平成25(ワ)347

裁判年月日・裁判所
平成27年3月12日 広島地方裁判所
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判決文本文15,236 文字)

主文 1 被告は,原告会社に対し,118万5000円及びこれに対する平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Aに対し,27万円及びこれに対する平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告会社に生じた費用の全部と被告に生じた費用の3分の2を5分し,その4を原告会社の負担とし,その余を被告の負担とし,原告Aに生じた費用の全部と被告に生じたその余の費用を10分し,その9を原告Aの負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告会社に対し,663万6121円及びこれに対する平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Aに対し,335万円及びこれに対する平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告Aが運転し,原告会社が所有する自動車が,地方公共団体である被告が管理する道路を走行していたところ,降雨のため冠水した箇所に進入して走行不能となった事故について,道路の設置又は管理に瑕疵があったため損害を被ったと主張して,国家賠償法に基づく損害賠償として,原告会社が被告に対して663万6121円及びこれに対する違法行為の日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,原告Aが被告に対して335万円及びこれに対する違法行為の日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年 9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,原告Aが被告に対して335万円及びこれに対する違法行為の日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の 割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認めることができる事実)原告会社は,一般区域貨物自動車運送事業を行うことを業とする会社であり,原告Aは原告会社の従業員である。 次の事故(以下「本件事故」という。)が発生した。(甲1,乙1)ア日時平成24年9月11日午前2時30分頃イ場所四国中央市B町Cウ事故車両原告会社が所有する普通貨物自動車(自動車登録番号は広島○○○か×××××。以下「本件車両」という。)(甲9)エ運転者原告Aオ事故態様 D線のうちJR高架下の地面よりも低くなっているアンダーパスの部分(以下「本件アンダーパス」という。)が降雨のため冠水していたところ,北から南に向かって走行中の本件車両が冠水箇所に進入し,走行不能となり,運転席に水が浸入した。原告Aは,水圧のためドアを開けることができなかったため,運転席側の窓ガラスを破壊して脱出した。 被告は,本件事故現場の道路(以下「本件道路」という。)を管理している地方公共団体である。 本件事故現場から約100m北側の箇所(本件アンダーパスの入口付近の箇所)には,可動式の遮断機(以下「本件遮断機」という。)が設置され,本件事故現場から約200m北側の箇所の道路脇には,回転灯(以下「本件回転灯」という。)付きの道路情報掲示板(以下「本件掲示板」という。)が設置されている。(甲4,5,乙4)本件事故当時,本件遮断機は下りていなかった(なお,本件掲 路脇には,回転灯(以下「本件回転灯」という。)付きの道路情報掲示板(以下「本件掲示板」という。)が設置されている。(甲4,5,乙4)本件事故当時,本件遮断機は下りていなかった(なお,本件掲示板及び本件回転灯が作動していたかどうかは,当事者間に争いがある。)。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 国家賠償責任の有無(原告らの主張)ア国家賠償法1条1項の責任本件事故現場は,降雨により冠水することが予測されるアンダーパスである。平成24年9月10日の雨量は,午後10時から午後11時までが9㎜,午後11時から翌日午前0時までが54㎜,同月11日の雨量は,午前0時から午前1時までが43㎜,午前1時から午前2時までが58㎜,午前2時から午前3時までが54㎜であった。被告の職員2名は,同月10日午後11時30分に本件アンダーパスに到着した際,本件遮断機を下ろして道路を閉鎖するか,降雨の状況に応じた対応をすることができるように,現場に待機すべきであるにもかかわらず,これを怠った。 増大していたから,被告は,本件事故現場が冠水することを予見することができた。被告は,遅くとも同日午前1時頃までに,本件遮断機を下ろして道路を閉鎖すべきであったにもかかわらず,これを怠った。 被告の職員2名は,本件事故現場を離れた際,非常通報装置をリセットすべきであるにもかかわらず,これを怠った。そのため,平成24年9月11日午前0時頃から午前2時30分頃まで,被告の職員が本件事故現場に再度出動して本件遮断機を下ろして道路を閉鎖する機会がなくなった。 したがって,被告の職員2名には,その職務を行うについて過失があるから,被告は,原告らに対し,国家賠償法1条1項に基づく責任を負う。 イ国家賠償法2条1項の責任 る機会がなくなった。 したがって,被告の職員2名には,その職務を行うについて過失があるから,被告は,原告らに対し,国家賠償法1条1項に基づく責任を負う。 イ国家賠償法2条1項の責任平成24年9月11日午前0時以降,急激に本件アンダーパスの水位 が上昇しているにもかかわらず,本件アンダーパスに設置されている非常通報装置は,故障等のため作動しなかった。 原告Aが本件車両を運転して本件アンダーパスに進入した際,本件遮断機は下ろされておらず,本件掲示板及び本件回転灯は故障等のため作動していなかった。 したがって,被告による本件道路の設置又は管理には瑕疵があるから,被告は,原告らに対し,国家賠償法2条1項に基づく責任を負う。 (被告の主張)ア国家賠償法1条1項の責任について道路等の公の営造物の設置,管理行為は,国家賠償法1条1項の規定する「公権力の行使」には該当しないから,被告が同条に基づく責任を負うことはない。 イ国家賠償法2条1項の責任について本件アンダーパスにおける冠水による事故を防止するための物的設備としては,道路情報掲示板(本件掲示板),回転灯(本件回転灯),排水ポンプ,非常通報装置及び遮断機(本件遮断機)があるところ,本件事故当時,これらの設備には,物理的,外形的欠陥はなかった。 本件掲示板,本件回転灯,排水ポンプ及び非常通報装置は,いずれも正常に作動していた。 b 被告の担当職員2名は,平成24年9月10日午後11時頃,本件事故現場の排水ポンプが2台運転になったとの連絡を受け,本件アンダーパスに赴いたところ,地下タンクは高水位となっておらず,そのため,本件掲示板と本件回転灯が作動していないことを確認した。担当職員らは,路面の状況を確認したところ,冠水しておらず,周辺の水路 ンダーパスに赴いたところ,地下タンクは高水位となっておらず,そのため,本件掲示板と本件回転灯が作動していないことを確認した。担当職員らは,路面の状況を確認したところ,冠水しておらず,周辺の水路からの水の流入もなかった。同月11日午前0時頃においては,降雨は小康状態になっていた。これらによると,担当職員らが冠水に よる水没事故が発生する可能性を相当程度の具体性をもって予見することはできず,本件事故の発生について予見可能性はなかった。担当職員らが,今後冠水の危険はないと考え,本件遮断機を下ろして道路を閉鎖することなく本件アンダーパスを離れたことは,被告の管理体制の不備に当たらない。今回のような局地的豪雨では,担当職員らが現場を離れた後に再度雨量が激しくなるという情報を得ることは困難であるし,現場の天候については,災害対策本部ではなく現場の職員らが一番よく分かるのであるから,被告の対応に落ち度はない。 c 本件事故当時,1時間当たりの雨量は50㎜を超えており,豪雨による水しぶきのため一面が白っぽく映り,車道と歩道の区別をすることができず,ワイパーを最も早く動かしても前方の視界を確保することがほとんどできず,自動車の運転は危険とされる状況にあったにもかかわらず,原告Aは,本件車両を停車させて雨が止むのを待つことなく,漫然と走行を続けたため,本件事故が発生した。本件事故は,一般人であれば通常とらない行動により発生したものである。 d したがって,本件道路の設置及び管理に瑕疵はない。 本件事故当時,1時間当たりの雨量は50㎜を超え,豪雨による水しぶきのため一面が白っぽく映り,車道と歩道の区別をすることができず,ワイパーを最も早く動かしても前方の視界を確保することがほとんどできず,自動車の運転は危険とされる状況にあった。仮に 豪雨による水しぶきのため一面が白っぽく映り,車道と歩道の区別をすることができず,ワイパーを最も早く動かしても前方の視界を確保することがほとんどできず,自動車の運転は危険とされる状況にあった。仮に被告が本件遮断機を下ろして本件アンダーパスを閉鎖したとしても,原告Aは,これに気付かず,本件遮断機を破損してそのまま本件アンダーパス内の冠水箇所に進入したであろうことは容易に想像できるから,本件道路の設置又は管理の瑕疵と本件事故との間に相当因果関係はない。 過失相殺の当否(被告の主張) 本件事故当時,1時間当たりの雨量は50㎜を超え,豪雨による水しぶきのため一面が白っぽく映り,車道と歩道の区別をすることができず,ワイパーを最も早く動かしても前方の視界を確保することがほとんどできず,自動車の運転は危険とされる状況にあった。原告Aは,本件車両の運転を中止し,雨が止むのを待つべきであったにもかかわらず,本件車両の走行を続け,県道13号線を右折した後,本件掲示板及び本件回転灯の表示を見落としたままD線を時速20~30㎞で走行させ,これと同程度の速度で本件アンダーパス内に進入したため,本件事故が発生した。原告Aには過失があるから,仮に被告に法的責任が認められるとしても,原告らに生じた損害の8割について過失相殺されるべきである。 (原告らの主張)本件事故当時,悪天候のため本件車両を運転することは危険な状況にあったが,場所をわきまえずに直ちに運転を中止すると,他の事故を誘発する危険があるから,原告Aは,広い国道に出て,パーキングエリアがあればそこで止まって様子を見ようと考えて,本件車両を運転していた。原告Aが本件車両の運転を直ちに中止しなかったことを理由に過失相殺することは不当である。 原告会社の損害額(原告 エリアがあればそこで止まって様子を見ようと考えて,本件車両を運転していた。原告Aが本件車両の運転を直ちに中止しなかったことを理由に過失相殺することは不当である。 原告会社の損害額(原告会社の主張)原告会社は,本件事故により,次のとおり,合計663万6121円の損害を被った。 ア本件車両の移動費用及び修理費用 394万6121円原告会社は,走行不能となった本件車両のレッカー移動費用17万円及び本件車両の修理費用377万6121円の合計394万6121円を要した。 イ運送経費等 10万円 原告会社は,本件事故後,本件車両の荷物である鉄骨の柱を他の車両2台に積み替えた上で,目的地まで運送した。その際,原告会社は,東予市から観音寺市の現場まで荷物を運送するための余分の経費及び高速道路の通行料として1万5000円,荷物の積替えのための作業経費(玉掛け作業員2名分の人件費)として3万5000円を要した。また,原告会社は,荷主に対し,荷主との間で取り決めていた運送料5万円を請求することができず,同額の損害を被った。 ウ休車損害 120万円15t車である本件車両の1か月当たりの売上げは約90万円であり,経費は約45万円であるから,利益は約45万円である。本件車両の1か月当たりの稼働日数は22日であるから,1日当たりの休車損害は2万円となる。休車期間は60日であるから,休車損害は120万円となる。 エ車検費用 69万円本件車両は,次回の車検まで9か月余の期間を残して使用不能となった。 直近の車検費用92万7520円(12か月分)のうち9か月分に対応する金額は69万円である。 オ弁護士費用 70万円カ合計額 663万6121円(被告の主張)ア本件車両の移動費用及び修理 検費用92万7520円(12か月分)のうち9か月分に対応する金額は69万円である。 オ弁護士費用 70万円カ合計額 663万6121円(被告の主張)ア本件車両の移動費用及び修理費用について本件車両の移動に要したレッカー代17万円の限度で認める。本件車両は経済的全損になっており,その時価は200万円である。 イ運送経費等について否認する。原告会社主張の損害は発生していない。 ウ休車損害について否認する。原告会社は,本件事故当時,遊休車両を所有していた。 エ車検費用について未経過分の車検費用は,本件車両の時価の評価に包含されており,別途損害となるものではない。 原告Aの損害額(原告Aの主張)原告Aは,本件事故により,次のとおり,合計335万円の損害を被った。 ア慰謝料 300万円原告Aは,本件事故の際,水没した本件車両の運転席に閉じ込められ,溺死する寸前の状況に追い込まれ,死の恐怖と不安にさらされ,著しい精神的苦痛を被った。これを慰謝するための慰謝料は,300万円を下らない。 イ携帯電話代 5万円本件事故により,原告Aの所有する携帯電話が破損し,使用不能となった。その購入価格5万円が損害となる。 ウ弁護士費用 30万円エ合計額 335万円(被告の主張)ア慰謝料について原告Aは本件事故の際に負傷していない。客観的には死の危険性はなかったから,慰謝料は発生しない。 イ携帯電話代について否認する。 第3 当裁判所の判断 1 事実関係後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 本件事故現場である本件アンダーパスには,地下タンクの水位が一定の数 値に達すると,非常通 の判断 1 事実関係後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 本件事故現場である本件アンダーパスには,地下タンクの水位が一定の数 値に達すると,非常通報装置が作動し,被告の担当部署に連絡が入るという通報管理システムが設けられている。その概要は,次のとおりである。(乙5~7,21,証人E)ア本件アンダーパスには,冠水を防止するため,深さ2.1mの地下タンクには,2台の排水ポンプが設置されている。地下タンク内に流入した雨水の水位がタンク底面から1.2m(道路高よりも0.9m低い位置)に達したときに排水ポンプ1台が,雨水の水位が地下タンク底面から1.7m(道路高よりも0.4m低い位置)に達したときに排水ポンプ全2台が運転を開始し,排水をする。 イ排水ポンプが2台運転になると同時に,非常通報装置が作動し,電話回線を通じて,市交換又はF宿直室に自動的に連絡が入る。平日昼間には,市交換の職員から建設課に,平日夜間や休日には,F宿直室の職員から建設課担当職員に電話連絡がされる。 ウ地下タンク内に流入した雨水の水位がタンク底面から1.8m(道路高よりも0.3m低い位置)に達したとき,本件アンダーパスの手前の道路脇に設置されている本件掲示板及び本件回転灯(甲4,5,乙4)が作動する。本件掲示板には,「通行止」の表示がされる。 エ上記イの連絡があったとき,市交換又はF宿直室から建設課の職員に連絡がされ,担当職員が現場に出動し,現場の状況を確認した上,必要と判断したときは,本件遮断機を下ろして本件アンダーパスを閉鎖するとともに,警察署,消防署等の関係機関に連絡する。本件アンダーパスの閉鎖にまで至らない場合は,随時,災害対策本部と連絡を取り合いながら,状況に応じて現場で待機する。 平成24年 ーパスを閉鎖するとともに,警察署,消防署等の関係機関に連絡する。本件アンダーパスの閉鎖にまで至らない場合は,随時,災害対策本部と連絡を取り合いながら,状況に応じて現場で待機する。 平成24年9月10日から同月11日にかけての本件事故現場付近(四国中央市B町G)における雨量は,①10日午後10時から午後11時までが9㎜(累計9㎜),②同日午後11時から11日午前0時までが54㎜(累 計63㎜),③11日午前0時から午前1時までが43㎜(累計106㎜),④同日午前1時から午前2時までが58㎜(累計164㎜),⑤同日午前2時から午前3時までが54㎜(累計218㎜)であった。(乙3,18の1~3) らF宿直室に自動通報が入った。F宿直室に勤務していたH(公益社団法人四国中央市シルバー人材センターから派遣された職員。以下「H」という。)は,所定の連絡網に従って,建設課のE(以下「E」という。)及びI(以下「I」という。)に連絡した。EとIは,同日午後11時30分頃,本件アンダーパスに到着した。本件事故現場の約200m北側の道路脇に設置されている本件掲示板及び本件回転灯は点灯しておらず,本件アンダーパスは冠水していなかった。排水ポンプは1台のみが作動しており,降雨は小康状態になっており,間もなくその1台の作動も停止したことから,EとIは,本件遮断機を下ろして本件アンダーパスを閉鎖する措置をとらず,同月11日午前0時頃,現場を離れた。(乙10~12,20,21,証人E)EとIが現場を離れた後,本件アンダーパス付近は局地的豪雨になった。 平成24年9月10日午後11時31分7秒,同月11日午前0時46分8F宿直室に自動通報が入ったが,Hは,いずれの通報時も,建設課の担当職員に対して所定の連絡をしなかった。(乙20,証人E) た。 平成24年9月10日午後11時31分7秒,同月11日午前0時46分8F宿直室に自動通報が入ったが,Hは,いずれの通報時も,建設課の担当職員に対して所定の連絡をしなかった。(乙20,証人E)大雨警報が発令されたため,被告は,平成24年9月11日午前1時32分,災害対策本部を設置した。(乙13)原告Aは,平成24年9月10日午後10時30分頃,広島県東広島市内の車庫を出発し,香川県観音寺市内の建築現場に向かった。本件車両の最大積載量は14.2t,車両重量は10.37tであり(甲9),出発時,本件車両には約9tの鉄骨が積載されていた。 原告Aは,平成24年9月11日午前1時頃,休憩を終えて出発したところ,その頃から,雨が強く降るようになった。水しぶきのため,前方の一面が白っぽく映り,車道と歩道の区別をすることができず,前照灯を上向きにし,ワイパーを最も早く動かしても,前方の視界をほとんど確保することができない状態になったが,原告Aは,走行を続け,同日午前2時30分頃,本件アンダーパスに差し掛かった。 原告Aは,実際には冠水している箇所が平坦な路面のように見えたため,そこから高架まで十分な高さがあるから通行可能であると判断して,時速約30㎞で本件アンダーパスに進入した。原告Aは,斜面の途中で異常に気付き,ブレーキをかけたが,本件車両は停止することなく,冠水箇所に進入し,エンジンが停止した。水圧のため,原告Aは,本件車両のドアを開けることができなかった。間もなく,ドアの隙間から水が浸入し,運転席の上部にまで達した。原告Aは,ドアのガラスを足で蹴って破壊し,本件車両から脱出した。(甲2の7,甲12,13,17,証人J,原告A本人)本件事故当時,本件掲示板と本件回転灯は,いずれも正常に作動していた。 ( た。原告Aは,ドアのガラスを足で蹴って破壊し,本件車両から脱出した。(甲2の7,甲12,13,17,証人J,原告A本人)本件事故当時,本件掲示板と本件回転灯は,いずれも正常に作動していた。 (甲4,5,乙21,証人E)(この点について,原告らは,本件事故当時,本件掲示板及び本件回転灯はいずれも正常に作動していなかったと主張し,原告Aの陳述書(甲12)及びJの陳述書(甲13)にはこれに沿う記載がある。しかし,証人Jは,本件掲示板が点灯していたかどうかをしっかり確認したわけではなく,実際はよく覚えていないと証言し,原告A本人は,本件掲示板をしっかりと見たことはなかったと供述していることからすると,上記各陳述書(甲12,13)の記載内容は採用することができない。また,証拠(乙9)によると,本件が行われた際,異常がなかったことを認めることができる。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。) 本件道路の管理の瑕疵についてア国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであると解される(最高裁判所昭和53年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁)。 イは,降雨時に冠水するおそれがあるアンダーパスであること,被告の担当職員2名が通報を受けて本件アンダーパスに赴いた際には,本件アンダーパスは冠水していなかったが,本件アンダーパスを離れた後,雨量が急激に増加したこと,平成24年9月11日午前0時46分8秒及び午前0時47分56秒にも非常通報装置からF宿直室に自動通報が入ったことからすると,被告は,大量の降雨のため本件事故現場の水位が上昇して本件アンダー こと,平成24年9月11日午前0時46分8秒及び午前0時47分56秒にも非常通報装置からF宿直室に自動通報が入ったことからすると,被告は,大量の降雨のため本件事故現場の水位が上昇して本件アンダーパスが冠水することを具体的に予見することができたということができる。 スの手前に設置されている本件掲示板と本件回転灯によって,本件アンダーパスが通行止めとなっていることを表示し,通行車両に対して注意を促本件事故当時,大量の降雨が続いており,前方の視界を十分に確保することが困難な状態にあったから,車両の運転者が道路脇に設置されている本件掲示板と本件回転灯の表示内容を見落としたまま本件アンダーパス内に進入することも想定される。そうすると,通行車両に対して本件掲示板と本件回転灯によって注意を促すだけでは,通行車両が本件アンダーパスに誤って進入することを防止するための措置として十分であるということは 当時,本件遮断機を下ろして本件アンダーパスを閉鎖したり,誘導員を配置するなどして,通行車両が本件アンダーパスに誤って進入することを防止するための実効的な措置をとらなかったことが認められる。 以上によると,本件道路の管理には瑕疵があったということができる。 ウこの点について,被告は,今回のような局地的豪雨では,現場を離れた後に再度雨量が激しくなるという情報を得ることは困難であるし,現場の天候については,災害対策本部ではなく現場の職員らが一番よく分かるのであるから,被告の対応に落ち度はないと主張する。 に非常通報装置を設置し,被告の担当職員が本件アンダーパスを離れた後も,合計3回にわたり,非常通報装置からF宿直室に自動通報が入ったことからすると,被告は,その時点における降雨の状況に応じた措置をとる被告の担当職員が本件アンダー 当職員が本件アンダーパスを離れた後も,合計3回にわたり,非常通報装置からF宿直室に自動通報が入ったことからすると,被告は,その時点における降雨の状況に応じた措置をとる被告の担当職員が本件アンダーパスを離れた後,再度本件アンダーパスに行かなかったのは,被告における連絡体制の不備によるものであるということができる。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ被告は,本件事故は原告Aが一般人であれば通常とらない行動により発生したものであるから,本件道路の設置及び管理に瑕疵はないと主張する。 しかし,上記イ認定のとおり,被告は,本件事故当時,本件遮断機を下ろして本件アンダーパスの通行を規制する措置をとらなかったことからす前方の視界を確保することが困難な状態にあったからといって,本件事故は,原告Aが一般人であれば通常とらない行動により発生したものであるということはできない。 因果関係について ア原告A本人)によると,原告Aは,前方を見ながら,時速約30㎞で本件車両を走行させていたことを認めることができる。これによると,本件事故当時,被告が本件遮断機を下ろして本件アンダーパスの通行を規制する措置をとったならば,本件車両は本件アンダーパスに進入しなかった可能性が高いと認められるから,本件道路の管理の瑕疵と本件事故との間には因果関係があるいうことができる。 イこれに対し,被告は,仮に被告が本件遮断機を下ろして本件アンダーパスを閉鎖したとしても,原告Aは,これに気付かず,本件遮断機を破損してそのまま本件アンダーパス内の冠水箇所に進入したであろうから,本件道路の管理の瑕疵と本件事故との間に因果関係はないと主張する。 しかし,上記ア認定のとおり,原告Aは,本件事故当時,前方を見ながら,時速約30㎞で本件車 内の冠水箇所に進入したであろうから,本件道路の管理の瑕疵と本件事故との間に因果関係はないと主張する。 しかし,上記ア認定のとおり,原告Aは,本件事故当時,前方を見ながら,時速約30㎞で本件車両を走行させていたことからすると,仮に被告が本件遮断機を下ろして本件アンダーパスの通行を規制していたならば,原告Aは,本件遮断機の手前でその存在に気付き,本件アンダーパスに進入しなかった可能性が高いということができる。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 証拠(乙22)によると,一般に,1時間当たりの雨量が50㎜以上になると,屋外は水しぶきで辺り一面が白っぽくなり,視界も悪くなり,自動車から午前2時までが58㎜,午前2時から午前3時までが54㎜であったこと,②原告Aは,本件事故当時,水しぶきのため,前方の一面が白っぽく映り,車道と歩道の区別をすることができず,前照灯を上向きにし,ワイパーを最も早く動かしても,前方の視界をほとんど確保することができない状態であったにもかかわらず,本件車両の運転を続けたこと,③原告Aは,本件 アンダーパスの手前に設置されている本件掲示板が「通行止」の表示をしていたにもかかわらず,これを見落としたことを認めることができる。これらによると,原告Aには,本件事故の発生について,過失があったということができる。原告Aの過失,本件道路の管理の瑕疵の内容等を総合考慮すると,本件においては,過失相殺として,原告らに生じた損害の5割を減ずるのが相当である。 これに対し,原告らは,本件事故当時,悪天候のため本件車両を運転することは危険な状況にあったが,場所をわきまえずに直ちに運転を中止すると,他の事故を誘発する危険があるから,原告Aは,広い国道に出て,パーキングエリアがあればそこで止ま 悪天候のため本件車両を運転することは危険な状況にあったが,場所をわきまえずに直ちに運転を中止すると,他の事故を誘発する危険があるから,原告Aは,広い国道に出て,パーキングエリアがあればそこで止まって様子を見ようと考えて,本件車両を運転していたのであるから,原告Aが本件車両の運転を直ちに中止しなかったことを理由に過失相殺することは不当であると主張し,原告A本人は,これに沿う供述をする。 原告Aは,休憩を終えた午前1時頃から約1時間半にわたり,本件車両の運転を継続していたことや,その間に本件車両を停止するのに適した場所がなかったことを裏付ける証拠はないことからすると,原告Aが本件車両の運転を中止して様子を見ようと考えていたとは認められないから,原告らの上記主張は採用することができない。 本件車両の移動費用及び修理費用についてア移動費用 17万円原告会社が本件車両をレッカー車で移動させるための費用として17万円を要したことは,当事者間に争いがない。 イ修理費用 200万円証拠(甲2の2)によると,本件車両を修理するためには,377万6121円を要することを認めることができる。他方で,証拠(甲8,9, 乙2,原告会社代表者)によると,本件車両は,初度登録年月が平成7年3月,累積走行距離が39万7605㎞の車両であり,その時価は200万円であること,原告会社は,本件車両を修理することなく,廃車としたことを認めることができる。これらによると,本件車両は,経済的全損状態にあり,その損害額は200万円の限度で認めるのが相当である。 この点について,原告会社は,本件車両と同等の車両を調達するためには修理費用以上の費用を要するから,修理費用相当額が損害として認められるべきであるとも主張するが, 限度で認めるのが相当である。 この点について,原告会社は,本件車両と同等の車両を調達するためには修理費用以上の費用を要するから,修理費用相当額が損害として認められるべきであるとも主張するが,上記のとおり,本件車両の時価は200万円であることからすると,原告会社の上記主張は採用することができない。 運送経費等についてア有料道路の通行料 0円証拠(甲8,原告会社代表者)及び弁論の全趣旨によると,①本件事故当時,本件車両を含む3台の車両が,荷物を積載して目的地に向かっていたこと,②本件車両を除く2台の車両は,予定どおり荷物を目的地まで運送したこと,③原告会社は,本件車両の荷物を,上記②の2台の車両に積み替え,これを目的地に運送したこと,④原告会社の従業員が上記③の積替作業を行ったことを認めることができる。 原告会社は,東予市から観音寺市の現場まで荷物を運送するための余分の経費及び高速道路通行料として1万5000円を要したと主張し,原告会社作成の一覧表(甲10)には,①本件車両の尾道ICから今治ICまでの通行料として7700円,②荷物を積み替えた後の2台の車両の善通寺IC又はさぬき豊中ICから土居ICまで及び土居ICからさぬき豊中ICまでの通行料として合計7200円が計上されている。 しかし,上記の認定事実によると,上記①の通行料は,本件事故前の通行に要した費用であるものと認められるから,本件事故による損害である ということはできない。上記②の通行料については,原告会社が荷物を運送するために有料道路を通行しなければならなかったことを裏付ける証拠はないから,本件事故による損害であるということはできないし,原告会社がそのような通行料を支出したことを裏付ける領収証等の証拠はない。 イ荷物の積替えのため なければならなかったことを裏付ける証拠はないから,本件事故による損害であるということはできないし,原告会社がそのような通行料を支出したことを裏付ける領収証等の証拠はない。 イ荷物の積替えのための作業経費 0円原告会社が本件車両に積載されていた荷物を他の車両に積み替えた際に人件費を支出したことを認めるに足りる証拠はない。 前記ア認定のとおり,原告会社の従業員が荷物の積替作業を行ったことが認められるところ,従業員の給与明細書(甲2の4)には,上記作業に対応する手当等は計上されていないことからすると,原告会社は,上記作業に伴う特段の経費を支出しなかったことを認めることができる。 ウ荷主との取り決め運賃 0円前記ア認定のとおり,原告会社は,本件車両に積載された荷物を他の車両に積み替え,これを目的地に運送したことが認められるところ,原告会社が荷主から運送料の支払を受けなかったことを認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(甲11,原告会社代表者)によると,原告会社は,荷主に対し,本件車両に積載された荷物の運送料として5万円を請求したことを認めることができる。 この点について,原告会社は,本件事故がなければ,本件車両の代替車両である2台の車両を使用して5万円の売上げを得ることができたとも主張するが,原告会社が上記2台の車両を使用することができなかったため運送の注文を断るなどして売上げが減少したことを裏付ける証拠はない。 休車損害 0円証拠(甲2の5,原告会社代表者)によると,本件事故当時,原告会社は約30台の車両を保有していたことを認めることができるところ,本件車両の修理又は代替車両の購入に要する相当期間において,本件車両を使用する ことができないことにより,運送の注文を断るなどして売上げが減少 を保有していたことを認めることができるところ,本件車両の修理又は代替車両の購入に要する相当期間において,本件車両を使用する ことができないことにより,運送の注文を断るなどして売上げが減少したことを認めるに足りる証拠はない。そして,証拠(甲2の5,原告会社代表者)によると,本件事故当時,原告会社には,常時,稼働していない予備車両が存在したこと,原告Aは,本件事故後,予備車両を使用して勤務していたことを認めることができる。これらによると,原告会社が本件事故により休車損害を被ったということはできない。 車検費用 0円 (乙2)によると,車検の残存車検費用(9か月分)は,本件車両の時価に包含されていることを認めることができる。したがって,原告会社主張の車ことはできない。 過失相殺後の残額 円となるところ,前記3で認定した過失相殺により,損害額の50%を減額すると,その残額は108万5000円となる。 弁護士費用本件事案の内容,認容額等に照らすと,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,10万円が相当である。 合計額以上によると,被告が原告会社に支払うべき損害額は,118万5000円となる。 5 原告A 慰謝料 50万円 原告A本人)によると,本件事故が発生した時,大量の水が運転席に浸入し,運転席の天井近くまで達したこと,原告 Aは,フロントガラスやドアガラスを蹴って破壊しようと試みたが,容易に破壊することができず,著しい恐怖を覚えたことを認めることができる。これによると,原告Aには,金銭によって慰謝すべき精神的苦痛が生じたということができる。本件事故の態様,その他本件に顕れた諸事情を考慮すると,原告Aの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は,50万円が相当である。 ,原告Aには,金銭によって慰謝すべき精神的苦痛が生じたということができる。本件事故の態様,その他本件に顕れた諸事情を考慮すると,原告Aの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は,50万円が相当である。 携帯電話代 0円原告Aは,本件事故により,自己の所有する携帯電話が破損し,使用不能となったと主張し,本人尋問において,これに沿う供述をするが,これを裏付ける他の証拠はないから,原告Aの上記主張は採用することができない。 過失相殺後の残額本件事故による原告Aなるところ,前記3で認定した過失相殺により,損害額の50%を減額すると,その残額は25万円となる。 弁護士費用本件事案の内容,認容額等に照らすと,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,2万円が相当である。 合計額以上によると,被告が原告Aに支払うべき損害額は,27万円となる。 6 結論よって,原告会社の請求は,118万5000円及びこれに対する本件事故日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告Aの請求は,27万円及びこれに対する本件事故日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却し(なお,前記事実関係の下では,原告らが国家賠償法1条1項に基づき請求する損害賠償金 の範囲は上記認定の損害賠償金の範囲と同一になるので,同法1条1項に基づく請求のうち上記認定額を上回る部分は,理由がないこととなる。),訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。なお く請求のうち上記認定額を上回る部分は,理由がないこととなる。),訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。なお,仮執行免脱宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。 広島地方裁判所民事第1部 裁判官龍見昇

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