- 1 -前橋地方裁判所平成18年㨯第725号強制わいせつ致傷事件(平成20年1月17日判決宣告,確定) 主文 被告人は無罪。 理由 第1検察官の主張する本件公訴事実は「被告人は,群馬県館林市内のA株式会社B営,業所にタクシー運転者として勤務していたものであるが,自己の運転するタクシーに乗車させたC女(当時28年)に強いてわいせつな行為をしようと企て,言葉巧みに同女を同車両後部座席から助手席に移動させ,平成18年9月1日午前2時10分ころ,同市D町E番地のF元G店北側駐車場付近道路を走行中の同車両内において,同女に対し,やにわ,「。 に左手で着衣の上からその右乳房を数回揉みホストクラブに行くような奴は軽いんだこれまで,誰にもやめてと言われたことはない。届け出されたことも,訴えられたこともない。ホストクラブに行ってることなんて,どうせ旦那に黙ってるんだろ。どうなるか分かってるだろ。裏の人も知っているんだ」などと語気鋭く申し向けた後,同日午前2時。 20分ころ,同市D町H番地のIパチンコ店J駐車場に同車両を停車させ,前記C女に対し,左手を同女の喉元に入れて同女を座席に押さえ付けながら,同女の乳房を舐め回し,同女の陰部を手指で執ように弄んだ上,左手で同女の後頭部を押さえ付けて同女に自己の陰茎を口淫させ,さらに,同日午前2時50分ころ,同市K町L丁目M番N号付近道路を走行中の同車両内において,左手で着衣の上から同女の右乳房を揉みながら,同女に再び自己の陰茎を口淫させ,もって暴行及び脅迫を用いて前記C女にわいせつな行為をし,その際,前記暴行により,同女に全治までに約2日間を要する外陰部擦過傷の傷害を負わせた」というものである。 。 これに対し,弁護人は,被告人が,本件当時,前記C女から誘われ,同人と合意の上で,タクシー車内において本件公訴 ,同女に全治までに約2日間を要する外陰部擦過傷の傷害を負わせた」というものである。 。 これに対し,弁護人は,被告人が,本件当時,前記C女から誘われ,同人と合意の上で,タクシー車内において本件公訴事実とは異なる態様で同人の乳房を舐めるなどの行為を行ったことは事実であるが,同人に対し本件公訴事実にあるような文言を申し向けたり,暴行を行ったりしたことはなく,強制わいせつ罪の構成要件に該当すべき事実自体が存在しないなどとして,被告人は無罪である旨主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。 以下,本件公訴事実について無罪とした理由について説明する。 第2証拠上容易に認定できる事実(以下「前提事実」という)。 本件当時における被告人及びC女の行動等㨯本件でC女が被告人の運転するタクシーに最初に乗車してから最後に下車するまでア被告人は,A株式会社B営業所に在籍するタクシー運転手として,本件前日である平成18年8月31日午後7時から同年9月1日(本件当日)午前10時までを勤務時間とする輸送業務に就いていた。 C女は,本件前日の午後7時ころ,約2か月前に出産した乳児を含む4人の子を夫であるO男に預け,友人と居酒屋に出掛けた。その後友人の家に行ったりしてから,本件当日の午前零時ころ,1人でホストクラブ「P」に行き,そこでC女自身の誕生日祝いなどとして飲酒した。 - 2 -本件当日のおおむね午前2時ころ(以下断りのない限り本件当日の出来事である,C女は「P」前で被告人が運転するタクシー(以下「本件タクシー」という)。),。 の後部座席に乗車し,間もなく発車した車内において,自分に子供が4人おり,すべて父親が違う旨の話を自ら被告人にした。 イ本件タクシーは「P」前から発車した後,国道Q号線に出て西進を開始した。 この段階で,C女は,自宅のあ もなく発車した車内において,自分に子供が4人おり,すべて父親が違う旨の話を自ら被告人にした。 イ本件タクシーは「P」前から発車した後,国道Q号線に出て西進を開始した。 この段階で,C女は,自宅のあるRとは反対方向に進んでいることを認識していたが,この点について被告人に何か言ったりはしなかった。 ,(,,本件タクシーは途中で1度停車しなおこの最初に停車した場所についてC女は,元G店〔以下「G店」という〕の北側駐車場と,被告人は,コンビニS店とそ。 れぞれ述べている,C女だけが一旦下車した後,再び乗り込んで発進した。 。)被害者は,その直後に被告人から最初のわいせつ行為や脅迫行為等をされた旨述べている。 被告人は,お金を下ろしたいからコンビニに寄って欲しいというC女の求めに応じて,午前2時12分ころ,コンビニT店(以下「本件コンビニT」という)前で停。 車した。そこでC女が,持っていたバッグを車内に置いたまま,本件タクシーを降りて1人で同店内に入り,ATMを操作してお金を1万円くらい下ろし,恐らくこれとは別のお金でたばこ1箱と携帯電話用の充電器を購入した。C女は,同店内にいた約3分30秒の間,このATM操作や物品購入の他男性店員に話し掛けたりもしたが,この店員や,同店内にいたもう1人の男性店員及び二,三人の客(男性含む)に助けを求めたり,あるいは同店内の電話を借りようとしたり,同店備え付けの公衆電話を使おうとしたりするようなことは一切していない。 この間,被告人は,同店内に入ったりはせず,同店の前に本件タクシーを停車させて待っており,午前2時16分ころ同店を出たC女が本件タクシーの助手席に乗車した後すぐに発車させた。 ウ本件コンビニT前から発車した本件タクシーは,約1分後にパチンコ店J南側駐車場に停車し,その車内において,少なく 2時16分ころ同店を出たC女が本件タクシーの助手席に乗車した後すぐに発車させた。 ウ本件コンビニT前から発車した本件タクシーは,約1分後にパチンコ店J南側駐車場に停車し,その車内において,少なくとも運転席に座った被告人が助手席に座ったC女の乳房を揉んだり舐めたりする行為をした。その後C女が助手席に座った状態で本件タクシーは同駐車場から発車して再び本件コンビニTに向かった。 本件コンビニTに向かったのは,C女が,同店で前記のとおり下ろした1万円が見当たらないことに気付いて同店に戻るよう求めたためである。 エ午前2時42分ころ,C女は,本件コンビニTに到着した本件タクシーを降りて1人で同店内に入り,ATMにお金が置き忘れられたりしていないか男性店員に確認した。同店内にいたのは約34秒間ほどで,この際も店員や同店内にいた客に助けを求めるなどの行為はしなかった。この間,被告人は同店内に入ったりはせず,同店前に本件タクシーを停車させて待っており,同店を出たC女が本件タクシーの助手席に乗車した後発車させた。 この後本件タクシーがC女方のあるRへ向かうことになるころまでに,被告人の携帯電話にC女の携帯電話の番号が入力された。午前2時50分ころ,被告人の携帯電話から,この携帯電話番号への発信が1回されている。なお,この番号の登録名は「U」となっている。 - 3 -オRに向かう途中の本件タクシー内で,C女が,運転している被告人の陰茎を口淫した。午前3時ころ,本件タクシーはC女の自宅があるR第1住宅前で停車し,メーターによる料金表示は1630円となっていたが,被告人は1000円でよい旨述べ,C女は1000円を支払い下車した。 㨯C女が本件タクシーを最終的に下車した後の同人及びO男の行動ア午前3時ころ自宅に戻ったC女は,子供2人(0歳と1歳)と一緒に 被告人は1000円でよい旨述べ,C女は1000円を支払い下車した。 㨯C女が本件タクシーを最終的に下車した後の同人及びO男の行動ア午前3時ころ自宅に戻ったC女は,子供2人(0歳と1歳)と一緒に寝ていたO男を起こし,声を震わせ,半泣き状態で,漢字でどのように書くかも含めて被告人の名前を告げ,ホストクラブから帰る際に乗ったタクシーの運転手である被告人に性的なことを無理矢理された旨述べた。 ,,O男は呼んだタクシーの社名をホストクラブに電話して聞くようC女に言いさらにC女の目の前で104に電話して館林市内にあるタクシー会社の電話番号を全部聞き出し,1軒ずつ電話していくことにしてまずA株式会社に電話した。この時点でO男は相当に怒った様子を見せていた。 イ前記A株式会社への電話で,被告人が在籍している旨の応答を受けたO男は,。 ,,,被告人に妻が強姦された旨伝えたこれに対し相手はあいまいな返答しかせずO男は今から警察に行く旨伝えて電話を切り,警察に行こうとC女に告げた。すぐにO男がV警察署に電話を架けたところ,来てくれと言われ,C女とO男は,寝ている4人の子を置いて,同警察署に向かった。 ウC女とO男がV警察署に着くと,そこにおいて,C女の胸の周りの痕跡を採取したり,当時着ていた服を調べたりすることが行われた。その後,C女とO男は,警察官に付き添ってもらって産婦人科に行き,そこで,C女の外陰部に擦過傷が1か所あり,全治2日間との診断を受けた。この擦過傷は比較的新しいもので,出血はなく,拇指頭大の軽度の発赤を内容とするものだった。警察署や産婦人科を回っている間,警察官や医師に対して,C女が自らの負傷や痛みを申告することはなかった。 㨯C女が本件タクシーを最終的に下車した後の被告人の行動等A株式会社B営業所長であるWは,午前9時前 産婦人科を回っている間,警察官や医師に対して,C女が自らの負傷や痛みを申告することはなかった。 㨯C女が本件タクシーを最終的に下車した後の被告人の行動等A株式会社B営業所長であるWは,午前9時前ころ,本件タクシーに乗車した客の夫から,妻が被告人にわいせつ行為をされたとの苦情を受けた旨聞いた。Wは,午前10時過ぎころ,本件後9回輸送業務を行って同営業所に戻ってきた被告人に対し,このような苦情があった旨告げて,事実はどうなのかと尋ねた。被告人は,ちょっとあぜんとしたような感じで「えっ」と,あるいは身に覚えがないというような感じで「はあ」という返事をした。Wは,被告人の話でははっきりしないと感じ,勤務が終わったから自宅に戻っていいが,連絡がすぐ取れるようそのまま待機するよう言い,被告人はこれを了承して帰った。 被告人は,平成18年10月24日に逮捕された。逮捕時においては,そもそも女性の胸を触ったり,舐めたりしたことについて全く覚えていないと述べていたが,同日中に同意の上で行った旨の供述をしている。 各地点間の距離等(甲5,16)国道Q号線は東西に走る国道で「P」はその1ブロック北側に所在している。同,店から同国道に出て約1キロ西に直進するとD町交差点に至り,南北に走る国道X号線と交差している。 - 4 -G店は国道Q号線の南側に面して所在し「P」からG店北側駐車場までの距離は,,. 。 約800メートル同店前路上からD町交差点までの距離は約2055メートルである本件コンビニTはD町交差点から国道X号線を南下した西側に面した位置に所在し,G店からの距離は約600メートルである。 コンビニS店は同交差点から国道X号線を約172.5メートル(縮尺7500分の1の甲5の図面上の長さが約2.3センチメートルであることから算出した)北上し ,G店からの距離は約600メートルである。 コンビニS店は同交差点から国道X号線を約172.5メートル(縮尺7500分の1の甲5の図面上の長さが約2.3センチメートルであることから算出した)北上し。 た地点の東側に面して所在している。 J南側駐車場は国道X号線の西側に位置し,D町交差点と本件コンビニTの中間に所在している。同店からの距離は約300メートルである。 本件タクシーの走行状況本件タクシーのタコグラフを解析した結果等によれば,午前2時4分ころから,本件コンビニTに到着した午前2時12分ころまでの本件タクシーの走行状況は以下のとおりとなっている(なお,タコグラフによると,本件コンビニTに約4分間停止していることになる時刻が午前2時2分ころから同2時6分ころとなり,実際の時刻より約10分遅れているので補正した。弁2。 )㨯約121秒間に約684メートル進行(これについて,検察官は「P」からの。 走行と主張し,弁護人は同店までの送迎のための走行と主張している)。 㨯その後約98秒間停止(これについて,検察官はG店での停止と主張し,弁護。 人は「P」での停止と主張している)。 㨯午前2時7分ころから加速(最高で時速約56キロメートル,減速を繰り返し)て,約154秒間に約1149メートル進行。 㨯その後約40秒間停止(または極低速で走行(これについて,検察官は極低)。 速での走行と主張し,弁護人はコンビニS店での停止と主張している)。 㨯その後約52秒間は時速約14キロメート以下の速度で約92メートル進行し,その後加速して最高で時速約65キロメートルまで上げ,約56秒間で約506メートル進行し,午前2時12分ころに本件コンビニTに到着,停止。そこで約234秒間停車している。 その他の事情㨯本件以前の状況ア本 時速約65キロメートルまで上げ,約56秒間で約506メートル進行し,午前2時12分ころに本件コンビニTに到着,停止。そこで約234秒間停車している。 その他の事情㨯本件以前の状況ア本件以前において,被告人とC女は互いに面識が全くない。 イC女は,昭和52年*月*日生まれである(甲3。 )ウ平成18年2月にC女とO男は婚姻し,その際O男はC女の連れ子であったそれぞれ父親の異なる3人の子と養子縁組をした。同年7月,C女は一児を出産した。 エ本件以前,C女は,自宅で週二,三回飲酒をし,たまに子供達が寝た後で飲み足りないときは,ホストクラブに行くことがあった。また,本件以前にも,C女は,午前2時ないし3時ころに帰宅することがたまにあった。 O男は,C女がホストクラブに行っていることを知っていたが,それを非常に嫌がっており,C女にもう行くなと言ったこともあった。本件でC女がホストクラブに行ったことは,同人の帰宅後に聞かされるまでO男は知らなかった。 オC女は,長らく館林に居住しており,自ら車を運転して周辺を移動することも- 5 -あった。 㨯本件タクシーについて本件タクシーはギアがハンドル側にあるマニュアル車である(いわゆるコラムのマニュアルシフト。 。)また,本件当時,本件タクシーの助手席前ダッシュボード上には,被告人の氏名及び会社名(A㈱)が記入された乗務員証が取り付けられており,そのすぐ下にも会「」社名が掲げられていた。これら氏名及び社名の文字の大きさはほぼ同じくらいか,社名の方がやや大きい。また,運転席及び助手席の各ドアにはそれぞれ「A」の文字が記載されており,車体上部にも「A」の表示がなされていた。 㨯運転者日報についてA株式会社においては,実際に仕事をした内容を申告するため,各運転者が運転者日報を記載す アにはそれぞれ「A」の文字が記載されており,車体上部にも「A」の表示がなされていた。 㨯運転者日報についてA株式会社においては,実際に仕事をした内容を申告するため,各運転者が運転者日報を記載することになっている。ただし,会社側では,タコグラフや料金メーターの記録を重要視しており,日報の記載は参考程度にしかしていない。 被告人作成の運転者日報には,本件当日午前2時40分ころ,K町で1名の客を乗せて,午前2時55分ころ,Rでこの客を降ろしており,料金が2030円であった旨記載されている。また,同日報の記載によれば,本件前日の午後8時前ころから本件当日の午前10時前ころまでの間に,被告人は合計18回,人数にして29人の客を輸送している。 㨯被告人に教えたC女の携帯電話番号の変更に関する事情本件当時C女が所持していた携帯電話の機種は,平成18年9月8日に変更されている。他方,その電話番号での契約は,平成19年3月1日に強制解約されている。 㨯C女立会いによる実況見分の実施平成18年9月13日,C女立会いのもと,司法警察員Yにより,本件現場等に関する実況見分が実施された。これに基づき作成された実況見分調書には,G店北側駐車場で本件タクシーの助手席に移動した後(なお,この際停車した位置は国道Q号線の直近となっている。現場見取図第3図,添付写真第3号から第5号,国道Q号線を西進して)D町交差点を左折した旨,その間運転手に脅されて胸を揉まれた旨,同交差点に差し掛かる辺りでコンビニに寄るよう頼んだ旨,本件コンビニT東側駐車場に本件タクシーが停車した旨それぞれC女が説明したとの記載がなされており,G店駐車場からD町交差点までの間の走行経路につき,国道Q号線を西進した旨,D町交差点から本件コンビニTまでの間の走行経路につき,国道X号線を南進した旨の現 ぞれC女が説明したとの記載がなされており,G店駐車場からD町交差点までの間の走行経路につき,国道Q号線を西進した旨,D町交差点から本件コンビニTまでの間の走行経路につき,国道X号線を南進した旨の現場見取図(第1図から第4図)が添付されている。 第3C女の公判供述について 前提事実から,本件タクシー車内において,被告人がC女の乳房を揉んだり舐めたりし,C女が被告人の陰茎を口淫したりしたこと,C女が本件タクシーを最後に下車した直後ころの時点で,その外陰部に1か所比較的新しい擦過傷が生じていること,これは被告人やC女による前記行為等がなされる過程で生じた可能性が高いことが認められる。しかし,この擦過傷は,拇指頭大の発赤のみで出血はなく,全治2日間という極めて軽微なものであり,その他の前提事実を併せ見ても,同擦過傷から被告人が本件公訴事実記載のような暴行脅迫を行って強制的にわいせつ行為に及んだなどとは到底推認できないのであ- 6 -って,これが認められるか否かはC女の公判供述の信用性にかかってくる。 C女の公判供述の要旨(本件公訴事実における暴行脅迫を中核とする部分)はおおむね以下のとおりである。 㨯第3回公判(平成19年3月6日実施)「P」前で本件タクシーに乗車し,行き先をRと告げてから,夫や子供を置いて出掛けているから,早く帰らなければという話をした。本件タクシーは発車してすぐRとは逆の方向に向かい始めたことに気付いたが,タクシー運転手である被告人が別の道を知っているのかと思って深くは考えず,何か言ったりはしなかった。 国道Q号線を走り始めてから,被告人は,車の調子が悪いから前の方に乗るかと言ってきて,G店の駐車場で本件タクシーを停めた。そこで被告人に,後ろの方で音がするから前に乗ってと言われたので,その言葉を信用してすんなり助手 めてから,被告人は,車の調子が悪いから前の方に乗るかと言ってきて,G店の駐車場で本件タクシーを停めた。そこで被告人に,後ろの方で音がするから前に乗ってと言われたので,その言葉を信用してすんなり助手席に乗ると,本件タクシーはすぐに発車した。 本件タクシーが走り出してからすぐに,被告人は,右手はハンドルを握った状態で,左手で胸を触ってきた。びっくりして払いのけ,やめてと言ったが,被告人はさらに胸を触ってくるとともに,ホストに行っているような奴はみんな尻軽だ,これまで何人もそういう奴を乗せてるし,そういう奴にこういうことをしても何も否定されないし,みんな言えないから黙ってる,ホストに行っているような奴は周りには言えないから,訴えられたこともない,いろいろ裏の方の知り合いの人もいる,断ったらどうなるか分かってるんだろうなと言ってきた。この間,本件タクシーは時速20キロメートルから30キロメートルくらいのゆっくりした速度で走行しており,ほかに走っていたトラックなどから追い越される際にのぞき込まれたりした。 私は,レイプされた上どこかに連れ去られて殺されるのではないかなどと思い,O男に助けを求めようと,自分の携帯電話が架かってきたふりをして,電話を架けようとしたが,充電が切れていて,架けることができなかった。そこで,充電器をコンビニで買って充電しようと思い,それを被告人に気付かれないよう,お金を下ろすためにコンビニに寄ってくれと言った。被告人はそれまでの間,ずっと胸を揉んだりしており,私が,他の車から見られているからやめてということを言っても,大丈夫,大丈夫みたいな感じでやめなかったが,私が,分かったから取りあえずコンビニ寄ってと言うと,本件コンビニTに寄った。 脅迫を受けたのは,G店駐車場からD町交差点までの間のことで,同交差点の手前でコンビニに みたいな感じでやめなかったが,私が,分かったから取りあえずコンビニ寄ってと言うと,本件コンビニTに寄った。 脅迫を受けたのは,G店駐車場からD町交差点までの間のことで,同交差点の手前でコンビニに寄るように頼んだ。頼んだ際に言ったのは,取りあえずコンビニ寄ってって,ATM行きたいから,分かった分かったと言った程度で,一生懸命説明したりはしていないが,この申し出を被告人は聞き入れて本件コンビニTに向かった。 本件コンビニTに着いて,私がタクシーから降りる際,被告人にバッグを置いていくように言われたので,これに従ってバッグは置いていった。被告人は,私に行くななどとは言っていない。同店では,ATMでお金を下ろして,充電器を買った。店内で充電しようとはしていない。たばこは買ったと警察官に対して述べたかもしれないが,買ったことを覚えていない。その際,男性店員と話をしたりしたが,この店員やもう1人いた店員あるいは客に助けを求めたりしなかったのは,おおごとになってこのことが周りに漏れて興味本位で言い触らされたら嫌だと思い,家に帰ってから警察なりO男なりに言おうと- 7 -思っていたためである。また,被告人が見ていたので,店内の電話や店備え付けの公衆電話を使って助けを求めたりはしなかった。 再び本件タクシーに乗れば,自分がどうなってしまうのかという恐怖感はあったが,私は同店を出て,本件タクシーの後部座席に乗ろうとしたところ,被告人は後部座席のドアを開けず,前に乗るよう言ってきたので助手席に乗った。本件タクシーが本件コンビニTからJ駐車場に移動するまでの間に,車内で充電器を使って携帯電話に充電しようとしたが,ランプが点かず充電できなかったため,もうO男に電話できず,助けを求める道がないと思った。 J駐車場に本件タクシーを停めると,被告人は,胸を揉んできた。 で充電器を使って携帯電話に充電しようとしたが,ランプが点かず充電できなかったため,もうO男に電話できず,助けを求める道がないと思った。 J駐車場に本件タクシーを停めると,被告人は,胸を揉んできた。私が,やめてと言うと,抵抗するとどうなるか分かってんの,いろんな人知ってるから,そういう人たちに何されても知らないよと言われた。これを聞いて,暴力団の人とかに拉致されて売られたりするのかと思った。このような話があった後,被告人は,左手で首の辺りを押さえ付けて,胸を揉んだり,ブラジャーを上げて舐めてきたりした。私は,手で払いどかそうとしたり,足をばたつかせたりしたが,手のひらで首を押さえられていたため,被告人の手を払いのけることはできなかった。首を絞められるような感覚があり,殺されちゃうんじゃないかと思った。被告人が,ガードルの隙間から右手を入れてきた際,私が両足を強く閉じたので,陰部は触られずに済んだ。そのとき,引っかかれたような痛みを感じた。 さらに,被告人は,陰茎を出して,舐めるように言ってきた。私は嫌だと言ったが,頭を押さえ付けられて舐めるよう言われ,抵抗したら何されるか分からなかったので舐めた。 とにかくこの場でこのようなことをされているのが嫌だったので,逃れるため必死になって,こんなところじゃ嫌だ,仕事が終わってから約束しよう,妹の家で待ってるからなどと嘘をつき,さらに私の携帯電話の番号も教えた。番号が嘘だとばれると大変なことになるし,すぐ変えられると思ったので本当の番号を教えた。被告人は私の言うことを信じたようで,本件タクシーを発車させた。その際,ダッシュボード付近を見て,タクシー会社の名前は覚えなかったが,被告人の名前は覚えた。家に帰ったらO男に言って,警察に行こうと思っていたからである。また,ATMで下ろした1万円が見当たらないこと 際,ダッシュボード付近を見て,タクシー会社の名前は覚えなかったが,被告人の名前は覚えた。家に帰ったらO男に言って,警察に行こうと思っていたからである。また,ATMで下ろした1万円が見当たらないことに気付き,本件コンビニTにもう一度戻るよう被告人に言った。もうこのお金のことは忘れて家に戻るということは考えなかった。また会う旨の約束をしてからは被告人は優しかったので,もう騙せたと思っていた。 再び本件コンビニTに行き,ATMにお金がなかったか店員に尋ねたが,見ていないと言われた。また会うという嘘の約束で被告人を騙せたと思っていたから,本件タクシーに戻っても平気だと思った。同店を出発するとき,被告人に前に乗るよう言われた。 もう帰れるからもうちょっとの我慢と思い,また怒り出したら大変になると思ったので被告人の言うことを聞いて助手席に乗った。本件タクシーはR方面に向けて走り出したが,車内で,また胸を触られたり,陰茎を舐めるよう言われて舐めたりした。 妹の家で降りるということにして,R第1住宅前に着くと,被告人が1000円でいいよと言ったので,1000円だけ払った。自宅に入るとすぐにO男をたたき起こし,。 ,,て泣きながら性的な被害を受けたと話した警察署に行く気があったので手も洗わず着替えもしなかった。警察署の中でO男に言われて,結構伸ばしていた爪が四,五本ぼろぼろになっていることに気付いたが,わいせつ行為を受けたことが一番頭にあったので,- 8 -そのことを警察官に申告することは思い付かなかった。また,首を絞められた,あるいは押さえ付けられたということは警察官や産婦人科の医師には言っていないかもしれない。 とにかく性的なことしか話さなかったかもしれない。 㨯第12回公判(平成19年10月16日実施)平成18年9月13日に行われた実況見分の際 ことは警察官や産婦人科の医師には言っていないかもしれない。 とにかく性的なことしか話さなかったかもしれない。 㨯第12回公判(平成19年10月16日実施)平成18年9月13日に行われた実況見分の際,G店駐車場を出てからD町交差点まで国道Q号線を直進し,同交差点を左折して,国道X号線を直進して本件コンビニTに行った旨説明した。これは自分が覚えている限りでの説明であるが,この経路以外は絶対とっていないという自信があるものではない。G店駐車場から本件コンビニTまでの距離は,その間の私と被告人との会話の長さを考えると短いと思う。警察官から,被告人はこのような経路で行った旨述べていると言われたときに,私ももしかしたらそのとおり通ったかもしれないけれどもここしか覚えていないということは説明した。どこかほかの道というのは全く記憶にない。距離が短いかもしれないということは,実況見分で説明した際に警察官に言った。その後警察官や検察官に経路を確認された際には言っていない。短いかもしれないというのは,別の道を走ったという記憶があるからではなく,自分が被告人に言われた言葉の長さからすると短いんじゃないかと思うということだけである。 2回目にコンビニTに行った後,タクシーはすぐには発進しなかった。そこで何があったか特に鮮明には覚えていないが,携帯電話の番号が本当なのか等,会えるように約束を取り付けたいという話をしつこくされて長引いていたと思う。このことは今まで警察官や検察官には話していないが,聞かれれば話した。 信用性に関する検討㨯C女の公判供述はそれ自体詳細かつ具体的であり,ことに被告人の暴行脅迫については実に事細かに述べられている。また,C女は,本件タクシーを最終的に下車してからすぐに夫であるO男に被害を受けた旨声を震わせ,半泣き状態で告げ,その後さほど 体的であり,ことに被告人の暴行脅迫については実に事細かに述べられている。また,C女は,本件タクシーを最終的に下車してからすぐに夫であるO男に被害を受けた旨声を震わせ,半泣き状態で告げ,その後さほど時を経ることなくO男とともに警察署に行って被害申告をしている。これらの点は,被告人から暴行脅迫を受けて,強制的にわいせつ行為をされたという供述部分の信用性を一見高めるかのようである。しかし,以下の事情にかんがみると,この供述部分の信用性は極めて乏しい。 㨯本件コンビニTへの1回目の立ち寄りまでにおける被告人の暴行脅迫行為等アこれに関するC女の公判供述の内容は,本件タクシーがG店の駐車場を発車してから,車内で被告人に胸を触られ,その手を払いのけたところ,さらに触られつつ一連の脅迫文言を告げられた,電話が架かってきたふりをして携帯電話でO男に連絡しようとしたものの充電切れで架けることができず,他の車から見られているからやめてと言って,,も被告人は大丈夫という感じで胸を揉んだりするのをやめなかったD町交差点の手前で分かったから取りあえずコンビニに寄って,ATMでお金を下ろしたいからと言うと,被告人は本件コンビニTに寄った,本件タクシーから降りる際被告人は行くななどとは言わなかったが,バッグを置いていくように言ったのでこれに従いバッグは車内に置いていったというものである(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第3段落から第6段落。 )イ犯行可能時間の不足及びG店北側駐車場での乗り換えの事実が認められないことについてC女の公判供述によれば,本件タクシーがG店駐車場を発車してからD町交差- 9 -点に至るまでの間に,C女の胸を触るという被告人のわいせつ行為の開始,これを拒絶したC女に対する一連の脅迫文言告知,C女の制止にもかかわらずさらに胸を揉ん G店駐車場を発車してからD町交差- 9 -点に至るまでの間に,C女の胸を触るという被告人のわいせつ行為の開始,これを拒絶したC女に対する一連の脅迫文言告知,C女の制止にもかかわらずさらに胸を揉んだりするという被告人のわいせつ行為の続行,C女によるO男への架電の試み,被告人に対するC女の申し出と被告人の了承という経緯があったというのである。 㨯しかし,甲5の実況見分調書から認められるC女の指示説明(前提事実・第2の4㨯)どおり,本件タクシーが,G店北側駐車場の国道Q号線に直近した位置から発車し,同店前路上からD町交差点まで国道Q号線を走行したというのであれば,その間の距離は200メートルそこそこしかないのであって(同・第2の2,本件タクシーが時)速20キロメートル(秒速約5.6メートル)で走行した場合でも所要時間は40秒足らず,時速10キロメートル(秒速約2.8メートル)で走行した場合ですら所要時間は80秒足らずしかない。このように,犯行可能な時間的余裕が1分前後しかないことにかんがみると,前記経緯は事実上あり得ないように思われる。 また,C女の公判供述を前提とすると,前記経緯があったというG北側駐車場からD町交差点までの走行部分(低速走行でわいせつ行為等をされたとする部分)と,同交差点手前から本件コンビニTまでの走行部分(通常の速度での走行と考えられる)。 の合計約600メートルを走行していることを示した部分が本件タクシーのタコグラフの記録上に存在しなければならない。本件コンビニTでの停車は,前提事実・第2の3㨯の234秒間の停止であるから,その手前598メートルの走行がその部分に当たり,誰も主張しているわけではないが,その手前の「s-t」の40秒間の停止がG店北側駐車場での乗り換えとなるはずである(前提事実・第2の3㨯,㨯。 し ,その手前598メートルの走行がその部分に当たり,誰も主張しているわけではないが,その手前の「s-t」の40秒間の停止がG店北側駐車場での乗り換えとなるはずである(前提事実・第2の3㨯,㨯。 し)かし,「s-t」をG店北側駐車場での乗り換えとすると「P」での乗車は,その1つ手前の停車であるから,前提事実・第2の3㨯の約98秒間の停止がそれに該当することになるが「P」からG店北側駐車場までの距離は約800メートル,である(前提事実・第2の2)のに「k-l」から「s-t」の間は約1149メート,ル走行しており,全く合致しない「P」からG店前までの経路について,C女も被告人。 も何らかの「遠回り」をしたなどとはこれまで一切述べていないから,約350メートルもの不一致を説明することはできない。 したがって「s-t」をG店北側駐,車場での乗り換えとみるのは困難である。 㨯「k-l」がG店北側駐車場での乗り換えだとする検察官の主張についてそこで検察官は,C女が第12回公判において,前記実況見分における指示説明が,自分の記憶に基づくものであるとしつつ,別の道を本件タクシーが走ったという記憶は全くないが,そこでの経路以外絶対とっていないという自信はない,その実況見分の際,警察官にG店駐車場から本件コンビニTまでの距離が短いかもしれないと言った,それ以降警察官や検察官に経路を確認された際には言っていない,短いかもしれないというのは,別の道を走った記憶があるからではなく,脅迫文言の長さからすれば短いのではないかと思うというだけである旨供述した(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯)のを受,「」,「」,けてG店北側駐車場での乗り換えをs-tではなくk-lではないかと考え「s-t」の約40秒間は,停止ではなく極低速での走行とみ の公判供述の要旨・第3の2㨯)のを受,「」,「」,けてG店北側駐車場での乗り換えをs-tではなくk-lではないかと考え「s-t」の約40秒間は,停止ではなく極低速での走行とみて,その矛盾を解消しようとしている。ついでに,G店北側駐車場から本件コンビニTに至るまでの時間が長くなることで,犯行可能時間を「延長」しようともしている。 - 10 -しかし「k-l」をG店北側駐車場での乗り換えとみると,その後,本件,コンビニTまで寄り道をせずにいけば約600メートルであるから,どこかを遠回りして約1800メートル走行しなければならないが,本件タクシーの走行状況(前提事実・第2の3)やC女も被告人も国道をそれて脇道に入ったなどとは一言も述べていないこと,東西(国道Q号線,南北(国道X号線)という単純明快な周囲の)道路状況などからすると,G店北側駐車場から本件コンビニTまでどうやって1800メートルも走行して辿り着いたのか不明である。検察官は経路について具体的な主張はしていないが,タコグラフの解析結果を子細に検討すると,あり得る経路としては「k-l」でG店北,側駐車場を出て,D町交差点を左折・南下し,本件コンビニT前を通過し(ここまでで約600メートル進行,さらに約550メートル進んだ)「s-t」でユーターンした可能性がないではない(D町交差点を直進又は右折・北上する経路は,タコグラフの解析結果の上で,同交差点から約600メートル先でユーターンしている形跡がないことからあり得ない。 そして,。)検察官は「s-t(停止又は極低速での走行)及び「t-(u,v,w)-x(時速,」」約14キロメートル以下の低速走行)の合計約92秒間・92メートルでも(で?)強制わいせつ行為が行われたと主張するようである。 (停止又は極低速での走行)及び「t-(u,v,w)-x(時速,」」約14キロメートル以下の低速走行)の合計約92秒間・92メートルでも(で?)強制わいせつ行為が行われたと主張するようである。 しかし,C女証言によれば,G店北側駐車場を出て「すぐに」わいせつ行為をされ始め,その後もされ続けたというのであって,1キロメートル以上も走ってからわいせつ行為が始まった,あるいは再開されたというのではないし,C女は,わいせつ行為をされた後,D町交差点の「手前で」本件コンビニTに行ってくれと頼んだとも証言しているが,上記「左折・南下の」経路を通ったとすれば,同交差点の「手前で」本件コンビニTに向かってくれと頼む場面もあり得ない。 一体全体,C女証言のどこをどのように善解すれば検察官のような主張が可能になるのか不思議というほかはない。 C女の「実況見分の際に)警察官にG店駐車場から本件コンビニTまで,(の距離が短いかもしれないと言った」との証言は,そもそも具体的な経路を全く述べて。 いないのであって,特段の証拠価値がないばかりでなく,前記実況見分を行った警察官Yが,C女は,考えたり悩んだりした様子はなく,できぱきと指示をしていた旨供述していることや,C女が第3回公判でも経路について明快に返答していることなどに照らすと,同証言は,タコグラフの解析結果が明らかになり,自己の述べてきた経路(G店北側駐車場での乗り換えの事実)が客観的にあり得ないと指摘されて何とか糊塗しようとしたものと推認され(後記㨯ウ参照,到底信用することができない。よって,前提事実・第2の)3㨯の98秒間の停止がG店北側駐車場の際のものであるとの検察官の主張は失当である。 したがって,本件においては,どこにもG店北側駐車場での停止という事実はなかったものとほぼ断定できる。 むしろ )3㨯の98秒間の停止がG店北側駐車場の際のものであるとの検察官の主張は失当である。 したがって,本件においては,どこにもG店北側駐車場での停止という事実はなかったものとほぼ断定できる。 むしろ,本件タクシーの走行状況等にかんがみると,後記被告人の供述(第4の2)に沿って,本件タクシーは,前記98秒間の停止の後,午前2時7分ころ「P」を発車して国道Q号線に出た後そのまま同号線を西進し,D町交差点を右折し国道X号線()を北上してコンビニS店で一時停車した前提事実・第2の3㨯の約40秒間- 11 -後,同店を発車して同号線を南下し本件コンビニTで停車したとみるのが合理的である。 なお,その場合,C女が,G店駐車場での停車とコンビニS店での停車を何らかの原因で勘違いしていたとして,この一時停車したコンビニS店からD町交差点までの間でC女の公判供述にいう前記わいせつ行為等の経緯があり得るのか念のため検討しても,前記㨯で指摘したのと同様,低速走行が約52秒間しかなく,事実上あり得ないように思われる。 それにそもそも停車場所がG店かコンビニS店かでは意味内容が相当異なってくる前,,(者なら「異音がするから前に移れ」となり得るのに対し,後者では「お金を下ろしたい。 からコンビニに寄って」と考えやすいことになる)のであって,G店北側。 。 駐車場での乗り換えの事実が「不明」を通り越して,明確に否定される以上,その余の点について検討するまでもなく,被告人を有罪とすることはかなり困難といえる。 ウC女証言にみる被告人の対応の不自然さについてC女の公判供述によれば,被告人は,㨯Gの駐車場を出るなり,本件タクシー内において,それまで全く面識のない女性に,前記一連の脅迫文言を告げ,相手の制止も意に介さず胸を揉み続けるという犯罪行為を敢行したというので 述によれば,被告人は,㨯Gの駐車場を出るなり,本件タクシー内において,それまで全く面識のない女性に,前記一連の脅迫文言を告げ,相手の制止も意に介さず胸を揉み続けるという犯罪行為を敢行したというのである。さらに遡れば,「P」を出た途端,C女の「Rへ」旨の指示を無視して正反対の方向に本件タクシーを走らせたというのであるから,その時点で既に犯行を決意していたと推認されよう。他方,同公判供述に加え,1回目に立ち寄った本件コンビニTにおいてC女がATMでお金を下ろしたり(すなわち,キャッシュカードを手に持っている,恐らくそれとは別のお金。)で買い物をしたりしていること前提事実・第2の1㨯イや本件タクシーの走行状況同()(・第2の3)も併せ見ると,被告人は,㨯㨯の行為の直後,単に相手の女性に,分かったから取りあえずコンビニ寄って,ATM行きたいからと言われただけで,これらの行為を中断してすぐに本件コンビニTに寄り,バッグを置いていけと言った以外,貴重品を持ち出させまいとすることすら特にせずその女性を1人で本件コンビニTに行かせていることになる。 仮に㨯のような犯罪行為を敢行したというのであれば,そこには強固な犯意が存在するとともに犯行の発覚を防ごうとする意思も存在するはずなのに,その直後㨯のとおり行動しているのは不合理かつ不可解であって,そもそも㨯のような犯罪行為の存在自体にわかに信じ難い。被告人がこのような支離滅裂な行動を行ったと考えてもおかしくないような原因や事情は全く見当たらない。なお,論告ないし検察官の被告人に対する尋問中には,これまでにも被告人はC女が供述するのと同様な行為に及んでいたとするかの如きものも見受けられるが,証拠上そのような事情を推認させるものは無論のことうかがわせるものすら皆無である。 エ以上のとおり,本件公訴事 も被告人はC女が供述するのと同様な行為に及んでいたとするかの如きものも見受けられるが,証拠上そのような事情を推認させるものは無論のことうかがわせるものすら皆無である。 エ以上のとおり,本件公訴事実に掲げられた強制わいせつ行為の着手及びその後の実行等に当たるところの,C女の公判供述で事細かに述べられている被告人の暴行脅迫行為は,本件タクシーの走行経路ないし走行状況や,被告人の行動等のいずれにかんがみても,ほぼあり得ないというべきであって,到底認めることができない。 㨯本件に関するC女の認識及び行動等ア本件コンビニTへの1回目の立ち寄り行為について㨯前提事実(第2の1㨯ア,イ)によれば,C女は,午前2時ころ本件タクシーに乗車し,お金を下ろしたいからコンビニに寄って欲しいと求め,午前2時12分ころ- 12 -本件タクシーを降りて1人で本件コンビニTに入店し,そこでお金を下ろしたり,充電器やたばこを買ったり,店員と会話したりしてから午前2時16分ころに同店を出て,本件タクシーの助手席に乗車しており,その後すぐに本件タクシーは発車しているが,この本件コンビニT入店から退店に至るまでの間,C女は,店内にいた2名の男性店員や数名の客に助けを求めたり,店内の電話を借りようとしたり,店備え付けの公衆電話を使おうとしたりするようなことは一切行っていない。 C女の公判供述によれば,前記本件タクシー乗車から本件コンビニTへの1回目の立ち寄りまでの間,車内において,被告人に胸を執拗に触られたり,様々な脅迫文言を言われたりしており,レイプされた上どこかに連れ去られて殺されるのではないかと思った,本件コンビニTを出て,本件タクシーに戻る際,タクシーに乗れば自分がどうなってしまうのかという恐怖感があったというのである(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第3段 て殺されるのではないかと思った,本件コンビニTを出て,本件タクシーに戻る際,タクシーに乗れば自分がどうなってしまうのかという恐怖感があったというのである(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第3段落から第4段落,第7段落。この供述内容と,1人で本件コンビニTに入っ)た際,そこにいた店員や客に一切助けを求めず,店内の電話や店備え付けの公衆電話を使って助けを求めようともせず,そのまままた店を出て被告人の待つタクシーに戻ったという事実とは全く相反するといっても過言ではない。 㨯この点につき,C女は,本件が公になって興味本位で言い触らされたら嫌だと思い,家に帰ってから警察なりO男なりに言おうと思っていたためであると述べる(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第6段落。しかし,被告人によりどこかに連れ去ら)れて殺されるのではないかと思い,また本件タクシーに乗れば自分がどうなってしまうのかという恐怖感があったというにもかかわらず,かような理由で助けも求めず,店内電話や公衆電話を使おうともせず,そのまま被告人の待つ本件タクシーに戻ったというのは不合理に過ぎる。そもそも,殺されるのではないか,連れ去られるのではないか,自分がどうなってしまうのかと思いつつ,家に帰ってから警察やO男に言おうと思ったということ自体理解し難い。 また,C女は,被告人に店外から見られていたから本件コンビニT備え付けの公衆電話や同店内の電話を使おうとはしなかった旨述べている(前記第6段落)が,被告人に殺されるかもしれない,本件タクシーに戻った後何をされるか分からないという認識のもとで,救助を求めるべくこれらの電話を使おうとすらしなかった(他方,C女は,何とかしてO男に携帯電話で助けを求めようとした旨重ねて述べている)理由としては。 やはり不合理かつ不可解に過ぎるし,まして店員や 救助を求めるべくこれらの電話を使おうとすらしなかった(他方,C女は,何とかしてO男に携帯電話で助けを求めようとした旨重ねて述べている)理由としては。 やはり不合理かつ不可解に過ぎるし,まして店員や客に助けを求めることも,本件コンビニTから本件タクシーに戻るまいとすることすらも試みなかった理由には全くなり得ない。 さらに,C女は,被告人に言われて本件タクシーにバッグを置いたまま本件コンビニTに行ったとも供述している(前記第6段落)が,既に見たとおり(㨯ウ,現)にC女が同店内でATMを使ってお金を下ろし,それとは別のお金で買い物を行っていると考えられることなどからすると本件タクシーに貴重品を置いていかされた等の事情も見当たらず,しかもC女の公判供述においても,そのバッグと関連付けて,同人に助けを求めさせないで本件タクシーに戻らせるための何らかの脅迫文言を被告人が述べたというような事情すら存在しないことにかんがみると,本件タクシーにバッグが置いたままであったことから,本件コンビニTで買い物等だけをして助けを求めたりすることは一切せずに- 13 -本件タクシーに戻ったC女の前記行動に何らかの合理性を見い出すことができるわけでもない。そもそも被告人に殺されるかもしれない,どうされてしまうのか分からないが,そのバッグが置いてあるから本件コンビニTで助けを求めようともせず,そのまま本件タクシーに戻ったというのであればやはり不可解の一語に尽きる。 㨯加えて,C女は,家に帰ってから本件を警察やO男に言うつもりであった,被告人が見ていたから本件コンビニTで公衆電話や店内電話を使おうとはしなかった,助けを求めるためO男に架けようとした携帯電話が充電切れだったので,コンビニで充電器を購入して充電しようと思った,充電器を購入することを被告人に気付かれないよう 電話や店内電話を使おうとはしなかった,助けを求めるためO男に架けようとした携帯電話が充電切れだったので,コンビニで充電器を購入して充電しようと思った,充電器を購入することを被告人に気付かれないように,お金を下ろすためと言って,コンビニに寄るよう求めた,本件コンビニT内で充電しようとはせず,被告人がすぐ横にいる本件タクシーの助手席でこの充電器を使って充電行為を行った(以上につき,C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第4段落,第6段落から第7段落)などと,帰宅してから被害申告するつもりだったのかそれとも途中で携帯電話を使って助けを求めるつもりだったのか,充電や電話使用等の行為が被告人に分からないようにしていたのかあるいは分かってもかまわないと思っていたのか等々,1回目の本件コンビニT立ち寄り及びその前後の併せてせいぜい10分足らずほどの間に関する自らの行動とその際の心情につき相矛盾する供述を繰り返している。 㨯念のため敢えて付言するに,このような事案においては,本件当時C女は脅えるあまり,あるいは公判で供述していない何らかの理由(どのような理由かも,何故供述しないのかも全く不明であるが)で,助けを求めることも,店内電話や公衆電話を使うことも,本件タクシーに戻るまいとすることも全くできなかったのではないか,あるいはまともな思考ができる状態ではなかったのではないかといった可能性もあるのではないかとの一般論もあり得るが,そもそもたかだか1分前後の犯行で,中年のタクシー運転手に被害者を圧倒的に支配できるような強力な脅迫行為等が可能であるなどとは想像しにくい上,C女自らコンビニに寄るよう求め,1人で本件コンビニTに入って,ATMでお金を降ろし,充電器のみならずたばこを買い(なお,C女は,たばこを購入した点につき,かつては警察官に供述していたようである 上,C女自らコンビニに寄るよう求め,1人で本件コンビニTに入って,ATMでお金を降ろし,充電器のみならずたばこを買い(なお,C女は,たばこを購入した点につき,かつては警察官に供述していたようであるのに,公判においては,充電器を購入したことのみ覚えていて,たばこを購入したことは覚えていないと述べている〔C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第6段落〕が,これ自体不自然である,その間に店員と会話もして。)いるという経緯にかんがみれば,そのように考える余地は皆無である。また,既に見たとおり,C女の公判供述はそれ自体詳細かつ具体的であり,ことに被告人の暴行脅迫に関し,,ては実に事細かに述べられているのであって当時に関する記憶に混乱ないし欠落が生じこれによって供述が混乱しているのではないかなどと善解する余地もない。 㨯このように,C女が,本件タクシー内で被告人による暴行脅迫や意に添わぬわいせつ行為を受けたという直後,1人でコンビニに入店していくつかの手段により危難を逃れ得る状況となったにもかかわらず,敢えてこれらを一切行わずに買い物等を行い,そのまま本件タクシーに戻っており,しかもその際の心情ないし認識や行動等につき不可解ないし相矛盾する供述をしている点は,被告人による暴行脅迫や意に添わぬわいせつ行為を受けたという供述部分の信用性を著しく低下させる。 イ本件コンビニTへの2回目の立ち寄り行為について㨯前提事実によれば,C女は,本件コンビニTで下ろした1万円が見当たらな- 14 -いことに気付いて被告人に同店へ戻るよう求め,午前2時42分ころ同店に到着した本件タクシーを降りて1人で本件コンビニTに入店し,ATMにお金を忘れていないかを男性店員に確認すると,すぐ(入店から約34秒後)同店を出て本件タクシーの助手席に乗車しているが,この本件コ 到着した本件タクシーを降りて1人で本件コンビニTに入店し,ATMにお金を忘れていないかを男性店員に確認すると,すぐ(入店から約34秒後)同店を出て本件タクシーの助手席に乗車しているが,この本件コンビニT入店から退店に至るまでの間においても,店員や客に助けを求める等の行為は一切していない(前提事実・第2の1㨯ウ,エ。 )C女の公判供述によれば,この本件コンビニTへの2回目の立ち寄り行為の直前,約20分以上にわたり,被告人から脅迫文言を言われた上,首を絞められるようにされ,胸を揉まれたり,陰部を触られそうになったりした,この場でこのようなことをされるのがとにかく嫌だったので,逃れるため必死になってまた会う旨嘘の約束をしたところ,被告人はこれを信じたようで,わいせつ行為をやめてタクシーを発進させたというのである(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第8段落。この供述内容と,下ろした。)1万円が見当たらないことに気付いて本件コンビニTに戻るようC女自ら頼み,実際戻ってから1人で同店内に行って,この1万円のことを店員に確認しただけでまた被告人のタクシーに戻ったという事実とはやはり相反すること甚だしい。 㨯C女は,もう被告人を騙せたと思っていた旨供述しているが,そうであるとしても「もう嫌で,嫌で(第3回公判供述)必死に嘘をついて被告人を騙し,前記の,」ような執拗なわいせつ行為を取りあえずやめさせることに成功したというのであれば,後はできる限り早く被告人から解放されるようにしようとそれこそ必死になるはずである。 C女の公判供述を前提とすれば,被告人はC女に騙され,自宅のあるRに向けて発進したことになるはずであるのに,被告人が騙せたから,1万円のことなど放置して家に戻るということを考えすらせずに,ただ1万円を置き忘れていないか確認するためだけに自 女に騙され,自宅のあるRに向けて発進したことになるはずであるのに,被告人が騙せたから,1万円のことなど放置して家に戻るということを考えすらせずに,ただ1万円を置き忘れていないか確認するためだけに自ら本件コンビニTに戻るよう求めた(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第8段落)というのは,本件コンビニTへの1回目の立ち寄り時に助けを求めたりすることなく本件タクシーに戻ったこと以上に不合理ないし不可解とすらいえる。 かようにして本件コンビニTに立ち寄り,1人で店内に入った挙げ句,またしても,何ら助けを求める手段を講じようともせず,ただ1万円のことを店員に尋ねてそのまま本件タクシーに戻ったというのである。ここでは被告人を騙せたと思っていたというのであるから,本件コンビニTへの1回目の立ち寄り時と違って被告人に殺されるかもしれないなどとは思っていなかったと見ることはできるが,そうであってもC女の公判供述を前提とすると,このまま本件タクシーに戻れば,あれほど「もう嫌で,嫌で」必死に嘘をついて逃れたはずのわいせつ行為にまた及ばれる可能性があることは容易に想像がつくはずであるのに,また会う旨騙せたようであるから戻っても平気だと思い(前記要旨・第3の2㨯の第9段落,助けを求めることもなく特に躊躇することもなく(店内にいた)のはわずかに約34秒間,そのまま戻ったというのは理解に苦しむ。 )㨯このように,本件コンビニTへの2回目の立ち寄りに関する事実関係や,その際の心情についてのC女の公判供述部分も,その直前に意に添わぬ執拗なわいせつ行為を受けたとしてこれを詳細かつ具体的に述べる同人の公判供述部分の信用性ひいては被告人の暴行脅迫について述べるC女の公判供述部分全体の信用性を著しく低下させる。 ウ本件タクシー乗車後G店北側駐車場での席の移動に至るまでC女 かつ具体的に述べる同人の公判供述部分の信用性ひいては被告人の暴行脅迫について述べるC女の公判供述部分全体の信用性を著しく低下させる。 ウ本件タクシー乗車後G店北側駐車場での席の移動に至るまでC女は,本件タクシー乗車後行き先をRと告げた,本件タクシーが発車してす- 15 -ぐにRと逆の方向に向かい始めたことに気付いたが,タクシー運転手である被告人が別の道を知っているのかと思ったので深くは考えず,また,G店の駐車場で後ろの方で音がするから前に乗ってくれと言われ,これを信用してすんなり助手席に乗ったと供述している(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第1段落から第2段落。 )しかし,C女自身,長らく館林に居住しており,自ら車を運転して周辺を移動したりもしていた(前提事実・第2の4㨯オ)というのであるから土地勘は十分あったはずであり,前記供述のような理由でRと逆方向に向かい始めたのを疑問にすら思わなかったというのは不自然である。特にG店にまで至ったときにはRとは正反対の方向に800メートルも来てしまっているのであり「別の道を知っているのかと思った」などとい,。 う言い訳が信用できるはずはない。さらにかように逆方向に向かっているタクシーの運転手が,いったん駐車場に車を停めて,前に乗るよう言ってきたのを不審とすら思わなかったというのも不自然といえる。 エ被告人の携帯電話に入力されたC女の携帯電話の番号について本件タクシーがRに向かうことになるころまでに,被告人の携帯電話にはC女()。 ,,の携帯電話の番号が入力されている前提事実・第2の1㨯エこれについてC女は被告人に後で会うという嘘の約束をする際,違うとばれたら大変なことになるし,すぐ変えられると思ったので,本当の自分の携帯電話の番号を教えた旨供述している(C女の公判供述の要旨・ これについてC女は被告人に後で会うという嘘の約束をする際,違うとばれたら大変なことになるし,すぐ変えられると思ったので,本当の自分の携帯電話の番号を教えた旨供述している(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第8段落。 )ところが,本件の約1週間後である9月8日に,C女の携帯電話は機種変更されているが,その電話番号は変更されることなく,翌年3月に強制解約されるまでそのままになっている(前提事実・第2の4㨯。前記のように考えたのであれば速やかに変更)しているはずであるし,また,意に添わぬわいせつ行為をされた相手に教えた番号をすぐ変えるというのは極めて自然というべきであるのに,機種変更はしても番号は変更しないままであったというのは実に不自然かつ不可解というしかない。 オ被告人及び本件タクシー会社の名前について(),,,前提事実第2の1㨯アによればC女は漢字でどのように書くかも含め。 ,,,被告人名をO男に告げているこの点につきC女は本件タクシーがJ駐車場を出た際ダッシュボード付近を見て,本件タクシー会社の名前は覚えなかったが,運転手である被告人の名前を覚えた,家に帰ったらO男に言って,警察に行こうと思っていたからであると供述している(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第8段落。 )しかし,前記供述を前提としたとしても,被害申告しようと思いつつ会社名を覚えようとすらしなかったというのであれば不可解に過ぎる。何より,ダッシュボードの乗務員証等の表示状況及び本件タクシー会社名(A)からすれば,運転手名(被告人「」)(),名を覚える際に会社名を覚えるのは極めて容易である前提事実・第2の4㨯参照しさらにその後もR住宅に着くまでの間,助手席に乗っていたC女がダッシュボードを見て運転手名とともに会社名を覚えることも, ,名を覚える際に会社名を覚えるのは極めて容易である前提事実・第2の4㨯参照しさらにその後もR住宅に着くまでの間,助手席に乗っていたC女がダッシュボードを見て運転手名とともに会社名を覚えることも,あるいは本件コンビニTへの2回目の立ち寄り時や最後の下車時に車体の各表示を見て会社名を覚えることもやはり極めて容易であって,むしろ乗務員証等の表示状況にかんがみれば運転手名を覚える際に自然に会社名も記憶に残ったはずであるとすらいえる。にもかかわらず,運転手名は覚えていたが会社名は覚えていなかったというのは相当に不自然というべきで,運転手名を覚えていたC女は会- 16 -社名も覚えていたものとみるのが相当であり,何らかの理由で自分からは敢えてO男にこれを告げなかったものと強く疑われる。 㨯公判供述に関する付加ないし変遷アC女は,強制わいせつ行為が開始されたというG店駐車場から本件コンビニTまでの区間の走行経路に関し,第12回公判に至って,甲5の実況見分調書に記載された距離が短いと思う旨供述するとともに,このことは同実況見分時にも警察官に言った旨供述しているが,既に見たとおり(㨯イ㨯,G店北側駐車場に本件タクシーが停車したと)は認められないし「警察官に言った」旨の証言は到底信用できない。 ,。 イまた,C女は,本件コンビニTへの2回目の立ち寄り後,本件タクシーに戻ってからも,被告人はすぐには発車させずに,携帯電話の番号が本当なのか等後で会う約束関係の話をしつこくされた旨の内容を第12回公判に至って述べている(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯。 )しかし,この時の状況につき,第3回公判において,検察官から尋ねられた際には前記内容を全く供述しておらず,むしろ弁護人の質問に対して,また会う約束をした旨被告人を騙せたと思った,約束した後は被告人 しかし,この時の状況につき,第3回公判において,検察官から尋ねられた際には前記内容を全く供述しておらず,むしろ弁護人の質問に対して,また会う約束をした旨被告人を騙せたと思った,約束した後は被告人は優しかったなどと,前記内容と噛み合わないことを述べている(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第8段落。 )また,C女は,第12回公判に至るまで聞かれなかったから前記内容を話さなかった旨供述するが,また会うという嘘の約束で騙せたはずの被告人から,さらに再びしつこくその約束について聞かれたという体験を真にしているのであれば,その時の状況について尋ねられた際自ずから語ることになるのが自然である(その意味では,前記内容を供述する際,特に鮮明には覚えていないなどと留保を付けている〔前記要旨〕点も不自然といえる。 。)これらからすれば,この供述自体信用性が乏しい。 ウこのような公判供述に関する付加ないし変遷が,1回目の公判供述(第3回公判供述)から約半年後になされたという経緯自体不自然であり,しかもいずれの内容も信用できないこと,タコグラフの解析結果が出た後である第11回公判(平成19年9月25日実施)においてC女の証人申請がなされ,その証人尋問(第12回公判)において,前記公判供述に関する付加及び変遷がなされていること,アの距離に関する供述は,先にみたとおりタコグラフの記録とC女の公判供述が全く合致しない点(第3の3㨯イ)に密接に関連するものである上,別の道を走った記憶があるからではなく,自分が言われた脅迫文言の長さからすれば短いのではないかというもので,この脅迫文言告知に関する供述が真実であることを前提としてしかもそれのみを根拠としたいわば本末転倒的な主張を内容とするものであること,イの本件コンビニTへの2回目の立ち寄り後の状況に関する供述は, この脅迫文言告知に関する供述が真実であることを前提としてしかもそれのみを根拠としたいわば本末転倒的な主張を内容とするものであること,イの本件コンビニTへの2回目の立ち寄り後の状況に関する供述は,C女の公判供述を前提とする検察官の主張からすれば,この2回目の立ち寄りが,タコグラフの記録上約8分近くにわたり停車していた箇所に該当することになることと密接に関連していることからすれば,前記付加及び変遷はいずれも,タコグラフの解析結果に平仄を合わせるためになされたものと推認される。 㨯その他の事情アC女の爪に関してC女は,被害申告のため警察署に行った際,そこでO男に言われて,結構伸ば- 17 -していた爪が四,五本ぼろぼろになっていることに気付いたが,わいせつ行為を受けたことが一番頭にあったので,そのことを警察官に申告することは思い付かなかったと供述する(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第10段落。 )しかし,この爪の状況については写真撮影等一切なく,証拠としては全く保全されていない。C女は,警察に行く気があったから,手も洗わなかったし,着替えもしなかったと供述し(前記要旨,同行したO男も,証拠を警察の方で採るから,なるべくC)女の体に触れないようにしたと供述しており,共に証拠を保全しようとする明確な意思があったはずであるのに,前記供述のようなC女の爪の状態を両名とも警察官に申告しなかったというのは不自然である。この点,O男の公判供述によれば,C女の伸ばしていた爪が,2本ほど割れるか欠けるかして,ちょっとおかしいと感じたというのであり(もっともO男はまじまじと全部見たわけではないとも供述しているが,C女の供述するような状態であれば,そもそもまじまじと見なくとも分かるはずである,実際その程度でしか。)なかったから敢えて両名とも申告 もO男はまじまじと全部見たわけではないとも供述しているが,C女の供述するような状態であれば,そもそもまじまじと見なくとも分かるはずである,実際その程度でしか。)なかったから敢えて両名とも申告しなかったとみるのが自然である。そして,その程度であれば,決して明るくはなく,十分広いとも言えない車内において,合意の下に,C女の胸を被告人が揉んだり舐めたりし,またはC女が被告人の陰茎を口淫したりした際に,あるいはC女が,本件コンビニTで下ろした1万円が見当たらないことに気付いてこれを探したりした際に生じたとしても特に不自然ではない。 イ被告人に首を絞められた,あるいは押さえ付けられたということについてC女は,Jの駐車場において,被告人から,首の辺りを押さえ付けられ,首を絞められるような感覚があり,殺されちゃうんじゃないかと思ったと供述する(C女の公判供述の要旨・第3の2㨯の第8段落。 )しかし,このような行為による痕跡等は一切証拠として保全されていない。のみならず,C女の公判供述(同第10段落)や本件当時C女を診察した医師Zの公判供述にかんがみれば,そもそもC女は警察官にも医師にも被告人からかような行為を受けたと申告していないものと認められる。C女は,とにかく性的なことしか話さなかったと供述するが,仮に,真実被告人からそのような行為を受けて,殺されちゃうんじゃないかと思ったというのであれば,被告人から受けた暴行として敢えて被害申告しなかったというのはかなり不自然である。 ウ運転者日報について検察官は,被告人作成の運転者日報において,C女を乗せた部分に該当すると()()ころの発時間乗車時刻が約40分間遅く記載されていること前提事実・第2の4㨯につき,被告人がこの発時間の記載時期のみならず,着時間の記載時期や到着地の記載内容につい 部分に該当すると()()ころの発時間乗車時刻が約40分間遅く記載されていること前提事実・第2の4㨯につき,被告人がこの発時間の記載時期のみならず,着時間の記載時期や到着地の記載内容について公判において供述を変遷させていることから,被告人は,C女に対して真実わ,,いせつな行為に及んだので被害者を乗車させた正しい記録を明らかにしたくないあまり虚偽の内容を日報に記載したと主張する。 そもそも会社側では,タコグラフや料金メーターの記録を重要視しており,日報の記載は参考程度にしかしていない(前記前提事実。そして,前記記載部分が,実際)と明らかに異なるのは,結局のところ発時間と料金のみである。被告人が,勤務時間中に合意の下とはいえ,客である女性とわいせつな行為に及んだことの後ろめたさから,なるべく目立たないようにしたいという程度の思いで時間を短く書いたり,実際の所要時間と- 18 -の関係で料金を多めに書いたりしたとしても特に不自然とはいえない。仮に強制わいせつ行為に及んだことを隠蔽するため虚偽の内容を記載するというのであれば,C女を乗せた(,)ことが出てこないような形例えば発車地及び到着地を実際と全く異なるものにする等にしようとするのが通常であろうし,実際この日報の記載をもとに被告人が本件について何らかの主張をしたというような形跡も全くない。ここで検察官が主張しているように,真実わいせつな行為に及んだので,正しい記録を明らかにしたくなかったのではないかという推認は可能であるが,それを超えて,被告人が強制的にそのわいせつ行為を行ったのではないかというところまでは到底推認できない。 㨯虚偽供述の可能性アこれまで見てきたところを総合すれば,被告人の暴行脅迫に関するC女の公判供述の信用性は皆無に近く,詳細かつ具体的であることや最 ではないかというところまでは到底推認できない。 㨯虚偽供述の可能性アこれまで見てきたところを総合すれば,被告人の暴行脅迫に関するC女の公判供述の信用性は皆無に近く,詳細かつ具体的であることや最終下車後すぐに被害申告を行(),っていること等を考慮してもむしろ暴行脅迫に関して詳細かつ具体的であるがゆえに同供述に基づいて被告人の強制わいせつ行為を認定することは到底できない。むしろ,「P」を出発して,すぐに西進し,最初に停車(これがコンビニS店といえることは前述のとおりである)するまでC女が何も文句も言わなかったこと(前提事実・第2の1㨯。 イ,その後の2度にわたる本件コンビニTへの立ち寄りとその際のC女の行動,この立)(,),ち寄り行為の合間やその後に車内でいわゆるわいせつ行為が行われていること同ウオC女の携帯電話番号告知とその後の不変更等の事情にかんがみれば,コンビニがある方向に進行したのはC女の指示によるものであり,その後のわいせつ行為も合意に基づくものと相当程度推認される。 イこの点,検察官はC女に虚偽供述をする理由は全く存しないと主張する㨯しかし,C女は,本件の約半年ほど前にそれぞれ父親の異なる3人の子を連れてO男と婚姻しており,約2か月ほど前には一児を出産したばかりであったこと,O男は,C女がホストクラブに行くことを非常に嫌がっており,C女にもう行くなと言ったりもしていたこと,にもかかわらず,本件当日,C女は,子供達をO男に預けたまま,O男,(,に告げることなくホストクラブに行き帰宅時間も相当遅くなっていたこと以上につき前提事実・第2の1㨯ア,4㨯ウ,エ)からすると,C女がO男からの強い叱責等を恐れて,被告人に襲われたという虚偽供述をした可能性をあながち否定できない。 㨯さらに,警察への被害申告の話が出た経緯 き前提事実・第2の1㨯ア,4㨯ウ,エ)からすると,C女がO男からの強い叱責等を恐れて,被告人に襲われたという虚偽供述をした可能性をあながち否定できない。 㨯さらに,警察への被害申告の話が出た経緯に関するC女及びO男の公判供述を子細に検討すると,以下のとおりである。 まず,C女は主尋問で,O男に被害を伝え,A株式会社との電話後,O男が警察に電話したとしか供述していない。また,O男がタクシー会社を探している最中に,自分が警察に言おうよ言おうよと言った旨供述するが,帰ったらすぐ110番しようと思っていたのかという質問に対しては,とにかくO男を間に入れようと思っていたと答え,O男の口から警察に電話するという言葉が初めて出たのはA株式会社に電話しているときと供述している。 他方,O男は,弁護人の反対尋問に至ってから,タクシー会社に電話する前に,C女と警察に行こうという話をした旨供述するが,警察官調書や検察官調書ではそのことが出てこないと指摘されている。さらに,A株式会社に電話した際,らちが明かないという気持ちになって,警察に行こうと思った,この電話の際に被告人と連絡をつけられ- 19 -ないかと言った時には,会社から本人に連絡をしてもらい,取りあえず直接本人に会って問いただしたいという気持ちだった旨供述し,裁判官の補充尋問では,C女との間で,警察に行こうという話は,タクシー会社に電話した後に出た,タクシー会社に電話したが,らちが明かない,じゃあ警察に行こう,それで証拠も全部採ってもらおうという形だった旨供述するに至っている。 これらの各供述内容からすれば,C女によるO男への被害申告後,C女とO男の間において警察に行くという会話をしたのは,A株式会社との電話でO男が警察に行く旨告げてからであると強く推認される。 㨯㨯及び㨯に加えて,C女は,被害 ば,C女によるO男への被害申告後,C女とO男の間において警察に行くという会話をしたのは,A株式会社との電話でO男が警察に行く旨告げてからであると強く推認される。 㨯㨯及び㨯に加えて,C女は,被害申告後,必死になって被告人の所属するタクシー会社を探そうとしていたO男の姿を目の当たりにしつつ(前提事実・第2の1㨯ア,被告人の名前とともに記憶していたはずの本件タクシー会社名を敢えてO男に告げ)なかった疑いが強いこと(㨯オ,公判供述に関して,不自然である上その内容自体信用)できない付加ないし変遷を,タコグラフの解析結果に平仄を合わせるために行ったものと推認されること(㨯)も併せ見ると,C女は,本件当日,生まれたばかりの乳児を含む4人の子供をO男に任せきりにした状態で,O男に黙って,同人が非常に嫌っており,もう行くなとまで言われていたホストクラブに行き,帰りがあまりに遅くなったことで同人からひどく責められたり,離婚話になったりするのを恐れ,そのような状況になる前に,帰りに合意の下でわいせつな行為をした被告人の名前を出し,タクシー運転手に襲われたと嘘を言い出すことで,そのような状況になるのを避けようとしたのではないか,その際,話に真実味を持たせるために被告人の実名を出したが,他方でタクシー会社の名前は出さずにおいて特定を困難にし,O男との間だけで(あるいはもし被告人が特定されたとしても,職務中に客であるC女とわいせつ行為をしたこと自体は事実である以上,夫であるO男に対して合意であるなどと主張しにくいであろう被告人も交えた三者の間だけで)話を終わらせようとしたものの,案に相違してO男が必死に本件タクシー会社を探し出そうとしてこれを見つけ出した挙げ句,警察に行くと言い出したため,もはや引っ込みがつかなくなったのではないかという疑いがある。 㨯以 うとしたものの,案に相違してO男が必死に本件タクシー会社を探し出そうとしてこれを見つけ出した挙げ句,警察に行くと言い出したため,もはや引っ込みがつかなくなったのではないかという疑いがある。 㨯以上のとおり,本件公訴事実にいう被告人の暴行脅迫に関するC女の公判供述部分は,そこで述べられているような被告人の暴行脅迫行為の観点から検討しても,そのような暴行脅迫による強制わいせつの被害を受けたというC女自身の認識及び行動等の観点から検討しても,その内容自体あまりに不自然かつ不合理で,他の客観証拠ないし前提事実ともおよそ整合せず,さらには不自然としか言いようがない供述の付加ないし変遷もあり,敢えて虚偽の供述をしたのではないかとの疑いもあることからすると,全く信用できない。むしろ,前記のとおり,合意のもとで前提事実にあるような行為を本件タクシー内で行ったものと相当程度推認される。 第4被告人の供述について 第3で検討したとおり,C女の公判供述によって本件における被告人の強制わいせつ行為を認定することは到底できず,本件公訴事実にいう強制わいせつ致傷については無罪という結論が導かれる。この点,検察官は被告人の供述が到底信用できない旨主張しているところ,前記のとおりC女の公判供述自体信用性を全く認め難い以上,被告人の供述の信用性如何を問題とする必要はない。ただ,検察官及び弁護人がそれぞれ被告人の供述- 20 -に関して相当の主張をしていることも踏まえ,以下念のため検討する。 被告人は,C女とのわいせつ行為に至るまでの経緯についておおむね以下のように供述している。 「P」前でC女を客として本件タクシーに乗せたところ,C女からお金を下ろしたいと言われたので,いくつかのコンビニへの道筋を教えると,コンビニS店の方へ行くよう求められたため,国道Q号線を している。 「P」前でC女を客として本件タクシーに乗せたところ,C女からお金を下ろしたいと言われたので,いくつかのコンビニへの道筋を教えると,コンビニS店の方へ行くよう求められたため,国道Q号線を西進した後,D町交差点を北上する経路(国道X号線を北上する経路)で,コンビニS店に向かった。その途中,同人から「あっ,タイプ,今日はUの誕生日なの,エッチしよう」と言われ,女房子供がいるからと断ると,自分にも。 旦那子供がいるのでちょうどいいじゃないと言われた。このとき,C女は身を乗り出しており,深夜だったこともあって,私はC女が本気で性的関係を持とうと誘ってきていると思った。コンビニS店に着くと,C女は1人で同店に入ったが,戻ってきてお金が下ろせなかった旨言ったので,国道X号線を南下する経路で本件コンビニTに行った。本件コン,,。 ビニTからC女が出てきた際に前に乗るかと尋ねたところC女は助手席に乗ってきた私は,同人と性的関係を持とうと思い,その後,前提事実にあるようなわいせつ行為を2人でした。また,C女が本件タクシーを最終的に下車する前には,陰部を触らせてくれたりもした。なお,C女の携帯電話の番号は,C女が自分で私の携帯電話に入力した。 被告人の前記供述内容は,C女の公判供述がタコグラフの記録と大きく食い違っており,本件タクシーの走行経路ないし走行状況と全く整合しないのと異なり,これらとおおむね符合している(第3の3㨯イ。また,前提事実から認められる事情や,自身の認)識ないし行動に関する供述にかんがみて,不自然,不合理,不可解に過ぎるC女の公判供述と異なり「P」を出て,すぐにRとは正反対の方向に1キロメートル以上も進行しな,がらC女から文句を言われることもなかったことや,本件コンビニTへの2度の立ち寄り,,とその際のC女の行動 判供述と異なり「P」を出て,すぐにRとは正反対の方向に1キロメートル以上も進行しな,がらC女から文句を言われることもなかったことや,本件コンビニTへの2度の立ち寄り,,とその際のC女の行動この立ち寄り行為の合間やその後に車内で行われたわいせつ行為C女の携帯電話番号告知とその後の不変更等の事情にもよく符合している。これらからすれば,C女に指示されてコンビニ方面に進行し,C女に誘われ,合意のもとにわいせつ行為を行ったという被告人の供述内容は合理的であり,C女の公判供述よりもはるかに信用性が高い。 検察官は,C女から誘われたという被告人の話は荒唐無稽であり,C女が被告人に本件当日が自分の誕生日であると言ったとはおよそ考えられない,被告人の携帯電話に入力されたC女の電話番号の登録名は「U」であり,C女の本名と異なるから,被告人の供述するような関係はC女との間で全く形成されていないなどと主張する。しかし,これまで検討してきたとおり,C女と被告人は合意に基づいて車内でのわいせつ行為を行ったものと相当程度推認されるのであるから,C女から誘われたのだという被告人の話を荒唐無稽と一蹴することなど到底できない。そもそも本件当時C女が,夫であるO男にも告げることなく深夜自身の誕生日祝いなどとしてホストクラブで飲酒し,その帰りに被告人のタクシーに乗車したという事実関係(前提事実・第2の1㨯ア,4㨯エ)からしても,誕生日だからと称して誘ってきたという被告人の供述を荒唐無稽と決め付けることはできない。また,被告人の供述するような形での誘いから形成された関係であれば,電話番号を教える際に,本名の読み方しか告げていなかったとしてもさほど不自然ではなく,検察官の主張するような断定は無理というものである。 - 21 -また,検察官は,被告人による運転者日報の記 ば,電話番号を教える際に,本名の読み方しか告げていなかったとしてもさほど不自然ではなく,検察官の主張するような断定は無理というものである。 - 21 -また,検察官は,被告人による運転者日報の記載やそれに関する公判供述の変遷を論難するが,これについては先に述べたとおりである(第3の3㨯ウ。 )さらに,検察官は,Wの公判供述や,被告人の逮捕時における供述からすれば,被,,告人は本件についてC女との合意があった旨の主張を一貫して行っていたわけではなく被告人の供述は苦し紛れの弁解にすぎない旨主張する。しかし,被告人がWの面前で合意があったと述べたか否かに関するWの公判供述は非常にあいまいで到底明確とはいえず,同公判供述からでは被告人がWの面前で合意があった旨の主張をしたのか否か不明である。また,既に述べたとおり,たとえ合意に基づくものであっても,勤務時間中に客である女性とわいせつ行為に及んだということを被告人が率直に認めにくかったとしてもことさら不自然とはいえず,しかも逮捕当日中に合意があった旨の主張を行っている(前提事実・第2の1㨯)のであるから,被告人の主張が一貫しておらず,苦し紛れの弁解だと決め付けるのは失当である。 第5以上から,本件公訴事実については,結局犯罪の証明が全くないことになるから,刑訴法336条により被告人に対し無罪の言渡しをすることとする。 (求刑懲役7年)(公判出席検察官久米智苗,私選弁護人(主任)青木正人)平成20年1月17日前橋地方裁判所刑事部裁判長裁判官久我泰博裁判官結城剛行裁判官武村重樹
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