令和4(ワ)30023 損害賠償請求事件 ほか

裁判年月日・裁判所
令和6年8月6日 東京地方裁判所
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判決文本文35,966 文字)

令和6年8月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第30023号損害賠償請求事件(以下「本訴事件」という。)令和5年(ワ)第8134号損害賠償請求反訴事件(以下「反訴事件」という。)口頭弁論終結の日令和6年6月11日判決 主文 1 被告は、原告に対し、124万3000円及びこれに対する令和3年1月5日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 被告の反訴請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを6分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 本訴請求被告は、原告に対し、169万円及びこれに対する令和3年1月5日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 反訴請求原告は、被告に対し、111万1000円及びうち56万1000円に対す る令和3年3月9日から、うち55万円に対する令和4年7月2日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本訴事件は、身体障害者を対象とするアーチェリー競技(以下「パラアーチェリー競技」という。)の選手である原告が、同じパラアーチェリー競技の選手 である被告が原告の運営するブログのコメント欄に投稿した内容は原告の名誉 権を侵害するものであると主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として169万円及びこれに対する不法行為時(上記投稿日)である令和3年1月5日から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 反訴事件は、被告が、①原告が として169万円及びこれに対する不法行為時(上記投稿日)である令和3年1月5日から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 反訴事件は、被告が、①原告が上記各投稿の発信者を特定するために提起し た発信者情報開示請求訴訟は、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由なく提起された違法なものであること、②原告が本訴事件に係る原被告間の紛争に関する情報を被告の所属する競技団体や勤務先企業の関係者に周知したことは被告の名誉権又はプライバシーを侵害するものであることを主張して、原告に対し、いずれも不法行為に基づく損害賠償として111万1000円(①につ き56万1000円、②につき55万円)及びこれに対する不法行為時(①につき上記①の訴訟の提訴日である令和3年3月9日、②につき被告の主張する周知行為の一つに係る不法行為時である令和4年7月2日)から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実 以下の事実は、当事者間に争いがないか、末尾掲記の証拠(枝番号のあるものは枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる。 ⑴ アーチェリー競技団体(弁論の全趣旨)ア世界アーチェリー連盟は、パラアーチェリー競技を含むアーチェリー競 技に関する国際団体であり、後記⑵のとおり、パラアーチェリー競技におけるクラス分けを定めている。 イ公益社団法人全日本アーチェリー連盟(以下「全ア連」という。)は、わが国におけるパラアーチェリー競技を含むアーチェリー競技に関する団体であり、後記⑷のとおり、競技規則を定めている。なお、全ア連の下部団 体として、各都道府県や市区町村にアーチェリー協会が設置されている。 ウ一 ー競技を含むアーチェリー競技に関する団体であり、後記⑷のとおり、競技規則を定めている。なお、全ア連の下部団 体として、各都道府県や市区町村にアーチェリー協会が設置されている。 ウ一般社団法人日本身体障害者アーチェリー連盟(以下「日身ア連」という。)は、日本の身体障害者アーチェリー競技を統括すること等を目的とし、身体障害者アーチェリーの競技会の開催や身体障害者の競技規則及びクラス分けの策定・改廃等の事業を行う、全ア連の下部団体である(甲34)。 ⑵ パラアーチェリー競技におけるクラス分け 世界アーチェリー連盟は、パラアーチェリー競技会の出場資格の有無及びクラス分けの判定等のために「パラアーチェリークラス分け委員ハンドブック」(以下「本件ハンドブック」という。)を発行している。 本件ハンドブックに記載されたクラス分け手順によれば、競技者は、同連盟が定める競技者の障害の程度を評価するための各種テストを受け、その評 価は、上肢、下肢及び胴体に割り当てられた所定のポイント数が障害の程度が重いほど減点される方式となっており、当該減点数その他の基準により出場資格の有無及びクラス分けが決まる。クラス分けは、障害の程度が重い順に①車いすから行射しなければならない「W1クラス」、②車いすから行射することのできる「W2クラス」及び③立位により(ただし、後記のとおり一 定の条件を満たす場合にはスツール(いす)から)行射する「STクラス」の三つ(不適格を除く。)に区分される。 本件ハンドブックのセクション6には、競技器具と補助用具に関する定めがあり、下肢と胴体に併せて最低50ポイントの減点がある場合に車いすを使用できること、下肢に38ポイント以上の障害があるSTクラスの競技者 はスツールを使用してよいことが定められて 関する定めがあり、下肢と胴体に併せて最低50ポイントの減点がある場合に車いすを使用できること、下肢に38ポイント以上の障害があるSTクラスの競技者 はスツールを使用してよいことが定められている。 (乙1、2)⑶ 当事者ア原告は、全ア連、日身ア連、東京都アーチェリー協会及び北区アーチェリー協会に所属し(なお、兼ねて板橋区アーチェリー協会〔以下「板ア協」 という。〕に所属していたこともあった。)、パラアーチェリー競技を行う女 性アスリートである。原告は、平成28年4月に米国で行われたクラス分けによりスツールの使用が可能なSTクラスと認定され、その証明書及び上記クラス分けが記載された日身ア連発行の会員証を保有していた。 原告は、自身の競技歴等を紹介する「Archery2020」と題するブログ(以下「本件ブログ」という。)を開設、管理している。 (乙3、4、原告本人〔19頁〕)イ被告は、全ア連、日身ア連及び福岡県アーチェリー協会(以下「福岡ア協」という。)に所属し、A株式会社(以下「被告勤務先」という。)に所属・勤務してパラアーチェリー競技を行う女性アスリートである(弁論の全趣旨)。 ウ原告と被告は、令和元年の日身ア連の公認記録ランキングにおいて被告が1位、原告が2位となるなど、ともに「東京2020パラリンピック競技大会」(新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により開催が令和3(2021)年に延期された。以下「東京パラリンピック」という。)におけるパラアーチェリー競技の女子代表選手への選出を目指す立場にあった。 なお、最終的に被告は同大会の日本代表選手団に選出され、原告は選出されなかった。(甲1、2、公知の事実)⑷ 競技規則全ア連は、全日本アーチェリー連盟競技規則(以下「 指す立場にあった。 なお、最終的に被告は同大会の日本代表選手団に選出され、原告は選出されなかった。(甲1、2、公知の事実)⑷ 競技規則全ア連は、全日本アーチェリー連盟競技規則(以下「競技規則」という。)を定めており、競技規則の第19章(パラアーチェリー)には以下の条項が ある(全ア連に対する調査嘱託の結果、乙8)。 ア 222条(クラス分けカード)1項全競技者は、クラス分けカードの取得を求められ、用具検査時、審判員に提示する。これにより審判員は、競技者の用具を検査する際、補助用具を確認することが可能となる。このカードを持たない競技者 は規則に違反することになり、自身の属する障害度のカテゴリーで競 技することができない。 2項 〔略〕3項いずれかの種類のクラス分けカードをまだ所有しない競技者でも、競技に参加することはできる。しかしその得点は、ワールドランキング、世界記録、またはタイトル獲得の対象にならない。 イ 223条(補助用具)1項国際もしくは国内クラス分け委員に認定されたクラス分けカードを所有する競技者は、補助用具を使用することができる。〔略〕2項パラ競技者と分類されるクラス分け基準を満たさない競技者は、一般の競技会に参加できるように補助用具の申請をすることができる。 しかし、補助用具は得点の向上につながるものであってはならない。 パラ競技者と分類される最低限の基準を満たさない、またはクラス分けに該当しない状態にある競技者は、主催者に補助用具の使用を申請することができる。 3項 〔略〕 ⑸ 原告の車いすを使用した競技会への出場原告は、令和元年12月1日及び令和2年9月13日、全ア連が公認し、身体障害を有しない者も参加する以下の各競技会に出場し(以下、上 3項 〔略〕 ⑸ 原告の車いすを使用した競技会への出場原告は、令和元年12月1日及び令和2年9月13日、全ア連が公認し、身体障害を有しない者も参加する以下の各競技会に出場し(以下、上記形態による競技会を「一般の公認競技会」といい、原告が出場した以下の2大会を併せて「原告車いす出場大会」という。)、車いすから行射したことがあり、 いずれも原告の記録が公認された(東京都アーチェリー協会及び千葉県アーチェリー協会に対する調査嘱託の結果)。 ア第8回千葉県70・60・50mR記録会(令和元年12月1日開催、千葉県アーチェリー協会主催)イ東京都ターゲットアーチェリー選手権大会(令和2年9月13日開催、 東京都アーチェリー協会主催) ⑹ 通達の発出全ア連及び日身ア連は、令和2年9月26日、「身体に障害のある競技者の競技会参加に対する対応について」と題する加盟団体及び役員宛ての通達(以下「本件通達」という。)を発出した。 本件通達は、身体に障害のある競技者の競技会参加に対する対応が以前か ら不明瞭であるとの意見があったこと、競技規則の改正があったことを踏まえた対応として、①身体に障害のある競技者の競技会参加については、競技規則に適合することが前提となり、クラス分けカードを所持している競技者は公認競技会に参加できること、②ただし、同カードを所持しない競技者でも、競技規則222条3項にあるように、補助具を使用して競技に参加する ことはできるが、その記録の扱いは、㋐身体に障害のある競技者を対象とし又は身体の障害による種別設定のある公認競技会においては、公認記録とは認められず、参考記録又はオープン参加として取り扱われ、㋑一般の公認競技会においては、競技規則223条2項により補助用具の使用を主催者に申 の障害による種別設定のある公認競技会においては、公認記録とは認められず、参考記録又はオープン参加として取り扱われ、㋑一般の公認競技会においては、競技規則223条2項により補助用具の使用を主催者に申請することができ、これが認められれば記録は公認の対象となることが記載 されている。 (乙8)⑺ 被告及び氏名不詳者によるブログコメントの投稿等被告は、本件ブログの令和3年1月2日付けの「御支援ありがとうございました。」と題するブログ記事のコメント欄に、同月5日午後0時56分に別 紙1投稿記事目録1の投稿(以下「本件投稿1」という。)を、同日午後6時33分に同目録2の投稿(以下「本件投稿2」といい、本件投稿1と併せて「本件各投稿」という。)を、いずれも匿名により行った。 なお、本件各投稿に先立つ令和元年12月15日頃には、氏名不詳者により、「初めまして」と題する本件ブログのブログ記事のコメント欄に同目録3 の投稿(以下「別件投稿」という。)が行われた。 (甲3、13)⑻ 本件各投稿の発信者情報開示請求等原告は、原告代理人に委任して、令和3年3月9日、東京地方裁判所に対し、経由プロバイダを被告として、本件各投稿の発信に用いられたIPアドレスをその投稿日時に使用した発信者の氏名・名称、住所及び電子メールア ドレス(以下、電子メール一般につき単に「メール」という。)の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める訴え(同裁判所令和3年(ワ)第5822号。以下「本件発信者情報開示請求訴訟」という。)を提起し、令和4年5月20日に本件発信者情報の開示を命じる認容判決を得た。上記経由プロバイダは、同年6月7日付けで、原告に対し、上記判決に基づき、本 件発信者情報として被告の氏名、住所及びメールアドレ 和4年5月20日に本件発信者情報の開示を命じる認容判決を得た。上記経由プロバイダは、同年6月7日付けで、原告に対し、上記判決に基づき、本 件発信者情報として被告の氏名、住所及びメールアドレスを通知した。 (甲4、5、乙13)⑼ 原告による被告関係者への周知(以下、原告の下記アからオの行為をそれぞれ冒頭の符号により「原告周知行為ア」から「原告周知行為オ」といい、これらをまとめて「原告各周知 行為」という。)ア原告は、令和4年6月8日、全ア連の会員等からの通報を受け付ける相談窓口(受付窓口)であるB司法書士(以下「B司法書士」という。)に対し、「発信者情報の件」と題する件名のメール(内容は別紙2のとおり。以下「本件B司法書士宛てメール」という。)を送信した(甲19、21〔①〕)。 イ原告は、同年6月14日、日身ア連のメールアドレス宛てに、「競技者の違法行為について」との件名のメール(内容は別紙3のとおり。以下「本件日身ア連宛てメール」という。)を送信した(甲23)。 ウ原告は、同月25日、被告が出場し原告は出場しなかった「第55回全日本ターゲットアーチェリー選手権大会」の会場において、日身ア連所属 の被告のコーチであるC(以下「Cコーチ」という。)に対し、本件に関す る各種資料(その内容には争いがある。)に「資料をお渡しします。ご一読の上、今後のご対応をお願い申し上げます。尚、示談の申し入れはありませんでした。6月7日に判決は確定しています。」などと記載した付箋を貼付して手渡した(以下、手渡した資料(上記付箋を含む。)を「本件Cコーチ宛て資料」という。)(乙21、弁論の全趣旨)。 エ原告は、同年7月2日、被告勤務先のメールアドレス宛てに、「御社所属選手の不法行為について」との件名 料(上記付箋を含む。)を「本件Cコーチ宛て資料」という。)(乙21、弁論の全趣旨)。 エ原告は、同年7月2日、被告勤務先のメールアドレス宛てに、「御社所属選手の不法行為について」との件名のメール(内容は別紙4のとおり。以下「本件被告勤務先宛てメール」という。)を送信した(乙20、弁論の全趣旨)。 原告は、同月3日、被告勤務先の代表取締役に対し、別紙5の書面(以 下「本件被告勤務先代表者宛て書面」という。)を郵送した(乙15〔3頁〕)。 オ原告は、令和5年3月22日、福岡ア協の当時の暫定相談窓口の一人であった副理事長のメールアドレス宛てに、別紙6のメール(以下「本件福岡ア協宛てメール」という。)を送信した(甲24、25〔④〕)。 2 争点 ⑴ 本訴事件ア本件各投稿と不法行為の個数イ本件各投稿の摘示事実の内容ウ本件各投稿が社会的評価を低下させるかエ本件各投稿に違法性・責任阻却事由があるか オ損害の発生及び額⑵ 反訴事件ア本件発信者情報開示請求訴訟の提起が不法行為を構成するかイ原告各周知行為が不法行為を構成するか(ア) 不法行為の個数 (イ) 原告各周知行為の摘示事実の内容 (ウ) 原告各周知行為が被告の名誉権を侵害するか(エ) 原告各周知行為の名誉権侵害に違法性・責任阻却事由があるか(オ) 原告各周知行為が被告のプライバシーを侵害するか(カ) 原告各周知行為のプライバシー侵害に違法性阻却事由があるかウ損害の発生及び額 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴ア(本件各投稿と不法行為の個数)について【原告の主張】本件投稿2のうち「(ルール違反を)してるから言ってる」という部分は、文脈上明らかに、本件投稿1を受けて、原告がル 事者の主張⑴ 争点⑴ア(本件各投稿と不法行為の個数)について【原告の主張】本件投稿2のうち「(ルール違反を)してるから言ってる」という部分は、文脈上明らかに、本件投稿1を受けて、原告がルール違反をしているから本 件投稿1でルールを守れないと言っていることを述べるものである。一般の読者からすれば、本件各投稿を同一人物が投稿したと受け止めるもので、本件各投稿は一連の表現行為であり、1個の不法行為である。 【被告の主張】本件各投稿の投稿主体は客観的には「名無しさん」と表示される匿名の者 であること、本件各投稿の投稿時間は約6時間の差があることからすれば、本件各投稿は一連の表現行為と捉えられるのが通常であるとはいえない。 ⑵ 争点⑴イ(本件各投稿の摘示事実の内容)について【原告の主張】本件各投稿は、一体として、原告が、ルール違反であるとの指摘をされて もその注意を聞かずに敢えて違反行為を行ったとの事実を摘示するものである。 本件各投稿を個別に検討しても、本件投稿1は、原告が代表になれないほどのルール違反をしていると断じており、本件投稿1にいう「ルール違反」とは、社会によくある何らかのルールへの違反ではなく、パラアーチェリー の代表選手になれないほどのルール違反、すなわち同競技のルールへの違反 を指すと受け止められるものである。また、本件投稿2の摘示事実は上記本件各投稿一体の摘示事実と同様である。 【被告の主張】本件投稿1は、「原告が何らかのルールに違反しているとの事実」を摘示したもので、ルールの対象や「守れない」ことの具体的な内容は摘示していな い。 本件投稿2は、原告がパラアーチェリーの競技のルールに違反しているとの事実を摘示したものである。 ⑶ 争点⑴ウ(本件各投稿が社会的 の対象や「守れない」ことの具体的な内容は摘示していな い。 本件投稿2は、原告がパラアーチェリーの競技のルールに違反しているとの事実を摘示したものである。 ⑶ 争点⑴ウ(本件各投稿が社会的評価を低下させるか)について【原告の主張】 本件各投稿の摘示事実は、一体としてみても、個別にみても、ルールを守ることが当然の前提とされるスポーツ選手である原告がパラアーチェリー競技のルールに違反していると指摘するもので、パラリンピックへの出場を目指すパラアーチェリー選手である原告の社会的評価を低下させる。 【被告の主張】 本件投稿1の摘示事実からすれば、何らかのルールに違反することは社会生活上あり得る事柄であるところ、本件投稿1が匿名の投稿であり、一般の読者としても虚実ない交ぜであることは予め想定していることも踏まえれば、本件投稿1は原告の社会的評価を低下させない。 本件投稿2が原告の社会的評価を低下させるものであることは争わない。 ⑷ 争点⑴エ(本件各投稿に違法性・責任阻却事由があるか)について【被告の主張】ア真実性前記⑵(摘示事実の内容)の点に加え、真実性の抗弁は摘示事実の重要な部分について証明されれば足りることからすれば、本件各投稿に係る真 実性立証の対象は、いずれも原告がパラアーチェリー競技のルールに違反 しているとの事実である。原告が車いすを使用して原告車いす出場大会に出場したことは、本件ハンドブックのセクション6及び競技規則に違反しており、本件各投稿の摘示事実はいずれも真実である。 イ真実相当性真実相当性立証の対象は前記アと同様であるところ、被告は、原告が国 際クラス分けカードを所持していることや、本件ハンドブック及び競技規則の内容を知っていたことから、同カードを持 イ真実相当性真実相当性立証の対象は前記アと同様であるところ、被告は、原告が国 際クラス分けカードを所持していることや、本件ハンドブック及び競技規則の内容を知っていたことから、同カードを持つ原告が一般の公認競技会に車いすで出場することが上記各ルールに違反するものと誤信していた。 ウ目的の公益性本件各投稿は、いずれも、原告のルール違反を非難し、原告が東京パラ リンピックの代表選手としてふさわしくないとの感想を述べたものであって、公益目的を有する。仮に本件各投稿を1個の不法行為と解しても、その目的はより詳細かつ具体的な本件投稿2に即すべきであるところ、少なくとも主要な動機において公益目的を有する。 エ事実の公共性 東京パラリンピックには準備段階から莫大な公金が投入されていることに加え、わが国で開催される点で従前の大会以上に社会公共に影響を与えるもので、その代表候補者も同様の影響を与える存在である。代表候補者に当該競技のルール違反があるか否かは当該候補者の東京パラリンピックへの出場資格の正当性にかかわるもので、公共性を有する。 【原告の主張】ア真実性について原告は、本件通達発出前、原告車いす出場大会に出場し、車いすから行射したが、そもそもパラアーチェリー選手が一般の公認競技会に参加する際にクラス分けカードの提示を求められることはなく、使用する補助用具 が競技規則等に適合しているかの確認もされておらず、原告の記録は公認 されていた。原告がいずれかの者からルール違反であるとの指摘を受けたことはなく、したがって原告がルール違反であるとの指摘を受けてもその注意を聞かずにあえて違反行為を行ったという事実は存在しない。 また、被告の主張する摘示事実を前提としても、各競技団体に対する調査嘱 とはなく、したがって原告がルール違反であるとの指摘を受けてもその注意を聞かずにあえて違反行為を行ったという事実は存在しない。 また、被告の主張する摘示事実を前提としても、各競技団体に対する調査嘱託の結果によれば、原告がルール違反をしたとの回答はなく、原告が ルール違反をしたという事実も存在しない。 イ真実相当性について原告が原告車いす出場大会に出場してその記録が公認されていることは明らかであったのであるから、原告がルール違反をしたと信ずるにつき相当な理由があったとはいえない。 ウ目的の公益性について本件投稿1は、前段部分(「ちゃんとルールを」よりも前の部分。以下同じ。)の記載に重点があるところ、当該部分は、一私人にすぎない原告に対して被告の立場からパラアーチェリー競技の実力を論難するものである上、「悪あがき」しているなどと端的な悪態をついており、被告の原告に対 する悪感情を吐露しているにすぎない(この点は、被告の主張する摘示事実を前提としても同様である。)。また、本件投稿2は、「ちゃんと結果を残すことですね」と、原告のルール違反に加えて競技において結果を残していないと悪態を書き連ねているもので、公共の利益に寄与せず、その動機は原告に対する敵意と攻撃に裏付けられている。 よって、本件各投稿を一体として解釈しても、個別に解釈しても、被告の本件各投稿が公益目的によるものとはいえない。 エ事実の公共性について上記ウの事情からすれば、本件各投稿は、パラリンピックの代表に選ばれた者のルール遵守の有無について批判的検討をするものではなく、公共 の利害に関するものではない。 ⑸ 争点⑴オ(損害の発生及び額)について【原告の主張】ア慰謝料 120万円パラアーチェリー選手である 批判的検討をするものではなく、公共 の利害に関するものではない。 ⑸ 争点⑴オ(損害の発生及び額)について【原告の主張】ア慰謝料 120万円パラアーチェリー選手である原告がルールに違反していると言われることは、スポーツに取り組む者として基本において失格であると言われてい るようなものであり、被害は甚大であり、その精神的被害を金銭に換算した額は上記金額を下回らない。 イ本件発信者情報開示請求訴訟の弁護士費用 33万円原告は、本件各投稿の投稿者を特定するために弁護士に委任して本件発信者情報開示請求訴訟を提起し、上記金額の弁護士費用を支払った。この 費用は被告の名誉毀損行為によって余儀なくされた支出であり、本件不法行為と相当因果関係のある財産的損害である。 ウ弁護士費用 16万円【被告の主張】ア慰謝料について 被告が、本件発信者情報開示請求訴訟に基づき本件各投稿の発信者情報として被告の氏名等が開示された直後に原告に謝罪の上、損害賠償請求等に真摯に対応する旨を伝えたことは、慰謝料額の算定に当たり有利に参酌されるべきである。 イ本件発信者情報開示訴訟の弁護士費用について 上記費用は不法行為との相当因果関係がない。 ウ弁護士費用について争う。 ⑹ 争点⑵ア(本件発信者情報開示請求訴訟の提起が不法行為を構成するか)について 【被告の主張】 令和3年法律第27号による改正前の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項2号にいう「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき 以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項2号にいう「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」(以下「正当理由」という。)は、開示 請求者が発信者情報を入手する合理的必要性(開示請求を認めることにより制約される発信者のプライバシーその他の利益を考慮した相当性を含む。)が求められる。そして、発信者開示請求が不当な自力救済や刑事告訴を目的とする場合には正当理由は認められない。 原告は、被告に対する損害賠償請求権を行使することなく自力救済及び刑 事告訴をしたもので、原告の発信者情報開示請求は正当理由を欠く。 そして、原告は、本件発信者情報開示請求訴訟がその要件である正当理由を満たさず、法律上の根拠を欠くにもかかわらず、あえてそのことを知りながら、正当理由があるとの虚偽の主張をして、本件発信者情報を不正に取得したものである。したがって、本件発信者情報開示請求訴訟の提起は裁判制 度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くもので、違法である。 【原告の主張】原告は、元々発信者に対して刑事告訴と民事訴訟の提起の両方をすることを想定して本件発信者情報開示請求訴訟を提起したもので、刑事告訴が先行したのは事務処理上の都合にすぎない。 また、刑事告訴において告訴人側で行為者(発信者)を特定しなければ告訴を受け付けてもらえないことがほとんどであるという現状からすれば、刑事告訴の目的も正当理由に当たる。 ⑺ 争点⑵イ(原告各周知行為が不法行為を構成するか)についてア争点⑵イ(ア)(不法行為の個数)について 【被告の主張】 原告各周知行為は、全体として1個の不法行為を構成する。そうでなくても、原告周知行為イ 法行為を構成するか)についてア争点⑵イ(ア)(不法行為の個数)について 【被告の主張】 原告各周知行為は、全体として1個の不法行為を構成する。そうでなくても、原告周知行為イ及び同ウは、日身ア連に対する行為として一連一体の1個の不法行為とみるべきである。 【原告の主張】原告各周知行為は、それぞれ別個の不法行為とみるべきである。 イ争点⑵イ(イ)から同(カ)について別表のとおり⑻ 争点⑵ウ(損害の発生及び額)について【被告の主張】ア本件発信者情報開示請求訴訟の提起に係る損害 (ア) 本訴の応訴費用 11万円本件発信者情報開示請求訴訟により不正に開示された本件発信者情報に基づいて本訴が提起され、その弁護士費用として11万円を支出した。 (イ) 慰謝料 40万円被告は、本件発信者情報開示請求訴訟により被告のプライバシーに属 する本件発信者情報を不正に取得された上、これを元に本訴において理由のない請求をされており、これによって被告の被った精神的損害を慰謝するに足る金額は上記金額である。 (ウ) 弁護士費用 5万1000円イ原告各周知行為に係る損害 (ア) 慰謝料 50万円(イ) 弁護士費用 5万円ウ合計 111万1000円【原告の主張】いずれも否認し、又は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実争いのない事実並びに証拠(末尾掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 原告の競技大会における車いすからの行射状況原告は、日常生活において車いすを使用して移動しているところ、本件通 達の発出前においては、身体障害者を対象とするパラアーチェリー大会においては自身のクラス分けに沿ってスツ いすからの行射状況原告は、日常生活において車いすを使用して移動しているところ、本件通 達の発出前においては、身体障害者を対象とするパラアーチェリー大会においては自身のクラス分けに沿ってスツールから行射していたが、身体障害を有しない選手も参加する一般の公認競技会においては、行射位置までの移動に使用する車いすからそのまま行射していた。その際、原告を含む競技者が主催者等からクラス分けカードの提示を求められたことはなく、使用する車 いすを含む補助用具が競技規則に適合するものであるかを確認されたこともなかった。 また、原告が、主催団体や被告などから原告の車いすからの行射が競技規則等に違反するといった指摘を受けたことはなかった。 原告が車いすから行射する方法により参加した2大会(原告車いす出場大 会)においても上記同様の状況であり、原告の記録は公認され、東京パラリンピックの代表選考に際して参照された。 原告は、本件通達の発出後は一般の公認競技会においてもスツールから行射した。 (前提事実⑸、原告本人〔10、11、20~22頁〕、東京都アーチェリ ー協会に対する調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)⑵ 原告と板ア協及び被告の間の紛争の経緯ア板ア協は、令和元年7月16日、原告に対し、原告の板橋区立小豆沢洋弓場を使用できる旨の認定を1年間停止し、停止期間中の認定審査の受審を不可とする旨の処分をした(甲17、18)。 イ原告は、上記処分を不服として、同年8月8日、東京地方裁判所に対し、 板ア協を相手方として、仮処分の申立て(同裁判所令和元年(ヨ)第2522号)をした。 上記仮処分事件は、同年9月5日、板ア協が前記アの処分を遡及的に取り消し、原告が申立てを取り下げたことにより終了した。 (甲17、18、弁 の申立て(同裁判所令和元年(ヨ)第2522号)をした。 上記仮処分事件は、同年9月5日、板ア協が前記アの処分を遡及的に取り消し、原告が申立てを取り下げたことにより終了した。 (甲17、18、弁論の全趣旨) ウ板ア協は、同日、原告の板ア協入会を拒絶した(甲38)。 エ原告は、令和3年3月9日、本件発信者情報開示請求訴訟を提起した(前提事実⑻)。 オ原告は、同年4月12日、全ア連に対し、前記アの処分やそれによって原告が被った不利益等について説明し、全ア連に是正措置と再発防止策を 講じることを求める通報をした。 全ア連の理事長は、同年11月6日、原告に対し、上記通報に関しては係争中のため対応を控えて流れを見守るとの方針を明らかにするとともに、板ア協の前記アの処分に基づく原告への制限や練習への影響のほか、板ア協との別件で係争中の案件(本件発信者情報開示請求訴訟)について 追加して報告すること、全ア連に求めることがあるかについてB司法書士に返信することを求める書簡を送付した。 (甲18、20の1)カ原告は、令和4年1月24日から同年4月22日にかけて、B司法書士に対し、順次、本件発信者情報開示請求訴訟の結審時期や判決期日等につ いてメールで報告した(甲20の2)。 キ東京地方裁判所は、同年5月20日、本件発信者情報開示請求訴訟において本件発信者情報の開示を命じる判決を言い渡し、同年6月7日に確定した。同判決においては、本件各投稿が原告の社会的評価を低下させその名誉を毀損するものであること、本件各投稿が真実である又は真実である と信じるに相当な理由があるとはいえないことから、権利侵害の明白性が あることが認定された。(前提事実⑻、甲4、乙21、弁論の全趣旨)ク経由プロバイダは、同日 である又は真実である と信じるに相当な理由があるとはいえないことから、権利侵害の明白性が あることが認定された。(前提事実⑻、甲4、乙21、弁論の全趣旨)ク経由プロバイダは、同日付けで、原告に対し、本件発信者情報として被告の氏名、住所及びメールアドレスを通知した(前提事実⑻)。 ケ原告は、同月8日、B司法書士に対し、本件B司法書士宛てメールを送信した(原告周知行為ア)(前提事実⑼ア)。 コ B司法書士は、同日、原告に対し、原告の報告内容を全ア連に伝えること、今後については弁護士と相談の上連絡されたいことを記載したメールを返信した(甲21〔②〕)。 サ原告は、同月14日午後0時47分、日身ア連の保有するメールアドレス(アットマークより前のユーザー名は「nisshinaren」)宛てに、本件日 身ア連宛てメールを送信した(原告周知行為イ)(前提事実⑼イ、甲23)。 シ被告代理人は、同日午後5時24分頃、原告代理人に対し、①被告代理人が被告の代理人として受任したことを通知するとともに、②被告が本件各投稿により原告に対し多大なるご迷惑を掛けたことを心からお詫びする旨を伝達した上で、③被告に対して損害賠償請求等をする場合における請 求内容を、交渉を経ずに訴訟提起する場合には可能であればその旨を、被告代理人に連絡することを依頼し、④請求について被告は真摯に対応することなどを記載した書面をファクシミリ送信し、原告代理人は、その頃、これを受領した(甲30、乙12、弁論の全趣旨)。 ス原告は、同月25日、被告が出場した大会の会場において、被告のCコ ーチに対し、本件Cコーチ宛て資料を手渡した(原告周知行為ウ)。この資料の中身は、本件発信者情報開示請求訴訟の判決書、これに基づく経由プロバイダの通知 出場した大会の会場において、被告のCコ ーチに対し、本件Cコーチ宛て資料を手渡した(原告周知行為ウ)。この資料の中身は、本件発信者情報開示請求訴訟の判決書、これに基づく経由プロバイダの通知書並びに本件各投稿及び別件投稿の内容であった。 (前提事実⑼ウ、甲37〔8頁〕、乙21、原告本人〔7・8頁〕)セ被告は、同年6月1日、同年7月に開催予定のパラアーチェリーヨーロ ピアンカップの出場選手に選出され、その旨発表された(甲37〔8頁〕)。 ソ原告は、同年7月2日、被告勤務先の広報・法務部のメールアドレス宛てに、前記スの資料と同旨の内容の電子ファイルを添付した、本件被告勤務先宛てメールを送信した。原告は、同月3日、被告勤務先の代表取締役に対して本件被告勤務先代表者宛て書面を郵送した。 (原告周知行為エ)(前提事実⑼エ、乙20) タ被告勤務先の広報・法務部の担当者は、同月6日、原告のメールアドレス(前記ソの送信に用いられたアドレス)宛てに、①原告の連絡を拝受したこと、②原告の連絡内容は被告勤務先が被告から報告を受けていなかった重大な内容であり、事実関係の把握に努めていくこと、③被告に対しては事実関係の報告を求めるとともに事情聴取を行って原告及び関係各所へ 適切な対応を行うよう求めることを記載したメールを送信した(甲32)。 チ原告は、同月29日、原告代理人を通じて、被告を名誉毀損罪の被疑事実により告訴した(甲11)。 ツ原告は、同年11月28日、原告代理人を通じて本訴事件に係る訴えを当裁判所に提起した(当裁判所に顕著な事実)。 テ東京地方検察庁検察官は、同年12月19日、前記チの告訴に係る名誉毀損被疑事件について、被告を不起訴(起訴猶予)処分とし、同日、原告にこれを通知した(甲11 (当裁判所に顕著な事実)。 テ東京地方検察庁検察官は、同年12月19日、前記チの告訴に係る名誉毀損被疑事件について、被告を不起訴(起訴猶予)処分とし、同日、原告にこれを通知した(甲11)。 ト原告は、令和5年3月22日、福岡ア協の当時の暫定相談窓口の一人であった副理事長のメールアドレス宛てに、本件福岡ア協宛てメールを送信 した(原告周知行為オ)(前提事実⑼オ)。 ⑶ 本件ブログにおける本件各投稿の投稿本件ブログの令和3年1月2日付けの「御支援ありがとうございました。」と題するブログ記事には、順に、①同月5日午後0時56分に被告が本件投稿1のコメント(コメント番号1)を投稿し、②同日午後4時37分に「し ろくま」との筆名の使用者が「↑悪あがきやルール違反をしていないので、 やらせておきなさいよ。」とのコメント(同番号2。以下「番号2のコメント」という。)を投稿し、③同日午後6時33分に被告が本件投稿2のコメント(同番号3)を投稿した(前提事実⑺、甲3)。 ⑷ 各種規程等ア全ア連・内部通報制度運用規程 全ア連は、選手その他の会員からの組織的又は個人的な法令違反行為等に関する相談又は通報の適正な処理等を目的として(1条)、内部通報制度運用規程(以下「全ア連内部通報規程」という。)を定めている。全ア連は、全ア連内部通報規程に基づき、会員等からの通報を受け付ける通報窓口(支援ステーション)を設置し、B司法書士はその受付窓口の一つとして、 ファクシミリ番号及びメールアドレスが表示されていた(2条)。この通報の対象は、全ア連の会員等に法令違反行為が生じている、又はまさに生じようとしていることに関するものであり(4条)、全ア連は、通報事項に関する事実関係の調査を行い(6条)、不正行為が明らかに この通報の対象は、全ア連の会員等に法令違反行為が生じている、又はまさに生じようとしていることに関するものであり(4条)、全ア連は、通報事項に関する事実関係の調査を行い(6条)、不正行為が明らかになった場合は是正措置及び再発防止措置を講じなければならず(8条)、また、当該行為に関 与した者に倫理規程等に従って処分を科すことができる(9条)。全ア連及び本規程に定める調査・業務に携わる者は、通報された内容及び調査で得られた個人情報を開示してはならず、全ア連は正当な理由なく個人情報を開示したものに対し、処分を科すことができる(11条)。通報処理窓口担当者に限らず、通報を受けた者は、本規程に準じて誠実に対応するよう努 めなければならないものとされる(14条)。(甲19)イ全ア連・行動規範全ア連が定めた行動規範(以下「全ア連行動規範」という。)において、全ての全ア連加盟員は、著しく品位又は名誉を傷つけることをしてはならないこと(1項)が定められている(甲28)。 ウ日身ア連・競技者等行動規範 日身ア連は、競技者等が遵守すべき基本的な行動規範を定めること等を目的として(1条)、競技者等行動規範(以下「日身ア連行動規範」という。)を定めている。日身ア連行動規範には、競技者等は、法令、諸規則、社会ルール及び日身ア連の規程を遵守しなければならず(2条⑴「法令及び諸規則等の遵守」)、競技者等の名誉を害し、又は信用を傷つけるような行為 をしてはならず(同条⑽「名誉毀損行為等の禁止」)、他の競技者等が日身ア連行動規範に違反していることを知ったときは、直ちに日身ア連に報告する義務を負い(3条)、日身ア連は、懲戒処分規程等に基づき、違反者を公正かつ適正に処分すること(4条)が定められている。(甲22) 2 争点⑴ア 反していることを知ったときは、直ちに日身ア連に報告する義務を負い(3条)、日身ア連は、懲戒処分規程等に基づき、違反者を公正かつ適正に処分すること(4条)が定められている。(甲22) 2 争点⑴ア(本件各投稿と不法行為の個数)について 前記1⑶で認定した事実を踏まえると、一般の読者の普通の注意と読み方において、本件投稿2は、本件投稿1において被告が「悪あがき」「ルールを守れない」と指摘したのに対し、「悪あがきやルール違反をしていない」と本件投稿1に反論するような内容のコメント(番号2のコメント)が投稿されたことを受けて、「ルール違反してない?してるから言ってるんですけど」などと指摘し てこれに再反論するものと理解すると認めるのが相当である。 そして、上記事情に加え、本件各投稿の投稿時間に約5時間半の時間差があること(前提事実⑺)も踏まえると、被告が本件投稿1を投稿した時点で続けて本件投稿2の投稿内容を投稿することを予定していたとはいえず、両者を一連一体のものとみるのは相当でなく、別個の不法行為とみるのが相当である。 3 争点⑴イ(本件各投稿の摘示事実の内容)について⑴ 本件投稿1について本件ブログが原告において自身の競技歴等を紹介するものであること(前提事実⑶ア)も踏まえると、本件ブログの一般の読者は、パラアーチェリー競技について一定の知識を有するものと考えられるところ、そのような一般 の読者の普通の注意と読み方において、本件投稿1は、①原告が東京パラリ ンピックへの出場やその代表選手に選出されることが不可能であるとの事実を摘示するとともに、②原告がそれらを目指すことが悪あがきであるとの論評を加え、さらに、③原告が「ルール」(その意味については後述する。)を守れないような人であり、東京パラリン 不可能であるとの事実を摘示するとともに、②原告がそれらを目指すことが悪あがきであるとの論評を加え、さらに、③原告が「ルール」(その意味については後述する。)を守れないような人であり、東京パラリンピックの代表選手になどなれないとの事実を摘示するものと理解すると解される(以下、上記番号の順に「本件 摘示事実1①」、「本件論評1②」、「本件摘示事実1③」という。)。 そして、本件摘示事実1③の「ルール」がいかなるルールであるかについては、「東京パラも無理だし代表入りも無理」「ルールを守れないような人、代表になんかなれないです」と記述していることからすれば、これらを併せて読めば、一般の読者の普通の注意と読み方において、東京パラリンピック の代表選手になることに支障を生じさせるようなルールに違反していることを摘示していると理解するものというべきである。被告が本件投稿1においてルールの具体的対象を特定していないことからすれば、原告の主張するようにそれがパラアーチェリー競技のルールであることを直ちに読み取ることは困難である一方、被告の主張するように単なる「何らかのルール」にすぎ ないということもできない。 ⑵ 本件投稿2について前記⑴と同様の一般の読者の普通の注意と読み方において、本件投稿2は、①原告が車いすに乗って競技をしてはならないにもかかわらず車いすに乗って競技を行うというルール違反をしているとの事実、②原告は何度も上記ル ール違反について注意を受けているにもかかわらず、これを聞かないとの事実を摘示した上で、③原告が東京パラリンピックの代表選手になりたいのであれば、上記ルールを守ることが最低限のマナーであるとの論評、④同代表選手になるためには結果を残す必要があるとの論評を加えるものであると理解するものと解される パラリンピックの代表選手になりたいのであれば、上記ルールを守ることが最低限のマナーであるとの論評、④同代表選手になるためには結果を残す必要があるとの論評を加えるものであると理解するものと解される(以下、上記番号の順に「本件摘示事実2①」、「本件 摘示事実2②」、「本件論評2③」及び「本件論評2④」という。)。 4 争点⑴ウ(本件各投稿が社会的評価を低下させるか)について⑴ 本件投稿1について前記3⑴を踏まえ、本件投稿1の内容を総合して読むと、一般の読者において、原告が、東京パラリンピックの代表選手になることに支障を生じさせるようなルールに違反し、同大会への出場やその代表選手候補入りが不可能 であるにもかかわらず、なおもこれを目指すという悪あがきをしている人物であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させるものというべきである。 被告は、本件投稿1が匿名の投稿であることから一般の読者も信用性を高く評価していないことを主張するが、本件投稿1の記載内容に加え、本件ブ ログが原告自身の運営するブログであり、本件投稿1があえて原告本人に向けて不正を指摘するような内容であること、本件摘示事実1①、同③において原告が代表選手になれないと断言していることからすれば、一般の読者において、本件投稿1の投稿者が内情を知るパラアーチェリーの関係者であると理解し、その内容を信用する蓋然性があるといえる。被告の上記主張は採 用できない。 ⑵ 本件投稿2について前記3⑵を踏まえ、本件投稿2の内容を総合して読むと、一般の読者において、原告が、再三の注意にもかかわらず、車いすからの行射の可否に関する競技ルールに違反して車いすから行射しており、東京パラリンピックの代 表選手になるための最低限のマナーすら守 般の読者において、原告が、再三の注意にもかかわらず、車いすからの行射の可否に関する競技ルールに違反して車いすから行射しており、東京パラリンピックの代 表選手になるための最低限のマナーすら守ることができず、また、競技においても結果を残していない人物であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させるものというべきである(なお、被告もこの点は積極的には争っていない。)。 5 争点⑴エ(本件各投稿に違法性・責任阻却事由があるか)について ⑴ 本件投稿1について ア事実の公共性について本件摘示事実1①、同③や本件論評1②は、当時、東京パラリンピックのパラアーチェリー競技の代表候補選手であった原告において同大会の出場資格に関わるルール違反があるか否かを話題にするものであるところ、東京パラリンピックは、それ自体公共性の高いスポーツイベントであ り、その代表候補選手が代表に選出されるか否か、あるいはその資格があるかといったことは、広く国民の関心を集める事項であって、公共の利害に関する事実であるというべきである。 イ目的の公益性について被告は、全ア連、日身ア連及びそれらの下位団体に所属するパラアーチ ェリー競技の選手として、本件投稿1において摘示するように原告に東京パラリンピックの代表選手としての資格に影響するようなルール違反があると考えるのであれば、前記1⑷の各種規程等に基づいて上記各団体に通報、指摘するなどしてその是正を求めることができる立場にあったと認められるが、被告においてそのような通報等をした事実はうかがわれない。 他方で、被告は、あえて原告自身が運営する本件ブログに、ブログ記事本文の内容とは全く関係のない本件投稿1のコメントを投稿しており、かつその内容は、原告自身にその した事実はうかがわれない。 他方で、被告は、あえて原告自身が運営する本件ブログに、ブログ記事本文の内容とは全く関係のない本件投稿1のコメントを投稿しており、かつその内容は、原告自身にその点を認識させて是正を促したり、本件ブログの読者として想定されるパラアーチェリー競技の関係者に対して問題提起をしたりすることを主たる目的とするものとしては説明が困難であ り、原告に対する反感、攻撃が全面に出たものである。さらに本件論評1②部分が「悪あがきもほどほどにした方がいい」という侮辱的、攻撃的なものであることも併せ考慮すると、前記アのとおり本件投稿1の内容自体は公共性のある事項に関するものであることを踏まえても、その主たる目的は、原告に対する攻撃等の公益外の点にあったものとみざるを得ない。 したがって、本件投稿1の主たる目的に公益性はない。 ウ真実性及び真実相当性について事案にかんがみて、念のため真実性及び真実相当性についても検討する。 (ア) 真実(相当)性立証の対象となる主要な事実前記3⑴、4⑴を踏まえ、本件投稿1が「原告が代表選手になれない」という指摘を二度にわたって繰り返して強調しており、一般の読者にお いてその点に投稿の主眼があると受け止められることに照らせば、本件投稿1の摘示事実に関して被告においてその真実(相当)性を立証すべき主要な事実は、東京パラリンピックの代表選手になることに支障を生じさせるようなルールに違反していること(本件摘示事実1③関係)及びそれによって原告が東京パラリンピックへの出場やその代表選手選出 が不可能であること(同1①関係)であると解するのが相当である。 (イ) 真実性について前提事実⑵、⑶ア、⑷及び前記1⑴で認定した事実を踏まえれば、少なくとも、本件摘示 その代表選手選出 が不可能であること(同1①関係)であると解するのが相当である。 (イ) 真実性について前提事実⑵、⑶ア、⑷及び前記1⑴で認定した事実を踏まえれば、少なくとも、本件摘示事実1①、同③に関して、本件通達発出前における一般の公認競技会での原告の車いす使用は、これを使用することが問題 視されていて、原告において東京パラリンピックの代表選手になることに支障を生じさせる状況にあったとか、同大会への出場又は代表選手候補入りが不可能であったという状況にあった事実は認められない。 したがって、本件投稿1の摘示事実が真実であるということはできない。 (ウ) 真実相当性について前記(イ)記載の事実を踏まえれば、少なくとも、本件摘示事実1①、同③に関して、本件通達発出前において、原告の一般の公認競技会における車いす使用について各競技団体が競技規則等に違反し又はその疑いがあることを前提として警告等の行動に出たことはなかったのであるか ら、被告において、確実な資料や根拠によって、原告が上記車いす使用 によって東京パラリンピックの代表選手になることに支障を生じさせ、あるいはそれが不可能となる状況にあったものと誤信する状況にあったとは認められない。 したがって、上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があるということもできない。 ⑵ 本件投稿2についてア事実の公共性について本件摘示事実2①、同②及び本件論評2③は、原告において東京オリンピックの出場資格に関わる競技ルールへの違反があるか否かを話題にするものであり、本件論評2④は、同大会の選考に係る試合結果について話 題にするものであり、本件投稿1(前記⑴ア)と同様、公共の利害に関する事実であるというべきである。 イ目的の を話題にするものであり、本件論評2④は、同大会の選考に係る試合結果について話 題にするものであり、本件投稿1(前記⑴ア)と同様、公共の利害に関する事実であるというべきである。 イ目的の公益性について前記⑴イのとおり、本件投稿1は原告に対する攻撃等を主たる目的とするものと認められるところ、前記2のとおり、本件投稿2が本件投稿1に 対しルール違反をしていないと指摘、反論する番号2のコメントへの再反論の形で投稿されたものと認められ、その目的を共通にするものと推認される。さらに、本件投稿2の内容、特に被告が競技ルール違反の点だけでなく、それとは無関係の競技結果に関しても「あと、ちゃんと結果を残すことですね」と挑発的に記述していることも併せ考慮すれば、本件投稿2 は、本件投稿1と同様に、原告に対する反感や攻撃を主たる目的とするもので、本件投稿2の主たる目的に公益性はない。 ウ真実性及び真実相当性について事案にかんがみて、念のため真実性及び真実相当性についても検討する。 (ア) 真実(相当)性立証の対象となる主要な事実 前記3⑵、4⑵を踏まえれば、本件投稿2の摘示事実に関して、被告 においてその真実(相当)性を立証すべき主要な事実は、原告は車いすに乗って競技をしてはならないにもかかわらず、車いすに乗って競技を行って競技ルールに違反していること(本件摘示事実2①関係)及び原告が再三の注意を聞かずに上記ルール違反をしていること(本件摘示事実2②関係)であると解するのが相当である。 (イ) 真実性及び真実相当性について上記主要な事実のうち、少なくとも、本件摘示事実2②に関して、原告が再三の注意を聞かずに上記ルール違反をしていると指摘する点については、被告又は主催団体等が、原告に対し、一般の公認 相当性について上記主要な事実のうち、少なくとも、本件摘示事実2②に関して、原告が再三の注意を聞かずに上記ルール違反をしていると指摘する点については、被告又は主催団体等が、原告に対し、一般の公認競技会において原告が車いすを使用して行射していることについて注意した事実はな く(前記1⑴)、被告においてそのような注意がなされていたと誤信する状況にあったと認めるに足る的確な証拠もない。 したがって、少なくとも上記主要な事実が真実であるということはできず、真実であると信ずるについて相当の理由があるということもできない。 6 争点⑴オ(損害の発生及び額)について⑴ 慰謝料計80万円本件各投稿は、原告と同じパラアーチェリー競技の競技者であり、競技ルールに関して疑義があるのであれば、競技団体等に指摘する手段を有する被告が、その名を秘して、確実に原告の目に届く本件ブログへのコメントとい う方法で投稿したものであり、卑劣なものというほかない。そして、原告の一般の公認競技会における車いす使用について、競技団体が本件通達発出前にこれを問題視していた事実がないにもかかわらず、これを強い表現で非難し、当時東京パラリンピック出場を目指して原告及び被告を含む選手が競っていた状況下において、その出場や代表選考の資格と関連付けて、それらが ないものと断定している。さらに、本件投稿2は、本件投稿1に記載された 「悪あがき」や「ルール違反」の事実はないと別のコメント投稿者に指摘されたのに対し、強い表現で反論し、原告が何度も注意されているのに聞かないなどと全くの虚偽の事実を摘示した上、競技ルールとは何ら関係のない原告の競技成績についてまで挑発的、嘲笑的に言及しており、悪質性は相応に高い。 東京パラリンピックの代表選考 いるのに聞かないなどと全くの虚偽の事実を摘示した上、競技ルールとは何ら関係のない原告の競技成績についてまで挑発的、嘲笑的に言及しており、悪質性は相応に高い。 東京パラリンピックの代表選考が行われていた重要な時期に、関係者と思しき匿名の人物から自身のブログにこのような身に覚えのない投稿を立て続けにされ、また、本件発信者情報開示請求訴訟によって本件各投稿の投稿者が自身のライバルである被告であったと知るに至った原告の精神的苦痛は相当なものであると認められる。 以上の各事情に加え、発信者が被告であると発覚した後の交渉や本訴・反訴の経過等を含む本件に現れた一切の事情を踏まえれば、原告の上記精神的苦痛を慰謝するに足る金額は、本件投稿1につき30万円、本件投稿2につき50万円の合計80万円と認めるのが相当である。 ⑵ 本件発信者情報開示請求訴訟の弁護士費用 33万円 インターネット上の投稿に対する損害賠償請求に当たっては、発信者の特定が必要不可欠であり、そのための裁判の追行には専門的な知識を要することから、その裁判等に係る弁護士費用については、その額は不相応に過大なものでない限り、投稿と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 証拠(甲4~6)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各投稿を対象 とする本件発信者情報開示請求訴訟の追行を原告代理人に委任し、その報酬として33万円を支払ったことが認められ、上記金額が不相応に過大であるとは認められないから、上記金額は本件各投稿と相当因果関係のある損害と認められる。 ⑶ 弁護士費用 11万3000円 本訴事件の難易度や認容額等の一切の事情を踏まえると、本件各投稿と相 当因果関係のある弁護士費用は11万3000円と認めるのが相当である。 ⑷ 合計 弁護士費用 11万3000円 本訴事件の難易度や認容額等の一切の事情を踏まえると、本件各投稿と相 当因果関係のある弁護士費用は11万3000円と認めるのが相当である。 ⑷ 合計 124万3000円 7 争点⑵ア(本件発信者情報開示請求訴訟の提起が不法行為を構成するか)について⑴ 前記1⑵アからエで認定した事実及び証拠(甲4〔16頁〕、37〔4、7 ~9頁〕、原告本人〔1~9頁〕)によれば、原告としては、元々、本件各投稿は、当時原告が洋弓場の使用停止や入会拒絶などの措置を受け、既に仮処分の提起という民事上の紛争に発展していた板ア協の関係者によるものと推測し、当該投稿者に対して損害賠償等の請求を目的として、本件発信者情報開示請求訴訟を提起したことが認められる。 以上の経緯からすれば、原告は、本件発信者情報開示請求訴訟の提起時点において、板ア協の関係者と推測していた発信者に対して損害賠償等を求める意思があったものと認められる。 したがって、本件発信者情報開示請求訴訟の提起は、原告の発信者に対する「損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示 を受けるべき正当な理由があるとき」に該当するといえ、上記訴訟提起がプロバイダ責任制限法4条1項2号の要件を欠く違法なものであるということはできない。 ⑵ 被告は、上記訴訟提起が自力救済や刑事告訴を目的とするものであると主張するが、上記のとおり、そもそも原告は上記訴訟提起時点で発信者を板ア 協の関係者であると考えていたのであるから、被告のいう自力救済、すなわち所属団体等に投稿の事実を暴露するなどして被告に競技上又は職業上の不利益を被らせる行為を目的とするものとはいえない。また、原告が板ア協の関係者と推測する投稿者を専ら刑事告訴する う自力救済、すなわち所属団体等に投稿の事実を暴露するなどして被告に競技上又は職業上の不利益を被らせる行為を目的とするものとはいえない。また、原告が板ア協の関係者と推測する投稿者を専ら刑事告訴することを目的として上記訴訟提起をしたと認めるに足る的確な証拠はない上、被告が投稿者であることが発覚 した後の被告に対する対応をみても、刑事告訴の結果が明らかになる前に民 事訴訟を提起していること(前記1⑵チからテ)からすれば、原告が、発信者の刑事告訴のみを目的とし、民事訴訟の提起その他の損害賠償請求権の行使を検討していなかったものということもできない。 よって、被告の上記主張は、刑事告訴や所属団体等への周知が正当理由に該当するか否かにかかわらず、前提を欠き採用することができない。 8 争点⑵イ(原告各周知行為が不法行為を構成するか)について⑴ 不法行為の個数について原告各周知行為は、少なくとも1週間程度の期間を空けて、それぞれ別の者に対して、それぞれメール送信又は書面の手交若しくは郵送の方法で周知したものであるから、それぞれ別個の行為として不法行為の成否を検討する のが相当である。 ⑵ 原告各周知行為の摘示事実の内容についてア本件B司法書士宛てメール(原告周知行為ア)前提事実⑼アによれば、一般の読者の普通の注意と読み方において(以下、基準につき後記オまで同様である。)、同メールの摘示事実は、①本件 ブログへの投稿の投稿者が板ア協の関係者ではなく被告であったこと、②本件発信者情報開示請求訴訟の判決書及びそれに基づく経由プロバイダの開示内容であると理解されるものと認められる。 イ本件日身ア連宛てメール(原告周知行為イ)前提事実⑼イによれば、同メールの摘示事実は、①本件ブログに令和元 年12 基づく経由プロバイダの開示内容であると理解されるものと認められる。 イ本件日身ア連宛てメール(原告周知行為イ)前提事実⑼イによれば、同メールの摘示事実は、①本件ブログに令和元 年12月と令和3年1月に不適切と感じる書き込みがされたこと、②原告が発信者情報開示請求訴訟を提起し、裁判所が名誉毀損に当たるとして認容判決をしたこと、③開示の結果、発信者が被告と判明したこと、④被告は示談の申入れを一度もしていないこと、⑤原告は今後代理人弁護士を通じて連絡することであると理解されるものと認められる。 ウ本件Cコーチ宛て資料(原告周知行為ウ) 前提事実⑼ウ及び前記1⑵スで認定した事実からすれば、本件Cコーチ宛て資料本体の摘示事実は、当該各資料の記載内容そのものであり、貼付した付箋の摘示事実は、前記イの④に加え、発信者情報開示請求訴訟が確定したことであると理解されるものと認められる。 エ本件被告勤務先宛てメール及び本件被告勤務先代表者宛て書面(原告周 知行為エ)前提事実⑼エによれば、本件被告勤務先宛てメールの前半部分(別紙4の「念のために、示談の申し入れは一度もございませんでした。」までの部分)は、本件日身ア連宛てメールの内容と概ね同旨であり、その摘示事実は、前記イの①から④と同様であると認められる。また、同メールの後半 部分の摘示事実は、⑥全ア連及び日身ア連への報告、日身ア連への懲戒請求の申立て並びに刑事告訴をしていること、⑦被告が発信者情報開示請求訴訟の判決後も各大会に出場していること、⑧Cコーチに本件の事実関係を周知し関係書類を渡したことであると理解されるものと認められ、添付ファイルの摘示事実は、当該各ファイルの記載内容そのものであると認め られる。 また、前提事実⑼エによれば、本件被 事実関係を周知し関係書類を渡したことであると理解されるものと認められ、添付ファイルの摘示事実は、当該各ファイルの記載内容そのものであると認め られる。 また、前提事実⑼エによれば、本件被告勤務先代表者宛て書面の内容は、本件被告勤務先宛てメールと概ね同旨であり、その摘示事実は、前記イの①から④並びに上記⑥(ただし「刑事告訴」とある点は「現行法で適用される法的手段」と読み替える。)、⑦及び⑧であると理解されるものと認め られる。 オ本件福岡ア協宛てメール(原告周知行為オ)前提事実⑼オによれば、本件福岡ア協宛てメールの摘示事実は、⑨本件ブログに令和元年12月に別件投稿が、令和3年1月に本件各投稿がされたこと及びその内容、⑩原告が発信者情報開示請求訴訟を提起し、名誉毀 損に当たるとして開示を命じる判決が確定し、発信者が被告と判明したこ と、⑪原告は日身ア連に被告の懲戒請求を求めており、今月中に処分を出すとの回答を受けていること、上記エの⑦と同様の摘示事実、⑫Cコーチも不祥事を認識しているが黙認しているようであること、⑬被告に対する損害賠償請求訴訟が係属中であることであると理解されるものと認められる。 ⑶ 原告各周知行為が被告の名誉権を侵害するかについてア本件B司法書士宛てメール(原告周知行為ア)前提事実⑼アのとおり、同メールは、B司法書士1名に対して送信されたものである。 そして、前提事実⑼ア及び前記1⑷アで認定した事実によれば、B司法 書士は、全ア連内部通報規程に定められた、全ア連の会員等からの通報を受け付ける通報窓口であり、同規程11条により、通報を受けたB司法書士のみならず、調査に携わる者は、守秘義務を負い、その違反に対しては処分の制裁が予定されている。そうすると、同メールは、 らの通報を受け付ける通報窓口であり、同規程11条により、通報を受けたB司法書士のみならず、調査に携わる者は、守秘義務を負い、その違反に対しては処分の制裁が予定されている。そうすると、同メールは、B司法書士のほか、調査に必要な範囲で守秘義務を負う全ア連又は下位団体の特定の関係 者に限ってその情報が共有されることが想定されているものというべきである。 したがって、同メールの内容がB司法書士から不特定又は多数の者に伝播する可能性は乏しく、公然性を欠き、被告の名誉権を侵害するものとはいえない。 イ本件日身ア連宛てメール(原告周知行為イ)前提事実⑼イ及び前記1⑵サで認定した事実のとおり、同メールは、日身ア連が使用するメールアドレス宛てに送信されたものであるが、日身ア連の中で当該メールアドレス宛ての送信されたメールの内容を確認することができた人数など、直接的に同メールを認識した者が多数であったこ とを認めるに足る的確な証拠はない。 他方で、上記認定事実のとおり、当該メールアドレスは、通報目的等その用途や日身ア連内での取扱者が限定されているものではなく、同メールの宛先が「関係者各位」と抽象的に記載され、受信者がある程度広範囲に周知することを原告自身が想定してメールを送信していると認められることに加え、通報処理窓口担当者以外の通報を受けた者は、全ア連内部通 報規程に準じて誠実に対応する努力義務が定められているにすぎず、全ア連の調査に関与しない限り守秘義務の直接的な対象ではないこと(前記1⑷ア〔11条、14条〕)も考慮すると、日身ア連内において当該案件の調査に関与しない者を含む不特定又は多数の者が同メールを閲読し、又はこれらの者に伝播する蓋然性は否定できず、公然性が認められる。 そして、前記⑵イの 考慮すると、日身ア連内において当該案件の調査に関与しない者を含む不特定又は多数の者が同メールを閲読し、又はこれらの者に伝播する蓋然性は否定できず、公然性が認められる。 そして、前記⑵イの摘示事実(①から⑤)は、全体として、被告が本件ブログに不適切な書き込みをして裁判所が名誉毀損に当たると認定された人物であるとの印象を与えるもので、被告の社会的評価を低下させるものというべきである。 ウ本件Cコーチ宛て資料(原告周知行為ウ) 前提事実⑼ウのとおり、同資料は、日身ア連所属の被告のコーチであるCコーチに直接手渡されたものである。そして、Cコーチの上記地位にかんがみれば、自身の担当する選手である被告に関する前記⑵ウの摘示事実の内容について、調査等の正当な目的のために必要な範囲を超えて、あえて不特定又は多数の者に伝播することは考え難い。 したがって、原告周知行為ウは公然性を欠き、被告の名誉権を侵害するものとはいえない。 エ本件被告勤務先宛てメール及び本件被告勤務先代表者宛て書面(原告周知行為エ)前提事実⑼エのとおり、本件被告勤務先宛てメールは、被告勤務先の広 報・法務部のメールアドレス宛てに送信されたものである。そして、当該 宛先は、その課の名称からして対外的広報や法務事案を取り扱う部署であると推認されるところ、当該部署の所属人数など、直接的に同メールの内容を認識した者が多数であったことについて、被告は何ら立証していない。 伝播可能性について検討すると、同メールに対する返信も広報・法務部の担当者から送信されているところ(前記1⑵タ)、広報・法務部の上記の ような立場にかんがみれば、たとえ本来的に従業員の不祥事について取り扱う部署でなかったとしても、自社に所属・勤務する被告に関する前記⑵エの されているところ(前記1⑵タ)、広報・法務部の上記の ような立場にかんがみれば、たとえ本来的に従業員の不祥事について取り扱う部署でなかったとしても、自社に所属・勤務する被告に関する前記⑵エの摘示事実の内容について、調査等の正当な目的のために必要な範囲を超えて、あえて社内外の不特定又は多数の者に伝播することは考え難い。 また、前提事実⑼エのとおり、本件被告勤務先代表者宛て書面は、被告 勤務先の代表取締役宛てに郵送されたものである。同代表取締役の地位にかんがみれば、上記同様に、調査等の正当な目的のために必要な範囲を超えて、あえて不特定又は多数の者に伝播することは考え難い。 したがって、原告周知行為エは公然性を欠き、被告の名誉権を侵害するものとはいえない。 オ本件福岡ア協宛てメール(原告周知行為オ)前提事実⑼オのとおり、同メールは、福岡ア協の当時の暫定相談窓口であった副理事長のメールアドレス宛てに送信されたものである。そして、副理事長は、通報内容につき調査等の正当な目的のために必要な範囲を超えて不特定又は多数の者に伝播しない責務を負うものと考えられ、副理事 長がこれに反して不特定又は多数の者に本件福岡ア協宛てメールの内容を伝播することは考え難い。 したがって、原告周知行為オは公然性を欠き、被告の名誉権を侵害するものとはいえない。 ⑷ 原告周知行為イの名誉権侵害に違法性・責任阻却事由があるかについて ア事実の公共性について 前記⑵イの摘示事実の内容を踏まえれば、パラアーチェリー競技の選手であり東京パラリンピックの日本代表候補である被告が、同競技のライバル選手である原告の運営するブログに投稿した内容やこれについての裁判所の判断内容、示談の申入れの有無等は、広く社会の関心を集める事項であっ 京パラリンピックの日本代表候補である被告が、同競技のライバル選手である原告の運営するブログに投稿した内容やこれについての裁判所の判断内容、示談の申入れの有無等は、広く社会の関心を集める事項であって、公共の利害に関する事実であるというべきである。 イ目的の公益性について(ア) 前記1⑷ウで認定したとおり、日身ア連行動規範は、競技者等に法令を含む諸規則等の遵守と名誉毀損行為等の禁止、同規範違反行為の報告義務を課し、日身ア連は、懲戒処分規程等に基づき、違反者を公正かつ適正に処分することとされている。 前提事実⑼イのとおり、原告は、本件日身ア連宛てメールの冒頭において、日身ア連行動規範3条の報告義務に基づく報告であることを明示しているところ、本件発信者情報開示請求訴訟の提起からの経緯を客観的に説明し、今後の対応は代理人弁護士を通じて追って連絡するとした同メールの記載内容に照らせば、原告が上記報告を目的に同メールを送 信したことが認められる(原告本人〔6、7頁〕)。 よって、原告周知行為イは、原告が日身ア連所属の競技者として負う報告義務を履行することを主たる目的とするものと認められ、目的の公益性が認められる。 (イ) 被告は、本件各投稿が名誉毀損に該当するかは当事者(原告・被告) 間の裁判では確定しておらず、日身ア連に伝える必要性がなく、自力救済を主たる目的とするものであると主張する。 しかし、前記⑵イのとおり、原告は、本件発信者情報開示請求訴訟において本件各投稿が名誉毀損に当たると判断したとの事実を摘示したにすぎず、原告において被告を相手に民事訴訟を提起して名誉毀損の事実 が認定されるまで日身ア連に対する報告をすることが許されないものと は解されない。また、前記(ア)のとおり、日身ア連所属の ぎず、原告において被告を相手に民事訴訟を提起して名誉毀損の事実 が認定されるまで日身ア連に対する報告をすることが許されないものと は解されない。また、前記(ア)のとおり、日身ア連所属の競技者である被告は、法令遵守義務を負い、その違反者に対しては懲戒処分規程等に基づく処分が予定されているのであるから、そのような処分を求める意図があったとしても、それは正当な目的であって、違法な自力救済には当たらない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 ウ真実性及び真実相当性について前記⑵イの摘示事実のうち、②、③及び⑤は真実である(前記1⑵エ、キ、ク)。 同①については、②と併せて読むと、令和3年1月の書き込み(本件各 投稿)のみならず令和元年12月の書き込み(別件投稿)も被告によるものであるとの印象を与える可能性はあるものの、そもそも原告は、本件日身ア連宛てメールにおいて別件投稿や本件各投稿の具体的内容は記載しておらず、同メールの受信者において別件投稿の具体的内容について被告の投稿であると誤解するおそれはない。したがって、この点は真実性立証 の対象となる重要な事実であるとはいえない。 同④については、そもそも、前記イ(ア)のとおり、通報義務の履行を目的とする原告周知行為イにおいて、示談の申入れの有無は相対的に重要な事実ではなく、真実性立証の対象に当たるとは解されない。また、仮にこれに当たると解しても、原告が本件日身ア連宛てメールを送信した後に被 告代理人が原告代理人に前記1⑵シの書面をファクシミリ送信するまで、被告側から原告側への連絡はなかったのであるから(弁論の全趣旨)、同書面が示談の申入れに該当するか否かにかかわらず、被告が示談の申入れを一度もしていないとの摘示事実は、真実であっ ミリ送信するまで、被告側から原告側への連絡はなかったのであるから(弁論の全趣旨)、同書面が示談の申入れに該当するか否かにかかわらず、被告が示談の申入れを一度もしていないとの摘示事実は、真実であったというべきである。 よって、前記⑵イの摘示事実につき真実性が認められる。 エしたがって、原告周知行為イにつき違法性阻却事由があり、名誉権侵害 による不法行為は成立しない。 ⑸ 原告各周知行為に係る摘示事実が被告のプライバシーに当たるかについてアある事実が、①私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であって(私事性)、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であ る場合(秘匿性)、当該事実は、プライバシーに属するものと解するのが相当である。 イ原告各周知行為の摘示事実は、前記⑵のとおりであるところ、原告各周知行為全部に共通する摘示事実である、被告が本件ブログに本件各投稿を行い、本件発信者情報開示請求訴訟において本件各投稿が名誉毀損に当た るとして発信者情報の開示を命じる判決がされた事実は、前記5⑴ア、⑵アのとおり本件各投稿の投稿内容自体には公共的側面があるものの、被告が本件各投稿をしたことや上記訴訟の結果自体は被告の純粋な私生活上の事柄であり、私事性が認められる。また、上記共通の摘示事実は、一般人の感受性を基準にして被告の立場に立った場合、公開を欲しないであろう と認められる事柄であり、秘匿性も認められる。 よって、原告各周知行為の摘示事実は、被告のプライバシーに属するものと認められる。 ⑹ 原告各周知行為が違法なプライバシー侵害に当たるかについてア公表に係る事実の性質及び内容、伝播される範囲、公表の目的及び意義、 為の摘示事実は、被告のプライバシーに属するものと認められる。 ⑹ 原告各周知行為が違法なプライバシー侵害に当たるかについてア公表に係る事実の性質及び内容、伝播される範囲、公表の目的及び意義、 公表の必要性等の諸般の事情に照らして、原告が事実を公表する利益が被告が事実を公表されない利益を上回るときは、違法なプライバシー侵害には当たらず、不法行為を構成しないものと解するのが相当である。 イ原告周知行為アについて前記1⑵アからケで認定した事実のほか、前記7⑴によれば、原告は、 別件投稿や本件各投稿が、当時紛争になっていた板ア協の関係者によるも のと推測し、B司法書士に対してその旨の相談をしていたところ、本件発信者情報開示請求訴訟に基づく情報開示により投稿者が被告であると判明し、取り急ぎその事実を報告する目的で本件B司法書士宛てメールを送信したものと認められる。そして、被告が全ア連の所属選手であり、全ア連の通報窓口であるB司法書士への通報対象である法令違反行為(前記1 ⑷ア)に該当するものであることを踏まえれば、同メールで摘示した事実は、投稿者が被告であったことを周知した点を含め、B司法書士に対する周知の必要性、相当性があったと認められ、この点は、原告が本件各投稿の投稿者を板ア協の関係者と誤解していたか否かに関わらないというべきである。 そして、前記⑶アのとおり、B司法書士から周知内容が不特定又は多数の者に伝播する可能性が乏しく、被告のプライバシー侵害の程度が小さいことも踏まえれば、原告の上記必要性は、被告が上記摘示事実を公表されない法的利益と比較して優越するものといえ、原告周知行為アが違法なプライバシー侵害であるとはいえない。 被告は、原告周知行為アを含む原告各周知行為が、パラアーチェ 告が上記摘示事実を公表されない法的利益と比較して優越するものといえ、原告周知行為アが違法なプライバシー侵害であるとはいえない。 被告は、原告周知行為アを含む原告各周知行為が、パラアーチェリーという職を失わせる可能性のある行為であると主張するが、仮に所属団体の処分等によって競技の続行が困難となり、又は被告勤務先の懲戒処分等によって勤務の継続が困難になったとしても、それは、被告が、前記4、5のとおり名誉権の侵害に当たり不法行為を構成するほか、全ア連行動規範 や日身ア連行動規範に抵触する内容の本件各投稿を行い、これについて原告が上記各団体等に処分等を求め、同団体等の判断によって決定されるものであるから、原告の正当な権利行使の結果にすぎず、違法な自力救済であるなどということはできない。 ウ原告周知行為イについて 原告周知行為イの主たる目的は、前記⑷イ(ア)のとおり、日身ア連行動 規範3条の報告義務の履行にあるところ、全ア連と日身ア連はそれぞれ別に被告に対する処分等をなし得ることも踏まえれば、日身ア連に対する周知の必要性があったと認められる。そして、前記⑶イのとおり、本件日身ア連宛てメールの送信先のメールアドレスは日身ア連内での取扱者が限定されている形跡がなく、日身ア連内での一定の伝播の可能性はあったも のの、日身ア連行動規範3条は「本連盟に報告する」と記載するのみで、その報告先等について明確に定めていないことも踏まえれば、上記メールアドレスへのメール送信の方法が不相当であったとまではいえない。 そして、前記⑵イのとおり、原告周知行為イの摘示事実の内容が、客観的な事実経過を説明するものであり、日身ア連の調査に必要な範囲の情報 であると認められ、被告のプライバシー侵害の程度が小さいことも踏まえれば イのとおり、原告周知行為イの摘示事実の内容が、客観的な事実経過を説明するものであり、日身ア連の調査に必要な範囲の情報 であると認められ、被告のプライバシー侵害の程度が小さいことも踏まえれば、原告の上記必要性は、被告が上記摘示事実を公表されない法的利益と比較して優越するものといえ、原告周知行為イが違法なプライバシー侵害であるとはいえない。 エ原告周知行為ウについて 原告周知行為ウの目的は、原告周知行為ア、イによっても全ア連又は日身ア連による処分がなされず、原告が試合で被告と会っても直接の謝罪がなく、被告代理人からも具体的な示談の提案がなかったことから、身近な指導者であるCコーチが被告を諭すことを期待するものであったと認められる(原告本人〔7頁〕)。 上記のような事実経過に照らせば、全ア連や日身ア連が被告に対して適正な処分をしないのではないかと不安視する原告の心情は理解できるものであり、本件各投稿がパラアーチェリーのルールに関するものであることからすれば、日常的に被告の指導監督をしているCコーチに指導を依頼することが不合理であるということはできない。 そして、原告周知行為ウの摘示事実の内容は、前記ウ同様、客観的で調 査に必要な範囲の情報であること、前記⑶ウのとおり、Cコーチが不特定又は多数の者に当該情報を伝播する可能性が乏しいことからすれば、被告のプライバシー侵害の程度は大きくない。そうすると、原告が既に原告周知行為イによって日身ア連に対する通報をしていることや、原告が交付した資料の中には別件投稿の内容が含まれ、別件投稿についても被告が行っ たものであるとの印象を与えた可能性があることを踏まえても、原告がCコーチに上記事実を公表する利益は、被告がこれを公表されない利益と比較して優越するも 容が含まれ、別件投稿についても被告が行っ たものであるとの印象を与えた可能性があることを踏まえても、原告がCコーチに上記事実を公表する利益は、被告がこれを公表されない利益と比較して優越するものといえ、原告周知行為ウが違法なプライバシー侵害であるとはいえない。 オ原告周知行為エについて 原告周知行為エの目的は、原告周知行為アからウによっても全ア連又は日身ア連による処分がなされず、前記エ同様に直接の謝罪や具体的な示談の提案がなかったことを踏まえ、被告勤務先に対しても被告への注意といった対応を求めるものであったと認められる(原告本人〔9頁〕)。 そして、被告は被告勤務先に所属・勤務し、その所属選手として選手名 簿等に記載される従業員であり(甲2)、パラアーチェリー競技は被告勤務先と密接な関連を有することからすれば、たとえ本件各投稿自体は私生活上の出来事であったとしても、被告勤務先が懲戒処分等の対応を行う可能性があると想定される。そして、全ア連や日身ア連から被告勤務先に摘示事実に係る内容が周知される可能性は乏しいことからすれば、原告周知行 為アからウとは別に本件勤務先に上記事実を周知する必要性があったと認められる。加えて、前記⑵エのとおり、原告周知行為エの摘示事実の内容が、客観的な事実経過を説明するものであって、被告勤務先における調査に必要な範囲の情報であること、被告勤務先の広報・法務部や代表取締役から不特定又は多数の第三者に上記情報が伝播する可能性も乏しいこ とからすれば、被告のプライバシー侵害の程度は小さい。そうすると、被 告勤務先宛てメールの添付ファイルの中には別件投稿の内容が含まれ、別件投稿についても被告が行ったものであるとの印象を与えた可能性があることを踏まえても、原告が被告勤務先に上記 そうすると、被 告勤務先宛てメールの添付ファイルの中には別件投稿の内容が含まれ、別件投稿についても被告が行ったものであるとの印象を与えた可能性があることを踏まえても、原告が被告勤務先に上記事実を公表する利益は、被告がこれを公表されない利益と比較して優越するものといえ、原告周知行為エが違法なプライバシー侵害であるとはいえない。 カ原告周知行為オについて原告周知行為オの目的は、原告周知行為アからエによっても全ア連又は日身ア連による処分がなされず、前記エ同様に直接の謝罪や具体的な示談の提案がなかったことを踏まえ、被告が同時に所属しているものと推測された福岡ア協にも処分等を求めるものであったと認められる(原告本人 〔9、10頁〕)。 上記のような事実経過に照らせば、全ア連や日身ア連が被告に対して適正な処分をしないのではないかと不安視する原告の心情は理解できるものであり、福岡ア協も独自に被告に対する処分をなし得るものと考え、福岡ア協に周知することが不合理であるということはできず、現に、福岡ア 協は、原告周知行為オまでの間、被告が本件各投稿をした事実を知らず、原告の周知を踏まえて調査を行い、被告に対し注意を行ったものである(甲26)。 そして、原告周知行為エの摘示事実の内容は、前記ウ同様、客観的で調査に必要な範囲の情報であること、前記⑶オのとおり、福岡ア協の暫定相 談窓口である副理事長が不特定又は多数の者に当該情報を伝播する可能性が乏しいことからすれば、被告のプライバシー侵害の程度は大きくない。 そうすると、本件福岡ア協宛てメールの文面からは別件投稿も被告がしたとの印象を与えるものであることを踏まえても、原告が福岡ア協に上記事実を公表する利益は、被告がこれを公表されない利益と比較して優越する もの 福岡ア協宛てメールの文面からは別件投稿も被告がしたとの印象を与えるものであることを踏まえても、原告が福岡ア協に上記事実を公表する利益は、被告がこれを公表されない利益と比較して優越する ものといえ、原告周知行為オが違法なプライバシー侵害であるとはいえな い。 被告は、全ア連や日身ア連と重ねて下位団体である福岡ア協に周知する必要性はないと主張するが、被告がこれらの団体と兼ねて福岡ア協にも所属している以上、原告において福岡ア協による指導を期待することが不合理であるとはいえず、また、上記のとおり上位団体から福岡ア協に本件に 関する情報が提供されていた事実もないのであるから、福岡ア協への周知の必要性がなかったとはいえない。 キ小括以上によれば、原告各周知行為は、いずれも原告においてその摘示事実を公表する利益が被告においてこれを公表されない利益と比較して優越 するものといえ、原告各周知行為はいずれも違法に被告のプライバシーを侵害するものであるということはできず、不法行為を構成しない。 9 結論以上によれば、原告の本訴請求は、124万3000円及びこれに対する不法行為時(本件各投稿の投稿日)である令和3年1月5日から支払済みまで民 法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求は理由がない。 また、被告の反訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第5部 裁判官大久保紘季大久保 紘 季 別紙1投稿記事目録 1 いい加減もう東京パラも無理だし代表入りも無理なの気づきませんか? 悪あがきもほどほどにした方が 大久保紘季 別紙1投稿記事目録 1 いい加減もう東京パラも無理だし代表入りも無理なの気づきませんか?悪あがきもほどほどにした方がいいですよ。ちゃんとルールを守れないような人、代表になんかなれないです。(本件投稿1) 2 ルール違反してない?してるから言ってるんですけど。車いすに乗って競技してはいけないのに車いすに乗ってますよ。何度も注意してるのにきかない。代表選手になりたいならルールを守るのは最低限のマナーです。あと、ちゃんと結果を残すことですね。(本件投稿2) 3 何か勘違いしてるようですが、あなた東京パラリンピックの出場の可能性は0%です。国際クラス分けの資格持ってると言ってますが、スツールの資格なのに車椅子で試合出てますよね?ウソの記録でランキング上位にいても除外です。さらに選考会の規定点数すら射ってないし、選考会すら出てないって事はあなたには強化選手ですらなれないって事です。(別件投稿) 以上 別紙2ないし別紙6は掲載省略

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