平成25(行コ)185 一般財団法人認可取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成23年(行ウ)第55号)

裁判年月日・裁判所
平成26年9月30日 大阪高等裁判所 その他
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判決文本文14,960 文字)

平成26年9月30日判決言渡平成25年(行コ)第185号一般財団法人認可取消請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用及び当審における参加費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 内閣総理大臣が平成23年2月1日付けで財団法人Aに対してした一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律45条の認可を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,内閣総理大臣が財団法人Aに対してした一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団・財団法人法」という。)及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という。)45条の認可(以下「本件認可」という。)は整備法117条各号の要件を満たしておらず違法であると主張して,被控訴人に対し,本件認可の取消しを求める事案である。原判決は,控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。 2 法令の定めは,原判決「事実及び理由」欄の第2の1(1頁22行目から4頁20行目まで)のとおりである。 3 前提となる事実は,原判決「事実及び理由」欄の第2の2(4頁21行目から9頁11行目まで)のとおりである。 4 争点及び当事者の主張は,争点3(定款変更内容基準適合性)について,次のとおり補足するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2の3(9頁12行目か ら17頁末行まで)のとおりである。 (控訴人の主張)(1) 旧民法では設立者の意思が保護されることが原則であ とおり補足するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2の3(9頁12行目か ら17頁末行まで)のとおりである。 (控訴人の主張)(1) 旧民法では設立者の意思が保護されることが原則であったところ,法人の運営継続の必要性をこれに優先させるとする議論は公益法人関連三法(一般社団・財団法人法,整備法,公益社団法人及び公益財団法人法の認定等に関する法律(以下「公益法人認定法」という。))の立法過程においてなされていないから,一般社団・財団法人法200条を,旧民法と異なり,定款変更における設立者の意思による絶対的拘束を認めず当該法人の運営継続のために必要がある場合には,設立者の意思に反し,又は当該財団法人の同一性を失わせるような定款変更であっても許容する趣旨の規定であるとすることはできない。むしろ,同条1項,2項は,設立者意思の保護のために規定された条項であり,同条3項による目的変更が許容されるのは,設立者の合理的意思に合致する場合に限られると解すべきである。 (2) また,同様に,特例財団法人(整備法40条1項により存続する一般財団法人)から一般財団法人への移行は義務付けられたものではなく,解散の道を選ぶこともできるから,法人の運営継続の必要性を設立者の意思に優先させて,整備法94条を,当該変更を行わなければ移行認可がされず,一般財団法人としての存続が不可能となるおそれがある場合には,当該財団法人の設立者の意思に反し,又は当該財団法人の同一性を失わせるような目的等の変更についても許容されると解することはできない。 (3) 控訴人への助成は,旧主務官庁から公益に関する事業と位置付けられていたから,整備法119条2項1号ハの継続事業のための支出として認定されるため,控訴人への助成を目的とする公益目的支出計画を立てることには支障は 助成は,旧主務官庁から公益に関する事業と位置付けられていたから,整備法119条2項1号ハの継続事業のための支出として認定されるため,控訴人への助成を目的とする公益目的支出計画を立てることには支障はなく,目的条項の変更を行わなければ移行認可がされないとはいえない。 (4) 残余財産帰属条項の変更によって,法的権利である財団法人清算時の残余財産分配請求権を奪うことは財産権の侵害となる。 (参加人の主張) (1) 旧民法でも,公益法人は,公益を実現する目的で法人格を認められた存在であり,その財産は,出捐により設立者の手を離れて法人の財産として公の規律に服し,税制上の優遇処置を受けて維持増大させることができたもので公益的性格を帯びることからすれば,設立者の意思を合理的に捉えることが妥当であるとされ,行政実務も,寄附行為の変更申請に対しては変更規定がない場合も含めて柔軟に対応しており,残余財産帰属条項についても,帰属先を特定団体等に帰属させることは無効であるとされ,寄附行為を変更してシプレ原則(可及的近似の原則)を導入するように指導していた。昭和63年変更は,この運用に沿うものであって,許容される。 (2) 公益法人関連三法の立法過程においても,定款変更について設立者の意思よりも新たな規律を優先すべきであり,例外的に設立者の意思を優先させる事項を設ける場合には明確に定めること,旧民法下の公益法人は,新たな制度における公益法人か新たな非営利法人のいずれかに簡易円滑に移行されることとされた。 (3) そして,一般社団・財団法人法200条3項は,設立者の意思によって目的条項の変更が制限されることを定めていない。整備法94条も設立者の意思によって目的条項が制限されると定めておらず,整備法が一般社団・財団法人法200条3項のような裁 3項は,設立者の意思によって目的条項の変更が制限されることを定めていない。整備法94条も設立者の意思によって目的条項が制限されると定めておらず,整備法が一般社団・財団法人法200条3項のような裁判所の関与の規定を設けなかったのは,5年以内に公益財団法人又は一般財団法人に移行しない限り解散と見なされる(同法46条)という事態は,およそ設立者には予見し得なかったことであるから,特例財団法人に関する限り,一般社団・財団法人法200条3項の要件が満たされていると考えられたからである。仮に整備法94条が,設立者の意思に反しないことを要件としているとしても,一般社団・財団法人法200条3項の要件が存在するときは,定款の変更を許容するのが設立者の合理的な意思であり,また,同項は事情変更の原則を明文化したものといえるから,定款の変更が許容されるというべきである。本件定款変更は,一般財団法人への移行のために必要な変更であって合理的であるから,許容される。 (4) 公益法人関連三法の立法過程において,現に活動している団体を強制的に解 散させることは,公益法人の活性化という改革の方針に反し,結社の自由との関連もあるから避けるべきであり,法人存続の必要性は当然である。 (5) 残余財産帰属条項による財団法人解散の際の財産権とは,一種の期待権にすぎず,憲法上保護に値する権利ではない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も控訴人の請求は,理由がないと判断する。 2 争点1(原告適格)についての判断は,以下に補足するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1(18頁2行目から21頁10行目まで)のとおりである。 (1) 取消訴訟の原告適格について規定する行政事件訴訟法9条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは 3の1(18頁2行目から21頁10行目まで)のとおりである。 (1) 取消訴訟の原告適格について規定する行政事件訴訟法9条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項)。 (2) 上記のとおり,控訴人は,本件認可の本来的効果として,自己の権利利益を侵害される関係にあるというべきであるが,控訴人は,本件認可の相手方以外の者であるから,これが法律上保護された利益であるかどうかについて検討する。整備法は,旧民法に基づき成立された財団法人について,その寄附行為を整備法40条2項により定款とみなした上で,定款の変更に関する経過措置を定め(同法94条), その変更について特例民法法人については旧主務官庁の認可を要しない(同法102条)とし,被控訴人が,定款の変更も含めて移行認可するものとされているところ,後記のとおり,同法は,旧民法に基づく公益法人について,公益性の判断基準が不明確であり,営利法人類似の法人や共益的な法人が主務 とし,被控訴人が,定款の変更も含めて移行認可するものとされているところ,後記のとおり,同法は,旧民法に基づく公益法人について,公益性の判断基準が不明確であり,営利法人類似の法人や共益的な法人が主務大臣の許可によって多数設立され,税制上の優遇措置等を受けていることを是正する目的をもって立法されたものである。そして,特例民法法人から一般社団法人又は一般財団法人への移行について,整備法117条は,定款変更内容基準及び公益目的支出基準を規定し,一般社団法人又は一般財団法人に移行する特例民法法人が,一般社団・財団法人法の予定する目的・事業内容や組織に合致しない事態を防止するとともに,特例民法法人の保有している財産が移行後の法人によって公益目的以外に費消される事態を防止するものである一方,同法119条2項1号ハは,特例民法法人が一般社団法人又は一般財団法人に移行後も,公益目的支出計画において,従来の公益事業のための支出を継続することを認めている。同法117条2号は,公益目的支出計画が「適正」であることを要求しているから,移行認可の際の定款の変更により,公益法人について権利利益が得ることができた者が移行認可による定款変更の効力完成によって経済的不利益を被ることに配慮して,「適正」な公益目的支出計画によって従来の公益事業のための支出を継続されることもその範囲で保護している。したがって,「適正」な公益目的支出計画によって,特例民法法人から公益事業のための支出を継続されることは,整備法によって保護された利益であると解される。 (3) 一般社団・財団法人法は,一般財団法人の定款の変更について,評議員の決議をもって変更することができるとしながら,設立者が同決議による変更可能性を定めない限りは,その定めた目的並びに評議員の選任及び解任の方法を例外とし(同法 般財団法人の定款の変更について,評議員の決議をもって変更することができるとしながら,設立者が同決議による変更可能性を定めない限りは,その定めた目的並びに評議員の選任及び解任の方法を例外とし(同法200条1項),その設立の当時予見することができなかった特別の事情により,上記選任及び解任の方法を変更しなければその運営の継続が不可能又は著しく困難となるに至ったときは,裁判所の許可を得て,変更できるものとしている(同条3項)。これは事情変更の原則の考え方に基づくものであると解される(丙100(京 都大学大学院法学研究科教授Bの意見書)参照)ところ,裁判所の許可が要件とされている。これに対し,整備法は,特例財団法人について,一般社団・財団法人法200条を適用しないと定める(整備法94条1項)一方で,単に定款に定款の変更に関する定めがある特定財団法人は,当該定めに従って,定款の変更をすることができる(同条2項)としており,定款の変更について,一般社団・財団法人法200条のような制限を置いていない。これは一般社団・財団法人法と同様の考え方に基づくものである(丙100(上記意見書),丙145(弁護士(元内閣府公益認定等委員会委員)Cの意見書)各参照)が,裁判所の許可を要件とせず,旧主務官庁の認可のみを要件とする(整備法94条6項)ものであることからすると,本件認可については,法律上保護された利益を幅広く認めることが相当であるといえる。 (4) したがって,控訴人が,本件認可の効果として侵害され得る自己の権利利益は,法律上保護された利益であると認められる。 以上によれば,控訴人は,本件認可の取消しを求める原告適格を有すると認められる。 3 争点2(訴えの利益)についての判断は,原判決「事実及び理由」欄の第3の2(21頁11行目から22 れる。 以上によれば,控訴人は,本件認可の取消しを求める原告適格を有すると認められる。 3 争点2(訴えの利益)についての判断は,原判決「事実及び理由」欄の第3の2(21頁11行目から22頁2行目まで)のとおりである。 4 争点3(定款変更内容基準適合性)について(1) 控訴人は,本件定款変更は,実体法上無効であるから,その効力を完成させる移行認可も無効又は違法となるとして,本件認可の無効又は違法事由として,本件定款変更が無効であると主張する。そして,控訴人は,本件定款変更が実体法上無効である理由として,旧民法の公益財団法人については,設立者の意思に反する目的の変更は,寄附行為に変更を可能とする規定があってもできないと解されており,一般社団・財団法人法200条も,一般財団法人の目的の変更を厳しく規制しているから,整備法94条の下でも,無制限に目的を変更するような定款変更の案は,許容されないと主張する。 (2) しかし,当裁判所は,本件定款変更は実体法上有効であると解する。 (3) 一般に,旧民法に基づく財団法人の寄附行為(旧民法39条)については,旧民法に変更に関する規定はないところ,寄附行為は,相手方のない単独行為であり,財団法人は,私的自治ないし法律行為自由の原則と私有財産制度を基礎として,設立者の意思とその財産の出捐に基づき設立されるものであるから,設立者の意思表示である寄附行為を変更することは,設立者が寄附行為に規定した方法の実行としてなされる場合や事務所の所在地等の形式的な事項を変更する場合を除いて,許されないと解されていた(甲71,93(京都大学名誉教授D及び神戸大学大学院法学研究科教授E作成の意見書)各参照)。 そして,上記のとおり,原始寄附行為(参加人の設立当時の寄附行為)(甲1)には, れないと解されていた(甲71,93(京都大学名誉教授D及び神戸大学大学院法学研究科教授E作成の意見書)各参照)。 そして,上記のとおり,原始寄附行為(参加人の設立当時の寄附行為)(甲1)には,①参加人は「J派F寺ノ維持ヲ確保スル」ことを目的とすること(1条)(目的条項),②参加人が解散したときは参加人に属する財産は「一切J派F寺ニ寄附スル」ものとすること(36条)(残余財産条項),目的条項及び残余財産条項は変更することができないこと(37条)(変更条項)が定められていたから,上記の一般的な見解からすれば,目的条項及び残余財産条項を変更することは許されないことになるとも考えられる(甲71,93(上記意見書)各参照)。 (4) しかし,原始寄附行為が「J派F寺ノ維持ヲ確保スル」とするところの「J派F寺」が,申請時寄附行為(整備法の施行に伴い整備法40条2項の規定により特例財団法人の定款とみなされた参加人の寄附行為)にいう「F寺(京都市α×番地)」と同一であるとは認められない。そもそも,控訴人は,昭和27年4月10日に宗教法人法に基づいて設立された宗教法人であるから,原始寄附行為における「J派F寺」は,法人である控訴人を指すものではない上,「J派F寺」からは,現在に至るまでに,多数の宗教法人及び学校法人が派生している。 なお,上記のとおり,申請時寄附行為にいう「F寺(京都市α×番地)」のF寺が,「京都市α×番地」に所在する礼拝施設であるいわゆるH寺(I)を指し,同所を主たる事務所と定める宗教法人(包括宗教団体)である控訴人と実質的に同視 できるのは,上記前提となる事実のとおり,原始寄附行為が,昭和39年変更により「J派の本山であるF寺」の助成を行うことを目的とする旨の規定に,昭和55年変更により「京都市α×番地F寺」の助成を行 できるのは,上記前提となる事実のとおり,原始寄附行為が,昭和39年変更により「J派の本山であるF寺」の助成を行うことを目的とする旨の規定に,昭和55年変更により「京都市α×番地F寺」の助成を行うことを目的とする旨の規定に,さらに,昭和57年変更により「F寺(京都市α×番地)の助成および納骨堂の経営」を目的とする旨の規定に,それぞれ変更された結果にすぎない。 したがって,原始寄附行為における設立者の意思においても,控訴人が参加人からの唯一の受益者であったとは直ちには認められない。 (5) そして,寄附行為という法律行為が法律効果を生ずるのは,法律が意思表示者の意思に従って法律効果を生じさせることを妥当とされる範囲におけるものであるから,原始寄附行為における設立者の意思が法律効果を生ずるのも,旧民法が,財団法人の寄附行為として予定していた範囲においてであると解すべきである。 旧民法34条は,「祭祀,宗教,慈善,学術,技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセザルモノ」は主務官庁の許可を得て法人とすることができると定めているから,旧民法が財団法人の寄附行為として設立者の意思の実現に助力するのは,その寄附行為が「公益ニ関スル」ものであることと「営利ヲ目的トセザル」ものであることを前提とするものである(丙171(K大学法科大学院教授L作成の意見書)参照)。 旧民法34条における「公益」とは,社会全般の利益ないしは不特定多数人の利益であると解するのが一般的な見解である(丙100(京都大学大学院法学研究科教授Bの意見書),丙133(一問一答中間法人法)各参照)。したがって,財団法人によって利益を受ける者が公共的な広がりを持つことが必要であると考えられる。財団法人の制度には,公共的な関心に基づく合理的な牽制が働くとされている 一問一答中間法人法)各参照)。したがって,財団法人によって利益を受ける者が公共的な広がりを持つことが必要であると考えられる。財団法人の制度には,公共的な関心に基づく合理的な牽制が働くとされているところである(丙122(M大学教授Nの意見書)参照)。もっとも,「宗教」に関する財団法人の寄附行為が特定の受益者を定めていたとしても,その特定の受益者によって不特定多数人が「宗教」に関する利益を受ける関係があれば,特定の受益者の利益であっても,その利益が公共的な広がりを持つことによって,旧民法の 予定する「公益」に関する財団法人の寄附行為であると解される余地がある。 (6) 原始寄附行為における目的条項は,「J派F寺ノ維持ヲ確保スル」ことを目的とするものであって,これを「J派F寺」という宗派(宗教団体)の維持を確保することのみを目的とするものであると解するならば,その信者という特定人からなる団体の利益を目的とし,直接には,不特定多数人の利益を目的とするものとはいえないことになる。しかし,信教の自由としての布教活動を通じて,「J派F寺」という宗派(宗教団体)から不特定多数人が「宗教」に関する利益を受けるという関係があったとすれば,旧民法の予定する公益を目的とするものであったと解する余地はある。なお,当然のことながら,ここにいう「公益性」の概念は,旧民法の規定が予定する「公益目的」に関するものであり,この意味での「公益性」がないとされる宗教的な行為であっても,それが信教の自由に関して憲法20条の保護の対象となり得ることを否定するものではなく,また,宗教それ自体が公益性を有すると解される面のある(甲71,93(京都大学名誉教授D及び神戸大学大学院法学研究科教授E作成の意見書)各参照)ことを否定するものではない。すなわち,上記の「公益性」は, 宗教それ自体が公益性を有すると解される面のある(甲71,93(京都大学名誉教授D及び神戸大学大学院法学研究科教授E作成の意見書)各参照)ことを否定するものではない。すなわち,上記の「公益性」は,あくまで旧民法の規定が予定する「公益目的」に適合するかどうかという限定的な意味におけるものである。 そこで,この意味における「公益目的」との適合性について検討する。原始寄附行為によって設立された参加人は,その名称を「G財団」とするものであり,その際の宗報134号「G財団の設立」(甲1)も,相続講が本廟維持の確立と教学の振興を期すものであったのに対し,「特に本廟の維持を唯一の目的」とするものであるとしていることからすれば,専ら礼拝施設であるいわゆるH寺(I)の維持のみを目的とするものであったと解される。そうすると,唯一の目的とされた特定の礼拝施設であるいわゆるH寺(I)の維持それ自体は,旧民法の予定する公益としての不特定多数人の利益を目的とするとはいえず,上記の「公益目的」に適合するものであるとは認められない。 (7) また,原始寄附行為における残余財産条項は,参加人が解散したときは参加 人に属する財産を「一切J派F寺ニ寄附スル」ものとするものであって,財団法人としての活動の成果をすべて「J派F寺」という礼拝施設であるいわゆるH寺(I)に寄附するものと定めるものであるから,公益である不特定多数人の利益との関係で旧民法の趣旨に適合するものではなかったと解される(丙64(神戸大学大学院法学研究科教授Oの意見書)参照)。 (8) 以上によれば,原始寄附行為における目的条項及び残余財産条項に現れた設立者の意思は,旧民法に基づく財団法人の寄附行為に要求される公益の実現に適う範囲において法律効果が実現されるものであるから,変更条項が目的条項 ,原始寄附行為における目的条項及び残余財産条項に現れた設立者の意思は,旧民法に基づく財団法人の寄附行為に要求される公益の実現に適う範囲において法律効果が実現されるものであるから,変更条項が目的条項及び残余財産条項は変更することができないと定めていたとしても,その法律効果をそのまま肯定することができないものであったと解される。 しかし,法人格を創設する財団法人制度を利用した設立者の意思は,その範囲で尊重されるべきであり,また,いったん主務官庁から財団法人設立の認可を得て法人格を取得し,多数の権利義務や法律関係を生じている以上,原始寄附行為における目的条項及び残余財産条項に現れた設立者の意思をそのまま尊重すべきではないとしても,これによって原始寄附行為全体が無効となるものであると解することはできない。 上記のとおり,原始寄附行為が,その文言からは,専ら礼拝施設であるいわゆるH寺(I)の維持を目的とするものであると解されるとしても,設立者は,あくまで旧民法における公益財団法人として参加人を設立する意思を有していたものであるから,その活動により不特定多数人が「宗教」に関する利益を受けることを目的とするものと理解し,その範囲で設立者の意思を尊重すべきである。 なお,原始寄附行為に現れた設立者の意思が,10万円の財産を出捐して,これを参加人が運用し,その運用利益を通じて,「J派F寺の維持を確保する」ために使用し,出捐された残余財産は,解散時に「J派F寺」に帰属するものとすることにあるとすれば,むしろ信託契約が成立しているとみるのが素直であるとする見解もある(甲66(京都大学大学院法学研究科教授P作成の意見書)参照)が,信託 契約の締結といえる合意の事実はうかがわれないだけでなく,設立者の意思は,財団法人の設立にあったことは明らか 見解もある(甲66(京都大学大学院法学研究科教授P作成の意見書)参照)が,信託 契約の締結といえる合意の事実はうかがわれないだけでなく,設立者の意思は,財団法人の設立にあったことは明らかであるから,あくまで寄附行為の効力の問題として理解すべきである。 (9) そして,公益法人関連三法の施行以前に,目的条項は,昭和39年変更により「J派の本山であるF寺」の助成を行うことを目的とする旨の規定に変更され,昭和55年変更により「京都市α×番地F寺」の助成を行うことを目的とする旨の規定に変更され,さらに,昭和57年変更により「F寺(京都市α×番地)の助成および納骨堂の経営」を目的とする旨の規定に変更されており,残余財産条項は,昭和39年変更により,参加人の解散に伴う残余財産は「F寺に寄附する」ものとする旨の規定に変更され,昭和63年変更により,参加人の解散に伴う残余財産は理事会及び評議員会において理事現在数及び評議員現在数の各4分の3以上の議決を経,かつ,主務官庁の許可を受けて,「第3条の目的と目的を同じくする,又は類似の目的を有する公益法人,又は団体に寄附する」ものとする旨の規定に変更されていた(申請時寄附行為)。 (10) 政府は,平成15年6月27日,「公益法人は,公益性の判断基準が不明確であり,営利法人類似の法人や共益的な法人が主務大臣の許可によって多数設立され,税制上の優遇措置や行政の委託,補助金,天下りの受け皿等について様々な批判,指摘を受けるに至っている。」との内容を含む「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」を閣議決定し,平成18年3月10日,公益法人関連三法案を閣議決定し,これを第164回国会に提出し,同法案は,同年5月26日,成立したものである(乙12,丙70)。そこで,公益法人関連三法において,旧民法の 定し,平成18年3月10日,公益法人関連三法案を閣議決定し,これを第164回国会に提出し,同法案は,同年5月26日,成立したものである(乙12,丙70)。そこで,公益法人関連三法において,旧民法の規定により設立された財団法人である参加人は,整備法の施行の日以後は,一般社団・財団法人法の規定による一般財団法人として存続するものとされた(整備法40条1項)が,特例財団法人として,整備法の施行の日から起算して5年を経過する日までの期間内に,整備法の定めるところにより,移行認可を受け,一般財団法人となることができる(同法45条)とした。 (11) 一般社団・財団法人法200条は,一般財団法人は,その成立後,原則として評議員会の決議によって定款を変更することができるが,目的並びに評議員の選任及び解任の方法に係る定款の定めについては変更することができない(同条1項)ものの,設立者がこれらの定めを評議員会の決議によって変更することができる旨を定款で定めたときは,評議員会の決議によって,これらの定めを変更することができる(同条2項)とした。これは,「公益法人制度改革に関する有識者会議」の下の「非営利法人ワーキンググループ」における議論(丙46,57~60,72~75,79~84)を踏まえて,目的又は評議員の選任及び解任の方法に係る定款の定めに現れた財団法人の設立者の意思を尊重するものであると解される。 しかし,同条は,その設立の当時予見することのできなかった特別の事情により,目的又は評議員の選任及び解任の方法に係る定款の定めを変更しなければその運営の継続が不可能又は著しく困難となるに至ったときは,裁判所の許可を得て,評議員会の決議によって,これらの定款の定めを変更することができるとしており(同条3項),事情変更の原則の考え方が適用され 運営の継続が不可能又は著しく困難となるに至ったときは,裁判所の許可を得て,評議員会の決議によって,これらの定款の定めを変更することができるとしており(同条3項),事情変更の原則の考え方が適用される特別な事態が生じた場合には,裁判所の許可を要件として,目的についての設立者の意思に変更を加えることを認めている。 これに対し,整備法は,評議員設置特例財団法人を除く特例財団法人については,一般社団・財団法人法200条の規定を適用しないとした上で(整備法94条1項),その定款に定款の変更に関する定めがある場合には,当該定めに従って定款の変更をすることができる(同条2項)が,その定めがない場合は,理事(清算中の特定財団法人にあっては,清算人)の定めるところにより,定款の変更に関する定めを設ける定款の変更をすることができる(同条3項)とし,特例財団法人の定款の変更は,旧主務官庁の認可を受けなければ,その効力を生じないとする(同条6項)。 もっとも,整備法は,移行認可を受けようとする特例民法法人が移行の登記をすることを停止条件としてした整備法117条各号に掲げる基準に適合するものとするために必要な定款の変更については,旧主務官庁の認可を要しないものとしている (同法118条,102条)。 そして,特例民法法人についての移行認可(整備法117条)の基準として,移行認可の申請書に添付された定款の変更の案(移行認可の申請をした特例民法法人において定款の変更について必要な手続を経ているものに限る。)の内容が一般社団・財団法人法及びこれに基づく命令の規定に適合するものであること(同条1号。 定款変更内容基準)を要するものとしている。 (12) 整備法94条1項が,評議員設置特例財団法人を除く特例財団法人については,一般社団・財団法人法200条の に適合するものであること(同条1号。 定款変更内容基準)を要するものとしている。 (12) 整備法94条1項が,評議員設置特例財団法人を除く特例財団法人については,一般社団・財団法人法200条の規定を適用しないものとしているのは,整備法の施行の日から起算して5年を経過する日までの期間(移行期間)内に,移行認可を受けて,一般財団法人となることができなければ,原則として,移行期間の満了の日に解散したものとみなされる(整備法45条,46条1項本文)ことを前提として,一般社団・財団法人法200条の定める目的又は評議員の選任及び解任の方法に係る定款の定めに現れた財団法人の設立者の意思の尊重のための制限を適用せず,これらの定款の定めについても移行認可の基準に適合するものに変更することを当然に許容しているものと解される。 内閣府の「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)平成23年9月版」(丙47)は,評議員を設置しない特例財団法人の定款の中に特定の条項を変更してはならない旨の規定がある場合であっても,当該規定を変更しなければ一般財団法人に移行することができず解散しなければならなくなるようなときには,仮に,変更が禁止されているのが目的規定等であっても,定款の中の定款変更に関する定めに従い(当該定めがない場合は,理事が定める手続に従って定款変更に関する定めを設ける定款変更を行った上,新たな定款変更に関する定めに従い),特定の条項の変更を禁止する旨の規定を削除又は変更するとともに当該条項を新制度に適合させる内容に変更する定款変更の手続を行い,旧主務官庁の認可を受けることができるとしているのも,上記解釈と結論を同じくするものである(乙15(Q大学法学研究科教授Rの意見書),丙64(神戸大学大学院法学研究科教 授Oの意見書) い,旧主務官庁の認可を受けることができるとしているのも,上記解釈と結論を同じくするものである(乙15(Q大学法学研究科教授Rの意見書),丙64(神戸大学大学院法学研究科教 授Oの意見書)各参照)。 (13) 上記のとおり,公益法人関連三法は,「公益法人は,公益性の判断基準が不明確であり,営利法人類似の法人や共益的な法人が主務大臣の許可によって多数設立され,税制上の優遇措置や行政の委託,補助金,天下りの受け皿等について様々な批判,指摘を受けるに至っている」ことから,これを是正するために立法されたものと解されるところ,参加人の原始寄附行為は,専ら礼拝施設であるいわゆるH寺(I)の維持を目的とするものであって,旧民法の予定する公益としての不特定多数人の利益を目的とするものというには疑問があり,また,原始寄附行為における残余財産条項も,財団法人としての活動の成果をすべて礼拝施設であるいわゆるH寺(I)に寄附するものと定めるものであるから,公益としての不特定多数人の利益との関係では法の趣旨に適合するものではなかったと解される。 上記のとおり,申請時寄附行為は,参加人は,「F寺(京都市α×番地)の助成および納骨堂の経営」を目的とする旨を規定する(3条)ところ,この「京都市α×番地」の「F寺」は,同所に所在する礼拝施設であるいわゆるH寺(I)を指すことが明らかであり,同所を主たる事務所と定める宗教法人(包括宗教団体)である控訴人と実質的に同視されるものである。もっとも,残余財産条項については,理事会及び評議員会において理事現在数及び評議員現在数の各4分の3以上の議決を経,かつ,主務官庁の許可を受けて,「第3条の目的と目的を同じくする,又は類似の目的を有する公益法人,又は団体に寄附する」ものとされている(30条)。 そこで,参加人は 数の各4分の3以上の議決を経,かつ,主務官庁の許可を受けて,「第3条の目的と目的を同じくする,又は類似の目的を有する公益法人,又は団体に寄附する」ものとされている(30条)。 そこで,参加人は,申請時寄附行為を変更して,目的条項を「勧学布教,学事の振興」の精神の下,日本及び日本国民の財産であるF寺伝承の有形,無形の文化及び広く佛教文化を興隆する事業を行い,広く国民の教化善導を図り,これを広く国際社会に及ぼすことにより,人類共通の叡智を構築し,もって世界の精神文化発展に寄与することを目的とする(3条)とし,残余財産条項を,評議員会の決議を経て,公益法人認定法5条17号に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与するものとする(34条)とする本件定款案をもって申請したものである。 上記のとおり,原始寄附行為の目的条項及び残余財産条項は,いずれも旧民法に基づく財団法人の寄附行為として合理的なものであるとはいいがたく,申請時寄附行為も,目的条項については,なお公益目的として問題が残されてはいたものの,本件定款案においては,公益法人関連三法の趣旨及び手続に沿って,いずれも旧民法に基づく財団法人の寄附行為としても本来合理的な内容のものに変更されたものとみることができるところ,上記のとおり,設立者は,旧民法における公益財団法人として参加人を設立する意思を有していたものであるから,その活動により不特定多数人が「宗教」に関する利益を受けることを目的とするものと理解し,その範囲で設立者の意思を尊重すべきであるところ,本件定款変更は,その範囲内における変更であると認められる。 (14) そうすると,設立者の意思との関係で本件定款変更が無効であるとは認められない。 5 争点4(公益目的支出基準適合性)についての判断は,原判決「事実及び理 る変更であると認められる。 (14) そうすると,設立者の意思との関係で本件定款変更が無効であるとは認められない。 5 争点4(公益目的支出基準適合性)についての判断は,原判決「事実及び理由」欄の第3の4(36頁17行目から39頁10行目まで)のとおりである。上記のとおり,信託契約が成立したものとは認められず,また,本件定款変更が無効であるとは認められない。 6 よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官林圭介 裁判官吉川愼一 裁判官久末裕子

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