令和2(ワ)22768 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年10月28日 東京地方裁判所
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令和3年10月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第22768号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和3年8月26日判決 原告 MiZ株式会社 同訴訟代理人弁護士服部真尚 同訴訟代理人弁理士吉田正義 同窪田稚之 同補佐人弁理士吉田安子 被告 株式会社日省エンジニアリング 同訴訟代理人弁護士小池豊 同櫻井彰人 同補佐人弁理士平山俊夫 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録1及び2記載の各製品を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録1及び2記載の各製品,その半製品及び製造のための金型を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,9130万円及びうち7730万円に対する令和2年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員,うち1400万円に対する同日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 原告は,発明の名称を「生体用水素ガス供給装置」とする2つの特許権(特許番号が特許第5091364号,特許第6667873号の各特許権(以下,順に「本件特許1」,「本件特許2」といいます。))を有する。 事案の概要原告は,発明の名称を「生体用水素ガス供給装置」とする2つの特許権(特 許番号が特許第5091364号,特許第6667873号の各特許権(以下,順に「本件特許1」,「本件特許2」又は「本件特許権1」,「本件特許権2」といい,これらを併せて,「本件各特許」又は「本件各特許権」という。))を有するところ,別紙被告製品目録1記載の製品(以下「被告製品1」という。)は,本件特許1に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張し,同目録2記載の製 品(以下,「被告製品2」といい,被告製品1と併せて,「被告各製品」という。)は,本件特許2に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張している。 そして,本件は,原告が,被告に対し,被告による被告各製品の製造,使用,譲渡等は,本件各特許に係る特許権を侵害すると主張して,被告に対し,特許法(以下「法」という。)100条1項,2項に基づき,被告各製品の製造,使 用,譲渡等の差止め及び被告各製品等の廃棄,並びに民法709条,法102条2項に基づき,損害賠償金2億1430万円の一部である9130万円及びうち7730万円(令和2年3月31日までの被告各製品の販売利益に相当する損害額)に対する令和2年10月4日(不法行為後である訴状送達日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5分の割 合による遅延損害金,うち1400万円(令和2年4月1日以降の被告製品2の販売利益に相当する損害額)に対する同日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。) (1) 当事者 ア 案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。) (1) 当事者 ア原告は,分子状水素の医療利用の研究及び開発,分子状水素の医療利用のための水素発生剤ならびに器具及び機器の開発及び製造,販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,内燃及び外燃機関の省エネ機器の製造販売,健康機器の製造販売を業とする株式会社である。 (2) 本件各特許原告は,次の2つの特許権を有している。 ア本件特許1発明の名称生体用水素ガス供給装置特許番号特許第5091364号 登録日平成24年9月21日出願番号特願2012-127296号(以下,同出願の明細書(図面を含む。)を「本件明細書1」といい,その該当部分の記載を【0001】などと表すこととする。)出願日平成24年6月4日 イ本件特許2発明の名称生体用水素ガス供給装置特許番号特許第6667873号登録日令和2年2月28日出願番号特願2016-210169号(以下,同出願の明 細書(図面を含む。)を「本件明細書2」といい,その該当部分の記載を【0001】などと表すこととする。)出願日平成28年10月27日(3) 本件各特許の特許請求の範囲ア本件特許1に係る特許請求の範囲の請求項1ないし4,6,7,10の 各記載は以下のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件 発明1-1」と,請求項2に記載された発明を「本件発明1-2」といい 求の範囲の請求項1ないし4,6,7,10の 各記載は以下のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件 発明1-1」と,請求項2に記載された発明を「本件発明1-2」といい,請求項3以下も同様とし,これらを総称して「本件発明1」という。)。(甲2)(ア) 請求項1被電解原水が導入される電解室と,前記電解室の内部と外部とを区画 する一つ以上の隔膜と,前記電解室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極板と,を有し,前記電解室の外部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている電解槽と,前記一対の電極板に直流電圧を印加する直流電源と,陰極となる電極板から発生する水素ガスを希釈するための希釈用ガス 供給器と,を備え,前記希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを前記陰極又は陰極水面に送風することにより,電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持し,水素ガス濃度が0.1~4vol%の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガスを生体に 供給する生体用水素ガス供給装置。 (イ) 請求項2請求項1に記載の生体用水素ガス供給装置において,さらに前記電解室の内部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている生体用水素ガス供給装置。 (ウ) 請求項3請求項1または2に記載の生体用水素ガス供給装置において,前記電解室には,前記希釈用ガス供給器からの希釈用ガスを導入する希釈用ガス導入口と,前記混合ガスを導出する混合ガス導出口とが設けられ, 前記電解室の内部に被電解原水が導入されている状態で,前記電解室 の内部に設けられた電極板を陰極とし,前記電解室の外部に設けられた電極板を陽極として,前記 出口とが設けられ, 前記電解室の内部に被電解原水が導入されている状態で,前記電解室 の内部に設けられた電極板を陰極とし,前記電解室の外部に設けられた電極板を陽極として,前記直流電源からの直流電圧を両電極板に印加する生体用水素ガス供給装置。 (エ) 請求項4請求項1または2に記載の生体用水素ガス供給装置において,前記電 解室の外部に,前記一対の電極板の一方の電極板を包含する側室が設けられている生体用水素ガス供給装置。 (オ) 請求項6請求項4に記載の生体用水素ガス供給装置において,前記電解室の内部および前記側室に被電解原水が導入される生体用水素ガス供給装置。 (カ) 請求項7請求項1から6のいずれか一項に記載の生体用水素ガス供給装置において,前記希釈用ガスが通常大気である生体用水素ガス供給装置。 (キ) 請求項10請求項1から9のいずれか一項に記載の生体用水素ガス供給装置にお いて,前記直流電圧を印加するのと同時にまたはこれに先立って,希釈用ガス供給器を作動させる生体用水素ガス供給装置。 イ本件発明1の構成要件本件発明1はそれぞれ以下のとおり構成要件に分説することができる(以下,「本件発明1の構成要件1A」などのように呼称せずに,単に「構 成要件1A」ということがある。)。 (ア) 本件発明1-1(請求項1)1A 被電解原水が導入される電解室と,前記電解室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜と,前記電解室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極板と,を有し,前 記電解室の外部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている電解 槽と,1B 前記一対の電極板に直流電圧を印加する直流電源と,1C 陰極となる も一対の電極板と,を有し,前 記電解室の外部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている電解 槽と,1B 前記一対の電極板に直流電圧を印加する直流電源と,1C 陰極となる電極板から発生する水素ガスを希釈するための希釈用ガス供給器と,を備え,1D 前記希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを前記陰極又は 陰極水面に送風することにより,電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持し,水素ガス濃度が0.1~4vol%の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガスを生体に供給する1E 生体用水素ガス供給装置。 (イ) 本件発明1-2(請求項2)2A 請求項1に記載の生体用水素ガス供給装置において,2B さらに前記電解室の内部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている生体用水素ガス供給装置。 (ウ) 本件発明1-3(請求項3) 3A 請求項1または2に記載の生体用水素ガス供給装置において,3B 前記電解室には,前記希釈用ガス供給器からの希釈用ガスを導入する希釈用ガス導入口と,前記混合ガスを導出する混合ガス導出口とが設けられ,3C 前記電解室の内部に被電解原水が導入されている状態で,前記電解 室の内部に設けられた電極板を陰極とし,前記電解室の外部に設けられた電極板を陽極として,前記直流電源からの直流電圧を両電極板に印加する生体用水素ガス供給装置。 (エ) 本件発明1-4(請求項4)4A 請求項1または2に記載の生体用水素ガス供給装置において, 4B 前記電解室の外部に,前記一対の電極板の一方の電極板を包含す る側室が設けられている生体用水素ガス供給装置。 (オ) 本件発明1-6(請求項6) 給装置において, 4B 前記電解室の外部に,前記一対の電極板の一方の電極板を包含す る側室が設けられている生体用水素ガス供給装置。 (オ) 本件発明1-6(請求項6)6A 請求項4に記載の生体用水素ガス供給装置において,6B 前記電解室の内部および前記側室に被電解原水が導入される生体用水素ガス供給装置。 (カ) 本件発明1-7(請求項7)7A 請求項1から6のいずれか一項に記載の生体用水素ガス供給装置において,7B 前記希釈用ガスが通常大気である生体用水素ガス供給装置。 (キ) 本件発明1-10(請求項10) 10A 請求項1から9のいずれか一項に記載の生体用水素ガス供給装置において,10B 前記直流電圧を印加するのと同時にまたはこれに先立って,希釈用ガス供給器を作動させる生体用水素ガス供給装置。 ウ本件特許権2について 本件特許権2に係る特許請求の範囲の請求項1,2,4,6の各記載は以下のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明2-1」といい,請求項2以下も同様とし,これらを総称して「本件発明2」という。)。(甲4)(ア) 請求項1 筐体,前記筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜,前記隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成されたガスを導出するガス出口を含む電解槽と, 前記一対の電極に直流電圧を印加する電源と, 前記陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器と,を備える生体用水素ガス供給装置。 (イ) 請求項2筐体,前記筐体内に設けられ被電解原水が導入 る電源と, 前記陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器と,を備える生体用水素ガス供給装置。 (イ) 請求項2筐体,前記筐体内に設けられ被電解原水が導入される陰極室,前記陰極室の内部と外部とを区画する隔膜,及び前記陰極室の内部及び外部の それぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成されたガスを導出するガス出口を含み,少なくとも前記陰極室の外部の電極が前記隔膜に接触又は隙間をもって設けられている電解槽と,前記一対の電極に直流電圧を印加する電源と, 前記陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器と,を備える生体用水素ガス供給装置。 (ウ) 請求項4筐体,前記筐体内に設けられて前記筐体内の下側空間を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜,前記 隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成され前記筐体内の上側空間に溜まったガスを導出するガス出口を含む電解槽と,前記一対の電極に直流電圧を印加する電源と,前記陰極室及び/又は前記陽極室に導入された被電解水の中に希釈ガ スを吐出する希釈ガス供給器と,を備える生体用水素ガス供給装置。 (エ) 請求項6前記希釈ガス供給器は,前記陰極室の前記陰極から10mm以下の範囲に前記希釈ガスを吐出する請求項1又は2に記載の生体用水素ガス供給装置。 エ本件発明2の構成要件 本件発明2はそれぞれ以下のとおり構成要件に分説することができる(以下,「本件発明2の構成要件1A」などのように呼称せずに,単に「構成要件1A」ということがある。)。 (ア) 本件 本件発明2はそれぞれ以下のとおり構成要件に分説することができる(以下,「本件発明2の構成要件1A」などのように呼称せずに,単に「構成要件1A」ということがある。)。 (ア) 本件発明2-1(請求項1)1A 筐体,前記筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される 陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜,前記隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成されたガスを導出するガス出口を含む電解槽と,1B 前記一対の電極に直流電圧を印加する電源と, 1C 前記陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器と,を備える1D 生体用水素ガス供給装置。 (イ) 本件発明2-2(請求項2)2A 筐体,前記筐体内に設けられ被電解原水が導入される陰極室,前記 陰極室の内部と外部とを区画する隔膜,及び前記陰極室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成されたガスを導出するガス出口を含み,少なくとも前記陰極室の外部の電極が前記隔膜に接触又は隙間をもって設けられている電解槽と, 2B 前記一対の電極に直流電圧を印加する電源と,2C 前記陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器と,を備える2D 生体用水素ガス供給装置。 (ウ) 本件発明2-4(請求項4) 4A 筐体,前記筐体内に設けられて前記筐体内の下側空間を被電解水が 導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜,前記隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成され前記筐体内の上側 導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜,前記隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成され前記筐体内の上側空間に溜まったガスを導出するガス出口を含む電解槽と,4B 前記一対の電極に直流電圧を印加する電源と, 4C 前記陰極室及び/又は前記陽極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器と,を備える4D 生体用水素ガス供給装置。 (エ) 本件発明2-6(請求項6)6A 前記希釈ガス供給器は,前記陰極室の前記陰極から10mm以下の 範囲に前記希釈ガスを吐出する6B 請求項1又は2に記載の生体用水素ガス供給装置。 (4) 被告の行為等ア被告は,平成29年11月頃から被告製品1を,平成30年12月頃から被告製品2を製造,販売している。 イ被告製品1の構成被告製品1の構成は,別紙被告製品1の構成記載のとおりである。なお,構成b,d,及びgについては当事者間に争いがあることから,以下補足して説明する。 (ア) 構成bについて 証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1の内タンクの底部の正方形穴には,内部電極板である陰極電極板(以下,単に「内部電極板」ともいう。),隔膜,外部電極板である陽極電極板(以下,単に「外部電極板」ともいう。)がこの順番で積層され,正方形穴を内部電極板よりも小さなサイズとすることで,内部電極板が上方(内タンク内)へ移 動するのを規制した上で,外部電極板を下面から抑え金具で保持してい ることが認められ,このような構造を前提とすると,内部電極板は内タンクとは別個の部材(ケーシング)に含まれる部材の一つと認めるのが相当である。 原告は, 面から抑え金具で保持してい ることが認められ,このような構造を前提とすると,内部電極板は内タンクとは別個の部材(ケーシング)に含まれる部材の一つと認めるのが相当である。 原告は,内部電極板は内タンクの底面の一部である旨を主張するが,前記認定に照らし採用することができない。 (イ) 構成dについて構成f(当事者間に争いがない)によれば,空気供給器から供給される空気で水素ガスが希釈されることは明らかであるといえるから,構成dについても,原告の主張するとおり,被告製品1の空気供給器の役割として,空気供給器が供給する空気により,水素ガスを導出管に到達さ せるとともに,水素ガスを希釈していることが認められる。 (ウ) 構成gについて証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1の使用開始時の水面は,水1.2L程度注ぎ入れた位置(陰極から水面までの距離は約6cm前後)になり,この水面の位置は,電気分解の時間経過に伴い下 降するものの,大きく変化するものではないと認められる。 被告は,上記水面は使用者が注入する水量により千差万別であり,また,水面は電気分解の時間経過に伴い大きく変化する旨を主張するが,前記認定に照らし採用することができない。 ウ被告製品2の構成 被告製品2の構成は,別紙被告製品2の構成記載のとおりである。 なお,原告は,構成hについて,電解時に発生した酸素ガスの一定量がガイド筒の内側を通って,水素ガスと混合される旨を主張する。しかし,証拠(甲8,9)及び弁論の全趣旨によれば,酸素ガスが排出される切り欠き(別紙被告製品2の構成の第6図の孔11)は,ガイド筒13の下端の 円よりも外側に位置しており,上記切り欠きから排出された酸素ガスが, 弁論の全趣旨によれば,酸素ガスが排出される切り欠き(別紙被告製品2の構成の第6図の孔11)は,ガイド筒13の下端の 円よりも外側に位置しており,上記切り欠きから排出された酸素ガスが, その上方ではなく,その内側にあるガイド筒内部に入る可能性は低いといえるから,原告の上記主張は採用できない。 2 争点(1) 被告製品1が本件発明1の技術的範囲に属するか否か(争点1)ア被告製品1は,構成要件1Aを充足するか(争点1-1) イ被告製品1は,構成要件1Dを充足するか(争点1-2)ウ被告製品1は,構成要件4Bを充足するか(争点1-3)(2) 被告製品2が本件発明2の技術的範囲に属するか否か(争点2)ア被告製品2は,構成要件1Aを充足するか(争点2-1)イ被告製品2は,構成要件1Cを充足するか(争点2-2) ウ被告製品2は,構成要件2Aを充足するか(争点2-3)エ被告製品2は,構成要件2Cを充足するか(争点2-4)オ被告製品2は,構成要件4Aを充足するか(争点2-5)カ被告製品2は,構成要件4Cを充足するか(争点2-6)(3) 本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点3) ア無効理由1(実施可能要件違反①)の有無(争点3-1)イ無効理由2(サポート要件違反①)の有無(争点3-2)ウ無効理由3(実施可能要件違反②)の有無(争点3-3)エ無効理由4(サポート要件違反②)の有無(争点3-4)オ無効理由5(サポート要件違反③)の有無(争点3-5) カ無効理由6(明確性要件違反①)の有無(争点3-6)キ無効理由7(明確性要件違反②)の有無(争点3-7)ク無効理由8(進歩性欠如)の有無(争点3- 違反③)の有無(争点3-5) カ無効理由6(明確性要件違反①)の有無(争点3-6)キ無効理由7(明確性要件違反②)の有無(争点3-7)ク無効理由8(進歩性欠如)の有無(争点3-8)(4) 本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点4)ア無効理由1(サポート要件違反①)の有無(争点4-1) イ無効理由2(サポート要件違反②)の有無(争点4-2) ウ無効理由3(実施可能要件違反)の有無(争点4-3)エ無効理由4(特許法29条1項柱書違反)の有無(争点4-4)オ無効理由5(新規性・進歩性欠如①)の有無(争点4-5)カ無効理由6(新規性・進歩性欠如②)の有無(争点4-6)(5) 原告の損害及び損害額(争点5) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1-1(被告製品1は,構成要件1Aを充足するか)(原告の主張)構成要件1Aの「区画」とは,「しきり。境界。」と解すべきであり,区画することによって,区画される内外の物質の移動までも制限するものではな く,電解室の内部と外部とで水が連通する構成も対象としている。 しかるに,被告製品1における水が注水される内タンクは,構成要件1Aの「電解室」に該当し,被告製品1における隔膜は一対の電極板に挟まれており,被告製品1における「本体」は,構成要件1Aの「電解槽」に該当するから,被告製品1は,構成要件1Aを充足する。 (被告の主張)構成要件1Aにおける電解室の内部に導入された被電解原水は,内部と外部を区切る膜に遮られて外部に流出しないものと解される。 しかるに,被告製品1では,外部から内タンクへ注がれた被電解原水は,内タンク底部の流出孔3等を通って外タンクに導入され,外タン 水は,内部と外部を区切る膜に遮られて外部に流出しないものと解される。 しかるに,被告製品1では,外部から内タンクへ注がれた被電解原水は,内タンク底部の流出孔3等を通って外タンクに導入され,外タンク及び内タ ンクの内部が水により満たされ,内タンクの4カ所の正方形穴の外側に保持されたケーシングは,外タンク内の水の中に水没した状態で存在することになるから,被告製品1の外タンクが構成要件1Aの「被電解原水が導入される電解室」に該当し,被告製品1には,外タンクの内部と外部を区切る「隔膜」に相当する部材は存在せず,構成要件1Aを充足しない。 (2) 争点1-2(被告製品1は,構成要件1Dを充足するか) (原告の主張)被告製品1の電解室は内タンクであり,その内タンクの水面が,「陰極水面」(構成要件1D)に該当する。被告製品1の内タンクの中に供給される希釈用ガス(空気)は約900ml/分に近い多くの量であり,水面の高さに依らず内タンクの中の水素ガスが十分に混合され希釈されるため,希釈用ガス (空気)は陰極水面に送風していると認められる。また,被告製品1の稼働時の水素ガス濃度は,実験成績証明書(甲7)のとおり,常に4vol%未満に維持され,安定的に供給される水素ガス濃度と推認できる電解開始15分後において2.6vol%となっている。 そうすると,被告製品1は,構成要件1Dを充足する。 なお,被告から原告への回答書(甲13)の中で,被告は「当社製品は貴社特許と異なり,爆発限界を超えることのない低い濃度で水素ガス供給を行っている」と記載しており,爆発限界(下限4vol%)を超えることのない低い濃度で水素ガス供給を行っていることを自ら認めている。 (被告の主張) 前記のとおり,被告製品1では,外 供給を行っている」と記載しており,爆発限界(下限4vol%)を超えることのない低い濃度で水素ガス供給を行っていることを自ら認めている。 (被告の主張) 前記のとおり,被告製品1では,外タンクが構成要件1Aの「電解室」に該当し,外タンクの内部と外部を区別する「隔膜」に相当する部材は存在せず,しかも,ケーシング(上側を陰極電極板,下側を陽極電極板に接合された高分子膜)は,内タンクの外部で外タンク内の水中に存在し,陰極電極板及び陽極電極板ともに外タンク内に存在しているから,被告製品1には構成 要件1Dの「陰極水面」に相当する部位も存在しない。 仮に,陰極電極板の上方に存在する水面を構成要件1Dの「陰極水面」とすると,当該水面(内タンク水面)は,使用者が注入する水量により内タンク内の種々の位置に存在することになるから,内タンク水面から7cm離れた位置が水素ガスと空気(希釈用ガス)の混合ガスの導出口である吸引補助 管7,7の吸引入口より上方に位置する場合や下方に位置する場合となるこ とがある。しかも,水の電気分解に伴い水量は減少して内タンク水面が低下し,被告製品1において,空気供給器から供給される空気(「希釈用ガス」)は,内タンクの中央に位置する水滴防止用中蓋の下面の空気送風口から送風されるから,注入される水量や電気分解の時間の経過により内タンク水面に空気が送風されなくなることがあり,また,内タンク水面から7cm離れた 位置が時々刻々と変化し,空気送風口との距離も変化するから,内タンク水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を測定することが不可能となる。 このように,被告製品1は,構成要件1Dを充足しない。 (3) 争点1-3(被告製品1は,構成要件4Bを充足するか)(原告の主張) 前記の の水素ガス濃度を測定することが不可能となる。 このように,被告製品1は,構成要件1Dを充足しない。 (3) 争点1-3(被告製品1は,構成要件4Bを充足するか)(原告の主張) 前記のとおり,被告製品1の内タンクが「電解室」に該当するところ,内タンクの外部には,外部電極板を包含する「タンク間空間」が存在するし,この「タンク間空間」が側室を形成しているといえるから,構成要件4Bを充足する。 (被告の主張) 前記のとおり,被告製品1の外タンクが「電解室」に該当するところ,外タンクの外部には,構成要件4Bの「側室」に相当する部材は存在しないから,構成要件4Bを充足しない。 (4) 争点2-1(被告製品2は,構成要件1Aを充足するか)(原告の主張) 被告製品2の隔膜及び仕切り板は,貯留空間をそれらよりも上方の空間であって内部電極板が設けられた陰極室と,下方の空間であって外部電極板が設けられた陽極室とに区画している。隔膜で区画された陰極室側で内部電極板が隔膜に接触し,陽極室側で外部電極板が隔膜に接触しており,内部電極板と外部電極板からなる一対の電極板は隔膜を挟んで設けられている。透明 容器内に注水した場合には,仕切り板の周縁部に設けた複数の切欠きを通し て,仕切り板よりも下方に水が流れ,陰極室及び陽極室に水が貯まる。 被告製品2は,ハウジングケース,前記ハウジングケース内に設けられて水が注水される陰極室と水が注水される陽極室とに区画する隔膜,前記隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた一対の電極,及び前記陰極室にて生成されたガスを導出するガス出口を含む貯留槽とを備えて いる。被告製品2におけるハウジングケースは構成要件1Aの「筐体」に該当し,被告製品2における「水」は れた一対の電極,及び前記陰極室にて生成されたガスを導出するガス出口を含む貯留槽とを備えて いる。被告製品2におけるハウジングケースは構成要件1Aの「筐体」に該当し,被告製品2における「水」は構成要件1Aの「被電解原水」に該当し,被告製品2における「貯留槽」は構成要件1Aの「電解槽」に該当する。 そうすると,被告製品2は,構成要件1Aを充足する。 なお,「隔膜」は,構成要件1Aにおいて「被電解水が導入される陰極室と 被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」と規定されている。ここで,陰極室と陽極室とに区画するのは隔膜のみとは規定されておらず,仕切り板を含んでも良いことは明らかである。 また,「被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」における「区画」の解釈については,「しきり。境界。」と解す べきであり,陰極室と陽極室とで水が連通する構成も対象としている。 (被告の主張)「前記筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」(構成要件1A)とは,筐体内に設けられた膜であって,被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入さ れる陽極室に区切り,陰極室と陽極室を区別する膜との意味である。そして,筐体内は膜により陰極室と陽極室に区切られるから,陰極室と陽極室は連通しておらず,陰極室に導入される被電解水と陽極室に導入される被電解水はそれぞれ各室に留まり,相互に流出しないものと認められる。 被告製品2では,外部から筒部材へ注がれた水(被電解原水)は,底蓋に 設けられた11個の孔,底蓋の外周と内壁の内周との隙間,直方体枠の上部 に開口された窓穴と高分子膜の上面に接合した網目状の陰極電極板との網目の隙間を通っ 被電解原水)は,底蓋に 設けられた11個の孔,底蓋の外周と内壁の内周との隙間,直方体枠の上部 に開口された窓穴と高分子膜の上面に接合した網目状の陰極電極板との網目の隙間を通って底ケースの上面(「被告製品2説明書」の皿部)に流出し,筒部材と内壁に囲まれた底ケースの内部を水が満たし,底ケースの内壁に囲まれた上面に設置された直方体枠の窓穴に保持されたケーシング(高分子膜の上側に陰極電極板,下側に陽極電極板を接合した部材)は水の中に水没した 状態になることから,高分子膜は筒部材と底ケースの内壁で囲まれた上面で形成された空間(水導入空間)を区切っておらず,また,水は筒部材の上部開口の一カ所から水導入空間内に充満し,高分子膜の周囲で連通しているから,被告製品2には,構成要件1Aの「筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」 に相当する膜は存在せず,水導入空間は区切り区別されていないから「陰極室」及び「陽極室」に相当する空間は存在せず,「筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」も存在しない。 そうすると,被告製品2は,構成要件1Aを充足しない。 (5) 争点2-2(被告製品2は,構成要件1Cを充足するか)(原告の主張)被告製品2では,隔膜が陰極室と陽極室とに区画しており,内部電極板(陰極)が設けられた陰極室が存在する。そして,被告製品2においては,「ガス吐出口は,仕切り板よりも上方の空間にガス(空気)を吐出するので,陰極 室の水の中にガス(空気)を吐出する」ものであり,「被電解水の中に希釈ガスを吐出」している。 そうすると,被告製品2は,構成要件1Cを充足する。 (被告の ガス(空気)を吐出するので,陰極 室の水の中にガス(空気)を吐出する」ものであり,「被電解水の中に希釈ガスを吐出」している。 そうすると,被告製品2は,構成要件1Cを充足する。 (被告の主張)本件発明2-1の「陰極室」は,膜で区切られた電解槽内の空間のうち陰 極が設けられた空間で,かつ,当該空間内に導入された被電解水が膜で仕切 られることから外部へ移動することがない空間をいうところ,被告製品2に当該空間は存在しないから,「陰極室」は存在せず,被告製品2は構成要件1Cを充足しない。 (6) 争点2-3(被告製品2は,構成要件2Aを充足するか)(原告の主張) 被告製品2におけるハウジングケースは構成要件2Aの「筐体」に該当し,被告製品2における「水」は構成要件2Aの「被電解原水」に該当し,被告製品2における「貯留槽」は構成要件2Aの「電解槽」に該当し,被告製品2における「前記陰極室の外部の電極」は隔膜に接触して設けられている。 「陰極室の内部と外部とを区画する隔膜」における「区画」の解釈につい ては,「しきり。境界。」(甲23)と解すべきであり,陰極室と陽極室とで水が連通する構成も対象としている。 そうすると,被告製品2は,構成要件2Aを充足する。 (被告の主張)「陰極室の内部と外部とを区画する隔膜」とは,陰極室の内部と外部を区 切り区別する隔膜との意味であり,陰極室の内部に導入された被電解原水は,内部と外部を区切る隔膜により陰極室の内部に留まり,陰極室の外部に流出しないものと認められる。 被告製品2では,外部から筒部材へ注がれた水(被電解原水)は底蓋に設けられた11個の孔,底蓋の外周と内壁の内周との隙間,直方体枠の上部に 開口された窓穴と高分子膜の上面に接合した網目 れる。 被告製品2では,外部から筒部材へ注がれた水(被電解原水)は底蓋に設けられた11個の孔,底蓋の外周と内壁の内周との隙間,直方体枠の上部に 開口された窓穴と高分子膜の上面に接合した網目状の陰極電極板との網目の隙間を通って底ケースの上面(「被告製品2説明書」の皿部)に流出し,筒部材と内壁に囲まれた底ケースの内部を水が満たし,底ケースの内壁に囲まれた上面に設置された直方体枠の窓穴に保持されたケーシング(高分子膜の上側に陰極電極板,下側に陽極電極板を接合した部材)は水の中に水没した 状態になることから,高分子膜は筒部材と底ケースの内壁で囲まれた上面で 形成された空間(水導入空間)を区切っておらず,また,水は水導入空間内に充満し,高分子膜の周囲で連通しているから,被告製品2には,構成要件2Aの「陰極室」に相当する空間,並びに,「陰極室の内部と外部とを区画する隔膜」が存在しない。 (7) 争点2-4(被告製品2は,構成要件2Cを充足するか) (原告の主張)被告製品2では,隔膜が陰極室と陽極室を区画しており,内部電極板(陰極)が設けられた陰極室が存在する。そして,被告製品2においては,「ガス吐出口は,仕切り板よりも上方の空間にガス(空気)を吐出するので,陰極室の水の中にガス(空気)を吐出する」ため,「被電解水の中に希釈ガスを吐 出」している。 そうすると,被告製品2は,構成要件2Cの「希釈ガス供給器」を備えると認められ,構成要件2Cを充足する。 (被告の主張)構成要件2Cの「陰極室」は,隔膜で区切られた電解槽内の空間のうち陰 極が設けられた空間で,かつ,当該空間内に導入された被電解原水が隔膜で仕切られた外部へ移動することはない空間をいうが,被告製品2には上記のような空 は,隔膜で区切られた電解槽内の空間のうち陰 極が設けられた空間で,かつ,当該空間内に導入された被電解原水が隔膜で仕切られた外部へ移動することはない空間をいうが,被告製品2には上記のような空間は存在しないから「陰極室」は存在せず,被告製品2は構成要件2Cを充足しない。 (8) 争点2-5(被告製品2は,構成要件4Aを充足するか) (原告の主張)被告製品2におけるハウジングケースは構成要件4Aの「筐体」に該当し,被告製品2における「水」は構成要件4Aの「被電解原水」に該当し,被告製品2における「貯留槽」は構成要件4Aの「電解槽」に該当する。 構成要件4Aの「被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽 極室とに区画する隔膜」における「区画」の解釈については,「しきり。境界。」 と解すべきで,陰極室の内部と外部とで水が連通する構成も対象としている。 そうすると,被告製品2は,構成要件4Aを充足する。 (被告の主張)被告製品2は,高分子膜6は筐体内に水平に設けられているから,本件発明2-4が対象とする装置とは構成が全く異なっており,構成要件4Aの全 ての構成を具備しない。 また,被告製品2では,外部から筒部材へ注がれた水は,底蓋に設けられた11個の孔,底蓋の外周と内壁の内周との隙間,直方体枠の上部に開口された窓穴と高分子膜の上面に接合した網目状の陰極電極板との網目の隙間を通って底ケースの上面に流出し,筒部材と内壁に囲まれた底ケースの内部を 水が満たし,底ケースの内壁に囲まれた上面に設置された直方体枠の窓穴に組み込まれたケーシング(高分子膜の上側に陰極電極板,下側に陽極電極板を接合した部材)は水の中に水没した状態になることから,高分子膜は筒部材と底ケースの内壁で囲まれ 上面に設置された直方体枠の窓穴に組み込まれたケーシング(高分子膜の上側に陰極電極板,下側に陽極電極板を接合した部材)は水の中に水没した状態になることから,高分子膜は筒部材と底ケースの内壁で囲まれた上面で形成された空間(水導入空間)を区切っておらず,また,水は水導入空間内に充満し,高分子膜の周囲で連通して いるから,被告製品2には,構成要件4Aの「陰極室」及び「陽極室」に相当する空間,並びに「陰極室と・・・陽極室とに区画する隔膜」は存在しない。 (9) 争点2-6(被告製品2は,構成要件4Cを充足するか)(原告の主張) 被告製品2では,隔膜が陰極室と陽極室とに区画しており,内部電極板(陰極)が設けられた陰極室が存在し,また,「ガス吐出口は,仕切り板よりも上方の空間にガス(空気)を吐出するので,陰極室の水の中にガス(空気)を吐出する」ため,「被電解水の中に希釈ガスを吐出」している。 そうすると,被告製品2は,構成要件4Cの「希釈ガス供給器」を備えて いるといえ,構成要件4Cを充足する。 (被告の主張)本件発明2-4が対象とする装置は,筐体内の下側空間を隔膜により左右の空間に区画し,陰極側の空間を陰極室,陽極側の空間を陽極室としているところ,被告製品2には筒部材と内壁に囲まれた底ケースの上面で囲まれた空間(水導入空間)の下側空間を左右に区画する膜は存在せず,当然に「陰 極室」及び「陽極室」に相当する空間も存在しないから,被告製品2は構成要件4Cを充足しない。 (10) 争点3-1(本件特許1の無効理由1(実施可能要件違反①)の有無)(被告の主張)本件特許1に関し,本件明細書1には,電極板15(陽極)の周囲に被電 解水が存在しない場合でも電気分解が生じる旨の説明が記載され 無効理由1(実施可能要件違反①)の有無)(被告の主張)本件特許1に関し,本件明細書1には,電極板15(陽極)の周囲に被電 解水が存在しない場合でも電気分解が生じる旨の説明が記載されており(段落【0017】,【0018】),その記載には,実施可能要件(特許法36条4項1号)違反の無効理由が存する。 すなわち,まず,本件発明1の請求項1は,被電解原水が導入される電解室内部の電極板の電極が陰極又は陽極になる発明,つまり,陽極である電極 板の周囲に被電解原水が存在しない発明を含むことになる。 そして,発明の詳細な説明には,隔膜として陽イオン交換膜を用いた各請求項に係る発明の実施態様の説明が記載されているものと認められる。 しかるに,発明の詳細な説明には,上記隔膜13の説明の後(段落【0017】,【0018】)に,電解室11の外部の電極板15が陽極で,電極板1 5の周囲に被電解原水が存在しない場合でも電気分解が生じる旨の説明が記載されている。しかしながら,陽イオン交換膜にあっては,段落【0017】,【0018】に記載されたような作用は決して起こらない。 したがって,発明の詳細な説明の段落【0017】,【0018】に記載された作用効果は誤りであるから,当業者は,明細書及び図面に記載された発 明の実施についての教示と出願時の技術常識に基づいて,請求項1に係る発 明(陽極である電極板の周囲に被電解原水が存在しない態様を含む発明)を実施しようとした場合に,どのように実施するか理解できないから,本件特許1の請求項1及びこれを引用する請求項2~4,6,7,10については,本件明細書1の記載に関して,実施可能要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 項1及びこれを引用する請求項2~4,6,7,10については,本件明細書1の記載に関して,実施可能要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 本件特許権1の発明は,水の電気分解によって水素ガスを発生させている。 そのため,被電解原水が陽極と陰極とに供給されない場合は電気分解が行われないことは出願当時の技術常識である。 発明の詳細な説明の実施例1では,陽極に被電解原水が確実に供給されるように「陽イオン交換膜にも水を湿潤させた」という条件が付されている。 原告は改めて,「陽イオン交換膜にも水を湿潤させた」という条件のもと,実施例1の実験を行い,水素ガスが発生することを確認した(甲28・実験成績証明書2)。言い換えれば,陽極では,被電解原水(H2O)の電気分解に より酸素ガス(1/2O2)と水素イオン(2H+)と電子(2e-)が発生し,陰極では隔膜を透過した水素イオン(2H+)が電子(2e-)と結合して水素ガス(H2)が発生することを確認した。なお,「ナフィオン膜は親水性であり,電気分解を行っているときには水の輸送が可能である」ため,陰極と陽極に継続して電気を通すことにより陽極にも追加の被電解原水が供給 され,電気分解による水素ガスの発生が継続したといえる。 隔膜について,段落【0014】記載の陽イオン交換膜はあくまでも例示であり,隔膜がこれに限定解釈される理由はないし,請求項においても隔膜を具体的に特定しているわけでもない。 以上のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき 当業者が本件特許権1の請求項1の発明1-1を実施できることは明らかで あり,被告の主張する実施可能要件違反の無効理由は存しない。 (11) 争点3-2(本 の技術常識に基づき 当業者が本件特許権1の請求項1の発明1-1を実施できることは明らかで あり,被告の主張する実施可能要件違反の無効理由は存しない。 (11) 争点3-2(本件特許1の無効理由2(サポート要件違反①)の有無)(被告の主張)請求項1に記載される「隔膜」には限定がなく,発明の詳細な説明には陽イオン交換膜しか記載されていないから,特許請求の範囲に記載された発明 は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになる。 本件発明1が解決しようとする課題は「健康上有益な水素ガスを医療の現場や家庭で安全に使用することができる生体用水素ガス供給装置を提供することであ」り(段落【0005】),発明の効果は「健康上有益な水素ガスを,医療の現場や家庭で安全に使用することができる。」(段落【0007】)とこ ろ,前記「実施可能要件違反①」に記載のとおり,発明の詳細な説明の記載により特許請求の範囲に記載された発明を実施することができないのであるから,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決すると認識できる範囲内のものではなく,また,発明の詳細な説明には,隔膜として陽イオン交換膜を使用する実施態様の記載しかなく,他の膜に関する記載 が全くないのであるから,当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲内のものではない。 したがって,本件特許1の請求項1及びこれを引用する請求項2~4,6,7,10については,本件明細書1の記載に関して,サポート要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。前記のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者が本件特許権1の請求項 件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。前記のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者が本件特許権1の請求項1の発明1-1を実施することができるため,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該 発明の上記の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえ,被告の主 張するサポート要件違反の無効理由は存しない。 (12) 争点3-3(本件特許1の無効理由3(実施可能要件違反②)の有無)(被告の主張)本件発明1の請求項1は,被電解原水が導入される電解室内部の電極板が電解室の内部と外部を区画する隔膜と離隔する発明を含むことになる。 また,発明の詳細な説明の段落【0012】には,請求項1における電解室内部の電極板と隔膜が離隔してもよい旨の記載がある。 しかしながら,発明の詳細な説明には,隔膜として陽イオン交換膜を用いた各請求項に係る発明の実施態様の説明が記載されており,陽イオン交換膜,少なくともナフィオンを代表とする固体高分子の陽イオン交換膜にあっては, 電解室の隔膜と電極板とが離隔されると,その離隔距離が僅か(例えば0. 5mm)であっても,被電解原水の電気分解は起こり得ない。 したがって,発明の詳細な説明の段落【0012】に記載された事項は,隔膜に陽イオン交換膜を使用する場合には起こり得ず,しかも,発明の詳細な説明には隔膜に陽イオン交換膜を用いた実施態様の記載しか存在していな いから,当業者は,明細書及び図面に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識に基づいて,当業者が請求項1に係る発明を実施しようとした場合に,どのよ 実施態様の記載しか存在していな いから,当業者は,明細書及び図面に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識に基づいて,当業者が請求項1に係る発明を実施しようとした場合に,どのように実施するか理解できないから,本件特許1の請求項1及びこれを引用する請求項2~4,6,7,10については,本件明細書1の記載に関して,実施可能要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 被電解原水の電気分解における隔膜と陰極,陽極との位置関係について,出願時の技術常識として,隔膜が陰極,陽極と離隔している電解槽が開示されている(甲29ないし31)。 また,本件特許権1の請求項1の隔膜について,段落【0014】におけ る陽イオン交換膜はあくまでも例示であり,隔膜がこれに限定解釈される理由はなく,請求項において,甲29のように隔膜を具体的に特定している訳でもない。 以上のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者が本件特許権1の請求項1の発明1-1を実施できることは明らかで あり,被告の主張する実施可能要件違反の無効理由は存しない。 (13) 争点3-4(本件特許1の無効理由4(サポート要件違反②)の有無)(被告の主張)請求項1に記載される「隔膜」には限定がなく,発明の詳細な説明には陽イオン交換膜しか記載されていないから,特許請求の範囲に記載された発明 は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになる。 本件発明1が解決しようとする課題は,「健康上有益な水素ガスを医療の現場や家庭で安全に使用することができる生体用水素ガス供給装置を提供することであ」り(段落【0005】),発明の効果は「健康上有 本件発明1が解決しようとする課題は,「健康上有益な水素ガスを医療の現場や家庭で安全に使用することができる生体用水素ガス供給装置を提供することであ」り(段落【0005】),発明の効果は「健康上有益な水素ガスを,医療の現場や家庭で安全に使用することができる。」(段落【0007】)とこ ろ,前記「実施可能要件違反②」に記載のとおり,発明の詳細な説明の記載により特許請求の範囲に記載された発明を実施することができないのであるから,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明1の課題を解決すると認識できる範囲内のものではなく,また,発明の詳細な説明には,隔膜として陽イオン交換膜を使用する実施態様の記載しかなく,陽イオン交換膜を 使用して本件発明1の課題を解決できず,しかも,発明の詳細な説明には陽イオン交換膜以外の膜に関する記載が全くないのであるから,当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲内のものではない。 したがって,本件特許1の請求項1及びこれを引用する請求項2~4,6, 7,10については,本件明細書1の記載に関して,サポート要件違反の無 効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。前記のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者が本件特許権1の請求項1の発明1-1を実施することができるため,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳 細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の上記の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえる。被告の主張するサポート要件違反の無効理由は存しない。 (14) 争点3-5(本件特許1の無効理由5(サポート要件違反③)の有無)(被 上記の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえる。被告の主張するサポート要件違反の無効理由は存しない。 (14) 争点3-5(本件特許1の無効理由5(サポート要件違反③)の有無)(被告の主張) 本件発明1の課題の要点は,「・・水素ガス発生の時点から生体に送り届けられるまでのあらゆる時点において,水素ガスを・・4vol%未満に維持すること」であると認められる。その為には,水素ガス濃度が高くなる発生源に近い箇所の水素ガス濃度を爆発限界外の濃度である4vol%未満に維持することが有効となるはずである。 しかし,特許請求の範囲に記載された発明のように,陰極又は陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度が4vol%未満としても,7cm未満の位置の水素ガス濃度を4vol%未満とできないのであるから,当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲内のものとはいえず,本件特許1の請求項1及びこれを引用する請求項2~ 4,6,7,10については,本件明細書1の記載に関して,サポート要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。電解室の内部は通常の大気圧よりも高い圧力(陽圧)となっている。陽圧の環境下において,電解室から生体に供給されるま での空間は一貫した空間となり,発生した水素ガス濃度もほぼ一定となり, 「電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持」されることとなる。この陽圧の環境にすることにより,本件特許権1の発明の効果である「水素ガス発生の時点から生体に送り届けられるまでのあらゆる時点において,水素ガスを爆発限界外の濃度である4vol%未満に維持する」効果を呈す の環境にすることにより,本件特許権1の発明の効果である「水素ガス発生の時点から生体に送り届けられるまでのあらゆる時点において,水素ガスを爆発限界外の濃度である4vol%未満に維持する」効果を呈するといえる。 したがって,「電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持」されることは,当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明1-1の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえる。被告の主張するサポート要件違反の無効理由は存しない。 (15) 争点3-6(本件特許1の無効理由6(明確性要件違反①)の有無) (被告の主張)本件発明1の請求項1には,「陰極又は陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持」すること,及び「水素ガス濃度が0.1~4vol%の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガスを生体に供給」することが構成要件として記載されている。 陰極又は陰極水面から7cm離れた位置には,4vol%未満の水素ガス濃度,即ち,「未満」であるから,0~4vol%未満の濃度範囲が示され,一方,生体に供給される位置,即ち,口元で吸引されるであろう位置には,そのまま「0.1~4vol%」の水素濃度範囲が示される。すると,0~0.1vol%の齟齬が見られることになる。 具体的に検証すると,7cm離れた位置で存在したはずの0~0.1vol%の範囲の水素ガスが,生体の口元で吸引される際には,存在しないものとなってしまう。しかし,上記事象を解決するための手段についても,本件発明1の明細書には,記載がなく,その示唆もない。 よって,本件発明1の特許請求の範囲における,「7cm離れた位置の水素 ガス濃度を常に4vol%未満」の数値範囲と, めの手段についても,本件発明1の明細書には,記載がなく,その示唆もない。 よって,本件発明1の特許請求の範囲における,「7cm離れた位置の水素 ガス濃度を常に4vol%未満」の数値範囲と,生体の口元で吸引される「水 素ガス濃度が0.1~4vol%」の数値範囲の間には技術的な不備があり,その結果,請求項1に係る発明は不明確となっている。 以上のとおり,本件特許1(本件発明1。請求項1及びこれを引用する請求項2~4,6,7,10に係る発明)には,明確性要件に反する無効理由が存する。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 水素濃度については,「前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持」,「水素ガス濃度が0.1~4vol%の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガスを生体に供給」の2つの要 件となっている。 本件発明1-1の1Dは全体として解釈する必要があり,上記2つの要件が完全に一致している必要はなく,2つの要件を満たさない「前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度が0~0.1vol%未満の範囲の水素ガス」は,単に請求項1の範囲外ということになる。 よって,構成要件1Dの数値範囲に技術的な不備はなく,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではないため,本件発明1-1は明確であって,被告の主張する明確性要件違反の無効理由は存しない。 (16) 争点3-7(本件特許1の無効理由7(明確性要件違反②)の有無)(被告の主張) 本件特許1の請求項1には,「前記希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを前記陰極又は陰極水面に送風することにより,電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常 本件特許1の請求項1には,「前記希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを前記陰極又は陰極水面に送風することにより,電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持し,水素ガス濃度が0.1~4vol%の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガスを生体に供給する生体用水素ガス供給装置。」が規定されてい る。 しかし,本件特許1の請求項1の文言から,希釈用ガスの送風先が「陰極」か「陰極水面」か,水素ガス濃度の測定位置が「陰極から7cm離れた位置」か「陰極水面から7cm離れた位置」か不明であるから,請求項1に係る発明の範囲を確定できず,しかも,明細書及び図面の記載,出願時の技術常識に基づいても希釈用ガスの送風先並びに水素ガス濃度の測定位置を確定でき ないから,本件特許1(本件発明1。請求項1及びこれを引用する請求項2~4,6,7,10に係る発明)には,明確性要件に反する無効理由が存する。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 構成要件1Dにおける希釈用ガスの送風先と水素ガス濃度の測定位置に関し,陰極の周囲に被電解原水が存在しない場合は,希釈用ガスの送風先は陰極であり,水素ガス濃度の測定位置は陰極から7cm離れた位置となる。 一方,陰極の周囲に被電解原水が存在する場合は,希釈用ガスの送風先は陰極又は陰極水面であり,水素ガス濃度の測定位置は陰極又は陰極水面から 7cm離れた位置となる。陰極又は陰極水面に送風される希釈用ガスは,希釈の目的のみならず,生体に供給される混合ガスを生体まで送出することも目的としている。よって,この目的を達成できるのであれば,希釈ガスの送風先を任意に選択できる。また,陰極から陰極水面までの距離が7cm未満であれば,水素 に供給される混合ガスを生体まで送出することも目的としている。よって,この目的を達成できるのであれば,希釈ガスの送風先を任意に選択できる。また,陰極から陰極水面までの距離が7cm未満であれば,水素ガス濃度の測定位置を陰極又は陰極水面から7cm離れた位 置に任意に選択できる。「陰極水面近傍(陰極水面から7センチメートル以内)」の位置で適切に水素ガス濃度を測定しているからである。 したがって,陰極の周囲に被電解原水が存在する場合の希釈用ガスの送風先と水素ガス濃度の測定位置は,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではない。 よって,構成要件1Dの希釈用ガスの送風先と水素ガス濃度の測定位置に 関し,本件発明1-1は明確であって,被告の主張する明確性要件違反の無効理由は存しない。 (17) 争点3-8(本件特許1の無効理由8(進歩性欠如)の有無)(被告の主張)ア乙1(特開2009-5881号公報)(主引用発明1)には次の発明が 記載されている。 (1A) 水が導入される陰極室35と,陰極室35の内部と外部とを区画するイオン交換膜31と,陰極室35の内部及び外部のそれぞれにイオン交換膜31を挟んで設けられた一対の陰極板33,陽極板32と,を有し,陰極室35の外部の陽極板32がイオン交換膜31に接触させて設け られている電解セル30と,(1B) 一対の陰極板33と陽極板32に直流電圧を印加する直流電源21と,(1C) 陰極となる陰極板33から発生する水素ガスを希釈するための小型空気ポンプ15と,を備え, (1D’) 小型空気ポンプ15は,水素ガス発生装置1の電解セル30内の陰極室35で発生した水素ガスを導管13でガス混合器14に導き,ここに空気を送出して水素ガ 空気ポンプ15と,を備え, (1D’) 小型空気ポンプ15は,水素ガス発生装置1の電解セル30内の陰極室35で発生した水素ガスを導管13でガス混合器14に導き,ここに空気を送出して水素ガスと空気を混合するものであり,水素ガスと空気を含む混合ガスを生体に供給する(1E) 水素ガスの体内吸入装置。 イ本件発明1-1と主引用発明1(乙1発明)との対比主引用発明1の「水」,「陰極室35」,「イオン交換膜31」,「陰極板33」及び「陽極板32」,「電解セル30」は,それぞれ本件発明1-1の「被電解原水」,「電解室」,「隔膜」,「一対の電極板」,「電解槽」に相当する。主引用発明1の「一対の陰極板33と陽極板32」は,本件発明1- 1の「一対の電極板」に相当する。主引用発明1の「小型空気ポンプ15」, 「空気」は,本件発明1-1の「希釈用ガス供給装置」,「希釈用ガス」に相当する。主引用発明1の「水素ガスの体内吸入装置」は,本件発明1-1の「生体用水素ガス供給装置」とも言い得る。 以上を踏まえると,本件発明1-1と主引用発明1の間には,次の一致点,相違点がある。 (ア) 一致点1A 被電解原水が導入される電解室と,前記電解室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜と,前記電解室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極板と,を有し,前記電解室の外部の電極板が前記隔膜に接触させて設けら れている電解槽と,1B 前記一対の電極板に直流電圧を印加する直流電源と,1C 陰極となる電極板から発生する水素ガスを希釈するための希釈用ガス供給器と,を備え,1D’前記希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを送風すること により,水素ガ 直流電源と,1C 陰極となる電極板から発生する水素ガスを希釈するための希釈用ガス供給器と,を備え,1D’前記希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを送風すること により,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガスを生体に供給する1E 生体用水素ガス供給装置。 (イ) 相違点1-1本件発明1-1では,「希釈用ガスを前記陰極又は陰極水面に送風する」のに対し,主引用発明1では,電解セル30(本件発明1-1の 「電解槽」)の外部に設けたガス混合器14に送風している点。 (ウ) 相違点1-2本件発明1-1では,「電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持し,水素ガス濃度が0.1~4vol%の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガ ス」としているのに対し,主引用発明1では,当該数値範囲の記載が ない点。 ウ乙3~乙7の記載事項(周知慣用技術)(ア) 乙3の記載事項乙3の要約書,課題には,水の電気分解による水素ガスの発生手段が,【0014】,【0026】には,電解槽内の水面上に空気を送風し て水面上に滞留した水素ガスを空気との混合で希釈するという希釈ガス供給手段が,【0027】には,水素ガスの濃度を爆発限界以下とする濃度設定,具体的には4vol%以下とする濃度設定が,【0031】には,装置内に高濃度の水素ガスの滞留をなくして水素ガスの爆発を確実に防止するという効果が,それぞれ記載されている。 (イ) 乙4の記載事項乙4の(特許請求の範囲),【0018】,【0024】には,電気分解で生じた水素ガスの希釈手段として空気を使用し,希釈空気を槽内の水面上に送り込み,その希釈濃度を4vol%未 乙4の記載事項乙4の(特許請求の範囲),【0018】,【0024】には,電気分解で生じた水素ガスの希釈手段として空気を使用し,希釈空気を槽内の水面上に送り込み,その希釈濃度を4vol%未満(1.5vol%)とする水素ガスの希釈に関する事項が,【0009】,【0011】には, 電解処理で生じた水素ガスを,爆発限界以下に希釈させて安全を図ろうとする水素ガスの爆発に関する事項が,【0014】,【0052】には発生した水素ガスを爆発限界以下に希釈させて安全性が向上した希釈の効果に関する事項が,それぞれ記載されている。 (ウ) 乙5の記載事項 乙5の【0003】,【0054】には,水の電気分解に伴う水素ガスの発生から生じる爆発の危険を防止すること,【0056】には,水素ガス濃度を4%未満にすること,【0058】,【0070】には,送風ファンにより水素ガス濃度を低下させること,【0076】には,水素ガスを送風手段で希釈することで爆発を防止する効果を奏したこと が,それぞれ記載されている。 (エ) 乙6の記載事項乙6には,特許請求の範囲,3頁右下欄に,被処理水の電気化学的処理方法として,水の電解で生じた水素ガスの爆発の危険を回避するため,空気等の不活性ガスで希釈し,その濃度を4容量%以下にすることが記載されている。 (オ) 乙7の記載事項乙7には,明細書の発明の詳細な説明の冒頭部分に,近年水を電解処理の際に発生する水素ガスの爆発防止手段として送風機で多量の空気を送り込んで希釈する方法が,一般的手段として用いられていることが記載されている。 (カ) 周知慣用技術乙3~乙7に示されるように,水の電気分解により陰極に発生した水素ガスについ んで希釈する方法が,一般的手段として用いられていることが記載されている。 (カ) 周知慣用技術乙3~乙7に示されるように,水の電気分解により陰極に発生した水素ガスについて,水素ガスの発生から生じる爆発の危険を防止するため,空気等の希釈用ガスを水素ガスの発生源,つまり,陰極の周囲に被電解原水が存在する場合には陰極水面の近傍,被電解原水が存在 しない場合には陰極の近傍に送風して貯留空間内の水素ガス濃度を希釈し,水素ガス濃度を4vol%未満とする技術は,当業者にとって周知慣用の技術である。 エ乙10~乙12の記載事項(技術常識)(ア) 乙10の記載事項 乙10には,水素および他燃料ガスの物性値の比較にあって,可燃限界として,「空気中4.0~75.0」が記載されている。(379頁の表1)(イ) 乙11の記載事項乙11には,混合ガスの爆轟範囲の題目で,水素と空気の混合にあ っては爆発限界として4.0%の数値が記載されている。(1173頁 の表17)(ウ) 乙12の記載事項乙12には,(水素+空気)は,下限濃度が4.1%であることが記載されている。(641頁の表13.4.3)(エ) 技術常識 乙10~乙12に示されるように,水素ガスを扱う業界において,安全のために空気との混合割合を4vol%未満とすることは技術常識である。乙11は,昭和42年11月25日発行とされるもので,少なくとも昭和42年には業界雑誌に記載のあるありふれた数値の提示である。 オ相違点についての検討(ア) 相違点1-1乙3~乙7に示されるように,被電解原水の電気分解により陰極に水素ガスを発生する装置において,水の ありふれた数値の提示である。 オ相違点についての検討(ア) 相違点1-1乙3~乙7に示されるように,被電解原水の電気分解により陰極に水素ガスを発生する装置において,水の電気分解により陰極に発生した水素ガスについて,水素ガスの発生から生じる爆発の危険を防止す るため,空気等の希釈用ガスを水素ガスの発生源,つまり,陰極の周囲に被電解原水が存在する場合には陰極水面の近傍,被電解原水が存在しない場合には陰極の近傍に送風して貯留空間内の水素ガス濃度を希釈し,水素ガス濃度を4vol%未満とする技術は,当業者にとって周知慣用の技術である。 したがって,乙1に記載された発明(主引用発明1)において,希釈用ガスの送風先を「陰極又は陰極水面」として,水素ガスの貯留空間内の水素ガス濃度を4vol%未満とすることは,乙3~乙7に示された周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 相違点1-2 「水素ガス濃度を常に4vol%未満」及び「水素ガス濃度が0. 1~4vol%」の数値範囲には臨界的意義がなく,当該数値範囲は,実用化に当たり妥当な範囲として自ら好ましいと思われた範囲を特許請求の範囲に加えたものに過ぎず,電気分解により発生した水素ガス濃度の測定位置として,水素ガスの発生源である「陰極又は陰極水面」の近傍を測定し,その測定位置である近傍を「陰極又は陰極水面から 7cm離れた位置」の水素ガス濃度とすることは当業者が実施に当たっての選択事項に過ぎない。 そして,乙10~乙12に示されるように,水素ガスを扱う業界において,安全のために空気との混合割合を4vol%未満とすることは技術常識であり,乙11は昭和42年11月25日発行とされるも そして,乙10~乙12に示されるように,水素ガスを扱う業界において,安全のために空気との混合割合を4vol%未満とすることは技術常識であり,乙11は昭和42年11月25日発行とされるも ので,少なくとも昭和42年には業界雑誌に記載のあるありふれた数値の提示である。 したがって,乙1に記載された発明(主引用発明1)において,「電解時の前記陰極又は前記陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未満に維持し,水素ガス濃度が0.1~4vol% の,水素ガスと希釈用ガスを含む混合ガス」とすることは,乙3~乙7に加えて乙10~乙12に示された周知慣用技術及び当業者の技術常識から容易に想到できるものである。 (ウ) 本件発明1-1の作用効果本件発明1-1は,電気分解で生じた水素ガスを空気等で希釈しつ つ生体に供給して,健康上有益な水素ガスを医療の現場や家庭で安全に使用することができるという作用効果を奏する。 一方,乙1には,電解で生じた水素ガスを体内に吸入する際に,水素ガスと空気を混合させて,水素ガスを濃度調整して吸入できることが示されている。乙3~乙7には,水の電気分解で生じた水素ガスを 4%以下の安全濃度に希釈できる効果が示されている。 したがって,本件発明1-1の効果は,乙1及び乙3~乙7から当業者が予測できる範囲内のものである。 カまとめ本件発明1-1は,乙1に記載された発明に乙3~乙7並びに乙10~乙12に示される周知慣用技術並びに当業者の技術常識を組み合わせ ることにより当業者が容易に想到できるものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであって,進歩性欠如の無効理由が存することとなる。 業者の技術常識を組み合わせ ることにより当業者が容易に想到できるものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであって,進歩性欠如の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)ア本件発明1-1と主引用発明1(乙1発明)との対比 主引用発明1との対比における構成要件の一致点と相違点に関し,1A,1B,1C,1Eの一致点は認めるが,相違点は1D全体とすべきである。 イ乙3~乙7の記載事項乙3~乙7においては,水素ガスを有益なものとして生体に使用して おらず,反対に無益なものとして排出している。 ウ乙10~乙12の記載事項乙10~乙12は主に水素ガスの安全性に関する文献であり,水素ガスを有益なものとして生体に使用することを前提としていない。 エ相違点についての検討 乙3~乙7並びに乙10~乙12には,構成要件1D全体が記載も示唆もされていない。 本件発明1-1では,水素ガスを有益なものとして生体に使用している。乙3~乙7は,水素ガスを有益なものとして生体に使用しておらず,反対に無益なものとして排出している。すなわち,明らかに阻害事由が あるといえ,乙1と,乙3~乙7のいずれかの文献とを組み合わせる動 機づけ自体もないといえる。 また,乙10~乙12は主に水素ガスの安全性に関する文献であり,水素ガスを有益なものとして生体に使用することを前提としておらず,動機づけ自体も当然ないといえる。 特開2009-228044(甲33)の審査段階での評価を踏まえ, 水素ガスを無益なものとして排気することを開示している乙3~乙7は,新規性や進歩性の引用文献としては不適格と判断できる。 オまとめ 228044(甲33)の審査段階での評価を踏まえ, 水素ガスを無益なものとして排気することを開示している乙3~乙7は,新規性や進歩性の引用文献としては不適格と判断できる。 オまとめ乙3~乙7並びに乙10~乙12には,構成要件1Dが記載も示唆もされておらず,また,動機づけに関連した記載もないため,無効理由を 構成する文献に該当せず,本件発明1-1である請求項1は特許法29条2項の進歩性の要件を満たし,被告の主張する進歩性欠如の無効理由は存しない。 (18) 争点4-1(本件特許2の無効理由1(サポート要件違反①)の有無)(被告の主張) 本件発明2の請求項1,2,4に記載された「隔膜」には限定がないから,多孔性膜や陽イオン交換膜など多くの膜が含まれることになる。 本件明細書の段落【0023】には,「図1の生体用水素ガス供給装置1において,陰極24の表面においては下記式(1),陽極23の表面においては,下記式(2)の化学反応が生じる。 [数1]2H2O+2e-→H2+2OH- ⋯式(1)2OH-→H2O+O2/2+2e- ⋯式(2)」との記載があり,「隔膜」が電極との間で起こす化学反応については,【0023】に記載されたものが明細書全体を通じて唯一のものである。 この式からは,一般的には,多孔性膜を使用した電気分解の化学反応を説 明できるものとは捉えられるが,陽イオン交換膜を使用した場合の化学反応を説明することはできない。 このように,発明の詳細な説明には「多孔性膜」に関する記載しか存在しないから,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになるし,また,多孔性膜に関する記載によ り多孔 細な説明には「多孔性膜」に関する記載しか存在しないから,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになるし,また,多孔性膜に関する記載によ り多孔性膜以外の陽イオン交換膜等の化学反応を説明できないことから,当業者が技術常識に照らし多孔性膜以外の膜により課題を解決できると認識できず,しかも,陽イオン交換膜の場合,電極を単に「隔膜を挟んで」設けただけでは本件発明2を実施することができないことからして,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決すると認識できる範囲内の ものであるとはいえない。 したがって,本件特許2(本件発明2。請求項1,2,4及び請求項1,2を引用する請求項6に係る各発明)については,本件明細書2の記載に関して,サポート要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張) 被告の上記主張は,争う。 本件特許権2の請求項1,2,4に記載された「隔膜」には限定がないから,多孔性膜や陽イオン交換膜など多くの膜が含まれることになる。 本件特許権2の出願時において,本件特許権1の特許公報(甲2)は公知となっており,本件特許権1の特許公報の開示内容は出願時の技術常識とい える。本件特許権1の特許公報には,具体的に隔膜として陽イオン交換膜を使用した構成や反応式,さらには陽極室に被電解水が存在しない構成も開示されている。すなわち,陽極室に被電解水が存在しない場合にも,被電解水の電気分解反応が始まり,水素ガスと酸素ガスとが発生することが開示されている。 以上のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき 当業者が本件特許権2の本件発明2-1,2-2,2-4を実施することができるため,特許請求の範囲に記載さ 以上のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき 当業者が本件特許権2の本件発明2-1,2-2,2-4を実施することができるため,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえ,被告の主張するサポート要件違反の無効理由は存しない。 (19) 争点4-2(本件特許2の無効理由2(サポート要件違反②)の有無)(被告の主張)本件発明2の請求項1,2,4の「隔膜」には,少なくとも「多孔性膜」及び「陽イオン交換膜」が含まれることが明らかである。 「多孔性膜」では,電解質の存在なしには,被電解水の電気分解が起こり 得ないのであるから,「隔膜」として多孔質膜を含む特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広いことになるし,また,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決すると認識できる範囲内のものではなく,また,発明の詳細な説明には,隔膜として多孔性膜を使用する場合に電気分解が起こり得ない被電解水が記載 されているのであるから,当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明2の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるとはいえない。 したがって,本件特許2(本件発明2。請求項1,2,4及び請求項1,2を引用する請求項6に係る各発明)については,本件明細書2の記載に関して,サポート要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 本件特許権2の発明において,隔膜が多孔性膜である場合,当業者は被電解水に純水を含み,被電解水に電解質を含有しないという条件で被電解水の 。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 本件特許権2の発明において,隔膜が多孔性膜である場合,当業者は被電解水に純水を含み,被電解水に電解質を含有しないという条件で被電解水の電気分解を行うことはない。当業者において,純粋な水が電気を通さないこ とは出願時の技術常識であるためである。すなわち,隔膜が多孔性膜である 場合,当業者は例えば電解質を適宜含有する被電解水で電気分解を行う。 当業者の技術常識に照らし,発明の詳細な説明に記載された「電解質を適宜含有する被電解水」により「多孔性膜」でも水の電気分解が可能なため,本件特許権2の本件発明2-1,2-2,2-4の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえ,被告の主張するサポート要件違反の無効 理由は存しない。 (20) 争点4-3(無効理由3(実施可能要件違反)の有無)(被告の主張)本件特許2に関し,本件明細書2の記載に基づいて,「隔膜」として陽イオン交換膜を選択し(段落【0013】,【0036】,【0062】),「隔膜」と 電極に僅かな隙間を設けて水の電気分解を行おうとしても実施不能であるから(段落【0012】,【0033】,【0061】),その記載には,実施可能要件(特許法36条4項1号)違反がある。 すなわち,本件発明2の請求項1,2,4は,「隔膜」に限定がないから,多孔性膜や陽イオン交換膜等の他の膜を含むものである。本件明細書の段落 【0013】には,「本実施形態の隔膜25としては,筐体20の内部を陽極室21と陰極室22とに仕切ることができるものであればよい。特に限定されないが,例えば・・多孔性膜を例示することができる。また,より望ましい例として,・・水素イオンは透過させる一方で水酸イオンは透 室21と陰極室22とに仕切ることができるものであればよい。特に限定されないが,例えば・・多孔性膜を例示することができる。また,より望ましい例として,・・水素イオンは透過させる一方で水酸イオンは透過させない陽イオン交換膜を使用することができる。特に,・・ナフィオン膜(登録商標, デュ・ポン社製),などが挙げられる。」と記載され,段落【0036】,【0062】にも同様の記載がある。 また,発明の詳細な説明には,隔膜と電極との関係について,「筐体20の内部は,隔膜25により陽極室21と陰極室22とに仕切られている。また本実施形態の一対の電極23,24は,板状に形成され,いずれも隔膜25 に接触又は僅かな隙間(隔膜25から10mm以下,好ましくは・・・)を もって設けられている。なお,一対の電極23,24は,隔膜25に接触又は僅かな隙間をもって設けるほか,被電解水Wの電気分解が可能な限りにおいて,隔膜25から所定距離だけ離して設けてもよい。」(段落【0012】)との記載があり,段落【0033】,【0061】にも同様の記載がある。 上記記載からすると,陽極室と陰極室とに仕切られた隔膜を挟む一対の電 極,又は,陰極室の内部の電極は,隔膜と接触又は僅かの隙間をもって設けられ,又は,所定距離だけ離して設けられてもよいものであることが明らかである。 しかしながら,陽イオン交換膜,少なくともナフィオンを代表とする固体高分子の陽イオン交換膜にあっては,電解室の隔膜と電極とが離隔されると, その離隔距離が僅か(例えば0.5mm)であっても,被電解水の電気分解は起こり得ない。 以上のとおり,発明の詳細な説明の段落【0013】,【0036】,【0062】に基づき「隔膜」として陽イオン交換膜を選択し,段落【0012】 5mm)であっても,被電解水の電気分解は起こり得ない。 以上のとおり,発明の詳細な説明の段落【0013】,【0036】,【0062】に基づき「隔膜」として陽イオン交換膜を選択し,段落【0012】,【0033】,【0061】に基づき「隔膜」と電極に僅かな隙間を設けて水 の電気分解を行おうとしても実施不能であるから,当業者は,明細書及び図面に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識に基づいて,当業者が請求項1,2,4に係る発明(隔膜と少なくとも1の電極が離間した構成の発明)を実施しようとした場合に,どのように実施するか理解できないから,本件特許2の請求項1,2,4,6については,本件明細書2の 記載に関して,実施可能要件違反の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 被電解原水の電気分解における隔膜と陰極,陽極との位置関係について,本件特許権2の出願時の技術常識として,隔膜が陰極,陽極と離隔している 電解槽が開示されている(甲29,甲30,甲31)。 また,本件特許権2の請求項1,2,4の隔膜について,段落【0013】における陽イオン交換膜はあくまでも例示であり,隔膜がこれに限定解釈される理由はなく,請求項において,甲29のように隔膜を具体的に特定している訳でもない。 さらに,請求項における「隔膜」の解釈について,「『隔膜』には限定がな いから,多孔性膜や陽イオン交換膜など多く膜が含まれることになる」と,隔膜に多様な膜が含まれる解釈を被告自身が自認している。 加えて,被告は本件特許権1に関する記載ではあるが,被告第2準備書面29頁において,「乙第2号証には,・・・前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている電解槽 いる。 加えて,被告は本件特許権1に関する記載ではあるが,被告第2準備書面29頁において,「乙第2号証には,・・・前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている電解槽によって,・・・が記 載されている。」と認定しており,「電極板が隔膜に僅かな隙間を介して設けられている」ことを先行技術(出願時の技術常識)として自認している。 以上のとおり,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者が本件特許権2の本件発明2-1,2-2,2-4を実施できることは明らかであり,被告の主張する実施可能要件違反の無効理由は存しない。 (21) 争点4-4(本件特許2の無効理由4(法29条1項柱書違反)の有無)(被告の主張)本件特許2は,産業上利用することができる発明とはいえず,法29条1項柱書に違反する無効理由が存する。 すなわち,本件特許2の請求項4には,「筐体,前記筐体内に設けられて前 記筐体内の下側空間を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜,前記隔膜を挟んで前記陰極室と前記陽極室のそれぞれに設けられた少なくとも一対の電極,及び前記陰極室にて生成され前記筐体内の上側空間に溜まったガスを導出するガス出口を含む電解槽」と規定されている。したがって,下側空間の陰極室と陽極室で発生した水素ガスと 酸素ガスは上側空間で混合することになる。そして,もしこのように酸素ガ スと水素ガスが混合されると,水素爆発という結果ないし危険性がもたらされることは明らかである。水素爆発とは,水素ガスと酸素ガスが出会って,火気等の存在で激しい化学反応を引き起こすことをいうものであり,両者が混合されるとこの化学反応は必至である。 本件特許2の請求項4に係る発 明らかである。水素爆発とは,水素ガスと酸素ガスが出会って,火気等の存在で激しい化学反応を引き起こすことをいうものであり,両者が混合されるとこの化学反応は必至である。 本件特許2の請求項4に係る発明は,水素爆発を誘起させるものとなり, 安全性を無視した点で発明の解決すべき課題を反映した手段とはいえず,余りにも生体への危険性が高いことから,「清浄な混合ガスを生体へ供給することができる。」という発明の効果を奏しない。 また,発生した水素と酸素とを混合させて水素爆発を誘起させてしまうような発明は,人身に危害を招く可能性があることから産業上利用することが できない発明といえる。 (原告の主張)被告の主張は,争う。 本件発明2-4では,下側空間の陰極室と陽極室で発生した水素ガスと酸素ガスが,上側空間で混合する構成となっている。ここで,発生した水素ガ スと酸素ガスとを混合させて水素爆発を誘起するか否かは,水素ガス濃度が影響する。 本件特許権2の出願時において,被告も主張するように「水素ガスを扱う業界において,安全のために空気との混合割合を4vol%未満とすることは技術常識」である。 また,本件特許公報2の段落【0065】には,「ただし,陽極室21及び陰極室22(これらを併せて電解部26ともいう)に導入される被電解水Wは,筐体20の内部の全てを満たすのではなく,電解部26の上部に,陽極23の表面から生成した酸素ガスと,陰極24の表面から生成した水素ガスと,希釈ガス入口205から供給された希釈ガスとが好適に混合し得る程度 の空間S3が形成されるような量だけ導入される。」との記載がある。 以上から,当業者であれば,出願時の技術常識に照らし,発生した水素ガスと酸素ガスとを混合させて水素爆発 程度 の空間S3が形成されるような量だけ導入される。」との記載がある。 以上から,当業者であれば,出願時の技術常識に照らし,発生した水素ガスと酸素ガスとを混合させて水素爆発を誘起しないように,「清浄な混合ガスを生体へ供給」するように発明を実施することは明らかであって,被告の主張する法29条1項柱書に違反する無効理由は存しない。 (22) 争点4-5(本件特許2の無効理由5(新規性・進歩性欠如①)の有無) (被告の主張)ア本件特許1の実施例1の記載本件特許1の実施例1には,次の発明(引用発明1)が記載されている。 「筐体,前記筐体内に設けられ被電解原水が導入される電解室(本件発明2の「陰極室」),前記電解室(同「陰極室」)の内部と外部とを区画する 陽イオン交換膜(同「隔膜」),及び前記電解室(同「陰極室」)の内部及び外部のそれぞれに前記陽イオン交換膜(同「隔膜」)を挟んで設けられた少なくとも一対の白金電極(同「電極」),及び前記電解室(同「陰極室」)にて生成されたガスを導出するガス出口を含み,電解室(同「陰極室」の内部と外部の白金電極(同「電極」)が前記陽イオン交換膜(同「隔膜」)に 接触をもって設けられている電解槽と,前記一対の白金電極(同「電極」)に直流電圧を印加する電源と,前記電解室(同「陰極室」)に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出し,電解室内の白金電極(同「陰極」)に吹付ける希釈ガス供給器と,を備える生体用水素ガス供給装置。」 実施例1の装置では,被電解原水が導入された電解室(本件発明2の「陰極室」)内の陰極に対し希釈用ガス供給器から大気を送風しているから,実施例1の希釈用ガス供給器は,本件発明2の「陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐 原水が導入された電解室(本件発明2の「陰極室」)内の陰極に対し希釈用ガス供給器から大気を送風しているから,実施例1の希釈用ガス供給器は,本件発明2の「陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器」に相当するものであって,吐出した希釈用ガスを電解室内の白金電極(同「陰極」)に吹付ける希釈ガ ス供給装置である。 イ本件特許1の実施例2の記載本件特許1の実施例2には,次の発明(引用発明2)が記載されている。 「筐体,前記筐体内に設けられ被電解水が導入される電解室(本件発明2の「陰極室」)と被電解水が導入される側室(同「陽極室」)とに区画する陽イオン交換膜(同「隔膜」),前記陽イオン交換膜(同「隔膜」)を挟ん で前記電解室(同「陰極室」)と前記側室(同「陽極室」)のそれぞれに設けられた少なくとも一対の白金電極(同「電極」),及び前記電解室(同「陰極室」)にて生成されたガスを導出するガス出口を含む電解槽と,前記一対の白金電極(同「電極」)に直流電圧を印加する電源と,前記電解室(同「陰極室」)に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出 し,電解室内の白金電極(同「陰極」)に吹付ける希釈ガス供給器と,を備える生体用水素ガス供給装置。」実施例2の装置では,被電解原水が導入された電解室(本件発明2の「陰極室」)内の陰極に対し希釈用ガス供給器から大気を送風しているから,実施例2の希釈用ガス供給器は本件発明2の「陰極室に導入された被電解水 の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器」に相当するものであって,吐出した希釈用ガスを電解室内の白金電極(同「陰極」)に吹付ける希釈ガス供給装置である。 ウ本件発明2-1について本件発明2-1は,引用発明2と同一であり,引用 給器」に相当するものであって,吐出した希釈用ガスを電解室内の白金電極(同「陰極」)に吹付ける希釈ガス供給装置である。 ウ本件発明2-1について本件発明2-1は,引用発明2と同一であり,引用発明2は,電解室に 導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器を備えることから,本件発明2の効果と同一の効果を奏している。 したがって,本件発明2-1は,本件特許1に記載された発明(引用発明2)と同一であるから新規性がないか,少なくとも,本件特許1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,法29条 2項に規定する進歩性欠如の無効理由が存することとなる。 エ本件発明2-2について本件発明2-2は,引用発明1と同一であり,引用発明1は,電解室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器を備えることから,本件発明2の効果と同一の効果を奏している。 したがって,本件発明2-2は,本件特許1に記載された発明(引用発 明1)と同一であるから新規性がないか,少なくとも,本件特許1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,法29条2項に規定する進歩性欠如の無効理由が存することとなる。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。 本件特許公報2の段落【0003】~【0007】で,先行技術文献として本件特許公報1(甲2)を挙げ,従来技術では「大気などの希釈ガスを陰極又は陰極水面に送風する」ことのみが開示され,希釈ガスを陰極室の被電解水の中に吐出する構成は開示されていないため,本件特許権2の発明の効果である「清浄な混合ガスを生体に供給できない」ことが記載されている。 実施例1や実施例2では,電解室の内と外を左右に区画しており,希 出する構成は開示されていないため,本件特許権2の発明の効果である「清浄な混合ガスを生体に供給できない」ことが記載されている。 実施例1や実施例2では,電解室の内と外を左右に区画しており,希釈用ガスは被電解原水がない陰極に対して直接送風されており,被電解水の中には吐出されていない。陰極に希釈用ガスを直接送風することで,陰極水面近傍の水素ガス濃度を厳格にコントロールし,安全に使用することが出来る効果を達成している。 また,本件特許1には,「被電解水の中に希釈ガスを吐出する」との記載は一切なく,その効果の記載も一切ない。 よって,本件特許1には,「陰極室に導入された被電解水の中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器」の構成は開示されておらず,被告の主張する進歩性欠如の無効理由も存しないこととなる。 (23) 争点4-6(本件特許2の無効理由6(新規性・進歩性欠如②)の有無) (被告の主張)ア本件特許1の発明の詳細な説明の図1及び段落【0027】等の記載と技術常識に照らせば,本件特許1の生体用水素ガス供給装置について次のことがいえる。 (a)図1には,生体用水素ガス供給装置1の構成が開示されており,そこ には,生体用水素ガス供給装置1と,生体用水素ガス供給装置1内に設けられて同装置1内を被電解原水12が導入される電解室11と被電解原水が導入される側室16とに区画する隔膜13が設けられ,隔膜13を挟んで前記電解室11内に陽極電極板14,前記側室16内に陰極電極板15という一対の電極が設けられ,陰極電極板15を設けた側室 16で生成されたガスを導出する混合ガス導出口18を含む電解槽が開示されている。 (b)また,前記装置1は,前記一対の電極に直流電圧を印加する直流電源2と, 極板15を設けた側室 16で生成されたガスを導出する混合ガス導出口18を含む電解槽が開示されている。 (b)また,前記装置1は,前記一対の電極に直流電圧を印加する直流電源2と,(c)前記側室16に導入された被電解原水12の中に希釈用ガス導入口1 7から希釈ガスを吐出する希釈用ガス供給器3と,(d)を備える生体用水素ガス供給装置である。 イ上記アによれば,本件特許1には次の発明が記載されていると認められる。 (ア) 主引用発明1 (1A)生体用水素ガス供給装置1,同装置1内に設けられて同装置1内を被電解原水12が導入される側室16と被電解原水12が導入される電解室11とに区画する隔膜13,隔膜13を挟んで前記側室16と前記電解室11のそれぞれに設けられた陰極電極板15と陽極電極板14,及び前記側室16にて生成されたガスを導出す る混合ガス導出口18を含む電解槽と, (1B)前記一対の電極に直流電圧を印加する直流電源2と,(1C)前記側室16に導入された被電解原水12の中に希釈用ガス導入口17から希釈ガスを吐出する希釈用ガス供給器3と,(1D)を備える生体用水素ガス供給装置。 (イ) 主引用発明2 (1A)生体用水素ガス供給装置1,同装置1内に設けられ被電解原水12が導入される側室16,前記側室16の内部と外部とを区画する隔膜13,及び前記側室16の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜13を挟んで設けられた陰極電極板15と陽極電極板14,及び前記側室16にて生成されたガスを導出する混合ガス導出口18を 含み,前記側室16の外部の電極が隔膜13に接触して設けられている電解槽と,(1B)前記一対の電極に直流電圧を印加する直流 前記側室16にて生成されたガスを導出する混合ガス導出口18を 含み,前記側室16の外部の電極が隔膜13に接触して設けられている電解槽と,(1B)前記一対の電極に直流電圧を印加する直流電源2と,(1C)前記側室16に導入された被電解原水12の中に希釈用ガス導入口17から希釈ガスを吐出する希釈用ガス供給器3と, (1D)を備える生体用水素ガス供給装置。」ウ主引用発明1と本件発明2-1との対比主引用発明1は本件発明2-1と同一であり,また,主引用発明1は,側室16に導入された被電解原水12の中に希釈ガスを吐出する希釈用ガス供給器3を備えることから,本件発明2の効果と同一の効果を奏して いる。 したがって,本件発明2-1は,主引用発明1と同一であるから新規性がなく,法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。 エ主引用発明2と本件発明2-2との対比 主引用発明2は本件発明2-2と同一であり,また,主引用発明2は, 側室16に導入された被電解原水12の中に希釈ガスを吐出する希釈用ガス供給器3を備えることから,本件発明2の効果と同一の効果を奏している。 したがって,本件発明2-2は,主引用発明2と同一であるから新規性がなく,法29条1項3号の規定により特許を受けることができないもの である。 オ主引用発明1,2と本件発明2-6との対比前記のとおり,本件発明2-1は主引用発明1と同一であり,本件発明2-2は主引用発明2と同一であるから,本件発明2-6と主引用発明1又は2との相違点は,次のとおりである。 すなわち,主引用発明1又は2においては,希釈ガスを吐出する範囲について「陰極からの距離が不明」であるのに対 であるから,本件発明2-6と主引用発明1又は2との相違点は,次のとおりである。 すなわち,主引用発明1又は2においては,希釈ガスを吐出する範囲について「陰極からの距離が不明」であるのに対し,本件発明2-6では,「前記陰極から10mm以下の範囲」と限定している点である。 しかし,本件発明2-6の数値範囲に臨界的意義はなく,本件特許1には陰極ないし陰極近傍に希釈用ガスを送風することが記載され,しかも, 陰極で発生する水素ガス濃度を希釈するためには陰極に出来るだけ近い位置に送風することが当業者の技術常識であるから,主引用発明1,2から当業者が本件特許1の記載ないし技術常識に基づき上記相違点に係る構成を採用することは容易に想到できるものである。 以上のとおり,本件発明2-6は,主引用発明1,2から当業者が容易 に想到することができたものであり,法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (原告の主張)被告の上記主張は,争う。被告の主張する新規性違反,進歩性違反の無効理由は存しない。 (24) 争点(5)(原告の損害及び損害額) (原告の主張)原告には,被告による被告製品1,2の販売がなければ利益を得ることができたであろう事情が存在する。 そして,被告は,遅くとも,平成29年12月から現在に至るまで被告製品1を製造販売等し,その1個あたりの販売価格は41万円であり,その製 造販売数は本件訴訟提起までの約32か月間で少なくとも合計960個,その限界利益率は販売価格の50%と推認される。よって,被告は被告製品1の販売によって,1億9680万円(41万円(単価)×960個(販売数)×50%=1億9680万円)の利益を得たと認められ,同利益は,法102条2 価格の50%と推認される。よって,被告は被告製品1の販売によって,1億9680万円(41万円(単価)×960個(販売数)×50%=1億9680万円)の利益を得たと認められ,同利益は,法102条2項により原告の損害と認められる。 また,被告は,遅くとも,平成31年1月から現在に至るまで被告製品2を製造販売等し,その1個あたりの販売価格は14万円であり,また,その製造販売数は本件訴訟提起までの約5か月間で少なくとも合計250個,その限界利益率は販売価格の50%と推認される。よって,被告は被告製品2の販売によって,1750万円(14万円(単価)×250個(販売数)× 50%=1750万円)の利益を得たと認められ,同利益は,法102条2項により原告の損害と認められる。 したがって,上記1億9680万円と1750万円との合計2億1430万円が原告の損害となるが,本件訴訟では,被告製品1については,1億9680万円のうち,その1年分(平成29年12月1日から平成30年11 月30日まで)の販売数360個分の利益に相当する7380万円を請求し,被告製品2については,上記のとおり1750万円を請求することとする。 また,遅延損害金については,被告製品1についての損害金7380万円及び被告製品2についての1か月分(令和2年2月28日から同年3月31日まで)の販売数50個分の利益に相当する350万円の合計7730万円 に対する改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金を請求し,被告製品 2についての令和2年4月1日以降の販売利益1400万円に対する年3分の割合による遅延損害金を請求する。 (被告の主張)原告の上記主張は,争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書等の記載本件各特 の販売利益1400万円に対する年3分の割合による遅延損害金を請求する。 (被告の主張)原告の上記主張は,争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書等の記載本件各特許の特許請求の範囲の記載は,前記前提事実(3)のとおりであるところ,本件明細書1及び2の発明の詳細な説明には,次の記載がある。 (1) 本件明細書1の記載ア技術分野 【0001】本発明は,生体用水素ガス供給装置に関するものである。 イ背景技術【0002】生体用水素ガス供給装置として,水素ガス発生装置から鼻腔カニューラへ の導管の一部に空気混合器を取り付けることにより,供給する水素ガスの濃度を任意に設定することができる生体用水素ガス供給装置が知られている(特許文献1)。 ウ発明が解決しようとする課題【0004】 しかしながら,上記従来の生体用水素ガス供給装置では,鼻腔カニューラへの導管の一部に取り付けられた空気混合器内で水素ガスを混合するため,水素ガス発生装置から空気混合器に至る導管においては爆発限界を超える水素ガスを通過させており,医療の現場や家庭で,安全に使用することができなかった。 【0005】 本発明が解決しようとする課題は,健康上有益な水素ガスを医療の現場や家庭で安全に使用することができる生体用水素ガス供給装置を提供することである。 エ課題を解決するための手段【0006】 本発明は,水素ガスが発生する陰極表面もしくは陰極水面に希釈用ガスを吹き付けることにより,水素ガス発生の時点から生体に送り届けられるまでのあらゆる時点において,水素ガスを爆発限界外の濃度である4vol%未満に維持することができる生体用水素ガス供給装置を提供することを通じて, とにより,水素ガス発生の時点から生体に送り届けられるまでのあらゆる時点において,水素ガスを爆発限界外の濃度である4vol%未満に維持することができる生体用水素ガス供給装置を提供することを通じて,課題を解決する。 オ発明の効果【0007】本発明によれば,健康上有益な水素ガスを,医療の現場や家庭で安全に使用することができる。 カ図面の簡単な説明 【0008】【図1】(別紙図1(本件特許1)のとおり)本発明の一実施の形態に係る生体用水素ガス供給装置を示す図である。 キ発明を実施するための形態【0009】本発明の一実施の形態に係る生体用水素ガス供給装置1は,図1に示すよ うに,被電解原水12が導入される電解室11と,前記電解室11の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜13と,前記電解室11の内部及び外部のそれぞれに,前記隔膜13を挟んで設けられた少なくとも一対の電極板14,15と,を有し,前記電解室11の外部の電極板15が前記隔膜13に接触させて設けられている電解槽1と,前記電解槽1の電極板14,15に直流 電圧を印加する直流電源2と,陰極となる電極板14又は15から発生する 水素ガスを希釈するための希釈用ガス供給器3と,を備え,前記希釈用ガス供給器3から供給される希釈用ガスが前記陰極となる電極板14又は15の近傍に送風されることを通じて,電解時の前記陰極近傍の水素ガス濃度が常に4vol%未満に維持されることにより,爆発限界以下の,該水素ガスと該希釈用ガスを含む混合ガスを生体に供給することができる生体用水素ガス 供給装置として実施される。 【0011】ここで,被電解原水は,水の電気分解の過程を通じて陰極に水素ガスを発生させることができる水であり,水 ガスを生体に供給することができる生体用水素ガス 供給装置として実施される。 【0011】ここで,被電解原水は,水の電気分解の過程を通じて陰極に水素ガスを発生させることができる水であり,水道水,浄水,精製水,蒸留水などを含む。 被電解原水は,カルシウムイオンやマグネシウムイオンなど電解質を適宜含 有していてもよい。(以下,略。)【0012】なお,電解室11の内部の電極板14については,隔膜13に接触させて設けられていても,隔膜からわずかな隙間(隔膜から1センチメートル以下,好ましくは5ミリメートル以下,より好ましくは1ミリメートル以下,さら に好ましくは0.5ミリメートル以下)を空けて設けられていてもよい。 【0013】電極板14,15は,これに限るものではないが,例えば,チタン板を素材として,白金,イリジウム,パラジウムなどの群から選ばれる貴金属を被覆したものを用いることができる。 【0014】また,隔膜13には陽イオン交換膜を用いることが望ましく,(中略),電解質基としてスルホン酸基を備えた全フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。このような膜としては,スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録 商標,デュ・ポン社製),フレミオン膜(登録商標,旭硝子社製),アシプレ ックス膜(登録商標,旭化成社製)などが挙げられる。 【0017】被電解原水12を電解室11の内部に導入し,直流電源2より直流電圧を印加することで,被電解原水12は電気分解され,陰極に水素ガスが発生する。 【0018】まず,電解室11の内部の電極板14を陰極とし,電解室11の外部の電極板15を陽極とする場合,電気分解によって陰極 ,被電解原水12は電気分解され,陰極に水素ガスが発生する。 【0018】まず,電解室11の内部の電極板14を陰極とし,電解室11の外部の電極板15を陽極とする場合,電気分解によって陰極に発生した水素ガスは,電解室11内の水(陰極水)中を上昇しながら電解室11の内部のヘッドスペース部4(陰極水面上部の空間)に移行する。 【0019】次に,電解室11の内部の電極板14を陽極とし,電解室11の外部の電極板15を陰極とする場合,陰極は電解室11の外部にあるため,基本的には大気に開放された状態にある。この場合,むき出しにされた陰極近傍において,上記同様,局所的であれ,水素ガスの爆発濃度範囲である4vol% 以上,75vol%未満の濃度域が形成されている。(以下略)【0027】また,電解室11の内部の電極板14を陽極とし,電解室11の外部の電極板15を陰極とする電気分解にあっては,電解室11の外部の電極板15を側室16で囲むとともに,電解室11のほかこうした側室16にも被電解 原水を満たして電気分解することにより,混合ガスにおける水素ガス濃度を維持したまま被電解原水12の水温の上昇を抑えることができる。(中略)側室16は,被電解原水をそこに満たさない場合であっても,得られた混合ガスを外部の大気から区画する空間として使用することができる。 ク小括 以上によれば,本件明細書1記載の従来技術との比較から認定される本件 発明1の技術的思想は,生体用水素ガス供給装置において,水素ガス発生装置から空気混合器に至る導管において爆発限界を超える濃度の水素ガスを通過させることになり,医療の現場や家庭で,安全に使用することができないという技術的課題が生じていたため, において,水素ガス発生装置から空気混合器に至る導管において爆発限界を超える濃度の水素ガスを通過させることになり,医療の現場や家庭で,安全に使用することができないという技術的課題が生じていたため,これを解決するため,被電解原水が導入される電解室と,電解室の内部と外部とを区画する隔膜と,電解質の内部 及び外部のそれぞれに隔膜を挟んで設けられた一対の電極板を有する電解槽という構成の下で,希釈用ガスを陰極又は陰極水面に送風するなどの構成を採ることにより,水素ガスを爆発限界外の一定の濃度に維持することができるようにして,上記課題の解決を図ったところにあるものというべきである。 (2) 本件明細書2の記載(甲4) ア技術分野【0001】本発明は,生体用水素ガス供給に関するものである。 イ背景技術【0002】 生体内への水素ガス供給装置として,出願人は,電解槽と,電解槽内の一対の電極に直流電圧を印加する直流電源と,陰極となる電極から発生する水素ガスを希釈するための希釈用ガス供給器とを備え,希釈用ガス供給器から供給される希釈用ガスを陰極又は陰極水面に送風することにより,電解時の陰極又は陰極水面から7cm離れた位置の水素ガス濃度を常に4vol%未 満に維持し,水素ガス濃度が0.1~4vol%の混合ガスを生体に供給する生体用高濃度水素ガス供給装置を,先に提案した(特許文献1)。 ウ発明が解決しようとする課題【0004】しかしながら,上記従来技術では,大気などの希釈ガスを陰極又は陰極水 面に送風することにより水素ガスを希釈する構成であるため,生体に供給さ れる混合ガスに塵埃等が含まれている可能性がある。そのため,混合ガスの供給系統又は希釈ガスの供給系統に,塵埃等を除去する 風することにより水素ガスを希釈する構成であるため,生体に供給さ れる混合ガスに塵埃等が含まれている可能性がある。そのため,混合ガスの供給系統又は希釈ガスの供給系統に,塵埃等を除去するためのフィルタその他の濾過器を設ける必要があった。 【0005】本発明が解決しようとする課題は,清浄な混合ガスを生体へ供給できる生 体用水素ガス供給装置を提供することである。 エ課題を解決するための手段【0006】本発明は,希釈ガスを陰極室の被電解水の中に吐出することにより,上記課題を解決する。 オ発明の効果【0007】本発明によれば,希釈ガスに含まれる塵埃等の異物は陰極室の被電解液中で分離されるので,清浄な混合ガスを生体へ供給することができる。 カ図面の簡単な説明 【0008】【図1】本発明に係る生体用水素ガス供給装置の一実施の形態を示す全体構成図である。(別紙図1(本件特許2)のとおり)【図2A】本発明に係る生体用水素ガス供給装置の他の実施の形態を示す全体構成図である。(別紙図2Aのとおり) 【図2B】図2Aに示す実施形態の変形例を示す全体構成図である。(別紙図2Bのとおり)【図4】本発明に係る生体用水素ガス供給装置のさらに他の実施の形態を示す全体構成図である。(別紙図4のとおり)キ発明を実施するための形態 【0010】 <第1実施形態>図1は,本発明に係る生体用水素ガス供給装置1の一実施の形態を示す全体構成図である。本実施形態の生体用水素ガス供給装置1は,電解槽2と,一対の電極23,24に直流電圧を印加する電源3と,陰極室22に導入された被電解水Wの中に希釈ガスを吐出 1の一実施の形態を示す全体構成図である。本実施形態の生体用水素ガス供給装置1は,電解槽2と,一対の電極23,24に直流電圧を印加する電源3と,陰極室22に導入された被電解水Wの中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器4と,を備える。 【0011】電解槽2は,筐体20と,隔膜25と,一対の電極23,24と,ガス出口204とを含んで構成されている。隔膜25は,筐体20の内部に設けられて,筐体20の内部を,被電解水Wが導入される陰極室22と,被電解水Wが導入される陽極室21とに区画する。一対の電極23,24は,隔膜2 5を挟んで陰極室22と陽極室21のそれぞれに設けられている。ガス出口204は,陰極室22にて生成されたガスを導出する。筐体20は,(中略),被電解水入口201,ガス出口202,被電解水入口203,ガス出口204及び希釈ガス入口205を除き,水密及び気密の状態が維持されるように構成されている。なお,図示は省略するが,陽極室21及び陰極室22のそ れぞれの底部に,被電解水Wを廃棄するための排水口を設けてもよい。 【0012】筐体20の内部は,隔膜25により陽極室21と陰極室22とに仕切られている。また本実施形態の一対の電極23,24は,板状に形成され,いずれも隔膜25に接触又は僅かな隙間(隔膜25から10mm以下,好ましく は5mm以下,より好ましくは1mm以下,さらに好ましくは0.5mm以下)をもって設けられている。なお,一対の電極23,24は,隔膜25に接触又は僅かな隙間をもって設けるほか,被電解水Wの電気分解が可能な限りにおいて,隔膜25から所定距離だけ離して設けてもよい。そして,被電解水Wが導入される陽極室21に設けられた電極23には,直流電源3の正 極(+)が接続され,陰極室 水Wの電気分解が可能な限りにおいて,隔膜25から所定距離だけ離して設けてもよい。そして,被電解水Wが導入される陽極室21に設けられた電極23には,直流電源3の正 極(+)が接続され,陰極室22に設けられた電極24には直流電源の負極 (-)が接続されている。以下において,直流電源3の正極に接続された電極23を陽極23,直流電源3の負極に接続された電極24を陰極24とも称する。(以下,略。)【0013】本実施形態の隔膜25としては,筐体20の内部を陽極室21と陰極室2 2とに仕切ることができるものであればよい。(中略)また,より望ましい例として,水素イオンは透過させる一方で水酸イオンは透過させない陽イオン交換膜を使用することができる。(中略),電解質基としてスルホン酸基を備えた全フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。このような膜としては,スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレ ンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録商標,デュ・ポン社製),フレミオン膜(登録商標,旭硝子社製),アシプレックス膜(登録商標,旭化成社製)などが挙げられる。 【0016】本実施形態の生体用水素ガス供給装置1の電解槽2は,陽極室21及び陰 極室22の両室に被電解水Wを導入するものである。陽極室21に導入する被電解水Wは,筐体20の陽極室21の上面に設けられた被電解水入口201から投入される。また,陰極室22に導入する被電解水Wは,筐体20の陰極室22の上面に設けられた被電解水入口203から投入される。 【0017】 本実施形態の生体用水素ガス供給装置1に用いられる被電解水Wは,水の電気分解反応によって陰極24に水素ガスを生成させることがで 電解水入口203から投入される。 【0017】 本実施形態の生体用水素ガス供給装置1に用いられる被電解水Wは,水の電気分解反応によって陰極24に水素ガスを生成させることができる水であり,水道水,浄水,精製水,イオン交換水,RO水,蒸留水,純水,脱イオン水などが含まれる。(以下,略。)【0032】 <第2実施形態> 図2Aは,本発明に係る生体用水素ガス供給装置1の他の実施の形態を示す全体構成図である。本実施形態の生体用水素ガス供給装置1は,電解槽2と,一対の電極23,24に直流電圧を印加する電源3と,陰極室22に導入された被電解水Wの中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器4と,を備える。 【0033】電解槽2は,筐体20と,陰極室22と,隔膜25と,一対の電極23,24とを含んで構成されている。陰極室22は,筐体20の内部に設けられて,被電解原水Wが導入される。隔膜25は,陰極室22の内部と外部とを区画する。一対の電極23,24は,陰極室22の内部及び外部のそれぞれ に,隔膜25を挟んで設けられている。一対の電極23,24のうち少なくとも陰極室22の外部の電極23(以下,陽極23ともいう)は,隔膜25に接触又は僅かな隙間をもって設けられている。筐体20は,(中略),ガス出口202,被電解水入口203,ガス出口204及び希釈ガス入口205を除き,水密及び気密の状態が維持されるように構成されている。なお,図 示は省略するが,陽極室21及び陰極室22のそれぞれの底部に,被電解水Wを廃棄するための排水口を設けてもよい。 【0034】筐体20の内部は,隔膜25により陽極室21陰極室22とに仕切られている。ここで,本実施形態では,陰極室22には被電解水Wを導入 ,被電解水Wを廃棄するための排水口を設けてもよい。 【0034】筐体20の内部は,隔膜25により陽極室21陰極室22とに仕切られている。ここで,本実施形態では,陰極室22には被電解水Wを導入するが, 陽極室21には被電解水Wを導入しない構成とされている。したがって,図2Aに示すように,筐体20の内部を,被電解水Wを導入しない陽極室21(単なる空間)と,被電解水Wを導入する陰極室22とに区画する形態のほか,図2Bに示すように,筐体20の一方の側面(図2Bにおいて左側)に陽極23,隔膜25及び陰極24を配置し,これらの右側の空間を陰極室2 2とする構成でもよい。(中略)要するに,隔膜25は,筐体20の内部に形 成され,被電解水Wが導入される陰極室22の内部と外部とを区画し,陽極23は陰極室22の外部に設けられ,陰極24は陰極室22の内部に設けられる構成であればよい。 【0035】図2Aに戻り,一対の電極23,24は,板状に形成され,いずれも隔膜 25に接触又は僅かな隙間(隔膜25から10mm以下,好ましくは5mm以下,より好ましくは1mm以下,さらに好ましくは0.5mm以下)をもって設けられている。ただし,陰極室22に設けられる電極24(以下,陰極24ともいう)は,被電解水Wの電気分解が可能な限りにおいて,隔膜25から所定距離だけ離して設けてもよい。そして,被電解水Wが導入されな い陽極室21に設けられた電極23には,直流電源3の正極(+)が接続され,被電解水Wが導入される陰極室22に設けられた電極24には直流電源の負極(-)が接続されている。図2Aに示す例においては,陽極室21に陽極23が設けられ,陰極室22に陰極24が設けられている。 (以下,略。)【0036】 24には直流電源の負極(-)が接続されている。図2Aに示す例においては,陽極室21に陽極23が設けられ,陰極室22に陰極24が設けられている。 (以下,略。)【0036】 本実施形態の隔膜25としては,第1実施形態と同様に,筐体20の内部を陽極室21と陰極室22とに仕切ることができるものであればよい。特に限定されないが,例えば骨材がポリエステル不織布,膜材質がポリフッ化ビニリデンと酸化チタン,厚さが0.12mm,平均孔径が0.4μm,透水量が0.3cc/cm2・min以下の多孔性膜を例示することができる。 また,より望ましい例として,水素イオンは透過させる一方で水酸イオンは透過させない陽イオン交換膜を使用することができる。特に,(中略)電解質基としてスルホン酸基を備えた全フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。 このような膜としては,スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録商標, デュ・ポン社製),フレミオン膜(登録商標,旭硝子社製),アシプレックス 膜(登録商標,旭化成社製)などが挙げられる。 【0039】本実施形態の生体用水素ガス供給装置1の電解槽2は,陰極室22にのみ被電解水Wを導入するものである。陰極室22に導入する被電解水Wは,筐体20の陰極室22の上面に設けられた被電解水入口203から投入される。 【0059】<第4実施形態>図4は,本発明に係る生体用水素ガス供給装置1のさらに他の実施の形態を示す要部構成図である。本実施形態の生体用水素ガス供給装置1は,電解槽2と,一対の電極23,24に直流電圧を印加する電源3と,陰極室22 及び/又は陽極室21に導入された被電解水 実施の形態を示す要部構成図である。本実施形態の生体用水素ガス供給装置1は,電解槽2と,一対の電極23,24に直流電圧を印加する電源3と,陰極室22 及び/又は陽極室21に導入された被電解水Wの中に希釈ガスを吐出する希釈ガス供給器4と,を備える。 【0060】電解槽2は,筐体20と,隔膜25と,一対の電極23,24と,ガス出口204とを含んで構成されている。隔膜25は,筐体20内に設けられて, 筐体20の内部の下側空間を,被電解水Wが導入される陰極室22と被電解水Wが導入される陽極室21とに区画する。一対の電極23,24は,隔膜25を挟んで陰極室22と陽極室21のそれぞれに設けられている。ガス出口204は,陰極室22にて生成され筐体20の内部の上側空間S3に溜まったガスを導出する。筐体20は,(中略)・・・被電解水入口201,ガス 出口204及び希釈ガス入口205を除き,水密及び気密の状態が維持されるように構成されている。なお,図示は省略するが,電解部26の底部に,被電解水Wを廃棄するための排水口を設けてもよい。 【0061】筐体20の内部の下側空間は,隔膜25により陽極室21と陰極室22と に仕切られている。また本実施形態の一対の電極23,24は,板状に形成 され,いずれも隔膜25に接触又は僅かな隙間(隔膜25から10mm以下,好ましくは5mm以下,より好ましくは1mm以下,さらに好ましくは0. 5mm以下)をもって設けられている。なお,一対の電極23,24は,隔膜25に接触又は僅かな隙間をもって設けるほか,被電解水Wの電気分解が可能な限りにおいて,隔膜25から所定距離だけ離して設けてもよい。そし て,被電解水Wが導入される陽極室21に設けられた電極23には,直流電源3の正極(+) て設けるほか,被電解水Wの電気分解が可能な限りにおいて,隔膜25から所定距離だけ離して設けてもよい。そし て,被電解水Wが導入される陽極室21に設けられた電極23には,直流電源3の正極(+)が接続され,陰極室22に設けられた電極24には直流電源の負極(-)が接続されている。以下において,直流電源3の正極に接続された電極23を陽極23,直流電源3の負極に接続された電極24を陰極24とも称する。(以下,略。) 【0062】本実施形態の隔膜25としては,筐体20の内部を陽極室21と陰極室22とに仕切ることができるものであればよい。特に限定されないが,例えば骨材がポリエステル不織布,膜材質がポリフッ化ビニリデンと酸化チタン,厚さが0.12mm,平均孔径が0.4μm,透水量が0.3cc/cm2・ min以下の多孔性膜を例示することができる。また,より望ましい例として,水素イオンは透過させる一方で水酸イオンは透過させない陽イオン交換膜を使用することができる。特に,(中略)電解質基としてスルホン酸基を備えた全フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。このような膜としては,スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレ ンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録商標,デュ・ポン社製),フレミオン膜(登録商標,旭硝子社製),アシプレックス膜(登録商標,旭化成社製)などが挙げられる。 【0065】本実施形態の生体用水素ガス供給装置1の電解槽2は,陽極室21及び陰 極室22の両室に被電解水Wを導入するものである。陽極室21に導入する 被電解水W及び陰極室22に導入する被電解水Wは,筐体20の陽極室21の上面に設けられた被電解水入口201から投入される。ただし,陽 電解水Wを導入するものである。陽極室21に導入する 被電解水W及び陰極室22に導入する被電解水Wは,筐体20の陽極室21の上面に設けられた被電解水入口201から投入される。ただし,陽極室21及び陰極室22(これらを併せて電解部26ともいう)に導入される被電解水Wは,筐体20の内部の全てを満たすのではなく,電解部26の上部に,陽極23の表面から生成した酸素ガスと,陰極24の表面から生成した水素 ガスと,希釈ガス入口205から供給された希釈ガスとが好適に混合し得る程度の空間S3が形成されるような量だけ導入される。 ク以上によれば,本件明細書2記載の従来技術(本件発明1)との比較から認定される本件発明2の技術的思想は,次のようなところにあるものといえる。すなわち,前記本件発明1は,生体用水素ガス供給装置において,被電 解原水が導入される電解室と,電解質の内部と外部とを区画する隔膜と,電解室の内部及び外部のそれぞれに隔膜を挟んで設けられた一対の電極板を有する電解槽という構成の下で,希釈用ガスを陰極又は陰極水面に送風するという構成を採るものであったが,これによっても,生体に供給される混合ガスに塵埃等が含まれる可能性があるという技術的課題が生じていた。そこで, これを解決するため,希釈ガスを陰極室の被電解水の中に吐出することにより,希釈ガスに含まれる塵埃等の異物を被電解水中で分離させ,清浄な混合ガスを生体へ供給することができるようにして,上記課題の解決を図ったところにあるものというべきである。 以上を前提に,以下検討する。 2 争点1-1(被告製品1は,構成要件1Aを充足するか)について(1) 原告は,被告製品1において,本件発明1-1の構成要件1Aの「被電解原水が導入される電解室」に該当する 討する。 2 争点1-1(被告製品1は,構成要件1Aを充足するか)について(1) 原告は,被告製品1において,本件発明1-1の構成要件1Aの「被電解原水が導入される電解室」に該当するのは,内タンク6であって,被告製品1は,「電解室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜」及び「電解室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電 極板」の文言を満たしており,本件発明1-1の構成要件1Aを充足する旨 を主張する。 そこで検討するに,同構成要件1Aの「被電解原水が導入される電解室」は,これに続く,「前記電解室の内部と外部とを区画する隔膜」という文言にあるように,「隔膜」によりその内部と外部とが区画されるものであるところ,隔膜による区画については,前記のように,本件明細書1には,電解室の内 部に被電解原水が導入される旨の記載が存する一方,その外部(側室)については,被電解原水が存在する場合のほか,被電解原水が存在しない場合に関する複数の記載が存する(段落【0019】,【0027】,別紙図1(本件特許1),実施例1,3)。これに照らせば,隔膜による区画については,隔膜によって上記電解室の内部と外部とは完全に区画されているものという べきであって,電解室の内部と外部とは,水が連通することがない独立した構造となっているものというべきである。したがって,構成要件1Aの「被電解原水が導入される電解室」とは,電解室の内部と外部が別個の独立した状態となるべく,電解室の内部と外部とで水が連通しないように,隔膜によって,その内部と外部とが完全に区画されているものを指すと解するのが相 当である。 しかるに,前記前提事実のとおり,被告製品1は,外部から内タンク6へ注がれた水 しないように,隔膜によって,その内部と外部とが完全に区画されているものを指すと解するのが相 当である。 しかるに,前記前提事実のとおり,被告製品1は,外部から内タンク6へ注がれた水が,内タンク6底部の流出孔及び正方形穴4と高分子膜10の上面に接合した網目状の陰極電極板11との網目の隙間から外タンク2内に流出し,内タンク6と外タンク2で同一高さの水面となるものであり,内タ ンク6と外タンク2とで水が連通するものである。 したがって,被告製品1の内タンク6は,構成要件1Aの「被電解原水が導入される電解室」に該当するとは認められず,原告の上記主張は採用することができない。その他,被告製品1が,構成要件1Aを充足することを具体的に根拠付けるものはない。 (2) 以上によれば,被告製品1は,本件発明1-1の構成要件1Aを充足しな いものであって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1の技術的範囲に属するということができない。そして,本件発明1-2の構成要件2Aは,本件発明1-1を引用し,本件発明1-3の構成要件3A,本件発明1-4の構成要件4Aは,本件発明1-1,1-2を引用し,本件発明1-6の構成要件6Aは,本件発明1-4を引用し,本件発明1-7の 構成要件7Aは,本件発明1-1~1-6を引用し,本件発明1-10の構成要件10Aは,本件発明1-1~1-9を引用しているから,被告製品1は,これらの各発明の技術的範囲に属するということもできない。したがって,被告製品1は,本件特許1に係る特許権を侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許1に係る特許権に基づく各請求は,い ずれも理由がない。 3 争点2-1(被告製品2は,構成要件1Aを充足するか) に係る特許権を侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許1に係る特許権に基づく各請求は,い ずれも理由がない。 3 争点2-1(被告製品2は,構成要件1Aを充足するか)について(1) 原告は,被告製品2の隔膜及び仕切り板は,貯留空間をそれらよりも上方の空間であって内部電極板が設けられた陰極室と,下方の空間であって外部電極板が設けられた陽極室とに区画しているとし,被告製品2は,高分子膜 6が構成要件1Aの「隔膜」,高分子膜6及び底蓋12より上方の空間が「陰極室」,下方の空間で陽極電極板8が設けられた空間が「陽極室」に該当するから,本件発明2-1(請求項1)の構成要件1Aを充足する旨主張する。 そこで検討するに,同構成要件1Aをみると,「前記筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室と に区画する隔膜」との文言となっており,「被電解水が導入される陰極室」と「被電解水が導入される陽極室」とに「区画」されていると記載されている。 これに照らすと,本件発明2-1において,被電解水は,陰極室と陽極室のそれぞれに対して,別個に導入され,陰極室内の被電解水と陽極室内の被電解水とは連通しないものと解するのが文言上自然である。また,本件明細書 2を考慮しても,図2A及び図2Bをみると,隔膜で仕切られた一方にのみ 水が存在しており,また,段落【0016】及び図1をみると,本件発明2の陽極室と陰極室には,それぞれ別個の被電解水の入口が設けられている。 さらに,段落【0018】をみると,「電解槽2の陽極室21の上部には,ガス出口202が形成され,電解槽2の陰極室22の上部には,ガス出口204が形成されている。本例のガス出口202は,被電解水入口202(2 段落【0018】をみると,「電解槽2の陽極室21の上部には,ガス出口202が形成され,電解槽2の陰極室22の上部には,ガス出口204が形成されている。本例のガス出口202は,被電解水入口202(20 1の誤記)と共用され,ガス出口204は,被電解水入口203と共用されているが,これらを別々に設けてもよい。」と記載され,陽極室21に設けられる被電解水入口201とガス出口202は,1つの開口部で兼ねても(共用),別個のものであってもよいこと,及び,陰極室22に設けられる被電解水入口203とガス出口204も,1つの開口部で兼ねても(共用),別個の ものであってもよいことが明記される一方で,陽極室21の被電解水入口201と陰極室22の被電解水入口203については,1つの開口部で兼ねてもよい(共用してもよい)ことは記載も示唆もされていない。 これらによれば,構成要件1Aの「前記筐体内に設けられて前記筐体内を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔 膜」との文言は,陰極室内の被電解水と陽極室内の被電解水が連通しない状態となり,陰極室と陽極室とがそれぞれ,別個に,被電解水を導入するための被電解水入口を有するように,筐体内を陰極室と陽極室とに完全に区画する膜を指すと解するのが相当である。 しかるに,前記前提事実のとおり,被告製品2は,外部から筒部材3へ注 がれた水W(被電解水)が,底蓋12に設けられた11個の孔11等を通って底ケース4の上面に流出し,筒部材3と内壁16に囲まれた底ケース4の内部を水Wが満たし,底ケース4の内壁16に囲まれた上面に設置された直方体枠10の窓穴5に保持されたケーシング9(高分子膜6の上側に陰極電極板7,下側に陽極電極板8を接合した部材)は水Wの中に水没した状態 水Wが満たし,底ケース4の内壁16に囲まれた上面に設置された直方体枠10の窓穴5に保持されたケーシング9(高分子膜6の上側に陰極電極板7,下側に陽極電極板8を接合した部材)は水Wの中に水没した状態に なるものであって,ケーシング9の高分子膜6の上側空間と下側空間の両方 に水Wが導入されるものである。また,被告製品2では,被電解水を導入するための被電解水入口は,被告製品2全体で1つしかなく,また,高分子膜6の上側空間と下側空間とで水が連通しており,水が連通しないように,水導入空間を2つに区切る部材は存在しない。 したがって,被告製品2には,構成要件1Aの「隔膜」に相当する部材は 存在せず,また,構成要件1Aの「陰極室」及び「陽極室」に相当する空間も存在しないものというべきであり,原告の上記主張は採用することができない。その他,被告製品2が,構成要件1Aを充足することを具体的に根拠付けるものはない。 (2) 以上によれば,被告製品2は,本件発明2-1(請求項1)の構成要件1 Aを充足しないものであって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1の技術的範囲に属するということができず,被告製品2は,本件特許2-1に係る特許権を文言侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許2-1に係る特許権に基づく各請求は,いずれも理由がない。 4 争点2-3(被告製品2は,構成要件2Aを充足するか)について(1) 原告は,本件発明2-1(請求項1)と同様に,本件発明2-2(請求項2)でも陰極室と陽極室とで水が連通する構成も対象としているとの解釈を前提に,被告製品2が本件発明2-2の構成要件2Aを充足する旨を主張する。 そこで検討するに,本件発明2-2 項2)でも陰極室と陽極室とで水が連通する構成も対象としているとの解釈を前提に,被告製品2が本件発明2-2の構成要件2Aを充足する旨を主張する。 そこで検討するに,本件発明2-2の構成要件2Aをみると,「被電解原水が導入される陰極室」,「陰極室の内部と外部とを区画する隔膜」との文言となっており,陽極室という文言がないものの,本件発明2-1の構成要件1Aについての前記3の説示が,その内容に照らして本件発明2-2の構成要件2Aにも当てはまると考えられる上,本件明細書2を考慮しても,段落【0 034】をみると,「筐体20の内部は,隔膜25により陽極室21陰極室2 2とに仕切られている。ここで,本実施形態では,陰極室22には被電解水Wを導入するが,陽極室21には被電解水Wを導入しない構成とされている。 したがって,図2Aに示すように,筐体20の内部を,被電解水Wを導入しない陽極室21(単なる空間)と,被電解水Wを導入する陰極室22とに区画する形態のほか,図2Bに示すように,筐体20の一方の側面(図2Bに おいて左側)に陽極23,隔膜25及び陰極24を配置し,これらの右側の空間を陰極室22とする構成でもよい。」と記載されている。 これらによれば,構成要件2Aの「前記陰極室の内部と外部とを区画する隔膜」は,陰極室の内部と外部とで水が連通しないように,陰極室の内部と外部とを完全に区画するものを指すと解するのが相当である。 しかるに,被告製品2の構成は,前記3に説示したとおりであるから,被告製品2には,構成要件2Aの「隔膜」に相当する部材は存在せず,また,構成要件2Aの「陰極室」に相当する空間も存在しないものというべきであり,原告の上記主張は採用することができない。その他,被告製品2が 品2には,構成要件2Aの「隔膜」に相当する部材は存在せず,また,構成要件2Aの「陰極室」に相当する空間も存在しないものというべきであり,原告の上記主張は採用することができない。その他,被告製品2が,構成要件2Aを充足することを具体的に根拠付けるものはない。 (2) 以上によれば,被告製品2は,本件発明2-2(請求項2)の構成要件2Aを充足しないものであって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2の技術的範囲に属するということができず,被告製品2は,本件特許2-2に係る特許権を文言侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許2-2に係る特許権に基づく各請求は,いずれも理 由がない。 5 争点2-5(被告製品2は,構成要件4Aを充足するか)について(1) 原告は,本件発明2-1(請求項1)と同様に,本件発明2-4(請求項4)でも陰極室と陽極室とで水が連通する構成も対象としているとの解釈を前提に,被告製品2が本件発明2-4(請求項4)の構成要件4Aを充足す る旨を主張する。 そこで検討するに,本件発明2-4の構成要件4Aをみると,「前記筐体内に設けられて前記筐体内の下側空間を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」との文言となっており,本件発明2-1の構成要件1Aについての前記3の説示が,その内容に照らして本件発明2-4の構成要件4Aにも当てはまると考えられる上,本件明細書2を 考慮しても,段落【0065】及び図4をみると,筐体内の下側空間の陽極23・隔膜25・陰極24によって左右に区画された陽極室21と陰極室22は,そのそれぞれに対して,それぞれの室の上部から被電解水Wを入れるものと理解するのが自然である。 こ 筐体内の下側空間の陽極23・隔膜25・陰極24によって左右に区画された陽極室21と陰極室22は,そのそれぞれに対して,それぞれの室の上部から被電解水Wを入れるものと理解するのが自然である。 これらによれば,構成要件4Aの「前記筐体内に設けられて前記筐体内の 下側空間を被電解水が導入される陰極室と被電解水が導入される陽極室とに区画する隔膜」は,陰極室内の被電解水と陽極室内の被電解水が連通しない状態となり,陰極室と陽極室とがそれぞれ,別個に,被電解水が導入されるように,筐体内の下側空間を陰極室と陽極室とに完全に区画する膜を指すと解するのが相当である。 しかるに,被告製品2では,ケーシング9中の高分子膜6の上側空間(陰極電極板7側の空間)と下側空間(陽極電極板8側の空間)とで水が連通しており,高分子膜6の上側空間と下側空間は,それぞれ,別個に,被電解水が導入されるものではない。また,被告製品2には,水が連通しないように,水導入空間を2つに区切る部材は存在しない。 したがって,被告製品2には,構成要件4Aの「隔膜」に相当する部材は存在せず,また,構成要件4Aの「陰極室」及び「陽極室」に相当する空間も存在しないものというべきであり,原告の上記主張は採用することができない。その他,被告製品2が,構成要件4Aを充足することを具体的に根拠付けるものはない。 (2) 以上によれば,被告製品2は,本件発明2-4(請求項4)の構成要件4 Aを充足しないものであって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-4の技術的範囲に属するということができず,被告製品2は,本件特許2-4に係る特許権を文言侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許2-4に係る特許権に基づく各請求は,い 発明2-4の技術的範囲に属するということができず,被告製品2は,本件特許2-4に係る特許権を文言侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許2-4に係る特許権に基づく各請求は,いずれも理由がない。 6 前記3ないし5のとおり,被告製品2は,本件発明2-1の構成要件1A,本件発明2-2の構成要件2A及び本件発明2-4の構成要件4Aを充足しないものであり,本件発明2-1,2-2,2-4の各技術的範囲のいずれにも属さないものであるところ,本件発明2-6の構成要件6Bは,本件発明2-1,2-2を引用しているから,被告製品2は,本件発明2-6の技術的範囲 にも属するとはいえない。 したがって,被告製品2は,本件特許2に係る特許権を侵害しているものとはいえないから,原告の被告に対する本件特許2に係る特許権に関する請求はいずれも理由がない。 したがって,原告の請求は既にいずれも理由がないものであるが,事案に鑑 み,念のため,続いて争点3-1(本件特許1の実施可能要件違反①の有無),争点3-3(本件特許1の実施可能要件違反②の有無)及び争点4-3(本件特許2の実施可能要件違反の有無)についても判断する。 7 争点3-1(本件特許1の実施可能要件違反①の有無)について(1) 被告は,本件特許1に関し,本件明細書1には,電極板15(陽極)の周 囲に被電解水が存在しない場合でも電気分解が生じる旨の説明が記載されており(段落【0017】,【0018】),その記載には,実施可能要件(特許法36条4項1号)違反がある旨主張する。 そこで検討するに,まず,本件特許1の請求項1においては,「電解室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極 板と,を有し,」と 項1号)違反がある旨主張する。 そこで検討するに,まず,本件特許1の請求項1においては,「電解室の内部及び外部のそれぞれに前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極 板と,を有し,」とあるように,文言上,陽極側に被電解水が存在しない構成 を含むものとなっており,同請求項2,3,4,7及び10はいずれも請求項1の当該構成を引用するものである(請求項3においては,被電解原水が導入される電解室内部の電極板を陰極,電解室外部の電極板を陽極とするとされているから,文言上,陽極側に被電解水が存在しない構成を含むものとなっていることが一層明らかである。)。 しかして,このように陽極側に被電解水が存在しない構成(請求項1,2,3,4,7及び10)について,当業者がその実施をすることができる程度の明確かつ十分な記載があるかどうか(特許法36条4項1号)についてみるに,本件明細書1の段落【0014】には,「隔膜13には陽イオン交換膜を用いることが望ましく,(中略),電解質基としてスルホン酸基を備えた全 フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。このような膜としては,スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録商標,デュ・ポン社製),フレミオン膜(登録商標,旭硝子社製),アシプレックス膜(登録商標,旭化成社製)などが挙げられる。」と記載されているから,ここに生体用水素ガス供給装置の隔 膜の具体例として挙げられているものは,陽イオン交換膜であり,固体高分子水電解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることが認められる。加えて,被電解原水の具体例が,水道水,浄水,精製水,蒸留水などと記載されていること(段落【0011】)を併せ 解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることが認められる。加えて,被電解原水の具体例が,水道水,浄水,精製水,蒸留水などと記載されていること(段落【0011】)を併せると,本件明細書1には,固体高分子水電解の装置が記載されているものと認めら れる。 しかして,固体高分子水電解の原理として,被電解原水が導入される電解室内部の電極板を陰極とする場合には,外部の電極板(陽極)も被電解原水で満たす必要があり,陽極側に被電解原水が存在しない場合には電気分解は生じ得ないことが認められるところ(乙8,13,14,弁論の全趣旨),本 件明細書1には,電解室の内部の電極板を陰極とし,外部の電極板を陽極と する場合に,電解室の内部に被電解原水を導入して直流電圧を印加することで,被電解原水が電気分解され,陰極に水素ガスが発生する旨が記載されており(段落【0017】,【0018】),上記に照らし,このような事象を起こすことは,固体高分子水電解の原理上,技術的に不可能である。そうすると,本件明細書1には,陽極側に被電解水が存在しない構成について,水の 電気分解が生じ得ない記載がされているといわざるを得ない。その他,本件明細書1の記載を精査しても,これを左右するに足りるものはない。 そうすると,本件明細書1には,固体高分子水電解を用いて水の電気分解を生じさせ得ない具体的記載がされているといわざるを得ず,このような記載を含む本件明細書1の発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者におい て,過度の試行錯誤を要することなく,水の電気分解を生じさせる本件発明1-1,1-2,1-3,1-4,1-7及び1-10の装置に係る特許を実施することはできないというべきである。 (2) したがって,本 試行錯誤を要することなく,水の電気分解を生じさせる本件発明1-1,1-2,1-3,1-4,1-7及び1-10の装置に係る特許を実施することはできないというべきである。 (2) したがって,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず, 本件特許1の請求項1,2,3,4,7及び10は,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさない無効理由(同法123条1項4号)があるといわざるを得ないものであって,この点からしても,原告は,被告に対し,本件特許1の請求項1,2,3,4,7及び10に係る特許権を行使することができないことに帰する(同法104条の3第1項)。 (3) 原告は,①被電解原水が陽極と陰極とに供給されない場合は,電気分解が行われないことは出願当時の技術常識である,②段落【0014】の隔膜の記載について,陽イオン交換膜はあくまでも例示であり,隔膜がこれに限定解釈される理由はない,③陽イオン交換膜たるナフィオン膜は親水性であり,電気分解を行っているときには水の輸送が可能であるため,陰極と陽極に継 続して電気を通すことにより陽極にも追加の被電解原水が供給され,電気分 解による水素ガスの発生が継続する(甲28・実験成績証明書2),などと主張する。 しかし,①前記説示のとおり,本件発明1の各請求項は,いずれも,文言上,陽極側に被電解水が存在しない構成を含むものとなっているのであって,仮に原告が指摘するような技術常識が存するとしても,これを左右するもの ではない。また,②本件明細書1の段落【0014】に,固体高分子水電解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることに変わりはない以上,仮に隔 も,これを左右するもの ではない。また,②本件明細書1の段落【0014】に,固体高分子水電解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることに変わりはない以上,仮に隔膜の記載についての原告の上記指摘を前提としても,本件明細書1に,陽極側に被電解水が存在しない構成について,水の電気分解が生じ得ない記載がされていることを左右するものではない。 さらに,③原告が指摘する,発明の詳細な説明の「陽イオン交換膜にも水を湿潤させた」という記載及び甲28(実験成績証明書2)をもっても,前記説示の固体高分子水電解の原理(陽極側に被電解水が存在しない構成について,水の電気分解が生じ得ないこと)を左右するものではなく,乙20(実験報告書(3))に照らしても,ナフィオン膜について,原告の上記指摘のよ うな理由があるため陽極側に被電解水が存在しない構成であっても水の電気分解が生じ得ることを認めるには足りないというべきである。 以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 8 争点3-3(本件特許1の実施可能要件違反②の有無)について(1) 被告は,本件特許1に関し,本件明細書1の記載に基づいて,「隔膜」とし て陽イオン交換膜を選択し(段落【0014】),「隔膜」と電極(電解室の内部の電極板)に僅かな隙間を設けて(段落【0012】),水の電気分解を行おうとしても実施不能であるから,その記載には,実施可能要件(特許法36条4項1号)違反がある旨主張する。 そこで検討するに,まず,本件特許1の請求項1においては,被電解原水 が導入される電解室の内部及び外部のそれぞれに,隔膜を挟んで一対の電極 板が設けられ,前記電解室の外部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられて の請求項1においては,被電解原水 が導入される電解室の内部及び外部のそれぞれに,隔膜を挟んで一対の電極 板が設けられ,前記電解室の外部の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている旨が記載され,文言上,電解室の内部の電極板が隔膜に接触していない構成を含むものとなっており,同請求項3,4,6,7及び10はいずれも請求項1の当該構成を引用するものである。 しかして,このように電解室の内部の電極板が隔膜に接触していない構成 について,当業者がその実施をすることができる程度の明確かつ十分な記載があるかどうか(特許法36条4項1号)についてみるに,前記7(1)のとおり,本件明細書1には,固体高分子水電解の装置が記載されているものと認められる。 しかして,固体高分子水電解の原理として,水の電気分解が生ずるために は,一対の電極の両方が隔膜に接触させて設けられていることが必要であると認められ,少なくとも一方の電極が隔膜から離隔していると,水の電気分解は生じ得ないことが認められるところ(乙9,13,14,弁論の全趣旨),本件明細書1には,電解室の内部の電極板については,隔膜からわずかな隙間を空けて設けられていてもよいと記載され,好ましい隙間の数値範囲まで 具体的に記載されており(段落【0012】),上記に照らし,このような事象を起こすことは,固体高分子水電解の原理上,技術的に不可能である。そうすると,本件明細書1には,電解室の内部の電極板が隔膜に接触していない構成について,水の電気分解が生じ得ない記載がされているといわざるを得ない。その他,本件明細書1の記載を精査しても,これを左右するに足り るものはない。 そうすると,本件明細書1には,固体高分子水電解を用いて水の電気分解を生じさせ得ない具体的 るを得ない。その他,本件明細書1の記載を精査しても,これを左右するに足り るものはない。 そうすると,本件明細書1には,固体高分子水電解を用いて水の電気分解を生じさせ得ない具体的記載がされているといわざるを得ず,このような記載を含む本件明細書1の発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者において,過度の試行錯誤を要することなく,水の電気分解を生じさせる本件発明 1-1,1-3,1-4,1-6,1-7及び1-10の装置に係る特許を 実施することはできないというべきである。 (2) したがって,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず,本件特許1の請求項1,3,4,6,7及び10は,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさない無効理由(同法123条1項4号)があるとい わざるを得ないものであって,この点からしても,原告は,被告に対し,本件特許1の請求項1,3,4,6,7及び10に係る特許権を行使することができないことに帰する(同法104条の3第1項)。 (3) 原告は,出願時の技術常識として,甲29(特開2007-284730号公報),甲30(特開2009-41086号公報)及び甲31(「機能水 を用いた洗浄技術」と題する論文)に,隔膜が陰極,陽極と離隔している電解槽が開示されている旨を主張する。 しかし,上記甲29ないし31で開示されている電解槽は,その内容からみて,いずれもアルカリ水電解又は電解イオン水の製造に係る電解槽であるものと認められ,固体高分子水電解に係る電解槽であるものとは認められな いから,原告の上記主張は,そもそもその前提を欠くものである。 また,原告は,本件明細書1 の製造に係る電解槽であるものと認められ,固体高分子水電解に係る電解槽であるものとは認められな いから,原告の上記主張は,そもそもその前提を欠くものである。 また,原告は,本件明細書1の段落【0014】の隔膜の記載について,陽イオン交換膜はあくまで例示であり,隔膜がこれに限定解釈される理由はないなどと主張する。 しかし,本件明細書1の段落【0014】に,固体高分子水電解(乙8, 13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることに変わりはない以上,仮に隔膜の記載についての原告の上記指摘を前提としても,本件明細書1に,固体高分子水電解の装置が記載されており,電解室の内部の電極板が隔膜に接触していない構成について,水の電気分解が生じ得ない記載がされていることを左右するものではない。 以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 9 争点4-3(本件特許2の実施可能要件違反の有無)について(1) 被告は,本件特許2に関し,本件明細書2の記載に基づいて,「隔膜」として陽イオン交換膜を選択し(段落【0013】,【0036】,【0062】),「隔膜」と電極に僅かな隙間を設けて(段落【0012】,【0033】,【0061】),水の電気分解を行おうとしても実施不能であるから,その記載に は,実施可能要件(特許法36条4項1号)違反がある旨主張する。 そこで検討するに,まず,本件特許2の請求項2においては,被電解原水が導入される陰極室の内部及び外部のそれぞれに,隔膜を挟んで一対の電極が設けられ,少なくとも前記陰極室の外部の電極が前記隔膜に接触又は隙間をもって設けられている旨が記載され,文言上,陰極室の外部の電極が隔膜 に接触していない構成を含 に,隔膜を挟んで一対の電極が設けられ,少なくとも前記陰極室の外部の電極が前記隔膜に接触又は隙間をもって設けられている旨が記載され,文言上,陰極室の外部の電極が隔膜 に接触していない構成を含むものとなっており,請求項1及び4においても,文言上,このような構成を排除しておらず含んでおり,請求項6は請求項1又は2を引用するものである。 しかして,このように陰極室の外部の電極が隔膜に接触していない構成について,当業者がその実施をすることができる程度の明確かつ十分な記載が あるかどうか(特許法36条4項1号)についてみるに,本件明細書2の段落【0013】には,「本実施形態の隔膜25としては,筐体20の内部を陽極室21と陰極室22とに仕切ることができるものであればよい。(中略)また,より望ましい例として,水素イオンは透過させる一方で水酸イオンは透過させない陽イオン交換膜を使用することができる。(中略),電解質基とし てスルホン酸基を備えた全フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。このような膜としては,スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録商標,デュ・ポン社製),フレミオン膜(登録商標,旭硝子社製),アシプレックス膜(登録商標,旭化成社製)などが挙げられる。」と記載されているから,ここに生 体用水素ガス供給装置の隔膜の具体例として挙げられているものは,陽イオ ン交換膜であり,固体高分子水電解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることが認められる(段落【0036】,【0062】も参照)。加えて,被電解水の具体例が,水道水,浄水,精製水,蒸留水などと記載されていること(段落【0017】。段落【0040】,【00 載されていることが認められる(段落【0036】,【0062】も参照)。加えて,被電解水の具体例が,水道水,浄水,精製水,蒸留水などと記載されていること(段落【0017】。段落【0040】,【0066】にも同旨の記載がある。)を併せると,本件明細書2には,固体高分子 水電解の装置が記載されているものと認められる。 しかして,固体高分子水電解の原理として,水の電気分解が生ずるためには,一対の電極の両方が隔膜に接触させて設けられていることが必要であると認められ,少なくとも一方の電極が隔膜から離隔していると,水の電気分解は生じ得ないことが認められるところ(乙9,13,14,弁論の全趣旨), 本件明細書2には,一対の電極は,いずれも隔膜に接触又は僅かな隙間をもって設けられており,被電解水の電気分解が可能な限りにおいて,隔膜から所定距離だけ離して設けてもよいと記載され,好ましい隙間の数値範囲まで具体的に記載されており(段落【0012】,【0035】,【0061】),上記に照らし,このような事象を起こすことは,固体高分子水電解の原理上, 技術的に不可能である。そうすると,本件明細書2には,陰極室の外部の電極が隔膜に接触していない構成について,水の電気分解が生じ得ない記載がされているといわざるを得ない。その他,本件明細書2の記載を精査しても,これを左右するに足りるものはない。 そうすると,本件明細書2には,固体高分子水電解を用いて水の電気分解 を生じさせ得ない具体的記載がされているといわざるを得ず,このような記載を含む本件明細書2の発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者において,過度の試行錯誤を要することなく,水の電気分解を生じさせる本件発明2の装置に係る特許を実施することはできないというべきである。 (2) 明細書2の発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者において,過度の試行錯誤を要することなく,水の電気分解を生じさせる本件発明2の装置に係る特許を実施することはできないというべきである。 (2) したがって,本件明細書2の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実 施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず, 本件特許2は,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさない無効理由(同法123条1項4号)があるといわざるを得ないものであって,この点からしても,原告は,被告に対し,本件特許2に係る特許権を行使することができないことに帰する(同法104条の3第1項)。 (3) 原告は,出願時の技術常識として,甲29(特開2007-284730 号公報),甲30(特開2009-41086号公報)及び甲31(「機能水を用いた洗浄技術」と題する論文)に,隔膜が陰極,陽極と離隔している電解槽が開示されている旨を主張する。 しかし,上記甲29ないし31で開示されている電解槽は,その内容からみて,いずれもアルカリ水電解又は電解イオン水の製造に係る電解槽である ものと認められ,固体高分子水電解に係る電解槽であるものとは認められないから,原告の上記主張は,そもそもその前提を欠くものである。 また,原告は,本件明細書2の段落【0013】等の隔膜の記載について,陽イオン交換膜はあくまで例示であり,隔膜がこれに限定解釈される理由はないなどと主張する。 しかし,本件明細書2の段落【0013】等に,固体高分子水電解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることに変わりはない以上,仮に隔膜の記載についての原告の上記指摘を前提としても,本件明細書2に,固体高分 固体高分子水電解(乙8,13,14,弁論の全趣旨)の電解質膜の典型例が記載されていることに変わりはない以上,仮に隔膜の記載についての原告の上記指摘を前提としても,本件明細書2に,固体高分子水電解の装置が記載されており,陰極室の外部の電極が隔膜に接触していない構成について,水の電気分解が生じ得ない記載がされていることを左右するものではない。以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 田中孝一 裁判官 小口五大 裁判官 稲垣雄大 (別紙)被告製品目録1 製品名 VitalShare 型式 AWH008 以上 (別紙)被告製品目録2 製品名 MyShinTouSui-Jet 型式 AWH003-S 以上 (別紙)被告製品1の構成 1.図面の簡単な説明 第1図 被告製品1全体を示す斜視図 第2図 被告製品1の断面斜視図 第3図 被告製品1の下部を示す断面斜視図 第4図 電解槽1を示す断面斜視図 第5図 内タンク5の底部を示す断面斜視図 第6図 電解槽1の断面概略図 被告製品1の断面斜視図第3図被告製品1の下部を示す断面斜視図第4図電解槽1を示す断面斜視図第5図内タンク5の底部を示す断面斜視図第6図電解槽1の断面概略図 第7図ケーシング13の平面図及び正面図 2.構成の説明a. 筐体内に設けられ,水Wが導入される底板を有する外タンク2と,外タンク2内に底部に水Wの流出孔3と4カ所の正方形穴4,4,4,4と各穴4の下 部に突出した枠体5,5,5,5を有する内タンク6を設け,内タンク6上部に被せる吸引補助管7,7付きのキャップ8を備えた電解槽1であり,b. 前記内タンク6には,その中央に多数の孔を開けた水滴防止中蓋9を設け,底部の4箇所の正方形穴4,4,4,4の外面に外部からケーシング13(高分子膜10の上側に網目状の陰極電極板11,下側に網目状の陽極電極板12 をそれぞれ接合した部材)を保持し,c. 各ケーシング13の陰極電極板11と陽極電極板12に直流電圧を印加する直流電源14と,d. 陰極電極板11から発生する水素ガスを吸引補助管7,7に速やかに到達させるとともに,水素ガスを希釈するための空気供給器15と,を備え, e. 使用者が内タンク6に注入した水Wは, ・内タンク6底部の流出孔3・正方形穴4,4,4,4と高分子膜10の上面に接合した網目状の陰極電極板11との網目の隙間から外タンク2内に流出し,内タンク6と外タンク2で同一高さの水面となり,当該水面は水の電気分解の時間経過に伴い下降し, f. 空気供給器15から供給される空気を水滴防止中蓋9の下面に設けた空気排出口16から送風し,吸引補助管7,7の先端入口から水素ガスと空気の混合ガスを排出し,他方で,陽極電極板12で発生した酸素ガ . 空気供給器15から供給される空気を水滴防止中蓋9の下面に設けた空気排出口16から送風し,吸引補助管7,7の先端入口から水素ガスと空気の混合ガスを排出し,他方で,陽極電極板12で発生した酸素ガスを枠体5から内タンク6と外タンク2の隙間内の水W内を通って外部に排出し,g. 前記eの水面は,水1.2L程度注ぎ入れた位置(陰極から水面までの距離 は約6cm前後)になり,水面は電気分解の時間経過に伴い下降するが,陰極から水面までの距離は大きくは変化しない,h. 水素ガスと空気を含む混合ガスを生体に供給する生体用水素ガス供給装置。 3.符号の説明 1 電解槽 2 外タンク 3 流出孔 4 正方形穴 5 枠体 6 内タンク 7 吸引補助管 8 キャップ 9 水滴防止中蓋 10 高分子膜 11 陰極電極板 12 陽極電極板 13 ケーシング 14 直流電源 15 空気供給器 W 水

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