令和1(ネ)3134 損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月3日 東京高等裁判所 棄却 東京地方裁判所 平成27(ワ)390
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判決文本文25,531 文字)

主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 (略称は,原判決の例による。) 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人Yは,原判決別紙投稿目録記載1のウェブサイトに掲載された記事中,同目録記載2の記載部分を削除せよ。 3 被控訴人らは,被控訴人会社の発行する「週刊文春」に原判決別紙謝罪広告 目録記載1の内容の謝罪広告を,同目録記載2の要領に従い,1回掲載せよ。 4 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1100万円及びこれに対する平成26年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人Yは,控訴人に対し,550万円及びこれに対する平成27年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被控訴人会社は,控訴人に対し,1100万円及びこれに対する平成27年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 控訴人は,朝日新聞の記者であった平成3年当時,いわゆる従軍慰安婦問題(以下,単に「従軍慰安婦問題」という。)に関する新聞記事(原告記事 A及びB。原判決別紙原告執筆記事目録記載1及び2)を執筆,掲載した。 これに対し,被控訴人Yは,平成24年12月頃から平成26年11月頃までの間に,同記事の内容が捏造であるなどとする論文等を執筆し,書籍及び雑誌に掲載するとともに(Y論文A,C及びD),ウェブサイト(本件ウェブサイト)に投稿した(Y論文B)。また,被控訴人会社は,平成26年1 月及び同年8月に,被控訴人Yの上記論文と同趣旨の内容の記事2つ(文春 記事A及びB。うち文春記事Aは被控訴人Yによる発言を含む。)を (Y論文B)。また,被控訴人会社は,平成26年1 月及び同年8月に,被控訴人Yの上記論文と同趣旨の内容の記事2つ(文春 記事A及びB。うち文春記事Aは被控訴人Yによる発言を含む。)を同社が発行する「週刊文春」に掲載した。 本件は,控訴人が,上記各論文等の掲載や投稿又は記事の掲載により,控訴人の名誉が毀損され,更に名誉感情,プライバシー,平穏な生活を営む法的利益等が侵害されたなどと主張して,以下の各請求を求めた事案である。 ア被控訴人Yによる本件ウェブサイトへの投稿につき,被控訴人Yに対し,民法723条の類推適用又は人格権による妨害排除請求権に基づき,本件ウェブサイト上に投稿された論文の一部(原判決別紙投稿目録記載2)の削除(前記第1の2)イ被控訴人会社による文春記事(被控訴人Yの発言を含むもの)の掲載に つき,被控訴人らに対し,民法723条に基づき,「週刊文春」への謝罪広告の掲載(前記第1の3)ウ被控訴人会社による文春記事(被控訴人Yの発言を含むもの)の掲載につき,被控訴人らに対し,民法709条,719条に基づき,損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用の合計1100万円)及び遅延損害金(起算日は 不法行為後の日である平成26年2月1日,利率は民法所定の年5分)の連帯支払(前記第1の4)エ被控訴人Yによる論文等の掲載,投稿につき,被控訴人Yに対し,民法709条に基づき,損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用の合計550万円)及び遅延損害金(起算日は訴状送達の日の翌日である平成27年3月 7日,利率は民法所定の年5分)の支払(前記第1の5)オ被控訴人会社による文春記事(被控訴人Yの発言を含まないもの)の掲載につき,被控訴人会社に対し,民法709条に基づき,損害賠償金(慰謝料及び 日,利率は民法所定の年5分)の支払(前記第1の5)オ被控訴人会社による文春記事(被控訴人Yの発言を含まないもの)の掲載につき,被控訴人会社に対し,民法709条に基づき,損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用の合計1100万円)及び遅延損害金(起算日は訴状送達の日の翌日である平成27年3月7日,利率は民法所定の年5分)の 支払(前記第1の6) 原審は,控訴人の上記各請求をいずれも棄却した。これに対し,控訴人が控訴した。 前提事実,当事者の主張の構造と争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」中の第2の2から4までに記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正ア 6頁19行目の「Z」を「元朝鮮人従軍慰安婦として名乗り出たZ氏(以下「Z」という。)」に改める。 イ 6頁23行目の「摘示するものである。」の次に以下のとおり加える。 「このうち,Zについて「キーセンに身売りした」ことを記事に記載し なかったことに関する記述の事実摘示のポイントは,「Zが慰安婦にされた本当の理由(キーセンへの身売り)を控訴人が認識していて,この本当の理由を誤魔化すためにキーセンへの身売りによってZが慰安婦にさせられたとの事実を記事に書かず,逆に「地区の仕事をしている人」を持ち出したり,あるいは何も書かなかったりすることによって,意図的に事実と 異なる記事を書いたこと」というものである。」ウ 7頁3行目の冒頭に「「捏造」との表現は,上記のとおり,控訴人が事実と異なることを知りながらあえて記事を執筆したとの事実を摘示するものと解するのが相当であるが,」を加える。 エ 10頁16行目の「とんだ売国行為だ」を「とんでもない 上記のとおり,控訴人が事実と異なることを知りながらあえて記事を執筆したとの事実を摘示するものと解するのが相当であるが,」を加える。 エ 10頁16行目の「とんだ売国行為だ」を「とんでもない売国行為だ」 に改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の上記各請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,下記2のとおり原判決を補正し,下記3のとおり控訴審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか,原判決「事実及び理由」中の第3に 記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正 16頁12行目の「送り込まれた。」の次に「彼女たちは,砲弾の飛び交う戦場の仮設小屋やざんごうの中で,一日に何十人もの将兵に体をまかせた。」を加える。 17頁8行目の「著作」の次に「(初期の代表的著作として,ノンフィ クション作家千田夏光による「声なき女八万人の告発従軍慰安婦」〔昭和48年〕,「従軍慰安婦(正篇)」〔昭和53年〕等がある。千田は,書籍において「従軍慰安婦」という言葉を使用し,「挺身隊」の名で集められた総計20万人の朝鮮人女性のうち5万人ないし7万人が慰安婦にされたとした。吉田や千田の著作は韓国で翻訳出版されるなど,慰安婦 を巡る国内外の議論に大きな影響を与えた。)」を加える。 17頁8行目の「134」の次に「,乙8,24」を加える。 17頁12行目の「初めて紹介し,」の次に「その後,平成9年までの間に合計16本の記事(乙24別冊資料1は,そのうち外部筆者によるもの以外の13本である。)で吉田証言を取り上げた。」を加える。 18頁10行目の「甲1」の次に「,115」を加える。 18頁15行目の「大学 は,そのうち外部筆者によるもの以外の13本である。)で吉田証言を取り上げた。」を加える。 18頁10行目の「甲1」の次に「,115」を加える。 18頁15行目の「大学教授」の次に「(梨花女子大学教授で従軍慰安婦問題を調査し,当時,ハンギョレ新聞に「挺身隊(怨念の足跡)取材記」を連載し,大きな反響を呼んでいた。)」を加える。 18頁22行目の「朝日新聞社に籍を置きつつ,ソウルで」を「朝日新 聞社の語学留学生として,ソウルの延世大学校で」に改める。 18頁24行目の「原告は」の次に「,帰国後,大阪本社社会部に勤務し」を加える。 19頁10行目から11行目にかけての「朝鮮人女性のZ」を「朝鮮人女性(後にZと判明)」に改める。 19頁11行目の「テープの内容」を「聞き取り調査の内容」に改め る。 19頁12行目の「Z」を「その朝鮮人女性(後にZと判明)」に改める。 19頁15行目の末尾に「原告記事Aは,翌日の平成3年8月11日付け朝日新聞大阪本社版朝刊の社会面トップに,写真(上記録音テープを聞 いているSらの様子を控訴人が撮影したもの)付きで掲載された。」を加える。 19頁17行目の「署名記事」の次に「(写真なし)」を加える。 19頁23行目から24行目にかけての「新聞報道」の次に「(いずれもZの写真付きで大きく扱われている。)」を加える。 20頁18行目の「「1924年,・・・」を「「1924年,中国の吉林省で生まれたZさんは,生後間もなく父が死ぬと,母について平壌に行ったが,」に改める。 21頁13行目の「記者」の次に「(ソウル支局駐在記者であったT)」を加える。 24年,中国の吉林省で生まれたZさんは,生後間もなく父が死ぬと,母について平壌に行ったが,」に改める。 21頁13行目の「記者」の次に「(ソウル支局駐在記者であったT)」を加える。 21頁14行目の「記事」の次に「(いずれもZの写真付きで朝刊1面に掲載された。)」を加える。 22頁26行目の「Z及び原告の義母を含む遺族会の会員ら」を「Zを含む遺族会(控訴人の義母が常任理事を務めていた。)の会員ら」に改め る。 23頁1行目の「戦後補償」の前に「旧日本軍の軍人,軍属及びその遺族のほか従軍慰安婦3名(うち唯一の実名原告がZである。)が」を加える。 23頁21行目の末尾に「原告記事Bは,平成3年12月25日付け朝 日新聞大阪本社版朝刊5面の「語り合うページ」で連載されていた企画 「女たちの太平洋戦争」の欄に,写真(上記アの聞き取り調査を受けているZの様子を撮影したもの)付きで掲載された。」を加える。 23頁25行目の「U」の次に「(平成3年訴訟の支援団体であり,上記アの聞き取り調査にも同行した「M会」の代表。甲13)」を加える。 24頁18行目の「原告各記事について」の次に「,以下のとおり」を 加える。 24頁20行目の末尾に以下のとおり加える。 「X記者は韓国への留学経験もあり,韓国語に堪能な記者である。昨年(注:平成3年)6月にはその留学体験を記した本も出版している。そんなX記者の書くZさん(注:Z)の体験は,悲惨の一言に尽きる。「地区 の仕事をしている人」に騙されて,わずか17歳で従軍慰安婦にされた―従軍慰安婦制度の残酷性を告発するのに,これ以上の体験はないといえるだろう。ところがである。こうし 惨の一言に尽きる。「地区 の仕事をしている人」に騙されて,わずか17歳で従軍慰安婦にされた―従軍慰安婦制度の残酷性を告発するのに,これ以上の体験はないといえるだろう。ところがである。こうしたX記者の記事は実は重大な事実誤認を犯しているのだ。しかもそれはどう考えても間違えようのない類の誤認である。Zさんが会見をした翌日,韓国各紙はこれを大きく扱った。すでに その記事の中でZさんの経歴について,韓国紙は「生活が苦しくなった母親によって14歳のとき平壌にあるキーセンの検番に売られていった。3年間の検番生活を終えたZさんが初めての就職だと思って,検番の義父に連れられていった所が,北中国の日本軍300名余りがいる部隊の前だった(「ハンギョレ新聞」91年8月15日)とはっきり書いているのであ る。もちろん,たとえキーセンとして売られていったとしても,Zさんが日本軍の慰安婦として苦汁を舐めたことに変わりはない。しかし,女子挺身隊という名目で明らかに日本当局の強制力によって連行された場合と,Zさんのケースのような人身売買による強制売春の場合では,日本軍ないし政府の関与の度合いが相当に違うことも確かだ。それはとりもなおさ ず,記事を読む人々に従軍慰安婦というものを印象づけるインパクトの違 いとなる。まして「挺身隊」イコール「慰安婦」という俗説が通用している韓国のことを考えれば,Zさんが挺身隊という名目で,日本の国家権力によって強制的に連れていかれたかどうかは,事実関係の上で最も重要なポイントの一つだろう。会見の4日も前(注:平成3年8月11日)にZさんの存在をスクープしたX記者が,そうした事実を果たしてほんとうに 知らなかったのだろうか。まして,提訴後の弁護士同行取材の折にも,韓国語に堪能なX記者はそうした韓国 平成3年8月11日)にZさんの存在をスクープしたX記者が,そうした事実を果たしてほんとうに 知らなかったのだろうか。まして,提訴後の弁護士同行取材の折にも,韓国語に堪能なX記者はそうした韓国内の報道を知らずにいたのだろうか。 それだけではない。V弁護士たちが12月6日に東京地裁に提出した訴状(注:平成3年訴訟の訴状)にもZさんは「14歳からキーセン学校に3年間通ったが,1939年,17歳(数え)の春,「そこへ行けば金儲け ができる」と説得され,(中略)養父に連れられて中国へ渡った」ことが,しっかり記されているのである。これでは,X記者はある意図を持って,事実の一部を隠蔽しようとしたと疑われても仕方がないと私は思う。 まして最も熱心にこの問題に関するキャンペーンをはった朝日新聞の記者が,こうした誤りを犯すことは世論への影響から見ても許されない。」 24頁25行目の末尾に「朝日新聞においても,吉田の証言は信用できないとの認識は,日韓関係について記事を書くなど知識経験のある記者の間に広まっていた。しかし,朝日新聞社内において,出るまでの間,吉田供述の真偽について改めて紙面で検証しようとする動きは一切なく,吉田供述に関する記事の掲載が続けられた。」を加える。 25頁1行目から2行目にかけての「従軍慰安婦問題を取り上げ,その中で」を以下のとおり改める。 「従軍慰安婦問題を取り上げた。この時期に上記特集記事(編集局長,担当局次長のもとに,政治部・社会部・外報部の3部の合同取材チームを組む態勢で進められた。)が掲載されることとなった主要なきっかけは,その前 年(平成8年)に,いわゆる「歴史教科書問題」(翌年度から使用される予 定の中学校用歴史教科書に,我が国による朝鮮人の強制連行 れた。)が掲載されることとなった主要なきっかけは,その前 年(平成8年)に,いわゆる「歴史教科書問題」(翌年度から使用される予 定の中学校用歴史教科書に,我が国による朝鮮人の強制連行や慰安婦問題についての記述が掲載されることの是非を巡る論争)が広く取り上げられるようになり,議論の中で吉田供述の信憑性に関する論争が再燃し,朝日新聞の吉田供述に関する一連の記事に強い非難が集中したことであった。当時ソウル特派員であった控訴人は,外報部の担当デスクからの指示を受け,上記特 集記事のために,吉田が「人狩り」を行ったという韓国済州島に赴いて調査したが,吉田供述の裏付けとなる証言等は得られず,「いわゆる人狩りのような行為があったという証言は出てこなかった」と報告した。朝日新聞社は,平成8年12月頃から行った取材,調査等の結果を踏まえ」 25頁9行目の冒頭に「朝日新聞社としては,上記特集記事において 「真偽は確認できない」と結論付けたことから,吉田供述については事実上訂正したものと総括した。平成9年の上記特集記事の掲載後,社会部の担当デスクは,「以降,吉田証言は紙面で使わないように」と記載した「行政」(社内の連絡文書)を出したが,取材班の者ですら,その存在はほとんど把握していない状態であり,多くの関係者が「上記特集で解決済 みになった」との認識であったため,吉田供述について改めて検証されることはなかった(なお,第三者委員会は,その要因として,当事者意識の欠如,引継ぎの不十分さ,記事の訂正・取消しのルールの不明確さ等を指摘している。)。」を加える。 25頁18行目の「(甲134)が」の次に「,朝日新聞社は,その後 も約15年にわたって,記事の訂正等をすることなく,被控訴人Yは,その間に発表し 指摘している。)。」を加える。 25頁18行目の「(甲134)が」の次に「,朝日新聞社は,その後 も約15年にわたって,記事の訂正等をすることなく,被控訴人Yは,その間に発表した」を加える。 26頁20行目の冒頭から同21行目の「掲載した。」まで以下のとおり改める。 「平成23年12月に韓国の日本大使館前に慰安婦像が設置され,韓国政 府が慰安婦問題を大きく取り扱うようになってきたことを契機に,再び朝日 新聞の過去の報道が国内で批判されるようになった。これを受け,朝日新聞社は,平成24年5月ころから吉田供述に関する調査(吉田の所在等の確認,これまでに関与した主な記者に対する聞き取り等)を秘密裏に行っていたが,特段,紙面化する予定はなかった。しかし,平成26年2月中旬ころから,政府による河野談話の見直しが実際に行われることになった場合に は,改めて過去の報道姿勢も問われることになるとの危機感が高まり,慰安婦問題についての本格的な検証を行わざるを得ないとの考えが経営幹部を含む社内において強まってきた。また,他の報道機関や読者からも慰安婦問題に対する同社の報道姿勢(吉田供述に関する記事の訂正や取消しをいまだにしていないこと等)への批判が強まり,これが販売部数や広告にも影響を見 せ始めてきた。そこで,朝日新聞社は,同年3月下旬ころ,経営幹部の関与の下,上記検証を行うためのチームを立ち上げ,吉田供述の裏付け調査や過去の記事の執筆者(原告各記事の執筆者である控訴人を含む。)に対する聞き取り等の取材を行い,その結果を踏まえて,同年8月5日及び6日付けで,同社の過去の従軍慰安婦報道に関する検証記事(1面に編集担当〔編集 部門のトップ〕の論文を掲載するほか2日間で合計4頁を割いた。こ の取材を行い,その結果を踏まえて,同年8月5日及び6日付けで,同社の過去の従軍慰安婦報道に関する検証記事(1面に編集担当〔編集 部門のトップ〕の論文を掲載するほか2日間で合計4頁を割いた。このうち同月5日付けの記事を,以下「本件検証記事」という。)を掲載した。」 26頁22行目の「裏付けが得られず」の次に「,研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになり」を加える。 27頁18行目の末尾に以下のとおり加える。 「同年8月5日(本件検証記事)及び6日付けの検証記事が掲載された後,朝日新聞社の予想をはるかに超える他紙や週刊誌を始めとする極めて強い批判があった(なお,第三者委員会は,吉田供述を記事にするに際して裏付け調査が不十分であったことを「反省します」と述べるにとどまって,「慰安婦問題の本質は女性が自由を奪われ,尊厳を踏みにじられたことであ る」との主張を展開し,他メディアにも同様の誤りがあったことを指摘する という朝日新聞社の論調が,大きな批判を浴びることになった原因であると指摘している。)。これに対し,朝日新聞社は,当初,続報を出すことで対応しようと考えたが,批判に逐一反論するのは火に油を注ぐことになるおそれが高く,危機管理上望ましくないと判断し,同月28日の記事(河野談話が吉田供述に依拠していない旨の記事)以外は,続報の掲載を見送った。」 31頁1行目の末尾に改行の上,以下のとおり加える。 「 また,平成26年の本件検証記事については,「慰安婦にするための強制連行はあったのか,との疑問に対する回答は,問題の本質は「慰安所で女性が自由を奪われ尊厳を傷つけられたこと」であるといういわゆる「広義の強制性」の存在を指摘するものであり,その 安婦にするための強制連行はあったのか,との疑問に対する回答は,問題の本質は「慰安所で女性が自由を奪われ尊厳を傷つけられたこと」であるといういわゆる「広義の強制性」の存在を指摘するものであり,その姿勢は基本的に 97年特集の時と変わっていない。当委員会は,その主張内容自体の当否について論評するものではないが,強制連行に関する吉田証言を虚偽と判断し,記事を取り消す以上,吉田証言が強制連行・強制性の議論に与えた影響の有無等について丁寧な検証を行うべきであった。吉田証言の取消しよりも本項目を先に位置づけ(注:5つの検証項目のうち「強 制連行」を「『済州島で連行』証言」(吉田供述)の項目よりも先に取り上げ,自由を奪われた強制性があったと結論づけていることを指す。),「朝日新聞の問題意識は変わっていない」と結論づけることによって,かえって朝日新聞が吉田証言を取り消し,裏付け取材が不十分であった点につき反省しているという意図が読者に伝わらず,誠実でな いという印象を与えた」としている。」 31頁26行目の「というべきである」から32頁3行目までを以下のとおり改める。 「。名誉毀損の成否が問題となっている部分について,そこに用いられている語のみを通常の意味に従って理解した場合には,証拠等をもって その存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張している ものと直ちに解せないときにも,当該部分の前後の文脈や,記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし経験等を考慮し,その部分が,修辞上の誇張ないし強調を行うか,比喩的表現方法を用いるか,又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ,間接的ないしえん曲に証拠等をもってその存否を決することが可能 な他人に関 誇張ないし強調を行うか,比喩的表現方法を用いるか,又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ,間接的ないしえん曲に証拠等をもってその存否を決することが可能 な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるならば,同部分は,事実を摘示するものと見るのが相当であり,また,上記のような間接的な言及は欠けている場合であっても,当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると,当該部分の叙述の前提として証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を黙示的に主張 するものと理解されるならば,その部分も,事実を摘示するものと見るのが相当である(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁,最高裁平成15年(受)第1793号,同年(受)第1794号同16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)。」 32頁7行目から8行目にかけての「結婚していることを指摘する記載に続く記述であり」を「結婚しているとの情報を入手したとの記載に続く記述であり,この情報が事実なら」に改める。 32頁22行目の「Y去の捏造報道に関する記載に続く記述であり」を加える。 33頁3行目の「これらの」から同10行目の「相当である。」までを以下のとおり改める。 「これらの記述を,証拠(甲3)から認められる同各記述の前後の記述も踏まえ,Y論文Aの一般の読者の普通の注意と読み方を基準としてその意味内容を解釈すると,Y論文Aの,の各記述は,控訴人 は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有してい ることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合 ,の各記述は,控訴人 は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有してい ることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(以控訴人が,意図的に事実と異なる記事を書いたのは,権力による強制連行という前提を維持し,遺族会の幹部である義母の裁判を有利にするためであった(以下, この事実を「裁判所認定摘示事実2」という。)との各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,控訴人の行為が悪質である等の意見ないし論評を表明するものと解するのが相当であり,Yおいて用いられている「捏造」については,上記摘示事実と同様の事実を摘示するものと解するのが相当である。 この点,控訴人は,「裁判所認定摘示事実1」は,「Zが慰安婦にされた本当の理由(キーセンへの身売り)を控訴人が認識していて,この本当の理由を誤魔化すために,キーセンへの身売りによってZが慰安婦にさせられたとの事実を記事に書かず,逆に「地区の仕事をしている人」を持ち出したり,あるいは何も書かなかったりすることによって,控訴人が意図的 に事実と異なる記事を書いた」というものであると主張する。しかし,Y論文Aには,「Zが慰安婦にされた本当の理由がキーセンへの身売りである」との記述はなく,Y論文Aの各記述を,一般の読者の普通の注意と読み方を基準としてその意味内容を解釈しても,控訴人の上記の主張のようには解されない。」 33頁14行目の「義母」の前に「遺族会の幹部である」を加える。 34頁18行目の「Yる。」までを以下のとおり改める。 「YZが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知 の前に「遺族会の幹部である」を加える。 34頁18行目の「Yる。」までを以下のとおり改める。 「YZが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記 事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえて これを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1)図的に事実と異なる記事を書いたのは,権力による強制連行という前提を維持し,遺族会の幹部である義母の裁判を有利にするためであった(裁判所認定摘示事実2)との各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,控訴人の行為が大犯罪であるとの意見ないし論評を表明するものと解 するのが相当である。」 34頁26行目の「Y論文B①の記述は,」の次に「義母が,Zも参加する訴訟(平成3年訴訟)の原告らの組織(遺族会)の常任理事を務めた人物であるとの事実及び」を加える。 36頁5行目の「Y論文Cの各記述」から同13行目の「相当であ る。」までを以下のとおり改める。 「Y論文Cの各記述は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1) 図的に事実と異なる記事を書いたのは,権力による強制連行という前提を維持し,遺族会の幹部である義母の裁判を有利にするためであった(裁判Zが「女子挺身隊」の名で戦場に強制連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(以下,この事実を「裁判所認定摘示事実3」という。)と の各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,原告 連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(以下,この事実を「裁判所認定摘示事実3」という。)と の各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,原告各記事によって結果として義母らの裁判に有利な誤解が内外に広まった,事実関係の捏造は絶対にしてはならないとの意見ないし論評を表明するものと解するのが相当であり,Y論文Cにおいて用いられている「捏造」については,上記摘示事実と同様の事実を摘示するものと解するのが相当であ る。」 37頁13行目の「Y論文Dの各記述」から同19行目の「相当である。」までを以下のとおり改める。 「Y論文Dの各記述は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえて これを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1)Zが「女子挺身隊」の名で戦場に強制連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,原告各記事は義母らの裁判を結果的に有利にする内容であったとの意見ないし論評を 表明するものと解するのが相当であり,Yいられている「捏造」については,上記摘示事実と同様の事実を摘示するものと解するのが相当である。」 37頁24行目から25行目にかけての「原告記事Aの内容を紹介する記載」を「原告記事Aをきっかけにして,朝日新聞は,日本軍による強制 連行があったとの主張を大々的に展開していったが,その後の調査で同新聞の報道に重大な誤りがあったことが明らかになった旨を指摘する記載」に改める。 きっかけにして,朝日新聞は,日本軍による強制 連行があったとの主張を大々的に展開していったが,その後の調査で同新聞の報道に重大な誤りがあったことが明らかになった旨を指摘する記載」に改める。 38頁6頁の末尾に以下のとおり加える。 「文朝日新聞が引用した吉 田供述は,その後の調査で虚偽であることが明らかになっており,「誤った記事で日韓関係や日本の国際的イメージを悪化させた朝日新聞の責任は極めて重大であり,きちんと総括すべきである(Y)」との記載に続く記述であり,「総括すべきなのは,最初に署名入りで報じたX記者も同じだ。だが,なんと今年3月で朝日新聞を早期退社し,4月からPを代表す るお嬢様女子大,Q大学の教授になるのだという。」というものである。 した上,朝日新聞関係者の談として「本人は『ライフワークである日韓関係や慰安婦問題に取り組みたい』と言っているようです」というものである。」 38頁9行目の「文春記事Aの各記述及びY発言」から同12行目の 「相当である。」までを以下のとおり改める。 「文春記事A,の各記述及びY発言の各記述は,は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(裁判 所認定摘示事実1)Zが「女子挺身隊」の名で戦場に強制連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,控訴人は原告記事Aについてきちんと総括すべきであり,これをしないまま大学教授になるのは不適切であるとの意見ない えて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するとともに,その事実を前提として,控訴人は原告記事Aについてきちんと総括すべきであり,これをしないまま大学教授になるのは不適切であるとの意見ない し論評を表明するものと解するのが相当であり,Y発言)において用いられている「捏造」については,上記摘示事実と同様の事実を摘示するものと解するのが相当である。」 38頁12行目の「事実の摘示」の次に「及び意見ないし論評の表明」を加える。 38頁15行目の「事実を」から同16行目の末尾までを以下のとおり改める。 関係や慰安婦問題に取り組みたいと言っているとの事実をそれぞれ摘示するものと解されるが,上記各事実自体は控訴人の社会的評価を低下させる ものとは認められない。」 38頁18行目の「文春記事B表現部分は」の次に「,文春記事A(甲7)の報道内容を前提に」を加える。 38頁19行目の「記事」を「原告記事A」に改める。 38頁26行目の「摘示するものと解するのが相当である。」を「摘示するとともに,その事実を前提として,控訴人が,事実と異なる記事を用 いて韓国人留学生に対し「誤った日本の姿」を刷り込むとすれば,とんでもない売国行為であるとの意見ないし論評を表明するものと解するのが相当であり,文春記事B表現部分において用いられている「捏造」については,上記摘示事実と同様の事実を摘示するものと解するのが相当である。」に改める。 39頁1行目の「事実の摘示」の次に「及び意見ないし論評の表明」を加える。 39頁9行目の「真実と信ずるに」を「真実と信ずるについて」に改める。 39頁11行目の「民集20巻5号1 1行目の「事実の摘示」の次に「及び意見ないし論評の表明」を加える。 39頁9行目の「真実と信ずるに」を「真実と信ずるについて」に改める。 39頁11行目の「民集20巻5号1118頁」の次に「,最高裁昭和 56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁」を加える。 39頁18行目の「最高裁」の前に「最高裁昭和55年(オ)第1188号同62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁,最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・ 民集43巻12号2252頁,」を加える。 39頁24行目から40頁19行目の末尾までを以下のとおり改める。 「ア Y論文Aについて Y論文Aの各記述は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有している ことを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行と の前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1)を書いたのは,権力による強制連行という前提を維持し,遺族会の幹部である義母の裁判を有利にするためであった(裁判所認定摘示事実2)との各事実を摘示するものと解するのが相当である。 裁判所認定摘示事実1について 平成3年8月11日付けの原告記事Aは,控訴人が挺対協の事務所において,Zの発言が録音されたテープ及びSや挺対協のスタッフからの聞き取り等の取材結果をもとに執筆した記事であるが,上記録音テープその他控訴人の取材内容を 証するに足りる資料は現存せず,上記録音テープ等における,慰安婦になった経緯についてのZの発言内容は必ずしも明らかでは 果をもとに執筆した記事であるが,上記録音テープその他控訴人の取材内容を 証するに足りる資料は現存せず,上記録音テープ等における,慰安婦になった経緯についてのZの発言内容は必ずしも明らかではない。もっとも,控訴人は,Zからの聞き取りを行ったSからの「Zイ)も踏まえ,原告記事Aにおいて「女性の話によると,中国東北 部で生まれ,17歳の時,だまされて慰安婦にされた」と記載しているのであるから,Zは,上記録音テープにおいて「だまされて慰安婦にさせられた」と発言していたものとみるのが自然である。まZが同月14日に開いた共同記者会見に関する韓国内の新聞報道,北海道新聞社によるZに対 する単独インタビューの報道,平成3年訴訟の訴状におけるZに関する主張,「月刊宝石」(平成4年2月号)のUの論文等におけるZの経歴に関する内容は,総じて「キーセンの検番」とか「キーセン学校」などの経歴に触れているものの,慰安婦になった直接の経緯については,養父ないし義父等が関与し,営利を目的として人身 売買により慰安婦にさせられたことを示唆するものもあるが,養父 等から力づくで引き離されたというものもあって必ずしも一致していない。 以上によれば,控訴人が原告記事A執筆当時,「Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされた」という経歴を有していることを知っていたとまでは認められないし,原告各記事執筆当時,「権力による強 制連行との前提にとって都合が悪い」との理由のみから,あえてこれを記事にしなかったとまで認めることは困難である。 しかし,被控訴人YがY論文Aを執筆するに当たって閲読した,甲67)には「生活が苦しくなった母親によって14歳の時に平壌にあったキー センの検番に売られていった。3 ある。 しかし,被控訴人YがY論文Aを執筆するに当たって閲読した,甲67)には「生活が苦しくなった母親によって14歳の時に平壌にあったキー センの検番に売られていった。3年間の検番生活を終えたZさんが初めての就職だと思って,検番の義父に連れられて行った所が(中略)日本軍300名余りがいる小部隊の前だった。」との記載があること乙22)には「家が貧乏なため,Zも普通学校を辞め,子守りや手伝いなどをしていた。Wという人 の養女となり,14歳からキーセン学校に3年間通ったが,1939年,17歳(数え)の春,『そこへ行けば金儲けができる』と説得され(中略)養父に連れられて中国へ渡った」との記載があること「月刊宝石」(平成4年2月号)のU論文(乙10)には「14歳のとき,母が再婚したのです。私は新しい父を好きになれ ず,次第に母にも反発しはじめ,何度か家出もしました。その後平壌にあった妓生専門学校の経営者に40円で売られ,養女として踊り,楽器などを徹底的に仕込まれたのです。ところが,17歳のとき,養父は「稼ぎに行くぞ」と,わたしと同僚の「R」を連れて汽車に乗ったのです。」との記載があることからすれば,被控訴人Y は,上記各資料等を総合して,Zが経済的困窮のためにキーセンに 身売りされ,養父により人身売買により慰安婦にさせられたものであり,Zが自らその旨述べていると信じたと認められる。そして,上記各資料のうち,,Zの共同記者会見の内容を報じた韓国紙(民主化運動の中で創刊しリベラルな論調で知られる主要紙)の記事であり,同会見を報じた韓国各紙の報道ともおおむね一致す ,平成3年訴訟を提起するに当たり訴訟代理人弁護士らがZから聞き取った内容をまとめたものである,平成3年訴訟の支援団 れる主要紙)の記事であり,同会見を報じた韓国各紙の報道ともおおむね一致す ,平成3年訴訟を提起するに当たり訴訟代理人弁護士らがZから聞き取った内容をまとめたものである,平成3年訴訟の支援団体の代表を務めるジャーナリストがZと面談した内容を論文にしたものであり,いずれもその性質上,あえてZに不利な内容を記載することは考え難いことから すると,被控訴人Yが上記各資料等を総合して上記のとおり信じたことについては相当の理由があるというべきである。 そして,上記各資料の内容及び発表時期に加え,原告各記事の執筆当時,朝日新聞社は吉田供述を紹介する記事を掲載し続け,これに依拠して従軍慰安婦に関し日本軍等による強制連行があったとの立場を 明確にして報道していたこと(),国会でも当時,強制連行の有無が大きな争点とされていたこと(),養父等による人身売買ということになれば,日本軍等による強制連行とは全く異なってしまうことを総合すると,被控訴人Yが,控訴人は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有している ことを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事にしなかったと考えたことは推論として相応の合理性があり,被控訴人Yが上記各資料等を総合して上記のとおり信じたことについては相当の理由があるというべきである。 控訴人は,キーセンは芸妓であり,娼妓と違って性売買が予定され ていなかったと主張する。しかし,本件検証記事(甲30)においても,「韓国での研究によると,学校を出て資格を得たキーセンと遊郭で働く遊女とは区別されていた。」としつつ,「中には生活に困るなどして売春行為をしたキーセンもおり,日本では戦後, 事(甲30)においても,「韓国での研究によると,学校を出て資格を得たキーセンと遊郭で働く遊女とは区別されていた。」としつつ,「中には生活に困るなどして売春行為をしたキーセンもおり,日本では戦後,韓国での買春ツアーが「キーセン観光」と呼ばれて批判されたこともあった。」と 記載され,本件調査報告書(乙24)において「(原告記事A)がキーセン学校のことを書かなかったことにより,事案の全体像を正確に伝えなかった可能性はある。Xによる「キーセン」イコール慰安婦ではないとする主張は首肯できるが,それならば,判明した事実とともに,キーセン学校がいかなるものであるか,そこに行く女性の人生がどの ようなものであるかを描き,読者の判断に委ねるべきであった」とされていることからも見とれるように,日本の新聞読者においては,「キーセンに身売りされた」との経歴は,(それが正しいかどうかはともかく),「慰安婦として人身売買された者」とのイメージを抱かせ,このことは,日本軍による強制連行との前提に疑問を抱かせる事 実であるから,少なくとも,被控訴人Yにおいて,上記のとおり信じたことには相当の理由があるというべきである。」 40頁20行目の「平成10年頃から繰り返し」を「平成4年頃に原告各記事を批判する論考(「捏造」との表現は用いられていないものの,その主旨はその後の被控訴人Yの各論文とも共通している。)を発表し(認定事実 ,その後も繰り返し」に改める。 40頁22行目の「甲136」を「甲135」に改める。 41頁4行目の「原告の義母」から同6行目の「約4か月前に掲載され」までを以下のとおり改める。 「原告記事Aの執筆時点において,控訴人が,義母の裁判(平成3年訴 訟)の提訴予定を知っていたことを認めるに足 「原告の義母」から同6行目の「約4か月前に掲載され」までを以下のとおり改める。 「原告記事Aの執筆時点において,控訴人が,義母の裁判(平成3年訴 訟)の提訴予定を知っていたことを認めるに足りる証拠はなく,控訴人が 「義母の裁判を有利にするために事実と異なる記事を書いた」との事実が真実であるとまで認めることは困難である。もっとも,控訴人の義母が幹部を務める遺族会の会員らは,平成2年10月29日に日本政府を被告として公式謝罪と賠償を求める訴訟を提起していたこと(乙20),さらに,平成3年12月6日にはZも原告となって平成3年訴訟を提起したこと,平成3年 訴訟の原告らは日本軍が従軍慰安婦を女子挺身隊の名で強制連行したと明確に主張していたこと,原告記事Aは平成3年訴訟提起の約4か月前に掲載され(遺族会の当時の活動状況等や平成3年訴訟の内容等に照らすと,提訴までに相当長期間の準備期間を要したものと考えるのはむしろ自然である。)」 41頁10行目の「原告が」から同14行目の「甲136ないし139)。」までを「控訴人が,権力による強制連行という前提(これは平成3年訴訟の前提でもあった。)を維持し,義母の裁判(平成3年訴訟)を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたと考えたことについては,推論として相応の合理性がある。被控訴人Y (被控訴人Yは,韓国在住の義母にも取材した。甲3)を総合して上記のとおり信じたことについては相当の理由があるというべきである。 また,被控訴人Yが,平成4年頃に原告各記事を批判する論考を発表し,その後も繰り返し,公刊物において,裁判所認定摘示事実2を摘示して朝日 とおりである。」に改める。 41頁22行目の「Y論文Bの各記述」から同26行目の 記事を批判する論考を発表し,その後も繰り返し,公刊物において,裁判所認定摘示事実2を摘示して朝日 とおりである。」に改める。 41頁22行目の「Y論文Bの各記述」から同26行目の「摘示するところ」までを以下のとおり改める。 「YZが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記 事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえて これを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1)図的に事実と異なる記事を書いたのは,権力による強制連行という前提を維持し,遺族会の幹部である義母の裁判を有利にするためであった(裁判所認定摘示事実2)との各事実を摘示するところ」 42頁3行目の「Y論文Cの各記述は」から同9行目の末尾までを以下 のとおり改める。 「Y論文Cの各記述は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1) 図的に事実と異なる記事を書いたのは,権力による強制連行という前提を維持し,遺族会の幹部である義母の裁判を有利にするためであった(裁判Zが「女子挺身隊」の名で戦場に強制連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するものであ る。」 43頁2行目の「掲載していたこと」を以下のとおり改める。 「掲載し続けるなど,従軍慰安婦に関し日本軍等による強制連行があったとの立場を明確にして報道していたこと(本件調査報告書は,朝日新聞が,当 目の「掲載していたこと」を以下のとおり改める。 「掲載し続けるなど,従軍慰安婦に関し日本軍等による強制連行があったとの立場を明確にして報道していたこと(本件調査報告書は,朝日新聞が,当初は「狭義の強制性」を大々的にかつ率先して報道してきたにもか かわらず,平成9年の特集記事において「広義の強制性」の存在を強調したことは「議論のすりかえ」であること,吉田証言を虚偽と判断し,記事を取り消した平成26年の本件検証記事においても「広義の強制性」の存在を指摘しており,吉田供述が強制連行・強制性に与えた影響の有無等についての検証が不足していることを指摘している。なお,控訴人は,従軍 慰安婦の強制連行に関する吉田供述に言及した朝日新聞の記事がわずかし かなかった旨主張するが,原告各記事の前後にわたり,同社が吉田供述に依拠して強制連行があったとの立場で記事を掲載し続けていたことは明らかである。乙24。認定事実ウ)」 43頁14行目の「掲載している。」の次に以下のとおり加える。 「なお,控訴人は,Z自身が挺身隊であり強制連行されたということを 記者会見等で述べていたのであるから,上記訂正をする必要はなかった旨供述している。しかしながら,控訴人が供述するところによっても,せいぜいZが「挺身隊」の語を「慰安婦」の意味で用いたこと及び自身が意思に反して慰安婦とされたことを「強制連行」等と表現したことがあったというにすぎず,これと「女子挺身隊の名で戦場に連行され慰安婦にさせら れた」のとでは明らかに意味が異なる。控訴人自身,Zについては「暴力的に拉致する類の強制連行ではないと認識していた」というのであり,原告記事Aでは「『だまされて慰安婦にされた』とはっきり書いており,強制連行とは書いてい 意味が異なる。控訴人自身,Zについては「暴力的に拉致する類の強制連行ではないと認識していた」というのであり,原告記事Aでは「『だまされて慰安婦にされた』とはっきり書いており,強制連行とは書いていない。」とも述べているのであるから(甲9),原告記事Aが報道する事実の意味内容と控訴人が認識した事実とが異なってい たことは明らかであって,訂正不要との上記供述は,本件調査報告書の指摘にもあるように,「広義の強制性」を持ち出して「議論のすりかえ」をしたものというほかない。当時,朝日新聞社は,吉田供述等に依拠して「狭義の強制性」が認められるとの立場を明確にとっており,一連の報道において,そのことを示すものとして「(女子)挺身隊の名で連行」等の 表現を繰り返し用いていたことからすると,原告記事Aの「『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され」との表現もその一環として用いられたものとみるのが自然である。」 から同19行目の「当時」までを「及び同社の従軍慰安婦問題に対する 報道姿勢(吉田供述等に依拠して「狭義の強制性」を大々的にかつ率先し て報道していた。)を知っていたと優に推認されることからすれば,控訴人は,原告記事Aを執筆した当時(上記国会質疑においても,日本軍等による強制連行の有無が大きな争点となっていた。)」に改める。 44頁25行目から45頁2行目までを以下のとおり改める。 「 なお,控訴人は,原告記事Aの「連行され」とのリード部分は「強 制連行」とは書いておらず,本文中の記載に照らしても「だまされて連れて行かれた」との意味であり強制連行を意味しない旨主張する。 しかしながら,リード中の「『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され」との表現を一般の読者の普通の注意と読み に照らしても「だまされて連れて行かれた」との意味であり強制連行を意味しない旨主張する。 しかしながら,リード中の「『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され」との表現を一般の読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば,Zが日本軍等により「強制的に戦場に連れて行かれた」こ と,すなわち権力による強制連行を意味するものというべきであって,このことは,本文中に「だまされて」との一語があることによっても変わりがない。なお,当時,朝日新聞社は,吉田供述等に依拠して「狭義の強制性」を大々的かつ率先して報道していたことに照らすと,「だまされて」と「連行」とでは明らかに意味合いが異なり,同 社の記者である控訴人がこのことを意識せずに,単に戦場に連れて行かれたとの意味で「連行」という語を用いたとは考え難い。したがって,上記a及びbの認定判断は左右されない。」 45頁4行目の「共同会見に立ち会った新聞記者」を「同会見を取材 たハンギョレ新聞の記者(なお,同記者は,当時,「挺身隊」と「慰安婦」が明らかに異なることを知っていたため,上記記事においては「挺身隊」ではなく「慰安婦」の語を用いた旨述べている。甲111)」に改める。 45頁15行目の「同様である」の次に「(控訴人は,Y 「地区の仕事をしている人」自体が控訴人の創作である旨を指摘したもの であり,この点も摘示事実として認定されるべきであると主張するが,結局のところ,権力による強制連行との前提にとって都合の悪い内容を記事にしなかったという本質においては共通であり,上記主張を踏まえても前記認定判断を左右するに足りない。)」を加える。 45頁20行目の「Y論文Dの各記述は」から46頁1行目の末尾まで を以下のとおり改める。 ては共通であり,上記主張を踏まえても前記認定判断を左右するに足りない。)」を加える。 45頁20行目の「Y論文Dの各記述は」から46頁1行目の末尾まで を以下のとおり改める。 「Y論文Dの各記述は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(裁判所認定摘示事実1)Z が「女子挺身隊」の名で戦場に強制連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するところとおり,裁判所認定摘示事実1については真実相当性が認められる。な お,裁判所認定摘示事実1の相当性についての前記説示からすれば,被控訴人Yが,控訴人が義父等のキーセン関係者の関与をあえて記載しなかったと考えたことには相当性が認められるから,あえて誰がだましたのかを原告記事Aに記載しなかった旨の記載にも相当性が認められる。」 46頁3行目の「文春記事A及びY発言は」から同7行目の末尾までを 以下のとおり改める。 「文春記事A,の各記述及びY発言の各記述は,は,Zが経済的困窮のためキーセンに身売りされたという経歴を有していることを知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いため,あえてこれを記事に記載しなかった(裁判 所認定摘示事実1)Zが「女子挺身隊」の名で戦場に強制 連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するところ,上ては真実相当性が認められる。 Y発言)には, に強制 連行され,日本人相手に売春行為を強いられたとする事実と異なる記事をあえて書いた(裁判所認定摘示事実3)との各事実を摘示するところ,上ては真実相当性が認められる。 Y発言)には,Zが 「親に身売りされて慰安婦になったと訴状に書いた」旨の記載があるところ,平成3年訴訟の訴状には,「家が貧乏なため…普通学校を辞め」「Wという人の養女となり,14歳からキーセン学校に3年間通った」「17歳(数え)の春,『そこへ行けば金儲けができる』と説得され…養父に連れられて中国へ渡った」との記載があるものの,「親に身売りされて慰安 婦になった」との記載はない。しかしながら,前記のとおり,被控訴人Yは,上記訴状のほか,ハンギョレ新聞の平成3年8月15日付けの記事(甲67)や「月刊宝石」(平成4年2月号)のU論文(乙10)も上記発言の資料としており,これらには「キーセンへの身売り」を示唆する記載があったのであるから,上記訴状の援用に正確性に欠ける点があった としても,裁判所認定摘示事実1につき真実であると信じたことについて相当性を欠くとはいえない。」 46頁23行目の「原告の」の前に「朝日新聞社ないし」を加える。 48頁19行目の「文春記事Aは」から同22行目の「摘示した上で」までを以下のとおり改める。 「文春記事Aの各記述及びY発言の各記述は,裁判所認定摘示事実1及び裁判所認定摘示事実3を摘示した上で」 49頁1行目の冒頭から同2行目の「摘示するものであるが」までを以下のとおり改める。 「文春記事B表現部分は,控訴人が,従軍慰安婦問題について,事実と 異なる内容の記事を意図的に書いたとの事実を摘示するものであるが」 49頁9行目か 改める。 「文春記事B表現部分は,控訴人が,従軍慰安婦問題について,事実と 異なる内容の記事を意図的に書いたとの事実を摘示するものであるが」 49頁9行目から10行目にかけての「講義」の次に「(朝日新聞の記事を学生に読ませて日本国内の問題や国際情勢について考えてもらうというもの)」を加える。 49頁17行目の末尾に以下のとおり加える。 「この点,控訴人は,22年前にニュース記事を2本書いたにすぎない 一私人の就職先が当然に公共の利害に関わるとは思われないなどと主張する。しかしながら,朝日新聞社は平成26年の本件検証記事に至ってようやく過去の記事の誤りを認め謝罪したが,その検証内容についても「朝日新聞の自己弁護の姿勢が目立ち,謙虚な反省の態度も示されず,何を言わんとするのか分かりにくいもの」(本件調査報告書)だったと指摘されて いるのであって,この間,原告各記事を含む慰安婦問題に関する朝日新聞社の報道が与え続けた国内外への影響の大きさにも照らすと,平成26年当時においても非常に社会的関心が高い事柄であったことは明らかであり,単に「22年前にニュース記事を2本書いたにすぎない一私人」の問題などとみるのは相当でない。また,控訴人は,文春記事A及びBが単な る問題提起に止まるものではなく,控訴人の職を奪うことを目的としたものである旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。」 49頁22行目の「認められない。」の次に「読者による上記抗議の中にはおよそ正当な抗議活動とは評価し得ないような控訴人及び家族に対する誹謗中傷や脅迫に類する行為が含まれており,これらが卑劣な違法行為 であることはいうまでもないが,被控訴人会社がかかる違法行為を扇動したとか, 活動とは評価し得ないような控訴人及び家族に対する誹謗中傷や脅迫に類する行為が含まれており,これらが卑劣な違法行為 であることはいうまでもないが,被控訴人会社がかかる違法行為を扇動したとか,その結果を予見していたなどと認めるに足りる証拠はない(なお,平成26年3月の「週刊文春」〔甲94〕には,「大学にもクレームが入ったのか,受け持ちの授業がなくなった」との控訴人の義母の発言及び「4月の着任はなくなった」とのQ大学関係者の発言が記載されている が,これのみをもっては,被控訴人会社が上記のような違法行為の存在を 認識し,これを扇動したとは認められない。)。」を加える。 3 控訴審における控訴人の主張に対する判断 平成3年11月25日の証言テープについて控訴人は,令和元年8月22日になって,平成3年11月25日にZの証言を直接聴取した際の「証言テープ」(甲196ないし199)が,関係者 宅から偶然発見されたところ,上記「証言テープ」には「キーセン学校に通った」とか「キーセンに身売りされた」旨の証言はなく「キーセン」という単語さえ出てこなかったから,これを再現した原告記事Bで「キーセンに身売りされた」事実を記載しなかったことは当然であって,「意図的に事実と異なる記事を書いた」とはいえない旨主張する(なお,被控訴人らは,上記 「証言テープ」及びこれに基づく主張は,時機に後れた攻撃又は防御の方法と言わざるを得ないから却下すべきである旨主張するが,上記攻撃防御方法の提出が控訴人の故意又は重過失により時機に後れたとか,これにより訴訟の完結を遅延させることになるなどと認めるに足りる証拠はないから,上記主張には理由がない。)。 しかしながら,上記聞き取り調査に同席した市民団体「M会 機に後れたとか,これにより訴訟の完結を遅延させることになるなどと認めるに足りる証拠はないから,上記主張には理由がない。)。 しかしながら,上記聞き取り調査に同席した市民団体「M会」(代表であるU同証言の記録(「N通信」1991年第2号。甲14)においても,Zは,義父を好きになれず反発して何度か家出した末「結局,私は平壌にあったキーセンを養成する芸能学校に入」ったとの経緯(これは平成3年8月当時の韓国内の新聞報道の 内容に整合している。前記認定事実)が記載されていることに照らすと,上記「証言テープ」が上記聞き取り調査の際のZの証言の全てを記録したものとは認め難い(上記「証言テープ」に録音されていない証言内容があること自体は,控訴人も認めている〔甲220〕。また,控訴人自身,反論の手記〔甲9〕,陳述書〔甲115〕及び原審における原告本人尋問におい て,Zは「養父」については「全く語らなかった」とする一方,「キーセン 学校」については「あまりキーセンということに重きを置いていなかった」,「キーセン学校に通ったという事実は述べられていたと思うが,キーセン学校に通ったことと慰安婦にされたことを結びつけて考えなかった」ので記載しなかった旨述べており,上記主張とは整合しない。甲9,115)。加えて,前記のとおり,原告記事Bの執筆時点においては,Zの経歴 につき,キーセン学校に通っていたとかキーセンに身売りされたなどの韓国各紙の報道等もあったのであるから,被控訴人Yが,控訴人がこの経緯を知っていたが,このことを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いためにあえてキーセンに関する経緯を記載しなかったと考えることには相応の合理性があるというべきである。控訴人の上記「証言テープ」 とを記事にすると権力による強制連行との前提にとって都合が悪いためにあえてキーセンに関する経緯を記載しなかったと考えることには相応の合理性があるというべきである。控訴人の上記「証言テープ」 に基づく主張には理由がない。 インターネット記事による名誉棄損行為(Y論文B)について控訴人は,インターネット記事による名誉棄損行為は,名誉毀損に該当する言質を日々公開し続けているという意味で,投稿日から削除日まで一つの行為が継続しており,全体で一個の継続的不法行為であると解すべきであ り,その当然の帰結として,相当性の判断時点は,名誉毀損を内容とする記事の公表が終了した時点(削除時点)となる,本件訴訟で提出された全ての資料,とりわけ,控訴審で提出したZの「証言テープ」(甲196ないし199)により,Zは,名乗り出た当初から,キーセンの検番に売られたという事実を一貫して 控訴人に「事実と異なる記事を書く」意図がないことの3つが確実に立証されたから,少なくとも,この点について相当性が認められる余地はなく,いまだ削除されていないY論文Bについての削除請求及び損害賠償は認められるべきであるなどと主張する。 しかしながら,本件ウェブサイトへのY論文Bの掲載は一回的な行為であ り,当初の執筆・投稿で終了している上,被控訴人Yが本件ウェブサイト (被控訴人Yとは別の主体である「O委員会」のサイトである。)から容易に記事を削除できる立場にあると認めるに足りる証拠もないから,本件ウェブサイト上からY論文Bが削除されていないことをもって,被控訴人Yが継続的に掲載行為を行っているとは認め難い。また,この点を措いても,上記 おりであり,控訴人主張に係る上記各事実が確実に立証されたとは認められない。 が削除されていないことをもって,被控訴人Yが継続的に掲載行為を行っているとは認め難い。また,この点を措いても,上記 おりであり,控訴人主張に係る上記各事実が確実に立証されたとは認められない。投稿時から現時点までにおける資料等をもとに判断したとしても,Y論文Bの摘示事実については,真実相当性が認められるというべきである。 第4 結論以上によれば,本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することと し,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官白石史子 裁判官角井俊文 裁判官大垣貴靖

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