【DRY-RUN】○ 主文 一 本件訴を却下する。 二 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求める裁判 一 原告ら (一) 被告が群馬県碓氷上水道企業団(以下単に企業団という)に対して、昭和 四九年
○ 主文一本件訴を却下する。 二訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一原告ら(一) 被告が群馬県碓氷上水道企業団(以下単に企業団という)に対して、昭和四九年六月一九日付厚生省環第五一四号をもつてした別紙(一)記載の認可処分を取消す。 (二) 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決。 二被告(一) 本案前の申立主文と同旨の判決(二) 本案に対する申立 1 原告らの請求を棄却する 2 訴訟費用は原告らの負担とするとの判決。 第二当事者の主張一原告らの請求の原因(一) 原告らは、いずれも利根川水系碓氷川に別紙(二)記載の水利権を有している。 (二) 企業団の経営する水道事業は、水源を碓氷川として昭和三三年に給水を開始して以来給水区域、給水人口、給水量を次第に増加し、昭和四九年五月一〇日現在の給水区域は、<地名略>及び安中市で合計三〇区域、給水人口は四万人、一日最大給水量は一万四〇〇〇立方メートルである。 (三) ところが企業団は、昭和四九年五月一〇日被告に対し次の内容を有する水道事業経営変更の認可申請をし、被告は右申請に対し昭和四九年六月一九日申請どおりの認可処分をした。 1 給水区域として新たに<地名略>、安中市の<地名略>外五区域を加える。 2 給水人口を六万人とする。 3 一日最大給水量を三万六〇〇〇立方メートルとする。 (四) 本件認可処分の違法性 1 企業団は本件認可申請に際し、関係水利権者である原告らの承諾を得ず、また被告は本件認可申請の審査に際し、原告らの意見も聞かず、同意も得ず、原告らの水利権に対する影響を充分調査検討もしないという違法な手続を進めて別紙(一)記載の本件認可処分をした。 2 本件認可処分は、企業団の従来の水道事業を一日最大給水量において約二・六倍に増加することを認め 利権に対する影響を充分調査検討もしないという違法な手続を進めて別紙(一)記載の本件認可処分をした。 2 本件認可処分は、企業団の従来の水道事業を一日最大給水量において約二・六倍に増加することを認めるものであるから広範囲の水利権に影響を与え、原告らの水利権を侵害することは明白である。 二被告の本案前の主張本件訴えは、原告適格を欠き、また訴えの利益を欠く不適法なものであり、却下されるべきである。その理由は次のとおりでである。 (一) 水道事業の認可制度について水道事業は国民生活に欠くことのできない水需要を充たす重要な性質を有している。 そこで法は、水道事業をして清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もつて公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与せしめる(水道法一条)との見地から、水道事業の経営及び既存水道事業者の事業変更には、厚生大臣の認可を要することとしている(同法六条一項、一〇条一項)。法の定める認可基準を要約すれば、水道事業計画及び計画遂行の確実性、合理性と当該水道事業自体の一般的必要性、公益性の存在であり、右認可基準適合性の判断は厚生大臣の行政裁量に委ねられており(同法八条、一〇条二項)、水道法一条に規定する公共的見地から判断される。 (二) 水道事業の認可処分と水利権水道事業の内容である水の供給が、河川によつて代表される水源からの取水により成り立つことは明らかである。このことから水道法八条二号の解釈として、当該水道事業計画遂行上必要な水利権が確保されていること、又は水利権確保の蓋然性が高度であることを要求されるとする考えも成り立ちうる。 しかし、河川からの取水は、これを必要とする者の恣意によつてなしうるのではなく、必ず河川管理者の許可を要するとされ、右許可権は河川管理者の専権に属する(河川法二三条、一〇二条一号)。このことは水道事業者 し、河川からの取水は、これを必要とする者の恣意によつてなしうるのではなく、必ず河川管理者の許可を要するとされ、右許可権は河川管理者の専権に属する(河川法二三条、一〇二条一号)。このことは水道事業者の場合も例外ではない。 そして河川管理者のする水利権許否の判断は、前記の水道事業認可基準とは全く別の基準によつてなされる。すなわち、河川について、洪水高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持されるように総合的な管理を図る(河川法一条)見地から判断されるのである。 (三) 関係河川使用者の保護河川法は水利権の許可にあたり、既存水利権者との水利調整に関する規定を設けている。 すなわち、同法三八条は、水利権許可の申請がなされた場合には、これに同意している者などを除く他の既存水利権者(関係河川使用者)にその旨通知すべきものとし、同法三九条は、関係河川使用者に意見陳述権を認めており、また、同法四〇条、四一条は、新規許可により損失を受ける関係河川使用者があるときは、一定の要件を充たす場合でなければ右許可をなし得ないものとして、その許可裁量権に厳重な制限を課しており、かつ、許可する場合にあつても、右許可による損失補償請求権を認めている。 (四) 結語以上述べたところから明らかなように、本件認可処分は、原告らの水利権の存否、内容に法的には何ら関連するところはなく、本件認可処分の内容たる取水量の増加についても、現にその取水は不可能の状態にあり、右取水を可能とする行政作用は河川管理者の専権に属するところである。 また、水道法自体は既存水利権者の保護については何ら考慮していないのであるから、企業団の水利権確保の高度の蓋然性の存否は、水道法上の本件認可処分の適法性と関係がなく、仮に右蓋然性が高度であるとしても、河川法には既存水利権 水利権者の保護については何ら考慮していないのであるから、企業団の水利権確保の高度の蓋然性の存否は、水道法上の本件認可処分の適法性と関係がなく、仮に右蓋然性が高度であるとしても、河川法には既存水利権を手続的にも実体的にも保護すべき規定が存するのであるから、これのみをもつて、ただちに、原告らの水利権が侵害されたとすることはできないし、侵害のおそれが高度であるということもできない。 結局、原告らは、行政事件訴訟法九条にいう、当該処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者に該らず、本件訴えは、紛争解決手続としては直接性に欠けるものというべきである。 三請求の原因に対する被告の答弁(一) 請求の原因(一)は認める。但し、取水量、面積等は別紙(三)のとおりである。 (二) 同(二)は認める。但し、「給水人口」とあるのは「計画給水人口」とするのが正しい。 (三) 同(三)は認める。 (四) 同(四)の1のうち別紙(一)の認可処分をしたこと、同2のうち一日最大給水量が二・六倍になつたことは認めるが、その余は争う。 四被告の本案前の主張に対する原告の反論(一) 形式論としては、水利権の許可は河川法の規定によりなされるものであるから、被告のなした本件認可処分とは何ら関係ないといえる。 (二) しかし、被告も認めているとおり、水道法八条二号は、許可の要件として、水道事業計画遂行上必要な水利権が確保されていること又はその蓋然性が高度であることを要求しているのである。 (三) 本件事業が実施されれば、企業団の現に有する水利権の範囲内では到底その必要とする水量を供給できないことは明らかであるにもかかわらず本件認可処分がなされたのは、企業団に対して水利権変更の許可が与えられる蓋然性が非常に高いと判断されたからに他ならない。 (四) 右水利権の許可に際して、本件 できないことは明らかであるにもかかわらず本件認可処分がなされたのは、企業団に対して水利権変更の許可が与えられる蓋然性が非常に高いと判断されたからに他ならない。 (四) 右水利権の許可に際して、本件認可処分の存在が全く何らの影響を与えないというのは、本件事業の実施される過程を無視した見解であり、企業団は、本件認可処分後、本件事業実施のための準備を進めており、本件認可処分は本件事業遂行の重要な第一段階を築くものである。 (五) 本件事業実施の実際の過程に照らして見れば、原告らの予想される水利権の侵害を防ぐには企業団に対する水利権許可の事実上の前提となつている本件認可処分が先ず取消されなければならない。 以上の点から原告らは本件認可処分の取消を求めるにつき訴えの利益を有し、原告適格を有するものである。 第三証拠関係なし。 ○ 理由一まず、原告らが本件認可処分の取消を求める適格を有するかどうか、すなわち、本件訴えにより保護されるべき利益が法律上の保護に値する利益かどうかを検討する。 二原告らの請求は、被告が訴外企業団に対してなした本件水道事業変更認可処分により、原告らの水利権が侵害された(あるいは侵害のおそれが生じた)のでその取消を求めるというのである。 三ところで、企業団が本件認可処分の内容たる水道事業を実施するためには、水源とすべき河川の河川管理者から、水利権変更の許可(水利使用の許可)を得なければならないことは、当事者間に争いがない。従つて企業団の水道事業実施に関しては、水道法上の本件認可処分及び河川法上の水利権変更許可(水利使用の許可)処分という一連の手続が必要であることになる。このような場合、先行行為自体が固有の不利益処分としての実質を有し、先行行為を取消すことが実害を除去する上で最も有効な方法であるときは、原告に処分の取消 処分という一連の手続が必要であることになる。このような場合、先行行為自体が固有の不利益処分としての実質を有し、先行行為を取消すことが実害を除去する上で最も有効な方法であるときは、原告に処分の取消を求めうる適格ないし訴えの利益が存するということができる。 これを本件についてみると、本件認可処分は水道法に基づいてなされたものであり、水道法には、水源からの取水等に関し、水利権の調整を図る規定は存在しない。従つてこれのみを見れば、本件認可処分は原告らの水利権に重大な影響を与えるかのような外観を呈するが、前述のとおり、企業団が本件認可処分にかかる水道事業の実施をするためにはなお、河川法上の河川管理者の水利権変更の許可(水利使用の許可)処分を得なければならず、右許可処分に際して、河川法は、既存水利権の保護を図る規定を設けている。 従つて、本件認可処分が存するけれども、これに基づく水道事業はいまだ実施されず、原告らの水利権に何ら実害を生じさせていないことが弁論の全趣旨に徴し明らかな現段階では、原告らに本件認可処分の取消を求める適格を認めることはできず、また、本件認可処分の取消による法律上の保護に値する利益も認められない。 四企業団が、本件認可処分に基づき、将来水利権を確保する高度の蓋然性があることは、水道法八条二号の決意に照らすと企業団が本件認可処分を得たことから、ただちに、推察できるとの考え方もあり得る。 しかし、水道法は水利調整に関する規定を有せず、河川法がこれを規定しており、両法は、それぞれ、その立法趣旨、法的規制の方法を異にするのであるから、一概に右のように解することはできない。むしろ、河川法上の水利権変更許可(水利使用の許可)処分は、先行する水道事業の認可処分に左右されるいわれはなく、河川法上に既存水利権保護規定の存置されているところから 右のように解することはできない。むしろ、河川法上の水利権変更許可(水利使用の許可)処分は、先行する水道事業の認可処分に左右されるいわれはなく、河川法上に既存水利権保護規定の存置されているところからすれば、河川管理者たるものは、水道法上の先行認可処分に左右されてはならないものと解される。してみれば、本件認可処分が、ただちに、原告らの水利権を侵害するおそれがあるということはできず、この点からするも、原告らは本件認可処分の取消を求める資格を有するものとは認められず、本件訴えには法律上の利益も認められない。 五以上の次第であるから、進んで他の争点について判断するまでもなく、本件訴えは不適法であるからこれを却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官柳沢千昭園部逸夫小野博道)別紙(一)一処分行政庁厚生大臣二処分年月日昭和四九年六月一九日三認可番号厚生省環第五一四号四処分の内容水道法第一〇条第一項の規定に基づき、昭和四九年五月一〇日碓氷上水発第二九一号申請の碓氷上水道企業団水道事業における次に掲げる変更を認可する。 記一給水区域を<地名略>、安中市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>に拡張すること。 一給水人口を六〇、〇〇〇に増加すること。 一給水量を一日最大給水量三六、〇〇〇立方メートルに増加すること。 別紙(二)省略
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