平成15(行コ)106 損害賠償請求控訴事件(原審・大津地方裁判所平成14年(行ウ)第10号)

裁判年月日・裁判所
平成17年7月14日 大阪高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文18,577 文字)

主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 前項に係る被控訴人らの請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人主文と同旨 2 被控訴人ら(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要本件は,滋賀県(以下「県」という。)の住民である被控訴人らが,滋賀県知事(以下「県知事」という。)である控訴人に対し,下水処理施設に係る環境対策負担金名下に違法に公金を支出しているなどと主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号前段に基づき,昭和58年度から平成13年度までに支出した金員相当額について県に代位して損害賠償を,同項1号に基づき,将来の公金支出の差止めを,それぞれ請求した事件である。 原判決は,昭和58年度から平成10年度までの公金支出に係る損害の賠償を求める訴え及び将来の公金支出の差止めを求める訴えをいずれも却下し,平成11年度から同13年度までに支出した金員相当額(合計2400万円)に係る損害賠償請求及びこれに対する遅延損害金請求を認容し,上記認容部分の取消し及び同取消しに係る請求の棄却を求めて控訴人が控訴した。 1 前提となる事実(証拠を掲記していない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア被控訴人らは,いずれも県の住民である。 イ控訴人は,平成10年7月20日,県知事に就任した者である(就任日については弁論の全趣旨)。 (2) 琵琶湖流域下水道湖南中部浄化センター(以下「本件センター」という。)の施設概要等及び県による環境対策負担金(以下「 月20日,県知事に就任した者である(就任日については弁論の全趣旨)。 (2) 琵琶湖流域下水道湖南中部浄化センター(以下「本件センター」という。)の施設概要等及び県による環境対策負担金(以下「本件負担金」という。)の支出等については,原判決の「事実及び理由」第2のⅠ2及び3(原判決3頁17行目から5頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (3) 監査請求等ア被控訴人らは,平成14年4月25日,県監査委員に対し,本件負担金の支出は違法な公金の支出であるとして,法242条1項に基づき,必要な措置を請求する旨の住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行った。 イ同監査委員は,被控訴人らに対し,平成12年度以前の支出に関する監査請求については,不適法なものとして却下し,平成13年度の本件負担金の返還及び今後の支出を差し止める措置については,請求に理由がないものとして棄却する旨の平成14年6月19日付け監査結果の通知を発送した。 (以上につき,甲1の1,甲2) 2 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 監査請求期間経過後の損害賠償請求についての「正当な理由」の存否ア控訴人の主張本件負担金の支出は,毎年,県の予算に計上され,県議会の議決を経て執行されており,何ら秘密裡にされたものではない。県では,昭和63年4月から公文書の公開に関する条例が施行されており,県の連絡協議会に対する本件負担金の支出書類や連絡協議会の議案書を含む一件書類は公開すべき書類として取り扱われている。 また,県だけでなく,本件センターに係る地元への本件協力費の支払については,昭和49年度以降,本件センターを使用する6市13町の予算に計上され,議会で審議された上でそれぞれ執行されてきた。 また,県だけでなく,本件センターに係る地元への本件協力費の支払については,昭和49年度以降,本件センターを使用する6市13町の予算に計上され,議会で審議された上でそれぞれ執行されてきた。 さらに,本件センターの供用開始後も,地元に対する協力金が3年ごとに増額されて支払われていることが朝日新聞によって報道されているほか,本件負担金及び本件協力費の支払があったことは,連絡協議会及び対策協議会の決算書にも明記されていた。なお,対策協議会の定例総会は,平成12年3月24日及び平成13年4月27日に開催され,当該総会までに上記決算書が作成され,総会の資料として配付されている(前者においては平成11年度分の,後者においては平成12年度分の各協力費の受領が明記された決算書が配付されている。)。 これらの点からすれば,県民らは,相当の注意力をもって調査を尽くすことにより,平成11年度分については遅くとも平成12年3月31日までに,平成12年度分については遅くとも平成13年3月31日までに,本件負担金の存在及び内容を容易に知ることができたと認められる。よって,被控訴人らには,監査請求期間を経過した平成11年度及び同12年度の支出について,所定の監査請求期間内に請求することができない「正当な理由」はない。 イ被控訴人らの主張(ア) 平成12年度以前の本件負担金の支出については,当時,普通の県民が容易かつ客観的に知り得る状況にはなく,被控訴人らには,監査請求期間内に監査請求をすることができない「正当な理由」があった。 (イ) 控訴人は,朝日新聞の記事及び対策協議会の決算書を根拠に上記「正当な理由」がないと主張するが,前者については,α島の空き地に県がゴルフ場を作ったことが環境保全上問題であることを指摘するもので, イ) 控訴人は,朝日新聞の記事及び対策協議会の決算書を根拠に上記「正当な理由」がないと主張するが,前者については,α島の空き地に県がゴルフ場を作ったことが環境保全上問題であることを指摘するもので,本件協力費のことはその末尾に数行触れられているにすぎず,また,後者については,対策協議会の総会もその決算書類も公開されているわけではないから,被控訴人らは,いずれについても知ることができなかった。 (2) 本件負担金の支出の違法性及び控訴人の故意・過失の有無アこの点に関する当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2のⅢ2(原判決7頁16行目から11頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決9頁22行目に「斬増」とあるのを「漸増」と改める。)。 イ控訴人の当審における主張(ア) 本件センターはいわゆる「大規模嫌悪施設」に当たるところ,このような施設が作られることは,地元住民にとってみれば,住民自身あるいは地域のイメージ等という観点から半永久的なダメージを受けることになる。このダメージを少しでも軽減すべく,当該施設の利用者である県民の負担において,地元のインフラの整備や地元活動の活発化を図ることは,何ら違法とされるものではない。そして,県民が上記の負担をするに際し,どのような負担をもって合理的とするかについては,施設の規模,嫌悪施設の設置により地域が受ける影響,この影響を補填して地域振興を図るために必要な内容,住民らの感情の強弱等の総合的な判断に係るのであり,これらの判断は,県民の代表たる議員により構成される議会及び県民により選出された県知事の広範な裁量に委ねられているというべきである。 本件負担金と同様の負担金は,本件センターに下水を流入させている は,県民の代表たる議員により構成される議会及び県民により選出された県知事の広範な裁量に委ねられているというべきである。 本件負担金と同様の負担金は,本件センターに下水を流入させている6市13町においても,本件協力費に対するそれぞれの負担割合に従って予算化し,それぞれの議会で議決した上で長によって執行されているのであって,これらの自治体の議会及び長がいずれも合理的と判断していることは,これを違法と判断した原判決が誤っていることの証左である。 (イ) 原判決は,地元には目に見える環境悪化が生じていないのに,協力金を支払うことは不合理であるとの判断が根底にあるものと思われる。しかし,本件センターのようないわゆる「嫌悪施設」を設置するに当たっては,五感に感じられるような悪臭,騒音等は発生しないことが前提であって,それにもかかわらず地元には強硬な反対があるのであり,環境悪化がない以上協力金を支払う必要がないとはいえない。 また,そもそも本件協力費は,単に地元住民らが被った環境悪化に対する補償金という趣旨のものではない(なお,現実には,地元住民らには臭気による被害が生じている。)。 さらに,本件センターは,「γ」として近江八景の一つにも数えられた名所の眺望を損ねる形で,琵琶湖上に作られ,6市13町,県民の約53%に相当する人口を対象とする広範囲の下水を受け入れる施設であり,地元の負担も未来永劫に続くものであることから,地元住民らは極めて強い不公平感,負担感を有し,他に見られないような強い反対運動が長期間にわたって繰り広げられてきたのである。 (ウ) 本件負担金は,各年度ごとに連絡協議会からの負担の申出に応じて支払うこととしているものであり,その都度必要性を判断してきており,県においては対策協議会 繰り広げられてきたのである。 (ウ) 本件負担金は,各年度ごとに連絡協議会からの負担の申出に応じて支払うこととしているものであり,その都度必要性を判断してきており,県においては対策協議会に対して段階的削減案を提示したこともある。なお,支払が相当でないと合理的に判断される時期になれば,取りやめることは当然である。 (エ) 平成11年度ないし同13年度における本件負担金の支払は,本件覚書において協議,解決を図るものとされている諸問題のうち,覆蓋上部公園の整備,中間水路(本件センターの敷地となるα島と湖岸との間の水路)の水質悪化に対する対策,γの常夜灯の保存という3点が未解決のままとなっていること,α島公園の整備が進むにつれて来場者が増加し,地元道路の混雑も生じていることなどの事情を総合勘案して支払うこととなったものである。 (オ) 対策協議会は,単なる名目上の組織ではなく,本件センターの受け入れが決まった後は,個別の問題について指摘をしつつ,その円滑な運営のために協力することにより,究極の目的である琵琶湖の水質改善を図り,また,より良い地域作りに向けた自治会活動を推奨するための組織として活動しており,本件協力費も地元住民らの福祉向上等のために用いられていて,住民の理解が得られている。 なお,本件負担金は,連絡協議会の「琵琶湖湖南中部流域下水道環境整備特別会計」の歳入となり,当該歳入金及び各市町からの負担金等の中から2000万円が,連絡協議会から対策協議会に本件協力費として支出されている。対策協議会においては,そのうち750万円を自らの運営諸経費に充て,残額1250万円を対策協議会の会員らの属する自治会(矢橋,新浜,橋岡,大町)に居住者に応じて配分しており,各自治会は,これらの配分金を自らの活動のために用い うち750万円を自らの運営諸経費に充て,残額1250万円を対策協議会の会員らの属する自治会(矢橋,新浜,橋岡,大町)に居住者に応じて配分しており,各自治会は,これらの配分金を自らの活動のために用いている(もっとも,本件負担金の支出の適否を判断するに当たり,連絡協議会から金員交付を受けた対策協議会や,更にその支出先における使途までが考慮されるべきではない。)。 (カ) 本件センターは,平成14年末までの工事費が総額2467億4400万円,年間の維持管理費用が32億7400万円(平成13年度)にも及ぶ大規模なものであり,これらの規模からすれば,本件負担金の額が裁量の範囲を超えるとも認められない。 (キ) 仮に本件負担金の支出が違法と判断されるとしても,本件負担金の支出命令は,滋賀県事務決裁規程により,課長が決裁権者とされているところ,当該決裁権者は,本件負担金の支出命令を発するに当たり,県の職員と対策協議会との間で継続的な協議が行われ,本件覚書の内容,既払額を前提とした金額に係る協議の経過,本件センターの稼働に関する諸問題及びその対策に関する経過等を慎重に検討した上で,本件負担金支出の必要性があり,同支出が適法であると判断したものであり,当該判断に過失はない。また,このことを前提とすれば,控訴人が上記決裁権者の行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反したということもできないから,控訴人に過失はない。 ウ被控訴人らの当審における主張(ア) 本件負担金は,嫌悪施設が存在することに対する迷惑料に当たるところ,このような施設に対する地元住民らの嫌悪感や違和感は,個々人の主観によるところが大きいほか,時間がたつにつれて次第に消失するものであるし,本件センターによって地元住民らが半永久的なダメージを受けるとする控訴人の主 に対する地元住民らの嫌悪感や違和感は,個々人の主観によるところが大きいほか,時間がたつにつれて次第に消失するものであるし,本件センターによって地元住民らが半永久的なダメージを受けるとする控訴人の主張も誤った先入観に基づくものである。本件センターの存在によって悪臭や騒音など客観的な実害は生じておらず,平成11年度ないし同13年度を含めて,各年度における本件負担金の支出に当たり,県と対策協議会との間で協議・検討が行われたり,県において支払の必要性が具体的に審議された形跡もない上,県内の他の下水処理施設に関しては同様の金員支払がされていないことなどからすると,本件負担金の支出は違法である。 (イ) 連絡協議会から対策協議会へ交付された本件協力費(各年度2000万円)のうち,1250万円が対策協議会から4つの自治会に配分されているが,これらの金員のほとんどすべては,各自治会の運営のための経費等に充てられており,本件協力費の本来の目的である環境対策のために用いられていない。また,本件協力費のうち残額750万円は,対策協議会の経費に充てられているが,これについてもその大半は環境対策以外の用途に費消されている。しかも,県は,本件協力費,ひいては本件負担金の具体的な使途の把握に努める義務と必要があったにもかかわらず,その把握を故意に怠り,又はその使途が本来の目的から逸脱したものであることを認識しながら,対策協議会や地元自治会との関係の悪化を恐れたためあえて使途の報告を受けることなく,本件負担金の支出を継続したものである。この点に関し,控訴人は,本件負担金の支出の適否を判断するに当たり,対策協議会や各自治会における使途を考慮すべきでない旨主張するが,本件の実態をみれば,連絡協議会は本件協力費を支払うに当たっての窓口の役割を果たしているにすぎな 負担金の支出の適否を判断するに当たり,対策協議会や各自治会における使途を考慮すべきでない旨主張するが,本件の実態をみれば,連絡協議会は本件協力費を支払うに当たっての窓口の役割を果たしているにすぎないのであって,本件負担金と本件協力費とは実質的に同一のものであるから,上記主張は失当である。 そして,本件負担金は,本件覚書に基づきその使途が限定されている点において補助金に準じる性質を有するものであるから,上記の使途及びこれについての県側の認識からしても,本件負担金の支出は違法ということができる。 第3 当裁判所の判断 1 監査請求期間経過後の損害賠償請求についての「正当な理由」の存否について(1) 前記第2の1(3)の事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人らの本件損害賠償請求のうち,平成11年度及び同12年度の本件負担金の支出命令に係る請求については,いずれも当該支出命令がされた日から法242条2項本文所定の1年の監査請求期間を経過した後に本件監査請求がされたことが認められる。そこで,本件監査請求が上記監査請求期間を経過してされたことに同項ただし書の「正当な理由」が存するか否かを検討する。 同項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされた場合はもとより,そのような場合でなくとも,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによ 段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。 (2) そこで検討すると,証拠(甲1の2)及び弁論の全趣旨によれば,滋賀報知新聞は,平成14年2月28日付けの日刊に,県や大津市など本件センターを供用している市町で構成している連絡協議会から毎年,対策協議会に対し「環境対策負担金」の名目で協力金が支払われており,その総額は,昭和49年度から平成13年度までで4億0250万円であって,うち1億6100万円を県が負担していること,協力金は3年ごとに,県,草津市及び対策協議会の3者が協議して更新(増額)が行われていることなどが滋賀報知新聞社の調べで分かった旨の記事を掲載したことが認められ,この事実によれば,上記の報道がされたころ,県の一般住民が相当の注意力をもって調査すれば,客観的にみて監査請求をするに足りる程度に,平成11年度及び同12年度にされた本件負担金の各支出の存在及び内容を知ることができたと認めるのが相当である。 (3) この点につき,控訴人は,本件負担金の支出は,毎年県の予算に計上され,県議会の議決を経て執行されており,秘密裡にされたものではないこと,県条例において,本件負担金の支出等に関する書類が公開の対象とされていること,本件センターを使用する市町においても,負担金の支出が予算に計上され,議会で審議された上で執行されていること,本件センターの地元に対して協力金が支払われていることは,朝日新聞によって報道されていること,連絡協議会及び対策協議会の決算書上も本件協力費の受領が明らかで 議会で審議された上で執行されていること,本件センターの地元に対して協力金が支払われていることは,朝日新聞によって報道されていること,連絡協議会及び対策協議会の決算書上も本件協力費の受領が明らかであることを指摘し,県民らは,平成11年度分については遅くとも平成12年3月31日までに,平成12年度分については遅くとも平成13年3月31日までに,本件負担金の存在及び内容を容易に知ることができたと主張する。 しかしながら,上記説示のとおり,法242条2項ただし書の規定は,財務会計上の行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされた場合でなくとも,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,その適用が問題となり得るものであるところ,証拠(丙66の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,県議会に提出された予算に関する説明書には,「(款)琵琶湖環境費 (項)下水道費 (目)下水道費」として「負担金補助及び交付金」が計上されていて,本件負担金の支出が県民に隠れて秘密裡に行われていたものではないことは認められるものの,同説明書からはそれ以上の詳細な内容は判明せず,県が連絡協議会に対して本件負担金を支出していることが明らかになるわけではないし,県条例において本件負担金の支出等に関する書類が公開の対象とされているとしても,県民が現実に当該書類の開示請求をすることにより本件負担金支出の事実を知るためには,それなりの端緒を必要とするのであり,そのような端緒が認められないにもかかわらず,公開の対象とされている文書の内容を直ちに知ることができたとみるのは相当でなく,また,証拠(丙47の1ないし3の各1・2,48ないし53の各1ないし3,54 ような端緒が認められないにもかかわらず,公開の対象とされている文書の内容を直ちに知ることができたとみるのは相当でなく,また,証拠(丙47の1ないし3の各1・2,48ないし53の各1ないし3,54の1ないし3の各1・2,55の1ないし3,56の1,56の2及び3の各1・2,57ないし65の各1ないし3)によれば,本件センターを使用している市町の中には,予算説明書に,連絡協議会に対する負担金である旨等のより具体的な記述をしている自治体も見受けられるが,これら市町の予算説明書に上記のような記述があるからといって,県の一般住民が,県における本件負担金の支出につき,客観的にみて監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができたとは直ちにいえない。また,証拠(丙25)によれば,朝日新聞の平成2年1月18日付けの夕刊には,本件センターが設置されたα島に県営ゴルフ場を整備する計画が進んでいることの問題を指摘する記事が掲載されたところ,その記事の中で,本件センターを設置するに当たっては地元住民らの間で反対運動が繰り広げられたが,昭和48年に地域振興費の名目で3億2000万円を,協力費の名目で500万円を県が地元に出すことで折り合いがつき,建設工事が始まった旨,昭和49年に始まった対策協議会への協力費の支払は同記事掲載当時も続いており,3年ごとに250万円ずつ上がり,記事掲載当時は1750万円になった旨述べられていることが認められるが,上記記事は,平成11年度及び同12年度における本件負担金の支出時期より約10年前に掲載されたものであり,しかも,ゴルフ場の整備計画に対する問題提起を主眼とする記事の中で,断片的に協力費支払の事実が紹介されたにすぎないこと,その後,滋賀報知新聞の前記記事が掲載されるまでの間,本件負担金あるいは本件協力費の支 ゴルフ場の整備計画に対する問題提起を主眼とする記事の中で,断片的に協力費支払の事実が紹介されたにすぎないこと,その後,滋賀報知新聞の前記記事が掲載されるまでの間,本件負担金あるいは本件協力費の支払が問題とされた形跡もないことからすると,朝日新聞の上記記事を根拠として,滋賀報知新聞の記事が出るより前に,県の一般住民が本件負担金の支出を知ることができたということもできない。さらに,証拠(丙44,45)によれば,対策協議会の平成12年3月24日開催に係る平成11年度決算総会及び平成13年4月27日開催に係る平成13年度定例総会においてそれぞれ配付された平成11年度及び同12年度の各決算書には,県協力金(地域環境整備費)2000万円が計上されていることが認められるが,県の一般住民がこれら総会を傍聴したり,各総会後まもない時期に決算書を容易に入手することができたとの事実は,証拠上いずれも認め難く,そうである以上,これら決算書等により上記住民が本件負担金の存在及び内容を知ることができたとも認められない。 (4) 以上によれば,平成11年度及び同12年度にされた本件負担金の各支出につき,県の一般住民が相当の注意力をもって調査することにより,客観的にみて監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができた時期は,平成14年2月28日ころであったと認められるところ,本件監査請求は,その約56日後の同年4月25日にされたものであるから,本件負担金支出の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内にされたものということができる。 よって,平成11年度及び同12年度の本件負担金の支出命令に係る本件監査請求は,監査請求期間を経過したことに「正当な理由」があると認められるから,適法である。 2 本件負担金の支出の違法性の有 よって,平成11年度及び同12年度の本件負担金の支出命令に係る本件監査請求は,監査請求期間を経過したことに「正当な理由」があると認められるから,適法である。 2 本件負担金の支出の違法性の有無について(1) 本件センターの供用開始までの経緯,本件センターの供用開始後の稼働状況等及び本件協力費の支払状況等については,前記「前提となる事実」の(1),(2),証拠(甲1の1ないし3,2,6,乙1の1・2,2,丙1ないし7,11及び12の各1・2,13ないし23,28,29,32,33の1,34ないし39,44ないし46,70ないし72の各1ないし3,75,80の1ないし3,証人A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原判決の「事実及び理由」第4のⅠ1ないし3(原判決14頁末行から23頁2行目まで)に記載のとおりの事実が認められるから,これを引用する。 ただし,原判決22頁16行目から23頁2行目までを次のとおり改める。 ア県は,平成11年度から同13年度までの各年度につき,毎年,連絡協議会に対し,本件協力費として年2000万円の支払を依頼(通知)し,連絡協議会は,毎年5月に開催された総会で,同金額の支払及び県の負担額を年800万円とすることを承認した。 イ控訴人は,平成10年7月20日に県知事に就任し,上記各年度の本件負担金800万円の支出を各年度の予算に計上して,議会に提出し,それぞれ議会の議決を経た。県は,上記各年度につき,それぞれ連絡協議会からの請求通知を受け,連絡協議会に対して上記各金員をそれぞれ支出した。なお,滋賀県事務決裁規程によれば,予算経理に関する事務のうち,支出負担行為兼支出命令又は支出命令(1件100万円以上のもの)については,課長が専決権者となっており,この定めによって,上記各金員の支出は, 賀県事務決裁規程によれば,予算経理に関する事務のうち,支出負担行為兼支出命令又は支出命令(1件100万円以上のもの)については,課長が専決権者となっており,この定めによって,上記各金員の支出は,いずれも下水道計画課長の支出命令に基づいて行われた。連絡協議会は,対策協議会に対し,上記各年度の協力費として,それぞれ2000万円を支払った。 ウこの間,県及び連絡協議会の内部においては,本件協力費の削減等も検討されており,平成9年6月3日に開催された県と地元との事前協議会において,県側から対策協議会の会長等に対し,本件協力費の削減を申し入れたこともあった。しかしながら,これに対し,対策協議会側の出席者からは強硬な反対意見とα島の撤去要求が出されるなどして紛糾したため,結局,県等の削減案は実現せず,その後平成10年から同13年における県,草津市と対策協議会との間の協議においては,覆蓋上部の公園化その他各種設備の設置・利用計画,中間水路(本件センターの敷地となるα島と湖岸との間の水路)の水質悪化に対する対策,常夜灯の保存その他の各種課題に関する意見交換が行われるのみで,本件協力費の在り方等が協議されることはないままに推移してきた。 エ連絡協議会から対策協議会に支払われる本件協力費(平成11年度ないし同13年度分)の使途についてみると,対策協議会は,連絡協議会から支払を受ける年2000万円の本件協力費のうち,750万円を対策協議会自身の運営経費(同協議会の主な事業は,下水道フェアの開催及び芝生広場の維持管理であり,本件協力費も多くがこれらの費用に充てられている。)に充て,残額1250万円を同協議会を構成する矢橋町,新浜町,橋岡町及び大町町の4自治会に配分している。また,上記配分を受けた各自治会においては,受領した金員を自らの判断で の費用に充てられている。)に充て,残額1250万円を同協議会を構成する矢橋町,新浜町,橋岡町及び大町町の4自治会に配分している。また,上記配分を受けた各自治会においては,受領した金員を自らの判断で諸経費に使用している。対策協議会における本件協力費の使途については,県としては概ね把握しているものの,対策協議会の判断に委ねており,また,対策協議会から配分を受けた各自治会における金員の使途については,県は全く把握しておらず,各自治会の判断に委ねられている。 (以上につき,甲1の1ないし3,2,6,丙6,7,11及び12の各1・2,13ないし23,28,29,32,33の1,34ないし39,44ないし46,70ないし72の各1ないし3,75,80の1ないし3,証人A,弁論の全趣旨)(2) 以上を前提に,本件負担金(平成11年度ないし同13年度分)の支出の適否を検討する。 ア本件負担金の性質本件センターは,県が,琵琶湖を始めとする公共用水域の水質を保全し,県民の快適な居住環境を実現するための有効な手段として下水道を位置づけ,県自らが策定した「琵琶湖周辺流域下水道基本計画」に基づく下水道整備事業の一環として,湖南中部(中部処理区)の流域下水道を整備し,同地域の下水を処理する施設として設置したものであるところ,このような流域下水道の設置及び維持管理等は,都道府県の事業とされており(下水道法25条の2第1項),住民の福祉の増進にかかわる地方公共団体の事務(法1条の2)に当たることが明らかである。その一方で,本件センターは,琵琶湖の沖合を埋め立てて作った人工島であるα島を敷地として建設された下水処理施設であり,いわゆる嫌悪施設に当たる上,景観をも害するものとして,その設置並びにその後における広い区域からの汚水の流入及 琶湖の沖合を埋め立てて作った人工島であるα島を敷地として建設された下水処理施設であり,いわゆる嫌悪施設に当たる上,景観をも害するものとして,その設置並びにその後における広い区域からの汚水の流入及びその処理に伴い,地元住民らに大きな犠牲を強いるものであり,現に,その設置に際して地元住民らから強い反対があったことも既に認定したとおりである。このような状況の下で,県は,地元住民で組織された対策協議会から,関係地域が強いられる犠牲に対する協力費として年間一定額の支払を求めるとの要請があったことを受けて,県及び本件センターを使用する市町がそれぞれ拠出した負担金を基に,連絡協議会から対策協議会へ毎年一定額の協力金(本件協力費)を支払うこととし,県としても連絡協議会に対して毎年一定額の負担金(本件負担金)を支払ってきたものである。 これらの事情によれば,本件負担金は,県の管理に係る中部処理区の流域下水道事業の円滑な遂行等の目的の下に,地元住民の理解と協力を得るために支出されてきたものであって,法232条1項所定の事務処理経費に当たると認めるのが相当である。 被控訴人らは,本件負担金は寄附又は補助金に当たると主張するが,上記説示に照らして採用することができない。 イ県が事務処理経費を支出するに当たっては,それが県の事務を処理するために必要な経費であることを要するところ,その支出の必要性の有無及び支出を要する金額等については,県の事務処理をめぐる諸般の事情を総合的に評価・判断した上で決せられるべきものであるから,その支出に関する権限を有し,日常的に県の事務処理に当たっている県知事又は上記権限行使を専決により処理する補助職員の裁量に委ねられていると解するのが相当であり,このことは本件負担金の支出についても同様である。したがって 有し,日常的に県の事務処理に当たっている県知事又は上記権限行使を専決により処理する補助職員の裁量に委ねられていると解するのが相当であり,このことは本件負担金の支出についても同様である。したがって,本件負担金の支出が違法とされるのは,上記支出について滋賀県事務決裁規程により専決権限を与えられており,現にこれを専決処理した下水道計画課長の判断がその裁量の範囲を逸脱したか,又はその濫用に当たると認められる場合に限られる。そこで,裁量の範囲の逸脱又は濫用の有無を検討する。 (ア) 前記認定事実によれば,① 本件センターは,琵琶湖の沖合を埋め立てて作った人工島であるα島に設置され,処理対象区域から流入する汚水は,同区域の地中に敷設された管渠や中継ポンプ場を経由してα島の北東部に設置された流入渠を通って本件センター内で処理される仕組みになっており,地元住民らの居住空間からは離れた場所で下水処理が行われていること,② 本件センターは,供用開始当時には,1日当たりの平均流入下水量2440m3に対応する稼働状況であったが,その後,流入下水量は断続的に増加して,平成13年度には,1日当たりの平均流入下水量が16万4637m3に上っており,上記増加に伴って,本件センターの施設も継続的に増設,整備が行われているもので,平成4年度には2系列目の,平成8年度には3系列目の最初沈殿池,生物反応槽,最終沈殿池の整備が行われ,平成13年度当時には4系列目の整備が行われていたこと,③ 本件センターへの流入下水量は,上記のとおり断続的かつ大幅に増加しているものの,施設の増設によりこれに対応する処理能力が備えられ,また,本件センターからの放流水の水質は,供用開始以後,極めて良好な状態で維持され,今後も更に改善される傾向にあるこ かつ大幅に増加しているものの,施設の増設によりこれに対応する処理能力が備えられ,また,本件センターからの放流水の水質は,供用開始以後,極めて良好な状態で維持され,今後も更に改善される傾向にあること,④ 上記流入下水量の増加に伴い,汚泥発生量も増加しているが,これに対しても,平成2年度以後の汚泥溶融設備の稼働により,汚泥を減容化,安定化して搬出することが可能になり,また,2系焼却溶融炉施設は,排ガスや臭気等による環境悪化を防止するための措置が講じられていること,⑤ 汚泥の焼却炉の稼働の際に発生する排ガスについては,硫黄酸化物等の6項目につき,排出基準値を下回る結果が出ているほか,臭気,騒音,振動等についても,供用開始以後,環境基本法16条所定の基準を超えたことがないこと(この点に関し,控訴人は,地元住民らには臭気による被害が生じていると主張するが,客観的な裏付けを欠いており,上記主張は採用できない。),⑥ 平成5年6月以降は,工事車両がδを通って草津市β内を通行しないように配慮されていること,⑦ 本件センターの供用開始後も平成13年当時に至るまで,県,草津市と対策協議会との間においては,覆蓋上部の公園化その他各種設備の設置・利用計画,中間水路(本件センターの敷地となるα島と湖岸との間の水路)の水質悪化に対する対策,常夜灯の保存その他の各種課題の解決が問題とされており,これらに関する意見交換が行われてきていること,以上の事実が明らかである。 これらの事実によれば,本件センターについては,昭和57年4月の供用開始以後も少なくとも平成13年度当時に至るまで,流入下水量の増加に伴う施設の増設・整備が継続して行われているほか,本件センターをめぐる各種の課題についても,なお未解決の ては,昭和57年4月の供用開始以後も少なくとも平成13年度当時に至るまで,流入下水量の増加に伴う施設の増設・整備が継続して行われているほか,本件センターをめぐる各種の課題についても,なお未解決のものが残っていたものであって,県としては,これらの諸点に関して,平成13年度当時においてもなお,地元住民らとの協議を通じてその理解と協力を得る必要があったことが認められ,また,本件センターのような嫌悪施設については,特別の犠牲を強いられた地元住民らの嫌悪感・不公平感が相当年数を経過してもなお消えることなく残っていることも,容易に推察できるところである。 しかしながら,他方,上記の事実によれば,本件センターにおいては,供用開始時から平成10年度までの約16年間に,流入下水量の断続的かつ大幅な増加に対応して,施設の増設及び処理能力の拡大を図りながら,周辺水域及び地域の大気,水質及び土壌等の環境を良好に維持し,悪臭,騒音及び振動等の発生を防止してきた事実が存するのであって,また,このような従前の実績に照らせば,平成11年度以降において見込まれる処理量の増加やこれに伴う増設工事により,従前の環境が悪化し,地元住民らに被害が生じる具体的な危険があると認めることもできない。 (イ) 前記認定事実のとおり,県は,本件センターの設置及び維持管理に伴い,地元住民らで構成される対策協議会に対して,供用開始時までに,地域振興費等として3億2000万円を支払い,その後,本件負担金として,昭和49年度から同51年度までは毎年200万円ずつ,昭和52年度から同54年度までは毎年300万円ずつ,昭和55年度から同57年度までは毎年400万円ずつ,昭和58年度から同60年度までは毎年500万円ずつ,昭和61年度から同63年度までは毎年600万円ずつ,平成 54年度までは毎年300万円ずつ,昭和55年度から同57年度までは毎年400万円ずつ,昭和58年度から同60年度までは毎年500万円ずつ,昭和61年度から同63年度までは毎年600万円ずつ,平成元年度から同3年度までは毎年700万円ずつ,平成4年度から同10年度までは毎年800万円ずつを支払ってきており,その支払総額は,平成10年度までで4億5700万円に上っているのみならず,本件負担金の額は年を追って増加の一途をたどっている。なお,県が対策協議会に対して永久に本件協力費を支払う旨を約した事実はなく,平成9年6月には,前記のとおり,県から対策協議会に対し本件協力費の削減を提案したこともあるが,対策協議会の反対にあったため実現していない。また,前記認定のとおり,県においては,本件負担金の使途を把握,検討している事実はなく,その使途を対策協議会及び同協議会から配分を受ける各自治会の判断に委ねている。 (ウ) 上記(ア),(イ)の諸点を総合すれば,県としては,嫌悪施設である本件センターの設置及び維持並びに増設等につき,地元住民らの理解と協力を得るため本件負担金を支出する必要があると認め,本件センターの供用開始後においてもその支出を継続してきたものであるところ,本件センターの建設時における反対運動が強かったこと,本件センターに対する地元住民らの嫌悪感・不公平感は容易に緩和されるものではないこと,平成11年度以降においても増設や整備のための工事のほか,各種課題の解決のために地元住民らの理解と協力を必要とする場面があり得ることなどの事情は存するものの,地元住民及び地元地区に本件センターの稼働に伴う具体的な被害は生じていない上,地元住民らの嫌悪感・不公平感も年とともに次第に収まっていくものと考えられるにもかかわらず,対策協議会との間で具 ものの,地元住民及び地元地区に本件センターの稼働に伴う具体的な被害は生じていない上,地元住民らの嫌悪感・不公平感も年とともに次第に収まっていくものと考えられるにもかかわらず,対策協議会との間で具体的な支払期間や金額についての合意がないままに,供用開始から平成10年度までで既に約16年にわたり本件負担金が継続的に支出されてきたのであり,しかも,その額は削減されるどころか,むしろ増加の一途をたどっているのみならず,本件負担金の使途を県において詳細に把握,検討した上で,その支出の要否及び額を判断してきたような事実も存しないのであって,これらの事情を総合考慮すると,少なくとも平成11年度以降における本件負担金の支出は,その必要性を欠くものと認めざるを得ず,これを必要と認めて支出を命じた下水道計画課長の判断は,その裁量の範囲を逸脱したものというべきである。なお,平成11年度以降においても,本件センターの増設工事等や各種課題の解決のために地元住民らの理解と協力を必要とする場面があり得ることは上記のとおりであるが,これらについては,支払の趣旨が明確とはいい難い本件協力費によって解決するのではなく,個別の問題ごとに整備等の必要性及び費用負担等を検討した上で解決を図るべき事柄と考えられるから,上記の判断を左右するほどの事情とは認められない。 よって,本件負担金の支出命令は違法である。 3 控訴人の故意・過失の有無について(1) 本件負担金の支出命令は,法令上,本来的には県知事の権限に属するものであるところ(法232条の4第1項),本件負担金(平成11年度ないし同13年度分)の支出が,滋賀県事務決裁規程の定めにより,いずれも専決権者である下水道計画課長の支出命令に基づいて行われたことは,既に認定したとおりである。 ところで,県 (平成11年度ないし同13年度分)の支出が,滋賀県事務決裁規程の定めにより,いずれも専決権者である下水道計画課長の支出命令に基づいて行われたことは,既に認定したとおりである。 ところで,県知事は,本件負担金についての支出命令を発する権限を法令上本来的に有するものとされている以上,その権限を補助職員である下水道計画課長に専決させることとしている場合であっても,上記支出命令の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において,法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当するものと解すべきであるが,この場合において,県知事である控訴人は,上記課長が違法な支出命令を発することを阻止すべき指揮監督上の義務があるということができ,この義務に違反し,故意又は過失により上記課長の違法な支出命令を阻止しなかったときに,上記課長がした違法な支出命令により県が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁)。 (2) 控訴人において,本件負担金(平成11年度ないし同13年度分)の支出が違法であることを認識しながら下水道計画課長が上記支出命令を発することを阻止しなかったことを認めるに足りる証拠はないから,控訴人にこの点に関する故意があったとはいえない。 そこで,過失の有無について検討すると,控訴人は,県知事として,県の予算等に関する事務を自らの判断と責任において,誠実に管理し,執行する義務を負っており(法138条の2),予算については,その調製権と議会への提出権(法211条),付再議権・原案執行権(法176条,177条),予算執行に関する調査権(法221条),支出命令権(法232条の4)等の広範な権限と責任を有していることに照らし,本件協力費及び本件負担金につい 1条),付再議権・原案執行権(法176条,177条),予算執行に関する調査権(法221条),支出命令権(法232条の4)等の広範な権限と責任を有していることに照らし,本件協力費及び本件負担金についても,本件センターをめぐる従前からの経緯,本件センターの稼働状況,地元住民ら及び他の地域の住民らの意識のほか,県をめぐる各種の情勢等を総合的に勘案した上で,本件負担金の支出の要否及び金額等を検討する必要があったことは明らかであるものの,既に認定したとおり,本件協力費及び本件負担金は本件センターの供用開始前から長期間にわたって支払われてきたものであって,平成10年度以前における支払の実績や対策協議会を始めとする地元住民らの意識を考えると,支払を打ち切るに当たっては,対策協議会や地元の自治会,関係市町等との事前の十分な協議を必要とするものと認められること,本件センターの建設時に強硬な反対運動があった事実や本件センターに対する地元住民らの嫌悪感・不公平感,平成11年度以降においてもなお増設工事等のために地元住民らの理解と協力を必要とする場面があり得ることなどの事情に照らせば,平成10年7月に県知事に就任した控訴人において,平成11年度ないし同13年度分の本件負担金の支出につき,下水道計画課長が違法な支出命令を発することを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,過失により同課長が違法な支出命令を発することを阻止しなかったとまでいうことはできない。 よって,控訴人には,下水道計画課長が本件負担金(平成11年度ないし同13年度分)につき違法な支出命令を発したことに関し,過失があったと認めるには足りないというべきである。 4 結論以上によれば,被控訴人らの本件負担金(平成11年度ないし同13年度分)の支出に係る本件代位請求は理由がないから, たことに関し,過失があったと認めるには足りないというべきである。 4 結論以上によれば,被控訴人らの本件負担金(平成11年度ないし同13年度分)の支出に係る本件代位請求は理由がないから,これを棄却すべきところ,これと結論を異にする原判決の控訴人敗訴部分を取り消した上,被控訴人らの上記請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第12民事部裁判長裁判官若林諒裁判官石井寛明裁判官三木昌之

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