平成11(行ウ)9 文書開示拒否処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成12年11月28日 山口地方裁判所 情報公開
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判決文本文16,066 文字)

主文 一被告が原告に対し、平成一一年五月二〇日付けをもってした別紙文書目録記載①ないし③の各文書を開示しないとの処分をいずれも取り消す。 二原告のその余の請求を棄却する。 三訴訟費用は、これを四分し、その一を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第一原告の請求被告が原告に対し、平成一一年五月二〇日付けをもってした別紙文書目録記載①ないし④の各文書を開示しないとの処分をいずれも取り消す。 第二事案の概要(原告が「議員調査費」、被告が「調査費」又は「県政調査交付金」との呼称を用いる金員については、県政に関する調査研究に要する経費として県議会の各会派に交付されるものであると解されるから、県議会の各会派に対する「県政調査交付金交付要綱」(乙七、以下「交付要綱」という。)にならい、「県政調査交付金」と表示することとする。)本件は、原告が、山口県情報公開条例(平成九年七月八日山口県条例第一八号、以下「県公開条例」という。)に基づき、右条例の実施機関である被告に対し、県政調査交付金に関する別紙文書目録記載①ないし④の各文書(以下同目録記載の文書をその項目番号に従い「本件文書①」のように表示し、本件文書①ないし④をまとめて「本件各文書」という。)の開示を請求したところ、被告が、右請求を却下する旨通知したので、原告が、被告は本件各文書を開示しない処分をしたと主張して、右処分の取消しを求めた事案である。 一関係法規 1 県公開条例(乙二)「第二条 1 この条例において「実施機関」とは、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会及び公営企業管理者をいう。 2 この条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は 委員会、人事委員会、監査委員、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会及び公営企業管理者をいう。 2 この条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書図画又は写真(括弧内省略)であって、決裁又は供覧の手続が終了し、実施機関が保有しているものをいう。 第五条次の各号のいずれかに該当するものは、実施機関に対し、公文書(括弧内省略)の開示を請求することができる。 (1)県内に住所を有する者((2)ないし(5)省略)」 2 山口県議会事務局の組織に関する条例(乙四、昭和四二年山口県条例第一五号、以下「事務局組織条例」という。)「第三条課及び室の分掌事務は、次のとおりとする。 一総務課((一)省略)(二) 議会の予算及び決算に関すること((三)ないし(五)、二ないし四省略)第五条 1 事務局長は、議長の命を受けて事務局の事務を掌理し、所属職員を指揮監督する。 (2ないし9省略)第六条この条例に定めるもののほか、事務局の組織について必要な事項は、議長が定める。」 3 山口県議会事務局処務規程(乙五、昭和四四年一〇月一日山口県議会訓令第一号、以下「事務局処務規程」という。)「第二条山口県議会事務局の組織に関する条例第三条に規定する課及び室の分掌事務の細目は、次のとおりとする。 総務課(一ないし九省略)十文書(括弧内省略)の収受、発送、編集及び保存に関すること。 (十一ないし十五省略)十六予算及び決算並びに会計に関すること。 (十七ないし二十一省略)第一二条の二(1及び2省略) 3 文書取扱主任は、主務課長又は室長の命を受け、次に掲げる事務を処理する。 (一省略)二文書の整理及び保存に関すること。 (三及び四省略)第二五条 1 完結した文書は、文書取扱主任におい 省略) 3 文書取扱主任は、主務課長又は室長の命を受け、次に掲げる事務を処理する。 (一省略)二文書の整理及び保存に関すること。 (三及び四省略)第二五条 1 完結した文書は、文書取扱主任において、次の各号の定めるところにより編集し、製本しなければならない。(但し書省略)(一及び二並びに2省略)第二六条 1 文書取扱主任は、前条第一項の規定により編集し、製本した簿冊を保存文書管理表を添えて総務課長に引き継がなければならない。 2 総務課長は、前項の規定により引き継いだ簿冊を文書倉庫に保存しなければならない。 (3省略)」 4 山口県会計規則(乙九、昭和三九年四月一日山口県規則第五四号、以下「会計規則」という。)「第一二一条 1 出納長(括弧内省略)は、伝票その他証拠書類については、各月ごとに区分し、かつ、当該年度の歳入歳出予算の科目の区分及び順序に従ってこれを編集しなければならない。 2 前項の規定により編集すべき伝票その他証拠書類の範囲及びその編集について必要な事項は、別に定める。」第一二三条 1 伝票その他証拠書類は、当該伝票その他証拠書類の属する年度経過後、五年間これを保存しなければならない。 (2省略)」二基礎事実(争いがない。)1(一) 原告は、山口県内に住所を有する者である。 (二) 被告は、県公開条例二条一項に定める実施機関としての山口県知事である。 2 原告は被告に対し、平成一一年五月一三日、県公開条例六条に基づき、本件各文書の開示を請求した(以下「本件請求」という。)。 3 被告は原告に対し、平成一一年五月二〇日、県公開条例は県議会を実施機関としておらず、本件各文書は県議会が保有する文書であって、県公開条例二条二項に定める公文書に該当しないことを理由として、右請求を却下するとの決定をした(以下「本件処分」とい 公開条例は県議会を実施機関としておらず、本件各文書は県議会が保有する文書であって、県公開条例二条二項に定める公文書に該当しないことを理由として、右請求を却下するとの決定をした(以下「本件処分」という。 なお、本件処分の法的性質については、後記のとおり争いがある。) 4 原告は被告に対し、本件処分につき平成一一年六月一日付けで行政不服審査法に基づく異議申立てを行ったが、被告は、同年七月一日付けでこれを棄却した。 三争点 1 本件処分の法的性質 2 本件各文書は、県公開条例二条一項に定められた「公文書」か否か。 四争点に関する主張 1 争点1について(原告)本件請求に係る公文書開示請求書は、平成一一年五月一三日、被告によって受理されているのであるから、これによって原告の公文書公開請求は適式にされたものであり、被告は、本件各文書を開示するか否かを判断した結果、非開示の処分をしたものである。 したがって、本件処分は非開示処分である。 (被告)本件各文書は、県公開条例二条一項に定められた実施機関である知事の被告が保有する文書ではなく、同条二項の「公文書」に該当しない。したがって、本件各文書は、県公開条例六条や七条の対象とはなり得ないものであるから、本件請求は、文書開示の可否という実体的な判断の前提である手続要件に反する請求である。そこで、被告は、手続に関する一般原則及び山口県行政手続条例(平成七年三月一四日山口県条例第一号、以下「県手続条例」という。)六条に基づき、本件請求を却下した。 2 争点2について(被告)(一) 実施機関について(1) 山口県を初めとして、地方公共団体が定める情報公開制度の多くは、議会を実施機関から除外している。これは、県議会が知事とは別に正統性の根拠を有しており、自律性が強く求められるため、県議会を行政機関た 山口県を初めとして、地方公共団体が定める情報公開制度の多くは、議会を実施機関から除外している。これは、県議会が知事とは別に正統性の根拠を有しており、自律性が強く求められるため、県議会を行政機関たる知事が定める情報公開制度の実施機関とすることには理論的な問題が内在するからである。 なお、平成一三年四月一日から施行される改正後の地方自治法一〇〇条は、従前法令上特段の定めがなかった議会の会派を所与のものとし、政務調査費の交付については条例で定めることとし、その収支報告書を議長に提出することと定めており、県議会が知事部局から自律した存在であることを前提として、予算を伴う事項についても議会の関与を中心に制度を組み立てている。 (2) 文書の作成や保有は、原告が主張するような予算編成・執行権によってのみ根拠付けられるものではない。予算やその執行は、その前提として法令等で認められた事務を必要としており、予算編成やその執行は、行政事務全体の一部でしかない。そして、文書等は、基本的には事務の必要上作成され、保存されるのであるから、文書管理は、予算との関係ではなく事務や事務分掌主体の性格に大きく影響される。 県公開条例は、右のように事務という観点から、地方自治法や公営企業法に基づいて限られた専門的事務の範囲内でのみ知事から独立した権限を有する機関をその実施機関として定め、また、「作成」・「取得」、「決裁」・「供覧」、「保有」というように、事務のプロセスに沿って公文書の定義がされているのである。 (3) 原告は、県議会の議長の統理する事務に予算の執行に関する事務及び現金の出納管理等の会計事務は含まれていない旨主張するが、過去の実績や具体的使途を踏まえた県政調査交付金に係る予算要求額の決定、会派の員数把握やその後の構成変動といった予算執行に関する事務は議長 び現金の出納管理等の会計事務は含まれていない旨主張するが、過去の実績や具体的使途を踏まえた県政調査交付金に係る予算要求額の決定、会派の員数把握やその後の構成変動といった予算執行に関する事務は議長の固有事務であり、その範囲において議会の事務に含まれている。 (4) 予算編成・予算執行も一つの行政事務ではあるが、これによって公文書の概念や公文書公開制度における開示対象の範囲が定められるのであれば、予算の裏付けのない事務がおおよそあり得ない以上、地方公共団体の全ての文書が公開対象となることになり、実施機関という概念を定める必要はないはずである。 (二) 保有について(1) 「保有」とは、実施機関が定めている山口県文書取扱規程(昭和二八年一〇月三一日山口県訓令第二一号、以下「文書取扱規程」という。)等の定めるところにより文書が公的に支配されている状態にあることをいう。これは、原告が主張する「管理」又は「法的に管理権限が及ぶ」という概念以上に、事実上の支配関係が及んでいる状態を意味することは語義から明白である。 原告は、知事が公文書の管理権限を有していることをもって、県公開条例二条一項にいう「保有」の意味を解釈するが、右の管理概念は、公文書との関係が間接的・抽象的であり、正当とはいえない。 (2) 山口県議会には、その事務を処理するため、山口県議会事務局(以下「県議会事務局」という。)が設置されている。事務局処務規程二条によれば、文書の収受、発送、編集及び保存に関することと、予算及び決算並びに会計に関することは、総務課の分掌事務として配分されている。また、文書の取扱いに関しては、事務局規程第四章に定められているように、完結した文書は、原則として、会計年度ごとに編集製本され、総務課長が定まった期間保存する。 右のとおり、文書の編集製本保存は、 また、文書の取扱いに関しては、事務局規程第四章に定められているように、完結した文書は、原則として、会計年度ごとに編集製本され、総務課長が定まった期間保存する。 右のとおり、文書の編集製本保存は、議会訓令である事務局処務規程に基づいて行われており、事務局組織条例五条によれば、右総務課長等県議会事務局の職員は、議長の命を受けた県議会事務局長の指揮監督に服するから、総務課長等の編集製本保存は、県議会や議長の指揮監督下においてなされるものである。 (3) 本件各文書のうち、本件文書④は、会派出納責任者が保管しており、県議会事務局も保存していない。また、本件文書③については収支決算書があるのみで、実施報告書と題する文書は県議会事務局も保存していない。 (三) 文書保存の必要性について(1) 県議会事務局は、事務局処務規程三条に掲げられた各事務を遂行する上で、議会と会派の要請に応じて本件各文書を含めた諸資料を必要とする。 また、前回の処理文書は、次年度以降の予算要求をする際や業務の継続性を保ちつつ、適正かつ迅速な事務処理を行う際の重要な資料となる上、文書の内容について対外的に責任ある説明を行うためにも必要不可欠である。 公文書開示手続との関係でも、事務分掌により文書を作成し、決裁をし、原議(決裁の終わった文書)として処理保存、すなわち「保有」し、事務分掌部門が開示に応じることが大量の行政文書のあり方に合致しているし、開示請求に対する迅速かつ的確な対応につながることになる。 (2) 原告は、予算について法的責任を問われ得る立場にある知事が、必要に応じて文書を参照することができるようになっている必要性があると主張するが、右の必要性は、県議会に対する知事の要請等によって賄える範囲のものであり、この点は知事が本件各文書を保有することの根拠とはならない。 を参照することができるようになっている必要性があると主張するが、右の必要性は、県議会に対する知事の要請等によって賄える範囲のものであり、この点は知事が本件各文書を保有することの根拠とはならない。 (五) 本件各文書と会計規則との関係について(1) 本件文書①は、交付決定の決裁文書とその前提となる申請書からなるものであるが、これらは支払手続の前処理として会計課で合議されるものであって、会計規則上、編集されるべき「伝票その他の証拠書類」(以下「伝票等」という。)には当たらない。 (2) 本件文書②は、会計規則一二三条の書類に該当する。 (3) 本件文書③は、会計課に回付されることはないから、会計規則上、編集されるべき伝票等には当たらない。 (4) 会計規則一二三条には、保存に係る主語が明記されていないが、これは、具体的・直接的占有が移り得るという文書の性質や文書利用に関する利害関係を考慮して、山口県の組織内で、事務権限を掌握している機関が保存し、保有すればよいことを定めているにすぎない。 そして、支出票等の支出関係書類は、出納長が支出命令に関する審査・確認をした後電算機に入力され、以降は電算入力情報に基づいて手続が進められるため、支出票自体を出納局で保管しておく必要性はなく、担当部署に戻されて経費支出伺い等他の支出関係書類とともに保存されることになる。 2 原告(一) 本件各文書の作成者について(1) 県公開条例二条二項は、その文言上、公文書開示の実施機関ではない県議会が作成した文書であっても、実施機関の職員が職務上取得した文書で、決裁又は供覧の手続が終了し、被告において保有しているものであれば公文書公開の対象としている。 これは、普通地方公共団体において、財務会計行為が適正に行われるべきことや、財務会計行為の適正を確保するための手続 の手続が終了し、被告において保有しているものであれば公文書公開の対象としている。 これは、普通地方公共団体において、財務会計行為が適正に行われるべきことや、財務会計行為の適正を確保するための手続内容は知事と県議会とで異ならないことからすれば、作成者の違いにより異なる取扱いをすべきではないし、議会が作成した文書の開示が、直ちに議会の自主性・自立性を損なうとは通常いえないからである。 したがって、県議会によって作成された文書であっても、実施機関が取得し、保有しているものであれば、実施機関は右文書の作成者が県議会であることを根拠にその開示を拒むことはできない。 (2) 原告は、県議会等、県公開条例に定められた執行機関ではない機関が作成した文書につき、予算執行事務や会計事務を根拠に知事が開示しなければならないとすれば、全ての公文書が公開対象になると主張するが、あくまで、①実施機関の職員が職務上作成し又は取得した文書で、②決裁又は供覧の手続が終了し、③被告において保有しているもので、かつ④県条例の非開示事由に該当しないことを条件に開示されるのであるから、現行法下においても、十分な限定はされている。 (二) 「保有」について(1) 県公開条例二条二項にいう「保有」とは、公的に支配された状態を意味するものであり、廃棄手続が採られた文書を除外する趣旨で設けられた規定である。 (2) 地方自治法上、予算の執行権は普通公共団体の長に専属し(一四九条二号)、現金の出納保管等の会計事務は出納長又は収入役の権限とされているから(一七〇条一、二項)、一般に議会の議長の統理する事務に予算の執行に関する事務及び現金の出納保管等の会計事務は含まれておらず、議会の議長はこのような事務を行う権限を有しない。 (3) 被告は、山口県事務決裁規程(昭和四四年四月一日山口県訓令 統理する事務に予算の執行に関する事務及び現金の出納保管等の会計事務は含まれておらず、議会の議長はこのような事務を行う権限を有しない。 (3) 被告は、山口県事務決裁規程(昭和四四年四月一日山口県訓令第四号、以下「事務決裁規程」という。)に基づき、山口県知事部局の職員と県議会事務局の職員とを併任する併任事務吏員に対し、その専決又は代決権限を与えて補助執行させている。本件の県議会議員に係る県政調査交付金の予算執行事務も併任事務吏員の専決又は代決権限事項に属する。 そして、地方自治法一四九条八号が、長の事務として証書及び公文書類を保管する事務を定め、会計規則一二三条が伝票等について五年間の保存期間を定めていることからすると、長は、予算執行事務終了後においても、予算執行事務の処理過程で作成又は取得した文書を、証拠書類として管理する権限と責任を有している。そうであるならば、本件各文書は、被告の併任事務吏員が、その専決又は代決権限事項である予算執行事務を補助執行する過程で作成又は取得し、予算執行事務終了後も、被告の併任事務吏員としての立場で、証拠書類として管理しているものである。 (4) 会計規則には、出納長が県議会の財務担当課から支出証拠書類の送付を受けて支払決定をした後、支出証拠書類を財務担当課に返還又は送付すべき旨定めた規定は存在せず、支出証拠書類の編集について定めた同規則一二一条一項の主語が出納長であることからすれば、同条二項及び一二三条の文書管理の主体は出納長及び出納員であると解するのが自然である。 被告は、総務課長等の編集製本保存は、議会訓令である事務局処務規程に根拠を有するものであると主張するが、会計規則一二一条に支出証拠書類の管理主体を定める規定がある以上、講学上の行政規則にすぎない訓令によって会計規則に定められた支出証拠書類の である事務局処務規程に根拠を有するものであると主張するが、会計規則一二一条に支出証拠書類の管理主体を定める規定がある以上、講学上の行政規則にすぎない訓令によって会計規則に定められた支出証拠書類の管理主体を変更することはできない。 (三) 文書管理の必要性について被告は、地方公共団体の長として、予算執行に関する法的責任を問われる立場にある。 地方自治法上、知事が地方公共団体を統轄する地位にあって、予算に関しては予算調製権及び予算執行権が知事に専属し、予算に関する調査権が与えられていること、知事によって監督される出納長において決算の調製権が与えられていること、知事は住民監査請求又は住民訴訟において、不当又は違法な予算の執行に関して法的な責任を負う場合があり得ることなどに鑑みると、予算執行に関して議会を含む他機関に対して総合的な調整をすることができる立場にある知事としては、予算の調製及び執行に関する範囲と限度において、その執行手続が終了した後も、予算の調製及び執行に関する証拠書類となる文書につき、必要に応じて参照できるようになっている必要性があるといえる。 第三争点に対する判断一争点1について 1 前記の基礎事実記載のとおり、原告は被告に対し、平成一一年五月一三日、本件請求をしたところ、被告は、同月二〇日、県公開条例が県議会を実施機関としておらず、かつ本件各文書は県議会が保有する文書であるから、本件各文書は県公開条例二条二項に定める公文書に該当しないことを理由として、本件請求を却下するとの決定をしたものである。 2 そこで、右の決定の法的性質について検討するに、これに関する被告の主張は、民事訴訟手続においては理論上、「却下」と「棄却」が分けられていることからすれば、直ちにこれを理由がないものとすることはできないが、乙第三号証によ 性質について検討するに、これに関する被告の主張は、民事訴訟手続においては理論上、「却下」と「棄却」が分けられていることからすれば、直ちにこれを理由がないものとすることはできないが、乙第三号証によれば、県手続条例の規定上、形式的要件に適合しない公文書公開の申請をした者に対する処分(同条例六条)も、その他の理由により開示を拒む処分(同条例七条)も、いずれも「許認可等を拒否」する処分として定められており、いずれの場合に該当してもその後経るべき手続は変わらないこと、右の許認可等を拒否する処分をする場合は、その理由を示さなければならず(同条例七条)、これにより形式的要件に適合しないのか、その他の理由によるのかは明らかになることが認められるのであって、これらの点に照らせば、本件において却下と棄却とを分別することは意味がなく、本訴請求の当否を判断する上で必要不可欠の争点をなすものとはいえない。そして、本件においては、被告のした本件請求を却下するとの決定は、右の許認可等を拒否する処分であるということができるから、本件処分は、これを端的に「本件請求を拒否する処分」として把握すれば足りるというべきである。 二争点2について 1 証拠(乙一、二、四ないし九、一一、一三、一八)及び弁論の全趣旨によれば、本件各文書の作成、編集、保存に関する手続について、次の事実が認められる。 (一) 行政文書の作成及び保管は、県議会においては事務局処務規程に基づいて、知事部局においては文書取扱規程に基づいてなされるが、その一般的な過程は次のとおりである。 (1) 文書の作成にあたり、まず、作成者から起案という形で、県等の意思決定としての伺いを立てることになる。右の起案文書は、直接の上司の審査と決裁(承認)を受けて意思決定されるほか、必要に応じて他の関係部課長の審査を受けるた まず、作成者から起案という形で、県等の意思決定としての伺いを立てることになる。右の起案文書は、直接の上司の審査と決裁(承認)を受けて意思決定されるほか、必要に応じて他の関係部課長の審査を受けるため、回議書として合議され、又は供覧された後、起案者の手元に戻される。 (2) 決裁後、文書の浄書や発送、又は支出等の事務手続を経た文書は、起案者の所属部署において、整理、保管及び保存がなされる。 (二)被告は、事務決裁規程に基づき、県議会事務局の職員を併せて山口県知事部局の職員として任命し(以下「本件併任事務吏員」という。)、この職員に対し、被告に権限が専属する予算執行事務や会計事務について専決又は代決権限を与えて補助執行させている。本件の県政調査交付金に係る予算執行事務も併任事務吏員の専決又は代決権限事項に属する。 (三) 県政調査交付金の申請・交付に関し、具体的に採られている手続は次のとおりである。 (1) まず、各会派から被告に対し、併任事務吏員がいる県議会事務局総務課に提出する形をとって、請求金額、事業概要、出納責任者等を記載した被告宛の交付申請書が提出される。県議会事務局総務課は、右の申請書を添付した経費支出伺書と交付決定伺書を作成する。右の各書類は、県議会事務局長の決裁を受け、財政課長、会計課長に合議された後、県議会事務局総務課に送付される。右の各書類のうち経費支出伺書は、事務局処務規程に基づいて県議会事務局総務課で保管されるとともに、県政調査交付金が支出されることになった場合、本件併任事務吏員により被告の交付決定のための事務処理がなされ、県議会各会派に対し、交付決定通知書が送付される。 右のとおり送付された交付決定通知書は、各会派で保管される。 (2) 交付決定の通知がされた後、各会派より県議会事務局に請求書が提出されると、県議会事 会各会派に対し、交付決定通知書が送付される。 右のとおり送付された交付決定通知書は、各会派で保管される。 (2) 交付決定の通知がされた後、各会派より県議会事務局に請求書が提出されると、県議会事務局では、予算執行のために必要な文書である支出負担行為票と、経費の支出のために必要な文書である支出票とを合わせた支出負担行為・支出票が、右の請求書を添付して作成され、本件併任事務吏員により、支出負担行為票に被告の決裁がなされ、出納長に対する支出命令がなされる。右の支出票は、本件併任事務吏員の決裁後、出納長に送付される。そして、出納長により支出負担行為や支出命令の審査及び支出命令の確認が行われた後、県議会事務局会計課にて指定金融機関への支払依頼がされ、県政調査交付金が各会派へ支払われる。そして、支出負担行為・支出票は、出納長が編集した後、出納局から県議会事務局に送付され、交付申請書と同じく県議会事務局総務課で保管される。 (3) 県政調査交付金の支出がなされた後、各会派は、収支関係を明らかにする帳簿等を備えて保存し、収入・支出の各決算額等を記載した被告宛の収支決算書を調製し、県議会事務局を通じて提出する。右の収支計算書は、提出を受けた県議会事務局でそのまま保管される。 (4) 県政調査交付金の支出に関する領収書は、県政調査交付金の交付申請書の提出から収支決算書の提出に至る過程で、県議会事務局に対して提出することは求められず、各会派で五年間保管される。 2 争点2についての判断の前提として、本件各文書が本件において具体的にどの文書を指すのかについて判断する。 (一) 本件文書①は、「交付申請書又はこれに類する文書」であるから、前記の交付申請書がこれに該当する。 (二) 本件文書②は、「支出に関する支出金調書又は交付金額のわかる文書」であるが、「支出 。 (一) 本件文書①は、「交付申請書又はこれに類する文書」であるから、前記の交付申請書がこれに該当する。 (二) 本件文書②は、「支出に関する支出金調書又は交付金額のわかる文書」であるが、「支出に関する支出金調書」との文言からすれば、県政調査交付金を請求する立場で作成された文書ではなく、県政調査交付金の請求を受けて支出をするに当たって作成された文書を意味するものと解される。そして、本件において右の文書に該当するものは、前記の支出負担行為・支出票である。 (三) 本件文書③は、「実施報告書又はこれに類する文書」であるが、「実施報告書」との文言からすれば、県政調査交付金の交付を受けて、右費用を使用した立場で作成された文書を意味するものと解される。そして、本件において右の文書に該当するものは、前記の収支決算書である。 (四) 本件文書④は、「費用の使途に関する領収証又はこれに類する文書」であるから、前記の領収証がこれに該当する。 3 以上を前提として、まず、争点2のうち、被告の職員が本件各文書を作成又は取得したものといえるか否かについて判断する。 (一) 本件文書①及び③は、県議会の各会派が作成し、県議会事務局を通じて被告に提出することにより、本件文書①は県議会調査費の支出を求めるために、本件文書③は被告がする支出の確定のために、いずれも被告の併任事務吏員が取得した文書である。 したがって、右の各文書は、被告の職員が職務上取得した文書であるということができる。 (二) 本件文書②は、県議会事務局で作成されるものの、併任事務吏員の専決又は代決を経ることにより支出命令が成立するために必要な文書となるのであるから、被告の職員が職務上作成した文書であるということができる。 (三) 本件文書④の作成者は、その性質上被告の作成に係る文書ではないことは明ら により支出命令が成立するために必要な文書となるのであるから、被告の職員が職務上作成した文書であるということができる。 (三) 本件文書④の作成者は、その性質上被告の作成に係る文書ではないことは明らかであり、また、被告が職務上取得したと評価するに足りる事実は存在しない。 原告は、地方自治法上予算の執行権限及び公文書類の保管権限を有する被告は会計規則一二三条により文書の保管義務をも負っているのであるから、予算執行に係る文書である本件文書④も当然に被告の職員が作成又は取得したと評価すべきとの見解に立つものと思われるが、県公開条例が「保有」とは別に「作成」又は「取得」という要件を定めており、本件文書④が、終始県議会の各会派の下に存在することに鑑みれば、事実上はもちろん、法律的な意味においても、本件文書④を被告の職員が取得したと評価するに足りる事実を認めることはできない。 (四) したがって、本件文書①ないし③は、被告の職員が「作成」又は「取得」した文書であるということができるが、本件文書④は、被告の職員が「作成」又は「取得」した文書であるとは認められない。 4 次に、争点2のうち、被告が本件文書①ないし③を保有しているものといえるか否かについて判断する。 (一) 「保有」の意味について(1) 県公開条例は、地方自治法上知事の権限とされている公文書の「保管」(同法一四九条八号)とは異なり、あえて「保有」との文言を使用した規定を定めているのであるから、「保有」の文言については、法的支配ではなく、事実上の支配という観点から決すべきものであるかのようにも思われる。 しかし、右のように解すると、山口県又は被告の文書保存に関する内部規定を変更し、文書を保存する場所を変更すれば容易に「保有」しているか否かを変更し得ることになる。このことは、山口県がその行政 る。 しかし、右のように解すると、山口県又は被告の文書保存に関する内部規定を変更し、文書を保存する場所を変更すれば容易に「保有」しているか否かを変更し得ることになる。このことは、山口県がその行政の諸活動について県民に説明する責務に基づいて、行政の透明性の向上を図るため、その保有する公文書の開示を求める県民の権利を明らかにするとする県公開条例の目的(同条例一条参照)から離れ、恣意的な取扱いがされる余地を残すことになるのであって、このような同条例の解釈には重大な疑問がある。県公開条例が右の「保有」の要件の意味内容を明確に定めていない本件においては、文書の保存につき定められている地方自治法及びその下位規定の趣旨及び文言に照らして、専ら文書を支配する法的権限の有無によってその意味内容を定めざるを得ない。 (2) この見地からすると、「保有」とは、文書を支配するための法的権限を有することを意味するものと解するのが相当である。 (二) 「保有」の主体について本件文書①ないし③を「保有」している主体、すなわち、本件各文書につきそれらを支配する法的権限を有している者は県議会か被告かについて判断する。 (1) 県議会の議長は、議会の事務の統理権(地方自治法一〇四条)、議会の庶務に関する事務局長等の指揮監督権(同法一三八条七項)を有するが、予算の執行権は被告に専属し(同法一四九条二号、なお、同法一一二条一項、一八〇条の六参照)、また、現金の出納保管等は出納長又は収入役の権限とされており(同法一七〇条一項、二項)、県議会の議長の統理する事務には予算の執行に関する事務や現金の出納保管等に関する会計事務は含まれていないから、県議会の議長が右の権限を有するということはできない。 被告は、県議会又はその議長が、一定の範囲内での予算執行権限を有すると主張し、予算 務や現金の出納保管等に関する会計事務は含まれていないから、県議会の議長が右の権限を有するということはできない。 被告は、県議会又はその議長が、一定の範囲内での予算執行権限を有すると主張し、予算執行に関連して県議会、その議長又は県議会事務局が関与する場面が存在することは否定できないものの、前記の事実関係に照らせば、交付申請書や収支決算書は被告宛に提出され、右の関与は、知事の権限が円滑に行使されることを目的として事実上行われているか、又は県議会に配分すべき予算の範囲を被告が決定した後、細部に亘る事項について県議会に委ねている限りでの関与にすぎず、右のように被告から委ねられた部分についても、結局は本件併任事務吏員の如く被告の専決又は代決権限を有する職員による事務処理を要することが認められる。そして、乙第七号証によれば、交付要綱に定めのない事項で必要なものについては被告が定めることとされていることが認められ。これらの事実関係に照らせば、県議会又はその議長が被告から独立した予算執行権限を有しているということはできない。 (2) 他方、被告は、地方公共団体を統轄する地位にあり(地方自治法一四七条)、前記のとおり、予算を調製・執行する権限と義務を有し(同法一四九条二号)、予算に関する調査権を与えられている(同法二二一条)。また、被告の監督下にある出納長には、会計事務の一環として、決算の調整権が与えられている(同法一四九条五号、一七〇条二項七号)。 また、被告は、公文書類を保管する権限を有し(同法一四九条八号)、会計規則中には、出納長に伝票等についての編集義務を課す規定(同規則一二一条一項)や、文言上は主体を限定せずに、右伝票等の保存義務を定めた規定が存在する(同規則一二三条)が、出納長が県議会事務局から支出負担行為・支出票の送付を受けて支払に係 義務を課す規定(同規則一二一条一項)や、文言上は主体を限定せずに、右伝票等の保存義務を定めた規定が存在する(同規則一二三条)が、出納長が県議会事務局から支出負担行為・支出票の送付を受けて支払に係る手続をした後、他部署において文書を保存する旨の規定は存在しない。 右のような被告の権限及び義務や、伝票等に関する規定に鑑みると、被告は、予算の執行を終了した後も、当該予算執行に関する文書を出納長を通じて保管する権限と義務を有しており、会計規則一二三条の主体は、同規則一二一条と同様に、出納長であるというべきである。 (3) 以上に検討したところによれば、本件文書①ないし③を支配する法的権限を有する者、すなわち、その「保有」の主体は被告と認められる。 (4) 被告は、会計規則一二三条が伝票等の保存主体を定めておらず、事務処理規程では伝票等を県議会事務局総務課長が保存すべきものとされていること、また、事務処理上、伝票等は被告が保存する必要性に乏しい反面、担当部署に存在する必要性があることから、本件文書①ないし③を保有するのは被告ではないと主張するが、前説示のとおり、県公開条例にいう「保有」とは、法的支配権限の有無によって決すべきものであるから、県議会事務局の担当部署や担当者が右の文書を現実に保存・占有しているとしても、そのことが「保有」の要件に影響を与えるものではないし、現実にされている保存・占有は、法的には本件併任事務吏員の職務の補助として行われていると解すべきものであるから、被告の右の主張は理由がない。 また、被告が、本件文書①及び③は伝票等に該当しないと主張するが、前記のとおり、被告が予算執行に関する文書を保管する権限と義務を有していることに照らせば、現実にされている右の各文書の保存は、被告が、会計規則一二三条に基づき、出納長を通じて行っ ないと主張するが、前記のとおり、被告が予算執行に関する文書を保管する権限と義務を有していることに照らせば、現実にされている右の各文書の保存は、被告が、会計規則一二三条に基づき、出納長を通じて行っているものであり、右の各文書は伝票等に該当すると解するのが相当であるから、被告の右の主張も理由がない。 更に、被告は県議会の自律性をも強調するが、県政調査交付金の使途は、議会審議や議会運営、又は議会活動そのものに係るものではなく、これらに付随する諸々の研究・調査活動等や、経費の類であり、これらを知事の権限のもとに服せしめたとしても、県議会の自律性を損なうおそれは少ないことに加え、県公開条例は、実質的な理由に基づく除外事由を定めた規定を有していることからすれば、本件文書①ないし③が文書開示の対象となり得る公文書に該当するとすることが、直ちに県議会の自律性を損なうことにはならないと解される。また、地方自治法の改正についても、従前必ずしも明確な法律的根拠に基づくものであったとはいえない県政調査交付金(地方自治法では「政務調査費」)について、条例による支出根拠を定めなければならないことを定めるとともに、県政調査交付金に係る収入及び支出の透明性を確保するために種々の手続を定めたに止まり、県議会又はその議長に予算執行権限を付与し、県議会の独立性を確認又は確保したものとまではいうことができない。したがって、被告の右の主張も理由がない。 5 争点2について右に判断したところによれば、本件文書①ないし③は、被告の職員が「作成し、又は取得し」、「保有」する文書であるといえるから、県公開条例二条二項の「公文書」に該当するが、本件文書④は、被告の職員が「作成し、又は取得し」た文書とはいうことができないから、県公開条例二条二項の「公文書」に該当しない。 第四結論 えるから、県公開条例二条二項の「公文書」に該当するが、本件文書④は、被告の職員が「作成し、又は取得し」た文書とはいうことができないから、県公開条例二条二項の「公文書」に該当しない。 第四結論よって、原告の本訴請求は、本件処分のうち、本件文書①ないし③に係る部分は理由があるから認容し、本件文書④に係る部分は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六四条本文、六一条を適用して、主文のとおり判決する。 山口地方裁判所第一部裁判長裁判官山下満裁判官杉山順一裁判官安部勝文書目録平成九年度及び平成十〇年度の県政調査交付金に関する次の文書① 交付申請書又はこれに類する文書② 支出に関する支出金調査又は交付金額のわかる文書③ 実施報告書又はこれに類する文書④ 費用の使途に関する領収書又はこれに類する文書文書目録平成九年度及び平成十〇年度の県政調査交付金に関する次の文書① 交付申請書又はこれに類する文書② 支出に関する支出金調査又は交付金額のわかる文書③ 実施報告書又はこれに類する文書④ 費用の使途に関する領収書又はこれに類する文書

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