平成20(行ウ)30 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年10月14日 神戸地方裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-37587.txt

判決文本文12,533 文字)

- 1 -主文 原告らの訴えのうち,被告神戸市代表監査委員に,Aに対し,4827万4500円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求をすることを求める部分並びに被告弁護士費用をB及びA個人の負担とすることを求める部分をいずれも却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告神戸市長及び神戸市代表監査委員は,B及びAに対し,4827万4500円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。 被告弁護士費用はB及びA個人の負担とする。 第2事案の概要本件は,原告らが,地方自治法(以下「法」という)242条の2第1項。 4号本文に基づき,神戸市長にB個人に対し損害賠償請求をすることを命じる判決が確定したが,Bが損害賠償金等を支払っていないにもかかわらず,神戸市長であるBが同人に対する請求をせず,神戸市代表監査委員であるAがBに対する訴訟を提起しないことが財産の管理を違法に怠る事実に該当し,又は,B及びAは,上記確定判決が認容したBに対する損害賠償請求権を違法に放棄し,これらによって神戸市に損害を与えたるとして,同号本文に基づき,神戸市長及び神戸市代表監査委員に,B及びA個人に対し,損害賠償請求をすることを求めるとともに,被告らの弁護士費用をB及びAの負担とすることを求める事案である。 容易に認定できる事実等- 2 -( )原告らは,神戸市の住民である(弁論の全趣旨。 )( )Bは,平成13年11月から現在まで神戸市長の地位にある(甲3,弁 論の全趣旨。 ),,,( )Aは遅くとも後記( )の判決が確定した平成19年10月1 る(弁論の全趣旨。 )( )Bは,平成13年11月から現在まで神戸市長の地位にある(甲3,弁 論の全趣旨。 ),,,( )Aは遅くとも後記( )の判決が確定した平成19年10月18日以降 神戸市代表監査委員の地位にある(弁論の全趣旨。 )( )原告らは,神戸市における平成16年度の永年勤続慰安会事業に係る公 金の支出が違法であるとして,神戸市長に,Bに対し,平成16年度の永年勤続職員に対する旅行券等の支給に関して支出した金員相当額について損害(()賠償請求をすることを求める住民訴訟を提起した神戸地裁平成▲年行ウ第▲号。神戸地方裁判所は,同訴訟において,平成18年3月23日,神)戸市長にBに対し4827万4500円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求をすることを命じる,(()判決を言い渡しこれに対する被告の控訴大阪高等裁判所平成▲年行コ第▲号・第▲号)並びに上告及び上告受理申立て(最高裁判所平成▲年(行ツ)第▲号,同年(行ヒ)第▲号)は容れられず,同判決は,平成19年10月18日,確定した(以下,この判決を「本件確定判決」という(以。)。 上につき,甲1ないし3,弁論の全趣旨)(5)「C」は,同年11月6日付けで,神戸市に対し,本件確定判決が支払請求を命じた金額(遅延損害金相当額を含む)を神戸市に納付する旨の申。 出を行い,同年12月4日,同日時点での上記金額全額に当たる5474万1960円を納付した(甲8。 )(6)原告らは,平成20年1月21日,神戸市監査委員に対し,本件確定判決があるにもかかわらずBが損害賠償金及び遅延損害金を支払っていないから,神戸市長はBに対し損害賠償金及び遅延損害金を請求すべきであり,代表監査委員はBに 月21日,神戸市監査委員に対し,本件確定判決があるにもかかわらずBが損害賠償金及び遅延損害金を支払っていないから,神戸市長はBに対し損害賠償金及び遅延損害金を請求すべきであり,代表監査委員はBに対する訴訟を提起すべきであるとして,怠る事実の確認等の措置を求める監査請求をした(以下「本件監査請求」という。甲1。 )- 3 -(7)神戸市監査委員は,同年3月19日付けで,本件監査請求について,措置の必要を認めないとする旨の決定をし,そのころ原告らに同決定を通知した(甲2,弁論の全趣旨。 )(8)原告らは,同年4月18日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著。 ) 争点 ,,(),本件の主な争点は①原告らは適法に選定された選定当事者か争点1②代表監査委員に被告適格があるか(争点2,③代表監査委員が当該職員に)(),(),該当するか争点3④本件確定判決の既判力が本件訴えに及ぶか争点4⑤本件訴えは,損害の発生の可能性がなく不適法であるか(争点5,⑥被告)らの弁護士費用をB及びAの負担とすることを求める訴えは適法か(争点6)である。 争点に関する当事者の主張( )争点1について (原告らの主張)選定者らは,神戸市の住民であり,原告らとともに本件監査請求をし,本訴において,原告らを選定当事者に選定した。 (被告神戸市長の主張)原告らの一部による別件訴訟における偽造行為にかんがみ,原告らを除く選定者らが本件訴訟を遂行する意思を有していることを争う。 ( )争点2について (原告らの主張)法242条の3第5項によれば,法242条の2第1項4号本文の規定による訴訟について普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得の返還の請求を命ずる判決が確定した場合において,当該普通地方公共団体が 第5項によれば,法242条の2第1項4号本文の規定による訴訟について普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得の返還の請求を命ずる判決が確定した場合において,当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起するときは,当該訴訟については代表監査委員が当該普通地方公共団- 4 -,。 体を代表することとされているから神戸市代表監査委員は被告となり得る(被告神戸市代表監査委員の主張)法242条の2第1項4号に基づく請求(以下「4号請求」という)に。 おいて被告となるべき者は「当該普通地方公共団体の執行機関又は職員」と規定されており,これは当該訴訟で求められている損害賠償等の請求や賠償命令を行う権限を有する行政庁とその補助機関を指すものと解される。損害賠償又は不当利得返還の請求をする権限及び賠償命令を発令する権限はいずれも普通地方公共団体の長に与えられているから,被告となるべき者は通常は普通地方公共団体の長であり,長から委任を受けている執行機関又は職員も含まれる。被告神戸市代表監査委員は,神戸市長から,法242条の3第1項の規定に基づく損害賠償若しくは不当利得返還請求,又は法243条の,,2第3項4項に基づく賠償命令を発令する権限の委任を受けていないから法242条の2第1項4号にいう「執行機関又は職員」に当たらない。 法242条の3第5項は,あくまで訴訟を提起することにつき代表監査委員が普通地方公共団体を代表するということであり,この規定が,損害賠償又は不当利得返還を訴訟外で請求する権限までも代表監査委員に与える趣旨であると解することはできないから,代表監査委員を被告とすることはできない。 ( )争点3について (原告らの主張)4号請求において損害賠償又は不当利得返還 権限までも代表監査委員に与える趣旨であると解することはできないから,代表監査委員を被告とすることはできない。 ( )争点3について (原告らの主張)4号請求において損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合においては,法242条の3等の規定が定めるところによることになる。法242条の3第5項は,4号請求について,普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得の返還の請求を命ずる判決が確定した場合において,当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起するときは,当該訴訟については,- 5 -代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表する旨規定している。このように代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表するとされているから「当,該職員」に該当する。 (被告神戸市長及び神戸市代表監査委員の主張)法242条の2第1項4号の「当該職員」とは,当該訴訟において問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどして権限を有するに至った者であるところ,神戸市代表監査委員は,財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有しておらず,神戸市長から委任も受けていない。 (3)争点4について(原告らの主張)勝訴当事者が同一訴訟物につき訴訟提起した場合には権利保護の利益を欠くものとして却下されることがあるが,Bは,本件確定判決が認めた債権は消滅したと主張してその支払義務を果たしていないから,本件債権は権利保護されていない。本件債権の権利保護の利益を求めているのである。 (被告神戸市長の主張)勝訴確定した当事者が再度当該訴訟物に関する訴訟を提起した場合には,既判力により前訴に拘束されるから,訴えの利益は認められない。 本件債権の権利保護の利益を求めているのである。 (被告神戸市長の主張)勝訴確定した当事者が再度当該訴訟物に関する訴訟を提起した場合には,既判力により前訴に拘束されるから,訴えの利益は認められない。本件確定判決の主文第1項と,本件訴訟の請求の趣旨第1項のうち神戸市長を被告とし,Bに対する金員の支払請求の義務付けを求める部分は全く同一であり,かつ,同部分の訴えは,平成16年度の永年勤続慰安会事業に係る公金の支出にかかる全額の損害に関するものであるので,本件確定判決の既判力により同部分に係る判決は本件確定判決と全く同一のものとなるから,同部分の訴えは,訴えの利益を欠く。 (4)争点5について(原告らの主張)- 6 -法243条は,普通地方公共団体は,法律又はこれに基づく政令に特別の定めがある場合を除くほか,公金の徴収若しくは収納又は支出の権限を私人に委託し,又は私人をして行わせてはならない旨規定している。しかるに「C」と称する市職員らは,法律や政令等に根拠がないのに市職員からカンパを集め,それを神戸市に納入し,Bが支払うべき確定した損害賠償金を補填したと主張しており,Bも神戸市に支払うべき確定した損害賠償金を支払。 ,っていない納入義務者が歳入を納付したときに納付したことになるところ確定した損害賠償金の納入義務者はBであり,納入義務者でない「C」から5475万1960円の納付があったところで当該債権は補填されたことにならず,Bに対する損害賠償請求権は消滅していない。 (被告神戸市長の主張)4号請求は,地方公共団体の執行機関又は職員による一定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実によって地方公共団体が被り,又は被るおそれのある損害の回復又は予防を目的とするものであり,地方公共団体にとって財産上の損失を伴わない行為は,仮にそれが違法で 定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実によって地方公共団体が被り,又は被るおそれのある損害の回復又は予防を目的とするものであり,地方公共団体にとって財産上の損失を伴わない行為は,仮にそれが違法であったとしても,4号請求の対象とすることはできないから,地方公共団体に損害が生じる可能性があることが訴訟要件である。本件では,本件確定判決が認定した平成16年度の永年勤続慰安会事業に係る公金の支出に関する神戸市の損害は「C」から,の当該損害額の納付により填補され,損害の発生の可能性は考えられないから,請求の趣旨第1項の請求は訴訟要件が欠如しており,不適法である。 (5)争点6について(原告らの主張)B及びAの行為の違法性が明白であり,裁量権の濫用が著しく,そもそも同人らが本来の義務を果たしたら本件訴訟も必要ないから,本訴で原告らが勝訴した場合には,被告らの弁護士費用は,B及びA個人が負担するべきである。被告らの弁護士費用についても自治体の損害となり,前記第1,1に- 7 -係る弁護士費用の支出は,公金の無駄遣いである。 (被告神戸市長及び神戸市代表監査委員の主張)原告らの請求のうち弁護士費用の負担に関する部分がB及びAに弁護士費用の負担をすることを求めるものであるならば,機関たる神戸市又は神戸市代表監査委員は被告となり得ない。 また,当該請求は地方自治法242条の2第1項各号のいずれにも該当せず,監査請求も経ておらず,その他の法令においてもこのような請求を可能とする根拠はなく,不適法である。 第3当裁判所の判断 争点1について本訴においては,原告らを選定当事者に選定する旨記載され,選定者らの記名押印のある平成20年4月18日付け選定書が同日当裁判所に提出されている。いずれも原告らを含む複数の者が原告となり,訴訟代理人を選任して提 ては,原告らを選定当事者に選定する旨記載され,選定者らの記名押印のある平成20年4月18日付け選定書が同日当裁判所に提出されている。いずれも原告らを含む複数の者が原告となり,訴訟代理人を選任して提起した当庁平成▲年(行ウ)第▲号事件(平成20年4月10日判決言渡し)及び同平成▲年(行ウ)第▲号事件(同月24日判決言渡し)において,口頭弁論終結後,一部原告らの訴訟委任に疑義が生じ,最終的に一部原告ら(本訴の原告ら及び選定者らを含まない)につき訴訟代理権の証明がないとしてその。 訴えが却下されたことは当裁判所に顕著であるが,これらの訴訟の各提起時点から本訴提起までには時間的隔たりが相当あり,上記の訴訟代理権の証明不奏功が直ちに本訴の選定行為の有無及びその有効性を疑わせるとはいえず,他にこれを疑うべき事情もないから,上記選定書により,選定者らの選定行為は有効になされたものと認める。 争点2について( )4号請求において被告となる「執行機関又は職員」とは,当該訴訟で求 められている損害賠償等の請求や賠償命令を行う権限を有する行政庁とその補助機関を指すものと解される。 - 8 -地方公共団体の住民が地方公共団体の執行機関又は職員に長個人に対する損害賠償等を請求することを求める4号請求を提起した段階において代表監査委員が地方公共団体を代表することとされていないのは,この段階では,地方公共団体と長個人との間に必ずしも利害対立があるわけではないからであるのに対し,4号請求で地方公共団体の長個人に対する損害賠償請求等を求める訴えが認容され,地方公共団体が長個人を被告として訴え(以下「第2段階訴訟」という)を提起する場合に代表監査委員が地方公共団体を代。 表する(法242条の3第5項)こととされたのは,第2段階訴訟では常に地方公共団体と長個 団体が長個人を被告として訴え(以下「第2段階訴訟」という)を提起する場合に代表監査委員が地方公共団体を代。 表する(法242条の3第5項)こととされたのは,第2段階訴訟では常に地方公共団体と長個人との利益が相反することとなり,執行機関としての長に地方公共団体を代表させることとすると訴訟を適切に提起・追行することができないから,執行機関の中で独立性が高く,また,監査という職務の性質上,地方公共団体の行政分野全般に幅広く精通している監査委員に地方公共団体を代表させることとしたためであると解される。そして,現行の地方自治法の下においては,地方公共団体の住民が地方公共団体に代位して第2段階訴訟を提起することが認められていないこと,第2段階訴訟の提起については議会の議決は不要とされていること(法242条の3第3項)などにかんがみると,代表監査委員は,地方公共団体の長個人に損害賠償等の請求をすることを求める4号請求において住民の請求が認容され,同判決が確定した場合において,判決確定の日から60日以内に損害賠償金等が支払われない場合には,速やかに長個人を被告とする第2段階訴訟を提起する義務を負い,当該訴訟に関する限り,地方公共団体を代表して訴訟の提起及び訴訟追行を行う全般的な権限を与えられているというべきである。 したがって,地方公共団体の長個人に損害賠償等の請求をすることを求める4号請求において住民の請求が認容され,同判決が確定したが,60日以内に長個人が損害賠償金等を支払っていないにもかかわらず,地方公共団体が長個人に損害賠償等の請求をしていないとして,地方公共団体の住民が長- 9 -個人に対する訴えを提起して損害賠償等の請求をすることを求める4号請求を提起する場合には,代表監査委員は「執行機関」として被告適格を有すると解するのが相当であ て,地方公共団体の住民が長- 9 -個人に対する訴えを提起して損害賠償等の請求をすることを求める4号請求を提起する場合には,代表監査委員は「執行機関」として被告適格を有すると解するのが相当である(代表監査委員は,訴訟外で損害賠償等の請求をすることまでは認められていないから,代表監査委員を被告として4号請求をする場合には,必然的に訴えを提起して請求することを求めていると解することになるが,このように請求方法を訴訟上の請求に限定する4号請求も適法と解すべきである。 。)なお,機関としての長も訴訟外において個人としての長に対して損害賠償金の支払を請求し,長が個人の立場でこれに応じて支払うことも可能であるから,機関としての長も「執行機関」として被告適格を有すると解するのが相当である。 被告神戸市代表監査委員は,法242条の3第5項は,あくまで訴訟を提起することにつき代表監査委員が地方公共団体を代表するということであり,損害賠償又は不当利得返還を訴訟外で請求する権限までも与える趣旨ではないから,代表監査委員を被告とすることはできない旨主張するが「執,行機関又は職員」に該当するために必要な「権限」が訴訟外の権限に限られると解する理由はないから,同被告の主張は採用できない。 (2)他方,地方公共団体が代表監査委員個人に対して損害賠償等の請求をする場合に代表監査委員が地方公共団体を代表する権限を有するとした法令上の根拠はなく,また,そのような場合には執行機関としての長が地方公共団体を代表することとしても利害相反は生じないから,代表監査委員個人に損害賠償等の請求をすることを求める4号請求においては機関としての代表監査委員は「執行機関又は職員」に該当せず,被告適格を有しない。 ,(3)したがって,本件において,被告神戸市代表監査委員を被告と 害賠償等の請求をすることを求める4号請求においては機関としての代表監査委員は「執行機関又は職員」に該当せず,被告適格を有しない。 ,(3)したがって,本件において,被告神戸市代表監査委員を被告とする訴えのうち,Bに対し損害賠償等の請求(これを訴訟上の請求と解すべきことは前記のとおりである)をすることを求める部分は被告適格を有する者に対。 - 10 -する訴えであるが,Aに対し損害賠償の請求をすることを求める部分は被告適格を欠き不適法である。 争点3について被告神戸市長は,神戸市代表監査委員であるAは,財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有しておらず神戸市長から委任も受けていないから当,「該職員」に該当しない旨主張するが,法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは,当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして権限を有するに至った者を広く意味するものであるところ(最高裁昭和62年4月10日第二小法廷判決・民集41巻3号239ページ参照,前記2( )説示のとおり,代表監査委員は,地方公共団体の長個人) に損害賠償等の請求をすることを求める4号請求において住民の請求が認容され,同判決が確定した場合において,判決確定の日から60日以内に損害賠償金等が支払われない場合には,速やかに長個人を被告とする第2段階訴訟を提起する義務を負い,当該訴訟に関する限り,地方公共団体を代表して訴訟の提起及び訴訟追行を行う全般的な権限を有しているから「当該職員」に該当す,ると解するのが相当である。 争点4について被告神戸市長は,本件確定判決の主文第1項と本件訴えの請求の趣旨第1項のうち神戸市長を被告とし,Bに対する金員の支払請求 るから「当該職員」に該当す,ると解するのが相当である。 争点4について被告神戸市長は,本件確定判決の主文第1項と本件訴えの請求の趣旨第1項のうち神戸市長を被告とし,Bに対する金員の支払請求の義務付けを求める部分は全く同一であり,本件訴えには本件確定判決の既判力が及ぶから訴えの利益がない旨主張する。 しかし,既判力の範囲は訴訟物によって画されるところ,本件確定判決に係る訴訟において問題とされた財務会計上の行為は永年勤続慰安会事業に係る公金の支出であるのに対し,本件において問題とされている財務会計上の行為はB個人に対する損害賠償請求権の行使を怠っていること又は同債権を放棄した- 11 -ことであって,両者の訴訟物が異なることは明らかであるから,本件訴えに本件確定判決の既判力が及ぶことはない。被告神戸市長の主張は失当であり,採用できない(この点,なるほど訴状の「請求原因」の記載には,上記公金支出の違法を理由とする損害賠償請求の義務付けを求めると解される部分もあるが,原告の準備書面( ),1項の釈明により本訴の訴訟物は上記のとおりであ ることが明らかとなっている。 。) 争点5について(1)被告神戸市長は,地方公共団体にとって財産上の損失を伴わない行為は4号請求の対象とすることはできないとした上で,本件では「C」が損害全額を納付しており,神戸市に生じた損害は填補されたから損害の発生の可能性は考えられないとして,本件訴えのうち,請求の趣旨第1項に係る請求は訴訟要件を欠く不適法な訴えである旨主張する。 4号請求は,地方公共団体の執行機関又は職員による違法な財務会計上の行為が究極的には地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであることから,執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為により地方公共団体が被った損害の回復 関又は職員による違法な財務会計上の行為が究極的には地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであることから,執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為により地方公共団体が被った損害の回復を目的とするものである。そうすると,執行機関又は職員の違法な行為であっても,およそ地方公共団体が損害を被る可能性がない類型の行為を問題とするものであれば4号請求として不適法であるが,地方公共団体が損害を被る可能性がある類型の行為を問題とするものであれば4号請求としては適法であるというべきである。 これを本件についてみると,原告らが本件訴えにおいて問題としている行為は,B及びAが本件確定判決に基づきBに損害賠償請求権を行使していないこと又は上記確定判決に基づく損害賠償請求権を放棄したことであるが,前者について言えば,B及びAが上記損害賠償請求権を行使していないという不作為自体が存在することは明らかであり(弁論の全趣旨,このような)確定判決に基づく債権の不行使が類型的におよそ地方公共団体が損害を被る- 12 -可能性のない行為に当たるとまではいえず,被告神戸市長の主張する損害の填補は,上記不作為にかかわらず神戸市には損害が発生しないということに帰し,この点は義務付けの対象となるB及びAに対する損害賠償請求権の有無に関する本案の問題というべきである。また,後者の請求権放棄との関係で言えば,一般に債権の放棄が地方公共団体に損害を被らせる類型の行為といえることは明らかであり,神戸市長の主張が,放棄自体の存在を争う趣旨又は放棄と両立するものとして損害填補を主張する趣旨のいずれであっても,義務付けの対象となる損害賠償請求権の有無に関する本案の問題というべきことは前同様である。 したがって,被告神戸市長の主張は採用できない。 (2)そこで,更に進んで本 張する趣旨のいずれであっても,義務付けの対象となる損害賠償請求権の有無に関する本案の問題というべきことは前同様である。 したがって,被告神戸市長の主張は採用できない。 (2)そこで,更に進んで本案について検討すると,一般に,地方公共団体の有する確定判決に基づく債権を当該普通地方公共団体の長又は権限を有する職員が行使しないというだけでは,当該普通地方公共団体に財産的損害は発生しない。これが発生するのは,時効消滅,債務者の無資力化等により本来回収できたはずの債権が,法律上又は事実上回収不能となった場合等に限られる。しかるに,本件確定判決に基づく神戸市のBに対する債権が本来回収可能であったにもかかわらず法律上又は事実上回収不能となったなどの事情が存することの主張立証はない。 しかも,前記第2,1,(4),(5)のとおり,本件においては「C」が,,本件確定判決の確定の日から60日以内に同確定判決が認容した金額全額を納付したことにより,同確定判決に基づく神戸市のBに対する損害賠償請求権は消滅したというべきであり,以後,B及びAが,訴訟外又は訴訟上,上記損害賠償請求権を行使すべき義務を負うことはないから,同損害賠償請求権の不行使が神戸市に対する不法行為を構成することもない。したがって,この点からしても,原告らが請求の義務付けを求める神戸市のB及びAに対する損害賠償請求権は発生していないというべきである。 - 13 -原告らは,B及びAが本件確定判決に基づく債権を放棄したとも主張するが,甲7号証はこれを証するものとはいえず,他にこれを認めるべき証拠はない。また,いずれにしても「C」による前記納付により,本件確定判決に基づく損害賠償請求権の発生原因となったBの不法行為による神戸市の損害は填補されたというべきであるから,仮に,Bが上記請求権を放棄 ない。また,いずれにしても「C」による前記納付により,本件確定判決に基づく損害賠償請求権の発生原因となったBの不法行為による神戸市の損害は填補されたというべきであるから,仮に,Bが上記請求権を放棄したところで神戸市にはその放棄による新たな損害はなく,原告らが請求の義務付けを求める神戸市のB及びAに対する損害賠償請求権は存在しない。 原告らは「C」が市職員からカンパを受けて納付したことが法令に定め,がないにもかかわらず公金の徴収を私人に行わせたことになると主張しているものと解されるが,仮に上記納付が法243条に抵触するとしても,それにより納付の効果が否定されることにはならないだけではなく,神戸市が「C」に対して市職員からの金員徴収を委託又は委任したことを認めるべき証拠はなく,また,カンパであるなら,仮にカンパをした市職員の中に平成16年度の永年勤続慰安会事業に関し同市に対して債務を負担する者が含まれているとしても公金を徴収したと直ちにはいえない。 また,原告らは,Bが納付していないことを問題としているが,本件確定判決に基づく損害賠償請求権の実体法上の性質は民法上の不法行為による損害賠償請求権と解され,その性質上第三者弁済が許されない債権ではなく,その他当事者が反対の意思を表示するなどこれが許されないと解すべき事情はない(弁論の全趣旨)から「C」による前記納付は,本件確定判決に基,づくBの債務に対する有効な弁済であり,これによりBの債務が消滅することは明らかである。このように解することは地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為により地方公共団体が被った損害の回復を目的とする住民訴訟制度の趣旨又は本件確定判決に何ら反するものとはならない。 争点6について- 14 -原告らの主張は判然としないが,弁護士費用は訴訟費用 より地方公共団体が被った損害の回復を目的とする住民訴訟制度の趣旨又は本件確定判決に何ら反するものとはならない。 争点6について- 14 -原告らの主張は判然としないが,弁護士費用は訴訟費用に含まれず(民事訴訟費用等に関する法律2条参照,また,4号請求として損害賠償請求をする)ことを求めるものとも解されないから,原告らの訴えのうち前記第1,2の請求は住民訴訟として被告らが本件訴訟に関して応訴のため要した弁護士費用をB及びAの負担とすることを求めるものと解するほかない。以下そのような理解の下に検討する。 住民訴訟は民衆訴訟であり,民衆訴訟は法律に定める場合において,法律に定める者に限り提起することができるところ(行政事件訴訟法42条,住民)訴訟については,法242条の2第1項各号所定の類型の訴えが定められている。しかし,執行機関としての地方公共団体の長や代表監査委員を被告とする住民訴訟において,当該訴訟における被告の弁護士費用を当該地方公共団体の長個人や代表監査委員個人の負担とすることを求める訴えは上記各類型のいずれにも該当せず,また,他にそのような訴えを提起することを認めた法令上の根拠は存在しないから,本件訴えのうち前記第1,2の請求に係る部分は不適法な訴えとして却下を免れない。 第4 結論 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求のうち被告神戸市代表監査委員に,Aに対し,4827万4500円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求することを求める部分並びに被告らの弁護士費用をB及びAの負担とすることを求める部分はいずれも不適法であるから却下することとし,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法 士費用をB及びAの負担とすることを求める部分はいずれも不適法であるから却下することとし,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部- 15 -裁判長裁判官佐藤明裁判官島戸真裁判官佐々木隆憲- 16 -

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る