3) (原告の主張)(ア) 被告製品は,再生ヘッドとしてGMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される(構成1g)ため,被告製品は構成要件1Gを充足する。 (イ) 被告らは,被告製品が,巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッ ド)を用いたLTOドライブを用いて再生可能であることを認めているが,構成要件1Gは,「再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される」というものである。被告製品が再生ヘッドとしてGMRヘッドを用いたドライブで再生可能である以上,構成要件1Gを充足することは明らかである。 (ウ) 被告らは,構成要件1Gの解釈として,「構成要件1Gが『使用することができる』ではなく『使用される』という文言を用い 再生可能である以上,構成要件1Gを充足することは明らかである。 (ウ) 被告らは,構成要件1Gの解釈として,「構成要件1Gが『使用することができる』ではなく『使用される』という文言を用いている以上,当該磁気テープは,『再生ヘッドシステムとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システム』において使用されることが要件である。」と主張する。しかし,被告らの主張によっても,被告製 品はまさに再生ヘッドシステムとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用されるものであるから,被告らの主張は,何ら被告製品による構成要件1Gの充足性を否定する根拠とはならない。仮に,被告らの上記主張が,巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいてのみ使用される,とい うことを本件発明1の発明特定事項であると理解しているとすれば,そもそもそのような限定解釈は誤りであって成り立たない。 (被告らの主張)(ア) 被告製品が構成1gを有すること,及び構成要件1Gを充足することは,いずれも否認する。被告製品は,巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(G MRヘッド)以外のヘッドを用いたドライブでも再生可能であり,巨大 磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用されるとは限らない。原告は,GMRヘッドがMRヘッドの一種であるかのように主張するが,誤りである。MRヘッドとGMRヘッドは異なる種類のヘッドであると理解されており,前者が後者を包含する関係にはない(乙65,66)。 (イ) 構成要件1Gの文言は,「再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される・・・磁気テープ」であり,「使用することができ 乙65,66)。 (イ) 構成要件1Gの文言は,「再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される・・・磁気テープ」であり,「使用することができる」磁気テープではない。構成要件1Gが「使用することができる」ではなく「使用される」という文言を用いている以上,当該磁気テープは,「再生ヘッドとして巨大磁気 抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システム」において使用されることが要件である。 (4) 争点4(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか(被告製品は構成要件2Aを充足するか))(原告の主張) ア被告システムは,磁気記録媒体に最小bit長52.34nmで磁気信号を記録し,該記録された信号をGMRヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムである(構成2a)から,被告システムは,構成要件2Aを充足する。 イ本件明細書2において,「最近ではMR(磁気抵抗)を動作原理とする 記録再生用MRヘッドが開発され」(段落【0003】)とあるように,構成要件2Aの「MRヘッド」とは「MR(磁気抵抗)を動作原理とする」ヘッドを意味するところ,GMRヘッドが「GiantMagnetoresistancehead(巨大磁気抵抗ヘッド)」の略称であることに端的に示されているとおり,GMRヘッドが磁気抵抗を動作原理としていることに変わりはない。 さらに,GMRヘッドが,磁気抵抗を動作原理とするMRヘッドの一種で あることについては,被告自身の特許出願に係る特許明細書において,被告自ら認めていることである。これらの一例を挙げれば,次のとおりである(甲33・特開2004-253088段落【0001】,甲34・特開2003-223774段落【0003】,甲3 細書において,被告自ら認めていることである。これらの一例を挙げれば,次のとおりである(甲33・特開2004-253088段落【0001】,甲34・特開2003-223774段落【0003】,甲35・特開2002-175612段落【0004】,甲26・特開2002-197830段落 【0004】,甲27・特開2002-197828段落【0004】,甲28・特開2002-197746段落【0004】,甲29・特開2002-197747段落【0005】,甲30・特開2002-197748段落【0004】,甲31・特開2002-183932段落【0005】)。 したがって,「MRヘッドとGMRヘッドは異なる種類のヘッドであると理解されており,前者が後者を包含する関係にはない」などとする被告の主張が成り立つ余地はない。 被告は,MRヘッドとGMRヘッドが異なる種類のヘッドであるという主張の根拠として,乙64ないし66を挙げているが,乙64には,被告 も認めるとおり,「原理はMRヘッドと同じ」であることが明記されており,GMRヘッドが磁気抵抗を動作原理とすることを否定していない。乙65も同様である。また,乙66は,その文脈上,AMRヘッドのことを「MRヘッド」と称しているものと思われるが,いずれにしても,GMRヘッドが磁気抵抗を動作原理とすることを否定したものではない。被告ら が挙げる乙64~66の記載は,感度の高いMRヘッドの一種であるGMRヘッドを,従来のMRヘッドとは区別して述べているにすぎない。 (被告らの主張)ア被告製品が「最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録」される磁気記録媒体であることは認め,「該記録された信号をMRヘッドを 用いて再生」される磁気記録媒体であることは否認する。 ア被告製品が「最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録」される磁気記録媒体であることは認め,「該記録された信号をMRヘッドを 用いて再生」される磁気記録媒体であることは否認する。被告製品は,M Rヘッドを用いたドライブでは,そもそも再生することができない。 イ被告システムは,磁気記録媒体に記録された信号をGMRヘッドを用いて再生するものであるところ,GMRヘッドは「MRヘッド」には該当しないから,被告システムは構成要件2Aを充足しない。MRヘッドとGMRヘッドは異なる種類のヘッドであると理解されており,前者が後者を包 含する関係にはない。例えば,オンライン辞典である「ASCII.jpデジタル用語辞典」には,「GMRヘッド」について,「巨大磁気抵抗効果ヘッド。コバルト系の多層膜でできている素子を利用したハードディスクの磁気ヘッド。原理はMRヘッドと同じだが,3倍以上の感度を実現している。」との記載が存在し,MRヘッドとGMRヘッドを明確に区別し ている(乙64)。同様の記載は,ウェブサイト「日経テクノロジーオンライン」の「GMRヘッド」の項目にも存在する(乙65)。また,「NTTPCコミュニケーションズ」のウェブサイトでは,MRヘッドとGMRヘッドを並列的に記載した上で,別の種類のヘッドであると説明している(乙66)。 原告は,構成要件2Aの「MRヘッド」とは,「MR(磁気抵抗)を動作原理とする」ヘッドを意味するところ,GMRヘッドも磁気抵抗を動作原理とすることに変わりはないと主張する。しかしながら,原告が引用する本件明細書2の【0003】段落の記載は,「MR(磁気抵抗)を動作原理とする記録再生用MRヘッドが開発され・・・」である。この記載か らは,「記録再生用MRヘッド」が「 ながら,原告が引用する本件明細書2の【0003】段落の記載は,「MR(磁気抵抗)を動作原理とする記録再生用MRヘッドが開発され・・・」である。この記載か らは,「記録再生用MRヘッド」が「MR(磁気抵抗)を動作原理とする」ものであることは読み取れるが,「MR(磁気抵抗)を動作原理とする」ものであればすべからく「MRヘッド」である,といったことは,何ら読み取ることはできないから,原告の主張は失当である。 また,原告は,甲27ないし31,33ないし35の記載を挙げて,G MRヘッドはMRヘッドの一種であると主張する。しかしながら,原告が 挙げる上記文献は,いずれも,被告による特許出願の公開公報であるところ,そこにおいてGMRヘッドがMRヘッドの一種であるかのような記載が存在したとしても,かかる理解が一般的に受け入れられていたことの根拠とはならないから,原告の主張は失当である。 さらに,原告は,乙64ないし66は,GMRヘッドが磁気抵抗を動作 原理とすることを否定するものではないと主張する。しかしながら,磁気抵抗を動作原理とするヘッドが全て「MRヘッド」と呼ばれるわけではなく,その中でも「MRヘッド」と「GMRヘッド」の区別が存在することは,乙64ないし66から明確に読み取ることができる事項であるから,原告の主張は失当である。 (5) 争点5(本件特許権2の間接侵害が成立するか)(原告の主張)ア被告製品は,被告システムの生産にのみ用いる物である(甲10,11)から,被告による被告製品の製造,販売及び販売の申出について,特許法101条1号の間接侵害が成立する。 イ被告システムの「生産」について「被告システム」は,磁気テープカートリッジである被告製品と,LTO-7ドライブとからなり 売の申出について,特許法101条1号の間接侵害が成立する。 イ被告システムの「生産」について「被告システム」は,磁気テープカートリッジである被告製品と,LTO-7ドライブとからなり,被告製品には,LTO-7ドライブにより,最小記録bit長50~500nmで磁気信号が記録され,被告製品に記録された信号をLTO-7ドライブに備えられたGMRヘッドが再生する, 磁気記録再生システムである。そして,被告製品は,LTO-7仕様書に準拠した磁気テープカートリッジであり,被告システムにおいてのみ使用される物である(甲10,11)。したがって,被告製品の製造等について,特許法101条1号の間接侵害が成立することは明らかである。 被告システムは,被告製品とLTO-7ドライブを含むことで「発明の 構成要件のすべてを充足する」ことになるのであり,被告システムとLT O-7ドライブとが組み合わさることで「新たな物」である被告システムが作り出されることになる。 被告らの主張によれば,テープカートリッジとドライブとの組み合わせにより初めて成り立ち得る磁気記録再生システムの発明において,テープカートリッジが特定のドライブに挿入されたまま使用されるのでなければ, テープカートリッジが当該システムにのみ用いられるものであっても間接侵害は成立しないということになるが,そのような理解は明らかに常識に反する。 ウ輸出される被告製品について被告らの主張は明確ではないが,被告らは,被告らによる被告製品の生 産工程のいずれかの時点で,日本国内向けか外国向けかが特定されることを前提に,輸出される被告製品の生産行為について間接侵害の成立を否定する趣旨であると解される。そうであれば,少なくとも,日本国内向けの被告製品の生産行為 で,日本国内向けか外国向けかが特定されることを前提に,輸出される被告製品の生産行為について間接侵害の成立を否定する趣旨であると解される。そうであれば,少なくとも,日本国内向けの被告製品の生産行為については,間接侵害が成立することは明らかである。 被告らは国内において生産された被告製品が多くの割合で海外に輸出さ れていると主張するが,これを裏付ける証拠を提出しておらず,その審理のために多くの時間を費やすことが予想されるから,当該主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 仮に,被告らの主張するとおり,国内において生産された被告製品が多くの割合で海外に輸出されており,かつ,被告製品の生産段階において, 海外向けと日本向けの区別が不可能であるとしても,別件訴訟(当庁平成28年(ワ)第32577号等)において被告ソニーは「本件の被告製品Aの商流では,多関節搬送装置事件の事例と異なり,製造段階において国内販売分と海外輸出分とが予め分かれておらず,被告が日本国内で製造する全ての被告製品Aについて,日本国内での直接侵害に用いられる十分な 蓋然性が存在し,原告の特許権が侵害される危険性は高いといえる。よっ て,本件では,被告製品Aの製造行為全体について間接侵害が成立するというべきであり,被告の上記主張は失当である。」と主張しており,かかる主張によれば,被告らによる被告製品の生産行為全体について間接侵害が成立すべきことを,被告らは自認しているに等しく,間接侵害が成立することとなる。 エ包袋禁反言に反するとの主張について出願人が「磁気記録媒体」から「磁気記録再生システム」に補正したのは,「磁気記録媒体」との特定では,「磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が10 との主張について出願人が「磁気記録媒体」から「磁気記録再生システム」に補正したのは,「磁気記録媒体」との特定では,「磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下」との要件との関係で,磁気記録媒体の記録方法に応じて侵害となっ たりならなかったりすることとなり,物の発明として特定されていないとの指摘に対応するためである。すなわち,出願人は,特許請求の範囲を明確にすべく,磁気記録媒体及び当該磁気記録媒体への記録を含めた「磁気記録再生システム」とするよう補正を行ったにすぎない。当該補正は,単に迅速な権利取得の観点からなされたにすぎず,特許請求の範囲に磁気記 録媒体が含まれないようにする意図に出たものでも,磁気記録媒体についての間接侵害の成立を排除するために行われたものでもない。このことは審査経過からも明らかであって,間接侵害を理由として磁気記録媒体に対して本件特許権2を行使することが禁反言の法理に反することはないから,被告の主張は失当である。 (被告らの主張)ア被告ソニーはそもそも被告製品の製造を行っていないから,この点について間接侵害が成立する余地はない。他方,被告ソニーは現在,被告製品の販売等を行っているが,以下に述べるとおり,この点についても本件特許権2の間接侵害は成立せず,原告の主張は失当である。 イ被告製品は被告システムの「生産」に用いるものではないこと 特許法101条1号にいう「物の生産」とは,特許発明の技術的範囲に属する物を新たに作り出す行為を意味し,具体的には,「発明の構成要件を充足しない物」を素材として「発明の構成要件のすべてを充足する物」を新たに作り出す行為をいう。しかしながら,被告製品の場合は,被告製品をある たに作り出す行為を意味し,具体的には,「発明の構成要件を充足しない物」を素材として「発明の構成要件のすべてを充足する物」を新たに作り出す行為をいう。しかしながら,被告製品の場合は,被告製品をある特定のドライブで使用したとしても,使用後は当該ドライブから 被告製品を取り出して,別のテープカートリッジを当該ドライブで使用し,あるいは,取り出した当該被告製品を別のドライブで使用することができるのであるから,被告製品と特定のドライブとが組み合わさることで新たな物が作り出されると評価することはできない。もし,被告製品と特定のドライブとが組み合わさることで新たな物が作り出されるとすると,被告 製品を当該ドライブから取り出す都度,その新たな物は破壊され,あるいは喪失することになるが,被告製品をドライブから取り出すことは被告製品の通常の用法の一環であり,これを何らかの物の破壊ないし喪失行為であると捉えるのは常識に反する。したがって,被告製品をLTO7ドライブで使用したとしても,それにより何らかの物の「生産」が行われるもの ではないから,被告製品は被告システムの「生産」に用いるものではない。 以上のとおり,被告製品は被告システムの「生産」に用いるものではないから,この点を前提とする原告の間接侵害の主張は成り立たない。 ウ輸出される被告製品は「日本国内での生産」に用いるものではないこと被告製品は,その大半がテープカートリッジの状態で海外に輸出されて おり,日本国内において流通する被告製品はごくわずかである。被告ソニーの従業員であるE氏の陳述書(乙107)によれば,被告製品が発売された平成27年12月頃から平成30年3月31日までの間に海外に輸出された被告製品は●(省略)●巻,日本国内で販売された被告製品は●(省略)●巻であり の陳述書(乙107)によれば,被告製品が発売された平成27年12月頃から平成30年3月31日までの間に海外に輸出された被告製品は●(省略)●巻,日本国内で販売された被告製品は●(省略)●巻であり,●(省略)●%以上が海外に輸出されたことが分かる。 原告は,この点について,被告らの主張が時機に後れた攻撃防御方法であ るとして却下を求めているが,被告らの主張は乙107により明確に裏付けられているから,この点について審理することは訴訟の完結を遅延させるものではない。 ここで,特許法101条1号にいう「生産」とは,日本国内での生産を意味し,日本国内におけるものに限られる。これは,間接侵害規定は特許 権の効力を拡張するものではなく,その効力の実効性を実質的に確保するための制度であるとされているところ,外国で生産される物についてまで「その物の生産にのみ用いる物」であるとして特許権の効力を及ぼすと,日本の特許権者が本来当該特許権によって及ぼし得ないはずの外国における実施行為(生産)にまで効力を及ぼすのと同等の結果を招来することに なってしまい,妥当でないからである。本件では,仮に,被告製品をLTO7ドライブで使用する行為が何らかの物の「生産」に該当すると解したとしても,海外に輸出される被告製品については,かかる使用行為は海外において行われるから,いずれにせよ,日本国内における「生産」行為は存在しない。以上のとおり,少なくとも海外に輸出される被告製品につい ては,「日本国内での生産」に用いるものではないから,間接侵害が成立する余地はない。 また,被告製品の生産ラインは,海外向けと日本向けの製品とで共通し,外観(パッケージ)も中身も同一であるから,被告製品の生産段階では,個々の被告製品が海外向けであるか,それとも する余地はない。 また,被告製品の生産ラインは,海外向けと日本向けの製品とで共通し,外観(パッケージ)も中身も同一であるから,被告製品の生産段階では,個々の被告製品が海外向けであるか,それとも日本向けであるかを区別す ることはできない。原告は,別件訴訟(当庁平成28年(ワ)第32577号)において,日本国内での特許製品の生産と日本国外での特許製品の生産の両方に用いられる可能性がある物を生産する行為は,特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」の生産には当たらない旨主張立証しており(乙94,95),かかる主張によれば,被告らによる被告製 品の生産行為については一切,間接侵害が成立しないことになる。 エ原告が被告製品について間接侵害を主張することは包袋禁反言に反すること本件特許2の出願人(富士写真フイルム株式会社)は,本件特許2に係る特許出願の審査経過において,磁気記録媒体に係る発明を記載した請求項について,実施可能要件違反及び明確性要件違反を理由として拒絶査定 を受けたことから,当該拒絶理由を解消するために,当該請求項に記載の発明を「磁気記録媒体」から「磁気記録再生システム」に補正し,「磁気記録媒体」の発明を記載した請求項を削除し,これにより特許査定を受けるに至っている(乙15ないし22)から,特許を得た後に,本件特許2の出願人から本件特許2を承継した原告が,磁気記録媒体である被告製品 について本件特許権2の間接侵害を主張することは,包袋禁反言に反し,許されない。そして,被告製品は磁気テープカートリッジであり,「磁気記録媒体」に他ならないから,原告が被告製品について本件特許権2の間接侵害を主張することは許されない。以上から,間接侵害は成立しない。 (6) 争点6(本件特許1に無効理 カートリッジであり,「磁気記録媒体」に他ならないから,原告が被告製品について本件特許権2の間接侵害を主張することは許されない。以上から,間接侵害は成立しない。 (6) 争点6(本件特許1に無効理由が存するか) ア磁気テープ1に基づく進歩性欠如(無効理由1-1)(争点6-1)(被告らの主張)(ア) 本件発明1-1及び1-2は,本件特許1の優先日(平成18年3月31日)前に公然実施された発明(特許法29条1項2号)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,進 歩性を欠く(特許法29条2項)。なお,本件発明1-2が進歩性を欠く場合には,本件発明1-1も必然的に進歩性を欠くことになるから,以下ではまず,本件発明1-2が進歩性を欠くことについて主張する。 (イ) 引用発明1(磁気テープ1)a磁気テープカートリッジ「DGD125P」(磁気テープ1)は, 本件特許1の優先日よりも前の平成8年頃に被告から発売された,磁 気テープの規格である「DigitalDataStorage 3」(以下「DDS3規格」という。)に準拠する,データ記録用の磁気テープカートリッジである(乙58,61)。 b磁気テープ1は,磁性の上層,非磁性の下層,非磁性のベースフィルム及びバックコート層の4層からなる。磁性の上層が存在する側を 上側とした場合,各層の順序は,①上層,②下層,③ベースフィルム,④バックコート層の順となる(乙61)。磁性の上層は磁性粉末及び結合剤からなり,非磁性の下層は非磁性粉末及び結合剤からなる。上層に含まれる磁性粉末は強磁性金属粉末である。 c磁気テープ1の磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密 度は800~10000n㎥の範囲内であり,また 性粉末及び結合剤からなる。上層に含まれる磁性粉末は強磁性金属粉末である。 c磁気テープ1の磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密 度は800~10000n㎥の範囲内であり,また,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲内であったと認められる。磁気テープ1は,磁気誘導ヘッドを使用するドライブを使用して再生することが可能なものであった。 d以上のとおり,ベースフィルムの一方の面に,強磁性金属粉末及び 結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録テープであって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲である磁気記録テープであって,再生ヘッドとして磁気誘導ヘ ッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される磁気記録テープ(以下「引用発明1」という。)は,本件特許1の優先日前に公然実施されていた。 (ウ) 本件発明1-2と引用発明1の対比本件発明1-2と引用発明1と対比すると,一致点及び相違点は以下 のとおりである。 a一致点非磁性支持体の一方の面に,強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるス ペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲であることを特徴とする磁気記録テープである点。 b相違点①本件発明1-2では,強磁性粉末として,平均板径が10~40nmの範囲の六方晶フェライト粉末 密度は20000~80000n㎥の範囲であることを特徴とする磁気記録テープである点。 b相違点①本件発明1-2では,強磁性粉末として,平均板径が10~40nmの範囲の六方晶フェライト粉末を使用しているのに対し,引用発 明1では,強磁性粉末として強磁性金属粉末を使用している点。 ②本件発明1-2では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaが0.5~2.5nmの範囲であるのに対し,引用発明1では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaは不明である点。 ③本件発明1-2では,磁気記録テープは再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用されるのに対し,引用発明1では,磁気記録テープは再生ヘッドとして磁気誘導ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される点。 (エ) 相違点①について相違点①については,磁気テープの磁性層における強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を使用することは,公知文献(乙23ないし38)に開示されており,本件特許1の優先日前より周知の技術であった。また,上記公知文献において,強磁性金属粉末及び六方晶フェライト粉末 が並列的に挙げられていることからも明らかであるとおり,六方晶フェ ライト粉末は,磁気テープの磁性層に使用する強磁性粉末として,強磁性金属粉末に代替し得るものとして当業者に認識されていた。さらに,特開2002-373414号公報(乙34)に記載されているとおり,六方晶フェライト粉末は金属強磁性粉末と比較して,粒子径を微細化することでノイズを低減することができ,低ノイズの磁気記録媒体が得ら れるという利点があり(3頁4欄37~43行),当業者が強磁性金属粉末 ェライト粉末は金属強磁性粉末と比較して,粒子径を微細化することでノイズを低減することができ,低ノイズの磁気記録媒体が得ら れるという利点があり(3頁4欄37~43行),当業者が強磁性金属粉末に代えて六方晶フェライト粉末を用いる動機付けが存在した。 また,磁気テープの磁性層における強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を使用する際,平均板径が10~40μmの六方晶フェライト粉末が好ましいことは,当業者に周知であった(乙24,26ないし31, 35ないし38)。 したがって,引用発明1において,強磁性金属粉末に代えて,平均板径が10~40μmの六方晶フェライト粉末を用いることは,当業者が容易になし得たことである。 (オ) 相違点②について 相違点②については,磁気テープの磁性層の中心面平均粗さRaを0. 5~2.5nmの範囲とすることが好ましいことは当業者にとって周知であり(乙24,26,28ないし31,37,38),Raをこの範囲とすることは,当業者が適宜なし得ることであった。 また,Raの測定に原子間力顕微鏡(AFM)を用いることも当業者 にとって周知であり(乙39ないし42),Raを測定するための機器として原子間力顕微鏡を選択することは,当業者が適宜なし得ることであった。 したがって,引用発明1において,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaを0.5~2.5nmの範囲とする ことは,当業者が容易になし得たことである。 (カ) 相違点③について相違点③については,再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムは,本件特許1の優先日前より周知の技術であり(乙24,26,28ないし34,37,38),これらの文献においては,磁気記録媒 ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムは,本件特許1の優先日前より周知の技術であり(乙24,26,28ないし34,37,38),これらの文献においては,磁気記録媒体を再生ヘッドに巨大磁気抵抗素子を使 用するシステムで使用すると好適であるとされていた。 また,巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)は,従来の誘導型磁気ヘッドと比較して,ヘッドの再生感度が向上しており,GMRヘッドを用いることで記録ビットの面積が小さくても十分な信号S/Nが得られ,媒体の記録密度を飛躍的に向上させることができるという長 所を有するものであり,このこともまた,当業者に周知であった(特開2002-324313号公報(乙43)・2頁1欄49行~2欄6行,特開2005-63507号公報(乙44)・2頁46行~3頁1行)。 したがって,当業者には,引用発明1において,再生ヘッドとして,磁気誘導型ヘッドに代えて巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いる動機付 けが存在した。 したがって,引用発明1において,再生ヘッドとして磁気誘導ヘッドを使用する磁気信号再生システムに代えて,再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムを用いることは,当業者が容易になし得たことである。 (キ) なお,上記相違点①ないし③をひとまとまりのものとして考えた場合であっても,磁気テープの磁性層における強磁性粉末として平均板径が10~40μmの六方晶フェライト粉末を使用し,磁気テープの磁性層の中心面平均粗さRaを0.5~2.5nmの範囲とし,かつ,再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用することは,前述した 公知文献(乙24,26,28ないし31,37,38)に開示されて おり, .5~2.5nmの範囲とし,かつ,再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用することは,前述した 公知文献(乙24,26,28ないし31,37,38)に開示されて おり,本件特許1の優先日前より周知の技術であった。 また,前述のとおり,Raの測定に原子間力顕微鏡(AFM)を用いることも当業者にとって周知であり,Raを測定するための機器として原子間力顕微鏡を選択することは,当業者が適宜なし得ることであった。 したがって,引用発明1において,磁気テープの磁性層における強磁 性粉末として平均板径が10~40μmの六方晶フェライト粉末を使用し,原子間力顕微鏡によって測定される磁気テープの磁性層の中心面平均粗さRaを0.5~2.5nmの範囲とし,かつ,再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用することは,当業者が容易になし得たことである。 (ク) 以上のとおり,本件発明1-2と引用発明1の相違点に係る構成は,当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得たものであるから,本件発明1-2は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性を欠く。 そして,従属項である請求項2に記載された発明である本件発明1- 2が進歩性を欠く以上,その独立項である請求項1に記載された発明である本件発明1-1もまた,進歩性を欠く。 したがって,本件特許1には,進歩性欠如の無効理由が存在する(原告の主張)(ア) 「引用発明1」が本件特許1の優先日前に公然実施をされた発明とは いえないことa「磁気テープ1」の販売時期について陳述書(乙58)4頁に示される「試料2の磁気テープカートリッジ」の写真には,ロット番号「C441828」が付されていない上,陳述書(乙58 えないことa「磁気テープ1」の販売時期について陳述書(乙58)4頁に示される「試料2の磁気テープカートリッジ」の写真には,ロット番号「C441828」が付されていない上,陳述書(乙58)には,上記記載の具体的な根拠が何ら示されておら ず,上記記載によって磁気テープ1が,本件特許1の優先日(平成1 8年3月31日)前に実施されていたことが立証されたことにはおよそならない。 また,乙61(「DDSDATACARTRIDGE」と題する書面)も,本件特許1の優先日(平成18年3月31日)後である2008年(平成20年)に作成されたものである上,磁気テープ1 という具体的な磁気記録テープが,実際に,本件特許1の優先日前に実施されていたことは何ら記載されていない。 よって,磁気テープ1が,実際に本件特許1の優先日前に実施されていた磁気記録テープであることが客観的に立証されたとはいえない。 b磁気テープ1が本件特許1の優先日前から「引用発明1」の構成を 備えていたとはいえないことさらに,仮に,乙58(陳述書)で述べるように,磁気テープ1(試料2)なるテープカートリッジが,実際に,本件特許1の優先日(平成18年3月31日)の前である平成10年11月28日に(住所は省略)の工場で製造され,平成21年(2009年)頃まで(住所は 省略)に所在する施設においてバックアップテープとして使用されていたとすると,磁気テープ1は,平成10年の製造後,平成21年までの約10年にわたって,バックアップテープとして使用されていたということになるのであるから,磁気テープ1は長期間にわたって記録と再生を繰り返し,その度に磁気記録テープ表面は磁気ヘッドと摺 動し続けていたことになる。 本件発明1-1及び1- されていたということになるのであるから,磁気テープ1は長期間にわたって記録と再生を繰り返し,その度に磁気記録テープ表面は磁気ヘッドと摺 動し続けていたことになる。 本件発明1-1及び1-2は,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を規定しているところ,磁気ヘッドとの長年の摺動とそれによって引き起こされる摩擦により,磁気テープ1の磁性層表面のスペクトル密度が変化していることは明らかである。 被告らは,磁気テープ1が本件特許1の優先日よりも前に被告から 発売された磁気記録テープであると主張し,現時点における磁気テープ1について,磁気テープ1から採取したテープの磁性層表面とバックコート層表面のスペクトル密度を測定し(乙58,59),この測定値をもって本件発明1-1及び1-2と対比して進歩性欠如の主張を行おうとしているが,上述したとおり,そもそもこの測定値が,磁 気テープ1の製造時ないし販売時における表面特性と等しいとは到底考えられない。 したがって,被告らの主張する構成を有する「引用発明1」は,本件特許1の優先日前に公然実施されていた発明ということはできない。 (イ) 本件発明1-1及び1-2は「引用発明1」及び周知技術に基づいて 当業者が容易に発明し得たとはいえないことa相違点①に係る本件発明1-2の構成の非容易想到性引用発明1は,特定の強磁性金属粉末を現に使用していた公用発明であり,かかる公用発明が使用していた強磁性金属粉末を,別の粉末に置き換えることには,強い動機付けが必要とされるべきである。す なわち,一般に,公用発明は,特許公報に記載された発明のように,その具体的な構成の一部を変更してもよいとの記載や示唆が物自体に存在しているわけではない。そして,本件においては べきである。す なわち,一般に,公用発明は,特許公報に記載された発明のように,その具体的な構成の一部を変更してもよいとの記載や示唆が物自体に存在しているわけではない。そして,本件においては,被告が動機付けを肯定するための証拠資料として提出した多数の公知文献(乙23ないし38)においても,引用発明1について,強磁性金属粉末を特 定の板径を有する六方晶フェライト粉末に変更することの動機付けを当業者に与える記載や示唆は見られない。よって,周知技術を引用発明1に適用することにより本件発明1-2に係る相違点①の構成が得られるとの被告の主張は誤りである。 加えて,磁気テープ1の規格であるDDS3においては,旧来のD DS,DDS2と同様,メタル塗布テープ(強磁性粉末として金属粉 末が塗布されたテープ)が採用されているのであり(甲22),DDS3と金属粉末塗布テープとは技術的に一体不可分の関係にある。したがって,DDS3のために開発された金属粉末塗布テープを,DDS3から切り離して他の強磁性粉末を塗布したテープに置き換えることに当業者が動機付けられることはない。DDS3において,金属粉 末塗布テープを,六方晶フェライト粉末を塗布したテープ,とりわけ特定の板径を有する六方晶フェライト粉末に置き換えることは,本件発明1-2を知った上での後知恵なくして想到しえない。 b相違点②に係る本件発明1-2の構成の非容易想到性被告らは,相違点②の認定について,「引用発明1では,原子間力 顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaは不明である」と主張する。しかし,被告らは,本件特許2の無効理由においては,引用発明1に係る「DGD125P」(磁気テープ1)について,DigitalInstruments 心面平均表面粗さRaは不明である」と主張する。しかし,被告らは,本件特許2の無効理由においては,引用発明1に係る「DGD125P」(磁気テープ1)について,DigitalInstruments社のNanoScopeⅢ原子間顕微鏡を用いて,磁性層表面における中心面平均表面粗さRaの測定結果を主張している (争点7-2)。このように,他の無効理由においては,Raの具体的な値を特定して主張しているにもかかわらず,本無効理由ではRaを「不明である」としていること自体,無効論に関する被告の主張が,後知恵に基づく作為的なものであり,およそ信用するに値しないことの証左である。 また,引用発明1は,公用発明であり,特定のRaを現に有する物として存在していたのであって,当該公用物が有していたRaを,本件発明1-2の構成のものに代えることには強い動機付けが必要であるというべきである。すなわち,公用発明は,特許公報に記載された発明のように,その具体的な構成を変更してもよいとの記載や示唆が 物自体に存在するわけではない。本件においては,被告が動機付けを 肯定するための証拠資料として提出した多数の公知文献(乙24,26,28ないし31,37,38)においても,引用発明1について,Raを変更することの動機付けを当業者に与える記載も示唆も見られない。よって,当業者をして,周知技術を引用発明1に適用することにより,本件発明1-2に係る相違点②の構成が得られるとの被告ら の主張は誤りである。 c相違点③に係る本件発明1-2の構成の非容易想到性磁気テープ1に係る再生ヘッドが磁気誘導ヘッドであり,磁気テープの規格であるDDS3規格に準拠するものであることは,被告らも認めているところ,DDS3に係る磁気テープに用いられる再 の非容易想到性磁気テープ1に係る再生ヘッドが磁気誘導ヘッドであり,磁気テープの規格であるDDS3規格に準拠するものであることは,被告らも認めているところ,DDS3に係る磁気テープに用いられる再生ヘッ ドは,いわゆるインダクティブヘッド(磁気誘導ヘッド)であった。 そして,インダクティブヘッドとGMRヘッドは,信号の読み取り方法(再生原理)及び出力電圧が全く異なり,SN比を向上させる手段が異なる。したがって,インダクティブヘッドをGMRヘッドに取り替えるなどということは容易に想到し得るものではない。 加えて,磁気テープ1の規格であるDDS3においては,旧来のDDS2よりもさらに大幅な再生出力を得るために,単結晶フェライトヘッド(インダクティブヘッド)が特別に開発されたのであり,DDS3とインダクティブヘッドとは,かかる意味において一体不可分の関係にある。開発経緯(甲22・19頁右欄26行~下から4行)に 鑑みても,DDS3のために特別に開発されたインダクティブヘッドを,DDS3から切り離して他のヘッドに置き換えることを当業者が動機付けられることはない。DDS3において,インダクティブヘッドを他のヘッドに置き換えることは,本件発明1-2を知った上での後知恵なくして想到しえない。 さらに,甲26(特開2002-197830)に,「磁気抵抗効 果型ヘッドは,従来のインダクティブヘッドに比べ,静電気に対する耐性が低く,磁気カセットテープの装着時や動作時等に帯電した静電気によって容易に静電破壊を起こしてしまうという問題点がある。」(段落【0004】)と記載されているとおり,本件発明1-2に係る巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)は,出願時におい て,静電気に弱いことが知られていた。したが という問題点がある。」(段落【0004】)と記載されているとおり,本件発明1-2に係る巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)は,出願時におい て,静電気に弱いことが知られていた。したがって,静電気に対する耐性の問題が存しないインダクティブヘッドを,静電気に対する耐性が低く,容易に静電破壊を起こしてしまうという問題点があるGMRヘッドに敢えて置き換えることを当業者が想到するとは言えず,むしろ,静電気に対する耐性の問題があることから,そのように置き換え ることには阻害事由がある。 加えて,インダクティブヘッドをGMRヘッドに置き換えることを容易に想到しえないことは,引用発明1が,強磁性粉末として強磁性金属粉末を使用していること(相違点①)からもいうことができる。 すなわち,甲32(「テープ装置に於けるMA/GMRヘッドの静電気破壊 対策の研究」)には,「MP(MetalParticle)」にあっては,走行による摩擦帯電の変動が起こり,高いピーク電圧値に至り,静電気破壊を引き起こす原因となりうることが示されている。引用発明1の強磁性粉末は,強磁性金属粉末「MP(MetalParticle)」であり(本件発明1-2との相違点①とされている),静電気破壊を引き起こす原因 となるものであるところ,上記で述べたように,GMRヘッドは静電気に弱い。したがって,静電気破壊を引き起こす原因となり得る強磁性金属粉末を採用する引用発明1に接した当業者が,あえて,静電気に弱いGMRヘッドを採用しようと動機付けられることはなく,むしろ,引用発明1の磁気ヘッドをGMRヘッドに置き換えることには阻 害事由があるというべきである。 d相違点①ないし③をひとまとまりのものとして考えた場合の被告らの主張の誤り ろ,引用発明1の磁気ヘッドをGMRヘッドに置き換えることには阻 害事由があるというべきである。 d相違点①ないし③をひとまとまりのものとして考えた場合の被告らの主張の誤り各相違点に係る本件発明1-2の構成を引用発明1に適用することを当業者が動機付けられることはないし,むしろ阻害事由があることは,既述したとおりである。特に,磁気テープ1の規格であるDDS 3は,そもそも本件発明1-2との相違点①~③に係る引用発明1の構成を備えるように開発をされていたのであるから,これらの引用発明1の構成を本件発明1-2の構成に置き換えることに当業者が容易に動機付けられることはないのである。 また,引用発明1に被告らが主張する周知の技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことではない。被告らは,相違点①~③のそれぞれが周知の技術であることを立証しようするために,磁気記録媒体に係る多数の特許公報を提出しているが,被告らが提出する特許公報のいずれにも,引用発明1との組合せを当業者に示唆する記載も示唆もない。このことは,むしろ,当業者をして,被告らが主張する周 知の技術を引用発明1に適用することが動機付けられることのない,何よりの証左である。 e本件発明1-1について上述したように,本件発明1-2が進歩性を有することは明らかであり,その他に被告らは本件発明1-1の進歩性欠如の理由を主張し ていないから,本件発明1-1が進歩性を有することは明らかである。 f小括以上のとおり,本件発明1-1及び1-2は,引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 イ実施可能要件違反(無効理由1-2)(争点6-2) (被告らの主張)(ア -2は,引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 イ実施可能要件違反(無効理由1-2)(争点6-2) (被告らの主張)(ア) 本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1-1及び1-2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,本件特許1には実施可能要件(特許法36条4項)違反の無効理由が存在する。以下,詳述する。 (イ) 本件発明1-1及び1-2は,「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であ」ること(構成要件1B),及び「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲であ」ること(構成要件1C)を構成要件とするものである。もっとも,磁性層表面及びバッ クコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法については,請求項には記載が存在しない。そして,本件明細書1には,段落【0013】以外に,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法・条件の記載は存在しない。 そのため,当業者は,請求項に規定する「磁性層表面の10μmピッチ におけるスペクトル密度」及び「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」が,具体的にいかなる測定方法・条件の下で測定した値であるのか,本件明細書1の記載から理解することはできない。 (ウ) 10μmピッチにおけるスペクトル密度は,測定方法・条件によって 値が大きく変動すること磁気テープの磁性層及びバックコート層表面の,10μmピッチにおけるスペクトル密度は,具体的な測定方法・条件により,その値が大きく変動する(乙58,60) によって 値が大きく変動すること磁気テープの磁性層及びバックコート層表面の,10μmピッチにおけるスペクトル密度は,具体的な測定方法・条件により,その値が大きく変動する(乙58,60)。その結果,同一の磁気テープを測定した場合であっても,測定方法・条件により,構成要件1B及び1Cが規定 する数値範囲(磁性層表面については800~10000n㎥の範囲, バックコート層表面については20000~80000n㎥の範囲)内に入る場合と,入らない場合とが存在する。 さらに,原告の提出する測定結果(甲92)によれば,同一のサンプルを,同一の測定条件で測定した場合であっても,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度が,構成要件1Cが規定する数値 範囲に入る場合と入らない場合があることが示されている。 (エ) 以上から,当業者としては,ある磁気記録テープについて,いかなる測定方法・条件により,測定した磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が構成要件1B及び1Cが規定する数値範囲に入る場合に,磁気記録テープが構成要件1B及び1Cを 充足するのか,理解することはできないから,結局,当業者は本件発明1-1及び1-2を実施することができない。 (オ) したがって,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1-1及び1-2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,本件特許1には実施可能要件(特許法36 条4項)違反の無効理由が存在する。 (カ) 乙A5ないし7について(第3事件における補充主張)a被告らは,新たに,被告らが従前製造・販売していた「LTOUltrium7」規格に準拠するテープ(「SONY」ブランドで販売し (カ) 乙A5ないし7について(第3事件における補充主張)a被告らは,新たに,被告らが従前製造・販売していた「LTOUltrium7」規格に準拠するテープ(「SONY」ブランドで販売していたもの)(サンプル1),原告が製造・販売する「LTOUltrium 6」規格に準拠 するテープ(サンプル2),及び原告が製造・販売する「LTOUltrium7」規格に準拠するテープ(サンプル3)の各サンプルについて,三井化学分析センターに依頼して,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した。なお,原告の主張するように,本件明細書の【0013】段落の記載が「10μmピッチにおけるス ペクトル密度」の測定方法について何らかの限定を加えるものである としても,被告ソニーが行った磁気テープのスペクトル密度の測定条件が妥当なものであったことは明らかである。 b測定結果(乙A5ないし7)によれば,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,対物レンズ50倍,中間レンズ0.5倍の組合せを用いた場合と,対物レンズ50倍,中間レ ンズ1倍の組合せを用いた場合とで,大きく変動することが分かる。 とりわけ,サンプル1については,対物レンズ50倍,中間レンズ0.5倍の組合せを用いた場合には,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,構成要件Cが規定するクレームの数値範囲の上限である80000n㎥の近傍であると考えられる(ただし,80000 n㎥以下であるかどうかは不明である。)のに対し,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いた場合には,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は90000n㎥台であると考えられ,クレームの数値範囲の上限を大きく上回る。したがって, に対し,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いた場合には,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は90000n㎥台であると考えられ,クレームの数値範囲の上限を大きく上回る。したがって,対物レンズ50倍,中間レンズ0.5倍の組合せを用いた場合に10μmピッチにお けるスペクトル密度の値が80000n㎥をわずかに下回る(したがって,クレーム数値範囲内である)磁気テープであっても,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いた場合には80000n㎥を上回ると考えられる。 また,サンプル2及び3については,いずれの対物レンズの組合せ を用いた場合であっても10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は80000n㎥を上回っているが,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いた場合は,対物レンズ50倍,中間レンズ0.5倍の組合せを用いた場合と比較して,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が10000~60000n㎥程度大きくなっている。 これだけの大きな変動が生じ得るということは,対物レンズ50倍, 中間レンズ0.5倍の組合せを用いた場合の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値がクレーム数値範囲内の中央(すなわち,40000n㎥)付近である場合にも,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いた場合には10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が80000n㎥を上回る場合もあり得ると考えられる。 以上のとおり,磁気テープのバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,測定条件により,その値が大きく変動する。その結果,同一の磁気テープを測定した場合であっても,測定条件によっては,構成要件Cが規定する数値範囲内に入る場合と,入らない場合が存在する。 cさら により,その値が大きく変動する。その結果,同一の磁気テープを測定した場合であっても,測定条件によっては,構成要件Cが規定する数値範囲内に入る場合と,入らない場合が存在する。 cさらに,同一サンプルを同一測定方法・条件で測定した場合にも,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が変動することが確認されている。すなわち,第1事件及び第2事件において原告が証拠として提出した実験報告書によると,原告が,被告らが製造・販売していた磁気テープ「LTX6000G」から,バックコート層が上側にな るようにした測定用サンプルを作成し,原告が保有するWyko社製HD2000を用いて測定用サンプルの10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した結果が記載されている。これによると,測定用サンプルの10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,最も低いものは41687n㎥であったのに対し,最も高いものは50119 n㎥であった。なお,これらの測定において原告が用いた測定方法・条件は,原告が適切であると主張している測定方法・条件である。そうすると,同一のサンプルを,同一の測定方法・条件(しかも,原告が適切であると主張する測定方法・条件)で測定した場合であっても,スペクトル密度の値には,8400n㎥を超える違いが生じる場合が あることが分かる。これは,本件発明1の構成要件1Cが規定する数 値範囲の幅(60000n㎥)の約14%に相当する。同一のサンプルを,同一の測定条件で測定した場合であっても,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値にこの程度の大きな違いが生じるとすると,当業者としては,磁気テープを測定しても構成要件Cを充足するか否かを判断することができない場合があることになる。 d本件特許1の請求項1に 密度の値にこの程度の大きな違いが生じるとすると,当業者としては,磁気テープを測定しても構成要件Cを充足するか否かを判断することができない場合があることになる。 d本件特許1の請求項1には,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の測定方法について,本件明細書1の【0013】段落に記載されているような限定は存在しないから,結局,請求項1には,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の測定方法について,特段の限定が存在しないことに帰する。なお,中心面平均表面粗さRaにつ いては,請求項1は「原子間力顕微鏡によって測定される」と明示的に規定し,測定方法を明示しているのに対し,スペクトル密度についてはクレーム中に測定方法の明示がないことからも,請求項1において,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の測定方法について特段の限定が存在しないことは明らかである。 この点,一般的に,磁気テープのスペクトル密度を測定する方法としては,本件明細書の【0013】段落に記載されているように「測定面積240μm×180μm」で測定する必要は必ずしもなく,非接触光学式粗さ測定機として「wyko社製HD2000」を用いる必要はなく,そもそも「非接触光学式粗さ測定機」を用いる必要も存 在しない。例えば,原子間力顕微鏡(AFM)を用いる方法によっても,スペクトル密度を測定することは可能であり,むしろ,原子間力顕微鏡の方が非接触光学式粗さ測定機よりも正確にスペクトル密度の値を求めることが可能である。このように,スペクトル密度の測定方法・条件については様々なものが考えられる。 そして,前述のとおり,磁気テープのスペクトル密度の値は,測定 条件により,その値が大きく変動する。その結果,同一の磁気テープを測定した場 条件については様々なものが考えられる。 そして,前述のとおり,磁気テープのスペクトル密度の値は,測定 条件により,その値が大きく変動する。その結果,同一の磁気テープを測定した場合であっても,測定条件によっては,クレームが規定する数値範囲内に入る場合と,入らない場合が存在する。また,同一のサンプルを,同一の測定条件で測定した場合であっても,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値には大きな違いが生じ得る。 そうすると,当業者は,いかなる場合に磁気テープが構成要件1B及び1Cを充足するか理解することはできないから,結局,当業者は,本件明細書の記載に基づき,本件発明1を実施することはできない。 (原告の主張)(ア) 本件明細書1の段落【0013】には,「10μmピッチにおけるス ペクトル密度」の測定方法・測定条件について記載があり,その記載に照らせば,構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」とは,「非接触光学式粗さ測定機」を用いて測定エリアを「240μm×180μm」として測定される10μmピッチにおけるスペクトル密度を意味するものと理解できるから,その測定方法・条件 は,本件明細書1の記載から明らかである。すなわち,「非接触光学式粗さ測定機」を用いて「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する場合には,測定エリアに適したレンズを選択する必要があるところ,非接触光学式粗さ測定機による表面粗さの測定においては,測定エリアが定まれば,他の測定条件であるレンズの倍率も特定される(例え ば,比較的大きいエリアの表面粗さを測定する場合には倍率が比較的小さなレンズ,比較的小さいエリアの表面粗さを測定する場合には倍率が比較的大きなレンズを選択する)。 上記段落【0013 例え ば,比較的大きいエリアの表面粗さを測定する場合には倍率が比較的小さなレンズ,比較的小さいエリアの表面粗さを測定する場合には倍率が比較的大きなレンズを選択する)。 上記段落【0013】には,構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」について,「非接触光学式粗さ測定機」 を用いて測定エリアを「240μm×180μm」として測定する,と いう測定条件が記載されており,測定エリアが記載されているから,測定方法・条件は一義的に定まる。 そうすると,当業者は,ある特定の磁気テープについて,測定エリア「240μm×180μm」に適するレンズを用いて測定された値が構成要件1B及び1Cが規定する数値範囲に入る場合に,当該磁気記録テ ープが構成要件1B及び1Cを充足すると理解できる。 したがって,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえ,実施可能要件を満たす。 (イ) この点,被告は,同一の磁気テープについて複数の測定結果(乙58 及び乙60)を提出し,測定方法・条件により「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の値が大きく変動すると主張する。 しかし,乙58及び乙60が示す測定結果に係る測定条件(測定エリア)は,いずれも構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」に係る測定条件(測定エリア)である「240μm ×180μm」とは異なるから,被告の主張は前提において成り立たない。すなわち,乙58が示す測定結果は,測定エリアを「290×220μ㎡」として測定された値であり(乙58・4~5頁),構成要件1B及び1Cの充足性を判断するための測定条件(測定エリア)であるところの「24 ち,乙58が示す測定結果は,測定エリアを「290×220μ㎡」として測定された値であり(乙58・4~5頁),構成要件1B及び1Cの充足性を判断するための測定条件(測定エリア)であるところの「240μm×180μm」とは異なる。同様に,乙60が示す 測定結果は,「各測定のPSDおよび2次元プロット」を示す図(乙60・6~41/41頁)によれば,測定エリアを「624×468μ㎡」,「230×172μ㎡」又は「126×94μ㎡」として測定された値であって,上記「1」で述べた構成要件1B及び1Cの充足性を判断するための測定条件であるところの「240μm×180μm」とは異な る。 このとおり,乙58及び乙60が示す測定結果は,本件明細書1に規定された測定条件とは異なる条件で測定されたものであって,構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」の値を示すものではないから,これらの証拠に基づく被告の主張は前提において成り立たない。 (ウ) 以上から,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1を実施することができる程度に十分に記載されたものといえることは明らかである。 (エ) 第3事件における補充主張について被告らは,実験データをもって,実施可能要件違反を主張するが,そ もそもその点が誤っている。実施可能要件は,明細書の発明の詳細な説明の記載に関する要件であり,物の発明においては,①「物の発明」について明確に説明され,②「その物を作れる」ように記載され,かつ,③「その物を使用できる」ように記載されていれば実施可能要件を満たす(甲A14)。被告が主張しているのは,①の点に関するものである ところ,本件明細書の発明の詳細な説明において 載され,かつ,③「その物を使用できる」ように記載されていれば実施可能要件を満たす(甲A14)。被告が主張しているのは,①の点に関するものである ところ,本件明細書の発明の詳細な説明においては,10μmピッチPSDの測定方法も含め,発明の対象である「物の発明」について明確に説明されていることについて,無効理由1-3について述べたとおりである。よって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に実施可能要件違反などない。 ウ明確性要件違反(無効理由1-3)(争点6-3)(被告らの主張)(ア) 構成要件1B及び構成要件1Cは不明確であり,ひいては,本件発明1-1及び1-2が不明確であるから,本件特許1には明確性要件(特許法36条6項2号)違反の無効理由が存在する。以下,詳述する。 (イ) 10μmピッチにおけるスペクトル密度は,測定方法・条件によって 値が大きく変動すること本件発明1-1及び1-2の構成要件1B及び構成要件1Cは,それぞれ,磁気テープの磁性層及びバックコート層表面の,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値を問題とするものである。しかしながら,物体の表面形状の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」といって も,その測定方法・条件には様々なものが考えられ,ある一つの確立した測定方法・条件が存在するわけではない。換言すれば,物体の表面形状の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定するという場合,当業者は,ある特定の測定方法・条件に当然に思い至るものではなく,複数の選択肢の中から,ある測定方法・条件を選択して,測定を行うこ とになる。 そして,前記イのとおり,磁気テープの磁性層及びバックコート層表面の,10μmピッチにおけるスペクトル密度は,測定方法・条件により,また 測定方法・条件を選択して,測定を行うこ とになる。 そして,前記イのとおり,磁気テープの磁性層及びバックコート層表面の,10μmピッチにおけるスペクトル密度は,測定方法・条件により,また,同一の測定方法・条件によっても,その値が大きく変動する。 その結果,同一の磁気テープを測定した場合であっても,測定方法・条 件により,あるいは同一の測定方法・条件によっても,構成要件1B及び1Cが規定する数値範囲(磁性層表面については800~10000n㎥の範囲,バックコート層表面については20000~80000n㎥の範囲)内に入る場合と,入らない場合とが存在する。 (ウ) 構成要件1B及び1Cは不明確であること 本件明細書1には,「10μmピッチにおけるスペクトル密度(中略)とは,以下の方法により測定された値をい」うとの記載があり,それに続いて測定方法が記載されている(甲3・段落【0013】)。しかしながら,これはあくまで測定方法の一例にすぎないものと解され,本件明細書1の段落【0013】の記載は,構成要件1B及び1Cにおける 10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法について,何ら限定 を加えるものではない。 そうすると,当業者としては,いかなる測定方法・条件により,測定した磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が構成要件1B及び1Cが規定する数値範囲に入る場合に,磁気記録テープが構成要件1B及び1Cを充足するのか理解することは できない。 したがって,構成要件1B及び1Cは不明確であると言わざるを得ない。 (エ) 以上のとおり,構成要件1B及び1Cは不明確であるから,これらの構成要件を含む本件発明1-1及び1-2も不明確であり,本件特許1 には明確性要 Cは不明確であると言わざるを得ない。 (エ) 以上のとおり,構成要件1B及び1Cは不明確であるから,これらの構成要件を含む本件発明1-1及び1-2も不明確であり,本件特許1 には明確性要件違反の無効理由が存在する。 (オ) 第3事件における補充主張無効理由1-2について述べたとおり,被告らは,未使用の磁気テープカートリッジについてスペクトル密度の測定を行ったところ,未使用の磁気テープカートリッジであっても,測定条件によってスペクトル密 度の値が大きく変動することが確認された(乙A5ないし7)。無効理由1-2について述べたとおり,請求項1に記載の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際に,それらの測定方法・条件のうちのいずれを用いるべきかは,本件明細書の記載からは必ずしも明確ではなく,当業者の選択に委ねられているところ,磁気テープの磁性層及 びバックコート層表面の,10μmピッチにおけるスペクトル密度は,測定方法・条件により,その値が大きく変動する。そうすると,当業者としては,いかなる場合に,磁気記録テープが構成要件1B及び1Cを充足するのか理解することはできない。したがって,本件発明1は不明確であり,本件特許1には明確性要件違反の無効理由が存在する。 (原告の主張) 前記イ(原告の主張)のとおり,本件明細書1の段落【0013】の記載に照らせば,構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」は,「非接触光学式粗さ測定機」を用いて測定エリアを「240μm×180μm」として測定された値を意味し,当業者は測定エリアを「240μm×180μm」に適するレンズを適宜選択することがで きるから,構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」 」として測定された値を意味し,当業者は測定エリアを「240μm×180μm」に適するレンズを適宜選択することがで きるから,構成要件1B及び1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定するための測定方法・条件は明確である。 したがって,本件発明1が明確性要件を満たすことは明らかである。 なお,第3事件における補充主張についても,特許・実用新案審査基準,第II部第2章第3節「明確性要件」の4.1.1(甲A13)にある とおり,測定方法について不明確になるのは,「明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても」測定方法等を理解できない場合に限られ,請求項自体に測定方法の記載がないことは,何ら明確性要件違反の理由にならない。そして,「明細書を参酌」すれば,段落【0013】に,PSDの測定方法が記載されていることは明らかである。また,測定面積 が「240μm×180μm」の記載からは,CCDの認識精度としての測定条件が規定されることになる。よって,本件特許1の請求項においては,PSDの測定方法について不明確な点はない。 エサポート要件違反(無効理由1-4)(争点6-4)(被告らの主張) (ア) 本件発明1-1及び1-2は,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく,また,当業者が出願時の技術常識に照らし上記各発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもないから,本件特許1にはサポート要件違反(特許法36条6項1号)の無効理由が存在する。以下, 詳述する。 (イ) 以下に述べるとおり,本件明細書1に記載されている実施例及び比較例の測定結果からは,本件発明1-1及び1-2が発明の効果を奏することを理解 存在する。以下, 詳述する。 (イ) 以下に述べるとおり,本件明細書1に記載されている実施例及び比較例の測定結果からは,本件発明1-1及び1-2が発明の効果を奏することを理解することができない。 a本件明細書1では,実施例1~9及び比較例1~9の各磁気テープの電磁変換特性を示す値として,線記録密度100kFCIの信号を記録した 場合及び線記録密度400kFCIの信号を記録した場合について,それぞれ「BB-SNR」及び「K-SNR」を測定している(甲3・24頁10~22行)。 しかしながら,本件明細書1の記載からは,「BB-SNR」及び「K-SNR」が具体的に何を示す数値であるのか,そもそも不明で あると言わざるを得ない。また,本件明細書1の表1では,「BB-SNR」及び「K-SNR」がマイナスの値となっている箇所が存在するが,そもそも,「BB-SNR」及び「K-SNR」がマイナスの値となり得るのか疑問であり,仮になり得るとして,いかなる場合に「BB-SNR」及び「K-SNR」マイナスの値になるのかも不 明である。したがって,「BB-SNR」及び「K-SNR」の値の高低をもって磁気テープの良・不良を判断することが本当に合理的であるのか,本件明細書1の記載からは理解することができない。 b本件明細書1において良・不良を判断するのに用いられている基準も,その根拠が不明である。この点,例えば,1週間保存後の電磁変 換特性(27頁の表)を見ると,「K-SNR」(100kfci)の値については-4に「×」が付されており(比較例2・6),不良であると判断されているのに対し,「K-SNR」(400kfci)の値については-4及び6は良好であると判断されている(実施例5,比較例8)。 本来はより に「×」が付されており(比較例2・6),不良であると判断されているのに対し,「K-SNR」(400kfci)の値については-4及び6は良好であると判断されている(実施例5,比較例8)。 本来はより良好であるはずの「K-SNR」の大きな値の方が,より 小さな値よりも不良であると見なされるというのは理解不能であり, そのような結論となる良・不良の判断基準は,合理性を欠くと言わざるを得ない。 cさらに,表1を見ると,大半の実施例・比較例において,線記録密度100kFCIの信号を記録した場合よりも,線記録密度400kFCIの信号を記録した場合の方が,「BB-SNR」及び「K-SNR」の値が軒 並み高くなっている。しかし,通常は,線記録密度が高くなるほど,電磁的記録特性は悪化するため,線記録密度100kFCIの信号を記録した場合よりも,線記録密度400kFCIの信号を記録した場合の方が「BB-SNR」及び「K-SNR」の値が高くなる(良好な結果が得られる)のは不自然である。かかる観点からも,本件明細書1に記載されてい る「BB-SNR」及び「K-SNR」の値の高低をもって磁気テープの良・不良を判断することが本当に合理的であるのか,本件明細書1の記載からは理解することができないと言わざるを得ない。 (ウ) また,仮に,本件明細書1に記載されている「BB-SNR」及び「K-SNR」の値の高低をもって磁気テープの良・不良を判断することが 合理的であるとしても,以下に述べるとおり,実施例1~9及び比較例1~9の測定結果からは,本件発明1-1及び1-2が発明の効果を奏するものと理解することはできない。 すなわち,実施例5(磁性層の10μmピッチにおけるスペクトル密度がクレーム範囲内の10000n㎥,バックコート層 らは,本件発明1-1及び1-2が発明の効果を奏するものと理解することはできない。 すなわち,実施例5(磁性層の10μmピッチにおけるスペクトル密度がクレーム範囲内の10000n㎥,バックコート層の10μmピッ チにおけるスペクトル密度がクレーム範囲内の40000n㎥)においては,「K-SNR」(100kfci)の値は保存前は-1.0であり,保存前から既にマイナスとなっているが,保存後はさらに-2.0まで低下している。また,「K-SNR」(400kfci)の値は,保存前は-2.0であり,保存前から既にマイナスとなっているが,保存後はさらに-4. 0まで低下している。もっとも,これらの「K-SNR」の値は,マイ ナスであるにもかかわらず,いずれも合格となっている。 ここで,実施例5の磁気テープにおけるバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を80000n㎥にした例(以下「仮想例」という。)を考えると,この仮想例は,不合格となる蓋然性が高い。 (エ) 以上のとおり,本件発明1-1及び1-2には,本件明細書1の発明 の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できない範囲が含まれる。また,上記範囲は,当業者が出願時の技術常識に照らし上記各発明の課題を解決できると認識できる範囲でないことは明らかである。 (オ) さらに言えば,本件明細書1に記載された実施例及び比較例の測定結 果からは,本当にバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が1週間保存後の電磁変換特性の悪化をもたらしているのか,疑問であると言わざるを得ない。 (カ) 以上のとおり,本件発明1-1及び1-2は,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識で たらしているのか,疑問であると言わざるを得ない。 (カ) 以上のとおり,本件発明1-1及び1-2は,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識で きる範囲のものではなく,また,当業者が出願時の技術常識に照らし上記各発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもないから,発明の詳細な説明に記載した発明ではなく,本件特許1にはサポート要件違反の無効理由が存在する。 (キ) 第3事件における補充主張 aクレームの文言を充足する全ての磁気テープにおいて常に本件発明1の効果を奏するとは理解できないこと本件明細書1には,ある特定の素材,ある特定の製法を用いて作製された磁気テープについて試験を行った結果しか記載されていない。 他方,バックコート層の磁性層への裏写りの有無及び程度は,バック コート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値(すなわ ち,バックコート層表面の凹凸の形状)によってのみ決まるものではなく,バックコート層及び磁性層表面を構成する素材などによっても影響を受けるものであり,むしろ,素材による影響の方が大きいということができる。とりわけ,磁性層表面の硬さは裏写りの生じやすさと密接に関連しており,磁性層表面が柔らかい素材であれば裏写りは 生じやすくしやすくなるし,硬い素材であれば裏写りはしにくくなることは,本件特許1の優先日当時,技術常識であった(乙A8ないし10)。 したがって,本件明細書1に接した当業者は,せいぜい,本件明細書1に記載されている,ある特定の素材及び製法を用いて作製された 磁気テープについて,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を制御することにより裏写りを抑制することができる,ということを理解する る,ある特定の素材及び製法を用いて作製された 磁気テープについて,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を制御することにより裏写りを抑制することができる,ということを理解することができるにすぎず,当業者は,本件明細書の記載及び技術常識に照らしても,クレームの文言を充足する全ての磁気テープにおいて常に本件発明1の効果を奏すると理解することはで きない。 bクレームの数値範囲内にある磁気テープであっても,本件発明1の作用効果を奏さないものが存在すること本件明細書1の優先権の基礎となった特許出願(特願2006-99936号)の明細書(乙A11。以下「本件基礎出願明細書」とい う。)中には,本件特許1の請求項1の数値範囲内にある磁気テープであるにも関わらず,本件発明1の作用効果を奏さないものが記載されている。すなわち,本件基礎出願明細書には,磁気テープのバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を制御することにより,高温保存後の高密度領域の電磁変換特性を良好に維持すること が記載されている。しかしながら,本件基礎出願明細書においては, かかる作用効果を奏するためには,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は8000n㎥以下である必要があり,かつ,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は50000n㎥以下である必要があるとされており,実際,これを満たさない比較例1は,60℃,10%で1週間保存後の電子変換特性が劣っ ていると評価されている。比較例1は,磁性体としてバリウムフェライトを用いた磁気テープであり,初期状態では,原子間力顕微鏡(AFM)で測定した中心面平均表面粗さRaが2.0nm,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が6 ,磁性体としてバリウムフェライトを用いた磁気テープであり,初期状態では,原子間力顕微鏡(AFM)で測定した中心面平均表面粗さRaが2.0nm,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が6000n㎥,バックコート層表面におけるスペクトル密度が80000n㎥であるから,本 件特許1の請求項1が規定する数値範囲内にある磁気テープであるが,本件基礎出願明細書においては,60℃,10%で1週間保存後の電子変換特性が劣っていると評価されているのである。このように,本件特許1の請求項1の数値範囲内にある磁気テープであっても,本件発明1の作用効果を奏さないものが存在する。 c以上から,本件特許1にサポート要件違反の無効理由が存在することは明らかである。 (原告の主張)以下に説明するとおり,本件明細書1の表1に示される電磁変換特性に係る各数値は,比較例2の値を基準,すなわち0dB(デシベル)としたと きの相対値であることが表1自体から明らかであるところ,このように相対値に基づいて実施例,比較例の良否判断を行うことは,被告を含む当業者が採用する一般的な手法であり,当業者であれば,表1及び後述するその他の本件明細書1の記載に基づき,本件発明1-1及び1-2が発明の効果を奏していることを容易に理解することができる。 (ア) 表1の記載の技術的意義が明確に理解できること 全ての電磁変換特性が,比較例2の電磁変換特性(保存前)を基準としたときの相対値により表わされていること表1では,実施例1~9及び比較例1~9の全ての電磁変換特性が,初期状態(保存前)における比較例2の電磁変換特性を0dB(デシベル)としたときの相対値として表わされており,この相対値を前提に, 初期状態ないしは1週間保存後に 1~9の全ての電磁変換特性が,初期状態(保存前)における比較例2の電磁変換特性を0dB(デシベル)としたときの相対値として表わされており,この相対値を前提に, 初期状態ないしは1週間保存後における実施例1~9及び比較例1,3~9の良・不良が判定されていることが分かる。本件明細書1においては,表Aにおける比較例2の各値が0dBと記載されていることから,当業者は,実施例1~9及び比較例2,4~9の電磁変換特性に関する各数値が,初期状態における比較例2の値を基準値とする相対値である ことを理解する。 本件明細書1の表A,Bには,電磁変換特性の各dB値に続けて「(×)」が付されているものと,そのような符合が付されていないものとがある。 「(×)」が付された測定結果は,本件明細書1の実施例・比較例において「不良」と判定されたものであり,「(×)」が付されていない測 定結果は,「不良」でないと判定されたものである。 (イ) 本件明細書1の表1による判定表A,Bでは,実施例1~9の電磁変換特性には全く「(×)」が付されていないのに対し,比較例1~9の電磁変換特性には少なくともいずれかに「(×)」が付されている。そして,本件明細書1の表1及び 上掲した段落【0116】の記載から,比較例1~9は,電磁変換特性が測定不可であるか(比較例1,3),SNRが低下したか(比較例2),バック面巻き姿(飛び出し数)が不良であるか(比較例5),ノイズの増大に起因してK-SNRないしSNRの値が低下しているか(比較例4,6~9)であって,いずれも不良と評価されたことが理解できる。 これに対し,実施例1~9は,電磁変換特性が測定不可であるとか, バック面巻き姿(飛び出し数)が不良であるといったことがなく,かつ,保存前後に 不良と評価されたことが理解できる。 これに対し,実施例1~9は,電磁変換特性が測定不可であるとか, バック面巻き姿(飛び出し数)が不良であるといったことがなく,かつ,保存前後における電磁変換特性の変化が小さいことが分かる(表1・段落【0116】第1段落)。 (ウ) 小括以上のとおり,本件明細書1の表1に記載された「BB-SNR」及 び「K-SNR」の電磁変換特性の各値は,比較例2の初期状態における電磁変換特性の各値を0dBとしたときの,各実施例と各比較例の初期状態と1週間保存後における相対値(dB)を示すものであり,当該相対値に基づいて,磁気テープの良・不良を判定していることが理解できる。したがって,当業者は,表1の測定結果とその説明(段落【01 16】等)に基づき,本件発明1-1及び1-2が本件発明の効果を奏していることを十分に理解することができる。 よって,本件特許1にサポート要件違反の無効理由が存在するとの被告の主張は,いずれも失当である。 (エ) 第3事件における補充主張について 被告らは,実施例,比較例において,磁気テープとして,特定の素材,特定の製法を用いて作製されたものしか用いていないから,サポート要件に違反する旨主張としている。しかし,サポート要件は,「明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識」に照らして,特許請求の範囲に記載された発明が,「当業者が当該発明の課題を解決できると 認識できる範囲のもの」か否かを判断すべきものである。この点,本件発明における解決手段は,磁性層の材料と平均板径(構成要件A,E),磁性層のRa(構成要件B),磁性層及びバックコート層のPSD(構成要件C,D)であるから,これらの要件を満たす場合に発明の課題を解決することができ,こ ,磁性層の材料と平均板径(構成要件A,E),磁性層のRa(構成要件B),磁性層及びバックコート層のPSD(構成要件C,D)であるから,これらの要件を満たす場合に発明の課題を解決することができ,これを満たない場合に課題が解決できないことが, 明細書の一般的な記載,実施例,比較例の記載,及び当業者の技術常識 から理解できればよい。この点,本件明細書1においては,比較例において,上記構成要件A~Eのいずれかを満たさない例が挙げられ,これらの要件を全て満たす実施例との比較を行うことにより,本件発明1の要件により,発明の課題が解決できることが確認できるようになっている。よって,サポート要件との関係で,磁気テープを種々変える必要な どない。 また,被告らは,本件特許1の優先権主張の基礎出願明細書(乙A11)との関係でるる主張するが,上述したとおり,サポート要件は,「明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識」に照らして,特許請求の範囲に記載された発明が,「当業者が当該発明の課題を解決で きると認識できる範囲のもの」か否かを判断すべきものであるから,優先権主張の基礎出願明細書の内容は参酌する必要がない(優先権主張の基礎出願明細書の内容は,優先権の範囲を確認するために参酌されるだけである)。 したがって,被告らの主張は失当である。 オサポート要件違反(無効理由1-5)(争点6-5)(被告らの主張)(ア) 本件発明1-1及び1-2は,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥の範囲であることを要件とする(構成要件1C)。しかしながら,以下に述べるとおり, 本件発明1-1及び1-2がバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度に着目する 80000n㎥の範囲であることを要件とする(構成要件1C)。しかしながら,以下に述べるとおり, 本件発明1-1及び1-2がバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度に着目することの技術的意義は,全く不明であると言わざるを得ない。したがって,本件特許1の明細書(本件明細書1)の記載に接した当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認識することはできず,また,出願時の技術常識に照らしても, 当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認識す ることはできない。 (イ) 本件発明1-1及び1-2がバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度に着目することの技術的意義について,本件明細書1には,「本発明者は,(中略)磁性層表面のうねり成分を制御するとともに,バックコート層表面のうねり成分,特に10μmピッチのう ねりをコントロールすることにより,長期保存時又は高温保存時の磁性層の裏写りを抑制できることを見出した。」との記載が存在する(甲3・3頁5~8行)。しかしながら,本件明細書1の上記記載は,何ら具体的な根拠を示すことなく,単に結論を述べたものにすぎない。かかる記載のみでは,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル 密度に着目し,その値を制御することが,本件明細書1に記載されているような作用効果を本当に奏するものであるか否か,当業者は到底理解することができない。 (ウ) そもそも,本件発明1-1及び1-2が,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目すること自体, 一般的なスペクトル密度の利用目的と相容れないものである。 スペクトル密度(パワースペクトル密度,PSD)とは,物体の表面形状(表面プ におけるスペクトル密度の値それ自体に着目すること自体, 一般的なスペクトル密度の利用目的と相容れないものである。 スペクトル密度(パワースペクトル密度,PSD)とは,物体の表面形状(表面プロフィール)を周波数の異なる複数の正弦波(周波数成分)に分離し,各周波数の波が有するパワーを示したものである。スペクトル密度は通常,パワースペクトル密度関数に特異な形状が存在するか否 か(換言すれば,各周期におけるスペクトル密度の相互の相対的な関係)を見ることに意義があるものであって,本件発明1-1及び1-2のように,ある特定の周期におけるスペクトル密度の値それ自体を問題とするものではない。したがって,本件発明1-1及び1-2がバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目 することの技術的意義は,不明であると言わざるを得ない。また,スペ クトル密度の値は,測定方法・条件によって値が大きく変動するものであるから,なおさら,スペクトル密度の値それ自体に着目する技術的意義は,不明であると言わざるを得ない。 (エ) この点,本件明細書1には,実施例1~9及び比較例1~9について,1週間保存の前後で「SNR」及び「K-SNR」の値がどのように変 化したかを測定した結果が記載されている(甲3・25~27頁の表1)。 しかしながら,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義が全く不明である以上,本件明細書1における上記の程度の開示では,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技 術的意義を当業者が理解するには,到底足りないと言わざるを得ない。 また,「10μmピッチ」におけるスペクトル密度に着目する 0μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技 術的意義を当業者が理解するには,到底足りないと言わざるを得ない。 また,「10μmピッチ」におけるスペクトル密度に着目する点については,そもそも,本件明細書1には,実施例1~9及び比較例1~9についてバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した結果が記載されているにすぎず,他の周期におけるスペクトル密 度,例えば5μmピッチにおけるスペクトル密度や,20μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した結果等については,一切記載されていない。スペクトル密度の中でも,とりわけ「10μmピッチ」におけるスペクトル密度に着目することに,本当に何らかの技術的意義が存在するか否かを確認するためには,少なくとも,他の周期におけるスペクト ル密度を検証することが必要不可欠であるが,かかる検証は全く行われていない。したがって,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することに,本当に何らかの技術的意義があるのか,本件明細書1の記載からは到底理解することはできない。 (オ) さらに,本件明細書1に記載されている上記実施例及び比較例の磁気 テープは,磁性層塗布液に含まれる六方晶フェライトの平均板径,使用 する支持体の表面粗さ,各層形成用塗布液の分散時間,遠心分離時間,又は使用するバックコート層形成用塗布液を本件明細書1の表1(甲3・25頁)記載のように変更した以外は,全て同一の素材,同一の方法を用いて作製されたものである(甲3・24頁1~4行)。仮に,本件明細書1に記載されているとおり,バックコート層表面のうねりによって 磁性層表面への裏写りが生じるとしても,その程度は,バックコート層表面のうねり(要する る(甲3・24頁1~4行)。仮に,本件明細書1に記載されているとおり,バックコート層表面のうねりによって 磁性層表面への裏写りが生じるとしても,その程度は,バックコート層表面のうねり(要するに,バックコート層の表面形状)のみならず,磁性層,バックコート層及び支持体の素材等によって影響を受けることは容易に理解できることである。本件明細書1に記載されている上記実施例及び比較例は,(前述した問題点を全て度外視したとしても,)せい ぜい,本件明細書1に記載されている,ある特定の素材を用いて作製された磁気テープについて,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が磁性層への裏写りに影響を与えることを示したものにすぎず,それがありとあらゆる磁気テープに当てはまることを示したものではない。したがって,本件明細書1に接した当業者は,クレーム の文言を充足する全ての磁気テープにおいて,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を制御し,これを20000~80000n㎥の範囲内とすることが,本件明細書1に記載されているような効果を奏するものであると理解することはできない。 なお,本件明細書1の表1(甲3・26頁)に記載されているバック コート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,「40000」「20000」「80000」「10000」「100000」「300000」(単位はn㎥)のいずれかであるが,実際の測定において,このような10000n㎥の自然数倍の値のスペクトル密度ばかりが得られるなどということは,現実には考えられない。したがって,これら の値は,実際に得られたスペクトル密度の値ではなく,切り上げ,切り 捨てあるいは四捨五入等を行った値ではないかと推測されるが,そうだ ことは,現実には考えられない。したがって,これら の値は,実際に得られたスペクトル密度の値ではなく,切り上げ,切り 捨てあるいは四捨五入等を行った値ではないかと推測されるが,そうだとすると,とりわけ「20000」及び「80000」については,本当にクレームの数値範囲内であったのか,不明であると言わざるを得ない。 (カ) なお,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値 それ自体に着目することの技術的意義が不明であることは,本件特許1の審査段階において,既に指摘されていた(乙68・1頁下から10~下から2行)。 上記拒絶理由通知を受けて,出願人は平成21年12月7日付で手続補正書(乙69)及び意見書(乙70)を提出した。しかし,乙70の 図1を根拠として,磁性層表面の10μmピッチにおけるPSDを規定することで近傍ノイズを低減することができるとする,出願人の説明は誤りである。したがって,このことを前提として,「保存中に磁性層表面に裏写りし,保存後の磁性層表面性を損なう主要因となるものは,バックコート層表面の10μmピッチのPSDである」とする出願人の説 明(乙70・8頁下から5~4行)もまた,前提を欠く。 以上のとおり,出願人は,技術的に誤った説明を審査官に対して行うことにより,あたかも,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度に着目する技術的意義が存在するように見せかけ,結果的に特許査定を得たものである。 (キ) 以上のとおり,本件発明1-1及び1-2がバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義は,本件明細書1の記載からは全く不明であるから,本件明細書1の記載に接した当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の 層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義は,本件明細書1の記載からは全く不明であるから,本件明細書1の記載に接した当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認識することはできない。また,出願時の技術常識に照らして も,当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認 識することはできない。 したがって,本件発明1-1及び1-2は,発明の詳細な説明に記載した発明ではなく,本件特許1にはサポート要件違反の無効理由が存在するから,原告は本件特許権1を行使することはできない。 (原告の主張) (ア) 「バックコート層表面の10μmピッチにおけるPSD」の技術的意義a本件明細書1(段落【0006】ないし【0008】,【0013】,【0016】,【0017】,【0115】,【0116】)には,「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」の 技術的意義について,これを制御することにより保存後の磁性層への裏写りを抑制できることが説明され,さらに,そのことが,豊富な実施例と比較例により実証されているのであるから,その技術的意義が明確に記載されているといえる。 b被告らは,原告が提出した平成21年12月7日付意見書(乙70) の内容について疑問を呈しているが,同意見書では,図(図1)を用いて「磁性層表面の10μmピッチにおけるPSD」を規定することの技術的意義を説明した上で,本件明細書1の比較例6を再現した磁気記録テープのバックコート層表面の複数の周期におけるスペクトル密度を示す図(図2)を用いてバックコート層表面の「10μmピッ チ」におけるPSDを規定することの技術的意義を補足説明している。 c被告ら ックコート層表面の複数の周期におけるスペクトル密度を示す図(図2)を用いてバックコート層表面の「10μmピッ チ」におけるPSDを規定することの技術的意義を補足説明している。 c被告らの主張に対する反論(a) スペクトル密度の利用目的についてスペクトル密度関数において,「突起(スパイク)」や「隆起(肩)」といった形状が存在するということは,当該形状を示す特定のスペ クトル密度の強度(縦軸)と特定の周期(横軸)が存在することを 意味する。仮に,被告らが主張するように,ある特定の周期におけるスペクトル密度の値それ自体に着目することが,スペクトル密度の一般的な利用目的と相容れないことだったとしても,そのことから,本件発明1がバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義が不明であ るとの結論が導かれるわけではない。むしろ,本件明細書1の記載を読めば,バックコート層表面の10μmピッチのスペクトル密度を構成要件1C記載の範囲にすることで,長期保存又は高温保存時の磁性層の裏写りを抑制し,長期保存又は高温保存前後で変わらず優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供することが理解で きるのであるから,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義は,かかる明細書の記載から明らかであるといえる。 (b) 他の周期におけるスペクトル密度を測定した結果等について本件明細書1には多数の実施例・比較例の記載があり,特にバッ クコート層表面の10μmピッチのPSDが10000n㎥を超えると,保存後に近傍ノイズ増大により「K-SNR」が劣化することは,本件明細書1中の比較例6,9により,また,バックコート バッ クコート層表面の10μmピッチのPSDが10000n㎥を超えると,保存後に近傍ノイズ増大により「K-SNR」が劣化することは,本件明細書1中の比較例6,9により,また,バックコート層表面の10μmピッチのPSDの下限値を20000n㎥とした場合に走行耐久性が劣化することについては実施例と比較例5との 対比により実証されている。したがって,本件明細書1に接した当業者であれば,他の周期のスペクトル密度の測定結果なくして,「バックコート層表面」の10μmピッチにおけるスペクトルを規定する技術的意義を十分に理解することができる。 (c) 本件明細書1の記載からは,せいぜい当該「同一の素材・方法を 用いて作成された磁気テープ」において技術的意義を理解し得るに とどまるとの主張について本件明細書1には,実に,100段落近くにわたって,本件発明1の実施例や製造方法が詳細に記述されているのであり,かかる本件明細書1の記載に基づき,当業者であれば,実施例として記載された磁気記録テープとは異なる素材・方法で製造された磁気記録テ ープであっても,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を20000~80000μ㎥(構成要件1C)に調整することで,本件明細書1に記載されているのと同様の作用効果を達しうるものと理解できる。また,被告が主張するように,磁性層,バックコート層及び支持体の素材等によっても裏写りに影響す ることは容易に理解できることである。当業者であれば,本件明細書1には,ある特定の素材を用いて作製された磁気記録テープについて特定の効果を奏することが詳細に記載されているのであるから,それ以外の素材を採用する場合には,上述した技術常識に基づいて裏写りしないように適宜変更すること 材を用いて作製された磁気記録テープについて特定の効果を奏することが詳細に記載されているのであるから,それ以外の素材を採用する場合には,上述した技術常識に基づいて裏写りしないように適宜変更することも,本件明細書1に記載され ているに等しいということができるのである。 以上のとおり,本件発明1に係る磁気記録テープの製造方法(素材・方法)を開示する本件明細書1の記載に基づき,当業者であれば,実施例として記載された磁気記録テープとは異なる素材・方法で製造された磁気記録テープであっても,バックコート層表面の1 0μmピッチにおけるスペクトル密度を20000~80000μ㎥(構成要件1C)とすることで,実施例と同様,特許発明1の課題を解決できると理解できることは明らかである。 (d) 審査経過における図1から10μmピッチPSDに着目することの技術的意義は導かれないとの主張について 被告の主張は意見書(乙70)の記載についての誤った理解に基 づくものであり,反論として成り立たっていない。原告は,本件発明の出願経過において,乙70の図1からPSDを求めることまで主張してはいないし,バックコート層表面の10μmピッチにおけるPSDを規定することの技術的意義については,図1によってではなく,図2に基づいて説明している。 カ磁気テープ2に基づく進歩性欠如(無効理由1-6)(争点6-6)(被告らの主張)(ア) 磁気テープ2a被告らは,製品名を「LTX400G」とし,ロット番号を「1A452P00704」とする磁気テープカートリッジ(磁気テープ2) を製造・販売していた。なお,上記ロット番号は,磁気テープ2のカートリッジに刻印されている。 b磁気テープ2は,平成16年12月に製造された とする磁気テープカートリッジ(磁気テープ2) を製造・販売していた。なお,上記ロット番号は,磁気テープ2のカートリッジに刻印されている。 b磁気テープ2は,平成16年12月に製造されたものである。このことは,上記ロット番号「1A452P00704」から容易に判明する事項である。そして,磁気テープ2のうち,後述する,未使用の まま保管されていた抜き取りサンプル以外の製品は,製造直後の平成16年12月頃に出荷された。 c磁気テープ2は,「LTOUltrium」規格に準拠するものであるところ,同規格に準拠するテープは,非磁性支持体上の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有して いた。また,磁性層に含まれる強磁性粉末は強磁性金属粉末であった(乙75)。 d磁気テープ2は,「LTOUltrium」規格に準拠するものであるところ,当該規格に準拠する磁気テープは,MRヘッドを再生ヘッドとして用いるドライブによって再生することが可能であった(乙76・4頁)。 e磁気テープ2の測定結果について 被告らは,平成16年12月に磁気テープ2を製造した後,これらを出荷する前に,その中から製品を一点抜き取り,抜き取りサンプルとして未使用のまま被告の倉庫に保管していた。被告らは,今回の測定のため,上記抜き取りサンプルを倉庫から取り出し,平成29年8月28日,(住所は省略)に所在する新潟県工業技術総合研究所に持 参した。同日,公証人の立会いの下,磁気テープ2の抜き取りサンプルについて,カートリッジから磁気テープを引き出し,磁気テープ片を切り出した上で,新潟県工業技術総合研究所が保有するWyko社製のNT-3300三次元構造解析顕微鏡を用いて,当該サンプル 取りサンプルについて,カートリッジから磁気テープを引き出し,磁気テープ片を切り出した上で,新潟県工業技術総合研究所が保有するWyko社製のNT-3300三次元構造解析顕微鏡を用いて,当該サンプルの磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペク トル密度を測定した。その測定結果によると,磁気テープ2の磁性層表面の10μm近傍のピッチにおけるスペクトル密度は,いずれのサンプルにおいても800~10000n㎥の範囲内であり,10μmピッチにおけるスペクトル密度も800~10000n㎥の範囲内であったと認められる。同様に,バックコート層の10μm近傍のピッ チにおけるスペクトル密度は,いずれのサンプルにおいても20000~80000n㎥の範囲内であり,10μmピッチにおけるスペクトル密度も20000~80000n㎥の範囲内であったと認められる(乙90)。また,被告らは,平成30年2月7日,再測定を行ったところ同様の結果であった(乙101)。 (イ) 引用発明2磁気テープ2が本件特許1の優先日前に販売されていたことに示されるとおり,ベースフィルムの一方の面に,強磁性金属粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録テープであって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は80 0~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチに おけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲である磁気記録テープであって,再生ヘッドとしてMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される磁気記録テープ(以下「引用発明2」という。)は,本件特許1の優先日前に公然実施されていた。 (ウ) 一致点・相違点 本件発明1-2と引用発明2 用する磁気信号再生システムにおいて使用される磁気記録テープ(以下「引用発明2」という。)は,本件特許1の優先日前に公然実施されていた。 (ウ) 一致点・相違点 本件発明1-2と引用発明2と対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 a一致点非磁性支持体の一方の面に,強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,磁 性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲であることを特徴とする磁気記録テープである点。 b相違点 ① 本件発明1-2では,強磁性粉末として,平均板径が10~40nmの範囲の六方晶フェライト粉末を使用しているのに対し,引用発明2では,強磁性粉末として強磁性金属粉末を使用している点。 ② 本件発明1-2では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaが0.5~2.5nmの範囲であるのに 対し,引用発明2では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaは不明である点。 ③ 本件発明1-2では,磁気記録テープは再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用されるのに対し,引用発明2では,磁気記録テープは再生ヘッド としてMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用され る点。 (エ) 相違点についての判断無効理由1-1に関して述べたとおり,上記各相違点に係る構成について,これを本件発明1の構成とすることは,いずれも当業者が容易になし得たことである。 争点6-1に関する原告の主張のうち 断無効理由1-1に関して述べたとおり,上記各相違点に係る構成について,これを本件発明1の構成とすることは,いずれも当業者が容易になし得たことである。 争点6-1に関する原告の主張のうち,本争点にも当てはまると考えられるものは,前記ア(被告の主張)同様,いずれも失当である。 (原告の主張)(ア) 磁気テープ2が本件特許1の優先日より前から「引用発明2」の構成を備えていたことは何ら立証されていないから,そもそも,被告らの主 張は前提において成り立たない。また,その点をおくとしても,「引用発明2」に係る被告らの主張は,本件発明1と「引用発明2」との相違点の認定,及び,当該相違点に係る構成の容易想到性の理由付けに誤りがあり,成り立たない。以下,詳述する(ただし,無効理由1-1に係る主張と重複する部分については繰り返さない。)。 (イ) 本件特許1の優先日より前に,磁気テープ2が,構成要件1Cを充足する構成を有していたことは,被告らが提出した証拠によっては立証されていないことa「磁気テープ2」が本件特許1の優先日より前に公然と実施されていたことについて被告らの立証は不十分である 仮に,被告らが主張するように,「磁気テープ2」なる未使用の磁気テープカートリッジが平成16年12月に被告らによって製造されていたとしても,当該「磁気テープ2」は,被告の倉庫に保管されていたというのであるから,当該「磁気テープ2」は本件特許1の優先日以前においては被告ら内部に留まっていたことになり,本件特許1 の優先日より前に,公然と実施されていたことが立証されたことには ならない。したがって,被告らの主張する構成を有する「引用発明2」は,特許法29条1項2号に掲げる発明とはいえない。 b乙90は「 に,公然と実施されていたことが立証されたことには ならない。したがって,被告らの主張する構成を有する「引用発明2」は,特許法29条1項2号に掲げる発明とはいえない。 b乙90は「磁気テープ2」の製造時ないし販売時における表面特性を示す証拠としての信用性を欠く新潟県工業技術総合研究所の保有する「Wyko社製NT3300」 を用いて,対物レンズの倍率を10倍,中間レンズの倍率を2倍とした場合には,フォーカスがずれ,コントラストが取れないため,磁気テープのPSD値を正確に測定することができない状態にあることが判明した。したがって,乙90に係る測定結果は信用性を欠く。 加えて,乙90には磁性層表面を測定するサンプル作成に係る写真 (写真13)はあるものの,これに対応するバックコート層表面を測定するサンプル作成に係る写真は存在しない。また,乙90の測定に係るサンプルを撮影した写真15及び16はなぜか白黒写真であり,かつ画像の解像度も他の写真よりも明らかに劣っており,何らかの恣意が入り込んだ疑いを否定できない。したがって,乙90に係る測定 結果が,「バックコート層表面」のスペクトル密度の測定結果ではない可能性を否定できない。 以上のとおり,乙90に記載された測定値は,本件特許1の優先日以前に製造・販売された磁気テープにおける表面特性と等しいといえないため,乙90に係る測定値を前提として認定した「引用発明2」 は,本件特許1の優先日以前に公然実施をされた発明ということはできない。 (ウ) 本件発明1は「引用発明2」及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たとはいえないこと仮に,「磁気テープ2」が本件特許1の優先日以前に構成要件1Cに 充足する構成を有していたとしても,本件発明1は,「引 発明2」及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たとはいえないこと仮に,「磁気テープ2」が本件特許1の優先日以前に構成要件1Cに 充足する構成を有していたとしても,本件発明1は,「引用発明2」及 び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。この点については,「引用発明1」に基づく進歩性欠如の主張に対する反論がほぼそのまま妥当する。 キ実施可能要件違反(無効理由1-7)(争点6-7)(被告らの主張) (ア) 仮に,原告の主張するように,本件明細書1の【0013】段落に記載のある測定条件を,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレーム文言中に読み込むとすると,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際に用いる測定機器は「Wyko社製HD2000」に限定されることになり,また,測定エリア(測定面積)については, 「240μm×180μm」に限定されることになる。 「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレーム文言についてこのような解釈を採用した場合,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定を行うことができるか否かは,「Wyko社製HD2000」を入手ないし利用することができるか否かに依存することになる。 しかしながら,Wyko社製の非接触光学式粗さ測定機「HD2000」については,既にメーカー(Wyko社を買収したVeeco社を,更に買収したBruker社)は「HD2000」の製造及び販売を終了しており,「HD2000」は入手不可能となっている。また,平成5年には,メーカーによる「HD2000」のサポートも終了している。 したがって,本件発明1-1及び1-2を実施しようとする者が,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測 いる。また,平成5年には,メーカーによる「HD2000」のサポートも終了している。 したがって,本件発明1-1及び1-2を実施しようとする者が,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定するために,メーカーから「HD2000」を入手しようとしても,もはや入手することは不可能である。「HD2000」を用いた測定を行う他の方法としては,既に「HD2000」を保有している他の会社・団体等に使用させてもら う,といった方法も考えられるが,そもそも,他の会社・団体等に使用 させてもらうよう頼んだとしても,他の会社・団体等がこれに応じてくれるとは限らない。なお,被告が確認した限りでは,現在,日本国内において,「HD2000」を保有しており,かつ,これを一般の利用に供している会社・団体等は存在しない。 したがって,上記解釈を採用した場合,「10μmピッチにおけるス ペクトル密度」を測定することはできない。 (イ) また,仮に,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際に用いる測定機器は,「非接触光学式粗さ測定機」であれば足り,「Wyko社製HD2000」には限定されないとしても,かかる測定を行うことができるか否かは,「測定エリア(測定面積)を「240μm× 180μm」とする測定を行うことが可能な非接触光学式粗さ測定機を入手ないし利用することができるか否かに依存することになる。 この点についても,被告が確認した限りでは,測定エリア(測定面積)を「240μm×180μm」とする測定を行うことが可能な非接触光学式粗さ測定機で,現在,一般に入手ないし利用可能なものは存在しな い。なお,被告が,前述のBruker社の製品を日本において販売する会社であるブルカー社(ブルカー・エイエックスエス株式会 光学式粗さ測定機で,現在,一般に入手ないし利用可能なものは存在しな い。なお,被告が,前述のBruker社の製品を日本において販売する会社であるブルカー社(ブルカー・エイエックスエス株式会社)に確認したところ,同社からは,Bruker社は現在,測定エリアを「240μm×180μm」とする測定を行うことが可能な非接触光学式粗さ測定機を取り扱っていないとの回答を受けた(乙89)。このように, 測定エリア(測定面積)を「240μm×180μm」とする測定を行うことが可能な非接触光学式粗さ測定機は,現在,一般に入手ないし利用することが出来ない状態にある。したがって,いずれにせよ,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定することはできない。 (ウ) よって,本件明細書1の【0013】段落に記載のある測定条件を, 「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレーム文言中に読み込 むというクレーム解釈を採用した場合には,本件発明1-1及び1-2を実施しようとしても,磁気テープが構成要件1Bないし1Cを充足するか否かを判断することはできないから,結局,本件発明1-1及び1-2は実施不能であることに帰する。したがって,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1-1及び1-2を実施する ことができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,本件特許1には実施可能要件違反の無効理由が存在する。 (原告の主張)被告らが主張する無効理由は,構成要件1Cにいう「10μmピッチにおけるスペクトル密度」との用語が,測定機器(Wyko社製HD200 0)や測定エリア(240μm×180μm)で厳密に限定されるとの限定解釈を前提とする。これらの限定解釈が,いずれも被告ら独自のものであって,成り の用語が,測定機器(Wyko社製HD200 0)や測定エリア(240μm×180μm)で厳密に限定されるとの限定解釈を前提とする。これらの限定解釈が,いずれも被告ら独自のものであって,成り立たないことは既に述べたとおりである。したがって,被告らの無効理由1-7に係る主張は前提において成り立たない。 ク乙28文献に基づく新規性欠如(無効理由1-8)(争点6-8) (被告らの主張)本件発明1は,乙28文献に基づき,新規性を欠く(特許法29条1項3号)。 (ア) 乙28文献の記載内容乙28文献(特開2001-110032号公報,平成13年4月2 0日公開)の実施例12には,以下の各事項が記載されている。 実施例12の磁気テープにおいて,支持体として用いられているPEN(ポリエチレンナフタレート)は,非磁性である。 実施例12の磁気テープにおいて,磁性体として用いられているバリウムフェライトは,六方晶フェライトの一種である。 実施例12の磁気テープについては,磁性層の中心面平均表面粗さR aは1.8nmであり,バックコート層の中心面平均表面粗さRaは4. 0nmである(【0103】段落,【表2】)。なお,実施例12のRaは,WYKO社製TOPO3Dを用いて,3D-MIRAU法で測定したものであると解される(【0082】段落参照)。そして,乙28文献には,実施例12の磁気テープについて,原子間力顕微鏡によって 測定した中心面平均表面粗さRaの値についての明示的な記載は存在しない。しかしながら,磁気テープ表面の中心面平均表面粗さRaを原子間力顕微鏡(AFM)によって測定すること自体は,本件特許の優先日前から周知であったものである。また,同一の物体表面を3D-MIRAU法で測定した場合と, 気テープ表面の中心面平均表面粗さRaを原子間力顕微鏡(AFM)によって測定すること自体は,本件特許の優先日前から周知であったものである。また,同一の物体表面を3D-MIRAU法で測定した場合と,原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合と で,異なるRaの値が得られるものではない。そうすると,結局,実施例12の磁気テープにおいては,原子間力顕微鏡で測定した磁性層表面の中心面平均表面粗さRaの値も,1.8nmであると認められる。そして,磁性層表面の中心面平均表面粗さRaの値が1.8nmであるということは,当該値が0.5~2.5nmの範囲内であることを意味す る。 乙28文献には,実施例12の磁気テープの磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度についての明示的な記載は存在しない。しかしながら,磁気テープの表面(磁性層又はバックコート層表面)のRaの値と,当該表面のスペクトル密度の値との 間には,一定の相関関係が存在し,Raが決まれば,これに基づいてスペクトル密度の値を推定することが可能である。磁性層表面のRaの値1.8nmから推定される10μmピッチのスペクトル密度の値は5,548n㎥であり,バックコート層表面のRaの値4.0nmから推定される10μmピッチのスペクトル密度の値は35,391n㎥である (乙A4)。そうすると,実施例12の磁気テープの磁性層表面の10 μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,本件発明1が規定する800~10000n㎥の範囲内である。また,実施例12の磁気テープのバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,本件発明1が規定する20000~80000n㎥の範囲内である。 この点は,東京電機大学工学部・先端機械工学科の教授で の磁気テープのバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,本件発明1が規定する20000~80000n㎥の範囲内である。 この点は,東京電機大学工学部・先端機械工学科の教授であり,計測 工学・トライボロジーの専門家であるF教授の鑑定意見書(乙A12,48)により更に裏付けられる。F教授は,スペクトル密度を含め,物体の表面性状に関して専門的知見を有しており,日本工業標準調査会の基盤技術専門委員会の委員として,「光学素子及び光学システム用の製図手法-第8部:表面形状(粗さ及びうねり)」(JISB 009 0-8:2013)(乙A13)の制定時の審査にも関与した人物である。上記鑑定意見書のとおり,乙28文献の実施例12の磁気テープの磁性層表面及びバックコート層表面のPSD(10μm)の値は,磁気テープ間の個体差等を考慮したとしても,なお,本件発明1の数値範囲内に入ると認められる。 実施例12の磁気テープの磁性層に含まれるバリウムフェライトの平均板径は40nmであるところ,これは,10~40nmの範囲内である。 (イ) 乙28発明以上を考慮すると,乙28文献には,「非磁性支持体の一方の面に, 六方晶フェライト粉末および結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲内であり,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲内であり,原子間力顕微鏡によって測定さ れる磁性層の中心面平均表面粗さRaは0.5~2.5nmの範囲であ り,かつ,バリウムフェライト粉末の平均板径は10~40nmの範囲であることを特徴する磁気記録 鏡によって測定さ れる磁性層の中心面平均表面粗さRaは0.5~2.5nmの範囲であ り,かつ,バリウムフェライト粉末の平均板径は10~40nmの範囲であることを特徴する磁気記録テープ」が記載されている。 なお,本件発明1は,乙28発明に対して何ら有利な効果,異質な効果を奏するものではない。 (ウ) 本件発明1と乙28発明の対比 本件発明1と乙28発明を対比すると,両者は一致する。 (原告の主張)(ア) 本件発明1と乙28発明には,少なくとも次の相違点1及び2が存在するから,本件発明1は,乙28発明に基づいて新規性を欠如するものではない。 a相違点1本件発明1においては,「原子間顕微鏡」によって測定される磁性層のRaが0.5~2.5nmであるのに対し,乙28発明は,3D-MIRAU法で測定した磁性層のRaが1.8nmである点。 b相違点2 本件発明2においては,磁性層表面及びバックコート層表面の10μピッチにおけるスペクトル密度がそれぞれ800~10000n㎥,20000~80000n㎥であるのに対し,乙28発明にはこれらの点について記載がない点。 (イ) 相違点1について 上記相違点1について,被告らは,以下の理由に基づいて,原子間力顕微鏡(AFM)で測定しても,乙28発明の磁性層のRaは1.8nmになると主張している。①磁気テープ表面のRaを原子間力顕微鏡(AFM)によって測定すること自体は,本件特許の優先日前から周知であった。②同一の物体表面を3D-MIRAU法で測定した場合と,原子 間力顕微鏡(AFM)で測定した場合とで,異なるRaの値が得られる ものではない。しかし,当該被告らの主張はいずれも失当である。 まず,上記①の点は,上記相 測定した場合と,原子 間力顕微鏡(AFM)で測定した場合とで,異なるRaの値が得られる ものではない。しかし,当該被告らの主張はいずれも失当である。 まず,上記①の点は,上記相違点1がないと主張する根拠になりえない。相違点1がないというために必要となるのは,乙28発明における,3D-MIRAU法で測定されたRa1.8nmの磁性層が,原子間力顕微鏡(AFM)によって測定した場合であっても,1.8nmになる, あるいは,0.5~2.5nmの間に収まるということである。他方,原子間力顕微鏡(AFM)によってRaを測定することが,本件特許の優先日前から周知であったとしても,そのことは,単に,測定方法そのものが知られていたという点にすぎないから,このことをもって,相違点1がないとすべき理由がない。 また,上記②は誤りである。同一の物体表面を3D-MIRAU法で測定した場合と,原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合とで,Raは同じにならないからである。すなわち,本件発明1に係る原子間力顕微鏡(AFM)による測定とは,探針と試料表面を微小な力で接触させ,探針が先端に取り付けられたカンチレバーのたわみ量が一定になるよう に,探針・試料間距離をフィードバック制御しながら水平に走査し,表面形状を検出するという,接触式の測定方法である(甲A10)。これに対し,3D-MIRAU法とは,参照面と試料面の配置をミラウ型にした干渉計を用いて行う,非接触式の測定方法であり,試料面からの反射光と参照面からの反射光との光路差により干渉像(縞)を発生させ, これにより表面形状を測定するものである(甲A11)。このように,原子間力顕微鏡(AFM)による測定原理と,3D-MIRAU法による測定原理は全く異なるところ,同一の物体 (縞)を発生させ, これにより表面形状を測定するものである(甲A11)。このように,原子間力顕微鏡(AFM)による測定原理と,3D-MIRAU法による測定原理は全く異なるところ,同一の物体表面を測定した場合,両測定方法で得られるRaの値が一致するとは到底考えられない。 (ウ) 相違点2について 相違点2(PSDの記載がない点)に関して,被告らは,磁気テープ 表面のRaの値とPSDの値との間には,一定の相関関係が存在し,Raが決まればこれに基づくスペクトル密度を推定することは可能であると主張するが,当該主張も理由がない。すなわち,Raの値とPSDの値との間に相関関係があるなどという技術常識は存在しない。このことは,甲85においても,具体的に説明されている。つまり,PSDとは, Raでは知り得ない,どのような周期成分が優勢であるかを見極めることができるということであるから,Raの値とPSDの値に相関関係などないのである。 なお,この点につき,被告らが提出する乙A4は,被告SSMMの従業員が自ら抽出したサンプルに基づいたものであり,そのサンプルを意 図的に選抜した可能性も否定できないから,信用できない。 また,乙A12(F教授意見書)も,まず,その内容について,4頁「7」においては,「一様・平坦な面を得ることを目的として面を加工した場合」に,標準面からの物体表面の各点の高さの分布は正規分布となることを前提として,意見を述べているが,ここでいう「一様・平坦 な面を得ることを目的として面を加工した場合」が,磁気テープのような表面に多数の凹凸を有する表面を前提にして議論されているのかは定かではない。また,「標準面からの物体表面の各点の高さの分布は正規分布となる」との見解の根拠も明らかではない(む が,磁気テープのような表面に多数の凹凸を有する表面を前提にして議論されているのかは定かではない。また,「標準面からの物体表面の各点の高さの分布は正規分布となる」との見解の根拠も明らかではない(むしろ,常に正規分布になると考えるのは不自然である)。その他にも,不適切な内容がある。 もっとも,乙A12の内容を参酌したとしても,乙A12においては,PSDの値は,近似曲線に基づいて,Raの値により算出できるなどとは述べられていない。 さらに,「Raが決まれば,PSDの値が一義的に決まる」との被告らの主張は,被告ソニーの出願に係る特許公開公報(甲A12)からも 否定される。そこでは,Raの特定に加えて,PSDの範囲及びMD方 向及びTD方向の比を特定することにより,課題を解決しようとしている。 そもそも,相違点2の検討に際し,被告らが選んだデータに基づく検証が必要であるということ自体,「本件優先日の技術常識に基づいて,乙28文献の記載を読んだ当業者が,磁性層表面及びバックコート層の 10μピッチにおけるPSDの値がそれぞれ800~10000n㎥,20000~80000n㎥であると認識することはない」ことを意味している。 (7) 争点7(本件特許2に無効理由が存するか)ア乙45文献に基づく進歩性欠如(無効理由2-1)(争点7-1) (被告らの主張)(ア) 本件発明2-1及び2-2は,本件特許2の優先日(平成13年7月30日)前である同年3月30日に日本国内で頒布された刊行物である特開2001-84549号公報(乙45文献)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,進歩性を欠く(特許法29 条2項)。なお,本件発明2-2が進歩性を欠く場合には,本件発明2-1も必然的に進 9号公報(乙45文献)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,進歩性を欠く(特許法29 条2項)。なお,本件発明2-2が進歩性を欠く場合には,本件発明2-1も必然的に進歩性を欠くことになるから,以下ではまず,本件発明2-2が進歩性を欠くことについて論じる。 (イ) 乙45発明乙45文献には,最短記録波長1μm以下のRLL2-7変調方式を 採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録システムにおいて用いる磁気テープにおいて,(ア)当該磁気テープは,非磁性支持体上に少なくとも下層非磁性層と上層磁性層とがこの順で設けられており,下層非磁性層は,カーボンブラックと結合剤を含み,上層磁性層は強磁性粉末及び結合剤樹脂を含むこと,(イ)磁性層に含まれる強磁性粉末として は,六方晶形板状微粉末を用いることが好ましいこと,並びに,(ウ) 当該磁気テープの磁性層表面において,50nm以上の深さを有する凹みは10個/46237.5μ㎡以下であり,かつ最大深さRvは100nm以下であること,が開示されている。 換言すれば,乙45文献には,磁気テープに最短波長1μm以下で磁気信号を記録する磁気記録再生システムであって,前記磁気テープは, 非磁性支持体上にカーボンブラック及び結合剤とを含む非磁性層と六方晶形板状微粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面に存在する50nm以上の深さを有する凹みの数が10個/46237.5μ㎡以下であり,かつ最大深さRvが100nm以下である,磁気記録再生システムに係る発明(乙45発明)が開示されている。 (ウ) 本件発明2-2と乙45発明の対比本件発明2-2と乙45発明とを対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 a一致点 ムに係る発明(乙45発明)が開示されている。 (ウ) 本件発明2-2と乙45発明の対比本件発明2-2と乙45発明とを対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 a一致点磁気記録媒体に最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記 録し,該記録された信号を再生ヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と六方晶フェライト粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ ㎡以下であることを特徴とする磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は磁気テープである磁気記録再生システム。 b相違点①本件発明2-2では,磁気記録再生システムは磁気記録媒体に記録された信号をMRヘッドを用いて再生するのに対し,乙45発明で は,用いる再生ヘッドの種類に限定がない点。 ②本件発明2-2では,磁性層表面の中心面平均粗さSRaが1. 0~6.0nmの範囲であるのに対し,乙45発明では,磁性層表面の中心面平均粗さは不明である点。 c原告の主張について乙45文献に記載されている発明は,磁気誘導ヘッド(インダクテ ィブヘッド)を再生ヘッドとして用いることを前提とするものではない。乙45文献には用いる再生ヘッドの種類として何ら限定はないから,相違点①に誤りはない。 (エ) 相違点①②についてa上記相違点①及び②については,六方晶フェライト粉末を磁性層に 含む磁気テープにおいて,磁気テープに記録された信号を再生するための再生ヘッドとしてMRヘッドを用いること,及び,磁性層表面の中心面平均粗さSRa については,六方晶フェライト粉末を磁性層に 含む磁気テープにおいて,磁気テープに記録された信号を再生するための再生ヘッドとしてMRヘッドを用いること,及び,磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることが好適であることは,公知文献(乙46ないし48,24,26ないし31)に開示されており,本件特許2の優先日前より周知の技術であった。 また,再生ヘッドの種類にかかわらず,磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることが好適であることも,当業者に周知であった(乙49ないし52)。したがって,乙45発明において,用いる再生ヘッドの種類にかかわらず,磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることは,当業 者が容易になし得たことである。 さらに,MRヘッドは,従来の誘導型磁気ヘッドと比較して,高い再生出力が得られやすく,高密度記録特性を向上させることができるという長所を有するものであり,このこともまた,当業者に周知であった(乙46・2頁2欄47行~3頁3欄7行,乙47・3頁4欄1 ~5行,乙48・2頁1欄46行~2欄1行。その他の文献として, 特開2000-99940号公報(乙53)・3頁4欄1~13行,特開2000-315312号公報(乙54)・2頁1欄44~49行,特開2001-43525号公報(乙55)・2頁1欄47行~2欄2行)。 また,六方晶フェライトの一種であるバリウムフェライトは,MR ヘッド適性が高い磁性粒子であることが,本件特許2の優先日前から知られていた(乙56)。 さらに,乙45発明が解決しようとする課題である,RLL2-7変調方式を用いて磁気テープにブロック単位でデータが書き込まれる際に致命的エラーが多 本件特許2の優先日前から知られていた(乙56)。 さらに,乙45発明が解決しようとする課題である,RLL2-7変調方式を用いて磁気テープにブロック単位でデータが書き込まれる際に致命的エラーが多発するという問題(乙45・段落【0008】) は,ヘッドと磁気テープの接触条件の低下により,ある深さ以上の凹みではスペーシングロスが増大して瞬間的な出力低下が発生すること,及び,RLL2-7変調方式ではランレングスの遷移が大きくなり,データパターンによってはピークシフトの影響が大きくなることに起因すると予想されているところ(同・段落【0016】),上記のス ペーシングロスの問題,及びランレングスの遷移の問題は,MRヘッドにおいても発生し得る問題であり,MRヘッドは,乙45発明と親和性を有する。 このように,当業者には,乙45発明において,再生ヘッドとしてMRヘッドを用いる動機付けが存在した。 したがって,乙45発明において,磁気テープに記録された信号を再生するための再生ヘッドとしてMRヘッドを用い,かつ,磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることは,当業者が容易になし得たことである。 bなお,乙45発明を開示する乙45文献の実施例には,製造した磁 気テープについて,Quantum製DLT-7000ドライブを使用して磁気テープ への書込みを行い,エラー測定を行った旨の記載がある(乙45・10頁17欄3~10行)。 他方で,上記Quantum製DLT-7000ドライブを用いてデータを記録したテープは,本件特許2の優先日前に発売された,再生ヘッドとしてMRヘッドを採用した別のドライブ(SuperDLTtapesystem)で再生す ることが可能であった(乙57)。 を記録したテープは,本件特許2の優先日前に発売された,再生ヘッドとしてMRヘッドを採用した別のドライブ(SuperDLTtapesystem)で再生す ることが可能であった(乙57)。 したがって,当業者であれば,乙45文献に開示されている磁気テープを,再生ヘッドとしてMRヘッドを用いた磁気記録再生システムで使用することは,容易に思い至ることであった。かかる観点からも,乙45発明において,磁気テープに記録された信号を再生するための 再生ヘッドとしてMRヘッドを用いることが当業者にとって容易であったことは明らかである。 (オ) 以上のとおり,本件発明2-2と乙45発明の相違点に係る構成は,当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得たものであるから,本件発明2-2は乙45発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明する ことができたものであり,進歩性を欠く。 そして,従属項である請求項2に記載された発明である本件発明2-2が進歩性を欠く以上,その独立項である請求項1に記載された発明である本件発明2-1もまた,進歩性を欠く。 したがって,本件特許2には,進歩性欠如の無効理由が存在する。 (原告の主張)(ア) 本件発明2乙45文献に記載されている従来のインダクティブヘッドで再生される磁気記録媒体は,高密度記録用に設計されたMRヘッド系における低ノイズ化という課題を解決できるものではなく,本件発明2は,MRヘ ッドを採用した磁気記録再生システムにおいて,媒体ノイズを著しく改 良した塗布型磁気記録媒体の提供を課題とする発明である。このような課題を解決すべく,本件発明2の発明者は,磁性層表面の特定の深さを有する凹み,及び磁性層表面粗さが,MRヘッドによる再生時における媒体ノイズに大きな 記録媒体の提供を課題とする発明である。このような課題を解決すべく,本件発明2の発明者は,磁性層表面の特定の深さを有する凹み,及び磁性層表面粗さが,MRヘッドによる再生時における媒体ノイズに大きな影響を与えることを見出し,本件発明2を完成させたものである。 (イ) 乙45発明乙45発明の課題は,インダクティブヘッドを用いるRLL2-7変調方式において,ドロップアウトで生じる訂正不可能な実害エラーを防止するというものである。そして,乙45発明は,このようなRLL2-7変調方式に特有の課題を解決するために,RLL2-7変調方式で 生じる実害エラーの発生メカニズムを解明して完成された発明である。 (ウ) 一致点の認定の誤りa乙45の段落【0010】には,「…最短記録波長1μm以下のRLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録システムにおいて,・・・磁性層の特定深さの凹みによる影響が顕著 であることを見いだし,本発明に至った。」と記載されているように,最短記録波長は「1μm」ではなく「1μm以下」と記載されている。 最短記録波長が特定されない限り,乙45文献に記載の最短記録波長と凹みの関係が本発明の構成要件2C-1を満たすか否かを判断することはできない。 乙45発明において,最短記録波長が100nm(最小記録bit長が50nm)の場合,その1/3の長さは17nm(小数点以下四捨五入)となり,乙45に記載の50nm以上の深さを有する凹みの数が10個/46237.5μ㎡以下であるからといって,(最小記録bit長の1/3である)17nm以上の深さを有する凹みの数が 10個/46237.5μ㎡以下であることにはならない。 したがって,被告らの主張における一致点の「前記磁 最小記録bit長の1/3である)17nm以上の深さを有する凹みの数が 10個/46237.5μ㎡以下であることにはならない。 したがって,被告らの主張における一致点の「前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下である」という認定は,誤りであるというよりほかはない。 b相違点①について,乙45発明は,RLL2-7変調方式を採用し たリニアサーペンタイン方式の磁気記録再生システムであり(システム/フォーマットはDLTシステム),インダクティブヘッドが用いられるシステムである(MRヘッドが用いられることはない)から,乙45発明に用いる再生ヘッドの種類に限定がないとする被告らの認定は誤っている。 c相違点②について,乙45発明が「磁性層の最大深さ100nm以下」との構成を採用することを捨象している。同構成は,乙45発明がその課題を解決するために不可欠な構成として採用した課題解決手段の一つであるから,この点を捨象して相違点を認定することは許されない。 (エ) 一致点及び相違点の正しい認定課題の解決手段に関し,両発明の構成において,偶々一致する点は,「磁気記録媒体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と六方晶フェライト粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有し」との点のみであり,(a)本件発明においては,「磁性層表面の中 心面平均粗さ」に着目し,その値(SRa)として「1.0~6.0nmの範囲」との構成を採用するのに対し,乙45発明では,「磁性層表面の最大深さ」に着目し,その値として「100nm以下」との構成を採用する点,(b)本件発明2においては,「磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上 するのに対し,乙45発明では,「磁性層表面の最大深さ」に着目し,その値として「100nm以下」との構成を採用する点,(b)本件発明2においては,「磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数」に着目し,その 値として「100個/10000μ㎡以下」との構成を採用するのに対 し,乙45発明では,「磁性層表面の50nm以上の深さを有する凹みの数」に着目し,その値として「10個/46237.5μ㎡以下」との構成を採用する点,さらに,(c)本件発明2では,MRヘッドを採用するのに対し,乙45発明では,インダクティブヘッドを採用する点において相違する。 そして,これらの3つの相違点(a)~(c)は,両発明の解決すべき課題や着想の相違に基づく相違点であるから,当業者が,乙45発明を出発点として,同発明が課題解決の手段として採用する各構成に代えて,同発明と課題や着想の異なる本件発明の採用する構成を採用しようと動機付けられることはない。 (オ) 乙45発明の磁気記録媒体の再生ヘッドとしてMRヘッドを適用することは容易に想到し得ないことaMRヘッドとインダクティブヘッドMRヘッドは,磁気抵抗効果(磁界によって電気抵抗が変化する現象)を示すMR素子が使用されたヘッドであるのに対して,インダク ティブヘッドは,磁気記録媒体に記録された信号に基づく磁束密度の変化に起因してコイルに発生する誘導電流を,起電力(出力電圧(VIND))として検出するヘッドである。このように,2つのヘッドの再生原理は異なり,両ヘッドは再生原理が異なることに起因して出力電圧(再生出力)の大きさも全く異なる(甲4(本件特許2の特許公 報)段落【0004】)。MRヘッドはインダクティブヘッドより少なく 原理は異なり,両ヘッドは再生原理が異なることに起因して出力電圧(再生出力)の大きさも全く異なる(甲4(本件特許2の特許公 報)段落【0004】)。MRヘッドはインダクティブヘッドより少なくとも約4.9~49倍再生出力が大きい,すなわち約4.9~49倍感度が高いといえる。 また,インダクティブヘッドでは,再生ヘッドにコイルが巻かれているため,当該コイルのインダクタンスに起因する機器ノイズが発生 し,結果的に再生出力が低下してしまう問題を有する(甲4・段落【0 003】)。したがって,インダクティブヘッドを用いたシステムでは,SN比を向上させるために,出力を大きくすることが重要であった。これに対して,MRヘッドでは,コイルを使用しないことからインピーダンスノイズ等の機器ノイズを大幅に低下させることができるため,機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすること ができれば,良好な記録再生を実現できる(甲4・段落【0004】)。 すなわち,MRヘッドを用いたシステムでは,SN比を向上させるために,磁気記録媒体ノイズを小さくすることが重要である。このように,インダクティブヘッドとMRヘッドでは機器ノイズの大きさが異なるから,SN比を向上させるための考え方が異なっている。 以上のとおり,乙45発明で用いられるインダクティブヘッドとMRヘッドは,再生原理及び出力電圧値が全く異なる。また,SN比を向上させるための考え方も異なるから,乙45発明から,磁気記録媒体ノイズを低減するという本発明の課題も想い至らない。よって,乙45発明の磁気記録媒体が供されるインダクティブヘッドを用いたシ ステムにおいて,当該ヘッドをMRヘッドに取り替えるなどということは容易に想到し得るものではない。 bまた,乙4 って,乙45発明の磁気記録媒体が供されるインダクティブヘッドを用いたシ ステムにおいて,当該ヘッドをMRヘッドに取り替えるなどということは容易に想到し得るものではない。 bまた,乙45発明は,実害に結びつく致命的エラーの改良というRLL2-7変調方式で生じる特有の課題を解決するものであり,①RLL2-7変調方式におけるインダクティブヘッドの接触条件に基づ く出力低下,及び②RLL2-7変調方式で生じるピークシフトの影響,という発明完成に用いた予想メカニズムもRLL2-7変調方式に由来する。このように乙45発明は,発明完成に用いた予想メカニズムもRLL2-7変調方式に特化している。したがって,当業者は,RLL2-7変調方式に特化した乙45の発明を,RLL2-7変調 方式では用いられないMRヘッドに適用することなど全く思いつかな い。 よって,乙45発明においてMRヘッドを適用することは容易であるとする被告主張は,乙45発明の課題と発明の課題が前提とする発明完成に用いた予想メカニズムを無視するものであり,失当である。 cまた,乙45発明は,RLL2-7変調方式における特有の実害エ ラーを改良するという課題を解決する発明である。すなわち,RLL2-7変調方式で規定された条件((i)RLL2-7変換規則,(ii)用いられる再生ヘッドがインダクティブヘッド,(iii)ヘッドと磁気テープの相対スピードが5m/s以下,(iv)最短記録波長が1μm以下,(v)記録方式がリニアサーペンタイン方式等)を満たす特別なシステムに おいて,実害エラーを防止できる磁気記録媒体を提供するものである(甲4・段落【0005】,乙45・段落【0007】の表1及び表2,【0010】)。したがって,乙45発明のシステ なシステムに おいて,実害エラーを防止できる磁気記録媒体を提供するものである(甲4・段落【0005】,乙45・段落【0007】の表1及び表2,【0010】)。したがって,乙45発明のシステムに用いられる磁気記録媒体表面の「50nm以上の深さを有する凹みが10個/46237.5μ㎡以下であり,且つ最大深さRvが100nm以下」 という特徴は,RLL2-7変調方式を採用した特別なシステムにおいて発生する実害エラーを防止できる磁気記録媒体表面の凹みの条件である。すなわち,乙45発明の磁気記録媒体表面の凹みの条件とRLL2-7変調方式におけるインダクティブヘッドの使用は技術的に一体不可分である。 したがって,かかる観点からも,当業者は,乙45発明の凹みの条件を満たす磁気記録媒体を,インダクティブヘッドに代えてMRヘッドに適用することなど想到しないのであり,被告の主張は後知恵以外のなにものでもない。 d以上のとおり,本件発明2が前提とするシステムは,MRヘッドを 用いて再生する,磁気記録再生システムであるのに対し,乙45発明 は,RLL2-7変調方式とインダクティブヘッドを採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムを前提とするから,乙45発明は,本件発明2に対する引用発明としての適格を欠く。さらに,本件発明2と乙45発明は,課題,着想(課題解決の方向付け),課題の解決手段及び効果のいずれも異なるから,当業者が乙45発明を出 発点として本件発明に容易に想到し得るものではない。また,磁気記録媒体ノイズの改良という,再生出力が大きく機器ノイズが小さいMRヘッドで顕在化した課題に想い至ることはなく,ましてや乙45発明を出発点として,MRヘッドを用いた場合の磁気記録媒体ノイズの改良という 媒体ノイズの改良という,再生出力が大きく機器ノイズが小さいMRヘッドで顕在化した課題に想い至ることはなく,ましてや乙45発明を出発点として,MRヘッドを用いた場合の磁気記録媒体ノイズの改良という課題を解決する手段である本件発明2の構成を当業者が想 到することはない。 (カ) 乙45文献には最小記録bit長と凹みの深さとの関係の開示がないこと乙45文献には,本件発明2の「最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下」という構成が記 載されておらず,被告はこの点を相違点としていない(相違点(b))。 しかしながら,乙45文献には,最短記録波長1μm以下のRLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式において,50nm以上の深さを有する凹みが10個/46237.5μ㎡以下であることを開示するだけで(乙45・請求項1,【0010】),最短記録波長の 大きさ,及び,凹みの深さと凹みの密度との関係性について全く検討されていない。 したがって,当業者が,乙45発明から,最小記録bit長と,磁性層表面の凹みの深さ及び凹みの密度との関係性に着目することはなく,いわんや最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が10 0個/10000μ㎡以下という構成に到達し得ない。 また乙45発明の課題は,RLL2-7変調方式とインダクティブヘッドを採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムにおいて,実害に結びつく致命的エラーを改良した塗布型磁気記録媒体を提供することであり,本件発明2の課題(MRヘッドを採用した記録再生システムにおいて,媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供す ること)と全く異なっていることに鑑みれば,なおさら,乙45発明から あり,本件発明2の課題(MRヘッドを採用した記録再生システムにおいて,媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供す ること)と全く異なっていることに鑑みれば,なおさら,乙45発明から相違点(b)の構成に到達することはない。 (キ) 乙45発明に乙49~52に記載の表面粗さを組み合わせられないこと乙45発明は,RLL2-7変調方式を採用したシステムにおける実 害に結びつく致命的エラーの改良を課題とし,その課題を解決するために,磁性層表面の凹みの深さ,数,最大深さRvを一定の範囲内にする発明である(乙45・請求項1,【0008】,【0009】)。しかしながら,乙45文献には,磁気記録媒体の中心面平均粗さについて記載されておらず,それが乙45発明の課題の解決に結びつくことの記載 も示唆もない。したがって,乙45発明において,当業者が磁気記録媒体の磁性層表面の中心面平均粗さを制御しようとする動機付けられることはない。 仮に,当業者が乙45発明において磁性層表面の中心面平均粗さを制御しようと動機付けられたとしても,磁性層表面の中心面平均粗さは非 磁性支持体,上層磁性層用塗料,下層非磁性層用塗料,粘度調整,塗布方法,硬化方法,カレンダ加工等の様々な条件に依存する。そして,これらの条件は乙45文献の段落【0062】~【0078】で具体的に特定されている。したがって,互いに異なる製造条件で製造された磁気記録媒体において,乙49~52に記載された磁性層表面の中心面平均 粗さを乙45発明の磁気記録媒体の磁性層の中心面平均粗さにそのまま 適用することはできない。また,仮に乙45発明の磁性層表面の中心面平均粗さを変更するように製造条件を変更した場合,磁性層表面にある凹みの深さや数が変化してしまう。よ 平均粗さにそのまま 適用することはできない。また,仮に乙45発明の磁性層表面の中心面平均粗さを変更するように製造条件を変更した場合,磁性層表面にある凹みの深さや数が変化してしまう。よって,乙45発明の磁性層表面の凹みの条件はそのままで,乙49~52に記載された中心面平均粗さの数値だけを組み合わせることは不可能である。 また,乙46~48,乙24,乙26~31及び乙49~52の記載に基づき,磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることが好適であることは周知であったとはいえない。すなわち,乙46~48,乙24,乙26~31及び乙49~52には,互いに異なる課題を解決できる磁気記録媒体や特有の構成を有する磁気記録 媒体が開示され,それらの磁気記録媒体の磁性層表面の平均粗さが記載されている。したがって,乙46~48,乙24,乙26~31及び乙49~52に記載の磁気記録媒体の表面の平均粗さだけを抜き出して,これらをひとくくりにして,1.0~6.0nmの範囲とすることが周知技術であると当業者が認識することはなく,また,これを乙45発明 に適用しようとすることもない。 以上のとおりであるから,乙45発明において,磁気記録媒体の磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることは容易に想到し得ない。 (ク) 小括 以上から,①乙45文献は,「磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下」との構成を開示しておらず,また,②当業者が,乙45において磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることを想到することもない。さらに,③当業者は,乙45の磁気記録媒体 において,再生ヘッドとして た,②当業者が,乙45において磁性層表面の中心面平均粗さSRaを1.0~6.0nmの範囲とすることを想到することもない。さらに,③当業者は,乙45の磁気記録媒体 において,再生ヘッドとして,RLL2-7変調方式を採用したリニア サーペンタイン方式では用いられていないMRヘッドを適用することは想到し得ない。 したがって,本件発明2は,乙45発明及び乙46~48,乙24,乙26~31及び乙49~52から容易に想到し得るものではない。 イ磁気テープ1及び磁気テープ3に基づく進歩性欠如(無効理由2-2) (争点7-2)(被告らの主張)(ア) 磁気テープ1による引用発明3の実施磁気テープカートリッジ「DGD125P」(磁気テープ1)は,本件特許1の優先日よりも前の平成8年頃に被告から発売された,磁気テ ープの規格である「DigitalDataStorage 3」(DDS3規格)に準拠する,データ記録用の磁気テープカートリッジである(乙58,61)。 磁気テープ1は,磁性の上層,非磁性の下層,非磁性のベースフィルム及びバックコート層の4層からなる。磁性の上層が存在する側を上側とした場合,各層の順序は,①上層,②下層,③ベースフィルム,④バッ クコート層の順となる(乙61)。磁性の上層は磁性粉末及び結合剤からなり,非磁性の下層は非磁性粉末及び結合剤からなる。上層に含まれる磁性粉末は強磁性金属粉末である。 磁気テープ1は,DDS3規格に準拠する磁気テープドライブでの記録・再生に対応するものであったところ,DDS3規格においては,最 短記録bit長は0.1666μm(=166.6nm)であった(乙62)。 「DGD125P」(ロット番号:C441828。平成10年11月28日製造)の磁気テ DDS3規格においては,最 短記録bit長は0.1666μm(=166.6nm)であった(乙62)。 「DGD125P」(ロット番号:C441828。平成10年11月28日製造)の磁気テープから切り出したサンプルについて,被告の委託に基づき,米国の測定機関(AdvancedSurfaceMicroscopy, Inc.) が,平成28年10月から11月にかけて,DigitalInstruments社のN anoScopeIII原子間力顕微鏡を用いて,磁性層表面における100μm×100μm(=10000μ㎡)の領域内における深さ55.5nm(=166.6nmの3分の1)以上の穴の数及び中心線平均表面粗さRaを測定したところ,測定結果(乙63)は,いずれのサンプルについても,穴の数は100個以下であり,また,Raは1.0~6.0n mの範囲内であった。磁気テープ1は,磁気誘導ヘッドを使用するドライブを使用して再生することが可能なものであった。 以上のとおり,磁気記録媒体に最小記録bit長166.6nmで磁気信号を記録し,該記録された信号を磁気誘導ヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上 に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と強磁性金属粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面に存在する55.5nm以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下であり,かつ前記磁性層表面の中心面平均粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲である磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は磁気テー プである磁気記録再生システム(引用発明3)は,本件特許2の優先日前に公然実施されていた。 (イ) 磁気テープ3による引用発明3の実施 録再生システムであって,前記磁気記録媒体は磁気テー プである磁気記録再生システム(引用発明3)は,本件特許2の優先日前に公然実施されていた。 (イ) 磁気テープ3による引用発明3の実施被告は,未使用の「DGD125P」(磁気テープ3)を用いて,磁性層表面の凹みの数及び平均中心粗さSRaの測定を行ったところ,引 用発明3は,磁気テープ1のみならず,磁気テープ3においても公然実施されていたことが確認された。 磁気テープ3は,被告が製造したロット番号「C4412284」の磁気テープカートリッジであり磁気テープ1と同様,DDS3規格に準拠している。磁気テープ3は,平成10年4月22日に製造され,未使 用のまま保管されていた抜き取りサンプル以外の製品は,同月頃に出荷 された。 被告は,平成10年4月22日に磁気テープ3を製造した後,これらを出荷する前に,その中から製品を一点抜き取り,抜き取りサンプルとして未使用のまま被告の倉庫に保管しており,今回の測定のため,平成29年7月に上記抜き取りサンプルを倉庫から取り出し,テープカート リッジの状態のまま,米国の測定機関(AdvancedSurfaceMicroscopy,Inc.)に送付した。同測定機関は,被告から受領した磁気テープ3の抜き取りサンプルについて,カートリッジから磁気テープを引き出し,磁気テープ片を切り出した上で,平成29年7月18日から19日にかけて,DigitalInstruments社のNanoScopeIII原子間力顕微鏡を用いて, 当該サンプルの磁性層表面における100μm×100μm(=10000μ㎡)の領域内における深さ55.5nm(=166.6nmの3分の1)以上の穴の数及び中心面平均粗さRaを測定した。 磁気 当該サンプルの磁性層表面における100μm×100μm(=10000μ㎡)の領域内における深さ55.5nm(=166.6nmの3分の1)以上の穴の数及び中心面平均粗さRaを測定した。 磁気テープ3は,磁性の上層,非磁性の下層,非磁性のベースフィルム及びバックコート層の4層からなる。磁性の上層が存在する側を上側 とした場合,各層の順序は,①上層,②下層,③ベースフィルム,④バックコート層の順となる(乙61)。 磁性の上層は磁性粉末及び結合剤からなり,非磁性の下層は非磁性粉末及び結合剤からなる。上層に含まれる磁性粉末は強磁性金属粉末である。 磁気テープ3は,DDS3規格に準拠する磁気テープドライブでの記録・再生に対応するものであったところ,DDS3規格においては,最短記録bit長は0.1666μm(=166.6nm)であった(乙62)。 磁気テープ3の磁性層表面における100μm×100μm(=10 000μ㎡)の領域内における深さ55.5nm(=166.6nmの 3分の1)以上の穴の数は12~29個の範囲であり,また,中心面平均粗さRaは4.191~5.307nmの範囲であった。 磁気テープ3は,DDS3規格に準拠するものであったところ,DDS3規格においては磁気誘導ヘッドが再生ヘッドとして採用されていた。 以上のとおり,引用発明3は,磁気テープ1のみならず磁気テープ3 においても公然実施されており,本件特許2の優先日前に公然実施されていた。 (ウ) 本件発明2-2と引用発明3の対比本件発明2-2と引用発明3とを対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 a一致点磁気記録媒体に最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録し,該記録された信号を再生ヘッド 明2-2と引用発明3とを対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 a一致点磁気記録媒体に最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録し,該記録された信号を再生ヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層と をこの順に有し,前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下であり,かつ前記磁性層表面の中心面平均粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲であることを特徴とする磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は磁気テープである磁気記録再生システム。 b相違点①本件発明2-2では,磁気記録再生システムは磁気記録媒体に記録された信号をMRヘッドを用いて再生するのに対し,引用発明3では,磁気誘導ヘッドを用いて再生する点。 ②本件発明2-2では,強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を 使用しているのに対し,引用発明3では,強磁性粉末として強磁性金 属粉末を使用している点。 (エ) 相違点①②について上記相違点①及び②については,磁気テープの磁性層における強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を使用すること,及び,磁気テープに記録された信号を再生するための再生ヘッドとしてMRヘッドを用いる ことは,前記「第2」において挙げた公知文献(乙46~48,24,26ないし31)に開示されており,本件特許2の優先日前より周知の技術であった。 また,MRヘッドは,従来の誘導型磁気ヘッドと比較して,高い再生出力が得られやすく,高密度記録特性を向上させることができるという 長所を有するものであり,このこと より周知の技術であった。 また,MRヘッドは,従来の誘導型磁気ヘッドと比較して,高い再生出力が得られやすく,高密度記録特性を向上させることができるという 長所を有するものであり,このこともまた,当業者に周知であった(乙46・2頁2欄47行~3頁3欄7行,乙47・3頁4欄1~5行,乙48・2頁1欄46行~2欄1行。その他の文献として,乙53・3頁4欄1~13行,乙54・2頁1欄44~49行,乙55・2頁1欄47行~2欄2行)。したがって,当業者には,乙45発明において,再 生ヘッドとしてMRヘッドを用いる動機付けが存在した。 さらに,上記公知文献(乙46~48,24,26ないし31)において,強磁性金属粉末及び六方晶フェライト粉末が並列的に挙げられていることからも明らかであるとおり,六方晶フェライト粉末は,磁気テープの磁性層に使用する強磁性粉末として,強磁性金属粉末に代替し得 るものとして当業者に認識されていた。 したがって,引用発明3において,磁気テープの磁性層における強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を使用し,かつ,磁気テープに記録された信号を再生するための再生ヘッドとしてMRヘッドを用いることは,当業者が容易になし得たことである。 (オ) 以上のとおり,本件発明2-2と引用発明3の相違点に係る構成は, 当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得たものであるから,本件発明2-2は引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性を欠く。 そして,従属項である請求項2に記載された発明である本件発明2-2が進歩性を欠く以上,その独立項である請求項1に記載された発明で ある本件発明2-1もまた,進歩性を欠く。 したがって,本件特許2には,進歩性欠如の無 求項2に記載された発明である本件発明2-2が進歩性を欠く以上,その独立項である請求項1に記載された発明で ある本件発明2-1もまた,進歩性を欠く。 したがって,本件特許2には,進歩性欠如の無効理由が存在する。 (原告の主張)(ア) 引用発明3は,前記(6)ア(原告の主張)で詳述した磁気テープ1に係るものであり,争点6-1に対する反論で述べたのと同じ理由により, 上記「引用発明3」の構成を有する磁気記録テープが,本件特許2の優先日前に公然実施されていたとはいえない。したがって,「引用発明3」は,特許法29条1項2号に掲げる発明とはいえず,「引用発明3」に基づく進歩性欠如の主張は失当である。 仮に,この点をおくとしても,本件発明2-1及び2-2は,「引用 発明3」及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,いずれにしろ,被告の主張は誤りである。 (イ) 相違点①に係る本件発明2-2の構成の非容易想到性被告は,磁気テープに記録された信号を再生するための再生ヘッドとしてMRヘッドを用いることは本件特許2の優先日前より周知の技術で あり,MRヘッドは,従来のインダクティブヘッドと比較して,高い再生出力が得られやすく,高密度記録特性を向上させることができるという長所を有するものであることも当業者に周知であったから,当業者には,引用発明3において再生ヘッドとしてMRヘッドを用いる動機付けが存在したと主張する。しかしながら,引用発明3の再生ヘッドとして, インダクティブヘッドに代えて,MRヘッド(磁気抵抗効果型磁気ヘッ ド)を用いることが容易に想到し得ないことは,前記ア(原告の主張)のとおりである。また,磁気テープの規格であるDDS3とインダクティブヘッドとは技術 MRヘッド(磁気抵抗効果型磁気ヘッ ド)を用いることが容易に想到し得ないことは,前記ア(原告の主張)のとおりである。また,磁気テープの規格であるDDS3とインダクティブヘッドとは技術的に一体不可分の関係にあるという開発経緯に鑑みても,インダクティブヘッドを,DDS3から切り離して他のヘッドに置き換えることに当業者が動機づけられることはない(前記(6)ア(原告 の主張))。さらに,静電気に対する耐性の問題が存しないインダクティブヘッドを,静電気に対する耐性が低く,容易に静電破壊を起こしてしまうという問題点があるMRヘッドに敢えて置き換えることに当業者を容易に想到するとは言えず,むしろ阻害事由があると言わざるを得ないからである(同上)。 また,インダクティブヘッドをMRヘッドに置き換えることを容易に想到しえないことは,引用発明3が,強磁性粉末として強磁性金属粉末を使用していること(相違点②)からもいうことができる。強磁性金属粉末は,静電気破壊を引き起こす原因となるものであるところ,MRヘッドは静電気に弱いのであるから,引用発明3に接した当業者が,イン ダクティブヘッドをMRヘッドに変更することに動機付けられることはなく,むしろ阻害事由があるということができるからである(同上)。 (ウ) 相違点②に係る本件発明2-2の構成の非容易想到性被告は,引用発明3において,強磁性金属粉末に代えて,六方晶フェライト粉末を使用することは,当業者が容易になし得たことであると主 張するが,被告の主張が失当であることは,前記(6)ア(原告の主張)において,すでに述べたとおりである。すなわち,公用発明である引用発明3が使用していた強磁性金属粉末を,別の粉末本に置き換えることには,強い動機付けが必要とされるべきであると (6)ア(原告の主張)において,すでに述べたとおりである。すなわち,公用発明である引用発明3が使用していた強磁性金属粉末を,別の粉末本に置き換えることには,強い動機付けが必要とされるべきであるところ,被告が提出した多数の公知文献においても,引用発明3の強磁性金属粉末を六方晶フェラ イト粉末に変更することの動機付けを当業者に与える記載や示唆は見ら れない。また,磁気テープの規格であるDDS3と金属粉末塗布テープとは一体不可分の関係にあるから,DDS3のために開発された金属粉末塗布テープを,DDS3から切り離して他の強磁性粉末を塗布したテープに置き換えることを当業者が動機づけられることはない。 よって,周知技術を引用発明3に適用することにより本件発明2-2 に係る相違点②の構成が得られるとの被告の主張は誤りである。 (エ) 以上のように,本件発明2-2及びその独立項である本件発明2-1は,引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。よって,本件発明2-1及び2-2は,引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであると の被告による進歩性欠如の主張は失当である。 ウサポート要件違反(無効理由2-3)(争点7-3)(被告らの主張)(ア) 本件発明2-1及び2-2は,本件明細書2の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの ではなく,また,当業者が出願時の技術常識に照らし上記各発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもないから,本件特許2はサポート要件違反(特許法36条6項1号)の無効理由を有する。以下,詳述する。 (イ) 本件明細書2には,実施例5~15及び比較例4~10について,S きる範囲のものでもないから,本件特許2はサポート要件違反(特許法36条6項1号)の無効理由を有する。以下,詳述する。 (イ) 本件明細書2には,実施例5~15及び比較例4~10について,S NRを測定した結果が記載されている(甲4・25頁表2,25頁35行~26頁1行)。しかしながら,本件発明2-1及び2-2における最小記録bit長の範囲は50~500nmである(構成要件2A)であるところ,上記実施例及び比較例は,最小記録bit長が275nm,150nm又は100nmのいずれかの場合のみであり,最小記録bi t長がそれ以外の値である場合(とりわけ,上限である500nm及び その近傍である場合,並びに,下限である50nm及びその近傍である場合)の実施例・比較例は存在しない。 また,上記実施例及び比較例においては,最小記録bit長ごとに異なる合否の判定基準が使用されている。すなわち,記録波長0.55μm(=最小記録bit長275nm)の場合にはSNR25dB以上を, 記録波長0.3μm(=最小記録bit長150nm)の場合にはSNR22dB以上を,記録波長0.2μm(=最小記録bit長100nm)の場合にはSNR12dB以上を,それぞれ良好と見なしている(甲4・24頁18~23行)。しかしながら,最長記録bit長がそれ以外の値である場合(とりわけ,上限である500nmである場合及び下 限である50nmである場合)については,本件明細書2には,そもそも合否の判定基準が記載されていない。最小記録bit長が275nm,150nm及び100nmの場合に,それぞれ異なる合否の判定基準を用いている以上,50nmや500nmの場合にも上記と異なる合否の判定基準を用いることになると推測されるが,その具体的な数値を nm,150nm及び100nmの場合に,それぞれ異なる合否の判定基準を用いている以上,50nmや500nmの場合にも上記と異なる合否の判定基準を用いることになると推測されるが,その具体的な数値を算出 する手掛かりとなる記載は,本件明細書2には一切存在しない。したがって,それらの場合に,SNRがいかなる値であれば良好と見なされ,いかなる値であれば不良と見なされるのか,本件明細書2の記載からは全く不明である。 (ウ) そもそも,最小記録bit長ごとに異なる合否の判定基準を用いる根 拠が不明であると言わざるを得ない。上記実施例及び比較例においては,最小記録bit長ごとに異なる合否の判定基準を用いているため,本来はより良好であるはずのSNRの値が大きい例が不良とみなされ,SNRの値が小さい例が良好と見なされるという逆転現象が生じてしまっている。例えば,比較例4は実施例11よりもSNRの値が大きいにも関 わらず,比較例4は不良と見なされ,実施例11は良好と見なされてい る。また,比較例4~8は実施例14・15よりもSNRの値が大きいにも関わらず,比較例4~8は不良と見なされ,実施例14・15は良好と見なされている。 上記の実施例及び比較例の評価結果からは,本件発明2-1及び2-2の構成要件に規定されているパラメータと,SNRとの間に,前者が 構成要件の規定する数値範囲内であれば後者は良好であり,前者が数値範囲外であれば後者は不良である,という相関関係を見出すことができないことは明らかである。そうであるにもかかわらず,本件明細書2は,最小記録bit長ごとに異なる合否の判定基準を用いることで,あたかも,上記のような相関関係が存在するかのように見せかけているにすぎ ない。 (エ) 以上のとおり,最小 らず,本件明細書2は,最小記録bit長ごとに異なる合否の判定基準を用いることで,あたかも,上記のような相関関係が存在するかのように見せかけているにすぎ ない。 (エ) 以上のとおり,最小記録bit長が275nm,150nm又は100nmのいずれの値でもない場合(とりわけ,上限である500nm及びその近傍である場合,並びに,下限である50nm及びその近傍である場合)の実施例・比較例が存在せず,また,最小記録bit長が27 5nm,150nm又は100nmの場合であっても前述したような逆転現象が生じていることから,本件明細書2の記載に接した当業者は,本件発明2-1及び2-2が発明の課題を解決すると認識することはできない。また,出願時の技術常識に照らしても,当業者は,本件発明2-1及び2-2が発明の課題を解決すると認識することはできない。 したがって,本件発明2-1及び2-2は,発明の詳細な説明に記載した発明ではなく,本件特許2にはサポート要件違反の無効理由が存在する。 (原告の主張)(ア) 当業者は,技術常識,及び実施例等の記載を含む本件明細書2の発明 の詳細な説明から,本件発明2の課題を解決できると認識できる。また, 磁気記録媒体の技術分野において,記録波長(最小記録bit長)毎に異なる出力基準又はSNR基準を設けることは,磁気記録媒体の性能を正しく評価するために必要であり,一般的に行われていることである。 よって,本件特許2はサポート要件を満たすものである。以下,その理由を述べる。 (イ) 最小記録bit長ごとに異なる判定基準が設けられること本件明細書2の記載によれば,本件発明2は,磁性層表面上に所定の深さ以上の凹み部分があると,MRヘッドと磁気テープ表面との距離が増大し,そ ) 最小記録bit長ごとに異なる判定基準が設けられること本件明細書2の記載によれば,本件発明2は,磁性層表面上に所定の深さ以上の凹み部分があると,MRヘッドと磁気テープ表面との距離が増大し,その凹み部分でスペーシングロス(後述)が増大して部分的な出力の低下が起こると考えられ,最小記録bit長とスペーシングロス に基づくノイズとの関係について研究を進め,MRヘッドを用いたときにノイズを低下させることができる凹みの深さ,凹みの密度,中心面平均粗さを見出した発明である(甲4・段落【0010】~【0013】)。 本件特許2の磁気記録媒体の技術分野において,記録波長(最小記録bit長)毎に異なる出力基準又はSNR基準を設けることは,磁気記 録媒体の性能を正しく評価するために必要なことなのである。 実際,磁気記録媒体の発明が記載された多くの特許公開公報において,磁気記録媒体の再生出力やSNRを評価する際,記録波長毎に異なる出力基準又はSNR基準が設けられ,当該基準に基づいて実施例・比較例の相対的評価がなされている(甲43~45)。 以上述べたとおり,本件特許2の優先日当時,磁気記録媒体の技術分野において,記録波長(最小記録bit長)毎に異なる出力基準又はSNR基準を設けることは,磁気記録媒体の性能を正しく評価するために必要であり,また一般的に行われていることである。よって,本件明細書2の発明の詳細な説明において,記録波長ごとに異なる基準を設けて いるからサポート要件違反であるという被告主張は失当である。 (ウ) 3つの最小記録bit長の実施例等を含む発明の詳細な説明の記載から本件発明2の課題を解決できると認識できること前記(イ)のとおり,本件明細書2の発明の詳細な説明には,本件発明2が,磁性層表 ウ) 3つの最小記録bit長の実施例等を含む発明の詳細な説明の記載から本件発明2の課題を解決できると認識できること前記(イ)のとおり,本件明細書2の発明の詳細な説明には,本件発明2が,磁性層表面上に所定の深さ以上の凹み部分でスペーシングロスが増大して部分的な出力の低下が生じることの発見に基づき,MRヘッドを 用いたときにノイズを低下させることができる凹みの深さ,凹みの密度,中心面平均粗さを見出した発明であることが記載されている。また,最小記録bit長(記録波長)が短くなれば出力及びSNRが低下し,最小記録bit長(記録波長)が長くなれば出力及びSNRが向上することが技術常識として知られている。したがって,このような技術常識, 及び本件明細書2の275nm,150nm及び100nmの3つの記録波長における実施例及び比較例のSNRの測定結果を含む発明の詳細な説明の記載に基づき,本件発明2のMRヘッドを採用した磁気記録再生システムは,最小記録bit長50nm~500nmの範囲において,媒体ノイズを著しく改良するという課題を解決できると認識されるので ある(甲4・段落【0005】)。 また,本件発明2のような磁気記録再生システムの発明において,あらゆる波長における判定基準を記載することは不可能である。仮にあらゆる波長における判定基準がなければサポート要件を満たさないということになれば,多くの磁気記録再生システム及び磁気記録媒体の発明が サポート要件欠如となり得,不合理と言わざるを得ない。実際,記録波長(最小記録bit長)が1つだけの実施例で,磁気記録媒体の出力を評価している特許公報が多数存在する(甲46ないし48)。 (エ) 小括以上に述べたとおり,当業者は,技術常識及び本件明細書2の発明の 詳細な説 が1つだけの実施例で,磁気記録媒体の出力を評価している特許公報が多数存在する(甲46ないし48)。 (エ) 小括以上に述べたとおり,当業者は,技術常識及び本件明細書2の発明の 詳細な説明から,本件発明2の課題を解決できると認識できる。また, あらゆる波長における判定基準がなければサポート要件を満たさないということになれば,多くの磁気記録再生システム及び磁気記録媒体の発明がサポート要件欠如となり,不合理である。 よって,最小記録bit長が275nm,150nm及び100nm以外の値の実施例・比較例が存在しないから本件特許2がサポート要件 を満たしていないとする被告主張は失当である。 エサポート要件違反(無効理由2-4)(争点7-4)(被告らの主張)(ア) 本件発明2-1及び2-2は,磁気記録媒体の磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/1 0000μ㎡以下であることを要件とする(構成要件2C-1)。しかしながら,以下に述べるとおり,本件発明2-1及び2-2が最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目することの技術的意義は,全く不明である。したがって,本件特許2の明細書(本件明細書2)の記載に接した当業者は,本件発明2-1及び2-2が発明の課 題を解決すると認識することはできず,また,出願時の技術常識に照らしても,当業者は,本件発明2-1及び2-2が発明の課題を解決すると認識することはできない。 したがって,本件発明2-1及び2-2は,発明の詳細な説明に記載した発明ではなく,本件特許2にはサポート要件違反の無効理由が存在 する。 (イ) 本件発明2-1及び2-2が最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目する の詳細な説明に記載した発明ではなく,本件特許2にはサポート要件違反の無効理由が存在 する。 (イ) 本件発明2-1及び2-2が最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目することの技術的意義について,本件明細書2の段落【0011】にのみ記載があるが,かかる記載のみでは,磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの個数 に着目し,これを制御することが,本件明細書2に記載されているよう な作用効果を本当に奏するものであるか否か,当業者は到底理解することができない。 また,磁性層表面に存在する凹みの「数」に着目し,その数が100個/10000μ㎡以下かそうでないかを問題にすることの技術的意義も不明である。仮に,磁性層表面の,ある特定の深さを有する凹みの存 在がノイズに影響を与えるとしても,それは単純に凹みの「数」によって決まるものではなく,凹みの面積によっても影響を受けると推測されるが,凹みの面積といった要素を度外視し,単純に凹みの「数」のみで磁気テープの性能の良し悪しを決定することは不合理であり,その技術的意義は不明である。 (ウ) この点,本件明細書2には,実施例5~15及び比較例4~10についてSNRを測定した結果が記載されており,各実施例・比較例ごとに,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が記載されている(甲4・25頁の表2)。しかしながら,前述のとおり,「1/3以上」という閾値の技術的意義,及び凹みの「数」を数えることの技術的 意義が全く不明である以上,本件明細書2における上記の程度の開示では,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目する技術的意義を当業者が理解するには到底足りない。「1/3以上」という閾値につい 不明である以上,本件明細書2における上記の程度の開示では,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目する技術的意義を当業者が理解するには到底足りない。「1/3以上」という閾値については,そもそも,本件明細書2には,実施例5~15及び比較例4~10について,磁性層表面における凹みの総数や,それぞれ の凹みの深さ,凹みの面積といった具体的な情報は一切記載されておらず,単に,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が記載されているにすぎない。本件明細書2に記載の実施例・比較例においては,「1/3以上」以外の閾値を用いた場合に,凹みの数とSNRの合否との間に関係性を見出すことができるか否か,といった検証は全く 行われていない。 また,凹みの「数」については,前述のとおり,仮に,磁性層表面の,ある特定の深さを有する凹みの存在がノイズに影響を与えるとしても,それは単純に凹みの「数」によって決まるものではなく,凹みの面積によっても影響を受けると推測されるところ,かかる凹みの面積が与える影響の有無については,本件明細書2に記載の実施例・比較例において 何ら検証は行われていない。 さらに,上記実施例及び比較例においては,最小記録bit長ごとに異なる合否の判定基準を用いているが,その根拠は不明であり,また,そこで用いている具体的な数字の根拠も不明である。 (エ) なお,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目 する技術的意義が不明であることは,本件特許2の審査段階において,既に指摘されていた事項である。 すなわち,平成17年8月2日付拒絶理由通知書(乙16)において,審査官は,理由Cの(b)として,数える対象となる凹みの深さを「最小記録bit長の1/3以上」のものとする 摘されていた事項である。 すなわち,平成17年8月2日付拒絶理由通知書(乙16)において,審査官は,理由Cの(b)として,数える対象となる凹みの深さを「最小記録bit長の1/3以上」のものとする理由(最小記録bit長を 用いることの技術的意義,「1/3以上」に対する技術的意味及び臨界的意義)が著しく不明瞭である旨を指摘した。上記拒絶理由通知を受けて,出願人は平成17年10月11日付で手続補正書(乙17)及び意見書(乙18)を提出した。理由Cの(b)については,出願人は,磁気記録信号の深さを半円と仮定すると波長の1/4(bit長の1/2) の深さまでしか記録することはできないが,実際にはスペーシングロスの影響もあるため記録可能な深さは更に浅くなり,この点を踏まえて発明者らが検討を重ねた結果,最小記録bit長の1/3の深さで記録に対する影響が大きくなることが判明した,と述べた(乙18・13頁26~末行)。しかしながら,審査官は,拒絶理由は依然として解消され ていないとして,平成18年1月20日,拒絶査定をした(乙19)。 理由Cの(b)については,審査官は,上記意見書における「磁気記録信号の深さを半円と仮定すると,波長の1/4(即ちbit長の1/2)の深さまでしか記録することはできない」とする根拠が不明であること,及び,「本件発明者らが検討を重ねた結果,最小記録bit長の1/3の深さで記録に対する影響が大きくなることが判明した」とあるが,そ の裏付けとなる実験等が提示されていないことを指摘した(乙19・2頁10~18行)。 そこで,出願人は拒絶査定不服審判を請求し(不服2006-3466),平成18年3月27日付手続補正書(乙20)で請求項の補正を行うとともに,同年5月10日付手続補正書(乙21) 10~18行)。 そこで,出願人は拒絶査定不服審判を請求し(不服2006-3466),平成18年3月27日付手続補正書(乙20)で請求項の補正を行うとともに,同年5月10日付手続補正書(乙21)において審判請 求の理由を述べた。その後,審査官は前置審査において拒絶査定を取り消し,特許査定をした(乙22)。 (オ) しかしながら,上記手続補正書(乙21)における,理由Cの(b)についての出願人の説明は,技術的には完全に誤りである。 すなわち,出願人は,乙21の図1を用いて,磁気信号の波長とbi t長の関係について,記録波長λ=2ビットであると説明する(乙21・6頁8行~7頁1行,図1)が,図1のグラフにおける横軸は時間である。記録波長及びbit長はいずれも物理的な長さであり,時間の長さではない。 次に,出願人の図2に関する説明(乙21・7頁1行~8頁1行,図 2)についても,図2のグラフがそもそも何を意味するのか,乙21には明示されていないが,少なくとも,横軸は時間であり,また「N」「S」との記載から,縦軸は磁気の強度及び向きであると推測される。図2の横軸と縦軸とでは単位が異なるから,これを「半円」であると仮定するというのは意味不明である。出願人は,図2の縦軸及び横軸を,いずれ も物理的な長さ(深さ)を意味すると理解している節があるが,図2を そのように理解する余地はない。また,磁気テープ上に磁気信号を記録することが可能な深さは,記録波長によって決まるものではない。磁気信号を記録可能な深さと記録波長との間に,前者が後者の1/4であるという関係性は存在しないのであり,出願人の上記説明は,根本的に誤っている。 さらに,出願人の図3に関する説明(乙21・8頁3~9行)についても,ECMA規 の間に,前者が後者の1/4であるという関係性は存在しないのであり,出願人の上記説明は,根本的に誤っている。 さらに,出願人の図3に関する説明(乙21・8頁3~9行)についても,ECMA規格におけるMissingPulseの定義が何故,記録再生特性の話と結び付くのか,出力が35%未満になると何故,最小記録bit長の1/3以上の記録深さが損なわれるのか,仮にそうであるとして,そのことから何故,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹み が記録再生特性に大きく影響するといえるのか,出願人の説明は度々大きく飛躍しており,完全に理解不能である。 (原告の主張)(ア) サポート要件を満たすこと本件明細書2の発明の詳細な説明には,本件発明2の課題について記 載されており(段落【0005】),本件発明2の課題は,MRヘッドを採用した記録再生システムにおいて,媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供することである。当該課題を解決すべく,本件発明2の発明者は,媒体ノイズの発生原因について研究を進め,本件発明2を完成させた。この点について,本件明細書2(段落【0010】 ないし【0013】)に記載のとおり,本件発明2の発明者は,磁性層表面上に所定深さ以上の凹み部分があると,MRヘッドと磁気テープの接触条件が低下,すなわち,MRヘッドと磁気テープ表面との距離が増大し,磁気テープ表面の凹み部分でスペーシングロスが増大して部分的な出力の低下が生じ,これが媒体ノイズ発生の原因となることを発見し た。そこで,本件発明2の発明者は,最小記録bit長とスペーシング ロスに基づく媒体ノイズとの関係についてさらに研究を進め,MRヘッドを用いたときに媒体ノイズを低減させることができる凹みの深さ,凹みの数 明2の発明者は,最小記録bit長とスペーシング ロスに基づく媒体ノイズとの関係についてさらに研究を進め,MRヘッドを用いたときに媒体ノイズを低減させることができる凹みの深さ,凹みの数及び中心面平均粗さを見い出し,本件発明2を完成させたのである。 本件明細書2には,本件発明2の磁気記録再生システムに用いられる 磁気記録媒体(以下「特許2磁気記録媒体」という)を構成する磁性層,非磁性層,バックコート層及び非磁性支持体,並びに,これらの層構成及び製造方法について詳細に記載されている。具体的には,本件明細書2には,特許2磁気記録媒体の「磁性層」の製造に用いることができる六方晶フェライト粉末,結合剤及びその他の添加剤等の材料や磁性層の 特性について具体的に記載され(段落【0017】~【0037】),特許2磁気記録媒体の磁性層の製造に好ましい条件も記載されている。 また,本件明細書2には,特許2磁気記録媒体の「非磁性層」に用いることができるカーボンブラック,非磁性粉末,結合剤の材料の材料について具体的に記載され(段落【0038】~【0050】),特許2磁 気記録媒体の非磁性層の製造に好ましい条件も記載されている。さらに,本件明細書2には,特許2磁気記録媒体の「バックコート層」に用いることができるカーボンブラックや結合剤の含有量,粒径,その他の添加物について具体的に記載され(段落【0051】~【0056】),特許2磁気記録媒体のバックコート層の製造に好ましい条件も記載されて いる。また,本件明細書2には,特許2磁気記録媒体の「非磁性支持体」に用いることができる材料,表面粗さ,特性(熱収縮率,破断強度,弾性率,温度膨張係数等)について具体的に記載され(段落【0057】~【0060】),特許2磁気記録媒体の非磁性 媒体の「非磁性支持体」に用いることができる材料,表面粗さ,特性(熱収縮率,破断強度,弾性率,温度膨張係数等)について具体的に記載され(段落【0057】~【0060】),特許2磁気記録媒体の非磁性支持体の製造に好ましい条件も記載されている。さらに,特許2磁気記録媒体の「層構成」と して各層の厚さについて具体的に記載され(段落【0061】~【00 65】),特許2磁気記録媒体の層構成の好ましい構成も記載されている。また,特許2磁気記録媒体の「製造方法」として,各層の塗布手段,乾燥条件,平滑化処理が記載され(段落【0066】~【0073】),特許2磁気記録媒体の製造方法の好ましい条件も記載されている。 さらに本件明細書2の実施例5~15及び比較例4~10には,磁性 層,非磁性層及びバックコート層の製造方法が工程毎(磁性層,非磁性層用及びバックコート層用の塗料の調製工程,塗布工程,磁性層の配向工程,乾燥工程)に記載され(段落【0092】~【0104】),このようにして得られた磁気記録媒体の凹み,表面粗さ及びSNRが測定され,100,150,275nmという3種類の最小記録bit長に おいて,特許2磁気記録媒体(実施例5~15)が比較例4~10の磁気記録媒体よりも優れたSNRを示すことが測定結果に基づいて説明されている(段落【0105】~【0107】,表2)。 以上のとおり,本件発明2は,MRヘッドと磁気テープ表面との距離が増大し,その凹み部分でスペーシングロスが増大して部分的な出力の 低下が媒体ノイズの原因であるという発見に基づき,「媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供する」という課題を解決するために必要な磁性層表面の凹みの深さ,凹みの数及び中心面平均粗さに着目し,11個の実施例と7個の るという発見に基づき,「媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供する」という課題を解決するために必要な磁性層表面の凹みの深さ,凹みの数及び中心面平均粗さに着目し,11個の実施例と7個の比較例の結果を踏まえ,それらを具体的な数値を以て特定した発明である。そして,本件明細書2は,特許2磁 気記録媒体を得るための磁性層,非磁性層,バックコート層,非磁性支持体,層構成及び製造方法を具体的に記載し,それらの好ましい条件も記載した上で,実施例5~15及び比較例4~10が,特許発明2の磁気記録媒体がMRヘッドを採用した記録再生システムにおける媒体ノイズを減らすことを,測定結果を以て示している。 したがって,本件明細書2には,MRヘッドを採用した記録再生シス テムにおいて媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供するという本件発明2の課題が解決できることを,当業者が認識できるように記載されているといえる。よって,本件特許2はサポート要件を満たすものである。 (イ) 被告らの主張に対する反論 a本件発明2の磁気記録媒体の磁性層は,凹みの深さや数だけではなく,磁性層表面の中心面平均粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲であることも構成要件として規定している。すなわち,本件発明2は,特定の深さの凹みの数のみならず,磁性層表面の中心面平均粗さSRaも特定しているのである。中心面平均粗さSRaは,測定領域にお いてある平面(「平均面」をいう。)の上下の体積が等しくなる場合,当該上下の部分(高い凸部分と低い凹部分)の総体積を測定面積で割った値である。したがって,被告がノイズに影響すると推測する「凹みの面積」すなわち「凹部の底面積」は中心面平均粗さSRaの値に影響を与えている。このように,本件発明 い凹部分)の総体積を測定面積で割った値である。したがって,被告がノイズに影響すると推測する「凹みの面積」すなわち「凹部の底面積」は中心面平均粗さSRaの値に影響を与えている。このように,本件発明2において,磁性層表面の 凹部の底面積は,中心面平均粗さSRaによって評価されているのである。 また,中心面平均粗さSRaが本件発明2の課題を解決するための重要な構成要件であることは,本件明細書2における実施例と比較例との対比からも明らかである。具体的には,実施例8と比較例4の磁 気記録媒体において,10000μ㎡当たりの最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹み数はいずれも100個以下であるが,実施例8のSRaは5.5nmで本件発明2の技術的範囲内にあり,そのSNRは良好(28.1)である(段落【0089,【0105】)のに対し,比較例4のSRaは6.5nmで技術的範囲外であり,そ のSNRは23.9であり良好といえない結果となっている(段落【0 105】,表2)。同様に,実施例11と比較例7の磁気記録媒体において,10000μ㎡当たりの最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹み数はいずれも100個以下であるが,実施例11のSRaは5.9nmで本件発明2の技術的範囲内にあり,そのSNRは良好(22.4)である(段落【0089】)のに対し,比較例7の SRaは6.5nmで技術的範囲外であり,そのSNRは20.9であり良好といえない結果となっている(段落【0105】,表2)。 このように,本件明細書2には,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数だけでなく,中心面平均粗さSRaも本件発明2の構成要件を満たさなくては,媒体ノイズを十分に低く抑えること はできないことが説明されている ,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数だけでなく,中心面平均粗さSRaも本件発明2の構成要件を満たさなくては,媒体ノイズを十分に低く抑えること はできないことが説明されている。 以上のとおりであるから,磁性層表面に存在する凹みの「数」に着目し,その数が10個/10000μ㎡以下かどうかを問題とすることの技術的意義が不明であるとする被告らの主張は失当である。 bまた,乙21の図1については,「図1に示すように,記録波長λ =2ビットである」と記載されているとおり(7/14頁1行),同図1は磁気ヘッドが記録媒体から情報を再生する際,磁気ヘッドが磁気媒体から読み取る信号の波長(記録波長)が2ビットであることを説明した図である。この点,乙21の図1の下側には,NSが1ビットと記載されており,また,同図の波形(波長を示すグラフ)の上 部に「記録波長」,「←λ→」と記載されていることから,NSと SNが2ビットであり,1記録波長(λ)が2ビットであることは明確である。また,「記録波長λ=2ビット」であることは,「最小記録bit長とは,システムとして記録される信号の最短波長の1/2の長さを指」すとの本件明細書2の説明(段落【0011】)と も合致する。 よって,乙21の図1に基づく「記録波長λ=2ビット」の説明に何ら誤りはなく,当業者や審査官は,同図の横軸の「時間」との表記は,正しくは「長さ」と表記されるべきこと(図2及び図3も同様である)を当然に理解する。 c次に,乙21の図2については,乙21に「磁気記録信号の深さ, つまり,下記図2の斜線部を半円と仮定すると,磁気信号を記録可能な深さは,波長の1/4(=1/4λ)となる」と記載しているとおり(乙21・7頁1行~ については,乙21に「磁気記録信号の深さ, つまり,下記図2の斜線部を半円と仮定すると,磁気信号を記録可能な深さは,波長の1/4(=1/4λ)となる」と記載しているとおり(乙21・7頁1行~2行),乙21の図2は,斜線部を半円と仮定すると磁気信号を記録可能な深さは1/4λといえるとすることで,磁気信号を記録可能な深さは1/4λ程度であると考えられることを 審査官に分かりやすく説明するために作成された図である。本件特許2の出願時において,記録可能な深さが1/4λ程度であるという考え方が存在したことは,被告による特許出願(特開2000-298825号公報(甲49)段落【0023】)からも明らかである。 したがって,乙21の図2を用いて説明しようとした「磁気信号を 記録可能な深さは,波長の1/4(=1/4λ)と考えられる」ことに何ら誤りはない。 dまた,乙21の図3は,記録深さ(1/2bit長(1/4λ))を前提とした場合,磁気記録媒体に記録された信号のうち1/3bit長の深さの信号が検出できない(失われる)と,出力が35%未満 に劣化し記録再生特性に悪影響を及ぼし得ることを説明したものである。そして,乙21は,実際上,最少記録ビット長の1/3以上の深さを有する凹みの数がSNRに大きく影響し,凹みの数が100個/10000μ平方メートルを超えると良好なSNRが得られないことは,明細書中の比較例(比較例6,9,10)に示されていることを 説明している(9/14頁1~4行)。 以上のとおり,乙21の図3の記載は,最小記録bit長を以て凹みの深さを特定した本件発明2を技術的に説明したものである。 e以上のとおり,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目する技術的意義が存在 図3の記載は,最小記録bit長を以て凹みの深さを特定した本件発明2を技術的に説明したものである。 e以上のとおり,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数に着目する技術的意義が存在するように見せかけて特許査定を得たという被告らの主張は,失当である。 オ乙88文献に基づく進歩性欠如(無効理由2-5)(争点7-5)(被告らの主張)(ア) 本件発明2-2は,本件特許2の優先日前である平成13年5月18日に公開された特開2001-134919号公報(乙88文献)に記載された発明(乙88発明)及び特開2001-84549号公報(乙 45)に記載された発明(乙45発明)を組み合わせることによって,当業者が容易に発明できたものであるから,進歩性を欠く。以下,詳述する。 (イ) 乙88文献の記載内容乙88文献には,磁気記録媒体に最短記録波長0.3μmで磁気信号 を記録し,該記録された信号をMRヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上にカーボンブラックと結合剤とを含む非磁性層と六方晶形酸化鉄粉及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面の中心線平均粗さRaが1~3nmの範囲であることを特徴とする磁気記録再生システムであって, 前記磁気記録媒体は磁気テープである磁気記録再生システム(乙88発明)が記載されている。 (ウ) 本件発明2-2と乙88発明との一致点・相違点a最小記録bit長は最短記録波長の2分の1である(本件明細書2・段落【0011】)から,最短記録波長が0.3μmであるというこ とは,最小記録bit長が0.15μm(=150nm)であること を意味する。 bカーボンブラックは,非磁性粉末である。 c )から,最短記録波長が0.3μmであるというこ とは,最小記録bit長が0.15μm(=150nm)であること を意味する。 bカーボンブラックは,非磁性粉末である。 c「六方晶形酸化鉄」には,六方晶フェライトが含まれる。また,乙88発明において,六方晶形酸化鉄紛は強磁性粉末として用いられるところ,強磁性粉末である六方晶形酸化鉄粉とは,六方晶フェライト 粉末のことに他ならない。 d乙88発明においては,磁性層表面の中心線平均表面粗さRaを1~3nmの範囲内とすることが好ましいとされている。ここで,磁性層表面の凹凸の程度が磁性層表面全体に渡って均一である場合には,中心線平均表面粗さと中心面平均粗さは,基本的に同一の値になると 考えられる。したがって,磁性層表面の中心線平均粗さRaを1~3nmの範囲内とすることが好ましいことが開示されているのであれば,中心面平均粗さSRaを1~3nmの範囲内とすることが好ましいこともまた,実質的に開示されているということができる。 なお,磁気テープにおいて,磁性層表面の中心面平均粗さSRaを 1.0~6.0nmの範囲とすることが好ましいこと自体は,本件特許2の優先日前より当業者に周知であった。 eしたがって,本件発明2-2と乙88発明との一致点・相違点は,以下のとおりである。 (a) 一致点 磁気記録媒体に最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録し,該記録された信号をMRヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と六方晶フェライト粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面の中心面平均 粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲である 体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層と六方晶フェライト粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面の中心面平均 粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲であることを特徴とする磁 気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は磁気テープである磁気記録再生システム。 (b) 相違点本件発明2-2では,磁気記録媒体の磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/1 0000μ㎡以下であるのに対し,乙88発明では,かかる凹みの数が不明である点。 f相違点についての判断乙45文献には,磁気テープに最短波長1μm以下で磁気信号を記録する磁気記録再生システムであって,前記磁気テープは,非磁性支 持体上にカーボンブラック及び結合剤とを含む非磁性層と六方晶形板状微粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面に存在する50nm以上の深さを有する凹みの数が10個/46237.5μ㎡以下であり,かつ最大深さRvが100nm以下である,磁気記録再生システム(乙45発明)が開示されている。 ここで,乙88発明と乙45発明は,磁気テープに最短波長1μm以下で磁気信号を記録する磁気記録再生システムである点,及び,非磁性支持体上にカーボンブラック及び結合剤とを含む非磁性層と六方晶フェライト粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する点において共通している。 また,乙45文献においては,ヘッドと磁気テープの接触条件の低下により,ある深さ以上の凹みではスペーシングロスが増大して瞬間的に出力低下が発生し,これがエラー発生の原因の一つとなっていることが予想されている(3頁3欄37行~3頁4欄7行)。そして,乙45発明は,かかる課題 さ以上の凹みではスペーシングロスが増大して瞬間的に出力低下が発生し,これがエラー発生の原因の一つとなっていることが予想されている(3頁3欄37行~3頁4欄7行)。そして,乙45発明は,かかる課題を,磁性層表面に存在する50nm以上の 深さを有する凹みの数を10個/46237.5μ㎡以下とし,かつ, 最大深さRvを100nm以下とすることで解決するものである。 他方,乙88発明は,記録波長を短くしたシステムについての発明であるところ,このような記録波長の短い磁気記録再生システムにおいて,磁気記録媒体と再生ヘッドとの間隔が再生出力の低下(スペーシングロス)として現われ,磁気記録媒体と再生ヘッドとの間隔が広 がるほどスペーシングロスが増大することは,原告も自認するとおり,本件特許2の優先日当時,当業者が誰でも知っている技術常識であった(甲41)。実際,乙88発明を開示する乙88文献においても,スペーシングロスの問題は認識されている(3頁4欄27~30行,4頁5欄25~27行)。したがって,乙88発明に接した当業者に は,乙45文献に記載されているとおり,ヘッドと磁気テープの接触条件の低下により,ある深さ以上の凹みでスペーシングロスが増大して瞬間的に出力低下が発生することを防止するために,かかる凹みの数を制御する動機付けが存在した。 なお,乙88文献には,スペーシングロスを少なくする具体的な方 法が開示されている(3頁4欄30~37行)が,これは,スペーシングロスの問題を完全に解決することを必ずしも意味するものではなく,乙45文献に記載されているような,一定以上の深さを有する凹みの数を制御することによってスペーシングロスをさらに少なくすることを排除するものではないことは明らかである。 さらに ではなく,乙45文献に記載されているような,一定以上の深さを有する凹みの数を制御することによってスペーシングロスをさらに少なくすることを排除するものではないことは明らかである。 さらに,乙45文献は,ヘッドの種類について特に限定していない。 また,ある深さ以上の凹みではスペーシングロスが増大して瞬間的に出力低下が発生するという問題は,MRヘッドを再生ヘッドとして用いた場合にも発生する問題である。したがって,乙88発明がMRヘッドを再生ヘッドとして用いる磁気記録再生システムに係る発明であ ることは,乙88発明に,乙45発明を組み合わせることを,何ら阻 害するものではない。 したがって,乙88発明に乙45発明を組み合わせ,乙88発明において,磁性層表面に存在する50nm以上の深さを有する凹みの数を10個/46237.5μ㎡以下とし,かつ,最大深さRvを100nm以下とすることは,当業者が容易になし得ることである。 この,乙88発明に乙45発明を組み合わせた発明においては,最小記録bit長は150nmであり,その1/3は50nmであるから,当該発明においては,最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数は10個/46237.5μ㎡以下であり,したがって,100個/10000μ㎡以下である。 したがって,乙88発明に乙45発明を組み合わせた上記発明は,本件発明2-2に他ならない。 g以上のとおり,本件発明2-2は乙88発明に乙45発明を組み合わせることで,当業者が容易に発明できたものであるから,進歩性を欠く。したがって,本件発明2-1も進歩性を欠く。 (原告の主張)(ア) 本件発明2と乙88文献に記載の発明の一致点及び相違点の正しい認定a被告らの認定する乙88発明 ,進歩性を欠く。したがって,本件発明2-1も進歩性を欠く。 (原告の主張)(ア) 本件発明2と乙88文献に記載の発明の一致点及び相違点の正しい認定a被告らの認定する乙88発明は誤っていること被告らの認定する乙88発明は,乙88文献の記載の中から,互い に相容れない記載を合体させたものであり,乙88文献に記載された発明(以下「乙88に記載の発明」という。)とはいえない。 具体的には,乙88発明の「最短記録波長0.3μmで磁気信号を記録する」という構成は,乙88文献の【従来技術】の欄に記載された,「DDS3の最短記録波長0.3μm程度」との記載に基づくも のであるのに対し(乙88【0002】),それ以外の構成(「該記 録された信号をMRヘッドを用いて再生する」こと,「非磁性支持体上にカーボンブラックと結合剤とを含む非磁性層と六方晶系酸化鉄粉及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する」こと,「磁性層表面の中心線平均粗さRaが1~3nmの範囲である」こと)は,乙88文献において従来技術に存在した課題を解決するための手段として記載 された構成である。このように,乙88発明は,従来技術として記載されたDDS3の最短記録波長の0.3μm程度という構成と,かかる構成が抱える課題を解決する手段として開示された構成とを組み合わせたものであり,このような発明は乙88文献には記載されていない。しかも,DDS3はインダクティブヘッドを再生ヘッドに用いる システムであるから,これを乙88発明のように,MRヘッドを用いて再生しようと当業者が想到することはない。したがって,かかる意味においても,被告らの主張する乙88発明は,乙88文献に記載された発明であるとは到底いえない。 b本件発明2と乙88に記 を用いて再生しようと当業者が想到することはない。したがって,かかる意味においても,被告らの主張する乙88発明は,乙88文献に記載された発明であるとは到底いえない。 b本件発明2と乙88に記載の発明との対比 本件発明2と乙88に記載の発明とを対比すると,少なくとも以下の点で相違する。 (a) 相違点1本件発明2では,磁気記録媒体の磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/100 00μ㎡以下であるのに対し,乙88に記載の発明では,係る凹みの数が不明である点。 (b) 相違点2本件発明2では,MRヘッドを用いる再生システムを前提に最小記録ビット長が50~500nmで磁気信号を記録するのに対し, 乙88に記載の発明では磁気信号の記録に関する開示がない点。 なお,乙88文献の【従来技術】の欄には,「DDS3の最短記録波長は0.3μm程度である」との記載はあるが,DDS3は再生ヘッドにインダクティブヘッドを用いるシステムであり,乙88に記載の発明が採用するMRヘッドを用いたシステムと異なる。したがって,乙88に記載の発明として,「最短記録波長は0.3μ m程度である」と認定することはできない。 (イ) 相違点を克服できない理由a相違点1について(a) 乙88に記載の発明と乙45発明の課題と着想は互いに全く異なるものであり,乙88に記載の発明に乙45発明を組み合わせるこ とは容易に想到し得るものではない(なお,この理は,被告らの主張する乙88発明に乙45発明を組み合わせようとする場合にも,そのまま当てはまる。)。 (b) 乙88に記載の発明の課題,着想(課題解決の方向付け)及びその課題解決手段 乙88に記載の発明の課題 88発明に乙45発明を組み合わせようとする場合にも,そのまま当てはまる。)。 (b) 乙88に記載の発明の課題,着想(課題解決の方向付け)及びその課題解決手段 乙88に記載の発明の課題は,媒体表面性の悪化及び信頼性の悪化を避け,かつ表面性が良好で,特に短波長領域での電磁変換特性が優れた磁気記録媒体を提供することである(乙88・段落【0015】)。このような課題に対して,乙88に記載の発明は,MRヘッドを用いたシステムにおいて,短波長領域で記録再生する高密 度磁気記録媒体における磁性層とヘッドとの距離(スペーシング)及び磁性層から漏れる磁束密度のムラは,特に電磁変換特性を悪化させるという着想に基づき,磁性層の厚みの平均値及び標準偏差,及び磁性層の表面粗度Ra等を特定した磁気記録媒体を提供するものである(乙88・【請求項1】,段落【0017】,【0019】)。 このように,乙88に記載の発明は,磁性層とヘッドとの距離(ス ペーシング)と磁性層から漏れる磁束密度のムラが電磁変換特性に影響を与えるという着想に基づき,磁性層の厚み変動や表面粗度を一定範囲に制御した磁気記録媒体の発明であり,特にMRヘッドを用いたシステムにおいて優れた電磁変換特性及び信頼性を有する発明である。 (c) 乙45発明の課題,着想(課題解決の方向付け)及びその課題解決手段これに対して,乙45発明は,ピークシフトの影響が大きいRLL2-7変調方式とインダクティブヘッドを採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムにおいて,瞬間的な出力低下と組 み合わさることによって生じる実害に結びつく致命的エラーの改良という特有の課題を解決する手段として,①支持体上に強磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性層が形成されてなる ,瞬間的な出力低下と組 み合わさることによって生じる実害に結びつく致命的エラーの改良という特有の課題を解決する手段として,①支持体上に強磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体であって,RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録再生システムに供されるものであり,②前記磁性層表面 には50nm以上の深さを有する凹みが10個/46237.5μ㎡以下であり,且つ最大深さRvが100nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体を採用したものである。 (d) 乙88に記載の発明と乙45発明との組み合わせ上記のように,乙88に記載の発明と乙45発明は課題,着想(課 題解決の方向付け)及びその課題解決手段が全く異なる。すなわち,乙88に記載の発明は,媒体表面性の悪化及び信頼性の悪化を避け,かつ表面性が良好で,特に短波長領域での電磁変換特性が優れた磁気記録媒体を提供することを課題とするのに対し,乙45発明は,ピークシフトの影響が大きいRLL2-7変調方式とインダクティ ブヘッドを採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システム という特別なシステムにおける,瞬間的な出力低下と組み合わさることによって生じる実害に結びつく致命的エラーの改良という特有の課題を解決する発明である。 また,乙88に記載の発明は,スペーシング及び磁束密度のムラが電磁変換特性に影響を与えるという着想に基づくものであるのに 対し,乙45発明は,RLL2-7変調方式ではピークシフトの影響が大きくなり,瞬間的な出力低下と組み合わさることによって,ドロップアウトが生じるという着想に基づく発明であり,両者の課題解決を方向付ける着想も異なっている。 さらに,乙45発明は,インダクティブヘッドを なり,瞬間的な出力低下と組み合わさることによって,ドロップアウトが生じるという着想に基づく発明であり,両者の課題解決を方向付ける着想も異なっている。 さらに,乙45発明は,インダクティブヘッドを採用したリニア サーペンタイン方式の記録再生システムにおいて生じる特有の課題を解決する発明である。すなわち,乙45発明はインダクティブヘッドを採用したシステムが前提となった発明である。これに対して,乙88に記載の発明はMRヘッドを用いたシステムにおいて優れた電磁変換特性及び信頼性を有する発明である(この点は被告らも争 っていない)。したがって,当業者は,インダクティブヘッドを用いたシステムが前提であって,このようなシステムに特有の課題を解決できる乙45発明を,MRヘッドを用いたシステムである乙88に記載の発明に組み合わせようと動機付けられることはない。 以上に述べたとおりであるから,乙88に記載の発明と乙45発 明を組み合わせることは当業者が容易に想到し得るものではない。 (e) 乙45文献に記載された凹みの条件だけを取り出して乙88に記載の発明に組み合わせることはできないこと乙45発明において,RLL2-7変調方式,及び,乙45文献が前提とするインダクティブヘッドの採用と,乙45発明が規定す る上記の具体的な磁気記録媒体表面の凹みの条件とは,技術的に一 体不可分である。したがって,当業者は,乙45発明において,前提とするインダクティブヘッドを切り離して凹みの条件だけを取り出すことはそもそも不可能であり,さらに,インダクティブヘッドの採用を前提とした乙45文献に記載の凹みの条件を,インダクティブヘッドではなくMRヘッドを用いて再生する磁気記録再生シス テムである乙88に記載の発明に適用すること らに,インダクティブヘッドの採用を前提とした乙45文献に記載の凹みの条件を,インダクティブヘッドではなくMRヘッドを用いて再生する磁気記録再生シス テムである乙88に記載の発明に適用することなどあり得ない。 また,仮に,当業者が乙45文献に記載された凹みの条件を乙88に記載の発明に組み合わせようと動機付けられたとしても,被告らの主張は成り立たない。なぜなら,磁性層表面の凹みの深さや数は,非磁性支持体,磁性塗料,中間層塗料,塗布方法,電子線照射 条件,カレンダー加工条件等の様々な製造条件に依存する(乙88・段落【0064】~【0083】)。そして,これらの製造条件は,乙88に記載の発明における磁性層表面の表面粗度Raや磁性層の厚み変動にも影響を与える。すなわち,乙88に記載の発明の磁性層表面の凹みの深さや数を調整すると,不可避的に,磁性層の表面 粗度Raや磁性層の厚み変動の値もそれに応じて変化することになる。したがって,互いに異なる製造条件で製造された磁気記録媒体である乙88と乙45の磁気記録媒体について,乙88の磁気記録媒体の表面粗度Raや磁性層の厚み変動を維持したまま,乙45文献に記載された凹みの深さや数の値を抜き出して,乙88の磁性層 にそのまま組み合わせることはできない。 仮に,乙88に記載の発明の磁性層表面に乙45文献の凹みの条件を適用しようとする場合,乙88に記載の発明の磁性層の表面粗度Raや磁性層の厚み変動が変化してしまい,結局,乙88に記載の発明の構成が特定できないこととなる。 以上のとおりであるから,乙45文献に記載された凹みの条件だ けを取り出し,さらに,乙88に記載の発明の中心面平均粗さRaや磁性層の厚み変動はそのままで,当該凹みの条件だけを組み合わせることには りであるから,乙45文献に記載された凹みの条件だ けを取り出し,さらに,乙88に記載の発明の中心面平均粗さRaや磁性層の厚み変動はそのままで,当該凹みの条件だけを組み合わせることには不可能である。 よって,乙88に記載の発明に乙45文献の磁性層表面の凹みの条件を組み合わせることは当業者が容易に想到し得ない。 b相違点2について乙88に記載の発明はMRヘッドを用いたシステムの発明であるところ,当業者が,インダクティブヘッドに比べて高い記録密度を実現できるMRヘッドを採用するシステムに,インダクティブヘッドを前提とする乙45記載の発明の最小記録bit長の値をそのまま適用し ようとはしないことは上述のとおりである。 したがって,乙88に記載の発明に,最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録する構成を適用することは当業者が容易に想到し得るものではない。 (ウ) 本件発明2は顕著な作用効果を奏すること 本件発明2は,MRヘッド搭載記録再生システム用に適した高いSNRを実現できる(段落【0018】)。具体的には,従来の磁気記録媒体を用いたシステムに比べて,本件発明2の磁気記録再生システムは最小記録bit長50~500nmの範囲で当業者の予想を超えて高いSNRを示していることは,本件明細書の表2のデータから明らかである。 このように本件発明2は,当業者の予想を超える高いSNRという顕著な効果を奏する発明である。 (エ) 小括以上に述べたとおり,被告らが乙88文献から認定する乙88発明は,乙88文献の記載の中から被告らに都合のよいところだけをピックアッ プして合体させたものであり,正しく認定した発明とはいえないから, このような誤った認定である乙88発明に基づく一 乙88文献の記載の中から被告らに都合のよいところだけをピックアッ プして合体させたものであり,正しく認定した発明とはいえないから, このような誤った認定である乙88発明に基づく一致点及び相違点の認定も誤っている。そして,乙88に記載された発明を正しく認定すると,本件発明2は乙88に記載の発明と上記各相違点を克服することはできない。また,本件発明2は予想を超える顕著な作用効果を奏するものである。 よって,本件発明2は乙88に記載の発明及び乙45発明から容易に想到し得るものではない。 (8) 争点8(本件特許2の請求項は●(省略)●に当たるか(権利濫用の成否))(被告らの主張)ア仮に,被告システムが本件発明2-1及び2-2の技術的範囲に属し, 被告製品が間接侵害の要件を満たし,かつ,本件特許2に無効理由がないとしても,本件特許2の請求項1及び2は,原告AP-75契約1条6項に規定する●(省略)●に該当する。 したがって,原告は,●(省略)●ところ,かかる原告が,被告らに対し,上記請求項に係る特許権に基づいて差止請求権及び損害賠償請求権を 行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に該当し,許されない。以下,詳述する。 イ本件特許2の請求項1及び2が●(省略)●に該当することについて(ア) 原告AP-75契約に規定する●(省略)●とは,同契約1条6項に規定されるとおり,●(省略)●を意味する(乙1)。 (イ) LTO-7規格に準拠する磁気テープにおいては,●(省略)●(LTO-7規格・12.2)。また,LTO-7規格に準拠する磁気テープの●(省略)●(LTO-7規格・M1.3.1)。 したがって,仮に原告が主張するとおり,GMRヘッドが「MRヘッド」に該当するのであれば,LT 12.2)。また,LTO-7規格に準拠する磁気テープの●(省略)●(LTO-7規格・M1.3.1)。 したがって,仮に原告が主張するとおり,GMRヘッドが「MRヘッド」に該当するのであれば,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再 生するシステムは,構成要件2Aを充足する。 (ウ) LTO-7規格に準拠する磁気テープの層構成は,●(省略)●(LTO-7規格・9.1)。このうち,●(省略)●は非磁性の支持体であり,●(省略)●は非磁性層(非磁性の粉末を結合剤で固めたもの)である。また,●(省略)●(LTO-7規格・10.1)。なお,バリウムフェライトは「六方晶フェライト」に含まれる。 したがって,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再生するシステムは,構成要件2Bを充足する。 (エ) LTO-7規格それ自体は,●(省略)●ものの,磁気テープがLTO-7規格に準拠するためには,●(省略)●(LTO-7規格・10. 8.1)。 他方,●(省略)●ところ,原告の磁気テープにおいて,磁性層表面に存在する●(省略)●以上の深さを有する凹みの数は,0~1個/10000μ㎡である。 そうすると,●(省略)●という要件を満たすためには,磁性層表面に存在する●(省略)●以上の深さを有する凹みの数が100個/10 000μ㎡を超えてはならないことは明らかである。 したがって,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再生するシステムは,構成要件2C-1を充足する。 (オ) LTO-7規格に準拠する磁気テープの●(省略)●(LTO-7規格・9.11.1.1)。 したがって,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再生するシステムは,構成要件2C-2を充足する。 (カ) また,以上に述べたところからすれば,LTO TO-7規格・9.11.1.1)。 したがって,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再生するシステムは,構成要件2C-2を充足する。 (カ) また,以上に述べたところからすれば,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再生するシステムが,構成要件2D,2E及び2Fを充足することは明らかである。 (キ) 以上より,LTO-7規格に準拠する磁気テープを再生するシステム は,(仮に,原告が主張するとおり,GMRヘッドが「MRヘッド」に該当するとすれば)本件発明2-1及び2-2の文言を全て充足するから,本件特許2の請求項1及び2は,●(省略)●に該当する。 ウ以上のとおり,原告の主張を前提とした場合には,本件特許2の請求項1及び2は●(省略)●に該当する。したがって,原告は,●(省略)● (原告AP-75契約8条2項)。また,被告ソニーは,●(省略)●(乙10)。 しかしながら,原告は,●(省略)●ものである。このように,原告が一方で,●(省略)●ながら,他方で,●(省略)●である本件特許2の請求項1及び2に基づく特許権を被告らに対して行使し,差止請求権及び 損害賠償請求権の行使を認めることは,権利の濫用(民法1条3項)に該当し,許されない。 (原告の主張)ア以下のとおり,少なくとも本件特許2の構成要件2B及び2C-1は,●(省略)●ではなく,本件特許2の請求項1及び2は,●(省略)●に は該当しない。また,米国ITC手続のInitialDeterminationでは,本件特許2の対応米国特許について,●(省略)●ことを,被告ソニーは立証できていないと判示し,本件特許2の対応米国特許の各請求項の●(省略)●を否定している。そのことからも,本件特許2の請求項1及び請求項2が●(省略 特許について,●(省略)●ことを,被告ソニーは立証できていないと判示し,本件特許2の対応米国特許の各請求項の●(省略)●を否定している。そのことからも,本件特許2の請求項1及び請求項2が●(省略)●に該当しないことは明らかである。 イ構成要件2Bは●(省略)●ではないLTO-7仕様書の§9.1には,●(省略)●との記載があるのみであり,非磁性の●(省略)●を用いなければならないわけではなく,磁性の●(省略)●を用いることでも構わない。同様に,同§9.1には,●(省略)●について,●(省略)●との記載があるのみであり,●(省略)●が非磁性 層でなければならないわけではなく,また,●(省略)●が非磁性粒子を 含まなければならないわけでもない。したがって,被告らの主張は誤りである。 ウ構成要件2C-1は●(省略)●ではないLTO-7仕様書の§10.8.1に記載されているのは,磁気テープの●(省略)●だけであり,磁気テープの●(省略)●に影響するのは磁性層表面 に存在する凹みの数だけではないのであるから,LTO-7仕様書に規定された●(省略)●を満たすためには本件特許2の構成要件2C-1を実施しなければならないことにはならない。したがって,被告らの主張は誤りである。 エ米国ITCの判断 米国ITC手続においても,被告らは,本訴訟における主張とほぼ同様の理由に基づいて,本件特許2に対応する米国特許(米国第6767612号の請求項1,2,4,5,7,9,10及び11)が●(省略)●である旨主張していたが,同手続のInitialDetermination(甲60)において,被告らの主張を排斥する判断がなされている。 オ以上より,本件特許2の請求項1及び2は●(省略)●には該当せず いたが,同手続のInitialDetermination(甲60)において,被告らの主張を排斥する判断がなされている。 オ以上より,本件特許2の請求項1及び2は●(省略)●には該当せず,権利濫用の抗弁に関する被告らの主張に理由がないことは明らかである。 (9) 争点9(被告らに共同不法行為が成立するか)(原告の主張)ア本件期間①について 本件期間①における侵害行為は,被告ソニーと被告SSMMによる共同不法行為であるから,原告が当該不法行為により被った損害について,被告ソニー及び被告SSMMは,不真正連帯債務として,連帯して責任を負う。そのため,原告は,被告ソニー及び被告SSMMに対して,本件期間1に被告ソニー及び被告SSMMが得た利益の合計額について,連帯での 損害賠償を請求することができる(特許法102条2項)。 イ本件期間②について本件期間②における侵害行為は,被告ら三社による共同不法行為であるから,原告が当該不法行為により被った損害について,被告らは,不真正連帯債務として,連帯して責任を負う。 そのため,原告は,被告ら三社に対して,本件期間②に被告ら三社が得 た利益の合計額について,連帯での損害賠償を請求することができる(特許法102条2項)。 ウ本件期間③について本件期間③においては,商流から被告ソニーは外れたものの,被告ソニーは,主体的に侵害行為に関与しており,主観的関連共同性及び客観的関 連共同性が認められる。したがって,本件期間③における侵害行為は,被告ら三社による共同不法行為であるから,原告が当該不法行為により被った損害について,被告らは,不真正連帯債務として,連帯して責任を負う。 そのため,原告は,被告ら三社に対して,本件期間③に被告ら三社が ら三社による共同不法行為であるから,原告が当該不法行為により被った損害について,被告らは,不真正連帯債務として,連帯して責任を負う。 そのため,原告は,被告ら三社に対して,本件期間③に被告ら三社が得た利益の合計額について,連帯での損害賠償を請求することができる(特 許法102条2項)。 (被告らの主張)争う。 (10) 争点10(除却請求の当否)(原告の主張) 原告は,被告自社製品の製造・販売等の差止めと併せて,特許法100条2項に基づき,被告自社製品及びその半製品の廃棄並びに製造設備の除却も求める。 なお,被告らは,被告自社製品の製造設備が被告自社製品以外の磁気テープ製品の生産にも用いられているとして,その除却は認められないと主張す る。しかしながら,被告自社製品の生産に用いる全ての製造設備が,被告自 社製品以外の磁気テープ製品の生産に用いられていることについて,被告らは何の証拠も提出していない。したがって,被告らの主張は,根拠を欠き,失当であるとともに,かかる主張を証拠もなしに行うことは,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 (被告らの主張) 原告は,差止請求に付帯して,被告自社製品の製造に用いる設備の除却も求めている。しかしながら,被告らが有する被告自社製品の生産設備は,被告自社製品以外の磁気テープ製品の生産にも用いられているから,裁判所が被告自社製品の生産設備の除却を命じた場合には,本件特許権1及び2の侵害を組成しない物の生産(換言すれば,本件特許権1及び2の侵害を構成し ない生産行為)に用いる設備も除却されることになりかねず,不当である。 したがって,被告自社製品の製造に用いる設備の除却は,認められないというべきである。また,本件特許権2については, 構成し ない生産行為)に用いる設備も除却されることになりかねず,不当である。 したがって,被告自社製品の製造に用いる設備の除却は,認められないというべきである。また,本件特許権2については,被告らによる被告自社製品の生産行為については一切,間接侵害が成立しないから,なおさら,被告自社製品の製造に用いる設備の除却請求は認められないというべきである。 このことは,E氏の陳述書(乙107)からも明らかである。すなわち,被告自社製品は,被告SSMMが(住所は省略)に有する磁気テープ工場において生産されているところ,当該工場においては,被告自社製品が準拠するLTO-7規格よりも前の世代の規格(LTOUltrium 1ないしLTOUltrium 6)に準拠する磁気テープカートリッジも生産 されており,これらの磁気テープカートリッジは被告自社製品と共通する生産設備を用いて生産されている。 なお,平成29年度(平成29年4月~平成30年3月)に製造・販売された製品の数量は,LTOUltrium 1ないしLTOUltrium 6に準拠する磁気テープカートリッジが合計約●(省略)●巻である のに対し,被告自社製品(海外輸出分・国内販売分を含む)は約●(省略) ●巻に留まる。したがって,被告自社製品の製造に用いる設備の除却請求は認められない。なお,原告は,この点について,被告らの主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下を求めているが,被告らの主張は乙107により明確に裏付けられているから,この点について審理することは,訴訟の完結を遅延させるものではなく,原告の主張は失当である。 (11) 争点11(損害の有無及び額)ア特許法102条2項の適用があるか(争点11-1)(原告の主張)被告 ことは,訴訟の完結を遅延させるものではなく,原告の主張は失当である。 (11) 争点11(損害の有無及び額)ア特許法102条2項の適用があるか(争点11-1)(原告の主張)被告らの特許権侵害による原告の損害について,特許法102条2項が適用される。 被告らは,原告が本件発明を実施していないことを理由に,特許法102条2項は適用されない旨主張しているが,特許権者が特許発明を実施していない場合においても,「特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合」には特許法102条2項が適用される。特許権者において,当該特許発明を実 施していることを要件とするものではなく,特許権者が侵害品の競合品を製造販売している場合,特許法102条2項が適用される 。この点,原告は,被告製品と同様にLTO-7に準拠する原告製品を販売しており,両製品は市場で競合しているから,原告が本件発明1を実施しているか否かを問わず,被告らによる特許権侵害行為がなければ原告が利益を得られた であろうという事情が存在し,特許法102条2項が適用される。原告製品が本件発明の実施品であるか否かは特許法102条2項の適用の有無とは全く関係がない。 (被告らの主張)(ア) 特許法102条2項の適用の前提としては,「特許権者に,侵害者に よる特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事 情が存在する」ことが必要である。 特許法102条2項による推定が認められるのは,侵害者が侵害品を販売したことによって,特許権者が自らの製品の販売の機会を失ったという因果関係が存在することが前提であり,それが上記の判断基準に端的に示されている。 (イ) 原告は本件発 ,侵害者が侵害品を販売したことによって,特許権者が自らの製品の販売の機会を失ったという因果関係が存在することが前提であり,それが上記の判断基準に端的に示されている。 (イ) 原告は本件発明1を実施していない。 原告が製造・販売する,LTO-7規格に準拠する磁気テープカートリッジ(原告製品)について,被告らが株式会社三井化学分析センターに依頼して磁気テープのバックコート層のスペクトル密度を測定したところ,10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は106,800~ 111,600n㎥の範囲であり,構成要件1Cが規定する数値範囲の上限である80000n㎥を上回っていた(乙116,117)。 また,米国ITCの調査手続きにおいても,2017年(平成29年)9月1日付でなされた行政法判事による暫定的判断は,原告製品は「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が2000 0~80000n㎥」の要件を満たさないと判断し,2018年(平成30年)3月8日付でなされた米国ITCによる最終判断(乙104)も,行政法判事による上記判断を維持している。 このように,原告はそもそも本件発明1を実施していない。 (ウ) 原告が本件発明1を実施していないことからも明らかなとおり,また 後に詳述するとおり,そもそも本件発明1は被告製品の販売に何らの寄与もしていない。また,本件訴訟の経緯からも明らかなとおり,被告らは,LTO-7規格に準拠するソニーブランドの磁気テープカートリッジとして,被告製品に代えて,本件発明1を回避した設計変更品を新たに販売する予定であるが,販売する製品を被告製品から設計変更品に切 り替えたからといって,被告らのLTO-7規格製品のシェアが変わる こともない。つまり,仮に被告製品 変更品を新たに販売する予定であるが,販売する製品を被告製品から設計変更品に切 り替えたからといって,被告らのLTO-7規格製品のシェアが変わる こともない。つまり,仮に被告製品が本件特許権1を侵害しているとしても,侵害の有無,あるいは被告製品から設計変更品に切り替わったことによって,原告製品の売上高,販売数などは全く影響を受けない。このような観点からは,被告製品の販売と原告の損害との間に因果関係があるとはいえず,「特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかっ たならば利益が得られたであろうという事情が存在する」とはいえない。 (エ) よって,本件については,特許法102条2項の適用の前提を欠いており,原告の損害を推定するにあたって同項を適用することはできない。 イ輸出を伴う取引形態における利益の範囲(争点11-2)(原告の主張) 被告OEM製品の取引形態2(被告OEM製品の製造業者である被告SSMMが被告OEM製品を海外に輸出し,海外において被告SSMM自身の在庫として保有しているものを,被告ソニー又は被告SSMSを介して海外の顧客に販売する取引形態)によって被告らが得た利益にも特許法102条2項の推定が及ぶことは明らかである。 (ア) 取引形態1と2は,取引の実態としては,実質的に何ら異なるものではなく,取引形態1と同様に,取引形態2における被告らによる販売行為も,全て日本で行われた行為であると認定されるべきこと被告OEM製品は,被告らが,HPE及びQuantum(以下「本件OEM供給先」という。)に対してのみ販売し,被告らが自ら市販することが 一切予定されていない,いわゆるOEM製品である。製造した被告OEM製品は,本件OEM供給先に販売することしかできないのであるから, 」という。)に対してのみ販売し,被告らが自ら市販することが 一切予定されていない,いわゆるOEM製品である。製造した被告OEM製品は,本件OEM供給先に販売することしかできないのであるから,被告らは,販売可能な数量に限って,製造・輸出したはずである。言い換えれば,取引形態が①と②のいずれであるかにかかわらず,被告ソニー又は被告SSMSは,無駄に多くの被告OEM製品を製造してしまう ことがないよう,本件OEM供給先から現実に(直接に,あるいは海外 販社を通じて)発注を受けた数量か,あるいは,近い将来発注を受けることが見込まれる数量の被告OEM製品を,被告SSMMに製造させたものと推察される。 そして,被告ソニー及び被告SSMSと本件OEM供給先との間の契約は,継続的供給契約であり,被告ソニー及び被告SSMSは,本件O EM供給先から,現に,継続的に発注を受けていたところ,その発注は,本件OEM供給先から事前に(おそらく数ヶ月前に)被告ソニー及び被告SSMSに提示された発注計画(見込値)を前提に行われ,被告ソニー及び被告SSMSにおいては,そのような発注計画に基づいて,納期遅延を起こさないよう必要な数量を輸出するなどして,被告OEM製品 の在庫管理を行っていたと推測される。 そうすると,取引形態1と2のいずれにおいても,被告OEM製品が,継続的契約関係の下,本件OEM供給先に販売されることが確実に予定される状況の下に製造され,輸出された点において何ら異なるものではないから,取引形態2における販売は,取引形態1と同様に,被告OE M製品の製造や輸出を含む一連の行為の一環として,国内においてなされたものと評価されるべきである。取引形態2においても,当該被告OEM製品の製造や輸出は,継続的供給契約 1と同様に,被告OE M製品の製造や輸出を含む一連の行為の一環として,国内においてなされたものと評価されるべきである。取引形態2においても,当該被告OEM製品の製造や輸出は,継続的供給契約に基づく発注計画を前提になされたものであり,その過程で一時的に国外倉庫に保管されているにすぎず,実質的には取引形態1と何ら変わりはない。 裁判例においても,日本企業である侵害者を売主とする海外顧客への輸出に伴う販売について,日本国内において「譲渡」が行われたと認定されている(大阪地裁平成22年1月28日判決,大阪地裁平成24年3月22日判決)。 (イ) 被告SSMMによる日本国内における製造・輸出行為と因果関係のあ る利益の額については,102条2項の推定が及ぶこと 特許法102条2項は,「侵害の行為」の行為態様について何らの限定もしていないことからすれば,「侵害の行為」には,譲渡のみならず,製造や輸出が含まれることは当然である(甲A15)。 また,特許法102条2項は,民法709条に基づいて認められるべき損害額の立証の困難性の軽減を図るものであるから,両者が同様の表 現で定められていることにも照らせば,民法709条に基づいて算出すれば認められる損害の額については,当然に,特許法102条2項の推定を受けると解するのが相当であり,侵害者が,侵害の行為の対価として直接得た利益のみならず,侵害の行為と相当因果関係のある利益の額についても,特許権者と侵害者の実施状況や競業関係等により特許権者 に損害(特許権者等の製品等の販売利益の減少等の逸失利益)が発生していることが推認される限り,特許法102条2項の適用を認めるのが相当である(甲A16)。 以上によれば,日本国内において,国外での販売を目的として「製造 品等の販売利益の減少等の逸失利益)が発生していることが推認される限り,特許法102条2項の適用を認めるのが相当である(甲A16)。 以上によれば,日本国内において,国外での販売を目的として「製造」した侵害品を「輸出」し,特許権者の製品と競合する国外市場でそれを 販売した行為によって,侵害者が得た利益についても,102条2項の推定が及ばないとする理由はない。なぜなら,国外での販売目的で製造し輸出され,現に国外で販売されており,これにより特許権者の国外市場での利益が害されている以上,日本国内での「製造」や「輸出」という侵害行為と,国外で販売したことにより侵害者が得た利益(特許権者 の被った損害)との間には相当因果関係が認められ,民法709条に基づく算定によれば,当該利益は特許権者の被った損害として認定されるものであり,その立証の困難性の軽減を図る特許法102条2項においても当然に推定が及ぶと解すべきであるからである(甲A17)。この理は,共同不法行為(民法719条)が成立する被告らにおいて妥当す る。すなわち,被告SSMMは,被告ソニーないし被告SSMSと意を 通じて,これらの指示に基づいて被告OEM製品の製造,輸出を行っていたものと推察されるのであり,被告らは,同一企業グループに属する会社として,被告OEM製品の製造,輸出,販売という一連の行為を共同で行っていたものであるから,共同で行われた国内における不法行為と,国内外における原告の損害との間には,相当因果関係が認められる。 (被告らの主張)(ア) 被告OEM製品の取引形態2における商流を図示すると,以下のとおりである。 (平成27年12月~平成29年3月)被告SSMM(輸出) →被告SSMM(海外で販売)→被告ソニー(海外 被告OEM製品の取引形態2における商流を図示すると,以下のとおりである。 (平成27年12月~平成29年3月)被告SSMM(輸出) →被告SSMM(海外で販売)→被告ソニー(海外で販売)→顧客(平成29年4月~平成29年9月)被告SSMM(輸出)→被告SSMM(海外で販売)→被告SSMS(海外で販売)→被告ソニー(海外で販売)→顧客 (平成29年10月以降)被告SSMM(輸出)→被告SSMM(海外で販売)→被告SSMS(海外で販売)→顧客被告ソニー(平成29年10月以降は被告SSMS)は,毎月,各OEM顧客から月毎の発注内示(フォーキャスト)を受領し,被告SSM Mに提供した。被告SSMMは,このフォーキャストと,海外倉庫における被告OEM製品の在庫のバランスを考慮して,海外倉庫への被告OEM製品の補充計画及び被告OEM製品の生産計画を策定し,これらの計画に基づいて被告OEM製品を生産するとともに,海外倉庫に輸送(輸出)して被告OEM製品の在庫を補充していた。なお,被告OEM製品 の生産・補充計画の策定は被告SSMMの責任において行われており, 被告ソニー及び被告SSMSは,OEM顧客から受領したフォーキャストを被告SSMMに提供はしていたものの,被告OEM製品の生産・補充計画の策定に関して被告SSMMに対して指示を行う等の関与はしていなかった。 (イ) 本件特許1の効力は,海外には及ばない(属地主義の原則)から,仮 に,被告OEM製品が本件発明1の技術的範囲に属し,かつ,本件特許1に無効理由が存在しないとしても,上記取引形態において,被告らが被告OEM製品を海外で販売する行為は,本件特許権1の侵害行為には該当しない。 他方,被告SSMMが被告OEM製 し,かつ,本件特許1に無効理由が存在しないとしても,上記取引形態において,被告らが被告OEM製品を海外で販売する行為は,本件特許権1の侵害行為には該当しない。 他方,被告SSMMが被告OEM製品を日本国内から海外に輸出する 行為それ自体は,本件特許権1を侵害する行為に該当するが,被告SSMMは,被告OEM製品を輸出する際,第三者に対して被告OEM製品を販売しているわけではなく,被告SSMMの所有のまま,被告OEM製品の所在地を日本国内から海外に移動させているにすぎない。したがって,被告SSMMは,被告OEM製品の輸出行為それ自体によっては, 何ら利益を受けていない。 したがって,被告らが取引形態2による被告OEM製品の販売によりそれぞれ得た限界利益については,特許法102条2項の適用はない。 (ウ) 原告は,被告SSMMによる侵害行為たる製造・輸出行為と利益との間に因果関係がある以上,当該利益が海外での被告OEM製品の販売に より得られた利益であっても,特許法102条2項が定める「侵害の行為により利益を受けているとき」に該当する,と主張する。 しかしながら,被告SSMMが被告OEM製品を海外で販売する行為は,海外で行われた行為である以上,属地主義の原則により,本件特許権1の効力は及ばない。このような行為が介在することによって初めて, 被告SSMMは利益を得ている以上,被告SSMMが被告OEM製品を 海外で販売したことにより得た利益は,被告SSMMが被告OEM製品の製造・輸出行為「により」得た利益には該当しないというべきである。 また,被告SSMMが被告OEM製品を海外で販売したことにより,原告が海外市場における自己の製品の販売機会を喪失したとしても,かかる海外市場における販売機会の喪失は, 該当しないというべきである。 また,被告SSMMが被告OEM製品を海外で販売したことにより,原告が海外市場における自己の製品の販売機会を喪失したとしても,かかる海外市場における販売機会の喪失は,日本国内にしか効力が及ばな い本件特許権1によって回復されるべきものではない。 なお,このように解したとしても,原告は,本件特許に対応する外国特許を取得した上でこれを被告SSMMに対して行使することにより,当該外国における市場における自己の製品の販売機会を喪失したことによる損害の賠償を受けることができたのであるから,何ら不当な結果と はならない。むしろ,そのように解さないと,原告に対し,被告SSMMの同一の行為に対して日本特許権及び外国特許権に基づく二重の損害賠償請求を認めることになりかねず,不当である。 仮に,属地主義の原則の問題を完全に度外視したとしても,OEM顧客に対する被告OEM製品の出荷は被告SSMMの海外倉庫から行われ ており,被告SSMMはOEM顧客から提供を受けたフォーキャストと,海外倉庫における被告OEM製品の在庫のバランスを考慮して,被告OEM製品の生産及び海外倉庫への被告OEM製品の補充を行っていたものの,かかるフォーキャストと,実際の被告OEM製品の受注は必ずしも一致するとは限らず,被告SSMMが海外倉庫において相当数の被告 OEM製品の在庫を抱える場合もあったから,被告OEM製品を生産し,被告SSMMの海外倉庫に補充する行為と,OEM顧客からの受注に基づいて被告SSMMの海外倉庫から被告OEM製品を出荷する行為は一連の行為とはいえない。よって,被告SSMMが被告OEM製品を製造・輸出する行為と,被告SSMMが海外で被告OEM製品を販売したこと による利益(及び,それ以降に被告ソニー又 出荷する行為は一連の行為とはいえない。よって,被告SSMMが被告OEM製品を製造・輸出する行為と,被告SSMMが海外で被告OEM製品を販売したこと による利益(及び,それ以降に被告ソニー又は被告SSMSが被告OE M製品を販売したことによる利益)との間には,相当因果関係は存在しない。 なお,原告が被告SSMMに関して主張する「因果関係」論は,被告ソニー及び被告SSMSには,そもそも当てはまる余地がない。すなわち,上記取引形態2における被告ソニー及び被告SSMSの行為は,海 外で購入した被告OEM製品を海外で他社に販売する行為のみであり,そこには,日本の特許の侵害行為であると評価する余地のある行為は存在しない。被告OEM製品を製造しているのはあくまで被告SSMMであり,かかる被告SSMMの行為をもって,被告ソニー及び被告SSMSに何らかの本件特許を侵害する行為があったと評価する余地はない。 結局,被告ソニー及び被告SSMSは,本件特許権の侵害行為を行っていないのであるから,被告ソニー及び被告SSMSが「侵害行為」により得た利益なるものを,そもそも観念する余地はない。特許法102条2項が適用されるためには,「特許権・・・を侵害した者(が)」「侵害の行為により」利益を受けたことを要するため,被告ソニー及び被告 SSMSが得た利益について同条項を適用する余地はない。 (エ) 被告らによる被告OEM製品の販売行為は日本国外で行われたものと評価されること取引形態2において,被告SSMMが被告OEM製品を日本から輸出した行為については,日本国内で行われたと評価することができるが, 他方,輸出され,日本国外に存在する被告OEM製品を,被告SSMMが被告ソニーまたは被告SSMSに対して販売した行為につ 輸出した行為については,日本国内で行われたと評価することができるが, 他方,輸出され,日本国外に存在する被告OEM製品を,被告SSMMが被告ソニーまたは被告SSMSに対して販売した行為については,販売行為の対象たる被告OEM製品が既に日本国外に存在する以上,日本国外で行われたと評価されることは明らかである。被告らはいずれも日本法人であるが,日本法人の間で行われる物の売買であっても,その売 買の過程において,売買の対象である被告OEM製品は一貫して日本国 外に存在したのであるから,かかる販売行為が日本国内で行われたと評価する余地はない。同様に,被告ソニー及び被告SSMSによる被告OEM製品の販売行為(販売先は被告ソニー又は顧客)も,日本国外で行われたと評価されることは明らかである。 原告は,取引形態2における販売は,取引形態1と同様に,被告OE M製品の製造や輸出を含む一連の行為の一環として,国内においてなされたものと評価されるべきである,と主張するが,取引形態1及び2は,被告らによる被告OEM製品の販売行為が行われた時点で,被告OEM製品が日本国内に存在するか,それとも日本国外に存在するかという点において,根本的に相違するから,取引形態1と2を同視することはで きない。また,前記(ウ)のとおり,被告SSMMがOEM顧客から提供を受けたフォーキャストと,実際の被告OEM製品の受注は必ずしも一致するとは限らず,被告SSMMが海外倉庫において相当数の被告OEM製品の在庫を抱える場合もあったから,被告OEM製品を生産し,被告SSMMの海外倉庫に補充する行為と,OEM顧客からの受注に基づい て被告SSMMの海外倉庫から被告OEM製品を出荷する行為は,相互に独立した別々の行為であって,これらを一連の を生産し,被告SSMMの海外倉庫に補充する行為と,OEM顧客からの受注に基づい て被告SSMMの海外倉庫から被告OEM製品を出荷する行為は,相互に独立した別々の行為であって,これらを一連の行為として一体的に捉えることはできない。 被告らは,OEM顧客からの被告OEM製品の受注,被告OEM製品の海外倉庫からの出庫(海外倉庫の管理を含む)及びOEM顧客への発 送,並びにOEM顧客に対する請求を,各国に本拠地を有する各現地協力会社に委託しており,これらの個々の業務について,被告らから現地協力会社に対して個別的な指示が行われることは原則としてなかったものであり,これらの業務は全て,日本国内ではなく海外において行われたものである。 (オ) なお,判例・学説上は,日本国内から海外の顧客に対して侵害品を販 売する行為によって得た利益について,特許法102条2項を適用することができるか否か,という論点が存在し,これを肯定した裁判例(大阪地裁平成22年1月28日判決)も存在するが,この裁判例に対しては,批判が多い。まして,そもそも本件は,日本国内から海外の顧客に対して侵害品を販売したという事案ではなく,海外の顧客への販売行為 それ自体は完全に日本国外で行われており,ただ,当該製品が日本国内で製造され,海外に輸出されたものであるという事案であるから,特許法102条2項を適用する余地はないことは明らかである。 ウ限界利益額(争点11-3)(原告の主張) (ア) 被告らの開示に基づく被告らの利益額平成27年12月~平成30年6月(被告自社製品)又は同年9月(被告OEM製品)までの各期間における被告らが被告製品の販売により得た利益額は,被告らの開示額を踏まえると,それぞれ別紙「原告主張:被告らの開 年12月~平成30年6月(被告自社製品)又は同年9月(被告OEM製品)までの各期間における被告らが被告製品の販売により得た利益額は,被告らの開示額を踏まえると,それぞれ別紙「原告主張:被告らの開示に基づく被告らの利益額(被告自社製品)」(被告三社に おける各売上高,仕入金額,物流費等を各侵害期間における被告製品の数量に応じて割り付けることで,各侵害期間の「利益の額」を算出した。)及び別紙「原告主張:被告らの開示に基づく被告らの利益額(被告OEM製品)」のとおりである。 (イ) 被告らの限界利益額 被告らは,限界利益の算出に当たって被告製品の売上高から人件費等の固定費を控除すべきと主張しているが,控除すべきではない。したがって,各侵害期間において被告らが被告製品を製造・販売等することにより受けた利益の額は,それぞれ別紙「原告主張:損害額(被告自社製品)」及び別紙「原告主張:損害額(被告OEM製品)」の各「利益の 額」欄記載の金額を下らない。 (ウ) 弁護士・弁理士費用原告は,本件訴訟の遂行を原告代理人弁護士・弁理士に委任した。原告が本件訴訟において負担を余儀なくされた弁護士費用のうち,被告らの不法行為と相当因果関係のある額は,別紙「原告主張:損害額(被告自社製品)」及び「原告主張:損害額(被告OEM製品)」の各「弁護 士費用等」欄記載の金額(「利益の額」記載の金額の10%)を下らない。 (エ) 損害合計額したがって,原告が被った損害合計額は,別紙「原告主張:損害額(被告自社製品)」及び別紙「原告主張:損害額(被告OEM製品)」の各 「合計額」欄記載のとおりである。 (被告らの主張)争点11-2のとおり,被告OEM製品の取引形態2によって被告らが得た利益には特許法102条2 原告主張:損害額(被告OEM製品)」の各 「合計額」欄記載のとおりである。 (被告らの主張)争点11-2のとおり,被告OEM製品の取引形態2によって被告らが得た利益には特許法102条2項の推定が及ばないが,以下では,同利益についても主張する。 (ア) 被告ソニーが得た利益についてa被告ソニーによる被告製品の販売巻数,売上高,仕入金額,物流費,ロイヤリティ,リベート及び限界利益額の四半期毎の合計を一覧にまとめたものが,別紙「被告ソニーの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告ソニーの利益額(被告OEM製品)」である(なお,被告ら は,被告ソニーの被告自社製品に係る四半期毎の物流費及びそれを前提とした四半期毎の限界利益額については明示的に主張していないものの,被告SSMMの被告自社製品に係る四半期毎の物流費について,四半期毎の販売巻数で案分した費用を主張していることから,同様に主張するものと解される。)。 bなお,上記別紙「被告ソニーの利益額(被告自社製品)」には,被 告ソニーが平成28年1月にOracleに有償で提供したサンプル(LTX6000G)●(省略)●巻,及び平成28年5月にGoogleに有償で提供したサンプル(20LTX6000GL)●(省略)●個(=●(省略)●巻)の売上高及び仕入金額が計上されていない。Oracleに提供したサンプル●(省略)●個の売上高は●(省略)●円(=● (省略)●米ドル)(乙191),仕入金額は●(省略)●円(乙176の最終行を参照)である。また,Googleに提供したサンプル●(省略)●巻の売上高は●(省略)●円(=●(省略)●米ドル)(192),仕入金額は●(省略)●円(乙177の最終行を参照)である。 これらを加えると,被告ソニー た,Googleに提供したサンプル●(省略)●巻の売上高は●(省略)●円(=●(省略)●米ドル)(192),仕入金額は●(省略)●円(乙177の最終行を参照)である。 これらを加えると,被告ソニーの被告自社製品の販売巻数は●(省略) ●巻,売上高は●(省略)●円,仕入金額は●(省略)●円となる。 以上より,被告ソニーが平成27年12月から平成29年9月までの期間中に被告自社製品の販売により得た限界利益の額は,上記別紙該当欄の金額と異なり,以下のとおり,●(省略)●円となる。 売上高●(省略)●円-(仕入金額●(省略)●円+物流費●(省 略)●円+ロイヤリティ●(省略)●円)=限界利益●(省略)●円c被告ソニーは,販売した被告製品ごとに,被告AP-75契約に基づき,TPCsに対してロイヤリティを支払っていた。このロイヤリティについては,平成28年3月までは,被告ソニーが最終的に負担していた。(なお,平成28年4月以降は,被告SSMMないし被告 SSMSが,被告ソニーに対してロイヤリティの額を償還していた。)。 d被告ソニーは,被告ソニーが被告OEM製品の商流に入っていた平成29年9月までの間,取引形態2により販売した被告OEM製品の数量に応じて,本件OEM供給先(HPE及びQuantum)に対してリベートを支払っていた(なお,平成29年10月以降は,被告SSMS がリベートを支払っていた。)。このリベートは,実質的に販売代金 の値引きであるため,限界利益額の算定に際し,売上高から控除される必要がある。その額は,別紙「被告ソニーの利益額(被告OEM製品)」の該当欄記載のとおりである。 (イ) 被告SSMMが得た利益についてa被告SSMMによる被告製品の販売巻数,売上高,生産費用(その る。その額は,別紙「被告ソニーの利益額(被告OEM製品)」の該当欄記載のとおりである。 (イ) 被告SSMMが得た利益についてa被告SSMMによる被告製品の販売巻数,売上高,生産費用(その 内の人件費),物流費,ロイヤリティ及び限界利益額の四半期毎の合計を一覧にまとめたものが,別紙「被告SSMMの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告SSMMの利益額(被告OEM製品)」である。 bなお,平成30年4~6月の間に被告SSMMが被告SSMSに販 売した被告OEM製品の巻数は,実際には●(省略)●巻であり,同期間中に被告SSMSが販売した被告OEM製品は●(省略)●巻である。残る●(省略)●巻は,被告SSMSが社内で使用しており,他社に販売しなかったため,乙A第42号証には記載されていないが,上記別紙には算入している。 c変動費に該当するのは,直接材料費(テープの材料費等),人件費,エネルギー費(電気・ガス代等),設備費(ドライブ等の消耗品や設備のメンテナンス費用等),間接材料費(製造工程で消費されて最終製品には残らない材料費)及び業務委託料(派遣従業員の人件費)である。 なお,被告SSMMは,全ての種類の被告OEM製品の変動費を一元的に管理しているわけではないため,各被告OEM製品について逐一,変動費の額を特定するのは容易ではない。そこで,被告OEM製品の変動費については,便宜上,被告OEM製品と同じくLTO-7規格に準拠する磁気テープカートリッジである被告自社製品の変動費 を用いた。なお,被告自社製品及び被告OEM製品の変動費の額は概 ね同じである。 原告は人件費を控除すべきではないと主張するが,被告SSMMにおいてより多くの被告製品を製造するためには,製造に従事す ,被告自社製品及び被告OEM製品の変動費の額は概 ね同じである。 原告は人件費を控除すべきではないと主張するが,被告SSMMにおいてより多くの被告製品を製造するためには,製造に従事する人員がより多く必要となる。また,人件費は,超過勤務や深夜勤務に係る手当等を含むものであるところ,被告SSMMにおいてより多くの被 告製品を製造するためには,各人員の勤務時間もより多く必要となり,必然,各人員の超過勤務や深夜勤務の時間も増加し,その分,被告SSMMによる手当の支払額も増加することになる。したがって,人件費は変動費として控除されるべきものである。 d上記変動費には,被告SSMMが被告製品を出荷する際の物流費が 含まれていない。各期間の物流費は別紙「被告SSMMの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告SSMMの利益額(被告OEM製品)」の「物流費」欄記載のとおり(被告自社製品については,原告主張と同様に,当該期間の販売巻数で按分した額とした。)。 e被告ソニーは,販売した被告製品ごとに,被告AP-75契約に基 づき,TPCsに対してロイヤリティを支払っていた。また,被告SSMMは,平成28年4月から平成29年3月まで,被告ソニーとの間の契約に基づき,被告ソニーがTPCsに対して支払ったロイヤリティの額を,被告ソニーに対して償還していた。 f以上より,被告SSMMが平成27年12月から平成30年5月ま での期間中に被告製品の販売により得た限界利益の額は,別紙「被告SSMMの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告SSMMの利益額(被告OEM製品)」の「限界利益」「人件費を控除」欄記載のとおりとなる。。 (ウ) 被告SSMSが得た利益について a被告SSMSによる被告製品の販売巻数 別紙「被告SSMMの利益額(被告OEM製品)」の「限界利益」「人件費を控除」欄記載のとおりとなる。。 (ウ) 被告SSMSが得た利益について a被告SSMSによる被告製品の販売巻数,売上高,仕入金額,物流 費,ロイヤリティ,リベート及び限界利益額の四半期毎の合計を一覧にまとめたものが,別紙「被告SSMSの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告SSMSの利益額(被告OEM製品)」である(なお,被告らは,被告SSMSの被告自社製品に係る四半期毎の物流費及びそれを前提とした四半期毎の限界利益額については明示的に主張して いないものの,被告SSMMの被告自社製品に係る四半期毎の物流費について,四半期毎の販売巻数で案分した費用を主張していることから,同様に主張するものと解される。)。 b被告SSMSは,被告ソニーが被告製品の商流から外れた平成29年10月以降,被告製品を出荷する際,物流費を支出している。 c被告ソニーは,販売した被告製品ごとに,被告AP-75契約に基づき,TPCsに対してロイヤリティを支払っていた。また,平成29年4月以降は,被告SSMSが,被告ソニーとの間の契約に基づき,被告ソニーがTPCsに対して支払ったロイヤリティの額を,被告ソニーに対して償還していた。 d被告SSMSは,平成29年10月以降,取引形態2により販売した被告OEM製品の数量に応じて,本件OEM供給先(HPE及びQuantum)に対してリベートを支払っていた。このリベートは,実質的に販売代金の値引きであるため,限界利益額の算定に際し,売上高から控除される必要がある。その額は,別紙「被告SSMSの利益額(被 告OEM製品)」の該当欄記載のとおりである。 エ推定覆滅事由の存否及びその割合( るため,限界利益額の算定に際し,売上高から控除される必要がある。その額は,別紙「被告SSMSの利益額(被 告OEM製品)」の該当欄記載のとおりである。 エ推定覆滅事由の存否及びその割合(争点11-4)(被告らの主張)(ア) 本件特許1の寄与度について被告製品は,LTO-7規格に準拠する磁気テープカートリッジであ り,最大記録容量15TB(非圧縮時は6TB)という大記録容量を実 現し,かつ,データ転送速度が750MB/秒(非圧縮時は300MB/秒)という高速のデータ転送速度を実現した磁気テープカートリッジである。被告製品を購入する顧客は,被告製品が上記のような大記録容量及び高速のデータ転送速度を実現した製品である点,及び,記録媒体としての磁気テープの利点(保存時において通電が不要である点等)に 着目して被告製品を購入するものであり,これらの事情が,顧客による被告製品の購入の主要な動機となっている。他方,本件発明1は,バックコート層を有する磁気記録媒体では,製造過程で磁気記録媒体をロール状態で保存したり,製品化後磁気テープをリールハブに巻いた状態で保存すると,バックコート層の突起が磁性層表面に転写し,微小な凹み を形成する,いわゆる「裏写り」が発生し,この裏写りにより,電磁変換特性,特に,BB-SNR及びK-SNR(近傍ノイズ)が長期保存後や高温保存後に劣化するという問題が生じるという課題があったところ(本件明細書1・段落【0006】),バックコート層表面のPSD(10μm)が80000n㎥を超えると磁性層表面への写りの影響が 大きく,電磁変換特性低下の原因となることが見出されたことから,バックコート層表面のPSD(10μm)を80000n㎥以下とすることで,上記課題を解決するもの ると磁性層表面への写りの影響が 大きく,電磁変換特性低下の原因となることが見出されたことから,バックコート層表面のPSD(10μm)を80000n㎥以下とすることで,上記課題を解決するものである(本件明細書1・段落【0017】)。 換言すれば,本件発明1の効果は,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性の劣化を抑える,という点にある。 しかしながら,後記(ウ)のとおり,被告製品において,本件発明1の構成要件を充足することによって,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性の劣化が抑えられているといった関係性が具体的に存在することを見出すことはできない。 また,仮に,被告製品において,本件発明1の構成要件を満たすこと により,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特 性の劣化が(いくばくかでも)抑えられている,という関係性が存在したとしても,後記(エ)のとおり,そのことは,顧客による被告製品の購入の動機となっているものではない。 以上のような事情を考慮すれば,仮に,被告製品が本件発明1の構成要件を充足しているとしても,そのことによる被告製品の売上への寄与 は,全く存在しないか,仮に存在するとしても微々たるものにすぎないことは明らかである。したがって,被告製品の販売により被告らが受けた利益に対する,本特許発明1の寄与度は,大きく見積もっても1%を上回ることはないというべきである。 以上のとおり,特許法102条2項による推定は,少なくとも一部(9 9%)覆滅される。 (イ) 競合業者が被告らと原告のみであることについてLTO-7規格に準拠する磁気テープカートリッジを製造販売している磁気テープカートリッジ事業者が被告らと原告のみであるとしても )覆滅される。 (イ) 競合業者が被告らと原告のみであることについてLTO-7規格に準拠する磁気テープカートリッジを製造販売している磁気テープカートリッジ事業者が被告らと原告のみであるとしても,そのことのみをもって,被告らが侵害品を製造販売等しなければ原告が 侵害品と同数の原告製品を販売できた,という関係が存在しないことは明らかである。すなわち,仮に,被告製品が本件発明1の技術的範囲に属するものであり,被告らが被告製品を製造・販売しなかったとしても,代わりに,被告らが本件発明1の技術的範囲に属さない(具体的には,磁気テープのバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度 (以下「バックコートPSD」という。)が80000n㎥を上回る)磁気テープカートリッジ(以下「代替製品」という。)を製造・販売することができたのであれば,かかる代替製品の販売分については,原告は原告製品を販売することができなかったことは明らかである。したがって,単に,LTO-7製品の市場において競合する会社が2社しかな いことのみをもって特許法102条2項の推定を覆滅する事由が存在し ないとする原告の主張は,同項を正しく理解しないものであり,失当であると言わざるを得ない。 (ウ) 被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないことaそもそも,バックコート層の磁性層への裏写りの有無及び程度は,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値(す なわち,バックコート層表面の凹凸の形状)によってのみ決まるものではなく,バックコート層及び磁性層表面を構成する素材などによっても影響を受けるものであり,むしろ,素材による影響の方が大きいということができる(磁性層表面が柔らかい素材であれば裏写りはしやすくなるし, く,バックコート層及び磁性層表面を構成する素材などによっても影響を受けるものであり,むしろ,素材による影響の方が大きいということができる(磁性層表面が柔らかい素材であれば裏写りはしやすくなるし,硬い素材であれば裏写りはしにくくなる。)。この点, 被告製品においては,磁性層を形成するに当たり,硬度の高い結合剤を使用し,さらに硬化処理を複数回行うことで,硬度の高い磁性層表面を形成しており,これにより,被告製品において裏写りは十分に抑制することができている。被告製品において,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が80000n㎥以下である ことと,それによって,被告製品において長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性の劣化が抑えられていることとの間に,具体的な因果関係を見出すことはできない。要するに,被告製品が,本件発明1の構成要件を充足しているとしても,それにより,本件発明1に係る作用効果の恩恵を被告製品が具体的に受けていると いった事情は,何ら見出すことはできない。 bさらにいえば,本件発明1が規定する,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は,測定条件・方法により値が大きく変動するものであり,同一の磁気テープを測定した場合であっても,測定方法・条件によってはスペクトル密度の値が80000n㎥以下 であったり,80000n㎥を上回ったりするものである。そうであ るにも関わらず,本件特許1のクレームには,10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法・条件について特段の限定が存在せず,本件明細書1の記載を参酌したとしても,本件特許1において,スペクトル密度の測定方法・条件を一義的に確定することはできない。このように,測定方法・条件によって値が 条件について特段の限定が存在せず,本件明細書1の記載を参酌したとしても,本件特許1において,スペクトル密度の測定方法・条件を一義的に確定することはできない。このように,測定方法・条件によって値が大きく変動するにも関わらず, その測定方法・条件を一義的に確定することができない「バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度」について,被告製品のスペクトル密度をある特定の測定条件・方法で測定した場合に,その値が偶々,80000n㎥を下回っていたからといって,そのことと,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性 の劣化が抑えられていることとの間に,何らの因果関係も存在しないことは明らかである。したがって,被告製品が本件発明1の構成要件を充足していることは,被告製品の販売に対して,何ら具体的に寄与していない。 c本件明細書1に記載されている「磁気テープの電磁変換特性」とは, 要するに,磁気テープにデータを書き込んだ直後に読み取りを行った場合に,ノイズやエラーがどの程度発生するか,ということを意味する。かかるノイズやエラーが少なければ,磁気テープの電磁変換特性は良好であるということになり,逆に,ノイズやエラーが多ければ,磁気テープの電磁変換特性は劣悪であるということになる。 かかる観点からの磁気テープの性能が,磁気テープを長期間保存し,あるいは高温環境下で保存した場合に,保存前と比較してどの程度劣化しているか,ということが,本件発明1では問題となっているのである。実際,本件明細書1に記載の実施例及び比較例においても,電磁変換特性の測定は,初期状態のものと,60℃,10%で一週間保 存後のものそれぞれについて,信号を記録し,その直後に当該信号を 再生することによって行 例及び比較例においても,電磁変換特性の測定は,初期状態のものと,60℃,10%で一週間保 存後のものそれぞれについて,信号を記録し,その直後に当該信号を 再生することによって行われている(本件明細書1・段落【0111】,【0112】)。 ここで注意すべきは,磁気テープに記録されたデータが,磁気テープの長期保存後や高温保存後に正しく読み取れるか否か,といったことは,本件明細書1の実施例では何ら問題とされておらず,かかる観 点からの磁気テープの性能の向上は,本件明細書1に記載の実施例によって何ら裏付けられておらず,本件発明1の作用効果とはされていない,という点である。「長期保存」というと,あたかも,磁気テープに記録されたデータの長期保存性のことを問題にしているかのように聞こえるが,本件発明1において問題にしているのは,あくまで, 磁気テープの電磁変換特性,すなわち,磁気テープにデータを書き込んだ直後に読み取りを行った場合にノイズやエラーがどの程度発生するか,という観点からの磁気テープの性能が,長期保存後や高温保存後にどの程度劣化するか,ということである。磁気テープに記録されたデータが,磁気テープの長期保存後や高温保存後に正しく読み取れ るか否か,といったことは,本件明細書1に記載の実施例においては何ら検証されておらず,かかる観点からの磁気テープの性能の向上は,本件発明1の作用効果とはされていない。 この点,原告の主張からは,原告が,本件発明1の作用効果は情報(データ)の長期保存性の向上であると考えていることが窺えるが, 原告は,本件発明1の作用効果を正しく理解していない。原告の主張は失当である。 したがって,被告製品において,本件発明1の構成要件を充足することによって,長期保存後や高温保 とが窺えるが, 原告は,本件発明1の作用効果を正しく理解していない。原告の主張は失当である。 したがって,被告製品において,本件発明1の構成要件を充足することによって,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられているといった関係性が存在すること を見出すことはできない。換言すれば,被告製品は,本件発明1の作 用効果を奏していない。 dまた,被告製品においては,磁性層を形成するに当たり,硬度の高い結合剤を使用し,さらに硬化処理を複数回行うことで,硬度の高い磁性層表面を形成しており,これにより,被告製品において裏写りは十分に抑制することができている。したがって,被告製品において, バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が80000n㎥以下であることと,それによって,被告製品において長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられていることとの間に,具体的な因果関係を見出すことはできない。 なお,磁気テープにおいて,磁性層表面が硬ければ硬いほど裏写りが生じにくいことは技術常識であり,当然,原告も十分に認識している事項である(例えば,乙197・段落【0023】,乙198・段落【0010】,乙199・段落【0002】。)。 これに対し,原告は,「硬度の高い結合剤の使用」や「複数回の硬 化処理」によって,「硬度の高い磁性層表面を形成」したとしても,裏写りを十分に抑制することはできないと主張し,その根拠として報告書(甲96)を提出する。しかしながら,第一に,甲96は,磁性層の硬さの指標として不適切な指標を用いていること(乙205・第7~第10段落),第二に,甲96には,硬度の異なる結合剤を用い る旨の記載 6)を提出する。しかしながら,第一に,甲96は,磁性層の硬さの指標として不適切な指標を用いていること(乙205・第7~第10段落),第二に,甲96には,硬度の異なる結合剤を用い る旨の記載はあるものの,硬化処理を行った旨の記載は一切存在しないことから,硬化処理を行わない磁気テープについて実験を行ったのではないかと推測され,不適切であること(乙205・第11~第14段落),第三に,甲96には,あらかじめ磁気テープ約100mを巻き付けたアルミニウム製の巻き芯の外周にサンプル片を貼り付け, さらにその上から磁気テープ約700mを巻き付けた後,熱処理を行 い,ロール状態での保存を再現した,との記載がある(甲96・2~3頁)が,「熱処理」なるものの条件(温度,時間等)について一切記載がなく,保存試験の条件として適切なものであったか否か不明であること(乙205・第15~第17段落),第四に,甲96においては,裏写りが生じたか否かを,磁性層表面における10μmピッチ のスペクトル密度の値によって判断している(甲96・4~5頁)が,本件発明1が問題としているのは,あくまで,裏写りによる電磁変換特性の劣化であるから,裏写りが十分抑制されているか否かも,電磁変換特性の劣化の程度によって判断する必要があること(乙205・第18~第19段落),以上から,甲96の実験は,原告の主張を裏 付ける実験として不適切であり,原告の主張は失当である。 被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないことは,被告らが実施した設計変更品の保存試験の結果(乙204)からも明らかである。すなわち,被告らは,設計変更品(磁気テープのバックコートPSDが80000n㎥を確実に上回るように調整されたLTO-7製 品)の磁気テープについて,4 の結果(乙204)からも明らかである。すなわち,被告らは,設計変更品(磁気テープのバックコートPSDが80000n㎥を確実に上回るように調整されたLTO-7製 品)の磁気テープについて,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存し,保存前と保存後それぞれについてWrite/Read試験(磁気テープにデータを書き込んだ直後に読み取る試験)を行い,エラーレート(エラーの発生率)を測定した結果,設計変更品において,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存する前とした後とで,エラー レートにほぼ違いは無く,C2についてはむしろエラーレートが低下していた。このように,磁気テープのバックコートPSDが80000n㎥を上回る設計変更品において,保存後もエラーレートの有意な上昇が確認されなかったことは,結局,バックコートPSDが80000n㎥を上回っている磁気テープにおいて,バックコートPSDが 80000n㎥以下の磁気テープと比較して,長期保存後や高温保存 後の電磁変換特性の劣化がより大きいという関係性が存在せず,バックコートPSDが80000n㎥以下である磁気テープであっても本件発明1の作用効果を奏するものではないことを示している。 また,被告らは,設計変更品について実施した保存試験(乙204)と同一の条件で,設計変更前の被告製品についても保存試験を実施し た(乙206)。すなわち,被告らは,設計変更前の被告製品2点(磁気テープのロット番号:XIT1024)について,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存し,保存前と保存後それぞれについてWrite/Read試験を行い,エラーレートを測定した。その結果,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存する前とした後とで,エラ ーレートに有意な変化は生じなかった。また 後それぞれについてWrite/Read試験を行い,エラーレートを測定した。その結果,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存する前とした後とで,エラ ーレートに有意な変化は生じなかった。また,乙204に記載の,設計変更品の保存試験においても,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存する前とした後とで,やはり,エラーレートに有意な変化は生じなかった。したがって,仮に,設計変更前の被告製品が本件発明1の構成要件を充足していたとしても,かかる製品の磁気テープ(すな わち,バックコートPSDが20000~80000n㎥の範囲内である磁気テープ)が,バックコートPSDが80000n㎥を上回る磁気テープと比較して,長期保存後や高温保存後の電磁変換特性の劣化がより抑えられている,といった関係性を確認することはできなかった。このことは,被告製品が本件発明1の効果を何ら奏していない ことを,明確に示すものである。 e被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないことは,QuantumInc.の従業員のG氏の意見書(乙203)からも明らかである。すなわち,同氏は,バックコートPSDは,磁性層がバックコート層により損傷されるか否かとは無関係であるため,バックコートPSDを測定する ことに意味はないと述べている(乙203・第4段落)。このように, Quantumにおいては,バックコートPSDと裏写りは無関係であると認識されているのであり,このことは,被告製品が本件発明1の作用効果を奏するものではないことを明確に示している。 fまた,被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないことは,原告製品が本件発明1の実施品でないにも関わらず,そのような原告製 品を原告が製造・販売していることからも明らかである。すなわち fまた,被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないことは,原告製品が本件発明1の実施品でないにも関わらず,そのような原告製 品を原告が製造・販売していることからも明らかである。すなわち,原告製品のバックコートPSDは80000n㎥を大きく上回っており(乙116,117),また,米国ITCも,原告製品は「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が20000~80000n㎥」との要件を満たさない,と判断している(乙10 4)。 このように,原告製品は本件発明1の実施品ではないが,そうであるにもかかわらず,原告製品において,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化という問題が生じているといった話は,被告らにおいて把握していないし,原告も,かかる問 題が原告製品において発生しているとは何ら主張していない。むしろ,原告は,自社のウェブサイトにおいて,「当社製品は,室温で30年以上に相当する加速条件下でのテストにおいて磁気特性に変化が生じないことが確認されています。」と記載しており(乙200),長期保存後の磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられている点を,原 告製品を含む原告の磁気テープ製品の長所として具体的に挙げている。 このように,原告製品が本件発明1の実施品でないにもかかわらず,長期保存後の磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられている点を原告が強調していることは,バックコートPSDをクレームの数値範囲内とすることによって本件発明1の効果が得られるものではないこ とを如実に示している。 g原告は,本件発明1の特許請求の範囲に規定される数値範囲に入れば,いわゆる「裏写り」を抑制することができ,長期保存や高温保存に適したものとなることは,本 とを如実に示している。 g原告は,本件発明1の特許請求の範囲に規定される数値範囲に入れば,いわゆる「裏写り」を抑制することができ,長期保存や高温保存に適したものとなることは,本件明細書1の実施例において確認されている事項である,と主張する。しかしながら,本件明細書1の実施例において確認された事項は,あくまで本件明細書1の実施例に記載 されている磁気テープについてのものにすぎない。被告製品は,本件明細書1の実施例に記載されている磁気テープとは,材質・組成等が全く異なるものである。なお,本件発明1において,バックコートPSDをクレームの数値範囲内とすることにより,何故,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えら れるという作用効果が得られるのか,その作用機序は不明であり,本件明細書1の記載及び技術常識に照らしても,作用機序は明らかではない。かかる作業機序が不明な発明において,単に,イ号製品が発明の構成要件を充足するからといって,当然にイ号製品が明細書に記載されている発明の効果を奏すると認められるものではないことは明ら かである。 h原告は,本件発明1はサポート要件を満たすものであるところ,「本件発明1の構成要件を充足することによって,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられている」という因果関係を有することは明らかであると主張する。しかしなが ら,本件明細書1の実施例において確認された事項は,あくまで,本件明細書1の実施例に記載されている磁気テープについてのものにすぎない。被告製品は,本件明細書1の実施例に記載されている磁気テープとは,材質・組成等が全く異なるものである。仮に,本件明細書1の実施例の記載が,本件特許1が されている磁気テープについてのものにすぎない。被告製品は,本件明細書1の実施例に記載されている磁気テープとは,材質・組成等が全く異なるものである。仮に,本件明細書1の実施例の記載が,本件特許1がサポート要件に適合するか否かと いう観点からは十分なものであったとしても,そのことは,本件明細 書1の実施例に記載された磁気テープとは材質・組成等が全く異なる被告製品が本件発明1の作用効果を奏することを何ら意味するものではない。 i以上のとおり,被告製品は,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられるという本件発明1の 作用効果を奏していない。そして,被告製品が本件発明1の作用効果を奏していない以上,本件発明1が被告製品の売上に何ら寄与していないことは明らかである。 (エ) 本件発明1の作用効果が,顧客による被告製品の購入の動機となっていないこと a被告らが,被告製品の販売資料等において,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性の劣化が抑えられているといったことを顧客向けに宣伝したことは全くないし,顧客も,かかる事情を全く知り得ない。したがって,かかる事情が,顧客による被告製品の購入の動機となることはない。このことは,原告が提出する被 告製品のパンフレット(甲97)から明らかである。甲97には,被告製品において,長期保存後や高温保存後の磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられているといったことは何ら記載されていない。 bさらに,前述したとおり,原告が製造・販売する原告製品は,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が8000 0n㎥を超えており,本件発明1の構成要件を充足しておらず,原告は,本件発明1を実施してい 原告が製造・販売する原告製品は,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が8000 0n㎥を超えており,本件発明1の構成要件を充足しておらず,原告は,本件発明1を実施していない。そうであるにもかかわらず,原告製品において,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性の劣化という問題が生じているといった話は,被告らにおいて把握していない。本件特許1の特許権者である原告自身が,本件 発明1を実施していないということは,とりもなおさず,本件発明1 の構成要件を満たすことにより長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁的特性の劣化が抑えられるという関係性がそもそも存在しないか,仮に存在するとしてもその効果は微々たるものであり,被告製品が本件発明1の構成要件を満たすことが被告製品の商品としての価値を何ら高めるものではなく,顧客による被告製品の購入 の動機となるものではないことを,如実に示している。 cまた,被告らにおいても,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値が80000n㎥を上回るようにする設計変更を行い,かかる設計変更品について,既に,平成30年6月20日付でTPCsの認定を取得済みである。このように,本件特許1は容易 に回避することができるものであり,このこともまた,磁気テープが本件発明1の構成要件を満たすことが,顧客による購入の動機となるものではないことを,如実に示している。 d被告製品の顧客が,長期保存後や高温保存後の磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられているといった点に着目して被告製品を選択 しているわけではないことは,Quantumの従業員であるG氏の意見書(乙203)からも明らかである。すなわち,同意見書におい 換特性の劣化が抑えられているといった点に着目して被告製品を選択 しているわけではないことは,Quantumの従業員であるG氏の意見書(乙203)からも明らかである。すなわち,同意見書において,同氏は,被告らのLTO-7製品と原告のLTO-7製品(本件発明1の実施品ではない。)との間に,長期保存後又は高温保存後の磁気テープの電磁的特性の点において差異があるとは認識していない旨,述べてい る(乙203・第6段落)。 e前記(ア)のとおり,被告製品を購入する顧客は,被告製品が大記録容量及び高速のデータ転送速度を実現した製品である点,及び,記録媒体としての磁気テープの利点(保存時において通電が不要である点等)に着目して被告製品を購入していたものであり,これらの事情が,顧 客が被告製品を購入する主要な動機となっていた。また,被告製品は, 原告製品と比較して,単一のドライブを用いて磁気テープカートリッジへのデータの記録を行った場合における,記録容量,転送レート及び記録速度の安定性という点で,より優れた性能を有していた。すなわち,被告製品においては,単一のドライブを用いて1000巻近い磁気テープカートリッジにデータの記録を行った場合に,記録容量, 転送レート及び記録速度がほぼ一定であったのに対し,原告製品においては,約250~500巻の磁気テープカートリッジにデータを記録した時点で,記録容量及び転送レートが著しく低下することが確認された(乙201,202)。なお,かかる被告製品の性能は,バックコートPSDや本件発明1の作用効果とは全く無関係である。 f以上のとおり,本件発明1の作用効果は,顧客による被告製品の購入の動機となっていない。そして,本件発明1の作用効果が顧客による被告製品の購入の 発明1の作用効果とは全く無関係である。 f以上のとおり,本件発明1の作用効果は,顧客による被告製品の購入の動機となっていない。そして,本件発明1の作用効果が顧客による被告製品の購入の動機となっていない以上,本件発明1が被告製品の売上に寄与しているという関係も存在しない。 (原告の主張) (ア) 競業事業者が被告らと原告のみであること被告らによる特許権侵害行為がなかったならば,原告は,被告らが製造販売した数量と同数の製品を販売して利益を得ることができたことは明らかであって,推定を覆滅させる事由は存在し得ない。 すなわち,LTO7に準拠する製品を製造販売している磁気テープカ ートリッジ事業者は被告らと原告のみであり,本件において,被告らが侵害品を製造販売等しなければ,原告が,侵害品と同数の原告製品を販売できたことは明らかである。この事実のみをもってしても,本件において,推定覆滅事由が存在するとの被告らの主張が失当であることは明白であって,被告らが主張する要素が考慮される余地はない。 (イ) 被告製品が本件発明1の作用効果を奏していること a本件発明1の特許請求の範囲に規定される数値範囲に入れば,いわゆる「裏写り」を抑制することができ,電磁変換特性が改善され,長期保存や高温保存に適したものとなることは,本件明細書1の実施例において確認されている事項である。したがって,被告製品において,本件発明1の特許請求の範囲が定める数値範囲に入っていれば,本件 発明1の作用効果を奏することが明らかである。仮に,被告らが本件発明1とは別の方法の裏写り抑止策を講じているとしても,そうであるからといって,被告製品において,本件発明1の作用効果が生じていないことにはならない。被告らの主張には何ら である。仮に,被告らが本件発明1とは別の方法の裏写り抑止策を講じているとしても,そうであるからといって,被告製品において,本件発明1の作用効果が生じていないことにはならない。被告らの主張には何ら理由がない。 被告らの講じているという裏写り抑制策の内容及び効果が具体的に 明らかにされておらず,これによって裏写りを十分に抑制できていることは何ら立証されていない。しかも,原告の研究及び実験によれば,「硬度の高い結合剤の使用」や「複数回の硬化処理」によって,「硬度の高い磁性層表面を形成」したとしても,裏写りを十分に抑制することはできない。 磁気テープは,磁性層,支持層,非磁性層,バックコート層等,複数の層から形成されているところ,磁性層を硬化したとしても,裏写りの程度は他の層の影響を受けることから,磁性層の硬化のみでは十分に裏写りを抑制することはできないのである。原告は,実験により,硬い磁性層を有する磁気テープと柔らかい磁性層を有する磁気テープ において,裏写りの指標となる本件発明1の構成要件である「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」の値の変化を比較したところ,硬い磁性層を有する磁気テープにおけるスペクトル密度の変化量と,柔らかい磁性層を有する磁気テープにおけるスペクトル密度の変化量の間に顕著な差異がないことを確認した(甲96)。この ことからも,磁性層を硬化したとしても裏写りは防止できないことが 理解できるのであって,被告らの主張は根拠を欠いており失当である。 b被告らは,本件発明1の「長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性が抑えられる」という作用効果について,「長期保存」といえば,磁気テープに記録されたデータが長期保存されることを意味するとの理解を前 の「長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性が抑えられる」という作用効果について,「長期保存」といえば,磁気テープに記録されたデータが長期保存されることを意味するとの理解を前提として,実施例,比較例において, 磁気テープに記録されたデータが磁気テープの長期保存後や高温保存後に正しく読み取れるかが検証されていないから,本件発明1の作用効果が検証されていないと主張している。 しかし,まず,被告らの主張は,その前提となる,「長期保存」の理解において誤っている。本件発明1において,「長期保存前後で変 わらず優れた電磁変換特性が得られる」ことは,直接的には,長期保存後であっても,データの記録が良好にできることを意味している。 このことは,実施例,比較例においてデータ記録の直後に再生を行っていることから明らかである。磁気記録媒体の電磁変換特性には,当然,データの記録が良好に行えることも含まれるところ,実施例,比 較例において検証されたデータ記録の観点から「長期保存前後で変わらず優れた電磁変換特性が得られる」ことを検証しているのであり,この点について何ら問題などない。もっとも,本件特許1における実施例,比較例からは,当業者であれば,本件発明1の磁気記録媒体は,磁気テープに記録されたデータが磁気テープの長期保存後や高温保存 後に正しく読み取れるという意味での電磁変換特性に優れることも,充分に理解できる。すなわち,当業者であれば,実施例の磁気テープにおいて,長期保存後であっても,データが良好に記録できたということは,磁気テープに裏写りがなくうねりや微小な凹みが抑制された結果,磁気ヘッドと磁気テープ表面の隙間が極めて小さくなり,接触 が良好であったことを意味すると理解する。そうすると,実施例の磁 は,磁気テープに裏写りがなくうねりや微小な凹みが抑制された結果,磁気ヘッドと磁気テープ表面の隙間が極めて小さくなり,接触 が良好であったことを意味すると理解する。そうすると,実施例の磁 気テープであれば,データを記録した磁気テープを長期保存後に読み取る場合であっても,磁気テープに裏写りがなくうねりや微小な凹みが抑制され,磁気ヘッドと磁気テープ表面の隙間が極めて小さくなり,接触が良好となる結果,正しく再生できると理解できるのである。よって,本件明細書1においては,データを記録した磁気テープの長期 保存に関する磁気変換特性の優れた効果に関しても,間接的に検証がされているといえる。 c被告らは,設計変更前の被告製品2点及び設計変更後の被告製品1点について,45℃,湿度80%の環境下で一週間保存し,保存前と保存後についてのエラーレートを測定したところ,設計変更前の被告 製品と設計変更後の被告製品のエラーレートの値に実質的な差が無かったとして,被告製品が本件発明1の作用効果を奏しないと主張する。 しかし,仮に,本件発明1の作用効果を検証するのであれば,本件明細書1の段落【0112】~【0114】の記載に基づいて,電磁変換特性(BB-SNR値及びK-SNR値),摩擦係数,バック面巻 き姿を検証するべきであるところ,被告はこのような検証を行っていない。被告が測定した「エラーレート」は,本件明細書に記載された電磁変換特性ではない。しかも,被告は,「エラーレート」の値を検証することによって,なぜ,本件発明1の作用効果を検証することになるのかについても,全く説明していない。よって,被告が行ったエ ラーレートの実験に基づいて,設計変更前の被告製品が,本件発明1の作用効果を奏していないということはできない。 検証することになるのかについても,全く説明していない。よって,被告が行ったエ ラーレートの実験に基づいて,設計変更前の被告製品が,本件発明1の作用効果を奏していないということはできない。 dまた,どのような実験を行ったとしても,被告製品が本件発明1の構成要件を備えている以上,本件発明1の作用効果を享受していないということはできない。すなわち,被告製品は,バックコート層の1 0μmピッチにおけるPSDが20000~80000n㎥であると いう要件を含め,本件発明1の全ての構成要件を満たしている。他方,本件発明1は,サポート要件を満たすものであるところ,「本件発明1の構成要件を充足することによって,長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられている」という因果関係を有することは,明らかである。そうすると被告製品は, 本件発明1に係る構成に由来して,「長期保存後や高温保存後の裏写りによる磁気テープの電磁変換特性の劣化が抑えられている」としか理解できない。 (ウ) 本件発明1が被告製品の購入動機に寄与していること被告製品の宣伝広告資料(甲97)には,LTO7の利点の一つとし てLTO6よりも高密度記録が可能となったことが挙げられているが,かかる高密度化はテープ表面の平滑性の向上によって実現されたと記載されている。本件発明1が定める中心面平均表面粗さRaはまさにテープ表面の平滑性を表す指標である。また,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,表面粗さには表れない磁気テープ表面 のうねりの強さを示す値であり,やはりテープ表面の平滑性の指標である。したがって,本件発明1の実施は,被告らが被告製品の特徴として宣伝広告資料において強調しているテープ表 ない磁気テープ表面 のうねりの強さを示す値であり,やはりテープ表面の平滑性の指標である。したがって,本件発明1の実施は,被告らが被告製品の特徴として宣伝広告資料において強調しているテープ表面の平滑性の向上につながるものであって,被告製品の購入動機に寄与するものである。 また,被告製品の需要者は,大量の情報の長期保存を行う事業者が大 半である。この意味でも,本件発明1の構成を採用し,被告製品を長期保存に適するものとすることは,ユーザーにおける購入動機に資するものである。 なお,被告らは,原告製品が本件発明1の構成要件を充足しないことを指摘しているが,原告製品は,本件発明1の実施品であり,かかる被 告らの主張は事実に反する。 (エ) 小括以上のとおりであるから,推定覆滅事情に関する被告らの主張には何ら理由がなく,本件において,推定の覆滅は認められない。 第3 争点に対する判断当裁判所は,①本件特許権1の侵害に基づく差止請求及び廃棄請求については 理由があり,②本件特許権1の侵害に基づく製造設備の除却請求については,侵害の予防に必要な範囲を超えるため,理由がなく,③本件特許権1の侵害に基づく損害賠償請求については,主文5ないし8項記載の限度で理由があり,④本件特許権2の侵害に基づく差止請求,廃棄・除却請求及び損害賠償請求については,本件特許2に無効理由(乙45文献に基づく進歩性欠如)があるから,理由がな い,と判断する。以下,詳述する。 1 争点1(国際裁判管轄があるか)について(1) 前記前提事実(9)のとおり,原告AP-75契約11条11項には,●(省略)●旨の定め(本件管轄合意)があるところ,同項の「当事者」とは,文言上,契約を締結した当事者である原告及びTPCsを指すことは 記前提事実(9)のとおり,原告AP-75契約11条11項には,●(省略)●旨の定め(本件管轄合意)があるところ,同項の「当事者」とは,文言上,契約を締結した当事者である原告及びTPCsを指すことは明らかで あり,被告らはこれに含まれないから,被告らは本件管轄合意の当事者ではない。 (2) 被告らは,●(省略)●ところ,民法ないし●(省略)●の判例法によれば,このような契約の第三者受益者には,当該契約における管轄合意の効力が及ぶ旨主張する。そこで検討するに,原告AP-75契約8条2項におい ては,●(省略)●旨定められているところ,●(省略)●ものと解される。 しかしながら,●(省略)●からすれば,本件管轄合意においても被告ソニーが●(省略)●に当たると解する理由はなく,本件管轄合意の効力が被告ソニーないし被告らに及ぶものとはいえない。このことは,●(省略)●法下での判例の内容を検討するまでもなく,原告AP-75契約8条2項及び 11条11項の規定自体から明らかである。 なお,被告らは,●(省略)●の確立した判例法によれば,①当該第三者が,当該契約の第三者受益者(third-partybeneficiary)である場合,②当該第三者が,グローバルな取引(globaltransaction)の当事者であり,当該契約が当該取引の一部であり,かつ,それらの契約が,同一の時期に,同一の当事者間で,又は同一の目的のために,締結されたものである場合に は,契約当事者でない第三者は,当該契約における管轄合意条項を行使することができるとされているところ,本件は,上記①及び②の場合に該当すると主張するが,上記判例法が存在することを認めるに足りる証拠はないし,仮にそのような判例法があるとしても,被告ソニーが●(省略 ることができるとされているところ,本件は,上記①及び②の場合に該当すると主張するが,上記判例法が存在することを認めるに足りる証拠はないし,仮にそのような判例法があるとしても,被告ソニーが●(省略)●,上記①のような同契約における一般的な第三者受益者に当たるものと認めるに足り る証拠はないし,また,上記②の場合に当たるものと認めるに足りる証拠もない。 (3) したがって,本件管轄合意の効力は被告らには及ばないから,本件申立てについては●(省略)●裁判所の専属的な管轄に属さず,日本の裁判所は管轄権を有する(民事訴訟法3条の2第3項)。 2 争点2(差止請求等に係る訴えの利益があるか)について被告らは,本件訴えのうち,被告自社製品の製造・販売等の差止請求に係る部分は,和解成立により訴えの利益を失ったものであり,不適法であるから,却下されるべきであり,また,これに付帯する被告自社製品・半製品の廃棄請求及び製造設備の除却請求に係る訴えもまた不適法なものであるから,同様に 却下されるべきであると主張する。 そこで検討するに,当裁判所に顕著な事実及び証拠(乙207)によれば,当庁平成30年(ヨ)第22061号における平成30年6月21日の第2回審尋期日において,原告と被告らとの間に和解が成立したところ,同和解の和解条項2項では,「債務者ら(判決注:本件訴訟における被告ら)は,磁気テ ープカートリッジ『LTX6000G』(判決注:被告自社製品)を製造し, 販売し,輸出し,又は販売の申出をしない。」と規定されていることが認められる。 同和解条項の内容は,原告が被告らに被告自社製品の製造,販売等の差止めを求める本件訴訟の請求の趣旨第1項ないし第3項(第1,1ないし3)と同内容である。しかしながら,原告は, ことが認められる。 同和解条項の内容は,原告が被告らに被告自社製品の製造,販売等の差止めを求める本件訴訟の請求の趣旨第1項ないし第3項(第1,1ないし3)と同内容である。しかしながら,原告は,請求の趣旨第4項(第1,4)のとおり, 被告らに被告自社製品及びその半製品の廃棄,並びにそれらの製造に用いる設備の除却をも求めているところ,侵害組成物の廃棄や侵害に供した設備の除却等の請求は,差止請求と同時にされることが必要である(特許法100条2項)。 そうすると,原告と被告らとの間に上記和解が成立していても,本件訴訟の請求の趣旨第1項ないし第3項記載の差止請求に係る訴えは,依然として訴えの 利益があるものというべきである。 よって,本件における差止請求及び廃棄・除却請求に係る訴えはいずれも適法である。 3 本件明細書1及び本件明細書2の記載(1) 本件明細書1の記載 本件明細書1には,以下の記載がある(甲3)。 ア背景技術「高記録容量化の手段として,磁気テープ製造面からのアプローチでは,磁性粉末の微粒子化とそれらの塗膜中への高密度充填,塗膜の平滑化,磁性層の薄層化などの高記録密度化技術が提案されている。」(段落【00 04】)「しかし,磁性層の表面平滑性を高めると,巻き乱れや走行性の悪化が生じるおそれがある。そこで,この巻き乱れや走行性の悪化を防止するために,支持体の磁性層とは反対側の面に,カーボンブラック等の粒状物質を含むバックコート層を設けることが行われている」(段落【0005】) イ発明が解決しようとする課題 「磁性層の表面性を評価する指標として,磁性層表面粗さRaが広く使われている。(中略)しかし,バックコート層を有する磁気記録媒体では,磁性層の表面性を制御す 決しようとする課題 「磁性層の表面性を評価する指標として,磁性層表面粗さRaが広く使われている。(中略)しかし,バックコート層を有する磁気記録媒体では,磁性層の表面性を制御するだけでは,製造過程で磁気記録媒体をロール状態で保存したり,製品化後磁気テープをリールハブに巻いた状態で保存すると,バックコー ト層の突起が磁性層表面に転写し,微小な凹みを形成する,いわゆる「裏写り」が発生する。この裏写りにより,電磁変換特性,特に,BB-SNRおよびK-SNR(近傍ノイズ)が劣化するという問題が生じる。裏写りは,長期保存後や高温保存後に顕著に発生するため,バックコート層を有する磁気記録媒体では,初期状態の磁性層の表面性を制御したとしても, 保存後に裏写りによって粗面化してしまうという問題がある。」(段落【0006】)「そこで,本発明の目的は,長期保存または高温保存前後で変わらず優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供することにある。」(段落【0007】) ウ課題を解決するための手段「本発明者らは,上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果,磁性層表面のうねり成分を制御するとともに,バックコート層表面のうねり成分,特に10μmピッチのうねりをコントロールすることにより,長期保存時又は高温保存時の磁性層の裏写りを抑制できることを見出した。こ の理由については定かではないが,裏写りが生じるときにはバック面形状そのものが完全に磁性層に写るのではなく,そのピッチと強度(頻度,振幅)により写り方が変化し,特にバック面の10μmピッチの写りを抑制することにより,出力の近傍ノイズに関わる粗さの写りを抑制できるためであると推定している。本発明は,以上の知見に基づき完成された。」(段 落【000 ,特にバック面の10μmピッチの写りを抑制することにより,出力の近傍ノイズに関わる粗さの写りを抑制できるためであると推定している。本発明は,以上の知見に基づき完成された。」(段 落【0008】) エ発明の効果「本発明によれば,長期保存・高温保存後でも高密度領域の電磁変換特性(BB-SNR,K-SNR(近傍ノイズ))を良好に維持することが可能な高容量磁気記録媒体を提供することができる。」(段落【0010】)オ発明を実施するための最良の形態 「10μmピッチにおけるスペクトル密度(PowerSpectrumDensity)とは,以下の方法により測定された値をいい,10μmピッチのうねりの指標として用いられる。以下において,10μmピッチにおけるスペクトル密度をPSD(10μm)ともいう。 非接触光学式粗さ測定機(装置:wyko社製HD2000)を用い, 測定面積240μm×180μmで媒体の長手方向の表面粗さのプロファイルデータをフーリエ変換処理したものを平均化し周波数分析結果を得る。 この分析結果から,各波長での強度を算出し10μmピッチにあたる強度を求める。これをPSD(10μm)とする。」(段落【0013】)「磁性層表面の中心面平均粗さRaは,出力およびSNRと関係し,2. 5nmを超えると出力が低下し,結果としてSNRが劣化する。特に,高線記録密度 (例えば線記録密度100~400KFCI)で使用されるシステムにおいて,出力の低下によるSNR劣化が顕著となる。また0.5nmより小さいと磁性層表面の摩擦係数が高くなり走行耐久性が劣化する。 そこで本発明の磁気記録媒体では,磁性層表面のRaを0.5~2.5n mの範囲とする。好ましくは1~2nmの範囲である。」(段落【001 いと磁性層表面の摩擦係数が高くなり走行耐久性が劣化する。 そこで本発明の磁気記録媒体では,磁性層表面のRaを0.5~2.5n mの範囲とする。好ましくは1~2nmの範囲である。」(段落【0015】)「更に本発明では,電磁変換特性を高めるために,磁性層表面の中心面平均粗さRaを制御するとともに,磁性層表面のうねり成分をも制御する。 本発明の磁気記録媒体において,磁性層表面のPSD(10μm)は80 0~10000n㎥の範囲である。磁性層表面のPSD(10μm)が80 0n㎥未満では,磁性層表面が過度に平滑であることにより,摩擦係数が上昇し,走行耐久性が劣化する。また,磁性層表面のPSD(10μm)が10000n㎥を超えると近傍ノイズが顕著に劣化する。磁性層表面のPSD(10μm)は,800~6000n㎥の範囲であることが好ましく,800~3000n㎥の範囲であることが更に好ましい。」(段落【00 16】)「更に本発明では,磁性層への裏写りによる電磁変換特性低下を防ぐため,バックコート層表面のうねり成分も制御する。本発明者らの検討の結果,バックコート層表面のPSD(10μm)が80000n㎥を超えると磁性層表面への写りの影響が大きく,電磁変換特性低下の原因となるこ とが新たに見出された。そこで本発明の磁気記録媒体では,バックコート層表面のPSD(10μm)を80000n㎥以下とする。但し,バックコート層のPSD(10μm)が20000n㎥未満では,ドライブ走行後のカ-トリッジの巻き姿が悪くなり,エッジ折れ等によって走行耐久性が劣化する。そこで本発明の磁気記録媒体において,バックコート層表面 のPSD(10μm)は20000~80000n㎥の範囲とする。これにより走行耐久性と電磁変換特性を両立 によって走行耐久性が劣化する。そこで本発明の磁気記録媒体において,バックコート層表面 のPSD(10μm)は20000~80000n㎥の範囲とする。これにより走行耐久性と電磁変換特性を両立することが可能となる。バックコート層表面のPSD(10μm)は,20000~60000n㎥の範囲であることが好ましく,20000~40000n㎥の範囲であることが更に好ましい。」(段落【0017】) 「更に本発明の磁気記録媒体において,磁性層に含まれる強磁性粉末は,平均板径10~40nmの六方晶フェライト粉末である。表面平滑化のためには,強磁性粉末は微粒子であり分散性が良好なものが望ましい。六方晶フェライトは,従来されている針状の金属強磁性製粉と比較してσsが低いため分散性が高く,形状も板状であるために粒子の最長サイズも小 さくできる,つまり微粒子化に有利である。また,平均板径が10nm未 満では,熱揺らぎによる影響が大きく所望の抗磁力(Hc)を確保できず電磁変換特性が劣化する。平均板径が40nmを超えると,高線記録密度での高出力,低ノイズを確保することが困難となる。六方晶フェライト粉末の平均板径は,好ましくは10~30nm,より好ましくは15~25nmの範囲である。」(段落【0018】) (2) 本件明細書2の記載本件明細書2には,以下の記載がある(甲4)。 ア発明の属する技術分野「従来より電磁誘導を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)が磁気記録媒体の記録再生システムに広く利用されている。しかしながら, 誘導型磁気ヘッドをさらに高密度記録再生領域で使用する場合には限界があるため問題とされていた。すなわち,大きな再生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くする必要がある。し しながら, 誘導型磁気ヘッドをさらに高密度記録再生領域で使用する場合には限界があるため問題とされていた。すなわち,大きな再生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くする必要がある。しかし,コイル巻数を多くすると,インダクタンスが増加して高周波での抵抗が増加してしまい,結果として再生出力が低下してしまうという問題があった。 そこで,このような事情に鑑み,最近ではMR(磁気抵抗)を動作原理とする記録再生用MRヘッドが開発され,ハードディスク装置等で実用され始めている。」(段落【0003】)「その一方で,磁気テープへの応用も研究されている。磁気テープの記録再生システムにMRヘッドを用いれば,誘導型磁気ヘッドに比べて数倍 の再生出力が得られ,しかも誘導コイルを使用しないことからインピーダンスノイズ等の機器ノイズを大幅に低下することができる。このため,MRへッドを用いれば磁気記録媒体自体のノイズを低下させることができ,大きなSN比を得ることが可能となる。すなわち,従来,機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さして,良好な記録再生を実現でき,高 密度記録特性が飛躍的に向上することができる。そこで,最近では,磁気 テープへの応用した磁気記録媒体も提唱されている」(段落【0004】)イ発明が解決しようとする課題「前記(中略)公報には,媒体表面の窪みを光干渉式粗さ計により評価し,窪み個数を一定数以下に抑えることで,リニアサーペンタイン方式の記録再生システムでのエラー発生を抑制する方法により作製された磁気記 録媒体が開示されている。 しかるに,上記磁気記録媒体に用いられる磁気ヘッドはインダクティブヘッドであるため,高密度記録用に設計されたMRヘッド系における低ノイズ化という課題を充 れた磁気記 録媒体が開示されている。 しかるに,上記磁気記録媒体に用いられる磁気ヘッドはインダクティブヘッドであるため,高密度記録用に設計されたMRヘッド系における低ノイズ化という課題を充分解決できるものではなかった。したがって,兼ねてからMRヘッドを使用する場合における媒体ノイズの低減を磁気記録媒 体サイドから解決できる技術の開発が望まれていた。 かくして,本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,MRヘッドを採用した記録再生システムにおいて,媒体ノイズを著しく改良した塗布型磁気記録媒体を提供することにある。」(段落【0005】) ウ課題を解決するための手段「本発明者らは,MRヘッドを採用した磁気記録再生システムにおいて,ヘッドと磁気テープ間のスペーシングについて鋭意検討した結果,磁性層表面の特定の深さを有する凹みによる影響がノイズに対して顕著であることを見出し,本発明を完成するに至った。」(段落【0006】) エ発明の実施の形態「本発明の磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの個数は,100個/10000μ㎡以下であるが,好ましくは80個/10000μ㎡以下であり,さらに好ましくは50個/10000μ㎡以下である。磁性層表面に最小記録bit長の1/3 以上の 深さを有する凹みが多数存在すると,ヘッドキャップと磁気テープ間に部 分的なスペーシングロスが多くなり媒体ノイズの増大の原因となる。そこで,磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの個数を100個/10000μ ㎡以下に減らすことにより,前記スペーシングロスを生じる部分を少なくし,効果的に媒体ノイズを減少させることができる。 it長の1/3以上の深さを有する凹みの個数を100個/10000μ ㎡以下に減らすことにより,前記スペーシングロスを生じる部分を少なくし,効果的に媒体ノイズを減少させることができる。 最小記録bit長とは,システムとして記録される信号の最短波長の1/2の長さをいい,システムにより異なるが,通常,50~500nm程度である。」(段落【0011】)「本発明の磁性層表面において原子間力顕微鏡(AFM)により測定される深さが50nm以上の凹みの個数は,100個/10000μ㎡以 下であることが好ましく,さらに好ましくは80個/10000μ㎡以下であり,特に好ましくは50個/10000μ㎡以下である。磁性層表面に深さが50nm以上の凹みが多数存在すると,ヘッドキャップと磁気テープ間のスペーシングロスが大きくなり媒体ノイズの増大の原因となる。 そこで,磁性層表面において原子間力顕微鏡(AFM)により測定される 深さが50nm以上の凹みの個数を100個/10000μ㎡以下に減らすことにより,前記スペーシングロスを生じる部分を小さくし,効果的に媒体ノイズを減少させることができる。」(段落【0012】)「また,本発明の磁性層表面の中心面平均粗さSRaは,6.0nm 以下であるが,好ましくは1.0 ~ 5.0nmであり,さらに好ましくは 1.5~4.5nm である。中心面平均粗さSRaが6.0nm 以下であれば,凹凸の振幅を小さく抑えてノイズを低下させることができると共に,出力の劣化も小さくすることができる。」(段落【0013】) 4 争点3(被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか)について(1) 被告製品は構成要件1Bを充足するか(争点3-1)について ア証拠(甲8)によれば,被告製品の磁 【0013】) 4 争点3(被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか)について(1) 被告製品は構成要件1Bを充足するか(争点3-1)について ア証拠(甲8)によれば,被告製品の磁性層表面の10μmピッチにおけ るスペクトル密度は5888n㎥であることが認められ,被告製品が構成1b「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は5888n㎥であり」(前記前提事実(6)ア(ア))を有することが認められる。したがって,被告製品は,構成要件1B「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり」を充足する。 イ被告らは,「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」との文言が不明確であるとか,その測定方法・条件の解釈如何によっては充足性の立証が不十分であるなどと主張する。しかしながら,「磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度」との文言は明確であるし,後記(2)イ(ア)の説示に照らせば,その測定方法や条件が不明確とはいえない。 被告製品が構成要件1Bを充足することは上記のとおりであって,被告らの主張は採用できない。 (2) 被告製品は構成要件1Cを充足するか(争点3-2)についてア原告は,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度が30903n㎥~55440n㎥の範囲であるとする非接触 光学式粗さ測定機による測定結果(甲8,61,62,64,65,78,86,92)を提出し,一方,被告らは,同スペクトル密度が5799n㎥~19540n㎥の範囲であるとする同測定機による測定結果(乙58,59,92,98,99・100,101,103,105)を提出するとともに,同スペクトル密度が構成要件1Cに規定する数値範囲を ㎥~19540n㎥の範囲であるとする同測定機による測定結果(乙58,59,92,98,99・100,101,103,105)を提出するとともに,同スペクトル密度が構成要件1Cに規定する数値範囲を上回っ ているとする原子間力顕微鏡による測定結果(乙113)を提出する。そこで,双方の提出する各測定結果の信用性を検討する。 イ原告の提出する測定結果の信用性について(ア) 証拠(甲51,65ないし67,77,79,83,88ないし90,92)によれば,非接触光学式粗さ測定機による粗さ測定においては, 磁気テープのような反射率が低いサンプルについて,10μmピッチに おけるスペクトル密度を測定する場合には,5倍や10倍の対物レンズでは集光率が低く不正確な測定しかできないため,できる限り倍率の大きなレンズを選択すべきであるところ,測定面積を「240μm×180μm」付近とすることも考慮すれば,Wyko社製HD2000及び同社製NTシリーズの測定器においては最大倍率である50倍の対物レ ンズを選択すべきであること,測定に際しては測定機のキャリブレーションを行った上で,対物レンズを調整すること(測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスを合せた状態で,かつ,コントラストの高い干渉縞が発生する状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面からの反射光の光路長がほぼ等しくなるように設定された状態)となるように参 照面の位置を調整すること)が必要であることが認められる。この点,被告ら自身も,上記の対物レンズの調整自体が必要であることは認めている(被告ら準備書面(15)2頁,4頁)。 そして,甲8,61,62,64,65,78,86,92の各測定においては,いずれも50倍の対物レンズを使用しており,また,測定 あることは認めている(被告ら準備書面(15)2頁,4頁)。 そして,甲8,61,62,64,65,78,86,92の各測定においては,いずれも50倍の対物レンズを使用しており,また,測定 機のキャリブレーションを行った上で,対物レンズの調整を行っているものと認められる(甲8については甲87)。また,その他の測定条件(測定機器,測定モード,測定面積等)については特段の問題は認められない。 したがって,上記各測定結果は信用することができる。 (イ) なお,甲8,62,64の各測定においては,測定機器として,Wyko社製非接触光学式粗さ測定機「HD2000」が使用されているところ,同測定機については平成15年にメーカーによるサポートが終了し(被告らは平成5年と主張するが,平成15年の誤りである。),少なくともその後はメーカーによるサポートを受けていないものと認めら れる(甲81の1,弁論の全趣旨)。もっとも,ブルカー社によれば, 原告保有の上記「HD2000」は,光学系が良好なため磁気テープでのPSI測定(50倍対物+0.5倍中間レンズ)を用いて正確なPSDを測定することが可能な状態である旨が確認されており(甲51,52),結果としてその他の信用できる測定結果(甲61,65,78,86,92)と同様の測定結果となっていることからすれば,測定に問 題はないものと認められる。なお,仮に同測定機器を用いた測定結果の信用性に疑義があるとしても,同測定機器以外による測定結果は信用できることからすれば,甲8,62,64の各測定結果の信用性が前記(ア)の結論を左右するものではない。 (ウ) 被告らは,原告の出願に係る特開2003-338023号公報(乙 73)には,「Wyko社製HD2000」を使用して 4の各測定結果の信用性が前記(ア)の結論を左右するものではない。 (ウ) 被告らは,原告の出願に係る特開2003-338023号公報(乙 73)には,「Wyko社製HD2000」を使用して5倍の倍率により10μmピッチのPSDを測定することが記載されていることなどを理由に,本件発明1における「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際の対物レンズの倍率は当然に50倍に決まるものではないと主張する。 しかしながら,乙73に記載された発明においては,測定対象が磁性層ではなく支持体であり,また,測定面積が「約1200μm×900μm」,測定値の範囲が「500~4000μ㎥」であって,本件発明1に係る測定条件,測定範囲とは大幅に異なっている。したがって,乙73の存在をもって,前記(ア)の結論は左右されるものではなく,被告ら の上記主張は採用できない。 ウ被告らの提出する測定結果の信用性について(ア) 非接触光学式粗さ測定機による測定について被告らは,非接触光学式粗さ測定機による被告製品のバックコート層表面のスペクトル密度の測定として,乙58,59,92,98ないし 101,103,105の各測定結果を提出する。 前記イ(ア)のとおり,非接触光学式粗さ測定機による粗さ測定においては,磁気テープのような反射率が低いサンプルについて,10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定する場合には,5倍や10倍の対物レンズでは集光率が低く不正確な測定しかできないため,できる限り倍率の大きなレンズを選択すべきであるところ,測定面積を「240μm× 180μm」付近とすることも考慮すれば,Wyko社製HD2000及び同社製NTシリーズの測定器においては最大倍率である50倍の対物レンズを選択すべ べきであるところ,測定面積を「240μm× 180μm」付近とすることも考慮すれば,Wyko社製HD2000及び同社製NTシリーズの測定器においては最大倍率である50倍の対物レンズを選択すべきであること,測定機のキャリブレーションを行った上で,対物レンズを調整すること(測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスを合せた状態で,かつ,コントラストの高い干渉縞が発生 する状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面からの反射光の光路長がほぼ等しくなるように設定された状態)となるように参照面の位置を調整すること)が必要である。これを上記各測定についてみると,いずれの測定においても対物レンズの調整が行われたものとは認められない。また,乙58,59,101の各測定については,対物レンズとし て5倍か10倍のレンズが使用されているものと認められる。 そうすると,被告らの提出する上記各測定は,いずれも適切な測定条件によってなされたものとは認められないから,その結果はいずれも信用することができない。なお,乙105については,測定条件として「試験片表面に焦点が合い,かつ,干渉縞が現れた状態で測定」と記載され ているものの,「SurfaceData」の画像をみると,その他の被告らの測定と同様に鮮明ではなく,コントラストの高い干渉縞が発生する状態となるように参照面の位置を調整して測定されたものか明らかでないと言わざるを得ない。 これに対して,被告らは,①対物レンズの調整について,測定サンプ ルの表面に対象レンズのフォーカスが合う状態には,ある程度の幅が存 在し,その範囲内で,対物レンズの上下方向の位置を調整することによって干渉縞を発生させることができれば,参照面の位置の調整を行うことなく測定ができる,②コント 態には,ある程度の幅が存 在し,その範囲内で,対物レンズの上下方向の位置を調整することによって干渉縞を発生させることができれば,参照面の位置の調整を行うことなく測定ができる,②コントラストの高い干渉縞が生じているか否かは主観的に判断するほかなく,測定結果にばらつきが生じる,③対物レンズの調整を要することは測定を日常的に行う専門家でも知らず,「N T9100」のマニュアル(乙96)にも言及はなく,原告自身も甲62の測定を行った平成29年11月26日時点ではその必要性を認識していなかったなどと主張する。 しかしながら,①証拠(甲65,67,77,83)によれば,対物レンズの調整において,測定サンプル表面にフォーカスを合せた状態で, 参照面の位置の調整を行い,コントラストの高い干渉縞が発生する状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面からの反射光の光路長がほぼ等しくなるように設定された状態)とすることが必要であるものと認められる。また,②コントラストの高い干渉縞が生じているか否かが主観的判断によらざるを得ないとしても,単に干渉縞が生じているだけの状 態に比べて,相当程度絞られた幅に限定されるし,そもそも,およそ幅が認められない測定をすることは現実的ではなく,単に干渉縞が生じている状態では正確な計測ができないことに変わりはない。また,③仮に,測定を日常的に行う専門家の中に,レンズ調整を要することを知らない者がいたとしても,そのことからそのようなレンズ調整が不要であると いうことにはならないし,「HD2000」の測定ガイド(甲79)や,ブルカー社が顧客から問い合わせがあった際にメールにて送付している説明用紙(甲74,乙106)には,対物レンズの調整を行う手順が記載されており,測定を日常的に行う専門家がお 測定ガイド(甲79)や,ブルカー社が顧客から問い合わせがあった際にメールにて送付している説明用紙(甲74,乙106)には,対物レンズの調整を行う手順が記載されており,測定を日常的に行う専門家がおよそ上記のレンズ調整を要することを知らないものとは認められない。また,原告自身がその必 要性を認識していなかったとも認められない。 よって,被告らの主張はいずれも,採用できないか,それによっても上記結論を左右するものではない。 (イ) 原子間力顕微鏡による測定について被告らは,測定対象の10μmピッチにおけるスペクトル密度をより正確に測定する場合には,非接触光学式粗さ測定機ではなく,原子間力 顕微鏡を用いた測定の方が適切であると主張し,原子間力顕微鏡により被告製品のバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した結果,いずれも構成要件1Cに規定する数値範囲を上回っている(乙113)から,被告製品は構成要件1Cを充足しないと主張する。 しかしながら,本件明細書1には,「10μmピッチにおけるスペク トル密度」は,「非接触光学式粗さ測定機」を用いて測定される値であることが定義され(段落【0013】),一方で,「中心面平均表面粗さRa」を測定する際は「原子間力顕微鏡」を用いること(段落【0014】)が記載されているものの,「スペクトル密度」を「非接触光学式粗さ測定機」以外の測定装置を用いて測定することについては何ら記 載されていない。そうすると,明細書の記載からは,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を,原子間力顕微鏡を用いて測定する必要性は認められず,原子間力顕微鏡を用いて測定する方が適切であるとする理由も認められない。また,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を正確に測定するた 密度」を,原子間力顕微鏡を用いて測定する必要性は認められず,原子間力顕微鏡を用いて測定する方が適切であるとする理由も認められない。また,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を正確に測定するために,原子間力顕微鏡を用いた方が適切であるとす る技術的な理由も不明である。被告らは,原告従業員がブルカー社担当者から,「一般に,粗さ(PSD値を含む)の測定において,対物レンズのフォーカスが異なる状態で測定された場合,測定数値が大きい測定結果の方が対物レンズが適切な状態にあり,信憑性が高いと考えられる。」との説明を受けたこと(甲65)をもって,測定数値の大きい原子間力 顕微鏡による測定結果(乙113)の方が信憑性が高いと主張するが, 上記ブルカー社担当者の説明は,非接触光学式粗さ測定機による測定について述べられたものであり(甲65),非接触光学式粗さ測定機と原子間力顕微鏡との間に同様の評価ができるものとは認められない。 したがって,被告らの上記主張は採用できず,原子間力顕微鏡による測定結果(乙113)は,原告が提出する測定結果の信用性を左右しな い。 (ウ) 乙A1ないし3について(第3事件のみの主張)被告らは,原告も測定を依頼した三井化学分析センターに依頼して,被告SSMMがOEM顧客であるHPEのために製造した磁気テープカートリッジ「LTO-7 UltriumRWDataCartridge 15TB」(製品番号:C7977A, ロット番号:5170919005,製造年月日:平成29年9月19日)につき,測定機器としてWYKONT1100を使用して,新たな測定を行ったところ,測定結果は,10μm近傍である9.73μmピッチ及び10.34μmピッチにおける各スペクトル密度が,いずれも80000 ,測定機器としてWYKONT1100を使用して,新たな測定を行ったところ,測定結果は,10μm近傍である9.73μmピッチ及び10.34μmピッチにおける各スペクトル密度が,いずれも80000n㎥を上回っていた(乙A1ないし3)ことから,10μmピッチにお けるスペクトル密度もまた80000n㎥を上回っていることは明らかであると主張する。 しかしながら,まず,前記説示のとおり,非接触光学式粗さ測定機による粗さ測定に際しては測定機のキャリブレーションを行った上で,対物レンズを調整すること(測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカ スを合せた状態で,かつ,コントラストの高い干渉縞が発生する状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面からの反射光の光路長がほぼ等しくなるように設定された状態)となるように参照面の位置を調整すること)が必要であるところ,乙A1ないし3を検討しても,上記調整が行われたかは不明である。 また,前記説示のとおり,非接触光学式粗さ測定機による粗さ測定に おいては,磁気テープのような反射率が低いサンプルについて,10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定する場合には,できる限り倍率の大きなレンズを選択すべきであり,測定面積を「240μm×180μm」付近とすることも考慮すれば,Wyko社製HD2000及び同社製NTシリーズの測定器においては最大倍率である50倍の対物レン ズを選択すべきであるところ,乙A1ないし3の測定では,50倍の対物レンズが使用されているから,この点は相当である。もっとも,この場合,本件明細書1の段落【0013】に記載された「測定面積」が「240μm×180μm」であることからすれば,同NT1100のスペック表(甲89)によれば,中間レンズとしては0.5倍 っとも,この場合,本件明細書1の段落【0013】に記載された「測定面積」が「240μm×180μm」であることからすれば,同NT1100のスペック表(甲89)によれば,中間レンズとしては0.5倍のものを選択 することが相当であると認められるところ,乙A1ないし3の測定では,中間レンズとして1倍のものが使用されているから,この点は,相当でないといわざるを得ない。 なお,被告らは,甲83(C教授意見書)に基づく原告の主張を前提とすると,CCDの認識精度がサンプリング長で0.2μmという測定 条件は,本件明細書の記載に照らして許容される測定条件であり,換言すれば,WYKONT1100を用い,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いることは,本件明細書から排除されていないと主張する。しかし,甲83(C教授意見書)では,「CCDの認識精度が0.34~1.58μmに範囲であれば,「10μmピッチにおけるP SD」に有意な差は生じないと考えます」と記載されており,CCDの認識精度が0.34~1.58μm以外のものについて,測定結果の有意差について言及していないから,被告らの上記主張は採用できない。 以上によれば,被告らが第3事件において提出した乙A1ないし3の測定結果も採用できない。 エ小括 以上から,原告の提出する測定結果(甲8,61,62,64,65,78,86,92)により,被告製品のバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は30903n㎥~55440n㎥の範囲であるものと認められ,被告製品は,構成要件1C「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の 範囲であり」を充足する。 (3) 被告製品は構成要件1Gを充足するか められ,被告製品は,構成要件1C「バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の 範囲であり」を充足する。 (3) 被告製品は構成要件1Gを充足するか(争点3-3)についてア証拠(甲10,11)によれば,被告製品はLTO7ドライブにおいて再生されるものであること,また,LTO7ドライブとしては巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)が用いられることが認められる。そ うすると,被告製品が構成1g「再生ヘッドとしてGMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される」(前記前提事実1(6)ア(ア))を有していることが認められ(なお,被告らも,被告製品がGMRヘッドを用いるLTO7ドライブを用いて再生可能であることは争っていない。),被告製品は構成要件1G「再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッ ドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される」を充足する。 イ被告らは,被告製品はGMRヘッド以外のヘッドを用いたドライブでも再生可能であり,構成要件1Gの「使用される」との文言からは,再生ヘッドとしてGMRヘッドを用いた磁気信号再生システムで使用されることが要件であると主張するところ,この主張の趣旨は,構成要件1Gは,G MRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいてのみ使用されることをいうものとうかがわれる。しかしながら,構成要件1Gの文言及び本件明細書1の記載をみても,そのような構成を有するものに限定したものとは解されないから,被告らの主張は採用できない。 (4) 小括 以上からすれば,被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するものと認 められる。 5 争点6(本件特許1に無効理由が存するか)について(1) 磁気テープ1 (4) 小括 以上からすれば,被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するものと認 められる。 5 争点6(本件特許1に無効理由が存するか)について(1) 磁気テープ1に基づく進歩性欠如(無効理由1-1)(争点6-1)について被告らは,本件発明1は,本件特許1の優先日(平成18年3月31日) 前に公然実施された磁気テープ1に基づく引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,進歩性を欠く(特許法29条2項,同条1項2号)と主張する。 ア磁気テープ1について被告らは,磁気テープ1は平成8年頃から発売されたと主張し,測定を 行ったテープ(ロット番号C441828)は平成10年11月28日に(住所は省略)の工場で製造されたものであるとする陳述書(乙58)を提出する。もっとも,同陳述書4頁の当該テープの写真画像からは,当該テープのロット番号や製造年月日の記載は見当たらない。また,仮に,この点をおくとしても,同陳述書によれば,当該テープは平成21年頃まで 米国の被告SSMSの施設においてバックアップテープとして使用された後,同社が委託した保管業者の施設において保管されており,平成28年10月28日に測定を行ったとのことであるが,このように,10年近く使用され,その後7,8年ほど保管されていたとすれば,磁性層表面及びバックコート層表面の状態は,製造時に比べて変化している可能性もあり, 計測結果が,製造当時の磁性層及びバックコート層の表面状態を表しているものといえるのかは疑問であると言わざるを得ず,その測定結果は信用できないから,被告らの主張はその前提を欠く。もっとも,仮にその測定結果が信用できるとしても,以下のとおり,被告らの磁気テープ1に基づく進 いえるのかは疑問であると言わざるを得ず,その測定結果は信用できないから,被告らの主張はその前提を欠く。もっとも,仮にその測定結果が信用できるとしても,以下のとおり,被告らの磁気テープ1に基づく進歩性欠如の主張は採用できない。 イ磁気テープ1に基づく引用発明 磁気テープ1に基づく引用発明(引用発明1)は以下のとおり(争いなし)。 「ベースフィルムの一方の面に,強磁性金属粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録テープであって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~1000 0n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲である磁気記録テープであって,再生ヘッドとして磁気誘導ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される磁気記録テープ。」ウ本件発明1-2と引用発明1の一致点・相違点 本件発明1-2と引用発明1の一致点・相違点は以下のとおり(争いなし)。 (ア) 一致点非磁性支持体の一方の面に,強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,磁性層 表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲であることを特徴とする磁気記録テープである点。 (イ) 相違点 a相違点1本件発明1-2では,強磁性粉末として,平均板径が10~40nmの範囲の六方晶フェライト粉末を使用しているのに対し,引用発明1では,強磁性粉末として,強磁性金属粉末を使用している点。 b相違点2 本件発明1- 粉末として,平均板径が10~40nmの範囲の六方晶フェライト粉末を使用しているのに対し,引用発明1では,強磁性粉末として,強磁性金属粉末を使用している点。 b相違点2 本件発明1-2では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の 中心面平均表面粗さRaが0.5~2.5nmの範囲であるのに対し,引用発明1では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaは不明である点。(なお,被告らは,争点7-2においては,磁気テープ1の原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaは1.0~6.0nmの範囲内であると主 張している。)c相違点3本件発明1-2では,磁気記録テープは再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用されるのに対し,引用発明1では,磁気記録テープは再生ヘッドとし て磁気誘導ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される点。 エ上記各相違点の容易想到性(ア) 相違点1の容易想到性被告らが提出する周知技術に関する証拠を検討しても,引用発明1に おける磁性粉末として六方晶フェライト粉末を用いること,及び,六方晶フェライト粉末の平均板径を10-40μmとすること,をそれぞれ動機付ける根拠は見当たらない。磁気テープ1の準拠するDDS3規格においては,メタル塗布テープ(強磁性粉末として金属粉末が塗布されたテープ)が使用されていることからすれば,磁性粉末として六方晶フ ェライト粉末を用いることには,むしろ阻害要因があるといえる。 また,仮に動機付けが存在するとしても,引用発明1の強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を使用することを想到した上で,さらに,その六方晶フェライト粉末の平均板径 は,むしろ阻害要因があるといえる。 また,仮に動機付けが存在するとしても,引用発明1の強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を使用することを想到した上で,さらに,その六方晶フェライト粉末の平均板径を10-40μmとすることを想到することが当業者にとって容易であったものと認めるに足りる証拠はな く,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったものと認め ることはできない。 (イ) 相違点2の容易想到性被告らが主張するとおり,本件特許1の優先日当時,磁性層の中心面平均粗さRaを0.5~2.5nmの範囲とすることが一般的に好ましいことが周知であったとしても,現に存する磁気テープ1において上記 の数値が実際に望ましいか否かは定かでなく,引用発明1における磁性層の中心面平均粗さRaを,0.5-2.5nmの範囲とする動機付けが存在したことを認めるに足りる証拠はないというべきであるから,相違点2に係る構成が当業者にとって容易想到であったものと認めることはできない。 (ウ) 相違点3について証拠(甲22ないし24)によれば,DDS3規格に準拠する磁気テープを再生するために,インダクティブヘッドが用いられることは明らかであるところ,DDS3規格に準拠する磁気テープの再生にMRヘッドが用いられることを裏付ける証拠は見当たらず,DDS3規格に準拠 する磁気テープ1に係る引用発明1の再生ヘッドとしてGMRヘッドを用いることの動機付けが存在したことを認めるに足りる証拠はないから,相違点3に係る構成が当業者にとって容易想到であったものと認めることはできない。 オ以上から,本件発明1-1及び1-2は,引用発明1及び周知技術に基 づいて当業者が容易に想到し得たものと認めることはできず,被告らの磁気テー 易想到であったものと認めることはできない。 オ以上から,本件発明1-1及び1-2は,引用発明1及び周知技術に基 づいて当業者が容易に想到し得たものと認めることはできず,被告らの磁気テープ1に基づく進歩性欠如の主張は採用できない。 (2) 実施可能要件違反(無効理由1-2)(争点6-2)について被告らは,当業者は,ある磁気記録テープについて,いかなる測定方法・条件により測定した磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチに おけるスペクトル密度が構成要件1B及び1Cの規定する数値範囲に入る場 合に,磁気記録テープが構成要件1B及び1Cを充足するのか,理解することはできないから,結局,当業者は本件発明1-1及び1-2を実施することができず,本件特許1には実施可能要件(特許法36条4項)違反の無効理由が存在すると主張する。 そこで検討するに,本件明細書1の段落【0013】には,「非接触光学 式粗さ測定機(装置:Wyko社製HD2000)を用い,測定面積240μm×180μmで媒体の長手方向の表面粗さのプロファイルデータをフーリエ変換処理したものを平均化し周波数分析結果を得る。この分析結果から,各波長での強度を算出し10μmピッチにあたる強度を求める。」と記載されており,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるス ペクトル密度の測定方法・条件が記載されているものと認められる。なお,被告らも,同段落に当該測定方法・条件が記載されていること自体は争っていないものと思われる。 そして,前記4(2)イ(ア)で説示したところに照らせば,測定エリアを「240μm×180μm」として10μmピッチにおけるスペクトル密度を測 定する場合,レンズの倍率は自ずと特定されるものと認められる。ま (2)イ(ア)で説示したところに照らせば,測定エリアを「240μm×180μm」として10μmピッチにおけるスペクトル密度を測 定する場合,レンズの倍率は自ずと特定されるものと認められる。また,被告らが提出する測定実験(乙60)においても,レンズの倍率(10.1倍,27.5倍,50.4倍)に応じて,測定エリアを変えている(それぞれ624×468μ㎡,230×172μ㎡,126×94μ㎡)ことからすれば,計測エリアに応じてレンズの倍率を特定することは技術常識であるとい える。 以上からすれば,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。 なお,被告らは,測定結果(乙58,60)を理由に,10μmピッチに おけるスペクトル密度は,測定方法・条件によって値が大きく変動すると主 張するが,上記のとおり,測定エリアを「240μm×180μm」として測定することは明確であるから,その主張の前提を欠く。また,乙58の測定結果は,前記4(2)ウのとおり,信用することができない。さらに,被告らは,測定結果(甲92)を理由に,同一のサンプルを,同一の測定条件で測定した場合であっても,バックコート層の10μmピッチにおけるスペク トル密度が,構成要件1Cが規定する数値範囲に入る場合と入らない場合があるなどとも主張するが,甲92の測定結果はいずれも構成要件1Cが規定する数値範囲内のものであるし,構成要件1Cの規定する数値範囲に照らして,測定結果の相違が殊更に大きなものとはいえないから,その主張は採用できない。 さらに,第3事件における補充主張についてみるに,被告らは,3つのサンプルについて,株式会社三井化学分析センターに依 結果の相違が殊更に大きなものとはいえないから,その主張は採用できない。 さらに,第3事件における補充主張についてみるに,被告らは,3つのサンプルについて,株式会社三井化学分析センターに依頼して,バックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定した結果(乙A5ないし7)によれば,対物レンズ50倍,中間レンズ0.5倍の組合せを用いた場合にクレームの数値範囲内であったとしても,対物レンズ50倍,中間 レンズ1倍の組合せを用いた場合にはクレームの数値範囲を上回ってしまう場合があると考えられ,同一の磁気テープを測定しても,測定条件により構成要件1Cの数値範囲に入る場合と入らない場合があると主張する。しかし,前記4(2)(争点3-2)説示のとおり,当該測定において,対物レンズ50倍,中間レンズ1倍の組合せを用いることは相当でないことから,被告ら の上記主張はその前提を欠く。 また,被告らは,第1事件及び第2事件において原告が証拠として提出した実験報告書によると,測定用サンプルの10μmピッチにおけるスペクトル密度の値は,最も低いものは41687n㎥であるのに対し,最も高いものは50119n㎥であり,本件発明1の構成要件Cが規定する数値範囲の 幅(60000n㎥)の約14%に相当するような違いが生じているから, 当業者としては,10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定しても,当該磁気テープが構成要件Cを充足するか否かを判断することができない場合があると主張する。しかし,上記の「41687n㎥」と「50119n㎥」は,ともに,構成要件Cの数値範囲である「20000~80000n㎥」の中央付近に位置する値であって,また,その差も,構成要件Cの範囲に対 して格別に大きいとはいえないから,上記 0119n㎥」は,ともに,構成要件Cの数値範囲である「20000~80000n㎥」の中央付近に位置する値であって,また,その差も,構成要件Cの範囲に対 して格別に大きいとはいえないから,上記測定結果から,磁気テープが構成要件Cを充足するか否かを判断できないということはできない。 したがって,被告らの第3事件における補充主張も採用できない。よって,被告らの実施可能性要件違反をいう上記主張はいずれも採用できない。 (3) 明確性要件違反(無効理由1-3)(争点6-3)について 被告らは,構成要件1B及び1Cは不明確であるから,これらの構成要件を含む本件発明1-1及び1-2も不明確であり,本件特許1には明確性要件違反(特許法36条6項2号)の無効理由が存在すると主張する。 しかしながら,明確性要件違反の理由として主張する内容は,実施可能要件違反(無効理由1-2)において主張することと同じであるところ,その 理由が認められないことは前記(2)のとおりである。また,構成要件1B及び1Cは,磁気記録テープの構成を規定するもので,10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法・条件を規定するものではないところ,磁気記録テープの構成として構成要件1B及び1Cが不明確であるとは認められない。 よって,本件発明1-1及び1-2が不明確であるとは認められず,被告らの明確性要件違反をいう上記主張は採用できない。 第3事件における補充主張についても,前記(2)説示に照らして採用できない。 (4) サポート要件違反(無効理由1-4)(争点6-4)について 被告らは,本件発明1-1及び1-2がバックコート層の10μmピッチ におけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義は,本件明細書1の記載から 点6-4)について 被告らは,本件発明1-1及び1-2がバックコート層の10μmピッチ におけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義は,本件明細書1の記載からは不明であるから,本件明細書1の記載に接した当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認識することはできないし,また,出願時の技術常識に照らしても,当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認識することはできないから,本件 特許1にはサポート要件違反の無効理由が存在すると主張する。 そこで検討するに,被告らは,本件明細書1において実施例1~9及び比較例1~9の各磁気テープの電磁変換特性を示す値として測定されている「BB-SNR」及び「K-SNR」が,具体的に何を示す数値であるのか不明であるとか,本件明細書1の表1でこれらの値がマイナスとなることが疑問 であるなどと主張しているが,本件明細書1の段落【0006】,【0008】,【0010】,【0112】の記載によれば,「BB-SNR」が広範囲のノイズ,「K-SNR」が特定周波数近傍のノイズであるものと認められる。また,SNRがデシベル(dB)で表されていることからすれば,マイナス値を取り得ることも自然なことといえる。 また,被告らは,本件明細書1・表1の記載について不合理な点があることを指摘するが,同表からは,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度,磁性層の中心面平均表面粗さ,六方晶フェライト粉末の平均板径のそれぞれが本件発明1-1に規定された範囲内である実施例は,比較例よりも保存前後のSNRの変化が小さいことを読み取 ることができる。したがって,本件発明1-1及び1-2には,本件明細書1の発明の詳細な説 件発明1-1に規定された範囲内である実施例は,比較例よりも保存前後のSNRの変化が小さいことを読み取 ることができる。したがって,本件発明1-1及び1-2には,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載により,当業者が発明の課題(段落【0006】,【0007】)を解決できるものと認識できない範囲が含まれるものとは認められない。 なお,被告らは,実施例5及び7から仮想例を想定し,その仮想例が構成 要件に記載された数値範囲内であるにもかかわらず,不合格になる蓋然性が 高いとも主張するものの,当該仮想例は,あくまで被告らの推測に基づくものであって,そのような結果となることを認めるに足りる証拠はない。 さらに,第3事件における補充主張についてみるに,まず,被告らは,当業者がクレームの文言を充足する全ての磁気テープにおいて,常に本件発明1の効果を奏すると理解することはできないと主張する。しかし,本件発明 1は,「裏写り」が長期保存後や高温保存後に顕著に発生するという課題(本件明細書1の段落【0006】)を解決するためになされたものであって,本発明者らが,磁性層表面のうねり成分を制御するとともに,バックコート層表面の10μmピッチのうねりをコントロールすることにより,長期保存時又は高温保存時の磁性層の裏写りを抑制できることを見出し,その知見に 基づき完成されたもの(段落【0008】)である。そして,本件明細書1の表1には,磁性層及びバックコート層のPSDを本件発明1の数値範囲内に制御した実施例は,保存前後の電磁変換特性の変化が小さかったことが示されており,当該実施例が,本件発明1が上記課題を解決することを裏付けていることは明らかである。したがって,当業者は,本件発明1が一般的に 上記課題を解決すると認識でき 化が小さかったことが示されており,当該実施例が,本件発明1が上記課題を解決することを裏付けていることは明らかである。したがって,当業者は,本件発明1が一般的に 上記課題を解決すると認識できるものというべきである。 また,被告らは,原告は,本件基礎出願明細書(乙A11)に記載された比較例1は,本件特許1の請求項1が規定する数値範囲内にある磁気テープであるにもかかわらず,高温保存後の電磁変換特性を良好に維持することができるという本件発明1の作用効果を奏しないと主張する。そこで,乙A1 1を参照すると,優先基礎出願に記載された課題は,「高温保存前後で変わらず優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供すること」(段落【0011】)であり,また,優先基礎出願の特許請求の範囲に記載された発明が該課題を解決することを裏付ける実施例・比較例に対する評価方法は,各実施例・比較例を60℃,10%で1週間保存後,それぞれのBB-SNR, K-SNRを測定し,該測定値に基づいて優劣の判断がされている(段落【0 092】~【0095】,表1)と認められる。一方,本件明細書1を参照すると,本件発明1が解決しようとする課題は,「長期保存または高温保存前後で変わらず優れた電磁変換特性を有する磁記録媒体を提供すること」(段落【0007】)であり,また,本件発明1が当該課題を解決することを裏付ける実施例・比較例に対する評価方法は,各実施例・比較例を60℃,1 0%で1週間保存し,保存前後のそれぞれのBB-SNR,K-SNRを測定し,保存後のSNR測定値だけではなく,保存前後のSNR測定値の変化幅も合わせて優劣の判断がなされている(段落【0112】~【0116】,表1)と認められる。このように,本件発明1と優先権基礎出願の特許請求 のSNR測定値だけではなく,保存前後のSNR測定値の変化幅も合わせて優劣の判断がなされている(段落【0112】~【0116】,表1)と認められる。このように,本件発明1と優先権基礎出願の特許請求の範囲に記載された発明とは,「解決しようとする課題」及び「実施例・比 較例」の評価方法が同一でない以上,本件基礎出願明細書に記載された比較例1が,本件発明1の作用効果を奏しないとは認めるに足りない。 よって,被告らのサポート要件違反をいう上記主張はいずれも採用できない。 (5) サポート要件違反(無効理由1-5)(争点6-5)について 被告らは,本件発明1-1及び1-2がバックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度の値それ自体に着目することの技術的意義は,本件明細書1の記載からは不明であり,当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決すると認識することはできず,また,出願時の技術常識に照らしても,当業者は,本件発明1-1及び1-2が発明の課題を解決する と認識することはできないから,本件特許1にはサポート要件違反の無効理由が存在すると主張する。 そこで検討するに,本件明細書1には,発明が解決しようとする課題として,「バックコート層を有する磁気記録媒体では,磁性層の表面性を制御するだけでは,製造過程で磁気記録媒体をロール状態で保存したり,製品化後 磁気テープをリールハブに巻いた状態で保存すると,バックコート層の突起 が磁性層表面に転写し,微小な凹みを形成する,いわゆる「裏写り」が発生する。この裏写りにより,電磁変換特性,特に,BB-SNR及びK-SNR(近傍ノイズ)が劣化するという問題が生じる。裏写りは,長期保存後や高温保存後に顕著に発生するため,バックコート層を有する磁気記録媒体では 写りにより,電磁変換特性,特に,BB-SNR及びK-SNR(近傍ノイズ)が劣化するという問題が生じる。裏写りは,長期保存後や高温保存後に顕著に発生するため,バックコート層を有する磁気記録媒体では,初期状態の磁性層の表面性を制御したとしても,保存後に裏写りによっ て粗面化してしまうという問題がある。」(段落【0006】)と記載されており,本件発明1は,「裏写り」により「BB-SNR」及び「K-SNR」(近傍ノイズ)が劣化するという問題が生じ,「裏写り」は,長期保存後や高温保存後に顕著に発生するという課題を解決するためになされたものと理解できる。 そして,本件明細書1には,課題を解決する手段として,「磁性層表面のうねり成分を制御するとともに,バックコート層表面のうねり成分,特に10μmピッチのうねりをコントロールすることにより,長期保存時又は高温保存時の磁性層の裏写りを抑制できることを見出した。」(段落【0008】)と記載され,また,本件明細書1の表1から,磁性層及びバックコート層の PSDを本件発明1の数値範囲内に制御した実施例では,保存前後の電磁変換特性の変化が小さかったことが示されている。 したがって,このような本件明細書1の記載からすれば,当業者は,本件発明1-1及び1-2により発明の課題を解決することができるものと認識することができるといえる。 被告らは上記サポート要件違反の理由としてるる主張するが,上記説示に照らし,いずれも採用できない。 (6) 磁気テープ2に基づく進歩性欠如(無効理由1-6)(争点6-6)について被告らは,本件発明1は,本件特許1の優先日(平成18年3月31日) 前に公然実施された磁気テープ2に基づく引用発明2及び周知技術に基づい て当業者が容易に発明 -6)について被告らは,本件発明1は,本件特許1の優先日(平成18年3月31日) 前に公然実施された磁気テープ2に基づく引用発明2及び周知技術に基づい て当業者が容易に発明することができたものであるから,進歩性を欠く(特許法29条2項,同条1項2号)と主張する。 ア磁気テープ2について証拠(乙74,90)によれば,製品名を「LTX400G」とし,ロット番号を「1A452P00704」とする磁気テープカートリッジ(磁 気テープ2)が,平成16年12月に製造されたことが認められる。同テープはサンプルとして未使用のまま保管されていたものと認められる(弁論の全趣旨)から,同テープと同様の構成を有する製品名を「LTX400G」とする製品が製造・販売されていたものと認められる。 よって,磁気テープ2は本件特許1の優先日以前に実施されていたもの と認められる。 イ磁気テープ2の測定結果について前記4(2)イ(ア)で説示したように,非接触光学式粗さ測定機による粗さ測定においては,磁気テープのような反射率が低いサンプルについて,10μmピッチにおけるスペクトル密度を測定する場合には,5倍や10倍 の対物レンズでは集光率が低く不正確な測定しかできないため,できる限り倍率の大きなレンズを選択すべきであるところ,測定面積を「240μm×180μm」付近とすることも考慮すれば,Wyko社製HD2000及び同社製NTシリーズの測定器においては最大倍率である50倍の対物レンズを選択すべきであること,測定機のキャリブレーションを行った 上で,対物レンズを調整すること(測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスを合せた状態で,かつ,コントラストの高い干渉縞が発生する状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面 ションを行った 上で,対物レンズを調整すること(測定サンプルの表面に対物レンズのフォーカスを合せた状態で,かつ,コントラストの高い干渉縞が発生する状態(測定サンプル表面からの反射光と参照面からの反射光の光路長がほぼ等しくなるように設定された状態)となるように参照面の位置を調整すること)が必要である。これを磁気テープ2の測定(乙90,101)につ いてみると,対物レンズとして10倍のレンズが使用されている上に,対 物レンズの調整が行われたかどうか不明であるから,適切な測定条件によってなされたものとは認められず,その結果は信用することができない。 ウ磁気テープ2に基づく引用発明仮に,上記イの点をおくとすると,磁気テープ2に基づく引用発明(引用発明2)は以下のとおりと認められる(乙75,76,90,101)。 「ベースフィルムの一方の面に,強磁性金属粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録テープであって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル密度は20000~80000n㎥の範囲である磁気記録テープであっ て,再生ヘッドとしてMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される磁気記録テープ。」エ本件発明1-2と引用発明2の一致点・相違点本件発明1-2と引用発明2の一致点・相違点は以下のとおりと認められる。 (ア) 一致点非磁性支持体の一方の面に,強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の 磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し,他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって,磁性層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度は800~10000n㎥の範囲であり,バックコート層の10μmピッチにおけるスペクトル 密度は20000~80000n㎥の範囲であることを特徴とする磁気記録テープである点。 (イ) 相違点a相違点1本件発明1-2では,強磁性粉末として,平均板径が10~40n mの範囲の六方晶フェライト粉末を使用しているのに対し,引用発明 2では,強磁性粉末として,強磁性金属粉末を使用している点。 b相違点2本件発明1-2では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面平均表面粗さRaが0.5~2.5nmの範囲であるのに対し,引用発明2では,原子間力顕微鏡によって測定される磁性層の中心面 平均表面粗さRaは不明である点。 c相違点3本件発明1-2では,磁気記録テープは再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用されるのに対し,引用発明1では,磁気記録テープは再生ヘッドとし てMRヘッドを使用する磁気信号再生システムにおいて使用される点。 オ上記各相違点の容易想到性上記相違点1及び2は,本件発明1-2と磁気テープ1に基づく引用発明1との相違点と同じであるところ,前記(1)エ(ア)及び(イ)で説示したように,少なくとも上記相違点1及び2に係る構成が当業者にとって容易想到 であったものと認めることはできない。 カ以上から,本件発明1-1及び1-2は,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認めることはできず,被告らの磁気テープ2に基づく進歩性欠如の主張は採用できない。 ( 。 カ以上から,本件発明1-1及び1-2は,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認めることはできず,被告らの磁気テープ2に基づく進歩性欠如の主張は採用できない。 (7) 実施可能要件違反(無効理由1-7)(争点6-7)について 被告らは,本件明細書1の段落【0013】に記載のある測定条件を,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」のクレーム文言中に読み込むというクレーム解釈を採用した場合には,「10μmピッチにおけるスペクトル密度」を測定する際に用いる測定機器は入手不可能な「Wyko社製HD2000」に限定されることになるし,仮にそうでないとしても,測定エリア(測 定面積)を「240μm×180μm」として測定することが可能な非接触 光学式粗さ測定機で入手可能なものは存在せず,いずれにしても,磁気テープが構成要件1Bないし1Cを充足するか否かを判断することはできないから,結局,本件発明1-1及び1-2は実施不能であることに帰するため,本件特許1には実施可能要件違反の無効理由が存在すると主張する。 そこで検討するに,前記3(1)オ及び5(2)のとおり,本件明細書1の段落 【0013】には,「非接触光学式粗さ測定機(装置:wyko社製HD2000)を用い,測定面積240μm×180μmで媒体の長手方向の表面粗さのプロファイルデータをフーリエ変換処理したものを平均化し周波数分析結果を得る。この分析結果から,各波長での強度を算出し10μmピッチにあたる強度を求める。これをPSD(10μm)とする。」との記載があ り,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法・条件が記載されているものと認められるところ,これはあくまで【発明を実施するため とする。」との記載があ り,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度の測定方法・条件が記載されているものと認められるところ,これはあくまで【発明を実施するための最良の形態】として記載されたものであるから,同記載をもって,測定機器が「Wyko社製HD2000」に限定されるものとは認められないし,また,測定エリアについても,厳密に「24 0μm×180μm」に限定されるものとは認められず,それに近い測定エリアを設定することも可能であると解される(被告らは,「240μm×180μm」に近い測定エリアでは適切に測定できないことを立証していない。)。 したがって,被告らの実施可能性要件違反をいう上記主張は,その前提を欠くため,採用できない。 (8) 乙28文献に基づく新規性欠如(無効理由1-8)(争点6-8)についてア被告らが新規性欠如の根拠として主張する乙28文献(特開2001-110032号公報,平成13年4月20日公開)の実施例12についての記載を検討すると,被告らも自認するとおり,①実施例12の磁気テー プについては,磁性層の中心面平均表面粗さRaは1.8nmであり,バ ックコート層の中心面平均表面粗さRaは4.0nmであること(段落【0103】,【表2】)が開示されているが,これは,WYKO社製TOPO3Dを用いて3D-MIRAU法で測定した中心面平均表面粗さRaであって(段落【0011】【0024】【0074】【0082】参照),乙28文献には,実施例12の磁気テープについて,原子間力顕微鏡によ って測定した中心面平均表面粗さRaの値についての明示的な記載は存在しないこと,②乙28文献には,実施例12の磁気テープの磁性層表面及びバックコート層表面の1 ープについて,原子間力顕微鏡によ って測定した中心面平均表面粗さRaの値についての明示的な記載は存在しないこと,②乙28文献には,実施例12の磁気テープの磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度についての明示的な記載は存在しないことが認められる。 イそして,被告らは,上記①の点について,磁気テープ表面の中心面平均 表面粗さRaを原子間力顕微鏡(AFM)によって測定すること自体は,本件特許の優先日前から周知であったところ,同一の物体表面を3D-MIRAU法で測定した場合と,原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合とで,異なるRaの値が得られるものではないと主張する。 しかしながら,証拠(甲A10,11)によれば,原子間力顕微鏡(A FM)による測定とは,探針と試料表面を微小な力で接触させ,探針が先端に取り付けられたカンチレバーのたわみ量が一定になるように,探針・試料間距離をフィードバック制御しながら水平に走査し,表面形状を検出するという,接触式の測定方法であること,一方,3D-MIRAU法とは,参照面と試料面の配置をミラウ型にした干渉計を用いて行う,非接触 式の測定方法であり,試料面からの反射光と参照面からの反射光との光路差により干渉像(縞)を発生させ,これにより表面形状を測定するものであることが認められ,両者は測定原理が異なるし,前者の方が後者よりもより高い解像度で測定することが可能であると考えられることから,両者により同一の測定値が得られるとは認めるに足りない。 また,被告らは,上記②の点について,乙A4(H陳述書),乙A12・ 48(F教授鑑定意見書)に基づき,磁気テープの表面(磁性層又はバックコート層表面)のRaの値と,当該表面のスペクトル密度の値との は,上記②の点について,乙A4(H陳述書),乙A12・ 48(F教授鑑定意見書)に基づき,磁気テープの表面(磁性層又はバックコート層表面)のRaの値と,当該表面のスペクトル密度の値との間には,一定の相関関係が存在し,Raが決まれば,これに基づいてスペクトル密度の値を推定することが可能であるところ,推定された実施例12の磁気テープのスペクトル密度の値は,本件発明1が規定する範囲内である と主張する。 しかしながら,乙A4,乙A12・48は,いずれも本件特許1の優先日(平成18年3月31日)から10年以上も経過した後である平成30年になって作成されたものであるところ,被告らが主張する上記の「相関関係」や「PSDの推定」が,本件特許1の優先日以前に,当業者におい て技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。 また,乙A4,乙A12・48の内容について検討しても,被告らが主張する実施例12の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」は,あくまでも被告らが抽出した複数のサンプルに基づく「推測値」にすぎないし,該実施例12の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」として,当該 「推測値」どおりの値が得られるのか検証されてもいないから,該実施例12の「10μmピッチにおけるスペクトル密度」が,本件発明1の数値範囲内であるとは未だ認めるに足りない。 ウしたがって,少なくとも上記①及び②の点は,本件発明1と乙28発明との相違点であると認められるから,乙28発明に基づく本件発明1の新 規性欠如の主張は理由がない。 (9) 小括以上から,本件特許1には無効理由は存在しないから,本件特許1が特許無効審判により無効とされるべきものとは認められない。 6 争点7(本件特許2に無効理由が存するか)について (9) 小括以上から,本件特許1には無効理由は存在しないから,本件特許1が特許無効審判により無効とされるべきものとは認められない。 6 争点7(本件特許2に無効理由が存するか)について 本件特許権2の侵害に基づく請求については,事案に鑑み,争点7-1(乙 45文献に基づく進歩性欠如(無効理由2-1))から判断する。 (1) 乙45文献の記載本件特許2の優先日(平成13年7月30日)前である平成13年3月30日に公開された乙45文献(特開2001-84549)には,以下の記載がある。 ア発明の詳細な説明「本発明は,塗布型の高記録密度の磁気記録媒体に関する。本発明は,特に磁性層と実質的に非磁性の下層を有し,最上層に強磁性金属粉末を含む,リニアサーペンタイン方式の記録再生システム用の磁気記録媒体に関する。」(段落【0001】) イ従来の技術「磁気テープの利用分野において,コンピュータ用の外部記憶媒体としてのバックアップテープが実用化されている。近年,コンピュータの情報処理量の増大により,バックアップテーープへの大容量化,高密度化の要求が高まっている。」(段落【0002】) ウ発明が解決しようとする課題「従来,RLL2-7変調方式を用いて磁気テープにブロック単位でデータが書き込まれる際に,致命的エラーが多発することがあった。この致命的エラーとは,書き込み直後の読み出し検査時に訂正不可能なエラーが発生し,別箇所に再書き込み(リライト)することを示すが,この場合当 然記録再生システムとしては,記憶容量及び転送レートの悪化につながり実害となっていた。」(段落【0008】)「本発明の目的は,RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムにおいて ステムとしては,記憶容量及び転送レートの悪化につながり実害となっていた。」(段落【0008】)「本発明の目的は,RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムにおいて,実害に結びつく致命的エラーを改良した塗布型磁気記録媒体を提供することにある。」(段落【0009】) エ課題を解決するための手段 「本発明者は鋭意検討した結果,ヘッドと磁気テープの相対スピードが5m/s以下で,最短記録波長1μm以下のRLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録システムにおいて,RLL2-7変調後の特定データパターンにてエラーが多発する原因を,ヘッドと磁気テープ間のスペーシングについて鋭意検討した結果,磁性層の特定深さ の凹みによる影響が顕著であることを見いだし,本発明に至った。」(段落【0010】)。 「すなわち,本発明は,支持体上に強磁性粉末および結合剤を主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体であって,RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録再生システムに供される ものであり,前記磁性層表面には非接触型表面粗さ計により測定された,50nm以上の深さを有する凹みが10個/46237.5μ㎡以下であり,且つ最大深さRvが100nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である」(段落【0011】)。 「本発明において,凹みの深さとは,WYKO製NT-2000を用い て3次元表面粗さを測定し,磁性層表面粗さの平均面から凹み最深部までの距離をいう」(段落【0015】)。 「ヘッドと磁気テープの相対スピードが5m/s以下で,最短記録波長1μm以下のRLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式を採用した磁気記録システムにおいて,磁 」(段落【0015】)。 「ヘッドと磁気テープの相対スピードが5m/s以下で,最短記録波長1μm以下のRLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式を採用した磁気記録システムにおいて,磁性層表面の凹みの深さが実害に 結びつく要因としては,リニアサーペンタイン方式の特徴であるヘッドと磁気テープの接触条件の低下と,RLL2-7変調方式の組み合わせによると推測される。ヘッドと磁気テープの接触条件の低下により,ある深さ以上の凹みではスペーシングロスが増大して瞬間的な出力低下が発生する。 一般の磁気テープでは磁性層表面はクリーニングや研磨などの表面処理に より異物や突起はある程度除去されているが,凹みについては除去不可能 である。更に,記録するデータパターンで顕著な差が見られることから,RLL2-7変調での影響が推測される。RLL2-7変調方式では8-10変換等に比較してランレングスの遷移が大きくなり,データパターンによってはピークシフトの影響が大きくなり,前述の瞬間的な出力低下と組み合わさることによってドロップアウトに至り,凹みがある個数以上に なるとドロップアウトによるエラーの訂正が不可能となり,実害エラーに至ると予想される。」(段落【0016】)オ発明の実施の形態「本発明の磁気記録媒体は,非磁性支持体上に少なくとも2層の塗膜,すなわち,下層非磁性層と膜厚0.3μm以下の上層磁性層とがこの順で 設けられており,非磁性支持体の下面側には,必要に応じてバックコート層が設けられる。」(段落【0017】)。 「非磁性層にはカーボンブラック以外にも各種無機質粉末を用いることができ,例えば針状の非磁性酸化鉄(α-Fe2 O3 )などを用いることができる。ただし,球状の超微粒子酸化鉄を用いることにより 。 「非磁性層にはカーボンブラック以外にも各種無機質粉末を用いることができ,例えば針状の非磁性酸化鉄(α-Fe2 O3 )などを用いることができる。ただし,球状の超微粒子酸化鉄を用いることにより高分散性が 得られ,非磁性層における粒子の充填率を大きくすることができる。このため,非磁性層自体の表面性が良化し,ひいては磁性層の表面性が良好となり,電磁変換特性が向上する。」(段落【0020】)「下層非磁性層の厚さは,通常,0.1~2.5μm,好ましくは0. 3~2.3μmである。非磁性層が薄すぎると,非磁性支持体の表面性の 影響を受けやすくなり,その結果,非磁性層の表面性が悪化して磁性層の表面性も悪化しやすくなり,電磁変換特性が低下する傾向にある。」(段落【0032】)「上層磁性層は,少なくとも強磁性粉末,結合剤樹脂および研磨材を含有する。本発明においては,強磁性粉末として,金属合金微粉末または六 方晶形板状微粉末を用いることが好ましい。」(段落【0033】) 「強磁性粉末の含有量が多すぎると,結合剤の含有量が減少するためカレンダ加工による表面平滑性が悪化しやすくなり,一方,少なすぎると,高い再生出力が得られない。」(段落【0034】)「研磨材の平均粒径は,例えば0.01~0.2μmであり,0.05~0.2μmであることが好ましい。平均粒径が大きすぎると,磁性層表 面からの突出量が大きくなって,電磁変換特性の低下,ドロップアウトの増加,ヘッド摩耗量の増大等を招く。」(段落【0040】)「バックコート層が厚すぎると,媒体摺接経路との間の摩擦が大きくなりすぎて,走行安定性が低下する傾向にある。一方,薄すぎると,非磁性支持体の表面性の影響でバックコート層の表面性が低下する。このため, バッ 層が厚すぎると,媒体摺接経路との間の摩擦が大きくなりすぎて,走行安定性が低下する傾向にある。一方,薄すぎると,非磁性支持体の表面性の影響でバックコート層の表面性が低下する。このため, バックコートを熱硬化する際にバックコート層表面の粗さが磁性層表面に転写され,高域出力,S/N,C/Nの低下を招く。また,バックコート層が薄すぎると,媒体の走行時にバックコート層の削れが発生する。」(段落【0048】)(2) 本件発明2-2と乙45発明の一致点及び相違点 本件発明2-2と乙45発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア一致点磁気記録媒体に最小記録bit長50~500nmで磁気信号を記録し,該記録された信号を再生ヘッドを用いて再生する磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は,非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを 含む非磁性層と六方晶フェライト粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有し,前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下であることを特徴とする磁気記録再生システムであって,前記磁気記録媒体は磁気テープである磁気記録再生システムである点。 イ相違点 (ア) 相違点1本件発明2-2では,磁気記録媒体に「記録された信号をMRヘッドを用いて再生する磁気記録再生システム」であるのに対し,乙45発明では,用いる再生ヘッドの種類に限定がない点。 (イ) 相違点2 本件発明2-2では,「磁性層表面の中心面平均粗さSRaが1.0~6.0nmの範囲である」のに対し,乙45発明では,磁性層表面の中心面平均粗さは不明である点。 ウ補足説明(ア) 原告は,乙45文献の段落【0010】には,最短記録波長は「1μ aが1.0~6.0nmの範囲である」のに対し,乙45発明では,磁性層表面の中心面平均粗さは不明である点。 ウ補足説明(ア) 原告は,乙45文献の段落【0010】には,最短記録波長は「1μ m」ではなく「1μm以下」と記載されており,最短記録波長が特定されない限り,乙45に記載の最短記録波長と凹みの関係が本発明の構成要件2C-1を満たすか否かを判断することはできないから,一致点として「前記磁性層表面に存在する最小記録bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下である」という認定 は,誤りであると主張する。 しかしながら,「1μm以下」には「1μm」が含まれることは明らかであり,乙45文献の段落【0010】には,最短記録波長を「1μm」とする構成が開示されているといえる。そして,一般に「最小記録bit長とは,システムとして記録される信号の最短波長の1/2の長 さをい」うとされている(弁論の全趣旨。本件明細書2・段落【0011】も参照。)ところ,最短記録波長が1μmである場合(乙45文献・段落【0010】)には,最小記録bit長は500nmとなり,その1/3は約167nmである。そして,50nm以上の深さを有する凹みの数が10個/46237.5μ㎡以下であること(乙45文献・段 落【0011】)は,167nm以上の深さを有する凹みの数も10個 /46237.5μ㎡以下であることを含み,46237.5μ㎡の領域に167nm以上の深さを有する凹みの数が10個以下であることは,46237.5μ㎡よりも狭い10000μ㎡の領域に存在する167nm以上の深さを有する凹みも10個以下であるといえる。 したがって,乙45文献には,「前記磁性層表面に存在する最小記録 bit 46237.5μ㎡よりも狭い10000μ㎡の領域に存在する167nm以上の深さを有する凹みも10個以下であるといえる。 したがって,乙45文献には,「前記磁性層表面に存在する最小記録 bit長の1/3以上の深さを有する凹みの数が100個/10000μ㎡以下である」という構成が開示されているといえる。これに反する原告の主張は採用できない。 (イ) 原告は,相違点1について,乙45発明は,RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録再生システムであり(シ ステム/フォーマットはDLTシステム),インダクティブヘッドが用いられるシステムである(MRヘッドが用いられることはない)から,乙45発明に用いる再生ヘッドの種類に限定がないとする被告らの認定は誤っていると主張する。 しかしながら,乙45文献の段落【0008】,【0010】,【0 016】を参照すると,乙45発明は,RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式のシステムにおいて,データを書き込んだ際エラーが多発するという課題を解決するためになされたものであって,上記システムが「インダクティブヘッド」(磁気誘導ヘッド)を前提としたシステムであることや,上記課題が「インダクティブヘッド」に起 因することなどは全く記載されていないし,さらに,乙45文献には,「ヘッド」が「インダクティブヘッド」であることを示唆する記載も見当たらない。 そして,乙45文献の「DLTシステム」に関する「近年のバックアップテープフォーマットでの変調方式を表1に示す。」(段落【000 6】),「このロールを24時間常温にて放置後,(中略)ロールを1 /2インチ幅に切断してDLTカートリッジに組み込み,磁気テープサンプルとした。」(段落【0 。」(段落【000 6】),「このロールを24時間常温にて放置後,(中略)ロールを1 /2インチ幅に切断してDLTカートリッジに組み込み,磁気テープサンプルとした。」(段落【0078】),「使用ドライブ:Quantum社製DLT-7000(DLT5モード)」(段落【0081】)等の各記載からすれば,「DLTシステム」は,「RLL2-7変調方式を採用したリニアサーペンタイン方式の磁気記録システム」の一例に すぎず,乙45発明が,当該「DLTシステム」に限定される理由は見当たらない。 また,一般に「RLL2-7変調方式」及び「リニアサーペンタイン方式」において「インダクティブヘッド」が必須であることを裏付ける証拠は何ら存在しない。 以上からすれば,乙45発明はインダクティブヘッドが用いられるシステムであるとはいえず,原告の主張は採用できない。 (ウ) 原告は,相違点2について,乙45発明が「磁性層の最大深さ100nm以下」との構成を不可欠なものとして採用していることを捨象しているなどと主張する。 しかしながら,乙45発明における「最大深さ」は,「50nm以上の深さを有した凹み」の中で「最大の深さ」を指すものであること(段落【0015】)からすれば,本件発明2の「中心面平均粗さ」との対比において,乙45発明における「最大深さ」を相違点として挙げる必要はないから,原告の主張は採用できない。 (3) 上記各相違点の容易想到性ア相違点1について(ア) 判断MRヘッドは,インダクティブヘッドに比べて数倍の再生出力が得られ,磁気記録媒体ノイズを小さくしてSN比を向上させることで,高密 度記録特性を向上できることは,本件特許2優先日時点で周知であった と認められる( ドに比べて数倍の再生出力が得られ,磁気記録媒体ノイズを小さくしてSN比を向上させることで,高密 度記録特性を向上できることは,本件特許2優先日時点で周知であった と認められる(乙24(特開2000-293845)・段落【0004】,乙46(特開平10-302243)・段落【0009】,乙48(特開平11-250449)・段落【0002】,乙53(特開2000-99940)・段落【0016】,【0017】,乙54(特開2000-315312)・段落【0002】,【0003】,乙5 5(特開2001-43525)・段落【0002】,【0003】)。 そして,乙45文献の「【従来の技術】(中略)近年,コンピュータの情報処理量の増大により,バックアップテープへの大容量化,高密度化の要求が高まっている。」(段落【0002】),「強磁性粉末の含有量が多すぎると,結合剤の含有量が減少するためカレンダ加工による 表面平滑性が悪化しやすくなり,一方,少なすぎると,高い再生出力が得られない。」(段落【0034】)との記載からすれば,乙45発明においても,高密度記録特性の向上という課題があり,再生ヘッドとしてMRヘッドを用いることの動機付けが存在する。 以上からすれば,本件特許2の優先日当時,乙45発明の再生ヘッド としてMRヘッドを採用することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。 (イ) 原告の主張についてa原告は,本件発明2が前提とするシステムは,MRヘッドを用いて再生する,磁気記録再生システムであるのに対し,乙45発明は,R LL2-7変調方式とインダクティブヘッドを採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムを前提とするから,乙45発明は,本件発明2に対する引用発明としての適格を 対し,乙45発明は,R LL2-7変調方式とインダクティブヘッドを採用したリニアサーペンタイン方式の記録再生システムを前提とするから,乙45発明は,本件発明2に対する引用発明としての適格を欠く旨主張する。 しかしながら,前記(2)ウ(イ)のとおり,乙45発明はインダクティブヘッドが用いられるシステムであるとはいえないから,同発明が引 用発明としての適格を欠く旨の主張はその前提を欠く。 bまた,原告は,本件発明2と乙45発明は,課題,着想(課題解決の方向付け),課題の解決手段及び効果のいずれも異なるから,当業者が乙45発明を出発点として本件発明に容易に想到し得るものではない旨主張する。 しかしながら,両者とも,磁性層表面の凹みによるスペーシングロ スの増大が課題に影響することに着目し,磁性層表面の凹みの数を制御することにより,課題を解決するものであること(本件明細書2の段落【0006】,【0010】,【0011】,乙45文献の段落【0010】,【0016】)からすれば,課題解決の方向性が共通しているものといえる。そして,相違点1に係る構成が当業者において容 易想到であったことは前記(ア)のとおりである。 cまた,原告は,磁気記録媒体ノイズの改良という,再生出力が大きく機器ノイズが小さいMRヘッドで顕在化した課題に想い至ることはなく,ましてや乙45発明を出発点として,MRヘッドを用いた場合の磁気記録媒体ノイズの改良という課題を解決する手段である本件発 明2の構成を当業者が想到することはない旨主張する。 しかしながら,媒体ノイズは,ヘッドの種類に関わらず従前から知られている課題である(弁論の全趣旨)ところ,乙45文献には,磁性層の表面を良好とすることで「電磁変換特性」を向上させると 旨主張する。 しかしながら,媒体ノイズは,ヘッドの種類に関わらず従前から知られている課題である(弁論の全趣旨)ところ,乙45文献には,磁性層の表面を良好とすることで「電磁変換特性」を向上させるという技術思想が記載されている(段落【0020】,【0032】,【0 034】,【0040】,【0048】)。そして,一般に,電磁変換特性にノイズ特性を含むことは技術常識である。そうすると,乙45発明のヘッドとして「MRヘッド」を採用した場合でも,乙45文献に,磁性層表面の凹みの数を規定すること,及び,磁性層表面の平滑性を良好とすることが記載されている以上,乙45発明により媒体 ノイズを低減できることも当業者であれば容易に予測し得たこととい える。 dよって,原告の主張はいずれも採用できない。 イ相違点2について(ア) 判断磁気記録媒体の分野において,磁性層表面に起因するスペースロスや ノイズ等を改善するために,磁性層の表面を平滑化することは技術常識である(弁論の全趣旨)ところ,乙45文献の「非磁性層自体の表面性が良化し,ひいては磁性層の表面性が良好となり,電磁変換特性が向上する。」(段落【0020】),「その結果,非磁性層の表面性が悪化して磁性層の表面性も悪化しやすくなり,電磁変換特性が低下する傾向 にある。」(段落【0032】),「強磁性粉末の含有量が多すぎると,結合剤の含有量が減少するためカレンダ加工による表面平滑性が悪化しやすくなり,一方,少なすぎると,高い再生出力が得られない。」(段落【0034】),「平均粒径が大きすぎると,磁性層表面からの突出量が大きくなって,電磁変換特性の低下(中略)等を招く。」(段落【0 040】)との各記載からすれば,乙45文献には,磁性層表面に存在 034】),「平均粒径が大きすぎると,磁性層表面からの突出量が大きくなって,電磁変換特性の低下(中略)等を招く。」(段落【0 040】)との各記載からすれば,乙45文献には,磁性層表面に存在する50nm以上の深さを有する凹みの数を10個/46237.5μ㎡以下とすることに加え,磁性層表面の「粗さ」を調整し,「粗さ」を良好とする技術思想も含まれているといえる。 そして,乙52(特開2001-176050)の「磁性層は,(中 略)中心面平均表面粗さ(Ra)が,1.0~6.0nm,好ましくは5nm以下,更に好ましくは4nm以下であることが適当である。上記中心面平均表面粗さ(Ra)が6.0nm以下であれば,磁気記録媒体とヘッドのスペーシングロスを抑制することが可能であり,高い出力と低いノイズとすることが容易になる。」(段落【0012】)との記載, 乙50(特開2001-160211)の「磁性層の中心面平均表面粗 さRaは,(中略)本発明では好ましくは1.0~3.0nm,更に好ましくは1.0~2.5nm,特に好ましくは1.0~2.3nmである。3.0nmを超えると磁気記録媒体とヘッドのスペーシングロスが大きくなり,出力が低くなる傾向があり,本発明の磁気記録媒体が有する媒体性能を発揮することが困難となる傾向がある。」(段落【004 1】)との記載,乙24(特開2000-293845)の「磁性層の中心面平均表面粗さRaは,(中略)本発明では好ましくは3.0nm以下,更に好ましくは2.7nm以下,特に好ましくは2.5nm以下である。3.0nmを超えると磁気記録媒体とヘッドのスペーシングロスが大きくなり,出力が低く,ノイズが高くなり,本発明により得られ る磁気記録媒体が有する媒体性能を発揮出来ない場合がある 以下である。3.0nmを超えると磁気記録媒体とヘッドのスペーシングロスが大きくなり,出力が低く,ノイズが高くなり,本発明により得られ る磁気記録媒体が有する媒体性能を発揮出来ない場合がある。」(段落【0006】)との記載からすれば,磁性層表面の中心面平均表面粗さを,1.0~6.0nm程度の範囲に設定し,ノイズを低下させ,高い出力を得ることは,本件特許2の優先日前より慣用的に行われたことと認められる(上記のほか,乙26(特開2001-67646)・段落 【0004】,【0024】,乙28(特開2001-110032)・段落【0024】,乙29(特開2001-118235)・段落【0004】,【0026】,乙30(特開2001-118236)・段落【0004】,【0024】,乙53(特開2000-99940)・段落【0044】)。 以上からすれば,乙45発明において,中心面平均表面粗さを1.0~6.0nm範囲とした場合,「50nm以上の深さを有する凹みの数」を「10個/46237.5μ㎡以下」に維持するにようにすることは,当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化・好適化にすぎないといえる。 したがって,本件特許2の優先日当時,乙45発明において,磁性層 表面の中心面平均表面粗さを,1.0~6.0nmの範囲に設定するこ とは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。 (イ) 原告の主張についてa原告は,乙45文献には,磁気記録媒体の中心面平均粗さについて記載されておらず,乙45発明において,当業者が磁気記録媒体の磁性層表面の中心面平均粗さを制御しようとする動機付けられることは ない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)のとおり,乙45文献には,磁性層表面の平滑性を良好にすることを示唆 磁気記録媒体の磁性層表面の中心面平均粗さを制御しようとする動機付けられることは ない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)のとおり,乙45文献には,磁性層表面の平滑性を良好にすることを示唆する記載があること,当該技術分野において,磁性層表面の平滑性を定量的に示すパラメータとして「中心面平均粗さ」は普通に知られたものであること(弁論の全趣旨)からす れば,乙45発明においても,「中心面平均粗さ」を制御する動機付けは存在している。 bまた,原告は,仮に動機付けられたとしても,乙45発明の磁性層表面の凹みの条件はそのままで,乙49~52に記載された中心面平均粗さの数値だけを組み合わせることは不可能である旨主張する。 しかしながら,本件特許2の優先日前において,磁性層表面の状態を良好とするために,中心面平均表面粗さを1~6nmの範囲程度に設定することは,慣用的に行われていたことは前記(ア)のとおりである。 また,本件明細書2に記載された「ノイズを減少させる」,「出力の劣化も小さくする」等の作用効果(段落【0011】~【0013】) は,磁気テープ全般に求められることであり,顕著なものとはいえない。 そして,乙45発明における磁気テープの構造(各層の材料の種類,量,大きさや,各層の厚み)(乙45文献の段落【0017】~【0050】),製造工程(乙45文献の段落【0051】~【0059】), 及び,凹みの制御方法(乙45文献の段落【0060】,【0061】) と,本件発明2の磁気テープ構造(本件明細書2の段落【0017】~【0065】),製造工程(本件明細書2の段落【0066】~【0073】),及び,凹みの制御方法(本件明細書2の段落【0062】~【0063】)とを比較すると,相当な部分にお 2の段落【0017】~【0065】),製造工程(本件明細書2の段落【0066】~【0073】),及び,凹みの制御方法(本件明細書2の段落【0062】~【0063】)とを比較すると,相当な部分において重複している。 そうすると,乙45発明においても,50nm以上の深さを有する 凹みの数を10個/46237.5μ㎡以下としつつ,磁性層表面の状態を良好とするために,中心面平均表面粗さを1~6nmの範囲程度に設定することは当業者が適宜なし得たことといえる。 cさらに,原告は,乙46~48,乙24,乙26~31及び乙49~52に記載の磁気記録媒体の表面の平均粗さだけを抜き出して,こ れらをひとくくりにして,1.0~6.0nmの範囲とすることが周知技術であると当業者が認識することはなく,また,これを乙45発明に適用しようとすることもない旨を主張する。 しかしながら,上記各乙号証における「中心面平均表面粗さ」に関する記載をみると,乙24(特開2000-293845)の段落【0 006】,乙26(特開2001-67646)の段落【0038】,乙28(特開2001-110032)の段落【0024】,乙29(特開2001-118235)の段落【0026】,乙30(特開2001-118236)の段落【0024】,乙50(特開2001-160211)の段落【0041】には,上限値を越えると磁気 記録媒体とヘッドのスペーシングロスが大きくなり,出力が低く,ノイズが高くなることが,乙27(特開2001-84551)の段落【0014】には,下限値未満では表面が平滑すぎて,走行安定性が悪化し,上限値を越えると,磁性層表面が粗くなり,ノイズが増大する傾向があることが,乙49(特開2000-215439)の段落 【0028】には ,下限値未満では表面が平滑すぎて,走行安定性が悪化し,上限値を越えると,磁性層表面が粗くなり,ノイズが増大する傾向があることが,乙49(特開2000-215439)の段落 【0028】には,下限値未満では,磁性層表面が平滑化しすぎ,ヘ ッドの接触面積が増大して,アルミシリンダに対する摺動抵抗が大きくなること,上限値より大きいと,磁性層表面の凹凸により,高い電磁変換特性を望めないことが,乙52(特開2001-176050)の段落【0012】には,上限値以下であれば,磁気記録媒体とヘッドのスペーシングロスを抑制することが可能であり,高い出力と低い ノイズを抑制することが容易になり,下限値以上であれば,固定ヘッドや固定ガイドとの摩擦係数を低く抑え,安定した走行性が得られ易いことが,それぞれ記載されていることからすれば,上記各乙号証の「中心面平均表面粗さ」に関る記載は,本件特許2の優先日当時,「中心面平均表面粗さ」を1~6nm程度の範囲に設定することにより磁 気記録媒体の一般的な作用効果が得られることが周知であったことを裏付けている。 dよって,原告の主張はいずれも採用できない。 (4) 小括以上からすれば,本件発明2-1及び2-2は,乙45発明及び本件特許 2の優先日当時における周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められるため,本件特許2は進歩性を欠き(特許法29条2項,同条1項1号),特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。よって,原告は,本件特許2に基づき被告らに対してその権利を行使することができない(特許法104条の3)。 7 争点9(被告らに共同不法行為が成立するか)について(1) 本件期間①について前記前提事実(5)アのとおり,平成27年12 の権利を行使することができない(特許法104条の3)。 7 争点9(被告らに共同不法行為が成立するか)について(1) 本件期間①について前記前提事実(5)アのとおり,平成27年12月から平成29年3月まで(本件期間①),被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告ソニーに販売し,被告ソニーは,被告製品を販売,輸出していたことが認められると ころ,同期間において,被告SSMM及び被告ソニーは,共同して本件特許 権1を侵害する行為を行っていたものであるから,本件特許権1の侵害について共同不法行為が成立する(なお,後記9(2)の説示に照らし,被告OEM製品の取引形態2についても,その一連の行為に被告らの共同不法行為が成立する。)。 (2) 本件期間②について 前記前提事実(5)イのとおり,平成29年4月から同年9月まで(本件期間②),被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告SSMSに販売し,被告SSMSは,被告製品を被告ソニーに販売し,被告ソニーは,被告製品を販売,輸出していたことが認められるところ,同期間において,被告らは,共同して本件特許権1を侵害する行為を行っていたものであるから,本件特 許権1の侵害について共同不法行為が成立する(なお,後記9(2)の説示に照らし,被告OEM製品の取引形態2についても,その一連の行為に被告らの共同不法行為が成立する。)。 (3) 本件期間③について前記前提事実(5)ウのとおり,平成29年10月から被告自社製品につき 平成30年6月21まで,被告OEM製品につき同年9月30日まで(本件期間③),被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告SSMSに販売し,被告SSMSは,被告製品を販売,輸出していたことが認められる。また,被告SSMM及び EM製品につき同年9月30日まで(本件期間③),被告SSMMは,被告製品を製造してこれを被告SSMSに販売し,被告SSMSは,被告製品を販売,輸出していたことが認められる。また,被告SSMM及び被告SSMSは,被告ソニーがTPCsと契約した被告AP-75契約に基づいて被告製品を製造,販売等しているものであり, 証拠(乙195,196)及び弁論の全趣旨(前記第2,3(11)における被告らの主張)によれば,被告ソニーは,販売した被告製品ごとに,被告AP-75契約に基づき,TPCsに対してロイヤリティを支払っており,平成29年4月以降は,被告SSMSが,被告ソニーとの間の契約に基づき,被告ソニーがTPCsに対して支払ったロイヤリティの額を,被告ソニーに対 して償還していたことが認められる。以上の事実に照らせば,本件期間③に おいて,被告らは,共同して本件特許権1を侵害する行為を行っていたものと認められるから,本件特許権1の侵害について共同不法行為が成立する(なお,後記9(2)の説示に照らし,被告OEM製品の取引形態2についても,その一連の行為に被告らの共同不法行為が成立する。)。 8 争点10(除却請求の当否) 被告らは,被告自社製品の製造設備が被告自社製品以外の磁気テープ製品の生産にも用いられているから,その除却は認められないと主張する。 そこで検討するに,被告自社製品を製造している被告SSMMが被告自社製品の製造設備において被告自社製品のみを製造していることを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,証拠(乙107)及び弁論の全趣旨によれば,被告自社 製品の製造設備は,被告自社製品が準拠する規格である「LTOUltrium 7」以前の規格である「LTOUltrium 1」から「LTOUltrium び弁論の全趣旨によれば,被告自社 製品の製造設備は,被告自社製品が準拠する規格である「LTOUltrium 7」以前の規格である「LTOUltrium 1」から「LTOUltrium 6」に準拠する磁気テープ製品をも相当数製造していることが認められる。そうすると,被告自社製品の製造設備の除却は,本件特許権1の侵害の予防に必要な範囲を超えるものといわざるを得ない。 よって,被告自社製品の製造設備の除却請求は理由がない。なお,原告は,この点に係る被告らの主張が時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)であるとして却下されるべきであると主張するが,これにより訴訟の完結を遅延させるものとは認められないから,却下すべきものとは認められない。 9 争点11(損害の有無及び額) (1) 特許法102条2項の適用の有無(争点11-1)原告は,被告らが特許権侵害行為により利益を受けているとして,特許法102条2項の適用があると主張するのに対し,被告らは,原告が本件発明1を実施していないこと,また,本件発明1は被告製品の販売に何ら寄与していないことから,被告製品の販売と原告の損害との間には因果関係がなく, 特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られた であろうという事情が存在しないから,特許法102条2項の適用がないと主張する。 そこで検討するに,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり,特許法102条2項の適用 に当たり,特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とするものではないというべきである(知財高裁平成24年(ネ)第10015 認められると解すべきであり,特許法102条2項の適用 に当たり,特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とするものではないというべきである(知財高裁平成24年(ネ)第10015号同平成25年2月1日判決参照)。 そうすると,原告が本件発明1を実施していないことは,特許法102条2項の適用を妨げる事情とはいえない。また,原告は,被告製品と同様にL TO-7規格に準拠する原告製品を販売しており(弁論の全趣旨),原告製品と被告製品の市場が共通していることからすれば,特許権者である原告に,侵害者である被告らによる特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が認められるから,原告の損害額の算定につき,特許法102条2項の適用が排除される理由はないというべきである。被告らが主 張する,被告製品の販売における本件特許1の寄与の程度については,推定覆滅の一事情として考慮すべきである(後記(4)参照)。 以上のとおり,被告らの主張は採用することができず,原告の損害額の算定については,特許法102条2項の適用による推定が及ぶ。 (2) 輸出を伴う取引形態における利益の範囲(争点11-2) 被告OEM製品の取引形態のうち,取引形態2(被告OEM製品の製造業者である被告SSMMが被告OEM製品を海外に輸出し,海外において被告SSMM自身の在庫として保有しているものを,被告ソニー又は被告SSMSを介して海外の顧客に販売する取引形態)によって被告らが得た利益について,特許法102条2項の推定が及ぶか否かについて検討する。この点, 被告らは,取引形態2によって得られた利益は,全て海外での販売行為によ り発生したものであるから,属地主義の原則から,これには上記推定が及ばないと主張する。 検討する。この点, 被告らは,取引形態2によって得られた利益は,全て海外での販売行為によ り発生したものであるから,属地主義の原則から,これには上記推定が及ばないと主張する。 弁論の全趣旨(被告準備書面(7))によれば,被告OEM製品の取引形態2は,具体的には,①平成27年12月から平成29年3月までは,被告SSMMが,被告OEM製品を日本国内で製造して海外に輸出した後に,被告 ソニーに対して販売し,さらに,被告ソニーが,これを顧客に対して販売しており,②平成29年4月から同年9月までは,被告SSMMが,被告OEM製品を日本国内で製造して海外に輸出した後に,被告SSMSに対して販売し,さらに,被告SSMSが,これを被告ソニーに対して販売し,その後,被告ソニーが,これを顧客に対して販売しており,③平成29年10月以降 は,被告SSMMが,被告OEM製品を日本国内で製造して海外に輸出した後に,被告SSMSに対して販売し,さらに,被告SSMSが,これを顧客に対して販売したことが認められる。 上記事実に照らせば,被告OEM製品の取引形態2における販売行為は,形式的には全て被告SSMMが被告OEM製品を海外に輸出した後に行われ ているものである。しかしながら,被告OEM製品は,その性質上,被告ら(本件期間①においては被告ソニー及び被告SSMM)が,本件OEM供給先(HPE及びQuantum)の発注を受けて製造し,本件OEM供給先に対してのみ販売することが予定されていたものであるから,被告SSMMが被告OEM製品を日本国内で製造して海外に輸出し,被告ソニーや被告SSMS に販売し,さらに被告ソニーや被告SSMSがこれを顧客(本件OEM供給先)に販売するという一連の行為が行われた際には,その前提として, 日本国内で製造して海外に輸出し,被告ソニーや被告SSMS に販売し,さらに被告ソニーや被告SSMSがこれを顧客(本件OEM供給先)に販売するという一連の行為が行われた際には,その前提として,当然,当該製品の内容,数量等について,被告らと本件OEM供給先との密接な意思疎通があり,それに基づいて上記の被告SSMMによる日本国内での製造と輸出やその後における被告らによる販売が行われたことを優に推認するこ とができる。そうであれば,上記一連の行為の一部が形式的には被告OEM 製品の輸出後に行われたとしても,上記一連の行為の意思決定は実質的には被告OEM製品が製造される時点で既に日本国内で行われていたと評価することができる。被告らは,被告SSMMが本件OEM供給先から提供を受けたフォーキャストと,実際の被告OEM製品の受注は必ずしも一致しないことから,被告SSMMの製造・輸出と,その後の販売行為は独立した別々の 行為である旨主張するが,被告SSMMは本件OEM供給先から提供されるフォーキャストで示された予想される発注量に基づいて被告OEM製品を製造し,被告らはこれを販売していたものであるから,月々のフォーキャストと受注が必ずしも一致しないことをもって,被告らの行為ないしその意思決定の一連性が否定されるものではない。また,被告らは,本件OEM供給先 からの被告OEM製品の受注,被告OEM製品の海外倉庫からの出庫(海外倉庫の管理を含む)及びOEM顧客への発送,並びにOEM顧客に対する請求を,各国に本拠地を有する各現地協力会社に委託しており,これらの業務は全て,日本国内ではなく海外において行われたものであるとも主張するが,単に事実行為の一部を海外の協力会社に委託していたと主張するにすぎない ものであって,上 会社に委託しており,これらの業務は全て,日本国内ではなく海外において行われたものであるとも主張するが,単に事実行為の一部を海外の協力会社に委託していたと主張するにすぎない ものであって,上記一連の行為の意思決定が実質的に日本国内で行われていたと評価することができるという上記結論を何ら左右するものではない。 加えて,少なくとも,本件特許権1の侵害行為である被告OEM製品の国内での製造及び輸出が被告らによる共同不法行為であると認められる(前記7参照)以上,被告らによる販売行為が,全て被告SSMMが被告OEM製 品を海外に輸出した後に行われたものであるとしても,被告らの販売行為による利益は,被告らによる国内における上記共同不法行為(被告OEM製品の国内での製造及び輸出)と相当因果関係のある利益(原告にとっての損害)ということができ,侵害行為により受けた利益といえる。 したがって,取引形態2によって被告らが得た利益についても,特許法1 02条2項の推定が及ぶと解すべきであり,このように解しても,我が国の 特許権の効力を我が国の領域外において認めるものではないから,属地主義の原則とは整合するというべきである。これに反する被告らの主張は採用できない。 (3) 限界利益額(争点11-3)証拠(乙118ないし190,195,196,乙A14ないし43)及 び弁論の全趣旨によれば,被告SSMMが被告製品を製造し,被告ソニーが被告製品の販売等を開始した平成27年12月以降,四半期ごとにおける被告らが被告製品を販売した販売巻数,売上高,仕入金額ないし生産費用,物流費,ロイヤリティ,リベート及び利益の額(売上高から仕入金額ないし生産費用,物流費,ロイヤリティ及びリベートを控除したもの)は,それぞれ, 被告ソニ 巻数,売上高,仕入金額ないし生産費用,物流費,ロイヤリティ,リベート及び利益の額(売上高から仕入金額ないし生産費用,物流費,ロイヤリティ及びリベートを控除したもの)は,それぞれ, 被告ソニーにつき別紙「被告ソニーの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告ソニーの利益額(被告OEM製品)」(ただし,取引形態1の「限界利益」欄中,「平成28年1~3月」の額は「●(省略)●」の誤りである。)のとおり,被告SSMMにつき別紙「被告SSMMの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告SSMMの利益額(被告OEM製品)」(利益額については 「限界利益」欄中の「人件費を控除しない」欄記載の金額。ただし,取引形態1の同欄中,「平成27年12月」の額は「●(省略)●」の,「平成28年1~3月」の額は「●(省略)●」の,「合計」の額は「●(省略)●」の誤りである。)のとおり,被告SSMSにつき別紙「被告SSMSの利益額(被告自社製品)」及び別紙「被告SSMSの利益額(被告OEM製品)」 (ただし,取引形態1の「限界利益」欄中,「平成30年1~3月」の額は「●(省略)●」の,「平成30年4~6月」の額は「●(省略)●」の誤りである。)のとおりであると認められる。 なお,被告SSMMの限界利益の算出にあたり,原告は人件費を控除すべきでないと主張し,被告らはこれを控除すべきであると主張するところ,被 告らが変動費であると主張する人件費が被告製品の製造・販売に比例して発 生したものとは認められないから,被告SSMMの限界利益の算出にあたり人件費を控除すべきではない。 また,四半期ごとにおける被告らの利益額の合計額は別紙「被告らの利益額の合計額(被告自社製品)」及び別紙「被告らの利益額の合計額(被告OEM製品)」の「合計額」欄記 人件費を控除すべきではない。 また,四半期ごとにおける被告らの利益額の合計額は別紙「被告らの利益額の合計額(被告自社製品)」及び別紙「被告らの利益額の合計額(被告OEM製品)」の「合計額」欄記載のとおりである。なお,証拠(乙177, 191,192)及び弁論の全趣旨(被告ら準備書面(20)4頁)によれば,被告ソニーは,平成28年1月にOracleに被告製品(LTX6000G)のサンプル●(省略)●巻を有償提供し,その利益は●(省略)●円(売上高●(省略)●円-仕入金額●(省略)●円)であること,また,平成28年5月にGoogleに被告製品(20LTX6000GL)のサンプル●(省略) ●個(●(省略)●巻)を有償提供し,その利益は●(省略)●円(売上高●(省略)●円-仕入金額●(省略)●円)であることが認められるところ,上記各利益を被告ソニーの各四半期の利益額に計上した(Oracle分につき侵害期間①-2,Google分につき侵害期間①-3)。 (4) 推定覆滅事由の存否及びその割合(争点11-4) ア被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないとの主張について被告らは,被告製品においては,硬度の高い磁性層表面を形成していることにより,裏写りを十分に抑制することができていること,また,本件発明1の構成要件1Cを充足する製品としない製品の保存試験(乙204,206)の結果などから,被告製品が本件発明1の作用効果を奏していな いと主張する。 しかしながら,前記5(4),(5)説示のとおり,本件明細書1・表1の記載からは,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度,磁性層の中心面平均表面粗さ,六方晶フェライト粉末の平均板径のそれぞれが本件発明1-1に規定された範囲内である実施例 載からは,磁性層表面及びバックコート層表面の10μmピッチにおけるスペクトル密度,磁性層の中心面平均表面粗さ,六方晶フェライト粉末の平均板径のそれぞれが本件発明1-1に規定された範囲内である実施例は, 比較例よりも保存前後のSNRの変化が小さいことを読み取ることができ, そこから,本件発明1により発明の課題を解決することができるものと理解できるから,そうである以上,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品は本件発明1の作用効果を奏していると認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 これに対し,被告らは,被告製品が本件明細書1の実施例に記載されて いる磁気テープとは材質・組成等が異なるものであり,構成要件を充足するからといって当然に明細書に記載されている発明の効果を奏すると認められるものではないと主張するが,本件明細書1の実施例に記載されている磁気テープと被告製品とは材質・組成等が異なるとしても,そのことによって被告製品が本件発明1の発明の効果を奏していないものと認めるに 足りる証拠はない。被告らはその他るる主張するが,いずれも上記結論を左右しない(なお,原告の製品が本件発明1の実施品でないとする主張については,その主張の根拠である測定結果(乙116,117)が前記4(2)イ(ア)の説示に照らして信用できないから,採用できない。)。 なお,被告らが主張する,被告製品が硬度の高い磁性層表面を形成して いる点について検討するに,確かに,証拠(乙197ないし199)によれば,磁性層表面が硬いほど裏写りが生じにくいことが認められ,また,本件発明1の構成要件1Cを充足しないように調整した被告製品において,高温保存の前後でエラーレートに有意な変化は生じなかったこと(乙204)からすれば,本件発明1の構成要件1C とが認められ,また,本件発明1の構成要件1Cを充足しないように調整した被告製品において,高温保存の前後でエラーレートに有意な変化は生じなかったこと(乙204)からすれば,本件発明1の構成要件1Cを充足しないように調整した 被告製品においては,硬度の高い磁性層表面を形成していること(原告は特に争っていない)によって,高温保存後の電磁変換特性の悪化が抑えられているものと認められる。 (なお,原告は,甲96の実験を根拠に,磁性層の硬度を高めたとしても裏写りは防止できないと主張するが,同実験においては,磁気テープの 硬度の指標として引張り強度が用いられているところ,裏写りによる磁気 テープの電磁変換特性の悪化を防止するための磁性層の硬度の指標としては,押込み強度が用いられるべきである(乙197・段落【0024】,【0026】,乙205)から,同実験によっても,磁性層の硬度(押込み強度)を高めた場合に裏写りが防止できないものと認めることはできない。また,原告は,エラーレートの検証がなぜ本件発明1の作用効果の検 証につながるのか説明がないなどと主張するが,磁気テープにおいて電磁変換特性が悪化した場合,エラーレートが上昇すること(乙204)からすれば,エラーレートの変化を検証することで電磁変換特性の変化も検証できるものと考えられる。)。 しかしながら,一方,証拠(乙206)によれば,本件発明1の構成要 件1Cを充足する被告製品においても,高温保存の前後でエラーレートに有意な変化は生じず,高温保存後の電磁変換特性の悪化が抑制されているものと認められるが,上記のとおり,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品は本件発明1の作用効果を奏していると認められるところ,被告製品において,硬度の高い磁性層表面を形成している が抑制されているものと認められるが,上記のとおり,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品は本件発明1の作用効果を奏していると認められるところ,被告製品において,硬度の高い磁性層表面を形成していることにより,本件発明 1の作用効果を超えて,独自の作用効果を奏していることを認めるに足りる証拠はない。 イ本件発明1の作用効果が被告製品の購入動機となっていないとの主張について被告らは,被告製品の顧客は,本件発明1の作用効果に着目して被告製 品を選択しているわけではなく,本件発明1の作用効果が被告製品の購入動機となっていないと主張する。 そこで検討するに,特許法102条2項の趣旨からすれば,同条項の推定を覆滅させる事由として認められるためには,特許権侵害がなかったとしても,被告製品の販売等による利益(の一部)は原告に向かわなかった であろう事由の存在が必要である。したがって,被告製品の顧客の購入動 機が単に本件発明1の作用効果に着目していなかったというのでは足りず(ゆえに,被告製品のパンフレットに本件発明1の作用効果がセールスポイントとして記載されていないのみでは推定覆滅事由足りえない。),被告製品の顧客の購入動機が,被告製品の独自の技術や性能に着目したものであったことを具体的に主張立証する必要がある。 そして,被告らは,被告製品の顧客の主要な購入動機として,被告製品が大記録容量及び高速データ転送速度を実現した製品である点,記録媒体としての磁気テープの利点(保存時に通電が不要である点等),単一ドライブを用いて時期テープカートリッジへのデータ記録を行った場合における,記録容量,転送レート及び記録速度の安定性(原告製品と比較してよ り優れた性能を有すること)を挙げるが,これらの点が被告製品独自 用いて時期テープカートリッジへのデータ記録を行った場合における,記録容量,転送レート及び記録速度の安定性(原告製品と比較してよ り優れた性能を有すること)を挙げるが,これらの点が被告製品独自のものであることや,仮に独自のものであったとしても,それが原告製品と比較して異なる程度,及び,これらの点が被告製品の顧客の主要な購入動機となっていたことを認めるに足りる証拠はないから,仮に本件特許権1の侵害がなかったとしても,これらの点のために,被告製品の販売等による 利益(の一部)は原告に向かわなかったであろうと認めるには足りない。 なお,前記アのとおり,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品は本件発明1の作用効果を奏していると認められるところ,被告製品において,硬度の高い磁性層表面を形成していることにより,本件発明1の作用効果を超えて,独自の作用効果を奏していることを認めるに足りる証拠はない し,仮に,被告製品において,磁性層の素材の硬度を高めることにより本件発明1と同様な独自の作用効果を一部奏しているとしても,そのような被告製品独自の作用効果がどの程度生じているのかは不明である上,その点が被告製品独自の購入動機となっていたとも認められない(被告自身が本件発明1の作用効果は購入動機となっていない旨主張している。また, 被告製品の広告(甲97)では,データの長期保存について記載されてい るところ,本件発明1の作用効果である長期保存後の裏写りの防止は,データの長期保存に資するものであるから,被告製品が本件発明1の作用効果を有していることは,間接的には購入の動機の一因になっているものと考えられるが,上記のとおり,そのような作用効果ひいては購入の動機が被告製品独自の構成によって生じたり,高められたりしたものと認め 果を有していることは,間接的には購入の動機の一因になっているものと考えられるが,上記のとおり,そのような作用効果ひいては購入の動機が被告製品独自の構成によって生じたり,高められたりしたものと認めるこ とはできない。)。したがって,仮に,被告製品が磁性層の素材の硬度を高めることで本件発明1の作用効果を一部奏しているとしても,そのことによって,仮に本件特許権1の侵害がなかった場合に,被告製品の販売等による利益(の一部)は原告に向かわなかったであろうと認めることはできない。 ウ以上のほか,被告らは,本件発明1の技術的範囲に属さない代替製品を製造・販売することできたことも主張するが,現にそのような代替製品を製造・販売していたものではなく,その可能性にとどまるものであるから,推定覆滅事由として認めることはできない。 したがって,特許法102条2項の推定を覆滅させる事由を認めること はできない。 (5) 損害額ア損害額以上からすれば,前記(3)で認定した被告らの限界利益額の全額が原告の被った損害と認められるから,被告らによる本件特許権1の侵害により原 告の被った損害は,別紙「被告らの利益額の合計額(被告自社製品)」及び別紙「被告らの利益額の合計額(被告OEM製品)」の「合計額」欄記載の各金額のとおりである。 イ弁護士費用本件事案の内容,複雑さ,上記損害額等を考慮すると,本件特許権1の 侵害と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は,別紙「損害額一覧(被 告自社製品)」及び別紙「損害額一覧(被告OEM製品)」の「弁護士費用相当損害額」欄記載の各金額と認めるのが相当である。 ウ合計以上から,被告らによる本件特許権1の侵害により原告が被った損害の合計は,別紙「損害額一覧(被告自 (被告OEM製品)」の「弁護士費用相当損害額」欄記載の各金額と認めるのが相当である。 ウ合計以上から,被告らによる本件特許権1の侵害により原告が被った損害の合計は,別紙「損害額一覧(被告自社製品)」及び別紙「損害額一覧(被告OEM製品)」の「合計額」欄記載の各金額であり,その合計は,被告自社製品について3億7131万8365円(本件期間①につき1億8294万3933円,本件期間②,③につき1億8837万4432円),被告OEM製品について46億8467万5777円(本件期間①につき17億2986万2240円,本件期間②,③につき29億5481万3537円)であると認められる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文第1項ないし第8項記載の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文第1項ないし第4項については相当でないから仮執行宣言を付さないこととして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官奥俊彦 裁判官髙櫻慎平 別紙当事者目録 第1事件・第2事件・第3事件原告富士フイルム株式会社(以下,単に「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士片山英二同服部誠同中村閑同黒田薫同佐志原将 誠同中村 閑 同黒田 薫同佐志原 将 吾同訴訟代理人弁理士黒川恵同古橋伸茂同加藤志麻子 同補佐人弁理士相田義明(第1事件・第2事件につき) 第1事件・第3事件被告ソニー株式会社(以下「被告ソニー」という。) 第2事件・第3事件被告ソニーストレージメディアマニュファクチャリング株式会社(以下「被告SSMM」という。) 第2事件・第3事件被告ソニーストレージメディアソリューションズ株式会社(以下「被告SSMS」という。) 上記3名訴訟代理人弁護士窪田英一郎同乾裕介同中岡起代子同今井優仁同本阿弥友子同(第3事件につき)鈴木佑一郎 別紙物件目録1 「LTX6000G」データカートリッジ以上 別紙物件目録2 1 以下の製品名及び製品番号により特定されるHewlett Packard Enterprise製のLTO7 以上 別紙物件目録2 1 以下の製品名及び製品番号により特定されるHewlettPackardEnterprise製のLTO7Ultriumカートリッジ(ただし,カートリッジに印字されている製品ロットコード の左から2桁目が「z」であり,かつ,製品を梱包した輸送箱に貼付されるラベルに視認できるように記載されている債務者らが定めた製品名の末尾が「Z」である製品を除く。)(1)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBRWdatacartridge製品番号:C7977A (2)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TB 960 datacartridgepalletwithoutcases製品番号:C7977AB(3)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBRW 20 datacartridgescustomlabeledlibrarypackwithoutcases製品番号:C7977AC (4)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TB 960 datacartridgepalletwithcases製品番号:C7977AD(5)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBRW 20 datacartridgesRFIDcustomlabeledwithcases製品番号:C7977AF (6)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TB 20 datacartridgeslibrarypackwithoutcases製品番号:C7977AH(7)製品名:HPELTO-7 Ultrium Ultrium 15TB 20 datacartridgeslibrarypackwithoutcases製品番号:C7977AH(7)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBRW 20 datacartridgescustomlabeledwithcases製品番号:C7977AL(8)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBRW 20 datacartridgesnon-customlabeledwith cases 製品番号:C7977AN(9)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBWORMdatacartridge製品番号:C7977W(10)製品名:HPELTO-7 Ultrium 15TBWORM 20 datacartridgescustomlabeledwithcases 製品番号:C7977WL 2 以下の製品番号により特定されるQuantumInc.,製のLTO7 Ultriumカートリッジ(ただし,カートリッジに印字されている製品ロットコードの左から2桁目が「z」であり,かつ,製品を梱包した輸送箱に貼付されるラベルに視認できる ように記載されている債務者らが定めた製品名の末尾が「Z」である製品を除く。)(1)MR-L7MQN-01(2)MR-L7MQN-02(3)MR-L7MQN-BC (4)MR-L7WQN-BC(5)MR-L7MQN-20(6)MR-L7LQN-BC以上 6)MR-L7LQN-BC以上

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