平成12(ワ)8343 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月27日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6663.txt

判決文本文48,810 文字)

主文 1 被告は,原告訴訟引受人に対し,2億円及びこれに対する平成12年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,株式会社なにわ銀行(以下「なにわ銀行」という。)が有限会社明大住宅(以下「明大住宅」という。)に対して8億円,Aに対して1億8000万円及び株式会社大真(以下「大真」という。)に対して2億4200万円の合計12億2200万円の融資を行ったことについて,当時,なにわ銀行の代表取締役兼取締役(頭取)であった被告は,上記各融資金の回収が困難であり,困難であるとの判断も可能であったところ,決裁権者として,上記各融資を否決するか,決定・実行するならより適切な債権保全措置を確保すべき善管注意義務(商法254条3項,民法644条)及び忠実義務(商法254条ノ3)を負っていたにもかかわらず,同義務に違反して上記各融資を決定・実行し(明大住宅及び大真に対する融資),あるいは,代表取締役(頭取)としてなにわ銀行の業務執行全般について監督すべき注意義務又は取締役として決裁行為を監視すべき注意義務を負っていたにもかからず,同義務に違反してBが上記融資を決裁するに際して何ら異を唱えず(Aに対する融資),なにわ銀行に少なくとも合計4億7403万7882円の損害を与えたと主張して,なにわ銀行と株式会社福徳銀行(以下「福徳銀行」という。)の特定合併により設立された脱退原告から損害賠償請求権等を譲り受けた原告訴訟引受人が,被告に対し,商法266条1項5号に基づき,上記損害のうち2億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ 等を譲り受けた原告訴訟引受人が,被告に対し,商法266条1項5号に基づき,上記損害のうち2億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を賠償するよう求めた事案である。 1 当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 当事者等ア原告訴訟引受人等(ア) なにわ銀行は,昭和26年10月に相互銀行法施行により転換した株式会社大阪相互銀行(以下「大阪相互銀行」という。)を前身とし,平成元年2月,普通銀行に転換して株式会社なにわ銀行に商号を変更した。 (イ) 脱退原告は,なにわ銀行と福徳銀行との特定合併(平成10年法律第133号による改正前の預金保険法附則6条の3第1項)によって,平成10年10月1日に設立された,預金又は定期積金の受入れ,資金の貸付け,手形の割引及び為替取引等を目的とする株式会社であり,平成13年5月15日現在の発行済株式の総数は28万7777.80株,資本の額は金182億3266万円である(弁論の全趣旨)。 (ウ) 原告訴訟引受人は,平成8年7月26日に設立された,特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法(平成8年法律第93号)2条2項に規定された特定住宅金融専門会社から譲り受けたその貸付債権その他の財産の管理,回収及び処分等を目的とする株式会社住宅金融債権管理機構を前身とする株式会社(平成11年4月1日商号変更)であり,平成13年12月7日現在の発行済株式の総数は424万株,資本の額は金2120億円である(弁論の全趣旨)。 (エ) 原告訴訟引受人は,脱退原告から,平成13年2月9日,脱退原告が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権及び契約以外の原因に基づいて脱退原告が有する権利( 億円である(弁論の全趣旨)。 (エ) 原告訴訟引受人は,脱退原告から,平成13年2月9日,脱退原告が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権及び契約以外の原因に基づいて脱退原告が有する権利(現在及び過去における脱退原告の役職員等に対し責任追及する一切の権利を含む。また,既に権利が確定しているもののほか,同月13日においてその存在の確認若しくは内容の特定が未了であるものを含む。)等を代金1895億3363万0736円で買い受けた。脱退原告は,同月28日到達の書面にて,被告に対し,その旨通知した(甲A8,甲A9の1,2)。 イ被告被告は,昭和28年3月に大阪相互銀行に入行し,昭和44年5月に同行の取締役に,昭和62年6月に同行の代表取締役社長に,平成元年2月になにわ銀行の代表取締役頭取に,平成9年6月に同行の取締役相談役にそれぞれ就任し,平成10年6月に同行の取締役を辞任した。 ウ BBは,昭和27年5月に大阪相互銀行に入行し,昭和49年5月に同行の取締役に,昭和60年3月に同行の常務取締役に,昭和63年6月に同行の専務取締役にそれぞれ就任し,平成5年6月になにわ銀行の取締役を退任した。 (2) 明大住宅に対する融資ア明大住宅は,不動産の売買,賃貸,仲介,管理業及び綜合建築請負等を目的とする有限会社であり,Cが代表取締役を務めていた(甲B1)。 イなにわ銀行は,明大住宅に対し,平成5年3月31日,弁済期を同年9月30日(期日一括返済),金利を年7.413パーセントとする約定で,8億円を貸し付けた(以下「本件融資1」という。)。 (3) Aに対する融資ア A(昭和19年10月30日生,平成9年12月29日死亡)は,中筋住宅の屋号で建売住宅を主業務とする地元不動産業者であった。 イなにわ銀行は,Aに対し,平成5年3月31日,弁済期 Aに対する融資ア A(昭和19年10月30日生,平成9年12月29日死亡)は,中筋住宅の屋号で建売住宅を主業務とする地元不動産業者であった。 イなにわ銀行は,Aに対し,平成5年3月31日,弁済期を平成6年3月29日(期日一括返済),金利を年8.25パーセントとする約定で,1億8000万円を貸し付けた(以下「本件融資2」という。)。 (4) 大真に対する融資ア大真は,不動産の売買・仲介・管理,土木建築設計施工及び請負等を目的とする株式会社であり,Dが代表取締役を務めていた(甲D1)。 イなにわ銀行は,大真に対し,平成5年3月31日,返済方法について毎月100万円あて59回分割返済し,平成10年3月31日に残額1億8300万円を一括返済する,金利を年7.0パーセントとするとの約定で,2億4200万円を貸し付けた(以下「本件融資3」という。)。 2 争点(1) 本件融資1から3まで(以下「本件各融資」と総称する。)について,被告に善管注意義務違反及び忠実義務違反があるか。 (2) 損益相殺が認められるか。 (1)(善管注意義務違反及び忠実義務違反)について(原告訴訟引受人の主張)ア被告の善管注意義務及び忠実義務被告は,銀行の取締役として,現在及び予想し得る将来の経済情勢(景気の動向,資産の価格動向,各業界の発展・衰退の動向を含む。)を踏まえつつ,融資先企業の業種,規模,業績,経営者の能力及び保有資産並びにこれらを前提とする当該企業の経営状況全般のほか,予定されている返済資金の調達方法とその方法による調達の見込み,従前の融資金の返済状況,当該融資の必要性,当該融資に係る担保の性質・内容・価値等の諸事情を総合勘案して,融資金の回収可能性について十分に検討した上で,当該融資をすべきかどうかを判断しなければならなかった。そして,融資の決裁 融資の必要性,当該融資に係る担保の性質・内容・価値等の諸事情を総合勘案して,融資金の回収可能性について十分に検討した上で,当該融資をすべきかどうかを判断しなければならなかった。そして,融資の決裁に当たっては,上記諸般の事情を総合勘案し,融資金の回収が困難であると判断される場合には,当該融資を決定・実行してはならず,仮に決定・実行するならより適切な債権保全措置を確保すべき善管注意義務及び忠実義務を負っていた。 イ本件各融資の回収可能性(ア) 総論a 債務超過・実質延滞先への融資明大住宅,A及び大真は,いずれも,なにわ銀行及び株式会社なにわファイナンス(以下「なにわファイナンス」という。)から不動産を担保に商品不動産購入資金及び運転資金等の融資を受けていた不動産・建設業者(建売業者)であるが,建売住宅やマンションの販売が滞り,売上げ及び利益が共に減少して過大な債務を負担し,当該担保物件の価値も著しく下落した状況にあった。したがって,明大住宅,A及び大真は,本件各融資の約2年前から,物件売却遅延等によってなにわ銀行及びなにわファイナンスに対する既存債務の返済が極めて困難な状況に陥り,なにわ銀行の既存融資について実質期限延長を繰り返し,かつ,なにわファイナンスの原融資についても実質延滞状態にあった。 b 返済困難な事業への融資本件各融資の返済原資は,いずれも入担物件及び商品物件の売却等とされていた。しかし,そもそも明大住宅,A及び大真に対するなにわファイナンスの原融資については,当該物件の売却の目処が立たず,返済期限延長が約2年にわたって繰り返されていたものであるところ,本件各融資時点においても,従前とは異なる新たな販売見通し及び代替計画等,行き詰まった現状を打開し得る具体的な返済計画はないままの状態であった。 c 大幅な担保不足 り返されていたものであるところ,本件各融資時点においても,従前とは異なる新たな販売見通し及び代替計画等,行き詰まった現状を打開し得る具体的な返済計画はないままの状態であった。 c 大幅な担保不足本件各融資は,いずれも稟議書上明白な担保不足であった。また,保証人(明大住宅及び大真の各代表者ら)も既に多額の連帯保証債務を負担する状況にあった。 d 被告の認識可能性被告は,①なにわ銀行の既存融資及びなにわファイナンスの本件各融資の原融資の管理に際して作成されていた調査資料等により,②本件各融資を採択した貸出審査会からの事後報告を受けていたことにより,また③本件各融資の稟議資料により,前記aからcまでの事情を認識し,又は少なくとも認識可能であった。 (イ) 本件融資1a 明大住宅の経営成績・財務状態(a) 過大な債務負担なにわ銀行は,昭和63年1月以降,明大住宅に対する融資取引を継続し,平成元年12月の融資残高6億6801万7000円をピークに,本件融資1の直前である平成5年3月時点の融資残高は2億6231万7000円であった。また,なにわファイナンスは,平成2年4月26日,明大住宅に対し6億円を貸し付けていたが,平成5年3月時点の同融資の残高は5億6500万円であった。 (b) 劣悪な経営成績・財務状況明大住宅は,不動産価格の下落・ユーザーの買控え等により,平成3年4月期には売上高が前期の半分以下に減少し,借入金利負担により多額の経常損失を計上し,債務超過で低調のまま推移した。 そして,明大住宅は,平成3年4月当時,10億円以上もの棚卸資産を抱え,借入金利負担軽減を図るために商品物件を損切り売却で一掃する等の対応を迫られていたが,それでも物件売却が滞って借入金減少も進まず,苦しい経営状態が続いていた。 (c) 返済期限延長・金利減 を抱え,借入金利負担軽減を図るために商品物件を損切り売却で一掃する等の対応を迫られていたが,それでも物件売却が滞って借入金減少も進まず,苦しい経営状態が続いていた。 (c) 返済期限延長・金利減免明大住宅は,平成2年6月ころから,なにわ銀行に対し,同行からの融資について,商品物件売却遅延を理由とする返済期限延長を繰り返し申し込んでいた。そこで,なにわ銀行は,返済期限延長や借入金利引下げに応じるだけでなく,物件損切り処分に際しての売却損失補填の運転資金まで融資していた。 また,明大住宅は,(a)のなにわファイナンスからの6億円の借入れについても,物件売却が遅延していたため,平成3年10月に6か月間,平成4年5月に1年間と返済期限延長を繰り返していた。 (d) 被告の認識可能性被告が,本件融資1について貸出審査会の審議に関する事後報告を受け,融資稟議において添付資料とされていた明大住宅の過去2年分の決算報告書によって同社の劣悪な経営成績と財務状況を認識し,又は少なくとも認識可能であったことは明白である。 b 経営意欲・返済意思の減退明大住宅のC社長は,①事務所を含め全て売却することにより債務を解消したいと決心し,②当初本件融資1を希望しておらず,むしろ平成5年4月1日以降の利息支払い及び金利支払支援のための融資も拒否していた。そこで,なにわ銀行は,住吉支店の元支店長を交渉役として融資に応じるようC社長を説得し,既に経営意欲も返済意思も著しく減退していた明大住宅に対して,その意向に反してまで強引に本件融資1を実行した。 そして,被告は,本件融資1の稟議資料から,このような状況について認識していた。 c 担保への極端な依存上記aのとおり,明大住宅の経営成績及び財務状況は劣悪であった。 また,なにわファイナンスに対する明大住宅の返済原資は 資1の稟議資料から,このような状況について認識していた。 c 担保への極端な依存上記aのとおり,明大住宅の経営成績及び財務状況は劣悪であった。 また,なにわファイナンスに対する明大住宅の返済原資は入担物件売却及び今後の建売計画による代金等しか存在しなかったところ,不動産価格の引き続く下落等の事情により,当該物件はいっこうに売却することができず,そのため,なにわファイナンスは,明大住宅に対し,平成3年10月以降,返済期限の延長を繰り返していたが,本件融資1の時点において従前の状況を打開できる新たな計画等は何ら具体化されていなかった。 したがって,なにわ銀行としては,本件融資1の回収に関しては,ひとえに入担物件の売却代金及び今後の建売計画に漠然と期待するほかなかったものであり,同融資は極端に担保に依存したものであった。 d 著しい担保不足(a) 本件融資1の時点において,なにわ銀行が取得した不動産担保の評価額は2億7740万円であり,本件融資1の実融資額5億9100万円に対して3億1360万円以上の担保不足の状態であった。 (b) 被告は,路線価の1.5倍を時価(ないし実勢価格)とみなす従前の評価方式を前提として,本件融資1の担保物件は,同融資の稟議資料中の時価額の5割増の価値があったから,本件融資1について担保不足はなかった旨主張するが,そのような担保評価は本件融資1の稟議資料のどこにも客観化・顕在化していないこと,本件融資1当時も前年度以上の著しい地価下落傾向にあったこと,これを踏まえた日本銀行の指導により,なにわ銀行が融資事務規定を改訂して不動産担保評価の際の基準となる時価を路線価の1.0倍へと引き下げていたこと等を勘案すれば,上記担保評価手法は不当である。 (ウ) 本件融資2aAの経営成績・財務状態(a) 過大な債務負担 て不動産担保評価の際の基準となる時価を路線価の1.0倍へと引き下げていたこと等を勘案すれば,上記担保評価手法は不当である。 (ウ) 本件融資2aAの経営成績・財務状態(a) 過大な債務負担なにわ銀行は,昭和52年1月以降,Aに対する融資取引を継続し,昭和61年10月の融資残高4億3548万円をピークに,本件融資2の直前である平成5年3月時点の融資残高は2億3068万2000円であった。また,なにわファイナンスは,平成2年2月28日,Aに対し1億8000万円を貸し付けていたが,平成5年3月時点の同融資の残高は1億8000万円のままであった。さらに,Aは,その他の8つの金融機関に対して合計21億円以上の借入金債務を負担していた。 (b) 劣悪な経営成績・財務状況Aの売上げは平成4年度において平成3年度の20分の1に減少し,物件販売は著しく停滞していた。その結果,Aの平成5年3月時点の申告所得はゼロとなった。 (c) 返済期限延長の反復(実質延滞状況)Aは,平成3年4月ころから,なにわ銀行に対し,同行からの融資について,商品販売遅延により返済原資が捻出できないことを明らかにして返済期限延長を度々申し込んでおり,なにわ銀行は,これに繰り返し応じていた。 また,Aは,(a)のなにわファイナンスからの1億8000万円の借入れについても,物件売却が遅延して返済原資を捻出できないため,平成4年2月に1年間,平成5年2月15日に1年間と返済期限延長を繰り返しており,実質延滞状況にあった。 (d) Bの認識可能性Bは,貸出審査会での審議において,(a)から(c)までの事情を認識し,又は少なくとも認識可能であった。 b 著しい担保不足(a) 本件融資2の時点において,なにわ銀行が取得した不動産担保の評価額は8380万円であり,本件融資2の融資額 から(c)までの事情を認識し,又は少なくとも認識可能であった。 b 著しい担保不足(a) 本件融資2の時点において,なにわ銀行が取得した不動産担保の評価額は8380万円であり,本件融資2の融資額1億8000万円に対して9620万円もの担保不足の状態であり,かつ,保証人も徴求できないままであった。 (b) (イ)d(b)のとおり(エ) 本件融資3a 大真の経営成績・財務状況(a) 過大な債務負担なにわ銀行は,昭和57年10月以降,大真に対する融資取引を継続し,平成元年4月の融資残高13億9736万1000円をピークに,本件融資3の直前である平成5年3月時点の融資残高は4億6739万2000円であった。また,同月時点のなにわファイナンスからの融資残高は2億4200万円であり,兵庫コンサルティング株式会社(以下「兵庫コンサルティング」という。)からの8億円,なにわ銀ファクターからの1億0500万円等も合わせると,同月時点で,大真は,合計16億円以上の借入債務を負担していた。 (b) 劣悪な経営成績・財務状態大真の本件融資3以前の経営成績・財務状態は著しく悪化し,多額の借入金利支払いを負担し,著しい債務超過状態であった。 (c) 返済期限延長・金利減免の要請大真は,なにわ銀行からの融資について,商品物件売却遅延のため返済原資を約定期限に捻出できなくなり,平成3年4月ころから,同行に対し,返済期限延長を申請するようになり,平成4年3月以降は,金利減免要求も繰り返し行っていた。 また,大真は,なにわファイナンスからの借入についても,物件売却の目処が立たなかったため,融資対象物件の使途を商品物件から自用の長期保有資産に変更せざるを得なくなり,平成3年8月28日に5年間の長期借入れに変更するなどして借り換えていた。 (d) 債務不履行による 処が立たなかったため,融資対象物件の使途を商品物件から自用の長期保有資産に変更せざるを得なくなり,平成3年8月28日に5年間の長期借入れに変更するなどして借り換えていた。 (d) 債務不履行による競売申立て大真は,平成4年6月から,(a)の兵庫コンサルティングからの借入金債務8億円について債務不履行に陥り,平成4年10月21日に同社から競売申立てをされた。 (e) 被告の認識可能性被告は,本件融資3について貸出審査会の審議に関する事後報告を受け,(a)から(d)までの事情を認識し,又は少なくとも認識可能であった。 b 著しい担保不足(a) 本件融資3の時点において,なにわ銀行が取得した担保は,不動産が7340万円,預金が6579万1000円の合計1億3919万1000円であり,本件融資3の融資額2億4200万円に対して1億0280万円もの担保不足の状態であった。 (b) (イ)d(b)のとおりウ経営判断の原則被告は,本件各融資を,系列ノンバンクたるなにわファイナンスの破綻を回避するために行ったとし,いわゆる「経営判断の原則」によって注意義務違反による損害賠償責任を負わない旨争うので,以下,反論する。 (ア) 経営判断の原則の意義a 原則的要件一般事業会社において,いわゆる経営判断の原則が適用されるためには,①当該判断の形成過程・手続が合法的かつ合理的なものであること,②当該判断内容それ自体も合法的かつ合理的であること,③当該判断と取締役との利益相反・忠実義務違反的事情が存在しないことが必要である。 b 銀行業務の特殊性からの変容①銀行においては,一般事業会社と異なり,取締役の兼職が制限されていること(銀行法7条)及び株主の帳簿閲覧権が否定されていること(同法23条)に応じ,取締役の注意義務を厳しく解さざるを得ないこと,②銀 銀行においては,一般事業会社と異なり,取締役の兼職が制限されていること(銀行法7条)及び株主の帳簿閲覧権が否定されていること(同法23条)に応じ,取締役の注意義務を厳しく解さざるを得ないこと,②銀行の公共性(同法1条)に鑑み,同法は,銀行業務を免許制とし(同法4条),資本や経理内容の健全性を図るとともに(同法第3章),監督官庁に強力な監督権限を付与し(同法第4章),もって経営の健全性及び安全性を強く求めているところ,このような銀行の経営に,一般事業会社におけると同様のリスクを持ち込むことは銀行取締役の裁量の範囲を逸脱するものであり,許されないこと,③銀行取締役は,あくまで銀行法を初めとする法令に違反しないことを前提として,銀行業務の公共性,健全性,安全性を害しない範囲で,経営の裁量を与えられているに過ぎないことなどから,銀行取締役についての経営判断原則の具体的適用は一般事業会社に比べてより厳格にされなければならず,銀行取締役の裁量はより限定されるべきである。 c 破綻系列会社に対する支援・救済における経営判断の原則の考慮要素さらに,既に破綻に瀕している系列会社に対する支援策として銀行が回収可能性に疑問のある新たな融資を行うという極めて特殊な場面においては,経営判断原則を無限定かつ安易に適用することはなおさら許されるべきではない。 銀行が,既に破綻に瀕している系列会社を支援のために,当該系列会社の債務者に対する肩代わり融資等の新たな金銭支出を伴う支援行為を行うか否かを決定する場合に,当該判断が経営判断の原則の適用を受けるか否かを検討するためには,(1)当該支援行為の必要性が極めて高いこと,(2)支援内容が合理的であること(①支援目標が合理的に設定されていること,②支援目標実現の蓋然性があること,③達成すべき支援目標に照らして支援に には,(1)当該支援行為の必要性が極めて高いこと,(2)支援内容が合理的であること(①支援目標が合理的に設定されていること,②支援目標実現の蓋然性があること,③達成すべき支援目標に照らして支援に要する銀行の負担・銀行への影響が必要最小限度であること),(3)当該支援方法・手段に全体として社会的相当性が認められることを考慮すべきである。 (イ) なにわファイナンスを支援する必要性の不存在a なにわファイナンスの実態(a) なにわ銀行は,なにわファイナンスに対して,直接の資本参加をしておらず,子会社であるなにわ銀ファクター等を通じて株式を保有していたに過ぎないのであって,なにわファイナンスは,なにわ銀行の単なる関係会社であった。 (b) なにわファイナンスは,本件各融資当時,既に自力再建が不可能な状態であり破綻に瀕していた。 (c) なにわ銀行は,破綻に瀕していたなにわファイナンスに対して,平成4年4月以降,肩代わり融資を繰り返したほか,同年5月29日から同年10月12日にかけて,銀行法13条の融資限度額に達すべき程の支援融資(合計35億円)を,その回収の見込みを度外視してまで行っていた。 (d) 本件各融資実行の結果,なにわファイナンスに残された業務は,借地権付マンション2棟の管理と,いわゆる「死んだ先」に対する競売手続からの回収のみとなった。 (e) このように,本件各融資当時,なにわファイナンスは,もはや新規融資等の新規事業を行うことはなく,事実上清算を待つだけで再生困難な状態であったから,なにわ銀行が新規の金銭支出を伴う支援・救済を行うに値しない存在であった。 b いわゆる「母体行責任」について(a) 被告は,なにわファイナンスの取引金融機関である株式会社東海銀行(以下「東海銀行」という。)及び株式会社日本長期信用銀行(以下「長 値しない存在であった。 b いわゆる「母体行責任」について(a) 被告は,なにわファイナンスの取引金融機関である株式会社東海銀行(以下「東海銀行」という。)及び株式会社日本長期信用銀行(以下「長銀」という。)による母体行責任の具体的追及行為への対応策として本件各融資を行うことが必要であったと主張するが,東海銀行及び長銀から母体行責任を追及されていたという事実はなく,被告の主張はその前提事実を欠き失当である。 (b) また,被告の主張する「母体行責任」は,法的責任ではないことは明白であり,そのことは被告も認めている。 c 信用不安発生の危険の不存在被告は,信用不安の発生を防止するために,本件各融資を行った旨主張するが,なにわファイナンスが破綻したからといって,なにわ銀行について他の金融機関との貸借の停止や取付け騒ぎなどの信用不安が発生する具体的危険性,蓋然性はなかった。 (ウ) なにわファイナンスに対する支援決定に至る判断過程の不合理性a 本件各融資の判断過程の不合理性(a) 被告は,本件各融資の返済可能性に関する詳細な資料の提出・検討を指示しなかった。 (b) 本件各融資は,被告からの基本的承諾を得ているトップダウン案件的なものとして,融資を決定・実行するという結論が先行していたため,本件各融資には回収可能性・安全性の点で問題があったことは明白であったのに,通常の融資判断では許容され得ない緩やかな判断によってこれらが是とされた。 (c) なにわ銀行が平成5年4月9日付けで日本銀行に対して提出した「経営改善計画について」と題する書面(甲A12)は,不良債権のうち要償却債権の総額について何ら言及しておらず,単に平成4年度から平成7年度までの償却可能額及び償却見通しについて触れているだけであり,なにわ銀行は,要償却債権の総額(すなわち 2)は,不良債権のうち要償却債権の総額について何ら言及しておらず,単に平成4年度から平成7年度までの償却可能額及び償却見通しについて触れているだけであり,なにわ銀行は,要償却債権の総額(すなわち,自己資本毀損分に相当する不良債権額)を全く把握していなかった。 (d) 仮に本件各融資に先立ち東海銀行及び長銀から一定の要求があったとしても,なにわ銀行が丸抱えでの「母体行責任」を両行に対して負担すべき事情はなく,むしろ金融実務の専門家たる両行の自己責任及び貸手責任を前提とした交渉が可能でもあった。それにもかかわらず,被告は,東海銀行及び長銀等の意向について十分な調査検討を行わず,なにわ銀行の負担を最小限化する努力をも怠っていた。 (e) 被告は,破綻状態にあったなにわファイナンスの最終処理方針に関し,当然検討すべき選択肢である法的整理手続等の当否及びその場合の利害得失等について詳細なシミュレーションを行うなどの検討を全くしなかった。 (f) なお,なにわ銀行の貸出審査会は,①融資決裁権者が最終決定することを前提とした諮問機関に止まり,②同行の全取締役によって構成されておらず代表取締役頭取の出席が不要であるなど,その実態からみて取締役会と同視することはできない。 b 本件各融資となにわファイナンスの救済・再建計画との関係等(a) 被告は,本件各融資が,なにわ銀行が平成5年4月9日付けで日本銀行に対して提出した「経営改善計画について」と題する書面(甲A12)添付の別表7(「(株)なにわファイナンス」の再建計画書)(以下「本件再建計画」という。)と一体であることを前提に,本件再建計画自体の合理性を主張するが,以下の理由から失当である。 (b) 本件各融資は,本件再建計画とは異なり,債権譲渡形式を採らず,当該債権等の査定もしないまま,債権額全額を であることを前提に,本件再建計画自体の合理性を主張するが,以下の理由から失当である。 (b) 本件各融資は,本件再建計画とは異なり,債権譲渡形式を採らず,当該債権等の査定もしないまま,債権額全額を債務者に対して融資実行したものである。そして,当該融資金はなにわファイナンスを介して資金調達先金融機関への返済資金等として用いられたのであるから,本件各融資は,本件再建計画に基づいて実行されたとはいえない。 (c) 本件再建計画について大蔵省の了解があったという事実はない。 (d) 本件各融資は,本件再建計画の日本銀行への提出より先に実行されており,本件各融資実行について日本銀行の了解があったという事実はない。 (e) なにわ銀行の担当者が大阪国税局に対して行った事前の打診は,あくまで既存融資の無利息化に関してであって,本件各融資の是非とは全く無関係である。 c 「母体行責任」について本件各融資当時の銀行経営実務の前例並びに大蔵省及び日本銀行の金融行政の実態は,母体行責任による丸抱えの支援を当然のものとするものではなかった。 (エ) なにわファイナンス支援内容の不合理性本件各融資を含むなにわ銀行のなにわファイナンス支援策は,既に破綻状態にあり自力再建が不可能であったなにわファイナンスの最終的処理方針を検討しないまま,資金調達先である東海銀行・長銀等に対する借入金返済を最優先し,そのための返済資金をなにわ銀行が全面的に融資しながら,無利息かつ元本回収もせずに貸し続けておくことを内容とするものであるから,なにわ銀行丸抱えの「破綻の先延ばし」以上の意味はなかった。 なお,本件各融資は,なにわ銀行のなにわファイナンスに対する先行融資分の回収不能を招来させる点でもなにわ銀行にとっては不利益であった。 (オ) なにわファイナンスに対する支援手段・方法の社会 かった。 なお,本件各融資は,なにわ銀行のなにわファイナンスに対する先行融資分の回収不能を招来させる点でもなにわ銀行にとっては不利益であった。 (オ) なにわファイナンスに対する支援手段・方法の社会的相当性の欠如a 銀行法13条の潜脱による実質的違法本件各融資は,銀行法13条に実質的に違反している。 (a) 本件各融資金は,形式的には各債務者名義の口座を経由しているものの,各債務者において運転資金等として現実に使用された事実はなく,各債務者名義の口座に入金された当日に,なにわファイナンス経由で東海銀行ほかへの返済資金として,そのほぼ全額が費消されたこと等からすれば,本件各融資は被告が当初から仕組んだ一連の迂回融資に過ぎない。 (b) 被告は,本件各融資が銀行法13条の趣旨目的に抵触しかねないことを認識しながら本件各融資を決定した。 (c) 被告は,本件各融資を緊急やむを得ない救済・支援融資であるとしながら,銀行法13条1項ただし書,同法施行令4条4項1号に従って大蔵大臣の個別の承認を得ることなく,これらの規定を潜脱し,債務者を迂回してなにわファイナンスに調達先金融機関への返済資金を融資したものである。 b 利益相反ないし忠実義務違反的事情の存在(a) 先行行為に基づく責任被告は,本件各融資の先行行為というべき,なにわファイナンスの経営失敗という重大な失敗を犯した当事者であり,そのような被告が,自らの失敗のいわば尻拭いのため,なにわ銀行にその負担を転嫁すべく行ったのが本件各融資である。 (b) 自己保身目的被告が本件各融資を決定した動機には,自らの頭取としての地位を失いたくないという自己保身の目的が強く働いていた。 (c) 第三者図利目的本件各融資は,東海銀行及び長銀等に対し,なにわファイナンスに対する融資金を全額回収させることを目 自らの頭取としての地位を失いたくないという自己保身の目的が強く働いていた。 (c) 第三者図利目的本件各融資は,東海銀行及び長銀等に対し,なにわファイナンスに対する融資金を全額回収させることを目的として,その反面でなにわ銀行が本件各融資のリスクを全面的に負担したものである。 (カ) 以上のとおり,本件各融資は,①必要性が全くなかったばかりか,②内容に合理性がなく,③方法・手段に社会的相当性がないから(実質的に銀行法に違反し,利益相反ないし忠実義務違反的事情も認められる),経営判断の原則の適用によって被告がその責任を免れることはない。 エ損害(ア) 本件融資1明大住宅は,平成5年7月以降事業を停止し,同年10月に延滞に陥った。 なにわ銀行は,同年12月の競売申立て等により,融資の一部を回収したが,平成9年3月期に残債権4億5907万2277円を償却処理した。 したがって,本件融資1(資金使途は,なにわファイナンスに対する返済資金5億6500万円,なにわ銀行既貸債務更改2億0900万円,本件融資1の金利6か月分2000万円,なにわ銀行の既存手形貸付の金利6か月分100万円,登記費用500万円)によって,なにわ銀行に,少なくとも,前記償却額から,本件融資1のうち,なにわファイナンスに対する返済に充てられた5億6500万円を除いた2億3500万円を控除した2億2407万2277円の損害が発生した。 (イ) 本件融資2Aは,平成6年2月には完全に延滞に陥った。なにわ銀行は,同年4月28日,担保処分によって8000万円を回収したが,平成7年3月期に残債権1億4055万6186円を償却した。 したがって,本件融資2によって,なにわ銀行に,前記償却額中同融資に関連する1億円の損害が発生した。 (ウ) 本件融資3脱退原告は,平成12年4月,本件融資 権1億4055万6186円を償却した。 したがって,本件融資2によって,なにわ銀行に,前記償却額中同融資に関連する1億円の損害が発生した。 (ウ) 本件融資3脱退原告は,平成12年4月,本件融資3の融資金2億4200万円中,残存する2億0430万円について不動産競売を申し立て,合計5433万4395円が元本に充当された。 したがって,本件融資3によって,原告に,残債権額1億4996万5605円の損害が発生した。 オ被告の責任原因(ア) 本件融資1及び3について被告は,アの善管注意義務及び忠実義務に違反して,本件融資1及び3を決裁権者として決定,実行した。 したがって,被告は,上記各融資について商法266条1項5号に基づいて損害を賠償する責任がある。 (イ) 本件融資2についてaBは,本件融資2を決裁権者として決定した。 b 被告は,代表取締役頭取としてなにわ銀行の業務執行全般について監督すべき注意義務又は取締役として決裁行為を監視すべき注意義務を負っていた。 c 被告は,本件融資2について貸出審査会の結果報告を受け,その内容を精査して融資の安全性に懸念ありとして同審査会に差し戻してBの決定を阻止することが可能であったにもかかわらず,簡易な口頭での報告のみでよしとし,Bの決定を阻止しなかった。 d したがって,被告は,本件融資2について,bの注意義務を怠ったものであるから,商法266条1項5号に基づいて損害を賠償する責任がある。 (ウ) よって,原告訴訟引受人は,被告に対し,本件各融資によってなにわ銀行に生じた損害合計4億7403万7882円のうち2億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を賠償するよう求める。 (被告の主張)ア本件各融資の回収可能性(ア) 本件融資1についてa 被告 円のうち2億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を賠償するよう求める。 (被告の主張)ア本件各融資の回収可能性(ア) 本件融資1についてa 被告は,当時,明大住宅が劣悪な経営成績・財務状況であると認識していなかった。 b 本件融資1に際して,なにわ銀行が取得した担保は,極度額7億2000万円の根抵当権であり,担保物件の時価は3億7524万1000円と評価されていたから,著しい担保不足とはいえない。 さらに,上記時価評価額は路線価の1.0倍であるが,従来の時価評価額は路線価の1.5倍であったから,更に担保不足はなく担保としては十分であったことになる。 (イ) 本件融資2について本件融資2に際して,なにわ銀行が取得した担保は,極度額2億1600万円の根抵当権であり,担保物件の時価は1億1975万7000円と評価されていたから,著しい担保不足とはいえない。 さらに,上記時価評価額は路線価の1.0倍であるが,従来の時価評価額は路線価の1.5倍であったから,更に担保不足はなく担保としては十分であったことになる。 (ウ) 本件融資3について本件融資3に際して,なにわ銀行が取得した担保は,極度額3億1000万円の根抵当権であり,担保物件の時価は1億0711万8000円と評価されていたが,上記時価評価額は路線価の1.0倍であるが,従来の時価評価額は路線価の1.5倍であり,これに担保預金6579万1000円を加えると,著しい担保不足とはいえない。 イ経営判断の原則本件各融資は,いずれもなにわ銀行が関連会社であるなにわファイナンスの救済・再建のために策定した本件再建計画に基づく肩代わり融資であり,同計画の一部分に過ぎない。したがって,本件再建計画の決定が善管注意義務違反・忠実義務違反を構成しないとき あるなにわファイナンスの救済・再建のために策定した本件再建計画に基づく肩代わり融資であり,同計画の一部分に過ぎない。したがって,本件再建計画の決定が善管注意義務違反・忠実義務違反を構成しないときは,本件各融資が独自に善管注意義務違反・忠実義務違反を構成することはあり得ない。そして,本件再建計画を決定した被告の事実認識に不注意な誤りはなく,同計画は,経営判断として,通常の企業人の合理的な選択の範囲内のものであるから,被告に善管注意義務違反及び忠実義務違反はない。 (ア) なにわファイナンス救済の必要性a なにわファイナンスは,なにわ銀行の系列ノンバンクであり,その株主は,いずれも同行が直接,間接に出資し,役員を派遣している関連会社及び同行の出身者であり,役員も同行の出身者で,従業員はほとんどおらず,営業や貸付審査も含めてほぼすべての業務が同行の組織で行われていたものであって,なにわファイナンスは実質的にはなにわ銀行の一営業店であった。 b なにわファイナンスは,平成5年当時,自力再建が不可能な状態であった。 c 銀行は業務の性質上信用不安を起こせば1日も運営することができないのであり,絶対に信用不安を避けなければならないところ,当時はいわゆる母体行責任論が強く主張され,大蔵省,日本銀行ひいては金融業界全体が,銀行が自己の関連会社を破産させないことを当然視していたため,なにわファイナンスが破綻した場合,なにわ銀行は重要な系列ノンバンクを救済・再建できないほどに業績が悪化していると判断されてなにわ銀行本体の信用不安を起こすことになるから,なにわファイナンスを救済することが不可欠であった。 d 長銀,東海銀行等は,なにわ銀行に対して母体行責任を強力に追及してきた。 (イ) なにわファイナンス再建計画の合理性a なにわ銀行は,本件再建計画を ァイナンスを救済することが不可欠であった。 d 長銀,東海銀行等は,なにわ銀行に対して母体行責任を強力に追及してきた。 (イ) なにわファイナンス再建計画の合理性a なにわ銀行は,本件再建計画を策定し,なにわ銀行の経営改善計画の一環として本件再建計画を日本銀行に提出し,その了承を得た。また,近畿財務局に対しても同様の書類を提出し,これも了承を得た。なにわ銀行は,日本銀行及び大蔵省の了解の下に,本件各融資を含む本件再建計画を実施したものである。 b なにわ銀行は,平成5年3月31日付けで本件再建計画を策定したが,同計画においては,なにわファイナンスが,貸付金債権及び担保権をなにわ銀行に譲渡する対価及び同行からの無利息融資をもって,2行1社からの借入金を返済し,残る借入金である千代田生命保険からの6億円の利払いについては所有マンションの家賃収入でまかなえるので,当期利益こそ見込めないものの損失計上は免れると考えられた。 c なにわファイナンスの業績悪化の原因は,いわゆる逆ざや現象と地価下落による不動産業界の業績悪化にあったところ,平成5年3月当時,地価は下落を続けていたが,少なくとも景気は底を打ち,反転するという見方が大方の観測であり,今日に至るまで不況が続くことは誰にも予測し得なかった。 (ウ) 母体行責任についてa 本件各融資当時の日本,特に銀行業界では,出資関係や社長など首脳陣を送り出しているなどの面で親会社がはっきりしている場合は,子会社が親会社の信用力をバックに取引をしているケースが多かったため,親会社がその子会社の再建の面倒をみるというのが常識であり,商慣習であった。 したがって,母体行責任は,明文上の法的責任ではないが,慣習法として認められていた。 b なにわファイナンスは,なにわ銀行の信用力をバックに取引をしていたので, いうのが常識であり,商慣習であった。 したがって,母体行責任は,明文上の法的責任ではないが,慣習法として認められていた。 b なにわファイナンスは,なにわ銀行の信用力をバックに取引をしていたので,なにわ銀行は母体行責任を負わざるを得なかった。 c 貸手責任を前提としたプロラタ処理という方法が検討され得るようになったのは,福徳銀行,阪和銀行及び大阪銀行が系列ノンバンクの法的処理を断行した平成7年3月以降であり,本件各融資当時は,母体行責任主義であった。 (エ) 本件各融資の決定過程a 被告は,「今回債務全一本化する。既入担物件あり。当行メインで支援すべき取引先と思料する。」との支店長の稟議書意見を慎重審議した上で本件融資1を決定した。 b 被告は,「物件売却により返済。金利の軽減可なり。なにわファイナンスより肩代わりにて政策的なものなり。」との支店長の稟議書意見を慎重審議した上で本件融資2に異議を述べなかった。 c 被告は,「既入担物件支障なく。過去取引実績良好。回収懸念なく,取引先の深耕支援を図る。」との支店長の稟議書意見を慎重審議した上で本件融資3を決定した。 d 本件各融資は,人事部,事務部担当取締役以外の全取締役が構成員となり,事実上の取締役会であった貸出審査会で十分審議された上で決裁されている。 (オ) なにわファイナンスに対する支援手段・方法の社会的相当性について被告は,なにわファイナンスに直接融資することができないので,日本銀行及び大蔵省の了解の下に本件各融資を決定したものであり,被告の責任問題の回避等の自己保身目的や東海銀行及び長銀等の利益のために本件各融資を決定したものではないから,利益相反・忠実義務違反的事情は全くない。 (2)(損益相殺の成否)について(被告の主張)被告に善管注意義務違反又は忠実義務違反があったと 銀等の利益のために本件各融資を決定したものではないから,利益相反・忠実義務違反的事情は全くない。 (2)(損益相殺の成否)について(被告の主張)被告に善管注意義務違反又は忠実義務違反があったとしても,被告は脱退原告に対して以下のような利益を与えているので,合計1億3440万6200円が損益相殺される。 ア被告は,平成5年9月分から平成6年6月分まで,毎月月額報酬の15パーセント(合計232万5000円)を受け取らず,平成5年分から平成9年分まで5年間の賞与全額(合計2300万円)を受け取らなかった。 月額報酬 23万2500円×10か月=232万5000円賞与 460万円×5年=2300万円イ被告は,退職金全額9841万8000円を受け取らなかった。 ウ被告は,平成11年5月31日,脱退原告の株式44.43株(1株当たり株価24万円)を放棄した。 24万円×44.43株=1066万3200円(原告訴訟引受人の主張)争う。 被告主張の利益は,いずれも本件各融資決定における被告の債務不履行行為とは別個の原因に基づくものであって,相当因果関係のある利益でもなく,本件各融資によるなにわ銀行の損害を直接に填補する目的・機能も有しないから,損益相殺の対象となり得ない。 ア損益相殺が認められるには,当該違法行為による損害と利益とが①同一の原因によって生じたこと,②両者の間に相当因果関係があること,③当該利益が当該損害を填補する内容であることが必要である。 イ被告が,月額報酬の一部と役員報酬を受け取らなかったのは,なにわ銀行が,経営環境の厳しさが増す中で,人件費削減策として,平成5年9月から役職員の報酬,賞与の削減策を掲げ,平成5年8月27日開催の取締役会において,「経営刷新委員会の決定によるリストラの一環として減額」の意思決定がされ さが増す中で,人件費削減策として,平成5年9月から役職員の報酬,賞与の削減策を掲げ,平成5年8月27日開催の取締役会において,「経営刷新委員会の決定によるリストラの一環として減額」の意思決定がされたためである。したがって,被告主張の報酬・賞与削減分は,そもそも被告に請求権がなかったものである。 ウ被告がなにわ銀行の取締役を辞任した平成10年6月26日開催の定時株主総会においても,被告への退職慰労金については,株主総会自体による支給決議も,退職金支給基準に従うことを条件とした取締役会への報酬額決定等の委任の決議も全くされていなかった。したがって,被告は,なにわ銀行に対し,退職慰労金請求権を有していなかった。 エ被告は,平成11年6月29日開催予定の脱退原告定時株主総会に先立って,同月24日までに議決権行使書を脱退原告あてに提出して,株主としての権利を行使していたものであり,かつ,脱退原告解散決議直前の平成13年5月14日現在においても脱退原告の株主名簿上の株主である。したがって,被告が脱退原告の株式を放棄したというのは事実に反する。仮に,被告が「株式の放棄」行為をしたとしても,それによって脱退原告は何らの利益も得ていない。 オ被告が経営のトップとしてなにわ銀行に対し責任を負担すべき損害は,本件各融資に関する損害金にとどまらず,極めて甚大であること,被告は,日銀考査や大蔵省検査等において融資姿勢を改めるよう繰り返し改善を求められていたにもかかわらず,実際には不動産関連融資偏重かつ担保依存主義による融資姿勢を改めず,かえって,なにわファイナンスその他系列ノンバンクを利用して貸出しを増加し,不動産建設業向け融資へと一層傾斜してなにわ銀行の損害を一層拡大させたこと等の諸事情を勘案すれば,損益相殺の趣旨である実質的衡平の観念に照らしても,被 その他系列ノンバンクを利用して貸出しを増加し,不動産建設業向け融資へと一層傾斜してなにわ銀行の損害を一層拡大させたこと等の諸事情を勘案すれば,損益相殺の趣旨である実質的衡平の観念に照らしても,被告の損害賠償責任を減じる理由はない。 第3 当裁判所の判断 1 当事者間に争いがない事実に関係証拠(甲A4の1,2,甲A7,甲A10の1から3まで,甲A11の1から4まで,甲A12,16,17の1,2,甲A18,19から22まで,25,26の2から7まで,甲A27の1から3まで,甲A28,29の1,2,甲A30から32まで,37の1,甲A39,42,43,46,47,50,51,54,55,70,甲B2の1,2,4から6まで,甲B3の1,3,5,甲B4の1,2,甲B5の1,2,甲B6の1,2,甲B8の1,甲B10,甲C2の1から5まで,甲C3,4の3,4,甲C5の1,2,甲C6の1,2,甲C7の1から4まで,甲C8,甲D2の1,3,5から7まで,甲D3の1から4まで,甲D4の1から3まで,甲D5の1,甲D6の1,2,甲D8,9,乙3,丙8,証人E,被告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1) なにわ銀行となにわファイナンスとの関係アなにわファイナンスは,平成元年5月6日に設立された,金銭債権の買取業務並びに金銭貸付業,信用保証及び債務保証業務等を目的とする株式会社であり,Eが代表取締役を務めていた。同社の株主は,同社の取締役及び監査役のほか,なにわ銀行の関連会社又は関係会社であり(なにわ銀行はなにわファイナンスに出資していなかった。),取締役及び監査役も,Eを含む全員がなにわ銀行の出身者であった。なにわファイナンスでは,代表取締役であるEのみが業務に携わり,従業員はいなかった(甲A10の1から3まで,甲A25,丙8,証 った。),取締役及び監査役も,Eを含む全員がなにわ銀行の出身者であった。なにわファイナンスでは,代表取締役であるEのみが業務に携わり,従業員はいなかった(甲A10の1から3まで,甲A25,丙8,証人E)。 イなにわファイナンスは,なにわ銀行の取引先以外には貸出しをしないという方針であった。すなわち,なにわ銀行の取引先から同行に融資の申込みがあると同行(本店審査部)が同行で融資する案件となにわファイナンスで融資する案件とに振り分け,なにわファイナンスは,同行から割り当てられた案件について,同行の決裁を受けて融資を実行していたものであり,Eの一存で融資をすることはできなかった。もっとも,なにわファイナンスは,融資に充てる資金を,なにわ銀行からではなく東海銀行(エヌ・ビーサービス株式会社[以下「エヌ・ビーサービス」という。]経由分を含む。),長銀等の金融機関から,しかもなにわ銀行の保証なしに調達していた。また,なにわファイナンスは,返済期限延長等の債権管理についても,なにわ銀行の常務取締役を経由して同行の頭取に報告していたほか,Eから,なにわファイナンスの貸借対照表及び損益計算書を毎月なにわ銀行に提出していた(甲A11の1から4まで,甲A25,51,証人E)。 (2) なにわファイナンスの経営状況アなにわファイナンスの営業損益及び経常損益は,以下のとおり推移した(甲A11の1から4まで)。 平成2年3月期営業損失  131万4718円経常利益 12万3682円平成3年3月期営業利益  440万7078円経常利益  664万3290円平成4年3月期営業損失  561万2284円経常利益 40万4579円平成5年3月期営業損失 2515万5658円経常損失  661万5274円イなにわファイナンスは,設立当初は営業状 成4年3月期営業損失  561万2284円経常利益 40万4579円平成5年3月期営業損失 2515万5658円経常損失  661万5274円イなにわファイナンスは,設立当初は営業状態も順調に推移したが,いわゆるバブル経済の崩壊,地価の下落等により,主要貸出業種である不動産関連企業の業況が悪化したことから,不良債権が増加し,上記のとおり経営状況が悪化した。貸付金についても,平成3年3月をピークに減少し,平成4年3月期からは新規の貸付けを抑制することとなり,同年5月ころには,新規の貸付けをしなくなっていた(甲A21,25,証人E)。 (3) なにわファイナンスの取引金融機関の債権保全状況ア東海銀行は,平成元年12月28日,なにわファイナンスに対して10億円を貸し付け,その担保として,なにわファイナンスとの間で債権譲渡予約を締結した。同予約の対象債権には,大真に対する債権2億4500万円,Aに対する債権1億8000万円が含まれていた。同予約において,東海銀行となにわファイナンスは,東海銀行が必要と認めた場合には,なにわファイナンスは,直ちに,民法467条2項の規定による第三者対抗要件を具備した債権譲渡手続をすること(なにわファイナンスは,当該債権の債務者に対する債権譲渡通知書を東海銀行に交付し,同行がなにわファイナンスに代わって債権譲渡通知をすることができること)を約していた。そして,その後,なにわファイナンスと東海銀行は,大真に対する債権2億4500万円及びAに対する債権1億8000万円等について,根抵当権付債権質入予約を締結した(甲A26の2から6まで,証人E)。 イ長銀となにわファイナンスは,長銀のなにわファイナンスに対する債権の担保として,債権譲渡担保契約を締結した。同契約の対象債権には,明大住宅に対する債権5億 た(甲A26の2から6まで,証人E)。 イ長銀となにわファイナンスは,長銀のなにわファイナンスに対する債権の担保として,債権譲渡担保契約を締結した。同契約の対象債権には,明大住宅に対する債権5億6500万円が含まれていた。同契約において,長銀となにわファイナンスは,長銀が請求した場合には,なにわファイナンスは,長銀に対して債権を譲渡するとともに,直ちに,当該債権の債務者に対して,確定日付のある証書をもって債権譲渡の通知をすることのほか,長銀が請求した場合には,なにわファイナンスは,債権譲渡通知書を長銀に提出し,長銀がなにわファイナンスに代わって債権譲渡通知をすることができることを約していた(甲A27の2,証人E)。 (4) なにわファイナンスの取引金融機関からなにわ銀行への支援要請アなにわファイナンスは,平成3年10月,長銀から,平成元年10月31日に実行した12億円の融資(返済方法は平成3年10月31日の期日に一括返済)について,「3割程度の約弁をして欲しい。」(返済方法を分割弁済に改めて欲しい。)との申入れを受け,同年11月及び12月に各1億円(合計2億円)を返済した(甲A27の3,甲A51)。 イなにわファイナンスは,平成3年10月から12月にかけて,東海銀行から,度々,融資金の返済方法を期日一括返済から分割返済に変更してもらいたいとか,①約定弁済を付ける(返済方法を期日一括返済から分割弁済に変更する。),②なにわファイナンスの融資先が返済期日に返済しなかった場合には,その都度,なにわファイナンスがなにわ銀行から借り入れて東海銀行に返済する,③なにわファイナンスが東海銀行以外の金融機関等から融資を受けて他に融資している分について融資先から返済があれば,東海銀行への返済に充てるのいずれかの方法で融資金を返済してもらいたいなどの 済する,③なにわファイナンスが東海銀行以外の金融機関等から融資を受けて他に融資している分について融資先から返済があれば,東海銀行への返済に充てるのいずれかの方法で融資金を返済してもらいたいなどの申入れを受けて,同年10月に1000万円を返済するとともに,なにわ銀行に東海銀行からの上記申入れを報告し,なにわ銀行からの指示で,なにわ銀行から借り入れて返済することを検討するなどと答えていた。 東海銀行は,同年12月,なにわファイナンスに対し,なにわファイナンスに対する融資についてなにわ銀行から大丈夫ですとの言葉をいただきたいとして,なにわ銀行のF専務取締役との面談を申し入れた。同専務取締役は,平成3年末か平成4年初め頃,東海銀行の求めに応じて,同行の担当者と面談したが,その際,同行の担当者から「同行のなにわファイナンスに対する融資の返済について,なにわ銀行から大丈夫ですとの言葉をいただきたい。」などとの申入れを受けた(甲A25,甲A26の7,50)。 なにわ銀行は,平成3年12月31日,三晃住宅に対し,5億9000万円を融資し,なにわファイナンスは,三晃住宅から5億5000万円を回収して,エヌ・ビーサービスに対し5億円を返済した(甲A25)。 (5) なにわ銀行のなにわファイナンスに対する融資アなにわ銀行は,平成4年3月23日,常務会で,なにわファイナンスに対する特別貸付について取締役会に付議することを決議し(甲A28),同月24日,取締役会で,被告(頭取)が議長を務めて審議をした上,なにわファイナンスに対する特別貸付(貸付金額20億円以内,利率年3パーセント以上)を決議した(甲A29の1)。被告(頭取)は,同年5月29日,なにわファイナンスに対し,返済期限を平成9年6月15日(期日一括返済),利息を年3.75パーセントとする約定で,20 年3パーセント以上)を決議した(甲A29の1)。被告(頭取)は,同年5月29日,なにわファイナンスに対し,返済期限を平成9年6月15日(期日一括返済),利息を年3.75パーセントとする約定で,20億円を融資することを決裁し,なにわ銀行は,同日,なにわファイナンスに対し,上記融資を実行した(甲A25,30)。 この融資金については,なにわ銀行から,なにわファイナンスに対し,同社の資金調達先(東海銀行,エヌ・ビーサービス)への返済,同社の貸付先(三晃企画)からの借地権付きマンションの購入等に充てるように指示があり,なにわファイナンスはその指示のとおり融資金を利用した(甲A25,証人E)。 イなにわ銀行は,平成4年9月24日,取締役会で,被告(頭取)が議長を務めて審議をした上,なにわファイナンスに対する追加融資(貸付金額15億円[総額35億円],利率公定歩合)を決議した(甲A29の2)。被告(頭取)は,同年9月30日,なにわファイナンスとの間で,5億円の当座貸越枠(利息年3.25パーセント)を設定する契約を締結することを決裁し,なにわ銀行は,同年10月1日,なにわファイナンスとの間で,上記契約を締結した(甲A25,31)。 ウ被告(頭取)は,平成4年9月30日,なにわファイナンスに対し,返済期限を平成9年10月15日(期日一括返済),利息を年3.25パーセントとする約定で,10億円を融資することを決裁し,なにわ銀行は,同年10月12日,なにわファイナンスに対し,上記融資を実行した(甲A25,甲A32)。 この融資金については,なにわ銀行から,なにわファイナンスに対し,同社の資金調達先(長銀)への返済に充てるように指示があり,なにわファイナンスはその指示のとおり融資金を利用した(甲A25,27の1,証人E)。 エなにわ銀行は,平成5年3月23 ァイナンスに対し,同社の資金調達先(長銀)への返済に充てるように指示があり,なにわファイナンスはその指示のとおり融資金を利用した(甲A25,27の1,証人E)。 エなにわ銀行は,平成5年3月23日開催の取締役会で,被告(頭取)が議長を務めて審議をした上,なにわファイナンスに対する支援融資を,銀行法13条の信用供与限度額以内で無利息で行うことを決議した(甲A18)。 (6) なにわ銀行における融資決定の仕組みアなにわ銀行は,本部与信権限規程を設けており,同規程において,本件各融資当時,債務者当たり与信金額が3億円を超える融資案件については頭取が,債務者当たり与信金額が1億円を超え3億円以下の融資案件については専務取締役が,それぞれ決裁権限を有する旨定めていた(甲A4の1,被告本人)。 イなにわ銀行は,本件各融資当時,融資案件についての事前協議機関として貸出審査会を設け,(1)既貸出先で総貸出残高が3億円超となる貸出案件,(2)既認貸出実績3億円超先の貸増案件,(3)新規貸出先で1件1億円超の貸出案件で,債務超過先に対するもの,他行肩代わり貸出等その内容に問題があると認められる案件について審査し,採択の可否を問わず,全ての審査案件について審査部長から頭取に報告するものと定めていた(甲A4の2,甲A51)。 また,貸出審査会において不採択とされた融資案件であっても,頭取の意見によって差し戻された事例もあった(丙8)。 ウなにわ銀行は,日本銀行による考査を踏まえ,平成5年1月から,土地担保の評価について,路線価の1.0倍に変更した(乙3)。すなわち,なにわ銀行は,平成5年3月25日付け「店長貸出専決権限規定の改訂について」と題する書面(甲A55)において,平成5年4月1日新規専決分から,土地担保評価採択基準を路線価格の1.5倍から1.0倍 ,なにわ銀行は,平成5年3月25日付け「店長貸出専決権限規定の改訂について」と題する書面(甲A55)において,平成5年4月1日新規専決分から,土地担保評価採択基準を路線価格の1.5倍から1.0倍に改訂した。なお,担保の掛目は,従前どおり,最寄鉄道駅までの直線距離,更地か建付地か,及び面積により,60パーセントから80パーセントとすることと規定していた。また,なにわ銀行は,事務規程集第2部融資事務第1編融資共通事務第5章不動産担保評価(甲A7,70)において,土地担保の掛目について同様の規定を設けていた。さらに,なにわ銀行は,日本銀行に提出した,「経営改善計画について」と題する平成5年4月9日付けの書面(甲A12)において,「不動産担保の評価に当たっては,従来,路線価の1. 5倍としていたが,不動産価格の下落傾向が続き,不動産価格が流動的であることを踏まえ,平成5年1月に見直しを行い,路線価の1.0倍とする指導を行っている。」と述べている。 (7) 経営改善計画の策定等ア日本銀行は,平成5年1月28日付けの「考査結果について」と題する書面(甲A16)で,なにわ銀行に対し,同年3月末を期限として,中期的な経営改善計画を策定した上,担当役員から提出することを求め,同時に,①不稼働資産の収益面への影響と対応状況及び投資信託の含み損圧縮状況並びに決算実績・見通し,②審査管理強化状況並びに不良資産の整理・回収及び新規発生状況,③系列ノンバンク2社に対する管理強化状況及び2社の経営改善状況を織り込んだ上記計画の実施状況を四半期ごとに担当役員から報告するように求めた。 イなにわ銀行は,平成5年4月9日付けで,日本銀行に対し,「経営改善計画について」と題する書面(甲A12)を提出した。なにわ銀行は,この中で,なにわファイナンスに対する管理強化の具体 うに求めた。 イなにわ銀行は,平成5年4月9日付けで,日本銀行に対し,「経営改善計画について」と題する書面(甲A12)を提出した。なにわ銀行は,この中で,なにわファイナンスに対する管理強化の具体策として,「今回銀行本体より全面支援し,既存の債権の回収に専念し,新規にファイナンス業務は行わない。」と述べ,別表7として「(株)なにわファイナンスの再建計画書」(本件再建計画)を添付している。なにわ銀行は,本件再建計画において,「同社の主要貸出先である不動産業界の不況に伴い延滞債権が急増している状況であります。同業界の回復兆しもなく、将来を展望すると母体行の支援を得て下記の通り、再建計画を実施いたします。」とした上で,「計画概要」として,以下の内容を記載している。 (ア) 母体行の支援内容① 現在営業中の貸出先に対する債権を母体行が譲り受ける。 ② 母体行から追加融資を実施する。 ③ 母体行の融資金利は無利息とする。 (イ) 貸付金について現在17社(人)46億4300万円の貸付金のうち,11社(人)20億2500万円をなにわ銀行に簿価で債権譲渡する。残る6社(人)26億1800万円については,債権回収に努める(なお,明大住宅[5億6500万円],A[1億8000万円]及び大真[2億4100万円]に対する各債権については,譲渡予定の債権[正常債権]に分類している。)。 (ウ) 借入金について借入金のうち,なにわ銀行(31億円)及び千代田生命保険相互会社(以下「千代田生命」という。)(6億円)を除く3行1社(東海銀行12億円,長銀10億円,安田信託銀行1億円,第一生命保険相互会社2億5000万円)からの借入金総額25億5000万円については,うち20億2500万円をなにわ銀行に対する債権譲渡で調達した資金で返済し,残る5億2500万円をなにわ銀 1億円,第一生命保険相互会社2億5000万円)からの借入金総額25億5000万円については,うち20億2500万円をなにわ銀行に対する債権譲渡で調達した資金で返済し,残る5億2500万円をなにわ銀行からの融資金で返済する。 (エ) 千代田生命に対する支払利息(年間3500万円)については,所有不動産(マンション)の賃料収入(年間6000万円)から充当する。本件再建計画を実施することによって,平成6年3月期に当期損失が零となる。 ウなにわ銀行の貸出審査会は,平成5年3月3日,なにわファイナンスの今後の方針について審議したが,その際,なにわファイナンスの債権のうち,正常先すなわち利息の支払いが遅滞していない債権についてなにわ銀行に譲渡するか,あるいは,なにわ銀行が肩代わり融資をし,延滞先すなわち利息の支払いが遅滞している債権についてはなにわファイナンスに残すという意見がまとまり,その旨被告に報告した。もっとも,このときの融資審査会の資料(甲A17の2)には,手書きで「正常先 2,617百万プロパー移行」「延滞先 2,024百万当社に残留」との書き込みがある一方,同資料中の「前受利息明細書(未経過利息)」という表には17社(人)の貸付先に対する貸付残高等が記載されており,そのうち,日数,利率,前受利息の記載がある貸付先の貸付残高の合計は20億2370万円である上,同表には手書きで「延滞分 2,616」,「正常 2,022」との書き込みもあり,正常先と延滞先との振分けについては明らかでない(甲A17の1,2,被告本人)。 エなにわ銀行の貸出審査会(B委員長)は,平成5年3月29日,なにわファイナンスの明大住宅に対する5億6500万円,大真に対する合計2億4100万円及びAに対する1億8000万円の各債権など合計18億1400万円の債権を 会(B委員長)は,平成5年3月29日,なにわファイナンスの明大住宅に対する5億6500万円,大真に対する合計2億4100万円及びAに対する1億8000万円の各債権など合計18億1400万円の債権をなにわ銀行の勘定に移す旨の意見を,被告(頭取)に報告した(甲A19)。 オなお,なにわ銀行は,平成5年2月16日,担当者を大阪国税局に赴かせ,なにわファイナンスに対する無利息貸付等の支援に関する税務上の取扱いについて事前相談を行った(甲A39,54)。 (8) 本件融資1についてア明大住宅の経営状況(ア) 明大住宅の営業損益,経常損益及び当期未処理損失は,以下のとおり推移した(甲B4の1,2)。 平成3年4月期営業利益 3409万9546円経常損失 3225万4814円当期未処理損失 1014万1462円平成4年4月期営業損失 1億4180万0496円経常損失 2億2620万5928円当期未処理損失 2億3639万7390円(イ) 明大住宅は,なにわファイナンスに対し,同社に対する6億円の債務(返済期限平成3年10月31日)について,同年10月22日,物件売却の遅れを理由に6か月間の返済期限延長を申し入れ,平成4年5月11日には,同じく物件売却の遅れを理由に更に1年間の返済期限延長を申し入れ,なにわファイナンスはいずれの申入れにも応じた(甲B6の1,2)。 (ウ) なにわ銀行は,Cが個人営業を行っていた頃から融資取引を行い,法人成りして明大住宅となった後も融資取引を継続した。融資残高は,平成元年12月の6億6801万7000円をピークに,本件融資1の直前である平成5年3月時点では2億6231万7000円となっていた。また,明大住宅は,平成2年4月26日,なにわファイナンスから,6億円の融資を受け 6億6801万7000円をピークに,本件融資1の直前である平成5年3月時点では2億6231万7000円となっていた。また,明大住宅は,平成2年4月26日,なにわファイナンスから,6億円の融資を受けており,平成5年3月時点の同融資の残高は5億6500万円であった(甲B2の1,2,甲B8の1,甲B10)。 (エ) なにわ銀行住吉支店支店長は,平成5年2月24日,審査部長に対し,明大住宅が,同月23日,同行との今後の返済計画についての話合いの中で,同行担当者が,安い土地を購入し建売すれば利益を捻出できるので返済可能である,そのために同行は最大限支援すると言った際,「一から出直したいので事務所を含めすべて売却することにより債務をゼロにしたい」旨の決心を述べたと報告した(甲B5の1)。 (オ) なにわ銀行住吉支店支店長は,平成5年3月22日,審査部長に対し,明大住宅が,当時,なにわ銀行からの再三の支援融資の申出に対し,「平成4年9月の支援融資の時に総額10億円まで枠をもらったが,金利免除等を考えてもらえなければ,金利支払いだけで終わってしまい,新規の物件を購入し利益を上げても到底やっていけず,不可能と判断した」などとして拒絶したこと,また,明大住宅について,「従来より低価格の建売計画をする様に言って来たが,現在その意欲もない状態です。」と報告した(甲B5の2)。 イ担保の状況本件融資1の当時,なにわ銀行は,手形貸付稟議書(甲B2の1)において,明大住宅に対する融資残高が2億6231万7000円であったのに対し,同行の有効担保額を約1億8840万円と評価していた。 ウ融資の決定過程(ア) 使途なにわ銀行住吉支店支店長は,手形貸付稟議書添付の審査部長あて平成5年3月29日付け稟議説明書(甲B2の2)で,本件融資1の使途について,①なにわフ 評価していた。 ウ融資の決定過程(ア) 使途なにわ銀行住吉支店支店長は,手形貸付稟議書添付の審査部長あて平成5年3月29日付け稟議説明書(甲B2の2)で,本件融資1の使途について,①なにわファイナンスの肩代わり資金5億6500万円,②なにわ銀行の既存手形貸付債務更改2億0900万円,③本件融資1の金利6か月分2000万円,④なにわ銀行の既存手形貸付の金利6か月分100万円,⑤登記費用他500万円と説明している。 (イ) 返済計画なにわ銀行住吉支店支店長は,(ア)の稟議説明書において,本件融資1の返済計画について,①4つの担保物件を早期に売却する(合計6億3300万円),②損切り分及び運転資金は今後建売で利益を上げることにより5ヶ年計画で返済すると説明している。 (ウ) 担保なにわ銀行は,本件融資1に際して,なにわファイナンスから,極度額7億2000万円の根抵当権を譲り受けることとなったが,(ア)の手形貸付稟議書において,その物件の担保価値を合計2億7749万6000円と評価していた(甲B2の1,4から6まで,甲B3の1,3,5)。 なにわ銀行は,本件融資1の実行により,明大住宅に対する融資残高が8億5331万7000円となるのに対し,(ア)の手形貸付稟議書において,同行の有効担保額は,前記譲受根抵当権の設定された担保物件と合わせて4億6580万円と評価していた(甲B2の1)。 (エ) 融資の決定なにわ銀行の貸出審査会は,本件融資1を可とする採択をし,被告は,平成5年3月29日,G常務取締役(審査部長)から説明を受けた上,手形貸付稟議書に押印して,同融資を可とする決裁をした(甲B2の1,乙3)。 (オ) 融資の実行なにわ銀行は,平成5年3月31日,本件融資1を実行した(甲B2の1)。 エ償却処理なにわ銀行は,平成9年3月期,明 に押印して,同融資を可とする決裁をした(甲B2の1,乙3)。 (オ) 融資の実行なにわ銀行は,平成5年3月31日,本件融資1を実行した(甲B2の1)。 エ償却処理なにわ銀行は,平成9年3月期,明大住宅は平成8年12月に営業所を売却し営業実体がなくなっていること,保証人にも保証能力がないこと,担保物件も全て処分されていることなどを根拠に,今後の回収が全く見込めなくなったと判断して,明大住宅に対する融資残高4億5907万2277円を償却処理した(甲B8,弁論の全趣旨)(9) 本件融資2についてア Aの経営状況(ア) Aは,平成3年度の売上げが10億1827万3000円であったのが,平成4年度には,売上げが5550万円に減少し,これに対して経費は2億1497万5833円であったことから,平成4年分の所得税の申告納税額は零であった(甲C4の3,4,甲C5の1,2)。 (イ) Aは,なにわ銀行に対し,商品物件購入資金として平成2年5月1日に借り入れた3500万円(返済期限平成3年4月20日)及び平成2年5月15日に借り入れた1億円の債務(返済期限平成3年5月10日)について,平成3年4月ころから度々,商品物件売却遅延を理由に返済期限延長を申し入れ,なにわ銀行もその申入れにも応じてきた(甲C5の1,2)。 (ウ) Aは,なにわファイナンスに対する1億8000万円の債務(返済期限平成4年2月28日)について,同社に対し,平成4年2月,1年間の返済期限延長を申し入れ,平成5年2月15日,さらに,1年間の返済期限延長を申し入れ,なにわファイナンスはいずれの申入れにも応じた。 前者の申入れに関する平成4年2月26日付けの貸付金返済条件変更協議書(甲C6の1)には,「マンション建設予定地として現在まで保有しているが,厳しい不動産情勢の中で建設した場合の 申入れにも応じた。 前者の申入れに関する平成4年2月26日付けの貸付金返済条件変更協議書(甲C6の1)には,「マンション建設予定地として現在まで保有しているが,厳しい不動産情勢の中で建設した場合の販売価格面等において目処が立ちにくいため,市場動向を見極めている状態である。賃貸あるいは分譲のマンション,テラスハウス,立体駐車場等あらゆる方面から最良の保有あるいは販売の方法を勘案中であり,本年度中には具体的な計画のもと着工したいとの申出がある。」旨の記載がある。 また,後者の申入れに関する平成5年2月15日付けの貸付金返済条件変更協議書(甲C6の2)には,①「保全面から,追加入担を要請したが,他行に対しても1物件1行主義で追加入担を断っており,応諾を得られない。」旨の記載や,②「現況更地にて当初マンション計画するも,その後1棟建住宅及び立体駐車場を計画考慮中のものでありますが,業界不況による現状では実行に至っていないもの。今回延長については担保不足を生ずるも,債務者及担保物件可。本件延長止むを得ぬものであり,採択せるもの。追加入担得られず。事業計画遅延にて止むなし。」との記載がある。 (エ) なにわ銀行は,昭和52年1月以降,Aとの間で,融資取引を継続した。融資残高は,昭和61年10月のピークに4億3548万円,本件融資2の直前である平成5年3月時点では2億3068万2000円となっていた。また,Aは,平成2年2月28日,なにわファイナンスから,1億8000万円の融資を受けており,平成5年3月時点の同融資の残高は1億8000万円のままであった(甲C2の1,4,甲C7の2,甲C8)。さらに,Aは,その他の8つの金融機関に対して合計21億円以上の借入金債務を負担していた(当事者間に争いがない)。 イ担保の状況本件融資2の当時,なにわ銀行は, の1,4,甲C7の2,甲C8)。さらに,Aは,その他の8つの金融機関に対して合計21億円以上の借入金債務を負担していた(当事者間に争いがない)。 イ担保の状況本件融資2の当時,なにわ銀行は,手形貸付稟議書(甲C2の1)において,Aに対する融資残高が2億3068万2000円であったのに対し,同行の有効担保額を2億1040万円と評価していた。 ウ融資の決定過程(ア) 使途なにわ銀行伊丹支店支店長は,手形貸付稟議書添付の審査部あての平成5年3月19日付けの稟議説明書(手形貸付補足説明)(甲C2の4)において,本件融資2の使途について,平成2年2月になにわファイナンスから借り入れた1億8000万円の肩代わり資金と説明している。 (イ) 返済計画Aは,なにわ銀行伊丹支店あての平成5年3月19日付け融資申込書(甲C2の3)において,本件融資2の返済原資を商品物件売却としていたが,同支店作成の同月17日付けの商品土地購入資金貸付説明書(甲C2の2)には,「計画では赤字となるため,この計画は再度勘案中のものである。」,「計画しても,販売価格が土地の下落により採算が合わない。」旨の記載がある。 また,なにわ銀行伊丹支店支店長は,(ア)の手形貸付稟議書(甲C2の1)の「店長採択意見」欄に,Aの平成4年度の売上高は5550万円で,9億6200万円減少していること,本件融資2がなにわファイナンスの肩代わりで政策的なものであること等を記載している。 さらに,なにわ銀行伊丹支店支店長は,(ア)の稟議説明書(手形貸付補足説明)において,今後の計画について,「マンション建設予定地として現在まで保有しているが,厳しい不動産情勢の中で建設した場合の販売価格面等において目処が立ちにくいため,市場動向を見極めている状態である。賃貸あるいは分譲のマンション,テラス ション建設予定地として現在まで保有しているが,厳しい不動産情勢の中で建設した場合の販売価格面等において目処が立ちにくいため,市場動向を見極めている状態である。賃貸あるいは分譲のマンション,テラスハウス,立体駐車場等あらゆる方面から最良の保有あるいは販売の方法を勘案中であり,本年度中には具体的な計画のもと着工したいとの申出がある。」旨記載している。 (ウ) 担保なにわ銀行は,本件融資2に際して,なにわファイナンスから,極度額2億1600万円の根抵当権を譲り受けたが,(ア)の手形貸付稟議書において,その物件の担保価値を8382万9000円(有効担保額8380万円)と評価していた(甲C2の1,5,甲C3)。 なにわ銀行は,本件融資2の実行により,Aに対する融資残高が4億1068万2000円となるのに対し,(ア)の手形貸付稟議書において,同行の有効担保額は,前記譲受根抵当権の設定された担保物件と合わせて2億9420万円と評価していた(甲C2の1)。 (エ) 融資の決定なにわ銀行の貸出審査会は,本件融資2を可とする採択をし,Bは,平成5年3月29日,手形貸付稟議書に押印して,同融資を可とする決裁をした(甲C2の1)。 (オ) 融資の実行なにわ銀行は,平成5年3月31日,本件融資2を実行した(甲C2の1)。 (カ) 被告の認識被告は,Aの経営状況について,前記ア(イ),(ウ)の事情を知っていたほか,本件融資2が本件再建計画の一環としての肩代わり融資であることを認識していた。そして,被告は,本件融資2についてBが決裁した旨G常務取締役(審査部長)から口頭で報告を受けたが,特にこれに反対しなかった(甲C6の2,乙3,被告本人,弁論の全趣旨)。 エその後の返済状況等Aは,平成5年4月,脳出血で入院した(甲C7の3,4,甲C8)。Aに対する融資は 頭で報告を受けたが,特にこれに反対しなかった(甲C6の2,乙3,被告本人,弁論の全趣旨)。 エその後の返済状況等Aは,平成5年4月,脳出血で入院した(甲C7の3,4,甲C8)。Aに対する融資は,平成6年2月2日以降延滞となっていたが,なにわ銀行は,平成6年4月28日,前記のとおり本件融資2に伴ってなにわファイナンスから根抵当権を譲り受けていた担保物件を処分して8000万円を回収した(甲C7の1から4まで,甲C8)。 オ償却処理なにわ銀行は,平成7年3月期,Aが脳出血で平成5年4月から入院していて回復の見込みがないこと,保証人はないこと,担保物件は全て処分されたこと,担保物件でない不動産については仮差押えをしたものの時価以上の担保設定がされていることなどを根拠に,回収の見込みが全くないと判断して,Aに対する融資残高1億4055万6186円(本件融資2については1億円)を償却処理した。なお,Aは,平成9年12月29日死亡した(甲C8,弁論の全趣旨)。 (10) 本件融資3についてア大真の経営状況(ア) 大真の営業損益,経常損益及び当期未処理損失は,以下のとおり推移した(甲D4の1から3まで)。 平成3年9月期営業利益 6970万6283円経常損失 4682万5291円当期未処理損失 7038万8735円平成4年9月期営業損失 1490万0867円経常損失 8391万7031円当期未処理損失 1億5672万1918円平成5年9月期営業利益 5241万0575円経常損失 7489万5219円当期未処理損失 2億3232万4423円(イ) なにわファイナンスは,大真に対して,平成2年4月26日,商品用マンション購入資金として5000万円(期間12か月)を貸し付 7489万5219円当期未処理損失 2億3232万4423円(イ) なにわファイナンスは,大真に対して,平成2年4月26日,商品用マンション購入資金として5000万円(期間12か月)を貸し付けていたが,大真が物件売却の目処が立たず,融資対象物件の使途を商品物件から自社用の長期保有資産に変更せざるを得なくなったことから,平成3年8月30日,資金使途を社宅購入資金,返済期日を平成8年8月30日とする長期貸付けに切り替えた(甲D6の1)。 また,なにわファイナンスは,大真に対して,平成2年8月27日に商品土地購入資金として貸し付けていた1億5000万円(期間24か月)についても,平成3年8月30日,上記理由から,資金使途を本社建物購入資金,金額を建築費5000万円を加えた2億円,返済期日を平成8年8月30日とする長期貸付けとした(甲D6の2)。 (ウ) なにわ銀行は,昭和57年10月以降,大真との間で,融資取引を継続した。融資残高は,平成元年4月の13億9736万1000円をピークに,本件融資3の直前である平成5年3月時点では4億6739万2000円となっていた。 また,大真は,同月時点のなにわファイナンスからの融資残高は2億4200万円であり,兵庫コンサルティングからの8億円,なにわ銀ファクターからの1億0500万円等も合わせると,同月時点で,合計16億円以上の借入債務を負担していた。 (エ) 大真は,平成4年10月21日,兵庫コンサルティングから競売申立てをされ,なにわ銀行は,平成4年11月14日,債権の届出をした(甲D5の1)。 イ担保の状況本件融資3の当時,なにわ銀行は,証書貸付稟議書(甲D2の1)において,大真に対する融資残高が4億6739万2000円であったのに対し,同行の有効担保額を3億9164万2000円と評価していた 状況本件融資3の当時,なにわ銀行は,証書貸付稟議書(甲D2の1)において,大真に対する融資残高が4億6739万2000円であったのに対し,同行の有効担保額を3億9164万2000円と評価していた。 ウ融資の決定過程(ア) 使途なにわ銀行甲子園支店支店長は,証書貸付稟議書添付の審査部あての平成5年3月26日付けの稟議説明書(甲D2の3)において,本件融資3の使途について,なにわファイナンスの肩代わり資金2億4200万円と説明している。 (イ) 返済計画なにわ銀行甲子園支店支店長は,(ア)の稟議説明書において,本件融資3の返済原資及び期間について,期間は5年,平成5年4月から毎月100万円あて59回,残額1億8300万円は期日一括弁済する,残額金については期間内に商品物件及び入担物件の売却により返済予定と説明している。 (ウ) 担保なにわ銀行は,本件融資3に際して,なにわファイナンスから,極度額合計3億1000万円の根抵当権を譲り受けたが,(ア)の証書貸付稟議書において,その物件の担保価値を合計7342万1000円(有効担保額7340万円)と評価しており,担保預金6579万1000円と合計しても1億3921万2000円であった(甲D2の1,5から7まで,甲D3の1から4まで)。 なにわ銀行は,本件融資3の実行により,大真に対する融資残高が7億0939万2000円となるのに対し,(ア)の証書貸付稟議書において,同行の有効担保額は,前記譲受根抵当権の設定された担保物件と合わせて約4億6504万2000円となると評価しており,その他担保預金が1億3464万6000万円であった(甲D2の1)。 (エ) 融資の決定なにわ銀行の貸出審査会は,本件融資3を可とする採択をし,被告は,平成5年3月30日,G常務取締役(審査部長)から説明を受けた上, 3464万6000万円であった(甲D2の1)。 (エ) 融資の決定なにわ銀行の貸出審査会は,本件融資3を可とする採択をし,被告は,平成5年3月30日,G常務取締役(審査部長)から説明を受けた上,(ア)の証書貸付稟議書に押印して,同融資を可とする決裁をした(甲D2の1,乙3)。 (オ) 融資の実行なにわ銀行は,平成5年3月31日,本件融資3を実行した(甲D2の1)。 エその後の返済状況等(ア) 大真は,その保有不動産について,平成5年6月,兵庫コンサルティングから仮差押えを受け,さらに,平成8年8月には神戸市から,平成10年11月には大蔵省からそれぞれ差押えを受けた(甲D3の3,4)。 (イ) その後,本件融資3の融資残高は,2億0430万円まで減少したが,これに対して,脱退原告は,平成11年8月27日現在で,大真所有の不動産の担保価値を8590万1000円と評価していた(甲D8)。その後,脱退原告は,大真所有不動産の競売を申し立てたが,原告訴訟引受人は,手続費用を除き,合計5433万4395円の配当を受けるにとどまった(甲D9)。 (11) 本件各融資金の流れ本件各融資の結果,なにわファイナンスは,明大住宅,A及び大真から融資の返済を受け,その返済金等によって東海銀行(12億0000万0515円),第一生命保険相互会社(2802万9878円)及び長銀(10億0460万0700円)に対する債務を返済した(甲A37の1,証人E)。 (12) 経営改善計画策定後のなにわファイナンスアなにわ銀行は,平成5年9月30日付けで,なにわファイナンスの「経営再建計画書」と題する書面(甲A21)を作成した。 上記書面によると,平成4年4月から平成5年9月までに,なにわ銀行が11社(人)(明大住宅[5億6500万円],A[1億8000万円]及び大真[2 営再建計画書」と題する書面(甲A21)を作成した。 上記書面によると,平成4年4月から平成5年9月までに,なにわ銀行が11社(人)(明大住宅[5億6500万円],A[1億8000万円]及び大真[2億4100万円]を含む。)に対して合計24億1000万円を肩代わり融資し,なにわファイナンスが合計50億1300万円を回収したため,平成5年9月30日現在の貸付金残高は26億1700万円となった。 そして,なにわ銀行は,上記書面において,今後の経営方針について,平成5年度(平成6年3月期)は,所有不動産(マンション)の家賃収入で利息を支払う,平成6年度(平成7年3月期)は,担保物件の競売手続を進め,利息,一般管理費等はマンションの家賃収入で支払い,100万円の当期利益が計上される見込みである,平成7年度(平成8年3月期)は,不良債権7億9700万円についてはなにわ銀行が債権放棄をして償却処理し,今後は賃貸業務に専念する,と述べ,また,この間の当期損益の推移について,平成5年3月期600万円の損失,平成6年3月期500万円の損失,平成7年3月期100万円の利益,平成8年3月期200万円の利益と予測している。 イなにわ銀行は,平成6年8月26日,日本銀行に対し,同年6月30日の時点における本件再建計画の進捗状況を報告する書面(甲A42)を提出した。 上記書面によると,なにわファイナンスの貸付金債権26億1400万円は全て不良債権化しており,回収見込額は12億3900万円にとどまり,含み損は13億7500万円である,未収収益,仮払金,投資有価証券及び商品不動産においても合計8億1000万円の含み損があった(合計21億8500万円)。 なにわ銀行は,上記書面において,なにわファイナンスに対する支援計画について,借入金に対する利息を無利息とするほか,借入 産においても合計8億1000万円の含み損があった(合計21億8500万円)。 なにわ銀行は,上記書面において,なにわファイナンスに対する支援計画について,借入金に対する利息を無利息とするほか,借入金についても,平成7年度(平成8年3月期)に8億3200万円,平成8年度(平成9年3月期)に5億1200万円,平成10年度(平成11年3月期)に8億4100万円(合計21億8500万円)をそれぞれ債務免除する計画であると報告している。 ウなにわ銀行は,平成7年2月24日開催の取締役会において,なにわファイナンスに対する清算のための支援として,2億8100万円の利息免除と21億5400万円(総額24億3500万円)の債務免除を平成11年3月期までに実施する旨決議した(甲A43)。 エなにわ銀行は,平成10年3月31日,なにわファイナンスに対する債権5億4600万円を放棄した(甲A46)。 オなにわ銀行審査部は,平成10年8月31日,なにわファイナンスに対する債権27億9488万1000円を株式会社整理回収銀行に譲渡する旨の変更稟議をした(甲A47)。 カなお,なにわ銀行は,平成5年9月30日付けで,なにわ銀行本体の「経営改善計画書」と題する書面(甲A20)を作成した。なにわ銀行は,上記書面において,リストラ施策の推進のため,人件費の削減に取り組むとし,役員報酬を平成5年9月以降毎月10パーセント,役員賞与を12月分につき50パーセントそれぞれ削減するほか,平成6年度からは,年収において役員報酬を10パーセント,役員賞与を50パーセントそれぞれ削減すると述べている。そして,なにわ銀行は,平成5年8月27日に開催した取締役会で,経営刷新委員会の決定によるリストラの一環として,同年9月から役員月額報酬減額(削減率は頭取15パーセント,その他の取 ると述べている。そして,なにわ銀行は,平成5年8月27日に開催した取締役会で,経営刷新委員会の決定によるリストラの一環として,同年9月から役員月額報酬減額(削減率は頭取15パーセント,その他の取締役及び監査役10パーセント)を実施することを決議した。被告(頭取)は,平成5年9月から平成6年6月までの間,毎月15パーセント削減した役員報酬を受け取り,平成5年度分から平成9年度分までの間,役員賞与全額を受け取らなかった(甲A22,乙3)。 2 争点(1)(善管注意義務違反・忠実義務違反)について(1) 経営判断の原則取締役は,営利を目的とする会社の経営を委ねられた専門家として,長期的な視点に立って全株主にとって最も利益となるように職務を遂行すべき善管注意義務及び忠実義務を負っている(商法254条3項,民法644条,商法254条ノ3)。 もっとも,営利の目的を実現するためには,取引先,顧客,従業員,近隣の住民,地域社会等,会社をめぐる関係者に対する配慮を欠かすことができないから,取締役は,会社を経営するに当たっては,上記関係者に対する適切な配慮を行いつつ,営利の目的を実現すべきこととなる。 そして,事業を営み利益をあげるためには,会社の状況,会社を取り巻く市場及び業界の状況,国内・国外の情勢等,時々刻々変化するとともに相互に影響し合いかつ流動的な考慮要素を的確に把握して総合的に評価し,短期的・長期的な将来予測を行った上,時機を失することなく経営判断を積み重ねていかなければならないから,専門家である取締役には,その職務を遂行するに当たり,広い裁量が与えられているものといわなければならない。もっとも,銀行は,決済機能を担っていること等,その営む事業が公共性を有することから,自由競争原理に基づく市場への参入と退出が活発に行われることは元来予定され えられているものといわなければならない。もっとも,銀行は,決済機能を担っていること等,その営む事業が公共性を有することから,自由競争原理に基づく市場への参入と退出が活発に行われることは元来予定されていないのであり,銀行の取締役は,銀行の業務の健全かつ適切な運営を行うことにより,預金者等の保護を確保するとともに信用秩序の維持を図ることが期待されている(銀行法1条参照)。したがって,銀行の取締役は,一般の事業会社の取締役と同様,経営の専門家として広い裁量が与えられているけれども,貸出業務等の与信業務を行うに当たっては,信用リスクを適切に管理し,安全な資金運用を行うことが求められているなど,銀行の取締役であるがゆえの違いがあることに留意しなければならない。 そこで,銀行の取締役に対し,過去の与信業務における措置が善管注意義務及び忠実義務に違背するとしてその責任を追及するためには,その措置を執った時点において,判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあったか,あるいは,意思決定の過程,内容が企業経営者一般としてではなく,銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったことを要するものと解するのが相当である。 (2) 本件各融資と本件再建計画の関係被告は,本件各融資が本件再建計画に基づく肩代わり融資であり,同計画の一部であると主張するのに対し,原告訴訟引受人は,本件各融資が本件再建計画に基づいて実行されたとはいえないと主張する。 前記認定のとおり,なにわ銀行のなにわファイナンスに対する支援は,本件再建計画が予定している債権譲渡の方法ではなく,本件各融資の方法で実施されており,また,本件再建計画は,平成5年4月9日付けであり,本件各融資が同年3月31日に実行された後に提出されたものと推認される。しかしながら,前記認定のとおり,なに く,本件各融資の方法で実施されており,また,本件再建計画は,平成5年4月9日付けであり,本件各融資が同年3月31日に実行された後に提出されたものと推認される。しかしながら,前記認定のとおり,なにわ銀行の貸出審査会(B委員長)は,同年3月3日,なにわファイナンスに対する支援のため,なにわファイナンスの正常債権をなにわ銀行が譲り受けるか又はなにわ銀行が肩代わり融資するという意見をとりまとめて被告(頭取)に報告していたこと,本件再建計画の骨子がなにわファイナンスの貸付金債権のうちの一部をなにわ銀行が譲り受け,なにわファイナンスは新規貸付けをせず,残った貸付金債権の回収に専念するというところにあることからすると,なにわ銀行は,本件各融資の時点で,既に,本件再建計画の概要を決定しており,本件再建計画の一環として本件各融資を決定し実行したものと推認される。 (3) なにわファイナンスを支援する必要性前記認定のとおり,なにわファイナンスは,平成4年3月期には既に営業損失を計上し,同年5月ころには新規貸付けをしなくなるなど経営状況が悪化していた。 また,なにわファイナンスは,平成3年10月から12月にかけて,東海銀行から,度々,融資金の返済方法の変更,なにわ銀行による肩代わり返済等の申入れを受けるようになっていた。加えて,なにわファイナンスは,商号になにわ銀行と同じ「なにわ」を使用している上,株主構成,役員構成及び営業実態からみて,なにわ銀行が直接出資していなかったとはいえ,なにわ銀行と密接な関係のある系列ノンバンクであるというべきである(前判示のとおり,東海銀行がなにわ銀行に対しなにわファイナンスに対する支援要請を行ったことは,外部からもそのように認識されていたことを示している。)。 そして,営業状況が悪化していたなにわファイナンスが経営破綻するとす 銀行がなにわ銀行に対しなにわファイナンスに対する支援要請を行ったことは,外部からもそのように認識されていたことを示している。)。 そして,営業状況が悪化していたなにわファイナンスが経営破綻するとすれば,なにわ銀行の信用不安を招来するおそれがないとはいえないから,本件各融資を決定し実行した当時,なにわ銀行としては,なにわファイナンスの再建を支援するか,あるいは信用不安を招来しない形での清算を支援するなど何らかの措置を講じる必要に迫られたものと推認することができる。 (4) 本件各融資の回収可能性(損失発生の危険性)アしかしながら,系列ノンバンクであるなにわファイナンスの経営破綻により信用不安を招来することを回避するためであっても,常に系列ノンバンクの再建を支援することが許される訳ではないし,また,再建を支援することが許されるとしても,無限定にあるいはどのような方法であっても許される訳ではなく,なにわ銀行の取締役に与えられている裁量を超えた場合には,善管注意義務違反及び忠実義務違反の責を負う場合も考えられる。 そこで,まず,本件各融資が回収不能となりなにわ銀行が損失を被る可能性を具体的に予見することができたかについて検討する。 イ本件融資1について前記認定のとおり,明大住宅は,平成3年4月期,平成4年4月期と2期続けて多額の経常損失を計上し,しかもその金額が増加していたこと,なにわファイナンスに対し,平成3年10月,平成4年5月と2回にわたり,物件売却の遅れを理由に借入金の返済期限延長を申し入れ,これに応じてもらっていたこと,平成5年3月の時点で,明大住宅のなにわ銀行からの借入金残高は2億6231万7000円であり,なにわファイナンスからの借入金残高は5億6500万円であったこと,明大住宅は,平成5年二,三月ころには,事業継続の意欲を 点で,明大住宅のなにわ銀行からの借入金残高は2億6231万7000円であり,なにわファイナンスからの借入金残高は5億6500万円であったこと,明大住宅は,平成5年二,三月ころには,事業継続の意欲を失っていたことがうかがわれること,本件融資1を実行すると,なにわ銀行の明大住宅に対する融資残高が8億5300万円余りとなるのに対し,同行が評価した有効担保額は4億6580万円にとどまることなどの事実が認められ,以上の事実を総合すると,なにわ銀行は,本件融資1を決定し(平成5年3月29日),実行した時点で(同月31日),同融資の融資金全額を明大住宅の営業収益や担保物件の換価によって回収することは困難であったものと認められる。 そして,前記認定の事実関係によれば,被告は,なにわファイナンスに対する支援を審議し決議した平成4年3月24日(20億円以内の特別貸付),同年9月24日(15億円の追加融資)及び平成5年3月23日(銀行法13条の信用供与限度額以内で無利息で行うこと)の取締役会において,議長を務めており,なにわファイナンス及びその取引先の状況について承知していたものと推認されること,貸出審査会で採択後G常務取締役(審査部長)から説明を受けた上で稟議書に押印して本件融資1を可とする決裁をしていること等の事実が認められるのであるから,被告は,本件融資1を可とする決裁をした時点において,同融資が回収不能となる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものと認められる。 ウ本件融資2について前記認定のとおり,Aは,平成4年度に売上げが大きく減少したこと,なにわ銀行に対し平成3年4月ころから度々物件売却の遅れを理由に借入金の返済期限延長を申し入れこれに応じてもらっていたこと,なにわファイナンスに対しても,平成4年2月,平成 げが大きく減少したこと,なにわ銀行に対し平成3年4月ころから度々物件売却の遅れを理由に借入金の返済期限延長を申し入れこれに応じてもらっていたこと,なにわファイナンスに対しても,平成4年2月,平成5年2月と2回にわたり,物件売却の遅れを理由に借入金の返済期限延長を申し入れこれに応じてもらっていたこと,平成5年3月の時点で,Aのなにわ銀行からの借入金残高は2億3068万2000円,なにわファイナンスからの借入金残高は1億8000万円であり,その他の金融機関からの借入金残高は合計21億円以上であったこと,本件融資2を実行すると,なにわ銀行のAに対する融資残高が4億1000万円余りとなるのに対し,同行が評価した有効担保額は2億9420万円にとどまることなどの事実が認められ,以上の事実を総合すると,なにわ銀行は,本件融資2を決定し(平成5年3月29日),実行した時点で(同月31日),同融資の融資金全額をAの営業収益や担保物件の換価によって回収することは困難であったものと認められる。 そして,前判示のとおり,被告は,なにわファイナンスに対する支援を審議し決議した取締役会において,議長を務めており,なにわファイナンス及びその取引先の状況について承知していたものと推認されること,貸出審査会で採択しB専務取締役が決裁をした後,本件融資1及び3を可とする決裁をした際,G常務取締役(審査部長)から本件融資2につきB専務取締役が決裁した旨報告を受けていたこと等の事実が認められるのであるから,被告は,G常務取締役(審査部長)から上記報告を受けた時点において,本件融資2が回収不能となる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものと認められる。 エ本件融資3について前記認定のとおり,大真は,平成3年9月期,平成4年9月期と2期続けて が回収不能となる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものと認められる。 エ本件融資3について前記認定のとおり,大真は,平成3年9月期,平成4年9月期と2期続けて経常損失を計上していたこと,平成4年10月には他の債権者から競売申立てをされていたこと,平成2年になにわファイナンスから調達した資金で商品用土地建物を購入したものの,物件売却の目処が立たないことから,平成3年8月には資金の使途を社宅購入・本社建物購入に改め,返済期限の大幅延長に応じてもらっていること,平成5年3月の時点で,大真のなにわ銀行からの借入金残高は4億6739万2000円,なにわファイナンスからの借入金残高は2億4200万円であり,その他の金融機関からの借入金も合わせると合計16億円以上の債務を負担していたこと,本件融資3を実行すると,なにわ銀行の大真に対する融資残高が7億円余りとなるのに対し,同行が評価した有効担保額は4億6504万2000円,担保預金は1億3464万6000円にとどまることなどの事実が認められ,以上の事実を総合すると,なにわ銀行は,本件融資3を決定し(平成5年3月30日),実行した時点で(同月31日),同融資の融資金全額を大真の営業収益や担保物件の換価によって回収することは困難であったものと認められる。 そして,前判示のとおり,被告は,なにわファイナンスに対する支援を審議し決議した取締役会において,議長を務めており,なにわファイナンス及びその取引先の状況について承知していたものと推認されること,貸出審査会で採択後G常務取締役(審査部長)から説明を受けた上で稟議書に押印して本件融資3を可とする決裁をしていること等の事実が認められるのであるから,被告は,本件融資3を可とする決裁をした時点において,同融資が回収不能とな 締役(審査部長)から説明を受けた上で稟議書に押印して本件融資3を可とする決裁をしていること等の事実が認められるのであるから,被告は,本件融資3を可とする決裁をした時点において,同融資が回収不能となる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものと認められる。 オこれに対して,被告は,本件各融資について,当時の時価評価額は路線価の1.0倍であったが,従来の時価評価額は路線価の1.5倍であったから,担保物件からほぼ融資金の全額が回収が可能であった旨主張するけれども,なにわ銀行が土地担保の評価について路線価の1.0倍に変更した経緯(日本銀行による考査を踏まえて変更したこと,その理由について,日本銀行に提出した「経営改善計画について」と題する書面で,不動産価格の下落傾向が続いていたこと等を挙げていること)に照らし,採用し難い。加えて,貸付金を確実に回収するため,土地担保を評価するに当たっては,担保価格が下落する危険性を考慮して掛目を乗じるのが一般であるにもかかわらず,被告の上記主張では掛目に対する配慮がないこと,本件各融資の稟議書(甲B2の1から7まで,甲C2の1から5まで,甲D2の1から7まで)には,路線価の1.0倍の価格に担保掛目(60パーセントから75パーセント)を乗じた有効担保額が記載されており,被告の上記主張に沿う記載は見受けられないことからみても,被告の上記主張を採用することは到底できない。 (5) 本件再建計画の合理性及び本件各融資の決定過程次に,本件各融資の前提となった本件再建計画の合理性及び本件各融資の決定過程について検討する。 本件再建計画の骨子は,前記認定のとおり,①なにわ銀行がなにわファイナンスの当時有していた債権のうち,金額にして約半分を簿価で譲り受けるとともに(実際には,なにわ銀行が肩 定過程について検討する。 本件再建計画の骨子は,前記認定のとおり,①なにわ銀行がなにわファイナンスの当時有していた債権のうち,金額にして約半分を簿価で譲り受けるとともに(実際には,なにわ銀行が肩代わり融資[本件各融資]を行った。),なにわファイナンスに対して無利息の追加融資をすることによって,同社がなにわ銀行以外の債権者(千代田生命を除く。)に対する債務を弁済する,②なにわファイナンスは,残る債権の回収とマンションの管理のみの業務を行い,新規貸付けはしない,③千代田生命に対する債務の利払い(年間3500万円)については,マンションの賃料収入(年間6000万円)から充当する,というものである。したがって,なにわ銀行としては,なにわファイナンスから譲り受けた債権を全額回収しない限り,本件再建計画の実施によって損失を被ることになる(なにわファイナンスの残債権額と同額あるいはそれ以上の肩代わり融資をした場合[本件各融資]も同様である。)。また,なにわファイナンスが,同社に残る債権(総額26億1800万円)の回収と同社所有のマンションの賃料によって,なにわ銀行に対する約36億円の債務を弁済することができなければ,なにわ銀行は更に損失を被ることになる。 しかるに,前判示のとおり,被告は,本件各融資がいずれも回収不能となりなにわ銀行が損失を被る可能性を具体的に予見することができたにもかかわらず,その損失の規模(融資額のうちどれだけが回収不能となるか)について検討した形跡がなく,したがって,本件各融資によって回避しようとするなにわ銀行の損失との比較・検討をした形跡もない。 また,なにわファイナンスのなにわ銀行に対する約36億円の債務の返済原資としては,前記のとおり,なにわファイナンスに残る債権と同社所有のマンションの賃料であるが,後者については,千代 た形跡もない。 また,なにわファイナンスのなにわ銀行に対する約36億円の債務の返済原資としては,前記のとおり,なにわファイナンスに残る債権と同社所有のマンションの賃料であるが,後者については,千代田生命に対する債務の利払いを控除すると年間2500万円が残るのみであり,更にこれからマンションの敷地の地代や維持管理費が控除されるのであり,前者については,仮に元本全額が回収されたとしてもなにわ銀行のなにわファイナンスに対する債権の元本額にも満たないのであるから,本件再建計画によってなにわ銀行に一定程度の損失が発生する蓋然性があった。それにもかかわらず,被告は,その損失の規模を予測するために必要不可欠な,なにわファイナンスに残存する債権の回収可能性を検討した形跡がなく,したがって,本件再建計画によって回避しようとするなにわ銀行の損失との比較・検討をした形跡もない。 そもそも,本件再建計画によれば,なにわファイナンスは新規貸付けを行わず,唯一確実な収益は,同社所有のマンションの賃料収入から千代田生命に支払う利息,地代,維持管理費等を控除した残額である上,なにわファイナンスに残る債権の回収可能性も定かではないから,本件再建計画は,ただなにわファイナンスを存続させるだけであって,同社の経営状況が改善される具体的な可能性を有する計画ではなく,合理性を有するものではなかったと言わざるを得ない。 (6) 被告の善管注意義務違反及び忠実義務違反ア本件融資1及び3被告は,前判示のとおり,なにわ銀行の代表取締役(頭取)として,本件融資1及び3の決裁権限を有していたのであり,本件融資1及び3によって,なにわ銀行に損失が生じる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものである。それにもかかわらず,その損失の規模や,なにわファイナンス であり,本件融資1及び3によって,なにわ銀行に損失が生じる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものである。それにもかかわらず,その損失の規模や,なにわファイナンスを救済する必要性(救済しないことによってなにわ銀行が被るおそれのある損失)と本件再建計画及び同各融資を実行することによってなにわ銀行が被るおそれのある損失との比較等の点について検討していないのであるから,被告が本件融資1及び3を可とする決裁をするという判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあり,その意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,本件融資1及び3を決定することとした経営判断については,被告に認められた裁量の範囲を逸脱するものであり,したがって,被告について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 イ本件融資2前記認定のとおり,本件融資2については,Bがなにわ銀行の専務取締役として決裁権限を有していた。 しかしながら,前記認定のとおり,なにわ銀行では,貸出審査会が審査した融資案件については全て審査部長から頭取に報告するものとされていたこと,貸出審査会が不採択とした融資案件について,頭取の意見によって差し戻された事例もあったことが認められるのであり,被告は,前判示のとおり,G常務取締役(審査部長)からB専務取締役が本件融資2を可とする決裁をした旨の報告を受けた時点において,本件融資2が回収不能となる可能性を具体的に予見していたか,または少なくとも予見することができたものと認められるにもかかわらず,その損失の規模や,なにわファイナンスを救済する必要性(救済しないことによってなにわ銀行が被るおそれのある損失)と本件再建計画及び同各融資を実行することによってな たものと認められるにもかかわらず,その損失の規模や,なにわファイナンスを救済する必要性(救済しないことによってなにわ銀行が被るおそれのある損失)と本件再建計画及び同各融資を実行することによってなにわ銀行が被るおそれのある損失との比較等の点について検討していないのであるから,被告が本件融資2を実行することに異論を差し挟まないという判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあり,その意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 よって,本件融資2について被告に認められた裁量の範囲を逸脱して,Bに対する監督義務を怠ったのであり,したがって,被告について善管注意義務違反及び忠実義務違反が認められる。 ウ母体行責任論ところで,被告は,本件各融資当時,日本,特に銀行業界では,母体行が,系列ノンバンクの再建の面倒を見るというのが常識であり,商慣習であったから,本件再建計画の一環として本件各融資を実行したことは,経営判断として,通常の企業人の合理的な選択の範囲内のものであったと主張する。 前判示のとおり,系列ノンバンクであるなにわファイナンスが経営破綻するとすれば,なにわ銀行の信用不安を招来するおそれがないとはいえないから,本件各融資を決定し実行した当時,なにわ銀行としては,なにわファイナンスの再建を支援するか,あるいは信用不安を招来しない形での清算を支援するなど何らかの措置を講じる必要に迫られたものと推認することができるけれども,系列ノンバンクの経営破綻により信用不安を招来することを回避するためであっても,常に,「母体行責任」の名の下に,系列ノンバンクの再建を支援することが許される訳ではないし,また,再建を支援することが許されるとしても,無限定にあるいはどのような方法であっても許される訳 であっても,常に,「母体行責任」の名の下に,系列ノンバンクの再建を支援することが許される訳ではないし,また,再建を支援することが許されるとしても,無限定にあるいはどのような方法であっても許される訳ではない。 被告は,本件各融資がいずれも回収不能となりなにわ銀行が損失を被る可能性を具体的に予見することができたのであるから,本件各融資を実行することによってなにわ銀行が被るおそれのある損失と,本件各融資を実行しないことによってなにわ銀行が被るおそれのある損失とを比較検討することを要するにもかかわらず,そのような検討をしていないのであるから,被告の判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあり,その意思決定の過程,内容が銀行の取締役として特に不合理,不適切なものであったといわざるを得ない。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 なお,前記認定のとおり,日本銀行がなにわ銀行から本件再建計画の提出を受けたことは認められるけれども,日本銀行あるいは大蔵省(近畿財務局)が,なにわ銀行が本件再建計画を作成するに当たりなにわファイナンスの支援策として何を盛り込むかについて事前に了承していたとか,なにわ銀行が本件各融資を実施することを事前又は事後に了解していたなどの事実を認めるに足りる証拠はない。 (7) 損害ア本件融資1なにわ銀行は,前記認定のとおり,平成9年3月期,明大住宅が平成8年12月に営業所を売却し営業実態がなくなっていること,保証人にも保証能力がないこと,担保物件も全て処分されていることなどを根拠に,今後の回収が全く見込めなくなったと判断して4億5907万2277円を償却処理したものであるから,遅くとも平成9年3月31日の時点において上記償却額相当分が回収不能となったものと推認される。 そして,本件融資1の融資金8 なくなったと判断して4億5907万2277円を償却処理したものであるから,遅くとも平成9年3月31日の時点において上記償却額相当分が回収不能となったものと推認される。 そして,本件融資1の融資金8億円のうちなにわファイナンスの肩代わり資金に充てられた5億6500万円を除くその余の2億3500万円を,上記回収不能額から控除した残額2億2407万2277円については,少なくとも,本件融資1によってなにわ銀行が被った損害であると認められる。 イ本件融資2なにわ銀行は,前記認定のとおり,平成7年3月期,Aが脳出血で平成5年4月から入院していて回復の見込みがないこと,保証人はないこと,担保物件は全て処分されたこと,担保物件でない不動産については仮差押えをしたものの時価以上の担保設定がされていることなどを根拠に,回収の見込みが全くないと判断してAに対する融資残高1億4055万6186円(本件融資2については1億円)を償却処理したものであるから,遅くとも平成7年3月31日の時点において上記償却額相当分が回収不能となったものと推認される。 よって,上記回収不能額のうち本件融資2についての1億円が本件融資2によってなにわ銀行が被った損害であると認められる。 ウ本件融資3前記認定のとおり,本件融資3の融資金のうち2億0430万円が残存していたこと,脱退原告は,平成11年8月27日現在で,大真所有の不動産の担保価値を8590万1000円と評価していたこと,原告訴訟引受人が上記不動産の競売手続で配当を受けたのは手続費用を除き5433万4395円に止まることが認められのであるから,本件融資3については,平成11年8月27日の時点において,少なくとも残債権2億0430万円から8590万1000円を控除した1億1839万9000円が回収不能となっていたものと推 られのであるから,本件融資3については,平成11年8月27日の時点において,少なくとも残債権2億0430万円から8590万1000円を控除した1億1839万9000円が回収不能となっていたものと推認される。 よって,少なくとも上記回収不能額が本件融資3による損害であると認められる。 エ以上によれば,なにわ銀行は,本件各融資によって,少なくとも合計4億4247万1277円の損害を被ったものと認められる。 3 争点(2)(損益相殺の成否)について被告は,本件各融資後,月額報酬の一部,賞与及び退職金を受け取らなかったこと並びに脱退原告の株式を放棄したことをもって損益相殺を主張する。 しかしながら,被告が脱退原告の株式を放棄したとの事実は,これを認めるに足りる証拠がないし,前記認定の事実関係によれば,被告が月額報酬の一部,賞与及び退職金を受け取らなかったことによる利益は,いずれも本件各融資と相当因果関係にあるものとは認められず,したがって損益相殺の対象となるものとは認められない。 第4 結論よって,原告訴訟引受人の請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条を,仮執行の宣言について同法259条1項を,それぞれ適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第4民事部裁判長裁判官池田光宏裁判官松田道別裁判官齋藤毅・

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る