昭和27(う)976 傷害致死被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和28年2月27日 大阪高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役壱年に処する。      原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。          理    由  本件各控訴の趣意

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判決文本文4,789 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役壱年に処する。 原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は、大阪地方検察庁検事正代理検事藤田太郎作成の控訴趣意書、弁護人村田太郎作成の控訴趣意書、弁護人阿部甚吉作成の控訴趣意書、控訴趣意補充書各記載の醉とおりであり、検察官の控訴趣意に対する答弁は、弁護人村田太郎作成の答弁書記載のとおりである。 弁護人村田太郎の控訴趣意第一点及び弁護人阿部甚吉の控訴趣意中第一ないし第八項について、弁護人阿部甚吉は、本件の被害者AやB等が、酒に醉うて被告人方に侵入してCことCに暴行を加え、Cがこれを防ぎながら家屋の入口から約二間の所へ押し出したのはCから言えば、故なく他人の住居に侵入したものを排斥しようとする行為の延長と見てさしつかえなく、且つCの生命身体に対する現在の危険が存し、又は現在の危険がなくても被告人が恐怖、狼狽のあまり右の危険があると思料したのであるから「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」第一条第一項第三号、第二項に当る、と主張するけれども、原判決の挙示する証拠によると被告人は、Cが一旦被告人の住居に侵入したBを屋外に押し出した後において、Aが、Cと格闘中のBに加勢しようとしたのに対し、Cを救援する意思を以てAを殴り倒したのであつて、被告人の加害行為は、その住居に侵入した者以外の者に対して行われたことが明らかであるから、被告人の行為は同弁護人主張の法条に該当しないものと解すべきである。 次に、両弁護人は、被告人の行為は、正当防衛か、少くとも過剰防衛であると主張するについて案ずるに、原判決は、原審弁護人等の右同様の主張に対し、「本件は所謂喧嘩争闘中に被告人が一方に加担する目的で攻撃を加えたものであつて、急 の行為は、正当防衛か、少くとも過剰防衛であると主張するについて案ずるに、原判決は、原審弁護人等の右同様の主張に対し、「本件は所謂喧嘩争闘中に被告人が一方に加担する目的で攻撃を加えたものであつて、急迫不正の侵害に対し他人の権利を防衛する為已むことを得ざるに出た行為と認めることはできないから、弁護人の右主張は採用することができない」と判示しておるが、いわゆる喧嘩闘争とは双方が互に相手方に対し同時に攻撃及び防禦を為す意思を以て闘争することを言うのであるから、もつぱら他人の暴行を防禦するだけで相手方に対し暴行を加える意思がないときは、たとえ相手方と格闘した事実があつても、いわゆる喧嘩闘争をしたものとは言えない。 原裁判所において取り調べた後記の証拠及び当審において取り調べた証人D、同C、同Bの各供述を綜合すると、被告人は、同人所有のガラス製造工場を株式会社E(社長D)に貸与し、自分は同工場内事務所裏側の家屋に居住しているものであり、被害者Aは、F店の名義を以て照明器具卸商を営み、右Eと取引関係のあつたものであるが、原判示の日の昼頃、Aがかねて注文してあつた電燈笠を受け取るため、同人の従弟に当るBと店員Gとともに、オート三輪車で右工場へ行つたところ、Dから「まだ品物ができていないから二時間ほど待つてくれ」と言われ、三人でaに行つてちよつと映画を見てから酒を飲み、午後五時過頃右工場へ帰つて来て、製品を右三輪車に積込にかかつたが、AとBとは相当酔うていたので、Aは同工場出荷係Hに「ながいこと待たした」と文句を言い、Bがやにわに右出荷係を突き倒し、更にBが、工場事務室に行つてDに対し、「仁義を切れ」等と暴言をはき、暴れた上、工場入口附近において、燃料の割木を以てDの腕を殴り、Aが、Bの暴行を止めようとした前記E製造所専務取締役Iを手拳で殴る等の乱暴 、工場事務室に行つてDに対し、「仁義を切れ」等と暴言をはき、暴れた上、工場入口附近において、燃料の割木を以てDの腕を殴り、Aが、Bの暴行を止めようとした前記E製造所専務取締役Iを手拳で殴る等の乱暴を働いた後、AがDに対し呑みに行こうと言い出し、Dは、A等が酔うておるので、その意に従い、上田の運転する三輪車に乗つて門外に出たが、AとBとは、工場構内に残つて通行の老人を倒すなどの酔態を演じていたところ、たまたま同事務所裏側にある被告人居宅人口の内側に、被告人と懇意の間がらで義弟と呼んでいるCことC(当時二十九年)がたばこに火をつけながらA等の方を見ているのに気づき、AがBに対して「なんぢやこいつもやつてしまえ」と言うと、Bが被告人居宅内土間に入つて来て、割木を以てCの頭部を殴り、更に続けて殴ろうとしたので、CはBの割木を持つている手を押え、屋外に押し出し、被告人居宅前の空地でもみ合つておるところへ、Aが「コイツかかつて来たな」と言いながら素手でCの背後に廻りBに加勢してCに暴行を加えようとする態勢を示したので、屋内において右の様子を見ていた被告人は、Cが危険であると思い、同人を救援しようとして、同人方出入口附近に置いてあつた薪割用の手斧を取つて、Aの背後から同人の後頭部を殴打し、Aが一旦よろめいて立ち上ろうとしたところ、更に同人の前頭部を一撃して気絶させ、右の第二撃が致命傷となつて原判示の日時場所において死亡するに至らしめたことを認め得られる。そうすると、CがBに組みついて行つて格闘したのは、Bが理由なく屋内に侵入して来て暴行を加えるのを排除するためであり、Bに対し互に攻撃防禦を反覆するいわゆる喧嘩闘争の意思であつたとは見られない。もつとも、J、Kの司法警察員並びに検察官に対する各供述調書には、CとB、Aとの三人が殴りあい若しくはつかみ ためであり、Bに対し互に攻撃防禦を反覆するいわゆる喧嘩闘争の意思であつたとは見られない。もつとも、J、Kの司法警察員並びに検察官に対する各供述調書には、CとB、Aとの三人が殴りあい若しくはつかみあいをしておるところへ被告人が行つて殴つたのを見たという趣旨の陳述をしており、またCは検察官に対して「Bに殴られたのでムカツとしてBに飛びついて行つた」と述べ被告人は司法警察員(第四回供述調書)に対し「私はAやBが何の関係もないCを殴るのを見て急に腹が立つた」と述べておるが、それだけではCが喧嘩闘争の意思であつたこと又は被告人が喧嘩闘争の一方に加担する目的であつたことを認めるには足りない。その他記録を精査してもCに前記のような攻撃意思のあつたことを認め得る証拠はないのである。原判決もまた量刑に関する説明として「被告人は同人と所謂義兄弟の間柄にあるCがAから理由なく薪で殴られているのを見てその急を救うべく本件所為に出たものである」と判示しておるのである。 然るに、原判決は、原審弁護人等の右主張に対し、CとBとの格闘が「喧嘩争闘」であつて、被告人はCに加担する目的でAに対し攻撃を加えたものと判断したのは失当であると言わねばならない。然らば、AとBとは共同して、Cの身体に対し急迫不正の侵害を加えたものであつて、被告人が義弟の関係にあるCの権利を防衛するため右の共同暴行者に対し加害行為を為すのは、また已むを得ざるところと<要旨>言わねばならない。しかしながら、被告人が凶器を持つていないAに対し、手斧を以てその背後から後頭部</要旨>を殴打し、同人が一旦よろめいて立ち上ろうとするところを更にその前頭部を殴打し、右の第二撃によつて致命傷を与えたことは、明らかに防衛の程度を超えたものと言わなければならない。本件は、刑法第三十六条第一項の正当防衛には当らな いて立ち上ろうとするところを更にその前頭部を殴打し、右の第二撃によつて致命傷を与えたことは、明らかに防衛の程度を超えたものと言わなければならない。本件は、刑法第三十六条第一項の正当防衛には当らないが、同条第二項の過剰防衛にはなると解すべきである。原判決が原審弁護人等の過剰防衛の主張を排斥したのは事実を誤認したものであつて、右の誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。 よつて、量刑に関する弁護人等のその余の控訴趣意及び検察官の控訴趣意に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十二条に従い原判決を破棄し、同法第四百条但し書によつて更に判決をする。 事実 被告人は、大阪市b区cd丁目e番地株式会社E構内にある同会社事務室裏側に居住しておるものであるが、昭和二十六年三月二十日午後五時三十分頃、前記会社へ注文の電燈笠を取りに来たA(当時三十年)と同人の従弟B(当時二十四年)とが、飲酒酩酊じて、同会社出荷係Hを突き倒し、同会社社長Dを割木を以て殴り、同会社専務取締役Iを手撃で殴り、更に通行の老人を倒す等の乱暴を働いた上、被告人方入口内側に居た被告人といわゆる義弟の間がらにあるCことC(当時二十九年)を見て、Aが「こいつも殴つてしまえ」と言う声に応して、Bが被告人方人口から屋内土間に入つて来て、割木を以てCの頭部を殴り、更に続けて殴ろうとしたので、CがBの割木を持つている手を押えて屋外に押し出し、被告人居宅前の空地においてもみ合つておるところへ、Aが「ユイツかかつて来たな」と言いながら、素手で、Cの背後に廻り、Bに加勢してCに暴行を加之ようとする態勢を示したので、屋内において右の様子を見ていた被告人は、Cが危険であると思い、同人を救援してその権利を防衛しようとして、被告人方出入口附近 で、Cの背後に廻り、Bに加勢してCに暴行を加之ようとする態勢を示したので、屋内において右の様子を見ていた被告人は、Cが危険であると思い、同人を救援してその権利を防衛しようとして、被告人方出入口附近に置いてあつた薪割用手斧を取つて、Aの背後から同人の後頭部を殴打し、Aが一旦よろめいて立ち上ろうとしたところを、更に同人の前頭部を殴打して気絶させ、その結果、。右Aに右前頭部骨折硬脳膜外出血、脳挫傷等の傷害を加え且つ化膿性脳膜炎を発起させて、同月二十三日午前九時頃、大阪市f区g町h番地L病院において死亡するに至らしめたものである。 証拠の標目一、 原審第一ないし第九回公判調書中被告人の供述記載二、 被告人の司法警察員に対する第三、第四回各供述調書の記載三、 被告人の検察官に対する第一回供述調書の記載四、 原審公判調書中証人C、同Dの各供述記載五、 当審証人D、同C、同Bの各供述六、 Cの検察官に対する供述調書の記載七、 Jの司法警察員並びに検察官に対する各供述調書の記載八、 Kの司法警察員並びに検察官に対する各供述調書の記載九、 司法警察員並びに原裁判所のなした各検証調書の記載十、 医師M作成の死亡診断書、医師N作成の鑑定書の各記載を綜合して判示事実を認める。 法令の適用被告人の判示行為は、刑法第二百五条第一項に当るところ、前示のように過剰防衛であるから、同法第三十六条第二項、第六十八条第三号により減軽をした刑期範囲内において処断するのであるが、前記のような犯行の動機、態様、被害者の遺族に慰籍料十五万円(内現金五万円、他は部品の提供、手形債権による相殺)を支払い示談が成立しておること、改悛の情その他諸般の事情を考慮し、被告人を懲役一年に処する。但し被告人に執行猶予を附することは適当でない。なお、刑事訴訟法 円、他は部品の提供、手形債権による相殺)を支払い示談が成立しておること、改悛の情その他諸般の事情を考慮し、被告人を懲役一年に処する。但し被告人に執行猶予を附することは適当でない。なお、刑事訴訟法第百八十一条により原審並びに当審における訴訟費用の負担を定める。 (裁判長判事瀬谷信義判事山崎薫判事西尾貢一)

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