平成26(行ウ)9 生存権を守るための行政処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年2月22日 津地方裁判所
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判決文本文50,242 文字)

主文 1 甲事件の原告③の訴えは令和4年6月19日の同原告の死亡により、原告④の訴えは同年1月日時不詳の同原告の死亡により、原告⑲の訴えは令和5年4月15日の同原告の死亡により、いずれも終了した。 2 甲事件の原告⑧及び原告⑳の訴えをいずれも却下する。 3 甲事件の第1項及び第2項の原告らに関する部分を除き、別紙2-1(処分一覧表1)の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各日付けでした各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 4 乙事件の別紙2-2(処分一覧表2)の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁 が「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各日付けでした各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 5 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 甲事件別紙2-1(処分一覧表1)の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各日付けでした各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 2 乙事件 主文第4項と同旨第2 事案の概要等(以下、略称は別紙3(略称・定義一覧)による。) 1 本件訴訟は、三重県内において生活保護を受けていた原告らが、保護基準を改定する本件改定に基づき生活扶助を減額する本件各決定を受けたことから、本件改定は憲法25条、法8条に違反する違憲、違法なものであり、これに基づく本 件各決定も違法であるなどとして、被告らに対し、それぞれ本件各決定の取消し を求める行政訴訟である。 2 関係法令等の定め別紙4(関係法令等の定め)のとおりである。 3 前提事実(争いのない事実のほか、顕著な事実並びに各項掲記 それぞれ本件各決定の取消し を求める行政訴訟である。 2 関係法令等の定め別紙4(関係法令等の定め)のとおりである。 3 前提事実(争いのない事実のほか、顕著な事実並びに各項掲記の証拠(書証の枝番については適宜省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 原告らはいずれも、本件各決定の時点において、三重県の被告ら各市内に居住し、それぞれ居住地の被告から生活扶助の支給を受けていた。(弁論の全趣旨) 生活扶助基準の改定方式の変遷(乙8の2、乙9、11、弁論の全趣旨)ア生活扶助基準の改定方式としては、別紙図1の「生活扶助基準改定率等の 年次推移」(乙11)のとおり、昭和23年以降はマーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が、昭和36年以降はエンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この 飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)が、昭和40年以降は格差縮小方式(政府経済見通しにおける個人消費の伸び率に格差縮小分を上乗せし、一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との格差を縮小させようとする方式)が、それぞれ採用されてきた。 イ厚生省(当時)の中央社会福祉審議会は、昭和58年12月23日、厚生大臣に対する昭和58年意見具申を取りまとめ、その中で生活扶助基準の在り方等についても意見を述べた。 昭和58年意見具申の概要は、次のとおりである。(乙9) 生活扶 月23日、厚生大臣に対する昭和58年意見具申を取りまとめ、その中で生活扶助基準の在り方等についても意見を述べた。 昭和58年意見具申の概要は、次のとおりである。(乙9) 生活扶助基準の評価 現在の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準 に達しているとの所見を得た。しかしながら、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるので、生活保護世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 生活扶助基準改定方式 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向をふまえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整がはかられるよう適切な措置をとることが必要である。 また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。 なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。 ウ厚生大臣は、昭和58年意見具申を受け、昭和59年度から、上記アの格 差縮小方式に代えて、上記「当該年度に想定される一般国民の消費動向をふまえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整がはかられる」方式、すなわち水準均衡方式を採用し、以後これを続けてきた。 エそして、昭和59年度以降の生活扶助は、別紙図1の「生活扶助基準改定率等の年次推移」記載のとおり、生活扶助の標準世 調整がはかられる」方式、すなわち水準均衡方式を採用し、以後これを続けてきた。 エそして、昭和59年度以降の生活扶助は、別紙図1の「生活扶助基準改定率等の年次推移」記載のとおり、生活扶助の標準世帯基準額は、平成12年 度までは毎年増額改定が行われていた。その後、平成13年度及び平成14年度については前年度のまま据え置くこととし、平成15年度及び平成16年度においては年金等に合わせて若干減額する(それぞれ前年度の99. 1%、99.8%)という改定を行った。さらにその後は、平成17年度から平成25年度までそれぞれ前年度のまま据え置かれた。この理由は、平成 17年度から平成19年度までについては民間最終消費支出の伸び率を基 礎とした一般国民の消費水準との調整を行った結果により、平成20年度については原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、平成21年度以降については世界的な金融危機等のその時々の経済・雇用情勢等を総合的に勘案した結果とされている(乙11、76~83、弁論の全趣旨)。 近年における生活扶助基準の検証の経緯等 生活扶助基準に関する平成25年報告書までの検証の経緯等は、以下のとおりである。 ア平成16年検証(甲3、乙5、弁論の全趣旨)厚生労働省の社会保障審議会が設置した専門委員会は、平成16年検証を行い、平成16年報告書を取りまとめた。 平成16年報告書の概要は、次のとおりである。 生活扶助基準の評価・検証等水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世 帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か 助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世 帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。 また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当 である。 現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算 する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得 世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため、特に多人数世帯基準の是正、単身世帯基準の設定及び第1類費の年齢別設定の見直しの点について改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 級地 現行級地制度については昭和62年度から最大格差22.5%、6区分制とされているが、現在の一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められたところである。このため、市町村合併の動向にも配慮しつつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 その他上記で述べた定期的な評価を次回行う際には、今回行われた基準の見直しに係る事項についても評価の対象とし、専門家による委員会等において詳細な分析や検証を行い、被 その他上記で述べた定期的な評価を次回行う際には、今回行われた基準の見直しに係る事項についても評価の対象とし、専門家による委員会等において詳細な分析や検証を行い、被保護世帯の生活への影響等も十分調査の上、必要な見直しを検討することが求められる。 財源の確保生活保護制度は国が国民の最低生活を保障する制度である。このため、いかなる突発的な事情や経済的・社会的環境の変化に際しても、財政事情等によって給付水準や保護の認定・運用のばらつきを生じさせることなく、憲法上保障された生存権を保障する機能を果たし、社会的不安定が生じる ことを防ぐ必要がある。 イ平成19年検証(甲4の1・2、乙6、弁論の全趣旨)平成16年報告書を受けて、厚生労働省社会・援護局長の下に設置された生活扶助基準検討会は、平成19年検証を行い、平成19年報告書を取りまとめた。平成19年検証は、平成16年報告書において提言された定期的な 検証のほか、直近の全国消費実態調査の結果等を用いて、主に統計的な分析 をもとに、専門的かつ客観的に評価・検証を実施したものであり、①水準の妥当性、②体系の妥当性、③地域差の妥当性等を主な検討項目として行われた。 平成19年報告書の概要は、次のとおりである。 生活扶助基準の評価・検証の方法 生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である。 生活扶助基準の水準 生活扶助基準の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民 別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である。 生活扶助基準の水準 生活扶助基準の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消費実態との関係、あるいは本人の過去の消費水準との関係で相対的に決まるものと認識されている。したがって、生活扶助基準の水準に関する評価・検証に当たっては、これらの点を総合的にみて妥当な水準となっているかという観点から行うことが必要である。 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当とされてきたが、①第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、②第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較し ても概ね遜色ない状況にあることから、今回、これを変更する理由は特段ないと考える(ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある。)。なお、これまでの給 付水準との比較も考慮する必要がある。 生活扶助基準の体系生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 世帯人員別の基準額の水準は、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる。 から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 世帯人員別の基準額の水準は、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる。年齢階級別の基準額の水準は、仮に60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1としたときの比率では、20歳~39歳及び40~59歳では相対的にやや低めになっている一方、70歳以上では相対的に やや高めであるなど消費実態からやや乖離している。 生活扶助基準の地域差現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と、直近(平成16年)の消費実態を比較すると、地域差が縮小している傾向がみられる。 ウ平成25年検証(甲6、56、210、乙7、22、弁論の全趣旨)平成16年報告書及び平成19年報告書に引き続き、保護基準について学識経験者による専門的かつ客観的な評価・検証を行うため、平成23年2月、社会保障審議会の下に新たに常設部会として基準部会が設置された。 基準部会は、平成21年全国消費実態調査の特別集計等のデータを用いて、 生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か等について、平成25年検証を行い、平成25年1月18日付けの平成25年報告書を取りまとめた。それまでの基準部会の検討事項等は、別紙5(基準部会の検討事項等)のとおりである。 平成25年報告書の概要は、次のとおりである。 検証方針と検証概要 平成25年検証においては、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一 平成25年検証においては、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、第1・十分位を設定した。 その上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世 帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行うことにした。その際、仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。 平成25年検証では、一部統計的分析手法である回帰分析を採用した。 その理由は、第一は、平成19年検証では、各年齢階級の単身世帯のデータを用いて各年齢階級別の平均消費水準を分析したが、全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった点を考慮した こと、第二は、今回の検証結果の妥当性を補強するため、回帰分析を用いた結果と概ね遜色がないかどうかを確認することとしたことである。 検証に使った統計データ平成25年検証では、国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要があるため、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いた。 平成25年検証は、様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数によって把握しようとするものである。この指数は第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位の世帯を用いた理由は、以下のとおりである。 a 生活扶助基準を国民の健康 性を指数によって把握しようとするものである。この指数は第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位の世帯を用いた理由は、以下のとおりである。 a 生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考 えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第 3・五分位)等から算出することも可能だが、これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的と判断した。 b 第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること。 c 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること。 d 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他 の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないこと。 eOECDの国際的基準によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得のスケールメリットを考慮して世帯人員数の平方根で除したもの)の中位値(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層にあ るとされる。今回の検証に用いた平成21年全国消費実態調査での等価可処分所得の中位値は約270万円であるが、第1・十分位の等価可処分所得の平均は92万円、最大では135万円となっている。これは第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることを示していること。 f また、分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第 1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることを示していること。 f また、分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられること。 検証手法 a 年齢階級別の基準額の水準 年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について、異なる年齢階級間の比率(指数)が、消費実態と比べてどれほどの乖離があるのかを検証した。その際、平成19年検証の考え方では、各年齢階級の単身世帯のデータを用いて、各年齢階級別の平均消費水準を分析したが、全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯が ほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった。このため、今回の検証では10代以下の者がいる複数人世帯のデータも用いて、10代以下の者も含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう統計的分析手法である回帰分析を採用した。その分析に際しては、スケールメリットが最大に働く場合(単純に世帯年収に着目) と最小に働く場合(1人当たりの世帯年収に着目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。 b 世帯人員別の基準額の水準第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに、各世帯人員別の平均 消費水準を指数化(単身世帯を1)し、現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。 c 生活扶助基準の地域差世帯人員別の検証と同様に、平成19年検証の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の 額を同様に指数化したものと比較した。 c 生活扶助基準の地域差世帯人員別の検証と同様に、平成19年検証の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費 水準を指数化(1級地-1を1)したものと、現行の基準額を同様に指数化したものとを比較した。 検証結果a⒜ 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態 による指数を比べると、各年齢階級間の指数に乖離が認められた。 ⒝ 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて、乖離が拡大する傾向が認められた。 ⒞ 級地別の基準額の水準 級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている。 ⒟ 年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準上記⒜~⒞の検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の各世帯への影響は、世帯員の年齢、世帯人員、 居住する地域の組み合わせにより、様々である。 ⒠ 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯 及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 b なお、上記a⒠の「考慮し、その上で他に合理的説明が に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯 及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 b なお、上記a⒠の「考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」との部分については、平成25年1月16日の基準部会(出 席者は駒村康平部会長・岩田正美部会長代理・阿部彩委員ら合計8名)で当局が準備していた案には「考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」と記載されていたが、委員の意見により修正したものであった。 また、物価指数については何も議論していないこと及び全国一律の物価 指数を当てはめることは非常に慎重に考えなければならない旨の意見 等も委員から述べられていた。(甲55の1~3、甲152、153) 検証結果に関する留意事項年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組み合わせによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によってさまざまに異なる差が 生じうる。こうした差は金銭的価値や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。しかし、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上 の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。 今回の本部会で採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法につい 極めて少数となるといった統計上 の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。 今回の本部会で採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮した ものであることから、これが唯一の手法ということでもない。さらに本部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定 の限界があることに留意する必要がある。 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一 般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 とりわけ第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。 また、現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要で ある。 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防 含まれることが想定される点についても留意が必要で ある。 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 本件改定に至る経緯 ア平成24年3月以降、当時は野党であった自由民主党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」(世耕弘成座長)において、生活保護の給付水準を10%程度引き下げるという同党の方針が固まった。(甲113、114、118~122)イ平成24年5月25日、人気お笑いタレントが、母親が生活保護を受給し ていたことを反省・謝罪する記者会見を開き、広く報道され、国会でも取り上げられるなどした結果、いわゆる「生活保護バッシング」が発生した(甲115の1~4、甲116、117、168、230、弁論の全趣旨)。 ウ平成24年8月、社会保障制度改革推進法(別紙4(関係法令等の定め)の第4)が成立して公布され、その附則2条において、生活保護制度に関し、 必要な見直しを早急に行うこととされた。 エ自由民主党は、平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙の選挙公約として、生活保護費の給付水準を原則1割カットすること等を掲げ、同選挙後、政権に復帰した。(甲135、弁論の全趣旨)オ新たに組閣された第2次安倍内閣の田村憲久厚生労働大臣は、平成24年 12月27日及び同月28日の記者会見において、生活保護につき、①下げ ないという選択肢はない、②給付水準を1割削減することは総選挙の政権公約の中の一つとして打ち出したので、自由民主党から選出された大臣としては、ある程度の制約を受ける旨発言した。さらに、同大臣は、平成25年1月16日、生活保 給付水準を1割削減することは総選挙の政権公約の中の一つとして打ち出したので、自由民主党から選出された大臣としては、ある程度の制約を受ける旨発言した。さらに、同大臣は、平成25年1月16日、生活保護の支給水準を「全体として引き下げることになる」と明言した。(甲126、127、128、乙59、60) カ本件改定を行うことは、同月27日に後記のとおり公表された。 本件改定の内容(甲8、乙4、18、31、弁論の全趣旨)ア本件改定厚生労働大臣は、平成25年告示、平成26年告示及び平成27年告示により、3年度に分けて順次、本件改定をした。 イゆがみ調整厚生労働大臣は、本件改定に当たり、基準部会の平成25年報告書で指摘された乖離の解消のためとして、ゆがみ調整をした。 ただし、上記ゆがみ調整では、平成25年検証の結果を反映させる比率を、増額となる世帯を含む全ての被保護世帯について一律に2分の1処理をし たが、これについては当時公表されず、基準部会にも諮られなかった。 ウデフレ調整厚生労働大臣は、本件改定に当たり、総務省CPIを基に、すべての消費品目から、生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費等)及び原則として保有が認められていないか又は負担が免除されるために、被 保護世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関連費、NHK受信料等)を除外して算出した消費者物価指数を生活扶助相当CPIとして勘案することとし、具体的には、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIを用いて、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率として算出した-4.78%によって減額するデフ レ調整をした。 助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIを用いて、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率として算出した-4.78%によって減額するデフ レ調整をした。 エ激変緩和措置本件改定は、平成25年度から3年度にわたって段階的に実施するものとされた上、見直しの影響を一定程度に抑える観点から、本件改定前の基準からの増減幅は±10%を超えないように調整された。 生活扶助相当CPIの内容 本件改定において、デフレ調整に用いられた生活扶助相当CPIの具体的内容等に関しては、以下のとおりである。 ア生活扶助相当CPIは、前記ウのように除外をした後の対象品目につき、平成22年において価格を100とした指数に総務省CPIの算出の基礎とされたウエイトを乗じ、その総計を上記ウエイトの合計で除して算出した ものであり、厚生労働省が本件改定に係る生活保護基準の見直しを検討するに際して、総務省CPIの算出基礎となっている数値を用いて独自に算定した指数である。(甲76、乙121、122、弁論の全趣旨)イ上記アによると、平成20年生活扶助相当CPIは104.5、平成23年生活扶助相当CPIは99.5となり、その変化率は、次の計算式により、 -4.78%である。 (99.5-104.5)÷104.5×100(小数点第3位以下四捨五入)これに対し、総務省CPIの平成20年から平成23年までの変化率は、次の計算式により、-2.35%であった。 (平成23年総務省CPI 99.7-平成20年総務省CPI 102.1) ÷102.1×100(小数点第3位以下四捨五入)両者の違いは、別紙図2の「2010年基準総務省CPIと生活扶助相当CPI」(甲268の5頁 9.7-平成20年総務省CPI 102.1) ÷102.1×100(小数点第3位以下四捨五入)両者の違いは、別紙図2の「2010年基準総務省CPIと生活扶助相当CPI」(甲268の5頁)のとおりである。(甲78、111、268、乙28~30)ウ生活扶助相当CPIの品目の教養娯楽用耐久財のうち、テレビ・パソコン 等の価格指数(乙29)の変動が、総務省CPIにおける総計を10000 とする各品目のウエイト(乙30)に基づいて、総合指数の変化率にどの程度寄与したかを示す寄与度を、次の計算式により試算すると、以下のとおり、合計2.87%となる。(甲19、144、168、289、乙28~30)(各品目の平成23年価格指数-各品目の平成20年価格指数)×各品目の平成23年ウエイト÷全対象品目のウエイトの総和(6393) ÷平成20年生活扶助相当CPI(104.5)×100品目平成23年ウエイト平成20年価格指数平成23年価格指数寄与度(小数第3位以下四捨五入)テレビ 205.869.1-1.98%パソコン(デスクトップ型) 237.260.1-0.27%パソコン(ノート型) 281.676.0-0.62% 厚生労働省社会・援護局保護課による説明(甲76、139の3)厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年1月27日、本件改定に関し「生活扶助基準等の見直しについて」と題する書面を公表した。 その概要は、次のとおりである。 ア生活扶助基準等の見直しの考え方と影響額基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整し(財政効果90億円)、これに加えて のとおりである。 ア生活扶助基準等の見直しの考え方と影響額基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整し(財政効果90億円)、これに加えて、平成20年以降の物価の動向を勘案して減額する(財政効果:本体分510億円、加算分70億円)とともに、激変緩和措置を講じる。 イ生活扶助基準等の見直しについて生活扶助基準等の見直しの財政効果(マクロベース)として、3年間で670億円程度(国費ベース)、6.5%程度の財政効果があり、また、期末一時扶助の見直しを行い、70億円程度(国費ベース)の財政効果がある。 個々の世帯に着目した見直しの概要(ミクロベース)として、物価の下落を勘案した調整については受給者全員に影響するが、体系・級地等の「歪み」を調整することにより、70%の世帯の見直し幅は物価の下落率を下回る。 ウ生活扶助にかかる物価の動向について生活扶助は、食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うもので あるため、生活扶助に相当する消費品目のCPI(物価指数)をみる必要がある。具体的には、品目別の消費者物価指数のうち、①家賃、教育費、医療費など生活扶助以外の他扶助で賄われる品目、②自動車関係費、NHK受信料など原則生活保護受給世帯には生じない品目を除いた品目を用いて、生活扶助相当CPIを算出した。 その結果、平成20年生活扶助相当CPI(104.5)から平成23年生活扶助相当CPI(99.5)までの下落率は4.78%であった。 エ平成20年からの物価を勘案することについて平成25年検証は、平成21年全国消費実態調査を用いて、年齢・世帯人員・級地ごとに、現行の基準額と一般低所得世帯 .78%であった。 エ平成20年からの物価を勘案することについて平成25年検証は、平成21年全国消費実態調査を用いて、年齢・世帯人員・級地ごとに、現行の基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実 態を比較し、その歪みを検証したものである。 このため、今回の検証結果を反映させたとしても、基準と一般低所得世帯との消費の年齢、世帯人員、級地による乖離が調整されるのみであり、デフレ等による金額の絶対水準の調整がなされるものではない。 また、今回物価を勘案した考え方は、平成19年検証の結果を踏まえた上 で、平成20年度の基準額が定められ、以後もその基準額が据え置かれてきた経緯に鑑み、平成20年から勘案することとしたものである。 本件訴訟の経緯等ア甲事件(甲9、10、18、乙38、弁論の全趣旨、顕著な事実) 別紙2-1(処分一覧表1)の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁は、 「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各日付けで、 法25条2項に基づく各保護変更決定処分をした。その通知書には、決定理由につき、「基準改定」(津市及び桑名市)、「基準改定による変更」(四日市市)、「平成25年8月基準改定による。」(松阪市)と記載されていた。 甲事件原告らは、別紙6(審査請求日等一覧)の「審査請求日」欄の日付けで三重県知事に対して審査請求をしたが、「裁決日」欄の日に、いず れも棄却する旨の裁決がされた。 甲事件原告らは、別紙6(審査請求日等一覧)の「再審査請求日」欄の日付けで、上記の裁決に対して再審査請求をした。厚生労働大臣は、平成27年5月11日、これらの再審査請求について、原告⑧及び原告⑳以外の 原告らは、別紙6(審査請求日等一覧)の「再審査請求日」欄の日付けで、上記の裁決に対して再審査請求をした。厚生労働大臣は、平成27年5月11日、これらの再審査請求について、原告⑧及び原告⑳以外のものについては棄却する旨の裁決をし、原告⑧及び原告⑳のものにつ いては却下する旨の裁決をした。 甲事件原告らは、平成26年8月1日、甲事件の訴えを提起した。 原告③は令和4年6月19日に、原告④は令和4年1月日時不詳に、原告⑲は令和5年4月15日に、それぞれ死亡した。 イ乙事件(甲60、乙45、46、弁論の全趣旨、顕著な事実) 別紙2-2(処分一覧表2)の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁は、「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各日付けで、法25条2項に基づく各保護変更決定処分をした。その通知書には、決定理由について、「基準改定」(津市)、「基準改定による変更」(四日市市)と記載されていた。 原告⑧及び原告⑳は、平成27年5月8日に三重県知事に対して審査請求をしたが、同年6月23日、いずれも棄却する旨の裁決がされた。 原告⑧及び原告⑳は、平成27年12月22日、乙事件の訴えを提起した。 4 争点 出訴期間の経過の有無(本案前の争点)(甲事件の原告⑧・原告⑳)(争点1) 本件各変更決定の適法性(甲事件・乙事件共通)ア判断枠組み(争点2-1)イゆがみ調整の合理性(争点2-2)ウデフレ調整の合理性(争点2-3) 理由付記に係る瑕疵の有無(甲事件・乙事件共通)(争点3) 5 争点に対する当事者の主張の要旨別紙7(当事者の主張の要旨)のとおりで ウデフレ調整の合理性(争点2-3) 理由付記に係る瑕疵の有無(甲事件・乙事件共通)(争点3) 5 争点に対する当事者の主張の要旨別紙7(当事者の主張の要旨)のとおりである。 第3 争点に対する判断当裁判所は、本件改定に当たり厚生労働大臣がしたデフレ調整は合理性を欠き、本件改定は法3条、8条2項の各規定に違反するものとして違法であり、本件改 定に基づく本件各決定も違法となるから、甲事件の訴訟係属中に死亡した原告ら並びに出訴期間を徒過した原告⑧及び原告⑳の請求を除き、甲事件及び乙事件の原告らの本件各決定の取消しを求める請求はいずれも理由があるから認容すべきものと判断する。 1 争点(出訴期間の経過の有無(本案前の争点))について 証拠(乙1)によれば、原告⑧及び原告⑳が平成25年告示による保護変更決定に係る審査請求の裁決があったことを知った日は、代理人弁護士に対して同裁決の配達が完了した日と解するべきところ、原告⑧については平成25年10月31日、原告⑳については同月25日であったことが認められる。これに対し、原告⑧及び原告⑳は、裁決があったことを知った日は同年11月13 日であると主張するが、認めることはできない。 証拠(甲10の8・20)によれば、原告⑧及び原告⑳が再審査請求をした日付けは、平成25年12月11日であることが認められるから、審査請求の裁決があったことを知った日の翌日から起算して、行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの)53条所定の30日を経過しており、再 審査請求期間を徒過したものと認められ、そのことについて、同法56条が準 用する同法14条1項ただし書所定の天災その他やむを得ない理由もない。 し の30日を経過しており、再 審査請求期間を徒過したものと認められ、そのことについて、同法56条が準 用する同法14条1項ただし書所定の天災その他やむを得ない理由もない。 したがって、原告⑧及び原告⑳について、平成25年告示による保護変更決定の取消しを求める訴えの出訴期間は、行政事件訴訟法14条3項本文により審査請求に対する裁決を知った日から6か月となるところ、甲事件の訴えが提起された日は平成26年8月1日であるから、出訴期間を徒過したものである。 2 争点(2-1)(判断枠組み)について一般に、行政処分において行政庁の裁量権が認められる場合においても、法律上考慮すべき事項を考慮せず、又は、考慮すべきでない事項を考慮して行政庁が判断を行えば、裁量権の範囲の逸脱又は濫用として、違法な行政処分となり得るものと解される。 法3条によれば、「保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」上、法8条2項によれば、保護基準は、「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない」とされる。 したがって、上記「必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」を保障しなければならない一方で、考慮してはならない事項を考慮すれば、いわゆる他事考慮として裁量権の範囲の逸脱又は濫用となり得る。 本件改定は、平成16年報告書において求められていた5年に一度の頻度で行う定期的な検証(前提事実ア)とは別に、生活扶助基準の改定をするも のであった。 憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、極め 報告書において求められていた5年に一度の頻度で行う定期的な検証(前提事実ア)とは別に、生活扶助基準の改定をするも のであった。 憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、 高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであ る(朝日訴訟最高裁判決・堀木訴訟最高裁判決参照)。 したがって、保護基準中の生活扶助基準を改定するに際しても、その内容が法3条にいう「健康で文化的な生活水準を維持することができるもの」であるか否かを判断するにあたっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 実際にも、生活扶助基準の改定の前提となる「最低限度の生活」の需要に係る評価や生活保護受給者への可及的な配慮は、前記のような専門技術的考察に基づくものとして、その改定については本件改定に至るまで各種統計や専門家の作成した資料に基づいて検討されてきた経緯があったと認められる。(前提 事実 ・) これらの経緯等に鑑みても、生活扶助基準の改定(激変緩和措置を採用する場面を除く。)は、生活扶助基準の改定の必要があり、当該改定後の生活扶助基準の内容が生活保護受給者の「健康で文化的な生活水準を維持する」に足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、「最低限度の生活」の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤・欠落の有無等の観点からみて裁量権の範 囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合には、法3条、8条2 した厚生労働大臣の判断に、「最低限度の生活」の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤・欠落の有無等の観点からみて裁量権の範 囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合には、法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるというべきである(老齢加算訴訟最高裁判決参照)。 3 争点(2-3)(デフレ調整の合理性)について 基準部会に諮っていないことについてアたしかに、法において、生活扶助基準の改定に当たって、基準部会等によ る諮問手続を経ることは要件となっていない。したがって、これらの専門機関等による検討を経なかったとしても、それだけで直ちに違法となるものとまでは解されない。 イもっとも、生活扶助基準の改定には、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであるところ、本件改定までの生活扶助 基準の改定は、基本的に専門機関の検討結果を踏まえて行われてきたことが 認められる。また、厚生労働大臣の判断に裁量権が認められるのは、必要とされる専門的知見を有していることを前提とするものであるから、少なくとも従前の専門的知見と異なる見解を採用して生活扶助基準を改定する場合には、その点について何らかの形で具体的に専門機関の検討を経ていない限り、専門的知見とは異なる独自の見解に基づく判断が行われたものと疑われ てもやむを得ないことになる。 ウとりわけ、保護基準を引き下げる場合には、従前の基準が法8条2項所定の「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないもの」として設定されていた以上、誤って過大な引下げが行われれば、直ちに「最低限度の生活の需要を満たす」には足りない水準となってしまう ことになり、ひいては生活保護受給者の生存権を脅かしかねないのである て設定されていた以上、誤って過大な引下げが行われれば、直ちに「最低限度の生活の需要を満たす」には足りない水準となってしまう ことになり、ひいては生活保護受給者の生存権を脅かしかねないのであるから、慎重の上にも慎重を期して、専門的知見を集約して誠実に検討すべきものであることは明らかである。 本件改定における厚生労働大臣の裁量権の行使に対する司法審査も、以上の観点から行うべきものである。 エ本件改定に関しては、以下のとおり認められる。(前提事実ウ・エ及び、弁論の全趣旨)昭和58年意見具申が、生活扶助基準の改定においては、一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整をすべきであり、賃金や物価については参考資料にとどめるべきとしたことにより、 水準均衡方式が採用され、本件改定に至るまで、生活扶助基準の改定においては、物価そのものの額が直接に反映されたことはなかった。 しかし、本件改定におけるデフレ調整は、消費者物価指数である総務省CPIを独自に改変した生活扶助相当CPIに基づく物価の下落率4.78%をそのまま生活扶助基準の減額率としたものである。 すなわち、デフレ調整は、それまで昭和58年意見具申によって「賃金や 物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである」とされていた物価(前提事実イ)の下落率を引下げの直接の根拠として大幅な引下げを行うものであり、従前の水準均衡方式により行われてきた生活扶助基準の改定とは全く性質を異にする見解を前提とするものである。 なお、本件改定は、この点において、従前から専門委員会等において廃止を含めた見直しの議論が行われていた生活保護の老齢加算の廃止(老齢加算訴訟最高裁判決 異にする見解を前提とするものである。 なお、本件改定は、この点において、従前から専門委員会等において廃止を含めた見直しの議論が行われていた生活保護の老齢加算の廃止(老齢加算訴訟最高裁判決参照)とは、明らかに事案が異なるものである。 オしかし、厚生労働大臣は、デフレ調整を含む本件改定をするに当たっては、生活扶助相当CPIの採用及びその算定等について、基準部会等の専門機関 に諮ることはなかった。むしろ、平成25年報告書の取りまとめの経緯(前提事実ウb)に鑑みれば、既に生活扶助相当CPIを根拠とする引下げを行う方針を決めていながら、これを平成25年1月16日に開催された基準部会においても殊更に秘した上で、新たな「経済指標」に基づく改定をあたかも基準部会が一任したかのような取りまとめをしようと図ったものの、 委員から、物価指数については何も議論していないこと及び全国一律の物価指数を当てはめることは慎重に考えなければならないとの意見を表明されるなどしたため、より抽象的かつ慎重な表現への修正を余儀なくされたものとみられる。 そして、本件改定の根拠が圧倒的多数の専門家の専門的知見に反するもの であることは、原告らが書証として提出した多数の意見書等(甲62、68、77、80、83、85、143、145、148、154、158、162、164~166、179、184、258、260の1・2、甲268~271)の内容からしても明らかであり、とりわけ岩田正美(基準部会長代理)は、生活保護の縮小自体に対して疑問を提起しており(甲230)、 本件訴訟と同一内容の別件訴訟における証言(甲153)においても、基準 部会について、「財政削減のために私たちは利用されたのかもしれない」、「常設部会は、ちょっと便利 30)、 本件訴訟と同一内容の別件訴訟における証言(甲153)においても、基準 部会について、「財政削減のために私たちは利用されたのかもしれない」、「常設部会は、ちょっと便利に使われちゃったかなというようなことで、常設部会があろうとなかろうと、やることは同じだったかもしれませんけれども、私個人としては非常に残念な思いがしています。そうした、外部から下げろという圧力がある。そして、部会が専門的な検証をして、下げる口実を作っ ていくというような構図をこのまま続けていくのは、やはり日本にとって決して良くない」などと証言している。 カ被告らは、平成19年報告書において生活扶助基準を改定する必要性が認められていたとも主張するが、デフレ調整に類する検討が行われていたとは認められない。(前提事実⑶イ) また、生活扶助基準の改定については、その時々の消費生活の実態の影響を強く受けるものであり、平成19年報告書から本件改定までに5年以上も経過していたことからすれば、およそデフレ調整の根拠となり得るものではない。他に、被告ら提出の学者の意見書(乙87)や本件改定を担当した官僚の供述(乙121、122)等によっても、デフレ調整の必要性について 合理的な根拠となるほどの専門的知見を厚生労働大臣が有していたとはうかがえない。 キそうすると、本件改定は、そもそも厚生労働大臣の判断の手続自体に重大な疑義があり、専門的知見に基づいて裁量権を行使したというよりも、むしろ基準部会をはじめとする専門家の意見を無視ないし著しく軽視して、本件 改定を強行したものとみざるを得ないのであって、その結果、手続のみならず判断の過程にも過誤又は欠落があることが強く疑われるものであったというべきである。 生活扶助相当CPIの算出 、本件 改定を強行したものとみざるを得ないのであって、その結果、手続のみならず判断の過程にも過誤又は欠落があることが強く疑われるものであったというべきである。 生活扶助相当CPIの算出についてア一般的に消費者物価指数として用いられる総務省CPIには、生活扶助に よる支出が想定されない品目も含まれていることからすれば、これらの品目 を除いたものを生活扶助相当CPIとして算出し、これを参考資料として用いるという手法自体には、一定の合理性があると認められる。 イしかし、本件改定は、平成20年から平成23年までの3年間に生活扶助相当CPIが4.78%下落したと算出されたことを根拠とするものであるところ、生活扶助相当CPIの下落率において、特に影響の大きいも のはテレビ・パソコン等であり、その寄与度は合計2.87%にも上り(前提事実ウ)、これは上記4.78%の約6割を占めるものであったことが認められる。また、総務省CPIにおけるウエイトの総計は10000であるのに対し、生活扶助相当CPIのウエイトの合計は6393であったから、テレビ・パソコン等の価格変動の比重は、一般世帯の約1.6倍 (10000÷6393≒1.6)に拡大評価されることになる。 総務省統計局はテレビ・パソコン等の価格指数の大幅な下落は技術革新や性能向上という要因によるものであると説明している。(甲78)たしかに被保護世帯においてもテレビ・パソコン等の保有は認められており、一般家庭とほぼ同様に普及しているとみられるとしても、上記の 要因によってテレビ・パソコン等を買い替える余裕があったとは考えられない。なお、地上デジタル放送への移行に際しては、被保護世帯を含むNHK受信料全額免除世帯にデジタルチューナーが無償給付 の 要因によってテレビ・パソコン等を買い替える余裕があったとは考えられない。なお、地上デジタル放送への移行に際しては、被保護世帯を含むNHK受信料全額免除世帯にデジタルチューナーが無償給付されている。 (甲144、177の1~3)したがって、テレビ・パソコン等の価格の下落によって、従前よりも被 保護世帯の家計に余裕が生じたとは、想定し難い。(甲144、289)加えて、厚生労働省が毎年、全国の被保護世帯を対象として、生活実態を明らかにすることによって、生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得ること等を目的として統計を取っている社会保障生計調査において、平成22年におけるテレビ・パソコン等を 含む教養娯楽用耐久財の支出割合は、一般世帯が約1.7%であったのに 対し、被保護世帯は約0.6%にすぎなかったことが認められる。(甲62、64、乙119)ウしかし、本件改定の検討に当たり、上記イの諸点が考慮された形跡は全くみられない。これは、厚生労働省において、総務省の統計を不適切に利用・改変したばかりか、厚生労働省自身が統計を取っていた社会保障生計調査の 結果さえも恣意的に度外視したという批判を免れないものである。 したがって、本件改定のデフレ調整における生活扶助相当CPIの算定は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものであり、法8条2項にいう「必要な事情」を考慮していないものというべきである。そして、これは生活扶助基準を「最低限度の生活の需要」を満 たすのに足りない水準としかねない重大なものである。原告らの陳述書等(甲290~299の2)及び死亡した原告⑲の本人尋問の結果によっても、本件改定は、生活保護受給者の「最低限度の生活」を脅 たすのに足りない水準としかねない重大なものである。原告らの陳述書等(甲290~299の2)及び死亡した原告⑲の本人尋問の結果によっても、本件改定は、生活保護受給者の「最低限度の生活」を脅かすものであったとうかがわれる。このような厚生労働大臣の判断の過程には、過誤又は欠落があったものというべきである。 起算点を平成20年度としたことについてア本件改定は、平成20年から平成23年までの間に、生活扶助相当CPIが4.78%下落したと算出されたことを根拠とするものである。 しかし、生活扶助基準の改定は、平成19年度までは水準均衡方式に基づき、民間最終支出の伸び率を基礎とした一般国民の消費水準との調整を 行った結果、据え置くこととなったのに対し、平成20年度は、原油高や世界的な経済情勢等その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、生活扶助基準の改定を見送ったものにすぎず、平成20年度の生活扶助基準を積極的に妥当とする判断をしたわけではない。(前提事実⑵エ) そうすると、仮に物価動向を勘案した調整をするとしても、その起算点 としては、平成20年度ではなく平成19年度とするのが自然である。 さらに、総務省CPIによると、別紙図2の「2010年基準総務省CPIと生活扶助相当CPI」のとおり、平成19年から平成20年にかけては物価が高騰してその前後で最高水準となり、平成22年を100とした平成20年の総務省CPIは102.1まで上昇していたのに対し、平 成21年以降は相当下落していたことが認められる。 イそうすると、平成19年度ではなく敢えて平成20年度を起算点とした場合には、同年度における一時的な物価の上昇に伴うその後の し、平 成21年以降は相当下落していたことが認められる。 イそうすると、平成19年度ではなく敢えて平成20年度を起算点とした場合には、同年度における一時的な物価の上昇に伴うその後の物価の大幅な下落によって、生活扶助基準の引下げを過大に行うこととなりかねないことが明らかであったが、就任早々から大幅な引下げを明言していた厚生 労働大臣(前提事実オ)が、本件改定に当たって、その問題性を慎重に検討した形跡はみられない。 被告らの主張は、生活扶助基準に関する専門家による検証が本件改定前に行われたのは平成19年検証であり、平成19年までの社会経済情勢等は既に同年度の改定において斟酌されていたから、平成20年以降の経済 情勢のみを斟酌することにしたなどというものである。しかし、それでも平成20年度を起算点とすれば、平成19年から平成20年まで1年間の変化は考慮されていないことになる上、平成19年度においても平成20年度と同様に生活扶助基準は据え置かれていたことからすると、敢えて平成19年度を外し、物価が一時的に上昇した平成20年度を起算点とすべ き合理的な理由はなく、これは生活扶助基準の引下げの幅を大きく算出する方向で、総務省の統計を部分的に切り取って利用し、恣意的な起算点の選択をしたものとみられてもやむを得ないものである。 このように、生活扶助相当CPIの比較の起算点を平成20年度とした点も、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性 を欠くものであるから、上記ウと同様に、厚生労働大臣の判断過程には、 過誤又は欠落があったものというべきである。 考慮すべきではない事項の考慮についてアさらに、本件改定に至る経緯(前提事実及び乙121、122)においては、次のよう 断過程には、 過誤又は欠落があったものというべきである。 考慮すべきではない事項の考慮についてアさらに、本件改定に至る経緯(前提事実及び乙121、122)においては、次のような背景があったことが容易に推認される。 厚生労働省においては、平成24年の衆議院議員総選挙で政権復帰が想 定されていた自由民主党が発表していた生活保護費を10%削減するとの方針ないし選挙公約に忖度し、当時会合が重ねられていた基準部会における議論とは全く無関係に、早い時期から生活扶助基準を大幅に引き下げるべく内々に検討をし、平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙により自由民主党が政権に復帰し、新内閣の厚生労働大臣が同月27日及 び同月28日の就任記者会見で生活保護の給付水準の引下げを断行する旨発言し、平成25年1月16日にもその旨明言すると、同日の基準部会においては、本件改定に関しては何ら明らかにせず、デフレ調整そのもの及びゆがみ調整の2分の1処理について何ら意見を求めないまま、取りまとめを終える一方、同月27日には本件改定を公表したものである。 イ以上によれば、厚生労働大臣が、デフレ調整等に当たっての専門的知見に基づく検討が極めて不十分であったにもかかわらず、極めて拙速に本件改定に及んだのは、上記選挙公約の下で「生活保護バッシング」に現れたような国民の不公平感・不信感が醸成されていたことを背景に、たとえ専門的知見に反してでも、反対意見を排除して早急に生活扶助基準を引き下 げるという政治的方針を実現しようとしたものとみるほかない。 これに対し、被告らは、社会保障制度改革推進法の附則において、保護基準の早急な見直しが求められており、専門機関から意見聴取をする時間がなかったなどと主張するが、これほど拙速に引下げを るほかない。 これに対し、被告らは、社会保障制度改革推進法の附則において、保護基準の早急な見直しが求められており、専門機関から意見聴取をする時間がなかったなどと主張するが、これほど拙速に引下げを求められていたということは到底できない。また、そもそも、上記のとおり現に本件改定の 公表直前まで基準部会は開催されており、取りまとめの最中であったから、 およそ専門機関から意見聴取をする時間がなかったなどというのは、全く事実に反する詭弁というほかない。 ウそして、法の定める「最低限度の生活」を具体的に設定するためには、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである反面、生活扶助基準の設定に関して、およそ専門的知見を無視ない し著しく軽視した単なる政治的判断をすることが許されるものではない。 たしかに、生活扶助基準を検討するに際しては、被保護世帯の生活実態のみを切り離して考えることはできず、現在の水準均衡方式に至る考え方の変遷(前提事実⑵)にもみられるように、国民一般の生活実態等を考慮に入れること自体は不合理とはいえない。しかし、生活扶助基準の改定に 当たっては、選挙公約や「生活保護バッシング」に見られるような憲法25条の保障の下にある生活保護自体に対する否定的な国民感情は、前記のような慎重な検討の契機とすることはともかくとして、本来的には考慮すべき事項ではない。したがって、厚生労働大臣は、考慮すべきではない事項を考慮したものというほかない。 以上によれば、本件改定は、次のとおり違法であるから、それを前提としてされた本件各決定も違法である。 本件改定におけるデフレ調整は、基準部会をはじめとする専門機関に諮らないまま行われており、他に専門的知見との整合性 のとおり違法であるから、それを前提としてされた本件各決定も違法である。 本件改定におけるデフレ調整は、基準部会をはじめとする専門機関に諮らないまま行われており、他に専門的知見との整合性を認めるに足りる証拠もない。また、生活扶助相当CPIの算定やその比較の起算点の設定には、統 計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性が認められず、その点について検討が行われた形跡も見当たらない、むしろ、本件改定の背景には、専門的知見を度外視した政治的判断があったことがうかがわれる。 そうすると、本件改定の過程及び手続には全体として過誤又は欠落があったといわざるを得ない。 したがって、原告らが主張するその他の種々の点について論じるまでもな く、厚生労働大臣が本件改定に当たり行ったデフレ調整については、「最低限度の生活」の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤又は欠落の有無等の観点からみて、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると判断される。 なお、被告らは、本件改定後の平成29年検証を取りまとめた平成29年報告書(甲211、乙86)の内容等によれば、本件改定を正当化し得るな どという主張もしているが、厚生労働大臣の判断過程における過誤又は欠落は、事後的な事情によって治癒されるものではないから、主張自体失当である。 4 争点(2-2)(ゆがみ調整の合理性)について本件改定においては、違法なデフレ調整によって、全体として4.78%もの 大幅な生活扶助基準の引下げが行われたものであり、原告らについても、同時にゆがみ調整が行われたことにより個々の世帯の引下率には若干の個別差は生じているものの、全員が例外なく引下げをされている。したがって、ゆがみ調整の当否にかかわらず、本件各決定が全体 についても、同時にゆがみ調整が行われたことにより個々の世帯の引下率には若干の個別差は生じているものの、全員が例外なく引下げをされている。したがって、ゆがみ調整の当否にかかわらず、本件各決定が全体として違法性を帯びていることは明らかである。 そして、本件訴訟は、本件改定に基づく保護変更決定処分である本件各決定の取消しを専ら求めているものであり、国家賠償請求は併合提起されていないこと等からしても、上記違法性の内容及び程度等について、これ以上検討を加えるまでもない。 第4 結論 1 以上によれば、その余の争点を検討するまでもなく、本件改定は違法であり、本件改定に基づく本件各決定も違法である。 2 よって、生存する原告らの請求のうち、甲事件の原告⑧及び原告⑳を除く請求及び乙事件の請求はいずれも理由があるから認容し、甲事件の原告⑧及び原告⑳の訴えは不適法であるから却下することとする。 3 なお、原告③、原告④及び原告⑲はこれまでに死亡しているところ、保護を受 ける権利は一身専属の権利であり、当該被保護者の死亡によって当然に消滅し、相続の対象となり得ない(朝日訴訟最高裁判決参照)。したがって、甲事件の原告③、原告④及び原告⑲の訴えについては、その死亡と同時に終了したものと解されるので、この旨を主文において明らかにすることとする。 4 訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条 ただし書を適用し、全部被告らの負担とする。 津地方裁判所民事部 裁判長裁判官(署名押印欄)竹内浩史 裁判官(署名押印欄) 清 名押印欄)竹内浩史 裁判官(署名押印欄) 清水萌 裁判官(署名押印欄)山 﨑 次矩 別紙1及び別紙2-1、2-2省略 (別紙3)略称・定義一覧法生活保護法保護基準法8条1項により定められた「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)生活扶助基準保護基準のうち生活扶助(法11条1項1号)に関する基準第1類費生活扶助基準(別表第1)の基準生活費(第1章)のうち、世帯を構成する個人ごとに算出される第1類の額第2類費生活扶助基準(別表第1)の基準生活費(第1章)のうち、世帯ごとに算出される第2類の額ウエイト家計の消費支出額に占める個々の品目の支出額の構成比第1・十分位年間収入階級第1・十分位(収入の低い世帯から順番に並べ、世帯数が等しくなるよう10等分した場合における、収入の最も低い層)第1・五分位年間収入階級第1・五分位(収入の低い世帯から順番に並べ、世帯数が等しくなるよう5等分した場合における、収入の最も低い層)生活扶助相当支出(額)(生活保護を受給していない世帯における)生活扶助費による支出が想定されている品目への支出(額)昭和58年意見具申厚生省(当時)の中央社会福祉審議会が、昭和58年12月23日に発表した「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」専門委員会厚生労働省(平成13年1月6 額)昭和58年意見具申厚生省(当時)の中央社会福祉審議会が、昭和58年12月23日に発表した「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」専門委員会厚生労働省(平成13年1月6日の省庁再編により設置)の社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)が、平成15年7月、その福祉部会内に設置した「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」 平成16年検証平成16年の専門委員会における検証平成16年報告書平成16年検証の結果を平成16年12月に取りまとめた報告書生活扶助基準検討会生活扶助基準の見直しの分析・検討を行うため、平成19年に厚生労働省社会・援護局に置かれた学識経験者等による「生活扶助基準に関する検討会」平成19年検証平成19年の生活扶助基準検討会における検証平成19年報告書平成19年検証の結果をまとめた平成19年11月30日の「生活扶助基準検討会報告書」基準部会保護基準の検証等を行う機関として社会保障審議会の下に常設された学識経験者による部会平成25年検証基準部会が平成21年全国消費実態調査の個票データを用いて平成25年1月までに実施した検証平成25年報告書平成25年検証の結果をまとめた平成25年1月18日の「生活保護基準部会報告書」平成29年検証基準部会が平成28年5月から平成29年12月までの間に実施した検証平成29年報告書平成29年検証の結果をまとめた平成29年12月14日の「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」平成25年告示平成25年厚生労働省告示第174号平成26年告示平成26年厚生労働省告示第136号平成27年告示平成27年厚生労働省告示第227号本件各告示平成25年 書」平成25年告示平成25年厚生労働省告示第174号平成26年告示平成26年厚生労働省告示第136号平成27年告示平成27年厚生労働省告示第227号本件各告示平成25年告示、平成26年告示及び平成27年告示本件改定本件各告示による保護基準の改定本件各決定原告らが平成25年告示及び平成27年告示による改定に基 づいて受けた生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定処分ゆがみ調整本件改定のうち、基準部会の平成25年検証の結果に基づき、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員、居住地域別の較差を是正する調整2分の1処理厚生労働大臣が、ゆがみ調整をするに当たり、平成25年報告書に記載された生活扶助相当支出額の指数そのものを使用せず、これを反映する比率を2分の1として改定率を算出して実施した処理総務省CPI総務省統計局が公表している消費者物価指数生活扶助相当CPI厚生労働大臣が生活扶助による支出が想定される品目を対象として本件改定のために算出したものとされる消費者物価指数デフレ調整本件改定のうち、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率により生活扶助基準を一律減額した調整テレビ・パソコン等テレビ、パソコン(デスクトップ型)及びパソコン(ノート型)社会権規約経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)朝日訴訟最高裁判決最高裁判所昭和39年(行ツ)第14号同42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁堀木訴訟最高裁判決最高裁判所昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁老齢加算訴訟最高裁判決最高裁判所平成22年(行ツ)第392号同24年2月28日第三小法 最高裁判決最高裁判所昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁老齢加算訴訟最高裁判決最高裁判所平成22年(行ツ)第392号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁及び最高裁判所平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁 (別紙4)関係法令等の定め第1 日本国憲法25条1項すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 2項国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向 上及び増進に努めなければならない。 第2 法 1 1条(この法律の目的)この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度 の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。 2 2条(無差別平等)すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。 3 3条(最低生活) この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。 4 4条(保護の補足性)1項保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として 行われる。 2項民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。 3項前2項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行 明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。 3項前2項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを 妨げるものではない。 5 8条(基準及び程度の原則)1項保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。 2項前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その 他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。 6 9条(必要即応の原則)保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要 の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。 7 10条(世帯単位の原則)保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。 8 11条(種類) 1項保護の種類は、次のとおりとする。 一生活扶助二教育扶助三住宅扶助四医療扶助 五介護扶助六出産扶助七生業扶助八葬祭扶助2項前項各号の扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われ る。 9 12条(生活扶助)生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。 一衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの二移送 10 25条(職権による保護の開始及び変更 活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。 一衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの二移送 10 25条(職権による保護の開始及び変更)2項前段保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。 11 30条1項(生活扶助の方法)本文 生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。 12 31条1項生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。 13 56条(不利益変更の禁止)被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない。 第3 保護基準(乙2) 1 厚生労働大臣は、法8条1項に規定する基準として保護基準を定めているとこ ろ、その概要は、以下のとおりである。前記第2の8(法11条1項)の8種類の保護の基準はそれぞれ別表第1から別表第8までに定めるところにより、要保護者に特別の事由があって、前項の基準により難いときは、厚生労働大臣が特別の基準を定める旨規定している。 2 地域の級地区分 保護基準は、生活扶助、住宅扶助、出産扶助及び葬祭扶助に係る各基準(保護 基準別表第1、第3、第6及び第8)について、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じてその基準額を定めているところ、保護基準別表第9は、当該級地区分として、全国の市町村を、1級地―1、1級地―2、2級地-1、2級地-2 第6及び第8)について、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じてその基準額を定めているところ、保護基準別表第9は、当該級地区分として、全国の市町村を、1級地―1、1級地―2、2級地-1、2級地-2、3級地-1及び3級地-2の六つの級地に区分している。上記地域の級地区分は、大別すると、大都市及びその周辺市町は1級地に、県庁所在地を始めとする中都 市は2級地に、その他の市町村は3級地に区分されており、本件各決定の時点における原告らの各居住地のうち、津市及び四日市市は2級地-1、松阪市及び桑名市は2級地-2に区分されている。 3 生活扶助基準 保護基準のうち、生活扶助基準(保護基準別表第1)は、基準生活費に関す る定め(第1章)と加算に関する定め(第2章)に大別される。 居宅で生活する者(法30条1項本文参照)の基準生活費は、世帯を構成する個人ごとに算出される第1類の額(第1類費)と、世帯ごとに算出される第2類の額(第2類費)とから成るところ、平成25年告示による改定前の別表第1の第1章1アは、基準生活費は、世帯を単位として算定するものとし、 その額は第1類費の額を合算した額と第2類費の額の合計額とすること、ただし、世帯人数が4人の世帯における基準生活費の額は、第1類費の額を合算した額に0.95を乗じた額(その額に10円未満の端数が生じたときは、これを10円に切り上げるものとする。以下この項において同じ。)と第2類費の額の合計額とし、世帯人数が5人以上の世帯における基準生活費の額は、第1 類費の額を合算した額に0.90を乗じた額と第2類費の額の合計額とすること、また、12月の基準生活費の額は、当該合計額に世帯構成員1人につき級地別に別途定める期末一時扶助費を加えた額とする旨規定していた。 た額に0.90を乗じた額と第2類費の額の合計額とすること、また、12月の基準生活費の額は、当該合計額に世帯構成員1人につき級地別に別途定める期末一時扶助費を加えた額とする旨規定していた。 第1類の表は、級地区分ごとに、被保護者の年齢の区分(①0~2歳、②3~5歳、③6~11歳、④12~19歳、⑤20~40歳、⑥41~59歳、 ⑦60~69歳及び⑧70歳以上の各区分)に応じて基準額を定めている。 第2類の表は、級地区分ごとに、保護受給世帯の世帯人数別(平成25年告示による改定前は、世帯人数1名、2名、3名、4名及び5名以上の5段階に区分されていた。)に基準額(ただし、世帯人数5名以上の世帯については、1名増すごとに加算する額)及び地区別冬季加算額(11月から3月までの加算額)を定めている。なお、冬季加算に係る地域の区別は、保護基準別表第1 の第1章1イの表に都道府県ごとにⅠ区からⅥ区までの6段階に区分して定められているところ、これによると、三重県はⅥ区に区分するものとされている。 加算(保護基準別表第1の第2章)は、基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補填することを目的として設けられているものであり、 ①妊産婦加算、②障害者加算、③介護施設入所者加算、④在宅患者加算、⑤放射線障害者加算、⑥児童養育加算、⑦介護保険料加算及び⑧母子加算につき、それぞれその要件、基準額及び重複調整の方法等について規定している。 第4 社会保障制度改革推進法(平成24年8月22日号外法律第64号)(生活保護制度の見直し) 附則2条政府は、生活保護制度に関し、次に掲げる措置その他必要な見直しを行うものとする。 一不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療 (生活保護制度の見直し) 附則2条政府は、生活保護制度に関し、次に掲げる措置その他必要な見直しを行うものとする。 一不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと。 二生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに総合的に取り組み、保護を受けている世帯に属する子どもが成人になった後に再び保護を受けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図るとともに、就労が困難でない者に関し、就労が困難な者とは別途の支援策の構築、正当な理由なく就労しない場合に厳格に対処する措置等を検討すること。 (別紙5)基準部会の検討事項等回数・開催日・議題等(証拠(甲112は共通))第1回平成23年4月19日・部会長選出及び部会長代指名について・生活保護制度の概要と過去の検証について ・その他(甲50の1~4、乙8の1、乙22、24)第2回平成23年5月24日・生活保護基準の体系等について・その他 (甲50の5、甲256の1~3、乙8の2、乙21、33)第3回平成23年6月28日・生活保護制度における地域差等について・その他(甲257の1・2、乙8の3) 第4回平成23年7月12日・生活保護制度における勤労控除等について・その他第5回平成23年9月27日・委員からの報告 ・その他(甲205~207)第6回平成23年10月4日・委員からの報告・その他 (甲189の1~3) 第7回平成23年10月25日・委員からの報告・その他第8 207)第6回平成23年10月4日・委員からの報告・その他 (甲189の1~3) 第7回平成23年10月25日・委員からの報告・その他第8回平成23年12月13日・生活保護基準の検証について ・その他(甲51の1・2)第9回平成24年5月8日・生活保護基準の検証について・その他 (甲16、17、52の1・2)第10 回平成24年10月5日・生活保護基準の検証について・その他(甲53の1・2) 第11 回平成24年11月9日・これまでの部会における議論を踏まえ、具体的な検証方法等の確認・その他(甲54の1~3、163、乙39、50、51)第12 回平成25年1月16日 ・生活保護基準の検証について・その他(甲55の1~3、乙25、52、75) (別紙6)審査請求日等一覧番号審査請求日裁決日再審査請求日③平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月24日④平成25年9月27日平成25年12月25日平成26年1月24日⑤平成25年9月20日平成25年12月25日平成26年1月24日⑥平成25年9月9日平成25年12月25日平成26年1月24日⑦平成25年9月3日平成25年12月25日平成26年1月24日⑧平成25年9月17日平成25年10月30日平成25年12月11日⑨平成25年9月17日平成25年11月5日平成25年12月3日⑩平成25年9月17日平成26年1月22日平成26年1月28日⑪平成25年9月15日平成25年12月25日平成26年1月21日 平成25年11月5日平成25年12月3日⑩平成25年9月17日平成26年1月22日平成26年1月28日⑪平成25年9月15日平成25年12月25日平成26年1月21日⑭平成25年9月15日平成25年12月25日平成26年1月23日⑮平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月20日⑯平成25年9月15日平成25年12月25日平成26年1月21日⑱平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月21日⑲平成25年9月16日平成25年12月25日平成26年1月23日⑳平成25年9月17日平成25年10月23日平成25年12月11日㉑平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月27日㉔平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月27日㉕平成25年9月25日平成25年12月25日平成26年1月27日㉖平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月25日㉗平成25年9月17日平成25年12月25日平成26年1月25日 (別紙7)当事者の主張の要旨 1 争点1(出訴期間の経過の有無(本案前の争点))(被告津市及び被告四日市市の主張)原告⑧及び原告⑳は、平成25年告示に基づく処分に対して、それぞれ審査請求し、その審査請求に対する審査庁である三重県知事の裁決書は、原告⑧につい ては平成25年10月31日付け、原告⑳に関しては同月25日付けで、それぞれ審査請求の代理人である弁護士の事務所に書留により配達された。このことからすれば、原告⑧及び原告⑳が、審査請求の裁決があったことを知った日は、原告⑧については平成25年10月31日で けで、それぞれ審査請求の代理人である弁護士の事務所に書留により配達された。このことからすれば、原告⑧及び原告⑳が、審査請求の裁決があったことを知った日は、原告⑧については平成25年10月31日であり、原告⑳については同月25日である。そして、原告⑧及び原告⑳は、同年12月11日に再審査請求をしている が、両原告が審査請求について裁決があったことを知った日の翌日から30日を経過しており、行政不服審査法(平成26年6月13日法律第68号による改正前のもの)56条において準用する同法14条1項ただし書が規定する正当な理由もないから、原告⑧及び原告⑳の再審査請求は不適法である。 したがって、原告⑧及び原告⑳による平成25年告示に基づく処分の取消しを 求める訴えの出訴期間の起算点は、審査請求に対する裁決があったことを知った日である平成25年10月31日及び同月25日であるが、両原告が甲事件の訴えを提起した日は平成26年8月1日であるから、行政事件訴訟法14条3項の出訴期間を徒過した不適法なものである。 (原告⑧及び原告⑳の主張) 原告⑧及び原告⑳が審査請求に係る裁決があったことを知った日は、平成25年11月13日であるから、被告の主張は前提を欠く。 2 判断枠組み(争点2-1)(原告らの主張) 憲法25条は、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を 保障とするとともに、国家に、すべての生活面について社会保障の向上及び増 進に努める義務を負わせている。憲法25条1項の保障する生存権は、本来、その後退を予定しているものではないから、正当な理由のない保護基準の引下げは許されず、国において、保護基準の引き下げに合理的な理由があることを主張立証しなければ、その違憲性が 障する生存権は、本来、その後退を予定しているものではないから、正当な理由のない保護基準の引下げは許されず、国において、保護基準の引き下げに合理的な理由があることを主張立証しなければ、その違憲性が事実上推定されるべきである。また、日本が批准する人権条約である社会権規約は、9条、11条及び12条で社会保障 についての権利を定め、2条1項で、締約国が、社会保障に関する権利の完全な実現を漸進的に達成するために必要な措置を執ることを法的義務として定めていることから、締約国が執った措置により権利の実現が以前より後退することは上記規定に違反し、これらの規定の趣旨についても、憲法や法の解釈にも反映されるべきである。 法は、憲法25条に基づき、生存権を具体化し、最低限度の生活を国民に保障している。もっとも、法が規定する最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であるから、その具体的な内容は、法8条2項の定める要保護者の年齢、性別、世帯構成、所在地域及び保護の種類に応じた必要な事情について、専門的ないし科学的な裏付けを備えた客観的な判断の結果として導くべきである。 最低限度の生活を具体化する保護基準設定の裁量の性質は、もっぱら専門的ないし科学的な考慮を要するという専門技術性に求められるべきであって、政策性はその性質に含まれないというべきである。さらに付言すれば、保護基準設定にあたり、厚生労働大臣は、法8条2項に定める各考慮事項を考慮に入れるよう義務付けられており、法外の考慮事項(国の財政事情、国民感情、政権与 党の公約等の「生活外的要素」)を考慮する裁量権は有しない。 これらを踏まえると、保護基準の改定は、①当該改定の時点において、改定前の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっ 外的要素」)を考慮する裁量権は有しない。 これらを踏まえると、保護基準の改定は、①当該改定の時点において、改定前の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっており、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活 の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点から裁 量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②生活扶助基準の引下げに際し激変緩和措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、生活保護受給者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合には、法3条、8条2項に反し、同条 1項の委任の範囲を逸脱するものとして違法となるものというべきである。そして、①又は②に当たるかを判断するに当たっては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から審理判断するべきである。 上記の審理判断に当たっては、以下のことを留意すべきである。 厚生労働大臣が、高度な専門技術的な考察を経たかどうかを審査するに当たっては、保護基準の改定が、常に専門家からなる審議会の検討結果を踏まえて行われてきたという歴史的な事実を踏まえると、基準部会の検討結果に依拠しているか否かが極めて重要な意味を持つ。また、生活保護受給権は、時の政府の施策方針によって左右されることのない、適正な保護基準による保護を利用 する権利であるが、前例のない規模の本件改定は、政権党の選挙公約を実現するという政治的意図の下で行われた。 原告らは、本件引下げによ って左右されることのない、適正な保護基準による保護を利用 する権利であるが、前例のない規模の本件改定は、政権党の選挙公約を実現するという政治的意図の下で行われた。 原告らは、本件引下げによって、食費を初めとして様々な生活費を節約することを強いられており、社会的な関係を失い、人としての尊厳を傷つけられた生活を余儀なくされている。これは、肉体的生存を維持できないだけではなく、 自分の生活と将来は自分で決めていくという社会参加のあり方が阻害されていることを意味し、原告らの生活が、健康で文化的な最低限度の生活を下回っていることは明らかである。 (被告らの主張) 憲法25条、法3条及び8条2項の規定にいう最低限度の生活は、抽象的か つ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社 会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、保護基準の改定については厚生労働大臣に上記のような専門技術的か つ政策的な見地からの裁量権が認められる(朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決、老齢加算訴訟最高裁判決)。 このような専門技術的知見に基づいた政策的判断として行われる保護基準の改定については、①当該改定後の保護基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものである とした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤又は欠落の有無等の観点からみて裁量権の範 準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものである とした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤又は欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、又は、②激変緩和措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸 脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項の規定に違反し、違法となる。 このように、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断については、その当不当が直ちに裁判所の司法審査の対象となるわけではなく、当該判断が著しく合理性を欠き明らかに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる ような場合でなければ、その判断は違法となり得ない(朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決)。そして、一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場合における判断過程審査とは、行政庁の判断に専属させるべき実体的な事柄の判断、すなわち裁量権行使の内容面に立ち入らずとも、いわばその外側から適否を判断できる手続や過程については裁判所の審査判断に 服させて差し支えないとしたものと解され、裁判所が、原告が納得できないと 主張する点について、被告である行政機関の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを審査する形で、いわば行政機関の説明する判断過程をできるだけ生かす審査方法であると解されており、同審査では、被告が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否か、すなわち、被告が挙げる理由に論理の飛躍や関連を欠くところがあるか否かという観点から、その 適否がされることになる。 告が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否か、すなわち、被告が挙げる理由に論理の飛躍や関連を欠くところがあるか否かという観点から、その 適否がされることになる。 専門機関の関与の有無という観点から保護基準の改定の適法性が問題となる余地があるかについてみると、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めること等を定める法令上の規定はなく、法やその関連法規にも保護基準の改定に当たり専門機関による分析 及び検証が必要である旨の規定もない。基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、保護基準の定期的な評価検証を行うことであり、保護基準の改定の在り方等は、同設置の趣旨及び審議事項とされていない。そうすると、厚生労働大臣は、保護基準の改 定に当たっての基準部会等の専門機関の関与の在り方や、これを依頼した場合における結果ないし意見をどのように考慮するかについては、専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきである。 したがって、厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経ることなく判断した場合には、その判断の前提となる課題に関する 事実認識やそれに対する評価、対策の課題解決手段としての適合性に一定の合理性が認められれば、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとはいえないというべきである。また、厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経た上で判断した場合であっても、厚生労働大臣は、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明ら かであり、かつ、厚生労 基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経た上で判断した場合であっても、厚生労働大臣は、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明ら かであり、かつ、厚生労働大臣の判断過程について一応の合理的理由すら認め られないような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。そして、裁判所が統計等の客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無を審査対象とするのも、それは、裁判所が自ら特定の衡量利益や考慮事項を選び出してこれを一般的に強調するのではなく、厚生労働大臣の判断の過程において現に用いられた統計等の客観的 な数値等や専門的知見を前提に、これらと厚生労働大臣の判断との間に合理的関連性や整合性が欠けるところがないかどうかを審査するべきである。 さらにいえば、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断に違法が生じるのは、朝日訴訟最高裁判決がいうように、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反したと評価できると きであるから、判断の過程及び手続における過誤又は欠落が結果としてこのような評価をもたらすものであるかどうかについても検討され、そのような評価ができるほど明らかに合理性を欠くと認められることになるような過誤又は欠落がある場合でなければ違法とはならない。 また、保護基準改定の際の激変緩和措置の採否等に係る厚生労働大臣の判断 についても、専門技術的かつ政策的な見地から広範な裁量権が認められている(老齢加算訴訟最高裁判決)。 本件改定は、生活扶助のうちすべての生活保護受給世帯に支給される基準生活費について、その多寡を変更したものにすぎず、基準生活費は、社会経済情勢等 められている(老齢加算訴訟最高裁判決)。 本件改定は、生活扶助のうちすべての生活保護受給世帯に支給される基準生活費について、その多寡を変更したものにすぎず、基準生活費は、社会経済情勢等の変化に伴って定期的に変更されることが法の規定上当然に予定されて いる(法8条2項参照)。法による保護として現に行われている給付が将来も存続することに対する信頼を保護すべき要請は、基本的には高いものとはいえない。 したがって、保護基準改定に当たり激変緩和措置を講じるか否か、どのような内容の措置を講じるかの判断については、かかる期待ないし信頼の程度も勘 案して、その判断に著しい過誤又は欠落があるか、当該判断が明らかに合理性 を欠くか否かを検討すべきである。 3 ゆがみ調整の合理性(争点2-2)(原告らの主張) 平成25年検証の合理性ア国は、ゆがみ調整において、第1・十分位を比較対象としたが、基準部会 平成25年報告書が挙げる根拠は理由がないし、第1・十分位から生活保護利用世帯と考えられるサンプルを除去しなかったが、これは異なる集団間の比較可能性を無視したという点で、統計学上明らかに不合理である。 イゆがみ調整において、生活扶助基準額と第1・十分位の消費支出の乖離を検証する際に、回帰分析を用いて、第1・十分位に属する世帯の消費支出額 を算出している。しかし、回帰分析には多くの過誤や疑問点があり、政府の掲げるEBPMの基準に反し、統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性がなく、恣意性及び不合理性があることが明らかである。 ウゆがみ調整の根拠となっている全国消費実態調査は、季節性が限定されていることの影響について調整がされていないこと、同調査におけるサンプ がなく、恣意性及び不合理性があることが明らかである。 ウゆがみ調整の根拠となっている全国消費実態調査は、季節性が限定されていることの影響について調整がされていないこと、同調査におけるサンプル の抽出では、地域別、家計の類型別に抽出率の違いに着目した補正が行われていないこと、単身世帯の調査方法が特殊であり、データの抽出や家計簿記帳精度の問題があること、個人別収支部分が記帳から漏れている可能性があり、家計の固定化がみられること、協力世帯の特性について偏りがあるという限界があり、同調査は、データの緻密さ、正確性ないし信頼性が欠ける。 平成25年検証の結果に基づく生活扶助基準への反映の方法国は、ゆがみ調整において、平成25年報告書の数値を、基準部会には無断で、増額方向の数値も含めて一律に2分の1処理をした。これは、基準部会が行った平成25年検証の成果を踏まえたゆがみ調整の内容を大きく変更するものであって、生活扶助基準の改定の内容の本質的部分を改変する措置である。 それにもかかわらず、専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行うことなく、 基準部会の検証結果の数値に操作を加えたものであるから、統計等の客観的数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性がないことが明らかであり、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものである。また、2分の1処理によって本来の増額幅が抑えられた世帯にとっては、最低限度の生活保障を直接侵害することは明らかである。 (被告らの主張)平成25年検証の合理性基準部会は、①平成25年検証においても、過去の検証に倣って生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準 理性基準部会は、①平成25年検証においても、過去の検証に倣って生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に 達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、 ⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法(乙75)による検証からは、各十分位間の中で、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯と比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられることから、生活保護受給世帯の比較対象としての一般低所得世帯として、第 1・十分位の世帯を用いることにした。そして、上記のとおり、平成25年検証は、専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであると評価できる。 平成25年検証の結果に基づく生活扶助基準への反映の方法ア平成25年検証は、上記アのとおり合理的なものと評価できるものの、当 該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に 限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界もあった。また、平成25年検証において算出された指数をそのまま反映させた場合には、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想されたが、平成25年報告書には、今般、生活扶助基準の た統計上の限界もあった。また、平成25年検証において算出された指数をそのまま反映させた場合には、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想されたが、平成25年報告書には、今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる 世帯への影響にも配慮する必要があると明記されており、平成25年検証自体がこの観点からの対策を講じることを要求していた。 イゆがみ調整について、減額幅を2分の1にし、増額幅をそのまま反映させるといったように、反映の程度を部分的に変えることは理論的にはあり得るが、このような世帯によって改定比率を変える反映方法は、検証結果の取扱 いの公平性を欠き、また、増額や減額に偏った反映をすることは、相対的な較差の検証という基準部会における本質的な検証の趣旨を改変することとなる。また、法3条及び8条2項の規定にいう、最低限度の生活に相当する生活扶助の額は、特定の統計資料等から一義的に導かれるような性質ではなく、平成25年検証のような統計手法やサンプル数に由来する一定の限界が 認められているものからすれば、その結果を反映させた生活扶助費の額が上記最低限度の額であるということはできない。 以上を踏まえ、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を反映する比率を一律2分の1とした。なお、2分の1処理を含めたゆがみ調整により約90億円の財政削減効果が生じたと試算されているが、事後的に2分の1処理を 行わず、平成25年検証の結果を全て反映させた場合を検証したところ、財政削減効果も約2倍となっていたことから、財政削減効果を目的として行われたものではない。 3 デフレ調整の合理性(争点2-3)(原告らの主張) デフレ調整の必要性 ころ、財政削減効果も約2倍となっていたことから、財政削減効果を目的として行われたものではない。 3 デフレ調整の合理性(争点2-3)(原告らの主張) デフレ調整の必要性 アデフレ調整は、総務省CPIではなく、厚生労働省が独自に作成した生活扶助相当CPIによって物価の変化率を算出しており、前者であれば変化率が-235%であるところ、後者を用いて変化率を-4.78%として生活扶助基準を改定している。 このような変化率を用いて生活扶助基準を改定するという判断は、一般的 世帯の消費構造よりも被保護者世帯の方が物価の下落による実質的な可処分所得の増加という影響を強く受けていることを前提とするものというべきであるが、これを裏付ける統計や専門家の作成した資料等はない。また、基準部会においても、平成25年報告書を取りまとめるにあたり、そのような議論はされていない。 イ本件改定のように、ゆがみ調整後の生活扶助基準の額にデフレ調整を行ったことは、水準均衡方式にあらかじめ組み込まれている物価を反映する効果と二重になる危険があること、ゆがみ調整により結果的に生じた財政効果を全く考慮することなくデフレ調整を行った点は保護費の二重引き下げにほかならないことから、その違法性は重大といわざるを得ない。 デフレ調整の相当性ア水準均衡方式にいう水準均衡とは、生活扶助基準と消費実態の均衡を意味している。物価や賃金は、消費に大きな影響は持つが消費実態そのものではないので、一般消費実態との均衡で基準を考えようとする場合には、参考程度ということになる。昭和58年意見具申が、賃金や物価は、そのままでは 消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべ 般消費実態との均衡で基準を考えようとする場合には、参考程度ということになる。昭和58年意見具申が、賃金や物価は、そのままでは 消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである、とするのもその趣旨である。つまり、物価の本格的考慮は、水準均衡方式の本質と矛盾し許されない。 そして、昭和59年度から平成25年度の本件改定に至る30年近くにわたって水準均衡方式に基づく生活扶助基準の改定が行われ、一度も物価指数 が用いられなかったことからすれば、物価の本格的考慮を許さないという水 準均衡方式は、処分基準に準じる確立した行政慣行となっていたということができる。そして、デフレ調整は、史上初めて物価指数による計算を直接、生活扶助基準の改定に用いたのであるから、確立した行政慣行である水準均衡方式を逸脱していることは明らかである。 また、デフレ調整は、基準部会等の専門家の検討を踏まえることすらされ ずに実行されたものであることからすれば、行政慣行である水準均衡方式と異なる取扱いをすることについて、これを相当と認める特段の事情がないことは明らかである。 イ国がデフレ調整に関する比較の起算点とした平成20年は、原油価格の高騰によりその前後の年に比べて相対的に物価が高くなった年である。総務省 CPIによれば、平成20年だけが、前後10年近い間で著しい物価高騰に見舞われていたのであり、この年を基準とすれば、消費者物価指数だけではなく、生活扶助相当CPIの下落率も大きい値が算出されることは明らかであったにもかかわらず、生活扶助費削減の結論を導くため恣意的に、平成20年を起算点に選んだ。 また、生活扶助を食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うものと とは明らかであったにもかかわらず、生活扶助費削減の結論を導くため恣意的に、平成20年を起算点に選んだ。 また、生活扶助を食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うものと説明する厚生労働省にとっては、食料と光熱・水道費はそろって下落している必要があることから、平成24年の総務省CPIを用いるのではなく、平成23年の消費者物価指数を使用した。 生活扶助相当CPIの設定の合理性 ア生活扶助相当CPIの大幅な下落の最大の要因は、教養娯楽の費目、とりわけ教養娯楽用耐久財の物価の大幅な下落である。しかし、厚生労働省が実施している被保護者世帯の生活実態を明らかにするための調査である社会保障生計調査の結果によれば、被保護者世帯においては、教養娯楽に属する品目に対する支出の割合が一般的世帯よりも相当低く、生活扶助 相当CPIの下落率が消費者物価指数よりも著しく大きくなった要因と しては、教養娯楽に属する品目についての物価下落の影響が増幅されたことが重要である。 このことからすれば、生活扶助相当CPIの値をもって、一般的世帯の消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的な可処分所得の増加という影響を強く受けているという事実が裏付けられて いるとはいえない。 イ物価動向によって生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加しているか否かを判断するためには、生活保護受給世帯のウエイトに基づいて計算しなければならないはずである。 しかし、生活扶助相当CPIを算出するに当たって用いられた消費実態 の数値は、総務省が行う家計調査の結果における一般世帯(2人以上の世帯)の品目別消費支出金額をもとに作成されており、保護利用世帯の品目別 扶助相当CPIを算出するに当たって用いられた消費実態 の数値は、総務省が行う家計調査の結果における一般世帯(2人以上の世帯)の品目別消費支出金額をもとに作成されており、保護利用世帯の品目別消費支出金額をもとに作成されていない。家計調査をもとに算出された生活扶助相当CPIは、一般世帯における生活扶助相当品目についての消費者物価指数ということになる。被保護世帯は、一般世帯よりも消費支出 の絶対額が低く、消費支出構造にも一般世帯とは異なる特徴があるにもかかわらず、生活扶助相当CPIを設定するに当たり、被保護世帯のウエイトを全く無視したものであるから、本来考慮すべき要保護者の需要(法8条1項)を考慮していないということであり、厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある。 ウまた、生活扶助相当CPIについては、国際基準からの逸脱や、異なる集団を比較することにも統計上の問題があり、厚生労働省が採用したパーシェ方式は、真の物価よりも下落率が大きくなる傾向がある等の問題点もある。 (被告らの主張) デフレ調整の必要性 ア物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、その品目の価格指数及びウエイトを把握する必要があるところ、生活扶助基準の改定が行われた平成25年当時、生活扶助費で支出される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在した一方で、そのほかに信頼性等が担保された適切なデータは見当 たらなかった。そこで、厚生労働大臣は、総務省CPIのうち生活扶助費で支出される品目のデータを用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率である-4.78%を算定した。 イ消費を基礎とする水準均衡方式 こで、厚生労働大臣は、総務省CPIのうち生活扶助費で支出される品目のデータを用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率である-4.78%を算定した。 イ消費を基礎とする水準均衡方式は、わが国の経済が右肩上がりに成長を続けているという社会経済情勢を背景に、生活扶助基準が一般国民の生活水準 との比較において妥当であるとの評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきたものである。これに対し、デフレ調整は、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、生活 扶助基準と一般国民との間の不均衡があって、生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものでもない。このように、デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは全く異なる場面で行われたものである。 デフレ調整の相当性 ア毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいて行われてきたところであるが、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準の改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにすること等を考慮し、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として改定を行うこととした。また、生活扶助のうち各種加算については、 これまでも物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきている。 平成19年報告書及びそれ以降の社会経済情勢に照らし生活扶助基準の水準を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においては生活扶助基準の水準についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶 及びそれ以降の社会経済情勢に照らし生活扶助基準の水準を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においては生活扶助基準の水準についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の水準の改定は断念せざるを得なくなった。そこで、厚生労働大臣は、自らの専門的技術的知見を踏まえてデフレ調整を行うこととし たところ、このデフレ調整の内容は、生活扶助基準の改定に当たっての基本的考え方に立脚したものであり、また、それまでの専門機関による検証の考え方と食い違うものでもなかった。そして、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣に求められていたところ、保護基準の改定に 当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の根拠はない上、厚生労働大臣が行おうとするデフレ調整の当否等について審議検討することは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなく、また、仮に、専門家から意見を聴取しようとすれば相当の期間を要することが見込まれた。厚生労働大臣は以上のような事実関係に照らし、デフレ調整について基準部会等の専門機関に 意見を求めなかった。 イ厚生労働大臣が、物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降の経済情勢による生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正することにあったことを理由とする。5年に1度の頻度で行われることとなっていた専門機関による 検証については、平成25年検証の直前は平成19年検証であり、専門機関による検証結果を踏まえた判断は、平成19年検証を踏まえた平成20年度の改定が直前のものであった。平成20年度の改定に関しては、厚生労働大臣は、平成19年検証に 直前は平成19年検証であり、専門機関による検証結果を踏まえた判断は、平成19年検証を踏まえた平成20年度の改定が直前のものであった。平成20年度の改定に関しては、厚生労働大臣は、平成19年検証において、生活扶助基準の水準が一般所得世帯の消費水準と比較して高いという結果が得られており、生活扶助基準の水準を引き 下げる必要性が認められたことを踏まえつつも、平成20年当時の原油価格 の高騰等を含む社会経済情勢等を総合的に勘案して、生活扶助基準の水準を据え置くという判断を行っており、同年までの社会経済情勢等は既に同年度の改定において斟酌されているということができていた。そして、厚生労働大臣は、同年度の生活保護基準が法8条2項の規定に適合する妥当なものであることを前提として、平成19年検証以来となる定期的な検証を踏まえた 生活扶助基準の改定においては、平成20年以降の経済情勢を斟酌することとしたものである。 これに加え、平成20年以降の社会経済情勢により生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡が生じたのは、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の消費等の実体経済に大きな影響 を与え、賃金、物価及び家計消費等がいずれも大きく下落する状況に至ったことによるものである。デフレ調整は、このような平成20年以降の社会経済情勢によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するために行ったものである。 また、厚生労働大臣は、平成25年に本件改定が検討された当時において、 最新の総務省CPIの年次データは平成23年のものであったため、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 生活扶助相当CPIの設定の合理性ア総務省CPIの指数 おいて、 最新の総務省CPIの年次データは平成23年のものであったため、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 生活扶助相当CPIの設定の合理性ア総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含ま れており、生活扶助基準の改定の指標とする物価変動率を把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当でないと考えられた。この点、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては、民間最終消費支出の伸びが改定の指標とされているところ、その際には生活扶助費で支出されない費用を除外して算出されているほか、専門委員会による平成16年 検証、生活扶助基準検討会による平成19年検証及び基準部会における平成 25年検証においても、同様に生活扶助相当品目による支出額が検証に用いられている。また、生活扶助相当CPIの算出において対象とした具体的な品目についても、基準部会等の専門機関による検証において消費実態の分析に用いられている品目によるものであり、これは、もとより制度運用上生活扶助費により支出される品目を対象としているものであって、恣意性を排除 した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであるため、その判断自体に恣意的判断が入り込む余地がなく、十分な合理性がある。 イ生活扶助基準の改定は、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に基づいて行われており、昭和59年以降、毎年度の改定において は、このような考え方に立脚する水準均衡方式が採用され、一般国民の消費水準が改定の指標とされている。この点、デフレ調 という考え方に基づいて行われており、昭和59年以降、毎年度の改定において は、このような考え方に立脚する水準均衡方式が採用され、一般国民の消費水準が改定の指標とされている。この点、デフレ調整についても、水準方式と同じく、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚しており、一般国民の生活水準の変化を通じた相対的なものとして生活扶助 基準の水準を改定するものである。そして、このような観点からすると、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、家計調査により算出された一般国民のウエイトのデータを用いるのが適切と考えられた。 仮に、多数ある指数品目のうち、教養娯楽費等の特定の品目に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し、又はウエイトを調整するのであれば、厚 生労働大臣には、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて適格に説明することが求められる。また、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査のウエイトのデータと社会保障生計調査に基づくウエイトのデータを比較すると、両者のウエイトの違いは特定の品目に限られるものではなく、その違いの程度も一様ではない。その上、厚生労働省が平成22年に実施し た「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、生活保護受給世 帯においても、テレビ・パソコン等の教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビ・パソコン等の教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶 助相当品目と変わり 想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビ・パソコン等の教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶 助相当品目と変わりがない。 ウ原告は、生活扶助相当CPIの統計上の問題点や、パーシェ方式に関する問題点を指摘するが、いずれの点についても論理的に間違っているとはいえず、厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。 4 争点3(理由付記に係る瑕疵の有無) (原告らの主張)被告らが、原告らに通知した生活保護変更通知書には、理由が基準改定等としか記載されていないから、原告らにおいて、その記載自体からどの法律に基づき、どのような基準が適用され、どの項目の保護費が増えたり減ったりしたのかを一切了知することができない。したがって、原告らにおいて、不服申立てをすべき かどうか判断もできず、上記理由は提示がないに等しいか著しく不十分であるから、法56条等が要求する理由提示義務に違反する。 (被告らの主張)本件各決定は、同決定より前の時点で官報により周知されていた告示に伴って、当該告示のとおりの処分を行うものであり、本件各決定の時点においてはその内 容は確定していたから、行政庁の恣意が介入するおそれはない。また、上記のとおり、告示は官報で周知されていたことに加え、本件各決定の通知書とそれ以前の通知書を見比べることによっても、本件各決定を受けた時点で、保護基準の改定により生活扶助支給額が減額されたことは理解可能であるから、原告らの不服申立ての便宜を損なうものではない。 本件各決定の通知書における保護変更理由の記載は、当該決定に当たって理由 を付さなければならないとする法及び行政手続法の規定 原告らの不服申立ての便宜を損なうものではない。 本件各決定の通知書における保護変更理由の記載は、当該決定に当たって理由 を付さなければならないとする法及び行政手続法の規定の趣旨に反するものではないから、違法とはならない。

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