令和3(ワ)519 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年9月25日 水戸地方裁判所
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判決文本文37,100 文字)

主文 1 被告本町化学、被告エーシーケミカル及び被告幸商事は、原告に対し、連帯して1億7212万9138円及び内金1億6841万9944円に対する平成27年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告本町化学及び被告朝日沪過材は、原告に対し、連帯して1億6283万0 175円及び内金1億5953万0755円に対する平成28年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告本町化学及び被告太平化学は、原告に対し、連帯して2308万6347円及び内金2262万5619円に対する平成29年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 この判決は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要本件は、原告が、平成26年度から平成28年度の各年度に、原告が設置する水道用水供給事業施設である鰐川浄水場で使用する活性炭の再生業務を一般競争入札の方法により発注したところ、別紙1記載の被告ら6社ほか10社が、上記業務の供給予定者及び入札価格について談合行為をして落札した結果、現実の落札価格と談合行 為がなければ形成されたであろう落札価格との差額分の損害を被ったと主張して、共同不法行為(民法709条、719条)に基づき、①平成26年度分について被告本町化学、被告エーシーケミカル及び被告幸商事、②平成27年度分について被告本町化学及び被告朝日沪過材、③平成28年度分について被告本町化学及び被告太平化学に対し、それぞれ損害賠償金及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前 の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 告本町化学及び被告太平化学に対し、それぞれ損害賠償金及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前 の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(争いがないか、括弧内に掲げる証拠により認定できる事実。以下、会社名を示す場合の「株式会社」や「有限会社」の表記は省略する。)⑴ 当事者ア原告は、地方公営企業法2条1項1号に基づき茨城県民が使用する水道用水供給事業を行っている普通地方公共団体である。公営企業管理者は、事業の執行につき 原告を代表し(同8条)、原告には、管理者の権限に属する事務を処理するため、企業局が置かれている。企業局には、4つの水道事務所(県南、鹿行、県西、県中央)が設置され、原告はその水道事業用施設として県内に10ヶ所の浄水場(霞ケ浦、利根川、阿見、鹿島、鰐川、関城、新治、水海道、水戸、涸沼川)を設置している。 イ被告本町化学(別紙1の番号1)は、医薬品、医薬部外品、工業薬品、化学薬 品の製造、販売等を目的とする株式会社である。被告本町化学は卸売業者であり、同社自身は活性炭の製造、再生業務は行っていない。 ウ被告エーシーケミカル(別紙1の番号13)は、活性炭の販売等を目的とする株式会社である。同被告は、茨城県内に工場を有しており、同所において活性炭再生業務を行っている(甲26の1)。 エ被告幸商事(別紙1の番号9)は、油脂、油脂原料及び活性炭の販売等を目的とする株式会社である。被告幸商事は、キャボット・ノリット・ジャパン(旧商号は日本ノリット。以下「キャボット社」という。)の名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭を販売している。被告幸商事自身は、活性炭の仕入、販売を行う商社であり、活性炭の製造するメーカーではなく、活性炭の再生業務 ット。以下「キャボット社」という。)の名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭を販売している。被告幸商事自身は、活性炭の仕入、販売を行う商社であり、活性炭の製造するメーカーではなく、活性炭の再生業務を行っていない。 オ被告朝日沪過材(別紙1の番号12)は、活性炭製造及び活性炭再生業等を目的とする株式会社である。 カ被告太平化学(別紙1の番号10)は、衣料品、工業用、化学用活性炭の製造販売等を目的とする株式会社である。 ⑵ 活性炭再生業務の入札 ア活性炭は、内部に微細な孔を無数に持つ炭素材料で、ヤシ殻や石炭等から作ら れている。活性炭には吸着能力があり、有機物やかび臭の原因物質等を除去することができる。 活性炭のうち、粒状活性炭は、専用の活性炭槽(吸着池内)で使用するもので、通年あるいは長期間の使用に適している。使用した粒状活性炭は専用の炉で焼成することで吸着性が回復するため、数ヶ月使用した後に工場で再生して再利用する。上記過 程で目減りする分については、新炭で補充する(以下、上記活性炭の再生と新炭補充とを併せて「活性炭再生業務」という。)。 イ各水道事務所長は、毎年3月頃、一般競争入札の方法により活性炭再生業務を発注しており、業務委託期間は、原則として4月1日から翌年の5月31日までである。 各水道事務所長と落札業者は、活性炭再生業務に要する浄水場1池当たりの単価を定め、それに実施した業務量を乗じた額を支払う契約を締結する。単価には、再生費用、補充炭費用、品質検査費用、搬出入費用、運搬費用、諸経費その他、税等が含まれる。 鰐川浄水場は、鹿行水道事務所長が入札を実施する。鰐川浄水場は、粒状活性炭が 入っている吸着池が18池あり、1池あたりの容量は約77㎥である。 ウメーカー 経費その他、税等が含まれる。 鰐川浄水場は、鹿行水道事務所長が入札を実施する。鰐川浄水場は、粒状活性炭が 入っている吸着池が18池あり、1池あたりの容量は約77㎥である。 ウメーカーは、原告の有資格者名簿に登録のある業者を自社の代理店として入札に参加する(以下、こうした代理店を「窓口業者」という。)。 ⑶ 平成26年度入札(以下、後記⑷、⑸と併せて「本件各入札」という。)。 鹿行水道事務所長は、鰐川浄水場の粒状活性炭再生業務についての平成26年度入 札を実施した。予定価格を1281万円(消費税別)として同年3月に実施した入札では、入札者の入札金額がいずれも予定価格を超過したため不調となり、その後に取手化学との間で行われた随意契約協議も不調となった。 鹿行水道事務所長が予定価格を1420万円(消費税別)に変更して同年4月10日に実施した入札では、取手化学が1池当たり1390万円(消費税別)で落札した (甲6、33、34、54の1~5、乙B1。以下、不調となった上記入札を「予定 価格変更前入札」と、取手化学が落札した上記入札を「予定価格変更後入札」という。 予定価格変更前入札結果は別紙5の1(乙B1)のとおり、予定価格変更後入札結果は別紙5の2(甲6)のとおり。)。 鹿行水道事務所長は、同年4月11日、取手化学と、契約単価を浄水場1池当り1501万2000円(内消費税111万2000円)とする業務委託単価契約を締結 した(甲11)。鹿行水道事務所長は、取手化学に対し、委託期間中の委託料として別紙3の「H26(2014)年度」の「支払日」に「支払額(円)」のとおり支払いをした(甲15の1~12)。 ⑷ 平成27年度入札鹿行水道事務所長は、同年3月16日、鰐川浄水場の粒状活性炭再生業務について 014)年度」の「支払日」に「支払額(円)」のとおり支払いをした(甲15の1~12)。 ⑷ 平成27年度入札鹿行水道事務所長は、同年3月16日、鰐川浄水場の粒状活性炭再生業務について の平成27年度入札を実施し、被告朝日沪過材の窓口業者である東邦薬品(甲7)が1407万円(消費税別)で落札した(入札結果は別紙6(甲8)のとおり)。 鹿行水道事務所長は、同年4月1日、東邦薬品と、契約単価を浄水場1池当り1519万5600円(内消費税112万5600円)とする業務委託単価契約を締結した(甲12)。鹿行水道事務所長は、東邦薬品に対し、委託期間中の委託料として別紙 3の「H27(2015)年度」の「支払日」に「支払額(円)」のとおり支払いをした(甲16の1~10)。 ⑸ 平成28年度入札鹿行水道事務所長は、同年3月10日、鰐川浄水場の粒状活性炭再生業務についての平成28年度入札を実施し、東鉱商事が507万円(消費税別)で落札した(入札 結果は別紙7(甲10)のとおり)。 鹿行水道事務所長は、同年4月1日、東鉱商事と、契約単価を浄水場1池当り547万5600円(内消費税40万5600円)とする業務委託単価契約を締結した(甲13)。鹿行水道事務所長は、東鉱商事に対し、委託期間中の委託料として別紙3の「H28(2016)年度」の「支払日」に「支払額(円)」のとおり支払いをした(甲17の 1~10)。 ⑹ 落札価格の推移平成29年度から令和2年度までの落札価格は別紙2中の「1 落札価格」「談合終了後の期間」の各年度欄に記載のとおり、順に327万0800円、326万8000円、451万円、396万円である。(甲18の1~4)また、令和3年度から令和6年度までの落札価格は、順に、385万円、445万、 各年度欄に記載のとおり、順に327万0800円、326万8000円、451万円、396万円である。(甲18の1~4)また、令和3年度から令和6年度までの落札価格は、順に、385万円、445万、 475万円、650万円である。(乙C1の1~4)⑺ 公正取引委員会による立入検査並びに課徴金納付命令及び排除措置命令(以下「課徴金納付命令等」という。)(甲1~5、27、61)ア公正取引委員会は、平成29年2月21日、別紙1の16社(以下、これらを総称して「本件16社」といい、被告本町化学を除く15社を「本件15社」という。) の、東日本地区に所在する地方公共団体が入札等の方法により発注する浄水場等向けの活性炭(以下「特定活性炭」という。)の取引等に関して、独占禁止法47条1項4号の規定に基づく立入検査を実施した。 イ公正取引委員会は、令和元年11月22日、本件16社が、共同して、特定活性炭(これには、被告が設置する浄水場向けの活性炭が含まれる。)について、供給予 定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し、供給予定者が被告本町化学を介して供給することができるようにすることにより、公共の利益に反して、特定活性炭の取引分社における競争を実質的に制限し、独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するとして、被告らそれぞれに対し、同法7条2項の規定による排除措置命令をした。 また、公正取引委員会は、同日、独占禁止法7条の2第1項の規定に基づき、被告らそれぞれに対し、課徴金納付命令を発した。鰐川浄水場における各取引は、被告本町化学については平成26年度入札から平成28年度入札までの各取引が、被告幸商事については平成26年度入札の取引が、被告朝日沪過材については平成27年度入札の た。鰐川浄水場における各取引は、被告本町化学については平成26年度入札から平成28年度入札までの各取引が、被告幸商事については平成26年度入札の取引が、被告朝日沪過材については平成27年度入札の取引が、被告太平化学については平成28年度入札の取引が、それぞれ課徴金算 定の基礎となっているが、被告エーシーケミカルについては、平成26年度入札の取 引は課徴金算定の基礎とはなっていない。 ウ被告本町化学は、前記イの課徴金納付命令等を不服として抗告訴訟を提起したが、東京地方裁判所は、令和4年9月15日、被告本町化学の請求を棄却し、東京高等裁判所は、令和6年10月16日、被告本町化学の控訴を棄却する判決をした。 被告本町化学以外の被告らは抗告訴訟を提起しなかった。 2 当事者の主張⑴ 不法行為の成否【原告の主張】ア被告本町化学と本件15社は、特定活性炭の入札に関し、遅くとも平成25年10月24日以降、各社の利益を確保するため、供給予定者を決定し、供給予定者は 被告本町化学を介して供給し、供給予定者以外の者は、供給予定者が供給できるよう協力する旨の合意をし(以下これを「本件基本合意」という。)、これに基づき平成26年度、平成27年度及び平成28年度の各入札(本件各入札)をするに当たり、供給予定者及び入札価格を調整して決定した(以下これを「個別調整行為」という。)。 かかる被告らの行為は、独占禁止法第2条6項、3項に違反する違法行為であると ともに、入札を実施して自由競争により形成されるはずの公正な価格による調達を妨げるものであり、原告に対する不法行為を構成する。 本件各入札における窓口業者とメーカーの対応関係は別紙8のとおりである。 イ被告らの主張は、いずれも否認ないし争う。 【被告本町化 よる調達を妨げるものであり、原告に対する不法行為を構成する。 本件各入札における窓口業者とメーカーの対応関係は別紙8のとおりである。 イ被告らの主張は、いずれも否認ないし争う。 【被告本町化学の主張】 供給予定者は従来からメーカーの間において定められたルールによって決定されており、被告本町化学は当該ルールに従って供給予定者が決定されるに当たり、メーカーの指示を受けメーカーに代わって他のメーカーに対して事務的・機械的に連絡をしていたに過ぎず、被告本町化学が供給予定者を決定していたことや主体的に連絡を取るなどの行為をしていたことはない。また、供給予定者の窓口業者の入札価格は、 供給予定者の供給価格を踏まえて当該供給予定者自身が決定するもの、供給予定者以 外の窓口業者の入札価格は当該供給予定者が決定するものであって、卸売業者の被告本町化学が決定できるような性質のものではない。さらに、メーカーは、被告本町化学が連絡行為その他の行為を行わなかったとしても、メーカー間で直接連絡を取り合うことで本件談合を行うことができた。メーカーは、被告本町化学を介在させれば本件談合が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用し介在させたに過ぎない。 以上のとおり、メーカーが供給予定者や入札価格を決定しており、被告本町化学は談合行為を行っておらず、メーカーの連絡役、手足に過ぎないから違法行為の主体でなく、メーカーとは実質的に競争関係になく、独占禁止法2条6項の事業者に当たらないから、被告本町化学の不法行為は成立しない。 【被告エーシーケミカルの主張】 被告エーシーケミカルに対する課徴金納付命令の対象に鰐川浄水場の平成26年度の入札案件は含まれておらず、被告エーシーケミカルが本件基本合意に参加したとする点、個別調整行為 ケミカルの主張】 被告エーシーケミカルに対する課徴金納付命令の対象に鰐川浄水場の平成26年度の入札案件は含まれておらず、被告エーシーケミカルが本件基本合意に参加したとする点、個別調整行為をしたとする点のいずれも立証が尽くされていない。取手化学は被告エーシーケミカルの窓口業者ではなく、被告エーシーケミカルが個別調整行為に関与した事実を明らかにする証拠は見当たらない。平成26年度入札における予定 価格変更前入札と予定価格変更後入札は、予定価格という基本的な事項が異なるから別個の入札と見るべきであり、前者に関する個別調整行為があったとしても、これを後者に関する個別調整行為と同視することはできない。 【被告幸商事の主張】被告幸商事が談合に関する基本合意をしたことは認めるが、各年度の入札者には別 紙1の本件16社以外の会社もあり、そうした会社と本件16社との関わりは明らかではなく、本件16社による談合行為があったことの主張立証は不十分である。 また、平成26年度入札において実際にどのような個別調整行為が行われ、各被告がどのような関与をしたのかは不明であり、個別調整行為に関する主張立証も不十分である。被告幸商事は、予定価格変更前入札と予定価格変更後入札を同視できない旨 の被告エーシーケミカルの主張を援用する。 【被告朝日沪過材の主張】本件基本合意は認め、平成27年度入札に係る個別調整行為は否認する。 【被告太平化学の主張】被告太平化学が、平成28年度入札において、インサイダー間で本件基本合意に基づく個別調整行為をしたことはない。また、アウトサイダーが入札に参加している場 合には、アウトサイダーとの個別の受注調整(入札に協力を要請する、入札の協力を得る)やこれに代わる特段の事情が存すること 個別調整行為をしたことはない。また、アウトサイダーが入札に参加している場 合には、アウトサイダーとの個別の受注調整(入札に協力を要請する、入札の協力を得る)やこれに代わる特段の事情が存することが必要であるところ、被告太平化学は、平成28年度入札において、アウトサイダーとなって入札に参加したセラケム(別紙1の番号16)やダイネン(別紙1の番号8)と個別の受注調整を行ったことはなく、これに代替する特段の事情もない。 ⑵ 損害の有無等及び損害額の認定【原告の主張】被告らの違法行為により原告が被った損害は、違法行為により形成された現実の落札価格(以下「現実落札価格」という)から、当該違法行為がなければ形成されたであろう落札価格(以下単に「想定落札価格」という)を差し引いた額である。 別紙1の本件16社は、本件の違反行為以前においても、本件と同様の違反行為を行っていた疑いがあることから、本件では違反行為が終了した直後の落札価格が違反行為の影響を受けない自由な競争による価格である。 鰐川浄水場における入札は、平成26年度、平成27年度及び平成28年度分(本件各入札)は談合の違法行為の影響を受けているが、平成29年2月21日に公正取 引委員会が立入検査を行ったことにより談合行為が取りやめられていることからすれば、平成29年度以降の入札は談合の違反行為の影響を受けていない。 そして、本件は、同一浄水場における、談合の前後を通じて委託業務内容を同一にする一般競争入札の事案であり、談合の前後の消費者物価指数、賃金等照らしても、入札における価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等にはさ したる変動はないから、民事訴訟法248条によらずとも損害額を算定することがで きるのであり、本件各入札後の 札における価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等にはさ したる変動はないから、民事訴訟法248条によらずとも損害額を算定することがで きるのであり、本件各入札後の入札である平成29年度から令和2年度までの落札価格の平均値を想定落札価格として損害額を算定するのが相当である。 被告らの違法行為により原告に生じた損害額元本は、別紙2の「3 損害額(税込)」及び別紙3のとおり、平成26年度分が1億5310万9944円(a)、平成27年度分が1億4503万0755円(b)、平成28年度分が2056万5619円(c) であり、確定遅延損害金(窓口業者に支払った再生業務委託費の各支払日から各年度の最も遅い支払日の前日までのもの)は、別紙4のとおり、平成26年度分(平成27年6月4日までのもの)が370万9194円(d)、平成27年度分(平成28年5月9日までのもの)が329万9420円(e)、平成28年度分(平成29年5月30日までのもの)が46万0728円である(f)。そして、弁護士費用は、平成2 6年度分は1531万円(g)、平成28年度分は1450万円(h)、平成28年度分は206万円(i)が相当である。 よって、原告は、①平成26年度分について被告本町化学、被告エーシーケミカル及び被告幸商事に対し、1億7212万9138円(a+d+g)及び内金1億6841万9944円(a+g)に対する平成27年6月5日から支払済みまで年5分の 割合による遅延損害金、②平成27年度分について被告本町化学及び被告朝日沪過材に対し、1億6283万0175円(b+e+h)及び内金1億5953万0755円(b+h)に対する平成28年5月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金、③平成28年度分について被告本 材に対し、1億6283万0175円(b+e+h)及び内金1億5953万0755円(b+h)に対する平成28年5月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金、③平成28年度分について被告本町化学及び被告太平化学に対し、2308万6347円(c+f+i)及び内金2262万5619円(c+i)に対する平 成29年5月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の、各連帯支払を求める。 【被告本町化学の主張】ア原告が主張する方法により想定落札価格を推認するには、その前提として、談合による影響解消の前後で、価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済 的要因等にさしたる変動がないことを原告が主張立証をする必要があるが(最判平成 元年12月8日民集43巻11号1259頁〔鶴岡灯油訴訟〕。以下「本件最判」といい、こうした考え方を「前後理論」という。)、本件ではその主張立証がない。原告が指摘する各指標は、上記変動がないことの根拠とはなり得ないものである。 かえって、平成27年度から平成28年度にかけて中国から輸入される活性炭の価格が約20%下落する変動があり、平成29年度以降も下落の影響が残るとみるべき こと、平成27年度から平成29年度にかけて燃料であるA重油の大幅な変動があったこと、同じ発注者及び同地域の入札である茨城県内の各浄水場における入札結果は、平成28年度を基準(100%)とした場合、最大で276.93%もの差が生じていること(鹿島浄水場)などからすれば、価格形成に影響を及ぼす経済的要因等に変動がある。 したがって、本件は前後理論の適用の前提を欠いている。 イ前後理論が適用される場合、または前後理論が適用されず、民事訴訟法248条により損害額が認定される場合でも、損害算定に 動がある。 したがって、本件は前後理論の適用の前提を欠いている。 イ前後理論が適用される場合、または前後理論が適用されず、民事訴訟法248条により損害額が認定される場合でも、損害算定における控えめの法理が妥当し、同種裁判例等に照らしても、本件の損害額は落札率に基づき算出される損害額を超えるものではない(予備的主張)。 原告が算定の基礎とする落札価格は平成29年度から令和2年度までの4年分しかなく、その落札価格の平均値をもって想定落札価格とするのは相当ではない。前記アの経済的要因等の変動を踏まえれば、当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因の総合検討が必要であり、その場合、落札価格と予定価格の比率(落札率)をもって想定落札価格を推認する方法を用いることが本件 最判に沿う。そして、想定落札率から推計される損害額は、平成26年度分が6335万1669円、平成27年度分が5397万2437円であり、平成28年度分は損害の発生がない。 ウ ①落札率50%を下回っており、同種事例における一般的な落札傾向を示しているとは言い難い平成29年度(落札率24.37%)、令和2年度(落札率42.3 1%)の各入札、②新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けている令和2年度の入 札は、想定落札価格の算定の基礎から除外すべきである。 【被告エーシーケミカルの主張】ア本件事案における排除措置命令は、「各社の利益を確保するため」と認定し、「受注価格の低落防止等を図るため」とは認定していないことからすると、本件事案における違反行為は、各事業者が安定的に(順番に)受注するという利益を確保する ためになされたものであり、落札価格が不当に高くなったことはなかったことが合理的に推認される。 からすると、本件事案における違反行為は、各事業者が安定的に(順番に)受注するという利益を確保する ためになされたものであり、落札価格が不当に高くなったことはなかったことが合理的に推認される。 イ一般競争入札であるから、アウトサイダーが入札に参加する可能性があること、セラケム(別紙1の場号16)とダイネン(別紙1の番号8)はアウトサイダーであることからすれば、平成26年度入札は自由かつ公正な競争に基づくものであり、損 害は発生していない。 ウ原告は、入札の予定価格を、窓口業者(5社から8社)から参考見積りの提出を受けてその中の最低額とする運用をしていたところ、これによれば、事業者は容易に予定価格を推測することできる、又は予定価格を事前開示しているのに等しい状況となるのであり、予定価格近い落札価格となることは、原告の上記入札業務の運用に より発生したものである。したがって、原告が主張する談合行為と、原告が主張する損害には相当因果関係がない。 エ平成26年度から平成28年度の入札では、茨城県内に再生工場を有することが入札条件となっていたこと、平成29年度以降の入札は、公正取引委員会の調査や排除措置命令等によって一時的な混乱に陥った事業者による赤字覚悟の低価格入札 (たたき合い)が行われたことからすると、平成29年度以降の落札価格の平均をもって想定落札価格とするのは相当でない。 【被告幸商事の主張】ア違反行為解消前であるはずの平成28年度の落札価格(507万円)が、平成26年度及び平成27年度の各落札価格(1390万円と1407万円)から大きく 下落していること、違反行為解消後の令和6年度の落札価格(650万円)は平成2 8年度の落札価格を上回っていることからすれば、落札価格の推移と公 390万円と1407万円)から大きく 下落していること、違反行為解消後の令和6年度の落札価格(650万円)は平成2 8年度の落札価格を上回っていることからすれば、落札価格の推移と公正取引委員会の立入検査の有無は符合しておらず、違反行為と落札価格の間には因果関係がない。 イ平成26年度と平成27年度の各落札価格は、平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質汚染対策によるコスト増(再生炉が放射性物質に汚染されて使用不能とならないようにする、焼成により放射性物質を拡散させな いようにする、汚染により再生利用不能な活性炭に代わり新炭を購入することなどによるコスト増)、平成25年度から平成26年度にかけての重油価格の高騰の影響を受けているのに対し、平成28年度は放射性物質汚染の収束及び重油価格の下落が見られ、落札価格も公正取引委員会立入検査前であるにもかかわらず大きく下落し、立入検査直後の平成29年度の落札価格(327万0800円)と有意な差がないこと からすると、平成28年度入札結果からも、価格形成に影響を及ぼす経済的要因等の変動があることがうかがわれる。 ウ鰐川浄水場の各年度の入札対象業務や入札参加者は全て同じというわけではない。平成26年度における想定落札価格を、それから3~6年の年月を経て行われた、わずか4回の落札価格の平均値によって算定するのは不合理である。 エ民事訴訟法248条に基づく損害額は抑制的に算定されるべきである。被告幸商事が平成26年度入札で得た粗利が955万3930円にすぎないこと(キャボット社からの仕入額1憶5907万2070円-被告本町化学への売上額1憶6862万6000円)ことは、損害額の算定に当たって考慮されるべきである。 【被告朝日沪過材の主張】 にすぎないこと(キャボット社からの仕入額1憶5907万2070円-被告本町化学への売上額1憶6862万6000円)ことは、損害額の算定に当たって考慮されるべきである。 【被告朝日沪過材の主張】 ア次の諸点からすれば、平成29年度から令和2年度の平均値を想定落札価格とするのは相当ではない。 (ア) 平成28年度落札価格(507万円)が談合期間中にもかかわらず平成27年度落札価格(1407万円)より大幅に下落したことは、価格形成の前提となっていた経済的要因等に変動が生じていたと考えるほかない。 (イ) 被告朝日沪過材は、平成23年度から平成28年度までは、福島第一原子力 発電所事故の影響による、再生炉の放射性物質による汚染リスクや新炭の大量購入リスクを加味した入札リスクを提示しており、上記期間と、平成29年度から令和2年度までの期間とでは、価格形成の前提となる経済的要因等に変動が生じている。 (ウ) 平成30年度及び平成31年度の落札者は被告太平化学の窓口業者である東鉱商事であるところ、同社から被告朝日沪過材は活性炭再生業務の再委託を受けてい るが、当該再委託に係る被告朝日沪過材の営業利益は大幅な赤字であったことからすれば、そもそも落札者において大幅な赤字が生じるような落札価格が設定されていたと考えるのが合理的である。 (エ) 談合から離脱したセラケムの窓口業者による平成28年度、平成29年度の平均入札価格と、その後の入札価格とでは顕著な高低差が認められることから、平成 30年度以降は経済的要因等の変動が生じたことが推認される。 イ想定落札価格は、①アウトサイダーの参加により競争原理が働いた平成28年度落札価格507万円、②平成28年度入札とこれと経済条件等が類似する平成29年度入札の落札 が生じたことが推認される。 イ想定落札価格は、①アウトサイダーの参加により競争原理が働いた平成28年度落札価格507万円、②平成28年度入札とこれと経済条件等が類似する平成29年度入札の落札価格の平均値417万0400円、③平成29年度から令和4年度までの落札価格の平均388万4800円のいずれかとすべきである。(予備的主張) ウ逸失利益の認定は謙抑的であるべきである。 【被告太平化学の主張】アアウトサイダーの協力ないしこれに代替する特段の事情がない平成28年度入札の落札価格は、自由な価格競争によって形成されたものであるから、談合行為による損害は発生していない。 イ平成29年度から令和2年度までのわずか4件の落札価格の平均値をもって想定落札価格とするのは相当でない。 ウ落札価格の平均値から想定落札価格を算定するとしても、①㋐鰐川浄水場の令和3年度から令和5年度までの落札価格、㋑同一自治体の隣接浄水場における同一業務の入札である鹿行浄水場の令和3年度から令和5年度までの落札価格を、想定落札 価格算定の基礎に加えるべきであり、②公正取引委員会による立入検査(令和29年 2月)直後であることからダンピングが疑われ、実際にも突出して低廉な落札価格となった平成29年度と平成30年度は、想定落札価格算定の基礎から除外すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 不法行為の成否 ⑴ 認定事実(括弧内の証拠等により認められる事実)ア被告らの営業担当者(ア) 被告本町化学(甲22の1~7)A(以下「A」という。)は、被告本町化学営業部に平成10年代半ば頃に設置された活性炭グループの責任者であるグループ長に就任し、平成27年3月まではグルー プ長を、同年4月から同年11月までは営 (以下「A」という。)は、被告本町化学営業部に平成10年代半ば頃に設置された活性炭グループの責任者であるグループ長に就任し、平成27年3月まではグルー プ長を、同年4月から同年11月までは営業部部長代理を務めた。 B(以下「B」といい、A と併せて「A ら」という。)は、A の部下であった者であり、平成27年4月以降はA の後任としてグループ長となった。 C(以下「C」という。)はA らの部下である。 A ら及びC は、被告本町化学が、新潟県、長野県及び静岡県以東の東日本地区にお ける地方公共団体等の浄水場で使用される活性炭(特定活性炭)の取引の商流に入るための営業活動を担当していた。 (イ) 被告エーシーケミカル(甲26の1・2、22の3)D(以下「D」という。)は、平成20年5月に被告エーシーケミカルが設立されてから平成29年5月までの間、同社の取締役であり、入札業務等を含めた営業部門の 責任者であった。 (ウ) 被告幸商事(甲22の1、23)E(以下「E」という。)は、キャボット社を退職した後、平成14年6月に被告幸商事に入社し、同社の営業活動を担当していた。 (エ) 被告朝日沪過材(甲24の1) F(以下「F」という。)は、平成13年頃に活性炭の営業を担当するようになって 以降、平成20年及び21年頃を除き、被告朝日沪過材の活性炭の営業活動を担当していた。 (オ) 被告太平化学(甲25の2)G(以下「G」という。)は、平成23年4月から、被告太平化学の活性炭の営業責任者であった。 イ入札談合の概要(甲22の1~7)(ア) 被告本町化学は、地方公共団体がその浄水場で使用する活性炭の商流において、クラレケミカル(現在のクラレに合併)、日本エンバイロケミカルズ(平成27 イ入札談合の概要(甲22の1~7)(ア) 被告本町化学は、地方公共団体がその浄水場で使用する活性炭の商流において、クラレケミカル(現在のクラレに合併)、日本エンバイロケミカルズ(平成27年4月に大阪ガスケミカルが事業承継)、フタムラ化学(当時の商号はツルミコール)、水ingに連なる会社等のメーカーの一次店として、地方自治体向けの活性炭をそれ らのメーカーから購入し、二次店その他の利用者に販売していた。 その後、A は、被告本町化学として売上げを上げたいと考えていた地方公共団体向けの活性炭について、メーカーに対し、この物件は貴社の活性炭を担いで供給したいといった希望を伝えるようになった。 次第に被告本町化学が一次店を務めるメーカーは増えていき、A は、被告本町化学 が一次店を務める各メーカーの営業担当者と人的つながりを深くしていった。こうして、A は、各メーカーの担当者から、本町化学を通じ、この地方自治体の物件で活性炭を供給したいという、メーカー側の希望を聞くようになっていった。 (イ) 平成20年頃までに、A は、被告本町化学が供給したいと考える地方公共団体向けの活性炭の入札物件について、被告本町化学の考えと、各メーカーが供給したい 物件の希望をまとめて調整するようになり、どの物件で、どのメーカーが活性炭を供給するのかの方針を入札前に決め、それをメーカー各社に伝えるようになっていた。 平成25年頃以降に東日本地区に所在する地方公共団体が入札等の方法により発注する浄水場等向けの活性炭(特定活性炭)の物件について、活性炭を供給したい物件の希望を被告本町化学に伝え、被告本町化学において、どのメーカーがどの物件で 活性炭を供給するかの方針を決める関係を被告本町化学と構築していた会社は、別紙 、活性炭を供給したい物件の希望を被告本町化学に伝え、被告本町化学において、どのメーカーがどの物件で 活性炭を供給するかの方針を決める関係を被告本町化学と構築していた会社は、別紙 1のうちの被告本町化学を除いた会社(本件15社。キャボット・ノリット・ジャパンの名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭を販売する被告幸商事(別紙1の9番)はこれに含まれる。)であった。 (ウ) 特定活性炭に関する入札談合は、概要、次のような手順で行われた。 すなわち、被告本町化学のA らは、本件15社の営業担当者と、毎年11月頃から 翌年1月か2月までの間に、被告本町化学営業部の会議室等で複数回面談するほか、電話やメール等でもやりとりをする(以下「面談等」という。)。A らは、本件15社の営業責任者に、A がB に作成させていた入札結果表(活性炭の発注物件の落札業者、活性炭納入会社、落札金額等の入札結果をまとめたもの)や予定見込表(地方公共団体による今後の発注が見込まれる活性炭の物件についての参考見積の実施状況 などを基にとりまとめたもの)を示すなどし、各社の営業担当者からは、この物件を取りたい等の供給予定者になりたい旨の希望を聞いていた。供給予定者を誰にするかは、入札前に被告本町化学のA らと本件15社の営業担当者間で確認、調整され、供給予定者が決定されると、その入札価格は、入札前に被告本町化学と供給予定者の営業担当者が相談し、被告本町化学又は供給予定者が決めていた。入札にアウトサイダ ーの参加が想定される入札案件では、入札価格はアウトサイダーに対抗できる価格とした。供給予定者の窓口業者への入札価格の連絡は、A らが行なうこともあったし、供給予定者が行なうこともあった。 そして、被告本町化学のB とC は、協力価格(協力価 ウトサイダーに対抗できる価格とした。供給予定者の窓口業者への入札価格の連絡は、A らが行なうこともあったし、供給予定者が行なうこともあった。 そして、被告本町化学のB とC は、協力価格(協力価格は、供給予定者の窓口業者が落札できるようにするため、窓口業者の入札価格よりも高い価格を設定する。) を決め、これを供給予定者以外の会社に連絡し、供給予定者以外の会社の窓口業者は、協力価格により入札するか、入札に参加しないことで供給予定者の窓口業者が落札できるよう協力していた。 本件15社は、落札後には、上記の手順を経て決定された供給予定者から窓口業者までの間の商流に加わることによって被告本町化学が差益を得ることを了承し、実際 にも同社は商流に加わって差益を得ていた。 ウ本件各入札の経緯本件各入札における窓口業者とメーカーの対応関係は別紙8のとおりであり(甲6、8、10、31の1~16、35の1~15、乙B1、弁論の全趣旨)、本件各入札の状況は下記のとおりである。 (ア) 平成26年度入札について a キャボット社は、日本国内に自社の再生工場を持っておらず、再生工場を持つ被告エーシーケミカルに再生処理業務を委託していた。キャボット社は、平成26年以前から、被告本町化学のA に対し、キャボット社が納入したい入札案件の伝達や上記A による納入予定者の決定を聞く先を、被告幸商事の営業担当者であるE とすることを表明していた。キャボット社の窓口業者である取手化学の代表取締役H は、被 告エーシーケミカルの取締役でもある。(甲19、20、21、22の1)b 平成26年度の鰐川浄水場においては、入札前に被告幸商事のE が被告本町化学のA 及び被告エーシーケミカルのD らと打ち合わせをして、キャボット社製の活 ある。(甲19、20、21、22の1)b 平成26年度の鰐川浄水場においては、入札前に被告幸商事のE が被告本町化学のA 及び被告エーシーケミカルのD らと打ち合わせをして、キャボット社製の活性炭を担ぐ被告幸商事が供給予定者となること及びキャボット社の窓口業者である取手化学の入札価格を決定した。また、被告エーシーケミカルのD は、被告本町化 学のA らないしC から連絡を受け、鰐川浄水場の物件についてキャボット社の窓口業者が落札できるように、被告エーシーケミカルの窓口業者である後藤商店には取手化学よりも高い入札金額で参加するように連絡した。 c 不調となった予定価格変更前入札(別紙5の1)の第1回入札には窓口業者15社が参加したが、その15社は、取手化学と本件15社の窓口業者であり、入札価 格は取手化学の1390万円が最も低く、他社の入札価格は1400万円から1670万円までの範囲であった。 また、予定価格変更前入札の第2回入札及び予定価格変更後入札(別紙5の2)に参加した窓口業者(括弧内は対応する会社名)は、取手化学(キャボット社)、東邦薬品(被告朝日沪過材)、中山商事(カルゴンカーボンジャパン別紙1の番号11)及び 後藤商店(被告エーシーケミカル)であるところ、いずれの入札でも取手化学の入札 価格が最も低く、入札価格の差は、予定価格変更前第2回入札が取手化学の1370万円に対して他3社が1377万円から1380万円までの範囲、予定価格変更後入札が取手化学の1390万円に対して1400万円から1433万円までの範囲と、いずれもわずかな違いであった。(別紙5の1・2、別紙8)d 取手化学は、予定価格変更後入札で落札した後、平成26年4月11日、鹿行 水道事務所長と業務委託単価契約を締結し、同月14 範囲と、いずれもわずかな違いであった。(別紙5の1・2、別紙8)d 取手化学は、予定価格変更後入札で落札した後、平成26年4月11日、鹿行 水道事務所長と業務委託単価契約を締結し、同月14日、鹿行水道事務所に対し、受託した業務のうち粒状活性炭再生業務(分析を含む)を被告エーシーケミカルに、粒状活性炭(新炭製造)をキャボット社に委託する旨を通知した。 被告エーシーケミカルは、取手化学が落札したことにより、キャボット社から再生処理の下請けを受注した。 被告本町化学は、上記落札後、被告幸商事から活性炭を仕入れ、流山化学に販売することにより、鰐川浄水場に係る活性炭業務委託契約の商流に入り、差益を取得した。 (甲14の3・4、22の1~7、23、26の1~3)(イ) 平成27年度入札についてa 平成27年1月頃、F は、部下のI を連れ、被告本町化学を訪問し、同社のA から、平成26年度分の入札結果一覧表をもらい、それを見ながら、被告朝日沪過材をどの案件に起用するか提示を受け、平成27年度の鰐川浄水場は被告朝日沪過材が供給予定者となった。 F は、被告朝日沪過材の窓口業者が落札する予定の入札金額を決めるにあたり、被告本町化学のA らから情報収集したり、被告本町化学がいくらのマージンを欲しい かの確認をしたりして入札金額を決定し、これを被告朝日沪過材の窓口業者に伝えた。 また、入札金額が決まると、F ないしF の指示を受けたI が、被告本町化学のB にその入札金額を伝え、B は、被告朝日沪過材の窓口業者が落札できるように、他の会社に対して、F がB に伝えた金額よりも高い金額でその会社の窓口業者に入札してもらえるように連絡した。(甲22の1~7、24の1・2) b 入札には窓口業者15社が参加し、被告朝 、他の会社に対して、F がB に伝えた金額よりも高い金額でその会社の窓口業者に入札してもらえるように連絡した。(甲22の1~7、24の1・2) b 入札には窓口業者15社が参加し、被告朝日沪過材の窓口業者である東邦薬品 が1407万円で落札した。他の窓口業者は、キャボット社の窓口業者である取手化学と本件15社の窓口業者であり、入札価格は1416万円から1660万円までの範囲であった。(別紙6、8)c 被告本町化学は、上記落札後、被告朝日沪過材から活性炭を仕入れ、アサヒ工業株式会社に販売することにより、鰐川浄水場に係る活性炭業務委託契約の商流に入 り、差益を取得した。 (ウ) 平成28年度入札についてa セラケム(別紙1の16番)は平成27年10月27日に、ダイネン(別紙1の8番)は平成28年1月14日に、被告本町化学に対して談合からの離脱を表明した。セラケムとダイネンの窓口業者は、平成26年度及び平成27年度の入札に参加 しており(別紙8)、前記離脱表明により、セラケム及びダイネンを除く本件16社において、インサイダーのみであった前年度までの入札(前記(ア)c、(イ)b)と異なり、鰐川浄水場における平成28年度入札にはセラケムやダイネン等の窓口業者がアウトサイダーとして入札に参加してくること想定される状況となった。 b G は、入札等の前に、被告本町化学のA やB と電話でやり取りをし、被告太 平化学が納入予定者となる物件を決めていた。 鰐川浄水場の平成28年度入札に関しては、被告太平化学のG は、入札締切日の1週間前頃に、被告本町化学のB から電話を受け、「太平で取れるか取れないかわからないけど、やってみましょう」などとして納入予定メーカーになることの打診を受け、これを了承した。 札締切日の1週間前頃に、被告本町化学のB から電話を受け、「太平で取れるか取れないかわからないけど、やってみましょう」などとして納入予定メーカーになることの打診を受け、これを了承した。 G は、他の物件の落札価格等を参考にする等して、被告太平化学としてぎりぎり利益が出る価格を計算し、被告本町化学のB や被告太平化学の窓口業者に入札価格の連絡をした。(甲22の1~7、25の1・2)c 入札には窓口業者17社が参加した。これには、前記aのとおり談合から離脱していたセラケム(別紙1の番号16)の窓口業者4社及びダイネンの窓口業者1社 並びに談合に関与していない日水産業の窓口業者1社、すなわちアウトサイダーが含 まれていたが、他の入札者は、キャボット社の窓口業者である取手化学と本件15社の窓口業者、すなわちインサイダーであった。入札価格は、落札した被告太平化学の窓口業者である東鉱商事が507万円、セラケムの窓口業者4社が564万9000円から670万円の範囲、その他は1302万円から1622万円の範囲であった。 (別紙7、8) d 被告本町化学は、上記落札後、被告太平化学から活性炭を仕入れ、これを東鉱商事に販売することにより、鰐川浄水場に係る活性炭業務委託契約の商流に入り、差益を取得した。 エ平成29年度以降の入札平成29年2月21日に公正取引委員会による立入検査が行われたことを契機に、 本件基本合意に基づく談合行為は取りやめとなった。したがって、平成29年度以降の各入札は、談合行為に基づいて行われたものではない。 各年度の入札結果は下記表のとおりである。 ⑵ 検討 ア前記認定事実によれば、別紙1の本件16社は、遅くとも平成25年頃までには、東日本地区に所在する地方公共団体 たものではない。 各年度の入札結果は下記表のとおりである。 ⑵ 検討 ア前記認定事実によれば、別紙1の本件16社は、遅くとも平成25年頃までには、東日本地区に所在する地方公共団体が入札等の方法により発注する浄水場等向けの活性炭(特定活性炭)について、各社の利益を確保するため、被告本町化学の営業担当者と本件15社営業担当者との面談等による情報交換を通じて供給予定者及び入札価格を決定し、落札した供給予定者は、同者から窓口業者までの間の商流に被告 入札年度入札会社数落札価格書証平成29年度 3,270,8003,280,000~15,500,000 甲18の1平成30年度 3,268,0003,500,000~8,239,000 甲18の2平成31年度 4,510,0004,640,000~11,550,000 甲18の3令和2年度 3,960,0004,190,000~4,503,200 甲18の4令和3年度 3,850,0003,850,000~6,251,640 乙C1の1令和4年度 4,450,0004,767,200~9,600,000 乙C1の2令和5年度 4,750,0006,690,000~8,450,000 乙C1の3令和6年度 6,500,0007,727,940~8,200,000 乙C1の4※入札会社数は辞退した会社を除く数である。 非落札会社の入札価格の範囲 本町化学を加えて同社を介して活性炭を供給し、供給予定者以外のメーカーは協力価格で入札するなどして供給予定者が落札して供給できるよう協力する旨の基本合意(本件基本合意)が成立したと認められる。 また、前記認定事実のとおり、納入予定者及び入札価格 予定者以外のメーカーは協力価格で入札するなどして供給予定者が落札して供給できるよう協力する旨の基本合意(本件基本合意)が成立したと認められる。 また、前記認定事実のとおり、納入予定者及び入札価格の決定について被告本町化学、被告幸商事と被告エーシーケミカル(平成26年度)、被告本町化学と被告朝日沪 過材(平成27年度)、被告本町化学と被告太平化学(平成28年度)の営業担当者間で決定されていたこと、各年度の入札者及び入札結果からすれば、平成26年度は取手化学、平成27年度は東邦薬品以外の窓口業者が協力価格により入札し、平成28年度についても、セラケム、ダイネン及び日水産業の窓口業者以外の窓口業者は協力価格により入札していると認められること、各年度の落札後、被告本町化学が商流に 入り差益を得ていることからすれば、本件各入札について本件基本合意に基づく個別調整行為が行われたことが推認される。 そして、事業者は、本来的には、入札に参加するかどうか、入札に参加する場合に入札価格をどうするか、落札した場合に入札実施者までの商流に別の業者を入れるかどうかなどを自由に決め、入札実施者は、こうした事業者の自由かつ公正な競争によ り形成される落札価格によって契約を締結する権利ないし法的利益があるというべきところ、特定活性炭に係る入札談合の本件基本合意は、事前に供給予定者を決めてこれに落札、供給させるための方法や手順等を取り決めるものであり、これにより事業者が取決めに制約されて意思決定を行うことになるという点において、他の事業者と共同して相互にその事業活動を制限し、特定活性炭の取引分野における競争を実質 的に制限するものであるから、本件基本合意は独占禁止法3条が禁止する同法2条6項の不当な取引制限に該当し、これに基づく個別調整行為の結 事業活動を制限し、特定活性炭の取引分野における競争を実質 的に制限するものであるから、本件基本合意は独占禁止法3条が禁止する同法2条6項の不当な取引制限に該当し、これに基づく個別調整行為の結果として本件各入札が行われたことで、自由かつ公正な競争による価格で契約を締結する原告の権利ないし法的利益を侵害したといえるから、平成26年度入札における被告本町化学、被告幸商事及び被告エーシーケミカルの行為、平成27年度入札における被告本町化学及び 被告朝日沪過材の行為、平成28年度入札における被告本町化学及び被告太平化学の 行為は、原告に対する共同不法行為を構成する。 イ被告本町化学の主張について被告本町化学は、メーカーが供給予定者や入札価格を決定しており、被告本町化学はメーカーの連絡役、手足に過ぎず違法行為の主体でなく、独占禁止法2条6項の事業者に当たらないから、被告本町化学の不法行為は成立しない旨主張する。 しかしながら、被告本町化学の営業担当者であったA らが、特定活性炭の入札の前に本件15社の営業責任者と面談等をして入札結果表や予定見込表を示すなどして希望する物件を営業担当者間で確認、調整して供給予定者となる会社及びその入札価格の決定に関与し、他の会社には協力価格を伝えていたこと、本件15社は被告本町化学が落札した供給予定者から窓口業者までの間の商流に加わって差益を得ること を了承していたことは、相互に符合する各社の営業担当者の各供述(被告本町化学のA と、被告エーシーケミカルのD、被告幸商事のE、被告朝日沪過材のF 及び被告太平化学のG)によって認定することができ、実際にも、被告本町化学は、本件各入札後、商流に加わって差益を得ていることは既に説示したとおりである。 そうすると、供給予定者及び入札価 過材のF 及び被告太平化学のG)によって認定することができ、実際にも、被告本町化学は、本件各入札後、商流に加わって差益を得ていることは既に説示したとおりである。 そうすると、供給予定者及び入札価格の決定に影響力が強いメーカーがあったとし ても、被告本町化学自身も自らの利益を確保するために主体的に談合に関与していたというべきであり、メーカーの連絡役ないし手足に過ぎない、独占禁止法2条6項の事業者に当たらないから不法行為は成立しない旨の被告本町化学の主張は採用できない。 ウ被告エーシーケミカル及び被告幸商事の主張について 被告エーシーケミカル及び被告幸商事は、平成26年度入札が本件基本合意及びこれに基づく個別調整行為についての具体的な立証が不十分である旨の主張をする。 しかしながら、既に説示した特定活性炭に関する入札談合の概要、平成26年度入札における被告本町化学、被告幸商事及び被告エーシーケミカルの営業担当者間のやりとりに加え、被告エーシーケミカルがキャボット社から再生処理業務の委託を受け ていること、被告エーシーケミカルの取締役と取手化学の代表取締役は同一人物であ ること、被告エーシーケミカルの窓口業者(後藤商店)が平成26年度入札に協力価格により入札していること(認定事実⑴ウ(ア)aのとおり、後藤商店の入札価格と取手化学の落札価格の落札価格はいずれもわずかな差であり、後藤商店の入札は協力価格による入札であったと認められる。)、被告幸商事がキャボット社の名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭を販売している会社であること(前提事実⑴エ、認定事実⑴ウ (ア)a)に照らすと、平成26年度入札が、本件基本合意に基づく個別調整行為によって行われたことは優に認められるというべきであり、被告エーシーケミカルにつ であること(前提事実⑴エ、認定事実⑴ウ (ア)a)に照らすと、平成26年度入札が、本件基本合意に基づく個別調整行為によって行われたことは優に認められるというべきであり、被告エーシーケミカルについて鰐川浄水場の平成26年度入札が課徴金算定の基礎とされていないことは、上記認定の妨げになるものではない。 また、被告エーシーケミカル及び被告幸商事は、予定価格変更前入札と予定価格変 更後入札は同視すべきではない旨も主張するが、上記各入札に参加したのはいずれもキャボット社の窓口業者である取手化学と本件15社の窓口業者であること、予定価格変更前入札2回目と予定価格変更後入札に参加した4社は同じ顔触れであり、いずれも取手化学が最も低い価格で入札し、その他の会社の入札価格と落札価格との差はわずかであることから、取手化学以外の窓口業者の入札は協力価格による入札であっ たと認められること(認定事実⑴ウ(ア)c、前記⑵ア)に照らし、予定価格変更前入札と予定価格変更後入札は同質性、連続性があるものと認められ、これを別異のものと見るべき事情はない。 以上によれば、上記主張は採用できない。 エ被告朝日沪過材の主張について 被告朝日沪過材は、平成27年度入札に係る個別調整行為を否認するが、既に説示した特定活性炭に関する入札談合の概要、平成27年度入札における被告本町化学及び被告朝日沪過材の営業担当者間のやりとりや、平成27年度入札の経過及び結果に照らせば、平成27年度入札が、本件基本合意に基づく個別調整行為によって行われたことは優に認められる。 オ被告太平化学の主張について 被告太平化学は、①被告太平化学が、平成28年度入札において、インサイダー間で本件基本合意に基づく個別調整行為をしたことはない、②アウト 。 オ被告太平化学の主張について 被告太平化学は、①被告太平化学が、平成28年度入札において、インサイダー間で本件基本合意に基づく個別調整行為をしたことはない、②アウトサイダーが入札に参加している場合には、アウトサイダーとの個別の受注調整(入札に協力を要請する、入札の協力を得る)やこれに代わる特段の事情が存することが必要であるところ、被告太平化学は、平成28年度入札において、アウトサイダーとなって入札に参加した セラケム(別紙1の番号16)やダイネン(別紙1の番号8)と個別の受注調整を行ったことも、これに代替する特段の事情もない旨主張する。 しかしながら、既に説示した特定活性炭に関する入札談合の概要、平成28年度入札における被告本町化学及び被告太平化学の営業担当者間のやりとりや、平成28年度入札の経過及び結果に照らせば、被告太平化学は、被告本町化学とのやりとりの結 果、談合から離脱していない他社(インサイダー他社)が落札する心配をすることなく、アウトサイダーとなったセラケム等に勝てる価格によって入札したと認められるのであり、これによれば、平成28年度入札も、談合の本件基本合意に基づく個別調整行為により行われたものであると認められる。 以上によれば、上記主張は採用できない。 2 損害の有無等について⑴ 被告エーシーケミカルの主張について被告エーシーケミカルは、①排除措置命令が「受注価格の低落防止等を図るため」とは認定していないことから、落札価格が不当に高くなったことはなかったことが推認される、②一般競争入札であるからアウトサイダーの参加可能性があり、セラケム とダイネンはアウトサイダーであったから、落札価格は自由かつ公正な競争に基づくものである、③窓口業者から参考見積りの提出 る、②一般競争入札であるからアウトサイダーの参加可能性があり、セラケム とダイネンはアウトサイダーであったから、落札価格は自由かつ公正な競争に基づくものである、③窓口業者から参考見積りの提出を受けて予定価格を決める原告の運用により落札価格が予定価格に近くなったなどとして、談合行為による損害は発生していない、談合行為と損害との間に因果関係はない旨主張する。 しかしながら、既に説示した特定活性炭に関する入札談合の概要、平成26年度以 降の入札の経過及び結果の推移に照らすと、談合行為により定まった平成26年度入 札の落札価格(1390万円)が、談合行為が取りやめられた直後の平成29年度入札の落札価格(327万0800円)との間に有意な差があることは明らかである。 また、平成26年度入札には、アウトサイダーは入札に参加しておらず(セラケムとダイネンがアウトサイダーに転じたのは平成28年度入札以降である。)、他に入札した窓口業者の入札価格は、取手化学の落札価格をわずかに上回る協力価格による入札 であったこと(認定事実⑴ウ(ア)c、前記⑵ア)からすれば、平成26年度の落札価格が、自由かつ公正な競争による価格であるとはいえない。 以上によれば、上記主張はいずれも採用できない。 ⑵ 被告幸商事の主張について被告幸商事は、違反行為解消前であるはずの平成28年度の落札価格(507万円) が、平成26年度及び平成27年度の各落札価格(1390万円と1407万円)から大きく下落していること、違反行為解消後の令和6年度の落札価格(650万円)は平成28年度の落札価格を上回っていることからすれば、落札価格の推移と公正取引委員会の立入検査の有無は符合しておらず、違反行為と落札価格の間には因果関係がない旨主張する。 しかし 万円)は平成28年度の落札価格を上回っていることからすれば、落札価格の推移と公正取引委員会の立入検査の有無は符合しておらず、違反行為と落札価格の間には因果関係がない旨主張する。 しかしながら、平成26年度と平成27年度の落札価格は、キャボット社の窓口業者(取手化学)と本件15社の窓口業者というインサイダーのみの入札の結果であること(認定事実⑴ウ(ア)c、⑴ウ(イ)b)、平成28年度入札の落札価格は、被告太平化学の窓口業者(東鉱商事)が、インサイダー他社が落札する心配をすることなく、アウトサイダーとなったセラケム等に勝てる価格設定をして入札した、いわば不完全な 競争の結果であること(前記1⑵オ)、談合行為が取りやめとなった平成29年度入札の落札価格は327万8000円と、平成28年度の落札価格(507万円)から更に約180万円も下落していること(認定事実⑴エ)からすると、落札価格の推移と公正取引委員会の立入検査の有無は概ね符合しているといえる。 そして、落札価格は令和4年度以降、上昇に転じ、令和6年度は平成28年度を上 回っているが(認定事実⑴エ)、後記3⑶ウで説示するとおり、令和3年度から令和4 年度にかけて新型コロナウィルス感染拡大に伴う国内輸送コストの上昇、ロシアによるウクライナ侵攻等といった不安定な海外情勢が見受けられることからすると、令和6年度は平成28年度とでは状況を異にしているというべきであるから、両者を比較して因果関係の有無を論じるのは相当でない。 以上によれば、上記主張は採用できない。 ⑶ 被告太平化学の主張について被告太平化学は、平成28年度入札の落札価格は自由かつ公正な競争によって形成されたものであるから談合行為による損害は発生していない旨主張するが、かかる主張が採用でき ⑶ 被告太平化学の主張について被告太平化学は、平成28年度入札の落札価格は自由かつ公正な競争によって形成されたものであるから談合行為による損害は発生していない旨主張するが、かかる主張が採用できないことは、前記1⑵オ、前記⑵と同旨である。 ⑷ 小括 本件各入札で前記1のとおり談合行為が行われた結果、自由かつ公正な競争が妨げられ、後記3の損害額の認定に係る損害が発生したものと認められ、他方、損害の発生ないし談合行為と損害の因果関係を否定すべき事情はない。 3 損害額の認定について⑴ 被告らの違法行為により原告が被った損害は、原則として、違法行為により形 成された現実の落札価格(現実落札価格)から、当該違法行為がなければ形成されたであろう落札価格(想定落札価格)を差し引いた額である(差額説)。 想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接推計することは困難であるから、現実に存在した落札価格を手掛かりとしてこれを推計することが許されてよい。そして、違反行為の前後で価格形成の前提となる経済条件、市場構造 その他の経済的要因等に変動がない限り、当該違反行為のされる直前の落札価格をもって想定落札価格とするのが相当である(本件最判、最判昭和62年7月2日・民集41巻5号789頁)。 もっとも、当該違反行為がされる直前の価格が違反行為の影響を受けない自由な競争による価格でない場合には、これをもって想定落札価格とするのは相当でなく、 むしろ、当該違反行為が終了した直後の落札価格が違反行為の影響を受けない自由 な競争による価格と認められ、かつ相当数の落札があり違反行為の直後の落札価格を合理的に算定することができるときは、価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、 な競争による価格と認められ、かつ相当数の落札があり違反行為の直後の落札価格を合理的に算定することができるときは、価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、その価格をもって想定落札価格と推認することが相当である(東京高裁平成18年2月17日第3特別部判決)。 そして、価格形成に影響を及ぼす経済的要因等にさしたる変動がないときは、直後 の落札価格をもって想定落札価格を推認することが許されるが、価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等の変動があるときは、上記のような事実上の推認を働かせる前提を欠くことになることから、違反行為の直後の落札価格のみから想定落札価格を推認することは許されず、直後の落札価格のほか、価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因を総合検討してこれを推計しなければな らないというべきである(上記最判等)。 既に説示したところによれば、平成26年度、平成27年度及び平成28年度の各入札(本件各入札)は談合の違反行為により形成された落札価格であり、談合は本件各入札以前から行われていたと認められるから、本件各入札の直前の落札価格をもって想定落札価格とするのは相当ではない。そこで、本件各入札より後の入札の落札価 格による推計の当否を検討する。 ⑵ 本件各入札とそれより後の各入札において、入札における価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等にさしたる変動がないといえるか(争点1)ア発注業務の同一性について 本件各入札と平成29年度以降の各入札は、いずれも鰐川浄水場の活性炭再生業務に係る入札であり、入札はいずれも一般競争入札により行われ、1池当たりの再生業務に要する費用を定めて契約されている(単価契約方式。以上について前提事 以降の各入札は、いずれも鰐川浄水場の活性炭再生業務に係る入札であり、入札はいずれも一般競争入札により行われ、1池当たりの再生業務に要する費用を定めて契約されている(単価契約方式。以上について前提事実⑵イ)。 そして、平成26年度から令和2年度までの茨城県企業局粒状活性炭再生業務委託共通仕様書(甲11~13、30の1~4)にて定められた再生収率(4項)は93% から95%の範囲、予定再生回数(7項)は15池から19池の範囲にあり、数値は 毎年全く同じではないものの、差異は大きなものではなく、発注業務の同一性を欠くと評価されるものではない。 以上によれば、本件各入札と平成29年度以降の各入札は、発注業務は同一であると認められる。 イ各指標について 総務省統計局が作成した消費者物価指数(甲28)によれば、2014年(平成26年)から2020年(令和2年)の総合指数は98.0から100.1の範囲で推移している。 厚生労働省の作成した賃金に関する資料(甲29)によれば、男女計の賃金は、平成26年から令和元年にかけて299万6000円から307万7000円へと上 昇し、令和2年も令和元年と同水準で推移している。平成26年から令和元年までの上昇幅は8万1000円、上昇率は2.7%である。 以上のとおり、本件各入札時とそれより後の各入札とでは、上記各指標に大きな変動はない。 ウ被告らの主張について 被告らは、下記諸点を指摘して、入札における価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等にさしたる変動がないとはいえない旨主張するので、検討する。 (ア) 中国から輸入される活性炭の価格に関する指摘について(被告本町化学)活性炭は、原料により、ヤシ殻系、石炭系、木質系等に分類されるところ、鰐川浄 ないとはいえない旨主張するので、検討する。 (ア) 中国から輸入される活性炭の価格に関する指摘について(被告本町化学)活性炭は、原料により、ヤシ殻系、石炭系、木質系等に分類されるところ、鰐川浄 水場で使用される活性炭はヤシ殻系であり(甲11の9枚目、甲30の1の2枚目等)、ヤシ殻系の80%強が東南アジアで生産されているが(甲48の3枚目)、中国産活性炭は主として石炭系のものである(弁論の全趣旨)。 この点を措いても、1キログラムあたりの中国から輸入される活性炭の価格は、平成27年の184.87円から平成28年は146.87円へと下落したものの、平 成29年は155.81円、平成30年は176.18円と回復しているのであり(乙 A3の1~10、被告本町化学準備書面(6)3頁表参照)、平成29年度以降にその前の下落の影響が残っているとは言い難いし、鰐川浄水場における平成26年度から令和2年度までの落札価格の推移(浄水場1池あたり、1390万円(平成26年度)、1407万円(平成27年度)、507万円(平成28年度)、327万0800円(平成29年度)、326万8000円(平成30年度)、451万円(令和元年度)、39 6万円(令和2年度)。認定事実⑴エ)と、上記輸入価格の推移とで相互の連関性を見出すことはできない。 また、中国からの輸入に限らない活性炭の輸入価格の推移(乙A3の1~10、被告本町化学準備書面(6)3頁表参照)によれば、平成26年度から令和2年度までの間は、1キログラム当たり200円前後の値で推移していることが認められ、やは り、上記落札価格との相互の連関性を見出すことはできない。 (イ) 燃料費の変動に関する指摘について(被告本町化学、被告幸商事)産業用A重油の1リットル当たりの全国 ることが認められ、やは り、上記落札価格との相互の連関性を見出すことはできない。 (イ) 燃料費の変動に関する指摘について(被告本町化学、被告幸商事)産業用A重油の1リットル当たりの全国平均価格は、平成25年が84.6円、平成26年が87.9円、平成27年が62.3円、平成28年が48.2円、平成29年が59.6円、平成30年が74.1円、平成31年が71.8円、令和2年が 58.5円であるところ(乙A4の1、被告本町化学準備書面(6)5頁表参照)、かかるA重油価格の変動の推移と、前記(ア)の落札価格の変動の推移が、相互の連関性があると直ちに認めることはできない。 (ウ) 福島第一原子力発電所事故に係る指摘について(被告幸商事、被告朝日沪過材)証拠(甲51、53、乙D1、2)及び弁論の全趣旨によれば、①平成23年度入 札で、霞ケ浦から取水する霞ケ浦浄水場の活性炭再生業務を落札したセラケムの窓口業者である小西安は、平成23年4月18日、県内水道事務所長に対し、霞ケ浦浄水場より抜き出した活性炭を検査したところ、放射性セシウムは不検出であったが、放射性ヨウ素は1000Bq/kg強が検出された旨報告したこと、鰐川浄水場は霞ケ浦に隣接する北浦から取水する浄水場であること、②被告朝日沪過材は、同年6月1 日、顧客に対し、使用済み活性炭の測定と受け入れ基準に関して、国または関係官庁 より具体的な方針が示されるまでの間、セシウム134、137が検出された場合は受入れができない旨、ヨウ素131が検出された場合は日数を置き、要相談の上決定する旨を連絡したこと、③県内水道事務所長は、平成23年6月9日、平成23年度入札の落札業者に対し、放射性物質の半減期を考えると低濃度であると推測され、現在の水道水中の放射性物質も不 要相談の上決定する旨を連絡したこと、③県内水道事務所長は、平成23年6月9日、平成23年度入札の落札業者に対し、放射性物質の半減期を考えると低濃度であると推測され、現在の水道水中の放射性物質も不検出であるとして、粒状活性炭再生業務を速やかに履 行するよう求めるとともに、再生業務の履行が困難な場合には同月17日までに回答するよう求めたが、再生業務の履行が困難である旨回答した落札業者はいなかったこと、④国により定められた、㋐食品中の放射性物質に関する基準値(暫定基準値)のうちの放射性ヨウ素(ヨウ素131)に関する規制値(平成23年3月17日制定)は、野菜・魚介類において2000Bq/kg、㋑東北地方太平洋沖地震に伴う原子 力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則(平成23年12月14日環境省令第33号)第14条により定められた廃棄物を安全に処理する為の基準値は8000Bq/kgであり、上記①の検出数値はいずれもこれを下回っていること、⑤鰐川浄水場において、本件各入札とその後に行われた入札において、茨城県内に再生工場を有することは入札条件になって いないこと(後記(エ))が認められる。 以上のとおり、東日本大震災とこれに続く福島第一原子力発電所事故が発生した平成23年中においても規制値を上回る放射性物質は検出されていないこと、本件で問題となる入札(本件各入札)は上記事故から3~5年を経過した平成26年度から平成28年度にかけて行われた入札であり、本件各入札及びその後の入札で茨城県内に 再生工場を有することは入札条件になっていないことに照らすと、本件各入札が福島第一原子力発電所事故の影響を受けたものであるとも、本件各入札後である平成29年度以降の入札が上記事項の影響が解 再生工場を有することは入札条件になっていないことに照らすと、本件各入札が福島第一原子力発電所事故の影響を受けたものであるとも、本件各入札後である平成29年度以降の入札が上記事項の影響が解消された状態で行われたものであるとも認められない。 (エ) その他の指摘(①同発注者及び同地域の入札である茨城県内の各浄水場におけ る入札結果が平成28年度を基準(100%)とした場合最大で276.93%もの 差が生じている(被告本町化学)、②本件各入札では茨城県内に再生工場を有することが入札条件になっていた(被告エーシーケミカル)、③平成28年度落札価格(507万円)が公正取引委員会の立入検査前であるにもかかわらず、立入検査後の平成29年度の落札価格(327万0800円)と有意な差がない(被告幸商事)、④平成28年度落札価格が平成27年度落札価格より大幅に下落した、談合から離脱したセラ ケムの窓口業者の入札価格が平成28年度、平成29年度とその後とでは顕著な高低差が見られる(被告朝日沪過材))について上記①④について、入札に参加する業者側の事情は様々であると考えられるのであり、他の浄水場との落札価格の比率に差異が見られること(上記①)、談合離脱業者の入札価格に高低差がみられること(上記④)をもって、直ちに、価格形成に影響 を及ぼす経済的要因等があることをうかがわせる事情に当たるとはいえない。 上記②について、本件各入札とその後に行われた入札において、茨城県内に再生工場を有することは入札条件になっていない(甲11~13、30の1~4)。 上記③④について、平成28年度入札の落札価格が前年度から大きく下落したのは、被告太平化学の窓口業者(東鉱商事)が、インサイダー他社が落札する心配をす ることなく、アウトサイ 0の1~4)。 上記③④について、平成28年度入札の落札価格が前年度から大きく下落したのは、被告太平化学の窓口業者(東鉱商事)が、インサイダー他社が落札する心配をす ることなく、アウトサイダーとなったセラケム等に勝てる価格設定をして入札したという、いわば不完全な競争の結果であることは既に説示したとおりであり、公正取引委員会の立入検査(平成29年2月)を契機に談合行為が取りやめられ、自由かつ公正な競争が行われた平成29年度の落札価格との差は約180万円と有意なものである。他方、以上に説示した点に照らすと、平成27年度までの落札価格と、平成 28年度入札及び平成29年度入札の各落札価格の差自体が、経済的要因等の変動があったことをうかがわせる事情であるとはいえない。 エ小括以上のとおり、本件は、談合の前後を通じて同一浄水場の、同一条件による、同一の委託業務内容の一般競争入札の事案であること(前記ア)、談合の前後を通じて、消 費者物価指数、賃金の指標に大きな変動がないこと(前記イ)、他方で、被告らの指摘 は的確なものとはいえないこと(前記ウ)からすれば、入札における価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等にさしたる変動がないとはいえないことをうかがわせる的確な事情はなく、本件各入札と平成29年度入札から令和2年度入札までの各入札は、入札における価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等にさしたる変動がないと認められる。 ⑶ 談合終了直後の落札価格の平均値をもって想定落札価格を算定することが相当であるか。相当である場合には、いかなる年度の落札価格を算定の基礎とすべきであるか(算定の基礎から除外すべき年度があるか、算定の基礎に加えるべき年度があるか)(争点2)ア を算定することが相当であるか。相当である場合には、いかなる年度の落札価格を算定の基礎とすべきであるか(算定の基礎から除外すべき年度があるか、算定の基礎に加えるべき年度があるか)(争点2)ア本件が、談合の前後を通じて同一浄水場の、同一条件による、同一の委託業務 内容の一般競争入札の事案であることに照らし、原告が主張するように、談合終了直後の入札である平成29年度から、本件提訴前に原告が損害賠償請求をした時期(令和3年3月。甲52の1、弁論の全趣旨)の直近である令和2年度までの4年分の落札価格を算定の基礎とし、その平均値をもって想定落札価格を算定することには、相応の合理性があるというべきである。 この点について、被告らは、多数の入札事例を基礎として想定落札価格を求めている入札談合損害賠償事件の裁判例を参照して、本件のように4件のみ落札価格の平均値で想定落札価格を算定するのは、少なすぎ、相当性がない旨主張する。 しかしながら、被告らが指摘する裁判例の多くは建設工事に係る談合事件であり、そうした事案では、談合があった事案とそれ以外の入札事案とで工事の規模や内容が 異なるのが通常であるから、多数の入札事例を算定の基礎とすることが必要であり、相当であると考えられるのに対し、本件は、談合の前後を通じて同一浄水場の、同一条件による、同一の委託業務内容の一般競争入札の事案であるから、被告らが主張するように多数の入札例を算定の基礎としなければならないものとは必ずしもいえない。 イ算定の基礎から除外すべき入札年度の有無(①落札率の低い平成29年度、令 和2年度の各入札(被告本町化学)、②新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けた令和2年度の入札(被告本町化学)、③大幅な赤字が生じるような落札価格であった ①落札率の低い平成29年度、令 和2年度の各入札(被告本町化学)、②新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けた令和2年度の入札(被告本町化学)、③大幅な赤字が生じるような落札価格であった平成30年度、平成31年度の各入札(被告朝日沪過材)、④公正取引委員会の立入検査直後でありダンピング(たたき合い)が疑われる平成29年度、平成30年度の各入札(被告エーシーケミカル、被告太平化学)) 上記①について、本件で落札率に着目することが相当でないことは、後記⑷に説示するとおりである。 上記②について、落札価格は、平成29年度と平成30年度が327万0800円、326万8000円と概ね同水準で推移した後、平成31年は451万円と上昇が見られたが令和2年度は396万円に下落したこと、令和2年度の非落札会社の入札価 格は419万円から450万3200円と、同年度の落札価格とそれほど差のない水準であったこと(認定事実⑴エ)、政府により新型コロナウィルスに係る緊急事態宣言が最初に発出されたのは令和2年4月7日、茨城県が対象とされたのは同月16日であり(公知の事実)、いずれも令和2年度入札の実施(同年3月19日。甲18の4)よりも後であることからすれば、令和2年度入札が新型コロナウィルス感染拡大 の影響を受けており、算定の基礎から除外すべきものであるとまではいえない。 上記③④について、既に説示したところを総合すると、平成28年度入札の落札価格の507万円は、インサイダー他社が落札することを心配することなく、アウトサイダーとなったセラケム等に勝てる価格という、いわば不完全な競争による価格によるものであり、平成29年2月の公正取引委員会による立入検査を契機に談合行為が 取りやめられたことで自由かつ公正な価格競争が行われた結 ケム等に勝てる価格という、いわば不完全な競争による価格によるものであり、平成29年2月の公正取引委員会による立入検査を契機に談合行為が 取りやめられたことで自由かつ公正な価格競争が行われた結果、平成29年度から令和2年度までの間の落札価格が、平成28年度の落札価格よりも低額な326万8000円から451万円までの範囲で推移したと認められるのであり、被告らが指摘する各年度の落札価格を算定の基礎から除外すべきものとはいえない。 以上によれば、上記主張はいずれも採用できない。 ウ算定の基礎に加えるべき入札年度等の有無(①平成29年度から令和4年度ま でを算定の基礎とすべきである(被告朝日沪過材)、②令和3年度から令和5年度までの落札価格も算定の基礎に加えるべきである(被告太平化学)、③鹿行浄水場の令和3年度から令和5年度までの落札価格を算定の基礎に加えるべきである(被告太平化学))上記①②について、鰐川浄水場の落札価格は、令和2年度は396万円、令和3年 度は385万円であったが、それ以降は上昇に転じ、令和4年度は445万円、令和5年度の475万円、令和6年度の650万円となったこと(認定事実⑴エ)、活性炭の製造販売を行うクラレが、原料費や物流費が高騰したことを理由に令和4年1月以降半年ごとに販売価格を値上げていること(甲57~59)、令和2年4月以降政府による緊急事態宣言が発せられ、令和3年度から令和4年度にかけて、新型コロナウ ィルス蔓延に伴う国内輸送コストの上昇、ロシアによるウクライナ侵攻といった不安定な海外情勢が見受けられたこと(公知の事実)からすれば、令和3年度の落札価格を算定の基礎に加えることの相当性には疑問を差し挟む余地があり、令和4年度以降については相当性がないというべきである。 定な海外情勢が見受けられたこと(公知の事実)からすれば、令和3年度の落札価格を算定の基礎に加えることの相当性には疑問を差し挟む余地があり、令和4年度以降については相当性がないというべきである。 上記③については、鰐川浄水場と鹿行浄水場は、それぞれで入札条件を定めて実施 される別の案件であり、鰐川浄水場自体で4年分の落札価格を算定の基礎とすることが可能な本件において、別の浄水場の落札価格を算定の基礎に入れることが相当とはいえない。 以上によれば、上記主張はいずれも採用できない。 ⑷ 前記⑶が不相当である場合には、①特定年度ないし特定年度の平均落札価格を もって想定落札価格とするべきであるか(被告朝日沪過材)、②㋐落札価格と予定価格の比率(落札率)をもって想定落札価格とするべきである(被告本町化学)、㋑他の入札談合損害賠償請求の事案と同様に、民事訴訟法248条により損害額を算定するべきであるか(被告本町化学、被告幸商事)(争点3)前記⑶が不相当といえないことは説示したとおりであるが、この点を措いて検討し ても、上記主張はいずれも採用できない。 すなわち、上記①について、既に説示したところを総合すると、想定落札価格を平成28年度落札価格507万円、平成28年度及び平成29年度落札価格の平均417万0400円、平成29年度から令和4年度までの落札価格平均388万4800円のいずれかとすべき旨の被告朝日沪過材の主張を相当とする事情を見出し難い。 上記②㋐について、原告が発注する各浄水場の活性炭再生業務は、国や地方公共団 体が行う建設工事のような積算基準がないことから、各年度の入札(3月頃)の2、3か月前に、窓口業者数社から見積価格を徴した上で予定価格を決定しているところ(甲26の1、弁論の全趣旨) 方公共団 体が行う建設工事のような積算基準がないことから、各年度の入札(3月頃)の2、3か月前に、窓口業者数社から見積価格を徴した上で予定価格を決定しているところ(甲26の1、弁論の全趣旨)、予定価格は、平成26年度が1420万円、平成27年度が1498万円、平成28年度が1295万円、平成29年度が1342万円であったのに対し(平成29年度は公正取引委員会の立入検査(同年2月21日)前に 決められていたものと推認される。)、平成30年度は前年度から大きく下落して630万円となり、平成31年度は532万円、令和2年度は936万円と推移している(弁論の全趣旨。被告本町化学準備書面(6)8頁参照)。そして、セラケムの営業担当者のJは、被告本町化学のAと連絡をとって見積価格を高くしていた旨供述していること(甲32)からすれば、平成29年度までの予定価格は、それ自体が談合行為 による影響を受けていたというべきである。また、平成30年度以降の予定価格についても、窓口業者数社からの見積価格を参照したという点において、建設工事による積算基準の場合と対比すると客観性、相当性に劣る点があるといえる上、落札率(落札価格÷予定価格)は、平成30年度が51.87%、平成31年度が84.77%、令和2年度が42.31%と必ずしも一定の傾向を示しているとはいえない。以上に よれば、落札価格と予定価格の比率(落札率)をもって想定落札価格を算定することは、相当性を欠く。 上記②㋑については、被告らが指摘する入札談合損害賠償事件の裁判例の多くは、談合があった事案とそれ以外の入札事案とで工事の規模や内容が異なるのが通常である建設工事に係る談合事件であることから、損害の性質上その額の立証をすること が極めて困難であるとき(民事訴訟法248条) あった事案とそれ以外の入札事案とで工事の規模や内容が異なるのが通常である建設工事に係る談合事件であることから、損害の性質上その額の立証をすること が極めて困難であるとき(民事訴訟法248条)に当たることが多いものと考えられ るが、本件は、同一浄水場における、委託業務内容を同一にする一般競争入札事案であり、上記のように損害の性質上その額の立証をすることが極めて困難であるときに当たるとまでは言い難い。 ⑸ 具体的損害額について(争点4)ア以上によれば、本件では、鰐川浄水場の平成29年度から令和2年度の落札価 格を算定の基礎として、その平均値をもって想定落札価格とするのが相当であり、その価格は、別紙2の「平均落札価格(想定落札価格)」欄のとおり375万2200円となる。 これにより算定した被告らの違法行為により原告に生じた損害額元本は、別紙2の「3 損害額(税込)」及び別紙3のとおり、平成26年度分が1億5310万994 4円(a)、平成27年度分が1億4503万0755円(b)、平成28年度分が2056万5619円(c)であり、確定遅延損害金(窓口業者に支払った再生業務委託費の各支払日から各年度の最も遅い支払日の前日までのもの)は、別紙4のとおり、平成26年度分(平成27年6月4日までのもの)が370万9194円(d)、平成27年度分(平成28年5月9日までのもの)が329万9420円(e)、平成28 年度分(平成29年5月30日までのもの)が46万0728円である(f)。 そして、弁護士費用は、平成26年度分は1531万円(g)、平成28年度分は1450万円(h)、平成28年度分は206万円(i)が相当である。 以上によれば、認容額は次のとおりとなる(いずれも連帯支払)(ア) 平成26年度分(被 分は1531万円(g)、平成28年度分は1450万円(h)、平成28年度分は206万円(i)が相当である。 以上によれば、認容額は次のとおりとなる(いずれも連帯支払)(ア) 平成26年度分(被告本町化学、被告エーシーケミカル及び被告幸商事)201億7212万9138円(a+d+g)及び内金1億6841万9944円(a+g)に対する平成27年6月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金(イ) 平成27年度分(被告本町化学及び被告朝日沪過材)1億6283万0175円(b+e+h)及び内金1億5953万0755円(b+h)に対する平成28年5月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害25金37 (ウ) 平成28年度分(被告本町化学及び被告太平化学)2308万6347円(c+f+i)及び内金2262万5619円(c+i)に対する平成29年5月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金イ 被告らの主張(①損害額の算定は謙抑的であるべきである(被告本町化学、被告幸商事、被告朝日沪過材)、②被告幸商事が平成26年度入札で得た粗利が9555万3930円にすぎないことが考慮されるべきである(被告幸商事)))について上記①について、想定落札価格の算定の基礎とした落札年度と落札価格は、平成29年度の327万0800円、平成30年度の326万8000円、平成31年度の451万円、令和2年度の396万円である。談合行為の影響の有無という観点からすれば、本件各入札からの時間の経過が短く、談合行為終了直後である平成29年度10の落札価格や、これとほぼ同額である平成30年度の落札価格のみを想定落札価格の算定の基礎とすることの方が、より合理性があるとも考えられるところでもあるが、これにより損害額を算定 平成29年度 の落札価格や、これとほぼ同額である平成30年度の落札価格のみを想定落札価格の算定の基礎とすることの方が、より合理性があるとも考えられるところでもあるが、これにより損害額を算定すると前記⑴よりも大きくなるのであり、平成29年度から令和2年度までの落札価格の平均値を用いることは、むしろ謙抑的に損害額を認定したというべきものである。 上記②について、既に説示した談合による共同不法行為の態様に照らすと、原告との関係では、共同不法行為者がいずれも全額の支払義務を負うのであり、被告幸商事が得た具体的な粗利額が原告の被告幸商事に対する請求権の消長に影響を及ぼすものではない。 以上によれば、上記主張はいずれも採用できない。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用は民事訴訟法61条を、仮執行宣言は同法259条1項を適用して主文のとおり判決する。 なお、被告本町化学の仮執行免脱宣言の申立ては、相当でないからこれを付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官佐々木健二 裁判官長谷川健太郎 裁判官井上かれん 39 ページ、40 ページの当事者目録は記載省略

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