平成14年12月13日判決言渡平成14年(少コ)第1281号損害賠償請求事件(以下「甲事件」という)平成14年(ハ)第11956号損害賠償請求事件(以下「乙事件」という) 主文 1 甲事件原告(A)の請求を棄却する。 2 乙事件被告(A)は,乙事件原告(B)に対し,金7万5000円を支払え。 3 乙事件原告(B)のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,甲事件については甲事件原告の負担とし,乙事件についてはこれを5分し,その4を乙事件原告の負担とし,その余を乙事件被告の負担とする。 5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求(甲事件)甲事件被告(B)は,甲事件原告(A)に対し,金27万4000円を支払え。 (乙事件)乙事件被告(A)は,乙事件原告(B)に対し,金31万5000円を支払え。 第2 事案の概要本件は,建物修繕の請負契約の注文者と請負人が,修繕の工事が途中で中断したのは相手方の責任であるとして,それぞれ損害の賠償を求めている事案である。 1 請求の原因(甲事件)(1) 甲事件原告(乙事件被告)A(以下「A」という)は,甲事件被告(乙事件原告)B(以下「B」という)との間で,下記内容の請負契約(以下「本件請負契約」という)を締結した。 ① 契約の日平成14年5月25日② 契約の内容ア葛飾区a丁目b番c号に所在するAが所有する賃貸用建物の廊下,トイレ並びに2階和室2室の大壁工事などイ工事期間材料入荷後7日以内に完成ウ請負代金 13万5 イレ並びに2階和室2室の大壁工事などイ工事期間材料入荷後7日以内に完成ウ請負代金 13万5000円ただし,契約時に前金として6万円を支払い,残金は工事完成時に支払う。材料は,原告の費用で購入・提供する。 (2) Aは,Bの指示に基づき,平成14年6月1日に工事用の材料を購入した。その代金は合計7万1656円である。 (3) Bは,平成14年6月2日に工事に着手し,翌3日まで作業を続けたが,その工事部分には,目的が達成できないような欠陥があり,そのことを注意すると,Bは一方的に工事を中止した。 (4) よって,AはBに対し,本件請負契約を解除すると共に,これによって生じた次の損害の賠償を求める。 ①前払金6万円 ②材料費代4万2006円 ③産業廃棄物代3万円 ④取り外し代(原状回復費用)7万円 ⑤賃貸料1か月分(逸失利益)7万00円合計27万4006円(なお,このうち6円は放棄する)(乙事件)(1) Bは,Aとの間の本件請負契約に基づき,平成14年6月2日工事を開始したが,同年6月3日,Aから工事の具合について理由のない苦情電話を受け,口論となった。 (2) Bは,同年6月5日,工事のために工事現場へおもむいたところ,建物の錠が取り替えられ建物への出入りができなくなったため,仕事の続行が不可能となった。 (3) Bは,注文者であるAの上記違反行為により,本件請負契約の履行ができなくなったので,本件請負契約を解除し,これによってBが被った次の損害の賠償を求める。 ①工事人 た。 (3) Bは,注文者であるAの上記違反行為により,本件請負契約の履行ができなくなったので,本件請負契約を解除し,これによってBが被った次の損害の賠償を求める。 ①工事人3人の2日分の手当金12万円 ②請負残代金7万5000円③追加水漏れ直し代2万円 ④アドバイス料10万円合計31万500 0円 2 争点注文主(A),請負人(B)のいずれに債務不履行責任が存するか第3 争点に対する判断 1 Bの債務不履行責任Aは,Bの行った工事がずさんであったと主張し,それを証する写真(甲事件・甲第10号証)を提出する。これによると,ボードとボードの間に段差があったり,すき間部分が随所にみられるなどの状況がみられる。しかし,Bの供述によれば,これらの段差やすき間は,あくまでも工事途中の段階のものであり,仕上げの段階で,パテを施したりするなどの方法で補修する予定であり,また,少なくとも,クロス張りの段階で,クロス張り業者の指摘があればこれを補修することにしていたという。 Bは,見習い期間を除き約35年間,本件と同様の内装工事経験を有しており,また,「C」という名称で地元で長く業を営んでいた事実(B本人)等に照らすと,これまで培ってきた信用を覆し自分の立場を強いて悪くするようなずさんな工事をすることは,特段の事情のない本件においては,経験則上,考えられない。 そして,前記証拠によっても,すでに完成した工事部分に目的が達成できないほどの欠陥があったとは認められない。 ところで,本件工事は,Bが工事を中止したことにより未完成となっているが,Bが工事を中止せざるを得なくなったのは,平成14年6月5日,Aが工事現場の建物の錠を取り替えたため(A,B各本人),Bら工事人が工事現場への出入りができな 中止したことにより未完成となっているが,Bが工事を中止せざるを得なくなったのは,平成14年6月5日,Aが工事現場の建物の錠を取り替えたため(A,B各本人),Bら工事人が工事現場への出入りができなくなったためである。Aが工事現場の錠を取り替えたのは,窓のそばのボードが欠けたような状態になっていたため,6月3日の夜,Bに対し,なぜそのような穴があるのかについて確認の電話を入れたところ,Bと口論となり,Bを「ど素人」呼ばわりするなど,仕事の仕方にまで干渉するに至り(B本人,弁論の全趣旨),Bとの信頼関係を喪失させたことが原因である。そして,Aが錠を取り替えた行為は,AがBに対し,Bが工事を続行するのを拒否する意思を表したものと解することができる。 すなわち,工事の中止は,その多くがAの言動に基因するものであり,Aがこのような態度に出ることは前記事情に照らすと何ら合理的な理由がないのであるから,本件請負契約にかかる仕事が完成しない責任をBに負わせることはできない。 2 Aの債務不履行責任前記認定事実のとおり,Aは,何ら合理的な理由がないのに,Bの工事の仕方についてBを中傷し,工事現場の錠を取り替えるなど,事実上Bが工事を続行することを不能ならしめたものである。本件請負契約は,Aが所有する建物の壁の下地工事を内容とし,請負人が建物の内部に入らなければその仕事を遂行することができない性質のものであるから,建物への出入りを禁じたAの行為は,注文者としての債務不履行に該当すると解される。したがって,Bは,本件請負契約を解除し,これによって被った損害をAに対し請求することができる。 3 Bの損害額Bは,本件請負契約の解除により,予定どおり工事が完成していた場合に得ることのできた請負代金残額7万5000円の利益を喪失した よって被った損害をAに対し請求することができる。 3 Bの損害額Bは,本件請負契約の解除により,予定どおり工事が完成していた場合に得ることのできた請負代金残額7万5000円の利益を喪失したのであるから,この分を損害として認めることができる。しかし,追加水漏れ直し並びにアドバイスについては,Bが本件工事に伴うサービスとして行ったものであるから(A,B各本人),これを損害と認めることはできない。また,工事人3人分の2日分の手当金については,上記残額7万5000円分に含まれていると解すべきであるから,特段の理由のない限り,これを損害として認めることはできない。 4 結論以上によると,Bの請求は,金7万5000円の限度で理由があり,また,Aの請求は理由がないので,それぞれ主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第1室裁判官廣瀬信義
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