主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 3 本件附帯控訴を棄却する。 4 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 控訴の趣旨主文第1項及び第2項と同旨 2 附帯控訴の趣旨 (1) 原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 控訴人は、被控訴人に対し、242万円及びこれに対する平成30年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 (1) 本件は、控訴人と労働契約を締結し、テーマパークの●●●●●●出演者として就労している被控訴人が、平成25年2月7日から平成30年3月12日までの間、上司や同僚からパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)及び集団的ないじめを受け、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、控訴人に対し、債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為(使用者責任)に基づ く損害賠償請求として、慰謝料及び弁護士費用合計330万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年9月11日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 原審は、①被控訴人の主張する上司や同僚の発言はいずれも証拠上認められ ないか、社会通念上相当性を欠いて違法とまではいえない、②しかし、控訴人 は「他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整し、被控訴人が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務」(以下「孤立防止義務」という。)を負っていたところ、この義務に違反し、被控訴 どして職場の人間関係を調整し、被控訴人が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務」(以下「孤立防止義務」という。)を負っていたところ、この義務に違反し、被控訴人に著しい精神的苦痛を被らせたとして、控訴人に対し、被控訴人に慰謝料80万円及び弁護士費用8万円並びにこれらの合計88万円 に対する平成30年9月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう命じた。 これに対し、控訴人は、被控訴人はこのような孤立防止義務違反について全く主張しておらず、原審の上記判断は処分権主義及び弁論主義に反するなどとして、自己の敗訴部分を不服として控訴を提起した。また、被控訴人は、上司 や同僚の発言には違法性が認められるべきであるなどとして、自己の敗訴部分を不服として附帯控訴を提起した。 2 前提事実(証拠等を掲記していない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア控訴人は、テーマパークの経営・運営、不動産賃貸等を目的とする会社で ある(甲1)。 「東京ディズニーランド」(以下「TDL」という。)及び「東京ディズニーシー」(以下「TDS」という。)は、いずれも控訴人が経営・運営するテーマパークである(弁論の全趣旨)。 イ被控訴人は、昭和▲年生まれの女性である。 (2) 労働契約の締結被控訴人は、従前、株式会社Eプロダクションとの間で締結した労働契約に基づき、TDLにおいて●●●●●●出演者として就労していたが、平成21年4月1日に同社が控訴人に吸収合併されたのに伴い、同日、控訴人との間で、労働期間を1年間とする労働契約を締結し、引き続きTDLの●●●●●●出 演者として就労することとなった。 年4月1日に同社が控訴人に吸収合併されたのに伴い、同日、控訴人との間で、労働期間を1年間とする労働契約を締結し、引き続きTDLの●●●●●●出 演者として就労することとなった。 上記労働契約は、その後、更新され続けている(甲B20、乙B13)。 (3) 被控訴人の上司及び同僚アユニットマネージャーユニットマネージャーとは、控訴人におけるユニットの責任者であり、当該ユニットに所属する従業員(後記イのスーパーバイザーを含む。)を指揮・ 監督し、所管業務を執行する者である。 Aは、控訴人の従業員であり、平成21年からTDLにおけるユニットマネージャーを務めている(乙B17、弁論の全趣旨)。 イスーパーバイザースーパーバイザーとは、控訴人において、個々のショー、パレード等の運 営に関する現場責任者である。 B、C、D及びEはいずれも控訴人の従業員であり、このうちBは平成21年から、Cは平成23年から、Dは平成24年から、Eは平成28年からTDLにおけるスーパーバイザーを務めている(なお、このうちBは平成29年にユニットマネージャーに昇格している。乙B14ないし16、18)。 ウ ●●●●●●出演者●●●●●●出演者は、控訴人において、●●●●●●●●●●●●●を着用してパフォーマンスをする職種である。 F、G、H及びIはいずれも控訴人の従業員であり、被控訴人と同様に、TDLの●●●●●●出演者として就労している(乙B19ないし22、弁 論の全趣旨)。 (4) 平成25年2月7日の暴行被害の申告被控訴人は、平成25年2月7日、TDLの「●●●●●●●」エリアでの●●●●●●●●●●●●●( 9ないし22、弁 論の全趣旨)。 (4) 平成25年2月7日の暴行被害の申告被控訴人は、平成25年2月7日、TDLの「●●●●●●●」エリアでの●●●●●●●●●●●●●(●●●●●●がゲスト(客)と直接触れ合ったり写真撮影に応じたりするショー)に、「●●●●●●●」(●●●●●●)の ●●である「●●●●●」役で出演した。 そして、被控訴人は、同日午前11時40分頃、控訴人に対し、上記●●●●●●●●●●●●●において男性ゲストと握手をしたところ、当該男性ゲストから自身の右手の指を曲げられるという暴行(以下「本件暴行」という。)を受けた旨申告した。 3 争点 (1) 被控訴人に対するパワハラの有無(2) 被控訴人に対する集団的ないじめの有無(3) 控訴人の債務不履行責任ないし不法行為責任の有無(4) 損害発生の有無及びその額 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(被控訴人に対するパワハラの有無)について(被控訴人の主張)被控訴人の上司らは、本件暴行に関し、以下のとおり被控訴人へのパワハラを行った。 ア B及び男性上司の発言 被控訴人は、本件暴行を受けた平成25年2月7日、B及びスーツ姿の50歳代と思われる氏名不詳の男性上司と面談をし、警察への通報や労災申請の協力を求めたところ、当該男性上司は「エンターなんだから、それくらい我慢しなきゃ。」、「君は心が弱い。」と発言してこれを拒絶し、Bも「心が弱い。」と復唱してこれに同調する旨の発言をした(以下、氏名不詳の男性上司 及びBの発言を併せて「本件発言1」という。)。 イ Cの発言被控訴人は、「●●●●●●●」役を演じると過 と復唱してこれに同調する旨の発言をした(以下、氏名不詳の男性上司 及びBの発言を併せて「本件発言1」という。)。 イ Cの発言被控訴人は、「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出るため、同役を演じるのを止めるよう医師から指導を受けており、複数のスーパーバイザーらに対してその旨を伝えた上で、平成25年の●●●●●●●●●(毎 年11月から始まる●●●●。1日に2公演が行われる。)では「●●●●● ●●」役を外してもらうよう願い出ていた。 しかし、同年9月に発表された●●●●●●●●●の配役において、被控訴人に「●●●●●●●」役が割り当てられていたため、被控訴人は、同年11月下旬頃、Cに対し、「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出るため、●●●●●●●●●において同僚との間で一時的に配役を交換した い旨申し出た。これに対し、Cは「わがままには対応できない。」、「(わがままな要望を繰り返せば)解雇対象になる。」と発言した(以下「本件発言2」という。)。 ウ Dの発言被控訴人は、平成25年11月下旬頃、「●●●●●●●」役を演じ終えた ところで過呼吸の症状が出たため、バックステージ内で呼吸を落ち着かせていたところ、Dは「次に倒れたら(●●●●●●●●●の役を)辞めてもらう。」、「(配役から外すことは)会社判断、変えられない。」と発言した(以下「本件発言3」という。)。 (控訴人の主張) 被控訴人の主張する本件暴行については、これを直接目撃した者がおらず、専ら被控訴人の申告内容によってしか事実関係を把握し得ない。そして、以下のとおり、Bその他の従業員が本件発言1ないし3の各発言をした事実はなく、パワハラがあったとは認められない。 者がおらず、専ら被控訴人の申告内容によってしか事実関係を把握し得ない。そして、以下のとおり、Bその他の従業員が本件発言1ないし3の各発言をした事実はなく、パワハラがあったとは認められない。 ア B及び男性上司の発言について 被控訴人とBの面談に「氏名不詳の男性上司」が同席した事実はなく、Bが本件発言1の発言をした事実もない。むしろ、Bは、警察に被害届を提出したいとの被控訴人の希望をセキュリティ部の責任者に伝えているし、労災申請についても、控訴人は所要の手続を遅滞なく行っていたのであって、これらの点からも、Bが警察への被害届の提出や労災申請をしないよう発言し たとは認められない。 イ Cの発言についてCが本件発言2の発言をした事実はない。被控訴人が●●●●●●●●●で「●●●●●●●」役を外してもらうよう事前に願い出ていた事実は存在しない。そして、Cに対する申出も、●●●●●●●●●そのものの配役の交換ではなく、「●●●●●」(●●●●●●●に行われる●●●●●●●● ●●●●●●●●●)での配役の変更を求めたものであり、その理由も、過呼吸に陥りやすいとの説明はなく、単に「●●●●●●●」役での●●●●●●●●●●●●●への出演が精神的につらいというものであった。Cは、「●●●●●」での配役だけを変更することは現実的には難しいため、精神面での調子が悪いようであれば、思い切って仕事を全部休んで療養に専念し た方が被控訴人の将来のために良いのではないか、ということを話したにすぎず、「わがまま」や「解雇」という単語は用いていない。 ウ Dの発言についてDが本件発言3の発言をした事実はない。そもそもDは被控訴人が過呼吸の症状を起こしているのを見聞きし ぎず、「わがまま」や「解雇」という単語は用いていない。 ウ Dの発言についてDが本件発言3の発言をした事実はない。そもそもDは被控訴人が過呼吸の症状を起こしているのを見聞きしたこと自体がなく、被控訴人の主張はそ の前提を欠く上、あらゆるショーやパレードの配役は全てのスーパーバイザー及びユニットマネージャーの意見を反映して決定されるのであって、Dがその場で出演を辞めてもらうとか、会社判断であって変えられないなどと発言することは考えられない。 (2) 争点(2)(被控訴人に対する集団的ないじめの有無)について (被控訴人の主張)控訴人の従業員らの間には一種の「カースト」が存在し、下位のカーストにいると分類された場合、他の従業員から集団的ないじめを受けるという実態があった。被控訴人の立場はこれに該当しており、上司や同僚らは、以下のとおり被控訴人に対するいじめを行っていた。 ア Fの発言 被控訴人は、平成27年12月又は平成28年1月頃、「●●●●●●」(TDLの●●●●●●●●●●●●●●●)への出演が決まり、ロッカールームで同僚のFに「来期から一緒のショーで働くのでよろしくお願いします。」と挨拶したところ、Fは「お前みたいにやる気のないやつは全力でつぶすから。」、「●●●●●●には神様がいるんだから。お前は神様に嫌われて いるから、3か月後に絶対怪我するから覚えておけ。」と発言した(以下「本件発言4」という。)。 イ Aの発言被控訴人は、平成28年1月6日、居酒屋で開かれた職場の懇親会に参加したところ、上司のAは「20代を集めてこい。」と発言した上、前に座って いた被控訴人に対し、「目障りだからどけ。」と発言した。被 訴人は、平成28年1月6日、居酒屋で開かれた職場の懇親会に参加したところ、上司のAは「20代を集めてこい。」と発言した上、前に座って いた被控訴人に対し、「目障りだからどけ。」と発言した。被控訴人がAに対し、喘息が起こる旨の相談をしたところ、Aは「病気なのか。それなら死んじまえ。」、「死んじゃえNISSAN。」、「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ。」、「てめーのワガママは聞いてらんねーんだよ。」、「俺の前に汚ねえ面見せるな。」、「お前は来期、シー(TDS)に異動かな。」、「行 っちゃえNISSAN。」と発言した(以下、併せて「本件発言5」という。)。 ウ Eの発言被控訴人は、平成29年1月頃、ショーの出演後に過呼吸の症状が出たため、トイレに駆け込んでいたところ、上司のEはトイレに来てその様子を確認した上、「体調悪いなら早く言ってくれないと。」と発言した。被控訴人が 「過呼吸は予測できないんです。」と説明したものの、Eは「ショーがキャンセルになったらどうするつもりなの。」と発言した(以下、併せて「本件発言6」という。)。 エ Gの発言Gは、平成29年2月2日、楽屋において、被控訴人に「どっち?」と突 然質問した。被控訴人は質問の意味が理解できず、「え、何ですか?」と尋ね たところ、Gは「●●●●●●●●●●●●●●●、どっちかを聞いているに決まってるじゃん。他の人は2ポジションやりませーん。バカ?」と発言した(以下「本件発言7の1」という。)。 また、被控訴人は、同月7日、ショーの最中の着替えの際、衣装の着用順を間違えそうになったところ、Gは「はい、出たー、出ましたー。」と発言し た(以下「本件発言7の2」という。)。 オ Hの た、被控訴人は、同月7日、ショーの最中の着替えの際、衣装の着用順を間違えそうになったところ、Gは「はい、出たー、出ましたー。」と発言し た(以下「本件発言7の2」という。)。 オ Hの発言被控訴人は、平成29年5月4日に生じた業務上の災害によって3か月程度休職していたところ、復職後の同年10月27日、楽屋でHから状態を聞かれ、「全力でダッシュできないので、●●●●●●(の担当)は抜いてもら ってます。」と答えた。これに対し、Hは、他の従業員に聞かせるように「私もできないとか言ってみたいわー。」と発言した(以下「本件発言8の1」という。)。 また、被控訴人は、同年11月22日、他の●●●●●●出演者が衣装を畳もうとしていたため、「すいません、クリーニング(に出すため畳む必要が ない)かもしれません。」と指摘したところ、Hは「あー、最初から分かってたのに言わなかったんでしょー。意地がわるーい。」と発言した(以下「本件発言8の2」という。)。 カ Iの発言平成30年2月3日、被控訴人が楽屋で片付けをしていたところ、Iは「カ ーペット敷きたいんですけど、早くその大きなお尻をどかしてくれます?」、「本当に邪魔。」と発言した(以下「本件発言9の1」という。)。 また、同年3月12日、被控訴人が新人の●●●●●●出演者2人から相談を受けてアドバイスしていたところ、Iは「●●●●の言うことなんか聞かない方がいいよー。」と発言した(以下「本件発言9の2」といい、本件発 言1から本件発言9の2までを併せて「本件各発言」という。)。 (控訴人の主張)控訴人の従業員らの間に「カースト」など存在しておらず、これを利用した集団的ないじめなどはない 言1から本件発言9の2までを併せて「本件各発言」という。)。 (控訴人の主張)控訴人の従業員らの間に「カースト」など存在しておらず、これを利用した集団的ないじめなどはない上、以下のとおり、Fその他の従業員において、社会通念上相当性を欠くものとして違法性が認められるような発言をした事実はない。 ア Fの発言についてFが本件発言4の発言をした事実はない。Fは、被控訴人からの挨拶に対して「本気で行くよ。」などと言ったが、これは怪我をしないよう緊張感を持って出演してもらいたいと思っていたためである。また、Fは「3か月で事故が起きやすいから気を付けて。」などと言った可能性があるが、これは、F の経験上、人間は慣れてくると事故を起こしやすいと考えていたためである。 イ Aの発言についてAは、被控訴人の主張する本件発言5のような発言はしていない。Aが「てめえらは稼いでいるんだから、ちょっとは我慢しろよ。」、「我慢できねえんなら、とっとと辞めちまえよ。」、「行っちゃえNISSAN。」などと発言し た事実はあるが、これらはいずれも出演者の先輩としてのアドバイスを行う中での断片的な発言であり、被控訴人が意図的に切り取ったものであって、発言の前後の文脈等に照らせば、パワハラ等に該当しないことは明らかである。 ウ Eの発言について Eが本件発言6の発言をした事実はない。Eは、平成28年4月20日、被控訴人がショーの開始前に痛みを訴えているとの連絡を受けて対応したことはあったが、不調を訴える被控訴人にEが対応したのはこの日だけであり、「平成29年1月頃」や「ショーの出演後」に対応したことはない。そして、Eは、交代要員が存在することを既に確認していたた したことはあったが、不調を訴える被控訴人にEが対応したのはこの日だけであり、「平成29年1月頃」や「ショーの出演後」に対応したことはない。そして、Eは、交代要員が存在することを既に確認していたため、被控訴人に対 し「どうしたの、大丈夫?」、「代わりは立ちますので、無理はしないでくだ さい。」と発言したのであって、交代要員が存在するにもかかわらず「ショーがキャンセルになったらどうするつもりなの。」などと発言するはずがない。 エ Gの発言についてGが本件発言7の1・2の各発言をした事実はない。Gが挨拶もせずに突然「どっち?」と話しかけることはなく、同僚に対して相手を非難する意図 で「バカ」と発言することもない。また、ショーの最中はG自身も着替えなど自分の仕事を行う必要があり、被控訴人の行動を注視するような余裕も時間もない。 オ Hの発言についてHが本件発言8の1の発言をした事実はない。被控訴人が楽屋で「全力で ダッシュできないので、●●●●●●は抜いてもらっています。」などと述べたことはあったが、H自身も怪我をして●●●●●●の出演を外してもらったことがあるため、Hが「私も(●●●●●●の出演を)できないとか言ってみたいわー。」などと発言するはずがない。 被控訴人主張の本件発言8の2については、Hが「分かってて言わなかっ たんでしょー。」、「いじわるー。」などと冗談めかして発言した可能性はあるが、被控訴人を非難する趣旨ではなく、お互いに冗談を言い合う関係の中での発言であって、社会通念上相当性を欠いて違法と評価されるようなものではない。 カ Iの発言について Iが本件発言9の1の発言をした事実はない。Iは平成30年2月3日に出勤 発言であって、社会通念上相当性を欠いて違法と評価されるようなものではない。 カ Iの発言について Iが本件発言9の1の発言をした事実はない。Iは平成30年2月3日に出勤しておらず、被控訴人と会っていない。 被控訴人主張の本件発言9の2については、被控訴人が後輩の出演者に対して「何かあったときは会社を訴えればいい。」と言い、後輩がこれに驚いて困惑していたため、Iがその場を和ませるために「●●●●の言うことを真 剣に捉えすぎなくていいよ。」と笑顔でアドバイスしたにすぎず、被控訴人 を非難したものではない。 (3) 争点(3)(控訴人の債務不履行責任ないし不法行為責任の有無)について(被控訴人の主張)アパワハラに係る安全配慮義務違反(本件発言1ないし3)控訴人は、使用者として安全配慮義務に基づくパワハラ防止義務を負って いるのであり、具体的には、従業員にパワハラ防止のための教育をし、パワハラが発生した場合はこれを調査・把握して、適切な措置を講ずべき義務を負っている。 また、控訴人は、従業員の健康を害する配役を行わないようにし、従業員から配役の変更等を求められた場合には必要に応じて配置転換等の措置を 採るべき義務を負っている。 本件において、被控訴人はうつ症状を発症しており、控訴人に対し、うつ症状の一つである過呼吸の症状を引き起こす配役(「●●●●●●●」役)を割り当てないよう求めていた。しかし、控訴人は、上記各義務を怠り、被控訴人に当該配役を演じることを求め続け、「わがままには対応できない。」、 「(わがままな要望を繰り返せば)解雇対象になる。」、「次に倒れたら(●●●●●●●●●の役を)辞めてもらう。」などの本件 人に当該配役を演じることを求め続け、「わがままには対応できない。」、 「(わがままな要望を繰り返せば)解雇対象になる。」、「次に倒れたら(●●●●●●●●●の役を)辞めてもらう。」などの本件発言1ないし3によるパワハラを漫然と放置したものである。 したがって、控訴人には安全配慮義務違反が認められる。 イ集団的ないじめに係る安全配慮義務違反(本件発言4ないし9の2) 被控訴人は、職場における集団的ないじめを控訴人に相談しており、控訴人は被控訴人に対するいじめの有無及びその内容を調査し、いじめが認められればこれを防止して、被控訴人がいじめを受けないようにするための配置転換等の種々の措置を講ずる義務を負っていた。 しかし、控訴人はかかる義務を怠り、本件発言4ないし9の2による集団 的ないじめを漫然と放置していたのであるから、控訴人には安全配慮義務違 反が認められる。 ウ不法行為責任(本件各発言)本件各発言(本件発言1ないし9の2)によるパワハラ及び集団的ないじめは、それ自体が民法709条の不法行為を構成するところ、これらは「事業の執行について」されたものであるから、控訴人は民法715条1項本文 の使用者責任を負う。 (控訴人の主張)ア争点(1)及び(2)で主張したとおり、Bその他の従業員において、社会通念上相当性を欠くものとして違法性が認められるような発言をした事実はなく、パワハラ及び集団的ないじめがあったとは認められないのであるから、 被控訴人の安全配慮義務違反等の主張はその前提を欠く。 イなお、原審は、パワハラ及び集団的ないじめの事実を否定した上で、これとは別に、控訴人は「他の出演者に事情を説明するなどして職場 被控訴人の安全配慮義務違反等の主張はその前提を欠く。 イなお、原審は、パワハラ及び集団的ないじめの事実を否定した上で、これとは別に、控訴人は「他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整し、被控訴人が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務」(孤立防止義務)を負っていたところ、この 義務に違反したとして、控訴人に損害賠償を命じている。 しかし、被控訴人はこのような孤立防止義務違反について全く主張しておらず、原審の上記判断は処分権主義及び弁論主義に反する違法なものである。 また、原審は、上記義務の内容を特定するための具体的事実関係を明らかにしておらず、当該義務違反を論ずる前提を欠く上、一種の人格権的利益を 保護の対象とする義務を創設するなど、労働契約法5条の解釈を誤っている。 さらに、原審は、何の立証も行われていないのに、「被控訴人が配役について希望を述べることで職場において孤立」していたなどと認定しており、事実誤認がある。 (4) 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について (被控訴人の主張) ア慰謝料 300万円被控訴人は、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめを受けた結果、うつ病を発症し、通院を余儀なくされ、その症状が増悪するとともに、現在も治癒することなく症状が継続している。このような精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は、300万円を下回らない。 イ弁護士費用 30万円ウ上記ア及びイの合計 330万円(控訴人の主張)否 い。 イ弁護士費用 30万円ウ上記ア及びイの合計 330万円(控訴人の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 当裁判所は、原審とは異なり、被控訴人の請求は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 1 認定事実前記前提事実に後掲の各証拠等を併せると、以下の事実が認められる。 (1) 控訴人の組織 ア控訴人には、「エンターテイメント本部」の「ショー運営部」の下に「第3ショー運営グループ」が設けられており、同グループが●●●●●●の出演業務を担当している。この第3ショー運営グループにはおおむね7、8人のスーパーバイザーが配属されており、それらの上司であるユニットマネージャーや部下らとともに業務を分担している。 本件において、①ユニットマネージャーのA、②スーパーバイザーのB、C、D及びE、③●●●●●●出演者のF、G、H、I及び被控訴人は、いずれもこの第3ショー運営グループに属している(乙B14、弁論の全趣旨)。 イまた、控訴人には、「エンターテイメント本部」に「ショー開発部」が設けられており、出演者との間の労働契約の締結・更新の有無や労働条件等の決 定・判断等を行っている(乙B14)。 ウ控訴人には、他に、パーク内のセキュリティ等を担当する「セキュリティグループ」等が設けられている(乙B3、弁論の全趣旨)。 (2) 本件暴行の申告等ア被控訴人は、平成25年2月7日、TDLの「●●●●●●●」エリアでの●●●●●●●●●●●●●に、「●●●●●●●」(●●●●●●)の● 全趣旨)。 (2) 本件暴行の申告等ア被控訴人は、平成25年2月7日、TDLの「●●●●●●●」エリアでの●●●●●●●●●●●●●に、「●●●●●●●」(●●●●●●)の● ●●●●「●●●●●」役で出演した(前提事実(4))。 イ被控訴人は、同日午前11時40分頃、上記●●●●●●●●●●●●●を担当していた控訴人の従業員のJに対し、男性ゲストから右手の指を曲げられた(本件暴行)旨を申告した。 Jは、同日午後零時9分頃、控訴人のセキュリティグループに上記の旨を 連絡し、同グループにおいて、被控訴人の申告する男性ゲストの捜索を開始した。この捜索にはBや他の出演者らも加わったが、結局、該当するゲストは見つからなかった(甲B20〔3頁〕、乙B3、14〔4頁〕)。 ウ被控訴人は、同日午後零時15分頃、控訴人の健康管理センターにおいて、医師の診察を受けた。その際、被控訴人は、医師に対し、「握手を求められて 手を出したら、20代男性に手首を握られ、第3・4指(中指及び薬指)を逆方向に曲げられた。」旨を伝えた。 上記医師は、被控訴人を診察したところ、しびれはなく、指の屈伸に問題もなく、軽度の発赤がみられる程度であるとして、湿布薬(カトレップ)のみを処方した(乙B1)。 エ被控訴人は、同日午後3時54分頃、TDLのセキュリティグループのオフィスである「サテライトオフィス」において、Bと面談した(なお、この際の同席者及びBの発言内容等については、前記のとおり、当事者間に争いがある。)(乙B3)。 (3) 被控訴人の出演についての配慮 被控訴人は、平成25年2月8日、Bに対し、ゲストと接することに恐怖感 があるのでシフトを配慮して 争いがある。)(乙B3)。 (3) 被控訴人の出演についての配慮 被控訴人は、平成25年2月8日、Bに対し、ゲストと接することに恐怖感 があるのでシフトを配慮してもらえないかと相談した。 Bは、ユニットマネージャーのAや他のスーパーバイザーとも話し合った上、しばらくの間、被控訴人については●●●●●●●●●●●●●の出演をしなくてもよいようにシフトを調整し、様子を見ていくこととした(乙B14〔6頁〕、15〔2頁〕、証人B〔13、16、30頁〕、証人C〔3、4頁〕、被控 訴人本人〔3、35頁〕)。 (4) 申告後の通院等ア被控訴人は、平成25年2月8日、浦安市内の病院(浦安サンクリニック)を受診し、「右第3、4指捻挫」と診断された(乙B2)。 イ被控訴人は、同日、ツイッターに「ガタイのいい男に指折られそうになっ て」、「気持ちが折れてるところに上司は『その仕事なんだから強くなりなさい、君の心は弱い』って?」などの投稿をした(甲B15、被控訴人本人〔2、3頁〕)。 ウ被控訴人は、同年3月22日、浦安市内の心療内科(髙木メンタルクリニック)を受診し、問診票に「仕事中、お客さんに指を折られそうになる事件 があり、それに対して上司がいたずらにがまんできない君の心が弱いからいけないと言われた日から、様子がおかしくなった。」と記載した。 被控訴人は、同クリニックにおいて、「ストレス性障害」と診断された(甲B4、14)。 (5) ●●●●●●●●●●●●●への復帰 被控訴人は、平成25年3月末頃、●●●●●●●●●●●●●への出演を再開した。その際、まず「●●●●●●●」以外の役での出演から徐々に再開し、その後、「●●●●●● ●●への復帰 被控訴人は、平成25年3月末頃、●●●●●●●●●●●●●への出演を再開した。その際、まず「●●●●●●●」以外の役での出演から徐々に再開し、その後、「●●●●●●●」役での出演も再開した(乙B14〔6頁〕、15〔2、3頁〕、証人B〔13、16頁〕、証人C〔4、11頁〕、被控訴人本人〔3、36頁〕)。 (6) 平成25年8月の相談等 ア被控訴人は、平成25年8月15日、控訴人の従業員相談窓口である「E-EAR」に相談した。相談の際、被控訴人は、ゲストに指を曲げられた事故の際に「エンターなんだからそれくらい我慢しなくちゃ。君は心が弱いよ。」と言われたのをきっかけに、会社への不信、仕事への恐怖、過呼吸が始まり、心療内科へ通った結果、「ストレス性障害」と診断され、その後もスーパーバ イザーの対応が苦痛で症状が進行しているなどと申告した(乙B12)。 イ被控訴人は、同月22日、第3ショー運営グループのマネージャーであるK及びBと共に控訴人の健康管理センターを訪れ、産業医2名(L医師、M医師)と面接をした。 まず、被控訴人は、K及びBが席を外した状態で、産業医らに対し、心療 内科(髙木メンタルクリニック)に通っていること、電車やバスには乗れず、●●●●●●を演じるときに過呼吸になること、その役(「●●●●●●●」役)を演じるとフラッシュバックすること、不安感で自殺願望が出てくることがあり、1週間前に首を吊ろうとしたことなどを伝えた。 その後、K及びBも同席し、産業医らは、被控訴人に対し、一番大切なの は確実に病気を治してもとの仕事ができるようになることであり、そのためには療養が望ましいなどと伝えた。 そして、産業医らのうち Bも同席し、産業医らは、被控訴人に対し、一番大切なの は確実に病気を治してもとの仕事ができるようになることであり、そのためには療養が望ましいなどと伝えた。 そして、産業医らのうち1名(L医師)は、同日付けで、町田市内の心療内科(ハートクリニック町田)宛ての紹介状を作成し、被控訴人に交付した。 この紹介状には、被控訴人の症状経過等が記載されるとともに、「就労の可 否につきご判断をお願いしたいのと、自宅療養(実家等で)の必要性についてもご教示お願い致します。」などと記載されていた(甲B3〔7枚目〕、乙B10の1)。 ウ被控訴人は、同月25日、町田市内の心療内科(ハートクリニック町田)を受診し、医師に対し、客から手首をひねられて怪我をしたこと、会社の対 応がひどく、会社への不信感があること、バスや電車に恐怖があったが改善 したこと、「使えないから死んじゃえ」との幻覚妄想があり、気分が落ちると聞こえること、仕事は楽しく、仕事したいと考えていることなどを伝えた。 同病院の医師は、被控訴人を「うつ病」と診断した上、産業医(L医師)に対し、「勤務は通常通りとしてよいと思われました。自宅療養も現在必要とせず、規則正しい生活は心がけるよう伝えました。本日より薬物療法を開 始しました。」などと返信した(甲B3、13、乙B23)。 (7) ●●●●●●●●●の配役等ア平成25年9月、●●●●●●●●●の配役が発表され、被控訴人には「●●●●●●●」役が割り当てられた(乙B15〔5頁〕)。 イ被控訴人は、同月21日、控訴人の健康管理センターの保健師(N保健師) に対し、「なるべくその役のシフトには入れないでほしいとSV(スーパーバイザー)に伝えておいたにもかかわらず、 イ被控訴人は、同月21日、控訴人の健康管理センターの保健師(N保健師) に対し、「なるべくその役のシフトには入れないでほしいとSV(スーパーバイザー)に伝えておいたにもかかわらず、●●●●●のキャスティングでその役になった。嫌がらせ?と考えてしまい、症状が悪化。これから先の苦痛を考えると頭がおかしくなりそうです。」とのメールを送信した。 そして、被控訴人は、同年10月15日、産業医2名(L医師、M医師) と面接し、上記保健師もこれに同席した。もっとも、この面接は、被控訴人の希望により、所属部署(第3ショー運営グループ)の上司には内密で行われた。 被控訴人は、産業医らに対し、●●●●●のキャスティングはもともと過呼吸のきっかけになった●●●●●●であり、不安は大きいことなどを話し た。産業医らは、現在の状態を考えると、療養することが一番良いと思われること、上司との情報共有により仕事環境の改善を依頼できる可能性はあることなどを伝えたが、被控訴人は、上司との情報共有は「やる気が出ない」などとしてこれを拒んだ(乙B10の4、5)。 ウ同年9月以降、●●●●●●●●●のリハーサルが行われ、同年11月、 ●●●●●の本番公演が開始した(乙B15〔5頁〕)。 エ被控訴人は、●●●●●●●●●開始後の同年11月下旬頃、Cに対し、「●●●●●●●」役の配役に関する相談をした(前記のとおり、●●●●●●●●●自体での配役の相談をしたのか、それとも●●●●の合間に行われる●●●●●●●●●●●●●での配役の相談をしたのかについては、当事者間に争いがある。)(乙B15〔5、6頁〕)。 オ被控訴人は、結局、同年12月25日までの間、●●●●●●●●●及びその間に行われる ●●●●での配役の相談をしたのかについては、当事者間に争いがある。)(乙B15〔5、6頁〕)。 オ被控訴人は、結局、同年12月25日までの間、●●●●●●●●●及びその間に行われる●●●●●●●●●●●●●の双方において、いずれも「●●●●●●●」役で出演し続けた(甲B20〔10頁〕、証人C〔13頁〕)。 (8) その後の被控訴人の勤務 被控訴人は、その後もTDLの●●●●●●出演者として就労していたが、平成30年7月13日からは、頸椎椎間板ヘルニア及び頸椎捻挫を理由として、現在まで休業している(当事者間に争いがない)。 2 争点(1)(被控訴人に対するパワハラの有無)について(1) 被控訴人は、平成25年2月7日の本件暴行に関し、①B及び氏名不詳の男 性上司が本件発言1を発言し、②Cが本件発言2を発言し、③Dが本件発言3を発言して、もってそれぞれが被控訴人に対するパワハラを行ったと主張する。 この点、被控訴人は、本件暴行により「右手薬指関節部辺りが紫色に変色して大きく腫れるという傷害を負った」(原審における令和元年5月24日付け原告〔被控訴人〕準備書面2〔5頁〕)と主張し、また自らが支部長を務める団 体(なのはなユニオン・オリエンタルランドユニオン。被控訴人本人〔48頁〕参照)のビラには「(指を)骨折した」と記載されているが(乙B29)、前記認定のとおり、同日(平成25年2月7日)午後零時15分頃に医師が診察したところ、指の屈伸に問題はなく、軽度の発赤がみられる程度であり、当該医師は湿布薬(カトレップ)のみを処方し、同月8日には別の医師により「右第 3、4指捻挫」と診断されているのであって、傷害の程度に関する被控訴人の 上記主張や上記ビラにある傷害の 該医師は湿布薬(カトレップ)のみを処方し、同月8日には別の医師により「右第 3、4指捻挫」と診断されているのであって、傷害の程度に関する被控訴人の 上記主張や上記ビラにある傷害の内容・程度は、上記医師らの診断内容等に反しており、にわかに採用できない。もっとも、男性ゲストから右手の指を曲げられる被害(本件暴行)にあったという事実自体は、具体的であり、それ自体不自然、不合理ともいえず、当時、被控訴人があえて虚偽の被害申告に及ぶ特段の動機も見当たらない以上、一応認められるというべきである。 そこで、以下、被控訴人の主張する上記①ないし③の各パワハラ(本件発言1ないし3)の有無について検討する。 (2) B及び男性上司の発言(本件発言1)についてア被控訴人は、本件暴行を受けた平成25年2月7日、B及びスーツ姿の50歳代と思われる氏名不詳の男性上司と面談をし、警察への通報や労災申請 の協力を求めたところ、当該男性上司が「エンターなんだから、それくらい我慢しなきゃ。」、「君は心が弱い。」と発言してこれを拒絶し、Bも「心が弱い。」と復唱してこれに同調する旨の発言をした(併せて本件発言1)と主張するとともに、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔2、3、34、49、51頁〕)。 しかし、上記面談に「スーツ姿の50歳代と思われる氏名不詳の男性上司」が同席していたとの事実については、控訴人はこれを否認し、Bもこれを否定する証言をしている(証人B〔11、12頁〕)。また、控訴人のセキュリティグループの記録(乙B3)にB以外の同席者として記載されているのは、スーパーバイザーに昇格したばかりのO(乙B14〔5頁〕)と、セキュリテ ィグループに所属するP及びQ 、控訴人のセキュリティグループの記録(乙B3)にB以外の同席者として記載されているのは、スーパーバイザーに昇格したばかりのO(乙B14〔5頁〕)と、セキュリテ ィグループに所属するP及びQだけであり、このうちOは女性であるし、P及びQは被控訴人の所属する「第3ショーグループ」とは全く別の部署(セキュリティグループ)に所属する者らであって「上司」には当たらない。そして、他に、「スーツ姿の50歳代と思われる氏名不詳の男性上司」が同席していた事実を認めるに足りる的確な証拠がない以上、かかる事実を認めるこ とはできない。 したがって、「スーツ姿の50歳代と思われる氏名不詳の男性上司」が「エンターなんだから、それくらい我慢しなきゃ。」、「君は心が弱い。」と発言し、Bもこれに同調した(本件発言1)との被控訴人の上記主張は、その前提を欠き、認められない。 イ事案に鑑み、上記発言の際に警察への通報や労災申請への協力を拒絶され たという点についても検討するに、セキュリティグループの記録(乙B3)及び業務災害報告書(乙B4)には、Bその他の従業員らが警察への被害届の提出を拒んだ旨の記載はなく、むしろ、①当日、被控訴人がBに対し、警察に被害届を提出する意向を示し、BはこれをセキュリティグループのPに伝えたこと、②PないしQは、被控訴人に対し、被害届の提出に際しては医 師の診断書の提出が求められるため、改めて外部の病院で診察を受けるよう助言したことが認められる(乙B14〔4、5頁〕、証人B〔8、9頁〕参照)。 したがって、Bその他の従業員らにおいては、被控訴人が警察へ被害届を提出することを前提とした行動を取っていたことが明らかであり、被控訴人自身、本人尋問においてこの点を認めている(被控訴人本人〔50頁])。 て、Bその他の従業員らにおいては、被控訴人が警察へ被害届を提出することを前提とした行動を取っていたことが明らかであり、被控訴人自身、本人尋問においてこの点を認めている(被控訴人本人〔50頁])。 また、証拠(乙B2、5の1・2、証人B〔9、10頁〕、被控訴人本人〔3頁〕)によれば、控訴人から被控訴人に対しては、労災申請用の通院見込証明書の書式(乙B2)及び労災給付(療養補償給付たる療養の給付)請求書(乙B5の1・2)が交付されており、このうち後者の請求書には控訴人の社印が押印されていたことが認められる。したがって、控訴人が労災申請に関す る所要の手続を進めていたことは明らかであり、被控訴人自身、本人尋問においてこの点も認めている(被控訴人本人〔3、51頁〕)。 以上によれば、Bその他の従業員らが警察への被害届の提出や労災申請への協力を拒絶したとの被控訴人の主張は、これらの事実に照らし、採用することができない。 ウさらに、Bが「心が弱い。」と復唱したとの事実についても、前記のとお り、これに先立って氏名不詳の男性上司が「君は心が弱い。」などと発言した事実自体が認められない上、B自身も「心が弱い。」と発言した事実を否定しているところである(証人B〔12、13頁〕)。 これに対し、被控訴人は、平成25年2月8日にはツイッターに「ガタイのいい男に指折られそうになって」、「気持ちが折れてるところに上司は『そ の仕事なんだから強くなりなさい、君の心は弱い』って?」などの投稿をし、同年3月22日には浦安市内の心療内科(髙木メンタルクリニック)の問診票に「仕事中、お客さんに指を折られそうになる事件があり、それに対して上司がいたずらにがまんできない君の心が弱いからいけないと言われた日から、様子 浦安市内の心療内科(髙木メンタルクリニック)の問診票に「仕事中、お客さんに指を折られそうになる事件があり、それに対して上司がいたずらにがまんできない君の心が弱いからいけないと言われた日から、様子がおかしくなった。」と記載している事実等を指摘するが、いずれ も被控訴人自身の認識に基づく投稿ないし記載であるし、前記のとおり、氏名不詳の男性上司が同席していたとの事実が認められない以上、これらの投稿ないし記載をもって、被控訴人主張の発言があったと認めるのは困難である。 エ以上によれば、B及び氏名不詳の男性上司が本件発言1の発言をしたとの 事実については、これを認めるに足りない。なお、「心が弱い」との発言は適切ではないが、仮にこのようなニュアンスの発言がされていたとしても、当時の1回限りのこのような発言を捉えて違法性を認めるのは相当でない。 (3) Cの発言(本件発言2)についてア被控訴人は、①「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出るため、 同役を演じるのを止めるよう医師から指導を受けており、複数のスーパーバイザーらに対してその旨を伝えた上で、平成25年の●●●●●●●●●では「●●●●●●●」役を外してもらうよう願い出ていたのに、同役に配役された、②●●●●●●●●●開始後の同年11月下旬頃、Cに対し、「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出るため、●●●●●●●●●に おける配役につき、同僚との間で一時的に配役を交換したい旨申し出たとこ ろ、Cは「わがままには対応できない。」、「(わがままな要望を繰り返せば)解雇対象になる。」と発言した(本件発言2)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔9、12ないし14頁〕)。 イしかし、 、「(わがままな要望を繰り返せば)解雇対象になる。」と発言した(本件発言2)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔9、12ないし14頁〕)。 イしかし、まず、被控訴人が当時通院していた浦安市内の心療内科(髙木メンタルクリニック)の診療録(甲B4)、町田市内の心療内科(ハートクリニ ック町田)の診療録(甲B3、13、乙B23)及び産業医の面接記録(乙B10の1ないし5)のいずれにも、医師が被控訴人に対して「●●●●●●●」役を演じるのを止めるよう指導した旨の記載はない。 そして、「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出ていたとする点についても、「E-EAR」への相談や産業医との面接の際に被控訴人が その旨の申告をしていた事実は認められるものの(認定事実(6)ア、イ)、「第3ショーグループ」の上司や同僚に積極的に伝えていた事実までは認めるに足りない。むしろ、上司のB、C及びDは、被控訴人が過呼吸の症状を訴えていたりした事実はなかった旨証言し(証人B〔14、15頁〕、証人C〔8頁〕、証人D〔6、7頁〕)、同僚のHも、被控訴人が職場で過呼吸になってい るのを見たことはないと証言している上(証人H〔5頁〕)、被控訴人が当時作成していたとするメモ(甲B5。被控訴人本人〔43、44頁〕参照)には、「すぐにトイレにかけ込み、誰にも知られないように過呼吸になっています。」として(甲B5〔7頁〕)、過呼吸を起こしていた事実を同僚らに知られないようにしていた旨の記載がある。そして、被控訴人と産業医との面接 は、その後、被控訴人の希望により上司に伝えることなく内密に行われることとなり、産業医は上司との情報共有を働きかけたものの、被控訴人が「(情報共有は)やる気が出ない」などと と産業医との面接 は、その後、被控訴人の希望により上司に伝えることなく内密に行われることとなり、産業医は上司との情報共有を働きかけたものの、被控訴人が「(情報共有は)やる気が出ない」などと述べてこれを拒んだのであって(認定事実(7)イ)、スーパーバイザーらは、被控訴人が産業医との面接を継続していること自体認識し得なかったものである(証人B〔15頁〕、証人C〔7頁〕、 証人D〔12頁〕)。 さらに、過呼吸の症状自体についても、被控訴人は、本人尋問において、「(●●●●●●●●●●●を着ると過呼吸になって」しまい(被控訴人本人〔10頁〕)、「●●●●●●●●●●●●●●●と、そのときの事件のそのときのその日のことがフラッシュバックして怖く」なり(被控訴人本人〔79頁〕)、「(息が荒くなって、呼吸を整えるのに必死になる状態が)5分から 長いと体感で10分、15分ぐらい」続く(同)と供述し、この過呼吸は「コントロールできない」(甲B20〔10頁〕)と陳述しておきながら、他方で、●●●●●●●●●に「●●●●●●●」役で出演している間は「(過呼吸に)なりません。」、「(過呼吸をコントロール)できます」と供述しているのであって(被控訴人本人〔81頁〕)、被控訴人の供述ないし陳述は必ずしも 一貫しているとはいえない。 以上によれば、被控訴人の上記アの主張を裏付ける事実の存在は認めることができない。 ウ事案に鑑みて更に検討するに、被控訴人の上記アの主張に対し、控訴人は、被控訴人から配役変更の申出があったのは、●●●●●●●●●自体の配役 ではなく、●●●●の合間に行われる●●●●●●●●●●●●●●●●●●の配役であること、その理由も、過呼吸に陥りやすいとの説明はなく、単に の申出があったのは、●●●●●●●●●自体の配役 ではなく、●●●●の合間に行われる●●●●●●●●●●●●●●●●●●の配役であること、その理由も、過呼吸に陥りやすいとの説明はなく、単に「●●●●●●●」役での●●●●●●●への出演が精神的につらいというものであったこと、Cは「●●●●●」の配役だけの変更は難しいため、精神面での調子が悪いようであれば、思い切って仕事を全部休んで療養に専 念した方が被控訴人の将来のために良いのではないかと話したにすぎず、「わがまま」や「解雇」という単語は用いていないことなどを主張し、Cもこれに沿う証言をしている(証人C〔7ないし9頁〕)。 そして、被控訴人自身、本人尋問においては、これまでの主張とは異なり、●●●●●●●●●自体の配役変更を申し出たことはなく、●●●●の合間 の●●●●●●●における配役変更を申し出たにすぎない旨供述している のであって(被控訴人本人〔13頁〕)、●●●●●●●●●の配役変更を申し出た際に「わがままには対応できない。」などと言われたとの被控訴人の主張は、この点でも前提を欠く。 以上に加え、結局、Cが被控訴人に対して「わがままには対応できない。」、「(わがままな要望を繰り返せば)解雇対象になる。」と発言した事実につい ては、被控訴人がこれに沿う供述をするのみで、他にこれを裏付ける的確な証拠がないこと、そもそもスーパーバイザーにすぎないCが「解雇対象になる」などと発言するとはにわかに考え難いこと(前記認定のとおり、出演者との間の労働契約の締結・更新等は、「エンターテイメント本部」の「ショー開発部」が行っている。)などを総合考慮すると、本件において、Cが本件発 言2の発言をした事実については、認めるに足りないという の労働契約の締結・更新等は、「エンターテイメント本部」の「ショー開発部」が行っている。)などを総合考慮すると、本件において、Cが本件発 言2の発言をした事実については、認めるに足りないというべきである。 (4) Dの発言(本件発言3)についてア被控訴人は、平成25年11月下旬頃、「●●●●●●●」役を演じ終えたところで過呼吸の症状が出たため、バックステージ内で呼吸を落ち着かせていたところ、Dが「次に倒れたら(●●●●●●●●●の役を)辞めてもら う。」、「(配役から外すことは)会社判断、変えられない。」と発言した(本件発言3)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔14頁〕)。 イしかし、被控訴人は、①本訴提起前に作成した平成30年3月30日付け通知書(民事訴訟法132条の2に基づく提訴予告通知)では、Dによる本 件発言3が「平成25年1月下旬」にされたと主張し(甲3〔8頁〕)、②その後、本訴の訴状(平成30年7月19日付け)では、本件発言3が「平成29年1月頃」にされたと主張して、その時期を大きく変遷させ(訴状〔13頁〕)、③更に、原審の令和元年5月24日付け準備書面2では「平成25年11月下旬ころ」(同準備書面〔10頁〕)にされたとして、更に変遷させ たものであって、これらの2度にわたる主張の変遷についての合理的な説明 はない。 そして、この点を措くとしても、Dは、平成25年11月下旬頃、被控訴人に「次に倒れたら(●●●●●●●●●の役を)辞めてもらう。」などと言ったことはなく、そもそも●●●●●●●●●における被控訴人の状態を直接確認しに行ったことすらなく、被控訴人が過呼吸の症状を引き起こしてい たところを見たこともなかっ )辞めてもらう。」などと言ったことはなく、そもそも●●●●●●●●●における被控訴人の状態を直接確認しに行ったことすらなく、被控訴人が過呼吸の症状を引き起こしてい たところを見たこともなかったと証言しており(証人D〔9ないし11頁〕)、この証言に反し、バックステージ内で呼吸を落ち着かせていた被控訴人のところにDが赴き、何らかの声掛けをした事実自体を認めるに足りる証拠はない。 したがって、Dが本件発言3の発言をしたとの事実については、これを認 めるに足りない。 (5) 小括以上によれば、①B及び氏名不詳の男性上司が本件発言1の発言をした事実、②Cが本件発言2の発言をした事実、③Dが本件発言3の発言をした事実については、いずれも認められない。 したがって、Bその他の従業員らからパワハラを受けたとの争点(1)における被控訴人の主張は、理由がない。 3 争点(2)(被控訴人に対する集団的ないじめの有無)について(1) 被控訴人は、控訴人の従業員らの間には一種の「カースト」が存在し、下位のカーストにいると分類された場合、他の従業員から集団的ないじめを受ける 実態があったところ、被控訴人の立場はこれに該当しており、被控訴人の上司や同僚らは、被控訴人に対する集団的ないじめを行っていたと主張する。 しかし、まず、被控訴人のいう「カースト」の具体的な内容は被控訴人の主張によっても判然としない上、被控訴人の上司や同僚らはいずれも「カースト」の存在を否定している(証人D〔12、13頁〕、証人G〔7頁〕、証人H〔7、 8頁〕、証人F〔6頁〕、乙B14〔3頁〕、15〔2頁〕、17〔6頁〕)。そし て、被控訴人自身、その陳述書(甲B20)や本人尋問では「カースト」の存在につ 〔7頁〕、証人H〔7、 8頁〕、証人F〔6頁〕、乙B14〔3頁〕、15〔2頁〕、17〔6頁〕)。そし て、被控訴人自身、その陳述書(甲B20)や本人尋問では「カースト」の存在について何ら言及していない上、「E-EAR」への相談や産業医との面接の際に、「カースト」ないしそれに類したものが存在するとか、被控訴人が下位のカーストに分類されているなどといった相談をした形跡はないのであって(乙B10の1ないし5、乙B12)、果たして被控訴人の主張する「カース ト」なるものが存在していたのかについては疑問を差し挟まざるを得ない。 そして、被控訴人がいじめと主張する個々の発言(本件発言4ないし9の2)についても、以下のとおり、そのような発言をした事実を認めるに足りないか、ニュアンスの近い発言がされたとしても社会通念上相当性を欠いて違法とまではいえない。 (2) Fの発言(本件発言4)についてア被控訴人は、平成27年12月又は平成28年1月頃、「●●●●●●」への出演が決まり、ロッカールームで同僚のFに「来期から一緒のショーで働くのでよろしくお願いします。」と挨拶したところ、Fは「お前みたいにやる気のないやつは全力でつぶすから。」、「●●●●●●には神様がいるんだか ら。お前は神様に嫌われているから、3か月後に絶対怪我するから覚えておけ。」と発言した(本件発言4)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔18頁〕)。 しかし、Fは、①被控訴人から当時ロッカールームで挨拶されたことはあるものの、「お前みたいにやる気のないやつは全力でつぶすから。」と発言し た事実はなく、ただ「本気で行くよ。」などと発言したにすぎない(証人F〔6頁〕)、②「●●●● ームで挨拶されたことはあるものの、「お前みたいにやる気のないやつは全力でつぶすから。」と発言し た事実はなく、ただ「本気で行くよ。」などと発言したにすぎない(証人F〔6頁〕)、②「●●●●●●には神様がいるんだから。お前は神様に嫌われているから、3か月後に絶対怪我するから覚えておけ。」と発言した事実はなく、ただ、人間は慣れてきたら3か月くらいで怪我をしやすくなるので気を付けようとの趣旨の発言をしたにすぎない(同〔8、14頁〕)などと証言 して、被控訴人の上記主張を否定している。 そして、他に、Fが本件発言4の発言をした事実を認めるに足りる的確な証拠はない。 イこれに対し、被控訴人は、本件発言4の裏付けとして、Fが過去にも被控訴人に度々暴力を振るっていたと主張し、具体的には、「●●●●●●●●●●」というショーで共演した際に、被控訴人に対して「手をつなぐ演技の 際に異常な力で握る」、「腕を無理に引っ張る」、「走る演技の際にかかとを蹴る」、「ジャンプして着地する際に足を踏む」、「被控訴人が●●●●●●を引っ張って転倒させようとする」、「被控訴人の●●●●●●●●●を軽く小突く演技の際に強い力で殴る」などの行為に及んでいたと主張する(甲B20〔11、12頁〕及び被控訴人本人〔17、18頁〕はおおむねこの主張に 沿う。)。 しかし、Fはこのような暴力を振るっていた事実を否定しており(証人F〔8ないし12頁〕)、他に上記暴力の事実を認めるに足りる的確な証拠もない。むしろ、被控訴人の主張する上記各行為の中には、ショーの演技の流れの中で行うのには無理な動きが含まれ、ゲストやステージマネージャーにも 容易に気付かれると思われる上、ショーの内容が録画されていることからしても(証 する上記各行為の中には、ショーの演技の流れの中で行うのには無理な動きが含まれ、ゲストやステージマネージャーにも 容易に気付かれると思われる上、ショーの内容が録画されていることからしても(証人F〔9頁〕)、そのような状況下であえて上記のような暴力行為に及ぶとは考え難い(なお、被控訴人が控訴人に対してFの暴力行為を訴え出た上、上記録画の確認を求めた事実はない(証人F〔9頁〕)。)。しかも、Fと被控訴人は、「●●●●●●●●●●」で共演していた当時、業務終了後に 2人で食事をしたり、被控訴人がFに悩みを相談したりする仲であったと認められ(証人F〔3、4頁〕、被控訴人本人〔63頁〕)、この点からも、Fが被控訴人に度々暴力を振るっていたとはにわかに考え難い。 ウ以上によれば、Fが本件発言4の発言をしたとの事実については、これを認めるに足りない。 (3) Aの発言(本件発言5)について ア被控訴人は、平成28年1月6日、居酒屋で開かれた職場の懇親会に参加したところ、上司のAが「20代を集めてこい。」と発言した上、前に座っていた被控訴人に対し、「目障りだからどけ。」と発言し、被控訴人が喘息が起こる旨の相談をしたところ、Aは「病気なのか。それなら死んじまえ。」、「死んじゃえNISSAN。」、「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めち まえ。」、「てめーのワガママは聞いてらんねーんだよ。」、「俺の前に汚ねえ面見せるな。」、「お前は来期、シー(TDS)に異動かな。」、「行っちゃえNISSAN。」と発言した(併せて本件発言5)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔20、21、41、42頁〕)。 イそこで検討するに、被控訴人はAとの会話をスマートフォンで録 した(併せて本件発言5)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔20、21、41、42頁〕)。 イそこで検討するに、被控訴人はAとの会話をスマートフォンで録音してい たところ(被控訴人本人〔73頁〕参照)、その録音データ(甲B6)には、Aの発言として、①「てめえらは稼いでいるんだから、ちょっとは我慢しろよ。」、②「てめえらが、てめえらの好きなように言ってるだけでしょう、わがままで。」、「金もらってやってんだから、ちょっと我慢しろよ。」、「我慢できねえんなら、とっとと辞めちまえよ。」、③「病気なんだ。それでこういう 商売できるの? ずっと。」、④「(TDSに)行っちゃえNISSAN。」との発言が記録されている。 しかし、被控訴人の主張する「20代を集めてこい。」、「目障りだからどけ。」、「病気なのか。それなら死んじまえ。」、「死んじゃえNISSAN。」、「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ。」、「てめーのワガマ マは聞いてらんねーんだよ。」、「俺の前に汚ねえ面見せるな。」との発言は、上記録音データには記録されていない。 この点につき、被控訴人は、「20代を集めてこい。」との発言は録音開始前にされ、「病気なのか。それなら死んじまえ。」、「死んじゃえNISSAN。」、「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ。」との発言は録音終 了後にされたと陳述する(甲B20〔16、17頁〕。被控訴人本人〔20、 21頁〕もおおむね同旨)。しかし、上記録音データに記録されている被控訴人とAのやり取りは、おおむね、被控訴人が職場の人間関係等の悩みを概括的・抽象的に相談し、Aがこれに対して冗談・自虐等を交えながらも比較的ゆっくりとした口調で 、上記録音データに記録されている被控訴人とAのやり取りは、おおむね、被控訴人が職場の人間関係等の悩みを概括的・抽象的に相談し、Aがこれに対して冗談・自虐等を交えながらも比較的ゆっくりとした口調でアドバイスしているものであって、録音開始前に「20代を集めてこい。」などと発言していたり、録音終了後(録音自体は、飲食 店のスタッフによる帰宅の促しで終了している。)、それまでの話題から一転して、「病気なのか。それなら死んじまえ。」、「死んじゃえNISSAN。」、「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ。」などと、およそ懇親会の場にそぐわないような発言をしたというのは考え難い。 そして、他に的確な証拠もない以上、Aが「20代を集めてこい。」、「目障 りだからどけ。」、「病気なのか。それなら死んじまえ。」、「死んじゃえNISSAN。」、「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ。」、「てめーのワガママは聞いてらんねーんだよ。」、「俺の前に汚ねえ面見せるな。」などと発言したとの事実については、証拠上認めるに足りない。 ウところで、被控訴人は、録音データに記録されている①「てめえらは稼い でいるんだから、ちょっとは我慢しろよ。」、②「てめえらが、てめえらの好きなように言ってるだけでしょう、わがままで。」、「金もらってやってんだから、ちょっと我慢しろよ。」、「我慢できねえんなら、とっとと辞めちまえよ。」、③「病気なんだ。それでこういう商売できるの? ずっと。」、④「〔TDSに〕行っちゃえNISSAN。」との発言だけをみても、これらが社会通 念上相当性を欠いて違法であることは明らかと主張する。 しかし、上記録音データによれば、上記①の発言は、被控訴人から「(好き嫌いのような人間関係を)予 だけをみても、これらが社会通 念上相当性を欠いて違法であることは明らかと主張する。 しかし、上記録音データによれば、上記①の発言は、被控訴人から「(好き嫌いのような人間関係を)予防するにはどうすればいいですか。」と唐突に聞かれて、「え? 予防とか知らないよ、そんなの。」、「どうしたらいいっていうのを、俺は教えてほしい。」などととまどいながらも、職場は「学校じゃ ない」のであり、給料を得る場所であるから、好き嫌いといった人間関係に ついて少しは我慢すべき旨を返答したにすぎない(その後、「じゃあ、君を嫌だって人間がいたら、どうしたらいいの?」と被控訴人に問い返したり、「俺だって、嫌なやつはいっぱいいる。 (略)でも、金もらって仕事してんだから、ちょっと我慢しちゃうかな。」と発言したりしている。)ようにうかがわれる。 上記②の発言は、上記①の発言と同様に、被控訴人から「(嫌いな人と)組 まないようにするとかは、できないんですか。」などと聞かれる中で、Aが「みんながそうやって言ってたら、どうしたらいいの、TDR(東京ディズニーリゾート)は。もうエンターテイナーやめた方がいい?」、「みんなが嫌いだったらどうするの。キャスティング、どうするの。ショーはどうするの。 やらなくていい?」と発言し、被控訴人も「できないですね、それは。」と応 じる中で、Aが上記②の発言をしたものである(しかも、この後に「でも、ほとんど答えは一緒だと思う。どうにもできない。」とも発言しており、本気で辞職を求めている趣旨でないことは明らかである。)。 上記③の発言は、被控訴人が「(TDSよりもTDLの方が)症状とかも分かってもらえてるから。」と唐突に発言し、Aが「え、症状って何?」と質問 したところ、被控 は明らかである。)。 上記③の発言は、被控訴人が「(TDSよりもTDLの方が)症状とかも分かってもらえてるから。」と唐突に発言し、Aが「え、症状って何?」と質問 したところ、被控訴人が「病気の症状が。」と答えたため、これによる就労への影響等について素朴に質問したものにすぎず、何らかの害意をもった発言とは解されない。 上記④の発言は、被控訴人から、TDLの人間関係についてずっと質問され続けたのに対し、人間関係を清算してTDSに異動するのも選択肢の一つ であるとし、「誰々ちゃんが駄目、誰々さんが駄目なんて(略)、誰も、誰も知らないところに行った方がいいじゃない。」、「誰々ちゃんと誰々さんが駄目だから(略)じゃあ、いないところへ行っちゃえばいいじゃん。」と提案したのに続けて、当時のテレビCMのフレーズを用いてくだけた雰囲気で発言したものにすぎず、やはり、何らかの害意をもった発言とは解されない。 このように、Aの上記①ないし④の各発言は、酒席での発言であることを 措いても、被控訴人との会話での発言のうちごく一部のみを意図的に切り出したものにすぎず、発言がされた前後の文脈等にも照らせば、社会通念上相当性を欠いて違法なものではない。 エ以上によれば、被控訴人の主張する本件発言5については、その一部は証拠上そのような発言がされた事実を認めるに足りず、その余は社会通念上相 当性を欠いて違法とはいえない。 (4) Eの発言(本件発言6)についてア被控訴人は、平成29年1月頃、ショーの出演後に過呼吸の症状が出たためにトイレに駆け込んでいたところ、上司のEがトイレに来てその様子を確認した上、「体調悪いなら早く言ってくれないと。」と発言し、被控訴人が「過 呼 月頃、ショーの出演後に過呼吸の症状が出たためにトイレに駆け込んでいたところ、上司のEがトイレに来てその様子を確認した上、「体調悪いなら早く言ってくれないと。」と発言し、被控訴人が「過 呼吸は予測できないんです。」と説明したものの、Eは「ショーがキャンセルになったらどうするつもりなの。」と発言した(併せて本件発言6)と主張し、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をする(被控訴人本人〔24、25、68ないし70頁〕)。 イしかし、控訴人はかかる事実を否定し、①不調を訴える被控訴人にEが対 応したのは平成28年4月20日だけであり、被控訴人がショーの開始前に痛みを訴えているとの連絡を受けて対応したものであって、これ以外に対応したことはない、②Eは、交代要員が存在することを既に確認していたため、被控訴人に対し「どうしたの、大丈夫?」、「代わりは立ちますので、無理はしないでください。」と発言したのであって、交代要員が存在するにもかか わらず「ショーがキャンセルになったらどうするつもりなの。」などと発言するはずがないなどと主張する。 そして、Eもこれに沿う証言をするほか(証人E〔4ないし8、10ないし14頁〕)、控訴人における出演者の日報(「TDL ●●●●●●●●● DailyReport」。乙B8)には、平成28年4月20日、被控訴人が首痛及び腰痛を 訴え、Eその他の従業員らが対応したこと、被控訴人は早退し、交代要員の 「R」が1回目から3回目のショーに、「S」が4回目及び5回目のショーに出演したことが記載されているのであって、控訴人の上記主張はこの客観証拠にも沿う。 これに対し、被控訴人の上記アの主張は、その客観的な裏付けを欠く上、そもそも当初は「平成28年1月3日 出演したことが記載されているのであって、控訴人の上記主張はこの客観証拠にも沿う。 これに対し、被控訴人の上記アの主張は、その客観的な裏付けを欠く上、そもそも当初は「平成28年1月3日頃」の出来事であると主張していた(訴 状〔15頁〕)のを、後に特段の説明もなく「平成29年1月頃」と主張を変遷させているのであって、にわかに採用し難い。なお、被控訴人は、Eが本件発言6の発言をした背景として、Fが被控訴人をいじめており、EもFに反抗できないという事情があった旨主張するが、EはTDLがオープンした翌年の昭和59年から●●●●●●出演者を務めていた上、平成17年から はステージマネージャーを、平成28年4月1日からはスーパーバイザーをそれぞれ務めていたのであって(乙B18〔1頁〕)、このような経歴を有するEが、平成3年から●●●●●●出演者を務めているF(乙B19〔1頁〕)に反抗できなかったというのには、疑問を差し挟まざるを得ない(E自身、これを否定している。証人E〔8、9頁〕)。 ウ以上によれば、Eが本件発言6の発言をしたとの事実については、これを認めるに足りない。なお、仮に本件発言6の発言があったとしても、その内容に照らせば、社会通念上不相当であったとまではいえない。 (5) Gの発言(本件発言7の1・2)についてア被控訴人は、①Gは、平成29年2月2日、楽屋において被控訴人に「ど っち?」と突然質問し、被控訴人は質問の意味が理解できずに「え、何ですか?」と尋ねたところ、Gは「●●●●●●●●●●●●●●●、どっちかを聞いているに決まってるじゃん。他の人は2ポジションやりませーん。バカ?」と発言した(本件発言7の1)、②被控訴人は、同月7日、ショーの最中の着替えの際、衣装の着用 ●●●●●●●●●●、どっちかを聞いているに決まってるじゃん。他の人は2ポジションやりませーん。バカ?」と発言した(本件発言7の1)、②被控訴人は、同月7日、ショーの最中の着替えの際、衣装の着用順を間違えそうになったところ、Gは「はい、 出たー、出ましたー。」と発言した(本件発言7の2)と主張する。 そして、被控訴人は、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をするほか(被控訴人本人〔27、28頁〕)、おおむねこれに沿う記載のあるメモ(甲B7、8)を提出する。 イしかし、控訴人はかかる事実を否定し、本件発言7の1については、Gが挨拶もせずに突然「どっち?」と話しかけることも、同僚に対して相手を非 難する意図で「バカ」と発言することもないとし、本件発言7の2については、ショーの最中はG自身も着替えなど自分の仕事を行う必要があり、被控訴人の行動を注視するような余裕も時間もないなどと主張している。また、Gも、証人尋問においてこれに沿う証言をしている(証人G〔3ないし6、10、11頁〕)。 そして、改めて被控訴人の主張についてみても、Gが「どっち?」と突然質問し、被控訴人が「え、何ですか?」と尋ねたところ、「●●●●●●●●●●●●●●●、どっちかを聞いているに決まってるじゃん。他の人は2ポジションやりませーん。バカ?」と発言したというのは、脈絡がなく、会話として不自然であるようにもうかがわれる。また、被控訴人の提出する上記 メモについても、いつ、どのような趣旨で記載されたのか明らかではないし(むしろ、後記(7)において説示するとおり、その信用性については疑問を差し挟まざるを得ないところがある。)、他に本件発言7の1・2がされたことを裏付ける的確な証拠も見当たらない。 し (むしろ、後記(7)において説示するとおり、その信用性については疑問を差し挟まざるを得ないところがある。)、他に本件発言7の1・2がされたことを裏付ける的確な証拠も見当たらない。 したがって、Gが本件発言7の1・2の各発言をしたとの事実については、 これを認めるに足りない。 (6) Hの発言(本件発言8の1・2)についてア被控訴人は、①業務上の災害による休職から復職した後の平成29年10月27日、楽屋でHから状態を聞かれ、「全力でダッシュできないので、●●●●●●(の担当)は抜いてもらってます。」と答えたところ、Hは他の従業 員に聞かせるように「私もできないとか言ってみたいわー。」と発言した(本 件発言8の1)、②被控訴人は、同年11月22日、他の●●●●●●出演者が衣装を畳もうとしていたため、「すいません、クリーニング(に出すため畳む必要がない)かもしれません。」と指摘したところ、Hは「あー、最初から分かってたのに言わなかったんでしょー。意地がわるーい。」と発言した(本件発言8の2)などと主張する。 そして、被控訴人は、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をするほか(被控訴人本人〔28ないし30、71、72頁〕)、おおむねこれに沿う記載のあるメモ(甲B9、10)を提出する。 イしかし、控訴人はかかる事実をいずれも否定し、①本件発言8の1については、楽屋で被控訴人が「全力でダッシュできないので、●●●●●●は抜 いてもらっています。」と述べた可能性はあるが、H自身も怪我をして●●●●●●の出演を外してもらったことがあるため、Hが「私も(●●●●●●の出演を)できないとか言ってみたいわー。」などと発言するはずがなく、②本件発言8の2については、Hが「分かってて 我をして●●●●●●の出演を外してもらったことがあるため、Hが「私も(●●●●●●の出演を)できないとか言ってみたいわー。」などと発言するはずがなく、②本件発言8の2については、Hが「分かってて言わなかったんでしょー。」、「いじわるー。」などと冗談めかして発言した可能性はあるが、被控訴人を 非難する趣旨ではなく、お互いに冗談を言い合う関係の中での発言であって、社会通念上相当性を欠いて違法と評価されるようなものではないと主張している。また、Hも、証人尋問においてこれに沿う証言をしている(証人H〔10ないし14頁〕)。 しかも、被控訴人は、本件発言8の1があった際、Hと同期のTも「私も できないとか言ってみたーい。」と繰り返したと主張・陳述(甲B20〔23頁〕)しているところ、Hは、そもそもTは交代で「●●●●●●●●●●●●●●」に出演していたため、当時楽屋にはいなかったと証言している(証人H〔10、11頁〕)。また、被控訴人は、Hが本件発言8の2を4回も繰り返したと陳述しているが(甲B20〔23頁〕)、Hはこれを否定している (証人H〔14頁〕)。 そして、被控訴人の提出する上記メモについても、いつ、どのような趣旨で記載されたのか明らかではないし(むしろ、後記(7)において説示するとおり、その信用性については疑問を差し挟まざるを得ないところがある。)、他に本件発言8の1・2がされたことを裏付ける的確な証拠も見当たらない。 ウ以上によれば、Hが本件発言8の1・2の各発言をしたとの事実について は、これを認めるに足りない。 (7) Iの発言(本件発言9の1・2)についてア被控訴人は、①平成30年2月3日、楽屋で片付けをしていたところ、Iが「カーペット敷きた について は、これを認めるに足りない。 (7) Iの発言(本件発言9の1・2)についてア被控訴人は、①平成30年2月3日、楽屋で片付けをしていたところ、Iが「カーペット敷きたいんですけど、早くその大きなお尻をどかしてくれます?」、「本当に邪魔。」と発言した(本件発言9の1)、②同年3月12日、 新人の●●●●●●出演者2人から相談を受けてアドバイスしていたところ、Iが「●●●●の言うことなんか聞かない方がいいよー。」と発言した(本件発言9の2)などと主張する。 そして、被控訴人は、本人尋問においておおむねこれと同旨の供述をするほか(被控訴人本人〔30、31、72頁〕)、平成30年2月3日にIから 「本当じゃま、早く大きいおしりをどかして。」と言われた旨の手書きのメモ(甲B11)及び同年3月12日にIから「○○さん(伏せ字)の言うことなんて聞かない方がいいよ~」と言われた旨のスマートフォンのメモ(甲B12)を提出する。 イしかし、控訴人は、本件発言9の1につき、そもそもIは平成30年2月 3日に出勤しておらず、被控訴人と会っていないのであって、Iが本件発言9の1の発言をした事実はないと主張する(Iの陳述書(乙B22)も同旨)。 そして、実際、控訴人における「出演者日別勤務状況一覧表」(乙B9の2)によれば、Iは同日には出勤していなかったことが認められる。 したがって、本件発言9の1に係る被控訴人の上記供述及びメモ(甲B1 1)の記載は、客観証拠に反し、にわかに信用できない。 ウそして、本件発言9の2についても、控訴人は、被控訴人が後輩の出演者に対して「何かあったときは会社を訴えればいい。」と言い、後輩がこれに驚いて困惑していたため、Iがその場 。 ウそして、本件発言9の2についても、控訴人は、被控訴人が後輩の出演者に対して「何かあったときは会社を訴えればいい。」と言い、後輩がこれに驚いて困惑していたため、Iがその場を和ませるために「●●●●の言うことを真剣に捉えすぎなくていいよ。」と笑顔でアドバイスしたにすぎず、被控訴人を非難したものではないと主張しており(Iの陳述書(乙B22)も同 旨)、この主張に係るやり取り自体、特に不自然、不合理というものではない。 他方、被控訴人は、後輩から受けていたとする「相談」の内容につき、当初は「出演者2名からショーの動きについて相談を受けていた」(原審における令和元年5月24日付け準備書面2)と主張していたのに、陳述書では 「1人の後輩から『何をやってもダメ出しされて、何が正解か分からない』『先輩からのいじめがつらい』(略)等の、人間関係やダメ出しについての相談を受けていました」(甲B20〔24頁〕)とし、本人尋問でも「先輩からのいじめがつらくてどうしていいのか分からないというような相談を受けていました。」(被控訴人本人〔31頁〕)と供述するなど、相談者の人数や相 談内容について変遷がみられる。 そして、結局、被控訴人が自認する限度を超えて、Iが被控訴人に対して害意を持って「●●●●の言うことなんか聞かない方がいいよー。」などと発言した事実を認めるに足りる的確な証拠はないのであって、これに、本件発言9の1についての被控訴人の供述及びメモの信用性に疑問があること も併せ考慮すると、被控訴人の主張・供述する態様で本件発言9の2がされたと認めることはできない。 エ以上によれば、Iが本件発言9の1の発言をしたとは認められず、本件発言9の2については社会通念上相当性を欠いて 控訴人の主張・供述する態様で本件発言9の2がされたと認めることはできない。 エ以上によれば、Iが本件発言9の1の発言をしたとは認められず、本件発言9の2については社会通念上相当性を欠いて違法とはいえない。 (8) 小括 ア以上のとおり、被控訴人の主張する集団的ないじめの事実については、そ の前提とする「カースト」の存在について疑問を差し挟まざるを得ない上、被控訴人の指摘する個々の発言についても、その多くは証拠上認めるに足りず、中には不自然なものや客観証拠に反するものもあるほか、主張自体にも変遷がみられるところであり、被控訴人の録音等によって証拠上認められる発言も、会話での発言のうちごく一部のみを意図的に切り出したものにすぎ ず、発言がされた前後の文脈等にも照らせば、社会通念上相当性を欠いて違法なものとはいえない。 したがって、被控訴人の主張する集団的ないじめの事実については、それを構成すると主張される個々のいじめ行為についてみても、いずれもこれを認めるに足りない。 イなお、被控訴人は、当審において、F、G、H及びIの各陳述書には人格攻撃とも思える内容が記載され、これが人証でも繰り返されていたとし、具体的には、①「腫物に触るような感じで気を付けて対応していた」(乙B19〔2頁〕)、②「楽屋にいるときは、ジャージ姿だったり、髪型もあまり気にかけていないような感じ」(乙B20〔2頁〕)、③「話が本当なのかどうか、 疑問に思ったことはあります。」(乙B21〔2頁〕)、④「お金をもらうためには、殴られることも構わないという考え方」(乙B22〔2頁〕)、⑤「もうちょっと疎遠というか、気楽には話せんな」、「何でも彼女の話をうのみにするのはやめよう」(証人H〔23頁〕) お金をもらうためには、殴られることも構わないという考え方」(乙B22〔2頁〕)、⑤「もうちょっと疎遠というか、気楽には話せんな」、「何でも彼女の話をうのみにするのはやめよう」(証人H〔23頁〕)との陳述ないし証言がこれに当たる旨主張する(本件発言4ないし9の2によるいじめが存在していたことの裏付 けとなる事情として主張するものと解される。)。 しかし、上記①については、5年ほど前から被控訴人の様子が変わり、目を合わせてくれなくなるなど、様子がちょっとおかしいことから「気を付けて対応していた」と陳述するものにすぎないし、上記②については、単に被控訴人の様子を陳述するものにすぎない。上記③及び⑤(ただし、「もうちょ っと疎遠というか、気楽には話せんな」というのは、質問者の発言である。) については、被控訴人から「自分は末期の乳がんだ」、「空き巣に2度入られた」、「バイクに放火をされた」、「雨の日にバイクで走っていたところ、前の車が急にドアを開けたので事故になった」などと言われ、このような出来事が何度も起こるのは珍しいため疑問に思ったという、素直な感想を陳述・証言したにすぎない。上記④については、被控訴人が、居酒屋で他の客と口論 になり、「殴られにいったら、お金をとれた。」、「だって、これだけでさー、何万だよ。」と発言した事実を踏まえた感想ないし評価にすぎない。 このように、被控訴人の指摘する上記①ないし⑤の陳述・証言は、その一部のみを意図的に切り出したものにすぎず、前後の文脈等にも照らせば、被控訴人をいじめる趣旨でしたものとは解されないのであって、これらの陳 述・証言をもって、被控訴人の主張するいじめが存在していたものと認めることはできない。 ウ以上によれば、Fその他の従業 人をいじめる趣旨でしたものとは解されないのであって、これらの陳 述・証言をもって、被控訴人の主張するいじめが存在していたものと認めることはできない。 ウ以上によれば、Fその他の従業員からいじめを受けたとの争点(2)における被控訴人の主張は、理由がない。 4 争点(3)(控訴人の債務不履行責任ないし不法行為責任の有無)について (1) 被控訴人は、①控訴人は本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめを漫然と放置していたのであって、控訴人には安全配慮義務違反が認められる、②本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめはそれ自体が民法709条の不法行為を構成するから、控訴人は民法715条1項本文の使用者責任を負うと主張する。 しかし、争点(1)及び(2)において説示したとおり、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめが存在していたとは認められないのであるから、被控訴人の上記主張は、いずれもその前提を欠き、理由がないというべきである。 (2)アなお、原審は、当審と同様に、本件各発言の多くは認めるに足りず、一部認めることができる発言についても違法とまではいえないと認定判断して おきながら、他方で、控訴人は「他の出演者に事情を説明するなどして職場 の人間関係を調整し、被控訴人が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務」(孤立防止義務)を負っていたところ、この義務に違反し、被控訴人に著しい精神的苦痛を被らせたと判断して、控訴人に対し合計88万円及び遅延損害金の支払を命じている。 イしかし、本訴における被控訴人の請求は、本件各発言によるパワハラ及び 集団的ないじめを漫然と放置したことによる安全配慮義務違反、又は、本件各発言によるパワ 損害金の支払を命じている。 イしかし、本訴における被控訴人の請求は、本件各発言によるパワハラ及び 集団的ないじめを漫然と放置したことによる安全配慮義務違反、又は、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめそれ自体を理由とする民法715条1項本文の使用者責任に基づく損害賠償を請求するものである。 すなわち、被控訴人は、①訴状において、安全配慮義務違反ないし使用者責任の前提となる行為を本件各発言(訴状別紙行為一覧記載の各行為)とし て特定し、②以後、原審での各準備書面において、本件各発言の存否について主張し、③原審での最終準備書面(令和3年8月31日付け準備書面7)においても、本件各発言の存否について主張した上、これらを漫然と放置したことが安全配慮義務違反に当たり(同〔24ないし27頁〕)、また使用者責任が生じ(同〔27頁〕)、本件各発言によって被控訴人に精神的損害が生 じた(同〔27、28頁〕)と主張していたものであって、被控訴人の本訴における請求が、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめを前提とするものであることは明らかである。そして、原審における被控訴人の訴状及び各準備書面を精査してみても、被控訴人の主張の中に、控訴人には職場における「孤立防止義務」すなわち「他の出演者に事情を説明するなどして職場 の人間関係を調整し、被控訴人が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務」があり、その義務を怠ったのであって、これにより被控訴人が損害を被ったと主張している部分は見当たらない。 したがって、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめが認められな い以上は、被控訴人の主張する安全配慮義務違反及び使用者責任はその前提 を欠くのであって たらない。 したがって、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめが認められな い以上は、被控訴人の主張する安全配慮義務違反及び使用者責任はその前提 を欠くのであって、被控訴人の請求は棄却されるべきものである。 ウこれに対し、被控訴人は、原審でも「孤立防止義務」の主張をしていたとし、その根拠として、①原審でも、被控訴人が「●●●●●●●」役の配役変更を希望したため、「わがまま」として同僚から否定的評価を受けていた旨主張していた(原審における令和3年8月31日付け準備書面7〔18、 19頁〕)、②孤立防止義務の内容である「他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整」するというのは、被控訴人が原審で主張していた「いじめ防止教育、指導」をする義務(上記準備書面7〔24頁〕)に含まれる、③被控訴人の元同僚であるUや同僚のG及びHは、被控訴人が孤立していた旨を陳述・証言していた(甲B19〔5頁〕、証人G〔12、13頁〕、 証人H〔25頁〕)などと主張する。 しかし、上記①については、被控訴人がいじめを受けていたことの裏付けとなる事情として主張していることが明らかであるし、上記②についても、いじめを漫然と放置したことが安全配慮義務違反となる旨の主張をしているものにすぎない。上記③については、これらは主張ですらない上、被控訴 人の引用する陳述・証言の内容は「(被控訴人が)わがまま(配役変更)を言っている」(甲B19〔5頁〕)、「やりたい配役のときは、ちょっとテンションが高かったり」(証人G〔12頁〕)、「嫌いな役は手を抜くという評価を聞いたことがあります。」(証人H〔25頁〕)というものにすぎず、控訴人に「孤立防止義務」があることを陳述・証言するものでもない。 そして、仮 〔12頁〕)、「嫌いな役は手を抜くという評価を聞いたことがあります。」(証人H〔25頁〕)というものにすぎず、控訴人に「孤立防止義務」があることを陳述・証言するものでもない。 そして、仮に、被控訴人の原審における主張の中に、被控訴人が職場で孤立しており、この点につき控訴人に安全配慮義務違反がある旨の主張が含まれているとみる余地があるとしても、当該主張は、原審も指摘するとおり(原判決32頁19行目ないし21行目)、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめが存在していたことを前提とする主張と解さざるを得ない。 エもっとも、被控訴人の主張は、原審の判断を受けて、パワハラ及び集団的 ないじめの有無にかかわらず、控訴人には職場における「孤立防止義務」違反があるとの新たな主張を当審において行う趣旨と解する余地もないわけではない。 しかし、被控訴人が援用する原判決の「孤立防止義務」の内容は、「職場において孤立することがないようにすべき義務」という抽象的なものにすぎず、 その具体的内容が判然としないのであって、「孤立」というのがどのような状態か、これを防止するために控訴人がどのような行為をすべきなのかなど、何ら明らかにはされていない(原判決でも説示されておらず、被控訴人もこれに追加する特段の主張をしていない。)。 したがって、かかる抽象的な義務を根拠に、控訴人に義務違反を認め、損 害賠償を命じるというのは、相当ではないといわざるを得ない(そもそも、この新たな主張は「孤立防止義務」違反に基づく新たな損害賠償請求を予備的に請求するものとして、訴えの追加的変更に該当するとも解されるところ、民事訴訟法143条1項の要件を満たすかどうかは疑問があるし、仮に訴えの追加的変更に該当しないと解しても、時機 害賠償請求を予備的に請求するものとして、訴えの追加的変更に該当するとも解されるところ、民事訴訟法143条1項の要件を満たすかどうかは疑問があるし、仮に訴えの追加的変更に該当しないと解しても、時機に後れた攻撃防御方法の提出 (民事訴訟法157条1項)と評価され得るものである。)。 オ以上の点を措き、仮に、被控訴人のいう「孤立防止義務」というのが損害賠償義務を発生させ得る程度に相応に具体的で特定されていると解する余地があるとしても、本件において、控訴人がかかる義務を履行しなければならない程度にまで被控訴人が職場で「孤立」していたと認めることは困難で ある。 この点につき、原審は、「他の出演者の中には、原告(被控訴人)に対する不満を有するものが増えたのであって、原告は職場において孤立していたと認めることができる」と認定しているが(原判決33頁8ないし9頁)、これを裏付ける具体的な事実関係は明らかにされておらず、どのような証拠に基 づいて認定したのかも不明である上、仮に被控訴人に対して何らかの不満を 有する従業員がいたとしても、そのことから直ちに被控訴人が「孤立」していたというのには飛躍がある。証拠上も、被控訴人が「E-EAR」への相談や産業医との面接、外部の病院の受診の際に、職場で「孤立」しているとの相談をした形跡は見当たらず(甲B3、4、13、乙B10の1ないし5、乙B23)、かえって、被控訴人は、産業医との面接の際には「(TDLでは) 具合の悪いことを知ってくれている出演者が徐々に増えている」と伝えており(乙B10の3)、原審でも、スーパーバイザーに配役の変更を願い出たのは「同僚らの助言」によるところが大きく、一部の同僚は「同行してくれた」と主張していたところであって(原審における 」と伝えており(乙B10の3)、原審でも、スーパーバイザーに配役の変更を願い出たのは「同僚らの助言」によるところが大きく、一部の同僚は「同行してくれた」と主張していたところであって(原審における令和元年11月20日付け準備書面5〔3、4頁〕)、被控訴人の置かれた状況に理解を示す同僚らも相当 程度存在し、被控訴人がTDSへの異動に消極的であったことがうかがわれることからしても、被控訴人が職場で「孤立」していたというのには疑問がある。 (3) また、被控訴人は、当審において、被控訴人は「●●●●●●●」役での出演について恐怖を抱いており、上司らに対してもその負担を訴え出ていたのに、 控訴人は被控訴人の希望及び精神状態を無視・軽視し、●●●●●●●●●での「●●●●●●●」役での出演を続けさせたのであって、この点に「仕事内容調整義務」違反が認められると主張する。 しかし、これまで説示したとおり、本訴における被控訴人の請求は、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめを漫然と放置したことによる安全配 慮義務違反、又は、本件各発言によるパワハラ及び集団的ないじめそれ自体を理由とする民法715条1項本文の使用者責任に基づき、損害賠償を請求するものであって、新たに「仕事内容調整義務」違反による損害賠償を請求するものとすれば、上記のとおり民事訴訟法143条1項又は157条1項の問題が生ずる上、この点を措いても、争点(1)において説示したとおり、医師が被控訴 人に対して「●●●●●●●」役を演じるのを止めるよう指導した旨の記載は 診療録にはなく、「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出ていた旨を「第3ショーグループ」の上司や同僚に積極的に伝えていた事実も認めるに足りない上、●●●●●●●●●自体 の記載は 診療録にはなく、「●●●●●●●」役を演じると過呼吸の症状が出ていた旨を「第3ショーグループ」の上司や同僚に積極的に伝えていた事実も認めるに足りない上、●●●●●●●●●自体の配役の変更を申し出た事実も認めるに足りない(●●●●の合間に行われる●●●●●●●●●●●の配役につき、精神的につらいとの申出があったとの限度で認められる。)。むしろ、先に説示 したとおり、過呼吸に関する被控訴人の供述ないし陳述は必ずしも一貫しているとはいえない上、被控訴人の上司(C)は、●●●●●●●●●●●の配役だけを変更することは難しいため、精神面での調子が悪いようであれば、思い切って仕事を全部休んで療養に専念した方が被控訴人の将来のために良いのではないかと話したことがうかがわれるのであって、これらの経緯等にも照ら すと、控訴人において、被控訴人のいう「仕事内容調整義務」が生じており、その違反があったと認めることは困難である。 したがって、被控訴人の上記主張は、いずれにせよ採用できない。 5 結論よって、争点(4)について判断するまでもなく、被控訴人の請求は理由がない から棄却すべきところ、これと異なる原判決は相当でないから、原判決中控訴人敗訴部分を取り消し、同部分に係る被控訴人の請求を棄却し、本件附帯控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部 裁判官河村浩 裁判官瀬孝 裁判長裁判官小出邦夫は、転補のため署名押印することができない。 裁判官河村 瀬孝 裁判長 裁判官小出邦夫は、転補のため署名押印することができない。 裁判官河村浩
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