主文 本訴原告(反訴被告)の請求を棄却する。 本訴被告(反訴原告)の請求を棄却する。 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを2分し,その1を本訴原告(反訴被告)の負担とし,その余を本訴被告(反訴原告)の負担とする。 事実及び理由 第1請求(本訴請求)本訴原告(反訴被告。以下単に「原告」という)と本訴被告(反訴原告。以下。 単に「被告」という)とを離婚する。 。 (反訴請求)原告は,被告に対し,金530万円及び内金500万円に対する昭和59年1月1日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要,(), 本件は婚姻を継続し難い重大な事由民法770条1項5号があるとして長期間別居中の夫から妻に離婚請求をした事案(本訴事件)と,夫に不法行為(不貞,遺棄,不当な離婚訴訟)があるとして,妻から夫に対し不法行為損害賠償請求をした事案(反訴事件)である。 前提事実(1)原告と被告は,昭和51年2月28日婚姻の届出をした夫婦であり,同年5月20日その間に長男Aが生まれた(甲1。 )(2)平成2年9月20日,原告と被告との間に,次の条項で家事調停(以下「本件調停」という)が成立した(岡山家庭裁判所平成2年(家イ)第281号婚姻。 費用分担調停事件。甲2。 )①原告と被告は,当分従来どおり別居生活を続ける。 ②上記別居期間中,被告において長男Aを事実上監護養育する。 ③原告は,被告に対し,Aの養育料を含む被告の婚姻費用の分担として,平成2年9月から上記別居期間中1か月金20万円宛を支払うこととし,これを毎月10日限り金10万円,毎月末日限り金10万円(平成2年9月については同月末日限り20万円)に分割して,B信用金庫C支店の被告名義の普通預金口座に振り込んで支払う。 ④原告は,被告に対し,被告とA 日限り金10万円,毎月末日限り金10万円(平成2年9月については同月末日限り20万円)に分割して,B信用金庫C支店の被告名義の普通預金口座に振り込んで支払う。 ④原告は,被告に対し,被告とAが今後医療機関で受診するようなことがあった場合には,当事者間で別途協議してその医療費を支払う。 ⑤原告と被告は,Aの今後の教育上の問題等について,双方連絡のうえ協議して解決する。 (3)原告は,腰椎椎間板ヘルニアのため平成5年5月28日から同年8月17日までD病院整形外科に入院した(甲6。 )(4)本件調停による原告の支払が滞ったため,被告は,平成6年1月ころ,原告が勤務先である有限会社Eに対して有する給料債権の差押命令を受け,同社から,別紙差押債権支払状況のとおり,平成12年9月1日までの間に合計414万円の支払を受けた(甲3,8,乙5,弁論の全趣旨。 )(5)平成13年5月28日,原告と被告との間に,前記調停条項③を次のとおり変更する旨の家事調停が成立した(岡山家庭裁判所平成13年(家イ)第290号婚姻費用分担金減額調停事件。乙20。 )原告は,被告に対し,婚姻費用分担金として平成13年5月から双方が同居又は離婚するまでの間,月額5万円を毎月末日限り被告名義のB信用金庫C支店の普通預金口座に振り込んで支払う。 (6)被告は,昭和61年1月,クモ膜下出血を発症して手術を受け,現在特発性浮腫のためF病院に通院しているが,ストレスのためと思われる不眠,摂食不良がみられる(乙18,被告本人。 ) 当事者の主張(本訴請求)(1)原告①昭和63年ころから夫婦仲は悪くなり,平成元年から原告と被告は別居を開始した。別居期間はすでに13年以上に及んでいる。 ②原告は,平成元年2月ころから,生活費及び子の養育費として,月額5万円ないし 昭和63年ころから夫婦仲は悪くなり,平成元年から原告と被告は別居を開始した。別居期間はすでに13年以上に及んでいる。 ②原告は,平成元年2月ころから,生活費及び子の養育費として,月額5万円ないし13万円を支払っていたが,平成2年9月20日,本件調停が成立した。調停成立後,原告は,調停条項を履行すべく身を粉にして懸命に働き続けたが,腰椎椎間板ヘルニアを患い,平成5年5月28日から同年8月17日まで入院した。これ以後,原告は,この腰の持病のために仕事が以前ほど満足にできなくなった。そのため収入も減り,被告に対する支払を調停条項どおりに実現することが困難になった。 ③すると被告は,本件調停に基づき,平成6年1月28日,原告の給料債権を差し押さえた。被告はこの差押により今までに合計414万円を受領し,さらに別居開始時からの原告の被告に対する支払を含めると,原告は,被告に対し,これまで相応に十分な金銭を支払っている。もはや別居も長期にわたり,既に婚姻が破綻しているにもかかわらず,原告は被告のために経済的援助を続けてきたのである。 ④現在,原告は,年老いた実母を扶養しており,またトラック運転手という職業柄,原告自身が年を取ったことから昔に比べ収入は激減している。原告が,現在の収入で実母を養いながら,従来どおりの婚姻費用を被告に支払い続けることはもはや不可能である。 ⑤原告と被告の別居期間は相当長期に及んでおり,現在原告は,成人に達した息子との接触も望めない状態にある。原告と被告の婚姻は完全に破綻しており,互いの性格の不一致のため,今後復縁する可能性は皆無である。原告は,被告と正式に離婚して互いに自立し,年老いた実母に心労をかけることなく,平穏な日々を送りたいと考えている。 ⑥反訴請求における原告の主張で述べるとおり,原告の不貞行為や悪意の遺 皆無である。原告は,被告と正式に離婚して互いに自立し,年老いた実母に心労をかけることなく,平穏な日々を送りたいと考えている。 ⑥反訴請求における原告の主張で述べるとおり,原告の不貞行為や悪意の遺棄が婚姻破綻の原因であるとする被告の主張は失当である。また,仮に,夫婦関係破綻に対する責任の一端が原告にあるとしても,本件の場合,離婚を認めても社会正義に反することはない。既に13年以上に及ぶ長期の別居生活を続けている原告と被告が,戸籍上だけで実態を全く欠く夫婦関係を続けることには何ら正当性も合理性もない。 ⑦以上のとおり,原被告間には民法770条1項5号所定の婚姻を継続し難い重大な事由があるから,原告は被告に対し離婚を求める。 (2)被告①昭和63年ころから夫婦仲が悪くなった事実は否認する。平成元年ころ,原告が遊興や女遊びにより留守がちになった事実はあったが,被告は許してきた。原告は,その後も気が向くと帰宅し,夫婦間の性交渉もあった。被告としては極めて病弱の身で子供を養育し,原告が目を覚ますのを待ち続けてきたものである。婚姻破綻については争う。 ②原告の有責性仮に,本件婚姻が破綻しているとしても,反訴請求における被告の主張で述べるとおり,その責任は専ら原告にあるから,離婚請求は許されない。 (反訴請求)(1)被告①不法行為原告には次の不法行為がある。 ア不貞行為結婚後現在に至るまでに,原告は次々と数人の女性と不貞行為をなしたが,その中には長期間にわたり家庭を放棄して不倫の相手と同棲を続けるという甚だしいものがあった。具体的には次のとおりである。 (ア)G原告が間借りしていた家の主婦で,昭和58年ころから不倫関係が始まり,同女の夫に発覚してからは,神戸市内の同女の実家に連れ立って移り,長らく同棲生活を送った。 (イ) のとおりである。 (ア)G原告が間借りしていた家の主婦で,昭和58年ころから不倫関係が始まり,同女の夫に発覚してからは,神戸市内の同女の実家に連れ立って移り,長らく同棲生活を送った。 (イ)居酒屋のママ某女,。 昭和62年ころ原告は近所の居酒屋のママ某女と男女関係を持つようになったイ悪意の遺棄(ア)原告は,妻子を伴って実家を出ながら,島原市内で被告が喫茶店を持つやその収入に依存し,窃盗事件や傷害事件を起こすなどした。女性関係も一度や二度で。 ,はない被告がAの養育を一手に引き受けながら女手一つで喫茶店を営むなどして家庭を必死で守ってきたことを知りながら,原告は勝手に出て行くなどしてほとんど別居し,生活費を出すことをほとんどせず,愛人との同居など身勝手かつ野放図な生活を続けてきた。 (イ)そのため,被告は,島原の地にあって働きずくめで,昭和60年ころから心臓病を患い,昭和61年のクモ膜下出血の際には生死の境をさまよった。昭和62年には心労から農薬を飲んで自殺を図るまでに追い詰められ,さらにはリューマチも発病した。被告については,これらによる度重なる緊急入院など危機的ないし極めて困難な状態が続いたが,原告は知りながら家庭に対する当然の責任を放棄してきた。被告は,原告の長年にわたる非道な仕打ちにより,精神的にも極限まで追い詰められ,自律神経失調等の変調を来すに至っている。 (ウ)Aは,平成3年に高校へ進学したが,被告がH病院に入院し,原告が家庭を顧みなかったために,岡山市aにある養護施設「I」から通学することを余儀なくされた。Aは,高校卒業後,母親を助けるため豆腐製造の会社(J「K)に「」,」勤め,毎朝午前3時から出勤するという過酷な生活に耐えている。しかも,Aは,平成12年にサッカーで大怪我をし,2度の入院を余儀 ,高校卒業後,母親を助けるため豆腐製造の会社(J「K)に「」,」勤め,毎朝午前3時から出勤するという過酷な生活に耐えている。しかも,Aは,平成12年にサッカーで大怪我をし,2度の入院を余儀なくされた。こうした状態を知りながら,原告は扶養義務を放棄してきたものであり,その違法性は重大である。 (エ)原告の扶養能力と遺棄の悪意性原告には被告母子の生活を支える能力が欠けていたわけではない。 a原告は造園業等を営むb町の裕福な実家からの支援のもと,鉢物等の輸送に携わり,昭和61年からは有限会社Eの代表者であったもので,月額100万円を超える収入を得ていた。 b平成2年9月20日に成立した本件調停において,原告が被告に対し,月額20万円の婚姻費用を支払うことになったが,この額は原告からの申し出により,被告とAの生活費の分担金として決まったものである。 cところが,原告は,分担金について全く支払をしなかった。被告は,平成6年になって,やむなく原告の給料債権の差押をしたが「役員を外れ,請負輸送とい,う契約形態で,会社からの立替金が多額に上るから,手取月収は20万円に満たない」などとの理由から,会社からは月額5万円の,しかも断続的な支払しかなかった。 dしかも,原告は,他の兄弟同様に父Oから生前贈与を受け,あるいは相続によって取得しながら,原告の行状不安から相続登記未了であったb町大字cd番の自宅の土地建物を,あろうことか平成11年5月17日受付で,母Lへの所有権移転登記をした(登記原因は平成9年1月19日相続。この不動産は,被告及びAに)対する扶養義務等を果たすための唯一ともいうべき責任財産であった。原告による遺棄は,まさしく悪意によるものである。 ウ不当な離婚訴訟前述のとおり不法行為及び悪意の遺棄という事情から,原告からの離 対する扶養義務等を果たすための唯一ともいうべき責任財産であった。原告による遺棄は,まさしく悪意によるものである。 ウ不当な離婚訴訟前述のとおり不法行為及び悪意の遺棄という事情から,原告からの離婚請求は,,,謝罪等の被告への慰謝措置を欠いては本来許されないところ原告は経過を無視しことさらに事実を偽って,離婚調停,ついで離婚訴訟を提起した。原告のかかる提訴は被告の精神的苦痛に対する配慮を著しく欠いたもので,不当違法である。 ②損害原告の前記不法行為により,被告は次の損害を被った。 ア慰謝料500万円原告の上記不法行為により,被告が被った精神的苦痛は甚大であり,金500万円の支払により慰謝されるのが相当である。 イ弁護士費用30万円被告は,法律扶助によって弁護士に訴訟委任し,本件につき応訴,反訴を提起,遂行することを余儀なくされた。法律扶助からの立替金見込額中30万円は原告が負担すべきである。 ③消滅時効について原告の不法行為は継続しているから,損害賠償請求権の消滅時効は完成しない。 ④よって,被告は,原告に対し,不法行為による損害賠償として金530万円及び内金500万円に対する,不貞及び悪意の遺棄等が継続し始めた昭和59年1月1日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2)原告①不貞行為について原告がGと一時交際したことはあったが,時々会う程度で,その関係は1年も続かなかった。それ以外の不貞行為はない。 ②悪意の遺棄について原告が被告を悪意で遺棄した事実はない。被告は,婚姻破綻の大きな原因である自己の派手好きで身勝手な性格のことは棚に上げ,原告の非を鳴らすが,その主張は余りにも一方的である。 ア原告は,被告及びAと別れて暮らすようになってからも,夫として又父としての責任を果たすべ ある自己の派手好きで身勝手な性格のことは棚に上げ,原告の非を鳴らすが,その主張は余りにも一方的である。 ア原告は,被告及びAと別れて暮らすようになってからも,夫として又父としての責任を果たすべく精一杯努力した。昭和56年8月から昭和58年7月まで,原告は,被告に対し月15万円位の金銭を送り続け,平成元年2月から平成2年10月までは総額111万円を送金している。原告は,明確な証拠資料があるだけでも1200万円以上の金銭を支払っている。 イ被告が昭和61年にクモ膜下出血のため長崎で入院したときには,仕事が忙し,。 かった原告に代わって原告の母Lが遠路長崎まで出向いて被告の看病をしているこれに対し,原告が平成5年持病の腰痛のため入院した際には,被告は看病はおろか見舞いにさえ来なかった。 ,,ウ被告は昭和61年当時原告に100万円を超える月収があったと主張するが100万円の売上から諸経費を控除すると,原告が自由にできた金額はそれほど大きなものではなかった。 エ原告は,親から250坪の土地を財産分けとして生前贈与されたが,この土地は原告と被告が長崎で家を購入するための資金を捻出するために原告の次兄Mに買い取ってもらっている。b町cd番地の土地建物は財産分けの対象外であり,原告が関知できるものではなく,当該土地建物の所有権が原告の母Lに移転されたことは本件とは無関係である。Lは,自己が居住しているこの家屋敷を原告にやると言ったこともなく,まして被告にやるなどと言ったことはない。当該建物は,被告が昔出入りしていた古い母屋を取り壊して建てられた新しい母屋であり,建て替えを機にLの居住財産として登記手続をとったのである。 ③不当な離婚訴訟について原告の離婚訴訟は正当であり,何ら不法行為にはならない。 ④消滅時効仮に原告に不法行為があっ しい母屋であり,建て替えを機にLの居住財産として登記手続をとったのである。 ③不当な離婚訴訟について原告の離婚訴訟は正当であり,何ら不法行為にはならない。 ④消滅時効仮に原告に不法行為があったとしても,その損害賠償請求権は既に時効により消滅しているから,原告は消滅時効を援用する。 第3当裁判所の判断 証拠(甲1ないし10,乙1ないし9,12ないし22,24(以上,枝番のあるものは枝番のすべて,証人A,原告本人,被告本人。但し,それらのうち後)記認定に反する部分は,他の証拠に照らし採用しない)並びに弁論の全趣旨によ。 れば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (1)被告は,昭和21年7月10日,当時の岡山県赤磐郡e村で出生したが,幼くして両親を失い,昭和39年ころM某と婚姻して娘2人を儲けたが,夫の女性関係が原因で昭和50年2月離婚し,娘2人は夫が引き取った。被告は,倉敷市fのクラブでホステスをしているとき客として知り合った原告とその後事実上婚姻し,同年5月ころから岡山県浅口郡b町の原告の実家に原告の両親らと同居した。原告は,昭和26年3月30日,O,同L夫婦の五男として出生し,二男M,四男Nらと家業の造園業に従事していたが,親の反対を押し切って被告と一緒になり,昭和,。 51年2月28日に婚姻届出をし被告との間に同年5月20日長男Aが生まれた原告は,昭和53年ころ親と仲違いをし,トラック1台に被告とAを乗せて故郷を飛び出した。 (2)原告夫婦は当初住居を持たず,車中で寝泊まりしながら,持って出たトラックを利用した運送仕事を行っていたが,昭和54年9月ころ,長崎県島原市k町にアパートを借りて住居を構えた。原告は,十分な資力がないのに親に対する対抗心などから持ち家を取得することを決め,昭和55年1月, 利用した運送仕事を行っていたが,昭和54年9月ころ,長崎県島原市k町にアパートを借りて住居を構えた。原告は,十分な資力がないのに親に対する対抗心などから持ち家を取得することを決め,昭和55年1月,住宅ローンを利用して同県南高来郡g町の建売住宅を購入し,被告やAと居住したが,同年3月ころには失職した。原告は,父から財産分けとして金光町に約250坪の土地をもらっていたが,これを次兄Mに500万円で購入してもらい,その代金を元手に島原市内で喫茶店「P」を開店し,被告に経営させた。被告はその店を懸命に営業したが,原告には酒浸りの日が多く,飲酒の上被告に暴力を振るうことも度々あった。原告は,,,,同年12月ころ天草で味噌壺の窃盗を働いたため逮捕されその後釈放されたが翌昭和56年夏ころには,被告と喫茶店の客の関係を邪推し,酔余被告や客の男性に暴行を加えて負傷させた。この傷害事件のため,被告は原告との離婚を決意し,原告を同伴して裁判所に相談に出向こうとしたが,離婚を嫌がった原告は途中で逃走し,結局原告夫婦は別居することとなった。原告は,岡山に戻って,父親の庭木卸の店を手伝うようになったが,住宅ローンを毎月15万円送金することを被告に約束し,これを履行していたものの,昭和58年2月から滞り,同年4月には競売の話が持ち上がった。被告は急遽100万円を工面し債権者に支払って競売の猶予をもらうとともに,島原市h町の市営住宅にAを連れ転居して建売住宅から荷物を出し,仲介業者に頼んで任意売却の話を進めてもらい,同年夏ころ任意売却に成功した。このとき住宅ローンが約500万円残ったが,この金は原告が工面し,岡山市から債権者側の預金口座に500万円振込入金して支払った。 (3)原告は,岡山に戻った後岡山市iに住んだが,間借り先の人妻Gと男女関係を結び,そのこ 500万円残ったが,この金は原告が工面し,岡山市から債権者側の預金口座に500万円振込入金して支払った。 (3)原告は,岡山に戻った後岡山市iに住んだが,間借り先の人妻Gと男女関係を結び,そのことが同女の夫に発覚し,島原に住む被告はもと子の夫から電話で脅されたりした。心労が重なった被告は,昭和59年ころ,心臓病で島原のQ病院に入院したため,原告は,前年小学校に入学したAを一時引き取り,神戸市l区にあるGの実家に2か月程預け,Aに心細い思いをさせた。昭和59年6月16日,原告は,被告に対し,これから先のことは自分に任せてほしい,親子3人で暮らすように絶対する,これからは電話も4日に1回位かけて連絡を密にし,島原には10日に1回帰り,その他話し合いにも応じると約束し,その旨の念書(乙12)を交付した。被告は,原告の言葉を信じ,親子3人で暮らせる日を心待ちにしたが,原告はその直後の同月18日Gの実家に転居する旨の住民異動届を提出し,Gとの関係を続けた。 (4)昭和60年ころ,原告の長兄らの取りなしにより,原告が被告とAを岡山に。 ,,引き取ることになった被告はそのための引越の準備に無理をしたことなどから昭和61年1月4日ころクモ膜下出血を発症し,同年3月2日までR病院に入院した(この病院は完全看護であり,この入院期間中原告の母が看病した事実は認められない。被告の退院後,喫茶店は低額で処分され,原告と被告,Aの3人は岡。)山市jk番地の借家で同居し,原告は,同年4月1日に設立した有限会社Eの代表者となって,生花市場内の鉢物植木の輸送仕事に従事した。被告は,クモ膜下出血の手術の後水頭症を発症し,同年6月16日から同年7月8日までH病院に入院するなど予後が不良であった。昭和62年ころ,原告とGの関係がこじれ,同女から原告宛の慰謝料請求 事した。被告は,クモ膜下出血の手術の後水頭症を発症し,同年6月16日から同年7月8日までH病院に入院するなど予後が不良であった。昭和62年ころ,原告とGの関係がこじれ,同女から原告宛の慰謝料請求の電話が連日かかるようになったため,原告はやむなく調停を申し立て,Gとの間を清算したが,それから間もない同年夏ころ,被告は,原告が居酒屋のママと男女関係にあることを居酒屋の従業員から聞かされた。被告は,当時原告が飲酒しては暴れ,また生活費を十分に渡さず,Aの小学校の費用も待ってもらえと言いながら,女遊びを続けることなどに絶望し,農薬を飲んで自殺を図ったが未遂に止まった。被告は,子宮筋腫のため昭和63年8月5日ころから同月24日ころまでS病院に入院したが,その間も原告はAの面倒を見なかった。 (5)平成元年ころ,原告は,家に戻らないようになり,被告やAと別居した。原告は,被告に対し,電信為替で次のとおり生活費を送金した。なお,Aは,平成元年4月,中学校に入学した。 平成元年2月2日金10万円同年2月23日金10万円同年3月20日金10万円同年4月5日金13万円同年5月19日金5万円同年5月31日金10万円同年6月22日金5万円同年8月10日金5万円平成2年2月2日金9万円同年2月21日金5万円同年3月14日金10万円同年9月7日金5万円同年10月12日金9万円同年10月25日金5万円(6)被告は,平成2年3月で原告からの生活費の送金が途切れ,困窮したため,同年7月ころ,原告を相手に離婚調停を申し立てたが,原告が改悛し,生活費を月20万円支払うなどと申し出たため,同年9月20日,本件調停が成立した。しかしながら,原告は前記のとおり同年10月に合計14万円を支払ったのみで,その,,。 余の支払を 原告が改悛し,生活費を月20万円支払うなどと申し出たため,同年9月20日,本件調停が成立した。しかしながら,原告は前記のとおり同年10月に合計14万円を支払ったのみで,その,,。 余の支払をしなかったため病弱の被告は中学生の篤を抱え貧困の日々を送った原告は,外車をいくつか乗り替えるなどして負債を抱えていたが,債権者からの督,,「」「」促が被告に及ぶようになったため被告は平成3年2月12日名をTからUに変更した。 (7)Aは,親子2人の貧しい生活の中,中学校を卒業し,平成4年4月岡山市内の工業高校に進学したが,被告が同年7月から10月まで入院したため,児童養護施設に入所し,結局高校3年間を同所から通学した。被告は,洋服店やスナック,パチンコ店,コンビニエンスストア,カラオケ店などで時給仕事に従事し,細々と生活したが,平成5年12月には,腎臓,栄養失調,貧血で緊急入院するなど体調は依然として芳しくなく,困窮の日々を重ねた。なお,原告も腰椎椎間板ヘルニアのため平成5年5月28日から同年8月17日までD病院に入院したが,その入院のことは被告に知らせなかった。被告は,法律扶助を受けて原告訴訟代理人に相談し,本件調停の調書を債務名義として,原告の有限会社Eの給料(原告は平成4年7月同社の取締役を辞め,単なる従業員になっていた)について平成6年1月こ。 ろ差押命令を受け,別紙差押債権支払状況記載のとおり,同社から平成12年9月までの間に合計414万円を取り立てた。被告は,差押命令申立のころ,生活保護の受給を周囲から勧められたが,受給を受ければサッカー部に所属するAにサッカーを続けさせてやれなくなると案じて,思い止まっていた。 (8)Aは,平成7年3月高校を卒業し,印刷会社に就職し,被告と同居してjの借家から通勤したが,同年秋,よ ればサッカー部に所属するAにサッカーを続けさせてやれなくなると案じて,思い止まっていた。 (8)Aは,平成7年3月高校を卒業し,印刷会社に就職し,被告と同居してjの借家から通勤したが,同年秋,より賃金の高い豆腐店に転職した。なお,被告は,昭和62,3年ころから,原告と自己を被共済者とする全労災のこくみん共済を原告名義で契約し,原告と別居した後も,原告が自分の元に戻ることを期待して共済契約を続け,掛金を支払っていたが,その後Aがこれを継続し,原告と被告を被共済者とする共済契約を締結し,掛金を支払っている。 (9)原告の父Oは,岡山県浅口郡b町大字cd番宅地300.82平方メートル等を所有して地上建物に妻と居住していたが,昭和59年ころ建て替えて,木造瓦葺平家建居宅を新築した。昭和61年3月に被告らが島原から岡山に戻る途中O方に立ち寄った際,Oは被告とAに「ここはお前達の家だぞ」と述べた。Oは平成。 ,,,()9年1月に死亡しその妻Lは平成11年5月17日自宅の敷地1864番につき単独で相続登記をし,同年6月11日地上建物について保存登記をした。 (10)平成11年,Aの結婚話が持ち上がったが,相手の親は,Aが母子家庭であり,結婚後も被告と同居する決意であったことなどから結婚に反対した。被告は,父親である原告に連絡を取りたがったが連絡先がわからずにいたところ,話を聞きつけた原告から被告に電話がかかり,相手の親が反対していることについて「Aにはbに家があるんだと向こうに言ってやれ」と被告に伝えたほか,優しい言葉で。 被告を慰めた。原告は,その後も何度か被告に電話したり,jの被告方を訪れ,被告と肉体関係を持つこともあった。なお,被告は,同年7月17日から同月24日まで肺炎のためH病院に入院した。 (11)原告は,前記のと 。原告は,その後も何度か被告に電話したり,jの被告方を訪れ,被告と肉体関係を持つこともあった。なお,被告は,同年7月17日から同月24日まで肺炎のためH病院に入院した。 (11)原告は,前記のとおり給料債権の差押を受け,平成8年7月からは毎月6万円を給料から差し引かれていたため,その支払の負担から免れるべく,平成12年11月16日,被告を相手に離婚調停の申立をしたが,平成13年1月19日調停不成立となった。他方,被告の申立により,岡山家庭裁判所調査官から本件調停に基づく婚姻費用の支払義務の履行勧告が同年2月2日になされ,原告は,同年4月23日,婚姻費用減額の調停を申し立てる一方,同月28日本訴事件を提起した。 ところで,Aは学生時代サッカーに没頭し,社会人になった後も趣味で続けていたところ,同年5月8日,同好会仲間との試合中負傷して靱帯,半月板損傷の重傷を負い,同月14日手術を受けた。その直前の同月12日本訴事件の訴状が被告に送達されたが,被告は,これまで母子に辛酸をなめさせてきた原告から離婚訴訟を提起され,自己が「被告」とされたことに強い衝撃を受け,他の心労も重なって同月18日に倒れた。被告は,特発性浮腫のためV病院に通院していたが,本件の離婚訴訟やAの結婚問題等の悩みから不眠,摂食不良が出現している。 (12)同年5月28日,原告から被告に対し婚姻費用分担金として平成13年5月から離婚まで毎月末日限り金5万円を支払う旨の婚姻費用減額調停が成立したが(岡山家庭裁判所平成13年(家イ)第290号,原告は,同年5月31日,同)年7月2日,同年8月7日,同年9月17日に各5万円を支払ったのみで滞っていたところ,平成14年4月5日になって30万円(6か月分)を支払った。 (13)被告にはAと原告以外に頼ることのできる親族がいない。なお,原 8月7日,同年9月17日に各5万円を支払ったのみで滞っていたところ,平成14年4月5日になって30万円(6か月分)を支払った。 (13)被告にはAと原告以外に頼ることのできる親族がいない。なお,原告の母Lは,近くに住む原告の次兄Mの扶養家族になっているところ,Mは家業を継いで,株式会社Wを経営している。また,原告の長兄は名古屋で会社社長として成功し,四兄のNはX株式会社の役員をしている。 本訴請求について(1)前記1の認定事実に照らせば,被告は未だ原告の帰りを待っているものの,原告と被告の婚姻は客観的にみれば,すでに破綻しているものと解されるところ,その専らの責任は,妻以外の女性と男女関係を結ぶなど家庭を顧みない身勝手な行状を重ね,妻子を捨てた原告にあるものといわざるをえない(原告は,被告の派手好きで身勝手な性格が婚姻破綻の大きな原因である旨主張するが,そのように認めるに足りる証拠はない。 。),(2)夫婦の別居が夫婦の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及びその間に未成熟の子が存在しない場合には,離婚により相手方が精神的,社会的,経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り,有責配偶者からの請求であるとの一時をもってその離婚請求が許されないとすることはできない(最高裁大法廷昭和62年9月2日判決。これを本件についてみると,原告と被告の別居は平成元年),,から13年の長期に及んでいるものの①婚姻破綻に至る原告の責任の態様や程度②被告がこれまで病気や貧困と闘いながら懸命にAを育て,原告の帰りをひたすら待っていた労力や心情,③被告は肉体的に多種の病魔に冒され,精神的にも相当疲弊困憊しており,長男が結婚して独立すれば被告には他に頼るべき親族 病気や貧困と闘いながら懸命にAを育て,原告の帰りをひたすら待っていた労力や心情,③被告は肉体的に多種の病魔に冒され,精神的にも相当疲弊困憊しており,長男が結婚して独立すれば被告には他に頼るべき親族がいないこと,他方,④原告は本件調停において自ら毎月20万円の婚姻費用を支払う旨約束しながら,調停の翌月に合計14万円支払ったのみであり,平成6年6月からの給料債権差押による取立を除けば,本件離婚訴訟提起まで誠実に調停を履行する姿勢を見せていないこと,⑤原告が離婚を必要とする事情として掲げる実母の扶養については,原告のほかに扶養能力のある兄弟がいないわけではなく,十分な根拠たりえないこと等を考えると,原告の本件離婚請求を認容すれば,それによって被告は精神的,社会的,経済的に極めて苛酷な状態におかれ,著しく社会正義に反するものといわざるをえない。 (3)したがって,原告の本件離婚請求は,信義誠実の原則に照らし,認容することができない。 反訴請求について(1)不貞行為による損害賠償被告が農薬を飲んで自殺を図った昭和62年ころまでは原告に不貞行為があったことが認められるが,それ以降も不貞行為があったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,昭和62年ころまでの不貞行為を原因とする損害賠償請求権については,反訴が提訴された平成13年11月2日当時すでに消滅時効が完成していることになる。 (2)悪意の遺棄による損害賠償原告は,平成5年5月から同年8月まで腰椎椎間板ヘルニアで入院し,別紙差押債権支払状況記載のとおり平成6年6月から平成12年9月まで給料債権から婚姻費用分担金を控除されているところ,少なくとも給料債権の差押を受けた平成6年1月ころ以降原告に十分な収入があったものと認めるだけの証拠はないから,原告が被告に婚姻費用分担金をそれ以 給料債権から婚姻費用分担金を控除されているところ,少なくとも給料債権の差押を受けた平成6年1月ころ以降原告に十分な収入があったものと認めるだけの証拠はないから,原告が被告に婚姻費用分担金をそれ以上に支払わなかったとしても,特段の事情がない限り,単なる債務不履行にすぎず,不法行為を構成するものとは解することができず,前記特段の事情は窺えない。そうすると,平成6年1月ころ以降の婚姻費用分担金不払いによる損害賠償は認められないところ,それ以前の不払いが仮に不法行為を構成するほどの悪質なものであったとしても,それによる損害賠償請求権については,反訴が提訴された平成13年11月2日当時すでに消滅時効が完成している。したがって,被告主張に係る悪意の遺棄による損害賠償請求も認められない。 被告は,原告が母の居住する居宅の土地建物を取得していたかの主張をするが,原告の父Oが被告親子に「ここはお前達の家だぞ」と述べたことや,原告が被告に。 「Aにはbに家があるんだと向こうに言ってやれ」と述べたことの。 みをもってそのように解することはできず,他に原告がそれらの土地建物を取得したことを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告と被告は,平成2年9月20日に調停を成立させ,当分従来どおり別居を続ける旨合意しているから,原告が被告と別居をすること自体は不法行為を構成しない。 (3)不当提訴による損害賠償原告による本件離婚訴訟は,およそ事実的、法律的根拠を欠くことが明らかなものとは認められないから,裁判制度の趣旨,目的に照らして著しく相当性を欠くものとは解せられない。その他,本件離婚訴訟が違法なものと認めるに足りる証拠はないから,原告に不当提訴による損害賠償責任を負わせることはできない。 以上によれば,原告の本訴請求及び被告の反訴請求は,いずれも理由がない。 の他,本件離婚訴訟が違法なものと認めるに足りる証拠はないから,原告に不当提訴による損害賠償責任を負わせることはできない。 以上によれば,原告の本訴請求及び被告の反訴請求は,いずれも理由がない。 岡山地方裁判所第2民事部裁判官政岡克俊
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