令和6年4月25日宣告令和6年(わ)第38号承諾殺人被告事件 主文 被告人を懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、平成30年に母が死亡して以降、父と2人で暮らし、令和5年7月には、父の世話をしたいと思い、長年勤めた会社を退職したものであるが、父が衰えていく中、自分自身は家事能力がなく、精神状態も悪化しており、公的機関等に支援をしてもらっているものの、結局、父を施設等に入れることができないかもしれないなどと思い悩んでいたところ、同年11月8日朝、父に対し、「親父、疲れたの。一緒に母ちゃんの所に行こうか」などと言うと、「分かった。覚悟はできている」「母ちゃんの所に行く」などと言ったため、父が死を望んでいるものと確信した。 (罪となるべき事実)被告人は、令和5年11月8日午前7時頃、大分県別府市ab 番地c 被告人方において、父であるA(当時87歳)に対し、その承諾を得て、殺意をもって、その頸部を両手で絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。 なお、被告人は、本件犯行当時重度のうつ病等のため心神耗弱の状態にあった。 (責任能力についての補足説明)弁護人は、被告人は本件犯行当時重度のうつ病等のため心神耗弱の状態にあった 旨主張し、検察官もこれを争っていない。 そこで検討すると、捜査段階で精神鑑定を担当した医師Bは、その作成に係る鑑定書において、「被告人は、本件犯行当時重度のうつ病等に罹患していた。重度のうつ病で思考制止状態にあったことに加え、不安焦燥感や希死念慮が高 と、捜査段階で精神鑑定を担当した医師Bは、その作成に係る鑑定書において、「被告人は、本件犯行当時重度のうつ病等に罹患していた。重度のうつ病で思考制止状態にあったことに加え、不安焦燥感や希死念慮が高まり、現実検討能力が低下していたところ、不安焦燥感が急激に高まったことで被害者を道連れに無理心中することしか考えられなくなり、衝動性が亢進したことが本件犯行に強く影響した」旨の意見を示しており、これを採用し得ない事情は認められない。 その上で、同医師の診断において明らかな幻覚妄想等の精神病症状は認められなかったこと、犯行の途中で被害者がむせる音を聞いて、犯罪に相当するという考えが頭をよぎったが、途中で首を絞めるのを止めて後遺症を残してしまうくらいなら、最後までやり遂げた方がいいと思い、首を絞め続けたと説明したり、犯行直後警察署に電話をかけて自首したりしていることからみて、自らの行動を振り返り状況を判断する能力が完全に失われていたとは考えにくいと思われることも併せ考慮すれば、被告人は、本件犯行当時重度のうつ病等のため事物の理非善悪を弁識する能力又はこの弁識に従って行動する能力が著しく減退していたが、欠如する程度に達していたものではなく、心神耗弱の状態にあったと認定するのが相当である。 (量刑の理由)強固な殺意に基づく犯行であるが、被告人は、当時重度のうつ病等のため心神耗弱の状態にあったものであり、判示の動機形成にもその精神障害がかなり影響していたと考えられるから、責任非難の程度を重くみることはできない。 以上を前提に、被告人には前科がなく、前記のとおり自首して以降一貫して本件犯行を認め、反省の態度を示していること、5か月以上の身体拘束の継続により相応の不利益を受けたことも考慮し、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑・懲役2 おり自首して以降一貫して本件犯行を認め、反省の態度を示していること、5か月以上の身体拘束の継続により相応の不利益を受けたことも考慮し、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑・懲役2年6月)令和6年4月25日大分地方裁判所刑事部 裁判官辛島靖崇
▼ クリックして全文を表示