- 1 -平成23年11月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第24860号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成23年7月28日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告らは,原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに対し,連帯して110万円並びにうち108万9000円に対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1万1000円に対する同年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告株式会社レントレックス及び同Aは,原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに対し,連帯して596円を支払え。 3 被告らは,原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに対し,連帯して393万3214円並びにうち392万7714円に対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち5500円に対する同年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株式会社レントレックス及び同Aは,原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに対し,連帯して2152円を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,次のとおりとする。 (1) 原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに生じた費用の20分の19と被告らに生じた費用の40分の19を同原告の負担とする。 - 2 -(2) 原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに生じた費用の6分の5と被告らに生じた費用の12分の5を同原告の負担とする。 (3) 原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに生じた費用の20分の1と原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに生じた費用の6分の1と被告らに生じた費用の120分の13 分の5を同原告の負担とする。 (3) 原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに生じた費用の20分の1と原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに生じた費用の6分の1と被告らに生じた費用の120分の13を同被告らの連帯負担とする。 7 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに対し,連帯して2348万1080円及びこれに対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告株式会社レントレックス及び同Aは,原告株式会社エフ・ジェー・ネクストに対し,連帯して1万2866円を支払え。 3 被告らは,原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに対し,連帯して2418万3750円及びこれに対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株式会社レントレックス及び同Aは,原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティに対し,連帯して1万3251円を支払え。 第2 事案の概要本件は,投資用マンションの販売等を業とする原告株式会社エフ・ジェー・ネクスト(以下「原告ネクスト」という。)とその完全子会社で投資用マンションの管理・賃貸等を業とする原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティ(以 - 3 -下「原告コミュニティ」という。)が,原告ネクストの営業社員であった被告A及び同Bにおいて,原告らからは不正の手段により,秘密保持義務を負った原告らの元社員からは悪意重過失により,原告らの営業秘密である顧客情報を取得し,被告Aが原告ネクストを退職した後に設立した投資用マンションの賃貸管理等を業とする被告株式会社レントレックス(以下「被告レントレックス」という。)で,上記顧客情報を使用し 密である顧客情報を取得し,被告Aが原告ネクストを退職した後に設立した投資用マンションの賃貸管理等を業とする被告株式会社レントレックス(以下「被告レントレックス」という。)で,上記顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,原告ネクストが債務超過で倒産する可能性が高く,原告コミュニティも連鎖倒産するなどと,競争関係にある原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するとともに,図利加害目的で賃貸管理の委託先を原告コミュニティから被告レントレックスに変更するよう勧誘して賃貸管理委託契約を締結したとして,営業秘密の不正取得・使用や信用毀損の不正競争行為,又は,秘密保持義務や競業避止義務を定めた誓約書違反若しくは就業規則違反の債務不履行等に基づき,被告らの上記各違法行為に対応を余儀なくされた費用相当額や信用毀損による損害額,逸失委託料相当額等の損害賠償を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告ネクストは,投資用マンション「ガーラマンション」を中心とした不動産の売買等を業とする資本金の額が18億5897万円の株式会社であり,平成19年3月以来,東京証券取引所市場第2部に上場している(目的・資本金額・上場時期につき甲1,15,84)。 イ原告コミュニティは,同ネクストが販売した不動産の管理及び賃貸等を - 4 -業とする資本金の額が5000万円の株式会社であり,原告ネクストの完全子会社である(目的・資本金額につき甲2,15)。 ウ被告レントレックスは,投資用マンションを中心とした不動産の賃貸管理,仲介等を業とする資本金の額が990万円の株式会社であり,平成20年11月14日,被告Aによって設立され,代表取締役を被告Aが務めている。原告コ スは,投資用マンションを中心とした不動産の賃貸管理,仲介等を業とする資本金の額が990万円の株式会社であり,平成20年11月14日,被告Aによって設立され,代表取締役を被告Aが務めている。原告コミュニティと被告レントレックスとは,競争関係にある。 (目的・資本金額につき甲3,乙10)エ被告Aは,平成14年3月,原告ネクストに営業社員として採用され,営業部に所属して投資用マンションの販売業務に携わり,平成18年2月,課長に就任したが,平成20年4月のカスタマーサポートグループへの異動を経て,同年7月9日に原告ネクストを退職した後,同年11月14日に被告レントレックスを設立した(原告ネクストでの社歴につき甲59,66,乙62)。 オ被告Bは,平成15年2月,原告ネクストに営業社員として採用され,営業部に所属して投資用マンションの販売業務に携わった後,平成20年10月27日,原告ネクストを退職し,同年11月ころ,被告レントレックスに入社した(乙20,63)。 (2) 被告A及び同Bによる誓約書の提出とその後の活動等ア被告Aは平成20年5月14日に,被告Bは同年9月16日に,いずれも原告ネクストに退職を申し入れるとともに,次の誓約事項を含む誓約書(以下「本件誓約書」という。)を提出し,以後各退職日までは有給休暇を取得した。 - 5 -1項貴社在職中に知り得た貴社および貴社の顧客についての機密を保持します。この機密のなかには,貴社在職中知り得た個人情報を含みます。 2項貴社在職中に職務遂行上の必要から交付を受けた業務上の資料および貴社顧客から貴社が交付を受けた機密情報並びにそれらの複製物の一切を貴社に返還し,何らこれらの機密情報を有していません。 3項貴社在職中知り得た個人情報を記録した資料 受けた業務上の資料および貴社顧客から貴社が交付を受けた機密情報並びにそれらの複製物の一切を貴社に返還し,何らこれらの機密情報を有していません。 3項貴社在職中知り得た個人情報を記録した資料,電子ファイルは一切保有していません。 4項貴社在職中に知り得た顧客その他の個人情報,機密情報もしくは業務遂行上知り得た特別の技術的機密を基に競合的あるいは競業的行為を行いません。 (甲4,5,66,乙62,63)イ平成20年11月7日に,同月6日発行の日刊新聞ゲンダイにおいて,「どこまで続く不動産倒産」「PBR0.3以下危険信号48社」という見出しの下に,「今年に入ってから上場会社の倒産は27社。そのうち建設・不動産が18社にのぼる。危ない業界の筆頭だ。」「PBR(純資産倍率)…0.5倍を切るような会社は実態とかけ離れ過ぎています。悪材料がひそんでいると判断したほうが賢明です。」「不動産を中心に市場が危険水域と判断する「0.5倍」より,さらに低い「0.3倍」以下を調べたところ48社もあった(別表)。」という記述部分や,PBRを0. 25倍とする原告ネクスト等,PBRが0.3倍以下の上場不動産企業48社の一覧表を含む記事が掲載された(乙1)。 - 6 -この記事に基づき,被告レントレックスは,平成20年12月ころから平成21年1月ころまでの間,原告コミュニティの顧客らの一部に対し,「どこまで続く新築販売不振と不動産倒産」「上場不動産会社危険信号48社!!」という見出しと「日刊ゲンダイ2008年11月6日号一部抜粋」という注釈の下に,倒産件数を加えた以外は,前記記述部分や前記一覧表と同旨の記述部分や一覧表を含む書面(以下「本件書面」という。)を送付した(本件書面の内容と送付時期につき甲8の1・2)。 抜粋」という注釈の下に,倒産件数を加えた以外は,前記記述部分や前記一覧表と同旨の記述部分や一覧表を含む書面(以下「本件書面」という。)を送付した(本件書面の内容と送付時期につき甲8の1・2)。 ウ被告レントレックスは,平成20年12月から平成21年2月ころまでの間にかけて,別紙顧客移動一覧表中の顧客氏名欄・住所地欄・解約届作成日欄・解約物件欄各記載のとおり,顧客番号1ないし62の63名(顧客番号49の顧客は2名と数える。)の原告コミュニティの顧客を代理して,同原告に対し,139件の投資用マンションに係る賃貸管理委託契約を解約するとともに,同別紙中の平成20年12月から平成21年2月ころまでの被告レントレックス受託の有無欄記載のとおり,うち38名の顧客との間で,うち82件の投資用マンションに係る賃貸管理委託契約を締結した(甲7,弁論の全趣旨)。 (3) 原告ネクストの秘密管理・競業禁止に関する規定平成19年2月1日に実施された原告ネクストの就業規則(以下「本件就業規則」という。)には,次の規定がある。 (服務上の厳守事項)12条社員は常に次の事項を守らなければならない。 15号会社内外を問わず,在職中又は退職後においても,会社,取引先 - 7 -等の機密,機密性のある情報,顧客情報,企画案,ノウハウ,データ,ID,パスワード及び会社の不利益となる事項を第三者に開示,漏洩,提供しないこと,またコピー等をして社外に持ち出さないこと(退職・解雇後の義務)54条2項退職し又は解雇された者でも,在職中に知り得た会社の業務上の機密を他に漏らしてはならない。 (競業避止義務)55条社員のうち役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合は,会社の承認を得ずに離職後6ヵ 知り得た会社の業務上の機密を他に漏らしてはならない。 (競業避止義務)55条社員のうち役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合は,会社の承認を得ずに離職後6ヵ月間は日本国内において会社と競業する業務を行ってはならない。また,会社在職中に知り得た顧客と離職後1年間は取引をしてはならない。 (金品等の返還等)56条4項退職し又は解雇された従業員は,退職し又は解雇された後も会社で知り得た機密を保持しなければならない。 (甲27の2) 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関しては,①原告らの顧客情報は,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものも含め,原告らの営業秘密に該当するか,②被告A及び同Bは,退職後に原告ら又は秘密保持義務を負った原告らの元社員から取得した原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか,③被告A及び同Bが原告ら - 8 -からその顧客情報を取得した場合,それは不正の手段によるものか,仮に不正の手段によるものでない場合,被告A及び同Bが,原告らの顧客情報を原告らから示され,退職後に図利加害目的で原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか,④被告らの故意・過失,⑤被告らの責任である。 信用毀損の不正競争行為等に関しては,①原告ネクストと被告らとは競争関係にあるか,②被告らは原告らの顧客に対して原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか,③被告らの故意・過失,④被告らの責任である。 誓約書違反又は就業規則違反の債務 被告らとは競争関係にあるか,②被告らは原告らの顧客に対して原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか,③被告らの故意・過失,④被告らの責任である。 誓約書違反又は就業規則違反の債務不履行等に関しては,①本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か,②被告A及び同Bは退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったか,③被告A及び同Bが退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか,④被告らの責任である。 前記各不正競争行為又は債務不履行等に関する因果関係・損害である。 (1) 営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関してア争点①(原告らの顧客情報は,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものも含め,原告らの営業秘密に該当するか)について(原告らの主張)(ア) 原告らの顧客情報は,売買契約書や住宅ローン申込書,営業報告書等,書類に記載されているものと,顧客管理システムに電子データで保存されているもの,営業社員が営業活動の必要上管理しているものに大 - 9 -別され,顧客の氏名,年齢,住所,電話番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等から構成される情報である。被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた顧客情報も,両被告が原告ネクストの社員であるからこそ得られた情報であり,原告らに帰属する。 (イ) 顧客情報が記載された書類については,営業本部によって一元的に管理されており,具体的には,営業本部フロアの入口部分に監視カメラが設置された上記フロア内の施錠式倉庫に保管され,営業副本部長だけが鍵を管理するとともに,鍵を借りて倉庫に入室することができる者も5名だけに限定されている。上記書 業本部フロアの入口部分に監視カメラが設置された上記フロア内の施錠式倉庫に保管され,営業副本部長だけが鍵を管理するとともに,鍵を借りて倉庫に入室することができる者も5名だけに限定されている。上記書類は,営業活動に必要なため,閲覧や複写を認めているものの,使用する書類や使用する目的を記載した申請書を提出し,所属長と営業本部の両承認を得ることが求められるとともに,使用後に破棄する旨の確認印が求められていた。また,顧客情報に係る電子データが保存されているサーバーについても,営業本部長による管理の下,監視カメラが設置されて施錠されたサーバー室に保管され,そのアクセス権者は,カスタマーサポートグループか顧客管理グループに所属する社員に限定されている。サーバーへアクセスするには,コンピュータへのログイン時と顧客管理システムへのログイン時の2度にわたって個別のIDやパスワードが求められ,IDやパスワードの有効期間も90日と短期間に設定されている。さらに,営業社員が営業活動の必要上管理している顧客情報についても,関係書類の机上への放置を禁じていた上,いつでも閲覧可能な就業規則や誓約書によって社員に秘密保持義務を課し,情報セキュリティに関する社内講習や試験を行っ - 10 -ていた。加えて,原告らは,適時に内部監査を行うとともに,外部審査も受けてISMSやISOの各登録更新を受け続けている。このため,原告らの顧客情報は,秘密として管理されていた情報といえる。 原告らの顧客情報は,投資用マンションを買い増しする顧客が多いことから,効率的な営業活動やアフターサービスに有用な情報であるとともに,原告ら以外では一般に入手することができないから,非公知の情報でもある。なお,氏名等,個々の情報だけでは有用な情報や非公知の情報でない場合があるとしても, フターサービスに有用な情報であるとともに,原告ら以外では一般に入手することができないから,非公知の情報でもある。なお,氏名等,個々の情報だけでは有用な情報や非公知の情報でない場合があるとしても,一体として管理されることにより,有用な非公知の情報となっている。 (ウ) したがって,原告らの顧客情報は,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものも含め,原告らの営業秘密に該当する。 (被告らの主張)(ア) 被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた顧客情報は,当該携帯電話が個人所有のものである上,両被告が顧客から個人的に得た情報であるから,原告らに帰属しない。 (イ) その余の顧客情報は,原告らに帰属するとしても,顧客情報が記載された書類について,その複写の申請は,使用後に破棄する旨の確認印を求められていなかった。また,営業社員が営業活動の必要上管理している顧客情報についても,関係書類が机上に放置されていたり,写しが上司等に配布されたり,上司の指導で休日等における営業のために自宅に持ち帰られたりしていた。就業規則は周知されていなかったし,誓約書にもその説明がなかった。情報セキュリティに関する社内講習や試験 - 11 -は,年1回形式的なものが行われるだけであった。営業社員は,手帳等で顧客情報を管理するだけであり,成約後も顧客情報を破棄することなく,買い増しに向けた営業のために手帳等での管理を継続している。このため,原告らの顧客情報は,特に営業社員が営業活動の必要上管理しているものを中心に,ずさんな方法で管理されていたものであり,秘密として管理されていた情報といえない。 原告らの顧客情報は,氏名や住所は登記事項要約書で,電話番号はNTTの番号案内で,勤務先名・所在地は名簿業者 な方法で管理されていたものであり,秘密として管理されていた情報といえない。 原告らの顧客情報は,氏名や住所は登記事項要約書で,電話番号はNTTの番号案内で,勤務先名・所在地は名簿業者やインターネットで,いずれも容易に入手することができるから,有用な情報ではないし,非公知の情報でもない。 (ウ) したがって,原告らの顧客情報は,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものを含まず,原告らの営業秘密にも該当しない。 イ争点②(被告A及び同Bは,退職後に原告ら又は秘密保持義務を負った原告らの元社員から取得した原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか)について(原告らの主張)被告A及び同Bは,被告レントレックスにおいて,原告ら又は原告らに対して秘密保持義務を負った原告らの元社員から取得した原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行っていた。このことは,被告A及び同Bが多数の原告らの顧客に対して集中的に連絡を取っていることから裏付けられる。 (被告らの主張) - 12 -被告A及び同Bは,被告レントレックスにおいて,原告コミュニティの顧客に連絡して営業活動を行った。しかしながら,それは,別紙顧客勧誘一覧表中の被告らの主張欄記載のとおり,顧客から個人的に教えてもらった連絡先や原告ネクストの元同僚から教えてもらった連絡先や各種名簿・不動産登記簿・電話番号案内・インターネット等で入手した連絡先を使用したり,顧客の方から連絡してきたりしたものである。顧客の連絡先を教えてくれた元同僚が原告らに対して秘密保持義務を負っていたことは争う。仮に原告らの顧客から個人的に教えてもらった連絡先が原告らの顧客情報であるとしても,被告レ きたりしたものである。顧客の連絡先を教えてくれた元同僚が原告らに対して秘密保持義務を負っていたことは争う。仮に原告らの顧客から個人的に教えてもらった連絡先が原告らの顧客情報であるとしても,被告レントレックスを設立したことに伴うあいさつを行っただけであって,賃貸管理の委託先の変更は顧客からの申入れによるものである。 したがって,被告A及び同Bは,原告らや原告らに対して秘密保持義務を負った原告らの元社員から取得した原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡しておらず,仮に使用していても,原告らの顧客に対する営業活動を行っていない。このことは,被告らが多数の原告らの顧客に対して一括して資料を送付していないことからも裏付けられる。原告コミュニティに対する解約が一時期に集中しているように見えるのは,平成21年3月以降の原告らによる被告らの営業活動への干渉や被告Bの病気の悪化,同年7月の原告らの被告らに対する本件訴訟の提起により,被告らが同年3月から営業活動を行えなくなったことによるものである。 ウ争点③(被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得した場合,それは不正の手段によるものか,仮に不正の手段によるものでない場合,被 - 13 -告A及び同Bが,原告らの顧客情報を原告らから示され,退職後に図利加害目的で原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について(原告らの主張)(ア) 被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得した場合において,被告A及び同Bは,両被告が原告ネクストの営業部に所属していた際には営業報告書等を,被告Aが原 (原告らの主張)(ア) 被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得した場合において,被告A及び同Bは,両被告が原告ネクストの営業部に所属していた際には営業報告書等を,被告Aが原告ネクストのカスタマーサポートグループに所属していた際には顧客情報に関する電子データを,いずれも不正にコピーするなどしていた。このことは,顧客の携帯電話番号が原告らの顧客情報からしか入手することができないのに,原告らの顧客の中には,被告Aや同Bと面識がなかったにもかかわらず,携帯電話に連絡を受けた者がいることから裏付けられる。 また,被告A及び同Bは,本件誓約書で機密情報の返還と不保持を誓約したにもかかわらず,退職時に携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を抹消せずに隠し持った。 したがって,被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得したのは,不正の手段によるものである。 (イ) 仮に不正の手段によるものでないとしても,被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得したのは,原告らから示されたことによるものである。 - 14 -そして,被告A及び同Bが原告ネクストを退職した後に原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったのは,競業の目的によるものである。原告ネクストでは,営業社員が営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であったものの,成約した場合には高額のインセンティブが支払われている上,退職時の引継ぎを十分に行っている限り,退職後に顧客への対応を求めることもないから,被告A及び同Bが原告ネクストを退職した後も顧客から得た携帯電話番号を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行うことには,正当な理由がない。 したがって,被告A及び同Bが退職後に原告らの顧客情報を使用して原告らの顧 告ネクストを退職した後も顧客から得た携帯電話番号を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行うことには,正当な理由がない。 したがって,被告A及び同Bが退職後に原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったことに図利加害目的もある。 (ウ) 被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得した場合において,被告A及び同Bは,上記元社員が原告らに対する秘密保持義務に違反して原告らの営業秘密を開示していることを知っていた。仮に知らなかったとしても,重大な過失により知らなかった。したがって,被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得したのは,悪意重過失によるものである。 (被告らの主張)(ア) 被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得した場合においては,被告A及び同Bが営業報告書等をコピーしたり,被告Aが顧客情報に関する電子データをコピーしたりしたことはない。被告A及び同Bが面識のない原告コミュニティの顧客の携帯電話に連絡を取れたのは,元 - 15 -同僚に教えてもらったからにすぎない。 したがって,被告A及び同Bが原告らの顧客情報を取得したのは,不正の手段によるものではない。 (イ) 被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得した場合において,それは原告ネクストから示されたことによるものであって,原告コミュニティから示されたことによるものではない。 また,被告A及び同Bが原告ネクストを退職した後に原告コミュニティの顧客に連絡して営業活動を行ったのは,投資用マンションの販売にのみ重点を置いて買い増しができない顧客には情報を提供せずに放置するという原告らの営業方針に疑念を抱いていたため,サービス面 ミュニティの顧客に連絡して営業活動を行ったのは,投資用マンションの販売にのみ重点を置いて買い増しができない顧客には情報を提供せずに放置するという原告らの営業方針に疑念を抱いていたため,サービス面で競い合う目的によるものである。仮に被告A及び同Bが顧客から個人的に得た携帯電話番号が原告らの顧客情報であるとしても,原告ネクストでは,営業社員が営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であり,成約した場合にも少額のインセンティブしか支払われない上,退職後に顧客への対応を求められることもあるから,被告A及び同Bが原告ネクストを退職した後も顧客から得た携帯電話番号を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行うことには,正当な理由がある。したがって,仮に被告A及び同Bが退職後に原告らから取得した原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったとしても,図利加害目的はない。 (ウ) 被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得した場合においても,被告A及び同Bは,上記元社員 - 16 -が原告らに対する秘密保持義務に違反して原告らの営業秘密を開示していることを知らなかったし,知らなかったことに重大な過失はない。したがって,被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得したのは,悪意重過失によるものでない。 エ争点④(被告らの故意・過失)について(原告らの主張)被告A及び同Bは,原告らの顧客情報が自己の携帯電話や記憶に残っていたものを含めて原告らの営業秘密に該当することを認識するとともに,これを,原告らから不正の手段により取得して使用し,原告らから示されて図利加害目的で使用し,又は,原告らの元社員から悪意重過失により取 たものを含めて原告らの営業秘密に該当することを認識するとともに,これを,原告らから不正の手段により取得して使用し,原告らから示されて図利加害目的で使用し,又は,原告らの元社員から悪意重過失により取得して使用し,原告らの顧客に連絡して営業活動を行うことを認識・認容していた。 したがって,被告らには,営業秘密の不正取得・使用についての故意又は過失がある。 (被告らの主張)否認する。 オ争点⑤(被告らの責任)(原告らの主張)被告らは,被告A及び同Bにおいて,原告らの営業秘密を不正の手段により取得して使用し,原告らから示された原告らの営業秘密を図利加害目的で使用し,又は,原告らに対する秘密保持義務を負った原告らの元社員から悪意重過失により取得した原告らの営業秘密を使用したから(不正競 - 17 -争防止法2条1項4・5・7・8号),不正競争防止法4条又は不法行為(共同不法行為を含む。)により,また,被告Aについては会社法429条1項によっても,被告レントレックスについては同法350条又は民法715条1項によっても,原告らに対する損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)争う。 (2) 信用毀損の不正競争行為等に関してア争点①(原告ネクストと被告らとは競争関係にあるか)について(原告らの主張)不正競争防止法2条1項14号の「競争関係にある」とは,双方の事業につき,その需要者又は取引者を共通にする可能性があれば足り,具体的な競争関係は必要とされない。原告ネクストは,不動産の売買だけでなく,不動産の賃貸,管理,仲介を業としている上,被告レントレックスも,不動産の賃貸,管理,仲介だけでなく,不動産の売買も業としている。また,原告コミュ されない。原告ネクストは,不動産の売買だけでなく,不動産の賃貸,管理,仲介を業としている上,被告レントレックスも,不動産の賃貸,管理,仲介だけでなく,不動産の売買も業としている。また,原告コミュニティと被告らは,競争関係にあるところ,原告コミュニティと同ネクストは,資本・営業いずれにおいても一体となって活動している。 したがって,原告ネクストと被告らとは,競争関係にある。 (被告らの主張)実際には,原告ネクストは,不動産の賃貸,管理,仲介を業としていないし,被告レントレックスも,不動産の売買を業としていない。 したがって,原告ネクストと被告らとは,競争関係にない。 イ争点②(被告らは原告らの顧客に対して原告らの営業上の信用を害する - 18 -虚偽の事実を告知したか)について(原告らの主張)被告らは,別紙顧客勧誘一覧表中の原告らの主張欄記載のとおり,原告ネクストの元社員として,原告らの顧客に対し,原告ネクストに倒産するおそれがある旨記載した本件書面を送付するとともに,原告ネクストが債務超過で倒産する可能性が高く,中古マンションの買取りもできなくなっている上,原告コミュニティも連鎖倒産するなどと,原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した。PBRは,株式投資尺度の1つにすぎず,0.3倍以下であっても,倒産するおそれがあるとは限らない。 (被告らの主張)本件書面で倒産するおそれがある企業として挙げたのは48社もあり,原告ネクストはその1社にすぎなかったから,原告らの営業上の信用は害されていない。また,本件書面に記載した事実は,虚偽ではない。さらに,被告らは,別紙顧客勧誘一覧表中の被告らの主張欄記載のとおり,原告らの顧客に対し,原告ネクストが債務超 ,原告らの営業上の信用は害されていない。また,本件書面に記載した事実は,虚偽ではない。さらに,被告らは,別紙顧客勧誘一覧表中の被告らの主張欄記載のとおり,原告らの顧客に対し,原告ネクストが債務超過で倒産する可能性が高く,中古マンションの買取りができなくなっている事実や,原告コミュニティが連鎖倒産するなどといった事実を告知していない。このことは,被告らが原告らの顧客に対して原告らに倒産するおそれがある旨を告知しても,顧客らは賃貸管理の委託先を設立されたばかりの被告レントレックスに変更しようとは通常考えないことからしても,明らかである。 ウ争点③(被告らの故意・過失)について(原告らの主張) - 19 -被告A及び同Bは,平成20年の半ばころまで原告ネクストに在籍していたから,原告ネクストが債務超過で倒産する可能性が高く,中古マンションの買取りができなくなっている事実や,原告コミュニティが連鎖倒産するなどといった事実が虚偽であることを認識していた。仮に虚偽であることを認識していなかったとしても,原告ネクストが債務超過でないことは,公開された有価証券報告書で容易に確認することができた。 また,被告らが顧客に対してサービスで選ぶよう訴えたいならば,被告レントレックスのサービス内容や財務状況を説明する資料を送付すれば足り,本件書面を送付する必要性はなかったから,その目的は正当でない。 したがって,被告らには,信用毀損についての故意又は過失がある。 (被告らの主張)被告A及び同Bは,原告ネクストの役員ではなかった上,本件書面に記載した事実は新聞に掲載されたものであったから,原告らに倒産する可能性があるなどといった事実が虚偽であることを認識しておらず,認識することもできな は,原告ネクストの役員ではなかった上,本件書面に記載した事実は新聞に掲載されたものであったから,原告らに倒産する可能性があるなどといった事実が虚偽であることを認識しておらず,認識することもできなかった。 また,本件書面は,被告レントレックスが設立されたばかりで倒産する可能性があると思われかねないため,顧客に対して大手企業でも倒産する可能性があり,規模で選ぶのではなくてサービスで選ぶよう訴える趣旨で作成されたものであるから,その目的は正当である。 したがって,被告らには信用毀損についての故意も過失もない。 エ争点④(被告らの責任)(原告らの主張) - 20 -被告らは,原告らの顧客に対して競争関係にある原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したから(不正競争防止法2条1項14号),不正競争防止法4条又は不法行為(共同不法行為を含む。)により,また,被告Aについては会社法429条1項によっても,被告レントレックスについては同法350条又は民法715条1項によっても,原告らに対する損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)争う。 (3) 誓約書違反又は就業規則違反の債務不履行等に関してア争点①(本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か)について(被告らの主張)本件誓約書4項及び本件就業規則55条は,国内において原告らと競業する業務を禁じるものであるならば,退職後の競業行為を広範かつ無限定に禁じるものとなるため,被告A及び同Bの職業選択の自由を代償措置もなく侵害するものである。特に,本件誓約書は,原告ネクストからこれを提出しないと退職できないものとされていた。 したがって,本件誓約書及び本件就業規則55条は,公序良俗に反しており,無効で もなく侵害するものである。特に,本件誓約書は,原告ネクストからこれを提出しないと退職できないものとされていた。 したがって,本件誓約書及び本件就業規則55条は,公序良俗に反しており,無効である。 (原告らの主張)本件誓約書は,退職者の秘密保持義務を主な内容とし,禁じる退職後の競業行為も秘密保持を破る行為に限定している。また,本件就業規則55 - 21 -条も,競業禁止の対象者を役職者と企画の職務に従事していた者に限定するとともに,競業禁止の対象行為と期間を,国内における競業は退職後6か月間だけに,在職中に知り得た顧客との取引は退職後1年間だけに,それぞれ限定している。成約した場合における高額のインセンティブという代償措置もある。 したがって,本件誓約書及び本件就業規則55条は,公序良俗に反しておらず,有効である。 イ争点②(被告A及び同Bは退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったか)について(原告らの主張)被告A及び同Bは,原告ネクストを退職した後も,前記(1)ア(原告らの主張)(ア)のとおり,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものを含む原告らの顧客情報を保有して,これを基に被告レントレックスで原告らの顧客に対して賃貸管理の委託先を原告コミュニティから被告レントレックスに変更するよう勧誘するという競業的行為を行った。 (被告らの主張)被告A及び同Bは,原告ネクストを退職した際,原告らの顧客情報はすべて破棄した。前記(1)ア(被告らの主張)(ア)のとおり,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた顧客情報は,原告らの顧客情報ではない。 ウ争点③(被告A及び同Bが退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行っ )(ア)のとおり,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた顧客情報は,原告らの顧客情報ではない。 ウ争点③(被告A及び同Bが退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか)について(被告らの主張) - 22 -仮に,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた顧客情報が原告らの顧客情報であるとしても,前記(1)ウ(被告らの主張)(イ)のとおり,原告ネクストでは,営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であり,成約した場合にも少額のインセンティブしか支払われない上,退職後に顧客への対応を求められることもあるから,被告A及び同Bが退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったとしても,自由競争の枠内であり,正当な理由がある。 (原告らの主張)前記(1)ウ(原告らの主張)(イ)のとおり,原告ネクストでは,成約した場合には高額のインセンティブが支払われている上,退職時の引継ぎを十分に行っている限り,退職後に顧客への対応を求めることもないから,被告A及び同Bが退職後も原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行うことに,正当な理由がない。 エ争点④(被告らの責任)について(原告らの主張)被告A及び同Bは,原告ネクストを退職した後も原告らの顧客情報を保有して被告レントレックスに開示し,これを基に,退職後6か月の間に国内で競業的行為を行うとともに,退職後1年の間に在職中に知り得た原告らの顧客と取引を行ったから,本件誓約書2ないし4項各違反又は本件就業規則12条15号,54条2項,55条後段若しくは56条4項各違反の債務不履行により,また,原告ネクストの課長であった被告Aについては本件就業規則55条前段違 件誓約書2ないし4項各違反又は本件就業規則12条15号,54条2項,55条後段若しくは56条4項各違反の債務不履行により,また,原告ネクストの課長であった被告Aについては本件就業規則55条前段違反の債務不履行によっても,原告らに対する - 23 -損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)争う。 (4) 争点(因果関係・損害)について(原告らの主張)ア原告ネクストの損害合計2348万1080円(ア) 被告らの違法行為への対応費用 48万1080円原告ネクストは,被告らの前記違法行為により,顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に,顧客1名当たり30分を要した。これに各担当者の時給を乗じると,48万1080円に上る。 (イ) 信用毀損による損害 2000万円原告ネクストは,被告らの前記信用毀損行為により,不動産業者及び上場企業として最も大切な信用・名誉を毀損された。通常,1件の販売だけで販売額の20~25%に相当する400万~500万円程度の利益が生じることを考慮すると,その無形損害は,2000万円を下らない。 (ウ) 弁護士費用 300万円イ原告コミュニティの損害合計3137万0070円(ア) 逸失委託料 832万1340円原告コミュニティは,顧客にとって管理委託料や家賃保証の点で被告レントレックスよりも有利であるにもかかわらず,被告らの前記違法行為により,少なくとも38名の顧客から得ていた管理委託料を失った。 - 24 -その総 にとって管理委託料や家賃保証の点で被告レントレックスよりも有利であるにもかかわらず,被告らの前記違法行為により,少なくとも38名の顧客から得ていた管理委託料を失った。 - 24 -その総額は,平成23年7月の時点で,別紙顧客移動一覧表中の原告らの主張欄記載のとおり,合計832万1340円に上る。 仮に前記損害が認められないとしても,被告レントレックスは,1件から毎月最低3500円の管理委託料を得ており,平成23年7月の時点で,798万円の利益を受けているから,不正競争防止法5条2項により,この利益額が原告コミュニティの損害額と推定される。 (イ) 被告らの違法行為への対応費用 4万8730円原告コミュニティは,被告らの前記違法行為により,顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に,顧客1名当たり30分を要した。 これに各担当者の時給を乗じると,4万8730円に上る。 (ウ) 信用毀損による損害 2000万円原告コミュニティは,被告らの前記信用毀損行為により,不動産業者として最も大切な信用・名誉を毀損された。その損害は,2000万円を下らない。 (エ) 弁護士費用 300万円(被告らの主張)争う。 なお,被告らの違法行為への対応費用については,抽象的に顧客1名当たり30分を要したというのは,具体的な根拠もなく,信じ難い。 逸失委託料については,原告らが買い増しのできない顧客や売却の意向を有する顧客には必要最小限度の連絡しか行わなかった上,仲介手数料も6万円に加えて売却価格の3%と高く,顧客の満足度が低いのに対し,被 - 25 - 原告らが買い増しのできない顧客や売却の意向を有する顧客には必要最小限度の連絡しか行わなかった上,仲介手数料も6万円に加えて売却価格の3%と高く,顧客の満足度が低いのに対し,被 - 25 -告レントレックスがアフターサービスを充実させていた上,仲介手数料も6万円限りと安く,顧客の満足度が高いというサービスの違いにより生じたものである。また,原告コミュニティが顧客にとって管理委託料や家賃保証の点で被告レントレックスより必ずしも有利であるとはいえないから,原告コミュニティは,被告らの前記違法行為によって管理委託料を失ったわけではない。したがって,被告らの前記違法行為との間には因果関係がない。仮に因果関係があるとしても,経費等を控除すべきである。 信用毀損による損害についても,本件書面の内容は既に新聞で報道済みであったから,被告らの前記信用毀損によって新たな損害が生じたわけではない。 (5) よって,原告らは,不正競争防止法4条,不法行為(共同不法行為・使用者責任を含む。),会社法350条,429条1項又は債務不履行に基づき,原告ネクストにおいては,被告らに対し連帯して損害賠償金2348万1080円及びこれに対する被告ら全員に訴状が送達された日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告レントレックス及び同Aに対し連帯して上記2348万1080円に対する上記被告両名に訴状が送達された日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金1万2866円の支払を,原告コミュニティにおいては,被告らに対し連帯して損害賠償金3137万0070円のうち2418万3750円及びこれに対する被告ら全員に訴状が送達された日である平成21年8月1日から支払済みま 払を,原告コミュニティにおいては,被告らに対し連帯して損害賠償金3137万0070円のうち2418万3750円及びこれに対する被告ら全員に訴状が送達された日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告レントレックス及び同Aに対 - 26 -し連帯して上記2418万3750円に対する上記被告両名に訴状が送達された日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金1万3251円の支払を,それぞれ求める。 第3 当裁判所の判断 1 営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関する争点①(原告らの顧客情報は,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものも含め,原告らの営業秘密に該当するか)について(1) 証拠によれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 ア原告らにおける営業の流れと顧客情報の取扱い等(甲18,22,24ないし26,31,38,40,41,53,54の1・3,55の1ないし3,59,67,69の1・2,79,85,87,乙3,5,7,15の1ないし6,29,30,37,41,43,50,62,63,証人S65,同S45,同C,被告A,同B各本人)(ア) 原告ネクストでの投資用マンションの販売に係る営業には,大別して新規営業と買い増し営業の2種類がある。 (イ) 新規営業は,従前,原告ネクストの営業部に所属する社員が,教職員名簿や医療関係者名簿等を基に電話をかけ,販売が見込める客に対して継続的に電話をかけたり自宅や勤務先等を訪問したりしながら,新規契約の成立を目指すというものであった。しかし,個人情報保護の必要性が高まってきたことから,平成18年春ころから,電話とコンピュータを融合さ に電話をかけたり自宅や勤務先等を訪問したりしながら,新規契約の成立を目指すというものであった。しかし,個人情報保護の必要性が高まってきたことから,平成18年春ころから,電話とコンピュータを融合させて名簿情報等を取り込んだCTIシステムが導入され,50名以上の営業部所属の社員が,モニター画面に現れた名簿情報等を基 - 27 -に,毎日200件ないし300件ほどの電話をかけ,うち数名ほどの販売が見込める客に対して継続的に電話をかけたり自宅や勤務先等を訪問したりしながら,新規契約の成立を目指すというものに変わった。 見込み客に対する営業活動は,投資用マンションの販売価格が1件約2000万円と高額なため,1件の販売でも少なくて3回,多ければ10回以上,客の自宅や勤務先等を訪問し,世間話や年賀状の送付,身上相談,交遊等を織り交ぜて信頼関係を構築しながら,契約の成立に至るというものであった。このため,営業部所属の社員は,客の氏名や住所,勤務先程度の情報であれば,自然に記憶するとともに,連絡の便宜上,客から携帯電話の番号を教えてもらって自己の所有する携帯電話に登録することもよくあった。 また,営業部所属の社員は,CTIシステムから見込み客の氏名や住所,固定電話の番号,勤務先等が記載された見込み用紙を適宜プリントアウトし,これを関係書類と共にとじ込んで交渉経過等を記載した見込み帳や上司に提出する営業報告書,見込み客の氏名や住所,電話番号等を転記した手帳等を作成していた。営業部所属の社員は,見込み帳等を普段は机の引き出しや施錠付きキャビネットの中に保管していたものの,休日の電話営業のために自宅に持ち帰ったり,訪問営業のために訪問先に持って行ったり,部内の同僚との情報交換の際に写しをやりとりしたりして,営業活動に役立てていた。 (ウ) に保管していたものの,休日の電話営業のために自宅に持ち帰ったり,訪問営業のために訪問先に持って行ったり,部内の同僚との情報交換の際に写しをやりとりしたりして,営業活動に役立てていた。 (ウ) 見込み客との間で原告ネクストとの売買契約や原告コミュニティとの賃貸管理委託契約が新規に成立すると,CTIシステムから当該顧客 - 28 -の情報が削除されるとともに,営業部所属の社員は,当該顧客の氏名や年齢,住所,固定電話・携帯電話の各番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況等の顧客情報を記載した契約内容報告書を作成し,売買契約書や住宅ローン申込書,賃貸管理委託契約書,各種証明書等の関係書類と併せた顧客ファイルを上司に提出していた。 提出された顧客ファイルは,入口ドア上部に監視カメラが設置された営業本部・営業推進本部フロアに移され,営業部を統括する営業本部が顧客ファイルを一元管理するという方針の下に,営業副本部長が鍵を管理して営業本部所属の社員だけが入室することのできる施錠付き書庫に保管されていた。営業本部は,営業部所属の社員に対して顧客ファイルの閲覧・複写を認めていたものの,対象書類と目的等を記載するとともに複写する場合は使用後に破棄することも約束して職長の承認印を得た申請書が提出され,営業副本部長が顧客管理システムのデータを確認して承認することをその条件としていた。 (エ) 営業本部は,提出された顧客ファイルや原告コミュニティから提供される賃貸管理情報に基づき,顧客管理システムに約7000名に上る顧客の氏名や年齢,住所,固定電話・携帯電話の各番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等の顧客情報を入力し,電子データとして一元管理していた。 顧客情報に関する電子データが保存されているサーバーは,営業 定電話・携帯電話の各番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等の顧客情報を入力し,電子データとして一元管理していた。 顧客情報に関する電子データが保存されているサーバーは,営業本部長とシステム管理者だけが入室することのできる,監視カメラが設置された施錠付きサーバー室に保管されていた。また,顧客管理システムの - 29 -アクセス権者は,情報セキュリティ管理者と情報システム管理者の両者が承認した営業本部内のカスタマーサポートグループか顧客管理グループに所属する数名の社員に限定されていた上,顧客管理システムにアクセスをする際には,端末へのログイン時と顧客管理システムへのログイン時の2度にわたって個別のIDとパスワードの入力が求められ,IDやパスワードの有効期間も90日と短期間に設定されていた。 (オ) 買い増し営業は,営業部所属の社員が,過去に投資用マンションを販売した顧客の購入余力を検討した上で,1日数件ほどの電話をかけ,販売が見込める顧客に対して複数回の電話営業や訪問営業を行うとともに,見込み帳や営業報告書等を作成しながら,追加契約の成立を目指すというものであった。 購入余力の検討は,営業部所属の社員において,新規契約の成立後も,顧客からの問い合わせに迅速に対応する必要があるため,契約内容報告書の写しを手元に保管しており,これに記載された借入状況等を参照し,買い増しが見込める顧客を大まかに絞り込んだ上で,営業本部に対して源泉徴収票や住宅ローン償還表等の借入関係書類等を複写申請するなどし,買い増しが見込める顧客を詳細に絞り込む方法で行われていた。 イ原告らにおける情報管理体制の構築と運用等(甲24,28,32,33の1ないし3,34の1ないし4,42ないし49,50の1・2,51,52,5 顧客を詳細に絞り込む方法で行われていた。 イ原告らにおける情報管理体制の構築と運用等(甲24,28,32,33の1ないし3,34の1ないし4,42ないし49,50の1・2,51,52,59,68,70ないし74,77の1ないし3,証人C)(ア) 原告ネクストでは,平成17年4月1日の個人情報保護法の完全実施を受け,同年6月29日,情報セキュリティ実施手順を定め,以後, - 30 -定期的な内部監査を行ったり,原告コミュニティや関連会社を含めた全従業員に対する研修や試験を毎年実施したり,情報セキュリティに関する意思決定機関である情報セキュリティ委員会を毎月開催したりして改善を進めていった結果,登録審査を経て,同年11月18日,情報セキュリティマネジメントシステムの国内規格であるISMS認証を取得した。 また,原告ネクストは,移行審査を経て,平成18年11月2日,原告コミュニティや他の関連会社と共に,上記システムの国際規格であるISO/IEC27001認証を取得し,その後も,各種の情報セキュリティを継続して実施し,毎年行われる審査に合格していた。 (イ) 原告ネクストは,平成19年1月15日以降,原告コミュニティや関連会社を含めた全従業員に対して「ISO27001ハンドブック」を配布し,同年6月末から同年7月初めにかけて実施した試験では,上記ハンドブックを基にした出題がされ,被告Aは9割,同Bは8割の各正答率であった。 また,前記研修で配布されたレジュメには,脅威から守るべき情報資産として「業務上知り得たお客様の情報(携帯電話番号…)」と記載されているとともに,しなければいけないこととして「情報の外部流出を防止する。」,してはいけないこととして「重要書類を机の上などに放置しない。」な 務上知り得たお客様の情報(携帯電話番号…)」と記載されているとともに,しなければいけないこととして「情報の外部流出を防止する。」,してはいけないこととして「重要書類を机の上などに放置しない。」などと記載されている。また,前記ハンドブックには,情報記録書面の社外持ち出し申請手順が記載されているとともに,携帯電話の取扱いルールとして「携帯電話からの情報漏洩を防止するため…不 - 31 -要になった情報については速やかに削除すること」,してはいけないこととして「重要書類を机上等に放置しない。」などと記載されている。 (2) 検討ア顧客情報の帰属先前記認定の事実によれば,原告ネクストから投資用マンションを購入して原告コミュニティに賃貸管理を委託した顧客の氏名,年齢,住所,電話番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等から構成される情報(以下「本件顧客情報」という。)は,いずれも原告ネクストの従業員や同コミュニティの従業員が業務上取得した情報であるから,これを従業員が自己の所有する携帯電話や記憶に残したか否かにかかわらず,勤務先の原告ネクストや同コミュニティに当然に帰属するというべきである。そして,証拠(甲28,29,38)によれば,原告らは,原告ネクストが販売した投資用マンションを完全子会社の原告コミュニティが賃貸管理するとともに原告ネクストが適宜買い取ったりする関係にあることが認められ,本件顧客情報を相互に提供していることを容易に推認することができるから,本件顧客情報を提供したのが原告ネクストであるか原告コミュニティであるかを問うことなく,本件顧客情報は,原告ら双方に帰属するものといえる。 証拠(乙62,63)によれば,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた本件顧客 トであるか原告コミュニティであるかを問うことなく,本件顧客情報は,原告ら双方に帰属するものといえる。 証拠(乙62,63)によれば,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていた本件顧客情報は,いずれも原告ネクストでの投資用マンションの販売業務に関連して取得されたことが認められるから,勤務先の原告ネクストに帰属するとともに,前記のとおり,原告コミュニティにも帰属する - 32 -ものといえる。 したがって,本件顧客情報は,被告Aや同Bの携帯電話や記憶に残っていたものを含めて,原告らに帰属するというべきである。 イ秘密管理性不正競争防止法上の営業秘密とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいう(同法2条6項)。そして,ある情報が秘密として管理されているというためには,当該情報に接し得る者が制限され,当該情報に接した者に当該情報が秘密であると認識し得るようにしていることが必要であると解するのが相当である。 前記認定の事実によれば,原告ネクストは,資本金の額が18億円を超える東京証券取引所市場第2部の上場企業であり,原告コミュニティも,資本金の額が5000万円の株式会社ではあるものの,本件顧客情報を共同して保有する原告ネクストの完全子会社として,両者併せて相応の情報管理体制が求められるというべきところ,本件顧客情報は,原告ネクストの営業部を統括する営業本部により,顧客ファイルや顧客管理システムに保管された電子データとして,一元管理されている。そして,顧客ファイルや顧客管理システムは,いずれも入室が制限された施錠付きの部屋に保管されている上,その利用も,前者は営業本部所属の社員と所定の申請手続を経た 子データとして,一元管理されている。そして,顧客ファイルや顧客管理システムは,いずれも入室が制限された施錠付きの部屋に保管されている上,その利用も,前者は営業本部所属の社員と所定の申請手続を経た営業部所属の社員に限定され,後者も所定のログイン操作を経た営業本部所属の社員に限定されている。この点,本件顧客情報は,営業部所属の社員によっても契約内容報告書の写しとして保管されてはいるもの - 33 -の,これは,顧客からの問い合わせに迅速に対応したり買い増し営業が見込める顧客を絞り込んだりするという営業上の必要性に基づくものである上,原告らにおいては,就業規則で秘密保持義務を規定するとともに退職時に秘密保持に関する誓約書を提出させたり,各種の情報セキュリティを実施してISMS認証やISO/IEC27001認証を取得し,毎年行われる審査に合格したり,従業員に対する「ISO27001ハンドブック」の配布やこれに基づく研修・試験といった周知・教育のための措置を実施したりしていたのであるから,原告らは,原告ネクスト営業部所属の社員を含む原告らの従業員に本件顧客情報が秘密であると容易に認識し得るようにしていたものといえる。 以上を総合すれば,原告らは,本件顧客情報に接し得る者を制限し,本件顧客情報に接した者に本件顧客情報が秘密であると認識し得るようにしていたといえるから,本件顧客情報は,原告らの秘密として管理されていたということができる。 これに対し,被告らは,本件顧客情報について,関係書類が机上に放置されていたり,写しが上司等に配布されたり,上司の指導で休日等における営業のために自宅に持ち帰られたり,手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったり,就業規則が周知されていなかったりするなど,ずさんな方法で管理されてい 司等に配布されたり,上司の指導で休日等における営業のために自宅に持ち帰られたり,手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったり,就業規則が周知されていなかったりするなど,ずさんな方法で管理されていたことから,本件顧客情報は秘密管理性を欠く旨主張する。しかしながら,上記関係書類が上司等に配布されたり自宅に持ち帰られたり手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったりしていたとしても,それは営業上の必要性に基づくものである上,原告らの営業関係部署 - 34 -に所属する社員以外の者が上記関係書類や手帳等に接し得たことをうかがわせる事情も見当たらず,原告らがその従業員に本件顧客情報を秘密であると容易に認識し得るようにしていたことは前示のとおりである。また,本件顧客情報の関係書類が机上に放置されていたことは,これを認めるに足りる証拠がない。さらに,証拠(甲66)によれば,就業規則が各部内に常備されていたことが認められる。したがって,本件顧客情報が秘密管理性を欠くとの被告らの上記主張は,採用することができない。 ウ有用性・非公知性証拠(甲22,証人C)によれば,原告らの顧客は,原告ネクストの販売する投資用マンションを買い増しして原告コミュニティに賃貸管理を委託することが多いため,本件顧客情報を用いて営業活動を行えば効率的に投資用マンションの売買契約や賃貸管理委託契約を成立させ得ること,本件顧客情報は,原告ネクストの販売する投資用マンションを購入した約7000名の個人情報であり,一般には知られていないことが認められるから,本件顧客情報は,原告らの事業活動に有用な営業上の情報であって,公然と知られていないものといえる。 この点につき,被告らは,顧客の氏名や住所,電話番号,勤務先名・所在地が登記事項要約書やNTTの番号案 ,原告らの事業活動に有用な営業上の情報であって,公然と知られていないものといえる。 この点につき,被告らは,顧客の氏名や住所,電話番号,勤務先名・所在地が登記事項要約書やNTTの番号案内,名簿業者,インターネットから容易に入手することができるので,本件顧客情報は有用な情報でも非公知の情報でもない旨主張する。しかしながら,本件顧客情報は,単なる少数の個人に係る氏名等の情報ではなく,原告ネクストの販売する投資用マンションを購入した約7000名の個人に係る氏名等の情報であって,そ - 35 -のような情報を登記事項要約書やNTTの番号案内,名簿業者,インターネットで容易に入手することができないことは明らかである。したがって,この点に関する被告らの上記主張は,採用することができない。 エ小括以上によれば,原告らの顧客情報である本件顧客情報は,被告A及び同Bの携帯電話や記憶に残っていたものも含め,原告らの営業秘密に該当するというべきである。 2 営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関する争点②(被告A及び同Bは,退職後に原告ら又は秘密保持義務を負った原告らの元社員から取得した原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか)について別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の事実認定欄記載の証拠によれば,同欄記載のとおりの事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 前記認定の事実によれば,被告Aは,原告ネクスト営業部の元同僚であるDやE,F,G,H,Iから,原告コミュニティとの間で賃貸管理委託契約を締結していた原告コミュニティの顧客の紹介や情報提供を受けている。ところで,証拠(甲13,41,乙7,29,30,36の1,37,41,43,50,62)によれば ュニティとの間で賃貸管理委託契約を締結していた原告コミュニティの顧客の紹介や情報提供を受けている。ところで,証拠(甲13,41,乙7,29,30,36の1,37,41,43,50,62)によれば,原告ネクスト営業部所属の社員は,客に投資用マンションを販売する際,原告ネクストとの間における売買契約の締結業務を担当するだけでなく,併せて原告コミュニティとの間における賃貸管理委託契約の締結業務も同時に担当していることが認められるから,原告ネクスト営業部所属の社員は,原告ネクストからだけでなく,原告コミュニティからも本件顧客情報を開 - 36 -示されて取得しているものといえる。そうすると,原告ネクスト営業部所属の社員は,原告コミュニティとの間に直接の雇用関係はないものの,原告コミュニティからその営業秘密である本件顧客情報の開示を受けて営業活動に使用しているのであるから,原告ネクストに対して就業規則に基づく本件顧客情報の秘密保持義務を負うのみならず,原告コミュニティに対しても信義則に基づく本件顧客情報の秘密保持義務を負うものと解するのが相当である。したがって,原告ネクストを退職した被告Aに対して本件顧客情報を開示したDやE,F,G,H,Iには,原告ネクストに対する就業規則上の秘密保持義務違反が成立するのみならず,原告コミュニティに対する信義則上の秘密保持義務違反が成立するというべきである。 そうすると,前掲各証拠によれば,被告A及び同Bは,別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に○と記載された原告らの顧客については,本件顧客情報のうち上記被告両名が記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先の情報を基に,NTTの番号案内やインターネットで顧客の自宅や勤務先の電話番号を調べて連絡したり,本件顧客情報のうち原告ネクスト在職中に顧 情報のうち上記被告両名が記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先の情報を基に,NTTの番号案内やインターネットで顧客の自宅や勤務先の電話番号を調べて連絡したり,本件顧客情報のうち原告ネクスト在職中に顧客から教えてもらって自己の携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を基に,顧客の携帯電話に連絡したり,本件顧客情報のうち元同僚が原告らに対する秘密保持義務に違反して開示した情報を元に,顧客の電話に連絡したりして,投資用マンションの賃貸管理の委託先を原告コミュニティから被告レントレックスに変更するよう勧誘したものであるから,原告コミュニティ又は同原告に対する信義則上の秘密保持義務を負った原告ネクストの元社員から取得した原告コミュニティの本件顧客情報を使用して同原告の顧客に連絡し,営業活動を - 37 -行ったものといえる(なお,賃貸管理の委託先を変更するよう勧誘したものであるから,原告ネクストの顧客に対する営業活動を行ったものとはいえない。)。 他方,前掲各証拠によれば,被告A及び同Bは,別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に×と記載された原告らの顧客については,顧客の方から連絡を受けたり,知人からの情報提供,名簿業者から入手した名簿,不動産登記簿謄本とNTT番号案内の番号案内で知った面識のない顧客の自宅電話や携帯電話,勤務先の電話番号を基に連絡したりしたものであると認められるから,原告らや原告らに対する秘密保持義務を負った原告らの元社員から取得した本件顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったものとはいえない(なお,顧客から連絡を受けた場合,顧客の氏名と電話番号以外の本件顧客情報を使用した可能性も考えられなくはないが,これを認めるに足りる証拠はない上,図利加害目的があるとはいい難く,判断を左右する ない(なお,顧客から連絡を受けた場合,顧客の氏名と電話番号以外の本件顧客情報を使用した可能性も考えられなくはないが,これを認めるに足りる証拠はない上,図利加害目的があるとはいい難く,判断を左右するものではない。)。 この点につき,被告らは,多数の原告らの顧客に対して一括して資料を送付していないから,本件顧客情報を使用していない旨主張する。しかしながら,前記認定のとおり,被告A及び同Bは,多数の顧客情報が記載された顧客名簿や顧客データを使用したものではなく,記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先,携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号又は元同僚の紹介や情報提供を基に連絡したものであり,これも本件顧客情報の使用に該当するから,この点に関する被告らの上記主張は,採用することができない。 以上によれば,被告A及び同Bは,原告ネクストを退職した後,別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に○と記載された顧客に限り, - 38 -原告コミュニティ又は同原告に対する秘密保持義務を負った原告ネクストの元社員から取得した原告コミュニティの営業秘密である本件顧客情報を使用して原告コミュニティの顧客に連絡し,営業活動を行ったというべきである。 3 営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関する争点③(被告A及び同Bが原告らからその顧客情報を取得した場合,それは不正の手段によるものか,仮に不正の手段によるものでない場合,被告A及び同Bが,原告らの顧客情報を原告らから示され,退職後に図利加害目的で原告らの顧客情報を使用して原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について(1) 不正の手 の顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,被告A及び同Bが秘密保持義務を負った原告らの元社員から原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について(1) 不正の手段による取得についてア営業報告書や電子データ等のコピーについて別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の事実認定欄記載のとおり,被告A及び同Bは,原告コミュニティから本件顧客情報を取得した場合において,担当者やその補助者として記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先又は顧客から教えてもらって携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を基に連絡したものである。被告A及び同Bが本件顧客情報に関する営業報告書や電子データ等を不正に複写するなどしていたことは,これを認めるに足りる証拠がない。 イ携帯電話番号の抹消懈怠について前記認定の事実によれば,被告A及び同Bは,原告ネクストに提出した本件誓約書2・3項において機密情報の返還と不保持を誓約したにもかかわら - 39 -ず,原告ネクストを退職する際に携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を抹消していない。しかしながら,上記携帯電話は,前記認定のとおり,被告A又は同Bの個人所有物であって,自由に管理し得るものであることを考慮すると,上記の事実をもって,窃取,詐欺,強迫に類した不正の手段によるものとはいい難いというべきである。 ウしたがって,被告A及び同Bが原告コミュニティからその営業秘密である本件顧客情報を取得したのは,不正の手段によるものとはいえないというべきである。 (2) 原告コミュニティからの開示による取得及び図利加害目的についてア原告コミュニティからの開示による取得について前記2のとおり,原告ネクスト営業部所属の社員は,原告コミュニティからも本件顧 ミュニティからの開示による取得及び図利加害目的についてア原告コミュニティからの開示による取得について前記2のとおり,原告ネクスト営業部所属の社員は,原告コミュニティからも本件顧客情報を開示されて取得しているものといえる。 したがって,被告A及び同Bが原告コミュニティの営業秘密である本件顧客情報を取得したのは,原告コミュニティから示されたことによるというべきである。 イ図利加害目的について前記認定の事実に証拠(甲30,41,被告A本人)を総合すれば,①被告レントレックスが賃貸管理委託契約の解約を代理した人数は,原告コミュニティと賃貸管理委託契約を締結していた者以外の者が数名であるのに対し,原告コミュニティと賃貸管理委託契約を締結していた者が38名に上ること,②別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の信用毀損欄に○と記載された顧客(顧客番号64の顧客を除く。)の事実認定欄記載のとおり,被告 - 40 -A及び同Bは,平成20年11月ころから平成21年1月ころまでの間,原告らの顧客9名(顧客番号7,28,29,38,39,44,53,54,65の顧客)に対し,原告ネクストに倒産のおそれがあるという原告ネクストの営業上の信用を害する事実を記載した本件書面を送付したり,原告ネクストが,大量の在庫を抱えて中古の買取りもできなくなっている上,債務超過で倒産のおそれがあり,原告コミュニティも,敷金に手を着けたり家賃の送金も遅れたりしており,原告ネクストが倒産すれば,連鎖倒産するなどと原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知したりしたこと,③原告コミュニティと被告レントレックスは,投資用マンションの賃貸管理業において競争関係にあり,両者の各サービス内容は,いずれも,賃借人から家賃を集金して顧客 害する事実を電話で告知したりしたこと,③原告コミュニティと被告レントレックスは,投資用マンションの賃貸管理業において競争関係にあり,両者の各サービス内容は,いずれも,賃借人から家賃を集金して顧客に送金するだけの家賃保証がない集金代行方式と,顧客から賃借して賃借人に転貸することで家賃保証があるサブリース方式とに分類され,集金代行方式の管理委託料が最低で1か月3500円,サブリース方式の家賃保証が最高で家賃の95%相当額と類似していることが認められる。 これらの事実を総合すれば,被告A及び同Bは,原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行っていた際,原告コミュニティを狙った競業を行う目的を有していたものと推認することができる。 前記認定のとおり,原告ネクストでは,就業規則や退職者が提出する誓約書で機密保持義務や競業避止義務が規定されるとともに,情報セキュリティに関する周知・教育のための措置が実施されていた。それにもかかわらず,被告A及び同Bは,原告コミュニティを狙った競業を行う目的で,原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,被告A及び同Bが - 41 -原告ネクストを退職した後に原告コミュニティの本件顧客情報を使用して原告コミュニティの顧客に連絡し,営業活動を行ったことには,不正の競業の目的があるといえる。 この点につき,被告らは,①被告A及び同Bが原告コミュニティの顧客に連絡して営業活動を行ったのは,投資用マンションの販売にのみ重点を置いて買い増しができない顧客には情報を提供せずに放置するという原告らの営業方針に疑念を抱いていたため,サービス面で競い合う目的によるものである上,②原告ネクストでは営業社員が営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であり,成約した場合にも少額のインセンティブ らの営業方針に疑念を抱いていたため,サービス面で競い合う目的によるものである上,②原告ネクストでは営業社員が営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であり,成約した場合にも少額のインセンティブしか支払われず,退職後に顧客への対応を求められることもあるから,上記営業活動には正当な理由があり,図利加害目的がない旨主張する。しかしながら,被告らの上記主張を前提としても,原告コミュニティを狙った競業が正当化されるものではない。したがって,この点に関する被告らの上記主張は,採用することができない。 以上によれば,被告A及び同Bが原告ネクストを退職した後に原告コミュニティの営業秘密である本件顧客情報を使用して原告コミュニティの顧客に連絡し,営業活動を行ったことには,図利加害目的があるというべきである。 (3) 悪意重過失による取得について前記認定のとおり,原告ネクスト営業部所属の社員は,客と原告コミュニティとの間における賃貸管理委託契約の締結業務も担当している上,原告コミュニティの従業員等と共に情報セキュリティに関する研修を受けたり共通のハンドブックを配布されたりしていたのであるから,原告コミュニティに - 42 -対しても本件顧客情報の秘密保持義務を負っていることを認識していたものと推認することができる。このため,被告A及び同Bは,原告ネクスト営業部に所属していたDやE,F,G,H,Iから本件顧客情報を取得した場合において,Dほか上記5名が,原告コミュニティに対しても秘密保持義務を負っているにもかかわらず,これに反して本件顧客情報を開示していることを知っていたものということができ,仮に知らなかったとしても,重大な過失があるものといえる。 したがって,被告A及び同Bが原告コミュニティに対する秘密保持 して本件顧客情報を開示していることを知っていたものということができ,仮に知らなかったとしても,重大な過失があるものといえる。 したがって,被告A及び同Bが原告コミュニティに対する秘密保持義務を負った原告ネクストの元社員から本件顧客情報を取得したことは,悪意重過失によるものというべきである。 4 営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関する争点④(被告らの故意・過失)について前記認定の事実に証拠(甲55の1・3,乙62,63,被告A,同B各本人)を総合すれば,被告A及び同Bは,平成16年10月26日や同年12月20日に原告ネクストの営業本部が発出した社内通達や平成17年から毎年行われている情報セキュリティに関する研修等により,本件顧客情報が集約された顧客ファイルが平成16年末から営業本部によって一元管理されていることや本件顧客情報が非公知の情報資産であることを認識していたものと認められるから,本件顧客情報が原告らの営業秘密に該当する旨認識していたといえる。 にもかかわらず,被告A及び同Bは,原告ネクストを退職した後,原告コミュニティを狙った競業を行う目的で,本件顧客情報を使用して原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,営業秘密の不正使用という不 - 43 -正競争(不正競争防止法2条1項7号)の故意があるものといえる。そして,被告Aが代表者を務める被告レントレックスも,上記故意があるものといえる。 また,被告A及び同Bは,前記3(3)のとおり,原告コミュニティに対する秘密保持義務を負った原告ネクストの元社員から悪意重過失によって本件顧客情報を取得し,これを使用して原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,不正開示された営業秘密の不正使用という不正競争(不正競 た原告ネクストの元社員から悪意重過失によって本件顧客情報を取得し,これを使用して原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,不正開示された営業秘密の不正使用という不正競争(不正競争防止法2条1項8号)の故意又は過失があるものといえる。そして,被告Aが代表者を務める被告レントレックスも,上記故意又は過失があるものといえる。 したがって,被告らには,営業秘密の不正使用又は不正開示された営業秘密の使用についての故意又は過失があるというべきである。 5 営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関する争点⑤(被告らの責任)について前記1ないし4によれば,被告らは,共同して,故意又は過失により,原告コミュニティから示されたその営業秘密である本件顧客情報を不正の競業の目的で使用するとともに,原告コミュニティに対する秘密保持義務を負っている原告ネクストの元社員から取得した本件顧客情報を使用したものであるから(不正競争防止法2条1項7・8号),不正競争防止法4条(共同不法行為)により,原告らに対する損害賠償責任を負う。 6 信用毀損の不正競争行為等に関する争点①(原告ネクストと被告らとは競争関係にあるか)について不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」とは,事業者間の公正な競争 - 44 -を確保するという同法の目的に照らし(同法1条),現実の市場における競合が存在しなくとも,市場における競合が生じるおそれがあれば足りると解される。 証拠(甲1,3,6,8の1・2,15,23,28,29,59,61,81の1,85,乙10,36の1,40,証人C)によれば,原告ネクストは,その目的に「不動産の売買,仲介,賃貸,管理およびコンサルティングに関する業務」を掲げ,実際,投資用マンションの売 ,61,81の1,85,乙10,36の1,40,証人C)によれば,原告ネクストは,その目的に「不動産の売買,仲介,賃貸,管理およびコンサルティングに関する業務」を掲げ,実際,投資用マンションの売買だけでなく,その賃貸営業,仲介,コンサルティングに関する事業を行っていること,被告レントレックスは,その目的に「1不動産の賃貸管理業,2不動産の売買,交換,仲介,保有ならびに運用,3不動産コンサルティング業」を掲げ,実際,投資用マンションの賃貸管理だけでなく,その賃貸営業,仲介,コンサルティングに関する事業を行っていることが認められる。このため,原告ネクストと被告レントレックスは,投資用マンションの賃貸営業,仲介,コンサルティングに関する事業において,市場における競合が生じるおそれがあるといえる。また,被告Aは,被告レントレックスの代表者として,被告Bも,被告レントレックスの社員として,同被告の業務を行っている者であるから,原告ネクストと被告A及び同Bの間でも,市場における競合が生じるおそれがあるといえる。 したがって,原告ネクストと被告らとは,競争関係にあるというべきである。 7 信用毀損の不正競争行為等に関する争点②(被告らは原告らの顧客に対して原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか)について被告A及び同Bが平成20年11月ころから平成21年1月ころまでの間に原告らの顧客9名に対して原告らに倒産のおそれがあるという原告らの営業上 - 45 -の信用を害する事実を告知したことは,前記3(2)イのとおりである。また,別紙顧客勧誘一覧表中の顧客番号64の顧客に係る当裁判所の判断欄記載のとおり,被告Bは,平成21年9月14日,上記顧客に対し,原告らが多くのオーナーから訴えられているなどと原告らの営業上の信用 た,別紙顧客勧誘一覧表中の顧客番号64の顧客に係る当裁判所の判断欄記載のとおり,被告Bは,平成21年9月14日,上記顧客に対し,原告らが多くのオーナーから訴えられているなどと原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知している。 証拠(甲14,15,17,18,乙62,証人C,弁論の全趣旨)によれば,①平成20年度(同年4月1日~平成21年3月31日)の原告ネクストは,総資産が約228億円,総負債が約64億円の約164億円の資産超過であり,同年度の原告コミュニティも,総資産が約37億円,総負債が約31億円の約6億円の資産超過であること,②PBR(株式純資産倍率)とは,株価を1株当たりの純資産額で除したものを指し,企業価値に対する株価の割高感・割安感を測る指標にすぎず,企業の財務状況と直結するものではないこと,③原告ネクストにおいて大量の在庫を抱えていた事実はなく,原告ネクストは,中古マンションの買取りを積極的に行っていたこと,④原告コミュニティにおいて敷金を着服したり家賃の送金が遅れたりしていた事実はないことが認められる。これらの事実を総合すれば,平成20年当時の原告らに倒産のおそれはなかったものと推認することができる。また,証拠(弁論の全趣旨)によれば,原告らが平成21年当時に多くの投資用マンション所有者から訴えられていた事実はないことが認められる。 この点につき,被告らは,本件書面で倒産するおそれがある企業として挙げたのは48社もあり,原告ネクストはその1社にすぎなかったから,原告らの営業上の信用は害されていない旨主張する。しかしながら,前記認定のとおり, - 46 -被告A及び同Bは,本件書面の送付と併せて,原告ネクストに倒産のおそれがあり,原告ネクストが倒産すれば,原告コミュニティも連鎖倒産するなどと る。しかしながら,前記認定のとおり, - 46 -被告A及び同Bは,本件書面の送付と併せて,原告ネクストに倒産のおそれがあり,原告ネクストが倒産すれば,原告コミュニティも連鎖倒産するなどと電話で告知していたのであるから,原告らの営業上の信用は優に害されているというべきである。したがって,この点に関する被告らの上記主張は,採用することができない。 したがって,被告らは,原告らの顧客10名に対し,原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したというべきである。 8 信用毀損の不正競争行為等に関する争点③(被告らの故意・過失)について前記認定のとおり,被告Aは原告らへの信用毀損行為を始める平成20年12月下旬(顧客番号53・54の各顧客)の約7か月前に当たる同年5月14日まで,被告Bも原告らへの信用毀損行為を始める同年11月ころ(顧客番号7の顧客)の約1か月半前に当たる同年9月16日まで,それぞれ原告ネクストの社員として稼働し,いずれもそれまで原告らの概況を内部から知り得た上,被告A及び同Bは,原告コミュニティを狙った競業を行う目的を有していたものである。これらの事実を総合すれば,被告A及び同Bは,原告らの顧客に対して告知した原告らの営業上の信用を害する事実が虚偽であったことを認識していたものと推認することができる。仮に虚偽であったことを認識していたとは認めるに足りないとしても,原告ネクストは,上場企業であり,有価証券報告書が開示されているのであるから,原告らに倒産のおそれがあることが虚偽であったことを認識しなかったことに過失があったものといえる。 これに対し,被告らは,本件書面につき,被告レントレックスが設立されたばかりで倒産する可能性があると思われかねないため,顧客に対して大手企業 - 47 とに過失があったものといえる。 これに対し,被告らは,本件書面につき,被告レントレックスが設立されたばかりで倒産する可能性があると思われかねないため,顧客に対して大手企業 - 47 -でも倒産する可能性があり,規模で選ぶのではなくてサービスで選ぶよう訴える趣旨で作成されたものであるから,その目的は正当であり,被告らに故意も過失もない旨主張する。しかしながら,被告らの主張を前提としても,虚偽の事実で信用毀損行為を行うことが正当化されるものではない。この点に関する被告らの上記主張は,採用することができない。 したがって,被告らには,信用毀損についての故意又は過失があるというべきである。 9 信用毀損の不正競争行為等に関する争点④(被告らの責任)について前記6ないし8によれば,被告らは,共同して,故意又は過失により,原告らの顧客に対して競争関係にある原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したものであるから(不正競争防止法2条1項14号),不正競争防止法4条(共同不法行為)により,原告らに対する損害賠償責任を負う。 10 誓約書違反又は就業規則違反の債務不履行等に関する争点④(被告らの責任)について(1) 本件誓約書2ないし4項各違反並びに本件就業規則12条15号,54条2項及び56条4項各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について前記1ないし5で認められる営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に基づく損害賠償請求と競合するものであるため,重ねての検討は行わない。 (2) 本件就業規則55条(競業避止義務)前段及び後段各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について本件就業規則55条前段は,「社員のうち役職者,又は企画の職務に従事したことのある者が退職し,又は解雇さ 則55条(競業避止義務)前段及び後段各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について本件就業規則55条前段は,「社員のうち役職者,又は企画の職務に従事したことのある者が退職し,又は解雇された場合」ではなくて「社員のうち - 48 -役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合」と規定していることから,原告ネクストを退職した時に役職者又は企画の職務に従事していた者を対象とするものと解される。しかるに,被告Aは,原告ネクストを退職した時,役職者又は企画の職務に従事していた者ではないから,被告らが同条前段違反の債務不履行責任を負う余地はない。 また,本件就業規則55条後段は,対象者が明記されていないものの,対象者が同条前段のそれと異なる場合,明記されるのが通常である上,禁止行為のみが「また」という接続詞で同条前段の禁止行為と並べて規定されているから,対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが自然である。また,同条前段が禁じる原告ネクストの承認を得ない離職後6か月間の日本国内における競業と同条後段が禁じる原告ネクスト在職中に知り得た顧客との離職後1年間の取引は,禁止の強度がおおむね同程度と解されるから,そのような観点からも対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが相当である。被告A又は同Bは,原告ネクストを退職した時,役職者又は企画の職務に従事していた者ではないから,被告らが同条後段違反の債務不履行責任を負う余地もないというべきである。 11 争点(因果関係・損害)について(1) 原告ネクストの損害ア被告らの違法行為への対応費用 0円原告ネクストとの関係で生じ得る被告らの違法行為への対応費用は,前記7のとおり,原告らの顧客 告ネクストの損害ア被告らの違法行為への対応費用 0円原告ネクストとの関係で生じ得る被告らの違法行為への対応費用は,前記7のとおり,原告らの顧客10名に対して原告ネクストの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことによって生じ得る費用がこれに当たる - 49 -ものといえる。しかしながら,10名の顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に要する費用を,弁護士費用を超えて通常生じる損害と認めることはできないというべきである。 イ信用毀損による損害 100万円前記説示のとおり,原告ネクストは,被告らの前記信用毀損行為により,顧客に企業の存続可能性を疑われるなど,上場企業として大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面に記載された事実は,実際,日刊新聞ゲンダイに掲載されたものである上,被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に書面の送付や電話での告知をしたにとどまり,これによって,その後の売上げの減少等といった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考慮すれば,原告ネクストの信用毀損による損害額は100万円(顧客番号64の顧客については,うち1万円)とするのが相当である。 ウ弁護士費用 10万円本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して10万円(顧客番号64の顧客に係る信用毀損の弁護士費用は,うち1000円)とするのが相当である。 エ原告ネクストの損害合計 110万円(2) 原告コミュニ 万円(顧客番号64の顧客に係る信用毀損の弁護士費用は,うち1000円)とするのが相当である。 エ原告ネクストの損害合計 110万円(2) 原告コミュニティの損害ア逸失委託料 303万3214円(ア) 損失としての逸失委託料 - 50 -原告コミュニティは,被告らの前記営業秘密の不正使用行為等により,顧客に賃貸管理委託契約を解約され,別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の損害額欄に損害額(顧客情報の不使用による棄却を意味する0円を除く。)が記載されている27名の顧客から得ていた管理委託料を失った(顧客番号2,3,5,10,12ないし14,17,19,24,25,27,30,32ないし37,45,47,49,50,52,55,57の顧客。顧客番号49の顧客は2名と数える。)。証拠(甲19)によれば,原告コミュニティが上記顧客との間で締結していた賃貸管理委託契約の契約終了日及び以後の逸失委託料は,同別紙中の原告らの主張欄記載のとおりであると認められる。 (イ) 相当因果関係ある損害としての逸失委託料原告コミュニティは,被告らが前記営業秘密の不正使用行為等をしなければ,前記顧客27名から相当期間賃貸管理を受託して管理委託料を得ることができたものと認められる。上記相当期間は,原告コミュニティが顧客との間で締結する賃貸管理委託契約の契約期間が2年であり,自動更新条項はあるものの(甲40),顧客は2年満了時に更新の是非を判断するのが通常であるから,2年をもって相当と認める。その上で,2年を限度とする前記逸失委託料に原告コミュニティの限界利益率(粗利から変動経費を除いた限界利益が収入に対して占める割合) 新の是非を判断するのが通常であるから,2年をもって相当と認める。その上で,2年を限度とする前記逸失委託料に原告コミュニティの限界利益率(粗利から変動経費を除いた限界利益が収入に対して占める割合)を乗じたいわゆる限界利益の額の限度で,上記行為等に起因する損害と認めるのが相当である。 本件についてこれをみると,被告レントレックスは,いずれの前記顧 - 51 -客からも,2年以上賃貸管理を受託していたから,相当因果関係ある損害としての逸失委託料は2年分となり,別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の2年分の逸失委託料欄記載のとおり,合計509万7840円となる。また,証拠(甲17)によれば,平成20年度の原告コミュニティは,賃貸管理業に係る賃貸管理収入と賃貸収入の合計約9億4594万円から賃貸営業費約1億3863万円を控除した限界利益額(約8億0731万円)の上記賃貸管理収入と賃貸収入の合計額に対する限界利益率は,約85%であることが認められる(小数点以下四捨五入)。 そうすると,相当因果関係ある損害としての逸失委託料は,前記2年分の逸失委託料に前記限界利益率を乗じ,別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の限界利益額欄記載のとおり,合計433万3164円となる。 (ウ) 寄与度による減額証拠(甲28,乙10,21,22,24,26ないし32,34,36-1,38,39,43,45ないし47,55,62,63,証人S34,同S45)によれば,前記顧客27名が原告コミュニティとの賃貸管理委託契約を解約したのは,被告レントレックスが顧客への相談対応や情報提供を重視するとともに,売却の際の仲介手数料を6万円のみと相当安くするサービスを提供していたこと等にも相当程度起因することが認められる。そこで したのは,被告レントレックスが顧客への相談対応や情報提供を重視するとともに,売却の際の仲介手数料を6万円のみと相当安くするサービスを提供していたこと等にも相当程度起因することが認められる。そこで,前記相当因果関係ある損害の発生には,被告らの前記営業秘密の不正使用行為等が70%の限度で寄与しているものと認め,30%を控除するのが相当である。 そうすると,逸失委託料としての損害額は,前記限界利益額に前記3 - 52 -0%の寄与度減額を行い,別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の損害額欄記載のとおり,合計303万3214円となる(1円未満切捨て)。 イ被告らの違法行為への対応費用 0円原告コミュニティとの関係で生じ得る被告らの違法行為への対応費用は,前記ア(ア)のとおり,被告A及び同Bにおいて原告コミュニティや元同僚から取得した営業秘密である本件顧客情報を使用したことによって生じ得る費用がこれに当たるものといえる。しかしながら,27名の顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に要する費用を,弁護士費用を超えて通常生じる損害とは認め難い上,原告らは上記27名の顧客に係る陳述書を作成していないから,これらの費用を損害として認めることはできないというべきである。 ウ信用毀損による損害 50万円原告コミュニティは,被告らの前記信用毀損行為により,顧客に企業の存続可能性を疑われ,賃貸管理委託契約を解約されかかるなど,企業として大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面には,原告コミュニティに関する記載がなかった上,被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に電話での告知を て大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面には,原告コミュニティに関する記載がなかった上,被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に電話での告知をしたにとどまり,これによって,賃貸管理委託契約が解約されてしまうなどといった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考慮すれば,原告コミュニティの信用毀損による損害額は50万円(顧客番号64の顧客については,うち5000円)とするのが相当である。 - 53 -エ弁護士費用 40万円本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して40万円(顧客番号64の顧客に係る信用毀損の弁護士費用は,うち500円)とするのが相当である。 オ原告コミュニティの損害合計 393万3214円 12 結論以上によれば,原告ネクストの請求は,被告らに対しては,連帯して損害賠償金110万円並びにうち108万9000円に対する不正競争行為の後の日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,及び,うち1万1000円に対する不正競争行為の日である同年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告レントレックス及び同Aに対しては連帯して上記108万9000円に対する不正競争行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金596円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする(小数点以下切捨て)。 また,原告 年5分の割合による遅延損害金596円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする(小数点以下切捨て)。 また,原告コミュニティの請求は,被告らに対しては,連帯して損害賠償金393万3214円並びにうち392万7714円に対する不正競争行為の後の日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,及び,うち5500円に対する不正競争行為の日である同年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告レントレックス及び同Aに対しては連帯して上記392万7714円 - 54 -に対する不正競争行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金2152円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする(小数点以下切捨て)。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官山門優 裁判官志賀勝 (別紙顧客移動一覧表は省略) - 55 -(別紙)当事者目録 東京都新宿区<以下略>原告株式会社エフ・ジェー・ネクスト東京都新宿区<以下略>原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティ両名訴訟代理人弁護士岡本政明同実 原告株式会社エフ・ジェー・コミュニティ両名訴訟代理人弁護士岡本政明同実野現同大城季絵同岡本直也東京都港区<以下略>被告株式会社レントレックス東京都練馬区<以下略>被告 A名古屋市<以下略>被告 B被告ら訴訟代理人弁護士土釜惟次同佐々木良行同一瀬太一被告ら訴訟復代理人弁護士飯田健司
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